(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】純粋な酸化リチウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01D 15/02 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
C01D15/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542798
(86)(22)【出願日】2022-01-03
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 EP2022050034
(87)【国際公開番号】W WO2022152590
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】102021100637.6
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517346602
【氏名又は名称】アルベマール・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビーテルマン,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】カラカ,アフメット
(72)【発明者】
【氏名】クレーゼナー,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】シェーダー,マリー
(72)【発明者】
【氏名】シュウェリン,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】レムペル,ヘンリケ
(72)【発明者】
【氏名】ウェッセルス,カトリーン
(72)【発明者】
【氏名】ザンデルス,ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュプナー,アレクサンダー
(57)【要約】
本発明は、純粋な酸化リチウムの製造プロセス、及びその使用に関し、炭酸リチウムを微粉化した粉末状の元素炭素と00~1200℃の温度範囲で反応させ、2つの反応関与体は、熱分解プロセスの前に激しく予備混合され、それにより混合物の嵩密度は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも15%減少する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- レーザー回折により決定して、2~150μmのメジアン粒子サイズ(D
50)を有する炭酸リチウム、及び
- 電子顕微鏡法により決定して、1μm未満のメジアン一次粒子サイズ(D
50)を有する粉末状の元素炭素
から、600~1200℃の温度範囲でのか焼によって酸化リチウムを製造するプロセスであって、
か焼の前に、炭酸リチウムと炭素を1:0.1~1:1.2のモル比で組み合わせ、混合及び圧縮し、それによって炭素粒子は炭酸リチウム粒子を取り囲んでコーティングを形成し、得られた混合物の嵩密度は、圧縮なしで調製された炭酸リチウム粒子と炭素粒子の混合物の嵩密度と比較して少なくとも5%増加し、嵩密度はEN ISO 697に従って決定されることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
圧縮混合物の嵩密度が、非圧縮混合物の嵩密度と比較して少なくとも15%増加することを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
組み合わせ及び混合が、粉砕ユニット、回転式インテンシブミキサー又は圧縮装置内で圧縮と共に行われることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
圧縮を伴う組み合わせ及び混合が
a) 10~500kW/m
3のエネルギー入力を有する回転式インテンシブミキサー内で、又は
b) ロータービーター、ピン若しくは粉砕媒体ミル内で、又は
c) 圧縮機内で
行われることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
か焼が、その生成物に面した表面が高温及び塩基性リチウム塩による腐食に耐性の材料から作製されている機器内で行われ、該材料が
a) 好ましくは材料-グラファイト及び無秩序グラファイト構造を有する純粋な炭素から選択される、炭素系材料、又は
b) 酸化物セラミックス、特にアルミン酸リチウムセラミックス、Ce安定化ZrO
2、又は
c) 非酸化物セラミックス、特に炭化物セラミックス、窒化物セラミックス、ホウ素化物セラミックス、又は
d) クロム及び/若しくはアルミニウムを含む金属材料
であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
か焼が、その生成物に面した表面が、好ましくは
- 高温耐性Cr-及び/又はAl含有ニッケル系合金,
- Ni-及びCr含有オーステナイト鋼、
- 低Ni及び/又は無Ni、Cr-及びAl含有フェライト鋼又はCr含有混合オーステナイト-フェライト鋼
から選択される金属材料から選択される機器内で行われ、
Alの非存在下(0.1重量%未満)での金属材料のクロム含有量が、好ましくは少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、特に好ましくは少なくとも30重量%であり、少なくとも1重量%のAlの存在下でのクロム含有量が、好ましくは少なくとも5重量%であることを特徴とする、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
金属材料が、クロム及びアルミニウムに加えて、各々0~10重量%の割合で元素ニオ
ブ、チタン、タンタル及び/又はケイ素を含むことを特徴とする、請求項5又は6に記載のプロセス。
【請求項8】
金属材料が2重量%未満、好ましくは1重量%未満のモリブデンを含むことを特徴とする、請求項5~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
金属材料が、生成物に面する側にCr含有金属コーティングが設けられた高温耐性黒鋼又はステンレス鋼を含み、コーティング中のクロム含有量は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも30重量%であることを特徴とする、請求項5~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
コーティングの厚さが、電子顕微鏡法により決定して、少なくとも5μm、好ましくは少なくとも10μmであることを特徴とする、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
か焼が
- 0.01~50mbar(1~5000Pa)の範囲の負圧を含む真空条件下、又は- オーバーフローガス又はガス混合物が、600℃を超える温度において、炭素に対して不活性又は実質的に不活性であるオーバーフロー条件下
で行われることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
ガス又はガス混合物が、窒素、希ガス、好ましくはアルゴン、又は不活性ガスの混合物を含むことを特徴とする、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
炭酸リチウムと炭素とのモル比が1:0.6~1:1.1の範囲であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
炭素が、10~1500m
2/g、特に20~200m
2/gの比表面積(BET)、及び好ましくは1000nm未満、特に100nm未満、特に好ましくは50nm未満のメジアン一次粒子サイズD
50を有する粉末状の元素炭素を含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
炭素が、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満の硫黄分と、1000ppm未満、好ましくは500ppm未満の残留灰分とを有する炭素粉末を含むことを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
解凝集した炭素粉末とLi
2CO
3とのメジアン粒子サイズD
50の比が1:50~1:20,000の範囲であることを特徴とする、請求項1~15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
か焼が移動床条件下で行われることを特徴とする、請求項1~16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
生成された酸化リチウムが脱炭素精製ステップに供され、ここで生成された酸化リチウムが、炭素に対して不活性のさらなるガスと任意的に混合されたO
2、CO
2、H
2O又はそれらの混合物から選択される酸素含有ガス又はガス混合物を含むガス流と、少なくとも300℃、好ましくは少なくとも600℃、特に好ましくは少なくとも700℃の温度で接触することを特徴とする、請求項1~17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
使用される粉末化元素炭素が、非小球状カーボンブラックであることを特徴とする、請求項1~18のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状の純粋な酸化リチウムの製造のための経済的なプロセス、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化リチウムは、現在、ガラス、ガラスセラミックス、セラミックス及びリチウム電池の正極の製造用の原料として使用されている。さらに、酸化リチウムは、水酸化リチウムの製造に使用することができる。
【0003】
先端技術
酸化リチウムは、白金坩堝内で最大267Pa(2000μm Hg)の圧力での
Li2CO3→Li2O+CO2 (1)
に従った約1000℃でのLi2CO3の熱分解(即ち、溶融炭酸リチウム)によって製造することができる。
【0004】
この製造方法は塊状の酸化物を生成し、これは使用前にさらに粉砕する必要がある(非特許文献1)。10-5トル未満の非常に低い圧力では、熱分解は720℃のLi2CO3の融点未満でも起こり得る(非特許文献2)。しかしながら、そのような低い圧力は、技術的な装置内で経済的に達成することができない。
【0005】
水素ガスを使用して
Li2CO3+H2→Li2O+H2O+CO (2)
に従って、炭酸リチウムを400~725℃の温度範囲で還元することも知られている(特許文献1)。このプロセスは、爆発性水素ガスの高温での使用に起因する安全関連の欠点を有する。
【0006】
最終的に、カーボンブラックを炭酸リチウムの還元剤として使用することができる(非特許文献3)。炭素熱分解は真空を必要としないが、アルミナ坩堝内でAr雰囲気下で約720℃を超える温度で、以下の反応により達成することができる:
Li2CO3+C→Li2O+2CO (3)
【0007】
欠点は、使用される酸化アルミニウム容器材料に対する炭酸塩溶融物の強い腐食作用である。コークス、木炭、活性炭、糖、合成グラファイト及び同様の材料を使用する炭素熱分解も、500℃を超えるが720℃未満の温度で行うことができ、即ち炭酸リチウムの溶融を避ける(特許文献2)。この場合、比較的長い反応時間を予想する必要がある。同様に、ポリマー樹脂中に包埋されている炭酸リチウムを、600~700℃の温度範囲で粒状酸化リチウムに還元することができる(特許文献3)。欠点は、少なくとも6時間の長い反応時間と、酸化物が粒状形態で得られるという事実である。例えばリチウム電池の電極材料の製造用の原料としてのさらなる使用のために、生成物は、従って、前もって粉砕される必要がある。
【0008】
特許文献4も、温度範囲720~1200℃の反応条件下での炭酸リチウム及び元素炭素又は元素炭素を形成する炭素源からの粉末状の酸化リチウムの製造プロセスを記載しており、ここで反応は酸素を実質的に排除して行われ、反応は、生成物と接触するその表面がガラス状炭素、アルミン酸リチウム、炭素で被覆されたセラミックス若しくはC被覆石英ガラス又はタンタルからなる容器内で行われる。このプロセスの好ましい実施形態では、反応は、真空条件下(10~5000Pa(0.1~50mbar))、又は炭素に対
して不活性若しくは実質的に不活性なガス雰囲気内で約50~2x105Pa(0.5~2bar)の圧力で、流動床又は移動床反応器内で行われ、窒素又は希ガス(好ましくはアルゴン)又は不活性ガスの混合物が不活性ガス雰囲気として使用される。特許文献4に記載されるこのプロセスの欠点は、反応生成物Li2Oが部分的にケーク状であり、元素炭素で汚染されていることである。一般に、灰色~黒色の生成物が得られ、これらは光学的に見ると不均一に見える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014047117 A号
【特許文献2】特開2012121780 A号
【特許文献3】特開11209122 A号
【特許文献4】国際公開第18114760 A1号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】D.S.Appleton,R.B.Poeppel in:Advances in Ceramics,Vol.25,「Fabrication and properties of lithium ceramics,」ed.I.J.Hastings and G.W.Hollenberg,1989,111-116
【非特許文献2】T.Takahashi,H.Watanabe,Fusion Eng.Design 8(1989)399-405
【非特許文献3】J.-W.Kim,H.-G.Lee,Metallurgical Mat.Trans.B,32B(2001)17-24
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、塩基性原料炭酸リチウムを使用する単純なプロセスを提供することを目的とし、該プロセスの助けにより、粉末状の自由流動性の酸化リチウムを高純度で、特に0.2重量%未満の元素炭素で汚染された生成物を製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、酸化リチウムが
- レーザー回折により決定して、2~150μmのメジアン粒子サイズ(D50)を有する炭酸リチウム、及び
- 電子顕微鏡法により決定して、1μm未満のメジアン一次粒子サイズ(D50)を有する粉末状の元素炭素
から、600~1200℃の温度範囲でのか焼によって製造される酸化リチウムの製造方法によって解決され、ここでプロセスは、
か焼の前に、炭酸リチウムと炭素を1:0.1~1:1.2のモル比で組み合わせ、混合及び圧縮し、それによって炭素粒子は炭酸リチウム粒子を取り囲んでコーティングを形成し、得られた混合物の嵩密度は、圧縮なしで調製された炭酸リチウム粒子と炭素粒子の混合物の嵩密度と比較して少なくとも5%増加し、嵩密度はEN ISO 697に従って決定されることを特徴とする。
【0013】
従って、酸化リチウムは、炭酸リチウムを、微粉化した粉末状元素炭素と600~1200℃の温度範囲で反応させるプロセスによって生成され、2つの反応関与体は、熱分解プロセスの前に圧縮と共に激しく予備混合され、それによりこの混合物の嵩密度は、圧縮せずに混合された2つの出発材料と比較して少なくとも5%、好ましくは少なくとも15%増加している。圧縮なしの2つの出発材料の嵩密度は、両方の原料を所望のモル比で容
器内に組み合わせ、いかなる明らかな機械的圧力の作用又は有意なせん断力もない、純粋な機械的混合プロセスによってそれらを均質化することによって決定される。この非圧縮混合プロセスでは、エネルギー入力は2kWh/m3未満である。実際的な測定のために、例えば、実験室量(5~1000mL)の混合物を公称容積の約2倍のボトルに注ぎ、長時間の振盪(少なくとも5分)によって、及び/又はローラースタンド上で数時間(例えば10時間)の間、ボトルを回転させることによって均質化する。嵩密度は、DIN ISO 697標準に従って決定される。
【0014】
本発明による激しい混合プロセスは、炭素凝集体の解凝集、即ち、個々の一次粒子への分割、及び結晶質炭酸リチウムの効率的な被覆を引き起こす。空間的に分離された一次炭素粒子は、混合中に、より大きい炭酸リチウム粒子の表面に堆積し、それらを被覆する。混合プロセスは、混合物中の炭素粒子の均質な巨視的分布と、できる限り完全な個々の炭酸リチウム粒子の表面コーティングの達成を目的とする。激しい混合条件下では、小さい炭素粒子(下記参照)を炭酸塩粒子の細孔容積及び間隙内に導入することが、混合物の嵩密度の観察された増大を引き起こすと仮定される。
【0015】
元素炭素からなる粒子と炭酸リチウム粒子との直接接触は、物質輸送に有利であり、従って2つの成分間の反応速度論に有利である。さらに、これは、溶融温度を超えた場合に、分離した炭酸リチウム粒子の融合を防止する。
【0016】
激しい混合、即ち解凝集及び混合物圧縮は、せん断力の作用によって、又は多段階圧縮/粉砕プロセスによって達成することができる。
【0017】
驚くべきことに、2つの原料の圧縮混合物を使用すると、特許文献4に示されるような非圧縮混合物とは対照的に、有意に改善された均質性、純度及び改善された流動性を有する酸化リチウム最終生成物を得ることができることが見出された。
【0018】
小球状炭素画分の所望の解凝集及び圧縮を混合中に達成するためには、異なる機器及びプロセス技術を適用し得る。粉砕ユニット、(回転式インテンシブミキサー(rotating intensive mixer))又は圧縮装置が適切である。これらは、殆どのタイプのミル、特にロータービーターミル(インパクトミル)、粉砕媒体ミル又はピンミルを含み;ナイフ又はカッティングミルも限定された範囲で使用することができる。粉砕媒体ミルでは、混合は、粉砕ドラム内で硬い粉砕媒体、例えば、金属(鋼又はニッケル系合金)又は硬いセラミックス(金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物)からなるボール、ロッドなどを使用して行われる。粉砕容器及び粉砕媒体のビッカース硬度は、少なくとも400、好ましくは少なくとも600である。ステンレス鋼又は金属酸化物、例えば酸化アルミニウム又は酸化ジルコニウムから作製された材料は、特に好ましい。ボール、ロッド又はハンマーミルを使用することができる。
【0019】
さらに、約10~500kW/m3の範囲のエネルギー入力を生成する回転ミキサーを使用することができる。回転ミキサーの中でも、回転容器を有するもの、及び回転混合ツールを有するものの両方が適切である。
【0020】
圧縮を生じる十分強いエネルギー入力が重要である。向流又は交差流の原理に従って設計され得るそのようなユニットは、例えば、Eirich社によって名称「インテンシブミキサー(intensive mixer)」で提供されている。他の適切なミキサー設計は、ナイフミルを追加で備えたパドルドライヤー、例えばLoedige社によって提供されるもの、及び、例えば、Hosokawa社からブランド名「Nobilta」で入手可能な高速ローターを有するインテンシブミキサーである。
【0021】
さらに、圧縮機、例えば一段階又は多段階ローラープレス又はローラーミルが、圧縮に適切である。この場合、ロール圧縮された原料混合物が、好ましくは第2のステップで顆粒化及び/又は粉砕される。炭素粒子の良好な解凝集及び均質な分布を達成するために、圧縮/粉砕プロセスは、好ましくは数回(例えば2~10回)にわたって実行される。
【0022】
非小球状(ドイツ語で「非ビーズ状(non-beaded)」とも称される)カーボンブラック等級を使用すること、又は、炭素生成物の解凝集を別個のステップで(即ち、炭酸リチウムの非存在下で)行い、次いで第2のステップで解凝集プロセス生成物を炭酸リチウムと混合し、それにより炭素被覆及びそれを高密度化することも可能である。非小球状カーボンブラックは、一般に低い流動性を有し、粉塵が多く発生するため、産業スケールで使用するためには特別な取り扱い技術を必要とする。非ビーズ状カーボンブラック、例えば会社Caboによって名称「Vulkan P fluffy」で提供されている製品は、酸化リチウムへの炭酸リチウムのより速く完全な変換が可能であることが見出された。特に、特に低い可燃性炭素含有量(即ちTOC)を有するLi2O最終生成物が所望される場合、そのような非小球等級が本発明によるプロセスに使用される。2ステッププロセスは、等価な混合物品質を生成することが可能であるが、機器要件がより高く、コストが比較的不利であるため、比較的好ましくない。いずれも場合も、本発明の所望の利点を達成するためには、適切な圧縮を伴う2成分の激しい混合が必要である。
【0023】
一般に、混合中のエネルギー入力、例えばせん断力の強度は、結晶質炭酸リチウム粒子の有意な粒子サイズ低下が起こらないようなものである。従って、混合エネルギー入力は、通常、比較的弱いファンデルワールス力によって一緒に保持されている炭素粒子凝集体の別々の一次粒子への分散に十分であるに過ぎない。しかしながら、比較的粗い粒子の炭酸リチウム等級(例えばD50が50μm超であるもの)が使用され、同時に、特に微細な粒子の酸化リチウム(例えばD50が約10~20μm)を生成するべきである場合、本発明によれば、より強いせん断力を混合物に作用させることも可能である。そのようなより高いせん断力は、例えば、分級機、遊星ボールミル又はジェットミル内で生じる。これらの強力に粉砕する混合プロセスも本発明に従い、Li2O最終生成物の粉砕よりも好ましい。実際に、利点は、炭酸リチウムが吸湿性ではなく、空気に無期限に耐性であることである。従って、粉砕プロセスは、通常の周囲空気の雰囲気下で行うことができる。これは、酸化リチウムの粉砕に対する要件とは対照的である。酸化物は極めて吸湿性であり、CO2と激しく反応する。従って、酸化物の粉砕は、不活性条件、即ち空気及び水分の排除を厳格に維持する必要があり、これは比較的高いコストに関連する。
【0024】
予備混合は、約0~500℃の広い温度範囲で行うことができる。予備混合は、能動的な加熱又は冷却なしで周囲温度で行うことが好ましい。粉塵爆発のリスクを避けるために、予備混合は、不活性条件下、即ち無酸素又は酸素不足の雰囲気内で行われることが好ましい。不活性条件は、不活性ガス(希ガス又は窒素)のオーバーフロー、又は真空条件下のいずれかによって達成することができる。好ましくは、使用する混合ユニット内の酸素含有量は、12体積%未満、好ましくは5体積%未満である。
【0025】
その後の熱誘導変換(か焼)は、その生成物に面した表面が高温及び塩基性リチウム塩による腐食に耐性の材料から作製されている機器内で行われる。タンタルを除く金属材料は一般に有用ではないという特許文献4において確立された教示とは対照的に、高温耐性Cr-及び/又はAl含有材料から選択される多様な金属材料が有用であることが見出された。特に、Cr-及び/又はAl含有ニッケル系合金、Ni及びCr含有オーステナイト鋼、並びに低Ni又は無Ni、Cr-及びAl含有フェライト鋼及びクロム含有混合オーステナイト-フェライト鋼は、本発明に従って圧縮された元素炭素と炭酸リチウムとの混合物を純粋な酸化リチウムに変換するための容器材料として使用することができる。使用に適した合金のクロム含有量は、少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重
量%、特に好ましくは少なくとも30重量%である。少なくとも1重量%のAl含有量の場合、クロム含有量は有意に低い(少なくとも5重量%)ように選択され得る。好ましいAl含有量は、少なくとも1重量%、特に好ましくは少なくとも2重量%である。クロム及びアルミニウムに加えて、本発明によるプロセスに使用できる金属材料合金は、元素ニオブ、チタン、タンタル及び/又はケイ素を、各々の場合、10重量%までの割合で含む場合がある。好ましくは、低Mo合金が使用される。Mo含有量は、2重量%未満、好ましくは1重量%未満である。
【0026】
以下の市販の金属材料は、使用するのに特に有利である:
Ni系合金:Inconel 600、Inconel 601、Inconel 693、Inconel 702、Inconel 800、Inconel 825;Incoloy 901、Nichrome、Nichrome V、Nimonic 75、Nimonic 80A、Nimonic 90、RA602CA/Alloy 602 CA、Alloy X及び同等の等級;
オーステナイト鋼:SS347(1.4550)、253MA(1.4835)、Nitronic 50、310S、316L、SS310、SS304、RA253MA及び同様物;
フェライト鋼:Kanthal(例えばKanthal A1、Kanthal AF、Kanthal D(FeCrAl))、PM 2000、Incoloy MA 956及び同様物。
【0027】
言及した材料群から選択される固体金属材料、及びそれに応じて被覆される高温耐性黒鋼又はステンレス鋼を使用することができる。生成物に面した側の腐食抑制コーティングは、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも30重量%のクロムを含む。さらに、腐食抑制コーティングは、元素Ni、Fe、Nb、Al、Ti、Ta及びSiを、各々、最大10重量%の含有量で含むことができる。
【0028】
クロム含有腐食防止コーティングの厚さは、少なくとも5μm、好ましくは少なくとも10μmである。コーティングの厚さは、電子顕微鏡法によって決定される。例えば、1.4401などの適度にのみ腐食耐性であるオーステナイト鋼は、50μm厚のCr-及びAl含有コーティングを適用することによって、その腐食耐性の点で有意に改善され得る。そのような被覆プロセスは、様々な電気化学的又は物理的技術、例えばパックセメンテーションプロセスを介して達成することができる(Kim,Mater.Transact.43,2002,593)。
【0029】
言及した金属材料に加えて、炭素系材料、特定の酸化物セラミックス(例えばAl2O3、アルミン酸リチウムセラミックス(LiAlO2)又はCe系セラミックス、例えばCe安定化ZrO2)及び非酸化物セラミックス(例えばSiC、BC、TiCなどの炭化物;スズ、AlNなどの窒化物、及びNbB2、BN、Al浸透TiB2、「TiBAl」などのホウ化物)も容器材料として使用することができる。上述したセラミックス(好ましくはLiAlO2)で被覆した材料、例えば高温耐性鋼も使用することができる。炭素系材料としては、材料グラファイト(炭素グラファイト、ハードカーボン)、特に、グラファイト構造及びセラミック特性プロファイルを有する純粋な炭素(ガラス炭素)を使用することができる。しかしながら、高温か焼プロセス、即ち約400℃を超える温度でのプロセスにおける炭素系材料の使用は、特に厳格に制御された不活性条件、即ち、酸素又は水若しくはCO2などの他の酸素ドナーなどの酸化剤の完全な排除を必要とする。周囲空気と接触した際に高純度グラファイトよりも有意に低い燃焼率を示す酸化安定化グラファイト材料の使用が特に好ましい。(D.V.Savchenko,New Carbon Materials 2012,27,12-18)。グラファイト材料は、充填剤/結合剤系を介して石油コークス、ピッチコークス、カーボンブラック、及びグラフ
ァイトなどの原料から生成される高温耐性材料である。これらは最初に、規定の粒子サイズ分布に粉砕され、高温で混合され、成形され、プレス内で素地に圧縮され、次いで高温熱分解プロセスによって炭化される。
【0030】
炭素系材料を固体反応容器として使用することができ、又はグラファイト材料で被覆若しくは裏打ちされた空洞体(例えば、グラファイト箔で裏打ちされた金属管)を使用することができる。
【0031】
元素炭素で被覆された炭酸リチウムの酸化リチウムへの炭素熱変換は、反応中に形成された一酸化炭素副生物の有効な除去を確実にする条件下で行われる。好ましくは、反応は減圧下、例えば「技術的真空」(即ち約0.01~50mbar(1~5000Pa)の範囲の負圧)下で行われる。オーバーフロー条件下で作業することも可能であり、その場合、オーバーフローガス又はガス混合物は、600℃を超える高温においてさえも、炭素対して不活性又は実質的に不活性でなければならない。好ましくは、窒素又は希ガス(好ましくはアルゴン)をそのような不活性ガスとして使用することができ、又は不活性ガスの混合物を使用することができる。不活性ガスは、水及び酸素による汚染に関連して高い純度を有する必要がある。後者の2つの物質は、一般に、約0.1%体積%の含有量を超えてはならない。
【0032】
商業的な視点からも満足できる反応速度を達成するために、600~1200℃の温度範囲が選択される。選択された温度に応じて、か焼の継続時間は、一般に、例えば900℃で5分~48時間、好ましくは10間~300分である。特に好ましくは、プロセス変形は、炭酸リチウムの溶融温度(約720℃)未満の反応相と、720℃超の第2の相とを含む特定の温度プロファイルを維持することからなり、第2の相の間、酸化リチウムへの変換が完了する。約1~120分の滞留時間を有する第1の反応相において、混合物は600~700℃の温度範囲でか焼される。次いで、さらに増加した生成物温度を有する反応相が続き、その間、酸化物への変換が完了する。この700~1200℃の温度範囲の第2の相は、選択された生成物温度に応じて10時間~5分間継続する。対応する2時間~10分間の滞留時間を伴う800~950℃の生成物温度が特に好ましい。驚くべきことに、この方法で生成された酸化リチウムは、高温相の間に焼結も凝集もしないことが見出された。
【0033】
元素炭素は、高い表面-対-体積比を有する粒子からなる粉末形態で使用される。好ましくは、粉末状の工業用カーボンブラック、グラファイト、活性炭又はグラフェンが使用される。元素炭素は、炭酸リチウムと炭素のモル比が1:0.1~1:1.2の範囲、好ましくは1:0.6~1:1.1の範囲で使用される。好ましくは、高い比表面積(BET法によって決定して、10~1500m2/g、好ましくは20~200m2/g)を有し、且つ非常に小さい一次粒子サイズを有するC-原料が使用される。比表面積は、標準規格ASTM D6556に従って、開発者Stephen Brunauer、Paul Hugh Emmett及びEdward Tellerにちなんで名付けられた「BET測定」として知られる方法であるガス吸着によって測定される。一次粒子サイズ及び凝集体含有量は、電子顕微鏡法(電子顕微鏡法ASTM D 3849を使用する形態学的決定方法)によって決定される。ISO標準13320(発行日2020-01)に従ったレーザー回折による粒子サイズ決定も可能であろうが、これは一次粒子と凝集体粒子を区別することができない。ASTM D3849に従って決定されたメジアン一次粒子サイズD50は1μm未満であるが、好ましくは100nm未満のメジアン一次粒子サイズD50を有する炭素、最も好ましくは50nm未満のメジアン一次粒子サイズD50を有する炭素が使用される。メジアン値D50は、それ未満又はそれを超えて全粒子の総質量に基づいて50重量%の各々の量タイプが存在する粒子サイズを示す。
【0034】
微粉化した炭素粉末は、充填剤、着色剤として、又は導電性カーボンブラックとしての用途のために様々な会社によって提供されており、後者は電気伝導性を改善するために提供されている。商業的に使用される多くの炭素等級、特にカーボンブラックは、より大量の凝集体を含む。これらの凝集体は微粉化炭素の流動性を改善し、小球化(prilling)によってカーボンブラック製造業者により製造されている。
【0035】
使用される炭素粉末は高純度のものであり、即ち、それは1000ppm未満、好ましくは500ppm未満の低い硫黄分、及び1000ppm未満、好ましくは500ppm未満の低い残留灰分を有する。硫黄含有量は、例えば誘導結合プラズマを用いる原子放出分光法(ICP-OES)によって決定される。残留灰分は、DIN EN 15403標準に従って決定される。
【0036】
例えば、会社Timcal Graphite & Carbonによってブランド名TIMCAL C45、C-NERGY Super C65又はSuper P-Liで販売されている、例えば典型的なBET表面積20~80m2/gの高純度導電性カーボンブラックを使用することができる。高純度の適切な工業用カーボンブラックは、例えば会社Cabotによってブランド名ELFTEX 254、ELFTEX TP又はELFTEX P 100で提供されている。
【0037】
炭酸リチウムは、2~150μm、好ましくは10~80μm(レーザー回折法による測定、例えばMalvern Pananalyticalからの装置「Mastersizer 3000」を用いて)の平均粒子サイズD50を有する。エネルギー貯蔵技術のための材料の製造のためのLi2O最終生成物の用途の場合、高い純度が一般に必要とされる。その結果、この目的のために、純粋な炭酸リチウムが、例えば名称「電池等級」の下で商業的に使用される。この製品等級は、例えば、500ppm以下のナトリウム含有量と、最大100ppmの重金属含有量とを有する。不純物は、一般に原子放出分光法、例えばICP-OESによって測定され、又は原子放出分光法において低い検出感度を有する元素では(例えば、Naが当てはまる)原子吸光分析法(AAS)によって測定される。
【0038】
激しい混合前処理中にできる限り均一な結晶質炭酸リチウム粒子の一次炭素粒子によるコーティングを達成することを可能にするために、炭素粒子が炭酸リチウム結晶と比較して有意に小さい粒子直径(D50)を有する必要がある。一般に、炭素とLi2CO3との粒子サイズD50の比は、1:50~1:20,000、好ましくは1:100~11:10,000の範囲である。
【0039】
本発明の趣旨において、炭酸リチウムの存在下で有機低灰分(最大灰分0.1重量%)有機化合物を使用する上流熱分解反応によって、炭素熱反応に必要な微粉化炭素を生成することも可能であり、次いでこの混合物を上述したプロセスに従って圧縮/圧迫し、次いでこれを600~1200℃でのか焼によって酸化リチウムに変換する。このプロセスでは、炭酸リチウムを適切な有機材料(例えば糖、セルロース、食用油など)と予備混合し、酸素の非存在下で200~600℃で熱分解する。揮発性成分及び熱分解ガスを弁システムにより廃棄物ガス処理プラントに排出する。次いで、好ましくは0.6~1.2:1のモル比で残留する、元素炭素及び炭酸リチウムからなる残留物を、本発明に従ってミル又は圧縮プラント内で少なくとも5%、好ましくは少なくとも15%圧縮し、次いで熱分解する。
【0040】
最も単純なケースでは、酸化リチウムへの熱分解変換は、静的条件下で、即ち、撹拌せず、移動しないで行われ得る。しかしながら、これは移動床条件下で行われることが好ましい。移動床技術の場合、流動又は浮遊床技術を用いた反応器、及び流動床反応器(例え
ば、回転管又は振り子管)が使用される。この目的のために、反応混合物は移動床反応器内で必要な温度にされ、生成物の酸化リチウムに変換され、CO含有排気ガス流は除去される。移動床反応器内での生成は、好ましくはバッチで行われず、連続した原料供給と、対応して連続した反応及び生成物排出が行われる。
【0041】
反応条件に応じて、ある割合の元素炭素が、か焼生成物において残留する場合がある。特定の用途で望ましくないこの残留C内容物を低減又は完全に排除するために、合成反応の下流で精製ステップを行うことができる。この精製プロセスでは、窒素又は希ガスなどの、炭素に対して不活性のさらなるガスで希釈される可能性がある、O2、CO2及びH2Oから選択される酸素含有ガス又はガス混合物(脱炭素ガス)が使用される。精製プロセスは、炭素熱Li2O形成が行われたものと同じ装置内、又はそれとは別個の第2の装置内のいずれかで行うことができる。精製は、合成と同様、一般に少なくとも300℃、好ましくは少なくとも600℃、特に好ましくは少なくとも700℃の高温を必要とする。このステップ用の容器材料として使用できる材料は、高温金属合金、セラミックス又は無機ガラスから選択される。ガラス状炭素、材料グラファイトなどの炭素系材料は、それらが脱炭素ガスで攻撃され、ガス状態に変換され得るため、約600℃を超える温度で使用することができない。C含有酸化リチウムへの変換中、以下の炭素ガス化反応が起こる:
C+O2→CO2 4)
C+CO2→2CO (5)
C+H2O→CO+H2 (6)
【0042】
形成されたC含有ガス(CO及びCO2)とLi2Oとの逆反応をできる限り避けるために、反応ガスを可能な限り効率的に除去する必要がある。これは、不活性担体ガスを、別個のガス流として、又は好ましくはO含有脱炭素ガスとの混合物として同時に導入することによって行われる。好ましくは空気が脱炭素に使用され、この空気の酸素含有量は、必要であれば、窒素を混合することによって10体積%未満の割合に希釈することができる。さらに、0~400℃の温度範囲でそれらのH2O飽和濃度に対応する水分含有量を有する窒素又はアルゴンは、好ましい脱炭素剤である。脱炭素ガス又はガス混合物のオーバーフロー速度は、一般に0.1~10cm/sである。
【0043】
本発明による純粋な酸化リチウムは、リチウム電池のカソード材料(正極材料)の製造、及びガラス、ガラスセラミックス又は結晶質セラミックスの製造に使用することができる。特に好ましくは、本発明によるプロセスにより製造される純粋な酸化リチウムは、リチウムリッチニッケル化合物、例えばLi2NiO2の製造(G.Cedar,Chem.Mater.2004,2685)又はリチウム伝導性ガラス、ガラスセラミックス若しくはセラミックス、例えばLLZO(ガーネット構造を有するリチウムランタンジルコニア)若しくは酸素安定化チオホスフェート化合物(H.Tsukasaki,Solid State Ionics 347,2020,115267)若しくはLi含有アルギロダイト(例えばLi6PS4OCl、米国特許第2020/0087155号)の製造に使用される。
【実施例】
【0044】
以下の実施例は、本発明によるプロセスを、いかなる限定も示唆することなく説明することを意図する。
【0045】
Li2O反応生成物の分析的特性評価を、以下の方法で行う:
・ Li2O含有量の決定:酸滴定
・ 金属不純物:ICP-OES(原子放出分光法)
・ 炭素含有量:無機C(炭酸塩、「TIC」)及び元素/有機C(「TOC」)の含
有量を、Seifert Instrumentsからの機器(C/S-Max)を使用して決定する。TIC決定の場合、サンプルを希釈リン酸を使用して分解し、得られたCO2をIR検出器内でキャリアガスにより決定する。TOC決定の場合、サンプルをO2流中で1350℃で燃焼させ、得られたCO2をIRにより同様に検出する。
【0046】
実施例1(ビーズ状カーボンブラックを使用した圧縮条件下での混合、その後の真空条件下又は窒素流中でのか焼):
1.1 混合:
618gの炭酸リチウム粉末、電池等級(嵩密度650g/L;D50=26μm)及び100.4gのカーボンブラック(CabotからのELFTEX TP、嵩密度370g/L、一次粒子サイズD50=25nm未満)、並びに2個の直径50mmの瑪瑙球及び10個の直径20mmの瑪瑙球を、ねじ蓋を有する3-L PEボトル内に秤量する。原料重量は、1:1のLi2CO3:Cの化学量論比に対応する。ボトルに蓋をした後、その内容物をローラースタンド上で9時間均質化する。その後、球体をふるい分けにより分離する。
秤量:716g黒色混合物、嵩密度0.67g/mL
1.2 真空条件下でのか焼:
20.0gの圧縮Li2CO3/C混合物を、アルミン酸リチウム層で裏打ちしたステンレス鋼坩堝内に置く。ステンレス鋼管を有する管状炉内に坩堝を置き、真空条件下(20mbar(2000Pa))で900℃の生成物温度に加熱する。特定の温度での3時間の熱分解後、冷却を行う。坩堝をAr充填グローブボックス内に置き、均質な、辛うじてケーク化した薄灰色の材料をガラスボトルに移動する。1mmふるいでふるい分けし、移動すると、僅かにケーク化した部分が粉末に崩壊した。
収量:6.5g(95% d.Th)。
分析結果:
総無機炭素(TIC)=0.2%。
総有機炭素(TOC)=0.1%
Fe(ICP-OES)=60ppm
含有量Li2O(滴定)=98%。
1.3窒素流中でのか焼:
10.0gの1.1からの圧縮Li2CO3/C混合物をアルミナ坩堝内に置く。石英管を有する管状炉内に坩堝を置き、窒素流(40L/h)下で900℃の生成物温度に加熱する。CO感受性ガスセンサーを使用してガス流出物中のCO濃度を測定した。当初、CO検出器は2000ppm(最高測定可能濃度)を超えるCO濃度を示した。特定の温度での6.5時間の熱分解後、COはもはや検出されず(3ppm未満)、これを冷却する。内部輸送容器を使用して坩堝をAr充填グローブボックス内に移動し、均質な、辛うじてケーク化した僅かに灰色の材料をガラスボトル内に移動する。1mmふるいでふるい分けし、移動すると、僅かにケーク化した部分が粉末に崩壊した。
収量:3.2g(92% d.Th)。
分析結果:
総無機炭素(TIC)=0.14%。
総有機炭素(TOC)=0.14%。
【0047】
実施例2(特許文献4による比較例、(非圧縮条件下でのビーズ状カーボンブラックの混合、及びその後のか焼)):
2.1 混合:
620gの炭酸リチウム粉末、電池等級、及び100.6gのカーボンブラック(Cabot社からのELFTEX TP)を、ねじ蓋を有する3-L PEボトル内に秤量する。これらは、実施例1.1で使用したものと同じ材料である。原料重量は、1:1のLi2CO3:Cの化学量論比に対応する。ボトルに蓋をした後、その内容物をローラース
タンド上で9時間均質化する。
秤量:717g黒色混合物、嵩密度0.58g/mL
2.2 か焼:
20.0gの非圧縮Li2CO3/C混合物を、アルミン酸リチウム層で裏打ちしたステンレス鋼坩堝内に置く。ステンレス鋼管を有する管状炉内に坩堝を置き、真空条件下(20mbar(2000Pa))で900℃の生成物温度に加熱する。特定の温度での3時間の熱分解後、冷却を行う。坩堝をAr充填グローブボックス内に置き、不均質に見える、部分的にケーク化した灰色着色の材料を1mmふるいで塊状の部分から除去し、ガラスボトルに移動する。
収量:6.1g(Thの88%)。(0.6gの1mm超をふるい残留物として得た)。分析結果:
総無機炭素(TIC)=0.8%。
総有機炭素(TOC)=0.6%。
Fe(ICP)=160ppm
含有量Li2O(滴定)=98%。
【0048】
実施例3(酸素を使用したTOC低減の後精製):
Ar充填グローブボックス内で、1.3%のTOC含有量及び0.19%のTIC含有量を有する7.9gのLi2Oを、セラミック坩堝(純粋なAl2O3)に加えた。坩堝を、直径40mmの石英管を有する管状炉内に空気の排除下で置き、約400L/hの窒素流下で800℃のプロセス温度に加熱した。目標温度に達した後、周囲空気を約10~40%の比率で30~60秒間、ガス流に数回加えた。サンプルは、空気含有オーバーフローガスとの最初の接触後に脱色を開始した。排気ガス中にCOが検出されなくなるまで空気の混合を繰り返した。次いで、システムを純粋な窒素に切り替え、さらに30秒間か焼した。次いで、窒素流下で冷却を行い、坩堝をグローブボックス内で空にした。
収量:6.7g無色の、僅かに凝集した生成物
分析結果:
TOC<50ppm(検出限界!)
TIC=0.18%
【0049】
実施例4(水蒸気によるTOC低減の後精製):
Ar充填グローブボックス内で、1.3%のTOC含有量及び0.19%のTIC含有量を有する8.3gのLi2Oを、セラミック坩堝(純粋なAl2O3)に加えた。坩堝を、直径40mmの石英管を有する管状炉内に空気の排除下で置き、これを約400L/hの窒素流下で900℃のプロセス温度に加熱した。目標温度に達した後、ガス流に水分を加えた。これは、水で満たされたWoulfのボトルにN2ガス流を通すことによって行った。サンプルは直ちに脱色を開始した。空気水分を含むガス流を1~2時間維持した。次いで、これを再び純粋な窒素に切り替え、さらに30分間か焼した。最後に、窒素流下で冷却を行い、坩堝をグローブボックス内で空にした。
収量:6.9g白色の、部分的に凝集した生成物
分析結果:
TOC 350ppm
TIC=0.023%
【0050】
実施例5(非ビーズ状カーボンブラックの使用、圧縮条件下での混合、その後の窒素流中でのか焼):
5.1 混合:
ねじ蓋を有する3-L PEボトル内に、350gの炭酸リチウム粉末、電池等級(嵩密度650g/L;D50=26μm)及び56.8gのカーボンブラック(Cabot
CompanyからのVulcan P fluffy、嵩密度220g/L、一次粒
子サイズD50=25nm未満)及び2個の直径50mmの瑪瑙球及び10個の直径20mmの瑪瑙球を秤量する。原料重量は、1:1のLi2CO3:Cの化学量論比に対応する。ボトルに蓋をした後、その内容物をローラースタンド上で9時間均質化する。その後、球体をふるい分けにより分離する。
秤量:395g黒色混合物、嵩密度0.63g/mL。
5.2 窒素流中でのか焼:
10.0gの5.1からの圧縮Li2CO3/C混合物をアルミナ坩堝内に置く。石英管を有する管状炉内に坩堝を置き、窒素流(40L/h)下で900℃の生成物温度に加熱する。CO感受性ガスセンサーを使用してガス排出物中のCO濃度を測定した。当初、CO検出器は2000ppmを超える範囲のCO濃度を示した。特定の温度での3時間の熱分解後、CO含有量は3ppm未満に低下しており、冷却が行われる。内部輸送容器を使用して坩堝をAr充填グローブボックス内に移動し、均質な、辛うじてケーク化した雪のように白い材料をガラスボトル内に移動する。1mmふるいでふるい分けし、移動すると、僅かにケーク化した部分が粉末に崩壊した。
収量:3.3g(95% d.Th)。
分析結果:
総無機炭素(TIC)=0.10%。
総有機炭素(TOC)=0.01%。
【0051】
実施例1及び2は、原料混合物の嵩密度に対する、及び最終生成物Li2Oの品質に対する異なる混合プロセスの影響を示している。
【0052】
実施例1の圧縮混合プロセスは、Li2CO3/C混合物の嵩密度を0.58g/mL(比較例2、いかなる圧力又は明らかなせん断力の作用もない)から0.67g/mLに増加させる。これは16%の圧縮に対応する。実施例5.1で非ビーズ状カーボンブラックを使用する場合、使用したカーボンブラック及び炭酸リチウムの体積の合計と比較して、26%の圧縮が観察される。
【0053】
真空条件下でか焼した場合、実施例1の圧縮原料混合物は、有意に低下したTOC及びTIC含有量を有する比較的凝集していない生成物をもたらす。
【0054】
実験3及び4は、2つの可能な後精製プロセス、特に、各々、酸素(空気)及び水蒸気を用いた反応による元素炭素の分解を記載する。
【0055】
空気中に含まれる酸素を使用した後燃焼により、TOCは50ppmの分析検出限界未満に低下し得る(実施例3)。実施例4では、C含有量は1.3重量%から230ppmに低下している。
【0056】
実施例1.3と5.2のか焼結果の比較は、非ビーズ状カーボンブラック(「fluffy等級」)の使用の利点を示す。25nm未満の同じ一次粒子サイズを有するビーズ状カーボンブラックの使用が、COの発生から崩壊へ6.5時間を要する一方、この時間は非ビーズ状カーボンブラック「Vulkan P fluffy」を使用した場合、3時間に低減する。加えて、可燃性炭素(TOC)含有量は、「Vulkan P fluffy」を使用した場合、有意により低い(0.01対0.14%)。
【国際調査報告】