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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-19
(54)【発明の名称】炭化水素からの水素の生成
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/24 20060101AFI20240112BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20240112BHJP
【FI】
C01B3/24
C01B32/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541079
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 US2022011691
(87)【国際公開番号】W WO2022150639
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/134,796
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230891
【弁理士】
【氏名又は名称】里見 紗弥子
(72)【発明者】
【氏名】ジョナ ディー アールバッチャー
(72)【発明者】
【氏名】シャシャンク ヴァンミディ ラクシュマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ルーク ホーリック
(72)【発明者】
【氏名】ジーナ レバ グリニッジ
【テーマコード(参考)】
4G140
4G146
【Fターム(参考)】
4G140DA03
4G146AA01
4G146AB01
4G146BA12
4G146BC03
(57)【要約】
【解決手段】水素を生成する方法は、金属およびハロゲン化物を含む金属塩を昇華させて、金属およびハロゲン化物を含む気相金属塩を生じさせるステップと、気相金属塩を気相炭化水素と接触させて、元素形態の金属、元素形態の炭素、水素ガス、およびハロゲン化物を含むハロゲン化水素を生じさせるステップと、を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応方法であって、
金属とハロゲン化物とを含む金属塩を昇華させて、前記金属と前記ハロゲン化物とを含む気相金属塩を生じさせるステップと、並びに
前記気相金属塩を気相炭化水素と接触させて、元素形態の前記金属、元素形態の炭素、水素ガス、および前記ハロゲン化物を含むハロゲン化水素を生じさせるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記接触ステップは、約800℃と約1300℃との間、または約850℃と約1300℃との間の範囲における温度で生起する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記金属は、マグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、および銅のうちの1つまたは複数を含む方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、およびヨウ化物のうちの1つまたは複数を含む方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記気相炭化水素は天然ガスを含む方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記気相炭化水素は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびノナン、またはそれらの任意の異性体のうちの1つまたは複数を含む方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記昇華ステップは、約0.01MPa(0.1バール)と約5MPa(50バール)との間の範囲における圧力で生起する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記接触ステップは、約0.01MPa(0.1バール)と約5MPa(50バール)との間の範囲の圧力で生起する方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記気相炭化水素を熱分解して前記炭素および前記水素ガスを生じさせるステップを含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記接触ステップは、前記気相炭化水素を用いて前記気相金属塩中の前記金属を還元するステップを含む方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、前記熱分解ステップは前記金属によって触媒される方法。
【請求項12】
請求項9に記載の方法において、前記熱分解のための熱は電力によって供給される方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、さらに、前記金属を前記ハロゲン化水素と接触させて、気相の前記金属塩および水素ガスを生じさせるステップを含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、さらに、前記金属を前記ハロゲン化水素と接触させる前に前記ハロゲン化水素を加熱するステップを含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記ハロゲン化水素を加熱するステップは、前記ハロゲン化水素を少なくとも1000℃の温度に加熱するステップを含む方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、前記金属を高温の前記ハロゲン化水素と接触させて前記金属塩を生じさせるステップは、断熱反応器中で生起する方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法であって、さらに、前記金属塩を凝縮させて固相の前記金属塩を生じさせるステップを含む方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、固相の前記金属塩は粒子の形態であり、前記粒子は少なくとも部分的に前記炭素で被覆されている方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、さらに、前記金属塩を、少なくとも1000℃の温度を有する塩化水素と接触させて、気相のハロゲン化金属および粒子状炭素材料を生じさせるステップを含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、前記粒子状炭素材料は、多数の中空炭素粒子を含む方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記中空炭素粒子は約200nm~約300nmの範囲における直径を有する方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記粒子状炭素材料は100重量ppm未満の金属を含む方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法において、前記ハロゲン化物は塩化物であり、前記金属はニッケルである方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法において、前記炭化水素はメタンを含む方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法において、前記昇華ステップは前記接触に先立って生起する方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法において、前記昇華ステップは、前記気相炭化水素とともに反応器の反応ゾーンに向かって前記金属塩を前進させるステップを含む方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、さらに、前記反応ゾーンを約800℃と約1300℃との間の範囲の温度に加熱するステップを含む方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、前記反応ゾーンを加熱するステップは電力を用いて達成される方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、放射熱を発生させるために前記電力が利用される方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法において、前記放射熱は電気炉または誘導加熱素子によって供給される方法。
【請求項31】
請求項1に記載の方法において、前記昇華ステップおよび前記接触ステップは、反応器の反応ゾーンにおいて同時に生起する方法。
【請求項32】
請求項1に記載の方法において、前記金属塩は無水である方法。
【請求項33】
水素ガスを発生させる方法であって、
気相のハロゲン化金属を気相の炭化水素と接触させるステップと、
前記ハロゲン化金属および前記炭化水素を分解して、水素およびハロゲン化水素を含む気体生成物、ならびに金属および炭素を含む固体生成物を生じさせるステップと、
前記水素を前記ハロゲン化水素から分離するステップと、並びに
前記ハロゲン化水素を前記金属と接触させて、前記気相のハロゲン化金属を生じさせるステップと、
を含む方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、さらに、前記ハロゲン化水素を金属と接触させた後、前記気相のハロゲン化金属を冷却して固相のハロゲン化金属を生じさせるステップを含む方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、さらに、前記固相のハロゲン化金属を加熱して前記気相のハロゲン化金属を生じさせるステップを含む方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法であって、さらに、前記気相のハロゲン化金属を前記気相の炭化水素と接触させるステップを含む方法。
【請求項37】
請求項33に記載の方法であって、さらに、前記固体生成物から前記気体生成物を分離するステップを含む方法。
【請求項38】
請求項33に記載の方法であって、さらに、前記ハロゲン化水素を前記金属と接触させる前に、前記ハロゲン化水素を少なくとも約1000℃の温度に加熱するステップを含む方法。
【請求項39】
請求項33に記載の方法であって、さらに、前記固体生成物を前記ハロゲン化水素と接触させて、前記気相のハロゲン化金属および前記炭素を生じさせるステップを含む方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、さらに、前記ハロゲン化金属を凝縮させて、ハロゲン化金属と前記炭素とを含む固体混合物を生じさせるステップを含む方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法において、前記固体混合物は、前記炭素の一部で被覆された前記ハロゲン化金属の粒子を含む方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、さらに、前記固体混合物を、少なくとも1000℃の温度を有する塩化水素と接触させて、前記気相のハロゲン化金属および粒子状炭素材料を生じさせるステップを含む方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法において、前記粒子状炭素材料は多数の中空炭素粒子を含む方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法において、前記中空炭素粒子は約200nm~約300nmの範囲における直径を有する方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法において、前記粒子状炭素材料は100重量ppm未満の前記金属を含む方法。
【請求項46】
水素生成システムであって、
気体反応物を反応させるように構成された第1の反応器と、
前記第1の反応器からの気体および固体反応生成物の混合物を受け取るように構成された熱交換器と、
前記熱交換器からの気体流出を受け取り、また前記熱交換器に気体流入を供給するように構成された分離器と、
前記熱交換器からの固体流入と気体流入とを反応させるように構成された第2の反応器と、
前記第2の反応器からの反応生成物を凝縮するように構成された冷却器と、
前記冷却器からの固体生成物を受け取り、前記固体生成物を蒸発させて気体生成物を生じさせ、また前記第1の反応器に前記気体生成物を供給するように構成された第3の反応器と、
を備える、システム。
【請求項47】
請求項46に記載のシステムにおいて、前記第1の反応器、前記第2の反応器、またはその両方が、約800℃と約1200℃との間の範囲における温度で動作するように構成されている、システム。
【請求項48】
請求項46に記載のシステムにおいて、前記第2の反応器は断熱反応器である、システム。
【請求項49】
請求項46に記載のシステムにおいて、前記第3の反応器は前記固体生成物の成分を前記冷却器から分離するように構成されている、システム。
【請求項50】
請求項46に記載のシステムであって、さらに、前記熱交換器からの前記気体流入から水素を除去するように構成された追加の分離器を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本出願は、「炭化水素からの水素の生成(PRODUCTION OF HYDROGEN FROM HYDROCARBONS)」と題された、2021年1月7日に出願された米国特許出願第63/134,796号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[連邦政府の後援による研究または開発]
本発明は、米国エネルギー省の一部であるエネルギー先端研究計画局から授与された契約DE-AR00001019の下で政府の支援を受けて行われた。政府は本発明について一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、炭化水素から水素を生成する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
水素は、典型的には水蒸気メタン改質または電気分解によって生成される。水蒸気メタン改質では、天然ガスを高温および高圧で水に反応させると、水素および一酸化炭素が生じる。付加的な水素は、一酸化炭素を水に反応させて水素および二酸化炭素を生じることによって得ることができる。電気分解では、電気化学反応を利用して、水を水素および酸素に分解する。水蒸気メタン改質は全水素の95%超を生成するのに利用されるが、大量の水を必要とし、また年間数百万トンの二酸化炭素を生成する。電気分解は水蒸気メタン改質よりもコスト効率が悪く、大量の電力だけでなく大量の水を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、一般に、炭化水素から水素を生成するためのシステムおよび方法に関する。実施形態は、炭素元素、ハロゲン化水素および金属を生じさせる、気相炭化水素を用いた気相ハロゲン化金属の還元、ならびに、水素ガスおよびハロゲン化金属を生じさせる、ハロゲン化水素を用いた金属の再酸化のためのシステムおよび方法を含む。還元されたハロゲン化金属および炭素は、気相炭化水素の熱分解を触媒し、追加の炭素元素および水素ガスが生じる。
【0006】
開示された発明概念は添付の特許請求の範囲において定義されたものを含むが、発明概念は以下の実施形態に従って定義することも可能であることを理解されたい。
【0007】
添付の特許請求の範囲の実施形態および上記の実施形態に加えて、以下の番号付きの実施形態もまた革新的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態1は、反応方法であって、
金属とハロゲン化物とを含む金属塩を昇華させて、該金属と該ハロゲン化物とを含む気相金属塩を生じさせるステップと、並びに
該気相金属塩を気相炭化水素と接触させて、元素形態の金属、元素形態の炭素、水素ガス、および該ハロゲン化物を含むハロゲン化水素を生じさせるステップと、を含む方法である。
【0009】
実施形態2は、実施形態1に記載の方法において、接触は、約800℃と約1300℃との間、または約850℃と約1300℃との間の範囲における温度で生起する、方法である。
【0010】
実施形態3は、実施形態1または2に記載の方法において、金属は、マグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、および銅のうちの1つまたは複数を含む方法である。
【0011】
実施形態4は、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法において、ハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、およびヨウ化物のうちの1つまたは複数を含む方法である。
【0012】
実施形態5は、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法において、気相炭化水素は天然ガスを含む方法である。
【0013】
実施形態6は、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法において、気相炭化水素は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびノナン、またはそれらの任意の異性体のうちの1つまたは複数を含む方法である。
【0014】
実施形態7は、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法において、昇華ステップは、約0.01MPa(0.1バール)と約5MPa(50バールとの間の範囲における圧力で生起する方法である。
【0015】
実施形態8は、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法において、接触ステップは、約0.01MPa(0.1バール)と約5MPa(50バール)との間の範囲における圧力で生起する方法である。
【0016】
実施形態9は、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法であって、さらに、気相炭化水素を熱分解して炭素および水素ガスを生じさせるステップを含む方法である。
【0017】
実施形態10は、実施形態9に記載の方法において、接触ステップは、気相炭化水素を用いて気相金属塩中の金属を還元するステップを含む方法である。
【0018】
実施形態11は、実施形態9または10に記載の方法において、熱分解ステップは金属によって触媒される方法である。
【0019】
実施形態12は、実施形態9~11のいずれか1つに記載の方法において、熱分解のための熱は電力によって供給される方法である。
【0020】
実施形態13は、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法であって、さらに、金属をハロゲン化水素と接触させて、気相の金属塩および水素ガスを生じさせるステップを含む方法である。
【0021】
実施形態14は、実施形態13に記載の方法であって、さらに、金属をハロゲン化水素と接触させる前にハロゲン化水素を加熱するステップを含む方法である。
【0022】
実施形態15は、実施形態14に記載の方法において、ハロゲン化水素を加熱するステップは、ハロゲン化水素を少なくとも1000℃の温度に加熱するステップを含む方法である。
【0023】
実施形態16は、実施形態14または15に記載の方法において、金属を高温のハロゲン化水素と接触させて金属塩を生じさせるステップは、断熱反応器中で生起する方法である。
【0024】
実施形態17は、実施形態13~16のいずれか1つに記載の方法であって、さらに、金属塩を凝縮させて固相の金属塩を生じさせるステップを含む方法である。
【0025】
実施形態18は、実施形態17に記載の方法において、固相の金属塩が粒子の形態であり、該粒子は少なくとも部分的に炭素で被覆されている方法である。
【0026】
実施形態19は、実施形態18に記載の方法であって、さらに、金属塩を、少なくとも1000℃の温度を有する塩化水素と接触させて、気相のハロゲン化金属および粒子状炭素材料を生じさせるステップを含む方法である。
【0027】
実施形態20は、実施形態19に記載の方法において、粒子状炭素材料は、多数の中空炭素粒子を含む方法である。
【0028】
実施形態21は、実施形態20に記載の方法において、中空炭素粒子は約200nm~約300nmの範囲における直径を有する方法である。
【0029】
実施形態22は、実施形態21に記載の方法において、粒子状炭素材料は100重量ppm未満の金属を含む方法である。
【0030】
実施形態23は、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法において、ハロゲン化物は塩化物であり、金属はニッケルである方法である。
【0031】
実施形態24は、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法において、炭化水素はメタンを含む方法である。
【0032】
実施形態25は、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法において、昇華ステップは接触に先立って生起する方法である。
【0033】
実施形態26は、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法において、昇華ステップは、気相炭化水素とともに反応器の反応ゾーンに向かって金属塩を前進させるステップを含む方法である。
【0034】
実施形態27は、実施形態26に記載の方法であって、さらに、反応ゾーンを約800℃と約1300℃との間の範囲の温度に加熱するステップを含む方法である。
【0035】
実施形態28は、実施形態26または27に記載の方法において、反応ゾーンを加熱するステップは電力を用いて達成される方法である。
【0036】
実施形態29は、実施形態28に記載の方法において、放射熱を発生させるために電力が利用される方法である。
【0037】
実施形態30は、実施形態29に記載の方法において、放射熱は電気炉または誘導加熱素子によって供給される方法である。
【0038】
実施形態31は、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法において、昇華ステップおよび接触ステップは、反応器の反応ゾーンにおいて同時に生起する方法である。
【0039】
実施形態32は、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法において、金属塩は無水である方法である。
【0040】
実施形態33は、水素ガスを発生させる方法であって、
気相のハロゲン化金属を気相の炭化水素と接触させるステップと、
ハロゲン化金属および炭化水素を分解して、水素およびハロゲン化水素を含む気体生成物、ならびに金属および炭素を含む固体生成物を生じさせるステップと、
水素をハロゲン化水素から分離するステップと、並びに
ハロゲン化水素を金属と接触させて、気相のハロゲン化金属を生じさせるステップと、
を含む方法である。
【0041】
実施形態34は、実施形態33に記載の方法であって、さらに、ハロゲン化水素を金属と接触させた後、気相のハロゲン化金属を冷却して固相のハロゲン化金属を生じさせるステップを含む方法である。
【0042】
実施形態35は、実施形態34に記載の方法であって、さらに、固相のハロゲン化金属を加熱して気相のハロゲン化金属を生じさせるステップを含む方法である。
【0043】
実施形態36は、実施形態35に記載の方法であって、さらに、気相のハロゲン化金属を気相の炭化水素と接触させるステップを含む方法である。
【0044】
実施形態37は、実施形態33~36のいずれか1つに記載の方法であって、さらに、固体生成物から気体生成物を分離するステップを含む方法である。
【0045】
実施形態38は、実施形態33~37のいずれか1つに記載の方法であって、さらに、ハロゲン化水素を金属と接触させる前に、ハロゲン化水素を少なくとも約1000℃の温度に加熱するステップを含む方法である。
【0046】
実施形態39は、実施形態33~38のいずれか1つに記載の方法であって、さらに、固体生成物をハロゲン化水素と接触させて、気相のハロゲン化金属および炭素を生じさせるステップを含む方法である。
【0047】
実施形態40は、実施形態39に記載の方法であって、さらに、ハロゲン化金属を凝縮させて、ハロゲン化金属と炭素とを含む固体混合物を生じさせるステップを含む方法である。
【0048】
実施形態41は、実施形態40に記載の方法において、固体混合物は、炭素の一部で被覆されたハロゲン化金属の粒子を含む方法である。
【0049】
実施形態42は、実施形態41に記載の方法であって、さらに、固体混合物を、少なくとも1000℃の温度を有する塩化水素と接触させて、気相のハロゲン化金属および粒子状炭素材料を生じさせるステップを含む方法である。
【0050】
実施形態43は、実施形態42に記載の方法において、粒子状炭素材料は多数の中空炭素粒子を含む方法である。
【0051】
実施形態44は、実施形態43に記載の方法において、中空炭素粒子は約200nm~約300nmの範囲における直径を有する方法である。
【0052】
実施形態45は、実施形態44に記載の方法において、粒子状炭素材料は、100重量ppm未満の金属を含む方法である。
【0053】
実施形態46は、水素生成システムであって、
気体反応物を反応させるように構成された第1の反応器と、
第1の反応器からの気体および固体反応生成物の混合物を受け取るように構成された熱交換器と、
熱交換器からの気体流出を受け取り、また熱交換器に気体流入を供給するように構成された分離器と、
熱交換器からの固体流入と気体流入とを反応させるように構成された第2の反応器と、
第2の反応器からの反応生成物を凝縮するように構成された冷却器と、
冷却器からの固体生成物を受け取り、固体生成物を蒸発させて気体生成物を生じさせ、また第1の反応器に気体生成物を供給するように構成された第3の反応器と、
を備える、システムである。
【0054】
実施形態47は、実施形態46に記載のシステムにおいて、第1の反応器、第2の反応器、またはその両方が、約800℃と約1200℃との間の範囲における温度で動作するように構成されているシステムである。
【0055】
実施形態48は、実施形態46または47に記載のシステムにおいて、第2の反応器は断熱反応器であるシステムである。
【0056】
実施形態49は、実施形態46~48のいずれか1つに記載のシステムにおいて、第3の反応器は固体生成物の成分を冷却器から分離するように構成されているシステムである。
【0057】
実施形態50は、実施形態46~49のいずれか1つに記載のシステムであって、さらに、熱交換器からの気体流入から水素を除去するように構成された追加の分離器を備えるシステムである。
【0058】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、有利なことに、水蒸気メタン改質よりもエネルギー効率が高く、電気分解よりもはるかにエネルギー効率が高い。これらのシステムおよび方法は、電気を利用して動力を供給することが可能であり、反応物として水を含まず、生成物として二酸化炭素を生成せず、高純度の炭素副生成物を生成する。加えて、これらのシステムおよび方法は、高温の熱分解反応器表面に炭素タール生成物を蓄積することなく、自由流動性の炭素元素粉末を生成する。
【0059】
本開示の主題の1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付の図面および明細書に説明される。主題の他の特徴、態様、および利点は、明細書、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】金属塩の昇華、気相金属塩の炭化水素との反応、および水素ガスを生ずる炭化水素の熱分解を行わせるための反応スキームを表すフローチャートである。
図2図1に表された反応を実行するように構成された反応器の概略図である。
図3図2に表されているものと同様の反応器におけるメタン分解を温度の関数として示す図である。
図4A図1の反応スキームにおける昇華前の塩化ニッケルの画像である。
図4B図1の反応スキームにおける部分消費後の塩化ニッケルの画像である。
図4C図1の反応スキームにおける部分消費後の塩化ニッケルの画像である。
図5図1の反応スキームにおいて発生した金属を濃縮ハロゲン化水素で酸化して、水素ガスおよび図1の金属塩を生じさせるための反応スキームを表すフローチャートである。
図6】本明細書に記載の実施形態による水素ガスの生成における操作を示すフローチャートである。
図7】本明細書に記載の実施形態による水素ガスの生成のための例示的なプロセスフロー図である。
図8】塩化ニッケルと炭素固体とを分離し、塩化ニッケルを蒸発させるためのユニットの概略図である。
図9A】加熱器中で塩化ニッケルを再生し蒸発させる前の、炭素で被覆されたニッケル粒子の透過型電子顕微鏡写真画像である。
図9B図9Aの材料からの塩化ニッケルの再生および蒸発後に生成された中空炭素粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
図9C図9Aの材料からの塩化ニッケルの再生および蒸発後に生成された中空炭素粒子の10,000倍での走査型電子顕微鏡写真である。
図9D図9Aの材料からの塩化ニッケルの再生および蒸発後に生成された中空炭素粒子の50,000倍での走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、金属塩の昇華、気相金属塩の気相炭化水素との反応、および水素ガスを生ずる炭化水素の熱分解を行わせるための反応スキーム100を表すフローチャートである。図1に表された例では、金属塩は塩化ニッケルであり、気相炭化水素はメタンである。しかしながら、いくつかの実施態様において、金属は、マグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、および銅などの、1つまたは複数のアルカリ土類金属および遷移金属を含み、金属塩は、フッ化物、塩化物、臭化物、およびヨウ化物のうちの1つまたは複数を含むハロゲン化金属である。若干の実施態様において、気相炭化水素は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびノナンまたはそれらの任意な異性体のうちの1つまたは複数を含む。若干の実施態様において、気相炭化水素は天然ガスを含む。
【0062】
反応102では、金属塩を昇華させて気相金属塩を生じさせる。金属塩は典型的には無水粉末形態のハロゲン化金属である。反応102は吸熱性であり、金属塩を昇華させるように選択された温度および圧力条件下で起こる。反応104において、気相金属塩は気相炭化水素と反応し、元素形態の金属、元素形態の炭素、および気相ハロゲン化水素が生じる。いくつかの場合においては、反応102は、気相炭化水素とともに金属塩を反応器内の加熱された反応ゾーンに向けて吹き込むことによって開始される。反応104における塩化金属の還元は発熱性であり、気相金属塩を気相炭化水素と接触させることで金属塩中の金属を還元し、炭化水素を分解するように選択された温度および圧力条件下で触媒の非存在下で起こる。いくつかの実施態様において、反応102は反応104の前に起こる。いくつかの実施態様において、反応102と反応104は同時に起こる。いくつかの実施態様において、反応106は反応102および104と同時に起こる。一実施態様において金属塩の非存在下(すなわち、金属塩が反応104において消費された後、過剰の炭化水素が存在する状態)で起こる反応106において、炭化水素は分解されて炭素元素および水素ガスが生じる。反応106はそれ自体が吸熱性であり、触媒として機能することが可能な金属および元素形態の炭素の存在下で、炭化水素を熱分解するように選択された温度および圧力条件下で起こる。反応106は、反応物が、熱分解が動力学的に停止するような温度、典型的には約850℃に冷却されるまで進行する。
【0063】
図2は、反応スキーム100の反応102、104、106を行うように構成された反応器200の一部を表す。金属塩は(例えば、無水粉末の形態で)流入口202を通じて反応器200に供給される。気相炭化水素は流入口204を通じて反応器200に供給され、分配器206を通過する。気相炭化水素は不活性ガス(例えば、アルゴン)と混合することが可能である。気相炭化水素は混合ゾーン208において金属塩と接触し、混合物は反応ゾーン210に前進する。一実施例においては、反応ゾーン210は流動床を含む。例えば電気炉または高周波誘導加熱を用いて、電力を使用して反応ゾーン210内に放射熱を発生させる。反応ゾーン210は、約800℃と約1300℃との間の範囲における温度、ならびに反応102および104の完了のために選択された適切な対応する圧力に維持することが可能である。いくつかの実施態様において、反応器200は絶縁材212を含む。図2に表されるように、反応ゾーン210は高周波コイル214および加熱素子216を含む。反応102および104は反応ゾーン210において同時に起こり得る。反応106は出口ゾーン218において起こる。出口ゾーン218における炭化水素の熱分解は、典型的には、約800℃と約1300℃との間(例えば、約850℃と約1300℃との間、または約850℃以上)の範囲における温度、ならびに利用可能な炭化水素の完全な熱分解のために選択された適切な対応する圧力で起こる。熱分解は、出口ゾーン218における反応生成物の冷却をもたらす。いくつかの実施態様において、反応生成物は約850℃で反応器から出る。
【0064】
例として、図1に表されるように、金属塩は粉末形態の無水塩化ニッケルであり、炭化水素はメタンである。反応102は、塩化ニッケルを昇華させるように選択された温度および圧力条件下(例えば、約750℃と約1300℃との間、または約1100℃、および約0.01MPa(0.1バール)と約5MPa(50バール)との間の範囲における適切な対応する圧力)で行われる。反応102は吸熱性であり、反応物が400℃に予熱されている場合、メタン1モルあたり約213kJのエネルギー流入を必要とする。反応104では、メタンは、約800℃と約1300℃との間(例えば、約850℃と約1300℃との間、または約1100℃)の範囲における温度で気相塩化ニッケルと反応し、ニッケル、炭素、および塩化水素が生じる。反応104は、約0.01MPa(0.1バール)と約5MPa(50バール)との間の範囲における適切な対応する圧力で行うことが可能である。反応104はわずかに発熱性であり、反応104に供給されるメタン1モルあたり約6kJのエネルギーを放出する。反応106では、未反応のメタンが熱分解され、炭素および水素ガスが生じる。反応106は吸熱性であり、生成物の流れを1100℃から850℃に冷却する。いくつかの実施態様において、反応104におけるニッケルの還元と反応106におけるメタンの熱分解とは同時に起こる。
【0065】
図1に表された例では、反応104に先立って反応102が起こると、反応104において塩化ニッケル1モルあたり0.5モルのメタンが分解され、反応106において塩化ニッケル1モルあたり1.2モルのメタンが分解され、メタン対塩化ニッケルのモル比が5:3となる。
【0066】
図3は、図2につき説明したものと同様であるが、不動の塩化ニッケルのプラグが充填された反応器における、塩化ニッケル還元反応104に従った塩化ニッケルの還元によるメタン分解を、温度の関数として示す。反応器のカラム長は28cmであり、メタン対アルゴンの比率(標準立方センチメートル/分)は80:20であった。図3に見られるように、メタンの塩化水素への初期転換率は温度に依存する。転換率は、塩化ニッケルの約2分の1が消費されるまで上昇する。約850℃以上では、メタンの塩酸への転換はほぼ完全である(例えば、約100%)。塩化ニッケルが消費されても(すなわち、反応器容積がほぼ空になっても)、転換は減衰しない。他の実験においては、反応104が反応106の約10倍の速度で進行することが観察される。
【0067】
図4Aは、反応102において昇華する前の無水塩化ニッケル粉末400の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。図4Bおよび4Cは、それぞれ、反応104において約半分消費された塩化ニッケルの低倍率および高倍率SEM画像である。図4Bは塩化ニッケルフレーク402を示し、図4Cは、ニッケル元素粒子404および炭素元素フレーク406を示す。
【0068】
図5は、図1の反応104において発生した金属を濃縮ハロゲン化水素で酸化して、水素ガスおよび図1の金属塩を生じさせるための反応スキーム500を表すフローチャートである。反応スキーム500は、典型的には溶液中で起こる。適した溶媒の例としては、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール)、他の有機および無機溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、塩化チオニル)、またはそれらの任意な混合物が挙げられる。図1と同様に、金属塩は塩化ニッケルであり、ハロゲン化物は塩化物である。しかしながら、図1につき説明した他の金属およびハロゲン化物もまた、図5のものに対応する反応を受けるように選択することが可能である。
【0069】
反応スキーム500において、反応104からの金属および炭素固体、ならびに存在する場合には反応106からの炭素固体は、溶媒および反応104からのハロゲン化水素を含む混合物と混合される。いくつかの実施態様において、反応104および106の生成物は、対応する適切な圧力(例えば、約0.01MPa(0.1バール)と約2MPa(20バール)との間の範囲における圧力)でハロゲン化水素および溶媒と接触させて反応502を開始する前に(例えば、約25℃と約200℃との間の範囲における温度まで)冷却される。一実施態様においては、金属および炭素固体は、溶媒およびハロゲン化水素を含む加熱混合物に供給される。ハロゲン化水素と金属とは反応して、水素ガスおよび溶媒に溶解した金属塩が生じ、これは反応完了時にハロゲン化水素をほぼ枯渇させることができる。一般に、炭素はハロゲン化水素酸と反応しないので、反応ゾーン504において濾過して除去することができる。いくつかの実施態様においては、金属塩は、反応104の気体生成物でゾーン506において溶液を再酸性化する際に起こる沈降によって、溶媒から回収することができる。沈降した金属塩は、ゾーン508において濾過によって溶媒から除去される。金属塩は、典型的には溶媒和されるが、反応104および106からの気体と接触させて、水素と共に無水金属塩、気相ハロゲン化水素、および気化水を生じさせることができる。無水金属塩は反応スキーム100中の反応102の反応物として供給することができ、気体は反応ゾーン506に供給することができる。水素ガスは反応502および反応106から(ゾーン506を通じて)収集することができる。
【0070】
図5に表された例では、反応104および106からのニッケルおよび炭素固体、ならびに反応104からの気相塩酸が溶液中で混合され、反応502に従って、炭素固体と共に塩化ニッケルおよび水素ガスが生じる。ニッケルおよび気相塩酸は、典型的には、反応502が開始する前に、約25℃と約200℃との間の範囲における温度に冷却される。504において、炭素固体は反応502の生成物混合物から濾過される。506において、塩化ニッケル水和物は、反応502からの残りの生成物混合物を反応104および106の気体生成物で酸性化することによって沈降する。508において塩化ニッケル水和物が水性塩酸から分離され、再生された塩酸を反応502に供給することができる。塩化ニッケル水和物を、反応104および106からの気体(塩酸および水素)と接触させることによって乾燥させ、水素と共に、無水塩化ニッケル、気相塩酸、および気化水(水和物から)を生じさせることができる。無水塩化ニッケルは反応スキーム100の反応102に供給することができ、気体は反応ゾーン506に供給することができる。水素ガスは反応502および反応106から(ゾーン506を通じて)収集することができる。
【0071】
図6は、本明細書に記載された実施形態による水素の生成のための例示的なプロセス600における操作を表すフローチャートである。プロセス600において、Mn+は、ハロゲン化金属を表し、ここで、Mは、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウムもしくはカルシウム)または遷移金属(例えば、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、もしくは銅)であり、Xは、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素)であり、Mn+は電気的に中性であり、nは整数である。若干の実施態様において、気相炭化水素は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、およびノナンまたはそれらの任意な異性体のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの実施態様において、気相炭化水素は天然ガスを含む。プロセス600の一実施例において、Mはニッケルであり、Xは塩素であり、炭化水素はメタンであり、n=2である。
【0072】
602において、炭化水素がMn+(g)の存在下で熱分解され、気体生成物および固体生成物が生じる。炭化水素対ハロゲン化金属のモル比は典型的には約0.5~約25の範囲であり、滞留時間は典型的には約0.1秒~約20秒の範囲である。熱分解は、典型的には、約1000℃~約1200℃の範囲における温度の反応器中で起こる。気体生成物は、水素ガス(H)およびハロゲン化水素(HX)を含む混合物であり、Hは典型的には約92mol%~約96mol%の範囲であり、HClは典型的には約4%~約8%の範囲である。固体生成物は、金属(M)および元素形態の炭素(C)を含む混合物である。
【0073】
604において、気体生成物と固体生成物とが分離される。いくつかの実施形態において、602からの生成物は、604における分離の前に冷却される。一実施例においては、生成物は熱交換器(例えば、復熱式熱交換器)に供給され、そこで生成物からの熱がプロセス600における別の流れ(例えば、HX)に伝達される。
【0074】
606において、604からの固体生成物は、HX(例えば、604に関して論じたように、プロセス600における他の流れからリサイクルされ、および/またはプロセス600における他の流れによって加熱されたもの)と反応し、生成物混合物が生じる。HX対Mのモル比は、典型的には、約1:1~約100:1の範囲である。反応器は、断熱反応器であり得る。反応は、典型的には、約900℃と約1200℃との間の範囲における温度の反応器中で起こる。いくつかの場合では、生成物がH+HX+Mn+(g)+Cを含み、H+HXの総量は最大4mol%のHおよび少なくとも95mol%のHXを含むように、HXは少量のH(例えば、約5mol%未満、または約3mol%未満)を含む。若干の場合では、604からの固体生成物をHXと反応させる前に、HXが実質的に純粋(>99mol%または>99.9mol%の純度)であるように、該少量のHをHXから取り除く。
【0075】
608において、606からの生成物混合物が冷却され、Mn+(s)+Cの混合物を含む固体生成物およびH+HXの混合物を含む気体生成物が生じ、H+HXの総量は、最大4%のHおよび少なくとも95mol%のHXを含む。冷却は、気体流をより低い圧力で容器に注入し、その温度を低下させるフラッシュ冷却器で達成することができる。冷却はまた、熱交換器を使用して達成することもできる。いくつかの場合では、固体生成物は608において分離され、Mn+(s)の流れおよびCの流れが生じる。すなわち、Mn+とCとを分離するためにさらなる下流処理(例えば、612~616における処理)は必要ない。610において、608からの固体生成物と気体生成物とが分離される。一実施形態においては、分離はセラミックキャンドルフィルターを用いて達成される。
【0076】
612において、610からの固体生成物を炉内で加熱してMn+(s)を蒸発させ、それによってMn+(g)+Cを含む混合物を生じさせる。614において、Cは612の混合物から除去される。616において、612の混合物からのMn+(g)が602にリサイクルされる。
【0077】
618において、610からのHXとHとが分離され、HXの流れおよびH生成物の流れが生じる。一実施例においては、HXとHとは、気体混合物を水性HXと接触させてHXを捕捉することにより分離され、実質的に純粋なH(例えば、>99%または>99.9%の純度)を一次水素生成物の流れとして残す。620において、618からのHXの流れが606に供給される。622において、618からのH生成物の流れは、ほぼ純粋な水素(例えば、>99mol%または>99.9mol%の純度)としてプロセス600を出る。
【0078】
624において、604からのHXとHとが分離され、HXの流れおよびH生成物の流れが生じる。626において、624からのHXが606に供給される。628において、624からのH生成物は、プロセス600を出る。
【0079】
いくつかの実施形態において、プロセス600に操作を追加する、またはプロセス600から操作を省略することができる。いくつかの実施形態においては、プロセス600における操作の順序を変更することができる。一実施例においては、固体生成物は、608または610において分離され、Mn+(s)の流れおよびCの流れが生じる。すなわち、Mn+とCとを分離するためにさらなる下流処理(例えば、612~616における処理)は必要ではなく、Mn+とCとは、Mn+が蒸発する前に固体として分離される。
【0080】
図7は、メタンおよびハロゲン化金属のモル比が約0.5:1~約25:1である場合の、プロセス600に従って水素生成を実行するための例示的なシステム700を表すプロセスフロー図である。図7につき説明した例では、ハロゲン化金属は塩化ニッケルであり、気相炭化水素はメタン(または天然ガス)である。しかしながら、プロセス600に関して論じたように、システム700と同様のシステムにおいて、他のハロゲン化金属および炭化水素を使用することが可能である。システム700は、以下にさらに詳細に説明する炭化水素分解ゾーン702、熱交換ゾーン704、H分離ゾーン706、706′、およびハロゲン化金属再生ゾーン708を含む。図7において、固体流は実線で表示される。非加熱(または「低温」)の流れは点線で表示される。加熱された(または「高温」の)流れは鎖線で表示される。
【0081】
流れ710(CH)は加熱器712に供給され、流れ714(CH)が生じる。流れ716(NiCl(s))は加熱器718に供給され、流れ720(NiCl(g))が生じる。流れ714(CH)および720(NiCl(s))は、約10:1~約20:1(例えば、約13:1~約17:1または約14:1~約16:1)の範囲におけるCH:NiClモル比で反応器722に供給される。Ni2+の気相発熱還元およびCHの吸熱熱分解が、式1および式2に示すように、反応器722内で起こる。
CH4+2NiCl2(g)→2Ni+C+4HCl ΔH°=-147kJ/mol CH4(1)
CH4→C+2H2 ΔH°=75kJ/mol CH4 (2)
【実施例
【0082】
表1は、実施例1~19について、CH:NiClモル比並びに式1および2に従った炭素へのCH転換率を列挙する。CH:NiClモル比は約1~約20の範囲であり、滞留時間が約5秒~約20秒の範囲でCH転換率は約10%~約100%の範囲である。実施例19(転換率95モル%、CH:NiClモル比6.08)の滞留時間は約16秒であった。実施例13(転換率88%、CH:NiClモル比15.43)の滞留時間は約8秒であった。
【0083】
【表1】

【0084】
反応器722から、流れ724(H+HCl+Ni+C)が熱交換ゾーン704に供給され、そこで流れ724は熱交換器728内で流れ726(リサイクルされたHCl)によって冷却される。熱交換器728は、復熱式熱交換器であり得る。熱交換器728において、流れ726は、流れ724を約150℃と約250℃との間の範囲における温度(例えば、約200℃)に冷却する。一実施例においては、熱交換器728は多管式交換器であり、流れ724は管側に供給される。流れ730(C+H+HCl+Ni)はフィルター732に供給され、そこで気体生成物(H+HCl)は固体生成物(C+Ni)から分離される。一実施例においては、フィルター732はキャンドルフィルターである。
【0085】
流れ734(H+HCl)は、H分離ゾーン706の分離器736に供給され、流れ738(H)および流れ740(HCl)が生じる。一実施例においては、分離器736は、流れ734に水性HCl(例えば、25℃の20wt%HCl)を噴霧して、流れ734からHClを捕捉することによって動作する。流れ738(ほぼ純粋なH)は、分離器736からシステム700を出る。流れ740(水性HCl)を蒸留して(例えば、圧力スイング蒸留によって)、無水HClを生成することが可能である。流れ738(>99.9mol%の純度)は、一次水素生成物の流れである。流れ740(HCl)は、流れ726において熱交換器728に戻される。
【0086】
フィルター732から、流れ742(Ni+C)は、ハロゲン化金属再生ゾーン708の反応器744に供給される。反応器744は断熱反応器または加熱反応器とすることができる。NiおよびC固体の粒子直径は、典型的には、約0.1μm~約1μm(例えば、約0.1μm~約0.5μm、または約0.2μm~約0.4μm)の範囲である。熱交換器728から、流れ746(HCl)が加熱器748に供給される。流れ746は、少量(例えば、約5%未満)のHを含み得る。加熱器748から、流れ750(HCl)が、約5:1~約50:1の範囲におけるHCl:Niのモル比で反応器744に供給される。反応器744において、式3に示すように、NiはHClと反応してNiCl(g)が生じる。
Ni+2HCl→NiCl2(g)+H2 ΔH°=110kJ/mol Ni (3)
流れ750中のHClは、流れ742からの固体を、反応器744中で約1000℃と約1200℃との間の範囲における温度に加熱し、それによって反応器744におけるNiCl(g)の形成を促進する。一実施例においては、反応器744は、ダウンフロー設計を有し、HClおよびNi+C固体の共供給を受ける(例えば、高温HClガスを用いた断熱反応器における同時の気体-固体流)。反応器744における滞留時間は、典型的には、約5秒~約30秒の範囲(例えば、約10秒)である。
【0087】
いくつかの場合において、流れ746は(したがって流れ750は)少量(例えば、約5%未満)のHを含む。相当モル量の塩素ガスが、流れ756を介して流れ750に添加される。塩素ガスは、流れ750中のHと反応して過剰なHClガスを形成する。この過剰なHClガスは、流れ750′を介して除去され、750は純粋なHCl(例えば、>99mol%または>99.9mol%の純度)の流れとして残る。流れ750′は、H分離ゾーン706′の分離器752に供給される。いくつかの実施形態において、分離器752は、HClの流れ(流れ750′)から純粋な水素(流れ754)および塩素(流れ756)を生成する、塩素アルカリ電解槽である。流れ754(>99.9mol%H)は、システム700を出て、一次水素生成物の流れ738(>99.9mol%H)と混合することができる。
【0088】
反応器744から、流れ758(H+HCl+NiCl(g)+C)が冷却器760に入り、そこでNiCl(g)が凝縮されてNiCl(s)が生じる。冷却器760からの熱を使用して、H分離ゾーン706および706′の一方または両方におけるH分離の動力を供給する蒸気を発生させることができる。流れ762(H+HCl+NiCl(s)+C)はフィルター764に入り、そこで固体生成物が気体生成物から分離される。一実施例においては、フィルター764はセラミックキャンドルフィルターである。流れ766(H+HCl)は、流れ740(HCl)と混合され、流れ726(HCl)において熱交換器728にリサイクルされる。流れ768(NiCl(s)+C)は、炭化水素分解ゾーン702の加熱器718にリサイクルされ、そこでNiCl(s)は蒸発してNiCl(g)が生じる。流れ770(C)は炭素固体として加熱器718を出る。いくつかの場合において、流れ770からの熱は、加熱器712に供給されて流れ710を加熱し、流れ772(C)は冷却された炭素固体としてシステム700を出る。
【0089】
図8は、加熱器718を示す概略図である。流れ716(C+NiCl(s))は流入口802を通じて加熱器718に入る。熱が供給されて固体NiClを蒸発させ、NiCl(g)として流出口804を通じて加熱器718を出る。下方に移動する炭素床806は、加熱素子808によって接触され、重力によって流出口810を通じて加熱器718を出る。いくつかの場合において、炭素は、流出口810付近で剥離ガス(例えば、約900℃~約1200℃の範囲における温度のHClの流れ)に接触され、炭素から残留NiCl(g)が除去される。HClが混合物上を流れるにつれて、HClは固体中の気体NiClを置換し、固体炭素と共にNiClがほとんどまたは全く除去されないようにする。炭素は、直径が約225nmと約275nmとの間(例えば、約240nmと約260nmとの間、または約250nm)である均質な中空炭素粒子として加熱器718を出る。
【0090】
図9Aは、加熱器718における塩化ニッケルの再生および蒸発前の、炭素で被覆されたニッケル粒子900の透過型電子顕微鏡写真画像である。図9Bは、図9Aの材料からの塩化ニッケルの再生および蒸発後に生成した中空炭素粒子902の透過型電子顕微鏡写真である。図9Cおよび図9Dは、図9Aの材料からの塩化ニッケルの再生および蒸発後に生成した中空炭素粒子902(ニッケル粒子904を有する)の、それぞれ10,000倍および50,000倍での走査型電子顕微鏡写真である。元素分析は炭素の全金属含有量は100ppm未満であることを示す。毒性溶出試験(TCLP)は、溶出可能なニッケルは300ppb未満であることを示す。
【0091】
いくつかの実施態様においては、システム700の構成要素(例えば、加熱器、熱交換器、フィルター)を、再配置または除去し得る。他の構成要素を追加してもよい。システム700内の1つまたは複数の流れを混合、除去、または経路変更することができる。水素への転換率、流れの純度などの所望の結果を達成するために、動作パラメーターを変更してもよい。
【0092】
本開示は、多くの具体的な実施形態の詳細を含むが、これらは、主題の範囲または特許請求され得るものの範囲に対する制限として解釈されるべきではなく、むしろ、特定の実施形態に特有であり得る特徴の記載として解釈されるべきである。別個の実施形態の文脈で本開示において記載される特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実行することもできる。反対に、単一の実施形態の文脈において記載される様々な特徴は、複数の実施形態において、別個に、または任意の適した下位の組み合わせで実行することもできる。さらに、先に記載された特徴は、特定の組み合わせで作用するものとして記載され、当初はそのように特許請求されることさえあるが、特許請求される組み合わせの1つまたは複数の特徴は、いくつかの場合においては、組み合わせから削除することができ、特許請求される組み合わせは、下位の組み合わせまたは下位の組み合わせの変形を対象とし得る。
【0093】
主題の特定の実施形態が記載された。記載された実施形態の、他の実施形態、変更、および再配列は、当業者に明らかであるように、以下の特許請求の範囲内にある。操作は、図面または特許請求の範囲において特定の順序で表されているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような操作が示された特定の順序で、もしくは連続した順序で実施されること、または図示されたすべての操作が実施されることを必要とするものとして理解されるべきではない(いくつかの操作は任意であるとみなされてもよい)。
【0094】
したがって、先に記載された例示的な実施形態は、本開示を定義または制約するものではない。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、他の改変、置換、および変更も可能である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
【国際調査報告】