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特表2024-502475石油コークスの処理装置、処理方法および処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-19
(54)【発明の名称】石油コークスの処理装置、処理方法および処理システム
(51)【国際特許分類】
   C10B 57/04 20060101AFI20240112BHJP
   C01B 32/348 20170101ALI20240112BHJP
【FI】
C10B57/04 101
C01B32/348
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541775
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-05
(86)【国際出願番号】 CN2022070885
(87)【国際公開番号】W WO2022148452
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】202110029311.0
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110029256.5
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522173712
【氏名又は名称】中石化(大連)石油化工研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】張舒冬
(72)【発明者】
【氏名】張長安
(72)【発明者】
【氏名】宋永一
(72)【発明者】
【氏名】劉繼華
(72)【発明者】
【氏名】方嚮晨
(72)【発明者】
【氏名】馬▲ルイ▼
(72)【発明者】
【氏名】蔡海樂
(72)【発明者】
【氏名】趙麗萍
(72)【発明者】
【氏名】廖昌建
(72)【発明者】
【氏名】孟凡飛
(72)【発明者】
【氏名】王海波
(72)【発明者】
【氏名】張慶軍
(72)【発明者】
【氏名】王超
【テーマコード(参考)】
4G146
4H012
【Fターム(参考)】
4G146AA06
4G146AC04B
4G146AC09B
4G146AC10B
4G146BA27
4G146BB03
4G146BB07
4G146BB17
4G146BD08
4G146BD10
4G146DA05
4G146DA14
4G146DA30
4G146DA31
4H012NA00
4H012NA03
(57)【要約】
石油コークスの処理装置、処理方法、および処理システム。前記処理装置は、環状炉反応器である活性化ユニットを含む。前記処理システムは、第1反応器と、第2反応器として使用される前記処理装置と、洗浄および分離ユニットと、冷却ユニットと、溶解および分離ユニットと、洗浄および乾燥ユニットと、任意選択的に、再生ユニットと、任意選択的に、乾燥および焙焼ユニットと、任意選択的に、蒸発晶出ユニットと、を備える。さらに、石油コークスを処理するための前記処理システムを使用して、炭素材料を生産するための方法も提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状炉反応器であって、
入口/出口ゾーン、高温ゾーンおよび冷却ゾーンへと分割された密閉環状空間を形成するハウジングであって、前記高温ゾーンは、加熱セクションおよび定温セクションを含む、ハウジングと、
前記ハウジングの内部に位置し、当該ハウジングの前記環状空間に沿って配置された回転テーブルであって、石油コークスと活性化剤との混合物である供給材料を、前記入口/出口ゾーンにおいて受け取り、石油コークスと前記活性化剤との混合された前記供給材料を、前記高温ゾーン内および前記冷却ゾーン内へ順に運び、次いで、当該供給材料を、前記入口/出口ゾーンにおいて排出するように、前記ハウジングに対して回転する、回転テーブルと、
前記ハウジングの内部に位置し、当該ハウジング上に固定され、前記回転テーブルの上方に離隔して配置された複数のバッフルであって、複数の案内穴を含む複数のバッフルと、
を備える、環状炉反応器。
【請求項2】
前記加熱セクションは、燃料ガスまたは電熱放射加熱によって作動され、
前記加熱セクションは、30~300分間、好ましくは60~180分間加熱され、
前記定温セクションは、700~1000℃、好ましくは800~950℃の一定温度で、10~120分間、好ましくは20~60分間、マイクロ波加熱を用いて作動される、請求項1に記載の環状炉反応器。
【請求項3】
前記入口/出口ゾーンに配置された1または複数のキャリアガス入口であって、
好ましくは、それぞれ前記入口/出口ゾーンの始点、中間点、および終点に配置された3つのキャリアガス入口である、1または複数のキャリアガス入口と、
前記高温ゾーンに配置され、好ましくは前記高温ゾーンの前記定温セクションに配置されたガス出口と、
をさらに備える、請求項1に記載の環状炉反応器。
【請求項4】
複数の前記バッフルは、前記回転テーブルの表面に対して垂直に配置されており、
複数の前記案内穴は、複数の前記バッフルの上部三分の一乃至上部二分の一のところに配置されており、
複数の前記案内穴は、20%~30%の開口率で形成されており、
複数の前記案内穴の入口側は、出口側の孔径よりも大きな孔径を有し、
好ましくは、複数の前記案内穴は、円錐形状である、請求項1に記載の環状炉反応器。
【請求項5】
前記入口/出口ゾーンは、前記ハウジングの内部に固定された排出システムを備え、
前記排出システムは、
螺旋排出装置の頂部から水平方向に排出材料を出力する、当該螺旋排出装置と、
前記螺旋排出装置の前記頂部に一端部が配置された状態で傾斜し、前記排出材料を前記螺旋排出装置の前記頂部へ送達する、コンベヤベルトと、
前記回転テーブル上の前記排出材料を、前記コンベヤベルトの他端部へピックアップするように傾斜した、持ち上げ面と、
を備える、請求項1に記載の環状炉反応器。
【請求項6】
前記持ち上げ面は、
D10よりも大きな粒度分布を有する複数の前記材料の粒子を、前記コンベヤベルトへピックアップする、一次持ち上げ面と、
D10よりも小さな粒度分布を有する複数の前記材料の粒子を、前記コンベヤベルトへピックアップする、二次持ち上げ面と、
を含み、
好ましくは、前記一次持ち上げ面の最下端部は、前記回転テーブルの表面と非接触状態にあり、硬質材料から作製され、かつ、鋸歯形状であり、
前記二次持ち上げ面の最下端部は、前記回転テーブルの表面と接触しており、可撓性材料から作製されている、請求項5に記載の環状炉反応器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の環状炉反応器を活性化ユニットとして含む、石油コークスの処理装置。
【請求項8】
石油コークスの処理方法であって、
(1)石油コークスの供給物および活性化剤を第1反応器内へ加え、非反応性雰囲気下で第1処理に供して、第1気相材料および第1固相材料を得る工程;
(2)工程(1)で得られた前記第1固相材料および前記第1気相材料を第2反応器内へ加え、第2熱処理に供して、第2気相材料および第2固相材料を得る工程;
(3)工程(2)で得られた前記第2固相材料を冷却処理、水との混合処理、および液固分離に供して、第1液相材料および第3固相材料を得る工程、ここで、前記第3固相材料は、多孔質炭素材料が得られるように、さらなる洗浄処理および乾燥処理に供される;
任意選択的に、(4)工程(3)で得られた前記第1液相材料を沈殿剤と接触および反応させる工程、ここで、前記反応の流出物は、第2液相材料および第4固相材料が得られるように、液固分離に供され、前記第4固相材料は、乾燥され、か焼され、次いで、前記沈殿剤として再循環される;ならびに、
任意選択的に、(5)工程(4)で得られた前記第2液相材料を蒸発-晶出に供して、第3気相材料および第5固相材料を得る工程、ここで、前記第5固相材料は、前記活性化剤として再利用される
を含む、石油コークスの処理方法。
【請求項9】
石油コークスの前記供給物を前もって乾燥処理および微粉化処理に供する工程をさらに含み、
乾燥された石油コークスの前記供給物は、2重量%以下の含水量、好ましくは1重量%以下の含水量を有し、
微粉化された石油コークスの前記供給物は、200μm以下の粒度、好ましくは150μm以下の粒度を有する、請求項8に記載の石油コークスの処理方法。
【請求項10】
工程(1)における前記第1処理は、200~500℃、好ましくは350~450℃の温度で行われ、
工程(1)における前記活性化剤と石油コークスの前記供給物とは、0.5:1~8:1の質量比であり、好ましくは1:1~5:1の質量比である、請求項8に記載の石油コークスの処理方法。
【請求項11】
工程(1)における前記活性化剤は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムからなる群から選択される1種または複数種のアルカリ金属化合物であり、好ましくは、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムのうちの1種または2種と、炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムのうちの1種または2種との混合物であり、より好ましくは、水酸化カリウムと炭酸カリウムとの混合物であり、最も好ましくは、炭酸カリウムの含有量が1~30重量%であり、好ましくは5~20重量%である水酸化カリウムと炭酸カリウムとの混合物である、請求項8に記載の石油コークスの処理方法。
【請求項12】
前記第2反応器は、請求項1~6のいずれか一項に記載の環状炉反応器である、請求項8に記載の石油コークスの処理方法。
【請求項13】
石油コークスの処理システムであって、
石油コークスの供給物および活性化剤を受け取って処理し、第1気相材料および第1固相材料を得るための第1反応器;
前記第1気相材料および前記第1固相材料を受け取って処理し、第2気相材料および第2固相材料を得るための第2反応器;
前記第2気相材料を前記第2反応器から受け取って処理し、窒素ガス、水素ガスおよびその他のガスを得るための洗浄および分離ユニット;
前記第2固相材料を前記第2反応器から受け取り、それを冷却して、冷却された前記第2固相材料を得るための冷却ユニット;
前記冷却ユニットからの冷却された前記第2固相材料および水を受け取り、混合処理および液固分離に供して第1液相材料および第3固相材料を得るための溶解および分離ユニット;
前記溶解および分離ユニットからの前記第3固相材料ならびに洗浄溶液を受け取るための洗浄および乾燥ユニット、ここで、前記第3固相材料は、活性炭が得られるように、洗浄処理および乾燥処理に供される
を備える、石油コークスの処理システム。
【請求項14】
前記溶解および分離ユニットからの前記第1液相材料、ならびに沈殿剤を受け取るための再生ユニット、ここで、前記第1液相材料は、第2液相材料および第4固相材料が得られるように、再生処理および液固分離に供される;
前記第4固相材料を前記再生ユニットから受け取って処理するための乾燥およびか焼ユニット、ここで、前記第4固相材料は、再生された前記沈殿剤が得られるように、乾燥処理およびか焼処理に供される
をさらに備え、好ましくは、
前記第2液相材料を前記再生ユニットから受け取って処理するための蒸発-晶出ユニット、ここで、前記第2液相材料は、第3気相材料および第5固相材料が得られるように、蒸発-晶出に供され、前記第5固相材料は、前記活性化剤として再循環される
をさらに備える、請求項13に記載の石油コークスの処理システム。
【請求項15】
前記第2反応器は、請求項1~6のいずれか一項に記載の環状炉反応器である、請求項13に記載の石油コークスの処理システム。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本開示は、石油コークスの処理装置、処理方法、および処理システムに関し、特に、石油コークスを原料として用いることによって多孔質炭素材料を調製するための装置、方法、およびシステムに関する。
【0002】
〔背景技術〕
石油コークスは、ディレードコーキングユニットの生成物である。石油コークスには、例えば、発熱量が高い、湿分が高い、揮発性が小さい等の性質がある。石油コークスは、コーキングユニットに加えられた供給原料油の、約25%~30%の収量で得られる。ディレードコーキング技術のさらなる発展に伴って、産業界は現在、石油コークスの有効利用、およびその付加価値の向上という課題に直面している。多孔質炭素材料を調製するための原料として石油コークスを使用することは、近年では、石油コークスの価値を向上させるための有効な方法の1つとなっている。
【0003】
石油コークス由来の多孔質炭素材料には、例えば、不純物含有量が低い、比表面積が大きい、物理的および化学的性質が安定である等の性質がある。石油コークス由来の多孔質炭素材料は、例えば、産業、農業、国防、科学技術等の分野で広く使用されている。石油コークスは、バイオマス、石炭、アスファルト等の原料と比較して、黒鉛化度が高く、活性化が比較的困難である。石油コークスの活性化には、一般に、活性化剤として、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が必要である。活性化の際には、装置の深刻な腐食、生成物の性質の不安定性等の課題がある。
【0004】
US4082694Aには、活性炭およびその調製方法が開示されている。この方法は、微粉炭、石炭コークス、石油コークスまたはそれらの混合物の供給物を、相当な重量比の水酸化カリウム水の存在下において撹拌し、より低い第1温度で加熱して、前記供給物を脱水する工程;より高い第2温度に加熱することによって、脱水された前記供給物を活性化する工程;次いで、洗浄処理によって冷却し、無機材料を前記供給物から除去して、より高い比表面積を有する活性炭を形成する工程を含む。調製された前記活性炭は、ケージ状構造、微孔性、ならび良好な嵩密度および全有機炭素指数を有する。例えば、前記調製方法は、石油コークスを重量が3倍の水酸化カリウムと混合する工程と、300~500℃の温度で脱水する工程と、700~800℃の温度で活性化する工程と、活性化された混合物を水で洗浄し、比表面積が2600m/gの活性炭を生産する工程と、を含んでもよい。
【0005】
JP95-215711には、石油コークスを、重量が3倍の水酸化カリウムによって、減圧下において800℃で活性化して、比表面積が3000m/g以上の活性炭を生産する方法が開示されている。この方法には、トンネルキルン活性炉が用いられる。
【0006】
CN1304788Aでは、KOHと石油コークスとを5:1の重量比で混合し、高温で活性化することにより、比表面積が3500m/g以上の活性炭が調製される。
【0007】
現在、石油コークスを活性化するための従来技術に係る処理では、石油コークスに対して塩基の比率を比較的高くすることが採用されている。この結果、活性化装置の深刻な腐食がもたらされ得る。一般に、ロータリーキルンまたはトンネルキルンは、石油コークスを塩基で活性化するための装置として使用される。ロータリーキルンが高温活性化において使用される場合には、その中の材料の物理的状態が温度とともに変化することにより、材料の一部が液化して、回転中にロータリーキルン反応器の壁に付着し、濃密な材料層が形成されることにより、熱伝達への悪影響、および材料の不均一な加熱がもたらされ得る。その結果、活性化に影響が及び、生成物の性質の不安定性が招来され得る。トンネルキルンを使用する場合には、供給物はコンベヤベルト上で移送される。トンネルキルンを通過する間、当該供給物は高温で活性化される。トンネルキルンでは通常、可撓性の長いコンベヤベルトおよび支持構造体が使用される。活性化中の高温およびアルカリ条件の下では、コンベヤベルトおよびその支持構造体は、構造的な崩壊および腐食を受けやすく、これにより、活性化装置の動作異常が招来され得る。現在、石油コークスからの活性炭の工業生産が実現されているが、活性化剤のコストが高い、生成物の性質が不安定である等の課題が、依然として存在している。したがって、石油コークスから多孔質炭素材料を調製するための方法、装置、およびシステムをさらに発展させることが、依然として求められている。
【0008】
〔発明の概要〕
本開示では、従来技術の欠点を克服する、石油コークスの処理方法、処理装置、および処理システムが提供される。本開示に係る方法、装置、およびシステムによって、連続生産を達成することができる。また、本開示に係る方法、装置、およびシステムは、活性化効率が高く、得られる炭素材料生成物の性質が安定であるという利点を有する。
【0009】
第1態様では、本開示において提供されるのは、石油コークスの処理方法であって、
(1)石油コークスの供給物および活性化剤を第1反応器内へ加え、非反応性雰囲気下で第1処理に供して、第1気相材料および第1固相材料を得る工程;
(2)工程(1)で得られた前記第1固相材料および前記第1気相材料を第2反応器内へ加え、第2熱処理に供して、第2気相材料および第2固相材料を得る工程;
(3)工程(2)で得られた前記第2固相材料を冷却処理、水との混合処理、および液固分離に供して、第1液相材料および第3固相材料を得る工程、ここで、前記第3固相材料は、多孔質炭素材料が得られるように、さらなる洗浄処理および乾燥処理に供される
を含む、処理方法である。
【0010】
好ましくは、石油コークスの処理方法は、
(4)工程(3)で得られた前記第1液相材料を沈殿剤と接触および反応させる工程、ここで、前記反応の流出物は、第2液相材料および第4固相材料が得られるように、液固分離に供され、前記第4固相材料は、乾燥され、か焼され(calcined)、次いで、前記沈殿剤として再循環される
をさらに含む。
【0011】
さらに好ましくは、石油コークスの処理方法は、
(5)工程(4)で得られた前記第2液相材料を蒸発-晶出に供して、第3気相材料および第5固相材料を得る工程、ここで、前記第5固相材料は、前記活性化剤として再利用される
をさらに含む。
【0012】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法において、石油コークスの前記供給物は、好ましくは、工程(1)において前記活性化剤と一緒に前記第1反応器内へ加えられる前に、乾燥処理および微粉化処理に供されてもよい。前記乾燥処理は、当技術分野において周知の方法に従って行われてもよい。一般に、乾燥された石油コークスの前記供給物は、2重量%以下の含水量、好ましくは1重量%以下の含水量を有し得る。前記微粉化処理は、当技術分野において周知の方法に従って行われてもよい。微粉化された石油コークスの前記供給物は、200μm以下の粒度、好ましくは150μm以下の粒度を有し得る。
【0013】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法において、工程(1)における前記第1処理は、200~500℃、好ましくは350~450℃の温度で行われてもよい。
【0014】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法において、工程(1)における前記活性化剤と石油コークスの前記供給物とは、0.5:1~8:1の質量比であってもよく、好ましくは1:1~5:1の質量比であってもよい。
【0015】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法において、工程(1)における前記活性化剤は、アルカリ金属化合物であってもよく、好ましくは、当該アルカリ金属化合物は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムからなる群から選択される1種または複数種のアルカリ金属化合物であり、より好ましくは、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムのうちの1種または2種と、炭酸カリウムおよび炭酸ナトリウムのうちの1種または2種との混合物であり、最も好ましくは、水酸化カリウムと炭酸カリウムとの混合物である。一変形形態では、水酸化カリウムと炭酸カリウムとの前記混合物は、1~30重量%の含有量の炭酸カリウムを含んでもよく、好ましくは5~20重量%の炭酸カリウムを含んでもよい。
【0016】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法において、工程(1)における前記非反応性雰囲気は、窒素または不活性ガスのうちの1または複数であってもよく、好ましくは、窒素である。前記不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、およびキセノンのうちの1または複数であってもよい。石油コークスの前記供給物の質量に基づいて計算する場合、前記非反応性雰囲気は、石油コークスの前記供給物1kg当たり、100~2000Lの量、好ましくは500~1000Lの量で供給されてもよい。
【0017】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法において、工程(1)における前記第1反応器は、ロータリーキルン反応器であってもよい。前記ロータリーキルン反応器は、当技術分野において一般的な任意の構造を有してもよい。当業者は、必要に応じて選択してもよい。さらに、回転速度は、0.1~2rpmであってもよく、好ましくは0.5~1rpmであってもよい。
【0018】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法において、工程(2)における前記第2熱処理は、圧力が10~100Pa(ゲージ圧)、好ましくは20~50Pa(ゲージ圧)、および温度が700~1000℃、好ましくは800~950℃という条件下で行われてもよい。前記第2熱処理は、高温処理と冷却処理とを含んでもよく、前記高温処理は、加熱処理と定温維持処理とを含んでもよい。前記加熱処理については、30~300分間、好ましくは60~180分間継続されてもよい。前記定温維持処理については、10~120分間、好ましくは20~60分間継続されてもよい。また、前記冷却処理において、前記定温維持処理工程後の材料は、300~500℃に冷却されてもよい。前記加熱処理は、燃料ガスまたは電熱放射加熱(electric thermal radiation heating)によって行われてもよい。前記定温維持処理工程は、マイクロ波加熱を用いることで行われてもよい。前記冷却処理は、前記定温維持処理工程の後に材料を冷却するために、水冷によって、または、ガスを通過させることによって、行われてもよい。
【0019】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法において、工程(2)において得られた前記第2気相材料は、水洗処理に供された後、分離ユニットにおける分離処理に供されてもよい。前記分離ユニットでは、種々のガス生成物(例えば、窒素、水素、およびその他のガス(主に、一酸化炭素、二酸化炭素、およびメタン等の炭化水素含有ガス、等が含まれる))が得られるように、1つの分離手段、またはより多くの分離手段の組み合わせが採用されてもよい。前記水洗処理は、ベンチュリスクラバを使用することによって行われてもよい。前記分離ユニットは、例えば、深冷分離のための装置、圧力スイング吸着のための装置、膜分離のための装置等の、1または複数の装置を含んでもよい。前記分離処理後に得られた前記窒素は、前記非反応性雰囲気として、前記第1反応器へ再循環されてもよい。前記分離処理後に得られた前記二酸化炭素および前記水素は、他の用途のための生成物として貯蔵されてもよい。前記分離処理後に得られた前記炭化水素含有ガスおよび前記一酸化炭素は、加熱処理用の燃料ガスとして使用されてもよい。当業者は、ガス組成および実際の必要性に基づいて、前記分離ユニットのための適切な装置を選択し得るが、これは、当業者にとって必要な基本的技能である。
【0020】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法において、前記第2反応器は、環状炉反応器である。当該環状炉反応器は、
(i)入口/出口ゾーン、高温ゾーンおよび冷却ゾーンへと分割された密閉環状空間を形成するハウジングであって、前記高温ゾーンは、加熱セクションおよび定温セクションを含み得る、ハウジングと、
(ii)前記ハウジングの内部に位置し、当該ハウジングの前記環状空間に沿って配置(構成)された回転テーブルであって、前記第1固相材料を、前記入口/出口ゾーンにおいて受け取り、当該第1固相材料を、前記高温ゾーン内および前記冷却ゾーン内へ順に運び、次いで、当該第1固相材料を、前記入口/出口ゾーンにおいて排出するように、前記ハウジングに対して回転可能である、回転テーブルと、
(iii)前記ハウジングの内部に位置し、当該ハウジング上に固定され、前記回転テーブルの上方に離隔して配置された複数のバッフルであって、複数の案内穴を含む複数のバッフルと、
を備える。
【0021】
さらに、複数の上記実施形態において、前記加熱セクションは、燃料ガスまたは電熱放射加熱によって作動されてもよく、前記加熱セクションは、30~300分間で、700~1000℃の温度に加熱されてもよく、前記定温セクションは、700~1000℃の一定温度で、10~120分間にわたって、マイクロ波加熱を用いて作動されてもよい。
【0022】
さらに、複数の上記実施形態において、前記加熱セクションは、60~180分間で、800~950℃の温度に加熱されてもよく、前記定温セクションは、800~950℃の一定温度で、20~60分間にわたって、マイクロ波加熱を用いて作動されてもよい。
【0023】
さらに、複数の上記実施形態において、前記定温ゾーンを通過した前記材料は、前記冷却ゾーンにおいて300~500℃に冷却されてもよい。好ましくは、前記定温ゾーンを通過した材料は、冷却ゾーンにおいて、水冷コイルを介して、300~500℃に冷却されてもよい。
【0024】
さらに、複数の上記実施形態において、前記環状炉反応器は、前記入口/出口ゾーンに配置された1または複数のキャリアガス入口と、前記高温ゾーンに配置されたガス出口と、をさらに備えてもよい。それぞれ前記入口/出口ゾーンの始点、中間点、および終点に配置された、3つのキャリアガス入口があってもよい。
【0025】
さらに、複数の上記実施形態において、複数の前記バッフルは、前記回転テーブルの表面に対して垂直であってもよく、複数の前記案内穴は、複数の前記バッフルの上部三分の一乃至上部二分の一のところに配置されてもよく、複数の前記案内穴は、20%~30%の開口率で形成されてもよい。複数の前記案内穴の入口側は、出口側の孔径よりも大きな孔径を有してもよい。複数の前記案内穴は、円錐形状であってもよい。
【0026】
さらに、複数の上記実施形態において、前記ガス出口は、前記高温ゾーンの前記定温セクションに配置されていてもよい。
【0027】
さらに、複数の上記実施形態において、前記入口/出口ゾーンは、フィーダを備えてもよい。前記フィーダは、前記ハウジング内のガスが前記第1固相材料のためのライン内へ入ることを防止するための1または複数の星形バルブと、前記ハウジング内へ入る前記第1固相材料を前記回転テーブル上へ均等に分配するための分配器と、を含んでもよい。
【0028】
さらに、複数の上記実施形態において、前記入口/出口ゾーンは、前記ハウジングの内部に固定された排出システムを備えてもよい。前記排出システムは、(i)螺旋排出装置(spiral discharge device)の頂部から水平方向に排出材料を出力する、当該螺旋排出装置と、(ii)前記螺旋排出装置の前記頂部に一端部が配置された状態で傾斜し、前記排出材料を前記螺旋排出装置の前記頂部へ送達する、コンベヤベルトと、(iii)前記排出材料としての、前記回転テーブル上に配置された前記第2固相材料を、前記コンベヤベルトの他端部へピックアップするように傾斜した、持ち上げ面と、を備える。
【0029】
さらに、複数の上記実施形態において、前記持ち上げ面は、D10よりも大きな粒度分布を有する前記第2固相材料の粒子を、前記コンベヤベルトへピックアップする、一次持ち上げ面と、D10よりも小さな粒度分布を有する前記第2固相材料の粒子を、前記コンベヤベルトへピックアップする、二次持ち上げ面と、を含んでもよい。
【0030】
さらに、複数の上記実施形態において、前記一次持ち上げ面の最下端部は、前記回転テーブルの表面と非接触状態にあってもよく、硬質材料から作製され、かつ鋸歯形状であってもよい。前記二次持ち上げ面の最下端部は、前記回転テーブルの表面と接触していてもよく、可撓性材料から作製されてもよい。
【0031】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法では、工程(3)において、前記第2固相材料は、20~100℃、好ましくは50~80℃に冷却され、次いで、水と混合される。ここで、水の量は、前記第2固相材料の重量の2~10倍、好ましくは3~5倍である。前記冷却処理は、スラグ冷却器において行われてもよい。前記スラグ冷却器は、当技術分野で一般的に使用される任意のものであってもよい。
【0032】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法では、工程(3)において、前記第3固相材料は、多孔質炭素材料、好ましくは活性炭が得られるように、さらなる洗浄処理および乾燥処理に供される。前記洗浄処理は、水洗処理および酸洗処理を含んでもよい。好ましくは、前記水洗処理は、濾液が中性になるまで行われる。前記水洗処理は、1つずつ容器内で行われてもよく、またはベルト上で行われてもよい。前記酸洗処理は、塩酸、硫酸、またはそれらの混合物であり得る酸を用いて行われてもよい。通常、酸は、1~10重量%の濃度の水溶液として使用される。前記乾燥処理は、50~200℃、好ましくは80~160℃の温度で行われてもよい。前記乾燥処理は、空気雰囲気下、窒素雰囲気下、または真空中で行われてもよい。
【0033】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法では、工程(4)において、前記沈殿剤は、酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムであってもよく、好ましくは、水酸化カルシウムであってもよい。カルシウムイオンを基準として、前記沈殿剤は、前記第1液相材料中の炭酸イオンの質量の70~100%、好ましくは70~95%、さらに好ましくは75~90%の量で加えられてもよい。
【0034】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法では、工程(4)において、前記第1液相材料および前記沈殿剤は、60~95℃、好ましくは80~90℃の温度で、接触および反応してもよい。
【0035】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法では、工程(4)において、前記第4固相材料は、乾燥およびか焼され、次いで、前記沈殿剤として再循環されてもよい。乾燥処理は、80~200℃、好ましくは120~160℃の温度で行われてもよく、か焼処理は、700~1200℃、好ましくは800~1000℃の温度で行われてもよい。
【0036】
本開示に係る石油コークスの前記処理方法では、工程(5)において、前記蒸発-晶出において得られた前記第3気相材料は、凝縮され工程(3)へ再循環されて、冷却された前記第2固相材料と混合されてもよい。
【0037】
本開示の第2態様では、石油コークスの処理装置が提供される。当該処理装置は、活性化ユニットを含み、前記活性化ユニットは、環状炉反応器である。当該環状炉反応器は、
(i)入口/出口ゾーン、高温ゾーンおよび冷却ゾーンへと分割された密閉環状空間を形成するハウジングであって、前記高温ゾーンは、加熱セクションおよび定温セクションを含み得る、ハウジングと、
(ii)前記ハウジングの内部に位置し、当該ハウジングの前記環状空間に沿って配置された回転テーブルであって、石油コークスと活性化剤との混合された供給材料を、前記入口/出口ゾーンにおいて受け取り、石油コークスと前記活性化剤との混合された前記供給材料を、前記高温ゾーン内および前記冷却ゾーン内へ順に運び、次いで、混合された当該供給材料を、前記入口/出口ゾーンにおいて排出するように、前記ハウジングに対して回転可能である、回転テーブルと、
(iii)前記ハウジングの内部に位置し、当該ハウジング上に固定され、前記回転テーブルの上方に離隔して配置された複数のバッフルであって、複数の案内穴を含む複数のバッフルと、
を備える。
【0038】
一変形形態では、本開示に係る石油コークスの前記処理装置は、石油コークスから活性炭等の多孔質炭素材料を調製するために使用される。
【0039】
さらに、複数の上記実施形態において、前記加熱セクションは、30~300分間で、700~1000℃の温度に加熱されてもよく、前記定温セクションは、700~1000℃の一定温度で、10~120分間にわたって、マイクロ波加熱を用いて作動されてもよい。
【0040】
さらに、複数の上記実施形態において、前記加熱セクションは、60~180分間で、800~950℃の温度に加熱されてもよく、前記定温セクションは、800~950℃の一定温度で、20~60分間にわたって、マイクロ波加熱を用いて作動されてもよい。
【0041】
さらに、複数の上記実施形態において、前記定温セクションを通過した当該混合供給物は、前記冷却ゾーンにおいて300~500℃に冷却されてもよい。例えば、前記冷却ゾーンにおける冷却処理は、水冷コイルを介して行われてもよい。
【0042】
さらに、複数の上記実施形態において、前記活性化ユニットは、前記入口/出口ゾーンに配置された1または複数のキャリアガス入口と、前記高温ゾーンに配置されたガス出口と、をさらに備えてもよい。それぞれ前記入口/出口ゾーンの始点、中間点、および終点に配置された、3つのキャリアガス入口があってもよい。
【0043】
さらに、複数の上記実施形態において、複数の前記バッフルは、前記回転テーブルの表面に対して垂直であってもよく、複数の前記案内穴は、複数の前記バッフルの上部三分の一乃至上部二分の一のところに配置されてもよく、複数の前記案内穴は、20%~30%の開口率で形成されてもよい。複数の前記案内穴の入口側は、出口側の孔径よりも大きな孔径を有してもよい。複数の前記案内穴は、円錐形状であってもよい。
【0044】
さらに、複数の上記実施形態において、前記ガス出口は、前記高温ゾーンの前記定温セクションに配置されていてもよい。
【0045】
さらに、複数の上記実施形態において、前記入口/出口エリアは、フィーダを備えてもよい。前記フィーダは、前記ハウジング内のガスが混合された前記供給材料のためのライン内へ入ることを防止するための1または複数の星形バルブと、前記ハウジング内へ入る混合された前記供給材料を前記回転テーブル上へ均等に分配するための分配器と、を含んでもよい。
【0046】
さらに、複数の上記実施形態において、前記入口/出口ゾーンは、前記ハウジングの内部に固定された排出システムを備えてもよい。前記排出システムは、(i)螺旋排出装置の頂部から水平方向に排出材料を出力する、当該螺旋排出装置と、(ii)前記螺旋排出装置の前記頂部に一端部が配置された状態で傾斜し、前記排出材料を前記螺旋排出装置の前記頂部へ送達する、コンベヤベルトと、(iii)前記回転テーブル上に配置された前記排出材料を、前記コンベヤベルトの他端部へピックアップするように傾斜した、持ち上げ面と、を備える。
【0047】
さらに、複数の上記実施形態において、前記持ち上げ面は、D10よりも大きな粒度分布を有する前記材料の粒子を、前記コンベヤベルトへピックアップする、一次持ち上げ面と、D10よりも小さな粒度分布を有する前記材料の粒子を、前記コンベヤベルトへピックアップする、二次持ち上げ面と、を含んでもよい。
【0048】
さらに、複数の上記実施形態において、前記一次持ち上げ面の最下端部は、前記回転テーブルの表面と非接触状態にあってもよく、硬質材料から作製され、かつ鋸歯形状であってもよい。前記二次持ち上げ面の最下端部は、前記回転テーブルの表面と接触していてもよく、可撓性材料から作製されてもよい。
【0049】
さらに、複数の上記実施形態において、本開示に係る前記装置は、活性化剤回収ユニットをさらに含んでもよい。当該活性化剤回収ユニットにおいて、前記排出材料は、洗浄処理および分離処理に供される。得られた液相生成物は、苛性化処理に供され、前記活性化剤が回収される。
【0050】
さらに、複数の上記実施形態において、本開示に係る前記装置は、前処理ユニットをさらに含んでもよい。当該前処理ユニットにおいて、石油コークスは、活性化剤と混合され、微粉化される。当該混合物は400~500℃に加熱されて、当該混合物が予備転換(pre-convert)され、次いで、前記活性化ユニット内へ送られる。前記活性化剤および石油コークスは、1:1~5:1の重量比で混合されてもよい。前記前処理ユニットは、前記混合物を予備転換するためのロータリーキルンであってもよい。
【0051】
さらに、複数の上記実施形態において、本開示に係る前記装置は、ガス処理ユニットをさらに含んでもよい。当該ガス処理ユニットにおいて、前記活性化ユニットの前記ガス出口から排出される気相生成物は、浄化処理および分離処理に供されて、水素ガスが出力される。
【0052】
さらに、複数の上記実施形態において、本開示に係る前記装置は、洗浄および精製ユニットをさらに含んでもよい。当該洗浄および精製ユニットにおいて、前記活性化ユニットからの前記排出材料は、洗浄処理および分離処理に供される。前記分離処理後の固相生成物は乾燥され、前記活性炭が得られる。
【0053】
本開示の第3態様では、石油コークスの処理システムが提供される。当該システムは、
石油コークスの供給物および活性化剤を受け取って処理し、第1気相材料および第1固相材料を得るための第1反応器;
前記第1気相材料および前記第1固相材料を受け取って処理し、第2気相材料および第2固相材料を得るための第2反応器;
前記第2気相材料を前記第2反応器から受け取って処理し、窒素、水素およびその他のガスを得るための洗浄および分離ユニット;
前記第2固相材料を前記第2反応器から受け取り、それを冷却して、冷却された前記第2固相材料を得るための冷却ユニット;
前記冷却ユニットからの冷却された前記第2固相材料および水を受け取り、混合処理および液固分離に供して第1液相材料および第3固相材料を得るための溶解および分離ユニット;
前記溶解および分離ユニットからの前記第3固相材料ならびに洗浄溶液を受け取るための洗浄および乾燥ユニット、ここで、前記第3固相材料は、活性炭が得られるように、洗浄処理および乾燥処理に供される
を備える。
【0054】
好ましくは、石油コークスの前記処理システムは、
前記溶解および分離ユニットからの前記第1液相材料ならびに沈殿剤を受け取るための再生ユニット、ここで、前記第1液相材料は、第2液相材料および第4固相材料が得られるように、処理および液固分離に供される;
前記第4固相材料を前記再生ユニットから受け取って処理するための乾燥およびか焼ユニット、ここで、前記第4固相材料は、再生された前記沈殿剤が得られるように、乾燥処理およびか焼処理に供される
をさらに備えてもよい。
【0055】
さらに好ましくは、石油コークスの前記処理システムは、
前記第2液相材料を前記再生ユニットから受け取って処理するための蒸発-晶出ユニット、ここで、前記第2液相材料は、第3気相材料および第5固相材料が得られるように、蒸発-晶出に供され、前記第5固相材料は、前記活性化剤として再循環される
をさらに備えてもよい。
【0056】
本開示に係る石油コークスの前記処理システムにおいて、
前記第1反応器は、石油コークスのための供給ラインおよび活性化剤のための供給ラインと連通する供給入口を備える;
前記第2反応器は、第1気相ラインを介して前記第1反応器の気相出口と連通するガス入口と、第1固相ラインを介して前記第1反応器の固相出口と連通する固相入口と、を備える;
前記洗浄および分離ユニットは、第2気相ラインを介して前記第2反応器の気相出口と連通する供給入口を備える;
前記冷却ユニットは、第2固相ラインを介して前記第2反応器の固相出口と連通する供給入口を備える;
前記溶解および分離ユニットは、第3固相ラインを介して前記冷却ユニットの出口と連通する供給入口を備える;
前記洗浄および乾燥ユニットは、第4固相ラインを介して前記溶解ユニットの固相出口と連通する供給入口を備える;
前記再生ユニットは、第1液相ラインを介して前記溶解および分離ユニットの液相出口と連通する供給入口を備える;
前記乾燥およびか焼ユニットは、第5固相ラインを介して前記再生ユニットの固相出口と連通する供給入口を備える;
前記蒸発-晶出ユニットは、第2液相ラインを介して前記再生ユニットの液相出口と連通する供給入口を備える、処理システム。
【0057】
本開示に係る石油コークスの前記処理システムにおいて、石油コークスのための前記供給ラインは、乾燥ユニットおよび微粉化ユニットとさらに連通していてもよい。当該乾燥ユニットおよび微粉化ユニットにおいて、石油コークスの前記供給物は、まず、乾燥処理および微粉化処理に供される。前記乾燥処理は、当技術分野において周知の方法に従って行われてもよい。一般に、乾燥された石油コークスの前記供給物は、2重量%以下の含水量、好ましくは1重量%以下の含水量を有し得る。前記微粉化処理は、当技術分野において周知の方法に従って行われてもよい。微粉化された石油コークスの前記供給物は、200μm以下の粒度、好ましくは150μm以下の粒度を有し得る。
【0058】
本開示に係る石油コークスの前記処理システムにおいて、前記第1反応器は、ロータリーキルン反応器であってもよい。前記ロータリーキルン反応器は、当技術分野において一般的に使用される任意の構造を有する反応器であってもよい。当業者は、必要に応じた適切なものを選択してもよい。
【0059】
本開示に係る石油コークスの前記処理システムにおいて、前記洗浄および分離ユニットは、直列に接続された、洗浄ユニットと分離ユニットとを含んでもよい。洗浄ユニットは、1または複数の洗浄装置を含んでもよく、好ましくは、前記第2気相材料を洗浄するためのベンチュリスクラバを含んでもよい。洗浄後の前記第2気相材料は、分離のために、前記分離ユニット内へ送られる。分離後に、窒素、水素、二酸化炭素、炭化水素含有ガスおよび一酸化炭素が得られる。前記分離ユニットは、例えば、深冷分離のための装置、圧力スイング吸着のための装置、膜分離のための装置等の、1または複数の装置を含んでもよい。当業者は、ガス組成および実際の必要性に基づいて、分離ユニットのための適切な装置を選択し得るが、これは、当業者にとって基本的な技能である。
【0060】
本開示に係る石油コークスの前記処理システムにおいて、前記第2反応器は、例えば上述した前記環状炉反応器等の、環状炉反応器であってもよいが、説明をここで繰り返すことはしない。
【0061】
本開示に係る石油コークスの前記処理システムにおいて、前記冷却ユニットは、1または複数の冷却装置を含んでもよい。当該冷却装置は、スラグ冷却器であることが好ましい。当該スラグ冷却器は、ドラムスラグ冷却器、振動スラグ冷却器、水冷スラグ冷却器、およびディスクスラグ冷却器からなる群から選択される、1または複数のスラグ冷却器であってもよい。当該スラグ冷却器は、ドラムスラグ冷却器であることが好ましい。前記冷却ユニットは、前記第2反応器からの前記第2固相材料を、20~100℃、好ましくは50~80℃にさらに冷却するためのものである。前記スラグ冷却器は、当技術分野において市販されている製品であってもよい。前記スラグ冷却器の種類は、当業者の要求に基づいて、当業者によって選択されてもよい、かかる選択は、当業者にとって基本的な技能である。
【0062】
本開示に係る石油コークスの前記処理システムにおいて、前記溶解および分離ユニットは、前記冷却ユニットからの冷却された前記第2固相材料と、給水ラインからの前記洗浄水とを受け取るための、撹拌装置を有する容器であってもよい。冷却された前記第2固相材料と前記洗浄水とは、前記第1液相材料および前記第3固相材料が得られるように、混合処理および液固分離に供される。前記洗浄水の量は、前記第2固相材料の重量の一般には2~10倍、好ましくは3~5倍である。本開示に係る石油コークスの前記処理システムは、1または複数の溶解および分離ユニットを含んでもよく、好ましくは、2以上の溶解および分離ユニットを含んでもよく、さらに好ましくは、2つの溶解および分離ユニットを含んでもよい。前記溶解および分離ユニットが2以上ある場合、それらを切り替えることができる。前記ユニットの数は、前記第2固相材料の量に基づいて決定されてもよい。本開示に係る前記溶解および分離ユニットは、断続的に運転されてもよい。前記蒸発-晶出ユニットにおける蒸発-晶出の間に生成される液相材料が、前記洗浄水として使用されてもよい。
【0063】
本開示に係る石油コークスの前記処理システムにおいて、前記洗浄および乾燥ユニットは、洗浄ユニットと乾燥ユニットとを含んでもよい。前記洗浄ユニットは、水洗処理および酸洗処理を含んでもよい。好ましくは、前記水洗処理は、濾液が中性になるまで行われる。前記水洗処理は、容器内で1つずつ行われてもよく、またはベルト上で行われてもよい。前記酸洗処理は、塩酸、硫酸、またはそれらの混合物であり得る酸を用いて行われてもよい。通常、酸は、1~10重量%の濃度の水溶液として使用される。前記乾燥処理は、50~200℃、好ましくは80~160℃の温度で行われてもよい。前記乾燥処理は、空気雰囲気下、窒素雰囲気下、または真空中で行われてもよい。
【0064】
本開示に係る石油コークスの前記処理システムにおいて、前記再生ユニットは、攪拌装置を有する、耐アルカリ材料製の加熱可能な容器であってもよく、好ましくは、オートクレーブであってもよい。
【0065】
本開示に係る石油コークスの前記処理システムにおいて、前記蒸発-晶出ユニットは、オートクレーブ蒸発器、管状薄膜蒸発器、スクレーパ真空蒸発器、遠心薄膜蒸発器等のうちの1または複数のものであってもよい。前記蒸発-晶出ユニットは、オートクレーブ蒸発器であることが好ましい。
【0066】
従来技術と比較して、本開示に係る石油コークスの前記処理方法、前記処理装置、および前記処理システムは、以下の利点を有する。
【0067】
1.石油コークスからの多孔質炭素材料の連続生産に適用可能であり、大規模工業生産に有利である。
【0068】
2.(i)回転テーブルがハウジングに対して回転する、環状炉反応器が使用される。使用中、回転テーブルは、環状炉のハウジングの内部を移動する供給材料を運ぶ。供給および移動の間、回転テーブルは、移動部分に対して静止しており、これによって、供給材料が乱されることが防止され、生成物の性質の均一性が保証される。また、環状炉反応器では、ロータリーキルンを使用する方法において一般的に生じる、材料が壁に付着する問題、およびトンネルキルンの過剰な長さのために通常生じる、コンベヤ崩壊の問題が回避され得る。(ii)さらに、環状炉反応器の高温ゾーンにおいて、加熱セクションは、燃料ガスまたは電熱放射加熱によって加熱され、定温セクションは、マイクロ波加熱を用いて加熱される。燃料ガスまたは電熱放射加熱による加熱には、費用効果が高いという利点があり、熱は、材料の表面から材料の内部へ伝達される。マイクロ波加熱では、熱は、材料の内部から材料の外部へ伝達される。それゆえ、この2つを組み合わせることによって、加熱をより均一なものにしつつ、より良好な加熱効果が高温ゾーンにおいて達成され、それによって、高温ゾーンに付随する生成物の性質の不均一性の問題が回避される。加えて、定温セクションを、従来の定温セクションとマイクロ波定温セクションとからなるように構成することができる。この場合において、従来の定温セクションは、依然として燃料ガスまたは電熱放射加熱により作動され、マイクロ波定温セクションは、マイクロ波加熱を用いて作動される。かかる構成によって、定温セクション全体においてマイクロ波加熱を用いることによって生じる、エネルギー消費およびコストの増大が回避され得る。(iii)さらに、環状炉反応器は、回転テーブルの上方に複数のバッフルを含み、複数の案内穴が複数の当該バッフル上に形成されている。かかる設計によって、加熱された供給材料から留出された(distilled)高温ガスがハウジングの外に移動され、その逆混合が低減されるだけでなく、活性化の間に生成される灰が複数の当該バッフルに蓄積され、これによって、ガス出口における、ラインをブロックし得る灰の蓄積が、効果的に回避される。
【0069】
3.活性化剤を再生する工程を含む。活性化剤を再循環させることによって、使用される活性化剤の量が低減され、これにより、コストが節約される。同時に、キャリアガス、洗浄水等の汎用的工業資源も再循環され、これにより、排出物が低減され、グリーン経済の要件が満たされる。
【0070】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本開示に係る石油コークスの処理方法のフローを示す模式図である。
【0071】
図2は、本開示に係る環状炉反応器の三次元概略図である(主に、ハウジング、およびマイクロ波加熱のための構成を示す)。
【0072】
図3は、本開示に係る環状炉反応器の上面概略図である。
【0073】
図4は、本開示に係る環状炉反応器の断面概略図である(主に、回転テーブルの部分断面図を示す)。
【0074】
図5は、本開示に係るバッフルの断面概略図である(バッフル上の案内穴の構造を示す)。
【0075】
図6は、本開示に係る排出システムの構造を示す概略図である。
【0076】
図7は、本開示に係る一次持ち上げ面の最下端部の構造を示す概略図である。
【0077】
〔詳細な説明〕
次に、例示的な実施形態を参照して、本発明をそれらに限定することなく、本発明の技術および利点を説明する。
【0078】
特に明記しない限り、明細書および特許請求の範囲全体で使用されているように、「備える」という語、または「含む」もしくは「有する」等の同等の語は、述べられた要素または構成要素を含むが、その他の要素または構成要素を排除するものではないものと理解されたい。
【0079】
本明細書において、例えば「下」、「下方」、「下側」、「上」、「上方」、「上側」等の、空間的または時間的に相対的な語は、図に示すある要素または特徴と他の(1以上の)要素または(1以上の)特徴との関係性を説明する記載を容易にするために使用され得る。空間的に相対的な語は、図に示す向きに加えて、使用中または動作中における物体の種々の向きを包含(網羅)するように意図され得ることを理解されたい。例えば、図中の物体がひっくり返された場合には、他の(1以上の)要素または(1以上の)特徴の「下」または「下方」にあるように説明された要素は、当該(1以上の)要素または(1以上の)特徴の「上(方)」にあるように向けられることとなる。したがって、「下(方)」という例示的な語は、下と上との両方の向きを包含し得る。物体は、他の向き(90度回転、またはその他の向き)を有することもでき、対応する説明は、本明細書に使用される空間的に相対的な語に委ねられるべきである。
【0080】
本明細書において、「第1」、「第2」等の語は、異なる2つの要素または位置を識別するために使用される。換言すれば、一部の実施形態において、「第1」、「第2」等の語は、相互に交換されてもよい。
【0081】
本明細書において、パラメータの全ての数値(例えば、量または条件)は、数値の前に「約」が実際に現れるか否かにかかわらず、全ての場合において、「約」という語によって修飾されているものと理解されるべきである。
【0082】
図1は、本開示に係る石油コークスの処理方法の一実施形態を示す。当該処理方法は、以下の工程を含む:乾燥ユニットAおよび微粉化ユニットBにおいて、石油コークスの供給物101を、乾燥処理および微粉化処理に供する工程。乾燥処理および微粉化処理の後の石油コークスの供給物は、混合ユニットCにおいて、活性化剤102と混合される。得られた混合物103は、第1反応器D内へ送られ、不活性雰囲気121の存在下で第1処理に供されて、第1気相材料104および第1固相材料105が得られる。得られた第1固相材料105および第1気相材料104は、第2反応器E内へ送られ、第2熱処理に供されて、第2気相材料106および第2固相材料107が得られる。得られた第2気相材料106は、洗浄および分離ユニットGにおいて、処理(例えば、ガススクラバにおける洗浄処理、および分離ユニットにおける分離処理)に供されて、窒素120、水素118およびその他のガス119が得られる(当該その他のガスには主に、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン等の炭化水素ガス、等が含まれる)。分離ユニットでは、深冷分離のための装置、圧力スイング吸着のための装置、膜分離のための装置等のうちの1または複数の装置が使用されてもよい。分離処理後に得られた炭化水素含有ガスおよび一酸化炭素は、第2反応器における加熱のための燃料として使用されてもよい。分離処理後に得られた窒素は、非反応性雰囲気として、第1反応器へ再循環されてもよい。分離処理後に得られた水素は、生成物として貯蔵されてもよい。得られた第2固相材料107は、冷却ユニットH(例えば、スラグ冷却器)において、冷却処理に供される。冷却された第2固相材料は、溶解および分離ユニットI内へ送られ、水との混合処理および液固分離に供されて、第1液相材料109および第3固相材料108が得られる。第3固相材料108は、洗浄および乾燥ユニット内へ送られ、洗浄ユニットJにおいて水洗処理および酸洗処理に、乾燥ユニットKにおいて乾燥処理に供され、多孔質炭素材料生成物(例えば、活性炭)122が得られる。得られた第1液相材料109は、沈殿剤110とともに、接触および反応のために再生ユニットL内へ送られる。当該反応の流出物が液固分離に供され、第2液相材料111および第4固相材料112が得られる。また、第4固相材料112は、乾燥およびか焼ユニットにおいて乾燥およびか焼されて、再生された沈殿剤113および二酸化炭素114が得られる。得られた再生された沈殿剤113は、再生ユニットLにおいて、再循環および再利用されてもよい。得られた第2液相材料111は、蒸発-晶出ユニット内へ送られ、蒸発-晶出に供されて、第3気相材料115および第5固相材料116が得られる。得られた第5固相材料116は、再生された活性化剤として、混合ユニットCにおいて、再循環および再利用される。得られた第3気相材料115は、凝縮され、次いで、溶解および分離ユニットIにおいて、再循環および再利用される。
【0083】
図2図4に示すように、第2反応器Eとして機能しているのは、本開示に係る環状炉反応器である。環状炉反応器は、環状ハウジング2を含む。環状ハウジング2は、入口/出口ゾーン(図3のリングの左上部)、高温ゾーン(図3のリングの右半分)、および冷却ゾーン(図3のリングの左下部)へと分割された密閉環状空間を形成する。環状炉反応器において、圧力は、10~100Pa(ゲージ圧)、好ましくは20~50Pa(ゲージ圧)に設定されてもよい。環状炉反応器は、回転テーブル25をさらに含む。回転テーブル25は、環状ハウジング2の内部に位置し、環状ハウジング2の環状空間に沿って配置されている。回転テーブル25は、その底部における伝達機構250によって駆動されてもよい。伝達機構250は、回転テーブル25を、ハウジング2に対して回転させる。入口/出口ゾーンにおけるフィーダ21は、回転テーブル25上に第1固相材料を分配する。回転中、回転テーブル25は、第1固相材料を受け取り、当該第1固相材料を、(第1固相材料が高温で活性化される)高温ゾーン内および(当該材料が冷却される)冷却ゾーン内へ順次運び、次いで、当該第1固相材料を、(冷却された当該材料が排出システムから排出される)入口/出口ゾーン内へ運ぶ。回転テーブルの材料は特に限定されない。しかしながら、硬質材料が好ましい。回転テーブルは、より大きな厚さを有してもよく、その底部は、リブで補強されていてもよく、その結果、可撓性コンベヤの構造的崩壊の問題がさらに回避されてもよい。
【0084】
本開示に係る環状炉反応器では、回転テーブルは、ハウジングに対して回転する。使用中、回転テーブルは供給材料を運び、環状炉のハウジングの内部を移動する。供給および移動の間、回転テーブルは、移動部分に対して静止しており、これによって、供給材料がかき乱されることが防止され、生成物の性質の均一性が保証される。また、環状炉反応器では、ロータリーキルンを使用する方法において一般的に生じる、材料が壁に付着する問題、およびトンネルキルンの過剰な長さのために通常生じる、コンベヤの構造的崩壊の問題が回避され得る。
【0085】
さらに、図3に示すように、高温ゾーンは、加熱セクションと定温セクションとに分けられる。加熱セクションは、燃料ガスまたは電熱放射加熱によって加熱されてもよく、加熱セクションにおける時間を30~300分、好ましくは60~180分として、第1固相材料を700~1000℃、好ましくは800~950℃に加熱する。定温セクションは、完全にマイクロ波加熱を用いて加熱されてもよい。あるいは、図3に示すように、定温セクションは、従来の定温セクションとマイクロ波定温セクションとからなる。この場合において、従来の定温セクションは、燃料ガスまたは電熱放射加熱によって作動され、マイクロ波定温セクションは、マイクロ波加熱を用いて作動される。燃料ガスまたは電熱放射加熱による加熱は、熱放射管202によって行われてもよい。この場合において、熱放射管202は、ハウジング200を貫通して延びる(図4参照)。定温セクションは、10~120分、好ましくは20~60分の定温セクションにおける時間にわたって、当該材料を700~1000℃、好ましくは800~950℃の温度に維持する。加熱セクションにおける時間、および定温セクションにおける時間は、環状ハウジング2の構造寸法、各々のゾーンおよびセクションの面積、回転テーブル25の回転速度等の因子によって、制御されてもよい。環状炉反応器の高温ゾーンにおいて、加熱セクションは、燃料ガスまたは電熱放射加熱によって加熱され、定温セクションは、マイクロ波加熱を用いて加熱される。燃料ガスまたは電熱放射加熱による加熱には、費用対効果が高いという利点があり、熱は、材料の表面から材料の内部へ伝達される。マイクロ波加熱では、熱は、材料の内部から材料の外部へ伝達される。それゆえ、この2つを組み合わせることによって、より効果的かつ均一な加熱が高温ゾーンにおいて達成され、それによって、高温ゾーンに付随する生成物の性質の不均一性の問題が回避される。加えて、定温セクションを、従来の定温セクションとマイクロ波定温セクションとからなるように構成することができる。この場合において、従来の定温セクションは、燃料ガスまたは電熱放射加熱により作動され、マイクロ波定温セクションは、マイクロ波加熱を用いて作動される。かかる構成によって、定温セクション全体においてマイクロ波加熱を用いることによって生じる、エネルギー消費およびコストの増大が回避され得る。
【0086】
高温活性化の後、材料は、冷却ゾーン内へ送られ、定温セクションを通過した材料が300~500℃に冷却され得るように、冷却処理に供されてもよい。一変形形態では、定温セクションを通過した材料は、冷却ゾーンにおいて、水冷コイルを介して、300~500℃に冷却されてもよい。
【0087】
さらに、図2に示すように、加熱用のマイクロ波は、マイクロ波源11を介して供給される。冷却水は、冷却水入口/出口主管120を通じて、冷却コイル12内へ移送され、次いで、冷却ゾーン内へ移送されて、高温活性化された材料を冷却する。マイクロ波加熱は、弱電流ケーブルトレイ13および強電流ケーブルトレイ14を通じて、電力供給および制御される。
【0088】
通常、石油コークスの活性化の間のキャリアガスとして、窒素が使用される。それゆえ、環状炉反応器は、1または複数のキャリアガス入口およびガス出口をさらに含む。キャリアガスのフラックスおよび均一性が保証されるように、1または複数のキャリアガス入口は、入口/出口ゾーンに配置されてもよい。限定するものではないが、好ましくは、3つのキャリアガス入口があり、それぞれ入口/出口ゾーンの始点、中間点、および終点に配置されている。ガス出口は、高温ゾーンの定温セクションに配置されてもよい。
【0089】
さらに、図4および図5に示すように、回転テーブル25の上方に(回転テーブル25と接触せずに)間隔を空けて(好ましくは、等間隔に)配置されたバッフル24を、キャリアガスAおよび活性化の間に留出された高温ガスが確実に通過できるように、複数の案内穴240がバッフル24上に設けられている。これらは、最終的にガス出口からハウジング外へ排出される第2気相材料(図3のガスB)とみなされる。限定するものではないが、好ましくは、バッフル24は、回転テーブル25の表面に対して垂直に配置されてもよく、複数の案内穴240は、複数のバッフルの上部三分の一乃至上部二分の一のところに配置されてもよく、複数の案内穴240は、20%~30%の開口率で形成されてもよい。回転テーブル25上の供給材料が加熱されると、高温ガスが留去され、環状ハウジングの上側部分の方へ濃縮される。これらの高温ガスをハウジングから効果的に除去して、逆混合およびそれによる転換(conversion)への悪影響が低減されるように、複数の案内穴がバッフル24の上側部分において開口しており、その結果、冷たいキャリアガスがバッフル24の下方を流れ、生成された高温ガスがバッフル24の上側部分から外へ出る、循環環境が形成される。第1固相材料の高温活性化の間に、微細灰が生成される。微細灰は、高温ガスによって運ばれ、移動される。ガス出口における、ラインをブロックし得るこれらの微細灰の蓄積が回避されるように、バッフル24の内部にこれらの微細灰を沈降させ、固体材料を有する環状炉反応器から外へ微細灰を移動させるよう、案内穴240におけるガスの流量の変化が利用される。さらに、案内穴240の入口側の孔径は、出口側の孔径よりも大きくてもよい。一変形形態では、出口側の孔径は、入口側の孔径の40~60%に設定されてもよい。一変形形態では、案内穴は、円錐形状または円錐形状に類似するその他の形態であってもよい。
【0090】
さらに、図4に示すように、環状炉反応器のハウジング200の底部には、ハウジング200を基部(図示せず)から隔離し、密閉空間を形成する、密閉層201が設けられる。回転テーブル25は、この密閉空間内にあり、伝達機構250の駆動によって、ハウジング200に対して回転する。図3に示すように、第1固相材料は、フィーダ21を通じて、回転テーブル25へ供給され、回転テーブル25上に分配される。第1固相材料は、回転テーブル25によって運ばれて、加熱セクション内、従来の定温セクション内、マイクロ波定温セクション内、および冷却セクション内へ順次移動し、最後に、排出システム22を通じて、環状ハウジング2から外へ出る。
【0091】
また、図3に示すように、フィーダ21は、入口/出口ゾーンに配置されている。フィーダ21は、星形バルブおよび分配器(図示せず)を含んでもよい。1または複数の星形バルブが使用されてもよい。星形バルブによって、ハウジング2内のガスが第1固相材料のためのライン内へ入ることが防止され得る。分配器は、ハウジング内へ入る第1固相材料を回転テーブル25上へ分配するために使用される。
【0092】
さらに、図3に示すように、排出システム22もまた、入口/出口ゾーンに配置されている。排出システム22は、ハウジング2の内部に固定されている。図6および図7に示すように、排出システム22は、螺旋排出装置221、コンベヤベルト222、および持ち上げ面を含んでもよい。持ち上げ面は、一次持ち上げ面223および二次持ち上げ面224を含んでもよい。2つの持ち上げ面は、回転テーブルの表面に対して、わずかに傾斜している。一次持ち上げ面223は、D10よりも大きな粒度分布を有する材料の粒子をコンベヤベルト222へピックアップし得、二次持ち上げ面224は、D10よりも小さな粒度分布を有する材料の粒子をコンベヤベルト222へピックアップし得る。高温で活性化されて冷却された後の材料(第2固相材料)は、ある粘度を有し、回転テーブル25の表面に付着し得る。そのため、一次持ち上げ面223の最下端部は、材料の粒子が回転テーブルの表面から効果的に分離され、当該材料の粒子がピックアップされるように、硬質材料から作製され、かつ(例えば、図7に示す鋸歯状構造2230のような)鋸歯形状であってもよい。回転テーブル25の表面が損傷しないよう、一次持ち上げ面223の最下端部は、回転テーブル25の表面と接触しておらず、それと回転テーブル25の表面との間の距離は、D10の粒度分布である。この結果、回転テーブルを保護し、D10よりも大きな粒度分布を有する材料の粒子をピックアップすることができる。二次持ち上げ面224の最下端部は、回転テーブル25の表面と接触している。回転テーブルの表面が保護されるように、二次持ち上げ面224の最下端部は、可撓性材料から作製され得る。一次持ち上げ面223の最下端部から漏れた材料の粒子(すなわち、D10よりも小さな粒度分布を有する材料の粒子)は、二次持ち上げ面224でピックアップすることができる。コンベヤベルト222もまた、傾斜している。回転テーブル25が移動するとき、2つの持ち上げ面は、材料の粒子を継続的にピックアップする。材料の粒子は、徐々に積み上げられ、コンベヤベルト222の下端部へ移送され、次いで、コンベヤベルトの上端部へ移送され、螺旋排出装置221内へ落下する。螺旋排出装置221は、排出材料を、その頂部から水平方向に出力する。結果として、材料の粒子は、材料コンベヤ23を通じて、環状ハウジング2の外へ移動される。
【0093】
本開示に係る石油コークスの処理装置は、洗浄および精製ユニットをさらに含んでもよい。当該洗浄および精製ユニットにおいて、活性化ユニットからの排出材料は、洗浄処理および分離処理に供される。分離処理後の固相生成物は乾燥され、多孔質炭素材料(例えば、活性炭)が得られる。
【0094】
石油コークスの活性化に多量の活性化剤が使用されるという事実ゆえに、本開示に係る装置は、活性化剤の再生および回収を実現する活性化剤回収ユニットをさらに含んでもよく、その結果、活性化剤の消費が効果的に低減され、コストが節約される。特に、活性化剤回収ユニットでは、洗浄および精製ユニットにおいて排出材料を洗浄および分離した後に得られる液相生成物は、水酸化カルシウムとの苛性化反応に供されて、活性化剤(例えば、水酸化カリウム)が再利用のために回収される。一変形形態では、苛性化反応で生成された浄化水は、洗浄および精製ユニットへ再循環されてもよい。
【0095】
さらに、本開示に係る装置は、ガス処理ユニットをさらに含んでもよい。当該ガス処理ユニットにおいて、活性化ユニットのガス出口から排出される気相生成物は、浄化処理および分離処理に供されて、水素ガスが出力される。残留ガスは、トーチ燃焼(torch combustion)を通じて排出される。
【0096】
活性化剤およびキャリアガスを回収するために活性化剤回収ユニットおよびガス処理ユニットを導入することにより、本開示に係る装置は、活性化剤の消費量を低減し、コストを節約し、排出物を低減し、グリーン経済の要件を満たしている。
【0097】
〔実施例〕
本開示に係る実施例および比較例において、石油コークスの供給物は、表1に示す性質を有するものであった。本開示に係る実施例における第2反応器は、上述したような環状炉反応器であった。
【0098】
【表1】
【0099】
(実施例1)
この実施例は、図1に示すフローに従うものであった。石油コークスの供給物が、乾燥ユニット(熱風循環式乾燥室)内で乾燥され、含水量が0.77重量%に低減された。微粉化ユニットにおいて、石油コークスの乾燥供給物は、次のように微粉化された:まず、ジョークラッシャによって、2mm未満の粒度に微粉化され、その後、超微粉砕機によって、100μm未満の粒度に微粉化された。石油コークスの微粉化供給物および活性化剤(水酸化カリウムと炭酸カリウムとの混合物、炭酸カリウムの量は、10重量%)が、混合ユニット(スパイラルベルトミキサ)へ加えられ、混合された。混合物は、窒素保護を有する貯蔵ビン内へ送られ、次いで、第1反応器(ロータリーキルン反応器)内へ送られた。同時に、新鮮な窒素ガスが、加えられた石油コークスの供給物を基準として、500L/kgの投入量で、第1反応器に導入された。ロータリーキルン反応器は、温度を450℃、回転速度を1rpm、ロータリーキルン反応器における材料の滞留時間を1時間として運転された。ロータリーキルン反応器からの流出物は、第2反応器(環状炉反応器)内へ送られた。環状炉反応器は、定温セクションが完全にマイクロ波加熱を用いて加熱され、定温セクションにおける温度が900℃であり、加熱セクションの長さと定温セクションの長さとの比が4:1であり、加熱セクションにおける滞留時間が120分であり、定温セクションにおける滞留時間が30分であり、加熱ゾーンにおける圧力が30Pa(ゲージ圧)である、という条件下で運転された。定温セクションを通過した後、材料は、冷却セクション内へ送られ、最終的には環状炉反応器から外へ出された。環状炉反応器からの固相材料は、冷却ユニット(スラグ冷却器)内へ送られて冷却された。冷却ユニットからの固相材料および真水(新鮮な水:fresh water)は、1:4の質量比で、溶解および分離ユニット内へ送られ、1時間、混合および撹拌された後、固液分離に供された。溶解および分離ユニットから得られた固体材料は、洗浄および乾燥ユニット内へ送られ、当該洗浄および乾燥ユニットにおいて、中性になるまで水洗され、3重量%の塩酸溶液で洗浄され、さらに中性になるまで水洗され、次いで固液分離された。得られた固体材料は、乾燥装置内へ送られ、120℃で8時間乾燥され、活性炭の生成物が得られた。第2反応器から排出された気相材料は、洗浄および分離ユニット内へ送られた。当該洗浄および分離ユニットにおいて、当該気相材料は水洗され、圧力スイング吸着装置を介して、水素ガス、可燃性ガス、および窒素ガスへとさらに分離された。可燃性ガスは、燃料ガス熱放射加熱またはトーチ燃焼のための燃料ガスとして使用され、窒素ガスは、第1反応器へ再循環された。溶解および分離ユニットからの流出液は、再生ユニット内へ送られた。同時に、水酸化カルシウムが、当該流出液中の炭酸イオンの質量の80%の量で、沈殿剤として加えられた。これらは、80℃で2時間、撹拌および混合され、冷却された後、固液分離に供された。再生ユニットから排出された固体材料は、乾燥およびか焼ユニット内へ送られた。850℃で4時間か焼した後に得られた固体材料は、再生ユニットへ再循環され、沈殿剤として再利用された。処理条件および生成物の性質を、表2に示した。
【0100】
(実施例2)
実施例1が繰り返された。ただし:第1反応器は、温度が350℃、回転速度が0.5rpm、第1反応器における材料の滞留時間が2時間で運転された。第2反応器(環状炉反応器)は、加熱セクションの長さと定温セクションの長さとの比が9:1であり、加熱セクションにおける滞留時間が180分であり、定温セクションにおける滞留時間が20分であり、加熱ゾーンにおける圧力が20Pa(ゲージ圧)である、という条件下で運転された。処理条件および生成物の性質を、表2に示した。
【0101】
(実施例3)
実施例1が繰り返された。ただし:石油コークスの供給物および活性化剤(水酸化カリウムと炭酸カリウムとの混合物、炭酸カリウムの量は、20重量%)は、1:5の比で加えられた。沈殿剤は、溶解および分離ユニットからの流出液中の炭酸イオンの質量の75%の量で、再生ユニット内へ加えられた。第1反応器は、温度が400℃、回転速度が1rpm、第1反応器における材料の滞留時間が1時間で運転された。第2反応器(環状炉反応器)は、定温セクションにおける温度が800℃であり、加熱セクションの長さと定温セクションの長さとの比が2:1であり、加熱セクションにおける滞留時間が120分であり、定温セクションにおける滞留時間が60分であり、加熱ゾーンにおける圧力が50Pa(ゲージ圧)である、という条件下で運転された。処理条件および生成物の性質を、表2に示した。
【0102】
(実施例4)
実施例1が繰り返された。ただし:石油コークスの供給物および活性化剤(水酸化カリウムと炭酸カリウムと混合物、炭酸カリウムの量は、5重量%)は、1:1の比で加えられた。沈殿剤は、溶解および分離ユニットからの流出液中の炭酸イオンの質量の90%の量で、再生ユニット内へ加えられた。第1反応器は、温度が450℃、回転速度が1rpm、第1反応器における材料の滞留時間が1時間で運転された。第2反応器(環状炉反応器)は、定温セクションにおける温度が950℃であり、加熱セクションの長さと定温セクションの長さとの比が3:1であり、加熱セクションにおける滞留時間が60分であり、定温セクションにおける滞留時間が20分であり、加熱ゾーンにおける圧力が40Pa(ゲージ圧)である、という条件下で運転された。処理条件および生成物の性質を、表2に示した。
【0103】
(比較例1)
実施例1が繰り返された。ただし:第2反応器(環状炉反応器)は、定温セクションがマイクロ波加熱ではなく、熱放射管によって加熱され、定温セクションにおける温度が900℃であり、加熱セクションの長さと定温セクションの長さとの比が4:1であり、加熱セクションにおける滞留時間が120分であり、定温セクションにおける滞留時間が30分であり、加熱ゾーンにおける圧力が30Pa(ゲージ圧)である、という条件下で運転された。処理条件および生成物の性質を、表2に示した。
【0104】
【表2】
【0105】
(実施例5)
実施例1および比較例1を、それぞれ10回繰り返した。各回において得られた生成物の性質を、表3に示した。
【0106】
【表3】
【0107】
上表のデータが示すように、本開示に係る実施例1を10回繰り返して得られた生成物は、比表面積の標準偏差が37m/gであり、細孔容積の標準偏差が0.03cm/gであった。これは、性質に有意な変化がなかったことを示している。対照的に、比較例1を10回繰り返して得られた生成物は、比表面積の標準偏差が162m/gであり、細孔容積の標準偏差が0.06cm/gであった。これは、性質に有意な変化があったことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1】本開示に係る石油コークスの処理方法のフローを示す模式図である。
図2】本開示に係る環状炉反応器の三次元概略図である(主に、ハウジング、およびマイクロ波加熱のための構成を示す)。
図3】本開示に係る環状炉反応器の上面概略図である。
図4】本開示に係る環状炉反応器の断面概略図である(主に、回転テーブルの部分断面図を示す)。
図5】本開示に係るバッフルの断面概略図である(バッフル上の案内穴の構造を示す)。
図6】本開示に係る排出システムの構造を示す概略図である。
図7】本開示に係る一次持ち上げ面の最下端部の構造を示す概略図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】