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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-19
(54)【発明の名称】バインダー化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20240112BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240112BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240112BHJP
【FI】
C08F293/00
H01M4/62 Z
H01M4/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546147
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 CN2022118740
(87)【国際公開番号】W WO2023061135
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】202111186129.2
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100212392
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 悠
(72)【発明者】
【氏名】林 江輝
(72)【発明者】
【氏名】趙 延傑
(72)【発明者】
【氏名】李 星
(72)【発明者】
【氏名】金 海族
【テーマコード(参考)】
4J026
5H050
【Fターム(参考)】
4J026HA09
4J026HA29
4J026HA32
4J026HA38
4J026HB11
4J026HB29
4J026HB32
4J026HB45
4J026HE01
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA11
5H050EA23
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本願は、式(I)のバインダー化合物、その製造方法及びそれを含む極性シートに関する。式(I)において、R、R、Rは、それぞれ独立して無置換又は置換の炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は無置換又は置換の炭素原子数6~20のアリール基を表し、Rは、-COOMを表し、Rは、オキソ基又はオキソイミノ基を表し、Mは、それぞれ独立してLi、Na、K、Rb及びCsのうちの1つを表し、Zは、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、mは、7600~47000から選択される整数であり、nは、1520~94000から選択される整数であり、且つm/n=0.1~10である。本願のバインダー化合物は接着性に優れ、水に溶解し、化学的性質が安定しており、膨潤性を有し、極性シートのイオン伝導性を向上させ、分極を低減させることができ、二次電池のセル性能が改善される。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるバインダー化合物であって、
【化1】
式中、
、R、Rは、それぞれ独立して無置換又は置換の炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は無置換又は置換の炭素原子数6~20のアリール基を表し、
は、-COOMを表し、
は、オキソ基又はオキソイミノ基を表し、
Mは、それぞれ独立してLi、Na、K、Rb及びCsのうちの1つを表し、
Zは、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、
mは、7600~47000から選択される整数であり、
nは、1520~94000から選択される整数であり、
m/n=0.1~10であるバインダー化合物。
【請求項2】
及びRはそれぞれ独立して、無置換の炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、好ましくは、R及びRはそれぞれ独立して、無置換の炭素原子数1~6の直鎖状のアルキル基を表す、請求項1に記載のバインダー化合物。
【請求項3】
は、無置換の炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はフェニル基を表し、好ましくは、Rは、無置換の炭素原子数1~6の直鎖状のアルキル基又はフェニル基を表す、請求項1又は2に記載のバインダー化合物。
【請求項4】
mは、7600~30000から選択される整数である、請求項1~3のいずれか一項に記載のバインダー化合物。
【請求項5】
nは、1520~46000から選択される整数であり、好ましくは、nは、1520~18000から選択される整数である、請求項1~4のいずれか一項に記載のバインダー化合物。
【請求項6】
m/n=0.3~7.5であり、好ましくは、m/n=0.5~7.5である、請求項1~5のいずれか一項に記載のバインダー化合物。
【請求項7】
式(I)で表されるバインダー化合物の製造方法であって、
【化2】
式中、
、R、Rは、それぞれ独立して無置換又は置換の炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は無置換又は置換の炭素原子数6~20のアリール基を表し、
は、-COOMを表し、
は、オキソ基又はオキソイミノ基を表し、
Mは、それぞれ独立してLi、Na、K、Rb及びCsのうちの1つを表し、
Zは、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、
mは、7600~47000から選択される整数であり、
nは、1520~94000から選択される整数であり、
m/n=0.1~10であり、
該製造方法は、ステップ(i)~ステップ(iii)を含み、
前記ステップ(i)では、式(II)の連鎖移動剤の存在下でフッ化ビニリデンモノマーを重合反応させて、式(III)のポリマーを得て、
【化3】
式中、R、R、Z、mは、それぞれ上記で定義した通りであり、
好ましくは、式(II)の連鎖移動剤は、4-シアノ-4-チオアシルチオプロピルスルファニルペンタン酸であり、
前記ステップ(ii)では、式(IV)のグルコースアクリル酸誘導体を式(III)のポリフッ化ビニリデンと重合反応させて、式(I’)のポリマーを得て、
【化4】
式中、R、R、R、Z、m、n、m/nは、それぞれ上記で定義した通りであり、
は、オキソ基又はオキソイミノ基を表し、
はアセチル基を表し、
前記ステップ(iii)では、ステップ(ii)で得られたポリマーをアルカリ金属アルコキシドのROMと反応させて、式(I)のバインダー化合物を得て、
【化5】
は、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基から選択され、好ましくはメチル基又はエチル基から選択される、バインダー化合物の製造方法。
【請求項8】
前記式(IV)のグルコースアクリル酸誘導体は、グルコース又は6-アミノグルコースから、以下のステップ(1)~(4)を通して得られるものであり、
ステップ(1)では、グルコース又は6-アミノグルコースを第1保護試薬と反応させて、その6位の第1級ヒドロキシ基又は第1級アミノ基を第1保護基で保護し、
ステップ(2)では、ステップ(1)の生成物を無水酢酸と反応させて、その1~4位のヒドロキシ基をアセチル基で保護し、
ステップ(3)では、ステップ(2)の生成物から前記第1保護基を除去し、
ステップ(4)では、ステップ(3)の生成物を塩化アクリロイル又はその誘導体と反応させて、式(IV)のグルコースアクリル酸誘導体を得る、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第1保護試薬はトリフェニルクロロメタンであり、前記第1保護基はトリチル基である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(3)は、臭化水素の存在下で実施される、請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
集電体と、前記集電体の少なくとも一方の表面に設置された極性シート材料層と、を含み、前記極性シート材料層は、請求項1~6のいずれか一項に記載のバインダー化合物又は請求項7~10のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたバインダー化合物を含む極性シート。
【請求項12】
前記極性シートは負極シートである、請求項11に記載の極性シート。
【請求項13】
前記負極シートの極性シート材料層は、前記極性シート材料層の総重量に基づいて、0.1~10重量%、好ましくは0.5~3重量%の前記バインダー化合物を含む、請求項12に記載の極性シート。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載のバインダー化合物、又は請求項7~10のいずれか一項に記載の製造方法によって得られたバインダー化合物、又は請求項11~13のいずれか一項に記載の極性シートを含む二次電池。
【請求項15】
請求項14に記載の二次電池を含む電池モジュール。
【請求項16】
請求項15に記載の電池モジュールを含む電池パック。
【請求項17】
請求項14に記載の二次電池、請求項15に記載の電池モジュール、又は請求項16に記載の電池パックから選択される少なくとも1つを含む電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はリチウム電池の技術分野に関し、特にバインダー化合物及びその製造方法、さらに該バインダー化合物を含む極性シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の応用範囲がますます広くなるにつれて、様々なエネルギー貯蔵電源システムに応用され、そのためリチウムイオン電池の性能に対してもより高い要件が提出されている。研究の結果、リチウムイオン二次電池の性能(例えば、容量維持率など)は、使用条件、極性シート、電解液、セパレータなどの様々な要因の影響を受けることが分かっている。
【0003】
極性シートについては、極性シートの接着力、導電性はいずれも電池の容量維持率に影響する。そのため、バインダーはリチウムイオン二次電池の製造における重要な構成要素として、本分野の研究における注目対象となっている。
【0004】
リチウムイオン電池によく使用されるバインダーは、一般的に水系と油系の2種類に大きく分けることができる。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)に代表される油系バインダーは、良好な接着性、電気化学的安定性と熱力学的安定性、及び膨潤性を有するが、水不溶性であるため、極性シートのスラリーの製造に使用するためには有機溶媒を使用しなければならず、コストが高く、環境にも悪影響を及ぼす。また、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)に代表される水系バインダーは、水溶性であるため、より経済的で環境に優しい水を溶媒として使用することができるが、その接着性能は油系バインダーに比べてやや劣る。
【0005】
したがって、本分野では、水溶性と、良好な接着性、化学的性質の安定性、膨潤性など油系バインダーの利点のうちの1つ又は複数とを兼ね備えたバインダーが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
上記課題を解決するために、本願は、水溶性を有し、且つ接着性に優れ、化学的性質が安定しており、膨潤するバインダー化合物を提供する。
【0007】
具体的には、本願は式(I)のバインダー化合物、その製造方法、及び該バインダー化合物を含む極性シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。
【0008】
本願の第1態様のバインダー化合物は、式(I)で表され、
【化1】
式中、
、R、Rは、それぞれ独立して無置換又は置換の炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は無置換又は置換の炭素原子数6~20のアリール基を表し、
は、-COOMを表し、
は、オキソ基又はオキソイミノ基を表し、
Mは、それぞれ独立してLi、Na、K、Rb及びCsのうちの1つを表し、
Zは、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、
mは、7600~47000から選択される整数であり、
nは、1520~94000から選択される整数であり、
m/n=0.1~10である。
【0009】
これにより、本願はバインダー化合物を提供し、それは接着性に優れ、水に溶解し、化学的性質が安定しており、膨潤性を有し、極性シートのイオン伝導性を向上させ、分極を低減させることができ、二次電池のセル性能(例えば、容量維持性能等)が改善される。
【0010】
任意の実施するための形態において、式(I)におけるR及びRはそれぞれ独立して、無置換の炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、好ましくは、R及びRはそれぞれ独立して、無置換の炭素原子数1~6の直鎖状のアルキル基を表す。
【0011】
任意の実施するための形態において、式(I)におけるRは、無置換の炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はフェニル基を表し、好ましくは、Rは、無置換の炭素原子数1~6の直鎖状のアルキル基又はフェニル基を表す。
【0012】
以上のように、式(I)のバインダー化合物の構造をさらに選択することにより、接着性、分散性等がさらに向上し、接着効果が改善される。
【0013】
任意の実施するための形態において、式(I)におけるmは、7600~30000から選択される整数である。
【0014】
任意の実施するための形態において、式(I)におけるnは、1520~46000から選択される整数であり、好ましくは、nは、1520~18000から選択される整数である。
【0015】
任意の実施するための形態において、式(I)におけるm/n=0.3~7.5であり、好ましくは、m/n=0.5~7.5である。
【0016】
以上のように、m、n及びm/nをさらに選択することにより、バインダー化合物の接着性、膨潤性、化学的安定性及び加工性がさらに改善されて、極性シートの導電率が改善され、分極が低減され、二次電池のセル性能が向上する。
【0017】
本願の第2態様のバインダー化合物の製造方法は、式(I)で表されるバインダー化合物の製造方法であって、
【化2】
式中、
、R、Rは、それぞれ独立して無置換又は置換の炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は無置換又は置換の炭素原子数6~20のアリール基を表し、
は、-COOMを表し、
は、オキソ基又はオキソイミノ基を表し、
Mは、それぞれ独立してLi、Na、K、Rb及びCsのうちの1つを表し、
Zは、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、
mは、7600~47000から選択される整数であり、
nは、1520~94000から選択される整数であり、
m/n=0.1~10であり、
該製造方法は、ステップ(i)~ステップ(iii)を含み、
ステップ(i)では、式(II)の連鎖移動剤の存在下でフッ化ビニリデンモノマーを重合反応させて、式(III)のポリマーを得て、
【化3】

式中、R、R、Z、mは、それぞれ上記で定義した通りであり、
好ましくは、式(II)の連鎖移動剤は、4-シアノ-4-チオアシルチオプロピルスルファニルペンタン酸(4-Cyano-4-thioacylthiopropylsulfanyl pentanoic acid)であり、
ステップ(ii)では、式(IV)のグルコースアクリル酸誘導体を式(III)のポリフッ化ビニリデンと重合反応させて、式(I’)のポリマーを得て、
【化4】
式中、R、R、R、Z、m、n、m/nは、それぞれ上記で定義した通りであり、
は、オキソ基又はオキソイミノ基を表し、
はアセチル基を表し、
ステップ(iii)では、ステップ(ii)で得られたポリマーをアルカリ金属アルコキシドのROMと反応させて、式(I)のバインダー化合物を得て、
【化5】

は、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基から選択され、好ましくはメチル基又はエチル基から選択される。
【0018】
以上、本願のバインダー化合物の製造方法を提供する。
【0019】
任意の実施するための形態において、前記式(IV)のグルコースアクリル酸誘導体は、グルコース又は6-アミノグルコースから、以下のステップ(1)~(4)を通して得られるものである。
【0020】
ステップ(1)では、グルコース又は6-アミノグルコースを第1保護試薬と反応させて、その6位の第1級ヒドロキシ基又は第1級アミノ基を第1保護基で保護し、
ステップ(2)では、ステップ(1)の生成物を無水酢酸と反応させて、その1~4位のヒドロキシ基をアセチル基で保護し、
ステップ(3)では、ステップ(2)の生成物から前記第1保護基を除去し、
ステップ(4)では、ステップ(3)の生成物を塩化アクリロイル又はその誘導体と反応させて、式(IV)のグルコースアクリル酸誘導体を得る。
【0021】
任意の実施するための形態において、前記第1保護試薬はトリフェニルクロロメタンであり、前記第1保護基はトリチル基である。
【0022】
任意の実施するための形態において、前記ステップ(3)は、臭化水素の存在下で実施される。
【0023】
以上、式(IV)のグルコースアクリル酸誘導体の製造方法を提供する。且つ、反応試薬及び反応条件を選択することにより、反応速度を兼ね備える前提で、副反応の発生を効果的に制御して、合成生成物の純度を保証する。
【0024】
本願の第3態様によれば、集電体と、前記集電体の少なくとも一方の表面に設置された極性シート材料層と、を含み、前記極性シート材料層は、本願の第1態様に係るバインダー化合物又は本願の第2態様に係る製造方法によって得られたバインダー化合物を含む極性シートを提供する。
【0025】
任意の実施するための形態において、前記極性シートは負極シートである。
【0026】
任意の実施するための形態において、前記負極シートの極性シート材料層は、前記極性シート材料層の総重量に基づいて、0.1~10重量%、好ましくは0.5~3重量%の前記バインダー化合物を含む。負極シートの負極材料層に含まれるバインダー化合物の%含有量を上記範囲内に制御し、負極材料層中のバインダー化合物の接着効果を保証するとともに、極性シートの活性材料の含有量が適切で、抵抗が小さく、分極が少なく、セルが適切なエネルギー密度を有するようにすることができる。
【0027】
本願の第4態様によれば、本願の第1態様に係るバインダー化合物、又は本願の第2態様に係る製造方法によって得られたバインダー化合物、又は本願の第3態様に係る極性シートを含む二次電池を提供する。
【0028】
本願の第5態様によれば、第4態様に係る二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0029】
本願の第6態様によれば、第5態様に係る電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0030】
本願の第7態様によれば、本願の第4態様に係る二次電池、第5態様に係る電池モジュール、又は第6態様に係る電池パックから選択される少なくとも1つを含む電力消費装置を提供する。
【0031】
本願のバインダー化合物は接着性に優れ、水に溶解し、化学的性質が安定しており、膨潤性を有し、該バインダー化合物を含む極性シートはイオン伝導性が高く、分極が少なく、二次電池のセル性能(例えば、容量維持性能等)を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施例1で製造されたバインダー化合物の赤外スペクトルである。
図2】本願の一実施形態に係る二次電池の概略図である。
図3図2に示す本願の一実施形態に係る二次電池の分解図である。
図4】本願の一実施形態に係る電池モジュールの概略図である。
図5】本願の一実施形態に係る電池パックの概略図である。
図6図5に示す本願の一実施形態に係る電池パックの分解図である。
図7】本願の一実施形態に係る二次電池を電源として使用する電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本願のバインダー化合物及びその製造方法、該バインダー化合物を含む極性シート、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を具体的に開示した実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、不必要な詳細な説明は省略する場合がある。例えば、周知の事項の詳細な説明や、実質的に同一の構造についての重複する説明は省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長にならないようにして、当業者の理解を容易にするためである。また、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されたものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0034】
本願に開示される「範囲」は、下限及び上限の形で定義され、所与の範囲は、1つの下限と1つの上限を選定することによって定義され、選定された下限及び上限は、特定の範囲の境界を定義するものである。このような方法で定義された範囲は、両端の値が含まれてもよく又は含まれていなくてもよく、且つ任意に組み合わせることができ、すなわち、任意の下限を任意の上限と組み合わせて範囲を形成することができる。例えば、60~120及び80~110の範囲が特定のパラメータについて列挙されている場合、60~110及び80~120の範囲も予想されると理解される。また、最小範囲値1及び2が列挙されており、及び最大範囲値3、4及び5が列挙されている場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の範囲がすべて企図されている。本願において、説明がない限り、数値範囲「a~b」は、aからbの間の任意の実数の組み合わせの省略表現を意味し、a及びbは両方とも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、「0~5」の間の全ての実数が本明細書に全て列挙されていることを意味し、「0~5」は、これらの数値の組み合わせの省略表現にすぎない。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現する場合、そのパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等であることを開示することに相当する。
【0035】
本願のすべての実施形態及び選択可能な実施形態は、特に説明しない限り、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0036】
本願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、特に説明しない限り、互いに組み合わせて新しい技術的解決手段を形成することができる。
【0037】
本願の全てのステップは、特に説明しない限り、順に又はランダムに実施することができ、好ましくは順に実施する。例えば、前記方法がステップ(a)及び(b)を含む場合、前記方法は、順に実施されるステップ(a)及び(b)を含んでもよく、又は順に実施されるステップ(b)及び(a)を含んでもよいことを示す。例えば、前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいという場合、ステップ(c)を任意の順序で前記方法に加えてもよいことを意味し、例えば、前記方法はステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、又はステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、又はステップ(c)、(a)及び(b)を含んでもよいなどを示す。
【0038】
本願で言及される「含む」及び「包含する」は、特に説明しない限り、開放形式及び閉鎖形式の両方を示す。例えば、前記「含む」及び「包含」は、列挙されていない他の構成要素も含む又は包含してもよいことを示すことができ、又は列挙された構成要素のみを含む又は包含してもよいことを示すことができる。
【0039】
本願において、特に説明しない限り、「又は」という用語は包括的である。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はA及びBの両方」を意味する。より具体的には、「A又はB」という条件は、Aが真(又は存在)であり、Bが偽(又は存在しない)であるか、Aが偽(又は存在しない)であり、Bが真(又は存在する)であるか、又はA及びBの両方が真(又は存在する)のいずれかによって満たされる。
【0040】
リチウムイオン電池が多くの分野における様々なエネルギー貯蔵電源システムに応用されるにつれて、電池の各分野の性能に対してもより高い要件が提出されている。一般的に、リチウムイオン電池の性能は、電池の使用条件、セルの極性シート、電解液、セパレータなどの多くの要因の影響を受ける。
【0041】
極性シートについては、極性シートの接着力、導電性などはいずれも電池の容量維持率に影響する。極性シートのバインダーの接着力が低く又は(劣化するなどして)接着力が低下すると、極性シート材料層における一部の活性材料(又は活性物質とも呼ばれる)が集電体と連通できないことで機能しなくなり、それによりセルの容量損失及び容量維持率の低下を引き起こす。また、セル容量が発揮されるためには、極性シートの導電性も大きく影響し、極性シートの導電性が優れており、電池分極が少ないと、電池効率が高く、容量維持率も高い。
【0042】
そのため、バインダーはリチウムイオン二次電池の製造における重要な構成要素として、本分野の研究における注目対象となっている。
【0043】
現在、本分野で一般的に使用されているバインダーは、水系(すなわち水溶性)と油系(すなわち水不溶性)の2種類に大きく分けることができる。そのうち、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)に代表される油系バインダーは、良好な接着性、化学的及び熱力学的安定性を有するが、水不溶性であるため、有機溶媒を使用しなければならず、コストが高く、環境にも悪影響を及ぼす。また、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)に代表される水系バインダーは、水を溶媒とすることができ、経済的で環境に優しいが、その接着性能は油系バインダーに比べて低く、且つ膨潤性がないので、極性シートの抵抗が大きくなり、電池容量維持率に劣る。
【0044】
そのため、本分野では、油系と水系バインダーの様々な利点を兼ね備えた理想的なバインダーが必要とされている。言い換えれば、該バインダーは、水溶性と、良好な接着性、化学的性質の安定性、膨潤性などの特性のうちの少なくとも1つとを同時に有していなければならない。このような目的に基づいて、本願の発明者らは、本願の式(I)のバインダー化合物を製造した。
【0045】
バインダー化合物及びその製造方法
本願の第1態様によれば、式(I)で表され、
【化6】
式中、
、R、Rは、それぞれ独立して無置換又は置換の炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は無置換又は置換の炭素原子数6~20のアリール基を表し、
は、-COOMを表し、
は、オキソ基又はオキソイミノ基を表し、
Mは、それぞれ独立してLi、Na、K、Rb及びCsのうちの1つを表し、
Zは、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、
mは、7600~47000から選択される整数であり、
nは、1520~94000から選択される整数であり、
m/n=0.1~10であるバインダー化合物を提供する。
【0046】
メカニズムは明確ではないが、発明者らは以下の事柄を発見した。本願のバインダー化合物は、PVDFのような良好な接着性、安定した化学的性質及び膨潤性(すなわち、電解液を吸収して膨潤する)に加えて、良好な水溶性を有することから、水を溶媒として使用して極性シートを製造することができる。さらに発明者らは、従来技術の他の水溶性バインダーと比較して、本願の式(I)のバインダー化合物を使用して製造された極性シートが、改善されたイオン伝導性、低減された分極を有し、このような極性シートを含む二次電池が、より低いセル内部抵抗及びより良好な容量保持性能を有する(すなわち、電池の高率放電の容量維持率及びサイクル容量維持率のうち少なくとも一方が改善される)ことを発見した。
【0047】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるR及びRはそれぞれ独立して、無置換の炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、好ましくは、R及びRはそれぞれ独立して、無置換の炭素原子数1~6の直鎖状のアルキル基を表す。
【0048】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるRは、無置換の炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はフェニル基を表し、好ましくは、Rは、無置換の炭素原子数1~6の直鎖状のアルキル基又はフェニル基を表す。
【0049】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるRは、好ましくは、オキソ基を表す。
【0050】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるMは、好ましくは、それぞれ独立して、Li、Na、Kのうちの1つを表し、さらに好ましくは、Mは、それぞれ独立して、Li又はNaを表す。
【0051】
以上のように、式(I)のバインダー化合物の構造をさらに選択することにより、接着性、分散性(すなわち、スラリー製造時の均一な分散)等がさらに向上し、接着効果が改善される。
【0052】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるmは、7600~30000から選択される整数である。
【0053】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるnは、1520~46000から選択される整数であり、好ましくは、nは、1520~18000から選択される整数である。
【0054】
いくつかの実施の形態において、式(I)におけるm/n=0.3~7.5であり、好ましくは、m/n=0.5~7.5である。
【0055】
以上のように、m、n及びm/nをさらに選択することにより、バインダー化合物の接着性、膨潤性、化学的安定性がさらに改善されて、極性シートの導電率が改善され、分極が低減され、二次電池の性能がさらに向上する。
【0056】
特に、m及びnをそれぞれ上記範囲内に制御し、且つ2つの間の比m/nの値を上記範囲内に制御することで、バインダー化合物におけるポリフッ化ビニリデン(PVDF)重合構成単位及びカルボキシメチルセルロース塩重合構成単位の2つの含有量及びその割合関係をいずれも適切にすることができ、それによりバインダー化合物が良好な接着性、化学的安定性及び十分な膨潤性を兼ね備えるとともに、良好な水溶性を有することができ、そこから得られる極性シートはイオン導電率が高く、分極が少なく、セル性能を向上させる。同時に、m、n及びm/nを上記範囲内に制御することにより、本願のバインダー化合物は加工性を有するようになり、極性シートのスラリーを製造する場合、溶媒である水によく溶解するため、スラリーの固形分を理想的な範囲に調整することができ、得られたスラリーは後に続く極性シート塗布、乾燥等の操作により使いやすい。
【0057】
いくつかの実施形態において、式(I)のバインダー化合物における、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)重合構成単位及びカルボキシメチルセルロース塩(CMC-M)重合構成単位は、ブロック共重合される。
【0058】
本明細書において、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)重合構成単位は、以下の式(A)で表される。
【0059】
【化7】
本明細書において、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC-M、Mはアルカリ金属イオン)重合構成単位は、以下の式(B)で表される。
【0060】
【化8】
上記の式(A)及び式(B)において、*は、該化学結合が他の重合構成単位と結合する位置を示す。
【0061】
本願の第2態様によれば、式(I)で表されるバインダー化合物の製造方法を提供する。
【0062】
【化9】
式中、
、R、Rは、それぞれ独立して無置換又は置換の炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は無置換又は置換の炭素原子数6~20のアリール基を表し、
は、-COOMを表し、
は、オキソ基又はオキソイミノ基を表し、
Mは、それぞれ独立してLi、Na、K、Rb及びCsのうちの1つを表し、
Zは、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、
mは、7600~47000から選択される整数であり、
nは、1520~94000から選択される整数であり、
m/n=0.1~10であり、
前記製造方法は、ステップ(i)~ステップ(iii)を含み、
ステップ(i)では、式(II)の連鎖移動剤の存在下でフッ化ビニリデンモノマーを重合反応させて、式(III)のポリマーを得て、
【化10】
式中、R、R、Z、mは、それぞれ上記で定義した通りであり、
ステップ(ii)では、式(IV)のグルコースアクリル酸誘導体を式(III)のポリフッ化ビニリデンと重合反応させて、式(I’)のポリマーを得て、
【化11】
式中、R、R、R、Z、m、n、m/nは、上記で定義した通りであり、
は、オキソ基又はオキソイミノ基を表し、
はアセチル基を表し、
ステップ(iii)では、ステップ(ii)で得られたポリマーをアルカリ金属アルコキシドのROMと反応させて、式(I)のバインダー化合物を得て、
【化12】
は、炭素原子数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基から選択され、好ましくはメチル基又はエチル基から選択される。
【0063】
上記製造方法により、本願のバインダー化合物を製造する。
【0064】
上記製造方法において、連鎖移動剤、フッ化ビニリデンモノマー及びグルコースアクリル酸誘導体の投入量は、m及びnの所望の値次第であるが、好ましくは化学量論比が使用される。
【0065】
いくつかの実施形態において、ステップ(i)における、式(II)の連鎖移動剤は、好ましくは、4-シアノ-4-チオアシルチオプロピルスルファニルペンタン酸(CPP)である。
【0066】
いくつかの実施形態において、ステップ(i)は、開始剤の存在下で実施されるものである。いくつかの実施形態において、開始剤はアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)又は過酸化ジベンゾイル(BPO)であり、好ましくは、開始剤はAIBNである。
【0067】
いくつかの実施形態において、ステップ(i)は、溶媒中で実施される。いくつかの実施形態において、前記溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はジメチルスルホキシド(DMSO)から選択され、好ましくは、溶媒はTHFである。
【0068】
いくつかの実施形態において、ステップ(i)は、加熱条件下で実施され、好ましくは60~80℃、より好ましくは65~75℃、最も好ましくは70℃で実施される。反応温度を制御することにより、反応速度を理想の範囲内に制御することができ、副反応の低減にも有利である。
【0069】
いくつかの実施形態において、ステップ(i)は、無酸素条件下で実施される。好ましくは、ステップ(i)は不活性雰囲気下で実施され、より好ましくは、ステップ(i)は窒素(N)雰囲気下で実施される。無酸素条件下で反応させることにより、反応中に生成されたラジカルの酸化を防ぎ、副生成物の生成を抑制することができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、ステップ(i)は、得られたポリマーの処理ステップをさらに含み、得られたポリマーを冷たいジエチルエーテルで沈殿させることを含むがこれに限定されない。
【0071】
いくつかの実施形態において、ステップ(ii)は、溶媒中で実施される。いくつかの実施形態において、前記溶媒は、THF、DMF、DMSOから選択され、好ましくは、溶媒はTHFである。
【0072】
いくつかの実施形態において、ステップ(ii)は、加熱条件下で実施され、好ましくは60~80℃、より好ましくは65~75℃、最も好ましくは70℃で実施される。反応温度を制御することにより、反応速度を好ましい範囲内に制御し、副反応の低減に有利である。
【0073】
いくつかの実施形態において、ステップ(ii)は、無酸素条件下で実施される。好ましくは、ステップ(ii)は不活性雰囲気下で実施され、より好ましくは、ステップ(ii)は窒素(N)雰囲気下で実施される。無酸素条件下で反応させることにより、反応中に生成されたラジカルの酸化を防ぎ、副生成物の生成を抑制することができる。
【0074】
いくつかの実施形態において、ステップ(ii)は、得られたポリマーの処理ステップをさらに含み、得られたポリマーを冷たいジエチルエーテルで沈殿させることを含むがこれに限定されない。
【0075】
いくつかの実施形態において、上記Rは、保護基を表す。一般的に、当業者であれば、所望の反応(本願では、6-第1級ヒドロキシ基又は第1級アミノ基と酸塩化物との反応)の進行を妨害しないように、グルコース又は6-アミノグルコースの環構造の1-4位の第2級ヒドロキシ基を保護するための、適切な保護試薬を選択することができる。使用される保護試薬次第で、Rは、本分野で公知の任意の適切な保護基であってもよく、アセチル基を含むが、これに限定されない。
【0076】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は、溶媒中で実施される。いくつかの実施形態において、溶媒は、THF又はアルコール(例えば、メタノール、エタノール)である。
【0077】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)におけるアルカリ金属アルコキシド(ROM)は、本分野で一般的に使用されるものである。好ましくは、ROMにおいて、Rはメチル基又はエチル基から選択され、すなわち、アルカリ金属アルコキシドはアルカリ金属のメトキシド又はエトキシドから選択される。上記アルカリ金属アルコキシドを選択することにより、反応に必要な塩基性環境を提供することができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は常温で、好ましくは20~30℃、より好ましくは22~28℃、最も好ましくは25℃で実施される。
【0079】
いくつかの実施形態において、ステップ(iii)は、最終生成物を精製することをさらに含み、該精製は例えば透析によって実施されるが、これに限定されない。
【0080】
いくつかの実施形態において、本願の製造方法における式(IV)のグルコースアクリル酸誘導体は、市販品か又は当業者に公知の合成方法によって得られたものである。
【0081】
いくつかの実施形態において、前記式(IV)のグルコースアクリル酸誘導体は、グルコース又は6-アミノグルコースから、以下のステップ(1)~(4)を通して得られるものである。
【0082】
ステップ(1)では、グルコース又は6-アミノグルコースを第1保護試薬と反応させて、その6位の第1級ヒドロキシ基又は第1級アミノ基を第1保護基で保護し、
ステップ(2)では、ステップ(1)の生成物を無水酢酸と反応させて、その1~4位のヒドロキシ基をアセチル基で保護する。
【0083】
ステップ(3)では、ステップ(2)の生成物から前記第1保護基を除去し、
ステップ(4)では、ステップ(3)の生成物を塩化アクリロイル又はその誘導体と反応させて、式(IV)のグルコースアクリル酸誘導体を得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、第1保護試薬は、本分野で公知の任意の選択的第1級ヒドロキシ基保護試薬又は選択的第1級アミノ基保護試薬である。いくつかの実施形態において、第1保護試薬はトリフェニルクロロメタンであり、対応して、第1保護基はトリチル基である。
【0085】
いくつかの実施形態において、ステップ(1)のトリチル化反応は、加熱条件下で実施され、好ましくは75~85℃、より好ましくは80℃で実施される。反応温度を上記範囲内に制御し、反応速度を兼ね備える前提で、副反応の発生を効果的に減少させる。
【0086】
いくつかの実施形態において、ステップ(2)におけるアセチル化反応は、室温で実施され、好ましくは20~25℃で、より好ましくは22℃で実施される。
【0087】
いくつかの実施形態において、保護試薬である無水酢酸は、ヒドロキシ基の保護に適した本分野で公知の任意の保護試薬で代替してもよい。本発明は無水酢酸をグルコースの1-4位のヒドロキシ基の保護試薬として用いており、その保護効果はより効果的である。
【0088】
いくつかの実施形態において、式(V)のグルコース分子の1-4位の第2級ヒドロキシ基をアセチル基で保護した後、6位に対して脱保護反応を行い、その後の反応のために該第1級ヒドロキシ基を露出させる。いくつかの実施形態において、ステップ(3)は、第1級ヒドロキシル基の保護基を除去するための、本分野で公知の任意の適切な条件下で実施される。いくつかの実施形態において、ステップ(3)は、酸性条件下で、好ましくはHBrの存在下で実施される。いくつかの実施形態において、ステップ(3)の脱トリチル化反応は、-5~5℃、好ましくは0℃で実施される。
【0089】
いくつかの実施形態において、ステップ(4)は、触媒の存在下で実施される。好ましくは、触媒はトリエチルアミンである。
【0090】
いくつかの実施形態において、ステップ(4)は、常温で、好ましくは20~30℃、より好ましくは22~28℃、最も好ましくは25℃で実施される。
【0091】
いくつかの実施形態において、ステップ(1)~(4)は、それぞれ独立して、同じ又は異なる溶媒中で実施される。好ましくは、ステップ(1)~(4)はすべて、溶媒のピリジン中で実施される。
【0092】
いくつかの実施形態において、式(IV)のグルコースアクリル酸誘導体は、以下の反応経路に従って、式(V)のグルコースを塩化アクリロイル又はその誘導体と反応させることによって得られるものである。
【0093】
【化13】
そのうち、R、R、R、Rはそれぞれ上記で定義した通りである。
【0094】
以上、式(IV)のグルコースアクリル酸誘導体の製造方法を提供する。且つ反応条件をさらに選択することにより、反応速度を兼ね備える前提で、副反応の発生を効果的に制御して、合成生成物の純度を保証する。
【0095】
極性シート
本願の第3態様によれば、集電体と、前記集電体の少なくとも一方の表面に設置された極性シート材料層と、を含み、前記極性シート材料層は、本願の第1態様に係るバインダー化合物又は本願の第2態様に係る製造方法で得られたバインダー化合物を含む極性シートを提供する。
【0096】
[負極シート]
いくつかの実施形態において、極性シートは負極シートである。いくつかの実施形態において、該負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面上に設置された負極材料層と、を含み、負極材料層は、本願の第1態様のバインダー化合物又は本願の第2態様の製造方法で得られたバインダー化合物を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、負極シートのシート材料層は、前記シート材料層の総重量に基づいて、0.1~10重量%、好ましくは0.5~3重量%の前記バインダー化合物を含む。負極材料層に含まれるバインダー化合物の%含有量を上記範囲内に制御し、負極材料層中のバインダー化合物の良好な接着効果(すなわち、極性シート材料層に粉落ち、脱落等が発生しにくい)を保証し、それにより極性シートの抵抗が小さく、分極が少なくなり、電池の高率放電の容量維持率(例えば、4C容量維持率)及びサイクル容量維持率のうちの少なくとも一方を効果的に改善する。同時に、極性シート材料層に含まれるバインダー化合物の含有量を制限することにより、極性シートに十分な量の活性材料が含まれることを保証し、得られたセルは所望のエネルギー密度を有する。
【0098】
一例として、負極集電体は、それ自体の厚み方向に対向する2つの面を有し、負極材料層は、負極集電体の対向する2つの面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0099】
いくつかの実施形態において、前記負極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔としては、例えば銅箔を用いることができる。複合集電体は、高分子基材層と、高分子基材層の少なくとも1つの表面に形成された金属層と、を含むことができる。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を、高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することにより形成することができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、負極の極性シート材料層はさらに負極活性材料を含む。前記負極活性材料は、本分野で公知の電池用負極活性材料を使用することができる。一例として、負極活性材料は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料、チタン酸リチウムなどのうち少なくとも1つを含むことができる。前記シリコン系材料は、シリコン単体、シリコン酸化物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体及びシリコン合金のうちの少なくとも1つから選択することができる。前記スズ系材料は、スズ単体、スズ酸化物及びスズ合金のうちの少なくとも1つから選択することができる。なお、本願はこれらの材料に限定されず、電池の負極活性材料として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活性材料は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
いくつかの実施形態において、負極の極性シート材料層は、好ましくは、さらに他のバインダーを含むことができる。前記バインダーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、負極の極性シート材料層は、好ましくは、さらに導電剤を含むことができる。導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、負極の極性シート材料層は、好ましくは、さらに増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の助剤を含むことができる。
【0104】
いくつかの実施形態において、以下の方式で負極シートを製造することができる。上記負極シートを製造するための成分、例えば負極活性材料、導電剤、バインダー及び任意の他の成分を溶媒(例えば脱イオン水)に分散させ、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等の工程を経て、負極シートを得ることができる。
【0105】
[正極シート]
いくつかの実施形態において、本願の極性シートは正極シートである。該正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられ、本願の第1態様に係る正極活性材料を含む正極材料層と、を含む。正極材料層は、本願の第1態様のバインダー化合物又は本願の第2態様の製造方法で得られたバインダー化合物を含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、正極シートは、所望の接着効果を達成することができる量で、本願の第1態様のバインダー化合物又は本願の第2態様の製造方法で得られたバインダー化合物を含む。
【0107】
一例として、正極集電体は、その厚さ方向に対向する2つの面を有し、正極材料層は、正極集電体の対向する2つの面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0108】
いくつかの実施形態において、前記正極集電体は金属箔又は複合集電体を用いることができる。金属箔としては、例えばアルミニウム箔を用いることができる。複合集電体は、高分子基材層と、高分子基材層の少なくとも一面に形成された金属層と、を含むことができる。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を、高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することにより形成することができる。
【0109】
いくつかの実施形態において、正極活性材料は公知の電池用正極活性材料を使用することができる。一例として、正極活性材料は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物、及びそれらのそれぞれの改質化合物のうちの少なくとも1つを含んでもよい。なお、本願はこれらの材料に限定されず、電池の正極活性材料として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの正極活性材料は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。リチウム遷移金属酸化物の例はリチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO、LiMn)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3(略称NCM333でもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(略称NCM523でもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25(略称NCM211でもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(略称NCM622でもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(略称NCM811でもよい)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05)及びその改質化合物等のうちの少なくとも1つが含まれてもよいが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩としては、例えば、リン酸第2鉄リチウム(例えばLiFePO(略称LFPでもよい))、リン酸第2鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸フェロマンガンリチウム、リン酸フェロマンガンリチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも1つが含まれてもよいが、これらに限定されない。
【0110】
いくつかの実施形態において、正極材料層は、好ましくはさらに他のバインダーを含む。一例として、前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0111】
いくつかの実施形態において、正極材料層は、好ましくはさらに導電剤を含むことができる。一例として、前記導電剤は超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、以下の方法で正極シートを製造することができる。上記正極シートを製造するための成分、例えば正極活性材料、導電剤、バインダー及び任意の他の成分を適切な溶媒(例えば水又はN-メチルピロリドン)に分散させ、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等のステップを経て、正極シートを得ることができる。
【0113】
二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
本願の第4態様によれば、本願の第1態様に係るバインダー化合物、又は本願の第2態様に係る製造方法で得られたバインダー化合物、又は本願の第3態様に係る極性シートを含む二次電池を提供する。
【0114】
いくつかの実施形態において、前記二次電池はリチウムイオン二次電池である。
【0115】
本願の第5態様によれば、本願の第4態様に係る二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0116】
本願の第6態様によれば、本願の第5態様に係る電池モジュールを含む電池パックを提供する。
【0117】
本願の第7態様によれば、本願の第4態様に係る二次電池、第5態様に係る電池モジュール、又は第6態様に係る電池パックから選択される少なくとも1つを含む電力消費装置を提供する。
【0118】
以下、適宜図面を参照して、本願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置について説明する。
【0119】
一般的に、二次電池は正極シート、負極シート、電解質及びセパレータを含む。電池の充放電過程において、活性イオンは正極シートと負極シートとの間で往復して挿入及び脱離する。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは正極シートと負極シートとの間に設置され、主に正負極の短絡を防止する役割を果たすと同時に、イオンを通過させることができる。
【0120】
[電解質]
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願は電解質の種類を特に限定せず、必要に応じて選択することができる。例えば、電解質は液体、ゲル又は完全な固体であってもよい。
【0121】
いくつかの実施形態において、前記電解質は電解液を使用する。前記電解液は電解質塩と溶媒を含む。
【0122】
いくつかの実施形態において、電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、リチウムジフルオロオキサレートボレート(CBFLiO)、リチウムビスオキサレートボレート(CBLiO)、リチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート(CLiOP)、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート(CLiOP)のうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、溶媒はエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1、4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、及びジエチルスルホンのうちの少なくとも1つから選択することができる。
【0124】
いくつかの実施形態において、前記電解液は選択的に添加剤をさらに含む。例えば、添加剤は、負極フィルム形成添加剤、正極フィルム形成添加剤が含まれていてもよく、さらに、電池の特定の特性を改善することができる添加剤、例えば、電池の過充電特性を改善する添加剤、電池の高温又は低温特性を改善する添加剤などが含まれていてもよい。
【0125】
[セパレータ]
いくつかの実施形態において、二次電池はセパレータをさらに含む。本願はセパレータの種類を特に制限せず、良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0126】
いくつかの実施形態において、セパレータの材料はガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1つから選択することができる。セパレータは単層フィルムであっても多層複合フィルムであってもよく、特に限定されない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は、同一でも異なっていてもよく、特に限定されない。
【0127】
いくつかの実施形態において、正極シート、負極シート及びセパレータは、捲回プロセス又はラミネートプロセスを介して電極アセンブリに製造されることができる。
【0128】
いくつかの実施形態において、二次電池は外装を含むことができる。該外装は上記電極アセンブリ及び電解質を封入するために用いられる。
【0129】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどの硬質ケースであってもよい。二次電池の外装は、パウチ型ソフトパックなどのソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質はプラスチックであってもよく、プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネート等が挙げられる。
【0130】
本願は二次電池の形状を特に限定せず、円筒形、角形、又は他の任意の形状であってもよい。例えば、図2は一例としての角形構造の二次電池5である。
【0131】
いくつかの実施形態において、図3を参照すると、外装は、ハウジング51及びカバープレート53を含むことができる。ハウジング51は底板及び底板に接続された側板を含み、底板及び側板で囲まれて収容キャビティが形成される。ハウジング51は収容キャビティと連通する開口を有し、カバープレート53は前記開口をカバーして、前記収容キャビティを密閉することができる。正極シート、負極シート及びセパレータから捲回プロセス又はラミネートプロセスを経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は前記収容キャビティ内に封入される。電解液は電極アセンブリ52内に含浸している。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は1つ又は複数であってもよく、当業者は具体的な実際の要件に応じて選択することができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、二次電池は電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は1つ以上であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの用途及び容量に応じて選択することができる。
【0133】
図4は一例としての電池モジュール4である。図4を参照して、電池モジュール4において、複数の二次電池5を電池モジュール4の長さ方向に沿って順に並べて設置することができる。当然ながら、他の任意の方法で配置してもよい。また、該複数の二次電池5は締結具によって固定することができる。
【0134】
好ましくは、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有する外ケースをさらに備えてもよい。
【0135】
いくつかの実施形態において、上記電池モジュールはさらに電池パックに組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は1つ以上であってもよく、具体的な数は、当業者が電池パックの用途及び容量に応じて選択することができる。
【0136】
図5及び図6は、一例としての電池パック1である。図5及び図6を参照すると、電池パック1は、電池ケースと、電池ケース内に設置された複数の電池モジュール4と、を含むことができる。電池ケースは上筐体2及び下筐体3を含み、上筐体2は下筐体3に被せることができ、且つ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方法で電池ケース内に配置することができる。
【0137】
また、本願はさらに、本願に係る二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置をさらに提供する。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として使用されてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵要素として使用されてもよい。前記電力消費装置はモバイル機器(例えば携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0138】
前記電力消費装置として、二次電池、電池モジュール又は電池パックをその使用要件に応じて選択することができる。
【0139】
図7は、一例としての電力消費装置である。該電力消費装置は純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。該電力消費装置の二次電池に対する高出力及び高エネルギー密度の要件を満たすために、電池パック又は電池モジュールを用いることができる。
【0140】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。該装置は、一般的に軽量薄型化が求められており、電源として二次電池を用いることができる。
【0141】
実施例
以下、本願の実施例について説明する。以下に説明する実施例は例示的なものであり、本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものと理解すべきではない。実施例において具体的な技術又は条件が示されていない場合、本分野の文献に記載された技術又は条件に従って、又は製品の説明書に従って実行される。使用した試薬又は機器にメーカーが記載されていない場合、いずれも市販の一般的な製品である。
【0142】
実施例1
[バインダーの製造]
(1)三口フラスコに、6.5gのフッ化ビニリデンモノマー及び2mgの連鎖移動剤CPPを加え、200mLのテトラヒドロフランに溶解させ、真空状態にし、次にNを連続的に導入する。0.05gの開始剤アゾビスイソブチロニトリルを加え、70℃まで加熱し、且つ70℃に保持して12時間撹拌しながら反応させた後、反応混合物を0℃の冷たいジエチルエーテルに入れて沈殿させ、濾過、乾燥を経て、固体粉末Aを得る。
【0143】
(2)室温条件下で、72gのグルコース(CAS:492-62-6)を秤量して50mLのピリジン溶媒に入れ、28gのトリフェニルクロロメタンを加え、80℃まで加熱し且つ該温度に保持して30min反応させ、6位のヒドロキシ基がトリチル化されたグルコースを得て、濾過、洗浄及び乾燥を経て、固体1を得る。次に固体1をすべて20gの無水酢酸に加え、22℃で12h反応させ、1~4位のヒドロキシ基がアセチル化されたグルコースを得て、濾過、洗浄及び乾燥を経て固体2を得る。次に固体2をすべて20mLの45%臭化水素の酢酸溶液に加え、0℃で10分間反応させ、6位の保護基を除去する。次に上記反応系に10mLの触媒トリエチルアミン及び42gのメタクリロイルクロリド(CAS:920-46-7)を加えて25℃で24時間反応させ、乾燥を経て1~4位のヒドロキシ基がアセチル化されたグルコースアクリル酸誘導体である固体粉末Bを得る。
【0144】
(3)100gの固体粉末A及び92gの固体粉末Bを秤量し、混合した後に500mLのテトラヒドロフランが入った三口フラスコに溶解し、且つ真空状態にする。Nを連続的に導入しながら、上記三口フラスコに0.05gの開始剤アゾビスイソブチロニトリルを加え、次に70℃まで加熱する。70℃で12h撹拌しながら反応させた後、反応混合物を0℃の冷たいジエチルエーテルに入れて沈殿させ、濾過、乾燥を経て、白色固体粉末を得る。
【0145】
(4)ステップ(3)で得られた白色固体粉末を200mLのテトラヒドロフランに溶解し、且つその中に10.8gの30%ナトリウムメトキシドメタノール溶液を滴下し、25℃で3h撹拌する。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて反応生成物を濃縮し、さらに濃縮後の反応生成物を分子量10000の透析袋に移して24h透析して生成物を精製し、凍結乾燥後に本願のバインダー化合物を得る。
【0146】
[負極シートの製造]
活性材料の人造黒鉛、導電剤のカーボンブラック、上記製造されたバインダー化合物を96:2:2の重量比で脱イオン水に溶解し、均一に混合した後に固形分含有量が55重量%である負極スラリーを製造する。負極スラリーを1回又は複数回に分け、12mg/cmの負荷量で負極集電体銅箔に均一に塗布し、乾燥、冷間プレス、切断を経て負極シートを得る。
【0147】
[正極シートの製造]
正極活性材料の三元ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、導電剤のカーボンブラック及びバインダーのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を96:2.5:1.5の質量比で加えて均一に混合した後、溶媒のN-メチルピロリドン(NMP)を添加し、固形分を70重量%~80重量%に調整し、撹拌して正極スラリーを得る。その後正極スラリーを20mg/cmの負荷量で正極集電体のアルミニウム箔に均一に塗布し、その後乾燥、冷間プレス、切断を経て正極シートを得る。
【0148】
[電解液の製造]
アルゴン雰囲気のグローブボックス内で、エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)を体積比3/7で均一に混合して溶媒を得て、LiPFを質量パーセント12.5%で加えて上記溶媒に溶解し、均一に撹拌して、電解液を得る。
【0149】
[セパレータ]
セパレータとしてポリプロピレンフィルムを用いる。
【0150】
[リチウムイオン二次電池の製造]
正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層し、セパレータは正極シートと負極シートとの間に配置されて隔離の役割を果たし、次に捲回してベアセルを得て、ベアセルにタブを溶接し、且つベアセルをアルミニウムケースに入れ、80℃で焼成して水を除去し、次いで電解液を注入して封口し、充電されていない電池を得る。充電されていない電池はさらに静置、ホットコールドプレス、予備充電、整形、容量テスト等の工程を順に経て、リチウムイオン電池製品を得る。
【0151】
実施例2
[バインダーの製造]
(1)三口フラスコに、6.5gのフッ化ビニリデンモノマー及び2mgの連鎖移動剤CPPを加え、200mLのテトラヒドロフランに溶解させ、真空状態にし、次にNを連続的に導入する。0.05gの開始剤アゾビスイソブチロニトリルを加え、70℃まで加熱し、70℃で12時間撹拌しながら反応させた後、反応混合物を0℃の冷たいジエチルエーテルに入れて沈殿させ、濾過、乾燥を経て、固体粉末Aを得る。
【0152】
(2)室温条件下で、72gのグルコース(CAS:492-62-6)を秤量して50mLのピリジン溶媒に入れ、28gのトリフェニルクロロメタンを加え、80℃まで加熱し且つ該温度に保持して30min反応させ、6位のヒドロキシ基がトリチル化されたグルコースを得て、濾過、洗浄及び乾燥を経て、固体1を得る。次に固体1をすべて20gの無水酢酸に加え、22℃で12h反応させ、1~4位のヒドロキシ基がアセチル化されたグルコースを得て、濾過、洗浄及び乾燥を経て固体2を得る。次に固体2をすべて20mLの45%臭化水素の酢酸溶液に加え、0℃で10分間反応させ、6位の保護基を除去する。次に上記反応系に10mLの触媒トリエチルアミン及び53gのプロピルアクリロイルクロリド(CAS:78450-85-8)を加え、乾燥を経て1~4位のヒドロキシ基がアセチル化されたグルコースアクリル酸誘導体を得て、即ち固体粉末Bである。
【0153】
(3)100gの固体粉末A及び92gの固体粉末Bを秤量し、混合した後に500mLのテトラヒドロフランが入った三口フラスコに溶解し、且つ真空状態にする。Nを連続的に導入しながら、上記三口フラスコに0.05gの開始剤アゾビスイソブチロニトリルを加え、次に70℃まで加熱する。70℃で12h撹拌しながら反応させた後、得られた反応混合物を0℃の冷たいジエチルエーテルに入れて沈殿させ、濾過、乾燥を経て、白色固体粉末を得る。
【0154】
(4)ステップ(3)で得られた白色固体粉末を200mLのテトラヒドロフランに溶解し、且つその中に10.8gの30%ナトリウムメトキシドメタノール溶液を滴下し、25℃で3h撹拌する。撹拌終了後、ロータリーエバポレーターを用いて反応生成物を濃縮し、さらに濃縮後の反応生成物を分子量10000の透析袋に移して24h透析して生成物を精製し、凍結乾燥後に本願のバインダー化合物を得る。
【0155】
以降の他のステップは実施例1と同様である。
【0156】
実施例3
[バインダーの製造]
(1)三口フラスコに、6.5gのフッ化ビニリデンモノマー及び2mgの連鎖移動剤CPPを加え、200mLのテトラヒドロフランに溶解させ、真空状態にし、次にNを連続的に導入する。0.05gの開始剤アゾビスイソブチロニトリルを加え、70℃まで加熱し、70℃で12時間撹拌しながら反応させた後、反応混合物を0℃の冷たいジエチルエーテルに入れて沈殿させ、濾過、乾燥を経て、固体粉末Aを得る。
【0157】
(2)室温条件下で、20.0gのグルコース(CAS:492-62-6)を秤量して50mLのピリジン溶媒に入れ、28gのトリフェニルクロロメタンを加え、80℃まで加熱し且つ該温度に保持して30min反応させ、グルコース分子の6位のヒドロキシ基を保護する。次に20gの無水酢酸を加え、22℃で反応させ、他の位置のヒドロキシ基を保護する。その後20gの45%臭化水素の酢酸溶液を加え、0℃で10分間反応させ、6位の保護基を除去する。次に上記反応系に10mLの触媒トリエチルアミン及び12gのメタクリル酸クロリド(CAS:920-46-7)を加え、乾燥させて、保護基を含有するグルコースアクリル酸誘導体である固体粉末Bを得る。
【0158】
(3)100gの固体粉末A及び92gの固体粉末Bを秤量し、混合した後に500mLのテトラヒドロフランが入った三口フラスコに溶解し、且つ真空状態にする。Nを連続的に導入しながら、上記三口フラスコに0.05gの開始剤アゾビスイソブチロニトリルを加え、次に70℃まで加熱する。70℃で12h撹拌しながら反応させた後、反応混合物を0℃の冷たいジエチルエーテルに入れて沈殿させ、濾過、乾燥を経て、白色固体粉末を得る。
【0159】
(4)ステップ(3)で得られた白色固体粉末を200mLのテトラヒドロフランに溶解し、且つその中に7.6gの30%リチウムメトキシドメタノール溶液を滴下し、25℃で3h撹拌する。撹拌終了後、ロータリーエバポレーターを用いて反応生成物を濃縮し、さらに濃縮後の反応生成物を分子量10000の透析袋に移して24h透析して生成物を精製し、凍結乾燥後に本願のバインダー化合物を得る。
【0160】
以降の他のステップは実施例1と同様である。
【0161】
実施例4
[バインダーの製造]
(1)三口フラスコに、6.5gのフッ化ビニリデンモノマー及び2mgの連鎖移動剤CPPを加え、200mLのテトラヒドロフランに溶解させ、真空状態にし、次にNを連続的に導入する。0.05gの開始剤アゾビスイソブチロニトリルを加え、70℃まで加熱し、70℃で12時間撹拌しながら反応させた後、反応混合物を0℃の冷たいジエチルエーテルに入れて沈殿させ、濾過、乾燥を経て、固体粉末Aを得る。
【0162】
(2)室温条件下で、2.0gのグルコース(CAS:492-62-6)を秤量して50mLのピリジン溶媒に入れ、28gのトリフェニルクロロメタンを加え、80℃まで加熱し且つ該温度に保持して30min反応させ、6位のヒドロキシ基がトリチル化されたグルコースを得て、濾過、洗浄及び乾燥を経て、固体1を得る。次に固体1をすべて20gの無水酢酸に加え、22℃で12h反応させ、1~4位のヒドロキシ基がアセチル化されたグルコースを得て、濾過、洗浄及び乾燥を経て固体2を得る。その後固体2をすべて20mLの45%臭化水素の酢酸溶液に加え、0℃で10分間反応させ、6位の保護基を除去し、次に上記反応系に10mLの触媒トリエチルアミン及び2gのβ-フェニルアクリル酸クロリド(CAS:102-92-1)を加え、乾燥を経て1~4位のヒドロキシ基がアセチル化されたグルコースアクリル酸誘導体である固体粉末Bを得る。
【0163】
(3)100gの固体粉末A及び92gの固体粉末Bを秤量し、混合した後に500mLのテトラヒドロフランが入った三口フラスコに溶解し、且つ真空状態にする。Nを連続的に導入しながら、上記三口フラスコに0.05gの開始剤アゾビスイソブチロニトリルを加え、次に70℃まで加熱する。70℃で12h撹拌しながら反応させた後、反応混合物を0℃の冷たいジエチルエーテルに入れて沈殿させ、濾過、乾燥を経て、白色固体粉末を得る。
【0164】
(4)ステップ(3)で得られた白色固体粉末を200mLのテトラヒドロフランに溶解し、且つ反応フラスコに10.8gの30%ナトリウムメトキシドメタノール溶液を滴下し、25℃で3h撹拌する。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて反応生成物を濃縮し、さらに濃縮後の反応生成物を分子量10000の透析袋に移して24h透析し、凍結乾燥後に本願のバインダー化合物を得る。
【0165】
以降の他のステップは実施例1と同様である。
【0166】
実施例5-17
実施例5-17は、[バインダーの製造]におけるステップ(1)のフッ化ビニリデンモノマー及びステップ(3)の固体粉末A及びBの添加量のみを調整し、他のステップはいずれも実施例1と同じであり、それにより異なるm、n、m/n値を有するバインダー化合物を得る。各実施例におけるフッ化ビニリデンモノマー及び固体粉末A及びBの添加量は以下の表1に示す通りである。
【0167】
【表1】
【0168】
実施例19-23
実施例19-23は、[負極シートの製造]過程におけるバインダーの添加割合のみが異なり、他のステップは実施例1と同じである。各実施例における黒鉛、カーボンブラック及びバインダーの重量比を表2に示す。
【0169】
【表2】
【0170】
比較例C1
負極シートの製造には、従来技術の公知の水系バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)とのバインダー組成物を用いる。
【0171】
[負極シートの製造]
活性材料の人工黒鉛、導電剤のカーボンブラック、バインダーのスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を96:2:1.5:0.5の重量比で脱イオン水に溶解し、均一に混合した後に負極スラリーを製造する。負極スラリーを1回又は複数回に分けて20mg/cmの負荷量で負極集電体銅箔に均一に塗布し、乾燥、冷間プレス、切断を経て負極シートを得る。
【0172】
その後、実施例1の前記ステップに従って二次電池を製造する。
【0173】
上記各実施例及び比較例で得られた負極シート及び二次電池に対して、性能試験を行った。
【0174】
試験方法は以下の通りである。
【0175】
[バインダー関連パラメータの試験方法]
1、赤外スペクトル試験
標準GB/T6040-2002赤外スペクトル分析方法に基づき、米国ニコレット(nicolet)社のIS10型のフーリエ変換赤外スペクトル計を用いて、実施例の導電性バインダーの構造組成を測定する。測定波数範囲は600~4000cm-1である。
【0176】
2、数平均分子量(Mn)の測定
日本の東ソー株式会社のHLC-8320GPCゲル浸透クロマトグラフィー(SuperMultiporeHZシリーズ セミミクロSECカラム、標準ポリスチレン)を用いて、各実施例で得られたバインダー組成物の数平均分子量(Mn)を測定する。
【0177】
測定方法:2mgの試験対象のポリマー粉末を2mLのGPC専用DMF溶媒に溶解し、次に2.5μLを注入して、測定する。
【0178】
パラメータ:
ポンプ流量:5mL/min;
注入量:100μL;
温度制御範囲:60℃;
データ収集周波数:100Hz。
【0179】
3、核磁気共鳴スペクトル試験
生成物の分子構造はBruker AVANCEIII400核磁気共鳴装置で測定し、測定温度は25℃であり、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準とし、使用される溶媒はそれぞれ重水素化クロロホルム(CDCl)、重水素化メタノール(CDOD-d4)及び重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)を溶媒とする。
【0180】
試験過程:5mgのサンプルを上記溶媒に溶解した後に核磁気管に移し、1mL注入し、試験を行う。
【0181】
これにより、生成物の分子構造を決定し、且つm及びnの値を決定することができる。
【0182】
[極性シート関連パラメータの試験]
1、接着性能の試験
各実施例及び比較例の負極シートを、長さ100mm、幅10mmの試験サンプルに切断する。幅25mmのステンレス鋼板に両面テープ(幅11mm)を貼り付け、試験サンプル上の負極材料層を有する面をステンレス鋼板上の両面テープに貼り付け、2000gの加圧ローラでその表面を300mm/minの速度で3回往復して圧延する。次に、試験サンプルの一端を180度折り曲げ、手動で試験サンプルの負極材料層と集電体を長さ方向に沿って25mm引き剥がし、該試験サンプルをINSTRON 336試験機に固定し、剥離面と試験機の力線を一致させ(即ち、試験機が剥離する時の運動方向と平行である)、試験機に30mm/minの速度で試験サンプルを連続的に剥離させて、剥離力曲線を得る。約30sの範囲内のプラトー領域(即ち、剥離力曲線において単調増加しない領域)の平均値を剥離力F0とすると、試験サンプルにおける負極材料層と集電体との間の接着力F=F0/試験サンプルの幅(Fの計量単位:N/m)である。
【0183】
2、膨潤率の測定
各実施例及び比較例の負極シートを、長さ100mm、幅100mmの試験サンプルに切断し、マイクロメータで極性シートの初期厚さd0を測定する。次に25℃の条件下で、極性シートをジメチルカーボネート(DMC)に1h浸漬し、取り出してから静置して、極性シートが乾燥するまでDMCを自然に揮発させ、マイクロメータで極性シートが膨潤した後の厚さd1を測定し、膨潤率p=(d1-d0)/d0×100%を計算する。
【0184】
3、極性シートのイオン伝導率の測定
各実施例及び比較例の負極シートを対称セルに組み立てて、25℃の条件下で、VMP3電気化学ワークステーションを使用して交流抵抗試験を行う。試験パラメータ:周波数点数:73、単一周波数点試験数:2、試験周波数範囲:500kHz~30MHz。測定されたデータに対してフィッティング処理、計算を行って極性シートのイオン導電率ρlを得る。
【0185】
[電池性能試験]
1、電池サイクル容量維持率の試験
25℃で、試験対象のリチウムイオン電池を1/3Cの定電流で4.3Vまで充電し、さらに4.3Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min放置し、さらに1/3Cで2.8Vになるまで放電し、得られた容量を初期容量C0とする。上記と同じ電池に対して上記ステップを繰り返し、且つ同時にnサイクル後の電池の放電容量Cnを記録し、毎回のサイクル後の電池容量維持率Pn=Cn/C0×100%である。これにより、実施例及び比較例の1000サイクル後の放電容量維持率をそれぞれ測定する。
【0186】
2、4C容量維持率
25℃で、電池を1/3Cの定電流で4.3Vまで充電し、次に4.3Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min放置し、次に1/3Cで2.8Vになるまで放電し、得られた容量を初期容量C0とする。次に電池を1/3Cの定電流で4.3Vまで充電し、次に4.3Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min放置し、4Cで2.8Vになるまで放電し、得られた容量をC1とすると、4C放電容量維持率Pn=C1/C0×100%である。
【0187】
3、電池の直流抵抗(DCR)試験
電池の直流インピーダンス試験の過程は以下の通りである。25℃で、電池を1/3Cの定電流で4.3Vまで充電し、さらに4.3Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、5min放置した後、電圧V1を記録する。次に1/3Cで30s放電し、電圧V2を記録すると、電池の内部抵抗DCR=(V2-V1)/(1/3C)である。
【0188】
[試験結果]
1、赤外スペクトルの試験結果
実施例1で製造されたバインダーに対して赤外スペクトル試験を行い、図1に示す赤外スペクトル図を得た。2883cm-1はC-Hの伸縮振動ピークであり、1405cm-1はCHの屈曲振動であり、1186cm-1、879cm-1はC-Cの骨格振動であり、615cm-1、530cm-1はCFの振動ピークであり、1592cm-1及び1406cm-1はそれぞれCOO-の対称伸縮振動特徴ピーク及び非対称伸縮振動特徴ピークであり、構造モノマー(I)の合成が成功したことを証明している。また、3200cm-1のピークはO-Hの伸縮振動ピークであり、このタイプのピークは分子内、分子間及び自由に移動するヒドロキシ基に対応する。2875cm-1はC-Hの伸縮振動ピークであり、1593cm-1及び1417cm-1はそれぞれCOO-の対称伸縮振動特徴ピーク及び非対称伸縮振動特徴ピークである。1055cm-1はグリコシド結合のC-O-Cの伸縮振動ピークであり、構造モノマー(II)のバインダー構造への重合が成功したことを証明している。
【0189】
2、極性シート及び二次電池の性能試験結果
極性シート及び二次電池の性能試験結果を下記表3に示す。
【0190】
【表3-1】
【表3-2】
【0191】
上記表から分かるように、従来の水系バインダーを使用する比較例C1に比べて、本願のバインダー化合物、極性シート及び二次電池は以下のうちの少なくとも1つを改善する。
【0192】
接着性において、本願の各実施例のバインダー化合物の接着力はいずれも向上する。
【0193】
極性シートの性能において、本願の極性シートの膨潤率は顕著に向上する。既知の通り、極性シートのイオン伝導率は膨潤率と正の相関があり、膨潤率が高いほど極性シートがより多くの電解液を吸収でき、イオン伝導率がより高いことを示す。それに対応して、本願の極性シートのイオン導電率も顕著に向上する。
【0194】
電池性能において、本願の負極シートを含むセルは、内部抵抗が大幅に低下し、4C容量維持率及びサイクル容量維持率のうち少なくとも一方が向上している。
【0195】
なお、本願は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示に過ぎず、本願の技術的解決手段の範囲内で、技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を発揮する実施形態はいずれも本願の技術的範囲に包含される。また、本願の主旨を逸脱しない範囲で、当業者が想到できる各種の変更を実施形態に追加したものや、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も本願の範囲内に包含される。
【符号の説明】
【0196】
1 電池パック
2 上筐体
3 下筐体
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ハウジング
52 電極アセンブリ
53 キャップアセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】