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特表2024-502568細胞培養デバイスからの画像解析および非侵襲的データ収集
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】細胞培養デバイスからの画像解析および非侵襲的データ収集
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240115BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12M1/34 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539301
(86)(22)【出願日】2022-01-04
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2022050072
(87)【国際公開番号】W WO2022144461
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】PA202170002
(32)【優先日】2021-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521552877
【氏名又は名称】セルヴィヴォ エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フェイ,ステファン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨコムスン,ハンス ヘンリック
(72)【発明者】
【氏名】ヴジェシスキ,クシシュトフ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA07
4B029AA11
4B029BB11
4B029BB12
4B029CC01
4B029DA10
4B029DF10
4B029FA02
4B029FA10
4B029FA11
4B029FA12
4B029GA08
4B029GB06
(57)【要約】
少なくとも1つまたは複数の細胞培養チャンバデバイスを照明し、それぞれの所定の軸を中心としてそれらを回転させるように構成されたインキュベータシステムであって、各細胞培養チャンバデバイスは、細胞培養培地を収容するように構成されたエンクロージャと、細胞培養培地の少なくとも一部の検査を可能にするように構成された少なくとも1つの観察領域とを備え、インキュベータシステムは更に、少なくとも1つの照明デバイスと、少なくとも1つの監視デバイスとを備え、少なくとも1つの監視デバイスは、少なくとも1つの照明デバイスの少なくとも1つによって、電磁放射線、好適には広波長または狭波長スペクトルのインコヒーレントまたはコヒーレントな紫外線、可視光線、赤外線、および/または近赤外線の信号で照明される、照明された細胞培養培地または照明された細胞培養チャンバの少なくとも一部の1または複数の監視信号を提供するように構成され、インキュベータシステムは更に、1または複数の監視信号からデータを抽出および/または導出するように構成された1または複数の処理ユニットを備え、または処理ユニットと接続され、上記データは、細胞培養チャンバデバイス自体および/またはその中で起こる細胞活性の1または複数の態様を表す。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つまたは複数の細胞培養チャンバデバイスを照明し、それぞれの所定の軸を中心としてそれらを回転させるように構成されたインキュベータシステムであって、各細胞培養チャンバデバイスは、細胞培養培地を収容するように構成されたエンクロージャと、前記細胞培養培地の少なくとも一部の検査を可能にするように構成された少なくとも1つの観察領域とを備え、前記インキュベータシステムは更に、少なくとも1つの照明デバイスと、少なくとも1つの監視デバイスとを備え、前記少なくとも1つの監視デバイスは、前記少なくとも1つの照明デバイスの少なくとも1つによって、電磁放射線、好適には広波長または狭波長スペクトルのインコヒーレントまたはコヒーレントな紫外線、可視光線、赤外線、および/または近赤外線の信号で照明される、照明された細胞培養培地または照明された細胞培養チャンバの少なくとも一部の1または複数の監視信号を提供するように構成され、前記インキュベータシステムは更に、前記1または複数の監視信号からデータを抽出および/または導出するように構成された1または複数の処理ユニットを備え、または処理ユニットと接続され、前記データは、前記細胞培養チャンバデバイス自体および/またはその中で起こる前記細胞活性の1または複数の態様を表す、インキュベータシステム。
【請求項2】
前記1または複数の監視信号の少なくとも1つは、ビデオ信号または1または複数の画像信号またはデータを備える、請求項1に記載のインキュベータシステム。
【請求項3】
前記細胞培養チャンバデバイスの少なくとも1つまたはいくつかの各々は、1または複数の基準マーク、バーコード、または同様のマークを更に備え、前記1または複数の処理ユニットは、画像解析を用いてそのようなマークを認識し、それに応じてそれぞれの細胞培養チャンバデバイスを識別するように構成され、前記インキュベータシステムは、前記それぞれの細胞培養チャンバデバイスの回転位置および/または回転速度を制御し、および/または前記それぞれの細胞培養チャンバデバイスの使用を監視するように構成される、請求項1または2に記載のインキュベータシステム。
【請求項4】
前記1または複数の処理ユニットは、前記基準マークの使用などを通して、回転する細胞培養チャンバデバイスのビデオまたは前記ビデオの1または複数の画像を見かけ上静止した位置に維持するように構成される、請求項1~3に記載のインキュベータシステム。
【請求項5】
前記1または複数の処理ユニットは、回転する細胞培養チャンバデバイスの毎分回転数または他の回転速度値に応答して決定される量だけ逆回転することによって、前記回転する細胞培養チャンバデバイスのビデオまたは前記ビデオの1または複数の画像を見かけ上静止した位置に維持するように構成される、請求項1~4のいずれか1項に記載のインキュベータシステム。
【請求項6】
前記1または複数の処理ユニットは、前記1または複数の監視信号からデータを抽出または導出し、前記抽出または導出されたデータの1または複数の特性に基づいて、所定のカテゴリの少なくとも1つが細胞または細胞クラスタに対応する異なるカテゴリに分類し、経時的な細胞増殖に関するデータを提供するするように構成される、請求項1~5に記載のインキュベータシステム。
【請求項7】
前記細胞増殖に関する情報は、ユーザに対して視覚化される、請求項6に記載のインキュベータシステム。
【請求項8】
前記インキュベータシステムは、前記1または複数の監視信号の抽出または導出データに応答して、1または複数の細胞培養チャンバデバイスの前記回転速度を調節するように更に構成される、請求項1~7に記載のインキュベータシステム。
【請求項9】
前記1または複数の監視信号から抽出および/または導出された前記データは、収容された細胞培養チャンバデバイスに関して取得された1または複数のデジタル画像および/またはデジタルビデオであり、またはそれらを備え、前記インキュベータシステムは、前記1または複数のデジタル画像および/またはデジタルビデオまたはその一部に画像解析を行うことによって前記収容された細胞培養チャンバデバイスの前記回転速度を調節するように更に構成される、請求項1~8に記載のインキュベータシステム。
【請求項10】
前記画像解析は、第1の領域(32)、第2の領域(33)、および第3の領域(31)を備える画像またはそれらに分割される画像に行われ、前記インキュベータシステムは、前記収容された細胞培養チャンバデバイスを前記それぞれの所定の軸を中心として時計回り方向に回転させ、
前記第1の領域(32)に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどが、単独で、または所定の正の許容値(x%)を足した状態で、前記第2の領域(33)に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックよりも大きい場合、前記収容された細胞培養チャンバデバイスの前記回転速度を下げ、
前記第3の領域(31)に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどが、単独で、または所定の正の許容値(x%)を足した状態で、前記第1の領域(32)に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックよりも大きい場合、前記収容された細胞培養チャンバデバイスの前記回転速度を上げ、
それ以外の場合、前記収容された細胞培養チャンバデバイスの前記回転速度を維持する
ように構成される、請求項9に記載のインキュベータシステム。
【請求項11】
前記画像解析は、第4の領域(37)、第5の領域(36)、第6の領域(34)、および第7の領域(35)を備える画像またはそれらに分割される画像に行われ、前記インキュベータシステムは、前記収容された細胞培養チャンバデバイスを前記それぞれの所定の軸を中心として時計回り方向に回転させ、
前記第4の領域(37)に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどと、前記第5の領域(36)に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどとを足したものが、単独で、または所定の正の許容値(x%)を足した状態で、前記第6の領域(34)に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどと、前記第7の領域(35)に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどとを足したものよりも小さい場合、前記収容された細胞培養チャンバデバイスの前記回転速度を下げ、
前記第5の領域(36)に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどと、前記第4の領域(37)に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどとを足したものが、前記第6の領域(34)に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどと、前7の領域(35)に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどとを足したもの自体、またはそれに所定の正の許容値(x%)を足したものよりも大きい場合、前記収容された細胞培養チャンバデバイスの前記回転速度を上げ、
それ以外の場合、前記収容された細胞培養チャンバデバイスの前記回転速度を維持するように構成される、請求項9に記載のインキュベータシステム。
【請求項12】
前記インキュベータシステムは、各々がそれぞれ連結または受容された細胞培養チャンバデバイスステップを回転させるように構成された少なくとも2つの軸または駆動ユニットを備え、前記インキュベータシステムは更に、特定の軸に、または特定の駆動ユニットによって連結または受容された特定の細胞培養チャンバデバイスを識別し、前記特定の軸または前記特定の駆動ユニットの前記回転速度を、前記連結または受容された細胞培養チャンバデバイスに関連付けられた回転速度に調整するように構成される、請求項1~11に記載のインキュベータシステム。
【請求項13】
前記処理ユニットは、前記細胞培養チャンバ内の細胞または細胞クラスタ要素のための前記細胞培養培地の前記1または複数の監視信号を解析し、存在する細胞の数または定義された生体分子の量を推定するように構成される、請求項1~12に記載のインキュベータシステム。
【請求項14】
前記生体分子は、タンパク質、DNA、RNA、または他のバイオマーカである、請求項13に記載のインキュベータシステム。
【請求項15】
前記細胞培養チャンバデバイス、前記細胞培養培地、および/または前記存在する細胞の1または複数に組み込まれた、化学的または生物学的プロセスに関するデータを提供するための少なくとも1つのセンサを更に備え、前記センサは、前記信号対ノイズ比を向上させるために特定の組み合わせの波長の電磁放射線およびフィルタを必要とし得る、請求項1~14に記載のインキュベータシステム。
【請求項16】
前記センサは、pHインジケータ、蛍光バイオマーカ、または化学物質または酵素系である、請求項15に記載のインキュベータシステム。
【請求項17】
前記1または複数の処理ユニットは、前記1または複数の細胞培養チャンバデバイスからの前記1または複数の監視信号からデータを抽出または導出することによって前記細胞培養チャンバの1または複数における細胞培養プロセスの状態を計算するように構成され、前記インキュベータシステムは更に、前記計算された状態に基づいて前記インキュベータの前記動作を自動的に変更または調整し、および/または前記計算された状態に関してユーザに警告することにより、前記ユーザが前記インキュベータシステムの前記動作を手動で調整することを可能にするように構成される、請求項1~16のいずれかに記載のインキュベータシステム。
【請求項18】
前記ユーザへの前記警告は、スマートフォン、タブレット、コンピュータ上で、またはSMSや他の電子メッセージにおいて視覚化される、請求項17に記載のインキュベータシステム。
【請求項19】
各所定の軸は、水平軸または略水平軸である、請求項1~18のいずれかに記載のインキュベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、データの少なくとも一部をリアルタイムまたはほぼリアルタイムで、オペレータが誘発するバイアスなしに解釈し、このデータの一部を用いて、たとえば細胞の環境を調節するインキュベータシステムの動作を調整するために、各細胞培養チャンバデバイスが(典型的には細胞も備える)細胞培養培地を収容するように構成された(本明細書において同等に細胞チャンバとも称される)エンクロージャを備える(本明細書において同等にバイオリアクタとも称される)細胞培養チャンバデバイスの画像からデータを抽出および/または導出することに関する。
【背景技術】
【0002】
基本的に平坦な細胞支持面などを有することが多い従来の細胞培養チャンバデバイスを用いて細胞および組織を増殖させる場合、一次細胞および生検材料は脱分化し、正常な構造組織および生体内機能を失う傾向がある。その一例は、細胞が組織ブロックから平坦な支持面上へ移動する場合(すなわち、いわゆる「溶けるアイスクリーム効果」)である。脱分化した細胞は、一般的に、無損傷の生物における組織内の対応する成熟細胞が通常表すものとは異なる生化学的特性を表す。また、特定の細胞は、通常、無損傷の生物における対応する細胞に比べて特殊化機能を失っている。がん細胞でさえも、平坦な表面上で培養されると、生体内よりも速く増殖させられる。そうすることで、がん細胞は、正常に近い表現型を表すことを妨げられるので、生体内のがんの適切なモデルにはならない。
【0003】
この点を改善し、単一または複数の細胞型または組織にかかわらず、細胞を増殖させるための特定の細胞培養チャンバデバイスまたはバイオリアクタは、通常または好適には、培養中の多数の種類の細胞の分化状態の維持を可能にするため、(模擬微小重力とも呼ばれる)全方位正常重力条件、すなわちクリノスタット誘導条件下での動作を用いる。また、多数の異なる細胞株において、生体内と同様の構造および機能の復元(または再分化)が促される。これは、現在実行されている細胞培養の多くに細胞株が使用されているため、重要である。急速に成長している一次細胞または幹細胞(生来型か何らかの方法で誘発されたかにかかわらず)の分野についても同じであり、それらは全て、ある程度生体内と同様の構造および機能を保持または取得する。
【0004】
このような模擬微小重力は、細胞培養を収容するコンパートメントの(1次元、2次元、または3次元での)連続的な回転によって誘発され、コンパートメント壁に細胞が付着することを防ぎ得る。厳密には、回転は重力(求心加速度)を無限に増加させるが、重力は全ての側面から加わるので、正味重力効果はゼロに近い。適切な回転は、培養に作用するせん断力を最小限に抑えながら、流体環境において細胞が互いに付着することを促進する。せん断力は、必要に応じて、細胞培養チャンバデバイスの回転速度を変更することによって、特定の細胞/組織型に関して導入され得る(Kraus他、2020年、doi:10.1016/j.mvr.2020.104107を参照)。したがって、細胞は、典型的にはクラスタ、凝集体、スフェロイド、オルガノイド、プロト組織、または偽組織と称される(本開示において、スフェロイドと総称される)3Dのコロニーに凝集する。切除された組織片も同様に影響を受けるので、それらもまた「スフェロイド」という総称に含まれる。
【0005】
少なくとも特定のインキュベータに関して、たとえば異なる種類および/または他のサイズ/状態の細胞を有する複数の細胞培養チャンバデバイスまたはバイオリアクタがインキュベータ内で使用され、それらは全て、典型的には同じ閉鎖可能な開放空間またはキャビティ内に位置する。内部照明が設けられている場合でも、インキュベータ内での使用は、各細胞培養チャンバデバイスの内容物の個々の可視性を低減し、ユーザが経時的に繰り返しインキュベータを開閉し、任意選択的に、詳細な手動検査および処理のために細胞培養チャンバデバイスを持ち出すことを促す場合が多い。インキュベータを繰り返し開閉することは、少なくとも汚染のリスクを高め、インキュベータの制御された内部環境を少なくとも一時的に崩壊させ得る。より具体的には、細胞培養チャンバデバイスをインキュベータからたとえば無菌ベンチや撮像顕微鏡に移動させることにより、場合によっては、細胞は、非常に低いCOレベル(大気中のCOはおよそ0.04%)、高いOレベル(およそ21%)、周囲温度(研究室内でおそらく約22℃)、過剰な光および正常重力(1G)に晒される。
【0006】
検査のために細胞培養チャンバデバイスをインキュベータから取り外すと、典型的には、細胞培養チャンバの周囲および内部の両方でCO分圧および温度が下がる。CO分圧の下降は、増殖培地のpHを塩基性に近付け、細胞の代謝に影響を及ぼす。急激な(わずか数分間にわたる、わずか数度の)温度の変化は、遺伝情報の表現の変化をもたらし、いわゆる「ヒートショック」(熱ストレス)または「コールドショック」反応の合成をもたらすことが示されている。温度変化によって誘発される「分子シャペロン」タンパク質のいくつかは、タンパク質が適切な形態に折り畳まれるための支援、または誤って折り畳まれたタンパク質のプロテアソーム分解に関与する。しかし、この反応は、これらいくつかのタンパク質よりも大幅に先へ進む(たとえばRichter他、2010年、doi:10.1016/j.molcel.2010.10.006を参照)。特定の既知の種類のインキュベータにおいて、たとえば培養チャンバへのドアを約30秒間だけ開けた後、適切な温度およびCOレベルを再確立するまでには約6分かかることが示されている。
【0007】
細胞培養チャンバデバイスを検査のためにインキュベータから取り外すことにより、通常、細胞クラスタまたはスフェロイドが底部に沈む。ここで、それらは通常、ガス交換の減少(酸素分圧の局所的な低下およびCO分圧の上昇)、栄養レベルの低下、および壊死による細胞死をもたらし得る不要な代謝物の蓄積が生じる。
【0008】
したがって、細胞培養チャンバデバイスを検査のためにインキュベータから取り外すことにより、典型的には、O分圧が低下する。酸素およびそのフリーラジカル(「活性酸素種」)(ROS)と総称される超酸化物陰イオンラジカル(O ・―)、一重項酸素()、ヒドロキシルラジカル(・OH)、およびペルヒドロキシアジ化る(HO・)を含む)は反応性が高く、生物学的分子の大部分に損傷を与え得る。この酸化損傷は、発癌、腫瘍化、および老化を含む多くのプロセスに関与することが提示されている。細胞培養チャンバデバイス内の細胞は、デバイスがインキュベータシステムに戻されて酸素が復活すると、有害なROSの急上昇に晒される。
【0009】
細胞培養チャンバデバイスを検査のためにインキュベータから取り外すことにより、細胞またはスフェロイドが受ける重力およびせん断力にも変化が生じ、その両方が、遺伝情報の表現にも影響を及ぼし得る(Pentho他、2019年、doi:10.1016/j.ceca.2019.03.007、およびMarin他、2013年、doi:10.1016/j.freeradbiomed.2013.05.034を参照)。
【0010】
たとえば検査のために培養チャンバを開けたり培養チャンバにアクセスしたりする場合、細胞培養チャンバデバイスおよびそのエンクロージャは光に晒され、これは場合によっては、特定の種類の細胞およびスフェロイドにとって有害である。
【0011】
最後に、細胞培養チャンバデバイスを検査および処理のためにインキュベータから取り外すことにより、細胞培養チャンバデバイスは、微生物(たとえばウイルス、細菌、真菌)による感染または(たとえばマイコプラズマまたは他の細胞型による)汚染の高いリスクにも晒される。
【0012】
スフェロイドが増殖して大きくなることにより、細胞培養チャンバデバイスの回転速度は、少なくとも特定の用途に関して、ガスおよび栄養交換を促進し、スフェロイドの均一性を高め、せん断力を最小限に抑えるために、スフェロイドが細胞培養チャンバデバイスに対して基本的に「静止軌道」に留まる最適条件を維持するように調整する必要がある。これは、スフェロイドのせん断応力が低減され、スフェロイド間またはスフェロイドと細胞培養チャンバの壁との間の衝突の回数および「衝撃力」も低減されるため、特定の細胞型にとって好適な条件である。ただし、いずれにしても、たとえば速度調整を行うべきか、場合によってはどの程度行うべきかを確認するために、細胞培養チャンバデバイス内のスフェロイドを何度か明確に検査することが可能であれば、非常に有益である。このタスクは、通常、インキュベータの外側ドアを開けることによって行われ、これは、インキュベータの構造に依存して、内部環境に影響を及ぼし得る。しかし、この速度調整は、培養の初期には毎日何度も行う必要があり、その後、数週間または数カ月の培養中に繰り返し行う必要があり、補正の程度は、ユーザおよびユーザがどの程度の頻度で培養を検査するかの主観に基づき依存するものである。したがって、繰り返し最適化される増殖条件にスフェロイドを維持するために、スフェロイドの視覚化を改善する必要があり、それによって、スフェロイドの均一性を高め、主観的バイアスの可能性が低減される。スフェロイドの均一性の改善によって、より標準化された代謝能力が得られ、それによって、たとえば高価な臨床試験などに進む前に細胞培養の候補薬物の予後に関する信頼性の高い生体内予測毒性学的評価が可能であり、すなわち、動物試験や臨床試験に乗り出す前に信頼性の高い「フィルタ」がもたらされる。
【0013】
また、スフェロイドまたはそれらが増殖する培地から、または細胞培養チャンバ自体からも多くの追加のデータおよび情報を回収することも可能であり、その全てが、培養を妨げることなく、したがって培養が温度、ガス分圧、重力の影響、および特に感染のリスクの変化に晒されることなく、ユーザの作業を促進または加速することができる。
【0014】
他の用途の場合、スフェロイドは、必ずしも静止軌道に留まる必要はなく、場合によっては留まるべきではなく、むしろ、異なる挙動を可能にされ、たとえば細胞培養チャンバ壁に対して転がる、細胞培養チャンバの底部または底部付近に位置する、または求心加速度によって細胞培養チャンバの壁に対し保持されるなどを可能にされる。これらの状況において、せん断力の最小化は必要なく、場合によっては細胞が生体内能力を模擬するために不利益である。
【0015】
したがって、内部にある細胞の検査を容易にし、加えてインキュベータを開閉する必要性を低減するインキュベータを提供することが有利である。また、スフェロイドのサイズの変化に応じて回転速度の補正を適用することも有利である。個々のスフェロイドを追跡することにより、培養物中の降下速度を計算することが可能である。この情報は、細胞培養チャンバの回転速度を最適化するために使用され得る。
【0016】
したがって、細胞培養から追加のデータおよび/または情報を非侵襲的に、たとえばオンザフライベースで収集することを容易にするインキュベータを提供することが有利である。また、このデータ/情報を用いて、インキュベータ自体の動作を設定または制御し、収集することが面倒、困難、または実現不可能であるデータをユーザに提供することが可能であれば、更に有利である。
【0017】
したがって、上記の全てに対して、インキュベータの自動化およびフィードバック調節は、主観的なユーザ介入を低減することによって動作および取得されるデータの品質の更なる標準化をもたらす。経済的観点から、インキュベータの動作コストも削減され得る。
【0018】
このように、上述した欠点の1または複数に少なくともある程度対処するインキュベータを提供することが有利である。特に、インキュベータシステムを開閉する必要性を低減する方法で収集されたデータを処理または解釈することができるインキュベータシステムを提供することが更なる利点または追加の利点である。また、オペレータが迅速かつタイムリーに決定を下すことを可能にし、予想通りに進展していない実験や実験が完了したこと(たとえば、処理の結果、スフェロイド中の細胞が死滅している場合)の早期インジケーションを提供することにより、別の実験のために機器を解放することができる、データ処理を可能にするインキュベータを提供することが更なる利点または追加の利点である。
【発明の概要】
【0019】
本発明の目的は、上述した欠点の1または複数に少なくともある程度対処するインキュベータシステムを提供することである。また、更なる目的は、任意の収容された細胞培養チャンバデバイスおよび/またはそのそれぞれのエンクロージャの内容物(すなわち中に収容された細胞培養培地)の視認性の向上をもたらす培養器システムを提供することである。また別の目的は、取得データ、たとえば取得画像が電子的に処理され、そこから(更なる)データが抽出および/または導出され得るように構成されたインキュベータシステムを提供することである。第4の目的は(少なくともいくつかの実施形態において)、細胞の増殖に関する予め定義された閾値(複数も可)を超過した場合にユーザまたは別のデバイスやシステムに警告を発することができるインキュベータシステムを提供することである。最後に、(少なくともいくつかの実施形態において)画像から抽出または導出されたデータの一部を用いてそれ自体の機能を変更することが可能なインキュベータシステムを提供することが目的である。
【0020】
第1の態様によると、これらの目的の1または複数は、所定の数の、少なくとも1または複数の細胞培養チャンバデバイスを受容するように構成されたインキュベータシステムによって、少なくともある程度実現される。所定の数の細胞培養チャンバデバイスは、たとえば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の数であってよい。インキュベータシステムは更に、所定の数(少なくとも1または複数)の細胞培養チャンバデバイスを受容し、それぞれの所定の軸を中心として(たとえばまたは好適には個別に)回転させ、照明するように構成され、各細胞培養チャンバデバイスは、細胞培養培地を収容するように構成されたエンクロージャを備え、細胞培養チャンバデバイスは、エンクロージャの少なくとも一部の検査を可能にするように構成された少なくとも1つの観察端部または部分を備え、インキュベータシステムは更に、少なくとも1つの照明デバイスと、少なくとも1つの監視デバイスとを備え、少なくとも1つの監視デバイスは、受容され照明された少なくとも1つの細胞培養チャンバデバイスを検出し、監視し、または記録するように構成され、少なくとも1つの監視デバイスは、撮像または視覚システムまたはデバイスであってよく、監視信号は、電磁放射線、好適には広波長または狭波長スペクトルのインコヒーレントまたはコヒーレントな紫外線、可視光線、赤外線、および/または近赤外線を備え、インキュベータシステムは、細胞培養チャンバデバイスの1または複数の画像および/または他の種類の監視信号(複数も可)を捕捉するように構成され、インキュベータシステムは更に、画像および/または他の種類(複数も可)の監視信号(複数も可)の少なくとも1つ、いくつか、または全てからデータを抽出および/または導出するように構成された1または複数の処理ユニットを備える。少なくともいくつかの実施形態において、または少なくともいくつかの好適な実施形態において、細胞培養チャンバデバイスが周囲を回転する(または周囲を回転することが可能な)それぞれの所定の軸は、水平または略水平軸である。
【0021】
いくつかの実施形態において、インキュベータシステムは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、出願番号PCT/EP2021/067777号を有する“AN INCUBATOR FOR RECEIVING A NUMBER OF CELL CULTURE CHAMBER DEVICES”と題された出願人の同時係属PCT特許出願の1または複数の実施形態において説明されるインキュベータである。
【0022】
いくつかの実施形態において、細胞培養チャンバデバイスは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、出願番号PCT/EP2021/064742号を有する“A CELL CULTURE CHAMBER DEVICE FOR CELL AND TISSUE GROWTH” と題された出願人の同時係属PCT特許出願の1または複数の実施形態において説明される細胞培養チャンバデバイスである。
【0023】
いくつかの実施形態において、インキュベータシステムは、
インキュベータによって受容されると細胞培養チャンバデバイスの少なくともそれぞれの一部を収容するように構成された培養チャンバを備えるハウジングと、細胞培養チャンバデバイスとを備え、
受容された細胞培養チャンバデバイスを、受容された細胞培養チャンバデバイスの(少なくとも)所定の回転軸、たとえばまたは好適には水平軸を中心として回転させるように構成され、
インキュベータと位置合わせされ、または一体化され、少なくとも1つの細胞培養チャンバデバイスの一部を、少なくとも1つの側面、場合によってはより多くの側面から少なくとも短期間にわたり照明するように構成された少なくとも1つの照明デバイスを備え、
インキュベータと位置合わせされ、または一体化され、インキュベータによって受容された時に細胞培養チャンバデバイスの少なくとも1つのエンクロージャの少なくとも一部を通って通過、反射、または伝搬した後の監視信号を記録および/または検出するように構成された少なくとも1つの監視デバイスを備え、
たとえば(ハードベースまたはソフトウェアベースであってよく、インキュベータシステムの一体部品であってもなくてもよい)フレームグラバを用いて任意選択的にビデオシーケンスから1または複数の信号画像を捕捉する要素を備え、
取得された画像を、たとえば使用中に1または複数の画像処理プログラムを実行する、インキュベータシステムの一体部品であってもなくてもよい1または複数の画像処理デバイスに提供するように構成される。
【0024】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される(本明細書において同等にバイオリアクタとも称される)細胞培養チャンバデバイスは、典型的には水性細胞培養培地および通常は細胞を収容するように構成されたエンクロージャ(または細胞チャンバ)を備える。エンクロージャは、第1の端部、第2の端部、および第1の端部と第2の端部とを連結する少なくとも1つの連結(たとえば周縁)壁によって画定される。第1の端部は、照明端部または部分、あるいは一次または前面照明端部または部分と称され得る。第1の端部は、観察端部または部分、あるいは一次観察端部または部分とも称され得る。第1の端部、あるいはその一部または窓は、実質的に透明である。第2の端部および/または連結壁、あるいはそれぞれの一部または窓は、実質的に透明、または実質的に半透明である。第1の端部あるいはその一部または窓は、第2の端部あるいはその一部または窓および/または連結壁あるいはその一部または窓と(少なくとも何らかの期間、または定期的に)光学的に、または他の方法で(たとえば他の電磁放射線または音波や音響波などの機械的な波に関して)位置合わせされるように構成され、それによって光または他の監視信号は、第2の端部あるいはその一部または窓および/または連結壁あるいはその一部または窓を通って、またはそれらによってエンクロージャ内に伝達することができ、細胞培養培地の少なくとも一部を通り、第1の端部あるいはその一部または窓を通って、エンクロージャの外側へ、たとえば細胞培養チャンバデバイスの外側へ伝達または伝搬される。第1の端部(あるいはその一部または窓)は、互いに交差または直交することによって第2の端部(あるいはその一部または窓)と光学的に、または他の方法で位置合わせされることが非常に好都合な方法であるが、必ずしもそうでなくてよい。たとえば、適切な光学ベースまたは他の電磁放射ベース、音/音響波ベースなどのシステム、または1または複数の適切なデバイスまたは構成要素(たとえば反射体、鏡、レンズ、プリズム、音導体または光導体など)は、少なくともある程度の時間、それぞれの端部(または一部/窓)を位置合わせするために使用され得る。
【0025】
細胞培養チャンバデバイスは、たとえば識別マーク、バーコード、参照点などの1または複数の基準および/または識別マーカを更に備えてよい。基準および/または識別マーカの少なくともいくつかは、好適には機械可読である。細胞培養チャンバデバイスは、たとえば軸方向、径方向、または周方向の(たとえば培地交換、サンプル収集、化合物の注入などのための)アクセスポート、(たとえばO、COの交換のための)ガス交換膜および通気孔、加湿デバイス、マーカまたはインジケータなどの他の特徴を有して構成されてもよい。原則として、細胞培養チャンバデバイスは、(本明細書で説明される回転を支持する)任意の適切な規則的または不規則的な形状を有し得るが、製造の都合上、比較的単純な形状であることが好適である。これらの追加部品は、少なくとも部分的に、または全体的に、エンクロージャの照明または検査を少なくともわずかな間しか妨げず、好適には全く妨げないことが明らかに有益である。また、これらの追加部品は、エンクロージャの照明または検査に少なくともわずかしか干渉せず、好適には全く干渉しないことが有益である。
【0026】
したがって、少なくとも一部の時間にわたり、細胞培養チャンバデバイスの筐体内に収容された任意の細胞培養培地および細胞の少なくとも一部を通って伝搬する、遮断されない光または他の監視信号伝搬経路を提供するインキュベータが説明される。また、「後方」からの逆光または他の監視信号の放出、すなわち第2の端部および/または連結壁(複数も可)を通って放出される(たとえば第2の端部に向かう)光または他の監視信号の提供も可能であり、他方/反対側の側面からの(すなわち第1の端部を介した)目視検査(手動または自動)も大幅に向上する。これは特に、たとえばインキュベータなどに配置されたいくつかの細胞培養チャンバデバイスの検査のために有用である。細胞培養デバイスの第2の端部が透明である場合、手動(光の場合)および/または自動(適切なセンサを用いた光または他の電磁放射線または音または音響波の場合)の目視検査または他の検査(たとえば光とは異なる音響または電磁放射線)は、エンクロージャの両端から、すなわち2つの側面から更に可能である。いくつかの実施形態において、細胞培養チャンバデバイスの全ての部分が透明である。
【0027】
そのような細胞培養チャンバデバイスは更に、透明な第1の端部により、本明細書に開示される1または複数の監視デバイス(複数も可)による内容物の検出および/または記録の品質を高めることが可能であるため、第1の態様に係る、本明細書に開示されるインキュベータに関連して使用するために特に有用である。上述したように、第1の態様によると、また本明細書に開示されるように、そのような細胞培養チャンバデバイス(複数も可)の1または複数は、適切に構成されたインキュベータ内に取り付けられ得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、細胞培養チャンバデバイスの第2の端部あるいはその一部または窓は、(実質的に半透明ではなく)実質的に透明であり、細胞培養チャンバデバイスは更に、光を受け取り、実質的に均一な光を第2の端部あるいはその一部または窓に提供するように構成されたインキュベータの(光学拡散器とも称される)光拡散器を備え、またはそれに連結されることにより、エンクロージャ内に収容された場合に細胞培養培地の実質的に均一な照明を提供する。光拡散器は、(自然および/または人工)光源からエンクロージャ/第2の端部あるいはその一部または窓までの光伝搬経路内に位置する。このような細胞培養培地の実質的に均一な照明により、インキュベータ内にある状態でのエンクロージャの内容物の(手動または自動)目視監視の向上、およびそれに伴う目視評価の向上が可能である。
【0029】
第2の端部あるいはその一部または窓が(実質的に透明ではなく)実質的に半透明である代替実施形態に関して、半透明の端部あるいはその一部または窓が光拡散器として効果的に機能することにより、そのような追加の構成要素の必要性が省かれる。第2の端部あるいはその一部または窓が(実質的に透明ではなく)実質的に半透明である更なる代替実施形態に関して、光拡散器が依然として存在することにより、(1つは半透明の端部あるいはその一部または窓により、1つは光拡散器による)二重の拡散器が実質的に提供され、更に均一な光分布が生成され得る(光エネルギのある程度の「コスト」がかかるが、典型的には多くはない)。
【0030】
したがって、インキュベータは、細胞培養チャンバデバイスの少なくともそれぞれの部分を照明するように構成された、たとえば収容された任意の細胞培養チャンバデバイスのそれぞれのエンクロージャの少なくとも一部を照明する、1または複数の光(または照明)源を備える。また更なる実施形態において、1または複数の光(または照明)源は、インキュベータに受容された1または複数の細胞培養チャンバデバイスのエンクロージャの少なくとも第1の端部あるいはその一部または窓をそれぞれ照明するように構成される。いくつかの更なる実施形態において、1または複数の光源は、インキュベータに受容された場合に1または複数の細胞培養チャンバデバイス(複数も可)に面するドアまたは蓋に配置される。したがって、エンクロージャ(複数も可)の(一次)「前面」照明が提供され、「前面」照明とは、(受容された場合に)培養チャンバの開口部から細胞培養チャンバデバイス(複数も可)に向かって発する照明であると考えられる。
【0031】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの回転駆動ユニットの少なくとも1つのそれぞれの駆動ユニット(たとえば1つ、いくつか、または全て)は、細胞培養チャンバデバイス(複数も可)の少なくともそれぞれの部分を照明するように構成された、たとえば受容された任意の細胞培養チャンバデバイス(複数も可)のそれぞれのエンクロージャの少なくとも一部を照明する1または複数の光源または照明源を備える。また更なる実施形態において、1または複数の光源または照明源は、それぞれの駆動ユニットに受容された1または複数の細胞培養チャンバデバイス(複数も可)のエンクロージャの少なくとも第2の端部あるいはその一部または窓をそれぞれ照明するように構成される。
【0032】
いくつかの代替実施形態において、少なくとも1つの回転駆動ユニットの少なくとも1つのそれぞれの駆動ユニット(たとえば1つ、いくつか、または全て)は、駆動ユニットに受容された場合に細胞培養チャンバデバイスまたはそのエンクロージャの少なくともそれぞれの部分を照明するように構成された光導体または他の光または照明デバイスを備える中空回転シャフトを備える。
【0033】
したがって、エンクロージャ(複数も可)の(一次)「背面」照明が提供され、「背面」照明とは、(受容された場合に)培養チャンバの開口部の反対側から細胞培養チャンバデバイスに向かって発する照明であると考えられる。
【0034】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つの駆動ユニット(または少なくとも背面照明を提供するもの)は、受容された細胞培養チャンバデバイスに隣接して配置されたキャビティを備え、キャビティは、1または複数の光源または照明源を備える。これにより、背面照明を有する非常に小型の駆動ユニットが提供される。
【0035】
いくつかの実施形態において、1または複数の光源または照明源は、エンクロージャまたは細胞培養チャンバデバイスの中心軸または回転軸からずらして配置され、それによって、エンクロージャへの、またその内容物への単純/より単純なアクセスが提供され得る。
【0036】
インキュベータの実施形態は、前面照明および背面照明光源または照明源の混合を備えてよく、得られる任意の監視信号の品質が高められる。実施形態は、代替的に、1または複数の背面照明光または照明光源のみを備え、あるいは1または複数の前面照明光または照明光源のみを備える。
【0037】
少なくともいくつかの実施形態において、光は、自然光または人工光またはそれらの組み合わせであり、典型的または好適には、約400~約700ナノメートルの波長または少なくともその部分範囲を有する可視光線である。あるいは、光はたとえば、約700ナノメートル~約1ミリメートルまたは約900ナノメートル~約2500ナノメートルの波長をそれぞれ有する赤外線または近赤外線であってよい。また別の代替として、監視信号は、可視光線または光とは異なる波長を有する電磁放射線、たとえば約10~400ナノメートルの波長を有する紫外線である。(実質的に)透明および(実質的に)半透明とは、端部または壁(あるいはその一部または窓)が、細胞培養チャンバデバイスに使用されることが意図された光または他の監視信号の種類に関して十分に(実質的に)透明および/または十分に(実質的に)半透明であることを意味する。特定の実施形態において、フィルタまたは回折格子を用いて特定の波長が選択されてよく、またはレーザのように光がコヒーレントであってよい。
【0038】
更なる代替実施形態において、拡散器は光拡散器ではなく、たとえば音響拡散器または光以外の電磁放射線のための拡散器など、他の種類の監視信号に関連する拡散器である。
【0039】
いくつかの代替実施形態において、細胞培養チャンバデバイスは、背面照明または「後方」からの別の監視信号の放出に加えて、またはその代わりに、前面照明(または他の種類の監視信号の他の前面適用)のために構成される。
【0040】
いくつかの実施形態において、第2の端部および/または少なくとも1つの連結壁の少なくとも1つは、1または複数の一体型光源を備える。
【0041】
いくつかの実施形態において、第2の端部および/または少なくとも1つの連結壁の少なくとも1つは、蛍光発光素子であり、または蛍光発光素子を備える。
【0042】
いくつかの代替実施形態において、細胞培養チャンバデバイスは、背面照明または前面照明または「後方」または「側方(複数も可)」からの別の監視信号の放出に加えて、またはその代わりに、側面照明(または他の種類の監視信号の他の側面適用)のために構成される。
【0043】
いくつかのそのような更なる代替実施形態において、拡散器(存在する場合)は、たとえば放物面反射器など、適切な反射器に置き換えられ得る。
【0044】
少なくとも1つの照明デバイスは、原則として(少なくともいくつかの実施形態において)インキュベータに統合されるのではなくインキュベータの外側に位置してよく、その場合インキュベータは、(インキュベータに受容された場合の)細胞培養チャンバデバイス(複数も可)と位置合わせされた複数の透明窓などを備え、照明デバイスは、適切に配置された場合、受容された任意の細胞培養チャンバデバイス(複数も可)の内容物を照明することが可能である。細胞培養チャンバデバイスの照明は、監視デバイスと同じ側面から(前面照明)であってよく、この構成では、主に監視デバイスに到達する反射光または再放出光に依拠する。細胞培養チャンバデバイスの照明は、監視デバイスと反対の側面から(背面照明)であってよく、この構成では、監視デバイスに到達する伝達、シルエット、位相差、または再放出光に依拠する。細胞培養チャンバデバイスの側面照明の結果、上述した2つの効果の組み合わせが生じる。
【0045】
第1の態様によると、このように、監視(および/または他の記録および/または検出)が容易に可能であり、監視は、たとえば本明細書で更に開示されるようにローカルまたは遠隔であってよい。監視信号は、電磁(通常は紫外線、可視光線、赤外線、および/または近赤外線)信号であってよく、監視デバイス(複数も可)は、収容された任意の細胞培養チャンバデバイスのエンクロージャ(複数も可)の内容物のデータまたはビデオフィードまたはビデオキャプチャ、(たとえば定期的な)静止画像などを提供するように構成された、たとえばカメラ、CCD、光電子増倍管、無線受信器などであってよい。あるいは、監視信号は、たとえば本明細書に開示されるような異なる信号である。
【0046】
少なくとも1つの監視デバイスは、原則として(いくつかの実施形態において)インキュベータに統合されるのではなくインキュベータの外側にあってよく、その場合インキュベータは、(インキュベータに受容された場合の)細胞培養チャンバデバイス(複数も可)と位置合わせされた複数の透明窓などを備え、監視デバイスは、適切に配置された場合、受容された任意の細胞培養チャンバデバイス(複数も可)の内容物を記録および/または検出することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、インキュベータは、開閉可能なドアまたは蓋(または他のアクセス要素)を備え、培養チャンバは、少なくとも1つの培養チャンバ壁、少なくとも1つの培養チャンバ壁および閉じられると培養チャンバを少なくとも部分的に画定するドアまたは蓋(または他の要素)を備える。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの培養チャンバ壁およびドアまたは蓋(または他のアクセス要素)は、閉じられると、培養チャンバを完全に画定する。いくつかの実施形態において、培養チャンバは、単一の培養チャンバ壁のみを備える。
【0048】
いくつかの更なる実施形態において、ドアまたは蓋(または他のアクセス要素)の第1の側面または内側(すなわちドア、蓋などが閉じた時に培養チャンバに面する側面)は、少なくとも1つの監視デバイスを備え、少なくとも1つの監視デバイスは、少なくとも1つの受容された細胞培養チャンバデバイスのエンクロージャが少なくとも1つの監視デバイスの少なくとも1つの記録および/または検出の視野内にあるように、すなわち受容された任意の細胞培養チャンバデバイス(複数も可)のエンクロージャ(複数も可)が少なくとも1つの監視デバイスの視野内にあるように面して配置される。
【0049】
いくつかの(複数の監視デバイスを備える)実施形態において、監視デバイスは、インキュベータのドア、蓋などに、たとえば等距離に、略円形に、または他の規則的パターンで配置される。
【0050】
いくつかの実施形態において、インキュベータは、所定の数の監視デバイス、すなわちインキュベータに受容され得る各細胞培養チャンバデバイスにつき1つの監視デバイスを備え、言い換えると1対1の関係である。いくつかの更なる実施形態において、各監視デバイスは、監視デバイスの記録および/または検出の視野の中心軸が、受容された細胞培養チャンバデバイスのそれぞれのエンクロージャの中心軸と少なくとも実質的に一致するように配置される。このように、1つの監視デバイスは、1つの特定の細胞培養チャンバデバイスに関する監視信号を記録および/または検出するための専用であり、それによって典型的にはそれぞれの監視信号の品質が向上し、および/または特定の細胞チャンバデバイス、特に収容された任意の細胞培養チャンバデバイスの内容物の記録および/または検出(たとえば観察)も向上する。また、監視デバイス(複数も可)および細胞培養チャンバデバイス(複数も可)が(X、Y、およびZ次元において)正確に位置合わせされることも保証(または大いに促進)され、これは、そのようなセットアップにおける両者の間の典型的な短距離を考慮すると特に重要である。あるいは、1つの監視デバイスは、複数の特定の細胞培養チャンバデバイスに関する監視信号を記録および/または検出するための専用であり、それによって必要な監視デバイスの数が低減される。これはたとえば、監視デバイスが安価ではない場合、または異なる細胞培養チャンバデバイスから収集される画像に非常に高い相互比較性が必要である場合に有利である。そのような場合、上記細胞培養チャンバデバイスをそれぞれ通過する光は、制御可能なレンズ、プリズム、鏡、または他の光導体を用いて、監視デバイスに入る光が任意の1つの時間に1つの細胞培養チャンバデバイスのみを通過し、またはそこに由来するように監視デバイスへ導かれ得る。他の実施形態において、光は、監視デバイスに入る光が任意の1つの時間に複数の細胞培養チャンバデバイスを通過し、またはそこに由来するように複数の細胞培養チャンバデバイスを通過してよい。これは、参照を必要とする、または位相差を用いる状況に関する通常のセットアップである。
【0051】
また、監視デバイス(複数も可)は、たとえば単一の写真またはビデオシーケンスの形式で、細胞培養チャンバデバイスの内容物の詳細な文書化を容易に可能にし得る。
【0052】
使用される照明は、より低い強度および/またはより低い波長であってもよく、その両方によって、細胞を損傷する可能性が低減され得る。照明は、監視デバイス(複数も可)を用いて細胞培養チャンバデバイス(複数も可)の内容物を検査または文書化する場合に選択的にオンに切り換えられ、その後オフに切り換えられることにより、露光の期間が低減される。また、ユーザは、複数の細胞培養チャンバデバイスの内容物をより高速で検査、文書化などしてよく、それによって露光の長さも低減される。
【0053】
また、監視デバイス(複数も可)は、(培養チャンバ内に照明が存在する場合でも)ガラスパネルなどを通して培養チャンバ内を手動で観察することに比べて、向上した視認性(たとえば拡大/ズーム、IR、変換波長などの観察)を容易に可能にし得る。
【0054】
あるいは、たとえば第2の端部あるいはその一部または窓を通してそれぞれのエンクロージャ内に別の種類の監視信号を放出するように構成された、光源以外の(1または複数の)監視信号源(複数も可)が使用され、少なくとも1つの監視デバイスは、第1の端部あるいはその一部または窓を通してエンクロージャの外側へ伝送される他の種類の監視信号の少なくとも一部を捕捉するように構成される。この他の種類の監視デバイス(複数も可)は、たとえば、音または音響波(たとえば超音波)の記録、または可視光線の波長とは異なる波長の電磁放射線(たとえばx線、紫外線、または赤外線)の記録のために構成され得る。
【0055】
細胞培養チャンバデバイスの照明およびその後のデバイスの画像の捕捉に関する実施形態の全てまたは少なくともいくつかにおいて、光は、たとえば光の操作に一般的に用いられるようなレンズ、拡散器、フィルタ、光導体、プリズム、鏡などの1または複数のたとえば制御可能な特徴を通して導かれ得る。これらの特徴のいくつかまたは全ては、取得された画像を少なくともある程度向上させ、そうすることで「信号対ノイズ」比を高めるために、独立して交換可能であってよい。他の特徴は、可視光線とは異なる波長の電磁放射線の操作が本明細書に含まれる場合、同様の目的で使用され得る。
【0056】
図示された実施形態において、光源は、背面照明を提供し、2つの(これは一例で、1、または2以外の数であってもよい)光源は、細胞培養チャンバデバイスおよび細胞培養チャンバの前面照明を提供し、それによって、監視デバイスによるエンクロージャの内容物の簡単な観察が可能であり得る。
【0057】
光源(複数も可)は、たとえばLED光源(複数も可)または他の任意の適切な光源であってよい。
【0058】
駆動ユニットが複数の光源を備えるいくつかの実施形態において、光源は、同じ種類であってよく、あるいは(たとえば異なる波長を放出する)異なる種類であってもよい。いくつかの更なる実施形態において、駆動ユニットは、少なくとも2つの異なる種類である複数の光源を備え、少なくとも2つの異なる種類は、UV、可視光線、近赤外線、および赤外線のグループから選択され得る。
【0059】
いくつかの更なる実施形態において、光は、信号対ノイズ比を高めるために、制限された波長であってよく、(たとえばレーザのように)コヒーレントであってよく、またはそうでなくてもよい。
【0060】
また更なる実施形態において、照明は、「背景」照明を低減し、そうすることで信号対ノイズ比を高めるために、時間を制限されてよく、すなわちパルス化、フラッシュ化、または単一のパルスまたはフラッシュであってもよい。パルスは、数秒または数分の1秒の可変長さであってよく、場合によっては特定のアプリケーション(たとえば時間分解蛍光)に関してミリ秒時間間隔まで抑えられる。特定の発光化合物は不安定であり、照明時に分解する。したがって、説明されるパルス化照明によってそれらの使用可能な寿命が延長され、パルスの長さは、適切な露光を得るために監視デバイスによって決定され得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、インキュベータシステムは、1または複数の光源から受容された細胞培養チャンバデバイスのエンクロージャまでの、またはそれに向かう光伝搬経路に配置された光拡散器を備える。いくつかの更なる実施形態において、光拡散器は、受容された細胞培養チャンバデバイスに隣接した、または少なくともその付近にある(たとえばエンクロージャの第2の端部に隣接した、またはその付近の)伝搬経路に配置される。光拡散器は、たとえば駆動ユニットのキャビティ内に配置され得る。光拡散器は、エンクロージャに向かってより均一な照明を提供し、それによって背面照明の品質を高めることにより、監視デバイス(複数も可)の監視信号の品質を高め得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、インキュベータシステムは、1または複数の光源から受容された細胞培養チャンバデバイスのエンクロージャまでの、またはそれに向かう光伝搬経路に配置された、少なくともある程度、特定の波長の光を通し、他の波長を遮断する光フィルタを備える。いくつかの更なる実施形態において、光フィルタは、受容された細胞培養チャンバデバイスに隣接した、または少なくともその付近にある伝搬経路に配置される。光フィルタは、たとえば駆動ユニットのキャビティ内に配置され得る。光フィルタは、エンクロージャからのより選択的な照明を提供し、それによって「画像信号対ノイズ比」を高めることにより、監視デバイス(複数も可)の監視信号を向上させ得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、インキュベータシステムは、細胞培養チャンバデバイスから監視デバイスまでの、またはそれに向かう光伝搬経路に配置された、少なくともある程度、特定の波長の光を通し、他の波長を遮断する光フィルタを備える。いくつかの更なる実施形態において、光フィルタは、監視デバイスに隣接して、または少なくともその付近にある伝搬経路に配置される。光フィルタは、たとえば駆動ユニットのキャビティ内、または監視デバイスまたはレセプタの直前に配置され得る。光フィルタは、エンクロージャからのより選択的な照明を提供し、それによって画像信号対ノイズ比を高めることにより、監視デバイス(複数も可)の監視信号を向上させ得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、高い画像信号対ノイズ比を得ることによって監視デバイス(複数も可)の監視信号を向上させるために、照明源と記録との間の任意の位置で、拡散器およびフィルタまたはフィルタセットの組み合わせが使用される。そのような拡散器およびフィルタは、細胞、センサ、または監視デバイスの要件に合致するように、たとえば取外し可能または交換可能であってよい。
【0065】
このようにエンクロージャ(複数も可)の内容物を観察および監視することにより、培養チャンバを繰り返し開閉して内部の制御された環境を(たとえば温度、湿度、O、CO、模擬微小重力、せん断応力などに関して)乱す必要性が大幅に低減される。それによって、培養チャンバ内の任意の細胞培養チャンバデバイス内の細胞の摂動が大幅に軽減される。
【0066】
回転駆動ユニット(複数も可)は、それぞれ、1つ、2つ、または3つの互いに実質的に垂直な軸を中心として受容された1つ(または複数)の細胞培養チャンバデバイスを回転させるように構成される。2つまたは3つのそのような軸を中心として回転するインキュベータは、場合によっては、いわゆるランダム位置決め装置とも称される。いくつかの実施形態において、所定の回転軸は、受容された細胞培養チャンバデバイスの所定の中心軸である。いくつかの実施形態において、受容された細胞培養チャンバデバイスの中心軸は、エンクロージャが細胞培養チャンバデバイス内で中心に位置合わせされている場合、受容された細胞培養チャンバデバイスのエンクロージャの中心軸と同じであり、または一致してよい(必ずしもそうである必要はない)。あるいは、所定の回転軸は、エンクロージャの中心軸からずれている。
【0067】
いくつかの実施形態において、回転駆動ユニット(複数も可)は、クリノスタット駆動ユニット(複数も可)である。
【0068】
いくつかの実施形態において、培養チャンバは、(インキュベータに受容された場合に)細胞培養チャンバデバイスを完全に収容するように構成される。あるいは、培養チャンバは、細胞培養チャンバデバイスの一部のみ、特にそれぞれのエンクロージャ(複数も可)の少なくとも一部、たとえば全体を収容するように構成される。いくつかの実施形態において、細胞培養チャンバデバイスは、それぞれの新しい培地および使用済み培地のリザーバ、駆動素子を備える(たとえば最大約14日またはそれ以上の長期間にわたり自己維持が可能な)たとえば灌流細胞培養チャンバデバイスであってよく、これは、たとえば新しい培地および使用済み培地のリザーバ、駆動素子(複数も可)などの特定の部分または構成要素を培養チャンバの外側に有することにより、汚染のリスクを低減し、容易な洗浄を可能にするという利点になる。たとえば、灌流細胞培養チャンバデバイスまたはバイオリアクタの例に関して、出願番号PCT/EP2020/068632号を有する出願人の同時係属PCT特許出願を参照されたい。
【0069】
いくつかの実施形態において、インキュベータ(複数も可)および/またはユーザインタフェースデバイスは更に、データロギングおよび/またはユーザ文書化、たとえば、細胞培養チャンバデバイスの少なくとも一部、たとえば全てに関する、たとえば温度、湿度レベル、回転速度などのデータの、たとえば経時的な、およびたとえば平均ならびに(回転をしない)休止の期間および回数を含む収集および格納を行うように構成される。これはたとえば、ビデオ(複数も可)および/または静止画像(複数も可)、および画像処理によるデータで補足され得る。データのデータロギングまたは文書化は、たとえばクラウドコンピューティング環境に(たとえば同様に)格納され得る。
【0070】
監視信号は、視覚光信号であってよく、監視デバイスは、たとえば、収容された任意の細胞培養チャンバデバイスのビデオフィードまたはビデオキャプチャ、(たとえば定期的な)静止画像などを提供するように構成された監視デバイスなどであってよい。あるいは、監視信号は、たとえば本明細書に開示されるような異なる信号であり、監視デバイスは、この異なる信号を収集するために適している。追加または代替として、上記機能は、ビデオおよび画像ではなく、たとえば本明細書に開示するような他の種類の監視信号(複数も可)のために提供される。
【0071】
第2の態様によると、これらの目的の1または複数は、
ハードウェアかソフトウェアかにかかわらず、好適には高解像度でビデオから単一の画像または単一のフレームを捕捉するように設計されたユニット(「フレームグラバ」)と、
1または複数が、リアルタイム(またはほぼリアルタイム)で画像を解析するために有効化される、(インキュベータユニット自体の一体部品であってもなくてもよい)1または複数の処理ユニットと、
実行中の画像解析のアクティビティを調整し得る1または複数のプロセッサユニットおよびアルゴリズムと、
各細胞培養チャンバデバイスに関する画像由来データを電子メモリおよび/または電子ストレージに収集するロギングシステムと、
ネットワークと通信するように構成された1または複数の信号送信器および受信器通信要素と、
上記データをインキュベータのオペレータに提供することができる要素と
を更に備える第1の態様におけるインキュベータによって、少なくともある程度実現される。
【0072】
特定の細胞培養チャンバデバイスのIDは、1または複数の基準および/または識別マーカまたはコードの画像またはビデオを捕捉し、適切な画像処理または他のデジタル処理を行うことによって自動的に取得され得る。同様に、細胞培養チャンバデバイスの特定のエンクロージャに含まれる気泡の存在もまた、画像またはビデオを捕捉することによって取得および提示され得る。したがって、いくつかの実施形態において、エンクロージャおよび/または細胞培養チャンバデバイスは、たとえば識別マーク、バーコード、参照点などの1または複数の基準および/または識別マーカを更に備える。基準および/または識別マーカの少なくともいくつかは、好適には機械可読である。これは、たとえば、本明細書に開示されるような少なくとも1つの監視デバイス、たとえば撮像または視覚システムまたはデバイスを用いた監視に関連して有利に使用され得る。基準マーカ(複数も可)は、本明細書に開示されるような少なくとも1つの監視デバイスとともに使用するための細胞培養チャンバデバイス(特にエンクロージャ)の向きの決定を可能にする。
【0073】
識別マーカは、好適には、それを備える特定の細胞培養チャンバデバイスに固有である。更なるアプリケーションにおいて、細胞培養チャンバデバイスの画像解析は、デバイス固有のバーコードを読み取り、(インキュベータシステムのどの軸にデバイスが載置されているかにかかわらず)細胞培養チャンバデバイスが適切な速度で回転されることを保証する。バーコードの画像解析は、そのデバイスに関してデータが適切に収集およびファイルされることも保証する。
【0074】
より具体的には、少なくともいくつかの実施形態において、細胞培養チャンバデバイスの少なくとも1つまたはいくつかの各々は、1または複数の基準マーク、バーコード、または同様のマークを更に備え、1または複数の処理ユニットは、画像解析を用いてそのようなマークを認識し、それに応じてそれぞれの細胞培養チャンバデバイスを識別するように構成され、インキュベータシステムは、それぞれの細胞培養チャンバデバイスの回転位置および/または回転速度を制御し、および/またはそれぞれの細胞培養チャンバデバイスの使用を監視するように構成される。
【0075】
特定の実施形態において、デバイス固有のバーコードを用いて、インキュベータは、細胞培養チャンバデバイス自体がその有効期間の終わりに近いことをユーザに警告し得る。警告は、たとえばタブレット上のポップアップウィンドウ、コンピュータやスマートフォン、または複数のターゲットや人物(ユーザ、共同ユーザ、グループリーダ、セキュリティ担当者など)へのeメールまたはSMSなどの様々な手段によって実現され得る。
【0076】
この実施形態の別の特定のアプリケーションにおいて、画像処理は、回転する細胞培養チャンバの見かけ上静止した画像を提供し、ユーザによるその検査を容易にし得る。より具体的には、少なくともいくつかの実施形態において、1または複数の処理ユニットは、回転する細胞培養チャンバデバイスの毎分回転数または他の回転速度値に応じて決定された量だけ逆回転することによって、回転する細胞培養チャンバデバイスのビデオまたはビデオの1または複数の画像を見かけ上静止した位置に維持するように構成される。
【0077】
オンラインフィードビデオまたは写真は、たとえばそれらのサイズ、軌道、降下速度など、含まれたスフェロイドの状態の手動検査を容易に可能にすることができ、それによってユーザは、たとえばスフェロイドが大きくなり、重くなった場合、回転速度を変更する、たとえば上げることを所望するように促され得る。
【0078】
いくつかの更なる実施形態において、インキュベータ(複数も可)は更に、画像解析をリアルタイムまたはほぼリアルタイムで、非侵襲的な方法で実行するように構成される。集約的な処理能力が必要とされる特定の場合、画像解析タスクは、外部コンピュータまたはスーパーコンピュータに共有され得る。そのような画像解析の目的は、細胞培養チャンバ内の培養に関する追加のデータをユーザに提供し、データ処理を容易にして加速することである。
【0079】
ユーザインタフェースデバイスは、たとえば、第1のインキュベータおよび/または少なくとも第2のインキュベータのいずれかのオンライン監視のために構成され得る。いくつかの実施形態において、ユーザインタフェースデバイスは、本明細書に開示されるような監視デバイスを備える場合、それぞれの監視デバイスを介してインキュベータによって取得された各インキュベータの1または複数に関するビデオオンラインフィード、または最後の単一または一連の写真を、たとえばスクリーン上のユーザインタフェースに表示するように構成される。各特定の細胞培養チャンバデバイスに関する、たとえば現在の回転速度、回転方向、IDなどの追加のデータも取得され、それぞれの細胞培養チャンバデバイスのビデオまたは画像(複数も可)とともにデバイス上に表示されるためにユーザインタフェースに送信され得る。細胞培養チャンバデバイス(複数も可)に固有のデータに加えて、たとえば現在の温度、現在のpH値、現在の湿度、現在のCO、O、および/またはNレベル(複数も可)など、それぞれのインキュベータに関するデータも取得および提供され得る。インキュベータシステムは、たとえば、特定の1または複数のパラメータが許容可能な値範囲外、許容可能な値より上または下などである場合(たとえば測定された現在の温度またはCOレベルが所与の温度閾値または値を超過する場合など)、ユーザインタフェースデバイス(または他の接続された外部コンピュータデバイス)に警告または警報を送信してもよい。
【0080】
また画像解析は、培養のpH、バイオマス量(DNAタンパク質、細胞数)、増殖率、細胞培養チャンバ内のスフェロイドまたはオルガノイドのサイズ、および標準偏差(再現率)に関して、非侵襲的なリアルタイムフィードバックをユーザに提供することもできる。特定の実施形態において、インキュベータは、培養が予想された増殖パラメータから逸脱していることをユーザに警告し得る。これらの警告は、たとえばタブレット上のポップアップウィンドウ、コンピュータやスマートフォン、または複数のターゲットや人物(ユーザ、共同ユーザ、グループリーダ、セキュリティ担当者など)へのeメールまたはSMSなどの様々な手段によって実現され得る。
【0081】
画像解析は、加湿システムの水が残り少ない場合にユーザが警告され得るように、画像内の水滴の面積を決定するためにも使用され得る。
【0082】
更なる実施形態において、光源(前面照明および背面照明の両方)および監視デバイス(複数も可)の適用は、細胞培養チャンバ上、培地内、および細胞培養チャンバ内の細胞またはスフェロイド上または内のセンサの存在と組み合わせられ、ユーザに、培養またはそこで発生する生物学的プロセスに関する多くの高感度かつ正確なデータを非侵襲的な方法で提供することができる。画像解析は、ユーザに、センサ出力データのリアルタイムフィードバックを提供し得る(その実施形態については図7Dを参照)。
【0083】
収集されたデータを正規化するために、画像解析出力データの異なる態様の組み合わせが使用され得る。(場合によっては異なるインキュベータ内の)異なる細胞培養デバイスからのデータの組み合わせは、対照サンプルと処理サンプルとを比較するために使用され得る。この処理データは、リアルタイムでユーザに提供されてもよい。
【0084】
更なる態様および/または更なる実施形態によると、本明細書に開示される画像解析方法またはそのステップの1または複数を実行するように構成された(たとえば本明細書に開示されるインキュベータシステムおよび/またはコンピュータの)1または複数の処理ユニットが提供される。いくつかの実施形態において、インキュベータ(複数も可)および/またはユーザインタフェースデバイスは更に、データロギングおよび/または文書化、たとえば回転速度、バイオマス(DNAタンパク質、細胞数)、増殖率、サイズおよび標準偏差(再現率)、および任意のセンサ出力などのデータの収集および格納を行うように構成され、各測定は、たとえば細胞培養チャンバデバイスの少なくともいくつか、たとえば全てに関して経時的に行われ、たとえば平均ならびに休止(回転しない)期間および回数を含む。これは、たとえばビデオ(複数も可)および/または静止画像(複数も可)、および画像解析によるデータで補足され得る。データロギングまたは文書化のデータは、たとえばクラウドコンピューティング環境に(も)格納され得る。
【0085】
この第2の態様において、1または複数の処理ユニットは、少なくとも1つの外部コンピュータデバイス、たとえばユーザインタフェースデバイス、クライアントおよび/またはサーバコンピュータまたはデバイス、ネットワーク接続されたストレージデバイス、および/または1または複数の追加のインキュベータの1または複数とネットワークを介して通信するように構成される。
【0086】
いくつかの実施形態において、監視デバイス(複数も可)の捕捉または取得されたビデオおよび/または写真および/または他の監視信号は、たとえば提示(たとえばリモート視聴またはリモートオンライン視聴)、格納、および/または更なるデジタル処理のために、インキュベータによって外部コンピュータデバイスに送信され得る。そのようなデバイスは、生データ(およびそれが収集された時間)だけではなく、処理データおよびそれが利用された時間も格納してよい。
【0087】
適切な処理電力およびメモリ容量は、現在の良質なタブレットに存在し得る。より高い処理速度および/またはメモリ容量が必要である場合は、コンピュータまたはスーパーコンピュータによって提供され得る。
【0088】
そのような実施形態において、画像解析アルゴリズムは、細胞培養チャンバデバイスの1または複数の画像から様々な種類のデータを抽出するために用いられ得る。場合によっては、画像解析は、オペレータにとって負担が大きく、困難、または実現不可能であるか、あるいは細胞培養デバイス内の細胞の増殖に悪影響を及ぼすようなデータ収集を可能にし得る。
【0089】
また他の例では、データは、増殖の経過および/または処理の効果の推定値を自動的に解釈または導出するために用いられ、そうすることで、バイアスのないデータの収集を可能にし得る。したがって、機器は、生読出しデータだけではなく、(たとえばそのようなデータの信頼性または再現性の推定値を含む)処理データも提示してよい。画像解析は、画像全体またはその一部(複数も可)、たとえば細胞培養チャンバデバイスの領域(すなわちスフェロイドが位置する場所)に適用され得る。解析される面積を低減することにより、それに応じて画像解析速度が上昇し、電力消費量が低減される。以下の画像解析の説明は、全画像、または、たとえば独立して、あるいは任意の重み付けされた組み合わせで使用される画像の3つの異なる色成分(赤色、緑色、および青色)に適用され得る。1つの色成分または派生するモノクロまたはグレースケール画像の使用も、画像解析速度を上昇させる。
【0090】
生成された画像は、細胞培養チャンバデバイス内の細胞に関する詳細な情報を、細胞の増殖を妨げることなく(すなわち非侵襲的な方法で)提供するために処理され得る。これにより、細胞培養チャンバデバイスがインキュベータから取り外されて手動で検査される場合に可能または許容範囲とされるよりも大幅に高頻度でそのような測定を行うことが可能である。より重要な点として、画像解析は、測定を行うために細胞培養チャンバデバイスをインキュベータシステムから取り外す必要がある場合に細胞が耐えることができないデータ収集を可能にし得る。そのような画像は、細胞培養チャンバ内で比較的速い反応が起こる場合、たとえば短期間(数分または数時間)を通して秒単位で処理され得るが、そのような観察は、細胞培養チャンバをインキュベータシステムから取り外すことが必要な場合には事実上不可能である。他の例では、そのような画像は、所望に応じて、長期間(数日、数週間、または数カ月)を通して分単位で処理され得る。リアルタイムまたはほぼリアルタイムで培養または実験の進展を追うために、様々な細胞培養チャンバからのデータが比較され、オペレータの介入の必要性が更に軽減され、結論が推察され得る速度を上げることができる。
【0091】
また、画像解析は、実験の経過を示し、最も重要な点として予想からの逸脱を示す、ユーザへの複数の信号またはデータ/情報を生成し得る。
【0092】
広範囲の様々な種類のセンサが存在してよく、それらは全て、細胞の増殖に適合することにより、そのような細胞の活性に大きな影響を及ぼすことなく細胞培養デバイスに含まれ得る。これらは、細胞培養、誘発や処理に対するその成果や反応に関する追加のデータを更に収集するために使用され得る。取得されたデータは、視覚画像と同様に画像解析を必要とし得る。
【0093】
この第2の態様によると、画像解析アルゴリズム(複数も可)の実施形態は、取得、強調、色空間変換、およびデジタル画像変換の1または複数のような処理で開始する。したがって、そのような画像は、たとえば形態学的画像解析のための事前処理(平滑化、鮮鋭化、焦点合わせ、またはコントラストおよび明るさの調整、および画像のノイズの除去(たとえば周囲の(8つ以上の)画素と著しく異なる値を有する個々のまたは小グループの画素が、8つ以上の画素の平均値に置き換えられ得る))、およびその後の局所的画像セグメント化および物体認識を必要とし得る。画像解析におけるプロセスの多くは、機械学習(ML、すなわち明確にプログラムされることなくデータにアクセスして自身の学習のためにそれを用いることができるコンピュータプログラム)、深層学習(DL)、または畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いることによって改善することもできるが、これらのプロセスは大量の処理能力を必要とし、従来の画像解析よりも速度が落ちる。ただし、一度学習すると、これらの画像プロセスは、場合によっては特定のタスク(たとえば画像内の視覚要素を分割すること(たとえば「背景」から物体を識別もしくは区別することまたは視覚的に重なっている物体を分離すること)、様々な要素を別々のグループに分類することなど)をより高速かつ効率的に行うことができる。
【0094】
画像セグメント化は、画像解析における初期ステップであってよく、画像を構成上の部分(要素)に分割するために使用され得る。これらの要素は、細胞培養チャンバデバイス、(たとえば1つの特定の実施形態において、画像内の大きく明るい基本的には既知の径の円形要素によって定義される)細胞培養チャンバエンクロージャ、(たとえば細胞培養チャンバの外側にあるが細胞培養チャンバから既知の距離および既知の角度にある既知の寸法の長方形領域内の一連の明色および暗色バー、正方形、または長方形によって定義される)バーコードなど、および既知の位置(細胞培養チャンバの内側または外側)にある既知のサイズおよび形状の基準マーカ(複数も可)、および細胞培養チャンバの既知のサイズおよび形状の前部プラグを含み得るが、それらに限定されない。
【0095】
識別されると、バーコードは、正確な細胞培養チャンバデバイスを明確に識別するために読み取られ得る。この細胞培養デバイスが、1つの駆動軸から取り外され、(場合によっては異なるインキュベータ内であるが、典型的には同じインキュベータクラスタ内の(すなわち同じプロセッサタブレットまたはコンピュータによって制御される))異なる軸に戻されると、ソフトウェアは、以前の軸で用いられたのと同じ回転速度で細胞培養チャンバデバイスを処理し続け、(異なるものや新しいものではない)適切な細胞培養チャンバデバイスに収集されたデータを帰属させ続け、更に、データストリームを混乱させることなく進行中のプロセスや運動プロセスを解析し続けてよい。この機能は、インキュベータまたはインキュベータクラスタ内で異なる軸に細胞培養デバイスを再配置することによるオペレータのエラーを抑制することから有利である。
【0096】
画像処理は、たとえば細胞培養チャンバデバイスを保持していない任意の軸を停止させることもできる。
【0097】
追加の特定の実施形態において、インキュベータシステムは、特定の細胞培養チャンバデバイスがどの程度の期間使用されているかを(始期日時を記録し、経過した使用時間に対して測定することによって)追跡し、たとえばガス交換膜(それらを備える実施形態の場合)などが機能性や使用可能性の終わりに到達しているためにデバイスを交換する必要がある場合、それをユーザに示してもよい。この機能は、細胞培養が均一な条件に維持されることを保証し得るために有用である。
【0098】
いくつかの更なる実施形態において、バーコードまたは基準マーカが識別されると、1または複数の処理ユニットは、たとえば周縁ポートを上にした特定の向きで細胞培養チャンバデバイスを停止させるように構成される。停止されると、細胞培養チャンバデバイス内のスフェロイドは、底部に沈降する。その後、ユーザは、たとえばより迅速に最小限の撹乱で増殖培地が交換され得るように、またはスフェロイドの収集を容易にするために、デバイスの向きを変更することなく細胞培養チャンバデバイスを無菌ベンチまたは他の場所に移動させ得る。
【0099】
更なる実施形態によると、画像データは、表示される場合に静止して見え、または静止するように回転される。したがって、画像データは、各画像またはそれらの一部(たとえば細胞培養チャンバデバイスに対応する部分)が、1つの画像フレームの撮影から次の画像フレームの撮影までに起こる順方向回転に対応する量だけ逆方向に回転されるように処理される。これは、たとえばバーコードおよび/または基準マーカの位置を特定し、その/それらの位置を提示される画像内で一定に保つことによって行われ得る。スフェロイドが細胞培養チャンバデバイスに対して「静止軌道」内にある場合、それらは画像内で概ね動いていないように見えるので個々のスフェロイドの観察が容易であり、より詳細な検査が可能である。スフェロイドを基本的に動かないように事実上維持することにより、長期間にわたる個々のスフェロイドの追跡が可能であり、単一のスフェロイドにおける生物学的プロセスの動態観察が可能である。
【0100】
一般に、このような画像の回転は、周知の画像解析プロセスである(アフィン変換の特殊な例である)。このプロセスは、たとえば回転している細胞培養チャンバの画像をより良い位置に置く(たとえば画面内で細胞培養デバイスの画像を中心に置く)ために並進変換を行ってもよい。そのような画像解析は、好適には、最も滑らかなビデオフィードを提供するために1つのフレームから次のフレームまでの時間に起こる必要がある。1または複数のフレームが「スキップ」される処理によって、ビデオの滑らかさは低下するが、画像解析のためにより多くの時間が得られる。
【0101】
(第1および第2の態様および更なる態様に係る)いくつかの実施形態において、1または複数の監視信号から抽出および/または導出されたデータは、収容された細胞培養チャンバデバイスに関して取得された1または複数のデジタル画像および/またはデジタルビデオであり、またはそれらを備え、インキュベータシステムは更に、1または複数のデジタル画像および/またはデジタルビデオまたはその一部に画像解析を行うことによって、収容された細胞培養チャンバデバイスの回転速度を調節するように構成される。回転速度を変更する以下の実施形態において、回転方向は時計回りである。この機能は、反時計回りの回転の場合、それに応じて調整する必要がある(概ね、以下で言及される領域は、関連画像の略垂直線に関して左右反対にする必要があり、または左右反対であり得る)。いくつかの更なる実施形態において、画像解析は、第1の領域(たとえば図5の32を参照)、第2の領域(たとえば図5の33を参照)、および第3の領域(たとえば図5の31を参照)を備える画像、またはそれらに分割された画像に行われ、インキュベータシステムは、収容された細胞培養チャンバデバイスを、それぞれの所定の軸を中心として時計回り方向に回転させ、
第1の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどが、単独で、または所定の正の許容値(x%)を足した状態で、第2の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックよりも大きい場合、収容された細胞培養チャンバデバイスの回転速度を下げ、
第3の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどが、単独で、または所定の正の許容値を足した状態で、第1の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックよりも大きい場合、収容された細胞培養チャンバデバイスの回転速度を上げ、
それ以外の場合、収容された細胞培養チャンバデバイスの回転速度を維持する
るように構成される。
【0102】
いくつかの実施形態において、第2の領域(たとえば図5の33を参照)は、細胞培養チャンバの中心を包含する略円形の中央領域であり、第1の領域(たとえば図5の32を参照)は、第2の領域に隣接し、第2の領域を部分的に(「上」および「両側」を)包含する実質的に外側の環状部分であり、第3の領域(たとえば図5の31を参照)は、第2の領域に隣接し、第2の領域を部分的に(「下」または「下側」を)包含する実質的に外側の環状部分である。少なくともいくつかの実施形態において、第1および第3の領域は、第2の領域を完全に取り囲んで包囲し、第1の領域は第3の領域よりも大きな範囲または面積を有する。
【0103】
あるいは、画像解析は、第4の領域(たとえば図6の37を参照)、第5の領域(たとえば図6の36を参照)、第6の領域(たとえば図6の34を参照)、および第7の領域(たとえば図6の35を参照)を備える画像、またはそれらに分割された画像に行われ、インキュベータシステムは、収容された細胞培養チャンバデバイスを、それぞれの所定の軸を中心として時計回り方向に回転させ、
第4の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどと、第5の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどとを足したものが、単独で、または所定の正の許容値を足した状態で、第6の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどと、第7の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどとを足したものよりも小さい場合、収容された細胞培養チャンバデバイスの回転速度を下げ、
第5の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどと、第4の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどとを足したものが、第6の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどと、第7の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどとを足したもの自体、またはそれに所定の正の許容値を足したものよりも大きい場合、収容された細胞培養チャンバデバイスの回転速度を上げ、
それ以外の場合、収容された細胞培養チャンバの回転速度を維持する
ように構成される。
【0104】
いくつかの実施形態において、第4の領域(たとえば図6の37を参照)、第5の領域(たとえば図6の36を参照)、第6の領域(たとえば図6の34を参照)、および第7の領域(たとえば図6の35を参照)は等しいサイズであり、細胞培養チャンバ(画像)の中央で約90°の角度で互いに交差し、45°より大きい角度で細胞培養チャンバ画像と交差する2本の直線(直線a--a)によって画定され、(画像内の)第4の領域は概ね「左上」にあり、第5の領域は概ね「左下」にあり、第6の領域は概ね「右上」にあり、第7の領域は概ね「右下」にある。交差する2本の直線は、回転方向(時計回りまたは反時計回り)に依存して、水平および垂直に対しある所定の量だけ回転される。時計回りの回転の場合、交差する2本の直線は、反時計回りに少量回転される(たとえば図6を参照)。
【0105】
追加の実施形態において、回転速度を上げるか下げるかの決定(複数も可)は、第4および第5の領域に関して導出されたデータ対第6および第7の領域に関して導出されたデータの比較ではなく、第5の領域対第6の領域「のみ」に関して導出されたデータの比較によって行われる。これはたとえば、実際の速度が適切な速度から「遠く離れている」場合に適切(より単純)である。実際の速度が適切な速度に「近い」場合、第4および第5の領域に関して導出されたデータ対第6および第7の領域に関して導出されたデータの比較が好適または必要である。
【0106】
上記(およびその他の箇所)で言及した回転速度を調整する代替実施形態において、特定の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計を導出および使用するのではなく、特定の領域に関する平均画素強度値が導出および使用される。更なる代替実施形態において、細胞培養チャンバの様々な領域に含まれる細胞クラスタ、スフェロイドなどの量または質量を決定または推定する他の方法が用いられてよい。本明細書における領域は、典型的には、同等にゾーンと称される。
【0107】
留意点として、回転速度を変更または調整する上記の2つの代替実施形態(および更なる変形例/その実施形態)は、実質的に均一な照明で(最終的に領域を有し、または提供する)画像が取得されることを想定し、または少なくともその状態で最適に機能する。照明が十分に均一ではない場合、そのことが、一般に知られているような適切な方法で、たとえば比較/解析の前にその領域の画素から(局所的)背景画素強度値を減算することによって考慮される必要がある。また、上述したこれらの実施形態の比較(「より大きい」および「より小さい」)もまた、(スフェロイド、細胞クラスタなどが周囲よりも明るく見える)前面照明を想定し、または前面照明で最適に機能する。(スフェロイド、細胞クラスタなどが周囲よりも暗く見える)背面照明が使用される場合、上記比較において、「より大きい」は「より小さい」に置き換えられ、「より小さい」は「より大きい」に置き換えられるべきである。あるいは、画像または領域は、比較を実行する前に、単純にそれ自体の(明るいエリアが暗くなり、またその逆の)ネガバージョンにデジタル変換され得る。また、領域が概して同じサイズでない場合、単位面積当たりの画素強度値(または他の任意の使用される関数またはメトリック)を合計する必要はなく、(実質的に同様のサイズの領域の場合)それぞれの領域の画素強度値を単純に合計し、瞬時に比較することができる。
【0108】
前面照明ではなく背面照明を有する実施形態の場合、比較は、以下に従ってよい。
【0109】
いくつかのそのような場合(背面照明実施形態)において、画像解析は、第1の領域(たとえば図5の32を参照)、第2の領域(たとえば図5の33を参照)、および第3の領域(たとえば図5の31を参照)を備える画像、またはそれらに分割される画像に行われ、インキュベータシステムは、収容された細胞培養チャンバデバイスを、それぞれの所定の軸を中心として時計回り方向に回転させ、
第1の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどが、単独で、または所定の正の許容値(x%)を足した状態で、第2の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックより小さい場合、収容された細胞培養チャンバデバイスの回転速度を下げ、
第3の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどが、単独で、または所定の正の許容値を足した状態で、第1の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックより小さい場合、収容された細胞培養チャンバデバイスの回転速度を上げ、
それ以外の場合、収容された細胞培養チャンバデバイスの回転速度を維持する
ように構成される。
【0110】
いくつかのそのような代替(背面照明)実施形態において、画像解析は、第4の領域(たとえば図6の37を参照)、第5の領域(たとえば図6の36を参照)、第6の領域(たとえば図6の34を参照)、および第7の領域(たとえば図6の35を参照)を備える画像、またはそれらに分割される画像に行われ、インキュベータシステムは、収容された細胞培養チャンバデバイスを、それぞれの所定の軸を中心として時計回り方向に回転させ、
第4の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどと、第5の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどとを足したものが、単独で、または所定の正の許容値を足した状態で、第6の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどと、第7の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどとを足したものよりも大きい場合、収容された細胞培養チャンバデバイスの回転速度を下げ、
第5の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどと、第4の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどとを足したものが、第6の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどと、第7の領域に関する単位面積当たりの画素強度値の合計または他の画像強度メトリックなどとを足したもの自体、またはそれに所定の正の許容値を足したものよりも小さい場合、収容された細胞培養チャンバデバイスの回転速度を上げ、
それ以外の場合、収容された細胞培養チャンバデバイスの回転速度を維持する
ように構成される。
【0111】
(第1および/または第2の態様およびたとえば更なる態様に係る)いくつかの実施形態において、インキュベータシステムは、各々がそれぞれ連結または受容された細胞培養チャンバデバイスステップを回転させるように構成された少なくとも2つの軸または駆動ユニットを備え、インキュベータシステムは更に、特定の軸に、または特定の駆動ユニットによって連結または受容された特定の細胞培養チャンバデバイスを(たとえば本明細書に開示されるような画像解析および基準マーカや他のマーカを用いて)識別し、特定の軸または特定の駆動ユニットの回転速度を、連結または受容された特定の細胞培養チャンバデバイスに関連付けられた回転速度に調整するように構成される。
【0112】
画像解析のまた別の実施形態において、細胞培養チャンバエンクロージャの画像内で要素を識別するための追加の動作が存在し、そのように処理領域を画像の一部に制限することにより、処理速度が上昇する。これは、集合的にセグメント化として知られている(全般的または局所的な背景減算を用いる)様々な画像解析アプローチの1または複数を用いて行われ得る(背景は、たとえば「ローリングボール技術」、極小値または極大値または適応ガウス閾値処理によって画定され得る)。画像解析分野において知られている様々なセグメント化アプローチが存在し、エッジベースのセグメント化(「エッジ検出」、「角検出」、「ブロッブ検出」アルゴリズム)、形態学的セグメント化、グラフィックベースのセグメント化フィルタ、クラスタベースのセグメント化、および確率的セグメント化などが含まれる。アルゴリズムは、「許容差」を含んでよく、すなわち、「エッジ」が要素の全周で検出されない場合、プログラムが補間して要素のエッジを完成させ得る。
【0113】
画像内で要素が識別されると、要素を先鋭化または平滑化し、その(積分光学密度(IOD、要素内の画素の合計から要素の周囲の(局所的)背景の合計を引いたもの)として定義される)面積および体積、最小軸および最大軸(必ずしもデカルトのX、Y、およびZ方向ではない)、平均径、平滑度、円周、円形度、およびたとえば基準マーカまたは前部ポートまたは画像の角部などの他の適切な点の1つにおける点に対する細胞培養チャンバ領域内の実際の位置(デカルトのX、Y、および場合によってはZ値(後者はたとえばフォーカシングアルゴリズムなどによって決定され得る))を決定するために、追加のアルゴリズムのセットが適用され得る。
【0114】
たとえば円形度が低く、円周対面積比が大きく、または最小軸と最大軸との差が大きい要素は、たとえば2つ(またはそれ以上)の重なり合うスフェロイドを分解する試みのために解析され得る。これはたとえば、ピンチング、最小軸に沿った分割、サドル分割、または撥水技術、または上記で説明したセグメント化アプローチのいずれかによって行われ得る。これらの技術は、たとえば、複雑な要素を分解するために繰り返され、または異なる組み合わせで使用され得る。
【0115】
この実施形態における更なる展開によると、要素が分解されると、これらの要素はその後、たとえば上述したパラメータの任意の組み合わせに従ってグループ化およびサブグループ化され得る。特定の閾値を下回る要素は除外され得る(たとえば画像ノイズ)。サイズ対体積(IOD)比が大きく、画像の上部に優先的に位置する要素は気泡を表し、下部にある要素は細胞破片を表していることがあり、これも更なる解析から除外され得る。残りの要素は、その後、たとえばそれらの平均径に基づいてサブグループに分類され得る。多数の例において、好適なスフェロイド培養は、スフェロイドのサイズおよび形状が均一なものであり、これは、これらが処理または他の工程に対しより均一に反応すると予想されるためである。言い換えると、スフェロイド培養物は、同様のX、Y、およびZ寸法、高い円形度(スフェロイド性)、値の周囲に比較的小さな標準偏差を有する(培養の年数またはスフェロイドの発生に用いられた細胞の数に依存する)特定の平均径を有する(スフェロイドとして分類される)要素を含む。逆に、不良なスフェロイド培養物は、X、Y、およびZ寸法の標準偏差が大きい要素ベースのグループを有し、グループ平均X-Y-Z、円形度(スフェロイド性)、および径の周囲の低い円形度(スフェロイド性)および小さな径を有する。複数のグループが存在することも可能であり、そのような追加のグループは、画像解析アルゴリズムによって分解することができないスフェロイドのグループを表し、あるいは実際には細胞培養チャンバ内のスフェロイドの塊、または2つの異なるスフェロイド群である場合がある。
【0116】
連続画像の画像解析は、個々の要素(たとえばスフェロイド)に関する軌道データを導出するために使用され得る。この情報は、たとえば、ユーザの要件に合致するように細胞培養チャンバの回転速度を調節するための自動フィードバックループで使用され得る。
【0117】
有用なデータおよび情報は、細胞培養チャンバの内側にあり、かつ画像内の全ての要素の外側(また、要素の周囲で起こり得るエッジ効果の外側かつ細胞培養チャンバおよび任意の関連ポートのエッジの外側)にある画像領域で抽出され得る。たとえば、培地のpHを示すために、フェノールレッド、ブロモクレゾールパープル、またはフクシンなどの化合物が細胞培養培地に添加され得る。したがって、全ての要素の外側にある画像領域の平均色は、培地のpHを推定するために使用され得る(たとえばhttps://www.biotek.com/resources/application-notes/using-phenol-red-to-assess-ph-in-tissue-culture-media/を参照)。これはたとえば、着色化合物および使用される特定の増殖培地に固有のルックアップテーブル(LUT)を用いてよく、そのようなLUTは、インキュベータシステムに設けられるか、ユーザによって提供されるサンプルの測定値によって導出されるか、または単純にユーザによって入力される。
【0118】
例としてフェノールレッドを用いると、細胞は老廃物を生成し、それによってpHが徐々に下がり、溶液を赤(pH8.0)からオレンジ(pH7.0)、黄色(pH6.0)へと段階的に変化させる(https://www.testallwater.co.uk/blog/post/what-is-phenol-red-in-swimming -pools/を参照)。
【0119】
培地の色は、たとえば、画像解析によって経時的に監視され、定義された値への変化は、培地が交換を必要とすることを示す。プログラムは、この事実をユーザに警告するように構成され得る。
【0120】
細胞の死や汚染微生物の過剰増殖によって生成される老廃物は、pHの急速な低下をもたらし、インジケータの色にも同じ変化をもたらす。色の変化が日常的に見られるよりも急速である場合、プログラムは、微生物の汚染や(予想外の)細胞の死が細胞培養チャンバ内で起こっている可能性があることをユーザに通知するように構成され得る。
【0121】
また画像解析は、培養のpH、バイオマス量(DNAタンパク質、細胞数)、増殖率、細胞培養チャンバ内のスフェロイドまたはオルガノイドのサイズおよび標準偏差(再現率)に関する非侵襲的なリアルタイムフィードバックをユーザに提供してもよい。特定の実施形態において、インキュベータは、培養が予想される増殖パラメータから逸脱していることをユーザに警告し得る。これらの警告は、タブレット上のポップアップウィンドウ、コンピュータやスマートフォン、または複数のターゲットや人物(ユーザ、共同ユーザ、グループリーダ、セキュリティ担当者など)へのeメールまたはSMSなどの様々な手段によって実現され得る。
【0122】
第3の態様において、上述した目的の1または複数は、第2の態様において説明されるインキュベータシステムが、画像解析機能とともに、
細胞培養チャンバデバイスの画像からデータを抽出することができる画像解析を実装するソフトウェアと、
画像導出データの一部を用いて、たとえば上記デバイスの培地交換、または細胞培養チャンバデバイスの回転速度、または任意選択的に事前指定された時間における(センサ読取りを含む)データ収集のための上記デバイスの照明の調節のために、ソフトウェア調節型電気機械部品を介してインキュベータの動作を変更することを可能にする要素またはデバイスと、
様々なプロセッサアクティビティを調整することができるコントローラと、
インキュベータの動作に行われた変更の少なくとも一部を収集および記録するロギングシステムと、
上記データをインキュベータのオペレータに提供する手段と
を更に備える場合、少なくともある程度実現される。
【0123】
この第3の態様において、インキュベータシステム、その撮像および画像解析能力は、培養条件を最適化または調整するために、インキュベータシステム自体の動作を調節するために使用され得る。これは、ユーザの作業を少なくともある程度高速化および容易化し、ユーザインタラクションを最低限にすることで、実行される解析の再現性を高くする。したがって、ユーザの介入がなくとも、収集された画像の解析により、上記培養の培養条件を改善または適合するようにインキュベータの性能が変更され得る。
【0124】
1つの特定の実施形態において、培地の色を測定するために画像解析が使用される上述の例を用いて、インキュベータシステムが「灌流」形である場合、すなわち培地の少なくとも一部を自動的に交換することが可能である場合、培地において検出された色の変化は、培地の少なくとも一部の交換をもたらす機構を作動させるために使用され得る。その結果、培地は新しい培地で希釈され、細胞培養デバイス内の培地の色が所望の色に戻る。所望の色が実現されると、培地を交換する機構は停止する。そのような調節は、培地の色によって調節される必要はなく、たとえば存在する他の任意のセンサによって調節され得る。
【0125】
別の特定の実施形態において、画像解析は、自動的に、ユーザによる介入なしで、スフェロイドが「静止軌道」条件で増殖するように細胞培養チャンバデバイスの回転速度の調節を調整することができ、そのような調整は、数日、数週間、または数カ月にわたり24時間ごとに何回も実行する必要があり得るので、ユーザによって実現することは難しい。これを実現するために使用され得るいくつかの異なるアルゴリズムが存在する。どのアルゴリズムを使用するかの決定は、当該細胞培養チャンバ内の細胞またはスフェロイドの画像解析に応じて、インキュベータプロセッサ自体によってオンザフライで行われ得る。
【0126】
細胞培養チャンバデバイスの回転速度の調節におけるこの改善によって、実験内および実験間での再現率が更に高くなり、ユーザによって意図的または無意識にもたらされる主観的変動が低減される。
【0127】
この実施形態によると、画像解析によって得られた、スフェロイドとしてグループ化された要素の分布は、細胞培養チャンバデバイスを回転させるクリノスタットの回転速度を調節するために使用され得る。スフェロイドが培養されると、細胞の増殖によってスフェロイドは大きくなる。スフェロイドは大きくなると、置換する水の体積に対して重くもなる。細胞培養デバイスの回転速度が変更されない場合、スフェロイドは増加したせん断力および衝突力を受け、ガスおよび栄養交換が減少し、それら全てがスフェロイドの増殖に有害であり得る。
【0128】
実際には、増殖中のスフェロイドが大きくなるにつれて底部に沈むのを防ぐために、クリノスタットのrpmを上げて上述した「静止軌道」を実現することが必要である。たとえば、分散した単細胞の「若い培養」は、約4rpmでの回転を必要とする。時間とともに、これらの細胞はスフェロイドを形成する。約21日後、細胞培養チャンバデバイスは、約18rpmでの回転を必要とし、約42日後、速度は約40rpmである必要がある(実際の速度は細胞型および使用される培地に依存する)。画像解析の「出力」の1つは、スフェロイドが静止軌道になるまで画像内の細胞培養チャンバデバイスを駆動するモータのrpmを調整するために使用され得る。そのような計算は、スフェロイドがその静止軌道を実現するまで高頻度で(たとえば最初は10~30分ごとに)繰り返す必要がある。その後、計算は、より少なく、頻度を落として繰り返すべきである。アルゴリズムは、(たとえばスフェロイドの処理後に必要なrpmの変更の程度が大きくなった場合)繰返しの頻度を増やすこともできる。rpmの各調整が記録され得る。
【0129】
スフェロイドがそれらの静止軌道に到達するrpmを求めることは、多数のアプローチで実現することができ、以下に4つの例を説明する。これらの例において、細胞培養デバイスは時計回りに回転すること、画像の上部は細胞培養チャンバの物理的上部に対応すること、気泡は存在しないこと、およびスフェロイドは背景よりも暗く見えること(すなわち背面照明を受けていること)が前提とされる。以下に示す例に共通して、画像の細胞培養チャンバデバイスを駆動するモータの回転速度(rpm)を制御するための計算が使用される。異なる速度で動かされる細胞培養チャンバデバイス内の(同じ経年数および同じ培地内の)スフェロイドの分布の例は、図4に提供される。
【0130】
第1の例において、細胞培養チャンバ画像は、図5に示すゾーン、部分、領域、セグメントなどに分割される(上記ゾーンは、必ずしも同じ面積でなくてよく、重なり合ってもよい)。図内のゾーンの実際の数、形状、およびサイズは単に典型例であり、実際には、示されたものと異なってよい。また、これらのゾーンの位置は、回転方向(時計回りまたは反時計回り)に依存する。ゾーン30(細胞培養チャンバ画像のエッジの非常に近くにある円形ゾーン)内の全ての画素位置値は、潜在的なエッジ効果(たとえばチャンバのエッジにおける光学収差および反射)により、更なる計算から除外され得る。他の要素(たとえば前部ポート(24))も同様に除外され得る。その後、ゾーン31および細胞培養チャンバの残りの部分(33+32)に関して、平均画素強度(API)が計算される。ゾーン31のAPIがゾーン33+32のAPIよりも小さい場合、これは、スフェロイドが細胞培養チャンバの下部に優先的に存在することを示し、rpmが低すぎること(図3に「超低速」として示される状況)が示される(この例では、スフェロイドが光を吸収するために暗く、高い(明るい)背景値に対して低い「画素値」に寄与している)。これにより、モータのrpmが上げられる。ゾーン31の実際の位置は、実際のrpmおよび使用される培地の粘度に依存する。超低速のrpm速度では、ゾーン31は細胞培養チャンバ画像の下部にあるが、速度を上げるにつれて、ゾーン31は次第に下部から回転方向にずれる。
【0131】
上記に対する相補的なアルゴリズムにおいて、ゾーン32は、細胞培養チャンバ画像の外側領域の環状ゾーンを表す(この場合ゾーン31を含む)。ゾーン32+31のAPIが残りのゾーン(33)よりも小さい場合、スフェロイドは、細胞培養チャンバの外側エッジに向かって位置し、スフェロイドが求心性加速度によって押し出されていること(図3に「超高速」と示される)、すなわちrpmが過剰に高く設定され、下げる必要があることを示す。
【0132】
したがって、一方は速度が低すぎる状況で速度を上げ、他方は速度が高すぎる場合に速度を下げる、これら2つの画像解析サブルーチンの組み合わせにより、rpm速度の調節の改善がもたらされ、スフェロイドは、細胞培養チャンバ内である程度均一な分布に維持される(図3に「適正」と示される)。
【0133】
同様の「フィードバック調節」のために他のゾーンの組み合わせを使用することもできる。これらは、ゾーン31が下側の半円(図6のゾーン36+37)、32+33が上側の半円(図6のゾーン34+35、半円の実際の位置は回転方向にずれる必要があるので、分割線は、水平でなくある程度傾斜している(そのような傾斜は、実施のrpmおよび使用される培地の粘度に依存する))となり得る。この状況において、下側半円(ゾーン36+37)のAPIが上側半円(ゾーン34+55)のAPIより小さいことは、rpmが低すぎることを示す。
【0134】
別のオプションとして、細胞培養チャンバ画像は、細胞培養チャンバ画像の中央で約90°の角度で互いに交差し、垂直に対して45°より大きい角度で細胞培養チャンバ画像と交差する2本の直線(直線a--a)によって、4つの基本的に等しいゾーン(図6、ゾーン34、35、36、および37)に分割される。ゾーン36のAPIが34より大きく、または37のAPIがゾーン35より大きい場合、rpmを上げるべきである。気泡が存在する場合、気泡が発見される領域(主にゾーン34内の細胞培養チャンバ上部)を除外するためにゾーンが区切られ得る。
【0135】
他の計算方法で同じ結果に到達することができるが、上述した方法は、ゾーンのAPIを計算することによって、(たとえば前部ポート画像要素(24)の存在による)面積の差を調整する必要がなく、特定の画像要素としてスフェロイドを「識別」する必要もないという利点を有する。
【0136】
第2の例において、上述した画像解析アルゴリズムを用いてスフェロイドを識別し、ゾーン内の単位面積当たりのスフェロイドの数、面積、または体積がAPIの代わりに使用され、同じ結果が得られ得る。
【0137】
第3の例において、(図5に示す)4つの仮想ゾーンは、細胞培養チャンバデバイスと同じ速度で回転され得る。この場合、4つのゾーンの各々におけるAPIまたはスフェロイドの数(または他の属性)が最も変化しない状態に留まる場合が適切なrpm速度である。理想的な速度において、スフェロイドは動かず、または細胞培養チャンバデバイスに対して比較的緩慢に動き、様々なゾーンのAPI(または選択された他の属性)は、不変に維持される。速度が遅くなると、細胞培養チャンバデバイス内でスフェロイドがタンブリングする(図3に「超低速」として示される)。したがって、rpm速度は、タンブリング運動が丁度検出される点まで下げられ、その後、以前の値まで再び上げられる。
【0138】
rpmの微調整のために使用され得る第4の例において、(上述したように、細胞培養チャンバが順方向に回転するのと同じ速度で細胞培養チャンバの画像が逆方向に回転される)画像位置の維持を個々のスフェロイドの追跡と組み合わせることにより、アルゴリズムは、全てのスフェロイドが移動した平均ベクトル距離を(角度にかかわらず)測定し、rpm速度を上げることができる。この平均ベクトル距離が減少した場合、アルゴリズムは、速度を更に上げてよい。ただし、平均ベクトル距離が増加した場合、アルゴリズムはrpm速度を下げなければならない。
【0139】
そのようなアルゴリズムは、毎回1または複数の画像の平均を使用し得る。アルゴリズムは周期的に実行してよく、周期性は、アルゴリズムの前回の実行中に行われた変更の程度によって決定され得る。
【0140】
第1の例と同様に説明されたアプローチは、実行が必要な計算が大幅に少ない、すなわちより迅速に計算され得るという利点を有する。このアプローチは、(たとえば平均径の標準偏差(SD)、X、Y、またはXおよびY寸法の差のSD、または円形度のSDなど、上述したパラメータのいくつかを用いて定義される)スフェロイドの品質および均一性が高い培養のために使用され得る。
【0141】
第2、第3、および第4の例と同様に説明されたアプローチは、品質および均一性がさほど高くない場合に利点を有する。これらのアプローチを用いると、スフェロイド以外の要素が計算から除外されることにより、スフェロイドに関するrpm調整が改善される。
【0142】
第3または第4の例と同様に説明されたアプローチは、rpmの微調整を提供するという利点を有する。しかし、これはかなりの計算能力を必要とするので、他のアプローチが(この場合、経時的に大きく変動するrpmを提供すると定義されるように)不十分な精度であると示された場合のみ利用され得る。
【0143】
ランダム位置決めデバイス、すなわち細胞培養チャンバデバイスが2つまたは3つの互いに垂直な方向に回転されるクリノスタットに関して、Z寸法は、rpmを調整するためにこれらの計算に取り入れることが必要である。
【0144】
言い換えると、画像解析から導出された測定値が、細胞培養チャンバデバイスのrpmを調整するためにどの種類のサブルーチンが使用されるかを定義するために使用され得る、多数のアプローチが存在する。
【0145】
更なる実施形態において、光源(前面照明および背面照明の両方)および監視デバイス(複数も可)の適用は、細胞培養チャンバ上、培地内、および細胞培養チャンバ内の細胞またはスフェロイド上または内のセンサの存在と組み合わせて、培養またはそこで起こる生物学的プロセスに関する多くの高感度で正確なデータをユーザに提供することができる。画像解析は、ユーザにセンサ出力データのリアルタイムフィードバックを提供し得る。
【0146】
したがって、この実施形態の別のアプリケーションにおいて、画像解析によってスフェロイドとしてグループ化された要素の面積は、細胞培養チャンバデバイスをインキュベータシステムから取り外すことなく、またその回転を止めることなく、スフェロイドまたは細胞培養チャンバデバイス全体に存在するDNA、RNA、タンパク質、または細胞数の量の推定値を提供するために使用され得る。いずれも、スフェロイドの増殖条件を維持し、細胞の摂動を最小限に抑えるために役立つ。FeyおよびWrzesinski、Wrzesinski他、およびFey他による出版物において、インキュベータからバイオリアクタが取り外され、それがカメラシステムの下に静止して載置される(それによって細胞の増殖に悪影響を及ぼす)。その後、細胞の写真が撮影され、2012年(PMID22454432)、2014年(PMID25222612)、および2020年(PMID32905230、この出版物における補足情報表1を参照)においてルックアップテーブル(LUT)が使用され、スフェロイドの平均「影面積」(これらの出版物においてそう称されるが、ここでは単に要素の面積として定義される)を存在する細胞数、スフェロイド内のDNAまたはタンパク質の量に変換するために用いられた。LUT内の正確な値は、実際の細胞株および使用されている増殖条件に依存するが、その原理は、任意の細胞型または条件に関して同じである。「スフェロイド」としてグループ化された各要素の面積を知ることで、細胞培養チャンバデバイス内の細胞の総数、DNAまたはタンパク質の量を非侵襲的に推測することが可能である。ここで説明される態様において、これらの測定は、細胞の灌流を最小限に抑えながら実行され、所望に応じて測定を高頻度で行うことを可能にする。
【0147】
この測定が間隔を置いて繰り返される場合、細胞培養チャンバ内の細胞の増殖を経時的に追跡することが可能であり、それによって、ユーザのインタラクションまたは労力を最小限に抑えながらユーザにデータが提示される。
【0148】
また、増殖曲線はその後、以前の増殖曲線と自動的に比較されてよく、曲線が「正常」増殖曲線から所定の程度逸脱している場合、プログラムは、ユーザに通知メッセージを発行し得る。そのような情報は、灌流型の機器において、たとえば増殖中の固体群が特定の栄養素に関して欠乏しないように培地交換速度を上げるために使用されてもよい。
【0149】
細胞培養チャンバ内のスフェロイドが何らかの方法で(たとえば薬物、候補薬物、または「ヒット」などの化合物、または植物抽出物などの化合物の混合物、増殖培地の変更、あるいは温度、pHの変更、または細胞培養チャンバを(少なくとも部分的に透過する波長(複数も可)の)電磁放射線で照射することによって)処理されている場合、スフェロイドの増殖に対する処理の効果を非侵襲的に測定することが可能である。この「処理された」増殖曲線は、その後、(以前の)対照「未処理」増殖曲線と比較することができ、その曲線が対照増殖曲線から逸脱している場合、プログラムは、ユーザに通知メッセージを発行し得る。また、特定の細胞型を細胞培養チャンバに含める、または細胞培養チャンバから取り除く効果も、同様の方法で追跡され得る。
【0150】
別の実施形態によると、特定の問題を探るために、本明細書で説明される細胞培養チャンバに関連して多くの種類のセンサが使用され得る。センサは、クリノスタット形細胞培養デバイスには組み込まれず(または関連して使用されず)、これは多くの場合、細胞培養チャンバを通って出入りする光または電磁放射線が不十分または不均一であることが理由である。そのようなセンサ、電磁放射線(または他の)源、および監視デバイスを含むことにより、細胞に提供された増殖環境を乱すことなく細胞培養から生物学的データを収集することが可能であり、そのような測定が高頻度で、反復的かつ自動的に行われることができるという大きな利点がもたらされる。電磁放射線の経路は、少なくとも電磁放射線源と監視デバイスとの間で、実質的に光学的に遮断されず均一でなくてはならない(ただし、照明の均一性を高めるために含まれ得る拡散器などのデバイスおよびセンサ自体を除く)。
【0151】
理想的には、これらのセンサは、無毒性である(存在する濃度によって定義され、細胞の増殖に影響を及ぼさず、または細胞培養デバイス内で調査される物質と化学的に反応しない)ことが望ましい。また、同様のセンサ、または異なる化合物や属性を測定するセンサとそれらを交換することも可能である。センサは、メモリ付きの読出し値をもたらす必要はないが、特定の条件に到達した場合に特定の信号を付与するように構成され得る。これは、回転応力または酸化ストレス、pH、または他の任意の属性であってよい。そのようさセンサの出力は、センサが特定の波長の光または他の電磁放射線で照明され、あるいはセンサが特定の波長の光または他の電磁放射線を生成する(異なる波長で放出または再放射する)場合に最も明確である(最も高い信号対ノイズ比を有する)ことが多い。
【0152】
いくつかの実施形態、特にセンサが利用される実施形態において、LEDまたはレーザ光源は、特定の波長の光を提供するために選択されてよく、または利用されるLEDやレーザは、異なる波長の光を生成するように調整可能であってよい。調整可能なレーザは、多数の供給元から市販されている。特定の波長を通しまたは遮断するための追加の特徴(たとえばフィルタ、回折格子)の使用は、信号対ノイズ比を向上させるための任意選択的なアプローチである。
【0153】
いくつかのセンサは、細胞培養チャンバの内側表面に「スポット」として、または小さなステッカやパッドの一部として適用される(たとえばpH、酸素の分圧、またはグルコースに感応する)化合物を利用する(そのような内側表面は、ポート内に挿入され、培養培地と接触するプラグの表面を有利に含むこともできる)。このセンサの照明により、適切なレセプタ(たとえば監視デバイスまたは無線受信器)によって捕捉され得る信号(通常は電磁)が生成される。このような例として、Fibox4トレース(メータ)、光ファイバ、および酸素センサスポットSP-PSt6-NAUと呼ばれる「非接触型」酸素センサ機器があり、PreSens社(ドイツ)によって製造される。PreSens社は、pHおよびCOのための同様のセンサも製造している。
【0154】
細胞培養チャンバ内のグルコース濃度を測定するために使用され得る多数のグルコースセンサが利用可能である。
【0155】
スフェロイド中の細胞は、グルコースをエネルギ源の1つとして用いることができ(グルコースは典型的には主要エネルギ源であり)、したがって、時間に伴い、細胞の活動によって培地中のグルコースレベルが低下する。インキュベータシステムが「灌流」型である場合、すなわち培地の少なくとも一部を自動的に交換することが可能である場合、グルコースレベルに関するデータは、培地の少なくとも一部を交換する機構を作動させるために使用されてよく、そうすることで、グルコースレベルが増加する。
【0156】
他の実施形態において、他の種類のセンサは、増殖培地に添加された化合物であってよく、同様に読み出され得る(例として、上述したフェノールレッド、ブロモクレゾールパープル、およびフクシン)。
【0157】
また他の実施形態において、他の種類のセンサは、細胞(の外側または内側)に付着(または吸着)または吸収される物質、または細胞や細胞の一部に溶解可能(たとえば膜または特定の膜に溶解可能)な物質であってよい。また他のセンサは、(脂質、タンパク質、核酸、または細胞内に存在する他の任意の成分に組み込まれた)細胞の一部であり、上述したものと同様に読み取ることができる。これに関する多数の例が存在し、蛍光色素(たとえば蛍光タンパク質(たとえばScott、2018、doi:10.1038/S41598-017-18045-y、またはBukhari、2019、doi:10.1016/j.tcb.2019.08.044)、標識抗体(たとえばCreative Biolabs、Nanostring、Antibodies Online、およびGenescript(後者は抗体に蛍光標識を付けるサービスを提供する)などの多くの企業から入手可能)、バイナリ色素(たとえばMarti他、2007、doi: 10.1016/j.tet.2006.08.109)、化学または蛍光ナノセンサ(たとえばAhmad他、2020、doi.org/10.1038/S41598-020-57654-y、およびFuおよびMa、2020、doi.org/10.1039/D0NR02844D)、またはアプタマ、または他の化合物が含まれる(ただしこれらに限定されない)。これらのセンサは、様々な方法で読み出され得る。これらは、化学発光、蛍光、蛍光共鳴エネルギ移動(FRET、たとえばBerchner-Pfannschmidt他、2008、doi:10.1183/09031936.00013408)、生物発光共鳴エネルギ移動(BRET)、または(有機電界効果トランジスタ(OFET)および有機電気化学トランジスタ(OECT)を含む)有機薄膜トランジスタ(OTFT)の使用を含む。グルコース、グルタチオン、コリン、NAD+乳酸、トリグリセリド、尿素、lgGおよびC反応性タンパク質などのタンパク質、およびステロイドなどの化合物のためのナノ粒子生化学センサのいくつかは、2010年にEl-AnsaryおよびFaddahによって再調査されている(doi:10.2147/NSA.S8199)。
【0158】
全てのナノセンサのうち、ヌクレオチド(DNA、RNA、LNAなど)アプタマは、特定の分子(たとえば抗生物質、CEA、またはATP)または分子の一部(たとえばエピトープまたは翻訳語修飾)と選択的に結合する特定のヌクレオチド配列が選択され得るという点が特有である。ナノセンサ配列は、その分子の特定の濃度範囲に(配列の小さな修正によって)「調整」され、リアルタイムフィードバックを提供することができる。いくつかのセンサは、同じ構造中で一方が構成的活性型、他方が条件的活性型である(そのような活動は、調査対象の特定の分子の濃度に依存する)2つの「レポータ」蛍光波長を放出するという点で「デュアル」である。そのようなデュアルシステムは、細胞内に存在するセンサの実際の量を補正することが可能であり、それによって、組み込まれているセンサの量にかかわらず異なる培養間で読出し値を正規化する手段を提供し得る。
【0159】
したがって、また別の実施形態において、センサは、細胞内で起こる、または細胞活性の結果として起こる物理学的、化学的、および生物学的プロセスに関するデータを提供するために使用され得る。センサの性質に依存して、オペレータの「要求」時、または数秒、数分、数時間、数日、またはそれ以上にわたって事前プログラムされた時間間隔(そのような間隔はセンサが対応する限り高頻度であってよい)で「問合せ」を行うことができ、それによってオペレータは、非侵襲的な方法で細胞培養チャンバ内の運動プロセスを追跡することができる。センサ出力から導出されたデータは、場合によっては(上述したように)、新しい培地の供給、細胞培養チャンバデバイスの回転速度、センサ問合せの頻度、または他の何らかのパラメータを調整するために、スフェロイドの増殖環境を調節するために使用され得る。
【0160】
多くの種類のセンサが存在し、それらは互いに独立して機能することができ、異なる波長の光を吸収および放出し得るので、特定の細胞培養に一度に複数のセンサの組み合わせが存在することが十分可能である。たとえば、2つの異なる種類の細胞に2つの異なる色センサが組み込まれる場合、培養中の細胞型の比率を監視することが可能である。2つの異なる色センサが同じ細胞に組み込まれる場合、それらは、2つの異なる生化学的経路の活動を追跡するために使用され得る(たとえばBervoets Charlier、2019、https://doi.org/10.1093/femsre/fuz001、およびRosenthal他、2018、DOI: https://doi.org/10.7554/eLife.33099)。
【0161】
画像解析出力の様々な態様の組み合わせは、収集されたデータを正規化するために使用され得る。異なる細胞培養デバイス(場合によっては異なるインキュベータ内の、場合によっては各グループ内の1または複数のデバイス)からのデータの組み合わせが、対照サンプルと処理サンプルとを比較するために使用され得る。この処理データは、リアルタイムでユーザに提供されてもよい。
【0162】
更なる実施形態によると、データの一部は、たとえばLUTおよびスフェロイドの影領域を用いて上述したように計算された、DNA、タンパク質、または細胞数の量(または他の任意のセンサパラメータ)によって正規化され得る。このようにデータを正規化することにより、たとえば経時的な細胞増殖の影響を、測定されたセンサ出力から除外することが可能である。正規化のための測定は、最も正確なデータを生成するために、センサ問合せと同時に(または直前または直後に)実行され得る。しかし、たとえば細胞増殖が(調査されているプロセスに対して)緩慢であり、センサ問合せが高頻度である、または短期間に行われる場合、全てのセンサデータに関する1つの正規化データセットを使用することが許容可能であり得る。
【0163】
この実施形態の特定のアプリケーションにおいて、「正常」増殖曲線のデータは、少なくとも1つの、場合によっては複数の(「対照用」として機能する)細胞培養チャンバから取得され、処理されたスフェロイドのデータは、対照用細胞培養チャンバ(複数も可)と平行して(理想的には同時に、場合によっては同じインキュベータユニット内で)増殖した、少なくとも1つの、場合によっては複数の(「試験用」として機能する)他の細胞培養チャンバから取得され得る。これは、実験が段階的に、または異なる機器で行われる場合に現在実現され得る再現性および実験精度よりも高い再現性および実験精度を実現する。また、細胞培養チャンバデバイスの1または複数のグループからのデータは、(上述したように)グループの少なくとも1つの処理の効果を追跡するために自動的に互いに比較され得る。したがって、インキュベータシステムは、画像解析から非侵襲的な方法で利用可能なデータを用いて高度なデータ解析を提供することができる。
【0164】
いくつかの実施形態において、1または複数の処理ユニットは、1または複数の監視信号からデータを抽出または導出し、それを、抽出または導出したデータの1または複数の特性に基づいて、所定のカテゴリの少なくとも1つが細胞または細胞クラスタに対応する異なるカテゴリに分類し、経時的な細胞増殖に関するデータを提供するように構成される。いくつかの更なる実施形態において、細胞増殖に関する情報は、ユーザに対して視覚化される。
【0165】
更なる態様および/または更なる実施形態によると、本明細書に開示される画像解析方法またはそのステップの1または複数を実行するように構成された(たとえば本明細書に開示されるインキュベータおよび/またはコンピュータの)1または複数の処理ユニットが提供される。いくつかの実施形態において、インキュベータ(複数も可)および/またはユーザインタフェースデバイスは更に、データロギングおよび/または文書化、たとえば回転速度、バイオマス(DNAタンパク質、細胞数)、増殖率、サイズおよび標準偏差(再現率)、および任意のセンサ出力などのデータの収集および格納を行うように構成され、各測定は、細胞培養チャンバデバイスの少なくともいくつか、たとえば全てに関して経時的に行われ、平均ならびに休止(回転しない)の期間および回数を含む。データが起こしたインキュベータ機能の変更およびそれが実行された時刻は、少なくとも場合によっては、ユーザに送信される任意の通知として記録される。これはたとえば、ビデオ(複数も可)および/または静止画像(複数も可)、および画像解析からのデータで補足され得る。データロギングまたは文書化のデータは、クラウドコンピューティング環境に(も)格納され得る。
【0166】
ユーザインタフェースデバイスは、たとえば、インキュベータの監視デバイス(複数も可)によって取得された信号のオンライン監視、そのような信号の格納、画像解析、および行われた任意の画像解析の出力(たとえば図7A~7Dに示す1または複数)のために構成され得る。
【0167】
いくつかの実施形態において、インキュベータは更に、ネットワークを介して、ユーザインタフェースデバイスおよび/または他の外部コンピュータデバイス(たとえばクライアント、サーバ、マスタなど)によって取得されたユーザ入力制御データを受信し、受信したユーザ入力制御データの少なくとも一部に応答して動作を変更し、または適合させるように構成される。
【0168】
いくつかの更なる実施形態において、インキュベータ(たとえばマスタユニット)は、ユーザ入力制御データを受信し、その少なくとも一部を他のインキュベータ(たとえばスレーブユニット)に通信するように構成され、他のインキュベータは、受信した更なるユーザ入力制御データの少なくとも一部に応答して動作を変更し、または適合させるように構成される。
定義
【0169】
本明細書において、全ての見出しおよび小見出しは単に便宜上使用されており、いかなるようにも本発明を限定するものとして構成されるものではない。
【0170】
本明細書における「細胞培養」という用語は、当技術分野において知られている任意の方法によって取得された、または最初に培養された、任意の種類の細胞、細胞クラスタ、組織状の構造、組織生検、スフェロイド、オルガノイド、または同様のサンプルを生きた状態で維持することを指す。
【0171】
本明細書における「細胞」という用語は、古細菌、原核生物、または真核生物にかかわらず任意の種類の生物から得た一次細胞、不死細胞、または(多能性細胞、(あらゆる意味での)誘導多能性細胞を含む)幹細胞、または遺伝子改変細胞を指し、複製のために生細胞を必要とするウイルスまたは他の実体物も含む。
【0172】
「画像処理」という用語は、強調画像を得るための画像全体の操作(たとえばコントラストや明るさの調整または画像の回転)に適用されることが多く(ただし必ずではない)、「画像解析」という用語は、画像から重要な情報を抽出すること(たとえば風景画像における木の識別のように、画像の部分、特徴、または要素を識別すること)に適用されることが多い(ただし必ずではない)。これら2つの用語(画像処理および画像解析)は、、主にこれらの定義に従って本明細書で使用されるが、本明細書において互換性を持って使用されることもある。
【0173】
「監視デバイス」という用語は、培養器システムの動作中の任意の時間に、細胞培養チャンバまたは細胞培養培地またはその内容物に関する1または複数の特性を記録または検出することが可能な任意のデバイスである。
【0174】
「監視信号」とは、記録、視覚化、ビデオ、画像、周波数、強度、および分光データを含むがこれらに限定されない、監視デバイスの使用によって得られる任意の信号である。少なくともいくつかの実施形態において、監視信号は、デジタル画像またはデジタルビデオを備え、または表す。
【0175】
本明細書に提供される任意のおよび全ての例、または典型的な文言の使用は、単に本発明を分かりやすく明示することが意図されており、特に主張されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる文言も、特許請求の範囲に記載されていない要素を本発明の実施に不可欠であると示すものとして解釈されてはならない。
【0176】
本発明は、適用法令によって許可されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載される主題事項の全ての変更例および均等物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0177】
図1】細胞を3次元(3D)で培養するために使用されるバイオリアクタの例の斜視図を示す。
図2】本明細書で開示されるインキュベータシステムにおける代替照明経路(前面照明および背面照明)の典型的な実施形態の概略斜視側面図を概略的に示す。
図3】細胞培養チャンバデバイスの第1の平面(たとえば正面)図画像を概略的に示す。
図4】細胞培養チャンバの5つの異なる回転速度における等しいサイズのスフェロイドの分布を概略的に示す。
図5】細胞培養チャンバの画像を、細胞培養チャンバデバイスの回転速度の調節のための画像解析によって使用され得るゾーンに分割する1つの解決策を概略的に示す。
図6】細胞培養チャンバの画像を、細胞培養チャンバデバイスの回転速度の調節のための画像解析によって使用され得るゾーンに分割する別の解決策を概略的に示す。
図7図7A~7D。本明細書で説明される機能のいくつかのそれぞれの典型的な実施形態を実施するコンピュータプログラムフローチャートを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0178】
図1は、細胞培養チャンバデバイス1の一例の斜視図を概略的に示し、そのようなデバイスに見られる要素のいくつかを示す。具体的には、2は、実質的に透明な主観察端部または部分を示す。この部分の背後には、細胞培養のためのエンクロージャ3がある。4は、エンクロージャ内へのアクセスを可能にする周縁ポートに位置するプラグである。5は、エンクロージャ内へのアクセスを可能にする前部ポートに位置するプラグである。6は、基準マーカとして使用され得る、細胞培養チャンバデバイスの要素である。この両側に、(入口および出口を有する)ガス交換ポート7が存在する。ガス交換ポート7の入口および出口は、要素6を画定または増強することにより、要素6を基準マーカとして適したものにする。バーコード(たとえば図2の8または図3の23など)などを基準マーカとして使用することもできる。
【0179】
図2は、本明細書に開示される培養器システムにおける2つの異なる照明経路の典型的な実施形態の概略斜視側面図を概略的に示す。10および10’はそれぞれ背面照明源および前面照明源を示し、点線および破線は、その結果生じる光路をそれぞれ示す。1は、本明細書に開示される細胞培養チャンバデバイスであり、3は、その細胞培養チャンバ(エンクロージャ)であり、その中で細胞または細胞クラスタが培養される。11は、監視デバイスを示す。12、12’、13、13’、14および14’は、特定の波長の光を選択的に含め、または排除し、細胞培養チャンバデバイス1との間で光を導くための1または複数の光フィルタまたはレンズを表す。6は、基準マーカ(たとえば、好適には図1に示すような基準マーカ)であり、8は、バーコードまたは同様の/他の識別子であり、複数のこのような細胞培養チャンバデバイスを備える培養器システムに、および/またはいくつかの培養器システムにわたり配置されると、特定の細胞培養チャンバデバイスを識別するために使用され得る。
【0180】
図3は、図1に概略的に示す細胞培養チャンバデバイス1の第1の平面(たとえば正面)画像20を示す。点線21で囲まれた領域は、細胞培養チャンバ3に対応する画像の部分である。22および23は、それぞれ基準マーク6およびバーコード8に対応する画像の部分である。24および25は、それぞれ前部ポートおよび周縁ポート(およびプラグ)に対応する画像の部分である。21内の光点(たとえば26)は、(ここでは前面照射で見られる)スフェロイドである。図3は、(領域21/細胞培養チャンバ3の外側に周方向に球体として、ここでは水滴の形態で見られる)多数の保湿要素も示す。少なくともいくつかの実施形態において、保湿要素は、セル培養チャンバ3と接触しているガス交換界面または周縁ガス透過性膜の少なくとも一部の近傍または隣接の空気またはガスを加湿または保湿するように構成される。
【0181】
図4は、超低速、低速、適正、高速、および超高速の5つの異なる速度で回転する細胞培養デバイスエンクロージャ3内の細胞クラスタまたはスフェロイドの典型的な分布の5つの典型的な画像を概略的に示す。矢印は、回転の速度および方向を示す。異なる画像(図4A~4E)におけるスフェロイドの異なる分布に留意する。明確性のために、たとえば前部ポートなどの多くの細部が排除されている。
【0182】
図5は、細胞培養チャンバの画像のゾーン、領域、部分、セグメントなどを概略的に示し、異なる実施形態に係る、たとえばまたは好適には図7A~7D(特に図7C)に関連して開示されるような画像解析に使用される、それぞれ30、31、32、および33と記された異なるゾーンなどの例を示す。これらのゾーンの実際のサイズおよび分布は説明のために示されており、他の多くの組み合わせおよび形状が使用され得る。矢印は、回転方向を示す。ゾーン30は比較的狭いゾーンであり、ここで、潜在的なエッジ効果(たとえばチャンバのエッジにおける光学収差および反射)が発生し、そのために画像解析からは除外され得る。細胞培養チャンバデバイスの回転速度を調節する実施形態の一例(たとえば図7Cのオプション1を参照)において、ゾーン31および(32+33)は、rpmが最適より遅い場合に画像解析に使用され、ゾーン(31+32)および33は、rpmが最適より速い場合に画像解析に使用される。ゾーン31は本明細書において第3の領域、ゾーン32は本明細書において第1の領域、ゾーン33は本明細書において第2の領域とも称され得る。
【0183】
図6は、細胞培養チャンバの第1の平面(たとえば正面)図画像を概略的に示し、異なる実施形態に係る、たとえばまたは好適には図7A~7D(特に図7C)に関連して掲示されるような画像解析に使用される、30、34、35、36、および37と記されたゾーンの例を示す。矢印は、回転方向を示す。破線(a‐‐aおよびb‐‐b)は、細胞培養チャンバデバイスの回転速度を調節する別の実施形態(たとえば図7Cのオプション2を参照)に係る細胞培養チャンバの画像の異なるゾーン、領域、部分、セグメントなどを示し、または画定する。この例では、rpmの速度を調節するために、ゾーン(36+37)とゾーン(34+35)とが比較される。代替実施形態において、36が34と比較され得る。a‐‐aは、典型的にはb‐‐bと直角を成す。a‐‐aが(方向または回転において)垂直からずれる程度は、典型的には、回転速度、培地の粘度、およびスフェロイドのサイズに依存する。ゾーン34は本明細書において第6の領域、ゾーン35は本明細書において第7の領域、ゾーン36は本明細書において第5の領域、ゾーン37は本明細書において第4の領域とも称され得る。
【0184】
図5および図6に示すゾーンは、画像解析における異なる領域に関連し、細胞培養チャンバ自体の物理的ゾーンには関連しない。言い換えると、ゾーンは、細胞培養デバイスの画像の異なる領域を分割するために使用される「切断テンプレート」と考えられ得る。そのため、ゾーンテンプレートは(細胞培養チャンバデバイスの回転に伴って)回転しない。特定のゾーンテンプレートは、使用される細胞培養チャンバデバイスの(監視デバイスによって監視される正面/側面から見た場合の)具体的な物理的設計に依存する。
【0185】
図7A~7Dは、本明細書で説明される(細胞培養チャンバデバイスの回転速度の調節および更なる情報を抽出するためのセンサの使用を含む)画像処理および/または画像解析機能のそれぞれの様々な実施形態を実行するコンピュータ実装プログラムまたは方法のフローチャート概要を概略的に示す。処理および/または解析される画像(複数も可)は、典型的には、たとえば1または複数のカメラ、CCDなどの1または複数の撮像または視覚システムなど、本明細書に開示される1または複数の監視デバイスによって取得または提供される。図示されたフローチャートによると、プログラムは、特定の(たとえばまたは好適には複数のうちの)細胞培養チャンバデバイスについて、当該デバイスが適切な培養器システムなどの軸に取り付けられると「開始」701し、デバイスが軸から再び取り外され、またはプログラムが停止されると「停止」する。下部の「アクション」ボックス(図の薄いグレーの下部領域)は、コンピュータ実装プログラムが培養器システム自体の動作を修正、および/または1または複数のユーザにデータ/情報または警告を送信することができるステップを示す。
【0186】
コンピュータ実装プログラムの関連部分は、単一の画像またはビデオシーケンスからの画像に実行され得るが、特定の機能は、典型的には複数の、場合によっては連続的な画像を必要とする。これらの画像は、「生」であってよく、または処理速度を高めるために何らかの方法で処理(たとえば圧縮)されてもよい。
【0187】
図示されたものは可能なステップのセットの一例であり、これらは提示された順序で行われなくてよい場合もある。また、全てのステップが行われる必要はなく、一部が繰り返される必要がある場合もある。個々のステップのいくつか(たとえば背景補正または要素識別)について、様々な異なるアルゴリズムが知られており、これらの多くは、所望の画像処理または画像解析タスクを実行するために使用することができる。
【0188】
タスクに依存して、照明は前面(監視デバイス/カメラと同じ側面)から、または(たとえば含まれるスフェロイドがシルエットで見えるように)背面からであってよい。照明(特にセンサを使用する解析の場合)は、異なる色および/または波長および/またはフィルタ間での(手動または自動の)切換えを必要とし得る。
【0189】
少なくともいくつかの実施形態において、ユーザは、特定の動作(たとえば6時間ごとまたは別の間隔で画像を収集する)を事前プログラムすることができる。いくつかの動作は、典型的にはデフォルトの開始値を有し、たとえばrpm(開始)は14.0rpmであってよく、典型的には、ユーザがこれらのデフォルト値を変更することが可能である。
【0190】
少なくともいくつかの実施形態において、rpmを調節する他の方法が存在する。たとえば、ユーザは、用いるべきrpmを手動で入力してよい。代替または追加として、フローチャートは、細胞またはスフェロイドの位置または軌道を用いる1または複数のステップを備える。そのようなステップはフローチャートに示されない。
【0191】
フローチャートで使用される略語は以下の通りである。CC:細胞培養チャンバデバイス、II:定められた画像領域内の積分強度((背景減算前または後の)画素強度値の合計)、rpm:毎分回転数、YおよびN:決定点(菱形ボックス)に対するイエスおよびノー応答(ここでYまたはNが得られない場合、この応答は特定のアクションに至らないものと仮定される)、また破線楕円内の二重文字(たとえばAAの周りの破線楕円)は、プログラムの一部が別の部分に接続する場所を示す。
【0192】
図7Aは、本明細書で説明される機能のいくつかのそれぞれの典型的な実施形態を実施するフローチャート(の一部)を概略的に示す。
【0193】
コンピュータ実装プログラムまたは方法は、ステップ701で開始し、ステップ702に進み、本明細書に開示されるような1または複数の撮像または視覚システムまたはデバイスによって少なくとも1つの画像が取得または捕捉される。上述したように、用途/実施形態に依存して、単一の画像、複数の後続画像、またはビデオシーケンスが取得され得る。ステップ703において、取得された画像(複数も可)/ビデオ(またはその1または複数の代表バージョン)が格納され、関連する日時が(たとえば他の関連データ/情報とともに)記録される。培養器のドアを閉めることにより、どのCCがどの軸に存在するかをチェックするサブルーチンが開始するが、必ずしも、(1または複数の軸に関してCCが存在するか否かを決定することとは別に)画像の収集(702)および後続処理(703~706)が生じるとは限らない。
【0194】
ステップ703はステップ704に進み、少なくともいくつかの実施形態において、図示されるように、1または複数の画像特性の調整が行われる。703において生画像を格納した後、画像は、その後の解析を向上させるために処理され得る。これは、焦点合わせ、ノイズ除去、平滑化、明るさおよびコントラストの調整(場合によっては非線形方式)を含み得るが、これらに限定されない。次に、任意選択的に、取得/捕捉された画像(たとえばビデオの)が軸またはCCの現在のrpmに一致する(またはそれを打ち消す)ように逆回転されるステップ707に進む前に、ステップ705が実行され、画像を位置合わせ(画像をXおよびY方向にスライドする)または特定の点(たとえばCCの回転の中心)に対し中心合わせするアライメントが行われる。このように、画像データは回転され、画像データの内容が(現在のrpmに従って回転しているにもかかわらず)静止して見える、または静止するように表示または処理され得る。したがって、画像データは、各画像またはそれらの一部(たとえば細胞培養チャンバデバイスに対応する部分)が、1つの画像フレームの撮影から次の画像フレームの撮影までの時間に生じる「順方向」回転に対応する量だけ「逆方向」に回転するように、継続的または間欠的に処理される。これはたとえば(特にステップ705からステップ707に進む場合)、単純に含まれるCCの現在の回転rpm(既知であることが多い)を表すデータまたは値を取得し、それを用いて画像を調整/逆回転を導出することによって行われ得る。代替/追加として、これは(後述のように特にステップ715からステップ707に進む場合)、バーコードおよび/または基準マーカの位置を特定し、その/それらの位置を逆回転された画像内で一定または固定に保つことによって行われ得る。上述したように、細胞培養チャンバデバイスに対してスフェロイドが「静止軌道」上にある場合、それらは画像内で概ね動かないように見えるため、個々のスフェロイドの観察が容易になり、詳しい検査が可能である。事実上、スフェロイドが基本的に動かない状態を維持することで、長期間にわたり個々のスフェロイドを追跡することが可能であり、単一のスフェロイドにおける生物学的プロセスの動態観察が可能である。
【0195】
ステップ705は、(オプションステップ707と)並行してステップ706に進み、(ステップ704および705によって)処理されたバージョンの取得画像(複数も可)/ビデオ(またはその代表バージョン)が格納および記録される。
【0196】
ステップ706および707が実行された後、(たとえばまたは好適には)処理された画像、複数の画像、またはビデオを提示するステップ708が実行され、ズームおよび/または他の典型的なユーザ画像操作の実現が可能になる。この提示は、たとえば培養器において、および/またはローカルまたは遠隔に存在し得る接続されたユーザデバイス上で行われ得る。
【0197】
ステップ702~708は、間欠的に、または概ねリアルタイムでループしてよいことを理解すべきである。リアルタイムの場合、記録および格納は間欠的にしか行われない。またこれらのステップは、主に図7Aに示すような画像処理を含む。いくつかの代替実施形態(不図示)において、ステップ707はステップ708ではなくステップ706に進んでもよく、直接取得された(CCに伴い回転するはずの)画像に加えて、またはその代わりに、逆回転された画像の格納および記録が可能である。
【0198】
ステップ706は、ステップ709にも分岐し、(たとえば特定の)CCが(それぞれの軸上または培養器内に)存在するか否かがチェックまたは試験される。ノーの場合、方法は、(それぞれの)CCが存在しないことが記録されるステップ710、格納された画像(複数も可)/ビデオが削除されるステップ711、(CCのない)軸が停止されるステップ712、および予想外にCCが存在しなかった場合、警告がトリガされ、または1または複数のユーザおよび/または他のシステム/デバイスに送信されるステップ713に進む。それが(CCが存在しないことが)予想外であったかの決定は、たとえば培養器の値または設定および/またはユーザ指定の値または設定に応じて実行され得る。
【0199】
試験709の結果がイエスである場合、方法は、示されたような画像解析を主に含むステップ714および後続ステップに進む。ステップ714において、少なくともいくつかの実施形態において、背景補正のために、適切(全般的または局所的)な閾値処理などが実行される。ステップ715に進むと、たとえばまたは好適にはステップ706の格納された処理画像(複数も可)に対し、(処理画像(複数も可)/ビデオ内の)1または複数の基準および/または識別マーカの(画像解析を用いた)識別が実行される。ステップ716において、基準および/または識別マーカ(複数も可)があるCCの関連識別子などを取得するために1または複数の識別された基準および/または識別マーカが読み取られ、または解釈されることにより、どのCCが存在するかの決定が可能になる。ステップ717において、(識別され読み取られた基準および/または識別マーカ(複数も可)によって決定された)CCが新たな/変更された位置に(すなわち新たな/変更された軸上に)あることが決定された場合、CCが存在する軸のrpm設定は、識別されたCCのための適切なRPMに合うように調整され、必要に応じて、以前の(CCが位置することが最後に記録された)軸が停止される。これにより、CCを識別し、現在CCが位置する軸のrpmを(過去にCCに関連付けられた)適切なものに調整することによって、たとえば検査または使用後に異なる軸でCCを培養器に戻すことによるCCの位置/軸位置のシームレスな変更が可能である。
【0200】
ステップ718において、取得されたCC識別子および時間およびデータが記録される。ステップ719において、(識別されたCCの)CC使用時間が(たとえば一時停止、培養器からの取外しなどを考慮して)計算または更新される。使用時間が所定の値を超過した場合、ステップ720において警告がトリガまたは送信される。
【0201】
ステップ721において、(識別されたCCが固定されている)軸を停止すべきか否かが試験される。イエスの場合、少なくともいくつかの実施形態において、ステップ722において(たとえば1または複数の基準および/または識別マーカ(複数も可)を用いて)軸が所定の向きに回転され、それぞれの軸の回転が停止される。ノーの場合、方法は、接続点723および(図7Bの)750によって示すように、追加の画像解析のために図7Bのステップ730に進む。
【0202】
図7Bは、本明細書で説明される機能のいくつかのそれぞれの典型的な実施形態を実施するフローチャート(の一部)を概略的に示す。
【0203】
(ここでは図7Bのステップ721の「ノー」から進む)ステップ730において、当該画像の1または複数の部分が(更なる)画像解析のために選択される。ステップ731において、画像内でCCが識別される。水滴または他の保湿剤が位置するCCの環状領域が選択され、そこに存在する水の量を決定するために使用され得る。また、CCの円形観察窓の位置が特定される。この観察窓領域において、当該CCの(円形)前部プラグ(たとえば図1の5または図3の24を参照)が識別され、画像は、プラグの内側(プラグのエッジに囲まれた画像の平坦で鮮明な内側部分)と、プラグの外側(すなわち円形観察窓領域の残りの部分)とに分割される(たとえば図3を参照)。センサがプラグの内側に配置されている場合がある。その場合、図7Dで説明するように、ステップ732において、センサ(複数も可)が問合せされる。これは、色、波長、フィルタの所定の組み合わせと、その後のIIの測定とを必要とし得る。センサがプラグ領域の外側に配置されている場合があり、その場合、ステップ734においてセンサ(複数も可)の同様の問合せが行われる。
【0204】
ステップ736において、画像の要素が識別され、そのうちのいくつかは、CCの回転速度の調節のために(図7CへのリンクZZ749を介して)用いられ得る。ステップ737において、画像解析に関して周知のアルゴリズムを用いて、エッジ検出、閾値処理、フィルタリング、および分類によって要素が更に識別される。要素は、重なり合う場合、形状、円形度、および撥水性などの特徴によって分割される必要があり得る。その後、各要素の(位置、寸法、面積、円形度、形状、平滑度、IIを含む)特性が決定され、これらの特徴の1または複数が、要素をグループに分類するために用いられる。その後、(たとえば平均、標準偏差などを決定するために)これらのグループに通常の統計ツールが適用され得る。これらのグループは、たとえば画像内の要素の色重ねによって、あるいはグラフィック、表、または他の手段740によって、ユーザに表示され得る。任意選択的に、ユーザは、画像解析に使用されるパラメータのいくつかとインタラクトし、その機能を変更741することができる。パラメータの変更により、画像要素の再計算、再識別、および表現が行われる。
【0205】
識別された画像要素グループの1つは、(たとえば高い円形度、暗いエッジおよび明るい中心部(またはネガ画像ではその逆)を特徴付けられる)気泡に対応し得る。(ステップ738において)これらが検出されると、ステップ739においてユーザに警告が送信される。別の画像要素グループ742は、(たとえばサイズによって特徴付けられる)個々の細胞に対応してよく、他のグループは、細胞のクラスタ(「スフェロイド」または「オルガノイド」)に対応してよい。ステップ744において、接続点743を介して、特性から、または細胞内または細胞上に位置するセンサの読取り値から、特定の生物学的情報を計算することが可能である。この生物学的情報は、存在する細胞の数、DNA、RNA、タンパク質の含有量、または他のバイオマーカであってよい。これらの要素の全ての外側にある(ただしCC観察窓内にある)画像領域は一般に、細胞の増殖培地に対応する。これもまた、たとえばpHのセンサまたはインジケータ(たとえばフェノールレッド)を含んでよく、画像処理によって、細胞が増殖している溶液のpHが決定される。ユーザは、これらのグループ、特徴、または特性のいずれかに、プログラムが警告748を発行すべきである閾値または設定点を割り当ててよい747。この例として、画像解析によって、細胞の総数(細胞+細胞クラスタ)がCCの個体数過剰を示す値を超過したことが計算される場合がある。この場合、ユーザは、培養を分割する、または培地をより頻繁に交換することを促され得る。
【0206】
異なる時点で収集されたデータにより、異なる特性を有するグループが識別され得る。たとえば、「細胞クラスタ」グループの平均面積は、時間に伴い増加し得る745。これは、細胞の増殖率を計算し、そのデータをユーザに提示するために用いられ得る746。
【0207】
図7Cは、特定の軸上に存在する細胞培養チャンバデバイスのrpmを自動的に制御する2つの可能な方法または実施形態を概略的に示す。このプログラム(またはサブルーチン)は、その用語表現において先行の図を参照し、CC観察窓の画像を、それぞれ図5および図6に例として示すゾーンに分割し、回転方向が時計回りであると仮定する。「ノイズ」を低減するために、積分強度を計算する前に、複数の画像が平均化され、または別の適切な方法で処理され得る。(たとえばステップ763、766、793、および796、799のように)許容値または係数x%を加算することによって、rpmが許容可能である速度範囲を規定することが可能になる。プログラムの結果、(たとえばステップ764、767、794、および797のように)rpmを上昇または低下させるアクションが行われた場合、画像解析は、所定の長さの時間(細胞クラスタの動きを新たなrpm速度に一致させるために、(クラスタのサイズおよび細胞が増殖している培地の粘度に依存して)通常1時間未満、より典型的には約10分間)後にステップ761または791から繰り返される必要がある。プログラムの結果、ステップ770または800においてrpmがOKであると結論が下された場合、速度チェックは、次の所定の時点に繰り返される必要がある。「速度チェック」は、定期的な(たとえばまたは好適にはユーザがプログラム可能な)間隔で、たとえば培養の最初の4日間は30分ごと、その後は6時間ごとに繰り返される必要がある。
【0208】
上記のオプションはいずれも、3Dスフェロイドまたはオルガノイドであると定義された画像要素に実行され得る(すなわち、図7Cに示す2つのオプションに、更に2つのオプションが与えられる)。そうでない場合、別の特徴(たとえばスフェロイドまたはオルガノイドの積算面積)が使用され得る。複数の画像から定義されたスフェロイドまたはオルガノイドの軌道データは、たとえば回転速度を調節するために使用されてもよい。
【0209】
rpm制御オプション1によると、図示されたプログラムまたはサブルーチンは、ステップ761に進む前に、接続点760におけるどこか(たとえば図7Bのステップ743または749)から開始され、ステップ761において、取得された画像(たとえば平均化画像)は、例として、図5に示すものに対応する所定の数の領域(ここでは例として3つ)に分割され、単位面積に正規化される。ステップ762において、(図5の)定義された面積または領域31、32、および33の各々における積分強度(II)((背景減算の前または後の)画素強度値の合計)が決定される。たとえばx%と示される特定の許容値または係数を加えた、面積または領域32(すなわち第1の領域32)のIIが、(ステップ763において試験された)面積または領域33(すなわち第2の領域33)のIIより大きい(前面照明が想定される)場合、rpmは、ステップ765においてrpmの低下をログ内に/ログ変更として記録する前に、ステップ764において適宜下げられる。rpm速度の変化の程度は、多数の方法で計算され得る(そのうちのいくつかは、異なる状況に関して他よりも適切である)。これらの方法は、ユーザ定義、rpmのデフォルトパーセンテージ、許容可能なrpmを実現するために必要であったrpm速度の変化以前の回転からの推測を含む。rpm速度変更の連続的な繰返しは、通常、徐々にサイズが小さくなる段階を用い、段階のサイズは、たとえば32+x%と33との間、または36+37+X%と34+35との間の差の程度に依存する。
【0210】
面積または領域31(すなわち第3の領域31)の単位面積当たりのIIが、たとえばx%で示される特定の許容値または係数を足した状態で、(ステップ766において試験されるように)面積または領域32(すなわち第2の領域32)の単位面積当たりのIIより大きい(前面照明が想定される)場合、ステップ768においてrpmの上昇をログ内に/ログ変更として記録する前に、ステップ767において(rpmの低下に関して説明したのと同様に)rpmが適宜上げられる。
【0211】
面積または領域32(すなわち第1の領域)のIIが、(ステップ769において試験されるように)面積または領域33(すなわち第2の領域)のIIと等しく、場合によっては許容値または係数+/-x%によって示される特定の閾値範囲内にある場合、ステップ770において、現在のrpmがOK、または少なくとも適当であると結論が下され、このインジケーションとともに現在のrpmが記録される。
【0212】
rpm制御オプション2によると、図示されたプログラムまたはサブルーチンは、ステップ791に進む前に、接続点790におけるどこか(たとえば図7Bのステップ743または749)から開始され、取得された画像(たとえば平均化画像)は、例として、図6に示すものに対応する所定の数(ここでは例として4つ)の領域に分割される。ステップ792において、(図6の)定義された面積または領域34、35、36、および36の各々における積分強度(II)((背景減算の前または後の)画素強度値の合計)が決定される。面積または領域36および37(すなわち第4の領域37および第5の領域36)のIIの合計が、たとえばx%で示される特定の許容値または係数を足した状態で、(ステップ793において試験された)面積または領域34および35(すなわち第6の領域34および第7の領域35)のIIの合計より小さい(前面照明が想定される)場合、ステップ795においてrpmの低下をログ内に/ログ変更として記録する前に、(上述したように)ステップ794においてrpmが適宜下げられる。
【0213】
面積または領域36および37(すなわち第4の領域37および第5の領域36)のIIの合計が、(ステップ796において試験されるように)面積または領域34および35(すなわち第6の領域34および第7の領域35)のIIの合計に、たとえばx%で示される特定の許容値または係数を足したものより大きい(前面照明が想定される)場合、ステップ798においてrpmの上昇をログ内に/ログ変更として記録する前に、(上述したように)ステップ797においてrpmが適宜上げられる。
【0214】
面積または領域36および37(すなわち第4の領域37および第5の領域36)のIIの合計が、(ステップ799において試験されるように)面積または領域34および35(すなわち第6の領域34および第7の領域35)のIIの合計と等しく、場合によっては許容値または係数+/-x%によって示される特定の閾値範囲内にある場合、ステップ800において、現在のrpmがOK、または少なくとも適当であると結論が下され、このインジケーションとともに現在のrpmが記録される。
【0215】
図7Dは、化学物質または生物学的に重要な分子の分析のための、たとえばまたは好適には本明細書に開示される典型的なセンサの使用を概略的に示す。センサの使用は、典型的には、細胞培養チャンバデバイスの周囲に、または細胞培養チャンバデバイスに関連して配置された色、波長、および/またはフィルタの適切な組み合わせの選択を必要とする(たとえば図2の12、12’、13、13’、14、および14’を参照)。センサ測定時間は、たとえばユーザがプログラム可能であり、または他の測定値(たとえば計算されたスフェロイドのDNAまたはタンパク質含有量)に依存し得る。「ノイズ」を低減するために、センサ出力を計算する前に、複数の画像が平均化され得る。
【0216】
図示されたセンサ分析の実施形態によると、図示されたプログラムまたはサブルーチンは、ステップ901に進む前に、接続点900におけるどこか(たとえば図7Bのステップ733、735、または743)から開始される。ステップ901は、細胞培養チャンバデバイス(CC)、含まれる細胞、および培地の1または複数に化学物質または生体分子のための1または複数のセンサが存在する場合、ステップ902に進み、1または複数の型のセンサ出力データを取得するために1または複数のセンサが読み取られる。取得されたデータ(および/またはそこから得られる処理または導出データ)の少なくとも一部は、ステップ905において記録され、ステップ906において提示される。また、ステップ903において、少なくとも1つのセンサ出力がそれぞれの所定の閾値に達する場合、警告がトリガまたは送信される。また、ステップ904は、取得された1または複数のセンサ出力(および/またはそこから得られる処理または導出データ)の少なくとも一部を用いて、1または複数の他の機能の変更、起動、開始、停止などを行う。
【0217】
強調すべき点として、上記においていくつかの好適な実施形態が示されたが、本発明は、これらに限定されるものではなく、以下に示す特許請求の範囲において定義される主題事項の範囲内である他の方法で具体化され得る。
【0218】
強調すべき点として、「備える/備えている」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、要素、ステップ、または構成要素の存在を明示するために用いられるが、1または複数の他の特徴、要素、ステップ、構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。
【0219】
複数の特徴を挙げる特許請求の範囲において、これらの特徴の一部または全ては、1つの同じ特徴、構成要素、または事項によって具体化され得る。特定の手段が、互いに異なる従属クレームにおいて記載され、または異なる実施形態において説明されるというだけの事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0220】
特許請求の範囲において、括弧内にある任意の参照符号は、特許請求の範囲を限定するものと解釈されてはならない。「備える」という言葉は、クレーム内に記載されたもの以外の要素やステップの存在を排除するものではない。要素を冠する「a」または「an」という語は、複数のそのような要素の存在を排除するものではない。
【0221】
特定の手段が互いに異なる従属クレームにおいて記載されるという事実のみでは、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことは示されない。
【0222】
開示される本発明の様々な実施形態および/またはその要素は、特許請求の範囲において定義される本発明の範囲から逸脱することなく組み合わせられ得ることが当業者には明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
【国際調査報告】