(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】新規再構成高密度リポタンパク質ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 47/54 20170101AFI20240115BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240115BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240115BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240115BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240115BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240115BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240115BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240115BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240115BHJP
C07K 14/775 20060101ALN20240115BHJP
【FI】
A61K47/54
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/14
A61P21/00
A61P25/08
A61P9/10
A61K38/17
C07K14/775
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518282
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 KR2022019747
(87)【国際公開番号】W WO2023106807
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0173303
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523098924
【氏名又は名称】メプスゲン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】ロ フン スク
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076CC01
4C076CC29
4C076DD63
4C076EE59
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA18
4C084DC50
4C084MA41
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA061
4C084ZA062
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZA221
4C084ZA222
4C084ZA401
4C084ZA402
4C084ZA941
4C084ZA942
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045EA21
(57)【要約】
本開示は、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)ナノ粒子、及びそれを含む神経変性疾患の予防または治療用組成物に関する。さらに詳しくは、本開示は、リン脂質及びアポリポタンパク質を混合することによって製造されるrHDLナノ粒子に関し、本開示のrHDLナノ粒子は、アミロイドベータ(Aβ)凝集阻害効果を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質と、アポリポタンパク質(Apolipoprotein)Eとを含む、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項2】
リン脂質とアポリポタンパク質Eとを0.25:1~2.5:1の重量比で含む混合物から生成されることを特徴とする、請求項1に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項3】
リン脂質とアポリポタンパク質Eとを0.5:1~1.5:1の重量比で含む混合物から生成されることを特徴とする、請求項1に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項4】
前記再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のリン脂質とアポリポタンパク質Eとの重量比が0.2:1~2.5:1であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項5】
前記再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のリン脂質とアポリポタンパク質Eとの重量比が0.2:1~1.5:1であることを特徴とする、請求項4に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項6】
前記再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のリン脂質とアポリポタンパク質Eとの重量比が0.2:1~0.5:1であることを特徴とする、請求項5に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項7】
前記再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の密度が0.1~2.0g/mLであることを特徴とする、請求項1に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項8】
前記再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の密度が0.2~1.5g/mLであることを特徴とする、請求項7に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項9】
前記再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の密度が0.3~1.2g/mLであることを特徴とする、請求項8に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項10】
アポリポタンパク質E2、E3、またはE2及びE3の両方を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項11】
アポリポタンパク質A1をさらに含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項12】
アポリポタンパク質E2、E3またはA1以外のアポリポタンパク質を含まないことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項13】
アポリポタンパク質E4を含まないことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項14】
前記リン脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DAPC)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DBPC)、1,2-ジエイコサノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DEPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、リゾホスファチジルエタノールアミン、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキシアミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド)(VL-5)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン 4-トリフルオロ酢酸(DOGS)、3β-[N-(N′,N′-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、1,2-ジオレイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、(1,2-ジオレイルオキシプロピル)-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、1,2-ジミリスチルオキシ-プロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキシアミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-bis(ドデシルオキシ)-1-プロパンアンモニウムブロミド(GAP-DLRIE)、N-t-ブチル-N′-テトラデシル-3-テトラデシルアミノプロピオンアミジン(diC14-amidine)、エチルホスホコリン(Ethyl PC)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N4-コレステリル-スペルミン(GL67)、1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、及びD-Lin-MC3-DMA(MC3、DLin-MC3-DMA)、DLin-KC2-DMA、及びDLin-DMAからなる群から少なくとも1つ選択されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の再構成高密度リポタンパク質及び薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項16】
アポリポタンパク質E2を含む再構成高密度リポタンパク質の第1のセット、及びアポリポタンパク質E3を含む再構成高密度リポタンパク質の第2のセットを含む、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
アポリポタンパク質E2及びアポリポタンパク質E3の両方が包含された再構成高密度リポタンパク質を含む、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか一項に記載の再構成高密度リポタンパク質を含む、神経変性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項19】
前記再構成高密度リポタンパク質が、アミロイドベータ(Aβ)の凝集を阻害し、脳組織の恒常性を維持できることを特徴とする、請求項18に記載の神経変性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項20】
前記神経変性疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ルーゲーリッグ病、脊髄小脳変性症、脊髄小脳失調症、プリオン病、認知機能障害、老年性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、アルコール性認知症、初老期認知症、マシャド・ジョセフ病、筋異緊張症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、フリードライヒ運動失調症、側頭葉てんかん、及び脳卒中からなる群から選択されることを特徴とする、請求項18または19に記載の神経変性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項21】
以下のステップを備える、リン脂質と、アポリポタンパク質Eとを含む、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
第1のアポリポタンパク質を含む第1の親水性溶液を、3つの入口及び1つの出口を有するマイクロ流体装置の第1の入口に注入するステップと、
リン脂質溶液を、マイクロ流体装置の第2の入口に注入するステップと、
第2のアポリポタンパク質を含む第2の親水性溶液を、マイクロ流体装置の第3の入口に注入するステップ。
【請求項22】
マイクロ流体装置が、マイクロ流体装置の中央に位置する第2の入口と、両側に位置する第1及び第3の入口とを含むことを特徴とする、請求項21に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項23】
第1のアポリポタンパク質及び第2のアポリポタンパク質の両方がアポリポタンパク質E2であることを特徴とする、請求項21または22に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項24】
第1のアポリポタンパク質及び第2のアポリポタンパク質の両方がアポリポタンパク質E3であることを特徴とする、請求項21または22に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項25】
第1のアポリポタンパク質がアポリポタンパク質E2であり、第2のアポリポタンパク質がアポリポタンパク質E3であることを特徴とする、請求項21または22に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項26】
第1のアポリポタンパク質がアポリポタンパク質E2またはE3であり、第2のアポリポタンパク質がアポリポタンパク質A1であることを特徴とする、請求項21または22に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項27】
第1の親水性溶液、リン脂質溶液、及び第2の親水性溶液が同時に注入されることを特徴とする、請求項21~26のいずれか一項に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項28】
再構成高密度リポタンパク質(rHDL)を出口から収集するステップをさらに備えることを特徴とする、請求項21~27のいずれか一項に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項29】
マイクロ流体装置の入口に注入されるリン脂質とアポリポタンパク質Eの重量比が0.25:1~2.5:1であることを特徴とする、請求項21~28のいずれか一項に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項30】
マイクロ流体装置の入口に注入されるリン脂質とアポリポタンパク質Eの重量比が0.5:1~1.5:1であることを特徴とする、請求項29に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項31】
請求項21~30のいずれか一項に記載の製造方法により製造された再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、再構成高密度リポタンパク質(rHDL;reconstituted high density lipoprotein)ナノ粒子、及びそれを含む神経変性疾患の予防または治療用組成物に関する。さらに詳しくは、本開示は、リン脂質(phospholipid)及びアポリポタンパク質(apolipoprotein)Eを主成分として含むrHDLナノ粒子に関し、本開示のrHDLナノ粒子は、優れたアミロイドベータ(Aβ)凝集阻害効果を有する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者人口の急増に伴い、様々な神経変性疾患(Neurodegenerative Disease)を患っている患者が増えており、それに対する治療や予防への関心が高まっている。神経変性疾患は、神経細胞の機能の低下や喪失による運動障害、記憶障害、認知障害など、様々な症状を引き起こす質病である。神経系疾患のみならず、正常な成人の脳でも毎日多数の神経細胞が死んでおり、加齢に伴って死ぬ神経細胞の数は指数関数的に増加する。
【0003】
神経変性疾患に属する主な質病としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ルーゲーリック病、ハンチントン病などがあり、現在までその疾患の病因が十分に解明されていない。アルツハイマー病の治療薬としては、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤またはNMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体拮抗薬などが用いられ、パーキンソン病の治療薬としては、L-ドーパ(dopa)、ドーパミン作動薬、MAO-B阻害剤、またはCOMT阻害剤などが用いられており、ハンチントン病の治療薬としては、ドーパミンD2受容体などが挙げられるが、前述の治療薬は、根本的な治療法ではなく、症状の発症を遅らせたり、症状を緩和する方法に過ぎないことが知られている。それによって、これらの疾患を根本的に予防または治療することができる新薬が引き続き求められている。
【0004】
特に、アルツハイマー病(Alzheimers disease;AD)は、認知症の最も一般的な形態であり、代表的な神経変性疾患である。80歳以上の高齢者の20%以上がアルツハイマー病の影響を受けているものと推定されており、高齢化社会の進展に伴いその数は急速に増加している。アルツハイマー病は、アミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein;APP)がβ-セクレターゼ及びγ-セクレターゼによって連続切断されることで産生されるアミロイドベータ(Aβ)が脳組織に沈着する老人斑(senile plaque)と、微小管関連タンパク質であるタウ(Tau)タンパク質の過剰リン酸化によって引き起こされる神経原線維濃縮体(neurofibrillary tangle;NTF)が主な病理学的特徴である。特に、タンパク質の一種であるAβが脳に蓄積すると、血液脳関門(BBB;Blood-brain-barrier)を損傷させ、脳血管から神経細胞への必須栄養素の送達が遅くなるばかりか、神経の持続的な炎症を引き起こすことでミクログリア細胞などの免疫細胞の活動を妨害し、最終的に神経細胞が信号を送受信する領域であるシナプスの役割を果たせなくなる。そのような一連の病態生理学的要因が最終的に人間の記憶、判断力、言語能力などの知的な機能と日常生活機能を徐々に低下させ、パーソナリティ行動障害を引き起こすことが知られている。よって、脳内における過剰なAβの産生を阻害したり、産生されたAβの凝集を防いだり、あるいは凝集したAβ構造体を効果的に減少させることは、アルツハイマー病の予防と治療において重要な部分であると考えられている。
【0005】
一方、高密度リポタンパク質(HDL)は、アポリポタンパク質ベースに形成される体内の主要なコレステロールキャリアであり、高密度(>1.063g/mL)及び小さいサイズ(ストローク直径=5~17nm)が特徴である。成熟したHDL粒子は、コレステロール、リン脂質、及び様々なアポリポタンパク質などを含む球状の形態で存在する。極性脂質、リン脂質、遊離コレステロールは、これらの粒子の外層に存在し、より疎水性の脂質、例えば、エステル化コレステロール及びトリグリセリドは、粒子の中心に存在する。肝臓や腸内で新たに形成された、または初期のHDL粒子は脂質が乏しく、円盤(discoidal)の形態で存在する。タンパク質成分は外層に含まれ、主要なタンパク質成分であるアポリポタンパク質としては、体内の主要タンパク質として知られるアポリポタンパク質A1(Apo A1)を始めとし、その機能に応じて、Apo A2、Apo A4、Apo C3、Apo D、Apo E、Apo J、Apo Mなどが含まれることが知られている。
【0006】
Apo A1は、肝臓や腸で合成され、血液中のHDLの生理作用をコントロールし、周囲の組織からコレステロールを除去してから、それをコレステロール逆輸送(RCT;reverse cholesterol transport)機構によって、再び肝臓または他のリポタンパク質に運ぶ役割を果たす。そのようなApo A1に基づく血液中のHDLの生理機能により、動脈硬化を引き起こす多くの危険因子を予防及び治療できることが知られており、そのことから、再構成高密度リポタンパク質の研究は、何十年にわたりApo A1に基づいて行われてきた。
【0007】
それに対して、Apo Eは、肝臓と神経膠細胞(neuroglia)で合成され、脳内のコレステロール及び脂質の恒常性をコントロールする役割を担っていることが知られている。ヒトの場合、アイソフォーム(isoform)タンパク質の種類としては、Apo E2、Apo E3、Apo E4が挙げられ、これらの組み合わせが老化する脳の恒常性に影響を与えることで、アルツハイマー病の発生率が変化することが知られている。主にApo E4がアルツハイマー病を引き起こすことが報告されており、それはアミロイドベータ(Aβ)の凝集に関与し、最終的にBBBを損傷することが知られている。一方、Apo E2とApo E3は保護的な役割を果たすことが報告されている。Apo E2、Apo E3、Apo E4は、2つのアミノ酸の突然変異によって形成され、これらの遺伝子変異により脂質化パターン及び受容体結合親和性が変化することが知られている。Apo Eが主に結合するLDLR(Low-Density Lipoprotein Receptor)受容体グループは、BBBに多く分布しており、Apo Eの脳への出入りに大きな影響を与えられる。
【0008】
認知障害やアルツハイマー病の患者は、正常な人に比べてHDLレベルが著しく低いことが知られており、そのことから、HDLを用いてアルツハイマー病をはじめとする認知障害を予防しようとする試みがなされていた。しかしながら、HDLは体内で様々なアポリポタンパク質と動的に反応して互いに共存し、またヒト血漿から分離されたHDLの多様性が分析的なメカニズムの研究を困難にしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、治療効果を有し、生体内で毒性を示さないrHDLを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、rHDLを含む、神経変性疾患の予防または治療用組成物を提供することを目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、神経変性疾患を患っている患者にrHDLを投与することを含む、神経変性疾患の治療方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示は、リン脂質と、アポリポタンパク質(Apolipoprotein)E(例えば、Apo E2及び/またはApo E3)のうち少なくとも1つとを含む、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)を提供する。
【0013】
本開示は、リン脂質と、アポリポタンパク質Eとを含み、前記リン脂質とアポリポタンパク質Eとを0.25:1~2.5:1、好ましくは0.5:1~1.5:1の重量比で含む混合物から生成されることを特徴とする、再構成高密度リポタンパク質を提供する。
【0014】
一実施形態において、前記再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のリン脂質とアポリポタンパク質Eとの重量比は、0.2:1~2.5:1、好ましくは0.2:1~2.5:1であり、より好ましくは0.2:1~0.5:1である。
【0015】
一実施形態において、前記再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の密度は、0.1~2.0g/mL、好ましくは0.2~1.5g/mL、より好ましくは0.3~1.2g/mLである。
【0016】
一実施形態において、前記アポリポタンパク質Eは、アポリポタンパク質E2、E3、またはE2及びE3である。
【0017】
一実施形態において、前記アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質A1をさらに含む。
【0018】
本開示は、前記再構成高密度リポタンパク質を含む、神経変性疾患の予防または治療用組成物を提供する。一実施形態において、前記再構成高密度リポタンパク質は、アミロイドベータ(Aβ)の凝集を阻害し、脳組織の恒常性を維持できるものである。
【0019】
本開示は、前記再構成高密度リポタンパク質を神経変性疾患の患者に投与することを含む、神経変性疾患の治療方法を提供する。
【0020】
本開示は、リン脂質溶液を、3つの入口(inlet)及び1つの出口(outlet)を有するマイクロ流体装置の中央に位置する第2の入口に注入し、アポリポタンパク質溶液を、両側に位置する第1の入口及び第3の入口に注入することで、リン脂質と、アポリポタンパク質(Apolipoprotein)Eとの少なくとも1つを含む、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法を提供する。一実施形態において、前記マイクロ流体装置は、マイクロピラーを含んでもよい。
【0021】
一実施形態において、前記リン脂質とアポリポタンパク質Eとの合成配合重量比は、0.25:1~2.5:1、好ましくは0.5:1~1.5:1である。
【0022】
本開示は、前記製造方法によって製造された再構成高密度リポタンパク質(rHDL)を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本開示のrHDLナノ粒子及びrHDLナノ粒子を含む組成物は、アミロイドベータ(A)の凝集を阻害する効果を有する。よって、本開示のrHDLナノ粒子は、神経変性疾患の予防または治療に用いることができる。
【0024】
さらに、本開示のrHDLは、マイクロ流体装置を用いて製造することができるので、単一ステップ(single-step)による連続(continuous)合成によって一貫した特性(no batch-to-batch variability)を有するrHDLの大量生産が可能である。従来のrHDLと比較して界面活性剤などの他の追加成分を含まないため、生体内で毒性を示すことがない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】rHDLを製造するためのマイクロ流体装置に対する概略図であり、親水性溶液に溶解したアポリポタンパク質と親油性溶液に溶解したリン脂質がマイクロピラーによって引き起こされる、継続的に伝播するマイクロボルテックスを通過しながら強く混合される効果を利用している。
【
図2】
図1に示したrHDLナノ粒子を製造するためのマイクロ流体装置において、マイクロピラーの有無による生産収率及び粒子サイズの均一性を示すグラフであり、連続的に伝搬するマイクロボルテックスがナノ粒子の形成に与える影響を示す。
【
図3】
図1に示したrHDLナノ粒子を製造するためのマイクロ流体装置において、マイクロピラーの有無による生産収率及び粒子サイズの均一性を示すグラフであり、連続的に伝搬するマイクロボルテックスがナノ粒子の形成に与える影響を示す。
【
図4】リン脂質(DMPC)及びアポリポタンパク質E3の合成配合比率によるナノ粒子のサイズと分布、並びにそれらによる生成量(体積)を示す図である。
【
図5】リン脂質(DMPC)及びアポリポタンパク質E3の合成配合比率によるナノ粒子のサイズと分布、並びにそれらによる生成量(体積)を示す図である。
【
図6】リン脂質(DPPC)及びアポリポタンパク質E3の合成配合比率によるナノ粒子のサイズと分布、及びそれらによる生成量(体積)を示す図である。
【
図7】リン脂質(DPPC)及びアポリポタンパク質E3の合成配合比率によるナノ粒子のサイズと分布、及びそれらによる生成量(体積)を示す図である。
【
図8】リン脂質(POPC)及びアポリポタンパク質E3の合成配合比率によるナノ粒子のサイズと分布、及びそれらによる生成量(体積)を示す図である。
【
図9】リン脂質(POPC)及びアポリポタンパク質E3の合成配合比率によるナノ粒子のサイズと分布、及びそれらによる生成量(体積)を示す図である。
【
図10】アポリポタンパク質E2及びE3のサイズ分布と、それらを用いて形成されたrHDLナノ粒子のサイズ分布を比較するためのDLS測定結果図である。アポリポタンパク質E2とE3はサイズに差がなく、それによって形成されたrHDLナノ粒子は、リン脂質との結合により5~10nm程度の大きな粒子を形成し、それらもまたアポリポタンパク質による差がない。
【
図11】リン脂質とアポリポタンパク質の合成配合重量比0.75:1で製造したアポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子のTEM写真である。
【
図12】リン脂質とアポリポタンパク質の合成配合重量比1.25:1で製造したアポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子のTEM写真である。
【
図13】リン脂質とアポリポタンパク質の合成配合重量比2.5:1で製造したアポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子のTEM写真である。
【
図14】アポリポタンパク質E2及びE3を同時に含むハイブリッドrHDLナノ粒子を製造したとき、均一な分布を確認するDLS測定結果図である。
【
図15】アポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子の分子形態の構造解析に応じて、リン脂質を比較的少量及び多量含めることを示す結果図である。
【
図16】リン脂質を比較的少量及び多量含む場合において、合成後のアポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子のサイズに対する合成後の結果図である。
【
図17】アポリポタンパク質E2を含むrHDLナノ粒子の濃度ごとのAβ凝集阻害効果を経時的に示すグラフである。
【
図18】アポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子の濃度ごとのAβ凝集阻害効果を経時的に示すグラフである。
【
図19】アポリポタンパク質E2及びE3を同時に含むハイブリッドrHDLナノ粒子の濃度ごとのAβ凝集阻害効果を経時的に示すグラフである。
【
図20】rHDLナノ粒子に含まれるアポリポタンパク質の種類によるrHDLナノ粒子の濃度ごとのAβ凝集阻害効果を経時的に示すグラフである。
【
図21】純粋なアポリポタンパク質E3とそれを用いて形成されたrHDLナノ粒子との間のAβ凝集阻害効果を経時的に比較するグラフである。
【
図22】アポリポタンパク質E2またはE3を含むrHDLナノ粒子、並びにアポリポタンパク質E2及びE3を含むハイブリッドrHDLナノ粒子に対して、脳微小血管内皮細胞(brain microvascular endothelial cell;BMEC)を介した脳組織への経細胞輸送(transcytosis)を表すために、細胞内への吸収量を実験した結果を示すグラフである。
【
図23】アポリポタンパク質E2またはE3を含むrHDLナノ粒子、並びにアポリポタンパク質E2及びE3を含むハイブリッドrHDLナノ粒子に対して、血液脳関門の星状膠細胞(astrocytes)を介した輸送を表すために、細胞内への吸収量を実験した結果を示すグラフである。
【
図24】アルツハイマー病動物モデル(5xFAD)に生理食塩水(Saline)を3ヶ月間投与し、その後アミロイドの脳組織分布を撮影した結果図である。
【
図25】アルツハイマー病モデル動物(5xFAD)にアポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子を3ヶ月投与し、その後アミロイドの脳組織分布を撮影した結果図である。
【
図26】正常マウス(wild type;WT)及びアルツハイマー病モデル動物(5xFAD)にアポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子を3ヶ月間投与し、その後CSF中のアミロイド濃度を示す結果図である。
【
図27】正常マウス(wild type;WT)及びアルツハイマー病モデル動物(5xFAD)にアポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子を3ヶ月間投与し、その後血漿中のアミロイド濃度を示す結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本開示が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本開示の実施形態及び実施例について詳しく説明する。しかしながら、本開示は、様々な形態で実施され得るので、以下に説明する実施形態及び実施例に限定されるものではない。
【0027】
本願明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは特に断らない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0028】
「アポリポタンパク質E」なる用語は、APOE遺伝子またはその機能的な変異体によってコードされる哺乳動物タンパク質を意味する。好ましい実施形態において、アポリポタンパク質Eは、19番染色体上のヒトAPOE遺伝子によってコードされるヒトタンパク質である。アポリポタンパク質Eは、APOE遺伝子産物のアイソフォームのいずれか1つ、例えば、アポリポタンパク質E2(「APOE2」)、アポリポタンパク質E3(「APOE3」)及びアポリポタンパク質E4(APOE4)であってもよい。APOEは、3つの主な対立遺伝子(イプシロン2、イプシロン3、及びイプシロン4)を有する多形体である。任意の対立遺伝子は、本発明の様々な実施形態で用いることができる。その「機能的な変異体」とは、APOE遺伝子産物と同じであるか、あるいは類似の生物学的機能を維持するAPOE遺伝子によってコードされる哺乳動物タンパク質の変異体を意味する。一部の場合、機能的な変異体は、ヒトAPOE遺伝子によってコードされるタンパク質と比較して、アミノ酸の挿入、欠失、及び/または置換を含む。一部の場合、機能的な変異体は、ヒトAPOE遺伝子によってコードされるタンパク質のフラグメントである。
【0029】
一部の実施形態において、アポリポタンパク質E2は、GenBankに受託番号ARQ79459で開示されているタンパク質またはそれと少なくとも95%の配列同一性、好ましくは少なくとも98%または99%の配列同一性である。一部の実施形態において、アポリポタンパク質E3は、GenBankに受託番号ARQ79461.1で開示されているタンパク質またはそれと少なくとも95%の配列同一性、好ましくは少なくとも98%または99%の配列同一性である。
【0030】
一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のアポリポタンパク質Eは、遺伝子工学によって生成された組換えタンパク質、または化学合成によって生成された合成タンパク質である。
【0031】
「アポリポタンパク質A1」なる用語は、APOA1遺伝子またはその機能的な変異体によってコードされる哺乳動物タンパク質を意味する。好ましい実施形態において、アポリポタンパク質A1は、11番染色体上のヒトAPOA1遺伝子によってコードされるヒトタンパク質である。その「機能的な変異体」とは、APOA1遺伝子産物と同じであるか、あるいは類似の生物学的機能を維持するAPOA1遺伝子によってコードされる哺乳動物タンパク質の変異体を意味する。一部の場合、機能的な変異体は、ヒトAPOA1遺伝子によってコードされるタンパク質と比較して、アミノ酸の挿入、欠失、及び/または置換を含む。一部の場合、機能的な変異体は、ヒトAPOA1遺伝子によってコードされるタンパク質のフラグメントである。
【0032】
一部の実施形態において、アポリポタンパク質A1は、GenBankに受託番号AAS68227.1で開示されているタンパク質またはそれと少なくとも95%の配列同一性、好ましくは少なくとも98%または99%の配列同一性である。
【0033】
一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のアポリポタンパク質A1は、遺伝子工学によって生成された組換えタンパク質、または化学合成によって生成された合成タンパク質である。
【0034】
本開示は、リン脂質(phospholipid)と、アポリポタンパク質(Apolipoprotein)Eのうち少なくとも1つとを含む、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)を提供する。
【0035】
本願に用いられる「再構成高密度リポタンパク質(rHDL;reconstituted high density lipoprotein)」なる用語は、リン脂質及びアポリポタンパク質を含む非自然発生HDL様粒子を意味する。
【0036】
一実施形態において、アポリポタンパク質Eは、アポリポタンパク質E2またはE3である。別の実施形態において、前記アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質E2及びE3を同時に含み、さらにアポリポタンパク質A1を含んでもよい。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)は、アポリポタンパク質E2またはE3、及びA1を含む。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)は、アポリポタンパク質E2、E3及びA1を含む。
【0037】
一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)は、アポリポタンパク質E2及び/またはE3を含み、他のアポリポタンパク質を含まない。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)は、アポリポタンパク質A1、E2及び/またはE3を含み、他のアポリポタンパク質を含まない。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)は、アポリポタンパク質E4を含まない。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)は、エステル型コレステロールまたはトリグリセリドを含まない。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)は、アポリポタンパク質A1、A2、A4、C3、D、JまたはMを含まない。
【0038】
本願に用いられる「リン脂質」なる用語は、具体的に、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DAPC)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DBPC)、1,2-ジエイコサノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DEPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、リゾホスファチジルエタノールアミン、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキシアミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド)(VL-5)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン 4-トリフルオロ酢酸(DOGS)、3β-[N-(N′,N′-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、1,2-ジオレイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、(1,2-ジオレイルオキシプロピル)-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、1,2-ジミリスチルオキシ-プロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキシアミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-bis(ドデシルオキシ)-1-プロパンアンモニウムブロミド(GAP-DLRIE)、N-t-ブチル-N′-テトラデシル-3-テトラデシルアミノプロピオンアミジン(diC14-amidine)、エチルホスホコリン(Ethyl PC)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N4-コレステリル-スペルミン(GL67)、1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、またはD-Lin-MC3-DMA(MC3、DLin-MC3-DMA)、DLin-KC2-DMA、DLin-DMAからなる群から少なくとも1つ選択されてもよいが、それらに限定されるものではない。
【0039】
一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DAPC)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DBPC)、1,2-ジエイコサノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DEPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、リゾホスファチジルエタノールアミン、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキシアミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド)(VL-5)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン 4-トリフルオロ酢酸(DOGS)、3β-[N-(N′,N′-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、1,2-ジオレイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、(1,2-ジオレイルオキシプロピル)-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、1,2-ジミリスチルオキシ-プロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキシアミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-bis(ドデシルオキシ)-1-プロパンアンモニウムブロミド(GAP-DLRIE)、N-t-ブチル-N′-テトラデシル-3-テトラデシルアミノプロピオンアミジン(diC14-amidine)、エチルホスホコリン(Ethyl PC)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N4-コレステリル-スペルミン(GL67)、1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、またはD-Lin-MC3-DMA(MC3、DLin-MC3-DMA)、DLin-KC2-DMA、及びDLin-DMAから選択された1、2、3または4つのリン脂質を含む。
【0040】
一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質はDMPCを含む。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質はDPPCを含む。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質はPOPCを含む。
【0041】
一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質は、DMPCを含み、他のリン脂質を含まない。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質は、DPPCを含み、他のリン脂質を含まない。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質は、POPCを含み、他のリン脂質を含まない。
【0042】
本開示は、リン脂質と、アポリポタンパク質E(Apolipoprotein E)とを含むことを特徴とする、再構成高密度リポタンパク質を提供する。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質のための合成配合は、リン脂質とアポリポタンパク質Eを0.25:1~2.5:1、好ましくは0.5:1~1.5:1の重量比で有する。一実施形態において、前記アポリポタンパク質Eは、アポリポタンパク質E2、E3、またはE2及びE3である。
【0043】
一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)は、リン脂質及びアポリポタンパク質Eを0.25:1~2.5:1の重量比で含む混合物から生成された。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)は、リン脂質及びアポリポタンパク質Eを0.5:1~1.5:1の重量比で含む混合物から生成された。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)は、リン脂質及びアポリポタンパク質Eを0.1:1~5:1の重量比で含む混合物から生成された。
【0044】
本開示は、リン脂質と、アポリポタンパク質(Apolipoprotein)Eの少なくとも1つを含む再構成高密度リポタンパク質を提供する。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のリン脂質とアポリポタンパク質Eとの重量比は、0.1:1~5:1である。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のリン脂質とアポリポタンパク質Eとの重量比は、0.1:1~3:1である。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のリン脂質とアポリポタンパク質Eとの重量比は、0.2:1~1.5:1である。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のリン脂質とアポリポタンパク質Eとの重量比は、0.2:1~0.5:1である。
【0045】
一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のリン脂質、アポリポタンパク質E2及びアポリポタンパク質E3の重量比は、1:5:5~30:5:5である。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のリン脂質、アポリポタンパク質E2及びアポリポタンパク質E3の重量比は、2:5:5~15:5:5である。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のリン脂質、アポリポタンパク質E2及びアポリポタンパク質E3の重量比は、2:5:5~5:5:5である。
【0046】
一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のアポリポタンパク質E2及びアポリポタンパク質E3の重量比は、1:10~10:1である。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のアポリポタンパク質E2及びアポリポタンパク質E3の重量比は、1:5~5:1である。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のアポリポタンパク質E2及びアポリポタンパク質E3の重量比は、1:2~2:1である。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のアポリポタンパク質E2及びアポリポタンパク質E3の重量比は、1:1である。
【0047】
一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の密度は、0.1~2.0g/mLである。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の密度は、0.2~1.5g/mLである。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の密度は、0.3~1.2g/mLである。
【0048】
一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)は、50nm未満、25nm未満、または20nm未満の長軸長を有するナノ粒子である。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)は、1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、または10nm超えの長軸長を有するナノ粒子である。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)は、1~100nm、5~50nm、5~25nm、または5~20nmの長軸長を有するナノ粒子である。
【0049】
一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)は、5~200kDa、5~150kDa、5~100kDa、または5~60kDaのナノ粒子である。
【0050】
一態様において、本開示は、本願に記載の再構成高密度リポタンパク質及び薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0051】
一部の実施形態において、薬学的組成物は、アポリポタンパク質E2を含む再構成高密度リポタンパク質の第1のセット、及びアポリポタンパク質E3を含む再構成高密度リポタンパク質の第2のセットを含む。一部の実施形態において、薬学的組成物は、アポリポタンパク質E2及びアポリポタンパク質E3の両方が包含された再構成高密度リポタンパク質を含む。
【0052】
一部の実施形態において、薬学的組成物は、アポリポタンパク質E2を含む再構成高密度リポタンパク質の第1のセット、アポリポタンパク質E3を含む再構成高密度リポタンパク質の第2のセット、及びアポリポタンパク質A1を含む再構成高密度リポタンパク質の第3のセットを含む。一部の実施形態において、薬学的組成物は、アポリポタンパク質E2、E3及びA1を含む再構成高密度リポタンパク質を含む。
【0053】
一部の実施形態において、薬学的組成物中の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の少なくとも80%は、10~20nmの長軸長を有するナノ粒子である。一部の実施形態において、薬学的組成物中の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の少なくとも70%は、10~20nmの長軸長を有するナノ粒子である。一部の実施形態において、薬学的組成物中の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の少なくとも60%は、10~20nmの長軸長を有するナノ粒子である。一部の実施形態において、薬学的組成物中の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の少なくとも50%は、10~20nmの長軸長を有するナノ粒子である。一部の実施形態において、薬学的組成物中の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の少なくとも40%は、10~20nmの長軸長を有するナノ粒子である。
【0054】
一部の実施形態において、薬学的組成物中の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の少なくとも80%は、5~50nmの長軸長を有するナノ粒子である。一部の実施形態において、薬学的組成物中の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の少なくとも70%は、5~50nmの長軸長を有するナノ粒子である。一部の実施形態において、薬学的組成物中の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の少なくとも60%は、5~50nmの長軸長を有するナノ粒子である。一部の実施形態において、薬学的組成物中の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の少なくとも50%は、5~50nmの長軸長を有するナノ粒子である。一部の実施形態において、薬学的組成物中の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の少なくとも40%は、5~50nmの長軸長を有するナノ粒子である。
【0055】
別の様態において、本開示は、前記再構成高密度リポタンパク質を含む、神経変性疾患の予防または治療用組成物を提供する。一実施形態において、再構成高密度リポタンパク質は、アミロイドベータ(Aβ)の凝集を阻害してもよい。一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質は、脳組織の恒常性を維持できる。
【0056】
本願に用いられる「予防」なる用語は、組成物の投与により疾患の発症を抑制または遅延させるあらゆる行為を意味し、「治療」なる用語は、組成物の投与により疾患が疑われるか、あるいは罹患している個体の症状を改善または有益に変化するあらゆる行為を意味する。
【0057】
一実施形態において、神経変性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ルーゲーリッグ病、脊髄小脳変性症、脊髄小脳失調症、プリオン病、認知機能障害、老年性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、アルコール性認知症、初老期認知症、マシャド・ジョセフ病、筋異緊張症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、フリードライヒ運動失調症、側頭葉てんかん、または脳卒中であるが、それらに限定されるものではない。
【0058】
本開示は、リン脂質と、アポリポタンパク質(Apolipoprotein)Eのうち少なくとも1つとを含む、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法を提供する。その方法は、アポリポタンパク質Eを含む親水性溶液をマイクロ流体装置の第1の入口に注入するステップと、リン脂質溶液をマイクロ流体装置の第2の入口に注入するステップと、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)をマイクロ流体装置の出口から収集するステップとを備えてもよい。
【0059】
本開示はまた、第1のアポリポタンパク質を含む第1の親水性溶液を、3つの入口及び1つの出口を有するマイクロ流体装置の第1の入口に注入するステップと、リン脂質溶液を、マイクロ流体装置の第2の入口に注入するステップと、第2のアポリポタンパク質を含む第2の親水性溶液を、マイクロ流体装置の第3の入口に注入するステップとを備える、リン脂質と、アポリポタンパク質とのうち少なくとも1つを含む、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法を提供する。
【0060】
一部の実施形態において、マイクロ流体装置は、マイクロ流体装置の中央に位置する第2の入口と、両側のうち1つに位置する第1及び第3の入口とを含む。一部の実施形態において、マイクロ流体装置は、リン脂質溶液及び親水性溶液を混合するように構成されたマイクロピラーをさらに含む。
【0061】
一部の実施形態において、第1のアポリポタンパク質及び第2のアポリポタンパク質の両方がアポリポタンパク質E2である。一部の実施形態において、第1のアポリポタンパク質及び第2のアポリポタンパク質の両方がアポリポタンパク質E3である。一部の実施形態において、第1のアポリポタンパク質はアポリポタンパク質E2であり、第2のアポリポタンパク質はアポリポタンパク質E3である。一部の実施形態において、第1のアポリポタンパク質はアポリポタンパク質E2またはE3であり、第2のアポリポタンパク質はアポリポタンパク質A1である。
【0062】
一部の実施形態において、第1の親水性溶液、リン脂質溶液、及び第2の親水性溶液が同時に注入される。
【0063】
一部の実施形態において、前記方法は、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)を出口から収集するステップをさらに備える。
【0064】
一部の実施形態において、マイクロ流体装置の入口に注入されるリン脂質と、第1及び第2のアポリポタンパク質との重量比は、0.25:1~2.5:1である。一部の実施形態において、マイクロ流体装置の入口に注入されるリン脂質と、第1及び第2のアポリポタンパク質との重量比は、0.5:1~1.5:1である。一部の実施形態において、マイクロ流体装置の入口に注入されるリン脂質と、第1及び第2のアポリポタンパク質との重量比は、0.1:1~5:1である。
【0065】
一部の実施形態において、マイクロ流体装置の入口に注入されるリン脂質と、第1のアポリポタンパク質と、第2のアポリポタンパク質との重量比は、1:2:2~10:2:2である。一部の実施形態において、マイクロ流体装置の入口に注入されるリン脂質と、第1のアポリポタンパク質と、第2のアポリポタンパク質との重量比は、1:1:1~3:1:1である。一部の実施形態において、マイクロ流体装置の入口に注入されるリン脂質と、第1のアポリポタンパク質と、第2のアポリポタンパク質との重量比は、1:5:5~30:5:5である。一部の実施形態において、マイクロ流体装置の入口に注入されるリン脂質と、第1のアポリポタンパク質と、第2のアポリポタンパク質との重量比は、2:5:5~15:5:5である。一部の実施形態において、マイクロ流体装置の入口に注入されるリン脂質と、第1のアポリポタンパク質と、第2のアポリポタンパク質との重量比は、2:5:5~5:5:5である。
【0066】
一部の実施形態において、前記方法は、リン脂質溶液を、3つの入口(inlet)及び1つの出口(outlet)を有するマイクロ流体装置の中央に位置する第2の入口に注入するステップと、アポリポタンパク質溶液を、両側に位置する第1及び第3の入口に注入するステップとを備える。一実施形態において、前記マイクロ流体装置は、マイクロピラーを含んでもよい。
【0067】
本願に用いられる「マイクロ流体装置」なる用語は、有機高分子物質を含むプラスチック、ガラス、金属、またはシリコンを含む様々な素材から製造された基板上に、流体を流すことができるように設けられたマイクロチャネルを含んでいる装置を意味する。
【0068】
本願に用いられる「マイクロピラー」または「マイクロピラー構造」なる用語は、マイクロ流体装置内に渦流を形成することで、マイクロ流体装置に注入された異なる種類の流体を効率的に混合するための柱状構造物を意味する。
【0069】
一部の実施形態において、前記方法は、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)を遠心分離によって精製するステップをさらに備える。
【0070】
一態様において、本開示は、本願に記載の製造方法によって製造された再構成高密度リポタンパク質(rHDL)を提供する。
【0071】
別の態様において、本開示は、本願に記載の再構成高密度リポタンパク質または本願に記載の薬学的組成物を対象体に投与することを含む、対象体の神経変性疾患を予防または治療する方法を提供する。一部の実施形態において、前記疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ルーゲーリッグ病、脊髄小脳変性症、脊髄小脳失調症、プリオン病、認知機能障害、老年性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、アルコール性認知症、初老期認知症、マシャド・ジョセフ病、筋異緊張症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、フリードライヒ運動失調症、側頭葉てんかん、及び脳卒中からなる群から選択される。
【0072】
一部の実施形態において、再構成高密度リポタンパク質または薬学的組成物は、アミロイドベータ(Aβ)の凝集を阻害するか、または脳組織の恒常性を維持するのに十分な量で投与される。
【0073】
以下、実施例を挙げて本開示をさらに詳しく説明するが、下記の実施例は説明を目的とするものに過ぎず、本開示の範囲を限定しようとする意図ではない。
【実施例1】
【0074】
マイクロ流体装置を用いたrHDLナノ粒子の製造方法
1-1.rHDLナノ粒子を製造するためのマイクロ流体装置の設計
リン脂質及びアポリポタンパク質を混合することにより、再構成高密度リポタンパク質(rHDL;reconstituted high density lipoprotein)ナノ粒子を製造するためのマイクロ流体装置(microfluidic device)を設計した(
図1)。マイクロ流体装置は、3つの入口(inlet)及び1つの出口(outlet)を有し、3つの入口のうち中央に位置する入口からは疎水性(hydrophobic)のリン脂質及び疎水性の薬物を、両側に位置する2つの入口からは親水性(hydrophilic)のアポリポタンパク質及び親水性の薬物を注入した。さらに、脂質及びアポリポタンパク質を効果的に混合するために、マイクロ流体装置の内部にマイクロピラー(micropillar)構造が導入された。
【0075】
1-2.rHDLナノ粒子の製造1
マイクロ流体装置を用いて、以下の方法でリン脂質(DMPC)及びアポリポタンパク質を含むrHDLナノ粒子を製造した。
【0076】
無水エタノール中のDMPC(1,2-dimyristoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)溶液及びPBS中のアポリポタンパク質溶液を用意した。その後、1本の注射器に、約0.8mLの無水エタノールに対して0.83mg/mLの濃度のDMPC溶液を充填し、他の2本の注射器に、同量のPBSに対して0.2mg/mLの濃度のアポリポタンパク質溶液約1.25mL(合計約2.5mL)をそれぞれ充填してから、すべての注射器の泡を除去した。
【0077】
各注射針とマイクロ流体装置の入口をチューブで接続し、マイクロ流体装置を洗浄するために、PBSを1mL/minの流速で流した。その後、シリンジポンプを用いて、DMPC溶液の注入流速を0.8mL/minに、アポリポタンパク質溶液の注入流速を2.2mL/minに設定した。マイクロ流体装置の出口から製造されたrHDLナノ粒子を収集し、得られたナノ粒子をPBSと混合してから、10Kフィルターを用いて遠心分離機の最大速度で4℃で20分間、3回精製した。最後の精製後に残留物に約250μLのナノ粒子溶液を残し、4℃で保存した。
【0078】
1-3.rHDLナノ粒子の製造2
1-2と同様の方法で、リン脂質(DPPC)及びアポリポタンパク質を含むrHDLナノ粒子を製造した。
【0079】
1-4.rHDLナノ粒子の製造3
1-2と同様の方法で、リン脂質(POPC)及びアポリポタンパク質を含むrHDLナノ粒子を製造した。
【0080】
1-5.マイクロピラー構造の効果
マイクロピラー構造の有無による脂質及びアポリポタンパク質の混合効率性を確認するため、シミュレーションと赤インクを用いてマイクロ流体装置内のリン脂質の分布を観察した。その結果、
図1に示すように、マイクロピラー構造によりマイクロボルテックス(microvortex)が発生し、リン脂質とアポリポタンパク質がより効率的に混合されることを確認した。また、BCAタンパク質の定量化によりrHDLナノ粒子の生産収率を確認したところ、
図2に示すように、マイクロピラーがない場合と比較して、マイクロピラーがある場合は生産収率が向上することを確認した。
【0081】
また、
図3に示すように、2種類のマイクロ流体装置で製造したrHDLナノ粒子をPBSに溶解させた後のDLSデータを測定したところ、マイクロピラーがない場合と比較して、マイクロピラーのあるマイクロ流体装置で製造したrHDLナノ粒子のサイズがはるかに均一であり、凝集(aggregation)度が減少したため、粒子サイズの均一性(homogeneity)が向上したことを確認した。
【実施例2】
【0082】
リン脂質及びアポリポタンパク質E3の配合比率の最適化
rHDLナノ粒子の製造に用いられるリン脂質及びアポリポタンパク質の合成配合比を最適化するために、以下の方法で合成配合比によるrHDLナノ粒子の平均サイズ及びサイズ分布を比較した。
【0083】
2-1.リン脂質(DMPC)及びアポリポタンパク質を含むrHDLナノ粒子
実施例1-2と同様の方法で、リン脂質(DMPC)及びアポリポタンパク質の配合比率を変化させて製造されたrHDLナノ粒子をPBSに溶解し、Zetasizer Nano ZSを用いて、動的光散乱法(DLS;Dynamic Light Scattering)によるナノ粒子の凝集現象による粒子サイズ分布の変化を測定した。その結果を強度(intensity)、体積(volume)、及び個数(number)によってプロットした。
【0084】
人工的に安定したHDLを製造するためには、rHDLを高密度かつ小粒にする必要があり、医薬品として用いるためには、安定したrHDLを大量に製造する必要がある。
【0085】
図4に示すように、リン脂質(DMPC)に対するアポリポタンパク質E3(GenBank:ARQ79461.1)の合成配合重量比が0.75:1の場合を1.25:1及び2.5:1の場合と比較すると、合成配合重量比が0.75:1の場合、ナノ粒子のサイズが小さく均一な最終生成物であるrHDLが得られることを確認した。
【0086】
人体で自然に産生されるHDLは直径が20nm以下であるが、本開示のrHDLの粒子は、ほとんど20nm以下のサイズを有することが分かる。具体的には、
図5に示すように、10~20nmの安定した粒子サイズを有するHDLの分布を計算したところ、合成配合重量比が0.75:1の場合に70%以上であり。合成配合重量比が1.25:1の場合に20%以上であったが、合成配合重量比が2.5:1の場合は5%未満であることを確認した。
【0087】
リン脂質(DMPC)に対するアポリポタンパク質E3の合成配合重量比が2.5:1を超えると、ナノ粒子の形成に必要な量よりも多量のリン脂質が含まれ、残りのリン脂質が安定に形成されたrHDL同士を結合することでクラスター(cluster)を形成するか、あるいはさらに凝集することでリン脂質集合体(aggregate)を生成することが分かる。
【0088】
また、リン脂質(DMPC)に対するアポリポタンパク質E3の合成配合重量比が0.25:1未満であると、ナノ粒子の形成に必要な量よりも多量のアポリポタンパク質が含まれ、ナノ粒子に形成されていないアポリポタンパク質が凝集することを確認した。
【0089】
一般的に、アポリポタンパク質はリン脂質に比べて比較的高価であるため、合成時にアポリポタンパク質を必要量を超えて含ませない方が大量生産の面でより好ましい。よって、効率的な大量生産のためには、比較的安価なリン脂質を必要量を超えて含ませて合成し、その後にリン脂質を有機溶媒と共に除去することが好ましい。
【0090】
よって、ナノ粒子を合成した後、有機溶媒を除去するステップを経て、ナノ粒子に合成されずに残っているリン脂質を最大限除去することで、均一で安定したrHDLが製造されるため、最終生成物であるrHDLナノ粒子に含まれるリン脂質とアポリポタンパク質の重量比は、合成配合重量比よりもさらに小さい。
【0091】
2-2.リン脂質(DPPC)及びアポリポタンパク質を含むrHDLナノ粒子
実施例1-3と同様の方法で、リン脂質(DPPC)及びアポリポタンパク質の配合比率を変化させて製造されたrHDLナノ粒子をPBSに溶解し、Zetasizer Nano ZSを用いて、動的光散乱法(DLS;Dynamic Light Scattering)によるナノ粒子の凝集現象による粒子サイズ分布の変化を測定した。
【0092】
図6に示すように、リン脂質(DPPC)に対するアポリポタンパク質E3の合成配合重量比が1.1:1の場合、ナノ粒子のサイズが小さく均一な最終生成物であるrHDLが得られることを確認した。
【0093】
具体的には、
図7に示すように、40nm以下の粒子サイズを有するHDLの分布を計算したところ、合成配合重量比が1.1:1の場合に50%以上であることを確認した。
【0094】
リン脂質(DPPC)に対するアポリポタンパク質E3の合成配合重量比が2.5:1を超えると、ナノ粒子の形成に必要な量よりも多量のリン脂質が含まれ、残りのリン脂質が安定に形成されたrHDL同士を結合することでクラスター(cluster)を形成するか、あるいはさらに凝集することでリン脂質集合体(aggregate)を生成することが確認された。
【0095】
また、リン脂質(DPPC)に対するアポリポタンパク質E3の合成配合重量比が0.5:1未満であると、ナノ粒子の形成に必要な量よりも少量のリン脂質が含まれるため、構成物質の不安定性が増し、凝集体のサイズ分布が不均一になることを確認した。
【0096】
2-3.リン脂質(POPC)及びアポリポタンパク質を含むrHDLナノ粒子
実施例1-4と同様の方法で、リン脂質(POPC)及びアポリポタンパク質の配合比率を変化させて製造されたrHDLナノ粒子をPBSに溶解し、Zetasizer Nano ZSを用いて、動的光散乱法(DLS;Dynamic Light Scattering)によるナノ粒子の凝集現象による粒子サイズ分布の変化を測定した。
【0097】
図8に示すように、リン脂質(POPC)に対するアポリポタンパク質E3の合成配合重量比が1.2:1の場合を1.35:1の場合を比較すると、合成配合重量比が1.2:1の場合、ナノ粒子のサイズが小さく均一な最終生成物であるrHDLが得られることを確認した。
【0098】
具体的には、
図9に示すように、40nm以下の粒子サイズを有するHDLの分布を計算したところ、合成配合重量比が1.2:1の場合に60%以上であり、合成配合重量比が1.35:1の場合に20%以上であることを確認した。
【0099】
リン脂質(POPC)に対するアポリポタンパク質E3の合成配合重量比が2.5:1を超えると、ナノ粒子の形成に必要な量よりも多量のリン脂質が含まれ、残りのリン脂質が安定に形成されたrHDL同士を結合することでクラスター(cluster)を形成するか、あるいはさらに凝集することでリン脂質集合体(aggregate)を生成することが確認された。
【0100】
また、リン脂質(POPC)に対するアポリポタンパク質E3の合成配合重量比が0.5:1未満であると、ナノ粒子の形成に必要な量よりも少量のリン脂質が含まれるため、構成物質の不安定性が増し、凝集体のサイズ分布が不均一になることを確認した。
【実施例3】
【0101】
アポリポタンパク質E2またはE3を含むrHDLナノ粒子の製造
実施例1及び2のアポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子の製造方法と同様にして、アポリポタンパク質E2(GeneBank:ARQ79459)を含むrHDLナノ粒子を製造した。その後、実施例2と同様の方法でDLSを用いて粒子のサイズ分布を測定し、それをアポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子と比較した。
【0102】
図10に示すように、アポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子とアポリポタンパク質E2を含むrHDLナノ粒子との間の形状差はほとんどなく、同じ条件下でナノ粒子を作製できることが確認された。
【実施例4】
【0103】
アポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子の形態
実施例1の製造方法に従って、リン脂質(DMPC)に対するアポリポタンパク質E3の合成配合重量比0.75:1のrHDLナノ粒子を製造し、透過型電子顕微鏡(TEM;Transmission electron microscopy)を用いてその形態学的特徴を観察した。rHDLナノ粒子をPBSに溶解し、その後ニッケルグリッド上に置き、ネガティブ染色し、十分に乾燥させてから、写真を撮影した。
【0104】
図11に示すように、アポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子は、2層のアポリポタンパク質がリン脂質に帯状に巻き付いた円盤状(discoidal shape)を示すことが確認された。
【0105】
一方、
図12及び
図13に示すように、重量比が1.25:1であると、円盤状の安定したrHDLが減少することが分かり、重量比が2.5:1を超えると、安定したrHDLがほとんど観察されないことが分かる。
【0106】
重量比が2.5:1を超えると、残ったリン脂質が既に生成済みの安定したrHDLを雲のように結びつけ、rHDLの粒子サイズを大きくするが、その場合、rHDLは不安定な形態を有するため、体内で一定濃度のrHDLを維持することができない。さらに、アポリポタンパク質(ApoE)は、体内においてLDLR(low-density lipoprotein receptor)を介してBBBを通過するか、あるいはアミロイドベータを脳外に輸送する役割を果たすが、リン脂質がそれらのアポリポタンパク質を雲のように取り囲んでおり、rHDLがその機能を果たすことを困難にする可能性がある。
【実施例5】
【0107】
複種類のアポリポタンパク質を含むハイブリッドrHDLナノ粒子の製造
本開示のrHDLナノ粒子は、リン脂質を取り囲むアポリポタンパク質の種類及び構成に応じて、異なる機能及び効果を有する。よって、本実施例では、リン脂質を取り囲むアポリポタンパク質が複種類で構成されているハイブリッドrHDLナノ粒子を製造した。
【0108】
生体適合性に優れたアポリポタンパク質A1(GenBank:AAS68227.1)及びアポリポタンパク質E3の両方を含むrHDLナノ粒子を製造するために、濃度1.8mg/mLのDMPC溶液、濃度0.2mg/mLのアポリポタンパク質A1溶液及びアポリポタンパク質E3溶液を共に用いて、実施例1に従ってrHDLナノ粒子を製造した。
【0109】
また、アポリポタンパク質E2溶液及びアポリポタンパク質E3溶液を併用すると、アポリポタンパク質E2及びE3を含むハイブリッドrHDLナノ粒子が製造できることを確認した。本開示のハイブリッドナノ粒子を製造するために、それぞれ0.1mg/mLの濃度のApoE2及びApoE3溶液1.25mLずつを用意して混合し、0.83mg/mLの濃度のDMPC溶液0.8mLを用意して、実施例1に従ってナノ粒子を製造した。その結果、
図10に示すように、アポリポタンパク質E2及びE3を含むハイブリッドrHDLナノ粒子を均一なナノ材料として製造できることが確認された。
【0110】
アポリポタンパク質A1溶液及びアポリポタンパク質E3溶液を併用すると、製造直後にアポリポタンパク質A1を含むrHDLナノ粒子、アポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子、並びにアポリポタンパク質A1及びE3を含むハイブリッドrHDLナノ粒子がいずれも存在することができる。また、ELISAで確認したところ、ハイブリッドrHDLナノ粒子は、全ナノ粒子に対して約10%の割合で生成されていることが確認された。
【0111】
結局、従来のインキュベーション(incubation)法では、アポリポタンパク質をリン脂質キャリアと混合して放置するが、アポリポタンパク質は互いに凝集しているため、アポリポタンパク質E2及びE3を同時に培養皿に添加しても、E2及びE3タンパク質が相互自発的に融合し、ハイブリッドrHDLが生成されない。しかしながら、本開示の製造方法によると、ハイブリッドrHDLナノ粒子が生成されることが分かる。
【実施例6】
【0112】
アポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子におけるリン脂質及びアポリポタンパク質の構成
実施例1及び2に従って製造されたrHDLナノ粒子の最終的なリン脂質及びアポリポタンパク質の組成比を確認するために、BCAアッセイ及びLipid quantification kitを用いて定量した。その結果を表1に示す。
【0113】
【0114】
表1に示すように、異なる時期に製造した合計6グループのrHDLナノ粒子のリン脂質:アポリポタンパク質の割合が0.2:1~0.5:1であることを確認した。すなわち、リン脂質:アポリポタンパク質の合成配合重量比0.75:1で製造されたrHDLにおいて、合成後のリン脂質:タンパク質は、0.2:1~0.5:1であることが分かる。よって、rHDLの製造過程で過剰なリン脂質が有機溶媒と共に除去されることで、最終生成物であるrHDL中のリン脂質含有量が減少することが分かる。
【0115】
本開示のrHDLは、2つの層を形成するアポリポタンパク質構造中にリン脂質が含まれているため、大量生産に最適な合成混合比で製造されたrHDLの合成後のリン脂質:アポリポタンパク質は、0.2:1~0.5:1であることが確認された。
【0116】
ただし、rHDLの製造過程で過剰のリン脂質が有機溶媒と共に除去されずに残る場合、rHDLの合成後のリン脂質:アポリポタンパク質比は0.2:1~2.5:1であってもよく、過剰のリン脂質が有機溶媒と一緒に完全に除去されずに残る場合、その割合は0.2:1~1.5:1であってもよい。
【実施例7】
【0117】
rHDLナノ粒子の密度の測定及び計算
合成に用いられたアポリポタンパク質E3の分子量と、合成に用いられた物質の長さと、DLS測定結果による最終合成産物の体積範囲に基づいて、rHDLナノ粒子の密度を計算した。
【0118】
rHDLナノ粒子の質量情報は以下のとおりである。アポリポタンパク質E3の分子量は35.20kDaであり、最終合成産物には、アポリポタンパク質E3が2つの層を形成するため、構成タンパク質の総質量は70.40kDaと計算される。さらに、実施例1及び2に従って製造されたrHDLナノ粒子の好ましい最終的な脂質:アポリポタンパク質の割合は、0.2:1~0.5:1であることが確認された。故に、最終合成産物に含まれている脂質の質量は、14.08~35.20kDaと計算された。よって、最終的なrHDLナノ粒子の分子量は、構成タンパク質と脂質の合計である84.48~105.60kDa(140.24×10-21~175.30×10-21g)の値であると計算された。
【0119】
rHDLナノ粒子の体積情報は以下のとおりである。シミュレーションによってrHDLナノ粒子の形態を推測した。その結果を
図14~16に示す。
図14~16に示すように、アポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子の長軸(diameter)長さが8~15nmの分布を有することが確認された。円盤状(discoidal shape)のrHDLナノ粒子の短軸(height)を2.5nmと仮定すると、球状または楕円体の体積は125.6~441.6nm
3と計算された。
よって、rHDLナノ粒子の密度は、実験データから推定された質量と体積から0.3~1.2g/mLの密度分布として計算された。
【0120】
[試験例1]
rHDLナノ粒子のAβ凝集阻害効果の確認
実施例で製造したrHDLナノ粒子のアミロイドベータ(Aβ)凝集阻害効果を確認するために、以下の実験を行った。
【0121】
488蛍光で標識された1μMのAβ1-42及び3つの濃度(0.01、0.1、0.5μM)のrHDLナノ粒子を用意し、96ウェルプレートに同時に処理し、その後0、10、20、30、40、50、60、120、150、240、300、360、720、及び1440分経過後の蛍光値をそれぞれ撮影した。比較のため、488-Aβ単独で処理したしたプレートの蛍光値を合わせて確認した。488-Aβは凝集すると自己消光(self-quenching)し、蛍光値が低下するため、rHDLナノ粒子を合わせて処理した時の蛍光値は、488-Aβ単独で処理した場合よりも高ければ、Aβ凝集阻害効果があると解釈できる。
【0122】
1-1.アポリポタンパク質E2またはE3を含むrHDLナノ粒子
図17、18に示すように、488-Aβ単独で処理した場合、488-Aβが経時的に凝集して自己消光し、蛍光値が低下することを確認した。また、488-Aβ単独で処理した場合よりも、アポリポタンパク質E2またはE3を含むrHDLナノ粒子を合わせて処理した場合の蛍光値が高いことを確認した。さらに、rHDLナノ粒子の濃度が増加するにつれて、蛍光値がより高いことを確認した。
【0123】
よって、本開示のrHDLナノ粒子は、優れたAβ凝集阻害効果を有することが分かる。
【0124】
1-2.アポリポタンパク質E2及びE3を同時に含むハイブリッドrHDLナノ粒子
図19に示すように、488-Aβ単独で処理した場合よりも、アポリポタンパク質E2及びE3を含むハイブリッドrHDLナノ粒子を併せて処理した場合の蛍光値が高いことを確認した。ハイブリッドrHDLナノ粒子の濃度が増加するにつれて、蛍光値がより高く測定され、特に、0.5μMのハイブリッドrHDLナノ粒子で処理すると、蛍光値はほとんど減少せず、Aβ凝集阻害において顕著な効果を有することが確認された。
【0125】
[試験例2]
rHDLナノ粒子に含まれるアポリポタンパク質の種類によるAβ凝集阻害効果の比較
rHDLナノ粒子に含まれるアポリポタンパク質の種類による効果の違いを比較するために、同じ濃度0.5μMのアポリポタンパク質E2及びE3を含むrHDLナノ粒子と、アポリポタンパク質E2またはE3を含むハイブリッドrHDLナノ粒子のアミロイドベータ(Aβ)凝集阻害効果を試験例1と同様に比較した。
【0126】
図20に示すように、アポリポタンパク質E2またはE3を含むrHDLナノ粒子とアポリポタンパク質E2及びE3を含むハイブリッドrHDLナノ粒子のいずれも優れたAβ凝集阻害効果を示し、特に10時間が経過した後にはハイブリッドrHDLナノ粒子が最も高い効果を示すことが確認された。最初の20分以内には、実験開始前に凝集したAβが脱凝集(deaggregation)し、蛍光値が一時的に上昇する現象が観察された。
【0127】
[試験例3]
純粋なアポリポタンパク質とrHDLナノ粒子とのAβ凝集阻害効果の比較
本開示のrHDLナノ粒子ではなく、アポリポタンパク質単独で処理することでもAβ凝集阻害効果が発揮されるか否かを確認するために、Aβとアポリポタンパク質E3で処理するか、あるいはAβとアポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子を1:0.1で処理し、試験例1と同様の方法で蛍光値の変化を確認した。
【0128】
図21に示すように、アポリポタンパク質E3で処理した場合でも、Aβ単独で処理した場合に比べて蛍光値が高くなったが、アポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子で処理した場合の蛍光値が有意に高く、本開示のrHDLナノ粒子のAβ凝集阻害効果が非常に優れていることを確認した。
【0129】
[試験例4]
血液脳関門内皮細胞におけるrHDLナノ粒子の輸送量比較
アポリポタンパク質E2またはE3を含むrHDLナノ粒子、並びにアポリポタンパク質E2及びE3を含むハイブリッドrHDLナノ粒子に対して、脳微小血管内皮細胞(brain microvascular endothelial cell;BMEC)を介した脳組織への経細胞輸送(transcytosis)の程度に関する実験を行った。その結果を
図22に示す。
【0130】
図22に示すように、アポリポタンパク質E2及びE3を含むハイブリッドrHDLナノ粒子の場合、血液脳関門の脳微小血管内皮細胞(brain microvascular endothelial cell;BMEC)を介した脳組織内への輸送(transcytosis)が、単一のアポリポタンパク質E2またはE3を含むrHDLナノタンパク質と比較して優れているっことが確認された。これは、E2及びE3がそれぞれ反応する脳微小血管内皮細胞の受容体に同量のナノ材料が細胞に供給されると、単一のアポリポタンパク質(E2またはE3)rHDLよりも、ハイブリッドrHDLがより効果的に細胞に吸収できることを意味する。
【0131】
よって、将来rHDLが治療剤または送達剤として使用される場合、最低の用量でもより効率的に脳微小血管内皮細胞関門を通過することができ、それによってより効果的な薬効発現及び薬物送達が可能であることが分かる。
【0132】
[試験例5]
血液脳関門の星状膠細胞におけるrHDLナノ粒子の輸送量比較
アポリポタンパク質E2またはE3を含むrHDLナノ粒子、並びにアポリポタンパク質E2及びE3を含むハイブリッドrHDLナノ粒子に対して、血液脳関門の星状膠細胞(astrocytes)を介した輸送の程度に関する実験を行った。その結果を
図23に示す。
【0133】
図23に示すように、アポリポタンパク質E2及びE3を含むハイブリッドrHDLナノ粒子の場合、単一のアポリポタンパク質(E2またはE3)rHDLと比較して血液脳関門の星状膠細胞(astrocytes)を介する輸送においてより優れており、脳組織内の恒常性維持に対してより優れた効果を発揮することが分かる。
【0134】
これは、E2及びE3がそれぞれ反応する星状膠細胞の受容体に同量のナノ材料が細胞に供給されると、アポリポタンパク質E2とE3を含むハイブリッドrHDLナノ粒子が受容体に最大限に反応できることを意味する。よって、最小の投与量で最大の効果を発揮できることが分かる。
【0135】
[試験例6]
アルツハイマー病動物モデルにおける脳組織アミロイドベータの除去量比較
アポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子について、アルツハイマー病動物モデルにおける脳組織アミロイドベータの除去に関する実験を行った。その結果を
図24~27に示す。
【0136】
同数の雌雄の正常マウス及びアルツハイマー病動物モデル(5xFAD)を、それぞれ対照群とrHDLナノ粒子投与群に分け、対照群には生理食塩水をi.v.注射で投与し、rHDLナノ粒子を投与した群には、アポリポタンパク質E3を含む本開示のrHDLナノ粒子(2.5mg/kg)を3日に1回、合計33回投与した。最終投与から24時間後に、脳を摘出し、左脳を4%PFA(paraformaldehyde)溶液で固定し、固定した脳組織をOCT化合物(compound)で凍結してから、ミクロトーム(microtome)で4μmの厚さに切断した。切断した組織切片をスライドに貼り付け、Aβ特異的抗体とDAB(3,3‘-diaminobenzidine tetrahydrochloride salt)発色剤を用いて反応させた。共焦点顕微鏡を用いて、染色されたスライドを撮影した。その結果を
図24及び25に示す。
【0137】
図24に示すように、生理食塩水(saline)を3ヶ月間投与したアルツハイマー病動物モデル(5xFAD)では、脳内に過剰なAβ沈着が観察された。しかしながら、
図25に示すように、アポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子を投与すると、Aβ沈着が著しく減少することが分かる。それで、E3を含むrHDLナノ粒子が、アルツハイマー病の原因となる脳組織内のAβタンパク質を効果的に除去できることが分かる。
【0138】
また、各実験群の脳脊髄液中のAβ濃度を比較するために、マウスの脳摘出前にマウスに麻酔をかけ、その後小脳(cerebellum)と延髄(medulla Oblongata)の間の大槽(cisterna magna)を介して脳脊髄液(cerebrospinal fluid;CSF)を採取した。血漿中のAβ濃度を比較するために、脳脊髄液を採取し、その後頸静脈より採血を行い、ヘパリン(5IU/mL)処理したチューブに約0.13mLの全血を得た。採取した血液を遠心分離し、血漿を分離した。
【0139】
その結果、
図26及び27に示すように、アポリポタンパク質E3を含むrHDLナノ粒子を投与したアルツハイマー病動物モデル(5xFAD)の脳脊髄液及び血漿中のAβ濃度が、生理食塩水を投与した群と比較して有意に減少することが確認された。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質と、アポリポタンパク質(Apolipoprotein)Eとを含む、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項2】
リン脂質とアポリポタンパク質Eとを0.25:1~2.5:1の重量比で含む混合物から生成されることを特徴とする、請求項1に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項3】
リン脂質とアポリポタンパク質Eとを0.5:1~1.5:1の重量比で含む混合物から生成されることを特徴とする、請求項1に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項4】
前記再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のリン脂質とアポリポタンパク質Eとの重量比が0.2:1~2.5:1であることを特徴とする、請求項
1に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項5】
前記再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のリン脂質とアポリポタンパク質Eとの重量比が0.2:1~1.5:1であることを特徴とする、請求項4に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項6】
前記再構成高密度リポタンパク質(rHDL)中のリン脂質とアポリポタンパク質Eとの重量比が0.2:1~0.5:1であることを特徴とする、請求項5に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項7】
前記再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の密度が0.1~2.0g/mLであることを特徴とする、請求項1に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項8】
前記再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の密度が0.2~1.5g/mLであることを特徴とする、請求項7に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項9】
前記再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の密度が0.3~1.2g/mLであることを特徴とする、請求項8に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項10】
アポリポタンパク質E2、E3、またはE2及びE3の両方を含むことを特徴とする、請求項
1に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項11】
アポリポタンパク質A1をさらに含むことを特徴とする、請求項
1に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項12】
アポリポタンパク質E2、E3またはA1以外のアポリポタンパク質を含まないことを特徴とする、請求項
1に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項13】
アポリポタンパク質E4を含まないことを特徴とする、請求項
1に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項14】
前記リン脂質が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DAPC)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DBPC)、1,2-ジエイコサノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DEPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、リゾホスファチジルエタノールアミン、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキシアミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド)(VL-5)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン 4-トリフルオロ酢酸(DOGS)、3β-[N-(N′,N′-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、1,2-ジオレイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、(1,2-ジオレイルオキシプロピル)-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、1,2-ジミリスチルオキシ-プロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキシアミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-bis(ドデシルオキシ)-1-プロパンアンモニウムブロミド(GAP-DLRIE)、N-t-ブチル-N′-テトラデシル-3-テトラデシルアミノプロピオンアミジン(diC14-amidine)、エチルホスホコリン(Ethyl PC)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N4-コレステリル-スペルミン(GL67)、1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、及びD-Lin-MC3-DMA(MC3、DLin-MC3-DMA)、DLin-KC2-DMA、及びDLin-DMAからなる群から少なくとも1つ選択されることを特徴とする、請求項
1に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の再構成高密度リポタンパク質及び薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項16】
アポリポタンパク質E2を含む再構成高密度リポタンパク質の第1のセット、及びアポリポタンパク質E3を含む再構成高密度リポタンパク質の第2のセットを含む、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
アポリポタンパク質E2及びアポリポタンパク質E3の両方が包含された再構成高密度リポタンパク質を含む、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか一項に記載の再構成高密度リポタンパク質を含む、神経変性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項19】
前記再構成高密度リポタンパク質が、アミロイドベータ(Aβ)の凝集を阻害し、脳組織の恒常性を維持できることを特徴とする、請求項18に記載の神経変性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項20】
前記神経変性疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ルーゲーリッグ病、脊髄小脳変性症、脊髄小脳失調症、プリオン病、認知機能障害、老年性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、アルコール性認知症、初老期認知症、マシャド・ジョセフ病、筋異緊張症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、フリードライヒ運動失調症、側頭葉てんかん、及び脳卒中からなる群から選択されることを特徴とする、請求項
18に記載の神経変性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項21】
以下のステップを備える、リン脂質と、アポリポタンパク質Eとを含む、再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
第1のアポリポタンパク質を含む第1の親水性溶液を、3つの入口及び1つの出口を有するマイクロ流体装置の第1の入口に注入するステップと、
リン脂質溶液を、マイクロ流体装置の第2の入口に注入するステップと、
第2のアポリポタンパク質を含む第2の親水性溶液を、マイクロ流体装置の第3の入口に注入するステップ。
【請求項22】
マイクロ流体装置が、マイクロ流体装置の中央に位置する第2の入口と、両側に位置する第1及び第3の入口とを含むことを特徴とする、請求項21に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項23】
第1のアポリポタンパク質及び第2のアポリポタンパク質の両方がアポリポタンパク質E2であることを特徴とする、請求項21または22に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項24】
第1のアポリポタンパク質及び第2のアポリポタンパク質の両方がアポリポタンパク質E3であることを特徴とする、請求項21または22に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項25】
第1のアポリポタンパク質がアポリポタンパク質E2であり、第2のアポリポタンパク質がアポリポタンパク質E3であることを特徴とする、請求項21または22に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項26】
第1のアポリポタンパク質がアポリポタンパク質E2またはE3であり、第2のアポリポタンパク質がアポリポタンパク質A1であることを特徴とする、請求項21または22に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項27】
第1の親水性溶液、リン脂質溶液、及び第2の親水性溶液が同時に注入されることを特徴とする、請求項21
または22に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項28】
再構成高密度リポタンパク質(rHDL)を出口から収集するステップをさらに備えることを特徴とする、請求項21
または22に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項29】
マイクロ流体装置の入口に注入されるリン脂質とアポリポタンパク質Eの重量比が0.25:1~2.5:1であることを特徴とする、請求項21
または22に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項30】
マイクロ流体装置の入口に注入されるリン脂質とアポリポタンパク質Eの重量比が0.5:1~1.5:1であることを特徴とする、請求項29に記載の再構成高密度リポタンパク質(rHDL)の製造方法。
【請求項31】
請求項21
または22に記載の製造方法により製造された再構成高密度リポタンパク質(rHDL)。
【国際調査報告】