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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】溶融鉄の処理プロセス
(51)【国際特許分類】
   C21C 1/08 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
C21C1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023537224
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2021086652
(87)【国際公開番号】W WO2022129612
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20215161.9
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511239074
【氏名又は名称】フォセコ インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Foseco International Limited
【住所又は居所原語表記】1 Midland Way,Central Park,Barlborough Links,Derbyshire S43 4XA,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハラビナ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】パウエル,コリン
【テーマコード(参考)】
4K014
【Fターム(参考)】
4K014BA10
4K014BD08
(57)【要約】
【解決手段】溶融鉄を処理する方法であって、金属処理剤を溶融鉄に加えることと、ローターヘッドを含む回転デバイスを用いて溶融鉄を撹拌することと、を含む。回転デバイスは、耐食性及び耐熱衝撃性を有し、金属処理剤の効率的な適用を可能にする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融鉄を処理する方法であって、
金属処理剤を溶融鉄の中に加えることと、
ローターヘッドを含む回転デバイスを用いて溶融鉄を撹拌することと、
を含む、溶融鉄を処理する方法。
【請求項2】
金属処理剤を前記撹拌中に加えることにより、金属処理剤を溶融鉄に通してバブルにすることと、
溶融鉄から、球状黒鉛鉄(SGI)又は圧縮黒鉛鉄(CGI)として知られているダクタイル鉄を生成することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記回転デバイスは、
一方の端部にローターヘッドを有する管状スリーブと、
前記管状スリーブ内を延びるシャフトであって、少なくとも一部分が前記管状スリーブによって囲まれるシャフトと、
を備えており、
前記管状スリーブは、耐食性及び耐熱衝撃性を有する耐熱材料から形成されており、
前記シャフトは、黒鉛を含む材料から形成されている、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記シャフトは中空シャフトである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
金属処理剤は、ノジュラー化剤、好ましくはマグネシウムを含む、請求項1乃至4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
溶融鉄はキュポラ炉から受けることを含み、
前記方法は、マグネシウム、カルシウム及び炭化カルシウムのうちの少なくとも一つを溶融鉄に通してバブルにすることにより溶融鉄を脱硫すること、次いで溶融鉄中の硫黄レベルを検査すること、次いでマグネシウムをノジュラー化剤として作用させるためにマグネシウムを溶融鉄の中を通してバブルにすること、を含む、
請求項1乃至4の何れかに記載の方法。
【請求項7】
金属処理剤は、前記中空シャフトの中を通して溶融鉄に加えられ、任意選択的に、前記ローターヘッドの中を通って溶融鉄に加えられる、請求項4又は請求項4に従属する何れかの請求項に記載の方法。
【請求項8】
金属処理剤は、前記回転デバイスの近傍にある前記溶融鉄に加えられる、請求項1又は請求項1に従属する何れかの請求項に記載の方法。
【請求項9】
金属処理剤は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%のマグネシウムを含む、請求項1乃至8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
ガスを、前記ローターヘッドの中を通して溶融鉄中に放出することを更に含む、請求項1乃至9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
金属処理剤は、粉末、ワイヤ、又はコアードワイヤを含む、請求項1乃至10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
金属処理剤を含むコアードワイヤを溶融鉄中に供給することを更に含み、任意選択的に、前記コアードワイヤが、高融点金属を含む外側シースと、金属処理剤を含む内側コアとを含み、任意選択的に、金属処理剤は、マグネシウム、カルシウム、炭化カルシウム、セリウム、フェロシリコンマグネシウム、又はそれらの組合せを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
金属処理剤を溶融鉄に加えることは、第1の金属処理剤と少なくとも第2の金属処理剤を加えることを含む、請求項1乃至12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
第1の金属処理剤が前記ローターヘッドの中を通して溶融鉄に加えられ、第2の金属処理剤が前記回転デバイスの近傍にある溶融鉄に加えられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第2の金属処理剤は、接種剤、好ましくはジルコニウム、マンガン、バリウム、カルシウム、フェロシリコン、又はそれらの組合せを含む、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1の金属処理剤はマグネシウムを含み、第2の金属処理剤はバリウムを含み、前記方法が、第2の金属処理剤を加えること、次いで第1の金属処理剤を加えることを更に含む、請求項13乃至15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
第2の金属処理剤を加える前に、アルゴンガスを溶融鉄の中に分散させることを更に含む、請求項13乃至16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
第2の金属処理剤は、少なくとも30%のジルコニウム、好ましくは少なくとも50%のジルコニウムを含む、請求項13乃至17の何れかに記載の方法。
【請求項19】
第2の金属処理剤は、少なくとも30%のバリウムを含む、請求項13乃至18の何れかに記載の方法。
【請求項20】
前記ローターヘッドは前記管状スリーブと一体的に形成されるか、又は前記ローターヘッドは前記管状スリーブの端部に結合される、請求項3乃至19の何れかに記載の方法。
【請求項21】
前記中空シャフトは第1の端部と第2の端部とを有しており、第1の端部は前記管状スリーブによって囲まれており、任意選択的に、前記中空シャフトの第2の端部は、前記回転デバイスを回転させるための装置に結合されるよう構成されている、請求項4乃至20の何れかに記載の方法。
【請求項22】
前記ローターヘッドは、金属処理剤を溶融鉄の中に加えるための出口を含む、請求項3乃至21の何れかに記載の方法。
【請求項23】
前記シャフトは中空シャフトであり、前記中空シャフトは前記出口と連通している、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属の処理方法に関する。特に、本発明は、溶融鉄の処理に関し、より具体的には、溶融鉄からダクタイル鉄(球状黒鉛鉄又はSGIとしても知られている)又は圧縮黒鉛鉄(CGI)を製造するための溶融鉄の処理に関する。本発明は更に、溶融金属に金属処理剤を加えるためのシステム、装置及び方法に関する。球状黒鉛鉄(SGI)又は圧粉黒鉛鉄(CGI)は、それぞれ、自動車部品、建設機械又は農業機械用部品、ダクタイル鉄管及び一般工学部品などの部品を製造するために使用される。
【背景技術】
【0002】
金属処理剤は、溶融鉄中の含有物の組成、形態及び/又は分布を改質するために使用される。溶融鉄に適用される金属処理剤は、鉄組織の形態を変化させて、ダクタイル鉄及びCGI製造するために使用され得るノジュラー化剤(nodularising agents)及び接種剤を含むことができる。
【0003】
従って、溶融鉄からダクタイル鉄及びCGIを製造することは、典型的には、マグネシウム等のノジュラー化剤を添加して、溶融鉄中に存在する炭素及び黒鉛を球状化形態に転換することを含み、マグネシウムはノジュラー化剤として作用する。溶融鉄からダクタイル鉄を製造する場合、炭素と黒鉛の核生成を促進するために、接種剤(ジルコニウム、マグネシウムなど)を添加することができる。多くの場合、ノジュラー化剤及び接種剤は、通常、90%がフェロシリコンであり、フェロシリコンは可溶性担体として作用する。換言すれば、このようなフェロシリコンをベースとするノジュラー化剤又は接種剤の「活性」成分は、ノジュラー化剤又は接種剤の総重量又は体積のわずか10%を占めるにすぎない。
【0004】
マグネシウムの沸点は鉄の融点より低いため、溶融鉄の中にマグネシウムを投入することは困難であり、危険である。それ故、元素状マグネシウムは、一度に多量に添加すると、溶融鉄と接触した際に爆発的に気化するか、又は直ちに酸化する。そのため、マグネシウムをベースとする金属処理剤は、通常、元素形態のマグネシウムよりも、フェロシリコンマグネシウム等の安定化形態で添加される。
【0005】
更に、溶融鉄を処理する工程は、典型的には、フェロシリコンベースのノジュラー化剤を処理用取鍋などの容器内に配置し、次いで、フェロシリコンベースのノジュラー化剤又はノジュラー化材料が溶融鉄と反応できるように、溶融鉄を処理用取鍋に注湯することを含む。その次のステップとして、フェロシリコンベースの接種剤を注湯用取鍋などの容器内に入れ、その後、処理用取鍋内の内容物を注湯用取鍋に移して、フェロシリコンベースの接種剤を注湯用取鍋に入れられた内容物と反応させて、例えばダクタイル鉄を生成する。ノジュラー化剤は、炭素を黒鉛片ではなく黒鉛球として析出させ、接種剤は、ダクタイル鉄中の黒鉛粒数(number of graphite nodules)を増やす核となる。
【0006】
本発明は、溶融鉄等の溶融金属を処理するための方法の改良を提供することを目的とし、当該技術分野における幾つかの制限を解消し、又は、少なくとも有用な代替手段を提供する。
【発明の概要】
【0007】
開示される主題の様々な実施形態に基づいて、溶融鉄を処理する方法が提供される。様々な実施形態において、本発明の方法は、金属処理剤を溶融鉄に加えることと、ローターヘッドを含む回転デバイスを用いて溶融鉄を撹拌することと、を含む。
【0008】
少なくとも一つの実施形態によれば、金属処理剤は溶融鉄の撹拌中に加えられる。撹拌中に加えることにより、金属処理剤が溶融鉄を通ってバブルとなり、例えば、溶融鉄からダクタイル鉄又は圧縮黒鉛鉄(CGI)が生成される。
【0009】
少なくとも一つの実施形態によれば、金属処理剤は、ノジュラー化剤を含む。一実施形態において、ノジュラー化剤は、マグネシウム、カルシウム、及び炭化カルシウムのうちの1又は複数であり得る。一実施形態において、ノジュラー化剤はマグネシウムである。少なくとも一つの実施形態によれば、金属処理剤は、少なくとも50%のマグネシウムを含む。幾つかの実施形態において、金属処理剤は少なくとも90%、又は少なくとも95%のマグネシウムを含む。
【0010】
少なくとも一つの実施形態によれば、溶融鉄はキュポラ炉から受けることができる。キュポラ炉から受けた溶融鉄の脱硫は、マグネシウム、カルシウム、及び炭化カルシウムのうちの少なくとも一つを溶融鉄を通して、バブルを生成する(bubbling)ことによって行うことができる。脱硫の後、溶融鉄中の硫黄レベルを検査してよい。脱硫及び/又は検査を行った後、例えばマグネシウムをノジュラー化剤として使用し、溶融鉄を通してマグネシウムのバブルを生成することができる。
【0011】
少なくとも一つの実施形態によれば、本発明の方法は、ガスを、ローターヘッドを通して溶融鉄中に放出することを更に含む。
【0012】
少なくとも一つの実施形態によれば、金属処理剤は、粉末、ワイヤ、又はコアードワイヤ(cored wire)を含んでよい。少なくとも一つの実施形態によれば、方法は、金属処理剤を含むコアードワイヤを溶融鉄の中に供給することを更に含むことができる。幾つかの実施形態では、コアードワイヤは、高融点金属を含む外側シースを含む。ワイヤは、金属処理剤を含む内側コアを含むことができる。
【0013】
一実施形態において、金属処理剤は、マグネシウム、カルシウム、炭化カルシウム、セリウム、フェロシリコンマグネシウム、又はそれらの組合せを含む。
【0014】
少なくとも一つの実施形態によれば、溶融鉄に金属処理剤を加えることは、第1の金属処理剤及び少なくとも第2の金属処理剤を添加することを含む。少なくとも一つの実施形態によれば、第2の金属処理剤は、少なくとも30%のジルコニウムを含む。幾つかの実施形態では、第2の金属処理剤は少なくとも50%のジルコニウムを含む。少なくとも一つの実施形態によれば、第2の金属処理剤は、少なくとも30%のバリウム、又は少なくとも50%のバリウムを含む。
【0015】
少なくとも一つの実施形態によれば、第2の金属処理剤は、接種剤を含んでもよい。接種剤は、ジルコニウム、マンガン、バリウム、カルシウム、フェロシリコン、又はそれらの組合せであってよい。好ましくは、接種剤はジルコニウムである。
【0016】
少なくとも一つの実施形態によれば、第1の金属処理剤はマグネシウムを含む。第2の金属処理剤はバリウムを含むことができる。方法は、第2の処理剤を加えた後、第1の金属処理剤を加えることを更に含んでもよい。
【0017】
少なくとも一つの実施形態によれば、この方法は、溶融鉄中にアルゴンガスを分散させることを更に含む。アルゴンは、第2処理剤を加える前に分散させてもよい。
【0018】
少なくとも一つの実施形態によれば、回転デバイスは、一方の端部にローターヘッドを有する管状スリーブを含む。回転デバイスは、管状スリーブ内に延在するシャフトを含み、例えば、シャフトの少なくとも一部分が管状スリーブによって囲まれるようにすることができる。管状スリーブは、耐腐食性及び耐熱衝撃性を有する耐熱材料から形成することができる。シャフトは、黒鉛を含む材料から形成することができる。少なくとも一つの実施形態によれば、シャフトは中空シャフトとすることができる。少なくとも一つの実施形態によれば、金属処理剤は、中空のシャフトを通して溶融鉄に加えられる。少なくとも一つの実施形態によれば、金属処理剤は、ローターヘッドを介して溶融鉄に加えられる。少なくとも一つの実施形態によれば、金属処理剤は、回転デバイスの近傍にある(adjacent to)溶融鉄に適用される。少なくとも一つの実施形態によれば、第1の金属処理剤はローターヘッドを介して溶融鉄に加えられ、第2の金属処理剤は回転デバイスの近傍にある溶融鉄に加えられる。
【0019】
少なくとも一つの実施形態によれば、ローターヘッドは管状スリーブと一体的に形成される。あるいは、ローターヘッドは管状スリーブの端部に結合されることもできる。
【0020】
少なくとも一つの実施形態によれば、中空シャフトは第1の端部及び第2の端部を有する。第1の端部は、管状スリーブによって囲まれてよい。任意選択的に、中空シャフトの第2の端部は、回転デバイスを回転させるための装置に結合されるように構成される。
【0021】
少なくとも一つの実施形態によれば、ローターヘッドは、金属処理剤を溶融鉄に加えるための出口を含む。
【0022】
少なくとも一つの実施形態によれば、シャフトは中空シャフトである。中空シャフトは、金属処理剤が通り抜けて溶融鉄に入る出口と連通してもよい。
【0023】
少なくとも一つの実施形態によれば、溶融金属(例えば、溶融鉄)を撹拌するための回転デバイス(本明細書では「ローター」とも称する)が提供される。
【0024】
回転デバイスは、一方の端部にローターヘッドを有する管状スリーブを含み、該管状スリーブの内部にはシャフトが延びており、シャフトの少なくとも一部は管状スリーブによって囲まれている。管状スリーブ及びローターヘッドは、耐腐食性及び耐熱衝撃性を有する耐熱材料から形成されてよい。シャフトは、黒鉛を含む耐熱材料から形成されてよい。
【0025】
本発明の第1の態様において、溶融金属を処理する方法が提供される。方法は、金属処理剤を溶融金属に加えることを含むことができる。方法は、ローターヘッドを含む回転デバイスを用いて溶融金属を撹拌することを含むことができる。幾つかの実施形態において、溶融金属は鉄金属である。実施形態において、溶融金属は鉄である。
【0026】
幾つかの実施形態では、溶融金属鉄は、1375~1550℃の範囲の温度を有する。任意選択で、溶融金属の温度は、少なくとも1400℃、少なくとも1410℃、少なくとも1420℃、少なくとも1430℃、少なくとも1440℃、少なくとも1450℃、少なくとも1460℃、又は少なくとも1470℃であってよい。任意選択で、温度は1540℃未満、1530℃未満、1520℃未満、1510℃未満、1500℃未満、1490℃未満、又は1480℃未満であってよい。幾つかの実施形態では、溶融金属は1450~1500℃である。
【0027】
幾つかの実施形態では、溶融鉄は3~5重量%の炭素当量(carbon equivalent content)を有することができる。任意選択で、炭素当量は3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、又は4.5重量%より大きくてよい。任意選択で、炭素当量は4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1、4、3.9、3.8、3.7、3.6、又は3.5%より小さくてよい。なお、上記下限の範囲の何れかと上記上限の範囲の何れかを組み合わせてもよい。炭素当量は、溶融鉄中の炭素と、炭素と同様の効果を有する任意の追加物質(許容元素など)との合計含有量である。
【0028】
ある方法に関連して記載された特徴及び実施形態はどれについても、本明細書に記載される他の任意の方法に対しても同様に適用され得ることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の実施形態について、例示のみを目的として、添付の概略図を参照して説明するが、図面には、本明細書に記載の参照符号に対応する部品が示されている。
【0030】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る回転デバイスを示す図であり、本明細書に開示される主題の様々な実施形態によるものである。
【0031】
図2図2は、図1に示す回転デバイスの断面図であり、本明細書で開示される主題の様々な実施形態によるものである。
【0032】
図3図3は、本発明の一実施形態に係る回転デバイスと共に使用される中空シャフトを示す図であり、本明細書で開示される主題の様々な実施形態によるものである。
【0033】
図4図4は、図3に示された中空シャフトの断面図である。
【0034】
図5図5は、本発明の一実施形態に係る回転デバイスを示す図であり、本明細書で開示される主題の様々な実施形態によるものである。
【0035】
図6図6は、図5に示す回転デバイスの断面図であり、本明細書で開示される主題の様々な実施形態によるものである。
【0036】
図7図7は、本発明の一実施形態に係る回転デバイスと溶融金属の撹拌及び処理に使用するための撹拌装置との組合せを示す概略図であり、本明細書で開示される主題の様々な実施形態によるものである。
【0037】
図8図8は、(a)二重プレート型ローターヘッド構造と、(b)600rpmで回転する単一プレート型ローターヘッド構造について、速度場(velocity field)のシミュレーションデータを示す図であり、本明細書で開示される主題の様々な実施形態によるものである。
【0038】
図9図9は、図10に示す速度場シミュレーションデータに対応する、スケーリングされたフローパターン(scaled flow pattern)のシミュレーションデータである。
【0039】
図10図10は、(a)100rpm、(b)200rpm、(c)300rpmで回転する単一プレート型ローターヘッド構造について、速度場シミュレーションデータとスケーリングされた流れパターン(scaled flow pattern)のシミュレーションデータを示す図であり、本明細書で開示される主題の様々な実施形態によるものである。
【0040】
図11図11は、(a)ねずみ鉄、(b)圧縮黒鉛鉄(CGI)、及び(c)ダクタイル鉄鋳物の構造を示す高分解能顕微鏡写真であり、本明細書で開示される主題の様々な実施形態によるものである。
【0041】
図12図12は、溶融鉄に金属処理剤を加える既存の手順の概略図であり、本明細書で開示される主題の様々な実施形態によるものである。
【0042】
図13図13は、溶融鉄に金属処理剤を加える手順を示す概略図であり、本明細書で開示される主題の様々な実施形態によるものである。
【0043】
図14図14は、圧縮黒鉛鉄(CGI)の高分解能顕微鏡写真組織である。
【0044】
図15図15は、それぞれの核の周囲に球状黒鉛が形成されたダクタイル鉄の高分解能顕微鏡組織である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書で開示される主題の様々な実施形態は、溶融鉄などの溶融金属を処理して、溶融鉄を鋳造用途に適した改良された形態の鉄(例えば、圧縮黒鉛鋳鉄(CGI)及びダクタイル鋳鉄)に変換するためのシステム、方法、及び装置の改良に向けられている。図11は、本明細書で開示される主題の様々な実施形態に係るもので、溶融鉄から製造された次の3つの主な種類の鋳造可能な鉄製品:(a)ねずみ鉄、(b)圧縮黒鉛鉄(CGI)、及び(c)ダクタイル鋳鉄の高分解能顕微鏡組織を示す。図14は、圧縮黒鉛鉄(CGI)の高分解能顕微鏡組織を示す。図15は、ダクタイル鉄の高分解能顕微鏡組織を示す。図15aは、核403の周囲に形成された球状黒鉛401を更に示している。一実施形態において、核は、溶融鉄に添加される接種添加剤によって供給されることができ、それによって、溶融鉄中に存在する黒鉛は、接種剤によって供給される核403の周囲に球状黒鉛401を形成し、例えばダクタイル鉄及び圧縮黒鉛鉄(CGI)のような延性が高い(脆性が低い)形態の鉄が形成される。
【0046】
図12は、溶融鉄を処理する既存の方法を示す図である。図12に示す既存の方法によれば、例えばフェロシリコンをベースとするノジュラー化剤(例えばFeSiMg)などの金属処理剤205(例えばノジュラー化剤)が処理用取鍋207に入れられ(又は予め処理用取鍋207の中に装填され)、その後、炉201内に存在する溶融鉄203が金属処理剤205を担持した処理用取鍋207に移送される。矢印202は、溶融鉄203の処理用取鍋207への移送を示す。
【0047】
炉201の中に存在する溶融鉄203を、金属処理剤205を含む処理用取鍋207に移した後、第1段階400aが開始し、この段階では、金属処理剤205が溶融鉄203と反応してノジュラー化された溶融鉄203aを生成する。金属処理剤205と溶融鉄203との反応が矢印209で示されており、それによってノジュラー化された溶融鉄203aが生成される。処理用取鍋207に存在するノジュラー化された溶融鉄203aは、次に、例えばフェロシリコンをベースとする接種剤などの接種剤213が予め装填された注湯用取鍋211に移される。矢印212は、ノジュラー化された溶融鉄203aの注湯用取鍋211への移送を示す。次に、第2段階500aが開始し、この段階では、接種剤213がノジュラー化された溶融鉄203aと反応して、ノジュラー化された溶融鉄203aから1又は複数のダクタイル鉄及び/又は圧縮黒鉛鉄(CGI)を生成する。矢印215は、鋳造の次の工程を示す。
【0048】
従って、図12に示されるように、既存の様々な方法は、金属処理剤(フェロシリコンをベースとするノジュラー化剤など)を処理用取鍋などの第1の容器内に入れて反応を開始することを含み、それによってノジュラー化された溶融鉄を生成する。既存の方法は、任意選択で、フェロシリコンをベースとする接種剤などの接種剤を注湯用取鍋などの第2の容器内に入れて、その後、処理用取鍋内の内容物(即ち、ノジュラー化された溶融鉄)を注湯用取鍋に移すことを更に含む。その結果、フェロシリコンをベースとする接種剤が注湯用取鍋の中に含まれるノジュラー化された溶融鉄と反応して、ダクタイル鉄を生成する。ダクタイル鋳鉄は、例えば、鋳鉄製品に使用されることができる。
【0049】
例えば図13に示されているように、本明細書で開示される主題の様々な実施形態は、図12を参照して記載した方法に対して様々な改良を含んでいる。
【0050】
溶融鉄などの溶融金属を処理するための改良された方法及びシステムの一実施形態が図13に示されている。図13は、本明細書で開示される主題の少なくとも一つの実施形態による溶融鉄の処理方法を示している。図13に示す方法によれば、炉201内に存在する溶融鉄203は、処理用取鍋207に移送される。矢印202は、溶融鉄203の処理用取鍋207への移送を示す。その後、ローターヘッド5を含む回転デバイス100が、処理用取鍋207の中に含まれる溶融鉄203の中に導入される。操業中、回転デバイス100のローターヘッド5が回転することによって溶融鉄203をかき回し(stir)たり、かき混ぜ(churn)たり、及び/又は、撹拌する(agitate)。金属処理剤205(例えば、図13にワイヤ形態で示すもの)がローターヘッド5による溶融鉄203の撹拌中に加えられると、金属処理剤205は気化し、溶融鉄の中を通って、小さなバブル223形態のバブルとなる。
【0051】
一実施形態では、金属処理剤205はマグネシウムを主として含む。一実施形態では、金属処理剤は、少なくとも20%のマグネシウムを含む。様々な実施形態において、金属処理剤205は、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、又は90%のマグネシウムを含み得る。一実施形態では、金属処理剤は、少なくとも90%のマグネシウムを含む。一実施形態では、金属処理剤は少なくとも95%のマグネシウムを含む。一実施形態では、金属処理剤は少なくとも98%のマグネシウムを含む。
【0052】
説明を容易にするために、金属処理剤205は、以下では、マグネシウムを参照して説明される。マグネシウムの沸点は約1,996°F(1,091℃)であるのに対し、鉄の融点は約2,120°F(1,160℃)である。溶融鉄の温度はマグネシウムの沸点よりも高いため、マグネシウムが溶融鉄と接触すると直ちにマグネシウムの気化が起こる。従って、マグネシウムは、溶融鉄203の高温との相互作用で気化する。気化したマグネシウムは、回転ローターヘッド5の回転により溶融鉄をかき回し又は撹拌することにより、小さなバブル223に変換される。改良された方法及びシステムの第1段階400では、金属処理剤205(例えば、マグネシウムのようなノジュラー化剤の形態)が溶融鉄203と反応して、ノジュラー化された溶融鉄203aが生成する。
【0053】
様々な実施形態において、金属処理剤は、粉末、ワイヤ、又はコアードワイヤの形態をとることができる。少なくとも一つの実施形態において、方法は、金属処理剤を含むコアードワイヤを溶融鉄中に供給することを含む。一実施形態では、コアードワイヤは、高融点金属を含む外側シースを含む。コアードワイヤは、内側コアを含み、該内側コアに金属処理剤を含むことができる。一実施形態では、金属処理剤は、マグネシウム、カルシウム、炭化カルシウム、セリウム、フェロシリコンマグネシウム、又はそれらの組み合わせを含む。好都合な一実施形態では、金属処理剤205はマグネシウムの形態である。
【0054】
一実施形態では、特にマグネシウムが粉末状であるとき、ガス(例えば、アルゴンガス)がマグネシウムと同時に溶融鉄中に加えられる。このガスは、例えば、マグネシウムを押し下げて回転デバイス100の一部を形成する中空シャフトから出て、マグネシウムが詰まるのを防止する。
【0055】
図12に示す既存の方法では、マグネシウムを10%超の濃度で含有するので、マグネシウムが溶融鉄203と激しく反応しすぎる。これとは対照的に、例えば図13に示される改良された方法では、ローターヘッド5の回転により、小さなバブル223のような非常に微細なマグネシウム蒸気のバブルが都合良く生成され、溶融鉄による吸収がより容易に行われる。ローターヘッド5によってかき回し及びかき混ぜ作用が生じるので、マグネシウムと溶融鉄203との反応は、あまり激しくないが非常に効果的に行われる。様々な実施形態において、ローターヘッド5の回転速度は、マグネシウム(又は任意の他の適切な金属処理剤)の蒸気バブルのサイズを最小化するように最適化され、同時に、溶融鉄と接触するマグネシウムの表面積を最大化することによって溶融鉄との反応の有効性を高め、更に溶融鉄の異なる部分とマグネシウムとの接触を連続的に行う。従って、ローターヘッド5によるかき回し、かき混ぜ等の撹拌作用は有利である。それ故、改良された方法は、最適な反応を生じさせるだけでなく、最適な反応を生じさせるのに必要な時間を短縮することができる。ローターの撹拌作用はこれを更に補助する。マグネシウムのバブルが細かくなることで、マグネシウムが鉄に素早く吸収され、歩留まりが向上し、(望ましくない)酸化は減少する。様々な実施形態において、ローターヘッド5の回転速度は、図13に示される第1段階400(及び第2段階500)で起こる反応が最適化されるように調節されてよい。
【0056】
図13に示される方法は、既存の方法と比較して、高濃度のマグネシウムを使用する点で利点をもたらす。高濃度のマグネシウムの使用は、例えば図12に示されるような既存の方法と比較して、コストの点で大きな利益をもたらす。例えば、「サンドイッチプロセス」として知られる取鍋処理の既存の方法では、FeSiMgの形態の金属処理剤は、典型的には、マグネシウム含有量は約10%であるが、その理由は、マグネシウムの濃度がそれよりも多くなると過度に激しい反応が生じるからである。対照的に、本明細書で開示される改良された方法は、高濃度のマグネシウムを扱うことができ、例えば、目下の用途に応じて、最大98%又はそれよりも高い純度のマグネシウムの濃度を扱うことができる。
【0057】
第1段階400で起こる反応/処理により、ノジュラー化された溶融鉄203aが生成される。少なくとも一つの実施形態において、ノジュラー化溶融鉄203a自体を鋳造に使用することができる。換言すれば、ノジュラー化溶融鉄203aは、ダクタイル鉄又は圧縮黒鉛鉄(CGI)の形態であり、鉄製品の鋳造に適している。矢印215は、鋳造の次の工程を示す。
【0058】
本明細書に開示される改良方法による幾つかの実施形態では、ノジュラー化された溶融鉄203aは、更に第2段階500に供される。第2段階500では、接種剤213(図13ではワイヤの形態で示されている)が、処理用取鍋207内に存在するノジュラー化溶融鉄203aに適用される。少なくとも一つの実施形態によれば、接種剤213は、ノジュラー化溶融鉄203aと反応して、ノジュラー化溶融鉄203aの構造を改質して、ノジュールカウントを増加し、ノジュールサイズを小さくして、より規則的なものにする。
【0059】
図13に示される方法は、ノジュラー化剤と溶融鉄との反応、及び接種剤と溶融鉄との反応が、例えば図12に示される既存の方法と比較してはるかに効果的であり、有利である。例えば、既存の方法では、ノジュラー化剤及び接種剤は、通常、90%のフェロシリコン(フェロシリコンは可溶性担体として作用する)をベースとしている。既存の方法では、FeSiMg(低濃度のマグネシウムを含む)の形態の金属処理剤は取鍋床底部に載置されるが、これは、かき回す、かき混ぜる等の撹拌作用がないため、溶融鉄とマグネシウム蒸気との相互作用に一貫性がなく、また、マグネシウム蒸気の大きなバブルが、固定された(即ち、不動)体積(stationary volume)の溶融鉄と相互作用する結果となる。この結果、高比率のマグネシウム蒸気が、溶融鉄と反応することなく溶融鉄の上面に到達するため、廃棄物となる。また、溶融鉄の内容物は、取鍋床に近い位置にある下部のマグネシウムが溶融鉄と反応する機会を得ることなく、反応不十分な状態で次の段階(即ち、第2段階500a)に移送されることになり、反応の品質に更なる悪影響を及ぼすと同時に、FeSiMgが廃棄物となる。
【0060】
これに対して、本明細書に開示される改良された方法及びシステムでは、純粋(100%)マグネシウム、又は高濃度(例えば、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、98%超、及びそれらの間にある他の%)のマグネシウムがノジュラー化反応に供されることができるので、ノジュラー化反応に必要な原材料のコスト及び量を低減することができる。更に、本明細書で開示される改良された方法及びシステムは、マグネシウムは上部から導入されるため、既存の方法の場合のように、未反応のマグネシウムが残るような無駄が排除される。本明細書に開示される改良された方法及びシステムは、以下の要因によって、安定した反応がもたらされる:(1)ローターヘッド5の撹拌作用が、溶融鉄を、マグネシウム蒸気のバブルの中及びその間を能動的に移動させること、(2)ローターヘッド5の撹拌作用によって発生するマグネシウムのバブルが小さくなるため、マグネシウムが溶融鉄に接触する表面積が大きくなること、(3)マグネシウムの供給速度/量を自動的に制御できること(マグネシウムは上部側から取鍋内に既に存在する溶融鉄の中に導入されるため)。本明細書に開示される改良された方法及びシステムでは、次の段階(即ち、第2段階500)が行われる前に、第1の取鍋(処理用取鍋)の内容物を第2の取鍋(注湯用取鍋)に移す必要性がない。その理由は、マグネシウムと接種剤が、例えば図13に示されるように、同じ第1の取鍋(処理用取鍋)内の溶融鉄に添加され得るからである。本明細書に開示される改良された方法及びシステムは、例えばワイヤ形態のマグネシウムが上部側から溶融鉄中に添加されるので、反応の品質の監視及び制御が良好に行われることができ、第1段階400の反応中のマグネシウムの添加を制御することができる。これに対して、既存の方法では、溶融鉄は、取鍋にあらかじめ装入されているFeSiMgの上に注入される。
【0061】
本明細書に開示される改良された方法及びシステムによれば、溶融鉄を処理する方法は、金属処理剤を溶融鉄に加えることと、ローターヘッド5を含む回転デバイスを用いて溶融鉄を撹拌することとを含む。幾つかの実施形態では、金属処理剤(例えば、マグネシウムの形態のノジュラー化剤)は、撹拌中に加えられるので、金属処理剤は溶融鉄の中を通ってバブルとなり、溶融鉄からダクタイル鉄又は圧縮黒鉛鉄(CGI)が製造される。
【0062】
本発明者らは、金属処理剤の溶融鉄への適用を、溶融鉄を撹拌しながら行うことで、必要な金属処理剤の量を減少させることができることを見出した。マグネシウムのようなノジュラー化剤は、溶融鉄の中で急速に蒸気化する。それ故、溶融鉄を撹拌することにより、マグネシウムガスのバブルが鉄中により良好に分散して、バブルのサイズを小さくすることができるため、表面積/体積比が大きくなり、滞留時間が長くなり、鉄への吸収が向上することを、本発明者らは見出した。マグネシウムの場合、ガスのバブルが溶融鉄の上面に達すると、急速に酸化してMgOスラグ層が形成され、ノジュラー化剤としての活性がなくなる。本明細書に開示される改良された方法では、溶融鉄の上面に到達するマグネシウムの量を最少にする利点がある。このスラグが鋳型に入り込むと、フィルターを塞ぎ、スラグ介在物のような鋳造欠陥を引き起こし得る。
【0063】
複数の実施形態では、金属処理剤は回転デバイスの近傍にある溶融鉄に適用することができる。上記に加えて、又は代替的に、金属処理剤は、中空シャフトを通して、任意選択で、ローターヘッドを通して溶融鉄に加えられることができる。
【0064】
様々な実施形態において、本方法は、金属処理剤を含むコアードワイヤを溶融金属中に供給することを含み得る。複数の実施形態において、コアードワイヤは、鉄又は鋼などの高融点金属を含む外側シースと、金属処理剤を含む内側コアとを具える。複数の実施形態において、金属処理剤は、脱硫剤、ノジュラー化剤、接種剤、又はそれらの混合物を含む。複数の実施形態において、金属処理剤は、マグネシウム、フェロシリコンマグネシウム、カルシウム、酸化カルシウム、炭化カルシウム、バリウム、ストロンチウム、又はそれらの組合せを、元素又は化合物の形態で含む。
【0065】
有利な実施形態では、コアードワイヤはマグネシウムのコアと、鉄又は鋼のシースを含む。使用において、外側シースは、コア剤が即座に反応又は酸化されるのを防ぐと共に、徐々に溶融又は溶解して、溶融金属の表面下の所定の深さでコア剤を放出する。コアードワイヤによる処理を組み合わせることで、脱硫、及び/又は、溶融鉄の処理及び組織改質を更に向上させることができる。
【0066】
様々な実施形態において、回転デバイス100は、一方の端部にローターヘッド5を備える管状スリーブ1と、シャフトの少なくとも一部が管状スリーブによって囲まれるように管状スリーブ1の内部に延びるシャフトとを備えており、管状スリーブ1は、耐腐食性及び耐熱衝撃性を有する耐熱材料から形成され、シャフトは、黒鉛を含む材料から形成される。一実施形態では、シャフトは、図1に示される中空シャフト3のような中空シャフトである。
【0067】
一実施形態によれば、中空シャフトは、第1の端部と第2の端部とを有し、第1の端部は、管状スリーブによって囲まれており、任意選択的に、中空シャフトの第2の端部は、回転デバイスを回転させるための装置に結合されるように構成される。一実施形態によれば、ローターヘッド5は、金属処理剤を溶融鉄に加えるための出口を含む。一実施形態によれば、シャフトは中空シャフトであり、中空シャフトは排出口と連通することができる。一実施形態では、ローターヘッド5は、管状スリーブ1と一体的に形成されている。一実施形態では、ローターヘッド5は、管状スリーブの端部に結合されている。
【0068】
一実施形態によれば、金属処理剤は、中空シャフトを通して溶融鉄に加えられる。一実施形態によれば、金属処理剤は、ローターヘッド5を介して溶融鉄に加えられる。一実施形態によれば、金属処理剤は、回転デバイスの近傍にある溶融鉄に適用される。一実施形態によれば、ガスが、ローターヘッド5を通して溶融鉄の中に放出される。
【0069】
比較のために、鉄の異なる形態での機械的性質を示すと、(1)ねずみ鋳鉄が150~350Mpa(メガパスカル)UTS(極限引張強さ);ダクタイル鋳鉄が350~800MPa UTSである。本明細書に開示される改良された方法により、延性(ductile)のより高い鉄が効果的に製造される。溶融鉄中にフレーク状で存在する黒鉛は、しばしばクラックの開始剤として作用する。黒鉛の形状を球状に変化させることで、鉄が脆くなりすぎることなく、鉄の強度を高めることができる。ノジュラー化プロセスは、マグネシウムなどのノジュラー化剤で溶融鉄を処理することを含み、その結果、黒鉛はフレーク状ではなく球状に変換される。フレーク状の黒鉛は鉄を脆くして、延性を低下させるが、球状形態の黒鉛は鉄の延性を高めて、脆性を低下させる。球状の黒鉛は、鉄の延性を高めることができ、得られる鋼の強度は、鉄の脆性で使用できなくなるような強度ではない。溶融鉄を撹拌するためのローターヘッドを使用することで、マグネシウムの注入されたバブルが破壊され、同時に溶融鉄が撹拌されて、吸収効率が向上する。改善されたプロセスにより、マグネシウムのコアードワイヤを供給して黒鉛の球状化を開始させることができる。それ故、少なくとも一つの実施形態では、金属処理剤は、ノジュラー化剤、好ましくはマグネシウムを含む。幾つかの実施形態では、ノジュラー化剤としてセリウムが使用される。マグネシウムは、コスト効率が高いので有利である。
【0070】
幾つかの実施形態において、方法は、固体金属処理剤を、ローターヘッドを通して又は該ローターヘッドの近傍に放出することを含む。幾つかの実施形態では、金属処理剤はワイヤ又は粉末の形態である。幾つかの実施形態では、金属処理剤は、コアードワイヤの中に含まれている。金属処理剤を、ローターヘッドを通して又は該ローターヘッドの近傍に放出することにより、金属処理剤を、溶融金属全体に迅速かつ効率的に分散させることができる。
【0071】
本発明の発明者らは、Mg/Caが蒸気化又は酸化する前に金属全体に迅速に分散されると、この迅速な分散により、酸化剤として使用されるMg又はCa元素が、溶融金属中にMg/Ca元素を使用することに通常伴う危険性を有意に低減することを見出した。これはまた、溶融金属を効果的に処理するのに必要な金属処理剤の量を減少させて、最終鋳造物に脆さを引き起こす過剰な金属処理剤の蓄積を減少させる。
【0072】
ローターヘッドを通して金属処理剤を放出することは、金属処理剤が回転デバイス内に収容されている間、溶融金属に曝露されないように遮蔽する作用があり、金属処理剤はローターヘッドの深さに対応する深さで溶融金属中に放出され得るので、保護コーティングは必ずしも必要ではない。しかしながら、他の形態の金属処理剤が利用できない場合や、溶融金属中に放出する前に金属処理剤をより低い深さに到達させる必要がある場合などには、便宜上、保護コーティングを備えるコアードワイヤを使用することができる。
【0073】
ローターヘッドを通して処理剤を適用する更なる利点は、金属処理剤の供給速度があまり重要でないことである。従来、ワイヤ又はコアードワイヤの供給速度は、ワイヤが正しい深さで溶融するように制御される。ワイヤの供給速度が遅すぎると、ワイヤは溶融金属の高すぎる位置で溶融し、供給速度が速すぎると、ワイヤは、処理が行われる容器(取鍋や炉など)のライニングに接触してライニングを損傷する可能性がある。
【0074】
幾つかの実施形態では、金属処理剤を適用することは、溶融鉄にノジュラー化剤を添加することを含む。ノジュラー化剤は、鋳造鉄内の炭素含有物の構造を制御する作用を有することができる。例えば、ノジュラー化剤はマグネシウムを含む。ノジュラー化剤の適用により、鉄内にノジュラー黒鉛含有物が生成され、これが最終鋳造品の耐衝撃性及び耐疲労性を向上させる。
【0075】
少なくとも一つの実施形態によれば、接種剤は、より高品質の鋳鉄を製造するために溶融鉄に適用される。接種剤は、鉄又は炭素の結晶化のための核を形成する機能を有する。例えば、ダクタイル鋳鉄では、接種量が多いほど核が多くなり、ノジュールカウントが増えて、得られる鉄に対して良好な特性がもたらされる。
【0076】
様々な実施形態において、接種剤は、ジルコニウム、マンガン、及び同様な他の元素を含むか、又は構成要素とすることができる。幾つかの実施形態において、接種剤は、バリウム、カルシウム、及び同様な他の元素を含むか、又は構成要素とすることができる。少なくとも一つの実施形態によれば、改良された方法は、第1の金属処理剤と少なくとも第2の処理剤を適用することを含み、第2の金属処理剤は、接種剤、好ましくはジルコニウム、マンガン、バリウム、カルシウム、フェロシリコン、又はそれらの組合せを含む。一実施形態では、第2の金属処理剤は、少なくとも30%のジルコニウム、好ましくは少なくとも50%のジルコニウムを含む。
【0077】
既存のダクタイル鋳鉄製造法では、FeSiMgの形態でマグネシウムを添加して黒鉛を球状にし、接種剤を添加して核生成に至らせる。本明細書に記載される改良された方法は、回転するローターヘッドが溶融鉄を撹拌しながら溶融鉄中に導入できる濃縮された接種剤コアードワイヤを使用する。この結果、接種剤の有効成分が溶融鉄内に容易に分散し溶解する。回転デバイス100の使用により、より濃縮された接種剤を使用できる利点がある。本明細書に記載される方法は、必要とされるノジュラー化剤及び接種剤の量を低減することができる。従って、本明細書に記載される方法は、より少ない輸送及び貯蔵資源を必要とする環境に優しい解決策を提供する。
【0078】
一実施形態によれば、溶融鉄はキュポラ炉の産物である。当業者にはよく理解されているように、キュポラ炉(又は単に「キュポラ」)は、鋳鉄を溶解するために鋳物工場で使用される溶解装置である。一実施形態によれば、キュポラ炉から受ける溶融鉄は、マグネシウム、カルシウム、及び炭化カルシウムのうちの少なくとも一つを溶融鉄中にバブリングすることによって脱硫され、次いで溶融鉄中の硫黄のレベルを試験し、次いでマグネシウムを溶融鉄中にバブリングすることにより、マグネシウムをノジュラー化剤として作用させる。
【0079】
一実施形態によれば、金属処理剤を溶融鉄に適用することは、第1の金属処理剤(例えば、ノジュラー化剤)と、少なくとも第2の金属処理剤(例えば、接種剤)とを添加することを含む。一実施形態によれば、第1の金属処理剤はローターヘッド5を通して溶融鉄に加えられ、第2の金属処理剤は回転デバイスの近傍にある溶融鉄に加えられる。
【0080】
一実施形態によれば、溶融鉄に金属処理剤を適用することは、第1の金属処理剤及び第2の処理剤を添加することを含み、第1の金属処理剤はバリウムを含み、第2の金属処理剤はマグネシウムを含み、方法は、バリウムの後にマグネシウムを加えることを更に含む。一実施形態において、第1の金属処理剤は、少なくとも30%のバリウムを含む。バリウムが(接種剤としてではなく)脱酸剤として作用する一実施形態では、バリウムは、ローターの前で取鍋の底部に加えられるか、又はローターに隣接して供給されるワイヤにより取鍋の底部に加えられる。バリウムが脱酸剤として作用する一実施形態では、バリウムは、容器の底部に置かれることができ、次いで、溶融鉄が容器に加えられ、次いで、回転デバイスにより溶融鉄を撹拌して、バリウムの溶融鉄と反応を高めることができる。
【0081】
一実施形態において、方法は、第2処理剤を適用する前に、溶融鉄中にアルゴンガスを分散させることを更に含む。アルゴンガスは、中空シャフト内又はスリーブ内の第1処理剤を運ぶ作用を有することができる。様々な実施形態において、ガス(例えば、アルゴンガス)をマグネシウムのコアードワイヤと共に、又は粉末状のマグネシウムと共に添加して、ローター中空内を正のガス圧に保持し、鉄がローター内を上方に流れるのを防止する。
【0082】
一実施形態では、スリーブは炭素を含む。一実施形態では、スリーブは溶融シリカから作られることができる。溶融シリカから作られたスリーブは、スリーブを溶融鉄の中へ導入する前の予熱を不要とすることができるが、溶融シリカから作られたスリーブは一度しか使用できず、再使用することができない。様々な実施形態において、スリーブは、鉄と反応しにくく、耐熱衝撃性を有する任意の材料で作られることができる。幾つかの実施形態では、スリーブは、溶融金属中への導入前に(例えば、1又は複数のバーナーを使用して)予熱される。一実施形態では、スリーブは約600~800℃の範囲に加熱される。幾つかの実施形態では、スリーブは予熱される必要はなく、即ちスリーブは「コールドスタート(cold-start)」用に構成される。幾つかの実施形態において、スリーブは、典型的には等方圧加圧された炭素結合材料で作られる。幾つかの実施形態では、スリーブは、粘土黒鉛材料、又はアルミナベースの材料で形成されてもよい。一実施形態では、スリーブは、交換が必要になるまでに10回、20回、又は50回までも使用することができる。
【0083】
本明細書に開示される方法は、純粋な形態のマグネシウムの使用を提供するもので、既存の方法で使用されている濃縮度の低いマグネシウム(FeSiMgの形態)よりもコスト面で大きな利点がもたらされる。純マグネシウムは溶融金属と激しく反応する可能性があるが、本明細書で開示される改良された方法では、回転するローターにより、マグネシウム蒸気は、吸収されることが容易な微細なバブルになり、ローターの撹拌作用により、溶融鉄によるマグネシウムの吸収を更に促進する。本明細書に開示される方法によって生じる微細なバブルは、マグネシウムの鉄への吸収が速く、収率を高めて、酸化を少なくすることができる。
【0084】
本明細書に開示される方法は、ノジュラー化工程に必要とされる原料の量を有意に低減することができる。一実施形態において、本明細書に開示される方法は、ノジュラー化工程に使用される原料の量を70%削減することができる。本明細書に開示される方法は、輸送及び貯蔵源の低減から生じる持続可能性がより高い手法を提供することができる。本明細書に開示される方法はまた、マグネシウム添加プロセスの自動化を提供することができる。本明細書に開示される方法は、既存の方法と比較して、取鍋の使用は1つだけである(同じ処理用取鍋を第1段階400及び第2段階500に使用することができる)。既存の方法では、2つの取鍋(処理用取鍋及び注湯用取鍋)が必要であり、更に、第1の取鍋の内容物を第2の取鍋に移す余分の工程を必要とする。
【0085】
幾つかの実施形態において、金属処理剤は、粉末の形態で溶融金属の表面に加えられる。そのような幾つかの実施形態では、溶融金属は、粉末が溶融金属に混入され、溶融金属全体に分散されるように、回転デバイスで撹拌される。複数の実施形態では、金属処理剤は、ワイヤの形態で加えられて、溶融金属の中へ供給される。複数の実施形態において、ワイヤは、上記の第3の態様に関して記載したように、外側の保護シースを含むコアードワイヤである。複数の実施形態では、ワイヤは、回転デバイスにて溶融金属の中へ供給される。
【0086】
幾つかの実施形態では、金属処理剤を溶融鉄に適用することは、第1の金属処理剤と少なくとも第2の処理剤を添加することを含むことができる。幾つかの実施形態では、第1の金属処理剤は、ローターヘッドを通して溶融鉄に加えられる。第2の金属処理剤は、回転デバイスの近傍にある溶融鉄に加えられることができる。第2の金属処理剤は、第1の金属処理剤が加えられた後に溶融鉄に加えられることができる。
【0087】
第2の金属処理剤は、本明細書に記載される任意の処理剤を含むことができる。幾つかの実施形態では、第2の金属処理剤は接種剤であってよい。本発明者らは、溶融鉄を撹拌することにより、接種剤は、濃縮されたコアードワイヤの形態で加えることができることを見出した。それ故、接種剤をより高い純度にて適用することができ、換言すれば、有効成分に関して金属処理剤内に存在する「担体(carrier)」の量を減らすことができる。接種剤は広く知られており、バリウム化合物やジルコニウム化合物をベースにしたものが多い。
【0088】
幾つかの実施形態では、回転デバイスは、高温度で高密度の溶融金属(例えば、鉄)の撹拌に特に適している。
【0089】
幾つかの実施形態において、方法は、ローターヘッドを通して溶融金属中にガスを放出することを更に含む。実施形態において、ガスは、溶融金属に溶解しない1又は複数種のガスを含む。実施形態において、ガスは、アルゴン、窒素、一酸化炭素又はそれらの混合物を含む。
【0090】
幾つかの実施形態において、方法は、回転デバイスを溶融鉄から取り外す直前に、ローターヘッドを通してガスを流すことを更に含むことができる。本発明者らは、これにより、工程が完了した後に回転デバイス上に残存する鉄の量を減少させて、回転デバイスの寿命を長くできることを見出した。
【0091】
本明細書で開示される改良された方法は、コアレス誘導炉(CIF)を含む任意の取鍋又は炉での使用に適している。方法が取鍋で使用される実施形態において、溶融金属は、CIF又はキュポラから取鍋に注湯(出湯)されることができる。本明細書に開示される改良された方法は、溶融鉄の処理に特に適しているが、ノジュラー化、接種又は脱硫を必要とする他の溶融金属の処理にも使用されることができる。
【0092】
幾つかの実施形態では、回転デバイスは、溶融金属を撹拌するために、少なくとも50rpm、少なくとも100rpm、少なくとも200rpm又は少なくとも300rpmの速度で回転される。幾つかの実施形態では、回転デバイスは、溶融金属を撹拌するために、800rpm以下、600rpm以下、500rpm以下、400rpm以下又は300rpm以下の速度で回転する。幾つかの実施形態では、回転デバイスは、50~600rpm、100~400rpm、又は200~300rpmの速度で回転し、例えば250rpmである。回転速度を速くすると、全体的な流速及びローターヘッドから下向きの流れの量を増加させる(即ち、底部撹拌を増加させる)が、溶融金属中への空気の巻き込みを増加させることにもなる。回転速度が800rpmを超えて増加すると、渦の生成を招き、空気を同伴し、空気が溶融金属中に戻されて、有害な影響を及ぼすことになり得る。幾つかの実施形態では、回転速度は方法が実施される中で変更される。
【0093】
回転デバイスは、溶融金属をガスで処理するためであってよい。シャフトは中空であってよい。ローターヘッドは、ガスを溶融金属中に放出するためのガス排出口を有し、中空シャフトは、ローターヘッドのガス排出口に流体が流通可能に接続することもできる。
【0094】
本発明者らは、黒鉛を含む材料から作られた内側シャフトと、耐熱性の優れた材料から作られた外側管状スリーブ及びローターヘッドとを含む二部品ローターが、鉄や鋼のような高温溶融金属中で優れた耐久性と寿命を有することを見出した。この回転デバイスの実施形態は、溶鋼中で繰り返し試験を行ってもほとんど変形せず、良好な撹拌効率とパージ効率を達成する。黒鉛を含む中空シャフトは、溶鋼の高温に溶融したり砕けたりすることなく好適な耐性を示し、また、使用中に破損することなくモータに取り付けられるのに十分なレベルの可塑性(plasticity)を有することが見出された。理論によって拘束されることを望むものではないが、金属から作られた内側シャフトは、鉄/鋼の溶融温度では軟化しすぎ、セラミック材料から作られた内側シャフトは、モータに取り付けるには脆すぎる。本発明者らは、黒鉛が本発明の中空シャフトに特に適していることを見出した。黒鉛は溶融鉄に溶解する可能性があるため、通常は、溶融鉄中での使用に適さないと考えられるが、本発明では、黒鉛を含む中空シャフトは外側の管状スリーブによって保護される。
【0095】
複数の実施形態において、管状スリーブは、溶融シリカ、炭化ケイ素、アルミナ、炭素結合アルミナ、炭素結合セラミックス、粘土黒鉛、窒化ケイ素アルミナを含む耐熱性材料や、金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含む等方圧加圧(アイソプレスとしても知られている)された耐熱性混合物の他、アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート、金属酸化物、又はそれらの組合せで被覆された耐熱性基材から形成される。ローターヘッドもまた、溶融シリカ、炭化ケイ素、アルミナ、炭素結合アルミナ、炭素結合セラミックス、粘土黒鉛、窒化ケイ素アルミナを含む耐熱性材料や、金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含むアイソプレスされた耐熱性混合物の他、アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート、金属酸化物、又はそれらの組合せで被覆された耐熱性基材から形成されることができる。幾つかの実施形態では、管状スリーブとローターヘッドは両方とも同じ材料から作られている。別の実施形態では、管状スリーブとローターヘッドは異なる材料から作られる。
【0096】
溶融シリカ、炭化ケイ素、アルミナ、炭素結合アルミナ、炭素結合セラミックス、粘土黒鉛、窒化ケイ素アルミナを含む高耐熱性材料や、金属酸化物、炭化物、又は窒化物を含むアイソプレスされた耐熱性混合物の他、アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート、金属酸化物、又はそれらの組合せで被覆された耐熱性基材は、溶融鉄中で使用するのに十分な耐食性及び耐熱衝撃性を有しており、劣化することなく、また、プライミング(priming)を行う必要性がない。
【0097】
複数の実施形態において、管状スリーブ及び/又はローターヘッドは、等方圧加圧された炭素結合アルミナを含む耐熱材料、例えば、Vesuvius Pic.が製造し、商標名がViso(商標)の耐熱材料から形成される。本発明の発明者らは、アイソプレスされた炭素結合アルミナを使用して製造されたローターは、特に耐久性が高いことを見出した。
【0098】
複数の実施形態において、ローターヘッドは管状スリーブと一体的に形成される。他の実施形態では、ローターヘッドは、管状スリーブの端部に結合される別個の部品である。このような実施形態では、ローターヘッドは、任意の適切な手段、例えば、ねじ結合、押込みばめ(push-fit)等によって管状スリーブの端部に結合されてよい。
【0099】
複数の実施形態において、中空シャフトは第1の端部と第2の端部とを有し、中空シャフトの第1の端部は管状スリーブによって囲まれている。複数の実施形態において、中空シャフトの第2の端部は、回転デバイスを回転させるための装置(例えば、モータ)に結合されるように構成される。例えば、中空シャフトの第2の端部は、Vベルトによってモータに接続されるよう構成されたプーリを含むことができるし、中空シャフトの第2の端部が、モータシャフトに直接取り付けられるように構成されてもよい。幾つかの実施形態では、中空シャフトの第2の端部は、Vベルト用プーリを含むカラー、又は他の手段、例えばフランジにボルト用開口を形成することにより、モータシャフトに結合されるよう構成されたカラーを受け入れることができるように構成されてよい。
【0100】
中空シャフトの長さは、第1の端部と第2の端部との間で測定されてよい。複数の実施形態では、中空シャフトの長さの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%が管状スリーブによって囲まれる。複数の実施形態では、中空シャフトは、管状スリーブによって実質的に完全に囲まれているが、そのような実施形態では、管状スリーブは、中空シャフトの第2の端部の近傍において開口しており、中空シャフトの第2の端部は、回転デバイスを回転させるための装置に結合されたままでよいことは理解されるであろう。
【0101】
複数の実施形態では、(管状スリーブに囲まれている)中空シャフトの第1の端部は、管状スリーブの相補的な受け部と係合するように構成されたロック部を含む。ロック部と受け部は、管状スリーブを中空シャフトにしっかりと固定するのに役立つだけでなく、中空シャフトと管状スリーブの相互回転をロックして、使用中に中空シャフトが管状スリーブから独立して回転するのを防ぐことができる。相補的受け部は、ローターヘッドを含む管状スリーブの端部に配置されてよい。使用中、管状スリーブは軟化し、軟化した管状スリーブは、内部の黒鉛の中空シャフトに支持されるが、ローターに若干のねじれが生じることがある。ローターヘッドを含む管状スリーブの端部に受け部を設けることで、仮にローターヘッドから離れた端部から駆動した場合よりも、管状スリーブのねじれは少ない。受け部は必ずしも管状スリーブの最端にある必要はなく、最端から離間して配置されてもよいことは理解されるであろう。
【0102】
複数の実施形態では、ロック部と受け部は多角形状断面を有する。このような実施形態では、ロック部と受け部は同じ多角形状断面を有し、ロック部は受け部の中にぴったり収まるように直径がわずかに小さくなっていることは理解されるであろう。ロック部のエッジは、受け部のエッジに当接し、ロック部が受け部の中で回転することを防止する。幾つかの実施形態では、多角形状断面は、少なくとも3、4、5又は6個の頂点を含む。好ましくは、多角形状断面は、頂点が12、11又は10個以下である。これは、多角形のエッジ間に形成される角度が、ロック部の頂点が受け部の隣接する頂点の間をスライドするのを防止するのに十分な鋭角となるようにするためである。他の実施形態では、ロック部と受け部は、弦が取り除かれた円形の断面を有する。
【0103】
管状スリーブは、その長手方向軸に沿って測定された長さを有する。幾つかの実施形態において、中空シャフトは、管状スリーブの長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%に沿って管状スリーブの内部を延びている。このように、中空シャフトは、ローターヘッドの中へ延びるのではなく、ローターヘッドの上方で終端してもよい。複数の実施形態では、中空シャフトは、管状スリーブの内部を管状スリーブの略全長に沿って延びており、中空シャフトの第1の端部がローターヘッドに直接隣接する位置にある。また、複数の実施形態では、中空シャフトが管状スリーブの内部を略全長に沿って延びておらず、中空シャフトの第1の端部がローターヘッドに直接隣接していない場合には、管状スリーブは、中空シャフトをローターヘッドのガス排出口に流体的に接続する導路又はボアを含むことができる。
【0104】
幾つかの実施形態では、中空シャフトの第2の端部は、クランプ手段によって管状スリーブに固定されることができる。ローターヘッドは、溶融金属を撹拌するための任意の適切な形状又は形態であってよい。
【0105】
複数の実施形態において、ローターヘッドは、管状スリーブの長手方向軸線に垂直な方向に延びる平面(即ち、プレート)と、平面から管状スリーブの長手方向軸線に略平行な方向に突出する複数のベーンと、を含む。そのような実施形態では、平面上にボアを含むことができる。複数の実施形態では、ボアは、平面の中心に位置する。幾つかの実施形態では、ローターヘッドは、第1の平面と対向して配置され、複数のベーン又はピラーによって第1の平面に接続された第2の平面(即ちプレート)を含む。このような実施形態もまた、第2のプレートの基部から突出するベーンを含むことができる。プレートは、略円形又は略多角形の形状であってよく、例えば四角形状である。複数の実施形態において、プレートは、凹状縁部と切頭隅部を有するほぼ四角形の形状であってもよい。
【0106】
単一プレート型のローターヘッド構造は、二重プレート型構造よりもプレス技術(例えば、アイソプレスされた炭素結合アルミナなどの材料を使用)による製造が容易であることを見出した。二重プレート型のローターヘッド構造はプレス技術で製造できるけれども、ローターヘッドの全体を完全な高密度化が達成できるとは限らないことが分かった。単一プレート型のローターヘッド構造は、ローターヘッドから下向きの流れの量を増加させる可能性があり、二重プレート型のローターヘッド構造は、ローターヘッドから横向きの流れの量を増加させる可能性がある。
【0107】
中空シャフトと管状スリーブは、摩擦嵌合により結合されることができる。他の結合手段や機構を用いることもできる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載の回転デバイスと共に使用するための管状スリーブが配備される。
【0108】
管状スリーブは、鉄に溶解しない耐熱材料から形成されることができる。管状スリーブは、溶融シリカのような黒鉛を含まない耐熱材料から形成されることもできる。例えば、管状スリーブは、炭化ケイ素、アルミナ、炭素結合アルミナ、炭素結合セラミック、粘土黒鉛、窒化ケイ素アルミナを含む耐熱材料、金属酸化物、炭化物、若しくは窒化物を含むアイソプレスされた耐熱混合物、或いは、アルミナ及び/又はマグネシウムジルコネート又は金属酸化物で被覆された耐熱性基材、又はそれらの組合せから形成されることができる。
【0109】
幾つかの実施形態では、管状スリーブは、一方の端部に一体的に形成されたローターヘッドを含み、該ローターヘッドはガス排出口を含む。他の実施形態では、管状スリーブは、一方の端部の別個のローターヘッドに結合するための手段、例えばねじ手段を含む。
【0110】
管状スリーブは、その長手方向軸に沿って測定された長さを有することができる。複数の実施形態では、管状スリーブは、中空シャフトを受けるためのボアを含み、ボアは、管状スリーブの長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%に沿って管状スリーブの内部を延びる。幾つかの実施形態では、中空シャフトを受けるためのボアは管状の袖の実質的に全長に沿って管状の袖の内部を延びる。中空シャフトを受けるボアが管状スリーブの略全長に沿って管状スリーブ内部を延びていない実施形態では、管状スリーブは、中空シャフトを受けるためのボアを、ローターヘッドのガス出口又はローターヘッドに結合するための手段に流体接続するための導路又はボアを更に含むことができる。
【0111】
複数の実施形態において、管状スリーブは、中空シャフト上の相補的なロック部分と係合するように構成された受け部を含む。幾つかの実施形態では、受け部は多角形の断面を有する。幾つかの実施形態において、多角形状断面は、少なくとも3、4、5又は6個の頂点を含む。幾つかの実施形態では、多角形状断面は12、11又は10以下の頂点を含む。他の実施形態では、ロック部と受け部は、弦が取り除かれた円形の断面を有する。
【0112】
ローターに関連して説明した任意の特徴や実施形態は、管状スリーブにも同様に適用されることができ、その逆もまた同様であることが理解されるであろう。
【0113】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る回転デバイス100を示す。回転デバイス100は、管状スリーブ1と、管状スリーブ1の内部に延びる中空シャフト3とを含む。管状スリーブ1は、一方の端部にローターヘッド5が一体に形成されている。ローターヘッド5は、標準の二重プレート型構造であり、第1のプレート7のような第1の平面と第2のプレート9とを含み、各プレートは管状スリーブ1の長手方向軸線と直角に延びている。第1のプレート7と第2のプレート9は、複数のピラー11によって互いに接続されている。ローターヘッド5は、溶融金属中にガスを放出するための排出口13を更に含み、該排出口は、第1のプレート7の中を通って延びるボアの形態である。
【0114】
中空シャフト3は、第1の端部15と第2の端部17を含み、第1の端部15は管状スリーブ1内で囲まれている。中空シャフト3は、該シャフトの中を通って延びるボア19を更に含む(図3に示される)。管状スリーブ1は、中空シャフト3のボア19をローターヘッド5のガス排出口13に流体接続する導路21を含み、ガス及び/又は固体金属処理剤が中空シャフト3を通って流れ、ローターヘッド5を通って使用中の溶融金属中に流出するようになっている。幾つかの実施形態(図示せず)において、中空シャフト3は、該中空シャフトの中を通って延びる複数のボアを含むことにより、ガス及び固体金属処理剤は中空シャフト3を通って別々に供給されることができる。
【0115】
中空シャフト3の第1の端部15は、管状スリーブ1の相補的な受け部25と係合するロック部23を含む。ロック部23の断面形状は、隣接する6つの弦を取り除くと円形である。即ちロック部23の断面は概ね六角形である。管状スリーブ1内の受け部25は対応する断面形状を有し、ロック部23の縁部及び頂点が受け部25に当接し、管状スリーブ1内の中空シャフト3が独立して回転するのを防止している。
【0116】
中空シャフト3の第2の端部17は、管状スリーブ1から突出し、回転デバイス100を回転させるための装置(例えば、図7に示される装置)に結合されるように構成されている。図示の実施形態では、中空シャフトの第2の端部17は、円周溝25aを含む。円周溝25aは、Vベルトを介してモータに接続するためのプーリとして機能することができる。或いは、円周溝25aは、(例えば、図6に示すように)カラーと係合するように構成されてもよく、このカラーは、Vベルトを介してモータに接続するためのプーリとして作用するか、又は、例えば、ナット及びボルトなどの他の手段によってモータシャフトに接続するためのフランジとして作用することができる。図示の実施形態では、中空シャフト3の第2の端部17は、中空シャフト3を管状スリーブ1に固定するクランプ手段(例えば、図7に示される)と係合するための窪み27を更に含む。
【0117】
管状スリーブ1は、管状スリーブ1の長手方向軸線に沿って測定された長さLAを有する。中空シャフト3は、長手方向軸線に沿って測定された長さLBを有する。管状スリーブ1は、その長さ方向に沿って、最大直径DAから内向きにテーパが形成されており、管状スリーブの直径はローターヘッド5に向かって僅かに小さくなっている。中空シャフト3もまた、管状スリーブ1の内径寸法に対応して、第1の端部15における最大直径DBから第2の端部17における最小直径まで、その長さに沿って内向きにテーパが形成されている。ローターヘッドは直径DCを有する。
【0118】
図5は、本発明の他の実施形態に係る回転デバイス200を示す。回転デバイス200は、管状スリーブ31と中空シャフト33とを含む。管状スリーブ31及び中空シャフト33は、図1~4に示される管状スリーブ1及び中空シャフト3と概ね同じであるが、管状スリーブ1が単一プレート型構造を有するローターヘッド35を含む点が異なる。ローターヘッド35は、管状スリーブ31の長手方向軸線Aに対して垂直に延びる平面(又はプレート)37を含み、プレート37の基部からベーン39が突出している。プレート37は略四角形の形状であり、凹状縁部41と切頭隅部43とを有する。
【0119】
回転デバイス200は、管状スリーブ31を中空シャフト33に固定するためのクランプ手段45を含む。回転デバイス200は、中空シャフト33の第2の端部の周囲に嵌合するカラー47を更に含む。カラーは、回転デバイス200を回転装置(例えば、図7に示される)結合するように構成されたフランジ49を備える。
【0120】
図6は、図5に示した回転デバイス200の断面図である。中空シャフト33の第1の端部は管状スリーブ31内に囲まれており、管状スリーブ31内の相補的な受け部53と係合するロック部51を含む。ボア55が中空シャフト33の中を通って延び、導路59、61によってローターヘッド35のガス排出口57に流体接続される。
【0121】
中空シャフト33の第2の端部には、カラー47と係合する円周溝63を含む。クランプ手段45は、カラー47と協働して管状スリーブ31を中空シャフト33に固定する。
【0122】
図7は、本発明の一実施形態に係る回転デバイス300を示しており、回転デバイス300を回転させて、回転デバイス300を通してガス及び/又は金属処理剤を溶融金属中に注入するための装置302と組み立てられている。使用時、回転デバイス300は取鍋304(又は炉)の中に下ろされる。取鍋304は、回転デバイス300が中に降ろされる前又は降ろされた後の何れかに、溶融金属で満たされることができる。次いで、回転デバイス300を使用して、例えば本発明に係る方法を用いて溶融金属が処理される。
【0123】
<実施例1>
作製した本発明の一実施形態に係る回転デバイスは、黒鉛を含む中空シャフトと、溶融シリカを含む管状スリーブとを備える。管状スリーブは、一体に形成されたローターヘッドを含む。長手方向軸線に沿って測定した管状スリーブの長さは123cmである(ローターヘッドを含まない)。黒鉛シャフトは、管状スリーブの長さの100cmに沿って管状スリーブ内に延在する。黒鉛シャフトの最大直径は7.6cmである。管状スリーブの最大直径は11.6cm、肉厚は1.6cmである。
【0124】
ローターヘッドは標準的な二重プレート型構造であり、凹状のエッジと先端が切り取られたコーナーを有する2つの平行な四角形の形状のプレートを含み、これらプレートが4本のピラーで接続されている。第1のプレートには、溶融金属中にガスを放出するためのボアが中央に形成されている。プレートの直径は25cmである。
【0125】
回転デバイスは溶融金属の処理に使用することができた。繰り返し使用した結果、溶融シリカの僅かな軟化により、ローターヘッドに多少の反りや歪みが生じ、撹拌効率が低下した。
【0126】
<実施例2>
作製した本発明の一実施形態に係る他の回転デバイスは、黒鉛を含む中空シャフトと、VISO(商標)等方圧加圧された炭素結合アルミナを含む管状スリーブとを備える。回転デバイスの寸法は、実施例1の回転デバイスの寸法と同じである。
【0127】
実施例2の回転デバイスは、単一プレート型とベーンとを含む改良されたローターヘッド構造である。プレートは概ね四角形の形状で、凹状縁部と切頭隅部を有し、各コーナーはプレートの底面から延びる4つのベーンを有する。プレートには、溶融金属中にガスを放出するためのボアが中央に形成されている。プレートの直径は25cmである。
【0128】
実施例2の回転デバイスは、溶融金属の処理に18回使用したが、変形の兆候は全くなく、摩耗も最小限度のものであった。黒鉛シャフトは、故障の兆候が全く見られなかったので、交換した外側スリーブを用いて更に使用することができた。黒鉛シャフトは、少なくとも50回は不具合なく使用できることがわかった。
【0129】
流れパターンのシミュレーションは次のとおりである:OpenFoam(商標)のソフトウェアを用いて流れパターンシミュレーションを行い、様々な回転速度で、溶鋼中の単一プレート型ローターと二重プレート型ローターが示す流速と流れ方向を比較した。結果は図8~10に示される。
【0130】
図8は、二重プレート型ローター(a)と単一プレート型ローター(b)を600rpmで15秒間回転させた後の速度場を示し、図9はスケーリングされた流れパターンを示す。どちらの構造も、達成されたピーク流速は同程度であった。しかし、流れの方向はわずかに異なっており、二重プレート型ローターからの出口の流れはほとんど水平であったが、単一プレート型構造は、より下向きの流れを示した。どちらの構造のローターも、溶鋼中で良好な模擬撹拌性能を示したが、単一プレート型ローターは二重プレート型ローターよりもわずかに高いトルクを示した(二重プレート型ローターが235N.mであったのに対して単一プレート型ローターは271N.mであった)。
【0131】
図10は、単一プレート型ローターを(a)100rpm、(b)200rpm、(c)300rpmで15秒間回転させた後の速度場とスケーリングされた流れパターンを示している。撹拌性能は、回転数の増加と共に向上することが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-9】
図10
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2022-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
CN106435216、CN210560654、及びEA016954は、アルミニウム処理に使用するための回転デバイスを開示している。JPS6245464及びRU2247289は、保護外面を有する回転デバイスを開示している。EP0691410及びCN111004965は、鉄及び鋼を処理するための処理剤を開示している。US4496393は、溶鉄にマグネシウムを供給するためのプランジングカプセルを開示している。本発明は、溶融鉄等の溶融金属を処理するための方法の改良を提供することを目的とし、当該技術分野における幾つかの制限を解消し、又は、少なくとも有用な代替手段を提供する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
開示される主題の様々な実施形態に基づいて、溶融鉄を処理する方法が請求項1に従って提供される
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
属処理剤は、粉末、ワイヤ、又はコアードワイヤ(cored wire)を含。少なくとも一つの実施形態によれば、方法は、金属処理剤を含むコアードワイヤを溶融鉄の中に供給することを更に含むことができる。幾つかの実施形態では、コアードワイヤは、高融点金属を含む外側シースを含む。ワイヤは、金属処理剤を含む内側コアを含むことができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融鉄を処理する方法であって、
ワイヤ又はコアードワイヤとノジュラー化剤とを含む金属処理剤を溶融鉄の中に加えることと、
ローターヘッド(5,35)を含む回転デバイス(100,200)を用いて溶融鉄を撹拌することと、
を含む、溶融鉄を処理する方法。
【請求項2】
金属処理剤は、前記ローターヘッド(5,35)を通して加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属処理剤を前記撹拌中に加えることにより、金属処理剤を溶融鉄に通してバブルにすることと、
溶融鉄から、球状黒鉛鉄(SGI)又は圧縮黒鉛鉄(CGI)として知られているダクタイル鉄を生成することと、
を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記回転デバイスは、
一方の端部にローターヘッド(5,35)を有する管状スリーブ(1,31)と、
前記管状スリーブ(1,31)内を延びるシャフト(3,33)であって、少なくとも一部分が前記管状スリーブ(1,31)によって囲まれるシャフト(3,33)と、
を備えており、
前記管状スリーブ(1,31)は、耐食性及び耐熱衝撃性を有する耐熱材料から形成されており、
前記シャフト(3,33)は、黒鉛を含む材料から形成されている、請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記シャフトは中空シャフト(3,33)である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
金属処理剤は、ノジュラー化剤、好ましくはマグネシウムを含む、請求項1乃至の何れかに記載の方法。
【請求項7】
溶融鉄はキュポラ炉から受けることを含み、
前記方法は、マグネシウム、カルシウム及び炭化カルシウムのうちの少なくとも一つを溶融鉄に通してバブルにすることにより溶融鉄を脱硫すること、次いで溶融鉄中の硫黄レベルを検査すること、次いでマグネシウムをノジュラー化剤として作用させるためにマグネシウムを溶融鉄の中を通してバブルにすること、を含む、
請求項1乃至の何れかに記載の方法。
【請求項8】
金属処理剤は、前記中空シャフトを通して溶融鉄に加えられ、任意選択的に、前記ローターヘッドを通して溶融鉄に加えられる、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
金属処理剤は、前記回転デバイスの近傍にある前記溶融鉄に加えられる、請求項1又は請求項1に従属する場合の請求項3乃至8の何れかの請求項に記載の方法。
【請求項10】
金属処理剤は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%のマグネシウムを含む、請求項1乃至の何れかに記載の方法。
【請求項11】
ガスを、前記ローターヘッド(5,35)を通して溶融鉄中に放出することを更に含む、請求項1乃至10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
金属処理剤を含む前記ワイヤ又はコアードワイヤを溶融鉄中に供給することを更に含み、任意選択的に、前記コアードワイヤが、高融点金属を含む外側シースと、金属処理剤を含む内側コアとを含み、任意選択的に、金属処理剤は、マグネシウム、カルシウム、炭化カルシウム、セリウム、フェロシリコンマグネシウム、又はそれらの組合せを含む、請求項1乃至11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
金属処理剤を溶融鉄に加えることは、第1の金属処理剤と少なくとも第2の金属処理剤を加えることを含む、請求項1乃至12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
第1の金属処理剤が前記ローターヘッド(5,35)を通して溶融鉄に加えられ、第2の金属処理剤が前記回転デバイス(100,200)の近傍にある溶融鉄に加えられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第2の金属処理剤は、接種剤、好ましくはジルコニウム、マンガン、バリウム、カルシウム、フェロシリコン、又はそれらの組合せを含む、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1の金属処理剤はマグネシウムを含み、第2の金属処理剤はバリウムを含み、前記方法が、第2の金属処理剤を加えること、次いで第1の金属処理剤を加えることを更に含む、請求項13乃至15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
第2の金属処理剤を加える前に、アルゴンガスを溶融鉄の中に分散させることを更に含む、請求項13乃至16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
第2の金属処理剤は、少なくとも30%のジルコニウム、好ましくは少なくとも50%のジルコニウムを含む、請求項13乃至17の何れかに記載の方法。
【請求項19】
第2の金属処理剤は、少なくとも30%のバリウムを含む、請求項13乃至18の何れかに記載の方法。
【請求項20】
前記ローターヘッド(5,35)は前記管状スリーブ(1,31)と一体的に形成されるか、又は前記ローターヘッド(5,35)は前記管状スリーブ(1,31)の端部に結合される、請求項4又は請求項4に従属する何れかの請求項に記載の方法。
【請求項21】
前記中空シャフト(3,33)は第1の端部と第2の端部とを有しており、第1の端部は前記管状スリーブ(1,31)によって囲まれており、任意選択的に、前記中空シャフト(3,33)の第2の端部は、前記回転デバイス(100,200)を回転させるための装置に結合されるよう構成されている、請求項5又は請求項5に従属する何れかの請求項に記載の方法。
【請求項22】
前記ローターヘッド(5,35)は、金属処理剤を溶融鉄の中に加えるための出口を含む、請求項乃至21の何れかに記載の方法。
【請求項23】
前記シャフトは中空シャフト(3,33)であり、前記中空シャフト(3,33)は前記出口と連通している、請求項22に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
CN106435216、CN210560654、及びEA016954は、アルミニウム処理に使用するための回転デバイスを開示している。JPS6245464及びRU2247289は、保護外面を有する回転デバイスを開示している。EP0691410CN111004965及びUS2015/267272は、鉄及び鋼を処理するための処理剤を開示している。US4496393は、溶鉄にマグネシウムを供給するためのプランジングカプセルを開示している。JP2007031810は、脱硫システム及びプロセスを開示している。EP0396267は、ローターを通して微粒子金属処理を施すためのシステムを開示している。本発明は、溶融鉄等の溶融金属を処理するための方法の改良を提供することを目的とし、当該技術分野における幾つかの制限を解消し、又は、少なくとも有用な代替手段を提供する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融鉄を処理する方法であって、
マグネシウムを少なくとも50%含むノジュラー化剤を含む金属処理剤を溶融鉄の中に加えることと、
ローターヘッド(5,35)を含む回転デバイス(100,200)を用いて溶融鉄を撹拌することと、
を含んでおり
金属処理剤はワイヤ又はコアードワイヤを備えており、前記ワイヤ又はコアードワイヤはローターヘッド(5,35)を通して適用される、
溶融鉄を処理する方法。
【請求項2】
金属処理剤は、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%のマグネシウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属処理剤を前記撹拌中に加えることにより、金属処理剤を溶融鉄に通してバブルにすることと、
溶融鉄から、球状黒鉛鉄(SGI)又は圧縮黒鉛鉄(CGI)として知られているダクタイル鉄を生成することと、
を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記回転デバイスは、
一方の端部にローターヘッド(5,35)を有する管状スリーブ(1,31)と、
前記管状スリーブ(1,31)内を延びるシャフト(3,33)であって、少なくとも一部分が前記管状スリーブ(1,31)によって囲まれるシャフト(3,33)と、
を備えており、
前記管状スリーブ(1,31)は、耐食性及び耐熱衝撃性を有する耐熱材料から形成されており、
前記シャフト(3,33)は、黒鉛を含む材料から形成されている、請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記シャフトは中空シャフト(3,33)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
溶融鉄はキュポラ炉から受けることを含み、
前記方法は、マグネシウム、カルシウム及び炭化カルシウムのうちの少なくとも一つを溶融鉄に通してバブルにすることにより溶融鉄を脱硫すること、次いで溶融鉄中の硫黄レベルを検査すること、次いでマグネシウムをノジュラー化剤として作用させるためにマグネシウムを溶融鉄の中を通してバブルにすること、を含む、
請求項1乃至5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
金属処理剤は、前記中空シャフトを通して溶融鉄に加えられ、任意選択的に、前記ローターヘッドを通して溶融鉄に加えられる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ガスを、前記ローターヘッド(5,35)通して溶融鉄中に放出することを更に含む、請求項1乃至の何れかに記載の方法。
【請求項9】
金属処理剤を含む前記ワイヤ又はコアードワイヤを溶融鉄中に供給することを更に含み、任意選択的に、前記コアードワイヤが、高融点金属を含む外側シースと、金属処理剤を含む内側コアとを含み、任意選択的に、金属処理剤はカルシウム、炭化カルシウム、セリウム、フェロシリコンマグネシウム、又はそれらの組合せを更に含む、請求項1乃至の何れかに記載の方法。
【請求項10】
金属処理剤を溶融鉄に加えることは、第1の金属処理剤と少なくとも第2の金属処理剤を加えることを含む、請求項1乃至の何れかに記載の方法。
【請求項11】
第1の金属処理剤が前記ローターヘッド(5,35)を通して溶融鉄に加えられ、第2の金属処理剤が前記回転デバイス(100,200)の近傍にある溶融鉄に加えられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第2の金属処理剤は、接種剤、好ましくはジルコニウム、マンガン、バリウム、カルシウム、フェロシリコン、又はそれらの組合せを含む、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1の金属処理剤はマグネシウムを含み、第2の金属処理剤はバリウムを含み、前記方法が、第2の金属処理剤を加えること、次いで第1の金属処理剤を加えることを更に含む、請求項10乃至12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
第2の金属処理剤を加える前に、アルゴンガスを溶融鉄の中に分散させることを更に含む、請求項10乃至13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
第2の金属処理剤は、少なくとも30%のジルコニウム、好ましくは少なくとも50%のジルコニウムを含む、請求項10乃至14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
第2の金属処理剤は、少なくとも30%のバリウムを含む、請求項10乃至15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
前記ローターヘッド(5,35)は前記管状スリーブ(1,31)と一体的に形成されるか、又は前記ローターヘッド(5,35)は前記管状スリーブ(1,31)の端部に結合される、請求項4又は請求項4に従属する何れかの請求項に記載の方法。
【請求項18】
前記中空シャフト(3,33)は第1の端部と第2の端部とを有しており、第1の端部は前記管状スリーブ(1,31)によって囲まれており、任意選択的に、前記中空シャフト(3,33)の第2の端部は、前記回転デバイス(100,200)を回転させるための装置に結合されるよう構成されている、請求項5又は請求項5に従属する何れかの請求項に記載の方法。
【請求項19】
前記ローターヘッド(5,35)は、金属処理剤を溶融鉄の中に加えるための出口を含む、請求項1乃至18の何れかに記載の方法。
【請求項20】
前記シャフトは中空シャフト(3,33)であり、前記中空シャフト(3,33)は前記出口と連通している、請求項19に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融鉄を処理する方法であって、
イヤ又はコアードワイヤとノジュラー化剤を含む金属処理剤を溶融鉄の中に加えることと、
ローターヘッド(5,35)を含む回転デバイス(100,200)を用いて溶融鉄を撹拌することと、
を含んでおり、
前記ワイヤ又はコアードワイヤはローターヘッド(5,35)を通して適用される、
溶融鉄を処理する方法。
【請求項2】
金属処理剤は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%のマグネシウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属処理剤を前記撹拌中に加えることにより、金属処理剤を溶融鉄に通してバブルにすることと、
溶融鉄から、球状黒鉛鉄(SGI)又は圧縮黒鉛鉄(CGI)として知られているダクタイル鉄を生成することと、
を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記回転デバイスは、
一方の端部にローターヘッド(5,35)を有する管状スリーブ(1,31)と、
前記管状スリーブ(1,31)内を延びるシャフト(3,33)であって、少なくとも一部分が前記管状スリーブ(1,31)によって囲まれるシャフト(3,33)と、
を備えており、
前記管状スリーブ(1,31)は、耐食性及び耐熱衝撃性を有する耐熱材料から形成されており、
前記シャフト(3,33)は、黒鉛を含む材料から形成されており
任意選択的に、前記シャフトは中空シャフト(3,33)であり、金属処理剤は、前記中空シャフトを通して溶融鉄に加えられる、請求項1乃至3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
溶融鉄はキュポラ炉から受けることを含み、
前記方法は、マグネシウム、カルシウム及び炭化カルシウムのうちの少なくとも一つを溶融鉄に通してバブルにすることにより溶融鉄を脱硫すること、次いで溶融鉄中の硫黄レベルを検査すること、次いでマグネシウムをノジュラー化剤として作用させるためにマグネシウムを溶融鉄の中を通してバブルにすること、を含む、
請求項1乃至の何れかに記載の方法。
【請求項6】
ガスを、前記ローターヘッド(5,35)を通して溶融鉄中に放出することを更に含む、請求項1乃至の何れかに記載の方法。
【請求項7】
金属処理剤を含む前記ワイヤ又はコアードワイヤを溶融鉄中に供給することを更に含み、任意選択的に、前記コアードワイヤが、高融点金属を含む外側シースと、金属処理剤を含む内側コアとを含み、任意選択的に、金属処理剤は、カルシウム、炭化カルシウム、セリウム、フェロシリコンマグネシウム、又はそれらの組合せを更に含む、請求項1乃至の何れかに記載の方法。
【請求項8】
金属処理剤を溶融鉄に加えることは、第1の金属処理剤と少なくとも第2の金属処理剤を加えることを含
任意選択的に、第1の金属処理剤が前記ローターヘッド(5,35)を通して溶融鉄に加えられ、第2の金属処理剤が前記回転デバイス(100,200)の近傍にある溶融鉄に加えられる、請求項1乃至7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
第2の金属処理剤は、接種剤、好ましくはジルコニウム、マンガン、バリウム、カルシウム、フェロシリコン、又はそれらの組合せを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
第1の金属処理剤はマグネシウムを含み、第2の金属処理剤はバリウムを含み、前記方法が、第2の金属処理剤を加えること、次いで第1の金属処理剤を加えることを更に含む、請求項8又は請求項9の何れかに記載の方法。
【請求項11】
第2の金属処理剤を加える前に、アルゴンガスを溶融鉄の中に分散させることを更に含む、請求項乃至10の何れかに記載の方法。
【請求項12】
第2の金属処理剤は、少なくとも30%のジルコニウム、好ましくは少なくとも50%のジルコニウムを含む、及び/又は、第2の金属処理剤は、少なくとも30%のバリウムを含む、請求項乃至11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
前記ローターヘッド(5,35)は前記管状スリーブ(1,31)と一体的に形成されるか、又は前記ローターヘッド(5,35)は前記管状スリーブ(1,31)の端部に結合される、請求項4又は請求項4に従属する何れかの請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記中空シャフト(3,33)は第1の端部と第2の端部とを有しており、第1の端部は前記管状スリーブ(1,31)によって囲まれており、任意選択的に、前記中空シャフト(3,33)の第2の端部は、前記回転デバイス(100,200)を回転させるための装置に結合されるよう構成されている、請求項又は請求項に従属する何れかの請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記ローターヘッド(5,35)は、金属処理剤を溶融鉄の中に加えるための出口を含
任意選択的に、前記シャフトは中空シャフト(3,33)であり、前記中空シャフト(3,33)は前記出口と連通している、請求項1乃至1の何れかに記載の方法。
【国際調査報告】