(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】オゾンの添加と組み合わせた活性炭への吸着による水の処理方法、および当該方法を実施するための設備
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20240115BHJP
B01F 21/20 20220101ALI20240115BHJP
B01F 23/2326 20220101ALI20240115BHJP
B01F 25/312 20220101ALI20240115BHJP
C02F 1/78 20230101ALI20240115BHJP
【FI】
C02F1/28 D
B01F21/20
B01F23/2326
B01F25/312
C02F1/78
C02F1/28 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540556
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 EP2021087514
(87)【国際公開番号】W WO2022144304
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503289595
【氏名又は名称】ヴェオリア・ウォーター・ソリューションズ・アンド・テクノロジーズ・サポート
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】サヴィニェ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】サブーディ,クリストフ
【テーマコード(参考)】
4D050
4D624
4G035
【Fターム(参考)】
4D050AA01
4D050AA13
4D050AB06
4D050AB31
4D050BB02
4D050BD02
4D050BD03
4D050BD06
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4D624AA02
4D624AA04
4D624AB04
4D624BA02
4D624BB01
4D624BC05
4D624CA02
4D624CA07
4D624DB24
4G035AA02
4G035AB20
4G035AC22
(57)【要約】
本発明は、ベンチュリ効果によって処理対象の水にオゾンを注入する工程と、その直後に、処理対象の前記水をオゾンで飽和させる工程と、活性炭粒子の流動層を含む反応器内に、オゾン処理された処理対象の前記水を運ぶ工程と、前記反応器内を上昇する水の流れに従って、オゾン処理された処理対象の前記水を前記活性炭粒子と接触した状態で配置する工程と、処理済みの前記水をこのまま排出する工程と、を含む水処理方法に関する。また、本発明は、活性炭反応器と、処理対象の前記水を前記反応器内へ運ぶための手段と、処理済みの前記水を排出するための手段と、水を前記反応器内へ運ぶための前記手段上に直接的に取り付けられた、またはバイパスとしての、ベンチュリ効果によって前記水にオゾンを注入するための手段および前記水をオゾンで飽和させるための手段と、を備える設備に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の水にオゾンを注入する工程と、
活性炭粒子の流動層を含む反応器内に、オゾン処理された処理対象の前記水を運ぶ工程と、
前記反応器内を上昇する水の流れに従って、オゾン処理された処理対象の前記水を前記活性炭粒子と接触した状態で載置する工程と、
処理済みの前記水をこのまま排出する工程と、
を含む、水処理方法において、
処理対象の前記水にオゾンを注入する前記工程は、ベンチュリ効果によって行われ、
前記注入工程の直後に、処理対象の前記水をオゾンで飽和させる工程が続くことを特徴とする、水処理方法。
【請求項2】
前記飽和工程は、飽和コーンまたは脱気カラムを用いて実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
注入する前記工程および前記水をオゾンで飽和させる前記工程は、1分未満の全継続時間、好ましくは10秒~30秒の全継続時間を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
オゾンを注入する前記工程および前記水をオゾンで飽和させる前記工程は、処理対象の前記水を前記反応器内へ運ぶための手段において実装されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
オゾンを注入する前記工程および前記水をオゾンで飽和させる前記工程は、処理対象の前記水を前記反応器内へ運ぶための手段上にバイパスとして取り付けられたパイプにおいて実装されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記活性炭粒子は、300μm~1500μmの粒子サイズ、好ましくは400μm~800μmの粒子サイズを有する凝集体であって、0.45より大きい真密度を有する凝集体であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応器は、上側部分に配置された、前記水を逸らすための少なくとも1つの手段を備え、
前記水を逸らすための少なくとも1つの前記手段は、活性炭粒子の前記層の上方に安定領域が構成されるように、水の上昇する前記流れの速さを低減させるように意図されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの前記逸らせ手段は、互いに平行な一組のブレードであって、垂直面に対して50°~60°の角度θだけ、好ましくは60°に近い角度θだけ傾斜した、一組のブレードからなることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応器は、前記安定領域の下流に配置された、前記水を回収するための手段をさらに備え、
前記回収手段は、水平面に対して45°~70°の角度αをなす複数の側面を有する角柱形状のシュートからなることが好ましく、
これらは各々、第1流体スパウトと、逸らせ手段としてのバッフルとして作用する逸らせ器と、を備えることを特徴とする、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
上昇する水の前記流れの速さは、8m/h~50m/hであり、好ましくは20m/h~40m/hであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
活性炭粒子(2)の流動層を含む活性炭反応器(1)と、
処理対象の前記水を前記反応器内へ運ぶための手段(3)と、
処理済みの前記水を排出するための手段(7)と、
を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法を実施するための設備(10)において、
前記水を前記反応器内へ運ぶための前記手段(3)上に直接的に取り付けられ、または処理対象の前記水を前記反応器内へ運ぶための前記手段(3)上にバイパスとして取り付けられたパイプ(3´)上に取り付けられた、ベンチュリ効果によって前記水にオゾンを注入するための手段(4)および前記水をオゾンで飽和させるための手段(5)
をさらに備えることを特徴とする、設備(10)。
【請求項12】
前記活性炭粒子(2)は、300μm~1500μmの粒子サイズ、好ましくは400μm~800μmの粒子サイズを有する凝集体であって、0.45より大きい真密度を有する凝集体であることを特徴とする、請求項11に記載の設備(10)。
【請求項13】
前記反応器(1)は、前記反応器の上側部分に配置された、少なくとも1つの逸らせ手段を備えることを特徴とする、請求項11または12に記載の設備(10)。
【請求項14】
少なくとも1つの前記逸らせ手段は、互いに平行な一組のブレードであって、垂直面に対して50°~60°の角度θだけ、好ましくは60°に近い角度θだけ傾斜した、一組のブレードからなることを特徴とする、請求項13に記載の設備(10)。
【請求項15】
前記反応器は、前記安定領域の下流に配置された、前記水を回収するための手段をさらに備え、
前記回収手段は、水平面に対して45°~70°の角度αをなす複数の側面を有する角柱形状のシュートからなることが好ましく、
これらは各々、第1流体スパウトと、逸らせ手段としてのバッフルとして作用する逸らせ器と、を備えることを特徴とする、請求項13または14に記載の設備(10)。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の技術分野〕
本発明は、水処理の技術分野に関し、特に、飲料水を得るための方法および汚水を浄化するための方法に関する。より詳細には、本発明は、オゾンの添加(addition)と組み合わせて、活性炭を含む反応器を上昇する流れによって、溶解した有機汚染物質を除去するように水を処理するための方法、およびかかる方法の実施を可能にする設備に関する。
【0002】
〔従来技術〕
流出水の中に溶解した有機汚染物質の除去を可能にする、複数の方法が存在する。都市汚水を処理し、残留流出物を処理するために、飲料水製造システム内で用いられる主な方法は、生物学的方法、凝結/凝集/沈降(coagulation/flocculation/sedimentation)法、酸化法、および吸着法である。
【0003】
生物学的方法および凝結/凝集/沈降法には、スラッジの発生という欠点がある。スラッジの管理はますます、問題が多く、費用のかかるものとなっている。加えて、凝結/凝集/沈降法は、化学物質(凝結剤、凝集剤)の供給および消費に基づくものであり、この同じ方法に先立ってそれらの再利用が可能となるように、発生したスラッジから当該化学物質(凝結剤、凝集剤)を抽出することができないという欠点がある。それらの一部のための酸化方法には、酸化副生成物が発生するという欠点がある(完全な無機化(mineralisation)に達しない、溶解した有機化合物の部分酸化)。これらの副生成物は、初期有機化合物(initial organic compounds)と同程度に高い毒性および/または生態毒性を有し得る。加えて、これらの酸化方法の一部は、均一系触媒反応(例えば、フェントン反応等)の機構に基づいており、この結果、さらにスラッジが発生する。
【0004】
吸着技術、特に活性炭への吸着技術は、公知の技術であって、飲料水製造システム内で溶解有機汚染物質(農薬、工業残留物、薬剤残留物等)を除去するため、ならびに都市汚水および工業廃水を処理するために、一般的に使用される技術である。しかしながら、この技術には、かなりの量の使用済み活性炭が発生するという欠点があり、当該使用済み活性炭を、反応器から取り出し、同量の新たな活性炭と交換する必要がある。
【0005】
オゾン処理工程と活性炭への吸着工程との併用も、特に飲用化システムにおいて、知られている。かかる技術の関心は、オゾンの強い酸化力と活性炭の著しい吸着能力との結合に関連するだけでなく、活性炭によるオゾンのヒドロキシルラジカルへの分解の加速にも関連する。2つの工程は、各々、それに専用される区画内で、連続して(consecutively)実施される。すなわち、まず、水とオゾンとを接触した状態で載置する工程が実施され、次に、吸着工程が実施される。吸着工程は、粒状活性炭フィルタにおいて実行され得る。オゾンの注入は一般に、オゾン処理反応器内に設置された多孔質散気装置によって、反応器での約20分間の接触時間にわたって行われる。しかしながら、水中へのオゾンの移動は完全ではないので、オゾン処理反応器内の気体空間にオゾンが存在し得る。このため、作業者の健康を守るために、オゾン処理反応器を覆い、オゾン破壊装置を通気孔に設置する必要がある。さらに、オゾン処理反応器から出て来る水の中に残留するオゾン分子を還元するために、亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤を追加する必要がある。この技術の別の欠点は、オゾン処理工程と吸着工程とが物理的に分離しており、処理対象の水とオゾンとの接触時間が長く、これにより、オゾン処理の副生成物(例えば、2~3分接触させた後に形成され始める臭素酸塩等)の形成に好都合な状態が作り出されるだけでなく、水中に存在する有機物質由来の副生成物(例えば、N-ニトロソジメチルアミン(N-nitrosodimethylamine:NDMA)等)の形成に好都合な状態も作り出されてしまうことである。これらの副生成物は、必ずしも活性炭粒子上に吸着可能であるとは限らず、吸着工程から出て来る水の中に蓄積する可能性がある。したがって、それらの形成を防止することが重要となる。
【0006】
〔発明の目的〕
本発明の1つの目的は、副生成物または固体残留物の形成をもたらさない、水の処理技術を提案することである。
【0007】
本発明の別の目的は、還元剤等の化学物質の使用が防止され、または少なくとも制限されるように、吸着が行われる区画の上方に気泡および/または気体雲の形成をもたらさない水の処理技術を提案することである。かかる技術は、作業者の健康に対するリスクの低減にも関わる。
【0008】
本発明の別の目的は、使用済み吸着剤の代わりとして導入される新たな吸着剤の量を減少させる観点から、活性炭の飽和を遅らせ、またはその原位置(in situ)における再生(regeneration)を可能にする、活性炭への吸着による水の処理技術を提案することである。
【0009】
本発明の別の目的は、促進酸化型の既存の方法と比較して、よりオゾン消費量が少ない水の処理技術を提案することである。
【0010】
本発明の別の目的は、これらの目的の達成を、オゾンと処理対象の水との接触時間を短縮しつつ可能にする技術を提案することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、処理対象の水中に存在する細菌およびウイルスの除去を、この目的のために特に実施される工程を必要とせずに可能にする、水の処理技術を提案することである。
【0012】
〔発明の概要〕
これらの目的、および以下で明らかになる他の目的は、本発明によって達成される。
【0013】
本発明に係る第1の態様は、水処理方法に関する。特に、本発明に係る方法は、
処理対象の水にオゾンを注入する工程と、
活性炭粒子の流動層(流動床:fluidised bed)を含む反応器内に、オゾン処理された(ozonated)処理対象の前記水を運ぶ工程と、
前記反応器内を上昇する水の流れに従って、オゾン処理された処理対象の前記水を前記活性炭粒子と接触した状態で載置する(placing)工程と、
処理済みの前記水をこのまま排出する工程と、
を含み、処理対象の前記水にオゾンを注入する前記工程は、ベンチュリ効果(Venturi effect)によって行われ、当該注入工程の直後に、処理対象の前記水をオゾンで飽和させる工程が続く。
【0014】
この方法によって、反応器内に存在する活性炭粒子を再生しつつ、気泡を除去する目的のために、オゾンを水中に取り込み、次いでそれを溶解させることが可能となる。この方法によって、実施例において実証されるように、良好な水処理性能を維持しつつ、既存の方法と比較して、使用されるオゾンの量と、使用済み活性炭の代替物として導入される新たな活性炭の量とを、低減することができる。
【0015】
あるいは、オゾンの量および活性炭の量は、既存の方法で使用されるものと同等であってもよい。この場合、水処理性能が、これら既存の方法によって得られるものに対して向上する。
【0016】
好ましい実施形態によれば、前記水をオゾンで飽和させる工程は、飽和コーン(saturation cone)または脱気カラム(degassing column)を用いて実行される。
【0017】
飽和コーンの使用は、装置の設置が簡単かつ有効かつ迅速であり、設備の構成および所望の性能に応じて、その設置面積を選択し得るために、有利である。このため、飽和コーンは、活性炭粒子の流動層反応器を含む既存の設備に、既その性能を改善する観点から、または補充される新たな活性炭の消費量を低減する観点から、容易に組み込まれ得る。また、飽和は、脱気カラムにおいて実行されてもよい。
【0018】
好ましい実施形態によれば、注入する前記工程および前記水をオゾンで飽和させる前記工程は、1分未満の全継続時間、好ましくは10秒~30秒の全継続時間を有する。
【0019】
実際、本発明に係る方法によって、水処理プロセスを遅らせることなく、水処理の性能を改善が可能となり、または、オゾンおよび新たな活性炭の消費量を低減することが可能となる。オゾンの注入、および水へのオゾンの溶解には、数秒しかかからない。これは、既存の設備を変更する状況において特に興味深い。
【0020】
特定の実施形態によれば、オゾンを注入する前記工程および前記水をオゾンで飽和させる前記工程は、処理対象の前記水を前記反応器内へ運ぶための手段において実装される。あるいは、これらの工程は、処理対象の前記水を前記反応器内へ運ぶための手段上にバイパスとして取り付けられたパイプにおいて実装されてもよい。
【0021】
構成におけるこの選択によって、前記方法を、特に、利用可能な床面積に応じて、既存の設備に対して可能な限り最良に、巧妙に適合させることが可能となる。
【0022】
一実施形態によれば、本方法に従って使用される活性炭粒子は、300μm~1500μmの粒子サイズ、好ましくは400μm~800μmの粒子サイズを有する凝集体(agglomerate)であって、0.45より大きい真密度(true density)を有する凝集体である。
【0023】
これらの特徴を有する活性炭凝集体は、活性炭粒子の流動層の最適な膨張の達成を可能とし、その結果、活性炭粒子への汚染物質の吸着能力を向上させるため、特に有利である。
【0024】
一実施形態によれば、本方法に係る当該流動層反応器は、上側部分に配置された、前記水を逸らすための少なくとも1つの手段を備える。かかる逸らせ手段は、活性炭粒子の当該層の上方に安定領域(tranquil area)が構成されるように、水の上昇する前記流れの速さを低減させるように意図されている。かかる安定領域は、低流体力学的乱流の領域であり、活性炭粒子、特に最も微細な粒子が、水の上昇する流れによって運び去られ、反応器から脱すること(これにより、補充される新たな活性炭の消費量が増加するだろう)の防止を可能にする。これは、活性炭粒子の表面におけるオゾンの合体(coalescence)によって、気泡の放出および炭素の損失が引き起こされてしまう場合に、特に有利である。
【0025】
一変形形態によれば、少なくとも1つの前記逸らせ手段は、互いに平行な一組のブレードであって、垂直面に対して50°~60°の角度θだけ、好ましくは60°に近い角度θだけ傾斜した、一組のブレードからなる。
【0026】
一実施形態によれば、少なくとも1つの前記逸らせ手段が前記反応器内に存在する場合、前記反応器は、前記安定領域の下流に配置された、前記水を回収するための手段をさらに備え、かかる回収手段は、水平面に対して45°~70°の角度αをなす複数の側面を有する角柱形状のシュートからなることが好ましく、これらは各々、第1流体スパウト(spout)と、逸らせ手段としてのバッフルとして作用する逸らせ器(デフレクタ:deflector)と、を備える。
【0027】
一実施形態によれば、前記流動層反応器内を上昇する水の前記流れの速さは、8m/h~50m/hであり、好ましくは20m/h~40m/hである。
【0028】
気泡は、水力擾乱(hydraulic disturbances)を引き起こすがゆえに流動層反応器の運転に適合しないため、オゾン処理された水中に気泡(この場合、オゾン)が存在していないことが肝要である。このことは、活性炭反応器に入る前に、オゾンが飽和コーンにおいて水の中に溶解することによって、達成される。オゾン気泡が水中に存在しないことで、活性炭粒子の層の乱流が減少する。これには、反応器から脱する傾向のある活性炭の量をさらに減少させる効果がある。
【0029】
本発明に係る別の態様は、本発明に係る方法に従って水を処理するための設備に関する。
【0030】
特に、本発明に係る設備は、
活性炭粒子の流動層を含む活性炭反応器と、
処理対象の前記水を前記反応器内へ運ぶための手段と、
処理済みの前記水を排出するための手段と、
を備え、
前記水を前記反応器内へ運ぶための前記手段上に直接的に取り付けられ、または処理対象の前記水を前記反応器内へ運ぶための前記手段上にバイパスとして取り付けられたパイプ上に取り付けられた、ベンチュリ効果によって前記水にオゾンを注入するための手段および前記水をオゾンで飽和させるための手段
をさらに備える。
【0031】
かかる設備は、既存の構造物の設置面積を顕著には増加させないという利点を有する。当該既存の構造物は、本発明に係る補足的な技術的特徴を組み込むように、容易に変更され得る。
【0032】
好ましい実施形態によれば、前記設備における前記活性炭粒子は、300μm~1500μmの粒子サイズ、好ましくは400μm~800μmの粒子サイズを有する凝集体であって、0.45より大きい真密度を有する凝集体である。
【0033】
かかる活性炭凝集体は、本発明に係る設備に特に適合されている。その特定の性質によって、上昇する水流に高速が適用される場合であっても、活性炭の層の最適な膨張を達成することができる。
【0034】
特定の実施形態によれば、前記設備の前記反応器は、前記反応器の上側部分に配置された、少なくとも1つの逸らせ手段を備える。
【0035】
かかる手段によって、前記反応器の上側部分に安定領域を巧妙に生じさせることができる。これにより、活性炭粒子の脱出、特に最も微細な粒子の脱出を防止することができる。
【0036】
一変形形態によれば、少なくとも1つの前記逸らせ手段は、互いに平行な一組のブレードであって、垂直面に対して50°~60°の角度θだけ、好ましくは60°に近い角度θだけ傾斜した、一組のブレードからなる。
【0037】
一実施形態によれば、前記反応器が逸らせ手段を備える場合、前記反応器は、前記安定領域の下流に配置された、前記水を回収するための手段をさらに備え、前記回収手段は、水平面に対して45°~70°の角度αをなす複数の側面を有する角柱形状のシュートからなることが好ましく、これらは各々、第1流体スパウトと、逸らせ手段としてのバッフルとして作用する逸らせ器と、を備える。
【0038】
〔図面の簡単な説明〕
[
図1]:
図1は、ベンチュリシステム、および水をオゾンで飽和させるための手段が、水を反応器へ運ぶパイプ上に取り付けられている、設備の模式図を表す。
【0039】
[
図2]:
図2は、ベンチュリシステム、および水をオゾンで飽和させるための手段が、処理対象の水を反応器へ運ぶパイプのバイパスとして取り付けられたパイプ上に設置されている、本発明に係る設備の模式図を表す。
【0040】
[
図3]:
図3は、オゾンの存在下または非存在下での、活性炭粒子(10g/m
3の活性炭粒子)の層反応器における、様々な微量汚染物質化合物の除去率を示す図である(白:オゾン非存在、黒:2g/m
3のオゾン)。化合物の一覧は、表2に与えられている。
【0041】
〔発明を実施するための形態〕
本発明は、既存の水処理方法および水処理設備の改善を目的とする。特に、本発明は、汚水処理および/または飲料水処理のための技術の改善を目的とする。実際、この水は、オゾン処理および活性炭への吸着による処理に特に適している。このため、本発明に係る技術は、かかる水の処理に特に有効である。
【0042】
本発明に係る方法および設備には、本来的な態様では、活性炭粒子の流動層を通じた汚染物質の吸着に専用される反応器のすぐ上流における、ベンチュリ効果によってオゾンを注入するための手段と水をオゾンで飽和させるための手段との結合が伴う。
【0043】
本発明の意味(意図)の範囲において、「汚染物質」とは、水質に悪影響を及ぼす有機物および化学物質を意味する。これには、非常に低い濃度で存在するもの(微量汚染物質)が含まれる。
【0044】
本発明に係る方法の第1の工程では、処理対象の水中にオゾンが注入される。続いて、オゾン処理された水は、活性炭粒子の流動層を含む反応器の方へ導かれる。活性炭粒子の層を通って上昇する流れに従ってそれが進展(発展、展開)する間に、水の汚染物質が活性炭粒子に吸着され、次いで、処理済みの水が反応器から排出される。
【0045】
オゾンの注入は、ベンチュリ効果によって生じる吸引によって実行されるが、これには、オゾンが空気中に脱するのを防止する利点がある。これにより、オゾンを水と混合させることができる。ベンチュリ効果は、負圧を受ける運動する流体によって生じる吸引効果である。その結果、ベンチュリ効果を通じて、処理対象の水は、水中におけるオゾンの吸い上げを可能にする負圧を受ける。この手法により、注入された全てのオゾンが、処理対象の水中に取り込まれ、混合される。それゆえ、従来技術において知られる手法と比べて、オゾンの使用量を低減することができる。水に注入されるオゾンの量は、処理対象の水1リットル当たり、0.5~3.0mgであることが好ましい。ベンチュリ効果の発生は、当技術分野で公知の任意の手段によって行われる。特に、それはベンチュリシステムによって実行される。
【0046】
次いで、オゾンと混合した処理対象の水は直ちに、オゾン飽和工程に供される。そして、オゾン分子は水中に溶解し、これにより、水中でのオゾン気泡の形成が著しく防止される。実際、かかる気泡によって、活性炭粒子の層における乱流が促進され、結果として、反応器からのその除去が促進される。加えて、気泡の形態のオゾンは、活性炭粒子の表面上にあまり十分に捕捉されない。さらに、活性炭は、オゾン分子を還元する能力を有する。それゆえ、活性炭粒子がオゾンを捕捉する能力を低下させると、反応器の上方における有害な気体の空間の形成を促進する結果が生じることになる。最後に、オゾンを注入し、処理対象の水をオゾンで飽和させるための数秒という非常に短い時間には、オゾンと処理対象の水に含まれる化学種との反応によって副生成物が形成することを防止する利点もある。オゾンによる水の飽和は、任意の公知の手段によって行われる。特に、それは、飽和コーンを利用して行われ、これにより、95~99%のオーダーの移動効率(transfer efficiency)の達成が可能となる。あるいは、脱気カラムによって、水をオゾンで飽和させる工程を実行できる。かかるカラムは、構成が単純であるという利点を有するものの、かなりの高さがある。この高さは、既存の運用においてカラムを実装することの妨げとなり得る。
【0047】
いかなる理論にも結びつけられることを望むものではないが、本発明に係る方法によって得られる改善は部分的に、活性炭粒子の表面で反応して新たな表面官能基を作り出す、溶解したオゾン分子の能力に基づくものだと考えることができる。実際、活性炭では、吸着部位の存在によって、汚染分子が捕捉されるが、さらに、汚染物質(特に、有機化合物)に結合できる官能基の存在によっても、汚染分子が捕捉される。オゾンは、その強い酸化力によって、活性炭粒子の表面に新たな官能基を作り出すことができる。それゆれ、活性炭粒子の吸着能力は、特に有機汚染物質(例えば、農薬、薬剤残留物および天然有機物質等)に関して、著しく改善される。このため、活性炭の使用量が同量である場合には、水の処理性能が著しく改善する。汚染物質の吸着性能が25%向上したことに伴い、処理対象の水1m3につき最大で10gの炭素の交換の低減が観察された。あるいは、本発明に係る方法によって、同一性能を維持しつつ、水の処理に必要な活性炭の量を著しく低減できる。さらに、有利には、活性炭の表面においてオゾンが反応することで、オゾンが減少し得ることにより、処理済みの水中に、および/または反応器上方の気体空間中に、オゾンが見出されることが防止される。
【0048】
実験部分で実証されている通り、本発明に係る方法によって、臭素酸塩等の副生成物が形成されないことが可能となる。処理対象の水中に高濃度の臭化物が存在している場合であっても、このことが可能となる。加えて、本発明に係る方法によって、微量汚染物質の非常に大部分を、90%を超える割合で減少させることができる。最後に、本発明は、特に、オゾンの作用によって水中の細菌およびウイルスを減少させることにより、より良好に水を清浄化できる。
【0049】
本発明に係る方法の別の利点は、オゾンを注入する工程および処理対象の水をオゾンで飽和させる工程の総継続時間が、非常に短いことである。特定の実施形態によれば、オゾンを注入する工程および水をオゾンで飽和させる工程の総継続時間は、60秒未満であり、好ましくは30秒未満であり、より好ましくは10~20秒である。このとき、処理対象の水がオゾンで飽和されるのには、わずか数秒しかかからない。その結果、水処理性能が著しく向上し、または、同等の性能に対して、交換すべき活性炭粒子の量が著しく低減することとなる。有利には、接触時間の短縮によって、副生成物の形成を回避でき、または少なくとも、副生成物の形成を低減できる。
【0050】
一実施形態によれば、オゾンを注入する工程、および水をオゾンで飽和させる工程は、処理対象の水を反応器へ運ぶための手段(例えば、パイプ等)において実装される。実際、本発明に係る方法は、活性炭粒子の流動層を含む反応器の近くでこれら2つの工程が実施される場合に、より良好な結果を与える。オゾンで飽和された水を運ぶ時間が増加すると、臭素酸塩等の副生成物の出現が促されてしまう。
【0051】
しかしながら、本発明に係る方法によって、これらの注入工程および飽和工程を別のレベルで実行することが可能となる。これにより、その実装を水処理設備の様々な構成に適合させることが可能となる。
【0052】
別の実施形態によれば、これらの工程は、処理対象の水を反応器へ運ぶための手段のバイパスとして取り付けられたパイプにおいて行われる。このため、主管のバイパスとして取り付けられたパイプへ処理対象の水を運ぶ、予備工程を追加すること可能である。バイパスとして取り付けられた当該パイプにおいて、オゾンを注入する工程と水をオゾンで飽和させる工程とが行われることとなる。次いで、その結果オゾンで飽和された水を主管へ運ぶ、追加の工程を設けることができる。
【0053】
処理対象の水がオゾンで飽和されると、活性炭粒子の流動層を含む反応器内へ運ばれる。この工程は、処理対象の水を反応器内へ運ぶための手段(例えば、主管等)によって実行される。場合によっては、その工程の前に、バイパスとして取り付けられたパイプから処理対象の水を反応器内へ運ぶための手段へ、オゾンで飽和した水を運ぶ工程が行われる。
【0054】
反応器内では、オゾンで飽和された水は、活性炭粒子の流動層を通って上昇する流れに従って進展(展開:evolve)する。前述したように、水中に含まれるオゾンによって、活性炭粒子の表面に新たな官能基を作り出すことが可能となる。その結果、処理対象の水に含まれる汚染物質は、活性炭粒子の吸着部位と活性炭粒子の表面に作り出された官能基との両方によって、吸着されることとなる。同時に、活性炭粒子の表面におけるオゾンの反応によって、オゾンが減少することとなる。その結果、間隙水(interstitial water)中には、もはやオゾンが全く存在しないか、またはほとんど存在しなくなる。
【0055】
好ましい実施形態では、オゾンで飽和された処理対象の水を接触した状態で載置する工程は、凝集体(agglomerate)の形態の活性炭粒子に対して行われる。活性炭粒子の凝集体は特に、粒子サイズ、比表面積および密度に関して、粉状活性炭とは異なっている。
【0056】
好ましくは、活性炭粒子の凝集体は、微粒の形態である。本発明に係る方法において実装される活性炭の微粒は、300μm~1500μmの平均粒子サイズ、好ましくは400μm~800μmの平均粒子サイズを有する。400μmよりも小さなサイズの粒子の割合は、厳密に5%未満である。なお、粉状活性炭の粒子サイズは、これよりも著しく小さく、概して5μm~50μmであり、特に10μm~25μmであることに留意されたい。
【0057】
一実施形態によれば、活性炭の微粒の密度は、0.45よりも大きく、好ましくは0.5よりも大きい(乾燥生成物)。
【0058】
一実施形態によれば、反応器内の活性炭粒子の濃度は、100g/L~400g/Lであり、好ましくは150g/L~300g/Lである。
【0059】
反応器内で適用される、水が上昇する流れの速さは、粒子層内の活性炭粒子の粒子サイズに応じて調整される。実際、その結果として、粒子の層の過少な膨張(expansion)または過剰な膨張が生じるべきではない。層の膨張が小さすぎる場合には、炭素粒子が互いに完全には分離せず、粒子の層の吸着性能が低下してしまう。逆に、膨張が大きすぎる場合には、活性炭粒子はさらに、上昇する水の流れによって運び去られ、反応器を去ってしまうリスクがあり、これらの損失分を補償するために追加すべき新たな活性炭の量が増加してしまう。このため、実際上は、上昇する流れの速さは、好ましくは、活性炭粒子の層の膨張領域とその上方の遷移領域(transition area)とが形成されるように選択され得、粒子の濃度は、膨張領域よりも遷移領域において、より疎となっている。
【0060】
一実施形態によれば、反応器内を上昇する水の流れの速さは、8m/h~50m/h、好ましくは20m/h~40m/hである。
【0061】
この実施形態は特に、反応器の層を形成する活性炭粒子が、前述したような微粒である場合に適している。
【0062】
特定の実施形態によれば、水を逸らすための手段が、反応器の上側部分に配置されている。かかる逸らせ手段は例えば、国際特許出願公開WO2019224258A1号に記載されている。当該逸らせ手段は、反応器の上側部分における安定領域の形成に寄与する。
【0063】
これにより、活性炭粒子の脱出を防止しつつ、処理対象の水の高速の上昇流を利用することが可能となる。さらに、これにより、処理対象の水の上昇流が比較的高速であるときにさえ、バラスティングポリマー(ballasting polymer)の使用を省くことが可能となる。
【0064】
好ましくは、逸らせ手段は、垂直面に対して傾斜し、かつ互いに平行な一組のブレードからなる。これらのブレードは、垂直面に対して50°~60°の角度θだけ傾斜していることが好ましい。有利には、これらのブレードは、特に、垂直面に対して60°に近い角度θだけ傾斜していてもよい。
【0065】
これらのブレードは、25mm~100mmの距離だけ、互いに離隔していてもよい。特に、これらのブレードは、36mm~42mmの距離だけ、互いに離隔していてもよい。この間隔は、300μm~1500μmの粒子サイズの吸着剤媒体粒子(特に、活性炭の粒(grain)または微粒(micrograin))に、特に適している。水の速さは、当該水が逸らせ手段内へ通過する間に、ブレード内で減少する。これにより、安定領域(粒子が安定(settle)できる領域)を作り出すことが可能となる。
【0066】
特定の実施形態によれば、逸らせ手段が存在する場合、設備の反応器は、安定領域の下流に配置された、水を回収するための手段をさらに備える。かかる手段は、例えば、水平面に対して45°~70°の角度αをなす複数の側面を有する角柱形状のシュートからなってもよく、これらは各々、第1流体スパウトと、逸らせ手段としてのバッフルとして作用する逸らせ器と、を備える。角度αは特に、60°に近い値を有してもよい。かかるシュートはすでに、仏国特許出願公開第FR2694209A1号に記載されている。
【0067】
また、本発明は、前述した本発明に係る方法を実施するように適合された、水、特に汚水または飲料水を処理するための設備に関する。この設備は、
図1および
図2を参照しつつ説明される。
図1および
図2は、単に例示の目的で用いられるにすぎず、以下に与える詳細な説明の限定を構成するものではない。
【0068】
本発明に係る設備10は、
-活性炭粒子2の流動層を含む活性炭反応器1と、
-処理対象の水を反応器1内へ運ぶための手段3と、
-処理済みの水を排出するための手段7と、
を備える。本発明に係る設備10は、
-ベンチュリ効果によって処理対象の水にオゾンを注入するための手段(この場合、ベンチュリシステム4)と、水をオゾンで飽和させるための手段(この場合、飽和コーン5)と、をさらに備える。これらの手段は、手段3上に直接的に配置されているか、あるいは、手段3のバイパスとして取り付けられた手段3´上に配置されている。
【0069】
本発明に係る方法に適した反応器1は、活性炭粒子2の流動層をさらに備える。反応器は、円筒形状または四角形状(square shape)であってもよい。好ましくは、反応器は、3m~10mの高さを有する。反応器は、水の上昇する流れが反応器内に形成されるように、処理対象の水を注入および分配するための手段を、当該反応器の下側部分に備える。
【0070】
反応器1の層2を構成する活性炭粒子は、上述したような活性炭粒子である。好ましくは、反応器内の活性炭粒子の層は、静止時に1.5m~3mの高さを有し、膨張中に2m~5mの高さを有する。
【0071】
給水手段3、および給水手段3の任意選択的なバイパス手段3´は、パイプであってもよい。バイパス手段3´が実装される場合、手段3と手段3´とは、ティー継手等の公知の手段によって、互いに接続される。この特定の実施形態の一変形例では、処理対象の水の一部が手段3から手段3´へ導かれるように、処理対象の水を運ぶための手段6が設けられてもよい。これは、特にポンプに関係し、好ましくはジェットポンプに関係する。
【0072】
本発明の意味の範囲内において好適なベンチュリシステム4は、任意の公知のベンチュリシステムであってもよい。Stubbe(uはウムラウト付き)が市販するベンチュリインジェクタ、またはその均等物を特に挙げることができる。
【0073】
本発明の意味における飽和コーンは、水をオゾンで飽和させるのに適した公知のコーンから選択してもよい。それはさらに、様々な基準に応じて、特に、占有空間、および処理対象の水の流量に応じて、選択されてもよい。例えば、PentairまたはLinde-Gasが市販する飽和コーン、またはその均等物が知られている。もちろん、水をオゾンで飽和させるためのその他の手段(例えば、脱気カラム等)が実装されてもよい。
【0074】
特定の実施形態によれば、本発明に係る設備の反応器は、逸らせ手段(図示せず)を備える。本発明に係る設備に適した逸らせ手段は、上述したものである。有利には、設備に逸らせ手段を実装することで、活性炭粒子の損失を避けるために反応器の高さを増さなくてもよいようにすることができる。これによって、よりコンパクトな設備が得られるようにする。逸らせ手段は、前述したように、水回収手段によって補完されることが有利である。
【0075】
設備は、処理済みの水が収集タンクまたは補助処理反応器の方へ導かれるように、処理済みの水を排出するための手段7(例えば、パイプ)を備えることが有利である。
【0076】
〔実施例〕
本発明の他の特徴および利点は、限定の目的ではなく例示の目的で与えられた以下の実施例から、一層明らかになるだろう。
【0077】
〔実施例1:活性炭粒子上の官能基の形成〕
粉状活性炭および微粒状活性炭の表面における官能基の活性化(activation)のオゾン処理の効果を検証するために、実験室試験を実施した。活性炭の表面は、そのpHが「ゼロ電荷点(Point of Zero Charge)」のpHであるpHPZCよりも高い場合には、負に帯電し、そのpHがpHPZCよりも低い場合には、正に帯電することが知られている。後者の場合、活性炭は、陰イオン性化合物(anionic compounds)に対して強い親和性を有することになる。
【0078】
これらの試験において、試験した活性炭を含む水のpHは、7.4~7.9の間に位置した。したがって、活性炭は、負に帯電した有機物質に適合された。注入したオゾンの量は、処理対象の水1m3に対して2gであるか、またはゼロであった。活性炭粒子は、1.2g/Lの濃度で存在していた。試験は10分間実施された。
【0079】
表面官能基の特定は、Boehm方法に従って実行した。ヨウ素価の値は、方法ASTM D4607-94(2006)に従って得られた。pHPZC(ゼロ電荷点)は、Noh and Schwarz法(1989)に従って得られた。
【0080】
得られた結果を、表1に示す。
【0081】
【0082】
活性炭を含む水のpHPZCは、オゾンなしのときには8.05であり、オゾン処理の10分後には8.28であった(試料中に存在するCO2の脱気)。活性炭粒子の原位置におけるオゾン処理は、表面官能基を生成または増加させることによって、材料の表面上に直接的に作用した。その結果、表面基の増加が観察された。
【0083】
活性炭の表面酸塩基性質(urface acid-base properties)は非常に高く、水相中の有機化合物の吸着の場合には、その多孔性の特徴よりも優勢であると思われる。炭素の表面化学は、酸素、窒素、水素、塩素、硫黄およびリン等のヘテロ原子の存在から生じる。これらのヘテロ原子によって、炭素微結晶の周辺に位置するケトン(I族)、エーテル(II族)、アミン(III族)およびリン酸塩(IV族)等の有機官能基(ペンダント官能基)が形成される。それらの含有量は、炭素およびその活性化方法の起源に依存しており、それらの含有量によって、材料の酸度(acidity)または塩基度(basicity)が決定される。それらの存在は、極性分子の吸着にわずかな影響しか及ぼさない。
【0084】
上記の結果は、I族が2.58meq/gから4.30meq/gへ変化し(強いカルボキシル官能基の著しい増加を示す)、III族が2.36meq/gから0meq/gへ低下し(これは、ヒドロキシル基およびフェノール基がカルボニル基およびカルボキシル基へ酸化したことによって説明される)、IV族が3.24meq/gから9.28meq/gへ変化することを示す。これは、特に興味深いことである。なぜなら、I族およびIV族は、特にCOとOHとの相互作用(有機物質-表面官能基)による有機物質の吸着に関与するものであるからである。
【0085】
ヨウ素価は増加し、910mg/gから930mg/gへ変化する。ヨウ素価のこの増加、および表面官能基の全体的な増加は、オゾンを受けた活性炭の吸着性能の最適化を示している。
【0086】
〔実施例2:原位置における汚染物質の除去〕
活性炭の濃度が100~300g/Lである、活性炭微粒(activated carbon micrograin)の既存の流動層反応器を、当該反応器に入る前にオゾンを注入し、水をオゾンで飽和させることが可能となるように変更した。使用された水は、2つの工場に由来するものであった。一方は、飲料水を生産するものであり、他方は、三次処理中の汚水であった。
【0087】
これらの工場の各々について、注入したオゾンの量は、1g/m3~2.5g/m3であった。活性炭微粒の交換の割合(rate of renewal)は、10mg/L~20mg/Lであった。反応器内を上昇する水の流れの速さは、20m/h~40m/hであった。流動化反応器におけるオゾンで飽和された処理対象の水の接触時間は、約10分であった。
【0088】
以下の表2に列挙する様々な化合物の含有量を測定して、処理に応じたそれらの除去率を評価した。
【0089】
【0090】
【0091】
これらは、本発明に係る方法が、水処理の質に著しい改善をもたらすことを裏付けるものである。様々な微量汚染物質を除去するための平均性能の20%~25%のオーダーの向上が、これらのサイト(site)のうちの一方で記録され、85%~92%の除去効率がもたらされた。他方のサイトでは、ベンゾトリアゾール(77.6%)を除いて、他の全ての分子が80%を超える割合で除去され、カルバマゼピン(化合物番号1)、ジクロフェナク(化合物番号7)、ヒドロクロロチアジド(化合物番号13)およびスルファメトキサゾール(化合物番号5、98%の除去)については、効率が99%に達している。
【0092】
〔実施例3:副生成物の形成〕
従来技術に係る技術では、使用されるオゾン濃度は、8~10g/m3である。かかる濃度、および水/オゾンの接触時間が長いことは、オゾンによる汚染物質の酸化による副生成物の出現に好都合であることが知られている。特に、臭化物を含む水のオゾン処理が臭素酸塩の形成をもたらすことは、よく知られている。
【0093】
本発明によって実施された低投入量のオゾンが副生成物の有害な形成ももたらしたかどうかを確認するために、試験を実施した。これらの試験には、約6.5~7mg/Lの臭化物を含む三次汚水が使用された。注入されたオゾンの濃度は、約2g/m3であり、流動層反応器における活性炭粒子の濃度は、100~300g/Lであった。流動層における接触時間は、8分間よりも長かった。この結果を、従来技術において知られているもののように、異なる区画でオゾン処理を実行し、3分間の接触時間、3g/m3のオゾン注入量としたものと比較した。それらを、オゾンを注入せずに流動層反応器で得られたものと比較した。
【0094】
表3は、水中の臭素酸塩濃度の結果を示す。
【0095】
【0096】
3g/m3未満という注入オゾン濃度は、汚染物質、特に微量汚染物質が酸化されない程度に十分低い濃度であった。このために、水中で副生成物が生成されないことが可能となった。
【0097】
さらに、本発明に係る方法のため、オゾンは、活性炭を含む反応器にほとんど直接的に注入された。この結果、酸化剤(オゾン)と還元剤(活性炭)との間に直接的な反応が起こった。これは、オゾンと汚染物質(例えば、有機物質および微量汚染物質等)との間の反応よりもはるかに速い。これが、オゾン処理反応によって微量汚染物質が変更(modify)されなかった理由である。さらに、間隙水には、残留オゾンがなかった。
【0098】
〔実施例4:殺菌作用〕
大腸菌群(coliform bacteria)を、処理対象の原水中で数え、次いで、活性炭を含む反応器から出てきた水中で数えた。約1~2logの総大腸菌数の減少が観察された。これらの結果により、オゾンの殺菌作用が裏付けられた。
【0099】
オゾンはその殺ウイルス作用についても知られているため、処理対象の水中に存在するウイルスに関して、同等の結果が予想された。
【0100】
〔参考文献〕
Joong S Noh、James A Schwarz、1989.Estimation of the point of zero charge of simple oxides by mass titration.Journal of Colloid and Interface Science 130(1): 157-164.ISSN 0021-9797,https://doi.org/10.1016/0021-9797(89)90086-6.
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1】ベンチュリシステム、および水をオゾンで飽和させるための手段が、水を反応器へ運ぶパイプ上に取り付けられている、設備の模式図を表す。
【
図2】ベンチュリシステム、および水をオゾンで飽和させるための手段が、処理対象の水を反応器へ運ぶパイプのバイパスとして取り付けられたパイプ上に設置されている、本発明に係る設備の模式図を表す。
【
図3】オゾンの存在下または非存在下での、活性炭粒子(10g/m
3の活性炭粒子)の層反応器における、様々な微量汚染物質化合物の除去率を示す図である(白:オゾン非存在、黒:2g/m
3のオゾン)。化合物の一覧は、表2に与えられている。
【国際調査報告】