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特表2024-502562反共振光学構成要素及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】反共振光学構成要素及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/032 20060101AFI20240115BHJP
   C03B 37/012 20060101ALI20240115BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
G02B6/032 Z
C03B37/012 A
G02B6/02 451
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538667
(86)(22)【出願日】2022-01-05
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2022050110
(87)【国際公開番号】W WO2022157010
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】21152376.6
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heraeusstr.12-14, 63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーガー,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】プラス,ジャクリーン
【テーマコード(参考)】
2H250
4G021
【Fターム(参考)】
2H250AB04
2H250AB06
2H250AB07
2H250AB32
2H250AC53
2H250AF04
2H250AF23
2H250AF28
2H250AF53
2H250AF57
4G021BA01
(57)【要約】
【解決手段】 反共振中空コアファイバ又はそのためのプリフォームの形態の光学構成要素は、中空コアと、中空コアに面する周方向内側を有するジャケットと、反共振構造要素とを含む。円形又は楕円形形状とは異なり、構成要素の長手方向軸の方向に見てそれぞれ断面が弧状設計であり、左側弧端部及び右側弧端部を有し、中空コアに向かって膨らんでいる、第1のタイプの反共振構造要素であって、弧端部が接触点でジャケットの内側に接続され、ジャケットの内側と共に湾曲面を張る、第1のタイプの反共振構造要素を有する光学構成要素を製造する方法を提供するために、本文書は以下の方法ステップを有する方法を提案する。(a)内側及び外側によって境界付けられたスリーブ管壁と内径dHとを有するスリーブ管を提供するステップと、(b)外径DM1を有する第1の反共振要素母管を備える反共振要素プリフォームを提供するステップと、(c)外径DSを有する支持管を提供するステップであって、DM1+2DS<dHであるステップと、(d)スリーブ管と、スリーブ管に対して同軸に配置された第1のARE母管と、スリーブ管と第1のARE母管との間の環状間隙内に平行軸を有して配置され、環状間隙の周囲に分布している複数の支持管とを備える円筒形アセンブリを形成するステップと、(e)円筒形アセンブリを延伸して光学構成要素を得るステップであって、減少圧力が支持管内で生成され、増大圧力が第1の母管内で生成されることにより、スリーブ管が部分的にコラップスし、支持管が少なくとも部分的にコラップスして、元のスリーブ管の内側と元の第1のARE母管の外側との間の接触点と、第1のタイプの弧状反共振要素とを形成するステップ。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反共振光学構成要素(1,1A,2,2A,3,4)であって、構成要素長手方向軸に沿って延在する中空コア(10)と、前記中空コア(10)に面する周方向内側(23)で前記中空コア(10)を取り囲むシース(20)と、第1のタイプの反共振要素(30)とを備え、前記第1のタイプの反共振要素(30)の各々が、前記構成要素の前記長手方向軸の方向に見て断面がそれぞれ弧状設計であり、左側弧端部及び右側弧端部を有し、前記中空コア(10)に向かって膨らんでおり、前記弧端部が、接触点(32)で前記シースの前記内側(23)に接続され、前記シースの前記内側と共に湾曲面(31)を張っている、反共振光学構成要素。
【請求項2】
第2のタイプの反共振要素(40)が設けられており、前記構成要素の長手方向軸の前記方向に見た前記断面において、少なくとも1つの前記第2のタイプの反共振要素(40)が前記湾曲面によって境界付けられた湾曲内部空間(35)内に配置されるという意味で、前記第2のタイプの反共振要素(40)が前記第1のタイプの反共振要素(30)と入れ子になっていることを特徴とする、請求項1に記載の光学構成要素。
【請求項3】
前記第2のタイプの前記入れ子式反共振要素(40)がそれぞれ、前記シース(23)の前記内側に接続されていることを特徴とする、請求項2に記載の光学構成要素。
【請求項4】
前記第2のタイプの前記入れ子式反共振要素(40)がそれぞれ、前記第1のタイプの前記弧状反共振要素(30)と接触していないことを特徴とする、請求項2又は3に記載の光学構成要素。
【請求項5】
前記第2のタイプの前記入れ子式反共振要素(40)が、いずれの場合も、前記構成要素の長手方向軸の前記方向に見て、断面が円形又は楕円形であることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項以上に記載の光学構成要素。
【請求項6】
少なくとも4つの前記第1のタイプの反共振要素(30)が、前記シースの前記内側(23)の周りに均等に分布し、隣接する前記第1のタイプの反共振要素(30)の前記弧端部が互いに接触していることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項以上に記載の光学構成要素。
【請求項7】
少なくとも4つの前記第1のタイプの反共振要素(30)が、前記シースの前記内側(23)の周りに均等に分布し、隣接する前記第1のタイプの反共振要素(30)の前記弧端部が互いに接触していないことを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項以上に記載の光学構成要素。
【請求項8】
第3のタイプの反共振要素(50)が設けられており、いずれの場合も、前記第3のタイプの少なくとも1つの反共振要素(50)が、隣接する前記第1のタイプの反共振要素(30)の間に配置され、前記反共振要素が、前記隣接する前記第1のタイプの反共振要素(30)及び前記シースの前記内側(23)に接続されていることを特徴とする、請求項7に記載の光学構成要素。
【請求項9】
前記第1のタイプの前記反共振要素(30)が、前記構成要素の長手方向軸の方向に見た断面において、内側弧(33b)及び入れ子式外側弧(33a)の形状に形成され、それぞれが左側円弧端部及び右側円弧端部を有し、前記中空コアに向かって膨らんでおり、前記入れ子式外側弧(33a)の前記左側弧端部及び前記内側弧(33b)の前記左側弧端部がそれぞれ互いに接続され、前記入れ子式外側弧(33a)の前記右側弧端部及び前記内側弧(33b)の前記右側弧端部がそれぞれ互いに接続されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項以上に記載の光学構成要素。
【請求項10】
構成要素の長手方向軸に沿って延在する中空コア(10)と、前記中空コア(10)に面する周方向内側(23)で前記中空コア(10)を取り囲むシース(20)と、反共振要素とを備える反共振光学構成要素(1、1A、2、2A、3、4)を製造する方法であって、
(a)スリーブ管(100)であって、前記スリーブ管(100)が、前記スリーブ管の内側ボア(101)及び前記スリーブ管の長手方向軸を備え、前記長手方向軸に沿って、内側(102)及び外側によって境界付けられたスリーブ管壁(103)が延在し、前記スリーブ管(100)が内径dを有する、スリーブ管(100)を提供するステップと、
(b)少なくとも1つの第1の反共振要素母管(ARE母管(200))を備える反共振要素プリフォームであって、前記第1の反共振要素母管(ARE母管(200))が、母管内側ボア(201)及び母管長手方向軸を備え、前記母管長手方向軸に沿って、内側及び外側によって境界付けられた母管壁が延在し、前記第1のARE母管(200)が内径DM1を有する、反共振要素プリフォームを提供するステップと、
(c)外径Dを有する支持管(300)を提供するステップであって、DM1+2D≦dであるステップと、
(d)前記スリーブ管(100)と、前記スリーブ管(100)に対して同軸に配置された前記第1のARE母管(200)と、前記スリーブ管(100)と前記第1のARE母管(200)との間の環状間隙内に平行軸を有して配置され、前記環状間隙の周囲に分布している複数の支持管(300)とを備える、円筒形アセンブリ(500)を形成するステップと、
(e)前記円筒形アセンブリ(500)を延伸して前記光学構成要素(1、1A、2、2A、3、4)を得るステップであって、減少圧力が前記支持管(300)内に生成され、増大圧力が前記第1のARE母管(200)内に生成されることにより、前記スリーブ管(100)が部分的にコラップスし、前記支持管(300)が少なくとも部分的にコラップスして、
・前記元のスリーブ管(100)の前記内側(102)と前記元の第1のARE母管(200)の前記外側との間の接触点(32)と、
・前記構成要素の長手方向軸の方向に見て断面がそれぞれ弧状設計であり、左側弧端部及び右側弧端部を有し、前記中空コア(10)に向かって膨らんでおり、前記弧端部が、接触点(32)で前記シースの前記内側(23)に接続され、前記シースの前記内側と共に、湾曲内部空間(35)を画定する湾曲面(31)を張っている、第1のタイプの弧状反共振要素(30)と、
を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
少なくとも4つの支持管(300)が、方法ステップ(d)に従って形成された前記円筒形アセンブリ(500)内の前記環状間隙内に均等に分布していることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも8つの支持管(300)が、方法ステップ(d)に従って形成された前記円筒形アセンブリ(500)内に対をなして配置され、前記支持管対が前記環状間隙内に均等に分布していることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記円筒形アセンブリ(500)が方法ステップ(d)に従って形成されるとき、前記支持管(300)の少なくとも一部が、前記母管の前記外側及び/又は前記スリーブ管の前記内側(102)に固定されることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項以上に記載の方法。
【請求項14】
方法ステップ(b)に従って提供される前記反共振要素プリフォームが、外径Dを有する複数の入れ子式毛細管(NE毛細管(400))であり、D<D<DM1であり、方法ステップ(d)に従って形成された前記円筒形アセンブリ(500)において、前記NE毛細管(400)が前記スリーブ管の前記内側(102)に固定され、支持管(300)の間の前記環状間隙内に平行な軸で配置され、方法ステップ(e)に従って前記円筒形アセンブリ(500)が延伸されると、前記NE毛細管(400)内に増大圧力が生成され、それにより、前記構成要素の長手方向軸の前記方向に見た前記断面において、いずれの場合も、少なくとも1つの前記第2のタイプの反共振要素(40)が、前記湾曲面によって境界付けられた湾曲内部空間(35)内に配置されているという意味で、前記第1のタイプの前記反共振要素(30)と入れ子になっている第2のタイプの反共振要素(40)がそこから形成されることを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項以上に記載の方法。
【請求項15】
方法ステップ(b)に従って提供される前記反共振要素プリフォームが、外径DM2を有する少なくとも1つの第2のARE母管(600)を備え、D<DM2<DM1であり、方法ステップ(d)に従って形成された前記円筒形アセンブリ(500)において、前記第2のARE母管(600)が、前記スリーブ管(100)及び前記第1のARE母管(200)に対して同軸に配置され、平行な軸で配置されかつ前記第1のARE母管(200)と前記第2のARE母管(600)との間の環状間隙内に分布した複数の中空支持要素(300)が設けられ、方法ステップ(e)による前記円筒形アセンブリ(500)の前記延伸中に、前記中空支持要素(300)内に減少圧力が生成され、前記第2のARE母管(600)内に増大圧力が生成され、それにより、前記中空支持要素(300)がコラップスして、
(a)前記元の第1のARE母管(200)の前記内側と前記元の第2のARE母管(600)の前記外側との間の接触点と、
(b)前記第1のタイプの弧状反共振要素(30)と、
を形成することを特徴とする、請求項10から14のいずれか一項以上に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反共振中空コアファイバ及び反共振中空コアファイバを線引きするためのプリフォームの分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、構成要素長手方向軸に沿って延在する中空コアと、中空コアに面する周方向内側で中空コアを取り囲むシースと、反共振要素とを備える反共振光学構成要素に関する。
【0003】
更に、本発明は、構成要素長手方向軸に沿って延在する中空コアと、中空コアに面する周方向内側で中空コアを取り囲むシースと、反共振要素とを備える反共振光学構成要素を製造する方法に関する。
【0004】
従来のシングルモード光ファイバは、中実材料製のコア領域を有し、コア領域は、より低い屈折率を有するガラス製のシース領域によって取り囲まれている。光誘導は、コア領域とシース領域との間の全反射に基づく。しかしながら、誘導された光と中実材料との相互作用は、データ伝送におけるレイテンシの増大及び高エネルギー放射に対する損傷閾値が比較的低いことに関連付けられる。
【0005】
対照的に、「反共振中空コアファイバ」(ARHCF)の場合、シース領域によって囲まれた中空コア領域が設けられ、その中にいわゆる「反共振要素」(略して「ARE」)が配置されている。中空コアの周りに均等に分布している反共振要素の壁は、反共振で動作するファブリーペロー空洞として作用することができ、この空洞は入射光を反射し、それを中空ファイバコアを通して誘導する。
【0006】
これらの中空コアファイバの潜在的な用途は、データ伝送、例えば材料加工のための高出力ビーム誘導、モーダルフィルタリング、特に紫外線波長範囲から赤外線波長範囲までのスーパーコンティニューム生成のための非線形光学の分野である。
【0007】
中空コアファイバにより、中空コア内に位置する媒体(気体又は液体)の精密な分光研究も可能になる。コア内を誘導される光は、検査対象となる媒体と大部分が重なり合うので、ppm範囲の濃度も検出することができる。更に、光原子時計、量子コンピュータ及び蛍光顕微鏡での使用も考慮される。
【背景技術】
【0008】
反共振中空コアファイバは、比較的大きな減衰を有することが多い。これは、高次モードが必ずしも抑制されるわけではないため、長い伝送長では排他的なシングルモードではないことが多く、出力ビームの品質が劣化するという事実に起因する。
【0009】
Francesco Polettiによる文献「Nested anti-resonant nodeless hollow core fiber」(Optics Express,Vol.22,No.20(2014);DOI:10.1364/OE 22.023807)には、反共振要素が単純な単一の構造要素として設計されているのではなく、いくつかの入れ子式構造要素で構成されているファイバ設計が提案されている。入れ子式反共振要素は、基本コアモードではなく高次コアモードが、シースモードに位相整合され、抑制されるように設計されている。その結果、基本コアモードの伝播が常に保証され、中空コアファイバは、制限された波長範囲にわたって効率的にシングルモードであることが可能である。
【0010】
効果的なモード抑制は、透過光の中心波長と、中空コアの半径及び反共振要素内の入れ子式リング構造の直径差などのファイバ設計の構造パラメータとに依存する。
【0011】
半径方向断面(中空コアファイバの長手方向軸の方向に見たとき)において、反共振構造要素は、一般に、円形又は楕円形の形状を有する。減衰損失を更に低減するために、最近では、中空コアが内側シース層によって囲まれ、その中に、円形又は楕円形とは異なる、例えば部分円(円弧、半円)若しくは部分楕円又はそれらから派生する構造を形成する反共振構造要素が配置された設計を有する反共振中空コアファイバが提案されている。
【0012】
したがって、例えば、Yang Chen、Mohammed F.Saleh、Nicolas Y.Joly及びFabio Biancalanaは、Optics Letters Vol.42、issue7、pp.1285-1288(2017);DOI:10.1364/OL.42.001285の論文「Low-loss single-mode negatively curved squarecore hollow fibers」で石英ガラス製の新規な反共振中空コアファイバを記載しており、このファイバでは、4つの眼状の中空シース領域が内管内に形成されており、中空コアの周りに均一に分布している。中空コアは、負に湾曲したほぼ正方形の形状を有する。
【0013】
中国特許出願公開第111474627号明細書から、中空コアがシースによって取り囲まれている反共振中空コアファイバが知られている。ファイバの長手方向軸の方向に見た断面において、ファイバは、中空コアに面する内側領域を有し、この内側領域の周りに、5つの閉じたかつ離間した構造要素が周方向に均一に分布している。各構造要素は、シースの内側に接続された更なる円形又は扇形の構造要素を含む空洞を形成する。
【0014】
英国特許出願公開第2583352号明細書は、内側方向に湾曲した弧状設計の反共振要素を有する反共振光中空コアファイバ用のプリフォームを開示しており、その弧端部は、接触点でスリーブ管の内側に接続され、スリーブ管の内側と共に、湾曲面にまたがっている。二重弧も記載されている。反共振要素を製造するために、異形ガラス管がスリーブ管に挿入される。異形材は、湾曲した長手方向部分に接続された直線状の長手方向部分を有する。直線状の長手方向部分は、スリーブ管壁に当接する。入れ子式の異形管の場合、内側異形管の直線状の長手方向部分は、外側異形管の直線状の長手方向部分に当接している。
【0015】
中国特許出願公開第110579836号明細書は、複数の共振層を有する中空コア光ファイバのためのプリフォームであって、スリーブ管と、弧状に内側に湾曲した第1のタイプの反共振要素と、長方形であり、バルジ内に配置された第2のタイプの反共振要素とを有するプリフォームを記載している。弧状及び長方形の反共振要素の端部は、スリーブ管の内壁に接続されている。反共振要素は、スリーブ管と共に、より低い屈折率を有する複数の異なる形状の空洞を形成する。製造は、「スタックアンドドロー法」に従って行われる。
【0016】
仏国特許出願公開第3006774号明細書は、小さい弧と大きい弧が交互になっている、負の曲率を有する弧の列を含む閉じた輪郭によって境界付けられた中空コア導波路を記載している。大きな弧の場合、比b=2Ra/Cは0.9より大きい(Ra=弦と弧との間の最大距離、C=弦の長さ)。ファイバは、円形断面を有する毛細管を製造し、配置し、延伸する、「スタックアンドドロー法」によって製造される。コアの輪郭は、レオロジー材料パラメータ、温度、及び線引き段階中の毛細管間の圧力差を最適化することによって達成される。更なる製造方法として、機械加工プロセスが挙げられる。
【0017】
技術的課題
Yang Chenらの上記論文によれば、負の曲率は、高次のコアモードとシースモードとの間の結合を可能にし、4つの角の領域のノードからモードフィールドを可能な限り除去することによって減衰損失を低減する。
【0018】
中国特許出願公開第111474627号明細書によれば、革新的な光ファイバ構造によって、反共振中空コアファイバの伝送損失が低減され、光損失が防止されるので、光ファイバは、低い伝送損失、更には0.1dB/km未満の超低伝送損失を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、両方の文献における減衰に関する情報又は仮定は、測定ではなくシミュレーションに基づいている。反共振中空コアファイバの製造方法は明記されていない。
【0020】
したがって、本発明の目的は、半径方向断面において中空コアを含み、その中空コアが内側シース層によって囲まれ、その中に円形状とは異なる反共振構造要素が配置される設計を有する、反共振中空コアファイバ又はそのためのプリフォームの形態の光学構成要素を提供することである。
【0021】
更に、本発明の目的は、そのような光学構成要素(反共振中空コアファイバ又は中空コアファイバを線引きするためのプリフォーム)を製造する方法を提供することである。
【0022】
反共振光学構成要素に関して、この目的は、構成要素長手方向軸に沿って延在する中空コアと、中空コアに面する周方向内側で中空コアを取り囲むシースと、第1のタイプの反共振要素とを有し、第1のタイプの反共振要素が、構成要素の長手方向軸の方向に見て断面がそれぞれ弧状設計であり、左側弧端部及び右側弧端部を有し、中空コアに向かって膨らんでおり、弧端部が、接触点でシースの内側に接続され、シースの内側と共に湾曲面を張っている本発明によって達成される。
【0023】
反共振光学構成要素(略して構成要素)は、反共振中空コアファイバ(略して中空コアファイバ)又は反共振中空コアファイバ用のプリフォーム(略してプリフォーム)である。その半径方向断面設計では、反共振要素の少なくとも一部が、閉じた円形又は楕円形ではなく、「弧状形」であり、2つの「自由」弧端部がシースの内側に取り付けられている(ただし、互いに接続されていない)ことを特徴とする。この設計は、通常の「円形又は楕円形設計」と言語的に区別するために、以下では「弧状設計」とも呼ばれる。
【0024】
第1のタイプの反共振要素は、断面が弧状設計であり、シースの内側と共に、中空コアに向かう膨らみを有する湾曲面を囲む。湾曲面は、弧頂点と弧端部の接続線とを通って延びるミラー軸に対して鏡面対称であり、弧端部の接続線は、検討中の断面においてシースの内側によって形成され、その半径を有する。湾曲面及びシースの内側は、非円形湾曲内部を画定する。
【0025】
湾曲部の数は、例えば4つであり、好ましくは5つから10の間であり、弧はシースの内側の周りに均等に分布している。
【0026】
「弧状設計」は、環状又は楕円形に閉じられた反共振要素を有する通常の「円形又は楕円形設計」と比較して減衰損失を低減するのに適している。
【0027】
この点に関する更なる改善は、第2のタイプの反共振要素が設けられている光学構成要素の好ましい実施形態をもたらし、構成要素の長手方向軸の方向に見た断面において、いずれの場合も、少なくとも1つの第2のタイプの反共振要素が湾曲面によって境界付けられた湾曲内部空間内に配置されるという意味で、第2のタイプの反共振要素は第1のタイプの反共振要素と入れ子になっている。第1及び第2のタイプの反共振要素は、同じ基本的な幾何学的形状(例えば、弧状)を有するか、又は異なる基本的な幾何学的形状(例えば、一方では弧状、又は他方では楕円形若しくは円形)を有する。いずれの場合も、第2のタイプの反共振要素は、設計における追加の自由度をもたらす。
【0028】
第2のタイプの入れ子式反共振要素がそれぞれシースの内側に接続されている場合、特に有利であることが判明している。
【0029】
「楕円設計」を有する中空コアファイバ又はプリフォームの場合、互いに入れ子になった複数の構造要素、例えば外側毛細管の内壁に融着された内側毛細管から構成される反共振要素が知られている。ファイバ線引きプロセスにおいて、この複合物は軟化及び延伸され、表面張力による毛細管の相互影響及び望ましくない変形が生じる可能性がある。第2のタイプの入れ子式反共振要素がシースの内側に接続され、第1のタイプの弧状反共振要素と接触しない場合、これらの変形は防止される。
【0030】
有利には、第2のタイプの入れ子式反共振要素は、いずれの場合も、構成要素の長手方向軸の方向に見て、断面が円形又は楕円形である。
【0031】
それらは、シース内を伝導される光モードへの高次コアモードの結合に寄与し、それによって、光モードは、基本コアモードのエネルギー及び伝搬の利益のために抑制される。
【0032】
光学構成要素の好ましい実施形態では、少なくとも4つの第1のタイプの反共振要素が、シースの内側の周りに均等に分布し、隣接する第1のタイプの反共振要素の弧端部は互いに接触している。
【0033】
隣接する第1のタイプの反共振要素の弧端部の接触により、簡単な方法でシースの内側を完全に覆うことが可能であり、したがって、反共振条件を損なう可能性がある正の凹曲率を有する反射面は、中空コアの方向から見て存在しない。
【0034】
光学構成要素の別の好ましい実施形態では、少なくとも4つの第1のタイプの反共振要素が、シースの内側の周りに均等に分布し、隣接する第1のタイプの反共振要素の弧端部は互いに接触していない。
【0035】
第1のタイプの反共振要素の重なりは、微細構造光ファイバの伝送特性と干渉し、したがって減衰損失をもたらす、いわゆる「ノード」につながる可能性がある。このようなノードは、互いに接触しない、隣接する第1のタイプの反共振要素の弧端部の接触点によって確実に防止される。
【0036】
シースの内側の凹部を完全に覆うために、この実施形態の好ましい発展形態では、第3のタイプの反共振要素が設けられており、第3のタイプの少なくとも1つの反共振要素は、いずれの場合も、隣接する第1のタイプの反共振要素の間に配置され、隣接する第1のタイプの反共振要素及びシースの内側に接続されている。
【0037】
中空コアの方向から見て、第3のタイプの反共振要素は、例えば、負の曲率を有する(凸状である)か、又は曲率を有さない(平面状、直線状である)。第1のタイプの反共振要素と共に、それらはシースの内側を完全に覆うので、この内側は反共振条件を損なわない。
【0038】
光学構成要素の更に好ましい実施形態では、第1のタイプの反共振要素は、構成要素の長手方向軸の方向に見た断面において、内側弧及び入れ子式外側弧の形状に形成され、それぞれが左側円弧端部及び右側円弧端部を有し、中空コアに向かって膨らんでおり、入れ子式外側弧の左側弧端部及び内側弧の左側弧端部はそれぞれ互いに接続され、入れ子式外側弧の右側弧端部及び内側弧の右側弧端部はそれぞれ互いに接続されている。
【0039】
半径方向断面で見ると、第1のタイプの反共振要素は、ここでは二重弧を形成し、入れ子式の外側弧は、いずれの場合も内側弧の湾曲内部空間内に配置されている。この考察において、二重弧の弧端部の共通接続線は、いずれの場合もシースの内側によって形成され、弧頂点は、光学構成要素の(構成要素の長手方向軸の)中心点から半径方向に延びる直線上に位置する。外側弧は、内側弧よりも小さい曲率(したがって、より大きい半径)を有する。
【0040】
隣接する二重弧の「自由」弧端部が互いに接触しているという事実により、シースの凸状内側は二重弧によって完全に覆われているので、この内側は反共振条件を損なわない。好ましくは、4~10の二重弧がシースの内側の周りに均等に分布している。
【0041】
反共振光学構成要素を製造する方法に関して、上記で更に特定された技術的目的は、本発明によれば、以下の方法ステップを含む方法によって達成される。
【0042】
(a)スリーブ管であって、スリーブ管が、スリーブ管の内側ボア及びスリーブ管の長手方向軸を備え、長手方向軸に沿って、内側及び外側によって境界付けられたスリーブ管壁が延在し、スリーブ管が内径dを有する、スリーブ管を提供するステップと、
(b)少なくとも1つの第1の反共振要素母管(ARE母管)を備える反共振要素プリフォームであって、第1の反共振要素母管(ARE母管)が、母管内側ボア及び母管長手方向軸を有し、母管長手方向軸に沿って、内側及び外側によって境界付けられた母管壁が延在し、第1のARE母管が内径DM1を有する、反共振要素プリフォームを提供するステップと、
(c)外径Dを有する支持管を提供するステップであって、DM1+2D≦dであるステップと、
(d)スリーブ管と、スリーブ管に対して同軸に配置された第1のARE母管と、スリーブ管と第1のARE母管との間の環状間隙内に平行軸を有して配置され、環状間隙の周囲に分布している複数の支持管とを備える、円筒形アセンブリを形成するステップと、
(e)円筒形アセンブリを延伸して光学構成要素を得るステップであって、減少圧力が支持管内に生成され、増大圧力が第1のARE母管内に生成されることにより、スリーブ管が部分的にコラップスし、支持管が少なくとも部分的にコラップスして、
・元のスリーブ管の内側と元の第1のARE母管の外側との間の接触点と、
・構成要素の長手方向軸の方向に見て断面がそれぞれ弧状設計であり、左側弧端部及び右側弧端部を有し、中空コアに向かって膨らんでおり、弧端部が、接触点でシースの内側に接続され、シースの内側と共に、湾曲面を張っている、第1のタイプの弧状反共振要素とを形成するステップ。
【0043】
円筒形構成要素、すなわちスリーブ管、少なくとも1つのARE母管、及び複数の支持管から、円筒形アセンブリの形態の半製品が製造され、この半製品では、構成要素が垂直配向で互いに緩く挿入され、それらの上端で保持されるか、又は全ての構成要素若しくは個々の構成要素が互いに接続されている。
【0044】
円筒形アセンブリを延伸してコラップスすることによって、プリフォームが得られるか、又は反共振中空コアファイバが得られる。両方の場合において、互いに接続された複数の弧状反共振要素が、少なくとも1つのARE母管から製造される。ARE母管は、第1の反共振要素を形成するように再成形される。支持管は、ARE母管の外側の所定の取付け点に配置され、これらの取付け点をスリーブ管の内側の所定の接触点に取り付けるという点で、再成形に寄与する。これは、以下の手段を含む取付け及び膨張プロセスによって行われる。
【0045】
(1)支持管は、スリーブ管と、スリーブ管に対して同軸に配置されたARE母管との間の環状間隙の周囲に、個々に又は対で均等に分布し、支持管は、円筒形アセンブリのコラップス前又はコラップス中に、ARE母管の外側の取付け点及びスリーブ管の接触点の両方と接触するか又は接触を受ける。その結果、隣接する支持管の間に、横方向に閉じた中空チャネルが、いずれの場合も環状間隙内に形成される。その境界は、ARE母管、スリーブ管及び両側の支持管によって形成される。
【0046】
(2)支持管は、円筒形アセンブリ自体のコラップス中に完全に又は部分的にコラップスされ、その初期体積は、その程度まで減少する。一般に、ほぼ完全に消失する、したがって、可能な限り薄い壁厚、例えば0.5mm未満の壁厚を有する支持管が好ましい。
【0047】
(3)円筒形アセンブリがコラップスすると、周囲圧力と比較して減少した圧力(負圧)が、ARE母管をスリーブ管の接触点に取り付ける役割を果たす支持管に印加される。
【0048】
(4)円筒形アセンブリがコラップスすると、周囲圧力と比較して増大した圧力(過圧)が中空チャネル内に印加され、その結果、ARE母管は、スリーブ管に固定された取付け点の間で変形し、弧状バルジが中空コアに向かって膨張する。各弧状バルジは、(元の)スリーブ管の内側の部分と共に、湾曲内部空間を画定する。
【0049】
このようにして製造された反共振中空コアファイバ(又はそのためのプリフォーム)において、元の支持管はこのように完全に又は部分的に消失し、元のARE母管は、複数の反共振要素を形成し、これらはそれぞれ、構成要素の長手方向軸の方向に見て、断面が弧状設計であり、左側弧端部及び右側弧端部を有し、中空コアに向かって膨らんでおり、弧端部は、シースの元の内側に固定され、シースの内側と共に湾曲面を張っている。
【0050】
本発明による方法は、「弧状設計」を有する上述の本発明による反共振光学構成要素を製造するのに適しており、出願人の知識に基づいて、「弧状設計」を有する反共振中空コアファイバ又は反共振中空コアファイバを線引きするためのプリフォームの製造を初めて可能にする。スリーブ管に加えて、この目的のための重要な出発要素は、少なくとも1つのARE母管及び複数の支持管である。
【0051】
好ましい手順では、少なくとも4つの支持管が、方法ステップ(d)に従って形成された円筒形アセンブリ内の環状間隙内に均等に分布している。
【0052】
この手順では、4つ以上の弧状バルジを有する光学構成要素を製造することができ、構成要素の隣接する弧状バルジは支持管を共有することができる。隣接する弧状バルジは、元の支持管上で互いに接続され、シースの内側を完全に覆う。
【0053】
別の好ましい手順では、少なくとも8つの支持管が、方法ステップ(d)に従って形成された円筒形アセンブリ内に対をなして配置され、支持管対は環状間隙内に均等に分布している。
【0054】
この手順では同じく、4つ以上の弧状バルジを有する光学構成要素を製造することができ、隣接する弧状バルジは支持管を共有しない。従って、隣接する弧状バルジの間には、元の支持管の間隔から生じる中間空間が残り得る。
【0055】
方法ステップ(d)による円筒形アセンブリの形成中、支持管の少なくとも一部が母管の外側又はスリーブ管の内側に固定されていると有利であることが判明している。
【0056】
固定は、円筒形アセンブリの延伸及びコラップス中に事前に行われるか、又はスリーブ管の上流のわずかなコラップス中に行われる。この事前組立てにより、円筒形アセンブリの組立てが容易になると共に、その寸法精度が向上する。
【0057】
特に有利な方法変形例は、方法ステップ(b)に従って提供される反共振要素プリフォームが、外径Dを有する複数の入れ子式毛細管(NE毛細管、NEは「入れ子式要素」を表す)であり、D<D<DM1であり、方法ステップ(d)に従って形成された円筒形アセンブリにおいて、NE毛細管がスリーブ管の内側に固定され、支持管の間の環状間隙内に平行な軸で配置され、方法ステップ(e)による円筒形アセンブリの延伸中、NE毛細管内に増大圧力が生成され、それにより、構成要素の長手方向軸の方向に見た断面において、いずれの場合も、少なくとも1つの第2のタイプの反共振要素が、湾曲面によって境界付けられた湾曲内部空間内に配置されているという意味で、第1のタイプの反共振要素と入れ子になっている第2のタイプの反共振要素がそこから形成されることを特徴とする。
【0058】
方法ステップ(e)による円筒形アセンブリの延伸中に、第2のタイプの反共振要素がNE毛細管から形成される。構成要素の長手方向軸の方向に見た断面において、これらは、いずれの場合も、第1のタイプの反共振要素によって張られる湾曲面によって境界付けられた湾曲内部空間内に配置される。NE毛細管の初期外径は、第1のARE母管の初期外径よりも小さい。
【0059】
NE毛細管は、支持管と同じ環状間隙内及びそれらの間に配置される。NE毛細管が取付け及び膨張プロセスを妨げないように、それらの外径は支持管の外径よりも小さい。
【0060】
方法ステップ(d)による円筒形アセンブリの形成中に、NE毛細管は、好ましくはスリーブ管の内側に固定される。固定は、円筒形アセンブリの延伸及びコラップス中に事前に行われるか、又はスリーブ管の上流のわずかなコラップス中に行われる。この事前組立てにより、円筒形アセンブリの組立てが容易になると共に、その寸法精度が向上する。
【0061】
円筒形アセンブリの延伸及びコラップス中に、周囲圧力に対して増大した圧力(過圧)がNE毛細管内に生成され、その結果、NE毛細管は膨張して第2のタイプの反共振要素を形成する。したがって、それらは実質的に(半径方向断面において)円形又は楕円形である。
【0062】
更なる有利な方法変形例では、方法ステップ(b)に従って提供される反共振要素プリフォームは、外径DM2を有する少なくとも1つの第2のARE母管を備え、D<DM2<DM1であり、方法ステップ(d)に従って形成された円筒形アセンブリにおいて、第2のARE母管が、スリーブ管及び第1のARE母管に対して同軸に配置され、平行な軸で配置されかつ第1のARE母管と第2のARE母管との間の環状間隙内に分布した、複数の中空支持要素が設けられ、方法ステップ(e)による円筒形アセンブリの延伸中に、中空支持要素内に減少圧力が生成され、第2のARE母管内に増大圧力が生成され、それにより、中空支持要素がコラップスして、
(a)元の第1のARE母管の内側と元の第2のARE母管の外側との間の接触点を形成し、
(b)第1のタイプの弧状反共振要素を形成する。
【0063】
第1のタイプの反共振要素は、第1のARE母管からだけでなく、第2のARE母管からも生成される。第1のARE母管及び第2のARE母管の同軸配置の結果として、(シースにより近い)第1のARE母管から生成された外側弧と、第2のARE母管から生成され、更にシースから除去された内側弧とが一緒になって二重弧を形成する。外側弧は内側弧内に入れ子になっており、したがって入れ子式構造要素(入れ子式要素)を形成する。頂点は、光学構成要素の中心点(構成要素長手方向軸)から半径方向外向きに延びる共通の直線上にある。内側弧は、外側弧よりも小さい曲率(したがって、より大きい半径)を有する。
【0064】
内側弧を生成するために、中空支持要素は、第1のARE母管と第2のARE母管との間の環状間隙内に個々に又は対で均等に分配される。中空支持要素は、上で説明した支持管に対応し、それらは同じ幾何形状(直径、壁厚)及び材料組成、又は異なる幾何形状及び材料組成を有することができる。
【0065】
方法ステップ(e)による円筒形アセンブリの延伸及びコラップス中に、周囲圧力に対して減少した圧力(負圧)が中空支持要素内に生成され、周囲圧力に対して増大した圧力(過圧)が第2のARE母管内に生成される。コラップスすると、中空支持要素は、「支持管」について上述した取付け及び膨張プロセスを使用して、第2のARE母管の所定の取付け点を第1のARE母管の内側の所定の接触点に接着する。二重弧を形成するために、取付け点は、第1のARE母管及び第2のARE母管における共通の直線上に対になって存在し、この直線は、光学構成要素の中心点(構成要素長手方向軸)から半径方向に延びる。したがって、支持要素又は「支持管」もこれらの線上に配置される。
【0066】
測定方法及び定義
上記の説明の個々の方法ステップ及び用語は、以下で更に定義される。定義は、本発明の説明の一部を形成する。以下の定義のうちの1つと残りの説明との間に実質的な矛盾がある場合には、説明の残りの部分においてなされた記述が優先される。
【0067】
反共振要素
反共振要素は、中空コアファイバの単純な構造要素であっても、又は入れ子式の構造要素であってもよい。反共振要素は、中空コアの方向から見て、負の曲率を有する(凸状である)又は曲率を有さない(平面状、直線状である)、少なくとも1つの壁を有する。反共振要素は、一般に、動作光に対して透明な材料、例えば、ガラス、特にドープされたSiO又はドープされていないSiO、プラスチック、特にポリマー、複合材料又は結晶材料からなる。
【0068】
反共振要素用プリフォーム
反共振要素プリフォームと呼ばれるものは、ファイバ線引きプロセス中の単純な伸長によって、中空コアファイバ内で実質的に反共振要素に形成されるプリフォームの構成要素、又は、構成成分である。入れ子式反共振要素プリフォームは、中空コアファイバ内で入れ子式反共振要素を形成する。入れ子式反共振要素は、ARE外管と、ARE外管の内側ボア内に配置されている少なくとも1つの更なる構造要素とで構成される。更なる構造要素は、外管の内面に接している更なる管とすることができる。更なる管は、「入れ子式要素(nested element)」若しくは略して「NE内管」、「NE毛細管」と呼ばれ、又は「入れ子式NE内管」とも呼ばれる。
【0069】
多重入れ子式反共振要素プリフォームの場合、少なくとも1つの更なる構造要素、例えば、入れ子式NE内管の内側シース面に当接している第3の管を、NE内管の内側ボア内に配置することができる。多重入れ子式反共振要素プリフォームが存在する場合、ARE外管内に配置される複数の管を区別するために、該当する場合には、「外側NE内管」と「内側NE内管」とを区別することができる。
【0070】
円筒形の反共振要素プリフォーム、それらの円筒形の構造要素及び毛細管半製品に関連して、「断面」という用語は、常に、円筒形のそれぞれの長手方向軸に垂直な断面を指し、すなわち、別段の指示がない限り、管状の構成要素の外部輪郭の断面(内部輪郭の断面ではない)を指す。
【0071】
一次プリフォームの更なる処理、特に熱間成形ステップによる更なる処理は、中間製品をもたらすことができ、中間製品では、元の反共振要素プリフォームは、元の形状と比較して変化した形状で存在する。本明細書では、修正された形状は、反共振要素プリフォームとも呼ばれる。
【0072】
プリフォーム/一次プリフォーム/二次プリフォーム/コアプリフォーム(ケーン)
プリフォームは、反共振中空コアファイバがそこから線引きされる構成要素である。プリフォームは、一次プリフォーム、又は一次プリフォームの更なる加工によって製造される二次プリフォームである。一次プリフォームは、少なくとも1つのスリーブ管と、その内部に緩く収容されている又はしっかりと固定されている、反共振要素のためのプリフォーム又は前駆体とからなるアセンブリとして存在することができる。中空コアファイバがそこから線引きされる二次プリフォームへの一次プリフォームの更なる処理は、以下の熱間成形プロセス、すなわち、
(i)延伸、
(ii)コラップス、
(iii)コラップス及び同時延伸、
(iv)追加のシース材料のコラップス、
(v)追加のシース材料のコラップス及びその後の延伸、
(vi)追加のシース材料のコラップス及び同時延伸
のうちの1つ以上の1回の実行又は反復実行を含むことができる。
【0073】
一次プリフォームをコラップス及び/又は延伸することによって得られ、したがって二次プリフォームの定義に入るプリフォームは、文献ではコアプリフォーム(ケーン)と呼ばれる。典型的には、ケーンは、中空コアファイバの線引き前又は線引き中、追加のシース材料で被覆される。
【0074】
延伸/コラップス
延伸中、一次プリフォームは熱伸長される。伸長は、同時にコラップスすることなく行うことができる。縮尺通りに延伸を行うことができ、それにより、例えば、一次プリフォームの構成要素又は構成成分の形状及び配置が、伸長され延伸された最終製品に反映される。しかしながら、延伸中、一次プリフォームは、縮尺通りに線引きされないことがあり、その幾何学形状が変化させられることがある。
【0075】
コラップス中に、内側ボアは狭くなり、又は、管状の構成要素の間の環状間隙が閉じる若しくは狭くなる。一般に、コラップスは延伸によって生じる。
【0076】
中空コア/内側シース領域/外側シース領域
本明細書では、少なくとも1つのスリーブ管と、その内部に緩く収容されている又はしっかりと固定されているAREプリフォームとを備えるアセンブリは、「一次プリフォーム」とも呼ばれる。一次プリフォームは、中空コアとシース領域とを備える。このシース領域は、例えばアセンブリ上へとコラップスすることによって製造された「外側シース領域」も存在する場合、及び当該シース領域を区別すべき場合、「内側シース領域」とも呼ばれる。「内側シース領域」及び「外側シース領域」という用語は、中空コアファイバにおける対応する領域、又は一次プリフォームの更なる処理によって得られる中間製品における対応する領域についても使用される。
【0077】
「管の内側」という表記は、「管の内面」の同義語としても使用され、「管の外側」という表記は、「管の外面」の同義語としても使用される。管に関連する「内側ボア」という用語は、内側ボアがドリル加工プロセスによって製造されたことを意味するものではない。
【0078】
例示的な実施形態
以下の例示的な実施形態及び図面を参照して本発明をより詳細に説明する。以下を概略図で詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1図1は、本発明による異なる「弧状設計」を有する反共振中空コアファイバ又はそのプリフォームの断面図である。
図2図2は、図1の設計1の第1の変形を有する反共振中空コアファイバを製造するための方法ステップを示す図である。
図3図3は、図1の設計2による反共振中空コアファイバを製造するための方法ステップを示す図である。
図4図4は、図1の設計2Aによる反共振中空コアファイバを製造するための方法ステップを示す図である。
図5図5は、図1の設計1の第2の変形を有する反共振中空コアファイバを製造するための方法ステップを示す図である。
図6図6は、図1の設計4による反共振中空コアファイバを製造するための方法ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図1に概略的に示されている設計1、1A、2、2A、3、4は、反共振中空コアファイバと、中空コアファイバを線引きすることができるプリフォームとで同一である。全ての設計1、1A、2、2A、3、4は、中空コア10と、壁21、外側22及び内側23を有するスリーブ管20と、中空コア10から見て負の(凸状である)曲率を有し、その弧の2つの端部がシースの内側23の取付け点32に取り付けられ、それぞれがスリーブ管の内側の一部と共に湾曲内部空間35を画定する、湾曲面31を有する弧状反共振要素30と、を有する。
【0081】
設計1、1A、2、2Aでは、丸い断面を有する内側の入れ子式反共振要素40が、湾曲内部空間内に配置され、シースの内側23に接続されている。
【0082】
設計1及び1Aでは、弧状反共振要素30は互いに接続されており、隣接する弧は取付け点32を共有している。図1(a)の設計1では、円形断面を有する単一の入れ子式反共振要素40が、各湾曲内部空間35内に配置されている。図1(b)の設計1Aでは、円形断面を有する入れ子式反共振要素40が、各湾曲内部空間35内に対で配置されている。
【0083】
設計2及び2Aでは、弧状反共振要素30は互いに接続されていない。各弧状反共振要素30は、2つの取付け点32を有し、そこでシースの内側23に固定されている。円形断面を有する単一の入れ子式反共振要素40が、各湾曲内部空間35内に配置されている。図1(c)の設計2では、シースの内側23の自由ストリップが、隣接する弧状反共振要素30の間に延在している。図1(d)の設計2Aでは、負の曲率を有する更なる反共振要素50が、隣接する弧状反共振要素30の間に配置され、シースの内側23の自由ストリップを完全に覆っている。
【0084】
設計3及び4は、互いに接続された弧状反共振要素30のみを含み、隣接する弧は取付け点32を共有している。
【0085】
図1(e)に示される設計3は、単純な弧状反共振要素30を有する。図1(f)に示す設計4は、二重弧33a、33bとして設計された弧状反共振要素30を有する。二重弧33a、33bは、異なる半径と共通の取付け点32とを有する。それらの弧頂点34a、34bは、それぞれ同じ半径方向線上に位置する。シース20に近い外側弧33bは、内側弧33aに入れ子になっている。
【0086】
設計1、2、2A及び4の製造を、図2図4を参照して以下に説明する。
【0087】
図2は、設計1による反共振中空コアファイバの製造のための第1の変形例を概略的に示す図である。この目的のために、以下の円筒形構成要素が設けられる。
【0088】
(i)石英ガラス製の厚肉のスリーブ管100(「ジャケット管」)であって、スリーブ管100が、スリーブ管の内側ボア101と、スリーブ管の長手方向軸とを備え、スリーブ管の内側102及び外側によって境界付けられたスリーブ管壁103が、スリーブ管の長手方向軸に沿って延在する、スリーブ管100。スリーブ管100の内径dは25mm、外径は90mmである。
【0089】
(ii)石英ガラス製の反共振要素母管200(ARE母管)であって、反共振要素母管200が、母管内側ボア201と、母管長手方向軸とを有し、内側と外側とによって境界付けられた母管壁が、母管長手方向軸に沿って延在する、反共振要素母管200。ARE母管の外径DM1は20mmである。
【0090】
(iii)それぞれの外径Dが2.5mm、壁厚が0.15mmである、石英ガラス製の構造的に同一の6つの支持管300。
【0091】
(iv)また、それぞれの外径Dが2.2mm、壁厚が0.35mmである、石英ガラス製の構造的に同一の6つの毛細管400。
【0092】
これらの円筒形構成要素(100、200、300、400)が接合されて、構成要素アセンブリ500を形成する。この目的のために、6つの支持管300は、全ての管(200、300)の長手方向軸が互いに平行に延在し、支持管300がARE母管200の外側の周りに均等に(60度の角度で)分布するように、ARE母管200の外側の所定の取付け点204で熱的に固定される。
【0093】
加えて、6つの毛細管400は、全ての管(100、400)の長手方向軸が互いに平行であり、毛細管400がスリーブ管100の内側の周りに均等に(60度の角度で)分布するように、スリーブ管100の内側に熱的に固定される。
【0094】
ARE母管200と支持管300との接合組合せは、支持管300と毛細管400との間に同じ周囲距離(30度の角度)が確立されるように、スリーブ管100と毛細管400との他方の接合組合せの内側ボア101に挿入される。したがって、支持管300は、いずれの場合も、隣接する毛細管400の間の中央に配置される。位置合せの後、まだ緩んでいる構成要素は、それらの位置を固定するために接着化合物で互いに接合される。
【0095】
アセンブリ500は、一次プリフォームを形成し、その後延伸されて二次プリフォーム(しばしば「ケーン」とも呼ばれる)を形成する。スリーブ管100が部分的にコラップスし、その内側102が支持管300と接触し、支持管がスリーブ管の内側102に融着される。その後、支持管300は、その全長にわたって、スリーブ管の内側102(軸方向接触点104に沿って)及びARE母管200の外側(軸方向取付け点204に沿って)の両方に融着される。したがって、隣接する支持管300の間に横方向に閉じた中空チャネルが形成され、このチャネルを通って単一の毛細管400が延在する。
【0096】
その後のファイバ線引きプロセスで、二次プリフォームは、垂直配向でゾーンごとに軟化され、それによって更に延伸され、コラップスされる。ここでは、(延伸された)支持管300内に減少圧力が生成され、一方、(延伸された)毛細管400及び中空チャネル内に増大圧力が生成される。減少圧力又は増大圧力の生成は、二次プリフォームの上端にガス又は真空ラインを接続することによって生じる。ガス圧又は真空の影響を受けない領域も閉鎖することができる。増加圧力又は減少圧力は、それぞれの周囲領域に対する差圧である。
【0097】
ファイバ線引きプロセス中、6つの支持管300は完全にコラップスし、それによってARE母管200上の取付け点204がスリーブ管100上の接触点104に対して引っ張られる。コラップスされた支持管300の残りの部分は、接触点104で小さなガラスゴブを形成する。同時に、増大圧力によって6つの中空チャネル及び6つの毛細管400が膨張する。その結果、第1のタイプの弧状反共振要素30が6つ、元のARE母管200から形成され、それぞれ隣接する弧状反共振要素30との接触点を有する。そして、元の毛細管400は、第2のタイプの入れ子式反共振要素40を形成する。
【0098】
このようにして製造された反共振中空コアファイバ1において、元の支持管(300)はこのように消失し、元のARE母管(200)は、6つの第1のタイプの反共振要素30を形成し、これらはそれぞれ、ファイバの長手方向軸の方向に見て、断面が弧状設計であり、左側弧端部及び右側弧端部を有し、中空コア10に向かって膨らんでおり、隣接する反共振要素の弧端部は、元のシース内側(23)の同じ軸方向接触点104に固定されている。元の毛細管(400)は、第1のタイプの反共振要素30によって囲まれた空間内に、第2のタイプの入れ子式反共振要素40として配置される。
【0099】
図3は、設計2による反共振中空コアファイバを製造するための方法の順序を概略的に示す図である。以下では、図2による設計1の製造と比較した方法の違いのみを説明する。
【0100】
・6つではなく、石英ガラス製の構造的に同一の、12の支持管300a、330bが使用される。
【0101】
・12の支持管300a、300bは、ARE母管200の外側の所定の取付け点204a、204bで対になって熱的に固定される。取付け点204a、204bの対は互いに近接しており、そこに固定された支持管300a、300b間の開放距離は、約1mmである。対になった配置とは別に、支持管300a、300bは、ARE母管200の外側の周りに均等に分布している。
【0102】
・アセンブリ500の二次プリフォームへの延伸中に、スリーブ管100が部分的にコラップスし、その内側102が支持管300a、300bと接触し、スリーブ管の内側102に融着される。支持管300a、300bは、その後、その全長にわたって、スリーブ管の内側102(軸方向接触点104a、104bに沿って)及びARE母管200の外側(軸方向取付け点204a、204bに沿って)の両方に融着される。したがって、密接に隣接する支持管対300a、300bの間に、横方向に閉じた狭い中空チャネルが形成される。互いに更に離れて配置された隣接する支持管300a、300bの間には、更なる中空チャネルが形成される。毛細管400は、広い中空チャネルの各々を通って延在する。
【0103】
・ファイバ線引きプロセスでは、狭い中空チャネル内に減少圧力が生成され、一方、(延伸された)毛細管400内及び広い中空チャネル内に増大圧力が生成される。12の支持管300a、300bは完全にコラップスし、それによって、ARE母管200上にある取付け点204a、204bを、スリーブ管100上の接触点104a、104bに対して引っ張る。狭い中空チャネルもコラップスする。同時に、増大圧力によって6つの広い中空チャネル及び6つの毛細管400が膨張する。これにより、元のARE母管200から、互いに接続されていない、6つの第1のタイプの弧状反共振要素30が形成される。元の毛細管400は、第2のタイプの入れ子式反共振要素40を形成する。
【0104】
このようにして製造された反共振中空コアファイバ2において、元の支持管はこのように消失し、元のARE母管は、6つの第1のタイプの反共振要素30を形成し、これらはそれぞれ、ファイバの長手方向軸の方向に見て、断面が弧状設計であり、左側弧端部及び右側弧端部を有し、中空コア10に向かって膨らんでおり、隣接する第1のタイプの反共振要素の弧端部は、元のシースの内側の隣接する軸方向接触点104a、104bに固定されており、互いに接続されていない。
【0105】
図4は、設計2Aによる中空コアファイバを製造するための方法の順序を概略的に示す図である。以下では、設計2の製造と比較した方法の違いのみを説明する。
【0106】
・ファイバ線引きプロセスにおいて、増大圧力が狭い中空チャネル内に生成され、その結果、それらは完全にコラップスするのではなく、中空コア10の方向に膨張し、負の曲率を有する反共振ブリッジ要素50(第3のタイプの反共振要素)を形成する。
【0107】
このようにして製造された反共振中空コアファイバ2Aでは、元の支持管(300)は消失し、弧端部の接触点104a、104bの領域に小さなガラスゴブを部分的に形成し、それらの間に配置されたブリッジ要素50を形成する。元のARE母管(200)は、6つの第1のタイプの反共振要素を形成し、これらはそれぞれ、ファイバの長手方向軸の方向に見て、断面が弧状設計であり、左側弧端部及び右側弧端部を有し、中空コア10に向かって膨らんでおり、隣接する反共振要素の弧端部は、元のシースの内側の隣接する軸方向接触点104a、104bで固定されており、互いに接続されていない。隣接する接触点104a、104bの間の領域は、ブリッジ要素50によって充填されている。それぞれの密接に隣接する支持管(300a、300b)の間の元の狭い空洞は、第3のタイプの反共振要素を形成し、これは入れ子にはされていないが、代わりにシースの内側23の周りに、第1のタイプの反共振要素30と交互に均一に分布している。
【0108】
図5は、設計1による反共振中空コアファイバの製造のための第2の変形例を概略的に示す図である。以下では、図2による設計1の製造と比較した方法の違いのみを説明する。
【0109】
・6つの支持管300は、ARE母管の取付け点204には接合されておらず、スリーブ管100の内側102上の所定の接触点104に接合されている。これらはスリーブ管内側102の周りに均等に(60度の角度で)分布しており、そこに同様に接合された6つの毛細管400と交互に配置され、支持管300は隣接する毛細管400の間の中央に配置されている。
【0110】
・ARE母管200は、スリーブ管100、支持管300、及び毛細管400の接合組合せの内側ボア101に挿入され、アセンブリ500を形成する。位置合せの後、これらの構成要素は接着化合物で互いに接続され、その位置に固定される。
【0111】
・アセンブリ500は延伸されて二次プリフォームを形成する。スリーブ管100が部分的にコラップスし、その結果、スリーブ管100に固定された支持管300は、ARE母管200の外側の取付け点204と接触し、そこでARE母管200と融着される。その後、支持管300は、その全長にわたって、スリーブ管の内側102(軸方向接触点104に沿って)及びARE母管200の外側(軸方向取付け点204に沿って)の両方に融着される。
【0112】
ファイバ線引きプロセスにおいて、6つの第1のタイプの反共振要素30がARE母管(200)の再成形によって形成され、それぞれ、長手方向軸の方向に見て、断面が弧状設計であり、左側弧端部及び右側弧端部を有し、中空コア10に向かって膨らんでおり、隣接する第1のタイプの反共振要素30の弧端部は、元のシースの内側の同じ軸方向接触点104に固定されている。元の毛細管400は、第2のタイプの入れ子式反共振要素40を形成する。
【0113】
図6は、設計4による反共振中空コアファイバを製造するための方法の順序を概略的に示す図である。この目的のために、以下の円筒形構成要素が設けられる。
【0114】
(i)石英ガラス製の厚肉のスリーブ管100(「ジャケット管」)であって、スリーブ管100が、スリーブ管の内側ボア101と、スリーブ管の長手方向軸とを備え、スリーブ管の内側102及び外側によって境界付けられたスリーブ管壁103が、スリーブ管の長手方向軸に沿って延在する、スリーブ管100。スリーブ管100の内径dは25mm、外径は90mmである。
【0115】
(ii)石英ガラス製の第1の外側反共振要素母管200(中空コアから離れた第1のARE母管)であって、外側反共振要素母管200が、母管内側ボア201と、母管長手方向軸とを有し、内側と外側とによって境界付けられた母管壁が、母管長手方向軸に沿って延在する、第1の外側反共振要素母管200。第1の外側ARE母管200の外径は20mm、内径は19mmである。
【0116】
(iii)石英ガラス製の第2の内側反共振要素母管600(中空コアに近い第2のARE母管)であって、反共振要素母管600が、母管内側ボア601と、母管長手方向軸とを有し、内側と外側とによって境界付けられた母管壁が、母管長手方向軸に沿って延在する、第2の内側反共振要素母管600。第2の内側ARE母管600の外径は14mm、内径は12.5mmである。
【0117】
(iv)それぞれの外径が2.5mm、壁厚が0.35mmである、石英ガラス製の構造的に同一の12の支持管300。
【0118】
これらの円筒形構成要素(100、200、300、600)が接合されて、構成要素アセンブリ500を形成する。この目的のために、6つの支持管300が、全ての管(200、600、300)の長手方向軸が互いに平行に走り、支持管300がARE母管200、600の外側の周りに均等に(60度の角度で)分布するように、第1のARE母管200の外側の所定の取付け点204及び第2のARE母管600の外側の所定の取付け点604でそれぞれ熱的に固定される。
【0119】
第1のARE母管200と6つの支持管300との第1の接合組合せ、及び第2のARE母管600と6つの更なる支持管300との第2の接合組合せは、スリーブ管の内側102上の所定の接触点104も位置する共通の半径方向線上に第1及び第2のARE母管(200、600)の支持管300が対で位置するように、スリーブ管100の内側ボア101内に挿入される。
【0120】
アセンブリ500は、一次プリフォームを形成し、その後延伸されて二次プリフォーム(「ケーン」)を形成する。スリーブ管100が部分的にコラップスし、その内側102が第1の接合組合せの支持管300と接触し、スリーブ管の内側102に融着される。更に、第1の外側ARE母管200が部分的にコラップスし、その内側が第2の接合組合せの支持管300と接触し、これらの支持管が第1のARE母管200の内側に融着される。
【0121】
その後、全ての支持管300は、それらの全長にわたって、スリーブ管の内側102(軸方向接触点104に沿って)及びそのそれぞれのARE母管200、600の外側(元の軸方向取付け点204、604に沿って)の両方に融着される。したがって、横方向に閉じた中空チャネル502a、502bは、隣接する支持管300の間、すなわち2つの隣接する同軸列501a、501b内、つまり全体で2×6の中空チャネル内に形成される。
【0122】
その後のファイバ線引きプロセスで、二次プリフォームは、垂直配向でゾーンごとに軟化され、それによって更に延伸され、コラップスされる。(延伸された)支持管300内に減少圧力が生成され、一方、中空チャネル502a、502b内に増大圧力が生成される。減少圧力又は増大圧力は、二次プリフォーム500の上端にガス又は真空ラインを接続することによって生成される。ガス圧又は真空の影響を受けない領域も端面で閉鎖されてもよい。
【0123】
ファイバ線引きプロセス中、12の支持管300は完全にコラップスし、それによってARE母管200、600上の取付け点204、604を、スリーブ管100上の接触点104に対して、又はこれらの接触点104の方向に引っ張る。それと同時に、12の中空チャネル502a、502bは、増大圧力によって膨張する。その結果、二重弧33a、33bとして設計された6つの相互接続された弧状反共振要素30の2つの列が、元のARE母管200、600から形成される。二重弧33a、33bは、異なる半径と、ファイバシース上の共通の取付け点32とを有する。それらの弧頂点及びそれぞれの取付け点32は、同じ半径方向線上にある。内側弧33bの曲率半径は約19μmであり、外側弧33aの曲率半径は約33μmである。
【0124】
このようにして製造された反共振中空コアファイバ4では、元の支持管(300)が消失し、2つの元のARE母管(200、600)が、同軸上に2列に並んだ二重弧33a、33bとしてシースの内側23の周りに均等に分布した12の反共振要素を形成する。二重弧33aはそれぞれ、共通の左側弧端部及び共通の右側弧端部を有し、隣接する反共振要素の弧端部は、シースの内側23の同じ軸方向接触点32に固定されている。
【0125】
上述した例示的な実施形態では、反共振中空コアファイバの全ての構成成分は、ドープされていない石英ガラスからなる。本発明はまた、他の材料、特に動作波長に対して透明な他のガラス又はプラスチックで作られた構成成分を用いて容易に実行可能である。例えば、ドーパントを添加することによって、石英ガラスの粘度を低下又は増加させることができる。石英ガラスの粘度を低下させるために使用されるドーパントは、好ましくはフッ素、塩素及び/又は水酸基である。石英ガラスの粘度を増加させるドーパントとして、Al、TiO及び/又は窒素が考慮される。ファイバ線引きプロセス中の熱応力又はその複雑さに応じて、個々のファイバ構成成分は、石英ガラスの粘度を低下させるか又は石英ガラスの粘度を増加させるドーパントを含有してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反共振光学構成要素(1,1A,2,2A,3,4)であって、構成要素長手方向軸に沿って延在する中空コア(10)と、前記中空コア(10)に面する周方向内側(23)で前記中空コア(10)を取り囲むシース(20)と、第1のタイプの反共振要素(30)とを備え、前記第1のタイプの反共振要素(30)の各々が、前記構成要素の前記長手方向軸の方向に見て断面がそれぞれ弧状設計であり、左側弧端部及び右側弧端部を有し、前記中空コア(10)に向かって膨らんでおり、前記弧端部が、接触点(32)で前記シースの前記内側(23)に接続され、前記シースの前記内側と共に湾曲面(31)を張っている、反共振光学構成要素。
【請求項2】
第2のタイプの反共振要素(40)が設けられており、前記構成要素の長手方向軸の前記方向に見た前記断面において、少なくとも1つの前記第2のタイプの反共振要素(40)が前記湾曲面によって境界付けられた湾曲内部空間(35)内に配置されるという意味で、前記第2のタイプの反共振要素(40)が前記第1のタイプの反共振要素(30)と入れ子になっていることを特徴とする、請求項1に記載の光学構成要素。
【請求項3】
前記第2のタイプの前記入れ子式反共振要素(40)がそれぞれ、前記シース(23)の前記内側に接続されていることを特徴とする、請求項2に記載の光学構成要素。
【請求項4】
前記第2のタイプの前記入れ子式反共振要素(40)がそれぞれ、前記第1のタイプの前記弧状反共振要素(30)と接触していないことを特徴とする、請求項2又は3に記載の光学構成要素。
【請求項5】
前記第2のタイプの前記入れ子式反共振要素(40)が、いずれの場合も、前記構成要素の長手方向軸の前記方向に見て、断面が円形又は楕円形であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の光学構成要素。
【請求項6】
少なくとも4つの前記第1のタイプの反共振要素(30)が、前記シースの前記内側(23)の周りに均等に分布し、隣接する前記第1のタイプの反共振要素(30)の前記弧端部が互いに接触していることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の光学構成要素。
【請求項7】
少なくとも4つの前記第1のタイプの反共振要素(30)が、前記シースの前記内側(23)の周りに均等に分布し、隣接する前記第1のタイプの反共振要素(30)の前記弧端部が互いに接触していないことを特徴とする、請求項2又は3に記載の光学構成要素。
【請求項8】
第3のタイプの反共振要素(50)が設けられており、いずれの場合も、前記第3のタイプの少なくとも1つの反共振要素(50)が、隣接する前記第1のタイプの反共振要素(30)の間に配置され、前記反共振要素が、前記隣接する前記第1のタイプの反共振要素(30)及び前記シースの前記内側(23)に接続されていることを特徴とする、請求項7に記載の光学構成要素。
【請求項9】
前記第1のタイプの前記反共振要素(30)が、前記構成要素の長手方向軸の方向に見た断面において、内側弧(33b)及び入れ子式外側弧(33a)の形状に形成され、それぞれが左側円弧端部及び右側円弧端部を有し、前記中空コアに向かって膨らんでおり、前記入れ子式外側弧(33a)の前記左側弧端部及び前記内側弧(33b)の前記左側弧端部がそれぞれ互いに接続され、前記入れ子式外側弧(33a)の前記右側弧端部及び前記内側弧(33b)の前記右側弧端部がそれぞれ互いに接続されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の光学構成要素。
【請求項10】
構成要素の長手方向軸に沿って延在する中空コア(10)と、前記中空コア(10)に面する周方向内側(23)で前記中空コア(10)を取り囲むシース(20)と、反共振要素とを備える反共振光学構成要素(1、1A、2、2A、3、4)を製造する方法であって、
(a)スリーブ管(100)であって、前記スリーブ管(100)が、前記スリーブ管の内側ボア(101)及び前記スリーブ管の長手方向軸を備え、前記長手方向軸に沿って、内側(102)及び外側によって境界付けられたスリーブ管壁(103)が延在し、前記スリーブ管(100)が内径dを有する、スリーブ管(100)を提供するステップと、
(b)少なくとも1つの第1の反共振要素母管(ARE母管(200))を備える反共振要素プリフォームであって、前記第1の反共振要素母管(ARE母管(200))が、母管内側ボア(201)及び母管長手方向軸を備え、前記母管長手方向軸に沿って、内側及び外側によって境界付けられた母管壁が延在し、前記第1のARE母管(200)が内径DM1を有する、反共振要素プリフォームを提供するステップと、
(c)外径Dを有する支持管(300)を提供するステップであって、DM1+2D≦dであるステップと、
(d)前記スリーブ管(100)と、前記スリーブ管(100)に対して同軸に配置された前記第1のARE母管(200)と、前記スリーブ管(100)と前記第1のARE母管(200)との間の環状間隙内に平行軸を有して配置され、前記環状間隙の周囲に分布している複数の支持管(300)とを備える、円筒形アセンブリ(500)を形成するステップと、
(e)前記円筒形アセンブリ(500)を延伸して前記光学構成要素(1、1A、2、2A、3、4)を得るステップであって、減少圧力が前記支持管(300)内に生成され、増大圧力が前記第1のARE母管(200)内に生成されることにより、前記スリーブ管(100)が部分的にコラップスし、前記支持管(300)が少なくとも部分的にコラップスして、
・前記元のスリーブ管(100)の前記内側(102)と前記元の第1のARE母管(200)の前記外側との間の接触点(32)と、
・前記構成要素の長手方向軸の方向に見て断面がそれぞれ弧状設計であり、左側弧端部及び右側弧端部を有し、前記中空コア(10)に向かって膨らんでおり、前記弧端部が、接触点(32)で前記シースの前記内側(23)に接続され、前記シースの前記内側と共に、湾曲内部空間(35)を画定する湾曲面(31)を張っている、第1のタイプの弧状反共振要素(30)と、
を形成するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
少なくとも4つの支持管(300)が、方法ステップ(d)に従って形成された前記円筒形アセンブリ(500)内の前記環状間隙内に均等に分布していることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも8つの支持管(300)が、方法ステップ(d)に従って形成された前記円筒形アセンブリ(500)内に対をなして配置され、前記支持管対が前記環状間隙内に均等に分布していることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記円筒形アセンブリ(500)が方法ステップ(d)に従って形成されるとき、前記支持管(300)の少なくとも一部が、前記母管の前記外側及び/又は前記スリーブ管の前記内側(102)に固定されることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
方法ステップ(b)に従って提供される前記反共振要素プリフォームが、外径Dを有する複数の入れ子式毛細管(NE毛細管(400))であり、D<D<DM1であり、方法ステップ(d)に従って形成された前記円筒形アセンブリ(500)において、前記NE毛細管(400)が前記スリーブ管の前記内側(102)に固定され、支持管(300)の間の前記環状間隙内に平行な軸で配置され、方法ステップ(e)に従って前記円筒形アセンブリ(500)が延伸されると、前記NE毛細管(400)内に増大圧力が生成され、それにより、前記構成要素の長手方向軸の前記方向に見た前記断面において、いずれの場合も、少なくとも1つの前記第2のタイプの反共振要素(40)が、前記湾曲面によって境界付けられた湾曲内部空間(35)内に配置されているという意味で、前記第1のタイプの前記反共振要素(30)と入れ子になっている第2のタイプの反共振要素(40)がそこから形成されることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
方法ステップ(b)に従って提供される前記反共振要素プリフォームが、外径DM2を有する少なくとも1つの第2のARE母管(600)を備え、D<DM2<DM1であり、方法ステップ(d)に従って形成された前記円筒形アセンブリ(500)において、前記第2のARE母管(600)が、前記スリーブ管(100)及び前記第1のARE母管(200)に対して同軸に配置され、平行な軸で配置されかつ前記第1のARE母管(200)と前記第2のARE母管(600)との間の環状間隙内に分布した複数の中空支持要素(300)が設けられ、方法ステップ(e)による前記円筒形アセンブリ(500)の前記延伸中に、前記中空支持要素(300)内に減少圧力が生成され、前記第2のARE母管(600)内に増大圧力が生成され、それにより、前記中空支持要素(300)がコラップスして、
(a)前記元の第1のARE母管(200)の前記内側と前記元の第2のARE母管(600)の前記外側との間の接触点と、
(b)前記第1のタイプの弧状反共振要素(30)と、
を形成することを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】