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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】接着フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20240115BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20240115BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20240115BHJP
【FI】
B32B5/26
C08G65/40
B32B27/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542471
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2022050342
(87)【国際公開番号】W WO2022152653
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/136,227
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21170100.8
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルイス, シャンタル
(72)【発明者】
【氏名】プラット, ジェームズ フランシス
(72)【発明者】
【氏名】エル-ヒブリ, モハマド ジャマル
【テーマコード(参考)】
4F100
4J005
【Fターム(参考)】
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK33
4F100AK33B
4F100AK45
4F100AK45A
4F100AK45C
4F100AK46
4F100AK46A
4F100AK46C
4F100AK49
4F100AK49A
4F100AK49C
4F100AK54
4F100AK54A
4F100AK54C
4F100AK56
4F100AK56A
4F100AK56C
4F100AK57
4F100AK57A
4F100AK57C
4F100AS00
4F100AS00A
4F100AS00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DG01C
4F100EH17
4F100EJ42
4F100GB31
4F100JA05
4F100JA06
4F100JK02
4J005AA24
4J005BA00
4J005BB01
4J005BB02
(57)【要約】
PEEK-PEoEKコポリマーを含む接着フィルムは、ポリアリールエーテルケトンの化学特性と適合し、それによって高い破壊靭性と全体的に良好な機械的特性を有する接合されたポリアリールエーテルケトンポリマー部品を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のPEEK-PEoEKコポリマーを含むフィルムであって、前記PEEK-PEoEKコポリマーの繰り返し単位の総モル数に対して、合計で少なくとも50モル%の繰り返し単位(RPEEK)及び繰り返し単位(RPEoEK)を含み、
- 繰り返し単位(RPEEK)は、式:
【化1】
の繰り返し単位であり、
- 繰り返し単位(RPEoEK)は、式:
【化2】
の繰り返し単位であり、
式中、各R及びRは、互いに同じであるか又は異なり、各出現時に、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
各a及びbは、0~4の範囲の整数からなる群から独立して選択され、
前記PEEK-PEoEKコポリマーが、95/5~5/95の範囲のモル比(RPEEK)/(RPEoEK)で前記繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEoEK)を含むフィルム。
【請求項2】
前記繰り返し単位(RPEEK)が、式:
【化3】
の繰り返し単位であり、及び/又は
前記繰り返し単位(RPEoEK)が、式:
【化4】
の繰り返し単位である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記PEEK-PEoEKコポリマーが、90/10~55/45、好ましくは85/15~60/40、より好ましくは80/20~65/35の範囲のモル比(RPEEK)/(RPEoEK)を有する、請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記PEEK-PEoEKコポリマーが、本明細書の方法に従って測定した場合に、320℃以下、好ましくは315℃以下の融解温度(T)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
前記PEEK-PEoEKコポリマーが、150℃以下の温度で測定したときに、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中で0.2重量%未満の溶解度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
15~800μmの厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
ポリマー(P1)を含む第1の構成要素と、ポリマー(P2)を含む第2の構成要素と、前記第1及び第2の構成要素の間に配置され、接着された請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルムとを含む組立体。
【請求項8】
ポリマー(P1)及びポリマー(P2)が、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテル、ポリカーボネート、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリーレン(ポリフェニレン)、ポリフタルアミド、多環芳香族エステル及びこれらのブレンドからなる群から独立して選択される、請求項7に記載の組立体。
【請求項9】
ポリマー(P1)及びポリマー(P2)が、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタルアミド、及びこれらのブレンドからなる群から独立して選択される、請求項7又は8に記載の組立体。
【請求項10】
ポリマー(P1)及びポリマー(P2)が、55/45~85/15、好ましくは57/43~80/20、より好ましくは58/42~75/25の範囲のT/I比を有するPEKKポリマー及びこれらの混合物から独立して選択される、請求項7~9のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項11】
前記第1の構成要素が、繊維及びポリマー(P1)を含む1つ以上の層を含む複合材料であり、並びに/又は、前記第2の構成要素が、繊維及びポリマー(P2)を含む1つ以上の層を含む複合材料である、請求項7~10のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項12】
前記繊維が、炭素繊維又はガラス繊維、好ましくは連続炭素繊維又は連続ガラス繊維である、請求項11に記載の組立体。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか一項に記載の組立体の作製方法であって、ポリマー(P1)を含む第1の構成要素とポリマー(P2)を含む第2の構成要素との間に請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルムを配置する工程と、前記フィルムを融解するには好適であるが、ポリマー(P1)及びポリマー(P2)を融解しない温度(T )に前記フィルムを晒す工程とを含む方法。
【請求項14】
温度(T )が、前記フィルムの前記融解温度よりも高く、好ましくはポリマー(P1)及びポリマー(P2)の前記融解温度よりも低い、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ポリマー(P1)を含む第1の構成要素とポリマー(P2)を含む第2の構成要素との間に前記フィルムを配置する工程と、280℃~315℃の範囲内の温度(T )に前記フィルムを晒す工程とを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記フィルムが前記温度(T )に晒されている間に圧力が加えられ、前記構成要素を固結する、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国で2021年1月12日に出願された米国仮特許出願第63/136,227号及び欧州で2021年4月23日に出願された欧州特許出願公開第21170100.8号の優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、接着フィルムを製造するためのPEEK-PEoEKコポリマーの使用、及び複合体、又は積層体などの組立体におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの産業、特に航空宇宙産業内では、積層体、複合体、及び多層の異なる材料からなる他の組立体が大いに使用されており、各々の材料が最終組立体に特定の特性をもたらしている。複合体又は積層体を利用するのに必要とされ得る異なる層の間に、満足度の高い直接的な接着又は結合を達成することは、しばしば困難であることが証明されている。複合層の間で適合性が乏しいと、そのような組立体に提示される特性が制限される可能性がある。特に、特定の熱可塑性ポリマー(特に結晶性及び/又は高温熱可塑性物質)は、他の材料との接着性に乏しいことが示されており、組立体を極めて厳しい環境で使用する状況に置かれた場合、剥離及び構造的一体性が失われるという問題がもたらされる。
【0004】
熱可塑性構成要素を共に固定及び/又は接着するための多数の技術が提案されている。特に、第1及び第2の熱可塑性構成要素を共に固定するために、超音波溶接、誘導溶接及び熱板溶接などの多くの異なる溶接プロセスが提案されている。しかしながら、第1及び第2の部品が溶接領域で局所的に融解することにより、部品の一体性及び/又は形状に影響を及ぼす可能性がある。また、溶接領域の熱可塑性物質を融解及び/又は冷却する間に、部品に残留応力が蓄積することによって、変形が生じる可能性がある。
【0005】
溶接プロセスに関連する問題のいくつかに対処するために、フィルム及び/又は接着剤を部品及び/又は層の間に設け、それらを共に接着することが提案されている。
【0006】
国際公開第11/001103A2号パンフレットには、複合体及び積層体などの組立体において、非晶質のポリエーテルケトンケトン(PEKK)フィルムを結合層として使用することが記載されている。しかしながら、フィルムが非晶質性である場合、航空宇宙産業において構造物用途に使用するのに好適であるとは見なされない。一般的見地として、非晶質材料を複合体の接着層として使用すると、耐溶剤性などの特性が相対的に低い、構造物の最も弱い部分となる可能性がある。従って、接合部が液体に腐食されやすくなり、構造物の早すぎる破損をもたらす可能性がある。
【0007】
国際公開第2015/198063A1号パンフレットには、ポリアリールエーテルケトンポリマー、特にPEEKを含む第1の部品と第2の部品との間の接着剤として、PEEK-PEDEKポリマー、すなわち、式
-O-Ph-O-Ph-CO-Ph- I
の繰り返し単位と、式
-O-Ph-Ph-O-Ph-CO-Ph- IIの繰り返し単位
[式中、Phはフェニレン部分を表す]とを有するポリマーを含む、ポリマー材料の使用が開示されている。しかしながら、PEEK-PEDEKポリマーの機械的特性は、他のポリアリールエーテルケトンポリマーほど優れたものではない。
【0008】
従って、良好な耐化学性及び機械的特性が付与されたポリアリールエーテルケトンポリマーから作製された部品を共に接着することができるフィルム及び/又は層を提供する必要性が依然として存在する。
【0009】
加工温度を下げて複合体部品を作製するためには、従来使用されていたポリアリールエーテルケトンポリマーの融解温度よりも低い融解温度を有するポリアリールエーテルケトンポリマーを使用することが有利となる。従って、低融点のポリアリールエーテルケトンポリマーをベースにした部品を適切に接着することができるように、融解温度が310℃未満の半結晶性ポリマーを含む接着フィルムが必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、PEEK-PEoEKコポリマーを含むフィルム、特に90/10~55/45、好ましくは85/15~60/40の範囲のモル比(RPEEK)/(RPEoEK)を有するフィルムは、ポリアリールエーテルケトンの化学特性に適合し、それによって高い破壊靭性を有する接合されたポリアリールエーテルケトンポリマー部品を提供し、DSC(10℃/分の冷却速度)で測定したときに4J/gの最低結晶化レベルを有し、それによって卓越した機械的性能を備えた複合材料を提供することが判明した。
【0011】
従って、本発明の第1の目的は、PEEK-PEoEKコポリマーを含むフィルムである。このフィルムは、接着フィルムとして使用するのに好適であり、本明細書の残りの部分では、「フィルム」及び「接着フィルム」という用語は、互換的に使用することができる。
【0012】
本発明を説明する目的のために、
- 化合物、化学式又は式の一部を特定する記号又は数字の前後の括弧の使用は、それらの記号又は数字を本文の残りの部分からよりよく区別する目的を有するにすぎず、従って、前記括弧は省略することも可能であり、
- 数値範囲が示されている場合は、範囲の端点が含まれ、
- 「PEEK-PEoEKコポリマーを含む」という表現は、組成物に1つ又は2つ以上のPEEK-PEoEKコポリマーが含まれていることを意味する。
【0013】
PEEK-PEoEKコポリマー
本明細書で使用される「PEEK-PEoEKコポリマー」という表現は、PEEK-PEoEKコポリマーの繰り返し単位の総モル数に対して、合計で少なくとも50モル%の繰り返し単位(RPEEK)及び繰り返し単位(RPEoEK)を、95/5~5/95の範囲のモル比(RPEEK)/(RPEoEK)で含むポリマーを指す。いくつかの実施形態では、PEEK-PEoEKコポリマーは、PEEK-PEoEKコポリマーの繰り返し単位の総モル数に対して、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、及び最も好ましくは少なくとも99モル%の繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEoEK)を含む。
【0014】
繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEoEK)は、90/10~55/45の範囲のモル比(RPEEK)/(RPEoEK)でPEEK-PEoEKコポリマーに存在する。なお、本発明のフィルムに好適な好ましいPEEK-PEoEKコポリマーは、モル比(RPEEK)/(RPEoEK)が、好ましくは85/15~55/45超、より好ましくは85/15~60/40、なおより好ましくは80/20~65/35の範囲のものであると一般に理解される。
【0015】
繰り返し単位(RPEEK)は、式:
【化1】
によって表され、
繰り返し単位(RPEoEK)は、式:
【化2】
によって表され、
式中、各R及びRは、互いに同じであるか又は異なり、各出現時に、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
各a及びbは、0~4の範囲の整数からなる群から独立して選択される。
【0016】
いくつかの好ましい実施形態では、式(A)において、各aはゼロであり、そのため、繰り返し単位(RPEEK)は、式:
【化3】
の繰り返し単位である。
【0017】
いくつかの好ましい実施形態では、式(B)において、各bはゼロであり、そのため、繰り返し単位(RPEoEK)は、式:
【化4】
の繰り返し単位である。
【0018】
好ましくは、繰り返し単位(RPEEK)は、式(A-1)の繰り返し単位であり、繰り返し単位(RPEoEK)は、式(B-1)の繰り返し単位である。
【0019】
本発明のPEEK-PEoEKコポリマーは、上記で詳述したような繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEoEK)とは異なる繰り返し単位(RPAEK)を更に含み得る。そのような場合、繰り返し単位(RPAEK)の量は、PEEK-PEoEKコポリマーの繰り返し単位の総モル数に対して、0.1~50モル%未満、好ましくは10モル%未満、より好ましくは5モル%未満、最も好ましくは2モル%未満で含み得る。
【0020】
繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEoEK)とは異なる繰り返し単位(RPAEK)が本発明のPEEK-PEoEKコポリマーに存在する場合、上記で説明したような単位(RPEEK)及び(RPEoEK)とは異なるこれらの繰り返し単位(RPAEK)は、一般に、下記の本明細書の次式(K-A)~(K-M):
【化5】
【化6】
【化7】
のいずれかと適合し、
式中、上記の式(K-A)~(K-M)の各々において、互いに等しいか又は異なるR’の各々は、各出現時に、任意選択により1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含むC1~C12アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアリール基;スルホン酸及びスルホン酸基;ホスホン酸及びホスホン酸基;アミン及び第四級アンモニウム基から独立して選択され;並びに、互いに等しいか又は異なるj’の各々は、0及び1~4の整数から独立して各出現時に選択され、好ましくはj’はゼロと等しい。繰り返し単位(RPAEK)において、それぞれのフェニレン部分は、繰り返し単位内のR’とは異なる他の部分に、1,2結合、1,4結合又は1,3結合を独立して有してもよい。
【0021】
好ましくは、本発明のフィルムに使用されるPEEK-PEoEKコポリマーは、上記で詳述したような繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEoEK)から本質的に構成される。従って、いくつかの好ましい実施形態では、PEEK-PEoEKコポリマーは、繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEoEK)から本質的に構成される。本明細書で使用される「繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEoEK)から本質的に構成される」という表現は、上記で詳述したような繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEoEK)とは異なる任意の追加の繰り返し単位が、PEEK-PEoEKコポリマーの繰り返し単位の総モル数に対して、最大2モル%、最大1モル%又は最大0.5モル%の量で、且つPEEK-PEoEKコポリマーの有利な特性を実質的に変更しないようにPEEK-PEoEKコポリマーに存在し得ることを意味する。
【0022】
好ましいPEEK-PEoEKコポリマーは、一般に、150℃以下の温度で測定したときに、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中で0.2重量%未満の溶解度を有する。いくつかの実施形態では、接着フィルムに関連して使用されるPEEK-PEoEKコポリマーは、有利なことに、上記に列挙した溶媒中では実質的に不溶であり、これにより、改善された耐化学性、及び/又は、場合によっては耐液体性が求められる用途で使用するのに特に適したものとなる。
【0023】
いくつかの実施形態では、PEEK-PEoEKコポリマーは、ASTM D3418-03、E1356-03、E794-06に従って示差走査熱量測定(DSC)で測定して、320℃以下、好ましくは315℃以下の融解温度(T)を有する。
【0024】
融解温度T、ガラス転移温度Tg、及び融解熱(ΔH)は、30℃から400℃までのスイープで、10℃/分の加熱及び冷却速度を適用して、ASTM D3418-03、E1356-03、E793-06、E794-06基準に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定される。
【0025】
有利な接着フィルムは、320℃以下、好ましくは310℃以下及び/又は少なくとも270℃の融解温度(T)を有するPEEK-PEoEKコポリマーによって作製された。
【0026】
いくつかの実施形態では、PEEK-PEoEKコポリマーは、少なくとも4J/g、好ましくは少なくとも5J/g、又は少なくとも10J/g、より好ましくは少なくとも15J/gの融解熱(ΔH)を有する。いくつかの態様では、PEEK-PEoEKコポリマーは、最大75J/g、好ましくは最大65J/gの融解熱(ΔH)を有し得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、PEEK-PEoEKコポリマーは、ASTM D3418-03及びE1356-03に従って示差走査熱量計(DSC)で測定した場合、165℃以下、好ましくは160℃以下、155℃以下、又は150℃以下のガラス転移温度(T)を有する。いくつかの実施形態では、PEEK-PEoEKコポリマーは、ASTM D3418-03及びE1356-03に従って示差走査熱量計(DSC)で測定した場合、130℃以上、好ましくは135℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0028】
必要に応じて、PEEK-PEoEKコポリマーは、より高い分子量か又はより低い分子量で製造して、融解したコポリマー粘度を非常に広範囲で調整するようにしてもよい。いくつかの実施形態では、PEEK-PEoEKコポリマーは、410℃、46.3s-1でASTM D3835に従って測定した場合、少なくとも0.10kN/m、より好ましくは少なくとも0.20kN/m、及び最も好ましくは少なくとも0.25kN/mの融解粘度(MV)を有し得る。いくつかの実施形態では、PEEK-PEoEKコポリマーは、410℃、46.3s-1でASTM D3835に従って測定した場合、最大1.50kN/m、より好ましくは少なくとも1.30kN/m、及び最も好ましくは少なくとも1.10kN/mの融解粘度(MV)を有し得る。
【0029】
PEEK-PEoEKコポリマーの融液相での安定性は、46.3s-1の剪断速度下で410℃での40分の滞留時間後に測定された融解粘度と、同一の温度及び剪断速度での10分の滞留時間後に測定された融解粘度の間の比率として測定することができ、前記融解粘度は、円錐ダイ(直径=1.016mm、長さ=20.32mm、円錐角=120°)を使用するASTM D3835基準に従って、キャピラリーレオメーターを使用することで測定される。PEEK-PEoEKコポリマーの融解安定性は、好ましくは1.23未満、好ましくは1.22未満、より好ましくは1.21未満である。好ましくは、融解安定性は0.60より高く、より好ましくは0.65より高く、最も好ましくは0.70より高い。
【0030】
PEEK-PEoEKコポリマーのFT-IR分析は、様々なモノマーの連結、末端基の特性、欠陥の有無を含む、コポリマーの微細構造に関する有益な情報を提供することができる。特定の好ましい実施形態によれば、PEEK-PEoEKコポリマーは、ポリマー粉末上でATRモードで600~1,000cm-1で記録されたときのそのFT-IRスペクトルが、以下の不等式を満たすような微細構造を有する:
(i)
【数1】
(式中、
【数2】
は700cm-1における吸光度であり、
【数3】
は704cm-1における吸光度である);
(ii)
【数4】
(式中、
【数5】
は816cm-1における吸光度であり、
【数6】
は835cm-1における吸光度である);
(iii)
【数7】
(式中、
【数8】
は623cm-1における吸光度であり、
【数9】
は557cm-1における吸光度である);
(iv)
【数10】
(式中、
【数11】
は928cm-1における吸光度であり、
【数12】
は924cm-1における吸光度である)。
【0031】
上記の分光学的特徴を特徴とする特定の微細構造(モノマーの連結、末端基及び欠陥を含む)を有するPEEK-PEoEKコポリマーは、改善された化学的及び機械的性能を提供することができる。
【0032】
PEEK-PEoEKコポリマーは、既知のカルシウム含有量の標準で校正された誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)によって測定した場合に、5ppm未満のカルシウム含有量を有するものであってよい。これらの好ましい実施形態によれば、PEEK-PEoEKコポリマーは、4ppm未満、3ppm未満、又は更により好ましくは2.5ppm未満のカルシウム含有量を有し得る。
【0033】
これらの好ましい実施形態では、PEEK-PEoEKコポリマーは、既知のナトリウム含有量の標準で校正された誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)によって測定した場合に、1,000ppm未満のナトリウム含有量を有するものであってもよい。好ましくは、PEEK-PEoEKコポリマーは、900ppm未満、800ppm未満、又は更により好ましくは500ppm未満のナトリウム含有量を有し得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、PEEK-PEoEKコポリマーは、既知のリン含有量の標準で校正された誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)によって測定した場合に、少なくとも6ppmのリン含有量を有するものであってよい。好ましくは、PEEK-PEoEKコポリマーは、少なくとも10ppm、少なくとも15ppm、又は更により好ましくは少なくとも20ppmのリン含有量を有する。
【0035】
本発明の接着フィルムでは、熱安定性が向上したPEEK-PEoEKコポリマーを選択することが有利となる場合があり、このことは、接着フィルムによって接合される構成要素が高融解温度のポリマーである場合、及び/又は最終部品が高い動作温度に耐性がなくてはならない場合に特に有益であり得る。従って、いくつかの実施形態では、PEEK-PEoEKコポリマーは、ASTM D3850に従ってTGAとして測定した場合に少なくとも550℃、より好ましくは少なくとも551℃、及び更により好ましくは少なくとも552℃のピーク分解温度を有する。
【0036】
PEEK-PEoEKコポリマーを作製するのに適した方法は、当該技術分野で一般に知られている。一般に、本明細書で使用されるPEEK-PEoEKコポリマーは、式(C):
【化8】
の少なくとも1種のジフルオロ化合物を、式(D)及び(E):
【化9】
のジ-ヒドロキシ化合物の混合物[式中、R、R、及びRは、上記で規定された意味を有し、各c、d、及びeは、0~4の範囲の整数からなる群から独立して選択される]と、90/10~55/45の範囲のモル比(D)/(E)で、例えば、NaCO、KCO、又はこれらの組み合わせなどの塩基の存在下の極性有機溶媒中で反応させることを含む方法によって作製される。c、d及びeのそれぞれは、ゼロであることが好ましい。
【0037】
一実施形態では、本発明のフィルムに使用されるPEEK-PEoEKコポリマーは、国際公開第2020/254097A1号パンフレットに記載されているように調製され、その全内容はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
フィルム組成物及びフィルムを製作する方法
いくつかの実施形態では、本発明のフィルムは、PEEK-PEoEKコポリマー以外の少なくとも1種の添加剤を含む。好適な添加剤としては、(i)染料などの着色剤、(ii)二酸化チタン、硫化亜鉛及び酸化亜鉛などの顔料、(iii)光安定剤、例えば、UV安定剤、(iv)熱安定剤、(v)有機ホスファイト及びホスホナイトなどの酸化防止剤、(vi)酸スカベンジャー、(vii)加工助剤、(viii)核剤、(ix)内部潤滑剤及び/又は外部潤滑剤、(x)難燃剤、(xi)煙抑制剤、(x)帯電防止剤、(xi)ブロッキング防止剤、(xii)カーボンブラック及びカーボンナノフィブリルなどの導電性添加剤、(xiii)可塑剤、(xiv)流動調整剤、(xv)増量剤、(xvi)金属不活性化剤並びに(xvii)シリカなどの流動助剤が含まれるが、それらに限定されない。
【0039】
特定の実施形態によれば、本発明のフィルムは、少なくとも1種の核剤を更に含む。核剤は、ホウ素含有化合物(例えば、窒化ホウ素、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸カルシウムなど)、アルカリ土類金属炭酸塩(例えば、炭酸カルシウムマグネシウム)、酸化物(例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、三酸化アンチモンなど)、シリケート(例えば、タルク、ケイ酸ナトリウムアルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなど)、アルカリ土類金属の塩(例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなど)、窒化物などからなる群から選択され得る。核剤はまた、炭素系であり得る。このカテゴリーの核剤には、グラファイト、グラフェン、グラファイトナノプレートレット及び酸化グラフェンが含まれる。カーボンブラック並びに炭素の他の形態であってもよい。核剤が窒化ホウ素であった場合に特に良好な結果が得られた。
【0040】
典型的には、フィルムは、20重量%未満の添加剤、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、及び更により好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の添加剤を含む。
【0041】
好ましい実施形態では、フィルムは任意の強化用繊維を含まず、すなわち0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満の任意の強化用繊維を含む。「繊維」という用語は、当業者に知られるようなその通常の意味を有し、複合構造物の補強に適した1種以上の繊維材料、すなわち、「強化用繊維」を含み得る。「繊維」という用語は、少なくとも0.5mmの長さを有する有機及び/又は無機の繊維を指すために本明細書では用いられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、フィルムは、2種以上のポリマーのブレンドを含んでもよく、そのうちの1種がPEEK-PEoEKコポリマーである。これらの実施形態によれば、接着フィルムは、PEEK-PEoEKコポリマーとは異なる、40重量%以下(ポリマーマトリックスの総重量を基準として)の少なくとも1種の追加のポリマー成分を含み得る。このような追加のポリマー成分は、有利には、ポリ(アリールエーテルスルホン)(PAES)ポリマー、及びポリ(アリールエーテルケトン)(PAEK)ポリマーからなる群から選択される。追加のポリマー成分がPAESポリマーである場合、有利には、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、及びポリ(エーテルスルホン)(PES)からなる群から選択され得る。追加のポリマー成分がPAEKポリマーである場合、有利には、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)ポリマー、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)ポリマー、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、及びPEEK-PEDEKコポリマーからなる群から選択され得る。追加のポリマー成分としては、ポリエーテルイミド(PEI)又はポリアミドイミドなどのポリイミドも挙げられ得る。
【0043】
代替的な実施形態では、上記で詳述したようなPEEK-PEoEKコポリマーは、接着フィルム中で唯一のポリマー成分である。本明細書で使用される「ポリマー成分」という表現は、繰り返し単位を有し、少なくとも2,000g/モルの分子量を有する化合物を意味する。いくつかの実施形態では、接着フィルムは、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満のPEEK-PEoEKコポリマー以外のポリマー成分を含む。
【0044】
特定の実施形態では、接着フィルムは、少なくとも90重量%のPEEK-PEoEKコポリマーと、少なくとも1種の添加剤及び/又はPEEK-PEoEKコポリマーとは異なる少なくとも1種の追加のポリマー成分とを含む。最も好ましくは、接着フィルムは、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%のPEEK-PEoEKコポリマーと、少なくとも1種の添加剤とを含む。
【0045】
本発明のフィルムは、15~800μm、更に25~600μm、好ましくは30~500μm、より好ましくは40~300μm、最も好ましくは50~250μmの厚さを有し得る。
【0046】
本発明のフィルムは、ポリマー加工における当該技術分野で公知のあらゆる従来の方法によって調製してもよい。
【0047】
接着フィルムの成分は、典型的に、任意選択により一軸延伸又は二軸延伸をしながら、キャスト押出によってフィルムの形態で加工される。本明細書で使用される「フィルムの成分」という表現は、PEEK-PEoEKコポリマーと、任意選択により、少なくとも1種の添加剤、PEEK-PEoEKコポリマーとは異なる少なくとも1種の追加のポリマー成分、又はこれらの組み合わせとを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、フィルムの作製方法は、フィルムの成分の物理的混合物を融解混練することを含む。共回転及び逆回転押出機、一軸スクリュー押出機、コニーダー、ディスクパックプロセッサー並びに様々な他のタイプの押出装置などの従来の融解混練装置を使用することができる。好ましくは、押出機、より好ましくは二軸スクリュー押出機を使用することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、物理的混合物は、押出機内で混練され、その後、ペレット又は顆粒に細断される。その後、顆粒又はペレットを更に加工して、本発明のフィルムを製造することができる。
【0050】
或いは、物理的混合物は、押出機内で混練され、その後フィルムに直接成形される。本発明の接着フィルムの製造に特に適した技術は、融解した組成物を細長い形状のダイを通して押し出して押出テープを得、前記押出テープをキャスト/圧延してフィルムを得ることを伴う。テープは、適切なロールに通すことによって圧延してフィルムにすることができ、ロールは適切な温度で維持することができ、その速度は要求される厚さを達成するように調整することができる。フィルムの厚さは、ダイで調整される。フィルムを固化させるために使用した冷却温度に応じて、完成(押出)形態のフィルムを非晶質又は半結晶にすることができる。
【0051】
有利な実施形態では、フィルムは単層フィルムであり、すなわちPEEK-PEoEKコポリマーを含む1層のみから構成される。
【0052】
組立体の作製方法
本発明の第2の目的は、本発明の第1の目的によるフィルムを使用した組立体の作製方法である。本方法は、ポリマー(P1)を含む第1の構成要素とポリマー(P2)を含む第2の構成要素との間に本発明の第1の目的によるフィルムを配置する工程と、フィルムを融解するには好適であるが、ポリマー(P1)及びポリマー(P2)を融解しない温度(T )にフィルムを晒す工程とを含む。
【0053】
温度(T )は、典型的に、接着フィルムの融解温度よりも高い。温度(T )は、330℃未満、好ましくは320℃未満、より好ましくは310℃未満であってよい。前記温度は、270℃より高くてよい。前記温度は、270℃~330℃の範囲、好ましくは280℃~315℃の範囲であってよい。
【0054】
温度(T )は、好ましくは、ポリマー(P1)及びポリマー(P2)の融解温度よりも低い。
【0055】
本方法は、ポリマー(P1)を含む第1の構成要素とポリマー(P2)を含む第2の構成要素との間にフィルムを配置する工程と、フィルムを融解するには好適であるが、ポリマー(P1)及びポリマー(P2)を融解しない、280℃~315℃の範囲内の温度(T )にフィルムを晒す工程とを含むことが好ましい。
【0056】
好ましくは、本方法は、フィルム並びに前記ポリマー(P1)及び(P2)を前記温度(T )に晒しながら、圧力を加えることによって構成要素を固結し、前記組立体を製造することを含む。従って、本方法は、フィルムを温度(T )に晒しながら、前記第1及び第2の構成要素に圧力を加えることを更に含む。
【0057】
本方法では、融解後の接着フィルムの冷却は、接着フィルム中のPEEK-PEoEKコポリマーが結晶化を生じさせる(すなわち、非晶質にならない)ように制御されることが好ましい。冷却後、フィルムは、本明細書に記載されるように測定して、少なくとも5%、好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、特に少なくとも23%の結晶化度を有することが好ましい。
【0058】
「ポリマー(P1)を含む第1の構成要素」という表現は、少なくとも1つの表面、特にポリマー(P1)を含む接着フィルムと接触する表面を有する構成要素を指すために本明細書で使用される。第1の構成要素は、前記ポリマー(P1)から構成されてもよい。或いは、第1の構成要素は、ポリマー(P1)を含む1つの表面を含む。ポリマー(P1)を含む表面は、典型的に、接着フィルムとの接着を形成するのに好適な厚さを有する。前記厚さは、便宜上5μm以上であり得る。
【0059】
「ポリマー(P2)を含む第2の構成要素」という表現は、少なくとも1つの表面、特にポリマー(P2)を含む接着フィルムと接触する表面を有する構成要素を指すために本明細書で使用される。
【0060】
第2の構成要素は、前記ポリマー(P2)から構成されてもよい。或いは、第2の構成要素は、ポリマー(P2)を含む1つの表面を含む。ポリマー(P2)を含む表面は、典型的に、接着フィルムとの接着を形成するのに好適な厚さを有する。前記厚さは、便宜上5μm以上であり得る。
【0061】
ポリマー(P1)及びポリマー(P2)は、同一であっても、又は異なっていてもよい。
【0062】
ポリマー(P1)及びポリマー(P2)は、結晶性及び/又は高温熱可塑性ポリマーからなる群から独立して選択され得る。注目すべき非限定的な例としては、ポリ(アリールエーテルケトン)、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテル、ポリカーボネート、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリーレン(ポリフェニレン)、ポリアミド、ポリフタルアミド、多環芳香族エステル及びこれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
好ましい実施形態では、ポリマー(P1)及びポリマー(P2)は、ポリアリールエーテルケトン(以下「PAEK」と称する)、並びにポリアリールエーテルケトンのブレンドからなる群から独立して選択される。
【0064】
好適なPAEKは、上記で定義されるような式(A)及び(K-A)~(K-M)からなる群から選択される式で表される繰り返し単位(RPAEK)の少なくとも50重量%を含むポリマーである。いくつかの実施形態では、PAEKは、少なくとも60重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%又は少なくとも98重量%の繰り返し単位(RPAEK)を有する。
【0065】
PAEKポリマーは、ホモポリマー、ランダム、交互又はブロックコポリマーであってよい。PAEKポリマーがコポリマーである場合、(i)式(A)及び(K-A)~(K-M)から選択される少なくとも2つの異なる式の繰り返し単位(RPAEK)を含み得る。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、繰り返し単位(RPAEK)は、式(J’-A)~(J’-D)の単位:
【化10】
からなる群から選択される。
【0067】
PAEKポリマーは、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)ポリマーであってよい。本明細書で使用される「PEEKポリマー」という用語は、少なくとも50重量%の繰り返し単位が、式J’-Aの繰り返し単位(RPAEK)、特に上記で定義されるような式(A-1)の繰り返し単位(RPAEK)である任意のポリマーを指す。いくつかの実施形態では、PEEKポリマーの繰り返し単位の少なくとも75重量%、少なくとも85重量%、少なくとも95重量%、又は少なくとも99重量%が式J’-Aの繰り返し単位である。いくつかの実施形態では、PEEKポリマーの99.99重量%が式J’-Aの繰り返し単位、特に式(A-1)の繰り返し単位(RPAEK)である。
【0068】
PAEKポリマーは、ポリエーテルケトンケトン(「PEKK」)ポリマーであってよい。
【0069】
本明細書で使用される「PEKKポリマー」という用語は、繰り返し単位(R)及び繰り返し単位(R)を、PEKKポリマーの総モル数を基準として、少なくとも50モル%の総量で含む任意のポリマーを指し、繰り返し単位(R)は、式(T):
【化11】
で表され、
繰り返し単位(R)は、式(I):
【化12】
で表され、
式中、
- 式(T)及び式(I)の各々で、各R及びRは、それぞれの場合において、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- 各i及びjは、それぞれの場合において、0~4から独立して選択される整数である。
【0070】
誤解を避けるために、繰り返し単位(R)のモル含有量は、
【数13】
として定義され、
繰り返し単位(R)のモル含有量は、
【数14】
として定義され、
故に、T/I比は、
【数15】
として定義される。
【0071】
一実施形態によれば、各R及びR基のi及びjは、ゼロである。言い換えれば、繰り返し単位(R)及び(R)は、どちらも非置換である。この実施形態によれば、繰り返し単位(R)及び(R)は、それぞれ式(T’)及び(I’):
【化13】
で表される。
【0072】
特定の実施形態では、ポリマー(P1)及びポリマー(P2)は、55/45~85/15、好ましくは57/43~80/20、より好ましくは58/42~75/25の範囲のT/I比を有する、上記に定義されるようなPEKKポリマーから独立して選択される。
【0073】
他の実施形態では、ポリマー(P1)及びポリマー(P2)は、各PEKKポリマーがT/I比によって特徴付けられる第1及び第2のPEKKポリマーを含む組成物から独立して選択されてもよく、第1のPEKKポリマーのT/I比は、第2のPEKKポリマー、特に330℃以下の融解温度を有するそれらの組成物のT/I比とは異なる。前記実施形態の一態様では、第1のPEKKポリマーは、少なくとも50/50、好ましくは少なくとも54/46、より好ましくは少なくとも56/44;最も好ましくは少なくとも57/43の(T/I)比、及び/又は最大64/36、好ましくは最大63/37、より好ましくは最大62/38の(T/I)低を有することが好ましい。第2のPEKKポリマーは、少なくとも65/35、好ましくは少なくとも66/34、より好ましくは少なくとも67/33の(T/I)比、及び/又は最大85/15、好ましくは最大83/17、より好ましくは最大82/18の(T/I)高を有することが好ましい。
【0074】
前記実施形態の更なる態様では、以下の不等式が満たされる:(第2のPEKKポリマーの繰り返し単位(R)のモル含有量)-(第1のPEKKポリマーの繰り返し単位(R)のモル含有量)≦20モル%、好ましくは≦17モル%、より好ましくは≦15モル%。典型的には、以下の不等式も成立する:(第2のPEKKポリマーの繰り返し単位(R)のモル含有量)-(第1のPEKKポリマーの繰り返し単位(R)のモル含有量)≧3モル%、好ましくは≧4モル%、より好ましくは≧5モル%。
【0075】
本発明の一実施形態では、ポリマーPEKKは求核PEKKであり、このことは、ジ-ヒドロキシ及びジ-フルオロベンゾイル含有芳香族化合物並びに/又はヒドロキシル-フルオロベンゾイル含有芳香族化合物の重縮合によってポリマーPEKKが生成されることを意味する。
【0076】
代替的実施形態では、ポリマーPEKKは、求電子性のPEKKである。
【0077】
なお他の実施形態では、ポリマー(PAEK)は、ポリ(エーテルケトン)[ポリマー(PEK)]である。本明細書で使用される「ポリ(エーテルケトン)」及び「ポリマー(PEK)」という表現は、繰り返し単位(RPAEK)の50モル%超が、式(K’-C):
【化14】
の繰り返し単位である任意のポリマーを意味し、
モル%は、ポリマー(PEK)の繰り返し単位の総モル数を基準とする。
【0078】
これらの実施形態によれば、繰り返し単位(RPAEK)の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は更に実質的に全てが、繰り返し単位(K’-C)である。好ましいポリマー(PEK)は、実質的に全ての繰り返し単位が式(K’-C)の単位であるポリマーであり、末端基、欠陥及び少量の不純物が存在し得ることが理解される。
【0079】
いくつかの実施形態では、ポリマー(PAEK)は、ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)[ポリマー(PEDEK)]である。本明細書で使用される「ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)」又は「ポリマー(PEDEK)」という表現は、繰り返し単位(R)の50モル%超が、式(K’-D):
【化15】
の繰り返し単位である任意のポリマーを意味し、
モル%は、ポリマー(PEDEK)の繰り返し単位の総モル数を基準とする。
【0080】
これらの実施形態によれば、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%、又は更に実質的に全ての繰り返し単位(R)が、上記で詳述したような繰り返し単位(K’-D)である。好ましいポリマー(PEDEK)は、実質的に全ての繰り返し単位が式(K’-D)の単位であるポリマーであり、末端基、欠陥及び少量の不純物が存在し得ることが理解される。
【0081】
いくつかの他の実施形態では、ポリマー(PAEK)は、ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)-ポリ(エーテルエーテルケトン)コポリマー[ポリマー(PEEK-PEDEK)]である。本明細書で使用される「ポリ(エーテルジフェニルエーテルケトン)-ポリ(エーテルエーテルケトン)コポリマー」又は「ポリマー(PEEK-PEDEK)」という表現は、繰り返し単位(R)の50モル%超が、95:5~5:95、好ましくは80:20~20:80の相対的なモル比(K’-A):(K’-D)の式(K’-A)及び(K’-D)の繰り返し単位の混合物である任意のポリマーを意味する。
【0082】
いくつかの実施形態では、ポリマー(P1)は、第1の組成物の一部であってよく、第1の組成物は、ポリマー(P1)及び充填剤を含み得る。前記充填剤は、繊維状充填剤又は非繊維状充填剤を含み得る。前記充填剤は、繊維状充填剤及び非繊維状充填剤の両方を含み得る。
【0083】
更に、又は代替的に、ポリマー(P2)は、第2の組成物の一部であってよく、第2の組成物は、ポリマー(P2)及び充填剤を含み得る。前記充填剤は、繊維状充填剤、又は非繊維状充填剤を含み得る。前記充填剤は、繊維状充填剤、及び非繊維状充填剤の両方を含み得る。
【0084】
好適な繊維状充填剤としては、例えば、炭素繊維、グラファイト繊維、Eガラス繊維などのガラス繊維、炭化ケイ素繊維などのセラミック繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリイミド繊維、高弾性率ポリエチレン(PE)繊維、ポリエステル繊維及びポリ-p-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などのポリベンゾオキサゾール繊維、アラミド繊維などの合成ポリマー繊維、ホウ素繊維、玄武岩繊維、石英繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維並びにこれらの混合物が挙げられる。繊維は、連続であっても又は不連続であってもよく、整列していても又はランダムに配向していてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、繊維は、少なくとも1種の炭素繊維を含む。本明細書で使用される「炭素繊維」という用語は、グラファイト化、部分グラファイト化、及び非グラファイト化炭素強化用繊維、並びにこれらの混合物を含むことを意図する。炭素繊維は、例えば、レーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)、芳香族ポリアミド又はフェノール樹脂などの異なるポリマー前駆体を熱処理及び熱分解することによって得ることができ、また、炭素繊維は、ピッチ系材料から得てもよい。「グラファイト繊維」という用語は、炭素繊維を高温で熱分解(2000℃超)することによって得られる炭素繊維を意味することを意図し、炭素原子がグラファイト構造と同様に配置される。炭素繊維は、好ましくは、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、グラファイト繊維、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0086】
いくつかの実施形態では、繊維は、少なくとも1種のガラス繊維を含む。ガラス繊維は、円形断面又は非円形断面(卵形若しくは長方形断面など)を有し得る。使用されるガラス繊維が円形断面を有する場合、3~30μmの平均ガラス繊維直径、特に好ましくは5~12μmの平均ガラス繊維直径を有することが好ましい。円形断面を有する異なるタイプのガラス繊維は、それらが製造されるガラスのタイプに応じて市場で入手可能である。特に、E-ガラス又はS-ガラスから製造されたガラス繊維が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、ガラス繊維は、非円形断面を有する標準的なE-ガラス材料である。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、円形断面を有するSガラス繊維を含む。
【0087】
一実施形態では、本発明の複合材料は、連続繊維を含む。本明細書で言及される「連続繊維」は、3mm以上、より典型的には10mm以上の長さ、且つ500以上、より典型的には5000以上のアスペクト比を有する繊維を指す。
【0088】
本発明の一実施形態では、第1の構成要素は、繊維及びポリマー(P1)を含む1つ以上の層を含む複合材料である。ポリマー(P1)は、繊維に含浸、コーティング、又は積層されている。
【0089】
本発明の更なる実施形態では、第2の構成要素は、繊維及びポリマー(P2)を含む1つ以上の層を含む複合材料である。ポリマー(P2)は、繊維に含浸、コーティング、又は積層されている。
【0090】
本発明の更なる目的は、ポリマー(P1)を含む第1の構成要素と、ポリマー(P2)を含む第2の構成要素と、前記第1及び第2の構成要素の間に配置され、前記第1及び第2の構成要素に接着された本発明のフィルムとを含む組立体である。
【0091】
本明細書における「接着された」という用語は、材料が、好ましくは永久的に互いに結合されていることを意味する。
【0092】
組立体は、航空宇宙産業及び自動車産業における用途のための構成要素又は構成要素の部品であってよい。例えば、本発明の組立体を含むか又はそれから構成される構成要素としては、ブラケット、クリップ、スティフナー、及び他の同様のタイプの部品を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
特定の実施形態に関連して記載されるものであっても、あらゆる記載が本開示の他の実施形態に適用可能であり、他の実施形態と互換可能であることが理解されよう。
【0094】
以下、本発明を、非限定的な実施例によって以下のセクションで更に詳細に説明する。
【0095】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語が不明確になり得る程度にまで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0096】
原材料
1,2-ジクロロベンゼン、テレフタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、3,5-ジクロロベンゾイルクロリド、塩化アルミニウム(AlCl)、メタノールを、Sigma Aldrichから購入した。
【0097】
インド特許第193687号明細書(1999年6月21日に出願され、参照により本明細書に組み込まれる)に従って、1,4-ビス(4-フェノキシベンゾイル)ベンゼンを調製した。
【0098】
フォトグレードのハイドロキノンを、Eastman,USAから調達した。このハイドロキノンには0.38重量%の水分が含まれており、この量を用いて装填量を適合させた。表示される全ての重量は、水分を含む。
【0099】
ACS試薬グレードのレゾルシノールを、Aldrich,USAから調達した。
【0100】
ポリマーグレードの4,4’-ビフェノールを、SI,USAから調達した。
【0101】
フレーク状のピロカテコールを、Solvay USAから調達した。その純度は、GCにより99.85%であった。このピロカテコールには680ppmの水分が含まれており、この量を用いて装填量を適合させた。表示される全ての重量は、水分を含む。
【0102】
ポリマーグレード(99.8%+)の4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを、Malwa,Indiaから調達した。
【0103】
ジフェニルスルホン(ポリマーグレード)を、Provironから調達した(純度99.8%)。
【0104】
軽質ソーダ灰である炭酸ナトリウムを、Solvay S.A.,Franceから調達した。
【0105】
90<45μmの炭酸カリウムを、Armand productsから調達した。
【0106】
塩化リチウム(無水グレード)を、Acrosから調達した。
【0107】
1,4-ビス(4’-フルオロベンゾイル)ベンゼン(1,4-DFDK)及び1,3ビス(4’-フルオロベンゾイル)ベンゼン(1,3-DFDK)を、Gilbらの米国特許第5,300,693号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の実施例1に従って、フルオロベンゼンのフリーデル・クラフツアシル化により調製した。米国特許第5,300,693号明細書に記載されているように、1,4-DFDKの一部をクロロベンゼン中で再結晶させることによって精製し、1,4-DFDKの一部をDMSO/エタノール中で再結晶させることによって精製した。DMSO/エタノール中で再結晶させることによって精製した1,4-DFDKを、重合反応で1,4-DFDKとして使用して下記に記載されるPEKKを製造する一方で、クロロベンゼン中で再結晶させた1,4-DFDKを、1,4-ビス(4’-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン(1,4-BHBB)の前駆体として使用した。
【0108】
Hackenbruchらの米国特許第5,250,738号明細書(その全体が本明細書に参照として組み込まれる)の実施例1に記載された手順に従って、1,4-DFDK及び1,3-DFDKのそれぞれを加水分解することにより、1,4-BHBB及び1,3-ビス(4’-ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン(1,3-BHBB)を生成した。それらをDMF/エタノール中で再結晶させることによって精製した。
【0109】
融解温度(T)、結晶化温度(Tc)及び融解熱の測定
融解温度Tを、ASTM D3418-03、E1356-03、E793-06、E794-06に従って、示差走査熱量計(DSC)の2回目の加熱走査での融解吸熱のピーク温度として測定した。本発明で用いた手順の詳細は以下の通りである:キャリアガスとしての窒素(純度99.998%、50mL/分)と共に、TA Instruments DSC Q20を使用した。温度及び熱流量較正は、インジウムを使用して行った。試料サイズは5~7mgであった。重量を±0.01mgと記録した。加熱サイクルは、
- 1回目の加熱サイクル:10.00℃/分で30.00℃~400.00℃、400.00℃で1分間等温;
- 1回目の冷却サイクル:10.00℃/分で400.00℃~30.00℃、1分間等温;
- 2回目の加熱サイクル:10.00℃/分で30.00℃~400.00℃、400.00℃で1分間等温であった。
【0110】
融解温度Tを、2回目の加熱走査での融解吸熱のピーク温度として測定した。2回目の加熱走査で融解エンタルピーを測定した。組成物の融解は、220℃から最後の吸熱を超える温度まで引かれた直線のベースラインにわたる面積とした。接着した構造体(部品)におけるフィルムの結晶化度を評価する場合は、1回目の加熱走査での融解熱を測定した。
【0111】
結晶化温度Tを、1回目の冷却走査での結晶化発熱のピーク温度として測定した。
【0112】
融解粘度の測定
融解粘度を、ASTM D3835に従ってキャピラリーレオメーターを用いて測定した。以下の特徴:直径=1.016mm、長さ=20.32mm、円錐角=120°のダイを使用して、380℃又は410℃(指示通り)及び46.3s-1の剪断速度で10分(表2で報告される)及び40分の滞留時間後に読み取りを行った。10分時点の粘度に対する40分時点の粘度の比率によって、溶融安定性であるVR40を測定する。
【0113】
引張特性の測定
以下の条件下で30gのポリマーを圧縮成形することにより、ポリマーから762mm×762mm×3.2mmのプラークを作製した:
で予熱、
/20分、2000kg-f
/2分、2700kg-f
40分かけて30℃まで冷却、2000kg-f。
【0114】
ポリマーに用いられたTの値を、結果の表に示す。その後、プラークを200℃で3時間アニールした。
【0115】
762mm×762mm×3.2mmの圧縮成形したプラークを、V型ASTM引張試験片に機械加工し、これらの様々なポリマー組成物の試験片を、3つの試験片について室温(すなわち23℃)で0.05インチ/分(0.127cm/分)でASTM法D638に従って引張試験を行った。3つの試験片の平均値を括弧内の標準偏差と共に示す。
【0116】
合成実施例
比較実施例1:60/40のT/I比を有するPEKK
撹拌機、N2注入管、反応媒体中に押し込んだ熱電対を備えるクライゼン型連結器、及び凝縮器とドライアイストラップを含むディーンスタークトラップを取り付けた500mLの4口反応フラスコに、112.50gのジフェニルスルホン、33.390gの1,3-BHBB、6.372gの1,4-BHBB及び41.051gの1,4-DFDKを導入した。フラスコの内容物を真空下で排気し、その後(10ppm未満のOを含有する)高純度窒素で満たした。その後、反応混合物を連続窒素パージ下に置いた(60mL/分)。
【0117】
反応混合物を270℃までゆっくり加熱した。270℃時点で、粉末ディスペンサーによって、反応混合物に13.725gのNaCO及び0.086gのKCOを60分かけて添加した。添加が終了した時点で、反応混合物を1℃/分で320℃に加熱した。320℃で2分後、1.207gの1,4-DFDKを、反応器の窒素パージを保持しながら反応混合物に添加した。5分後、0.529gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後、別の0.503gの1,4-DFDKを反応器に添加し、反応混合物の温度を15分間保持した。反応混合物に25gのジフェニルスルホンを別に追加充填し、これを撹拌しながら15分間保持した。その後、反応器の内容物を反応器からステンレス鋼製受け皿に注ぎ込んで冷却した。固形物を分割し、2mmの篩を通してアトリションミル内で粉砕した。ジフェニルスルホン及び塩をpH1~12のアセトン及び水で混合物から抽出した。最終的な洗浄のために、0.67gのNaHPO・2HO及び0.62gのNaHPOを1200mLの脱イオン水に溶解させた。その後、粉末を反応器から取り出し、真空下、120℃で12時間乾燥させ、72gの黄色の粉末を得た。最終的なポリマーの特性を表2で詳述する。
【0118】
比較実施例2:PEEK-PEDEK 72/25コポリマーの調製
撹拌機、N注入管、反応媒体中に押し込んだ熱電対を備えるクライゼン型連結器、及び凝縮器とドライアイストラップを含むディーンスタークトラップを取り付けた500mLの4口反応フラスコに、128.21gのジフェニルスルホン、20.297gのハイドロキノン、11.411gの4,4’-ビフェノール、及び54.377gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを導入した。フラスコの内容物を真空下で排気し、その後(10ppm未満のOを含有する)高純度窒素で満たした。その後、反応混合物を連続窒素パージ下に置いた(60mL/分)。
【0119】
反応混合物を150℃までゆっくり加熱した。150℃時点で、粉末ディスペンサーによって、反応混合物に26.955gのNaCO及び0.169gのKCOの混合物を30分かけて添加した。添加が終了した時点で、反応混合物を1℃/分で320℃に加熱した。320℃で13分後、3.742gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを、反応器の窒素パージを保持しながら反応混合物に添加した。5分後、1.039gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後、別の2.138gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを反応器に添加し、反応混合物の温度を15分間保持した。
【0120】
その後、反応器の内容物を反応器からSS製受け皿に注ぎ込んで冷却した。固形物を分割し、2mmの篩を通してアトリションミル内で粉砕した。ジフェニルスルホン及び塩をpH1~12のアセトン及び水で混合物から抽出した。その後、反応器から粉末を取り出し、真空下、120℃で12時間乾燥させ、74gの白色の粉末を得た。
【0121】
410℃、46s-1でキャピラリーレオロジーによって測定した融解粘度は、0.28kN-s/mであった。
【0122】
最終的なポリマーの特性を表2で詳述する。
【0123】
比較実施例3:PEEK-PEmEK 70/30コポリマーの調製
撹拌機、N注入管、反応媒体中に押し込んだ熱電対を備えるクライゼン型連結器、及び凝縮器とドライアイストラップを含むディーンスタークトラップを取り付けた1000mLの4口反応フラスコに、330.00gのジフェニルスルホン、37.949gのハイドロキノン、16.234gのレゾルシノール、及び109.875gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを導入した。フラスコの内容物を真空下で排気し、その後(10ppm未満のOを含有する)高純度窒素で満たした。その後、反応混合物を連続窒素パージ下に置いた(60mL/分)。
【0124】
反応混合物を150℃までゆっくりと加熱した。150℃時点で、粉末ディスペンサーによって、反応混合物に54.099gのNaCO及び0.170gのKCOの混合物を30分かけて添加した。添加が終了した時点で、反応混合物を1℃/分で300℃に加熱した。300℃で57分後、17.135gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを、反応器の窒素パージを保持しながら反応混合物に添加した。5分後、2.081gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後、別の4.284gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを反応器に添加し、反応混合物の温度を15分間保持した。
【0125】
その後、反応器の内容物を反応器からSS製受け皿に注ぎ込んで冷却した。固形物を分割し、2mmの篩を通してアトリションミル内で粉砕した。ジフェニルスルホン及び塩をpH1~12のアセトン及び水で混合物から抽出した。その後、反応器から粉末を取り出し、真空下、100℃で12時間乾燥させ、125gの薄茶色の粉末を得た。
【0126】
410℃、46s-1でキャピラリーレオロロジーによって測定した融解粘度は、0.70kN-s/mであった。最終的なポリマーの特性を表2で詳述する。
【0127】
実施例4:PEEK-PEoEK 80/20コポリマーの調製
撹拌機、N注入管、反応媒体中に押し込んだ熱電対を備えるクライゼン型連結器、及び凝縮器とドライアイストラップを含むディーンスタークトラップを取り付けた1000mLの4口反応フラスコに、343.63gのジフェニルスルホン、61.852gのハイドロキノン、15.426gのピロカテコール、及び154.573gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを導入した。フラスコの内容物を真空下で排気し、その後(10ppm未満のOを含有する)高純度窒素で満たした。その後、反応混合物を連続窒素パージ下に置いた(60mL/分)。
【0128】
反応混合物を150℃までゆっくりと加熱した。150℃時点で、粉末ディスペンサーによって、反応混合物に76.938gのNaCO及び0.484gのKCOの混合物を30分かけて添加した。添加が終了した時点で、反応混合物を1℃/分で320℃に加熱した。320℃で1分後、以下の3段階で反応を終結させた:反応器の窒素パージを保持しながら、18.329gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを反応混合物に添加した。5分後、2.338gの塩化リチウムを反応混合物に添加した。10分後、別の6.110gの4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを反応器に添加し、反応混合物の温度を15分間保持した。
【0129】
その後、反応器の内容物を反応器からSS製受け皿に注ぎ込んで冷却した。固形物を分割し、2mmの篩を通してアトリションミル内で粉砕した。ジフェニルスルホン及び塩をpH1~12のアセトン及び水で混合物から抽出した。その後、粉末を真空下、120℃で12時間乾燥させ、174gの白色粉末を得た。
【0130】
410℃、46s-1でキャピラリーレオロジーによって測定した融解粘度は、1.50kN-s/mであった。ポリマーの特性を下記表2に開示する。
【0131】
実施例5~7:PEEK-PEoEK 75/25コポリマー及び70/30コポリマーの調製
実施例4と同じ手順に従うが、以下の表1に示す試薬の量を使用した。得られたポリマーの特性は表2の通りである。
【0132】
【表1】
【0133】
表2は、実施例1~7に従って調製された試料の特性を示すものである。
【0134】
【表2】
【0135】
表2に提示したデータは、PEEK-PEoEKコポリマーが、一般にTの低さによって特徴付けられ、公知のPAEKに優る以下の利点を有することを示している。
- 融解熱の値(CE1対E4)で示されるように、同じTでも結晶化度がPEKKよりも増大している;
- PEEK-PEmEKよりもTgが高く、従って連続使用温度が高い;
- 同じTでも機械的特性がPEEK-PEDEKよりも向上している(CE2対E4)
- PEEK-PEDEK(T<295℃)よりも低いTに到達する場合がある。
【0136】
実施例10~11-実施例5及びCE3のポリマーから接着フィルムを作製するための一般的手順
粗粉末形態のポリマーを、48:1のL/D比を有する26mmのCoperion(登録商標)(型式ZSK-26)共回転部分噛合型二軸スクリュー押出機を使用して融解混練することによってペレットに変換した。粉末を、押出機のバレル部分1の供給ホッパーに37ポンド/時(16.8kg/時)の速度で重量測定的に供給した。押出機には12個のバレル部分があり、バレル部分2~12、並びにダイを、全体を通して350℃の温度特性設定で加熱した。押出物の融解温度を、ダイから出る度に携帯型高温計で測定した。
【0137】
押出物の融解温度は、混練運転全体を通して約380℃であった。スクリュー速度を200rpmに設定し、得られた押出機のトルクの読み出し値は、生産運転全体を通して約50%であった。化合物から水分及びあらゆる存在可能な残留揮発性物質を除去するために、混練中のバレル部分10で26Hgの真空レベルの真空ベントを適用した。運転による押出物をストランド状にして水槽中で冷却し、その後、直径約2.7mm、長さ3.0mmのペレットにペレット化した。
【0138】
混練したペレットを、一軸スクリュー押出機で融解押出することによって、呼称厚さ140ミクロン、幅8.5~9cmのフィルムに加工した。この目的のために、OCS(Optical Control Systems、GmbH)押出機を使用した。この押出機は、直径が20mm、L/D比が30の単段式ノンベントスクリューを有していた。押出機は、0.5mmのギャップ厚を有する125mm幅のフィルムダイを装備していた。押出機のバレルには4つの加熱部分があり、後方から前方に向かって、それぞれ約335℃、360℃、360℃及び370℃の設定温度で操作した。フィルムダイを390℃の温度で設定した。フィルムに押し出す前に、ペレットを150℃に設定した乾燥空気対流式オーブンで一晩(約16時間)乾燥させた。28rpmのスクリュー速度及び約4ポンド/時(1.8kg/時)の押出量でブレンドを押し出した。140℃及び145℃に設定され、それぞれ第1の(上部)ロール及び第2の(下部)ロールの2本の冷却ロール上にフィルムを成形して延伸した。
【0139】
実施例11:組立体の作製及び破壊靭性試験
クラック平面の層が繊維強化複合基材の表面に融着した融着接着フィルムである破壊靭性(G1c)積層体(305mm×305mmサイズ)を、以下のように作製した。名目上の繊維目付=145gsm、及び樹脂含有量が34重量%のAPC(実施例8によるポリマー)/AS4Dのユニテープを切断して積み重ね、16プライの疑似等方性配向(+45°/0°/-45°/90°02sのレイアップを作製した。そのレイアップスタックの上に、表面全体を覆うように1プライのstyle 108ガラス織物を配置した後、3辺をレイアップの辺と一致させた状態で、実施例10の280mm×305mm×0.125mmのフィルムを配置した。他の辺には、305mm×25mm×0.05mmの厚さの剥離剤がコーティングされたカプトンフィルムがあり、パネルが固結されるとこれがクラックスターターとなった。レイアップの残りは、style 108ガラス繊維布から始め、その後16プライの疑似等方性のガラス繊維布を配置して、材料の順序を逆にした。
【0140】
その後、レイアップを平らな鋼鉄製工具の上に載せ、真空バッグに入れ(710~730mm Hgの真空)、高温オートクレーブ内で処理した。オートクレーブサイクルは375℃までの直線的な温度勾配であり、この375℃の時点で6.7バールの圧力をかけて15分間保持した後、6.7バール(670kPa)の圧力下及び711mm Hgとしながらレイアップを冷却した。93℃で圧力を解放し、室温まで冷却した後にオートクレーブから取り出した。得られたパネルの厚さを測定し、その後1”×12”(2.5cm×30.5cm)のテストクーポンに機械加工し、G1c破壊靭性の測定を行った。
【0141】
【表3】
【0142】
データは、本発明による接着フィルム(実施例5)を使用すると、破壊靭性強度が高い値であったことにより実証されるように、改良された積層体の接着性がもたらされたことを示している。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー(P1)を含む第1の構成要素と、ポリマー(P2)を含む第2の構成要素と、少なくとも1種のPEEK-PEoEKコポリマーを含むフィルムとを含む組立体であって、前記PEEK-PEoEKコポリマーは、前記PEEK-PEoEKコポリマーの繰り返し単位の総モル数に対して、合計で少なくとも50モル%の繰り返し単位(RPEEK)及び繰り返し単位(RPEoEK)を含み、
- 繰り返し単位(RPEEK)は、式:
【化1】
の繰り返し単位であり、
- 繰り返し単位(RPEoEK)は、式:
【化2】
の繰り返し単位であり、
式中、各R及びRは、互いに同じであるか又は異なり、各出現時に、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、
各a及びbは、0~4の範囲の整数からなる群から独立して選択され、
前記PEEK-PEoEKコポリマーが、95/5~5/95の範囲のモル比(RPEEK)/(RPEoEK)で前記繰り返し単位(RPEEK)及び(RPEoEK)を含み、
前記フィルムが、前記第1及び第2の構成要素の間に配置され、接着された組立体
【請求項2】
前記繰り返し単位(RPEEK)が、式:
【化3】
の繰り返し単位であり、及び/又は
前記繰り返し単位(RPEoEK)が、式:
【化4】
の繰り返し単位である、請求項1に記載の組立体
【請求項3】
前記PEEK-PEoEKコポリマーが、90/10~55/45、好ましくは85/15~60/40、より好ましくは80/20~65/35の範囲のモル比(RPEEK)/(RPEoEK)を有する、請求項1又は2に記載の組立体
【請求項4】
前記PEEK-PEoEKコポリマーが、本明細書の方法に従って測定した場合に、320℃以下、好ましくは315℃以下の融解温度(T)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組立体
【請求項5】
前記PEEK-PEoEKコポリマーが、150℃以下の温度で測定したときに、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中で0.2重量%未満の溶解度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組立体
【請求項6】
前記フィルムが、15~800μmの厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組立体
【請求項7】
ポリマー(P1)及びポリマー(P2)が、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテル、ポリカーボネート、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリーレン(ポリフェニレン)、ポリフタルアミド、多環芳香族エステル、及びこれらのブレンドからなる群から独立して選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項8】
ポリマー(P1)及びポリマー(P2)が、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフタルアミド、及びこれらのブレンドからなる群から独立して選択される、請求項に記載の組立体。
【請求項9】
ポリマー(P1)及びポリマー(P2)が、55/45~85/15、好ましくは57/43~80/20、より好ましくは58/42~75/25の範囲のT/I比を有するPEKKポリマー及びこれらの混合物から独立して選択される、請求項7又は8に記載の組立体。
【請求項10】
前記第1の構成要素が、繊維及びポリマー(P1)を含む1つ以上の層を含む複合材料であり、並びに/又は、前記第2の構成要素が、繊維及びポリマー(P2)を含む1つ以上の層を含む複合材料である、請求項7~のいずれか一項に記載の組立体。
【請求項11】
前記繊維が、炭素繊維又はガラス繊維、好ましくは連続炭素繊維又は連続ガラス繊維である、請求項10に記載の組立体。
【請求項12】
請求項11のいずれか一項に記載の組立体の作製方法であって、ポリマー(P1)を含む第1の構成要素とポリマー(P2)を含む第2の構成要素との間にフィルムを配置する工程と、前記フィルムを融解するには好適であるが、ポリマー(P1)及びポリマー(P2)を融解しない温度(T )に前記フィルムを晒す工程とを含む方法。
【請求項13】
温度(T )が、前記フィルムの前記融解温度よりも高く、好ましくはポリマー(P1)及びポリマー(P2)の前記融解温度よりも低い、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ポリマー(P1)を含む第1の構成要素とポリマー(P2)を含む第2の構成要素との間に前記フィルムを配置する工程と、280℃~315℃の範囲内の温度(T )に前記フィルムを晒す工程とを含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記フィルムが前記温度(T )に晒されている間に圧力が加えられ、前記構成要素を固結する、請求項1214のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】