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特表2024-502544多目的フェノール不含有直接感熱記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】多目的フェノール不含有直接感熱記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/333 20060101AFI20240115BHJP
   B41M 5/42 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B41M5/333 220
B41M5/42 210
B41M5/42 220
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023534746
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 US2020064342
(87)【国際公開番号】W WO2022125104
(87)【国際公開日】2022-06-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523209830
【氏名又は名称】アプヴィオン エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、マーク アール.
【テーマコード(参考)】
2H026
【Fターム(参考)】
2H026AA07
2H026AA28
2H026BB02
2H026BB24
2H026BB39
2H026FF11
2H026FF15
(57)【要約】
非フェノール系直接感熱記録媒体は、ロイコ染料と、1,3-ジフェニル尿素(DPU)および尿素ウレタン(UU)を含む複数の非フェノール系顕色剤とを含有する熱応答層を有する。この化学物質により、水浸漬、ポリ塩化ビニルの肉包装フィルムとの接触、沸騰水、乾熱および湿熱、太陽光、手指消毒剤との接触など、複数の異なる種類の環境条件または薬剤に耐えることができる多目的記録材料が可能になる。独特の非フェノール系化学物質により、製品の熱応答層のコート重量は、1.48g/m未満という超軽量にすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体であって、
基材と、
前記基材によって支持された、ロイコ染料および複数の顕色剤を含む、熱応答層と
を備え、
前記記録媒体は、実質的にフェノールを含有せず、
前記複数の顕色剤は、1,3-ジフェニル尿素(DPU)および尿素ウレタン(UU)を含む、記録媒体。
【請求項2】
前記熱応答層と前記基材との間にベースコート層をさらに備える、請求項1に記載の媒体。
【請求項3】
前記基材によって支持されるトップコートをさらに備え、前記熱応答層が前記トップコートと前記基材との間に配置される、請求項1に記載の媒体。
【請求項4】
前記熱応答層は、1.48g/m未満のコート重量を有する、請求項1に記載の媒体。
【請求項5】
前記熱応答層の前記コート重量は、少なくとも0.9g/mである、請求項4に記載の媒体。
【請求項6】
前記DPUおよび前記UUは、前記熱応答層全体に分散されている、請求項1に記載の媒体。
【請求項7】
前記熱応答層には、DPUおよびUU以外の顕色剤が実質的に存在しない、請求項1に記載の媒体。
【請求項8】
前記DPUおよび前記UUは、1/3~3の範囲の相対重量比で前記熱応答層中に存在する、請求項1に記載の媒体。
【請求項9】
前記相対重量比は、1/2~2の範囲である、請求項8に記載の媒体。
【請求項10】
前記相対重量比は、1である、請求項9に記載の媒体。
【請求項11】
11.7mJ/mmのサーマルプリンタエネルギー設定で6インチ/秒(ips)の印刷速度で印刷したときの前記記録媒体の印刷品質が、少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項1に記載の媒体。
【請求項12】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を水に24時間浸漬し、その後取り出して乾燥させた後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項11に記載の媒体。
【請求項13】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を水に浸漬し、その後7ポンドの重量下で24時間ポリ塩化ビニルの肉包装フィルムと接触して配置し、その後取り出して乾燥させた後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項11に記載の媒体。
【請求項14】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を沸騰水に20分間浸漬し、その後取り出して乾燥させた後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項11に記載の媒体。
【請求項15】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を60℃に24時間加熱し、その後取り出して冷却した後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項11に記載の媒体。
【請求項16】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を40℃かつ相対湿度90%の空気に24時間曝露し、その後取り出して冷却した後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項11に記載の媒体。
【請求項17】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体が、0.67W/mで7時間促進太陽光試験を受け、その後取り出した後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項11に記載の媒体。
【請求項18】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、70%エチルアルコールベースの手指消毒剤を1滴前記印刷された記録媒体上に滴下して乾燥させた後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項11に記載の媒体。
【請求項19】
前記媒体は、実質的にフェノールを含まず、
前記基材は、可撓性であり、
前記DPUおよび前記UUは両方とも、前記熱応答層全体に分散されており、
前記DPUおよび前記UUは、1/3~3の範囲の相対重量比で前記熱応答層中に存在し、
11.7mJ/mmのサーマルプリンタエネルギー設定で6インチ/秒(ips)の印刷速度で印刷したときの前記記録媒体の印刷品質が、少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項1に記載の媒体。
【請求項20】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を水に浸漬し、その後7ポンドの重量下で24時間ポリ塩化ビニルの肉包装フィルムと接触して配置し、その後取り出して乾燥させた後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられ、
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を60℃に24時間加熱し、その後取り出して冷却した後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられ、
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を40℃かつ相対湿度90%の空気に24時間曝露し、その後取り出して冷却した後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項19に記載の媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の直接感熱記録技術によって記録または印刷するのに適したシート状記録材料に関するものである。本発明はまた、直接感熱記録媒体に関するものであり、特に、熱活性化印刷機構を提供するためにロイコ染料および酸性顕色剤(現像剤)を組み込んだ媒体に適用される。本発明は、関連する方法、システム、および物品にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
直接感熱記録では、(コーティングされたサーモクロミック紙、感熱紙、感熱記録材料または媒体、または熱応答性記録材料と呼ばれることもある)記録材料を、選択された位置で、サーマルプリントヘッドの下を、あるいはサーマルプリントヘッドを横切って材料を通過させることにより選択的に加熱することによって画像が生成される。記録材料は、熱応答層のコーティングを含み、画像は、熱応答層の色の熱誘起変化によって提供される。直接感熱記録の一般的な用途には、レジのレシート、食品またはその他の商品用のラベル、またはイベントのチケットが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0003】
数多くの種類の直接感熱記録媒体が知られている。例えば、特許文献1~7を参照されたい。このような事例では、ロイコ染料などの塩基性の無色または淡色の発色材料と、酸性顕色剤材料が基材上のコーティング内に含まれており、適切な温度に加熱されると、溶融または軟化して材料が反応できるようになり、それにより、熱が加えられた場所に色付きのマークまたは画像が生成される。熱応答性記録材料は、特徴的な熱応答を有し、選択的な熱曝露により十分な強度またはコントラストの着色画像を生成することが望ましい。
【0004】
このような記録材料の使用方法によっては、特定の汚染物質または環境条件にさらされる可能性がある。例えば、製薬用途でラベルとして使用される直接感熱媒体は、手指消毒液にさらされる可能性がある。他の用途で使用される直接感熱媒体は、いくつか挙げると、汗(水)、熱および/または湿気、太陽光、または肉の包装フィルムなど、そのような用途に特有の環境因子または条件にさらされる可能性がある。理想的には、直接感熱記録材料に感熱印刷されたバーコードまたはその他の画像は、そのような薬剤にさらされても視認可能で機能し続ける必要がある。しかしながら、そのような機能を直接感熱製品内に設計することは困難な場合があり、常に可能または現実的であるとは限らない。
【0005】
これらの問題とは別に、直接感熱記録材料中にフェノールベースの化学物質が存在することについての懸念が何年も前に提起された。もともと、フェノール材料は、感熱記録材料の熱応答層、より具体的には、その層内のロイコ染料と反応して熱誘起の色の変化を引き起こす顕色剤化学物質中に存在していた。これらの懸念に対処するために、フェノール不含有の代替の顕色剤化学物質が開発された。このような化学物質の1つのグループは、Ciba Specialty Chemical Corp.によって、約20年前、Pergafast 201(3-(3-トシルウレイド)フェニル p-トルエンスルホネート)を含むPergafast(商標名)のブランドで導入された。この顕色剤は、フェノール不含有の直接感熱記録材料の製造に現在でも依然として広く使用されている。他の既知のフェノール不含有の顕色剤としては、日本曹達株式会社が販売するNKK 1304(N-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド)、トルブタミド(1-ブチル-3-(4-メチルフェニル)スルホニル尿素)、およびダプソン(4,4’-ジアミノジフェニルスルホン)が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,539,375号明細書
【特許文献2】米国特許第3,674,535号明細書
【特許文献3】米国特許第3,746,675号明細書
【特許文献4】米国特許第4,151,748号明細書
【特許文献5】米国特許第4,181,771号明細書
【特許文献6】米国特許第4,246,318号明細書
【特許文献7】米国特許第4,470,057号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、直接感熱記録材料の熱応答層に使用するための独特の顕色剤化学物質を発見した。非フェノール系であることに加えて、その独特の化学物質を利用して、複数の異なる種類の環境条件または薬剤に耐えることができる直接感熱記録材料を作ることができ、その点でこれらの記録材料は多目的として説明され得る。独特の化学物質は、2つの非フェノール系顕色剤を組み合わせて使用し、どちらも単独では(適切なロイコ染料と併用しても)このような特性を持つ直接感熱記録材料を生成することはできないが、組み合わせると驚くべき予想外の結果を提供することができる。2つの顕色剤は、1,3-ジフェニル尿素(「DPU」)と尿素ウレタン(「UU」)である。さらに、独特の化学物質により、製品の熱応答層のコート重量を超軽量、つまり極薄にすることが可能であることも発明者らは発見した。これは、製品質量の削減、および環境への影響を改善するための直接感熱記録材料に関連する使用後の廃棄物流の削減を含む関連する多くの利点を可能にする。
【0008】
したがって、発明者らは、フェノール不含有直接感熱記録材料または媒体の新しい系統を開発した。これらの材料は、直接熱画像処理用に構成されており、そのようにして生成された熱画像は、複数の異なる環境条件または要因に耐えるのに十分堅牢であり得る。これらの材料は、2つの非フェノール系顕色剤を組み合わせて使用するが、いずれも単独では所望の多目的機能を備えた直接感熱記録材料を生成することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、発明者らは、本明細書において、とりわけ、基材と、基材によって支持される熱応答層とを含む記録媒体を開示する。記録媒体は、実質的にフェノールを含まず、感応答性層は、ロイコ染料と、1,3-ジフェニル尿素(DPU)および尿素ウレタン(UU)を含む複数の顕色剤とを含む。
【0010】
記録媒体はさらに、熱応答層と基材との間にベースコート層を含み、熱応答層がトップコートと基材との間に配置されるように基材によって支持されるトップコートを含み得る。熱応答層は、1.48g/m(1lb/3300ft)未満、または0.9g/mから1.48g/m未満の範囲のコート重量を有し得る。DPUおよびUUは、熱応答層全体に分散され得る。DPUおよびUU以外の顕色剤は、熱応答層中に実質的に存在し得ない。DPUおよびUUは、1/3~3、または1/2~2の範囲に入る相対重量比、または実質的に1とすることができる相対重量比で熱応答層中に存在し得る。
【0011】
11.7mJ/mmのサーマルプリンタエネルギー設定で、6インチ/秒(ips)の印刷速度、すなわち略15cm/秒で印刷したときの記録媒体の印刷品質は、少なくとも1.5の(650nm、または670nm、または650nmと670nmの両方の波長での)ANSI値によって特徴付けられ得る。印刷された記録媒体の印刷品質は、次のいずれか、またはいくつか、またはすべての後:印刷された記録媒体を水に24時間浸漬し、その後取り出して乾燥させた後;印刷された記録媒体を水に浸漬し、その後7ポンド(略3.2kg)の重量下で24時間ポリ塩化ビニルの肉包装フィルムと接触して配置し、その後取り出して乾燥させた後;印刷された記録媒体を沸騰水に20分間浸漬し、その後取り出して乾燥させた後;印刷された記録媒体を60℃に24時間加熱し、その後取り出して冷却した後;印刷された記録媒体を40℃かつ相対湿度90%の空気に24時間曝露し、その後取り出して冷却した後;印刷された記録媒体が、0.67W/mで7時間促進太陽光試験を受け、その後取り出した後;または70%エチルアルコールベースの手指消毒剤を1滴印刷された記録媒体上に滴下して乾燥させた後でも、依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられ得る。
【0012】
発明者らはまた、可撓性基材と、基材によって支持される熱応答層とを含み、熱応答層は、ロイコ染料と、DPUおよびUUを含む複数の顕色剤を含む、実質的にフェノールを含有しない記録媒体を開示する。DPUおよびUUは両方とも、熱応答層全体に分散されることができ、1/3~3、または1/2~2の範囲に入る相対重量比、または実質的に1である相対重量比で熱応答層中に存在し得る。11.7mJ/mmのサーマルプリンタエネルギー設定で6インチ/秒(ips)の印刷速度で印刷した場合の記録媒体の印刷品質は、少なくとも1.5の(650nm、または670nm、または650nmと670nmの両方の波長での)ANSI値によって特徴付けられ得る。
【0013】
印刷された記録媒体の印刷品質は、次のいずれか、いくつか、またはすべてを行った後:印刷された記録媒体の印刷品質は、印刷された記録媒体を水に浸漬し、その後7ポンドの重量下で24時間ポリ塩化ビニルの肉包装フィルムと接触して配置し、その後取り出して乾燥させた後;印刷された記録媒体を60℃に24時間加熱し、その後取り出して冷却した後;または印刷された記録媒体を40℃かつ相対湿度90%の空気に24時間曝露し、その後取り出して冷却した後でも、依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられ得る。
【0014】
発明者らは、多数の関連する方法、システム、および物品を開示している。
【0015】
本開示のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、いかなる場合においても、上記の概要は、特許請求された主題に対する制約として解釈されるべきではなく、その主題は、(出願手続き中に補正されるかもしれないが)添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるものである。
【0016】
本発明の物品、システム、および方法は、添付の図面を参照してさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】直接感熱記録材料または媒体のロールの概略斜視図である。
図2】直接感熱記録材料の拡大概略正面図兼概略断面図である。
【0018】
図面において、同様の参照番号は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上で述べたように、発明者らは、直接感熱記録材料に使用するための、フェノール不含有の独特の顕色剤化学物質を発見した。新しい化学物質は、2つの顕色剤の組み合わせで構成されており、適切なロイコ染料と併用すると、複数の環境曝露試験に合格できる多目的直接感熱記録材料を生成できるが、そうではなく同一の感熱記録材料を個別に使用しても、同じ環境曝露試験に合格することはできない。実際、2つの顕色剤のうちの1つを適切なロイコ染料と単独で使用すると、環境曝露試験が行われる前に感熱プリンタで画像を作成すると、バーコードの機械可読性の最低基準すら満たさない画像を生成する直接感熱記録材料を生じさせる。この独特の組み合わせの2つのフェノール不含有顕色剤は、1,3-ジフェニル尿素(「DPU」)と尿素ウレタン(「UU」)である。
【0020】
独特の化学物質により、製品の熱応答層のコート重量を超軽量、つまり極薄にすることも可能になる。コート重量が低いと、材料コスト、製造コストが下がり、製品全体の重量または質量が減る。製品質量の減少により、直接感熱記録材料に関連する使用後の廃棄物の流れも減少し、環境への影響が改善される。
【0021】
直接感熱記録材料は、多くの場合、紙またはその他の可撓性のある基材材料の連続ウェブを使用して、工業用サイズのコーティング機で大きなロールの形態で製造される。このような直接感熱記録材料104のロール100を図1に概略的に示す。製造後、ロール100は、スリット、切断、または他の標準的な操作によって、個々のシート、ラベル、またはより小さなロールに転換することができる。記録材料104の拡大側面図または断面図が図2に概略的に示され、構成要素層またはコーティングで構成される典型的な下部構造を示す。
【0022】
記録材料104は、基材110の少なくとも片面または主面110aにいくつかの異なるコーティングを塗布することによって作製することができる。主面110aを基材の前面と呼ぶことができ、露出した主面104aを記録材料104の前面とすることができる。反対側の主面104bは、記録材料の裏面とすることができる。簡単に言えば、基材110は、ベースコート層112、熱応答層114、およびトップコート層116を支持するようにコーティングされる。コーティングは、層114が層112、116の間に位置し、層112が層114と基材110の間に位置するように、図示の順序で塗布されることが好ましい。場合によっては、ベースコート112が省略されてもよいし、トップコート116が省略されてもよく、あるいはベースコートとトップコートの両方が省略されてもよい。コーティングは、ロールコーティング、ナイフコーティング、ロッドコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、スポットコーティングなどを含む任意の適切なコーティング技術によって形成することができる。さらに、追加の層およびコーティングを、記録材料の表側および/または裏側に追加または記録材料に含めることができる。例えば、以下にさらに説明するように、1つまたは複数のコーティングを基材の反対側、すなわち主面110bに塗布することができる。しかしながら、まずはここで、直接感熱記録材料104の他の要素についてより詳細に説明する。
【0023】
基材110は、その上に他の層をコーティングまたは塗布し、その後支持できる任意の材料とすることができる。基材材料の種類またはタイプは、重要ではない。一般的に、基材110は、シートまたはロールの形態であり、例えば、ウェブ、リボン、テープ、ベルト、フィルム、カードなどの支持部材とすることができるか、または支持部材を含むことができる。この点に関して、シートとは、2つの大きな(主)面寸法と、比較的小さな厚み寸法とを有する物品を指し、場合によっては、シートは、ロールを形成するように巻き取られ得る。その点に関して、基材110は、典型的には薄くて可撓性があるが、過度の破損を生ずることなくコーティング機内で受ける力および張力に耐えるのに十分な強度をもっている。基材110は、不透明、透明、または半透明であってもよく、着色されていても無着色であってもよい。基材材料は、例えば、紙および繊維状合成材料を含む繊維状とすることができる。それは、例えば、注型、押出、またはその他の方法で形成されたセロハンおよび合成ポリマーシートを含むフィルムとすることができる。適切なプラスチックフィルムとしては、ポリプロピレン(延伸ポリプロピレン(OPP)および二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)を含む)、ポリエチレン(PE)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルムが挙げられる。したがって、基材材料は、非セルロース系とすることができる。
【0024】
例示的な基材110は、中間サイズの原紙であってもよいし、それを含んでもよい。基材110の厚さは、その組成に依存し得るが、セルロース系材料の典型的な厚さ(キャリパー)範囲は、1.9~12ミル(例えば、50~300μm)、または他の適切な厚さである。紙は、35~200g/mの範囲の坪量を有することができるが、他の適切な坪量も使用することができる。紙はまた、表面サイズ剤(sizing agent)などの1つまたは複数の薬剤で処理されてもよい。サイズなしの原紙、従来のサイズの原紙、および軽く処理された原紙を含む、コートされていない原紙を使用することができる。基材110は、構造が単純であり、光沢のあるコーティングまたはその他の実質的な機能的なコーティングがなくてもよい。基材110は、例えば、1つまたは複数の別個の機能性コーティングがすでに塗布された多層構造または材料ではなく、その厚さ全体にわたって組成が実質的に均一であってもよい。しかしながら、場合によっては、図に示す1つまたは複数の他の層をその上にコーティングする準備として基材110を処理、準備、またはさもなければ加工することが望ましいこともある。
【0025】
ベースコート112は、他のコーティングが塗布される前に、基材110の表面110aに直接塗布され得る。ベースコート112は、場合によっては、断熱層、セパレータ層、熱反射層、隔離層、または下塗りとして特徴付けられるか、または説明することができる。熱応答層114の熱伝導率および基材110の熱伝導率の両方よりも低い熱伝導率を有するように層112を調整することによって、ベースコート112は、これらの他の2つの層の間にある程度の断熱を提供する。このような断熱は、サーマルプリントヘッド(図示せず)によって前面104aに伝えられる熱が、熱応答層114を介してより大きな基材110への熱伝導によって実質的に失われないことを保証することによって、画像品質、画像形成速度、またはその両方を促進する。
【0026】
ベースコート112は、The Dow Chemical Companyから入手可能な製品コードRopaque(商標名)TH-2000またはTH-500EFなどの中空球顔料(HSP)、または他の適切な材料を含んでもよい。HSPは、ベースコートの熱伝導率を下げるのに役立つ。分散液を基材の表面110a上にコーティングし、その後乾燥させるプロセスによって、ベースコート112を作製することができる。場合によっては、ベースコート112を製品構造から除去して省略することもできる。記録材料の一部として含まれる場合、断熱層は、2μm~12μmの範囲の厚さ、または他の適切な厚さを有し得る。
【0027】
熱応答層114は、ベースコート112の上にコーティングされてもよく、ベースコートが省略される場合には基材110の上にコーティングされてもよい。層114は、その代わりに、感熱発色層と呼ばれることもある。この層114は、感熱性(すなわち、十分な加熱により色が変化する)発色組成物を含む。発色組成物は、ロイコ染料または発色材料としても知られる発色染料(電子供与性染料前駆体)と酸性顕色剤の2つの主成分を有する。ロイコ染料および酸性顕色剤は、典型的には、1~10マイクロメートルの個々の粒径に粉砕され、結合剤中に分散され、層114全体にわたって均一かつ互いに連続した関係で分布される。任意の位置で十分に加熱すると、酸性顕色剤の粒子がロイコ染料の粒子と反応し、その結果、加熱部位の色が、通常は明るい色から暗い色に変化することができる。既知のシステムおよび材料は、特許文献1~7および米国特許第5,955,398号明細書に記載されている。
【0028】
酸性顕色剤は、好ましくは非フェノール系であり、既に上で説明したように、有利には、2つの異なる非フェノール系顕色剤材料、特に、1,3-ジフェニル尿素(「DPU」)および尿素ウレタン(「UU」)の組み合わせを含む。DPUは、その代わりに、1-3-ジフェニル尿素または1-3-ジフェニル尿素;N,N’-ジフェニル尿素;ジフェニル尿素;尿素、N,N’-ジフェニル-;カルバニリド;ジフェニルカルバミド;またはC1312Oなどの名前で呼ばれることもある。UUは、その代わりに、ウレタン尿素、ウレタン-尿素共重合体、ポリウレタン尿素、またはポリ(ウレタン尿素);ポリウレタン尿素エラストマー、またはポリ(ウレタン尿素)エラストマー;ポリ尿素-ウレタン;ポリ(尿素)ウレタン;ポリ(尿素-ウレタン)ポリマー;ポリ(尿素-ウレタン)熱硬化性樹脂;ポリ(エーテルウレタン尿素);ポリ(エステルウレタン尿素);ポリ(エステルウレタン)尿素エラストマー;またはC11などの名前で呼ばれることもある。
【0029】
熱応答層114に非フェノール系の顕色剤を使用する1つの理論的根拠は、フェノール不含有のレシート、ラベルなどに対する市場の需要を満たすことである。したがって、多くの場合、熱応答層114がフェノールを含有しないまたはフェノールを実質的に含有しないだけでなく、直接感熱記録材料104全体がフェノールを含有しないまたはフェノールを実質的に含有しないことが望ましいが、すべての場合に必要というわけではない。実質的にフェノール不含有という用語は、絶対的かつ完全にフェノール不含有の品目と、閾値以下の微量のフェノール系材料しか含まない品目の両方を含むために使用する。
【0030】
DPUもUUも、適切なロイコ染料と併用した場合、単独では特に注目に値しない。実際、UUは、他の顕色剤と併用せず、熱応答層に適切なロイコ染料と併用した場合、得られた直接感熱記録材料は、ダイレクトサーマルプリンタで画像を作成すると、バーコードの機械可読性の最小要件すら満たさない初期画像を生成する。一方、そのような生成物のUUが完全にDPUに置き換えられる場合、つまりDPUが層114内で唯一の顕色剤として単独で使用される場合、ダイレクトサーマルプリンタによって最初に生成される画像は、バーコードの機械可読性の最小要件を満たすが、以下でさらに説明するように、印刷されたサンプルが多数の環境曝露試験のいずれかにさらされた後では、もはやその機械可読性の最小要件を満たさない。驚くべきことに、DPUとUUを組み合わせて使用し、そして当然のことながら適切なロイコ染料と併用した場合、得られる直接感熱記録材料は、バーコードの機械可読性の最小要件を満たす熱生成画像を提供するだけでなく、印刷されたサンプルが、顕色剤としてDPUのみまたはUUのみを含有するその他の点では同一の記録材料では合格しない環境曝露試験を受けた後においてその画像品質を維持する。
【0031】
DPUとUUの組み合わせを使用する実施形態では、DPU、UU、および選択されたロイコ染料はそれぞれ、熱応答層114全体に均質かつ均一に分散されることが好ましい。これは、これらの様々な材料がその層内で等しい荷重を有することを必ずしも意味するわけではない。しかしながら、ほとんどの場合、DPUとUUの荷重がほぼ等しい、つまりDPU/UUの相対重量比がほぼ1であることが望ましいことを見出した。しかしながら、以下の例で示されるように、DPU/UUの他の重量比も使用可能である。DPU/UUの重量比は、例えば1/3~3、または1/2~2の範囲に入っていてもよく、あるいは約1であってもよい。DPUとUUが組み合わせて使用される場合、それらは層114で使用される唯一の化学顕色剤であることが好ましい。しかしながら、必要に応じて、DPUおよびUU以外に1つまたは複数の他の化学顕色剤を添加することもできる。これが行われる場合、そのような他の顕色剤(複数可)は、DPUの重量パーセントよりも低く、UUの重量パーセントよりも低い重量パーセントで、層114中に個別にかつ集合的に存在することが好ましい。
【0032】
DPUおよびUUに加えて、熱応答層114は、当然のことながら、高温で複数の顕色剤と反応してマークまたは色の変化を生成するように調整された少なくとも1つのロイコ染料も含む。1つまたは複数のロイコ染料は、そのような反応が可能な任意の既知の染料(複数可)とすることができる。例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されない。
・ODB-2(CAS番号:89331-94-2、化学名スピロ(イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン)-3-オン、6’-(エチル(4-メチルフェニル)アミノ)-3’-メチル-2’-(フェニルアミノ)-);
・BK305(CAS番号:129473-78-5、化学名スピロ(イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン-3-オン,6’-(ジペンチルアミノ)-3’-メチル-2’-(フェニルアミノ)-);および
・ETAC(CAS番号:59129-79-2、化学名スピロ(イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン)-3-オン、6’-(エチル(4-メチルフェニル)アミノ)-3’-メチル-2’-(フェニルアミノ)-)。
【0033】
熱応答層114は、層内の粒子を共に保持するのに役立つ1つまたは複数の適切な結合剤も含む。このような結合剤としては、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、イソプロピルセルロース、デンプン、加工デンプン、ゼラチンなどが含まれ得る。ポリアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレンなどを含むラテックス材料も使用することができる。結合剤は、記録材料104の使用または保管から生じるブラッシングまたは取扱いの力に応じて、層114の機械的完全性を維持するのに役立つ。このような保護を提供するのに十分な結合剤が存在すべきであるが、発色反応性材料間の反応性接触の達成を妨げるほど多くあってはならない。結合剤は、乾燥したコーティングの5~30重量%で存在し得る。
【0034】
ロイコ染料、顕色剤、および結合剤に加えて、層114の発色組成物は、色の形成を助ける改質剤と呼ばれる1つまたは複数の物質を含有してもよい。改質剤(複数可)は、(a)染料/顕色剤の融点を下げること、および(b)染料および顕色剤が溶解または融解する一種の溶媒として作用することの一方または両方によって機能することができる。したがって、改質剤(複数可)は、ロイコ染料と顕色剤との間の反応を促進して、より強力な熱画像、より速い画像形成、またはその両方を生成することができる。例えば、米国特許第4,531,140号(Suzukiら)、第4,794,102号(Petersenら)、第5,098,882号(Terajiら)、第6,835,691号(Mathiaparanamら)、および第6,921,740号(Hizatateら)を参照されたい。
【0035】
通常、従来の直接感熱記録材料の熱応答層は、1.2~4.8μmまたは1~5μmの範囲の仕上がり乾燥厚さに対して、1.5~6ポンド/3,300平方フィート(2.2~8.9g/m)、より典型的には2~4ポンド/3,300平方フィート(3.0~5.9g/m)のコート重量に相当する厚さで塗布されるであろう。実際の下限は、コート重量約1ポンド/33,000立方フィート(約1.48g/m)である。本発明の記録材料104の熱応答層114は、必要に応じて、これらと同じ従来のコート重量および厚さで塗布することもできるが、開示された顕色剤DPU/UUの組み合わせの別の利点は、依然として許容可能な熱画像品質を提供しながら、層114をはるかに薄く作製できることであることを見出した。特に、層114は、1ポンド/3,300平方フィート(1.48g/m)未満のコート重量で作製することができる。発明者らは、層114(DPUおよびUU顕色剤を含む)のコート重量が0.9g/mという低さでも許容可能な製品性能を実証した。したがって、層114のコート重量は、例えば、0.9~8.9g/m、または0.9~5.9g/m、または0.9~2.2g/m、または0.9~1.48g/m、または0.9~1.48g/m未満の範囲とすることができる。
【0036】
熱応答層114を極薄にする能力は、製品重量/質量の低減、製品コストの低減、使用後の廃棄物流に関する環境への影響の低減など、多くの利点を有する。
【0037】
再び図2に戻ると、トップコート層116が、熱応答層114の上に接触して示されている。図示の実施形態では、トップコート116の外側主面は、空気に露出されており、直接感熱記録材料104の外側主面104aに対応する。トップコート116は任意選択であり、必要に応じて省略することができる。それが含まれる場合、記録材料104の下層を望ましくない汚染物質または物質から保護することができる。例えば、一部のトップコートは、油またはその他の不要な液体の浸潤に対するバリアまたはシールとして使用できる。
【0038】
トップコート116は、従来の設計の任意の適切なトップコートであってもよい。トップコート116は、例えば、変性または未変性のポリビニルアルコールなどの結合剤、アクリル結合剤、架橋剤、潤滑剤、およびアルミニウム三水和物および/またはシリカなどの充填剤を含んでもよい。トップコート116は、0.5~2μmの範囲の厚さ、または他の適切な厚さを有してもよい。
【0039】
開示された記録材料は、上で論じたもの以外の追加の層およびコーティングを含んでもよい。このような他の層またはコーティングには、基材110の裏面110bに適用できるコーティング(複数可)が含まれる。そのような層の1つが図2に示されており、ラベルは118である。この層118は、感圧接着剤(PSA)、ホットメルト接着剤、または他の適切な接着剤を含む接着層とすることができる。記録材料104の裏面に設けることにより、記録材料はラベルとして機能することができ、その前面の感熱印刷された面がユーザーに見える状態で、容器、フィルム、または他の物体に取り付けることができる。使用の準備ができるまでPSA層を覆うために剥離ライナー(図示せず)を含めることもできる。ライナーを必要としない用途では、表面に剥離コーティングを施すこともできる。
【0040】
直接感熱記録材料は、潜在的に多様な環境で使用され得るため、多様な環境因子、汚染物質、および条件にさらされる可能性がある。このような材料上に直接感熱印刷によって形成された画像は、これらの条件の少なくとも一部にさらされると劣化することが知られている。所与の記録材料は、熱応答層に使用される化学物質を含む構造の詳細に応じて、多かれ少なかれこれらの条件に対して劣化する可能性がある。当然のことながら、記録材料が画像を大幅に劣化させることなく耐えられる環境条件が多ければ多いほど、より多くの環境および用途で使用できるようになる。
【0041】
乾熱:1つの関心のある環境条件は、画像形成された材料の熱への曝露、つまり熱安定性である。当然のことながら、画像形成された記録材料が十分に高い温度まで加熱される(例えば、少なくとも約200℃のプリントヘッド温度に近づく)と、ロイコ染料が熱応答層全体にわたって顕色剤と反応し、記録材料の前面全体を変色させ、その上に以前に形成された画像は消去される。ここでは代わりに、画像形成された記録材料が、コーヒーまたはその他の温かい飲み物のカップまたは容器にラベルとして貼り付けられた場合、または電子レンジで加熱または調理することを目的とした食品のパッケージに貼り付けられた場合に経験する可能性がある、周囲の室温を大幅に上回る60℃付近の加熱環境に注目する。
【0042】
可塑剤:もう1つの関心のある環境条件は、可塑化フィルム、特に食料品店で肉を包むために使用されるポリ塩化ビニル(PVC)フィルムとの接触である。直接感熱記録材料は、このような包装肉に貼付されるラベルとして使用され得る。ラベルの前面に印刷された直接熱画像が、他のパッケージからのPVCフィルムに接触する可能性がある。
【0043】
水:もう1つの関心のある環境条件は、水への浸漬である。これは、印刷されたレシートまたはチケットが衣服のポケットに残され、誤って洗濯機のサイクルに送られた場合に発生する可能性がある。この環境条件の最も穏やかなバージョンは、水が室温、または場合によってはぬるま湯である場合である。
【0044】
沸騰水:この関心のある環境条件は、水浸漬条件に似ているが、水は沸騰温度にある。
【0045】
蒸し暑さ:もう1つの関心のある蒸し暑い環境条件は、熱帯地域で経験される可能性のあるような高温多湿の条件にさらされることである。これには、例えば、約40℃の温度と90%の相対湿度が含まれ得る。
【0046】
太陽光:もう1つの関心のある環境条件は、太陽光への曝露である。
【0047】
消毒剤:もう1つの関心のある環境条件は、アルコールベースの手指消毒液との接触である。
【0048】
実施例および比較例
前述の教示に従って、多数の直接感熱記録媒体の実施例および比較例が製造され、試験された。
【0049】
サンプルの作製の準備として、多数の分散液配合物が調製された。ロイコ染料用の分散液配合物と酸性顕色剤用の分散液配合物の2種類があった。以下のように、ロイコ染料用の配合物は、第1のレシピ「A」に従い、顕色剤用の配合物は、第2のレシピ「B」に従い、すべての部またはパーセンテージは重量部であると理解される。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
分散液A1と呼ばれる配合物はレシピ「A」に従い、発色材料としてODB-2、すなわち2-アニリノ-3-メチル-6-ジブチルアミノフルオランを使用した。
【0053】
分散液A2と呼ばれる配合物はレシピ「A」に従い、発色材料としてBK-305、すなわち2-アニリノ-3-メチル-6-ジペンチルアミノフルオランを使用した。
【0054】
分散液B1と呼ばれる配合物はレシピ「B」に従い、DPU、すなわち1,3-ジフェニル尿素を顕色剤材料として使用した。
【0055】
分散液B2と呼ばれる配合物はレシピ「B」に従い、UU、すなわちウレタン尿素(特に、ケミプロ化成株式会社により販売される尿素ウレタン合成物、CAS番号:321860-75-7)を顕色剤材料として使用した。
【0056】
分散液B3と呼ばれる配合物はレシピ「B」に従い、顕色剤材料としてD-8、すなわち4-ヒドロキシフェニル-4-イソプロポキシフェニルスルホンを使用した。
【0057】
分散液B4と呼ばれる配合物はレシピ「B」に従い、顕色剤材料としてBPS、すなわち4-ヒドロキシフェニルスルホンを使用した。
【0058】
分散液B5と呼ばれる配合物はレシピ「B」に従い、顕色剤材料としてBPS-MBE、すなわち4-ベンジルオキシフェニル-4’-ヒドロキシフェニルスルホンを使用した。
【0059】
分散液B6と呼ばれる配合物はレシピ「B」に従い、トルブタミド、すなわち1-ブチル-3-(4-メチルフェニル)スルホニル尿素を顕色剤材料として使用した。
【0060】
分散液B7と呼ばれる配合物はレシピ「B」に従い、顕色剤材料としてダプソン、すなわち4,4’-ジアミノジフェニルスルホンを使用した。
【0061】
分散液B8と呼ばれる配合物はレシピ「B」に従い、顕色剤材料としてSolenis LLCが販売するPergafast(商標名)201、すなわちN-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素を使用した。
【0062】
分散液B9と呼ばれる配合物はレシピ「B」に従い、NKK-1304、すなわち、日本曹達株式会社が販売するN-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミドを顕色剤材料として使用した。
【0063】
これらの分散液配合物の異なるものを他の成分と混合して、所与のサンプルの熱応答層を形成するのに使用するコーティング配合物を作製した。特に明記しない限り、コーティング配合物は次の通りであった。
【0064】
【表3】
【0065】
各々のサンプル(実施例または比較例)は、特に明記しない限り、以下の方法で作製された。第1のステップは、基材(例えば、図2の基材110を参照)の片面または主面上にベースコート(例えば図2の層112を参照)をコーティングすることであった。使用した基材は、63g/m(gsm)の高度に精製された紙シートであった。ベースコートは断熱性があり、BASF CorporationのAnsilex 93などの焼成粘土と、The Dow Chemical CompanyのRopaque(商標名)-TH-2000中空球顔料(HSP)との混合物と、SBRバインダーとを含み、4.5g/mのコート重量で塗布された。乾燥後、熱応答層(例えば、図2の層114を参照)をベースコートの上にコーティングした。熱応答層のコート重量は、特に明記しない限り、1.3g/mであった。このコーティングが乾燥した後、トップコート(例えば、図2のトップコート116を参照)が熱応答層の表面上にコーティングされた。トップコートは、剥離した粘土、PVOH、架橋剤、およびステアリン酸亜鉛などの潤滑剤で構成され、1.5g/mのコート重量で塗布された。トップコートが乾燥した後、サンプルには他のコーティングは塗布されず、サンプルは、感熱印刷および試験の準備が整った。
【0066】
以下の表は、作製および試験された様々なサンプル(実施例1~6および比較例1~12)に与えられた名前と、それぞれの熱応答層の詳細を示している。
【0067】
【表4】
【0068】
これらのサンプルはすべて薄くて可撓性があり、フェノール不含有であり、前面は均一に白または明るい色であった。次に、直接感熱印刷による画像形成能力、その画像の印刷品質、および印刷サンプルを多数の異なる環境試験に供した後の画像の印刷品質について、各々のサンプルを試験した。
【0069】
感熱印刷は、Zebra(商標名)サーマルプリンタ、モデル140-401を使用して、6インチ/秒(ips)の速度で、プリントヘッドのデフォルトのエネルギー設定(11.7mJ/mm)を使用して、各々のサンプルに対して実行された。印刷された画像は、いずれの場合もバーコードパターンであった。バーコードパターンの印刷品質または画質は、波長650nmで動作するTruCheck(商標名)バーコード認証装置(モデルTC-843)を使用して評価され、合格結果は、1.5以上のANSI値に相当し、不合格結果は、1.5未満のANSI値に相当した。場合によっては、TruCheck(商標名)バーコード認証装置モデルTC-854を使用して、同じ画像の印刷品質を670nmでも評価し、この場合も、合格スコアは、1.5以上のANSI値に相当し、不合格スコアは、1.5未満のANSI値に相当した。
【0070】
印刷された記録媒体の初期印刷品質を測定した後、各サンプルの試験片は、上記で概説した7つの環境試験(つまり、乾熱、可塑剤、水、沸騰水、蒸し暑さ、日光、および消毒剤)の各々に供された。
【0071】
乾熱試験では、印刷された試験片を60℃の(乾燥した)熱に24時間さらし、その後熱から取り出した。この試験の後、印刷された画像の品質が、650nmと670nmの両方で試験された。
【0072】
可塑剤試験では、印刷された試験片を室温の水に浸漬し、その後取り出して、7ポンドの重りの下で24時間ポリ塩化ビニル肉包装フィルムと接触させて配置し、その後取り出して乾燥させた。この試験の後、印刷された画像の品質が、650nmで試験された。
【0073】
水試験では、印刷された試験片を室温の水に24時間浸し、その後取り出して乾燥させた。この試験の後、印刷された画像の品質が、650nmで試験された。
【0074】
沸騰水試験では、印刷された試験片をプラスチックの見本に貼り付け、沸騰水に20分間浸し、その後取り出して乾燥させた。この試験の後、印刷された画像の品質が、650nmで試験された。
【0075】
蒸し暑さ試験では、印刷された試験片を40℃の熱と90%の相対湿度に24時間さらした。この試験の後、印刷された画像の品質が、650nmと670nmの両方で試験された。
【0076】
太陽光試験では、印刷された試験片を加速太陽光試験室(オハイオ州ウエストレイクのQ-Lab Corporationが販売するQ-Sun(商標名)キセノン試験室)内に放射照度0.67W/mで7時間置き、その後取り出した。この試験の後、印刷された画像の品質が650nmと670nmの両方で試験された。
【0077】
消毒剤試験では、Gojo Industriesが販売するPurell(商標名)手指消毒剤を1滴、印刷された試験片上に滴下し、乾燥させた。この試験の後、印刷された画像の品質が、650nmと670nmの両方で試験された。
【0078】
これらのサンプル実行の一部、初期印刷品質試験、および上記の環境試験の各々の後の印刷品質試験の結果を表5に報告する。
【0079】
【表5】
【0080】
この表では、「合格」の結果は、650nm(かつ該当する場合は670nm)でのANSI値が少なくとも1.5であることを指し、「合格*」の結果は、650nmでのANSI値が少なくとも1.5であるが、670nmでのANSI値が1.5未満であることを指し、「不合格」の結果は、650nm(かつ該当する場合は670nm)でのANSI値が1.5未満であることを指す。
【0081】
表中の比較例1~4と実施例1~6との比較は、DPUとUUの新しい顕色剤化学物質の組み合わせが、複数の環境曝露試験に合格できる多目的直接感熱記録材料を生成できることを実証しているが、そうではなく同一の感熱記録材料を個別に使用しても、同じ環境曝露試験に合格することはできない。UUを単独で使用する比較例は、バーコードの機械可読性の最低基準すら満たさない画像を生成する直接感熱記録材料を生じさせる。
【0082】
表5の結果は、熱応答層内のDPU対UUの相対重量比が1である必要はなく、少なくとも1/3~3の範囲、さらには1/2~2などのより狭い範囲であってもよいことを示している。表5の結果はさらに、DPUとUUを組み合わせて使用した場合、熱応答層のコート重量が0.9g/m程度に低くても、依然として許容可能な印刷品質の直接感熱画像を生成できることを示している。
【0083】
残りの比較例の結果を表6に示す。ここで、「合格」、「合格*」、および「不合格」は表5と同じ意味を有する。
【0084】
【表6】
【0085】
特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される量、測定された特性などを表すすべての数値は、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、特に断りのない限り、明細書および特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本出願の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。均等論の適用を特許請求の範囲に限定するものではなく、各々の数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広範な範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、本明細書に記載の特定の実施例に数値が記載されている限り、それらは合理的に可能な限り正確に報告される。しかしながら、どの数値にも、試験または測定の制約に関連する誤差がかなり含まれる可能性がある。
【0086】
例えば、様々な実施形態を説明するための「頂部」、「底部」、「上部」、「下部」、「上方」、「下方」などの関係語の使用は、単に本明細書のいくつかの実施形態の説明を容易にするために便宜的に使用される。このような用語の使用にもかかわらず、本開示は、特定の向きまたは相対位置に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、上記のものに加えて、任意の向きおよび相対位置を有する実施形態を包含すると理解されるべきである。
【0087】
本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の様々な修正および変更が当業者には明らかであり、本明細書に記載の例示的な実施形態に限定されるものではない。読み手は、特に明記しない限り、開示された一実施形態の構成が他のすべての開示された実施形態にも適用できることを想定すべきである。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体であって、
基材と、
前記基材によって支持された、ロイコ染料および複数の顕色剤を含む、熱応答層と
を備え、
前記記録媒体は、実質的にフェノールを含有せず、
前記複数の顕色剤は、1,3-ジフェニル尿素(以後「DPU」という)および尿素ウレタン(CAS番号321860-75-7)以後「UU」という)を含む、記録媒体。
【請求項2】
前記熱応答層と前記基材との間にベースコート層をさらに備える、請求項1に記載の媒体。
【請求項3】
前記基材によって支持されるトップコートをさらに備え、前記熱応答層が前記トップコートと前記基材との間に配置される、請求項1に記載の媒体。
【請求項4】
前記熱応答層は、1.48g/m未満のコート重量を有する、請求項1に記載の媒体。
【請求項5】
前記熱応答層の前記コート重量は、少なくとも0.9g/mである、請求項4に記載の媒体。
【請求項6】
前記DPUおよび前記UUは、前記熱応答層全体に分散されている、請求項1に記載の媒体。
【請求項7】
前記熱応答層には、DPUおよびUU以外の顕色剤が実質的に存在しない、請求項1に記載の媒体。
【請求項8】
前記DPUおよび前記UUは、1/3~3の範囲の相対重量比で前記熱応答層中に存在する、請求項1に記載の媒体。
【請求項9】
前記相対重量比は、1/2~2の範囲である、請求項8に記載の媒体。
【請求項10】
前記相対重量比は、1である、請求項9に記載の媒体。
【請求項11】
11.7mJ/mmのサーマルプリンタエネルギー設定で15cm/秒(6インチ/秒の印刷速度で印刷したときの前記記録媒体の印刷品質が、650nmの波長で作動するバーコード認証装置により測定したANSI値が少なくとも1.5であることによって特徴付けられる、請求項1に記載の媒体。
【請求項12】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を水に24時間浸漬し、その後取り出して乾燥させた後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項11に記載の媒体。
【請求項13】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を水に浸漬し、その後3.2kg(7ポンドの重量下で24時間ポリ塩化ビニルの肉包装フィルムと接触して配置し、その後取り出して乾燥させた後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項11に記載の媒体。
【請求項14】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を沸騰水に20分間浸漬し、その後取り出して乾燥させた後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項11に記載の媒体。
【請求項15】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を60℃に24時間加熱し、その後取り出して冷却した後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項11に記載の媒体。
【請求項16】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を40℃かつ相対湿度90%の空気に24時間曝露し、その後取り出して冷却した後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項11に記載の媒体。
【請求項17】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体が、0.67W/mで7時間促進太陽光試験を受け、その後取り出した後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項11に記載の媒体。
【請求項18】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、70%エチルアルコールベースの手指消毒剤を1滴前記印刷された記録媒体上に滴下して乾燥させた後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項11に記載の媒体。
【請求項19】
前記媒体は、実質的にフェノールを含まず、
前記基材は、可撓性であり、
前記DPUおよび前記UUは両方とも、前記熱応答層全体に分散されており、
前記DPUおよび前記UUは、1/3~3の範囲の相対重量比で前記熱応答層中に存在し、
11.7mJ/mmのサーマルプリンタエネルギー設定で15cm/秒(6インチ/秒の印刷速度で印刷したときの前記記録媒体の印刷品質が、650nmの波長で作動するバーコード認証装置により測定したANSI値が少なくとも1.5であることによって特徴付けられる、請求項1に記載の媒体。
【請求項20】
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を水に浸漬し、その後3.2kg(7ポンドの重量下で24時間ポリ塩化ビニルの肉包装フィルムと接触して配置し、その後取り出して乾燥させた後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられ、
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を60℃に24時間加熱し、その後取り出して冷却した後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられ、
前記印刷された記録媒体の前記印刷品質は、前記印刷された記録媒体を40℃かつ相対湿度90%の空気に24時間曝露し、その後取り出して冷却した後でも依然として少なくとも1.5のANSI値によって特徴付けられる、請求項19に記載の媒体。
【国際調査報告】