(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】注射用充填剤及びコラーゲン成長の土台として有用な多粘度水中油型組成物
(51)【国際特許分類】
A61L 27/50 20060101AFI20240115BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20240115BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20240115BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20240115BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240115BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240115BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240115BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240115BHJP
A61K 47/16 20060101ALI20240115BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240115BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240115BHJP
【FI】
A61L27/50
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/58
A61K9/107
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/16
A61K47/44
A61K47/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023537411
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 US2022012200
(87)【国際公開番号】W WO2022155261
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522083204
【氏名又は名称】ロリア・ファーマスーティカル・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビクター・ローリア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB11
4C076BB16
4C076BB40
4C076DD38
4C076DD52E
4C076EE06
4C076EE16
4C076EE27
4C076EE32
4C076EE36
4C076EE37
4C076FF70
4C081AB11
4C081BA13
4C081BA16
4C081BB09
4C081CA05
4C081CA06
4C081CC05
4C081CD01
4C081CD02
4C081CD04
4C081CE11
(57)【要約】
薬学的に許容される水中油型エマルジョンである充填剤組成物は、1~80体積%の、第1の粘度を有する第1のシリコーン油;15~98体積%の水;1~3重量%輸送媒体;0.05~10体積%の界面活性剤;及び、任意選択で前記第1の粘度よりも低い第2の粘度を有する第2のシリコーン油を含む。前記第1の粘度が30,000cSt以下である場合、前記第2のシリコーン油は1~80体積%の量で提供され、前記第1の粘度が30,000cStを超える場合、前記第2のシリコーン油は0~80体積%の量で提供される。前記第1のシリコーン油及び前記第2のシリコーン油のうちの少なくとも1つは、30μm未満の平均直径を有する液滴として水中に分散される。前記輸送媒体は、ヒトの皮内又は皮下に移植された場合に十分に生分解性であり、前記液滴間のコラーゲン成長のための一時的な土台を提供する。充填剤組成物の製造方法及び軟組織増大方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む充填剤組成物:
1~80体積%の、第1の粘度を有する第1のシリコーン油;
15~98体積%の水;
1~3重量%輸送媒体;
0.05~10体積%の界面活性剤;及び、任意選択で
前記第1の粘度よりも低い第2の粘度を有する第2のシリコーン油;
ここで、
前記充填剤組成物は薬学的に許容される水中油型エマルジョンであり、
前記第1の粘度が30,000cSt以下である場合、前記第2のシリコーン油は1~80体積%の量で提供され、
前記第1の粘度が30,000cStを超える場合、前記第2のシリコーン油は0~80体積%の量で提供され、
前記第1のシリコーン油及び前記第2のシリコーン油のうちの少なくとも1つは、30μm未満の平均直径を有する液滴として水中に分散され、
前記輸送媒体は、ヒトの皮内又は皮下に移植された場合に十分に生分解性であり、前記液滴間のコラーゲン成長のための一時的な土台を提供する。
【請求項2】
3体積%の前記第2のシリコーン油と27体積%の前記第1のシリコーン油とを含み、前記第2の粘度が1,000cStであり、前記第1の粘度が12,500cStである、請求項1に記載の充填剤組成物。
【請求項3】
5体積%の前記第2のシリコーン油と25体積%の前記第1のシリコーン油とを含み、前記第2の粘度が12,500cStであり、前記第1の粘度が100,000cStである、請求項1に記載の充填剤組成物。
【請求項4】
30体積%の前記第1のシリコーン油を含み、前記第2のシリコーン油を含まず、前記第1の粘度が100,000cStである、請求項1に記載の充填剤組成物。
【請求項5】
前記第1の粘度が12,500cSt~20,000,000cStであり、前記第2の粘度が65cSt~5000cStである、請求項1に記載の充填剤組成物。
【請求項6】
前記第1のシリコーン油及び前記第2のシリコーン油がポリジメチルシロキサンである、請求項1~5のいずれか1項に記載の充填剤組成物。
【請求項7】
前記輸送媒体が水溶性ポリマーである、請求項1~5のいずれか1項に記載の充填剤組成物。
【請求項8】
前記輸送媒体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、キサンタンガム、クロスカルメロースナトリウム、及びアルギン酸からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~5のいずれか1項に記載の充填剤組成物。
【請求項9】
前記輸送媒体がCMCである、請求項8に記載の充填剤組成物。
【請求項10】
前記CMCが架橋されている、請求項9に記載の充填剤組成物。
【請求項11】
前記一時的な土台が7~35日で溶解する、請求項1~5のいずれか1項に記載の充填剤組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤がリドカインである、請求項1~5のいずれか1項に記載の充填剤組成物。
【請求項13】
前記液滴の平均直径が1nm~1μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の充填剤組成物。
【請求項14】
前記第1のシリコーン油及び前記第2のシリコーン油はポリジメチルシロキサンであり、
前記輸送媒体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、キサンタンガム、クロスカルメロースナトリウム、及びアルギン酸からなる群から選択される水溶性ポリマーであり、任意選択で架橋されており、
前記一時的な土台が7~35日で溶解し、
前記界面活性剤はリドカインであり、及び/又は
前記液滴の平均直径は1nm~1μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の充填剤組成物。
【請求項15】
請求項1~5のいずれか1項に記載の充填剤組成物の製造方法であって、以下のステップを含む方法:
(i)以下のステップを含む、油相の調製:
(a)実質的に無菌であり、発熱物質を実質的に含まない活性成分を提供する;ここで、前記活性成分は、前記第2のシリコーン油であるか、前記第2のシリコーン油がない場合には前記第1のシリコーン油である;
(b)前記活性成分を1~5倍量の滅菌注射用水と1200~1500rpmで4~6分間混合する;
(c)前記活性成分と水の混合物を、下層の水層と前記活性成分を含む上層とに分離させる;
(d)前記下層の水層を除去し、前記上層を収集する;そして
(e)前記活性成分に対してステップ(b)~(d)を少なくとも1回繰り返して油相を得る;
(ii)以下の一連のステップを含む、水相溶液の調製:
(a)輸送媒体を、注射用水、生理食塩水、リンゲル液、及び乳酸リンゲル液からなる群から選択される滅菌溶媒に撹拌しながら溶解して、予備水相溶液を形成する;
(b)前記予備水相溶液を滅菌して滅菌水相溶液を形成する;そして
(c)任意選択で、前記滅菌水相溶液を凍結及び解凍する;及び
(iii)35~45体積部の油相と55~65体積部の水相溶液を撹拌しながら組み合わせて、水中に前記活性成分のエマルジョンを形成することによる、水中油型エマルジョンの調製。
【請求項16】
前記滅菌溶媒が、前記輸送媒体中で架橋を形成する架橋剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記架橋剤が、前記組成物に対して0.01~10重量%の量の1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~5のいずれか1項に記載の充填剤組成物を患者に皮内及び/又は皮下注射することを含む軟組織増大方法。
【請求項19】
20~60mlの量の前記充填剤組成物が単一の注射部位に注射される、請求項18に記載の軟組織増大方法。
【請求項20】
前記充填剤組成物はコラーゲンの成長を刺激し、
前記輸送媒体は、活性成分の液滴間のコラーゲン成長のための一時的な土台を形成し、
前記一時的な土台が7~35日以内に溶解すると、コラーゲンマトリックスが前記活性成分の液滴の位置を固定する、請求項18に記載の軟組織増大方法。
【請求項21】
前記充填剤組成物が、陰茎又は陰嚢の増強のために陰茎又は陰嚢に注入される、請求項18に記載の軟組織増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年1月12日に出願された米国仮出願第63/136,256号に対する優先権を主張し、その内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
1.発明の分野
本発明は、一般に、水中油型エマルジョンを含む組成物、及びそのような組成物を皮膚充填剤として製造及び使用する方法に関する。特に、本発明は、皮膚の潰瘍形成や発熱などの副作用を最小限に抑えながら、乳化した油滴を取り囲むようにコラーゲンを生成する積極的な反応を生み出す多粘度水中油型エマルジョンに関する。
【0003】
2.関連技術の説明
医療及び美容の両方において、軟組織を増大させるための材料及び方法を開発することが長年必要とされてきた。この増強の必要性又は要望はさまざまであり、例えば、顔の小じわ、しわ、傷跡(ニキビ跡など)の治療、外傷(ヘルニア修復など)や病気によって損傷した軟組織の再構築;創傷治癒と組織再生の促進;乳房組織の増大;及び男性器の増強がある。軟組織増強のためのいくつかの材料と治療技術は、少なくとも1900年代半ばから利用可能になっている。しかし、これらの材料や技術の多くには欠点がある。
【0004】
治療技術の例には、再建手術、補綴物の移植、及びさまざまな材料の注入が含まれる。外科的介入は組織を修復又は再構築するために使用される場合があり、自家移植(患者自身の身体の一部から組織を採取して別の部分に移植する)又は同種移植(組織が同一でないドナーから取得する)が含まれる場合がある。例えば、人間の死体の骨の同種移植は、顎骨の増大を伴う歯科処置でよく使用される。外科的介入は、組織を再構築したり、インプラントや補綴物を配置したりするために使用されることもある。インプラントや補綴物の例としては、シリコーン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(ゴアテックスなど)などの合成材料で作られたもの、無細胞真皮基質(ADM)、コラーゲン、死体の骨などの天然由来の材料からのもの、及びブタやウシの心臓弁などの動物由来の組織部分が挙げられる。これらの治療技術の多くは侵襲的であり、二次的な医学的問題を引き起こす可能性がある。
【0005】
外科的技術に加えて、さまざまな直径の針やカニューレを使用し、シリコーン油、コラーゲン、ヒアルロン酸(結合組織、上皮組織、神経組織全体に広く分布する陰イオン性の非硫酸化グリコサミノグリカン)、自家脂肪(同じ個体から得られた脂肪)、カルシウムヒドロキシアパタイト、ポリ-L-乳酸、ポリメタクリル酸メチル、及びA型ボツリヌス毒素ボトックスなどの材料を使用して患者に注射するための注射技術も使用されてきた。ボトックス注射は技術的に組織を増強するために使用されるのではなく、むしろ神経から筋肉への信号をブロックすることによって効果を提供するために使用され、顔のしわを緩和して柔らかくするのに役立つことが認識されている。例えば、Jones, D., Semipermanent and Permanent Injectable Fillers, Dermatol Clin 27 (2009) 433-444を参照されたい。
【0006】
しかしながら、これらの材料はそれぞれ、独自の特性、治療期間、及び副作用を有する。コラーゲンや自己脂肪などの一部の物質は一時的であって、吸収される傾向があり、従前の部位に定期的に繰り返し治療する必要がある。シリコーン油などの他の処置は、耐久性が高く、簡単には分解されない傾向がある。また、シリコーン油などの材料は、異物反応を介して患者自身のコラーゲンの生成を刺激し、より自然な組織の増大、充填、及び永続効果をさらに高めると考えられている。例えば、米国特許第9,993,578号を参照。架橋デキストランやポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの皮膚充填剤が報告されている。しかし、この物質の陰茎増強に対する長期的な有効性については情報が不足しているようである。Yang, Y. et al., Tolerability and Efficacy of Newly Developed Penile Injection of Cross-linked Dextran and Polymethacrylate Mixture on Penile Enhancement, Int. J. Import. Res., 2013, 25(3), 99-103を参照されたい。
【0007】
効果的な軟組織の増大のためには、高品質のコラーゲンの生成を刺激することが非常に望ましい。コラーゲンは、人間や動物のさまざまな結合組織の細胞外空間にある主要な構造タンパク質である。これは、結合組織の主成分として、哺乳類に最も豊富に含まれるタンパク質であり、全身のタンパク質含有量の約25%~35%を占める。石灰化の程度に応じて、コラーゲン組織は柔い場合もあれば、硬い場合もある。トロポコラーゲンとも呼ばれる単一のコラーゲン分子は、フィブリルなどのより大きなコラーゲン凝集体を構成するために使用される成分である。これらの凝集体は、さまざまな組み合わせと濃度で配置され、さまざまな組織特性を提供する。
【0008】
治療される人体の領域に応じて、優先的に生成され、均一で滑らかなシートとして配置される新しいコラーゲンの生成を刺激することが一般に望ましい。さらに、コラーゲンの形成は一般に1~2週間で起こることが好ましい。このような均一で滑らかなコラーゲンの生成は、顔、乳房、又は男性器などの身体の非常に目立つ領域又は敏感な領域において特に望ましい。外科的再建や創傷治癒などの他の場合には、構造的完全性と引張強度が重要な特性となる。これらの構造特性と強度特性が重要となる特定の例には、ヘルニア修復が含まれ、ヘルニア修復では、多大な一定の機械的ストレスがかかる。したがって、求められる用途及び結果に応じて、生成されるコラーゲンの量、構造、及び品質を注意深く制御するための組成物及び方法を提供することも非常に望ましい。
【0009】
特定の種類のシリコーン油は、適切にデリバリーされると、コラーゲンの生成を刺激することができる。しかし、適切なコラーゲン生成を生成するために、医師又は開業医は、単に患者の標的組織にシリコーン油を配置又は注入することはできない。
【0010】
シリコーン油の開発、及び医療及び美容処置におけるそれらの使用には、長く複雑な歴史がある。例えば、Chasan, P., The History of Injectable Silicone Fluids for Soft-Tissue Augmentation, Plastic and Reconstructive Surgery, Volume 120, Number 7, pp. 2034-2040, December 2007を参照されたい。最初のポリジメチルシロキサンは1930年代に合成された。ポリジメチルシロキサン(PDMS又はシリコーン油)は一般に、化学式CH3[Si(CH3)2O]nSi(CH3)3で表すことができる。ここで、nはモノマー[SiO(CH3)2]単位の繰り返し数である。ポリジメチルシロキサンには、潤滑剤、消泡剤、油圧作動油としての使用など、多くの産業用途がある。近年、シリコーン油はその即効性と滑らかな感触のため、ヘアコンディショナーやスキンコンディショナーなどのパーソナルケア製品に採用されている。例えば、米国特許第4,960,764号及び第5,300,286号を参照されたい。
【0011】
組織増強のためのシリコーンの最も初期の使用は、少なくとも第二次世界大戦中に遡り、日本の一部の女性がバストラインを増強するためにシリコーン油注射を受けていた。注射用シリコーンのより管理された医療使用は、Dow Corningがしわやニキビ跡の治療などの適応症として、患者におけるシリコーン油MDX4-4011の研究の承認を取得した1965年に遡る。組織増強のためのシリコーン油に関する他の研究も行われた。しかし、厳密な科学的データは不足しており、さまざまな副作用が報告されている。このような副作用には、瘢痕化、肉芽腫及び小結節の形成、炎症、及び脚などの四肢へのシリコーン油の移動又はその中での貯留が含まれる。肉芽腫の形成は炎症反応であり、免疫系が異物と認識した物質を壁で遮断しようとするものの、除去することができない極度の異物反応である。多くの研究では、シリコーン油自体、その中の可能な汚染物質や混入物、注入技術、又は使用したシリコーン油の量が悪影響の原因であるかどうかを判断することは困難である。しかしながら、シリコーン油は、眼科において、網膜剥離を治療するための眼内タンポナーデ(すなわち、プラグ又はタンポン)としての使用に成功していることがわかっている。例えば、Vaziri, K. et al., Tamponade in the surgical management of retinal detachment, Clinical Ophthalmology 2016:10, pp. 471-476を参照されたい。
【0012】
この文献では、微液滴技術が報告されており、連続穿刺技術を使用して、非常に少量(0.01ml~0.03ml)のシリコーン油が2~10mmの間隔で目的の身体部位に皮下注射されるか、又は、トンネリング又はファンニング技術によって最大約1mlが注入される。ただし、少量のシリコーン油を正確に注入するのは面倒な作業であり、最終結果は施術者のスキルと判断に大きく依存する。この技術を男性の増強に使用したという報告がある。例えば、Urol. Ann. 2012 Sep-Dec; 4(3): 181-186.doi: 10.4103/0974-7796.102672 PMCID: PMC3519113. Low-grade liquid silicone injections as a penile enhancement procedure: Is bigger better? Ramesh Sasidaran, Mohd Ali Mat Zain, and Normala Hj Basironを参照されたい。このような場合でも、注射部位ごとに注入されるシリコーン油の量は依然として比較的多く、高品質のコラーゲンの刺激と生成に必要な均一性を達成することが難しい場合があり、その結果、望ましくないでこぼこした又は結節状のパターンが生じる。さらに、皮下空間と真皮が薄いため、マイクロドロップレット技術で陰茎の皮膚に注射することは禁忌である。
【0013】
Fulton et al.“The optimal filler: immediate and long-term results with emulsified silicone (1,000 centistokes) with cross-linked hyaluronic acid.”Journal of drugs in dermatology: JDD 11.11 (2012): 1336-1341は、顔面移植のための注射可能な充填剤として、ヒアルロン酸を含有するシリコーン水中油型エマルジョンの使用を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述の開発にもかかわらず、永久的な軟組織の増大、特に男性生殖器などのより繊細で困難な部位の増大を提供する安全で効果的な組成物及び方法の開発が必要とされている。好ましくは、これらの組成物及び方法は、標的組織を刺激して、所望の結果を永続的に達成するのに十分な量の高品質コラーゲンを生成する。
【0015】
本明細書で引用したすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の第1の態様は、以下を含む充填剤組成物に関する:1~80体積%の、第1の粘度を有する第1のシリコーン油;15~98体積%の水;1~3重量%輸送媒体;0.05~10体積%の界面活性剤;及び、任意選択で前記第1の粘度よりも低い第2の粘度を有する第2のシリコーン油;ここで、前記充填剤組成物は薬学的に許容される水中油型エマルジョンであり、前記第1の粘度が30,000cSt以下である場合、前記第2のシリコーン油は1~80体積%の量で提供され、前記第1の粘度が30,000cStを超える場合、前記第2のシリコーン油は0~80体積%の量で提供され、前記第1のシリコーン油及び前記第2のシリコーン油のうちの少なくとも1つは、30μm未満の平均直径を有する液滴として水中に分散され、前記輸送媒体は、ヒトの皮内又は皮下に移植された場合に十分に生分解性であり、前記液滴間のコラーゲン成長のための一時的な土台(scaffold)を提供する。
【0017】
特定の実施形態では、前記組成物は、3体積%の前記第2のシリコーン油と27体積%の前記第1のシリコーン油とを含み、前記第2の粘度が1,000cStであり、前記第1の粘度が12,500cStである。
【0018】
特定の実施形態では、前記組成物は、5体積%の前記第2のシリコーン油と25体積%の前記第1のシリコーン油とを含み、前記第2の粘度が12,500cStであり、前記第1の粘度が100,000cStである。
【0019】
特定の実施形態では、前記組成物は、30体積%の前記第1のシリコーン油を含み、前記第2のシリコーン油を含まず、前記第1の粘度が100,000cStである。
【0020】
特定の実施形態では、前記第1の粘度が12,500cSt~20,000,000cStであり、前記第2の粘度が65cSt~5000cStである。
【0021】
特定の実施形態では、前記第1のシリコーン油及び前記第2のシリコーン油はポリジメチルシロキサンである。
【0022】
特定の実施形態では、前記輸送媒体は水溶性ポリマーである。
【0023】
特定の実施形態では、前記輸送媒体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、キサンタンガム、クロスカルメロースナトリウム、及びアルギン酸からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0024】
特定の実施形態では、前記輸送媒体はCMCであり、任意選択で架橋されている。
【0025】
特定の実施形態では、前記一時的な土台は7~35日で溶解する。
【0026】
特定の実施形態では、前記界面活性剤はリドカインである。
【0027】
特定の実施形態では、前記液滴の平均直径は1nm~1μmである。
【0028】
特定の実施形態では、前記第1のシリコーン油及び前記第2のシリコーン油はポリジメチルシロキサンであり、前記輸送媒体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、キサンタンガム、クロスカルメロースナトリウム、及びアルギン酸からなる群から選択される水溶性ポリマーであり、任意選択で架橋されており、前記一時的な土台が7~35日で溶解し、前記界面活性剤はリドカインであり、及び/又は前記液滴の平均直径は1nm~1μmである。
【0029】
本発明の第2の態様は、本発明の充填剤組成物を調製する方法を含む。この方法は以下のステップを含む:(i)以下のステップを含む、油相の調製:(a)実質的に無菌であり、発熱物質を実質的に含まない活性成分を提供する;ここで、前記活性成分は、前記第2のシリコーン油であるか、前記第2のシリコーン油がない場合には前記第1のシリコーン油である;(b)前記活性成分を1~5倍量の滅菌注射用水と1200~1500rpmで4~6分間混合する;(c)前記活性成分と水の混合物を、下層の水層と前記活性成分を含む上層とに分離させる;(d)前記下層の水層を除去し、前記上層を収集する;そして(e)前記活性成分に対してステップ(b)~(d)を少なくとも1回繰り返して油相を得る;(ii)以下の一連のステップを含む、水相溶液の調製:(a)輸送媒体を、注射用水、生理食塩水、リンゲル液、及び乳酸リンゲル液からなる群から選択される滅菌溶媒に撹拌しながら溶解して、予備水相溶液を形成する;(b)前記予備水相溶液を滅菌して滅菌水相溶液を形成する;そして(c)任意選択で、前記滅菌水相溶液を凍結及び解凍する;及び(iii)35~45体積部の油相と55~65体積部の水相溶液を撹拌しながら組み合わせて、水中に前記活性成分のエマルジョンを形成することによる、水中油型エマルジョンの調製。
【0030】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記滅菌溶媒は、前記輸送媒体中で架橋を形成する架橋剤を含有する。
【0031】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、前記架橋剤は、前記組成物に対して0.01~10重量%の量の1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルである。
【0032】
本発明の第3の態様は、本発明の充填剤組成物を患者に皮内及び/又は皮下注射することを含む軟組織増大方法を含む。
【0033】
本発明の第3の態様の特定の実施形態では、20~60mlの量の前記充填剤組成物が単一の注射部位に注射される。
【0034】
本発明の第3の態様の特定の実施形態では、前記充填剤組成物はコラーゲンの成長を刺激し、前記輸送媒体は、前記活性成分の液滴間のコラーゲン成長のための一時的な土台を形成し、前記一時的な土台が7~35日以内に溶解すると、コラーゲンマトリックスが前記活性成分の液滴の位置を固定する。
【0035】
本発明の第3の態様の特定の実施形態では、前記充填剤組成物は、陰茎又は陰嚢の増強のために陰茎又は陰嚢に注入される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、ヒト患者及び他の哺乳類におけるコラーゲン生成を刺激するのに有用な水中油型分散液の形態の組成物に関し、これは、様々な医療処置及び美容処置における軟組織の増大に用途がある。本発明はまた、これらの組成物を調製する方法、及びそれを必要とするヒト患者及び他の哺乳動物におけるコラーゲン生成を刺激する方法にも関する。従来技術とは対照的に、本発明の組成物及び方法は、均一で滑らかで持続性があり、良好な構造的完全性を有する高品質のコラーゲンの生成を刺激するのに特に有用である。
【0037】
本発明の組成物は、それを必要とする哺乳動物、特にヒトにおいてコラーゲン生成を刺激するのに有用である。コラーゲンの刺激は、さまざまな治療や美容効果を目的としており、非限定的な例としては次のようなものがある:陰茎又は陰嚢組織を増強するためにコラーゲンの生成を刺激すること;顔や体の皮膚のしわを軽減するためにコラーゲンの生成を刺激すること;セルライトを軽減又は滑らかにするためにコラーゲンの生成を刺激すること;傷跡修復のためのコラーゲン生成を刺激すること;又はヘルニア修復のためのコラーゲンの生成を刺激すること。他の非限定的な用途には、体又は顔の強化のためのコラーゲン生成の刺激が含まれ、さらなる例示として以下がある:鼻、耳、顎、頬、眼窩周囲領域、額、垂れた首の輪郭を整えること;胸筋又は腹部の筋肉組織を再構築又は増強すること;臀部を増強すること;凹面皮膚の変形を埋めるか最小限に抑えること;乳房の増強;手の若返り;足の輪郭を整えること(特に足の底を厚くすること);関節内治療;組織又は損傷の修復;火傷やその他の外傷による創傷治癒;治癒の促進と補綴物やインプラントの組み込み;及び浮腫などの症状に対する胸膜間又は胸膜内の治療。
【0038】
定義
「食作用」という用語は、貪食によって摂取することを意味する。食作用は、食細胞と呼ばれる特定の生きた細胞が他の細胞や粒子を摂取又は飲み込むプロセスである。食細胞は、アメーバなどの自由生活の単細胞生物、又は白血球などの体細胞の1つであり得る。
【0039】
「分散」という用語は、小さな粒子又は液滴が水などの連続相中に分配又は「分散」されている系を意味する。分散液は、粒子サイズ、沈殿の有無、ブラウン運動の有無など、さまざまな方法で分類できる。分散液の一般的な例は水性インクである。本発明において、組成物は、水相中に分散されたシリコーン油を含み、これはシリコーン水中油型エマルジョンと呼ぶことができる。
【0040】
本明細書で使用される「エマルジョン」という用語は、通常混和しない2つ以上の液体の混合物を意味する。エマルジョンは、コロイドと呼ばれる、より一般的な二相系の一部である。エマルジョンの一例は、油相が連続水相中に分散している水中油型(「o/w」)エマルジョンである。エマルジョンの一般的な例は牛乳である。本発明において、組成物はまた、油相がシリコーン油である水中油型エマルジョン(すなわち、「水中シリコーン油型エマルジョン」)の形態であってもよい。
【0041】
本明細書で使用される「界面活性剤」という用語は、2つの液体の間、気体と液体の間、又は液体と固体の間の表面張力を低下させる化合物を意味する。これには、界面活性剤として分類されていないが、界面活性剤と同様に作用する他の化合物が含まれる場合がある。界面活性剤は、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、又は分散剤として機能する。本発明において、組成物は、水中シリコーン油型エマルジョンの生成を促進するために界面活性剤を使用することができる。
【0042】
「粘度」という用語は、本明細書では、せん断応力又は引張応力による漸進的な変形に対する流体の抵抗の尺度として、その標準的な意味で使用される。この用語は、流体の厚さの概念として、より非公式な形で使用される。流体の粘度は、動粘度、すなわち絶対粘度又は動粘度として報告できる。流体の動粘度は通常センチストークス(cSt)で報告され、隣接する層が異なる速度で互いに平行に移動するせん断流れに対する流体の抵抗に関係する。流体の動粘度は通常センチポアズ(cP)で報告され、流体の密度に対する動粘度の比である。例えば、1000cStの動粘度及び0.90g/mlの密度を有するシリコーン流体は、1111.11cP(1000cStを0.90g/mlで割った値)の動粘度を有することになる。すべての粘度値は、特に明記しない限り、25℃で測定したものとして提供される。
【0043】
本明細書で使用される場合、材料を説明するために「薬学的に許容される」という表現を使用することは、その材料がヒト及び下等動物の組織と接触して使用するのに適し、過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激、アレルギー反応などがなく、合理的な利益/リスク比に見合っていることを意味する。
【0044】
「生分解性」という用語は、人体に移植されたときに溶解することができる材料を表す。
【0045】
「活性成分」という用語は、所望の異物反応を引き起こす、当業者に知られているシリコーン油又は類似体を意味する。望ましいことではないが、活性成分は発熱、潰瘍などの副作用を引き起こす可能性もある。ほとんどのシリコーン油は、体内に注入するとある程度の副作用を引き起こすが、本発明の目的では、活性成分は粘度が12,500cSt未満のシリコーン油であることが好ましい。
【0046】
「増粘剤」という用語は、2種類以上のシリコーン油を含有する組成物中のシリコーン油を指し、増粘剤は、組成物中の最も高い粘度を有するシリコーン油である。増粘剤を活性成分と組み合わせて、注入後の油相液滴の移動及び合体を遅らせ、異物反応の発生を誘発することができる。
【0047】
「輸送媒体」という用語は、水中油型混合物を選択された注射部位に輸送し、その移動及び合体を減少させ、コラーゲン生成のための土台を作り出すことができる物質を意味する。
【0048】
本明細書で使用されるすべてのパーセンテージ及び比は、別段の指示がない限り、重量によるものである。また、場合によっては、体積ベースで組成を記述することが有用かつ便利であることも認識される。
【0049】
本発明は、その精神又は本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化することができる。前述及び以下の実施形態は、あらゆる点において、本明細書に記載の本発明を限定するものではなく、例示的なものであると考えられるべきである。例えば、本発明の組成物及び方法などの本発明の様々な実施形態において、「含む」という用語が使用される場合、他の実施形態において、本発明が本質的にそれらの実施形態からなる、又はそれらの実施形態からなることも意図される。さらに、別段の指定がない限り、本発明が動作可能である限り、ステップの順序又は特定のアクションを実行する順序は重要ではないことを理解されたい。さらに、場合によっては、2つ以上のステップ又はアクションを同時に実行することもできる。
【0050】
本明細書では、文脈上明らかに別段の指示がない限り、単数形には複数形も含まれる。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾がある場合には、本明細書が優先される。
【0051】
さらに、特定の成分は、混合するとさらに反応するか、又は追加の材料に変換される可能性があるため、場合によっては、組成物は混合前の成分から構成されるものとして説明できることを認識すべきである。
【0052】
本発明の好ましい実施形態は、好ましくは30μm未満の平均液滴直径を有するシリコーン油などの活性成分と輸送媒体とを任意選択で含む、水中油型エマルジョンの形態の多重粘度組成物に関する。本発明はまた、これらの組成物を所望の比率で調製する方法、及びコラーゲン生成を必要とするヒト患者及び他の哺乳動物におけるコラーゲン生成を刺激する方法にも関する。
【0053】
本発明の組成物は、均一で、滑らかで、持続性があり、良好な構造的完全性を有する高品質のコラーゲンの生成を刺激する軟組織充填剤として特に有用である。
【0054】
水中油型エマルジョンの使用は、シリコーン油液滴の注入後に形成される塊や凹凸という一般的な問題の解決に役立つ。より小さい直径(好ましくは1nm~30μm)のシリコーン油液滴は、エマルジョンを使用すると、皮内及び皮膚の皮下空間及び皮膚の下の両方に効果的に送達され、エマルジョンを使用しない場合に一般的に形成される不規則性を回避することができる。エマルジョンにより、油滴が移動や凝集を最小限に抑えながら近接して送達されるため、異物反応FBRが発生し、各油滴がコラーゲンに包まれることが可能になる。遷移を伴わない30μm以下の液滴を使用すると、異物反応が起こり、コラーゲンは滑らかな連続シート状に形成される。この結果は、シリコーン液滴のサイズが小さすぎる場合、すなわち直径約30μm未満の場合、シリコーン油は効果がなくなる可能性が高いという以前の理解を考慮すると、予想外である。食細胞はシリコーン油を貪食し、コラーゲンの生成が刺激される前にシリコーン油を運び去ってしまうからである。例えば、米国特許第9,993,578号を参照されたい。しかし、さらなる研究では、30μm未満の小さなシリコーン液滴が食細胞によって体から除去されなかったことが示されている。臨床観察では、食細胞がシリコーン油を持ち去る前に、異物反応とコラーゲン生成が起こることが示された。
【0055】
活性成分
活性成分は、所望の異物反応を誘発するシリコーン油又はその類似体である。
【0056】
シリコーン油は、0.65~2,500,000cStの範囲の粘度で商業的に製造されている。ここで説明するシリコーン油の1つは、0.65~100,000cStの粘度範囲を持つPDMSである。臨床状況では、患者には低粘度のPDMSと高粘度のPDMSの両方が注射された。観察された結果は、より低い粘度のシリコーン油(約1,000cSt)が、コラーゲンの生成におけるより迅速な反応と、シリコーンが注入された場所で生成される量を含む、より強力な異物反応を引き起こすということであった。この強力な異物反応には、皮膚潰瘍や発熱などの有害な側面がある。より高い粘度のシリコーン油(約12,500cSt)を使用した患者をさらに観察したところ、異物反応があまり強くないことが示され、これは反応までの時間が長くなり、生成されるコラーゲンの量が減少することを意味する。より高い粘度のシリコーン油はまた、それほど強力ではない異物反応を引き起こし、それによって皮膚の潰瘍形成や発熱などの副作用を最小限に抑えた。
【0057】
軟組織の増大のためのシリコーン油注入の使用による副作用を最小限に抑えるために、より高度に精製されたシリコーン油を使用し、任意の組織領域での注入量を最小限に抑える努力がなされてきた。精製作業には、イオン交換クロマトグラフィー、限外濾過、蒸留などの技術による発熱物質の除去が含まれる。現在、シリコーン油は、唇やほうれい線(一般に「スマイルライン」として知られている)の軟組織の増加や、頬や鼻の凹凸の矯正に臨床で使用されている。
【0058】
副作用を最小限に抑える別の方法は、低粘度のシリコーン油(本明細書では第2のシリコーン油と呼ばれることもある)と高粘度のシリコーン油(第1のシリコーン油と呼ばれることもある)を所望の比率で組み合わせることであり、より低粘度のシリコーン油は、好ましくは、この組み合わせにおける少量の割合をなす。この組み合わせには、副作用を最小限に抑えながら、人間の患者や他の哺乳類のコラーゲンの迅速かつ増加した生成を促進するという意図された効果もある。この組成物は、陰茎の拡大を含む様々な医療及び美容処置のための軟組織の増大に有用である。
【0059】
コラーゲン生成を刺激するために本明細書で有用なシリコーン油は、好ましくは、ポリジメチルシロキサン、フッ素化ポリシロキサン、ジメチコノール、シリコーンポリエーテル、及びそれらの混合物から選択される。当業者に知られている他のシリコーン油は、コラーゲン生成の刺激に有用であり、本発明において有用であり得る。ジメチコーンとしても知られるポリジメチルシロキサンは、一般に化学式CH3[Si(CH3)2O]nSi(CH3)3で表すことができる。ここで、nはモノマー[SiO(CH3)2]単位の繰り返し数である。本明細書で特に有用なシリコーン油の例には、一般にCAS識別番号63148-62-9で分類されるポリジメチルシロキサンが含まれる。いくつかの市販のポリジメチルシロキサンには、ADATO SIL-OL5000シリコーン油(製品コードES-5000S、ニューヨーク州ロチェスターのBausch&Lombから入手可能)が含まれる。この物質は、粘度が25℃で5000~5900センチポアズ(cP)、比重(水に対する密度)が25℃で0.913の透明な油状液体であると記載されている。いくつかの情報源によると、粘度が5000cPのシリコーン油の分子量は約50,000になる。
【0060】
他のポリジメチルシロキサン材料には、Dow Corning Medical FluidsなどのさまざまなDow Corningシリコーン流体が含まれる。しかし、これらの材料の中には一般に粘度が低いものもあり、本明細書での使用にはあまり望ましくない。好ましい物理的特性を持つダウコーニングの液体には、25℃で0.972の比重(水と比較した密度)が報告されているDow Corning360Medical Fluid1000cStが含まれる。
【0061】
他のポリジメチルシロキサン材料としては、1000cStの粘度及び25℃で0.97の報告比重(水と比較した密度)を含む、好ましい物理的特性を有するALCON1000油及びSILIKON1000油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
活性成分は、好ましくは、充填剤組成物の1~80体積%、2~50体積%、又は3~30体積%を構成する。
【0063】
増粘剤
増粘剤は、充填剤組成物中の他のシリコーン油よりも高い粘度を有する油である。増粘剤は活性成分と組み合わされて、注入後の油相液滴の移動と合体を遅らせ、異物反応の発生を誘発する。
【0064】
増粘剤は、12,500cSt~20,000,000cStの粘度を有することが好ましい。
【0065】
増粘剤は、好ましくは、活性成分として使用される油の高分子量バージョンをなす。したがって、増粘剤は、好ましくは、活性成分に関して上述したもののような、少なくとも12,500cStの粘度を有するシリコーン油又はその類似体である。増粘剤は、25℃で0.972の比重(水と比較した密度)が報告されているDow Corning360Medical Fluid12,500cStなどのポリジメチルシロキサンが最も好ましい。
【0066】
増粘剤は、活性成分と同様に、注射後に異物反応を引き起こす可能性がある。しかし、増粘剤の場合、そのような異物反応はそれほど強力ではなく、皮膚潰瘍や発熱などの望ましくない副作用を伴う可能性が低くなる。
【0067】
増粘剤は、充填剤組成物中に提供される場合、好ましくは充填剤組成物の1~80体積%、又は10~50体積%、又は20~30体積%を構成する。
【0068】
充填剤組成物中の活性成分対増粘剤の比は、好ましくは、1:1000~100:1、又は1:100~10:1、又は1:10~1:1の範囲をなす。
【0069】
輸送媒体
本明細書における適切な輸送媒体は、一般にポリマー輸送媒体である。これらの輸送媒体のいくつかは、親水性ゲル化剤として説明される場合もあれば、一般に水溶性ポリマー又はコロイド状水溶性ポリマーとして説明される場合もある。適切な輸送媒体としては、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース(すなわち、CMC又はセルロースガム)、セルロースエーテル(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、及びキサンタンガムが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる非限定的な例には、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムであるクロスカルメロースナトリウム、及び褐藻(海藻)から得ることができるアニオン性多糖であるアルギン酸(アルギン又はアルギン酸塩とも呼ばれる)が含まれる。
【0070】
輸送媒体は、供給されたままの形態(非架橋)で使用することも、BDDEなどの適切な架橋剤で架橋することもできる。
【0071】
BDDEで架橋されたCMCを使用する例示的な実施形態では、CMC架橋により、身体がCMC一時的な土台をゆっくりと溶解することが可能になる。これにより、免疫系が個々の油滴を体系的に認識し、異物反応を介して反応し、油滴をコラーゲンでカプセル化することが可能になる。この反応が油滴ごとに繰り返されると、コラーゲンは塊やその他の凹凸を形成するのではなく、滑らかなシートを形成することができる。
【0072】
架橋されたCMCが望ましい実施形態では、架橋剤(例えば、BDDE)は、組成物の重量%に対して0.01重量%~10重量%、又は0.01重量%~5重量%、又は約0.1重量%の量で使用されることが好ましい。
【0073】
他の適切な輸送媒体には、アクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー及びLubrizol Corp.によって販売されているCARBOPOLカルボキシビニルポリマーが含まれるが、これらに限定されない。これらの樹脂は本質的に、例えばポリアリルスクロース又はポリアリルペンタエリスリトールなどの0.75%~2.00%の架橋剤で架橋された、アクリル酸のコロイド状水溶性ポリアルケニルポリエーテル架橋ポリマーからなる。例としては、CARBOPOL934、CARBOPOL940、CARBOPOL950、CARBOPOL980、CARBOPOL951、及びCARBOPOL981が挙げられる。CARBOPOL934は、スクロース分子ごとに平均約5.8個のアリル基を有する約1%のスクロースのポリアリルエーテルで架橋されたアクリル酸の水溶性ポリマーである。また、本明細書での使用に適しているのは、Lubrizol Corpから、CARBOPOL1382、CARBOPOL1342及びPEMULEN TRI(CTFA指定:アクリレート/10~30アクリル酸アルキルクロスポリマー)として入手可能な両親媒性特性を有するアクリル酸の疎水的に修飾された架橋ポリマーである。ポリアルケニルポリエーテル架橋アクリル酸ポリマーと疎水変性架橋アクリル酸ポリマーとの組み合わせも適している。輸送媒体は、常温及び高温の両方にわたって優れた安定性特性を提供することが好ましい。
【0074】
特定の実施形態では、輸送媒体は、所望の時間枠(例えば、7~35日)内にインビボで溶解するように修飾されたコラーゲンを含む。例えば、コラーゲンは部分的又は完全に加水分解してより速く溶解することができ、また架橋して溶解速度を低下させることができる。好ましくは、土台は、異物反応が均一なコラーゲン層を築くのに必要な時間と一致する時間枠内で体内において消散する。
【0075】
輸送媒体は、好ましくは、0.5~5重量%又は1~3重量%の充填剤組成物を含む。
【0076】
界面活性剤
界面活性剤は、油と水の混合を促進して、安定な注射可能なエマルジョンを生成する。界面活性剤は、アニオン性、両性、ノニオン性及びカチオン性化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。塩酸リドカイン(HCL)及びその類似体は、界面活性作用と注射部位の鎮痛の両方を提供するために含まれることが好ましい。界面活性剤は、好ましくは水相の0.001%~10%を構成する。
【0077】
ポリソルベートは、別の適切な界面活性剤である。ポリソルベートは、脂肪酸でエステル化されたエトキシル化ソルビタン(ソルビトールの誘導体)から誘導された、油状液体の親水性非イオン性界面活性剤である。ポリソルベートの一般的なブランド名には、Scattics、Alkest、Canarcelなどがある。ポリソルベートの名前の後には、通常、分子内の繰り返し単位の数に関連する数字が続く。ポリソルベートは、食品や腫瘍治療薬などの注射薬に使用されている。“Safety of Polysorbate 80 in the Oncology Setting,“Lee S. Schwartzberg and Rudolph M. Navari, Adv Ther. 2018; 35(6): 754-767. Published online 2018 May 23を参照されたい。
【0078】
界面活性剤は、液滴のサイズを平均直径30μm未満まで小さくすることが好ましい。特定の実施形態では、リドカインは、水とシリコーン油を組み合わせる界面活性剤として使用され、ヒト患者及び他の哺乳類に鎮痛効果を与えるという追加の利点が得られる。
【0079】
界面活性剤は、好ましくは充填剤組成物の0.05体積%~10体積%を構成する。
【0080】
水
充填剤組成物は、好ましくは、15重量%~98重量%、又は30重量%~95重量%、又は50重量%~80重量%の量で水を含む。水は、好ましくは医薬品等級であり、好ましくはUSP注射用水である。
【0081】
追加成分
本発明の組成物は、塩、糖、緩衝剤、アルコール、保存剤、抗酸化剤、及びUV吸収剤を含むがこれらに限定されない追加の成分を含んでもよい。選択される正確な量及び材料は、所望の特性を有する配合物を達成するために、配合技術の当業者によって決定され得る。
【0082】
追加成分は以下の物を含み得る:エタノール、グリセロール、プロピレングリコールなどの溶剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)やクエン酸などの安定剤;ベンジルアルコールなどの抗菌防腐剤;メチルパラベン、プロピルパラベン;ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)やブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などの酸化防止剤;クエン酸/クエン酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸水素ナトリウム、酢酸/酢酸ナトリウム、マレイン酸/マレイン酸ナトリウム、フタル酸水素ナトリウム、リン酸/リン酸二水素カリウム、リン酸/リン酸水素二ナトリウムなどの緩衝剤;塩化ナトリウム、マンニトール、ブドウ糖などの張性調整剤。追加成分の正確なレベルは、一般に全組成物の約1重量%未満であるが、所望の最終組成物及び目標の物理的及び生理学的特性に応じて変わり得る。
【0083】
本発明の他の実施形態では、他の追加成分には、例えば、ヒト細胞の浸透圧を有する等張性の生理食塩水を調製するために使用される成分が含まれ得る。生理食塩水には、約154mmol/Lのナトリウムイオンと約154mmol/Lの塩化物イオンが含まれる。本発明の組成物は、前述の成分が生理食塩水と本質的に同等となる最終組成を有するように配合することができる。生理食塩水のpHは約5である。
【0084】
本発明のさらに他の実施形態では、他の追加成分としては、例えば、リンゲル液(特に、乳酸リンゲル液は人間の血液と等張であり、人間の組織と適合性があり、注射に適している)を調製するために使用される成分が含まれ得る。乳酸リンゲル液には、約130mmol/Lのナトリウムイオン、約109mmol/Lの塩化物イオン、約28mmol/Lの乳酸イオン、約4mmol/Lのカリウムイオン、及び約1.5mmol/Lのカルシウムイオンが含まれる。本発明の組成物は、前述の成分が乳酸リンゲル液と本質的に同等となる最終組成を有するように配合することができる。乳酸リンゲル液のpHは約6.5である。
【0085】
本発明の組成物は、一般に、組成物の物理的特性、及び組成物の安全性及び有効性に関して最適化された物理的パラメーターを有することになる。
【0086】
本発明の充填剤組成物は、好ましくは、適切なゲージの針又はカニューレ、例えば、14ゲージ、18ゲージ及び/又は25ゲージの針又はカニューレを使用して容易に注入できるような適切な粘度を有する。粘度は少なくとも100cStであることが好ましい。
【0087】
本発明の充填剤組成物は、不快感及び組織損傷の可能性を最小限に抑えるために、材料が注入される対象の組織と生理学的に適合するpH及び張性を有するべきである。適切なpHは、約4.5~約7の範囲であり得る。組成物の張性は、一般に、ヒトの血液又はヒトの細胞と等張であるべきである。張性とpHの1つの適切な目標は、上で説明したように、生理食塩水の組成に基づいている。張性及びpHのもう1つの適切な目標は、前述のように、乳酸リンゲル液の組成に基づいている。
【0088】
所望の特性を有する十分に高品質のコラーゲンの刺激を確実にするために、組成物が適切な範囲内の油滴サイズ(すなわち、直径)を有することが特に好ましい。本発明の組成物は、所望のサイズ範囲の分散油滴を有するように調製される。上で論じたように、大きすぎる液滴は望ましくなく、液滴サイズの均一な分布が好ましい。分散された油滴の液滴サイズは、顕微鏡検査及び当業者が利用できる他の技術によって決定することができる。液滴サイズは、平均サイズとして報告することも、サイズ範囲の分布とともに報告することもできる。
【0089】
30μm~1000μmの直径を有する液滴は、十分な量のコラーゲン産生を伴い、非常に良好な自然な感触の臨床結果を提供する。直径が30μm未満の液滴は、非常に優れた自然な感触の臨床結果をもたらし、さらに、より小さな液滴を囲むコラーゲンの量により、より多くのコラーゲンが生成される。これは、すべてが1つの液滴に合体した場合、同じ体積の小さな液滴を取り囲むコラーゲンの体積よりも大きくなる。そのため、液滴直径が30μm未満の場合、治療ごとにより大きな寸法の増加が実現される。したがって、本発明の好ましい組成物は、1000μm以下、又は1~1000μmの平均油滴直径を有する。本発明のより好ましい組成物は、30μm未満、好ましくは1nm~30μm、又は1~29μmの平均油滴直径を有する。
【0090】
本発明の組成物は、好ましくは、保存安定性、使用中及び注射中の安定性、及び注射後の安定性を含む適切な安定性を有する。いくつかの実施形態では、保存のために組成物を凍結することが望ましい。好ましくは、組成物は最大約45日間保存でき、その後はさらなるFDAの物理的及び化学的安定性試験が必要となる可能性がある。製品が凍結している場合は、使用前に解凍される。FDAは通常、複合製品を調製又は解凍してから72時間以内に使用することを要求している。
【0091】
本発明の組成物は、ヒト又は他の下等動物の体内に移植された場合、生分解性であることが好ましい。特に、組成物の輸送媒体成分は、新生コラーゲンを含む宿主組織が時間の経過とともに徐々に油滴にアクセスしやすくなるように、宿主に移植されたときに分解(例えば、溶解)するように選択することができる。このようにして、組成物は油滴間のコラーゲン成長のための一時的な土台を提供する。
【0092】
土台が溶解するのにかかる時間は、輸送媒体の選択によって調整することができる。土台は7~365日の範囲の時間で溶解し得る。陰茎シャフト、亀頭、陰嚢の拡大には、土台が溶解するまで拡大領域への物理的刺激を伴う性行為を避けるべきであることを考慮すると、より短い時間枠が最も好ましい。
【0093】
輸送媒体の生分解速度は、例えば、輸送媒体の選択、輸送媒体の鎖長の調整、及び輸送媒体の架橋度の調整を通じて調整することができる。JUVEDERMやRESTYLANEなどの長期持続性の高度に架橋された皮膚充填剤は、陰茎シャフト、亀頭、陰嚢の拡大にとって土台の溶解が遅すぎる。一方、輸送媒体の溶解が速すぎると、油滴の遷移能力が高まり、油滴が合体して大きな塊を形成する可能性がある。このような場合、形成されるコラーゲンの量は少なくなる。例示的な一実施形態では、小さな油滴の周囲に形成されるコラーゲンの量が合計ではるかに多くなるため、コラーゲンに囲まれた1つの大きな油滴ではなく、コラーゲンに囲まれた多くの小さな油滴を形成することができる。
【0094】
調製方法
本発明の組成物は、以下の一般的な手順によって調製されるが、他の実施形態も考えられる。特定の実施形態では、水中油分散体は、油相と水相を別々に調製し、これらの相を適切に混合することによって調製される。
【0095】
活性成分がシリコーン油である好ましい実施形態では、プロセスは以下の一般的なステップを含む:1)以下のステップを含む、各シリコーン油相画分の調製:(a)本質的に無菌かつ発熱物質がなくなるまで、各油画分を滅菌及び脱発熱物質処理する;(b)得られた無菌かつ発熱物質を含まない画分を、ほぼ等量から約4~5倍量の範囲の量の滅菌注射用水と約5分間、1200~1500rpmの範囲で混合することによって、各油画分を洗浄する;(c)各油画分と水の混合物を2層に分離させる;(d)下層の水層を除去し、上層のシリコーン層を回収する(増粘剤の製造時に生成される低分子量分子を除去し、増粘剤による潜在的な化学毒性(発熱物質)及び/又はアレルギー反応を大幅に低減するため);(e)任意選択で、有害反応を最小限に抑えるために、発熱物質を許容可能なレベルまで十分に減少させるために、前述のステップをさらに1回以上繰り返す;(f)各油相画分を組み合わせてシリコーン油相を得る;2)以下のステップを含む、水相の調製:(a)滅菌注射用水、又は生理食塩水、リンゲル液、もしくは乳酸リンゲル液から選択される滅菌溶液に輸送媒体を撹拌しながら溶解して、濃厚な水相溶液を形成する;(b)濃厚な水相溶液を滅菌する;(c)任意選択で、滅菌された濃厚な水相溶液を凍結及び解凍する;(d)リドカインを含み得る界面活性剤などの他の所望の成分を添加する;及び3)以下のステップを含む、水中シリコーン油分散液の調製:約40体積部のシリコーン油相を約60体積部の濃厚な水相に撹拌しながら添加し、水中にシリコーン油の分散液を形成する。
【0096】
上記の手順は、以下のステップ(a)~(d)のように、上記2)のステップ(a)~(c)の代替手段を介して、輸送媒体用の架橋剤を組み込むように容易に変更することができる:2)以下のステップを含む、水相の調製:(a)架橋剤を滅菌注射用水、又は生理食塩水、リンゲル液、もしくは乳酸リンゲル液から選択される滅菌溶液に撹拌しながら溶解させて、架橋剤の溶液を形成する;(b)輸送媒体を架橋剤の溶液に溶解して、濃厚な水相溶液を形成する;(c)濃厚な水相溶液を滅菌する;及び(d)任意選択で、滅菌された濃厚な水相溶液を凍結及び解凍する。
【0097】
上記の手順を簡単に変更して、増粘剤と活性成分の位置を切り替えることもでき、ここで、活性成分は、上記(i)のステップ(a)~(f)において増粘剤を置き換え、増粘剤はステップ(f)の活性成分を置き換える。
【0098】
特定の例示的な実施形態では、濃厚な水相溶液は170℃で滅菌される。さらなる実施形態では、滅菌はオーブン内で行われてもよい。
【0099】
特定の例示的な実施形態では、混合はオートクレーブ内で起こり得る。
【0100】
軟組織増大方法
本発明の軟組織増大方法は、本発明の充填剤組成物を患者に皮内及び/又は皮下注射することを含む。
【0101】
単一の注射部位に注射される充填剤組成物の体積は、好ましくは1~75ml、又は20~60mlである。
【0102】
充填剤組成物はコラーゲンの成長を刺激し、輸送媒体は好ましくは油滴間のコラーゲン成長のための一時的な土台を形成し、これにより、一時的な土台が7~35日以内に溶解すると、コラーゲンマトリックスが形成されて油滴の位置が固定される。
【0103】
この方法は、陰茎の強化、陰嚢の増強、顔又は体のしわ又はくぼみの充填、瘢痕の修復、ヘルニアの修復及び豊胸のために使用することができる。
【0104】
本発明をその特定の例を参照して詳細に説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を加えることができることは当業者には明らかである。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む充填剤組成物:
1~80体積%の、
12,500~20,000,000cStの第1の粘度を有する第1のシリコーン油;
15~98体積%の水;
1~3重量%
の輸送媒体;
0.05~10体積%の界面活性剤;及び、任意選択で
前記第1の粘度よりも低い第2の粘度を有する第2のシリコーン油;
ここで、
前記充填剤組成物にはコラーゲンが含まれておらず、
前記充填剤組成物は薬学的に許容される水中油型エマルジョンであり
、
前記第1のシリコーン油及び前記第2のシリコーン油のうちの少なくとも1つは、30μm未満の平均直径を有する液滴として水中に分散され、
前記輸送媒体は、ヒトの皮内又は皮下に移植された場合に十分に生分解性であり、前記液滴間のコラーゲン成長のための一時的な土台を提供する。
【請求項2】
3体積%の前記第2のシリコーン油と27体積%の前記第1のシリコーン油とを含み、前記第2の粘度が1,000cStであり、前記第1の粘度が12,500cStである、請求項1に記載の充填剤組成物。
【請求項3】
5体積%の前記第2のシリコーン油と25体積%の前記第1のシリコーン油とを含み、前記第2の粘度が12,500cStであり、前記第1の粘度が100,000cStである、請求項1に記載の充填剤組成物。
【請求項4】
30体積%の前記第1のシリコーン油を含み、前記第2のシリコーン油を含まず、前記第1の粘度が100,000cStである、請求項1に記載の充填剤組成物。
【請求項5】
前記第2の粘度が65cSt~5000cStである、請求項1に記載の充填剤組成物。
【請求項6】
前記第1のシリコーン油及び前記第2のシリコーン油がポリジメチルシロキサンである、請求項1~5のいずれか1項に記載の充填剤組成物。
【請求項7】
前記輸送媒体が水溶性ポリマーである、請求項1~
6のいずれか1項に記載の充填剤組成物。
【請求項8】
前記輸送媒体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、キサンタンガム、クロスカルメロースナトリウム、及びアルギン酸からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~
7のいずれか1項に記載の充填剤組成物。
【請求項9】
前記輸送媒体がCMCである、請求項8に記載の充填剤組成物。
【請求項10】
前記CMCが架橋されている、請求項9に記載の充填剤組成物。
【請求項11】
前記一時的な土台が7~35日で溶解する、請求項1~
10のいずれか1項に記載の充填剤組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤がリドカインである、請求項1~
11のいずれか1項に記載の充填剤組成物。
【請求項13】
前記液滴の平均直径が1nm~1μmである、請求項1~
12のいずれか1項に記載の充填剤組成物。
【請求項14】
前記第1のシリコーン油及び前記第2のシリコーン油はポリジメチルシロキサンであり、
前記輸送媒体は、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、キサンタンガム、クロスカルメロースナトリウム、及びアルギン酸からなる群から選択される水溶性ポリマーであり、任意選択で架橋されており、
前記一時的な土台が7~35日で溶解し、
前記界面活性剤はリドカインであり、及び/又は
前記液滴の平均直径は1nm~1μmである、請求項1~
13のいずれか1項に記載の充填剤組成物。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか1項に記載の充填剤組成物の製造方法であって、以下のステップを含む方法:
(i)以下のステップを含む、油相の調製:
(a)実質的に無菌であり、発熱物質を実質的に含まない
、少なくとも1つのシリコーン油を提供する;ここで、前記
少なくとも1つのシリコーン油は、前記第
1のシリコーン油
、及び任意選択で前記第2のシリコーン油
を含む;
(b)前記
少なくとも1つのシリコーン油を1~5倍量の滅菌注射用水と1200~1500rpmで4~6分間混合する;
(c)前記
少なくとも1つのシリコーン油と水の混合物を、下層の水層と前記
少なくとも1つのシリコーン油を含む上層とに分離させる;
(d)前記下層の水層を除去し、前記上層を収集する;そして
(e)前記
少なくとも1つのシリコーン油に対してステップ(b)~(d)を少なくとも1回繰り返して油相を得る;
(ii)以下の一連のステップを含む、水相溶液の調製:
(a)輸送媒体を、注射用水、生理食塩水、リンゲル液、及び乳酸リンゲル液からなる群から選択される滅菌溶媒に撹拌しながら溶解して、予備水相溶液を形成する;
(b)前記予備水相溶液を滅菌して滅菌水相溶液を形成する;そして
(c)任意選択で、前記滅菌水相溶液を凍結及び解凍する;及び
(iii)35~45体積部の油相と55~65体積部の水相溶液を撹拌しながら組み合わせて、水中に前記
少なくとも1つのシリコーン油のエマルジョンを形成することによる、水中油型エマルジョンの調製。
【請求項16】
前記滅菌溶媒が、前記輸送媒体中で架橋を形成する架橋剤を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記架橋剤が、前記組成物に対して0.01~10重量%の量の1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
軟組織増大方法のために使用される、請求項1~
14のいずれか1項に記載の充填剤組成
物。
【請求項19】
20~60mlの量の前記充填剤組成物が単一の注射部位に注射される、請求項18に記載の
充填剤組成物。
【請求項20】
前記充填剤組成物はコラーゲンの成長を刺激し、
前記輸送媒体は、
前記液滴間のコラーゲン成長のための一時的な土台を形成し、
前記一時的な土台が7~35日以内に溶解すると、コラーゲンマトリックスが前
記液滴の位置を固定する、請求項18
又は19に記載の
充填剤組成物。
【請求項21】
前記充填剤組成物が、陰茎又は陰嚢の増強のために陰茎又は陰嚢に注入される、請求項18
~20のいずれか1項に記載の
充填剤組成物。
【国際調査報告】