(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】HBV感染の処置のためのFXRアゴニストとIFNの相乗効果
(51)【国際特許分類】
A61K 38/21 20060101AFI20240115BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240115BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240115BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240115BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240115BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20240115BHJP
A61K 31/4162 20060101ALI20240115BHJP
A61K 31/569 20060101ALI20240115BHJP
A61K 31/42 20060101ALI20240115BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240115BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240115BHJP
C07K 14/56 20060101ALN20240115BHJP
【FI】
A61K38/21
A61K45/00
A61K45/06
A61P31/20
A61P43/00 121
A61K31/55
A61K31/4162
A61K31/569
A61K31/42
A61K31/496
A61K47/60
C07K14/56 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543018
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2022050589
(87)【国際公開番号】W WO2022152770
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520299784
【氏名又は名称】ウエヌイグレックオ・ファーマ
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】504217063
【氏名又は名称】サントル レオン ベラール
(71)【出願人】
【識別番号】503161615
【氏名又は名称】ウニベルシテ クロード ベルナール リヨン 1
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・ダルテイユ
(72)【発明者】
【氏名】ピエトロ・スカルファロ
(72)【発明者】
【氏名】ジャッキー・フォンダーシャー
(72)【発明者】
【氏名】エリーズ・ロイ
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィド・デュランテル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076BB31
4C076CC35
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA19
4C084AA23
4C084BA01
4C084DA22
4C084MA02
4C084MA63
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086BC67
4C086CB11
4C086CB22
4C086DA09
4C086GA02
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC75
4H045AA30
4H045BA57
4H045CA40
4H045DA16
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、B型肝炎の処置のためのFXRアゴニストとインターフェロンとの相乗的な組み合わせに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
B型肝炎ウイルス感染症の処置のための、インターフェロンアルファ(IFN-α)と組み合わせた使用のためのファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストであって、FXRアゴニスト及びIFN-αが、HBV複製を減少させる相乗効果を得るように使用され、FXRアゴニストがEYP001でない、FXRアゴニスト。
【請求項2】
LJN452(Tropifexor)、LMB763(Nidufexor)、GS-9674(Cilofexor)、PX-102(PX-20606)、PX-104(Phenex 104)、OCA(Ocaliva)、EDP-297、EDP-305、TERN-101(LY2562175)、MET-409、MET-642、GW4064、WAY362450(ツロフェキソレートイソプロピル)、フェキサラミン、AGN242266(AKN-083)、及びBAR502又はその任意の薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1に記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【請求項3】
Tropifexor、Nidufexor、Ocaliva及びGW4064、又はその任意の薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1に記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【請求項4】
1日1回投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【請求項5】
1日2回投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【請求項6】
IFN-αが、IFN-α2a、IFN-α2b又はそのペグ化形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【請求項7】
IFN-αがペグ化IFN-α2a及びペグ化IFN-α2bである、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【請求項8】
IFN-αが治療量以下の量で投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【請求項9】
IFN-αが週1回皮下経路によって投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【請求項10】
治療量以下の量で投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【請求項11】
慢性B型肝炎感染の処置のための使用のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【請求項12】
FXRアゴニスト及びIFN-αが、5、6、7又は8週間から52週間の期間中に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【請求項13】
FXRアゴニスト及びIFN-αが、少なくとも1つの追加の活性成分と組み合わせて使用される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【請求項14】
少なくとも1つの追加の活性成分が、L-ヌクレオシド、デオキシグアノシン類似体及びヌクレオシドホスホネートからなる群から選択されるポリメラーゼ阻害剤である、請求項13に記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【請求項15】
少なくとも1つの追加の活性成分が、ラミブジン、テルビブジン、エムトリシタビン、エンテカビル、アデホビル及びテノホビルからなる群から選択される、請求項13に記載の使用のためのFXRアゴニスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B型肝炎感染を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎は、広範なワクチン接種プログラムにもかかわらず、3億5,000万人を超える慢性感染者を抱え、依然として世界的な公衆衛生上の重大な問題である。慢性B型肝炎は、肝硬変やがんを含む生命を脅かす合併症に進行する。現在の治療レジメンは、長期処置(例えば、ポリメラーゼ阻害剤、生涯にわたる;最大1年のペグ化インターフェロン)であり、それらはウイルス保有宿主を標的としないため、HBVを治癒できない。HBVの機能的治癒は、深刻な満たされていない医療ニーズのままである。
【0003】
慢性B型肝炎(CHB)の処置の第一の目標は、HBV複製を永続的に抑制し、肝疾患を予防又は改善することである。現在、CHB感染の処置のために、従来のインターフェロン(IFN)、ペグ化インターフェロン、及び直接の抗ウイルス剤の7つの薬剤が利用可能である。直接の抗ウイルス剤(ヌクレオシド/ヌクレオチド類似体)は、L-ヌクレオシド(ラミブジン、テルビブジン及びエムトリシタビン);デオキシグアノシン類似体(エンテカビル)及びヌクレオシドホスホネート(アデホビル及びテノホビル)の3つのクラスに属し、主に連鎖停止剤としてHBV DNA複製を直接妨げる。インターフェロン処置の主要な限界は、主な副作用、HBV DNA抑制率の低さ、ALT正常化率の低さである。直接の抗ウイルス剤による処置の主要な限界は、耐性の発現;長期の生涯にわたる治療を必要とする治療を中止した後のHBV複製の跳ね返り、HBsAgクリアランス率の非常な低さ、長期の生涯にわたる治療による有害事象のリスクの増加である。重要なことに、現在の直接の抗ウイルス剤は、プレゲノムウイルスRNAのゲノムDNAへの逆転写を抑制する。したがって、それらは、ウイルスが肝細胞に侵入した後に形成される共有結合で閉じた環状DNA(cccDNA)の形成に下流で作用する。cccDNAは、追加のミニ染色体として細胞核に存在し、ウイルスのmRNAに転写され、肝細胞が分裂した場合に娘細胞に遺伝される。現在の直接の抗ウイルス剤は、HBV cccDNA保有宿主及びウイルス遺伝子の発現には影響を及ぼさないか、又はほとんど影響を及ぼさない。したがって、現在利用可能な処置は最適以下であり、重度の副作用と関連し得る。
【0004】
国際公開第2015/036442号は、HBV複製を減少させるためのFXRアゴニストの影響力を開示している。EYP001は、良好な忍容性プロファイルを有する合成の非ステロイド性非胆汁酸FXRアゴニストである。EYP001は、慢性B型肝炎を有する患者のフェーズIbにおいて現在評価されている経口用の生物学的に利用可能な低分子化合物である。本質的にウイルス複製を標的とした生涯にわたる治癒基準とは対照的に、EYP001は、cccDNA(「ウイルス保有宿主」)を標的とし、したがって、HBVの真の治癒を目指している。Erkenら(2018年、Journal of Hepatology、68巻、補遺1、S488~S489)は、EYP001が慢性B型肝炎患者においてHBVウイルス量を低減させることを開示している。Jolyら(2017年、Journal of Hepatology、66巻、補遺1、SAT-158)は、EYP001及びヌクレオシド類似体が健康な個人に安全に使用することができ、細胞培養におけるHBV低減/排除に相加的な効果を有することを開示している。
【0005】
IFN及びヌクレオシド/ヌクレオチド類似体を用いたいくつかの併用療法が研究されている:すなわち、IFN-α、並びにラミブジン、アデホビル、テルブビリン、エンテカビル及びテノホビルから選択される薬剤(Wooら、2017年、Ann Transl Med、5巻、159頁)。ほとんどすべての組み合わせでは、何らかの利益は示されなかった。実際、HBsAg (B型肝炎表面抗原)消失率が10%未満のパーセンテージと高いのは、テノホビルとの組み合わせのみである。しかしながら、このようにHBsAgの消失率が低いため、治癒は困難のままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2015/036442号
【特許文献2】国際公開第03/016288号
【特許文献3】米国特許第6,005,086号
【特許文献4】欧州特許出願公開第1392714号
【特許文献5】欧州特許出願公開第1568706号
【特許文献6】特開第2005281155号
【特許文献7】米国特許出願公開第20030203939号
【特許文献8】米国特許出願公開第2005080064号
【特許文献9】米国特許出願公開第2006128764号
【特許文献10】米国特許出願公開第20070015796号
【特許文献11】米国特許出願公開第20080038435号
【特許文献12】米国特許出願公開第20100184809号表
【特許文献13】米国特許出願公開第20110105475号
【特許文献14】米国特許第6,984,560号
【特許文献15】国際公開第2000037077号
【特許文献16】国際公開第200040965号
【特許文献17】国際公開第200076523号
【特許文献18】国際公開第2003015771号
【特許文献19】国際公開第2003015777号
【特許文献20】国際公開第2003016280号
【特許文献21】国際公開第2003016288号
【特許文献22】国際公開第2003030612号
【特許文献23】国際公開第2003016288号
【特許文献24】国際公開第2003080803号
【特許文献25】国際公開第2003090745号
【特許文献26】国際公開第2004007521号
【特許文献27】国際公開第2004048349号
【特許文献28】国際公開第2004046162号
【特許文献29】国際公開第2004048349号
【特許文献30】国際公開第2005082925号
【特許文献31】国際公開第2005092328号
【特許文献32】国際公開第2005097097号
【特許文献33】国際公開第2007076260号
【特許文献34】国際公開第2007092751号
【特許文献35】国際公開第2007140174号
【特許文献36】国際公開第2007140183号
【特許文献37】国際公開第2008002573号
【特許文献38】国際公開第2008025539号
【特許文献39】国際公開第2008025540号
【特許文献40】国際公開第200802573号
【特許文献41】国際公開第2008051942号
【特許文献42】国際公開第2008073825号
【特許文献43】国際公開第2008157270号
【特許文献44】国際公開第2009005998号
【特許文献45】国際公開第2009012125号
【特許文献46】国際公開第2009027264号
【特許文献47】国際公開第2009080555号
【特許文献48】国際公開第2009127321号
【特許文献49】国際公開第2009149795号
【特許文献50】国際公開第2010028981号
【特許文献51】国際公開第2010034649号
【特許文献52】国際公開第2010034657号
【特許文献53】国際公開第2017218330号
【特許文献54】国際公開第2017218379号
【特許文献55】国際公開第2017201155号
【特許文献56】国際公開第2017201152号
【特許文献57】国際公開第2017201150号
【特許文献58】国際公開第2017189652号
【特許文献59】国際公開第2017189651号
【特許文献60】国際公開第2017189663号
【特許文献61】国際公開第2017147137号
【特許文献62】国際公開第2017147159号
【特許文献63】国際公開第2017147174号
【特許文献64】国際公開第2017145031号
【特許文献65】国際公開第2017145040号
【特許文献66】国際公開第2017145041号
【特許文献67】国際公開第2017133521号
【特許文献68】国際公開第2017129125号
【特許文献69】国際公開第2017128896号
【特許文献70】国際公開第2017118294号
【特許文献71】国際公開第2017049172号
【特許文献72】国際公開第2017049176号
【特許文献73】国際公開第2017049173号
【特許文献74】国際公開第2017049177号
【特許文献75】国際公開第2016173397号
【特許文献76】国際公開第2016173493号
【特許文献77】国際公開第2016168553号
【特許文献78】国際公開第2016161003号
【特許文献79】国際公開第2016149111号
【特許文献80】国際公開第2016131414号
【特許文献81】国際公開第2016130809号
【特許文献82】国際公開第2016097933号
【特許文献83】国際公開第2016096115号
【特許文献84】国際公開第2016096116号
【特許文献85】国際公開第2016086115号
【特許文献86】国際公開第2016073767号
【特許文献87】国際公開第2015138986号
【特許文献88】国際公開第2018152171号
【特許文献89】国際公開第2018170165号
【特許文献90】国際公開第2018170166号
【特許文献91】国際公開第2018170173号
【特許文献92】国際公開第2018170182号
【特許文献93】国際公開第2018170167号
【特許文献94】国際公開第2017078928号
【特許文献95】国際公開第2014184271号
【特許文献96】国際公開第2013007387号
【特許文献97】国際公開第2012087519号
【特許文献98】国際公開第2011020615号
【特許文献99】国際公開第2010069604号
【特許文献100】国際公開第2013037482号
【特許文献101】米国特許出願公開第2017275256号
【特許文献102】国際公開第2005080064号
【特許文献103】国際公開第2018190643号
【特許文献104】国際公開第2018215070号
【特許文献105】国際公開第2018215610号
【特許文献106】国際公開第2018214959号
【特許文献107】国際公開第2018081285号
【特許文献108】国際公開第2018067704号
【特許文献109】国際公開第2019007418号
【特許文献110】国際公開第2018059314号
【特許文献111】国際公開第2017218337号
【特許文献112】国際公開第2020231917号
【特許文献113】国際公開第2020211872号
【特許文献114】国際公開第2020168143号
【特許文献115】国際公開第2020168148号
【特許文献116】国際公開第2020156241号
【特許文献117】国際公開第2020150136号
【特許文献118】国際公開第2020114307号
【特許文献119】国際公開第2020061118号
【特許文献120】国際公開第2020061114号
【特許文献121】国際公開第2020061112号
【特許文献122】国際公開第2020061113号
【特許文献123】国際公開第2020061116号
【特許文献124】国際公開第2020061117号
【特許文献125】国際公開第2020011146号
【特許文献126】国際公開第2020001304号
【特許文献127】国際公開第2019160813号
【特許文献128】国際公開第2019120088号
【特許文献129】国際公開第2019118571号
【特許文献130】国際公開第2019089667号
【特許文献131】国際公開第2019089672号
【特許文献132】国際公開第2019089665号
【特許文献133】国際公開第2019089664号
【特許文献134】国際公開第2019089670号
【特許文献135】国際公開第2017/049172号
【特許文献136】国際公開第2017/049176号
【特許文献137】国際公開第2017/049173号
【特許文献138】国際公開第2017/049177号
【特許文献139】国際公開第2018/170165号
【特許文献140】国際公開第2018/170166号
【特許文献141】国際公開第2018/170173号
【特許文献142】国際公開第2018/170182号
【特許文献143】国際公開第2018/170167号
【特許文献144】PCT国際公開第00/37077号
【特許文献145】米国特許出願公開第2007/0015796号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Erkenら(2018年、Journal of Hepatology、68巻、補遺1、S488~S489)
【非特許文献2】Jolyら(2017年、Journal of Hepatology、66巻、補遺1、SAT-158)
【非特許文献3】Wooら、2017年、Ann Transl Med、5巻、159頁
【非特許文献4】Formanら、Cell、1995年、81巻、687~693頁
【非特許文献5】Maloneyら(J. Med. Chem. 2000年、43巻:2971~2974頁)
【非特許文献6】J. Med. Chem. 2009年、52巻、904~907頁
【非特許文献7】Lecuyseら(Methods Mol. Biol. Clifton NJ 640巻、57~82頁(2010年))
【非特許文献8】Ladnerら(Antimicrob. Agents Chemother. 41巻、1715~1720頁(1997年))
【非特許文献9】Hantz, O.ら、J. Gen. Virol. 90巻、127~135頁(2009年)
【非特許文献10】Gripon, P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 99巻、15655~15660頁(2002年)
【非特許文献11】Alfaiate, D.ら、Antiviral Res. 136巻、19~31頁(2016年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、HBV感染、具体的にはCHB感染の処置目標を達成するためには、より良好な治療法が常に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、本発明者らは、FXRアゴニストが、B型肝炎の処置のために、特にウイルス複製のマーカーであるプレゲノムウイルスRNA、及び慢性B型肝炎の血清マーカーであるコア関連抗原であるHBcrAgにおいて、インターフェロンと相乗効果を有することを特定した。より詳細には、EYP001(Vonafexor)及びIFNは、cccDNA転写の低減において相乗効果を有する。これらの効果は、非常に短期間のわずか4週間の処置後に観察されたが、一方、EYP001及びIFNのいずれも単独で使用した場合は、同用量で、同期間以降に有意な影響は示さなかった。更に、驚くべきことに、相乗効果は、EYP001を1日1回投与した場合、1日1回と同用量で1日2回投与した場合と比較して、少なくとも2倍強である。同様に、相乗効果は、別のFXRアゴニスト、すなわちGW4064を用いた場合に、細胞内HBV RNAレベル、並びにHBeAg及びHBsAg分泌において観察され、他のFXRアゴニスト、すなわちTropifexor、Nidufexor、及びOcaliva(OCA)を用いた場合に、HBV感染した肝細胞の2つの異なるモデルのHBsAg分泌において観察された。
【0010】
したがって、本発明は、B型肝炎感染、特に慢性B型肝炎の処置における使用のためのFXRアゴニストとIFNとの相乗的な組み合わせに関する。
【0011】
本発明は、B型肝炎ウイルス感染、特に慢性B型肝炎の処置のためのインターフェロンアルファ(IFN-α)又はそのペグ化形態と組み合わせた使用のためのFXRアゴニスト又はそれを含む医薬組成物であって、FXRアゴニスト及びIFN-αがHBV複製を減少させる相乗効果を得るように使用される、FXRアゴニスト又はそれを含む医薬組成物に関する。場合により、FXRアゴニストはEYP001ではない。
【0012】
また、インターフェロンアルファ(IFN-α)又はそのペグ化形態と組み合わせた、B型肝炎ウイルス感染、特に慢性B型肝炎の処置のための薬剤を製造するためのFXRアゴニスト又はそれを含む医薬組成物の使用であって、FXRアゴニスト及びIFN-αがHBV複製を減少させる相乗効果を得るように使用される、使用に関する。更に、必要とする対象において、B型肝炎ウイルス感染、特に慢性B型肝炎を処置する方法であって、治療有効量又は治療量以下の量のFXRアゴニストを投与する工程、及び治療有効量又は治療量以下の量のインターフェロンアルファ(IFN-α)又はそのペグ化形態を投与する工程を含み、FXRアゴニスト及びIFN-αがHBV複製を減少させる相乗効果を得るように投与される、方法に関する。場合により、FXRアゴニストはEYP001ではない。
【0013】
場合により、FXRアゴニストは、LJN452(Tropifexor)、LMB763(Nidufexor)、GS-9674(Cilofexor)、PX-102(PX-20606)、PX-104(Phenex 104)、OCA(Ocaliva)、EDP-297、EDP-305、TERN-101(LY2562175)、MET-409、MET-642、GW4064、WAY362450(ツロフェキソレートイソプロピル)、フェキサラミン、AGN242266(AKN-083)、及びBAR502からなる群から選択される。特定の態様では、FXRアゴニストは、LJN452(Tropifexor)、LMB763(Nidufexor)、GS-9674(Cilofexor)、PX-102(PX-20606)、PX-104(Phenex 104)、OCA(Ocaliva)、EDP-297、EDP-305、TERN-101(LY2562175)、MET-409、MET-642、GW4064、WAY362450(ツロフェキソレートイソプロピル)、フェキサラミン、AGN242266(AKN-083)、及びBAR502、又はその任意の薬学的に許容される塩からなる群から選択される。より特異的な態様では、FXRアゴニストは、Tropifexor、Nidufexor、Ocaliva及びGW4064、又はその任意の薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0014】
場合により、FXRアゴニストは、治療量以下の量で投与されるべきである。
【0015】
一態様では、FXRアゴニストは、1日1回投与される。別の態様では、FXRアゴニストは、1日2回投与される。
【0016】
一態様では、IFN-αは、IFN-α2a、IFN-α2b、又はそのペグ化形態である。好ましくは、IFN-α又はそのペグ化形態は、週1回、皮下経路によって投与される。場合により、IFN-α又はそのペグ化形態は、治療量以下の量で投与することができる。
【0017】
1つの特定の態様では、FXRアゴニストとIFN-α又はそのペグ化形態の両方は、治療量以下の量で投与される。
【0018】
一態様では、FXRアゴニスト及びIFN-α又はそのペグ化形態は、5、6、7又は8週間から52週間の期間中に投与される。
【0019】
一態様では、FXRアゴニスト及びIFN-α又はそのペグ化形態は、少なくとも1つの追加の活性成分と組み合わせて使用される。より具体的には、少なくとも1つの追加の活性成分は、L-ヌクレオシド、デオキシグアノシン類似体及びヌクレオシドホスホネートからなる群から選択されるポリメラーゼ阻害剤である。非常に特異的な態様では、少なくとも1つの追加の活性成分は、ラミブジン、テルビブジン、エムトリシタビン、エンテカビル、アデホビル及びテノホビルからなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】慢性的に感染した処置歴のないHBV患者における、インターフェロンと組み合わせた、FXRアゴニストであるEYP001a又はプラセボの4週間の抗HBV処置経過後、HBV pgRNA(log10コピー/mL)はベースラインから変化することを示すグラフである。PBO:プラセボ。ペグ-IFN:ペグ化インターフェロンアルファ2a。150 BID:150mg、1日2回。300 QD:300mg、1日1回。pgRNA:プレゲノムリボ核酸。黒色カラムは、29日目の処置終了時の変化である。灰色カラムは、35日目の処置終了から1週間後の変化である。*p=0.04
【
図2】慢性的に感染した処置歴のないHBV患者における、インターフェロンと組み合わせた、FXRアゴニストであるEYP001a又はプラセボの4週間の抗HBV処置経過後、HBcrAg(log10コピー/mL)はベースラインから変化することを示すグラフである。PBO:プラセボ。ペグ-IFN:ペグ化インターフェロンアルファ2a。HBcrAg:B型肝炎コア関連抗原。黒色カラムは、29日目の処置終了時の変化である。灰色カラムは、35日目の処置終了から1週間後の変化である。
【
図3】感染した初代ヒト肝細胞(PHH)におけるHBV複製におけるFXRアゴニストとIFN-アルファの相乗作用を示す図である。新しく調製し、播種したPHHを250GE/細胞の感染の多重度でHBVに感染させた。感染後4~10日目に、細胞を1又は10μM、+/-IFN-アルファを100IU/mL、又はベヒクル(NT)、又はIFN-アルファを100IU/mL単独で処置した。細胞内HBV RNA、ウイルス血症、並びに分泌抗原(HBsAg及びHBeAg)を定量するために、細胞及び上清を10日目に回収した。結果は、3つの生物学的反復を用いて行われた1回の実験の平均±SDである。
【
図4】HBV感染した初代ヒト肝細胞(PHH)のHBsAg分泌におけるFXRアゴニストとIFN-アルファの相乗作用を示す図である。新しく調製し、播種したPHHを250GE/細胞の感染の多重度でHBVに感染させた。感染後4~10日目に、細胞を10μMのVonafexor、又は10μMのNidufexor、又は1μMのTropifexor、又は10μMのOCA、又は10μMのGW4064、100IU/mLの+/-IFN-アルファ(IFN)、又はベヒクル、又は100IU/mLのIFNαで単独で処置した。分泌されたHBs抗原(HBsAg)を定量するために、10日目に上清を回収した。結果は、3つの反復を用いて行われた5回の実験の平均±SEMである。
【
図5】HBV感染したdHepaRG細胞のHBsAg分泌におけるFXRアゴニストとIFN-アルファの相乗作用を示す図である。分化したHepaRG(dHepaRG)細胞を250GE/細胞のMOIでHBVに感染させた。HBV感染後7~14日目に、細胞を10μMのVonafexor、又は10μMのNidufexor、又は1μMのTropifexor、又は10μMのOCA、又は10μMのGW4064、25IU/mLの+/-IFN-アルファ、又はベヒクル、又は25IU/mLのIFN-アルファ単独で処置した。分泌されたHBsAg(HBsAg)を定量するために、14日目に上清を回収した。結果は、3つの反復を用いて行われた3回の実験の平均±SEMである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、FXRアゴニストとIFN-αの併用処置が、驚くべきことに、慢性B型肝炎において相乗効果をもたらすことを観察した。したがって、FXRアゴニストとIFN-αの相乗的な組み合わせを用いることによって、患者に対し治療効果を得ることができる。
【0022】
定義
用語「FXR」とは、ファルネソールの超生理学的レベルによって活性化される核受容体であるファルネソイドX受容体を指す(Formanら、Cell、1995年、81巻、687~693頁)。FXRはまた、NR1H4、レチノイドX受容体相互作用タンパク質14(RIP14)及び胆汁酸受容体(BAR)としても公知である。保存されたDNA結合ドメイン(DBD)及びC末端リガンド結合ドメイン(LBD)を含むFXRは、一次胆汁酸ケノデオキシコール酸(CDCA)並びにそのタウリン及びグリシンコンジュゲートを含む種々の天然に存在する胆汁酸(BA)に結合し、それによって活性化されるようになる。活性化されると、FXR-RXRヘテロ二量体は標的遺伝子のプロモーター領域に結合し、胆汁酸ホメオスタシスに関与するいくつかの遺伝子の発現を制御する。肝臓のFXR標的遺伝子は2つの主要なグループに分けられる。第1のグループは、肝臓の胆汁酸の放出を増加させ、それらの合成を減少させることによって肝臓の胆汁酸濃度を減少させるように機能する。リン脂質輸送タンパク質PLTP及びアポリポタンパク質などのFXR標的遺伝子の第2のグループは、血清中のリポタンパク質レベルを調節し、血漿トリグリセリド濃度を減少させる。FXR制御遺伝子のより詳細なリストについては、例えば、国際公開第03/016288号、22~23頁を参照されたい。米国特許第6,005,086号は、哺乳動物FXRタンパク質をコードする核酸配列を開示している。FXRのためのヒトポリペプチド配列は、受入番号NM_005123、Q96RI1、NP_005114、AAM53551、AAM53550、AAK60271の下で、ヌクレオチド及びタンパク質のデータベースに寄託される。
【0023】
本明細書において、用語「FXRアゴニスト」は、当該技術分野において一般的な意味を有し、特に、ファルネソイドX受容体(FXR)を標的化及び結合することによって機能し、Maloneyら(J. Med. Chem. 2000年、43巻:2971~2974頁)に記載されるアッセイにおいてバックグラウンドよりも少なくとも40%高くFXRを活性化する化合物を指す。
【0024】
一部の実施形態では、本発明のFXRアゴニストは、選択的FXRアゴニストである。本明細書で使用される場合、用語「選択的FXRアゴニスト」とは、LXRα、LXRβ、PPARα、PPARγ、PPARδ、RXRα、RARγ、VDR、PXR、ERα、ERβ、GR、AR、及びPRからなる核受容体のパネルのうちの1つ以上、理想的には実質的にすべてに対して有意な交差反応性を示さないFXRアゴニストを指す。有意な交差反応性を決定する方法は、J. Med. Chem. 2009年、52巻、904~907頁に記載されている。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「処置」、「処置する」又は「処置すること」は、疾患の治療、予防(prevention)、予防(prophylaxis)及び遅延などの患者の健康状態を改善することを意図した任意の行為を指す。ある種の実施形態では、このような用語は、疾患又はそれに関連する症状の改善又は根絶を指す。他の実施形態では、この用語は、このような疾患を有する対象への1つ又は複数の治療剤の投与に起因する、疾患の拡散又は悪化を最小限にすることを指す。より詳細には、用語「処置すること」又は「処置」は、組成物を投与することによって、HBV感染を軽減し、疾患の発症を阻止し、及び/又はHBVを排除することを意味する。
【0026】
より詳細には、B型肝炎感染、特に慢性B型肝炎の処置は、HBV複製の減少によって示される。HBV複製は、対象におけるHBeAgレベル、HBsAgレベル、HBcrAgレベル、プレゲノムRNA(HBV pgRNA)レベル、プレコアRNAレベル、弛緩環状DNA(HBV rcDNA)レベル、HBV cccDNAレベル又はHBV DNAレベルのうちの少なくとも1つを決定することによって評価することができる。HBsAg消失及びセロコンバージョンは、一般的に臨床的治癒の目標である。減少することとは、HBeAgレベル、HBsAgレベル、HBcrAgレベル、プレゲノムRNA(HBV pgRNA)レベル、プレコアRNAレベル、弛緩環状DNA(HBV rcDNA)レベル、HBV cccDNAレベル及びHBV DNAレベルのうちの少なくとも1つにおけるレベルが、処置を行わない場合と比較して減少することを意味する。
【0027】
HBV複製を減少させることとは、好ましくは、HBV複製が、処置を行わない場合のHBV複製と比較して、10分の1又は100分の1以下に減少することを意味する。例えば、HBV複製は、HBV DNAレベルを決定することによって評価することができ、このレベルは、EYP001が存在しない場合のHBV複製と比較して、10分の1又は100分の1以下に減少する。或いは、HBV cccDNAレベルは、処置を行わない場合と比較して、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45又は50%減少する。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「対象」、「個体」又は「患者」は互換性があり、大人、小児、新生児及び出生前段階のヒトを含むヒトを指す。特定の態様では、対象又は患者は、B型肝炎感染、具体的には慢性B型肝炎を患う。
【0029】
用語「分量」、「量」、及び「用量」は、本明細書において互換的に使用され、分子の絶対的定量を指すことができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「治療効果」とは、疾患又は障害の出現若しくは発症を予防若しくは遅延させ、或いは疾患又は障害の影響を治癒又は減弱させることができる、活性成分、又は本発明による医薬組成物によって誘導される効果を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「治療有効量」とは、疾患、特に感染症の有害作用を予防し、除去し又は低減する活性成分又は医薬組成物の分量を指す。投与されるべき分量は、処置されるべき対象に従って当業者によって、疾患の性質等に適合させることができることは明らかである。特に、投与の用量及びレジメンは、処置されるべき疾患の性質、病期及び重症度、並びに処置されるべき対象の体重、年齢及び全体的な健康、並びに医師の判断により変化し得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「治療量以下の量」又は「治療量以下の用量」とは、他の薬剤の非存在下で投与された場合に、対象に治療結果をもたらす投薬量よりも少ない投薬量を指す。例えば、「治療量以下の量」又は「治療量以下の用量」とは、単独で使用した場合の治療有効量、特に、同じ適応症及び同じ投与経路についての従来の治療投薬量と比較して、25、50、70、80又は90%だけ減少する投薬量を指すことができる。従来の治療投薬量は、医薬品承認機関(例えば、FDA又はEMEA)によって承認された投薬量である。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「賦形剤又は薬学的に許容される担体」とは、医薬組成物中に存在する活性成分を除く任意の成分を指す。その追加は、最終生成物に特定の一貫性又は他の物理的若しくは味覚的特性を付与することを目的とすることができる。賦形剤又は薬学的に許容される担体は、活性成分とのいかなる相互作用、具体的には化学的相互作用も欠いていなければならない。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「ペグ化形態」とは、ペグ化インターフェロンを指す。
【0035】
「相乗効果」とは、HBV複製を減少させる効果であって、各分子単独の効果の和よりも大きいものを指すことが意図される。HBV複製は、表面HBV抗原(HBsAg)、HBeAg、HBVコア関連抗原(HBcrAg)、HBV DNA、HBVプレゲノムRNA、HBVプレコアRNA及び/又はHBV cccDNAを決定することによって評価することができる。より詳細には、この効果は、プレゲノムRNA(HBV pgRNA)及び/又はB型肝炎コア関連抗原(HBcrAg)について観察される。
【0036】
併用処置
本発明は、B型肝炎ウイルス感染、特に慢性B型肝炎の処置のためのFXRアゴニストとIFNの組み合わせの使用に関する。実際に、この組み合わせは、HBVに対して相乗効果をもたらす。
【0037】
したがって、本発明は以下に関する。
- 具体的にはB型肝炎ウイルス感染、特に慢性B型肝炎の処置における使用のための、FXRアゴニスト及びIFN-α又はそのペグ化形態、並びに場合により薬学的に許容される担体及び/又は追加の活性成分を含む医薬組成物であって、FXRアゴニスト及びIFN-αが、HBV複製を減少させる相乗効果を得るように使用される医薬組成物;
- 具体的にはB型肝炎ウイルス感染、特に慢性B型肝炎の処置における、同時の、別々の又は連続した使用のための併用製剤として、FXRアゴニスト、又はそれとIFN-α又はそのペグ化形態を含む医薬組成物を含有する製造物又はキットであって、FXRアゴニスト及びIFN-αが、HBV複製を減少させる相乗効果を得るように使用され、場合により、少なくとも1つの追加の活性成分を含むことができる、製造物又はキット;
- 具体的にはB型肝炎ウイルス感染、特に慢性B型肝炎の処置における、同時の、別々の又は連続した使用のための、FXRアゴニスト、又はそれとIFN-α又はそのペグ化形態を含む医薬組成物を含む併用製剤であって、FXRアゴニスト及びIFN-αが、HBV複製を減少させる相乗効果を得るように使用され、場合により、少なくとも1つの追加の活性成分を含むことができる、併用製剤;
- B型肝炎ウイルス感染、特に慢性B型肝炎の処置における使用のためのFXRアゴニストを含み、IFN-α又はそのペグ化形態を用いた処置と組み合わせる医薬組成物であって、FXRアゴニスト及びIFN-αが、HBV複製を減少させる相乗効果を得るように使用され、場合により、少なくとも1つの追加の活性成分を含むことができる、医薬組成物;
- B型肝炎ウイルス感染、特に慢性B型肝炎の処置における使用のためのIFN-α又はそのペグ化形態を含み、FXRアゴニストを用いた処置と組み合わせる医薬組成物であって、FXRアゴニスト及びIFN-αが、HBV複製を減少させる相乗効果を得るように使用され、場合により、少なくとも1つの追加の活性成分を含むことができる、医薬組成物;
- B型肝炎ウイルス感染、特に慢性B型肝炎の処置のための医薬を製造するためのFXRアゴニストを含み、IFN-α又はそのペグ化形態を用いた処置と組み合わせる医薬組成物の使用であって、FXRアゴニスト及びIFN-αが、HBV複製を減少させる相乗効果を得るように使用され、場合により、医薬組成物が少なくとも1つの追加の活性成分を含むことができる、使用;
- B型肝炎ウイルス感染、特に慢性B型肝炎の処置のための医薬を製造するためのIFN-α又はそのペグ化形態を含み、FXRアゴニストを用いた処置と組み合わせる医薬組成物の使用であって、FXRアゴニスト及びIFN-αが、HBV複製を減少させる相乗効果を得るように使用され、場合により、医薬組成物が少なくとも1つの追加の活性成分を含むことができる、使用;
- B型肝炎ウイルス感染、特に慢性B型肝炎の処置のための医薬を製造するための、FXRアゴニスト及びIFN-α又はそのペグ化形態、並びに場合により、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の使用であって、FXRアゴニスト及びIFN-αが、HBV複製を減少させる相乗効果を得るように使用され、場合により、医薬組成物が少なくとも1つの追加の活性成分を含むことができる、使用;
- a)FXRアゴニスト、b)IFN-α又はそのペグ化された形態、及び薬学的に許容される担体を含む有効量の医薬組成物を投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるB型肝炎ウイルス感染、特に慢性B型肝炎の処置のための方法であって、FXRアゴニスト及びIFN-αが、HBV複製を減少させる相乗効果を得るように使用され、場合により、医薬組成物が少なくとも1つの追加の活性成分を含むことができ、又は方法が少なくとも1つの追加の活性成分の投与を更に含むことができる、方法。
- FXRアゴニストを含む有効量の医薬組成物、及びIFN-α又はそのペグ化形態を含む有効量の医薬組成物を投与する工程を含む、それを必要とする対象におけるB型肝炎ウイルス感染、特に慢性B型肝炎を処置する方法であって、FXRアゴニスト及びIFN-αが、HBV複製を減少させる相乗効果を得るように使用され、場合により、医薬組成物の1つが少なくとも1つの追加の活性成分を含むことができ、又は方法が少なくとも1つの追加の活性成分の投与を更に含むことができる、方法。
【0038】
FXRアゴニストは、当業者に周知である。
【0039】
例えば、当業者は、以下の刊行物(それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)からFXRアゴニストを容易に同定することができる。
(参考資料)
【0040】
典型的には、FXRアゴニストは、ステロイドFXRアゴニスト及び非ステロイドFXRアゴニストのクラスを含む。
【0041】
本発明のある特定の実施態様では、FXRアゴニストは、以下の刊行物:欧州特許出願公開第1392714号;欧州特許出願公開第1568706号;特開第2005281155号;米国特許出願公開第20030203939号;米国特許出願公開第2005080064号;米国特許出願公開第2006128764号;米国特許出願公開第20070015796号;米国特許出願公開第20080038435号;米国特許出願公開第20100184809号;米国特許出願公開第20110105475号;米国特許第6,984,560号;国際公開第2000037077号;国際公開第200040965号;国際公開第200076523号;国際公開第2003015771号;国際公開第2003015777号;国際公開第2003016280号;国際公開第2003016288号;国際公開第2003030612号;国際公開第2003016288号;国際公開第2003080803号;国際公開第2003090745号;国際公開第2004007521号;国際公開第2004048349号;国際公開第2004046162号;国際公開第2004048349号;国際公開第2005082925号;国際公開第2005092328号;国際公開第2005097097号;国際公開第2007076260号;国際公開第2007092751号;国際公開第2007140174号;国際公開第2007140183号;国際公開第2008002573号;国際公開第2008025539号;国際公開第2008025540号;国際公開第200802573号;国際公開第2008051942号;国際公開第2008073825号;国際公開第2008157270号;国際公開第2009005998号;国際公開第2009012125号;国際公開第2009027264号;国際公開第2009080555号;国際公開第2009127321号;国際公開第2009149795号;国際公開第2010028981号;国際公開第2010034649号;国際公開第2010034657号;国際公開第2017218330号;国際公開第2017218379号;国際公開第2017201155号;国際公開第2017201152号;国際公開第2017201150号;国際公開第2017189652号;国際公開第2017189651号;国際公開第2017189663号;国際公開第2017147137号;国際公開第2017147159号;国際公開第2017147174号;国際公開第2017145031号;国際公開第2017145040号;国際公開第2017145041号;国際公開第2017133521号;国際公開第2017129125号;国際公開第2017128896号;国際公開第2017118294号;国際公開第2017049172号;国際公開第2017049176号;国際公開第2017049173号;国際公開第2017049177号;国際公開第2016173397号;国際公開第2016173493号;国際公開第2016168553号;国際公開第2016161003号;国際公開第2016149111号;国際公開第2016131414号;国際公開第2016130809号;国際公開第2016097933号;国際公開第2016096115号;国際公開第2016096116号;国際公開第2016086115号;国際公開第2016073767号;国際公開第2015138986号;国際公開第2018152171号;国際公開第2018170165号、国際公開第2018170166号、国際公開第2018170173号、国際公開第2018170182号、国際公開第2018170167号;国際公開第2017078928号;国際公開第2014184271号;国際公開第2013007387号;国際公開第2012087519号;国際公開第2011020615号;国際公開第2010069604号;国際公開第2013037482号;米国特許出願公開第2017275256号;国際公開第2005080064号;国際公開第2018190643号;国際公開第2018215070号;国際公開第2018215610号;国際公開第2018214959号;国際公開第2018081285号;国際公開第2018067704号;国際公開第2019007418号;国際公開第2018059314号;国際公開第2017218337号;国際公開第2020231917号;国際公開第2020211872号;国際公開第2020168143号;国際公開第2020168148号;国際公開第2020156241号;国際公開第2020150136号;国際公開第2020114307号;国際公開第2020061118号;国際公開第2020061114号;国際公開第2020061112号;国際公開第2020061113号;国際公開第2020061116号、国際公開第2020061117号;国際公開第2020011146号;国際公開第2020001304号;国際公開第2019160813号;国際公開第2019120088号;国際公開第2019118571号;国際公開第2019089667号;国際公開第2019089672号;国際公開第2019089665号;国際公開第2019089664号;国際公開第2019089670号に開示されているFXR調節因子として作用する低分子化合物から選択される。
【0042】
ある態様では、FXRアゴニストは、以下の特許出願:国際公開第2017/049172号、国際公開第2017/049176号、国際公開第2017/049173号、国際公開第2017/049177号、国際公開第2018/170165号、国際公開第2018/170166号、国際公開第2018/170173号、国際公開第2018/170182号、及び国際公開第2018/170167号に開示されている任意のFXRアゴニストであり得る。
【0043】
FXRアゴニストの具体例には、限定されないが、EYP001、GW4064(PCT国際公開第00/37077号又は米国特許出願公開第2007/0015796号)、6-エチル-ケノデオキシコール酸、特に3α,7α-ジヒドロキシ7α-ジヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン-24-オイル酸、INT-747(OCA)とも呼ばれる;INT-777;6-エチル-ウルソデオキシコール酸、INT-1103、UPF-987、WAY-362450、MFA-1、GW9662、T0901317、フェキサラミン、3β-アジド-6α-エチル-7α-ヒドロキシ-5β-コラン-24-酸、GS-9674(Cilofexor)(Phenex Pharmaceuticals AG社)、Tropifexor(LJN452)、LMB763(Nidufexor)、PX-102(PX-20606)、PX-104(Phenex 104)、EDP-297、EDP-305、TERN-101(LY2562175)、MET-409、MET-642、WAY362450、フェキサラミン、特にフェキサラミン-3(Fex-3)、AGN-242266(以前はAKN-083、Allergan)、BAR502、BAR704、PX20606、PX20350、3α,7α,11β-トリヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン-24-酸(TC-100)、6-(4-{[5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロフェニル)イソオキサゾール-4-イル]メトキシ}ピペリジン-1-イル)-1-メチル-1H-インドール-3-カルボン酸、3,6-ジメチル-1-(2-メチルフェニル)-4-(4-フェノキシフェニル)-4,8-ジヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-e][1,4]チアゼピン-7-オン;オベチコール酸、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロジヒドロフシダート、タウロデオキシコール酸、コール酸塩、グリココ酸塩、デオキシコール酸塩、タウロコール酸塩、タウロデオキシコール酸塩、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、タウロウルソデオキシコール酸、グリクルソデオキシコール酸、7-B-メチルコール酸、メチルリトコール酸、GSK-8062(CAS番号943549-47-1)が含まれる。一部の実施形態では、FXRアゴニストは、天然胆汁酸、好ましくはケノデオキシコール酸[CDCA]若しくはタウリン若しくはグリシンコンジュゲートCDCA[タウロ-CDCA若しくはグリコ-CDCA]及び天然胆汁酸の合成誘導体、好ましくは6-エチル-CDCA若しくはタウリン若しくはグリシンコンジュゲート6-エチル-CDCA、天然非ステロイド性アゴニスト、好ましくはカフェストール及びカーウェオールなどのジテルペノイド、又は合成の非ステロイド性FXRアゴニストから選択される。
【0044】
一部の実施形態では、FXRアゴニストは、オベチコール酸(Intercept Pharma社)、コール酸(CT-RS)、GS-9674(Cilofexor)(Phenex Pharmaceuticals AG社)、Tropifexor(LJN452)(Novartis Pharmaceuticals社)、LMB763(Nidufexor)、PX-102(PX-20606)、PX-104(Phenex 104)、EYP001、OCA、EDP-297、EDP-305、ステロイド性非カルボン酸FXRアゴニスト(Enanta Pharmaceuticals社)、ツロフェキソレートイソプロピル(Pfizer社)、INT-767(Intercept Pharmaceuticals社)、LY-2562175(Lilly社)、AGN-242266(以前はAKN-083、Allergan)、EP-024297(Enanta Pharmaceuticals社)、M-480(Metacrine社)、TERN-101(LY2562175)、MET-409(Metacrine社)、MET-642(Metacrine社)、BAR502、RDX-023(Ardelyx社)、GW4064、GW6046、WAY362450、カフェストール、フェキサラミン及びCAS番号1192171-69-9(国際公開第2009127321号に記載される)によって同定される化合物PXL007(EYP001又はEYP001aとも命名される)からなる群から選択される。特定の実施形態では、FXRアゴニストは、INT-747、EDP-305によって同定される化合物、ステロイド性非カルボン酸FXRアゴニスト(Enanta Pharmaceuticals社)、及びCAS番号1192171-69-9によって同定された化合物(国際公開第2009127321等に記載される)からなる群から選択される。
【0045】
特定の態様では、FXRアゴニストは、LJN452(Tropifexor)、GS-9674(Cilofexor)、LMB763(Nidufexor)、PX-102(PX-20606)、PX-104(Phenex 104)、OCA(Ocaliva)、EDP-297、EDP-305、TERN-001、MET-409、MET-642、GW4064、WAY362450(ツロフェキソレートイソプロピル)、フェキサラミン、AGN242266(AKN-083)、BAR502及びPXL007(EYP001とも命名される)からなる群から選択される。
【0046】
非常に特定の態様では、FXRアゴニストは、OCA(Ocaliva)(Intercept社)、EDP-297(Enanta社)、EDP-305(Enanta社)、GS-9674(Cilofexor)(Gilead社)、TERN-001(TERNS社)、MET-409(Metacrine社)、MET-642(Metacrine社)、LJN452(Tropifexor)(Novartis社)、LMB763 (Nidufexor)(Novartis社)、及びAGN242266(AKN-083)(Abbvie社)からなる群から選択される。
【0047】
特定の態様では、FXRアゴニストは、Table 1(表1)に開示される化合物:
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
及びその任意の薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0053】
特定の態様では、FXRアゴニストは、Tropifexor、Nidufexor、Ocaliva及びGW4064、又はその任意の薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0054】
本発明の好ましい態様では、FXRアゴニストはEYP001ではない。
【0055】
FXRアゴニストは、1日1回、2回又は3回、好ましくは1回又は2回、例えば、朝(例えば午前6時~10時)又は夕方(例えば午後6時~10時)に投与することができる。一態様では、FXRアゴニストは、1日1回投与される。別の態様では、FXRアゴニストは、1日2回投与される。毎日投与することが好ましい。しかしながら、2、3、4、5、6又は7日ごとの投与もまた考えられ得る。FXRアゴニストの1日投薬量は、1μg~1,000mg/成人/日の広範囲にわたって変化させることができる。FXRアゴニストは、経口投与、舌下投与、皮下投与、筋内投与、静脈内投与、経皮投与、局所投与又は直腸投与によって投与することができ、好ましくは経口投与することができる。
【0056】
特定の態様では、FXRアゴニストは、治療量以下の量で投与されるべきである。場合により、FXRアゴニストの投薬量は、少なくとも2、3、4又は5の倍数だけ、好ましくは少なくとも1/2又は3だけ減少させることができる。場合により、FXRアゴニストの投薬量は、0.001~200mg/日、又は50~200mg/日、又は50~100mg/日の範囲であり得る。
【0057】
特定の態様では、FXRアゴニストの投薬量は、治療有効量、特に、同じ適応症についての従来の治療用量及び単独で使用される場合の同じ投与経路と比較して、25、50、70、80又は90%だけ減少された投薬量である。
【0058】
IFN-αは、例えば、IFN-α1又はIFN-α2、例えば、IFN-α1a、IFN-α1b、IFN-α2a、IFN-α2b、IFN-α2c又はコンセンサスIFN-αであり得る。非常に特定の態様では、IFNは、IFN-α2a、IFN-α2b又はそのペグ化形態である。
【0059】
場合により、IFN-αは、コンセンサスIFN-α(例えば、INFERGEN(登録商標)、Locteron(登録商標))、IFN-α1b(例えば、HAPGEN(登録商標)、IFN-α2a(Roferon-A(登録商標)、MOR-22、Inter 2A、Inmutag、Inferon)、ペグ化IFN-α2a(例えば、PEGASYS(登録商標)、YPEG-IFNα-2a、PEG-INTRON(登録商標)、Pegaferon)、IFN-α2b(例えば、INTRON A(登録商標)、Alfarona、Bioferon、Inter 2B、citpheron、Zavinex、Ganapar等)、ペグ化IFN-α2b(例えば、Pegintron(登録商標)、Albuferon、AOP2014/P1101、Algeron、Pai Ge Bin)、及びIFN-α2c(例えば、Berofor Alpha)からなる包括的でないリストから選択される。特定の態様では、IFNは、ペグ化IFN-α2a(例えば、PEGASYS(登録商標))又はペグ化IFN-α2b(Pegintron(登録商標))である。
【0060】
一態様では、IFNα又はそのペグ化形態は、週1回皮下経路によって投与され、例えば、1μg~500μgまでの様々な投薬量、好ましくは10μg~500μg、更に好ましくは100μg~250μg、例えば100、110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200μgで投与される。
【0061】
場合により、IFNα又はそのペグ化形態は、治療量以下の量で投与することができる。
【0062】
場合により、IFNα又はそのペグ化形態及びFXRアゴニストは、治療量以下の量で投与される。
【0063】
好ましくは、FXRアゴニスト及びIFN-αを含む併用療法は、HBVの複製を減少させるのに有効である。
【0064】
FXRアゴニスト及びIFN-α(すなわち、IFN-α2a、IFN-α2b又はそのペグ化形態)の併用処置との関連で、本発明者らは、驚くべきことに、EYP001を1日1回投与した場合、1日1回と同用量で1日2回投与した場合と比較して、相乗効果が少なくとも2倍強になることを観察した。更に、本発明者らは、驚くべきことに、EYP001を1日2回ではなく、1日1回投与した場合に、掻痒症がより少ないことを観察した。したがって、特定の態様では、FXRアゴニストは1日1回投与される。
【0065】
好ましくは、組成物、投薬単位又は投薬形態は、処置されるべき患者への投薬量の対症的調節のために1μg~500又は1000mgのFXRアゴニストを含有する。
【0066】
一態様では、投薬形態は、スコア化された投薬形態であり得る。或いは、1日の投薬量は、いくつかの投薬形態を投与することによって提供することができる。
【0067】
FXRアゴニストは、薬学的に許容される賦形剤、及び場合により、生分解性ポリマーなどの持続放出マトリックスと組み合わせて、医薬組成物を形成することができる。
【0068】
「薬学的に」又は「薬学的に許容される」とは、哺乳動物、特にヒトに適宜投与した場合に、有害、アレルギー性又は他の好ましくない反応を生じない分子実体及び組成物を指す。薬学的に許容される担体又は賦形剤とは、任意のタイプの非毒性固体、半固体若しくは液体充填剤、希釈剤、封入剤又は製剤補助剤を指す。
【0069】
FXRアゴニストを含む医薬組成物は、経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所又は直腸投与、好ましくは経口投与に適しているといえる。
【0070】
FXRアゴニストは、単独で、又は別の活性成分(principle)と組み合わせて、従来の医薬支持体との混合物として、単位投与形態で投与することができる。適切な単位投与形態は、経口経路形態、例えば、錠剤、ゲルカプセル剤、散剤、顆粒剤及び経口懸濁剤又は液剤、舌下及び口腔内投与形態、エアゾール剤、植え込み注射剤、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下(subdermal)、経皮、髄腔内及び鼻腔内投与形態、並びに直腸投与形態を含む。
【0071】
好ましい実施形態では、経口投薬形態はカプセル剤又は錠剤である。場合により、経口投薬形態はスコア化された投薬形態である。場合により、投薬形態は、4つの小片、3つの小片又は2つの小片にスコア化することができる。
【0072】
場合により、処置は、2~4カ月から最長24カ月まで、例えば2~24カ月間、又は2~12カ月間、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24カ月間継続する。非常に特異的な態様では、処置は、12~52週間、好ましくは45~52週間、例えば48週間継続する。
【0073】
FXRアゴニスト及びIFN-α又はそのペグ化形態は、少なくとも1つの追加の活性成分と組み合わせて使用することができる。好ましくは、追加の活性成分は、抗ウイルス剤であり、より詳細には、HBVに対して活性を有する抗ウイルス剤である。好ましい態様では、少なくとも1つの追加の活性成分は、L-ヌクレオシド、デオキシグアノシン類似体及びヌクレオシドホスホネートからなる群から選択されるポリメラーゼ阻害剤である。非常に特異的な態様では、少なくとも1つの追加の活性成分は、ラミブジン、テルビブジン、エムトリシタビン、エンテカビル、アデホビル及びテノホビルからなる群から選択される。
【0074】
本発明の更なる態様及び利点は、以下の実施例において説明され、例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
FXRアゴニストEUYP001
HBVに慢性的に感染した患者(男性(n=39)及び女性(n=34))は、研究のパートA(n=48)における毎日の経口でのFXRアゴニストEYP001a単独療法若しくはプラセボ若しくはエンテカビル(ETV)、又はパートBにおけるインターフェロンとの組み合わせ(n=23、ペグ化IFNα2a、PEG-IFNの週1回皮下注射)、のいずれかとして4週間の処置経過を受けた。患者の特徴は、平均年齢39.7歳(範囲:19~63歳)、73人中6人がHBeAg陽性;70%の未処置;平均ベースラインHBV DNA 4.2(±1.5 SD)log10 IU/mL、HBsAg 3.5(±0.8 SD)log10 IU/mL、遺伝子型A(25)、B(8)、C(10)、D(7)及びE(4)であった。詳細なウイルス学的特徴をTable B(表3)及びTable C(表4)に要約した。全EYP001用量と関わるFXRは、C4の減少及びFGF19の増加をもたらした(データは示さない)。
【0076】
29日目の処置終了時に、400mg QDのEYP001は、平均HBsAgを-0.1 log10 IU/mL減少させた(p<0.05)。驚くべきことに、HBV複製pgRNA及びHBcrAgの初期マーカーは、EYP001をペグ-IFNと組み合わせた場合に相乗的な減少を示したが、ペグ-IFN又はEYP001単独療法と組み合わせた場合には相乗的な減少を示さなかった(Table A(表2))。平均HBV pgRNA減少は-1.7 log10コピー/mL(p<0.05)であり、平均HBcrAg減少は-0.9 log10 IU/mL(p=0.15)であったが、一方、プラセボ+Peg-IFN群は有意な減少を有しなかった(-0.2 log10コピー/mL pgRNA、-0.4 log10 IU/mL HBcrAg)。この効果は35日目、すなわち処置終了後7日目に持続した(EoT、
図1及び
図2)。BIDと比較して、より強い相乗効果がQDで観察される。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
(実施例2)
FXRアゴニストGW4064
材料及び方法
初代ヒト肝細胞
初代ヒト肝細胞(PHH)は、Lecuyseら(Methods Mol. Biol. Clifton NJ 640巻、57~82頁(2010年))において以前に記載されているように、フランスの大臣認可(AC 2013-1871、DC 2013-1870、AFNOR NF 96 900 sept 2011)を有するCentre Leon Berard(Lyon)から得られたヒト肝臓切除から新しく調製された。
【0081】
ウイルス
HBV株(遺伝子型D、Genbank ID U95551)は、Ladnerら(Antimicrob. Agents Chemother. 41巻、1715~1720頁(1997年))の以前に記載されたプロトコールに従って、HepAD38細胞株を用いて調製された。HBV粒子を含有する上清を清澄化し(0.45μmフィルター)、8%PEG8000(Sigma-Aldrich社)により濃縮した。
【0082】
AmpliPrep/COBAS(登録商標)TaqMan(登録商標)HBV試験(Roche社)を用いてHBV DNAを定量した。
【0083】
化学物質
GW4064[3-(2,6-ジクロロフェニル)-4-(3-カルボキシ-2-クロロ-スチルベン-4-イル)-オキシメチル-5-イソプロピルイソオキサゾール]は、インビボとインビトロの両方で活性であるFXRアゴニスト(EC50 90nM)である(Maloneyら、J. Med. Chem. 43巻、2971~2974頁(2000年))。限定された生物学的利用能を提示するが、GW4064は強力であり、選択的なFXRアゴニストとして広く使用されており、この分野では「参照化合物」の地位に達している。インターフェロンアルファ-2(ROFERON-A)はRoche社から購入した。
【0084】
HBs及びHBeの定量
細胞上清中に分泌されるHBs及びHBe抗原は、必要な希釈後に、Autobioキット(AutoBio社、中国)を用いて、製造業者のプロトコールに従って定量された。
【0085】
qPCRによるウイルスRNAの定量
総RNAはNucleoSpin RNA Plus(Macherey-Nagel社)を用いて調製された。TURBO DNase(Ambion社)によるDNA消化後、最大1000ngのRNAをHigh-Capacity RNA to-cDNAキット(Thermo Fisher Scientific社)を用いて逆転写した。定量PCRは、プレゲノム/プレコアHBV RNAの定量化のために、プライマーHBV-F(5'-AGCTACTGTGGAGTTACTCTCGT-3' 配列番号1)及びHBV-R(5'-CAAAGAATTGCTTGCCTGAGTG-3' 配列番号2)を用いて行われた。LightCycler(登録商標)480装置(Roche社)上のQuantiFast SYBR(登録商標)Green PCRキット(Qiagen社)を使用して、45 PCRサイクルを用いてcDNAを定量PCR(qPCR)により分析した。すべてのアッセイを3重にして実施した。相対的定量化は、プライマーS9-F(5'-CCGCGTGAAGAGGAAGAATG-3' 配列番号3)及びS9-R(5'-TTGGCAGGAAAACGAGACAAT-3' 配列番号4)を用いて、S9ハウスキーピング遺伝子に対する各遺伝子の発現を正規化することによって決定した。
【0086】
結果:FXR調節因子とIFN-αの併用処置はPHHにおけるHBV複製を相乗的に阻害する。
FXRアゴニストとインターフェロンアルファ(IFN-α)がHBV感染に及ぼす複合的な影響を決定するため、インビトロ感染を初代ヒト肝細胞(PHH)において行った。PHHは、インビトロで産生されたHBVビリオンに自然に感染しやすく、ウイルスの複製レベルが非常に高い。
【0087】
2濃度のGW4064及び1濃度のIFN-αを用いて、FXRアゴニストとインターフェロン-アルファ(IFN-α)がHBV複製に及ぼす複合的な影響を決定した(
図3)。GW4064を単独で使用した場合、細胞内HBV RNAレベル及びHBeAg分泌を用量反応的に減少させるのみであり、ウイルス血症及びHBsAg分泌に有意な影響を及ぼすことはできなかった。100IU/mLのIFN-アルファ単独では、ウイルス血症及びHBeAg分泌を減少させることができたが、細胞内HBV RNAレベル及びHBsAg分泌にはほとんど影響を及ぼさなかった。両分子の組み合わせは、HBeAgとHBsAg分泌と同様に細胞内HBV RNAレベルに相乗効果をもたらし、相乗効果はHBsAg分泌に特に強かった。
【0088】
結論
FXRアゴニスト(GW4064)とIFN-αの相乗作用がPHHモデルで観察された。この相乗作用は、特にHBsAg分泌に顕著であった。
【0089】
(実施例3)
追加のFXRアゴニストとの相乗効果
材料及び方法
HepaRG
ヒト細胞性肝癌腫由来のHepaRG細胞株は、規定された条件下で4週間培養した後、肝細胞の多くの表現型形質を分化し、再び獲得することができる(Hantz, O.ら、J. Gen. Virol. 90巻、127~135頁(2009年))。HepaRG細胞を培養し、分化させ、以前に記載されるように(Gripon, P.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 99巻、15655~15660頁(2002年);Alfaiate, D.ら、Antiviral Res. 136巻、19~31頁(2016年))、HBVに感染させた。簡単に説明すると、分化のために、細胞を標準培地中で2週間、次に1.8%DMSOを補充した標準培地中で少なくとも2週間維持した。標準培地の組成は、以下:10%HyCLone FetalClone II血清(Thermo Fisher Scientific社)、ペニシリン/ストレプトマイシン、L-グルタミン、インスリン-トランスフェリン-セレニウム(Gibco社)及び50μMヘミコハク酸ヒドロコルチゾンを補充したWilliam's E培地であった。
【0090】
初代ヒト肝細胞
初代ヒト肝細胞(PHH)は、以前に記載されているように(Lecluyse, E. L. & Alexandre, E. Methods Mol. Biol. Clifton NJ 640巻、57~82頁(2010年))、フランスの大臣認可(AC 2013-1871、DC 2013-1870、AFNOR NF 96 900 sept 2011)を有するCentre Leon Berard(Lyon)から得られたヒト肝臓切除から新しく調製された。
【0091】
ウイルス
HBVストック(遺伝子型D、Genbank ID U95551)は、以前に記載されたプロトコール(Ladner, S. K.ら、Antimicrob. Agents Chemother. 1巻、1715~1720頁(1997年))に従ってHepAD38細胞株を用いて調製された。HBV粒子を含有する上清を清澄化し(0.45μmフィルター)、8%PEG8000(Sigma-Aldrich社)を用いて濃縮した。
【0092】
AmpliPrep/COBAS(登録商標)TaqMan(登録商標)HBV試験(Roche社)を用いてHBV DNAを定量した。
【0093】
HBs定量
細胞上清中に分泌されたHBs抗原を、必要な希釈後に、Autobioキット(AutoBio社、中国)を用いて、製造業者のプロトコールに従って定量した。
【0094】
結果:FXRアゴニストとIFN-αの併用処置は、HBV感染したPHH及びHBV感染したHepaRG細胞におけるHBsAg分泌を相乗的に阻害する。
FXRアゴニストとインターフェロンアルファ(IFN-α)がHBV感染に及ぼす複合的な影響を決定するために、初代ヒト肝細胞(PHH)及び分化したHepaRG細胞(dHepaRG)においてインビトロ感染を行った。PHHは、インビトロで産生されたHBVビリオンに自然に感染しやすく、ウイルスの複製レベルが非常に高い。分化後、HepaRG細胞はインビトロで産生されたHBVビリオンによる感染にも感受性を示すが、複製レベルはPHHで観察されるレベルよりも低い。
【0095】
PHHモデルでは、5種類のFXRアゴニスト(Vonafexor、Nidufexor、Tropifexor、OCA及びGW4064)を単独又はIFN-αと併用してHBsAg分泌について評価した(
図4)。5種類のFXRアゴニストの各々とIFN-αの併用は、試験したFXRアゴニスト間の構造の有意差にもかかわらず、HBsAg分泌に相乗効果をもたらした。
【0096】
HepaRGモデルにおいても、FXRアゴニズムとIFN-αの同種の相乗作用が観察され、すべてのFXRアゴニストが評価された(
図5)。
【0097】
結論
異なるFXRアゴニストとIFN-αの間のHBsAg分泌阻害における相乗作用が、PHHとHepaRGモデルの両方で観察された。慢性感染患者の血中HBsAgレベルの減少は、ヒトにおけるHBV処置の改善のための次の工程と考えられることから、得られた結果は、HBV慢性感染患者の改善された処置の開発に有望である。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト及びインターフェロンアルファ(IFN-α)
を含む、B型肝炎ウイルス感染症の処置のための組み合わせ物であって、FXRアゴニスト及びIFN-αが、HBV複製を減少させる相乗効果を得るように使用され、FXRアゴニストがEYP001でない、
組み合わせ物。
【請求項2】
LJN452(Tropifexor)、LMB763(Nidufexor)、GS-9674(Cilofexor)、PX-102(PX-20606)、PX-104(Phenex 104)、OCA(Ocaliva)、EDP-297、EDP-305、TERN-101(LY2562175)、MET-409、MET-642、GW4064、WAY362450(ツロフェキソレートイソプロピル)、フェキサラミン、AGN242266(AKN-083)、及びBAR502又はその任意の薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1に記載の
組み合わせ物。
【請求項3】
Tropifexor、Nidufexor、Ocaliva及びGW4064、又はその任意の薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1に記載の
組み合わせ物。
【請求項4】
1日1回投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の
組み合わせ物。
【請求項5】
1日2回投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の
組み合わせ物。
【請求項6】
IFN-αが、IFN-α2a、IFN-α2b又はそのペグ化形態である、請求項1~5のいずれか一項に記載の
組み合わせ物。
【請求項7】
IFN-αがペグ化IFN-α2a及びペグ化IFN-α2bである、請求項1~5のいずれか一項に記載の
組み合わせ物。
【請求項8】
IFN-αが治療量以下の量で投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の
組み合わせ物。
【請求項9】
IFN-αが週1回皮下経路によって投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の
組み合わせ物。
【請求項10】
治療量以下の量で投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の
組み合わせ物。
【請求項11】
慢性B型肝炎感染の処置のための使用のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の
組み合わせ物。
【請求項12】
FXRアゴニスト及びIFN-αが、5、6、7又は8週間から52週間の期間中に投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の
組み合わせ物。
【請求項13】
FXRアゴニスト及びIFN-αが、少なくとも1つの追加の活性成分と組み合わせて使用される、請求項1~12のいずれか一項に記載の
組み合わせ物。
【請求項14】
少なくとも1つの追加の活性成分が、L-ヌクレオシド、デオキシグアノシン類似体及びヌクレオシドホスホネートからなる群から選択されるポリメラーゼ阻害剤である、請求項13に記載の
組み合わせ物。
【請求項15】
少なくとも1つの追加の活性成分が、ラミブジン、テルビブジン、エムトリシタビン、エンテカビル、アデホビル及びテノホビルからなる群から選択される、請求項13に記載の
組み合わせ物。
【国際調査報告】