(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】クロロトキシン誘導体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/435 20060101AFI20240115BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240115BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20240115BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240115BHJP
【FI】
C07K14/435 ZNA
C12N15/62 Z
C12N5/078
C12N15/12
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023540726
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 HU2021050075
(87)【国際公開番号】W WO2022144560
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523248242
【氏名又は名称】ヴェーエルゲー セラピューティクス コルラートルト フェレレーシュシェーギュー タールシャシャーグ
【氏名又は名称原語表記】VRG THERAPEUTICS KFT.
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャーンドール ファルカシュ
(72)【発明者】
【氏名】ゾルターン タカーチュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーノシュ ナクチャ
(72)【発明者】
【氏名】ガーボル ラーツ
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル ホルンヤーク
(72)【発明者】
【氏名】ゾルターン フイベル
(72)【発明者】
【氏名】ダーニエル ツィオカ
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4H045AA10
4H045BA19
4H045CA50
4H045DA83
4H045EA51
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、一般的な配列X
0X
1CMPCX
S1X
S2X
S3DHX
S4X
S5ARRCX
2X
3CCGGYGX
4CFGYQCLCX
5X
6X
7X
8のアミノ酸配列を含むクロロトキシン誘導体に関し、ここで、(i)N末端X0X1クラスターは、AM、0M、または00からなる群から選択され;(ii)溶解性XS
1XS
2XS
3XS
4XS
5クラスターは、FTTQT、FTTES、SSSQT、SSSES、FSSQT、FSSES、またはFSSQSからなる群から選択され、(iii)内部X
2X
3X
4クラスターは、DKR、RDK、KDR、IKY、HKW、DRK、LKQ、KKKからなる群から選択され;そして(iv)C末端X
5X
6X
7X
8クラスターは、N000、R000、NR00、NRG0、NRGY、NRRR、またはRRRRからなる群から選択され;ここで、0はアミノ酸が存在しない位置を示す。本発明はさらに、前記クロロトキシン誘導体を含むコンジュゲートおよびその調製方法、前記コンジュゲートからなるセラノスティック対、前記コンジュゲートまたは前記セラノスティック対を含むキット、前記コンジュゲートを含む医薬組成物、癌の治療方法、前記クロロトキシン誘導体を含むキメラ抗原受容体をコードする核酸分子、前記核酸を含むベクター、および前記ベクターによりトランスフェクションまたは形質導入されたヒト集団に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般的な配列のアミノ酸配列
X
0X
1CMPCX
S1X
S2X
S3DHX
S4X
S5ARRCX
2X
3CCGGYGX
4CFGYQCLCX
5X
6X
7X
8
(配列番号43)
を含む、クロロトキシン誘導体であって、
ここで、
(i)N末端X
0X
1クラスターが、AM、0M、または00からなる群から選択され;
(ii)溶解性X
S1X
S2X
S3X
S4X
S5クラスターが、FTTQT、FTTES、SSSQT、SSSES、FSSQT、FSSES、またはFSSQSからなる群から選択され;
(iii)内部X
2X
3X
4クラスターが、DKR、RDK、KDR、IKY、HKW、DRK、LKQ、KKKからなる群から選択され;そして
(iv)C末端X
5X
6X
7X
8クラスターが、N000、R000、NR00、NRG0、NRGY、NRRR、またはRRRRからなる群から選択され;
ここで、0はアミノ酸が存在しない位置を示す、クロロトキシン誘導体。
【請求項2】
一般的な配列のアミノ酸配列
X
0X
1CMPCFTTDHQTARRCX
2X
3CCGGYGX
4CFGYQCLCX
5X
6X
7X
8
(配列番号35)
を含み、
(i)前記N末端X
0X
1クラスターが、AM、0M、または00からなる群から選択され;
(ii)前記X
2X
3X
4クラスターが、DKR、RDK、KDR、IKY、HKW、DRK、LKQ、KKKからなる群から選択され;そして
(iii)前記C末端X
5X
6X
7X
8クラスターが、N000、R000、NR00、NRG0、またはNRGYからなる群から選択され;
ここで、0はアミノ酸が存在しない位置を示す、請求項1に記載のクロロトキシン誘導体。
【請求項3】
前記内部X
2X
3X
4クラスターがDKRである、請求項1または2に記載のクロロトキシン誘導体。
【請求項4】
配列番号3~配列番号18、および配列番号36~配列番号42に記載の配列のいずれかを有するクロロトキシン誘導体から選択される、請求項1に記載のクロロトキシン誘導体。
【請求項5】
配列番号4または配列番号42に記載の配列を有する、請求項1に記載のクロロトキシン誘導体。
【請求項6】
環状である、請求項1~5のいずれか一項に記載のクロロトキシン誘導体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のクロロトキシン誘導体および補欠分子族を含む、コンジュゲート。
【請求項8】
前記補欠分子族が以下の剤:
(i)可視化剤であって、好ましくは蛍光標識、放射性標識、磁気共鳴イメージング標識、および標識分子への高親和性結合により間接的標識を可能にする剤から選択される可視化剤;
(ii)治療剤であって、好ましくは化学療法剤、および生物学的治療剤から選択される治療剤;
(iii)標的化剤であって、好ましくは抗体、ポリペプチド、多糖および核酸から選択される標的化剤;
(iv)循環半減期を増加させる部分、好ましくはPEG部分、グリコシル部分、グリコシルPEG部分およびリンカー延長を介して請求項1~6のいずれか一項に記載のクロロトキシン誘導体の環状化を可能にする部分から選択される部分
から選択される、請求項7に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記クロロトキシン誘導体と前記補欠分子族との間に、1つまたは複数のリンカー(複数可)および任意に1つまたは複数のスペーサー(複数可)を含む、請求項7または8のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
前記リンカーが、ペプチド、ジメチルジスルフィドリンカー、グルタリルリンカー、カテプシン切断性リンカーの群から選択される、請求項9に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
第1のコンジュゲートおよび第2のコンジュゲートを含むコンジュゲートのセラノスティック対であって、前記第1のコンジュゲートが請求項7~10のいずれか一項に記載のコンジュゲートであり、前記第2のコンジュゲートが請求項7~10のいずれか一項に記載のコンジュゲートである、コンジュゲートのセラノスティック対。
【請求項12】
a)前記第1のコンジュゲートおよび前記第2のコンジュゲートのクロロトキシン誘導体部分が同じアミノ酸配列を有し、前記2つのコンジュゲートが異なる補欠分子族を有するか;または
b)前記第1のコンジュゲートおよび前記第2のコンジュゲートのクロロトキシン誘導体部分が異なるアミノ酸配列を有し、前記第1のコンジュゲートおよび前記第2のコンジュゲートが、同じまたは異なる補欠分子族を有する、請求項11に記載のセラノスティック対。
【請求項13】
請求項7~10のいずれか一項に記載のコンジュゲートおよび使用説明書を含む、キット。
【請求項14】
請求項11または12に記載のセラノスティック対および使用説明書を含む、キット。
【請求項15】
請求項8~10のいずれか一項に記載のコンジュゲートを含む医薬組成物であって、前記コンジュゲートの前記補欠分子族が治療剤または可視化剤であり、前記医薬組成物がさらに、薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項16】
癌の治療に使用するための、請求項7~10のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
癌の診断に使用するための、請求項7~10のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
前記補欠分子族が可視化剤であり、癌性組織の可視化に使用するためのものである、請求項7~10のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項19】
前記癌が、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、上衣腫、ユーイング肉腫、神経節膠腫、神経節腫、神経膠腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、髄芽腫、髄膜腫、神経芽腫、黒色腫(原発性および転移性)、膵臓癌、褐色細胞腫、前立腺癌、シュワン腫、小細胞肺癌腫の群から選択される;より好ましくは、前記癌が、乳癌、神経膠芽腫、黒色腫および膵臓癌の群から選択される、請求項16または17に記載のコンジュゲート。
【請求項20】
前記癌性組織が、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、上衣腫、ユーイング肉腫、神経節膠腫、神経節腫、神経膠腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、髄芽腫、髄膜腫、神経芽腫、黒色腫(原発性および転移性)、膵臓癌、褐色細胞腫、前立腺癌、シュワン腫、小細胞肺癌腫の群から選択される;より好ましくは、前記癌性組織が、乳癌、神経膠芽腫、黒色腫および膵臓癌の群から選択される、請求項18に記載のコンジュゲート。
【請求項21】
請求項7~10のいずれか一項に記載のコンジュゲートを有効量投与することによる、癌に罹患している患者の治療方法であって、前記補欠分子族が前記癌の治療に適切な治療剤である、方法。
【請求項22】
前記癌が、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、上衣腫、ユーイング肉腫、神経節膠腫、神経節腫、神経膠腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、髄芽腫、髄膜腫、神経芽腫、黒色腫(原発性および転移性)、膵臓癌、褐色細胞腫、前立腺癌、シュワン腫、小細胞肺癌腫の群から選択される;より好ましくは、前記癌が、乳癌、神経膠芽腫、黒色腫および膵臓癌の群から選択される、請求項21に記載の癌に罹患している患者の治療方法。
【請求項23】
請求項15に記載の医薬組成物を投与することによる、癌に罹患している患者の治療方法であって、前記コンジュゲートの前記補欠分子族が、前記癌の治療に適切な治療剤である、方法。
【請求項24】
前記癌が、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、上衣腫、ユーイング肉腫、神経節膠腫、神経節腫、神経膠腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、髄芽腫、髄膜腫、神経芽腫、黒色腫(原発性および転移性)、膵臓癌、褐色細胞腫、前立腺癌、シュワン腫、小細胞肺癌腫の群から選択される;より好ましくは、前記癌が、乳癌、神経膠芽腫、黒色腫および膵臓癌の群から選択される、請求項23に記載の癌に罹患している患者の治療方法。
【請求項25】
コンジュゲートの調製方法であって、以下の
a)請求項1~6のいずれか一項に記載のクロロトキシン誘導体を提供する工程;
b)任意に、リンカー基を工程a)の前記クロロトキシン誘導体に結合させる工程;
c)補欠分子族を工程b)で形成された化合物のリンカー部分に結合させるか、またはリンカー非存在下で工程a)のタンパク質に直接結合させる、工程を含む、方法。
【請求項26】
癌性組織を可視化する方法であって、検査する組織を請求項7~10のいずれか一項に記載のコンジュゲートと接触させる工程を含み、前記コンジュゲートの前記補欠分子族が、前記癌性組織の前記可視化に適切な可視化剤である、方法。
【請求項27】
キメラ抗原受容体をコードする核酸分子であって、前記キメラ抗原受容体が、
a)請求項1~6のいずれか一項に記載のクロロトキシン誘導体;
b)任意に、前記クロロトキシン誘導体と膜貫通ドメインとの間のスペーサー領域;
c)膜貫通ドメイン;
d)1つまたは2つの共刺激ドメイン;
e)シグナル伝達ドメインを含み、
前記クロロトキシン誘導体が、前記キメラ抗原受容体がT細胞の表面に発現された際に、T細胞活性を癌細胞に向けることを可能にする、核酸分子。
【請求項28】
前記クロロトキシン誘導体が、配列番号3~配列番号18、および配列番号36~配列番号42、好ましくは配列番号4または配列番号42に記載の配列のいずれかを有するクロロトキシン誘導体から選択される、請求項27に記載の核酸分子。
【請求項29】
i)膜貫通ドメインが、CD4膜貫通ドメインまたはそのバリアント、CD8膜貫通ドメインまたはそのバリアント、CD28膜貫通ドメインまたはそのバリアント、およびCD3ゼータ膜貫通ドメインまたはそのバリアントからなる群から選択され;
ii)1つまたは2つの共刺激ドメインが、CD28共刺激ドメインまたはそのバリアント、4-1BB共刺激ドメインまたはそのバリアント、およびOX40共刺激ドメインまたはそのバリアントからなる群から選択され;および
iii)シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータシグナル伝達ドメインまたはそのバリアントである、請求項27または28に記載の核酸分子。
【請求項30】
請求項27~29のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項31】
ヒト細胞の集団であって、
i)請求項27~29のいずれか一項に記載の核酸を含む発現カセットを含むRNAまたはDNAベクターによりトランスフェクションされ、前記トランスフェクションがin vivoまたはex vivoで行われる、または
ii)請求項27~29のいずれか一項に記載の核酸を含む発現カセットを含むウイルスベクターによって形質導入され、前記形質導入がin vivoまたはex vivoで行われ、前記ウイルスベクターが好ましくはレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであり;
前記ヒト細胞が、自家ヒトT細胞、自家ヒトCD4+ヘルパーT細胞、自家ヒトCD8+細胞傷害性T細胞、自家ヒトCD4+ヘルパーT細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞の任意の割合の混合物、同種ヒトT細胞、同種ヒトCD4+ヘルパーT細胞、同種ヒトCD8+細胞傷害性T細胞、同種ヒトCD4+ヘルパーT細胞とCD8+細胞傷害性T細胞の任意の割合の混合物、自家初代ヒトナチュラルキラー(NK)細胞、同種初代ヒトナチュラルキラー(NK)細胞、NK-92細胞株の同種細胞、自家ヒト単球、自家ヒトマクロファージ、同種ヒト単球、同種ヒトマクロファージからなるリストから選択される、ヒト細胞の集団。
【請求項32】
請求項31に記載のヒト細胞の1つまたは複数の集団を投与することを含む、患者の癌を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロトキシン誘導体に関する。特に、本発明は、哺乳動物、特にヒトの癌性細胞を標的とするのに有用な新規のクロロトキシン誘導体に関する。本発明はまた、新規クロロトキシン誘導体を用いて癌性細胞を標的化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロトキシン特性
クロロトキシン(以下、CTXと称する)は、36アミノ酸の小さなタンパク質で、シスチンノットミニタンパク質[Moore 2012]であり、4つのジスルフィド結合によって安定化されたコンパクトな三次構造を有する。CTXはサソリであるレイウルス・クインケストリアトゥス(Leiurus quinquestriatus)の毒から最初に単離され、クロライドチャネルを遮断する能力から名付けられた。CTXは節足動物において神経毒性を引き起こすことがある[DeBin 1993]。クロロトキシンまたはCTXという用語では、配列番号1に示される野生型タンパク質を指す。野生型CTXおよびいくつかのCTXバリアント/誘導体のジスルフィドパターンを
図1に示す。野生型CTXのジスルフィドパターンは以下の通りである:C
2-C
19、C
5-C
28、C
16-C
33、およびC
20-C
35である。
【0003】
神経膠腫特異的なクロライド電流を研究していた際に、CTXが正常脳組織の細胞とは対照的に、in vitroおよびin vivoで神経膠腫細胞に特異的および選択的な結合を示すことが見出された[Soroceanu 1998]。この発見は、131Iヨウ素放射性同位元素に基づく殺細胞放射線療法を標的腫瘍細胞に集中させる標的分子としてCTXを使用する概念を提起した[Mamelak 2006]。また、免疫組織化学的研究により、蛍光標識またはビオチン標識を有するCTX様分子が神経膠腫の免疫組織化学的標識にうまく使用できることが示された[Soroceanu 1998]。その後、CTXによる腫瘍特異的結合は、神経外胚葉由来腫瘍に分類される様々な種類の腫瘍でより広範に観察された[Lyons 2002]。多形膠芽腫(GBM)、退形成性星状細胞腫、星状細胞腫、および乏突起膠腫を含む神経膠腫の他に、LyonsらはCTX陽性(すなわち特異的結合体)として、膠肉腫、神経節膠腫、髄膜腫、上衣腫等の多数の他の原発性脳腫瘍、ならびに髄芽腫、神経芽細胞腫、神経節腫、黒色腫(原発性および転移性)、褐色細胞腫、ユーイング肉腫、小細胞肺癌腫、およびシュワン細胞腫等の末梢神経外胚葉腫瘍を記載している。Lyonsらはまた、7つの膠芽腫細胞株および6つの末梢神経外胚葉腫瘍細胞株を含む異なるヒト腫瘍起源の不死化細胞株へのビオチン化CTXの高い特異的結合を示した。また、生理的温度の生細胞では、CTXは異なる細胞局在パターンをもたらす異なる内在化プロセスによって、腫瘍細胞および非腫瘍細胞に取り込まれることが示された[Wiranowska 2011]。この研究では、CTXは、神経膠腫細胞ではエンドソームコンパートメントでリソソームに処理されるために受容体介在性(クラスリン性とも呼ばれる)エンドサイトーシスによって取り込まれ、その結果、細胞内に長く保持されることが証明された。一方、正常細胞(星状細胞および線維芽細胞)では、CTXは非受容体介在性のマクロピノサイトーシスによって取り込まれ、その後急速に放出されるため、正味の取込みは少なく、保持は延長されなかった。これらの特徴は、CTXの選択的腫瘍標的化特性に重要な役割を果たしている可能性がある。
【0004】
本来の毒由来のCTXはC末端にカルボキサミドを持つが(すなわち、CTXと表記されるネイティブなタンパク質)、組換えにより産生されたCTXのバリアント(以下、rCTXと表記される)はC末端のアルギニンのカルボキシル基で終わっている。
【0005】
CTXの腫瘍選択性は、元来神経膠腫細胞のクロライドイオンチャネルに結合することに起因していた。その後、マトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP-2)がCTXの受容体として、単独で、またはMMP-14(マトリックスメタロプロテイナーゼ14、膜型-1マトリックスメタロプロテイナーゼ(MT1-MMP)としても知られる)、TIMP-2(tissue inhibitor of metalloproteinase 2)、およびavβ3インテグリンとのタンパク質複合体として同定された[Deshane 2003]。このMMP-TIMP-インテグリン複合体は、細胞表面に結合および放出された活性型MMP-2の制御(成熟、固定、活性化、および阻害)に重要な役割を果たすと考えられており、これらの因子が協調して腫瘍浸潤、転移、および血管新生を促進し得る[Yosef 2018]。
【0006】
それにもかかわらず、その後の研究において、CTXと組換え産生されたMMP-2との直接的および特異的な相互作用は、プルダウンアッセイでは確立できなかった[Veiseh 2007]。この曖昧さに促され、他の研究グループは、アフィニティーカラム、架橋試薬、および質量分析を用いて神経膠腫CTX受容体の同定を再調査し、CTX受容体を含む直接結合パートナータンパク質はおそらくアネキシン2(Anx2)であろうと結論づけたが[Kesavan 2010];彼らは他の結合パートナータンパク質の可能性を認め、組換え産生および精製されたAnx2タンパク質を用いてCTX-Anx2タンパク質-タンパク質相互作用を直接証明はしなかった。
【0007】
さらに他の研究グループは、腫瘍細胞および内皮細胞のエンドサイトーシス受容体であるニューロピリン-1(NRP1)を新規CTX標的として同定した[McGonigle 2019]。彼らは、NRP1と結合するのはrCTXだけであり、ネイティブ(すなわち、C末端がカルボキサミドである)CTXはNRP1と結合しないが、細胞環境で脱アミド化によってカルボキシルバリアントに代謝されることを発見した。
【0008】
このように、議論の余地がある提案を鑑みると、CTXの真の標的タンパク質は、未だ不明な点が多いままである。CTXと特異的に結合する標的タンパク質のドメインまたは部位は、しばしばCTX受容体と呼ばれ[例えばSoroceanu 1998;Dardevet 2015]、本明細書では簡略化のためにこの用語も使用する。
【0009】
前臨床試験および臨床試験におけるCTX含有構築物およびCTXバリアント
特異的抗体標的分子と比較して、小タンパク質CTXは脳血液関門を通過することができる。このため、CTXは新しい標的化分子を創製する出発点として有望である。
【0010】
いくつかの初期の前臨床研究では、合成的に製造されたCTX(TM-601)が、単独またはテモゾロミドとの組合せで、in vivoのマウスにおける膠芽腫異種移植片腫瘍増殖に有効であることが、いくつかの特許出願により報告されている[米国特許公開第20100215575号広報および米国特許公開第20100210546号広報]。しかし、これらの知見は、後に科学論文または追跡臨床試験で明らかに確認されることはなく、むしろ標的分子としてのCTXの利用に興味が向かうようになった。
【0011】
CTXの真の標的が明確になっていないにもかかわらず、この分子は、診断もしくは治療ツールとしての利用、またはそのような利用を組み合わせたセラノスティクスとして、癌研究分野で多くの関心を集めている。[Dardevet 2015]で概説されている複数の利用は、CTXのアミノ酸配列が有用な化学改変のためのいくつかの機会を提供することによって可能となる。このような改変には、多くの化合物とのコンジュゲーション、またはコンジュゲーションもしくは環状化のためのリンカーとしてのさらなるペプチド配列の付加が含まれ、これらの改変により、CTXを標的化キャリア分子として使用することが可能になる。標的化の利用は、このような改変がしばしば改変CTX化合物の標的認識(CTX受容体結合)特性を有意に変化させないという明白な特徴によって可能になる。例えば、CTXはヨウ素化に使用できる29位のチロシン残基を1つ含んでおり[Soroceanu 1998]、特定の放射性ヨウ素同位体(123I、125I、および131I)は、標的化分子に結合して、様々な前臨床研究(例えば、結合研究における125I)または臨床イメージング(例えば、ガンマスキャンまたは単一光子放出コンピュータ断層撮影-SPECTまたはSPECT/CT)または放射線治療応用のいずれかに日常的に使用されている。131I標識CTX(関連文献ではTM-601と表記)を用いた臨床第1/2相試験が、局所(腫瘍部位内)治療投与および静脈内イメージング(低用量)投与の両方で開始された。治療試験の第1相の結果は、有効性および安全性に関して有望なシグナルを示すものとして発表された[Mamelak 2006]が;承認された第2相の治療試験および診断薬の開発は、結果を何ら発表することなく中止された。第1相診断(イメージング)試験は明らかに早期に中止された[clinicaltrials.govの参照番号NCT00683761]。
【0012】
国際公開第WO2011094671号広報には、N末端にコンジュゲートしたポリペプチドが記載されており、ポリペプチドはCTXであっても、またはそのバリアントであっても良い。ここでは、CTXが癌性細胞の集団にコンジュゲートを標的化するのに役立ち、CTXがMMP-2に特異的に結合できることが記載されている。
【0013】
CTX分子のリジン残基は、幅広い架橋試薬の利用可能性により、活性物質のコンジュゲーションを容易に行うためにも利用できる。CTXの15、23、および27位には3つのリジン残基があり、これらはNHS-エステル改変シアニン5.5(Cy5.5)および他の蛍光分子とのコンジュゲーションに利用されている[Akcan 2011;国際公開第WO2011142858号広報]。しかし、野生型CTXには3つのリジン残基が存在するため、様々な単一部位および複数部位のコンジュゲーション生成物の混合物ではなく、特定の位置(複数可)で均一なコンジュゲート誘導体を高収率で再現性よく生産するために、CTXのいくつかの改変が妥当であると考えられた。米国食品医薬品局(FDA)および他の類似の規制機関から承認された混合物を使用することは可能であるが、モノ、ジ、およびトリ標識バッチの比率を合わせるのが高価かつ困難であるため、商業化の妨げになる可能性がある。そこで、Olsonと共同研究者らはCTXのリエンジニアリングの例を発表した。彼らは、リジン15および23をアラニンまたはアルギニンのいずれかで置換することにより、得られるバッチ中の混合バイオコンジュゲート種が排除される一方、CTXと比較して変異CTXタンパク質のin situ腫瘍染色活性は保持されることを示した[Akcan 2011;国際公開第WO2011142858号広報]。その結果、15位および23位のリジン-アルギニン置換(K15R、K23R)により、CTXのモノリジン(K27)変異体(以下、mCTXと呼ぶ;配列番号2)が得られた。このmCTXタンパク質にBLZ-100(INN名 トズレリスチド;CAS登録番号: 1673565-40-6)と表記されるインドシアニングリーン(ICG)をコンジュゲートさせた。これは現在、ヒト腫瘍の術中可視化[Dintzis 2019;Patil 2019]、すなわち「腫瘍ペイント」として、第2相臨床開発[clinicaltrials.govの参照番号NCT03579602]中である。CTXおよびmCTXの蛍光コンジュゲートを研究している間に、これらのコンジュゲートがHeLa(子宮頸癌)細胞によって内在化されること、およびmCTXのCy5.5-およびAlexa Fluor 488-コンジュゲートの細胞内取込みが、CTXの類似コンジュゲートのそれよりも1.5倍および2倍高いことが観察された[Ojeda 2017]。しかし、この差はフルオロフォアにコンジュゲートさせたCTXの特徴であり、必ずしもコンジュゲートさせていない標的化CTXのバリアントの特徴ではない。しかし、術中可視化(「蛍光ガイド下手術」)には、上記のCy5.5およびICG以外に、例えばIRDye 800 CW、DyLight 750、またはVivoTag-S 750を含むいくつかの他のフルオロフォアコンジュゲートCTXバリアントを使用してもよく、近赤外色素の使用が最も好ましい[Stroud 2011]。
【0014】
国際公開第WO2015042202号広報は、CTXバリアントを含むコンジュゲートおよびキットを開示している。いくつかの実施形態によれば、CTXバリアントは蛍光部分とコンジュゲートを形成する。ここに記載されたコンジュゲートは、腫瘍の治療およびイメージングに有用である。
【0015】
CTX特異的な発明に関する総説が2014年に発表された[Cheng 2014]。ここでは、CTXが神経膠腫細胞の増殖および転移を特異的に阻害し、腫瘍のアポトーシスを加速し得ることが記載されている。CTXバイオコンジュゲートに関するいくつかの文献が提供されている。ここにはCTXがMMP-2レセプターに特異的に結合することも記載されている。
【0016】
環状化は、in vitroまたはin vivoにおいて、血中血清中のポリペプチド薬剤候補の半減期を延長するためにしばしば用いられる方法である。Akcanらは、CTXの環状バリアントが悪性組織に結合する能力を保持していることを示した[Akcan 2011]。この環状バリアントは、C末端アルギニンをN末端メチオニンへとヘプタペプチド(GAGAAGG)リンカーを介して連結することにより作製された。この改変は血漿中での半減期を延長するだけでなく、単独部位コンジュゲートを促進した。したがって、いくつかの伸長するペプチドセグメントを用いた、または余分なジスルフィド架橋を組み込んだ環状化は、当業者にとってCTXバリアント親タンパク質の明らかな改変であり、そのような改変は親タンパク質の標的化能を保持するであろう。
【0017】
標的化分子としてのCTXの他の利用は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法に、特異的タンパク質認識抗体の代わりにCTXを適用することである。キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞に腫瘍細胞表面に存在する特定のタンパク質を標的とする新しい能力を与えるように遺伝子操作された受容体タンパク質である。受容体は、抗原結合機能とT細胞活性化機能の両方を1つの受容体に組み込んだものであるためにキメラである。したがって、CARは、細胞外腫瘍認識/標的化ドメイン、細胞外のリンカー/スペーサー、膜貫通ドメイン、および細胞内T細胞活性化および共刺激シグナル伝達ドメインから構成される。特許出願である国際公開第WO2017/066481号広報は、細胞外腫瘍認識/標的化ドメインがCTX、関連毒素、またはCTXバリアントであるCAR-T構築物を記載している。現在、CTXを腫瘍標的化ドメインとして使用するCAR-T細胞免疫療法の開発が、MMP-2陽性膠芽腫患者の治療のために臨床第1相[clinicaltrials.govのNCT04214392]にある。
【0018】
標的化分子としてのCTXの他の利用は、CTXを抗増殖性または細胞傷害性ペイロード分子に結合させることである。標的化分子による特異性を達成するために、様々な抗増殖薬剤が抗体、またはより小さな標的化ポリペプチドに結合されてきた。当初、この試みはビンカアルカロイドおよびドキソルビシン等の既存の化学療法薬剤の特異性を高めることに向けられた。しかし、抗体-薬剤コンジュゲート(ADC)は近年大きな進化を遂げ、FDAの承認に至ったものもあれば、臨床開発中のものもかなりある[Lambert 2018]。現在臨床開発中のADCのほとんどに使用されている細胞傷害性化合物は、強力な抗有糸分裂微小管破壊剤であるドラスタチン10(アウリスタチン)もしくはメイタンシンの誘導体、または細胞傷害性の高いいくつかのDNA損傷剤:カリケアマイシン、デュオカルマイシン、ピロロベンゾジアゼピン二量体、およびインドリノベンゾジアゼピン偽二量体の1つの誘導体のいずれかである[Lambert 2018]。これらのキャリア-リンカー-ペイロード構築物は、細胞傷害性化合物が細胞内標的に作用し、標的化分子が細胞特異的な標的タンパク質の表面存在によって認識される細胞への特異的な内在化を促進するという前提に基づいている。内在化は、エンドソーム-リソソーム経路を介して行われ、そこでリンカーが切断され、および/または抗体が分解されてペイロードが放出される。したがって、このようなADC構築物は、リソソーム酵素切断可能または切断不可能リンカーのいずれかで組み立てられていた[Lambert 2018]。特許出願である国際公開第WO2017/136769号広報には、CTXとクリプトフィシン誘導体のコンジュゲートが、有効な抗癌治療薬剤として記載されている。アウリスタチン(例えば、モノメチルアウリスタチンEまたはF-MMAEまたはMMAF)およびメイタンシンの他に、クリプトフィシンも他の微小管破壊剤である。この特許出願の顕著な例は、リジン27において、切断可能なジメチルジスルフィドリンカーを介してクリプトフィシンのアナログにコンジュゲートしたCTXのキャリア-リンカー-ペイロード構築物である。この化合物は、神経膠芽腫、膵臓癌、前立腺癌および乳癌のマウス皮下異種移植モデルにおいて、CTXを含まない同様のリンカー-ペイロード構築物の有効性と比較して、優れた強力な抗腫瘍活性を有する。
【0019】
さらに、CTXを標的化分子として利用した診断および治療応用として、白金(IV)-CTX;ポリマードットバイオコンジュゲート用コンジュゲート;コンジュゲートアップコンバージョンナノプローブ;Ag-In-S/ZnS量子ドット;癌細胞標的化、イメージングおよびsiRNA送達の組合せに適合したガドリニウム磁性ナノベクターを有するデンドリグラフトポリリジン;ナノベクターベースの標的化遺伝子送達;薬剤送達およびCTX-コンジュゲート酸化鉄ナノ粒子によるMRI造影剤の増強の組合せ; CTX-改変ドキソルビシン充填リポソーム;[Dardevet 2015;Cohen 2018]で総説されているような、他のナノ粒子およびナノプローブが提案および開発されている。
【0020】
既存のCTX構築物およびバリアントの欠点
CTXを診断または治療の標的化剤として利用する試みは、初期段階の臨床開発も含めて数多く行われているが、これまでのところ医療現場への導入の認可(販売承認)に至った開発物はない。CTXを標的化薬剤として使用する2つのアプローチ(CAR-Tおよびトズレリスチド)は、近年活発に開発されているようである。他の開発物のいくつかは、clinicaltrials.gov等の必須の臨床試験データベースにおいて公開されている情報によれば、明らかに中止されていると考えられる。しかし、失敗または中止の理由は開示されておらず、推測の余地しかない。潜在的な財政的または経営的な問題に加えて、失敗の明らかな理由の1つは、CTXの有用な受容体に対する親和性または強度が不十分であったこと、および/または他の分子または細胞標的に対する望ましくない結合または効果に対して、選択性が不十分であったことであろう。
【0021】
U251MG、D54MGおよびU87MGの神経膠腫細胞株の浸潤および遊走に対してCTXで観察された50%の阻害効果(IC50)をもたらす濃度は約600nM[Soroceanu 1999]であり、これは本発明者らのMMP-2結合および置換実験で測定された約500~700nMの範囲のEC50およびIC50値と一致している(下記参照)。このような中程度の効力と高いサブマイクロモル有効濃度レベルは、治療または標識に十分有効な全身濃度をin vivoで達成することが困難であることを意味する。それにもかかわらず、健常な正常細胞よりも腫瘍細胞により多くのペイロード分子をもたらす標的化分子の選択性は、標的化分子の効果的な診断および/または治療応用にとってさらに重要である。したがって、悪性腫瘍の診断および治療のためのCTX関連研究分野における膨大なアンメットニーズは、標的タンパク質関連または細胞結合および機能的効果のいずれかの点で、より強力なおよび/またはより選択的な化合物によって、よりよく満たされるかもしれないということは、当技術分野の当業者にとって明白な仮定である。さらに、同じ種類の腫瘍でも、腫瘍細胞株によって示すマーカータンパク質の発現は多種多様である。したがって、異なる認識プロファイルを有する多種多様な新しい腫瘍細胞マーカー認識分子、およびまた、細胞特異的診断ツールと、共通のパターン認識標的分子によって連結されたマッチング治療ツールとの結合、すなわち「セラノスティクス」が必要である。特異的抗体はこのような目的のために広く使用されているが、より小さなサイズの特異的標的化分子は、より優れた浸透特性および生産コスト効果等、抗体を上回る利点がある可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の背景にある考えは、本発明のCTX誘導体(以下、CTXDまたはクロロトキシン誘導体と称する)がCTXよりも強くマトリクスメタロプロテイナーゼ2(MMP-2)タンパク質に結合することである。その結果、これらの化合物は、乳癌、神経膠芽腫、黒色腫および膵臓癌を含むがこれらに限定されない、MMP-2を過剰発現する多数の神経外胚葉腫瘍細胞により強力に取り込まれる。驚くべきことに、フルオロフォアとコンジュゲートした本発明の代表的化合物(すなわちCTXD5およびCTXD8、表II参照)は、線維芽細胞、星状細胞および内皮細胞のような非腫瘍細胞と比較して、試験した神経外胚葉腫瘍細胞に対して、より強い細胞取込みだけでなく、より高い選択性を示した。さらに、精製された形態で、想定される標的タンパク質のパネルとの結合を調べたところ、驚くべきことに、CTXはMMP-2以外の他のタンパク質、すなわちNRP-1ともほぼ同様の強度で結合し、MMP-9、TIMP-2、およびクロライドチャネルCLC3とも中程度に結合し、同時に、CTXD5およびCTXD8も標的タンパク質選択性の増加を示し、MMP-2にのみ明白な結合を示し、TIMP-2およびCLC3に対しては非常に弱い結合を示すことが明らかになった。さらに、CTXD5およびCTXD8の主要標的タンパク質であるMMP-2に対する親和性は、設計したリンカー構造を有する化学療法用細胞分裂阻害化合物または蛍光標識フルオロフォア化合物のような比較的大きな分子とリジン残基でコンジュゲートしても有意には変化しなかった。これらの観察を合わせると、本発明の化合物は、単独で、または診断、もしくは治療、または診断と治療の組合せである、CTXのこのような仮定された利用に関連する先行技術から明らかであろう「セラノスティック」とも呼ばれる応用を可能にする付加的な特徴を提供する他の分子、ナノ粒子、CAR-T細胞構築物とコンジュゲートされた状態で有用であり、標的化分子としてCTXまたはmCTXよりも優れている、という結論がもたらされる。本発明のタンパク質は、当業者にとって、血中血清中におけるタンパク質薬剤候補の半減期を延長するための環状化等、CTX誘導体のさらなる改変または拡張の出発点となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の観点から、本発明は、一般的な配列
X0X1CMPCXS1XS2XS3DHXS4XS5ARRCX2X3CCGGYGX4CFGYQCLCX5X6X7X8
(配列番号43)
のアミノ酸配列を含むクロロトキシン誘導体に関し、
ここで、
(i)N末端X0X1クラスターは、AM、0M、または00からなる群から選択され、
(ii)溶解性XS1XS2XS3XS4XS5クラスターは、FTTQT、FTTES、SSSQT、SSSES、FSSQT、FSSES、またはFSSQSからなる群から選択され、
(iii)内部X2X3X4クラスターは、DKR、RDK、KDR、IKY、HKW、DRK、LKQ、KKKからなる群から選択され;そして、
(iv)C末端X5X6X7X8クラスターは、N000、R000、NR00、NRG0、NRGY、NRRR、またはRRRRからなる群から選択され;
ここで、0はアミノ酸が存在しない位置を示す。
【0024】
好ましい実施態様によれば、本発明は、一般的な配列
X0X1CMPCFTTDHQTARRCX2X3CCGGYGX4CFGYQCLCX5X6X7X8
(配列番号35)
のアミノ酸配列を含むクロロトキシン誘導体に関し、
ここで、
(i)N末端X0X1クラスターは、AM、0M、または00からなる群から選択され、
(ii)内部X2X3X4クラスターは、DKR、RDK、KDR、IKY、HKW、DRK、LKQ、KKKからなる群から選択され;そして
(iii)C末端X5X6X7X8クラスターは、N000、R000、NR00、NRG0、またはNRGYからなる群から選択され;
ここで、0はアミノ酸が存在しない位置を示す。
【0025】
好ましい実施形態によれば、クロロトキシン誘導体の内部X2X3X4クラスターはDKRである。
【0026】
より好ましい実施形態によれば、クロロトキシン誘導体は、配列番号3~配列番号18および配列番号36~配列番号42に記載の配列のいずれかを有するクロロトキシン誘導体から選択される。さらにより好ましい実施形態によれば、クロロトキシン誘導体は、配列番号4または配列番号42に記載の配列を有する。
【0027】
他の好ましい実施形態によれば、クロロトキシン誘導体は環状である。
【0028】
本発明はさらに、コンジュゲートに関し、ここで、コンジュゲートは、本発明のクロロトキシン誘導体および補欠分子族を含む。
【0029】
補欠分子族は、好ましくは以下の薬剤から選択される:
(i)可視化剤であって、好ましくは蛍光標識、放射性標識、磁気共鳴イメージング標識、および標識分子への高親和性結合により間接的標識を可能にする薬剤から選択される可視化剤;
(ii)治療剤であって、好ましくは化学療法剤、および生物学的治療剤から選択される治療剤;
(iii)標的化剤であって、好ましくは抗体、ポリペプチド、多糖および核酸から選択される標的化剤;
(iv)循環半減期を増加させる部分であって、好ましくはPEG部分、グリコシル部分、グリコシルPEG部分およびリンカー延長を介して請求項1~5のいずれか一項に記載のクロロトキシン誘導体の環状化を可能にする部分から選択される部分。
【0030】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、コンジュゲートは、クロロトキシン誘導体と補欠分子族との間に、1つ以上のリンカー(複数可)と、任意に1つ以上のスペーサー(複数可)とを含む。リンカーは、好ましくは、ペプチド、ジメチルジスルフィドリンカー、グルタリルリンカー、カテプシン切断性リンカーの群から選択される。
【0031】
本発明はさらに、第1のコンジュゲートと第2のコンジュゲートを含むコンジュゲートのセラノスティック対に関し、ここで両方のコンジュゲートが本発明のコンジュゲートである。本発明の好ましい実施形態によれば、前記2つのコンジュゲートのクロロトキシン誘導体部分は同じアミノ酸配列を有し、前記2つのコンジュゲートは異なる補欠分子族を有する。他の好ましい実施形態によれば、前記第1のコンジュゲートおよび前記第2のコンジュゲートのクロロトキシン誘導体部分は、異なるアミノ酸配列を有し、前記第1のコンジュゲートおよび前記第2のコンジュゲートは、同一または異なる補欠分子族を有する。
【0032】
本発明はさらに、本発明のコンジュゲートおよび使用説明書を含むキットに関する。他の実施形態によれば、キットは、本発明のセラノスティック対および使用説明書を含む。
【0033】
本発明はさらに、本発明のコンジュゲートを含む医薬組成物に関し、コンジュゲートの補欠分子族は治療剤または可視化剤であり、医薬組成物はさらに、薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0034】
本発明はさらに、本発明のコンジュゲートに関し、このコンジュゲートは、癌の治療における使用、または癌の診断における使用のためのものである。好ましい実施形態によれば、癌は、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、上衣腫、ユーイング肉腫、神経節膠腫、神経節腫、神経膠腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、髄芽腫、髄膜腫、神経芽腫、黒色腫(原発性および転移性)、膵臓癌、褐色細胞腫、前立腺癌、シュワン腫および小細胞肺癌腫の群から選択される。最も好ましい実施形態によれば、癌は、乳癌、神経膠芽腫、黒色腫および膵臓癌の群から選択される。
【0035】
本発明はさらに、本発明のコンジュゲートに関し、このコンジュゲートは、癌性組織の可視化における使用のためのものである。好ましい実施形態によれば、癌性組織は、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、上衣腫、ユーイング肉腫、神経節膠腫、神経節腫、神経膠腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、髄芽腫、髄膜腫、神経芽腫、黒色腫(原発性および転移性)、膵臓癌、褐色細胞腫、前立腺癌、シュワン腫および小細胞肺癌腫の群から選択される。最も好ましい実施形態によれば、癌性組織は、乳癌、神経膠芽腫、黒色腫および膵臓癌の群から選択される。
【0036】
本発明はさらに、本発明によるコンジュゲートを有効量で投与することによる、癌に罹患している患者の治療方法に関し、ここで、補欠分子族は癌の治療に適した治療剤である。好ましい実施形態によれば、癌は、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、上衣腫、ユーイング肉腫、神経節膠腫、神経節腫、神経膠腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、髄芽腫、髄膜腫、神経芽腫、黒色腫(原発性および転移性)、膵臓癌、褐色細胞腫、前立腺癌、シュワン腫および小細胞肺癌腫の群から選択される。最も好ましい実施形態によれば、癌は、乳癌、神経膠芽腫、黒色腫および膵臓癌の群から選択される。
【0037】
本発明はさらに、本発明による医薬組成物を投与することによる、癌に罹患している患者の治療方法に関し、ここで、コンジュゲートの補欠分子族は、癌の治療に適した治療剤である。好ましい実施形態によれば、癌は、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、上衣腫、ユーイング肉腫、神経節膠腫、神経節腫、神経膠腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、髄芽腫、髄膜腫、神経芽腫、黒色腫(原発性および転移性)、膵臓癌、褐色細胞腫、前立腺癌、シュワン腫、小細胞肺癌腫の群から選択される。最も好ましい実施形態によれば、癌は、乳癌、神経膠芽腫、黒色腫および膵臓癌の群から選択される。
【0038】
本発明はさらに、コンジュゲートの調製方法であって、
a)本発明によるクロロトキシン誘導体を提供する工程;
b)任意にリンカー基を工程a)のクロロトキシン誘導体に結合させる工程;
c)工程b)で形成された化合物のリンカー部分に補欠分子族を結合させるか、またはリンカー非存在下で工程a)のタンパク質に直接結合させる工程を含む、方法に関する。
【0039】
本発明はさらに、癌性組織を可視化する方法であって、検査される組織を本発明のコンジュゲートに接触させる工程を含み、前記コンジュゲートの補欠分子族が癌性組織の可視化に適した可視化剤である、方法に関する。
【0040】
本発明は、さらに、キメラ抗原受容体をコードする核酸分子に関し、ここで、キメラ抗原受容体は:
a)本発明によるクロロトキシン誘導体;
b)任意に、クロロトキシン誘導体と膜貫通ドメインとの間のスペーサー領域;
c)膜貫通ドメイン;
d)1つまたは2つの共刺激ドメイン;
e)シグナル伝達ドメイン
を含み、
ここで、クロロトキシン誘導体は、キメラ抗原受容体がT細胞の表面に発現された場合に、T細胞の活性を癌性細胞に向けることを可能にする。
【0041】
好ましい実施形態によれば、本発明の核酸分子はキメラ抗原受容体をコードし、ここでクロロトキシン誘導体は、配列番号3~配列番号18、および配列番号36~配列番号42、好ましくは配列番号4または配列番号42に記載の配列のいずれかを有するクロロトキシン誘導体から選択される。
【0042】
他の好ましい実施形態によれば、本発明の前記核酸分子はキメラ抗原受容体をコードし、ここで、
i)膜貫通ドメインはCD4膜貫通ドメインまたはそのバリアント、CD8膜貫通ドメインまたはそのバリアント、CD28膜貫通ドメインまたはそのバリアント、およびCD3ゼータ膜貫通ドメインまたはそのバリアントからなる群から選択され;
ii)1つまたは2つの共刺激ドメインは、CD28共刺激ドメインまたはそのバリアント、4-1BB共刺激ドメインまたはそのバリアント、およびОX40共刺激ドメインまたはそのバリアントからなる群から選択され;ならびに
iii)シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータシグナル伝達ドメインまたはそのバリアントである。
【0043】
本発明はさらに、本発明の核酸分子を含むベクターに関する。
【0044】
本発明はさらに、ヒト細胞の集団であって、
i)本発明の核酸を含む発現カセットを含むRNAまたはDNAベクターによりトランスフェクションされ、ここでトランスフェクションがin vivoまたはex vivoで行われる;または
ii)本発明の核酸を含む発現カセットを含むウイルスベクターにより形質導入され、ここで形質導入がin vivoまたはex vivoで行われる、ヒト細胞の集団に関し、
ここでウイルスベクターは好ましくはレトロウイルスまたはレンチウイルスベクターであり;前記ヒト細胞は、自家ヒトT細胞、自家ヒトCD4+ヘルパーT細胞、自家ヒトCD8+細胞傷害性T細胞、自家ヒトCD4+ヘルパーT細胞とCD8+細胞傷害性T細胞との任意の割合の混合物、同種ヒトT細胞、同種ヒトCD4+ヘルパーT細胞、同種ヒトCD8+細胞傷害性T細胞、同種ヒトCD4+ヘルパーT細胞とCD8+細胞傷害性T細胞の任意の割合の混合物、自家初代ヒトナチュラルキラー(NK)細胞、同種初代ヒトナチュラルキラー(NK)細胞、NK-92細胞株の同種細胞、自家ヒト単球、自家ヒトマクロファージ、同種ヒト単球、同種ヒトマクロファージからなるリストから選択される。
【0045】
本発明はさらに、本発明によるヒト細胞の1つまたは複数の集団を投与することを含む、患者の癌を治療する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】ジスルフィドパターンも示すいくつかのCTXバリアント/誘導体の配列を示し、ここでCTXおよびrCTXの配列は配列番号1に記載され;mCTXの配列は配列番号2に記載され;CTXD5の配列は配列番号4に記載され;CTXD8の配列は配列番号42に記載されている。
【
図2】モノメチルアウリスタチンF(MMAF)と形成されたCTXD5の切断性細胞分裂阻害コンジュゲートを示す。
【
図3】Co-bead試験におけるファージ提示CTXおよびCTXDのMMP-2およびNRP1結合強度を示す。
【
図4】Magnabead試験におけるCTXD5、CTXD8およびCTXのCTX-Cy5置換によるMMP-2結合親和性を示す。
【
図5】Magnabead試験におけるCTXD5-Cy5、CTXD8-Cy5およびCTX-Cy5のMMP-2結合を示す。
【
図6】Co-bead試験におけるCTX-Cy5、CTXD5-Cy5およびCTXD8-Cy5の仮定標的タンパク質への結合を示す。
【
図7】Magnabead試験におけるCTXD5-Cy5およびCTX-Cy5のNRP1結合を示す。
【
図8】U251細胞およびPanc-1細胞におけるCTXD5-Cy5およびCTX-Cy5の濃度-取込み関係を示す。
【
図9】1:1のエフェクター対標的細胞比で、CTXD8-CARおよびCTX-CARならびに非形質導入(NT)対照Tリンパ球に曝露したMDA-HER2乳癌由来細胞の生存率を示す。
【
図10】異なるエフェクター細胞数でCTXD8-CARおよびCTX-CARならびに対照Tリンパ球に曝露したMDA-HER2乳癌由来細胞の生存率を示す。
【
図11】CTXD8-CAR構築物のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本明細書の文脈において、「バリアント」、「クロロトキシンバリアント」または「CTXバリアント」という用語の下では、これらのタンパク質は、野生型CTXとは異なるタンパク質であり、当技術分野の一部であると理解される。
【0048】
本明細書の文脈において、「誘導体」、「クロロトキシン誘導体」、「CTX誘導体」、または「CTXD」という用語の下では、これらのタンパク質は、本発明をもたらすプロジェクトの間に開発されたものと理解される。
【0049】
末尾に通し番号の付いたCTXDという用語は、クロロトキシン誘導体(タンパク質)または前記クロロトキシン誘導体を産生するファージクローンを指す。本明細書で言及される各特定のCTXDは、特定のアミノ酸配列を有する。例えば、本明細書におけるCTXD5は配列番号4による配列を有するタンパク質を指し、本明細書におけるCTXD1は配列番号17による配列を有するタンパク質を指す。
【0050】
「癌」という用語は、異常な細胞が制御されずに分裂し、近傍の組織に浸潤し得る疾患に対して使用される(この定義は、本願特許出願日のhttps://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/cancerの記述に基づく)。癌細胞はまた、血液およびリンパ系を介して体の他の部分に広がることができる。癌にはいくつかの主な種類がある。癌腫は、皮膚または内臓を裏打ちするか、もしくは覆う組織から始まる癌である。肉腫は骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、他の結合組織または支持組織から始まる癌である。白血病は、骨髄等の造血組織から始まり、異常な血液細胞が作られすぎる癌である。リンパ腫および多発性骨髄腫は、免疫系の細胞から始まる癌である。中枢神経系の癌は、脳および脊髄の組織から始まる癌である。癌は悪性腫瘍とも呼ばれる。
【0051】
「癌性」という用語では、哺乳動物またはヒトの患者の状態であって、癌を含む状態と理解される。
【0052】
「セラノスティクス(theranostics)」という用語は、治療学(therapeutics)と診断学(diagnostics)の組合せに由来する。この用語は、診断技術と治療技術の特有の組合せを指し、これによって特定の診断技術と治療のための方法または製品との組合せが、適切な治療に感受性の患者、組織または細胞集団を同定するためのガイダンスを提供する[Jeelani 2014]。
【0053】
本発明のクロロトキシン誘導体は、以下の一般的なアミノ酸配列:
X0X1CMPCXS1XS2XS3DHXS4XS5ARRCX2X3CCGGYGX4CFGYQCLCX5X6X7X8
(配列番号43)
を含み、ここで、
(i)N末端X0X1クラスターは、AM、0M、または00からなる群から選択され、
(ii)溶解性XS1XS2XS3XS4XS5クラスターは、FTTQT、FTTES、SSSQT、SSSES、FSSQT、FSSES、またはFSSQSからなる群から選択され、
(iii)内部X2X3X4クラスターは、DKR、RDK、KDR、IKY、HKW、DRK、LKQ、KKKからなる群から選択され;そして
(iv)C末端X5X6X7X8クラスターは、N000、R000、NR00、NRG0、NRGY、NRRR、またはRRRRからなる群から選択され;
ここで、0はアミノ酸が存在しない位置を示す。
【0054】
好ましい実施形態によれば、本発明は、一般的な配列のアミノ酸配列
X0X1CMPCFTTDHQTARRCX2X3CCGGYGX4CFGYQCLCX5X6X7X8
(配列番号35)
を含むクロロトキシン誘導体に関し、ここで、
(i)N末端X0X1クラスターは、AM、0M、または00からなる群から選択され、
(ii)内部X2X3X4クラスターは、DKR、RDK、KDR、IKY、HKW、DRK、LKQ、KKKからなる群から選択され;そして
(iii)C末端X5X6X7X8クラスターは、N000、R000、NR00、NRG0、またはNRGYからなる群から選択され;
ここで、0はアミノ酸が存在しない位置を示す。
【0055】
配列表に示される配列番号35および配列番号43の全ての可能なバリエーションが本発明の範囲内に入るわけではなく、上記のクラスターの定義を満たすもののみが本発明の範囲内に入ることに留意されたい。
【0056】
一般的な配列である配列番号35および配列番号43は、それぞれ3つおよび4つの可変クラスターを有する。N末端のN末端クラスター(X0X1クラスター)、溶解性クラスター(XS1XS2XS3XS4XS5クラスター、配列番号43のみ)、内部クラスター(X2X3X4クラスター)、およびC末端のC末端クラスター(X5X6X7X8クラスター)がある。これらのクラスターは全て、特定の限られたアミノ酸組成を有する。しかし、クラスターの組成は互いに独立していることが明らかになった。
【0057】
N末端クラスターは2つの位置、すなわちX0およびX1の位置からなる。N末端クラスターの組成はAM、0M、または00であり得る。ここで、Aはアラニン(Ala)を表し、Mはメチオニン(Met)を表す。0はアミノ酸が存在しない位置を示す。したがって、N末端クラスターは、Ala-Met二量体、またはMet単量体のみを有していても、またはこのN末端クラスターは空のまま、すなわちこれらの位置にアミノ酸を有しないままであってもよい。
【0058】
溶解性クラスターは、N末端に近いXS1XS2XS3XS4XS5クラスター(配列番号43のみ)である。これは、XS1、XS2、XS3、XS4およびXS5の5つの位置からなり、ここで、添字の「S」は「溶解性」の特徴を指す。溶解性クラスターを形成するアミノ酸は、必ずしも配列中で隣り合うアミノ酸とは限らず、2つのサブクラスター、すなわちXS1XS2XS3およびXS4XS5が存在することは明らかである。溶解性クラスターは以下の組成:FTTQT、FTTES、SSSQT、SSSES、FSSQT、FSSES、またはFSSQSを有し得る。例えば、XS1XS2XS3XS4XS5溶解性クラスターの組成がFTTQTである場合、XS1位のアミノ酸はフェニルアラニン(Phe)を示すFであり、XS2、XS3およびXS5位のアミノ酸はスレオニン(Thr)を示すTであり、XS4位のアミノ酸はグルタミン(Gln)を示すQであると理解される。この溶解性クラスターに見出し得るさらなるアミノ酸は、グルタミン酸(Glu)を示すE、およびセリン(Ser)を示すSである。
【0059】
内部クラスターはアミノ酸配列のほぼ中央にあるX2X3X4クラスターであり、X2、X3、およびX4の3つの位置からなる。内部クラスターを形成しているアミノ酸は、配列の中で必ずしも隣り合うアミノ酸ではないことは明らかである。X2位とX3位のアミノ酸は隣接しているが、X4位のアミノ酸はC末端方向に位置が7つ離れている。内部X2X3X4クラスターは以下の組成:DKR、RDK、KDR、IKY、HKW、DRK、LKQ、KKKを有し得る。例えば、内部X2X3X4クラスターの組成がDKR(これは本発明の好ましい実施形態の1つである)と言われる場合、X2位のアミノ酸はアスパラギン酸(Asp)を示すDであり、X3位のアミノ酸はリジン(Lys)を示すKであり、X4位のアミノ酸はアルギニン(Arg)を示すRであると理解される。この内部クラスターに見出し得るさらなるアミノ酸は、イソロイシン(Ile)を示すI、チロシン(Tyr)を示すY、ヒスチジン(His)を示すH、トリプトファン(Trp)を示すW、ロイシン(Leu)を示すL、およびグルタミン(Gln)を示すQである。
【0060】
C末端クラスターは4つの位置、すなわちX5、X6、X7、およびX8からなる。C末端クラスターの組成は、N000、R00D、NR00、NRG0、またはNRGYであり得る。ここで、Nはアスパラギン(Asn)を示し、Rはアルギニン(Arg)を示し、Gはグリシン(Gly)を示し、Yはチロシン(Tyr)を示す。0はアミノ酸が存在しない位置を示す。このC末端クラスターは、1つのアミノ酸NまたはRのみを有することができ(すなわち、X5X6X7X8の意味がN000またはR00Dである場合)、これらの場合、本発明のクロロトキシン誘導体は、X5位を有するC末端で終了することが明らかである。さらに、C末端クラスターは、2つのアミノ酸(すなわち、X5X6X7X8の意味がNR00である場合)、または3つのアミノ酸(すなわち、X5X6X7X8の意味がNRG0である場合)、または4つのアミノ酸(すなわち、X5X6X7X8の意味が配列番号35の場合にはNRGYであり、配列番号43の場合にはNRGY、NRRR、またはRRRRである場合)を有し得る。
【0061】
本発明の好ましい実施形態によれば、クロロトキシン誘導体は、配列番号3~配列番号18および配列番号36~配列番号42に記載の配列のいずれかを有するクロロトキシン誘導体から選択される。配列番号43によって定義される化学的空間は、配列番号3~配列番号18および配列番号36~配列番号42に記載の全てのクロロトキシン誘導体をカバーする。配列表の記載とは別に、これらの配列に対応するクロロトキシン誘導体を表Iおよび表IIに示す。
【0062】
本発明のより好ましい実施形態によれば、クロロトキシン誘導体は、配列番号3~配列番号18に記載の配列のいずれかを有するクロロトキシン誘導体から選択される。配列番号35によって定義される化学的空間は、配列番号3~配列番号18に記載の全てのクロロトキシン誘導体をカバーする。配列リストとは別に、これらの配列に対応するクロロトキシン誘導体を表Iに示す。
【0063】
本発明のさらにより好ましい実施形態によれば、クロロトキシン誘導体は、配列番号4または配列番号42に記載のアミノ酸配列を有する。配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク質は、本明細書においてCTXD5とも称する。配列番号42のアミノ酸配列を有するタンパク質は、本明細書においてCTXD8とも称する。
【0064】
本発明のクロロトキシン誘導体は環状タンパク質であり得る。タンパク質は、直鎖形態よりも環状化された方がより安定になり得ることは、当技術分野の当業者には周知である。上述のように、CTXの環状バリアントは悪性組織に結合する能力を維持していた[Akcan 2011]。したがって、任意のクロロトキシン誘導体を環状化することができ、それによって半減期を長くできることは当技術分野の当業者には明らかに予想されることである。タンパク質の環状化方法は、当技術分野の当業者にとって周知である[Di 2015]。本発明の範囲内において、用語「環状」は、それ自体で、またはリンカーを挿入することによって環状にされたクロロトキシン誘導体を指し、ただし、所与の環状化は、クロロトキシン誘導体の所望の効果、例えば、MMP-2タンパク質に対するクロロトキシン誘導体の親和性に負の様式で有意に影響しないことを条件とする。
【0065】
本発明のクロロトキシン誘導体は、癌性細胞を効果的に認識および結合し得る。したがって、これらは、化学的実体を前記癌性細胞に送達するのに適しており、この化学的実体は、一旦癌性細胞によって結合されると、所望の機能を発揮することができる。本発明の範囲内において、「コンジュゲート」という用語の下では、構築物は、少なくともクロロトキシン誘導体および補欠分子族を含むものと理解される。本発明によれば、前記化学的実体は補欠分子族の形態である。本発明の範囲内において、「補欠分子族」という用語の下では、任意の化学的実体は、一次結合(すなわち共有結合またはイオン結合)を介して本発明によるクロロトキシン誘導体に結合するものと理解される。補欠分子族の範囲は、単一原子から大きなタンパク質まで及ぶことができる。
【0066】
補欠分子族は、好ましくは可視化剤である。すなわち、本発明の好ましい実施形態において、本発明によるクロロトキシン誘導体は、補欠分子族とのコンジュゲートを形成しており、ここで補欠分子族は可視化剤である。それによって、このようなコンジュゲートは、前記クロロトキシン誘導体と結合する身体(例えば、ヒト身体)の部分を可視化するために使用し得る。可視化剤および特定のタンパク質への化学的結合のための方法は、当技術分野の当業者に公知である。本発明の意味で好ましい可視化剤は
i)シアニン色素(例えばインドシアニングリーン)のような蛍光標識;
ii)123I、125Iおよび131Iのヨウ素同位体のような放射性標識;
iii)これらのナノ粒子またはポリマーのいずれかはさらにガドリニウムを含む、ホウ素ナノ粒子、ホウ素および炭素ナノ粒子、炭化ホウ素ナノ粒子、ホウ素含有ポリマー、ホウ素および炭素含有ポリマー、炭化ホウ素ポリマーのような磁気共鳴イメージング標識;
iv)ビオチン、アビジン、hisタグのような標識分子への高親和性結合による間接的標識を可能にする剤、である。
【0067】
可視化剤が蛍光標識の場合、蛍光ガイド下外科手術に好ましいように使用し得る。この外科手術の過程で、本発明のコンジュゲートは、クロロトキシン誘導体部分を介してコンジュゲートと結合する細胞または組織の一部を可視化する。それにより、これらの細胞または組織の一部は、外科手術を実施する医師にとって可視化される。好ましくは、インドシアニングリーン、シアニン5.5、IRDye 800 CW、DyLight 750またはVivoTag-S 750を含むがこれらに限定されない近赤外色素をこの目的のために使用し得る。
【0068】
補欠分子族が蛍光標識である本発明のコンジュゲートを使用する他の好ましい例は、フローサイトメトリー法または組織学的染色プロセスの過程で標的細胞を解析する場合である。このような場合、本発明のコンジュゲートは診断剤として使用される。
【0069】
他の好ましい実施形態によれば、補欠分子族は治療剤である。すなわち、本発明の好ましい実施形態において、本発明によるクロロトキシン誘導体は、補欠分子族とのコンジュゲートを形成しており、ここで補欠分子族は治療剤である。それによって、このようなコンジュゲートは治療のために使用することができ、ここで、コンジュゲートのクロロトキシン部分は癌組織を認識し、それに結合する。コンジュゲートの治療的部分は、それによって前記癌性組織に近接するか、またはその細胞に内在化し、治療効果を発揮する。治療剤および特定のタンパク質への化学的結合のための方法は、当技術分野の当業者に公知である。本発明の意味において好ましい治療剤は、
i)アウリスタチン、クリプトフィシン、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、ピロロベンゾジアゼピン二量体、インドリノベンゾジアゼピン偽二量体、メイタンシン、メトトレキセート、ドセタキセル、シスプラチンおよびエトポシドのような化学療法剤;
ii)cDNA、siRNA、shRNA、およびRNAiのような生物学的治療剤である。
【0070】
モノメチルアウリスタチンF(MMAF)と形成されたコンジュゲートは、治療目的に適した本発明のコンジュゲートの例である(詳細については、例えば、以下の「化学的ツールボックス」、項目3.3.または実施例4を参照のこと)。
【0071】
さらに好ましい実施形態によれば、補欠分子族は標的化剤である。すなわち、本発明の好ましい実施形態において、本発明によるクロロトキシン誘導体は、補欠分子族とコンジュゲートを形成しており、ここで補欠分子族は他の標的化剤である。それによって、標的細胞上の二重結合部位を有するこのようなコンジュゲートは、標的化された細胞または組織に対してさらに高い親和性を有する標的化分子を提供する。標的化剤および特定のタンパク質への化学的結合のための方法は、当技術分野の当業者に公知である。本発明の意味において好ましい標的化剤は、抗体、ポリペプチド、多糖および核酸である。
【0072】
他の好ましい実施形態によれば、補欠分子族は、循環半減期を増加させる部分である。すなわち、本発明の好ましい実施形態において、本発明によるクロロトキシン誘導体は、補欠分子族とコンジュゲートを形成しており、ここで、補欠分子族は、循環半減期を増加させる部分である。これにより、このようなコンジュゲートは、CTXDの代謝を緩和することができる。循環半減期を増加させる部分および特定のタンパク質への化学的結合の方法は、当技術分野の当業者に公知である。本発明の意味で循環半減期を増加させる好ましい部位は、PEG部分、グリコシル部分、グリコシルPEG部分、およびリンカー延長を介して本発明のクロロトキシン誘導体の環状化を可能にする部分である。
【0073】
クロロトキシン誘導体および補欠分子族は一緒になって本発明のコンジュゲートを形成する。場合によっては、クロロトキシン誘導体と補欠分子族の間にリンカー部分を構築する必要がある。例えば、補欠分子族がクロロトキシン誘導体に直接化学的に結合できない場合には、リンカーを使用しなければならない。補欠分子族が、例えば癌性細胞のような標的部位に到達した時点で放出される必要がある場合には、特別に切断性のリンカーを使用することができる。リンカーは当技術分野の当業者に公知であり、リンカーの例はペプチド、ジメチルジスルフィドリンカー、グルタリルリンカー、カテプシン切断性リンカーである。当技術分野の当業者には明らかなように、特定のクロロトキシン誘導体-補欠分子族構築物において2つ以上のリンカーを使用することが可能である。
【0074】
1つまたは複数のリンカーが存在するにもかかわらず、いくつかの種類の補欠分子族は、その効果を発揮するためにクロロトキシン誘導体から離れて伸長される必要がある。この目的のために、クロロトキシン誘導体と補欠分子族の間に1つまたは複数のスペーサー(複数可)を適用することができる。スペーサー部分は、一次結合(すなわち、共有結合またはイオン結合)を介して、補欠分子族、リンカー、またはクロロトキシン誘導体に結合される。
【0075】
当技術分野の当業者には、補欠分子族、リンカーおよびスペーサーは場合によっては厳密に区別できないことがあり、それらの境界は場合によっては厳密ではないことは明らかである。例えば、いくつかの補欠分子族はリンカーとして機能し得るテール領域を有し得る。
【0076】
セラノスティック対は、本発明のコンジュゲートから選択することができる。これら2つのコンジュゲート、すなわち第1のコンジュゲートおよび第2のコンジュゲートは、同一であっても、または異なっていてもよい。本発明の好ましい実施形態によれば、前記2つのコンジュゲートのクロロトキシン誘導体部分は、同一のアミノ酸配列を有し、前記2つのコンジュゲートは、異なる補欠分子族を有する。
【0077】
「セラノスティック」という用語は、当技術分野の当業者に公知であるように、診断と治療応用の組合せを指す。簡潔に言えば、セラノスティック対のメンバーの一方は診断目的に適しており、セラノスティック対の他方のメンバーは治療目的に適している。
【0078】
セラノスティック対のメンバーは、空間的および/もしくは時間的に別々に、または同時に使用することができる。本発明のセラノスティック対は、典型的には同じクロロトキシン誘導体(すなわち同じアミノ酸配列)を有し、それによって両方のコンジュゲートが同じ癌性組織に結合する。しかしながら、本発明の典型的なセラノスティック対は、異なる補欠分子族を有し、一方は診断目的(例えば可視化剤のような)であり、他方は治療目的(例えば化学療法剤のような)である。当技術分野の当業者には明らかなように、本発明の同じコンジュゲートもまたセラノスティック対を形成することができ、ここで、前記コンジュゲートの補欠分子族は診断および治療の両方の特徴を有する。他方、本発明のセラノスティック対のメンバーは、クロロトキシン誘導体部分において異なるアミノ酸配列を有していてもよく、同様に異なる補欠分子族を有していてもよい。
【0079】
本発明はまた、本発明のコンジュゲートおよび使用説明書を含むキットに関する。本発明のコンジュゲートは、溶液または凍結乾燥物の形態でキットに提供することができる。使用説明書には、当技術分野の当業者が理解できるレベルでキットのコンジュゲートの使用が記載されている。使用説明書は、紙、電子データキャリアの形態であってもよく、またはオンラインで入手可能であってもよい。キットはさらに、溶液、緩衝液、試薬、実験器具の使い捨て部品を含むことができる。
【0080】
本発明はまた、本発明のセラノスティック対および使用説明書を含むキットに関する。本発明のセラノスティック対は、溶液または凍結乾燥物の形態でキット中に提供することができる。使用説明書には、当技術分野の当業者が理解できるレベルでキットのセラノスティック対の使用が記載されている。使用説明書は紙、電子データキャリアの形態であってもよく、またはオンラインで入手可能であってもよい。キットはさらに、溶液、緩衝液、試薬、実験器具の使い捨て部品を含むことができる。
【0081】
本発明はさらに、本発明のコンジュゲートおよび薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関し、ここで、前記コンジュゲートの補欠分子族は治療剤または可視化剤である。本発明の医薬組成物が治療に使用される場合、補欠分子族は治療剤とする。本発明の医薬組成物が可視化に使用される場合、補欠分子族は可視化剤とする。
【0082】
本発明の医薬組成物は、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮または頬側経路で投与することができる。本医薬組成物は腫瘍の治療に適しているため、好ましい投与方法は、治療すべき腫瘍に局所的に適用される微量注入である。投与される医薬組成物の用量は、腫瘍の種類、患者の年齢、健康状態、および体重、任意の同時治療の種類、治療の頻度、ならびに達成される効果の性質に依存する。上記のデータを考慮して投与量を決定できるのは当業者である。典型的な投与量は、1.0pg/kg体重~100mg/kg体重を含む。全身投与のための好ましい投与量は、100.0ng/kg体重~10.0mg/kg体重を含む。微量注入を介した部位への直接投与のための好ましい投与量は、1ng/kg体重~1mg/kg体重を含む。
【0083】
本発明の医薬組成物中の薬学的に許容される賦形剤は、作用部位への送達のために薬学的に使用できる製剤へのコンジュゲートの加工を容易にする。非経口投与に適した製剤としては、水溶性の形態(例えば、水溶性塩)のコンジュゲートの水溶液が挙げられる。さらに、コンジュゲートの懸濁液(例えば、油性注射懸濁液)を投与してもよい。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えばゴマ油)または合成脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチル)またはトリグリセリドが挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよびデキストランを含むことができる。任意で、懸濁液は安定剤も含むことができる。腫瘍細胞への送達のためにコンジュゲートをカプセル化するためにリポソームを使用してもよい。
【0084】
本発明による全身投与用の医薬製剤は、経腸、非経口または局所投与用に製剤化することができる。溶液、懸濁液、ゲル、軟膏(ointment)または軟膏(salve)等の任意の一般的な局所製剤を採用することができる。このような局所製剤の調製は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Gennaro ed, 1995, Mack Publishing)に記載されている。局所適用のために、医薬組成物はまた、粉末またはスプレーとして、特にエアロゾルの形態で投与し得る。医薬組成物は、吸入によって投与し得る。吸入療法のためには、コンジュゲートは、定量吸入器による投与に有用な溶液であっても、または乾燥粉末吸入器に適した形態であってもよい。医薬組成物は、気管支洗浄による投与にも適している。
【0085】
経口投与に適した製剤としては、硬質または軟質のゼラチンカプセル、丸剤、錠剤、例えばコーティング錠剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤または吸入剤、およびそれらの放出制御形態が挙げられる。
【0086】
本発明のCTXDコンジュゲートは、癌の診断、癌性組織の可視化、および癌の治療に使用することができる。これらの使用は全て、コンジュゲートが癌性組織/細胞に選択的に結合するという現象に基づいている。そのような細胞は、MMP-2タンパク質を過剰発現している細胞であり得る。一度コンジュゲートが癌性細胞に結合すると、コンジュゲートの補欠分子族の機能に応じて、特異的結合を診断目的、可視化に使用したり、細胞を死滅させたりすることができる(すなわち、癌の治療)。診断的使用は、体内または上皮表面(皮膚または粘膜)上の癌性細胞/組織の存在を確認または位置決定すること、またはCTXD受容体を標的化モチーフとして使用する特異的治療に感受性を示し得る癌性組織の種類を同定することのいずれかに役立ち得る。コンジュゲートが可視化剤を補欠分子族として有する場合、癌性組織を可視化することができる。可視化は、例えば蛍光ガイド下外科手術において、癌性細胞または組織を周囲の健常な(非癌性)細胞/組織と区別するのに役立ち得る。特定のタンパク質および適切な補欠分子族とのコンジュゲートによる癌性細胞および組織の診断、可視化、および治療は、当技術分野の当業者に周知である。
【0087】
本発明のコンジュゲートは、CTX結合部位を発現する実質的に全ての種類の悪性癌の診断および治療に有用である。これらの種類の癌としては、神経膠腫、星状細胞腫、乏突起膠腫、髄芽腫、脈絡叢癌腫、上衣腫、髄膜腫、神経膠芽腫、ガングリオーマ、褐色細胞腫、および転移性脳腫瘍、他の脳腫瘍、神経芽細胞腫、頭頸部癌、小細胞肺癌腫、乳癌、腸癌、膵臓癌、結腸癌、肝臓癌、腎臓癌、皮膚癌、肉腫(30種類超)、骨肉腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、癌腫、黒色腫、卵巣癌、子宮頸癌、リンパ腫、甲状腺癌、肛門癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、胚細胞腫瘍、喉頭癌、多発性骨髄腫、前立腺癌、網膜芽細胞腫、胃癌、精巣癌およびウィルムス腫瘍が挙げられる。本発明のコンジュゲートは、以下の群:乳癌、子宮頸癌、結腸癌、上衣腫、ユーイング肉腫、神経節膠腫、神経節腫、神経膠腫、神経膠芽腫、神経膠肉腫、髄芽腫、髄膜腫、神経芽腫、黒色腫(原発性および転移性)、膵臓癌、褐色細胞腫、前立腺癌、シュワン腫および小細胞肺癌腫から選択される癌の治療および診断に特に有用である。本発明の実験では、したがって本発明による最も好ましい癌性組織である乳癌、神経膠芽腫、黒色腫および膵臓癌細胞への本発明のCTXDの特に高い強度の取込みが証明された。
【0088】
本発明のコンジュゲートは、CTX結合部位を発現する実質的に全ての種類の悪性癌の可視化に有用である。本発明のコンジュゲートは、癌性組織の可視化において特に有用であり、組織は以下の癌:乳癌、子宮頸癌、結腸癌、上衣腫、ユーイング肉腫、神経節腫、神経節膠腫、神経膠腫、神経膠肉腫、髄芽腫、髄膜腫、神経芽腫、黒色腫(原発性および転移性)、膵臓癌、褐色細胞腫、前立腺癌、シュワン腫、小細胞肺癌腫に由来し;乳癌、神経膠芽腫、黒色腫および膵臓癌は、本発明による最も好ましい癌性組織である。
【0089】
本発明はさらに、癌に罹患している患者の治療方法に関する。この意味において、「患者」という用語の下では、任意の動物、例えばヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラットおよびマウスと理解される。本発明は、癌に罹患しているヒト患者の治療に特に有用である。前記方法は、有効量の本発明によるコンジュゲートを前記患者に投与することを含む。癌性患者の治療を目的とするコンジュゲートは、前記癌の治療に適した治療剤の補欠分子族を有する。好ましい実施形態において、治療方法に使用されるコンジュゲートは、本発明の医薬組成物の形態である。
【0090】
本発明の好ましい実施形態によれば、コンジュゲートで、または本発明の医薬組成物で治療される患者は、神経膠腫、膵臓癌、黒色腫および乳癌の群から選択される癌に罹患している。
【0091】
本発明はさらに、本発明のコンジュゲートの調製方法に関する。この方法は、少なくとも以下の工程:
a)請求項1~5のいずれか一項に記載のクロロトキシン誘導体を提供する工程;
b)任意にリンカー基を工程a)のクロロトキシン誘導体に結合させる工程;
c)補欠分子族を、工程b)で形成された化合物のリンカー部分に結合させるか、またはリンカー非存在下で工程a)のタンパク質に直接結合させる工程を含む。
【0092】
簡潔に言えば、調製方法の出発物質は本発明のクロロトキシン誘導体である(すなわち、工程「a」)。これらのタンパク質は、タンパク質を構成する通常のアミノ酸からなる単純なアミノ酸配列を構成するため、前記クロロトキシン誘導体の合成は、当技術分野の周知の方法および試薬を用いて実施することができる。
【0093】
調製方法の次の工程は任意であり、これは、コンジュゲート中のリンカーの存在が任意であるためである。すなわち、調製するコンジュゲートが、クロロトキシン誘導体と補欠分子族との間にリンカーを有するコンジュゲートである場合には、前記工程「b」を実施しなければならない。リンカーは、当技術分野で周知の方法でタンパク質に結合させることができる。
【0094】
次の工程「c」として、リンカー非存在下でクロロトキシン誘導体であるか、または工程「b」の結果である構築物に補欠分子族を結合させる。補欠分子族のタンパク質への結合は、補欠分子族それ自体に強く依存する。しかし、このような構築物を構成することは当技術分野の当業者に公知である。
【0095】
コンジュゲートの調製方法は、単離、精製、解析等のような周知の工程をさらに含んでいてもよく、これらは全て当技術分野の当業者のタンパク質化学者にとって一般的に公知である。
【0096】
本発明はさらに、癌性組織を可視化する方法に関し、前記方法は、検査する組織を本発明のコンジュゲートに接触させる工程を含み、ここで、コンジュゲートの補欠分子族は、癌性組織の可視化に適した可視化剤である。このような組織は、MMP-2タンパク質を過剰発現している組織であり得る。
【0097】
上記で詳述したように、本発明のコンジュゲートの補欠分子族が可視化剤である場合、前記コンジュゲートは、コンジュゲートのクロロトキシン誘導体部分が結合する組織を可視化するために使用し得る。この方法を行うことにより、クロロトキシン誘導体が癌性組織に特異的に結合する場合、前記癌性組織を可視化することができる。この方法により、腫瘍を可視化することができ、これは前記腫瘍の除去を目的とする外科手術に大いに役立つ。
【0098】
上記の可視化方法によって、特定の腫瘍を患者の体内で位置特定することができる。この方法は、特定の種類の腫瘍の局在が定かでない場合、または確認する必要がある場合に有用である。本発明によって提供される可視化および位置特定ツールを使用することにより、医師は癌性組織を除去する外科的工程の間、サポートされる。
【0099】
上述の可視化方法のさらなる有用な応用は、患者の体内に特定の腫瘍があるかどうかを調べるために前記患者を検査することである。すなわち、本発明は、本発明のコンジュゲートの選択的結合の助けによって癌性組織を検出することにより、癌の診断のための有用なツールを提供する。
【0100】
上記の可視化方法の他の有用な応用は、腫瘍細胞を位置決定することであり、これにより医師は腫瘍が患者から完全に除去されたかどうかを確認することができる。
【0101】
本発明はさらに、本発明によるクロロトキシン誘導体由来の細胞外ドメインを組み込んだキメラ抗原受容体(CAR)に関する。クロロトキシンまたは類似の毒素を用いて構築されたCARは、国際特許出願である国際公開第WO2017/066481号広報に開示されている。クロロトキシンドメインを含むCARの合成方法、特徴および使用に関しては、この国際特許出願は当技術分野の当業者によって公知の情報として参照される。CARは遺伝子改変T細胞の表面に発現する。CAR T細胞は、抗原的に異なる腫瘍集団を特異的に認識するように方向転換することができる。
【0102】
簡潔に言えば、キメラ抗原受容体(CAR)改変T細胞は、その特異的腫瘍関連抗原(TAA)に結合することにより、様々な腫瘍細胞株を特異的に認識し、殺傷することができる。CARは、分子標的への特異的かつ効率的な結合を提供する本発明によるクロロトキシン誘導体である細胞外TAA認識/標的化ドメインと、Tリンパ球の効率的な活性化が可能な細胞内エフェクタードメイン(通常はTCRゼータ(TCRζ)鎖)を発現する膜貫通型キメラタンパク質である[June 2018]。T細胞は、例えばレトロウイルスまたはレンチウイルス形質導入後に、対応する核酸によってコードされたCARを有する場合、CARを発現することができる。
【0103】
本発明の一実施形態によれば、キメラ抗原受容体、すなわちCARをコードする核酸が提供され、このCARは、少なくとも以下の構成要素:
a)本発明によるクロロトキシン誘導体;
b)任意に、クロロトキシン誘導体と膜貫通ドメインとの間のスペーサー領域;
c)膜貫通ドメイン;
d)1つまたは2つの共刺激ドメイン;
e)シグナル伝達ドメイン;を含み、
ここで、クロロトキシン誘導体は、T細胞の表面上で発現される場合に、CARをT細胞の活性を癌性細胞に向けることを可能にする。
【0104】
この構築物によれば、本発明の核酸によってコードされるCARは、本発明のクロロトキシン誘導体に対応する細胞外クロロトキシン誘導体ドメインを有する。このクロロトキシン誘導体は、細胞外認識ドメインとして機能する細胞外ドメインを形成するか、またはその一部である。その認識エレメントは標的細胞の細胞表面に存在する分子に特異的に結合する。細胞外認識ドメインは、ヒンジ(リンカーまたはスペーサーとしても公知である)および関連する膜貫通ドメインによって細胞内エフェクタードメインに連結されている。すなわち、膜貫通ドメインはCARを前記T細胞の膜に固定する。細胞内ドメインは、少なくとも1つの共刺激ドメインおよびシグナル伝達ドメインを含み、その機能は当技術分野の当業者に周知である。
【0105】
細胞外ドメイン、言い換えれば細胞外認識ドメインは、本発明の1つまたは複数の、同じまたは異なるクロロトキシン誘導体を含み得る。好ましい実施形態によれば、CAR構築物は1つのクロロトキシン誘導体を含む。
【0106】
クロロトキシン誘導体は、好ましくは、配列番号3~配列番号18および配列番号36~配列番号42、好ましくは配列番号4または配列番号42に記載の配列のいずれかを有するクロロトキシン誘導体から選択される。
【0107】
本発明の核酸によってコードされるCAR構築物は、任意に、クロロトキシン誘導体と膜貫通ドメインとの間にスペーサー領域を含む。当技術分野の当業者に明らかなように、スペーサー領域は、CAR構築物が適切に機能するために、膜貫通ドメインおよびクロロトキシン誘導体が互いの間に一定の空間的配置を有する必要がある場合に必要とされる。スペーサー領域の組成および長さは、抗原認識ドメインの可動性、ならびにT細胞と標的との間の物理的距離を決定する。スペーサー領域は、5~300残基の長さのアミノ酸を含み得る。例えば、スペーサー領域はIgG(IgG1またはIgG4)またはCD8ヒンジ領域を含み得る。
【0108】
本発明の核酸によってコードされるCAR構築物の膜貫通ドメインは、好ましくは、CD4膜貫通ドメインまたはそのバリアント、CD8膜貫通ドメインまたはそのバリアント、CD28膜貫通ドメインまたはそのバリアント、およびCD3ゼータ膜貫通ドメインまたはそのバリアントからなる群から選択される[Fujiwara 2020]。膜貫通ドメインに関連する「バリアント」という用語の下では、タンパク質は、システイン残基が改変されていないことを条件として、元のタンパク質と比較して1~5つのアミノ酸改変(例えば、置換、挿入、欠失)を有すると理解される。
【0109】
本発明の核酸によってコードされるCAR構築物の共刺激ドメインは、CD28共刺激ドメインまたはそのバリアント、4-1BB共刺激ドメインまたはそのバリアント、およびOX40共刺激ドメインまたはそのバリアントからなる群から選択されることが好ましい[Zhong 2010]。共刺激ドメインに関する「バリアント」という用語の下では、タンパク質は、システイン残基が改変されていないことを条件として、元のタンパク質と比較して1~5つのアミノ酸改変(例えば置換)を有すると理解される。
【0110】
本発明の核酸によってコードされるCAR構築物のシグナル伝達ドメインは、好ましくはCD3ゼータシグナル伝達ドメインまたはそのバリアントからなる群から選択される。シグナル伝達ドメインに関連する「バリアント」という用語の下では、タンパク質は、システイン残基が改変されていないことを条件として、元のタンパク質と比較して1~5つのアミノ酸改変(例えば置換)を有すると理解される。
【0111】
共刺激ドメインとシグナル伝達ドメインは、その間に短い(すなわち10アミノ酸未満)リンカーアミノ酸配列を有し得る。
【0112】
本発明の核酸によってコードされるCAR構築物のクロロトキシン誘導体は、T細胞の表面上に発現された場合に、CARが、T細胞活性を癌性細胞、好ましくは膠芽腫細胞に方向転換することを可能にする。
【0113】
本発明の核酸は、当技術分野の当業者に公知の分子クローニングの標準的技術によって調製し、完全なコード配列に組み立てることができる。
【0114】
本発明はさらに、本発明のCAR構築物をコードする核酸分子を含むベクターに関する。ベクターは、プラスミド、核酸(RNAまたはDNA)分子であってもよく、これは、他の細胞において外来性遺伝物質を運ぶためのビヒクルとして使用される。この場合、前記外来性遺伝物質は、前記CAR構築物をコードする本発明の核酸であり、前記他の細胞は、前記目的に適した特定の免疫細胞である(適した免疫細胞は、自家ヒトT細胞、自家ヒトCD4+ヘルパーT細胞、自家ヒトCD8+細胞傷害性T細胞、自家ヒトCD4+ヘルパーT細胞とCD8+細胞傷害性T細胞の任意の割合の混合物、同種ヒトT細胞、同種ヒトCD4+ヘルパーT細胞、同種ヒトCD8+細胞傷害性T細胞、同種ヒトCD4+ヘルパーT細胞とCD8+細胞傷害性T細胞の任意の割合の混合物、自家初代ヒトナチュラルキラー(NK)細胞、同種ヒト初代ナチュラルキラー(NK)細胞、NK-92細胞株の同種細胞、自家ヒト単球、自家ヒトマクロファージ、同種ヒト単球、同種ヒトマクロファージである)。このベクターは、前記免疫細胞をトランスフェクションし、それによって本発明の核酸分子を前記免疫細胞に導入するのに適している。トランスフェクションされた免疫細胞は、その後、前記CAR構築物をその表面に発現することができる。ベクターの導入は、エレクトロポレーションまたはリポフェクタミン等のトランスフェクション試薬によって容易に行うことができる。外来性遺伝物質の宿主細胞への侵入および宿主細胞の遺伝物質への組込みは、ウイルスベクターによっても促進することができ、この場合、このプロセスはトランスフェクションの代わりに形質導入と呼ばれる。
【0115】
本発明はさらに、ヒト細胞の集団に関し、前記細胞は、i)本発明の核酸を含む発現カセットを含むRNAまたはDNAベクターによってトランスフェクションされ、ここでトランスフェクションはin vivoまたはex vivoで行われるか;またはii)本発明の核酸を含む発現カセットを含むウイルスベクターによって形質導入され、ここで形質導入は、in vivoまたはex vivoで行われる。形質導入の場合、ウイルスベクターは、好ましくはレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであり、これは、この種類のウイルスベクターが広く使用されており、前記形質導入目的に有用であることが証明されているためである。形質導入の場合、本発明のヒト細胞の集団は、好ましくはレトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであるウイルスベクターによって形質導入され、前記ベクターは、本発明の核酸を含む発現カセットを含む。ここで、ベクターはウイルスベクターであり、この場合、トランスフェクションの代わりに形質導入という用語が使用される。このウイルス形質導入されたヒト細胞の集団は、形質導入された細胞の表面に前記CAR構築物を発現できるようになる。形質導入はin vivoまたはex vivoで行われる。
【0116】
当技術分野の当業者にとって明らかなように、in vivoという用語は、この文脈において、トランスフェクションまたは形質導入が、生きているヒトに存在する細胞上で行われることを意味する。当技術分野の当業者には明らかであるが、ex vivoという用語は、この文脈において、トランスフェクションまたは形質導入が、生きているヒトから抽出された細胞上で行われることを意味し、これらの細胞は、後に、前記生きているヒトに戻しても、または他の生きているヒトに導入してもよい。前記ヒト細胞は、以下のヒト細胞種:自家ヒトT細胞、自家ヒトCD4+ヘルパーT細胞、自家ヒトCD8+細胞傷害性T細胞、自家ヒトCD4+ヘルパーT細胞とCD8+細胞傷害性T細胞の任意の割合の混合物、同種ヒトT細胞、同種ヒトCD4+ヘルパーT細胞、同種ヒトCD8+細胞傷害性T細胞、同種ヒトCD4+ヘルパーT細胞と同種ヒトCD8+細胞傷害性T細胞の任意の割合の混合物、自家初代ヒトナチュラルキラー(NK)細胞、同種初代ヒトナチュラルキラー(NK)細胞、NK-92細胞株の同種細胞、自家ヒト単球、自家ヒトマクロファージ、同種ヒト単球、同種ヒトマクロファージからなるリストから選択するものとする。
【0117】
上記のリスト化した細胞は、本発明の目的に有用であるが、これは以下の理由によるものである:
i)CAR T細胞療法の有効性は、CD8+細胞傷害性T細胞に起因することが最も多く、CD4+ヘルパーT細胞は、そのヘルパー機能で知られており、サイトカイン産生を通じてCD8+T細胞の活性を増強することによって、本質的に細胞溶解活性を誘発することが証明されている[Zhang 2020]。
ii)キメラ抗原受容体改変ナチュラルキラー(CAR-NK)細胞ベースの免疫療法は、固形腫瘍、または血液悪性腫瘍のいずれかの癌免疫療法の文脈において、有望および先進的な選択肢であることが証明されている[Marofi 2021]。
iii)NK-92細胞株は、非ホジキンリンパ腫患者由来であり、その特徴は末梢血から得られた活性化ヒト初代NK細胞に類似している。しかし、初代細胞の単離およびex vivo増殖は困難である。したがって、NK-92細胞株は、IL-2添加環境で容易に増殖できるため、貴重な代替を提供する。
iv)さらに、キメラ抗原受容体改変マクロファージは固形腫瘍組織に浸潤し、腫瘍微小環境(腫瘍細胞、免疫細胞、例えばT細胞、NK細胞、樹状細胞、および他の常在非免疫細胞等)のほとんど全ての細胞成分と相互作用できることが証明されている[Mukhopadhyay 2020]。単球は血液中に存在するマクロファージの前駆体と考えられている。
【0118】
ヒト細胞の前記集団は、本発明の核酸を含む発現カセットを含む前記ベクターによってトランスフェクションまたは形質導入される。本発明のヒト細胞の集団は、発現カセットの形態で本発明の核酸を担持する。これらのヒト細胞は、治療するヒト患者から適切な細胞を単離し、これらの適切なヒト細胞を、前記核酸を含む発現カセットを含むベクターでトランスフェクションまたは形質導入することにより作製することができる。トランスフェクションまたは形質導入はin vivoまたはex vivoで行われる。
【0119】
本発明はさらに、患者の癌を治療する方法に関する。この方法は、本発明のヒト細胞の集団を投与する工程を含む。本発明によれば、患者の癌を治療する目的で、本発明のヒト細胞の異なる集団の組合せを投与することもできる。
【0120】
癌を治療する方法は、例えば、本発明の核酸を含む発現カセットを含むベクターによって形質導入された自家または同種ヒトT細胞の集団を投与する工程を含む。
【0121】
癌を治療する方法は、例えば、本発明の核酸を含む発現カセットを含むベクターにより形質導入された自家もしくは同種ヒトナチュラルキラー(NK)細胞またはNK-92細胞株の集団を投与する工程を含む。
【0122】
この方法は、本発明の核酸を含む発現カセットを含むベクターにより形質導入された自家または同種ヒト単球またはマクロファージの集団を投与する工程を含む。
【0123】
本発明者らのアプローチ(本発明へのプロセス)
本発明者らの目標は、腫瘍細胞を健常組織の細胞と区別するために使用される、MMP-2に対する親和性および選択性が改善された新しいCTX誘導体を見出すことであった。MMP-2がCTXの真の結合タンパク質の標的であることは、背景となる科学から強く示唆されていたが、この知見は組換え産生されたMMP-2を用いたプルダウンアッセイではこれまで確認されていなかった[Veiseh 2007]。そこで、本発明者らは最初に、組換え産生された精製MMP-2タンパク質へのCTXの結合を評価するための定量的フローサイトメトリー方法である「Magnabead試験」を確立した。この新規の試験を用いて、本発明者らは、フルオロフォア標識CTXが、抗MMP-2抗体によってビーズに固定されたMMP-2でカバーされたビーズに特異的に結合することを確認した。この結合は、ビーズ上に蓄積した蛍光強度の測定によって検出され、標識CTXのインキュベーション濃度を上昇させることによって飽和し、過剰量の非標識CTXとインキュベーションすることによって完全に消失(「置換」)され、したがって、これによって、MMP-2タンパク質上のCTX受容体に特異的に結合することが示されている。
【0124】
精製MMP-2が単独で、すなわち必ずしもタンパク質複合体中ではなくとも、CTXと特異的に結合することが確認されたため、本発明者らはより強力なMMP-2結合CTXDのスクリーニングプログラムを開始した。この目的のために、本発明者らは、デザイナー毒素プラットフォーム技術を適用した[Takacsら, 2009]。この技術は、1985年にG.P.Smithが発明したファージ提示と呼ばれる方法[Smith 1985]を用いて、既存の毒素タンパク質配列を利用して、糸状バクテリオファージM13の表面に提示される毒素タンパク質のライブラリーを作成し、高親和性結合体を反復選択によって同定するものである。本発明者らは、CTXのジスルフィド架橋のパターンを保持したまま、32種のサソリに由来する1,376,254の順列誘導体のライブラリーを設計および構築した。提示されたタンパク質は、GSASSA(ペプチド配列)リンカーを介してC末端でP3コートタンパク質に融合した。本発明者らは、このライブラリーをヒト組換えMMP-2に対してスクリーニングし、CTXよりもMMP-2に強く結合する新規化合物(以下、CTXD1または配列番号17と称する)を同定した。
【0125】
ファージ上に提示されたタンパク質の相対的結合強度を定量的に評価するために、本発明者らは「コバルトビーズ試験」または簡潔には「Co-bead試験」と呼ばれる新しいフローサイトメトリーベースのアッセイを開発した(未発表)。このアッセイは、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)の原理にしたがって、hisタグ化タンパク質を単離することを目的とした、工場で事前に製造されたコバルトコートビーズ(ThermoFisher ScientificのDynabeads-His-Tag Isolation & Pulldown)の使用に基づいている。これらのビーズによって、異なるhisタグ化標的タンパク質をその表面に固定化し、それによってファージのM13抗原に対する蛍光染色の後、標的タンパク質に結合したリガンドペプチドを提示するファージ粒子の量を評価することが可能になった。この方法によって、合成または組換え産生された精製およびフルオロフォア標識されたリガンドペプチドの、様々なhisタグ化標的タンパク質への結合を調べることも可能になった。この新規フローサイトメトリーベースの方法の詳細は、実施例5に記載されており;Co-bead試験で試験したファージの調製は、実施例7に記載されている。
【0126】
Co-bead試験の支援を用いて、構造活性関係(SAR)を明らかにするために、CTXD1の配列から始まる意識的変異導入試験を行い、参照としてCTX提示ファージと比較して、異なるCTXD提示ファージのMMP-2結合の優劣(「相対的結合」)を定量化した。相対的結合は、等濃度のCTXDおよびCTX発現ファージとインキュベートし、M13抗原検出のための染色を行った後、MMP-2でコーティングしていないビーズからの蛍光シグナルに対する、MMP-2でコーティングしたビーズ上のM13関連蛍光増加の相対量を測定することにより評価した。これらのSAR試験で検討したアミノ酸配列およびその結果を表Iに示す。
【表1】
【0127】
CTX自体よりも実質的に強力な結合体ではないCTXDタンパク質は、配列番号19~配列番号34に列挙されている。配列の中間の「-」は、配列を互いに整列させるための見かけ上の単なるギャップである。「N=」は、相対的MMP-2結合の測定回数を指し、「相対的MMP-2結合」は、N回行われた実験に基づく平均である。配列番号4によりコードされるタンパク質は、本明細書においてCTXD5と称し、配列番号17によりコードされるタンパク質はCTXD1と称する。
【0128】
モノリジンCTXDタンパク質は、標識または標的化送達のための、コンジュゲート生成物の目的に有利である可能性があるため、最初に、本発明者らは、3つのリジン残基のうち2つを置換することによって、CTXD1の様々なモノリジン誘導体を検討した。驚くべきことに、CTXD1のモノリジン誘導体の中で、CTXD1よりも実質的に強力なMMP-2結合性体である7つの誘導体(配列番号4、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号16)を発見した。次に、本発明者らは、ジスルフィド架橋パターンを維持しながら、観察された優れたMMP-2結合強度に不可欠な最小タンパク質長を決定することを目的とした。そのため、CTXD5をさらなる改変について選択し、最初のシステイン残基までのN末端およびC末端の切断(欠失変異)の影響を調べた。C末端を段階的に切断しても、最後のシステインに続くグルタミンが除去されるまでは、CTX誘導体の優れた結合能が失われることはないと考えられ、これは
図3に示されている。この図面において、棒グラフは、Co-bead試験を用いたファージ提示試験によって示される、MMP-2およびNRP1標的タンパク質に対するCTXおよび異なるCTXD5誘導体の異なる結合強度および選択性を示す。この実験はCTXD5のC末端改変の影響を調べることを目的としていたため、試験したCTXおよびCTXD5由来のタンパク質の最後のシステイン残基から始まる異なるC末端配列も示す。対照ビーズ(CONT)はファージには暴露しなかったが、標的タンパク質でコーティングされ、全染色手順に供した。他のビーズは、均一なファージ濃度2.6×10
14ファージ粒子/mLで、示すペプチド提示ファージに暴露した。
【0129】
C末端切断変異体を用いた本発明の定量的ファージ結合試験は、NRP1タンパク質への結合の測定にも拡張されたが、これは、McGonigleらの論文[McGonigle 2019]が、rCTXのC末端部分がNRP1との結合において重要な役割を果たすことを示唆しているためである。その結果、ファージ提示されたCTXは、MMP-2とNRP1の両方に対してほぼ同等の結合を示したが、CTXD5およびその切断変異体は、C末端部分をシステイン残基まで切断した場合を除いて、MMP-2に対して選択的であり、NRP1には結合しなかった。しかし、システイン以降のアミノ酸を全て欠失させると、NRP1との結合が再び出現し、相対的に減少したMMP-2結合(
図3)またはCTXのNRP1結合とほぼ同等のレベルに達した。したがって、これらのファージ提示の結果は、CTXD5、およびシステインで終わるものを除いたその切断誘導体は、CTXよりもMMP-2に対する強い結合体であるだけでなく、NRP1に対する結合に比べてMMP-2に対して選択的であることを示していた。ファージ提示試験からのこの予測は、組換え産生された純粋なCTXD5タンパク質物質を調べることによっても確認された(下記参照)。
【0130】
CTXD5(すなわち配列番号4)のN末端アミノ酸を1つまたは2つ欠失させると、それぞれ配列番号6および配列番号8のクロロトキシン誘導体が得られた(表I参照)。しかし、これらの変異は、得られたクロロトキシン誘導体の結合強度を有意に変化させなかった。
【0131】
CTXD1(すなわち配列番号17)のN末端アラニンの欠失は、配列番号18のクロロトキシン誘導体をもたらした。この変異はまた、得られたタンパク質の結合強度を有意に変化させなかった。
【0132】
ファージ提示された化合物の標的タンパク質結合の定量的評価から得られたSARの結果に基づいて、一連のクロロトキシン誘導体が同定され、これらの誘導体は、CTXまたはmCTXよりも、MMP-2に対する結合の点で実質的に強力であり、標的タンパク質選択性の点でもより選択的であり、これは、正常細胞/組織と比較して腫瘍細胞/組織に対する選択性の向上をもたらし得る。
【0133】
ファージ提示試験から予測されるタンパク質の特徴を確認するため、CTXD5を組換え産生し、精製クロロトキシン誘導体として得た。CTXD5をリード化合物として用い、本発明者らは、単独またはコンジュゲート形態のいずれかのCTXおよび/またはmCTXと比較して、その標的タンパク質および細胞結合特性を特性評価した。しかし、このリード化合物の水溶性は中程度であり、様々なコンジュゲーションによりさらに低下し得るため、非経口使用のための診断薬剤または治療薬剤の製剤化の阻害要因となる可能性があった。
【0134】
そこで本発明者らは、リード化合物である配列番号4(CTXD5)および配列番号10の計画的溶解性向上変異の影響を調べた。公開された科学文献データ[Trevino 2007]に基づき、7位および12位のアミノ酸位置から始まるFTTおよびQTの配列をそれぞれSSSおよびESの配列に置換し、さらにC末端領域にポリアルギニン配列を適用することで、リード化合物のMMP-2親和性を増強させたまま、得られたCTXDタンパク質の溶解性を有意に改善し得ると仮定した。新しい溶解性増強変異体のMMP-2親和性を評価するために、本発明者らは上記のように、CTX提示ファージに対して、異なる溶解性向上CTXD提示ファージのMMP-2結合の優位性(「相対的MMP-2結合」)を定量化した。この相対的MMP-2結合に関する、この溶解性増強変異体ファージ-提示試験の結果を表IIに示す。
【表2】
【0135】
その結果、設計した溶解性増強変異体は全て、CTXの約3倍、またはそれよりもやや高い結合強度を示していたことから、高いMMP-2結合性を維持していた。そこで、本発明者らは、試験した全ての溶解性増強変異体を含むタンパク質(配列番号42)を二次リード化合物として試験物質産生用に選択し、CTXD8と命名した。CTXD5を一次リード化合物として、CTXD8を二次リード化合物として使用し、本発明者らは、単独またはコンジュゲート形態でCTXおよび/またはmCTXと比較して、標的タンパク質および細胞結合特性を特性評価した。
【0136】
これらの検討のための化学的ツールボックスには以下の化合物が含まれていた。
【0137】
化学的ツールボックス
1.非コンジュゲートCTX誘導体:
いくつかの非コンジュゲートCTXバリアント/誘導体を
図1に示す。
【0138】
合成CTXはIris Biotech GMBH(ドイツ)から購入した。rCTXおよびmCTXは実施例1に記載するように組換え産生した。
【0139】
2.非コンジュゲートCTXD誘導体:
CTXD5およびCTXD8は、実施例1に記載するように組換え産生した。
【0140】
3.コンジュゲートCTXおよびCTXD誘導体
以下のコンジュゲーション生成物は、購入、または上記の非コンジュゲートCTXおよびクロロトキシン誘導体との化学反応をコンジュゲートすることによって産生した。
【0141】
3.1. シアニン-5(-Cy5)コンジュゲート
本発明者らは、CTX-Cy5、rCTX-Cy5、mCTX-Cy5、CTXD5-Cy5およびCTXD8-Cy5を本試験で用いた。これらは全て、HPLC分離により選択されたモノコンジュゲートCTX誘導体であった。CTX-Cy5およびrCTX-Cy5は、CTXの3つのリジン残基のうちの1つでランダムにモノコンジュゲートした分子の混合物であった。CTXD5、CTXD8およびmCTXの場合は、1つのリジン残基のみで連結したコンジュゲートを分離して使用した。コンジュゲーション反応は、実施例2に記載したように、シアニン5 NHSエステルを適用した。
【0142】
3.2.Alexa 488(-A488)コンジュゲート
CTXのCTX-A488コンジュゲートを、異なるCy5標識および非標識のCTXおよびCTXDリガンドの置換強度(親和性)を、他の(Cy5)フルオロフォアとの干渉なしに比較評価できるように、十分に異なる励起/発光波長で作用する蛍光標識リガンドとして適用した。A488およびCy5の励起/発光極大は、それぞれ495/519および647/665である。
【化1】
【0143】
3.3.モノメチルアウリスタチンF(MMAF)をペイロードとして有する切断性細胞分裂阻害コンジュゲート
広く用いられているバリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(VC-PABC)ジペプチドリンカーは、リソソーム分解経路の細胞内プロテアーゼであるカテプシンBによって優先的に切断され得る特異的標的化抗体へのペイロード薬剤の安定的な共有結合を維持する方法として普及してきた[Doronina 2008]。mCTXと比較した、CTXD5のこの種の標的化有用性を示すために、本発明者らはグルタリルリンカーを介して標的化タンパク質に結合した切断性細胞分裂阻害コンジュゲートを合成した。mCTX-グルタリル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル-MMAF(mCTX-G-VC-PAB-MMAF)およびCTXD5-グルタリル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル-MMAF(CTXD5-G-VC-PAB-MMAF)の両方を、lxコンジュゲートおよび2xコンジュゲートの両方の形態、すなわちmCTX(-G-VC-PAB-MMAF)2およびCTXD5(-G-VC-PAB-MMAF)2が、最終精製工程で回収されるように合成した。第2のコンジュゲーション部位はN末端アミンである。G-VC-PAB-MMAFコンジュゲートの合成は実施例4に記載されている。
【0144】
CTXD5-G-VC-PAB-MMAFコンジュゲートの構造を
図2に示す。この構築物は、本発明のコンジュゲートの好ましい例である。すなわち、クロロトキシン誘導体部分はCTXD5(配列番号4)である。このコンジュゲートは2つのリンカー、すなわちグルタリルリンカーおよびカテプシン切断性リンカーを有する。これはさらにスペーサーを有する。このコンジュゲートの補欠分子族はモノメチルアウリスタチンF(MMAF)である。
【0145】
3.4.ビオチンコンジュゲートCTXおよびCTX誘導体
ビオチン化CTXおよびCTXD5は細胞化学および組織化学の用途に使用された。ランダムにモノビオチン化したCTXはIris Biotech GMBH(ドイツ)から購入した。モノビオチン化CTXD5は、慣用的なビオチン化手順で作製し、唯一のリジン残基におけるモノコンジュゲートをHPLCで精製し、実施例3に記載したように凍結乾燥した。
【0146】
標的化分子としてのCTXと比較したCTXD5のプロファイリング
本発明者らは、上記の詳細な化学的ツールボックスの化合物を用いて、CTXD5、CTXD8および関連する例のコンジュゲートの主要な特徴を調べ、CTXと、いくつかの局面ではmCTXおよびそれらのコンジュゲートと比較した。
【0147】
選択した標的タンパク質に対する試験物質の結合親和性を調べるために、Co-bead試験に加えて、フローサイトメトリーベースの他のアッセイである「Magnabead試験」を確立した。この試験は、標的タンパク質をビーズ表面に固定化するために特異的抗体を使用し、Co-bead試験と比較して利点および欠点を有する。利点は、感度がより高いこと、すなわち低有効濃度で作用すること、およびブロッキングインキュベーション工程なしで、非特異的結合のレベルが有意ではないことである。欠点は、ファージ提示されたタンパク質の結合試験、または固定化された標的タンパク質の広範のパネルに対する標識リガンドの結合の均一な調査には適用できないことであった。Magnabead試験は、2つの異なる試験モード、すなわち結合および置換で、リガンドの親和性を調べるために使用した。CTX受容体に対するフルオロフォア標識リガンドの親和性を評価するためには、「結合モード」が適用され、それによって様々な標識リガンド濃度でインキュベートした後の蛍光強度から、結合リガンドの量を直接推定した。非標識リガンドのCTX受容体に対する親和性を評価するために、「置換モード」が適用され、これによって、試験した非標識リガンドと事前インキュベートおよび共インキュベートした後、ビーズを一定濃度の標識リガンド(1μM CTX-Cy5)に曝露し、結合した蛍光を測定した。非標識リガンドの相対的親和性は、試験リガンドの50%置換濃度(IC50値)を特性評価する濃度置換試験によって推定した。MMP-2およびNRP1タンパク質に対する標識および非標識CTXおよびCTXDの結合親和性の比較測定のためのMagnabead試験の詳細なプロトコルは、実施例6に記載されている。
【0148】
CTX、rCTXおよびmCTXと比較したCTXD5およびCTXD8のMMP-2結合親和性
CTXD5、CTXD8およびCTXの結合親和性を、1μMの標識リガンドCTX-Cy5を置換することによって得られた非標識リガンドの濃度応答試験によって比較した(
図4)。
図4は、Magnabead試験における置換リガンドとしての1μM CTX-Cy5に対するCTX、CTXD5、CTXD8の濃度-置換関係を示しており、MMP-2タンパク質に対する親和性の違いを示している。結果は、2つの化合物を比較した2つの独立した実験の平均±SD、および平均値に対するシグモイド曲線フィッティングとして示す。
【0149】
CTXD5、CTXD8およびCTXの結合親和性は、Magnabead試験におけるMMP-2からの1μM CTX-A488の置換によっても比較された。結果を表IIIに示す。
【表3】
【0150】
後者の実験では、rCTXおよびmCTXに対する比較も行った。標識CTXの結合の強度は、5つのリガンド全てによって濃度依存的に置換された。阻害はシグモイド濃度応答関係をたどり、完全な置換に達したことから、5つのタンパク質リガンドに共通の結合部位があることが示唆された。しかし、CTXD5およびCTXD8は、CTXよりも4.4倍強力に標識リガンドCTX-Cy5を置換し、それぞれIC
50値は0.16μM、0.16μM、および0.71μMであった(
図4参照)。CTX-A488置換試験によれば、rCTXおよびmCTXのIC
50値は、CTXと実質的には異ならず、それぞれIC
50値は0.68μM、0.77μMおよび0.68μMであった。したがって、この結果から、CTXD5およびCTXD8のMMP-2結合親和性が、ファージ提示試験から予測されるように、CTX、rCTXおよびmCTXとほぼ同等の高さであることが確認された。
【0151】
コンジュゲート誘導体CTXD5、CTXおよびmCTXのMMP-2結合親和性
CTXD5-Cy5、CTXD8-Cy5およびCTX-Cy5の結合親和性は、Magnabead試験におけるこれらの標識リガンドのMMP-2への結合の濃度応答試験により比較した(
図5)。この図は、Magnabead試験におけるCTX-Cy5、CTXD5-Cy5、およびCTXD8フルオロフォア標識リガンドのMMP-2結合濃度-蛍光の関係を示しており、これらのフルオロフォア標識リガンドのMMP-2タンパク質に対する親和性の違いを示している。結果は、3つの化合物を比較した3回の独立実験の平均±SDおよび平均値に対するシグモイド曲線フィッティングで示す。濃度応答関係はシグモイド曲線によくフィットし、同程度のレベルで飽和に達したことから、MMP-2上のほぼ同数の結合部位に結合することが示唆された。CTXD5-Cy5およびCTXD8-Cy5は、CTX-Cy5よりも3.7倍および3.1倍強力であり、それぞれEC
50値は0.15μM、0.18μM、および0.56μMであった。これらの結果は、CTXD5、CTXD8およびCTXのコンジュゲートリガンドは全て、非標識タンパク質の親和性を維持していることを示している。この結論は、CTX-A488(1μM)が標識リガンドである置換試験でも確認され、CTXD5、CTXD8、CTXD5-Cy5、およびCTXD8-Cy5のIC
50値は、それぞれ22μM、18μM、18μM、および18μMであった。比較のため、CTX、rCTXおよびmCTXの非標識およびCy5標識誘導体も検討した(表III参照)。その結果、CTX、rCTXおよびmCTXのMMP-2親和性には実質的な差はなく、Cy5コンジュゲートは類似の、またはわずかに高い親和性を示したが、標識タンパク質と非標識タンパク質の間で最も大きな差が認められ、mCTX-Cy5のIC
50値は、mCTXの0.77μMに対し、0.40μMであった。
【0152】
CTXD5の細胞分裂阻害コンジュゲート、すなわちCTXD5-G-VC-PAB-MMAFおよびCTXD5(-G-VC-PAB-MMAF)2とのMMP-2結合親和性の維持は、CTX-Cy5を置換リガンドとして用いた置換試験でも確認された。CTXD5、CTXD5-G-VC-PAB-MMAF、およびCTXD5(-G-VC-PAB-MMAF)2のIC50値は、同等、すなわち、それぞれ0.20μM、0.23μM、および0.22μMであった。
【0153】
CTXと比較したCTXD5およびCTXD8の標的タンパク質選択性の変化
Co-bead試験を用いて、本発明者らは、CTX-Cy5、CTXD5-Cy5およびCTXD8-Cy5の、CTXの直接的または間接的な結合パートナーとして示唆されている標的タンパク質のパネルへの結合を調べた。パネルには、hisタグ化タンパク質MMP-2、MMP-9、MMP-14、TIMP-2、α
vβ
3インテグリン、Anx2、NRP1、CLC3(クロライドチャネル)、およびヒト血清アルブミン(HSA)が含まれ、後者は一種の陰性対照であった。結果を
図6に示す。ここで棒グラフは、CTX-Cy5、CTXD5-Cy5、およびCTXD8-Cy5標識試験物質(全て1μM)の、Co-bead試験におけるビーズ結合蛍光強度によって測定される、様々な仮定標的タンパク質への異なる結合強度を示す。列のトリプレットは、どの標的タンパク質でもコーティングしていないが、MMP-2、NRP1、MMP-9、TIMP-2、MMP-14、Anx2、αvβ3インテグリン(INT)、ヒト血清アルブミン(HSA)、およびCLC3クロライドチャネルでコーティングした他の全ての標的タンパク質コーティングビーズと同様に、カゼインでブロッキングした対照ビーズ(CONT)を示す。結果は3回の実験の平均±SDで示す。
図6に示した結果から、CTX-Cy5は1μMの試験濃度でMMP-2およびNRP1にほぼ等しい強度で結合し、MMP-9、TIMP-2およびCLC3にも弱いながらも明白な結合を示した。それにもかかわらず、CTX-Cy5の、MMP-14、α
vβ
3インテグリン、Anx2およびHSAに対する結合はごくわずかであった。対照的に、CTXD5-Cy5およびCTXD8-Cy5は、CTX-Cy5よりも少なくとも3倍強くMMP-2に結合したが、CLC3およびTIMP-2を除く試験パネルの他の全てのタンパク質に対する結合はごくわずかであった。CLC3およびTIMP-2に対する微量の結合でさえもCTX-Cy5より明らかに弱かった。2つのリード化合物の標的タンパク質パネル結合および選択性プロファイルは、質的にも量的にも同等に見えた。CTX-Cy5がNRP-1に対して顕著な親和性を示したため、本発明者らは、Magnabead試験におけるCTX-Cy5およびCTXD5-Cy5の結合濃度-応答関係を比較した。結果を
図7に示す。この図は、CTX-Cy5フルオロフォア標識リガンドに対するNRP1結合濃度-蛍光関係を示しており、Magnabead試験においてCTXD5-Cy5のNRP1への明白な結合が見られなかったことを示している。結果は、2つの化合物を比較する2つの独立した実験の平均±SD、およびCTX-Cy5の相対的蛍光強度の平均値に対するシグモイド曲線フィッティングとして、NRP1に対するCTX-Cy5の親和性を特徴付けるEC
50の計算値と共に示されている。
図7に示す結果から、CTX-Cy5は濃度依存的にNRP1に結合し、EC
50値は0.41μMであったのに対し、CTXD5は試験濃度10μMまで全くNRP1に結合を示さなかった。非標識CTXD5およびCTXD8のNRP1への結合が見られないことは、CTX-Cy5置換試験でも確認された(図示しない)。
【0154】
CTX-Cy5およびmCTX-Cy5と比較したCTXD5-Cy5およびCTXD8-Cy5の腫瘍細胞の選択的染色についての有用性
本発明者らは、より高いMMP-2結合親和性および選択性が、腫瘍細胞対非腫瘍細胞に対する細胞取込み強度および選択性にどのように反映されるかを検討した。この目的のために、蛍光顕微鏡および画像解析による定性的および半定量的な特性評価および、フローサイトメトリーによる定量的な特性評価のために、いくつかの代表的な腫瘍細胞株を検討した。
【0155】
細胞培養画像結果
mCTX-Cy5またはCTXD5-Cy5(2μM)と37℃で1時間インキュベートしたヒトU251MG神経膠芽腫細胞およびHDFa線維芽細胞の接着性培養の蛍光顕微鏡画像をImageXpress Nano Automated Imaging Systemを用いて調査し、MetaXpressソフトウェア(Molecular Devices)で解析した。細胞体および核を可視化するために、培養物をそれぞれカルセイン AM(Invitrogen #C1430)およびヘキスト 33342(Life Technologies #H3570)で染色した。その結果、mCTX-Cy5およびCTXD5-Cy5は共に細胞に取り込まれ、Wiranowskaら[Wiranowska 2011]が記載した特徴的な細胞内分布、すなわち、神経膠芽腫細胞ではトランスゴルジ蓄積を伴うクラスリン介在性エンドサイトーシスと一致する核周囲大顆粒局在を示したが、線維芽細胞ではマイクロピノサイトーシスと一致する拡散性細胞質分布を示した。半定量的解析によって、神経膠芽腫細胞では線維芽細胞よりも両方の標識CTXDの取込みが高いこと、両方の細胞種でCTXD5-Cy5の取込みがmCTX-Cy5よりも高いこと、およびまた、神経膠芽腫細胞では線維芽細胞よりもCTXD5/mCTXの取込み比率が高いことが示された。
【0156】
フローサイトメトリーによる解析
細胞取込みのフローサイトメトリー調査の詳細なプロトコルは、実施例8に示されている。簡潔に述べると、試験細胞を生存率マーカー(PO-PRO-1色素)およびCy5標識CTX、mCTX、CTXD5、またはCTXD8と共にインキュベート(二重染色)した。Cy5コンジュゲートタンパク質の取込みを、PO-PRO-1取込みの高さに基づいて非生存細胞をゲーティングした後、Cy5タンパク質未染色細胞に対する蛍光強度の中央値(ΔMFI)の増加として測定した。代表的な腫瘍細胞株のセットとして、本研究では、ヒト神経膠芽腫(U251 MGおよびU87 MG)、膵臓癌(Panc-1)、黒色腫(A375)および乳癌(SK-Br)細胞が挙げられ、これらは以前の研究で「CTX陽性」と分類されている[Lyons 2002]。さらに、「CTX陰性」と報告されている悪性腫瘍細胞株TE 671ヒト横紋筋肉腫[Soroceanu 1998]、および正常な非腫瘍細胞、すなわちラット星状細胞、ヒト皮膚線維芽細胞(HDFa)およびヒト臍帯静脈細胞(HUVEC)も、腫瘍選択性の変化を明らかにするために調査した。まず、本発明者らは、フルオロフォア標識したCTXD5およびCTXを用いた、U251 MG細胞およびPanc-1細胞に対する比較濃度取込み試験を行った。その結果、CTXD5-Cy5は両細胞株においてCTX-Cy5よりも4倍強力に、すなわち4倍低い等有効濃度で取り込まれた(
図8)。この図は、フローサイトメトリーで測定した細胞染色強度試験におけるCTX-Cy5およびCTXD5-Cy5フルオロフォア標識リガンドの細胞内取込み濃度-蛍光の関係を示している。データは、2つの悪性腫瘍細胞株:U251およびPanc-1における2つの化合物の染色強度を比較する、N=2およびN=3の実験の平均±SDとして示した。濃度-取込み関係に基づいて、300nMを固定試験濃度として選択し、CTXD5-Cy5、CTX-Cy5およびmCTX-Cy5のコンジュゲートタンパク質の取込みを、選択した細胞株のセットにおける同時比較実験で調べた。その結果、比較的多量の標識CTX、mCTXおよびCTXD5が「CTX陽性」の腫瘍細胞:神経膠芽腫、黒色腫、膵臓癌および乳癌細胞に取り込まれ、「正常細胞」および「CTX陰性」の横紋筋肉腫細胞株への取込みははるかに少なかったことが示された(表IV参照)。
【表4】
【0157】
CTXD5-Cy5の取込みは、CTX-Cy5よりも全ての細胞種で高かった。しかし、CTXD5/CTX取込み比率から、CTXD5はCTXよりも、腫瘍細胞には2.4~3.5倍多く取り込まれたが、正常細胞には1.1~1.9倍しか取り込まれないことが示され、このことは、フルオロフォア標識CTXD5が、標識CTXよりも腫瘍細胞を強く染めるだけでなく、調べた腫瘍細胞を正常細胞に対してより選択的に染めることを明らかに示している。mCTX-Cy5の細胞取込み強度は、試験した全ての細胞株でCTX-Cy5と実質的には異ならなかった。
【0158】
2つの標識リード化合物CTXD8-Cy5およびCTXD5-Cy5の細胞内取込みを比較するために、2回目の一連の実験を行った。この比較試験の結果を表Vに示す。
【表5】
【0159】
その結果、この新しい試験におけるCTXD5-Cy5の取込み強度は、以前の試験と非常に類似していることが示された(表IV参照)。さらに、CTXD8-Cy5の取込み強度はCTXD5-Cy5とほぼ同じであり、これは非常に類似した細胞取込みおよび腫瘍対非腫瘍の選択性プロファイルを示している。
【0160】
化学療法薬剤の標的化細胞内送達におけるCTXD5の使用
化学療法薬剤とコンジュゲートしたmCTXよりもCTXD5の標的化効力が向上していることを調べるため、本発明者らは、2つの標的タンパク質CTXD5およびmCTXの細胞内切断性MMAFコンジュゲートの増殖阻害効力を比較した。-GVC-PAB-MMAFとの、CTXD5およびmCTXのモノコンジュゲートおよびバイコンジュゲート形態の両方を試験した。調査のプロトコルは実施例9に記載されている。その結果、IC50が585nMのモノコンジュゲートCTXD5-G-VC-PAB-MMAFは、モノコンジュゲートmCTX-GVC-PAB-MMAFよりもU251 MG細胞増殖に対して2.4倍強力な阻害剤であることが示された。IC50が235nMのバイコンジュゲートCTXD5-(GVC-PAB-MMAF)2は、バイコンジュゲートmCTX-(GVC-PAB-MMAF)2よりも9.7倍強力であった。2つの標的化タンパク質の違いは、最小有効濃度の比較においてより顕著であり、これは、CTXD5バイコンジュゲート化合物の最小有効濃度は10nMであったのに対し、より優れたmCTXコンジュゲート、すなわちmCTXモノコンジュゲートは最小有効濃度1000nMを有し、これはCTXD5の化学療法コンジュゲートがはるかに低い濃度レベルで所望の治療効果を有し始めることを意味している。
【0161】
CAR T細胞療法におけるCTXD8の有用性に関するin vitro試験
CTXD8または古典的CTX認識ドメインリダイレクトエフェクター細胞が、標的細胞の細胞溶解を誘導する可能性が高いかを調べるため、本発明者らは、CTXD8-CARまたはCTX-CARをコードするレトロウイルスベクターを作製し、3人のヒトドナーから得た血液から単離した末梢血単核球(PBMC)由来の初代ヒトTリンパ球を形質導入した。CTXD8-およびCTX-CARの両方がT細胞上で安定的に発現することが見出された。平均発現効率はCTXD8-、およびCTX-CAR T細胞で54.4%および51.2%であった。CTXD8-およびCTX-リダイレクトCAR T細胞のエフェクター機能および潜在的細胞傷害性を調べるため、本発明者らは、高MMP-2発現を示すHER2+トラスツズマブ耐性乳癌由来細胞株(MDA-HER2)を標的として用いた。また、公知のCTX-CAR非感受性対照としてHEK293T細胞株に対する細胞傷害性も調べた[国際公開第WO2017/066481号広報]。それらのエフェクター機能および細胞傷害活性を評価するために、CTXD8-およびCTX-発現CAR T(「エフェクター」)細胞を、異なるエフェクター対標的細胞比率でMDA-HER2細胞と共培養した。本発明者らは、インターフェロンガンマ(IFNγ)サイトカインの産生を決定することで、エフェクター機能を調べた。CTXD8-およびCTX-由来のCAR T細胞は、有意な量のIFNγを産生した。非改変T細胞(NT)または標的抗原非存在下(HEK293T細胞株)では、サイトカイン産生は観察されなかった。CTXD8-またはCTX-CARエフェクターで処理した腫瘍細胞の生存率は、非形質導入(「NT」)リンパ球との共培養で測定した平均生存率に対して正規化した腫瘍細胞の平均生存率のパーセンテージで示した。調査のプロトコルは実施例10および11に記載されている。
図9および
図10に示す結果は、CTX-およびCTXD8-CARの両方が、エフェクター対標的比率に依存する顕著な細胞傷害性効果(生存率の低下)を誘導することを示した。NT対照T細胞との共培養では細胞傷害性は見られなかった。しかし、CTXD8-またはCTX-リプログラミングCAR Tリンパ球は、いずれもHEK293T細胞に対して細胞傷害性効果を示さなかった。本発明者らは、CTXD8-CAR T細胞はCTX-CAR T細胞よりも大きな細胞傷害性を誘導すると結論づけた。CTXD8-CAR T細胞の効果は、統計学的に有意であった(二元配置分散分析、Bonferroni検定、
図10)。
【0162】
本発明のCTXDの使用の結論
要約すると、本発明者らは、デザイナー毒素およびファージ提示技術を用いて、CTXおよびmCTXよりもMMP-2タンパク質に対して実質的に高い親和性を有する新規CTXDリード化合物(すなわちCTXD1)を開発した。異なるファージ提示CTXDタンパク質のMMP-2および他の潜在的標的タンパク質との結合強度の定量的評価に適した新規フローサイトメトリー法を用いて、本発明者らは、このリード化合物周辺の構造-活性関係を確立した。これらの構造-活性相関研究により、CTXおよびmCTXと比較してMMP-2への結合についてさらに効力が強く、NRP1には結合しないため、より選択的でもあるCTXD化合物のセットが明らかになった。ファージ提示タンパク質を調査することによって得られた観察結果は、2つの選択した例示的なクロロトキシン誘導体、CTXD5およびCTXD8を組替え産生し、精製試験物質として用いた調査によってさらに確認された。これらの検討はファージ提示の結果と一致し、CTXD5およびCTXD8のMMP-2活性および選択性が3~4倍高いことを示した。驚くべきことに、CTXD5およびCTXD8はNRP1だけでなく、CTXがある程度の結合を示す他の標的タンパク質に対してもより選択的であることが証明された。リード化合物のフルオロフォアおよび化学療法薬剤コンジュゲート誘導体は、親タンパク質のMMP-2結合親和性を維持していた。さらに、フルオロフォア標識したCTXD5およびCTXD8は、CTXよりもはるかに高い強度で腫瘍細胞に取り込まれ、正常細胞に対する腫瘍細胞への選択性が上昇していた。さらに、CTXD5の試験化学療法コンジュゲートは、mCTXの同様のコンジュゲートよりも高い効力で、神経膠芽腫細胞の増殖を阻害した。CTXD8またはCTXを抗原認識ドメインとして組み立てられたCAR T細胞は、高MMP-2発現乳癌由来細胞株に対して選択的細胞傷害効果を示したが、対照細胞株に対しては非傷害性であった。CTXD8-CAR細胞の選択的細胞傷害効果は、CTX-CAR細胞よりも大きかった。これらの観察を合わせると、本発明の化合物は、単独で、または他の分子、ナノ粒子とコンジュゲートして、またはCTXのそのような推定される用途に関連する先行技術から明らかであり得る診断、治療、または診断と治療を組み合わせたセラノスティック応用とも呼ばれる付加的な特徴を提供するCAR細胞構築物中の標的認識ドメインとして適用した場合に、標的化分子としてCTXまたはmCTXよりも有用であり、優れているという結論に至った。本発明のクロロトキシン誘導体は、さらなる改変の出発点となり得る。
【0163】
このような利用には、術中可視化のための眼内腫瘍染色、または皮膚もしくは粘膜表面の腫瘍染色、または放射線学的およびイメージング応用、または組織化学的染色のための様々なコンジュゲート形態の診断標的化分子としての本発明のクロロトキシン誘導体の使用が含まれるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0164】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細かつ具体的に説明するが、これらは本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0165】
rCTX、mCTX、CTXD5およびCTXD8の組換え産生および精製
クローニング
rCTX、mCTXおよびCTX誘導体をコードするDNA配列を、N末端His-タグ化融合パートナーであるDsbC(ジスルフィド結合異性化酵素C)もコードするpETベースの発現ベクターにクローニングした。BamHI制限エンドヌクレアーゼの認識部位とSplB(セリンプロテアーゼ様タンパク質B)の切断部位(WELQ)のアミノ酸配列を含むフォワードプライマーを用いて、CTX誘導体をPCR反応で増幅した。リバースプライマーは2つの終止コドンおよびXhoIの認識部位を含んでいた。PCR産物をBamHIおよびXhoI制限エンドヌクレアーゼで消化し、DsbC融合パートナータンパク質コードセグメントの下流の線状化ベクターにライゲーションした。ライゲーション反応は、化学的にコンピテントなDH5α細胞(Thermo Fisher Scienti fic)に形質転換した。構築物のDNA配列はサンガーシーケンシングで決定した。
【0166】
発現
化学的にコンピテントなSHuffle T7 Express細胞(New England Biolabs)をプラスミドで形質転換し、アンピシリン(100μg/mL)を添加したLB寒天培地にストリークした。翌日、単一のコロニーをアンピシリン添加LB培地20mLに接種し、160rpmで振盪しながら37℃で一晩インキュベートした。翌日、アンピシリン添加自己誘導テリフィックブロス1Lに一晩の培養物1mLを接種し、Ultra Yieldフラスコ(Thomson Instrument Company)中で30℃、160rpmで増殖させた。30時間のインキュベート後、7460×gで10分間遠心分離して細菌細胞を回収した。組換えCTXの細胞ペレットを140mLの50mM Tris-HCl pH8.0、300mM NaCl、および0.5% Triton X-100に再懸濁した。組換えCTX誘導体の細胞ペレットを140mLの溶解緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.5、300mM NaCl、30mM イミダゾール、および0.25% Triton X-100)に再懸濁した。サンプルは-20℃で保存した。
【0167】
rCTXの精製
解凍後、超音波処理により細胞を破砕した。細胞残屑を48400×gで20分間遠心分離してペレット化し、上清を蠕動ポンプを用いて、17mLのBioRad Nuvia IMACクロマトグラフィー樹脂を充填したカラムにロードし、6xHisタグ化DsbC-CTX融合タンパク質を捕捉した。5カラム容積のIMAC洗浄緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.5、300mM NaCl、および30mM イミダゾール)で洗浄後、IMAC溶出緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.5、300mM NaCl、250mM イミダゾール)でカラムからサンプルを溶出した。溶出液を2Lの20mM Tris-HCl pH8.0緩衝液に対して25℃で一晩透析した。透析したサンプルを20000×gで10分間遠心分離し、0.2μmメンブレンで濾過し、Aktaピュアクロマトグラフィーシステムに接続した20mM Tris-HCl pH8.0緩衝液(緩衝液A)で予め平衡化した5mL HiTrap Q HPカラム(GE Healthcare)にアプライした。緩衝液Aで洗浄後、DsbC-CTX融合タンパク質を20mM Tris-HCl pH8.0、1M NaCl(緩衝液B)の0~50%直線勾配で25分かけて2mL/分の流速で溶出した。溶出した画分を10%トリシン-SDSゲルで解析した。DsbC-CTXを含む画分をプールし、SplBプロテアーゼ(非切断性Hisタグ化)を融合タンパク質:プロテアーゼ比率2:1で添加し、tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を最終濃度100μMで添加した。サンプルを25℃で一晩インキュベートした。翌日、10% トリシン-SDS PAGEゲル上で切断率を決定した。サンプルにNaClおよびイミダゾールをそれぞれ最終濃度0.5Mおよび15mMになるように添加し、溶液を孔径0.2μmのシリンジフィルタで濾過した。次に、Aktaピュアクロマトグラフィーシステムを用いて、サンプルを8ml BioRad Nuvia IMAC樹脂に2ml/分でアプライした。カラムを20mM Tris-HCl pH8.0、0.5M NaCl、および15mMイミダゾール緩衝液で洗浄し、フロースルーを回収した。6xHis-DsbCおよび6xHis-SplBタンパク質を、20mM Tris-HCl pH8.0、0.5M NaCl、および250mM イミダゾール緩衝液を用いてカラムから溶出した。標的(rCTX)タンパク質を含むフロースルーをAmicon Ultra-15遠心フィルタユニット(MWCO=3000Da)を用いて濃縮した。このフィルタユニットは、その後のサイズ排除クロマトグラフィーのために、洗浄緩衝液を10mM Tris-HCl pH8.0、0.5M NaCl緩衝液に交換するためにも使用した。Aktaピュアクロマトグラフィーシステムに接続したHiLoad 16/600 Superdex 30pgカラム(GE Healthcare)を10mM Tris-HCl pH8.0、0.5M NaCl緩衝液で平衡化した。サンプルを1mL/分で1mLのアリコートでカラムにアプライした。その後、1mL/分の流速でカラム1容量分の緩衝液でサンプルを溶出し、吸光度を280nmでモニターした。クロロトキシンを含む画分は、10%トリシン-SDSゲル上のPAGEによって決定された。クロロトキシン含有画分のTris-HClおよびNaCl含量は、Amicon Ultra-15遠心分離フィルタユニット(MWCO=3000Da)で繰り返しサンプルを濃縮し、USP試験WFI水で希釈することにより、それぞれ0.01mMおよび0.5mM未満に減少させた。サンプルの濃度は、凍結乾燥に供する前に、214nmでの吸光度を測定することにより決定した。タンパク質の純度と分子量は、その後のHPLC-UV/MS測定により決定した。
【0168】
mCTXおよびCTXDの精製
解凍後、サンプルに最終濃度1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF、プロテアーゼ阻害剤)を添加し、超音波処理により細胞を破砕した。細胞残屑を48400×gで20分間遠心分離してペレット化し、上清を25mL BioRad Nuvia IMACクロマトグラフィー樹脂を充填したカラムに蠕動ポンプを用いてロードし、6xHisタグ化DsbC-CTX誘導体融合タンパク質を捕捉した。5カラム容積のIMAC洗浄緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.5、300mM NaCl、および30mM イミダゾール)で洗浄後、IMAC溶出緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.5、300mM NaCl、および250mM イミダゾール)でカラムからサンプルを溶出した。溶出液をSpectra/Por透析膜(MWCO:12000Da、Fisher Scientific)を用いて、2Lの20mM HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)pH7.5緩衝液に対して25℃で一晩透析した。透析後、サンプルにSplBプロテアーゼおよびTCEP(tris(2-カルボキシエチル)ホスフィン)を融合タンパク質:プロテアーゼ:TCEPのモル比率3:1:1で添加し、25℃で一晩インキュベートした。翌日、切断の程度を10%トリシン-SDS PAGEゲルで検査した。消化したサンプルを20000×gで10分間遠心分離した後、0.2μmのメンブレンで濾過した後、Aktaピュアシステムで行われる陽イオン交換クロマトグラフィーに供した。サンプルを、洗浄緩衝液(20mM HEPES pH7.5)で予め平衡化した5mL HiPrep SP HPカラム(GE Healthcare)にロードし、カラムを5カラム容積の洗浄緩衝液で洗浄した。次に、25分かけて0~50%の溶出バッファー(20mM HEPES pH7.5、1M NaCl)の直線勾配を2mL/分の流速で用いて、サンプルを溶出した。溶出した画分をSDS-PAGEゲルで解析した。CTX誘導体を含む画分をプールし、Agilent 1100シリーズHPLCシステム(Agilent Technologies)に接続したJupiter 10μ C5 300Åカラム(Phenomenex)にロードした。移動相には、0.1%ギ酸を添加したHPLCグレードの水(緩衝液A)および0.1%ギ酸を添加したアセトニトリル(緩衝液B)が含まれた。タンパク質は、2ml/分で30分かけて15~45%の緩衝液Bの直線勾配でカラムから溶出した。溶出した画分を10%トリシン-SDSゲルで解析し、CTXDを含む画分をプールした。サンプルの濃度は、凍結乾燥に供する前に、280nmでの吸光度を測定することにより決定した。タンパク質の純度および分子量は、その後のHPLC-UV/MS測定により決定した。
【0169】
実施例2~4では、コンジュゲートCTX、rCTX、mCTX、CTXD5およびCTXD8の合成を示す。
【実施例2】
【0170】
フルオロフォア標識CTX、rCTX、mCTX、CTXD5およびCTXD8の合成
シアニン5標識CTX、およびCTXバリアントおよび誘導体の合成
0.1NのHC1でpH8に調整した0.1Mの炭酸水素ナトリウムに溶解したCTX(10mg/mL)と、0.1%(v/v)のジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を添加した無水ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解したシアニン5N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(Cy5-NHSエステル、Lumiprobe)の混合物を用いて、CTX-Cy5(モノコンジュゲート)を合成した。染料溶液の濃度を設定し、2つの溶液をモル比1:0.9(CTX/染料)および溶媒比1/10(重炭酸塩/DMF)になるように混合した。コンジュゲートは、室温で1時間行った。反応後のサンプルは、逆相クロマトグラフィーを用いて均質になるように精製した。サンプルを、PDA 996検出器を備えたAlliance 2795 HPLCシステムに接続したXBridge BEH C18カラム(3.5μm 4.6×50mm)にロードした。移動相は0.1%ギ酸を含むHPLCグレードの水(緩衝液A)とアセトニトリル(緩衝液B)を含んでいた。CTX-Cy5は、20秒間の画分を回収することにより、2mL/分の流速で0.5分~4.5分、5~70%の緩衝液Bの直線勾配を用いてカラムから溶出した。吸光度クロマトグラムは650nmでモニターした。関連する画分サンプルを質量分析計(Waters Acquity SQD;イオン化:ES+/ES-、ソースブロック温度:150℃、脱溶媒温度:250℃、脱溶媒ガス:650L/h、コーンガス:80L/h、キャピラリー:3000V、コーン:30V、エクストラクタ:6V、Rfレンズ:0.1V、スキャン:1秒あたり80~1000m/z、スキャン間遅延:0.1秒)で解析し、純粋なモノコンジュゲートCTX-Cy5を含む画分をプールし、サンプルの分子量および純度をHPLC質量分析で確認した。最後に、得られたサンプルを凍結乾燥した。Cy5標識rCTX、mCTX、CTXD5およびCTXD8は、基本的に同じプロセスで合成した。
【0171】
Alexa 488標識CTX、およびCTXバリアントならびに誘導体の合成
Alexa 488標識CTX(CTX-A488)も、出発反応性色素化合物がAlexa 488テトラフルオロフェニル(TFP)エステルであることを除き、同様のプロセスで合成した。
【実施例3】
【0172】
ビオチン化CTXDの合成
0.1NのHC1でpH8に調整した0.1Mの炭酸水素ナトリウムに溶解したCTXD(10mg/mL)と、0.1%(v/v)のDIPEAを添加した無水ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解したビオチン3-スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(Sigma)との混合物を用いて、ビオチン化CTXD(モノコンジュゲート)を合成した。活性化ビオチン溶液の濃度を設定し、2つの溶液をモル比1:1(CTX/ビオチン)および溶媒比1:10(炭酸水素塩/DMF)になるように混合した。コンジュゲートは室温で1時間行った。反応後のサンプルは、逆相クロマトグラフィーを用いて均一に精製した。サンプルをPDA 996検出器を備えたAlliance 2795 HPLCシステムに接続したPhenomenex Jupiter C5カラム(300Å 4.6×250mm)にロードした。移動相は0.1%ギ酸を含むHPLCグレードの水(溶出液A)およびアセトニトリル(溶出液B)を含んでいた。CTXD-ビオチンは、27秒の画分を回収することによって、1.8mL/分の流速で、5分~12分で7分間、溶出液Bの5~70%直線勾配を用いてカラムから溶出した。吸光度クロマトグラムは280nmでモニターした。関連する画分サンプルを質量分析計で解析し、純粋なモノコンジュゲートCTXD-ビオチンを含む画分をプールし、サンプルの分子量および純度をHPLC質量分析で確認した。最後に、得られたサンプルを凍結乾燥した。
【実施例4】
【0173】
CTXD5-グルタリル-Val-Cit-PAB-MMAFおよびmCTX-グルタリル-Val-Cit-PAB-MMAFの合成
CTX受容体ベースの標的化化学療法剤が設計され、これは、標的化タンパク質としてCTX誘導体、細胞内切断カテプシンB酵素感受性リンカー(グルタリル-バリン-シトルリン-P-アミノベンゾイルオキシカルボニル、略称G-VC-PAB)およびペイロードとして細胞分裂阻害モノメチルアウリスタチンF(MMAF)を含む。試験のために、G-VC-PAB-MMAFコンジュゲートを、CTXD5またはmCTXのいずれかを標的分子として用いて以下の手順にしたがって合成した:
【0174】
工程1:VC-PAB-MMAFの合成
出発物質は、MedChemExpressから購入したFmoc-Val-Cit-PAB-PNP(Fmoc=フルオレニルメトキシカルボニル保護基;PNP=パラニトロフェニル)およびMMAF(MedChemExpress)であった。出発物質(Fmoc-Val-Cit-PAB-PNP 28mgおよびMMAF 27mg、モル比1.25:1)を、5.6mgの1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)および3μLのDIPEAを含む3.5mLのDMFに溶解した。室温で1時間反応させた後、20%(v/v)のピペリジンを添加し、室温で20分間反応させてFmoc保護基を除去し、サンプルを2487二波長吸光度検出器を備えたWaters 600半分取逆相HPLCシステムに接続したSun Fire C18カラム(5μm、4.6×250mm)で精製した。
【0175】
移動相は0.1%ギ酸を含むHPLCグレードの水(溶出液A)およびアセトニトリル(溶出液B)を含んでいた。生成物は、13mL/分の流速で、5分~16分、5~70%の溶出液Bの直線勾配を用いてカラムから溶出した。吸光度クロマトグラムは280nmでモニターした。関連する画分サンプルを質量分析計で解析し、純粋に標的化合物(VC-PAB-MMAF)を含む画分をプールし、凍結乾燥した。
【0176】
工程2:NHS-G-VC-PAB-MMAFの合成
この反応の出発物質は、先に合成したVC-PAB-MMAFおよびSigmaから購入したグルタル酸ジ(N-スクシンイミジル)である。両方の出発物質を4-4mLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、前者には3μLのDIPEAを添加した。次に、VC-PAB-MMAF溶液をグルタル酸ジスクシンイミジル溶液に約30分かけて滴加し、一晩反応させた。翌日、標的化合物を上記のようにHPLCで精製し、凍結乾燥し、CTXDとカップリングするまで-20℃で保存した。
【0177】
工程3:G-VC-PAB-MMAFとCTX誘導体へのカップリング
カップリング反応は、CTXD5またはmCTXを用いて同一の方法で行った。カップリング反応は、0.1N HC1でpH8に調整した0.1M炭酸水素ナトリウムに溶解したCTXD5(10mg/mL)と、0.1%(v/v)DIPEAを添加した無水ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解したNHS-G-VC-PAB-MMAFの混合物を用いて行った。リンカーペイロード溶液の濃度を設定し、2つの溶液をモル比1:2(CTXD/リンカーペイロード)および溶媒比1:10(炭酸水素塩/DMF)になるように混合した。コンジュゲートは室温で1時間行った。反応したサンプルは、Cy5コンジュゲート反応について上述したように、逆相クロマトグラフィーを用いて均質に精製した。NHSエステルリンカー-ペイロード分子は、モノリジンCTX誘導体中の唯一のリジン残基の一級アミンと主にコンジュゲートできるが、二次的にN末端アミンともコンジュゲートできるため、モノコンジュゲート(例えばCTXD5-G-VC-PAB-MMAF)およびバイコンジュゲート(CTXD5(-G-VC-PAB-MMAF)2)誘導体の両方が形成された。したがって、モノコンジュゲート化合物とバイコンジュゲート化合物の両方を精製プロセスで別々に回収し、凍結乾燥後に生物学的調査に供した。
【0178】
実施例5~9では、いくつかの試験プロトコルを示す。
【実施例5】
【0179】
Co-bead試験
Co-bead試験は、様々な標的タンパク質に対するファージ提示または精製CTXDリガンドタンパク質の結合強度の測定に使用した。この試験は、固定化コバルトコーティングしたHis-Tag Isolation & Pulldown Dynabeads(ThermoFisher Scientific、カタログ番号:10104D)に様々なHisタグ化標的タンパク質(受容体)を固定化し、フルオロフォア標識リガンドを標的タンパク質に結合させ、フローサイトメトリーでビーズ結合蛍光強度を測定するという原理に基づいている。
【0180】
Co-beadの調製
各反応チューブ中で体積0.5μLのビーズ(直径1μmと特定)をピペッティングし、3回の洗浄を行った。各回の洗浄は、0.05%(v/v)のTween-20を含む2mLのTris緩衝生理食塩水溶液(TBS、ThermoFisher Scientificの20xTBS、カタログ番号:28360)(以下、洗浄液をTTと略する)にビーズを(再)懸濁し、チューブを磁気濃縮器(DynaMag-5、ThermoFisher Scientific、カタログ番号:12303D)に入れ、10分後に上清を捨てることを含む。その後、ビーズを50μLの標的タンパク質溶液中で4℃で一晩インキュベートした。本願で報告された研究では、全ての標的タンパク質を同一のモル濃度である0.16μMでアプライし:これは活性MMP-2(MW 62kDa)の場合、10μg/mLに相当する。標的タンパク質溶液はTBSに溶解または希釈した。陰性対照ビーズは、標的タンパク質を含まないTBSで同時にインキュベートした。使用した標的タンパク質は以下の通りである(NCBIアクセッション番号[セグメントアミノ酸配列];his-tagの位置:C末端またはN末端;供給元;およびカタログ番号#を括弧内に記載):MMP2(NP_004521.1[110-660];N-;ProSpec、#ENZ-769);NRP1(NP_001019799.1[1-644];C-;Sino Biological;#10011-H08H);MMP-9(NP_004985.2[20-701];C-;ProSpec;#ENZ-1091)、TIMP-2 (NP_003246.1[27-220];N-;ProSpec;#ENZ-646)、MMP-14(NP_004986[24-524];C-;ThermoFisher;#RP77533)、Anx2(NP_001002857.1[1-339];N-;ProsPec;#PRO-777)、αvβ3インテグリン(AAA52589.1&NP_002196.4ヘテロ二量体;共にC-末端his-タグを有する;Native Antigen Company;#REC31719-100)、CLC3(NP_001820.2[1-818];C-;Creative Biomart;大腸菌(E.coll)での組換え発現によるカスタムメイド)、ヒト血清アルブミン(NP_000468.1[25-609];C-;Abcam;#ab217817)。標的タンパク質のインキュベート後、ビーズを3回洗浄し、次いで100μLのCasein Blocking Solution (Sigma、#B6429)で室温で1時間インキュベートしてブロッキングした後、3回洗浄した。その後のプロセスは、ファージ提示タンパク質、ならびに精製および標識タンパク質試験物によって異なる。
【0181】
ファージ提示の暴露および染色
ファージ提示タンパク質(CTXおよびCTXD)のリガンドを試験する場合、調製したビーズを試験モノクローナルファージ溶液に再懸濁し、室温で1時間インキュベートした。ファージは、0.5%ウシ血清アルブミンおよび0.05%(v/v)Tween-20(以下TBTと略記)を含むファージおよび抗体インキュベート緩衝液TBSに溶解した。ファージ暴露後、ビーズを3回洗浄した後、1:200希釈のマウスモノクローナル抗M13抗体(Sino Biological、#11973-MM05)を含む50μLのTBT中で、4℃で30分間インキュベートした。その後、ビーズを3回洗浄し、1:1000に希釈したCy5標識ヤギ抗マウス二次抗体を含む50μLのTBT中、4℃で30分間インキュベートした。3回の最終洗浄後、ビーズを2mLのTTに再懸濁し、フローサイトメトリー測定の準備とした。
【0182】
フルオロフォア標識試験物質曝露
フルオロフォア標識試験物質(例えば、CTX-Cy5またはCTXD-Cy5)を試験するため、標的タンパク質でコーティングし、カゼインでブロッキングしたビーズを、標識試験物質を特定の濃度で含む50μLの試験溶液に再懸濁し、室温で1時間インキュベートした。試験溶液は、例えば、10~14%(v/v)のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む水に溶解した100μMの試験物質のストック溶液をTTで希釈することにより調製した。試験溶液とインキュベートした後、ビーズを3回洗浄し、2mLのTTに再懸濁し、フローサイトメトリー測定の準備とした。
【0183】
フローサイトメトリーによるビーズ結合蛍光強度の測定
フローサイトメーター(Miltenyi BiotecのMACSQuant Analyzer 10)を用い、励起のために635nmの赤色レーザー、およびパルスエリアモードでの蛍光強度測定のためにR1チャンネルを使用してフローサイトメトリー解析を行った。吸引容積は1サンプルあたり200μLで、穏やかに混合するように設定し、1サンプルあたり10000イベントを収集した。流速は遅く設定され、最大イベント数は毎秒500であった。この包括的な楕円ゲートは、主要ビーズ集団の周辺で適用され、これは、陰性対照ビーズで得られた前方散乱対側方散乱のドットプロットに基づいて設定し、ダブレットおよびマルチプレットに関連するイベントが解析から除外されるようにした。ゲーティングは、同じ種類のビーズを用いた全ての実験を通して一定に保った。結合の定量的特性評価には、ゲーティングされたイベントの蛍光強度の中央値(MFI)を用いた。結果はMFIまたは相対蛍光強度(RFI)で表され、後者は同時に処理した関連する陰性対照サンプルのMFIに対するサンプルのMFIの比として定義される。陰性対照サンプルは、ビーズが標的タンパク質でコーティングされていないことを除き、全ての調製、ブロッキング、および染色の手順に供した。結合強度(すなわち、ビーズに結合したファージ/タンパク質の数/量)の評価には、デルタMFI値またはデルタRFI値を用い、これらは陰性対照サンプルの値に対する増加(差)を意味する。
【0184】
CTXDを提示するファージの結合強度を評価する間(例えば、表Iおよび表IIに示す結果)、CTX発現ファージ溶液も同じ実験で同一のファージ濃度(1.08~4.08×1014ファージ粒子/mLの範囲)で試験し、CTXDの相対的MMP-2結合強度(デルタRFI)をCTXのデルタRFIで正規化(除算)した。表Iに示した相対的MMP-2結合強度の値は、N回の実験の平均である。Nは、mCTXおよび特許請求される化合物(化合物3~18)について少なくとも3であった。
【実施例6】
【0185】
Magnabead試験
Magnabead試験は、MagnaBind Goat Anti-Rabbit IgG Beads(ThermoFisher、Scientific、カタログ番号:21356)、すなわちヤギ抗ウサギ抗体を工場でコーティングしたマイクロビーズに標的タンパク質特異的ウサギIgG抗体を介して標的タンパク質を固定し、フルオロフォア標識リガンドを標的タンパク質に結合させ、ビーズ結合蛍光強度をフローサイトメトリーで測定するという原理に基づいている。MMP-2およびNRP-1標的タンパク質に対するフルオロフォア標識CTX、mCTXおよびCTXDリガンドタンパク質の濃度-結合関係の特性評価にMagnabead試験を使用し、それによって半最大有効濃度(EC50値)の測定による相対的結合親和性を特性評価した。この方法は、MMP-2またはNRP1標的タンパク質上の受容体からのフルオロフォア標識CTXの結合の置換(阻害)を測定することにより、非標識CTXDおよびコンジュゲートCTX誘導体の相対的親和性を特性評価するためにも有用である。このようにして、種々のCTX、mCTXおよびCTXD誘導体の親和性を比較するために、半最大阻害濃度(IC50値)を測定した。
【0186】
Magnabead調製
各反応チューブ中で体積1μLのビーズ(ビーズ直径1~4pmと特定)をピペッティングし、3回の洗浄を行った。各回の洗浄は、ビーズを2mLのDulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、Sigma #D8662)に(再)懸濁し、チューブを磁気濃縮器(DynaMag-5;ThermoFisher Scientific、カタログ番号:12303D)に入れ、10分後に上清を捨てることを含む。その後、ビーズを1:100に希釈した試験標的タンパク質に対するウサギ抗体を含む50μLのDPBS中で、4℃で1時間インキュベートした。使用した抗MMP-2抗体はポリクローナル抗体(ThermoFisher Scientific、カタログ番号:PAI-16667)であり、これは長さ660アミノ酸のヒトMMP-2タンパク質(NP_004521.1)のアミノ酸位置504-518の合成配列に対して産生した。MMP-2タンパク質は、成熟活性酵素(例えば、ProspecBio #Enz-100またはSigma #SRP3118)またはプロ酵素(例えば、ProspecBio #Enz-769またはSigma #SRP6270)のいずれでもよく、これらは非常に類似したCTX結合結果を有する。使用した抗NRPl抗体はポリクローナル抗体(ThermoFisher Scientific、カタログ番号:PA5-26079)で、923アミノ酸長のヒトNRP1タンパク質(NP_003864.5)のアミノ酸位置722-750の合成配列に対して産生した。抗体によってビーズに固定されたNRP1タンパク質は、923アミノ酸長の配列のうち843アミノ酸(22~856)を含む単一のグリコシル化ポリペプチド鎖として組換え産生された(ProsPec、カタログ番号:Cyt-1059)。2回目の抗体コーティング後、ビーズを3回洗浄し、0.16μMの濃度で選択した標的タンパク質(例えば、MMP-2またはNRP1)を含む50μLのDPBS中で、室温で1時間インキュベートした。Magnabead試験の場合、非特異的結合を除去するためにブロッキングインキュベーションを行う必要はなかった。
【0187】
試験物質の暴露
フルオロフォア標識試験物質(例えば、CTX-Cy5、もしくはCTXD-Cy5、またはCTX-A488)の試験では、標的タンパク質でコーティングしたビーズを、標識試験物質を特定濃度で含む試験溶液に再懸濁し、室温で1時間インキュベートした。試験溶液は、例えば、10~14%(v/v)のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む水に100μMの試験物質を溶解したストック溶液をDPBSで希釈することによって調製した。試験溶液と共にインキュベートした後、ビーズを3回洗浄し、2mLのDPBSに再懸濁し、フローサイトメトリー測定の準備とした。
【0188】
非標識試験物質を試験する場合、標的タンパク質でコーティングしたビーズを、DPBSに溶解した特定濃度の非標識試験物質を含む50μLの試験溶液に再懸濁し、室温で1時間インキュベートした。次に、2μMの標識CTX(CTX-Cy5またはCTX-A488)と特定濃度の非標識試験物質を含む50μLのDPBS溶液を添加し、1μMの標識CTX(置換指示リガンド)と特定濃度の非標識試験物質(置換リガンド)中でビーズをインキュベートした。ビーズを室温でさらに1時間インキュベートした後、3回洗浄し、2mLのDPBSに再懸濁し、フローサイトメトリー測定の準備とした。
【0189】
フローサイトメトリーによるビーズ結合蛍光強度の測定
フローサイトメーター(Miltenyi BiotecのMACSQuant Analyzer 10)を用い、励起に635nm赤色レーザー、およびCy5標識リガンド結合の蛍光強度測定にR1チャンネル、または励起に488nm青色レーザー、およびA488標識リガンド結合の蛍光強度測定にBlチャンネルを用い、パルスエリアモードでフローサイトメトリー解析を行った。吸引容積は1サンプルあたり200μLで、穏やかに混合するように設定し、1サンプルあたり10000イベントを収集した。流速は遅く設定され、最大イベント数は毎秒500であった。この包括的楕円ゲートは、主要ビーズ集団の周辺で適用され、これは、陰性対照ビーズで得られた前方散乱対側方散乱のドットプロットに基づいて設定され、ダブレットおよびマルチプレットに関連するイベントが解析から除外されるようにした。ゲーティングは、同じ種類のビーズを用いた全ての実験を通して一定に保った。
【0190】
標識リガンドの結合の定量的特性評価には、ゲートイベントのMFIを用いた。結果はデルタRFI(RFIマイナス1)値で表した。標識試験物質の相対的親和性は、デルタRFI値を対数濃度に対してプロットし、シグモイド曲線フィッティング(ボルツマン関数)により半最大有効濃度(EC50)を決定することにより評価した。
【0191】
置換試験では、結果を標識リガンド結合の阻害パーセント(置換%)に変換し、対数濃度に対する置換%をプロットし、シグモイド曲線フィッティングにより半最大阻害濃度(IC50)を決定することにより、非標識試験物質の相対的親和性を評価した。
【実施例7】
【0192】
ファージ提示リガンドペプチド結合測定用ファージの調製
ファージ提示試験溶液は、慣用的なファージ提示プロトコルにしたがって調製した[例えば、Tonikian 2007]。発現ペプチドをコードするオリゴヌクレオチドをリン酸化およびアニーリングし、pAS62ファージミドベクター[米国特許第8716437号広報、32段、第48~49列]にベクター/インサート比1:3でライゲーションした。インサートを含むファージミドは、P3コートタンパク質に融合したリンカーペプチド配列(GSASSA)でC末端を拡張した提示タンパク質をコードしていた。エレクトロコンピテント細菌細胞(大腸菌SS320)をライゲーション産物で形質転換した後、アンピシリン(100μg/mL)を含むライソジェニーブロス寒天培地(LB/Amp)プレートにストリークし、37℃で16時間インキュベートした。この条件下では、ファージミド保有細胞のみが生存し、コロニーを形成する。数個のクローンの塩基配列を決定し、標的配列を確認した単一コロニーを3mLの2YT/Ampブロスに接種し、37℃で培養が中対数期に達するまでインキュベートした。培養物にM13KO7ヘルパーファージ(ファージ/細胞比10:1)を感染させ、37℃で30分間インキュベートした。3mLの培養物を200mLの2YT/Amp/Kanブロスに移し、一晩インキュベートした。一晩の細胞培養物(200mL)を、400mL遠沈管で8000×g、10分間、4℃で遠心分離してペレット化した。上清を40mLのPEG/NaCl(200g/L PEG-8000、146.1g/L NaCl)を含む新しい400mL遠心チューブに移した後、十分に混合した後、室温で20分間インキュベートした。沈殿したファージを18000×g、15分間、室温で遠心分離してペレット化した。上清を捨てた後、ペレットを接線方向に向けて1000rpmで1分間再度遠心分離し、残留流体を回収および除去した。ファージを4mLのファージ再懸濁緩衝液(TBT)に可溶化し、18000×g、10分間、4℃で遠心分離して不溶物質を全て除去した。上清を4本の1.5mL遠心チューブ(4×1mL)に移し、200-200μLのPEG/NaClで再度沈殿させ、さらに5分間インキュベートした後、12000×gで再度遠心分離した。ペレットを少ない体積(150~300μL)のファージ再懸濁緩衝液に再懸濁し、合わせて単一のファージ溶液にした。ファージ溶液の粒子濃度は、NanoDrop One C (Thermo Scientific)分光光度計を用いて、0.5~10の吸光度範囲における吸光度(OD268)とファージ力価の直線関係に基づいて分光光度法で決定した。ファージ粒子濃度は式:(OD268-OD320)×5×l012粒子/mLにしたがって評価し[Tonikian 2007];TBTで希釈することによって標的濃度に設定した。
【実施例8】
【0193】
フローサイトメトリーによるフルオロフォア標識試験物質の細胞染色強度の解析
細胞は、特に断りのない限り、10%ウシ胎児血清(FBS)および抗生物質抗真菌溶液(Ab/Am、Sigma #A5955)を添加した推奨培地中、5%CO2を含む加湿雰囲気下、37℃で維持した。使用した細胞(括弧内は入手源#カタログ番号および培養培地)は以下の通りである:U251 MGヒト神経膠芽腫(Sigma #09063001、RPMI-1640)、U87 MGヒト神経膠芽腫(Sigma #89081402、DMEM高グルコース)、PANC-1ヒト膵臓癌(Sigma #87092802、DMEM高グルコース+Glutamax)、A375ヒト黒色腫(Sigma #88113005、DMEM高グルコース+Glutamax)、SK-Br-3ヒト乳癌(AddexBio #C0006007、DMEM低グルコース)、TE-671ヒト横紋筋肉腫(Sigma #85111502、DMEM高グルコース)、HDFaヒト皮膚線維芽細胞(Sigma #106-05A、他の添加物を含まない線維芽細胞増殖培地)、HUVECヒト内皮細胞(ThermoFisher #C0035C、Large Vessel Endothelial Supplementのみを添加したMedium 200)、新生児ラット星状細胞(ThermoFisher Scientific #N7745100、DMEM高グルコース+Glutamax、15%FBSを添加)。
【0194】
培養液を除去した後、TrypLE Express細胞解離酵素液を5~10分間作用させて細胞を剥離し、FBS添加培養液で酵素を失活させた。細胞を遠心分離で3回洗浄し、上清を捨ててDPBSに再懸濁した。3回目の洗浄後、懸濁液の細胞密度をCountess II Automated Cell Counter(ThermoFisher Scientific)を用いて20μLのサンプルから決定し、0.4% Trypan Blueによる対比染色によって生存率95%超の基準を満たすかどうかも評価した。細胞密度は、DPBSで希釈することによって、1mL当たり100万~150万個に設定した。細胞懸濁液を100μLサンプルとして5mLフローサイトメトリーチューブに分注し、標識試験物質(例えば、100μMのストック溶液を必要に応じて希釈したもの)または同等のビヒクル(例えば10%DMSO溶液)を体積1~3μLで添加した。次いで試験チューブは、5%CO2を含む加湿雰囲気下、37℃で45分間インキュベートした。その後、試験チューブをチルラックに置き、2.5μMのPo-Pro-1を各チューブに添加して、4℃で15分間インキュベートし、非生存細胞を染色した。その後、細胞を3回洗浄し、冷DPBS(2mL/チューブ)に再懸濁し、できるだけ早く、通常は1時間以内に行うフローサイトメトリー試験までチルラックに保管した。
【0195】
フローサイトメトリー解析は、フローサイトメーター(Miltenyi BiotecのMACSQuant Analyzer 10)を用い、励起用635nm赤色レーザー、およびCy5標識リガンド取込みの蛍光強度測定用のR1チャンネル、ならびに励起用405nm紫色レーザー、およびPo-Pro-1蛍光検出用V1チャンネルを用いて行った。両チャンネルのイベントはパルスエリアモードで記録された。吸引容積はサンプルあたり200μLで、穏やかに混合するように設定し、サンプルあたり10000イベントを収集した。流速は遅く設定され、最大イベント数は毎秒500であった。
【0196】
各セットの実験を解析するために、まず、非染色対照細胞で得られた線形モードのFSC対SSC散布図にゲートを定義し、細胞株に典型的なサイズおよび粒状性を有する単一細胞のみを解析に含めた。高いPo-Pro-1シグナル強度を示す非生存細胞も解析から除外した。設定したゲート設定は、同じ種類の細胞を用いた全ての実験を通して一定に保たれた。染色強度の定量的な特性評価には、ゲーティングされたイベントの蛍光強度の中央値(MFI)を用いた。結果は、MFIまたは相対蛍光強度(RFI)で表され、後者は同時に処理した未染色ビヒクル対照サンプルのMFIに対するサンプルのMFIの比として定義される。細胞への取込みの評価には、デルタMFI値またはデルタRFI値を用い、これは同時に処理した未染色の対照サンプルの値に対する増加(差)を意味する。ほとんどの実験は二つ組形式で行った。
【実施例9】
【0197】
試験物質の細胞分裂阻害効力の測定
細胞を単層で増殖させ、5%CO2を含む加湿雰囲気中、37℃で75~90%コンフルエントレベルになるまで培養した。TrypLE Expressで剥離した後、細胞を96ウェルプレートに、1ウェルあたり10% FBS添加細胞培養液100μL中1,500個/ウェルで播種した。約24時間のインキュベート期間後、各ウェルの培地全量を90μlの新しい培地に交換し、そこに試験物質含有培地30μLを添加し、3.16nM~3.16μMの様々な試験物質濃度を3.16倍ごとに得た。次いで、細胞をさらに72時間インキュベートした。試験物質処理後の細胞の生存率は、製造者の指示にしたがって行った、Cell counting Kit-8(CCK-8)生存率アッセイを用いて決定した。簡潔に言うと、CCK-8溶液を10%培養体積になるように細胞に添加した。細胞を37℃でさらに4時間インキュベートし、プレートリーダーを用いて460nmの吸光度からホルマザン色素産生を測定した。実験は全て、6回の測定を並行して行った。
【0198】
各処理について、ビヒクル対照群も同じプレートで同時に行った。各処理についての結果は、対応するビヒクル群に対する%として計算し、ボルツマン関数にしたがってシグモイド曲線フィッティングした対数スケールで、濃度に対してプロットした。50%阻害濃度(IC50)は、変曲点、すなわちビヒクル対照と最大阻害の中間点で決定した。最小有効濃度は、20%超の統計的に有意な阻害をもたらす最低の試験濃度と定義した。ビヒクル対照からの統計的に有意な差は、一元配置分散分析に続く、ダネット検定を用いて検定した。
【実施例10】
【0199】
CTX-CAR/CTXD-CAR T細胞の作製
形質導入ベクターの構築
本発明者らは、以下のタンパク質ドメイン配列をコードするcDNAを含むCTXD8-CARおよびCTX-CAR遺伝子カセットを設計した:IgG重鎖シグナルペプチド(GMCSFRa)、CTXD8、またはCTX、CD8アルファヒンジ、CD28細胞内共刺激エンドドメインを有するヒトCD28の膜貫通領域(CD28膜貫通型およびCD28細胞質型)、(Gly)3リンカー、ヒトCD3ゼータの細胞質領域、T2A自己切断ペプチドおよび切断型CD19。設計されたCTXD8-CAR構築物のアミノ酸配列は、
図11に示され、これは、配列番号44に記載されている。
図11は、アミノ酸配列の上記エレメントを描いており、GMCSFRaシグナルペプチド、CD8アルファヒンジ、CD28細胞質、CD3ゼータ、および切断型CD19には下線が引かれている。機能しない切断型CD19は、形質導入効率を検出することを可能にするように付加した。このカセットはpUC57クローニングベクターに挿入されて得た後、切り出し、改変pMSGVレトロウイルスベクターにライゲーションした。CTXD8-CARまたはCTX-CARをコードするレトロウイルス粒子は、jetPrimeトランスフェクション試薬(Polyplus、Illkirch、France)を用いて、CTXD8-およびCTX-CARをコードする改変MSGVレトロウイルスベクター、MoMLV gag-polの配列を含むPeg-Pam-eプラスミド、およびRD114の配列を含むpMax.RD114プラスミドでHEK 293T細胞を一過性トランスフェクションすることにより作製した。ウイルス上清はトランスフェクション後72時間で回収し、同日中にT細胞形質導入に使用するか、または使用するまで-80℃で急速凍結および保存した。
【0200】
Tリンパ球の増殖および形質導入
末梢血単核球(PBMC)は、Histopaque(登録商標)-1077(Sigma-Aldrich(St.Louis、MO、USA)を用いた密度勾配分離により、健常ドナーから単離した。その後、細胞を1μg/mLの抗CD3e(クローン:OKT3;Thermo Fischer、Waltham、MA、USA)および抗CD28(R&D Systems、Minneapolis、MN、USA)を事前コーティングした24ウェルの非組織培養処理プレートに播種した。初期刺激用の培養培地は、10%ウシ胎児血清および2mmol/L GlutaMAX(Thermo Fisher、Waltham、MA)を添加したRPMI 1640であった。24時間後、ヒトインターロイキン-7(IL-7;10ng/mL)およびヒトインターロイキン-15(IL-15;5ng/mL)(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)を培養物に添加した。翌日、IL-7(10ng/mL)およびIL-15(5ng/mL)の存在下、20μg/mL RetroNectin(Takara Bio、Mountain View、CA)コーティングプレート上で細胞をレトロウイルス粒子で形質導入した。48時間のインキュベート後、細胞をさらなる実験に使用した。
【0201】
形質導入効率の評価
レトロウイルスの形質導入効率は、アロフィコシアニンコンジュゲート抗ヒトCD19抗体(Beckman Coulter、Brea、CA)を用いて、切断型CD19分子をフローサイトメトリーで検出することにより決定した。T細胞の純度は、Alexa Fluor 488-コンジュゲート抗ヒトCD3抗体(BD Biosciences、San Jose、CA、USA)染色により決定した。フローサイトメトリー解析に用いた全ての抗体は、10μg/mLの最終濃度で氷上10分間アプライした。解析は、NovoCyteフローサイトメーターおよびNovoExpressソフトウェア(ACEA Biosciences、San Diego、CA、USA)を用いて、1サンプルあたり少なくとも10,000細胞について行った。
【実施例11】
【0202】
CTX-CAR/CTXD-CAR T細胞の細胞傷害性の検討
HER2+トラスツズマブ耐性乳癌由来細胞株(MDA HER2)は、HER2陰性MDA-MB-468細胞株(American Type Culture Collection(Manassas、VA、USA)から購入)をヒトHER2遺伝子コード化レンチウイルス粒子で形質導入後、単一細胞クローニングにより作製した。HEK293T陰性対照細胞株は、American Type Culture Collection(Manassas、VA、USA)から購入した。ホタルルシフェラーゼ発現MDA-HER2細胞株およびHEK293T細胞株は、eGFP.ffLucをコードするレトロウイルスでMDA-HER2細胞株およびHEK293T細胞株を形質導入し、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)とホタルルシフェラーゼ(ffLuc)の融合遺伝子を発現させた後、単一細胞クローニングによって作製した。
【0203】
標的に対するCAR T細胞の細胞傷害活性は、ルシフェラーゼベースの細胞傷害性アッセイによって決定した。eGFP/ffLucを発現するMDA-HER2およびHEK293T細胞を96ウェル平底プレートに105細胞/ウェルの密度で2つ組で播種した。4時間後、様々な量のCTXD8-およびCTX-由来のCAR T細胞を腫瘍細胞に添加し、広範囲のエフェクター対標的細胞比における細胞傷害性を評価した。未改変エフェクター細胞(NT)を含むウェルを、未処理対照の参照とした。24時間後、培地およびT細胞を除去し、残った腫瘍細胞をルシフェラーゼ活性により定量化した。ルシフェラーゼアッセイキットは、製造者の指示(Promega、Madison、WI、USA)にしたがって使用し、検出はSynergy HTルミノメーター(BioTek、Winooski、VE、USA)で行った。
【0204】
参考文献
特許文献
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【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
一般的な配列のアミノ酸配列
X
0X
1CMPCX
S1X
S2X
S3DHX
S4X
S5ARRCX
2X
3CCGGYGX
4CFGYQCLCX
5X
6X
7X
8
(配列番号43)
を含む、クロロトキシン誘導体であって、
ここで、
(i)N末端X
0X
1クラスターが、AM、0M、または00からなる群から選択され;(ii)溶解性X
S1X
S2X
S3X
S4X
S5クラスターが、FTTQT、FTTES、SSSQT、SSSES、FSSQT、FSSES、またはFSSQSからなる群から選択され;
(iii)内部X
2X
3X
4クラスターが、DKR、RDK、KDR、IKY、HKW、DRK、LKQ、KKKからなる群から選択され;そして
(iv)C末端X
5X
6X
7X
8クラスターが、N000、R000、NR00、NRG0、NRGY、NRRR、またはRRRRからなる群から選択され;
ここで、0はアミノ酸が存在しない位置を示
し;
配列番号1の野生型クロロトキシンより少なくとも1.62倍高い相対的ヒトMMP-2
結合性を有するクロロトキシン誘導体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
上記の観点から、本発明は、一般的な配列
X0X1CMPCXS1XS2XS3DHXS4XS5ARRCX2X3CCGGYGX4CFGYQCLCX5X6X7X8
(配列番号43)
のアミノ酸配列を含むクロロトキシン誘導体に関し、
ここで、
(i)N末端X0X1クラスターは、AM、0M、または00からなる群から選択され、(ii)溶解性XS1XS2XS3XS4XS5クラスターは、FTTQT、FTTES、SSSQT、SSSES、FSSQT、FSSES、またはFSSQSからなる群から選択され、
(iii)内部X2X3X4クラスターは、DKR、RDK、KDR、IKY、HKW、DRK、LKQ、KKKからなる群から選択され;そして、
(iv)C末端X5X6X7X8クラスターは、N000、R000、NR00、NRG0、NRGY、NRRR、またはRRRRからなる群から選択され;
ここで、0はアミノ酸が存在しない位置を示し;
配列番号1の野生型クロロトキシンより少なくとも1.62倍高い相対的ヒトMMP-2
結合性を有するクロロトキシン誘導体に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
本発明のクロロトキシン誘導体は、以下の一般的なアミノ酸配列:
X0X1CMPCXS1XS2XS3DHXS4XS5ARRCX2X3CCGGYGX4CFGYQCLCX5X6X7X8
(配列番号43)
を含み、ここで、
(i)N末端X0X1クラスターは、AM、0M、または00からなる群から選択され、(ii)溶解性XS1XS2XS3XS4XS5クラスターは、FTTQT、FTTES、SSSQT、SSSES、FSSQT、FSSES、またはFSSQSからなる群から選択され、
(iii)内部X2X3X4クラスターは、DKR、RDK、KDR、IKY、HKW、DRK、LKQ、KKKからなる群から選択され;そして
(iv)C末端X5X6X7X8クラスターは、N000、R000、NR00、NRG0、NRGY、NRRR、またはRRRRからなる群から選択され;
ここで、0はアミノ酸が存在しない位置を示し;
配列番号1の野生型クロロトキシンより少なくとも1.62倍高い相対的ヒトMMP-2
結合性を有する。
【国際調査報告】