(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ポリエステルの脱色方法およびこれを含むポリエステルの解重合方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20240112BHJP
C08J 11/10 20060101ALI20240112BHJP
C08G 63/16 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
C08J11/10
C08G63/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542586
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 KR2021015812
(87)【国際公開番号】W WO2022154223
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0005357
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ジュニョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ホンクァン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヘリム
【テーマコード(参考)】
4F401
4J029
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
脱色剤をポリエステルに添加した後、ポリエステルに過熱水蒸気を接触させる、ポリエステルの脱色方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ、酸、これらの塩(salt)、モノアルコール、多価アルコール、またはこれらの混合物を含む脱色剤をポリエステルに添加した後、
前記ポリエステルに過熱水蒸気を接触させる段階を含む、ポリエステルの脱色方法。
【請求項2】
前記過熱水蒸気の温度は250℃~450℃である、請求項1に記載のポリエステルの脱色方法。
【請求項3】
前記過熱水蒸気は0.1bar~2barの噴射圧力で加えられる、請求項1に記載のポリエステルの脱色方法。
【請求項4】
前記脱色段階は1分~60分間行われる、請求項1に記載のポリエステルの脱色方法。
【請求項5】
前記アルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載のポリエステルの脱色方法。
【請求項6】
前記酸は塩酸、硝酸、硫酸、炭酸、リン酸、酢酸、次亜塩素酸(HClO)、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載のポリエステルの脱色方法。
【請求項7】
前記塩は炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩、次亜塩素酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載のポリエステルの脱色方法。
【請求項8】
前記モノアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載のポリエステルの脱色方法。
【請求項9】
前記多価アルコールは、エチレングリコール、n-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ベンジルアルコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載のポリエステルの脱色方法。
【請求項10】
前記脱色剤は、前記ポリエステルに含まれる二塩基酸1.0モルに対して0.05モル~1.5モルで添加される、請求項1に記載のポリエステルの脱色方法。
【請求項11】
アルカリ、酸、これらの塩(salt)、モノアルコール、多価アルコール、またはこれらの混合物を含む脱色剤をポリエステルに添加した後、前記ポリエステルに過熱水蒸気を接触させてポリエステルを脱色する段階と、
前記脱色されたポリエステルを解重合してアルキレングリコールと二塩基酸塩を含む解重合生成物を得る段階と、
前記解重合生成物から液状のアルキレングリコールと固体状の二塩基酸塩を固液分離する段階と、
前記固体状の二塩基酸塩を水に溶解する段階と、
前記二塩基酸塩の水溶液を酸で中和して二塩基酸の結晶を析出する段階と、
前記析出生成物から二塩基酸の結晶を固液分離する段階と、を含む、ポリエステルの解重合方法。
【請求項12】
前記ポリエステルの解重合方法は、前記二塩基酸塩の水溶液から不純物を除去する段階をさらに含む、請求項11に記載のポリエステルの解重合方法。
【請求項13】
前記ポリエステルの解重合方法は、前記二塩基酸の結晶を再結晶させる段階をさらに含む、請求項11に記載のポリエステルの解重合方法。
【請求項14】
請求項11に記載のポリエステルの解重合方法によって得られる二塩基酸およびアルキレングリコールを含む、再生ポリエステル重合用組成物。
【請求項15】
請求項14に記載のポリエステル重合用組成物を用いて製造される、再生ポリエステル。
【請求項16】
前記再生ポリエステルの色相はL値が60以上である、請求項15に記載の再生ポリエステル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル、特に加工中に染料が多量に投入された有色ポリエステルの脱色方法およびこれを含む解重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステルは、その化学的安定性に優れることから繊維、織物、服、フィルム、シート、または飲料ボトルなどに使用されている。
【0003】
ポリエステルの使用量が急増するに伴い、その廃棄物を回収してリサイクルするための各種の方法が検討されている。その一つとして、ポリエステルなどの廃棄物を解重合することによって、モノマーに変換して回収し、このモノマーを原料として使用して再び重合させてポリエチレンテレフタレートなどの再生ポリエステルを製造する、いわゆるケミカルリサイクル(chemical recycle)方法が知られている。
【0004】
このケミカルリサイクルは、不純物の分離が可能であり、原料としての品質もバージン(virgin)と大きく差がないので、資源のリサイクルを実現できる手段として期待されている。
【0005】
ポリエステルのモノマーへの解重合の方法を大きく分けると、水を溶媒とするハイドロリシス法、アルコールを溶媒とするアルコリシス法、およびグリコールを溶媒とするグリコリシス法の3個の方法が代表的である。
【0006】
ハイドロリシス法としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートの溶融物を水と反応させ、その後に水酸化アンモニウムと反応させることによって、テレフタル酸およびエチレングリコールに分解する方法が挙げられる(特許文献1を参照)。この方法は、反応のためにグリコールやアルコールを使用しない利点があるが、高圧の条件下で反応が行われるので特殊な高圧反応器を必要とする。
【0007】
アルコリシス法は、例えば、アルコール溶媒中(必要に応じて触媒を添加して)で加熱することによって、ポリエステルを解重合する方法である(特許文献2および特許文献3を参照)。この方法は、例えば、メタノールを溶媒としてポリエチレンテレフタレートを解重合する場合、有用で取り扱いが容易なモノマーであるジメチルテレフタレート(DMT)が、解重合反応によって直接的に生成され、解重合反応も比較的速いという長所がある。しかし、溶媒として用いられるアルコールは低沸点であり、反応を行うためには加圧が必要であり(例えば、超臨界または亜臨界の状態のメタノール中で反応させる)、特殊な高圧反応器を必要とする。
【0008】
グリコリシス法は、ポリエステルを、過剰のアルキレングリコール溶媒中で、炭酸ナトリウムなどの解重合触媒とともに加熱することによって解重合して、ビス(β-ヒドロキシアルキル)テレフタレートとエチレングリコールを生成させる方法である(特許文献4および特許文献5を参照)。例えば、溶媒としてエチレングリコールを用いる場合、解重合反応によってビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)が生成されるのであって、エステル交換触媒の存在下でメタノールを添加してエステル交換反応を行うことで、ジメチルテレフタレート(DMT)を回収することができる。グリコリシス法は、常圧で反応させ得るが、反応時間が比較的長く反応時間の短縮が求められるのであり、溶媒のグリコールが長時間加熱されて劣化するという問題がある。
【0009】
また、このような公知のポリエステルの解重合方法は、少なくとも数時間以上反応させる必要があり、ポリエステル廃棄物の大量処理において困難があり、高温または高圧の条件下で反応させる必要があるため、このような反応条件に耐えられる特殊な装置が必要である。
【0010】
一方、ポリエステルの解重合の際、すべてのポリエステル原料が飲料ボトル(bottle)のように透明ではなく、特に、繊維、織物、服などの有色ポリエステル供給原料(feedstock)の場合、加工中に投入された染料の色相除去が最終製品の品質に大きな影響を与える。
【0011】
特に、ポリエステル供給原料のうちの、有色ポリエステル廃繊維などの、加工工程で染色された廃繊維は、繊維の色相と細さ(繊度の小ささ)に応じて、染料の投入量も急激に増加する。そのため、有色ポリエステル供給原料は用途が限定的であり、付加価値の創出のためには、解重合により原料に分解した後に再重合して使用することが最も合理的でかつ環境にやさしい方法であるが、工程コストが高くて経済的でない。
【0012】
このような有色ポリエステルの染料は、解重合工程中の脱色のために溶剤(solvent)処理および吸着工程(活性炭)により除去するが、使用される溶剤の価格が高く、回収コストが高く、染料の含有量が多いほど有効寿命が急激に減り、全般的に工程コストが高くて実質的に経済性がない。したがって、通常、ポリエステルの解重合には、回収純度が高いポリエステルボトル(bottle)のフレークを使用することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開第2003-527363号(公開日:2003年9月16日)
【特許文献2】特開第1999-100336号(公開日:1999年4月13日)
【特許文献3】特開第2003-300916号(公開日:2003年10月21日)
【特許文献4】特開第2002-167468号(公開日:2002年6月11日)
【特許文献5】特開第2004-300115号(公開日:2004年10月28日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の一実施形態によれば、安価かつ高い効率で有色ポリエステルの染料を除去できるポリエステルの脱色方法を提供する。
【0015】
他の実施形態によれば、ポリエステルを脱色する段階を含むポリエステルの解重合方法を提供する。
【0016】
他の実施形態によれば、ポリエステルの解重合方法によって製造された再生ポリエステル重合用組成物を提供する。
【0017】
さらに他の実施形態によれば、再生ポリエステル重合用組成物を用いて製造された再生ポリエステルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施形態によれば、アルカリ、酸、これらの塩(salt)、モノアルコール、多価アルコール、またはこれらの混合物を含む脱色剤を、ポリエステルに添加した後、ポリエステルに過熱水蒸気を接触させる解重合段階を含む、ポリエステルの脱色方法を提供する。
【0019】
過熱水蒸気の温度は、250℃~450℃であり得る。
【0020】
過熱水蒸気は、0.1bar~2barの噴射圧力で加えられ得る。
【0021】
脱色段階は、1分~120分間行うことができる。
【0022】
アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、またはこれらの混合物を含み得る。
【0023】
酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、炭酸、リン酸、酢酸、次亜塩素酸(HClO)、またはこれらの混合物を含み得る。
【0024】
塩としては、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩、次亜塩素酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、またはこれらの混合物を含み得る。
【0025】
モノアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、またはこれらの混合物を含み得る。
【0026】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、n-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ベンジルアルコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、またはこれらの混合物を含み得る。
【0027】
脱色剤は、ポリエステルに含まれる二塩基酸1.0モルに対して、0.05モル~1.5モルで添加することができる。
【0028】
他の実施形態によれば、アルカリ、酸、これらの塩(salt)、モノアルコール、多価アルコール、またはこれらの混合物を含む脱色剤をポリエステルに添加した後、ポリエステルに過熱水蒸気を接触させてポリエステルを脱色する段階と、脱色されたポリエステルを解重合してアルキレングリコールと二塩基酸塩を含む解重合生成物を得る段階と、解重合生成物から、液状のアルキレングリコールと固体状の二塩基酸塩とを固液分離する段階と、固体状の二塩基酸塩を水に溶解する段階と、二塩基酸塩の水溶液を酸で中和して二塩基酸の結晶を析出する段階と、析出生成物から二塩基酸の結晶を固液分離する段階と、を含むポリエステルの解重合方法を提供する。
【0029】
ポリエステルの解重合方法は、二塩基酸塩の水溶液から不純物を除去する段階をさらに含み得る。
【0030】
ポリエステルの解重合方法は、二塩基酸の結晶を再結晶する段階をさらに含み得る。
【0031】
さらに他の実施形態によれば、一実施形態によるポリエステルの解重合方法によって得られた、二塩基酸およびアルキレングリコールを含む、再生ポリエステル重合用組成物を提供する。
【0032】
さらに他の実施形態によれば、一実施形態によるポリエステル重合用組成物を用いて製造された、再生ポリエステルを提供する。
【0033】
再生ポリエステルの色相は、L値が60以上であり得る。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るポリエステルの脱色方法は、安価かつ高い効率で有色ポリエステルの染料を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施例3でポリエチレンテレフタレートの脱色処理の前と後を示す写真である。
【
図2】比較例1でポリエチレンテレフタレートの脱色処理の前と後を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、説明する技術の利点および特徴、並びにそれらを達成する方法は、添付する図面と共に詳細に後述する実施形態を参照すると明確になる。しかし、具現される形態は、以下に開示する実施形態に限定されるものではない。他に定義のない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術的および科学的用語を含む)は、当該技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解される意味で使用される。また、一般に使用される辞典に定義されている用語は、明白に特に定義されない限り、理想的または過度な具合に解釈されない。
【0037】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、単数形は文脈で特に断りのない限り、複数形も含む。
【0038】
本発明の一実施形態によるポリエステルの脱色方法は、ポリエステルに脱色剤を添加した後、ポリエステルに過熱水蒸気を接触させる段階を含む。
【0039】
ポリエステルは、二塩基酸とアルキレングリコールを重合してなるポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートであり得、またはカプロラクトンを重合してなるポリカプロラクトンであり得る。
【0040】
ポリエステル脱色の原料としては、ポリエステルを含む成形品、特に廃棄物を用いることができる。廃棄物とは、ポリエステルを含む成形品を使用した後に発生する廃棄物以外の成形品の製造時に発生する残余物、不良品などであり得る。例えば、使用が終わったPETボトル、カップ、紐、包装パックなど、あるいはこれらを成形する際のバリ(bur)、スプルー、真空成形後のカップ切り取り後のシート、繊維、織物、服、フィルム、シートなどであり得る。
【0041】
特に、本発明の一実施形態によるポリエステルの脱色方法は、後述するように染料が多量で含まれた繊維、織物、服などの有色ポリエステルを経済的かつ効率的に脱色することができる。
【0042】
この際、ポリエステル廃棄物中のポリエステルの含有量は、ポリエステル廃棄物の全重量に対して60重量%~100重量%であり得る。ポリエステルの含有量が60重量%未満の場合、解重合工程によって得られる原・副原料に対して、副反応物およびリサイクル不可能な分離精製の廃棄物の量が多すぎて実質的に経済性がない可能性がある。
【0043】
本発明の一実施形態によるポリエステルの脱色方法は、ポリエステルに過熱水蒸気を直接接触させて乾式で脱色する。
【0044】
ポリエステルを脱色溶剤に浸漬させて行われる従来の湿式方式とは異なり、過熱水蒸気がポリエステルと直接反応するので、脱色効率が高く、比較的安価な過熱水蒸気を用いるため、経済的である。また、ポリエステルに過熱水蒸気を加えることで、脱色した後にポリエステルを解重合するとき、解重合の効率を向上させることもできる。
【0045】
また、脱色反応が過熱水蒸気をポリエステルに直接加えて行われるので、高圧反応器を必要としないのであり、バッチ式(batch)または連続式の反応器でもって装置を構成することができる。
【0046】
一例として、ポリエステルと過熱水蒸気との接触は、250℃~450℃の高温の過熱水蒸気を0.1bar~2barの噴射圧力でポリエステルに直接噴射することで行われうるのであって、例えば、過熱水蒸気の温度は280℃~380℃であり得る。
【0047】
過熱水蒸気の温度が250℃未満である場合、ポリエステルの脱色時間が過度に長くなって経済性が低くなり、450℃を超える場合、脱色反応が不活性雰囲気で行われる反応ではないので炭化を伴うことがある。過熱水蒸気の圧力が0.1bar未満である場合、直接的な反応水蒸気の接触有効性が不足し、実質的な脱色時間が、一般的な湿式反応に比べて大きな効果がないのであり得るのであって、2barを超える場合、直接的に接触する面積にて、熱可塑性素材であるために、分解よりはメルティング(Melting)が先行して、大きな塊り(かたまり)を形成するので、表面から内面まで段階的に脱色される時間が、長くなりうる。
【0048】
脱色反応は、1分~60分、または10分~40分間行われる。脱色反応時間は、ポリエステルの染料を含む不純物の濃度が高いほど、ポリエステルの処理量が多いほど、過熱水蒸気の温度が低いほど、60分の範囲内で増加させうる。
【0049】
一方、ポリエステルの脱色方法は、ポリエステルを過熱水蒸気と接触させる前にポリエステルに脱色剤を添加することができる。高温の過熱水蒸気を単独で処理する際、染料が分解される前に熱可塑性樹脂であるポリエステルが溶解して、表面でだけ脱色され、溶解したポリエステルの内部では脱色されないのでありうるのであり、ポリエステルに脱色剤を先に処理する場合、ポリエステルが溶解する前に脱色されるようにすることができる。
【0050】
脱色剤は、アルカリ、酸、これらの塩(salt)、モノアルコール、多価アルコール、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0051】
一例として、アルカリは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、またはこれらの混合物を含むことができる。ここでアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどの1価金属であり得るのであって、その中で比較的安価なナトリウムまたはカリウムを使用することができる。アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムなどであり得る。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化リチウムが挙げられる。その中、水酸化ナトリウムはエチレングリコールなどと組み合わせて使用すると反応速度および反応率などに優れる。
【0052】
酸は、有機酸または無機酸であり得るのであって、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、炭酸、リン酸、酢酸、次亜塩素酸(HClO)、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0053】
塩は、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩、次亜塩素酸塩などの無機酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩、またはこれらの混合物を含むことができるのであって、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸三カリウム(水和物)、次亜塩素酸ナトリウム、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0054】
多価アルコールは、エチレングリコール、n-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ベンジルアルコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、またはこれらの混合物を含むことができる。これらの多価アルコールのうちで、沸点が高く、反応性が比較的高い、エチレングリコール、n-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンを使用することができる。
【0055】
モノアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、またはこれらの混合物を含むことができるのであって、上に例示したジオール、トリオールなどの多価アルコールのアルキルエーテル化合物、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルやベンジルアルコール、2-エチルヘキサノールなどが挙げられる。
【0056】
脱色剤は、ポリエステルに付着した染料と反応しなければならないので、脱色剤の投入量は、ポリエステルに含まれる二塩基酸1.0モルに対して0.05モル~1.5モルで添加することができ、例えば、1価の脱色剤(例えば水酸化ナトリウム)の場合、0.1モル~1.5モルで添加することが適しており、2価の脱色剤(例えば炭酸カルシウム)の場合0.05モル~0.75モルで添加することが適している。
【0057】
また、ポリエステル供給原料が繊維である場合、加工中に投入される染料の量はポリエステル繊維の重量の0.5重量%~20重量%(on the weight of fabric(o.w.f.)基準)まで多様であるので、脱色剤の投入量は、染料の分解がすべて行われうるように、ポリエステルに含まれる二塩基酸1.0モルに対して1.0モル以上であることが好ましい。
【0058】
他の実施形態によるポリエステルの解重合方法は、ポリエステルを脱色する段階、および脱色されたポリエステルを解重合させる段階を含む。
【0059】
ポリエステルを脱色する段階は上述の通りであるので、その説明は省略する。
【0060】
ポリエステルは、二塩基酸とアルキレングリコールとを重合してなるポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートであり、またはカプロラクトンを重合してなるポリカプロラクトンであり得る。これらのポリエステルを解重合することによって、二塩基酸、アルキレングリコール、またはカプロラクトンをモノマーとして回収することができる。
【0061】
つまり、ポリエステルを解重合して得られるアルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ベンゼンジオールなどが挙げられる。例えば、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートの場合、アルキレングリコールとしてエチレングリコールを回収することができ、ポリエステルがポリブチレンテレフタレートの場合、ブチレングリコールをモノマーとして回収することができる。
【0062】
ポリエステルを解重合して得られる二塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸(オルト体)、イソフタル酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、フェニレンジオキシジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、その他のジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、およびコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸、ドデカジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0063】
ポリエステルを解重合する方法としては、水を溶媒とするハイドロリシス法、アルコールを溶媒とするアルコリシス法、およびグリコールを溶媒とするグリコリシス法をすべて用いることができる。
【0064】
ハイドロリシス法は、例えば、ポリエチレンテレフタレート溶融物を水と反応させ、その後に水酸化アンモニウムと反応させることによって、テレフタル酸およびエチレングリコールに分解することができる。
【0065】
アルコリシス法は、例えば、アルコール溶媒中で(必要に応じて触媒を添加して)加熱することにより、ポリエステルを解重合することができる。この方法は、例えば、メタノールを溶媒としてポリエチレンテレフタレートを解重合する場合、有用で取り扱いやすいモノマーであるジメチルテレフタレート(DMT)が解重合反応によって直接的に生成され、解重合反応も比較的速いという長点がある。
【0066】
グリコリシス法は、ポリエステルを、過剰のアルキレングリコール溶媒中で、炭酸ナトリウムなどの解重合触媒とともに加熱することにより解重合して、ビス(β-ヒドロキシアルキル)テレフタレートとエチレングリコールを生成することができる。例えば、溶媒としてエチレングリコールを用いた場合、解重合反応によりビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)が生成され、エステル交換触媒の存在下でメタノールを添加してエステル交換反応を行うことにより、ジメチルテレフタレート(DMT)を回収することができる。
【0067】
具体的には、解重合する段階は、反応溶液を製造する段階、ポリエステルを反応溶液に浸漬する段階、および反応溶液を加熱して解重合する段階を含み得る。
【0068】
反応溶液は、反応触媒を溶媒に添加し溶解して製造することができる。ここで、反応触媒はアルカリ、酸、またはこれらの塩(salt)を含むことができ、溶媒は、水、モノアルコール、多価アルコール、またはこれらの混合物を含み得る。アルカリ、酸、これらの塩、モノアルコール、または多価アルコールは、脱色段階で用いられるものと同様のものを使用することができるので、その説明は省略する。
【0069】
反応触媒の溶媒の添加量は、ポリエステルを構成する二塩基酸1モルに対して0.01モル~100モル、例えば、0.1モル~10モル、または0.8モル~1.2モルであり得る。
【0070】
一例として、反応触媒として水酸化ナトリウムを使用してポリエチレンテレフタレートを分解する場合、反応式は、PET(ポリエチレンテレフタレート)+2NaOH→TPA塩(テレフタル酸二ナトリウム)+EG(エチレングリコール)であるので、1kgのPETを分解するためには、TPA 1モル当たりに、2モルのNaOH(420g)が必要である。
【0071】
次に、ポリエステルを製造した反応溶液に浸漬する。
【0072】
一方、ポリエステル廃棄物を解重合の供給原料とする場合、選択的に解重合段階前に廃棄物を洗浄し、廃棄物に付着した汚染物、例えば、内容物または土などを除去する追加の前処理段階を行うことができる。
【0073】
また、より効率的に反応を行うために、廃棄物などを機械的に切断、粉砕、加工することもできる。粉砕処理は、公知の好適な手段を用いて行うことができ、例えば、ハンマーミルなどを用いて粉砕することによって、ポリエステル廃棄物を2mm~8mmの大きさの細片に粉砕した後、解重合反応に供することができる。
【0074】
また、必要に応じて、粉砕したチップを溶剤(solvent)に浸漬して、溶剤より軽い成分を分離することができ、粉砕物を風で吹き飛ばすか、またはふるいを用いて一定の大きさだけを回収して解重合反応に供することもできる。
【0075】
次に、解重合段階で得られた解重合生成物からアルキレングリコールと二塩基酸塩を分離して回収する。
【0076】
一例として、反応溶媒としてポリエステルの構成成分であるアルキレングリコールと他のアルコール類を用いた場合、解重合によって生成されたアルキレングリコールと反応溶媒とは一応混合されているが、両者を分離することで解重合によって生成されたアルキレングリコールを回収することができる。
【0077】
解重合反応で生成されたアルキレングリコールと反応溶媒を分離する方法は特に限定されず、対象となる化合物に応じて適切な方法を選択することができるのであって、例えば、蒸留濃縮法により分離することができる。蒸留濃縮のための手段としては、従来の蒸留濃縮装置、例えば減圧連続式蒸留装置、減圧バッチ式蒸留装置などをすべて用いることができる。
【0078】
解重合反応で生成されたアルキレングリコールが反応溶媒と同じ種類である場合、生成したアルキレングリコールは、別に分離しなくてもよい。
【0079】
一方、解重合段階は反応溶媒の種類によって、ヒドロキシ基(OH基)を用いるハイドロリシス法、アルコールを用いるアルコリシス法およびグリコールを用いるグリコリシス法を選択的に適用することができ、これによって得られる二塩基酸の種類が異なる。
【0080】
グリコリシス法を用いてポリエステルを解重合する場合、得られた二塩基酸塩は解重合反応に用いられる反応溶媒の種類によって変化することができる。例えば、反応溶媒としてエチレングリコールを用いてポリエチレンテレフタレートを解重合する場合、モノマーとしてビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を得ることができ、反応溶媒としてプロピレングリコールを用いて解重合する場合、モノマーとして主にビス(β-ヒドロキシエチルイソプロピル)テレフタレート(BHEPT)を得ることができる。
【0081】
また、反応溶媒としてベンジルアルコールおよびリン酸三カリウムを用いる場合、得られるオリゴマーのエステル化合物はクロロホルムなどへの溶解性が非常に良好であるため、溶媒抽出を用いて効率的に回収することができる。その他、濾過や蒸留などの手段を用いて、二塩基酸またはオリゴマーのエステル化合物を回収することもできる。
【0082】
このように、得られた二塩基酸またはオリゴマーのエステル化合物(例えばBHET)はまた、メタノールとエステル交換反応させることによって、二塩基酸またはオリゴマーのメチルエステル(例えばDMT)として回収することができる。
【0083】
エステル交換反応は公知の方法を適切に用いることができ、例えば、解重合反応濃縮液とメタノールとを、エステル交換反応触媒(アルカリ金属化合物など)の存在下で、65℃~85℃で0.5時間~5時間エステル交換反応させることによって、固体状のDMTが、メタノールとアルキレングリコールなどの混合液中に分散しているスラリーを得ることができる。また、固液分離装置などによってDMTを含有するケーキを分離して、蒸留精製を行うことによって、精製DMTを回収することができる。
【0084】
一方、グリコリシス法を用いてポリエステルを解重合する場合、二塩基酸、またはオリゴマーのジアルカリ金属塩などの二塩基酸塩が生成されうるのであって、この生成物は、解重合反応に用いられるアルカリ金属の種類によって変化しうる。例えば、ポリエチレンテレフタレートについて、反応溶媒として水酸化ナトリウムを用いて解重合する場合、エチレングリコールと共にテレフタル酸ナトリウムが生成される。
【0085】
その中で、二塩基酸塩(例えばテレフタル酸ナトリウム)は、アルキレングリコールに溶解せずに固相結晶を形成するため、固液分離などの濾過方法で容易に溶媒から分離することができる。また、得られた粉末型結晶に付着しているアルコール類は、メタノールやエタノールなどのアルコールで洗浄することで除去することができる。
【0086】
次に、二塩基酸塩の結晶を水に溶解させた後、酸を混合して中和反応させることによって、二塩基酸(例えばテレフタル酸)を得ることができる。二塩基酸も水中に結晶として析出するので、遠心分離処理などの方法で水と固液分離することによって回収することができる。
【0087】
回収工程の際に添加する水の含有量は、二塩基酸塩の1重量に対して3重量~10重量であり得る。二塩基酸を分離するために供給する酸の含有量は、二塩基酸塩に含まれるアルカリ金属と等モル以上であり得るのであって、この際、用いられる酸の種類としてはpH2の強酸である塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、またはギ酸、酢酸、シュウ酸などの有機酸を用いることができ、その中でも無機酸、特に塩酸または硫酸は、生成されるモノマー中の不純物を減少させるため、好ましい。中和反応の温度は65℃~85℃であり、中和反応は、通常0.5時間~5時間内に終了する。
【0088】
一方、ポリエステルの解重合方法は、任意選択的に、二塩基酸塩の水溶液でもってポリエステル成形品や廃棄物などに含有されていた不純物を除去する段階をさらに含むことができる。
【0089】
不純物を除去するための手段は特に限定されず、適切な技法、装置などをすべて用いることができる。例えば、未反応状態で残っているポリエステル以外の樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなど)、溶解しないアルカリ金属などの反応触媒、などの固形分は、メッシュなどを用いて除去することができる。また、染料、充填剤などは、メッシュなどでは除去できないので、遠心分離、活性炭などの吸着剤による濾過処理などによって除去することができる。
【0090】
得られた二塩基酸の結晶は数μm~数十μmの粒度分布特性を示すので、選択的に二塩基酸の結晶を再結晶させ、商業化が可能な粒子サイズ(100μm以上)に再結晶させる段階をさらに含むことができる。再結晶の方法は特に限定されず、例えば、二塩基酸の結晶を水と混合した後に、高温および高圧の条件下で行うことができる。
【0091】
ポリエステルの解重合方法によって得られる二塩基酸およびアルキレングリコールは、再生ポリエステルを重合するためのモノマーとしてリサイクルすることができる。具体的には、ポリエステルの解重合方法によって得られる二塩基酸およびアルキレングリコールを含む再生ポリエステル重合用組成物についてエステル化および重縮合を行わせ、再生ポリエステルを製造することができる。
【0092】
エステル化は、回収したモノマーである二塩基酸とアルキレングリコールとを、例えばテレフタル酸とエチレングリコールとを反応させることである。この反応は、触媒なしで行うことができるが、エステル交換触媒としてよく知られているマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属化合物、チタン、亜鉛、マンガンなどの金属化合物などの触媒の存在下で行うこともできる。
【0093】
その後、エステル化工程の生成物を重縮合させて再生ポリエステル樹脂を製造することができる。この際、溶解重合または固相重合をすべて用いることができる。
【0094】
また、固相重合後に、品質調整のために必要に応じて、水処理および/または結晶化を促進する化合物の添加を行うことができ、重縮合工程の開始や途中に重縮合触媒や安定剤を添加することもできる。
【0095】
ここで、水処理は、固体粒子形で製造された再生ポリエステル樹脂を、例えば水、水蒸気、水蒸気含有不活性ガス、水蒸気含有空気などと接触させることによって行うことができる。結晶化を促進する化合物としては、例えば、ポリヘキサメチレンテレフタレート、無機化合物、高級脂肪族化合物、ポリエーテル系化合物、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの化合物は、再生ポリエステル樹脂に対して1ppm~100ppmで添加することができる。
【0096】
重縮合触媒としては、ゲルマニウム、アンチモン、チタン、アルミニウムなどの化合物を使用することができる。重縮合触媒の添加量は、二塩基酸成分の全重量に対して、触媒金属元素の重量として2ppm~800ppmであり、例えば4ppm~500ppmであり得る。
【0097】
また、再生ポリエステルは、安定剤として、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスホノアセテートなどのリン酸エステル、トリフェニルホスファート、トリスドデシルホスファートなどの亜リン酸エステル、メチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸などのリン化合物を含むことができる。安定剤の添加量は、再生ポリエステルの全重量に対する安定剤中のリン元素の重量として1000ppm以下であり、例えば500ppm以下、または300ppm以下であり得る。
【0098】
一方、上述の通り、一実施形態によるポリエステルの解重合方法は、過熱水蒸気を用いて脱色するのであり、脱色剤を添加してポリエステルが溶解されて表面でのみ脱色され、溶解したポリエステル内部では脱色されないという問題を解決することで、これによって得られた二塩基酸およびアルキレングリコールを用いて製造した再生ポリエステルの色相は、L値が60以上であり、例えば、65~95であり得る。
【0099】
L、aおよびb色相システムは、ポリエステルの色相評価のための基準として、国際的に共通して活用されている。このような色相数値は、色相測定を標準化するための色相システムの一つであり、認識可能な色相および色相の差を記述するものである。このシステムで、Lは明度因子であり、aおよびbは色相測定数である。この中で、L値は明るさを示す数値因子を意味し、繊維、織物または服の製造において大変重要な数値である。また、正のb値は黄色変色を意味し、負の値は青色変色を意味し、正のa値は赤い変色を意味し、負の値は緑色変色を意味する。
【0100】
L、aおよびbの値は、色測定に関連する韓国産業規格(KS)であるKS A 0061、0063、0064、0065、0066、0067、0084、0085、0089、0114などに定義されており、一例としてL、aおよびbの値は、測定対象となるポリエステル樹脂50gを空気中で水分を除去した後、カラリメータ(色度測定器;Colorimeter)モデルSA-2000に入れて色相を10回測定して平均値を標準値として決定することができる。
【0101】
再生ポリエステルのL値は、再生された二塩基酸およびアルキレングリコールの純度と関係がある。一例として、内部に、不純物または二酸化チタン(TiO2)などの消光剤の量が多くなるほどL値は低くなる。L値が60未満の場合、不純物の量が過度に多いことから、ポリマー化、繊維化後の色相が有色を有するか、または重合中に副反応を多く発生させて、高付加価値素材として使用し得ない可能性があり、主な用途として、機械的な再生ポリエステルと同じ用途に適用されるので意味がないのでありうる。なお、L値が95を超える場合、従来のバージン(Virgin)素材でも到達しにくい物性で、再生によりこの値を達成するためには、脱色、精製工程の追加または滞留時間の増加など、単位生産量および工程コストの増加によって、経済性が低くなる。
〈発明の実施の形態〉
【0102】
以下、本発明の具体的な実施形態を提示する。ただし、下記に記載された実施例は、本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲は、これによって限定されるものではない。
【0103】
(実施例1~実施例3)
ポリエチレンテレフタレート有色廃繊維供給原料(PET含有量90重量%)10kgを、水酸化ナトリウム(NaOH)30重量%水溶液に含浸させ、含浸量(on the weight of fabric(o.w.f.)基準)をそれぞれ50重量%、100重量%、および300重量%になるようにした。
【0104】
この際、ポリエチレンテレフタレートに含浸した水酸化ナトリウムの含有量は、テレフタル酸1モルに対して、それぞれ0.18モル、0.36モル、および1.08モルとなる。
【0105】
これを過熱水蒸気システムに投入して、350℃の過熱水蒸気を1.5barの圧力で噴射して10分間脱色処理した。
【0106】
脱色処理したポリエチレンテレフタレートに、さらに水酸化ナトリウム(NaOH)2.2モルを投入した後、180℃で5時間解重合した。
【0107】
その後、分解された解重合生成物を洗浄した後、硫酸(H2SO4)を投入してpHが3.0以下になるように還元し、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)を回収した。
【0108】
(比較例1)
ポリエチレンテレフタレート有色廃繊維供給原料(PET含有量90重量%)10kgを過熱水蒸気システムに投入して、450℃の過熱水蒸気を1.5barの圧力で噴射して10分間脱色処理した。
【0109】
その結果、脱色処理したポリエチレンテレフタレートの一部が炭化していることを確認した。
【0110】
(比較例2)
ポリエチレンテレフタレート有色廃繊維供給原料(PET含有量90重量%)10kgを水酸化ナトリウム(NaOH)30重量%水溶液に含浸させ、含浸量(on the weight of fabric(o.w.f.)基準)を50重量%になるようにした。
【0111】
この際、ポリエチレンテレフタレートに含浸した水酸化ナトリウムの含有量は、テレフタル酸1モルに対してそれぞれ0.18モルとなる。
【0112】
これを196℃の温度を有する13.5barの飽和水蒸気をシステムに投入して10分間脱色処理した。
【0113】
その結果、脱色処理したポリエチレンテレフタレートの一部が脱色されていることを確認した。しかし、13.5barの高圧により、廃繊維がシステム内部にて、はためくことから不安定で、水蒸気凝縮水に起因して反応温度が低くなり、効率が低下した。
【0114】
水蒸気の圧力を最高50barまで高めると、265℃まで温度を上昇させることができるが、目標とする高圧の水蒸気製造装置が高価であり、費用に比べて効率が低いという短所がある。
【0115】
脱色処理したポリエチレンテレフタレートに、さらに水酸化ナトリウム(NaOH)2.2モルを投入した後、180℃で5時間解重合した。
【0116】
その後、分解された解重合生成物を洗浄した後、硫酸(H2SO4)を投入してpHが3.0以下になるように還元し、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)を回収した。
【0117】
[実験例:脱色処理の結果]
実施例および比較例で、脱色処理したポリエチレンテレフタレート(PET)に対してL、aおよびbの色システムを用いて色相を測定し、その結果を表1に示す。
【0118】
L、aおよびbの値は、脱色処理したポリエチレンテレフタレート50gについて、空気中で水分を除去した後、カラリメータ(色度測定器;Colorimeter)モデルSA-2000に入れ、色相を10回測定して平均値を標準値として決定した。
【0119】
また、実施例3および比較例1におけるポリエチレンテレフタレートについての、脱色処理の前と後の写真をそれぞれ
図1および
図2に示す。
図1および
図2において、左側の写真は脱色処理前の写真であり、右側の写真は脱色処理後の写真である。
【0120】
【0121】
表1、
図1および
図2を参照すると、比較例1の結果としての、脱色処理したポリエチレンテレフタレートは、一部が炭化していることを確認することができたのであり、実施例1~実施例3は、比較例2に比べて色相が優れていることが分かった。これは比較例2の場合、過熱水蒸気ではなく196℃の低温の通常の水蒸気を用いることで、有色廃繊維の染料が完全に分解されなかったためである。
【0122】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、次の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本発明の範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、ポリエステル、特に、加工中に染料が多量に投入された有色ポリエステルの脱色方法およびこれを含む解重合方法に関し、安価かつ高い効率で有色ポリエステルの染料を除去することができる。
【国際調査報告】