(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】MHC-I拘束性エピトープ免疫化のための製剤及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20240115BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240115BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240115BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240115BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240115BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240115BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240115BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240115BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240115BHJP
C07K 4/12 20060101ALN20240115BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61K9/127 ZNA
A61K47/24
A61K39/39
A61K47/22
A61K47/28
A61P35/00
A61P37/04
A61K47/64
C07K4/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542496
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 US2022012045
(87)【国際公開番号】W WO2022155156
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519411043
【氏名又は名称】ザ リサーチ ファウンデイション フォー ザ ステイト ユニバーシティー オブ ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェル,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ホー,シュエダン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,シーチー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC06
4C076CC07
4C076DD60
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA03
4C085AA38
4C085BB01
4C085DD86
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF14
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045CA40
4H045CA41
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA31
(57)【要約】
本開示は、免疫応答を生成するための、又は免疫応答を増強するための組成物及び方法を提供する。本方法は、コバルト金属がポルフィリン大環状体中の二重層内に存在するようにコバルトがキレート化されたポルフィリンと、ポリ-ヒスチジンタグ化MHC-I拘束性腫瘍ペプチドとを含むリポソームを含む組成物を、治療を必要とする被験体に投与することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における腫瘍の増殖を低減する方法であって、治療を必要とする被験体に、
a)以下のi)及びii)を含むリポソーム:
i)1つ以上のリン脂質と、1つ以上のポルフィリン-リン脂質コンジュゲートとを含む二重層であって、前記ポルフィリン-リン脂質コンジュゲートは、コバルトに配位して、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲートを形成している;
ii)ポリヒスチジン-タグ化MHC-I拘束性腫瘍ペプチドであって、ここで、該MHC-I拘束性ペプチドのアミノ酸配列の少なくとも一部は、リポソームの外側に露出している
及び
b)医薬担体
を含む組成物を投与することを含み、ここで、組成物の投与が、腫瘍の増殖を抑制する、被験体における腫瘍の増殖を低減する方法。
【請求項2】
腫瘍抗原に対する免疫応答を生成するための方法であって、腫瘍を有する被験体に、
a)以下のi)及びii)を含むリポソーム:
i)1つ以上のリン脂質と、1つ以上のポルフィリン-リン脂質コンジュゲートとを含む二重層であって、前記ポルフィリン-リン脂質コンジュゲートは、コバルトに配位して、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲートを形成している;
ii)ポリヒスチジン-タグ化MHC-I拘束性腫瘍ペプチドであって、ここで、該MHC-I拘束性ペプチドのアミノ酸配列の少なくとも一部は、リポソームの外側に露出している
及び
b)医薬担体
を含む組成物を投与することを含み、ここで、組成物の投与が、腫瘍の増殖を抑制する、腫瘍抗原に対する免疫応答を生成するための方法。
【請求項3】
前記免疫応答が、CD8
+T細胞の誘導である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
MHC-I結合ペプチドが、7~11アミノ酸長(ポリヒスチジンタグを除く)である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
MHC-I結合ペプチドが、MHC-II分子に有意に結合しない、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ポリヒスチジンタグが、6~10個のヒスチジン残基を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
リポソームが、その中に組み込まれた1つ以上のアジュバントをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上のさらなるアジュバントが、QS21及び/又はMPLAである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上のさらなるアジュバントが、MPLA又はその合成変異体をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記合成変異体が、PHAD、3D6A-PHAD、3D-PHAD、又はその任意の組み合わせである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
MHC-I拘束性ペプチドとアジュバントの質量比が、1:1~10:1である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
MHC-I拘束性ペプチド、QS21、PHADが、1:1:1、2:1:1、3:1:1、4:1:1、5:1:1、6:1:1、7:1:1、8:1:1、9:1:1、又は10:1:1の質量比で存在する、請求項11に記載のリポソーム。
【請求項13】
被験体がヒトである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が複数回投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ワクチン組成物であって、
a)以下のi)及びii)を含むリポソーム:
i)1つ以上のリン脂質と、1つ以上のポルフィリン-リン脂質コンジュゲートとを含む二重層であって、前記ポルフィリン-リン脂質コンジュゲートは、コバルトに配位して、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲートを形成している;
ii)MHC-I結合腫瘍ペプチドのポリヒスチジン-タグ化アミノ酸配列であって、ここで、前記ポリヒスチジンタグの少なくとも一部が、前記二重層の疎水性部分に存在し、前記ポリヒスチジン-タグの1つ以上のヒスチジンが、前記コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲートのコバルトに配位しており、及び、前記MHC-I結合腫瘍ペプチド配列の少なくとも一部は、前記リポソームの外部に露出している
及び
b)医薬担体
を含む、ワクチン組成物。
【請求項16】
ポリヒスチジン-タグが、2~6個のヒスチジン残基を含んでいる、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項17】
MHC-I拘束性ペプチドが、MHC-IIクラス分子に結合しない、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項18】
リポソームがさらに、その中に組み込まれた1つ以上の追加アジュバントを含む、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項19】
前記1つ以上のアジュバントが、QS21及び/又はPHADである、請求項18に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
前記1つ以上の追加アジュバントが、MPLA又はその変異体をさらに含む、請求項18に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
前記MPLA変異体が、PHAD、3D6A-PHAD、又は3D-PHADである、請求項20に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
MHC-I拘束性ペプチドと、QS21又はPHADとの質量比が、1:1~10:1である、請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
MHC-I拘束性ペプチド、QS21、PHADが、1:1:1、2:1:1、3:1:1、4:1:1、5:1:1、6:1:1、7:1:1、8:1:1、9:1:1、又は10:1:1の質量比で存在する、請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項24】
二重層が、コバルトポルフィリンをさらに含む、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項25】
コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲートが、単層又は二重層の1~25モル%を構成する、請求項24に記載のワクチン組成物。
【請求項26】
コバルトポルフィリン-リン脂質複合体が、二重層の約2%~約8%、好ましくは3~4%(質量比率)を構成する、請求項25に記載のワクチン組成物。
【請求項27】
二重層が、さらにコレステロールを約15~20%(質量比率)含む、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項28】
リポソームのサイズが50nm~250nmである、請求項15に記載のワクチン組成物。
【請求項29】
候補ネオエピトープペプチドの組み合わせでマウスを免疫すること、及び
前記マウスにおいて、MHC-Iに結合してCD8
+T細胞を刺激するペプチドを1つ以上選択すること
を含む方法。
【請求項30】
選択されたペプチドの1つ以上を用いて、CD8
+T細胞を刺激するのに用いる組成物を製剤化することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
1つ以上の候補ネオエピトープペプチド中の1つのアミノ酸又はアミノ酸の組み合わせをランダム化すること、ランダム化されたアミノ酸を1つ以上含むペプチドを試験すること、及び、1つ以上の前記ペプチドの特性を、ランダム化に用いられたランダム化前のペプチドの特性と比較して、改善された特性を有する1つ以上のペプチドを特定することを含む、方法。
【請求項32】
前記1つ以上の改善された特性が、MHC-1に対するより高い親和性、CD8
+T細胞の活性化の向上、抗癌活性の向上、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【連邦政府による支援を受けた研究に関する声明】
【0001】
本発明は、国立衛生研究所によって付与された認可番号R01 CA247771の下で政府支援を受けて発明された。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【関連出願の相互参照】
【0002】
この出願は、2021年1月13日に出願された米国仮特許出願第63/137,036号に基づく優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる
【開示の背景】
【0003】
癌細胞を死滅させるためには、CD8+T細胞受容体(TCR)は、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI(MHC-I)分子に付随する短い腫瘍由来ペプチド(8~10個のアミノ酸からなる)を認識しなければならない。これらの短いペプチドエピトープは、製造が簡単で、理論的には抗原(Ag)-担持標的細胞に対してCD8+T細胞を誘導する直接的な方法を提供するため、癌ワクチン開発にとって魅力的である。残念なことに、ペプチドベースワクチンの癌臨床試験は、免疫チェックポイント阻害のようなより最近の免疫療法とは対照的に、説得力のある臨床応答を生じなかった。いくつかの理由がこのことを説明し得るが、ペプチドベースの癌ワクチンの1つの課題は、十分な量及び質でAg-特異的CD8+T細胞を強力に生成することができないことである。改善された癌ペプチドワクチンシステムの開発にかなりの努力が注がれてきた。それらの免疫原性を改善するために共有結合が用いられることも多く、最近の有望なアプローチは、この目的を達成するために、脂質(Kuai et al., Nature materials 16, 489-496(2017))、タンパク質(Mehta et al., Nature Biomedical Engineering, doi:10.1038/s41551-020-0563-4(2020))、及び長いペプチド(Lynn, et al. Nature Biotechnology, 1-13(2020))への結合を活用してきた。
【0004】
癌ワクチン開発の別の課題は、癌細胞上の標的エピトープを認識することができるAg-特異的CD8+T細胞応答を誘導する短ペプチド免疫原を同定することである。ネオアンチゲンは、変異した癌特異的エピトープであり、潜在的な癌ワクチン標的の豊富な供給源を提供する。しかしながら、機能的免疫応答をもたらす免疫原性MHC-I-拘束性ネオアンチゲンを同定することは困難であることが証明されている。実際、長いペプチドを使ってこれらを標的化する試みは、長いペプチドが、MHCクラスII(MHC-II)結合とCD4+(CD8+ではない)T細胞の助けによって効果を発揮するという発見につながった(Kreiter, et al. Nature 520, 692-696, doi:10.1038/nature14426(2015))。このことはMHC-Iの設計を複雑にし、実際的な意味合いとしては、短いペプチド(その長さによって、MHCクラスIとの結合が制限される)の設計は、標的アミノ酸配列を合理的に選択する能力が限られた、新しいプラクティスであるということである。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、MHC-Iペプチドを含む機能性リポソームを使用して、抗腫瘍免疫応答を生成するための、又はMHC-Iペプチドに対する免疫応答を増強するための組成物及び方法を提供する。
【0006】
ある態様では、本開示は、MHC-I結合ペプチド(本明細書では、MHC-I拘束性ペプチド及びMHC-I標的ペプチドとも呼ばれる)を含む機能性リポソーム(本明細書ではナノ構造体とも呼ばれる)を提供する。本開示ではMHC-Iに言及されているが、本開示にはヒト白血球抗原(HLA)クラス1分子に結合するペプチドも含まれる。したがって、MHC-Iが言及される場合、本開示は、ヒトで使用するためのHLA-1拘束性ペプチドを含む。MHC-I結合及び/又はCD8+T細胞刺激が実証又は予測されると本明細書に記載されたペプチドは、HLA-1発現T細胞が使用された場合も、同じ特性を有すると考えられる。複数の実施形態において、MHC-Iに結合してCD8+T細胞を刺激することができると記載されたペプチドは、MHC-Iコンテキスト(context)で提示されると考えられる。
【0007】
例えば、リポソームは、ヒトMHC-I結合ペプチドを含むことができる。二重層は、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲート、ポルフィリンにコンジュゲートしていないリン脂質、任意にステロール、及び任意にポリエチレングリコール(PEG)を含む。ポリヒスチジンタグを有する1つ以上のMHC-I結合ペプチドは、ポリヒスチジンタグの一部が二重層内に存在するように二重層に組み込まれ、MHC-I標的ペプチドの少なくとも一部は、二重層の外部に露出している。コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲートの代わりに、又はそれに加えて、コバルトポルフィリンをリポソーム二重層中で使用することができる。二重層構造は、コバルトキレート化ポルフィリンを含み(コバルト金属は二重層及びポルフィリン大環状体内に存在している)、さらに、ヒスチジンタグが非共有結合的に付着したMHC-I結合ペプチド分子を有する(ヒスチジンタグの少なくとも一部は二重層内に存在し、コバルト金属コアに配位している)。複数の実施形態において、コバルトポルフィリンは、コバルトポルフィリン-リン脂質(CoPoP)である。本リポソームは、アジュバントをさらに含んでもよく、前記アジュバントは、二重層中に組み込まれるか、又は水性コンパートメント内に存在するか、又はその両方であってもよい。例えば、複数の実施形態において、リポソームは、QS21及びPHADをさらに含む。CPQは、CoPoP、PHAD変異体及びQS21を含むリポソームを指す。2HPQは、同じであるがポルフィリン大環状体中のコバルトを欠くリポソームを指し、ゆえに、PoP、PHAD変異体及びQS21を含む。
【0008】
様々な実施形態において、本開示は、a)二重層とb)ポリヒスチジン-タグ化MHC-I拘束性ペプチドとを含むリポソームを提供し、前記二重層は、i)リン脂質と、コバルトに配位してコバルト-ポルフィリンを形成するポルフィリンとを含むものであり、前記ポリヒスチジン-タグ化MHC-I拘束性ペプチドのうち、ポリヒスチジンタグの少なくとも一部は二重層の疎水性部分に存在し、ポリヒスチジンタグの1つ以上のヒスチジンは、コバルト-ポルフィリン中のコバルトに配位しており、ここで、ポリヒスチジン-タグ化MHC-I拘束性ペプチドの少なくとも一部は、リポソームの外側に露出しており、このリポソームは分子のMHC-Iクラスに結合するが、分子のMHC-IIクラスには結合せず、前記ポリヒスチジンタグは、2~6個のヒスチジン残基(好ましくは6個未満のヒスチジン残基)を含み、MHC-I拘束性ペプチドは長さ4~11アミノ酸のペプチドである(その間のすべての整数値及び範囲を含む、例えば、長さ7~11のアミノ酸、なおこの際、His-タグのヒスチジンはカウントしない)。
【0009】
様々な実施形態において、本開示は、医薬担体と、1つ以上のリポソームとを含むワクチン組成物を提供し、ここで、前記リポソームは、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲート、任意で、ポルフィリンにコンジュゲートしていないリン脂質、任意でステロール、及び任意でポリエチレングリコール(PEG)を含んでおり、且つ、ポリヒスチジンタグを有する1つ以上のMHC-I標的ペプチドを有しており、このMHC-I標的ペプチドは二重層に組み込まれて、前記ポリヒスチジンタグの一部は二重層内に存在し、MHC-I標的ペプチドの少なくとも一部は二重層の外部に露出している。様々な実施形態において、MHC-Iペプチドのすべて又はほとんどすべてが、リポソームの外部に露出し、ポリヒスチジンタグのすべて又はほとんどすべてが二重層内に存在する。ワクチン組成物は、複数のリポソームを含んでもよく、各リポソームは、組成物中の別のリポソームと同一の又は異なるMHC-Iペプチドを含む。例えば、ワクチン組成物は、リポソームを複数セット含んでもよく、一セット中の各リポソームは特定のMHC-Iペプチド含んでおり、各セットは異なるMHC-Iペプチドを含んでいる。一実施形態では、リポソームは、2つ以上のMHC-Iペプチドを含むことができ、組成物中の異なるリポソームは、異なる組み合わせのMHC-Iペプチドを含んでもよい。
【0010】
本ナノ構造体は、免疫応答の生成又は免疫応答の増強に用いることができる。この癌ワクチンアジュバントは、短いMHC-I拘束性ペプチドを使用して抗腫瘍応答を生成するために使用されることができる。一態様では、本開示は、抗腫瘍免疫応答を生成又は増強するための方法を提供する。この方法は、免疫化が必要な被験体に、組成物を投与することを含み、この組成物はリポソームを含んでおり、前記リポソームは、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲート、任意でポルフィリンにコンジュゲートしていないリン脂質、任意でステロール、及び任意でポリエチレングリコール(PEG)を含んでおり、且つ、ポリヒスチジンタグを有する1つ以上のMHC-I標的ペプチドを有しており、前記MHC-I標的ペプチドは、ポリヒスチジンタグの一部が二重層に存在し、MHC-I標的ペプチドの少なくとも一部が二重層の外側に露出するように、二重層に組み込まれている。
【0011】
いくつかの実施形態において、本開示は、治療を必要とする被験体に、リポソームを含む組成物を投与することによって、MHC-Iペプチドの免疫原性を増加させる、及び/又はMHC-Iペプチドに対する中和抗体を誘発するための方法を提供し、ここで、リポソームは、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲート、 任意にポルフィリンとコンジュゲートしていないリン脂質、任意にステロール、及び任意にポリエチレングリコール(PEG)を含む二重層を含み、且つ、ポリヒスチジンタグの一部が二重層に存在し、MHC-Iペプチドの少なくとも一部が二重層の外側に露出するように、二重層に組み込まれたポリヒスチジンタグを有する1つ以上のMHC-Iペプチドを有する。任意で、1つ以上のアジュバントが、ナノ構造体に組み込まれてもよく、あるいは別々に投与されてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、ペプチドマイクロライブラリーを用いたインビボの癌エピトープスクリーニング及び改良のための方法を提供する。この方法は、1つ以上のペプチドを動物モデルに導入すること、及び、続いて前記1つ以上のペプチドによって生じる抗癌活性及び/又はCD8+T細胞活性を評価することを含む。前記ペプチドは、残基を繰り返し変異させ、変異ペプチドの活性が改善したか試験することによって、さらに改良することができる。前述のスクリーニングによって同定されたペプチドの組み合わせは、多重化ワクチンとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[
図1]
CPQリポソームは、短いMHC-I拘束性ペプチドを迅速かつ安定的に固定する
A)モデルA5ペプチドとともに、この研究で使用されるCPQアジュバントシステムの構成要素。A5の配列は、配列番号1である。
B)1時間インキュベーション後の、リポソームとA5ペプチドの結合(his-タグがある場合又は無い場合)。
C)1時間インキュベーション後の、表記のリポソームとA5(his-タグ有)の結合。
D)及びE)は、それぞれ、(B)及び(C)のリポソームの流体力学的サイズを示す。
F)A5ペプチドが結合している/結合していない場合の、CPQリポソームのクライオ電子顕微鏡(低温電子顕微鏡)写真。
G)CPQリポソーム及び2HPQリポソームへのA5の結合キネティクス。
H)CPQリポソーム及びCPQ/A5リポソームの冷蔵保存安定性。
I)40%ヒト血清存在下、37℃でインキュベートした場合の、CPQリポソーム及び2HPQリポソームに対するA5の結合安定性。エラーバーは、n=3の独立した実験の、平均±標準偏差を示す。*p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001, ****p<0.0001
二元配置ANOVA(B、G、H、I)、又は一元配置ANOVA(C)とボンフェローニ多重比較事後検定によって分析した。
【0014】
[
図2]
A5結合後のリポソームのサイズ及び多分散性
様々な質量比での、リポソームとペプチドの結合
A)蛍光A5ペプチドをCPQリポソーム/2HPQリポソームと、1:8、1:4、1:2又は1:1のペプチド:リポソーム質量比にて、1時間インキュベートした。A5の蛍光は、リポソームと結合すると消光した。
B)マイクロ遠心分離法による、A5ペプチドのリポソームへの結合。
C)ペプチド結合後のリポソームのサイズ。
D)ペプチド結合後のリポソームの多分散性。
エラーバーは、n=3の独立した実験における平均±標準偏差を示す。
【0015】
[
図3]
CPQリポソームと混合されたA5は、ロバストなAg-特異的CD8
+
T細胞応答を誘導する
BALB/cマウスを、表示のアジュバントと混合した500ngのA5により、0及び7日目に免疫した(筋肉内)。次いで、血液中のAg-特異的CD8
+T細胞及びエフェクターメモリー(Tem)表現型を、四量体(テトラマー[略称tet])及び表面マーカー染色によって評価した。IFN-γ及びTNF-α産生CD8
+T細胞を、脾細胞の細胞内染色によって評価した。
AH1四量体
+CD8
+T細胞のフローサイトメトリーゲーティング(A)及びパーセンテージ(B)
Tem CD8
+T細胞のT細胞表現型ゲーティング(C)及びパーセンテージ(D)。
ペプチド再刺激後の脾細胞中のIFN-γ産生CD8
+T細胞ゲーティング(E)及びパーセンテージ(F)
G)抗原再刺激後の脾細胞におけるTNF-α産生CD8
+T細胞のパーセント
H)Tエフェクター細胞(E)による、CT26標的細胞(T)のインビトロ溶解。様々なE:T比でCPQ/A5-ワクチン接種したマウス又は未処置マウスの脾細胞より。
エラーバーは、BとDについてはn=7の独立した実験、FとGについてはn=5の独立した実験、Hについてはn=3の独立した実験からの平均±標準偏差を示す。
*p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001, 及び ****p<0.0001
(B, D)は一元配置ANOVA、(H)は二元配置ANOVA及びボンフェローニ多重比較事後検定、(F, G)は両側独立スチューデントt検定によって分析した。
【0016】
[
図4]
CPQ/A5ワクチン接種は、脾臓においてロバストなAH1特異的CD8
+
T細胞を誘発する
BALB/cマウスに、表示のアジュバントと混合したA5を、0日目と7日目にワクチン接種した(筋肉内)。各注射は0.5μgの抗原を含有した。14日目に、これらのマウスから脾細胞を調製し、抗体で染色した。
(A)細胞をまずSSC-FSCによってゲーティングし、その後、CD8陽性、しかしI-A/I-E、CD4、B220陰性によってゲーティングした。AH1-特異的T細胞を、AH1四量体陽性細胞によってゲーティングした。
(B)表示のワクチンを接種したマウスの脾臓におけるAHI特異的CD8
+T細胞のパーセント。****p<0.0001, (B)は一元配置ANOVAによって分析。
【0017】
[
図5]
CPQ/A5免疫による、多様な腫瘍モデルチャレンジからの耐久的でロバストな保護
(A)マウスを0及び7日目に、表示のワクチン用量で免疫し、血液中のAg-特異的CD8
+T細胞を、4量体染色によって7日目及び13日目に評価した。棒グラフの各ペアにおいて、プライムは左側であり、ブーストは右側である。
(B)0及び7日目に、CPQ/A5を表示のA5用量で筋肉内免疫し、14日目にCT26でチャレンジした後の無腫瘍日数。試験期間は90日とした。
(C)腫瘍接種から2週間後の、Ag-特異的CD8
+T細胞と腫瘍サイズとの相関。
(D)13日目の血液中の及び13日目の脾臓中の、AH1-特異的CD8
+T細胞(棒グラフの各ペアにおいて、血液は左側、脾臓は右側である)。
(E)表示のアジュバントと混合した500ngのA5で免疫されたマウスに、CT26細胞をチャレンジした後の無腫瘍日数。
CPQリポソーム又は2HPQリポソームと混合された500ngのA5で免疫されて、CT26細胞(F)又はCMS4細胞(G)で皮下チャレンジされた、又は4T07細胞(H)で同所チャレンジされた後、1cm未満の腫瘍サイズを有するマウスのパーセント。
(I)0及び7日目に、表示のアジュバントと混合した500ngのA5をワクチン接種されたマウスの血液中のAg-特異的CD8
+T細胞のキネティクス。
(J)CPQ/A5又は2HPQ/A5をワクチン接種したマウスにおける腫瘍増殖。最終ブーストから73日後、マウスをCT26細胞で皮下チャレンジした(矢印で示す)。
エラーバーは、平均±標準偏差を示す。1グループ当たりn=5のマウス。
* p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001, 及び、****p<0.0001
(B, E)一元配置ANOVA、(A, D, I, J)二元配置ANOVA及びボンフェローニ多重比較事後検定又はログランク検定(F, G, H)で分析。
【0018】
[
図6]
T細胞産生に対するQS21と抗原投与量の影響
CPQリポソームを、[CoPoP:PHAD:QS21=1:1:1]又は[CoPoP:PHAD:QS21=1:1:0.25]の質量比で調製し、抗原をリポソームと1:4の質量比でインキュベートした。0日目及び7日目にCPQ/A5ワクチンをBALB/cマウスに注射し、14日目に血液を採取して、四量体染色した。表示のワクチンを注射されたマウス血液中のCD8
+T細胞のAH1四量体
+細胞のパーセント。
エラーバーは、n=3の独立した実験についての、平均±標準偏差を示す。
*p<0.05, 一元配置ANOVAとボンフェローニ多重比較事後検定で分析。
【0019】
[
図7]
CPQ/A5の安全性
CD-1マウスを、未処置のままとするか、又は0及び7日目にCPQ/A5をワクチン接種した(CoPoP、QS-21及びPHADをそれぞれ2μg含むCPQリポソームと混合した500ngのA5)。血液及び臓器を14日目に採取した。
(A)未処置の又はCPQ/A5をワクチン接種したCD-1マウスの体重。
(B)表示の臓器の包埋ヘマトキシリン・エオシン染色切片
(C)全血球カウントパラメータは、以下の通りである:WBC(白血球)、NEU(好中球)、LYM(リンパ球)、MONO(単球)、EOS(好酸球)、BAS(好塩基球)、RBC(赤血球数)、HGB(ヘモグロビン)、HCT(ヘマトクリット)、MCV(平均細胞体積)、MCH(平均細胞ヘモグロビン)、MCHC(平均細胞ヘモグロビン濃度)、PLT(血小板)、MPV(平均血小板体積)、RDW(赤血球分布幅)
CPQ+A5は、左側のバーであり、対照(Ctrl)は、右側のバーである。
(D)血清マーカーの概要は以下の通りである:BUN(血液尿素窒素)、リン、カルシウム、総タンパク質、アルブミン、グロブリン、グルコース、コレステロール、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、ALP(アルカリホスファターゼ)、及び総ビリルビン。値は、一グループ当たりn=5マウスの平均±標準偏差を示す。ND:正常範囲のデータなし。統計的に有意な差異は、いずれのグループにおいても観察されなかった(*P<0.05; 一元配置ANOVAに基づく)
CPQ+A5は、左側のバーであり、対照は右側のバーである。
【0020】
[
図8]
初期段階のCT26癌に対するCPQ/A5ワクチン接種の治療効果
BALB/cマウスに、0日目にCT26細胞を皮下接種し、次いで5及び12日目にCPQ/A5又は2HPQ/A5(500ngペプチド)で免疫した。
(A)CPQ/A5、2HPQ/A5でワクチン接種した、又は未処置のマウスの平均腫瘍サイズ
個々のマウスの腫瘍サイズ:(B)CPQ/A5でワクチン接種、(C)2HPQ/A5でワクチン接種、又は(D)未処置
(E)腫瘍接種後に1cm未満の腫瘍サイズを有するマウスのパーセント。一グループ当たりn=5マウス
転移モデルについては、マウスにCT26腫瘍細胞を静脈内注射し、その後、2及び9日後に免疫した。肺を18日目に転移について評価した。代表写真(F)、肺転移結節の数(G)、及び肺重量(H)によって示されるように、転移は、未処置グループ及び2HPQ/A5グループには存在したが、CPQ/A5グループには存在しなかった。
エラーバーは、一グループ当たりn=5マウスについての平均±標準偏差を示す。
**p<0.01, ***p<0.001, 及び ****p<0.0001
(G, H)一元配置ANOVA、(A)二元配置ANOVA及びボンフェローニ多重比較事後検定又はログランク検定(E)で分析。パネルAのアスタリスクは、CPQ/A5と対照群との間の統計的有意差を示す。
【0021】
[
図9]
CPQ/A5免疫化の推定メカニズム
(A)CPQで免疫した後のT細胞活性化の概略図
(B)表示ワクチンの接種により免疫された2日後に採取された流入領域リンパ節の免疫細胞集団。一連のバーのそれぞれについて、左側のバーは未処置であり、真ん中のバーはCP/A5であり、右側はCPQ/A5である。
(C)1時間インキュベーションした後、マウスのマクロファージ又はBMDCへのA5の取り込み。一連の棒グラフのそれぞれについて、左がBMDCであり、右がマクロファージである。
(D)表示の貪食阻害剤及びエンドサイトーシス阻害剤の存在下における、マクロファージへのA5ペプチドの取り込み。
(E)CPQ又はCPQ/A5-hilyte 488でコーティングされたビーズと共にインキュベートされたマウスBMDCの共焦点顕微鏡写真。H-2L
d(MHC-I)及びLAMP-1との共局在を示す。スケールバー、10μm
(F)CoPoP又はCoNTAを含有するリポソームにA5を結合させ、続いて、表記のように血清及びリソソーム抽出物を添加する。エラーバーは、平均±標準偏差を示す。リンパ節研究についてはn=5、マクロファージ及びBMDC取込み研究、並びにA5結合研究については、n=3の独立した実験。
**p<0.01, ***p<0.001, 及び ****p<0.0001
(D)一元配置ANOVA、(B, C)二元配置ANOVAとボンフェローニ多重比較事後検定で分析 。
【0022】
[
図10]
リポソームは速やかにリンパ節に排出される
BALB/cマウスの左脚に、50μLの320μg/mL 2HPを筋肉内注射し、ワクチン接種から0、1、2、4時間後にマウスからリンパ節を採取し、蛍光イメージングを行った。
(A)マウスのリンパ節を示す
(B)リンパ節の蛍光
(C)表示された時点における蛍光リンパ節の数。エラーバーは、n=3マウスの平均±標準偏差を示す。*p<0.05, 一元配置ANOVAとボンフェローニ多重比較事後検定で分析。
【0023】
[
図11]CPQ/A5-Hilyte488リポソームのマクロファージ取込み
RAW264.7マクロファージを、CPQ/A5、2HPQ/A5、又はA5単独(抗原濃度1μg/mL)とともに1時間インキュベートし、次いでPBSで洗浄し、0.1%トリトンで溶解した。
(A)A5-Hilyte488のマクロファージ取込みパーセントを、表示の時点で測定した。
(B)マクロファージの蛍光画像。CPQ/A5、2HPQ/A5、A5単独を、マクロファージと1時間インキュベートした。
(C)マイクロファージにおけるペプチド放出パーセント。エラーバーは、n=3の独立した実験についての平均±標準偏差を示す。
*p<0.01, ***p<0.001, 二元配置ANOVAとボンフェローニ多重比較事後検定で分析。
パネルAのアスタリスクは、CPQ/A5グループとA5グループとの間の統計的有意差を示す。
【0024】
[
図12]
シリカビーズへのPoP脂質コーティング
シリカビーズは、コーティングされないか、又は2HPQでコーティングされ、その後蛍光顕微鏡法にかけられた。
【0025】
[
図13]
マクロファージに取り込まれた蛍光A5ペプチドの完全性
マクロファージをCPQ/A5と1時間又は2時間インキュベートし、次いで溶解バッファーで溶解し、HPLCにかけた。
【0026】
[
図14]
A5のERR-タグとhis-タグの長さがH-2L
d
の結合とCD8
+
T細胞の誘導に与える影響
(A、B)様々な濃度のA5(his-タグなし、ERR-タグなし)と表示のペプチドとの間のインビトロH-2L
d結合競合。(A)の6つのヒスチジンの配列は配列番号2である。(B)の6つのヒスチジンの配列は配列番号2であり、5つのヒスチジン配列は配列番号3である。
(C)左パネル;インビトロH-2L
d結合においてA5と競合する表示のペプチドのEc50。BALB/cマウスに、CPQ及び表示のペプチドを0日目及び7日目にワクチン接種し、その後、AH1四量体染色を行うために血液を採取した(14日目)。右パネル;CPQ及び表示のペプチドをワクチン接種したマウス血液中のCD8
+T細胞のAH1四量体
+細胞のパーセント。エラーバーは、n=3の独立した実験についての平均±標準偏差を示す。(C)の6つのヒスチジンの配列は配列番号2であり、5つのヒスチジン配列は配列番号3である。
【0027】
[
図15]
his-タグの長さが、A5ペプチド結合及び免疫原性に与える影響
BALB/cマウスに、表示されたhis-タグ長を有するA5ペプチドと、CPQ又はCQとを、0日目及び7日目に注射し、その後、AH1四量体染色のために血液を採取した(14日目)
(A)CPQリポソーム及び2HPQリポソームへのペプチドの結合
(B)結合後のCPQリポソームのサイズ
(C)表示のアジュバントと併用して表示ペプチドを注射したマウス血中のCD8
+T細胞のAH1四量体
+細胞のパーセント。
エラーバーは、n=3の独立した実験についての平均±標準偏差を示す。*p<0.05, **p<0.01, ****p<0.0001。二元配置ANOVAとボンフェローニ多重比較事後検定により分析。
【0028】
[
図16]
CPQを用いた短ペプチド・マイクロライブラリー・スクリーニングは、RragcL385P 9merペプチドが、CT26及び4T1肺転移を阻害する機能的ワクチンエピトープであることを明らかにする
(A)100ペプチドマイクロライブラリーのインビボスクリーニングに用いられるアプローチ。マウスを、プールしたマイクロライブラリーペプチド(一度に5つのペプチド、内部対照であるA5とともに)で免疫した。次いで、回収された脾細胞を個々の短ペプチドで再刺激して、IFN-γを計測し(A5再刺激に対して相対的に)、Ag-特異的T細胞が存在するかを示した。(A)の6つのヒスチジンの配列は配列番号2である。
(B)免疫原性ペプチドの同定。エラーバーは、一グループ当たりn=2マウスの3連ウェルのデータ範囲を示し、同じ免疫グループにおいてA5によって産生されたIFN-γと比較して表される。
(C)マウスを、0日目にCT26細胞を用いて静脈内チャレンジした後、1及び8日後に、RragcL385P、Eml5G44R、Tmem5S71N、又はその組み合わせとともに、CPQで免疫した(1000ngの全ペプチド)。肺結節(C)及び肺重量(D)を18日目に評価した。チャレンジを繰り返し、免疫には500ngのRragL385Pと表示のアジュバントを使用し、肺転移は、CT26細胞(F)又は4T1細胞(H)によるチャレンジ後に評価した。
(E)様々なグループからの肺の画像を取得した。
CT26腫瘍担持マウス(G)及び4T1腫瘍担持マウス(I)について、肺重量も評価した。
ラインは、一グループ当たりn=5マウスの平均を示す。*p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001, ****p<0.0001。一元配置ANOVAとボンフェローニ多重比較事後検定により分析。
【0029】
[
図17]
CPQ/A5及びCPQ/RragcL385Pワクチン接種マウスの脾細胞の細胞毒性
エフェクター脾細胞(E)を、5000の標的CT26細胞(T)と5時間インキュベートした。次いで、特異的溶解を、製造者の指示に従って非放射性LDH放出アッセイによって分析した。エラーバーは、n=4の独立した実験についての平均±標準偏差を示す。
【0030】
[
図18]
RENCAネオアンチゲンの同定
(A)RENCAネオアンチゲンのインビボスクリーニングに用いられるアプローチ。
(B)分析の各段階で同定されたゲノム変異又は変異ペプチドの数、及び最終的に免疫原性であると検証されたされたペプチドの数を表すフローチャート。
【0031】
[
図19]
予防ワクチンとしての、CPQリポソームと混合された20個のRENCAネオアンチゲン候補は、CD8
+
T細胞応答を誘発し、腫瘍の増殖を抑制した
BALB/cマウスを、0日目及び7日目にCPQ/ペプチドワクチンで免疫し、次いで、14日目にRENCA細胞を皮下接種した。腫瘍接種から21日後に脾臓を採取し、脾細胞を調製し、IFN-γ、TNF-α及びT
EM細胞染色のために、注射したペプチドで個別に刺激した。
(A)CPQ及び2HPQリポソームに対する20個の予測ペプチドの結合パーセンテージ。
ペプチド結合を伴うか又は伴わない、リポソームのサイズ(B)及び多分散度(C)。一連の棒グラフのそれぞれについて、CPQは左側であり、2HPQは右側である。
(D)CPQ/ペプチド及び2HPQ/ペプチドワクチン接種マウスの腫瘍増殖
CPQ/ペプチドワクチン接種(E)又は2HPQ/ペプチドワクチン接種(F)による個々のマウスの腫瘍増殖。
(G)脾臓のCD8
+T細胞におけるT
EM細胞のパーセント。
(H)脾臓におけるIFN-γ産生CD8
+T細胞のパーセント。
エラーバーは、n=5の独立した実験についての平均±標準偏差を示す。
【0032】
[
図20]
CPQ/RENCAペプチド2
ワクチンは、マウスにおける腫瘍増殖を抑制する
BALB/cマウスを、0日目及び7日目にCPQ/ペプチドワクチンで免疫し、次いで14日目にRENCA細胞を皮下接種した。
(A)表示のペプチドと混合したCPQでワクチン接種されたマウスの腫瘍サイズ(腫瘍接種後18日目)。腫瘍接種18日後に脾細胞を調製し、5日間インビトロで培養した後、抗原で刺激してエフェクター細胞(E)とし、腫瘍細胞を標的細胞(T)とした。
エフェクター細胞を標的細胞と5時間インキュベートし、次いで、製造者の指示に従って、非放射性LDH放出アッセイによって特異的溶解を分析した。
RENCA細胞の細胞溶解パーセント(B)、及び、無関係なTC-1細胞の細胞溶解パーセント(C)。エラーバーは、n=5の独立した実験についての平均±標準偏差を示す。
【0033】
[
図21]
E6/E7
MHC-Iエピトープ候補は、TC-1腫瘍増殖を抑制する免疫原性粒子を形成する
(A)E6/E7癌遺伝子のDNA配列決定;MHC-Iエピトープの予測;CPQを用いた多価ワクチンの形成;及び、マウスを免役して機能的免疫原性を評価する;ことによる機能的MHC-I拘束性エピトープのスクリーニングアプローチ。
(B)同定された6種類の合成ペプチドのCPQ又は2HPQリポソームへの結合。C57BL/6マウスに0日目と7日目に多価ワクチンを接種し、14日目に血液を採取し、ゲートCD8
+T細胞集団内のセントラルメモリー表現型(C)とエフェクターメモリー表現型(D)を評価した。
(E)多価ワクチンを接種したマウスのPBMCの、エピトープ特異的IFN-γ産生CD8
+T細胞。
(F)多価ワクチンにより免疫した後、TC-1細胞でチャレンジしたマウスにおける腫瘍増殖
エラーバーは、平均±標準偏差を示す。結合及びサイズ研究については一グループ当たりn=3、マウス研究については一グループ当たりのn=5。
*p<0.05, ***p<0.001 ****p<0.0001, (E, F)二元配置ANOVA及びボンフェローニ多重比較事後検定又は(B, C, D)両側独立スチューデントt検定により分析。
【0034】
[
図22]
すべてのE6/E7合成エピトープが粒子を形成したが、E7
49-57
のみがTC-1腫瘍増殖を抑制した
(A)機能的エピトープ同定のために評価したシングルペプチドワクチンの模式図。シングルペプチドワクチンエピトープについての、
図22(A)の配列は、左から右に配列番号4~配列番号9。
CPQ及び2HPQリポソームに対する、予測HPV-16
E6/E7エピトープの結合(B)及びそのサイズ(C)。ペプチドを、測定前にリポソームとともに室温で1時間インキュベートした。エラーバーは、平均±標準偏差を示す(n=3)。0日目及び7日目に、CPQと混合した各ペプチド500ngでマウスを免疫し、14日目にTC-1腫瘍チャレンジを行った。平均腫瘍体積(D)、及び、1cm未満の腫瘍サイズを有するマウスのパーセンテージ(E)。一グループ当たりn=5マウス。CPQ/E7
49-57グループのマウスはすべて、研究の終わりに腫瘍を有さない。
【0035】
[
図23]
E7
HHH49-57
と混合したCPQによる免疫化は、治療環境においてpoly(I:C)よりも強力に腫瘍の増殖を抑制する
C57BL/6マウスに、0日目にTC-1細胞を皮下接種した後、異なるワクチンを腫瘍接種から2日後に接種した。血液を、腫瘍接種後18日目に採取し、CD8
+T細胞を分析した。
(A)表示のワクチンを接種したマウスの腫瘍増殖
(B)19日目のマウスの腫瘍サイズ
(C)マウスの生存
(D)血液中のCD8
+E7
49-57
tet
+細胞のパーセンテージ
エラーバーは、平均±標準偏差を示す(一グループ当たりn=5)。*p<0.05, **p<0.01, ****p<0.0001。(C)ログランク検定又は(D)一元配置ANOVA及びボンフェローニ多重比較事後検定により分析。
【0036】
[
図24]
天然エピトープと比べて向上した機能を有する、CPQ/Trp2 e-ミモトープの開発
(A)ポジショナルマイクロライブラリーを使用してミモトープを開発するための二段階アプローチ。インビボスクリーニング及び腫瘍チャレンジを用いて、配列選択の指針とする。
(B)C57BL/6マウスを、表示の残基にランダムなアミノ酸を有するペプチドライブラリーで免疫し(0及び7日目)、次いで、14日目にB16-F10細胞でチャレンジした。
(C)データは、21日目の腫瘍体積を示す。
エラーバーは、n=3の独立した実験についての平均±標準偏差を示す。
【0037】
[
図25]T
rp2
8C及びTrp2
8Yは、CPQと混合した場合、天然のTrp2
8Wペプチドと比べて、予防ワクチンとしてより優れた抗腫瘍効果を有する
8位に表示のアミノ酸変異を有するTrp2ペプチドでマウスを免疫した。データは、B16-F10チャレンジ後21日目の腫瘍体積を示す。未処置マウス(Ctrl)、又はミモトープ(Trp2-8C及びTrp2-8Y)又は天然配列(Trp2-8W)をワクチン接種したマウスの、腫瘍増殖(A)、生存(B)、及び23日目の腫瘍体積(C)。エラーバーは、n=5の独立した実験についての平均±標準偏差を示す。
*p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001, ****p<0.0001。
ログランク検定(B)又は一元配置ANOVA(C)及びボンフェローニ多重比較事後検定により分析。
【0038】
[
図26]
Env
37-44
ポジション-スキャニング・ペプチドライブラリー(粒子免疫原として)
効率的な免疫原としてポジショナルライブラリーを実証する実験デザインのスキーム。左端のスキームの配列は、上から下に、配列番号10~配列番号18である。
【0039】
[
図27]
Env
37-44
-Pos5ポジショナルペプチドワクチンは、Env
37-44
四量体と結合してEnv
37-44
-Pos5ポジショナルペプチドに対して高い親和性を有するT細胞を誘導し、Env
37-44
ペプチドに対する親和性を増強した
BALB/cマウスを、未処置とするか、又は0日目及び7日目にCPQ/表示のペプチドライブラリーでワクチン接種し、次いで、14日目に血液を採取し、四量体染色及び分析を行った。21日目に脾細胞を調製して分析した。
(A)Env
37-44ポジショナルライブラリーのNetMHC結合パーセンタイル。破線は、H-2L
dに対するEnv
37-44ペプチドの結合パーセンタイルを示す。
(B)血液中のCD8
+T細胞集団におけるEnv
37-44tet
+細胞のパーセンテージ。
(C)CD8
+T細胞集団におけるエフェクターメモリーT細胞表現型のパーセンテージ。脾細胞を10μg/mLのEnv
37-44又はEnv
37-44-Pos5で刺激した後、細胞内IFN-γを染色し、フローサイトメトリーで分析した。
Ag刺激後のCD8
+T細胞集団におけるIFN-γ産生細胞のフローサイトメトリーゲーティング(D)及びパーセンテージ(E)。*p<0.05, ****p<0.0001。二元配置ANOVA(E)及びボンフェローニ多重比較事後検定により分析。エラーバーは、1グループ当たりn=5についての平均±標準偏差を示す。(E)の一連の棒グラフのそれぞれについて、Env
(37-44)は右であり、Pos5は左である。
【0040】
[
図28]
AH1ポジショナルペプチドライブラリー、及び粒子免疫原としてのライブラリー混合物
1つのAH1ポジショナルライブラリー又は4つのAH1ポジショナルライブラリーからなるCPQワクチンのスキーム。左端の模式図における配列は、上から下に、配列番号19~配列番号28である。
【0041】
[
図29]
AHl-Pos1、Pos3、Pos5、及びPos8ライブラリーワクチン免疫原は、野生型エピトープよりもAH1-特異的T細胞を誘導する能力に優れ、腫瘍チャレンジからマウスを保護した
BALB/cマウスを未処置のままとするか、又は、CPQ及び表示のペプチド若しくはペプチドライブラリーで0日目及び7日目にワクチン接種した後、血液を分析のために採取し、CT26腫瘍細胞を14日目に皮下接種した。
(A)AH1ポジショナルライブラリーMHC-I結合パーセンタイル、破線は、H-2L
dに対するAH1ペプチドの結合パーセンタイルを示す。
CD8
+T細胞集団におけるAH1
tet
+細胞のパーセンテージ(B)、及びT
EM細胞のパーセンテージ(C)
(D)CPQ及び表示のポジショナルライブラリーをワクチン接種したマウスの無腫瘍日数。エラーバーは、平均±標準偏差を示す(一グループ当たりn=3)。
【0042】
[
図30]
抗腫瘍効果を有するAH1ペプチドの同定
マウスを、0日目及び7日目に、ポジション1又は3又は5又は8に表示のアミノ酸置換を有するAH1ペプチドで免疫し、次いで血液をAH1四量体分析のために採取し、14日目にマウスにCT26細胞を皮下チャレンジした。
ポジション1(配列番号20)(A)、ポジション3(配列番号22)(B)、ポジション5(配列番号24)(C)、又はポジション8(配列番号27)(D)にアミノ酸置換を有するAH1ペプチドでワクチン接種したマウスの腫瘍サイズ。データは、CT26チャレンジ後28日目の腫瘍体積を示す。
【開示の説明】
【0043】
この出願において、単数形の使用は、複数形を包含し、その逆も同様である。例えば、別段の指示がない限り、「a」又は「an」は、複数の参照項目をも包含する。
【0044】
本開示において値の範囲が提供されている場合、明確に別段の指示がない限り、その範囲の上限と下限との間に介在する各値、及び介在するすべての範囲も含まれると理解すべきである。広い範囲内の上限値及び下限値は、独立して、本開示に包含されるより小さい範囲に含まれてもよい。
【0045】
本明細書で使用される「治療的有効量」という用語は、意図する治療目的を単一又は複数の用量で達成するのに十分な剤又は組成物の量を指す。治療は、完全な治癒につながってもよいが、つながる必要はない。治療とは、適応症の一つ又は複数の症状やマーカーを緩和することを意味し得る。所望又は要求される正確な量は、使用される特定の化合物又は組成物、その投与形態、患者の詳細などに応じて変化する。適切な有効量は、通常の実験方法のみを使用して、本開示による情報を得た当業者によって決定され得る。本開示の意味において、「治療」はまた、再発の予防及び治療、並びに、適応症に関連する急性又は慢性の兆候、症状及び/又は機能不全の緩和も含む。治療は対症療法的に行われることもあり、たとえば症状を抑えることが目的である。それは、短期間にわたって、中期間にわたって行われてもよく、又は、長期間の治療(例えば維持療法のような)であってもよい。投与は、間欠的、定期的、継続的のいずれでもよい。
【0046】
「MHC-I拘束性ペプチド」又は「MHC-I標的ペプチド」又は「MHC-I結合ペプチド」という用語は、互換的に使用され、MHC-I分子上で提示され、CD8+T細胞応答を誘導することができる4mer~11merのペプチドを指す。
【0047】
短いMHCクラス-I拘束性(MHC-I)ペプチドは、抗原(Ag)-特異的CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導するための最小限の生化学的情報を含んでいるが、アジュバントプラットフォームなしでそれを行うことは、ほとんどの場合不可能である。本開示において、従来の短いMHC-Iエピトープの迅速な粒子化を誘導し、ナノグラム投与で高度に機能的な細胞応答をもたらす新規なコバルトポルフィリン-リポソームワクチンアジュバントが記載される。実施例にさらに記載されているように、本発明のリポソームの有効性を実証するために、マウスを用いた研究を行ったところ、モデル系として癌遺伝子gp70由来の短いMHC-Iペプチドを用いた免疫化により、機能的なAg-特異的CD8+T細胞が産生され、複数の腫瘍細胞株に対する拒絶反応、持続的な免疫、局所及び転移性疾患の制御がもたらされた。100の推定MHC-I結合性癌エピトープを含むペプチドマイクロライブラリーのインビボスクリーニングにより、小数が免疫原性であることが明らかになった。関連するヒトペプチドを同定するために、MHC-I結合剤であると予測される(腫瘍細胞又は細胞株を使用して、又は腫瘍特異的遺伝子シークエンシングによって)1つ以上のネオ-エピトープを、本リポソームに組み込んで、機能的免疫応答(例えば、腫瘍増殖を阻害する)を生成又は増強するそれらの能力を評価してもよい。同様の方法を用いて、HLAMHC分子を発現するトランスジェニックマウスを用いて、関連するヒトペプチドを特定してもよい。
【0048】
低免疫原性標的エピトープの課題に取り組むために、ポジショナルマイクロライブラリーを開発して、天然エピトープと比較して増強された機能を有する新規の増強されたペプチドである「e-ペプチド」を同定することができる。さらなる説明は、実施例において提供される。
【0049】
本開示は、ヒトMHC-I拘束性ペプチドなどのMHC-I結合ペプチドを含むリポソームを提供する。ペプチドは、天然ペプチドであってもよいし、その類似体であってもよい。類似体は、ペプチドの1つ以上の機能が変化するような、天然ペプチドの改変を含むことができる。例えば、天然ペプチドは、MHC-Iへの結合を改善するために、あるいはCD8+TCR-ペプチドMHC-I複合体を安定化するために、又はその両方のために改変されてもよい。これらの改変された構築物は、変更されたペプチドリガンドであり、本明細書では「e-ミモトープ」と呼ばれ、天然ペプチドと比較して改善された機能応答を誘導することができる。「e-ミモトープ」の文献にはいくつかの例があり、例えばマウスの場合のA5ペプチドは、様々なマウス癌細胞株で発現する腫瘍関連Agである、gp70糖タンパク質に見られるAH1エピトープ(アミノ酸423-431)に由来する。しかしながら、脂質及びタンパク質にコンジュゲートした合成A5短ペプチドは、限られた有効性しか示さない(Goodwin et al., Vaccine 35, 2550-2557, 2017; Zhang et al., Nature Communications 11, 1187, 2020)。e-ミモトープは、メラノーマ抗原Melan-A/MART-126-35 A27L、gp100 2M、NY-ESO-1 C165V、及びサバイビンT97M(ELMLGEFLKL(配列番号29)のような癌ワクチンの臨床試験に転用されている。
【0050】
本開示では、次世代ワクチンアジュバントを使用して、短い従来のMHC-I拘束性合成ペプチド(さらなる共有結合性コンジュゲーションなし)もまた、ペプチド癌ワクチン開発における少なくとも3つの課題に対処できることを実証する:(1)単純な短いペプチドを使用して機能性CD8+T細胞を強力に誘導する;(2)ペプチドマイクロ-ライブラリースクリーニングを介して新規な機能性エピトープの発見を可能にする;及び(3)変異ペプチドライブラリーを使用して、ベタートープエボリューション(bettertope evolution)を介して、確立されたエピトープに対する応答を改善する。
【0051】
一態様では、本開示は、医薬担体と1つ以上のリポソームとを含む組成物を提供し、前記リポソームは、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲート、任意で、ポルフィリンにコンジュゲートしていないリン脂質、任意でステロール、及び任意でポリエチレングリコール(PEG)を含んでおり、且つ、ポリヒスチジンタグを有する1つ以上のMHC-I標的ペプチドを有しており、このMHC-I標的ペプチドは二重層に組み込まれて、前記ポリヒスチジンタグの一部は二重層内に存在し、MHC-I標的ペプチドの少なくとも一部は二重層の外部に露出している。様々な実施形態において、MHC-Iペプチドのすべて又はほとんどすべてはリポソームの外部に露出し、ポリヒスチジンタグのすべて又はほとんどすべては二重層に存在する。ワクチン組成物は、複数のリポソームを含むことができ、各リポソームは、組成物中の別のリポソームと同一の又は異なるMHC-Iペプチドを含んでもよい。例えば、ワクチン組成物は、複数のリポソームを含み、そのそれぞれが同じ1つ以上のMHC-I結合ペプチドを含んでもよく、又はワクチン組成物は、複数セットのリポソームを含み、セット中の各リポソームは、特定の1つ以上のMHC-Iペプチドを含み、各セットは、異なる1つ以上のMHC-Iペプチドを含んでもよい。様々な実施形態において、リポソームは、同一の配列又は異なる配列を有する複数のペプチドを含んでもよく、組成物中の異なるリポソームは、MHC-Iペプチドの異なる組み合わせを含んでもよい。組成物は、アジュバントをさらに含んでもよく、これはリポソームに組み込まれてもよいが、リポソームに組み込まれることなく、組成物中に存在してもよい。
【0052】
一態様では、本開示は、抗腫瘍免疫応答を生成又は増強するための方法を提供する。この方法は、免疫化が必要な被験体に、組成物を投与することを含み、この組成物はリポソームを含んでおり、前記リポソームは、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲート、任意でポルフィリンにコンジュゲートしていないリン脂質、任意でステロール、及び任意でポリエチレングリコール(PEG)を含んでおり、且つ、ポリヒスチジンタグを有する1つ以上のMHC-I標的ペプチドを有しており、前記MHC-I標的ペプチドは、ポリヒスチジンタグの一部が二重層に存在し、MHC-I標的ペプチドの少なくとも一部が二重層の外側に露出するように、二重層に組み込まれている。
【0053】
様々な実施形態において、本開示は、治療を必要とする被験体に、リポソームを含む組成物を投与することによって、MHC-Iペプチドの免疫原性を増加させる、及び/又はMHC-Iペプチドに対する中和抗体を誘発するための方法を提供し、ここで、前記リポソームにはポリヒスチジンタグ化MHC-Iペプチドが組み込まれており、前記リポソームは、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲート、任意にポルフィリンとコンジュゲートしていないリン脂質、任意にステロール、及び任意にポリエチレングリコール(PEG)を含む二重層を含み、ポリヒスチジンタグの一部は二重層に存在し、MHC-Iペプチドの少なくとも一部は二重層の外側に露出している。任意で、1つ以上のアジュバントが、ナノ構造体に組み込まれてもよく、あるいは別々に投与されてもよい。
【0054】
一実施形態では、本開示は、癌細胞上の抗原を認識することができる腫瘍抗原-特異的CD8+T細胞応答を誘導する方法を提供し、この方法は、治療を必要とする個体にリポソームを含む組成物を投与することを含み、ここで、腫瘍抗原に由来するポリヒスチジン-タグ化MHC-I結合ペプチドが前記リポソームに組み込まれており、前記リポソームは二重層を含んでおり、この二重層は、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲート、任意にポルフィリンにコンジュゲートしていないリン脂質、任意にステロール、及び任意にポリエチレングリコール(PEG)を含み、前記ポリヒスチジンタグの一部は二重層に存在し、MHC-I結合ペプチドの少なくとも一部は、二重層の外部に露出している。
【0055】
一実施形態において、本開示は、リポソームを含む組成物を個体に投与することを含む、腫瘍に罹患している個体を治療する方法を提供し、前記リポソームは、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲート、任意にポルフィリンにコンジュゲートしていないリン脂質、任意にステロール、及び任意にポリエチレングリコール(PEG)を含み、且つ、ポリヒスチジンタグを有する1つ以上のMHC-I標的ペプチドを有しており、前記MHC-I標的ペプチドは、ポリヒスチジンタグの一部が二重層に存在し、MHC-I標的ペプチドの少なくとも一部が二重層の外側に露出するように、二重層に組み込まれている。組成物は、一回又は複数回投与されてもよい。例えば、治療を行う医師は、腫瘍の成長に応じて、組成物の投与量及び投与回数を調整してもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、本開示は、ペプチドマイクロライブラリーを使用してインビボで癌エピトープをスクリーニングする及び改善するのための方法を提供する。
【0057】
複数の実施形態において、本開示は、MHC-1結合、CD8+T細胞活性化、抗癌活性、又はそれらの組み合わせを決定するために、複数のペプチドをスクリーニングするための方法を提供する。複数のペプチドは、ペプチドライブラリーを含んでもよい。複数の実施形態において、ライブラリーは、2つ以上のペプチドを含む。複数の実施形態において、ライブラリーは、2~1000個のペプチドを包括的に含み、その間のすべての数字範囲を含む。複数の実施形態において、ライブラリーは、2~100個のペプチドを含む。複数のペプチド(2~100個のペプチドを含む)は、本開示において、ときにマイクロライブラリーと呼ばれる。
【0058】
ライブラリー中でスクリーニングされるペプチドは、任意のソースに由来してもよく、又は、デザイナーペプチドであってもよい。特定の実施形態では、ペプチドは、ネオアンチゲンから得られるか、又はネオアンチゲンから誘導されたアミノ酸配列を含むか、又は該アミノ酸配列から構成される。特定の実施形態では、ペプチドはネオアンチゲンのセグメントである。特定の実施形態では、ペプチドはネオアンチゲンのセグメントの誘導体である。特定の実施形態では、ペプチドは、コンピュータ実行分析を使用してなされた予測に少なくとも部分的に基づいて設計され、その非限定的な例が本明細書に記載される。
【0059】
複数の実施形態において、スクリーンで使用されるライブラリー中のペプチドは、パーソナライズされた医薬アプローチを使用して生成されてもよい。これは、個体の癌細胞に由来するポリヌクレオチド配列を決定し、コードされたネオアンチゲンを特定し、特定されたネオアンチゲンに基づいてペプチドを生成し、ペプチドを検査して、検査ペプチドの1つ以上の抗癌関連特性を決定することを含む。候補ペプチドは、以下に記載されるようにさらに特性評価されてもよい。抗癌活性が実証された1つ以上のペプチドは、そのサンプルが得られた個体において、予防又は治療用抗癌剤として使用される。
【0060】
複数の実施形態において、ペプチドのスクリーニングは以下のように行われる。1つ以上のペプチドが動物に導入され、CD8
+T細胞応答を刺激する前記1つ以上のペプチドの能力を評価する(これは、前記1つ以上のペプチドがMHC-Iに結合し、抗癌剤として使用するための候補であることを示唆する)。特定のペプチドがCD8
+T細胞応答を刺激できるかどうかを決定するための様々な方法が当技術分野で知られており、本明細書の利点を考慮することにより、本明細書に記載の方法における使用に適合させることができる。ある態様では、1つ以上のペプチドをマウスモデルなどの動物に導入し、その後、マウスに導入された1つ以上のペプチドの存在下で動物由来の細胞を試験する。ある特定のアプローチでは、ヒト化した免疫系を含むマウスモデルを使用することができる。ヒト化した免疫系を含むマウスモデルは市販されており、例えば、「THE JACKSON LABORATORY」から入手可能である。複数の実施形態において、マウスモデルは、MHC-Iの代わりにHLA-1を発現する免疫細胞を産生する。一実施形態では、動物モデルに導入されたペプチドは、動物の脾臓内の又は脾臓から単離されたCD8
+T細胞によるIFN-γ産生を刺激し、このことは、ペプチドがMHC-1に結合し、抗癌ワクチンとして使用できる候補であることを示している。このプロセスの代表的な概要は、
図18に提供される。
図18は、全エクソーム及びRNA配列決定を示している。当業者によって認識されるように、エクソームシーケンシングは、エクソンを含むゲノム部分の配列を決定することを含む。このアプローチを使用することによって、及び、得られたエクソーム配列を、非癌遺伝子対照配列などの参照配列と比較することによって、癌に関連するエクソン中の変異を特定することができる。変異は、例えば、コンピュータ実行アルゴリズムを使用して評価することができ、これには、ニューラルネットワーク・シミュレーション・アルゴリズムが含まれるが、必ずしもこれに限定されない。変異は、タンパク質コード配列を変更する任意の変異であってもよく、選択的又は不適切にスプライシングされたエクソンをもたらす変異、ミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、挿入、欠失、例えばインデル含むが、これらに限定されない。ペプチドの評価は、多くの基準に基づくペプチドのランク付けを含んでもよく、これには、前記ペプチドによって構成されるエピトープを含むタンパク質を産生する癌細胞のCD8
+T細胞-媒介性腫瘍細胞溶解を刺激すると予測されるペプチド能力が含まれるが、必ずしもこれに限定されない。ペプチドのこの能力および/または他の能力のさらなる特徴付けは、同定された1つ以上のペプチドで動物を免疫して、この免疫ペプチドによって構成されるエピトープを含むタンパク質を産生する癌に罹患した動物において、ペプチドのいずれかが抗癌反応を刺激できるかどうかを決定することによって行うことができる。
図18に示すように、本開示は、複数の別個のペプチドを分析して、例えば、複数の同定されたペプチドを含む多価ワクチンを生成するために組み合わされ得るペプチドを特定することを含む。
【0061】
本開示は、同定されたペプチド中の1つ以上のアミノ酸を変更することによって、同定されたペプチドを改善することをさらに含む。このアプローチの代表的な実施形態が、
図24に示されている。
図24に示されるように、ペプチドは、ある位置でランダム化されて、抗癌活性の変化について試験される複数の変異ペプチドを生成することができる。例えば、本開示は、ポジショナルランダムライブラリーを生成し、位置ランダム化ペプチドをスクリーニングしてペプチドの第一のセットを選択し、所望により、選択されたペプチドの第一のセットにさらに変更を加えてペプチドの第二のセットを提供すること、を含む。ペプチドの第二セットは、第一セットのペプチドと比較して、1つ以上の抗癌特性がさらに改善されている1つ以上のペプチドを特定するために試験されることができる。
【0062】
1つ以上のペプチドの抗癌特性の改善は、任意の適切な基準値と比較されてもよい。複数の実施形態において、基準値は、対照ペプチドを使用して誘発される抗癌効果である。対照ペプチドは、天然ペプチド、例えば、野生型アミノ酸配列であっても、又は本明細書に記載のペプチドと比べて既知の抗癌作用を有するペプチドであっても、又は本開示の方法によって同定されたペプチドであってもよい。改善された抗癌効果は、任意の抗癌効果であってもよい。複数の実施形態において、抗癌効果は、癌細胞の増殖の抑制、腫瘍体積の減少、転移の阻害、癌の再発の阻害、生存期間の延長、前記ペプチドとともに使用されるコンパニオンセラピー(例えば、養子免疫療法、化学療法、抗体ベース療法、CAR T療法、又はチェックポイント阻害剤療法)への応答の改善のうちの、少なくとも1つである。1つ以上のペプチドの抗癌特性の改善はまた、CD8+T細胞の活性化の改善及び/又はMHC-Iに対する親和性の改善を含んでもよい。
【0063】
上述の通り、本開示は、主に、二層(二重層)又は単層を有するリポソームとともに、記載されたペプチドを使用することに言及するが、本開示及び様々な実施形態は、単層にも適用可能である。二重層又は単層は、本明細書において「膜」と呼ばれることがある。
【0064】
リポソームの単層又は二重層中のコバルトポルフィリンの一部又は全部は、ポリヒスチジンタグ化分子に非共有結合的に結合することができる(タグ化分子のポリヒスチジンタグの少なくとも一部が二重層内に存在し、タグ化分子が二重層の表面に提示されるか、あるいはリポソームの外部に露出するように)。ポリヒスチジンタグ内の1つ以上のヒスチジン残基は、二重層内のコバルト金属に配位していると考えられる。ポリヒスチジンタグのヒスチジン残基のイミダゾール基が、膜中のポルフィリンと結びついたコバルト金属に配位してもよい。ヒスチジンタグ全体が、二重層内に存在してもよい。コバルト金属がそこにコンジュゲートされたポルフィリン-リン脂質コンジュゲートは、本明細書においてCoPoPと呼ばれる。二重層がCoPoPを含むリポソームは、本明細書においてCoPoPリポソームと呼ばれる。CoPoPリポソームは、ヒスチジンタグ化分子で機能化することができる。本明細書で使用される「His-タグ化分子」という用語は、ヒスチジンテールを有する分子(例えば、MHC-I拘束性ペプチドなど)を意味する。例えば、ヒスチジンテールを有するペプチドは、his-タグ化分子である。このようなhis-タグを含むCoPoPリポソームは、本明細書では、His-タグ化CoPoPリポソーム又はHis-タグ化CoPoPと呼ばれる。
【0065】
本明細書において、「リン脂質」は、疎水性脂質テールにグリセロール骨格を介して連結されたリン酸基を有する親水性のヘッド基を有する脂質である。リン脂質は、炭素数6~22個(その間のすべての整数値の炭素、及びその間の範囲を含む)のアシル側鎖を含む。特定の実施形態では、ポルフィリンとコンジュゲートしたリン脂質は、l-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリンである。ポルフィリンとコンジュゲートしたリン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)及び/又はホスファチジルイノシトール(PI)を含んでもよく、あるいは本質的にそれらからなってもよい。リン脂質の例としては、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
特定の実施形態では、ポルフィリンは、炭素数1~20個(それらの間のすべての整数値の炭素を含む)の炭素鎖リンカーによってリン脂質上のグリセロール基にコンジュゲートされる。
【0067】
His-タグ化MHC-I拘束性ペプチドで機能化されたCoPoP二重層は、それらのHis-タグ化ペプチドに対する特異的免疫応答を生成するためのプラットフォームを提供する。His-タグ化ペプチドは、CoPoPに非共有結合的に付着(配位)され、インキュベーション工程によって調製することができる。CoPoPの調製プロセスは、マレイミドなどの反応性部分の除去、又は、外因性触媒あるいは非標準アミノ酸(他のタイプのコンジュゲーション化学で使用される)を必要としない。
【0068】
コバルト-ポルフィリンは、その中に水性コンパートメントを囲い込む自己集合性リポソームの二重層又は単層内にあってもよい。コバルトポルフィリン-リン脂質(CoPoP)は、その両親媒性の性質に関しては従来の脂質と同様に挙動する。したがって、CoPoPを含む単層又は二重層は、当業者に知られている方法によりナノ粒子のコーティングのために使用することができる。一実施形態では、本開示の二重層又は単層は、例えば、コーティングの形態などで、他のナノ粒子上に存在してもよい。一実施形態では、コバルト-ポルフィリンを含有する二重層又は単層(例えば、コバルトポルフィリン-リン脂質)は、金又はシリカナノ粒子、又は親水性表面を有する他のナノ粒子上のコーティングとして存在する。一実施形態では、コーティングは、単層の形態であってもよい。一実施形態では、コバルト-ポルフィリン(例えば、コバルトポルフィリン-リン脂質)を含む単層又は二重層は、カーボンナノチューブなどの疎水性表面上のコーティングとして存在する。一実施形態では、単層は、1つ以上の疎水性分子を取り囲むミセルを形成してもよい。
【0069】
本開示のリポソームは、以下のi)及びii)を含む:
i)コバルトに配位してコバルト-ポルフィリンを形成するポルフィリン、ここで、コバルト-ポルフィリンの一部又はすべてはリン脂質にコンジュゲートして、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲートを形成してもよい。
ii)任意に、コバルト-ポルフィリンにコンジュゲートしていないリン脂質。
任意で、前記リポソームは、以下の1つ以上をさらに含んでもよい:ステロール(例えば、コレステロール(明細書全体を通してCholと略される)、アジュバント(例えば、PHAD、QS-21など、及びそれらの組み合わせ)、又はオリゴエーテル(例えば、PEG)。
例えば、CoPoP/PoP, DOPC, Chol, PHAD, 及びQS-21を含むリポソームについて、[DOPC:Chol:CoPoP/PoP:PHAD:QS-21]の典型的な質量比は、[20:5:1:1:1]又は[20:5:1:0.25:0.25]のいずれかである。
【0070】
単層又は二重層は、コバルトポルフィリンにコンジュゲートしていないリン脂質を含む必要はなく、この場合は、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲートのみを有する。コバルトポルフィリン-リン脂質は、単層又は二重層の1~100モル%(その間の0.1モル%値及び範囲を含む)を構成することができる。例えば、コバルトポルフィリンは、単層又は二重層の1~20モル%、又は5~10モル%を構成することができる。コバルトポルフィリンが単層又は二重層の100%を構成する場合、コバルトポルフィリンとコンジュゲートしていないリン脂質は存在しない。二重層又は単層は、ステロール及び/又はポリエチレングリコールも含むことができる。ステロールはコレステロールであってもよい。
【0071】
ヒスチジンタグ(His-tag)は、様々な用途のために様々なMHC-I拘束性ペプチドを担持し得る。His-タグの少なくとも一端は、リポソームの外面に近接して存在することができる。一実施形態では、ポリヒスチジンタグの少なくとも一端は、MHC-I拘束性ペプチドに共有結合的に付着される。単層又は二重層におけるポリヒスチジン-タグにおけるヒチジンの数は、1~6とすることができる。例えば、ポリヒスチジン-タグ中のヒチジンの数は、1、2、3、4、5又は6とすることができる。6未満のヒスチジンがより優れた免疫応答の増強を提供することが見出されたので、6個未満のヒスチジンを有することが好ましい。一実施形態では、ポリ-Hisタグは、2~5個のヒスチジンを含むことができる。一実施形態では、His-タグの一端はフリーであり、ペプチドは他端に付着している。Hisタグの少なくとも一部は、それがコバルト金属に配位するように二重層内に位置していると考えられる。
【0072】
一実施形態において、本開示は、ヒトMHC-I拘束性ペプチドなどのMHC-I拘束性ペプチドを担持するリポソームを含む抗原性組成物を提供する。本リポソームはまた、1つ以上のアジュバントを含んでもよい。アジュバントの例として、弱毒化リピドA誘導体(例えば、モノホスホリルリピドA(MPLA))、又は合成誘導体、例えば、3-脱アシル化モノホスホリルリピドA、又はモノホスホリルヘキサ-アシルリピドA、3-脱アシルが挙げられる。様々な実施形態において、アジュバントは、モノホスホリルリピドA(MPLA:monophosphoryl lipid A)、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ミョウバン(Alum)、リン酸化ヘキサアシル二糖(PHAD:phosphorylated hexaacyl disaccharide)、シグマアジュバントシステム(SAS:Sigma adjuvant system)、AddaVax(Invitrogen)、又はサポニンQS21、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN:CpG oligodeoxynucleotides)、又はポリイノシン:ポリシチジル酸(poly(I:C))であってもよい。いくつかの実施形態では、アジュバントは、QS21である。いくつかの実施形態では、アジュバントはPHADである。いくつかの実施形態では、アジュバントは、QS21及びPHADである。QS21及びPHADは、その中にhis-タグ化MHC-I拘束性ペプチドが組み込まれている同一のリポソームに組み込まれることが好ましい。QS-21は、複数の糖残基を有する2つの親水性ヘッド基と、トリテルペン基及びアルキルエステルからなる疎水性領域を有し、二重膜にも組み込まれる。QS-21は、コレステロールに不可逆的に結合して複合体を形成することができるので、脂質二重層に局在化されることもできる。MPLAはホスファスホリル(phosphasphoryl)脂質であり、リポソーム二重層に組み込まれていてもよい。
【0073】
アジュバントは、リン酸緩衝生理食塩水中の0.001~50重量%の溶液として使用することができ、抗原は、製剤中のペプチド及び脂質の総質量に対して、例えば約0.0001~約5重量%、例えば約0.0001~約1重量%、又は例えば約0.0001~約0.05重量%などの、マイクログラムからミリグラムのオーダーで存在する。抗原は、マイクログラムからミリグラムオーダーの量で、又は約0.001~約20重量%、例えば約0.01~約10重量%、又は約0.05~約5重量%の量で存在することができる。
【0074】
例えば、[CoPoP:PHAD:QS21:ペプチド]の適切な質量比は、4:4:4:1であってもよい。いかなる特定の理論によっても拘束されることを意図しないが、リポソーム製剤中のアジュバント、PHADとQS21のパーセンテージが低いとT細胞応答が増加するが、これはおそらくQS-21の用量が高すぎるためと考えられる。例えば、ペプチド用量が同じである場合に、MPLA及びQS21の割合を[CoPoP:PHAD:QS21:ペプチド]=4:4:1:1の質量比に減少させると、T細胞応答は増加する。[CoPoP:PHAD:QS21:ペプチド]=4:1:1:1の質量比も免疫原性が高い。しかしながら、リポソーム内にQS21が存在しない場合、CD8+T細胞応答はほとんどない。製剤中にMPLAがないと、ワクチンプラットフォームの免疫原性も劇的に減少する。
【0075】
様々な実施形態では、CoPoP:ペプチドのモル比の範囲は、0.5:1から4:1まで変化することができ、CoPoP:PHADの範囲は、1:1から1:0.1まで変化することができ、CoPoP:QS21の範囲は、1:1から0.1:1まで変化し得る。
【0076】
リポソーム又は他の構造体の二重層の少なくとも一部を構成するコバルト-ポルフィリン又はコバルト-ポルフィリンコンジュゲートのポルフィリン基には、ポルフィリン、ポルフィリン誘導体、ポルフィリン類似体、又はそれらの組み合わせが含まれる。ポルフィリンの例として、ヘマトポルフィリン、プロトポルフィリン、テトラフェニルポルフィリンが挙げられる。ポルフィリン誘導体の例として、ピロフェオホルビド類(ピロフェオホルバイド類とも呼ばれる[pyropheophorbides])、バクテリオクロロフィル類、クロロフィルA、ベンゾポルフィリン誘導体、テトラヒドロキシフェニルクロリン類、プルプリン類、ベンゾクロリン類、ナフトクロリン類(naphthochlorins)、ベルジン類(verdins)、ロジン類(rhodins)、ケトクロリン類、アザクロリン類(azachlorins)、バクテリオクロリン類、トリポルフィリン類(tolyporphyrins)及びベンゾバクテリオクロリン類が挙げられるが、これらに限定されない。追加的なポルフィリン類似体の例として、広義のポルフィリンファミリーメンバー(例えばテキサフィリン類(texaphyrins)、サプフィリン類(sapphyrins)及びヘキサフィリン類(hexaphyrins))ならびにポルフィリン異性体(例えばポルフィセン類(porphycenes)、反転ポルフィリン類(inverted porphyrins)、フタロシアニン類及びナフタロシアニン類)が挙げられる。例えば、コバルト-ポルフィリンは、ビタミンB12(コバラミン)又はその誘導体であってもよい。
【0077】
一実施形態において、CoPoPはピロフェオホルビド-リン脂質である。ピロフェオホルビド-リン脂質の構造を以下に示す:
【化1】
【0078】
一実施形態では、層(単層又は二重層)はCoPoPのみを有し、且つ、層はその中に埋め込まれたHis-タグ化提示分子を有する。この実施形態では、層中の唯一のリン脂質はCoPoPである(すなわちCoPoPが100モル%)。一実施形態では、層(単層又は二重層)は、CoPoP及びポルフィリンがコンジュゲートしたリン脂質(PoP)のみを有し、ここで、CoPoPはそこにキレート化されたヒスチジンを有し、前記ヒスチジンは、そこに付着したペプチド又は他の提示分子を有している。ある実施形態では、CoPoP以外の他のリン脂質は存在しないが、層(単層又は二重層)は、任意で、ステロール類及び/又はPEG-脂質を含有してもよい。
【0079】
一実施形態では、CoPoPに加えて、二重層は、ポルフィリンにコンジュゲートしていない、それゆえCoに配位していないリン脂質も有してもよい。そのようなリン脂質は、本明細書では「追加のリン脂質」と呼ばれることがある。一実施形態では、二重層中の唯一の金属-PoPはCoPoPであり、二重層に埋め込まれたHis-タグ化MHC-I拘束性ペプチドを伴う。
【0080】
一実施形態では、リポソームの二重層はCoPoP及びPoPを含む。CoPoP及びPoPに加えて、二重層は追加のリン脂質を有することができる。二重層は、1つ以上のステロールをさらに含んでもよい。一実施形態では、二重層は、CoPoP、PoP、追加のリン脂質、及び任意に1つ以上のステロール、及び、他の脂質(ガングリオシドなど)から本質的になるか、又はそれらのみからなる。一実施形態では、二重層内の唯一の金属はCoである。
【0081】
一実施形態では、CoPoPは、ナノ粒子中に0.1~10モル%の存在し、残りの99.9~90モル%は追加の脂質であり、ここで、前記モルパーセントは、二重層中の脂質の総量に対してである。例えば、CoPoPの組み合わせは、0.1~10モル%存在することができ、ステロールは0.1~50モル%存在することができ、任意で、弱毒化リピドA誘導体、例えば、モノホスホリルリピドA、又は3-脱アシル化モノホスホリルリピドA、あるいは関連する類似体は0~20モル%又は0.1~20モル%存在することができ、残りは追加のリン脂質である。追加のリン脂質の例として、DOPC、DSPC、DMPC、又はそれらの組み合わせが挙げられる。存在する場合、ステロールはコレステロールであってもよい。
【0082】
一実施形態では、CoPoP及びPoPの組合せは、ナノ粒子中に0.1~10モル%存在してもよく、残りの99.9~90モル%は追加のリン脂質である。例えば、CoPoPとPoPとの組み合わせは0.1~10モル%存在することができ、ステロールは0~50モル%又は0.1~50モル%存在することができ、PEGは0~20モル%又は0.1~20モル%存在することができ、残りは追加のリン脂質である。追加のリン脂質は、DOPC、DSPC、DMPC、又はそれらの組み合わせであってもよい。存在する場合、ステロールはコレステロールであってもよい。
【0083】
様々な実施形態において、本明細書に開示されるポルフィリンコンジュゲートに加えて、リポソームの二重層は他のリン脂質も含む。これらのリン脂質の脂肪酸鎖は、二重層を形成するのに適した数の炭素原子を含むことができる。例えば、脂肪酸鎖は、12、14、16、18、又は20個の炭素原子を含んでもよい。異なる実施形態では、二重層は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、及び/又は、ホスファチジルイノシトールを含む。
【0084】
本発明の二重層及び単層はまた、ステロール類を含んでもよい。ステロール類は、動物性ステロール類又は植物性ステロール類であってもよい。ステロール類の例としては、コレステロール、シトステロール、スチグマステロール、コレステロール等が挙げられる。複数の実施形態において、コレステロールは、0モル%~50モル%、又は0.1~50モル%であってもよい。他の実施形態では、コレステロールは、1~50モル%、5~45モル%、10~30モル%で存在し得る。
【0085】
特定の実施形態において、二重層又は単層は、モノホスホリルリピドA、又は3-脱アシル化モノホスホリルリピドAなどの弱毒化リピドA誘導体などのアジュバントをさらに含む。
【0086】
リポソームは、球形であってもよく、非球状であってもよい。リポソームのサイズ(例えば、最長の直線寸法)は、50~1000nm又はそれ以上であり得る。一実施形態では、リポソームは50~1000nmのサイズ(例えば、最大寸法、例えば直径など)を有し、これにはその間のすべての整数のnm値と範囲が含まれる。例えば、サイズは、50~200nmであってもよいし、20~1000nmであってもよい。リポソームが球形でない場合、最長寸法は50~1000nmであってもよい。これらの寸法は、二重層のナノ構造幅を保ちながら達成することができる。RBD配列又はその一部は、二重層に組み込むことができる。リポソームは、追加的に、水性区画内にカーゴを保有することができる。一実施形態では、リポソームは、30nm~250nmのサイズ(その間のすべての整数のnm値と範囲が含まれる)を有することができる。一実施形態では、リポソームのサイズは、100~175nmである。一実施形態では、組成物中のリポソームの少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%は、30~250nm又は100~175nmのサイズを有する。リポソームは、200nmを超えることができる。一実施形態では、リポソームは1000nmを超える。一実施形態では、ナノ構造体は200~1000nmである。一実施形態では、二重層のナノ構造幅を保ちながら、リポソームの最大寸法は200nm未満である。一実施形態では、リポソームのサイズは、二重層のナノ構造幅を保ちながら、いくつかの次元で200nmを超える。一実施形態では、リポソームのサイズは、二重層のナノ構造幅を保ちながら、いくつかの次元で1000nmを超える。
【0087】
一態様では、本開示は、本開示のリポソーム又は他の構造体、又は異なるリポソーム又は他の構造体の混合物を含む組成物を提供する。組成物はまた、ヒトを含む個体に投与するための滅菌された適切な担体、例えば生理学的緩衝剤、例えば、スクロース、デキストロース、生理食塩水、pH緩衝剤(例えば、pH5~9、pH7~8、pH7.2~7.6、例えば7.4などの)、例えば、ヒスチジン、クエン酸塩、又はリン酸塩などを含むことができる。一実施形態では、組成物は、少なくとも0.1%(w/v)のCoPoPリポソーム又はHis-タグ化-CoPoPリポソーム又は他の構造体を含む。様々な実施形態において、組成物は、0.1~100モル%のCoPoPリポソーム又はHis-タグ化CoPoPリポソーム、又は他の構造体(二重層でコーティングされたナノ粒子など)を含む。一実施形態では、組成物は、そこに会合したHis-タグ化提示分子を有するCoPoPリポソームを0.1~99モル%含む。
【0088】
一実施形態において、本開示の組成物は、マレイミド又はスクシンイミジル(succinimidyl)エステル反応性基を含まない。一実施形態では、膜に付着されるタグ化分子は、非天然アミノ酸を有さない。
【0089】
His-tagを有するMHC-I拘束性ペプチドは、4~11個のアミノ酸を含むペプチドであってもよい。例えば、ペプチドは、4、5、6、7、8、9、10又は11個のアミノ酸を有してもよい(前記ヒスチジンは除いて)。様々な実施形態では、ペプチドは、5~11、5~10、6~11、6~10、7~11、7~10、8~11、8~10、9~11、9~10個のアミノ酸(前記ヒスチジンを除いて)を有し得る。抗原選択は、ペプチド癌ワクチンを開発するための重要なステップである。ヒトペプチドの例としては、メランA/MART126-35(EAAGIGILTV(配列番号30))、メランA/MART127-35(AAGIGILTV(配列番号31))、チロシナーゼ1-9(MLLAVLYCL(配列番号32))、チロシナーゼ368-376(YMDGTMSQV(配列番号33))、Gp100457-466(LLDGTATLRL(配列番号34))、サバイビン-2B80-88(AYACNTSTL(配列番号35))、NY-ESO-1b157-165(SLLMWITQC(配列番号36))、WT1235-243(mp235)(CMTWNQMNL(配列番号37))、gp100209-217(210M)(IMDQVPFSV(配列番号38))、gp100280-288(288V)(YLEPGPVTA(配列番号39))、E711-20(YMLDLQPETT(配列番号40))、E786-93(TLGIVCPI(配列番号41))、及び、E782-90(LLMGTLGIV(配列番号42))が挙げられる。ペプチドは、天然に存在するアミノ酸のみを有することができ、又は天然に存在するアミノ酸と天然に存在しないアミノ酸の混合であってもよく、又は天然に存在しないアミノ酸のみを有していてもよい。ヒトワクチンのためのペプチドは、商業的にカスタマイズすることができる。本開示の層によって形成される構造体は、血清安定性である。例えば、インビトロでは、CoPoP二重層へのhis-タグ結合の安定性は、40%のヒト血清中でインキュベートしたとき、37℃で21日間安定である。したがって、これらの構造体は、血清下で又は濃縮あるいは希釈された血清条件下で安定であり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、ヒトでの治療に適した組成物は、0.05~1mgのペプチド(その間のすべての0.01mg値と範囲を含む)、0.05~4mgのCoPoP(その間のすべての0.01mg値と範囲を含む)、0.01~0.5mgのQS21(その間のすべての0.01mg値と範囲を含む);及び0.01~1mgのMPLA(その間のすべての0.1mg値と範囲を含む)を含んでもよい。
【0091】
本開示はまた、本明細書に記載の二重層を有する構造体を使用するための方法を提供する。一実施形態では、本開示は、宿主において免疫応答を誘発する方法を提供する。免疫応答は、CD8+T細胞を生成し得る。この方法は、CoPoP二重層を有する構造体を含む組成物を個体に投与することを含み、二重層には、1つ以上のヒスチジン-タグ化MHC-I拘束性ペプチド(単数又は複数)がコンジュゲートしている。組成物は、皮下、皮内、筋肉内、腫瘍内、又は任意の他のルートを含む免疫化の標準的なルートによって投与されることができる。組成物は、一回の投与で投与されてもよいし、ブースターショットを含む複数回の投与で投与されてもよい。免疫応答をモニターするために、T細胞及びサイトカイン産生を測定することができる。
【0092】
一実施形態では、本リポソーム及び組成物は、他の抗癌療法と併せて使用されてもよい。例えば、本組成物を使用する治療は、PD-1、PD-L1、又はCTLA-4抗体などのチェックポイント遮断によって増強され得る。
【0093】
一態様では、本開示は、CoPoPを含む二重層を調製する方法を提供する。フリーベースのPoPは、ピロフェオホルビド-aなどのモノカルボン酸ポルフィリンを、2-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(lyso-C16-PC)(Avanti #855675P)とともに、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド及び4-ジメチルアミノピリジンを用いて、クロロホルム中で、lyso-C16-PC:Pyro:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC):4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)=モル比1:1:2:2にて、室温で一晩撹拌することによってエステル化することにより製造することができる。次いで、PoPをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製する。CoPoPは、ポルフィリン-リン脂質コンジュゲートを、暗所にて溶媒(例えば、メタノール)中でモル過剰(例えば、10倍モル過剰)のコバルト塩(例えば、酢酸コバルト(II)四水和物)と接触させることによって生成することができる。
【0094】
以下の組成物及び方法の例は、本開示の様々な態様を示す:
【0095】
a)二重層とb)ポリヒスチジン-タグ化MHC-I拘束性ペプチドを含むリポソームであって、前記二重層は、i)1つ以上のリン脂質、及びii)コバルトに配位してコバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲートを形成する1つ以上のポルフィリン-リン脂質コンジュゲートを含み、ここで、ポリヒスチジンタグの少なくとも一部は二重層の疎水性部分に存在し、ポリヒスチジンタグの1つ以上のヒスチジンはコバルト-ポルフィリン中のコバルトに配位しており、ポリヒスチジン-タグ化MHC-I拘束性ペプチドの少なくとも一部はリポソームの外部に露出し、前記リポソームはMHC-Iクラスの分子に結合するが、MHC-IIクラスの分子には結合せず、前記ポリヒスチジン-タグは、2~6個のヒスチジン残基を含み、前記MHC-I拘束性ペプチドは、アミノ酸の数が4~11のペプチドである(前記アミノ酸の数には、His-タグのヒスチジンは含まれない)。様々な実施形態において、ポリヒスチジン-タグは、2~5個のヒスチジン残基を含み、MHC-I拘束性ペプチドは、MHC-IIクラス分子に結合せず、リポソームは、その中に組み込まれた1つ以上の追加のアジュバント(QS21あるいはPHADであってもよい)をさらに含むことができ、前記1つ以上の追加のアジュバントは、MPLA(PHAD, 3D6A-PHAD, 又は3D-PHADなどの合成変異体を含む)をさらに含んでもよく、前記1つ以上の追加のアジュバントは、MPLA及びQS21をさらに含んでもよく、MHC-I拘束性ペプチドとQS21の質量比は、1:1~10:1であってもよく、MHC-I拘束性ペプチドとPHADの質量比は、1:1~1:10であってもよく、MHC-I拘束性ペプチド、QS21、PHADは、1:1:1、2:1:1、3:1:1、4:1:1、5:1:1、6:1:1、7:1:1、8:1:1、9:1:1、又は10:1:1の質量比で存在してもよく、コバルトポルフィリンはリン脂質にコンジュゲートされてコバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲートを形成してもよく、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲートは、単層又は二重層の1~25モル%を構成してもよく、コバルトポルフィリン-リン脂質コンジュゲートは、二重層の約2%~約8%、より具体的には3~4%(質量比)を構成してもよく、二重層は、約15~20%の質量比(例えば、約17~19%)でコレステロールをさらに含んでもよく、及び/又は、リポソームのサイズは、50nm~250nmであってもよい。
【0096】
腫瘍抗原に対する免疫応答を生成し、被験体において腫瘍の増殖を減少させ、及び/又は、ホスト個体において腫瘍細胞に対するCD8+陽性細胞を誘導する方法であって、本明細書に記載のリポソームを医薬担体中に含む組成物を、個体に投与することを含む方法。複数の実施形態において、個体は、ヒト又は非ヒト動物である。
【0097】
本開示を説明するために、以下の実施例が示される。これらは、いかなる方法による限定も意図していない。
【実施例】
【0098】
本実施例では、MHC-I拘束性ペプチドを含むリポソームの調製及び使用が記載される。この実施例は、マウスにおける研究を記載するものであり、gp70癌遺伝子由来の短いMHC-Iペプチドをモデル系として免疫することにより、機能的なAg-特異的CD8+T細胞を生成し、複数の腫瘍細胞株の拒絶、耐久性のある免疫、局所性及び転移性疾患の制御をもたらす。100個の推定MHC-I結合性癌エピトープを含むペプチドマイクロライブラリーのインビボスクリーニングでは、小数が免疫原性であることが明らかになった。乳癌及び結腸癌細胞株の両方によって共有されるRrgac遺伝子の1つのエピトープは、免疫後に転移性疾患を低減した。関連するヒトペプチドを同定するために、MHC-I結合剤であると予測される1つ以上のネオエピトープ(腫瘍細胞又は細胞株を使用する)を、本リポソームに組み込んで、機能性免疫応答(例えば、腫瘍増殖を阻害する)を生成又は増強するそれらの能力を評価することができる。この方法は以下の通りであった。RENCA腫瘍細胞に由来する最良のMHC-I結合剤であると予測される上位20(上位100ではなく)のネオ-エピトープを、CPQリポソームと混合したところ、このワクチンは腫瘍増殖を抑制し、(AYTTQREEL(配列番号43))を機能性ネオアンチゲンとしてスクリーニングした。HPV-16細胞癌タンパク質E6及びE7を同じ方法でスクリーニングし、最良のMHC-I結合剤であると予測される6個のペプチドをCPQリポソームと混合したところ、このワクチンは腫瘍増殖を抑制し、以前に同定されたE749-57エピトープが、機能的エピトープとしてスクリーニングされた。
【0099】
結果
【0100】
短いペプチドは、CoPoP/PHAD/QS-21(CPQ)リポソームと混合すると粒子を形成する
【0101】
図1Aに示されるように、CoPoPを、免疫賦活アジュバントであるQS-21(サポニン)、及びPHAD(合成モノホスホリルリピドA(MPLA))とともに用いてリポソームを形成した。ポルフィリン-リン脂質(PoP、又は2つの水素がコバルトの代わりに存在するので2HPoP)、CoPoP、PHAD及びQS-21の化学構造を
図1Aに示す。二重層中の3つの活性成分により、これらは「CPQ」と呼ばれる。CoPoPの役割は、MHC-I拘束性ペプチドの粒子形成を誘導することである。QS-21及びモノホスホリルリピドA(MPLA)は、AS01の成分であり、マラリア及び帯状疱疹のためのライセンスワクチンで使用されるリポソームアジュバントである。MPLAは、二重層に組み込むことができるToll様受容体4アゴニスト脂質である。QS-21は、複数の糖残基を有する2つの親水性ヘッド基、トリテルペン基及びアルキルエステルからなる疎水性領域を有し、これもまた二重層に組み込まれる。QS-21は、コレステロールに不可逆的に結合して複合体を形成するので、脂質二重層に局在化することもできる。それは単独で、局所の細胞コレステロールに結合し、注入部位で壊死を引き起こすことができる。それは、赤血球の脂質二重層中のコレステロールにも結合し、細孔を生じさせる。QS-21による溶血及びその毒性を低減するために、QS-21はコレステロールを含むリポソームとともに配合される。この研究を通して、2つの水素原子がポルフィリン大環状体中のコバルトと置き換わっている以外はCPQと同じである対照リポソームが、非粒子形成対照リポソームとして使用され、「2HPQ」と呼ばれる。したがって、CPQアジュバントと2HPQアジュバントとの比較により、粒子ベースでの短ペプチドの提示が、免疫原性に与える影響を試験することができる。
【0102】
A5ペプチドは、his-タグを含む場合、CPQリポソームとのみ結合することが見出された(
図1B)。マイクロ遠心濾過アッセイによって評価されるように、A5とリポソームとを混合した直後、約80%が粒子形態に変換された。QS-21及びPHADは、リポソームとペプチドとの間の結合に影響を与えなかった(
図1C)。しかしながら、ポルフィリンを含むがコバルトを含まない対応リポソームは、A5に対して最も少ない結合を示した。ペプチドを用いた粒子形成後、すべてのリポソーム(CPQ、2HPQ、CoPoP/PHAD[CP]、CoPoP/QS-21[CQ]、2HPoP/PHAD[2HP])のサイズは、動的光散乱に基づくと約100nm~150nmのままであった(
図1D及び
図1E)。クライオ電子顕微鏡は、ペプチドが結合している、又は、ペプチドが結合していない双方のCPQリポソームが、球形であり、単層であり、100nmに近いサイズを有することを明らかにした(
図1F)。得られたワクチンのペプチド結合キネティクス及び血清安定性を試験するために、A5を蛍光標識した。リポソームに結合すると、フルオロフォアからCPQリポソーム又は2HPQリポソームへの蛍光エネルギー移動は、エネルギー移動をもたらし、測定可能となる。インキュベーションから20分以内に、標識されたA5ペプチド蛍光は完全に消光され、リポソームへの迅速な結合を反映した(
図1G)。2HPQは、A5ペプチドの蛍光を消光しなかった。ペプチドの積載効率を最大にするため、約4倍の質量比のCoPoPを使用した(
図2)。これらの結果は、標識されていないペプチドを使用するマイクロ遠心濾過アッセイと一致している。冷蔵保存では、A5ペプチドが結合しているCPQ、結合していないCPQは、少なくとも三ヶ月間安定であり、100~150nmのサイズを有していた(
図1H)。40%のヒト血清中では、A5とCPQリポソームの結合は、数週間にわたって損なわれず、体液中で非常に安定であるペプチド-粒子形成を反映する(
図1I)。
【0103】
A5/CPQリポソームは、ロバストなAg-特異的CD8
+
T細胞応答を誘導する
【0104】
次に、BALB/cマウスを、CPQと混合した500ngのA5で0及び7日目に免疫し、7及び13日目に末梢血を採取した。A5と混合したCPQ(CPQ/A5)で免疫したマウスは、CD8
+T細胞集団内で約20%のAg-特異的細胞を誘導した。QS-21を含まないCoPoPリポソーム(CP/A5)を用いたワクチン接種は、血液(
図3A及び
図3B)又は脾臓(
図4)中で、検出可能なAg-特異的CD8
+T細胞を生成しなかった。リポソーム中にPHADがないCQ/A5は、CPQ/A5と比較して、Ag-特異的CD8
+T細胞の生成量が少なかった。これらのAH1四量体-陽性CD8
+T細胞の大部分(89%)は、CD44及びCD62Lの差次的発現に基づくと、エフェクターメモリーT細胞(Tem)表現型であった(
図3C)。エフェクターメモリーCD8
+T細胞の全体のパーセントは、CPQ/A5ワクチン接種後に有意に増加した(
図3D)。QS-21及びPHADと同じ粒子上でA5ペプチドの提示が重要であるかどうかも試験した。このために、マウスはCPQ/A5で免疫されるか、又はA5を有するCoPoPリポソーム(C/A5)と2HPQリポソームとの混合物で免疫された(ペプチド及びアジュバントの用量は同じ)。別のリポソーム中のQS-21及びPHADを伴う、A5の粒子提示は、依然としてAg-特異的CD8
+T細胞を誘導できたが、同じ粒子上にすべての成分を提示するほうが、有意に効果的であった。
【0105】
インターフェロン-γ(IFN-γ)及び腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)の細胞内染色のために脾細胞を採取した。未処置マウス又はCPQ/A5をワクチン接種したマウスから採取した脾細胞を、A5ペプチドによるインビトロ刺激のために調製した。ペプチド刺激後にロバストなIFN-γ産生があり、刺激後、約12%のCD8
+T細胞がIFN-γを産生し、約4%のCD8
+T細胞がTNF-αを産生した。サイトカイン産生によって測定されたように、これは、CPQ/A5が強いCD8
+T細胞応答を誘導したことを示す(
図3E、
図3F及び
図3G)。脾細胞をA5ペプチドで刺激し、IL2とともに5日間培養した後、エフェクター細胞(E)として使用し、CT26細胞にA5ペプチドをパルスして標的細胞(T)とした。これらのエフェクターT細胞は、エフェクター-対-標的(E:T)細胞比100にて、4時間で腫瘍細胞の60%を溶解した(
図3H)。A5ペプチドを用いた最初の研究は、溶解性を改善することを目的として、荷電アミノ酸「ERR」を含む双性イオン荷電C末端トリペプチドを含んだ(MHC-I結合エピトープは、疎水性である傾向があるため)。しかしながら、これは、後に必須ではないことが判明し、後の実験ではA5に含まれなかった。他のペプチドは、可溶化アプローチ(ペプチドの溶解及び投与のコントロールを容易にする)の恩恵を受ける可能性がある。この研究においてすべての実験に使用されたペプチド配列を表1~2に列記する。
【0106】
予防用癌ワクチンとしてのCPQ/A5
【0107】
ワクチンにより誘導されるAg-特異的CD8
+T細胞の機能を試験するために、CPQ/A5のナノグラム用量を変化させて免疫されたBALB/cマウスに、gp70を発現するCT26細胞をチャレンジした。最初のワクチン接種から7日後に、AH1-特異的CD8
+T細胞の増加がみられた。ブースタワクチン接種後、わずか20ngのA5(80ngのCoPoP、80ngのPHAD及び80ngのQS-21と併用)ですら、5%の末梢CD8
+T細胞をAg-特異的にした(
図5A)。一般的な用量反応が観察され、CPQ/A5用量を増加させると、より強いCD8
+T細胞応答が誘導された(500ng A5のプラトーまでは)。さらに高い用量は、CD8
+T細胞中のAg-特異的細胞のパーセンテージを増加させず、実際には、頻度の低下をもたらした。ペプチド-対-アジュバント比は、すべてのケースで固定されていたので、ペプチド用量がより高いと、より多くのQS-21も投与され、これが流入領域リンパ節内の免疫細胞に毒性をもたらした可能性がある。実際に、1000ngのA5が、4000ng(固定されたAg-対-アジュバント比で使用された)ではなく、1000ngのQS-21を含むように配合されたリポソームを用いて免疫化に使用された場合、Ag-特異的CD8
+T細胞が有意に増加した(
図6)。
【0108】
4日間の腫瘍チャレンジにおいて、すべての対照マウスが、触知可能な腫瘍を発症した。しかしながら、わずか20ngのA5ペプチドをワクチン接種した後、免疫化マウスの40%は、腫瘍チャレンジ後90日間、腫瘍を有さないままであった(
図5B)。200又は500ngのA5による免疫化は、すべてのマウスで腫瘍を完全に拒絶した。500ngを超える投与量で免疫されたマウスは、腫瘍拒絶率が実際に低かったが、それでも腫瘍チャレンジ後の平均無腫瘍期間はそれぞれ70日と60日であった。防御率の低さは、Ag-特異的CD8
+T細胞の頻度データと一致している。腫瘍を発症したマウスのうち、Ag-特異的CD8
+T細胞の誘導が高いほど、腫瘍の大きさは小さかった(
図5C)。
【0109】
次に、CPQと混合された500ngのA5ペプチドの免疫原性を、2HPQ(コバルトを欠く)、ミョウバン(Alum)、又はpoly(I:C)を含む他のワクチンアジュバントと混合されたA5ペプチドの免疫原性と比較した。血液及び脾臓の両方において、500ngのA5と混合されたCPQで免疫したマウスのみが、AHl-特異的CD8
+T細胞を産生し(
図5D)、これは、CT26腫瘍チャレンジの完全な拒絶を伴った(
図5E)。対照的に、他のアジュバントと混合された500ngのA5で免疫されたマウスは、検出可能なAHl-特異的CD8
+T細胞を産生せず、チャレンジから4日以内に腫瘍を生じた。したがって、CPQは、短いA5ペプチドによる免疫化を向上させた。
【0110】
gp70は複数のマウス癌細胞株で発現する共通のバイオマーカーであるが、癌ワクチンにおけるgp70の使用は一般的にCT26腫瘍を対象としてきた。CPQ/A5が他のモデルでも防御を提供できるかどうかを評価するために、CPQ/A5により、及び、非同一であり粒子を形成しない2HPQ/A5対照により免疫したマウスに、CT26細胞(
図5F)、及びgp70を発現する他のモデル;CMS4マウス肉腫モデル(
図5G)及び同所性4T07乳癌モデル(
図5H)をチャレンジした。CPQ/A5による免疫化は、腫瘍の増殖を有意に抑制し、3つの癌モデルのすべてにおいて、腫瘍チャレンジ後に腫瘍サイズが1cmに達するマウスの割合が著しく低くなり、60~100%のマウスが完全な腫瘍拒絶を示した。
【0111】
次に、CPQ/A5免疫の持続性を評価した。0日目及び7日目に、CPQ又は2HPQと混合した500ngのA5でマウスを免疫し、末梢血内のAg-特異的CD8
+T細胞応答をフォローした。Ag-特異的CD8
+T細胞は、初期免疫及びブースト後に増加し、14日目に最大頻度が観察された(
図5I)。2HPQ/A5で免疫したマウスは、試験したすべての時点で、Ag-特異的CD8
+T細胞が最小限であった。14日目以降、Ag-特異的CD8
+T細胞集団は徐々に低下するが、全CD8
+T細胞の約5%は80日目まで持続した。500ngのA5による最終ブースターから二ヶ月以上経過した80日目に、マウスにCT26癌細胞をチャレンジした。
図5Jに示されるように、この時点においても、すべてのCPQ/A5免疫化マウスは腫瘍チャレンジを完全に拒絶し、少なくとも40日間、増殖の兆候はなかった。コバルトを有さないリポソームと混合したA5でワクチン接種されたすべてのマウスは、急速に増殖する腫瘍を生じた。
【0112】
機能的用量である500ngのペプチドとCPQ/A5で、0日に初回刺激され7日目にブーストされたCD-1マウスを用いて、安全性研究を行った。潜在的な毒性反応をより広く表すために、非近交系マウスが選択された。マウスは、通常の体重増加を示した(
図7A)。マウスの心臓、肝臓、脾臓、肺又は腎臓における明らかな差異は、組織像では観察されなかった(
図7B)。完全な血球計数(
図7C)及び血清化学パネル(
図7D)は、健康なマウスとワクチン接種マウスとの間に有意な差がないことを明らかにした。
【0113】
治療用癌ワクチンとしてのCPQ/A5
【0114】
CPQ/A5は予防的な状況において強力であることが示されたが、ほとんどの癌ワクチンは、まず、進行性又は転移性疾患を有する患者において試験されるであろう。これに対処するために、CPQ/A5を、腫瘍移植後又は実験的な肺転移状況下のマウスにおいて評価した。前者の状況では、免疫化の5日前に、マウスにCT26腫瘍を接種した。次いで、腫瘍が最初に測定可能になり、急速に成長を開始した時点である5日目に、マウスを500ngのA5で免疫した(
図8A)。マウスは1週間後に500ngのA5でブーストされ、その間の期間に腫瘍は約3mm×3mmに成長した(12日目まで)。しかしながら、CPQ/A5による二回目の免疫後、数日以内に、すべての腫瘍は退縮し、90日間再増殖のエビデンスなく消失し、100%の生存を伴った(
図8B)。対照マウス又は非粒子形成2HPQ/A5で免疫されたマウスは、急速な腫瘍増殖を示し、生存したマウスはいなかった(
図8C、
図8D及び
図8E)。
【0115】
転移状況におけるCPQ免疫を研究するために、実験的CT26肺転移モデルを腫瘍細胞の静脈注射によって確立した。2日及び9日後に、マウスを500ngのA5で免疫した。癌細胞注入の18日後に、肺結節を記録した。未処置マウス、又は非粒子形成2HPQ/A5ワクチンを受けたマウスでは、数十の結節が観察された(
図8F)。全く対照的に、CPQ/A5で免疫されたマウスではすべて、結節は検出されなかった。対照マウス又は2HPQ/A5を注入したマウスは、マウスあたり平均50個を超える肺結節を有していた(
図8G)。CPQ/A5で免疫したマウスは、疾患の可視的なエビデンスを有していなかった。肺転移は、増加した肺重量によって確認された;何の処置も受けていない又は2HPQ/A5を注入されたマウスは、CPQ/A5で免疫されたマウスと比較して、ほぼ二倍の肺重量を有していた(
図8H)。
【0116】
CPQの機構的特徴
【0117】
次に、CPQ/A5のワクチン効力の免疫学的根拠を決定することを試みた。CPQと混合した後、短いペプチドは血清中で安定な粒子を形成し(
図1)、これは流入領域リンパ節に輸送されることができる。
図9Aに、概略が示されている。免疫細胞はリンパ節に集められ、そこでAg提示細胞(APC)が、リポソームをファゴソームやエンドソームに取り込む。そこで、ペプチドはCPQリポソームから放出され、T細胞の外在化および活性化の前に発現されたMHC-I分子上に提示されると考えられる。
【0118】
筋肉内投与後、リポソームは、1時間で注射部位に近い1~3個のリンパ節に、4時間で3~4個のリンパ節に移動した(
図10)。免疫細胞の動員を調査するために、流入領域鼠径リンパ節を採取し、CPQ/A5又はCP/A5(これら違いはCPQリポソームにはQS-21が含まれることである)で筋肉内免疫した48時間後に、フローサイトメトリーで細胞を分析した。CP/A5をワクチン接種したマウス及び未処置マウスと比較して、CPQ/A5をワクチン接種したマウスのリンパ節では、より多量のCD11b
low樹状細胞(DC)及びCD11b
-DCが動員されていた(
図9B)。MPLA及びQS-21は、注射部位への免疫細胞の動員を促進することが示されている。他の免疫細胞型(好中球、好酸球、浸潤性単球、骨髄DC(mDC)及びマクロファージ)については、流入領域リンパ節中での有意な増加は観察されなかった。
【0119】
免疫後のリンパ節におけるある種の免疫細胞のわずかな増加は、CPQによるAg-特異的CD8
+T細胞応答のロバストな増強を完全には説明しないと思われる。ペプチドAgの取り込みを、標識されたA5ペプチドを用いた蛍光顕微鏡法を用いてインビトロで検査した。マクロファージ及び骨髄由来樹状細胞(BMDC)をCPQ/A5又は2HPQ/A5とともにインキュベートし、取り込みを評価した。CPQと混合すると、インキュベーション混合物中の総A5ペプチドの5%がマクロファージによって取り込まれ、13%がBMDCによって取り込まれた(
図9C)。しかしながら、A5単独又は2HPQ/A5を細胞とインキュベートした場合には、Ag取り込みは観察されなかった。キネティクスにより、CPQ/A5ペプチドの約3%が20分以内にマクロファージに取り込まれ、1時間で4~5%まで増加することが明らかになった(
図11A)。蛍光顕微鏡法はこれらの結果を確認した:A5は、ペプチドをCPQリポソームに混和した場合にのみマクロファージに取り込まれた(
図11B)。興味深いことに、CPQは、標識されたA5ペプチドの蛍光を結合時に消光するので、顕微鏡写真中の標識されたA5の強い蛍光は、細胞取り込み後にペプチドがリポソームから放出され得ることを示唆する。ペプチドの放出は、蛍光定量消光アッセイに基づいて細胞内で検出され、his-タグ長が短いほど細胞内ペプチドの放出が多いことが示唆された(
図11C)。サイトカラシンB(貪食抑制剤)及びクロルプロマジン(クラスリン-介在性エンドサイトーシスの阻害剤)の存在下では、マクロファージによって取り込まれるA5ペプチドは有意に少なかった(
図9D)。まとめると、これらのデータは、粒子ベースのA5が、CPQと混合した後、貪食及びエンドサイトーシスを介して免疫細胞によって取り込まれることを示した。
【0120】
細菌膜の成分を模倣するMPLAは、ファゴソーム内のMHC-I発現に関連付けされてきた。BMDC中でCPQ/A5とインキュベーションした後、H-2L
d MHC-Iハプロタイプ(A5の制限要素である)の発現を評価した。ファゴソームの可視化を支援するために、プロトコルを開発して、シリカマイクロビーズをCPQ又はCPQ/A5で被覆した(
図12)。免疫蛍光顕微鏡法は、ファゴソームマーカーであるリソソーム膜タンパク質1(LAMP-1:lysosomal-associated membrane protein 1)に対する抗体(Ab)、及びH-2L
dに対する抗体を用いて実施した。CPQビーズと共にインキュベートされたBMDCは、予想されたように、H-2L
d及びLAMP-1の両方の共局在蛍光を示した。CPQ/A5とインキュベートしたBMDCは、すべての成分:A5、H-2L
d、及びLAMP-1の共局在蛍光を示した(
図9E)。
【0121】
マクロファージ及びBMDC内のA5の検出可能な蛍光シグナルは、A5がリポソームから放出され、消光されなくなったことを示唆するので、これらのデータは、ペプチドが細胞取り込み後に放出されたことを示唆する。実際に、インビトロで市販のリソソーム抽出物とインキュベートすると、CoPoPリポソームからのA5放出が検出された(
図9F)。ほとんどすべてのペプチドが、2時間以内にCPQから放出された。マクロファージ細胞抽出物から放出されたペプチドは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって検出することができ、インタクトである。
図13に示すように、細胞溶解物中のA5ペプチドの溶出時間は、純粋なA5ペプチドと同じである。まとめると、これらのデータにより、CPQリポソームに結合したペプチドはAPCに優先的に取り込まれ、おそらくそのままの形で細胞のファゴソームやリソソーム内で直接MHC-Iへと放出され、それらの表面に提示されると考えられる。このメカニズムは、MHC-Iペプチド提示のための液胞経路と適合し、ペプチドが最初に細胞質を通って輸送される必要性を回避できる。この研究の中には、潜在的な溶解性の問題に対処するために、C末端にERRトリペプチドを使用した研究もあったが、これは多くの場合において通常は必要ないことが後にわかった。この荷電タグの存在は、インビトロで組換えH-2L
dへのペプチド結合を阻害した(酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用)(
図14)。しかしながら、荷電トリペプチドの有無は、Ag-特異的CD8
+T細胞の誘導に影響を与えなかった。このように、免疫化は、MHC-Iエピトープの隣接残基に過度に敏感ではなかった。MHC-Iエピトープに隣接する少数の残基を除去するためにペプチドをさらにタンパク質分解処理することは可能であり、さらに研究されるべきである。N末端上の短縮型his-タグが短いと、Ag-特異的CD8
+T細胞がより多く誘導されることに留意すべきである(
図15)。この理由は、上述したように、細胞内取り込み後のペプチドの放出増加に関連し得る。
【0122】
CPQを用いた抗原スクリーニング
【0123】
現代のゲノム、プロテオミクス、及び生物情報学アプローチは、マウスCT26及び4T1細胞株に対して報告された、癌細胞中のコード変異(すなわち、ネオアンチゲン)の広範なリストを迅速に特定することができる。しかしながら、これらのうちどれが免疫原性であって、機能的応答を生じることができるかを確実に判断することは、まだ実現されていない。CPQシステムの強力さを考慮し、候補ペプチドをスクリーニングするために低価格のペプチドマイクロライブラリーを評価した。最も強いMHC-I親和性に基づいて100個の予測されるネオアンチゲンを選び、またCT26と4T1の両細胞株で共有されるネオアンチゲンもいくつか選択した(表3)。
【0124】
マウスをA5ペプチドと共に、一度に5個のライブラリーペプチドで免疫した(すべてのペプチドを合わせてCPQと混合した)。二回の筋肉内注射の後、脾細胞を採取し、次いで、各合成マイクロライブラリーペプチドで個々に再刺激した。スクリーニングプロセスの概要を
図16Aに示す。IFN-γの産生を測定し、ペプチドの免疫原性を、A5ペプチド(強いAg-特異的CD8
+T細胞応答を誘導することができる内部標準として働く)と比較して決定した。
【0125】
Agスクリーニングのために、同一のMHC-Iハプロタイプ(H-2L
d, H-2D
d, 又はH-2K
d)を有するペプチド及び内部A5ペプチドからなる多価ワクチンをCPQと混合した。免疫化後、ペプチド再刺激によりIFN-γを産生するT細胞(脾細胞中)を誘導したMHC-I 結合ペプチドはわずか10%ほどであり、A5ほど有効なものはなかった(
図16B)。最も高い免疫原性ペプチドでも、A5と比べて約4分の1のレベルのIFN-γを産生しただけであった。この結果は、たとえ強力なアジュバント系を使用したとしても、予測MHC-I結合ペプチドから免疫原性CD8
+T細胞エピトープを特定することは困難であることを強調している。これらの結果の1つの注意点は、A5の免疫優位性が、カクテル内の他のペプチドの免疫原性に悪影響を及ぼしたかどうかを否定できないということである。また、個々の単一ペプチドをより高い抗原用量で免疫することで、より強い免疫原性反応を誘導することも可能であるが、そうするとインビボでのペプチドマイクロライブラリー・スクリーニングのスループットが低下する。
【0126】
次いで、最も免疫原性の高い3つの9-merペプチド(RragcL385P、Tmem5S71N、及び、Eml5G44R)を、CT26肺転移モデルにおいて評価した。ペプチドとCPQリポソームを混合することによってワクチンを調製し、続いて、腫瘍細胞の静脈内投与後、1日目及び8日目に、CPQとペプチド(合計1000ng)で二回免疫した。チャレンジ後20日間で、未処置マウスは約75個の肺結節を有した(
図16C)。しかしながら、CPQ/RragcL385Pをワクチン接種したマウスは、わずか15個の肺結節を有した。他の2つのネオアンチゲンをワクチン接種したマウスは、未処置マウスと比較して肺転移に有意な差を示さなかった。3つすべてのネオアンチゲンを組み合わせてワクチン接種されたマウスは、平均25個の肺結節を有しており、これはRragcL385P抗原の存在に起因すると思われる。肺重量から、RragcL385Pワクチンによる免疫の肺転移抑制効果が確認された(
図16D)。
【0127】
CPQと混合された短いRragcL385Pペプチド(SPKALAHNG(配列番号44))の抗腫瘍効果を、治療用肺転移モデルで評価した。4T1腫瘍細胞を接種したマウスの肺を16日目に採取し、CT26を接種したマウスの肺を18日目に採取した。500ngのペプチド免疫投与量で、CPQ/RragcL385Pワクチンは、BALB/cマウスにおける肺腫瘍増殖を有意に抑制した(
図16E及び
図16F)。CT26細胞をマウスに接種した場合、対照群(CPQ単独, Alum/RragcL385P, 2HPQ/RragcL385P)の肺は、平均90個の肺結節を有し、CPQ/RragcL385Pを接種した場合、肺は平均30個の肺結節を有していた(
図16F)。肺重量は、結節数の結果を反映した(
図16G)。4T1細胞をマウスに接種した場合、対照群(CPQ単独、Alum又は2HPQと混合したペプチド)の肺は平均80個の結節を有する一方、CPQ/RragcL385Pを接種した場合の肺結節は、平均40個であり(
図16H);ここでも、肺重量は、結節数の結果を反映した(
図16I)。しかしながら、インビトロ細胞傷害性実験では、CPQ/RragcL385P免疫マウスの脾臓細胞は、CPQ/A5免疫マウスの脾臓細胞と比較して、CT26細胞に対して細胞傷害性を示さないことが明らかになり(
図17)、この結果はオフターゲット効果によるものと思われ、さらなる調査が必要である。このように、MHC-Iペプチドのスクリーニングは機能的エピトープの特定には成功したが、作用機序が腫瘍細胞溶解によるものであることは確認できなかったため、Rragcエピトープによる免疫化の役割を決定するにはさらなる研究が必要である。将来の研究において、このスクリーニングアプローチにより、エピトープ-特異的腫瘍細胞溶解が可能なCD8
+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導するペプチドエピトープを特定することができる可能性は高いと思われる。
【0128】
CoPoPリポソームによるRENCAネオアンチゲンのスクリーニング
【0129】
マウス腎臓癌RENCA細胞及び正常なBALB/cマウスからの組織細胞の全エクソームシークエンシングを実施して、腫瘍細胞における変異を同定した(
図18A)。次いでNetMHCを用いて、MHC-Iに対するペプチドの結合親和性を予測した。次いで、これらの20個の予測ペプチドのすべてをCoPoPリポソームと混合して、健康なBALB/cマウスにワクチン接種した。個々のペプチドの免疫原性を、抗原刺激後のIFN-γ産生によって評価し、抗腫瘍効果を腫瘍チャレンジによって評価した。8373個の変異をRENCA細胞において同定し、これらの変異のうち、1007個のエクソームコーディング変異体をRNA-Seqによって確認した。NetMHCを使用して、予測変異9アミノ酸エピトープの結合親和性を予測した。NetMHCパーセンタイルが0.1未満である20個のエピトープを同定した(
図18B及び表4)。
【0130】
まず20個のペプチドすべてをCPQリポソーム及び2HPQリポソームとともに室温で1:4の質量比にて1時間インキュベートすることによって、多価ワクチンを調製した。ペプチドの結合率は、ペプチド濾過アッセイによって評価した。約80%のペプチドは、単純に混合するだけでCoPoPと結合したが、ペプチドは、2HPQ(CPQと同一のリポソームであるがコバルトを欠いている)とは結合しなかった(
図19A)。結合前後でリポソームのサイズに有意な変化はなく、100nm付近であった(
図19B)。リポソームの多分散性指数は、0.25未満である(
図19C)。マウスにCPQ/ペプチドを0日目及び7日目にワクチン接種し、注入用量は、1つのペプチド当たり50ngとし、マウス当たりのペプチドの合計は1μgとした。次いで、14日目にマウスにRENCA細胞を皮下チャレンジした。CPQ/ペプチドをワクチン接種されたマウスは、2HPQ/ペプチドと比較して有意に小さい平均腫瘍サイズを有していた(
図19D)。CPQワクチンは4/5のマウスの腫瘍増殖を抑制したが(
図19E)、2HPQワクチンは抑制しなかった(
図19F)。18日目に、脾細胞をこれらのマウスから調製したが、CPQワクチン接種マウスは、2HPQワクチン接種マウスと比較して、脾臓において有意に多いエフェクターメモリーCD8
+T細胞を有した(
図19G)。また、96ウェルプレートにおいて個々のペプチドを用いて脾細胞を刺激したところ、ペプチド2及びペプチド8は、脾臓においてIFN-γ産生CD8
+T細胞を約2%及び5%生じたが、他のペプチドはIFN-γ産生CD8
+T細胞の明らかな増加を示さなかった(
図19H)。
【0131】
どのペプチドがワクチンの抗腫瘍効果を担うのか確認するために、単一のペプチドをCoPoPリポソームと混合し、ワクチンとしてBALB/cマウスに注射した。これら20個のワクチンを、0日目及び7日目にBALB/cマウスの20のグループに注射し、RENCA細胞を14日目に接種した。RENCAペプチド2は、腫瘍増殖を抑制した唯一のペプチドであり、他の19ペプチドはすべて、腫瘍増殖を抑制しなかった(
図20A)。インビトロ細胞溶解研究では、ペプチド2のみが、RENCA細胞を特異的に標的とし(
図20B)、TC-1細胞は標的としない(
図20C)機能的T細胞を誘導することが確認された。
【0132】
CoPoPリポソームによるHPV-16 E6/E7 CD8
+
T細胞エピトープのスクリーニング
【0133】
Sanger配列決定法を用いて、抽出したDNAからTC-1細胞のE6及びE7遺伝子を配列決定した。MHC-I結合剤の上部パーセンタイルの内の6つの予測H-2K
b- 及び H-2D
b-拘束性エピトープを、ニューラルネットワーク・シミュレーション・アルゴリズムを使用して同定した。次いで、これらの短い9-merペプチドを、表5に示すように化学的に合成し(3つの残基からなるポリヒスチジン配列を伴う)、CPQリポソームと混和して粒子形成を誘導した。これら6つのペプチドをCPQと組み合わせて、1つのマウス用多価ワクチンを形成し、各ペプチドの免疫原性を、インターフェロンガンマ(採取した末梢血単核球[PBMC]を個々のペプチドで刺激した後のIFN-γ産生)によって評価した。次いで、マウスをTC-1細胞で皮下チャレンジし、ワクチンによる腫瘍保護を評価した(
図21A)。
【0134】
多価ペプチドワクチンを、6つのペプチドとCPQリポソームとを、総ペプチドとCoPoPの質量比1:4にて、単に混合することによって調製した。各ペプチドの用量は100ngであった。ペプチドと各アジュバントの質量比1:1.6にて、QS-21及びMPLAも前記リポソーム中に含めた。6つのプールされたE6/E7エピトープ候補とCPQリポソームとを室温で1時間混合すると、マイクロ遠心濾過アッセイによって評価されるように、約100%のペプチドが粒子形態に変換された(
図21B)。コバルトを欠く以外は同一の2HPQリポソームは、非常に少ないペプチドとの結合を示した。
【0135】
次に、免疫原性を決定するために、0日目及び7日目に前記多価ワクチンをC57BL/6マウスに接種し(筋肉内)、末梢血単核細胞(PBMC)を採取し、14日目にマウスをTC-1腫瘍細胞でチャレンジした。そのときまでに、CPQと混合したペプチドで免疫したマウスでは、CD8
+T細胞のセントラルメモリーT細胞(T
CM)(CD44
+CD62L
+として定義される)(
図21C)、及びCD8
+T細胞のエフェクターメモリーT細胞(T
EM)(CD44
+CD62L
-として定義される)(
図21D)の両方のパーセンテージが有意に増加したが、2HPQの場合増加しなかった。したがって、同量のQS-21及びMPLAを用いた場合でも、粒子形態におけるペプチドの提示は、メモリーCD8
+T細胞を誘導するために重要であると思われる。
【0136】
採取したPBMCを、多価ワクチンに含まれるエピトープ候補で再刺激し、その後CD8
+T細胞を細胞内IFN-γ産生(Ag-特異的CD8
+T細胞の誘導を示す)について評価した。3つのペプチド(E7
49-57, E7
71-79, 及びE7
6-14)が、免疫後のPBMC中でバックグラウンドより高い割合のIFN-γ産生細胞(CD8
+T細胞)を誘導した。非-粒子形成2HPQ/ペプチドを注入したマウスのPBMCを前記ペプチドで再刺激した場合は、いずれもIFN-γ産生CD8
+T細胞を誘導しなかった(
図21E)。免疫されたマウスに、TC-1細胞を皮下注射でチャレンジした場合、多価CPQ/ペプチドワクチン群は腫瘍増殖を完全に拒絶した。対照的に、2HPQ/ペプチド製剤をワクチン接種したマウスは、急速に増殖する腫瘍を生じた(
図21F)。
【0137】
次に、どのペプチドエピトープが抗腫瘍活性を提供するかを決定するために、ペプチドをCPQリポソーム又は2HPQリポソームと個別に混合した(
図22A)。個別にみると、ペプチドはすべてCPQリポソームに効果的に結合したが、コバルトを欠く2HPQリポソームには結合しなかった(
図22B)。リポソームのサイズは、E6及びE7ペプチドと結合した後も約100nmのままであった(
図22C)。次に、マウスに、0日目及び7日目に、CPQと混合したペプチドをワクチン接種した(500ngのペプチド用量で)。その後、14日目にTC-1細胞を各マウスにチャレンジした。評価されたすべての合成短ペプチドエピトープのうち、E7
HHH49-57ペプチド(配列:HHH-RAHYNIVTF(配列番号8))のみが、腫瘍増殖を阻害した(
図22D)。延長された無腫瘍生存は、観察期間を反映して少なくとも60日間維持され(
図22E)、一方、他の予測ペプチドエピトープは、測定可能な抗腫瘍効果を示さなかった。
【0138】
CPQ/E7
HHH49-57は、予防的状況において有効であったため、次に、確立されたTC-1腫瘍に対するワクチンを評価した。これは、最も多くの癌ワクチンが最初に臨床試験される状況でもある。poly(I:C)を、アジュバント対照薬として使用した。poly(I:C)に対し、合成単ペプチド用量は、マウス当たり20μg~2μgの範囲とする一方、poly(I:C)用量は、20μg/マウスに固定したままとした。CPQリポソームアジュバントの場合、ペプチド投与量は、マウス当たり1~0.1μgで変化させた。リポソームとペプチドの比が固定されることから、これは、4~0.4μgの範囲にわたるCoPoP用量と、1.6~0.16μgの範囲にわたる3D6A-PHAD用量及びQS-21用量に対応する。同一のE7
HHH49-57ペプチドを、筋肉内免疫を行う直前にアジュバントのいずれかと混合した。0日目にマウスにまずTC-1細胞を接種し、次いで2及び9日目にワクチンを接種した。これらの条件下において、CPQアジュバントだけが効果的な腫瘍増殖阻害をもたらし、poly(I:C)アジュバントはもたらさなかった(
図23A)。19日目には、CPQワクチン接種マウスは、検出可能な腫瘍増殖を示さなかったが、poly(I:C)ワクチン接種マウスのほぼすべてが(ペプチドが最も高用量(20μg)の場合も)、検出可能な腫瘍増殖を示した(
図23B)。すべてのpoly(I:C)ワクチン接種マウスの腫瘍は、60日以内に1cmのエンドポイントに達する一方、すべてのCPQワクチン接種マウスは、たった0.1μgのE7ペプチド用量でさえ、無腫瘍のままである(この用量は、poly(I:C)での最も高いペプチド用量と比較して200倍低い)(
図23C)。抗腫瘍効果は、Ag-特異的CD8
+T細胞の発生頻度に関連すると予想されるので、腫瘍接種後19日目にこれを試験した。CPQワクチン接種マウスでは、ペプチド用量が増加するにつれ、血液中のAg-特異的CD8
+T細胞のパーセントが高まった。ペプチド用量1μgは、約30%の四量体陽性(tet
+)CD8
+T細胞をもたらし、一方、ペプチド用量0.1μgは、約20%のCD8
+T細胞をtet
+に変換した。これとは全く対照的に、poly(I:C)ワクチン接種マウスは、血液中にAg-特異的CD8
+T細胞をほとんど有していなかった(
図23D)。
【0139】
CoPoPをTrp2ペプチドの強化されたミモトープスクリーニング・システムとして、ミモトープ進化システム改良版を開発した(
図24Aに概略を示す)。チロシナーゼ関連タンパク質2エピトープ(Trp2
180-188; SVYDFFVWL(配列番号45))、マウスH-2K
b及びヒトHLA-A2エピトープをモデルAgとして用いた。e-ミモトープを開発するために、まず、ある位置に20のアミノ酸をすべて挿入し、ペプチドの8つの位置は野生型ペプチドの元のアミノ酸で固定することにより、9つのポジショナルランダムライブラリーを得た。したがって、一実施形態における方法は、候補ペプチドの反復性アミノ酸ランダム化を含む。各ポジショナルライブラリーについて、20のアミノ酸すべてが特定の残基位置に存在した。次いで、C57BL/6マウスを、ライブラリー(1μgの総ペプチドライブラリー用量)を用いて0日目及び7日目に免疫した。14日目に、マウスを、Trp2を発現するB16-F10細胞でチャレンジし、腫瘍増殖をモニターした。注目すべきことに、腫瘍接種の一週間後、Trp2位置8ペプチドライブラリーをワクチン接種したマウスは、すべてのマイクロライブラリーと比較して有意に小さい腫瘍サイズを有していた(
図24B)。次に、20個の個別のTrp2ペプチド変異体を合成した(各ペプチドは第8位に異なるアミノ酸を有する)。マウスをこれらのペプチドとCPQで個別に免疫した。
図24Cに示されるように、腫瘍チャレンジ後、Trp2-8Cで免疫されたマウスは、野生型配列(Trp-8W)と比較して、腫瘍増殖を抑制した(21日目において)。Trp-8Yを用いた免疫化も、一匹のマウスにおいて腫瘍増殖を完全に抑制した。Trp2-8C及びTrp2-8Yをさらに研究して、前記ミモトープが、野生型エピトープ(Trp-8W)と比べて腫瘍増殖を抑制できるかどうか確認した。
【0140】
マウスをCPQ及び500ngのペプチドで0及び7日目に免疫し、その後、B16-F10細胞を14日に接種した。Trp2-8Y及びTrp2-8Cで免疫したマウスでは、野生型Trp2-8W又はアジュバント単独で免疫したマウス(これらの群における腫瘍増殖は未処置マウスと同様である)と比較して腫瘍増殖が有意に遅延した(
図25A)。CPQ/Trp2-8C及びCPQ/Trp2-8Yは、CPQ/Trp2-8Wと比較してマウスの生存期間を延長した(
図25B)。23日目には、Trp2-8Y及びTrp2-8Cをワクチン接種されたマウスのみが、500mm
3未満の腫瘍サイズを有していた(
図25C)。
【0141】
CPQリポソームのための免疫原としてのポジショナルペプチドライブラリー
【0142】
図26に示すようにして、ポジション-スキャニングライブラリーを合成した。CoPoPリポソームを用いた粒子形成のために、すべてのペプチド及びペプチドライブラリーのN末端に3つのヒスチジンを付加した。各ライブラリーについて、特定の位置のアミノ酸を20のアミノ酸すべてで置換し、残りの位置は野生型配列と同じとした。この8-merペプチドについて、8つのポジショナルライブラリーを作製した。ペプチドをCPQと組み合わせて、マウスのための単一ペプチドワクチン又はポジショナルペプチドライブラリーワクチンを形成した。これらの免疫原の免疫原性は、野生型抗原Env
37-44四量体染色によって評価し、これらの免疫原の抗腫瘍効果は、CT26細胞を皮下にチャレンジしたマウスによって評価した。ポジショナルペプチドライブラリー及び単一ペプチドミモトープによって誘発されるT細胞の、天然ペプチドへの交差反応性は、脾細胞のインビトロ抗原刺激後のサイトカイン産生によって評価した。
【0143】
Env
37-44
のポジショナルペプチドライブラリーの免疫原性
【0144】
NetMHCニューラルネットワークアルゴリズムを用いて、各ポジショナルライブラリーの結合親和性を予測した。野生型Env
37-44のH-2L
d結合パーセンタイルは0.015%であり、これは非常に良好なMHC-I結合剤であることを表す。Env
37-44-Pos5の個々のライブラリーメンバーは、一般に、天然エピトープと比較してわずかに弱い結合のみを有すると予測された(
図27A)。Env
37-44はH-2L
d-反応性ペプチドであり、第二残基のアミノ酸ProはH-2L
dの結合モチーフであるため、第二位が置換されたPos2ライブラリーメンバーは、数桁低いH-2L
d結合を有していた。次に、8つのポジショナルペプチドライブラリーを使用して免疫し、免疫原性を天然のEnv
37-44ワクチンと比較した。すべての場合において、粒子化されたペプチドを誘導するために、ペプチドをCPQリポソームと混合した。Env
37-44四量体を使用して、Env
37-44特異的CD8
+T細胞を評価した。BALB/cマウスを0及び7日目に免疫した後、14日目に血液を採取して四量体を分析した。評価されたすべてのポジショナルライブラリーのうち、CPQ/Env
37-44-Pos5ワクチンのみが、Env
37-44に特異的である30%のCD8
+T細胞を誘導したが、他のペプチドライブラリーワクチン又は野生型エピトープワクチンは、検出可能なEnv
37-44特異的CD8
+T細胞を誘発しなかった(
図27B)。CPQ/Env
37-44-Pos5ワクチンは、CD8
+T細胞集団内に約30%のエフェクター-メモリーT細胞を誘発した(
図27C;CD62L
-CD44
+)。これとは対照的に、他のポジショナルライブラリー又は野生型ペプチドをワクチン接種したマウスは、検出可能なエフェクターメモリーT細胞を誘導しなかった。ミモトープライブラリーのこの顕著な有効性を理解するために、未処置のマウスから、又は腫瘍接種の23日後にCPQ/Env
37-44-Pos5あるいはCPQ/Env
37-44をワクチン接種したマウスから脾細胞を採取した。Pos5ワクチン接種マウスからの脾細胞は、Pos5刺激後にIFN-γを産生するCD8
+T細胞を約6%有し、約2~3%のCD8
+T細胞は、野生型ペプチド刺激後にIFN-γを産生した(
図27D、
図27E)。しかしながら、未処置マウス又は野生型ペプチドでワクチン接種されたマウスからの脾細胞は、Env
37-44-Pos5刺激後も野生型ペプチド刺激後も、検出可能なIFN-γ産生を示さなかった。Env
37-44-Pos5ワクチンで誘発されたこれらのCD8
+T細胞が、野生型ペプチド刺激と比べて、Env
37-44-Pos5刺激に応答して、より多くのIFN-γを産生したことに留意することが重要である。これは、Env
37-44-Pos5ワクチンによって誘発されたCD8
+T細胞が、Env
37-44四量体と結合し、Env
37-44と比べてEnv
37-44-Pos5により高い親和性を有したことを示す。
【0145】
CPQリポソームワクチンのための免疫原としてのAH1ポジショナルペプチドライブラリー
【0146】
次に、ポジショナルライブラリーワクチン戦略を、第二のMuLVエピトープであるAH1に適用した。Env
37-44とは異なり、AH1は、CT-26癌細胞のMHC-Iに高度に発現される確立された腫瘍拒絶エピトープである
[15]。
図28に示すように、9merのAH1配列の各アミノ酸位置についてポジショナルライブラリーを作成した。
【0147】
AH1ポジショナルペプチドライブラリーの抗腫瘍効果
【0148】
最初にNetMHCによって、AH1ライブラリーのMHC-I結合親和性を予測した
[20]。野生型AH1のH-2L
dへの結合パーセンタイルは0.5%であり、これはAH1が良好なMHC-I結合剤であることを示唆し、位置2及び9におけるアミノ酸変化はMHC-I-ペプチド結合を減少させるが、他の位置でのアミノ酸変化は、平均H-2L
d結合を有意に変化させるとは予測されなかった(
図29A)。次いで、BALB/cマウスを、CPQとAH1ライブラリー又は野生型AH1ペプチドとで(1μgの総ペプチド用量)0日目及び7日目に免疫し、血液を14日目に採取して分析した。野生型AH1ペプチドは、検出可能な量のAH1
tet
+CD8
+T細胞を誘発しなかったが、CPQ及びペプチドライブラリーPos1、Pos3、Pos5、Pos8でワクチン接種されたマウスは、Ag特異的であるCD8
+T細胞を10%以上誘発した(
図29B)。これらのAg-特異的T細胞は、エフェクターメモリーT細胞表現型であった(
図29C)。ワクチンCPQ/P1、CPQ/P3、CPQ/Pos8は、腫瘍チャレンジから少なくとも90日間、100%マウスを保護した。CPQ/Pos5は、腫瘍チャレンジから少なくとも90日間、2/3のマウスを保護した(
図29D)。野生型CPQ/AH1免疫では、一匹のマウスのみが保護された。
【0149】
ワクチン接種により抗腫瘍効果を示すAH1 e-ミモトープの同定
【0150】
次に、20個の個別のAH1ペプチド変異体を合成した(各ペプチドは、l位、3位、5位、8位において異なるアミノ酸を有する)。マウスをこれらのCPQ/ペプチドワクチンで個別に免疫し、第一ポジションライブラリーのスクリーニングと一定に保つため、単一ペプチドの注射用量は50ngとする。
図30Aに示されるように、l位については、アミノ酸置換(C、Q、H、I、L、M、F、W、Y、V)を有する約10個のペプチド変異体は、CT26腫瘍の増殖を阻害した。3位については、アミノ酸置換(E、H、P)を有する3つのペプチド変異体が、CT26腫瘍増殖を100%阻害した(
図30B)。5位については、アミノ酸置換(A、C、G、T)を有する4つのペプチド変異体が、CT26腫瘍増殖を100%阻害した(
図30C)。8位については、アミノ酸置換(N、D、Q、H)を有する4つのペプチド変異体が、CT26腫瘍増殖を100%阻害した(
図30D)。
【0151】
結論
【0152】
CPQリポソームは、短いペプチドの安定した粒子形成を誘導し、局所と転移性状況の両方において、複数のマウス腫瘍モデルで腫瘍増殖を阻害するAg-特異的CD8+T細胞を誘導するために非常に効果的であることが実証された。免疫はマウスにおいて耐容性が良好であった。効力の推定メカニズムは、APCの流入領域リンパ節への浸潤の促進、短ペプチドのAPCへの送達の強化、その後のエンドソーム及びファゴソーム内に発現されるMHC-Iへの結合のためのペプチドの推定放出に関連する。この効力に基づき、マイクロライブラリーをスクリーニングし、CT26と4T1の両細胞株でCPQと一緒にワクチン接種すると転移病変を減少させる共有エピトープ、RragcL385Pを同定した(このエピトープはオフターゲット効果から作用しているようであるが、この観察の根拠を理解するためにはさらなる研究が必要である)。RENCA細胞株のネオアンチゲンをスクリーニングするために同じ方法を使用し、ペプチド(AYTTQREEL(配列番号43))を、RENCA腫瘍細胞株のネオアンチゲンとして発見し、これはCPQリポソームと混合してワクチンとしたとき、腫瘍増殖遅延させた。CPQリポソームをスクリーニングツールとしても使用し、HPV-16細胞腫瘍性タンパク質E6及びE7をスクリーニングする。スクリーニングされたペプチドのうち、以前に同定されたE749-57エピトープのみが機能的であった。合成短ペプチド100ng用量による免疫化は、CoPoPリポソームと混合した場合、治療的腫瘍チャレンジにおいてマウスを保護したが、その一方、Poly(I:C)アジュバントを用いた場合、200倍高いペプチド用量でも効果は観察されなかった。天然エピトープと比較して改善された機能を有するTrp2及びAH1 e-ミモトープを見つけ出すために、CPQを使用する方法も開発した。さらに、ポジショナルライブラリー自体がワクチン免疫原として役立つことを見出した。CPQシステムは、他のMHC-Iエピトープにも、また機能的エピトープのスクリーニングや探索に特化した実施形態にも使用できる。
【0153】
実験
【0154】
材料
【0155】
Co(II)PoPは、当技術分野で既知の方法により合成した。以下の他の脂質を使用した:DOPC(Corden; カタログ番号:LP-R4-070)、Ni-NTA脂質 ジオレオイルグリセロ-Ni-NTA(Avanti; カタログ番号:790404P)、コレステロール(PhytoChol; Wilshire Technologies)、合成PHAD(Avanti; カタログ番号:699800P)。QS-21は、Desert King(カタログ番号:NC0949192)から入手した。以下のアジュバントを入手した:Alhydrogel 2%アルミニウムゲル(Accurate Chemical and Scientific Corporation; カタログ番号:A1090BS)。Poly(I:C)(Sigma; カタログ番号:P1530)。顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、Shenandoah Biotechnology(カタログ番号:200-15-AF)から入手した。塩酸クロルプロマジンはVWR(カタログ番号:TCC2481)から入手した。サイトカラシンBは、Acros(カタログ番号:228090010)から入手した。リソソームは、Xeno tech(カタログ番号:H0610.L)から入手した。10x異化バッファーは、Xeno tech(カタログ番号:K5200)から入手した。以下の抗体は、BioLegendから入手した。APC-CD8a抗体(カタログ番号:100712)、FITC-I-A/I-E抗体(カタログ番号:107605)、FITC-B220(カタログ番号:103206)、FITC-CD4抗体(カタログ番号:100405)、PerCP/Cyanine5.5-CD44(カタログ番号:103031)、PE/Cy7-CD62L抗体(カタログ番号:104417)、パシフィックブルーIFN-γ(カタログ番号:505818)、PE-TNFα(カタログ番号:506305)、Alexa Fluor 488-Ly6C(カタログ番号:128021)、PE/Cy7-CD11b(カタログ番号:101215)、PE-Ly6G(カタログ番号:127607)、APC/Cy7-CD11c(カタログ番号:117323)、PerCP/Cyanine5.5-CD3(カタログ番号:100217)、Alex Fluor 700-I-A/I-E(カタログ番号:107621)、ブレフェルジンA(BD、カタログ番号:555029)、生/死固定化色素(Invitrogen; カタログ番号:L34965)、固定/透過処理キット(BD; カタログ番号:554714)。細胞溶解バッファーは、BioVision(カタログ番号:5830)から入手した。A5-HiLyte488、及びE7-HiLyte488は、Anaspecによって合成された。コラゲナーゼI型(Gibco; カタログ番号:17018-029)、DNase I(Roche Diagnostics; カタログ番号:04536282001)。
【0156】
ワクチンの調製及び特性評価
【0157】
エタノール注入及び脂質押出によって、既報のようにしてリポソームを調製した。調製したリポソームを4℃にてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で透析し、エタノールを除去し、0.2μmの無菌フィルターを通過させた。QS-21を含むリポソームについては、QS-21(1mg/mL)を、4℃にて一晩、リポソームに添加した([DOPC:Chol:CoPoP/PoP:PHAD:QS-21]=[20:5:1:1:1]の質量比で)。最終リポソーム濃度を、320μg/mL CoPoPに調整した。個々の脂質濃度を実際に測定することなく、インプット濃度が維持されると仮定して操作した。
【0158】
CPQ、CP、CQ、2HP及び2HPQワクチンを調製するために、リポソームとペプチドを、室温で1時間、4:1の質量比でインキュベートした。PQ+C/A5ワクチンを調製するために、A5ペプチドをCoPoPリポソーム(PHAD又はQS-21を欠く)と1時間インキュベートし、その後、2HPQリポソームを注入直前に試料に添加した。所望のAg投与のために、リポソームを上記のようにしてAgとインキュベートし、次いでPBSで希釈した。Alhydrogel(Alum)ワクチンを調製するために、A5を2%のAlumと1時間混合し、注入前に4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)バッファーで希釈した。各ワクチンは、500ngのペプチド及び75μgのAlumを含有した。poly(I:C)ワクチンを調製するために、ペプチドを1時間poly(I:C)と混合し、その後PBSでさらに希釈した。A5研究のためには、500ngのペプチド及び50μgのpoly(I:C)用量とし、TC-1研究のためには、20μgのpoly(I:C)用量とした。
【0159】
リポソームとペプチドの結合を特性評価するために、ペプチドを、室温で1時間リポソーム又はPBSとインキュベートし、100kDaカットオフのマイクロ遠心濾過チューブ(PALL; カタログ番号:29300)にかけて、リポソームから遊離ペプチドを分離した。Micro BCA(Thermo; カタログ番号:23235)アッセイを使用して、濾液中の遊離ペプチドの量を測定した。リポソームへのペプチド結合率を、リポソーム結合ペプチドと遊離ペプチドとを比較することによって算出した。NanoBrook 90 plus PALS機器を用いる動的光散乱法を使用して、PBSで500倍希釈したサンプルのサイズ及び多分散度指数を測定した。
【0160】
ワクチンの血清安定性を特性評価するために、予め調製されたA5-HiLyte488又はE7-HiLyte488とリポソーム混合物を、37℃にて40%ヒト血清又は10%FBS(PBS中)においてインキュベートした。サンプルを、様々な時点での蛍光測定のためにPBSで希釈した。ペプチドの蛍光は、HiLyte488からポルフィリンへのエネルギー移動により、ペプチドがリポソームに結合すると消光した。ペプチドの結合率は、ペプチドの蛍光クエンチのパーセントに基づいて計算した。
【0161】
リソソームにおけるペプチドのインビトロ放出研究のために、リソソーム溶液を製造業者の指示に従って調製した。簡潔に言えば、96ウェルプレート中で、10μLのl0x異化バッファーを、50μlの1xリソソーム及び40μlの水と混合した。調製したCPQ/A5-HiLyte488、CoNTA/A5-HiLyte488、又は、PBS/A5-HiLyte488を、リソソーム溶液に添加し、37℃でインキュベートした。混合物の蛍光を表示の時点で測定した。A5-HiLyte488の蛍光は、マイクロプレートリーダー(TECAN Safire)にて、491nm励起及び527nm発光で読み取った。
【0162】
クライオ電子顕微鏡法
【0163】
A5ペプチド結合前後のCPQリポソームの形態を分析するため、各サンプル約3.6μLを有孔カーボングリッドに適用し、Vitrobotブロッティングペーパー(Standard Vitrobot Filter Paper、Φ55/20mm、Grade 595)を用いて手動でブロッティングした。ブロッティングの直後に、サンプルの新たな液滴をEMグリッドに適用し、Vitrobot Mark IV(Thermo Fisher Scientific)の2つのブロッティングパッドを用いる標準ルーチンを用いて再びブロッティングした(3秒間及びブロット力+1)。グリッドはその後直ちに液体エタンに入れた。Vitrobotを25℃、相対湿度100%に設定した。すべての試料について、クロロホルムで洗浄したc-flatグリッド(C-Flat 2/2-3Cu-T)を使用し、サンプルをビトリフィケイション(vitrification)にかける直前に15秒間、空気中5mAにて2時間ネガティブグロー放電した。「side-entry Gatan 626 single tilt cryo-holder」を使用して、200kVで作動させたTecnai F20電子顕微鏡でサンプルを撮像した。画像は、50,000xの倍率でTVIPS XF416 CMOSカメラで収集され、2.145Åの較正ピクセルサイズで画像を生成した。画像は、-1.75~-2.50μmの範囲のデフォーカス(defocus)を使用して、全量約10e-/Å2で収集された。
【0164】
健常なBALB/cマウス及びRENCA腫瘍細胞から得たRNAの配列決定
【0165】
Agilentの「SureSelectXT Mouse All Exon Kit」を、製造者の指示に従って使用して、全エクソーム・シークエンシング・ライブラリーを作成した。Illumina NextSeqプラットフォームで、ペアエンドシークエンシングを行い、75bpリードを生成した。RNA-Seq実験のために、Illumina Stranded TruSeq RNAライブラリー調製キットを使用し、その後、中出力モードにて、NextSeqで、75サイクルのペアエンドシークエンシングを行い、サンプル当たり約2500万のリードを生成した。
【0166】
全エクソームシーケンスデータからバリアントコールを作成するために、まず、BWA(バージョン0.7.13、"mem-M"オプション付き)を使用して、生のシーケンスリード(fastq形式)をGRCm38参照アセンブリにアライメントし、続いて、複数のフローセルレーンでシーケンスされた同一サンプルからの個々のfastqファイルをマージし、選別した(ゲノム座標によって)。次に、Genome Analysis Toolkit(GATK、バージョン4.0.9.0)のMutect2ツールをデフォルトのパラメータで使用し、腫瘍細胞株の座標ソートされたbamファイルを「-tumor」のためのインプットとして、BALB/cのbamファイルを「-normal」のためのインプットとして、バリアントコールを作成した。次いで、得られたVCFファイル中の変異体を、GATKの「FilterMutectCalls」ツールを使用して選別する。選別されたVCFファイルは、samtools suiteのbcftool(samtools.github.io/bcftools/bcftools)を用いて、複数の対立遺伝子を分割し、インデルを左揃えすることにより、さらに正規化された。最終的なVCFファイルは、バリアントの機能的効果をアノテーションするためのオンラインEnsembl Variant Effect Predictor(useast.ensembl.org/Mus_musculus/Tools/VEP)ツールへのインプットとして使用した。RNA-seqデータについては、まずSTAR(version 2.6.1b_10-01)を用いて、腫瘍細胞株及びBalb/cサンプルからの生のシークエンシングリードを、GRCm38参照ゲノムにアライメントした(2パスアプローチで)。得られたbamファイルは、Mutect2を使用してバリアントコールを作成するために使用される。次に、GATKの'VariantFiltration'ツールを使い、"-window 35 -cluster 3 -filterName FS -filter "FS > 30.0" -filterName QD-filter "QD < 2.0"をパラメータとしてvcfファイルをフィルタリングした。最終的な非同義バリアント候補を得るために、エクソームシークエンシングVCFファイルから、非同義バリアントとしてアノテーションされ、RNA-Seqデータでも検出されたバリアントをフィルターした(最小リード深度4)。次に、これらの非同義バリアント周辺のペプチド配列をカスタムPerlスクリプトを用いて抽出し、得られたペプチド配列を、NetMHC-I結合予測サーバー(cbs.dtu.dk/services/NetMHC/)を用いた結合親和性予測のためにインプットとして使用した。
【0167】
細胞研究
【0168】
RAW264.7マウスのマクロファージ細胞を、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC:American Type Culture Collection)から入手し、10%ウシ胎児血清(FBS)と1%ペニシリン/ストレプトマイシンとを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養した。CT26結腸細胞をATCCから入手し、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)を含むRPMI1640中で培養した。4T07細胞株は、Josh Gamble博士(Karmanos Cancer Institute, Detroit, MI)の厚意により提供され、10%FBS、1xグルタミン、1%pen/strepを含むDMEM中で培養された。CMS4-met細胞は、Abrams博士(Roswell Park, Buffalo, NY)の厚意により提供され、10%FBS及び1%pen/strepを含むロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地で培養された。4T1細胞は、Yun Wu博士(University at Buffalo, Buffalo, NY)の厚意により提供され、10%FBS及び1%pen/strepを含むRPMI1640で培養された。RENCA細胞は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から入手し、10%ウシ胎児血清、0.1mMの追加非必須アミノ酸(NEAA)、1mMの追加ピルビン酸ナトリウム、2mMの追加L-グルタミンを補充したRPMI1640中で培養した。TC-1細胞は、Gomez-Gutierrez博士(university of Louisville, Kentucky)から入手し、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(pen/strep)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養した。B16-F10細胞はATCCから入手し、10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEMで培養した。BMDCは、BALB/cマウスの大腿骨及び脛骨の骨髄から得た。107細胞/mLを、10%FBS、1%pen/strep、及び20ng/mLの組換えマウスGM-CSFを含む10mLのRPMI1640培地中で培養した。3日目に、GM-CSFを含む培地を10mL追加し、最終用量を20mLとした。6日目に、非接着細胞を収集し、24-ウェルプレートにて、10%FBS及び1%pen/strepを含むRPMI 1640培地において、5×105細胞/mLで培養した。脾細胞研究のために、新たに単離した脾臓を分離し、70μmのセルストレーナーで濾過した。滅菌3mLシリンジのプランジャーを使用して、ストレーナーを通して組織を分離し、5mLの冷PBSを使用して細胞を洗浄し、50mLのチューブに入れた。細胞を500×gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。赤血球を5mLの赤血球溶解バッファーで5分間溶解し、その後35mLのPBSを前記チューブに加えた。細胞を再度遠心分離し、細胞ペレットをさらなる使用のために収集した。脾細胞を、10%FBS、1%pen/strep、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、1x非必須アミノ酸溶液 及び 50μMのβ-メルカプトエタノールを補充したRPMI1640中で培養した。細胞を、加湿チャンバー内で、5%のCO2/95%空気・37℃にて培養した。
【0169】
インビトロ細胞取り込み研究のために、RAW264.7細胞(ウェル当たり2.5×105)及びBMDC(ウェル当たり2.5×105)を24ウェルプレート中で一晩培養し、その後、CPQ/A5-HiLyte488、2HPQ/A5-HiLyte488、及びPBS/A5-HiLyte488(ペプチド濃度1μg/mL)で処置した(10分、30分、又は1時間)。ファゴサイトーシス及びエンドサイトーシス阻害剤研究のために、細胞をまず、サイトカラシンB(10μg/ml)又はクロルプロマジン(10μg/mL)と1時間プレインキュベートし、その後、細胞取り込み研究を行った。細胞を洗浄し、0.1%Triton X-100及び10mMジチオスレイトール(DTT)で溶解した。蛍光シグナルを、DTTを加える前後で測定した。A5-HiLyte488標準曲線を作成することにより、細胞のA5-HiLyte488取り込みを算出した。
【0170】
細胞溶解物のHPLCのために、1×106のRAW 264.7マウスマクロファージを、コンフルエントになるまでT25細胞培養フラスコにシーディングした。CPQ/A5-HiLyte488(ペプチド濃度2μg/mL)又はPBSを、表示の時間、細胞培養培地に添加した。細胞を洗浄し、溶解し、遠心分離した。上清を回収し、逆相HPLCカラムAgilent poroshell 120 EC-C18(2.7μm充填、4.6×50mm長)に注入した。移動相はアセトニトリルと0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液からなった(この方法では、1mL/minにて10分間、5%-60%アセトニトリル)。HPLCシステムは、「Agilent Technologies 1260 Infinity」及びダイオードアレイ検出器(G1315C DAD VL+)からなった(475nmに設定)。
【0171】
マウス研究
【0172】
インビボ免疫化
バッファローIACUC大学で承認されたプロトコルに従って、マウス研究を行った。5~6週齢の雌BALB/cマウス(Charles River Laboratories, strain BALB/cAnNCrl)の右後脚に免疫した(筋肉内)。BALB/cJマウス(Jackson Laboratories)は、この研究において、表示されたDNA配列決定のためにのみ使用された。
【0173】
腫瘍チャレンジ
予防ワクチン腫瘍モデルのために、マウスに0及び7日目にワクチンを接種し、14日目にチャレンジした。ワクチンによる長期間の保護を試験するために、80日目にマウスにチャレンジを行った。治療用ワクチン腫瘍モデルのために、マウスに0日目に腫瘍細胞を皮下接種し、その後、5及び12日目に表示のワクチンを接種した。腫瘍増殖を週三回モニターし、腫瘍サイズを、式「腫瘍体積=長さ×幅2/2」によって算出した。腫瘍サイズが直径1cmに達したとき、又は動物が潰瘍を発症したときに、動物を安楽死させた。実験用肺転移腫瘍モデルのために、0日目に尾静脈を介して腫瘍細胞を静脈内注射し、次いで、未処置のままとするか、あるいはA5ワクチン研究については2日及び9日目に、RragcL385P、Tmem5S71N又はEML5G44Rペプチドスクリーニング研究については1日及び8日目に、表示のワクチンを筋肉内注射することにより治療を行った。肺を切除し、CT26細胞を注射したマウスについては18日目に、4T1細胞を注射したマウスについては16日目に、Bouin溶液(Sigma Catalog:HT10132)を用いて染色した。腫瘍結節は手動でカウントし、肺重量を測定した。
【0174】
急性毒性試験
8週齢の雌CD-1マウスを未処置とするか、あるいは、CPQ/A5を0及び7日目に筋肉内注射した(マウス当たり、0.5μgのA5ペプチド、2μgのCoPoP、2μgのPHAD及び2μgのQS-21)。14日目に、抗凝固処理した血液及び血清を、標準的な全血球カウント及び血清パネルのために採取し、15μLの血液を、Heska Element HT5 Hematology Analyzerによって、全血球カウントについては血液採取から4時間以内に評価した。血清は、Heska Element DC Chemistry Analyzerによって評価した。臓器(心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓)をホルマリン中で固定し、70%エタノール中で保存し、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色及びイメージングに供した。
【0175】
IFN-γ ELISA
2.5×105脾細胞を96ウェルプレートに播種し、10μg/mLの抗原で72時間刺激した。50μLの上清を各ウェルから回収し、製造者プロトコルに従ってインターフェロンガンマELISA(Thermofisher; カタログ:BMS606TEN)にかけた。
【0176】
抗体染色
【0177】
四量体染色のために、テトラマー染色アッセイによって、免疫マウスの腫瘍Ag-特異的CD8+T細胞の割合を分析した。H-2Ld-拘束性AH1(SPSYVYHQF)ペプチドを、MHC-I(H-2Ld)と複合体化し、PE(NIH Tetramer Core Facility)とコンジュゲートした。60μLの血液を、4℃で1時間AH1四量体とインキュベートし(100x希釈)、次いで、CD8a、MHC-II(IA/IE)、B220、CD4、CD44、及びCD62L抗体と4℃で30分間インキュベートした(1000x希釈)。赤血球を細胞溶解バッファーで5分間溶解した後、細胞を500×gで5分間遠心分離した。細胞ペレットを二回洗浄してフローサイトメトリー分析を行った。脾細胞の四量体染色のために、1×106個の細胞を、血液と同じ条件で四量体及び抗体とインキュベートし、次いでフローサイトメトリー分析のために二回洗浄した。フローサイトメトリー研究は、BD LSRFortessaTM X-20サイトメーターを用いて行った。Flowjo(バージョン10)ソフトウェアをデータ分析に使用した。
【0178】
細胞内染色のために、100μLの1×106脾細胞を平底96ウェルプレートに播種し、細胞培養インキュベータ内で、10μg/mLの抗原により15~18時間刺激した。次いで、ブレフェルジンAを、1000xの希釈液を用いて、5時間、プレートに添加した。細胞を丸底96ウェルプレートに移し、1350rpmで3分間遠心分離し、細胞ペレットを二回洗浄し、500x生/死細胞固定染料で染色し、200x希釈APC抗-マウスCD8、200x希釈FITC抗-マウスCD4、200x希釈PE/Cy7抗-マウスCD62L、200x希釈PerCP/Cy5.5抗-マウスで染色した(4℃で25分間。振とうしながら)。細胞を二回洗浄し、4℃で20分間、固定/透過処理バッファーによって、固定及び透過した。細胞をPerm/Washバッファーで二回洗浄し、200x希釈パシフィックブルー抗-マウスIFN-γ及び200x希釈PE抗-マウスTNF-αで、30分間氷上で染色した。細胞を、フローサイトメトリーのために、Perm/Washバッファーで二回洗浄した。
【0179】
細胞リクルートメント研究のために、CD-1マウスを、未処置のままとするか、あるいは、CPQ/A5又はCP/A5を筋肉内注射した。48時間後に、マウスを安楽死させ、リンパ節を細胞抽出のために回収した。細胞を4%で固定し、洗浄した後、Ly6C、CD11b、Ly6G、CD11c、CD3、I-A/I-E、及びF4/80に対する混合抗体を用いて、氷上で1時間染色し、細胞を同定した。
【0180】
免疫蛍光顕微鏡法のために、リポソーム(蛍光A5を含む他の成分に加えて320μg/mLのPoP又はCoPoPを含む)を、25mg/mLのビーズ(Spherotech Silica Particles, 1.5-1.9μm; カタログ:SIP-15-10)とともに、2000rpmで10分間振とうし、続いて1200rpmで45分間振とうすることによって、ビーズをコーティングした。遊離リポソーム(上清中)を、2分間1200 rcfで遠心分離することによって除去し、ビーズをPBSで二回洗浄した。ガラスカバースリップを、インキュベータ内で37℃にて1%アルシアンブルーで10分間処理し、次いでPBSで三回洗浄した。5×105のBMDCを、アルシアンブルー処理されたガラスカバースリップに30分間播種し、次いで、リポソームでコーティングされたシリカビーズ又はコーティングされていないシリカビーズと3時間インキュベートした。細胞をPBSで三回洗浄し、次いで、4%パラホルムアルデヒド(VWR; カタログ:30525-89-4)で4℃にて20分間固定した。スライドをPBSで三回洗浄し、次いで5%BSA及び0.1%Triton X-100(PBST)とともに室温にて30分間インキュベートした。細胞を、抗-マウスH2Ld(1:500希釈, Invitrogen, PIMA170109)と共に4℃で一晩インキュベートし、5%BSA(PBST中)で三回洗浄し、続いてAlexa Flour 555抗-マウス二次抗体(1:1000希釈、Invitrogen; カタログ:A21137)とともに室温で30分間インキュベートした。スライドをPBSTで三回洗浄し、抗-マウスLAMP1(1:500希釈、Invitrogen, カタログ50-128-11)とともに室温で30分間染色した。インキュベーション後、スライドをPBSTで三回洗浄した後、Alexa Flour 647チキン抗-ラットIgG(1:1000希釈、Invitrogen cat #A21137A21472)で室温にて30分間染色し、次いでPBSTで三回洗浄した。スライドを、抗-フェード(anti-fade)封入剤(Vectashield, カタログ:H-1200)中で、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色した。Zeiss LSM 710共焦点顕微鏡を用いて画像を取得した。
【0181】
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)細胞毒性アッセイのために、単離された脾細胞を細胞培養培地中で培養し、マウスIL-2(Pepro tech; カタログ:212-12; 10 IU/mL)及び抗原(10μg/mL)によって5日間刺激し、エフェクター細胞として使用した。5000のCT26細胞を96ウェルプレートに播種し、10μg/mLの抗原で1時間パルスした後、脾細胞を様々なE:T比にてプレートに添加した(5時間)。腫瘍細胞に対する脾細胞の細胞毒性は、Non-Radioactive Cytotoxicity Assay Kit(Promega; カタログ:G1780)を、製造者の指示にしたがって使用し、乳酸脱水素酵素(LDH)放出によって評価した。
【0182】
CT26及び4T1細胞におけるRragcL385PのDNAシークエンシング
【0183】
DNAを、DNeasy Blood & Tissue kit(QIAGEN、カタログ番号:69504)を使用して抽出し、フォワードプライマーTCACTGTTCACGTCTGTCCT(配列番号46)及びリバースプライマーACTGAGTTCTGAGGTCTCT(配列番号7)を用いてPCR-増幅した。1.5%のアガロースゲルを用いてDNAを精製し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN、カタログ番号:28706)を用いてDNAバンドを切断し抽出した。単離されたPCR産物の質及び濃度を、NanoDrop One(ThermoFisher)を用いて測定した。精製されたDNAは、DNA Sequencing Core(College of Medicine, Houston, TX)にて、Sanger配列決定法によって配列決定した。データをSnapgeneにより分析した。
【0184】
統計解析
【0185】
データは、複数グループの比較のために、一元配置又は二元配置分散分析(ANOVA)、続いてボンフェローニ事後検定によって解析され、又は2つのグループの比較のためにスチューデントt検定によって解析され、又は生存比較のためにログランク検定によって解析された(Prism 8(GraphPad Software)を使用)。0.05未満のP値は統計的に有意とされた。値は、表記のサンプルサイズとともに、平均±SDとして報告される。
【0186】
表1.各図で使用されたペプチド。ペプチド同一性については次の表を参照。
【表1】
【0187】
【0188】
表3.CT26ペプチド
【表3】
*は、CT26及び4T1に共通の変異を示す。
【0189】
表4.スクリーニングされたRENCAペプチド
【表4】
【0190】
表5.TC-1細胞から配列決定されたE6/E7癌遺伝子内の予測MHC-Iエピトープ
【表5】
*H3は、N末端の3つのヒスチジン残基を表す。M.W.は分子量を表す。
【0191】
【0192】
本発明を特定の実施形態を介して説明してきたが、当業者には通常の変更が明らかであり、そのような変更は本開示の範囲内であることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】