(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】酸ガスを除去するための水性吸収媒体
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20240115BHJP
B01D 53/40 20060101ALI20240115BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240115BHJP
C07C 215/10 20060101ALI20240115BHJP
C07C 215/08 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/40 220
B01D53/78 ZAB
C07C215/10
C07C215/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536555
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 US2021063188
(87)【国際公開番号】W WO2022132684
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ドゥードル、ジョン アール.
(72)【発明者】
【氏名】クバディア、ズービン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】グッドマン、アマンダ エム.
(72)【発明者】
【氏名】クリスタンチョ、ディエゴ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ラザー、シモーネ ティ.
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4H006
【Fターム(参考)】
4D002AA03
4D002AA04
4D002AA06
4D002AA09
4D002AA15
4D002AB01
4D002AC07
4D002AC10
4D002BA02
4D002DA32
4D002GA01
4D002GB08
4D020AA03
4D020AA04
4D020AA06
4D020AA08
4D020AA10
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BC01
4D020BC02
4D020CB08
4D020DA03
4D020DB07
4H006AA03
4H006AB80
4H006BN10
4H006BU32
(57)【要約】
ガス流から酸ガスを除去するための水性吸収媒体は、少なくとも1つの三級アルカノールアミン及び少なくとも1つの二級アルカノールアミンを含む。少なくとも1つの三級アルカノールアミン及び少なくとも1つの二級アルカノールアミンの合計重量は、水性吸収媒体のアミン重量を占める。水性吸収媒体のアミン重量は、水性吸収媒体の総重量に基づいて25重量%~65重量%であり、少なくとも1つの二級アルカノールアミンは、水性吸収媒体のアミン重量に基づいて11重量%~45重量%の量で存在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流から酸ガスを除去するための水性吸収媒体であって、
(a)一般式(I)を有する少なくとも1つの三級アルカノールアミンと、
【化1】
(式中、R
1は、C
1~C
4アルキルである)
(b)一般式(II)を有する少なくとも1つの二級アルカノールアミンと、
【化2】
(式中、R
2は、C
1~C
4アルキルである)
(c)水と、を含み、
前記少なくとも1つの三級アルカノールアミン及び前記少なくとも1つの二級アルカノールアミンの合計重量が、前記水性吸収媒体のアミン重量を占め、前記水性吸収媒体の前記アミン重量が、前記水性吸収媒体の総重量に基づいて25重量%~65重量%であり、前記少なくとも1つの二級アルカノールアミンが、前記水性吸収媒体の前記アミン重量に基づいて11重量%~45重量%の量で存在する、水性吸収媒体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの三級アルカノールアミンが、前記水性吸収媒体の総重量に基づいて25重量%~55重量%の量で存在する、請求項1に記載の水性吸収媒体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの二級アルカノールアミンの量が、前記水性吸収媒体の総重量に基づいて5重量%~20重量%である、請求項1又は2に記載の水性吸収媒体。
【請求項4】
前記少なくとも1つの二級アルカノールアミンの量が、前記水性吸収媒体の総重量に基づいて6重量%~11重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性吸収媒体。
【請求項5】
R
1が、C
1アルキルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性吸収媒体。
【請求項6】
R
2が、C
1アルキルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性吸収媒体。
【請求項7】
R
1が、C
1アルキルであり、R
2が、C
1アルキルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性吸収媒体。
【請求項8】
ピペラジン及びメチルエタノールアミンが前記水性吸収媒体から除外される、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性吸収媒体。
【請求項9】
ガス流から酸ガスを除去するためのプロセスであって、前記ガス流及び請求項1~8のいずれか一項に記載の水性吸収媒体を提供することを含む、プロセス。
【請求項10】
前記ガス流と前記水性吸収媒体とを接触させることによって酸ガスを多く含む水性吸収媒体を形成することと、
前記酸ガスを多く含む水性吸収媒体から酸ガスを少なくとも部分的に除去して、酸ガスをあまり含まない水性吸収媒体を形成することと、
前記ガス流から酸ガスを更に除去するために、前記酸ガスをあまり含まない水性吸収媒体を再循環させることと、
を更に含む、請求項9に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、少なくとも1つの三級アルカノールアミン及び少なくとも1つの二級アルカノールアミンを含む酸ガスを除去するための水性吸収媒体、並びにこの水性吸収媒体を提供することを含む酸ガスを除去するためのプロセスに関する。
【0002】
序論
ガス流は、二酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、二硫化炭素、シアン化水素、硫化カルボニル、及び/又はメルカプタンなどの酸ガスを不純物として含有する場合がある。ガス流は、天然ガス、石油、合成ガス、バイオガス、又は石炭加工から生じ得る。例えば、ガス流は、天然ガス、製油所ガス、シェール熱分解からの炭化水素ガス、アンモニア合成ガス、煙道ガス、及び/又は液化天然ガスを含み得る。
【0003】
水性アミンベースの吸収媒体が、恐らく酸ガスを除去するための最も一般的な吸収剤である。しかしながら、酸ガスを除去するための改善されたアミンベースの水性吸収媒体が、コストを最小にし、酸ガス除去を最大にしようとする試みの両方において求められている。
【発明の概要】
【0004】
実施形態は、ガス流から酸ガスを除去するための水性吸収媒体を提供することによって実現され得、当該水性吸収媒体は、(a)一般式(I)を有する少なくとも1つの三級アルカノールアミンと、
【0005】
【化1】
(式中、R
1は、C
1~C
4アルキルである)
(b)一般式(II)を有する少なくとも1つの二級アルカノールアミンと、
【0006】
【化2】
(式中、R
2は、C
1~C
4アルキルである)
(c)水と、を含む。
【0007】
少なくとも1つの三級アルカノールアミン及び少なくとも1つの二級アルカノールアミンの合計重量は、水性吸収媒体のアミン重量を占める。水性吸収媒体のアミン重量は、水性吸収媒体の総重量に基づいて25重量%~65重量%であり、少なくとも1つの二級アルカノールアミンは、水性吸収媒体のアミン重量に基づいて11重量%~45重量%の量で存在する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
実施形態の特色は、添付の図面を参照しながら、その例示的な実施形態を詳細に説明することによって、当業者にはより明らかになるであろう。
【
図2】実施例1及び2並びに比較例A及びBについての性能データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
酸ガスを除去するための三級アルカノールアミンを含む水性吸収媒体は、反応速度、ひいては二酸化炭素などの酸ガスのガス流からの除去を加速させるのに役立ち得る十分な量の少なくとも1つの活性剤を含み得る。理論に束縛されることを意図するものではないが、十分な量の活性剤がないと、三級アルカノールアミンを含む水性吸収媒体は、二酸化炭素を効率的に除去することができないと考えられる。更に、コスト管理の理由から、かつプロセスの問題を最小化するために、少なくとも1つの三級アルカノールアミン及び/又は水と比較して水性吸収媒体が(重量及び/又はモルパーセントで)相対的に高い濃度の活性剤を必要としないことが、最適な性能のためには望ましい。したがって、比較的低濃度で二酸化炭素などの酸ガスの効率的な除去を可能にする活性剤が求められている。
【0010】
少なくとも1つの三級アルカノールアミンに対する活性剤の量を、依然として有効でありつつ、可能な限り低く維持することが望ましい。例えば、少なくとも1つの三級アルカノールアミンに対する活性剤の重量比は、1未満であってもよい(例えば、55重量%アミン溶液において、全活性剤濃度が25重量%である場合、三級アルカノールアミン濃度は30重量%であってもよい)。これに関して、活性剤の吸収熱は、MDEAなどの三級アルカノールアミンと比較して高い傾向があり、この高い吸収熱の結果、再生プロセスにより多くのエネルギーが必要となる場合がある及び/又は吸収プロセス中にアミンが多く失われる場合があるなどの理由で、水性吸収媒体(例えば、OPEX)を再生するコストが増加し得るので、比較的少量の活性剤を使用することが望ましい場合がある。反応速度とは、水性吸収媒体中で単位時間当たり単位体積当たりに消費される二酸化炭素のモル数を意味し、活性剤の存在が反応速度に大きく影響し得ることが理解される。
【0011】
水性吸収媒体に関して、媒体がメチルジエタノールアミン(methyldiethanolamine、MDEA)などの三級アルカノールアミンを含む場合、一般的な活性剤はピペラジンである。更に、アミノエトキシエタノール(aminoethoxyethanol、AEE)などの一級アミンはガス処理用途において腐食及び分解する場合があり、三級アミンは典型的には良好な活性剤ではないので、活性剤は二級アミンであることが好ましい。しかしながら、ガス処理最終用途におけるピペラジンの反応速度は速すぎる場合がある及び/又はピペラジン自体の揮発性が高すぎる場合がある。ピペラジンの反応が速すぎる場合、別の選択肢はメチルエタノールアミン(methylethanolamine、NMEA)である。
【0012】
MDEA/NMEAのブレンドは、製油所ガス処理用途において使用されることが多いが、NMEAの低沸点に基づいて、それは最適な選択ではない。例えば、低沸点は、特に吸収中に、溶媒/水性吸収媒体中のMDEA塩基に対して活性剤の高損失を引き起こす場合があるので、これらのガス処理用途において問題となることが多い。塩基アミンに対する活性剤のそのようなより高い損失は、最適な水性吸収媒体組成物の維持における困難さなどの重大なプロセス問題を引き起こし得る。したがって、プロセス問題を最小限に抑えながら、比較的高い反応速度を可能にする代替物が求められている。
【0013】
更に、MDEA/DEAなどのジエタノールアミン(diethanolamine、DEA)を含むブレンドが提案されているが、これは、DEAがMDEAの平均標準沸点と同様の平均標準沸点を有するためである。しかしながら、DEAの反応速度はNMEAの反応速度よりも大幅に低いことが知られており、したがって、DEAは、効率的なプロセスにおいてガス状混合物から二酸化炭素を除去するのにあまり望ましくない。
【0014】
例示的な実施形態によれば、低濃度、比較的低い処理コストで高い反応速度を可能にし、腐食/分解の問題に関してより大きな懸念が知られていない水性吸収媒体のための活性剤は、メチルアミノプロパンジオール(methylaminopropanediol、MAPD)に類似の構造体を有する二級アミンである。MAPD及び類似の構造体は、ガス状混合物から酸ガスを除去するための効率的な水性吸収媒体として、MDEA及び類似の構造体とのブレンドにおいて使用可能であると考えられる。MAPD及び類似の構造体は、DEA及びMDEAとは対照的に、ヒドロキシル基が分子の一端にあるという点でNMEAに類似している。この構造は、分子の他方の末端におけるアルキル化窒素基構造を可能にする。この理論に束縛されることを意図するものではないが、分子の一方の末端における複数のヒドロキシル基及び反対側の末端におけるアルキル化窒素基構造の両方の組み合わせ間の相互作用によって、MAPD及び類似の構造が活性剤として使用するのに非常に適した選択肢になると考えられる。
【0015】
水性アルカノールアミン媒体
例示的な実施形態によれば、ガス流から酸ガスを除去するための水性吸収媒体は、少なくとも1つの三級アルカノールアミンが十分な量の活性剤なしで使用された場合又はあまり望ましくないアミンが使用された場合と比較して、他の問題を最小限に抑えながら、改善された酸ガス除去のために反応速度を増加させるのに十分な量の、酸ガスを除去するための少なくとも1つの三級アルカノールアミンと、活性剤としての少なくとも1つの二級アルカノールアミンとを含む。水性吸収媒体は、ピペラジンなどの揮発性が高すぎる場合がある他のアミン及び/又はNMEAなどの低い標準沸点を有する他のアミンを除外してもよい。
【0016】
少なくとも1つの三級アルカノールアミンは、一般式(I)を有する:
【0017】
【化3】
(式中、R
1は、C
1~C
4アルキル、例えば、直鎖C
1~C
4アルキルである)。C
1~C
4アルキルとは、1~4個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。例としては、-CH
3、-CH
2CH
3、-(CH
2)
2CH
3、及び-(CH
2)
3CH
3(例えば、直鎖)が挙げられる。水性吸収媒体は、各々が一般式(I)を有する1つ以上の異なる三級アルカノールアミンを含んでいてもよい。上記一般式(I)は、MDEA及びガス状混合物からの酸ガス除去に使用するための類似の特性を有すると考えられる類似の構造体を包含する。
【0018】
活性剤としての少なくとも1つの二級アルカノールアミンは、一般式(II)を有する:
【0019】
【化4】
(式中、R
2は、C
1~C
4アルキル、例えば、直鎖C
1~C
4アルキルである)。C
1~C
4アルキルとは、1~4個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。例としては、-CH
3、-CH
2CH
3、-(CH
2)
2CH
3、及び-(CH
2)
3CH
3(例えば、直鎖)が挙げられる。水性吸収媒体は、各々が一般式(II)を有する1つ以上の異なる二級アルカノールアミンを含んでいてもよい。上記一般式(II)は、ガス状混合物からの酸ガス除去に活性剤として使用するための類似の特性を有すると考えられるMAPD様構造を包含する
例示的な実施形態は、一般式(I)中のR
1がC
1アルキルであり、かつ/又は一般式(II)中のR
2がC
1アルキルであることを含む。
【0020】
水性吸収媒体は、水を更に含む。水性吸収媒体は、当技術分野で既知の物理溶媒などの少なくとも1つの物理溶媒を更に含んでいてもよい。例示的な物理溶媒としては、メトキシトリグリコール(methoxytriglycol、MTG)、スルホラン、グリセロール、メタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及びトリエチレングリコールが挙げられる。
【0021】
水性吸収媒体中に存在する少なくとも1つの三級アルカノールアミン及び少なくとも1つの二級アルカノールアミンの合計重量は、水性吸収媒体のアミン重量(例えば、水性吸収媒体の乾燥アミン重量)を占める。言い換えれば、水性吸収媒体のアミン重量は、水性吸収媒体中に存在する少なくとも1つの三級アルカノールアミンの総重量及び少なくとも1つの二級アルカノールアミンの総重量からなり、あらゆる他の添加剤も、水も、物理溶媒も含まない。例示的な実施形態では、水性吸収媒体のアミン重量を除いた水性吸収媒体の総重量の残りは、水である。
【0022】
水性吸収媒体のアミン重量は、水性吸収媒体の総重量の25重量%~65重量%(例えば、25重量%~60重量%、30重量%~55重量%、30重量%~50重量%、40重量%~55重量%、45重量%~55重量%など)を占める。少なくとも1つの二級アルカノールアミンの量は、水性吸収媒体のアミン重量の総重量に基づいていてもよい。実施形態では、少なくとも1つの二級アルカノールアミンは、水性吸収媒体のアミン重量に基づいて、11重量%~45重量%(例えば、11重量%~40重量%、11重量%~35重量%、11重量%~30重量%、11重量%~25重量%、12重量%~20重量%など)の量で存在する。
【0023】
少なくとも1つの二級アルカノールアミンの量は更に、水性吸収媒体の総重量に基づいていてもよい。例えば、少なくとも1つの二級アルカノールアミンは、水性吸収媒体の総重量に基づいて、5重量%~25重量%(例えば、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、6重量%~20重量%、6重量%~15重量%、6重量%~11重量%など)の量で存在し得る。少なくとも1つの二級アルカノールアミンは活性剤として存在するので、少なくとも1つの三級アルカノールアミン及び/又は水よりも少ない量で存在する。例えば、水性吸収媒体中の少なくとも1つの二級アルカノールアミンの総重量パーセントは、(合計100重量%の水性吸収媒体に対して)少なくとも1つの三級アルカノールアミンの総重量パーセント及び水の総重量パーセントよりも少ない。
【0024】
例示的な実施形態では、少なくとも1つの三級アルカノールアミンは、水性吸収媒体の総重量に基づいて、25重量%~60重量%(例えば、25重量%~55重量%、30重量%~55重量%、35重量%~55重量%、35重量%~50重量%、39重量%~45重量%など)の量で存在し得る。
【0025】
用途
主にガス状の流れからの酸ガスの除去は、気液接触装置(液体吸収剤を使用する圧力スイング吸収(Pressure Swing Absorption、PSA)及び温度スイング吸収(Temperature Swing Absorption、TSA)など)で行うことができる。揮発性に起因するアミンの損失は、気液分離における懸念事項であり得る。揮発性は、活性剤のような水性吸収媒体の成分が、一般的に使用される塩基三級アルカノールアミンと比較して相対的に低い沸点を有する場合に、特に問題になり得る。したがって、少なくとも1つの三級アルカノールアミン及び活性剤としての少なくとも1つの二級アルカノールアミンを含む水性吸収媒体については、両方が比較的高い沸点(例えば、少なくとも230℃の同様の沸点)を有することが両方にとって有用であり得ることが見出されている。低沸点はガス処理用途における高い揮発性を意味するが、液体炭化水素媒体における高い溶解度を必ずしも意味するものではないことに留意されたい。換言すれば、揮発性と炭化水素共溶解性とは異なる原理であり、この場合、懸念事項は揮発性である。この点に関して、揮発性が高いアミンは、ガス流の酸ガス処理にとって非実用的であり、コストがかかる傾向がある。
【0026】
ガス流から酸ガスを除去するためのプロセスは、酸ガス除去処理のためのガス流と水性吸収媒体とを提供することを含む。酸ガスを除去するためのプロセスでは、酸ガスを多く含む水性吸収媒体を形成するために、水性吸収媒体と酸性ガスを含むガス状混合物とを吸収塔において低温及び高圧で向流的に接触させてもよい。環状吸着プロセスは、高速の気液交換、吸収工程と再生工程との間の大量の液体インベントリの移動、及びアミン溶液の再生のための高エネルギー要件を使用することができる。このようなプロセスは、サイクルの吸収部分と脱離(再生)部分との間のガス流における大きな温度差を利用することができる。例えば、水性アミンスクラビング方法は、酸ガス取り込みには比較的低い温度、例えば、50℃未満を使用してもよく、脱離には約100℃超、例えば、120℃以上まで温度を上昇させる。
【0027】
再生は、酸ガスを多く含む水性吸収媒体から酸ガスを少なくとも部分的に除去して、酸ガスをあまり含まない水性吸収媒体を形成することを可能にする。酸ガスをあまり含まない水性吸収媒体を形成するための大量の水性吸収媒体の再生は、100℃を超える温度で行われる場合があり、その結果、多くの一般的に使用されるアミンは、温度スイングプロセスにおける蒸発に起因して著しいアミン損失を被る可能性がある。したがって、そのような損失を最小限に抑えるアミンを使用することが望ましい。再生後、酸ガスをあまり含まない水性吸収媒体は、ガス流からの酸ガスの除去において再使用するために、再循環させて酸ガス除去プロセスに戻されてもよい。
【0028】
酸ガス除去のために処理され得るガス流としては、炭化水素リザーバから生成される天然ガス、石炭加工、バイオガス、及び精油所ガスなどの工業ガスが挙げられる。
【0029】
実施例
例示的な実施例、比較実施例、並びに実施例及び比較実施例のための報告された結果において使用された情報に関して、近似の特性、性質、パラメータなどが以下に提供される。
【0030】
ガス流を処理するためのプロセスは、
図1に示されるものに基づいており、ここでは、供給ライン5を介して気液向流充填床(1/4インチセラミックIntalox saddle)吸収カラム2の上部に水性吸収媒体を供給し得る。ガス流は、供給ライン1を通って吸収カラム2の下部に約17標準リットル/分のガス流量で導入され得る。乾燥供給物の組成は、90モル%の窒素及び10モル%の二酸化炭素である。吸収カラム内の圧力は、約250psigに設定される。クリーンなガス(すなわち、CO
2量が低減されたもの)が、出口ライン3を通って吸収カラム2の頂部で排出され、残留CO
2レベルがガスクロマトグラフィによって測定される。CO
2を多く含む水性吸収媒体は、吸収カラム2の下部に向かって流れ、ライン4を介して出る。
【0031】
ライン4内のCO2を多く含む水性吸収媒体は、レベル制御弁8によって減圧され、ライン7を通って熱交換器9に流れることができ、ここで、CO2を多く含む水性吸収媒体が加熱され得る。次いで、加熱されたCO2を多く含む水性吸収媒体は、ライン10を介して再生器12の上部に入ることができる。再生器12は、H2S及びCO2の脱離を行うことができるランダム充填(1/4インチPro-Pak(登録商標))を備えている。再生器の圧力は、約27psiaに設定される。次いで、再生器12からのガスは、ライン13を通過して凝縮器14内に送られ得、ここで、任意の残留水及びアミンの冷却及び凝縮が行われ得る。次いで、ガスは分離器15に入ることができ、ここで、凝縮された液体が蒸気相から分離され得る。凝縮された水溶液は、ポンプ22を介してライン16を通って再生器12の上部にポンプ輸送され得る。凝縮から残ったガスは、最後の回収及び/又は廃棄のためにライン17を通して除去することができる。再生された水溶液は、再生器12及び密結型リボイラ18を通って下方に流れる。電気加熱装置を備えるリボイラ18は、水溶液の一部分を気化させて任意の残留ガスを追い出すことができる。リボイラ温度は約125℃に設定されてもよい。蒸気は、リボイラから上昇して再生器12に戻されてもよく、ここで、落下する液体と混ざり合い、次いでライン13を通って出て、プロセスの凝縮段階に入り得る。リボイラ18からの再生された水性吸収媒体は、ライン19を通って出て、熱交換器20で冷却することができる。次いで、再生された(すなわち、酸ガスをあまり含まない)水性吸収媒体は、溶媒供給ライン5を通って吸収器2に戻るようにポンプ21を介してポンプ輸送され得る。
【0032】
実施例では以下の材料を主に使用してもよい。
【0033】
MDEAは、The Dow Chemical Company又は関連会社から入手可能であり、以下の構造を有する三級アルカノールアミンメチルジエタノールアミンの約98%溶液を指す。
【0034】
【0035】
MAPDは、The Dow Chemical Company又は関連会社から入手可能であり、以下の構造を有する二級アルカノールアミンメチルアミノプロパンジオールの約98%溶液を指す。
【0036】
【0037】
NMEAは、The Dow Chemical Company又は関連会社から入手可能であり、以下の構造を有する、二級アルカノールアミンメチルエタノールアミンの約98%溶液を指す。
【0038】
【0039】
以下の表1の実施例を参照すると、MDEA-MAPDブレンドの酸ガス除去性能に関して、一般に使用されているMDEA-NMEAブレンドと比較している。一方、NMEAは一価の二級アルカノールアミンであるが、二価の二級アルカノールアミンであるMAPDと比較して平均標準沸点が著しく低い。更に、実施例は50重量%の水に設定するが、それは、腐食及び加工上の問題を最小限に抑えながら酸ガスの容量を最大化するための典型的な目標であるためである。しかし、全アミン含有量(したがって、水の量)は、特定のガス処理施設で使用される材料の意図される用途及び種類に基づいて異なり得ることが周知である。活性剤/総アミンとは、水性吸収媒体中のアミン重量(すなわち、水の重量を除く)に対する活性剤(すなわち、MAPD又はNMEA)の重量パーセントを意味する。
【0040】
【0041】
表1の実施例は、10モル%の二酸化炭素含有量で吸収カラム2に入る、供給ガスの処理(すなわち、
図1の供給ライン1)に基づく。目標は、処理されたガス中2モル%の二酸化炭素濃度を達成するために吸収カラム2において十分な二酸化炭素を除去すること(すなわち、
図1の出口ライン3)である。
図1を参照すると、CO
2除去のための流量に関しては、比較的少量の活性剤を使用しながら、可能な限り低い(例えば、2.5kg/時未満)水性吸収媒体(すなわち、溶媒)の流量でガス流から2モル%のCO
2除去を達成することが望ましい。
【0042】
図2を参照すると、実施例1及び2に関して、望ましい低流量が達成可能であることが示されている。対照的に、比較例A及びBでは、流量は2.5kg/時よりも高い。特に、溶媒流量(すなわち、溶媒供給ライン5における)対処理されたガスCO
2(すなわち、アウトラインライン3におけるガス流における)に関して
図2に提供されるデータに示されているように、実施例1及び2(すなわち、MDEA-MAPD(43:7)及びMDEA-MAPD(40:10)についてのデータ)はいずれも、2.5kg/時未満の流量で2.0モル%(20,000ppmv)の処理されたガスCO
2の閾値を達成することができる。特に、
図2は、90モル%の窒素及び10モル%のCO
2で構成される供給ガス流からのCO2の除去について有望な結果を示す。可能な限り低い溶媒循環速度で、処理されたガス流(すなわち、処理されたガス)中2モル%以下のCO
2の規格に達することが望ましい。
【0043】
図2を参照すると、除去される二酸化炭素の量は、二酸化炭素が吸収される速度に正比例し、それは、(i)二酸化炭素と活性剤との反応速度、(ii)活性剤の濃度、及び(iii)溶媒の流量によって決定され得る。更に、等モルの2モル%溶液(5重量%のNMEA及び7重量%のMAPD)について、MAPD/MDEAを用いると同じ流量のNMEA/MDEAよりも二酸化炭素除去の改善を実現することができることが示されている。したがって、MAPDは相対的に速い反応速度を有すると考えられる。等モル量のNMEA及びMAPDを含有する実施例について、MAPD溶液がNMEA溶液よりも良好な機能を発揮することは驚くべきことであるが、その理由は、追加のヒドロキシルが性能を若干悪化させると予想されていたからである。
【0044】
更に、比較的低い流量で十分な二酸化炭素除去に達することができる唯一の溶媒ブレンドは、7重量%及び10重量%のMAPDを有するMDEA/MAPDブレンドである。更に、5重量%のNMEAを含有するMDEA/NMEAブレンドは、約3.0kg/時の溶媒循環速度を達成すること可能性があるが、NMEAは約158℃の平均沸点を有するので、プロセス条件において揮発性が高すぎて、高い割合の溶媒損失及び高い運転コストにつながり得るため、MDEA/NMEAブレンドを実際に使用することは望ましくない。対照的に、MAPDは、同じ揮発性の問題を有さず、約249℃の著しくより高い平均沸点を有する。更に、MDEAの平均沸点も同様に約247℃であることに留意されたい。更に、実施例2を参照すると、MAPD濃度の増加も同様の利益を提供することが示されている。
【0045】
上記に関して、特定のMDEA/MAPDブレンドは、二酸化炭素などの酸ガスの除去に関する規格を満たすためにより低い循環速度の水性吸収媒体を使用することなどによって、MDEA/NMEAブレンドよりも良好に機能を発揮し得ることが分かる。NMEAと比較して活性剤としてのMAPDは、CO2などの酸ガスとの反応を妨げない可能性があり、MAPDが酸ガス除去のための高性能吸収媒体として作用することを可能にするのに十分に速い反応速度をもたらす可能性があると考えられる。
【0046】
したがって、MAPDが50重量%アミン溶媒について5重量%超の量で存在する水性吸収媒体中のMDEA/MAPDブレンドは、ブレンドに必要なより高コストのMAPD活性剤の量を最小限に抑え、揮発性に関する問題を最小限に抑えながら、2.5kg/時未満の流量での二酸化炭素除去に関してベースライン性能を提供し得ることが見出された。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流から酸ガスを除去するための水性吸収媒体であって、
(a)一般式(I)を有する少なくとも1つの三級アルカノールアミンと、
【化1】
(式中、R
1は、C
1~C
4アルキルである)
(b)一般式(II)を有する少なくとも1つの二級アルカノールアミンと、
【化2】
(式中、R
2は、C
1~C
4アルキルである)
(c)水と、を含み、
前記少なくとも1つの三級アルカノールアミン及び前記少なくとも1つの二級アルカノールアミンの合計重量が、前記水性吸収媒体のアミン重量を占め、前記水性吸収媒体の前記アミン重量が、前記水性吸収媒体の総重量に基づいて25重量%~65重量%であり、前記少なくとも1つの二級アルカノールアミンが、前記水性吸収媒体の前記アミン重量に基づいて11重量%~45重量%の量で存在する、水性吸収媒体。
【請求項2】
前記少なくとも1つの三級アルカノールアミンが、前記水性吸収媒体の総重量に基づいて25重量%~55重量%の量で存在する、請求項1に記載の水性吸収媒体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの二級アルカノールアミンの量が、前記水性吸収媒体の総重量に基づいて6重量%~11重量%である、請求項1のいずれかに記載の水性吸収媒体。
【請求項4】
ガス流から酸ガスを除去するためのプロセスであって、前記ガス流及び請求項1のいずれか一項に記載の水性吸収媒体を提供することを含む、プロセス。
【請求項5】
前記ガス流と前記水性吸収媒体とを接触させることによって酸ガスを多く含む水性吸収媒体を形成することと、
前記酸ガスを多く含む水性吸収媒体から酸ガスを少なくとも部分的に除去して、酸ガスをあまり含まない水性吸収媒体を形成することと、
前記ガス流から酸ガスを更に除去するために、前記酸ガスをあまり含まない水性吸収媒体を再循環させることと、
を更に含む、請求項4に記載のプロセス。
【国際調査報告】