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特表2024-502611相同組換え修復欠損を判定する方法及びそのキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】相同組換え修復欠損を判定する方法及びそのキット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20240115BHJP
   C12Q 1/6827 20180101ALI20240115BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240115BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20240115BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 31/502 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20240115BHJP
   A61K 31/5025 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
C12Q1/68
C12Q1/6827 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6876 Z
A61P35/00
A61P43/00
A61K45/00
A61K31/704
A61K31/502
A61K31/454
A61K31/55
A61K31/5025
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541639
(86)(22)【出願日】2021-08-13
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 US2021046034
(87)【国際公開番号】W WO2022150063
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/135,622
(32)【優先日】2021-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520178700
【氏名又は名称】エーシーティー ジェノミックス (アイピー) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ウォエイ-フー
(72)【発明者】
【氏名】イェー、ヤー-チー
(72)【発明者】
【氏名】チェン、イン-チャー
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シュー-チェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、チエン-フン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、コアン-イン
(72)【発明者】
【氏名】タン、ウェン-ハオ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR72
4B063QR77
4B063QS36
4B063QX01
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC202
4C084ZC511
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC37
4C086BC42
4C086BC50
4C086CB11
4C086EA10
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
本開示は、対象の相同組換え修復欠損(HRD)状態を評価するための方法、システム、及びキットを提供する。本開示はさらに、ヒト対象のHRD状態に基づいて治療を特定するための方法、システム、及びキットを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)対象から得た試料の複数の一塩基多型(SNP)遺伝子座を配列決定すること、ここで、各隣接する2つのSNP遺伝子座間にインターバルが存在し、かつ前記インターバルのうちの50%以上が0.01~1Mbの長さである;
(2)前記配列決定結果に基づいて、ヘテロ接合性喪失(LOH)SNP遺伝子座の数及び非ホモ接合性SNP遺伝子座の数を特定すること;
(3)LOHスコアを計算すること、ここで、前記LOHスコアは、非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合である;
(4)前記LOHスコアに基づいて、相同組換え修復欠損(HRD)状態を特定すること
を含む、対象における相同組換え修復欠損(HRD)状態を評価するための方法。
【請求項2】
前記複数のSNP遺伝子座の数が、1000以上、1500以上、2000以上、2500以上、3000以上、3500以上、4000以上、4500以上、5000以上、5500以上、6000以上、6500以上、7000以上、7500以上、8000以上、8500以上、9000以上、9500以上、10000以上、20000以上、30000以上、40000以上、50000以上、60000以上、70000以上、80000以上、90000以上、100000以上、110000以上、120000以上、130000以上、140000以上、150000以上、160000以上、170000以上、180000以上、190000以上、200000以上、210000以上、220000以上、230000以上、240000以上、250000以上、260000以上、270000以上、280000以上、290000以上、又は300000以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のSNP遺伝子座の数が、2500~250000である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のSNP遺伝子座の数が、3000~60000である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のSNP遺伝子座の数が、6000~11000である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のSNP遺伝子座が、2対以上の染色体に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のSNP遺伝子座が、22対の染色体に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記インターバルの平均の長さが、0.01~3Mb、0.02~2Mb、0.03~1Mb、0.06~1Mb、0.1~1Mb、0.06~0.6Mb、0.1~0.5Mb、又は0.2~0.4Mbである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(3)が、不均衡な染色体腕を排除することによって前記LOHスコアを調整することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記LOHスコアが、不均衡ではない染色体腕における前記非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対する不均衡ではない染色体腕におけるLOH SNP遺伝子座の数の割合である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記不均衡な染色体腕が、染色体腕における前記非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の所定の割合によって特徴付けられ、前記所定の割合が、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は100%である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の割合が、前記試料の腫瘍純度に基づいてさらに調整される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記腫瘍純度が、30%~95%である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記腫瘍純度が、30%~70%である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記HRD状態が、陽性又は陰性として特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記HRD状態を特定するための前記LOHスコアのカットオフ値が、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、又は0.6である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
(1)対象から得た試料の、BRCA1、BRCA2、ARID1A、ATM、ATR、ATRX、BARD1、BRIP1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCA、FANCL、FANCM、HDAC2、NBN、PALB2、PPP2R2A、PTEN、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、RAD54L、又はこれらの任意の組合せを含む遺伝子を配列決定すること、
(2)前記遺伝子が変化を有するかどうかを判定すること、及び
(3)前記判定結果に基づいてHRD状態を特定すること
を含む、対象のHRD状態を評価する方法。
【請求項18】
前記遺伝子が変化を有する場合、前記HRD状態が陽性である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記遺伝子がいずれも変化を有しない場合、前記HRD状態が陰性である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記変化が、生殖細胞変化又は体細胞変化である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記変化が、一塩基変異(SNV)、挿入、欠失、増幅、遺伝子融合、及び再編成からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記変化が、SNV、小規模な挿入及び欠失(INDEL)、大規模ゲノム再編成(LGR)、及びコピー数多型(CNV)からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
(1)以下の(1a)及び(1b)を含む、対象から得た試料中の遺伝子の変化をアッセイすること、
(1a)前記試料の、BRCA1、BRCA2、ARID1A、ATM、ATR、ATRX、BARD1、BRIP1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCA、FANCL、FANCM、HDAC2、NBN、PALB2、PPP2R2A、PTEN、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、RAD54L、又はこれらの任意の組合せを含む遺伝子を配列決定すること;
(1b)前記遺伝子が変化を有するかどうかを判定すること

(2)以下の(2a)及び(2b)を含む、前記試料のHRDスコアを計算すること、
(2a)前記試料の複数の一塩基多型(SNP)遺伝子座を配列決定すること;
(2b)染色体異常のHRDスコアを計算すること

(3)ステップ(1b)、ステップ(2b)、又はその両方の結果に基づいてHRD状態を特定すること
を含む、対象のHRD状態を評価する方法。
【請求項24】
(1)以下の(1a)及び(1b)を含む、対象から得た試料中の遺伝子の変化をアッセイすること、
(1a)HRR関連遺伝子を配列決定すること;及び
(1b)前記HRR関連遺伝子が変化を有するかどうかを判定すること
(2)以下の(2a)及び(2b)を含む、前記試料のLOHスコアを計算すること、
(2a)前記試料の複数のSNP遺伝子座を配列決定すること、ここで、各隣接する2つのSNP遺伝子座間にインターバルが存在し、かつ前記インターバルのうちの50%以上が0.01~1Mbの長さである;及び
(2b)非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合を計算すること
(3)ステップ(1b)、ステップ(2b)、又はその両方の結果に基づいて、HRD状態を特定すること
を含む、対象のHRD状態を評価する方法。
【請求項25】
ステップ(1)の前記遺伝子が変化を有する場合、又はステップ(2)の前記スコアがカットオフ値を超える場合、前記HRD状態が陽性である、請求項23又は請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記対象の前記HRD状態に基づいて、治療を特定するステップをさらに含む、請求項1、請求項17、請求項23、又は請求項24に記載の方法。
【請求項27】
治療有効量の前記治療を前記対象に行うステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記治療が、DNA傷害剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼI阻害剤、放射線、PARP阻害剤、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記PARP阻害剤が、オラパリブ、ニラパリブ、ルカパリブ、及びタラゾパリブからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
試料のHRD状態を評価するための前記方法が、次世代シーケンシング(NGS)コンピューティングプラットフォーム上で実施される、請求項1、請求項17、請求項23、又は請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記試料が、NGSアッセイによって配列決定される、請求項1、請求項17、請求項23、又は請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記試料が、細胞株、生検、一次組織(primary tissue)、凍結組織、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)、液体生検、血液、血清、血漿、バフィーコート、体液、内臓液(visceral fluid)、腹水、穿刺、脳脊髄液、唾液、尿、涙、精液、膣液、吸引液、洗浄液、口腔スワブ(buccal swab)、循環腫瘍細胞(CTC)、無細胞DNA(cfDNA)、循環腫瘍DNA(ctDNA)、DNA、RNA、核酸、精製核酸、精製DNA、又は精製RNAに由来する、請求項1、請求項17、請求項23、又は請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が、ヒトである、請求項1、請求項17、請求項23、又は請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、がん患者である、請求項1、請求項17、請求項23、又は請求項24に記載の方法。
【請求項35】
前記試料の腫瘍純度が、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、又は100%である、請求項1、請求項17、請求項23、又は請求項24に記載の方法。
【請求項36】
前記HRD状態を電子記憶媒体又はディスプレイに出力するステップをさらに含む、請求項1、請求項17、請求項23、又は請求項24に記載の方法。
【請求項37】
HRD状態の特性を判定するための命令を格納するデータ記憶デバイス、及び前記命令を実行して、以下の(1)~(4)を含む方法を遂行するように構成されたプロセッサを含む、HRD状態を評価するためのシステム。
(1)対象から得た試料の複数の一塩基多型(SNP)遺伝子座を配列決定すること、ここで、各隣接する2つのSNP遺伝子座間にインターバルが存在し、かつ前記インターバルのうちの50%以上が0.01~1Mbの長さである、
(2)前記配列決定の結果に基づいて、ヘテロ接合性喪失(LOH)SNP遺伝子座の数及び非ホモ接合性SNP遺伝子座の数を特定すること、
(3)ヘテロ接合性喪失(LOH)スコアを計算すること、ここで、前記LOHスコアは、非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合である、及び
(4)前記LOHスコアに基づいて、前記HRD状態を特定すること。
【請求項38】
HRD状態の特性を判定するための命令を格納するデータ記憶デバイス、及び前記命令を実行して、以下の(1)~(3)を含む方法を遂行するように構成されたプロセッサを含む、HRD状態を評価するためのシステム。
(1)対象から得た試料のBRCA1、BRCA2、ARID1A、ATM、ATR、ATRX、BARD1、BRIP1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCA、FANCL、FANCM、HDAC2、NBN、PALB2、PPP2R2A、PTEN、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、RAD54L、又はこれらの任意の組合せを含む遺伝子を配列決定すること、
(2)前記遺伝子が変化を有するかどうかを判定すること、及び
(3)前記判定結果に基づいてHRD状態を特定すること。
【請求項39】
HRD状態の特性を判定するための命令を格納するデータ記憶デバイス、及び前記命令を実行して、以下の(1)~(3)を含む方法を遂行するように構成されたプロセッサを含む、HRD状態を評価するためのシステム。
(1)以下の(1a)及び(1b)を含む、対象から得た試料中の遺伝子の変化をアッセイすること、
(1a)前記試料の、BRCA1、BRCA2、ARID1A、ATM、ATR、ATRX、BARD1、BRIP1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCA、FANCL、FANCM、HDAC2、NBN、PALB2、PPP2R2A、PTEN、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、RAD54L、又はこれらの任意の組合せを含む遺伝子を配列決定すること;及び、
(1b)前記遺伝子が変化を有するかどうかを判定すること
(2)以下の(2a)及び(2b)を含む、前記試料のHRDスコアを計算すること、
(2a)前記ヒト試料の複数の一塩基多型(SNP)遺伝子座を配列決定すること;及び
(2b)染色体異常の前記HRDスコアを計算すること、及び
(3)ステップ(1b)、ステップ(2b)、又はその両方の結果に基づいて、HRD状態を特定すること。
【請求項40】
HRD状態の特性を判定するための命令を格納するデータ記憶デバイス、及び前記命令を実行して、以下の(1)~(3)を含む方法を遂行するように構成されたプロセッサを含む、HRD状態を評価するためのシステム
(1)以下の(1a)及び(1b)を含む、対象から得た試料の遺伝子の変化をアッセイすること、
(1a)前記試料のHRR関連遺伝子を配列決定すること;及び
(1b)前記HRR関連遺伝子が変化を有するかどうかを判定すること、
(2)以下の(2a)及び(2b)を含む、前記試料のLOHスコアを計算すること、
(2a)前記試料の複数のSNP遺伝子座を配列決定すること、ここで、各隣接する2つのSNP遺伝子座間にインターバルが存在し、かつ前記インターバルのうちの50%以上が0.01~1Mbの長さである;及び
(2b)非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合を計算すること、及び
(3)ステップ(1b)、ステップ(2b)、又はその両方の結果に基づいて、前記HRD状態を特定すること。
【請求項41】
前記対象の前記HRD状態に基づいて、治療を特定するステップをさらに含む、請求項37~請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
治療有効量の治療を前記対象に行うステップをさらに含む、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
試薬であって、
複数のSNP遺伝子座を標的とするオリゴヌクレオチドのセットを含み、ここで、各隣接する2つのSNP遺伝子座間にインターバルが存在し、かつ前記インターバルのうちの50%以上が0.01~1Mbの長さである、試薬、並びに
コンピュータプログラムであって、
LOHスコアを計算するための命令、ここで、前記LOHスコアは非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合である、及び
HRD状態を特定するための命令
を含む、コンピュータプログラム
を含む、対象のHRD状態を評価するためのキット。
【請求項44】
試薬であって、
対象から得た試料の、BRCA1、BRCA2、ARID1A、ATM、ATR、ATRX、BARD1、BRIP1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCA、FANCL、FANCM、HDAC2、NBN、PALB2、PPP2R2A、PTEN、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、RAD54L、又はこれらの任意の組合せを含む遺伝子を標的とするオリゴヌクレオチドのセットを含む、試薬、並びに
コンピュータプログラムであって、
前記遺伝子が変化を有するかどうかを判定するための命令、及び
HRD状態を特定するための命令
を含む、コンピュータプログラム
を含む、対象のHRD状態を評価するためのキット。
【請求項45】
試薬であって、
複数のSNP遺伝子座を標的とするためのオリゴヌクレオチドのセット、ここで、各隣接する2つのSNP遺伝子座間にインターバルが存在し、かつ前記インターバルのうちの50%以上が0.01~1Mbの長さである;及び
HRR関連遺伝子を標的化するためのオリゴヌクレオチドのセット
を含む、試薬、並びに
コンピュータプログラムであって、
LOHスコアを計算するための命令、ここで、前記LOHスコアは、非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合である、
前記HRR関連遺伝子が変化を有するかどうかを判定するための命令、及び
HRD状態を特定するための命令
を含む、コンピュータプログラム
を含む、対象のHRD状態を評価するためのキット。
【請求項46】
試薬であって、
対象から得た試料の複数のSNP遺伝子座を標的とするためのオリゴヌクレオチドのセット;及び
BRCA1、BRCA2、ARID1A、ATM、ATR、ATRX、BARD1、BRIP1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCA、FANCL、FANCM、HDAC2、NBN、PALB2、PPP2R2A、PTEN、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、RAD54L、又はこれらの任意の組合せを含む遺伝子を標的とするためのオリゴヌクレオチドのセット
を含む、試薬、並びに
コンピュータプログラムであって、
染色体異常のHRDスコアを計算するための命令;
前記遺伝子が変化を有するかどうかを判定するための命令;及び
HRD状態を特定するための命令
を含む、コンピュータプログラム
を含む、対象のHRD状態を評価するためのキット。
【請求項47】
前記LOHスコアがカットオフ値を超える場合、前記HRD状態が陽性である、請求項43に記載のキット。
【請求項48】
前記遺伝子が変化を有する場合、前記HRD状態が陽性である、請求項44に記載のキット。
【請求項49】
前記LOHスコアがカットオフ値を超える場合、又は前記HRR関連遺伝子が変化を有する場合、前記HRD状態が陽性である、請求項45に記載のキット。
【請求項50】
前記HRDスコアがカットオフ値を超える場合、又は前記遺伝子が変化を有する場合、前記HRD状態が陽性である、請求項46に記載のキット。
【請求項51】
前記コンピュータプログラムが、前記対象の前記HRD状態に基づいて、治療を特定するための命令をさらに含む、請求項43~請求項46に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月10日に出願された米国仮出願第63/135,622号の優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、相同組換え修復欠損(HRD)状態を評価するための方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)経路及び相同組換え修復(HRR)経路は、DNA損傷修復に関与する。PARPの阻害は、未修復のDNA一本鎖切断(SSB)及び失速した複製フォークの蓄積を生じる可能性があり、複製フォークの崩壊及び二本鎖DNA切断(DSB)の生成がもたらされ、これらは正常細胞においてHRR経路によって修復される。HRRが欠乏している場合、PARP阻害の存在下で合成致死が起こる。近年、相同組換え修復欠損(HRD)患者を治療するための抗がん薬としてPARP阻害剤が開発されている。
【0004】
PARP阻害剤治療のためには、治療から最も利益を得る患者を特定するために、PARP阻害剤治療の開始前にバイオマーカ試験(すなわち、BRCA1/2突然変異状態)が主に必要とされる。これまでのところ、PARP阻害剤治療のための2つのコンパニオン診断試験、Myriad myChoice及びFoundationFocusのみがFDAによって承認されている。患者のHRD状態を判定するために、より多くのコンパニオン診断アッセイを開発する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般的な一態様では、本開示は、
(1)対象から得た試料の複数の一塩基多型(SNP)遺伝子座を配列決定すること、ここで、各隣接する2つのSNP遺伝子座間のインターバルのうちの50%以上が0.01~1Mbの長さである、
(2)配列決定結果に基づいて、ヘテロ接合性喪失(LOH)SNP遺伝子座の数及び非ホモ接合性SNP遺伝子座の数を特定すること、
(3)LOHスコアを計算すること、ここで、前記LOHスコアは、非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合である、及び
(4)LOHスコアによってHRD状態を特定すること
を含む、対象における相同組換え修復欠損(HRD)状態を評価するための方法に関する。
【0006】
いくつかの実施形態では、SNP遺伝子座の数は、1000遺伝子座以上、1500遺伝子座以上、2000遺伝子座以上、2500遺伝子座以上、3000遺伝子座以上、3500遺伝子座以上、4000遺伝子座以上、4500遺伝子座以上、5000遺伝子座以上、5500遺伝子座以上、6000遺伝子座以上、6500遺伝子座以上、7000遺伝子座以上、7500遺伝子座以上、8000遺伝子座以上、8500遺伝子座以上、9000遺伝子座以上、9500遺伝子座以上、10000遺伝子座以上、20000遺伝子座以上、30000遺伝子座以上、40000遺伝子座以上、50000遺伝子座以上、60000遺伝子座以上、70000遺伝子座以上、80000遺伝子座以上、90000遺伝子座以上、100000遺伝子座以上、110000遺伝子座以上、120000遺伝子座以上、130000遺伝子座以上、140000遺伝子座以上、150000遺伝子座以上、160000遺伝子座以上、170000遺伝子座以上、180000遺伝子座以上、190000遺伝子座以上、200000遺伝子座以上、210000遺伝子座以上、220000遺伝子座以上、230000遺伝子座以上、240000遺伝子座以上、250000遺伝子座以上、260000遺伝子座以上、270000遺伝子座以上、280000遺伝子座以上、290000遺伝子座以上、又は300000遺伝子座以上である。いくつかの実施形態では、SNP遺伝子座の数は、1000~260000、2000~200000、3000~100000、3000~60000、6000~11000、7000~10000、又は7500~9500である。いくつかの実施形態では、SNP遺伝子座は、1対以上、2対以上、3対以上、4対以上、5対以上、6対以上、7対以上、8対以上、9対以上、10対以上、11対以上、12対以上、13対以上、14対以上、15対以上、16対以上、17対以上、18対以上、19対以上、20対以上、21対以上、又は22対のヒト染色体に存在する。いくつかの実施形態では、SNP遺伝子座は、常染色体に存在する。いくつかの実施形態では、SNP遺伝子座は、ヒト染色体腕の1p、2p、3p、4p、5p、6p、7p、8p、9p、10p、11p、12p、16p、17p、18p、19p、20p、21p、22p、1q、2q、3q、4q、5q、6q、7q、8q、9q、10q、11q、12q、13q、14q、15q、16q、17q、18q、19q、20q、21q、及び/又は22qに存在する。いくつかの実施形態では、SNP遺伝子座間のインターバルのうちの50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、又は100%が、0.01~3Mb、0.02~2Mb、0.03~1Mb、0.06~1Mb、0.1~1Mb、0.1~0.5Mb、又は0.06~0.6Mbの長さである。いくつかの実施形態では、SNP遺伝子座間のインターバルの平均の長さは、0.01~3Mb、0.02~2Mb、0.03~1Mb、0.06~1Mb、0.1~1Mb、0.06~0.6Mb、0.1~0.5Mb、又は0.2~0.4Mbである。
【0007】
いくつかの実施形態では、染色体異常は、ヘテロ接合性喪失(LOH)である。いくつかの実施形態では、HRDスコアは、LOHスコアである。いくつかの実施形態では、LOHスコアは、非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対する染色体異常を有する非ホモ接合性SNP遺伝子座の数の割合である。いくつかの実施形態では、LOHスコアは、非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合である。いくつかの実施形態では、非ホモ接合性SNP遺伝子座は、ヘテロ接合性SNP遺伝子座及びヘテロ接合性LOH SNP遺伝子座を含む。いくつかの実施形態では、ヘテロ接合性SNP遺伝子座は、SNP遺伝子座から特定される。
【0008】
いくつかの実施形態では、LOHスコアは、不均衡な染色体腕を排除することによって調整される。いくつかの実施形態では、LOHスコアは、不均衡ではない染色体腕における非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対する不均衡ではない染色体腕におけるLOH SNP遺伝子座の数の割合である。いくつかの実施形態では、不均衡な染色体腕は、染色体腕における非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の所定の割合によって特徴付けられ、ここで、所定の割合は、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、又は100%である。
【0009】
いくつかの実施形態では、不均衡な染色体腕を特徴付けるためのLOHを有する非ホモ接合性SNP遺伝子座の割合は、試料の腫瘍純度の値に基づいて調整される。いくつかの実施形態では、不均衡な染色体腕を特定するためのLOHを有する非ホモ接合性SNP遺伝子座の割合は、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、又は100%である。いくつかの実施形態では、腫瘍純度の値は、30%~95%又は30%~70%である。いくつかの実施形態では、腫瘍純度の値は、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%である。
【0010】
いくつかの実施形態では、HRD状態は、陽性又は陰性として特定される。いくつかの実施形態では、HRD状態を特定するためのLOHスコアのカットオフ値は、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、又は0.6である。
【0011】
一般的な一態様では、本開示は、
(1)対象から得た試料のSNP遺伝子座を配列決定すること、ここで、各隣接する2つのSNP遺伝子座間にインターバルが存在し、かつ前記インターバルのうちの50%以上が0.01~1Mbの長さである、
(2)非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合を計算すること、及び
(3)HRD状態を特定すること
を含む、対象のHRD状態を評価するための方法に関する。
【0012】
一般的な一態様では、本発明は、
(1)対象から得た試料の少なくとも1つのHRR関連遺伝子を配列決定すること、
(2)前記HRR関連遺伝子のうちのいずれかが変化を有するかどうかを判定すること、
(3)前記対象のHRD状態を特定すること
を含む、対象のHRD状態を評価するための方法に関する。
【0013】
いくつかの実施形態では、HRD状態は、遺伝子の少なくとも1つが変化を有する場合、陽性として特定される。いくつかの実施形態では、遺伝子がいずれも変化を有しない場合、HRD状態は、陰性として特定される。
【0014】
いくつかの実施形態では、変化は、一塩基変異(SNV)、挿入、欠失、増幅、遺伝子融合、及び再編成からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、変化は、SNV、小規模な挿入及び欠失(INDEL)、大規模ゲノム再編成(LGR)、及びコピー数多型(CNV)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、変化は、生殖細胞変化又は体細胞変化である。
【0015】
一般的な一態様では、本発明は、
(1)BRCA1、BRCA2、ARID1A、ATM、ATR、ATRX、BARD1、BRIP1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCA、FANCL、FANCM、HDAC2、NBN、PALB2、PPP2R2A、PTEN、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、RAD54L、又はこれらの任意の組合せを含む遺伝子を配列決定すること、
(2)BRCA1、BRCA2、ARID1A、ATM、ATR、ATRX、BARD1、BRIP1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCA、FANCL、FANCM、HDAC2、NBN、PALB2、PPP2R2A、PTEN、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54L遺伝子のうちのいずれかが変化を有するかどうかを判定すること、
(3)HRD状態を特定すること
を含む、対象のHRD状態を評価するための方法に関する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象のHRD状態に基づいて治療を特定するステップ、及び/又は治療有効量の治療を対象に行うステップをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、治療は、これらに限定されないが、DNA傷害剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼI阻害剤、放射線、及び/又はPARP阻害剤、又はこれらの任意の組合せを含む、薬物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、PARP阻害剤は、これらに限定されないが、オラパリブ、ニラパリブ、ルカパリブ、及びタラゾパリブを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、試料のHRD状態を評価するための方法は、次世代シーケンシング(NGS)コンピューティングプラットフォーム上で実施される。いくつかの実施形態では、試料は、NGSアッセイによって配列決定される。いくつかの実施形態では、NGSアッセイで使用されるNGSシステムとしては、これらに限定されないが、Illumina,Inc.製のMiSeqシーケンサー、HiSeqシーケンサー、MiniSeqシーケンサー、iSeqシーケンサー、NextSeqシーケンサー、及びNovaSeqシーケンサー、Life Technologies,Inc.製のIon Personal Genome Machine(PGM)、Ion Proton、Ion S5シリーズ及びIon GeneStudio S5シリーズ、BGI製のBGlseqシリーズ、DNBseqシリーズ、及びMGIseqシリーズ、並びにOxford Nanopore Technologies製のMinlON/PromethlONシーケンサーが挙げられる。
【0019】
いくつかの実施形態では、配列決定リードは、元の試料から増幅された核酸、又はベイトによって捕捉された核酸から産生される。いくつかの実施形態では、配列決定リードは、アダプター配列の付加を必要とするシーケンサーから産生される。いくつかの実施形態では、配列決定リードは、これらに限定されないが、ハイブリッド捕捉、プライマー伸長標的濃縮、分子反転プローブベースの方法、又は多重標的特異的PCRを含む方法から産生される。
【0020】
いくつかの実施形態では、試料は、細胞株、生検、一次組織(primary tissue)、凍結組織、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)、液体生検、血液、血清、血漿、バフィーコート、体液、内臓液(visceral fluid)、腹水、穿刺、脳脊髄液、唾液、尿、涙、精液、膣液、吸引液、洗浄液、口腔スワブ(buccal swab)、末梢血単核球(PBMC)、循環腫瘍細胞(CTC)、無細胞DNA(cfDNA)、循環腫瘍DNA(ctDNA)、DNA、核酸、精製核酸、又は精製DNAに由来する。
【0021】
いくつかの実施形態では、試料は、ヒト対象に由来する。いくつかの実施形態では、試料は、臨床試料である。いくつかの実施形態では、試料は、疾患患者に由来する。いくつかの実施形態では、試料は、がん、固形腫瘍、又は血液系腫瘍を有する患者に由来する。いくつかの実施形態では、試料は、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、又は膵臓がんを有する患者に由来する。いくつかの実施形態では、試料は、脳がん、乳がん、結腸がん、内分泌腺がん、食道がん、女性生殖器がん、頭頸部がん、肝胆道系がん、腎臓がん、肺がん、間葉系細胞新生物、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、膵臓外分泌腫瘍、又は泌尿器系がんを有する患者に由来する。いくつかの実施形態では、試料は、妊婦、小児、青年、高齢者又は成人に由来する。いくつかの実施形態では、試料は、研究試料である。
【0022】
いくつかの実施形態では、本方法は、HRD状態を電子記憶媒体又はディスプレイに出力するステップをさらに含む。
【0023】
一般的な一態様では、本開示は、以下の(1)~(3)を含む、NGSコンピューティングプラットフォーム上で実施される対象のHRD状態を評価する方法を開示する。
(1)以下の(1a)及び(1b)を含む、対象から得た試料の遺伝子の変化をアッセイすること、
(1a)BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、ARID1A遺伝子、ATM遺伝子、ATR遺伝子、ATRX遺伝子、BARD1遺伝子、BRIP1遺伝子、CDK12遺伝子、CHEK1遺伝子、CHEK2遺伝子、FANCA遺伝子、FANCL遺伝子、FANCM遺伝子、HDAC2遺伝子、NBN遺伝子、PALB2遺伝子、PPP2R2A遺伝子、PTEN遺伝子、RAD51遺伝子、RAD51B遺伝子、RAD51C遺伝子、RAD51D遺伝子、RAD54L遺伝子、又はこれらの任意の組合せを含む遺伝子を配列決定すること;
(1b)BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、ARID1A遺伝子、ATM遺伝子、ATR遺伝子、ATRX遺伝子、BARD1遺伝子、BRIP1遺伝子、CDK12遺伝子、CHEK1遺伝子、CHEK2遺伝子、FANCA遺伝子、FANCL遺伝子、FANCM遺伝子、HDAC2遺伝子、NBN遺伝子、PALB2遺伝子、PPP2R2A遺伝子、PTEN遺伝子、RAD51遺伝子、RAD51B遺伝子、RAD51C遺伝子、RAD51D遺伝子、及びRAD54L遺伝子のうちのいずれかが変化を有するかどうかを判定すること、
(2)以下の(2a)及び(2b)を含む、試料のHRDスコアを計算すること、
(2a)前記試料の複数の一塩基多型(SNP)遺伝子座を配列決定すること;
(2b)染色体異常のHRDスコアを計算すること、
(3)HRD状態を特定すること。
【0024】
一般的な一態様では、本発明は、以下の(1)~(3)を含む、NGSコンピューティングプラットフォーム上で実施される対象のHRD状態を評価する方法に関する。
(1)以下の(1a)及び(1b)を含む、対象から得た試料中の複数の遺伝子の変化をアッセイすること、
(1a)少なくとも1つのHRR関連遺伝子を配列決定すること;
(1b)前記HRR関連遺伝子のうちのいずれかが変化を有するかどうかを判定すること、
(2)以下の(2a)及び(2b)を含む、試料におけるLOHスコアを計算すること、
(2a)前記試料の複数のSNP遺伝子座を配列決定すること、ここで、各隣接する2つのSNP遺伝子座間にインターバルが存在し、かつ前記インターバルのうちの50%以上が0.01~1Mbの長さである;
(2b)非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合を計算すること、
(3)HRD状態を特定すること。
【0025】
いくつかの実施形態では、HRD状態は、遺伝子の少なくとも1つが変化を有する場合、又はスコア(すなわち、LOHスコア又はHRDスコア)がカットオフ値を超える場合のいずれかで、陽性として特定される。
【0026】
別の一般的な態様では、本発明は、HRD状態の特性を判定するための命令を格納するデータ記憶デバイス、及び前記命令を実行して、以下の(1)~(3)を含む方法を遂行するように構成されたプロセッサを含む、HRD状態を評価するためのシステムに関する。
(1)試料の複数の一塩基多型(SNP)遺伝子座を配列決定すること、ここで、各隣接する2つのSNP遺伝子座間にインターバルが存在し、かつ前記インターバルのうちの50%以上が0.01~1Mbの長さである、
(2)ヘテロ接合性喪失(LOH)スコアを計算すること、ここで、前記LOHスコアは、非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合である、及び
(3)HRD状態を特定すること。
【0027】
別の一般的な態様では、本発明は、HRD状態の特性を判定するための命令を格納するデータ記憶デバイス、及び前記命令を実行して、以下の(1)~(3)を含む方法を遂行するように構成されたプロセッサを含む、HRD状態を評価するためのシステムに関する。
(1)BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、ARID1A遺伝子、ATM遺伝子、ATR遺伝子、ATRX遺伝子、BARD1遺伝子、BRIP1遺伝子、CDK12遺伝子、CHEK1遺伝子、CHEK2遺伝子、FANCA遺伝子、FANCL遺伝子、FANCM遺伝子、HDAC2遺伝子、NBN遺伝子、PALB2遺伝子、PPP2R2A遺伝子、PTEN遺伝子、RAD51遺伝子、RAD51B遺伝子、RAD51C遺伝子、RAD51D遺伝子、RAD54L遺遺伝子、又はこれらの任意の組合せを含む遺伝子を配列決定すること、
(2)BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、ARID1A遺伝子、ATM遺伝子、ATR遺伝子、ATRX遺伝子、BARD1遺伝子、BRIP1遺伝子、CDK12遺伝子、CHEK1遺伝子、CHEK2遺伝子、FANCA遺伝子、FANCL遺伝子、FANCM遺伝子、HDAC2遺伝子、NBN遺伝子、PALB2遺伝子、PPP2R2A遺伝子、PTEN遺伝子、RAD51遺伝子、RAD51B遺伝子、RAD51C遺伝子、RAD51D遺伝子、及びRAD54L遺伝子のうちのいずれかが変化を有するかどうかを判定すること、
(3)HRD状態を特定すること。
【0028】
別の一般的な態様では、本発明は、HRD状態の特性を判定するための命令を格納するデータ記憶デバイス、及び前記命令を実行して、以下の(1)~(3)を含む方法を遂行するように構成されたプロセッサを含む、HRD状態を評価するためのシステムに関する。
(1)以下の(1a)及び(1b)を含む、試料中の複数の遺伝子の変化をアッセイすること、
(1a)BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、ARID1A遺伝子、ATM遺伝子、ATR遺伝子、ATRX遺伝子、BARD1遺伝子、BRIP1遺伝子、CDK12遺伝子、CHEK1遺伝子、CHEK2遺伝子、FANCA遺伝子、FANCL遺伝子、FANCM遺伝子、HDAC2遺伝子、NBN遺伝子、PALB2遺伝子、PPP2R2A遺伝子、PTEN遺伝子、RAD51遺伝子、RAD51B遺伝子、RAD51C遺伝子、RAD51D遺伝子、RAD54L遺遺伝子、又はこれらの任意の組合せを含む遺伝子を配列決定すること;
(1b)BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、ARID1A遺伝子、ATM遺伝子、ATR遺伝子、ATRX遺伝子、BARD1遺伝子、BRIP1遺伝子、CDK12遺伝子、CHEK1遺伝子、CHEK2遺伝子、FANCA遺伝子、FANCL遺伝子、FANCM遺伝子、HDAC2遺伝子、NBN遺伝子、PALB2遺伝子、PPP2R2A遺伝子、PTEN遺伝子、RAD51遺伝子、RAD51B遺伝子、RAD51C遺伝子、RAD51D遺伝子、及びRAD54L遺伝子のうちのいずれかが変化を有するかどうかを判定すること、
(2)以下の(2a)及び(2b)を含む、試料中のHRDスコアを計算すること、
(2a)前記試料中の一塩基多型(SNP)遺伝子座を配列決定すること;
(2b)染色体異常のHRDスコアを計算すること、
(3)HRD状態を特定すること。
【0029】
別の一般的な態様では、本発明は、HRD状態の特性を判定するための命令を格納するデータ記憶デバイス、及び前記命令を実行して、以下の(1)及び(2)を含む方法を遂行するように構成されたプロセッサを含む、HRD状態を評価するためのシステムに関する。
(1)以下の(1a)及び(1b)を含む、試料中の複数の遺伝子の変化をアッセイすること、
(1a)少なくとも1つのHRR関連遺伝子を配列決定すること;及び
(1b)前記HRR関連遺伝子のうちのいずれかが変化を有するかどうかを判定すること、
(2)以下の(2a)及び(2b)を含む、試料のLOHスコアを計算すること、
(2a)試料の複数のSNP遺伝子座を配列決定すること、ここで、各隣接する2つのSNP遺伝子座間にインターバルが存在し、かつ前記インターバルのうちの50%以上が0.01~1Mbの長さである;
(2b)非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合を計算すること、
(3)HRD状態を特定すること。
【0030】
別の一般的な態様では、本発明は、以下の(1)~(3)を含む、試料のHRD状態を評価するためのキットに関する。
(1)複数のSNP遺伝子座を標的とするオリゴヌクレオチドのセット、
(2)複数のHRR関連遺伝子を標的とするオリゴヌクレオチドのセット、及び
(3)HRD状態を判定するための方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラム。
【0031】
別の一般的な態様では、本発明は、以下の(1)及び(2)を含む、試料のHRD状態を評価するためのキットに関する。
(1)試薬であって、
複数のSNP遺伝子座を標的とするオリゴヌクレオチドのセットを含み、ここで、各隣接する2つのSNP遺伝子座間にインターバルが存在し、かつ前記インターバルのうちの50%以上が0.01~1Mbの長さである、試薬、
(2)コンピュータプログラムであって、
LOHスコアを計算するための命令、ここで、前記LOHスコアは、非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合である;及び
HRD状態を特定するための命令
を含む、コンピュータプログラム。
【0032】
別の一般的な態様では、本発明は、以下の(1)及び(2)を含む、試料のHRD状態を評価するためのキットに関する。
(1)試薬であって、
BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、ARID1A遺伝子、ATM遺伝子、ATR遺伝子、ATRX遺伝子、BARD1遺伝子、BRIP1遺伝子、CDK12遺伝子、CHEK1遺伝子、CHEK2遺伝子、FANCA遺伝子、FANCL遺伝子、FANCM遺伝子、HDAC2遺伝子、NBN遺伝子、PALB2遺伝子、PPP2R2A遺伝子、PTEN遺伝子、RAD51遺伝子、RAD51B遺伝子、RAD51C遺伝子、RAD51D遺伝子、RAD54L遺伝子、又はこれらの任意の組合せを含む遺伝子を標的とするオリゴヌクレオチドのセットを含む、試薬、
(2)コンピュータプログラムであって、
BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、ARID1A遺伝子、ATM遺伝子、ATR遺伝子、ATRX遺伝子、BARD1遺伝子、BRIP1遺伝子、CDK12遺伝子、CHEK1遺伝子、CHEK2遺伝子、FANCA遺伝子、FANCL遺伝子、FANCM遺伝子、HDAC2遺伝子、NBN遺伝子、PALB2遺伝子、PPP2R2A遺伝子、PTEN遺伝子、RAD51遺伝子、RAD51B遺伝子、RAD51C遺伝子、RAD51D遺伝子、及びRAD54L遺伝子のうちのいずれかが変化を有するかどうかを判定する命令;及び
HRD状態を特定する命令
を含む、コンピュータプログラム。
【0033】
別の一般的な態様では、本発明は、以下の(1)及び(2)を含む、試料のHRD状態を評価するためのキットに関する。
(1)試薬であって、
複数のSNP遺伝子座を標的とするオリゴヌクレオチドのセット、ここで、各隣接する2つのSNP遺伝子座間にインターバルが存在し、かつ前記インターバルのうちの50%以上が0.01~1Mbの長さである;及び、
少なくとも1つのHRR関連遺伝子を標的とするオリゴヌクレオチドのセット
を含む、試薬、
(2)コンピュータプログラムであって、
LOHスコアを計算するための命令、ここで、前記LOHスコアは、非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合である;及び
HRD状態を特定すること;
HRR関連遺伝子のうちのいずれかが変化を有するかどうかを判定する命令;及び
HRD状態を特定するための命令
を含む、コンピュータプログラム。
【0034】
別の一般的な態様では、本発明は、以下の(1)及び(2)を含む、試料のHRD状態を評価するためのキットに関する。
(1)試薬であって、
試料の複数のSNP遺伝子座を標的とするオリゴヌクレオチドのセット;及び
BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、ARID1A遺伝子、ATM遺伝子、ATR遺伝子、ATRX遺伝子、BARD1遺伝子、BRIP1遺伝子、CDK12遺伝子、CHEK1遺伝子、CHEK2遺伝子、FANCA遺伝子、FANCL遺伝子、FANCM遺伝子、HDAC2遺伝子、NBN遺伝子、PALB2遺伝子、PPP2R2A遺伝子、PTEN遺伝子、RAD51遺伝子、RAD51B遺伝子、RAD51C遺伝子、RAD51D遺伝子、RAD54L遺伝子、又はこれらの任意の組合せを含む遺伝子を標的とするオリゴヌクレオチドのセット
を含む、試薬、
(2)コンピュータプログラムであって、
染色体異常のHRDスコアを計算する命令;
BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、ARID1A遺伝子、ATM遺伝子、ATR遺伝子、ATRX遺伝子、BARD1遺伝子、BRIP1遺伝子、CDK12遺伝子、CHEK1遺伝子、CHEK2遺伝子、FANCA遺伝子、FANCL遺伝子、FANCM遺伝子、HDAC2遺伝子、NBN遺伝子、PALB2遺伝子、PPP2R2A遺伝子、PTEN遺伝子、RAD51遺伝子、RAD51B遺伝子、RAD51C遺伝子、RAD51D遺伝子、及びRAD54L遺伝子のうちのいずれかが変化を有するかどうかを判定する命令;及び、
HRD状態を特定する命令
を含む、コンピュータプログラム。
【0035】
いくつかの実施形態では、コンピュータプログラムは、対象のHRD状態に基づいて、治療を特定するための命令をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A】腫瘍試料GSM956523の異なる数のSNP遺伝子座における異なるアルゴリズムのLOHスコアの安定性を示す。
図1B】腫瘍試料GSM956527の異なる数のSNP遺伝子座における異なるアルゴリズムのLOHスコアの安定性を示す。
図1C】正常試料GSM956582の異なる数のSNP遺伝子座における異なるアルゴリズムのLOHスコアの安定性を示す。
図1D】正常試料GSM956597の異なる数のSNP遺伝子座における異なるアルゴリズムのLOHスコアの安定性を示す。
図2A】異なる数のSNP遺伝子座で式1を用いた、異なる腫瘍群及び正常試料群のLOHスコアを示す。
図2B】異なる数のSNP遺伝子座で式2を用いた、異なる腫瘍群及び正常試料群のLOHスコアを示す。
図3】染色体腕の不均衡因子を考慮した又は無視した、異なる腫瘍純度レベルでのLOHスコアを示す。
図4】SNP遺伝子座間のインターバルの長さをプロットしたグラフである。
図5】異なる群のLOH分布をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、「ある~(a)」、「ある~(an)」、及び「前記~(the)」という単数形は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0038】
本明細書で使用される場合、「HRR関連遺伝子」とは、HRR遺伝子、又はその制御因子若しくは修飾因子を指す。HRR関連遺伝子の変化はHRDの存在を引き起こし得る。いくつかの実施形態では、HRR関連遺伝子は、BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、ARID1A遺伝子、ATM遺伝子、ATR遺伝子、ATRX遺伝子、ABL1遺伝子、BAP1遺伝子、BARD1遺伝子、BLM遺伝子、BRIP1遺伝子、CDK12遺伝子、CHEK1遺伝子、CHEK2遺伝子、ERCC1遺伝子、ERCC3遺伝子、ERCC4遺伝子、FANCA遺伝子、FANCC遺伝子、FANCD2遺伝子、FANCE遺伝子、FANCF遺伝子、FANCG遺伝子、FANCL遺伝子、LIG3遺伝子、MRE11遺伝子、MSH2遺伝子、MSH6遺伝子、MLH1遺伝子、NBN遺伝子、PALB2遺伝子、PTEN遺伝子、PARP1遺伝子、POLB遺伝子、RAD50遺伝子、RAD51遺伝子、RAD51B遺伝子、RAD51C遺伝子、RAD51D遺伝子、RAD52遺伝子、RAD54L遺伝子、UBE2A遺伝子、XRCC2遺伝子、DNMT3A遺伝子、IDH1遺伝子、IDH2遺伝子、STAG2遺伝子、及びTP53遺伝子からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、HRR関連遺伝子は、BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、ARID1A遺伝子、ATM遺伝子、ATR遺伝子、ATRX遺伝子、BARD1遺伝子、BRIP1遺伝子、CDK12遺伝子、CHEK1遺伝子、CHEK2遺伝子、FANCA遺伝子、FANCL遺伝子、FANCM遺伝子、HDAC2遺伝子、NBN遺伝子、PALB2遺伝子、PPP2R2A遺伝子、PTEN遺伝子、RAD51遺伝子、RAD51B遺伝子、RAD51C遺伝子、RAD51D遺伝子、及びRAD54L遺伝子からなる群から選択される。
【0039】
本明細書で使用される場合、「カットオフ値」とは、その値が生物学的試料についての2つ以上の分類状態の間で処理するために使用される、数値又は他の表現を指す。本発明のいくつかの実施形態では、カットオフ値は、陽性のHRD状態又は陰性のHRD状態を区別するために使用される。HRDスコアがカットオフ値を超える場合、HRD状態は陽性と判定されるか、又は、HRDスコアがカットオフ値未満である場合、HRD状態は陰性と判定される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「不均衡な染色体腕」とは、染色体腕のコピー数の喪失又は増加を意味する。いくつかの実施形態では、不均衡な染色体腕とは、LOHを伴う非ホモ接合性SNP遺伝子座のうちの70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、又は100%を有する染色体腕を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「腫瘍純度」とは、腫瘍試料中のがん細胞の割合である。腫瘍純度は、NGSアプローチでアッセイされるような分子及びゲノムの特徴の正確な評価に影響を及ぼす。本開示のいくつかの実施形態では、試料は、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、又は100%の腫瘍純度を有する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「深度」とは、位置あたりの配列決定リードの数を指す。「平均深度」は、配列決定領域全体にわたるリードの平均数を指す。通常、平均深度はNGSアッセイの性能に影響を及ぼす。平均深度が高いほど、バリアントの変異頻度の変動性が低くなる。本開示のいくつかの実施形態では、配列決定領域全体にわたる試料の平均深度は、200倍以上、300倍以上、400倍以上、500倍以上、600倍以上、700倍以上、800倍以上、900倍以上、1000倍以上、2000倍以上、3000倍以上、4000倍以上、5000倍以上、6000倍以上、8000倍以上、10000倍以上、又は20000倍以上である。
【0043】
本明細書で使用される場合、「カバレッジ」とは、所与の遺伝子座における深度を指す。「標的塩基のカバレッジ」とは、所定の値を上回る深度で配列決定される配列決定領域の割合を指す。標的塩基のカバレッジは、それが評価される深度を指定する必要がある。いくつかの実施形態では、100倍の標的塩基のカバレッジは、85%である。すなわち、標的配列決定塩基の85%が、少なくとも100倍の配列決定リード深度によってカバーされている。いくつかの実施形態では、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、125倍、150倍、175倍、200倍、300倍、400倍、500倍、750倍、1000倍での標的塩基のカバレッジは、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%を超える。
【0044】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「ヒト対象」とは、正式に診断された疾患を有する者、正式に認識された疾患を有しない者、医学的注意を受けている者、疾患を発症するリスクがある者などを指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、及び「治療すること」には、対象が疾患又は他の危険因子を発症するリスクを低下させる治療的処置、予防的治療、及び適用が含まれる。治療は、疾患の完全な治癒を必要とせず、症状又は基礎危険因子を軽減する実施形態を包含する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」とは、所望の生物学的効果又は臨床的効果を誘発するのに必要とされる治療活性分子の量を意味する。本開示の好ましい実施形態では、「治療有効量」とは、HRD陽性のがん患者を治療するのに必要とされる薬物の量である。
【0047】
本開示は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例は限定の目的ではなく実証の目的で提供される。
【実施例
【0048】
実施例1:LOHスコアリングのためのアルゴリズムの安定性試験
この試験は異なるアルゴリズムに由来するLOHスコアの安定性を評価するために設計された。
【0049】
インシリコのダウンサンプリングを、GEO番号:GSE39130によりGEOで公開されたAffymetrix GeneChip Human Mapping 250K Nsplアレイデータ(Wang、Birkbakら、2012年)からランダムに選択された260K、150K、100K、50K、40K、30K、20K、10K、9K、8K、7K、6K、5K、4K、3K、2K、及び1KのSNP遺伝子座に適用した。本発明者らは、まず、このアレイデータ中の各SNP遺伝子座に染色体腕情報を割り当て、ホモ接合、ヘテロ接合、及びヘテロ接合性喪失SNP遺伝子座について対立遺伝子頻度範囲を定義した。染色体腕レベルでの層別化サンプリングによってインシリコのダウンサンプリングを遂行し、指定された数のSNPを得た。本発明者らは、ダウンサンプリングしたセットにおける各染色体腕のSNP遺伝子座の数が元のデータセットに比例することを確実にするために、各染色体腕のSNP遺伝子座を独立してサンプリングした。異なる数の各SNP遺伝子座における異なるアルゴリズムのLOHスコアの変動を評価するために、100のブートストラップ試料サイズを生成した。式1は、LOH SNPの数を考慮し、非ホモ接合性SNPの数に対するヘテロ接合性喪失SNPの数の割合によってLOHスコアを計算した。対照的に、式2は、LOH SNPの全長を考慮し、ゲノムサイズに対するヘテロ接合性喪失SNP領域の全長の割合によってLOHスコアを判定した。分析はR(バージョン4.0.0)を用いて遂行した。
【0050】
【数1】
【0051】
【数2】
【0052】
図1A図1Dは、2つの異なるアルゴリズムを用いた、2種類の腫瘍試料(GSM956523及びGSM956527)、及び2種類の正常試料(GSM956582及びGSM956597)のLOHスコアリング結果を示す。式1を用いた計算結果は、式2から導出されるLOHスコアがSNP遺伝子座の数が少ないほど低くなる場合に、異なる数のSNP遺伝子座で安定したLOHスコアの中央値を示す。
【0053】
実施例2:LOHスコアリングアルゴリズムの検証
この試験では、異なる数のSNP遺伝子座で腫瘍群と正常群との間に有意な差を有するLOHスコアを推定するアルゴリズムを選択する。
【0054】
試験で使用した全ての試料をこの試験で分析した(Wang、Birkbakら、2012年)。BRCA2 LOHを有する腫瘍試料は高ゲノム不安定性群(GI-H)にクラスタ化され、対照的に、低不安定性群(GI-L)はBRCA2 LOHを有しない腫瘍試料であった。BRCA2 LOHを有する細胞はゲノム不安定性を示し、かつDNA傷害剤に対して高い感受性を示したので、この試験におけるGI-H群は薬物感受性群を潜在的に表す可能性があり、GI-L群は薬物耐性群を潜在的に表す可能性がある。GI-H群、GI-L群、及び正常群には、それぞれ、12、11、及び18の試料があった。260K、50K、10K、7K、5K、3K、2K、及び1KのSNP遺伝子座の数で、各試料のLOHスコアを実施例1に記載の式1及び式2により推定した。ウィルコクソンの符号順位検定を適用して、GI-H、GI-L及び正常試料の間のLOHスコアのp値を推定した。
【0055】
本発明者らは、SNP遺伝子座の全ての異なる数(p値<0.05)で式1を用いて、2つの腫瘍群であるGI-HとGI-Lとの間にLOHスコアの有意な差を見出した。しかしながら、S式2を用いることにより、NP遺伝子座の数が7K以上である場合にのみ、LOHスコアが2つの腫瘍群間で有意に異なる。
【0056】
実施例3:染色体腕の不均衡因子を考慮するか又は考慮しない、異なる腫瘍純度レベルの試料のLOHスコアリング
この試験は、LOHスコアを計算する場合の染色体腕不均衡の影響を評価するためのものである。
【0057】
コピー数が変化したがん細胞株試料(NCL-H1395)を、その一致した正常試料と混合して、異なる腫瘍純度レベルを模倣した。実験手順は、DNA抽出、ライブラリ構築、及びNGS配列決定を含み、これらは実施例5に従う。混合試料のLOHスコアを、異なる腫瘍純度レベルで3つの異なるアルゴリズムによって推定した。第1のアルゴリズムは、染色体腕の不均衡の影響を考慮せずにLOHスコアを計算した(式1)。第2のアルゴリズム及び第3のアルゴリズムは、不均衡な染色体腕上に位置するSNPを除外する、染色体腕の不均衡因子を考慮した(式3)。不均衡な染色体腕は、ある染色体腕における非ホモ接合性SNP遺伝子座の数に対するLOH SNP遺伝子座の数の割合によって特徴付けられる。この例の割合は85%である。第3のアルゴリズムは、異なる腫瘍純度レベルに基づいて不均衡な染色体腕を特徴付けるために、LOHを有する非ホモ接合性SNP遺伝子座の割合をさらに調整した。
【0058】
【数3】
【0059】
図3は、異なる腫瘍純度レベルで3つの異なるアルゴリズムを用いたLOHスコアリング結果を示す。第1のアルゴリズムによって計算されたLOHスコアは、腫瘍純度の増加と共に急激に増加している。対照的に、第2のアルゴリズム及び第3のアルゴリズムによって計算されたLOHスコアは、腫瘍純度が30%を超える場合に安定である。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例4:がん試料のHRD状態の判定
ARID1A、ATM、ATR、ATRX、BARD1、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCA、FANCL、FANCM、HDAC2、NBN、PALB2、PPP2R2A、PTEN、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54Lを含むパネルAのコード領域、並びにヒトゲノムにわたる約9000のSNP遺伝子座を標的とする、アンプリコンに基づくNGSパネルを設計した。SNP遺伝子座間のインターバルの平均の長さは約0.3Mbであった(図4)。
【0062】
がん患者のFFPE試料及びPBMCを収集し、NGSパネルを用いてアッセイした。ゲノムDNAを、RecoverAll(商標)Total Nucleic Acid Isolation Kit(Thermo Fisher Scientific)を用いて抽出した。CleanPlex NGSパネル(Paragon Genomics、USA)のユーザガイドに従って、NGSライブラリを構築した。簡潔には、上記で設計した領域を標的とするプライマーを用いて、60ngのDNAをマルチプレックスPCR反応によって増幅した。磁気ビーズを用いた精製、CP消化、及び二次精製の後、第2のPCR反応を、ユーザガイドに従ってIllumina用のi5インデックスプライマー及びi7インデックスプライマーを用いて行った。追加の精製後、試料をキャピラリー電気泳動(FragmentAnalyzer、AATI)した。ライブラリー品質管理(QC)を通過した試料を、製造者のシステムガイド並びにIllumina NextSeq System Denature及びDilute Fibraries Guideに従って、NextSeq550(Illumina、USA)での配列決定のために組み合わせる。
【0063】
シーケンサーによって産生された生リードを、BWA(バージョン0.7.17)を用いてhgl9参照ゲノムにマッピングした。Pisces(バージョン5.2.5.20)を用いてSNV及びINDELを特定した。VEP(Variant Effect Predictor)(バージョン88)を使用して、Clinvar(バージョン20180729)及びGenome Aggregationデータベースr2.1.1からのデータベースを用いて全てのバリアントに注釈を付けた。パネル中の各標的塩基及び標的アンプリコンでの深度を計算するために、Bedtools及びSamtoolsによってカバレッジ分析を行った。
【0064】
試料QCを遂行して、各試料の平均配列決定深度が1000倍に達したことを確認した。
【0065】
LGR及びCNVを判定するために、全ての検出可能なアンプリコンの最低1パーセンタイル及び最高0.5パーセンタイルのリード数を有するアンプリコン、及び0.35以上の変動係数を有するアンプリコンを除去した。残りのアンプリコンを正規化して、プール設計バイアスを補正した。ONCOCNV(Boevaら(2014年)によるアンプリコンの配列決定データにおけるコピー数異常を計算するために確立された方法)を全アンプリコン数、アンプリコンGC含有量、アンプリコン長、及び技術関連バイアスの正規化に適用し、続いて、試料を遺伝子認識モデルでセグメント化した。各遺伝子及びエクソンの観察されたコピー数をONCOCNVを用いて計算した。Aberration Detection in Tumour Exome(ADTEx)ソフトウェア(Amarasingheら、2014年)を使用して、各FFPE試料の腫瘍純度を計算した。FFPE試料中の腫瘍純度を調整することによって、各遺伝子の調整コピー数を計算した。
【0066】
SNPを、それらのバリアント対立遺伝子頻度に従ってLOH又はヘテロ接合性として判定した。試料のLOHスコアは、式3に従ってLOH状態を有するSNPの割合を取ることによって計算される。
【0067】
染色体腕の不均衡が検出された場合、染色体腕上の全てのSNPを分析から除外する。ここで、染色体腕の不均衡は、染色体腕全体に対するコピー数の増加又は喪失のいずれかとして検出される。
【0068】
試験した試料のLOHスコアを表2に列挙する。
【0069】
【表2】
【0070】
実施例5:異なる遺伝子型群における試料のLOH分布
この試験は、ARID1A、ATM、ATR、ATRX、BARD1、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCA、FANCL、FANCM、HDAC2、NBN、PALB2、PPP2R2A、PTEN、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54Lを含むパネルAの異なる遺伝子型を有する試料のLOHスコア分布を評価するように設計された。
【0071】
実施例4のアッセイによって、合計92種類の卵巣がん試料及び4種類の正常試料を配列決定し、各試料のLOHスコアを式3によって計算した。パネルAの遺伝子に病原性突然変異又は推定病原性突然変異を有する試料を、パネルA遺伝子(有害)へと群分けした。対照的に、パネルAの全ての遺伝子に病原性突然変異又は推定病原性変異を有しない他の試料を、パネルA遺伝子(WT)と見なした。各群の試料LOHスコアの分布を図5に示す。
【0072】
異なる群における試料のLOHスコアの分布は、パネルA遺伝子(有害)の群が他の群よりも高いLOHスコアを有することを示す。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4
図5
【国際調査報告】