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特表2024-502688被覆型リチウムイオンふるい及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】被覆型リチウムイオンふるい及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 45/00 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
C01G45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531507
(86)(22)【出願日】2021-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 CN2021122753
(87)【国際公開番号】W WO2022134736
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】202011537107.1
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522210590
【氏名又は名称】リシ (シャンハイ) マテリアル テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユ フ
(72)【発明者】
【氏名】ジンジェ チャン
(72)【発明者】
【氏名】ルリ バオ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイピン タン
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
(57)【要約】
本発明は、被覆型リチウムイオンふるいの製造方法を提供する。当該製造方法は、空気雰囲気においてマンガン塩を2~10時間焼成することにより、Mnを得るステップ01と、Mnとリチウム塩を混合して研磨し、オートクレーブ内で、100~200℃で36~72時間反応させ、生成物LiMnOを得、Mnとリチウム塩の中のLi/Mnのモル比は、1~10:1であるステップ02と、LiMnOを金属被覆試薬に添加し、2~10時間超音波処理し、6~24時間乾燥させた後、400~600℃の温度で2~10時間焼成することにより、酸化物で覆われたLi1.6Mn1.6リチウムイオン吸着剤を得、前記金属被覆試薬とLiMnOのモル比は、0.01~0.08:1であるステップ03と、前記酸化物で覆われたLi1.6Mn1.6リチウムイオン吸着剤に対して酸化処理を行い、酸化処理された後の生成物を洗浄及び乾燥し、被覆型リチウムイオンふるいを得るステップ04とを備える。本発明の被覆型リチウムイオンふるいは、構造格子がより安定であり、従来技術におけるHMnリチウムイオンふるいが溶解損失しやすいという難題を解決し、何度も繰り返し使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内殻及び被覆層を含み、前記被覆層は、前記内殻の外側を均一に覆い、前記内殻は、Li1.6Mn1.6であり、前記被覆層は、LiO、LiMnO、MnOのうちの何れか1つであることを特徴とする被覆型リチウムイオンふるい。
【請求項2】
前記被覆型リチウムイオンふるいは、直径が45~55nmであり、前記被覆層は、厚さが2~4nmであることを特徴とする請求項1に記載の被覆型リチウムイオンふるい。
【請求項3】
空気雰囲気においてマンガン塩を2~10時間焼成することにより、Mnを得るステップ01と、
Mnとリチウム塩を混合して研磨し、オートクレーブ内で、100~200℃で36~72時間反応させ、生成物LiMnOを得、Mnとリチウム塩の中のLi/Mnのモル比は、1~10:1であるステップ02と、
LiMnOを金属被覆試薬に添加し、2~10時間超音波処理し、6~24時間乾燥させた後、400~600℃の温度で2~10時間焼成することにより、酸化物で覆われたLi1.6Mn1.6リチウムイオン吸着剤を得、前記金属被覆試薬とLiMnOのモル比は、0.01~0.08:1であるステップ03と、
前記酸化物で覆われたLi1.6Mn1.6リチウムイオン吸着剤に対して酸化処理を行い、酸化処理された後の生成物を洗浄及び乾燥し、被覆型リチウムイオンふるいを得るステップ04と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の被覆型リチウムイオンふるいの製造方法。
【請求項4】
前記マンガン塩は、炭酸マンガンであり、前記金属被覆試薬は、硝酸マンガン又は硝酸リチウムであることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記リチウム塩は、水酸化リチウム又は炭酸リチウムであることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記酸化処理は、塩酸又は硫酸による浸漬処理であり、前記塩酸又は硫酸の濃度は、0.25~0.5mol/Lであり、浸漬時間は、12~48時間であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ステップS02においては、超音波処理後の溶液をマッフル炉に入れ、400~600℃の温度で焼成し、焼成のときに、加熱速度を5~10℃/分に制御することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ステップS02においては、オートクレーブ内の反応温度は、110~150℃であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ステップS02においては、焼成温度は、350~450℃であることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互引用)
本願は、2020年12月23日に提出された、出願番号がCN202011537107.1である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容が引用により本願に組み込まれている。
【0002】
本願は、リチウムイオンふるい分野に関し、具体的に、被覆型リチウムイオンふるい及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電力及びエネルギー貯蔵のリチウム電池が新エネルギーに幅広く用いられることは、リチウム資源の世界的な需要が継続的に増加することを促進している。リチウム資源は、潤滑剤、セラミック、製薬、電池、原子エネルギー等の新興分野で広く用いられ、国民経済と国防建設のための重要な戦略的資源になっている。
【0004】
現在、スピネル型リチウムマンガン酸化物(LMO)は、高い吸着能力とLi選択性を有するので、多くの研究関心を集めており、LiMn,Li1.33Mnl.67及びLi1.6Mn1.6を含む。全てのLMOスピネル材料の中では、Li1.6Mn1.6は、比較的高い理論的吸着容量及び数サイクル後の良好な安定性を有するので、最も代表的なものになっている。しかしながら、マンガンの溶解は、吸着能力を低下させるだけでなく、実際の応用で脱着溶液を汚染してしまう。その産業用途が制限される。ドーピング改質は、スピネル型吸着剤のマンガン溶解損失を改善するための最も簡単で効果的な方法であると考えられている。ドーパントイオンを導入する主な目的は、リチウムマンガン酸化物スピネルの中のマンガンの平均化学価を高め、Mn3+の含有量を減らし、Jahn-Teller効果の発生を抑制し、又は、八面体の化学結合を強化することである。Chitrakarらは、酸処理の過程におけるマンガンの溶解に対するLiMgMn(III)Mn(IV)(0≦x≧0.5)の影響を研究し、その結果、Mg/Mn比の増加に伴い、リチウムの吸着能力が高まり、吸着剤の化学的安定性も高まった。Xueらは、磁性イオンふるいの前駆体として初めてFeをドーピングしたリチウムマンガン酸化物(LiMn/Fe)を合成し、FeをLMOにドーピングすることにより、前駆体の中のMnの平均原子価が+3.48から+3.53に増加し、その構造的安定性を高めるのに有利である。Maらは、一連のLiMMn2-x(M=Ni、Al、Ti;0≦x≧1)スピネル型吸着剤を製造し、それらの水溶液の中のリチウムイオン回収性能について比較した。その結果、LiAl0.5Mn1.5は、酸処理の過程において比較的高いLi吸着率及び比較的低いMnとAlの溶解損失率が現れる。一方、LiNi0.5Mn1.5とLiTi0.5Mn1.5スピネルは、Li吸着性能が比較的悪い。Qianらは、Li1.6Mn1.6に異なる遷移金属イオン(Fe3+、Co2+)をドーピングすることにより、酸洗いの過程におけるマンガンの溶解損失率を改善する。吸着結果から分かるように、ドーピングされていない吸着剤(32.3mg/g)に比べ、Fe3+とCo2+がドーピングされた後の吸着量は、それぞれ35.3mg/g及び35.4mg/gであり、マンガン損失率が5.43%から3.95%及び4.42%に減少した。イオンドーピングプロセスにおいては、ドーピングした過程においてドーピングした金属イオンの8aサイトの占有を避ける必要があり、これはリチウムイオンの移動を妨げることを避けることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、被覆型リチウムイオンふるい及びその製造方法を提供することであり、吸着容量が高く、マンガン溶解損失が少なく、サイクル安定性が高いというメリットを有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明は、以下の技術案を用いる。被覆型リチウムイオンふるいは、内殻及び被覆層を含み、前記被覆層は、前記内殻の外側を均一に覆う。前記内殻は、Li1.6Mn1.6であり、前記被覆層は、LiO、LiMnO、MnOのうちの何れか1つである。
【0007】
また、前記被覆型リチウムイオンふるいは、直径が45~55nmであり、前記被覆層は、厚さが2~4nmである。
【0008】
上述した被覆型リチウムイオンふるいの製造方法は、ステップ01、ステップ02、ステップ03及びステップ04を備える。
【0009】
ステップ01においては、空気雰囲気においてマンガン塩を2~10時間焼成することにより、Mnを得る。
【0010】
ステップ02においては、Mnとリチウム塩を混合して研磨(すりつぶし、製粉する)し、オートクレーブ内で、100~200℃で36~72時間反応させ、生成物LiMnOを得る。なお、Mnとリチウム塩の中のLi/Mnのモル比は、1~10:1である。
【0011】
ステップ03においては、LiMnOを金属被覆試薬に添加し、2~10時間超音波処理し、6~24時間乾燥させた後、400~600℃の温度で2~10時間焼成することにより、酸化物で覆われたLi1.6Mn1.6リチウムイオン吸着剤を得る。なお、前記金属被覆試薬とLiMnOのモル比は、0.01~0.08:1である。
【0012】
ステップ04においては、前記酸化物で覆われたLi1.6Mn1.6リチウムイオン吸着剤に対して酸化処理を行い、酸化処理された後の生成物を洗浄及び乾燥し、被覆型リチウムイオンふるいを得る。
【0013】
また、前記マンガン塩は、炭酸マンガンであり、前記金属被覆試薬は、硝酸マンガン又は硝酸リチウムである。
【0014】
また、前記リチウム塩は、水酸化リチウム又は炭酸リチウムである。
【0015】
また、前記酸化処理は、塩酸又は硫酸による浸漬処理であり、前記塩酸又は硫酸の濃度は、0.25~0.5mol/Lであり、浸漬時間は、12~48時間である。
【0016】
また、前記ステップS02においては、超音波処理後の溶液をマッフル炉に入れ、400~600℃の温度で焼成し、焼成のときに、加熱速度を5~10℃/分に制御する。
【0017】
また、前記ステップS02においては、オートクレーブ内の反応温度は、110~150℃である。
【0018】
また、前記ステップS02においては、焼成温度は、350~450℃である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0020】
1.本発明の被覆型リチウムイオンふるいは、構造格子がより安定であり、従来技術におけるHMnリチウムイオンふるいが溶解損失しやすいという難題を解決し、何度も繰り返し使用できる。
【0021】
2.本発明の被覆リチウムイオンふるいは、形態が優れ、平均粒子サイズが小さく、比表面積が比較的大きく、リチウムイオン吸着剤として用いられる場合、その特定の形態がリチウム含有液体の完全な接触を利し、リチウムイオンの嵌入及び脱出に便利であり、材料の繰り返し安定性の性能を保つのに役立つ。
【0022】
3.本発明の製造方法は、簡単であり、条件が適度であり、製品の一貫性が良好であり、安定性が良く、工業化の実現が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の第一の実施形態により製造された被覆リチウムイオンふるいのXRDグラフである。
図2図2は、本発明の第一の実施形態により製造された被覆リチウムイオンふるいのSEMグラフである。
図3図3は、本発明の第一の実施形態により製造された被覆リチウムイオンふるいのTEMグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的、技術案及びメリットをより明らかにするために、以下、図面を参照しながら、本発明の具体的な実施形態を更に詳しく説明する。
【0025】
本発明は、内殻及び被覆層を含む被覆型リチウムイオンふるいを開示する。被覆層は、内殻の外側を均一に覆い、内殻は、Li1.6Mn1.6であり、被覆層は、LiO、LiMnO、MnOのうちの何れか1つである。なお、被覆型リチウムイオンふるいは、直径が45~55nmであり、被覆層は、厚さが2~4nmである。
【0026】
好ましくは、本発明の被覆型リチウムイオンふるいは、結晶型がスピネル結晶型であり、リチウムイオンふるいが多面体粒子であり、平均粒子径が約50nmであり、被覆層が約3nmであり、結晶性が良好である。本発明の被覆型リチウムイオンふるいのマンガン溶解損失率は、明らかに減少し、複数の吸着サイクル後でも、スピネル構造が維持されており、当該吸着剤がより安定的な結晶構造を有することが分かる。マンガンベースの吸着剤の実際の応用におけるマンガン溶解損失及び安定性等の難題を解決するのに有利である。また、本発明の被覆型リチウムイオンふるいの粒子は、平均粒子サイズが小さく、リチウムイオンふるいは、溶液と直接に接触せず、材料のサイクル安定性を維持するのに役立つ。
【0027】
(第一の実施形態)
被覆型リチウムイオンふるいの製造方法は、ステップ01、ステップ02、ステップ03及びステップ04を備える。
【0028】
ステップ01においては、空気雰囲気においてMnCOを5時間焼成することにより、Mnを得る。
【0029】
ステップ02においては、Mnとリチウム塩を混合して研磨し、100mLのテフロン(登録商標)で内貼りされたステンレス鋼反応ケトルに移し、反応ケトルをオーブンに入れ、120℃の反応温度で水熱反応を行い、反応時間が48時間であり、反応が完了した後、昇温をオーブンに入れ、60℃で12時間乾燥させて生成物LiMnOを得る。なお、Mnとリチウム塩の中のLi/Mnのモル比は、1:1である。
【0030】
なお、リチウム塩の実際の使用量は、理論量の1.00~1.05倍であることに留意されたい。これは、1回の焼成だけで前駆体の製品が得られ、リチウム塩の損失が比較的少ないため、リチウム塩の使用量が理論量又は僅かに過剰な量を使用することができるが、リチウム塩の使用量が多すぎると、残留のリチウム塩が製品の性能に影響を与えるからである。本発明においては、リチウム塩とMnのLi/Mnモル比を設定する際に、リチウム塩の理論的使用量及び実際の使用量を十分に考慮した。
【0031】
ステップ03においては、1gのLiMnOを4Mの硝酸リチウム溶液に加え、4時間超音波処理し、60℃で20時間乾燥させ、乾燥後の粉末を研磨プロセスにおいて十分に混合した後、るつぼに入れてマッフル炉に入れ、空気の中で5℃/分の加熱速度で450℃に昇温させ、高温固相反応を4時間行うことにより、酸化物に覆われるLi1.6Mn1.6リチウムイオン吸着剤を得る。なお、金属被覆試薬とLiMnOのモル比は、0.04:1であり、被覆量が少なすぎると、改質の目的を達成することができないが、被覆量が多すぎると、リチウムイオンの脱インターカレーションを妨げ、リチウムイオンふるいの吸着能力を低下させる。
【0032】
本発明では、リチウム、マンガンを被覆元素として選択することは、両者が反応過程において酸性環境に対して安定なLiMnOを形成し、リチウムイオンふるいの全体的な安定性を高めることができるので、焼成後の材料の結晶構造がより安定し、後続するリチウムイオンふるいの吸着及び脱着の過程において溶解損失しにくく、材料の使用寿命を高めることができる。
【0033】
金属被覆試薬の陰イオンは、硝酸イオンを選択することが好ましい。その理由としては、硝酸イオンは、加熱条件で相応する酸化物及び二酸化窒素ガスを容易に形成し、他の不純物の元素を持ち込まない。
【0034】
ステップ04においては、酸化物で覆われたLi1.6Mn1.6リチウムイオン吸着剤を、20mLの濃度が0.5mol/Lである希塩酸に入れ、室温で24時間振とうして脱リチウム化を完了し、得られた生成物を濾過して洗浄した後に、オーブンに入れ、60℃で12時間乾燥させると、得られた粉末材料は、本実施形態の被覆型リチウムイオンふるいである。なお、酸性化浸漬時間が短すぎると、リチウムイオンの浸出が不十分になり、浸出時間が長すぎると、酸性化し過ぎてMnが溶解損失してしまう。
【0035】
図1は、第一の実施形態で製造された被覆型リチウムイオンふるいのXRDグラフである。XRDグラフと組み合わせると分かるように、表面被覆は、前駆体の相組成を変化させず、全て良好な結晶形態が良く、純相Li1.6Mn1.6が得られる。MnOを被覆する際、XRDグラフは、単一のLi1.6Mn1.6の特徴的な回折ピークを示す。LiOとLiMnOを被覆する際、LiMnOの特徴的なピークが現れる。
【0036】
図2は、第一の実施例で製造された被覆型リチウムイオンふるいのSEMグラフである。
【0037】
図3は、第一の実施例で製造された被覆型リチウムイオンふるいのTEMグラフであり、SEMグラフは、粒子サイズが約100nmであることを示している。多面体の小さい粒子は、球状の二次粒子に凝集し、グラフから分かるように、被覆されていない前駆体の粒子が比較的大きく、粒子表面が比較的滑らかであるが、金属酸化物で被覆された前駆体粒子は、凹凸があり、粒子が小さくなっている。前駆体であるLi1.6Mn1.6の表面の金属酸化物の被覆の厚さを検出するために、被覆された前駆体の表面を高分解能透過型電子顕微鏡HRTEMで分析した。グラフから分かるように、基体であるLi1.6Mn1.6の表面は、ざらざらした被覆層があり、厚さが約3nmであり、Li1.6Mn1.6が金属酸化物層をうまく被覆していることが証明されている。
【0038】
(第二の実施形態)
被覆型リチウムイオンふるいの製造方法は、ステップ01、ステップ02、ステップ03及びステップ04を備える。
【0039】
ステップ01においては、空気雰囲気においてMnCOを2時間焼成することにより、Mnを得る。
【0040】
ステップ02においては、Mnとリチウム塩を混合して研磨し、100mLのテフロン(登録商標)で内貼りされたステンレス鋼反応ケトルに移し、反応ケトルをオーブンに入れ、120℃の反応温度で水熱反応を行い、反応時間が36時間であり、反応が完了した後、昇温をオーブンに入れ、60℃で12時間乾燥させて生成物LiMnOを得る。なお、Mnとリチウム塩の中のLi/Mnのモル比は、10:1である。
【0041】
ステップ03においては、1gのLiMnOを4Mの硝酸リチウム溶液に加え、2時間超音波処理し、60℃で36時間乾燥させ、乾燥後の粉末を研磨プロセスにおいて十分に混合した後、るつぼに入れてマッフル炉に入れ、空気の中で7℃/分の加熱速度で400℃に昇温させ、高温固相反応を2時間行うことにより、酸化物に覆われるLi1.6Mn1.6リチウムイオン吸着剤を得る。なお、金属被覆試薬とLiMnOのモル比は、0.01:1である。
【0042】
ステップ04においては、酸化物で覆われたLi1.6Mn1.6リチウムイオン吸着剤を、濃度が0.4mol/Lである希塩酸に入れ、室温で24時間振とうして脱リチウム化を完了し、得られた生成物を濾過して洗浄した後に、オーブンに入れ、60℃で12時間乾燥させると、得られた粉末材料は、本実施形態の被覆型リチウムイオンふるいである。
【0043】
(第三の実施形態)
被覆型リチウムイオンふるいの製造方法は、ステップ01、ステップ02、ステップ03及びステップ04を備える。
【0044】
ステップ01においては、空気雰囲気においてMnCOを10時間焼成することにより、Mnを得る。
【0045】
ステップ02においては、Mnとリチウム塩を混合して研磨し、100mLのテフロン(登録商標)で内貼りされたステンレス鋼反応ケトルに移し、反応ケトルをオーブンに入れ、200℃の反応温度で水熱反応を行い、反応時間が72時間であり、反応が完了した後、昇温をオーブンに入れ、60℃で12時間乾燥させて生成物LiMnOを得る。なお、Mnとリチウム塩の中のLi/Mnのモル比は、5:1である。
【0046】
ステップ03においては、1gのLiMnOを4Mの硝酸リチウム溶液に加え、10時間超音波処理し、60℃で36時間乾燥させ、乾燥後の粉末を研磨プロセスにおいて十分に混合した後、るつぼに入れてマッフル炉に入れ、空気の中で10℃/分の加熱速度で600℃に昇温させ、高温固相反応を10時間行うことにより、酸化物に覆われるLi1.6Mn1.6リチウムイオン吸着剤を得る。なお、金属被覆試薬とLiMnOのモル比は、0.08:1である。
【0047】
ステップ04においては、酸化物で覆われたLi1.6Mn1.6リチウムイオン吸着剤を、濃度が0.4mol/Lである希硫酸に入れ、室温で24時間振とうして脱リチウム化を完了し、得られた生成物を濾過して洗浄した後に、オーブンに入れ、60℃で12時間乾燥させると、得られた粉末材料は、本実施形態の被覆型リチウムイオンふるいである。
【0048】
(比較例1)
比較例1と第一の実施形態の違いは、ステップS02において、1gのLiMnOを脱イオン水に添加して4時間超音波処理することである。
【0049】
(実験例1)
第一~第三の実施形態及び比較例1の被覆型リチウムイオンふるい0.1gを、初期のリチウムイオン濃度が165mg/Lであり、溶液pHが12.0である20mLのブラインにそれぞれ加え、温度が25℃であり、反応時間が24時間である条件で、その吸着容量をテスト(測定)した。初回の吸着容量を表1に示す。リチウムイオンを吸着した後のリチウムイオンふるいは、無機酸で酸洗浄された後に再利用でき、当該実験例では、酸洗浄後のリチウムイオンふるいに対して五回目の吸着容量と十回目の吸着容量のテストを継続的に行い、テスト方法は、初回の吸着容量のテスト方法と同じである。
【0050】
【表1】
【0051】
上述した内容により、次のことが分かる。(1)比較例1の単純なリチウムイオンふるいに比べ、本発明により製造された被覆型リチウムイオンふるいのリチウムイオンに対する吸着容量が大幅に増加している。よって、本発明により製造された被覆型リチウムイオンふるいは、吸着容量が高く、リチウムイオンへの選択性が高い。
【0052】
(2)本発明の方法により製造された被覆リチウムイオンふるいは、使用後に酸洗浄が行われ、酸洗浄後の被覆リチウムイオンふるいのリチウムイオンに対する吸着容量は、9回サイクルした後、吸着能力が45%以上に保たれ、その性能が安定しており、長期間リサイクルできる。
【0053】
(実験例2)
以下の方法で第一~第三の実施形態及び比較例の中のリチウムイオンふるいのマンガン溶解損失をテストする。即ち、0.1gの第一~第三の実施形態及び比較例におけるMgドーピング改質のリチウムイオンふるいを20mLのLi165mg/Lが含まれるソルトレイクブラインに入れ、25℃で48時間吸着した後、リチウムイオンふるいを酸洗浄し、酸洗浄後に上澄みを取り、原子吸収分光計又はICPで残留のMn2+の濃度をテストする。表2は、テスト結果を示している。
【0054】
【表2】
【0055】
上述した内容により次のことが分かる。本発明により製造されたMgドーピング改質のリチウムイオンふるいのマンガン溶解損失量は、比較例1の単純なリチウムイオンふるいのマンガン溶解損失量より著しく低い。
【0056】
本発明の被覆型リチウムイオンふるいは、構造格子がより安定し、従来のHMnリチウムイオンふるいが溶解損失しやすいという難題を解決し、何度も繰り返し使用することができる。本発明の被覆型リチウムイオンふるいは、形態が優れ、平均粒子サイズが小さく、比表面積が比較的大きく、リチウムイオン吸着剤として用いられる際、その特定の形態がリチウム含有液体の完全な接触を利し、リチウムイオンの嵌入及び脱出に便利であり、材料の繰り返し安定性の性能を保つのに役立つ。本発明は、製造方法が簡単であり、条件が温和であり、製品の一貫性が良好であり、安定性が良く、工業化の実現が容易である。
【0057】
上述した内容は、本発明の好ましい実施形態に過ぎない。前記実施形態は、本発明の特許保護の範囲を制限しない。本発明の明細書及び図面に基づいて行われた等価構造の変更は、何れも本発明の特許請求の範囲に含まれる。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図3
【国際調査報告】