(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-19
(54)【発明の名称】画像投影
(51)【国際特許分類】
G03H 1/22 20060101AFI20240112BHJP
G03H 1/08 20060101ALI20240112BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240112BHJP
G02B 27/01 20060101ALN20240112BHJP
【FI】
G03H1/22
G03H1/08
G02B27/02 Z
G02B27/01
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531659
(86)(22)【出願日】2022-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2022052498
(87)【国際公開番号】W WO2022167492
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519027213
【氏名又は名称】エンヴィシクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】ジェイミーソン クリスマス
(72)【発明者】
【氏名】メイト カーナー
(72)【発明者】
【氏名】ルイシェン リン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー スミートン
【テーマコード(参考)】
2H199
2K008
【Fターム(参考)】
2H199CA22
2H199CA24
2H199CA53
2H199CA67
2H199CA68
2H199CA77
2H199CA97
2H199DA12
2H199DA26
2H199DA42
2K008AA14
2K008CC03
2K008FF21
2K008FF27
2K008HH00
2K008HH26
(57)【要約】
観察システムによって変換可能な光をターゲット画像に空間的に変調するように構成される回折構造。回折構造は、複数の離散光パターンを生成するように構成される。各光パターンは、ターゲット画像の異なる部分に対応する。各離散光パターンの形状は、観察システムの入射開口の形状に実質的に対応する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察システムによって画像に変換可能な光を空間的に変調するように構成される回折構造であって、
光を複数のホログラムチャネルにルーティングするように構成され、各ホログラムチャネルが前記画像の異なる部分に対応する、
回折構造。
【請求項2】
前記ホログラムチャネルが前記回折構造から異なるそれぞれの角度で伝搬するように配置される、
請求項1に記載の回折構造。
【請求項3】
各ホログラムチャネルは、前記画像のそれぞれの異なる部分に従って空間的に変調される光を実質的に含む、
請求項1又は2に記載の回折構造。
【請求項4】
前記光の位相を空間的に変調するように構成される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の回折構造。
【請求項5】
導波路を通じて光をルーティングするように構成される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の回折構造。
【請求項6】
前記導波路が瞳拡張のために配置される、
請求項5に記載の回折構造。
【請求項7】
各ホログラムチャネルによって形成可能な光パターンの断面形状は、前記観察システムの入口開口の形状に実質的に対応する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の回折構造。
【請求項8】
前記ホログラムチャネルは、空間的に分離される又は少なくとも部分的に空間的に分離される、
請求項1から7のいずれか一項に記載の回折構造。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の回折構造と、前記回折構造から前記空間的に変調される光を受けるように構成される導波路と、前記導波路を介して前記空間的に変調される光を受けるように構成される観察システムとを備える
システム。
【請求項10】
各ホログラムチャネルの光が前記回折構造から前記観察システムまで異なる光路をたどるように構成される、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記異なる光路が前記導波路内に異なる数の反射を含む、
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記異なる光路が異なる長さである、
請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
前記異なる光路が異なるそれぞれの角度で前記観察システムの前記入口開口を通過する、
請求項10、11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記導波路は、全てのホログラムチャネルが観察面上の任意の観察位置で前記観察システムの前記入口開口を通じてルーティングされるように配置される、
請求項10から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記導波路は、それぞれの許可された観察位置ごとに各ホログラムチャネルを一方の光路を介して前記観察システムにルーティングするだけである、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記複数のホログラムチャネルのうちの少なくとも2つのホログラムチャネルは、前記観察システムの前記入口開口で部分的に重なっている、
請求項9から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記回折構造がキノフォーム又はホログラムである、
請求項1から8のいずれか一項に記載の回折構造又は請求項9から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
画像のホログラムを計算する方法であって、
照明されるときに空間的に変調される光を形成するホログラムを形成するために前記観察システムの前記入射瞳に従って切り取ること(計算中の光路)を含む少なくとも1つのステップを含み、前記空間的に変調される光の連続光チャネルが前記画像の連続領域に対応する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像投影に関する。より具体的には、本開示は、ホログラム又はキノフォームなどの回折構造を決定するための回折構造及び方法に関する。幾つかの実施形態は、視線追跡情報に基づくリアルタイムホログラム計算に関する。幾つかの実施形態は、虚像投影に関する。幾つかの実施形態は、実像の投影に関する。実施形態は、導波路を介して投影画像を見ることに関する。幾つかの実施形態は、画像生成ユニットなどの光エンジンに関する。幾つかの実施形態は、ヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
物体から散乱される光は、振幅情報及び位相情報の両方を含む。この振幅情報及び位相情報は、例えば、干渉縞を備えるホログラフィック記録又は「ホログラム」を形成するべく周知の干渉技術によって感光板上に捕捉され得る。ホログラムは、当初の物体を表す2次元又は3次元ホログラフィック再構成或いは再生画像を形成するべく適切な光による照明によって再構成され得る。
【0003】
計算機合成ホログラフィは、干渉プロセスを数値的にシミュレートすることができる。計算機合成ホログラムは、フレネル変換又はフーリエ変換などの数学的変換に基づく技術によって計算され得る。これらのタイプのホログラムは、フレネル/フーリエ変換ホログラム又は単にフレネル/フーリエホログラムと称される場合がある。フーリエホログラムは、物体のフーリエ領域/平面表示又は物体の周波数領域/平面表示と見なされ得る。また、計算機合成ホログラムは、例えば、コヒーレントレイトレーシング又は点群技術によって計算され得る。
【0004】
計算機合成ホログラムは、入射光の振幅及び/又は位相を変調するようになっている空間光変調器で符号化され得る。光変調は、例えば、電気的にアドレス可能な液晶、光学的にアドレス可能な液晶、又は、マイクロミラーを使用して達成され得る。
【0005】
空間光変調器は、一般に、セル又は素子とも称され得る複数の個別にアドレス可能なピクセルを備える。光変調方式は、バイナリ、マルチレベル、又は、連続であってもよい。或いは、デバイスが連続的(すなわち、ピクセルから構成されない)であってもよく、したがって、光変調がデバイス全体にわたって連続的であってもよい。空間光変調器は、変調光が反射して出力されることを意味する反射型であってもよい。空間光変調器は、同様に、変調光が透過して出力されることを意味する透過型であってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホログラフィックプロジェクタは、本明細書に記載のシステムを使用して提供されてもよい。そのようなプロジェクタは、例えば、ヘッドアップディスプレイ「HUD」及び光検出並びに測距「LIDAR」に用途を見出している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様は、添付の独立請求項に規定される。
【0008】
本開示及び図面は、一般に、説明及び例示を容易にするために一次元の場合を示す。しかしながら、光学分野の当業者であれば分かるように、記載されて図示された概念が二次元ホログラムから二次元画像を与えるために二次元に拡張されてもよい。例えば、一次元の瞳孔拡張のみを説明して図示する場合があるが、読者であれば分かるように、本開示は、例えば直列の2つの一次元瞳孔拡張器を使用して、二次元瞳孔拡張にまで及ぶ。
【0009】
本開示は、画像投影に関する。本発明は、画像投影の方法及び表示デバイスを備える画像プロジェクタに関する。また、本開示は、画像プロジェクタと観察システムとを備える投影システムに関する。本開示は、単眼及び両眼の観察システムに等しく適用可能である。観察システムは、観察者の1つの眼又は複数の眼を含むことができる。観察システムは、光パワーを有する光学素子(例えば、人の眼の1つ/複数のレンズ)と、観察面(例えば、人の1つ/複数の眼の網膜)とを備える。プロジェクタは、「光エンジン」と呼ばれることがある。表示デバイス及び表示デバイスを使用して形成(又は知覚)される画像は、互いに空間的に分離される。画像は、表示平面上に形成される又は観察者によって知覚される。幾つかの実施形態では、画像が虚像であり、表示平面が虚像面と呼ばれることがある。画像は、表示デバイスに表示される回折パターン(例えば、ホログラム)を照明することによって形成される。本開示は、画像投影のための回折パターンを与えること(例えば、計算すること)、及び、回折パターンに更に関する。
【0010】
表示デバイスはピクセルを備える。表示デバイスのピクセルは、光を回折する。十分に理解されている光学素子によれば、最大回折角の大きさは、ピクセルのサイズ(及び光の波長などの他の要因)によって決定される。
【0011】
実施形態において、表示デバイスは、液晶オンシリコン(「LCOS」)空間光変調器(SLM)などの空間光変調器である。光は、LCOSからカメラ又は眼などの観察エンティティ/システムに向かって、ある範囲の回折角(例えば、0から最大回折角まで)にわたって伝搬する。幾つかの実施形態では、拡大技術を使用して、利用可能な回折角の範囲をLCOSの従来の最大回折角を超えて増大させることができる。
【0012】
実施形態では、画像が実像である。他の実施形態において、画像は、人の眼(又は複数の眼)によって知覚される虚像である。したがって、投影システム又は光エンジンは、観察者が表示デバイスを直接見るように構成することができる。そのような実施形態において、ホログラムで符号化された光は、眼に直接伝搬される。この光は、「空間的に変調された」又は「ホログラフィック光」と呼ばれることがある。そのような実施形態では、自由空間又はスクリーンもしくは他の受光面のいずれかにおいて、表示デバイスと観察者との間に中間ホログラフィック再構成が形成されない。そのような実施形態において、眼の瞳孔は、観察システムの入口開口であると見なされてもよく、眼の網膜は、観察システムの観察面であると見なされてもよい。この構成では、眼のレンズがホログラムから画像への変換を行うと言われることがある。
【0013】
十分に理解されている光学素子の原理によれば、眼又は他の観察エンティティ/システムによって見ることができる表示デバイス又は観察窓から伝搬する光の角度の範囲は、表示デバイスと観察エンティティとの間の距離に伴って変化する。例えば、1メートルの観察距離では、LCOSからの狭い範囲の角度のみが眼の瞳孔を通じて伝搬し、所定の眼の位置の網膜に画像を形成することができる。所定の眼の位置に関して網膜に画像を形成するべく眼の瞳孔を通じて首尾よく伝搬し得る表示デバイスから伝搬される光線の角度の範囲は、観察者に「見える」画像の部分を決定する。言い換えると、画像の全ての部分が、観察面上の任意の1つの点(例えば、アイモーションボックスなどの観察窓内の任意の1つの眼の位置)から見えるわけではない。
【0014】
幾つかの実施形態において、観察者によって知覚される画像は、表示デバイスの上流側に現れる虚像であり、すなわち、観察者は、画像が表示デバイスよりも遠方にあると知覚する。概念的には、虚像の異なる複数の虚像点を考えることができる。仮想点から観察者までの距離は、本明細書では、その虚像点についての虚像距離と呼ばれる。勿論、異なる仮想点は、異なる虚像距離を有してもよい。各仮想点に関連付けられた光線束内の個々の光線は、表示デバイスを介して、観察者への異なるそれぞれの光路をとることができる。しかしながら、表示デバイスの一部のみ、したがって、虚像の1つ以上の仮想点からの光線の一部のみが、ユーザの視野内にあってもよい。換言すれば、虚像上の仮想点の一部からの光線の一部のみが、表示デバイスを介してユーザの眼に伝搬し、したがって観察者に見える。したがって、概念的には、観察者が「表示デバイスサイズの窓」を通して虚像を見ていると考えることができ、「表示デバイスサイズの窓」は、非常に小さく、例えば比較的長い距離、例えば1メートルでは直径1cmとなり得る。また、ユーザは、非常に小さくすることもできるユーザの眼の瞳孔を介して表示デバイスサイズの窓を見ている。したがって、視野は小さくなり、見ることができる特定の角度範囲は、任意の所定の時間において、眼の位置に大きく依存する。
【0015】
例えば、空間が限られている及び/又は不動産価値が高い場所で実施される場合、光学系は物理的に小さいことが望ましいことが多い。しかしながら、物理的制約は、一般に、機能的制限と関連付けられる。例えば、従来の光学系では、小型の表示デバイスを使用することは、一般に、限られた視野(FOV)を有することに関連し、したがって画像の視認性を制限する。本開示は、表示デバイスが(相対的に)小さく、投影距離が(相対的に)大きい場合に、視野をどのように拡大するか、すなわち、表示デバイスから伝搬し、眼の瞳孔を通って首尾よく伝搬して画像を形成することができる光線の角度範囲をどのように拡大するかという技術的問題に対処する。幾つかの実施形態において、投影距離は、表示デバイスの開口の直径又は幅よりも少なくとも1桁、例えば少なくとも2桁大きい(すなわち、ピクセルのアレイのサイズ)。より具体的には、本開示は、画像自体ではなく画像のホログラムが人間の眼に伝搬される、いわゆるダイレクトビューホログラフィを用いてこれを行う方法の技術的問題に対処する。換言すれば、観察者が受光する光は、画像のホログラムにしたがって空間的に変調された「ホログラフィック光」である。
【0016】
瞳孔拡張器は、視野を増大させ、したがって、表示デバイスの完全な回折角を使用することができる最大伝搬距離を増大させる。瞳孔拡張器の使用は、ユーザのアイボックスを横方向に増大させることもでき、それにより、ユーザが依然として画像を見ることができるようにしつつ、眼のいくらかの動きが生じ得るようにする。実施形態では、瞳孔拡張器が導波路瞳孔拡張器である。本開示は、一般に(排他的ではないが)、非無限の虚像距離、すなわち近接場虚像に関する。
【0017】
本発明者らは、非無限の虚像距離、すなわち近接場虚像における従来のホログラフィでは、いわゆる「ゴースト像」が現れることを見出した。これは、導波路を通る異なる想定し得る光伝搬経路によって引き起こされ得る。ゴースト像は、主像の低強度複製である。主な最高強度像は、一次像と呼ばれることがある。各ゴースト像は、二次像と呼ばれることがある。ゴースト像の存在は、知覚される虚像の品質を著しく低下させる可能性がある。ゴースト像は、一次像のぼけの外観を与え得る。
【0018】
本開示の態様は、ゴースト像によって引き起こされる問題に対処するための異なる手法に関する。本明細書に開示される幾つかの解決策は、ゴースト像の除去又は形成の防止に成功することが分かってきた。本明細書に開示される幾つかの解決策は、一次/非ゴースト像を強化又は強化するためにゴースト像を修正/操作することが分かってきた。
【0019】
本開示の態様によれば、光エンジンは、空間的に変調された光を伴う、入射瞳を有する、観察システムを提供するように構成される。表示システムは、ホログラムを表示し、ホログラムに従って光を空間的に変調するように構成される表示デバイスを備える。表示システムは、表示デバイスに表示するためのホログラムを出力するように構成されるホログラムエンジンを更に備え、観察システムが特定の位置でターゲット画像又は対象物の画像を見るか又は知覚することができるようにする。瞳孔拡張器が設けられて表示デバイスに対して配置されることにより、観察システムが入射瞳の位置を変更する必要なく画像全体(すなわち最大視野を与えるために)に対応する光を受けるようにすることができる。
【0020】
本明細書では、表示デバイスと観察システムとを備えるシステムのための画像の回折構造を決定する方法が開示される。回折構造は、ホログラムであってもよく、以後、「ホログラム」という用語は、本開示に係る回折構造の一例としてのみ使用される。回折構造は、複雑なホログラム、位相限定ホログラム、又はキノフォームであってもよい。表示デバイスは、ホログラムを表示するように構成される。観察システムは、瞳孔拡張器を通じてホログラムを見るように構成される。瞳孔拡張器は、表示デバイスから観察システムへの複数の光伝搬経路を与える。
【0021】
本開示の態様によれば、ホログラムが表示される表示デバイスに、適切に照明される際に空間的に変調された光の出力チャネルを出力させるホログラムが与えられる(例えば、計算される)。少なくとも幾つかの構成では、各チャネルは、ホログラムによって表される画像のそれぞれの連続領域に対応する。各チャネルは、チャネルが組み合わさって画像全体のホログラフィック光を与えるように、画像の異なる連続部分又は領域に対応することができる。表示デバイスと観察システムとの間に瞳孔拡張器を設けることができ、瞳孔拡張器は、各チャネルを観察システムの入口開口に向けるように構成される。各チャネルは、表示デバイスに対して、例えば、表示デバイスの発光面上の中心点又は別の基準点に対して、そのチャネルの主(又は、「コア」)移動方向を規定する固有のそれぞれの中心軸を有すると見なされ得る。したがって、読者は、各チャネルが、チャネルの光軸又は伝搬軸と見なされ得る軸によって特徴付けられ得ることを理解するであろう。各軸は、表示デバイスの法線に対する固有の角度によって特徴付けることができる。各軸は、表示デバイス(又はホログラム)の中心を照明領域の中心又はチャネル(すなわち、光チャネルの断面積の中心)の光パターンに結合する直線であってもよい。
【0022】
チャネルのうちの1つ以上の断面積は、観察システムの入口開口のサイズ及び/又は形状に対応するサイズ及び/又は形状を有することができる。例えば、入口開口が人の眼である場合、チャネルは、断面が実質的に楕円形又は楕円形であってもよい。ホログラム計算を含む実施形態において、計算プロセスは、入口開口のサイズ及び/又は形状にしたがって及び/又は表示デバイスのサイズ及び/又は形状にしたがって、ホログラムを制限又は切り取ることを含んでもよい。
【0023】
幾つかの実施形態では、画像コンテンツに関してチャネル間に重なりはない。他の実施形態では、画像コンテンツに関してチャネル間にいくらかの重なりがある。この重なりは部分的であり、比較的小さい。例えば、2つの隣り合うチャネルは両方とも、画像の同じ部分に関する幾つかの情報を含むことができる。したがって、視野内の画像コンテンツ/空間角度に関して、チャネルは部分的に重なり合ってもよいと言える。
【0024】
視野内の角度に関してチャネルを特徴付けることが可能である。これらの角度は、表示デバイス/ホログラムの法線から測定することができる。各チャネルは、2つの角度、例えば、xz平面上の第1の角度及びyz平面の第2の角度によって特徴付けられてもよく、z方向は、表示デバイス/ホログラムに垂直であり、ホログラムからの一般的な光伝搬方向を表す。x方向は水平であってもよく、y方向は垂直であってもよい。例えば、x方向(水平視野)において、第1のチャネルは角度範囲0~+4度に対応することができ、第2の角度は+3~+7度に関連することができる。この例では、1度の重なりが存在する。この例では、第1のチャネル及び第2のチャネルは両方とも、画像の角度コンテンツ又は+3~+4度の範囲の水平視野の角度に関する情報を含む。当然ながら、両方のチャネルは追加の情報を含む。重なりは比較的小さく、例えば、10%以下など、各チャネルに関連付けられた角度範囲の25%以下である。
【0025】
幾つかの実施形態では、各チャネルに関連する(重なり合う角度範囲だけでなく)全角度範囲の大きさは同じである。他の実施形態では、1つの角度チャネルに関連する角度範囲の大きさは、別の角度チャネルの角度範囲の大きさとは異なる。
【0026】
本明細書では、画像のホログラムを計算する方法が開示され、この方法は、照明されるときに空間的に変調された光を形成するホログラムを形成するべく、観察システムの入射瞳にしたがって切り取ることを含む少なくとも1つのステップを含み、空間的に変調された光の連続光チャネルは、画像の連続領域に対応する。連続光チャネルは、空間的に変調された光の光線角度の連続範囲によって規定され得る。ホログラムの全てのピクセルが各チャネルに寄与するので、各チャネルに寄与する光線は、ホログラムが表示及び照射される表示デバイスの複数の異なるピクセルから放射され得る。これらの光線は、結合して連続チャネルを形成し、各チャネルは、表示デバイスに対して固有のそれぞれの主伝搬方向を有する。コア又は軸は、伝搬方向で、それぞれのチャネルごとに規定され得る。個々のホログラムピクセルごとに、異なるそれぞれのチャネルの光が、異なるそれぞれの角度でそのピクセルから出力される。
【0027】
空間的に変調された光の各連続光チャネルは、画像のそれぞれの連続領域に対応する。空間的に変調された光は、任意の数の連続光チャネルに分割され得る。幾つかの実施形態では、光チャネルが重なり合わない。他の実施形態、例えば、導波路と観察者との間に光パワーを有する光コンバイナ(例えば、車両のフロントガラス)を更に含む実施形態では、幾つかの光チャネルが少なくとも部分的に重なり合ってもよい。本明細書に開示される方法は、観察システムによって画像に変換可能な光を空間的に変調するように構成される回折構造を決定し、回折構造は、光を複数のホログラムチャネルにルーティングするように構成され、各ホログラムチャネルは画像の異なる部分に対応する。
【0028】
誤解を避けるために、観察者によって形成又は知覚される画像は、ターゲット画像のホログラフィック再構成である。ホログラフィック再構成は、ターゲット画像に基づくホログラムから形成される。幾つかの実施形態において、ホログラムは、ターゲット画像から決定(例えば、計算)される。
【0029】
ホログラムは、任意の適切な技術を使用して計算することができる。幾つかの想定し得るホログラム計算技術が本明細書に開示されるが、本開示は提供される例に限定されない。幾つかの実施形態によれば、ホログラムは、いわゆる「点群」ホログラム計算技術などのレイトレース技術などのモデリング技術を使用して計算することができる。そのような実施形態では、ホログラムエンジンは、入射瞳の位置に基づいて表示デバイスの寄与領域及び非寄与領域を識別する寄与情報を受信するように構成されてもよい。表示デバイスの寄与領域は、決定された位置で入射瞳を通過する光を実質的に伝搬する。表示デバイスの非寄与領域は、決定された位置で入射瞳によって停止された光を実質的に伝搬する。寄与情報は、(i)一次像に寄与する表示デバイスの光を観察システムに伝搬する少なくとも1つの一次寄与領域、及び(ii)二次像に寄与する表示デバイスの光を観察システムに伝搬する少なくとも1つの二次寄与領域を更に識別する。ホログラムエンジンは、処理エンジンによって識別された表示デバイスの少なくとも1つの一次寄与領域に基づいてホログラムを決定するように更に構成される。ホログラムエンジンは、表示のためにホログラムを表示デバイスに出力するように更に構成される。
【0030】
表示デバイスの寄与領域及び非寄与領域を識別することにより、光エンジンは、表示デバイスのどの部分又は複数の部分がホログラムによって有用に符号化され得るかを判定して、観察システムの入口開口の所与の位置について、一次像の形成に積極的に寄与することができる。例えば、これは、所与の時間における観察者の眼の位置に対応し得る。更に、光エンジンは、表示デバイスのどの部分が入口開口を通って光を伝搬することができないかを決定することができ、したがって、ホログラム値を入力する価値がない。更に、光エンジンは、「主」ターゲット画像に積極的に寄与する表示デバイスの部分と、一次像のコピー/複製又は「ゴースト」バージョンに寄与する部分とを区別することができる。したがって、ホログラムは、ゴーストを除去するために、いわゆる二次寄与領域では省略することができる。
【0031】
或いは、注目すべき更なる改善点では、追加の寄与領域に表示されるホログラムは、像点(すなわち、ホログラフィック再構成されるべき所望の画像内の点)の変位又は修正された位置に基づいて決定されてもよい。この修正された位置は、「二次像点」であると呼ばれることがあるが、これは、(一次)像点の二次(すなわち、変更されている)位置であることの省略表現である。簡単に言えば、一次像を効果的に補強するために、像点のモデル化/計算された位置は、前記修正された位置から表示デバイス上の追加の寄与領域を通って進む光が、観察面上の所望の位置に到達することになるように修正され得る(例えば、画像平面上で並進させられ得る)。したがって、この代替手法では、追加の寄与領域のホログラムは、表示デバイス上の一次寄与領域を識別するために使用されるものとは異なる像点の位置に基づいて決定される。一次像点からの光路長は、一般に、二次像点から、観察面上に形成される対応する画像までの光路長とは異なる。したがって、追加の寄与領域に関連するホログラム決定プロセスは、ホログラム決定プロセスで使用される像点を並進又はシフトすることを含むと言える。
【0032】
したがって、合理的且つ計算効率的な態様で決定されたホログラムに対応する鮮明で正確な画像を提供するように構成及び動作することができるインテリジェントで効率的な光エンジンが提供される。
【0033】
表示デバイスに表示するためのホログラムを決定する方法が提供される。方法は、ホログラムを見るように構成される観察システムの入射瞳の位置を決定することと、表示デバイスの寄与領域及び非寄与領域を識別することとを含み、表示デバイスの寄与領域は、決定された位置で観察システムの入射瞳を通過する光を実質的に伝搬し、表示デバイスの非寄与領域は、決定された位置で観察システムの入射瞳によって停止された光を実質的に伝搬する。方法は、一次像に寄与する光を与える表示デバイスの少なくとも1つの一次寄与領域と、二次像に寄与する光を与える表示デバイスの少なくとも1つの二次寄与領域とを識別すること、及び、表示デバイスの少なくとも1つの一次寄与領域に基づいてホログラムを決定することとを更に含む。
【0034】
観察システムによって変換可能な光をターゲット画像に空間的に変調するように構成された回折構造が設けられ、回折構造は、複数の離散光パターンを生成するように構成され、各光パターンはターゲット画像の異なる部分に対応し、各離散光パターンの形状は、観察システムの入口開口の形状に実質的に対応する。
【0035】
観察システム(レンズを備える)によって変換可能な光を画像に空間的に変調するように構成される回折構造が設けられ、回折構造は、光を複数の離散光チャネルに導くように構成され、各光チャネルは、観察システムの入射瞳に実質的に対応する断面形状を有し、各光チャネルは、画像の異なる部分に実質的に対応する。
【0036】
表示デバイスに表示するためのホログラムを決定し、導波路を介して表示デバイスに表示されたホログラムを見ることによって、観察面から知覚可能な虚像を形成する方法が提供される。方法は、虚像のそれぞれの虚像点ごとに、虚像点の座標[xvirtual、yvirtual、virtual]を決定するステップと、観察面上の観察位置を決定するステップと、導波路によって形成される一次像に関連する導波路内の光反射の数Bを決定するステップとを含む。方法は、導波路内での「B」個の光反射について虚像点から観察面までレイトレースするステップと、[xvirtual、yvirtual、zvirtual]から観察面までのB光反射を伴う光伝搬のための表示デバイスにおける主光線の座標[xLCOS(B)、yLCOS(B)]を決定するステップとを更に含む。方法は、[xLCOS(B)、yLCOS(B)]によって規定される領域内の表示デバイスの活性ピクセルを決定するステップと、[xvirtual、yvirtual、zvirtual]からの光波を活性ピクセルまで伝搬することにより、活性ピクセルの振幅及び/又は位相ホログラム成分を含むサブホログラムを決定するステップとを更に含む。
【0037】
主光線は、虚像点から表示デバイスを経由して観察面上の虚像点の一次又は「主」像点まで進む際に決定される(例えば、計算される又はモデル化される)光線を含むことができる。
【0038】
方法は、ホログラムを形成するために、サブホログラム(2つ以上の対応する虚像点に関してそれぞれ計算される)を組み合わせるステップを更に含むことができる。
【0039】
方法は、虚像点の主画像の、観察面上の位置[xsensor、ysensor]を決定するステップを更に含むことができる。
【0040】
方法は、導波路によって許容されるΔBの各値について、[xsensor、ysensor]からB+ΔB跳ね返りで虚像面zvirtualまでレイトレースバックするステップと、B+ΔB反射で[xsensor、ysensor]に結像する仮想点座標[xvirtual(ΔB)、yvirtual(ΔB)、zvirtual]を決定するステップとを更に含むことができる。方法は、[xvirtual(ΔB)、yvirtual(ΔB)、zvirtual]から観察面までのB+ΔB跳ね返りを伴う光伝搬のための表示デバイスにおける主光線の座標[xLCOS(B+ΔB)、yLCOS(B+ΔB)]を決定するステップと、[xLCOS(B+ΔB)、yLCOS(B+ΔB)]によって規定される第2の領域(すなわち、追加の領域)内の表示デバイスの追加の活性ピクセルを識別するステップとを更に含むことができる。方法は、[xvirtual(ΔB)、yvirtual(ΔB)、zvirtual]からの光波を追加の活性ピクセルまで伝搬することにより、追加の活性ピクセルの振幅及び/又は位相ホログラム成分を含む追加のサブホログラムを決定するステップを更に含むことができる。
【0041】
幾つかの実施形態によれば、ホログラムは、複素光照射野を決定することによって計算されてもよく、方法は反復的であってもよい。一実施形態によれば、方法は、第1~第5段階を含む。第1の段階は、観察システムの入射瞳における第1の複素光照射野を決定することを含む。第1の複素光照射野は、瞳孔拡張器の少なくとも1つの光伝搬経路に沿った表示デバイスの表示平面からの光の伝搬によってもたらされる。また、第1の段階は、観察システムの入射瞳にしたがって切り取るステップも含む。第2の段階は、観察システムのセンサのセンサ平面における第2の複素光照射野を決定することを含む。第2の複素光照射野は、入射瞳から観察システムのレンズを通じた第1の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされる。また、第2段階は、画像にしたがって振幅成分を変更するステップも含む。第3の段階は、入射瞳における第3の複素光照射野を決定することを含む。第3の複素光照射野は、センサ平面からレンズを通じて戻る第2の複素光照射野の光の逆伝搬によってもたらされる。また、第3の段階は、入射瞳にしたがって切り取るステップも含む。第4の段階は、表示平面における第4の複素光照射野を決定するステップを含む。第4の複素光照射野は、瞳孔拡張器の少なくとも1つの光伝搬に沿って戻る第3の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされる。また、第4の段階は、表示デバイスにしたがって切り取るステップも含む。ホログラムは、第4のデータセットから抽出される。第1~第4の段階が反復的に繰り返されてもよい。ホログラムは、反復ごとに収束し、改善される可能性が高いが、プラトーになる。方法は、例えば、第4の段階から抽出可能なホログラムが許容可能な品質であると見なされる或いは各反復による変化率が閾値を下回る又は割り当てられた時間が経過した場合に停止することができる。誤解を避けるために、抽出されるホログラムは、表示デバイスに表示するためのホログラムである。
【0042】
「逆伝搬」という用語は、第3及び第4の段階における光の伝搬方向が第1及び第2の段階における光の伝搬方向とは異なる又は実質的に反対であることを反映するために使用されるにすぎない。この点において、第1の段階及び第2の段階における光の伝搬は、「順伝搬」と呼ばれ得る。幾つかの実施形態において、「順伝搬(forward propagation)」及び「逆伝搬(reverse propagation)」は、互いに数学的に逆である。
【0043】
「切り取る」という用語は、本明細書では、光開口の外側などの領域又は関心領域の外側で、光照射野情報などの情報を選択的に廃棄するプロセスを指すために使用される。幾つかの実施形態において、「切り取る」は、開口の外側でデータポイントを破棄すること、又は、データポイントをゼロにすること、又は、単にデータポイントを無視することを含むデータ処理ステップである。
【0044】
本明細書では、「複素光照射野」について言及する。「光照射野」という用語は、少なくとも2つの直交する空間方向x及びyで有限サイズを有する光のパターンを単に示す。「複素」という用語は、本明細書では、単に光照射野の各点における光を、振幅値及び位相値によって規定することができ、したがって複素数又は値の対によって表すことができることを単に示すために使用されるにすぎない。ホログラム計算のために、複素光照射野は、複素数の2次元配列であってもよく、複素数は、光照射野内の複数の離散位置における光強度及び位相を規定する。本明細書に開示される方法によれば、複素光照射野は、ホログラム平面と像面との間において+z及び-z方向で前方及び後方に伝搬される。光伝搬は、波動光学の当業者によく知られている幾つかの異なる手法又は数学的変換のうちのいずれか1つを使用してシミュレート又はモデル化することができる。
【0045】
本発明者らは、比較的小型の表示デバイス及び比較的長い距離にわたる投影のためのホログラムを決定する方法を考案したが、ホログラムが観察システム/複数の観察システムに直接に投影され、方法をリアルタイムで実施することができる。表示デバイスの比較的小さいサイズ及び比較的長い投射距離は、瞳孔拡張器を必要とする場合がある。本発明者らによって考案された方法は、瞳孔拡張器を使用することによって導入される光学的複雑性にも対処する。少なくとも幾つかの実施形態において、方法は、更にまた、画像コンテンツが、1つ以上の観察システムから異なる距離及び/又は複数の距離で、任意選択的に同時に、例えば1つのホログラムを使用して見えることができるようにする。更にまた、方法は、画像コンテンツが表示デバイスの下流側及び表示デバイスの上流側で、任意選択的に、同時に、例えば1つのホログラムを使用して見えることができるようにする。
【0046】
重要なことに、ホログラム自体の光(すなわち、ホログラフィック光)は、ホログラムから形成されたホログラフィック再構成(すなわち、画像)ではなく、観察システムに伝搬される。観察システム/複数の観察システムによって受信された空間的に変調された光は、空間領域又は画像領域ではなくホログラム領域にあると言える。また、観察システム/複数の観察システムは、画像変換に合わせてホログラムを実行すると言うこともできる。より具体的には、各観察システムのレンズ等の光学素子が変換を行う。実施形態において、ホログラフィック再構成又は画像は、表示デバイスと観察システムとの間に形成されない。幾つかの実施形態において、異なるホログラムは、計算されて場合によりインターレース方式を使用して観察者の各眼に伝搬される。
【0047】
表示デバイスは、5cm未満又は2cm未満などの10cm未満であり得る第1の寸法を有する活性領域又は表示領域を有する。表示デバイスと観察システムとの間の伝搬距離は、1.5mよりも大きい又は2mよりも大きいなど、1mよりも大きくてもよい。導波路内の光伝搬距離は、最大1.5m又は最大1mなど、最大2mであってもよい。方法は、画像を受信し、15m未満又は10m未満などの20m未満で十分な品質の対応するホログラムを決定することが可能であり得る。
【0048】
本明細書に開示される方法は、光を複数のチャネルにルーティングするように構成されるホログラムを形成し、各チャネルは画像の異なる部分(すなわち、サブ領域)に対応する。ホログラムは、空間光変調器などの表示デバイスに表示されるなどして表すことができる。ホログラムは、適切な表示デバイスに表示されると、観察システムによって画像に変換可能な光を空間的に変調することができる。回折構造によって形成されたチャネルは、単にそれらが画像情報を有するホログラムによって符号化された光のチャネルであることを反映するために、本明細書では「ホログラムチャネル」と呼ばれる。各チャネルの光は、画像又は空間領域ではなくホログラム領域にあると言える。幾つかの実施形態において、ホログラムはフーリエ又はフーリエ変換ホログラムであり、したがってホログラム領域はフーリエ又は周波数領域である。ホログラムは、同様に、フレネル変換ホログラム又はフレネル変換ホログラムであってもよい。
【0049】
ホログラムは、本明細書では、ホログラムから再構築可能な画像が有限のサイズを有し且つ複数の画像サブ領域に任意に分割され得ることを単に反映するために、光を複数のホログラムチャネルにルーティングするものとして説明され、各ホログラムチャネルは各画像サブ領域に対応する。重要なことに、この開示のホログラムは、照明されたときに画像コンテンツをどのように分配するかを特徴とする。具体的には、ホログラムは、画像コンテンツを角度で分割する。すなわち、画像上の各点は、照明されたときにホログラムによって形成される空間的に変調された光の固有の光線角度又は角度範囲、少なくとも、ホログラムが二次元であるために固有の角度又は角度範囲の対に関連付けられる。すなわち、ターゲット/所望の画像の各点は、画像を再構成するホログラムによって形成される光チャネルに関連付けることができる。より具体的には、各像点に関連する画像コンテンツ又は情報は、対応するチャネル内で符号化される。上記のように重なりがない限り、各像点(又は画像のサブ領域を形成する像点の連続範囲)は、対応する光チャネルに一意に関連付けられる。したがって、画像の各部分は、ホログラムによって形成される離散光チャネルの軸を規定する角度(又は一対の角度)に関連付けることができる。誤解を避けるために、このホログラム挙動は従来のものではない。この特殊なタイプのホログラムによって形成される空間的に変調された光は、照明される際に、複数のホログラムチャネルに任意に分割され得る。以上から分かるように、空間的に変調された光において考慮され得る任意のホログラムルは、画像のそれぞれの部分又はサブ領域と関連付けられる。すなわち、画像のその部分又はサブ領域を再構成するのに必要な全ての情報は、画像のホログラムから形成される空間的に変調された光のチャネル内に含まれる。空間的に変調された光が全体として観察される場合、複数の離散光チャネルの痕跡は必ずしも存在しない。しかしながら、幾つかの実施形態において、複数の空間的に分離されたホログラムチャネルは、ホログラムが計算されるターゲット画像の領域を意図的に空白又は空にする(すなわち、画像コンテンツが存在しない)ことによって形成される。
【0050】
それにもかかわらず、ホログラムは依然として識別され得る。例えば、ただ1つのホログラムチャネル、すなわち、ホログラムによって形成された空間的に変調された光の1つの連続部分又はサブ領域のみが再構成される場合、画像の1つのそれぞれのサブ領域のみが見えるはずである。異なるホログラムチャネル、すなわち、空間的に変調された光の異なる連続部分又はサブ領域が再構成される場合、画像の異なるそれぞれのサブ領域が見えるはずである。このタイプのホログラムの特徴の更なる識別は、任意のホログラムチャネルの断面積の形状が、少なくともホログラムが計算された適正な平面ではサイズが異なり得るが、入射瞳の形状に実質的に対応する(すなわち、入射瞳の形状と実質的に同じ)ことである。各光ホログラムチャネルは、ホログラムからコア(又は、軸方向)方向に伝搬する。これらはこのタイプのホログラムを特徴付ける又は識別する例示的な方法であるが、他の方法を使用してもよい。要約すると、本明細書に開示されるホログラムは、ホログラムによって符号化された光内で画像コンテンツがどのように分布するかによって特徴付けられて識別可能であり、添付の特許請求の範囲はそれに応じて記載される。
【0051】
方法は、ホログラムによって形成される光チャネルの数、したがって光チャネル間の間隔が本明細書に記載の複製プロセスと相乗的になるように、ホログラム計算中に画像を分割するステップを含むことができる。幾つかの実施形態では、各チャネルは、導波路内の反射の数に一意に対応する。例えば、第1のチャネルは0「跳ね返り」に対応してもよく、第2のチャネルは1つの「跳ね返り」に対応してもよく、以下同様である。
【0052】
本明細書に開示される方法によって提供される多くの技術的進歩がある。第1に、本方法は、他の方法によって形成され得るゴースト像を形成しない。これは、この方法が、導波路内の全ての想定し得る光伝搬経路を完全に考慮することによって、正しい画像コンテンツが正しい場所に到達することを本質的に保証するためである。第2に、少なくとも幾つかの実施形態において、方法は、像点距離が非常に小さい場合に不十分であり得る他の方法とは異なり、任意の深度面に画像コンテンツを提示することができる。これは、虚像を形成するために車両のフロントガラスなどの光パワーを有する光コンバイナを利用する光学系において重要な問題である。第3に、方法は、複数の単色ホログラフィックチャネルを含むカラープロジェクタにおいて、米国特許第10,514,658号明細書に開示されているような波長による画像サイズ補正の必要がないように、波長の効果を本質的に考慮する。
【0053】
ホログラムチャネルの異なる伝搬経路は、異なるそれぞれの角度で観察システムの入口開口を通過することができる。瞳孔拡張器は、全てのホログラムチャネルが観察面上の任意の観察位置で観察システムの入口開口を通ってルーティングされるように構成されてもよい。瞳孔拡張器は、許容されたそれぞれの観察位置ごとに1つの伝搬経路を介して各ホログラムチャネルを観察システムにルーティングするだけである。複数のホログラムチャネルのうちの少なくとも2つのホログラムチャネルは、観察システムの入口開口で部分的に重なっていてもよい。
【0054】
方法が第1~第5段階を含む実施形態では、第1~第4段階は順序付けられた段階であってもよい。開示された方法は、像面とホログラムとの間で前後に投影することによって動作し、また、方法は、像面又はホログラム平面で開始することができる。像面又はホログラム面への各伝搬後の光照射野の振幅成分は変更又は制約されるが、位相成分は保存される。幾つかの実施形態において、方法は、ホログラム平面から開始することに等しい第1の段階から始まる。しかしながら、他の実施形態において、方法は、像面で開始することに等しい第3段階で始まる。これらの他の実施形態では、第3の段階の後に第4の段階が続く。第4の段階の後に第1の段階が続き、第1の段階の後に第2の段階が続く。各段階は、ホログラム抽出の前に1回実行されてもよく、或いは、少なくとも一部の段階がホログラム抽出の前に複数回実行されてもよい。
【0055】
少なくとも1つの光伝搬経路は、瞳孔拡張器によって与えられる複数の光伝搬経路を含むことができる。瞳孔拡張器の構造は、それを通る複数の異なる想定し得る光路を容易にする又は可能にする。異なる想定し得る光路は、部分的に重なり合っていてもよい。幾つかの実施形態では、瞳孔拡張器によって一連の異なる光路が作成され、一連の光路のそれぞれは最後の光路よりも長い。一連の各光路は、その出口面上の異なる点で瞳孔拡張器を出て、対応する一連の光出口点又はサブ領域を形成する。一連の光出口点又はサブ領域は、瞳孔拡張器の出口面に沿って実質的に均等に離間されてもよい。
【0056】
瞳孔拡張器は、導波路瞳孔拡張器であってもよい。瞳孔拡張器に入る各光線は、複数回複製されてもよい。瞳孔拡張器は、一連の内部反射によって光を伝搬し、その一次面に沿った複数の点で光を出力するように構成されてもよい。各光伝搬経路は、その光伝搬経路に関連する導波路内の内部反射の数によって規定され得る。例えば、第1の光伝搬経路は、ゼロ内部反射を含むことができ、したがって、導波路を直接通過する光に対応する。例えば、第2の光伝搬経路は、導波路を出る前の2つの内部反射、すなわち、導波路の第1の一次/反射面での第1の反射及び導波路の第2の一次/反射面での第2の反射を含むことができ、第2の一次/反射面は、第1の一次/反射面の反対側又は第1の一次/反射面に対して相補的である。したがって、疑念を避けるために、光伝搬経路は幾つかの重なり合いを有する。他の例では、第1の光伝搬経路が1つの反射を含み、第2の光伝搬経路が3つの反射を含む。第1の光伝搬経路は最短の光伝搬経路であってもよく、第nの光伝搬経路は最長の光伝搬経路であってもよい。異なる伝搬経路は、異なる角度で観察システムの入口開口を通過することができる。
【0057】
少なくとも1つの光伝搬経路は、瞳孔拡張器によって与えられる複数の光伝搬経路のうちの1つのみであってもよい。第1~第4の段階は、それぞれの光伝搬経路ごとにホログラムを抽出するために、複数の光伝搬経路のそれぞれの光伝搬経路ごとに行われてもよい。第1~第4の段階は、それぞれの光伝搬経路ごとに独立して実施されてもよい。複数の光伝搬経路に対応する複数のホログラムは、表示デバイスに表示するためのホログラムを形成するために組み合わされてもよい。
【0058】
特に、方法は、それぞれの光伝搬経路ごとに(開始点に関係なく)第1~第4の段階を実行することによって、導波路を通る複数の光伝搬経路を考慮する。第1~第4の段階は、それぞれの伝搬経路ごとに順々に実行されてもよい。或いは、第1の段階をそれぞれの伝搬経路ごとに実行し、次いで第2の段階をそれぞれの伝搬経路ごとに実行し、その後、第3の段階等を実行することもできる。異なる伝搬経路の部分的な重なり合いに起因して、n番目の伝搬経路に関連して実行される段階は、n-1個の伝搬経路に関連する計算を再利用することができ、n番目の伝搬経路は、n-1個の伝搬経路の次に長い伝搬経路であることが理解される。複数の異なる光伝搬経路に関してそれぞれ決定された複数のホログラムは、特にホログラムが位相又は位相限定ホログラムである場合、加算によって組み合わせることができる。
【0059】
第1の段階で表示平面から伝搬される光は、ランダムな位相成分、二次関数、又は、サンプリングされた二次関数を有する第0の複素光照射野を含むことができる。
【0060】
第0の複素光照射野の振幅成分は、照明ビームの振幅成分に等しくてもよい。幾つかの実施形態では、第0の複素光照射野の振幅が1である。方法が第1の段階から始まる場合、第0の複素光照射野の位相成分はランダムであってもよい。ランダム位相分布は、ランダム位相シードと呼ばれることもあり、ホログラム平面(すなわち、第1の段階)で始まる場合、単に方法の開始点として使用することができる。
【0061】
第1~第4の段階は、最終反復からホログラムを抽出するステップの前に反復的に繰り返されてもよい。2回目以降の反復のために表示デバイスから伝搬された光は、直前の反復の第4の複素光照射野の位相分布を含むことができる。
【0062】
方法が停止される前に第1の段階の更なる反復が実行される(すなわち、ホログラムが許容可能である)場合、第4の段階からの位相成分は保存される又は保持される又は進められる。すなわち、第1の段階にしたがって表示平面に伝搬する複素光照射野の位相成分は、第4の複素光照射野の位相成分と等しい。
【0063】
ホログラムは、第4のデータセットの位相成分であってもよい。ホログラムは、方法の最終の反復又は段階の第4のデータセットの位相成分であってもよい。幾つかの実施形態において、ホログラムは、キノフォーム又は位相ホログラム又は位相限定ホログラムである。第4の複素光照射野の振幅成分は破棄されてもよい。
【0064】
ホログラムは、複数の画像のホログラムであってもよい。各画像は、異なる画像距離を有してもよい。方法の第2の段階は、それぞれの画像ごとに独立して実行することができる。重要なことに、本明細書に開示される方法は、同時に複数の平面上に画像コンテンツを形成することができるホログラムを形成する。これは、それぞれの異なる平面ごとに第2の段階を実行し、例えば複素光照射野を合計することによって結果を組み合わせることによって達成される。各画像は、実像であってもよく又は虚像であってもよい。画像コンテンツは、表示デバイスの前方、すなわち表示デバイスの下流側、及び/又は表示デバイスの後方、すなわち表示デバイスの上流側で見ることができる。
【0065】
各複素光照射野は、フレネル伝搬、シフトフレネル伝搬、フラクショナルフレネル伝搬、フラクショナルフーリエ変換又はスケーリングされた高速フーリエ変換などの波伝搬光学素子によって決定される。
【0066】
第2の段階の振幅成分の変更は、第2の複素光照射野の振幅成分を画像の振幅成分と置き換えるステップ、又は、画像の振幅成分に基づいて第2の複素光照射野の振幅成分を重み付けるステップを含むことができる。
【0067】
切り取る各段階は、対応する瞳孔のサイズ及び位置の少なくとも一方にしたがって複素光照射野を切り取ることを含むことができる。入射瞳のサイズ及び位置の少なくとも一方は、観察システムを追跡又は監視すること又は観察システムに関する情報を受けることによって決定することができる。観察システムが眼である実施形態において、方法は、視線追跡又は頭部追跡を含むことができる。本明細書に開示される第1~第4の段階は、位置又はサイズなどの入射瞳の少なくとも1つの特性が変化する場合に繰り返されてもよい。
【0068】
画像又は各画像は、虚像であってもよい。画像又は各画像は、表示デバイスの背後又は向こう側となるように観察システムに見える場合がある。すなわち、観察システムから知覚される画像までの画像距離は、観察システムから表示デバイスまでの距離より大きくてもよい。しかしながら、他の実施形態において、画像コンテンツは、これに加えて又は代えて、表示デバイスの下流側、すなわち、表示デバイスと観察システムとの間に形成される。
【0069】
観察システムは、観察者の眼であってもよい。方法は、観察システムの入射瞳のサイズ及び位置の少なくとも一方を決定するために、観察者の眼又は頭部を追跡するステップを更に含むことができる。幾つかの実施形態において、観察システム/複数の観察システムの入射瞳/複数の入射瞳のサイズ及び/又は位置は、ホログラムを決定する方法の一部として使用される。幾つかの実施形態において、方法は、リアルタイムで、例えばビデオレートで実行され、また、ホログラムは、観察者が移動する又は例えば観察者の入射瞳のサイズに影響を与える周囲光条件が変化する場合に、再決定され、例えば再計算される。
【0070】
瞳孔拡張器によって与えられる各光伝搬経路に沿った伝搬は、それぞれの個々の光伝搬経路の個々の複素光照射野を組み合わせることを含むことができる。個々の複素光照射野は、加算によって組み合わされてもよい。瞳孔拡張器によって与えられる複数の異なる光伝搬経路の各光伝搬経路が個別に考慮される。各光伝搬経路によって形成される複素光照射野は、個別に決定される。
【0071】
瞳孔拡張器は、導波路瞳孔拡張器であってもよい。各光伝搬経路は、導波路内の異なる数の内部反射に対応する。幾つかの実施形態において、瞳孔拡張器は、実質的に一次元(すなわち、長尺な)又は二次元(例えば、スラブ形状などの実質的に平面)の形状を有する導波路瞳孔拡張器である。実施形態において、射出瞳は、構成要素の長手方向又は寸法に拡張される。瞳孔拡張器は、一対の対向する又は相補的な反射面を備えてもよい。これらの表面のうちの1つは、光が一連の光出口点又はサブ領域で逃げることができるようにするために、部分的にのみ反射性であってもよい。
【0072】
個々の複素光照射野を組み合わせることは、入射瞳を含む平面上の個々の複素光照射野の横方向位置を決定することを含んでもよい。導波路内の内部反射の数が横方向位置を決定する。
【0073】
個々の複素光照射野を組み合わせることは、各光伝搬経路の内部反射に関連する全位相シフトを決定することを更に含むことができる。これは、各光伝搬経路に関連する複数の位相シフトを合計することを含むことができ、各位相シフトは瞳孔拡張器内の反射によってもたらされる。
【0074】
本明細書では、ヘッドアップディスプレイを使用して見るための画像のホログラムを決定するように構成されるホログラムエンジンも開示される。ヘッドアップディスプレイは、表示デバイスと瞳孔拡張器とを備える。ヘッドアップディスプレイは、少なくとも1つの観察システムで動作するように構成される。各観察システムは、入射瞳平面上の入射瞳と、レンズ平面上のレンズと、センサ平面上のセンサとを備える。ヘッドアップディスプレイは、一対の眼などの一対の観察システムで動作するように構成されてもよい。表示デバイス(例えば、空間光変調器)は、ホログラムを表示するように構成される。瞳孔拡張器は、ホログラムにしたがって空間的に変調された光を受けるように構成される。例えば、表示されたホログラムは、光源からの少なくとも部分的にコヒーレントな光で照明されてもよい。表示デバイスは、表示されたホログラムにしたがって受けた光を空間的に変調する。ホログラムエンジンは、観察システムの入射瞳で第1の複素光照射野を決定するように構成される。第1の複素光照射野は、瞳孔拡張器の各光伝搬経路に沿った表示デバイスの表示平面からの光の伝搬によってもたらされる。第1の複素光照射野は、更に、観察システムの入射瞳にしたがって切り取ることによってもたらされる。ホログラムエンジンは、観察システムのセンサのセンサ平面における第2の複素光照射野を決定するように更に構成される。第2の複素光照射野は、入射瞳から観察システムのレンズを通じた第1の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされる。第2の複素光照射野は、画像にしたがった振幅成分の変更によって更にもたらされる。ホログラムエンジンは、入射瞳で第3の複素光照射野を決定するように更に構成される。第3の複素光照射野は、センサ平面からレンズを通じて戻る第2の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされる。第3の複素光照射野は、入射瞳にしたがった切り取りによって更にもたらされる。ホログラムエンジンは、表示平面における第4の複素光照射野を決定するように更に構成される。第4の複素光照射野は、瞳孔拡張器の各光伝搬に沿って戻る第3の複素光照射野の光の伝搬によってもたらされる。第4の複素光照射野は、表示デバイスにしたがった切り取りによって更にもたらされる。ホログラムエンジンは、第4のデータセットからホログラムを抽出するように構成される。ホログラムエンジンは、フィールドプログラマブルゲートアレイ「FPGA」又は特定用途向け集積回路「ASIC」などのディスプレイドライバに組み込まれてもよい。ディスプレイドライバは、ヘッドアップディスプレイ「PGU」用の画像生成ユニット「HUD」の一部であってもよい。
【0075】
本開示の態様は、ホログラフィック光のチャネリング又はルーティングを特徴とするホログラム又はキノフォームに関する。具体的には、本明細書では、観察システムによって画像に変換可能な光を空間的に変調するように構成される回折構造が開示され、回折構造は、光を複数のホログラムチャネルにルーティングするように構成され、各ホログラムチャネルは画像の異なる部分に対応する。
【0076】
回折構造は、これに限定されないが、液晶オンシリコン(LCOS)空間光変調器(SLM)などの空間光変調器などの表示デバイスに表示されてもよい。回折構造を表示する表示デバイスが適切に照明されると、回折構造は光を空間的に変調するように構成され、その結果、表示デバイスによって放射された光は複数のホログラムチャネルへとルーティングされる。単一の(すなわち、共通の)光源を使用して、回折構造全体を照明することができる。回折構造は、回折構造の全てのピクセルがホログラムチャネルのそれぞれに光を寄与する複数のピクセルを含んでもよい。
【0077】
ホログラムチャネルは、回折構造によって空間的に変調された光のチャネルを含むため、代わりに「ホログラフィックチャネル」と呼ばれることがある。
【0078】
回折構造は、ホログラムチャネルが回折構造から異なる角度で伝搬するように構成されてもよい。すなわち、各ホログラムチャネルは、前述のように表示デバイスに対して固有の軸角度、又は一対の角度によって特徴付けられる。そのような各角度は、それぞれのチャネルの主又はコア進行方向と、回折構造が表示される表示デバイス上の中心点などの表示デバイス上の点との間で規定されてもよい。ホログラム又は回折構造の各ピクセルは、全てのチャネルに寄与し得る。
【0079】
各ホログラムチャネルは、主に、画像のそれぞれの異なる部分に従って空間的に変調された光を含むことができる。「主に」という用語は、チャネル間にいくらかの重なりが発生し得るが、重なりは比較的小さいことを反映するために使用される。例えば、第1のチャネルは、視野の第1の角度部分(すなわち、画像)に主に(すなわち、一般的又は実質的に)対応することができ、第2のチャネルは、視野の第2の角度部分(すなわち、画像)に概ね又は実質的に対応することができるが、第1の角度部分と第2の角度部分との間にいくらかの部分的な重なりがあってもよい。すなわち、第1のチャネル及び第2のチャネルの両方は、視野の重なり領域の情報を符号化することができる。
【0080】
各チャネルは、画像のサブ領域(すなわち、視野の角度領域)に対応する。(前述したように)サブ領域間にはいくらかの部分的な重なりがあり得るが、各チャネルは、対応するサブ領域の中心を形成する視野内の点に一意に関連付けられる。幾つかの実施形態では、サブ領域は同じサイズ及び/又は形状である。他の実施形態では、サブ領域は異なるサイズ及び/又は形状を有する。幾つかの実施形態では、各サブ領域の形状は、表示デバイスの形状、より具体的には、ピクセルのアレイを画定する領域の形状によって決定される。
【0081】
回折構造は、光の位相を空間的に変調するように配置されてもよい。
【0082】
回折構造は、導波路を介して光をルーティングするように配置されてもよい。導波路は、瞳孔拡張又は瞳孔複製のために配置されてもよい。
【0083】
各ホログラムチャネルによって形成可能な光パターンの断面形状は、観察システムの入口開口の形状に実質的に対応し得る。また、各チャネルの断面のサイズは、断面を入口開口の平面で見ると、入口開口のサイズにも実質的に対応し得る。断面は、断面を入口開口の平面で見たときに、入口開口のサイズと同様であるがそれよりも大きいサイズであるようなサイズにすることができる。
【0084】
ホログラムチャネルは、空間的に分離されていてもよく、少なくとも部分的に空間的に分離されていてもよい。チャネルは、それらが回折構造から離れて観察者又は観察システムに向かって伝搬するときに、互いに空間的に分離するためにファンアウト又は分岐することができる。幾つかの実施形態では、チャネルは、1つの方向/寸法、例えば水平方向のみにファンアウトする。
【0085】
本明細書では、回折構造と、回折構造から空間的に変調された光を受信するように構成された導波路と、導波路を介して空間的に変調された光を受信するように構成された観察システムとを備えるシステムが更に開示される。
【0086】
システムは、各ホログラムチャネルの光が回折構造から観察システムまで異なる光路をたどるように構成されてもよい。
【0087】
異なる光路は、導波路内の異なる数の反射を含むことができる。異なる光路は、異なる長さを有してもよい。異なる光路は、異なるそれぞれの角度で観察システムの入口開口を通過することができる。
【0088】
導波路は、全てのホログラムチャネルが、観察面上の任意の観察位置で、観察システムの入口開口を通ってルーティングされるように配置されてもよい。導波路は、許可されたそれぞれの観察位置ごとに、1つの光路を介して各ホログラムチャネルを観察システムにルーティングするだけでよい。
【0089】
複数のホログラムチャネルのうちの少なくとも2つのホログラムチャネルは、観察システムの入口開口で部分的に重なっていてもよい。
【0090】
回折構造は、キノフォーム又はホログラムであってもよい。回折構造は、コンピュータで生成されるホログラムを含むことができる。ホログラムエンジン又は他のコントローラ又はプロセッサは、回折構造を表示するように表示デバイスを制御するための信号を出力するために設けられてもよい。
【0091】
「ホログラム」という用語は、物体に関する振幅情報又は位相情報又はそれらの何らかの組み合わせを含む記録を指すために使用される。「ホログラフィック再構成」という用語は、ホログラムを照らすことによって形成される物体の光学的再構成を指すために使用される。ホログラフィック再構成は実像であってホログラムから空間的に分離されるため、本明細書中に開示されるシステムは「ホログラフィックプロジェクタ」として説明される。「再生フィールド」という用語は、ホログラフィック再構成が形成されて完全に合焦される2D領域を指すために使用される。ホログラムがピクセルを備える空間光変調器に表示される場合、再生フィールドは複数の回折次数の形態で繰り返され、この場合、各回折次数は0次再生フィールドの複製である。0次再生フィールドは、それが最も明るい再生フィールドであるため、一般に、好ましい又は一次の再生フィールドに対応する。別段に明記されなければ、「再生フィールド」という用語は、0次再生フィールドを指すと解釈されるべきである。「再生平面」という用語は、全ての再生フィールドを含む空間内の平面を指すために使用される。「画像」、「再生画像」、及び、「画像領域」という用語は、ホログラフィック再構成の光によって照らされる再生フィールドの領域を指す。幾つかの実施形態において、「画像」は、「画像スポット」又は便宜的にのみ「画像ピクセル」と称され得る別個のスポットを含み得る。
【0092】
「エンコーディング」、「書き込み」、又は、「アドレス指定」という用語は、各ピクセルの変調レベルをそれぞれ決定するそれぞれの複数の制御値をSLMの複数のピクセルに与えるプロセスを説明するために使用される。SLMのピクセルは、複数の制御値の受信に応じて光変調分布を「表示」するように構成されると言える。したがって、SLMはホログラムを「表示する」と言うことができ、ホログラムは光変調値又はレベルの配列と見なすことができる。
【0093】
許容可能な品質のホログラフィック再構成は、元の物体(すなわち、再構成のためのターゲット画像)に関連する位相情報のみを含む「ホログラム」から形成できることが分かっている。そのようなホログラフィック記録は、位相限定ホログラムと称される場合がある。実施形態は位相限定ホログラムに関するが、本開示は振幅限定ホログラフィにも等しく適用可能である。本開示は、ホログラム計算の特定の方法に限定されない。幾つかの実施形態は、単なる例として、点群ホログラム、すなわち点群法を使用して構築されたホログラムに関する。しかしながら、本開示は、フーリエ又はフレネル型ホログラム、及びコヒーレントレイトレースなどの他の技術に従って計算されたホログラムにも同様に適用可能である。
【0094】
また、本開示は、元の物体(すなわち、ターゲット画像)に関連する振幅及び位相情報を使用してホログラフィック再構成を形成することにも同様に適用可能である。幾つかの実施形態において、これは、当初の物体に関する振幅情報及び位相情報の両方を含むいわゆる完全複素ホログラムを使用した複素変調によって達成される。そのようなホログラムは、ホログラムの各ピクセルに割り当てられた値(グレーレベル)が振幅成分及び位相成分を有するため、完全複素ホログラムと称される場合がある。各ピクセルに割り当てられた値(グレーレベル)は、振幅成分及び位相成分の両方を有する複素数として表されてもよい。幾つかの実施形態では、完全複素計算機合成ホログラムが計算される。
【0095】
「位相遅延」の省略表現として、位相値、位相成分、位相情報、又は、単に、計算機合成ホログラム又は空間光変調器のピクセルの位相を参照することができる。すなわち、記載される任意の位相値は、実際には、そのピクセルによって与えられる位相遅延の量を表す数(例えば、0~2πの範囲内)である。例えば、π/2の位相値を有すると記載された空間光変調器のピクセルは、受けた光の位相をπ/2ラジアンだけ遅延させる。幾つかの実施形態において、空間光変調器の各ピクセルは、複数の想定し得る変調値(例えば、位相遅延値)のうちの1つで動作可能である。「グレーレベル」という用語は、複数の利用可能な変調レベルを指すために使用され得る。例えば、「グレーレベル」という用語は、異なる位相レベルが異なるグレーの影をもたらさない場合であっても、位相限定変調器において複数の利用可能な位相レベルを指すために便宜上使用され得る。また、「グレーレベル」という用語は、複素変調器における複数の利用可能な複素変調レベルを指すために便宜上使用され得る。
【0096】
したがって、ホログラムは、グレーレベルの配列-すなわち、位相遅延値又は複素変調値の配列などの光変調値の配列を含む。ホログラムは、空間光変調器に表示され、空間光変調器のピクセルピッチに匹敵する、一般にそれ未満の波長を有する光で照射されたときに回折を引き起こすパターンであるため、回折パターンとも考えられる。本明細書では、ホログラムを、レンズ又は格子として機能する回折パターンなどの他の回折パターンと組み合わせることについて言及する。例えば、格子として機能する回折パターンは、再生フィールドを再生平面上で並進させるためにホログラムと組み合わされてもよく、又は、レンズとして機能する回折パターンは、ホログラフィック再構成を近接場の再生平面上に集束させるためにホログラムと組み合わされてもよい。
【0097】
以下の詳細な説明では、異なる実施形態及び実施形態のグループが別々に開示される場合があるが、任意の実施形態又は実施形態のグループの任意の特徴が、任意の実施形態又は実施形態のグループの任意の他の特徴又は特徴の組み合わせと組み合わされてもよい。すなわち、本開示に開示される特徴の全ての想定し得る組み合わせ及び置換が想定される。
【0098】
以下の番号が付けられた項も開示される。
【0099】
1.空間的に変調された光を伴う入射瞳を有する観察システムを与えるように構成される光エンジンにおいて、表示システムは、
ホログラムを表示し、ホログラムに応じて光を空間的に変調する表示デバイスと、
入射瞳の位置に基づいて表示デバイスの寄与領域及び非寄与領域を識別する寄与情報を受けるように構成されるホログラムエンジンであって、表示デバイスの寄与領域が、前記位置において入射瞳を通過する空間的に変調される光を実質的に伝搬し、表示デバイスの非寄与領域が、前記位置において入射瞳によって停止される空間的に変調される光を実質的に伝搬する、ホログラムエンジンと、
を備え、
前記寄与情報は、(i)一次像に寄与する観察システムへ光を伝搬する表示デバイスの少なくとも1つの一次寄与領域と、(ii)二次像に寄与する観察システムへ光を伝搬する表示デバイスの少なくとも1つの二次寄与領域とを更に識別し、
ホログラムエンジンは、表示デバイスの少なくとも1つの一次寄与領域に基づいてホログラムを決定し、表示のためにホログラムを表示デバイスに出力するように更に構成される、
光エンジン。
【0100】
2.光エンジンは、観察システムの入射瞳の位置を決定するように構成される監視システムを更に備える、項1に記載の光エンジン。
【0101】
3.光エンジンは、表示デバイスから空間的に変調される光を受け、表示デバイスから入射瞳への空間的に変調される光のための複数の異なる光伝搬経路を与えるように構成される導波路を更に備え、各寄与領域は、導波路によって与えられる異なるそれぞれの光伝搬経路に対応する、項1又は項2に記載の光エンジン。
【0102】
4.観察システムは、ホログラムに対応する画像を形成するように構成される、項1から3のいずれか一項に記載の光エンジン。
【0103】
5.一次像が画像の第1のバージョンを含み、二次像が画像の第2のバージョンを含む、項4に記載の光エンジン。
【0104】
6.寄与情報は、画像の複数の像点のそれぞれについて表示デバイスのそれぞれの寄与領域及び非寄与領域を識別する、項1から5のいずれか一項に記載の光エンジン。
【0105】
7.ホログラムが複数のサブホログラムを含み、各サブホログラムは、画像のそれぞれの像点の寄与情報に基づいてホログラムエンジンによって決定される、項6に記載の光エンジン。
【0106】
8.表示デバイスに表示するためのホログラムを決定する方法において、
(i)ホログラムを見るように構成される観察システムの入射瞳の位置を決定するステップと、
(ii)表示デバイスの寄与領域及び非寄与領域を識別するステップであって、表示デバイスの寄与領域が、決定された位置で観察システムの入射瞳を通過する光を実質的に伝搬し、表示デバイスの非寄与領域が、決定された位置で観察システムの入射瞳によって停止される光を実質的に伝搬する、ステップと、
(iii)一次像に寄与する光を与える表示デバイスの少なくとも1つの一次寄与領域と、二次像に寄与する光を与える表示デバイスの少なくとも1つの二次寄与領域とを識別するステップと、
(iv)表示デバイスの少なくとも1つの一次寄与領域に基づいて前記ホログラムを決定するステップと、
を含むホログラムを決定する方法。
【0107】
9.ステップ(ii)~(iv)は、画像の複数の像点のそれぞれの像点ごとに実行され、それぞれの像点ごとに各寄与領域の位置を決定するステップは、前記像点から入射瞳に進む光線が表示デバイスと交差する位置を識別するステップを含む、項8に記載のホログラムを決定する方法。
【0108】
10.観察システムは、表示デバイスから空間的に変調される光を受け、表示デバイスから入射瞳への空間的に変調される光のための複数の異なる光伝搬経路を与えるように構成される導波路を備え、ステップ(iii)は、それぞれの像点ごとに、一次像に対応する導波路瞳拡張器内の内部反射の数Bを決定するステップを含む、項8又は9に記載のホログラムを決定する方法。
【0109】
11.内部反射の数(B)を決定するステップは、対応する像点に関連する角度に基づき、角度は、表示デバイスの中心と決定された入射瞳位置とを接続する線を画像に外挿することによって形成される線の光軸に対する角度である、項10に記載の方法。
【0110】
12.各寄与領域は、入射瞳の直径に基づくサイズを有する、項11に記載の方法。
【0111】
13.ステップ(ii)及び(iii)は、それぞれの像点ごとに、
導波路内のB個の光反射のために像点[xvirtual、yvirtual、zvirtual]から観察システムの観察面までレイトレーシングして、観察面上の位置[xsensor、ysensor]を識別するステップと、
像点[xvirtual、yvirtual、zvirtual]から観察面上の前記位置[xsensor、ysensor]へのB個の反射を伴う光伝搬のために表示デバイスにおける主光線の座標[xLCOS(B)、yLCOS(B)]を決定するステップと、
[xLCOS(B)、yLCOS(B)]によって画定される領域内の表示デバイスの活性ピクセルを識別するステップと、
を含む、項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【0112】
14.ステップ(iv)は、表示デバイスの少なくとも1つの主寄与領域においてのみホログラムの1つ以上の値を決定するステップを含む、項8から13のいずれか一項に記載の方法。
【0113】
15.一次寄与領域内に含まれない表示デバイスの領域内のホログラムの値を除外するステップを更に含む項8から13のいずれか一項に記載の方法。
【0114】
16.ステップ(iv)は、ホログラムの決定中に、少なくとも1つの二次寄与領域に関連するホログラム値を除外するステップを含む、項8から13のいずれか一項に記載のホログラムを決定する方法。
【0115】
17.ステップ(iv)は、ホログラム決定を表示デバイスの少なくとも1つの一次寄与領域のみに限定するステップを含む、項8から13のいずれか一項に記載のホログラムを判定する方法。
【0116】
18.ステップ(iv)は、それぞれの像点ごとに少なくとも1つの一次寄与領域内のサブホログラムを決定し、ホログラムを形成するためにサブホログラムを組み合わせるステップを含む、項8から17のいずれか一項に記載のホログラムを決定する方法。
【0117】
19.各サブホログラムは、[xvirtual、yvirtual、zvirtual]からの光波を対応する一次寄与領域に伝搬することによって決定される振幅及び/又は位相ホログラム成分を含む、項18に記載のホログラムを決定する方法。
【0118】
20.それぞれの像点ごとに、B+ΔB個の跳ね返りに関連する表示デバイスの追加の寄与領域を識別するステップを更に含む、項8から13のいずれか一項に記載のホログラムを決定する方法。
【0119】
21.追加の寄与領域を識別するステップは、
B+ΔB個の跳ね返りに関して[xsensor、ysensor]から仮想像面zvirtualへレイトレーシングバックするステップと、
B+ΔB個の反射に関して[xsensor、ysensor]に結像する仮想点座標[xvirtual(ΔB)、yvirtual(ΔB)、zvirtual]を決定するステップと、
B+ΔB個の跳ね返りを伴う[xvirtual(ΔB)、yvirtual(ΔB)、zvirtual]から観察面への光伝搬のための表示デバイスにおける主光線の座標[xLCOS(B+ΔB)、yLCOS(B+ΔB)]を決定するステップと、
[xLCOS(B+ΔB)、yLCOS(B+ΔB)]によって画定される第2の領域内の表示デバイスの追加の活性ピクセルを識別するステップと、
を含む、項20に記載のホログラムを決定する方法。
【0120】
22.それぞれの追加の活性ピクセルごとに追加のサブホログラムを決定するステップと、追加のサブホログラムをサブホログラムと組み合わせるステップとを更に含む、項21に記載のホログラムを決定する方法。
【0121】
23.各追加のサブホログラムは、[xvirtual(ΔB)、yvirtual(ΔB)、zvirtual]からの光波を追加の寄与領域に伝搬することによって決定される振幅及び/又は位相ホログラム成分を含む、項22に記載のホログラムを決定する方法。
【0122】
24.ホログラムは、一次像及び少なくとも1つの二次像がそれぞれ非無限の虚像距離を有する虚像であるように構成される、項1から23のいずれか一項に記載の光エンジン又はホログラムを決定する方法。
【0123】
25.表示デバイスの表示領域が2cm未満又は1cm未満など、5cm未満の第1の寸法を有する、項1から24のいずれか一項に記載の光エンジン又はホログラムを決定する方法。
【0124】
26.表示デバイスから観察システムの入射瞳までの距離は、20cm以上又は50cm以上、例えば75cmよりも大きい又は100cmよりも大きい、項1から25のいずれか一項に記載の光エンジン又はホログラムを決定する方法。
【0125】
27.導波路は、表示デバイスから空間的に変調される光を受けるように配置され、一次像は、導波路によって形成される複数の画像から、最大輝度を有する選択された画像である、項1から27のいずれか一項に記載の光エンジン又はホログラムを決定する方法。
【0126】
以下の図を参照して、特定の実施形態を単なる一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【
図1】スクリーン上にホログラフィック再構成を生成する反射型SLMを示す概略図である。
【
図2A】Gerchberg-Saxton型アルゴリズムの一例の第1の反復を示す。
【
図2B】Gerchberg-Saxton型アルゴリズムの例の第2のその後の反復を示す。
【
図2C】Gerchberg-Saxton型アルゴリズムの例の別の第2のその後の反復を示す。
【
図4】小さな観察窓を介して開口に向かって効果的に伝搬する画像の角度コンテンツを示す。
【
図5A】比較的小さい伝搬距離を伴う観察システムを示す。
【
図5B】比較的大きい伝搬距離を伴う観察システムを示す。
【
図6A】無限遠で虚像を形成するための、導波路を含む比較的大きい伝搬距離を伴う観察システムを示す。
【
図7】有限虚像及び導波路瞳膨張器を用いてゴースト像を形成することができる方法を示す。
【
図8】一次像及び2つのゴースト像を含む仮想画像を示す。
【
図9A】LCOS全体を使用して一次像点及び2つの対応するゴースト像点を形成する例を示す。
【
図9B】LCOS全体を使用して一次像点及び2つの対応するゴースト像点を形成する例を示す。
【
図9C】LCOS全体を使用して一次像点及び2つの対応するゴースト像点を形成する例を示す。
【
図10A】第2のゴースト点を生じさせる導波路を通る第1の伝搬経路を示す。
【
図10B】主像点を生じさせる導波路を通る第2の伝搬経路を示す。
【
図10C】第1のゴースト点を生じさせる導波路を通る第3の伝搬経路を示す。
【
図11A】視野/像点に関連する伝搬経路及びLCOS利用を示す。
【
図11B】異なる視野/像点に関連する異なる伝搬経路及びLCOS利用を示す。
【
図11C】異なる視野/像点に関連する異なる伝搬経路及びLCOS利用を示す。
【
図12A】観察システム及び導波路によって形成される虚像点及びその虚像点の画像を含む観察システムを示す。
【
図13】実施形態に係る改善されたデータ構造を導出するための改善された方法のフローチャートを示す。
【
図14】実施形態に係る改善されたデータ構造を導出するための更なる改善された方法のフローチャートを示す。
【
図16】実施形態に係る方法のステップを示すフローチャートである。
【
図17A】複数の画像領域を備える画像(下)と、複数のホログラム構成要素を備える対応するホログラム(上)とを示す。
【
図17B】複数の離散ホログラムチャネルへのホログラフィックに符号化された光のルーティング又はチャネリングを特徴とする、本開示に係るホログラムを示す。
【
図17C】各ホログラムチャネルの光コンテンツを異なる光路を通じて眼にルーティングするように構成される最適化されたシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0128】
同じ又は同様の部分を指すために図面の全体にわたって同じ参照番号が使用される。
【0129】
本発明は、以下に記載される実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の全範囲に及ぶ。すなわち、本発明は、異なる形態で具体化されてもよく、例示目的で提示される記載された実施形態に限定されると解釈されるべきでない。
【0130】
単数形の用語は、特に明記しない限り、複数形を含み得る。
【0131】
他の構造の上部/下部又は他の構造上/下に形成されると記載された構造は、構造が互いに接触する場合、更には、構造間に第3の構造が配置される場合を含むと解釈されるべきである。
【0132】
時間関係を説明する際、例えば、事象の時間的順序が「後」、「後続」、「次」、「前」などとして説明される場合に、本開示は、別段に明記されなければ、連続的及び非連続的な事象を含むように解釈されるべきである。例えば、「ちょうど」、「即時」、又は、「直接」などの表現が使用されなければ、説明は連続的でない場合を含むように解釈されるべきである。
【0133】
本明細書中では、「第1」、「第2」などの用語を使用して様々な要素を説明する場合があるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきでない。これらの用語は、単にある要素を別の要素から区別するために使用されるにすぎない。例えば、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と称することができ、同様に、第2の要素を第1の要素と称することができる。
【0134】
異なる実施形態の特徴は、部分的又は全体的に互いに結合又は組み合わせられてもよく、互いに様々に相互動作されてもよい。幾つかの実施形態は、互いに独立して行われてもよく、或いは、共依存関係で一緒に行われてもよい。
【0135】
光学形態
【0136】
図1は、計算機合成ホログラムが単一の空間光変調器で符号化される実施形態を示す。計算機合成ホログラムは、再構成のための物体のフーリエ変換である。これは単なる例であり、ホログラムをコンピュータ生成するための他の方法が本開示において企図されることが理解され得る。したがって、ホログラムは、物体のフーリエ領域又は周波数領域又はスペクトル領域表示であると言える。この実施形態では、空間光変調器が反射型液晶オンシリコン「LCOS」デバイスである。ホログラムは空間光変調器で符号化され、また、ホログラフィック再構成が、再生フィールドで、例えばスクリーン又はディフューザなどの受光面で形成される。
【0137】
光源110、例えばレーザ又はレーザダイオードが、コリメートレンズ111を介してSLM140を照らすように配置される。コリメートレンズは、光の略平面状の波面をSLMに入射させる。
図1では、波面の方向が法線方向ではない(例えば、透明層の平面に対して正確に直交している状態から2度又は3度ずれている)。しかしながら、他の実施形態では、ほぼ平坦な波面が垂直入射でもたらされ、入力光路と出力光路とを分離するためにビームスプリッタ構成が使用される。
図1に示される実施形態において、構成は、光源からの光がSLMの鏡映後面から反射されて光変調層と相互作用して出口波面112を形成するようになっている。出口波面112は、スクリーン125にその焦点を有するフーリエ変換レンズ120を含む光学素子に適用される。より具体的には、フーリエ変換レンズ120は、SLM140から変調光のビームを受けて、周波数空間変換を実行し、スクリーン125でホログラフィック再構成を生成する。
【0138】
特に、このタイプのホログラフィでは、ホログラムの各ピクセルが全体の再構成に寄与する。再生フィールド上の特定の点(又は画像ピクセル)と特定の光変調素子(又はホログラムピクセル)との間に1対1の相関はない。言い換えると、光変調層から出る変調光は、再生フィールドにわたって分布される。
【0139】
これらの実施形態において、空間におけるホログラフィック再構成の位置は、フーリエ変換レンズの屈折力(集束力)によって決定される。
図1に示される実施形態では、フーリエ変換レンズが物理レンズである。すなわち、フーリエ変換レンズが光フーリエ変換レンズであり、フーリエ変換が光学的に行われる。任意のレンズはフーリエ変換レンズとして作用することができるが、レンズの性能は、それが実行するフーリエ変換の精度を制限する。当業者は、レンズを使用して光フーリエ変換を実行する方法を理解している。
【0140】
Gerchberg-Saxton法
【0141】
幾つかの実施形態において、計算機合成ホログラムは、フーリエ変換ホログラム、又は、単にフーリエホログラム又はフーリエベースのホログラムであり、この場合、正レンズのフーリエ変換特性を利用することによって遠隔場で画像が再構成される。フーリエホログラムは、再生平面内の所望の光照射野を元のレンズ平面にフーリエ変換することによって計算される。計算機合成フーリエホログラムは、フーリエ変換を使用して計算されてもよい。
【0142】
フーリエ変換ホログラムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムなどのアルゴリズムを使用して計算されてもよい。更に、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムを使用して、空間領域内の振幅限定情報(写真など)からフーリエ領域内のホログラム(すなわち、フーリエ変換ホログラム)を計算してもよい。物体に関する位相情報は、空間領域における振幅限定情報から効果的に「検索」される。幾つかの実施形態において、計算機合成ホログラムは、Gerchberg-Saxtonアルゴリズム又はその変形を使用して振幅限定情報から計算される。
【0143】
Gerchberg Saxtonアルゴリズムは、平面A及びBにおける光ビームの強度断面IA(x、y)及びIB(x、y)がそれぞれ既知であり、IA(x、y)及びIB(x、y)が単一のフーリエ変換によって関連付けられるときの状況を考慮する。所定の強度断面を用いて、平面A及びBにおける位相分布ΨA(x、y)及びΨB(x、y)に対する近似がそれぞれ見出される。Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、反復プロセスに従うことによってこの問題の解を見つける。より具体的には、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、IA(x、y)及びIB(x、y)を表すデータセット(振幅及び位相)を空間領域とフーリエ(スペクトル又は周波数)領域との間で繰り返し転送しながら、空間的制約及びスペクトル制約を繰り返し適用する。スペクトル領域内の対応する計算機合成ホログラムは、アルゴリズムの少なくとも1回の反復によって得られる。アルゴリズムは、収束的であり、入力画像を表すホログラムを生成するように構成される。ホログラムは、振幅限定ホログラム、位相限定ホログラム、又は、完全複素ホログラムであってもよい。
【0144】
幾つかの実施形態において、位相限定ホログラムは、参照によりそれらの全体が本願に組み入れられる英国特許第2,498,170号又は第2,501,112号に記載されるようなGerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づくアルゴリズムを使用して計算される。しかしながら、本明細書中に開示される実施形態は、単なる一例として位相限定ホログラムを計算することを記載する。これらの実施形態において、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムは、既知の振幅情報T[x、y]をもたらすデータセットのフーリエ変換の位相情報Ψ[u、v]を検索し、この場合、振幅情報T[x、y]はターゲット画像(例えば写真)を表す。大きさ及び位相はフーリエ変換において本質的に組み合わされるため、変換された大きさ及び位相は、計算されたデータセットの精度に関する有用な情報を含む。したがって、アルゴリズムは、振幅情報及び位相情報の両方に関するフィードバックと共に反復的に使用され得る。しかしながら、これらの実施形態では、像面でターゲット画像を表すホログラフィックを形成するために位相情報Ψ[u、v]のみがホログラムとして使用される。ホログラムは、位相値のデータセット(例えば2D配列)である。
【0145】
他の実施形態では、Gerchberg-Saxtonアルゴリズムに基づくアルゴリズムを使用して、完全複素ホログラムを計算する。完全複素ホログラムは、大きさ成分と位相成分とを有するホログラムである。ホログラムは、複素データ値の配列を含むデータセット(例えば2D配列)であり、この場合、各複素データ値は、大きさ成分及び位相成分を含む。
【0146】
幾つかの実施形態では、アルゴリズムが複素データを処理し、フーリエ変換が複素フーリエ変換である。複素データは、(i)実数成分及び虚数成分、又は、(ii)大きさ成分及び位相成分を含むと見なされ得る。幾つかの実施形態において、複素データの2つの成分は、アルゴリズムの様々な段階で異なるように処理される。
【0147】
図2Aは、位相限定ホログラムを計算するための幾つかの実施形態に係るアルゴリズムの最初の反復を示す。アルゴリズムへの入力は、ピクセル又はデータ値の2D配列を含む入力画像210であり、この場合、各ピクセル又はデータ値は、大きさ又は振幅の値である。すなわち、入力画像210の各ピクセル又はデータ値は、位相成分を有さない。したがって、入力画像210は、大きさ限定又は振幅限定又は強度限定分布と見なされ得る。そのような入力画像210の一例は、写真、又は、フレームの時系列を含むビデオの1フレームである。アルゴリズムの最初の反復は、開始複素データセットを形成するために、ランダム位相分布(又はランダム位相シード)230を使用して、入力画像の各ピクセルにランダム位相値を割り当てることを含むデータ形成ステップ202Aから始まり、この場合、セットの各データ要素は、大きさ及び位相を含む。開始複素データセットは、空間領域における入力画像を表すと言える。
【0148】
第1の処理ブロック250は、開始複素データセットを受けて、フーリエ変換複素データセットを形成するべく複素フーリエ変換を実行する。第2の処理ブロック253は、フーリエ変換された複素データセットを受けて、ホログラム280Aを出力する。幾つかの実施形態では、ホログラム280Aが位相限定ホログラムである。これらの実施形態において、第2の処理ブロック253は、ホログラム280Aを形成するために各位相値を量子化し、各振幅値を1に設定する。各位相値は、位相限定ホログラムを「表示」するために使用される空間光変調器のピクセル上に表され得る位相レベルにしたがって量子化される。例えば、空間光変調器の各ピクセルが256個の異なる位相レベルを与える場合、ホログラムの各位相値は、256個の想定し得る位相レベルのうちの1つの位相レベルに量子化される。ホログラム280Aは、入力画像を表す位相限定フーリエホログラムである。他の実施形態において、ホログラム280Aは、受けられたフーリエ変換複素データセットから導き出される複素データ値(それぞれが振幅成分及び位相成分を含む)の配列を含む完全複素ホログラムである。幾つかの実施形態において、第2の処理ブロック253は、各複素データ値を複数の許容可能な複素変調レベルのうちの1つに制約してホログラム280Aを形成する。制約するステップは、各複素データ値を複素平面内の最も近い許容可能な複素変調レベルに設定することを含んでもよい。ホログラム280Aは、スペクトル領域又はフーリエ領域又は周波数領域における入力画像を表すと言える。幾つかの実施形態では、アルゴリズムがこの時点で停止する。
【0149】
しかしながら、他の実施形態において、アルゴリズムは、
図2Aの破線矢印によって表されるように継続する。言い換えると、
図2Aの破線矢印に続くステップは任意選択的である(すなわち、全ての実施形態に必須ではない)。
【0150】
第3の処理ブロック256は、第2の処理ブロック253から修正複素データセットを受けて、逆フーリエ変換を実行し、逆フーリエ変換された複素データセットを形成する。逆フーリエ変換された複素データセットは、空間領域における入力画像を表すと言える。
【0151】
第4の処理ブロック259は、逆フーリエ変換された複素データセットを受けて、大きさ値の分布211A及び位相値の分布213Aを抽出する。随意的に、第4の処理ブロック259は、大きさ値の分布211Aを評価する。具体的には、第4の処理ブロック259は、逆フーリエ変換された複素データセットの大きさ値の分布211Aを、それ自体が勿論大きさ値の分布である入力画像510と比較してもよい。大きさ値の分布211Aと入力画像210との間の差が十分に小さい場合、第4の処理ブロック259は、ホログラム280Aが許容可能であると決定することができる。すなわち、大きさ値の分布211Aと入力画像210との間の差が十分に小さい場合、第4の処理ブロック259は、ホログラム280Aが入力画像210を十分に正確に表すと決定することができる。幾つかの実施形態において、逆フーリエ変換された複素データセットの位相値の分布213Aは、比較の目的のために無視される。大きさ値の分布211Aと入力画像210とを比較するための任意の数の異なる方法を使用することができ、また、本開示が任意の特定の方法に限定されないことが分かる。幾つかの実施形態では、平均二乗差が計算され、また、平均二乗差が閾値未満である場合、ホログラム280Aは許容可能であると考えられる。ホログラム280Aが許容できないと第4の処理ブロック259が決定する場合には、アルゴリズムの更なる反復が実行されてもよい。しかしながら、この比較ステップは必須ではなく、他の実施形態では、実行されるアルゴリズムの反復回数が、予め決定され又は予め設定され或いはユーザ定義である。
【0152】
図2Bは、アルゴリズムの第2の反復及びアルゴリズムの任意の更なる反復を表す。先行する反復の位相値の分布213Aは、アルゴリズムの処理ブロックを介してフィードバックされる。大きさ値の分布211Aは、入力画像210の大きさ値の分布を支持して拒絶される。最初の反復において、データ形成ステップ202Aは、入力画像210の大きさ値の分布とランダム位相分布230とを組み合わせることによって最初の複素データセットを形成した。しかしながら、2回目以降の反復において、データ形成ステップ202Bは、(i)アルゴリズムの前回の反復からの位相値の分布213Aと、(ii)入力画像210の大きさ値の分布とを組み合わせることによって複素データセットを形成することを含む。
【0153】
その後、
図2Bのデータ形成ステップ202Bによって形成された複素データセットは、第2の反復ホログラム280Bを形成するべく
図2Aに関連して説明したのと同じ方法で処理される。したがって、プロセスの説明はここでは繰り返さない。アルゴリズムは、第2の反復ホログラム280Bが計算されたときに停止してもよい。しかしながら、アルゴリズムの任意の数の更なる反復が実行されてもよい。第3の処理ブロック256は、第4の処理ブロック259が必要とされる又は更なる反復が必要とされる場合にのみ必要とされることが理解される。出力されたホログラム280Bは、一般に、反復ごとに良好になる。しかしながら、実際には、通常、測定可能な改善が観察されない又は更なる反復を実行するプラスの利益が追加の処理時間のマイナスの効果によって相殺されるポイントに達する。したがって、アルゴリズムは、反復的且つ収束的であるとして説明される。
【0154】
図2Cは、2回目以降の反復の別の実施形態を表す。先行する反復の位相値の分布213Aは、アルゴリズムの処理ブロックを介してフィードバックされる。大きさ値の分布211Aは、大きさ値の別の分布を支持して拒絶される。この別の実施形態において、大きさ値の別の分布は、前回の反復の大きさ値の分布211から導き出される。具体的には、処理ブロック258は、前回の反復の大きさ値の分布211から入力画像210の大きさ値の分布を減算し、その差を利得係数αでスケーリングして、スケーリングされた差を入力画像210から減算する。これは、以下の式によって数学的に表され、この場合、下付き文字及び数字は反復回数を示す。
【0155】
【数1】
ここで、
F’は、逆フーリエ変換;
Fは、順フーリエ変換;
R[x、y]は、第3の処理ブロック256によって出力される複素データセットであり、
T[x、y]は、入力又はターゲット画像であり、
【数2】
は位相成分であり、
Ψは位相限定ホログラム280Bであり、
ηは、大きさ値の新たな分布211Bであり、及び
αは利得係数である。
【0156】
利得係数αは固定であっても可変であってもよい。幾つかの実施形態において、利得係数αは、入ってくるターゲット画像データのサイズ及びレートに基づいて決定される。幾つかの実施形態では、利得係数αが反復回数に依存する。幾つかの実施形態では、利得係数αが反復回数の単なる関数である。
【0157】
図2Cの実施形態は、他の全ての点で
図2A及び
図2Bの実施形態と同じである。位相限定ホログラムΨ(u、v)は、周波数領域又はフーリエ領域における位相分布を含むと言える。
【0158】
幾つかの実施形態では、フーリエ変換が空間光変調器を使用して実行される。具体的には、ホログラムデータは、光パワーを与える第2のデータと組み合わされる。すなわち、空間光変調に書き込まれるデータは、物体を表すホログラムデータと、レンズを表すレンズデータとを含む。空間光変調器に表示されて光で照らされると、レンズデータは、物理レンズをエミュレートし-すなわち、対応する物理光学素子と同じ方法で光を焦点に至らせる。したがって、レンズデータは、光パワー又は集束力を与える。これらの実施形態では、
図1の物理フーリエ変換レンズ120が省かれてもよい。レンズを表すデータを計算する方法は知られている。レンズを表すデータは、ソフトウェアレンズと称される場合がある。例えば、位相限定レンズは、その屈折率及び空間的に変化する光路長に起因してレンズの各点によって引き起こされる位相遅延を計算することによって形成されてもよい。例えば、凸レンズの中心における光路長は、レンズの縁における光路長よりも大きい。振幅限定レンズは、フレネルゾーンプレートによって形成されてもよい。計算機合成ホログラフィの技術分野では、物理的なフーリエレンズを必要とせずにホログラムのフーリエ変換を実行できるように、レンズを表すデータをホログラムと組み合わせる方法も知られている。幾つかの実施形態において、レンズデータは、単純なベクトル加算などの単純な加算によってホログラムと組み合わされる。幾つかの実施形態では、フーリエ変換を実行するために、物理レンズがソフトウェアレンズと共に使用される。或いは、他の実施形態では、ホログラフィック再構成が遠隔場で行われるように、フーリエ変換レンズが完全に省かれる。更なる実施形態において、ホログラムは、格子データ、すなわち、画像ステアリングなどの格子の機能を果たすように構成されるデータと同じ方法で組み合わされてもよい。この場合も先と同様に、そのようなデータをどのように計算するかは、当該分野において既知である。例えば、位相限定格子は、ブレーズド格子の表面上の各点によって引き起こされる位相遅延をモデル化することによって形成されてもよい。振幅限定格子は、ホログラフィック再構成の角度ステアリングをもたらすべく、振幅限定ホログラムと単純に重ね合わされてもよい。レンシング及び/又はステアリングを与える第2のデータは、画像形成機能又は画像形成パターンと呼ばれる場合があるホログラムデータと区別するために、光処理機能又は光処理パターンと呼ばれる場合がある。
【0159】
幾つかの実施形態において、フーリエ変換は、物理フーリエ変換レンズとソフトウェアレンズとによって一緒に実行される。すなわち、フーリエ変換に寄与する一部の光パワーがソフトウェアレンズによって与えられ、また、フーリエ変換に寄与する光パワーの残りが1つ以上の物理光学素子によって与えられる。
【0160】
幾つかの実施形態では、画像データを受けるとともにアルゴリズムを使用してリアルタイムでホログラムを計算するようになっているリアルタイムエンジンが設けられる。幾つかの実施形態において、画像データは、画像フレームのシーケンスを含むビデオである。他の実施形態において、ホログラムは、予め計算され、コンピュータメモリに記憶されるとともに、SLMに表示するために必要に応じて呼び出される。すなわち、幾つかの実施形態では、所定のホログラムのリポジトリが与えられる。
【0161】
実施形態は、単なる一例として、フーリエホログラフィ及びGerchberg-Saxton型アルゴリズムに関する。本開示は、同様の方法によって計算することができるフレネルホログラフィ及びフレネルホログラムに等しく適用可能である。また、本開示は、点群法に基づく技術などの他の技術によって計算されたホログラムにも適用可能である。理解されるように、本明細書の後続の図は、ホログラム計算のための点群法を含むものとして説明される。しかしながら、
図2A~
図2Cに関連して前述したフーリエ法を含む、ホログラム計算の他の方法が代わりに使用されてもよい。
【0162】
光変調
【0163】
空間光変調器を使用して、計算機合成ホログラムを含む回折パターンを表示してもよい。ホログラムが位相限定ホログラムである場合には、位相を変調する空間光変調器が必要とされる。ホログラムが完全複素ホログラムである場合には、位相及び振幅を変調する空間光変調器が使用されてもよく、又は、位相を変調する第1の空間光変調器及び振幅を変調する第2の空間光変調器が使用されてもよい。
【0164】
幾つかの実施形態では、空間光変調器の光変調素子(すなわち、ピクセル)が液晶を含むセルである。すなわち、幾つかの実施形態において、空間光変調器は、光学活性要素が液晶である液晶デバイスである。各液晶セルは、複数の光変調レベルを選択的に与えるように構成される。すなわち、各液晶セルは、複数の想定し得る光変調レベルから選択される1つの光変調レベルで動作するように常に構成される。各液晶セルは、複数の光変調レベルとは異なる光変調レベルに動的に再構成可能である。幾つかの実施形態では、空間光変調器が反射型液晶オンシリコン(LCOS)空間光変調器であるが、本開示はこのタイプの空間光変調器に限定されない。
【0165】
LCOSデバイスは、小さな開口(例えば、数センチメートル幅)内に光変調素子又はピクセルの高密度配列をもたらす。ピクセルは一般に約10ミクロン以下であり、その結果、回折角が数度になり、そのため、光学系をコンパクトにすることができる。LCOS SLMの小さな開口を適切に照らすことは、他の液晶デバイスの大きな開口よりも容易である。LCOSデバイスは一般に反射型であり、そのため、LCOS SLMのピクセルを駆動する回路を反射面下に埋め込むことができる。その結果、開口率が高くなる。言い換えると、ピクセルは密集しており、そのため、ピクセル間にデッドスペースがほとんどない。これは、それによって再生フィールドにおける光学的ノイズが低減するため有利である。LCOS SLMは、ピクセルが光学的に平坦であるという利点を有するシリコンバックプレーンを使用する。これは、位相変調デバイスにとって特に重要である。
【0166】
以下、
図3を参照して、適切なLCOS SLMを単なる一例として説明する。LCOSデバイスは、単結晶シリコン基板302を用いて形成される。LCOSデバイスは、基板の上面に配置される、ギャップ301aだけ離間された正方形の平面アルミニウム電極301の2D配列を有する。電極301のそれぞれは、基板302に埋め込まれた回路302aを介してアドレス指定され得る。各電極はそれぞれの平面ミラーを形成する。電極の配列上に配向層303が配置され、また、配向層303上に液晶層304が配置される。第2の配向層305が例えばガラスの平面透明層306上に配置される。例えばITOの単一の透明電極307が、透明層306と第2の配向層305との間に配置される。
【0167】
正方形電極301のそれぞれは、透明電極307の上層領域及び介在する液晶材料と共に、しばしばピクセルと称される制御可能な位相変調素子308を画定する。有効ピクセル面積又はフィルファクタは、ピクセル301a間の空間を考慮して、光学的に活性な全ピクセルの割合である。透明電極307に対して各電極301に印加される電圧を制御することにより、それぞれの位相変調素子の液晶材料の特性を変化させることができ、それにより、液晶材料に入射する光に可変遅延をもたらすことができる。効果は、波面に位相限定変調をもたらすことであり、すなわち、振幅効果が生じない。
【0168】
記載されたLCOS SLMは、反射において空間的に変調された光を出力する。反射型LCOS SLMは、信号線、ゲート線、及び、トランジスタが鏡面の下にあるという利点を有し、その結果、フィルファクタが高く(通常は90%を超える)、分解能が高くなる。反射型LCOS空間光変調器を使用する別の利点は、液晶層の厚さを、透過型デバイスを使用した場合に必要となる厚さの半分にすることができることである。これにより、液晶のスイッチング速度が大幅に向上する(動画像の投影にとって重要な利点)。しかしながら、本開示の教示内容は、透過型LCOS SLMを使用して同様に実施することができる。
【0169】
小型の表示デバイスと長い観察距離を用いた画像投影
【0170】
本開示は、表示デバイスと観察者との間の離間距離が表示デバイスのサイズよりもはるかに大きい画像投影に関する。観察距離(すなわち、観察者と表示デバイスとの間の距離)は、表示デバイスのサイズよりも少なくとも1桁大きくてもよい。観察距離は、表示デバイスのサイズよりも少なくとも2桁大きくてもよい。例えば、表示デバイスのピクセル面積は10mm×10mmであってもよく、観察距離は1mであってもよい。システムによって投影された画像は、表示デバイスから空間的に分離される表示平面上に形成される。観察者が画像を見るための入口開口は、観察距離と比較して比較的小さくてもよい。
【0171】
本開示によれば、画像はホログラフィック投影によって形成される。表示デバイスにはホログラムが表示される。ホログラムは、光源(図示せず)によって照明され、ホログラムから空間的に分離された表示平面上で画像が知覚される。画像は、実像であっても虚像であってもよい。以下の説明のために、表示デバイスの上流側に形成される虚像を考慮することが有用である。すなわち、表示デバイスの背後に現れる。しかしながら、画像が虚像であることは必須ではなく、本開示は、表示デバイスと観察システムとの間に形成される実像にも等しく適用可能である。
【0172】
本開示は、観察距離が比較的大きい場合であっても、画像(実像又は虚像)を表すために、非常に小型の表示デバイスを使用できるようにする。それは、所望の位置における画像の存在を模倣するホログラムを与えることによって、並びに、観察システムの位置及び光を観察システムに入れるための入口開口のサイズ及び/又は形状を考慮に入れて、そのホログラムによって空間的に変調された光をインテリジェントに導くことによって行われる。
【0173】
表示デバイスは、ホログラムを表示するピクセルを備える。表示デバイスのピクセル構造は回折性である。したがって、ホログラフィック画像のサイズは回折規則によって支配される。表示デバイスの非常に小さいサイズの結果は、
図4に関連して、広範な光学的用語で以下に説明される。
【0174】
図4は、実物体又は画像401と観察システム405との間に小さな観察窓を形成する開口402を示す。開口402は、表示デバイスの開口を表す。
図4は、開口402の上流側に有限距離を隔てて位置される実物体又は実像401から来る光に対する開口402の効果を示す。開口402は、それと観察システム405との間の距離に対して非常に小さい。この例示的な配置では、画像401、表示デバイス402、及び観察システム405は、光軸Ax上に配置される。
【0175】
図4は、開口402によって画定された非常に小さい観察窓を通過して光軸Axに垂直に画定された観察面406に向かって進む画像401からの光線(又は、光線束)のみを示す。当業者であれば分かるように、他の光線は、画像401から進行するが、開口402とは一致せず、そのため、(この例では)観察面406に到達することができない。更に、5つの光線(又は光線束)は、画像401から進行するもの、-画像401の5つの異なる部分のそれぞれからのもの-として示されるが、この場合も先と同様、当業者であれば分かるように、これは例示にすぎず、本開示は5つの光線又は光線束に限定されない。観察システム405は、観察面406のすぐ前方に入口開口404を有する。観察システム406は、人の眼であってもよい。したがって、入口開口404は、眼の瞳孔であってもよく、また、観察面406は、眼の網膜であってもよい。
【0176】
図4は、開口402のサイズが非常に小さいことが、観察面上の各位置から画像の一部のみを見ることができることをどのように意味するかを示している。
図4は、それぞれが光軸に対するそれぞれの角度Axによって特徴付けられ且つそれぞれが画像401の異なるそれぞれの部分から進行する5つの例示的な光線束を示す。光軸Axに沿って進む光束は、画像の中心部分を伝え、すなわち、画像の中心の光である。他の光束は、画像の他の部分を伝える。全ての画像コンテンツが任意の所定の観察位置で入射瞳404を通過することができるわけではない大きい観察距離と比較して、開口402によって画定される非常に小さい観察窓、及び瞳孔404の非常に小さい入口開口の結果である。言い換えると、全ての画像コンテンツが眼によって受信されるわけではない。
図4の例では、図示されている5つの光束のうちの1つのみが、任意の観察位置で瞳孔404を通過する。
【0177】
この例では、示されている瞳孔404の位置に関し、画像の中央部分が眼によって見られる。残りの画像情報は遮断される。読者であれば分かるようには、観察者が上下に動けば、異なる光束を眼によって受けることができ、例えば、画像の中央部分が遮断され得る。したがって、観察者は、完全な画像の一部のみを見ることになる。残りの画像情報は遮断される。換言すれば、観察者は表示デバイス自体の小さな開口を通して画像を効果的に見ているため、観察者の視界は非常に制限される。
【0178】
要約すると、光は、表示デバイスから小さな観察窓まである角度範囲にわたって伝搬する。1mの観察距離では、小さな観察窓からの狭い範囲の角度のみが眼の瞳孔を通って伝搬し、所定の眼の位置の網膜に画像を形成することができる。見える画像の部分のみが、入口開口404を通過する
図4に示される小さな角度範囲内にある部分である。したがって、視野は非常に小さく、特定の角度範囲は眼の位置に大きく依存する。
【0179】
図4に関連して説明した小視野及び眼の位置に対する感度の問題は、観察窓の大きい観察距離及び小さい開口、並びに観察システムの小さい入口開口の結果である。観察距離の重要性は、
図5~
図7に関連して更に説明される。
【0180】
適切な表示デバイスに表示及び照射されたホログラムを使用して、所望の位置に画像(実像又は虚像)を形成することは周知である。しかしながら、本発明者らは、従来のホログラフィック技術は、特に比較的大きい観察距離又は比較的小さい観察開口に対して、小さい表示デバイスを使用して鮮明且つ正確に画像を形成するのに適していないことを確認した。従来のホログラフィック技術は、更に、これが特に虚像などの画像が観察者から無限遠ではない距離で表されるようになっている場合に当てはまることを認識している。更に、本発明者らは、従来のホログラフィック技術は、典型的には、表示デバイスと観察者との間の画像のホログラフィック再構成の形成に依存し、そのホログラフィック再構成は自由空間又は受光部材内に形成され得ることを認識した。しかしながら、中間ホログラフィック再構成の形成に依存することは、一般に、ディフューザ、レンズ又はミラーなどの追加の光学素子を必要とし、これは、特にコンパクトさが望まれ、不動産価値が高い用途では非実用的又は他の点で望ましくない場合がある。
【0181】
図5Aは、ホログラムを表示してホログラムにしたがって空間的に変調された光を入口開口504と観察面506とを備える観察システムに伝搬するように構成される表示デバイス502を示す。
図5Aの表示デバイスは、
図4の観察開口と同様の小さい物理的サイズを有する。また、
図5Aは、表示デバイス502の上流側に、ホログラムが表す虚像(図示せず)からの光のレイトレースも示す。虚像501は無限遠にあるため、虚像と表示デバイス502との間で追跡される光線はコリメートされる。虚像からのコリメート光は、5つの光線又は光線束を備えるものとして示されるが、これは例示にすぎず、本開示を限定するものと見なされるべきではないことが理解され得る。
【0182】
図5Aの下部は、観察システムの拡大図を示す。この図は概略図であり、したがって眼の生理学的詳細は示されない。実際には、当然ながら、表示デバイス502を照らすように構成される光源(
図5Aには図示せず)がある。
【0183】
図5Aでは、表示デバイスと観察面との間の距離は、表示デバイスからの光線の全回折角が網膜上に画像を形成することができるほど十分に小さい。言い換えると、(虚像から来るものとして示される)5つの光線束全ての光伝搬経路は、入口開口を通過する。したがって、虚像上の全ての点が網膜上にマッピングされ、全ての画像コンテンツが観察面に配信される。したがって、知覚される画像の視野は最大である。最適な位置では、視野は表示デバイスの回折角に等しい。興味深いことに、網膜上の異なる像点は、表示デバイス502上の異なる領域から伝搬する光から形成され、例えば、
図5Aの上部に最も近い像点は、表示デバイスの下部のみから伝搬する光から形成される。表示デバイスの他の領域から伝搬する光は、この像点に寄与しない。
【0184】
図5Bは、観察距離が増大されるにつれて生じる状況を示す。
【0185】
より詳細には、
図5Bは、ホログラムを表示してホログラムにしたがって変調された光を入口開口504’と観察面506’とを備える観察システムに伝搬するように構成される表示デバイス502’を示す。虚像501’は無限遠にあるため、虚像と表示デバイスとの間でトレースされる光線はコリメートされる。
図5Bの下部は、観察システムの拡大図を示す。この図は概略図であり、したがって眼の生理学的詳細は示されない。実際には、当然ながら、表示デバイス502’を照らすように構成される光源(
図5Bには図示せず)がある。
【0186】
図5Bは、開口504’を通って伝搬することができる光線のみを示し、開口504’を通過することができない任意の他の光線は省略される。しかしながら、これらの他の光線も表示デバイス502’から伝搬することが理解され得る。
図5Bのより大きい観察距離では、光円錐は、光線束の一部が入口開口504’によって遮断される(すなわち、それらは物理的に一致しない)程度まで、観察面上に広がっている。具体的に、この例では、虚像のエッジ部分と関連付けられた光線束は、入射瞳504’によって遮断される。しかしながら、入口開口504’が観察面506’と平行な位置を移動した場合、虚像の異なるそれぞれの部分が見えるように、異なるそれぞれの光線束が開口504’と一致し得る。したがって、任意の開口位置に関して、虚像全体は見えず、見える虚像の部分は開口(例えば、眼)位置に大きく依存する。したがって、表示デバイスと観察システムとの間の距離が大きいことは、表示デバイスのサイズが小さいために、特に比較的小さい入口開口と組み合わせた場合に問題となる。
【0187】
図6Aは、表示デバイス602に表示されたホログラムで符号化された光を入口開口604と観察面606とを備える観察システムに向けて伝搬する、表示デバイス602を備える改良されたシステムを示す。実際には、当然ながら、表示デバイス602を照明するように構成される光源(図示せず)がある。改良されたシステムは、表示デバイス602と入口開口604との間に位置された導波路608を更に備える。
図6Aの下部は、入射瞳604及び観察面604の拡大図を示す。この図は概略図であり、したがって眼の生理学的詳細は示されない。
【0188】
図6の観察距離は、
図5Bの観察距離と同じである。しかしながら、
図5Bで遮断された光線束は、より長い観察距離にもかかわらず、全画像情報が観察システムによって受信されるように、導波路608によって効果的に復元される。
【0189】
導波路608の存在は、この比較的大きい投影距離であっても、表示デバイス602からの全ての角度コンテンツを眼によって受けることができるようにする。これは、周知であり、したがって本明細書では簡単に説明される態様で、導波路608が瞳孔拡張器として作用するからである。
【0190】
手短に言えば、導波路608は、実質的に長尺な形成を含む。この例では、導波路は屈折材料の光学スラブを備えるが、他のタイプの導波路も周知であり、使用されてもよい。導波路608は、表示デバイス602から投影される光円錐と、例えば斜めの角度で交差するように位置される。導波路608のサイズ、場所、及び位置は、光円錐内の5つの光線束のそれぞれからの光が導波路608に入るようにするべく構成される。光円錐からの光は、その第1の平坦面610(表示デバイス602に最も近い位置にある)を介して導波路608に入射し、導波路608の長さに沿って少なくとも部分的に誘導された後、第1の面610とは実質的に反対側の第2の平坦面612(眼に最も近い位置にある)を介して放射される。よく理解されるように、第2の平坦面612は部分的に反射性、部分的に透過性である。言い換えると、各光線が、導波路608内で、導波路608の第1の平坦面610から第2の平坦面612へと進むとき、光の一部は導波路608から透過され、一部は第2の平坦面612によって反射されて第1の平坦面610に戻る。第1の平坦面610は反射性であり、それにより、導波路608内から第1の平坦面に当たる全ての光は、第2の平坦面612に向かって反射される。したがって、光の一部は、伝送される前に導波路608の2つの平坦面610、612間で単に屈折されてもよく、一方、他の光は反射されてもよく、したがって、伝送される前に導波路608の平坦面610、612間で1つ以上の反射(又は「跳ね返り」)を受けてもよい。したがって、導波路608の正味の効果は、光の伝送が導波路608の第2の平坦面612上の複数の位置にわたって効果的に拡張されることである。したがって、表示デバイス602によって出力される全ての角度コンテンツは、導波路608がない場合よりも、表示平面上のより多くの位置(及び開口平面上のより多くの位置)に存在し得る。このことは、比較的大きい投影距離にもかかわらず、各光線束からの光が入口開口604に入って観察面606によって形成される画像に寄与し得ることを意味する。言い換えると、表示デバイス602からの全ての角度コンテンツを眼で受けることができる。したがって、表示デバイス602の完全な回折角が利用され、観察窓がユーザにとって最大化される。したがって、このことは、全ての光線が知覚される虚像601に寄与することを意味する。
【0191】
図6Bは、上から下にそれぞれR1~R5とラベル付けされている、
図6Aで形成される虚像601内の5つのそれぞれの像点に寄与する5つの光線束のそれぞれの個々の光路を示す。図から分かるように、R1及びR2のそれぞれの光は、単に屈折した後、導波路608によって伝送される。一方、R4の光は、透過する前に単一の跳ね返りに遭遇する。R3の光は、伝送される前に導波路608によって単に屈折される表示デバイス602の対応する第1の部分からの幾つかの光と、伝送される前に単一の跳ね返りに遭遇する表示デバイス602の第2の異なる対応する部分からの幾つかの光とを含む。同様に、R5の光は、透過前に単一の跳ね返りに遭遇する表示デバイス602の対応する第1の部分からの幾つかの光と、透過前に2つの跳ね返りに遭遇する表示デバイス602の第2の異なる対応部分からの幾つかの光とを含む。R3及びR5のそれぞれについて、LCOSの2つの異なる部分は、虚像のその部分に対応する光を伝搬する。
【0192】
本発明者らは、少なくとも幾つかの用途において、虚像距離、すなわち観察者から虚像までの距離が、虚像が無限遠で形成されるのとは対照的に、有限であることが好ましいことを認識した。特定の用途では、虚像コンテンツが現れることが望ましい又は必要である好ましい虚像距離が存在する。例えば、これは、例えば自動車の設定におけるヘッドアップディスプレイの場合、例えば、虚像コンテンツが、車両のフロントガラスを通して見る人によって見られている実際のコンテンツに重畳される場合であり得る。例えば、所望の虚像距離は、観察者の車両又はフロントガラスの前方に数メートル、例えば3メートル又は5メートルで形成される虚像コンテンツを含むことができる。
【0193】
図7の上部は、表示デバイス702上に表示されたホログラムで符号化された(表示されたホログラムにしたがって変調された)光703を、入口開口704及び観察面706を含む眼に向かって伝搬する表示デバイス702を含むシステムを示す。表示デバイス702を照明するように構成される光源(図示せず)がある。システムは、上記の
図6aに関連して詳細に説明したように、瞳孔拡張器として機能するために、表示デバイス702と入口開口704との間に配置された導波路708を更に備える。
図7の中央部は、入口開口704及び観察面706の拡大図を示し、
図7の最下部は、観察面706の更なる拡大図を示す。この図は概略図であり、したがって眼の生理学的詳細は示されない。この構成では、眼は、虚像701が表示デバイス702の上流の有限の距離に位置していると知覚する。虚像距離は有限であるため、光線は発散する。
【0194】
上記の
図6Aに示すように、
図7の導波路708の存在は、表示デバイス702の全回折角が比較的大きな投影距離でアクセスされることを効果的に可能にし、それにより、全画像コンテンツが示されている表示位置でユーザに視認可能になる。
【0195】
しかしながら、更なる技術的問題が導入される。発散光及び結果として生じる異なる光線角度が存在するため、特定の光線束について、表示デバイス702の異なる部分からの光の異なる光路は、虚像が有限の虚像距離で形成されるときに、それぞれが網膜706上に複数の像点を形成する光線束をもたらすことができる。これは、
図7aのR3’及びR5’とラベル付けされた光線束に関連して示されている。形成される追加の像点は、虚像内の所与の点の主像点に従属し、「ゴースト像点」と呼ばれ、集合的に「ゴースト像」又は単に「ゴースト」を形成する。画像形成の当業者が理解するように、ゴーストの形成は、観察者の視点から、虚像のぼやけ及び知覚品質の一般的な低下を引き起こす可能性がある。これは、「ゴースト」が「主」画像に部分的に重なる場合に特に当てはまる。
【0196】
図8は、主画像に加えてゴースト像を含む、
図7aに示すものと同様の観察システムを使用して作成された番号「5」及び「9」の仮想画像の例を示す。主画像は、左右にゴーストがある、各数字の最も明るい中央画像として見ることができる。
図8の例では、視距離が「5」の場合よりも大きい場合に「9」が形成され、したがって、ぼけはそれに対してより顕著になる。
【0197】
ホログラム計算-例1
【0198】
発明者らは、ゴースト像の問題に対処した。本発明者らは、表示デバイスによって出力される全ての角度画像コンテンツを含み、ゴースト像の形成を低減又は除去する、有限の虚像距離で虚像を形成することができる観察システムを提供することが望ましいことを認識した。更に、本発明者らは、従来の観察システムでは、観察開口のサイズが大きくなるにつれて、表示平面上に追加の像点を形成し得る追加の光線を開口が通過させることができるため、ゴースト像点を形成するリスクが増加することを見出した。したがって、ゴースト像の形成を依然として低減又は除去しながら、異なるサイズの開口に対応することができる改善された観察システムを提供することが望ましい。以下に詳述する本発明者らによって提供される解決策は、開口、導波路、及び表示デバイスの様々なサイズ及び構成の範囲に適用可能であり、1つ以上のゴースト像が従来から形成され得る様々な伝搬距離に適用することができる。また、比較的小型の表示デバイスに適用することができる。
【0199】
全体として、本発明者らは、ホログラムが表示デバイスに表示されて照明されるときにゴースト像点の形成を回避又は低減し、一方で完全な画像を正確に見ることを可能にする、ホログラムを生成するための光エンジンを提供することが可能であることを認識した。本発明者らは、観察システム内の投影距離が比較的大きく、表示デバイス及び/又は観察開口が比較的小さい場合であっても、そのようなホログラムを与えるためのホログラムエンジンを提供し、改善された画像を形成するために、改善されたホログラムの表示及び照明のための改善された観察システムを提供することが可能であることを更に認識した。
【0200】
一実施形態によれば、本発明者らは、点群ホログラム計算技術などのレイトレース法などのモデリング法を使用してホログラムを決定できることを確認した。本発明者らによって考案されたモデリングは、実際には、従来の構成では1つ以上のゴースト像に寄与する表示デバイスの1つ以上の領域を識別し、ホログラムは、表示デバイスのそれらの1つ以上の領域からの寄与を制御するために導出され、したがって、ホログラムが表示デバイスに表示されて照明されるときのゴースト像点の形成を回避又は低減する。
【0201】
ホログラムを決定するための他の手法もまた、以下の図に関連して詳述するように、本明細書に開示されている。
【0202】
本発明者らは、本明細書の
図6A及び
図7Aに示されているような、比較的小さい観察開口と、任意選択的に比較的小さい表示デバイスとを含む導波路を含む観察システムを有することによって課される角度制限のために、導波路内の異なる可能な伝搬経路を別々に考慮することが可能であることを認識した。更に、本発明者らは、そのような考察の結果として、所望の「主」画像に寄与する光源である表示デバイスの領域、望ましくない「ゴースト」画像に寄与する光源である表示デバイスの領域、開口によって遮断され、したがって主画像又はゴースト像のいずれにも寄与しない光源である表示デバイスの領域のそれぞれを識別することが可能であることを認識している。本発明者らは、ホログラム計算を、主画像に寄与する表示デバイスの領域のみに限定することが可能であることを更に認識した。本発明者らは、更なる改良において、幾つかの実施形態では、改良されたホログラムを提供することができ、これにより、ゴースト像のうちの1つ以上を変換して主画像に重ね合わせることができることを更に認識している。
【0203】
本発明者らによる認識、並びにそれらの認識を具体化する改良されたシステム及び方法は、以下に詳述する図面を参照して更に理解することができる。
【0204】
図9Aは、この例ではLCOS空間光変調器である表示デバイス902を示す。以下では、「表示デバイス」の省略表現として「LCOS」を参照する。本開示の教示は、LCOS表示デバイスに限定されない。
図9Bは、LCOS902を示し、LCOS902から導波路908を介して、この例では観察者の眼を含む観察エンティティ/システム905に向かって、ある虚像点に対する光線をトレースする。
図9Cは、瞳孔904(すなわち、入口開口)及び網膜906(すなわち、センサ又は観察面)における光線を示す、眼905の拡大図を更に含む。この例では、LCOS領域全体が網膜906上の像点の形成に寄与する。換言すれば、LCOS902の全体が観察者に「見える」。画像に対するLCOS902全体のこの寄与は、LCOS全体が網掛けされることによって示され、その全表面積を「寄与領域」として示す。
【0205】
図示のように、
図9B及び
図9CのLCOS902からトレースされた光は、この特定の虚像点の網膜906上に、それぞれG1、M、及びG2とラベル付けされた3つの像点の形成をもたらす。中間像点「M」は、観察者によって知覚される一次/主虚像に寄与する主像点を含む。上部像点G1は第1のゴースト像点を含み、下部像点G2は同じ仮想像点の第2の異なるゴースト像点を含む。特に、また更なる進歩において、本発明者らは、主像点M及び/又はゴースト像点G1、G2に寄与するLCOS902の領域を識別することが可能であることを認識した。
【0206】
図10A~
図10Cは、3つのそれぞれの伝搬経路に分割された
図9A~
図9CのLCOS902及び光線図を示し、そのうちの第1の伝搬経路は下部ゴースト像点G2に寄与する光を含み、そのうちの第2の伝搬経路は主像点Mに寄与する光を含み、そのうちの第3の伝搬経路は上部ゴースト像点G1に寄与する光を含む。
図10Aに見られるように、G2に寄与する光は、導波路908によって伝送される前に3回跳ね返る。
図10Bに見られるように、Mに寄与する光は、導波路908によって伝送される前に2回跳ね返る。
図10Cに見られるように、G1に寄与する光は、導波路908によって伝送される前に一度跳ね返る。
【0207】
各図(10A、10B、10C)はまた、それぞれの像点に寄与するLCOS902の部分を網掛けで示している。したがって、下部ゴースト像点G2は、LCOS902の下部に向かう領域が寄与し、上部ゴースト像点G1は、LCOS902の上部に向かう領域が寄与し、主像点は、LCOS902全体が寄与していることが分かる。
【0208】
開口904(すなわち、観察者の瞳孔)は、
図9A~
図9C及び
図10A~
図10Cの例では比較的広く、LCOS902全体が主像点に寄与する理由を説明する。言い換えれば、この例では、観察システムのF値は比較的低い。
図10A~
図10Cは、LCOS902の一部が一方又は他のゴースト像G1、G2にも寄与するが、ゴースト像G1、G2にも寄与しないが、主像点Mにのみ寄与するLCOS902の領域があることを示している。本発明者らは、この領域が、この例のLCOS902の場合、寄与領域として識別され得ること、より具体的には、後続の図の説明から更に理解されるように、「一次寄与領域」として識別され得ることを認識した。したがって、この場合、一次寄与領域は円又は楕円に限定されず、他のより複雑な形状をとることができることが分かる。
【0209】
図11A~
図11Cは、入口開口が比較的小さい(すなわち、F値が比較的高い)場合の虚像の異なる点についての対応する光線図を示す。
図11Aは、虚像の第1の視野点(すなわち、第1虚像点)に関し、
図11Bは、虚像の第2の視野点に関し、
図11Cは、虚像の第3の視野点に関する。
図11A~
図11Cは、LCOS902の全てが主像点に寄与するわけではないことを示している。実際、
図11A~
図11Cは、LCOSの第1の領域が主像点(本明細書では「一次寄与領域」と呼ぶ)に対応し、LCOSの第2の領域がゴースト像点(本明細書では「二次寄与領域」と呼ぶ)に対応することを示している。
【0210】
本発明者らは、特定の条件下では、LCOS902の異なるそれぞれの領域(又は他の表示デバイス、観察システム)が主画像又はゴースト像のいずれかに寄与するか、又は画像の可視部分に寄与しないことを認識した。本発明者らは、この情報を使用してホログラム決定プロセスを最適化できることを更に認識している。例えば、表示デバイスの特定の部分からの光は省略されてもよく、又は場合によっては、表示デバイスのそれらの部分がホログラムによって符号化される方法は、ゴースト像に寄与するのではなく、主画像に積極的に寄与するように変更されてもよい。更に、表示デバイスの追加の領域が識別されてもよく、これは主画像に積極的に寄与するように構成されてもよい。
【0211】
本発明者らによってなされた認識は、一例として点群ホログラムに関連して以下ですぐに説明される。しかしながら、これらは、本開示の後の図に関連して詳述されるように、フーリエ又はフレネルホログラムなどの他のタイプのホログラムに適用されてもよい。すなわち、本開示に記載されるように、本発明者らによってなされた認識に従って、他のホログラム計算方法を最適化することができる。
【0212】
よく理解されるように、通常、画像(虚像など)の点群ホログラムの計算のために、画像は、虚像の形成を説明するので、本明細書では「仮想点」と呼ばれる複数の個々の点に分解される(すなわち、複数の個々の点によって表される)。次いで、球面波(又は「ウェーブレット」)が、各仮想点から、仮想画像内のその意図された又は所望の位置で、前述の例ではLCOSの平面などの表示デバイスの平面に、計算的に、すなわちモデル又は他の理論ツールを使用して伝搬される。そのようなウェーブレットが互いに干渉する方法が考慮され、表示デバイスの各ピクセルで受信されるであろうウェーブレットの結果として生じる振幅及び/又は位相が計算される。次いで、表示デバイスは、計算されたウェーブレットを模倣し、したがって画像のホログラムを作成するために、各ピクセル位置で必要とされる振幅及び/又は位相変調を示すように、本明細書では説明しない周知の方法で調整することができる。
【0213】
本発明者らは、本明細書に記載の導波路及び大きな視距離を有する観察システムでは、表示デバイス全体に全ての仮想点の対応するウェーブレットの正味の振幅及び位相が入力される場合、作成されるホログラムは、表示及び照射されると、1つ以上のゴースト像並びに主画像を生成することができることを認識した。特に、これは、観察システムが、観察者から有限の距離で虚像が知覚されるように構成されているときに起こり得る。更に、多くの場合、デバイスの幾つかの部分のピクセルから放射された光線は、無駄になる(すなわち、それらは、観察者が見たり知覚したりする画像に寄与しない)。これは、観察システムの物理的制約(小さな開口及び/又は小さな表示デバイス及び/又は大きな投影距離など)が、デバイスのこれらの部分からの光が観察者の眼に入らないようにするためである。したがって、本発明者らは、表示デバイスのどの部分がホログラムを提供するように調整されているかに関して、インテリジェントな選択が適用され得ることを認識した。具体的には、主画像に寄与するLCOSの部分(又は、部分、又は、領域)のみが選択され、ウェーブレットが意図された仮想画像の仮想点からのみ、LCOSのそれらの部分に計算的に伝搬され、主画像に寄与しないLCOSの他の部分には伝搬されない場合、表示デバイスの選択された領域内の各ピクセルで受け取られるであろうウェーブレットの結果として生じる振幅及び/又は位相を計算することができる。表示デバイスの他の部分については計算は不要である。
【0214】
次いで、表示デバイスは、改善された計算に従って、計算されたウェーブレットを模倣し、したがって主画像のホログラムを作成するために、選択された部分(複数可)内の各ピクセル位置で必要とされる振幅及び位相変調を示すように調整することができる。これが行われるとき、LCOSの他の部分を調整する必要はなく、したがって、計算されたホログラムが表示デバイスに表示され、照明されるとき、画像情報はそれらの他の部分から観察者の眼(又は他の観察エンティティ)に伝搬しない。したがって、観察者が利用できる情報はなく、望ましくない「ゴースト」像点を形成する可能性がある。結果として、ゴーストは排除又は「クエンチ」される。更に、所与のセットの条件(例えば、特定の開口幅及び眼の位置)に対して、観察者の瞳孔(又は、対応する他の視聴エンティティの開口を介して)を通って入ることになる光を提供することが知られている表示デバイスのピクセルのみが調整されるので、計算又は画像情報は無駄にならない。
【0215】
図12Aは、例示的な仮想点1201を含む仮想画像を形成するシステム1200を示す。観察システム1200は、この例ではLCOS SLMである表示デバイス1202を備え、本開示に従って識別された寄与領域1203及び非寄与領域1207を備える。表示デバイス1202は、虚像のホログラムを表示し、ホログラムに従って符号化された光を、開口として作用する瞳孔(図示せず)、レンズ1209、及び観察面として作用する網膜1206を含む眼1205に向けて投射するように構成される。レンズ1209と網膜とは、分離距離「A」だけ分離されている。表示デバイス1202を照明するように構成される光源(図示せず)がある。観察システム1200は、LCOS1202と眼1205との間に位置された導波路1208を更に備える。この画像は概略的であり、したがって眼の生理学的詳細は示されていない。
【0216】
仮想点1201は、表示デバイス1202の上流に位置し、
図12Aでは、仮想点1201が表示デバイス1202の左側にあることによって示されている。仮想点1201は、この例ではデカルト(x、y、z)座標を含む空間座標によって定義された位置を有するが、他の座標系又は仮想点の位置を識別する他の手段を使用することができる。距離「z」は、表示デバイス1202の光軸に実質的に平行な方向において、仮想点1201と表示デバイス1202との間に規定される。表示デバイス1201とアイレンズ1209との間には、表示デバイス1201の光軸に実質的に平行な方向に規定されたディスプレイ-レンズ間距離「l」もある。「z」と「l」の両方の数値は、観察者の位置を含む所与の時間における観察システム1200の特定の配置に応じて変化する。例えば、ディスプレイ-レンズ間距離「l」は約1メートル程度であってもよく、ディスプレイ-画像間距離「z」はより大きくてもよく、例えば数メートル程度であってもよい。しかし、これらの数値例は純粋に例示的なものであり、限定的であると見なされるべきではない。
【0217】
本発明者らは、虚像点1201を含む虚像が
図12に示す位置で観察者によって知覚される場合、対応する像点1211が網膜1206上に形成されなければならないことを認識した。光線は、LCOS1202を介して、虚像の仮想点1201から網膜1211上の対応する点1211まで追跡することができる。
【0218】
導波路1208によって作成/生成された可能な経路のために、LCOS1202を介して、網膜上の仮想点1201とその対応する点1211との間で、複数の可能な光路をとることができることが理解され得る。実施形態によれば、虚像点1201と対応する点1211との間の、観察面(すなわち、網膜1206)上の複数の光線経路の中の光線経路を含む主光線を決定することができる。この主光線経路が特定されると、導波路内で主光線の光が受ける跳ね返り数が決定される。その跳ね返り数(B)は、虚像と観察面との間で光線を追跡すべき跳ね返り数として設定することができる。実施形態によれば、主光線及び関連する跳ね返り数(B)は、最初のステップとして識別することができる。
【0219】
本例では、レイトレースは、その虚像点1201の「寄与領域」1203を識別するために、網膜上の対応する点1211と虚像点1201との間の、「主光線」光が通過するLCOS1202の部分を判定することができる。したがって、
図12の表示デバイス1202の虚像点1201と寄与領域1203との間を伝搬するように描かれた光線「r」が存在する。本発明者らによる認識に従って、LCOSの寄与領域に寄与するウェーブレットのみを、虚像点1201及び表示デバイス1202からモデル化する(又は他の方法で計算的に考慮する)必要がある。言い換えれば、適切なホログラムを生成するために、表示デバイス1202の識別された寄与領域1203のみが符号化される(又は「調整される」)必要がある。このようなホログラムは、表示デバイス上で符号化され、適切に照明されると、その仮想点1201のゴースト像も存在することなく、観察者がその虚像点1201を知覚することを可能にする。これは、以下に説明する
図13及び
図14から更に理解することができる。
【0220】
図12Bの寄与領域1203、並びに以下の
図13及び
図14に関連して説明する寄与領域は、主光線と表示デバイスとの交差に従って配置することができる。例えば、寄与領域は、主光線が表示デバイスと交差する点を中心にしてもよい。寄与領域は、対応する視覚エンティティの入口開口及び関連する光学系のサイズ及び形状(例えば、導波路幾何学的形状、より大きな光学系内の任意の反射など)に基づいてサイズ及び形状が決められてもよい。したがって、視聴エンティティが人間の眼である場合、表示デバイス上の寄与領域は、場合によっては、実質的に円形、又は楕円形、形状、又は複雑な形状など、受信瞳と同様のサイズの任意の他の適切な形状を含むことができる。しかしながら、本開示は、寄与領域のより複雑な形状を包含する。瞳孔径は、任意の適切な方法で測定又は推定することができる。例えば、眼の瞳孔径の測定は、視標追跡システムによって行われてもよい。或いは、瞳孔径は、眼の瞳孔径の既知の範囲(例えば2~6mm)に基づいて、又は所与の時間における周囲光条件を考慮した別の推定値に基づいて推定されてもよい。
【0221】
寄与領域は、意図的に瞳孔よりもわずかに大きい領域(開口面上)に寄与するように、及び/又は瞳孔(又は他の開口)に対してわずかに異なる形状の領域(開口面上)に寄与するように設定されてもよい。そのような場合、「寄与領域」からの全ての光が常に瞳孔を通過するわけではないが、網膜上に良好な画像を形成するのに十分な光を依然として収集しながら、眼は少し動き回ることができる。
【0222】
図13は、本開示の一態様による、表示デバイスの寄与領域及び非寄与領域を決定するための方法を示す。任意選択で、これらの決定を使用して、
図12のシステム1200などの観察システムによる表示及び照明のための1つ以上のホログラムの生成を最適化することができる。
図13を参照して説明した方法では、観察システムは、(すなわち、焦点距離及び開口)の数を有するレンズと、カメラとを備える。カメラの感光性構成要素は、例えば、CCDアレイであってもよく、観察面上に配置される。機能的には、レンズ及びカメラは、観察者の人間の眼の眼のレンズ及び網膜を置換し、表示デバイスの寄与領域及び非寄与領域を決定するプロセスにのみ使用される。表示デバイスのこれらの領域は、複数の観察位置(例えば、眼球運動ボックス内の眼の位置)及び/又は複数の画像距離(例えば、車両の前方の虚像距離)に対して決定されてもよい。幾つかの点で、
図13を参照して開示された方法は、ホログラム計算の前駆体と考えることができる。この方法は、最適化又は更には較正プロセスと考えることができる。
【0223】
よく理解されるように、生成される各虚像は、例えば(x、y、z)座標によって定義されるように、それぞれが対応する位置を有する1つ以上の虚像点によって表すことができる。
図13の方法1300のステップ1 1302からステップ6 1312(詳細は後述)は、作成される仮想画像内の各仮想像点に別々に適用することができる。更に、方法1300は、観察システムの特定の条件セット、すなわち特定の測定値及び制約条件に適用する。したがって、方法1300の任意の所与の反復(又は、「走行」)は、作成されるべき特定の画像(虚像点による虚像点)を構築するために適用され、システムが特定のディスプレイ対画像間距離「z」、表示デバイスと網膜との間の特定の距離「d」、特定の開口(瞳孔)幅、及び眼が合焦される特定の虚像距離を有する場合に適用される。方法1300の反復はまた、許可された観察ウィンドウを用いて、表示デバイスの特定のサイズ及び種類、並びに眼の特定の位置にも固有である。方法の各反復が特定される他の測定値及び/又は制約が存在してもよい。実施形態によれば、それらの測定値又は制約のいずれかが変化した場合、方法1300を再実行して、変化した状況下で表示デバイスの寄与領域を再判定することができる。しかしながら、実施形態によれば、それらの測定値又は制約のうちの1つ以上に特定の許容誤差を適用することができ、それらが所定の量未満及び/又は所定の時間長未満だけ変化する場合に方法を再実行する必要がないことが理解され得る。方法がいつ再反復されるべきかに関する規則は、システムごとに決定されてもよい。
【0224】
方法1300は、適切なプロセッサによって実行されてもよい。プロセッサは、ホログラムエンジンを含むか、ホログラムエンジン内に含まれるか、ホログラムエンジンと通信することができる。プロセッサ又はホログラムエンジンは、光エンジン内に含まれてもよい。
【0225】
プロセッサは、方法1300が実行される前に、観察システムに関する境界情報を取得又は受信することができる。例えば、プロセッサは、表示デバイスなどの構成要素のサイズに関する情報、様々な構成要素及び観察システム(例えば、潜在的な人間の観察者)の絶対及び/又は相対位置に関する情報、光源に関する情報などを取得又は受信することができる。
【0226】
方法1300によれば、第1のステップ1302において、虚像点の位置、例えば座標[xvirtual、yvirtual、zvirtual](本明細書では、略して「仮想点」とも呼ばれる)が、虚像が知覚されるべき位置に従って取得される。次いで、レンズ1209と仮想点との間の虚像距離が取得又は決定される。この虚像距離は、方法1300を実行しているプロセッサによって設定又は決定されてもよく、又は別のエンティティによって設定又は決定され、そのプロセッサに通信されてもよい。これは、幾つかの構成では、予め設定されるか、又は複数の可能な虚像距離から選択されてもよい。現実世界の動作では、観察システムが眼である場合、アイトラッキング又はヘッドトラッキング情報を虚像距離の決定に使用することができる。
【0227】
第2のステップ1304において、レンズとセンサとの間の必要な距離「A」が、虚像点に焦点を合わせるために決定される。各虚像点は、角度によって定義することもできる(
図4参照)。本明細書では、「角度コンテンツ」は、虚像の虚像点に対して参照される。
【0228】
第3のステップ1306では、観察システムによって形成された主画像又は一次像に関連する導波路内の光の反射又は跳ね返りの回数「B」が決定される。光学分野の当業者であれば分かるように、導波路が虚像点に関連付けられた光の複数の複製を生成し、各複製が導波路内の異なる数の光の跳ね返り/反射に関連付けられ得る。単なる例として、Bを決定する1つの方法は、導波路内の可能な光伝搬経路ごとに主光線と表示デバイスとの交差を決定し、主光線を表示デバイスの中心に最も近くする反射/跳ね返りの数を選択することである。好適には、この手法は、観察システムに寄与する表示デバイスの面積が最大であるようなものである。
【0229】
或いは、第3のステップ1306で使用する跳ね返り数を計算する別の方法は、以下のサブステップ1から5を含む。
【0230】
1.入力として知られ、使用される眼の位置
2.第1の数の跳ね返り(B)についての表示デバイスの中心から決定された眼の位置までのレイトレース。虚像に向かうその光線の外挿は、この数の跳ね返り(B)についての視野(θ
B)内の角度を規定する。
3.第2の数の跳ね返りB+1について、表示デバイスの中心から決定された眼の位置までのレイトレース。仮想画像に向かうその光線の外挿は、この数の跳ね返り(B+1)の視野内の角度(θ
B+1)を規定する。
4.Bは、θ
Bとθ
B+(θ
B+1-θ
B)/2との間の角度成分に使用される跳ね返りの数である
5.B+1は、θ
B+(θ
B+1-θ
B)/2とθ
Bとの間の角度成分に使用される跳ね返りの数である。
第1のステップ1302(すなわち、虚像点の座標)及び第3のステップ1306(パラメータ、B)からの出力は、センサ上の対応する画像位置/点[x
sensor、y
sensor、z
sensor]を決定するために第4のステップ1308で使用される。すなわち、第4のステップ1308は、センサ上で虚像点の光を受光する点を決定する。換言すれば、虚像点が結像されるセンサ上の点である。センサ上のこの点は、
図14に関連して、主像点[x
sensor、y
sensor、z
sensor]として以下で参照される。単なる例として、導波路内のB個の跳ね返りについての仮想点からセンサまでの計算レイトレースを使用することができるが、本開示は第4のステップへのこの手法に限定されない。
【0231】
当業者は、仮想点[xvirtual、yvirtual、zvirtual]からセンサ上の点[xsensor、ysensor、zsensor]までの主光線(又は単に主光線)が識別され得ることを理解するであろう。ここでも、計算レイトレースを使用して主光線を識別又は追跡することができるが、他の方法も同様に適用可能である。第5のステップ1310において、表示デバイス交点[xLCOS(B)、yLCOS(B)、zLCOS(B)]が識別され、表示デバイス交点は、主光線が表示デバイスと交差する表示デバイス上の位置である。表示デバイスの交点は、例えば計算レイトレースによって決定、計算、又は測定することができる。
【0232】
第6のステップ1312では、表示デバイス交点[xLCOS(B)、yLCOS(B)、zLCOS(B)]に関連付けられた表示デバイスの領域が識別される。表示デバイスの領域は、この点[xLCOS(B)、yLCOS(B)、zLCOS(B)]を幾何学的に中心とすることができる。例えば、領域は円又は楕円であってもよいが、他のより複雑な形状が想定されてもよい。領域が円又は楕円などの規則的な形状である場合、領域の半径は、例えば、観察システムのレンズのF値に従って決定され得る。領域は、観察システムによって形成された一次像に対応するため、本明細書では「一次寄与領域」と呼ばれる。「寄与」という単語は、表示デバイスの識別された領域内の表示デバイスのピクセルが、必要な情報コンテンツをセンサに提供するピクセルであることを反映する。表示デバイスの他の領域(すなわち、表示デバイスの他のピクセル)は、センサ上の像点の形成に寄与しない。他のピクセルは、当然ながら、他の仮想像点に関連するセンサ上の他の像点に寄与してもよい。
【0233】
本開示の主要な態様による方法は、表示デバイスの一次寄与領域の決定によって終了する。任意選択的に、ホログラムは、表示デバイスの全領域ではなく、一次寄与領域に基づいて決定されてもよい。
【0234】
したがって、任意選択の第7のステップ1314では、仮想点に基づいて一次寄与領域についてホログラム成分が決定される。具体的には、一次寄与領域の光パラメータが決定される。光パラメータは、一次寄与領域の各ピクセルの振幅及び/又は位相であってもよい。例えば、当業者によく知られている点群法を使用して、仮想点から一次寄与領域への光の伝搬に基づいて、一次寄与領域内の各ピクセルについて光の振幅及び位相を決定することができる。虚像全体の完全なホログラムを構築するために、以下の段落で説明する反復プロセスの一部として、仮想点のホログラム成分を記憶し、他の仮想点のホログラム成分と組み合わせることができる。
【0235】
概要として、第7のステップ1314では、一次寄与領域内の表示デバイスの各ピクセル値に光変調値(例えば、振幅及び/又は位相の値)が割り当てられる。これは、[xvirtual、yvirtual、zvirtual]から一次寄与領域への光波の伝搬を考慮し、[xLCOS(B)、yLCOS(B)、zLCOS(B)]の所望の半径内の表示デバイスのピクセルに振幅及び/又は位相を加算することによって達成される。すなわち、虚像点から発して一次寄与領域の各点(すなわち、ピクセル)に到達する光の振幅及び/又は位相は、光波の伝搬、すなわち、虚像点から各ピクセルまでの距離を進んだ後の光波の振幅及び/又は位相を考慮して決定される。この決定は、光学分野の当業者に知られている幾つかの異なる技術のいずれか1つによって実行され得る。この決定は、実験的測定によって行うことができる。
【0236】
第1~第7のステップは、ホログラムを用いて投影される虚像内の各仮想点について繰り返されてもよい。例えば、複数のホログラム要素を一緒に加算して、表示デバイスの各ピクセルについて結果として得られるホログラムを生成することができる。例えば、複素振幅は、全ての虚像点からの伝搬のために各ピクセルで加算されてもよい。ホログラムが位相限定変調器に表示される場合、結果として得られる複素振幅和の振幅成分は無視され、位相のみが残る。より広義には、この結果は、観察システム内の表示デバイス上に表示及び照明されると虚像を形成する虚像に対応する回折構造である。
【0237】
ホログラムは、表示デバイスに表示又は符号化することができる。結果として、表示デバイスは、必要な虚像距離で虚像が観察者によって知覚されることを可能にするように光を変調するように調整される。
【0238】
方法1300は、虚像内の複数の仮想点のそれぞれに対して実質的に同時に(又は非常に迅速に連続して)実行することができ、その結果、虚像全体に適したホログラムを導出し、所与の表示設定、並びに特定の数値測定及び制約条件に対して、表示デバイスに非常に迅速に符号化することができる。寄与領域の識別、及び/又は表示デバイスの必要な調整に影響を及ぼし得るものが変化した場合、方法を再実行することができる。プロセッサは、時間制御されたループ上で、及び/又は変化が発生したことを示す信号に応答して、及び/又は必要な仮想画像のコンテンツ又はアイデンティティが変化したときに方法を再実行するように構成され得る。プロセッサは、以前に計算されたデータを記憶するためのメモリを含むことができ、又はメモリと通信することができる。例えば、特定のセットの測定値及び/又は制約の下で、特定の虚像又は仮想点についての表示デバイスの活性領域を示すルックアップテーブル又は他の記憶手段を設けることができる。
【0239】
方法1300は、幾つかの異なる虚像を迅速に連続して表示するために、及び/又はユーザの動きなどの状態の変化に正確に応答するために、非常に迅速に実行(又は再実行)することができる。
図12のシステムには片眼のみが示されているが、方法1300は、観察者の両眼及び/又は2つ以上の入口開口を有する別の観察システムを考慮するように構成することができる。更に、上記の説明の幾つかは開口幅に言及している場合があるが、瞳孔(及びエンティティを見るためのほとんどの他の開口)は二次元であり、それらの二次元のそれぞれにおいてサイズを変更することができることが理解され得る。方法1300は、二次元開口サイズ、及びそれに対する変更を考慮に入れるように構成され得る。
【0240】
本発明者らは、
図13を参照して開示された方法を使用して、虚像のホログラムを効率的に決定できることを見出した。しかしながら、本発明者らは、場合によっては、ゴースト像を形成する光を従来通り伝搬するLCOSの全ての領域が使用されなかった場合、LCOSの比較的小さな部分のみが利用されていることも観察した。注目すべき更なる技術的進歩において、本発明者らは、一次寄与領域に加えて、LCOSの追加領域を使用し、望ましくないゴースト像を形成するのではなく、一次像を強化するために光を寄与させることができるこれらの追加領域のホログラム値を計算する方法を見出した。
【0241】
よく理解されるように、光線が観察システム内の導波路を通過する光路は、それぞれの他の光線の経路長に対してその経路長を増加させることができる。通常、このような増加は、虚像距離「v」と比較して小さい可能性が高いため、眼には見えない。
【0242】
図14は、
図12のシステム1200などのシステムに適用することができる、本発明者らによってなされた追加の認識による、更に改良された方法1400を示す。
図14の方法1400は、
図13の方法1300の全てのステップを含み、更に、仮想点に対応するゴースト像点のうちの1つ以上の処理を含み、仮想点はまた存在してもよく、従来はこれにより、仮想画像の1つ以上のゴースト像の知覚がもたらされる。
【0243】
方法1400は、適切なプロセッサによって実行されてもよい。プロセッサは、ホログラムエンジンを含むか、ホログラムエンジン内に含まれるか、ホログラムエンジンと通信することができる。プロセッサ又はホログラムエンジンは、光エンジン内に含まれてもよい。
【0244】
プロセッサは、方法が実行される前にシステムに関する境界情報を取得又は受信することができる。例えば、プロセッサは、表示デバイスなどの構成要素のサイズに関する情報、様々な構成要素及び観察者の絶対及び/又は相対位置に関する情報、光源に関する情報などを取得又は受信することができる。
【0245】
場合によっては、本発明者らは、ゴースト像点が、主画像の主光線が通過する「一次寄与領域」とは異なる表示デバイスの一部を通過する対応する仮想点からの光に起因して生じることを見出した。本明細書の前述の図では、表示デバイスのそのような部分は、「二次寄与領域」と呼ばれる。1つ以上のゴースト像点を生成する光は、1つ以上の「ゴースト光線」を含むと呼ばれることがある。ゴースト像を生じさせる光線は、観察者の眼の狭い瞳孔を通って移動し、網膜と一致するために、導波路内で主画像に対応するものとは異なる数の跳ね返りを受けることができる。したがって、主画像に対応する主光線が導波路内で「B」個の跳ね返りを受けると判定された場合、ゴースト像に対応する光は「B+ΔB」個の跳ね返りを受けると判定することができ、ΔBは、負又は正の整数、通常は例えば-5から+5の範囲の一桁の数であり得る。
【0246】
図14の改良された方法1400によれば、観視平面上の主像点の位置、例えば、その座標(x
sensor、y
sensor、z
sensor)が確立される、
図13の方法1300の第4のステップ1308の後、
図13の方法13の後続のステップは継続することができ、更に、例えば、並行して、又は後に、以下のように、ΔBの少なくとも1つの値に対して更なるステップのセットを実行することができる。要約すると、
図14の改善された方法1400は、仮想点の座標[x
virtual、y
virtual、z
virtual]から、観察面にゴースト像点を形成するために、ゴースト光線が何回跳ね返ったかを判定する。次に、改善された方法1400は、別個のゴースト像点を形成するのではなく、そこから光が進行し、導波路内で「B+ΔB」個の跳ね返りを受け、観察面上の主像点に到達することができる仮想点の並進(又は、修正)位置を決定する。次いで、仮想点の並進位置から主像点に光線が進むLCOS上の位置を識別することができ、したがってホログラムで符号化することができる。したがって、LCOSの1つ以上の追加の領域(一次寄与領域以外)は、ゴースト像の生成を依然として回避しながら、主画像に寄与するためにホログラム値で符号化することができる。
【0247】
より詳細には、改善された方法1400は以下の通りである。
【0248】
第1の更なるステップ1402では、主像点(xsensor、ysensor、zsensor)からの光線は、虚像にトレースバックされるが、「B+ΔB」個の跳ね返り/反射を受ける光線については、導波路内で(B個の跳ね返りではなく)。
【0249】
第2の更なるステップ1404において、光が「B+ΔB」個の跳ね返りを受けた場合、主像点[xsensor、ysensor、zsensor]に結像する、すなわち、表示デバイス、導波路、及び入口開口を通って移動して位置[xsensor、ysensor、zsensor]における観察面と一致する光を伝搬する、虚像の二次仮想点の位置、例えば座標[xvirtual(ΔB)、yvirtual(ΔB)、zvirtual(ΔB)]が決定される(例えば、最初の更なるステップ1402で実行されたレイトレースの結果として)。「二次仮想点」という用語は、本明細書では、(一次)仮想点の二次(すなわち、変位された、又は修正された)位置の省略表現として使用される。すなわち、本発明者らは、仮想点の位置が「二次仮想点」位置[xvirtual(ΔB)、yvirtual(ΔB)、zvirtual(ΔB)]にシフトされた場合、導波路で「B+ΔB」個の跳ね返り/反射を受けた「二次仮想点」からの光が、観察面で主画像に寄与することを認識した。
【0250】
要約すると、第三の更なるステップ1406は、導波路内のB+ΔB個の跳ね返りについて、[xvirtual(ΔB)、yvirtual(ΔB)、zvirtual]から観察面への光伝搬について表示デバイスにおける主光線の座標[xLCOS(B+ΔB)、yLCOS(B+ΔB)、zLCOS]を決定することを含む。場合によっては、zvirtualは、導波路を通る異なる経路長を考慮に入れるように調整されてもよい(すなわち、跳ね返りの数が異なるため)。この主光線は、「二次主光線」と呼ばれることがある。
【0251】
より詳細には、第3の更なるステップ1406において、二次仮想点から主像点[xsensor、ysensor、zsensor]への「二次主光線」が進行するであろう表示デバイス上の点が識別され、この点を介して導波路内でB+ΔB個の跳ね返りを受ける。表示デバイス上のこの点は、座標[xLCOS(B+ΔB)、yLCOS(B+ΔB)、zLCOS]を有する。
【0252】
第4の追加ステップ1408では、点[xLCOS(B+ΔB)、yLCOS(B+ΔB)、zLCOS]に、それに関連する領域の範囲又はサイズの半径又は他の適切な指標が割り当てられる。点[xLCOS(B+ΔB)、yLCOS(B+ΔB)、zLCOS]に関連する領域は、本明細書では「追加の寄与領域」と呼ばれ、これは、それが観察面で主像点に寄与する光を伝搬するが、その光が(一次)仮想点の変位された、又は修正された位置、すなわち、第2の更なるステップ1404で決定された[xvirtual、yvirtual、zvirtual]ではない[xvirtual(ΔB)、yvirtual(ΔB)、zvirtual]から生じる場合にのみである。
【0253】
第4の更なるステップ1408は、第6のステップ1312と同様である。具体的には、第4の更なるステップ1408は、表示デバイス交点[xLCOS(B+ΔB)、yLCOS(B+ΔB)、zLCOS(B)]に関連付けられた表示デバイスの領域を識別することを含む。表示デバイスの領域は、この点[xLCOS(B+ΔB)、yLCOS(B+ΔB)、zLCOS(B)]を幾何学的に中心とすることができる。例えば、領域は円又は楕円であってもよいが、他のより複雑な形状が想定されてもよい。領域が円又は楕円などの規則的な形状である場合、領域の半径は、例えば、観察システムのレンズのF値に従って決定され得る。この領域は、適切なホログラムが(一次)仮想点の変位又は修正された位置に基づいて計算される場合、虚像に寄与する光を伝搬するので、本明細書では「追加の寄与領域」と呼ばれる。
【0254】
第5の更なるステップ1410は、第7のステップ1314と同様である。第5の更なるステップ1410は任意選択である。第5の更なるステップ1410では、(一次)仮想点[xvirtual(ΔB)、yvirtual(ΔB)、zvirtual]の修正された位置に基づいて、追加の寄与領域についてホログラム成分が決定される。具体的には、追加の寄与領域の光パラメータが決定される。光パラメータは、追加の寄与領域の各ピクセルの振幅及び/又は位相であってもよい。例えば、光の振幅及び位相は、当業者によく知られている点群法を使用して、異なる仮想点[xvirtual(ΔB)、yvirtual(ΔB)、zvirtual]から追加の寄与領域への光の伝搬に基づいて、追加の寄与領域内の各ピクセルについて決定され得る。異なる仮想点のホログラム成分[xvirtual(ΔB)、yvirtual(ΔB)、zvirtual]は、記憶され、虚像全体の完全なホログラムを構築するために、以下の段落で説明する反復の一部として他の仮想点のホログラム成分と組み合わされてもよい。
【0255】
単一の個々の仮想点に関連して出力される、表示デバイスによるこの必要な光変調は、その仮想点の「ホログラム部品」と呼ばれることがある。ホログラム部品は、作成される仮想画像内の1つ以上の他の仮想点に対する方法1300のその後の繰り返しの間に、プロセッサによって記憶されてもよい。
【0256】
図14の更に改善された方法1400のステップ1402~1410は、
図13の方法1300のステップ1 1302~ステップ7 1314と共に、作成される仮想画像内の各仮想点に対して繰り返されてもよい。各仮想点についての変調挙動及び対応するホログラム成分が決定されると、ホログラム成分を一緒に加算して、表示デバイスの各ピクセルについて結果として生じる変調挙動を生成することができる。この結果として生じる変調挙動は、虚像の回折構造、すなわちホログラムを表し、これは、観察システム内の表示デバイスに表示及び照射されると、主画像のみが形成され、ゴースト像を形成しない。
図14の改良された方法1400が実行された結果として形成される主画像は、
図13の方法1300のみから生じる対応する主画像よりも明るくてもよい。
【0257】
プロセッサは、任意の適切な方法でホログラムに対応するデータを出力することができる。ホログラムは、表示デバイスに符号化することができる。結果として、表示デバイスは、ゴースト像を形成することなく、必要な虚像距離で虚像が観察者によって知覚されることを可能にするように光を変調するように調整される。
【0258】
方法1400は、虚像内の複数の仮想点のそれぞれに対して実質的に同時に(又は非常に迅速に連続して)実行することができ、その結果、虚像全体に適したホログラムを導出し、所与の表示設定、並びに特定の数値測定及び制約条件に対して、表示デバイスに非常に迅速に符号化することができる。表示デバイスの識別及び/又は必要な調整に影響を及ぼし得るものが変化した場合、本方法を再実行することができる。プロセッサは、時間制御されたループ上で、及び/又は変化が発生したことを示す信号に応答して、及び/又は必要な仮想画像のコンテンツ又はアイデンティティが変化したときに方法を再実行するように構成され得る。プロセッサは、以前に計算されたデータを記憶するためのメモリを含むことができ、又はメモリと通信することができる。例えば、特定のセットの測定値及び/又は制約の下で、特定の虚像又は仮想点についての表示デバイスの活性領域を示すルックアップテーブル又は他の記憶手段を設けることができる。
方法1400は、幾つかの異なる虚像を迅速に連続して表示するために、及び/又はユーザの動きなどの状態の変化に正確に応答するために、非常に迅速に実行(又は再実行)することができる。
図12のシステムには片眼のみが示されているが、方法1400は、観察者の両眼を考慮するように構成することができる。更に、上記の説明の幾つかは開口幅に言及している場合があるが、瞳孔(及びエンティティを見るためのほとんどの他の開口)は二次元であり、それらの二次元のそれぞれにおいてサイズを変更することができることが理解され得る。方法1400は、二次元開口サイズ、及びそれに対する変更を考慮に入れるように構成され得る。
【0259】
ホログラム計算-例2
【0260】
上記の
図13及び
図14の方法は点群ホログラム計算方法を含むが、本発明者らによって行われた認識は、フレネル及びフーリエホログラム計算方法を含む任意の適切な方法によるホログラム計算にまで及ぶ。換言すれば、本発明者らは、ホログラムが、多くの異なる可能な方法のうちの1つで計算され、観察者から比較的大きい距離に配置された比較的小さい表示デバイスに表示され、観察者がゴースト像なしに表示デバイスの上流の有限距離で虚像を見るために、表示デバイスと観察者との間に適切に配置された導波路を有することを認識した。更に、これは、中間ホログラフィック再構成を形成することなく、ホログラムの光を観察者の眼に直接投影することによって行うことができる。
【0261】
本発明者らは、
図15に示される光学系のホログラムを計算する方法を考えた。重要なのは、表示デバイスが比較的小さく、投影距離が比較的長いことである。ホログラムは観察システムに直接投影され、方法はリアルタイムで実施することができる。上記の
図6A以下に示す構成と同様に、表示デバイスの比較的小さいサイズ及び比較的長い投射距離は、瞳孔拡張器を必要とする。本方法は、瞳孔拡張器を通る異なる経路に対処し、観察システムの入口開口のサイズ及び形状を考慮する。更に、方法は、例えば1つのホログラムを使用して、観察システムから異なる距離及び/又は複数の距離で、任意選択的に同時に画像コンテンツを表示することを可能にする。方法は、画像コンテンツが例えば1つのホログラムを使用して表示デバイスの下流側及び表示デバイスの上流側に任意選択的に、同時に出現できるようにする。
【0262】
図15は、画像のホログラムを表示するように動作可能な空間光変調器1501を示す。この実施形態では、空間光変調器1501は、受けた光の位相をモジュール化するように構成される液晶オンシリコンデバイスである。空間光変調器1501は、図示しない光源からの少なくとも部分的にコヒーレントな光によって照明される。光源は、レーザダイオードであってもよい。空間光変調器1501は、表示ホログラムにしたがって空間的に変調された光を出力する。
図15は、一例として、空間的に変調された光の一方の光線1502を示す。典型的には、空間光変調器1501によって出力される複数の空間的に変調された光が存在することが理解され得る。空間的に変調された光は、瞳孔拡張器1503によって受けられる。瞳孔拡張器1503は、表示デバイス1501の平面に対して傾斜している。したがって、瞳孔拡張器1503は、非垂直入射で光を受ける。入射角(光軸が瞳孔拡張器と成す角度)は、25度未満、例えば10度~20度であってもよい。瞳孔拡張器は、空間的に変調された光を受ける入力面1503aと、出力面703bとを備える。入力面1503a及び出力面1503bは、実質的に平行であり、瞳孔拡張の方向で長尺である。入力面1503aは、少なくとも実質的に完全に反射する(例えば、R=1)部分を備える。出力面1503bは、少なくとも高反射性であるが部分的に透過性である(例えば、R=0.9及びT=0.1)部分を備える。反射面は、
図6Aの導波路608を参照して前述したように、空間的に変調された光がそれらの間で前後に跳ね返りして光が出力面1503bに沿った複数の点で放射されるように構成される。この実施形態では、瞳孔拡張器は実質的に長尺である。瞳孔拡張器は、一方向、すなわち長尺な方向に瞳孔拡張をもたらすが、本開示は、瞳孔を直交方向に拡張するように構成される第2の瞳孔拡張器の存在を含むように拡張されてもよい。
【0263】
図15は、光線1502がどのように2回効果的に複製されて、それぞれが異なるそれぞれの距離Z
0、Z
1及びZ
2に関連付けられた3つの伝搬経路1505を形成するかを示す。最短伝搬経路は、Z
0に対応し、この例では、内部反射を何ら伴うことなく導波路を通過した光に対応する。示されている3つの中距離伝搬経路は、瞳孔拡張器におけるZ
1及び2つの内部反射(各表面に1つずつ)に対応する。示されている最長伝搬経路は、瞳孔拡張器におけるZ
2及び4つの内部反射(各表面に2つ)に対応する。平面x
0、x
1、及びx
2は、それぞれ3つの伝搬経路Z
0、Z
1、及びZ
2のそれぞれに関連する光照射野の空間的範囲を示す。より具体的には、
図15は、3つの平面x
0、x
1、及びx
2がx方向に互いにどのようにオフセットされているかを示す。
【0264】
図15は、入射瞳1507、レンズ1509、及び光センサ1511を備える観察システム1513を更に示す。実施形態では、観察システム1513は人の眼であり、光センサ1511は眼の網膜である。
図15は、各伝搬経路に関連する光照射野の一部のみがどのように入口1507を通過するかを示す。
図15は、入射瞳1507の中心を通過する中距離伝搬経路の中心に関連する光線を示す。しかし、例えば、最短伝搬経路の光照射野の中心に関連する光線は、開口1507の上部によって遮断される。しかしながら、最短伝搬経路の光照射野に関連する他の光線は、開口1507を通過することができる。最長伝搬経路の光照射野の中心に関連する光線は、開口1507の下部によって遮断される。しかしながら、最長伝搬経路の光照射野に関連する他の光線も開口15807を通過することができる。
【0265】
開口1507を通過する光は、レンズ1509によって光センサ1511上に集束される。光センサ1511の平面は、表示デバイス1501の表示平面と実質的に平行であり、したがって、瞳孔拡張器1503の長尺な寸法に対しても傾斜している。
【0266】
図15は、単なる例として、空間的に変調された光の単一の光線1502の3つの可能な光伝搬経路を示す。本開示は、伝搬経路の数に限定されない。すなわち、当業者が以下の説明から理解するように、方法は、任意の数の光伝搬経路を考慮に入れるように拡張され得る。同様に、瞳孔拡張器が表示平面及びセンサ平面に対して傾斜していることは必須ではない。本発明者らは、
図16に関連して以下に説明する方法を考案し、この方法は、異なる瞳孔拡張器が設定する範囲に関して及び瞳孔拡張器内の光の任意の想定し得る数の跳ね返りに関して、したがって任意の数の光伝搬経路に関して、空間的に変調された光が観察者の眼に正確に到達するようにするのに適したホログラムを計算するために使用され得る。重要なことに、それは、画像の必要な全ての光が観察者に到達するように、観察システムの入口開口のサイズ及び形状を考慮する。
【0267】
図16は、方法のステップを示すフローチャートである。方法は、画像平面とホログラムとの間の数学的変換を使用して、画像に対応する位相ホログラムに収束するGerchberg-Saxtonタイプのアルゴリズムに似ており、位相ホログラムは虚像であってもよく、空間光変調器1501の上流側に有限距離を隔てて形成されてもよい。像面又はホログラム面への各伝搬後の光照射野の振幅成分は変更又は制約されるが、位相成分は保存される。
【0268】
方法の第0の段階は、ステップ1602及び1604を含む。第0段階は、第0の複素光照射野を形成することを含む。ステップ1602は、第0の複素光照射野の位相成分を形成するランダムな位相シードを提供する。ステップ1604は、第0の複素光照射野の振幅成分を提供する。振幅成分は、ホログラムから画像を再構成するために使用される光源の光を表す単一又は振幅分布であってもよい。
【0269】
ステップ1606において、第0の複素光照射野は、空間光変調器1501から(すなわち、ホログラム面から)観察システム713の入射瞳1507へ(より具体的には、観察システム713の入射瞳1507を含む平面へ)フレネル伝搬される。この場合も先と同様に、この実施形態は、本開示の思想又は範囲から逸脱することなく使用することができる幾つかの異なる数学的変換の単なる一例としてフレネル伝搬を指す。ステップ1606は、各光伝搬経路に関して複素光照射野を形成するために瞳孔拡張器1503によって与えられる跳ね返り又は内部反射の数ごとに実行される。ステップ1606は、入射瞳1507の平面におけるx方向の複素光照射野の横方向位置、及び瞳孔拡張器1503内の各反射における位相シフトを考慮に入れることを含む。異なる複素光照射野は、例えば加算により組み合わされてもよい。第1の段階は、入射瞳1507のサイズ及び形状にしたがって組み合わせ複素光照射野を切り取って入射瞳1507に第1の複素光照射野を形成するステップ1608を更に含む。
【0270】
方法の第2の段階は、ステップ1610及び1612を含む。ステップ1610において、第2の複素光照射野は、入射瞳からレンズ1509を通って光センサ711の平面まで第1の複素光照射野を伝搬することによって決定される。ステップ1612は、光センサ711に到達する複素光照射野の振幅成分を変更することを含む。より具体的には、ステップ1612は、複素光照射野の振幅成分を、ターゲット画像の振幅成分又はターゲット画像の振幅成分の重み付けバージョンなどのターゲット画像の振幅成分に基づく振幅成分で置き換えることを含む。伝搬に使用されるレンズ1509の位置は、画像距離、すなわち、画像コンテンツが現れる空間を決定する。幾つかの実施形態では、画像は虚像であり、この距離は虚像距離「VID」と呼ばれることがある。
【0271】
好適には、本明細書に開示される方法は、同じホログラムを使用して複数の異なる画像距離、例えば複数のVIDで画像コンテンツを形成できるようにする。本発明者らは、これが、z方向におけるレンズ1509の異なる位置を考慮することによって、画像距離ごとに第2の段階を繰り返すことにより達成され得ることを確認した。異なる画像距離ごとにこの手法にしたがって決定された複雑な光照射野は、例えば加算によって組み合わせることができる。
【0272】
方法の第3の段階は、第2の複素光照射野がレンズ1509を介して入射瞳1507に戻って伝搬されるステップ1614を含む。これは、単に光が反対のz方向に進行していることを反映するために逆伝搬と呼ばれることがある。幾つかの実施形態では、逆伝搬は、対応する「順方向」伝搬の数学的逆伝搬である。また、第3の段階は、第3の複素光照射野を形成するために入射瞳1507のサイズ及び形状にしたがって伝搬光照射野を切り取ることも含む。
【0273】
第4の段階は、ステップ1616及び1618を含む。ステップ1616において、光は、瞳孔拡張器の複数の光伝搬経路を介して空間光変調器1502の平面に戻るように伝搬されるが、これは第1の段階に関して前述したことであるが、当然ながら反対の光方向(すなわち、「逆」伝播)である。ステップ1618は、表示デバイスの活性/ピクセル領域のサイズ及び位置に従って伝播光照射野を切り取ることを含む。各複素光照射野の複素値の数は、表示デバイスのピクセル数以下であってもよい。
【0274】
ステップ1620は、第四の複素光照射野からホログラムを抽出することを含む。ホログラムは、第4の複素光照射野の位相値を含んでもよく、この場合、ホログラムは、キノフォームと呼ばれてもよい。本方法は、像面(すなわち、第3段階)で同様に開始することができる。本開示によれば、各段階の少なくとも1回の反復が必要である。
図17A及び
図17Bは、この方法、並びに
図13及び
図14の方法によって形成されたホログラムを説明する。
【0275】
チャネリングホログラム
【0276】
本発明者らは、計算方法にかかわらず、本開示に従って計算されるホログラム(又は、「キノフォーム」又は「回折構造」)は、従来のホログラム計算方法では観察又は達成できない固有の特性を有することを見出した。
【0277】
要約すると、本開示にしたがって計算されるホログラムは、例えば、これに限定されないが、それが表示及び照明されるLCOSなどの表示デバイスが空間的に変調された光のチャネルを出力できるようにし、この場合、各チャネルは、対応する画像の異なるそれぞれの部分に対応する。この特有のチャネリングにより、表示デバイスは、観観察距離が比較的大きい場合であっても、表示デバイスが比較的小さい場合であっても、また眼を動かす必要なく、観察者が眼の比較的小さい開口を介して画像全体を正確に見ることを可能にするために、導波路などの適切な瞳孔拡張器と連携して動作することができる。例えば、観察者の眼の開口とホログラムが表示される表示デバイスの両方が比較的非常に小さい場合でも、表示デバイスの上流側に有限距離を隔てて位置する虚像は、比較的大きな距離で(正確に、且つその全体において)観察され得る。これは、従来のホログラフィを使用しても、非ホログラフィ技術を使用しても、これまで達成できなかった。
【0278】
本開示の一態様によれば、本発明者らは、上記のように「点群」法を使用してホログラムを計算すると、各虚像点からの光が、表示デバイスの異なる対応する一次寄与領域に従って制限されることを見出した。本発明者らは更に、これが、虚像の異なる部分(すなわち、異なる虚像点)からの光がシステムを通る異なる光路をたどることを意味することを認識した。本開示の一態様によれば、本発明者らは、上記の
図16に示す方法などを介してフレネル伝搬を使用してホログラムを計算すると、画像の異なるそれぞれの部分に対応する空間的に変調された(すなわち、「ホログラフィック」)光が異なるそれぞれの光路をたどることを見出した。したがって、本発明者らは、(計算方法にかかわらず)ホログラムを使用して、それらの光路のそれぞれを観察者の眼に同時に向けることができ、それによって観察者が眼を動かしたり他の物理的変化を行ったりすることなく、眼/脳が画像全体を再構成するのに必要な全てのホログラフィック光を受信できるようにすることを認識した。上記の詳細な例に示すように、これを達成するために、計算されたホログラムを表示する表示デバイスと共に導波路又は他の瞳孔拡張器を使用することができる。
【0279】
図17A及び
図17Bによって示される実施形態において、本発明者らは、本明細書に開示されるホログラムの固有の特性の理解を助けるために、複数の個別の虚像成分又は領域を含む虚像を表示する光学システムを構成した。しかしながら、本開示は、連続的な(すなわち、非離散)画像コンテンツを有する画像に対応するホログラムの計算及び表示、並びに/又は離散画像部分の任意の数/サイズ/分割を有する画像のホログラムにも同様に適用可能である。
図17A及び
図17Bでは、簡単に言えば、(i)虚像は複数の個別の虚像成分又は領域を含み、(ii)各虚像成分の光は導波路1708内の異なる数の跳ね返り/反射に関連付けられる。しかしながら、幾つかの他の実施形態では、2つ以上の個別の虚像成分の光が導波路内で同じ数の跳ね返りを受ける可能性がある。
【0280】
図17Aは、V1~V8の8つの個別の画像領域/成分を含む投影のための画像1752を示す。
図17Aは、例としてのみ8つの画像成分を示しており、画像1752は任意の数の成分に分割することができる。また、
図17Aは、(本明細書に開示されるように計算された)ホログラムが適切に表示されて照明されるときに形成される符号化された光パターン(すなわち、ホログラフィック光のパターン)1754を示す。符号化された光パターン1754は、例えば、観察者の眼などの適切な観察システムのレンズによって変換されるときに、画像1752を再構成することができる。符号化された光パターン1754は、第1~第8の画像成分/領域V1~V8に対応する第1~第8の成分又はチャネルH1~H8を備える。したがって、ホログラムは、ホログラムが実行するホログラフィック光のチャネリングを特徴とし得る。このようにして生じる光のチャネリングは、計算されており、
図17Bに示されている。具体的には、本開示に係るホログラムは、ホログラフィック光を、個別のそれぞれの領域として平面上に形成され得る複数の個別のチャネルに方向付ける。図示の例では、個別の領域がディスクであるが、他の形状も想定される。上で詳述したように、ホログラムは、具体的には、表示デバイスにおける光照射野のサイズ/形状及び/又は観察開口における光照射野のサイズ/形状を念頭に置いて計算される(例えば、切り取られる)。したがって、最適なディスクのサイズ及び形状は、観察システムの入射瞳のサイズ及び形状に関連し得る。
【0281】
本開示から、このタイプのホログラムは任意の方法で計算することができ、本発明者らによるコア認識は、このタイプのホログラムを使用して、比較的小さな表示デバイスを使用して比較的大きな視野を提供できることであることを理解すべきである。本明細書に開示されるホログラム挙動は、瞳孔拡張器などのホログラム複製器と相乗的である。本明細書に開示されるホログラフィックシステムは、ヘッドアップディスプレイと特に相乗的である。
【0282】
ホログラムによって出力されるホログラフィック光のチャネルは、(観察者によってホログラフィックに再構成されるべき画像の)画像コンテンツを角度によって効果的に分解する。これは、実像401上の複数の別個の位置からの光線束が複数の別個の対応する角度で開口(又は、観察窓)402に進むが、これらの束のうちの1つのみからの光が任意の所定の眼の位置で観察者の眼を通って進むことができる、上記の
図4の光学配置と比較することによって更に理解することができる。本明細書に記載のように計算されて適切な表示デバイスによって表示されるホログラムは、ホログラフィックに再構成された虚像を形成して、所望の画像距離にあるその画像401(又は、実際には、任意の所望の画像/物体)の存在を模倣することができる。しかしながら、
図4の光学系及び従来のホログラフィックシステムに優る顕著な利点において、本明細書で説明するように計算されたホログラムは、表示デバイスが比較的小さい場合、及び観察者の眼などの観察システムの入口開口が比較的小さい場合、及び観察距離が比較的大きい場合でも、画像全体を観察者が見る又は知覚することができるようにする。言い換えると、非限定的な例として、ホログラムは、
図4に示す5つの光線束全てが同時に観察者に到達できるようにし、したがって所望の虚像を完全に形成する。
【0283】
重要なことに、そのようなホログラムは、適切に表示及び照射されると、表示デバイスにホログラフィック光のチャネルを出力させ、この場合、ホログラフィック光の各チャネルは、所望の画像/物体のそれぞれの部分からの光が表示デバイスに到達する角度(又は、場合によっては、角度の束)に対応する。したがって、ホログラフィック光のチャネルは、画像コンテンツの異なるそれぞれの角度部分に対応すると言うことができる。これは、従来のホログラムには当てはまらない。更に、実際の画像/物体からの無変調光又は従来のホログラムから形成された空間的に変調された光とは異なり、本明細書に開示されるホログラフィック光のチャネルは、チャネルのそれぞれ、したがって画像の各(すなわち、全ての)部分に対応するホログラフィック光が観察者によって同時に受けられ得るようにするために、表示デバイスと観察者との間に位置された適切な導波路又は他の瞳孔拡張器によってガイドされ得るように特に構成される。更に、各チャネルは、少なくとも幾つかの実施形態では、1回だけ受信されてもよい。
【0284】
【0285】
観察システム1700は、この構成ではLCOS1702を備える表示デバイスを備える。LCOS1702は、ホログラムを備える変調パターン(又は「回折パターン」)を表示するとともに開口1704として作用する瞳孔、レンズ1709、及び観察面として作用する網膜(図示せず)を備える眼1705に向かってホログラフィックに符号化された光を投影するように構成される。LCOS1702を照明するように構成される光源(図示せず)がある。光源は、例えば、レーザダイオードを備えることができる。ホログラムは、単一の光線(又は、単一の光線束)によりホログラム全体を照明できるように構成される。ホログラムが本明細書で説明するように機能するために、複数の光源又は例えば異なるそれぞれの波長の複数の光線がホログラムを照明する必要はない。
【0286】
眼1705のレンズ1709は、ホログラムを画像に変換する。したがって、LCOSと眼1705との間に画像のホログラフィック再構成はない。
【0287】
観察システム1700は、LCOS1702と眼1705との間に位置された導波路1708を更に備える。
図17Cの投影距離は比較的大きくてもよい。しかしながら、前の図に関連して説明したように、導波路1708の存在は、この比較的大きい投影距離であっても、LCOS1702からの全ての角度コンテンツを眼1705によって受けることができるようにする。これは、導波路1708が前述したように瞳孔拡張器として作用するからである。
【0288】
更に、この構成では、LCOS1702が本明細書に記載の方法にしたがって符号化されている場合、LCOS1702からの光と観察者が知覚する虚像との間に固有の関係を確立するために、導波路1708をLCOS1702に対してある角度に向けることができる。導波路1708のサイズ、場所、及び位置は、各ホログラフィックチャネルからの光、したがって、虚像の各部分からの光が、導波路1708に入ってその長尺な軸に沿って案内されることによって、導波路1708の実質的に平坦な表面間で跳ね返りするようにするべく構成される。光が第2の平坦面(眼1705に最も近い)に到達するたびに、一部の光が透過され、一部の光が反射される。
【0289】
図17Cは、導波路1702の長さに沿った合計9つの「跳ね返り」点B0~B8を示す。読者は、画像1752の中心が空白のままであることに気付くことができる。
図17Cは、導波路内の第0~第9の光「跳ね返り」又は反射点B0~B8を示す。画像の全ての点(V1-V8)に関連する光であるが-すなわち、8つのホログラフィック光チャネルH1~H8-のそれぞれの光は、導波路1708の第2の平面からの各「跳ね返り」で導波路から透過され、画像の角度部分(例えば、画像部分V1~V8のうちの特定のそれぞれ1つに対応するチャネルH1~H8のうちの1つの光)のうちの1つからの光のみが、各それぞれの「跳ね返り」点B0~B8から眼1705に到達することを可能にする軌道を有する。更に、この実施形態において、異なるチャネルからの光、したがって画像の異なるそれぞれの角度部分V1~V8からの光は、それぞれの「跳ね返り」点から眼1705に到達する。
図17Cは、(各透過点で複数の短い矢印により示される)各「跳ね返り」点で放射されている全ての異なるホログラフィック光チャネルの光を示すが、この場合、それぞれのチャネルの眼1705への光路のみを示しており、これは、その跳ね返り点から眼1705に実際に到達する固有のそれぞれの画像部分(すなわち、固有のそれぞれの角度画像コンテンツ)に対応する。それぞれの跳ね返り点ごとに眼に到達するようにその光路が示されるチャネルは、導波路のそのそれぞれの部分からの虚像のそれぞれの部分に寄与するチャネルである。例えば、第0の跳ね返りB0の場合、導波路1708によって伝送される光は、単に屈折され、その中でいかなる反射も受けない。第8のサブホログラフィックサブチャネルH8の光は、第0の跳ね返りB0から眼に到達する。次の跳ね返りB1の場合、導波路1702によって伝送される光は、伝送前にその中で一回跳ね返りを受ける。第7のホログラムH7からの光は、次の跳ね返りB1から眼に到達する。これは、最終的な跳ね返りB8で導波路1708によって透過される光が、透過されて眼1705に到達する前に8回の跳ね返りを受け、第1のホログラムH1にしたがって符号化された光を含むまで、順次継続する。この構成では、各チャネルからの光は、導波路上の複数の異なるそれぞれの跳ね返りポイントからそれぞれ1つずつ、同時に観察者に到達する。したがって、観察者は、眼及び表示デバイスの両方が比較的非常に小さく且つ観察距離が比較的大きい場合でも、眼を動かしたり他の変更を加えたりすることなく、虚像全体に対応するホログラフィック光を同時に受け取る。
【0290】
図17A-
図17Cに示される例では、ただ1つの画像領域の光が各跳ね返り点から眼に到達する。したがって、ホログラムが本明細書で説明されるように決定されると、虚像の領域と導波路上のそれらの関連する跳ね返り点との間の空間相関が確立される。幾つかの他の例では、画像の1つの領域が、2つの隣接する透過点によりもたらされ、したがって導波路から観察面に向かって伝搬する光の2つの隣接するディスク内に含まれるように、比較的小さな重なり合いが存在し得る。
【0291】
したがって、本発明者らによってなされた認識、並びに本明細書に記載の方法及び構成は、ホログラムを備える回折パターン(又は、光変調パターン)を生成できるようにすることが可能であり、このパターンは、LCOS又は他の適切な表示装置に表示されると、そこから、空間的に変調された光を、それぞれが対応する虚像の異なるそれぞれの部分に対応する(より具体的には、符号化する)複数の「ディスク」又はホログラフィック光のチャネルの状態で効果的に放射できるようにすることが可能である。
【0292】
したがって、表示デバイスが適切な光源によって照明されるときに、観察者が鮮明な画像を見ることができるようにする態様で、ホログラムを計算して適切な表示デバイスに表示できるようにする改良された方法及び構成が本明細書に記載される。観察者が見る画像はゴーストがなくてもよく、少なくとも幾つかの実施形態では、従来はゴースト像に寄与していたはずの光の寄与によってより明るくすることができ、代わりに単一の主画像に寄与する。例えば、改良された方法及び構成は、表示デバイス及び観察者の観察開口(すなわち、眼)が比較的小さく且つ観察距離が比較的大きい場合でも、観察者が表示デバイスから(無限遠ではなく)有限の距離を隔てて虚像などの画像を見ることができるようにし得る。
【0293】
本明細書に記載の改良された方法及び構成は、リアルタイムで実行することができるとともに、観察開口の場所/位置の変化に対応するべく例えば非常に迅速に繰り返すことができる。改良された方法及び構成は、2つの眼に関してなど、2つ以上の観察開口に関して実施されてもよい。改良された方法及び構成は、例えば非常に迅速に繰り返されて、複数の異なるホログラムの表示、したがって複数の異なる対応する画像の連続した及び/又はシーケンスでの、順次での、パターン状の又はループ状の観察を可能にすることができる。
【0294】
本明細書に記載の改良された方法及び構成は、様々な異なる用途及び観察システムで実施することができる。例えば、改良された方法及び構成はヘッドアップディスプレイ(HUD)で実施されてもよい。虚像が無限遠で形成される多くの従来のHUDに優る改良において、本明細書に記載の改良された方法及び構成は、ゴースト像を依然として排除しながら、適切なコントローラによって選択及び調整することができる有限の画像距離を隔てて虚像を作成するために実施することができる。
【0295】
知覚された画像を形成するために眼が受信された変調光を変換することを必要とする虚像について本明細書で説明してきたが、本明細書に記載の改善された方法及び構成は、実像に適用することができる。
【0296】
更なる特徴
【0297】
実施形態は、単なる例として、電気的に活性化されるLCOS空間光変調器に言及する。本開示の教示内容は、例えば、任意の電気的に作動されるSLM、光学的に作動されるSLM、デジタルマイクロミラーデバイス又は微小電気機械デバイスなど、本開示に係るコンピュータ生成ホログラムを表示することができる任意の空間光変調器で等しく実施することができる。
【0298】
幾つかの実施形態では、光源がレーザダイオードなどのレーザである。
【0299】
本開示のシステムは、改良されたヘッドアップディスプレイ(HUD)又はヘッドマウントディスプレイを提供するために使用することができる。幾つかの実施形態では、HUDを提供するために車両に設置されたホログラフィック投影システムを備える車両が提供される。車両は、自動車、トラック、バン、大型トラック、オートバイ、電車、飛行機、ボート、又は、船などの自動車両であってもよい。
【0300】
ホログラフィック再構成の品質は、ピクセル化空間光変調器を使用する回折性の結果である、いわゆる0次問題によって影響を受ける可能性がある。そのような0次光は、「ノイズ」と見なすことができ、例えば鏡面反射光、及びSLMからの他の不要な光を含む。
【0301】
実施形態では、一次再生フィールドのみが利用され、システムは、システムを通る高次再生フィールドの伝搬を制限するように構成されたバッフルなどの物理ブロックを含む。
【0302】
実施形態では、ホログラフィック再構成がカラーである。幾つかの実施形態では、空間的に分離された色「SSC」として知られる手法を使用して、カラーホログラフィック再構成を提供する。他の実施形態では、フレームシーケンシャルカラー「FSC」として知られる手法が使用される。
【0303】
SSCの方法は、3つの単色ホログラムに対して3つの空間的に分離された光変調ピクセルの配列を使用する。SSC方法の利点は、3つの全てのホログラフィック再構成が同時に形成され得るため、画像が非常に明るくなり得ることである。しかしながら、空間の制限により、光変調ピクセルの3つの空間的に分離された配列が共通のSLMに提供される場合、利用可能な光変調ピクセルのサブセットのみが各色に使用されるため、各単色画像の品質は次善最適である。したがって、比較的低解像度のカラー画像が提供される。
FSCの方法は、共通の空間光変調器の全てのピクセルを使用して、3つの単一色ホログラムを順に表示することができる。単一色再構成は、人間の観察者が3つの単一色画像の統合から多色画像を知覚するように十分な速さで周期的に繰り返される(例えば、赤色、緑色、青色、赤色、緑色、青色など)。FSCの利点は、SLM全体が各色に使用される点である。このことは、SLMの全てのピクセルがそれぞれのカラー画像ごとに使用されるため、生成される3つのカラー画像の品質が最適であることを意味する。しかしながら、FSC法の欠点は、各単色照明イベントはフレーム時間の1/3しか発生し得ないため、合成カラー画像の輝度がSSC法よりも約3倍低いことである。この欠点は、レーザをオーバードライブすることによって、又はより強力なレーザを使用することによって対処できる可能性があるが、これはより多くの電力を必要とし、その結果、コストが高くなり、システムのサイズが大きくなる。
【0304】
例は可視光でSLMを照らすことを説明するが、当業者であれば分かるように、例えば本明細書中に開示されるように、光源及びSLMを等しく使用して赤外線又は紫外線を方向付けることができる。例えば、当業者は、情報をユーザに提供する目的で赤外光及び紫外光を可視光に変換するための技術を認識し得る。例えば、本開示は、この目的のために蛍光体及び/又は量子ドット技術を使用することに及ぶ。
【0305】
幾つかの実施形態は、単なる一例として2Dホログラフィック再構成について記載する。他の実施形態では、ホログラフィック再構成が3Dホログラフィック再構成である。すなわち、幾つかの実施形態では、各計算機合成ホログラムが3Dホログラフィック再構成を形成する。
【0306】
本明細書中に記載される方法及びプロセスは、コンピュータ可読媒体で具現化されてもよい。「コンピュータ可読媒体」という用語は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、バッファメモリ、フラッシュメモリ、及び、キャッシュメモリなど、データを一時的又は恒久的に記憶するようになっている媒体を含む。また、「コンピュータ可読媒体」という用語は、命令が、1つ以上のプロセッサによって実行される場合に、本明細書中に記載される方法論のうちの任意の1つ以上を全体的又は部分的に機械に実行させるように、機械による実行のための命令を記憶できる任意の媒体又は複数の媒体の組み合わせを含むように解釈されるものとする。
【0307】
「コンピュータ可読媒体」という用語は、クラウドベースのストレージシステムも包含する。「コンピュータ可読媒体」という用語は、ソリッドステートメモリチップ、光ディスク、磁気ディスク、又は、それらの任意の適切な組み合わせの例示的な形態を成す1つ以上の有形且つ持続性のデータリポジトリ(例えば、データ量)を含むが、これらに限定されない。実施形態の幾つかの例では、実行のための命令がキャリア媒体によって通信されてもよい。そのようなキャリア媒体の例としては、トランジェント媒体(例えば、命令を通信する伝搬信号)が挙げられる。
【0308】
当業者であれば分かるように、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変形を行うことができる。本開示は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内の全ての修正及び変形を包含する。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察システムによって画像に変換可能な光を空間的に変調するように構成される回折構造であって、
光を複数のホログラムチャネルにルーティングするように構成され、各ホログラムチャネルが前記画像の異なる部分に対応する、
回折構造。
【請求項2】
前記ホログラムチャネルが前記回折構造から異なるそれぞれの角度で伝搬するように配置される、
請求項1に記載の回折構造。
【請求項3】
各ホログラムチャネルは、前記画像のそれぞれの異なる部分に従って空間的に変調される光を含む、
請求項1に記載の回折構造。
【請求項4】
前記光の位相を空間的に変調するように構成される、
請求項1に記載の回折構造。
【請求項5】
導波路を通じて光をルーティングするように構成される、
請求項1に記載の回折構造。
【請求項6】
前記導波路が瞳拡張のために配置される、
請求項5に記載の回折構造。
【請求項7】
各ホログラムチャネルによって形成可能な光パターンの断面形状は、前記観察システムの入口開口の形状に対応する、
請求項1に記載の回折構造。
【請求項8】
前記ホログラムチャネルは、空間的に分離されるか、又は少なくとも部分的に空間的に分離される、
請求項1に記載の回折構造。
【請求項9】
請求項1に記載の回折構造と、前記回折構造により空間的に変調される光を受けるように構成される導波路と、前記導波路を介して前記空間的に変調される光を受けるように構成される観察システムとを備える
システム。
【請求項10】
各ホログラムチャネルの光が前記回折構造から前記観察システムまで異なる光路をたどるように構成される、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記異なる光路が前記導波路内に異なる数の反射を含む、
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記異なる光路は、異なる長さを有する、
請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記異なる光路は、異なるそれぞれの角度で前記観察システムの入口である開口を通過する、
請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記導波路は、全てのホログラムチャネルが観察面上の任意の観察位置で前記観察システムの入口である開口を通じてルーティングされるように配置される、
請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記導波路は、それぞれの許可された観察位置ごとに各ホログラムチャネルを一方の光路を介して前記観察システムにルーティングする、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記複数のホログラムチャネルのうちの少なくとも2つのホログラムチャネルは、前記観察システムの入口である開口において部分的に重なっている、
請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
前記回折構造がキノフォーム又はホログラムである、
請求項1に記載の回折構造。
【請求項18】
画像のホログラムを計算する方法であって、
照明されるときに空間的に変調される光を形成するホログラムを形成するために前記観察システムの前記入射瞳に従って計算中の光を切り取ることを含む少なくとも1つのステップを含み、前記空間的に変調される光の連続光チャネルが前記画像の連続領域に対応する、
方法。
【国際調査報告】