(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】歯科修復用部品キット
(51)【国際特許分類】
A61K 6/889 20200101AFI20240115BHJP
A61K 6/836 20200101ALI20240115BHJP
A61K 6/838 20200101ALI20240115BHJP
A61K 6/831 20200101ALI20240115BHJP
【FI】
A61K6/889
A61K6/836
A61K6/838
A61K6/831
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023536964
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 FI2021050760
(87)【国際公開番号】W WO2022144492
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500425987
【氏名又は名称】スティック テック オサケユイチア
(74)【代理人】
【識別番号】100145849
【氏名又は名称】井澤 眞樹子
(72)【発明者】
【氏名】リッポ ラッシラ
(72)【発明者】
【氏名】スフヤーン ガロウシ
(72)【発明者】
【氏名】ペッカ バリッツ
(72)【発明者】
【氏名】エイヤ サイリノヤ
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA06
4C089BA01
4C089BA08
4C089BA16
4C089BE02
4C089CA03
(57)【要約】
本発明は、100,000~1,000,000g/molの分子量を有するポリアクリル酸を含み、溶液中のポリアクリル酸の濃度が1~30mg/lである水性活性化剤溶液、及びライニング材料であって、前記ライニング材料の総重量に基づいて、20~80重量%の歯科用樹脂と、カルシウム、リン酸塩及び亜鉛のうちの少なくとも1つを含む20~80重量%のイオン放出材料と、を含むライニング材料を含む歯科修復用キットに関する。
【選択図】
【
図5B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 100,000~1,000,000g/molの分子量を有するポリアクリル酸を含み、溶液中のポリアクリル酸の濃度が1~30mg/lである水性活性化剤溶液、及び
- ライニング材料であって、前記ライニング材料の総重量に基づいて、20~80重量%の歯科用樹脂と、カルシウム、リン酸塩及び亜鉛のうちの少なくとも1つを含む20~80重量%のイオン放出材料と、を含むライニング材料を含む歯科修復用キット。
【請求項2】
前記ポリアクリル酸の分子量は、250,000~600,000g/molである請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記溶液中のポリアクリル酸の濃度が5~20mg/lである請求項1又は2に記載のキット。
【請求項4】
前記水性活性化剤溶液は、濃度0.8~7.5mg/mlの10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(10-methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate)をさらに含む請求項1乃至3の何れか一項に記載のキット。
【請求項5】
前記イオン放出材料は、ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、炭酸カルシウム、生体活性ガラス、酸化亜鉛含有ガラス、ケイ酸アルミニウムカルシウムガラス、酸化チタン含有ガラス、及びそれらの混合物から選択される請求項1乃至4の何れか一項に記載のキット。
【請求項6】
前記イオン放出材料の組成は、イオン放出材料の総重量に基づいて、
- 35~55重量%の炭酸アパタイト、
- 2~10重量%の炭酸カルシウム、及び
- 40~60重量%のZnO含有ガラス、である請求項1乃至5の何れか一項に記載のキット。
【請求項7】
前記歯科用樹脂は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸モルホリノエチル、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシ)フェニル)プロパン、アクリル酸、エポキシ、ビスフェノールA-グリシジルメタクリレート、ウレタンジメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、半結晶性ポリセラム及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1乃至6の何れか一項に記載のキット。
【請求項8】
ライニング材料中に配置された不活性充填剤をさらに含む請求項1乃至7の何れか一項に記載のキット。
【請求項9】
前記不活性充填剤は、Eガラス繊維、Sガラス繊維及びそれらの混合物から選択される請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記イオン放出材料、前記歯科用樹脂、前記不活性充填剤の相対量は、ライニング材料の総重量に基づいて、
- 30-50重量%のイオン放出材料、
- 30~50重量%の歯科用樹脂、及び
- 10~30重量%の不活性充填剤、である請求項8又は9に記載のキット。
【請求項11】
歯科用修復材料をさらに含む、請求項1~10の何れか一項に記載のキット。
【請求項12】
前記活性化剤溶液は、歯の修復におけるドリリング溶液として、又は表面改質剤として使用するのに適している、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のキット。
【請求項13】
前記ライニング材料は、歯の修復におけるライナー材料として、又はベース材料として使用するのに適している、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科修復品及び歯科修復品の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
う蝕(dental caries)又は空洞(cavities)としても知られる虫歯(tooth decay)は、細菌によって作られた酸による歯の破壊である。う蝕の治療は、う蝕病変を除去し、修復材料で置き換えることによって行われる。う蝕に感染した象牙質では、有機マトリックスが不可逆的に損傷するが、より深い、象牙質に影響を与えたう蝕は、健全な有機マトリックスでの石灰化が低下しており、修復して再石灰化する可能性がある。
【0003】
象牙質掘削機を使用して手動でう蝕病変を除去する低侵襲窩洞(minimally invasive cavity)の準備は、現在、修復治療中のエアロゾルや飛沫の発生を回避するために推奨されるアプローチの1つである。
低侵襲アプローチは、最終的には歯組織の掘削を最小限に抑え、代わりに歯組織の回復と修復を促進することを目的とする。
う蝕の進行の遅さは、実際に修復介入を可能とし、感染層を掘削した後に石灰化した構造を復元することができる。
【0004】
再石灰化プロセスには、古典的アプローチと非古典的アプローチに分類できる様々なアプローチが適用されている。
古典的なアプローチでは、象牙質の再石灰化は残留微結晶のエピタキシャル成長に基づいており、象牙質がカルシウムイオンとリン酸イオンが豊富な溶液中で保存されるときに、リン酸カルシウム鉱物が沈殿するための核生成サイトとして機能する。
しかし、最近の研究では、そのようなアプローチは象牙質の不完全且つ機能しない再石灰化をもたらす可能性があることを示す。
古典的な再石灰化アプローチでは、コラーゲンの内部線維部分の石灰化を伴わずに、象牙質のコラーゲンマトリックスの外部線維の再石灰化を生じる。
これは、サイズ及び配向のいかなる制御もない中での、このプロセス中に形成するアパタイト結晶のサイズによるためであると考えられている。
その結果、非古典的アプローチが、インビトロでの代替再石灰化技術として提案されており、象牙質の有機マトリックスの階層的な生体模倣再石灰化を達成しようとしている。
【0005】
生体模倣の非古典的再石灰化プロセスを行うためには、2つのことが必要である。まず、生体模倣再石灰化プロセス(非晶質リン酸カルシウムの形成と安定化)中に重要な役割を果たす特定の象牙質マトリックスタンパク質の合成代替品の使用である。
2番目は、カルシウムとリン酸塩の供給源として使用されるキャビティライナーである。既知の解決策は、う蝕病変を清浄した表面をキャビティライナーで処理し、その後修復材料を適用することにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、象牙質の再石灰化を促進することができる使いやすい歯科修復用の製品を開発することである。
有利なことに、この製品は、強力な完成した修復物をもたらすであろう。さらなる利点は、製品が抗菌性であること、すなわち、細菌の増殖を制限することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要約)
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。いくつかの特定の実施形態は、従属請求項で定義される。
本発明の一態様によれば、以下のような歯科修復用キットが提供される。
- 100,000~1,000,000g/molの分子量を有するポリアクリル酸を含み、溶液中のポリアクリル酸の濃度が1~30mg/lである水性活性化剤溶液、及び
- ライニング材料であって、前記ライニング材料の総重量に基づいて、20~80重量%の歯科用樹脂と、カルシウム、リン酸塩及び亜鉛のうちの少なくとも1つを含む20~80重量%のイオン放出材料と、を含むライニング材料を含む歯科修復用キット。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態による本発明の背後にある理論を概略的に示す。
【
図3】
図3A~5Bは、様々な時点でのSBFへのサンプルの浸漬後のSEM写真を示す。
【
図6】
図6A及び6Bは、
図5A及び5Bのサンプルの異なる角度からのSEM写真である。
【
図7】
図7A及び7Bは、活性化剤溶液で処理された象牙質と適用された本発明による材料との間の界面のSEM写真である。
【0009】
【
図8】
図8は、本活性化剤溶液では活性化されていないが、本ライニング材が適用された象牙質間の界面のSEM写真である。
【
図9】
図9~11は、前記界面の異なる部分の主な元素組成を示す。
【
図12】
図12~15は、市販の材料と象牙質の間の界面のSEM写真である。
【
図16】
図16~19は、様々な条件下で切断され、SBFに1週間浸漬された象牙質表面のSEM写真である。
【0010】
【
図22】
図22は、いくつかの実施形態による、ディスクサンプルからの24時間以内の水へのカルシウムの溶解(g/kg)を試験した結果を示す。
【
図23】
図23は、一実施形態による、3つの異なる時点における水への亜鉛の溶解(g/kg)の測定結果を示す。
【
図24】
図24は、別の実施形態による、3つの異なる時点におけるサンプルから水へのカルシウムの溶解(g/kg)の測定結果を示す。
【
図25】
図25は、様々な比較例及び一実施形態に従って調製されたいくつかのサンプルの曲げ強度をMPaで示す。
【0011】
【
図26】
図26は、いくつかの実施形態による2つのサンプルの曲げ強度をMPaで示す。
【
図27】
図27は、いくつかの比較サンプルの曲げ強度をMPaで示す。
【
図28】
図28A及び28Bは、せん断接着強度を測定するための試験設定を示す。
【
図29】
図29は、いくつかのさらなる実施形態によるサンプルのせん断接着強度をMPaで示す。
【
図30】
図30は、さらにいくつかのさらなる実施形態によるサンプルのせん断接着強度をMPaで示す。
【0012】
【
図31】
図31A~32Bは、様々な処理後の象牙質表面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
明細書において、「抗菌(antimicrobial)」という用語は、その物質が微生物を殺すか、又は微生物の増殖を阻害するが、宿主にはほとんど又は全く損傷を与えないことを意味する。
「象牙質の再石灰化(remineralisation of dentin)」という用語は、カルシウム、リン酸イオン、場合によってはフッ化物イオンが脱塩した(demineralised)エナメル質の結晶空隙に沈着する、非空洞歯病変の自然な修復プロセスを表す。
「再石灰化(remineralisation)」は、歯の構造内の強度と機能の回復に貢献する。「放出速度(release rate)」という用語は、所定の時間内にサンプルから放出されるイオンの量を意味する。この文脈において「表面改質剤(surface modifier)」とは、修復される歯の石灰化を活性化することを主な目的とする成分又は化合物である。
「歯科用樹脂(dental resin)」という用語は、歯科での使用に適した、すなわち生体適合性があり、十分な強度を有する、重合及び/又は架橋が可能なモノマー混合物又はポリマーを表す。
【0014】
本出願の文脈において、繊維の平均長は以下のように決定される。
繊維は、倍率6.5倍の実体顕微鏡(又は走査型電子顕微鏡)で写真撮影される。次に、写真はImage-J処理プログラムで処理され、繊維の長さが決定される。計算に含まれるファイバーの総数は500である。その後、繊維は、それらの長さに応じて0.1mm間隔で複数の区画に分割する。各0.1mm間隔の繊維長を合計する。
平均繊維長とは、短い繊維と長い繊維の長さが等しいとみなしたときの値とする。
この測定方法は、「Mechanical properties of fiber reinforced restorative composite with two distinguished fiber length distribution, Journal of the mechanical behavior of biomedical materials 60 (2016) 331-338, セクション 2.5 333 ページ」に記載されている。
粒子の平均サイズを決定するために同じ決定方法を使用することができ、測定された寸法は粒子の最大寸法となる。繊維の直径(すなわち、断面の直径)も、製造業者によって提供されない場合には、この方法で決定することができる。
異なる測定方法でも典型的には同じ結果が得られ、粒子サイズの考えられる測定方法の1つはISO13320:2009に開示されている。最も一般的には、特に粒子の平均粒径は製造業者によって提供される。
【0015】
本発明の態様によれば、以下のような歯科修復のためのキットが提供される。
- 100,000~1,000,000g/molの分子量を有するポリアクリル酸を含み、溶液中のポリアクリル酸の濃度が1~30mg/lである水性活性化剤溶液、及び
- ライニング材料であって、前記ライニング材料の総重量に基づいて、20~80重量%の歯科用樹脂と、カルシウム、リン酸塩及び亜鉛のうちの少なくとも1つを含む20~80重量%のイオン放出材料と、を含むライニング材料を含む歯科修復用キット。
【0016】
キットは、従って、象牙質活性化剤溶液と、強力な窩洞ライナーとして機能し、再石灰化(例えば、カルシウム及び/又はリン酸塩による)及び/又は抗菌(例えば、亜鉛による)能力を有する添加剤を含むライニング材料との組み合わせを提供する。
ライニング材料のイオン放出材料は、材料から放出可能な形態であり、いくつかの例を以下に示す。
ある場合には、ライニング材料は流動性複合材料の形態であってもよく、好ましくは生体活性である。
いかなる理論にも束縛されるものではないが、活性化剤溶液は、コラーゲン線維を含む象牙質表面をマイナスに帯電させ、イオン放出材料からのイオンを引き付け、ヒドロキシアパタイト結晶の形成を安定化させると考えられる。
材料とその特性の組み合わせは、機械的特性、化学的特性、取り扱い特性に基づいて選択された。
【0017】
水性活性化剤溶液(活性化溶液とも呼ばれる)は、通常、大部分又は単独で水とポリアクリル酸(PAA)で構成される。ポリアクリル酸以外の別の高分子電解質を使用するか、又は追加の成分を少量使用することも可能である。
例えば、活性化剤溶液は、10-メタクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート(MDP)をさらに含むことができる。
使用する場合、通常は0.8~7.5mg/mlの濃度で使用される。実験データによると、0.4及び8.3mg/mlの濃度ではまだ影響は小さいが、本文脈においては0.8~7.5mg/mlの範囲が最適であると考えられている。
MDPの効果は、初期の結合を増加させ、結合修復物の耐久性を向上させる。
選択的には、4-メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物(4-META)、N-(2-ヒドロキシ-3-((2-メチル-1-オキソ-2-プロペニル)オキシ)プロピル)-N-トリルグリシン(NTG-GMA)、ビス-(-)-ノル-メプタジノール(BisMEP)、ピロメリト酸ビス(グリセリル ジメタクリレート)(PMDGM)、又は、1,3-グリセロール ジメタクリレート/マレイン酸塩(GDMAマレイン酸塩)等の公知の接着促進剤又はそれらの任意の混合物が、MDPの代わりに、又はMDPに加えて使用されうる。
【0018】
一実施形態によれば、MDPの濃度は1.0~6.5mg/mlである。別の実施形態によれば、MDPの濃度は2.0~5.5mg/mlである。
MDPの濃度は、例えば0.8、0.9、1.0、1.2、1.5、1.7、2.0、2.2、2.5、2.7、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5又は7.0mg/mlから、最大1.2、1.5、1.7、2.0、2.2、2.5、2.7、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、又は7.5mg/mlまでであってもよい。
【0019】
活性化剤溶液に使用されるPAAの分子量は100,000~1,000,000g/molである。分子量は重量平均分子量であり、通常はPAAの製造元によって提供される。気相クロマトグラフィーにより測定された重量平均分子量が上記範囲にあるPAAが本用途に適している。
一実施形態によれば、ポリアクリル酸(PAA)の分子量は250,000~600,000g/molである。
一実施形態によれば、10,000g/molの分子量は小さすぎ、4,000,000g/molの分子量は大きすぎることが本文脈中では判明した。
PAAの分子量は、例えば100000、120000、150000、200000、250000、300000、350000、400000、450000、500000、550000、600000、650000、700000、750000、800000、850000又は900000g/molから、150000、200000、250000、300000、350000、400000、450000、500000、550000、600000、650000、700000、750000、800000、850000、900000、950000又は1000000g/molまでであってもよい。
【0020】
溶液中のポリアクリル酸の濃度は1~30mg/lである。一実施形態によれば、溶液中のPAAの濃度は5~20mg/lである。
濃度は、例えば、1、3、5、7、10、12、15、18、20、22、25又は28mg/lから、3、5、7、10、12、15、18、20、22、25、28又は30mg/lまでであってもよい。
【0021】
以下の実施例の箇所で実証するように、PAAの選択した分子量と選択した濃度の両方が最終結果に関係する。
【0022】
典型的には、活性化剤溶液は、歯の修復におけるドリリング溶液として、又は表面改質剤として使用することに適している。
ドリリング溶液及び表面改質剤、ならびにそれらの用途はそれ自体知られており、本キットは、いずれの用途にも適した形態の活性化剤溶液を含む。
典型的には、ドリリング溶液の粘度は、表面改質剤の粘度よりも若干低い。
【0023】
このキットは、ライニング材料の総重量に基づいて、20~80重量%の歯科用樹脂と20~80重量%のイオン放出材料とを含むライニング材料を含む。
歯科用樹脂の量は、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は70重量%から、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75又は80重量%までであってもよい。
イオン放出材料の量は、例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は70重量%から30、35、40、45、50、55、60、65、70、75又は80重量%までであってもよい。
さまざまな量の例を以下に示す。
【0024】
一実施形態によれば、イオン放出材料はカルシウム及びリン酸塩を含む。別の実施形態によれば、イオン放出材料はカルシウム及び亜鉛を含む。さらに別の実施形態によれば、イオン放出材料はリン酸塩及び亜鉛を含む。好ましい実施形態によれば、イオン放出材料は、カルシウム、リン酸塩、及び亜鉛を含む。別の好ましい実施形態によれば、イオン放出材料は、カルシウム、リン酸塩、亜鉛及びチタンを含む。
イオン放出材料は、生体活性ガラス、アルミニウム及び/又はチタンなどのさらなる材料を含んでもよい。
イオン放出材料は、ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、炭酸カルシウム、生体活性ガラス、酸化亜鉛含有ガラス、ケイ酸アルミニウムカルシウムガラス、酸化チタン含有ガラス、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0025】
一実施形態によれば、イオン放出材料の組成は、イオン放出材料の総重量に基づき、
- 35~55重量%の炭酸アパタイト、
- 2~10重量%の炭酸カルシウム、及び
- 40~60重量%のZnO含有ガラス、
である。
【0026】
別の実施形態によれば、イオン放出材料の組成は、イオン放出材料の総重量に基づき、
- 40~50重量%の炭酸アパタイト、
- 4~8重量%の炭酸カルシウム、及び
- 45~55重量%のZnO含有ガラス、
である。
【0027】
イオン放出材料からの様々なイオンの放出速度は、様々な方法で制御することができる。放出速度を制御する1つの方法は、結晶化の程度である。典型的には、イオン放出材料がアパタイト、炭酸塩及び/又はガラスであり、高度に結晶化されている(材料に応じて、20%以上又は70%以上の結晶化度を有するなど)場合、それはむしろ不活性である可能性があって、つまり、イオンはゆっくりと放出される。所望の放出速度に適した結晶化度は、選択した材料に依存し、それは、大きく異なる場合がある。但し、ほとんどの材料においてイオンを素早く放出するためには材料が非晶質(アモルファス)である必要がある。
放出速度は環境のpHにも依存する。従って、イオン放出材料において、異なる放出速度を有する少なくとも2つの異なる材料を組み合わせることが可能であり、有利である。この場合、放出速度が高い材料はイオンを素早く放出するが、放出速度が低い材料はイオンをよりゆっくりと放出するため、より長い期間にわたってイオンを放出する。
【0028】
ライニング材料は、歯科修復中のライナー材料又はベース材料としての使用に適していることが好ましい。つまり、ライナーとベース材料の使用は、粘度や湿潤などの必要な特性と同様に、それ自体が公知である。
ライナー材料とベース材料との違いは当業者には公知であり、ライナー材料が修復されるキャビティの底部に薄い層(典型的には0.5~1mm、又は0.5mmよりも薄い)として塗布されるのに対して、ベース材料はわずかに厚い層(通常は2~4mm)で塗布されることとして要約されうる。
【0029】
ライニング材料は歯科用樹脂も含み、これは典型的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸モルホリノエチル、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシ)フェニル)プロパン、アクリル酸、エポキシ、ビスフェノールA-グリシジルメタクリレート(BisGMA)、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、半結晶性ポリセラム(PEX)、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
本キットはさらに、歯科修復用樹脂を含んでもよい。 歯科用修復樹脂は、典型的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸モルホリノエチル、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジウレタンジメタクリレート、2,2-ビス(4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシ)フェニル)プロパン、アクリル酸、エポキシ、ビスフェノールA-グリシジルメタクリレート(BisGMA)、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、半結晶性ポリセラム(PEX)、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。従って、歯科用修復樹脂は、ライニング材料の樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよい。歯科修復樹脂はまた、以下に列挙するもののいずれかのような充填剤を含んでもよい。
【0031】
ライニング材料及び/又は歯科修復樹脂中の樹脂は、国際公開第2020/035321号に開示されている化合物であってもよく、その内容は、特にこの化合物の製造に関して参照により本明細書に組み込まれる。
従って、化合物は下記一般式(I)を有することができる。
【0032】
【化1】
(I)
ここで、n=1,R=NH,R’は(Ia)又は(Ib)
【0033】
【0034】
【化3】
(Ib)
ここで、n=2、R=O、R’は(Ic)又は(Id)
【0035】
【0036】
【化5】
(Id)
ここで、x=1~12、
n=2,R=NH又はOの時、R’は(Ie)
【0037】
【化6】
(Ie)
ここで、m=0~16、及び
n=2,R=Oの場合に、R’は(If)
【0038】
【0039】
ライニング材料はさらに充填剤を含んでもよい。このような充填剤は、例えば、シリコン(Si)、カルシウム(Ca)、リン(P)、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、チタン(Ti)、フッ素(F)、ストロンチウム(Sr)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)、ニオブ(Nb)又は上記元素の他の化合物等の成分を含む生体活性又は部分反応性グラスアイオノマーフィラー、着色顔料、不活性セラミック、不活性シリカ、ヒドロキシルアパタイト(HA)又は他のリン酸カルシウム、Al2O3、ZrO2、Ag、ゼロゲル、機能性生体活性分子又は治療活性分子を含む生体活性ガラス又はフィラー粒子、抗原、抗生物質、消毒剤、放射線不透過性材料、マレイン酸などの有機酸、ポリアクリル酸等であってもよい。これらの充填剤のいずれも、歯科修復樹脂に組み込まれていてもよい。
【0040】
好ましい実施形態によれば、ライニング材料はさらに不活性充填剤を含む。
充填剤は典型的には、Eガラス繊維、Sガラス繊維、及びそれらの混合物から選択される。これらの充填剤のいずれも、歯科修復樹脂に組み込まれていてもよい。
【0041】
一実施形態によれば、ライニング材料中のイオン放出材料、歯科用樹脂及び不活性充填剤の相対量は、ライニング材料の総重量に基づき、
- 30~50重量%のイオン放出材料、
- 30~50重量%の歯科用樹脂、及び、
- 10~30重量%の不活性充填剤である。
【0042】
他の一実施形態によれば、ライニング材料中のイオン放出材料、歯科用樹脂及び不活性充填剤の相対量は、ライニング材料の総重量に基づき、
- 35~45重量%のイオン放出材料、
- 35~45重量%の歯科用樹脂、及び、
- 15~25重量%の不活性充填剤である。
【0043】
充填剤は粒子状であっても繊維状であってもよい。粒子とは、例えば、球及び非常に短い繊維(繊維の長さがその直径の最大2倍である)、同時に、ウィスカー、すなわち50μm未満の長さを有するような短繊維よりも著しく短いものを意味する。繊維状の充填剤の場合、繊維の長さは80μm~300μm(マイクロメートル)の範囲である。さらに任意選択で、繊維の平均長は100~300μmの範囲である。
例えば、フィラー繊維の平均長さは、100、120、150、170、200、220、230又は250μmから、120、150、180、200、210、220、230、250、280又は300μmまでであってもよい。
任意に、好ましい実施形態では、材料中の繊維の平均長は150~250μmの範囲である。
粒子状充填剤の平均最大寸法は、例えば0.3~25μmであってもよい。充填材中の粒子の直径は、不規則な粒子の場合、粒子の最大直径となる。
直径は0.3、0.5、1、5、7、10、13、15、17、20、又は22μmから、1、5、7、10、13、15、17、20、22、又は25μmまでであってもよい。これらの適切なサイズは、上記のイオン放出材料にも適用される。
【0044】
本キットを使用する場合、歯科医はまず修復する窩洞を準備する。
ドリリング中、活性化溶液はドリリング溶液(リンス溶液とも呼ばれる)として使用することができる。又は、表面改質剤として適用することもでき、つまり、ドリリング及びリンス後の最初のステップとしてキャビティの内面(キャビティの内面全体又はキャビティの底部だけ、のいずれかでも)に適用することもできる。
その後、ライナー材料がライナー材料又はベース材料として適用され、続いてライナー又はベース材料の硬化、通常は光硬化が行われる。
第3のステップは、さらに、歯科修復物(通常はレジン)を塗布し、レジンを硬化することである。従って、歯科修復物はライニング材料を覆い、それによって患者の口へのイオンの浸出を防ぐ。
【0045】
開示される本発明の実施形態は、本明細書に開示される特定の構造、プロセスステップ、又は材料に限定されず、関連技術の当業者によって認識されるように、その均等物に拡張されることが理解されるべきである。
又、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみに使用されており、限定することを意図していないことも理解されるべきである。
【0046】
さらに、記載された特徴、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
明細書では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、長さ、幅、形状等の例等の多くの具体的な詳細が提供される。
【0047】
この文書では、動詞「から成る」及び「含む」は、言及されていない機能を除外したり存在を要求したりしないオープンな制限として使用される。
従属請求項に記載された特徴は、別段の明示的な記載がない限り、相互に自由に組み合わせることができる。さらに、この文書全体での「a」又は「an」、つまり単数形の使用は複数形を排除するものではないことが理解されるべきである。
【0048】
(図面の詳細な説明)
図1は、一実施形態による本発明のバックグラウンドの理論を概略的に示す。図では、イオン放出材料は領域1として概略的に示されており、ここでは放出可能な様々なイオンを含むものとして示されている。象牙質(参照番号2で示す)は活性化溶液で処理されているため、その表面はCa
2+イオン(イオンの一例として)を引き付ける。この電荷の違いにより、イオン放出材料から象牙質へのイオンの移動が誘発されると考えられている。
図2A及び2Bは、以下でさらに詳しく説明するサンプルの準備を示している。
図3A~33は、サンプルに対して実行されたテストの結果を示しており、以下の実施例のパートに関連してより詳細に説明される。
【実施例】
【0049】
本明細書に従っていくつかの異なるサンプルを調製し、市販の製品を使用して調製したサンプルと比較した。以下に説明するさまざまな測定が行われた。
【0050】
サンプルの調整
活性化剤溶液は、蒸留水(グレードIII)と所定の分子量を有するSigma-Aldrich(ミズーリ州セントルイス、米国)のポリアクリル酸(PAA)を混合することによって調製した。水中のPAAの異なる分子量(5000g/mol、450000g/mol及び4000000g/mol)及び濃度(10mg/L、20mg/L、2g/L及び500g/L)を試験した。
以下の表2に示す濃度の10-メタクリロイルオキシデシルリン酸二水素(MDP、フルオロケム社製、ハドフィールド、英国)を使用した。
【0051】
ライニング材料は、成分を共に混合することによって調製された。以下の成分が使用され、各サイズと分子量は製造者から提供された。
- 直径6μm、長さ50~200μmの分布(繊維の90重量%がこの範囲内)を有するEガラス繊維、GC Dental社製
- 直径約10μmの炭酸アパタイト粒子、GC Dental社製 Cytrans(登録商標)
- 一次粒子サイズ200nmの炭酸カルシウム粒子(材料はクラスターを形成、一次粒子サイズは製造者によって提供された)、Shirai社製
- Schott社製ガラス(混合物の85重量%)とGC Dental社製(混合物の15重量%、Caradyne(登録商標)で使用されるガラス粉末)を含む、平均粒径0.7μmのZnO含有反応性ガラス粉末混合物
- シリカフィラー:Schott社製 BaAlSiO2フィラー粒子(直径0.7μm)(UltraFine、GM27884、Schott社製、ランツフート、ドイツ)
- 以下の成分を含む様々な樹脂混合物
-BisGMA(ビスフェノール A-グリシジルメタクリレート)、Esstech Inc.製(ペンシルバニア州エシントン、米国)
-TEGDMA(ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート)、Esstech Inc.製(ペンシルバニア州エシントン、米国)
-UDMA(ウレタンジメタクリレート)、Sigma-Aldrich Co.製(ミズーリ州セントルイス、米国)
【0052】
試験に使用した歯科用ディスクは次のように準備された。
まず、抜歯した健全な親知らずの咬合面を、水冷下で自動研削盤500grit、300rpm(Struers Rotopol-11)を使用して湿式研削した(米国歯学部教育クリニック、トゥルク大学、フィンランドから入手)。
その後、
図2Aに示すように、歯の最長寸法の横方向にディスク(厚さ2mm)を歯から切り出し、各実験につき5つの相似サンプルを作成した。
図2Aには、歯3と2本の切断線4が示されている。
象牙質ディスクの脱塩は、酸エッチング(37%リン酸で20秒間)によってシミュレートされた。
【0053】
再石灰化試験のために、ディスク(
図2B、参照番号5で示す)を、ISO 23317 (2014)に従って調製された模擬体液(SBF)に7日間浸漬する前に、活性化剤溶液(表3を参照)で表面処理するか(すなわち、リンス)、又は活性化剤溶液を使用せずに(すなわち、普通の水ですすいだ;対照サンプルC0として)表面処理した。
【0054】
象牙質と現在のライニング材料の間の界面を評価するために、象牙質ディスク(上記のように調製されたもの)をPAA(450000g/mol、蒸留水中10mg/l)で最初の処理を行い、次に、実施例30(Ex30)によるライニング材料で(以下の表1を参照)処理することによって界面サンプルを調製した。
ライニング材料は流動性があるため、手持ちの歯科用プラスチック器具を使用して象牙質ディスクに塗布し、その後20秒間光硬化させた(発光波長範囲は430~480nm、放射照度は約1600mW/cm2)。その後、サンプルをSBFに2週間浸漬した。
【0055】
所定の市販材料と象牙質との間の界面を観察するために、比較用の界面サンプルも調製した。象牙質ディスクは、活性化剤溶液を使用せずに、リン酸エッチングを使用して、上で説明したように調製した。
市販の材料を製造業者の指示に従って象牙質ディスクに適用し、キュア/硬化した(材料に応じて)比較サンプルをSBF中に2週間保管した。
比較例C1はGC Dental社のFuji II LCを使用し、比較例C2はGC Dental社のFuji IXを使用し、比較例C3は米国Pulpdent Corp.のActiva-Linerを使用し、比較例C4はGC Dental社のCaredyneを使用した。
【0056】
ISO 4049:2019に従って、直径10mm、厚さ1mmのサンプルを調製することにより、本材料及び対照サンプルからのイオン放出(又は溶解)を試験した。この材料を金型に配置し、20秒間キュアさせた。
【0057】
本明細書によるイオン放出サンプルは、表1に列挙されているように、異なる成分含有量であった。ライニング材の成分の量は、ライニング材の総重量に対する重量百分率である。使用した樹脂は、Exp24、25、26、27、28、及び30ではBisGMA/TEGDMA(50/50)、Exp31ではUDMA/TEGDMA(70/30)であった。ディスクサンプルから24時間での水へのカルシウムの溶解をテストするには、BisGMA/TEGDMA(50/50)及びシリカ充填剤からなる対照イオン放出サンプルC5を使用した。
【0058】
【0059】
曲げ強度の試験には、上記のサンプルExp24、25、26、27、28及び30と同一のサンプルを使用した(すなわち、ISO 4049:2019に従って調製した)。さらに、曲げ強度の比較サンプル(各5つの相似サンプル)も使用した。曲げ強度の比較サンプルは、C6としてFuji Lining LC、GC Dental社製、C7としてTheraCal LC、Bisco Dental社製、米国、C8としてActiva-Liner、Pulpdent Corp.製、米国及びC9としてUltra-Blend plus、Ultra Dent社製、米国を使用して調製された。
さらに、比較サンプルC1~C4と同じ材料を用いて曲げ強度比較サンプルを作製した。すなわち、比較例C10はFuji II LC、GC Dental社製を使用し、比較例C11はFuji IX、GC Dental社製を使用し、比較例C12はCaredyne、GC Dental社製を使用した。
【0060】
本明細書による材料と象牙質との間の結合性能(すなわち、せん断結合強度)もまた、異なる象牙質表面処理後に評価した。結合性能も、異なる重量パーセントの10-MDP(10-メタクリロイルオキシデシルリン酸二水素)をPAA溶液に添加することによって評価された。
【0061】
まず、エッチングを1つの結合サンプル及び1つの比較結合サンプル(以下の表2のサンプルS2a及びS2b)にのみ使用したことを除いて、上で説明したように象牙質ディスクを調製した。
【0062】
各処理について、上記の実施例Exp30によるライニング材料を適用することによって、以下に説明するように、結合サンプルを調製し(サンプルS1a~S8a)、市販の流動性複合材料(GC社製、G-aenial Injectable)を使用して比較結合サンプルを調製した(サンプルS1b~S8b)。各サンプル及び比較サンプルを水中に一晩保管し、翌日接着強度を測定した。
【0063】
結合性能測定のために、抜歯した歯の咬合面を湿式研磨(自動研削盤、500grit、水冷下300rpm、Struers Rotopol-11を使用)して平坦な象牙質表面を作成した。
続いて、低温硬化自動重合アクリル樹脂Palapress(Palapress; Heraus Kulzer社製、ヴェールハイム、ドイツ)を使用して、歯をアクリルブロック(直径2.5cm)に個別に取り付けた。
【0064】
内径3.6mmの透明なポリエチレンの型を使用して、ライニング材料(上記Exp30による)又は比較材料(G-aenial Injectable、GC Dental社製)を象牙質基材に2mmづつ増分しながら適用して、直径3.6mmの突起を形成した。
ライニング材料及び比較材料を、手動光硬化ユニット(Elipar S10)を使用して、側面及び上面から全厚で20秒間2回光重合させた。試験片は試験前に1日間水(37℃)中に保管された。
【0065】
接着性能試験は、表2に従って、異なる象牙質表面処理を使用して調製されたサンプルに対して実行された。
【0066】
【0067】
破壊靱性も、ISO20795-2:2013標準方法に準拠して片刃ノッチ付きビーム試験片(2.5×5×25mm3)を使用して試験された(適応はサンプルのサイズのみで、それ以外試験は標準に従った)。
特注のステンレス製割型を使用することで、力を入れずに試験片を取り出すことができた。正確に設計されたスロットは金型の中央にその高さの中間まで延在して作成され、ノッチの中央位置と亀裂の長さ(x)を試験片の高さの半分に最適化することができた。試験した材料は実施例Exp30及び上記の比較試験C1、C2、C3及びC4であった。この材料を、マイラーストリップで覆われたガラススライド上に配置された型に1回ずつ挿入した。
重合又は硬化の前に、直線状の刃のスチールブレードを金型の既成スロットに挿入することによって、中央に位置する鋭利な亀裂が生成された。Exp30の樹脂複合材料の重合は、5つの別々の重複部分で20秒間実行された。重合光にさらす前に、モールドの上側をブレードの両側からマイラーストリップとガラススライドで覆った。型から取り出すと、各試験片は反対側でも重合されていた。市販の材料(C1~C4)の塗布と重合は、製造元の指示に従って行われた。各材料の試験片(n=6)は、試験前に37℃、24時間乾燥状態で保管された。
【0068】
さらなるサンプルの1つであるC14は、活性化剤溶液の使用中のエアロゾル放出の減少に対するセルロースナノクリスタル(NCC)の効果をテストするために調製された。この例では、活性化剤溶液は、蒸留水(グレードIII)と分子量450000g/molのSigma-Aldrich社製(St. Louis、MO、米国)のポリアクリル酸(PAA)を水中のPAA濃度が10mg/Lになるまで混合することによって調製された。
さらに、Fluorochem Ltd社製、Hadfield、英国の10-メタクリロイルオキシデシルリン酸二水素(MDP)を5mg/mlの量で活性化溶液に添加した。
活性化溶液は、溶液の総重量の1重量%の量のセルロースナノクリスタル(NCC)、NovaWire-CNC-T、Novarials社製、で増粘された。このサンプルは、GC製の光硬化G-aenial Injectable(スタブの直径3.6mm)を使用して、以下に説明するせん断接着試験にさらに使用された。よって、サンプルC14は、NCCの使用を除いて、サンプルC13bと同等である。
【0069】
試験方法
化学的特性は「Ferracane et al., Academy of Dental Materials guidance-Resin composites: Part II-Technique sensitivity (handling, polymerization, dimensional changes), Dental Materials 33 (2017) 1171-1191」に記載の方法を使用してFT-IR分光法によりモノマー転化率(DC%)を測定することによって推定された。
【0070】
さらに、pH変化によるイオン放出を、イオン選択電極(ISE)及びISO 9917-1:2007を使用した原子吸光分光法(AAS)で測定した。
【0071】
SBFに1、2、3、及び7日間浸漬した後の象牙質表面(石灰化対照サンプルC0と活性化剤溶液ですすいだ石灰化サンプルの両方)の特性評価には、走査型電子顕微鏡(SEM/EDS)を使用した。
【0072】
本明細書による材料と象牙質との間の界面は、SBF中で界面サンプルを2週間保存した後、ディスクを水平に2等分し、SEM/EDS及び化学マッピングを使用することによって試験した。比較界面サンプルC1~C5についても同じことを行った。
【0073】
サンプルからのカルシウムと亜鉛の溶解度の測定には、次のツールと試薬を使用した。
AAS(原子吸光分光法)値は、AAnalyst 400原子吸光分光計、シリアルナンバー201S8090503、PerkinElmer Life and Analytical Sciences社製、コネチカット州シェルトン、米国を使用して測定した。
ISE(イオン選択性電極)値は、Orion ionplus Sure-Flow Electrode Body 9700BNWP、VV1-11811、ThermoScientific、米国を使用して測定され、一方、電極用の液体は、Orion ionplus Filling Solution、A optimum Results、Orion900061、60ml、LOT UV1、P/N 223228-A01、Thermo Fisher Scientific、チェルムスフォード、米国、を使用した。
使用したカルシウム標準は、カルシウム標準0.1M Ca2+、Orion ionplus Application溶液475ml、Orion 922006、(脱イオン水 H2O CAS 7732-18-5、塩化カルシウム CaCl2 CAS 10043-52-4)、Exp 11/2018、LOT: UP1、P/N: 02480-A03、CML: 922006、Thermo Fisher Scientific社製、米国、を使用した。
ISAは、Calcium ISA Ionic Strength Adjuster、Orion ionplus Application Solution、475 ml、Orion 932011、LOT: UP1、P/N: 702555-A03、CML: 932011、Thermo Fisher Scientific社製、米国を使用した。
pH測定器は、PHM 220 LAB pH METER, 657R005N035, Radiometer Copenhagen, MeterLab TM, Radiometer Analytical S.A. フランス、を使用し、バッファー溶液としてpH4のAVS(Titrinorm, VWR Chemicals, 00168, 100 ml, 32095.184, LOT 19B194007, VWR International S.A.S. Fontenay-sous-Bois フランス)を使用した。
他のバッファー溶液(リン酸バッファー)としては、pH7のもの、(+/-0,02(20C):AVS Titrinorm, VWR Chemicals, 00152, 100 ml, 32096.187, LOT 19G124120, VWR International bvba Leuvenベルギー)が、pH10のもの(AVS Titrinorm, VWR Chemicals, 00093, 100 ml, 32040.185, LOT 19G104115, VWR International bvba Leuven ベルギー)と共に使用された。
【0074】
機械的特性は、LRXモデル、Lloyd Instruments Ltd製及びISO standard 4049:2019を用いた100℃、16時間の水中での熟成の前後の曲げ強度の測で推定された。
【0075】
接着性能(せん断接着強度)の測定は以下のように行った。
上述のように調製したサンプル及び比較サンプルを、まず取り付け治具に取り付けて固定し、次にせん断接着強度試験アセンブリ上に配置した。
試験は万能試験機(LRX、Lloyd Instruments)を使用して室温(23±1℃)で実行され、データはPCソフトウェア(Nexygen、Lloyd Instruments)を使用して記録された。
剪断ロッドを、準備された平坦な結合部位に対して平行に配置した。直径4.1mmの円形の穿孔を金属ブレードに形成し、金属ブレードがライニング材料又は市販材料と象牙質の界面に位置するまで複合材料を通過させ、その後スパン長10mm、クロスヘッド速度1.0mm/minで試験片が破断するまで荷重をかけた。
接合強度は、破壊時の最大荷重(N)を接合面積(mm
2)で割ることによって計算され、メガパスカル(MPa)で記録された。試験の設定を
図28A及び28Bに示す。
【0076】
追加の試験も実施され、象牙質表面ディスクは表面をエッチングせずに準備され、すなわち高速ハンドピースで単純にバーカットされ、普通の水冷却剤溶液又は上記の活性化剤溶液(PAA分子量450000g/mol、濃度10mg/l))の下で調製された。ディスクをSBF中で1週間保管し、その後、上記のようにSEM/EDSで評価した。結果を
図16~20に示す。
【0077】
破壊靱性もまた、上で説明したように調製されたサンプルの3点曲げモードで、万能材料試験機を用いてクロスヘッド速度1.0mm/分で試験された。
破壊靱性(FT)は次の式を使用して計算された。
【0078】
【0079】
ここで、Pはキロニュートン(kN)の最大荷重、Lはスパン長(2cm)、Bはセンチメートル(cm)の試験片の厚さ、Wはcmの試験片の幅(深さ)、xは幾何学的関数に依存し、及び、a/Wでは、aは亀裂の長さ(cm)である。xの値はASTM E399-12で与えられる。
【0080】
結果
FT-IR分光法により測定したモノマー転化率(DC%)は、実験1によると、実施例Exp24、25、26、27、28及び30のすべてのサンプルについて60~61%であった。
【0081】
異なる分子量のいくつかの異なる濃度のPAAの石灰化を試験した(SBFに7日間浸漬)。結果を表3にまとめる。
ここで、(-)は石灰化がないことを意味し、(+)はある程度の石灰化はあるが完全な石灰化ではないことを意味し、(++)は表面が石灰化で完全に覆われていることを意味する(
図5Bに示す)。
【0082】
【0083】
図3Aから5Bは、脱塩された象牙質ディスクサンプルをSBFに浸漬した後の様々な時点での再石灰化の結果を示す。
図Aは、対照サンプルC0、すなわち活性化剤溶液で処理されず、水のみで処理されたサンプルのものである。
図Bは、450000g/mol及び10mg/lの上記の活性化剤溶液で処理したサンプルのものである。
図3は1日浸漬後、
図4は3日間浸漬後、
図5は7日間浸漬後である。対照サンプルC0(
図3A、4A及び5A)の再石灰化は非常に限られており、7日間の浸漬後においてごくわずかな再石灰化しか見られなかった。上記の活性化剤溶液で処理したサンプル(
図3B、4B及び5B)は、3日後にはすでに顕著な再石灰化を示した。
【0084】
図6Aは、
図5Aと同じ象牙質ディスクを側面図として示す。
図6Bは、
図5Bの象牙質ディスクを側面図として示す。示されているように、
図6Bの象牙質細管はディスクの表面で再石灰化されているが、
図6Aでは基本的に開いたままである。
【0085】
図7A及び7B(
図7Bは
図7Aの部分拡大図である)は、活性化剤溶液で処理された象牙質(図の下部、明るい灰色)と適用された本発明による(SBF中で2週間保管後のExp30のような)ライニング材料(図の上部、充填剤粒子が明るい灰色で示されている)との間の界面を示す。
示されているように、石化層又は反応性(イオンが豊富な)層が、活性化象牙質と裏打ち材料の間の界面に形成された。界面のSEM画像を撮影したところ、脱灰象牙質内部のレジンタグ中だけでなく界面にもカルシウムの豊富な層が形成されていることが明確に示されていた。
【0086】
図8は、象牙質は本発明の活性化溶液で活性化されなかったが、本ライニング材料が使用された状況を示す。
図7A及び7Bと比較すると、活性化剤溶液とライニング材料との本発明の組み合わせが象牙質の石灰化に顕著な効果を有することが分かる。
【0087】
図9、10、11は、エネルギー分散型X線分光計(EDX)によって測定された、界面のさまざまな部分(
図7A及び7Bに示す)の主な元素組成を示す。
図9は、
図7Bの領域1(図の上部)から測定されたイオン放出材料の組成を示す。
図10は、
図7Bの点5(図の中央)で測定された界面における石灰化層の組成を示す。
図11は、
図7Bの領域2(図の下部)から測定された脱灰象牙質の組成を示す。示されているように、イオン豊富な層の主な元素組成はCaとPであり、これらは活性化象牙質の再石灰化を促進する。
【0088】
図12~15は、市販の材料(比較例C1~C4)と象牙質との間の界面を示す。
図12はGC Dental社製、Fuji II LC(C1)、
図13はGC Dental社製、Fuji IX(C2)、
図14はPulpdent Corp製、米国、Activa-Liner(C3)、及び
図15はGC Dental社製、Caredyne(C4)を使用した。結果は、これらの市販の材料と象牙質との間の界面に反応性層又は石灰化層は形成されなかったことを示す。
【0089】
再石灰化試験のさらなる結果を
図16及び17(異なる倍率)に示す。これは、普通の水冷下で切断され、SBFに1週間浸漬された象牙質表面を示す。つまり、サンプルはまったく処理されていない。石灰化は見られず、汚れの層のみが見られる。
図18及び19は、
図16及び17と同じSEM/EDS写真であるが、本活性化剤溶液下で切断され、SBF中に1週間保存されたサンプルに関するものである。石灰化がサンプルの表面全体を覆っていることがわかる。
図20は、同じサンプルの断面図であり、石灰化層の厚さを示している。
図21は、EDXによって測定された、
図21中に四角でマークされた領域の主な元素組成を示す。ここにあきらかなように、活性化剤溶液は象牙質の再石灰化に適切な環境を提供する。
【0090】
図22は、ディスクサンプルからの、24時間の水へのカルシウム(g/kg)の溶解のテスト結果を示す。
試験は4つのサンプルに対して行われ、左側の最初のサンプルは実施例Exp26から、2番目のサンプルは実施例Exp27から、3番目のサンプルは対照サンプルC5で、右側の4番目のサンプルは実施例Exp30からであり、各サンプルについて本明細書によれば、4つの測定が行われ、各グループの列は結果を示す。
各グループにおいて、左端の列(各グループの最小値)はサンプルの全重量からのAASによる測定値を示し、後ろから2番目の列はサンプルの活性部分の重量からのAASによる測定値を示す。
当然のことながら、対照サンプルにはサンプルの全重量からのAASのみを与えることができる。
各グループの3番目の列はサンプルの全重量からのISEの測定値に対応し、右端の列はサンプルの活性部分の重量からのISEの測定値に対応する。
線は、サンプルを浸した水の測定されたpHを示す。迅速なカルシウム放出が求められる場合、混合物中に炭酸カルシウムを含めること(実施例Exp27及び30)が重要であることを結果は示している。
【0091】
図23は、実施例30のサンプルから水への亜鉛の溶解(g/kg)を3つの異なる時点、すなわち15分(左側)、24時間(中央)、及び168時間(右側)で測定した結果を示す。線はサンプルを浸した水のpHを示す。各グループの列において、左の列はサンプルの全重量からのAASによる測定値であり、右の列はサンプルの活性部分の重量からのAASによる測定値である。放出される亜鉛イオンの量が時間とともに増加し、それによりpHがよりアルカリ性に変化することを結果は示す。
【0092】
図24は、3つの異なる時点、すなわち15分(左側)、24時間(中央)及び168時間(右側)における、実施例30のサンプルから水へのカルシウムの溶解(g/kg)の測定結果を示す。線はサンプルを浸した水のpHを示す。
各列グループの左端の列は、サンプルの全重量からのAASによる測定値であり、2番目の列はサンプルの活性部分の重量からのAASによる測定値である。各グループの3番目の列はサンプルの全重量からのISEの測定値に対応し、右端の列はサンプルの活性部分の重量からのISEの測定値に対応している。結果は、放出されるカルシウムイオンの量が時間とともに増加し、それによりpHがよりアルカリ性に変化することを示す。
【0093】
図25は、異なる組成及び組成成分を有する様々な比較例(C6~C9)及び本明細書に従って調製されたいくつかのサンプル(実施例Exp24、実施例Exp25、実施例Exp26、実施例Exp27、実施例Exp28及び実施例Exp30)の曲げ強度(MPa)を示す。
各サンプルの曲げ強度は、乾燥サンプル(各グループの左列、数値結果の上の線)及び水(100℃)で16時間煮沸して熟成させたサンプル(各グループの右列、下段は数値結果)で測定された。
結果は、本発明のライニング材が熟成(沸騰)前後の市販の比較材料よりもはるかに強いことを示している。
【0094】
図26は、樹脂が異なる、本明細書に従って調製された2つのサンプル(実施例Exp30及び31)の曲げ強度(MPa)を示す。
各サンプルの曲げ強度は、乾燥サンプル(両グループの左列)と水(100℃)で16時間煮沸したサンプル(両グループの右列)で測定された。
それ以外の点ではサンプルは同一であった、左側の列のグループに結果が示されているサンプルはBisGMA/TEGDMA(50/50)(実施例Exp30)の樹脂混合物を使用し、右側の列のグループに結果が示されているサンプルでは、UDMA/TEGDMA(70/30)の樹脂混合物を使用した(実施例Exp31)。
【0095】
図27は、比較サンプルC10、C11、C8及びC12の曲げ強度(MPa)を示し、実施例Exp30によるサンプルの結果も示す。明らかなように、本材料はいくつかの市販材料と比較して曲げ強度を大幅に向上させ、一部の市販材料と比較した場合は他の市販材料と比較して同程度の同じ曲げ強度に達する。
【0096】
図29は、サンプルS1~S6及びC13、つまり表2に列挙したさまざまな表面処理後の象牙質表面のせん断接着強度をMPa単位で示す。
サンプルの各グループにおいて、左の列は実施例Exp30(S1a、S2a、S3a、S4a、S5a、S6a、C13a)のように処理したサンプルの結果を示し、右の列は市販の流動性複合材料で処理したサンプル(S1b、S2b、S3b、S4b、S5b、S6b、C13b)の結果を示す。
結果は、象牙質表面処理にPAAのみを使用した場合、両方の材料が同じせん断接着強度をもたらすことを示す(サンプルS1)。エッチングを使用した場合、本材料はせん断接着強度を大幅に向上させる(サンプルS2)。同じ効果は、MDPをPAAとともに0.4mg/ml(サンプルS3)、2.5mg/ml(サンプルS4)又は5.0mg/ml(サンプルS5)使用した場合にも当てはまる。PAAとともに8.3mg/mlの量(サンプルS6)又は単独で5mg/mlの量(サンプルC13)で使用されるMDPの場合、本発明の材料は、市販製品よりわずかに低い剪断接着強度をもたらす。
【0097】
図30は、
図29と同様に、さまざまなサンプル(サンプルS5を除く)についてのせん断接着強度をMPaで示す。この図は、PAA濃度とその分子量の影響を示している。2g/lの量のPAAでは最低の結果(サンプルS9)が得られたが、10mg/lの濃度、分子量450000g/mol(サンプルS5)では、分子量4000000g/molを超えるもの(サンプルS7)より、より優れたせん断接着強度が得られることが明らかである。
同様に、分子量450000g/molでは、せん断接着強度は、20mg/l(サンプルS8)よりも濃度10mg/l(サンプルS5)の方が高くなる。
【0098】
さらに、サンプルC14(活性化剤溶液中にNCCを使用)の場合、せん断結合値は3.9MPa(SD2.2)であった。これは、サンプルC13bと同じ結果が得られたが、NCCの使用のみがC14と異なる。よって、NCCの使用は材料のせん断接着強度に影響を与えなかった。
【0099】
図31A、31B、32A及び32Bは、5mg/mlのMDPで処理した後(すなわち、C13;異なる倍率の
図31A及び31B)、又は5mg/mlのMDP及びPAAで処理した後(すなわち、S5;異なる倍率の
図32A及び32B)の象牙質表面のSEM写真である。両サンプルはSBFに1週間浸漬した。あきらかに、MDPとPAAの両方で処理したサンプルは、MDPを単独で使用した場合よりも大幅に多くの石灰化を示している。
【0100】
図33は、比較サンプルC10、C11、C8及びC12、ならびに実施例Exp30のライニング材料を使用して調整されたサンプルの破壊靱性を、MPa m
1/2Asで示す。明らかに、本明細書による材料の破壊靱性は、市販の材料よりも著しく高い。
【国際調査報告】