(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】中鎖脂肪酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/6409 20220101AFI20240115BHJP
【FI】
C12P7/6409
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023540543
(86)(22)【出願日】2022-01-04
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 IB2022050038
(87)【国際公開番号】W WO2022144863
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2021-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522284085
【氏名又は名称】ドランコ,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】DRANCO, NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【住所又は居所原語表記】Dok Noord 4C, bus 3, 9000 Gent BELGIUM
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ヤン レミ ヘー
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AD02
4B064CD23
4B064DA11
4B064DA16
(57)【要約】
本発明に係る中鎖脂肪酸の製造方法は、有機廃棄物(3)から中鎖脂肪酸(2)を製造する方法(1)であって、有機廃棄物(3)を固体画分(5)と液体画分(6)とに分離する分離工程(4)と、後発酵工程(7)中に液体画分(6)を発酵させる工程と、バイオマス分離工程(12)により、少なくとも部分的に発酵した液体画分(11)を、低スラッジ流出液(14)と高スラッジ流出液(13)とに分離する工程と、低スラッジ流出液(14)から中鎖脂肪酸(2)を抽出する抽出工程(15)とを有することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機廃棄物(3)から中鎖脂肪酸(2)を製造する方法(1)であって、
該方法(1)が、
・主発酵工程(21)で有機廃棄物を発酵し、有機廃棄物(3)を少なくとも部分的に乳酸に変換する工程と、
・有機廃棄物(3)を固体画分(5)と液体画分(6)とに分離する分離工程(4)と、
・後発酵工程(7)中に液体画分(6)を発酵させ、それにより乳酸の少なくとも一部を中鎖脂肪酸(2)に変換する工程と、
・バイオマス分離工程(12)により、少なくとも部分的に発酵した液体画分(11)を、低スラッジ流出液(14)と高スラッジ流出液(13)とに分離する工程と、
・低スラッジ流出液(14)から中鎖脂肪酸(2)を抽出する抽出工程(15)と
を有する
ことを特徴とする中鎖脂肪酸の製造方法。
【請求項2】
主発酵工程(21)の前に、場合によっては前処理工程(17)を経た有機廃棄物(3)とバイオマス(19)とを混合する混合工程(18)を実施し混合物(20)を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機廃棄物(3)をバイオマス(19)と混合する混合工程(18)の際に、有機廃棄物(3)の発酵工程(7,21)における発酵を刺激する添加剤(28)を加えることができる
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記添加物(28)が、酸及び/又は塩基及び/又は酵素及び/又は例えばミネラル、微量元素及びビタミン等の一つ以上の栄養素を含む
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
主発酵工程(21)が、10%~35%の間の比較的高い乾物含量で行われる
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
主発酵工程(21)が、微生物が増殖する25℃~60℃、より好ましくは30℃~50℃、最も好ましくは35℃~45℃の間の温度で行われる
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
主発酵工程(21)のpH値が4~6であり、かつ、酸若しくは塩基の添加、又はプロトン及び/又は水酸化物イオンによって調整可能である
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
主発酵工程(21)が、最短で1日、最長で10日行われる
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
主発酵工程(21)の後に混合工程(24)を行い、少なくとも部分的に発酵した混合物(23)を形成し、処理水(25)が少なくとも部分的に発酵した混合物(23)に添加される
ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
後発酵工程(7)を6時間~10日間行う
ことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
後発酵工程(7)の間のpH値が5~7である
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
後発酵工程(7)が、1~15%、より好ましくは2~10%、最も好ましくは4~8%の乾物含量で行われる
ことを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
後発酵工程(7)が、22℃~55℃、より好ましくは28℃~45℃、最も好ましくは30℃~37℃の温度で行われる
ことを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
中鎖脂肪酸(2)を低スラッジ流出液(14)から抽出する抽出工程(15)が、流体-流体抽出又は電気化学的抽出等からなる
ことを特徴とする請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
混合物(20)が、乳酸及び/又は乳酸に変換可能な基質を含み、前記乳酸及び/又は基質が、主発酵工程(21)の間に、短鎖脂肪酸等の中間生成物、及び最終生成物である中鎖脂肪酸(2)に変換可能である
ことを特徴とする請求項2~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
廃棄物(3)、場合によっては前処理工程(17)を経た、又は発酵された混合物(23)が、後発酵工程(7)の間に最終生成物として中鎖脂肪酸(2)に変換され得る乳酸及び/又は短鎖脂肪酸等を含有する
ことを特徴とする請求項1~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
乳酸及び/又は短鎖脂肪酸が、微生物の鎖伸長によって、後発酵工程(7)及び/又は主発酵工程(21)の間に、カプロン酸を含む中鎖脂肪酸(2)に変換され、それによって乳酸及び/又は短鎖脂肪酸が中間生成物として製造され得る
ことを特徴とする請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
固形画分(5)が、嫌気性消化工程(8)によって堆肥(10)及び/又はバイオガス(9)に変換される
ことを特徴とする請求項1~17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
後発酵工程(7)及び/又は主発酵工程(21)の間に処理ガス(22)が得られ、
前記処理ガス(22)は、直接的及び/又は間接的に嫌気性消化工程(8)に排出される
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中鎖脂肪酸の製造方法に関する。
より具体的には、本発明は、有機廃棄物から中鎖脂肪酸を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中鎖脂肪酸は、ヤシ油やパーム油から抽出されていた。
この従来の方法の欠点は、得られる中鎖脂肪酸が比較的少ないことにある。
他の欠点は、ヤシ油及びパーム油は、中鎖脂肪酸の製造源として持続可能でないことにある。
本発明の目的は、前記した欠点及び他の欠点の一つに対する解決策を提供することにある。
【発明の開示】
【0003】
この目的のために、本発明は、
・主発酵において有機廃棄物を発酵させ、有機廃棄物を少なくとも部分的に乳酸に変換する工程、
・有機廃棄物を、固体画分と液体画分とに分離する工程、
・後発酵(post-fermentation)中に液体画分を発酵させ、乳酸の少なくとも一部を中鎖脂肪酸に変換する工程、
・バイオマス分離工程を用いて、少なくとも部分的に発酵された液体画分を、スラッジの少ない流出液と、スラッジの多い流出液とに分離する工程、及び
・スラッジの少ない流出液から中鎖脂肪酸を抽出する工程
を備えた有機廃棄物から中鎖脂肪酸を製造する方法に関する。
この方法の利点は、中鎖脂肪酸を持続的に生産できることにある。
他の利点は、前記方法が、生物学的廃棄物を処理する持続的でエコロジカルな方法であり、(従来の廃棄物処理に比べて)高い付加価値を持つ生物学的生産物が得られることにある。
【0004】
また、本発明の他の利点は、とりわけ乳酸を中間生成物として中鎖脂肪酸をその場で生産する方法であることにある。
この方法によって、外部からの添加やエタノール場生産を必要とすることなく、有機廃棄物を中鎖脂肪酸に処理することが可能になる。
乳酸はエタノールに比べて有害性及び/又は毒性が低いため、それほど厳しい安全対策や検査が必要ない。
【0005】
有機廃棄物の固体画分及び液体画分への分離は、廃棄物をバイオマスに混合する混合工程に先行することができる。
有機廃棄物をバイオマスと混合する際に、微生物及び/又は添加物、例えば、酵素及び/又は、微量元素及び/又はミネラル及び/又はビタミン等の特定の栄養素を添加することもできる。
この利点は、前記添加物が廃棄物の発酵を促進し得ることにある。
好ましくは、前記混合工程に続いて主発酵が行われ、廃棄物が発酵される。
主発酵と後発酵の場合、混合工程はこれら発酵工程の間に行われ得、処理水が発酵混合物に添加される。
この処理水は、スラッジの少ない流出液から中鎖脂肪酸を分離した後に得ることができる。
後発酵及び/又は主発酵の間に、処理ガスが形成され得、前記処理ガスは、好ましくは、水素ガスを含む。
前記水素ガスは、プロトンの電解生成に使用され得る。
この利点は、外部の酸及び/又は塩基を添加することなく、pHを調整するために必要な物質を提供できることにある。
【0006】
溶液中の中鎖脂肪酸を含む発酵混合物は、一つ又は複数のメンブレンフィルタを用いてろ過され得、それにより、バイオマスが保持され、中鎖脂肪酸は、スラッジの少ない流出液中に残る。
この利点は、前記バイオマスを、例えば、バイオマスを有機廃棄物と混合する間、又は、一方若しくは両方の発酵工程の間に再利用することができることにある。
前記した方法は、タンク、反応器、プレス又は遠心分離機のような既存の設備を使用するため、適用が比較的簡単である。
この方法の様々な工程は断続的な動作を有し得、それによりエネルギ吸収工程を交互に行うことができ、その結果、電力消費を低下することができ、環境的及び経済的の両方に有利である。
好ましい実施形態では、この方法及びこの方法のために使用され得る設備には、太陽光発電及び/又は風力エネルギ及び/又はこの方法から得ることができるバイオガスを用いて電力が供給される。
この主のエネルギは、pHを調整するために使用され得るプロトン及び/又は水酸化物イオンの電解生成にも寄与し得る。
加えて、好ましくは、限られた量の化学物質、及び/又は水、及び/又はバイオマス等のみが外部から供給される。
この方法には、例えば、化学物質、及び/又は化合物、及び/又は水、及び/又はバイオマス、及び/又は一つ又は複数のそれらの組み合わせ等の再利用を可能にする様々な内部再循環が設けられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明による連続工程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の特徴をより良く示すことを意図して、本発明による中鎖脂肪酸の製造方法の幾つかの好ましい用途を、添付図面を参照しながら、限定することのない実施例として説明していく。
図1は、本発明による連続工程を模式的に示す図である。
図2は、
図1の方法の代替方法を示す図である。
【0009】
図1に示す方法は、有機廃棄物3から中鎖脂肪酸2を製造することを意図するものである。
【0010】
中鎖脂肪酸2は、カプロン酸、エナント酸及びオクタン酸等のような、少なくとも6個のC原子を持つ脂肪酸を意味する。
【0011】
このような中鎖脂肪酸2を製造するための基質として、例えば、台所ゴミ(生ごみ)、及び/又は食品廃棄物、及び/又は選択的に収集された他の単純分解性有機廃棄物3、及び/又は同様の特性を有する他の種類の有機基質のような様々な廃棄物流3が適している。
【0012】
このような廃棄物3は、液体廃棄物及び固体廃棄物の両方、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0013】
このため、有機廃棄物3は、主発酵工程21中に加水分解によって分解され、分解工程の中間生成物及び鎖伸長の基質として作用する乳酸に変換され得る。
【0014】
主発酵工程21中、乳酸は、部分的に中鎖脂肪酸製造の中間生成物、例えば、酢酸や酪酸のような短鎖脂肪酸に変換され得、また、カプロン酸を含む最終生成物である中鎖脂肪酸2にも変換され得る。
【0015】
発酵した有機廃棄物3は、固体画分5と液体画分6とに分離される。
【0016】
このような液体画分6は、篩又はプレス等を用いて廃棄物3を分離することで得ることができる。
【0017】
その後、液体画分6は、後発酵工程7中に発酵され、それにより、乳酸の少なくとも一部は、最終製品としての中鎖脂肪酸2に変換される。
前記液体画分6には、例えば、繊維等の小さな有機粒子を依然として含まれており、前記粒子は、有機廃棄物3の篩分け及び/又はプレス中に保持されない。
【0018】
これらの有機粒子は、後発酵工程7中に乳酸に変換され、その後、前記乳酸の少なくとも一部が、後発酵工程7中に中鎖脂肪酸2に変換され得る。
【0019】
従って、より多くの中鎖脂肪酸2を得ることができる。
【0020】
前記固体画分5は、嫌気性消化工程8によってバイオガス9及び/又は堆肥10に変換され得る。
【0021】
好ましくは、公知の乾燥嫌気性堆肥化(DRANCO)システムがこの処理のために使用される。
【0022】
このような後発酵工程7は、連続攪拌槽反応器(CSTR)、アップフロー嫌気性汚泥ブランケット反応器(UASB)又は充填床反応器(PBR)等で実行され得る。
【0023】
後発酵工程7の後、発酵混合物11は、遠心分離及び/又は精密ろ過などのバイオマス分離工程12によって、発酵を触媒し得る活性微生物を主に含む高スラッジ流出液13と、中鎖脂肪酸2を豊富に含む低スラッジ流出液14とに分離される。
【0024】
発酵混合物11を分離することは、バイオマス分離工程12によって少なくとも部分的に発酵した液体画分を分離することを意味すると理解される。
【0025】
前述の低スラッジ流出液14は、スラッジを含まない場合もある。
【0026】
その後、前記低スラッジ流出液14は、低スラッジ流出液14からの中鎖脂肪酸2の抽出工程15に使用される。
【0027】
この工程は、例えば、流体-流体抽出又は電気化学的抽出15によって行うことができ、膜ろ過は使用してもしなくてもよい。
【0028】
図2に示すように、好ましくは、廃棄物3は、枝石やプラスチック等の不要な不純物から廃棄物16を保護するために、まず前処理工程17に供される。
【0029】
この廃棄物3の前処理工程17では、とりわけ、回転してもしなくてもよい篩及び/又はドラム等が使用され得る。
【0030】
さらに、有機化合物の放出を刺激するために、前処理工程17中に、例えば、破砕及び/又は、刻み及び/又は、細断等の手段を用いて、廃棄物3を機械的に処理することも可能である。
【0031】
好ましくは、有機廃棄物3は、嫌気状態の下でバイオマス19に混合され混合物20を形成し、前記バイオマス19は、好ましくは、生産工程の別の工程から来るものである。
【0032】
該方法は、バイオマス19を再利用できるように様々な再循環工程を有し得る。
【0033】
従って、バイオマス19は、主発酵工程21から、及び/又は固体画分5及び液体画分6の分離工程4の後、及び/又はバイオマス分離工程12の後に得ることができ、前記得られたバイオマス19は、廃棄物3又は前処理廃棄物31の混合工程18中に添加することによって再利用され得る。
【0034】
バイオマス19は、特定の鎖伸長微生物、例えば、カプロイシプロデュセンス属(Caproiciproducens sp)及び/又はルミノコッカス属(Ruminococcaceae sp)及び/又はクロストリジウム・クルイベリ(Clostridium kluyveri)及び/又はシュードラミバクター属(Pseudoramibacter sp)、及び/又はラクトバチルス属(Lactobacillus sp) 及び/又はオルセネラ属(Olsenella sp)等のような乳酸形成バクテリアを含み、従って、中鎖脂肪酸2の生成に寄与し得る。
【0035】
バイオマス19と廃棄物3又は前処理済廃棄物31との混合工程18の後に、混合物20は主発酵工程21に供され、それにより、混合物20は特定の条件下で発酵される。
【0036】
前記主発酵工程21の間、有機廃棄物3又は前処理済廃棄物31は、少なくとも部分的に乳酸に発酵される。
【0037】
好ましい実施例では、前記主発酵工程21の間に生成される乳酸は、主発酵工程21中に少なくとも部分的に中鎖脂肪酸2に変換される。
【0038】
さらに、主発酵工程21中に、処理ガス22が生成され得、前記処理ガス22は、メタンに変換され得る。
【0039】
好ましくは、前記処理ガス22は、前記固体画分の嫌気性消化工程8に排出される。
【0040】
前記処理ガス22は、水素ガスを含み得、前記水素ガスは、微生物鎖伸長を刺激するために主発酵工程21に添加することができる。
【0041】
好ましくは、前記水素ガスは、プロトンの電解生成にも使用され、該方法1には、内部酸供給が設けられ得る。
【0042】
主発酵工程21及び/又は後発酵工程7の間、エタノールが生成される可能性もある。
【0043】
このようにエタノールをその場で生成することは、生物学的廃棄物を乳酸に処理するためにも、例えば、乳酸を中鎖脂肪酸に鎖伸長するためにも必要ない。
【0044】
さらに、該方法1は、微生物の鎖伸長によって中鎖脂肪酸2に変換される乳酸を生成することを目的としている。
【0045】
好ましい方法では、主発酵工程21及び/又は後発酵工程7の間に、大量のエタノールが生成及び/又は添加されることはない。
【0046】
前記主発酵工程21の後に、発酵された混合物23は、混合工程24に供され得、それにより、処理水25及び/又は静水30が混合物23に加えられ得る。
【0047】
この処理水25は、該方法1の後の工程から来るもので、バイオマス分離工程12の後、及び/又は抽出工程15の後に得ることができる。
【0048】
抽出工程15を介してバイオマス分離工程12の後に得ることがえきる処理水25を混合工程24に間接的に排出することが可能であり、それによって発酵混合物23は排出された処理水25と混合工程24で混合され得る。
【0049】
バイオマス分離工程12と抽出工程15との間に、前述の工程12及び15を互いに独立して動作させるためのバイパス32を設けることができる。
【0050】
好ましくは、前記処理水25は比較的低濃度の中鎖脂肪酸2を含む。
【0051】
有機化合物及び無機化合物の濃度を所望の範囲内に持ってくるため、又は維持するために、必要であれば、又は、所望であれば、新鮮な水30を加えることができる。
【0052】
新鮮な水30とは、水道水、雨水及び/又は地下水等を意味する。
【0053】
処理水25を発酵混合物23と混合した後、好ましくは、前記混合物23は、少なくとも分離工程4において前述の液体画分6と固体画分5とに分離され、この場合も、液体画分6は、後発酵工程7に供給されることになる。
【0054】
有機廃棄物3及び/又は前処理廃棄物31及び/又は発酵混合物23を、液体画分6、固体画分5及びバイオマスに富む画分19に分離することも可能である。
【0055】
主発酵工程21及び/又は後発酵工程7は、微生物の鎖伸長処理によってカプロン酸を主成分とする中鎖脂肪酸2が形成されるように制御される。
【0056】
この目的のために、有機廃棄物3は、主発酵工程21の間に加水分解によって分解され、分解工程の中間生成物および鎖伸長の基質として作用する乳酸に変換され得る。
【0057】
主発酵工程21の間に、乳酸は部分的に中鎖脂肪酸製造の中間生成物、例えば酢酸や酪酸のような短鎖脂肪酸、及びカプロン酸を含む最終生成物中鎖脂肪酸2に変換され得る。
【0058】
乳酸の生産中、タンク内のpHは、pHを上昇させる効果を持つ微生物鎖伸長とは逆に、低下し得、それにより、タンク内のpHは均衡を保つ。
【0059】
その結果、例えばプロトン又は水酸化物イオン、及び/又は酸及び/又は塩基によるpHの最小限の調節のみが必要となる。
【0060】
後発酵工程7の間、液体画分6は発酵され、反応器又はタンク内の状態は、反応器内にまだ存在する乳酸及び/又は酢酸及び/又は酪酸が、最も重要な最終生成物としてカプロン酸のような中鎖脂肪酸2に変換されるように制御される。
【0061】
さらに、前記後発酵工程7の間に、好ましくは乳酸を豊富に含む液体廃棄物26が前記反応器に直接添加され得る。
【0062】
しかしながら、
図2に示すように、最初に、例えば篩を用いて、前記液体廃棄物26を分離工程4において分離することが可能であり、その後、液体画分は、後発酵工程7に使用することができる。
【0063】
中鎖脂肪酸の生産は、鎖伸長微生物が基質又は最終製品自体によって阻害されない限り、前述の一つ又は複数の発酵工程7,21の間に行われる。
【0064】
前述の高スラッジ流出液13は、主発酵工程21の前に廃棄物3又は前処理廃棄物31と混合工程18で混合され得るバイオマス19として機能することができる。
【0065】
この高スラッジ流出液13は、後発酵工程7とバイオマス分離工程12との間で複数回循環させることができ、従って、後発酵工程7のタンク内におけるスラッジ33の滞留時間を制御することができる。
【0066】
この場合、低スラッジ流出液14は、溶液中に比較的多量の脂肪酸を含む。
【0067】
従って、低スラッジ流出液14中には、酢酸、プロピオン酸、(イソ)酪酸、(イソ)吉草酸、(イソ)カプロン酸、エナント酸及び/又はカプリル酸のような広範囲の炭酸が存在する。
【0068】
中鎖脂肪酸2用の下流にある抽出システム15により、主にカプロン酸、エナント酸、及びカプリル酸を最終生成物として得ることができる。
【0069】
従って、これらの中鎖脂肪酸2は、流体-流体抽出または電気化学的抽出等の手段によって抽出工程15において抽出され得、これにより、前記中鎖脂肪酸2は、低スラッジ流出液14からも抽出され得る。
【0070】
この抽出工程15により、カプロン酸のような中鎖脂肪酸2と、スラッジが少なく中鎖脂肪酸2をほとんど含まない水溶液27とが得られる。
【0071】
図2の実施例に示すように、有機廃棄物3とバイオマス19との混合工程18中に、例えば酸及び/又は塩基及び/又は酵素及び/又はミネラル、微量元素及びビタミンのような一つ又は複数の栄養素である一つ又は複数の添加剤28を添加することも可能である。
【0072】
また、前述の混合工程18の間に、廃棄物3/バイオマス19の比率を適合させて、微生物バイオマス19をより高い割合で系に加える必要がある場合、特に鎖伸長微生物の割合を調整することが望ましい場合、外部培養マイクロバイオーム29が添加され得る。
【0073】
好ましくは、そのような培養マイクロバイオーム29は、カプロイシプロデュセンス属(Caproiciproducens sp)及び/又はルミノコッカス属(Ruminococcaceae sp)及び/又はクロストリジウム・クルイベリ(Clostridium kluyveri)及び/又はシュードラミバクター属(Pseudoramibacter sp)、及び/又はラクトバチルス属(Lactobacillus sp) 及び/又はオルセネラ属(Olsenella sp)等のようなバクテリアを含む。
【0074】
使用する反応器によっては、後発酵工程7の間のバイオマス及び液体画分6の滞留時間を別々に設定して、例えばメタン生成菌のような増殖の遅い微生物との競合反応を抑制することができる。
【0075】
バイオマス分離工程12の間に、発酵混合物11を濾過して、0.2~5μmより大きい成分を除去することができ、それにより中鎖脂肪酸2が、濾過された低スラッジ流出液14中に存在したままとなる。
【0076】
例えば、有機廃棄物2からの中鎖脂肪酸2の収量を増加させるために、低スラッジ流出液14を数回再循環させることができることを排除するものではない。
【0077】
従って、中鎖脂肪酸2の抽出工程15の後に、低スラッジ流出液14中の短鎖脂肪酸を、水溶液27によって後発酵工程7に戻し、前記短鎖脂肪酸を中鎖脂肪酸2に変換することも可能である。
【0078】
バイオマス19は、バイオマス分離工程12の後に再利用することもでき、それによりバイオマス19は、後発酵工程7のタンクに加えられ得るか、又は、主発酵工程21の前に有機廃棄物3と混合工程18において混合され得る。
【0079】
このようにして、流入廃棄物3及び/又は前処理廃棄物31及び/又は混合物20及び/又は液体画分6に、発酵工程7及び21を触媒し得る活性バイオマス19を相当量接種することができる。
【0080】
このバイオマス分離工程12では、余剰スラッジ33が分離され得、前記スラッジ33は嫌気性消化工程8の間に添加され得る。
【0081】
このスラッジ33は、特にバイオマス19を含み、余剰のバイオマス19が、タンク及び/又は反応器から除去され得る。
【0082】
後発酵工程7の間に、処理ガス22が形成されることがあり、当該処理ガス22は、主発酵工程7に供給され得、このようにして嫌気性消化工程8に至る。
【0083】
代わりに、生成された処理ガス22は、後発酵工程7のタンクから固体画分5の嫌気性消化工程8に直接廃棄される。
【0084】
固体画分5及び液体画分6における廃棄物3又は発酵混合物23の分離工程4の間に、妨害物質34も分離され、システムから除去され得る。
【0085】
好ましい実施形態では、主発酵工程21の間、タンク内の温度は、25℃~60℃、より好ましくは30℃~50℃、最も好ましくは35℃~45℃の間で変動し、それにより、微生物が最適な条件で増殖し得る。
【0086】
好ましくは、前記主発酵工程21の間のタンク内のpH値は、4~6の間の低いpH値であり、かつ、乾物含量は好ましくは10~35%である。
【0087】
典型的には、主発酵工程21は好ましくは1~10日かかる。
【0088】
好ましい実施形態では、好ましくは、後発酵工程7は、乾物含量1~15%、より好ましくは2~10%、最も好ましくは4~8%で、6時間から10日の間行われる。
【0089】
実際的な実施形態では、タンク内の温度は、後発酵工程7の間に、22℃~55℃、より好ましくは28℃~45℃、最も好ましくは30℃~37℃の間で変動し、それによって微生物は最適な条件下で増殖し得る。
【0090】
前記後発酵工程7中に使用されるタンクに応じて、後発酵工程7のタンク内のスラッジ33の滞留時間を設定することができ、必要に応じて、スラッジ33は、嫌気性消化工程8に排気され得る。
【0091】
これにより、メタン菌などの微生物との競合反応が抑制されるという利点がある。
【0092】
好ましくは、必ずしもそうではないが、タンク内のpH値は、主発酵工程中よりも後発酵工程7中の方が高く、好ましくは、pH値は5~7である。
【0093】
必要であれば、又は、望ましくは、後発酵工程7と主発酵工程21の両方の間で、タンク内のpH値は調整され得る。
【0094】
好ましい実施形態では、pH値は、処理ガス22から得ることができるプロトンを添加することによって下げられる。
【0095】
しかしながら、pH値を所望の範囲内にするために、所望または必要に応じて、酸又は塩基をタンク又は反応器に添加することも可能である。
【0096】
本発明は、実施例として記載され、図示された実施形態に決して限定されるものではなく、そのような方法は、本発明の範囲から逸脱することなく、異なる変形に従って実現することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台所ゴミ、及び/又は食品廃棄物、及び/又は選択的に収集された単純分解性有機廃棄物を含む有機廃棄物(3)から中鎖脂肪酸(2)を製造する方法(1)であって、
該方法(1)が、
・主発酵工程(21)で有機廃棄物を発酵し、有機廃棄物(3)を少なくとも部分的に乳酸に変換する工程と、
・有機廃棄物(3)を固体画分(5)と液体画分(6)とに分離する分離工程(4)と、
・後発酵工程(7)中に液体画分(6)を発酵させ、それにより乳酸の少なくとも一部を中鎖脂肪酸(2)に変換する工程と、
・バイオマス分離工程(12)により、少なくとも部分的に発酵した液体画分(11)を、低スラッジ流出液(14)と高スラッジ流出液(13)とに分離する工程と、
・低スラッジ流出液(14)から中鎖脂肪酸(2)を抽出する抽出工程(15)と
を有する
ことを特徴とする中鎖脂肪酸の製造方法。
【請求項2】
主発酵工程(21)の前に、場合によっては前処理工程(17)を経た有機廃棄物(3)とバイオマス(19)とを混合する混合工程(18)を実施し混合物(20)を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機廃棄物(3)をバイオマス(19)と混合する混合工程(18)の際に、有機廃棄物(3)の発酵工程(7,21)における発酵を刺激する添加剤(28)を加えることができる
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記添加物(28)が、酸及び/又は塩基及び/又は酵素及び/又は例えばミネラル、微量元素及びビタミン等の一つ以上の栄養素を含む
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
主発酵工程(21)が、10%~35%の間の比較的高い乾物含量で行われる
ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
主発酵工程(21)が、微生物が増殖する25℃~60℃、より好ましくは30℃~50℃、最も好ましくは35℃~45℃の間の温度で行われる
ことを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
主発酵工程(21)のpH値が4~6であり、かつ、酸若しくは塩基の添加、又はプロトン及び/又は水酸化物イオンによって調整可能である
ことを特徴とする請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
主発酵工程(21)が、最短で1日、最長で10日行われる
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
主発酵工程(21)の後に混合工程(24)を行い、少なくとも部分的に発酵した混合物(23)を形成し、処理水(25)が少なくとも部分的に発酵した混合物(23)に添加される
ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
後発酵工程(7)を6時間~10日間行う
ことを特徴とする請求項1~9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
後発酵工程(7)の間のpH値が5~7である
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
後発酵工程(7)が、1~15%、より好ましくは2~10%、最も好ましくは4~8%の乾物含量で行われる
ことを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
後発酵工程(7)が、22℃~55℃、より好ましくは28℃~45℃、最も好ましくは30℃~37℃の温度で行われる
ことを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
中鎖脂肪酸(2)を低スラッジ流出液(14)から抽出する抽出工程(15)が、流体-流体抽出又は電気化学的抽出等からなる
ことを特徴とする請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
混合物(20)が、乳酸及び/又は乳酸に変換可能な基質を含み、前記乳酸及び/又は基質が、主発酵工程(21)の間に、短鎖脂肪酸等の中間生成物、及び最終生成物である中鎖脂肪酸(2)に変換可能である
ことを特徴とする請求項2~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
廃棄物(3)、場合によっては前処理工程(17)を経た、又は発酵された混合物(23)が、後発酵工程(7)の間に最終生成物として中鎖脂肪酸(2)に変換され得る乳酸及び/又は短鎖脂肪酸等を含有する
ことを特徴とする請求項1~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
乳酸及び/又は短鎖脂肪酸が、微生物の鎖伸長によって、後発酵工程(7)及び/又は主発酵工程(21)の間に、カプロン酸を含む中鎖脂肪酸(2)に変換され、それによって乳酸及び/又は短鎖脂肪酸が中間生成物として製造され得る
ことを特徴とする請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
固形画分(5)が、嫌気性消化工程(8)によって堆肥(10)及び/又はバイオガス(9)に変換される
ことを特徴とする請求項1~17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
後発酵工程(7)及び/又は主発酵工程(21)の間に処理ガス(22)が得られ、
前記処理ガス(22)は、直接的及び/又は間接的に嫌気性消化工程(8)に排出される
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【国際調査報告】