(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(54)【発明の名称】改善された経皮的冠動脈形成術に向けて患者を選択するための手段および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/026 20060101AFI20240115BHJP
【FI】
A61B5/026 110
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563155
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2021087477
(87)【国際公開番号】W WO2022136637
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523239941
【氏名又は名称】セー・フェー・カーディアック・リサーチ・インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】CV CARDIAC RESEARCH INSTITUTE
(71)【出願人】
【識別番号】506075182
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ トリノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソンク,イェルーン
(72)【発明者】
【氏名】コレ,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ロディ・リッツィーニ,マウリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】ガロ,ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】モルビドゥッツィ,ウンベルト
(72)【発明者】
【氏名】キアストラ,クラウディオ
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AC03
4C017FF05
(57)【要約】
本発明は、機能性冠動脈疾患の程度を定量するための、コンピューターデバイスおよびコンピューターが実行する方法を提供する。さらに本発明は、哺乳動物における冠状疾患の機能的パターンを決定するためのコンピューターデバイスを提供する。解剖学的および生理学的評価の間でのCADの程度のミスマッチは、経皮的血管形再建術による心外膜コンダクタンスの改善に関して予測可能であることが示される。より詳細には、本発明は、経皮的冠動脈形成術から利益を得るよう、冠状疾患に罹患した哺乳動物を選択する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性冠動脈疾患(CAD)の程度を定量するためのコンピューターデバイスであって、
i) 冠状血管の小孔と最遠位部分との間の冠状血管の種々の位置で得られた、ひと組の冠血流予備量比(FFR)値を処理し、
ii) 自動変化点検出アルゴリズムを適用することにより前記FFRデータの区分的線形化を実施することによって、前記冠状血管を、健康なセグメント、限局性疾患セグメント、および/またはびまん性疾患セグメントに分類する
ように構成されたプロセッサーを含むコンピューターデバイス。
【請求項2】
前記コンピューターデバイスが、必要に応じて前記冠動脈の画像上で、前記健康なセグメント、限局性疾患セグメント、および/またはびまん性疾患セグメントを表示するように構成されたディスプレーをさらに含み、必要に応じて、前記冠動脈の表示された画像が二次元画像である、請求項1に記載のコンピューターデバイス。
【請求項3】
前記自動変化点検出アルゴリズムが、前記FFR値の組の1つまたは複数の変化点を検出し、その結果、前記変化点はそれぞれ、前記FFR値の組の属性が変化する前記冠状血管に沿った位置に対応するように構成されており、
- 前記1つまたは複数の変化点は、前記FFR値の組を2つまたはそれよりも多くのセグメントに分割するように構成され、各変化点は2つのセグメント間の端点を画定し、および
- 前記2つまたはそれよりも多くのセグメントは、それぞれ、前記セグメントの近位点と前記セグメントの遠位点との間の前記冠状血管に沿った種々の位置で得られた前記FFR値の組の線形化サブセットに対応する、
請求項1または2に記載のコンピューターデバイス。
【請求項4】
- 前記属性が、平均値および/または勾配であり、および/または
- 前記2つまたはそれよりも多くのセグメントが、下記の量
・ 前記セグメントの前記遠位点でのFFR値と前記近位点でのFFR値との間の差であるFFR降下、および
・ 前記セグメントの遠位点と前記セグメントの近位点との間の冠状血管軸に沿った距離としてのセグメント長さ、および
・ 必要に応じて、前記FFR降下と前記セグメント長さとの間の比であるセグメント勾配
を特徴とする、請求項3に記載のコンピューターデバイス。
【請求項5】
- セグメントが、前記セグメントのFFR降下、セグメント長さ、および/またはセグメント勾配に基づき、所定の第1の分類閾値関数を用いて、健康なセグメントとしてまたは疾患セグメントとして分類され、および
- 必要に応じて、疾患セグメントが、
- 前記セグメントのFFR降下、セグメント長さ、および/またはセグメント勾配に基づき、所定の第2の分類閾値関数を用いて、限局性疾患セグメントとしてまたはびまん性疾患セグメントとして
分類され;および
- 必要に応じて、セグメントは、前記セグメントが正のFFR降下を示すときおよび前記セグメントが疾患セグメントに隣接するときおよび前記セグメントが30mmより短く、好ましくは25mm、さらにより好ましくは20mmであるとき、健康であると分類される
ように前記冠状血管を分類するようにさらに構成されており、
- 必要に応じて、前記コンピューターデバイスは、各セグメントを健康なセグメント、限局性疾患セグメント、および/またはびまん性疾患セグメントと自動的に区別するよう構成されたロジスティック回帰モデルをさらに含み、必要に応じて、前記セグメントのFFR降下、セグメント長さ、および/または勾配に基づく二変数ロジスティック回帰をさらに含み、必要に応じて、前記ロジスティック回帰モデルが導出コホートの視覚的判断から決定され、健康なおよび疾患セグメントの間を区別するよう構成され、さらに限局性疾患セグメントとびまん性疾患セグメントとの間を区別するよう構成されている、請求項1から4のいずれかに記載のコンピューターデバイス。
【請求項6】
前記自動変化点検出アルゴリズムが、ペナルティ付きパラメトリックグローバル法に基づいて動作するよう構成されている、請求項1から5のいずれかに記載のコンピューターデバイス。
【請求項7】
前記ディスプレーが、二次元画像で冠動脈の画像を表示するようにさらに構成されている、請求項2または6のいずれかに記載のコンピューターデバイス。
【請求項8】
- プルバック曲線、または
- 三次元定量冠状血管造影、または
- CTスキャン、または
- 血管内撮像、必要に応じて光干渉断層撮影(OCT)、もしくは血管内超音波(IVUS)、または
- 冠状血管造影と血管内撮像との間の組合せ、または
- CTスキャンと血管内撮像との組合せ、または
- 医学的撮像から再構築された冠状血管の3Dモデルに適用された数値流体力学シミュレーションであって、必要に応じて前記医学的撮像が、三次元定量冠状血管造影、CTスキャン、OCT、またはIVUSを含むシミュレーション
から前記FFR値の組が得られるようにさらに構成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のコンピューターデバイス。
【請求項9】
前記コンピューターデバイスが、機能性CADの程度の前記定量によって経皮的冠動脈形成術(PCI)に対する応答を予測するようにさらに構成され、および/または前記コンピューターデバイスが、前記疾患セグメントの長さの合計として機能性CADの程度を定量するようにさらに構成されている、請求項1から8のいずれか1項に記載のコンピューターデバイス。
【請求項10】
前記コンピューターデバイスが、機能性CADの程度の前記定量と、前記冠動脈における機能性疾患の程度が前記冠動脈における解剖学的疾患の程度よりも小さいときの哺乳動物の選択とによって、経皮的冠動脈形成術(PCI)に相応しい、冠動脈疾患(CAD)に罹患している哺乳動物を選択するようにさらに構成され、および/または
前記コンピューターデバイスが、前記解剖学的CADの程度と前記機能性の程度との間の差として機能的解剖学的ミスマッチ(FAM)を計算し、それによって2つの病変エンドタイプ:(1)FAM>0であるとき、前記解剖学的CAD内に外接した機能性CAD、および(2)FAM<0であるとき、前記解剖学的CADを超えて拡がる機能性CADを特定するように、さらに構成されている、請求項1から9のいずれか1項に記載のコンピューターデバイス。
【請求項11】
前記コンピューターデバイス(システム)が、オフラインで動作するように構成されている、請求項1から10のいずれか1項に記載のコンピューターデバイス。
【請求項12】
前記コンピューターデバイスが、前記自動分類を行うように構成されている、請求項1から11のいずれか1項に記載のコンピューターデバイス。
【請求項13】
機能性冠動脈疾患(CAD)の程度を定量するために、コンピューターが実行する方法であって、下記のステップ:i)冠状血管の小孔と最遠位部分との間の冠状血管の種々の位置で得られたひと組の冠血流予備量比(FFR)値を処理するステップ、ii)自動変化点検出アルゴリズムを適用することにより前記FFRデータの区分的線形化を実施することによって、前記冠状血管を、健康なセグメント、限局性疾患セグメント、および/またはびまん性疾患セグメントに分類するステップ、および必要に応じて、iii)前記健康な、限局性の、および/またはびまん性の疾患断片を、前記冠動脈の画像上に表示するステップを含み、必要に応じて、前記自動変化点検出アルゴリズムがペナルティ付きパラメトリックグローバル法に基づく、方法。
【請求項14】
前記方法が、前記FFR値の組を、プルバック曲線、または三次元定量冠状血管造影、またはCTスキャン、または血管内撮像(例えば、光干渉断層撮影(OCT)または血管内超音波(IVUS))、または冠状血管造影と血管内撮像との間の組合せ、またはCTスキャンと血管内撮像との組合せから得るステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
健康な、限局性の、および/またはびまん性疾患セグメントへの冠状血管の分類を行うための、請求項1から12のいずれかに記載のコンピューターデバイスでの使用のための、および/または健康な、限局性の、および/またはびまん性疾患セグメントへの前記冠状血管の分類を行うための、請求項13または14に記載の方法での使用のための、自動分類器を開発するための方法であって、
- 前記自動分類器は、ロジスティック回帰、好ましくは関連付けられたセグメントのFFR降下、セグメント長さ、および/または勾配に基づく二変数ロジスティック回帰に基づいて開発され、および
- 必要に応じて、前記ロジスティック回帰は、健康なおよび疾患セグメントの間を区別するように、および限局性疾患セグメントとびまん性疾患セグメントとの間をさらに区別するように構成されている、導出コホートの視覚的判断から決定される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、心疾患の分野、特に冠状血管の評価、特に冠状血管を通る血流の遮断または制限のパターンの決定に関する。より詳細には、本発明は、機能性冠動脈疾患の程度を定量するためのコンピューターが実行する方法に関する。さらに本発明は、哺乳動物における冠疾患の機能的パターンを決定するためのコンピューターデバイスを提供する。より詳細には、本発明は、経皮的冠動脈形成術から利益を得るよう、冠疾患に罹患した哺乳動物を選択する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明の序論
冠動脈疾患(CAD)の侵襲的機能評価は、慢性冠症候群の患者における血管再建術のゲートキーパーと見なされてきた。指針は、血管再建術の必要性に応じて決定された圧力由来指数を使用して冠血流の軽減を評価することを提唱する。冠状内圧力測定は、典型的には、心外膜血管に沿った累積圧力損失を反映する冠動脈の遠位セグメントで行われる。限局性狭窄は、全体として圧力降下の原因になる可能性があり;それにもかかわらず、びまん性機能低下も、冠状還流圧の全減少に関与する血管造影狭窄領域外に観察することができる。冠状血管造影は、依然として、今日まで、ステント移植を案内するのに最も利用されてきた方法である。病変の長さは、定量的冠状血管造影(QCA)によって、あるいは、より正確には血管内撮像を使用して、定量することができる。両方のアプローチは、アテローム性動脈硬化性プラークをカバーし、心外膜コンダクタンスを回復させ、および心筋潅流を改善するため、ステント選択を案内することを目標とする。しかしながら、血管造影が成功した経皮的冠動脈形成術(PCI)の後、患者のほぼ3分の1において、心外膜コンダクタンスは最適ではないままである。びまん性機能疾患では、PCIは、心臓生理学に関してその利益が限られており、それに対して限局的CADでは、PCIが通常は心外膜コンダクタンスを回復させる。さらに、冠血流予備量比(FFR)が低い患者は、経皮的血管再建術後、高いPCI後FFRを持つ患者と比較して有害事象が増大したリスクがあることを示している。PCIによる心外膜コンダクタンスの利得は、心外膜抵抗の分布を評価することによって予測することができる。冠状内圧力測定中のプルバック動作は、圧力降下の存在、場所、および大きさを特定する。2つの因子、即ち(i)FFR降下の大きさ、および(ii)機能性CADの拡大は、経皮的血管再建術後の心外膜コンダクタンスの改善を予測する。したがって、機能性疾患の程度の定量は、PCI後FFRの予後能力を有し得る。
【0003】
本発明では、本発明者らは、解剖学的および機能的評価の間のCADの程度のミスマッチを定量すること、ならびにPCI後のFFRに対する機能的解剖学的ミスマッチ(FAM)の影響を評価することを試みた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
第1の態様によれば、機能性冠動脈疾患(CAD)の程度を定量するためのコンピューターデバイスであって、
i) 冠状血管の小孔と最遠位部分との間の冠状血管の種々の位置で得られた、ひと組の冠血流予備量比(FFR)値を処理し、
ii) 自動変化点検出アルゴリズムを適用することにより前記FFRデータの区分的線形化を実施することによって、冠状血管を、健康な、限局性および/またはびまん性疾患のセグメントに分類する
ように構成されたプロセッサーを含むデバイスが提供される。
【0005】
この手法は、自動変化点検出アルゴリズムを用いる区分的線形化を利用しない従来技術のデバイスと比較して、プルバック曲線におけるアーチファクトに対してそれほど脆弱ではない。線形セグメントに基づき決定されたパラメーターを用いる、自動変化点検出アルゴリズムを用いた区分的線形化は、局所アーチファクトに対してそれほど感受性がないことが明らかであり、これは例えば一時的なまたは局所的な測定誤差などの結果による。さらに、以下にさらに詳述されるように、解剖学的および機能性CAD長さの間のミスマッチを定量する、FAMの文脈でこの改善された定量が使用されるとき、PCI後の生理学に対する、処置領域外の残留圧力損失の影響を考慮することも可能になる。さらに、FAM手法は、連続病変の場合に相互作用によってこの手法をそれほど影響のないものにする圧力降下の大きさではなく、疾患の存在および長さに基づく。さらに、このことは、十分なPCI後利益をもたらさないステント形成病変を回避することによって、周術期心筋梗塞のリスクを低減することによって、および血管再建術からの正味の臨床利益の機会を増大させることによって、PCIに向けた患者の選択を改善し得る、CADの機能性パターンを改善した評価を可能にする。このように、負のFAMを持つ、即ち、びまん性機能性CADを有する患者は、最適な医学的治療または冠動脈バイパスグラフト術でより良く処置することができ、正のFAMを持つ患者は、PCIで、より良く処置され得る。
【0006】
前記FFRデータは、前記組の冠血流予備量比値を指すことが明らかである。
実施形態によれば:
ii) 前記自動変化点検出アルゴリズムを適用することにより、前記FFRデータの前記区分的線形化を実施することによって、冠状血管を下記:
- 1つまたは複数の健康なセグメント;
- 1つまたは複数の限局性疾患セグメント;
- 1つまたは複数のびまん性疾患セグメント
の少なくとも1つに分類する
ように構成された、コンピューターデバイスが提供される。
【0007】
実施形態によれば:
ii) 前記自動変化点検出アルゴリズムを適用することにより、前記FFRデータの前記区分的線形化を実施することによって、冠状血管を下記:
- 1つまたは複数の健康なセグメント;
- 1つまたは複数の限局性疾患セグメント;
- 1つまたは複数のびまん性疾患セグメント
の少なくとも2つに分類する
ように構成された、コンピューターデバイスが提供される。
【0008】
実施形態によれば:
ii) 前記自動変化点検出アルゴリズムを適用することにより、前記FFRデータの前記区分的線形化を実施することによって、冠状血管を下記:
- 1つまたは複数の限局性疾患セグメント;および
- 1つまたは複数のびまん性疾患セグメント;および
- 必要に応じて、1つまたは複数の健康なセグメント
に分類する
ように構成された、コンピューターデバイスが提供される。
【0009】
実施形態によれば、機能性冠動脈疾患(CAD)の程度、または言い換えれば機能性病変の長さを、
- 疾患断片と分類されたセグメントの長さの合計;
- 限局性疾患セグメントおよびびまん性疾患セグメントの長さの合計;
- FFR低下を特徴とするセグメントの長さの合計
に基づいておよび/またはこれらに対応するように、定量するよう構成されたコンピューターデバイスが提供される。
【0010】
実施形態によれば、FFRデータは、冠状血管の小孔と最遠位部分との間の冠状血管の種々の位置で得られたFFR値の組を含む。
【0011】
実施形態によれば、FFR値の組は、FFRプルバック曲線に対応する。
実施形態によれば、FFRプルバック曲線の分析から機能性病変の長さを定量するように構成されたコンピューターデバイスが提供される。
【0012】
実施形態によれば、コンピューターデバイスはさらに、下記:
- FFR値の組を平滑化すること;
- FFR値の組に、移動平均(average)または平均(mean)フィルターを適用すること;
- FFR値の組に、ローパスフィルターを適用すること
の1つまたは複数の後に、機能性病変の長さの定量および/またはセグメントの冠状血管の分類を行うように構成されている。
【0013】
実施形態によれば、前記健康な、限局性、および/またはびまん性疾患断片を、必要に応じて冠動脈の画像上に表示するように構成されたディスプレーをさらに含み、冠動脈の表示された画像が二次元画像である、コンピューターデバイスが提供される。
【0014】
実施形態によれば、自動変化点検出アルゴリズムが、FFR値の組の1つまたは複数の変化点を検出し、その結果、前記変化点はそれぞれ、FFR値の組の属性が変化する冠状血管に沿った位置に対応するように構成されており:
- 前記1つまたは複数の変化点は、FFR値の組を2つまたはそれよりも多くのセグメントに分割するように構成され、各変化点は2つのセグメント間の端点を画定し;および
- 前記2つまたはそれよりも多くのセグメントは、それぞれが、セグメントの近位点とセグメントの遠位点との間の冠状血管に沿った種々の位置で得られたFFR値の組の線形化サブセットに対応するものである、
コンピューターデバイスが提供される。
【0015】
実施形態によれば:
- 前記属性が、平均値および/または勾配であり;および/または
- 前記2つまたはそれよりも多くのセグメントが、下記の量:
・ セグメントの遠位点でのFFR値と近位点でのFFR値との間の差であるFFR降下;および
・ セグメントの遠位点とセグメントの近位点との間の冠状血管軸に沿った距離であるセグメントの長さ、および
・ 必要に応じて、FFR降下とセグメント長との間の比であるセグメント勾配
を特徴とする、
コンピューターデバイスが提供される。
【0016】
実施形態によれば:
- セグメントが、セグメントのFFR降下、セグメント長、および/またはセグメント勾配に基づき、所定の第1の分類閾値関数を用いて、健康なセグメントとしてまたは疾患セグメントとして分類され;および
- 必要に応じて、疾患セグメントが:
- セグメントのFFR降下、セグメント長、および/またはセグメント勾配に基づき、所定の第2の分類閾値関数を用いて、限局性疾患セグメントとしてまたはびまん性疾患セグメントとして分類され;および
- 必要に応じて、セグメントは、前記セグメントが正のFFR降下を示すときおよび前記セグメントが疾患セグメントに隣接するときおよび前記セグメントが30mmより短く、好ましくは25mm、さらにより好ましくは20mmであるとき、健康であると分類される
ように冠状血管を分類するようにさらに構成されており、
- 必要に応じて、コンピューターデバイスは、各セグメントを健康なセグメント、限局性疾患セグメント、および/またはびまん性疾患セグメントと自動的に区別するよう構成されたロジスティック回帰モデルをさらに含み、必要に応じて、セグメントのFFR降下、セグメント長、および/または勾配に基づく二変数ロジスティック回帰をさらに含み、必要に応じて、ロジスティック回帰モデルが導出コホートの視覚的判断から決定され、健康なおよび疾患セグメントの間を区別するよう構成され、さらに限局性疾患セグメントとびまん性疾患セグメントとの間を区別するよう構成されている、
コンピューターデバイスが提供される。
【0017】
実施形態によれば、ロジスティック回帰モデルは、二成分分離を提供するよう構成されている。
【0018】
実施形態によれば、コンピューターデバイスはさらに、ロジスティック回帰モデルを2ステップ手法で適用するように構成され:
ステップ1では、ロジスティック回帰モデルが、健康なセグメントおよび疾患セグメントへのセグメントの分離を用いて分類するように構成され、疾患セグメントは限局性疾患セグメントおよびびまん性セグメントを含み;および
ステップ2では、ロジスティック回帰モデルは、疾患セグメントの限局性疾患セグメントおよびびまん性疾患セグメントへの分離を用いて、分類するように構成され、
それによって、区分的線形化FFRデータ、好ましくはFFRプルバック曲線の、セグメントの自動的判断が提供される。
【0019】
実施形態によれば、自動変化点検出アルゴリズムが、ペナルティ付きパラメトリックグローバル法に基づき動作するよう構成されている、コンピューターデバイスが提供される。
【0020】
実施形態によれば、ディスプレーが、二次元画像で冠動脈の画像を表示するようにさらに構成されている、コンピューターデバイスが提供される。
【0021】
実施形態によれば:
- プルバック曲線;または
- 三次元定量冠状血管造影;または
- CTスキャン;または
- 血管内撮像、必要に応じて光干渉断層撮影(OCT)もしくは血管内超音波(IVUS);または
- 冠状血管造影と血管内撮像との間の組合せ;または
- CTスキャンと血管内撮像との組合せ;または
- 医学的撮像から再構築された冠状血管の3Dモデルに適用された数値流体力学シミュレーションであって、医学的撮像が:三次元定量冠状血管造影、CTスキャン、OCT、またはIVUSを含むシミュレーション
からFFR値の組が得られるようにさらに構成されている、コンピューターデバイスが提供される。
【0022】
実施形態によれば、コンピューターデバイスが、機能性CADの程度の前記定量によって経皮的冠動脈形成術(PCI)に対する応答を予測するようにさらに構成され、および/またはコンピューターデバイスが、疾患セグメントの長さの合計として機能性CADの程度を定量するようにさらに構成されている、コンピューターデバイスが提供される。
【0023】
実施形態によれば、コンピューターデバイスが、機能性CADの程度の前記定量、および冠動脈における機能性疾患の程度が冠動脈の解剖学的疾患の程度よりも小さいときの哺乳動物の選択によって、経皮的冠動脈形成術(PCI)に相応しい、冠動脈疾患(CAD)に罹患している哺乳動物を選択するようにさらに構成され;および/またはコンピューターデバイスが、解剖学的CADの程度と機能性の程度との間の差として機能的解剖学的ミスマッチ(FAM)を計算し、それによって2つの病変エンドタイプ:(1)FAM>0であるとき、解剖学的CAD内に外接した機能性CAD、および(2)FAM<0であるとき、解剖学的CADを超えて拡がる機能性CADを特定するようにさらに構成されている、コンピューターデバイスが提供される。
【0024】
実施形態によれば、コンピューターデバイス(システム)がオフラインで動作するよう構成されている、コンピューターデバイスが提供される。
【0025】
実施形態によれば、コンピューターデバイスが前記自動分類を行うよう構成されている、コンピューターデバイスが提供される。
【0026】
第2の態様によれば、機能性冠動脈疾患(CAD)の程度を定量するためにコンピューターが実行する方法であって、下記のステップ:i)冠状血管の小孔と最遠位部分との間の冠状血管の種々の位置で得られたひと組の冠血流予備量比(FFR)値を、処理するステップ、ii)冠状血管を、自動変化点検出アルゴリズムを適用することにより前記FFRデータの区分的線形化を実施することによって、健康なセグメント、限局性疾患セグメント、および/またはびまん性疾患セグメントに分類するステップ、および必要に応じて、iii)前記健康な、限局性、および/またはびまん性疾患断片を、冠動脈の画像に表示し、および必要に応じて、前記自動変化点検出アルゴリズムがペナルティ付きパラメトリックグローバル法に基づくステップを含む方法が、提供される。
【0027】
実施形態によれば、コンピューターが実行する方法であって、前記方法が、プルバック曲線、または三次元定量冠状血管造影、またはCTスキャン、または血管内撮像(例えば、光干渉断層撮影(OCT)、または血管内超音波(IVUS)、または冠状血管造影と血管内撮像との間の組合せ、またはCTスキャンと血管内撮像との間の組合せから、FFR値の組を得るステップを含む、方法が提供される。
【0028】
第3の態様によれば、健康な、限局性の、および/またはびまん性疾患セグメントへの冠状血管の分類を行うための、第1の態様によるコンピューターデバイスでの使用のための、および/または健康な、限局性の、および/またはびまん性疾患セグメントへの冠状血管の分類を行うための、第2の態様によるコンピューターが実行する方法での使用のための、自動分類器を開発するための、コンピューターが実行する方法であって、
- 自動分類器は、ロジスティック回帰、好ましくは関連付けられたセグメントのFFR降下、セグメント長、および/または勾配に基づく二変数ロジスティック回帰に基づいて開発され;および
- 必要に応じて、ロジスティック回帰は、健康なおよび疾患セグメントの間を区別するように、および限局性疾患セグメントとびまん性疾患セグメントとの間を区別するようにさらに構成されている、導出コホートの視覚的判断から決定される、
方法が提供される。
【0029】
心外病変の重症度に関する解剖学および生理学の間のミスマッチは、従来技術で広く認識されてきた。例えばFAME研究では、血管造影で50%から70%の直径の狭窄を持つ病変の3分の1よりも多くが、FFR≦0.80を実証し、それに対して71%から90%の血管造影直径の狭窄を持つ病変の5分の1が、FFR>0.80を実証した。解剖学と生理学との間の断絶は、病変有意性の評価を超えたものである。CADの長さも解剖学的および機能的評価の間で異なる。本発明において、本発明者らは、特に開発された自動アルゴリズムを用いて、機能性CAD病変の長さを決定した。したがって本発明者らの新規なコンピューターが実行する方法は、機能性疾患の長さ(患者の冠動脈で)が、QCAまたは光干渉断層撮影(OCT)のいずれかから導出されたその解剖学的均等物よりも大きいとき、FAM値は<0であることを示す(
図6)。したがって、FAM値<0であるとき、PCIを実施するのに有益な効果はない。
【0030】
一態様では、本発明は、機能性冠動脈疾患(CAD)の程度を定量するための、コンピューターが実行する方法であって、下記のステップ:i)冠状血管の小孔と最遠位部分との間の冠状血管の種々の位置で得られたひと組の冠血流予備量比(FFR)値を処理するステップ、ii)自動変化点検出アルゴリズムを適用することにより前記FFRデータの区分的線形化を実施することによって、冠状血管を、健康な、限局性の、および/またはびまん性の疾患セグメントに分類するステップ、および必要に応じて、iii)前記健康な、限局性の、および/またはびまん性の疾患断片を、冠動脈の二次元画像に表示するステップを含む方法に関する。
【0031】
コンピューターが実行する方法の特定の態様では、FFR値は、プルバック曲線、三次元定量冠状血管造影、CTスキャン、またはOCTから得られる。したがってFFR値の組、または言い換えればFFRデータもしくはFFRプルバック曲線は、実施形態によれば、FFRプルバック操作中に適切な圧力センサーの測定から測定された、作成された、および/または記録されたデータとして得ることができ、または言い換えれば、FFRデータは、侵襲的測定である冠動脈血管での圧力測定から得られることが明らかである。しかしながら、好ましくはコンピューターが実行する方法の実施形態は、冠動脈血管での圧力測定を行う侵襲的ステップを含まず、好ましくはそのような測定から得られた、入力として受け取ったデータを処理するだけであることが明らかである。代替の実施形態によれば、FFR値の組、または言い換えればFFRデータもしくはFFRプルバック曲線は、冠状血管内での直接圧力測定から得られず、例えば三次元定量冠状血管造影、CTスキャン、OCT、またはIVUSなどの医学的撮像から再構築された冠状血管の3Dモデルに適用された数値流体力学シミュレーションを用いて計算される。そのような実施形態によれば、FFRデータは、例えば三次元定量冠状血管造影、CTスキャンなどの非侵襲的測定を用いて得ることができることが明らかである。そのような実施形態によれば、例えばOCTまたはIVUSなどの侵襲的測定が利用されるとき、好ましくはコンピューターが実行する方法の実施形態は、冠動脈血管で測定を行う侵襲的ステップを含まず、好ましくはそのような測定から得られた入力として受け取ったデータ、好ましくはこれらの測定からの医学的撮像データ、またはそのような医学的撮像データから再構築された冠状血管の三次元モデルを処理するだけであることが明らかである。
【0032】
別の態様では、機能性CADの程度を定量することによって、経皮的冠動脈形成術(PCI)に対する応答を予測する、in vitro法が提供される。
【0033】
さらに別の態様では、本明細書に記述されるコンピューターが実行する方法の適用と、冠動脈での機能性疾患の程度が冠動脈での解剖学的疾患の程度よりも小さいときに哺乳動物を選択することを含む、経皮的冠動脈形成術(PCI)に相応しい冠動脈疾患(CAD)に罹患した哺乳動物を選択するin vitro法が、提供される。
【0034】
特定の態様では、方法が、オフライン法である。
さらに別の態様では、機能性冠動脈疾患の程度を定量する方法は、自動分類法である。
【0035】
別の態様では、コンピューターデバイスは、哺乳動物における冠動脈疾患の機能性パターンを評価するために提供され、前記コンピューターデバイスは、冠状血管の小孔と最遠位部分との間の冠状血管の種々の位置で得られるひと組のFFR値を処理するように構成され、自動変化点検出アルゴリズムを適用することにより前記FFRデータの区分的線形化を実施することによって冠状血管を、限局性および/またはびまん性疾患セグメントに分類する。
【0036】
さらなる態様によれば、下記のステップ:i)冠状血管の小孔と最遠位部分との間の冠状血管の種々の位置で得られる、ひと組の冠血流予備量比(FFR)値を処理するステップ、ii)自動変化点検出アルゴリズムを適用することにより前記FFRデータの区分的線形化を実施することによって、冠状血管を、健康な、限局性の、および/またはびまん性の疾患セグメントに分類するステップ、および必要に応じて、iii)前記健康な、限局性の、および/またはびまん性の疾患断片を、冠動脈の画像上に表示するステップを含む、機能性冠動脈疾患(CAD)の程度を定量する、コンピューターが実行する方法が提供される。
【0037】
実施形態によれば、前記自動変化点検出アルゴリズムがペナルティ付きパラメトリックグローバル法に基づきコンピューターが実行する方法が、提供される。
【0038】
実施形態によれば、ステップiii)では、冠動脈の表示された画像が二次元画像である、コンピューターが実行する方法が提供される。
【0039】
実施形態によれば、FFR値が、プルバック曲線または三次元定量冠状血管造影またはCTスキャンまたは血管内造影(例えば、光干渉断層撮影(OCT)または血管内超音波(IVUS)、または冠状血管造影と血管内撮像との間の組合せ、またはCTスキャンと血管内撮像の組合せから得られる、コンピューターが実行する方法が提供される。
【0040】
さらなる態様によれば、先の態様により機能性CADの程度を定量することによって、経皮的冠動脈形成術(PCI)に対する応答を予測する方法が提供される。
【0041】
さらなる態様では、先の態様によるコンピューターが実行する方法の適用と、冠動脈における機能性疾患の程度が冠動脈の解剖学的疾患の程度よりも小さいときに哺乳動物を選択することを含む、経皮的冠動脈形成術(PCI)に相応しい、冠動脈疾患(CAD)に罹患した哺乳動物を選択する方法が提供される。
【0042】
実施形態によれば、方法がオフライン法である、先の態様による方法が提供される。
実施形態によれば、方法が自動分類法である、先の態様による方法が提供される。
【0043】
さらなる態様によれば、哺乳動物における冠動脈疾患の機能性パターンを評価するためのコンピューターデバイスであって、前記コンピューターデバイスが、冠状血管の小孔と最遠位部分との間の冠状血管の種々の位置で得られたひと組のFFR値を処理するように構成され、自動変化点検出アルゴリズムを適用することにより前記FFRデータの区分的線形化を実施することによって、冠状血管を、健康な、限局性の、および/またはびまん性のセグメントに分類し、必要に応じて前記自動変化点検出アルゴリズムは、ペナルティ付きパラメトリックグローバル法に基づく、コンピューターデバイスが提供される。
【0044】
実施形態によれば、FFR値の組がプルバック曲線または三次元定量冠状血管造影またはCTスキャンまたは血管内撮像(例えば、光干渉断層撮影(OCT)または血管内超音波(IVUS)、または冠状血管造影と血管内撮像との間の組合せ、またはCTスキャンと血管内撮像との組合せから得られる、コンピューターデバイスが提供される。
【0045】
次に例示的な実施形態について、例えば以下の図を参照しながら記述する。これらの図および/または記述の文脈にあるとき、本特許出願の書類に添付される図面に存在する色が参照される。これらの色は、以下の図の種々の線種を用いて、対応する表示に変換されている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】QCAから導出された解剖学的病変長さ、機能性病変長さ、および機能的-解剖学的ミスマッチ(FAM
QCA)の定義。A):QCAから導出された解剖学的病変長さは、各標的病変ごとに2つの血管造影プロジェクションから開始して得られた。B):3D定量冠状血管造影アルゴリズムを使用して、QCAから導出された解剖学的病変長さを、参照直径の線が、局所血管直径値について記述する曲線と交差する距離として得た。言い換えれば、
図1に示されるように、冠状血管または冠状血管の管腔の直径を表すひと組の値は、冠状血管の近位および遠位部分と呼ぶこともできる冠状血管の小孔と最遠位部分との間の種々の位置で決定される。好ましくは、冠状血管の直径に関する値は、例えば血管の輪郭を自動的に検出するようにおよびそこから直径を導出するように構成されている、定量冠状血管造影(QCA)アルゴリズムを用いた冠状血管造影の画像データの処理を用いて、自動的に決定される。代替の実施形態は、解剖学的病変長さを決定することが可能であることは明らかであり、ここで直径またはその任意のその他の適切なパラメーター、例えば管腔面積などは、冠状血管の長さに沿って決定される。さらに図示されるように、決定するために、この実施形態により線形関数として表される、冠状血管の直径に関する参照データセットが決定され、これは冠状血管の長さに沿った血管の直径の進化に関する正常参照に対応するものである。一部の実施形態によれば、参照データセットは、冠状血管の長さに沿った冠状血管の直径を表すデータから導出された参照データの内挿セットを含むことができる。例えば血管の実際に測定された直径、および/または例えば冠状血管の仕様、患者の特徴など、任意のその他の適切なパラメーターのデータセットの関数として決定された所定の組の参照データなど、代替の実施形態が可能であることが、明らかである。
図1Bの実施形態にさらに示されるように、QCAで定義された解剖学的長さは、参照直径に対して実際の直径の低減を経験するセクションの長さによって決定される。言い換えれば、
図1Bに示される表示によれば、参照直径が実際の直径の値を表す線と交差する2点間の長さ、およびその間で実際の直径の値を表す線が参照直径の線の下にあるままである長さである。2つのそれぞれの交点間の間で参照線の下にあるままの実際の直径の線の複数のそのような部分が利用可能であるとき、実施形態によれば、解剖学的長さは、複数のそのような部分のそれぞれの長さの集合として決定することができることが明らかである。好ましい実施形態によれば、例えば
図1Bに示されるように、適切なパラメーターによりその部分が解剖学的病変として適格であるとき、そのような部分の長さのみが、解剖学的長さを集合させるのに考慮される。一実施形態によれば、そのような部分は、例えばそのような部分の最小直径、そのような部分の参照直径からの最大限のずれ、そのような部分の長さ、または任意のその他の適切なパラメーター、またはパラメーターの組合せに基づいて、病変として適格である。
図1Bに示されるように、QCAで定められた解剖学的長さは、ボックスを用いて示される部分を用いて決定され、言い換えれば、参照直径の線よりも下に在る参照直径の部分に関して、参照直径の線と実際の直径の線との2つの交点間の長さである。図示されるように、参照直径線よりも下にある実際の直径の曲線のさらなる部分は、例えばこれらの部分の最小管腔直径に基づいて、QCAで定められた解剖学的長さの計算に考慮されない。QCAで定められた解剖学的病変長さのそのような検出および計算は、例えば冠状CT画像上での病変の自動特定に関する機械学習技法に基づき、適切に自動化されたコンピューターが実行する方法を用いて行うことができる。実施形態によれば、そのようなコンピューターが実行する方法は、サポートベクターマシンまたは任意のその他の適切な方法であって、冠動脈血管の定量的幾何および形状フィーチャー、例えば冠動脈血管の管腔直径、最小管腔直径、および/または任意のその他の適切なパラメーターなど、例えば円形性、偏心性、...などに関するデータ上で操作されるものを利用して、解剖学的病変として適格な冠状血管の部分を自動的に検出しおよび/または定量してもよい。例えば適切な閾値、ディープラーニングなどを利用する、代替の実施形態が可能であることが、明らかである。しかしながら、CADの解剖学的長さは、任意の適切な従来の血管造影から決定でき、血管の狭窄部分の長さまたは程度、または言い換えれば血管の直径または管腔面積の所定の低減を用いて特定されたCADの長さに対応することが明らかである。
図1Bに示される実施形態によれば、QCAから導出された解剖学的病変長さは、3D QCAソフトウェアを使用して自動的に計算した。
図1のボックスを用いて概略的に示されるように、解剖学的病変長さは、参照直径線が、その長さに沿った血管の実際の直径の値を表す線と交差する、2点間の長さと定義される。実施形態によれば、図示されるように、この計算は自動的に行われる。この好ましい実施形態によれば、
図1Bのボックスを用いて示されるように、好ましくは、上記にて説明されるように、2つの交差の間の長さのみが、適切な自動コンピューター実施法を用いて決定するときに考慮され、例えば、血管の最小管腔直径を含む部分である。連続病変が血管内に存在するとき、特定の実施形態によれば、解剖学的長さは、参照線に対する直径値のそのような交差の間の、血管の2つまたはそれよりも多くのセクションの長さの集合と定義され得ることが明らかである。上記と同様に、連続病変に関しても、病変として適格なセクションを例えば適切に自動化されたコンピューターが実行する方法を用いて、例えばこれらのセクションの最小管腔直径に基づいて、決定することができる。特定の実施形態によれば、血管に沿って少なくとも2つの狭窄の存在が検出されたとき、連続病変の存在を自動的に検出でき、例えばその部分の定量的パラメーターは、適切に自動化されたコンピューターが実行する方法を用いて、例えばその部分の直径の最小値に基づいて、決定された病変として適格であり、これらは参照血管直径の少なくとも3倍、互いから離れた距離に位置決めされるものである。しかしながら、代替の実施形態によれば、そのようなセクションが、解剖学的病変長さを決定するのに適格であるか否かを決定するための、その他の適切に自動化されたコンピューターが実行する方法が可能であることが、明らかである。C):機能性病変長さは、FFRの低下を特徴とするセグメントの合計として、平滑化および区分的線形化後に、FFRのプルバック曲線の分析から得られた。言い換えれば、以下にさらに記述されるように、機能性病変長さ、または機能性冠動脈疾患(CAD)の長さもしくは程度は、FFRの低下を特徴とする疾患断片として分類されたセグメントの長さの合計に対応する。言い換えれば、以下にさらに記述されるように、機能性病変長さ、または機能性CADの程度は、限局性セグメントおよびびまん性疾患セグメントの長さの合計に対応する。以下にさらに詳細に説明されるように、FFRの低下は、以下にさらに詳細に説明されるように、例えばFFR降下、セグメント長さ、勾配など、それぞれのセグメントの特徴を用いて決定される。D):FAM
QCAは、QCAから導出された解剖学的病変長さから機能性病変長さを差し引いた、間の差と定義される。機能性病変長さは、機能性冠動脈疾患の長さまたは程度と呼ぶこともできることが明らかである。機能性病変長さは、機能性冠動脈疾患の長さまたは程度と呼ぶこともできることが明らかである。代替の実施形態によれば、解剖学的病変長さ、または解剖学冠動脈疾患の程度は、代替の手段によって、次いで例えば以下にさらに詳細に記述されるようなQCA、例えばCTスキャン、光干渉断層撮影(OCT)などにより決定できることが明らかである。
【
図2】正対負のFAM
QCA。A):正のFAM
QCAを持つ血管の例であり、QCAから導出された解剖学的病変長さは機能性病変長さよりも長く、それぞれ、領域およびFFR曲線で青および赤の影が付いている(左パネル)。左から右に、FFRは、血管の三次元幾何学的再構築に関するカラーコードマップとして表示される。
図2のカラーコードマップは、上から下まで線種により表される、以下の色の配列を含み、FFRに関して:青 1.00~、緑 0.8~0.6に至り、かつ赤 0.4に至る;およびFAM
QCAに関し:赤 20mmから、黄および緑 約-50mmに至り、さらに青 -120mmにまで至る。解剖学的および機能的長さの拡がりは黒で表示され、QCAから導出された解剖学的病変内に相対的FFR降下が示されている。FAM
QCAは、カラーコードマップとして表示され:赤色は、機能性疾患が解剖学的病変内に外接されたことを強調する。経皮的冠動脈形成術(PCI)は、心外膜コンダクタンスを修復し、高いPCI後FFRをもたらし(右パネル)、その相対利得は0.99に等しかった。B):負のFAM
QCAを持つ血管の例であり、解剖学的病変長さは機能性病変長さよりも短く、それぞれ青および赤の影が領域およびFFR曲線に付けられる(左パネル)。左から右に、FFRはカラーコードマップとして、血管の三次元幾何学的再構築上に表示される。QCAから導出された解剖学的および機能性長さの拡がりは黒で表示され、解剖学的病変内に相対的FFR降下が示されている。FAM
QCAは、カラーコードマップとして表示される:青色は、解剖学的病変を超えて拡がる機能性疾患を強調する。経皮的冠動脈形成術(PCI)は、心外膜コンダクタンスおよび低いPCI後FFRの少量の改善をもたらし(右パネル)、その相対利得は0.22に等しかった。
【
図3】QCAから導出される解剖学的長さ、OCTから導出される解剖学的長さ、FAM
QCA、およびFAM
OCTの定義。機能性びまん性疾患の血管の例を考慮する。FAM
QCAは、QCAから導出された解剖学的長さ(パネルA)と機能的長さ(パネルB)との間の差として定義され、一方、FAM
OCTは、OCTから導出された解剖学的長さ(パネルC)と機能的長さ(パネルB)との間の差と定義される。QCAまたはOCTから導出された解剖学的病変は、3D幾何学的血管再構築上で表され、FAM
QCAまたはFAM
OCTを使用してカラーコードされる(それぞれ、パネルDおよびE)。両方の場合、機能性病変長さは解剖学的病変長さよりも長い(即ち、負のFAM)。
【
図4】自動分類器の開発および性能。健康な、限局性疾患、およびびまん性疾患セグメント(それぞれ、緑、赤、および青)の、長さ対FFR降下平面における図。導出セットにいて2名の独立した観察者(CaCおよびSN)による視覚的判断を使用して、健康な、限局性疾患、およびびまん性疾患セグメントを区別できる自動分類器を開発した(パネルA)。次いで自動分類器を、検証セットに適用した(パネルB)。分類器の性能を、2名の独立した観察者による視覚的判断と比較することによって評価した。
【
図5】機能的長さとQCAから導出された解剖学的長さとの間、OCTから導出された解剖学的長さとFFR相対利得との間の相関を示す、散乱プロットである。QCAから導出された解剖学的長さは、機能的長さと相関しなかった(パネルA)。OCTから導出された解剖学的長さは、機能的長さと相関した(パネルB)。機能性疾患長さは、FFR相対利得と逆に相関した(パネルC)。
【
図6】FAM、FFR相対利得の間、および解剖学的病変内のFFR降下とFFR相対利得との間の相関を示す、散乱プロットである。直接有意な関連が、PCI後にFAM
QCAとFFR相対利得との間に見い出され、即ちFAMが大きくなるほど、PCI後の機能性相対利得が高くなる(パネルA)。直接有意な関連は、FAM
OCTと、PCI後のFFR相対利得との間でも見い出された(パネルB)。QCAから導出された解剖学的病変内のFFR降下は、PCI後の機能性相対利得に強力に相関し、即ち、降下が機能性病変よりも解剖学的病変に大きく起因するにつれ、PCI結果が良好になる(パネルC)。OCTから導出された解剖学的病変内のFFR降下は、PCI後の機能性相対利得に強力に相関した(パネルD)。
【
図7】生成点(m,FFR
m)、(i,FFR
i)、および(n,FFR
n)を持つ、FFRプルバック曲線の例示的なケース。
【
図8】FFR降下およびセグメント長さの図式的説明による、区分的線形化されたFFRプルバック曲線の例示的なケース。
【
図9】左の結果は、観察者CaCに対するものであり、右は、観察者SNに関するものである。パネルA:検証セットに関する長さ対FFR降下平面における、健康なセグメント、限局性疾患セグメント、およびびまん性疾患セグメント(それぞれ、黒、白、および灰色;当初はそれぞれ緑、赤、および青)。パネルB:分類 健康対病理学的セグメントの、混同行列。パネルC:分類 限局対びまん性疾患セグメントの混同行列。
【
図10】FAM
QCAおよびFAM
OCTの連続病変に対する感度分析。機能的長さの定義に関して連続セグメントのみ考慮して、FAM
QCAとPCI後のFFR相対利得との間(パネルA)、およびFAM
QCAとPCI後のFFR相対利得との間(パネルC)に直接有意な関連を見い出した。連続病変を分析から除外し、直接有意な関連を、FAM
QCAとPCI後のFFR相対利得との間(パネルB)、およびFAM
QCAとPCI後のFFR相対利得との間に見い出した(パネルD)。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の詳細な説明
本発明について、特定に実施形態に関しておよびある特定の図面を参照しながら記述するが、本発明はそれらに限定するものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。請求項における任意の参照符号は、範囲を限定すると解釈されるものではない。記述される図面は、単に概略的であり、非限定的である。図面において、要素のいくつかのサイズは、例示的な目的で強調されてもよく、縮尺を合わせて描かれていなくてもよい。「含む」という用語が本記述で使用される場合、その他の要素またはステップを除外しない。単数名詞を指すときに不定または定冠詞、例えば「a」または「an」、「the」が使用される場合、他の何かについて特に言及しない限り、複数のその名詞が含まれる。さらに、記述および請求項における第1、第2、第3などの用語は、類似の要素同士を区別するために使用され、必ずしも順次的または年代的な順序について記述するものではない。そのように使用された用語は適切な状況下で同義であり、本明細書に記述される本発明の実施形態は、本明細書に記述されるまたは示される以外の順序で操作可能であることを理解されたい。以下の用語または定義は、本発明の理解を助けるためだけに提供される。本明細書で特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語は、本発明の分野の当業者が有するであろうものと同じ意味を有する。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、当技術分野の当業者(例えば、分子生物学、介入心臓流体物理学、生化学、および/または計算生物学/バイオメカニクス)に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0048】
冠動脈の機能的完全血管再建術は、経皮的冠動脈形成術(PCI)後に改善された臨床結果に関連付けられていた。それにもかかわらず、患者の3分の1では、首尾良くなされた処置の後であっても、冠状潅流圧力が低いままである。本発明では、本発明者らは、解剖学的および機能性の侵襲的評価間でのCADの程度のミスマッチを定量することができるコンピューターが実行する方法を開発した。本発明では、本発明者らは、PCI後の冠血流予備量比(FFR)に対するこのミスマッチの影響を評価した。
【0049】
したがって本発明は第1の実施形態で、機能性冠動脈疾患(CAD)の程度を定量する、コンピューターが実行する方法であって、下記のステップ:i)冠状血管の小孔と最遠位部分との間の冠状血管の種々の点で得られたひと組の冠血流予備量比(FFR)値を処理するステップ、ii)ペナルティ付きパラメトリックグローバル法に基づき自動変化点検出アルゴリズムを適用することにより前記FFRデータの区分的線形化を実施することによって、冠状血管を、限局性および/またはびまん性セグメントに分類するステップ、および必要に応じて、iii)前記限局性および/またはびまん性疾患断片を、冠動脈の二次元画像上に表示するステップを含む方法を提供する。
【0050】
特定の実施形態では、FFR値は、プルバック曲線、三次元定量冠状血管造影、CTスキャン、または光干渉断層撮影(OCT)から得られる。
【0051】
自動変化点検出アルゴリズムは、当技術分野で公知であるが、心疾患の文脈では決して使用されていない。そのようなアルゴリズムのいくつかは、当技術分野で公知である。例えば、Scott,A.J.およびKnott,M.(1974)Biometrics、30巻(3号):507~512により提案されるバイナリーセグメンテーション法は、周知の変化点サーチ法である。さらに別の手法は、Jackson B.ら(2005)IEEE、Signal Processing Letters、12巻(2号):105~108のアルゴリズムに基づく。本発明では、Killick Rら(2012)J.Am.Stat.Assoc.107、1590~1598)の方法が使用されている。
【0052】
さらに別の実施形態では、本発明は、機能性CADの程度を定量することによって、経皮冠動脈形成術(PCI)に対する応答を予測するためのin vitro法を提供する。
【0053】
さらに別の実施形態では、本発明は、経皮冠動脈形成術(PCI)に適格な冠動脈疾患(CAD)に罹患する哺乳動物を選択する方法であって、本明細書に記述される方法によりコンピューターが実行する方法の適用と、冠動脈における機能性疾患の程度が冠動脈での解剖学的疾患の程度よりも小さいときに哺乳動物を選択することを含む方法を提供する。
【0054】
特定の実施形態では、哺乳動物は、機能的解剖学的ミスマッチ(FAM)が0よりも大きいとき(FAM=>0)、PCIに適格である。このことは、機能性CADの長さが、解剖学的に定義されたCADで記述されることを意味する。
【0055】
別の実施形態では、哺乳動物は、FAMが0よりも低いとき(FAM=<0)、PCIに適格ではない(または、首尾良くなされたPCI処置を有するのに適格ではない)。このことは、機能性CADの長さが、解剖学的に定義された病変を超えて延びることを意味する。このことは、負のFAM値が、決定された解剖学的病変の外側の圧力損失を反映することを意味する。
【0056】
特定の実施形態では、方法が、オフライン法である。
他の特定の実施形態では、方法は、自動分類法である。
【0057】
さらに別の実施形態では、本発明は、哺乳動物の冠動脈疾患の機能性パターンを評価するためのコンピューターデバイスを提供し、前記コンピューターデバイスは、冠状血管の小孔と最遠位部分との間の冠状血管の種々の位置で得られたひと組のFFR値を処理するように構成され、冠状血管を、ペナルティ付きパラメトリックグローバル法に基づき自動変化点検出アルゴリズムを適用することにより前記FFRデータの区分的線形化を実施することによって、限局性および/またはびまん性疾患セグメントに分類する。
【0058】
特定の実施形態では、FFR値の組は、プルバック曲線、三次元定量冠状血管造影、CTスキャン、または光干渉断層撮影(OCT)から得られる。
【0059】
本発明の方法は、獣医学的適用例で使用することもできる。哺乳動物は、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、および好ましくはヒト対象(ヒト患者)を含む。
【0060】
他の特定の実施形態では、冠血流予備量比(FFR)データは、手作業でまたはプレッシャーワイヤーに取着された電動式プルバックデバイスによって得られる。
【0061】
さらに別の特定の実施形態では、電動式プルバックデバイスを必要とせず、代わりにFFR曲線は、多数の内蔵圧力センサーを含むプレッシャーワイヤーによって得られる。
【0062】
別の特定の実施形態では、カテーテルは、冠状血管に関する診断情報を得るように構成される。これに関し、カテーテルは、1つまたは複数のセンサー、トランスデューサー、および/または血管に関する診断情報を得るように構成されたその他のモニタリング要素を含むことができる。診断情報は、圧力、流れ(速度)、画像(超音波(例えば、血管内超音波-IVUS)、光干渉断層撮影(OCT)、熱、および/またはその他の撮像技法を使用して得られた画像を含む)、温度、および/またはこれらの組合せの1つまたは複数を含む。これらの1つまたは複数のセンサー、トランスデューサー、および/またはその他のモニタリング要素は、一部の場合には、カテーテルの遠位先端から30cm未満、10cm未満、5cm未満、3cm未満、2cm未満、および/または1cm未満に位置決めされる。ある場合には、1つまたは複数のセンサー、トランスデューサー、および/またはその他のモニタリング要素の少なくとも1つが、カテーテルの遠位先端に位置決めされる。別の特定の実施形態では、カテーテルは、冠状血管内の圧力をモニターするよう構成された少なくとも1つの要素を含む。圧力モニタリング要素は、ピエゾ抵抗圧力センサー、ピエゾ電気圧力センサー、容量圧力センサー、電磁圧力センサー、光圧力センサー、および/またはこれらの組合せの形をとることができる。ある場合には、圧力モニタリング要素の1つまたは複数の特色は、半導体および/またはその他の適切な製造技法を使用して製造されたソリッドステート構成要素として実現される。
【0063】
さらに別の実施形態では、カテーテルは、プレッシャーワイヤー(またはガイドワイヤー)を含む。適切な圧力モニタリング要素を含む、市販のガイドワイヤー製品の例には、限定するものではないがPrime Wire PRESTIGE(登録商標)圧力ガイドワイヤー、Prime Wire(登録商標)圧力ガイドワイヤー、およびComboWire(登録商標)XT圧力およびフローガイドワイヤーであって、それぞれVolcano Corporationから入手可能なもの、ならびにPressure Wire(商標)CertusガイドワイヤーおよびPressure Wire(商標)AerisガイドワイヤーであってそれぞれSt.Jude Medical,Incから入手可能なもの、またはCOMET(商標)FFR圧力ガイドワイヤーであってBoston Scientific製のものが含まれる。プレッシャーワイヤーは、冠状血管に関する診断情報を得るためにも構成される。ある場合には、プレッシャーワイヤーは、カテーテルと同じ診断情報を得るためにも構成される。ある場合には、プレッシャーワイヤーは、追加の診断情報、それほど診断的ではない情報、および/または代替の診断情報を含み得る、カテーテルとは異なる診断情報を得るように構成される。プレッシャーワイヤーにより得られた診断情報は、圧力、流れ(速度)、画像(超音波(例えば、IVUS)、OCT、熱、および/またはその他の撮像技法を使用して得られた画像を含む)、温度、および/またはこれらの組合せの1つまたは複数を含む。
【0064】
カテーテルと同様に、プレッシャーワイヤーは、血管内の圧力をモニターするよう構成された少なくとも1つの要素も含む。圧力モニタリング要素は、ピエゾ抵抗圧力センサー、ピエゾ電気圧力センサー、容量圧力センサー、電磁圧力センサー、光圧力センサー、および/またはこれらの組合せの形をとることができる。ある場合には、圧力モニタリング要素の1つまたは複数の特色は、半導体および/またはその他の適切な製造技法を使用して製造されたソリッドステート構成要素として実現される。特定の実施形態では、プレッシャーワイヤーは、多数の圧力センサー、例えば少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、またはそれよりも多くの圧力センサーを含むことができる。プレッシャーワイヤーのそのような実施形態によれば、多数の圧力センサーは、プレッシャーワイヤーの長さに沿った種々の位置で提供され、したがって静止しているときであっても、冠状血管内に導入されて冠状血管の遠位端まで至った後は、冠状血管の長さに沿った種々の位置で、または言い換えれば冠状血管の小孔と遠位端との間の種々の位置での複数の圧力測定値を決定するように構成されることが明らかである。
【0065】
特定の実施形態では、プレッシャーワイヤーは、血管の管腔内を移動しながら血管内の圧力をモニターするように構成される。ある場合には、プレッシャーワイヤーは、血管の管腔内を移動し、血管に存在する狭窄を横断するように構成される。これに関し、プレッシャーワイヤーは、狭窄の遠位に位置決めされ、狭窄を横断して近位に移動して(即ち、引き戻される)、ある場合には狭窄の近位の位置に至る。プレッシャーワイヤーの移動は、一部の実施形態では、医療従事者による手作業で(例えば、術者の手で)制御することができる。他の好ましい実施形態では、プレッシャーワイヤーの移動は、移動制御デバイス(例えば、Volcano Corporationから入手可能なTrak Back(登録商標)IIまたはVolcano R-100デバイスなどのプルバックデバイス)によって自動的に制御される。その点に関し、移動制御デバイスは、ある場合には、プレッシャーワイヤーの移動を、選択可能で公知の速度(例えば、5.0mm/秒、2.0mm/秒、1.0mm/秒、0.5mm/秒など)で制御する。血管を通るプレッシャーワイヤーの移動は、ある場合には、各プルバックごとに連続的である。他の場合には、プレッシャーワイヤーは、血管内を段階的に移動する(即ち、固定量の距離および/または固定量の時間で繰り返し移動する)。
【0066】
さらに別の実施形態では、本発明は、充血性条件下で患者の冠動脈疾患を評価するためのシステムであって、i)圧力センサーを含み、少なくとも1つの圧力センサーを含むプレッシャーワイヤーをさらに含む、冠状カテーテル、ii)カテーテルおよびプレッシャーワイヤーと通信し、多数のFFR値に基づきFFR曲線を作成するよう構成された、コンピューターデバイス(後者は、小孔での圧力に対して冠状血管の全長にわたり得られた圧力からの相対圧力測定値である)、iii)前記コンピューターデバイスが、FFR曲線、および解剖学的冠動脈疾患との相関に基づいて、機能性冠状疾患の長さ(または程度)を計算するコンピューターアルゴリズムとを含み、コンピューター出力が、FAM値の正または負の値に基づいて首尾良くなされた経皮的冠動脈形成術を介入心臓専門医に知らせるFAM値を表示する、システムを提供する。特に、FAM値が負(即ち、<0)のとき、患者に対して首尾良くPCIを実行する可能性はない。
【0067】
本発明では、「システム」は、「デバイス」または「装置」に等しい。そのようなシステム、デバイス、および/または装置は、同じハウジングにまたは複数の種々のハウジングに収容することができる、任意の適切な数の相互接続サブシステムまたは構成要素を含むことができることが明らかである。
【0068】
コンピューターデバイスは一般に、本開示で論じられた処理および分析技法を行うのに適した任意のデバイスを表す。一部の実施形態では、コンピューターデバイスは、プロセッサー、ランダムアクセスメモリー、および記憶媒体を含む。それに関し、ある特定の場合には、コンピューターデバイスは、本明細書に記述されるデータ獲得および分析に関連するステップを実行するようにプログラムされる。したがって、データ獲得、データ処理、FAMの計算、機器制御、および/または本開示のその他の処理もしくは制御態様に関する任意のステップは、コンピューターデバイスによってアクセス可能な非一時的コンピューター可読媒体上にまたはその内部に記憶された対応する命令を使用して、コンピューターデバイスによって実現され得ることが理解される。ある場合には、コンピューターデバイスは、コンソールデバイスである。ある場合には、コンピューターデバイスは、ポータブル(例えば、手持ち式、ローリングカート上など)である。さらに、ある場合には、コンピューターデバイスは、複数のコンピューターデバイスを含むことが理解される。これに関し、本開示の種々の処理および/または制御態様は、複数のコンピューターデバイスを使用して別々にまたは所定のグループ分けの中で、実現され得ることが特に理解される。多数のコンピューターデバイス全体にわたる本明細書に記述される処理および/または制御態様の任意の分割および/または組合せは、本開示の範囲内にある。
【0069】
物理的接続(電気的、光学的、および/または流体接続を含む)、ワイヤレス接続、および/またはそれらの組合せを含む、カテーテルとコンピューターデバイスとの間の任意の通信経路が、利用され得ることが理解される。その点に関し、接続は、ある場合にはワイヤレスであることが理解される。ある場合には、接続は、ネットワーク全体にわたる通信リンクである(例えば、イントラネット、インターネット、テレコミュニケーションネットワーク、および/またはその他のネットワーク)。その点に関し、コンピューターデバイスは、ある場合にカテーテルが使用されている操作領域から離れて位置決めされることが理解される。接続に関する選択肢は、コンピューターデバイスが隣接する部屋にあるのか、隣接する建物にあるのか、または異なる州/国にあるのかとは無関係に、カテーテルとリモートコンピューターデバイスとの間の通信を容易にし得るネットワーク上での接続を含む。さらに、カテーテルとコンピューターデバイスとの間の通信経路は、ある場合には安全な接続であることが理解される。さらになお、ある場合には、カテーテルとコンピューターデバイスとの間の通信経路の1つまたは複数の部分上で通信されるデータは、暗号化されることが理解される。
【0070】
考察および概要
本発明は、ヒト患者などの哺乳動物における機能性冠動脈疾患(CAD)の拡がりを定量するための、コンピューターデバイスおよびコンピューターが実行する方法を提供する。機能性CADの拡がりは、CADの機能的長さに対応することが明らかである。方法は、血管造影、血管内撮像、および冠状内充血性圧力トレースプルバックに基づいて、解剖学的および生理学的侵襲評価の間でのCADの程度のミスマッチを決定する。特に、FFRデータ(プルバック曲線から導出されたFFRデータなど)から導出された機能性疾患の程度は、本明細書で提供される、特に開発されたアルゴリズムを使用して定量することができる。提供される方法の臨床関係は、解剖学的および機能性CADの長さの間のミスマッチ(即ち、FAMと省略され、QCAまたはOCTのいずれかから導出される)が、経皮的血管再建術後の心外膜コンダクタンスの改善を予測することを提供する。解剖学的CADの長さまたは程度は、直径、冠状血管の管腔面積の低減を含む、血管の特定の部分、または例えば所定の閾値を超える、血管の解剖学的逸脱の任意のその他の適切な指標の検出を用いて決定されることが明らかである。解剖学的CADの長さまたは程度は、その解剖学が冠状血管に沿った血流に負の影響を及ぼすので、解剖学的に罹患したと見なすことができる血管の部分に相関することが明らかである。機能性CADの長さまたは程度は、FFR値の低減と相関する血管の特定の線形化セグメント、または所定の閾値を超える、圧力変化の任意のその他の適切な指標の検出を用いて決定され、それによって、検出可能な解剖学的指標とは無関係に、これらのセグメントにおける冠動脈の機能性が負の影響を受けるという事実に基づいて、機能的に罹患したと見なすことのできる血管の程度または長さを決定することが明らかである。
【0071】
QCAは、従来の血管造影に基づき、狭窄セグメントの程度としてCAD長さを特定する。上述のように、この実施形態によりQCAを用いて決定される、解剖学的CADの程度または長さを指すことが明らかである。一方、より高い空間解像度を保有するOCTは、アテローム動脈硬化症のプラークなしで、近位および遠位参照断面の選択から病変長さを導出する。このことは、この実施形態によりOCTを用いて決定された、解剖学的CADの程度または長さを指すことが明らかである。したがって、OCTから導出されたCAD解剖学的長さの実施形態は、QCAから導出された長さの実施形態に等しくまたはそれよりも長くなることが予測される。本発明者らは、OCTから導出されたものと比較して、QCAから導出されたときにCADの解剖学的長さがより短く;それでもFFRプルバックから導出されたCADの長さは、より長い(
図6)ことを観察した。言い換えれば、この実施形態によれば、CADの機能的長さは、CADの解剖学的長さの両方の実施形態よりも長かった。この知見は、冠状生理学を使用して評価したとき、アテローム性動脈硬化症のびまん性を強調する。興味深いことに、QCAから導出されたCADの程度および機能的長さは統計的に相関せず、それに対してOCTから導出された解剖学的長さおよび機能的長さは、適度な相関を示した。本発明者らのデータは、病変の拡がりの評価に関してQCAにより提供された準最適指針を強調し、機能性完全血管再建術を実現するための血管内撮像の有用性を確認する。言い換えれば、QCAから導出されたCADの解剖学的程度または長さのみ考慮するとき、病変の拡がりの評価に関する準最適指針が提供される。
【0072】
圧力プルバックは、2つの明確な機能性CADエンドタイプ、即ち、主として限局性またはびまん性を示すことができる。限局的機能性CADでは、圧力降下が一般に解剖学的狭窄に制限される。この疾患のエンドタイプでは、PCIが心外膜コンダクタンスを回復させ、より高いPCI後FFRをもたらし、患者を狭心症から解放する可能性を増大させ、改善した臨床結果に関連付ける。対照的に、機能的びまん性疾患を持つ患者では、PCIは、血管生理学での少量の改善、低いPCI後FFR、および永続的狭心症のより高い可能性をもたらす。いくつかの新規な方法は、冠状生理学に関してPCIの結果を予測することを狙うCADのパターンを評価するのに利用可能である。プルバック圧力勾配(PPG)指数(Coroventis Research、Uppsala、スウェーデン)、瞬時血流予備量比(iFR)コレジストレーションシステム(Philips、Best、オランダ)、およびFFR
CT血管再建術プランナー(HeartFlow Inc, Redwood city、USA)は、臨床判断の決定をさらにパーソナライズ化し、慢性冠動脈症候群の患者における血管再建戦略を洗練させ得る新規な手法である。本発明では、FFRプルバックから機能性CADの程度を定量することによって、PCIに対する応答を予測する相補的手法を開発した。CADの機能的長さが大きくなるほど、PCIで得られる機能的利得は低くなり、機能的血管再建術の可能性は低くなる。この手法は、機能性疾患のミリメートルがFFR閾値に基づき計算されるPPGに類似する。言い換えれば、本実施形態によれば、例えばFFR降下の閾値は、FFRの低下を示す冠状血管の部分の標識に関して≧0.0015/mmと定義される。この実施形態によれば、同様にこの閾値は、FFRの低下を示さない冠状血管の部分を定義することが明らかである。PPG指数の文脈において、上記にて言及したように、機能性疾患の長さまたは程度は、例えば曲線の全ての部分の長さを集合させることによりプルバック曲線から導出され、ここでFFRの降下、または言い換えればFFRの低下は≧0.0015/mmであった。本発明の手法の実施形態によれば、上述のように、最初に例えばFFRプルバック曲線を表すFFR値の組を、自動変化点検出アルゴリズムを適用することにより区分的線形化を用いて、連続セグメントに、例えば健康なセグメントおよび疾患セグメントなど、例えば限局性疾患セグメント、びまん性セグメント、または任意のその他の適切な疾患セグメントを含むものに変換する。本発明の手法では、機能性疾患の長さは、FFR曲線セグメントを健康または疾患と分類する自動アルゴリズムに基づき計算される。言い換えれば、例えばFFRプルバック曲線を表すFFR値の組を処理した後、自動変化点検出アルゴリズムは、区分的線形化を用いてFFR値の組を連続した線形セグメントに変換し、これを健康なセグメントまたは疾患セグメントとして分類する。好ましい実施形態によれば、そのようなセグメントは、セグメントがFFRの低下を示さないとき、または言い換えれば、例えばFFR降下およびセグメントのセグメント長さが、FFR降下がy軸であり、セグメント長さがx軸である座標系の位置を、所定の第1の分類閾値関数よりも上に画定するとき、健康なセグメントとして分類される。FFR降下は、セグメントの遠位と近位点との間のFFR値の差と定義されることが明らかである。実線で標識された「健康対病的」を用いて
図4に示される例示的な実施形態によれば、所定の第1の分類閾値関数は、例えば以下の方程式、y=(-1,6536.10
-4).x-0,0393(式中、yはFFR降下の値であり、xは、mmを単位とするセグメント長さである)を用いて表される。示される実施形態によれば、この実施形態によりその第1の分類閾値関数の上方に位置決めされた、それぞれセグメント長さおよびセグメントのFFR降下により決定された、対応するx,y座標を持つ任意のセグメントは、健康なセグメントとして分類され、黒色マーカーを用いて表されることが明らかである。好ましい実施形態によれば、そのようなセグメントは、そのセグメントがFFR低下を示すときまたは言い換えればセグメントのFFR降下およびセグメント長さが、FFR降下がy軸でありセグメント長さがx軸である座標系の位置を、所定の第1の分類閾値関数よりも下に画定するとき、疾患セグメントとして分類される。
図4に示される例示的な実施形態によれば、所定の第1の分類閾値関数は、例えば、以下の方程式、y=(-1,6536.10
-4).x-0,0393(式中、yはFFR降下に関する値であり、xは、mmを単位としたセグメント長さである)を用いて表される。示される実施形態によれば、その第1の分類閾値関数よりも下に位置決めされた、それぞれセグメント長さおよびセグメントのFFR降下によって決定された、対応するx,y座標を持つ任意のセグメントは、疾患セグメントとして分類され、白色または灰色のマーカーを用いて表されることが明らかである。しかしながら、この実施形態によるこの第1の分類閾値関数は、特定の組の患者データから導出されたことが明らかであり、分類が代替のおよび/または追加の患者データに基づくとき、その他の適切な分類閾値関数が導出され得ることが明らかである。言い換えれば、代替の実施形態によれば、FFR降下および/またはセグメント長さなどのセグメントの適切なパラメーター、および/または任意の適切な割合、またはこれらセグメントのそれらの組合せに基づいて健康なセグメントおよび疾患セグメントを分類するように構成された任意の適切な第1の分類閾値関数が、可能である。本発明者らの手法の別の利点は、自動変化点検出アルゴリズムを用いた区分的線形化を利用することなしに、閾値の適用と比較して、プルバック曲線のアーチファクトに対してそれほど脆弱ではないことである。線形セグメントに基づき決定されたパラメーターを用いて、自動変化点検出アルゴリズムを用いた区分的線形化は、例えば一時的なまたは局所的な測定誤差などの結果である局所アーチファクトに対してそれほど感受性がないことが明らかである。さらに、疾患の解剖学的長さを組み込むことによるFAM概念は、PCIとの相互作用を説明し、したがって処置されるセグメントの文脈において機能的関与が評価される。血管再建術は、心外膜コンダクタンスを修復して、心筋潅流を改善することを目標とする。2つの因子が、冠状生理学に関して、PCIに対する心外膜血管の応答に影響を及ぼす。第1に、完全血管圧力損失に対する、処置された病変の機能的関与である。言い換えれば、血管でのFFRの全体的な低減に対する、病変内のFFR曲線のステップアップの大きさである。第2に、処置されたセグメントの外側での圧力損失の存在である。FAMは、解剖学的および機能性CAD長さの間のミスマッチを定量し、それによって、PCI後の生理学に対する、処置領域の外側の残留圧力損失の影響に、ストレスを与える。さらに、FAM手法は、圧力降下の大きさではなく疾患の存在および長さに基づき、この手法は連続病変の場合に相互作用によりそれほど影響を受けるものではない。さらに、病変内の相対的FFR降下として本発明で示される、処置された病変の機能的関与も、機能的利得と相関する(
図6、C、およびD)。デルタ病変FFRが大きいほど、機能的利得は大きくなる。要するに、本発明者らの知見はさらに、圧力プルバック戦略を支えて、血液動態病変の有意性の確認後に決定を下す第2のレベルとしてPCIを案内する。CADの機能的程度がCADの解剖学的程度よりも長い、負のFAMを持つ病変を特定することにより、臨床医にジレンマが生じる。機能性疾患をカバーする、さらに長いステントで処置された領域を拡げることにより、PCI後FFRが改善され得るが、目標血管不全のより高い率に関連しているさらに長い、さらに多くのステントももたらし得る。さらに、機能性びまん性疾患を持つ血管のPCIは、より多くの周術期合併症に関連してきた。したがって、CADの機能的パターンの評価は、リスクの層化をさらに提供し、プルバックのステップアップなしに病変ステント留置を回避することによってPCIに関する患者の選択を改善してもよく、周術期心筋梗塞のリスクを低減し、および正味の臨床利益を血管再建術からもたらす。本発明の方法により、負のFAMを持つ患者、即ちびまん性機能性CADを持つ患者は、最適な医学的治療または冠動脈バイパスグラフト形成でより良く処置することができ、それに対して正のFAMを持つ患者はPCIでより良く処置されることを予見する。
【0073】
冠動脈疾患の特徴に関して得られた情報、例えば解剖学的および機能的領域の長さの測定値なども、血管特徴のより完全なおよび/または正確な理解を提供するために、病変もしくは狭窄および/または血管のその他の代表例、例えばIVUSなどであって例えばバーチャル組織学、OCT、ICE、熱、赤外線、流れ、ドップラー流、および/またはその他の血管データ収集様式を含むものに加えて考慮できることが明らかである。例えば、ある場合には、本発明のシステムによって得られた病変もしくは狭窄および/または血管の特徴に関する情報は、1種または複数のその他の血管データ収集様式を使用して計算されたまたは決定された情報を確認するのに利用される。
【0074】
最後に、特定の実施形態、特定の構成、ならびに材料および/または分子について、本発明による方法のために本明細書で論じてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、形および詳細の様々な変更または修正を行ってもよいことを理解されたい。以下の実施例は、特定の実施形態をより良く示すために提供され、それらは本出願を限定すると見なすべきではない。本出願は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0075】
実施例
1.患者の特徴
患者の臨床的特徴を表1に示す。全体として、117名の患者(131の血管)が含まれた:71名の患者(81の血管)が導出コホートにあり、48名の患者(50の血管)が検証コホートにあった。QCAおよびOCT解剖学的病変長さを、検証コホートの全て(n=50)および部分(n=36)に関してそれぞれ入手した(表2)。PCI前後でのFFR電動式プルバックを、全てのケースで入手した。
【0076】
2.FFRプルバック曲線自動分類器
導出および検証コホートの解剖学的、機能的、および手続き的特徴を、表2に提示する。FFR曲線から、431のセグメントを抽出した。詳細には、151(観察者1)および156(観察者2)のセグメントを、健康であると視覚的に評価し、101(観察者1)および106(観察者2)を限局性疾患、146(観察者1)および147(観察者2)をびまん性疾患と評価した(
図4)。検証コホートでは、自動分類器が、「健康な」および「疾患」セグメントの間で優れた識別能を提供した(観察者1に関してAUCは0.97、95%CI 0.94~0.99、および観察者2に関して、1.00、95%CI 0.98~1.00であった)。限局性およびびまん性疾患セグメントの間の差別化を考慮すると、識別能も優れていた(観察者1に関して、AUCは0.93、95%CI 0.86~0.97、および観察者2に関して、0.96、95%CI 0.91~0.99であった)。FFR曲線の視覚評価に関する観察者間の一致は、適度であった(ICC 0.66、95%CI 0.60~0.71)。
3.機能的解剖学的ミスマッチ(FAM)
PCIを、検証コホートに含まれる50の血管で行った。PCI前FFRは0.74[0.67~0.77]であり、直径狭窄は53.0%[47.25~59.50]であった。QCAから導出された解剖学的CAD長さは、16.05mm[11.40~22.05]、OCTから導出された解剖学的CAD長さは、28.0mm[16.63~38.0]、および機能性CAD長さは67.12mm[25.38~91.37](p<0.001)であった。QCAから導出された解剖学的CADの程度または長さと、FFRプルバックから導出された機能性CADの程度または長さとの間に相関は生じなかった(r=0.124、95%CI 0.168~0.396、p=0.390、
図5A)。OCTから導出された解剖学的病変長さは、機能性CAD長さと相関した(r=0.469、95%CI 0.156~0.696、p=0.004、
図5B)。
【0077】
平均ステント長さは27.45±11.52mmであった。平均PCI後FFRは0.86[0.82~0.89]であった。PCIおよびPCI後FFR測定を受けた正および負のFAMを持つ血管を視覚化する例示的な実施例を、
図2に提示する。FAM
QCAは-47.59[-73.22~-8.08]mmであり、FAM
OCTは-37.47[-64.29~-8.98]mm(p=0.446)であった。機能性CADの長さは、相対的機能利得と逆相関し(r=-0.672、95%CI -0.804~-0.478、p<0.001、
図5C)、即ち機能性疾患が長くなるほど、PCIを持つFFRの改善は小さくなる。強力な関連は、PCI後のFAM
QCAとFFR相対利得との間(r=0.647、95%CI 0.443~0.788、p<0.001、
図6A)、ならびにPCI後にFAM
OCTとFFR相対利得との間(r=0.630、95%CI 0.372~0.798、p<0.001、
図6B)に生じた。連続病変の下位群の感度分析は、類似の結果を示した(
図10)。PCI後のFFR利得は、PCI前の血管FFRに対するPCI後の血管FFRの差に対応することが明らかである。血管FFRは、冠動脈の近位または小孔の大動脈圧Paに対して、冠動脈の遠位圧力または最遠位部分のPdから計算されたFFRを指すことが明らかである。
【0078】
その機能性疾患が解剖学的病変内で確認された患者(即ち、FAM≧0)は、相対的機能利得が最も強力に改善された(FAM
QCA≧0.701±0.235対FAM
QCA<0 0.441±0.225、p<0.001)。QCAまたはOCTのいずれかから導出されたFAMは、機能利得を予測した(FAM
QCA AUC 0.84、95%CI 0.71~0.93、p<0.001およびFAM
OCT AUC 1.00、95%CI 0.93~1.00、p<0.001)。心外膜コンダクタンスの50%利得を予測する最良FAM
QCAおよびFAM
OCTカットオフ値は、それぞれ-57.64mmおよび-37.19mmであった。QCAまたはOCTのいずれかから導出された解剖学的病変内のFFR降下パーセントは、機能利得と強力に相関した(QCAに関して、r=0.792、95%CI 0.655~0.879、p<0.001、およびOCTに関して、r=0.789、95%CI 0.615~0.890、p<0.001、
図6C~6D)。
【0079】
表
【0080】
【0081】
【0082】
方法
1.研究設計
これは、PCI前に電動式FFRプルバック評価が行われる臨床的に必要な冠状血管造影を受ける患者の、多角的でプロスペクティブな登録である。急性冠動脈症候群、以前の冠動脈バイパスグラフト術、著しい弁疾患、重症閉塞性肺疾患または気管支喘息、冠動脈口狭窄症、重度蛇行、または重度石灰化を提示する患者は除外した。適切な圧力トレースおよびプルバック曲線を持つ患者を、この分析に含めた。研究は、参加する各センターの倫理委員会により承認された。研究集団は、2つのプロスペクティブ研究NCT03824600およびNCT03782688の組合せである。
【0083】
2.冠状血管造影分析
血管造影を、専用の獲得プロトコールを使用して行った。少なくとも30度離れた2つの血管造影投影を、冠動脈内ナイトレートの投与後に各標的病変ごとに得た(
図1A)。血管造影図を、生理学的および臨床データを見ずに評価し、三次元定量冠状血管造影(3D QCA)(QAngio XA、Medis Medical Imaging、オランダ)を使用して分析した。最小管腔直径(MLD)、参照血管直径(RVD)、および直径狭窄パーセンテージ(DS%)を計算した。急性利得は、PCI前後のMLDの間の差と定義した。QCAから導出された解剖学的病変長さを、3D QCAソフトウェアを使用して計算し、参照直径線が直径機能線と交差する長さと定義した(
図1B)。上記にて言及されたように、および
図1Bに示されたように、QCAで定められた解剖学的長さは、参照直径線が直径機能線と交差するそのようなセクションの長さによって決定され、または言い換えれば、例えば最小管腔直径に基づく参照直径線は、狭窄病変として、適切なコンピューターが実行する方法を用いて適格であるとされ、解剖学的長さの計算のために選択される。解剖学的病変長さの手動補正はなされなかった。連続病変は、同じ血管内で、参照血管直径の少なくとも3倍の距離にある少なくとも2つの目に見える直径狭窄病変の存在と定義された。しかしながら、上記にて参照されたように、代替の実施形態によれば、解剖学的病変として適格であり、その長さが解剖学的病変長さを計算するのに考慮される、血管の部分またはセクションを決定するためのその他の適切なコンピューターが実行する方法は可能であり、例えば少なくとも30%、または少なくとも50%、または任意のその他の適切な閾値など、例えば直径参照値に対する血管の直径の低減に適切な閾値に基づくものなどが可能であることが明らかである。
【0084】
3.光干渉断層撮影(OCT)
OPTIS(商標)OCTシステム(Abbott Vascular)を使用して検査を行った。36mm/秒でのOCTプルバックを、可能であれば予備拡張前に獲得した。OCTから導出された解剖学的病変長さは、OCT自動管腔検出フィーチャーを使用して、近位および遠位参照セグメント間の距離と定義された。ステント直径の選択は、ステント直径を決定するために、最も近くで利用可能なステントサイズに向かって丸みの付いた(通常は、0.25mmずつ増える)遠位参照平均外弾性板(EEL)ベースの直径に基づいた。EELが適切に視覚化できない場合、ステント直径は、次のステントサイズに至るまで丸みの付いた遠位参照で平均管腔直径を使用して選択される。デバイスの最適化は、オペレーターの裁量でOCTに基づき行われた。
【0085】
4.冠状内圧力測定およびFFRプルバック曲線分析
冠血流予備量比(FFR)測定を、1mm/秒の速度で電動式プルバックデバイス(R 100、Philips Volcano、San Diego、Ca、USA)に接続されるプレッシャーワイヤーX(Abbott Vascular、Chicago、Il、USA)で行った。圧力プルバック測定値は、100Hzのサンプリング周波数で獲得した。連続静脈内アデノシン輸液は、少なくとも2分で定常状態の充血を得るために、140mg/kg/分の用量で、末梢または中心静脈を介して与えられた。圧力センサーの位置を造影剤注入で記録して、同時登録の目的でプルバック初期位置を特定した。PCIを受ける場合、FFR測定を、同じ解剖学的部位で繰り返した。FFR利得は、PCI後FFRからPCI前FFRを差し引いた値と定義された。FFRドリフト(>0.03)が観察された場合、FFRプルバックを繰り返した。FFR利得では、PCI後およびPCI前のFFRを、冠動脈の遠位圧力または最遠位部分でのPdの、冠動脈の小孔の近位またはそこでの大動脈圧Paに対する比として決定した。
【0086】
血管軸に沿ったFFR曲線は、10秒の窓サイズを持つ移動平均フィルターを適用し、その後、平滑化のため無限インパルス応答ローパス楕円フィルター(0.1Hzカットオフ周波数)を適用することによって、再構築した(
図1C)。代替の実施形態は、FFRプルバック曲線を平滑化することが可能であり、言い換えればFFRデータ、例えば任意の適切な移動平均フィルターであってFFRプルバック曲線に関連した期間または長さの適切な部分に設定された窓サイズを持つものなどが可能であることが明らかである。さらに他の実施形態によれば、そのような移動平均フィルターの窓サイズは、例えば、2、3、4、5サイクルなど、または任意のその他の適切な心拍サイクル数に対応する期間に、あるいは任意のその他の適切な手法で設定することができる。FFRプルバック曲線を平滑化するためのさらに他の代替の実施形態が可能であることが明らかであり、その場合、各心周期中にそこからFFRが導出される圧力値のサイクル変動を低減させるために、例えば、適切な移動平均関数(moving average function)、移動平均関数(moving mean function)、ローパスフィルターなどが利用される。
【0087】
そのような実施形態は特に、充血条件下の患者から冠状血管における冠動脈機能性疾患の程度および/またはパターンを定量するのに有用であり、この患者は哺乳動物であり、例えばヒトである。そのような条件下、プルバック動作中にFFRプルバック曲線を表す圧力値を発生させることができる。そのようなFFRプルバック曲線の決定は、プルバック期間中、近位または大動脈圧力Paとも呼ばれる静止圧力センサーに対して、遠位圧力またはPdとも呼ばれる可動式圧力センサーの測定からのFFR値を決定することによって行われる。例えば静止圧力センサーは、血管の小孔に位置決めされ、可動式圧力センサーは、プルバック期間中に血管のさらなる遠位部分、例えば血管の最遠位部分、または狭窄、拘束、もしくは病変の疑いがある血管遠位部分と、血管の小孔との間を移動することが明らかである。そのような測定が、例えば冠動脈の充血条件下で行われるとき、可動式センサーが血管に沿って移動するプルバック期間中にこれらの測定に基づいて決定されるこれらの値は、FFRプルバック曲線のFFR値と呼ばれ、典型的にはPd/Paの比として決定され、ここでPdおよびPaは、例えば、任意の適切な形の前処理、例えば心拍周期の律動的および/または周期的成分をフィルター除去するよう構成された移動平均(mean)または平均(average)関数を用いるなどの後に、測定された圧力値から決定することができる。したがって好ましい実施形態によれば、FFRは例えば、IV輸液によるまたは冠状内(IC)ボーラス注入のいずれかによる例えばアデノシン、ATP、またはパパベリンなどの強力な血管拡張剤の投与を経て好ましくは実現された、好ましくは最大充血中に測定された、可動式圧力センサーによって測定された圧力である平均(mean)または平均(average)遠位冠状圧力と、例えば静止圧力センサーにより測定された圧力である平均(mean)または平均(average)大動脈圧力との比と定義できることが明らかである。充血のそのような条件下、心筋微小血管耐性を一定かつ最小限にすることにより、心外膜導管動脈における疾患の、心筋血流に対する影響が、より有利に切り離される。
【0088】
自動アルゴリズムは、FFR曲線からの機能的長さの定量のために開発された。アルゴリズムの第1のステップは、次のセクションで詳述されるように、ペナルティ付きパラメトリックグローバル法に基づいて自動変化点検出アルゴリズムを適用することによる、各FFR曲線の区分的線形化からなり、例えば
図1Cを参照されたい。アルゴリズムの第2のステップは、それらの長さと、セグメントの遠位点と近位点でのFFR値の差と定義された関連あるFFR降下に基づいて、「健康な」セグメント、即ちFFR低下のないセグメント;「限局性」または「びまん性」疾患セグメントとしての、線形化FFR曲線セグメントの自動分類からなり、例えば
図1を参照されたい。上述のように、好ましい実施形態によれば、そのようなセグメントは、セグメントがFFR低下を示さないとき、または言い換えれば、例えばFFR降下およびセグメントのセグメント長さが、FFR降下がy軸でありセグメント長さがx軸である座標系での位置を画定するとき、即ち所定の第1の分類閾値関数よりも上にあるとき、健康なセグメントとして分類される。
図4に示される例示的な実施形態によれば、所定の第1の分類閾値関数は、例えば下記の方程式、y=(-1,6536.10
-4).x-0,0393(式中、yはFFR降下に関する値であり、xはmmを単位とするセグメントである)を用いて表され、しかしながら代替の実施形態が可能であることが明らかであり、例えば代替の分類閾値関数が適切なデータセットに基づき決定される。好ましい実施形態によれば、そのようなセグメントは、セグメントがFFR低下を示すとき、または言い換えればFFR降下およびセグメントのセグメント長さが、FFR降下がy軸でありセグメント長さがx軸である座標系で位置を画定し、所定の第1の分類閾値関数の下にあるとき、疾患セグメントとして分類される。好ましい実施形態によれば、そのようなセグメントは、セグメントがFFR低下を示し、または言い換えればFFR降下およびセグメントのセグメント長さが、FFR降下がy軸でありセグメント長さがx軸である座標系での位置を画定し、上記言及された所定の第1の分類閾値関数、例えばy=(-1,6536.10
-4).x-0,0393などよりも下にあり、FFR降下およびセグメントのセグメント長さが、FFR降下がy軸でありセグメント長さがx軸である座標系での位置を画定し、所定の第2の分類閾値関数よりも上にあるとき、びまん性疾患セグメントと分類される。ストライプ線で標識された「限局性対びまん性」を用いて
図4に示される例示的な実施形態によれば、第2の分類閾値関数は、例えば下記の方程式、y=(-0,0091).x+0,0575(式中、yはFFR降下の値であり、xはmmを単位としたセグメント長さである)を用いて表され、しかしながら代替の実施形態か可能であることが明らかであり、例えば代替の分類閾値関数が適切なデータセットに基づき決定される。好ましい実施形態によれば、そのようなセグメントは、セグメントがFFRの低下を示すとき、言い換えればFFR降下およびセグメントのセグメント長さが、FFR降下がy軸でありセグメント長さがx軸である座標系で位置を画定し、上記言及された所定の第1の分類閾値関数、例えばy=(-1,6536.10
-4).x-0,0393などよりも下にあるとき、ならびにFFR降下およびセグメントのセグメント長さが、FFR降下がy軸でありセグメント長さがx軸である座標系での位置を画定し、所定の第2の分類閾値関数よりも下にあるとき、限局性疾患セグメントとして分類される。
図4に示される例示的な実施形態によれば、第2の分類閾値関数は、例えば下記の方程式、y=(-0,0091).x+0,0575(式中、yはFFR降下に関する値であり、xはmmを単位としたセグメント長さである)を用いて表され、しかしながら、例えば代替の分類閾値関数が適切なデータセットに基づき決定される、代替の実施形態が可能であることが明らかである。代替の実施形態によれば、健康なセグメント対疾患セグメントを分類するよう構成された任意の適切な第1の分類閾値関数、およびびまん性疾患セグメント対限局性疾患セグメントを分類するよう構成された任意の適切な第2の分類閾値関数が可能であり、これらの関数は必ずしも線形関数である必要がなく、任意のその他の適切な連続または不連続関数とすることができることが、明らかである。
【0089】
2つのコホートは、自動FFRセグメント分類を行うアルゴリズムの部分を開発し検証するよう定められた。導出コホートは、遠位FFR<0.90と定義されたCADを持つ患者からなった。このコホートでは、ベースライン(即ち、PCI前)FFRプルバックのみが含まれた。これらは登録に含まれる全ての患者から連続的に選択された。検証コホートは、ステント留置後にOCTで案内されたPCIおよびFFR測定を受ける、遠位FFR≦0.80と定義されたCADを持つ後続の患者を含んだ。
【0090】
2名の独立した観察者(観察者1:CaC、観察者2:SN)は、2つのコホートに属する区分的線形化FFR曲線セグメントのそれぞれ1つが、「健康な」、即ちFFR低下がないとして、または「疾患」状態として、目視検査によって予備的に判断した。次いで2名の観察者は、「疾患」セグメントに関してさらなる判断を行い、FFRプルバック線形化曲線におけるステップアップの存在に基づいて「限局性」または「びまん性」の間を区別した。
【0091】
導出コホートの視覚的判断を使用して、二変数ロジスティック回帰に基づく自動分類器を開発した。ロジスティック回帰のために考慮される2つの独立変数は、線形化セグメントの長さであり、関連するFFR降下であった。
【0092】
5.自動セグメント分類法
5.1 FFRプルバック曲線上の変化点検出
FFRプルバック曲線の分布特性の主な変化の検出は、ここでは変化点特定戦略を実現した対処した。実施された手法は、変化点検出問題に基づきFFRプルバック曲線の区分的線形化をもたらし、変化点は、曲線の属性が突然変化する、獲得されたFFRプルバック曲線のサンプルと定義される。獲得されたFFRプルバック曲線のサンプルは、対応するFFRプルバック曲線が発生する冠状血管の部分に沿った、特定の位置に対応することが明らかである。FFRプルバック曲線の属性の突然の変化は、例えば以下のさらに詳述されるものなど、FFRプルバック曲線の関連ある属性におけるその特定の位置での、特定可能な変化に対応することが明らかである。例えば以下に記述されるように、FFRプルバック曲線の属性は、例えばFFRプルバック曲線のセグメントに沿った平均値および/または勾配とすることができ、または言い換えれば、冠状血管の小孔と最遠位部分との間の冠状血管の種々の位置で得られたFFR値の組のサブセットである。技術的に、Killick,R.et al(2012)J.Am.Stat.Assoc.107,1590-1598、およびLavielle M.(2005)Signal Processing 85,1501-1510に詳述されるパラメトリックグローバル法は、本明細書ではMATLAB(登録商標)環境(MathWorks、Natick、MA、US)で、FFRプルバック変化点の特定のために実現された。単一変化点の検出に至る、実現されたアルゴリズムのステップは、下記の通りである:
1. FFRプルバック曲線を2つのセグメントに分割し、
2. 各セグメント上で、対象とする統計的特性の実験的評価を計算し、
3. 各セグメントの各点上で、実験的評価からのずれを計算し、
4. 総残余誤差を、セグメント点のずれの合計によって得、
5. 変化点の場所を、総残余誤差によって表されるコスト関数を繰り返し最小限に抑えて特定する。
【0093】
したがって変化点は、2つのセグメントでFFRプルバック曲線を分割するように構成され、その変化点は、これら2つのセグメント間の端点を画定することが明らかである。
【0094】
ポイント1~5によって表される問題は、下記で説明されるようにアルゴリズムに変換することができる。一般的なFFRプルバック曲線、FFR=(FFR1,FFR2,・・・,FFRN)(式中、FFRiは、曲線のi番目のサンプルでのFFR値であり、Nは、サンプルの総数である)が与えられると、問題は、k番目のサンプルがコスト関数
【0095】
【0096】
を最小限に抑えるという知見にあり、式中、χは、対象とする統計的特性の実験的評価であり、Δは偏差尺度である。本発明者らは、FFRプルバック曲線に沿った平均値および勾配の変化を強調することに興味があるので、ここでは対象とする統計的特性として線形関数を採用した。このことは、FFRプルバック曲線に沿った点mおよびnの間の一般的な間隔に関し(
図7)、方程式(1)の右辺の項は:
【0097】
【0098】
として表すことができると言える。
一般的なFFRプルバック曲線は、いくつかの変化点を有していてもよく、変化点の数は先験的に未知である。変化点の付加は残余誤差を減少させるので、FFR曲線の過剰適合は、コスト関数に対する変化点の数の線形関数であるペナルティタームを付加することによって回避され、これは:
【0099】
【0100】
と表すことができ、式中、krおよびkcはそれぞれFFRプルバック曲線の最初および最後のサンプルであり、Cは変化点の数であり、βは固定ペナルティ項(この研究では、0.1に等しく設定される)である。コスト関数の最小化は、早期放棄による動的プログラミングに基づいてアルゴリズムを実現することで得た。Killick,R.et al(2012)J.Am.Stat.Assoc.107,1590-1598。
【0101】
したがって、1つまたは複数の変化点は、FFRプルバック曲線を2つまたはそれよりも多くのセグメントに分割するように構成され、その変化点は、2つのセグメント間、または言い換えれば2つの隣接するセグメント間の端点を画定することが明らかである。示される実施形態による前記セグメントは、境界を有する変化点の間の線形関数に対応し、または言い換えれば線形化セグメントに対応することがさらに明らかである。FFRプルバック曲線は、冠状血管の小孔と最遠位部分との間の冠状血管の種々の位置で得られた、ひと組の冠血流予備量比(FFR)値に対応することが明らかである。したがって、各セグメントは、セグメントの近位点とセグメントの遠位点との間を延び、冠状血管の小孔と最遠位部分との間の冠状血管の種々の位置で得られたFFR値の組のセグメントの前記近位点とセグメントの遠位点との間の種々の位置で得られたFFR値を含むサブセットに対応することが、明らかである。言い換えれば、各線形化セグメントは、FFRプルバック曲線の線形化サブセットに、または言い換えれば、少なくとも1つの変化点で境界を有するFFR値の対応する組に対応する。セグメントの近位点は、FFR値の組の血管の小孔にさらに近い位置に対応することが明らかである。セグメントの遠位点は、FFR値の組の血管の遠位部分にさらに近い位置に対応することが明らかである。示される実施形態による、2つまたはそれよりも多くのセグメントは、最初のセグメントが小孔と第1の変化点との間を延び、最後のセグメントが最後の変化点と冠状血管の最遠位部分との間を延びるように、冠状血管の小孔と最遠位部分との間を延びることがさらに明らかである。FFRプルバック曲線で検出される2つまたはそれよりも多くの変化点がある実施形態では、この最初のセグメントと最後のセグメントとの間を延びる、1つまたは複数のセグメントの対応する順序があることが明らかである。
【0102】
FFRプルバック曲線の区分的線形化が実施されたら、次いで曲線の各線形化セグメントを、2つの量で特徴付けた(
図8):(1)セグメントの遠位点にあるFFR値と近位点にあるFFR値との間の差と定義される、FFR降下;(2)セグメントの遠位点とセグメントの近位点との間の、血管軸に沿った距離と定義される、セグメント長さ。
【0103】
各セグメント上で、第3の量、セグメント勾配は、FFR降下とセグメント長さとの間の比と定義した。
【0104】
5.2 自動セグメント分類
2名の独立した観察者(CaC、SN)は、5つのセグメントの表現型:(1)健康なセグメント;(2)限局性疾患セグメント;(3)びまん性疾患セグメント;(4)圧力回復セグメント;(5)アーチファクトの1つに属するとして、FFRプルバック曲線の区分的線形化の各セグメントの目視検査により判断した。
【0105】
定義された5つのセグメントの表現型の1つに対するFFRプルバック曲線の区分的線形化の各セグメントの自動判断は、導出コホート(81名の患者)からのFFRプルバック曲線のセグメントでのロジスティック回帰モデルの適用に基づいた。技術的に、ロジスティック回帰モデルは、2名の観察者からの同じ判断を得たセグメント上に構築され(216のセグメント)、一方、アーチファクトであると手作業で分類されたセグメントは、考慮しなかった。2つの独立変数は、セグメント:FFR降下およびセグメント長さを区別するためロジスティック回帰モデルで考慮した。このように、適切な第1および第2の分類閾値関数は、上述のように健康なセグメントを疾患セグメントから区別し、限局性疾患セグメントをびまん性疾患セグメントから区別するため、ロジスティック回帰モデルに関して導出されたことが明らかである。第1および第2の分類閾値関数は、異なることが明らかである。示される実施形態による、第1の分類閾値関数は、全てのセグメント上で動作することがさらに明らかである。示される実施形態による、第2の分類閾値関数は、第1の分類関数を用いて疾患として分類されたセグメント上でのみ動作することが、さらに明らかである。任意のその他の適切な分類閾値関数は、任意の適切な数の観察者がそこからセグメントの適切な分類を提供する、任意の適切な数の患者を含む適切な導出コホートなどの任意の適切なデータセットから導出され得ることが明らかである。実施形態によれば、例えばロジスティック回帰モデルを用いてセグメントを分類するなどの分類閾値関数は、任意の適切な、監視されたデータドリブン手法から導出することができる。代替の実施形態によれば、任意の適切なサイズを含む任意の適切な訓練データセットを使用して、そのような適切な分類式位置関数を、セグメントを自動的に分類するのに適切なモデルに関して、例えばFFR降下、セグメント長さ、勾配、またはセグメントの任意のその他の適切なパラメーターに基づいて決定することができる。
【0106】
ロジスティック回帰は二成分分離を提供するので、2ステップ手法が区分的線形化FFRプルバック曲線セグメント自動判断に関して実現された:
ステップ1: 健康および全て(限局性およびびまん性のグループ分け)の疾患セグメントの間の分離。
ステップ2: 限局性およびびまん性疾患セグメントの間の分離。
【0107】
健康なセグメント表現型において、圧力回復セグメントは、以下の基準の全てを満たすものとして特定され:それらは正のFFR降下を有し、疾患セグメントに隣接し、20mmよりも短い。
【0108】
自動判断の性能は、検証コホート(50名の患者、179セグメント)に属する区分的線形化FFRプルバック曲線に関する、2名の観察者(CaC;SN)による手作業による判断との比較によって評価した。自動判断の結果を、精度、感度、特異度に関して
図9に報告する。
【0109】
5.3 自動分類器性能
健康な、限局性の、およびびまん性の疾患セグメントを区別する際の、提案された自動判断法の能力は、明らかに出現する(
図9、パネルA)。健康対病的セグメントの判断に関し(
図9、パネルB)、自動判断は、精度(CaCに関して87.7%、SNに関して94.6%)、感度(CaCに関して87.2%、SNに関して92.8%)、および特異度(それぞれCaCに関して88.7%、SNに関して98.2%)に関して優れた性能を提供した。限局性対びまん性疾患の判断を考えると(
図9、パネルC)、自動判断性能は、精度(CaCに関して94.6%、SNに関して96.4%)、感度(CaCに関して91.9%、SNに関して98.3%)、および特異度(CaCに関して93.6%、SNに関して94.3%)に関しても傑出していた。病理学的セグメントは疾患セグメントであることが明らかである。
【0110】
6.連続病変に対するFAM感度
連続病変に対するFAM
QCAおよびFAM
OCTの感度を、2つの手法:(1)機能的長さの画定において連続セグメントのみ考慮すること、および(2)分析から連続病変を除外することにより試験した。機能的長さを画定するのに隣接セグメントのみ考慮するとき、FAM
QCAおよびFAM
OCTの両方は、PCI後に依然としてFFR相対利得に相関した(r=0.606、95%CI 0.387~0.760、p<0.001、
図10A、およびr=0.560、95%CI 0.326~0.729、p<0.001、
図10C)。連続病変を除外し(QCAに関して10のケースを除外し、OCTに関して8のケースを除外)、FAM
QCAおよびFAM
OCTの両方は、PCI後に依然としてFFR相対利得と相関した(r=0.708、95%CI 0.502~0.838、p<0.001、
図10B、およびr=0.679、95%CI 0.400~0.8427、p<0.001、
図10D)。
【0111】
7.機能的-解剖学的ミスマッチ(FAM)
FFR曲線セグメントの自動区分的線形化および分類は、機能性疾患の程度、即ち、ミリメートルを単位として表現される機能的長さの導出を可能にした。詳細には、各冠動脈に関する疾患の機能的長さは、アルゴリズムにより疾患として分類された、全ての線形化FFR曲線セグメントの長さの合計として得た。連続または多数の病変の存在下(即ち、機能的に健康なセグメントにより分離された機能的疾患セグメント)、機能的長さは、全ての(即ち、隣接および非隣接)疾患セグメントの合計と見なした。
【0112】
CADの解剖学的および機能的長さの間の差は、機能的解剖学的ミスマッチ(FAM)と定義した(
図1D)。この量は、2つの病変エンドタイプ:(1)解剖学的に画定された病変内に外接された機能性疾患(即ち、FAM>0)、および(2)解剖学的に画定された病変を超えて拡がる機能性疾患(FAM<0)の特定を可能にする。負のFAMは、解剖学的病変の外側での圧力損失を意味する。したがって正のFAMは、疾患の機能的長さが病変長さに制限される限局性CADを表し、それに対して負のFAM値は、解剖学的病変の外側に機能性疾患の存在を指摘する(
図2)。視覚化の目的で、赤で示される正の値ならびに青で示される負の値を持つ解剖学的病変の内部で3D QCA幾何形状を使用して、FAM値を色分けした(
図2)。CADの解剖学的長さはQCAまたはOCTから導出できるので、2つのFAM値、即ちFAM
QCAおよびFAM
OCTが計算された(
図3)。さらに、解剖学的病変内に含まれる圧力損失の割合は、血管全体のFFR降下に対する、QCAまたはOCTから導出された解剖学的病変に起因するFFR降下と定義した(即ち、それぞれQCAまたはOCT病変内のFFR降下)。
【0113】
PCIは、共にステント留置の前後に実行される、FFRおよびOCTによって案内される標準治療に従い行った。生理学または撮像に基づく、手続き内PCI指針またはステント最適化は、術者の裁量に任せた。新世代DESを、全てのケースで使用した。PCIの影響を定量するため、相対的機能利得は、PCI後FFRからPCI前FFRを差し引いた値を、1-PCI前FFRで割った値と定義した。
【0114】
8.統計分析
連続データは、平均(±SD)またはメジアン[25th~75thパーセンタイル]として提示される。カテゴリーデータは、カウントおよび割合(%)として提示される。差は、単変量Mann-Whitney非パラメトリックU検定を使用して評価した。Spearmanの相関係数を計算して、FAMとPCI後FFRとの間の関係を評価した。観察者間での一致は、級内相関係数(ICC)によって評価した。相対的機能利得を予測する、FAMの最適なカットオフ値は、受信者動作特性(ROC)曲線を使用して計算した。最適なPCI後生理学的結果を予測するための、FAM値の識別能は、曲線下面積(AUC)で評価した。最適な相対的機能利得は、50%よりも大きい、心外膜コンダクタンスの増大として定義された。
【国際調査報告】