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特表2024-502695改善された熱特性を有する低損失フィルム用のポリシクロオレフィン組成物
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  • 特表-改善された熱特性を有する低損失フィルム用のポリシクロオレフィン組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】改善された熱特性を有する低損失フィルム用のポリシクロオレフィン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 32/00 20060101AFI20240116BHJP
   C08F 4/80 20060101ALI20240116BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240116BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C08F32/00
C08F4/80
C08K3/013
C08L45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525028
(86)(22)【出願日】2021-10-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-18
(86)【国際出願番号】 US2021057284
(87)【国際公開番号】W WO2022094232
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】63/107,514
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】303043461
【氏名又は名称】プロメラス, エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】カンダナラチチ,プラモド
(72)【発明者】
【氏名】ローズ, ラリー, エフ.
(72)【発明者】
【氏名】久保田 匠
【テーマコード(参考)】
4J002
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BK001
4J002FD016
4J002GQ01
4J015DA09
4J100AR11P
4J100AR11Q
4J100AR11R
4J100AR21P
4J100AR21R
4J100BA75R
4J100BA81R
4J100BC04P
4J100BC08P
4J100BC43P
4J100CA01
4J100CA04
4J100CA05
4J100DA25
4J100FA08
4J100FA12
4J100FA18
4J100JA44
(57)【要約】
本発明による実施形態は、1種以上のポリシクロオレフィン系モノマーと、少なくとも1種の多官能性オレフィン系モノマーを含み、適切な温度で塊重合を起こして3D絶縁性物品を提供する組成物に関する。上記物品は、従来技術で実現することができなかった低誘電率、低損失特性、非常に高い熱特性を有する。本発明の組成物は、非常に低い誘電特性と、さらに改善された熱機械的特性を提供する1種以上の有機または無機充填剤物質をさらに含んでもよい。当該組成物は、室温で安定しており、一般的に100℃以上の適切な高温に露出した場合にのみ塊重合を起こす。本発明の組成物は、様々な用途で使用可能であり、中でもミリ波レーダアンテナの絶縁物質に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むフィルム形成用組成物:
a)式(I)の1つ以上のオレフィンモノマー:
【化1】
(ここで、
mは0または1であり、
【化2】
は、単結合または二重結合であり、
1、R2、R3、およびR4は、同一または異なり、それぞれ独立して水素、直鎖もしくは分枝の(C4-C16)アルキル、直鎖もしくは分枝の(C2-C16)アルケニル、(C3-C10)シクロアルキル、(C3-C10)シクロアルケニル、(C6-C12)ビシクロアルキル、(C6-C12)アリール、および(C6-C12)アリール(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、または
1およびR2の1つは、R3およびR4の1つおよびこれらが結合している炭素原子と共に、必要に応じて1つ以上の二重結合を含む置換もしくは未置換の(C5-C14)単環式環、(C5-C14)二環式環、または(C5-C14)三環式環を形成する。)
b)下記からなる群から選択された化合物:
式(A1)の化合物:
【化3】
(ここで、
bは、2~6の整数であり、
Zは結合、またはR910SiOSiR1112であり、ここで、R9、R10、R11およびR12のそれぞれは、同一または異なり、それぞれ互いに独立してメチル、エチル、および直鎖もしくは分枝の(C3-C6)アルキルからなる群から選択され、
5、R6、R7およびR8は、同一または異なり、それぞれ互いに独立して水素、メチル、エチル、および直鎖もしくは分枝の(C3-C16)アルキルからなる群から選択される。)
式(A2)の化合物:
【化4】
(ここで、
13、R14、R15、およびR16は、同一または異なり、それぞれ互いに独立して水素、メチル、エチルおよび直鎖もしくは分枝の(C3-C16)アルキルからなる群から選択される。)、および
式(A3)の化合物:
【化5】
(ここで、
Lは、結合、またはメチレン、エチレン、直鎖もしくは分枝の(C3-C16)アルキレン、(C3-C16)シクロアルキレン、(C5-C8)ヘテロサイクル、(C6-C12)アリーレン、(C5-C12)ヘテロアリーレン、および-(CH2cO(CH2c-から選択される2価の連結基またはスペーサ基であり、cは、1ないし6の整数であり、必要に応じて各CH2は、メチル、エチル、直鎖もしくは分枝の(C3-C16)アルキル,および(C6-C12)アリールで置換されてもよく、ここで、必要に応じてメチレン、エチレンまたは(C3-C16)アルキレン上の水素部分は、フッ素、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、および直鎖もしくは分枝のパーフルオロ(C3-C16)アルキルからなる群から選択される基で置換され、
17およびR18は、同一または異なり、それぞれ独立してメチル、エチル、直鎖もしくは分枝の(C3-C12)アルキル、(C6-C12)アリール、および(C6-C12)アリール(C1-C12)アルキルから選択され、ここで、必要に応じてメチル、エチルまたは(C3-C12)アルキル上の水素部分は、フッ素、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルおよび直鎖もしくは分枝の(C3-C12)パーフルオロアルキルからなる群から選択される基で置換され、
Ar1およびAr2は、同一または異なり、それぞれ独立して(C6-C12)アリーレン基または(C6-C12)ヘテロアリーレン基から選択され、これらは、必要に応じて(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシ、(C6-C10)アリール、(C6-C12)アリールオキシ、(C6-C12)アリール(C1-C4)アルキル、および(C6-C12)アリール(C1-C4)アルキルオキシから選択された基で置換される。)
c)以下からなる群から選択される有機パラジウム化合物:
パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド;
パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)ジブロミド;
パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)ジアセテート;
パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)ビス(トリフルオロアセテート);
パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロリド;
パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジブロミド;
パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785);
パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ビス(トリフルオロアセテート);
パラジウム(II)ビス(トリ-p-トリルホスフィン)ジクロリド;
パラジウム(II)ビス(トリ-p-トリルホスフィン)ジブロミド;
パラジウム(II)ビス(トリ-p-トリルホスフィン)ジアセテート;
パラジウム(II)ビス(トリ-p-トリルホスフィン)ビス(トリフルオロアセテート);
パラジウム(II)エチルヘキサノエート;
ジクロロビス(アセトナト)パラジウム(II);
ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II);
プラチナム(II)クロリド;
プラチナム(II)ブロミド;および
プラチナムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド;および
d)以下からなる群から選択される活性剤:
リチウムテトラフルオロボレート;
リチウムトリフレート;
リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートエーテラート(LiFABA);
リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイソプロパノレート;
リチウムテトラフェニルボレート;
リチウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(2-フルオロフェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(3-フルオロフェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(4-フルオロフェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(3,5-ジフルオロフェニル)ボレート;
リチウムヘキサフルオロホスフェート;
リチウムヘキサフェニルホスフェート;
リチウムヘキサキス(ペンタフルオロフェニル)ホスフェート;
リチウムヘキサフルオロアルセネート;
リチウムヘキサフェニルアルセネート;
リチウムヘキサキス(ペンタフルオロフェニル)アルセネート;
リチウムヘキサキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)アルセネート;
リチウムヘキサフルオロアンチモネート;
リチウムヘキサフェニルアンチモネート;
リチウムヘキサキス(ペンタフルオロフェニル)アンチモネート;
リチウムヘキサキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)アンチモネート;
リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
リチウムトリス(ノナフルオロビフェニル)フルオロアルミネート;
リチウム(オクチルオキシ)トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
リチウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)アルミネート;
リチウムメチルトリス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
ここで、前記組成物から形成されたフィルムは、10GHzの周波数で2.4未満の誘電率(Dk)、150℃を超えるガラス転移温度、および150ppm/K未満の熱膨張係数(CTE)を有する。
【請求項2】
mは0であり、
【化6】
は単結合であり、
1、R2、R3、およびR4は、同一または異なり、それぞれ独立して水素、n-ブチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、およびノルボルニルからなる群から選択される、請求項1に記載のフィルム形成用組成物。
【請求項3】
式(I)のモノマーは、以下からなる群から選択される、請求項1に記載のフィルム形成用組成物:
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【請求項4】
式(A1)または(A3)の化合物は、下記からなる群から選択される、請求項1に記載のフィルム形成用組成物:
【化8-1】
【化8-2】
【請求項5】
式(A2)の化合物は、
【化9】
である、請求項1に記載のフィルム形成用組成物。
【請求項6】
前記組成物は、式(I)の少なくとも1つのモノマーと、式(A1)または(A2)または(A3)の1つの化合物とを含む、請求項1に記載のフィルム形成用組成物。
【請求項7】
前記組成物から形成されたフィルムは、10GHzの周波数で2.0~2.38の誘電率(Dk)、約160℃~約350℃のガラス転移温度、および約100ppm/K~約140ppm/Kの熱膨張係数(CTE)を有する、請求項1に記載のフィルム形成用組成物。
【請求項8】
さらに、無機充填剤を含む、請求項1に記載のフィルム形成用組成物。
【請求項9】
さらに、有機充填剤を含む、請求項1に記載のフィルム形成用組成物。
【請求項10】
下記からなる群から選択される、請求項1に記載のフィルム形成用組成物:
5-デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(DecNB)、5-ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(HexNB)、1,4,4a,5,8,8a-ヘキサヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(TDD)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(DecNB)、5-フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PhNB)、1,4,4a,5,8,8a-ヘキサヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(TDD)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(DecNB)、2,2’-ビ(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-エン)(NBANB)、1,3-ビス(2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)エチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(NBC2DMSC2NB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(HexNB)、2,2’-ビ(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-エン)(NBANB)、1,3-ビス(2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)エチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(NBC2DMSC2NB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
3a,4,7,7a-テトラヒドロ-1H-4,7-メタノインデン(DCPD)、5-ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(HexNB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
3a,4,7,7a-テトラヒドロ-1H-4,7-メタノインデン(DCPD)、5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(CyHexNB)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(CyHexNB)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン(NBD)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(TD)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-(シクロヘキス-3-エン-1-イル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(CyclohexeneNB)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(TD)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン(NBD)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);および
5-シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(CyhexNB)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、3a,4,4a,5,8,8a,9,9a-オクタヒドロ-1H-4,9:5,8-ジメタノシクロペンタ[b]ナフタレン(CPD3)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA)。
【請求項11】
以下を含む組成物を含むフィルム形成用キット:
a)式(I)の1つ以上のオレフィンモノマー:
【化10】
(ここで、
mは0または1であり、
【化11】
は、単結合または二重結合であり、
1、R2、R3、およびR4は、同一または異なり、それぞれ独立して水素、直鎖もしくは分枝の(C4-C16)アルキル、直鎖もしくは分枝の(C2-C16)アルケニル、(C3-C10)シクロアルキル、(C3-C10)シクロアルケニル、(C6-C12)ビシクロアルキル、(C6-C12)アリール、および(C6-C12)アリール(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、または
1およびR2の1つは、R3およびR4の1つおよびこれらが結合している炭素原子と共に、必要に応じて1つ以上の二重結合を含む置換もしくは未置換の(C5-C14)単環式環、(C5-C14)二環式環、または(C5-C14)三環式環を形成する。)
b)下記からなる群から選択された化合物:
式(A1)の化合物:
【化12】
(ここで、
bは、2~6の整数であり、
Zは結合、またはR910SiOSiR1112であり、ここで、R9、R10、R11およびR12のそれぞれは、同一または異なり、それぞれ互いに独立してメチル、エチル、および直鎖もしくは分枝の(C3-C6)アルキルからなる群から選択され、
5、R6、R7およびR8は、同一または異なり、それぞれ互いに独立して水素、メチル、エチル、および直鎖もしくは分枝の(C3-C16)アルキルからなる群から選択される。)
式(A2)の化合物:
【化13】
(ここで、
13、R14、R15およびR16は、同一または異なり、それぞれ互いに独立して水素、メチル、エチルおよび直鎖もしくは分枝の(C3-C16)アルキルからなる群から選択される。)、および
式(A3)の化合物:
【化14】
(ここで、
Lは、結合、またはメチレン、エチレン、直鎖もしくは分枝の(C3-C16)アルキレン、(C3-C16)シクロアルキレン、(C5-C8)ヘテロサイクル、(C6-C12)アリーレン、(C5-C12)ヘテロアリーレン、および-(CH2cO(CH2c-からなる群から選択される2価の連結基またはスペーサ基であり、cは、1ないし6の整数であり、必要に応じて各CH2は、メチル、エチル、直鎖もしくは分枝の(C3-C16)アルキル,および(C6-C12)アリールで置換されてもよく、ここで、必要に応じてメチレン、エチレンまたは(C3-C16)アルキレン上の水素部分は、フッ素、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、および直鎖もしくは分枝のパーフルオロ(C3-C16)アルキルからなる群から選択される基で置換され、
17およびR18は、同一または異なり、それぞれ独立してメチル、エチル、直鎖もしくは分枝の(C3-C12)アルキル、(C6-C12)アリール、および(C6-C12)アリール(C1-C12)アルキルからなる群から選択され、ここで、必要に応じてメチル、エチルまたは(C3-C12)アルキル上の水素部分は、フッ素、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルおよび直鎖もしくは分枝の(C3-C12)パーフルオロアルキルからなる群からなる基で置換され、
Ar1およびAr2は、同一または異なり、それぞれ独立して(C6-C12)アリーレン基または(C6-C12)ヘテロアリーレン基から選択され、これらは、必要に応じて(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシ、(C6-C10)アリール、(C6-C12)アリールオキシ、(C6-C12)アリール(C1-C4)アルキル、および(C6-C12)アリール(C1-C4)アルキルオキシから選択された基で置換される。)
c)以下からなる群から選択される有機パラジウム化合物:
パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド;
パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)ジブロミド;
パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)ジアセテート;
パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)ビス(トリフルオロアセテート);
パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロリド;
パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジブロミド;
パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785);
パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ビス(トリフルオロアセテート);
パラジウム(II)ビス(トリ-p-トリルホスフィン)ジクロリド;
パラジウム(II)ビス(トリ-p-トリルホスフィン)ジブロミド;
パラジウム(II)ビス(トリ-p-トリルホスフィン)ジアセテート;
パラジウム(II)ビス(トリ-p-トリルホスフィン)ビス(トリフルオロアセテート);
パラジウム(II)エチルヘキサノエート;
ジクロロビス(アセトナト)パラジウム(II);
ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II);
プラチナム(II)クロリド;
プラチナム(II)ブロミド;および
プラチナムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド;
d)以下からなる群から選択される活性剤:
リチウムテトラフルオロボレート;
リチウムトリフレート;
リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートエーテラート(LiFABA);
リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイソプロパノレート;
リチウムテトラフェニルボレート;
リチウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(2-フルオロフェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(3-フルオロフェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(4-フルオロフェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(3,5-ジフルオロフェニル)ボレート;
リチウムヘキサフルオロホスフェート;
リチウムヘキサフェニルホスフェート;
リチウムヘキサキス(ペンタフルオロフェニル)ホスフェート;
リチウムヘキサフルオロアルセネート;
リチウムヘキサフェニルアルセネート;
リチウムヘキサキス(ペンタフルオロフェニル)アルセネート;
リチウムヘキサキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)アルセネート;
リチウムヘキサフルオロアンチモネート;
リチウムヘキサフェニルアンチモネート;
リチウムヘキサキス(ペンタフルオロフェニル)アンチモネート;
リチウムヘキサキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)アンチモネート;
リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
リチウムトリス(ノナフルオロビフェニル)フルオロアルミネート;
リチウム(オクチルオキシ)トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
リチウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)アルミネート;
リチウムメチルトリス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);ならびに
e)充填剤;
ここで、前記組成物から形成されたフィルムは、10GHzの周波数で2.4未満の誘電率(Dk)、150℃を超えるガラス転移温度、および150ppm/K未満の熱膨張係数(CTE)を有する。
【請求項12】
mは0であり、
【化15】
は単結合であり、
1、R2、R3、およびR4は、同一または異なり、それぞれ独立して水素、n-ブチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、およびノルボルニルからなる群から選択される、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
式(I)のモノマーは、以下からなる群から選択される、請求項11に記載のキット:
【化16-1】
【化16-2】
【化16-3】
【請求項14】
式(A1)または(A3)の化合物は、下記からなる群から選択される、請求項11に記載のキット:
【化17-1】
【化17-2】
【請求項15】
式(A2)の化合物は、
【化18】
である、請求項11に記載のキット。
【請求項16】
前記組成物は、式(I)の少なくとも1つのモノマーと、式(A1)または(A2)または(A3)の1つの化合物とを含む、請求項11に記載のキット。
【請求項17】
前記組成物から形成されたフィルムは、10GHzの周波数で2.0~2.38の誘電率(Dk)、約160℃~約350℃のガラス転移温度、および約100ppm/K~約140ppm/Kの熱膨張係数(CTE)を有する、請求項11に記載のキット。
【請求項18】
前記充填剤は無機充填剤である、請求項11に記載のキット。
【請求項19】
前記充填剤は有機充填剤である、請求項11に記載のキット。
【請求項20】
下記からなる群から選択される、請求項11に記載のキット:
5-デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(DecNB)、5-ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(HexNB)、1,4,4a,5,8,8a-ヘキサヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(TDD)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(DecNB)、5-フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PhNB)、1,4,4a,5,8,8a-ヘキサヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(TDD)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(DecNB)、2,2’-ビ(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-エン)(NBANB)、1,3-ビス(2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)エチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(NBC2DMSC2NB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(HexNB)、2,2’-ビ(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-エン)(NBANB)、1,3-ビス(2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)エチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(NBC2DMSC2NB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
3a,4,7,7a-テトラヒドロ-1H-4,7-メタノインデン(DCPD)、5-ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(HexNB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
3a,4,7,7a-テトラヒドロ-1H-4,7-メタノインデン(DCPD)、5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(CyHexNB)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(CyHexNB)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン(NBD)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(TD)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-(シクロヘキス-3-エン-1-イル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(CyclohexeneNB)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(TD)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン(NBD)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);および
5-シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(CyhexNB)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、3a,4,4a,5,8,8a,9,9a-オクタヒドロ-1H-4,9:5,8-ジメタノシクロペンタ[b]ナフタレン(CPD3)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互引用
本願は、2020年10月30日に出願され、本願に組み込まれた米国仮出願第63/107,514号の権利を主張している。
【0002】
本発明による実施形態は、一般的に1種の以上のポリシクロオレフィンモノマーと、少なくとも1種の多官能性オレフィンモノマーとを含む組成物に関し、当該組成物は、適切な温度で塊重合を起こして、従来達成することができなかった低誘電率と低損失特性、超高度の熱特性を示す3D絶縁性物品を提供する。より具体的には、本発明は、特定の有機パラジウム化合物の存在下で塊重合を起こして、例えばフィルムなどの3D物品を形成する、一連の置換ノルボルネン誘導体と、少なくとも1種以上の二官能性モノマー化合物とを含む組成物に関し、300℃以上の非常に高いガラス転移温度、低誘電率(10GHz周波数で2.4未満)、および低損失特性を示す。よって、本発明の組成物は、各種の自動車部品の製造に用いられる電子機械デバイスを含む様々な用途で絶縁材料として用いられる。
【背景技術】
【0003】
低誘電率(Dk)および低損失(低誘電損失率(Df)とも呼ばれる)を有する絶縁材料が、電気製品、自動車部品およびその他の用途で広く用いられる印刷回路基板において重要な要素であることは周知である。一般的に、多くのデバイスにおいて適切な絶縁材料は、例えば50GHzを超える高周波数で誘電率が3未満、損失率が0.001未満でなければならない。また、製造が容易であるというメリットのため、有機誘電体材料の開発に対する関心が高まっている。
【0004】
しかしながら、要求事項をすべて満たす絶縁材料を開発するには、多くの技術的な問題を解決しなければならない。そのような問題の1つは、当該絶縁材料の熱膨脹係数(CTE)が低くなければならないことであり、熱膨脹係数は、銅層の剥離を防ぐために50ppm/K未満であることが好ましい。また、当該絶縁材料は、ガラス転移温度(Tg)が非常に高くなければならず、当該温度は、印刷回路基板の製造に用いられる工程条件と、自動車に使用されるミリ波レーダアンテナなどの当該デバイスが露出され得る苛酷な条件を考慮すると、150℃、あるいは250℃を超えることが好ましい。
【0005】
例えば、5-ヘキシルノルボルネン(HexNB)および5-デシルノルボルネン(DecNB)のように長側鎖を含むノルボルネン誘導体を付加重合して作られたフィルムは、疎水性を有するのでDkおよびDfは低いが、CTEが高く(>200ppm/K)、Tgは低い。例えば、日本特開第2016-037577号および第2012-121956号を参照されたい。
【0006】
また、フッ素化ポリエチレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの特定ポリマーは、Dk/Dfが低いことを特徴とするが、当該ポリマーはガラス転移温度が150℃よりもはるかに低く、有機絶縁材料としては不向きであることが文献に報告されている。さらに、エステルまたはアルコール基などの極性基で置換された特定の置換ノルボルネンを含む場合、一般的にCTEが低く、Tgが低いポリマーを生成することが可能であることも文献に報告されている。しかしながら、そのような基を組み込むと、電磁場下、特に高周波で分極性によりDkとDfがいずれも高くなる。したがって、このような極性基で置換されたノルボルネンは、本発明の絶縁材料を形成するには適していない。
【0007】
そのため、低誘電率はもちろん、超高熱特性を示す新規な絶縁材料の開発に対する需要は依然として存在する。
【0008】
また、熱可塑性フィルムではなく、熱硬化性フィルムを形成することができる材料を開発する必要もある。熱硬化性樹脂は一般的に架橋構造となっており、高温でさらに安定しており、熱可塑性フィルムとは異なり、熱移動性を示さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、1種以上の置換ノルボルネンモノマーと、多官能性モノマーとを含む組成物であって、塊重合を起こしてこれまで達成できなかった特性を有する絶縁材料を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的および用途の範囲に関しては、下記の詳細な説明で記述する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に記載された式(I)の1種以上のモノマーと、本明細書に記載された式(A1)または(A2)または(A3)の1種以上の多官能性化合物とを含む組成物を用いることでこれまで得られなかった誘電特性および熱特性を提供する3D物品を形成可能であることが見出された。
【0012】
本発明のまた他の態様では、本発明の組成物を含むキットを提供する。
【0013】
本発明による実施形態を、以下の添付の図面および/または画像を参照して下記に説明する。以下の図面は、本発明の各種の実施形態を簡略化して示したものであり、説明のみを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本明細書に記述されたように様々な水準で二官能性架橋結合剤を含む本発明の組成物から形成されたフィルムの熱機械的分析(TMA)から得られた比較サーモグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で用いられる用語は、以下のような意味を有する。
【0016】
冠詞「a」、「an」、「the」を使用した場合、明示的に1つの対象に限定されない限り、複数の対象まで含むとみなす。
【0017】
本明細書、および本明細書に添付された特許請求の範囲に記載される成分、反応条件などの量を示す数字、数値および/または式は、その数字、数値および/または式を得るために実施された測定の不確定要素を反映しているので、別途の記載がない限り、すべて「約(about)」という表現を含むものとみなす。
【0018】
本明細書において数字の範囲が開示される場合、上記範囲は連続的であり、当該範囲の最大値と最小値、さらに上記最大値と最小値との間のすべての値を含むとみなす。上記範囲が整数値に関する場合、範囲の最大値と最小値との間のすべての整数を含む。さらに、特徴または特性を説明する目的で、複数の範囲を提示する場合、上記複数の範囲を組み合わせることも可能である。言い換えれば、別途の指示がない限り、本明細書に開示されるすべての範囲は、当該範囲が含むすべての下位範囲を包含する。例えば「1~10」という範囲を提示した場合、当該範囲は最小値1と最大値10との間のすべての下位範囲を含むとみなすべきである。1と10との間の下位範囲の例としては、1~6.1、3.5~7.8、5.5~10などが挙げられるが、これに限定されない。
【0019】
本明細書において「ヒドロカルビル」は、炭素および水素原子を含有する基を示し、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリル、アルケニルなどが挙げられるが、これに限定されない。「ハロヒドロカルビル」は、少なくとも1つの水素をハロゲンで置換したヒドロカルビル基を言う。「パーハロカルビル」は、すべての水素をハロゲンで置換したヒドロカルビル基である。
【0020】
本明細書において「アルキル」は、特定の数の炭素原子を有する飽和した直鎖もしくは分枝の炭化水素置換基を示す。特にアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチルなどをいう。「アルコキシ」、「チオアルキル」、「アルコキシアルキル」、「ヒドロキシアルキル」、「アルキルカルボニル」、「アルコキシカルボニルアルキル」、「アルコキシカルボニル」、「ジフェニルアルキル」、「フェニルアルキル」、「フェニルカルボキシアルキル」、および「フェノキシアルキル」などの派生表現も同様に解釈されるべきである。
【0021】
本明細書において「シクロアルキル」は、既知の環状基をすべて含む。「シクロアルキル」の代表的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが挙げられるが、これに限定されない。「シクロアルコキシ」、「シクロアルキルアルキル」、「シクロアルキルアリール」、「シクロアルキルカルボニル」などの派生表現も同様に解釈されるべきである。
【0022】
本明細書において「パーハロアルキル」は、上記で定義されるアルキルであり、前記アルキル基の水素原子のすべてが、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選択されるハロゲン原子で置換されているアルキルを表す。代表的な例としては、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、トリヨードメチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタブロモエチル、ペンタヨードエチル、直鎖もしくは分枝のヘプタフルオロプロピル、ヘプタクロロプロピル、ヘプタブロモプロピル、ノナフルオロブチル、ノナクロロブチル、ウンデカフルオロペンチル、ウンデカクロロペンチル、トリデカフルオロヘキシル、トリデカクロロヘキシルなどが挙げられる。派生表現である「パーハロアルコキシ」も同様に解釈されるべきである。本明細書に記載された特定のアルキル基は部分的にフッ素化されていてもよい。すなわち、前記アルキル基の水素原子の一部のみをフッ素原子で置換され、派生表現も同様に解釈されるべきである。
【0023】
本明細書において「アシル」は、「アルカノイル」と同義であり、構造式「R-CO-」で示すことができ、ここでRは、特定の数の炭素原子を有する本明細書で定義される「アルキル」である。さらに、「アルキルカルボニル」は、本明細書で定義される「アシル」と同義である。特に「(C1-C4)アシル」は、ホルミル、アセチル、またはエタノイル、プロパノイル、n-ブタノイルなどを意味する。「アシルオキシ」および「アシルオキシアルキル」などの派生表現も同様に解釈される。
【0024】
本明細書において「アリール」は、置換もしくは未置換のフェニルまたはナフチルを示す。置換フェニルまたは置換ナフチルの具体的な例としては、o-、p-、m-トリル、1,2-、1,3-、1,4-キシリル、1-メチルナフチル、2-メチルナフチルなどが挙げられる。さらに、「置換フェニル」または「置換ナフチル」は、本明細書で定義されるか、当該技術分野において知られているものの中で可能な置換基をすべて含む。
【0025】
本明細書において「アリールアルキル」は、本明細書で定義されるアリールが、本明細書で定義されるアルキルに結合されていることを示す。代表的な例としては、ベンジル、フェニルエチル、2-フェニルプロピル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチルなどが挙げられる。
【0026】
本明細書において「アルケニル」は、特定の数の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む非環式の直鎖もしくは分枝の炭化水素鎖を意味し、エテニル、直鎖もしくは分枝のプロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどを含む。派生表現である「アリールアルケニル」と5員または6員の「ヘテロアリールアルケニル」も同様に解釈される。上記派生表現の代表的な例としては、フラン-2-エテニル、フェニルエテニル、4-メトキシフェニルエテニルなどが挙げられる。
【0027】
本明細書において「ヘテロアリール」は、既知のすべての芳香族ラジカル含有ヘテロ原子を示す。代表的な5員のヘテロアリールラジカルとしては、フラニル、チエニル、チオフェニル、ピロリル、イソピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリルなどが挙げられる。代表的な6員のヘテロアリールラジカルとしては、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニルなどのラジカルが挙げられる。二環式ヘテロアリールラジカルの代表的な例としては、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ピリドフラニル、ピリドチエニルなどのラジカルが挙げられる。
本明細書において「複素環」は、既知の環状ラジカルを含む周知の還元ヘテロ原子をすべて含む。代表的な5員複素環ラジカルとしては、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリジニル、2-チアゾリニル、テトラヒドロチアゾリル、テトラヒドロオキサゾリルなどが挙げられる。代表的な6員複素環ラジカルとしては、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニルなどが挙げられる。複素環ラジカルとしては、アジリジニル、アゼパニル、ジアゼパニル、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘブト-2-イル、トリアゾカニルなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0028】
「ハロゲン」または「ハロ」は、クロロ、フルオロ、ブロモ、およびヨードを意味する。
広義で、「置換(substituted)」は、有機化合物の許容可能な置換基がすべて含まれると解釈することができる。本明細書に開示された一部の特定の実施態様において、「置換」は、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C1-C6)パーフルオロアルキル、フェニル、ヒドロキシ、-CO2H、エステル、アミド、(C1-C6)アルコキシ、(C1-C6)チオアルキル、および(C1-C6)パーフルオロアルコキシからなる群より独立して選択された1つ以上の置換基で置換されることを意味する。しかしながら、当該実施形態では、当業者に知られている他の適切な置換基が用いられてもよい。
【0029】
本明細書の本文、図解、実施例、および表において原子が原子価(valence)を満たすことができない場合、当該原子価を満たす適切な数字の水素原子を有するものとみなすこととする。
【0030】
本明細書において「誘電体」と「絶縁」という用語は相互互換可能である。よって、絶縁材料または絶縁層に対する言及は、誘電体材料または誘電体層を含み、その逆も同様である。また、本明細書で使用される「有機電子デバイス」という用語は、「有機半導体デバイス」、例えば自動車産業で使用される当該デバイスの特定の具現を含むものと理解すべきである。
【0031】
本明細書において材料の誘電率(Dk)は、2つの金属板の間に配置された絶縁材料に貯蔵された電荷と絶縁材料を真空または空気に替えたときに貯蔵可能な電荷の割合をいう。電気誘電率、または誘電率ともいう。また自由空間の誘電率と比べて相対的に測定されるため、比誘電率ともいう。
【0032】
本明細書において「低損失」は、散逸システムにおける振動モード(機械的、電気的、または電子機械的)のエネルギー損失率の尺度である散逸率(Df)を意味する。これは、振動の「品質」または耐久性を示す品質係数の逆数である。
【0033】
本明細書において、「由来(derived)」は、ポリマーの繰り返し単位を、例えば式(I)による多環ノルボルネン型モノマーから重合(形成)されることを意味する。この場合、結果的に得られるポリマーは、以下のようにノルボルネン型モノマーの2,3二重結合で形成される。
【0034】
【化1】
【0035】
上記の重合は、下記に詳しく説明されるように、有機パラジウム化合物または有機ニッケル化合物のような有機金属化合物の存在下で一般的に起きるビニル付加重合として知られている。
【0036】
したがって、本発明の実施によると、フィルム形成用組成物において、
a)式(I)の1つ以上のオレフィンモノマー:
【化2】
(ここで、
mは0または1であり、
【化3】
は、単結合または二重結合であり、
1、R2、R3、およびR4は、同一または異なり、それぞれ独立して水素、直鎖もしくは分枝の(C4-C16)アルキル、直鎖もしくは分枝の(C2-C16)アルケニル、(C3-C10)シクロアルキル、(C3-C10)シクロアルケニル、(C6-C12)ビシクロアルキル、(C6-C12)アリール、および(C6-C12)アリール(C1-C6)アルキルからなる群から選択され、または
1およびR2の1つは、R3およびR4の1つおよびこれらが結合している炭素原子と共に、必要に応じて1つ以上の二重結合を含む置換もしくは未置換の(C5-C14)単環式環、(C5-C14)二環式環、または(C5-C14)三環式環を形成する。)
b)下記からなる群から選択された少なくとも1つの化合物:
式(A1)の化合物:
【化4】
(ここで、
bは、2~6の整数であり、
Zは結合、またはR910SiOSiR1112であり、ここで、R9、R10、R11およびR12のそれぞれは、同一または異なり、それぞれ互いに独立してメチル、エチル、および直鎖もしくは分枝の(C3-C6)アルキルからなる群から選択され、
5、R6、R7およびR8は、同一または異なり、それぞれ互いに独立して水素、メチル、エチル、および直鎖もしくは分枝の(C3-C16)アルキルからなる群から選択される。)
式(A2)の化合物:
【化5】
(ここで、
13、R14、R15、およびR16は、同一または異なり、それぞれ互いに独立して水素、メチル、エチルおよび直鎖もしくは分枝の(C3-C16)アルキルからなる群から選択される。)、および
式(A3)の化合物:
【化6】
(ここで、
Lは、結合、またはメチレン、エチレン、直鎖もしくは分枝の(C3-C16)アルキレン、(C3-C16)シクロアルキレン、(C5-C8)ヘテロサイクル、(C6-C12)アリーレン、(C5-C12)ヘテロアリーレン、および-(CH2cO(CH2c-から選択される2価の連結基またはスペーサ基であり、cは、1ないし6の整数であり、必要に応じて各CH2は、メチル、エチル、直鎖もしくは分枝の(C3-C16)アルキル,および(C6-C12)アリールで置換されてもよく、ここで、必要に応じてメチレン、エチレンまたは(C3-C16)アルキレン上の水素部分は、フッ素、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、および直鎖もしくは分枝のパーフルオロ(C3-C16)アルキルからなる群から選択される基で置換され、
17およびR18は、同一または異なり、それぞれ独立してメチル、エチル、直鎖もしくは分枝の(C3-C12)アルキル、(C6-C12)アリール、および(C6-C12)アリール(C1-C12)アルキルから選択され、ここで、必要に応じてメチル、エチルまたは(C3-C12)アルキル上の水素部分は、フッ素、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルおよび直鎖もしくは分枝の(C3-C12)パーフルオロアルキルからなる群から選択される基で置換され、
Ar1およびAr2は、同一または異なり、それぞれ独立して(C6-C12)アリーレン基または(C6-C12)ヘテロアリーレン基から選択され、これらは、必要に応じて(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシ、(C6-C10)アリール、(C6-C12)アリールオキシ、(C6-C12)アリール(C1-C4)アルキル、および(C6-C12)アリール(C1-C4)アルキルオキシから選択された基で置換される。)
c)以下からなる群から選択される有機パラジウム化合物:
パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド;
パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)ジブロミド;
パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)ジアセテート;
パラジウム(II)ビス(トリフェニルホスフィン)ビス(トリフルオロアセテート);
パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロリド;
パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジブロミド;
パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785);
パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ビス(トリフルオロアセテート);
パラジウム(II)ビス(トリ-p-トリルホスフィン)ジクロリド;
パラジウム(II)ビス(トリ-p-トリルホスフィン)ジブロミド;
パラジウム(II)ビス(トリ-p-トリルホスフィン)ジアセテート;
パラジウム(II)ビス(トリ-p-トリルホスフィン)ビス(トリフルオロアセテート);
パラジウム(II)エチルヘキサノエート;
ジクロロビス(アセトナト)パラジウム(II);
ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II);
プラチナム(II)クロリド;
プラチナム(II)ブロミド;および
プラチナムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド;ならびに
d)以下からなる群から選択される活性剤:
リチウムテトラフルオロボレート;
リチウムトリフレート;
リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートエーテラート(LiFABA);
ナトリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートエーテラート(NaFABA);
トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートエーテラート(tritylFABA);
トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートエーテラート(tropyliumFABA);
リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイソプロパノレート;
リチウムテトラフェニルボレート;
リチウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(2-フルオロフェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(3-フルオロフェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(4-フルオロフェニル)ボレート;
リチウムテトラキス(3,5-ジフルオロフェニル)ボレート;
リチウムヘキサフルオロホスフェート;
リチウムヘキサフェニルホスフェート;
リチウムヘキサキス(ペンタフルオロフェニル)ホスフェート;
リチウムヘキサフルオロアルセネート;
リチウムヘキサフェニルアルセネート;
リチウムヘキサキス(ペンタフルオロフェニル)アルセネート;
リチウムヘキサキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)アルセネート;
リチウムヘキサフルオロアンチモネート;
リチウムヘキサフェニルアンチモネート;
リチウムヘキサキス(ペンタフルオロフェニル)アンチモネート;
リチウムヘキサキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)アンチモネート;
リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
リチウムトリス(ノナフルオロビフェニル)フルオロアルミネート;
リチウム(オクチルオキシ)トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
リチウムテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)アルミネート;
リチウムメチルトリス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
ここで、前記組成物から形成されたフィルムは、10GHzの周波数で2.4未満の誘電率(Dk)、150℃を超えるガラス転移温度、および150ppm/K未満の熱膨張係数(CTE)を有する。
【0037】
本発明の組成物は、適切な温度条件および/または光分解条件で露出されるときに塊重合可能な組成物である点に留意されたい。すなわち、一般的に式(I)の1種以上のモノマー、式(A1)または(A2)または(A3)の少なくとも1種の化合物の、少なくとも1種の有機パラジウム化合物、本明細書に記載された活性剤を含む本発明の組成物を特定の温度に加熱すると、当該組成物は塊重合を起こして固体物体を形成する。塊重合を起こす温度条件であれば制限なく本明細書で採択することができる。一実施形態において、本発明の組成物は、例えば約1時間~8時間の十分な時間、約60℃~約150℃の温度に加熱される。また他の実施形態において、本発明の組成物は、例えば約1時間~4時間の十分な時間、例えば約90℃~約130℃の温度に加熱される。
【0038】
また、本発明の組成物を適切な電磁放射線に露出させると、塊重合を起こして固体物体を形成することがさらに明らかになった。一実施形態において、式(A1)または(A2)または(A3)の化合物は電磁放射線の特定波長で活性化されることができ、これは、一般的に約240nm~400nmの範囲である。よって、電磁放射線で活性化される式(A1)または(A2)または(A3)の化合物のうちの任意の化合物は、光分解塊重合条件に適合する本発明の組成物に使用することができる。一実施形態において、式(A1)または(A2)または(A3)の化合物を活性化させるための放射線の波長は260nmである。他の実施形態において、式(A1)または(A2)または(A3)の化合物を活性化するための放射線の波長は310nmである。また他の実施形態において、式(A1)または(A2)または(A3)の化合物を活性化するための放射線の波長は365nmまたは395nmなどである。
【0039】
本発明の一実施形態において、本発明の組成物は、式(I)のモノマーの塊状重合を容易にするために、式(A1)または(A2)または(A3)の化合物を活性化することができる他の増感剤化合物をさらに含有してもよい。当該目的のために、任意の好適な増感剤化合物を本発明の組成物として使用することができる。好適な増感剤化合物の例としては、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ベンズピレン、フルオランテン、ルブレン、ピレン、キサントン、インダントレンおよびこれらの混合物のような感光剤が挙げられる。一部の例示的な実施形態において、好適な増感剤成分はそれらの混合物を含む。一般に、感光剤は放射された光源からエネルギーを吸収し、そのエネルギーを本発明の組成物に使用される好ましい基質/反応物質に伝達する。
【0040】
多くの場合、有機パラジウム化合物および塊重合に影響を与えるために使用される活性剤は、均質溶液の形成に使用されるモノマーに溶解することができる。活性剤が溶解されない場合、有機パラジウム化合物および活性剤を、例えばテトラヒドロフラン(THF)のような適切な溶媒に溶解させた後、式(I)の1種以上のモノマーと、式(A1)または(A2)または(A3)の化合物と混合して均質溶液を形成してもよい。本明細書に記載されているように、有機パラジウム化合物および/または活性剤の溶解に使用され得る他の溶媒としては、酢酸エチル(EA)、トルエン、トリフルオロトルエン(TFT)、シクロヘキサン(CH)、メチルシクロヘキサン(MCH)などが挙げられる。このような塊重合法は既に周知の技術であり、当業者に周知の任意の手順で本発明のフィルムを形成することができる。例えば、本明細書に組み込まれた米国登録特許第6,825,307号を参照されたい。
【0041】
一実施形態において、フィルム形成用組成物は、
mは0であり、
【化7】
は単結合であり、
1、R2、R3、およびR4は、同一または異なり、それぞれ独立して水素、n-ブチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、およびノルボルニルからなる群から選択される式(I)のモノマーを含む。
【0042】
式(I)のモノマーであれば、いずれも本発明のフィルム形成用組成物の形成に使用できる。式(I)のモノマーは、以下からなる群から選択することができるが、これに限定されない。
【0043】
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【0044】
さらに、式(A1)の範疇に属する特定化合物を本発明のフィルム形成用組成物に使用して所望の効果を得ることができる。式(A1)の化合物は、以下からなる群から選択することができるが、これに限定されない。
【0045】
【化9】
【0046】
式(A2)の範疇に属する特定化合物を本発明のフィルム形成用組成物に使用して所望の効果を得ることができる。式(A2)の化合物は、以下からなる群から選択することができるが、これに限定されない。
【0047】
【化10】
【0048】
式(A3)の範疇に属する特定化合物を本発明のフィルム形成用組成物に使用して所望の効果を得ることができる。式(A3)の化合物は、以下からなる群から選択することができるが、これに限定されない。
【0049】
【化11】
【0050】
前述のように、本発明によるフィルム形成用組成物は、式(I)の少なくとも1種のモノマーと、式(A1)または(A2)または(A3)の化合物とを含む。式(I)のモノマーと式(A1)または(A2)または(A3)の化合物の量は、本発明の組成物を形成し、本明細書に記載された低誘電率および/または低い熱的/機械的特性、あるいは意図した最終的な用途に応じた他の好ましい特性などの意図した利点をもたらすことができれば、特に制限はない。よって、式(I)のモノマーと式(A1)または(A2)または(A3)の化合物のモル比は95:5~5:95であってもよい。一実施形態では、式(I)のモノマーと式(A1)または(A2)または(A3)の化合物のモル比は90:10~10:90の範囲であり、他の一実施形態では85:15~15:85、80:20~20:80、70:30~30:70、75:25~25:75、60:40~40:60、50:50などの範囲であってもよい。
【0051】
一実施形態では、式(A1)または(A2)または(A3)の化合物の量は5モル%未満である。よって、一実施形態において、式(I)のモノマーと式(A1)または(A2)または(A3)の化合物のモル比は99:1~1:99、98:2~2:98、97:3~3:97、96:4~4:96、あるいはこれらの分数であり得る。意図した用途で所望の利点が得られれば、本発明の組成物に適用する組み合わせには制限はない。
【0052】
また、式(I)の1種以上のモノマーと式(A1)または(A2)または(A3)の1種以上の化合物も本発明の組成物に用いることができる。よって、式(I)の第1モノマーと式(I)の第2モノマーのモル比は1:99~99:1であってもよい。一実施形態において、式(I)の第1モノマー:式(I)の第2モノマーのモル比は、5:95~95:5の範囲であり、他の一実施形態では、10:90~90:10、15:85~85:15、20:80~80:20、30:70~70:30、60:40~40:60、50:50などの範囲であってもよい。同様に、式(A1)または(A2)または(A3)の1種以上の化合物が本発明の組成物に用いられる場合、式(I)の1種以上のモノマーを本発明の組成物に適用するときは、本明細書で提示した様々な割合などの任意の好ましい量で用いてもよい。
【0053】
一般的に、本発明による組成物は、前述の式(I)のモノマーを1種以上含み、以下から分かるように、用途に適合しており、好ましい特性を提供するために、様々な組成物の実施形態を選定するので、当該実施形態を様々な特定用途に合わせて構成できる。よって、一実施形態において本発明の組成物は、式(I)の2種以上のモノマー、例えば式(I)の異なる3種のモノマー、または式(I)の異なる4種のモノマーと、式(A1)または(A2)または(A3)の化合物とを任意の好ましい数で含んでもよい。
【0054】
例えば、上記で既に論議したように、式(I)で示される各種のモノマーを適切に組み合わせて使用することで、各種の特性の中でも特に好ましい低誘電率と熱的-機械的特性を示す組成物を得ることが可能になった。また、以下で詳述するように、最終的な用途に応じて好ましい低損失および低誘電率を提供するために互換可能な他のポリマーまたはモノマー材料を含むことも好ましい。
【0055】
式(A1)または(A2)または(A3)の化合物を1種以上使用してポリマー骨格内で架橋構造を形成することができることが見出された。言い換えると、架橋は分子内(すなわち、同一の高分子鎖にある架橋可能な2つの部位の間)で発生することができる。これは、統計的に起きる可能性があり、当該組み合わせはすべて本発明の一部である。分子間または分子内の架橋を形成することで、本発明の組成物から形成されたポリマーは、これまで得られなかった特性を確保する。例えば、向上した熱特性を含むことができる。すなわち、類似した組成の非架橋ポリマーで観察されるよりもはるかに高いガラス転移温度を提供する。またこのような架橋ポリマーは、350℃以上のさらに高い温度においても安定性を維持する。高温安定性は、当業者に周知の熱重量分析(TGA)方法によっても測定することができる。当該測定値のうちの1つは、ポリマーが重量の5%を失う温度(Td5)である。下記の具体的な実施例により分かるように、本発明の組成物から形成されたポリマーのTd5は、一般的に約270℃~約320℃の範囲であり得る。一実施形態では、本発明の組成物から形成されたポリマーのTd5は、約280℃~約300℃の範囲である。
【0056】
また、組成物から形成されたポリマーの架橋を達成するために、式(A1)または(A2)または(A3)の1種以上の化合物を必ずしも使用する必要はない点に留意すべきである。すなわち、化学式(I)のモノマーが前述のように分子間または分子内で他の重合鎖と架橋可能なモノマーとして機能できる不飽和二重結合を含む別個のモノマーを1種以上含む場合である。よって、一実施形態では、式(I)のモノマーを少なくとも2種含み、そのうちの少なくとも1種のモノマーが二重結合を含む組成物を提供する。このような組み合わせは、すべて本発明の一部である。
【0057】
本発明の組成物から形成された架橋ポリマーは熱硬化性となり得るので、特に熱可塑性ポリマーが望ましくない特定の用途においてさらなる利点を提供することができる。例えば、高温が伴う用途においては、当該ポリマー材料が流動する可能性があり、高温環境に適していないため、熱可塑性ポリマーは好ましくない。このような用途としては、特に本明細書で企図されているミリ波レーダアンテナが挙げられる。
【0058】
式(I)の1種以上のモノマーから形成されたポリマーは、式(A1)または(A2)または(A3)の1種の化合物と反応して前述した架橋熱硬化性形態を形成することができる。よって、一実施形態では、式(I)の1種以上のモノマーと、式(A1)または(A2)または(A3)の少なくとも1種の化合物とから形成されたポリマーを適切な溶媒に混合した組成物をさらに提供する。このように形成された溶液は、周知の方法のいずれかによりフィルムにキャストされることができ、本明細書に記載されているように、適切な高温または放射線に露出して架橋フィルムを形成することもできる。適切な溶媒としては、式(I)のモノマーから形成されたポリマーを溶解させる任意の溶媒、例えばデカンのような炭化水素溶媒、ジクロロメタンまたはジクロロエタンのようなハロ炭化水素溶媒、または酢酸エチルのようなエステル溶媒、テトラヒドロフランまたはジエチルエーテルのようなエーテル溶媒、ジグリムまたはエチルアルコールなどのようなアルコール溶媒が挙げられる。架橋に適切な温度は、例えば30分~1時間以上の間の十分な時間、約100℃~約180℃以上であってもよい。適切な化学放射線は、当業界で一般的に使用されているように、365nmまたは400nmで放射線を照射することを含んでもよい。
【0059】
後述するように、本発明による組成物は、フィルムに形成することができる。本発明の組成物から形成されたフィルムは、特に誘電率が低くガラス転移温度が高いというこれまで得られなかった組み合わせを示す。よって、一実施形態において、本発明の組成物から形成されたフィルムは、10GHz周波数で2.0~2.38の誘電率(Dk)、約160℃~約350℃のガラス転移温度、約100ppm/K~約140ppm/Kの熱膨脹係数(CTE)を有する。他の一実施形態において、本発明の組成物から形成されたフィルムは、10GHz周波数で2.10~2.30の誘電率(Dk)、約190℃~約350℃のガラス転移温度、約80ppm/K~約140ppm/Kの熱膨脹係数(CTE)を有する。他の一実施形態において、本発明の組成物から形成されたフィルムは、約220℃~約350℃のガラス転移温度を有する。
【0060】
本発明の組成物から形成されたフィルムの低誘電率は、1種以上の充填剤を含むことによりさらに改善できることが見出された。充填剤は有機または無機であってもよい。意図した利点をもたらすことができれば、周知の充填剤のいずれも本発明に使用することができる。
【0061】
したがって、一実施形態において、本発明によるフィルム形成用組成物は、無機充填剤を含む。適切な無機充填剤は、本発明の組成物から形成されたフィルムの熱膨脹係数(CTE)よりも低い熱膨脹係数を有するものである。無機充填剤の例としては、シリカ、アルミナ、珪藻土、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、金属フェライトなどの酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物;炭酸カルシウム(硬質および重質);炭酸マグネシウム、白雲石、ドロマイトなどの炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩;滑石、雲母、粘土、ガラスファイバー、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイトなどのケイ酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩;カーボンブラック;炭素繊維などの炭素;鉄粉末;銅粉末;アルミニウム粉末;酸化亜鉛;硫化モリブデン;ホウ素繊維;チタン酸カリウム;ジルコン酸鉛などが挙げられるが、これに限定されない。
【0062】
他の一実施形態において、本発明によるフィルム形成用組成物は、有機充填剤をさらに含む。有機充填剤は、一般的に粉末状の合成樹脂であってもよく、他の適切な形態やポリマーであってもよい。ポリマー充填剤の例としては、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(ビニル-トルエン)、α-メチルスチレンとビニル-トルエンのコポリマーなどが挙げられるが、これに限定されない。合成樹脂粉末のまた別の例示としては、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、アクリルおよびメタクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテートコポリマーなどの各種の熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂の粉末、またはこれらの樹脂のコポリマーの粉末が挙げられる。有機充填剤のまた別の例としては、芳香族または脂肪族ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維などが挙げられる。
【0063】
一実施形態では、充填剤は無機充填剤であり、それにより、熱膨脹係数を効果的に減少させることができる。さらに、耐熱性を向上できる。一実施形態では、無機充填剤はシリカである。これにより、熱膨脹係数を減少させて誘電体特性を改善することができる。当業界で周知の各種のシリカ充填剤が本発明の組成物に用いられる。シリカ充填剤の例としては、溶融球状シリカと、溶融粉砕シリカ、結晶質シリカなどを含む溶融シリカが挙げられるが、これに限定されない。一実施形態では溶融シリカを使用する。球状シリカを使用することにより、最大充填量、例えば、80重量%のシリカを含む組成物を形成することができることが見出された。適切なシリカ充填剤を使用することにより、誘電体特性に特に優れるようにすることができる。一般的に充填剤の量は、約5重量%から80重量%以上までに変化し得る。一実施形態において、組成物内の充填剤の含量は、本明細書に記載されているように、フィルム/シートを形成するために重合するときの組成物の全固体含量を基準として約30~80重量%である。充填剤の含量を適切に調節することにより、誘電体特性と熱膨脹係数との間のバランスを改善することができる。他の一実施形態において、組成物内の充填剤の含量は、組成物の全固体含量を基準として約40~70重量%である。
【0064】
一般的に、充填剤は、アルコキシシリル基と、アルキル基、エポキシ基、ビニル基、フェニル基、スチリル基のような有機官能基を単一分子内に有するシラン化合物で処理される。該シラン化合物の例としては、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン(アルキルシラン)などのアルキル基を有するシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、フェネチルトリエトキシシランなどのフェニル基を有するシラン、スチリルトリメトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、プロペニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン(ビニルシラン)などのスチリル基を有するシラン、γ-(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシランなどのアクリル基またはメタクリル基を有するシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基を有するシラン、またはγ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ウレイドトリエトキシシランなどのエポキシ基を有するシランなどが挙げられる。γ-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有するシランも使用することができる。前述のシラン化合物の1つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
また、無機充填剤を充填剤として使用する場合、一般的に「非極性シラン化合物」で処理される点に留意すべきである。これにより、本発明の組成物から形成された環状オレフィンポリマーと充填剤との間の接着力を向上させることができる。その結果、成形体の機械的特性を向上させることができる。「非極性シラン化合物」で処理すると、誘電特性に対する悪影響を排除または低減できることが見出された。本明細書で使用される「非極性シラン化合物」は、極性置換体を含まないシラン化合物を指す。極性置換体は、水素結合またはイオン解離することができる基をいう。極性置換体の例としては、-OH、-COOH、-COOM、NH3、NR4 、-CONH2などが挙げられるがこれに限定されない。ここで、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、または第4級アンモニウム塩のようなカチオンであり、Rは、Hまたは炭素原子が8つ以下のアルキル基であり、Aは、ハロゲン原子のようなアニオンである。
【0066】
一実施形態では、充填剤の表面をビニル基で修飾する。ビニル基は、非極性置換体として本発明に必要な低誘電率を提供するので、ビニル基を使用することが好ましい。例えば、ビニル基で充填剤の表面を修飾するとき、ビニルシランを使用することができる。ビニルシランの具体的な例は、前述の通りである。
【0067】
一般的に、充填剤の平均粒径は約0.1~10μmの範囲である。一実施形態では約0.3~5μmであり、他の一実施形態では約0.5~3μmである。平均粒径は、光散乱法で測定された粒子の平均直径として定義される。充填剤を2種以上使用する場合も、該充填剤のうちの1種以上の平均粒径は、前述の数値の範囲内にある。充填剤の平均粒径が適度に小さいので、充填剤の比表面積が減少する。その結果、誘電特性に悪影響を及ぼす極性作用基の数が減少して誘電特性が容易に改善される。また、充填剤の平均粒径が適度に小さい場合、本発明の組成物からフィルムを重合して形成することが容易になる。このように形成されたフィルム/シートは、各種の用途で必要とされる均一な厚さと平坦度を有する。
【0068】
本発明の組成物は、上記以外の成分を含んでいてもよい。上記以外の成分は、カップリング剤、難燃剤、離型剤、抗酸化剤などを含む。カップリング剤の例示としては、ビニルシラン、アクリルおよびメタクリルシラン、スチリルシラン、イソシアナトシランなどのようなシランカップリング剤が挙げられるがこれに限定されない。シランカップリング剤を用いることにより、本発明の組成物と基材等との密着性を向上させることができる。
【0069】
難燃剤の例としては、トリキシレニルホスフェート、キシレニルホスフェート、10(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10ホスファフェナントレン-10-オキシドのようなリン系難燃剤、臭化エポキシ樹脂のようなハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムのような無機難燃剤が挙げられるがこれに限定されない。
【0070】
本発明の組成物は、接着促進剤、表面平坦化剤、相乗剤、可塑剤、硬化促進剤、フリーラジカル開始剤などのような有用性のある1種以上の化合物または添加剤をさらに含んでもよい。1種以上の熱的フリーラジカル発生剤を使用することにより、本発明の組成物から形成されたポリマーの架橋を加速化してさらに向上した熱特性を示す架橋ポリマーを生成することができる。例えば、ガラス転移温度(Tg)と、生成されたポリマーの5重量%の重量損失が発生する温度(Td5)がいずれも高くなる。Tgの増加は、約10℃~50℃の範囲であってもよい。一実施形態において、ポリマーのTgは、適切な量の熱的フリーラジカル発生剤を使用して20℃~40℃程度上昇する。同様に、ポリマーのTd5も約3℃~10℃程度上昇する。
【0071】
熱に露出したときにラジカルを形成する任意の化合物をこの目的で使用することができる。該化合物の一般的な例示としては、過酸化物、過酸、アゾ化合物、N-アルコキシアミン、N-アシルオキシアミンなどが挙げられ、特定の熱的フリーラジカル発生剤の例示としては、ベンゾイルパーオキシド、過酸化ジクミル(DCP)、m-クロロ過安息香酸、メチルエチルケトンパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、(1-フェニル-3,3-ジプロピルトリアゼン)、(1-(フェニルジアゼニル)ピロリジン)、(1-(フェニルジアゼニル)ピペリジン)、(1-(フェニルジアゼニル)アゼパン)などが挙げられるがこれに限定されない。
【0072】
熱的フリーラジカル発生剤は、意図した効果をもたらす限り、本発明の組成物に様々な含量で使用可能である。一般的に、含量の範囲は、樹脂100部当たり約2部(pphr)~10pphr以上である。一実施形態において使用される熱的ラジカル発生剤の量は、約3pphr~6pphrである。
【0073】
本発明のフィルム形成用組成物の例示は、以下からなる群から選択されることができるが、これに限定されない。
【0074】
5-デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(DecNB)、5-ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(HexNB)、1,4,4a,5,8,8a-ヘキサヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(TDD)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(DecNB)、5-フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PhNB)、1,4,4a,5,8,8a-ヘキサヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(TDD)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(DecNB)、2,2’-ビ(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-エン)(NBANB)、1,3-ビス(2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)エチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(NBC2DMSC2NB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(HexNB)、2,2’-ビ(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-エン)(NBANB)、1,3-ビス(2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)エチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(NBC2DMSC2NB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
3a,4,7,7a-テトラヒドロ-1H-4,7-メタノインデン(DCPD)、5-ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(HexNB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
3a,4,7,7a-テトラヒドロ-1H-4,7-メタノインデン(DCPD)、5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(CyHexNB)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(CyHexNB)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン(NBD)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(TD)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-(シクロヘキス-3-エン-1-イル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(CyclohexeneNB)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(TD)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン(NBD)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(CyhexNB)、5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、3a,4,4a,5,8,8a,9,9a-オクタヒドロ-1H-4,9:5,8-ジメタノシクロペンタ[b]ナフタレン(CPD3)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(HexNB)、3,3’-((オキシビス(メチレン))ビス(4,1-フェニレン))ビス(3-(トリフルオロメチル)-3H-ジアジリン)(ビス-ジアジリンエーテル)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(HexNB)、5-(ブト-3-エン-1-イル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(ButenylNB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、5-(ブト-3-エン-1-イル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(ButenylNB)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);
5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、5-(ブト-3-エン-1-イル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(ButenylNB)、ジクミルパーオキシド(DCP)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA);および
5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(BuNB)、5-(ブト-3-エン-1-イル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(ButenylNB)、ジクミルパーオキシド(DCP)、シリカ(SC2300)、パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート(Pd785)、およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(DANFABA)。
【0075】
本発明の組成物は、任意の形状または形態に成形することができ、特にフィルムに限定されないことに留意すべきである。したがって、一実施形態では、本発明の組成物をシートに形成することができる。シートの厚さは特に制限されないが、誘電体材料としての用途を考慮すると、0.01~0.5mmである。他の一実施形態において、厚さは約0.02~0.2mmである。このように形成されたシートは、一般的に室温(25℃)で流動性を有さない。シートは、任意の担持層上に設けられてもよいし、単独で設けられてもよい。担持層の例としては、ポリイミドフィルムまたはガラスシートが挙げられ、その他の周知の剥離可能なフィルム基材も担持層として使用することができる。
【0076】
前述のように、本発明により形成されたフィルム/シートは、良好な誘電特性を有する。定量的に、10GHz周波数におけるフィルム/シートの比誘電率、すなわち誘電率(Dk)は約2.0~2.38である。10GHz周波数における誘電正接は約0.0003~0.005であり、他の一実施形態では約0.0004~0.003である。本発明の組成物は、このような低誘電率材料が必要とされる様々な装置、例えばミリ波レーダからアンテナなどの様々なデバイスに使用することができる。例えば、日本特開2018-109090号公報および日本特開第2003-216283号公報を参照されたい。アンテナは、一般的に絶縁体と導体層(例:銅箔)から構成される。本発明の組成物またはシートは、絶縁体の一部または全体として使用することができる。本発明の組成物またはシートを絶縁体の一部または全体として使用するアンテナは、高周波特性および信頼性(耐久性)に非常に優れている。
【0077】
アンテナの導体層は、例えば好ましい伝導率を有する金属から形成される。導体層には、周知の回路処理方法を用いて回路が形成される。導体層を形成する導体としては、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウムまたはこれらの合金金属のように伝導性を有する様々な金属が挙げられる。導体層は、周知の方法、例えば、気相蒸着、無電解メッキ、電解メッキなどで形成することができる。または、金属箔(例えば、銅箔)を熱圧縮ボンディングで圧力結合させてもよい。導体層を構成する金属箔は、一般的に電気連結に使用される金属箔である。銅箔の他にも、金、銀、ニッケルおよびアルミニウムのような様々な金属箔を使用することができる。相当部分(例えば、98重量%以上)が該金属で構成された合金箔を含んでもよい。金属箔の中では銅箔が一般的に使用される。銅箔は、圧延銅箔または電解銅箔であってもよい。
【0078】
前述のように、本発明の組成物は、一般にフィルムまたはシートを形成するためにそのまま使用される。しかしながら、一実施形態では、本明細書に記載されたように触媒を溶解させるために、組成物は少量の溶媒を含んでもよい。また、本発明の組成物は、特定の用途のための低分子量ワニスタイプの材料も使用することができる。その場合、重合時に組成物の固体含量を約10~70重量%に維持するために適切な量の好ましい溶媒が添加されてもよい。当該溶液の形成に適切な溶媒は、該用途に必要な単一の溶媒または溶媒の混合物として使用することができる。
【0079】
本発明の他の態様では、フィルム形成用キットが提供される。本発明の組成物は、当該キット内に分散される。よって、一実施形態において、本明細書に記載された式(I)の1種以上のオレフィンモノマー、本明細書に記載された式(A1)または(A2)または(A3)の1種以上の化合物、本明細書に記載された有機パラジウム化合物、本明細書に記載された活性剤が分散されたキットが提供される。一実施形態において、本発明のキットは、望ましい結果を得るために、または意図した目的のために、式(I)の1種以上のモノマーと、式(A1)または(A2)または(A3)の1種以上の化合物とを組み合わせて含む。
【0080】
本発明の一実施形態の他の態様において、本発明のキットは、ポリマーフィルムの形成に十分な時間、適切な温度に露出された場合にのみ塊重合を起こす。言い換えれば、本発明の組成物は、本明細書に記載されているように、表面または基板上に注がれ、表面または基板上はカプセル化され、適切な熱処理に露出されるとモノマーが重合を起こして、フィルムまたはシート状の形態の固体ポリマーを形成する。
【0081】
一般的に、上記で言及したように、このような重合は、例えば加熱のような様々な温度条件でなされ、例えば90℃に加熱した後、110℃で、そして最後に150℃で、例えば各温度段階で5分間~2時間の十分な時間加熱し、必要に応じて5分間~15分間などのような様々な時間で150℃以上にさらに加熱するなどの段階からなってもよい。重合は約100℃ないし250℃の単一温度で1時間~3時間、またはそれ以上の十分な時間実施してもよい。本発明の実施により、実質的に均一なフィルムである基材上に重合フィルムを得ることが可能である。フィルムの厚さは、上記で具体的に言及したように、所望の通り調整することができ、一般的に50~500ミクロン以上の範囲である。
【0082】
シートを作製するときにシートの平坦度を確保し、意図しない収縮を抑制するために、周知の様々な加熱方法を使用することができる。例えば、最初は比較的に低い温度で加熱し、徐々に温度を上げる。平坦度などを確保するために、加熱前に平板(ガラス板)などで加圧し、または平板で加圧して加熱してもよい。このような加圧に使用される圧力は、例えば0.1~8MPaであってもよく、他の一実施形態では、約0.3~5MPaの範囲であってもよい。
【0083】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載されたキットは、式(I)の2種以上のモノマーと、式(A1)または(A2)または(A3)の2種以上の化合物とを含む組成物を含む。本明細書に記載された式(I)のモノマー、あるいは式(A1)、または(A2)または(A3)の化合物のうちの任意の物質を本実施形態で、意図した使用の性質に応じて任意の好ましい量で使用することができる。
【0084】
一実施態様において、本明細書に記載されたキットは、前述のような様々な例示的な組成物を含む。
【0085】
本発明のさらに別の態様では、以下を含む様々な光電子および/または自動車用デバイスの製造のためのフィルムを形成する方法をさらに提供し、該方法は、
式(I)の1種以上のモノマーと式(A1)または(A2)または(A3)の1種以上の化合物の組み合わせ;本明細書に記載された有機パラジウム化合物;本明細書に記載された活性剤を含み、必要に応じて本明細書に記載された充填剤を含む、均質な透明組成物を形成するステップ、
上記組成物を好適な基板にコーティングし、または好適な基板に上記組成物を注いでフィルムを形成するステップ、
フィルムを適切な温度に加熱してモノマーの重合を誘導するステップからなる。
【0086】
本発明の組成物を好適な基板にコーティングしてフィルムを組成するステップにおいて、基板は、本明細書に記載されたコート法、またはスピンコート法のように当業者に周知のコート法のうちの1つでコーティングしてもよい。その他の好適なコート法としては、スプレーコート、ドクターブレード(doctor blading)、メニスカスコート(meniscus coating)、インクジェットコート、スロットコートが挙げられるが、これに限定されない。混合物を基板上に注いでフィルムを形成することもできる。好適な基板であれば特に制限はないが、電気デバイス、電子デバイスまたは光電子デバイスに用いられる基板、例えば半導体基板、セラミック基板、ガラス基板であってもよい。
【0087】
次に、コーティングされた基板を、例えば約50℃~150℃の温度で約1分~180分間(温度と時間は調整可能)加熱して、すなわちベークして塊重合を促進する。一実施形態において、約100℃~約120℃の温度で120分~180分間基板をベークする。他の一実施形態において、約110℃~約150℃の温度で60分~120分間基板をベークする。
【0088】
このように形成されたフィルムの電気的特性を、当業者に周知の任意の方法を使用して評価する。例えば、誘電率(Dk)または誘電率および誘電正接は、10GHz周波数におけるキャビティ共振器方式による誘電率測定装置(AET社製、JIS C 2565標準準拠)を使用して測定した。熱膨脹係数(CTE)は、測定試料のサイズ4mm(幅)×40mm(長さ)×0.1mm(厚さ)、測定温度範囲30~350℃、昇温速度5℃/minの条件で熱力学的分析装置(Seiko Instruments社製、SS 6000)で測定した。線形膨脹係数は、50℃~100℃の線形膨脹係数を採択した。一般的に、本発明により形成されたフィルムは、優れた誘電特性を示し、本明細書に記載されているように、好ましい誘電特性に合わせて調整可能である。
【0089】
本発明の一実施形態では、本明細書に記載されているように、組成物の塊重合で得られたフィルムまたはシートを提供し、他の実施形態では、本明細書に記載されたように本発明のフィルム/シートを含む電子デバイスを提供する。
【0090】
本発明のさらに別の態様では、式(I)の1種のモノマーと、式(A1)または(A2)または(A3)の少なくとも1種の化合物とから形成されたポリマーを含む組成物も提供される。該組成物を本明細書に記載されているように適切な温度および/または光分解条件に露出させることで架橋結合して、本明細書に記載されているように優れた特性を示すフィルムなどの3D物品を形成することができる。
【0091】
下記の実施例は、本発明の特定の化合物/単量体、ポリマー、組成物の調製および使用方法を詳細に説明するものである。詳細な調製方法は、前述の一般的な調製方法の範疇に属し、さらにその例示に該当する。実施例は、説明のみを目的とし、本発明を限定するものではない。実施例および本明細書において、単量体と触媒の割合はモル比である。
【0092】
実施例(一般)
次の略語は本明細書において本発明の特定の実施形態を説明するために使用された一部の化合物、器具および/または方法を記述するために用いられる。
PENB:5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン;
PhNB:5-フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン;
DecNB:5-デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン;
HexNB:5-ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン;
BuNB:5-ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン;
ButenylNB:5-(ブト-3-エン-1-イル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン;
NBANB:2,2’-ビ(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-5-エン);
CyHexNB:5-シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン;
DCPD:3a,4,7,7a-テトラヒドロ-1H-4,7-メタノインデン;
NBD:ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン;
TDD:1,4,4a,5,8,8a-ヘキサヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン;
NBC2DMSC2NB:1,3-ビス(2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)エチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン;
CPD3:3a,4,4a,5,8,8a,9,9a-オクタヒドロ-1H-4,9:5,8-ジメタノシクロペンタ[b]ナフタレン;
Pd785:パラジウム(II)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジアセテート;
DANFABA:ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
DCP:過酸化ジクミル;
ビス-ジアジリンエーテル:3,3’-((オキシビス(メチレン))ビス(4,1-フェニレン))ビス(3-(トリフルオロメチル)-3H-ジアジリン);
GEN-I BondLynx:3,3’-((パーフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス(4,1-フェニレン))ビス(3-(トリフルオロメチル)-3H-ジアジリン);
MCH:メチルシクロヘキサン;
EA:酢酸エチル;
THF:テトラヒドロフラン;
DSC:示差走査熱量計;
TGA:熱重量分析;
TMA:熱力学的分析;
pphr:樹脂100部当たりの部または式(I)の総モノマー100部当たりの部。
【0093】
本明細書で使用される様々なモノマーは、市販されており、または米国登録特許第9,944,818号に記載された手順により容易に製造することができる。
【0094】
実施例1
(DecNB/HexNB/TDD含有組成物-モル比50:30:20)
Pd-785(0.003mmol)とDANFABA(0.15mmol)の混合物をバイアル内で、ドライボックス中で混合した後、密封した。このバイアルにTHF(0.24g)をシリンジで添加した。その後、触媒溶液をDecNB(3.52g、15mmol)、HexNB(1.6g、9mmol)およびTDD(0.95g、6mmol)の混合物に添加した。このようにして形成された組成物をドクターブレードを使用してガラス基板にコーティングし、110℃のオーブンで3時間空気中で硬化して約100~300μmの厚さのフィルムを得た。このフィルムを長方形のストリップに切断して熱的および誘電特性の測定に使用した。結果を表1にまとめる。
【0095】
実施例2
(PhNB/DecNB/TDD含有組成物-50:30:20モルの割合)
Pd-785(0.031g)とDANFABA(0.176g)の混合物をバイアル内で、ドライボックス中で混合した後、密封した。このバイアルにTHF(3.2g)をシリンジで添加し、この溶液0.16gをexo-PhNB(2.13g、12.5mmol)、DecNB(1.76g、7mmol)およびTDD(0.79g、5mmol)の混合物に添加した。このようにして形成された組成物をドクターブレードを使用してガラス基板にコーティングし、110℃のオーブンで3時間空気中で硬化して約100~300μmの厚さのフィルムを得た。このフィルムを長方形のストリップに切断して熱的および誘電特性の測定に使用した。結果を表1にまとめる。
【0096】
実施例3
(NBANB/HexNB/NBC2(DMS)2C2NB含有組成物-モル比50:30:20)
Pd-785(0.031g)とDANFABA(0.176g)の混合物をバイアル内で、ドライボックス中で混合した後密封した。このバイアルにTHF(3.2g)をシリンジで添加し、この溶液0.16gをNBANB(1.88g、10mmol)、HexNB(1.07g、6mmol)およびNBC2(DMS)2C2NB(1.5g、4mmol)の混合物に添加した。このようにして形成された組成物をドクターブレードを使用してガラス基板にコーティングし、110℃のオーブンで3時間空気中で硬化して約100~300μmの厚さのフィルムを得た。このフィルムを長方形のストリップに切断して熱的および誘電特性の測定に使用した。結果を表1にまとめる。
【0097】
実施例4
(NBANB/DecNB/NBC2(DMS)2C2NB含有組成物-モル比50:30:20)
Pd-785(0.031g)とDANFABA(0.176g)の混合物をバイアル内でドライボックス中で混合した後、密封した。このバイアルにTHF(3.2g)をシリンジで添加し、この溶液0.16gをNBANB(1.88g、10mmol)、DecNB(1.41g、6mmol)およびNBC2(DMS)2C2NB(1.5g、4mmol)の混合物に添加した。このようにして形成された組成物をドクターブレードを使用してガラス基板にコーティングし、110℃のオーブンで3時間空気中で硬化して約100~300μmの厚さのフィルムを得た。このフィルムを長方形のストリップに切断して熱的および誘電特性の測定に使用した。結果を表1にまとめる。
【0098】
【表1】
【0099】
実施例5~8
Pd-785(MCHで1重量%)およびDANFABA(EAで5重量%)のストック溶液を、密封されたバイアル内で調製した。その後、本明細書に記載されているように、異なるモノマーを含む様々な組成物をPd-785およびDANFABAとともに以下のように製造した。実施例5は、CyHexNB/BuNB/NBD(モル比50/40/10)を含み、実施例6は、TD/BuNB/NBD(モル比50/40/10)を含み、実施例7は、CyHexNB/BuNB/CPD3(モル比50/40/10)を含んでいる。実施例8は、熱ラジカル開始剤としてDCP4pphrを有するCyHexNB/BuNB/CPD3(モル比50/40/10)を含んでいる。実施例5~8の各組成物は、約10,000/1/5のモノマー/Pd-785/DANFABAモル比を含んでいる。実施例5~8の各組成物を、ガラス基板上に注ぎ、ドクターブレードを使用して約10cm×6cmの長方形を生成した後、110℃で3時間硬化して約200~500μmの厚さの長方形のフィルムを形成した。このフィルムを真空状態で3~6時間、約120~150℃にさらに加熱して残留モノマーを取り除いた。長方形のフィルムをさらに小さな長方形に切り取ってTMAおよび電気的特性の測定、誘電率(Dk)および誘電損失係数(Df)を10GHz周波数で測定した。ガラス転移温度(Tg)、フィルムの5重量%損失が発生する温度(Td5)で測定した熱分解温度、熱膨脹係数(CTE)、フィルムのDkおよびDfを表2にまとめる。表2に示したデータから、実施例5~8の組成物で製造されたフィルムは、317℃~364℃の範囲の高いTg、284℃~301℃の範囲の高いTd5、86ないし89ppm/Kの範囲の低いCTE、2.2~2.36の範囲の低いDk、0.0008~0.0022の範囲の低いDfを示す。また、DCPのような熱的フリーラジカル発生剤を統合して実施例8のように熱硬化性を生成するために、フィルムを架橋結合させる第2の硬化経路を活用する場合、CPD3の第2二重結合がフリーラジカル開始重合を起こし、フィルムを架橋結合する第2の硬化経路が活用されない実施例7の組成物に比べて、10GHzにおけるDfが0.001にさらに減少する。実施例8の組成物のガラス転移温度も実施例7の組成物より高く、これはより堅固な架橋フィルムが形成されたことを示す。
【0100】
【表2】
【0101】
実施例9~14
密封されたバイアル内でPd-785(MCH1重量%溶液)およびDANFABA(EA5重量%溶液)のストック溶液を調製した。その後、HexNB(1.68g、10mmol)のサンプルにPd-785の原液(0.08g)およびDANFABAの原液(0.08g)を添加して様々な組成物を製造した。モノマー:Pd-785:DANFABAの割合は、約10000:1:5に維持した。その後、表3に記載されているように様々な量のビス-ジアジリンエーテルを各組成物に添加した。このような各組成物をガラス基板上に個別にドクターブレーディングし、それぞれ130℃で3時間硬化させた。この硬化条件で、HexNBモノマーはpoly-HexNBで大量重合されると同時に、ビス-ジアジリンエーテルが分解して、本明細書で説明したように、架橋ネットワークを形成するpHexNBのC-H結合に挿入されるカルベン中間体を形成することが予想される。誘電率(Dk)および誘電損失係数(Df)は、10GHzで測定され、表3に示されたデータから分かるように、実施例10~14はいずれもさらに低いDkのフィルムが形成された。300℃以上の2回目のガラス転移温度の出現と熱膨脹係数(CTE)の減少、1回目のガラス転移温度(Tg)の消滅は、TMAで測定されたとおり、ビス-ジアジリンエーテルが存在する場合にのみ観察された。表3と図1にまとめたTMAデータは、ビス-ジアジリンエーテルが存在するときに架橋ネットワーク、すなわち熱硬化性フィルムが形成されることを示す。
【0102】
【表3】
【0103】
実施例15
重量平均分子量(Mw)が約224K(5g)であるpoly-HexylNBのサンプルをデカン(20g)に溶解して20重量%溶液を調製した。この溶液を二等分し、第1の部分を実施例Aと指定し、この溶液の第2の部分(ポリマー2gを含んだ溶液10g)をビス-ジアジリンエーテル(0.24g、12pphr)と混合して実施例15Bと指定した。両溶液はいずれも1μPTFEフィルタを通じて濾過した。これらの溶液をガラス基板に塗布した後、80~90℃のホットプレートで10分間ベークしてビス-ジアジリンエーテルが熱分解されないようにベーク温度を十分に低く維持しながらデカン溶媒を取り除いた。約100~200μmの厚さに形成されたフィルムを365nm波長のi線放射線で線量1000mJ/cmに露出した。露出したフィルムは、120℃で5分間露出後、ベークステップを経た。ビス-ジアジリンエーテルを含まない実施例15Aの組成物から形成されたフィルムは、THFに容易に溶解され、光露出ステップで架橋が起こらなかったことを示す。一方で、実施例15Bの組成物から形成されたフィルムは、THFに溶解されなかった。これは、架橋ネットワークを形成するビス-ジアジリンエーテルの存在により、実施例15Bのフィルムが光硬化されたことを明らかに示している。この2つのフィルムの特性を表4にまとめる。
【0104】
【表4】
【0105】
実施例16~21
Pd-785(MCHで1重量%)およびDANFABA(EAHで5重量%)のストック溶液を、密封されたバイアル内で調製した。その後、本明細書に記載されているように、異なるモノマーを含む様々な組成物をPd-785およびDANFABAとともに以下のように製造した。実施例16は、HexNB/ButenylNB(モル比80/20)、実施例17は、HexNB/ButenylNB(モル比70/30)、実施例18は、BuNB/ButenylNB(モル比80/20)、実施例19は、BuNB/ButenylNB(モル比70/30)を含んでいる。実施例20は、熱的フリーラジカル発生剤としてBuNB/ButenylNB(モル比70/30)およびDCP(2pphr)を含み、実施例21は、熱的フリーラジカル発生剤としてBuNB/ButenylNB(モル比70/30)、DCP(2pphr)およびシリカナノ粒子(75pphr、SC2300-SVJ)を含んでいる。モノマー/Pd-785/DANFABAのモル比が約10,000/1/5に維持されるように、これらの組成物のそれぞれに十分な量のMCH中のPd-785およびEA中のDANFABAを添加した。実施例20および21の組成物をガラス基板上に注ぎ、ドクターブレードを使用して約10cm×6cmの長方形の形状を生成した後、120℃で3時間硬化して(硬化条件1)、約100~300μmの厚さの長方形のフィルムを形成した。このフィルムの一部を約160℃で2時間さらに加熱した(硬化条件2)。長方形のフィルムをさらに小さな長方形に切断して10GHz周波数におけるTMA、誘電率(Dk)および誘電損失係数(Df)を測定した。表5には、実施例16~21の組成および硬化条件がまとめられている。ガラス転移温度(Tg)、フィルムの5重量%損失が発生する温度(Td5)で測定した熱分解温度、熱膨脹係数(CTE)、10GHz周波数におけるフィルムのDkおよびDfを表6にまとめる。
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
実施例22~25
重量平均分子量(Mw)が約190,000であるpoly-HexNBのサンプル(15g)をデカン(60g)に溶解して20重量%溶液を調製した。このストック溶液中の5gの部分に1gのpoly-HexNBを入れて以下のように様々な組成物を調製した。実施例22は、ビス-ジアジリンエーテルを10ppr含み、実施例23は、GEN-IBondLynxを10ppr含んでいる。実施例24は、20pprのGEN-IBondLynxと追加の15gのデカンを含み、実施例25は、15pprのGEN-IBondLynxを含んでいる。すべての組成物は、1μmのPTFEフィルタを通じて濾過された。ガラス基板上にドクターブレードを使用して150~200μmの厚さのフィルムを形成した後、80℃のホットプレートで5分間のベークステップを経て溶媒を取り除いた。実施例22~24で生成されたフィルムを半分に切る。各フィルムの半分は、光硬化に影響を与えるために線量1500mJ/cmのi線(365nmの波長)に露出し、残り半分は、熱硬化に影響を与えるために130℃の窒素雰囲気下で30分間オーブンで加熱された。硬化されたフィルムの小さな切片をデカンに約1時間浸漬してフィルムの溶解度をテストした。光硬化または熱硬化を経たすべてのフィルムはデカンに溶解されなかったが、ビス-ジアジリン架橋剤を含んでいないフィルムは、光硬化ステップでも熱硬化ステップでも、容易に溶解された。誘電率(Dk)および誘電損失係数(Df)を測定し、表7に記載した。実施例25のフィルムを190℃で真空状態で1.5時間さらに硬化して、約140μmおよび160μmの厚さを有する硬化されたフィルムを得た。これらのフィルムのDkおよびDfを10GHz、35GHzおよび80GHzで測定し、表8に記載した。
【0109】
【表7】
【0110】
【表8】
【0111】
表8に示したデータから分かるように、Dfは、より高い周波数でもあまり変化せず、これは、様々な用途に有利な利点をもたらす。すなわち、50GHz以上の高周波で作動するデバイスの場合、最適な性能のために信号損失が最小化されなければならず、これは本発明の組成物から形成されたフィルムにより提供される。
【0112】
実施例26~27
実施例23および24の組成物を4インチのSiO2のウェハに500rpmで40秒間スピンコーティングし、80℃で2分間塗布した後、ベーク(PAB)を実施した。実施例23で得たフィルムをマスクを介して1000mJ/cmのi線放射線(365nm)に露出して、線、ピラー、トレンチおよびコンタクトホール(CH)を生成した。実施例24で得たフィルムをマスクを介して791mJ/cmのi線放射線に露出して、線、ピラー、トレンチおよびコンタクトホール(CH)を生成した。露出したフィルムをデカンで現像して、線、ピラー、トレンチおよびコンタクトホール(CH)のイメージを現わした。表9に当該組成物の光イメージ特性をまとめた。
【0113】
【表9】
【0114】
本発明を上記実施例により説明したが、本発明は実施例に限定されず、本明細書で開示される一般的な領域を包含している。本発明の趣旨から逸脱しない限り、各種の様々な改良および実施形態をなすことができる。

図1
【国際調査報告】