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特表2024-502639病原性標的のためのループ媒介等温増幅(LAMP)分析
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】病原性標的のためのループ媒介等温増幅(LAMP)分析
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20240115BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20240115BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240115BHJP
   C12N 15/33 20060101ALN20240115BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12Q1/6851 Z
C12M1/00 A
C12N15/33
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542512
(86)(22)【出願日】2022-01-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-12
(86)【国際出願番号】 US2022012635
(87)【国際公開番号】W WO2022155546
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/138,312
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598063203
【氏名又は名称】パーデュー・リサーチ・ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
(71)【出願人】
【識別番号】520435267
【氏名又は名称】レイセオン ビービーエヌ テクノロジーズ コープ
【氏名又は名称原語表記】RAYTHEON BBN TECHNOLOGIES CORP.
【住所又は居所原語表記】10 Moulton Street Cambridge Massachusetts 02138 US
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】セヴィル,ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】マックチェスニー,ダービー
(72)【発明者】
【氏名】デヴィッドソン,ジョシア
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジアンシャン
(72)【発明者】
【氏名】マルサムス,ムラリ カンナン
(72)【発明者】
【氏名】デクストル,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルマ,モヒット
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB20
4B029FA03
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR62
4B063QS26
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物、方法、及びシステムに関する。組成物は、1つ又は複数の標的プライマー、DNAポリメラーゼ、及び再可溶化剤を含むことができる。組成物は、固相媒体を変色させることができる非pH感受性薬剤を実質的に含まないものであり得る。本方法は、固相媒体のアセンブリを提供すること、固相媒体上に生体試料を堆積すること、及びLAMP反応を促進するのに十分な等温温度までアセンブリを加熱すること、を含むことができる。システムは、組成物及び組成物がその上に堆積される固相媒体を含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物であって、
1つ又は複数の標的プライマー;
DNAポリメラーゼ;及び
再可溶化剤、を含み、
前記固相媒体を変色させることができる非pH感受性薬剤を実質的に含まない、前記組成物。
【請求項2】
抗酸化剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
揮発性剤を実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
吸湿剤を実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記吸湿剤が、25℃で約40%~約90%の相対湿度(RH)の場合に、約10重量%を超える量を吸収する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記吸湿剤には、グリセロール、エタノール、メタノール、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、及びそれらの組み合わせが含まれる、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記再可溶化剤が界面活性剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記再可溶化剤が、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ポリソルベート20、及びそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記標的プライマーが、ウイルス病原体、細菌性病原体、真菌性病原体、または原生動物病原体を含む病原体を標的とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記病原体がウイルス病原体である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ウイルス病原体が、dsDNAウイルス、ssDNAウイルス、dsRNAウイルス、プラス鎖ssRNAウイルス、マイナス鎖ssRNAウイルス、ssRNA-RTウイルス、またはds-DNA-RTウイルスを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ウイルス病原体が、H1N1、H2N2、H3N2、H1N1pdm09、またはSARS-CoV-2を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
逆転写酵素をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
非変色添加剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記非変色添加剤が、糖、緩衝液、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
指示薬をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
固相媒体上のLAMP分析のための方法であって、
固相媒体と請求項1に記載の組成物のアセンブリを提供すること;
前記固相媒体上に生体試料を堆積すること;及び
LAMP反応を促進するのに十分な等温温度まで前記アセンブリを加熱すること、を含む、前記方法。
【請求項18】
前記生体試料が、唾液、粘液、血液、尿、糞便、及びそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記生体試料が唾液である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ウイルス病原体を検出することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記LAMP分析が逆転写酵素LAMP(RT-LAMP)である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の組成物;及び
前記組成物がその上に堆積される固相媒体、
を含む、LAMP分析を実行するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年1月15日出願の米国仮特許出願第63/138,312号の利益を主張し、この仮特許出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、種々の分析目的でヌクレオチドの増幅が可能になる分子生物学技術である。定量的PCR(qPCR)は、標的ヌクレオチドの増幅をモニタリングできるPCRを応用したものである。診断用qPCRは、感染症、がん、遺伝子異常を示すヌクレオチドの検出に適用されている。逆転写PCR(RT-PCR)は、標的RNAヌクレオチドの検出が可能になるqPCRを応用したものである。この能力により、RT-PCRはウイルス病原体の検出に好適である。しかし、RT-PCRでは、特定のポイントオブケア環境では利用できない場合がある大型の機器を使用する。さらに、RT-PCRでは、訓練を受けた人員が起用され、大がかりな試料調製が使用され、実行と結果の取得に時間がかかる。
【0003】
対照的に、ループ媒介等温増幅(LAMP)は、標的ヌクレオチドの診断的同定に対するより単純なアプローチである。特に、LAMPは、特定のヌクレオチド配列を増幅する一工程での核酸増幅法である。等温加熱プロセスの使用に加えて、LAMPでは、PCRで使用されるより複雑な蛍光指示薬ではなく、色の変化などの単純な視覚的出力試験指示薬を使用することができる。逆転写LAMP(RT-LAMP)は、RNAから標的ヌクレオチドを同定するためにRT-PCRと同様に使用することができ、ウイルス病原体の存在または不存在を識別する診断能力に使用することができる。LAMPはより単純であるため、より少ない機器及び試料調製により実行することができ、そのため、診療所、緊急治療室、さらにはモバイルベースなどのポイントオブケア環境での使用が容易になる。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、LAMP分析を使用して標的ヌクレオチドを検出する際に使用するための技術(例えば、組成物、方法、システム、及びアセンブリ)に関する。いくつかの態様では、標的ヌクレオチドは、目的の病原体に存在することが知られている場合がある。病原体がウイルスである場合、LAMP分析はRT-LAMP分析であってもよい。
【0005】
いくつかの開示実施形態では、病原体標的のループ媒介等温増幅(LAMP)検出用の唾液試料を調製する方法を提供する。一態様では、そのような方法は、試験対象から一定量の唾液を提供することと、病原体標的の検出が可能になるのに十分な濃度を維持しながら、唾液の緩衝能を低下させる程度まで唾液を水で希釈することとを含むことができる。
【0006】
一態様では、本方法は、元の粘度と比較して唾液の粘度を低下させることを含むことができる。別の態様では、粘度は、希釈、濾過、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数によって低下させることができる。別の態様では、濾過を使用して粘度を低下させることができる。さらなる態様では、10ミクロンのフィルタを使用して粘度を低下させることができる。さらに別の態様では、粘度は、元の粘度と比較して流動性が増加して固相媒体を通る程度まで低下させることができる。さらに別の態様では、粘度は、約1.0センチポアズ(cP)~約50cPの範囲まで低下させることができる。
【0007】
一態様では、このような方法は、唾液試料のpHが試験試料の標的範囲に調整される程度まで唾液試料を濾過することを含むことができる。別の態様では、試験試料の標的範囲は約7.2~約8.6であり得る。別の態様では、水は6.0を超えるpHを有する場合があり、汚染物質を実質的に含まない場合がある。さらに別の態様では、唾液試料は唾液と水から本質的に構成され得る。なおさらなる態様では、唾液はスポンジベースの採取を使用して採取することができる。
【0008】
一態様では、唾液は、唾液対水の比が約1:1~約1:20になるまで水で希釈することができる。別の態様では、唾液は、試料の600nmにおける光学密度(OD600)が0.2未満となる程度まで水で希釈することができる。さらなる態様では、唾液は約50μl~約100μlの体積を有する。さらに別の態様では、唾液試料は、約100μl~約1mlの範囲の体積を有する。
【0009】
追加の態様では、病原体標的は、ウイルス病原体、細菌性病原体、真菌性病原体、または原生動物病原体を含み得る。一態様では、病原体標的はウイルス標的であり得る。別の態様では、ウイルス標的は、dsDNAウイルス、ssDNAウイルス、dsRNAウイルス、プラス鎖ssRNAウイルス、マイナス鎖ssRNAウイルス、ssRNA-RTウイルス、またはds-DNA-RTウイルスを含むことができる。さらに別の態様では、ウイルス標的は、H1N1、H2N2、H3N2、H1N1pdm09、またはSARS-CoV-2であり得る。
【0010】
いくつかの態様では、LAMP検出は、逆転写LAMP(RT-LAMP)検出を含み得る。
【0011】
他の開示実施形態では、LAMP分析のための試験試料組成物が開示されており、これは、LAMP分析を介して病原体標的を検出するのに十分な量の試験対照の唾液を、唾液の緩衝能を低下させる量の水と組み合わせて含むことができる。
【0012】
一態様では、組成物は約1.0cP~約50cPの粘度を有することができる。別の態様では、組成物は約7.2~約8.6のpHを有することができる。別の態様では、組成物は、唾液対水の比が約1:1~約1:20であり得る。さらに別の態様では、組成物は、600nmでの光学密度(OD600)が0.2未満であり得る。別の態様では、水は6.0を超えるpHを有する場合があり、汚染物質を実質的に含まない場合がある。一態様では、組成物は唾液と水から本質的に構成され得る。別の態様では、唾液は約50μl~約100μlの範囲の体積を有し得る。さらに別の態様では、唾液試料は、約100μl~約1mlの体積を有し得る。
【0013】
一態様では、病原体標的は、ウイルス病原体、細菌性病原体、真菌性病原体、または原生動物病原体を含み得る。別の態様では、病原体標的はウイルス標的であり得る。別の態様では、ウイルス標的は、dsDNAウイルス、ssDNAウイルス、dsRNAウイルス、プラス鎖ssRNAウイルス、マイナス鎖ssRNAウイルス、ssRNA-RTウイルス、またはds-DNA-RTウイルスを含むことができる。さらに別の態様では、ウイルス標的は、H1N1、H2N2、H3N2、H1N1pdm09、またはSARS-CoV-2を含み得る。さらに別の態様では、組成物の緩衝能は5mM未満であり得る。
【0014】
さらに他の開示実施形態では、固相媒体上のLAMP分析用の組成物は、1つ又は複数の標的プライマー、DNAポリメラーゼ、及び再可溶化剤を含むことができる。いくつかの態様では、このような組成物は、固相媒体を変色させることができる非pH感受性薬剤を実質的に含まないものであり得る。一態様では、組成物は、抗酸化剤を含むことができる。別の態様では、組成物は揮発性剤を実質的に含まないものであり得る。さらに別の態様では、組成物は吸湿剤を実質的に含まないものであり得る。他の一態様では、組成物は逆転写酵素をさらに含むことができる。
【0015】
一態様では、吸湿剤は、25℃で相対湿度(RH)が約40%~約90%の間の場合、約10重量%を超える量を吸収することができる。別の態様では、吸湿剤には、グリセロール、エタノール、メタノール、塩化カルシウム、塩化カリウム、硫酸カルシウム、及びそれらの組み合わせを含めることができる。
【0016】
別の態様では、再可溶化剤は界面活性剤であり得る。別の態様では、再可溶化剤は、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ポリソルベート20、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0017】
一態様では、標的プライマーは、ウイルス病原体、細菌性病原体、真菌性病原体、または原生動物病原体を含み得る病原体を標的とすることができる。一態様では、病原体はウイルス病原体であり得る。別の態様では、ウイルス病原体は、dsDNAウイルス、ssDNAウイルス、dsRNAウイルス、プラス鎖ssRNAウイルス、マイナス鎖ssRNAウイルス、ssRNA-RTウイルス、またはds-DNA-RTウイルスを含むことができる。別の態様では、ウイルス病原体は、H1N1、H2N2、H3N2、H1N1pdm09、またはSARS-CoV-2を含み得る。
【0018】
一態様では、組成物は、非変色添加剤をさらに含むことができる。非変色添加剤は、糖、緩衝液、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含むことができる。別の態様では、組成物は指示薬をさらに含むことができる。
【0019】
他の開示の実施形態では、固相媒体上のLAMP分析のための方法は、本明細書に記載の固相媒体と組成物のアセンブリを提供すること、固相媒体上に生体試料を堆積すること、及びLAMP反応を促進するのに十分な等温温度までアセンブリを加熱すること、を含むことができる。一態様では、生体試料は、唾液、粘液、血液、尿、糞便、汗、呼気凝縮液、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数であり得る。別の態様では、生体試料は唾液である。一態様では、LAMP分析は、逆転写酵素LAMP(RT-LAMP)であり得る。別の態様では、この方法は、ウイルス病原体を検出することをさらに含むことができる。
【0020】
他の開示実施形態では、LAMP分析を実行するためのシステムは、本明細書に記載の組成物と、その組成物が堆積される固相媒体とを備えることができる。
【0021】
なおさらなる開示実施形態では、ループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物では、pH感受性色素を含み得るpH依存性出力シグナル及び複数の非干渉LAMP試薬を利用することができる。一態様では、LAMP分析はRT-LAMPであり得る。
【0022】
一態様では、pH感受性色素は、フェノールレッド、フェノールフタレイン、アゾリトミン、ブロモチモールブルー、ナフトールフタレイン、クレゾールレッド、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つであり得る。別の態様では、複数の非干渉LAMP試薬は、揮発性試薬、pH干渉試薬、マグネシウム干渉試薬、またはそれらの組み合わせを実質的に含まないものであり得る。
【0023】
一態様では、複数の非干渉LAMP試薬は、マグネシウム、硫酸アンモニウム、及び炭酸アンモニウムを実質的に含まないものであり得る。一態様では、複数の非干渉LAMP試薬は、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、標的プライマー、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0024】
別の態様では、組成物は抗酸化剤を含むことができる。別の態様では、組成物は、キャリアRNA、キャリアDNA、RNase阻害剤、DNase阻害剤、塩酸グアニジン、またはそれらの組み合わせをさらに含むことができる。一態様では、組成物は固相媒体をさらに含むことができる。
【0025】
一態様では、組成物は、糖、緩衝液、遮断剤、またはそれらの組み合わせを含むことができる非変色添加剤を含むことができる。一態様では、糖は、トレハロース、グルコース、スクロース、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含むことができる。別の態様では、遮断剤は、ウシ血清アルブミン、カゼイン、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0026】
他の開示実施形態では、pH依存性出力シグナルを用いてLAMP分析を実行する方法が提供され、この方法は、本明細書に記載の固相媒体と組成物のアセンブリを提供すること、固相媒体上に生体試料を堆積すること、及びLAMP反応を促進するのに十分な等温温度までアセンブリを加熱すること、を含むことができる。一態様では、LAMP分析はRT-LAMPであり得る。一態様では、生体試料は、唾液、粘液、血液、尿、糞便、汗、呼気凝縮液、及びそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数であり得る。一態様では、生体試料は唾液であり得る。別の態様では、この方法は、ウイルス病原体を検出することをさらに含むことができる。
【0027】
さらなる開示実施形態では、pH依存性LAMP分析における出力シグナルの精度を最大化する方法は、シグナル出力媒体から非LAMP反応によって生じる変色を最小限に抑える試薬混合物を提供することと、LAMP反応を実行することとを含むことができる。一態様では、この方法は、非LAMP反応からのプロトンの生成を制御することを含むことができる。別の態様では、この方法は、非LAMP反応による酸化を制御することを含むことができる。
【0028】
他の開示実施形態では、pH依存性LAMP分析における出力シグナルの精度を最大化する方法は、シグナル出力媒体から非LAMP反応によって生じる変色を実質的に除去することを含むことができる。
【0029】
他の開示実施形態では、pH依存性LAMP分析における検出限界(LOD)を最大化する方法は、シグナル出力媒体から非LAMP反応によって生じる変色を実質的に除去することを含むことができる。
【0030】
本開示の特質及び利点は、本開示の特質を例として一緒に示す添付図面と併せて以下の詳細な説明から明らかになるであろう。添付図面は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】例示的な実施形態に従って、病原体標的のループ媒介等温増幅(LAMP)検出のために唾液試料を調製する方法を示す。
図2】例示的な実施形態に従って、LAMP分析の方法を示す。
図3】例示的な実施形態に従って、pH依存性LAMP分析における出力シグナルの精度を最大化する方法を示す。
図4】例示的な実施形態に従って、ループ媒介等温増幅(LAMP)を唾液試料中で得ることができることを示す。
図5A】例示的な実施形態に従う、スポンジベースの採取デバイスを示す。
図5B】例示的な実施形態に従う流涎(passive drool)採取デバイスを示す。
図6A】例示的な実施形態に従う、種々の濃度の試料及び種々の採取デバイスの検出限界を示す。
図6B】例示的な実施形態に従う、RT-LAMP比色応答に対する種々の濃度のテンプレートに対するRNase阻害剤の効果を示す。
図6C】例示的な実施形態に従う、比色LoDに対する唾液処理技術の効果を示す。
図6D】例示的な実施形態に従う、RT-LAMP比色応答に対するキャリアDNA濃度の影響を示す。
図6E】例示的な実施形態に従う、RT-LAMP比色応答に対するグアニジンHClの影響を示す。
図6F】例示的な実施形態に従う、エンドポイントRT-LAMP比色応答に対するUDGの効果を示す。
図6G】例示的な実施形態に従う、比色応答に対する唾液処理の効果を示す。
図7】例示的な実施形態に従う、凍結唾液試料の安定性を示すチャートである。
図8】例示的な実施形態に従う、未処理唾液の検出限界を示す。
図9】例示的な実施形態に従う、ウシ鼻腔スワブにおける検出限界を示す。
図10】例示的な実施形態に従う、紙上の検出限界を示す。
図11】例示的な実施形態に従う、フェノールレッドの比色遷移を示す。
図12】例示的な実施形態に従う、紙ベースのアッセイに使用される緩衝液を示す。
図13A】例示的な実施形態に従う、紙LAMP検証を示す。
図13B】例示的な実施形態に従う、紙LAMP検証を示す。
図14A】例示的な実施形態に従う、0分の時点での紙上の低テンプレート濃度LAMPを示す。
図14B】例示的な実施形態に従う、60分の時点での紙上の低テンプレート濃度LAMPを示す。
図15】例示的な実施形態に従う、熱不活化SARS-CoV-2ウイルスを含む未処理の唾液全体を示す。
図16】例示的な実施形態に従う、RT-LAMP比色及び蛍光応答の比較を示す。
図17A】例示的な実施形態に従う、LAMP比色指示薬としてのカルマガイトの使用を示す。
図17B】例示的な実施形態に従う、LAMP指示薬としてのEBTの使用を示す。
図17C】例示的な実施形態に従う、比色レポーターとしてEBTを使用するクロマトグラフィー用紙上のLAMPを示す。
図17D】例示的な実施形態に従う、指示薬としてEBTを使用する、種々の紙上のLAMPの比色応答を示す。
図17E】例示的な実施形態に従う、比色指示薬としてEBTを使用するbiodyne A両性紙上のLAMP検出を示す。
図17F】例示的な実施形態に従う、LAMP比色応答に対するクリスタルバイオレット濃度の影響を示す。
図17G】例示的な実施形態に従う、紙上の種々の濃度のクリスタルバイオレットを使用する比色LAMPを示す。
図17H】例示的な実施形態に従う、RT-LAMP用の比色レポーターとしてのpH指示薬を示す。
図17I】例示的な実施形態に従う、LAMP反応の比色応答に対するクレゾールレッド濃度の影響を示す。
図17J】例示的な実施形態に従う、RT-LAMP反応の比色応答に対する種々のpH指示薬の濃度の影響を示す。
図17K】例示的な実施形態に従う、pH指示薬を使用したRT-LAMP生成物のゲル電気泳動スキャンを示す。
図17L】例示的な実施形態に従う、フェノールレッドを使用したRT-LAMP比色応答に対する初期pHの影響を示す。
図18】例示的な実施形態に従う、乾燥プロセスの色の安定性を示す。
図19A】例示的な実施形態に従う、乾燥後の紙の初期色に対する単一反応物の除去の効果を示す。
図19B】例示的な実施形態に従う、RT-LAMP比色応答に対するトレハロース及びTween20の効果を示す。
【0032】
ここで、例示的な実施形態を参照し、本明細書では、これを説明するために特定の言語を使用する。それでもなお、本技術の範囲がそれによって限定されないことを意図していることが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態を説明する前に、本開示は、本明細書に開示される特定の構造、プロセスステップ、または材料に限定されず、関連技術の当業者によって認識されるであろうその等価物にまで拡張されることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、具体的な例または実施形態を説明する目的でのみ使用されており、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。異なる図面における同じ参照番号は同じ構成要素を表す。フローチャート及びプロセスで提供される番号は、ステップ及び操作を示すことを明確にするために提供されており、必ずしも特定の順序(order)または順番(sequence)を示すものではない。
【0034】
さらに、記載された特質、構造、または特徴は、1つ又は複数の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせることができる。以下の説明では、本発明の種々の実施形態の完全な理解を提供するために、組成物、剤形、治療法等の例などの多くの具体的な詳細が提供される。しかし、当業者であれば、そのような詳細な実施形態は、本明細書で明示される全体的な発明概念を限定するものではなく、単にその代表的なものであることを認識するであろう。
【0035】
定義
本明細書で使用される場合、文脈上別段の明確な指示がない限り、「a」、「an」及び「the」という単数形には、複数の指示対象が含まれる。したがって、例えば、「賦形剤」への言及には、1つ又は複数のそのような賦形剤への言及が含まれ、「担体」への言及には、1つ又は複数のそのような担体への言及が含まれる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「配合物」及び「組成物」という用語は交換可能に使用され、2つ以上の化合物、元素、または分子の混合物を指す。いくつかの態様では、「配合物」及び「組成物」という用語は、1つ又は複数の活性剤と担体または他の賦形剤との混合物を指すために使用することができる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「可溶性」という用語は、所定の溶媒に溶解する能力に関する物質または薬剤の尺度または特徴である。組成物の特定の成分における物質または薬剤の溶解度は、約25℃または約37℃などの特定の温度で溶解して目に見えて透明な溶液を形成する物質または薬剤の量を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「親油性」という用語は、水に溶けにくい化合物を指す。逆に、「親水性」という用語は、水に可溶性である化合物を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「対象」とは動物を指す。一態様では、動物は哺乳動物であってもよい。別の態様では、哺乳動物はヒトであってもよい。
【0040】
本明細書で使用される場合、「非液体」は、本明細書に開示される組成物の状態を指すために使用される場合、半固体または固体としての組成物の物理的状態を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「固体」及び「半固体」とは、標準温度及び圧力で自重を支え、自由に流動しない適切な粘度または構造を有する組成物の物理的状態を指す。半固体の材料は、圧力を加えると容器の形状に適合する場合がある。
【0042】
本明細書で使用される場合、「固相媒体」、「固相ベース」、「固相基材」、「固相試験基材」、「固相検査基材」などは、非液体媒体、デバイス、システム、または環境を指す。いくつかの態様では、非液体媒体は、液体を実質的に含まなくても、または液体を完全に含まなくてもよい。一例では、非液体媒体は、多孔質材料もしくは多孔質表面を有する材料を含むか、または多孔質材料もしくは多孔質表面を有する材料であり得る。別の例では、非液体媒体は、繊維状材料もしくは繊維状表面を有する材料を含むか、または繊維状材料もしくは繊維状表面を有する材料であり得る。さらに別の例では、非液体媒体は紙であってもよい。
【0043】
本明細書で使用される場合、「非変色添加剤」は、その上またはその中で起こっているLAMP反応からのヌクレオチド増幅以外の理由による、固相媒体の色の元の色または開始色から異なる色への色の変化を最小限に抑えるまたは防止する添加剤を指す。例えば、一実施形態では、そのような色の変化は、非変色添加剤が存在しない場合に起こる色の変化と比較して、最小限に抑えられるか、または低減し得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「非LAMP反応によって生じる変色」とは、LAMP反応からのヌクレオチド増幅の結果ではない、固相媒体のあらゆる変色(例えば、元の色から別の色への色の変化)を指す。いくつかの例では、非LAMP反応によって生じる変色は、揮発性剤、マグネシウム干渉剤、酸化剤、LAMP反応による増幅以外の原因から生じるpH変化、乾燥、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数に起因する固相媒体の変色を指し得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「揮発性剤」とは、高い蒸気圧または低い沸点を有する組成物を含む剤を指す。一例では、アンモニアは揮発して硫酸を残し得るため、硫酸アンモニウムは揮発性剤となり得る。一例では、組成物、構成成分、または元素は、組成物が約30℃を超える温度において気相で存在する場合、高い蒸気圧を有し得る。一例では、組成物が約80℃未満の温度において気相で存在する場合、組成物は低い沸点を有し得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「pH干渉試薬」は、LAMP反応からの増幅以外の理由で、反応、系、または環境のpHに影響を与える得る試薬である。一例では、アンモニウムイオンは硫酸アンモニウムから揮発し得、硫酸イオンは反応して硫酸を形成し、LAMP反応による増幅がない場合に反応のpHに影響を与え得る。
【0047】
本開示では、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含有すること(containing)」、及び「有すること(having)」などは、米国特許法においてそれらに帰属する意味を有することができ、「含む(includes)」、「含むこと(including)」、などを意味することができ、一般に非限定用語であると解釈される。「からなること(consisting of)」または「からなる(consists of)」という用語は限定用語であり、そのような用語に関連して具体的に列挙されている成分、構造、ステップなど、ならびに米国特許法に従うもののみを含む。「から本質的になること(Consisting essentially of)」または「から本質的になる(consists essentially of)」とは、米国特許法によってそれらに一般に与えられる意味を有する。特に、そのような用語は、関連して使用される項目(複数可)の基本的かつ新規な特徴または機能に実質的に影響を及ぼさない追加の項目、材料、成分、ステップ、または構成要素を含めることが可能であることを除き、一般に限定用語である。例えば、組成物中に存在するが組成物の性質や特徴に影響を及ぼさない微量元素は、「から本質的になること」という語法の下で存在する場合、たとえそのような専門用語に従う項目のリストに明示的に記載されていなくても許容されるであろう。本明細書において「含むこと(comprising)」または「含むこと(including)」などの非限定用語を使用する場合、「から本質的になること(consisting essentially of)」という語法ならびに「からなること(consisting of)」という語法にも、あたかも明示的に記載されているかのように直接的支持が与えられるべきであり、その逆も同様であることが理解される。
【0048】
明細書及び特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」、「第4」などの用語は、類似する構成要素間を区別するために使用され、必ずしも特定の連続的または時系列的な順序を説明するために使用されるわけではない。このように使用される用語はいずれも、本明細書に記載される実施形態が、例えば、本明細書に図示または別様に記載されたもの以外の順番で動作できるように、適切な状況下では交換可能であることを理解されたい。同様に、方法が一連のステップを含むものとして本明細書に記載されている場合、本明細書に提示されているステップの順序は、必ずしもそのようなステップが実行される唯一の順序であるわけではなく、記載されたステップのうちのある特定のものが省略される場合がある、及び/または本明細書に記載されていないある特定の他のステップが方法に追加される場合がある。
【0049】
本明細書で使用される場合、「増加した」、「減少した」、「より良好な」、「悪化した」、「より高い」、「より低い」、「強化された」、「最大化された」、「最小化された」などの比較用語は、周囲または隣接する領域にある、同様に位置している、単一のデバイスもしくは組成物内または複数の相当するデバイスもしくは組成物内にある、群またはクラス内にある、複数の群またはクラス内にある、他のデバイス、成分、組成物、または活動とは測定可能な程度に異なる、または既知の従来技術と比較して測定可能な程度に異なる、デバイス、成分、組成物、または活動の特性を指す。
【0050】
本明細書で使用される「結合した(coupled)」という用語は、化学的、機械的、電気的または非電気的な様式で直接的または間接的に接続していると定義される。本明細書で互いに「隣接している」と記載されている物体は、その語句が使用される文脈に応じて、互いに物理的に接触している、互いに極めて近接している、または互いに同じ一般的領域もしくは範囲に存在することがある。本明細書において「一実施形態では」または「一態様では」という語句が出現する場合、必ずしもすべてが同じ実施形態または態様を指すわけではない。
【0051】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、動作、特徴、特性、状態、構造、項目、または結果の完全もしくほぼ完全な範囲または程度を指す。例えば、「実質的に」封入されている物体は、その物体が完全に封入されているか、ほぼ完全に封入されているかのいずれかであることを意味する。絶対的な完全性からの逸脱の正確な許容可能な程度は、場合によっては特定の状況に依存することがある。しかし、一般的に言えば、完全に近づくと、あたかも絶対的かつ総体的な完全が得られるかのように、同じ全体的な結果が得られるようになる。「実質的に」の使用は、動作、特徴、特性、状態、構造、項目、または結果が完全にもしくはほぼ完全に欠如していることを指す否定的な意味合いで使用される場合にも等しく適用可能である。例えば、粒子を「実質的に含まない」組成物は、粒子が完全に欠如しているか、またはその効果は粒子が完全に欠如しているのと同じである程度にほぼ完全に粒子が欠如しているかのいずれかであろう。言い換えれば、ある成分または要素を「実質的に含まない」組成物であっても、その測定可能な効果がない限り、実際にはそのような項目をなおも含有している場合がある。
【0052】
本明細書で使用される場合、「約(about)」という用語は、所定の値が端点の「わずかに上」または「わずかに下」であり得ることを規定することにより、数値範囲の端点に柔軟性を与えるために使用される。特に明記しない限り、特定の数または数値範囲に従って「約」という用語を使用することは、「約」という用語を伴わないそのような数値用語または数値範囲を支持するものであると理解されるべきである。例えば、便宜性及び簡潔性のために、「約50オングストローム~約80オングストローム」という数値範囲は、「50オングストローム~80オングストローム」の範囲を支持するものであるとも理解されるべきである。さらに、本明細書では、実際の数値は、それに伴って「約」という用語が使用される場合でも、支持されることを理解されたい。例えば、「約」30という記述は、30をわずかに上回る値と少し下回る値を支持するだけでなく、30という実際の数値も支持すると解釈されるべきである。
【0053】
本明細書で使用される場合、複数の項目、構造要素、構成要素、及び/または材料は、便宜上、共通のリストで提示してもよい。しかし、これらのリストは、リストの各メンバーが別々かつ固有のメンバーとして個別に識別されるかのように解釈されるべきである。したがって、そのようなリストのいかなる個々のメンバーも、反対の表示がなければ、共通の群内での提示のみに基づいて、同じリストのいかなる他のメンバーとも事実上同等であると解釈されるべきではない。
【0054】
濃度、量、レベル及び他の数値データは、本明細書では範囲形式で表現または提示することができる。そのような範囲の形式は、単に便宜性及び簡潔性のために使用され、したがって、範囲の制限として明示的に列挙された数値を含むだけなく、その範囲内に包含されるすべての個々の数値または部分範囲または小数単位も、あたかも各数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように、含むことが柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。実例として、「約1~約5」という数値範囲は、明示的に列挙された約1~約5の値だけでなく、示された範囲内の個々の値及び部分範囲も含むものと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、2、3、及び4などの個々の値、ならびに1~3、2~4、及び3~5等などの部分範囲、ならびに1、2、3、4、及び5が個別に含まれる。最小値または最大値として1つの数値のみを記載する範囲にも、これと同じ原理が当てはまる。さらに、そのような解釈は、記載されている範囲の広さまたは特徴に関係なく適用されるべきである。
【0055】
本明細書全体を通じて「一例(an example)」への言及は、その例に関連して説明される特定の特質、構造、または特徴が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じて種々の箇所で出現する「一例では」という語句は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない。
【0056】
実施形態
病原体(例えば、COVID-19の原因ウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2))の多くの分子試験は、実験室に限定される可能性があり、したがって、結果が得られるまでに大幅な遅延時間(>24時間)があり、ポイントオブケア環境での採用が妨げられる。SARS-CoV-2のポイントオブケア試験の開発は何度か試みられているが、いくつかの限界が残っている:i)スケーラビリティ(検査の需要は週に数百万のオーダーであるが、その規模で新しい試験を作成するのは困難である)、ii)試料処理(唾液を使用する場合、多くの試験では依然として抽出操作が使用される)、及びiii)可読性(分子試験では多くの場合蛍光が使用されるため、結果を報告するために蛍光リーダーが使用される)。
【0057】
現在の検査方法は、試料として希釈唾液(例えば、水中5%体積/体積)を使用して60分以内に病原体(例えば、SARS-CoV-2)の存在下での色の変化を報告する、紙ベースのデバイス及び逆転写ループ媒介等温増幅(RT-LAMP)を使用するポイントオブケア試験を使用することによって克服することができる。RT-LAMPは、特に感染の急性期中に適切な診断性能を備えた一定温度で実行される核酸増幅技術である。RT-LAMPは、一定温度で実行することができるため、高価な熱サイクル機器を使用しない。さらに、LAMP生成物用の既存の比色レポーターでは、蛍光リーダーを使用しない。したがって、この試験はポイントオブケア環境での使用に好適であり、迅速な開発及びスケールアップに適しているため、公衆衛生上の緊急事態での使用に適している。
【0058】
RT-LAMPは、種々の病原体(SARS-CoV-2など)を検出するためのマイクロ流体紙ベース分析デバイス(μPAD)に実装することができ、携帯型電子デバイスを使用して画像分析を実行して陽性応答と陰性応答を区別することができる。一例では、紙上での高コントラストRT-LAMP反答により、肉眼で見える色の変化が得られる。さらに、ワックス印刷-印刷領域と試薬の分配の正確な位置合わせが可能-を使用する代わりに、試料間のクロストークを防ぐためにポリスチレンスペーサーを使用することができる。ポリスチレンスペーサーは、製造をスケールアップするためのロールツーロール製造に適している。
【0059】
核酸ベースのCOVID-19診断方法は、前処理を使用して結果を提供する。本明細書に開示されるように、SARS-CoV-2の紙上比色検出は、最小限の前処理で実行することができる。このデバイスは、事前増幅なしで紙上のSARS-CoV-2を検出することができる感度及び特異度を有することができる。溶液中で実行される他のアッセイは、紙ベースのアッセイほど製造中に拡張可能ではない場合がある。さらに、本明細書に開示されるアッセイでは数秒で完了することができる希釈操作を使用するが、他のアッセイではSARS-CoV-2を検出するためにプロテアーゼによる処理、熱不活化、及び/またはRNA抽出などの種々の操作を使用する(操作は少なくとも10分間で完了し、追加の機器を使用する)。
【0060】
LAMP分析用の試料採取及び特性
唾液には、LAMP反応との関係において困難を引き起こす可能性がある種々の物理的、化学的、及び抗菌的特性がある。例えば、ある物理的特性では、唾液は、有機酸を歯垢から希釈して除去することがあり、これはLAMP反応を妨げる可能性がある。化学的特性の一部-pHの変化を最小限に抑える電解質及び緩衝分子-も、LAMP反応を妨げる可能性がある。唾液中の抗菌剤、例えばムチン、アミラーゼ、リゾチーム、ペルオキシダーゼ酵素にも課題がある。例えば、ペルオキシダーゼ酵素は細菌細胞内でフリーラジカル化合物を形成し、細菌細胞にアポトーシス様の死を引き起こす可能性がある。しかし、このような反応は不安定な酸化還元環境を提供し、LAMP反応を複雑にする可能性もある。
【0061】
上述の背景を念頭に置いて、図1のフローチャートに示すように、病原体標的のループ媒介等温増幅(LAMP)検出のために唾液試料を調製する方法100が提供される。光学的に検出されたpHベースの色の変化など、試験結果を示すために選択された最終シグナル出力に応じて、試料中の唾液によって試料全体のpHが中性から大きく偏らないようにすることが望ましい場合がある。試料中の唾液の緩衝能または影響をチェックするかまたは別様に制限するために、さまざまな技術及びプロセスを実装することができる。過剰な量の緩衝能は、pHベースの色の変化を検出するために使用されるpHの変動を妨げる可能性がある。
【0062】
唾液の緩衝能を低下させる1つの方法として、希釈を挙げることができる。一実施形態では、このような方法は、ブロック110に示すように、試験対象から一定量の唾液を提供することと、ブロック120に示すように、病原体標的の検出が可能になるのに十分な濃度を維持しながら、唾液の緩衝能を低下させる程度まで唾液を水で希釈することとを含むことができる。
【0063】
唾液中に存在するタンパク質は、別の課題を提示する。例えば、過度に粘性のある試料を固体ベースまたは固相媒体で試験するのは困難になる可能性がある。固体ベースの媒体の流速が遅いと、反応時間が長くなり、広がりの均一性が低下し、結果のばらつきが増大し、結果の無効性が増大する可能性がある。例えば、粘性のある形態の唾液が固体ベースの媒体全体に均一に広がらない場合、色ベースの表示が読み取りにくい場合がある。均一な広がりが低下すると、結果の読み取りに不確実性が加わり、結果のばらつきが増大する可能性がある。技術者によって結果の解釈が異なる場合がある。場合によっては、色の変化が曖昧であったり、変化がなかったりするため、結果を読み取ることが実行不可能になる場合がある。したがって、唾液の粘度を制御することで、発生し得る種々の複雑な問題を防ぐことができる。
【0064】
したがって、別の実施形態では、本方法は、元の粘度と比較して唾液の粘度を低下させることをさらに含むことができる。一態様では、唾液は、希釈、濾過など、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数によって減少させることができる。一態様では、希釈を用いて唾液の粘度を低下させる場合、唾液は、唾液対水の比が約1:1から約1:20になるまで水で希釈することができる。別の態様では、唾液の粘度を水で希釈して、唾液対水の比を約1:1、1:2、1:4、1:8、1:10、1:12、1:14、1:16、1:18、または1:20にすることができる。一態様では、唾液は、試料の600nmにおける光学密度(OD600)が約0.2未満となる程度まで水で希釈することができる。一態様では、唾液は、約50μl~約100μlの範囲の体積を有し得る。別の態様では、唾液試料は、約100μl~約1mlの範囲の体積を有し得る。
【0065】
場合によっては、唾液試料を希釈することにより、唾液の緩衝能及び粘度から生じる作用の影響を低減することができる。唾液の粘度の影響を低減する別の方法には、濾過が含まれる。別の態様では、約2ミクロン~50ミクロンの間の定格を有するフィルタを使用して粘度を低下させることができる。一例では、フィルタ定格は、2ミクロン、5ミクロン、8ミクロン、10ミクロン、15ミクロン、20ミクロン、25ミクロン、40ミクロン、または50ミクロンのうちの1つ又は複数であり得る。一態様では、フィルタ定格は、フィルタが特定の粒径の少なくとも約98.7%を除去することができる絶対ミクロン定格とすることができる。希釈だけでなく唾液を濾過すると、LAMP反応を妨げる場合がある唾液タンパク質(例えば、ムチン、アミラーゼ、リゾチーム、及びペルオキシダーゼ酵素)も除去することができる。
【0066】
希釈、濾過、またはその両方を組み合わせることにより、粘度を特定の範囲内に収まるように制御することができる。さらに別の態様では、粘度は、元の粘度と比較して流動性が増加して固相媒体を通る程度まで低下させることができる。一例では、唾液の粘度は、希釈または濾過前に約1センチポアズ(cP)~約100cPの範囲を有し得る。一例では、唾液の粘度は、希釈または濾過後に約1.0cP~約50cPの範囲まで低下させることができる。別の例では、唾液の粘度は、希釈または濾過後に約1.0cP~約10cPの範囲まで低下させることができる。
【0067】
唾液を濾過することによって、pH範囲を所望のレベルに調整することもできる。例えば、一部のpH指示薬は、特定のpH範囲(例えば、7.2~約8.6)内で色の変化を表示する場合がある。したがって、使用するpH指示薬のタイプに応じて、唾液を試験試料の標的範囲に濾過することができる。しかし、試験試料の標的範囲を生理学的条件内に維持すると、LAMP反応結果の均一性を向上させることができる。一態様では、唾液は、唾液試料のpHを試験試料の標的範囲に調整する程度まで濾過することができる。一例では、試験試料の標的範囲は、約7.2~約8.6の間のpH範囲を含むことができる。別の例では、試験試料の標的範囲は、約7.6~約8.2の間のpH範囲を含むことができる。
【0068】
試験試料の標的範囲を所望のレベルに調整する場合、LAMP反応におけるpH変化(または他の比色指標)を検出するには十分ではないことがある。別の例では、組成物の緩衝能が水で希釈する前の緩衝能と比較して低下する程度まで唾液を水で希釈して、pH指標を検出可能にすることができる。一例では、緩衝能は、酸または塩基が加えられたときのpHの変化に抵抗する溶液(例えば、唾液、水、または水で希釈された唾液)の能力として定義することができる。一例では、緩衝能は、pHを1単位変化させるために溶液1リットルに加えられる強酸または強塩基の量、すなわちグラム当量として定義することができる。一態様では、水で希釈する前の唾液の緩衝能は、0.03mg/ml~約0.30mg/mlの間であり得、水で希釈した後の唾液希釈水の緩衝能は、約0.003mg/ml~約0.03mg/mlの間であり得る。別の例では、唾液希釈水の緩衝能は、約5mM、4mM、3mM、2mM、または1mM未満であり得る。
【0069】
試料を希釈するために使用される水には、LAMP反応に干渉する可能性のあるいかなる汚染物質または特性も含まれない必要がある。例えば、pHがあまりに酸性であると、pHベースの指標変化が妨げられる場合、LAMP反応が検出されなくなる可能性がある。一態様では、唾液は水で希釈することができ、この水は約6.0を超えるpHを有することができる。別の態様では、水は約8.0未満のpHを有することができる。一例では、水は、RNase及びDNaseなどの汚染物質を実質的に含まない分子グレードの水であり得る。RNaseは検出対象の唾液中のRNAを分解し、DNaseはLAMP反応中に形成されたDNAを分解する。別の例では、唾液試料は唾液と水から本質的に構成され得る。
【0070】
望ましくない唾液タンパク質の存在を最小限に抑えることは、特定の唾液採取方法を使用して達成することができる。一態様では、唾液は、スポンジベースの採取方法または流涎採取方法のうちの1つ又は複数を使用して採取することができる。スポンジベースの採取方法を使用して唾液を採取すると、ムチン及び高分子量タンパク質はスポンジに吸収されないため、唾液から本質的に濾過されるという利点が得られる場合があり、これにより、固体ベースの媒体上で使用すると、唾液の粘度が低下し、唾液の迅速性、均一性、及び信頼性が向上する可能性がある。流涎法を使用して唾液を採取する場合、濾過されていない唾液は粘度が高くなることがあるため、吸収が低下し、固体ベースの媒体上に分布する可能性がある。結果として、いくつかの実施形態では、流涎を介して唾液を採取する場合、ムチン及び他の細片を除去するためにその後濾過して、その粘度を低下させることができる。
【0071】
選択された病原体標的は、唾液から検出することができる。一態様では、病原体標的は、ウイルス病原体、細菌性病原体、真菌性病原体、原生動物病原体など、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数であり得る。唾液中の病原体標的は、病原体標的からの核酸が、細胞壁、細胞膜、タンパク質膜などから放出され得る場合に検出することができる。
【0072】
より具体的には、一態様では、病原体標的はウイルス標的であり得る。いくつかの態様では、ウイルス標的は、H1N1、H2N2、H3N2、H1N1pdm09、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス1(SARS-CoV-1)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、中東呼吸器症候群(MERS)、インフルエンザなど、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0073】
ウイルス標的は、多くの異なるウイルス種から選択することができる。一例では、ウイルス標的は、ヒトコロナウイルス229E、ヒトコロナウイルスOC43、ヒトコロナウイルスHKU1、ヒトコロナウイルスNL63、MERSコロナウイルス、ヒトレスピロウイルス1、ヒトルブラウイルス2、ヒトレスピロウイルス3、ヒトルブラウイルス4、ヒトエンテロウイルス、ヒト呼吸器ウイルス、ライノウイルスA、ライノウイルスB、ライノウイルスC、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0074】
ウイルス標的はまた、インフルエンザの形態であってもよい。一態様では、インフルエンザは、インフルエンザA、インフルエンザB、インフルエンザC、またはインフルエンザDのいずれかであり得る。一態様では、ウイルス標的は、Nidovirale目から選択されるウイルスであり得る。一態様では、ウイルス標的は、Nidovirale目のアルファ属、ベータ属、ガンマ属、またはデルタ属から選択することができる。
【0075】
検出することができるウイルスには種々のファミリーが存在する。一態様では、ウイルス標的は、Adenoviridae、Papovaviridae、Parvoviridae、Herpesviridae、Poxviridae、Anelloviridae、Pleolipoviridae、などを含む科、及びそれらの組み合わせの群から選択されるDNAウイルスであり得る。別の態様では、ウイルス標的は、Reoviridae、Picornaviridae、Caliciviridae、Togaviridae、Arenaviridae、Flaviviridae、Orthomyxoviridae、Paramyxoviridae、Bunyaviridae、Rhabdoviridae、Filoviridae、Coronaviridae、Astroviridae、Bornaviridaeなどを含む科、及びそれらの組み合わせの群から選択されるRNAウイルスであり得る。別の態様では、ウイルス標的は、Retroviridae、Caulimoviridae、Hepadnaviridaeなど含む科、及びそれらの組み合わせの群から選択される逆転写ウイルスであり得る。
【0076】
より一般的には、ウイルス標的は、ボルチモア分類によって分類されるウイルスであり得る。一態様では、ウイルス標的は、RNAウイルス(例えば、インフルエンザA、ジカ、C型肝炎)であり得る。一態様では、ウイルス標的は、DNAウイルス(例えば、エプスタイン・バー、天然痘)であり得る。一態様では、ウイルス標的は、ポジティブセンスRNAウイルス(例えば、A型肝炎、風疹)であり得る。一態様では、ウイルス標的は、ネガティブセンスRNAウイルス(例えば、エボラ出血熱、麻疹、流行性耳下腺炎)であり得る。別の態様では、ウイルス標的は、dsDNAウイルス(例えば、水痘、ヘルペス)、ssDNAウイルス、dsRNAウイルス(例えば、ロタウイルス)、プラス鎖ssRNAウイルス、マイナス鎖ssRNAウイルス、ssRNA-RTウイルス(例えば、レトロウイルス)、またはds-DNA-RTウイルス(例えば、B型肝炎)であり得る。
【0077】
ウイルス標的に加えて、別の態様では、病原体標的は細菌性標的であり得る。いくつかの例では、細菌性標的は、Bacillus、Bartonella、Bordetella、Borrelia、Brucella、Campylobacter、Chlamydia、Chlamydophila、Clostridium、Corynebacterium、Enterococcus、Escherichia、Francisella、Haemophilus、Helicobacter、Legionella、Leptospira、Listeria、Mycobacterium、Mycoplasma、Neisseria、Pseudomonas、Rickettsia、Salmonella、Shigella、Staphylococcus、Streptococcus、Treponema、Ureaplasma、Vibrio、Yersiniaなどを含む属、及びそれらの組み合わせから選択することができる。別の例では、細菌性標的は、Actinomyces israelii、Bacillus anthracis、Bordetella pertussis、B.abortus、B.canis、B.melitensis、B.suis、Corynebacterium diphtheriae、E.coli、Enterotoxigenic E.coli、Enteropathogenic E.coli、Enteroinvasive E.coli、Haemophilus influenzae、Helicobacter pylori、Klebsiella pneumoniae、Legionella pneumophila、M.tuberculosis、Mycoplasma pneumoniae、N.meningitidis、S.typhi、S.sonnet、S.dysenteriae、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes、Streptococcus viridans、Vibrio cholerae、Yersinia pestisなどを含む種、及びそれらの組み合わせから選択することができる。別の態様では、病原体標的は、Chlamydia pneumoniae、Pneumocystis jirovecii、Candida albicans、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus epidermis、Streptococcus salivariusを含む種、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0078】
病原体標的には、種々のタイプの真菌も含めることができる。一態様では、病原体標的は真菌性標的であり得る。いくつかの例では、真菌性標的は、Aspergillus、Histoplasma、Pneumocystis、Stachybotrysなどを含む属、及びそれらの組み合わせから選択することができる。別の態様では、病原体標的は原生生物標的であり得る。いくつかの例では、原生生物標的は、plasmodium、trypanosomesなどを含む属、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0079】
唾液中の病原体標的がRNAを含む場合、RNAは逆転写させることができる。したがって、別の態様では、LAMP検出は、逆転写LAMP(RT-LAMP)であり得る。この例では、逆転写酵素を使用して標的RNAからcDNAを生成することができる。cDNAは検出可能な量まで増幅することができる。病原体標的をDNAから直接検出できる場合、LAMPを使用して、RNAをDNAに逆転写することなく、DNAを検出可能な量まで増幅することができる。
【0080】
別の態様では、検出される特定の標的ヌクレオチド配列は、ヒトバイオマーカーに対応する標的ヌクレオチドであり得る。疾患のヒトバイオマーカーに対応する標的ヌクレオチドを有するあらゆる疾患を検出することができる。乳がん、膵臓がん、大腸がん、卵巣がん、胃腸がん、子宮頸がん、肺がん、膀胱がん、多くのタイプの癌腫、唾液腺がん、腎臓がん、肝臓がん、リンパ腫、白血病、黒色腫、前立腺がん、甲状腺がん、胃がんなど、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含む、種々のタイプの疾患を検出することができる。例えば、種々のタイプの疾患のバイオマーカーは、アルファフェトプロテイン、CA15-3及びCA27-29、CA19-9、CI-125、カルシトニン、カルレチニン、癌胎児性抗原、CD34、CD99MIC2、CD117、クロモグラニン、染色体3、7、17、及び9p21、サイトケラチン、セスミン(cesmin)、上皮膜抗原、第VIII因子、CD31FL1、グリア線維性酸性タンパク質、肉眼的嚢胞性疾患液体タンパク質(gross cystic disease fluid protein)、hPG80、HMB-45、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、免疫グロブリン、インヒビン、ケラチン、リンパ球マーカー、MART-1、MyoD1、筋肉特異的アクチン、神経フィラメント、ニューロン特異的エノラーゼ、胎盤性アルカリホスファターゼ、前立腺特異的抗原、PTPRC、S100タンパク質、平滑筋作用、シナプトフィジン、チミジンキナーゼ、サイログロブリン、甲状腺転写因子-1、腫瘍M2-PK、ビメンチンなど、またはそれらの組み合わせ、の1つ又は複数に対応する標的ヌクレオチドを検出することによって検出することができる。
【0081】
別の実施形態では、ループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の試験試料組成物は、唾液の緩衝能を低下させる量の水と組み合わせて、LAMP分析を介して病原体標的を検出するのに十分な量の試験対象の唾液を含むことができる。一態様では、組成物の粘度は約1.0cP~約50cPであり得る。別の態様では、組成物のpHは約7.2~約8.6であり得る。これらのそれぞれの範囲内の粘度及びpHを選択すると、pHの変化が促進され、したがってpHベースの指示薬に起因する色の変化が促進される。
【0082】
唾液を水で希釈して、粘度及びpHを上に列挙した範囲内に収めることができる。一態様では、唾液を、約1:1~約1:20の唾液対水の比で水と混合させることができる。別の態様では、唾液対水の比は、約1:1、1:2、1:4、1:6、1:8、1:10、1:12、1:14、1:16、1:18、または1:20であり得る。別の態様では、唾液は、試料の600nmにおける光学密度(OD600)が0.2未満となる程度までの量の水と組み合わせることができる。
【0083】
唾液の量が検出可能な量のウイルスを含有することを保証するために、採取された唾液の量は閾値量よりも多くてもよい。一態様では、唾液は、約50μl~約100μlの範囲の体積を有し得る。別の態様では、唾液試料は、約100μl~約1mlの範囲の体積を有し得る。
【0084】
唾液はまた、LAMP反応を促進することができる種々の化学的特性(例えば、pH及び緩衝能)を有し得る。一態様では、水は約6.0を超えるpHを有する場合があり、RNase及びDNaseなどの汚染物質を実質的に含まない場合がある。別の態様では、水は約8.0未満のpHを有する場合があり、汚染物質を実質的に含まない場合がある。別の態様では、組成物は唾液と水から本質的に構成され得る。一態様では、組成物の緩衝能は、約0.003mg/ml~約0.03mg/mlの間であり得る。別の例では、組成物の緩衝能は、約5mM、4mM、3mM、2mM、または1mM未満であり得る。
【0085】
前述したように、病原体標的は、ウイルス病原体、細菌性病原体、真菌性病原体、または原生動物病原体を含み得る。病原体標的はウイルス標的であり得る。ウイルスのボルチモア分類に基づいて、別の態様では、ウイルス標的は、dsDNAウイルス、ssDNAウイルス、dsRNAウイルス、プラス鎖ssRNAウイルス、マイナス鎖ssRNAウイルス、ssRNA-RTウイルス、またはds-DNA-RTウイルスを含むことができる。別の態様では、ウイルス標的は、H1N1、H2N2、H3N2、H1N1pdm09、またはSARS-CoV-2を含み得る。
【0086】
試薬組成物
検査媒体、読み出しタイプ、及び設計されたシステムの全体的な環境に応じて、さまざまな試薬をLAMP分析で使用することができる。さらに、プライマー及び酵素などの反応成分は、検出すべき特定の標的ヌクレオチド配列、同定すべき生物などを考慮して選択することができる。さらに、液体環境、無水環境、筐体、基材等の試験環境の特性、ならびに安定な状態での保存などの他のニーズもLAMP分析の基礎となる反応に関与する特定の試薬を選択する際の考慮に入れることができる。
【0087】
一実施形態では、固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物は、1つ又は複数の標的プライマー、DNAポリメラーゼ、及び再可溶化剤を含むことができる。一態様では、組成物は、固相媒体を変色させることができる非pH感受性薬剤を実質的に含まないものであり得る。
【0088】
固相媒体上でLAMP分析を行う場合、液相媒体におけるLAMP分析と比較して、試薬の濃度を増加させることができる。一態様では、固相媒体上で使用される場合のDNAポリメラーゼの濃度は、液体媒体で使用される場合のDNAポリメラーゼの濃度の少なくとも2倍であり得る。別の態様では、固相媒体上で使用される場合のDNAポリメラーゼの濃度は、液体媒体で使用される場合のDNAポリメラーゼの濃度の少なくとも3倍であり得る。一例では、DNAポリメラーゼの濃度は、固相媒体上で使用される場合、約300U/mL~約1000U/mLであり得る。別の例では、DNAポリメラーゼの濃度は、固相媒体上で使用される場合、約600U/mL~約1000U/mLであり得る。更に別の例では、DNAポリメラーゼの濃度は、固相媒体上で使用される場合、約620U/m~約680U/mLであり得る。
【0089】
LAMP分析が逆転写酵素LAMP(RT-LAMP)を伴う場合、組成物は逆転写酵素をさらに含むことができる。逆転写酵素は、RNAベースのウイルスの検出に役立ち得る。一態様では、固相媒体上で使用される場合の逆転写酵素の濃度は、液体媒体で使用される場合の逆転写酵素の濃度の少なくとも2倍であり得る。別の態様では、逆転写酵素の濃度は、液体媒体で使用される場合の逆転写酵素の濃度の少なくとも3倍であり得る。一例では、逆転写酵素の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約200U/mL~約600U/mLであり得る。別の例では、逆転写酵素の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約250U/mL~約500U/mLであり得る。さらに別の例では、逆転写酵素の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約290U/mL~約310U/mLであり得る。
【0090】
標的プライマー、DNAポリメラーゼ、及び逆転写酵素に加えて、組成物は再可溶化剤を含むことができる。再可溶化剤は、唾液試料が固体ベースの媒体上に堆積するときに、固体ベースの媒体上でのLAMP試薬の再水和に役立つ場合がある。一態様では、再可溶化剤は界面活性剤であり得る。例えば、再可溶化剤は、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ポリソルベート20など、またはそれらの組み合わせを含むことができる。BSA及びカゼインは、乾燥試薬を再水和するときに、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、及びその他の関連酵素の再可溶化を促進する。ポリソルベート20は、乾燥試薬の再可溶化にも役立つ界面活性剤である。一例では、再可溶化剤の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.05重量%~約5重量%であり得る。別の例では、再可溶化剤の濃度は約0.5重量%~約3重量%であり得る。さらに別の例では、再可溶化剤の濃度は約0.5重量%~約1.5重量%であり得る。
【0091】
組成物は、反応を加速する薬剤、感度を高める薬剤、またはそれらの組み合わせをさらに含むことができる。一例では、反応を加速し、感度を高めるためにBSAを含めることができる。しかし、BSAを含めるとpH変動が誘導され、結果の読みやすさが損なわれる可能性がある。したがって、いくつかの例では、再可溶化剤には、カゼイン、ポリソルベート20など、またはそれらの組み合わせを含めることができる。
【0092】
揮発性剤は、LAMP反応に干渉する可能性がある。例えば、揮発性化合物が複数のイオンにイオン化する場合があり、それらイオンのうちの1つが低沸点を有する場合がある。低沸点のイオンが蒸発すると、残ったイオンがさらに反応する可能性がある。さらなる反応のいくつかには、酸化還元反応、酸塩基反応、またはpHベースのシグナルの解釈に影響を与える可能性のあるその他の反応が含まれる場合がある。一態様では、組成物は揮発性剤を実質的に含まないものであり得る。一例では、揮発性剤を除去すると、揮発性剤が含まれる場合の色のコントラスト及び反応時間と比較して、固体ベースの媒体の色のコントラストが増加し、反応時間を短縮することができる。一態様では、組成物は、1.0重量%、0.5重量%、0.1重量%、または0.01重量%のうちの1つ又は複数の量未満の揮発性剤を含有することができる。
【0093】
揮発性剤は、固体ベースの媒体中で不安定性を引き起こす可能性がある。いくつかの例では、硫酸アンモニウムなどの揮発性化合物を含むLAMP反応では、アンモニウムイオンが硫酸アンモニウムを部分的にアンモニウムに変換し、それが揮発して硫酸イオンが残る場合に、固体ベースの媒体が不安定になることがある。硫酸イオンは硫酸となり、pHを低下させ、pHベースの指示薬の読み取りに影響を与える場合がある(例えば、LAMP反応が発生していない場合でも、フェノールレッド指示薬が赤から黄色に変化する)。硫酸アンモニウムをベタインに置き換えると、非LAMP反応による変色を防ぎ、保存中の変色を防ぐことで固体ベースの媒体を安定化させることができる。
【0094】
したがって、組成物中の揮発性剤の存在を減少させることにより、LAMP反応及びpHベースの指示薬によるその読み取り値への干渉の程度を低下させることができる。一態様では、LAMP組成物は、不揮発性剤、例として中性電荷の低分子量の第四級アンモニウム、中性電荷の低分子量のアミド化合物など、またはそれらの組み合わせを含むことができる。一例では、不揮発性剤としては、N-ホルミル尿素、尿素、L-アスパラギン、トリメチルグリシン(ベタイン)、3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸(CAPS)、3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホネート(NDSB-201)、N-メチル尿素、アセトアミド、プロピオンアミド、イソブチルアミド、ピラセタム、1,3-ジメチル尿素、1,1-ジメチル尿素、グリコールアミド、2-クロロアセトアミド、スクシンイミド、2-イミダゾリドン、塩化コリン、塩化アセチルコリン、塩化ベタネコール、L-カルニチン分子内塩、O-アセチル-L-カルニチン塩酸塩、4-(シクロヘキシルアミノ)-1-ブタンスルホン酸(CABS)、ジメチルエチルアンモニウムプロパンスルホネート(NDSB-195)、3-(1-メチルピペリジニウム)-1-プロパンスルホネート(NDSB-221)、3-(ベンジルジメチルアンモニオ)プロパンスルホネート(NDSB-256)、及びジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウム-1-プロパンスルホネート(NDSB-211)など、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない
【0095】
一例では、中性電荷の低分子量の第四級アンモニウム、または中性電荷の低分子量のアミド化合物を含む不揮発性剤の濃度は、固相媒体で使用する場合、約1mM~約200mMであり得る。別の例では、不揮発性剤の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約10mM~約50mMであり得る。さらに別の例では、不揮発性剤の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約15mM~約25mMであり得る。
【0096】
揮発性剤に加えて、吸湿剤もLAMP反応に干渉する可能性がある。吸湿剤は過剰な量の水を保持し、乾燥を遅らせるかまたは防止することで固体ベースの媒体中の試薬を不安定にする可能性がある。一態様では、組成物は吸湿剤を実質的に含まないものであり得る。いくつかの例では、グリセロールなどの吸湿剤を含むLAMP反応は、吸湿剤が水を引き付ける可能性があるため、固体ベースの媒体中での試薬の不安定性に寄与する可能性がある。一例では、吸湿剤は、25℃で約40%~約90%の相対湿度(RH)の場合に、約10重量%を超える量を吸収することができる。一例では、吸湿剤としては、グリセロール、エタノール、メタノール、塩化カルシウム、塩化カリウム、硫酸カルシウムなど、またはそれらの組み合わせ、のうちの1つ又は複数を挙げることができるが、これらに限定されない。一態様では、組成物は、1.0重量%、0.5重量%、0.1重量%、または0.01重量%のうちの1つ又は複数の量未満の吸湿剤を含有することができる。
【0097】
以前のLAMP反応物のキャリーオーバー汚染、プライマー二量体化、非特異的増幅、またはそれらの組み合わせを防止するために、いくつかの追加の薬剤を含めることができる。キャリーオーバー汚染は、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)、またはそれらの組み合わせをLAMP反応物に含めることによって防止することができる。これらの薬剤は、ウラシルを含有する一本鎖または二本鎖DNAからの遊離ウラシルの放出を触媒することができる。
【0098】
フェノールレッドなどの抗酸化作用を有する一部のpHベースの指示薬は、抗酸化活性の程度が低い他のpHベースの指示薬と比較して、コントラスト及び均一性が向上し得ることが発見されている。一態様では、組成物は、抗酸化剤をさらに含むことができる。一例では、抗酸化剤の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.1mM~約1mMであり得る。別の例では、抗酸化剤の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.2mM~約0.8mMであり得る。さらに別の例では、抗酸化剤の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.2mM~約0.3mMであり得る。抗酸化剤は、酸化還元反応を防止することにより、固体ベースの媒体上の試薬を安定化させることができる。
【0099】
N-アセチルシステイン、ヒドロキシチロソール(HXT)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、マンガン、ヨウ化物、メラトニン、α-カロテン、アスタキサンチン、β-カロテン、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ゼアキサンチン、アピゲニン、ルテオリン、タンゲレチン、イソラムネチン、ケンフェロール、ミリセチン、プロアントシアニジン、ケルセチン、エリオジクチオール、ヘスペレチン、ナリンゲニン、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、テアフラビン、テアルビギン、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、レスベラトロール、プテロスチルベン、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ペオニジン、ペチュニジン、チコリ酸、クロロゲン酸、桂皮酸、エラグ酸、エラジタンニン、没食子酸、ガロタンニン、ロスマリン酸、サリチル酸、クルクミン、フラボノリグナン、キサントン、オイゲノール、カプサイシン、ビリルビン、クエン酸、シュウ酸、フィチン酸、R-アルファ-リポ酸など、またはそれらの組み合わせ、を含むがこれらに限定されない種々の抗酸化剤を使用することができる。
【0100】
これまでpHベースの指示薬について考察してきたが、他の指示薬も使用することができる。一態様では、組成物は指示薬をさらに含むことができる。一例では、指示薬は、固体ベースの媒体とともに使用される場合、フェノールレッドなどのpHベースの指示薬であり得る。フェノールレッドには、他の一部の色素にはない抗酸化特性がある。フェノールレッド分子は共役結合系であり、抗酸化特性にも寄与している可能性がある。一例では、指示薬の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.1mM~約1mMであり得る。別の例では、指示薬の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.2mM~約0.8mMであり得る。さらに別の例では、指示薬の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.2mM~約0.3mMであり得る。
【0101】
他のいくつかの指示薬も、適切な比色シグナルを提供することができる。別の例では、指示薬は、(i)マグネシウム比色指示薬、(ii)pH比色指示薬、または(iii)DNAインターカレート比色指示薬のうちの1つ又は複数であり得る。指示薬がマグネシウム比色指示薬である場合、マグネシウムを約0.01mM~約2mMの範囲内に維持するために、マグネシウムの濃度を監視するべきである。また、DNAポリメラーゼに対する干渉を防ぐために、マグネシウムの濃度を監視するべきである。DNAポリメラーゼの補因子であるマグネシウムは、マグネシウム濃度が標的範囲外である場合、DNAポリメラーゼに干渉する可能性がある。
【0102】
LAMP反応では、種々のタイプの標的プライマーを使用することもできる。一部の標的プライマーには、ゲノム内の6つまたは8つの領域をそれぞれ標的にすることができる約4つまたは6つのプライマーを含めることができる。一態様では、標的プライマーの濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.05μM~約5μMの濃度を有し得る。別の例では、標的プライマーの濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.1μM~約3μMであり得る。さらに別の例では、標的プライマーの濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.2μM~約1.6μMであり得る。
【0103】
標的プライマーは、種々の病原体のゲノムを標的とするように選択することができる。一態様では、標的プライマーは、ウイルス病原体、細菌性病原体、真菌性病原体、または原生動物病原体を含み得る病原体を標的とすることができる。別の態様では、病原体標的はウイルス標的であり得る。別の態様では、ウイルス標的は、dsDNAウイルス、ssDNAウイルス、dsRNAウイルス、プラス鎖ssRNAウイルス、マイナス鎖ssRNAウイルス、ssRNA-RTウイルス、またはds-DNA-RTウイルスを含むことができる。別の態様では、ウイルス標的は、H1N1、H2N2、H3N2、H1N1pdm09、またはSARS-CoV-2を含み得る。要するに、標的プライマーは、ほぼあらゆる病原体標的、特に、本明細書に開示されるような標的病原体を標的とすることができる。
【0104】
固体ベースの媒体が過剰量の揮発性剤、酸化剤、pH干渉剤、マグネシウム干渉剤など、またはそれらの組み合わせを含む場合、固体ベースの媒体の色は、LAMP反応による増幅が存在しない場合に影響を受けることがある。この問題に対処するために、別の態様では、組成物は非変色添加剤を含むことができる。一態様では、非変色添加剤の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.01mM~約1Mであり得る。別の例では、非変色添加剤の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約10mM~約500mMであり得る。さらに別の例では、非変色添加剤の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約200mM~約400mMであり得る。
【0105】
LAMP反応による増幅がない場合に固体ベースの媒体の色を保存し、LAMP反応による増幅が発生した場合にコントラストを潜在的に高めることができる種々の非変色添加剤が存在する。一例では、非変色添加剤は、糖、緩衝液など、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0106】
一例では、糖などの非変色添加剤は、固体ベースの媒体を安定化し、長期保存条件下での変色を防止することができる。例えば、トレハロースは、凍結乾燥条件下または周囲温度で乾燥させた場合に酵素の安定性を維持することができる。一態様では、糖は、グルコース、スクロース、トレハロース、デキストランなど、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含むことができる。一態様では、糖の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.01mM~約1Mであり得る。別の例では、糖の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約10mM~約500mMであり得る。さらに別の例では、糖の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約200mM~約400mMであり得る。
【0107】
LAMP反応はまた、他の試薬を含むこともできる。一態様では、組成物は、酵素、核酸、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含むことができる。一例では、酵素はRNase阻害剤またはDNase阻害剤であり得る。RNase阻害剤を含めると、RNA標的の分解を遅らせることができ、検出限界を高めることができる。DNase阻害剤を含めると、DNA標的の分解を遅らせることができ、検出限界を高めることもできる。一態様では、組成物はキャリアDNAまたはキャリアRNAを含むことができる。キャリアDNAまたはキャリアRNAは、それぞれDNaseまたはRNaseの活性を隔離するデコイ基質を提供することができる。別の例では、選択された量の塩酸グアニジンが、RNA分子の変性及び露出を刺激し、これによりLAMP反応をさらに安定化させることができる。
【0108】
一態様では、固相媒体上で使用される場合、RNaseまたはDNase阻害剤の濃度は、唾液試料1mLあたり約0.01μL~唾液試料1mLあたり約5μLであり得る。別の例では、固相媒体上で使用される場合、RNaseまたはDNase阻害剤の濃度は、唾液試料1mLあたり約0.1μL~唾液試料1mLあたり約1μLであり得る。さらに別の例では、固相媒体上で使用される場合、RNaseまたはDNase阻害剤の濃度は、唾液試料1mLあたり約0.5μL~唾液試料1mLあたり約1.5μLであり得る。
【0109】
一態様では、キャリアRNAまたはキャリアDNAの濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.01ng/μL~約10ng/μLであり得る。別の例では、キャリアRNAまたはキャリアDNAの濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.1ng/μL~約1ng/μLであり得る。さらに別の例では、キャリアRNAまたはキャリアDNAの濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.2ng/μL~約0.4ng/μLであり得る。
【0110】
上記に加えて、本明細書に記載のLAMP反応を実行するのに好適な組成物において、複数の他の薬剤または成分を使用することができる。例えば、別の態様では、組成物は、等張化剤、pH調整剤、保存剤、水など、またはそれらの組み合わせをさらに含むことができる。さらに、これらの成分/薬剤は、具体的に所望の特性の範囲を組成物に提供するために使用することができる。一態様では、組成物の張性は、約250~約350ミリオスモル/リットル(mOsm/L)であり得る。別の態様では、組成物の張性は、約270~約330mOsm/Lであり得る。等張化剤は、組成物中に種々の量で存在することができる。一態様では、等張化剤は、組成物中で約0.1重量%、約0.5重量%、または約1重量%~約2重量%、約5重量%、または約10重量%の濃度を有し得る。
【0111】
組成物はpH干渉試薬を実質的に含まない必要があるが、LAMP反応の前に組成物の初期pHを選択するためにpH調整剤を使用することができる。さらに、LAMP反応の結果を解釈する際に、pH調整剤の影響を補償することができる場合には、pH調整剤も使用することができる。pH調整剤の非限定的な例としては、多数の酸、塩基、及びそれらの組み合わせ、例として、塩酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。pH調整剤は、組成物に適切なpHを提供するために使用することができる。一態様では、pHは約5.5~約8.5であり得る。一態様では、pHは約5.8~約7.8であり得る。別の態様では、pHは約6.5~約7.8であり得る。さらに他の例では、pHは約7.0~約7.6であり得る。pH調整剤は、組成物中に種々の量で存在することができる。一態様では、pH調整剤は、組成物中で約0.01重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、または約0.5重量%~約1重量%、約2重量%、約5重量%、または約10重量%の濃度を有し得る。
【0112】
組成物の貯蔵寿命は、防腐剤を使用することによって延長することができる。防腐剤の非限定的な例としては、塩化ベンザルコニウム(BAK)、セトリモニウム、過ホウ酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びその種々の塩形態、クロロブタノールなどを挙げることができる。防腐剤は、組成物中に種々の量で存在することができる。一態様では、防腐剤は、組成物中で約0.001重量%、約0.005重量%、約0.01重量%、または約0.05重量%~約0.1重量%、約0.25重量%、約0.5重量%、または約1重量%の濃度を有し得る。
【0113】
別の実施形態では、図2に示すように、固相媒体上のLAMP分析のための方法200は、ブロック210に示すように、固相媒体と、本明細書に列挙される成分または組成物のいずれかなど、固相媒体と組み合わせた反応組成物とのアセンブリを提供することを含むことができる。一態様では、本方法は、ブロック220に示すように、固相媒体上に生体試料を堆積させることを含むことができる。別の態様では、本方法は、ブロック230に示すように、LAMP反応を促進するのに十分な等温温度までアセンブリを加熱することを含むことができる。
【0114】
一態様では、生体試料は、唾液、粘液、血液、尿、糞便、汗、呼気凝縮液など、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数であり得る。別の態様では、生体試料は唾液であり得る。一態様では、本方法は、ウイルス病原体を検出することを含むことができる。一態様では、ウイルス病原体は、本明細書に開示されるような病原体であり得る。別の態様では、LAMP分析は、逆転写酵素LAMP(RT-LAMP)であり得る。
【0115】
別の態様では、LAMP反応を促進するのに十分な等温温度は、約50℃~約70℃の温度範囲であり得る。別の態様では、LAMP反応を促進するのに十分な等温温度は、約60℃~約70℃の温度範囲であり得る。別の態様では、LAMP反応を促進するのに十分な等温温度は、約60℃~約65℃の温度範囲であり得る。等温温度は、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、またはそれらの組み合わせの活性のうちの1つ又は複数に基づいて選択することができる。
【0116】
別の例では、LAMP反応を促進するのに十分な温度は、約60℃~約70℃の温度範囲であり得る。別の例では、等温温度は、摂氏5度未満の差がある範囲内の温度であり得る。
【0117】
別の実施形態では、LAMP分析を実行するためのシステムは、本開示に記載されるような構成を備えることができる。別の態様では、システムは、その上に組成物が堆積される固相媒体を含むことができる。
【0118】
pH感受性シグナル出力の最大化
LAMP反応を実行する場合、反応の結果を読み取るために種々の指示薬を使用することができる。3つのタイプの比色指示薬には、マグネシウム比色指示薬、pH比色指示薬、及びDNAインターカレート比色指示薬が含まれる。マグネシウムは、DNAポリメラーゼの補因子となる場合があり、その濃度を厳密に制御する必要があるため、マグネシウムベースの指示薬をLAMP反応との関連で使用する場合、種々の制限に直面することがある。DNAインターカレート指示薬も、関与する変数の数により制限に直面することがある。3つの指示薬はすべてLAMP反応において使用することができるが、pHベースの指示薬は影響を受ける変数が少ない場合がある。
【0119】
一実施形態では、pH依存性出力シグナルを利用するループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物は、pH感受性色素及び複数の非干渉LAMP試薬を含むことができる。一態様では、LAMP分析は、逆転写LAMP(RT-LAMP)であり得る。
【0120】
pH感受性色素の選択は、pHに相関する比色範囲、色の変化の間のコントラストの程度、色の変化に対するpHレベル、色の変化の均一性、及び色の変化の再現性、などの種々の要因に依存し得る。例えば、フェノールレッドは、pH約6.8~約7.4の間の比色範囲を有し得る。pH約6.8未満では、フェノールレッドは黄色に変化し、pH約7.4を超えると、フェノールレッドは赤色に変化し得る。黄色と赤色との間の違いの程度は簡単に読み取ることができ、生理学的条件を模倣したpHレベルでpH変化が発生し得る。
【0121】
一態様では、pH感受性色素は、一貫した対照的な色の変化を達成するために、pH6.5付近で色変化を示すpH指示薬であり得る(例えば、フェノールレッド)。一態様では、pH感受性色素は、フェノールレッド、リトマス、ブロモチモールブルー、ニトラジンイエロー、クレゾールレッド、クルクミン、ブリリアントイエロー、m-クレゾールパープル、α-ナフトールフタレイン、フェノールフタレイン、ニュートラルレッド、酸性フクシン、アゾリトミンなど、またはそれらの組み合わせであり得る。一態様では、pH感受性色素の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.1mM~約1mMであり得る。別の例では、pH感受性色素の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.2mM~約0.8mMであり得る。さらに別の例では、pH感受性色素の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.2mM~約0.3mMであり得る。
【0122】
pH感受性シグナル出力を最大化するために、LAMP反応では、LAMP反応に干渉する(例えば、DNAポリメラーゼに干渉する)ことによって、またはLAMP反応からのシグナル(例えば、pHシグナル)に干渉することによって、シグナルに不確実性を生じさせる試薬を実質的に含まない必要がある。一態様では、複数の非干渉LAMP試薬は、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、標的プライマー、またはそれらの組み合わせを含むことができる。別の態様では、複数の非干渉LAMP試薬は、揮発性試薬、pH干渉試薬、マグネシウム干渉試薬、またはそれらの組み合わせを実質的に含まないものであり得る。
【0123】
一例では、複数の非干渉LAMP試薬は、マグネシウム、硫酸アンモニウム、または炭酸アンモニウムを実質的に含まないものであり得る。DNAポリメラーゼの補因子としてのマグネシウムは、LAMP反応が設計どおりに進行できることを確認するために厳密に監視するべきである。硫酸アンモニウムはアンモニウムイオンにイオン化され、これにより硫酸イオンが残ることがあり、これは反応して硫酸を形成することがある。炭酸アンモニウムもアンモニウムイオンにイオン化され、これにより炭酸イオンが残ることがあり、これは反応して炭酸を形成することがある。したがって、複数の非干渉LAMP試薬は、これらの物質を実質的に含まない必要がある。
【0124】
揮発性剤は、反応して、LAMP反応からのpH依存性シグナルに干渉することがある酸または塩基を形成する可能性のある組成物を残す可能性があるため、揮発性剤は最小限に抑えられるべきである。一例では、複数の非干渉LAMP試薬には、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなど、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない揮発性試薬を実質的に含まないものであり得る。一態様では、組成物は、1.0重量%、0.5重量%、0.1重量%、または0.01重量%のうちの1つ又は複数の量未満の揮発性試薬を含有することができる。
【0125】
さらに、任意のpH干渉試薬は、それらのpH干渉試薬が補償されない場合、pH依存性シグナル出力に干渉する可能性がある。一例では、複数の非干渉LAMP試薬には、限定されないが、多数の酸、塩基、及びそれらの組み合わせを含むpH干渉試薬を実質的に含まないものであり得る。一態様では、組成物は、1.0重量%、0.5重量%、0.1重量%、または0.01重量%のうちの1つ又は複数の量未満のpH干渉試薬を含有することができる。
【0126】
pHが監視されている場合でも、LAMP反応が干渉されると、pH依存性シグナル出力が悪影響を受ける可能性がある。例えば、マグネシウムは、DNAポリメラーゼの補因子として、濃度が選択された範囲外にある場合、LAMP反応による増幅に干渉する可能性がある。一例では、複数の非干渉LAMP試薬は、マグネシウム干渉剤を実質的に含まないものであり得る。マグネシウム干渉剤としては、Mg2+、Mg1+、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸マグネシウム七水和物など、またはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されないマグネシウム含有剤が挙げられる。一態様では、組成物は、1.0重量%、0.5重量%、0.1重量%、または0.01重量%のうちの1つ又は複数の量未満のマグネシウムを含有することができる。別の例では、マグネシウム干渉剤には、マグネシウムに干渉するキレート剤を含めることができる。
【0127】
pHが監視されており、LAMP反応が適切に機能している場合でも、固相媒体の変色は、長期保存などの他の要因によって生じる可能性がある。一態様では、組成物は、非変色添加剤を含むことができる。一例では、非変色添加剤は、糖、緩衝液、遮断剤など、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含むことができる。一例では、糖は固体ベースの媒体を安定化し、長期保存条件下での変色を防ぐことができる。一態様では、糖は、グルコース、スクロース、トレハロース、デキストランなど、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0128】
一態様では、糖の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.01mM~約1Mであり得る。別の例では、糖の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約10mM~約500mMであり得る。さらに別の例では、糖の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約200mM~約400mMであり得る。
【0129】
緩衝液は、唾液試料からばらつきを除去することによって、LAMP反応の安定化を促進することができる。一例では、緩衝液には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ダルベッコPBS、アルセバー液、トリス緩衝生理食塩水(TBS)、HEPES、BICINE、水、緩衝塩類溶液(BSS)、例としてハンクスBSS、アールBSS、グレイ(Grey’s)BSS、パック(Puck’s)BSS、シム(Simm’s)BSS、タイロードBSS、BSSプラス、乳酸リンゲル液、生理食塩水(すなわち、0.9%生理食塩水)、1/2生理食塩水など、またはそれらの組み合わせ、のうちの1つ又は複数を含めることができる。一態様では、緩衝液の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約10μM~約20mMであり得る。別の例では、緩衝液の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約100μM~約10mMであり得る。さらに別の例では、緩衝液の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約100μM~約500μMであり得る。
【0130】
遮断剤によって、RNaseベースの分解、DNaseベースの分解、または他の酵素分解の量を減少させることができる。一例では、遮断剤には、ウシ血清アルブミン、カゼイン、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含めることができる。一態様では、遮断剤の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.01重量%~約5重量%であり得る。別の例では、遮断剤の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.01重量%~約1重量%であり得る。さらに別の例では、遮断剤の濃度は、固相媒体上で使用される場合、約0.02重量%~約0.06重量%であり得る。
【0131】
抗酸化剤は、酸化反応に関連する変数を排除することによって、固相媒体上のpH依存性シグナルの均一性及びコントラストを高めることができる。一例では、組成物は、本明細書に開示される抗酸化剤をさらに含むことができる。
【0132】
別の例では、組成物は固相媒体をさらに含むことができる。固相媒体としては、ガラス繊維、ナイロン、セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
ある特定の添加剤は、LAMP反応の安定性及び均一性を高めることができる。一態様では、組成物は、本明細書に開示される酵素、核酸、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含むことができる。一例では、酵素はRNase阻害剤またはDNase阻害剤であり得る。別の態様では、組成物はキャリアDNAまたはキャリアRNAを含むことができる。キャリアDNAまたはキャリアRNAは、それぞれDNaseまたはRNaseの活性を隔離するデコイ基質を提供することができる。
【0134】
別の例では、選択された量の塩酸グアニジンが、RNA分子の変性及び露出を刺激することができる。一態様では、塩酸グアニジンの濃度は、固相媒体上で使用される場合、約1mM~約200mMであり得る。別の例では、塩酸グアニジンの濃度は、固相媒体上で使用される場合、約10mM~約100mMであり得る。別の例では、塩酸グアニジンの濃度は、固相媒体上で使用される場合、約20mM~約60mMであり得る。
【0135】
pH依存性出力シグナルの最大化は、本明細書に開示される他の実施形態と併せて使用することもできる。一実施形態では、pH依存性出力シグナルを用いてLAMP分析を実行する方法は、本明細書に記載の固相媒体と組成物のアセンブリを提供することを含むことができる。本方法は、生体試料を固相媒体上に堆積させることをさらに含むことができる。本方法は、LAMP反応を促進するのに十分な等温温度までアセンブリを加熱することをさらに含むことができる。
【0136】
本明細書に開示されるように、一態様では、生体試料は、唾液、粘液、血液、尿、糞便、汗、呼気凝縮液など、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数であり得る。別の実施形態では、生体試料は唾液であり得る。一態様では、本方法は、ウイルス病原体を検出することを含むことができる。一態様では、ウイルス病原体は、本明細書に別途開示される病原体であり得る。
【0137】
一例では、LAMP反応を促進するのに十分な温度は、約60℃~約70℃の温度範囲であり得る。別の例では、等温温度は、摂氏5度未満の差がある範囲内の温度であり得る。
【0138】
別の態様では、LAMP反応を促進するのに十分な等温温度は、約50℃~約70℃の温度範囲であり得る。別の態様では、LAMP反応を促進するのに十分な等温温度は、約60℃~約70℃の温度範囲であり得る。別の態様では、LAMP反応を促進するのに十分な等温温度は、約60℃~約65℃の温度範囲であり得る。等温温度は、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、またはそれらの組み合わせの活性のうちの1つ又は複数に基づいて選択することができる。
【0139】
別の実施形態では、図3に示すように、pH依存性LAMP分析における出力シグナルの精度を最大化する方法300は、ブロック310におけるように、シグナル出力媒体から非LAMP反応によって生じる変色を最小限に抑える試薬混合物を提供することを含むことができる。この方法は、ブロック320に示すように、LAMP反応を実行することをさらに含むことができる。一態様では、この方法は、非LAMP反応によるプロトンの生成を制御することを含むことができる。別の態様では、この方法は、非LAMP反応による酸化を制御することを含むことができる。
【0140】
別の実施形態では、pH依存性LAMP分析における出力シグナルの精度を最大化する方法は、シグナル出力媒体から非LAMP反応によって生じる変色を実質的に除去することを含むことができる。
【0141】
別の実施形態では、pH依存性LAMP分析における検出レベル(LOD)を最大化する方法は、シグナル出力媒体から非LAMP反応によって生じる変色を実質的に除去することを含むことができる。一態様では、唾液を水で5~10%に希釈することによって、検出限界に影響を与えることなく、色のコントラストを高め、試料のばらつきを軽減することができる。別の例では、本明細書に別途開示されるフィルタで唾液を濾過することによって、検出限界に影響を与えることなく、色のコントラストを高め、試料のばらつきを軽減することができる。
【実施例
【0142】
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態のより明確な理解を促進するために提供されるものであり、決してそれを限定することを意味するものではない。
【0143】
希釈唾液試料中のウイルス標的用の紙LAMP分析
実施例1-DNase/RNase非含有蒸留水
DNase/RNase非含有蒸留水を0.1μmの膜で濾過することによって調製し、DNase及びRNase活性について試験する。DNase及びRNase活性は、現在の米国薬局方(USP)の注射用水(WFI)に関するモノグラフ試験基準に従って試験する。DNase、RNase、またはプロテアーゼ活性がないことが確認されると、水は汚染物質非含有であると見なされ、唾液試料の調製に使用される。
【0144】
実施例2-唾液中での増幅
図4に示すように、唾液試料からのヌクレオチド増幅を確認するための陽性対照として、唾液中のRNasePを標的とするように核酸配列プライマーを設計した。図4Aは、熱不活化SARS-CoV-2の105ゲノム換算量/反応をスパイクした18%唾液中のRNaseP POP7を標的とするプライマーセットの蛍光定量RT-qLAMPの結果を示す。図4Bは、0.2ngの合成RNaseP POP7 RNAを含む水中のRNaseP POP7を標的とするプライマーセットについての蛍光定量RT-qLAMPの結果を示す。
【0145】
図4Aに示すように、反応ごとに熱不活化SARS-CoV-2の105ゲノム換算量をスパイクした18%の唾液を分析した。左の図では、RNasePのp20サブユニットをコードするPOP7遺伝子のmRNA配列を使用してRNasePを標的とするように設計されたプライマー(RNaseP.I)が、低レベルのRNasePを適切に検出しなかったため、増幅は発生しなかった。中央の図では、プライマー(RNaseP.II)が、テンプレートなしの対照を増幅することなく、RNasePのレベルを検出できたため、黒色の線と重なることなく青色の線で示されるように増幅が発生した。右の図では、プライマー(RNaseP.III)が二量体化したため、黒色の線と青色の線の両方で増幅が発生した(例えば、テンプレートなしの対照の黒い線で増幅が示された)。
【0146】
図4Bに示すように、0.2ngの合成RNaseP POP7 RNAを含む水を分析した。左の図では、プライマー(RNaseP.I)が二量体化したため、青色の線及び黒色の線で増幅が発生した(例えば、テンプレートなしの対照を増幅させた)。中央の図では、プライマー(RNaseP.II)が、テンプレートなしの対照を増幅することなく、RNasePのレベルを検出できたため、黒色の線と重なることなく青色の線で示されるように増幅が発生した。右の図では、プライマー(RNaseP.III)が、テンプレートなしの対照を増幅することなくRNase Pを増幅したため、青色の線では増幅が発生したが、黒色の線では増幅が発生しなかった。
【0147】
実施例3-唾液採取デバイス
唾液採取デバイスのタイプにより、LAMP反応における唾液試料を容易に得ることができる。場合によっては、操作担当者は、飛沫を介して拡散する可能性のある病原体(例えば、エアロゾルウイルス)から保護するために保護具を使用することがある。したがって、操作担当者は、エアロゾルウイルスとの偶発的な接触から保護するために個人用保護具を装着することができる。特定の唾液採取デバイスは、医療専門家の指導の下、対象が自己管理することができる。唾液採取デバイスは、有効性が証明されており、図5A及び図5Bに示すように、スポンジベースの採取と流涎採取の2つのカテゴリーに分類することができる。
【0148】
スポンジ採取デバイス500aは、唾液を吸収するためにスポンジ様の採取パッド504を使用し、十分な量が採取されたことを示す試料量適正インジケータ512を含む。飽和したら、スポンジを圧縮チューブ506に挿入し、フィルタに対して圧縮し、唾液を濾して採取チューブに入れる。この濾過操作を行う理由は、唾液からムチン及び高分子量タンパク質を濾し取り、標本の粘度を大幅に低下させるためである。その結果、固相媒体は、より迅速、均一、かつ信頼性の高い方法で唾液を取り込み、分散することができる。スポンジ採取デバイス500aはまた、圧縮チューブ506上に圧縮チューブとのシールを形成する圧縮シール508;圧縮チューブ506を圧縮するためのハンドル510;及び十分な唾液が採取されたことを識別するための試料量適正インジケータ512、を備えることもできる。
【0149】
流涎デバイス500bは、試料の吸収及び分散を遅くする粘度を有する、未濾過の唾液を提供することができる。流涎デバイス500bは、唾液を採取するための採取漏斗522;十分な唾液が採取されたことを示すインジケータライン528;唾液を採取するための採取チューブ524;チューブキャップ526;体積インジケータ530;及びチューブキャップ収納部532、を含むことができる。
【0150】
どちらのタイプの採取デバイスでも、操作担当者に対する曝露の残余リスクは最小限に抑えられる。スポンジベースのデバイスでは、特にユーザーが圧縮プロセスを不意に行う場合、圧縮操作中にエアロゾルが放出されるという仮説上のリスクがある。曝露のリスクを制御するために、医療操作担当者がこの操作を実行してもよい。採取デバイスは、エアロゾルの逆流を防ぐために圧縮シールを備えていてもよい。流涎採取では、デバイスの外側が浮遊した唾液で汚染される若干のリスクがあり、適切に取り扱わないと操作担当者に二次汚染を引き起こす可能性がある。どちらの場合も、患者が唾液試料を自己採取することで曝露リスクが軽減される。
【0151】
3つの市販の唾液採取デバイスを選択して、唾液中のRT-LAMP反応に対するそれらの効果を評価した。3つのデバイスは、StatSure Diagnostic Systems,Inc.製の「Saliva Sampler(商標)」、Oasis Diagnostics製の「Pure・SAL(商標)」、及び同じくOasis Diagnostics製の「Super・SAL(商標)」である。StatSure Saliva Sampler(商標)では、患者から唾液を採取するために使用される緩衝液(例えば、Buffer 2000)を含有するチューブを提供する。Super・SALは、円筒形の吸収パッド及び採取チューブを使用して、固形汚染物質及び粘液性物質を除去することで唾液の採取を標準化する。Pure・SALは同様の機構で動作するが、汚染物質を除去するために採取チューブに追加のフィルタが含まれている。
【0152】
唾液pHを、処理済み唾液試料から測定して、その後の比色分析及び蛍光RT-LAMP LODアッセイを、処理済み唾液試料を使用して実行した。このデータを、図6Aに示す。このデータは、さまざまな唾液採取デバイス(Pure-Sal、Super-Sal、Stat-sure)を使用して処理された唾液中のLoDを示している。マスターミックスを0.6マイクロリットルのHClで処理した。Pure・SAL(商標)及びSuper・SAL唾液採取デバイスは、より広範囲の濃度(熱不活化SARS-CoV-2の反応あたり1~10,000ゲノム換算量)に対するより広範囲の比色応答を示す。
【0153】
実施例4-唾液採取プロセス
対象が自己検査を行う場合、対象は医療専門家の指導の下、添加物を含有せず、したがって対象が採取に使用しても安全な専用の採取容器に唾液標本を採取する。採取される唾液の量はおよそ100μLである。例えば、スポンジサンプラーを対象の口に挿入し、スポンジサンプラーのインジケータの色が変わるまで唾液を採取する。次に、スポンジサンプラーを採取チューブに挿入する。次に、スポンジを圧縮して、唾液(およそ100μL)を、唾液を希釈するための量の水を含有する採取チューブに絞り出す。唾液を、唾液対水の比が約1:1~約1:20になるまで水で希釈する。唾液を、採取チューブから試験場所に移す。
【0154】
実施例5-唾液に対するRNase阻害剤の効果
RNase阻害剤を未処理の唾液に、唾液1mL当たり1μLの濃度で加え、RT-LAMP反応に対するRNase阻害剤の添加の効果を判定した。
【0155】
新たに採取した唾液(5%)に対するRNAsecure(商標)(AM7006、Invitrogen(商標))の効果を試験して、ポイントオブケアRT-LAMP反応の単一操作プロセスとしての適合性を判定した。1×RNAsecure(商標)は、1mlの唾液を使用して25×ストックから希釈された。処理済み唾液をマトリックスとして使用し、熱不活化SARS-CoV-2を、1000コピー~62.5コピー/反応の濃度範囲で、40mM塩酸グアニジン及び0.3ng/μlのキャリアDNAとともにpH7.6のWarmstart(商標)比色マスターミックスにスパイクした。RNAsecure(商標)処理済みRT-LAMPを65℃でインキュベートして、反応を開始させた。これらの条件下での未処理唾液を、対照として、RNAsecure(商標)を使用せずに試験した。
【0156】
5μLの熱不活化ウイルスを5%処理済み唾液(すなわち、最終反応濃度)で希釈し、RT-LAMP反応に加えて、最終反応体積25μLの示された濃度を提供した。陰性反応の場合、希釈した熱不活化ウイルスの代わりに5μLの処理済み唾液(最終反応濃度5%)を加えて、同じ反応体積25μLを提供した。加熱は、インキュベータ内で65℃にて60分間行った。比色スキャンは、RT-LAMP反応の前後にフラットベッドスキャナーを使用して取得した。1250μLのNEB比色マスターミックスに、0.5μLのAntarctic Thermolabile、3.5μLのdUTP 25×を補充した。RNase阻害剤(RNASecure(商標))を全唾液で希釈して1×濃度にし、その後、唾液を5%に希釈して反応物に加えた。
【0157】
図6Bに示すように、RNAsecure(商標)は、反応物のLoDの有意な増加を示さなかった。すなわち、RNase阻害剤の添加によって、RT-LAMP反応の測定パラメータ(例えば、反応速度、偽陽性率、または検出限界)は、顕著に増加しなかった。
【0158】
実施例6-凍結唾液試料
場合によっては、物流、輸送の必要性等の理由から、唾液試料を分析前に一定期間凍結することが望ましい場合がある。そのような状況は、本明細書に記載のLAMP分析を実行する際に特別な注意を払う価値があり得る。図7に示されるように、凍結唾液試料のpHは、唾液試料が解凍されて検査されるまでの-20℃での日数に応じて変化し得る。一例では、ドナー1からの唾液試料のpHは、採取と試験の間の日数が無い場合のpH7.21から、採取/凍結と検査の間の6日後のpH7.46まで変化した。別の例では、ドナー2からの唾液試料のpHは、採取と試験の間の日数が無い場合のpH7.00から、採取/凍結と試験の間の6日後のpH6.98まで変化した。一例では、ドナー3からの唾液試料のpHは、採取と試験の間の日数が無い場合のpH7.18から、採取/凍結と試験の間の6日後のpH7.18まで変化した。一例では、ドナー4からの唾液試料のpHは、採取と試験の間の日数が無い場合のpH7.35から、採取/凍結と試験の間の6日後のpH7.47まで変化した。一例では、ドナー1からの唾液試料のpHは、採取と試験の間の日数が無い場合のpH7.22から、採取/凍結と試験の間の6日後のpH7.24まで変化した。
【0159】
実施例7-未処理唾液における検出限界
図8は、未処理唾液の検出限界を示す。未処理唾液を流涎法を使用して採取し、1:3の比で水で希釈して、25%の唾液及び75%の水を得た。対照として、熱不活化SARS-CoV-2を段階希釈して25%の唾液にスパイクした。5μLの25%唾液を20μLのRT-LAMP試薬に加え、唾液の最終濃度を5%とした。65℃で1時間インキュベートした後、色が変化した。y軸のコピー数は、希釈しない場合の100%唾液の元の濃度のコピー数を表す。プライマーの検出限界(LOD)は、25μLの体積中250コピー/反応であり、これは約200,000コピー/唾液1mLに相当する。
【0160】
したがって、ヌクレアーゼ非含有水で唾液を25%に希釈し、RT-LAMP反応への添加時に唾液の最終濃度5%までさらに希釈すると、60分以内に結果が得られることが判明した。希釈により、唾液の緩衝能が低下し、阻害成分の濃度が低下し、その両方によって比色報告が遅延することになる。希釈は、唾液の阻害成分を不活化するための、プロテアーゼ、Chelex(登録商標)100による前処理、またはRNA抽出操作など、さまざまな研究で見出される他の前処理操作と比較して、エンドユーザーにとってそれほど複雑ではない。
【0161】
Pure・SAL(商標)を使用して処理された5%唾液中の比色アッセイのLoDは、1000コピー/反応(反応体積25μL)であり、これは、800コピー/希釈を考慮した後の患者唾液1μLに相当する(図6C)。
【0162】
図6Cに示すように、異なる唾液採取デバイス(Pure・SAL(商標)、Super-Sal(商標)、Stat-sure(商標))により、LoDが変化する可能性がある。すべての処理技術について、水で5%に希釈した唾液を試験した。プライマーセットorflab.2を使用した。5%処理済み唾液(最終反応濃度)で希釈した5μLの熱不活化ウイルスをRT-LAMP反応に加えて、示された濃度及び最終反応体積25μLを得た。陰性反応の場合、希釈した熱不活化ウイルスの代わりに5μLの処理済み唾液(最終反応濃度5%)を加えて、同じ反応体積25μLを提供した。加熱は、インキュベータ内で65℃にて60分間行った。比色スキャンは、RT-LAMP反応の前後にフラットベッドスキャナーを使用して取得した。反応物は、12.5μLのNEB 2×比色マスターミックス、2.5μLのプライマーミックス、5μLの水、及び5μLの試料から構成されていた。
【0163】
このLoDは、RT-PCRアッセイまたはRNA抽出を利用する他のアッセイ(1コピー/反応程度)よりも数桁高い。しかし、これらの他のアッセイでは、報告されているLoDを達成するために前処理プロトコル及び/またはRNA抽出操作を伴っていた。
【0164】
このLoDを高めるために、本発明者らは、RNase阻害剤、グアニジンHCl、及びキャリアDNAの使用を調査した。RNase阻害剤の添加により、5%唾液中のLoDが低下した(図6B)が、これは、唾液中のRT-LAMPアッセイでRNase阻害剤を利用することによりLoDを増加させたという文献報告と矛盾する;この不一致は、使用したRNase阻害剤のタイプに起因する可能性がある。グアニジンHCl及びキャリアDNAは両方ともLoDを増加させ(図6D及び図6E)、これらを比色溶液反応用のRT-LAMP反応配合物に加えた。紙上で乾燥させる場合、色が変化するため、これらの成分は含まれていなかった。
【0165】
図6Dに示すように、5%処理済み唾液(最終反応濃度)で希釈した5μLの熱不活化ウイルスをRT-LAMP反応に加えて、示された濃度及び最終反応体積25μLを得た。陰性反応の場合、希釈した熱不活化ウイルスの代わりに5μLの処理済み唾液(最終反応濃度5%)を加えて、同じ反応体積25μLを得た。プライマーセットorflab.2を使用した。加熱は、インキュベータ(Fisherbrand(商標)Isotemp(商標))内で65℃にて60分間行った。比色スキャンは、RT-LAMP反応の前後にフラットベッドスキャナーを使用して取得した。1250μLのNEB比色マスターミックスに、0.5μLのAntarctic Thermolabile UDG、3.5μLのdUTP、及びキャリアDNAを補充して、示されている最終反応濃度を得た。
【0166】
図6Eに示すように、5%処理済み唾液(最終反応濃度)で希釈した5μLの熱不活化ウイルスをRT-LAMP反応に加えて、示された濃度及び最終反応体積25μLを得た。陰性反応の場合、希釈した熱不活化ウイルスの代わりに5μLの処理済み唾液(最終反応濃度5%)を加えて、同じ反応体積25μLを得た。プライマーセットorflab.2を使用した。加熱は、インキュベータ(Fisherbrand(商標)Isotemp(商標))内で65℃にて60分間行った。比色スキャンは、RT-LAMP反応の前後にフラットベッドスキャナーを使用して取得した。1250μLのNEB比色マスターミックスに、0.5μLのAntarctic Thermolabile UDG、3.5μLのdUTP、及びグアニジンHCl(40mM)を補充した。
【0167】
最後に、キャリーオーバー汚染を低減するために、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)及びデオキシウリジン三リン酸(dUTP)(図6F)を含めた。図6Fに、UDG及びdUTPを加えた場合と加えない場合の、サーモミキサー及びインキュベータ上での25uLの反応について、65℃で60分間インキュベートした後の比色スキャンを示す。プライマーセットはorflab.IIを使用した。テンプレートは、示された濃度の熱不活化ウイルスであった。UDGとの反応については、1250μLのNEB 2×比色マスターミックスに0.5μLのAntarctic Thermolabile UDG、3.5μLのdUTPを加えた。他のすべての反応では、NEB 2×比色マスターミックスを使用した。
【0168】
グアニジンHCl、キャリアDNA、及びUDGを含む場合、溶液中の5%処理済み唾液におけるRT-LAMP比色アッセイのLoDは、250コピー/反応に増加した(図6G)。図6Gでは、Pure・SAL(商標)で処理された唾液及び未処理の唾液を使用した、RT-LAMP比色LoDを示す。プレートを、65℃に設定したインキュベータ内で60分間加熱した。使用したプライマーセットはorflab.IIであり、テンプレートは指定濃度の熱不活化ウイルス(陽性反応)またはヌクレアーゼ非含有水(陰性反応)であった。加熱は、インキュベータ(Fisherbrand(商標)Isotemp(商標))内で65℃にて60分間行った。比色スキャンは、RT-LAMP反応の前後にフラットベッドスキャナーを使用して取得した。1250μLのNEB比色マスターミックスに、0.5μLのAntarctic Thermolabile UDG、3.5μLのdUTP、キャリアDNA(0.3ng/μL)、及びグアニジンHCl(40mM)を補充した。
【0169】
実施例8-動物の鼻腔スワブにおける検出限界
図9は、約1mLの水に再懸濁したウシ鼻腔スワブにおける検出限界を示す。熱不活化SARS-CoV-2を、再懸濁したバックグラウンド粘液及びマイクロバイオームとともに水にスパイクして、唾液を使用した前の例と同じコピー/反応を得た。5μLの試料を20μLのRT-LAMPに加えた。65℃で約1時間インキュベートした後、色が変化した。プライマーについてのLODは、25μLの体積中約250コピー/反応であり、これは約5,000コピー/鼻腔スワブ再懸濁液1mLに相当する。
【0170】
実施例9-紙上の検出限界
図10は、紙上の検出限界を示す。20μLのRT-LAMP試薬をグレード1のクロマトグラフィー用紙に加えた。熱不活化SARS-CoV-2を、ウイルスを段階希釈して100%プール唾液にスパイクした。15μLの約100%唾液を各紙片に加えた。65℃で90分間インキュベートした後、色が変化した。プライマーのLODは、15μLの体積中約3,000コピー/反応であり、これは約20,000コピー/唾液1mLに相当する。
【0171】
紙上でのLAMP分析を容易にする試薬組成物
実施例10-試料試薬
一例では、試薬は表A1に示すように含まれていた。別の例では、試薬は表A2に示すように含まれていた。
【表1】
【表2】
【0172】
実施例11-緩衝液の選択及び濃縮
唾液のpHは試料ごとに異なる可能性があるため、紙ベースのデバイスでは緩衝液を使用して、一貫した開始pHを維持した。フェノールレッドの場合、図11に示すように、比色遷移を促進するにはpH7.6が好適な開始点であった。開始時のpH7.6は、増幅が起こったときに色の変化が可能になる緩衝範囲の限界に近かったため、約8のpKaを有するいくつかの緩衝液をスクリーニングした。図12に示すように、紙ベースのアッセイには10mMのBICINE緩衝液を使用した。
【0173】
実施例12-反応速度に対するプライマーの影響
RT-LAMP反応の速度を高めるために、RT-LAMP蛍光反応混合物に複数のプライマーセットを含めることを調査した。調査は、蛍光指示薬としてNEB LAMP蛍光色素を使用して水中で行った。複数のプライマーセットを含めても、反応速度が大幅に向上するようには見えなかった。むしろ、反応は主に、単独で使用した場合に最も速い反応時間を有するプライマーセットの速度で進行した。
【0174】
実施例13-試料LAMPプロトコル、試薬、検証、及びトラブルシューティング
試料Lampプロトコル13-A:
プライマーミックス
1.冷凍庫から6つの希釈プライマーすべてを入手する;2.チューブ内で80μlのFIP、80μlのBIP、20μlのFB、20μlのLB、10μlのF3及び10μlのB3を混合する;3.十分なPCRグレードの水を500μlになるまで加える。
【0175】
LAMP
1.NEB Bst 2.0 Warmstartキット及びプライマーミックスを入手する;2.試薬を解凍している間、DNAwayをスプレーして少なくとも5分後、キムワイプで表面を拭く;3.必要なすべてのPCRチューブに、使用するDNA試料及びプライマーをラベル付けする。DNAが加えられていない陰性対照を必ず追加する;4.反応ごとにPCRグレードの水(または色素)5μl、NEB Bst 2.0 Warmstartキット12.5μl、及びプライマーミックス2.5μlを加える。マスターミックスは、実行する反応の数に応じて作成することができる;5.EBT色素5μlを加える場合、最終濃度が300μMになるように、1500μMの濃度にする必要がある;6.DNAを含まない反応には、さらに5μlのPCRグレードの水を加え、ゲルに充填する必要があるまで再度開けない;7.準備ができたら、PCRチューブを事前にパススルーチャンバー内に残しておいたPCRトレイに置き、BRK2037に移す;8.BRK2037に入ったら、-20°Cの冷凍庫から試料DNAを入手する;9.DNAwayスプレーを手にスプレーし、DNA試料チューブもスプレーで覆うように周りを手でこする;10.必要に応じて5μlのDNA試料を加え、チューブを閉じる。決して2本のDNAチューブを同時に開けたり、DNAを加えた直後にPCRチューブを閉じたりしないこと;11.試料を、65℃で1時間、80℃で5分間に設定したサーモサイクラーに置く(この操作後、試料を-20℃で一晩保持してもよい)。
【0176】
試料試薬濃度13-B:
比色RT-LAMPマスターミックスは:KCl(50mM)、MgSO(8mM)、dNTP混合物(各dNTPを1.4mM)、Bst 2.0 WarmStart(登録商標)DNAポリメラーゼ(0.32U/μL)、WarmStart(登録商標)RTx逆転写酵素(0.3U/μL)、フェノールレッド(0.25mM)、dUTP(0.14mM)、Antarctic Thermolabile UDG(0.0004U/μL)、Tween(登録商標)20(1%体積/体積)、ベタイン(20mM)、BSA(500μg/mL)、及びトレハロース(10%重量/体積)、であり得る。
【0177】
これらの成分を、紙LAMPアッセイについて、それぞれ0.25×の液体濃度から5×以上まで滴定した。濃度は、LAMP反応の速度、60分の反応時間における陽性と陰性の間のLAMP結果のコントラスト、及び非特異的増幅の量の減少によって決定した。
【0178】
タンパク質安定化添加剤の濃度を決定するために、D-(+)-トレハロース二水和物を、5%の増分で0%から15%重量/体積まで滴定し、凍結乾燥BSAを、0.2mg/mLの増分で0から1.25mg/mLまで滴定した。トレハロース及びBSAの濃度は、それぞれ10%重量/体積及び0.626mg/mLであった。
【0179】
試料Lampプロトコル13-C:
試薬
試薬は、実施例10の表A-2に示されている。
【0180】
機器
ピンセット、0.5~10μLピペット、2~20μLピペット、20~200μLピペット、100~1000μLピペット、Ahlstrom-Munksjo Grade 222、pHプローブ、65℃に達し得る熱源(例えば、インキュベータ、水浴)、PCRフード。
【0181】
消毒:
ピペット及びすべての作業台(PCRフード)表面に、RNase AWAYをスプレーする。RNase AWAYを塗布した後はよく拭き取ること。RNase AWAYが残っていると反応を妨げる可能性がある。二次汚染を防ぐため、紙ベースのデバイスの製造及び試料の充填には、別々の部屋を使用する。クロマトグラフィー用紙を5mmx6mmにプレカットする。
【0182】
LAMPの調製:
1.PCRフード内で、表13B-1に示すように2×LAMPミックスを調製する。2.pHを1M KOH(約1~2μL)で約7.5~8.0(赤色であるがピンク色ではない)に調整する。正確である必要はない。pH調整後、2×LAMPミックスは、-20℃で保存することができる。
【表3】
【0183】
3.表13B-2に従ってマスターミックスを調製する。
【表4】
【0184】
4.pHを0.1M KOHで8.0に調整する。マイクロpH電極を使用する。5.よく混合する。PCRフード内の清潔な面に紙パッドを置く。プレカットしたグレード222紙パッドに完全ミックス30μLを加える。6.PCRフードの下で室温にて60分間乾燥させる。7.乾燥させた後、紙パッドを清潔な遠心分離チューブまたは清潔な再密封可能なプラスチックバッグに収集する。
【0185】
試料充填
1.RNase AWAYを作業台にスプレーし、ワイパーできれいに拭く。2.テンプレート(DNA、RNA、熱不活化ウイルス)を冷凍庫から取り出す。3.清潔な表面に反応パッドを配置する。新しい透明フィルム上にパッドを置き、使用後はそれを廃棄することができる。4.まず陰性対照パッドを準備する。25μLの非テンプレート溶媒(水、唾液)でパッドを再構成する。再構成プロセスは穏やかに行うべきであり、パッドから試薬を洗い流すのを避ける。5.ピンセットを使用して、陰性対照パッドを清潔な容器(例えば、1インチ×1インチの再密封可能なプラスチックバッグ、遠心分離チューブ)内に置く。6.テンプレートを溶媒で所望の濃度に希釈する。7.さらなる反応パッドを配置し、25μLの希釈テンプレートでパッドを再構成する。8.ピンセットを使用して、陽性パッドを清潔な容器(例えば、1インチ×1インチの再密封可能なプラスチックバッグ、遠心分離チューブ)内に置く。9.作業スペースを清掃し、イメージング及びインキュベーションのためにパッドを持ち込む。
【0186】
イメージング及びインキュベーション:
注:複数のイメージング方法(例えば、微速度撮影ビデオ、スキャニング)及び熱源(例えば、インキュベータ、水浴)が存在する。本プロトコルでは、卓上スキャナー及び微生物インキュベータを使用することができる。1.スキャナーの上部にパッドを配置する。反応前(0分)にパッドをスキャンする。2.インキュベータを65℃に予熱する。3.パッドをインキュベータ内に置く。パッドを分離する。加熱の均一性は結果の一貫性に影響を与える可能性がある。4.パッドを取り出し、異なる時点(通常は30分ごと)でスキャンを繰り返す。5.最終スキャンの後、反応パッドをバイオハザード廃棄物容器内に廃棄する。
【0187】
検証:
LAMP増幅の発生を確認するために、各反応パッドを清潔な1.5mLマイクロ遠心チューブに移した。100μLの緩衝液EBを、各チューブに加えた。核酸を溶出するために、反応パッドを緩衝液EBに一晩浸漬した。溶出液を用いてゲル電気泳動(2%アガロースゲル)を実行し、LAMP増幅の発生を確認した。ラダー様パターン(典型的なLAMP生成物パターン)が各陽性パッドレーンに示されたが、各陰性レーンには明らかなバンドはなかった(図13A及び13B)。
【0188】
図13A及び13Bに示すように、紙LAMP検証を実行した。図13Aに示すように、2つの条件(反応混合物中にBSAを含む場合と含まない場合)で紙上のLAMPを実行した。図13Bに示すように、関連ゲル電気泳動(2%アガロース)を実行した。SARS-CoV-2を標的とするorf7ab.1プライマーセットを使用した。陰性反応パッドを、25μLのヌクレアーゼ非含有水で再構成した。陽性反応パッドを、400コピー/μLの熱不活化SARS-CoV-2ウイルス25μLで再構成した。加熱は、65℃に設定したインキュベータ内で実行し、フラットベッドスキャナーでスキャンした。
【0189】
BSAは、LAMP混合物中で使用することができる試薬である。図14A及び図14Bに示すように、BSAを加えると、反応を加速させ、感度を向上することができる。これらの反応では、紙上の低テンプレート濃度LAMPを、2つの条件(反応混合物にBSAを含む場合と含まない場合)に従って実行した。図14Aは、0分の時点を示す。図Bは60分の時点を示す。この実験では、orf7ab.1プライマーを使用した。陰性反応パッドを、25μLのヌクレアーゼ非含有水で再構成した。陽性反応パッドを、それぞれ8コピー/μL及び16コピー/μLの熱不活化SARS-CoV-2ウイルス25μLで再構成した(最終濃度は200コピー/反応及び400コピー/反応)。
【0190】
しかし、BSAは、デバイスにpHの変動をもたらす可能性もある。図13A及び図14Bは、インキュベーション(60分)後、BSAを含有する陰性紙パッドが黄色がかった端部を有することを示す。溶出後、溶出液をゲル電気泳動で泳動させた後、図13Bに示すように、ゲル上にDNA生成物は見えず、端部の黄色がオフターゲット増幅または汚染によって生じたものではないことを示している。BSAが不均質に分布している場合、熱を加えると端部が黄色になることがある。
【0191】
トラブルシューティング:
紙パッド上の異常なピンク色:LAMP紙パッドを準備するプロセス中に、周囲の色とは異なる異常なピンク色の斑点が存在する可能性があり、これはパッドに直接スプレーされた及び/またはピンセットを介して移されたかのいずれかの残留RNase AWAYよって引き起こされた可能性がある。RNase AWAYは、加えられたRNA/DNAテンプレートを分解することがある。このことが発生した場合は、すべての機器及び表面を完全に乾燥させ、新しい5×6mmの紙パッドを切り取り、「LAMP調製」セクションを操作5から再開する。
【0192】
パッド再構成後の試薬のオーバーフロー:試料充填操作中、パッドは、再構成のためにそれに加えられた全試料量を吸収できない可能性がある。テンプレートの濃度は、オーバーフローしたパッドによって正確に表されない可能性がある。パッドの乾燥が不十分な場合、オーバーフローが発生する可能性がある。このような場合は、1)長時間乾燥させる、2)加熱乾燥(37℃の清潔な微生物インキュベータに置く;Bst 2.0 WarmStart(登録商標)ポリメラーゼの活性化を防ぐため、温度を45℃より高く設定しないこと)か、または対流乾燥(乾燥中の空気流を高めるために小型ファンを使用する)などの改善された乾燥方法を使用する、または3)再構成量を20μLに減少させる。
【0193】
陰性対照が色の変化を示す:イメージング及びインキュベーション操作中に、陰性パッドは試料含有パッドと同時にまたはその直後に変化する可能性がある。これは、プライマーの二量体化/非特異的増幅、または以前のLAMP反応物のキャリーオーバー汚染物質のいずれかによって引き起こされる可能性がある。解決するには、紙上で使用する前に、液体ベースのLAMPでプライマーを検証する。キャリーオーバー汚染を制御するには、1)すべてのLAMP反応物にdUTP及びUDGを導入する、2)LAMP混合物の調製及び試料添加用に別個の作業台を維持する、3)試薬ストックを分取し、汚染が発生した疑いがある場合は新しいアリコートを使用する。反応物を過剰インキュベートすると、非特異的増幅が誘発される可能性がある。インキュベーション時間は75分を超えないようにすること。
【0194】
試料のpH及び緩衝能は比色読み取りに影響を与える:フェノールレッドはpH指示薬であるため、試料のpH及びその緩衝能はアッセイに重大な影響を与える可能性がある。本明細書で提示する試薬組成物は、唾液濃度5~10%体積/体積(水で希釈)で作用することが確認されている。5%唾液が選択されたのは、その濃度で応答時間が速く、一貫した結果が得られるためである。ヒトの唾液には、重炭酸塩、リン酸塩、及びタンパク質などの高度な緩衝系があり、これは、唾液濃度が高い場合のpH変化(及びしたがって色の変化)を防ぐ。水に再懸濁した鼻腔スワブを用いた紙LAMPデバイスを試験したが、試料マトリックスによる阻害は示されなかった。比色読み取りは、緩衝塩溶液(輸送媒体など)によって妨げられることもある。
【0195】
実施例14-不活化ウイルスを含む未処理唾液の紙上の検出限界。
図15に示すように、熱不活化SARS-CoV-2ウイルスを含む全未処理唾液から、唾液1μL当たり約20コピーの検出限界が検証された。20コピー/μL(1×LoD-10試料)、40コピー/μL(2×LoD-10試料)、100コピー/μL(2試料)、1000コピー/μL(2試料)、10,000コピー/μL(2試料)、100,000コピー/μL(2試料)、1,000,000コピー/μL(2試料)などの種々の試料濃度を作成し、陰性試料として、プール唾液のアリコート(30アリコート)を使用した。結果は、画像処理を使用して確認した。
【0196】
PH感受性シグナル出力を最大化する試薬組成物
実施例15-試料LAMP色素
【表5】
【0197】
実施例16-
蛍光レポーターでは、特殊な機器を使用せずに読み取るために追加の紫外(UV)光源が使用されるであろう。しかし、指示薬としてフェノールレッドを使用する比色アッセイではUV光を使用しないため、肉眼で判断することができる。DNAの重合によりプロトンが生成され、フェノールレッドはpHに応答する。希釈唾液(最終濃度5%)を使用して、唾液の緩衝能を克服してpHの変化を測定した。唾液を最終濃度5%に希釈すると、干渉物質(例えば、RNase)の濃度も低下した。
【0198】
キャリアDNA及び塩酸グアニジンを組み込むとまた、LoDが強化され、水中及び唾液中で同等の比色反応が得られた。キャリアDNAがLAMP結果を高める機構は不明であった。この機構は、NEB 1kb DNAラダー(NEB-N3232L)を使用して調査した。異なる濃度のキャリアDNA(0.3ng/μl及び0.75ng/μl)を使用して、LoDに対する効果を研究した。塩化グアニジン(40mM)も使用した。完全マスターミックスのpHは7.6に維持され、キャリアDNAを伴わない場合でも同じ条件を試験した。pH6.5の未処理唾液(5%)を使用して、1000コピー~62.5コピー/反応の濃度範囲で熱不活化SARS-CoV-2について、塩化グアニジンとともにキャリアDNAの効果を試験した(図6D)。
【0199】
塩酸グアニジンは、LAMPの感度を増加させることが報告された。本発明者らのプライマーセットを使用した場合の性能は、pH7.6のNEB Warmstart(商標)比色マスターミックスに40mMの塩酸グアニジンを加えて試験した。pH6.5のプール唾液(5%)を使用して、1000コピー~62.5コピー/反応の濃度範囲の熱不活化SARS-CoV-2について、塩化グアニジンの効果を試験した。この同じ組成物を、対照として塩化グアニジンを加えずに試験した。塩化グアニジンは複製の感度を増加させ、複製全体にわたって一貫した増幅を有していた(図6E)。
【0200】
フェノールレッドと蛍光色素は、LAMPベースの核酸増幅を報告する機構が異なるため、経時的なシグナル測定におけるこれらの差異を調査した。反応物は、Warmstart(商標)比色LAMP 2×マスターミックスとLAMP蛍光色素の組み合わせを含むFrameStar 96ウェルのスカート付き光学ボトムプレート上で調製し、Thermo Scientific(商標)Adhesive Plate Sealsで密封し、インキュベーションならびに吸光度及び蛍光強度の測定のためにClariostar(商標)Plusマイクロプレートリーダー(BMG)に入れた。経時的な色の変化は、A432nm/A560nmの比として表した。吸光度値は、A432nm及びA560nmをA620nmで減算することによってベースライン補正を行った。
【0201】
図16に基づくと、反応における色の変化は、蛍光の変化と比較して遅れて発生した。比色分析及び蛍光分析データは、BMG CLARIOstar(登録商標)Plusプレートリーダーで収集した。反応ベースミックスは、NEB 2x比色LAMPマスターミックス、2.5μLのプライマーミックス、及び5μLの1:100希釈のNEB LAMP蛍光色素(NEB B1700A)で構成されていた。プレートリーダーのチャンバー温度は、プレートを挿入する前に65℃に平衡化させた。水で希釈した熱不活化ウイルス5μLを、反応ベースミックスに加えて、示されている最終反応濃度を得た(陽性反応)。NTC反応の場合、5μLのヌクレアーゼ非含有水を、反応ベースミックスに加えた。この変化の違いは、pHベースのレポーターは蛍光レポーターよりもLAMPベースのDNA増幅に対する応答が遅いことを示唆している。
【0202】
実施例17-
紙は、数百万のデバイスまでスケールアップできるが、RT-LAMP試薬を紙上に置くと、たとえ増幅が発生していなくても、陰性対照を使用した場合でも紙の色が変化した。この色の変化の可能性の1つは、熱によって引き起こされるセルロースの酸化と、RT-LAMP混合物中に存在する硫酸アンモニウムの酸化性である。この色の変化のもう1つの可能性は、RT-LAMP混合物からのアンモニアの脱気による試薬の酸性化である。硫酸アンモニウムを除去すると、陰性対照の色が維持された。抗酸化剤として作用するフェノールレッドの濃度を増加させた場合でも、図11に示すように陰性対照の色が維持された。
【0203】
実施例18-比色色素のスクリーニング
3つのクラスの比色指示薬:(i)マグネシウム比色指示薬、(ii)pH比色指示薬、及び(iii)DNAインターカレート比色指示薬を、紙ベースのアッセイについて評価した。
【0204】
マグネシウム指示薬については、カルマガイト(CAS#3147-14-6)、キシリジル(Xylidly)ブル-I(CAS#14936-97-1)、クロロホスホナゾIII(CAS#1914-99-4)、o-クレゾールフタレインコンプレクソン(CAS#2411-89-4)、Eriochrome(登録商標)Black T(EBT、CAS#1787-61-7)、及びヒドロキシナフトールブルー(HNB、CAS#63451-35-4)をスクリーニングした。
【0205】
pH指示薬については、ブロモチモールブルー(CAS#76-59-5)、酸性フクシン(CAS#3244-88-0)、ニトラジンイエロー(CAS#5423-07-4)、クレゾールレッド(CAS#1733-2-6)、クレゾールレッドナトリウム塩(CAS#62625-29-0)、クルクミン(CAS#458-37-7)、フェノールレッド(CAS#143-74-8)、フェノールレッドナトリウム塩(CAS#34487-61-1)、ブリリアントイエロー(CAS#3051-11-4)、o-クレゾールフタレイン(CAS#596-27-0)、m-クレゾールパープル(CAS#2303-01-7)、m-クレゾールパープルナトリウム塩(CAS#62625-31-4)、α-ナフトールフタレイン(CAS#596-01-0)、及びニュートラルレッド(CAS#553-24-2)をスクリーニングした。
【0206】
DNAインターカレート色素については、クリスタルバイオレット(CAS#548-62-9)をスクリーニングした。
【0207】
多くのマグネシウム指示薬は、紙上で一貫した色の変化を生じなかった。金属イオン指示薬(カルマガイト及びEBT)は、溶液中のマグネシウム(II)イオンと相互作用し、その濃度は、ポリメラーゼ反応の副産物であるピロリン酸マグネシウムの形成によりRT-LAMP実験全体を通じ低下した。
【0208】
図17Aは、ゲノムDNAをテンプレートとして使用したLAMP反応全体にわたる、様々な濃度でのカルマガイトの比色応答を示す。LAMP検出は、カルマガイト(マグネシウム指示薬)の濃度を増加させて実行した。Histophilus somniゲノムDNAを標的とするlolB.3プライマーセットを使用した。陽性反応には、0.2ng/μLの濃度で5μLのHS gDNAをスパイクした。陰性反応には、5μLのヌクレアーゼ非含有水を使用した。総反応体積は25μLであった。反応物は、NEB Warmstart 2×マスターミックス12.5μL、プライマーミックス2.5μL、及び上記のテンプレート(陽性反応)または水(陰性)のいずれか5μL、及び示される最終濃度を得るように水で調製したカルマガイト5μLを使用して、調整した。
【0209】
試験された濃度では、LAMP反応中に視覚的な変化は検出されなかった。EBTは、LAMP反応の0分~60分の間の時点で、紫色から暗青色への検出可能な色の変化を示した;しかし、色の変化は明確ではないため、臨床現場での解釈に支障をきたす可能性がある。
【0210】
図17Bに示すように、Eriochrome(商標)Black T(マグネシウム指示薬)の濃度を増加させてLAMP検出を実行した。Histophilus somniゲノムDNA(gDNA)を標的とするlolB.3プライマーセットを使用した。陽性反応には、0.2ng/μLの濃度で5μLのHS gDNAをスパイクした。陰性反応には、5μLのヌクレアーゼ非含有水を使用した。総反応体積は25μLである。反応物は、NEB Warmstart 2×マスターミックス12.5μL、プライマーミックス2.5μL、及び上記のテンプレート(陽性反応)または水(陰性)のいずれか5μL、及び示される最終濃度を得るように水で調製したEBT 5μLを使用して、調製した。
【0211】
さらに、EBTを使用して紙上でLAMPを使用しても、検出可能な色の変化は生じなかった。図17Cに示すように、PCRチューブ内のクロマトグラフィー用紙上で、Eriochrome(商標)Black Tの濃度を増加させてLAMP検出を実行した。Histophilus somniゲノムDNAを標的とするlolB.3プライマーセットを使用した。陽性反応には、0.2ng/μLの濃度で5μLのH.somni gDNAをスパイクした。陰性反応には、5μLのヌクレアーゼ非含有水を使用した。総反応体積は25μLであった。反応物は、NEB Warmstart 2×マスターミックス12.5μL、プライマーミックス2.5μL、及び上記のテンプレート(陽性反応)または水(陰性)のいずれか5μL、及びヌクレアーゼ非含有水で調製したEBT(300μM)5μLを使用して調製した。EBT反応の場合、反応はヌクレアーゼ非含有水中で調製した25μLのEBT(300μM)から構成されていた。
【0212】
いくつかの異なるタイプの紙をスクリーニングし、ゲル電気泳動によってPES及びポリスルホンBTS 0.8で増幅が発生していることを確認することによって、どの紙上でも比色変化を検出することができなかった(図17D及び図17E)。
【0213】
図17Dに示すように、複数の紙上でLAMP検出を実行した:クロマトグラフィーグレード1、アニオン交換ナイロン、カチオン交換ナイロン、ポリエーテルスルホン膜、非対称サブミクロンポリスルホン(BTS 0.8)、非対称サブミクロンポリスルホン(BTS 100)及びヒドロキシル化ナイロン1.2。b)60分時点でのパネルaの紙のエンドポイントスキャン、及びc)60分時点での抽出されたLAMP生成物のゲル電気泳動(2%アガロース)スキャン。Histophilus somni(HS)ゲノムDNAを標的とするlolB.3プライマーセットを使用した。陽性反応には、0.2ng/μLの濃度で5μLのH.somni gDNAをスパイクした。陰性反応には、5μLのヌクレアーゼ非含有水を使用した。総反応体積は25μLである。反応物は、NEB Warmstart 2×マスターミックス12.5μL、プライマーミックス2.5μL、及び上記のテンプレート(陽性反応)または水(陰性)のいずれか5μL、及びヌクレアーゼ非含有水で調製したEBT(300μM)5μLを使用して調製した。紙(示されているとおり)を、25μLの反応物を含有するPCRチューブに入れ、反応の過程で紙によって吸い上げた。60分後、紙を取り出してスキャンした。30を使用してゲルを抽出した。
【0214】
図17Eに示すように、結果は、a)PCRチューブ、b)60分の時点で紙から抽出したDNAのゲル電気泳動(2%アガロース)、及びc)60分の時点での紙のスキャンについて、経時的に得た。Histophilus somni(HS)ゲノムDNAを標的とするlolB.3プライマーセットを使用した。陽性反応には、0.2ng/μLの濃度で5μLのH.somni gDNAをスパイクした。陰性反応には、5μLのヌクレアーゼ非含有水を使用した。総反応体積は25μLである。反応物は、NEB Warmstart 2×マスターミックス12.5μL、プライマーミックス2.5μL、及び上記のテンプレート(陽性反応)または水(陰性)のいずれか5μL、及びヌクレアーゼ非含有水で調製したEBT(300μM)5μLを使用して調製した。Biodyne A両性紙を、25μLの反応物を含有するPCRチューブに入れ、反応の過程で紙によって吸い上げた。60分後、紙を取り出してスキャンした。
【0215】
さらに、RT-LAMP反応用の溶液中でクリスタルバイオレット指示薬を安定化することは困難であった。クリスタルバイオレットの不安定な誘導体であるロイコクリスタルバイオレット(LCV)の場合、溶液中で無色の安定性を維持するために過剰な亜硫酸ナトリウムを使用した。水に可溶化するために、LCVでは亜硫酸ナトリウム(SS)及びベータ-シクロデキストリン(BCD)を使用した。dsDNAに結合させると、LCVはクリスタルバイオレット(例えば、溶液中の紫色)に戻った。その結果、RT-LAMP反応全体を通じて、増幅の結果としてより多くのdsDNAが生成されるため、溶液の色が無色から紫色に変化すると予想された。しかし、さまざまな濃度のCVでLAMP反応を実行すると、陽性反応と陰性反応の両方で色の変化が発生した。
【0216】
図17Fに示すように、LAMP検出を、溶液中のインターカレーション色素である、クリスタルバイオレットを用いて実行し、b)関連する60分の時点での生成物のゲル電気泳動(2%アガロース)のスキャンを行った。H.somni gDNAを標的とするlolB.3プライマーセットを使用した。陽性反応には、0.2ng/μLの濃度で5μLのH.somni gDNAをスパイクした。陰性反応には、5μLのヌクレアーゼ非含有水を使用した。総反応体積は25μLであった。反応物は、NEB Warmstart 2×マスターミックス12.5μL、プライマーミックス2.5μL、及び上記のテンプレート(陽性反応)または水(陰性)のいずれか5μL、及び示される最終濃度を得るようにヌクレアーゼ非含有水で調製したクリスタルバイオレット5μLを使用して、調製した。紙を、25μLの反応物を含有するPCRチューブに入れ、反応の過程で紙によって吸い上げた。60分後、紙を取り出してスキャンした。亜硫酸ナトリウム及びシクロデキストリンを使用して、クリスタルバイオレットを可溶化した。
【0217】
増幅が、陽性反応では発生しているが陰性反応では発生していないことを確認するために、RT-LAMP溶液を2%アガロースゲル中で実行したところ、試験したすべてのCV濃度で陽性反応が増幅を示し、一方、陰性反応は、試験したどのCV濃度でも増幅を示さなかったことが示された。したがって、陰性反応における色の変化は、LCVからCVへの分解によって引き起こされたものであり、増幅したDNAの結合が原因ではなかった。
【0218】
異なる濃度のCV、SS、及びBCDで紙上のCVについてさらに試験すると、陰性反応と陽性反応との間の区別がつかない結果が得られた。図17Gに示すように、紙上でインターカレート色素であるクリスタルバイオレット(CV)を用いたLAMP検出のためにエンドポイント比色スキャンを実行した。亜硫酸ナトリウム(SS)及びベータ-シクロデキストリン(BCD)を使用してCVを可溶化した。紙は、NEB Warmstart(商標)2×マスターミックス12.5μL、プライマーミックス2.5μL、及び上記のテンプレート(陽性反応)または水(陰性)のいずれか5μL、及び示される最終濃度でヌクレアーゼ非含有水で調製したCV 5μLを充填した。
【0219】
最後に、約7.0の色遷移pHで約2pH単位の範囲を包含するいくつかの比色pH指示薬を、RT-LAMP反応の予想されるpH範囲の変化及び遷移点に一致するかどうか試験した。これらの範囲は、本発明者らのLAMP比色マスターミックスの初期開始pHに基づいて、また唾液の緩衝能を克服するために選択された。この選択プロセスの1つの例外は酸性フクシンであり、これはpH3.0の範囲を包含し、色遷移pH5.0を有する。図17H図17Kは、選択されたpH指示薬の様々な濃度を、60分の時点でのLAMP反応の関連するゲル電気泳動の結果とともに示す。
【0220】
図17Hに示すように、溶液中のクレゾールレッドナトリウム塩、ニュートラルレッド、フェノールレッドナトリウム塩、m-クレゾールパープル、及びm-クレゾールパープルナトリウム塩(pH指示薬)の濃度を増加させてRT-LAMP検出を行った。SARS-CoV-2のN遺伝子を標的とするN.10プライマーセットを使用した。陽性反応には、5μLのインビトロ転写されたN遺伝子RNAを、0.2ng/μLの濃度でスパイクした。陰性反応には、5μLのヌクレアーゼ非含有水を使用した。総反応体積は25μLであった。反応物は、NEB Warmstart(商標)2×マスターミックス12.5μL、プライマーミックス2.5μL、及び上記のテンプレート(陽性反応)または水(陰性)のいずれか5μL、及びヌクレアーゼ非含有水中で指定濃度の示されたpH指示薬5μLを使用して調製した。反応はインキュベータ内で実行し、フラットベッドスキャナーを使用して20分ごとにスキャンした。
【0221】
図17Iに示すように、クレゾールレッド(pH指示薬)の濃度を増加させてLAMP検出を実行した。H.somni gDNAを標的とするlolB.3プライマーセットを使用した。陽性反応には、0.2ng/μLの濃度で5μLのH.somni gDNAをスパイクした。陰性反応には、5μLのヌクレアーゼ非含有水を使用した。総反応体積は25μLである。反応物は、NEB Warmstart(商標)2×マスターミックス12.5μL、プライマーミックス2.5μL、示されている最終反応濃度となるクレゾールレッド5μL、及び上記のテンプレート(陽性反応)または水(陰性)のいずれか5μLを使用して調製した。
【0222】
図17Jに示すように、溶液中のクレゾールレッド、ナトリウム塩、m-クレゾールパープル、ブロモチモールブルー及び酸性フクシンの濃度を増加させてRT-LAMP検出を実行し、b)関連する60分の時点での生成物のゲル電気泳動(2%アガロース)のスキャンを行った。SARS-CoV-2のN遺伝子を標的とするN.10プライマーセットを使用した。陽性反応には、5μLのインビトロ転写されたN遺伝子RNAを、0.2ng/μLの濃度でスパイクした。陰性反応には、5μLのヌクレアーゼ非含有水を使用した。反応物は、NEB Warmstart 2×マスターミックス12.5μL、プライマーミックス2.5μL、及び上記のテンプレート(陽性反応)または水(陰性)のいずれか5μL、及び示される最終反応濃度を得る示されたpH指示薬5μLを使用して、調製した。加熱は、65℃に設定したインキュベータ内で実行し、20分ごとにフラットベッドスキャナーでスキャンした。
【0223】
図17Kに示すように、RT-LAMP生成物のエンドポイントゲル電気泳動スキャン(60分)を、2%アガロースゲルで実行した。
【0224】
示されるように、陽性反応と陰性反応の間で明確な比色応答を生じた1つのpH指示薬は、クレゾールレッドであった。さらに、フェノールレッド(NEBの比色RT-LAMPキットで使用されるpH指示薬)も、示された初期pH値を提供するために溶液にHClとKOHを添加した結果生じる初期pH値の変化に関して評価した。
【0225】
図17Lに示すように、溶液中でのpH8.1、8.5、及び8.8のフェノールレッド(pH指示薬)を用いたRT-LAMP検出を実行した。HClとKOHを使用して調整を行った後、テンプレートRNAを加えた。SARS-CoV-2のN遺伝子を標的とするN.10プライマーセットを使用した。陽性反応には、5μLのインビトロ転写されたN遺伝子RNAを、0.2ng/μLの濃度でスパイクした。陰性反応には、5μLのヌクレアーゼ非含有水を使用した。反応物は、20μLのマスターミックスと上記のテンプレート(陽性)またはヌクレアーゼを含まない水(陰性)5μLから構成されていた。(NHSO(20mM)、KCl(100mM)、MgSO(16mM)、dNTPミックス(各dNTPを28mM)、tween20(0.2%体積/体積)を使用して10mLのマスターミックスを作製した。したがって、フェノールレッドは、クレゾールレッドと比較して、陽性反応と陰性反応の間のコントラストがより高いレベルになった。
【0226】
その結果、pH6.5付近で色の変化を伴うpH指示薬は、最も一貫性があり、最もコントラストの強い色の変化を示した(例えば、フェノールレッド)。
【0227】
実施例19-紙に対する開始pHの影響
本発明者らのプロセスに乾燥を組み込んだ場合の色の安定性を評価するために、LAMPマスターミックスのpHを8.0、8.5に調整するか、または未調整のまま(例えば、7.6)にし、また再水和に使用される水もしくは合成RNA(N遺伝子、0.2ng/μL)も、8.0、8.5に調整するか、または未調整のまま(例えば、5.5)にした。
【0228】
図18に示すように、pH7.6は、RT-LAMP反応混合物の未調整のpHである。湿設定は、20μLのLAMP反応マスターミックスを加えた直後に、5μLの合成RNA(N遺伝子、0.2ng/μL、「+」)または水(「-」)が加えられたことを示す。乾燥設定は、20μLのLAMPマスターミックスを適用した後、紙ストリップを室温で30分間自然乾燥させ、その後25μLの合成RNA(「+」)または水(「-」)で再水和したことを示す。
【0229】
pHを8.0に調整すると、陰性対照においてより良好な色安定性が得られたが、pH8.5は高すぎて、標準及び乾燥設定では120分間のインキュベーション後に色の変化が識別可能にならなかった。pHを未調整のままにすると、対照を充填した場合でも色が変化した。
【0230】
実施例20-RT-LAMP比色応答に対するトレハロース及びTween20の効果
図19Bは、所与の濃度のトレハロースまたはTween20を含めた比色RT-LAMP結果を示す。orflab.IIプライマーセットを使用した。KCl(50mM)、MgSO(8mM)、等モルdNTP混合物(各dNTPを1.4mM)、WarmStart BST 2.0(0.32U/μL)、WarmStart RTx(0.3U/μL)、フェノールレッド(0.25mM)、dUTP(0.14mM)、Antarctic UDG(0.0004U/μL)、Tween20(指示されている場合、1%体積/体積)、ベタイン(20mM)、BSA(40mg/mL)、トレハロース(指示されている場合、10%重量/体積)の基本配合を含むRT-LAMPマスターミックス20μLを、グレード1クロマトグラフィー用紙(5mm×20mm)に加え、PCR調製フード内で60分間乾燥させた。25%処理済み唾液(陽性反応)またはヌクレアーゼ非含有水(陰性反応)中の反応当たり最終濃度1×10コピーの熱不活化SARS-CoV-2 25μLを、乾燥反応パッドに加えた。パッドを65℃に設定したインキュベータ内で60分間加熱し、フラットベッドスキャナーを使用してスキャンした。
【0231】
硫酸アンモニウムを含めると、テンプレートが存在しない場合、RT-LAMP試薬の乾燥時に赤色から黄色への変化が生じた。この色の変化は、フェノールレッド濃度を増加させ、硫酸アンモニウムをベタインで置き換えることによって防止された(図19A)。さらに、トレハロース及びウシ血清アルブミン(BSA)の添加により、反応速度が増加し、LoDが増加した(図19B)。
【0232】
例示的実施形態
【0233】
一例では、1つ又は複数の標的プライマー;DNAポリメラーゼ;及び再可溶化剤を含む(includes)、または含む(comprises)、固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物であって;固相媒体を変色させることができる非pH感受性薬剤を実質的に含まない、組成物が提供される。
【0234】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物の一例では、組成物は、抗酸化剤をさらに含むことができる。
【0235】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物の別の例では、組成物は揮発性剤を実質的に含まないものであり得る。
【0236】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物の別の例では、組成物は吸湿剤を実質的に含まないものであり得る。
【0237】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物の別の例では、吸湿剤は、25℃で約40%~約90%の相対湿度(RH)の場合に、約10重量%を超える量を吸収することができる。
【0238】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物の別の例では、吸湿剤としては、グリセロール、エタノール、メタノール、塩化カルシウム、塩化カリウム、硫酸カルシウム、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0239】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物の別の例では、再可溶化剤は界面活性剤であり得る。
【0240】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物の別の例では、再可溶化剤は、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ポリソルベート20、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0241】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物の別の例では、標的プライマーは、ウイルス病原体、細菌性病原体、真菌性病原体、または原生動物病原体を含む病原体を標的とすることができる。
【0242】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物の別の例では、病原体はウイルス病原体であり得る。
【0243】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物の別の例では、ウイルス病原体は、dsDNAウイルス、ssDNAウイルス、dsRNAウイルス、プラス鎖ssRNAウイルス、マイナス鎖ssRNAウイルス、ssRNA-RTウイルス、またはds-DNA-RTウイルスを含むことができる。
【0244】
別の態様では、ウイルス病原体は、H1N1、H2N2、H3N2、H1N1pdm09、またはSARS-CoV-2を含み得る。
【0245】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物の別の例では、組成物は逆転写酵素をさらに含むことができる。
【0246】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物の別の例では、組成物は非変色添加剤をさらに含むことができる。
【0247】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物の別の例では、非変色添加剤は、糖、緩衝液、またはそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含む。
【0248】
固相媒体上のループ媒介等温増幅(LAMP)分析用の組成物の別の例では、組成物は指示薬をさらに含むことができる。
【0249】
一例では、固相媒体上のLAMP分析のための方法であって、本明細書に記載の固相媒体と組成物のアセンブリを提供すること、固相媒体上に生体試料を堆積すること、及びLAMP反応を促進するのに十分な等温温度までアセンブリを加熱すること、を含む、方法が提供される。
【0250】
固相媒体上のLAMP分析のための方法の一例では、生体試料は、唾液、粘液、血液、尿、糞便、汗、呼気凝縮液、及びそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数である。
【0251】
固相媒体上のLAMP分析のための方法の別の例では、生体試料は唾液であり得る。
【0252】
固相媒体上のLAMP分析のための方法の別の例では、本方法は、ウイルス病原体を検出することをさらに含むことができる。
【0253】
固相媒体上のLAMP分析のための方法の別の例では、LAMP分析は、逆転写酵素LAMP(RT-LAMP)であり得る。
【0254】
一例では、本明細書に記載の組成物;及び組成物がその上に堆積される固相媒体を含む(including)、または含む(comprising)、LAMP分析を実行するためのシステムが提供される。
【0255】
上記の方法は、本発明のいくつかの実施形態の単なる例示であることを理解されたい。当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの修正及び代替構成を考案することができ、添付の特許請求の範囲は、そのような修正及び構成を網羅するものとする。したがって、本発明を、現在本発明の最も実際的で好ましい実施形態であると考えられるものに関連して具体的かつ詳細に上で説明してきたが、本明細書に記載されている原則及び概念から逸脱することなく、変形を含み、作成することができることは当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図17F
図17G
図17H
図17I
図17J
図17K
図17L
図18
図19A
図19B
【国際調査報告】