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特表2024-502613ライン走査型の共焦点顕微鏡から等方的な面内超解像画像を生成するシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】ライン走査型の共焦点顕微鏡から等方的な面内超解像画像を生成するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 3/4053 20240101AFI20240115BHJP
   G06T 3/4046 20240101ALI20240115BHJP
【FI】
G06T3/40 730
G06T3/40 725
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541648
(86)(22)【出願日】2022-01-06
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 US2022011484
(87)【国際公開番号】W WO2022150506
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/134,907
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519314559
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ、アズ リプリゼンテッド バイ ザ セクレタリー、ディパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(71)【出願人】
【識別番号】501242712
【氏名又は名称】ザ ユニヴァーシティー オヴ シカゴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュロフ、アリ
(72)【発明者】
【氏名】ウー、イーツォン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、シアオフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ラ リヴィエール、パトリック
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057CA20
5B057CD05
5B057CE08
5B057DB01
(57)【要約】
訓練済みニューラルネットワークを使用して回折限界ライン共焦点画像から一次元超解像画像を生成し、一次元超解像出力と等方的な面内超解像画像とを生成するためのシステム及び方法の様々な実施形態が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間分解能を向上させる方法であって、
イメージタイプの複数の回折限界ライン共焦点画像を生成し、前記イメージタイプの前記複数の回折限界ライン共焦点画像に対応する前記イメージタイプの複数の一次元超解像画像を生成することと、
複数のマッチングされた訓練ペアを含む訓練セットを生成することであって、前記複数のマッチングされた訓練ペアの各訓練ペアは、前記イメージタイプの前記複数の回折限界ライン共焦点画像のうちの回折限界ライン共焦点画像と、前記複数の回折限界ライン共焦点画像うちの前記回折限界ライン共焦点画像に対応する一次元超解像画像とを含む、訓練セットを生成することと、
前記イメージタイプの前記複数のマッチングされた訓練ペアを入力として入力することによってニューラルネットワークを訓練することと、
前記ニューラルネットワークに入力された回折限界ライン共焦点画像の評価に基づいて、前記ニューラルネットワークによって前記イメージタイプの一次元超解像画像を生成することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ニューラルネットワークは、前記ニューラルネットワークに入力された前記イメージタイプの前記回折限界ライン共焦点画像の入力と前記訓練セット内の前記イメージタイプの前記複数の回折限界ライン共焦点画像との間の類似性を識別することによって、前記イメージタイプの前記回折限界ライン共焦点画像を評価する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
訓練済みニューラルネットワークによって前記イメージタイプの前記一次元超解像画像を生成することは、前記訓練済みニューラルネットワークによって評価された前記イメージタイプの前記回折限界ライン共焦点画像の入力と前記訓練セットの前記複数の回折限界ライン共焦点画像との間で確立された任意の類似性の識別に基づく、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記訓練済みニューラルネットワークによって前記イメージタイプの前記一次元超解像画像を生成することは、各訓練ペアから、前記回折限界ライン共焦点画像の入力と前記イメージタイプの前記複数の回折限界ライン共焦点画像との間で識別される前記類似性を用いて、前記イメージタイプの前記対応する一次元超解像画像の1つ以上の特徴を識別することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の回折限界ライン共焦点画像の各回折限界ライン共焦点画像が位相シフトされ、次いで、前記位相シフトされた回折限界ライン共焦点画像が合成されて、マッチングされた訓練ペア毎に前記イメージタイプの前記複数の一次元超解像画像のそれぞれの一次元超解像画像を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
等方的な超解像画像の生成方法であって、
ニューラルネットワークへの入力として、第1の方向におけるイメージタイプの第1の回折限界ライン共焦点画像と、第2の方向における前記イメージタイプの第2の回折限界ライン共焦点画像と、を提供することと、
前記ニューラルネットワークからの出力として、前記第1の方向における前記イメージタイプの前記第1の回折限界ライン共焦点画像の第1の一次元超解像画像と、前記第2の方向における前記イメージタイプの第2の一次元超解像画像と、を生成することと、
プロセッサによって、前記第1の方向における前記イメージタイプの前記第1の一次元超解像画像と、前記第2の方向における前記イメージタイプの前記第2の一次元超解像画像とを合成して、前記プロセッサによって出力される等方的な超解像画像を生成することと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記等方的な超解像画像を生成するために、ジョイント逆畳み込み演算を使用して、前記第1の方向における前記イメージタイプの前記第1の一次元超解像画像と、前記第2の方向における前記イメージタイプの前記第2の一次元超解像画像とを合成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセッサは、リチャードソン-ルーシーアルゴリズムを使用して、前記ジョイント逆畳み込み演算を実行する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の方向は、前記第2の方向とは異なる方向である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ニューラルネットワークへの入力として、第3の方向におけるイメージタイプの第3の回折限界ライン共焦点画像を提供することと、
前記ニューラルネットワークからの出力として、前記第3の方向における前記イメージタイプの前記第1の回折限界ライン共焦点画像の第3の一次元超解像画像を生成することと、 プロセッサによって、前記第3の方向における前記イメージタイプの前記第3の一次元超解像画像を、前記第2の方向における前記イメージタイプの前記第2の一次元超解像画像及び前記第1の方向における前記第1の一次元超解像画像と合成して、前記プロセッサによって出力される等方的な超解像画像を生成することと、
をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項11】
前記ニューラルネットワークへの入力として、第4の方向におけるイメージタイプの第4の回折限界ライン共焦点画像を提供することと、
前記ニューラルネットワークからの出力として、前記第4の方向における前記イメージタイプの前記第1の回折限界ライン共焦点画像の第4の一次元超解像画像を生成することと、
プロセッサによって、前記第4の方向における前記イメージタイプの前記第4の一次元超解像画像を、前記第3の方向における前記イメージタイプの前記第3の一次元超解像画像、前記第2の方向における前記イメージタイプの前記第2の一次元超解像画像及び前記第1の方向における前記第1の一次元超解像画像と合成して、前記プロセッサによって出力される等方的な超解像画像を生成することと、
をさらに含む、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、回折限界画像から超解像画像を生成することに関し、特に、訓練済みニューラルネットワークを使用して、回折限界ライン共焦点画像(diffraction-limited line-confocal images)から超解像画像を生成し、一次元超解像画像出力と、異なる方向の一次元超解像画像を合成することで得られる等方的な面内超解像画像と、を生成するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ライン走査型の共焦点顕微鏡は、蛍光標識されたサンプルを1つの空間次元に集光させたシャープな回折限界照明で照明する。照明ラインがサンプルを横切って走査される際に、サンプルによって放出された蛍光がスリットを通ってフィルタリングされ、記録されると、焦点外の蛍光による汚染が低減された光学的切片像が得られる。一般には理解されていないが、サンプルの照明が必ず回折限界であるという事実は、追加の画像が取得されるか又は光学的再割り当て技術(optical reassignment techniques)が使用されると、ラインが集光される方向の(すなわち、1つの空間次元に沿って)空間分解能を向上させることが可能であることを意味する。しかしながら、ライン走査型の共焦点顕微鏡において一次元分解能を向上させるためのこのような技術はすべて、従来の回折限界共焦点顕微鏡よりも多くの線量(dose)を与えるか、又はより多くの画像を必要とする。
【0003】
本開示の様々な態様は、特にこれらの知見を念頭に置いて考案され、開発されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、回折限界ライン共焦点画像及びマッチングされた位相シフトφ1、φ2、及びφ3画像を得るために、サンプルのシャープなライン照明を生成するためのライン走査型の共焦点顕微鏡システムの一実施形態を示す概略図である。
図2A図2Aは、図1の顕微鏡システムを使用して、回折限界照明ラインをライン共焦点画像の左から右に水平方向に走査したときのライン走査共焦点画像を示す図である。
図2B図2Bは、回折限界照明ライン走査が特定の間隔でブランクにされ、次いで、マッチングされた位相シフトφ1、φ2、及びφ3画像を生成するために互いに対して約120度位相シフトされたときに生じる疎な周期的照明パターンを示す図である。
図2C図2Cは、図2Bに示す各位相シフトφ1、φ2、及びφ3画像の疎な周期的照明パターンを合成した横方向の超解像画像を示す図である。
図3図3は、各々が細胞の回折限界線共焦点画像(左)と同じ細胞の対応する一次元超解像画像(右)とを有するマッチングされたデータ訓練ペアの訓練セットを示す簡略図であり、訓練セットは、回折限界ライン共焦点画像入力を評価し、評価された回折限界ライン共焦点画像の一次元超解像画像を予測し、生成することのみに基づいて一次元超解像画像を生成するニューラルネットワークを訓練するために使用される。
図4図4は回折限界ライン共焦点画像入力に基づいて一次元超解像画像を生成するための高精度な予測を生成するニューラルネットワークを訓練するために、図3の訓練セットが使用される方法を示す簡略図である。
図5A図5Aはシミュレートされたテストデータを使用して二次元回折限界の点広がり関数(PSF)でぼかされた入力画像である。
図5B図5Bはシミュレートされたテストデータを使用して訓練された訓練済みニューラルネットワークのディープラーニング出力である。
図5C図5Cは、訓練済みニューラルネットワークの生成された一次元超解像画像出力との比較に使用された入力画像の一次元超解像の正解画像である。
図6A図6Aは、異なる方向(0度、45度、90度、及び135度)で回転された細胞の回折限界画像を示す簡略図であり、各回折限界画像は、訓練済みニューラルネットワークに入力され、その結果として得られた画像はそれぞれ水平方向に解像度が向上している。
図6B図6Bは、図6Aの訓練済みニューラルネットワークからの出力画像を回転させて原画像のフレームに戻し、ジョイント逆畳み込みを使用して合成した出力画像を示す簡略図である。
図7A図7Aは、ドット、ライン、リング、及び実線の円の混合物を用いてシミュレートされた未加工画像であり、回折限界PSFでぼかされ、未加工画像にはポアソンノイズとガウシアンノイズとが付加されている。
図7B図7Bは、図6A及び図6Bに示すステップを実行した後、それぞれ0度、45度、90度、及び135度に沿って配向された一次元超解像を有する4つの画像である。
図7C図7Cは、図7Bの4つの画像をジョイント逆畳み込みした後の二次元の等方的な解像度を有する超解像画像である。
図8図8は、上段がφ1、φ2及びφ3における照明パターンを示す図であり、中段が微小管マーカを有する実際の細胞の画像とマッチングされたφ1、φ2、及びφ3画像を示し、下段は、テスト中に得られた回折限界ライン共焦点画像(左)及び超解像画像(右)を示す。
図9A図9Aは、回折限界モードで撮影された微小管の蛍光画像である。
図9B図9Bは、訓練済みニューラルネットワークによって生成された微小管の蛍光画像である。
図9C図9Cは、走査方向に沿って局所的縮約が適用され、1つの次元(垂直方向)に沿って解像度が高められた超解像画像を生成する場合の、正解の微小管の蛍光画像である。
図10A図10Aは、回折限界データから得られた微小管の蛍光画像を示す入力である。
図10B図10Bは、異なる回転軸に沿った微小管の蛍光画像を示す回転及びディープラーニング出力である。
図10C図10Cは、解像度のゲインを等方化する、ジョイント逆畳み込みを使用して処理された微小管の蛍光画像である。
【0005】
対応する参照符号は、図面の図の中の対応する要素を示す。図中で使用される見出しは、特許請求の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書には、訓練済みニューラルネットワークを使用してライン走査型の共焦点顕微鏡における空間分解能を向上させるためのシステム及び関連する方法の様々な実施形態が開示されている。一態様では、空間分解能を向上させるための方法は、ライン走査型の共焦点顕微鏡システムによって生成される複数の疎な位相シフトされた回折限界ライン照明パターンでサンプル又はイメージタイプ(image-type)を照明することによって、サンプル又はイメージタイプの一連の回折限界ライン共焦点画像を生成することを含む。これらの回折限界ライン共焦点画像が生成されると、複数のマッチングされたデータ訓練ペアを含む訓練セットが組み立てられ、マッチングされたデータ訓練ペアの各々は、あるサンプル又はイメージタイプの回折限界ライン共焦点画像と、同じ回折限界ライン共焦点画像の対応する一次元超解像画像とがマッチングされたものを含む。分解能向上の程度は、ライン照明による蛍光発光がどの程度微細であるかに依存し、従来のライン走査型の共焦点顕微鏡のように回折限界のある照明の場合、理論的には回折限界より約2倍程度の分解能の向上が達成される可能性がある。しかしながら、蛍光発光を照明強度に非線形に依存させることができれば、例えば、光スイッチング可能な蛍光色素や、飽和可能でオン/オフ状態を有する蛍光色素を使用する場合、原理的には蛍光発光の微細化の程度に限界はない。この場合、2倍を超える(理論的には「回折限界なし」)解像度向上が可能である。これまでに行われたシミュレーション及び実験的テストでは、回折限界分解能に対して2倍の解像度向上が達成された。
【0007】
訓練セットがそのように組み立てられた後、マッチングされたデータ訓練ペアは、ニューラルネットワークが以前に評価したことのない回折限界ライン共焦点画像入力の評価のみに基づいて、一次元超解像画像出力を「予測」して生成するように、ニューラルネットワークを訓練するために使用される。本開示のシステムは、そのような目的のために、残渣チャネル注意ネットワーク(RCAN:Residual Channel Attention Network)及びU-Netをテストすることに成功し、回折限界入力で2倍以上の解像度向上を実現した。RCANを例にとると、低解像度画像及び高解像度画像のマッチングされたペアがネットワークアーキテクチャに入力され、ネットワーク予測値と正解(ground-truth)の超解像画像との間のL1損失を最小化することによってネットワークが訓練される。RCANアーキテクチャは、それ自体が残渣構造を含む複数の残渣グループから構成される。このような「残渣中の残渣(residual in residual)」構造は、長いスキップ接続を持つ複数の残渣グループからなる非常に深いネットワークを形成する。各残渣グループはまた、短いスキップ接続を有する残渣チャネル注意ブロック(RCAB:Residual Channel Attention Blocks)を含む。長いスキップ接続と短いスキップ接続、及び残渣ブロック内のショートカットにより、低解像度情報がバイパスされることを可能にし、高解像度情報の予測を容易にする。さらに、RCAB内のチャネル注意メカニズムは、チャネル間の相互依存性を考慮することによりチャネル毎の特徴を適応的に再スケーリングするために使用され、ネットワークの能力をさらに向上させてより高い解像度を達成する。本開示のシステムは、残渣グループ(RG:Residual Groups)の数を5に設定し、(2)各RGにおいて、RCABの数は3又は5に設定され、(3)浅い特徴抽出における畳み込み層の数は32であり、(4)チャネルダウンスケーリングにおける畳み込み層は4つのフィルタを有し、ここで低減比は8に設定され、(5)すべての二次元畳み込み層は三次元畳み込み層に置き換えられ、(6)本開示のシステムではネットワークの入力と出力とが同じサイズであるために、元のRCANの最後にあるアップスケーリングモジュールは省略される。
【0008】
ニューラルネットワークが特定のサンプル又はイメージタイプのマッチングされたデータ訓練ペアで訓練されると、ニューラルネットワークは、対応する一次元超解像画像を生成するために類似のサンプル又はイメージタイプの複数のマッチングされたデータ訓練ペアを使用するニューラルネットワークを訓練することのみに基づいて、回折限界ライン共焦点画像入力の一次元超解像画像出力を生成することによって、類似のサンプル又はイメージタイプの任意の回折限界ライン共焦点画像入力の空間分解能を向上させる能力を獲得する。別の態様では、ニューラルネットワークは、異なる方向に沿って一次元空間分解能が高められた複数の画像を合成することによって、等方的な面内超解像画像を生成することができる。図面を参照すると、訓練済みニューラルネットワークによって一次元超解像画像及び等方的な面内超解像画像を生成するためのシステム及び関連する方法が図示されており、図1図10では、概して100、200、300、及び400として図示されている。
【0009】
一態様では、ニューラルネットワーク302は、訓練済みニューラルネットワーク302Aへの入力として提供される回折限界ライン共焦点画像307の評価のみに基づいて、一次元超解像画像308を予測して生成するように訓練される。回折限界ライン共焦点画像307の評価が完了すると、訓練済みニューラルネットワーク302Aは、回折限界ライン共焦点画像307自体の空間分解能を訓練済みニューラルネットワーク302Aによって直接的に向上させることなく、回折限界ライン共焦点画像307が一次元超解像画像308としてどのように見えるかの予測に基づいて、一次元超解像画像308を出力として生成する。特に、訓練済みニューラルネットワーク302Aは、訓練済みニューラルネットワーク302Aへの入力として提供される回折限界ライン共焦点画像307における特定のサンプル又はイメージタイプの特定の態様及び/又はメトリックを評価することによって、一次元超解像画像308を生成するように動作可能であり、評価された回折限界ライン共焦点画像307の空間分解能を直接向上させることなく、回折限界共焦点画像307の空間分解能を、一次元超解像画像306のレベルまで向上させて出力する。訓練済みニューラルネットワーク302Aは、回折限界ライン共焦点画像304と対応する一次元超解像画像306とのマッチングされたデータ訓練ペア301を評価したことによる訓練済みニューラルネットワーク302Aの以前の訓練に基づいて、評価対象の回折限界ライン共焦点画像307の空間分解能を向上させるように動作可能である。
【0010】
ニューラルネットワーク302の訓練の際に、マッチングされたデータ訓練ペア301は、それぞれが、特定の種類のサンプル又はイメージタイプについての回折限界ライン共焦点画像304とその回折限界ライン共焦点画像304に基づく対応する一次元超解像画像306とから構成されており、後に類似のサンプル又はイメージタイプの回折限界ライン共焦点画像307をニューラルネットワーク302への入力304として評価する際に、類似の態様を認識するようにニューラルネットワーク302を訓練するために使用される。ここで、訓練済みニューラルネットワーク302Aは、評価済み回折限界ライン共焦点画像307の訓練済みニューラルネットワーク302Aへの入力に基づいて、一次元超解像画像308の出力を構築するように動作可能である。さらに、以下でより詳細に説明するように、訓練済みニューラルネットワーク302Aによって、サンプル又はイメージタイプの平面に対して異なる軸に沿って配向された一連の一次元超解像画像308A~Dを合成すること(combining)によって、等方的な面内超解像画像310を生成する方法が本明細書に開示されている。
【0011】
図1及び図2A図2Cを参照すると、複数の回折限界共焦点画像304は、照明されたサンプル108から放出される疎な周期的照明を生成するライン走査共焦点顕微鏡システム100(図1)と、回折限界ライン共焦点画像304を生成するために3つ以上の異なる位相シフト角度で疎な周期的照明画像の各々を受信して位相シフトするプロセッサ111と、を用いて生成され得る。ライン走査型の共焦点顕微鏡システム100によって特定のサンプル108又はイメージタイプについて複数の回折限界共焦点画像304が生成されると、プロセッサ111は、これら又はより多くの回折限界共焦点画像304を合成して、プロセッサ111と相互に通信するデータベース116に記憶されたそれら回折限界ライン共焦点画像304各々の一次元超解像画像306を生成する。
【0012】
一態様では、プロセッサ111は、複数のマッチングされたデータ訓練ペア301をデータベース116に記憶し、マッチングされたデータ訓練ペア301の各々は、あるサンプル又はイメージタイプの回折限界ライン共焦点画像304と、そのサンプル又はイメージタイプの回折限界共焦点画像304を共に合成することから生成される、同じサンプル又はイメージタイプの対応する一次元超解像画像306とから構成される。例えば、データベース116は、特定の種類のサンプルの複数のマッチングされたデータ訓練ペア300を記憶することができ、データ訓練ペア300の各々は、サンプル又はイメージタイプの回折限界ライン共焦点画像304と、その同じ回折限界ライン共焦点画像304のサンプル又はイメージタイプの対応する一次元超解像画像306とから構成される。
【0013】
図1及び図2A図2Cに示すように、回折限界ライン共焦点画像304を生成し、一次元超解像画像306とマッチングさせるための、ライン走査型の共焦点顕微鏡システム100の一実施形態が示されている。図1に示すように、ライン走査型の共焦点顕微鏡システム100は、位相シフトされ、シャッタ処理された(shuttered)サンプル108のライン走査共焦点画像115を生成し、プロセッサ111によって、第1の位相シフトでφ1画像116Aを、第2の位相シフトでφ2画像116Bを、及び第3の位相シフトでφ3画像116Cを生成する。プロセッサ111は、これらの位相シフトされた画像116A~116Cを合成処理して、一次元超解像画像306を生成する。一構成では、ライン走査型の共焦点顕微鏡システム100は照明光源101を含み、照明光源101は、例えば高速シャッタ102を通り、次いでシャッタ処理されたシャープな照明ライン走査(line scan)113を生成するシャープ照明発生器及びスキャナ103を通って、レーザビーム112を伝送する。シャッタ処理されたシャープな照明ライン走査113は、次に、第1のリレーレンズ104及び第2のリレーレンズ105を含むリレーレンズ系を通過した後、ダイクロイックミラー106によって方向転換され、対物レンズ107を通過してシャッタ処理された照明ライン走査113を集光し、サンプル108を通過してサンプル108を照明及び走査する。いくつかの実施形態では、照明光源101と連携する高速シャッタ102(例えば、音響光学可変フィルタ-AOTF:acousto-optic tunable filter)は、シャッタ処理された照明ライン走査113を生成するシャープ照明発生器及び走査機構103などのライン照明装置を通して、照明光源101によって生成されたレーザビーム112をブランキング(blanking)するように動作可能である。代替的に、空間光変調器(図示せず)を使用して、シャッタ処理された照明ライン走査113を生成するために、レーザビーム112をブランキングしてもよい。いくつかの実施形態では、ダイクロイックミラー106は、シャッタ処理された照明ライン走査113を方向転換して対物レンズ107の後方焦点面に結像させ、疎な構造化照明パターンでサンプル108を照明する。サンプル108がこのように照明されると、サンプル108によってサンプル108の平面に対して特定の方向で放出された蛍光発光114は、対物レンズ107を介してエピモード(epi-mode)で集光され、対物レンズ107と連携する4f構成のチューブレンズ109を通過した後、ダイクロイックミラー106を介してシャッタ処理された照明ライン走査113から分離され、検出器110(例えば、カメラ)によって収集される。空間光変調器が使用される場合、空間光変調器は、ダイクロイックミラー106を使用することなく、第1のリレーレンズ104及び第2のリレーレンズ105によってサンプル108に結像される。いくつかの実施形態では、レーザ光を除去する機能を有するフィルタ(図示せず)を、検出器110の前に配置してもよい。
【0014】
図示されるように、プロセッサ111は、シャッタ照明ライン走査113によって照明された後にサンプル108によって放出された蛍光114に関するデータを受信するために、検出器110と相互に通信している。いくつかの実施形態では、サンプル108が照明されて、その結果得られる蛍光は異なる位相で得られてもよく、サンプル108の各回折限界ライン共焦点画像はそれぞれ異なる位相で撮像されてもよい。
【0015】
一態様では、回折限界ライン共焦点画像の各々は、評価のために訓練済みニューラルネットワーク302Aに入力されて、それぞれの一次元超解像画像を生成することができ、次いで、ジョイント逆畳み込み技法を使用して、様々な角度におけるサンプル108の複数の一次元超解像画像308を合成して、等方的な超解像画像310を生成することができる。
【0016】
図2Aを参照すると、回折限界共焦点画像115が図示されており、それは、左から右に水平方向に走査されたシャッタ処理された照明ライン走査113を示しており、照明ライン走査113により、顕微鏡システム100によって生成された光学的に切片化された回折限界ライン共焦点画像が得られる。上述したように、高速シャッタ102は、シャッタ処理された照明ライン走査113がサンプル108に対して左から右に走査されて、疎な周期的照明パターンが生成されるように、レーザビーム112をブランキングする。例えば、図2Bに示すように、シャッタ処理された照明ライン走査113によって生成された疎な周期的照明パターン116A、116B、及び116C(φ1、φ2、及びφ3で示される)の各々は、互いに対して約120度位相シフトされている。しかしながら、他の実施形態では、任意の複数の位相シフトが、顕微鏡システム100によって生成された疎な周期的照明パターンに適用されてもよい。位相がシフトされると、疎な周期的照明パターン116A、116B、及び116Cの各々は共に合成されて、図2Cに示すように、ライン走査の方向(例えば、1つの空間次元)の空間分解能が、回折限界ライン共焦点画像304よりも約2倍増加した一次元超解像画像306を生成する。
【0017】
上述したように、また図3に示すように、訓練データセット300は、複数のマッチングされたデータ訓練ペア301A~301Nを含み、マッチングされたデータ訓練ペア301の各々は、あるサンプル又はイメージタイプの回折限界ライン共焦点画像304と、上述した位相シフト法を用いたそのサンプル又はイメージタイプの回折限界共焦点画像304の対応する一次元超解像画像306とから構成される。基礎となるサンプル又はイメージタイプが好ましい配向を示さないという事実から、十分な数のマッチングされたデータ訓練ペア301を得ることができるように、十分な範囲のランダムな配向のサンプル又はイメージタイプを容易にサンプリングできることが示唆される。
【0018】
例えば、図3に示すように、訓練データペア301Aは、第1の方向におけるサンプル又はイメージタイプの回折限界共焦点画像304Aと、それに対応する一次元超解像画像306Bとから構成される。一方、マッチングされたデータ訓練ペア301Bは、第2の方向におけるサンプル又はイメージタイプの回折限界ライン共焦点画像304Bと、それに対応する一次元超解像画像306Bとから構成される。このプロセスは、サンプル又はイメージタイプが異なる方向で走査され、必要な数のマッチングされたデータ訓練ペア301Nが得られるまで、N回繰り返される。図示されるように、蛍光標識された構造(グレー)を有するN個のサンプル(例えば、細胞の画像)が撮像されて、回折限界ライン共焦点画像304A、304Bが得られる。これらの画像304A、304Bは、図2A図2Cに示すように処理されて、画像304A、304B等の対応する一次元超解像画像306A、306B等を生成し、画像306A、306B等はそれぞれの訓練データペア301A、301B等を生成する。上述したように、回折限界共焦点画像304は、ライン共焦点顕微鏡システム100を用いて水平方向にライン走査することによって得られる。あるいは、図3のように疎なライン照明構造を有する一連の画像を後処理することにより、水平方向に沿って解像度が向上した図3の右列に沿った画像が得られる。
【0019】
図4を参照すると、特定の種類のサンプル又はイメージタイプに対して十分な数のマッチングされたデータ訓練ペア301が生成されると、マッチングされたデータ訓練ペア301の訓練データセット300は、方法200を使用して、ニューラルネットワーク302(例えば、U-Net又はRCAN)を訓練するために使用され、ニューラルネットワーク302によって以前に評価されたことはないが、ニューラルネットワーク302が訓練されたサンプル又はイメージタイプの種類に類似する回折限界ライン共焦点画像入力307の評価のみに基づいて構築された一次元超解像画像308を「予測」する。図5Bに示すように、訓練済みニューラルネットワーク302Aは、訓練済みニューラルネットワーク302Aへの回折限界ライン共焦点画像入力307の評価のみに基づいて、一次元超解像画像308の高精度のレンダリングを生成することができる。
【0020】
図5A図5Cを参照すると、訓練済みニューラルネットワーク302Aのテストが、シミュレートされたデータを使用して実施された。回折限界ライン共焦点画像入力307(図5A)のドット、ライン、リング、及び実線の円の混合構造を含むシミュレートされたデータのぼやけた画像が、訓練済みニューラルネットワーク302Aに入力された。訓練済みニューラルネットワーク302Aにより、一次元超解像画像の正解(図5C)と同等の空間分解能を有する一次元超解像画像出力308(図5B)が生成された。シミュレートデータを用いた、訓練済みニューラルネットワーク302Aのディープラーニング出力と正解出力との比較は、訓練済みニューラルネットワーク302Aによって生成されたディープラーニング出力308が、実際の正解の一次元超解像画像306に非常に類似した高精度のレンダリングであることを示している。
【0021】
図6A及び図6Bを参照すると、方法400として図示された本発明の概念の別の態様では、顕微鏡システム100から得られたサンプル又はイメージタイプの回折限界ライン共焦点画像304を、異なる方向(例えば、0度、45度、90度、及び135度)に沿って回転させて、訓練済みニューラルネットワーク302Aによってそれらの特定の方向に配向させた一連の「生成された(生成済み)」一次元超解像画像308A~308Dを生成することができる。図6Bに示すように、訓練済みニューラルネットワーク302Aによって生成された異なる方向でのこれらの一次元超解像画像308A~308Dは、0度に配向された元の一次元超解像画像308のフレームに回転して戻すことができ、ジョイント逆畳み込み演算(ジョイントデコンボリューション演算、joint deconvolution operation)を使用して、例えば、リチャードソン-ルーシーアルゴリズムを用いて、合成されて、各方向に沿って最良の空間分解能を有する等方的な超解像画像310を生じさせる。一態様では、異なる配向の少なくとも2つの回折限界ライン共焦点画像304を訓練済みニューラルネットワーク302Aに入力することにより、後でジョイント逆畳み込み演算を使用して合成されたときに、それらの方向に沿って高められた空間分解能を有する等方的な超解像画像310が生成される。
【0022】
図7A図7Cは、異なる方向又は異なる軸に沿って一次元空間分解能が向上された一連のディープラーニング出力(例えば、異なる方向における対応する回折限界ライン共焦点画像304に基づいて生成された一次元超解像画像308)を合成することによる等方的な解像度復元の一例を示す。図7Aは、ドット、ライン、リング、及び実線の円の混合物を用いてシミュレートされ、回折限界点広がり関数(PSF:point spread function)でぼかされ、画像にポアソンノイズ及びガウシアンノイズを加えることによって劣化された未加工の入力画像である。図7Bは、図6Aに示す方法ステップを実行した後、それぞれ0度、45度、90度、及び135度に配向された4つの「生成された」一次元超解像画像308A~308Dを示す。図6Bに示すように、これらの一次元超解像画像308A~308Dの逆畳み込み演算により、図7Cに示すような等方的な二次元超解像画像310が得られる。ニューラルネットワーク302Aが訓練された後、ベースとなる回折限界ライン共焦点画像304に対する速度の損失又は線量の増加なしに、訓練済みニューラルネットワーク302Aによって一次元超解像画像308が生成され得ることが見出された。
【0023】
図8を参照すると、訓練済みニューラルネットワーク302Aに入力された回折限界共焦点画像入力307のデノボ評価(de novo evaluation)に基づいて一次元超解像画像308を予測し生成するために、ニューラルネットワーク302を訓練する本開示の方法の有効性を証明するために、実データを使用するテストが実施された。具体的には、図8の上段は、位相シフトφ1、φ2、及びφ3における共焦点ライン走査の照明パターンを示し、中段は、微小管マーカを有する細胞の実際の蛍光画像と、φ1画像、φ2画像、及びφ3画像がこれらの実際の蛍光画像においてどのように現れるかを示す。最後に、下段は、回折限界ライン共焦点画像(図8の左下段)と、一次元(この例では、ライン走査が行われた「y」方向)に沿った解像度の向上をもたらす局所的縮約演算(local contraction operation)が適用された対応する一次元超解像画像306(図8の右下段)とを示す。
【0024】
図9A図9Cは、図7A図7Cに示すテストに類似する実データを使用するテストの画像である。図示されるように、図9A図9Cの上段はそれぞれ、回折限界モードで撮影された微小管の蛍光画像304(図9A)、回折限界モードで撮影された微小管の蛍光画像304(図9A)の評価に基づく、訓練済みニューラルネットワーク302Aによる微小管の蛍光回折限界ライン共焦点画像304の一次元超解像画像308のディープラーニング出力(図9B)、及び局所的縮約演算を使用して強調された一次元超解像画像を示す正解(図9C)を示している。図9Aの下段は、訓練済みニューラルネットワーク302Aによって評価される前の、訓練済みニューラルネットワーク302Aへの回折限界共焦点入力のフーリエ変換である。同様に、図9B及び図9Cの下段は、対応する上段で生成された画像の対応するフーリエ変換を示しており、それぞれ一次元(例えば、垂直方向)解像度の向上を示している。
【0025】
図10A図10Cは、実データではなくシミュレートされたデータが使用された図7A図7Cに示すテストに類似する、実データを使用するテストの画像である。図10Aの上段は回折限界画像の入力であり、一方、図10Bは入力画像10Aが4つの異なる方向(それぞれ0度、45度、90度、及び135度)に沿って回転された後の、訓練済みニューラルネットワーク302Aの出力である「生成された」一次元超解像画像308であり、一方、図10Cの上段は、ジョイント逆畳み込み演算を使用して生成された等方的な二次元超解像画像310である。図10A及び図10Cの下段はフーリエ変換を示し、図10Bのフーリエ変換は、図10Cの上段に示す画像の解像度が、図10Aの上段に示す回折限界画像よりも良好であることを示す。
【0026】
一態様では、イメージタイプは、ライン共焦点顕微鏡100によって照明されたときに蛍光発光を発するサンプル(例えば、細胞)と同じタイプであってもよい。
【0027】
特定の実施形態が例示され説明されてきたが、当業者には明らかであるように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変形が可能であることを上記から理解されよう。そのような変更及び変形は、本明細書に添付される特許請求の範囲において定義される本発明の範囲及び教示の範囲内である。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
【国際調査報告】