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特表2024-502530窒化アルミニウム充填熱伝導性シリコーン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】窒化アルミニウム充填熱伝導性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20240115BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240115BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20240115BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240115BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20240115BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240115BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/5415
C08K3/22
C08K3/28
H01L23/36 D
H01L23/36 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527428
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 CN2020127668
(87)【国際公開番号】W WO2022099432
(87)【国際公開日】2022-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】バグワガー、ドラブ
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ダレン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、ペン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ハン グァン
【テーマコード(参考)】
4J002
5F136
【Fターム(参考)】
4J002CP04X
4J002CP13W
4J002DE109
4J002DE148
4J002DF017
4J002EX036
4J002GQ00
5F136BC06
5F136FA53
5F136FA63
5F136FA67
(57)【要約】
組成物は、(a)(i)30~400MPa秒の粘度を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルポリシロキサンと、(ii)SiH官能性架橋剤と、及び(iii)ヒドロシリル化触媒を含み、架橋剤SiH官能性対ビニル官能性のモル比が0.5:1~1:1である、硬化性シリコーン組成物と、(b)アルキルトリアルコキシシラン及び/又はモノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサン処理剤と、(c)(i)40重量%以上の球状及び不規則形状のAlN粒子を含有するフィラー混合物であって、両方とも平均粒径が30マイクロメートル以上であり、球状AlNフィラーは、AlNフィラーの重量の40~60重量%である、フィラー混合物であって、(ii)平均サイズが1~5マイクロメートルの、25~35重量%の球状Al粒子と、(iii)平均サイズが0.1~0.5マイクロメートルの、10~15重量%の追加の熱伝導性フィラーと、及び(iv)場合により、平均サイズが20マイクロメートルを超えるBNフィラーとを含み、特に明記しない限り、フィラー混合物は組成物重量に対して90~97重量%である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性組成物であって、
a.
i.a.30~400ミリパスカル秒の範囲の粘度を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルポリシロキサンと、
ii.水素化ケイ素官能性架橋剤と、及び
iii.ヒドロシリル化触媒とを含み、
前記架橋剤からの水素化ケイ素官能性とビニル官能性とのモル比が0.5:1~1:1の範囲である、硬化性シリコーン組成物と、
b.アルキルトリアルコキシシラン及びモノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンの一方又は両方を含むフィラー処理剤と、
c.熱伝導性フィラー混合物であって、
i.40重量パーセント以上の窒化アルミニウムフィラーであって、球状及び不規則形状の窒化アルミニウム粒子の混合物を含み、前記球状粒子及び不規則形状の粒子の両方の平均粒径が30μm以上であり、30μm以上の粒径の前記球状窒化アルミニウムフィラーが、30μm以上の粒径の窒化アルミニウムフィラーの総重量の40~60重量%の濃度で存在する、窒化アルミニウムフィラーと、
ii.25重量%~35重量%の、平均粒径が1~5マイクロメートルの球状酸化アルミニウム粒子と、
iii.10重量%~15重量%の、平均粒径が0.1~0.5マイクロメートルの追加の熱伝導性フィラーとを含み、
iv.場合により、平均粒径が20マイクロメートル超の窒化ホウ素フィラーを含む、熱伝導性フィラーとを含み、
各熱伝導性フィラーの重量%は、特に明記しない限り、組成物重量に対するものであり、熱伝導性フィラー混合物の総量は、組成物重量の90~97重量%である、熱伝導性組成物。
【請求項2】
前記ビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルポリシロキサンが、60~80ミリパスカル秒の範囲の粘度を有し、1.2~1.4重量%のビニル官能性を含む、請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
前記水素化ケイ素官能性架橋剤が、(II)及び(III)
H(CHSiO-[(CH)SiO)]-Si(CHH (II)
(CHSiO-[(CH)HSiO][(CH)SiO]-Si(CH (III)
(式中、下付き文字xは10~100の範囲の値を有し、下付き文字yは3~30の範囲の値を有し、下付き文字zは3~100の範囲の値を有する)から選択される化学構造を有する1種以上のポリシロキサンを含む、請求項1又は2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項4】
前記水素化ケイ素官能性架橋剤が、化学構造(II)を有する、請求項3に記載の熱伝導性組成物。
【請求項5】
前記アルキルトリアルコキシシランが、C6~C12アルキルトリメトキシシランから選択され、前記モノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンが、平均化学構造(IV)を有するモノ-トリメトキシ末端ジメチルポリシロキサンから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
(CHSiO[CHSiO]Si(OCH (IV)
(式中、下付き文字aは、30~110の範囲の値である)
【請求項6】
前記組成物が酸化マグネシウムフィラーを含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項7】
前記組成物が窒化ホウ素フィラーを含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項8】
前記追加の熱伝導性フィラーが酸化亜鉛である、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物。
【請求項9】
別の材料上に請求項1~8のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物を含む物品。
【請求項10】
前記熱伝導性組成物が、電子デバイスの発熱部品と、前記電子デバイスのヒートシンク、冷却プレート及び金属カバーのうちの1つ以上との間にあり、それらと熱接触している、請求項9に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化アルミニウムフィラーを含有する熱伝導性シリコーン組成物に関する。
【0002】
序論
電子機器の小型化及び強力化により、業界では、そのようなデバイスで発生した熱を放散するのに有用な熱伝導性材料に対する需要が増加している。例えば、電気通信産業では、5Gネットワークへの世代交代を経験しており、小型の高度に集積化された電気機器を必要とされており、必要な電力が倍増している(600ワットから1200ワット)。小型の装置における高電力によって発生した熱を効率的に放散しなければ、装置が損傷してしまう。熱伝導性界面材料は、多くの場合、発熱部品と放熱部品とを熱的に結合させるために電子機器に使用される。結合された構成要素間で熱を効率的に伝達するために、熱伝導性組成物は、望ましくは、ASTM法D5470に従って測定して、少なくとも8.0ワット/メートルケルビン(W/mK)の熱伝導率を有する。同時に、電子デバイスが小型化するにつれて、迅速な製造プロセス中に適切な部品に熱伝導性を正確かつ精密に適用することがより重要になる。その点に関して、熱伝導性材料は、本明細書で以下に記載される手順を使用して、標準的な30立方センチメートルEFDシリンジパッケージを用いて0.62メガパスカル(90ポンド/平方インチ)の圧力で測定した場合に、40グラム/分(g/分)を超える押出速度(ER)を有することが望ましい。
【0003】
熱伝導性材料においてそのような熱伝導率及び押出速度を同時に達成することは困難である。熱伝導性フィラーの量を増加させると、熱伝導率を上昇させることができるが、粘度も高くなり、押出速度が抑制される。窒化ホウ素は高熱伝導性フィラーであるため、粘度が高くなりすぎるのを回避するのに十分低い濃度で組成物の熱伝導率を高めることができると考えられる。しかしながら、窒化ホウ素は、板状の形状を有するため、40体積%以上の濃度であっても、熱伝導性組成物の粘度が高くなりすぎて、40g/分を超えるERを達成することができない。
【0004】
40g/分を超えるER及び少なくとも8.0W/mKの熱伝導率を同時に達成することができる熱伝導性組成物を特定する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、40g/分を超える押出速度及び少なくとも8.0W/mKの熱伝導率を同時に達成する熱伝導性材料を提供する。更に、熱伝導性材料は反応性であり、硬化して硬化した熱伝導性材料になることができる。
【0006】
本発明は、部分的には、粒径が30マイクロメートル以上である球状及び不規則形状の窒化アルミニウムフィラーの特定の混合物を、粒径が1~5マイクロメートルの特定量の球状の酸化アルミニウムフィラー及び平均粒径が0.1~0.5マイクロメートルの追加量のフィラーと混和することができ、窒化ホウ素が存在しない場合でも、40g/分を超えるER及び少なくとも8.0W/mKの熱伝導率を同時に達成する熱伝導性材料を提供することを発見した結果である。
【0007】
第1の態様では、本発明は、熱伝導性組成物であって、
(a)(i)30~400ミリパスカル秒の範囲の粘度を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルポリシロキサンと、(ii)水素化ケイ素官能性架橋剤と、及び(iii)ヒドロシリル化触媒とを含み、架橋剤からの水素化ケイ素官能性とビニル官能性とのモル比が0.5:1~1:1の範囲である、硬化性シリコーン組成物と、(b)アルキルトリアルコキシシラン及びモノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンの一方又は両方を含むフィラー処理剤と、(c)熱伝導性フィラー混合物であって、40重量パーセント以上の窒化アルミニウムフィラーであって、球状及び不規則形状の窒化アルミニウム粒子の混合物を含み、球状粒子及び不規則形状の粒子の両方の平均粒径が30μm以上であり、30μm以上の粒径の球状窒化アルミニウムフィラーが、30μm以上の粒径の窒化アルミニウムフィラーの総重量の40~60重量%の濃度で存在する、窒化アルミニウムフィラーと、(ii)25重量%~35重量%の、平均粒径が1~5マイクロメートルの球状酸化アルミニウム粒子と、(iii)10重量%~15重量%の、平均粒径が0.1~0.5マイクロメートルの追加の熱伝導性フィラーを含み、(iv)場合により、平均粒径が20マイクロメートル超の窒化ホウ素フィラーを含む、熱伝導性フィラーとを含み、各熱伝導性フィラーの重量%は、特に明記しない限り、組成物重量に対するものであり、熱伝導性フィラー混合物の総量は、組成物重量の90~97重量%である、熱伝導性組成物である。
【0008】
第2の態様では、本発明は、別の材料上に第1の態様の熱伝導性組成物を含む物品である。
【0009】
本発明の熱伝導性組成物は、例えば、電子デバイスの部品間の熱伝導性界面材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
試験方法は、日付が試験方法の番号と共に示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子が適用される。ASTMは、ASTMインターナショナル試験法(ASTM International methods)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0011】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0012】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。特に明記しない限り、全ての重量パーセント(重量%)値は組成物の重量に対するものであり、全ての体積パーセント(体積%)の値は組成物の体積に対するものである。
【0013】
個々のポリシロキサンの「粘度」は、特に明記しない限り、25セ氏温度(℃)でガラス毛細管キャノン-フェンスケ型粘度計を使用してASTMD445によって測定される。
【0014】
標準H、13C、及び29Si核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)分析により、ポリシロキサンの化学構造を決定する。操作ソフトウェアに従ってレーザ回折粒径分析器(CILAS920粒径分布測定装置又はベックマン・コールタLS 13 320 SW)を使用して、充填剤粒子の平均粒径をメジアン粒径(D50)として決定する。
【0015】
熱伝導性組成物は、それ自体がビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルポリシロキサン(PDMS)、水素化ケイ素(SiH)官能性架橋剤及びヒドロシリル化触媒を含む硬化性シリコーン組成物を含む。ビニルジメチルシロキシ末端PDMS及びSiH官能性架橋剤の相対濃度は、ビニル官能性に対する、架橋剤からのSiH官能性のモル比が0.5:1~1:1の範囲内であり、0.5:1以上、0.6:1以上、0.7:1以上、0.8:1以上、更には0.9:1以上であり得、同時に1:1以下であり、0.9:1以下、0.8:1以下、0.7:1以下、又は更には0.6:1以下であり得る。
【0016】
ビニルジメチルシロキシ末端PDMSは、30ミリパスカル秒(mPas)以上、好ましくは45mPas以上、60mPas以上の粘度を有し、更に90mPas以上、100mPas以上、120mPas以上、140mPas以上、160mPas以上、更には180mPas以上の粘度を有していてもよく、同時に400mPas以下、300mPas以下、200mPas以下、180mPas以下、更には160mPas以下、140mPas以下、120mPas以下、100mPas以下、80mPas以下、更には60mPas以下の粘度を有する。粘度が高すぎると、熱伝導性組成物の粘度が高すぎて、所望の押出速度が得られない。粘度が低すぎると、熱伝導性組成物は粘度が低すぎる危険性があり、機械的特性が不十分になり、チョークが発生する可能性がある。
【0017】
ビニルジメチルシロキシ末端PDMSは、望ましくは以下の化学構造(I)を有する。
Vi(CHSiO-[(CHSiO]-Si(CHVi (I)
(式中、「Vi」はビニル基(-CH=CH)を指し、nはジメチルシロキサン単位の平均数を指し、ビニルジメチルシロキシ末端PDMSの重合度(DP)である。)ビニルジメチルシロキシ末端PDMSの所望の粘度を達成するようにnを選択する。典型的には、nは、25以上の値であり、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上、60以上、70以上、80以上、更には90以上であり得ると同時に、典型的には、200以下、190以下、180以下、170以下、160以下、150以下、140以下、130以下、120以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、更には50以下である。
【0018】
望ましくは、ビニルジメチルシロキシ末端PDMSは、1.2~1.4重量%のビニル官能性を含む。
【0019】
好適なジビニルPDMS材料は、米国特許第5883215(A)号に教示されているように、停止のためのビニル末端ブロッカーを用いたシクロシロキサンの開環重合によって作製することができる。市販されている適切なジビニルPDMSとしては、GelestからDMS-V 21の名称で入手可能なポリシロキサンが挙げられる。
【0020】
SiH官能性架橋剤は、SiH官能性を含有するポリシロキサンである。望ましくは、SiH官能性架橋剤は、1分子当たり2つ以上、更には3つ以上のSiH官能性を含有する。好ましくは、SiH官能性架橋剤は、SiH官能性架橋剤の重量に基づいて、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上であり、0.6重量%以上、0.7重量%以上、0.8重量%以上、更には0.9重量%以上であり得、同時に1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、更には0.4重量%以下、又は0.3重量%以下であり得るSiHの濃度を有する。
【0021】
SiH官能性架橋剤は、望ましくは、(II)及び(III)から選択される化学構造を有する1種以上のポリシロキサンを含むことができる。
H(CHSiO-[(CH)SiO)]-Si(CHH (II)
(CHSiO-[(CH)HSiO][(CH)SiO]-Si(CH (III)
[式中、
下付き文字xは、10~100の範囲の値を有し、10以上、15以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、更には80以上であり得、同時に、一般に100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、30以下、更には20以下であり得、
下付き文字yは、3~30の範囲の値を有し、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上、更には25以上であり得、同時に、一般に30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、更には4以下であり得、
下付き文字zは、3~100の範囲の値を有し、3以上、5以上、10以上、15以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、更には80以上であり得、同時に、一般に100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、30以下、20以下、10以下、5以下、更には4以下であり得る。
【0022】
適切な市販のSiH官能性架橋剤としては、全てGelestから入手可能なHMS-071、MHS-301及びDMS-H11の名称で入手可能なものが挙げられる。
【0023】
ヒドロシリル化触媒は、任意のヒドロシリル化触媒であり得る。望ましくは、ヒドロシリル化触媒は、Speier触媒(H2PtCl6)及び/又はKarstedt触媒(ジビニル含有ジシロキサンから誘導され、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体又は1,3-ジエテニル-1,1,3,3テトラメチルジシロキサン白金錯体としても識別される有機白金化合物)などの白金系触媒を含む。ヒドロシリル化触媒は、カプセル化(典型的には、フェニル樹脂中で)又は非カプセル化であり得る。ヒドロシリル化触媒の濃度は、典型的には、熱伝導性組成物の重量に対して0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.03重量%以上、0.04重量%以上、更には0.05重量%以上の濃度で存在し、同時に0.10重量%以下、0.09重量%以下、0.08重量%以下、0.07重量%以下、又は更には0.06重量%以下の濃度で存在する。
【0024】
熱伝導性組成物はまた、1種以上のフィラー処理剤を含む。フィラー処理剤は、アルキルトリアルコキシシラン及びモノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンの一方又は両方を含む。
【0025】
アルキルトリアルコキシシランは、望ましくは、6~20個の炭素(C6~20)アルキルトリメトキシシラン、好ましくはC8~C12アルキルトリメトキシシランであり、n-デシルトリメトキシシランであり得る。適切なアルキルトリアルコキシシランとしては、n-デシルトリメトキシシランが挙げられ、Dow,Inc.からDOWSIL(商標)Z-6210シラン(DOWSILはThe Dow Chemical Companyの商標である)として、又はGelestからSID2670.0の名称で入手可能である。
【0026】
適切なモノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンの例は、化学構造(IV)を有する。
(CHSiO-[(CHSiO]-Si(OR’) (IV)
(式中、下付き文字aは、20以上の値を有し、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、更には90以上であり得、同時に、典型的には、150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、更には30以下である。)aが20以上(重合度が20以上)であると、aが20未満の場合と比較して、モノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンの安定性が高くなるため好ましい。しかしながら、より短い鎖長の方が、長い鎖長よりも粘度低下の効率が良好であるので、aの値を150未満に維持することが望ましい。R’はアルキル基であり、好ましくは1~12個の炭素原子を含有し(C1~C12)、最も好ましくはメチルである。
【0027】
適切なモノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンは、米国特許出願公開第2006/0100336号の教示に従って合成することができる。
【0028】
望ましくは、アルキルトリアルコキシシランは、典型的には、熱伝導性組成物の重量に対して、1.8重量%以上、2.0重量%以上、2.5重量%以上、3.0重量%以上、更には3.5重量%以上の濃度で存在し、同時に、典型的には、4.0重量%以下、3.5重量%以下、又は更には3.0重量%以下の濃度で存在する。
【0029】
同時に、又はその代わりに、モノ-トリアルコキシシロキシ末端ジメチルポリシロキサンは、望ましくは、熱伝導性組成物の重量に対して、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、又は更には0.4重量%以上の濃度で存在し、同時に、典型的には0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、又は0.2重量%以下の濃度で存在する。
【0030】
熱伝導性組成物は、熱伝導性フィラー混合物を更に含む。熱伝導性フィラー混合物は、熱伝導性組成物中の全ての熱伝導性フィラーを含有する。熱伝導性フィラーとは、熱伝導性組成物を通る熱伝導を促進する微粒子を指す。
【0031】
フィラー混合物は、球状及び不規則形状の窒化アルミニウム粒子の混合物を含む。「球状」形状の粒子は、1.0+/-0.2のアスペクト比を有する粒子を指す。走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)イメージングを使用し、少なくとも10個の粒子の最長寸法(長軸)と最短寸法(短軸)の平均比を取ることで、粒子のアスペクト比を決定する。「不規則な」形状の粒子は、1.0+/-0.2以外のアスペクト比を有し、SEM画像化によって明らかな少なくとも3つの面を有する(2つの面を有する「板」から粒子を区別する)。
【0032】
球状及び不規則な窒化アルミニウムフィラーは、いずれも平均粒径が30マイクロメートル以上であるが、同時に、典型的には、平均粒径が200マイクロメートル以下、175マイクロメートル以下、150マイクロメートル以下、125マイクロメートル以下、100マイクロメートル以下であるか、又は平均粒径が90マイクロメートル以下、又は80マイクロメートル以下であり得る。
【0033】
この混合物からの窒化アルミニウムフィラーの濃度、望ましくはあらゆる窒化アルミニウムフィラーの合計としての熱伝導性組成物中の窒化アルミニウムフィラーの濃度は、40重量%以上であり、41重量%以上、42重量%以上、43重量%以上、44重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上であり得、60重量%以上を有し得るが、同時に、典型的には、63重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下であり得、44重量%以下、更には43重量%以下であり得る。
【0034】
球状窒化アルミニウム粒子は、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、又は更に55重量%以上の濃度で存在し、同時に60重量%以下の濃度で存在し、粒径が30マイクロメートル以上の窒化アルミニウムフィラーの総重量に対する重量%で、55重量%以下、50重量%以下、更に45重量%以下であり得る。特に、熱伝導性組成物は、上述の球状及び不規則形状の窒化アルミニウム粒子のこの特定の混合物に加えて窒化アルミニウムフィラー粒子を有し得、又は熱伝導性組成物は、上述の球状及び不規則形状の窒化アルミニウム粒子の特定の混合物に加えて窒化アルミニウムフィラー粒子を含み得ない。
【0035】
熱伝導性フィラー混合物は、球状酸化アルミニウム粒子を更に含む。球状酸化アルミニウム粒子は、平均粒径が1マイクロメートル以上であり、2マイクロメートル以上、3マイクロメートル以上、更には4マイクロメートル以上であり得、同時に、平均粒径は5マイクロメートル以下、4マイクロメートル以下、更には3マイクロメートル以下、又は2マイクロメートル以下であり得る。球状酸化アルミニウム粒子の濃度は、熱伝導性組成物の重量を基準として、25重量%以上であり、30重量%以上であってもよく、同時に35重量%以下であり、30重量%以下であってもよい。
【0036】
熱伝導性フィラー混合物は、平均粒径が0.1マイクロメートル以上、0.2マイクロメートル以上、0.3マイクロメートル以上、又は更に0.4マイクロメートル以上の1種以上の追加の熱伝導性フィラーを更に含み、同時に平均粒径が0.5マイクロメートル以下、0.4マイクロメートル以下、0.3マイクロメートル以下、又は更に0.2マイクロメートル以下であり得る。追加の熱伝導性フィラーの総量は、熱伝導性組成物の重量に対して、重量%で、10重量%以上であり、11重量%以上、12重量%以上、13重量%以上、更には14重量%以上の濃度で存在することができ、同時に15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下であり、12重量%以下、更には11重量%以下であり得る。金属窒化物及び金属酸化物(酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等)などの当技術分野で公知のあらゆるフィラーから追加の熱伝導性フィラーを選択する。望ましくは、追加の熱伝導性フィラーは酸化亜鉛である。
【0037】
場合により、熱伝導性フィラー混合物は、平均粒径が20マイクロメートルを超える窒化ホウ素フィラーを含み得る。同時に、典型的には、窒化ホウ素フィラーは、平均粒径が200マイクロメートル以下、175マイクロメートル以下、150マイクロメートル以下、125マイクロメートル以下、更には100マイクロメートル以下、75マイクロメートル以下、又は50マイクロメートル以下である。
【0038】
熱伝導性フィラーは、言及したものに加えて熱伝導性フィラーを含んでもよく、又は言及したもの以外の熱伝導性フィラーを含まなくてもよい。熱伝導性フィラー混合物は、望ましくは、上述の窒化アルミニウムフィラー、酸化アルミニウム粒子、追加の熱伝導性フィラー、及び任意の窒化ホウ素フィラーからなる。熱伝導性フィラー混合物(及び熱伝導性組成物全体)は、酸化マグネシウムフィラー、窒化ホウ素フィラー、又は酸化マグネシウムフィラーと窒化ホウ素フィラーの両方を含まなくてもよい。
【0039】
熱組成物中の熱伝導性フィラー混合物の濃度は、熱伝導性組成物重量に基づいて90重量%以上であり、91重量%以上、92重量%以上、93重量%以上、94重量%以上、95重量%以上、更には96重量%以上であり得、同時に97重量%以下であり、96重量%以下、更には95重量%以下であり得る。
【0040】
熱伝導性組成物は、以下の追加の成分:抑制剤(例えば、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン)、熱安定剤及び/又は顔料(例えば、銅フタロシアニン粉末)、チキソトロピー剤、ヒュームドシリカ(好ましくは、表面処理された)、及びスペーサ添加剤(例えば、ガラスビーズ)のうちの1種又は2種以上の任意の1つ又は任意の組み合わせを更に含んでもよく、又はそれらを含まなくてもよい。
【0041】
熱伝導性組成物は、標準的な30立方センチメートルのEFDシリンジパッケージを用いて0.62メガパスカル(90ポンド/平方インチ)の圧力で測定して、40g/分を超える押出速度を達成する(更なる詳細は、以下の押出速度特性評価で提供される)。このような特性は、熱伝導性組成物を他の材料上に塗布することを容易に不要にする。
【0042】
同時に、熱伝導性組成物により、LonGwin Model LW 9389 TIM熱抵抗及び伝導率測定装置を使用してASTM D-5470に従って測定して、少なくとも8.0W/mKの熱伝導率を有するという目的が達成される。このような高い熱伝導率を有し、容易に不要になることにより、熱伝導性組成物は熱界面材料(TIM)として特に有用になるTIMは、デバイスの2つの物品又は構成要素を熱的に結合するために使用される。例えば、TIMは、特に電子機器において、熱発生装置をヒートシンク、冷却プレート、金属カバー又は他の放熱部品と熱的に結合するのに有用である。そのような用途では、熱伝導性組成物は、少なくとも2つの構成要素、典型的には発熱装置と、ヒートシンク、冷却プレート、金属カバー又は他の放熱構成要素のうちの少なくとも1つとの間に存在し、それらと熱接触している。
【実施例
【0043】
表1は、本明細書で以下に記載される試料の熱伝導性組成物に使用するための材料を示す。注:「Vi」はビニル基を指す。「Me」はメチル基を指す。SYL-OFF、及びDOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である。
【0044】
【表1】

シリコーン樹脂は、78モル%のモノフェニルシロキサン単位、及び22モル%のジメチルシロキサン単位であり、軟化点は80~90℃、55重量%のヘキサメチルジシラザン処理ヒュームドシリカである。触媒は、重量で0.16%のPt含有量を有する。
【0045】
試料調製
試料の配合を表2及び3に示し、各成分の量をグラム(g)で報告する。注:「球状AlNの重量%」は、30マイクロメートル以上の全てのAlN粒子に対して30マイクロメートル以上である球状AlNの重量%を指す。
【0046】
成分を一緒に混合するために、Flack Components由来のSpeedMixer(商標)DAC 400 FVZを使用して試料を調製する。SpeedMixerのカップに、Viポリマー、架橋剤、処理剤、並びにC2及びC3 TCフィラーを添加する。1000回転/分(RPM)で20秒間、次いで1500RPMで20秒間混合する。半分のC1 TCフィラーを添加し、1000回転/分(RPM)で20秒間、次いで1500RPMで20秒間混合する。残りのC1 TCフィラーを添加し、同様に混合する。組成物をカップ内で掻き取って確実に混合した後、阻害剤E-1及び顔料F-1を添加し、同様に混合して熱伝導性組成物試料を得る。
【0047】
試料の特性評価
以下の試験方法を使用して、押出速度及び熱伝導率について各試料を特性評価する。
【0048】
押出し速度の特性評価。Nordson EFD分注装置を使用して、試料の押出速度(「ER」)を測定する。試料材料を、2.54ミリメートルの開口部を有する30立方センチメートルのシリンジ(Nordson Company製のEFDシリンジ)にパッケージングする。シリンジに0.62MPaの圧力を加えることによって、開口部を通して試料を分注する。1分後に押し出された試料の質量(グラム)は、押出速度(グラム/分)に相当する。本発明の目的は、40g/分を超える、好ましくは50g/分以上、更により好ましくは60g/分以上の押出速度を達成することである。特に、いくつかの試料は、押出しできなかった粉末状ペーストであったため、ERが0であると報告されている(TCは測定されなかった)。
【0049】
熱伝導率特性評価。Longwin Science and Technology Corporation,TaiwanからのLonGwin Model LW 9389 TIM熱抵抗及び伝導率測定装置を使用して、ASTM D-5470に従って各試料の熱伝導率(「TC」)を測定する。本発明の目的は、少なくとも8.0ワット/メートルケルビン(W/mK)の熱伝導率を達成することである。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
データ分析/考察
表2の配合物は全て、40g/分を超えるER及び8.0W/mKを超えるTCの両方の目的を達成する。一方、表3の配合物は、これらの目的の少なくとも1つを達成することができない。
【0053】
試料1~7は、30マイクロメートル以上の全窒化アルミニウム粒子に対する、30マイクロメートル以上の球状窒化アルミニウム球状窒化アルミニウム粒子の重量%を40重量%~60重量%の範囲で変化させ、この範囲で配合を変化させる窒化アルミニウム粒子の種々のサイズを有する熱伝導性組成物を示す。
【0054】
試料1~5は窒化ホウ素粒子も含むが、試料6及び7は含まない。これらの試料は、窒化ホウ素の有無にかかわらず、配合物において目的のTC及びERが達成可能であることを実証している。これらの試料はまた、窒化ホウ素を含むことがより高いTC配合物をもたらしたことを示しており、これは一般に望ましい。
【0055】
試料A~Cは、30マイクロメートル以上の不規則形状の窒化アルミニウム粒子のみを有する配合物を示し、30マイクロメートル以上のサイズ不規則な形状の窒化アルミニウムのみが存在する場合、ERが40g/分未満であることを明らかにする。
【0056】
試料D、E、並びにG~I及びMは、30マイクロメートル以上の球状窒化アルミニウム粒子のみを含む配合物を示し、これらの配合物においては、TC値が8.0W/mK未満であることを明らかにする。配合物G~Iは、TCを増加させようとするために窒化ホウ素、酸化マグネシウム又は酸化アルミニウムを添加する効果を調査しているが、8.0W/mKを超えるTC値が依然として得られていないことを明らかにする。
【0057】
試料Fは、球状及び不規則形状の窒化アルミニウム粒子の混合物を有するが、球状粒子の重量%が60重量%をわずかに超えて67重量%を超える配合物を示す。配合物は、押し出すことができない粉末状のペーストである。
【0058】
試料Jは、40~60重量%の間の球状粒子の重量%を有する球状及び不規則な形状の窒化アルミニウム粒子の混合物を有する配合物を示すが、1~5マイクロメートルの粒径範囲の球状酸化アルミニウムの代わりに不規則な形状の酸化アルミニウムを使用する。得られた配合物は、押し出すことができない粉末状ペーストである。
【0059】
試料K及びLは、30マイクロメートル以上の粒径を有するが、40~60重量%を上回るか又は下回る重量%の球状粒子である球状及び不規則な窒化アルミニウム粒子のブレンドを使用する配合物を示す。得られたTC値は8.0W/mK未満である。
【国際調査報告】