(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】ピリド[1,2-a]ピリミジノン類似体の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240115BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240115BHJP
C07D 471/04 20060101ALN20240115BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
C07D471/04 117A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543006
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 CN2022072322
(87)【国際公開番号】W WO2022152296
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】202110061761.8
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520175190
【氏名又は名称】クワンチョウ ジョーヨー ファーマテック カンパニー,リミティド
(71)【出願人】
【識別番号】518212539
【氏名又は名称】シャンハイ ジャ タン ファーマテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】李永国
(72)【発明者】
【氏名】隗維
(72)【発明者】
【氏名】宋艾雲
(72)【発明者】
【氏名】葉未
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA03
4C065BB10
4C065CC01
4C065DD02
4C065EE02
4C065HH06
4C065JJ01
4C065KK01
4C065LL01
4C065LL04
4C065PP12
4C065PP17
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
医薬の製造におけるピリド[1,2-a]ピリミジノン類似体又はその薬学的に許容される塩の使用を開示し、前記医薬は、PIK3CA突然変異の乳癌、PIK3CA突然変異の卵巣癌、PIK3CA突然変異の子宮内膜癌、PIK3CA突然変異の子宮頸癌及びPIK3CA突然変異の膀胱癌の1つ又は複数の治療及び/又は予防に使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物Iの構造が下記式に示される通りであることを特徴とする、医薬の製造における化合物I又はその薬学的に許容される塩の使用であって、
【化1】
前記医薬は、PIK3CA突然変異の癌の治療及び/又は予防に使用される、使用。
【請求項2】
前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の乳癌であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬の製造における化合物I又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項3】
前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の卵巣癌であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬の製造における化合物I又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項4】
前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の子宮内膜癌であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬の製造における化合物I又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項5】
前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の子宮頸癌であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬の製造における化合物I又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項6】
前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の膀胱癌であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬の製造における化合物I又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項7】
前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、
(1)前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、PIK3CA突然変異の卵巣明細胞癌であり、
(2)前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、転移を有するPIK3CA突然変異の卵巣癌であり、
(3)前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、一次治療方法又は二次治療方法が無効な卵巣癌である、
条件の1つ又は複数を満たし、
好ましくは、前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、
(1)前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、PIK3CA突然変異の左卵巣明細胞癌であり、
(II)前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、肝転移を有するPIK3CA突然変異の卵巣癌である、
条件の1つ又は複数を満たすことを特徴とする、請求項3に記載の医薬の製造における化合物I又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項8】
前記PIK3CA突然変異の子宮頸癌は、
(1)前記PIK3CA突然変異の子宮頸癌は、PIK3CA突然変異の子宮頸部扁平上皮癌であり、
(2)前記PIK3CA突然変異の子宮頸癌は、転移を有するPIK3CA突然変異の子宮頸癌であり、
(3)前記PIK3CA突然変異の子宮頸癌は、一次治療方法、二次治療方法又は三次治療方法が無効な子宮頸癌である、
条件の1つ又は複数を満たし、
好ましくは、前記転移は、リンパ及び/又は肺であり;より好ましくは、前記リンパは、左鎖骨上リンパ及び/又は後腹膜リンパであることを特徴とする、請求項5に記載の医薬の製造における化合物I又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項9】
(1)前記医薬は経口剤形で提供され、
(2)前記医薬は錠剤で提供され、
(3)前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の投与量は、0.1~2.0mg/回であり、例えば、0.1mg/回、0.2mg/回、0.3mg/回、0.4mg/回、0.5mg/回、0.6mg/回、0.7mg/回、0.8mg/回、0.9mg/回、1.0mg/回、1.1mg/回、1.2mg/回、1.3mg/回、1.4mg/回、1.5mg/回、1.6mg/回、1.7mg/回、1.8mg/回、1.9mg/回又は2.0mg/回であり、
(4)前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の投与頻度は、1回/日又は2回/日である、
条件の1つ又は複数を満たすことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬の製造における化合物I又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項10】
医薬キットAと医薬キットBを含む、組み合わせ医薬キットであって、
前記医薬キットAはPIK3CA遺伝子突然変異を検出する試薬を含み、前記医薬キットBは化合物I又はその薬学的に許容される塩を含み、
好ましくは、前記組み合わせ医薬キットは、
(1)前記医薬キットAと医薬キットBの投与時間は任意の順序又は前記医薬キットにおける前記医薬キットAを最初に投与し、
(2)前記医薬キットAにおいて、前記PIK3CA遺伝子突然変異検出試薬は、癌患者がPIK3CA遺伝子突然変異を有しているかどうかを検出するために使用され、例えば、前記癌患者は、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌及び膀胱癌の1つ又は複数を患っている患者であり、
(3)前記医薬キットBにおいて、前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の含有量は治療有效量であり、
(4)前記医薬キットBは更に薬学的に許容される助剤を含み、
(5)前記医薬キットBにおいて、前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の投与量及び投与頻度は請求項9に記載された通りである、
(6)前記組み合わせ医薬キットはPIK3CA突然変異の癌を治療及び/又は予防するために使用され、前記PIK3CA突然変異の癌は請求項1~8のいずれか一項に記載された通りである、
条件の1つ又は複数を満たす組み合わせ医薬キット。
【請求項11】
前記化合物Iの構造は下記に示される通りであることを特徴とする、PIK3CA突然変異の癌を治療及び/又は予防するための化合物I又はその薬学的に許容される塩。
【化2】
(ただし、前記PIK3CA突然変異の癌は、請求項1~8のいずれか一項に記載された通りである。)
【請求項12】
患者に治療有効量の化合物I又はその薬学的に許容される塩を投与することを特徴とする、PIK3CA突然変異の癌の治療及び/又は予防方法。
【化3】
(ただし、前記PIK3CA突然変異の癌は、請求項1~8のいずれか一項に記載された通りである。)
【請求項13】
前記方法は更に、患者がPIK3CA遺伝子突然変異を有するかどうかを検出するステップを含むことを特徴とする、請求項12に記載のPIK3CA突然変異の癌の治療及び/又は予防方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は出願日が2021年1月18である中国特許出願2021100617618の優先権を主張する。本出願は上記の中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は生物医学の技術分野に関し、具体的には、本発明はピリド[1,2-a]ピリミジノン類似体の使用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
現在、悪性腫瘍は人の生命と健康を大きく脅かす疾患の1つであり、その罹患率及び死亡率は年々増加しており、癌による人の死亡率は心疾患・脳血管疾患に次ぐ第2位となっている。発癌の本質は、細胞の生理機能を調節する分子シグナルが伝達過程で異常を生じ、細胞の正常な生理機能が障害され、無限に増殖することである。細胞シグナル伝達は、腫瘍の発生、発展、再発及び転移と密接に関連している。腫瘍治療用の通常の細胞毒性薬剤は一般に、選択性が低く、副作用が強く、薬剤耐性が低いなどの欠点があり、これは抗腫瘍薬物の小分子標的薬物の研究方向への移行を促進している。
【0004】
PI3K-AKT-mTORは、細胞の成長、分裂、生存及び生殖に重要な細胞周期制御の重要な経路であり、その過渡的な活性化は様々な腫瘍の発生、発達、生存、移動に関与している。PI3K(ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ、phosphatidylinositol 3-kinase)、AKT及びmTOR(mammalian target of rapamycin)はこの経路の重要な分子であるため、抗腫瘍治療の標的となり、PI3K又はmTORの特異的な阻害剤はすでに販売されており、これらの2つの分子の二重阻害剤は、理論的には、より優れた抗腫瘍効果を発揮する可能性がある。
【0005】
PF-05212384(PKI-587)は、ファイザーによって開発されたPI3K及びmTORの二重標的阻害剤であり、現在第II相臨床試験段階にある。エベロリムス(Everolimus)は、ノバルティス社が開発した経口mTOR単一標的阻害剤であり、商品名はAfinitorであり、2009年3月にFDAにより販売が承認された。国際的にエベロリムスは、進行性腎細胞癌(RCC)、結節性硬化症関連上衣下巨細胞星状細胞腫(TSC-SEGA)及び腎血管筋脂肪腫(TSC-AML)、進行性膵神経内分泌腫瘍(pNET)、閉経後エストロゲン受容体陽性/HER-2陰性の進行乳癌(BC)などの腫瘍の複数の適応症に対して承認されている。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、化合物又はその薬学的に許容される塩が、PIK3CA突然変異の癌に対して良好な抗腫瘍活性を有し、例えば、PIK3CA突然変異の乳癌、PIK3CA突然変異の卵巣癌、PIK3CA突然変異の子宮内膜癌、PIK3CA突然変異の子宮頸癌及びPIK3CA突然変異の膀胱癌の1つ又は複数に対して良好な抗腫瘍活性を有するピリド[1,2-a]ピリミジノン類似体の使用を提供することである。
【0007】
本発明は、医薬の製造における、構造が下記式に示される通りである化合物I又はその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0008】
【0009】
前記医薬は、PIK3CA突然変異の癌の治療及び/又は予防に使用される。
【0010】
ただし、前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の乳癌であってもよい。
【0011】
前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の卵巣癌であってもよい。
【0012】
前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の子宮内膜癌であってもよい。
【0013】
前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の子宮頸癌であってもよい。
【0014】
前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の膀胱癌であってもよい。
【0015】
本発明において、前記医薬は経口剤形で提供される。
【0016】
本発明において、前記医薬は錠剤で提供される。
【0017】
前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、PIK3CA突然変異の卵巣明細胞癌であってもよく、例えば、PIK3CA突然変異の左卵巣明細胞癌である。
【0018】
前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、転移を有するPIK3CA突然変異の卵巣癌であってもよく、前記転移は肝転移であってもよい。
【0019】
前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、一次治療方法又は二次治療方法が無効な卵巣癌であってもよい。
【0020】
前記PIK3CA突然変異の子宮頸癌は、PIK3CA突然変異の子宮頸部扁平上皮癌であってもよい。
【0021】
前記PIK3CA突然変異の子宮頸癌は、転移を有するPIK3CA突然変異の子宮頸癌であってもよく、前記転移はリンパ及び/又は肺であってもよい。前記リンパは、左鎖骨上リンパ及び/又は後腹膜リンパであってもよい。
【0022】
前記PIK3CA突然変異の子宮頸癌は、一次治療方法、二次治療方法又は三次治療方法が無効な子宮頸癌であってもよい。
【0023】
本発明はまた、PIK3CA突然変異の癌を治療及び/又は予防するための、構造が下記に示される通りである化合物I又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0024】
【0025】
ただし、前記PIK3CA突然変異の癌は前記のいずれか1つのスキームに記載された通りである。
【0026】
本発明は、患者に治療有効量の前記化合物I又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、PIK3CA突然変異の癌を治療及び/又は予防する方法を提供する。前記PIK3CA突然変異の癌は前記のいずれか1つのスキームに記載された通りである。
【0027】
医薬の製造における、前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の使用又は前記PIK3CA突然変異の癌を治療及び/又は予防する方法において、前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の投与量は、対象者/患者の体重に従って投与してもよく、好ましくは、前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の投与量は、0.1~2.0mg/回であり、例えば:0.1mg/回、0.2mg/回、0.3mg/回、0.4mg/回、0.5mg/回、0.6mg/回、0.7mg/回、0.8mg/回、0.9mg/回、1.0mg/回、1.1mg/回、1.2mg/回、1.3mg/回、1.4mg/回、1.5mg/回、1.6mg/回、1.7mg/回、1.8mg/回、1.9mg/回又は2.0mg/回である。
【0028】
前記使用又は前記PIK3CA突然変異の癌の治療及び/又は予防方法において、前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の投与頻度は、1回/日又は2回/日であってもよい。
【0029】
前記使用又は前記PIK3CA突然変異の癌の治療及び/又は予防方法において、前記化合物I又はその薬学的に許容される塩は経口投与してもよい。
【0030】
好ましくは、前記使用又は前記癌の治療及び/又は予防方法において、前記化合物I又はその薬学的に許容される塩を経口投与し、投与量は0.1~2.0mg/回であり、例えば、0.1mg/回、0.4mg/回、0.5mg/回、0.6mg/回、0.7mg/回、0.9mg/回又は1.1mg/回であり、投与頻度は1回/日又は2回/日である。
【0031】
前記使用又は前記PIK3CA突然変異の癌の治療及び/又は予防方法において、更に、患者がPIK3CA遺伝子突然変異を有するかどうかを検出するステップを含んでもよい。
【0032】
本発明はまた、医薬キットAと医薬キットBを含む、組み合わせ医薬キットを提供する。
【0033】
ここで、前記医薬キットAはPIK3CA遺伝子突然変異を検出する試薬を含み、前記医薬キットBは化合物I又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0034】
好ましくは、前記医薬キットAと医薬キットBの投与時間は任意の順序又は前記医薬キットにおける前記医薬キットAを最初に投与する。
【0035】
好ましくは、前記医薬キットAにおいて、前記PIK3CA遺伝子突然変異検出試薬は、癌患者がPIK3CA遺伝子突然変異を有しているかどうかを検出するために使用され、例えば、前記癌患者は、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌及び膀胱癌の1つ又は複数を患っている患者である。
【0036】
好ましくは、前記医薬キットBにおいて、前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の含有量は治療有效量である。
【0037】
好ましくは、前記医薬キットBは更に薬学的に許容される助剤を含む。
【0038】
好ましくは、前記医薬キットBにおいて、前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の投与量及び投与頻度は前記のいずれか1つのスキームに記載された通りである。
【0039】
好ましくは、前記組み合わせ医薬キットはPIK3CA突然変異の癌を治療及び/又は予防するために使用され、前記PIK3CA突然変異の癌は前記のいずれか1つのスキームに記載された通りである。
【0040】
別途に説明しない限り、本明細書で用いられる以下の用語及び連語は以下の意味を含む。1つの特定の用語又は連語は、特別に定義されない場合、不確定又は不明瞭ではなく、普通の定義として理解されるべきである。本明細書で商品名が出た場合、相応の商品又はその活性成分を指す。
【0041】
本明細書で用いられる「薬学的許容される」は、それらの化合物、材料、組成物及び/又は剤形に対するもので、これらは信頼できる医学判断の範囲内にあり、ヒト及び動物の組織との接触に適し、毒性、刺激性、アレルギー反応又はほかの問題又は合併症があまりなく、合理的な利益/リスク比に合う。
【0042】
用語「薬学に許容される塩」とは、本発明の化合物と比較的に無毒で、薬学的に許容される酸又は塩基で製造された塩を指す。本発明の化合物に比較的に酸性の官能基が含まれる場合、単独の溶液又は適切な不活性溶媒において十分な量の薬学的に許容される塩基でこれらの化合物の中性の形態と接触することで塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、ビスマス塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩などが含まれるが、これらに限定されない。本発明で化合物に比較的塩基性の官能基が含まれる場合、単独の溶液又は、適切な不活性溶媒において十分な量の薬学的に許容される酸をこれらの化合物の中性形態と接触することで酸付加塩を得ることができる。前記薬学的に許容される酸は、無機酸を含み、前記無機酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、リン酸、亜リン酸、硫酸などが含まれるが、これらに限定されない。前記薬学的に許容される酸は、有機酸を含み、前記有機酸は、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、イソニコチン酸、酸性クエン酸、オレイン酸、タンニン酸、パントテン酸、酒石酸水素、アスコルビン酸、ゲンチジン酸、フマル酸、グルコン酸、糖酸、ギ酸、エタンスルホン酸、パモ酸(即ち、4,4’-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸)、アミノ酸(グルタミン酸、アルギニンなど)などが含まれるが、これらに限定されない。本発明の化合物に比較的酸性及び比較的塩基性の官能基を含む場合、塩基付加塩又は酸付加塩に転換することができる。具体的には、Berge et al., “Pharmaceutical Salts”, Journal of Pharmaceutical Science 66: 1-19 (1977)、又は、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use (P. Heinrich Stahl and Camille G. Wermuth, ed., Wiley-VCH, 2002)を参照することができる。
【0043】
用語「治療」とは、治療療法を指す。特定の疾患に関して、治療とは、(1)疾患又は症状の1つ又は複数の生物学的表現を緩和すること、(2)(a)疾患につながる又は疾患を引き起こす生物学的カスケードの1つ又は複数のポイント又は(b)疾患の1つ又は複数の生物学的表現を干渉すること、(3)疾患に関連する1つ又は複数の症状、影響又は副作用、又は疾患又はその治療に関連する1つ又は複数の症状、影響又は副作用の改善、又は(4)疾患又は疾患の1つ又は複数の生物学的表現を減少することを指す。
【0044】
用語「予防」とは、疾患又は障害を獲得又は発症するリスクを低減することを指す。
【0045】
用語「治療有効量」とは、患者に投与された場合に、本願に記載の疾患又は症状を効果的に治療するために十分な化合物の量を指す。「治療有効量」は、化合物、疾患及びその重症度、ならびに治療される患者の年齢に応じて変更されるが、当業者は必要に応じて調整することができる。
【0046】
用語「薬学的に許容される助剤」とは、医薬品の製造及び処方の調整に使用される賦形剤及び付加剤を指し、有効成分を除く、薬物製剤に含まれるすべての物質を指す。詳細については、中華人民共和国薬局方2020 I-IV、又は、Handbook of Pharmaceutical Excipients(Raymond C Rowe, 2009 Sixth Edition)を参照することができる。
【0047】
用語「患者」とは、本発明の実施例に従って、当該化合物を投与する予定であるか、既に投与された任意の動物、好ましくは、哺乳動物であり、最も好ましくは、ヒトである。用語「哺乳動物」は、任意の哺乳動物を含む。哺乳動物には、牛、馬、羊、豚、猫、犬、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、ヒトなどが含まれるが、これらに限定されなく、ヒトが最も好ましい。
【0048】
前記好ましい条件は、当技術分野の通常の知識を違反しない限り、任意に組み合わせて、本発明の各々の好ましい実施例を得ることができる。
【0049】
本発明で使用される試薬及び原料は市販品として入手できる。
【0050】
本発明の積極的な進歩効果は、化合物Iが、PIK3CA突然変異の乳癌、PIK3CA突然変異の卵巣癌、PIK3CA突然変異の子宮頸癌、PIK3CA突然変異の子宮内膜癌及びPIK3CA突然変異の膀胱癌の1つ又は複数に対して良好な抗腫瘍活性を有する。
【0051】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕ヒト乳癌BT-474異種移植片腫瘍に対する化合物Iの体内薬効結果である。
【0052】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例の形態によってさらに本発明を説明するが、これによって本発明を前記実施例の範囲内に限定するわけではない。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常の方法及び条件、或いは商品の説明書に従って選ばれた。
【0053】
下記の実施例における化合物Iは
【0054】
【0055】
を指し、ピリド[1,2-a]ピリミジノン類似体である。
【0056】
実施例1 体外でのPIK3CA突然変異体キナーゼ活性に対する化合物Iの阻害効果のIC50試験
1.実験材料と方法
主な試薬:ヒトPI3K p110α/p85α(Promegaから購入し、カタログ番号:V1721)、ヒトPI3K p110α(E542K)/p85α(Milliporeから購入し、カタログ番号:14-782)、ヒトPI3K p110α(E545K)/p85α(Milliporeから購入し、カタログ番号:14-783)及びヒトPI3K p110α(H1047R)/p85α(Milliporeから購入し、カタログ番号:14-792)
実験方法:
1)化合物の調製、化合物Iの開始濃度は100nMであり、10個濃度を3倍に順次に希釈し、試験プレートに移した。
【0057】
2)ヒトPI3K p110α/p85α、ヒトPI3K p110α(E542K)/p85α、ヒトPI3K p110α(E545K)/p85α又はヒトPI3K p110α(H1047R)/p85αと試験緩衝液(10μMのホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸及びmg/ATP)を培養した。ATP溶液を加えて反応を開始させ、30分間培養した。
【0058】
3)30分間培養した後、停止溶液を加えて反応を停止させた。停止溶液にはEDTA、ビオチン化ホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸が含まれている。
【0059】
4)ユウロピウムタグ付きの抗GSTモノクローナル抗体、GSTタグ付きのGRP1 PHドメイン及びストレプトアビジンアロフィコシアニン(Streptavidin allophycocyanin)を含む、検出緩衝液を加えた。
【0060】
5)プレートを読み取り、式HTRF=10000×(Em665nm/Em620nm)に従って、HTRF値を計算した。Gra phPad Prism 5.0ソフトウェアを使用し、非線形回帰モデルを使用してS型用量-生存率曲線を描き、IC50値を計算した。
【0061】
2.実験結果
【0062】
【0063】
表1の実験結果から、化合物Iは、PI3Kαキナーゼに対して強い阻害効果(IC50=1nM)有することだけではなく、3つの代表的な突然変異体(E542K、H1047R及びE545K)に対しても野生型と同様の阻害効果を有することが分かる。
【0064】
実施例2 CTG法によるPIK3CA突然変異の乳癌細胞株における化合物IのIC50の測定
1.実験材料と方法
(1)細胞株
【0065】
【0066】
(2)試薬
1)FBS(ウシ胎児血清)(ExCellから購入し、製品番号:FND500);
2)DMEM培地(Gibcoから購入し、製品番号:C11995500BT);
3)Insulin(Gibcoから購入し、製品番号:EPX010-12003-901);
4)RPMI1640培地(Hycloneから購入し、製品番号:SH30809.01);
5)MEM培地(Hycloneから購入し、製品番号:SH30024.01)。
【0067】
(3)試料と陽性対照品
試料:化合物I;
陽性対照品:Cisplatin、分子量:300.05;溶媒:PBS(リン酸緩衝液);保存条件:2~8℃;サプライヤー:Qilu Pharmaceutical。
【0068】
(4)CTG方法で化合物の細胞増殖IC50を測定した。
【0069】
ステップ1:指数増殖期にある細胞を回収し、Vi-Cell XR細胞カウンターで生細胞をカウントした。培地で細胞懸濁液を適切な温度に調節した。96ウェル細胞プレートの各ウェルに90μLの細胞懸濁液を加え、最終の細胞濃度は1500~6000細胞/ウェルであった。
【0070】
ステップ2:化合物Iの投与開始濃度は3μMであり、対照薬物Cisplatinの投与開始濃度は100μMであり、3倍で連続希釈し、合計9個濃度勾配及び1つのDMSO対照であり、各ウェルのDMSOの最終濃度は0.1%であり、37℃、5%のCO2インキュベータで72時間培養した。
【0071】
ステップ3:72時間薬物処理した後、CTG操作説明書に従って、各ウェルに予め室温に融解して平衡化したCTG溶液50μL(培養体積の1/2)を加え、マイクロプレートシェーカーで2分間均一に混合し、室温に10分間置き、Envision2104プレートリーダーで蛍光シグナル値を測定した。
【0072】
(5)データ分析
細胞生存率は、式:Vsample/Vvehicle control×100%で計算した。ここで、Vsampleは薬物処理群の測定値であり、Vvehicle controlは溶媒対照群の平均値である。GraphPad Prism 5.0ソフトウェアを使用し、非線形回帰モデルを使用してS型用量-生存率曲線を描き、IC50値を計算した。
【0073】
2.実験結果
【0074】
【0075】
表3の実験結果から、化合物IがT47D及びBT-474腫瘍細胞に対して50%の阻害效果を達成した時に阻害剤の濃度が1μM未満であることが分かる。
【0076】
実施例3 CTG法によるPIK3CA突然変異の子宮頸癌細胞株における化合物IのIC50の測定
1.実験材料と方法
(1)細胞株
【0077】
【0078】
(2)試薬
1)FBS(ウシ胎児血清)(ExCellから購入し、製品番号:FND500);
2)RPMI1640培地(Hycloneから購入し、製品番号:SH30809.01);
3)McCoy’s 5A培地(Gibcoから購入し、製品番号:12330-031);
4)MEM培地(Hycloneから購入し、製品番号:SH30024.01);
5)MEM NEAA(Gibcoから購入し、製品番号:11140-050);
6)ピルビン酸ナトリウム(Gibcoから購入した)。
【0079】
(3)試料と陽性対照品
試料:化合物I;
陽性対照品:
1)Alpelisib、分子量:441.47;溶媒:DMSO;溶解後の保存条件:-20℃;サプライヤー:Shanghai TOPSCIENCE Biochemical Technology Co., Ltd.、CAS号:1217486-61-7;
2)Cisplatin、分子量:300.05;溶媒:PBS(リン酸緩衝液);保存条件:2~8℃;サプライヤー:Qilu Pharmaceutical。
【0080】
(4)CTG方法で化合物細胞増殖IC50を測定した。
【0081】
ステップ1:指数増殖期にある細胞を回収し、Vi-Cell XR細胞カウンターで生細胞をカウントした。培地で細胞懸濁液を適切な温度に調節した。96ウェル細胞プレートの各ウェルに90μLの細胞懸濁液を加え、最終の細胞濃度は1500~6000細胞/ウェルであった。
【0082】
ステップ2:化合物I及び対照薬物Alpelisibの投与開始濃度は3μMであり、対照薬物Cisplatinの投与開始濃度は100μMであり、3倍で連続希釈し、合計9個濃度勾配及び1つのDMSO対照であり、各ウェルのDMSOの最終濃度は0.1%であり、37℃、5%のCO2インキュベータで72時間培養した。
【0083】
ステップ3:薬物処理72時間後、CTG操作説明書に従って、各ウェルに予め室温に融解して平衡化したCTG溶液50μL(培養体積の1/2)を加え、マイクロプレートシェーカーで2分間均一に混合し、室温に10分間置き、Envision2104プレートリーダーで蛍光シグナル値を測定した。
【0084】
(5)データ分析
細胞生存率は、式:Vsample/Vvehicle control×100%で計算した。ここで、Vsampleは薬物処理群の測定値であり、Vvehicle controlは溶媒対照群の平均値である。GraphPad Prism 5.0ソフトウェアを使用し、非線形回帰モデルを使用してS型用量-生存率曲線を描き、IC50値を計算した。
【0085】
2.実験結果
【0086】
【0087】
結論:化合物Iは、PIK3CA突然変異を持つ子宮頸癌細胞の増殖を有意に阻害し、半減阻害濃度は0.015~0.180μMであったが、対照化合物Alpelisibは基本的に効果がなく、2つの細胞株における半減阻害濃度は最大濃度より3μM高く、更に、化合物Iは対照化合物Cisplatinよりも、PIK3CA突然変異の子宮頸癌細胞に対して優れた増殖阻害を示した。
【0088】
実施例4 CTG法によるPIK3CA突然変異の膀胱癌細胞株における化合物IのIC50の測定
1.実験材料と方法
(1)細胞株
【0089】
【0090】
(2)試薬
1)FBS(ウシ胎児血清)(ExCellから購入し、製品番号:FND500);
2)MEM培地(Hycloneから購入し、製品番号:SH30024.01);
3)MEM NEAA(Gibcoから購入し、製品番号:11140-050);
4)ピルビン酸ナトリウム(Gibcoから購入した)。
【0091】
(3)試料と陽性対照品
試料:化合物I;
陽性対照品:
1)Erdafitinib、分子量:446.55;溶媒:DMSO;溶解後の保存条件:-8℃;サプライヤー:Shanghai TOPSCIENCE Biochemical Technology Co., Ltd.、CAS号:1346242-81-6;
2)Cisplatin、分子量:300.05;溶媒:PBS(リン酸緩衝液);保存条件:2~8℃;サプライヤー:Qilu Pharmaceutical。
【0092】
(4)CTG方法で化合物の細胞増殖IC50を測定した。
【0093】
ステップ1:指数増殖期にある細胞を回収し、Vi-Cell XR細胞カウンターで生細胞をカウントした。培地で細胞懸濁液を適切な温度に調節した。96ウェル細胞プレートの各ウェルに90μLの細胞懸濁液を加え、最終の細胞濃度は1500~6000細胞/ウェルであった。
【0094】
ステップ2:化合物I及び対照薬物Erdafitinibの投与開始濃度は3μMであり、対照薬物Cisplatinの投与開始濃度は100μMであり、3倍で連続希釈し、合計9個濃度勾配及び1つのDMSO対照であり、各ウェルのDMSOの最終濃度は0.1%であり、37℃、5%のCO2インキュベータで72時間培養した。
【0095】
ステップ3:薬物処理72時間後、CTG操作説明書に従って、各ウェルに予め室温に融解して平衡化したCTG溶液50μL(培養体積の1/2)を加え、マイクロプレートシェーカーで2分間均一に混合し、室温に10分間置き、Envision2104プレートリーダーで蛍光シグナル値を測定した。
【0096】
(5)データ分析
細胞生存率は、式:Vsample/Vvehicle control×100%で計算した。ここで、Vsampleは薬物処理群の測定値であり、Vvehicle controlは溶媒対照群の平均値である。GraphPad Prism 5.0ソフトウェアを使用し、非線形回帰モデルを使用してS型用量-生存率曲線を描き、IC50値を計算した。
【0097】
2.実験結果
【0098】
【0099】
結論:化合物Iは、PIK3CA突然変異を持つ膀胱癌細胞の増殖を有意に阻害し、半減阻害濃度は1μM未満であったが、対照化合物Erdafitinibは基本的に効果がなく、2つの細胞株においての半減阻害濃度は最大濃度より3μM高く、更に、化合物Iは対照化合物Cisplatinよりも、PIK3CA突然変異の膀胱癌細胞に対して優れた増殖阻害を示した。
【0100】
実施例5 CTG法によるPIK3CA突然変異の子宮内膜癌細胞株における化合物IのIC50の測定
1.実験材料と方法
(1)細胞株
【0101】
【0102】
(2)試薬
1)FBS(ウシ胎児血清)(ExCellから購入し、製品番号:FND500);
2)McCoy’s 5A培地(Gibcoから購入し、製品番号:12330-031);
3)MEM培地(Hycloneから購入し、製品番号:SH30024.01)。
【0103】
(3)試料と陽性対照品
試料:化合物I;
陽性対照品:Alpelisib、分子量:441.47;溶媒:DMSO;溶解後の保存条件:-20℃;サプライヤー:Shanghai TOPSCIENCE Biochemical Technology Co., Ltd.、CAS号:1217486-61-7;
(4)CTG方法による化合物細胞増殖IC50の測定
ステップ1:指数増殖期にある細胞を回収し、Vi-Cell XR細胞カウンターで生細胞をカウントした。培地で細胞懸濁液を適切な温度に調節した。96ウェル細胞プレートの各ウェルに90μLの細胞懸濁液を加え、最終の細胞濃度は1500~6000細胞/ウェルであった。
【0104】
ステップ2:化合物I及び対照薬物Alpelisibの投与開始濃度は3μMであり、3倍で連続希釈し、合計9個濃度勾配及び1つのDMSO対照であり、各ウェルのDMSOの最終濃度は0.1%であり、37℃、5%のCO2インキュベータで72時間培養した。
【0105】
ステップ3:薬物処理72時間後、CTG操作説明書に従って、各ウェルに予め室温に融解して平衡化したCTG溶液50μL(培養体積の1/2)を加え、マイクロプレートシェーカーで2分間均一に混合し、室温に10分間置き、Envision2104プレートリーダーで蛍光シグナル値を測定した。
【0106】
(5)データ分析
細胞生存率は、式:Vsample/Vvehicle control×100%で計算した。ここで、Vsampleは薬物処理群の測定値であり、Vvehicle controlは溶媒対照群の平均値である。GraphPad Prism 5.0ソフトウェアを使用し、非線形回帰モデルを使用してS型用量-生存率曲線を描き、IC50値を計算した。
【0107】
2.実験結果
【0108】
【0109】
結論:化合物Iは、PIK3CA突然変異を持つ子宮内膜癌細胞の増殖を有意に阻害し、半減阻害濃度は0.1μM以内であったが、対照化合物Alpelisibは2uMを超えた。対照薬と比較して、化合物IはPIK3CA突然変異の子宮内膜癌に対して有意な治療効果を示した。
【0110】
実施例6.ヒト乳癌BT-474皮下異種移植腫瘍BALB/cヌードマウスモデルにおける試験薬物の生体内薬効研究
実験目的:ヒト乳癌BT-474皮下異種移植腫瘍BALB/cヌードマウスモデルにおける試験薬物の生体内薬効を研究するためである。
【0111】
実験デザイン
(1)細胞培養:ヒト乳癌BT-474細胞を体外単層培養し、培養条件はHybri-Care培地に10%のウシ胎児血清、100U/mlのペニシリン(Gibcoから購入)及び100μg/mlのストレプトマイシン(Gibcoから購入)を加え、37℃、5%のCO2で培養した。週に2回、トリプシン-EDTA(Gibcoから購入し、製品番号:25200-072)を使用して通常の消化処理をし、継代培養した。細胞の飽和度が80%~90%に達する場合、細胞を収集してカウントし、接種した。
【0112】
(2)動物:BALB/cヌードマウス、メス、6週齢、体重16~18g。Shanghai Sippe-Bk Lab Animal Co., Ltd.から提供された。
【0113】
(3)対照品
PF05212384及びエベロリムスはShanghai TOPSCIENCE Biochemical Technology Co., Ltd.から購入した。
【0114】
(4)腫瘍接種:各マウスの右背部に0.2ml(1×107)BT-474細胞(マトリゲルを加え、体積比1:1)を皮下接種し、平均腫瘍体積が122mm3に達した時点で群を分けて投与した。実験の群分け及び投与方法は下記の表10を参照する。
【0115】
【0116】
(4)体内薬効結果:
図1及び表11に示される通りである。
【0117】
ヒト乳癌BT-474異種移植モデルにおける化合物Iの体内有効性である。20日間投与した後、溶媒対照群と比較して、化合物Iは0.05mg/kg、0.1mg/kg及び0.3mg/kgの投与量で、T/Cはそれぞれ:44%、23%及び16%であり、TGIはそれぞれ77%、109%及び118%であり、この結果からヒト乳癌BT-474異種移植モデにおいて、化合物Iは0.05、0.1及び0.3mg/kgの投与量でいずれも有意な抗腫瘍効果を有し、用量依存的な傾向がある。参照薬PF05212384は20mg/kg群(T/C=15%、TGI=134%、p=0.006)で溶媒対照群と比較して有意な抗腫瘍効果を有した。エベロリムス(Everolimus)、5mg/kg(T/C=19%、TGI=113%、p<0.001)は、溶媒対照群と比較して有意な抗腫瘍効果を有し、0.3mg/kgの投与量の化合物Iは、5mg/kgのエベロリムス(Everolimus)と同様な抗腫瘍効果を有した。
【0118】
【0119】
結論:化合物IはPIK3CA突然変異の乳癌腫瘍の増殖を有意に阻害し、0.1mg/kg、0.3mg/kgの非常に低用量の群で腫瘍縮小を引き起こす可能性があり、対照化合物エベロリムス(5mg/kg、高用量)と同様な効果があった。
【0120】
実施例7 臨床試験における、PIK3CA突然変異を有する子宮頸癌患者に対する化合物Iの有効性データ。
【0121】
症例データ:対象者1、女性、50歳、2019年5月5日に「広範子宮全摘出術+骨盤リンパ節郭清術」を受け、術後の病理報告で子宮頸部扁平上皮癌と示され、術後2019年5月~8月に術後補助療法を実施し、2020年8月25日に画像検査で再発が判明され、一次治療、2020年11月10日に画像検査で疾患の進行が判明され、二次治療、2021年1月4日に画像検査で疾患の進行が判明され、三次治療、2021年6月まで疾患の進行後、2021年6月18にインフォームドコンセントを得て、YakangboヒトPIK3CA遺伝子変異検出キットを使用して遺伝子検査を実行し、遺伝子検査により、腫瘍がPIK3CA突然変異を持っていることが示され、「PIK3CA突然変異を有する婦人科腫瘍の治療に関する化合物Iの臨床研究」に参加し、2021年7月1日から2021年10月21日の第2回腫瘍評価期間中、化合物Iを含む錠剤を1.1mgの投与量で、1日1回単回投与し、1.1mgの投与量には、2錠の0.5mgの化合物Iと1錠の0.1mgの化合物Iが含まれた。ベースラインの標的病変は、リンパ(左鎖骨上)26mm、右肺の下葉17mm、左肺の下葉14mm、リンパ(後腹膜)21mm、全直径78mmであり、2021年8月に最初の腫瘍評価が実行され、標的病変は、リンパ(左鎖骨上)13mm、右肺の下葉13mm、左肺の下葉8mm、リンパ(後腹膜)13mm、全直径47mmであり、ベースラインと比較して腫瘍縮小率は39.7%であり、有効性評価はPR(部分的に緩和し、標的病変の最大直径の合計が≧30%減少し、少なくとも4週間維持された)であり、2021年10月21日に2回目の腫瘍評価が実行され標的病変はリンパ(左鎖骨上)で14mm、右肺の下葉14mm、左肺の下葉NE(存在するが測定不可、5mm未満)、リンパ(後腹膜)12mm、全直径45mm未満であり、ベースラインと比較して腫瘍縮小率は42.3%を超え、有効性評価はPR(部分的に緩和し、標的病変の最大直径の合計が≧30%減少し、少なくとも4週間維持された)であった。
【0122】
結論:化合物Iは、臨床試験において、PIK3CA突然変異の子宮頸癌に対して治療効果を示し、対象者1には放射線療法、化学療法、化学療法と血管新生阻害剤などの三次治療が無効であったため、治療の選択肢がなくなった。化合物Iを投与した後、治療効果が有意であり、腫瘍はPRまで縮小した(部分的に緩和し、標的病変の最大直径の合計が≧30%減少し、少なくとも4週間維持した)。
【0123】
実施例8 臨床試験における、PIK3CA突然変異を有する卵巣癌患者に対する化合物Iの有効性データ。
【0124】
症例データ:対象者2、女性、44歳、2020年4月27日に「卵巣癌の細胞縮小手術(子宮全摘+二重付属器+大網+虫垂切除+右骨盤リンパ節生検)」を受け、術後の病理報告で左卵巣の明細胞癌が指摘され、一次治療方法で治療を受け、最後の化学療法日は2020年10月11日であり、2020年10月27日のCT検査で肝転移の可能性が判明され、2020年11月23日に「肝腫瘍切除+腹腔病変切除+横隔膜部分切除+横隔膜修復+腸管癒着溶解」を実行し、術後の病理学報告では、肝臓に明細胞癌の転移が示され、患者は2021年1月に二次治療を受け、2021年4月8日にMRIで腫瘍の進行が示された。2021年4月23日にインフォームドコンセントを得て、次世代シークエンシングに基づく過去の遺伝子検出報告により、腫瘍がPIK3CA突然変異を保有していることが示され、「PIK3CA突然変異を有する婦人科腫瘍の治療に関する化合物Iの臨床研究」に参加し、2021年5月11日から2021年8月31日の第2回腫瘍評価期間中、化合物Iを含む錠剤を1.1mgの投与量で、1日1回単回投与し、1.1mgの投与量には、2錠の0.5mgの化合物Iと1錠の0.1mgの化合物Iが含まれ、ベースラインの標的病変は、腹膜の右側にある傍結腸溝(最長直径は35mm)であり、腹膜小網腔の最長直径は47mmであり、合計直径は82mmであり、2021年7月6日に最初の腫瘍評価が実行され、標的病変は(1)腹膜の右側にある傍結腸溝(測定不能、直径5mmで計算)、腹膜小網腔の最長直径は34mmであり、合計直径は39mmであり、ベースラインと比較して腫瘍縮小率は52.4%であり、有効性評価はPR(部分的に緩和し、標的病変の最大直径の合計が≧30%減少し、少なくとも4週間維持された)であり、2021年8月30日に2回目の腫瘍評価が実行され、標的病変は(1)腹膜の右側にある傍結腸溝(測定不能、直径5mmで計算)、(2)腹膜小網腔の最長直径は28mmであり、合計直径は33mmであり、ベースラインと比較して腫瘍縮小率は59.8%であり、有効性評価はPR(部分的に緩和し、標的病変の最大直径の合計が≧30%減少し、少なくとも4週間維持された)であった。
【0125】
結論:化合物Iは、臨床試験において、PIK3CA突然変異の卵巣癌に対して治療効果を示し、対象者2は二次標準治療後薬剤耐性を示したため、治療の選択肢がなくなった。化合物Iを投与した後、治療効果が有意であり、腫瘍はPRまでになり(部分的に緩和し、標的病変の最大直径の合計が≧30%減少し、少なくとも4週間維持した)、継続して縮小した(腫瘍は59.8%縮小した)。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【
図1】ヒト乳癌BT-474異種移植片腫瘍に対する化合物Iの体内薬効結果である。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物Iの構造が下記式に示される通りであることを特徴とする、医薬の製造における化合物I又はその薬学的に許容される塩
を含む薬学的組成物の使用であって、
【化1】
前記医薬は、PIK3CA突然変異の癌の治療及び/又は予防に使用される、使用。
【請求項2】
前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の乳癌であることを特徴とする、請求項1に記載
の使用。
【請求項3】
前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の卵巣癌であることを特徴とする、請求項1に記載
の使用。
【請求項4】
前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の子宮内膜癌であることを特徴とする、請求項1に記載
の使用。
【請求項5】
前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の子宮頸癌であることを特徴とする、請求項1に記載
の使用。
【請求項6】
前記PIK3CA突然変異の癌は、PIK3CA突然変異の膀胱癌であることを特徴とする、請求項1に記載
の使用。
【請求項7】
前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、
(1)前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、PIK3CA突然変異の卵巣明細胞癌であり、
(2)前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、転移を有するPIK3CA突然変異の卵巣癌であり、
(3)前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、一次治療方法又は二次治療方法が無効な卵巣癌である、
条件の1つ又は複数を満た
すことを特徴とする、請求項3に記載
の使用。
【請求項8】
前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、
(
I)前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、PIK3CA突然変異の左卵巣明細胞癌であり、
(II)前記PIK3CA突然変異の卵巣癌は、肝転移を有するPIK3CA突然変異の卵巣癌である、
条件の1つ又は複数を満たすことを特徴とする、
請求項3に記載の使用。
【請求項9】
前記PIK3CA突然変異の子宮頸癌は、
(1)前記PIK3CA突然変異の子宮頸癌は、PIK3CA突然変異の子宮頸部扁平上皮癌であり、
(2)前記PIK3CA突然変異の子宮頸癌は、転移を有するPIK3CA突然変異の子宮頸癌であり、
(3)前記PIK3CA突然変異の子宮頸癌は、一次治療方法、二次治療方法又は三次治療方法が無効な子宮頸癌である、
条件の1つ又は複数を満た
すことを特徴とする、請求項5に記載
の使用。
【請求項10】
前記転移は、リンパ及び/又は肺であ
ることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記リンパは、左鎖骨上リンパ及び/又は後腹膜リンパであることを特徴とする、
請求項10に記載の使用。
【請求項12】
(1)前記医薬は経口剤形で提供され、
(2)前記医薬は錠剤で提供され、
(3)前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の投与量は、0.1~2.0mg/回であり
、
(4)前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の投与頻度は、1回/日又は2回/日である、
条件の1つ又は複数を満たすことを特徴とする、請求項1~
11のいずれか一項に記載
の使用。
【請求項13】
前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の投与量は、0.1mg/回、0.2mg/回、0.3mg/回、0.4mg/回、0.5mg/回、0.6mg/回、0.7mg/回、0.8mg/回、0.9mg/回、1.0mg/回、1.1mg/回、1.2mg/回、1.3mg/回、1.4mg/回、1.5mg/回、1.6mg/回、1.7mg/回、1.8mg/回、1.9mg/回又は2.0mg/回であることを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
医薬キットAと医薬キットBを含む、組み合わせ医薬キットであって、
前記医薬キットAはPIK3CA遺伝子突然変異を検出する試薬を含み、前記医薬キットBは化合物I又はその薬学的に許容される塩を含
む、組み合わせ医薬キット;
【化2】
【請求項15】
前記組み合わせ医薬キットは、
(1)前記医薬キットAと医薬キットBの投与時間は任意の順序又は前記医薬キットにおける前記医薬キットAを最初に投与し、
(2)前記医薬キットAにおいて、前記PIK3CA遺伝子突然変異検出試薬は、癌患者がPIK3CA遺伝子突然変異を有しているかどうかを検出するために使用され
、
(3)前記医薬キットBにおいて、前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の含有量は治療有效量であり、
(4)前記医薬キットBは更に薬学的に許容される助剤を含み、
(5)前記医薬キットBにおいて、前記化合物I又はその薬学的に許容される塩の投与量及び投与頻度は請求項
12又は13に記載された通りである、
(6)前記組み合わせ医薬キットはPIK3CA突然変異の癌を治療及び/又は予防するために使用され、前記PIK3CA突然変異の癌は請求項1~
11のいずれか一項に記載された通りである、
条件の1つ又は複数を満たす組み合わせ医薬キット
であることを特徴とする、請求項14に記載の組み合わせ医薬キット。
【請求項16】
前記医薬キットAにおいて、前記PIK3CA遺伝子突然変異検出試薬は、癌患者がPIK3CA遺伝子突然変異を有しているかどうかを検出するために使用され、前記癌患者は、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮頸癌及び膀胱癌の1つ又は複数を患っている患者であることを特徴とする、請求項15に記載の組み合わせ医薬キット。
【国際調査報告】