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特表2024-502404複雑な弓部の解剖学的構造と橈骨アクセスのための動的湾曲アクセスツール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-19
(54)【発明の名称】複雑な弓部の解剖学的構造と橈骨アクセスのための動的湾曲アクセスツール
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
A61M25/092 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534122
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2023-06-05
(86)【国際出願番号】 US2021065256
(87)【国際公開番号】W WO2022154959
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】17/148,073
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595148888
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Stryker Corporation
【住所又は居所原語表記】2825 Airview Boulevard Kalamazoo MI 49002 (US)
(71)【出願人】
【識別番号】521535973
【氏名又は名称】ストライカー ヨーロピアン オペレーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Stryker European Operations Limited
【住所又は居所原語表記】Anngrove, IDA Business & Technology Park, Carrigtwohill, County Cork, T45HX08 Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ポーター,ステファン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA32
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB11
4C267BB17
4C267BB26
4C267BB52
4C267CC08
4C267DD01
4C267GG01
4C267GG21
4C267HH08
(57)【要約】
血管内デバイスは、カテーテル近位端、カテーテル遠位端、およびカテーテル近位端とカテーテル遠位端との間に延在するカテーテル内腔を有する細長い外側カテーテル本体を備える。血管内デバイスは、カテーテル内腔内に摺動可能に配置された細長い内側関節運動部材をさらに備える。内側関節運動部材は、近位部材端および関節運動可能な遠位部材端を有する。血管内デバイスは、カテーテル近位端および近位部材端に機械的に結合された制御アセンブリをさらに備える。制御アセンブリは、外側カテーテル本体を内側関節運動部材の上にわたって遠位方向に並進させ、遠位部材端を関節運動させるように構成される。
【選択図】図3B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル近位端、カテーテル遠位端、および前記カテーテル近位端と前記カテーテル遠位端との間に延在する内腔を有する細長い外側カテーテル本体と、
前記外側カテーテル本体の前記内腔内に摺動可能に配置された細長い内側関節運動部材であって、近位部材端および関節運動可能な遠位部材端を有する、内側関節運動部材と、
前記カテーテル近位端および前記近位部材端に機械的に結合された制御アセンブリであって、前記外側カテーテル本体を前記内側関節運動部材の上にわたって遠位方向に並進させ、前記遠位部材端を関節運動させるように構成される、制御アセンブリと、
を備える、血管内デバイス。
【請求項2】
前記制御アセンブリは、前記遠位部材端を単一湾曲の平面形状に関節運動させるように構成される、請求項1に記載の血管内デバイス。
【請求項3】
前記制御アセンブリは、前記遠位部材端を多湾曲形状に関節運動させるように構成される、請求項1に記載の血管内デバイス。
【請求項4】
前記制御アセンブリは、手動操作の制御アセンブリである、請求項1に記載の血管内デバイス。
【請求項5】
前記制御アセンブリは、前記カテーテル近位端に解放可能に結合される、請求項1に記載の血管内デバイス。
【請求項6】
前記カテーテル遠位端は、1つまたは複数の注入開口部を有する、請求項1に記載の血管内デバイス。
【請求項7】
前記カテーテル遠位端は、遠位ワイヤー先端を含む、請求項1に記載の血管内デバイス。
【請求項8】
前記カテーテル遠位端は、ヒトの大動脈弓の枝に挿入されるように構成される、請求項1に記載の血管内デバイス。
【請求項9】
前記遠位部材端と前記制御アセンブリとの間に動作可能に接続された少なくとも1つのプルワイヤーをさらに備え、前記制御アセンブリは、前記少なくとも1つのプルワイヤーに張力をかけることによって前記遠位部材端を関節運動させるように構成される、請求項1に記載の血管内デバイス。
【請求項10】
カテーテル近位端、カテーテル遠位端、および前記カテーテル近位端と前記カテーテル遠位端との間に延在する内腔を有する外側カテーテル本体の内腔内に摺動可能に配置されるように構成された細長い内側関節運動部材であって、近位部材端および関節運動可能な遠位部材端を有する、細長い内側関節運動部材と、
前記近位部材端に機械的に結合された制御アセンブリであって、前記カテーテル近位端に解放可能に結合されるようにさらに構成され、前記内側関節運動部材の上にわたって前記外側カテーテル本体を遠位方向に並進させ、前記遠位部材端を関節運動させるようにさらに構成される、制御アセンブリと、
を備える、血管内デバイス。
【請求項11】
前記制御アセンブリは、前記遠位部材端を単一湾曲の平面形状に関節運動させるように構成される、請求項10に記載の血管内デバイス。
【請求項12】
前記制御アセンブリは、前記遠位部材端を多湾曲形状に関節運動させるように構成される、請求項10に記載の血管内デバイス。
【請求項13】
前記制御アセンブリは、手動操作の制御アセンブリである、請求項10に記載の血管内デバイス。
【請求項14】
前記制御アセンブリは、前記カテーテル近位端に解放可能に結合される、請求項10に記載の血管内デバイス。
【請求項15】
前記カテーテル遠位端は、ヒトの大動脈弓の枝に挿入されるように構成される、請求項10に記載の血管内デバイス。
【請求項16】
前記遠位部材端と前記制御アセンブリとの間に動作可能に接続された少なくとも1つのプルワイヤーをさらに備え、前記制御アセンブリは、前記少なくとも1つのプルワイヤーに張力をかけることによって前記遠位部材端を関節運動させるように構成される、請求項10に記載の血管内デバイス。
【請求項17】
カテーテル遠位端およびカテーテル内腔を有する細長い外側カテーテル本体と、前記カテーテル内腔内に摺動可能に配置され、遠位部材端を有する細長い内側部材とを含む血管内デバイスを使用して、患者に医療処置を実行する方法であって、
前記患者の血管系内に前記血管内デバイスを導入するステップと、
前記カテーテル遠位端が前記血管系内の血管孔に隣接するまで、前記血管内デバイスを前記患者の前記血管系内で遠位方向に前進させるステップと、
前記カテーテル遠位端が前記血管の前記孔に向けられるように、前記遠位部材端を能動的に関節運動させるステップと、
前記カテーテル遠位端を前記血管の前記孔に挿入するステップと、
前記カテーテル遠位端が前記血管内にさらに前進するように、前記カテーテル遠位端を前記遠位部材端に対して遠位方向に摺動させるステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記カテーテル遠位端は、前記遠位部材端に対して前記カテーテル遠位端を遠位方向に摺動させることによって、前記血管の前記孔に挿入される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記血管は、前記患者の大動脈弓から延在する動脈枝である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記動脈枝は、前記患者の左鎖骨下動脈(LSA)および左椎骨動脈(LVA)を形成する第1の動脈枝、前記患者の左総頸動脈(LCCA)を形成する第2の動脈枝、および前記患者の右鎖骨下動脈(RSA)、右椎骨動脈(RVA)、および右総頸動脈(RCCA)を形成する第3の動脈枝のうちの1つである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記大動脈弓は、III型大動脈弓である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記血管内デバイスは、大腿アプローチを介して前記患者の前記血管系内に導入される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記血管内デバイスは、橈骨アプローチを介して前記患者の前記血管系内に導入される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記動脈枝は第3の動脈枝であり、前記カテーテル遠位端を前記血管内にさらに前進させるステップは、前記カテーテル遠位端をRCCA内に前進させるステップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記カテーテル遠位端が前記血管内に留まりながら、前記ガイドカテーテルが標的治療部位に到達するまで、前記血管内デバイスの上にわたって前記ガイドカテーテルを前進させるステップと、
前記ガイドカテーテルが前記標的治療部位にある間に、前記ガイドカテーテルから前記血管内デバイスを取り除くステップと、
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記ガイドカテーテルを通して治療デバイスを、前記治療デバイスが前記標的治療部位に到達するまで導入するステップと、
前記治療デバイスを使用して前記標的治療部位で治療処置を実行するステップと、
をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記外側カテーテル本体の前記内腔から前記内側部材を取り除くステップと、
前記カテーテル遠位端が前記血管内に留まりながら、外側カテーテル本体の内腔を通してガイドカテーテルを、前記ガイドカテーテルが標的治療部位に到達するまで前進させるステップと、
前記ガイドカテーテルが前記標的治療部位にある間に、前記ガイドカテーテルから前記血管内デバイスを取り除くステップと、
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記外側カテーテル本体の前記内腔を通して治療デバイスを、前記治療デバイスが前記標的治療部位に到達するまで導入するステップと、
前記治療デバイスを使用して前記標的治療部位で治療処置を実行するステップと、
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記カテーテルアセンブリを介して前記血管内に造影剤を送出するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療デバイスおよび血管内医療処置に関するものであり、より具体的には、カテーテル遠位端でのたわみを制御するためのデバイスおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
治療用または診断用のカテーテルは、患者の体内の非常に狭い空間内で医療処置を行うために一般的に使用されている。これらの医療処置のほとんどは、正確なカテーテルナビゲーションを必要とする。遠隔地から人体内の標的部位にアクセスするために、カテーテルは通常、血管系などの1つまたは複数の体内管腔を通り、標的部位に到達する。血管系を使用する場合、カテーテルは経皮的に、または患者の体の比較的小さな切開部を通して動脈または静脈に挿入される。次いで、カテーテルを患者の血管系に通して、所望の標的部位に到達させる。多くの場合、ガイドカテーテルまたは長いシースなどの搬送デバイスを使用して血管系を通って標的部位まで経路が作られ、それを通して治療用または診断用カテーテルを標的部位に誘導することができる。
【0003】
ガイドカテーテルの有用性は、細い血管を通して、大動脈弓の周囲などの血管系内のきつい屈曲部をうまくナビゲートする能力によって大きく制限される。大動脈弓から離れた大血管へのアクセスは、特に解剖学的特徴により、デバイスが非常に曲がった経路または十分に支持されていない経路をたどる必要がある場合に、課題を引き起こす。これらの課題のいくつかを克服するために、内部ガイドレールであって、その上にわたってガイドカテーテルまたは長いシースが選択された経路を横断してガイドカテーテルまたは長いシースの意図された標的位置に到達することができる内部ガイドレールを提供することによって、ガイドカテーテルまたは長いシースを誘導するように予め成形された選択的カテーテルが開発された。そのような予め成形された選択的カテーテルは、大動脈弓から始まる大血管へのアクセスを可能にする、軸方向に離間した複数の湾曲部を有し得る。多くの場合、診断用カテーテルは、選択的カテーテルと同じ目的で使用され、選択的カテーテルは一般的に、ガイドカテーテルまたは長いシースの内側に篏合するように長さのみが異なる。例えば、患者の動脈または静脈系に共通するねじれ部および枝分かれの両方をうまく通り抜けるのを支援し、標的空洞(例えば、心臓の部屋)内に配置された後も形状を維持するために、様々なタイプの予め成形された遠位端(例えば、Simmons、Headhunter、Vitek、Bentson、Newton、Berenstein形状)を有する診断用および選択的カテーテルが開発されている。しかしながら、予め成形された湾曲部は製造時に選択的カテーテルに固定されるので、半径、曲率の程度、および全体的な形状は、一般的にインサイチューで変更することはできない。解剖学的な違いにより、選択的カテーテルの適切な曲率を決定するために、広範な術前計画が必要になる。現在の診療では、患者の解剖学的形状に最も近い近似である既存の形状を推測して選択する必要がある。
【0004】
1つの特定の治療処置では、アテローム性動脈硬化症を治療するために、ガイドカテーテルを使用してステントを1つまたは複数の頸動脈またはそれらの枝に配置する場合がある。これらの血管内で起こる病気の過程で血管内壁が劣化し、血管内壁から剥離した病的物質が、血管径を順次小さくしながら動脈系全体にわたって押し流され、血管構築部内に留まり、ブロック領域の血流が停止して酸素欠乏による組織死を引き起こす場合がある。この病気の過程は、脳卒中、心臓発作、およびその他の衰弱または致命的な事象の主な原因である。頸動脈のアテローム性動脈硬化症が進行するにつれて、脳卒中のリスクが増加し、特に、脳、または循環経路内でそれに先行する総頸動脈に仕える、内頸動脈枝の疾患に関連して脳内に留まる血塊または血管破片による脳卒中または死亡を防ぐためにインターベンションを行う必要が生じる。発展途上国では脳卒中が3番目に多い原因であることに留意すべきである。すべての脳卒中の85%は本質的に(脳循環障害による)虚血性であり、すべての虚血性脳卒中の20~30%は、頸動脈のアテローム性動脈硬化性閉塞性疾患によって引き起こされる。内頸動脈または総頸動脈のアテローム性動脈硬化性閉塞性疾患の場合、インターベンション専門医(インターベンション放射線科医、血管外科医、またはインターベンション心臓専門医)によって行われる1つの処置は、ステントの設置であり、これは、膨張する円筒形のワイヤーまたはプラスチックのメッシュであり、動脈の疾患部位を支えて安定させ、膨張可能なバルーンを使用して、狭窄領域の血管の内径全体に送られたバルーンを瞬間的に広げる血管形成術と呼ばれる治療で、動脈の狭窄(狭くなること)を改善する。
【0005】
左頸動脈または右頸動脈へのアクセスは、大動脈弓の解剖学的配置に依存する可能性があるため、頸動脈のステント留置術は困難な処置である。例えば、図1A図1Cを参照すると、典型的なヒトは、左鎖骨下動脈(LSA)14および左椎骨動脈(LVA)16を形成する第1の動脈枝12と、左総頸動脈20(LCCA)を形成する第2の動脈枝18と、右鎖骨下動脈(RSA)24、右椎骨動脈(RVA)26、右総頸動脈(RCCA)28を形成する第3の動脈枝(腕頭動脈)を含む、大動脈弓10から出る3つの主要な動脈枝を備えた大動脈弓10を有する。
【0006】
腕頭動脈22が大動脈弓10に付く基部位置からの大動脈弓10の頂部の高さhによって画定される3つのタイプの弓部がある。タイプIの弓部では、図1Aに示されるように、高さhは、重要ではない(hは、LCCA20またはRCCA28の直径よりも小さい)。タイプIIの弓部では、図1Bに示されるように、高さhは、大幅に増加し(hは、LCCA20またはRCCA28の直径の1倍から2倍の間)、タイプIIIの弓部では、図1Cに示されるように、高さhは、さらに増加する(hは、LCCA20またはRCCA28の直径の2倍を超える)。大動脈弓10の高さが増加するにつれて、大動脈弓10への動脈接続の曲がりくねった性質のために、頸動脈内の処置はますます困難になる。例えば、図1Cに示されるように、タイプIIIの厳しい大動脈弓では、第2の動脈枝18または第3の動脈枝22の起点の角度が非常に鋭角になるため、LCCA20またはRCCA28へのアクセスが困難になる可能性がある。bovine型弓部は難しい解剖学の別の一例であり、LCCA(18)の起点が腕頭動脈(22)から出ている。
【0007】
例えば、インターベンション専門医は、大動脈弓10からの動脈枝の1つにアクセスするときに、大腿アプローチまたは橈骨アプローチの間で選択することができる。図2Aに示されるように、大腿アプローチの間、カテーテル30は、大腿動脈内に導入して、腹部大動脈を上って下行大動脈に至り、そして大動脈弓10の周りを大動脈弓10の3つの動脈枝のうちの1つに至ることができる。対照的に、図2Bに示されるように、橈骨アプローチの間、カテーテル30は、橈骨動脈に導入され、それを通って、上腕動脈および腋窩動脈を通って、次にRSA24に沿って、そして最後に大動脈弓10の中へ入ることができる。1つの方法では、安定したプラットフォームであって、それを通してインターベンションデバイス(例えば、ステント送出デバイス)が疾患動脈に導入される安定したプラットフォームを提供するために、カテーテル30は、大動脈弓10からの動脈枝のうちの選択された1つに挿入される。他の方法では、カテーテル30は、大動脈から延在する主要な動脈枝の1つの中に造影剤を注入するための診断用カテーテルとして機能することができる。多くの場合、大動脈弓10内でのガイドカテーテルの適切な方向付け、および大動脈弓10の関連する動脈枝へのガイドカテーテルのその後の導入を容易にするために、予め曲げられたまたは予め成形された遠位端を有する選択的カテーテルを使用することができる。
【0008】
首または首より上のインターベンション処置は、特にタイプIIIまたはbovine型弓部などの厳しい大動脈弓、またはLCCAが弓部から鋭角に出てくる場合に直面した場合に困難である。ガイドカテーテルを通して導入されるインターベンションデバイスは、しばしば比較的硬く、大動脈弓10から始まる血管の曲がりくねった部分のために、インターベンションデバイスと共にカテーテル30が不安定になり、大動脈弓10内に押し出される可能性がある。したがって、カテーテル30を大動脈弓の動脈枝に遠位方向にできるだけ遠くまで導入して、インターベンションデバイスがそれらの意図する治療位置に移動するための安定したプラットフォームを提供することが重要である。
【0009】
しかしながら、脳卒中インターベンションデバイスは、ますます大きくなり、その結果、これらのより大きなインターベンションデバイスに対して支持プラットフォームを提供するガイドシースは、より大きく、より支持的にならなければならない。より新しい、より支持的で可撓性のあるガイドカテーテルのデザインが開発されており、開発が続けられているが、支持されていない解剖学的屈曲部を横断するという課題は残っている。大動脈弓10内でのガイドカテーテルの適切な方向付けを容易にするために選択的カテーテルが使用されたとしても、選択的カテーテルの遠位端に静的に配置された湾曲部は、選択的カテーテル上にわたる大きな支持的インターベンションデバイスの前進をさらに容易にするために、より大きな安定性を達成するように、選択的カテーテルが大動脈弓10の選択された動脈枝の奥深く遠位方向に前進することを阻止する。
【0010】
したがって、大動脈弓からの動脈枝の1つなどの解剖学的血管内でガイドカテーテルを操作するための改善された手段に対する継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、血管内デバイスは、カテーテル近位端、カテーテル遠位端、およびカテーテル近位端とカテーテル遠位端との間に延在する内腔を有する細長い外側カテーテル本体を備える。一実施形態では、カテーテル遠位端は、1つまたは複数の注入開口部を有する。別の一実施形態では、カテーテル遠位端は、遠位ワイヤー先端を含む。さらに別の一実施形態では、カテーテル遠位端は、ヒトの大動脈弓の枝に挿入されるように構成される。
【0012】
血管内デバイスは、外側カテーテル本体の内腔内に摺動可能に配置された細長い内側関節運動部材をさらに備える。内側関節運動部材は、近位部材端および関節運動可能な遠位部材端を有する。
【0013】
血管内デバイスは、カテーテル近位端および近位部材端に機械的に結合された制御アセンブリをさらに備える。制御アセンブリは、外側カテーテル本体を内側関節運動部材の上にわたって遠位方向に並進させ、遠位部材端を関節運動させるように構成される。一実施形態では、制御アセンブリは、遠位部材端を単一湾曲の平面形状に関節運動させるように構成される。別の一実施形態では、制御アセンブリは、遠位部材端を多湾曲形状に関節運動させるように構成される。さらに別の一実施形態では、制御アセンブリは、手動操作の制御アセンブリである。さらに別の一実施形態では、制御アセンブリは、カテーテル近位端に解放可能に結合される。さらに別の一実施形態では、遠位部材端と制御アセンブリとの間に動作可能に接続された少なくとも1つのプルワイヤーをさらに備え、この場合、制御アセンブリは、プルワイヤー(複数可)に張力をかけることによって遠位部材端を関節運動させるように構成される。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、血管内デバイスは、カテーテル近位端、カテーテル遠位端、およびカテーテル近位端とカテーテル遠位端との間に延在する内腔を有する外側カテーテル本体の内腔内に摺動可能に配置されるように構成された細長い内側関節運動部材を備える。一実施形態では、カテーテル遠位端は、ヒトの大動脈弓の枝に挿入されるように構成される。内側関節運動部材は、近位部材端および関節運動可能な遠位部材端を有する。
【0015】
血管内デバイスは、近位部材端に機械的に結合された制御アセンブリをさらに備える。制御アセンブリは、カテーテル近位端に解放可能に結合されるようにさらに構成される。制御アセンブリは、内側関節運動部材の上にわたって外側カテーテル本体を遠位方向に並進させ、遠位部材端を関節運動させるようにさらに構成される。一実施形態では、制御アセンブリは、遠位部材端を単一湾曲の平面形状に関節運動させるように構成される。別の一実施形態では、制御アセンブリは、遠位部材端を多湾曲形状に関節運動させるように構成される。さらに別の一実施形態では、制御アセンブリは、手動操作の制御アセンブリである。さらに別の一実施形態では、制御アセンブリは、カテーテル近位端に解放可能に結合される。さらに別の一実施形態では、血管内デバイスは、遠位部材端と制御アセンブリとの間に動作可能に接続された少なくとも1つのプルワイヤーをさらに備え、この場合、制御アセンブリは、少なくとも1つのプルワイヤーに張力をかけることによって遠位部材端を関節運動させるように構成される。
【0016】
本発明の第3の態様によれば、カテーテル遠位端およびカテーテル内腔を有する細長い外側カテーテル本体と、カテーテル内腔内に摺動可能に配置された細長い内側部材とを含む血管内デバイスを使用して、患者に医療処置を実行する方法が提供される。内側部材は、遠位部材端を有する。
【0017】
この方法は、患者の血管系内に血管内デバイスを導入するステップ(例えば、大腿アプローチまたは橈骨アプローチ)を含む。この方法は、カテーテル遠位端が血管系内の血管孔に隣接するまで、血管内デバイスを患者の血管系内で遠位方向に前進させるステップをさらに含む。1つの方法では、血管は、患者の大動脈弓(例えば、III型大動脈弓)から延在する動脈枝(例えば、患者の左鎖骨下動脈(LSA)および左椎骨動脈(LVA)を形成する第1の動脈枝、患者の左総頸動脈(LCCA)を形成する第2の動脈枝、および患者の右鎖骨下動脈(RSA)、右椎骨動脈(RVA)、および右総頸動脈(RCCA)を形成する第3の動脈枝のうちの1つ)である。動脈枝が第3の動脈枝である場合、カテーテル遠位端を血管内にさらに前進させるステップは、カテーテル遠位端をRCCA内に前進させるステップを含むことができる。別の方法では、カテーテル遠位端は、遠位部材端に対してカテーテル遠位端を遠位方向に摺動させることによって、血管孔に挿入される。
【0018】
この方法は、カテーテル遠位端が血管孔に向けられるように、遠位部材端を能動的に関節運動させるステップをさらに含む。この方法は、カテーテル遠位端を血管孔に挿入するステップと、カテーテル遠位端が血管内にさらに前進するように、カテーテル遠位端を遠位部材端に対して遠位方向に摺動させるステップとをさらに含む。1つの方法は、カテーテル遠位端が血管内に留まりながら、ガイドカテーテルが標的治療部位に到達するまで、血管内デバイスの上にわたってガイドカテーテルを前進させるステップと、ガイドカテーテルが標的治療部位にある間に、ガイドカテーテルから血管内デバイスを取り除くステップとをさらに含むことができる。この方法は、治療デバイスが標的治療部位に到達するまでガイドカテーテルを通して治療デバイスを導入するステップと、治療デバイスを使用して標的治療部位で治療処置を実行するステップとをさらに含むことができる。別の方法は、外側カテーテル本体の内腔から内側部材を取り除くステップと、ガイドカテーテルが標的治療部位に到達するまで、カテーテル遠位端が血管内に留まりながら、外側カテーテル本体の内腔を通してガイドカテーテルを前進させるステップと、ガイドカテーテルが標的治療部位にある間に、ガイドカテーテルから血管内デバイスを取り除くステップとをさらに含むことができる。この他の方法は、治療デバイスが標的治療部位に到達するまで外側カテーテル本体の内腔を通して治療デバイスを導入するステップと、治療デバイスを使用して標的治療部位で治療処置を実行するステップとをさらに含むことができる。任意選択の方法は、カテーテルアセンブリを介して血管内に造影剤を送出するステップをさらに含む。
【0019】
実施形態の他のおよびさらなる態様および構成が、添付の図面を考慮して、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面は、開示された発明の好ましい実施形態の設計および有用性を示しており、類似の要素は、共通の符号によって参照されている。図は、一定の縮尺で描かれておらず、類似の構造または機能の要素は、図全体を通して同様の符号によって表されていることに留意すべきである。図は、実施形態の説明を容易にすることのみを意図していることにも留意すべきである。それらは、本発明の網羅的な説明として、または添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によってのみ定義される本発明の範囲に対する限定として意図されるものではない。また、開示された発明の図示された実施形態は、示されたすべての態様または利点を有する必要はない。さらに、開示された発明の特定の実施形態に関連して説明された態様または利点は、必ずしもその実施形態に限定されず、図示されていなくても他の実施形態で実施することができる。
【0021】
開示された発明の上記および他の利点および目的がどのように得られるかをよりよく理解するために、添付の図面に示されている特定の実施形態を参照して、上記で簡単に説明された開示された発明のより具体的な説明を行う。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解して、本発明は、添付の図面を使用することにより、追加の具体性および詳細と共に記述および説明される。
【0022】
図1図1Aは、患者の例示的なI型大動脈弓の平面図である。図1Bは、患者の例示的なII型大動脈弓の平面図である。図1Cは、患者の例示的なIII型大動脈弓の平面図である。
図2図2Aは、大腿アプローチを介して患者のIII型大動脈弓に導入されたカテーテルの平面図である。図2Bは、右橈骨動脈アプローチを介して患者のIII型大動脈弓に導入されたカテーテルの平面図であり、図2Aのカテーテルの平面図を含み、特に、カテーテル遠位端を湾曲した構成で示している。
図3図3Aは、本発明の例示的な一実施形態に従って構成された血管内デバイスの平面図であり、特に直線構成で示されている。図3Bは、図3Aの血管内デバイスの平面図であり、特に湾曲した構成で示されている。図3Cは、図3Aの血管内デバイスの平面図であり、特に湾曲した伸張構成で示されている。
図4図4A図4Gは、図3Aの血管内デバイスの異なる遠位端の平面図である。
図5図5は、複雑な湾曲部を呈する血管内デバイスの1つの例示的な遠位端の平面図である。
図6図6は、図3Aの血管内デバイスの例示的な内側関節運動部材の平面図である。
図7図7は、図6の内側関節運動部材の遠位端の1つの特定の構造の平面図である。
図8図8は、図3Aの血管内デバイスによって使用され得る制御アセンブリの例示的な一実施形態の斜視図である。
図9図9は、図8の制御アセンブリの縦断面図である。
図10図10は、図3Aの血管内デバイスによって使用され得る制御アセンブリの別の例示的な一実施形態の斜視図である。
図11図11は、図10の制御アセンブリの縦断面図である。
図12図12A図12Fは、図3Aの血管内デバイスの遠位端の平面図であり、特に一連の異なる構成で示されている。
図13図13は、図3の血管内デバイスを使用して患者に治療処置を実行する1つの例示的な方法を示す流れ図である。
図14図14A図14Iは、患者に治療処置を実行するために図13の方法によって使用される異なるステップを示す平面図である。
図15図15は、図3の血管内デバイスを使用して患者の診断処置を実行する1つの例示的な方法を示す流れ図である。
図16図16A図16Gは、患者に治療処置を実行するために図15の方法によって使用される異なるステップを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図3A図3Cを参照して、本発明の一実施形態に従って構成された血管内デバイス100の一実施形態についてここで説明する。図示の実施形態では、血管内デバイス100は、ガイドカテーテルを患者の体内の標的治療部位まで前進させるためのレール(特に、従来の選択的カテーテルまたは診断カテーテルの代替として使用される)として説明されており、そのガイドカテーテルはその後、治療デバイス(例えば、カテーテルまたはその他の器具)を標的治療部位に誘導するために使用される。血管内デバイス100は、特に大腿アプローチによるIII型大動脈弓または橈骨アプローチによる任意の大動脈弓構成を通じて、支持されていない湾曲部を介して比較的硬いデバイスの送出を容易にするのに役立つ。しかしながら、血管内デバイス100は、血管孔(例えば、患者の大動脈弓から離れた動脈枝の孔)にアクセスすることから利益を得ることができる医療処置(治療または診断)を行うことを目的とする、選択的カテーテル、ガイドワイヤー、または作業カテーテル自体を含む任意のデバイスの形態をとることができることを理解すべきである。
【0024】
カテーテル上の静的位置にある静的湾曲を有する選択的カテーテル、またはさらにはカテーテルが孔を通って血管内に遠位方向に前進することを防止する従来の操縦可能なカテーテルとは対照的に、血管内デバイス100は、血管内デバイス100の遠位端を血管孔に向かって、またはその内部に向けるように成形されることができ、血管内デバイス100の遠位端は、成形された湾曲部に対して遠位方向に進められ、それによって湾曲部が通過を容易にしている曲がりくねった解剖学的構造の位置に成形された湾曲部が留まりながら、血管内デバイスの遠位端の血管内の前進を容易にする。
【0025】
この目的のために、細長い血管内デバイス100は、一般的に、外側カテーテル本体102、外側カテーテル本体102内に摺動可能に配置された内側関節運動部材104、および制御アセンブリ106を備える。外側カテーテル本体102は、一般的に、近位端108、遠位端110、および内側関節運動部材104が内部に摺動可能に配置される内腔112を有する。内側関節運動部材104は、一般的に、近位端114および遠位端116を有する。制御アセンブリ106は、外側カテーテル本体102の近位端108および内側関節運動部材104の近位端114に機械的に結合され、内側関節運動部材104を関節運動させて、エネルギー伝達要素(および特に1つまたは複数のプルワイヤー)を介して、したがって細長い血管内デバイス100(図3Bを参照)を介して、内側関節運動部材に湾曲部を形成するように、かつ外側カテーテル本体102を内側関節運動部材104に対して長手方向軸118に沿って軸方向120に並進させる(図3C参照)ように構成される。図3Bに示される実施形態では、内側関節運動部材104によって形成される湾曲部は、単純な湾曲部(単一の屈曲部)として示されているが、以下でさらに詳細に説明されるように、内側関節運動部材104によって形成される湾曲部は、複数の屈曲部がある複雑な湾曲部である場合がある。任意選択で、制御アセンブリ106は、外側カテーテル本体102を内側関節運動部材104に対して、長手方向軸118の周りの回転方向122に並進させるように構成されてもよい。
【0026】
外側カテーテル本体102は、ほとんどの血管内カテーテルシャフトと同様の方法で構築することができ、様々な構築プロセスを使用して様々な材料から構成することができる。外側カテーテル本体102は、患者の体内に前進させたときに、外側カテーテル本体102が患者の血管の形状または曲率に倣う、採用する、または一致するように、実質的に柔軟であるか、または可撓性がある。あるいはまた、外側カテーテル本体102は、半剛性であってもよく、すなわち、屈曲の量を制限するために、硬い材料で作られることによって、またはコーティングまたはコイルで補強されることによってもよい。
【0027】
外側カテーテル本体102は、好ましくは、直径が約2フレンチ~9フレンチであり、長さが80cm~150cmである。外側カテーテル本体102は、円形の断面形状を有することが好ましい。しかしながら、楕円形、長方形、三角形、および様々なカスタマイズされた形状など、他の断面形状もまた使用することができる。外側カテーテル本体102は、好ましくは、体温でその形状を保持し、著しく軟化しない不活性で弾力的であるプラスチック材料(例えば、Pebax(登録商標)、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、Hytrel(登録商標)(ポリエステル))で予め成形される。あるいはまた、外側カテーテル本体102は、金属およびポリマーを含むがこれらに限定されない様々な材料から作製することができる。
【0028】
外側カテーテル本体102は、外側カテーテル本体102の長手方向軸に沿って高い軸方向剛性を提供しながら、低い曲げ剛性を示す複数の材料層および/または複数のチューブ構造から構成されてもよい。好ましくは、外側カテーテル本体102は、内側関節運動部材104から独立して回転できるように、適切なねじれ剛性を有する。典型的な設計には、編組にカプセル化されたニチノールスパインと、任意の可撓性のある、柔軟な、または適切なポリマー材料、レーザー切断ハイポチューブ、または生体適合性ポリマー材料、または低デュロメータープラスチック(例えば、ナイロン-12、Pebax(登録商標)、ポリウレタン、ポリエチレンなど)で構成される編組プラスチック複合構造が含まれる。
【0029】
内腔112は、外側カテーテル本体102の全長にわたって配置される。外側カテーテル本体102を貫通して延在する外側カテーテル本体102の内腔112の少なくとも一部は、内側ポリマーチューブ(例えば、厚さ0.001インチのポリテトラフルオロエチレン(PTFE))によって形成することができる。外側カテーテル本体102の遠位端110は、非外傷性遠位先端124で終端を迎える。図4Aに示される一実施形態では、カテーテル遠位端100は、予め成形された湾曲部を有する。図4B図4Gに示される他の実施形態では、カテーテル遠位端100は、直線構成を有する。図4A図4Bおよび図4Gに示される実施形態では、非外傷性遠位先端124は、閉鎖または密封され、図4C図4Fに示される実施形態では、非外傷性遠位先端124は、任意選択の造影剤注入を可能にするために外側カテーテル本体102の内腔112と流体連通する少なくとも1つの注入開口部126を有する。図4F図4Gに示される実施形態では、血管内デバイス100は、血管孔への進入を容易にする遠位ワイヤー先端128を含む。
【0030】
図5を参照すると、(図3A図3Cに示される)内側関節運動部材104の遠位端116、したがって外側カテーテルチューブ102の遠位端110は、直線構成から湾曲部構成へと徐々に関節運動して複数の湾曲部の平面形状になるように構成される。この実施形態では、内側関節運動部材104の遠位端116は、Simmons型の形状に、特に典型的な大動脈弓の湾曲を模倣するために平面内で曲がる近位湾曲部130、および同じ平面内であるが、近位湾曲部130とは反対側に曲がる遠位湾曲部130に関節運動することができるので、以下でさらに詳しく説明するように、内側関節運動部材104の遠位端116、したがって外側カテーテル本体102の遠位端110は、患者の大動脈弓から分岐する動脈枝の孔の方を向く。図5に示される複数の湾曲した構成は単なる例示であり、内側関節運動部材104の遠位端116の代替実施形態は、単一の湾曲部のみを含むことができるか、または互いに面外にある曲げまたはさらには複数の複合湾曲部を含む異なる形状または異なる数の曲げを有する異なるタイプの複合湾曲を含むことができることを理解すべきである。
【0031】
図6を参照すると、内側関節運動部材104は、遠位関節運動セクション134、中間移行セクション136、および近位シャフトセクション138の3つのセクションに機能的に分割されている。
【0032】
遠位関節運動セクション134は、適度な程度の軸方向圧縮および最適な横方向の可撓性を可能にすることが好ましい。遠位関節運動セクション134は、異なる剛性のいくつかの部分を有する。図7に示される例示的な一実施形態では、遠位関節運動セクション134は、遠位湾曲部132を形成する相対的に可撓性のある遠位関節運動領域140、近位湾曲部130を形成する相対的に可撓性のある近位関節運動領域144、および近位関節運動領域144と遠位関節運動領域140との間に位置する相対的に可撓性のない非関節運動領域142を備える。
【0033】
図7に示される実施形態では、遠位関節運動セクション134は、遠位関節運動セクション134の可撓性、曲げ弧長、最小曲げ半径、および曲げ面を調整する、スロット付き(例えば、マイクロ機械加工された、またはレーザーカットされた)ハイポチューブで形成される。特に、スロット付きハイポチューブは、関節運動セクション134が近位関節運動領域144と一致する近位湾曲部130と、遠位関節運動領域140と一致する遠位湾曲部132とを形成するように、戦略的にサイズ決めされ、配置されたスロット146を有する。遠位関節運動セクション134はさらに、遠位関節運動セクション134の近位関節運動領域144および遠位関節運動領域140が非関節運動領域142の周りで予測可能に関節運動して近位湾曲部130および遠位湾曲部132を形成するように、非関節運動領域142に配置され、そこに横方向の剛性を付加する一対の螺旋状ストラット148を含む。代替の一実施形態では、レーザー切断ハイポチューブの代わりに、適切なポリマー材料(例えば、Pebax(登録商標))から構成される異なる外側チューブを有することによって遠位関節運動セクション134を形成することができる。この代替のケースでは、軸方向の剛性および弾性特性を高めるために、遠位関節運動セクション134は、外側ポリマーチューブ内に埋め込まれた編組層(例えば、2オーバー2のパターンに68ピック/インチ(ppi)で編組された16本の0.0005インチ×0.003インチのスプリングテンパー304Vステンレス鋼ワイヤー)を含むことができるか、様々なピッチを有するコイルを含むことができるか、または遠位関節運動セクション134の可撓性および屈曲面を調整するためにスロット付き(例えば、マイクロ機械加工された)ハイポチューブを含むことができる。
【0034】
上記で簡単に説明したように、エネルギー伝達導管(複数可)は、機械的エネルギー伝達導管であり、特に、内側関節運動部材104内に延在する1つまたは複数のプルワイヤーの形態をとる。図示の実施形態では、単一のプルワイヤー150が使用される。図示の実施形態では、遠位関節運動セクション134は、プルワイヤー150の遠位端が取り付けられる遠位先端リング152と、中央管腔153であって、プルワイヤー150がそこを通って制御アセンブリ106に戻るように延在する中央管腔153とを備える。制御アセンブリ106の操作を介したプルワイヤー150の張力は(以下でさらに詳細に説明されるように)、遠位関節運動セクション134を直線構成から湾曲した構成に変形させる。
【0035】
プルワイヤー150は、金属ワイヤー、ケーブル、またはフィラメントであってもよいし、ポリマーワイヤー、ケーブル、またはフィラメントであってもよい。プルワイヤー150はまた、天然または有機材料または繊維でできていてもよい。プルワイヤー150は、変形、大幅な変形、または破損なしに様々な種類の荷重を支持することができる任意のタイプの適切なワイヤー、ケーブル、またはフィラメントとすることができる。機械的エネルギー伝達導管(複数可)は、プルワイヤーであるとして説明されてきたが、機械的エネルギー伝達導管は、プルワイヤーに限定されるべきではないことを理解すべきである。例えば、機械的伝達導管(複数可)は、軸方向には剛性が高いが横方向には可撓性をもつ小径のチューブまたはロッドの形態をとることができる。さらに、血管内デバイス100の代替実施形態では、非機械的、例えば、流体伝達導管(例えば、油圧または空気圧)、電気伝達導管(すなわち、電線)、電磁エネルギー(例えば、光)伝達導管などを、エネルギー伝達導管として使用することができる。本質的に、近位湾曲部130および遠位湾曲部132を形成するために遠位関節運動セクション134を関節運動させるために、内部関節運動部材104の近位端114から遠位端116に任意のエネルギーを伝達することができる任意のエネルギー伝達導管を使用することができる。
【0036】
内側関節運動部材104の遠位端116に沿って異なる力を加えて近位湾曲部130および遠位湾曲部132を生成するために、プルワイヤー150は、摺動可能に配置され、内部関節運動部材104を貫通して延在する中央管腔153内で浮遊する。代替の一実施形態では、2本のプルワイヤーが、内側関節運動部材104を貫通して延在する2つのプルワイヤー管腔(図示せず)を貫通して延在してもよい。この場合、プルワイヤー管腔は、低摩擦材料で構成されてもよいし、プルワイヤーが内部でそれぞれ浮遊する単に支持されていない管状空洞であってもよく、180度円周方向に離間した関係で内側関節運動部材104に設けられてもよい。
【0037】
以下でさらに詳細に説明するように、プルワイヤー150の近位端は、制御アセンブリ106に動作可能に結合され、プルワイヤー150の遠位端は、内側関節運動部材104の遠位端116に固定されるため、制御アセンブリ106の手動作動を介したプルワイヤー150のその操作は、近位湾曲部130および遠位湾曲部132を生成するために関節運動し得る内側関節運動部材104の遠位端116への力または張力を印加または変更する。図示の実施形態では、内側関節運動部材104の遠位関節運動セクション134を取り囲む外側カテーテル本体102の部分は弾力的であるので、制御アセンブリ106の手動作動を介してプルワイヤー150を解放すると、内側関節運動部材104の遠位関節運動セクション134の内部の力または張力が解放され、遠位関節運動セクション134が直線構成に戻ることを可能にする。
【0038】
中間移行セクション136は、軸方向の圧縮に抵抗して、遠位関節運動セクション134の近位端を明確に画定し、プルワイヤー150の動きを遠位関節運動セクション134に伝達する一方で、横方向の可撓性を維持して、血管内デバイス100が曲がりくねった解剖学的構造を越えて追跡できるようにする。中間移行セクション136は、スロット付きハイポチューブまたは適切なポリマー材料(例えば、Pebax(登録商標))から構成される外側チューブから形成することができる。
【0039】
近位シャフト部分138は、内側関節運動部材102を中間移行セクション136から内側関節運動部材102のより剛性の高い残りの部分に、スロット付きハイポチューブ構成の異なるセクションまたは適切なポリマー材料(例えば、Pebax(登録商標))から構成された異なる外側チューブを有することによって形成される異なる剛性の部分を有することによって、徐々に移行する。任意のポリマーチューブセグメントの軸方向剛性を高めるために、近位シャフトセクション138は、外側ポリマーチューブ内に埋め込まれた二重編組層(例えば、2オーバー2のパターンに68ピック/インチ(ppi)で編組された16本の0.0005インチ×0.003インチのスプリングテンパー304Vステンレス鋼ワイヤー)を備えることができる。
【0040】
上で簡単に論じたように、制御アセンブリ106は、内側関節運動部材104の遠位端116を直線構成と湾曲した構成との間で関節運動させ、外側カテーテル本体102を内側関節運動部材104の上にわたって長手方向軸118に沿って並進させ、任意選択で、外側カテーテル本体102を内側関節運動部材104に対して長手方向軸118を中心に回転させるように構成される。図示の実施形態では、制御アセンブリ106は、手動で操作される制御アセンブリである(すなわち、インターベンション専門医が片手または両手で制御アセンブリ106を操作する)。代替の一実施形態では、制御アセンブリ106は、例えばロボットデバイスを介して、自動化することができる。
【0041】
血管内デバイス100が、その後のガイドカテーテルまたは他のデバイスの導入のためのレールとして機能する場合、制御アセンブリ106の少なくとも一部は、外側カテーテル本体102に解放可能に結合することができる。したがって、制御アセンブリ106は、それに結合された内側関節運動部材104と共に、外側カテーテル本体102の内腔112から引き抜き、外側カテーテル本体102を患者の血管系内に残して、その後導入されるガイドカテーテル用のレールとして使用することができる。内側関節運動部材104は、取り付けられた制御アセンブリ106と共に、外側カテーテル本体102と共に包装されて販売され、血管内デバイス100を形成することができるか、または内側関節運動部材104は、取り付けられた制御アセンブリ106と共に、スタンドアロンのデバイスとして包装されて販売され、その後、外側カテーテル本体102に結合されて、血管内デバイス100を形成することができる。代替の一実施形態では、血管内デバイス100の外側カテーテル本体102は、ガイドカテーテルの形態をとる。この場合、内側関節運動部材104は、取り付けられた制御アセンブリ106と共に、イントロデューサとして包装されて販売され、その後、ガイドカテーテル102に結合されて、血管内デバイス100を形成することができる。したがって、制御アセンブリ106は、それに結合された内側関節運動部材104と共に、ガイドカテーテル102の内腔112から引き抜き、ガイドカテーテル102を患者の血管構造内に残して、それを通して治療デバイスをその後に導入することができる。
【0042】
ここで図8および図9を参照すると、図3A図3Bに示される血管内デバイス100で使用できる制御アセンブリ106aの例示的な一実施形態について説明する。制御アセンブリ106は、一般的に、フレーム154、フレーム154によって支持される回転アクチュエータ156、およびフレーム154によって支持される複合軸方向並進/関節運動アクチュエータ158を備える。
【0043】
フレーム154は、少なくとも1つの摺動ロッド160(この場合は4つの摺動ロッド)、摺動ロッド160の近位端を互いに対して固定する近位端キャップ162、および摺動ロッド160の遠位端を互いに対して固定する遠位端キャップ164を備える。図9に最もよく示されるように、遠位端キャップ164は、管腔166であって、これを通して内側関節運動部材104の近位端114が摺動可能に配置される管腔166と、環状隆起部170を有する縮小ボス168とを有する。
【0044】
回転アクチュエータ156は、外側カテーテル本体102の近位端108が内部に固定される遠位管腔174を有するノーズ172と、縮小ボス168の環状隆起部170が内部に回転可能に配置される近位環状空洞176とを備える。したがって、ノーズ172は、遠位端キャップ164に対して長手方向軸118を中心に双方向196に回転させることができ、それにより、外側カテーテル本体102をフレーム154に対して長手方向軸118を中心に回転させることができる。制御アセンブリ106aの少なくとも一部が外側カテーテル本体102の近位端108に解放可能に結合される場合、ノーズ172は、例えば、ねじ式構成(図示せず)を使用して、外側カテーテル本体102の近位端108に解放可能に結合することができる。
【0045】
軸方向並進/関節運動アクチュエータ158は、少なくとも1つの管腔182であって、それを通してフレーム154の摺動ロッド160が摺動可能に配置される少なくとも1つの管腔182(この場合は4つの管腔)を有するハウジング180を備える。ハウジング180は、内側関節運動部材104の近位端114が内部に固定される遠位開口部184をさらに有する。したがって、フレーム154は、軸方向並進/関節運動アクチュエータ158のハウジング180に対して双方向198に長手方向軸118に沿って軸方向に並進することができ、それによって、外側カテーテル本体102を内側関節運動部材104に対して長手方向軸118に沿って軸方向に並進させることができる。
【0046】
図9に最もよく示されるように、ハウジング180はまた、遠位開口部184と連通する縮径管腔186を有し、そこを通ってプルワイヤー150が摺動可能に配置される。軸方向並進/関節運動アクチュエータ158は、ハウジング180の周りを回転可能に摺動可能なピニオンカラー188の形態の回転ギアと、ハウジング180内で軸方向に摺動可能なラック190の形態のリニアギアとをさらに備える。ピニオンカラー188は、雌ねじ192を有し、ラックは、ピニオンカラー188の雌ねじ192と係合する歯部194の直線列を有する。ラック190は、プルワイヤー150の近位端が内部に取り付けられる管腔196を有する。
【0047】
したがって、ピニオンカラー188は、ハウジング180に対して長手方向軸118の周りを双方向199に回転させ、それによって、内側関節運動部材104の遠位端116の関節運動を増加させる内側関節運動部材104内でプルワイヤー150を近位方向に並進させるか、または内側関節運動部材104の遠位端116の関節運動を減少させる内側関節運動部材104内でプルワイヤー150を遠位方向に並進させることができる。
【0048】
制御アセンブリ106aの1つの特定の実施形態のみを説明したが、外側カテーテル本体102を内側関節運動部材104の上にわたって遠位方向に並進させ、内側関節運動部材104の遠位端116を直線構成と湾曲した構成との間で関節運動させることができる任意の制御アセンブリを使用できることを理解すべきである。
【0049】
例えば、図10および図11を参照して、制御アセンブリ106bの代替の一実施形態を説明する。上記の制御アセンブリ106aと同様に、制御アセンブリ106bは、外側カテーテル本体102の近位端108および内側関節運動部材104の近位端114に機械的に結合される。制御アセンブリ106bは、フレーム202と、フレーム202によって支持される複合軸方向並進/関節運動アクチュエータ204とを備える。
【0050】
フレーム202は、少なくとも1つの摺動ロッド206(この場合は、2つの摺動ロッド)と、摺動ロッド206の遠位端を互いに対して固定する遠位端キャップ208とを備える。図11に最もよく示されるように、遠位端キャップ208は、外側カテーテル本体102の近位端108が内部に取り付けられる遠位開口部210と、貫通管腔212であって、それを通して内側関節運動部材104の近位端114が摺動可能に配置されている貫通管腔212とを有する。制御アセンブリ106bの少なくとも一部が、外側カテーテル本体102の近位端108に解放可能に結合される場合、ノーズ遠位端キャップ208は、例えば、ねじ式構成(図示せず)を使用して、外側カテーテル本体102の近位端108に解放可能に結合することができる。
【0051】
軸方向並進/関節運動アクチュエータ204は、操作者が手動で握るように構成され、操作者が外側カテーテル本体102および内側関節運動部材104をより容易に操作できるように人間工学的に成形されたハンドル本体214を備える。図示の実施形態では、ハンドル本体214は、丸みを帯びた長方形の断面を有するが、別の実施形態では、ハンドル本体214は、操作者がそれをしっかりと握ることができる任意の断面(例えば、円形または六角形の断面)を有してもよい。ハンドル本体214は、フレーム202の摺動ロッド206が内部に摺動可能に配置される少なくとも1つのブラインド管腔(図示せず)(この場合、2つのブラインド管腔)を有する。内側関節運動部材104の近位端114は、コネクタ216を介してハンドル本体214に取り付けられる。したがって、遠位端キャップ208および取り付けられたフレーム202は、軸方向並進/関節運動アクチュエータ204に対して双方向222に長手方向軸118に沿って軸方向に並進され、それによって、外側カテーテル本体102を内側関節運動部材104に対して長手方向軸118に沿って軸方向に並進させることができる。
【0052】
ハンドル本体214は、コネクタ216と連通する管腔218を有し、この管腔を通ってプルワイヤー150が摺動可能に配置される。軸方向並進/関節運動アクチュエータ204は、ハンドル本体214の外部スロット223内に軸方向に摺動可能に配置された摺動機構220をさらに備える。プルワイヤー150の近位端は、摺動機構220に取り付けられる。したがって、摺動機構220は、長手方向軸118に沿って双方向224に、ハンドル本体214に対して近位方向に摺動され、それによってプルワイヤー150を内側関節運動部材104内で近位方向に並進させることができ、これは内側関節運動部材104の遠位関節運動セクション134の関節運動を増加させ、摺動機構220は、ハンドル本体214に対して長手方向軸118に沿って遠位方向に摺動され、それによって内側関節部材104内でプルワイヤー150を遠位方向に並進させることができ、これは内側関節部材104の遠位端116の関節運動を減少させる。
【0053】
ここで図12A図12Fを参照して、制御アセンブリ106を操作して一連の関節運動および軸方向並進操作を実行する1つの技法について説明する。図12Aに示されるように、外側カテーテルチューブ102の遠位端110は、内側関節運動部材104に対してその最も近位の位置にあり、内側関節運動部材104の遠位端116、したがって外側カテーテルチューブ102の遠位端110は、直線構成にある。この構成では、血管内デバイス100が制御アセンブリ106aを備える場合(図8図9を参照)、軸方向並進/作動アクチュエータ158のハウジング180は、フレーム154に対して最も遠位の位置にあり、ピニオンカラー188は、軸方向並進/関節運動アクチュエータ158のハウジング180に対して中立位置で、長手方向軸118の周りを回転する。血管内デバイス100が制御アセンブリ106bを備える場合(図10図11を参照)、軸方向並進/作動アクチュエータ204のハンドル本体214は、フレーム202に対してその最も遠位の位置にあり、摺動機構220は、軸方向並進/関節運動アクチュエータ204のハンドル本体214に対してその最も遠位の位置にある。
【0054】
図12B図12Dに示されるように、血管内デバイス100の内側関節運動部材104の遠位端116、したがって外側カテーテルチューブ102の遠位端110はその後、直線構成から湾曲した構成に徐々に変形させることができる。この特定の実施形態では、湾曲した構成は、近位湾曲部130および遠位湾曲部132からなるSimmonsのような形状を有する(図12Dを参照)。血管内デバイス100が制御アセンブリ106aを備える場合(図8図9参照)、直線構成から湾曲した構成への変形中、ピニオンカラー188は、長手方向軸118の周りを軸方向並進/関節運動アクチュエータ158のハウジング180に対して中立位置から湾曲作動位置まで回転する。血管内デバイス100が制御アセンブリ106bを備える場合(図10図11を参照)、摺動機構220は、軸方向並進/関節運動アクチュエータ204のハンドル本体214に対してその最も遠位の位置からその最も近位の位置まで移動される。
【0055】
図12E図12Fに示されるように、外側カテーテルチューブ102の遠位端100は、内側関節運動部材104に対して、その最も近位の位置からその最も遠位の位置まで徐々に移動される。血管内デバイス100が制御アセンブリ106aを備える場合(図8図9参照)、これは、フレーム154を遠位方向に並進させ、その際に軸方向並進/作動アクチュエータ158のハウジング180をフレーム154に対してその最も遠位の位置から最も近位の位置まで移動させることによって達成される。血管内デバイス100が制御アセンブリ106bを備える場合(図10図11を参照)、これは、フレーム202を遠位方向に並進させ、その際に軸方向並進/作動アクチュエータ204のハンドル本体214をフレーム202に対してその最も遠位の位置から最も近位の位置まで移動させることによって達成される。
【0056】
ここで図13および図14A図14Hを参照して、血管内デバイス100を使用して患者に医療処置を実行する1つの例示的な方法300を説明する。方法300では、医療処置は、血管404のうちの1つ(すなわち、患者の大動脈弓402から延在する左鎖骨下動脈(LSA)406および左椎骨動脈(LVA)408を形成する第1の動脈枝404a、患者の大動脈弓402から延在する左総頸動脈(LCCA)410を形成する第2の動脈枝404b、および患者の大動脈弓402から延在する右鎖骨下動脈(RSA)412、右椎骨動脈(RVA)414、および右総頸動脈(RCCA)416を形成する腕頭動脈404cのうちの1つ)に対して実行される治療処置(例えば、ステントの配置)である。血管内デバイス100の使用は、図14A図14Iに示されるように、III型大動脈弓から延在する第2および第3の枝404b、404cのアクセスに適しているが、血管内デバイス100を使用して、III型大動脈弓から延在する第1の枝404a、またはI型大動脈弓またはII型大動脈弓から延在する枝のいずれかにアクセスしてもよい。
【0057】
方法300は、最初に、血管内デバイス100を患者の血管系内に導入するステップを含み、この場合、大腿アプローチを介する(ステップ302)(図14Aを参照)。方法300はさらに、外側カテーテル本体102の遠位端114が患者の血管系内の血管孔に隣接するまで、この場合、患者の大動脈弓402の周りに、および第3の動脈枝404cの孔418に隣接して、血管内デバイス100を患者の血管系内で遠位方向に前進させるステップ(ステップ304)を含む(図14Bを参照)。図示の方法では、血管内デバイス100は、外側カテーテル本体102の遠位端114が患者の大動脈弁420の近位に来るまで、遠位方向に進められる。
【0058】
方法300は、外側カテーテル本体102の遠位端110が血管孔の方を向くように血管内デバイス100を操作するステップをさらに含み、図示の方法では、患者の大動脈弓402から延在する第3の動脈枝404cの孔の方を向く。特に、方法300は、制御アセンブリ106の操作を介して内側関節運動部材104の遠位端116を能動的に関節運動させるステップ(ステップ306)を含む(図14Cを参照)。
【0059】
1つの方法では、内側関節運動部材104の関節運動した遠位端116は、患者の大動脈弓402の曲率を模倣するために平面内で曲がる近位湾曲部126、および同じ平面内であるが、近位湾曲部126とは反対側に曲がる遠位湾曲部128に関節運動することができるので、内側関節運動部材104の遠位端116、したがって外側カテーテル本体102の遠位端110は、患者の大動脈弓402から延在する第3の動脈枝404cの孔の方を向く。別の方法では、内側関節運動部材104の関節運動した遠位端116は、内側関節運動部材104の遠位端116、したがって外側カテーテル本体102の遠位端110を、患者の大動脈弓402から延在する第3の動脈枝404cの孔の方へ向ける単一の湾曲に関節運動され、一方、患者の大動脈弓402の長さに沿って存在する内側関節運動部材104の部分は、大動脈弓402の内壁によって内側関節運動部材に加えられる圧力によって受動的に関節運動される。
【0060】
第3の動脈枝404cの孔が、内側関節運動部材104の関節運動された遠位端116の遠位湾曲部128の平面内に存在しない場合、方法30は、内側関節運動部材104の遠位端116が関節運動している間に、第3の動脈枝404cの孔が、内側関節運動部材104の関節運動した遠位端116の遠位湾曲部128の平面内に存在するまで、長手方向軸118の周りで外側カテーテル本体102の遠位端110を能動的に回転させるステップ(ステップ308)を含むことができる。
【0061】
方法300は、外側カテーテル本体102の遠位端110を血管孔に挿入するステップ、図示の方法では、患者の大動脈弓402から延在する第3の動脈枝404cの孔に挿入するステップをさらに含む。特に、外側カテーテル本体102の遠位端110は、内側関節運動部材104の遠位端116に対して外側カテーテル本体102の遠位端110を遠位方向に並進させることによって、第3の動脈枝404cの孔に挿入される(ステップ310)(図14D参照)。
【0062】
重要なことは、外側カテーテル本体102の遠位端110が、内側関節運動部材104の遠位端116に対して遠位方向に並進するとき、内側関節運動部材104の関節運動された遠位端116は、外側カテーテル本体102に動的湾曲を課すことである。すなわち、外側カテーテル本体102が、内側関節運動部材104に対して遠位方向に並進するとき、内側関節運動部材104の関節運動された遠位端116によって外側カテーテル本体102に課せられた湾曲部は、患者の大動脈弓402に対して静止したままであるが、外側カテーテル本体102自体に対しては動く。したがって、選択的カテーテルの本体に対して移動することができない静的湾曲を有する、したがって、選択的カテーテルの遠位端が血管孔に導入されるのを防止または妨害する可能性がある選択的カテーテルとは対照的に、内側関節運動部材104の関節運動された遠位端116によって外部カテーテル本体102に課せられた動的湾曲は、外部カテーテル本体102の遠位端110の血管孔(この場合は、第3の動脈枝404cの孔)への導入を妨げない。
【0063】
方法300は、外側カテーテル本体102の動的湾曲が患者の大動脈弓402の外側曲率(すなわち、大動脈弓402の壁の部分であって、そこから動脈枝404が延在する部分)に対して締め付けられるように、血管内デバイス100を近位方向に引っ張るステップ(ステップ312)をさらに含む(図14E参照)。結果として、大動脈弓402は、血管内デバイス100の遠位端を支持し、したがって安定させ、外側カテーテル本体102の遠位端110は、患者の大動脈弓402から延在する第3の動脈枝404c内に(この場合、RCCA416内に)さらに遠位方向に進められる。
【0064】
方法300は、外側カテーテル本体102の遠位端110が血管内にさらに前進する(この場合、治療標的部位422でRCCA416内にさらに前進する)ように、外側カテーテル本体102の遠位端110を内側関節運動部材104の遠位端116に対して遠位方向に並進させるステップ(ステップ314)をさらに含む(図14F参照)。このようにして、血管内デバイス100の遠位端は、患者の大動脈弓402内にさらに固定される一方で、RCCA416内の治療標的部位422へのアクセスも提供する。
【0065】
方法300は、ガイドカテーテル424の遠位端が標的治療部位422に到達するまで、外側カテーテル本体102の遠位端110がRCCA416内に留まりながら、血管内デバイス100の上にわたってガイドカテーテル424を前進させるステップ(ステップ316)をさらに含む(図14G参照)。図示の方法では、これは、外側カテーテル本体102の近位端108から制御アセンブリ106aまたは制御アセンブリ106bを取り外し、取り外された制御アセンブリ106aまたは取り外された制御アセンブリ106bを引っ張ることにより、外側カテーテル本体102の内腔112から内側関節運動部材104を取り除き、外側カテーテル本体102の近位端108を越えてガイドカテーテル424の遠位端を通すことによって達成することができる。
【0066】
方法300は、ガイドカテーテル424の遠位端が標的治療部位422に留まりながら、血管内デバイス100(特に、血管内デバイス100の外側カテーテル本体102)をガイドカテーテル424から取り除くステップ(ステップ318)(図14H参照)と、治療デバイス426の遠位端が標的治療部位422に位置するまで、ガイドカテーテル424を通して治療デバイス426(およびこの場合、ステント送出カテーテル)を導入するステップ(ステップ320)(図14I参照)とをさらに含む。
【0067】
血管内デバイス100の外側カテーテル本体102が、ガイドカテーテルの形態を取る別の実施形態では、ステップ316でガイドカテーテル424を血管内デバイス100の上にわたって前進させ、ステップ318で血管内デバイス100をガイドカテーテル424から取り除き、ステップ320でガイドカテーテル424を通して治療デバイス426を導入する代わりに、方法300は、代替的に、外側カテーテル本体102の内腔112から内側関節運動部材104を取り除くステップ(ステップ322)と、治療デバイス426の遠位端が標的治療部位422に位置するまで、外側カテーテル本体102の内腔112を通して治療デバイス426(この場合、ステント送出カテーテル)を導入するステップとを含む。
【0068】
最後に、方法300は、治療デバイス426を使用して標的治療部位422で治療処置を実行するステップ、特に、標的治療部位422でRCCA416内にステントを配置するステップ(ステップ326)を含む。
【0069】
ここで図15および図16A図16Gを参照して、血管内デバイス100を使用して患者に医療処置を実行する別の例示的な方法350を説明する。方法350では、医療処置は、動脈枝404の1つに対して実行される診断処置(例えば、造影(例えば、血管造影)剤の導入)である。特に、血管内デバイス100が、上にわたってガイドカテーテルが導入される安定したレールとして使用され、別個の治療デバイスが医療処置を実行するために使用される、図13に関して上記した方法300とは対照的に、血管内方法350は、医療処置を行うために血管内デバイス100自体を使用する。
【0070】
方法350は、最初に、血管内デバイス100を患者の血管系内に(この場合は、橈骨アプローチを介して)導入するステップ(ステップ352)を含む(図16Aを参照)。方法350は、外側カテーテル本体102の遠位端114が患者の血管系内の血管孔に隣接するまで、患者の血管系内で血管内デバイス100を遠位方向に(この場合は、RSA410を通って、第3の動脈枝404cを通って、第2の動脈枝404bの孔428に隣接する大動脈弓402内へ)前進させるステップ(ステップ354)をさらに含む(図16Bを参照)。図示の方法では、血管内デバイス100は、外側カテーテル本体102の遠位端114が患者の大動脈弁416の近位になるまで、遠位方向に進められる。
【0071】
方法350は、外側カテーテル本体102の遠位端110が血管孔(図示の方法では、患者の大動脈弓402から延在する第2の動脈枝404bの孔)の方を向くように血管内デバイス100を操作するステップをさらに含む。
【0072】
特に、方法350は、内側関節運動部材104の遠位端116を能動的に関節運動させるステップ(ステップ356)を含む(図16Cを参照)。図示の方法では、内側関節運動部材104の遠位端116の関節運動は、方法300のステップ306に関して上記で説明したのと同じ方法で達成することができる。この方法では、内側関節運動部材104の関節運動した遠位端116は、内側関節運動部材104の遠位端116、したがって外側カテーテル本体102の遠位端110を、患者の大動脈弓402から延在する第2の動脈枝404bの孔の方に向ける単一の湾曲部に関節運動する一方で、RSA410の長さに沿って存在する内側関節運動部材104の部分および第2の動脈枝404bは、RSA410の内壁および第2の動脈枝404bによって内側関節運動部材104に課される圧力によって受動的に関節運動する。
【0073】
第2の動脈枝404bの孔が、内側関節運動部材104の関節運動した遠位端116の湾曲部の平面内に存在しない場合、方法350は、第2の動脈枝404bの孔が、内側関節運動部材104の関節運動した遠位端116の湾曲部の平面内に存在するまで、内側関節運動部材104の遠位端116が関節運動している間に、外側カテーテル本体102の遠位端110を長手方向軸118の周りに回転させるステップ(ステップ358)を含むことができる。図示された方法では、方法300のステップ308に関して上記で説明したのと同じ方法で、長手方向軸118を中心とした外側カテーテル本体102の回転を実行することができる。
【0074】
方法350は、外側カテーテル本体102の遠位端110を血管孔(図示の方法では、患者の大動脈弓402から延在する第2の動脈枝404bの孔)に挿入するステップをさらに含む。特に、外側カテーテル本体102の遠位端110は、外側カテーテル本体102の遠位端110を内側関節運動部材104の遠位端116に対して遠位方向に並進させることによって、第2の動脈枝404bの孔に挿入される(ステップ360)(図16D参照)。内側関節運動部材104の遠位端116に対する外側カテーテル本体102の遠位端110の遠位並進は、方法300のステップ310に関して上記で説明したのと同じ方法で達成することができ、外側カテーテル本体102の遠位端110を血管孔(この場合は、第2の動脈枝404bの孔)へ導入するのを妨げない、内側関節部材104の関節運動した遠位端116によって外側カテーテル本体102に動的湾曲を課す同じ結果が得られる。
【0075】
方法350は、外側カテーテル本体102の動的湾曲が患者の大動脈弓402の外側曲率(すなわち、大動脈弓402の壁の部分であって、そこから動脈枝404が延在する部分)に対して締め付けられるように、血管内デバイス100を近位方向に引っ張るステップ(ステップ362)をさらに含む(図16E参照)。結果として、大動脈弓402は、血管内デバイス100の遠位端を支持し、したがって安定させ、外側カテーテル本体102の遠位端110は、患者の大動脈弓402から延在する第2の動脈枝404c内に(この場合、LCCA408内に)さらに遠位方向に進められる。
【0076】
方法350は、外側カテーテル本体102の遠位端110が血管内にさらに前進する(この場合、診断標的部位430でLCCA408内にさらに前進する)ように、外側カテーテル本体102の遠位端110を内側関節運動部材104の遠位端116に対して遠位方向に並進させるステップ(ステップ364)をさらに含む(図16F参照)。このようにして、血管内デバイス100の遠位端は、患者の大動脈弓402内にさらに固定される一方で、LCCA408内の診断標的部位430へのアクセスも提供する。最後に、方法350は、血管内デバイス100を介してLCCA408内に造影剤を導入するステップ(ステップ366)を含む(図16Gを参照)。
【0077】
本明細書では特定の実施形態が示され、説明されてきたが、それらが開示された発明を限定することを意図していないことが当業者には理解され、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によってのみ定義される開示された発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、および修正(例えば、様々な部品の寸法、部品の組み合わせ)を行うことができることが当業者には明らかであろう。したがって、明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で見なされるべきである。本明細書に示され、説明される様々な実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれ得る、開示された発明の代替物、修正物、および均等物を網羅することを意図している。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図14H
図14I
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図16G
【国際調査報告】