(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】生理学的センサを有する心房間シャント
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240116BHJP
A61F 2/86 20130101ALI20240116BHJP
A61B 5/0215 20060101ALI20240116BHJP
A61B 5/026 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61F2/86
A61B5/0215 F
A61B5/026
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528430
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 IB2021060473
(87)【国際公開番号】W WO2022101832
(87)【国際公開日】2022-05-19
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518369682
【氏名又は名称】ブイ-ウェーブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アイグラー, ニール
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンフェルド, エレズ
(72)【発明者】
【氏名】ネイ, ニール
(72)【発明者】
【氏名】ブフドルカー, ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン, リオル
(72)【発明者】
【氏名】ホワイティング, ジェイムズ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ウォードル, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハーフェルフィンガー, ワーナー
【テーマコード(参考)】
4C017
4C117
4C267
【Fターム(参考)】
4C017AA01
4C017AB04
4C017AC04
4C017BC11
4C017CC08
4C117XB04
4C117XC21
4C117XD24
4C117XE15
4C117XH02
4C267AA45
4C267BB26
4C267BB38
4C267BB62
4C267CC19
(57)【要約】
組み込まれた生理学的センサを有する、心房間シャントが、心不全および肺高血圧症を含む、心血管症候群を監視および治療するために提供され、1つまたはそれを上回るセンサは、シャントに添着され、心房間シャント内の生理学的パラメータを測定する。1つまたはそれを上回るセンサは、シャントの管腔表面に、またはその中に直接添着され得、もしくはシャント管腔に対して離間関係において支持構造上に配置され得、1つまたはそれを上回るセンサは、パンヌス形成または心臓壁運動アーチファクトを殆どもしくは全く受けない場所に配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの心房生理学的パラメータを監視し、患者ディスプレイデバイス上に前記少なくとも1つの心房生理学的パラメータを示す情報を表示することによって、心不全(HF)または肺動脈高血圧症(PAH)を治療するためのシステムであって、前記システムは、
心房間シャントであって、前記心房間シャントは、(i)アンカであって、前記アンカは、第1の漸拡領域と、縮径領域と、第2の漸拡領域とを有し、前記縮径領域は、前記第1の漸拡領域と前記第2の漸拡領域との間に配置される、アンカと、(ii)生体適合性被覆物であって、前記生体適合性被覆物は、前記アンカ上に配置され、前記第1の漸拡領域から前記第2の漸拡領域まで延在する管腔を形成する、生体適合性被覆物とを備える、心房間シャントと、
センサであって、前記センサは、前記少なくとも1つの心房生理学的パラメータを示すデータを発生させるための回路網と、前記データを前記患者ディスプレイデバイスに伝送するための回路網とを備える、センサと、
前記センサを前記心房間シャントに結合するための支持構造であって、前記支持構造は、少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するために、前記管腔に対して前記センサを配置し、その場所において、埋込後組織成長は、300ミクロンを超えない、支持構造と、
前記患者ディスプレイデバイスのプロセッサによって実行されるべきプログラミングを記憶するコンピュータ可読媒体であって、前記プログラミングは、前記センサから前記データを受信し、前記患者ディスプレイデバイス上での閲覧のために前記データを処理するための命令を含む、コンピュータ可読媒体と
を備える、システム。
【請求項2】
前記支持構造は、カラーに結合される少なくとも1つの支持支柱を備え、前記カラーは、前記センサを保定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記センサは、前記心房間シャントの埋込後に前記カラー内に配置されるように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記支持構造は、前記管腔の流路から外に選択的に移動され、血管内ツールが前記管腔を通して挿入されることを可能にするように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記センサの回路網は、前記患者ディスプレイデバイスと通信するように構成される電子機器包装を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記センサは、導線なしセンサであり、前記システムはさらに、外部患者モジュールを備え、前記導線なしセンサは、外部患者モジュールを介して前記患者ディスプレイデバイスと通信する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記センサは、前記回路網に結合される導線を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記支持構造は、前記生体適合性被覆物の1つまたはそれを上回る領域を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記生体適合性被覆物は、2つの層を備え、前記センサは、前記2つの層の間に配置される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記センサによって発生される前記データは、左心房圧、右心房圧、または前記管腔を通した血流の速度を示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記伝送するための回路網は、テレメトリコイルを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
高圧力を緩和するために血液をシャントし、少なくとも1つの心房生理学的パラメータを監視することによって、心不全(HF)または肺動脈高血圧症(PAH)を治療するための心房間シャントであって、前記心房間シャントは、
アンカであって、前記アンカは、第1の漸拡領域と、縮径領域と、第2の漸拡領域とを有し、前記縮径領域は、前記第1の漸拡領域と前記第2の漸拡領域との間に配置される、アンカと、
生体適合性被覆物であって、前記生体適合性被覆物は、前記アンカ上に配置され、前記第1の漸拡領域から前記第2の漸拡領域まで延在する管腔を形成する、生体適合性被覆物と、
センサであって、前記センサは、前記少なくとも1つの心房生理学的パラメータを示すデータを発生させるための回路網と、前記データを伝送するための回路網とを備える、センサと
を備え、
前記センサは、埋込後組織成長が、300ミクロンを超えないように、前記管腔に対して配置される、心房間シャント。
【請求項13】
前記アンカと、前記センサを保定するように構成されるカラーとの間に延在する少なくとも1つの支持支柱を含む支持構造をさらに備える、請求項12に記載の心房間シャント。
【請求項14】
前記センサは、前記カラー内に可撤式に配置されるように構成される、請求項13に記載の心房間シャント。
【請求項15】
前記支持構造は、前記管腔の流路から外に選択的に移動され、血管内ツールが前記管腔を通して挿入されることを可能にするように構成される、請求項13に記載の心房間シャント。
【請求項16】
前記センサの回路網は、外部患者ディスプレイデバイスと通信するように構成される電子機器包装を備える、請求項12に記載の心房間シャント。
【請求項17】
前記センサは、導線なしセンサであり、前記心房間シャントは、外部患者ディスプレイデバイスと通信するように構成され、前記導線なしセンサは、外部患者モジュールを介して前記外部患者ディスプレイデバイスと通信する、請求項16に記載の心房間シャント。
【請求項18】
前記センサは、前記回路網に結合される導線を含む、請求項16に記載の心房間シャント。
【請求項19】
前記センサは、前記生体適合性被覆物内に配置される、請求項12に記載の心房間シャント。
【請求項20】
前記生体適合性被覆物は、2つの層を備え、前記センサは、前記2つの層の間に配置される、請求項19に記載の心房間シャント。
【請求項21】
前記センサによって発生される前記データは、左心房圧、右心房圧、または前記管腔を通した血流の速度を示す、請求項12に記載の心房間シャント。
【請求項22】
前記伝送するための回路網は、テレメトリコイルを備える、請求項12に記載の心房間シャント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その全内容が、参照することによって本明細書に組み込まれる、2020年11月13日に出願された、米国特許出願第17/098,251号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、循環器系内の圧力を調整するためのデバイスおよび方法に関し、特に、生理学的センサを有する心房間シャントを使用して、心臓内の血圧を調整することに関する。
【背景技術】
【0003】
臨床療法的必要性が殆ど満たされていない、数百万人の多数の患者を抱える多数の心血管および心配障害が、残っている。これらの障害は、限定ではないが、心不全(HF)および肺動脈高血圧症(PAH)として公知の症候群を含む。療法における数十年の進歩にもかかわらず、これらの患者の大部分は、障害のある症状、不良な運動耐性、仕事の実施不能、急性悪化に関する再発性入院、および許容できないほど高い死亡率を含む、厳しく限定された生活の質を有する。これは、患者がガイドライン指示医療療法(GDMT)として公知の最も有益な最適治療計画で治療されるときであっても、当てはまったままである。本開示は、埋込可能生理学的センサと組み合わせられる心房間シャントデバイスを用いて、本広範な群の障害を治療するための装置および方法を説明する。
心不全および肺動脈高血圧症
【0004】
心不全(HF)は、心臓が身体の要求を満たすために十分な血液を圧送することができない、またはこれがそのためにより高い内部充填圧を要求する、病態生理学的状態として定義される。HFを伴う殆どの患者は、主として、左心室(LV)不全を患うが、右心室(RV)不全も、同様に存在し、但し、通常、より低い程度であり得る。HFの症候群は、基礎心疾患、最も一般的には、虚血性心疾患、全身性高血圧、糖尿病、特発性心筋症、心臓弁膜症、心筋炎の進行からもたらされ、多数の他のあまり一般的ではない原因が続く。
【0005】
HFは、600万人の米国人および2,600万人を上回る世界中の人々に影響を及ぼしている。米国人口内のHFの有病率は、人生の10年毎に約2倍になる。米国では、現在、年間870,000件の新たに診断された症例および308,000件の死亡が、存在している。入院の主要な原因が、急性非代償性心不全(ADHF)である、年間100万件を上回る入院が、存在している。加えて、約700,000件の救急外来受診および少なくとも6百万件の医院/診療所受診が、存在し、これは、システムに対して社会的、物流的、および経済的負担を加えている。今後数十年では、人口が高齢化するにつれて、HFは、ますます大きな保健医療問題となることが予期されている。HFは、殆どの場合、不治の障害である。
【0006】
従来的に、低減されたLV収縮期性機能(不良に収縮するLV)と関連付けられるが、現在、HFがまた、一般的に、問題が拡張期に充填することが困難である過度に堅性の心室である、正常または軽度にのみ低減された収縮でも生じることが認識されている。LV収縮期性機能は、駆出率(LVEF)によって査定され、これは、収縮期で放出される血液の体積を拡張終期体積で除算したものである。LVEFは、通常、平均して約60%である。HFは、したがって、2つの臨床症候群、すなわち、LVEFが<40%である、低減された駆出率を伴う心不全(HFrEF)と、LVEFがある定義によって、少なくとも40%である、温存された駆出率を伴う心不全(HFpEF)とに分割される。HFpEF患者は、HFrEFを伴う患者よりも高齢であり、より高い頻度で女性、高血圧、および糖尿病である傾向がある。ADHF入院の有病率は、HFpEFとHFrEFとの間でほぼ均等に分かれている。
【0007】
LVEFおよびガイドライン指示医療療法(GDMT)での証拠ベースの治療にかかわらず、殆どの患者は、症状の悪化、ADHF入院、および死亡によって特徴付けられる、進行性の経過を辿る。ADHFで入院する患者は、4%の院内死亡率、10%の90日死亡率、および大規模な登録研究によると、30%の1年死亡率を有する。Shah et al.は、HFで入院した65歳以上の39,982人の患者を分析した。LVEFにかかわらず、5年死亡率は、平均して75%であり、96%以上が、経過観察の間に死亡したか、または再入院したかのいずれかであった。ADHFに関する入院は、高い再入院率および増加する死亡率と関連付けられる。再入院率は、30日で25%であり、6ヵ月までに50%である。再発性HF入院では、増加される死亡率リスクが、存在する。第1、第2、第3、および第4のHF入院後の生存期間の中央値は、それぞれ、2.4、1.4、1.0、および0.6年である。概して、ADHF関連入院を正常に防止する療法が、平均余命を延ばす可能性が高いであろうことを理解されたい。
【0008】
HFrEFに関する外来患者GDMTは、大規模な無作為化臨床治験において罹患率および死亡率を低減させる、投薬カテゴリの最大耐性量を与えることに焦点を当てている。これらの薬物は、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、ネプリライシン阻害薬、ベータ拮抗薬、ミネラルコルチコイド阻害薬、イバブラジン、およびまもなく登場するであろうナトリウムグルコース共輸送体2阻害薬を含む。しかしながら、殆どの場合、利益は、症状の軽い患者(ニューヨーク心臓協会クラスII)に限られている。最良の転帰を達成するために、薬物は、耐性まで頻繁に漸増または漸減されなければならない。これらの薬物は、症状、特に、労作時または安静時の呼吸困難(息切れ)を制御する際にあまり効果的ではない。慢性症状は、経口利尿薬、通常、フロセミド等の効能のあるループ利尿薬を用いて、およびある場合には、長時間作用する硝酸塩の追加で最良に管理される。ADHFは、静脈内ループ利尿薬を用いた流体除去で治療され得る。利尿薬の投与は、経口または非経口にかかわらず、大いに経験的であり、多くの場合、管理することが困難である。その過剰な使用は、脱水、腎臓機能障害、電解質不均衡、および死亡と関連付けられる。
【0009】
埋込可能心臓除細動器/除細動器(ICD)の有無を問わない心臓再同期療法(CRTまたは両室ペーシング)、重度の機能的僧帽弁閉鎖不全および中程度のLV機能障害を伴う患者におけるマイトラクリップデバイスを用いた経皮的僧帽弁修復、および末期疾患を伴う患者に関する心室補助デバイスを含む、いくつかのデバイスは、HFrEFにおける証拠ベースの効用を有する。
【0010】
HFpEFは、異なる。いかなる投薬または上記に言及されるデバイスの無作為化治験も、それらの主要エンドポイントを達成していない。HFpEFに関するGDMTは、高血圧症、心房細動等の基礎的な素因的条件の管理、および利尿薬を用いた症状ならびに急性増悪の治療に限定されている。
【0011】
ADHFと関連付けられる誘発因子は、食事および投薬の不遵守、医療処置を求めようとしないこと、不適切な療法、および急性虚血症候群または高血圧クリーゼ等の基礎的な心血管障害の急性増悪である。これらの因子は、腎臓によるナトリウムおよび水分の留保を引き起こすことによって総体液体積を増加させるか、またはそれらは、体液を内臓から肺静脈容量血管床に再分配するか、もしくはその両方のいずれかである。過剰な体積は、左心房圧(LAP)および左心室拡張終期圧(LVEDP)を含む、左側静水圧を上昇させる。上昇された静水圧は、肺水腫として公知である、肺毛細血管および静脈から肺間質、最終的に、肺胞気腔の中への流体濾出に関する主要な原動力となる。ADHF入院の約90%は、肺鬱血の症状、徴候、または臨床検査値を提示する。ADHFが発症すると、頻呼吸および呼吸困難等の呼吸器症状が、優勢になる。最終的に、本プロセスが、逆転されない場合、重度の肺水腫が、結果として起こり、死亡の増加された可能性が、存在する。
【0012】
正常なLAPは、6~12mmHgに及ぶ。1970年代初頭以降、肺毛細血管楔入圧(PCWP)のスワン-ガンツカテーテル測定値が、LAPの近似値としての役割を果たしている。PCWP上昇が、HFの既往歴を伴わない患者において25mmHgを上回って持続されるとき、肺水腫が、数時間以内に発症する。慢性心不全を伴う患者は、肺の増加されたリンパ液排出に起因して、より高い充填圧(30~35mmHg)を許容し得る。上昇された心臓充填圧を伴うHF患者は、入院および死亡に関するリスクが高い一方、右心房圧、肺動脈圧、全身動脈圧、心臓指数、および全身性血管抵抗等の他の血行動態パラメータは、それほど予測的でない。
【0013】
ここで、PAHに目を向けると、肺動脈高血圧症(PAH)としてより公知である、WHO臨床I群肺高血圧症は、稀ではあるが、重大かつ複雑な臨床障害のセットである。米国における有病率は、10,000人の人口あたり0.4~1.2症例に及び、約13,000~40,000人の患者に影響を及ぼす。診断時の平均年齢は、50~65歳であり、女性患者が優勢である。患者の2分の1は、遺伝性形態のPAHを伴う少数を含む、特発性(IPAH)を有する。残りは、関連付けられる条件(APAH)を有し、基礎的な病因は、最も一般的に、結合組織障害であり、これらの中でも主に、全身性硬化症(強皮症)である。わずかな割合の症例は、薬物誘発性PAH、先天性心疾患(補正および未補正)、門脈圧亢進症、ならびにHIVを含む、他の関連付けられる原因をそれらの病因として有する。PAHは、平均肺動脈圧(mPAP)が≧25mmHgであり、PCWPまたはLAPが≦15mmHgであり、肺血管抵抗(PVR)が通常≧3ウッド単位である、毛細血管前高血圧症によって特徴付けられる。PAHの早期の病理学的基礎は、内側肥大、内膜増殖性線維性変化、血管周囲の炎症浸潤を伴う外膜肥厚を含む、遠位肺動脈(直径<500μm)の病変である。後期の所見は、より複雑な病変(叢状、拡張病変)および血栓性病変である。
【0014】
PAHの症状は、息切れ、疲労、脱力感、胸痛、および気絶を含む、非特異的なものであり、最初に、労作と関連付けられる。進行すると、重度のRV不全および低心拍出量の症状が、優勢になり、多くの場合、安静時に起こる。これは、腹部膨満および下肢の膨張、深い疲労、ならびに活動に対する著しい不耐性を含む。PAHは、患者およびそれらの介護者に対して深い心理社会的および経済的影響を及ぼす。予後不良に関するリスク因子は、RV不全の証拠、症状の急速な進行、再発性気絶、WHO機能クラスの悪化、低減された6分間歩行距離(6MWD)、心肺運動試験に対する低減されたピークVO2またはVE/CO2、上昇されたナトリウム利尿ホルモンレベル、右RV不全の撮像所見(低減されたRV機能、増加されたRAまたはRVサイズ、RV偏心、心膜液貯留)、および上昇された右心房圧(RAP)、低心臓指数(CI)、および低減された混合静脈酸素飽和度(SvO2)を含む、異常な侵襲性血行動態測定値である。これらのパラメータのうちの多くは、死亡の最も一般的な原因である、RV不全の程度を反映する。
【0015】
過去20年で、緩和医療療法は、重要な進歩を遂げているが、PAHは、5年の生存期間の中央値を伴う普遍的に致命的な障害のままである。心房間シャントの使用を考慮するときに潜在的に重要である、1つの例外が、存在する。未補正の先天性心疾患を伴う少数の患者は、多くの場合、心房中隔欠損症(ASD)、心室中隔欠損症(VSD)、または動脈管開存症、および同等物に起因して、あらかじめ左から右へのシャントを有する。PAHが進行するにつれて、これらのシャントは、方向を逆転させ、主として、右から左になる。これは、アイゼンメンガーの生理学として公知であり、動脈酸素脱飽和に起因する四肢のチアノーゼが、頻繁な臨床所見になる。補足的として、PAHを伴うアイゼンメンガーの患者は、他の原因からのIPAHまたはAPAHを伴う患者に優る生存利点を有すると考えられる。
【0016】
現在、プロスタノイド、プロスタグランジン受容体アゴニスト、エンドセリン受容体アンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ5型阻害薬、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬、およびカルシウムチャネル拮抗薬を含む、複数の承認された薬物クラスが、存在する。薬物療法は、有意な症状の改善および臨床的悪化のより緩慢な率をもたらす。逐次経口薬物併用療法は、臨床実践において最も広く使用される方略である。すでにGDMTを受けている患者により新しい薬品を追加する無作為化治験は、罹患率および死亡率の組み合わせられたエンドポイントにおける改善を示している。症状が、もはや経口薬で制御できなくなると、患者は、非経口プロスタノイドの投与を受け、最終的に、留置カテーテルおよび注入ポンプを要求する。持続的静脈内エポプロステノールは、生存率を高めることが示されている唯一の薬物である。しかしながら、非経口プロスタノイドは、多くの場合、嘔吐、頭痛、低血圧、顔面紅潮、顎および脚の痛み、ならびに下痢等の頻繁かつ障害を引き起こす有害効果と関連付けられる。静脈内送達システムに関連する重大な有害事象は、ポンプ誤動作、局所部位感染、カテーテル閉塞、および敗血症を含む。療法の突然の中断は、リバウンドによる肺高血圧症の悪化、急性RV代償不全、および死亡を促進している。患者は、非経口療法を拒否する、またはこれは、約30%の症例において中止されなければならない。肺移植は、PAH患者にとって不可欠な治療選択肢であるが、ドナー肺の不足および他の肺障害に関するものよりも低い生存率に起因して、200人未満の米国のPAH患者しか、毎年移植されていない。
【0017】
HFおよびPAH以外にも、限定ではないが、左または右心室機能障害と関連付けられる、僧帽弁狭窄を引き起こす僧帽弁輪石灰化、急性心筋梗塞に起因する心原性ショックの有無を問わない難治性肺水腫、急性心筋炎、慢性血栓塞栓性肺高血圧症、体外式膜型人工肺(ECMO)療法からの離脱等を含む、当業者に熟知される他の心血管または心肺障害が、存在することを理解されたい。HFおよびPAHのように、埋込可能センサの使用、心房間シャントデバイスの使用、または両方を含む、具体的に指示される療法の標的であり得る、心臓充填圧の結果として生じる上昇が、存在する。また、僧帽弁修復、左心房付属器官閉塞、心房細動の肺静脈アブレーション、および同等物を含む、経中隔カテーテル留置を伴う、心血管または心肺障害を伴う患者に対して実施される他の介入も、存在し、介入の完了時に、患者はまた、埋込可能センサまたは心房間シャント、もしくは組み合わせにおける両方の経中隔設置から利益を享受し得る。
HFおよびPAHにおける埋込可能圧力センサを用いた実験
【0018】
埋込可能圧力センサは、絶対圧力を測定するための回路網を含み、これは、ゲージ圧力を計算するために外部基準圧力と比較される。代替として、2つの心室または血管の間の差圧を測定する設計も、説明されている。2つの主なタイプの圧力センサ、すなわち、ピエゾ抵抗型および静電容量型が、埋込可能心血管用途のために使用されている。ピエゾ抵抗歪みゲージは、面積(圧力)にわたって印加される歪みまたは偏向(力)を測定するために、ダイヤフラム等の集力器に接合され得る。歪みゲージトランスデューサが、通常、出力を最大限にするために、ホイートストンブリッジ回路を形成するように接続される。静電容量センサは、可変コンデンサを作成するために、ダイヤフラムおよび圧力キャビティを使用する。両方のセンサタイプは、現在、微小電気機械(MEM)技術を用いて加工されており、約1.0×1.0×0.1mmの非常に小さい包装をもたらす。ピエゾ抵抗デバイスは、より高い電力消費に起因して、持続的測定よりも周期的測定により適している。
【0019】
いくつかの用途では、静電容量センサは、圧力変化に対するより高い感度、より低い雑音、およびより低い温度感度に起因して、より良好な選択肢である。正確で耐久性があり、実践的な埋込可能センサ性能を達成するための主な課題は、腐食性体液の進入および繊細な電子コンポーネントに対するそれらの周知の効果に耐える密閉生体適合性包装、感知要素に対する残留内部応力を最小限にする包装、堅牢なオフセットドリフト補償、十分な範囲および帯域幅を伴う遠隔給電/テレメトリのための導線なし設計を可能にするための十分に低い電力要件、除細動保護、および磁気共鳴走査との適合性を有することである。ある化学種の圧力、流動、速度、温度、pH、または濃度を測定する他のセンサ技術が、それらが有利に機能を果たすことが可能であることが示されるとき、埋込される心血管環境に同様に適用され得ることが、当業者によって理解される。
【0020】
心内圧または肺動脈圧を測定する埋込可能センサは、臨床医に差し迫った代償不全を知らせ、投薬調節を誘導するために成功裏に使用される。本アプローチは、標準的なGDMTと比較して、HFrEFまたはHFpEFにかかわらず、HF患者の広範な母集団において症状を改善し、ADHFエピソードを防止するための利益を示す。より最近では、センサはまた、重度のPAHを伴う患者の管理において使用されている。
【0021】
埋込可能血行動態監視システムが、臨床代償不全のエピソードを低減させることを目標として、外来患者HF評価および管理のために開発されている。実施例として、左心房において経中隔カテーテル留置手技によって設置される治験中の埋込可能圧力センサは、Savacor-St Jude Medical、現在のAbbott Laboratories(Abbott Park IL)によって、およびVectorius Medical Technologies(Tel Aviv, Israel)によって開発されたデバイスを含んでいる。別の実施例として、LAPに関する代用物/推定値である肺動脈圧(PAP)を測定する、肺動脈内に設置されるデバイスは、CardioMEMs、現在のAbbott Laboratories(Abbott Park IL)およびEndotronix, Inc.(Lisle, IL)による製品を含む。当業者に熟知される複数の製造業者からの埋込可能圧力センサの他の実施例もまた、存在する。
【0022】
実施例として、Savacor HeartPODTMシステムは、皮下に位置付けられるアンテナコイルに、または特別に設計されたCRT/ICDシステムに接続される、埋込可能センサ導線を含み、アンテナコイルは、Ritzema J, et al.「Direct left atrial pressure monitoring in ambulatory heart failure patients: Initial experience with a new permanent implantable device」 Circulation 2007;116;2952-2959およびMaurer MS, et al.「Rationale and design of the left atrial pressure monitoring to optimize heart failure therapy study (LAPTOP-HF)」 J Cardiac Failure 2015;21:479-488に説明されるように、発電機ヘッダに内蔵される。付加的コンポーネントは、インプラントとの通信のための、および臨床医によって使用されるセキュアなウェブベースのソフトウェアに患者データをアップロードし、それから処方をダウンロードするためのハンドヘルド患者助言モジュール(PAM)を含む。センサ導線は、内部ピエゾ抵抗歪みゲージと、LAP、温度、および心内電位図を測定ならびに通信するための特定用途向け回路網とを含有する、その遠位端にチタン圧力感知ダイヤフラムを伴う、直径3mm×長さ7mmの円筒形の密閉してシールされたセンサモジュールを有していた。折畳ニチノールアンカが、心房間中隔においてセンサモジュールを添着し、いずれの中隔厚にも対応した。アンカは、Pretorious V, et al.「An implantable left atrial pressure sensor lead designed for percutaneous extraction using standard techniques」 Pacing Clin Electrophysiol 2013 May;36(5):570-7に説明されるように、展開に関して制約されるとき、前方に折畳され、要求される場合、標準的ペーシング導線除去技法を使用して、センサ導線の後期経皮的抽出を促進するように設計された。
【0023】
埋込されたLAPセンサは、PAMからの125kHzの無線周波数無線テレメトリによって、皮膚を通して給電および反応測定される。皮下のアンテナコイルにわたる正しい場所に保持されるとき、PAMは、瞬間的に振動し、情報入手が行われていたことを患者に示し、入手が完了されたとき、再び振動する(通常、15秒)。反応測定の間、高忠実度生理学的圧力および心電図波形が、収集され、PAM上に記憶される。LAPは、PAM内に位置する第2の圧力センサによって測定された大気基準から、インプラントによって取得された絶対圧力を減算することによって計算される。
【0024】
患者センサ読取値は、毎日インターネットを介して集中管理されたセキュアなデータベースにアップロードされる。波形および傾向データは、周期的に、またはパラメータが境界を超えたときに発生されるアラートに基づいてのいずれかで、患者のHF医師によって評価された。医師は、次いで、患者閲覧のために、更新された処方および命令をPAMにダウンロードする。PAMのリマインダ機能は、患者が自身の心不全投薬を行う前に、スケジューリングされた朝および晩の時間窓内に安静時LAPを測定するように患者にアラートした。
【0025】
PAMは、LAP値を表示し、投薬量を含め、投薬の予定であるときを患者に知らせるように設定され得る。これは、2つの方法で行われる。第1に、処方が、全体的LAP傾向に従って調節される。本タイプの服用は、「Static Rx」と呼ばれた。さらに有効化される場合、PAMは、治療が現在のLAP値によって調節されることを可能にする、「DynamicRxTM」と呼ばれる、医師指示患者自己管理命令を表示する。DynamicRxは、5つのLAP範囲(非常に低い、低い、最適、高い、および非常に高い)に基づいていた。各範囲は、薬剤服用、活動レベル、ナトリウムおよび流体摂取量、ならびに医師連絡命令に関する処方と関連付けられる。現地の調査者は、患者毎にこれらの範囲を調節する。DynamicRx処方は、現地の調査者の自由裁量であるが、一般的な目標は、低いまたは非常に低いLAPに関して利尿薬の用量を低減もしくは排除し、高いまたは非常に高いLAPに関して利尿薬もしくは長時間作用する硝酸塩血管拡張剤用量を増加させることである。
【0026】
センサドリフト補償は、温度および大気圧の変化に関する内部自動調節を含んでいた。センサオフセットのより長期の変化は、内部ゲージおよび電子機器における固有のドリフト、またはセンサ膜にわたる新生心内膜組織成長からの外来的変化に起因し得る。McClean et al.による「Noninvasive calibration of cardiac pressure transducers in patients with heart failure: An aid to implantable hemodynamic monitoring and therapeutic guidance」 J Card Fail 2006;12:568-576に説明されるように、埋込されたセンサの正確度は、バルサルバ法の間に心内圧および気道圧を同時に測定することによって査定され得る。20mmHgを上回って胸腔内圧を増加させてから2~3秒以内に、拡張期の間の心内圧は、気道圧と等しくなる。実践では、埋込されたLAPセンサは、PAMの大気基準圧力センサに接続されたマウスピースの中に吐出しながら、患者にバルサルバ法を実施させることによって、診療所受診の間に周期的にチェックされる。これは、原因にかかわらず、オフセットドリフトの定量化および補正をもたらす。加えて、LAP波形内の具体的特徴が、診療所受診の合間のオフセットドリフトを検出し、それを自動的に補償するために使用され得ることが発見された。
【0027】
Ritzema et al.は、「Physician-directed patient self-management of left atrial pressure in advanced chronic heart failure」 Circulation 2010;121:1086-1095において、HFrEFまたはHFpEFおよび事前のADHF入院を伴うNYHAクラスIIIもしくはIV HFの既往歴を伴う40人の連続する患者において、Savacor HeartPODTMシステムを使用して、前向き観察型ファーストインヒューマン研究を報告した。患者は、センサを埋込され、読取値が、1日に2回入手された。最初の3ヵ月にわたって、患者および臨床医は、センサ読取値に対して盲検化され、治療は、通常の臨床査定に従って継続された。その後、医師指示患者自己管理処方(DynamicRx)が、適用された。HF事象(ADHF入院または全ての原因の死亡)からの解放は、3年で61%であり、最初の3ヵ月後に有意に頻度が減少した。LAPは、最初の3ヵ月における平均17.6mmHgから圧力誘導療法の間の14.8mmHg(P=0.003)に低下した。上昇された読取値(>25mmHg)の頻度は、67%(P<0.001)低減された。LAP制御は、25mmHgを上回る圧力の頻度が、6ヵ月連続して10%を下回っていた場合、経験的に定義された。LAP制御は、患者の77%において達成された。HF事象は、LAP制御を伴わない周期の間よりも、LAP制御の周期の間に98%頻度が減少した(P<0.001)。症状およびLVEFにおける有意な改善もまた、存在した。レニンアンジオテンシン系阻害薬およびベータ拮抗薬の用量は、それぞれ、37%(P<0.001)および40%(P<0.001)漸増された一方、ループ利尿薬の用量は、27%低下した(P=0.15)。著者らは、LAP上昇が、常に、臨床代償不全に先行することを明解に示した。また、自己管理療法方略に結び付けられる埋込可能LAP監視は、より最適な療法および改善された転帰を促進することによって、進行した心不全の管理を変化させ得る。
【0028】
HeartPOD LAPセンサの元の設計は、中隔の左心房側上に静置されるその3つの係留脚部を越えて約1mm左心房の中に突出する、感知ダイヤフラムを有していた。後の改良されたバージョンでは、アンカ脚部は、感知ダイヤフラムが約2.5mmLAの中に突出するように、センサモジュール本体上のより近位に設置された。比較種間病理学研究では、Trainorおよび同僚は、「Comparative pathology of an implantable left atrial pressure sensor」 ASAIO journal 2013; 59:486-492および「Integrated microscopy techniques for comprehensive pathology evaluation of an implantable left atrial pressure sensor」 J Histotechnology 2013;36:17-24において、ヒツジ、イヌ、およびヒトの3種の比較病理学研究において、有意な新生心内膜組織(パンヌス)形成が、改良された幾何学形状センサを伴う40個の試料のうち3個のみと比較して、31個の元のセンサのうち20個において、感知ダイヤフラムにわたって観察されたことを実証した。組織被覆を伴う20個の元のセンサのうち、7個が、LA圧力波形において実証可能アーチファクトを有していた。アーチファクトを伴う各症例では、感知ダイヤフラムにわたるパンヌス形成は、厚さ>0.3mmを有していた。これらのデータは、組織被覆が本厚さを超えるとき、組織が流体圧力測定に干渉することを示す。改良されたセンサのいずれも、波形アーチファクトまたは組織厚>0.3mmを有していなかった。改良されたセンサ幾何学形状が、厚い新生心内膜組織の過剰成長を防止することによって、波形アーチファクトを排除し、長いアーチファクトのないセンサ波形忠実度を助長したと結論付けられ得る。
【0029】
Troughton et al.は、「Direct left atrial pressure monitoring in severe heart failure: long-term sensor performance」 J Cardiovasc Trans Res 2011;4:3-13において、センサの元の設計を用いて、波形アーチファクトが、4ヵ月までに症例の約15%において見られ、その後見られなかったことを示した。これは、波形アーチファクトが、デバイス治癒の結果であり、相互接続する組織過剰成長による心房壁への機械的結合からのダイヤフラムの圧縮または引動によって引き起こされた可能性が高いことを示す。いったん改良された幾何学形状のセンサが使用されると、波形アーチファクトは、次の41人の連続する患者において排除された。したがって、圧力感知ダイヤフラムを中隔壁から左心房の中に2.5mm前進させる設計変更は、センサにわたる組織厚を最小限にし、これを心房壁の収縮および延伸移動から結合解除する。
【0030】
Maurer et al.「Rationale and design of the Left Atrial Pressure Monitoring to Optimize Heart Failure Therapy Study (LAPTOP-HF)」 J Card Fail 2015;21:479-88に報告されるように、無作為化対照転帰研究が、行われ、LAPTOP-HF治験は、過去12ヵ月の間にHFに関して入院したか、または駆出率にかかわらず、上昇されたB型ナトリウム利尿ペプチドレベルを有していたかのいずれかのNYHA機能クラスIII患者において、HeartPODシステムの安全性および効能を検査した。治療患者は、LAPを1日に2回測定し、療法を誘導するために医師指示患者自己管理を使用した一方、対照群は、最適な医療療法のみを受けた。LAPTOP-HF治験における登録は、知覚された過剰な経中隔関連合併症に起因して、早期に中止された。治験は、新しいカテーテル留置技法の普及した使用が、大幅に改善された経中隔安全性を有する前の時期に行われた。予備的結果が、Abraham WT, et al.「Hemodynamic monitoring in advanced heart failure: Results from the LAPTOP-HF trial」 J Card Fail 2016;22:940に報告されるように、2016年の米国心不全学会の会議においてLate Breaking Clinical Trials Sessionの間に提示された。結果が、再発性心不全入院のCHAMPION治験エンドポイント(下記参照)を使用して分析されたとき、LAPTOP-HF治験の結果は、CHAMPIONのものに類似し、41%の相対的リスク低減(p=0.005)を示した。
【0031】
心臓内感知の別の実施例は、Vectorious Medical Technologies (Tel Aviv, Israel)によって開発された、V-LAPと呼ばれる次世代埋込可能LAP監視システムである。そのセンサは、無線かつ導線なしであり、円筒形の外形(長さにおいて14mmおよび直径において2.5mm)を有する。PCT国際特許公開第WO 2014/170771号およびPerl et al.によるJ Cardiovascular Translational Research 2019,12:290-298における「A Novel Wireless Left Atrial Pressure Monitoring System for Patients with Heart Failure, First Ex-Vivo and Animal Experience」に説明されるように、センサは、センサモジュールの左心房極端に配置されるMEMS可変コンデンサ感知表面と、オンボードの自動的ドリフト補償を特徴とする特定用途向け集積回路技術とを採用する。センサ長の大部分は、小さいフェライトコアの周囲に巻着される、インダクタアンテナコイルを備える。センサは、卵円窩の18mm直径領域を占有するアンプラッツァーASD閉鎖デバイスのような2つの織成超弾性ニチノールディスクを用いて卵円窩に係留される。システムはまた、インプラントに遠隔で給電し、患者に圧力読取値を表示し、ウェブベースのデータベースにLAP波形情報を伝送する、外部ウェアラブルベルトを含む。動物研究では、デバイスは、安全であり、最大30cmの深さにおいて外部ベルトと通信することが示された。デバイスは、現在は、早期ヒト臨床治験中であり、短期の経過観察を伴って埋込された最初の21人の患者において良好に機能していると考えられる。
【0032】
心内圧センサのまた別の実施例は、CardioMEMS ChampionTM HF監視システムであり、これは、右心カテーテル留置手技の間に肺動脈の枝内に埋込されるように設計される、無線圧力センサを使用して、PAPを測定する。センサは、長さにおいて15mm、幅において3.4mm、および厚さにおいて2mmであり、医療等級シリコーンを用いてカプセル化される密閉してシールされた溶融シリカ本体内に配置される。筐体は、インダクタコイルと、圧力が変化すると、共振周波数が変化するように、高Q LC共振回路を備える、圧力感受性MEMS可変コンデンサとを含有する。外部電子機器ユニットが、RFパルスをセンサに伝送し、そこで、エネルギーは、励起が停止した後に再放射され、圧力情報は、センサ伝送信号の周波数においてエンコードされる。圧力読取値は、データベースにアップロードされ、そこで、医師は、収縮期、拡張期、および平均圧力、ならびに心拍数の傾向プロットを含む、患者のPAP波形を閲覧する。患者は、次いで、連絡され、療法を調節する方法の命令を与えられる。
【0033】
Abraham et al.は、「Wireless pulmonary artery haemodynamic monitoring in chronic heart failure: a randomized controlled trial」 The Lancet DOI:10.1016/S0140-6736(11)60101-3、「Sustained efficacy of pulmonary artery pressure to guide adjustment of chronic heart failure therapy: complete follow-up results from the CHAMPION randomized trial」 Lancet 2016;387:453-461. doi.org/10.1016/S0140-6736(15)00723-0 、および「Wireless pulmonary artery pressure monitoring guides management to reduce decompensation in heart failure with preserved ejection fraction」 Circ Heart Fail 2014;7:935-944において、CardioMEMSシステムのCHAMPION治験の結果に関して幅広く報告した。これは、収縮期機能にかかわらず(患者の22%がLVEF≧40%を有していた)、事前の12ヵ月の間にHF入院歴を伴う550人のNYHAクラスIII患者の患者盲検化無作為化対照治験であり、患者は、GDMTを受けた。治療群では、PAP傾向が、投薬を調節するために使用され、これは、殆どの事例では、ループ利尿薬および長時間作用する硝酸塩であった。経過観察(平均17.6ヵ月)の間、治療群は、対照群と比較して、HF入院における39%の低減を有していた(p<0.0001)。HFpEF患者におけるHF入院は、治療群患者対対照群において50%より低かった(P<0.0001)。HFrEFを伴う患者における効果は、あまり顕著ではなかったが、依然として、非常に統計的に有意であった。肺動脈圧情報に応答して、利尿薬および静脈拡張薬療法のさらなる変更が、EFにかかわらず、治療群において行われた。これらのデータは、利尿薬(塩分および水分の排除)または長時間作用する硝酸塩(静脈拡張)によるものにかかわらず、上昇された左側圧力に応答して与えられる、体積管理が、HFrEFおよびHFpEFの両方におけるADHFのエピソードを低減させることを確立する。
【0034】
Benza et al.は、「Monitoring pulmonary arterial hypertension using an implantable hemodynamic sensor」 Chest 2019; 156(6):1176-1186において、NYHA III(85%)またはIV(15%)を伴い、RV不全を伴う27人の患者におけるCardioMEMSデバイスの安全性および有用性に関して報告した。全ての患者は、非経口プロスタサイクリンでの69%を含む、少なくとも2つの薬物を使用した。患者は、2.5±1.4年にわたって経過観察された。26人の患者は、主な合併症を伴わずに正常にセンサを埋込された。殆どの患者(92%)は、女性であり、年齢が51±18歳であり、50%がIPAHを伴い、31%が関連付けられる結合組織疾患であるAPAHを伴っていた。RV不全に関する8件の入院が、存在し、これらのうちの6件は、2人の患者においてであった。5件の死亡が、存在し、3件は、1年目にあり、1件の死亡は、埋込の間のPA破裂に起因し、2件は、2年目であった。1年における平均PAPにおける有意な低減(42±13から34±14)およびCOにおける上昇(5.8±1.5から6.8±1.8)が、存在した。RV1回拍出量、血管コンプライアンス、およびRV効率における改善、ならびにRV1回心仕事および総肺抵抗における低減もまた、観察された。NYHA機能クラス(P<0.001)、ナトリウム利尿ペプチド(P<0.01)、およびミネソタ心不全QOL質問票スコア(P<0.001)また、ベースラインから改善し、血行動態変化を反映した。著者らは、PAH患者における埋込可能監視が安全であると考えられ、入院を低減させ得、血行動態および機能的転帰の迅速な最適化を可能にすると結論付けた。
【0035】
PAPと比較して、LAP波形は、LA、LVの充填、コンプライアンス、および機能、ならびにADHFにおける機能的僧帽弁閉鎖不全の役割についてのより具体的な情報を含有する。実施例として、収縮期、平均、または拡張期圧にかかわらず、平均LAP対PAPにおける上昇の意味および特異性を考慮する。両方とも、血管内容積過負荷、LV不全、またはLA流出閉塞に起因して上昇するであろう。加えて、PA圧力はまた、毛細血管前(PAH)または毛細血管後(二次)肺高血圧症において上昇される。二次肺高血圧症は、左側HFと関連付けられる一般的な条件である。最初に、改善するHFに応答するであろう肺動脈収縮を引き起こす、反応性変化が、存在する。その後、HFからの肺静脈圧における長い上昇に応答して、肺動脈脈管は、PAHと同じである固定病変を発症する。本設定では、通常、LAPに非常に類似する、PA拡張期圧は、LAPよりも実質的に高く上昇されるであろう。PAPが、HFに関する利尿療法を誘導するために使用されており、実質的な二次PAHが、存在する場合、PA拡張期圧は、LAPを実質的に過大に見積もるため、入院を必要とする脱水、腎機能の悪化、電解質不均衡を伴う非常に低いLAPをもたらす過利尿が、より頻繁になるであろう。例えば、CHAMPION治験では、PAP誘導療法群における入院をもたらす脱水の発生率は、標準的な臨床ベースの利尿薬服用を使用する対照群におけるものの2倍であった。
【0036】
波形の成分(aおよびv波、xおよびy下落等)の構成を伴う、心臓血行動態生理学を熟知する人に公知のLAP波形におけるいくつかの他の診断特徴が、存在する。また、外来患者における個々の圧力測定は、それ自体では、患者が所与の療法に応答するであろう程度、または患者が所与の療法に応答するであろうかどうかを予測するために十分ではない。多くの患者は、急性心筋虚血からの急速な生理学的変化または重度の機能的僧帽弁閉鎖不全からもたらされる後負荷変化を受けて、非常に可変の圧力を有する。それらのLAP規定外変動は、不安定であり、正常値から、80~100mmHgと同程度に高い巨大なv波を伴って、50mmHgと同程度に高い平均圧力に及び得る。これらの変化は、数時間のみにわたって、ある場合には、数分のみにわたって起こり得る。そうであっても、これらの急速な変動は、ADHF入院または死亡等の重大な有害HF事象を殆どもたらさない。実際には、検出されるとき、これらの変化は、非常に診断的であり得、個々の患者管理を支援することができる。また、単一観察血行動態は、「スナップショット」にすぎず、全体的な生理学的像ではないと理解されるべきである。経時的な圧力傾向は、臨床転帰を予測するためにより有用である。
【0037】
成功させるために、埋込可能血行動態監視は、約1週間毎の頻繁な介護者データ精査および自動化アラートへの応答、データへの効果的な処方変更の開発、患者への処方変更の伝送、それらの処方に対する入念な患者順守、および患者が変更に対する応答または非応答を表明するための時間を利用し得る。また、充填圧が悪化しているときを認識し、多くの場合、試行錯誤を通して、患者が応答するであろう薬剤および投薬量を判定するために、時間がかかる。標準的な医療療法よりも良好であるが、圧力誘導療法は、類似する生来の遅延および複数の失敗する点を有する。医師指示患者自己管理は、これらの限定のうちの多くを克服する。これらの短所にもかかわらず、埋込可能血行動態監視が、HF患者の処置に革命をもたらし、これまでのところ、無作為化対照臨床治験においてHFpEF患者のための有意な転帰利益を実証するための唯一の介入であるという臨床的証拠が、蓄積されている。圧力誘導療法が、PAHの管理において役割を有し得るという証拠もまた、初めて存在する。
【0038】
最後に、埋込可能センサに関して、これまで説明されたタイプは、圧力を直接測定するデバイスに限定されている。これは、それらが最も研究されており、慢性的なインプラントとしての耐久性が証明されているためにすぎない。加えて、本発明者らの生理学の理解は、医師が、それらが心臓カテーテル留置の経験から長年にわたって確立されてきたため、圧力値から意味を収集することを可能にする。要するに、圧力データは、実用的であり、それらは、療法的意思決定を誘導することが成功裏に証明されている。
【0039】
標準的および血行動態誘導療法の限定は、それぞれ、HFおよびPAHにける左および右心房圧を自動的に調整するための手段の明確な必要性を確立する。そのような手段は、遅延を伴わずに効果的であり、患者の過剰治療または他の心臓、血管、もしくは末端器官機能障害を引き起こすことを防止し、他の療法と適合し、または相補的であり、介護者による「実地」管理を要求しないべきであり、医学的に画期的なものとして認識されるであろう。
HFおよびPAHにおける心房間シャントを用いた実験
【0040】
心房間シャントの潜在的利益の文脈に関して、二次孔型ASDとして公知である、心房間中隔の中間部分を伴う自然に生じる先天性心房中隔欠損症(ASD)を有することの含意を理解することが、重要である。ASDは、最も一般的なタイプの先天性心臓欠損のうちの1つである。十分に大きいとき、ASDは、小児期または早期の成人期の間に、右心の容積過負荷を伴う左から右への心房シャントに起因して、両心房およびRVの肥大を提示する。肺動脈対大動脈内の流動(Qp:Qs)は、多くの場合、>2:1である。これらの欠損は、RV不全および死亡を引き起こすPAHの発症を防止するために、閉鎖されなければならない。
【0041】
しかしながら、往々にして、ASDは、十分に許容され、多くの場合、心エコー図上の偶発的所見として、成人期にのみ存在する。直径において<10mmである、またはQp:Qsが<1.5である、小さいASDを伴う患者は、概して、容積過負荷、肺高血圧症、および後続RV不全を発症しない。ガイドライン推奨は、例えば、Webb G and Gatzoulis MA「Atrial septal Defects in the Adult: Recent progress and overview」 Circulation 2006;114:1645:1653およびBaumgartner H, et al.「ESC guidelines for the management of grown-up congenital heart disease (new version 2010)」 Eur Heart J 2010;31:2915-2957に議論されるように、進行性のRV拡張または静脈系に由来する全身性血栓塞栓症(奇異性塞栓症)の証拠が存在しない限り、これらの欠損を閉鎖しないことになっている。これらの患者が、心エコーによって数年毎に経過観察されることが推奨される。それにもかかわらず、右心容積過負荷を発症するそれらのリスクは、非常に小さい。
【0042】
Wiedemann HR「Earliest description by Johann Friedrich Meckel, Senior (1750) of what is known today as Lutembacher syndrome (1916)」 Am J Med Genet. 1994 Oct 15. 53(1):59-64およびAminde LN, et al.「Current diagnostic and treatment strategies for Lutembacher syndrome: the pivotal role of echocardiography」 Cardiovasc Diagn Ther 2015;5:122-132に議論されるように、リュタンバッシェ症候群は、通常、リウマチ由来の僧帽弁狭窄(MS)と、殆どの場合、二次孔型ASDである、心房レベルにおける左から右のシャントとの併存として定義される。ASDはまた、医原性である、または経中隔交差の合併症に対する二次的なものであり得る。古典的な教示は、これらの2つの病変がそれぞれ、他方の血行動態および臨床的発現を修正し、MSの頻繁な肺水腫および喀血特性が、ASDの減圧効果によって低減されるというものである。具体的には、MSによって引き起こされる上昇されたLAPは、ASDを通して右心房の中への血液の除負荷を駆動し、肺静脈内の背圧の蓄積を緩和し、したがって、肺鬱血を回避する。肺血管抵抗、RVコンプライアンス、MSの重症度、およびASDのサイズは、これらの患者における血行動態および臨床転帰を判定する重要な因子である。
【0043】
故に、共存する先天性ASDを伴うHF患者が、より良好な転帰を有し得、ASDの閉鎖が、結果として生じる肺水腫を伴う即時のADHFを誘発することによって、亜臨床的なLV機能障害を明らかにし得ることが観察されている。本事実は、例えば、Viaene D, et.al.「Pulmonary oedema after percutaneous ASD-closure」 Acta Cardiol. 2010 Apr;65(2):257-60、Schubert S, et al.「Left ventricular conditioning in the elderly patient to prevent congestive heart failure after transcatheter closure of atrial septal defect」 Catheter Cardiovasc Interv 2005;64:333-337、およびDavies H, et al.「Abnormal left heart function after operation for atrial septal defect. Br Heart J 1970;32:747-753」に議論されるように、先天性心疾患を伴う成人を治療するためのESC、AHA/ACC、およびカナダのガイドラインにおける警告として顕著に記述されている。ASD閉鎖が、疑わしい左心室機能障害を伴う成人において考慮されているとき、最初にバルーンを用いて欠損を閉塞し、LAPにおける上昇を測定し、明白な臨床HFを発症する潜在性を明らかにすることが、推奨される。これは、LV機能障害が、存在する場合、ASDが、全身性(左)心室のための「ポップオフ」弁として機能し、肺静脈高血圧症を防止するためである。すでに説明されたように、ASDおよびアイゼンメンガーの生理学を伴う患者は、PAHでの改善された生存率を有する。したがって、現在、ASDが、PAHにおけるLV機能障害および急性RV不全の存在下でADHFを防止することを示す、多数の証拠が、存在する。
【0044】
PAHにおける右から左への心房間シャントを有する有用性に関するさらなる裏付けは、全身性酸素飽和度がちょうど低下し始めるまで、漸進的により大きいバルーンが膨張される、バルーン心房中隔裂開術(BAS)を伴う実験からもたらされる。バルーンサイズは、典型的には、直径において4~12mmに及び、平均して約8mmである。
【0045】
シャントがBASまたは恒久的シャントデバイスの埋込によって遂行されるかどうかにかかわらず、左心房アクセスは、最初に、心臓カテーテル留置の技術分野における当業者に周知の手技である、経中隔カテーテル留置によって遂行されなければならない。簡潔に言うと、経中隔カテーテル留置システムは、通常、右大腿静脈における入口部位から、心房間中隔の中心かつ最も薄い領域である、卵円窩(FO)の領域における心房間中隔を横断して設置される。これは、先天性二次孔型ASDが位置するであろう、同一の一般的な場所である。成人におけるFOは、典型的には、その長軸寸法において15~20mmであり、厚さにおいて≦3mmであるが、ある状況では、最大10mm厚さであり得る。LA室アクセスは、針穿刺、スタイレット穿刺、ねじ針穿刺、および無線周波数アブレーションを含む、様々な異なる技法を使用して達成され得る。BASでは、2つの心房の間の通路は、医原性ASDを作成するために拡張される。通路は、所望のオリフィスサイズのシャントデバイスの通過を促進するために、同様に拡張される。拡張は、テーパ状シース/拡張器カテーテルシステムを前進させることによって、またはFOを横断する血管形成バルーンの膨張によって遂行される。
【0046】
PAHでは、成功したBASは、RVを減圧させ、LV前負荷、全身性心拍出量、および酸素輸送を増加させ、中程度のみの動脈O2脱飽和度を引き起こす。Sandoval J, et al.「Graded balloon dilation atrial septostomy in severe primary pulmonary hypertension. A therapeutic alternative for patients nonresponsive to vasodilator treatment」 J Am Coll Cardiol 1998;32:297-304、Kurzyna M, et al.「Atrial septostomy in treatment of end-stage right heart failure in Patients with pulmonary hypertension」 Chest 2007;131:977-983、およびCiarka A, et al.「Atrial septostomy decreases sympathetic overactivity in pulmonary arterial hypertension」 Chest 2007; 131:1831-1837等の研究は、WHO/NYHA症状クラス、運動能力、RAP、交感神経活性化の減少、およびB型ナトリウム利尿ペプチドレベルにおける改善を示している。手技関連死亡率と関連付けられる因子が、Sandoval J, et al. eds, Right Ventricle in Health and Disease, New York: Humana Press, Springer Science Business Media; 2015に報告されるように、320件の文献の中隔裂開術症例において評価されている。これらは、RAP>20mmHg、CI<1.5 L/分/2、既存のLV機能障害である。2%と同程度に低い1ヵ月周術期死亡率が、Maluli H, et al.「Atrial Septostomy: A contemporary review」 Clinical Cardiology. 2015;38:393に報告されている。これらの利益にもかかわらず、BASは、重要な限定を有する。使用するべきバルーンのサイズを予測することは、困難である。ある場合には、FOは、より弾性であり、バルーン収縮後に跳ね返り、その他では、これは、より線維性であり、引裂され得る。増加された死亡率が、中隔裂開術が大きすぎるシャントを作成し、重大な全身性酸素脱飽和(<80%)をもたらすときに関連付けられている。例えば、Rich S, et al.「Atrial septostomy as palliative therapy for refractory primary pulmonary hypertension」 Am J Cardiol 1983; 51:1560-1561を参照されたい。シャント開存性の維持は、Sandoval J, et al.「Effect of atrial septostomy on the survival of patients with severe pulmonary arterial hypertension」 Eur Respir J 2011:1343-1348に議論されるように、約3分の1の患者に影響を及ぼす別の限定であり、多くの場合、数ヵ月の周期にわたる複数の手技を要求する。BASは、現在、殆ど使用されず、いくつかの経験豊富なセンターにおける緩和療法または肺移植への橋渡しと見なされる。
【0047】
前述の観察は、経皮的に埋込される心房間シャント補綴物の開発につながっており、これは、現在、HFおよびPAHにおけるヒト臨床試験において試験されている。HFでは、左心房から右心房に血液をシャントすることによって、LA内の圧力は、これがそうでないであろう場合と比較して高く上昇しないように低下または防止される(LA減圧)。そのような遂行は、肺鬱血と関連付けられる症状、兆候、および症候群を防止、緩和、または限定する。これらは、重度の息切れ、肺水腫、低酸素症、緊急入院の必要性、機械的換気、およびある場合には、死亡を含む。PAHでは、シャントデバイスは、正常な心房間圧力勾配の逆転に起因して、右心房から左心房に流動を迂回させるであろう。目標は、重大な動脈酸素脱飽和を引き起こすことなく、RV前負荷を低減させ、左側心拍出量および組織酸素送達を増加させることである。予想される転帰は、症状における低減、増加された運動能力、急性RV代償不全の防止、および改善された平均余命である。
【0048】
具体的には、HFでは、心房間シャントの主な生理学的機構は、心房間圧力勾配によって調整されるように、血液を左心房から右心房に迂回させることによって、過剰な体積および圧力のLVを緩和することである。その際、LAPおよびLVEDPの規定外変動の振幅ならびに持続時間は、限定される。HF患者の圧倒的多数では、LAPは、RAPを超える。重度のRV機能障害の不在下では、LAP-RAPの量は、左心室不全が悪化し、LAPが上昇するにつれて、増加する。したがって、右心にシャントされる血液の量は、左側心不全の悪化に伴って増加する。LAPおよびLVEDPが、上昇されると、LVは、患者がHFrEFまたはHFpEFを有するどうかかにかかわらず、その拡張期コンプライアンス曲線のより急峻な部分に作用している。LV拡張終期体積における低減は、LV拡張終期圧における必然的かつ実質的な低下をもたらす。LAP、肺静脈圧、および肺動脈圧を含む、上流充填圧における同一基準の低下が、存在するであろう。LV体積および圧力の本変化は、シャントが、自動的、瞬間的、かつ持続的に機能することを除いて、過剰な体積を除去する利尿薬の作用と同様である。また、効果は、LAPまたはLVEDPのレベルに対して自動的に適切になる。左側充填圧が高いほど、シャントは、より多くなり、したがって、除負荷は、より多くなる。より小さい心房間勾配において、より少ないシャントが、存在し、したがって、LV体積および充填圧に対する効果は、これが無視できるものになるまで、漸進的により小さくなる。したがって、利尿療法と異なり、体積枯渇および心拍出量の有意な低下を引き起こす過剰治療は、防止される。最後に、心房間シャントは、医師または患者によるいかなる調節も要求せず、療法は、圧力誘導薬物服用を伴う埋込可能血行動態監視を含む、全ての公知の投薬およびデバイス療法と相補的である。予想される臨床結果は、肺鬱血症状の軽減、またはさらにはその防止であろう。
【0049】
シャント流動は、概して、心房とシャントデバイスの流体力学的性質との間の圧力勾配によって統制される。後者は、典型的には、シャント幾何学形状および生体材料組成によって影響を受ける。例えば、類似するシャント設計の一般的流動性質は、平均心房間圧力勾配および有効オリフィス直径に関連することが示されている。未補正先天性ASDで見られるもののようなHFに関する心房間シャントデバイスについての1つの懸念は、シャントが大きすぎる場合、RV容積過負荷が、発展し、最終的に、RV不全を伴う毛細血管前PAHを引き起こすであろうことである。患者は、次いで、右心房から左心房へのシャント流動の方向の逆転を伴うアイゼンメンガーの生理学を発展させ得る。すでに言及されたように、小さいシャントでは、余分な体積は、右心および全身静脈の大きい血管コンプライアンスに起因して、十分に許容される。したがって、心房間シャントデバイスに関する重大な寸法考慮事項は、シャントが、左心を除負荷するために十分に大きいが、右心に過剰に負荷をかけないように十分に小さいことである。
【0050】
2つのタイプの経皮的に埋込可能なシャントが、医療および特許文献に説明されている。小規模臨床治験では、両タイプとも、症状、生活の質測定、および運動能力における改善と関連付けられることが示されている。第1のタイプのシャントは、以降、オリフィス-プレートメッシュシャントと称される。オリフィス-プレートメッシュシャントは、中心に孔を伴って、中隔の両側の周囲に巻着し、小先天性二次孔型ASDの場所および幾何学的特性を解剖学的に模倣する、金属メッシュを備える。シャント幾何学形状は、概して、孔をその中に伴う、薄いプレートに類似する。大部分の実施形態では、「プレート」は、メッシュ材料およびメッシュによって包囲される心房中隔組織の両方から成る。
【0051】
カスタム開窓を伴う修正されたアンプラッツァー中隔閉塞器が、Schubert et al.「Left ventricular conditioning in the elderly patient to prevent congestive heart failure after transcatheter closure of atrial septal defect」 Catheter Cardiovasc Interv 2005;64:333-337によって実施された研究に議論されるように、試行された第1のデバイスアプローチであった。その研究では、ASDを伴い、欠損が閉塞されたときに上昇されたLAPを被った患者は、有窓のアンプラッツァー閉塞器を埋込された。「Fenestrated occluders for treatment of ASD in elderly patients with pulmonary hypertension and /or right heart failure」 2008;21:44-49, DOI: 10.1111/j.1540-8183.2007.00324.xに報告されるように、Bruchおよび同僚は、LV不全の高いリスクがある、大きい左から右へのシャント、肺高血圧症、および/または右心不全を有する高齢の15人のASD患者において、5~8mm直径の有窓のアンプラッツァー中隔閉塞器を埋込した。症状のある患者は、NYHAクラスにおける改善を示し、いかなるHF代償不全も、起こらなかった。RV拡張終期寸法および肺動脈圧は、有意に減少した。しかしながら、Lammers AE, et al.「Efficacy and long-term patency of fenestrated Amplatzer devices in children」 Catheter Cardiovasc Interv 2007; 70:578-584およびSandoval J, et al.「Effect of atrial septostomy on the survival of patients with severe pulmonary arterial hypertension」 European Respiratory Journal. 2011;38:1343-1348に報告されるような長期経過観察は、本デバイスが、可能性として、心房の間の通路における制御された内皮化の欠如に関連する、高い閉鎖率と関連付けられることを示している。有窓のアンプラッツァーデバイスは、それらが、中隔を通して幾分大きい通路を作製することを要求し、血栓形成のリスクを伴う多くの異物を中隔内に残すため、殆ど放棄されている。
【0052】
ディアボロまたは砂時計形状に原位置で拡張されるステントを設置することが、修正された有窓のアンプラッツァーデバイスよりも改良された開存性を示している。ディアボロステントは、Troost E, et al.「Modified technique of stent fenestration of the interatrial septum improves patients with pulmonary hypertension」 Catheter Cardiovasc Interv 2009; 73:173-179に説明されるように、殆どがPAHにおいて使用されているが、初期設計は、急性ステント塞栓のリスクをもたらした。有窓のアンプラッツァーおよびディアボロステントは両方とも、BASに類似する転帰を達成したが、閉鎖/狭窄の長期リスクは、非効果的なシャントをもたらし得る。
【0053】
現在臨床治験中のオリフィス-プレートメッシュシャントの第2の実施例は、Corvia Medical, Inc.(Tewksbury Massachusetts)によって開発された、心房間シャントデバイスIASD IIである。IASD IIは、中心に開放オリフィス構造を伴う、ディスク様フランジの対を形成する、自己拡張式超弾性ニチノールメッシュから成る。ディスクの最大直径は、19.4mmであり、オリフィス直径は、8mmである。各ディスクフランジは、心房間中隔のLAおよびRA側の周囲に巻着する、事前に設定された構成に展開する、複数の束様脚部を有する。デバイスは、フランジの間の中隔組織を圧縮するその咬持力を印加することによって固着される。露出金属フレームは、カプセル化されない。
【0054】
REDUCE LAP-HF治験調査者を代表するHasenfuss G, et al「Rationale and design of the reduce elevated left atrial pressure in patients with heart failure (Reduce LAP-HF) trial」 J Cardiac Fail 2015;21:594-600およびREDUCE LAP-HF研究調査者を代表するHasenfuss, G., et al「A transcatheter intracardiac shunt device for heart failure with preserved ejection fraction (REDUCE LAP-HF): a multicentre, open-label, single-arm, phase 1 trial」 Lancet 2016;387:1298-304に説明される、REDUCE LAP-HF実行可能性研究では、シャント設置が、68人の患者のうち64人で成功した。研究母集団は、ベースライン上昇LAP、境界域の肺高血圧症、および正常なRV機能を伴う、NYHAクラスIIおよびIII患者の混合を含んで、排他的にHFpEFであった。いかなる患者も、最初の6ヵ月の間に、周術期または主な有害な心臓もしくは脳血管事象またはデバイス関連合併症に関する心臓外科手術介入の必要性を有していなかった。1年後まで続く、NYHAクラス、生活の質スコア、および6分間歩行距離(「6MWD」)における持続された改善が、存在した。経胸壁エコー撮像は、患者の64人のうち48人(75%)において12ヵ月において左から右へのシャントの存在を確認したが、シャント狭化度を査定しなかった。RV拡張末期指数における付随の上昇を伴う、LV拡張末期体積指数における緩やかであるが安定した低減が、存在した。三尖弁輪平面収縮期規定外変動(TAPSE)が、RVEFの増加を伴って12ヵ月において有意に改善され、RVがシャントによって発生される付加的体積を許容することを示唆した。12ヵ月におけるQp:Qs比は、平均して1.25であった。シャントされた患者は、運動の間のLAPにおける低減が付随する、運動能力における改善によって利益を享受した。症状および生活の質計測値もまた、1年後まで患者の>40%において改善された。
【0055】
Feldman et. al.、次いで、Shah et. al.は、Feldman T, et al.「A transcatheter interatrial shunt device for the treatment of heart failure with preserved ejection fraction (REDUCE LAP-HF I): A phase 2, randomized, sham-controlled trial」 10.1161/CIRCULATIONAHA.117.032094およびShah SJ, et al.「One-year safety and clinical outcomes of a transcatheter interatrial shunt device for the treatment of heart failure with preserved ejection fraction in the Reduce Elevated Left Atrial Pressure in Patients with Heart Failure (REDUCE LAP-HF I) Trial. A Randomized Clinical Trial」 JAMA Cardiol. doi:10.1001/jamacardio.2018.2936において、REDUCE LAP-HF I治験に関して報告した。これは、NYHAクラスIIIまたは外来クラスIV HF、LVEF≧40%、運動PCWP≧25mmHg、およびPCWP-RAP勾配≧5mmHgを伴う患者における第2相無作為化並行群盲検化多施設治験であった。参加者は、IASD IIデバイス対偽の対照手技に無作為化された。患者および経過観察の間に患者を査定する調査者は、治療割当に対して盲検化された。主要な有効性エンドポイントは、1ヵ月における運動PCWPであった。主要な安全性エンドポイントは、1ヵ月における主な有害心臓、脳血管、および腎臓事象(MACCRE)であった。合計44人の患者が、IASD(n=22)および対照(n=22)群に無作為化された。平均年齢は、70±9歳であり、50%は、女性であった。1ヵ月において、シャント治療は、偽の対照群と比較してPCWPにおけるより大きい低減を有していた(運動の全ての段階を考慮してP=0.028)。加えて、受動的脚上昇の間および20Wの運動の間のPCWPは、シャントされた患者においてより大きい程度まで減少した。1年において、MACCREおよび静脈内治療を要求するHF事象における低減に関する傾向が、存在した。IASD IIデバイスは、現在、REDUCE-LAP HF II (NCT030880330)と呼ばれる、より大規模なピボタル無作為化盲検化対照治験において評価されている。
【0056】
そのようなメッシュタイプシャントの別の実施例は、Occlutech International AB(Helsingborg, Sweden)によって開発された、心房流動調整器(AFR)デバイスである。AFRは、先天性二次孔型ASDを閉鎖するために使用されるアンプラッツァータイプ二重ディスク閉塞器に類似し、これは、加えて、2つのディスクを接続する、短開放バレルオリフィスを中心に含む。本シャントは、異なる厚さのFOに適応するために、2mm増分において4~10mmのオリフィスサイズを伴い、異なるバレル長を伴って利用可能である。ディスクの直径は、オリフィスサイズに応じて、22~26mmに及ぶ。
【0057】
Occlutechデバイスに関する実行可能性研究である、Paitazoglou C, et al.「The AFR-PRELIEVE TRIAL: A prospective, non-randomized, pilot study to assess the Atrial Flow Regulator (AFR) in Heart Failure Patients with either preserved or reduced ejection fraction」 EuroIntervention 2019; Jaa-588 2019, doi: 10.4244/EIJ-D-19-00342に報告される、AFR-PRELIEVE治験(NCT03030274)では、NYHAクラスIIまたはIV HFおよび安静時にPCWP≧15mmHgまたは運動時に≧25mmHgを伴う36人の患者が、LVEFにかかわらずに登録された(44.5% HFrEF、55.5% HFpEF)。埋込成功および3ヵ月における開存性は、100%であった。Qp:Qsは、平均して1.2であった。NYHAクラス、運動能力、および生活の質スコアにおいて、ベースラインに優る有意な改善が、存在した。長期データは、まだ公開されていない。
【0058】
AFRデバイスを使用する単一センター非盲検研究である、Rajeshkumar R, et al.「Atrial septostomy with a predefined diameter using a novel Occlutech atrial flow regulator improves symptoms and cardiac index in patients with severe pulmonary arterial hypertension」 Cathet Cardiovasc Inerv 2017;1-9は、気絶およびRV不全を提示する重度のPAHを伴う患者における良好な中間期を報告した。NYHA III(n=9)またはIV(n=4)症状を伴う年齢が28±8歳の12(12)人の患者が、主な合併症を伴わずに正常に埋込された。患者は、8または10mmのデバイスを受けた。RAPは、シャント埋込後に直ちに4.1±3.2mmHg低下した。全ての患者は、気絶の排除を有し、NYHAは、経過観察の持続時間においてクラスII(n=7)およびクラスIII(n=5)まで改善した。6MWDは、377±33から423±31mに改善した。心臓指数および全身酸素輸送もまた、有意に改善された。シャントは、中央値6ヵ月の経過観察において全ての患者において開存していた。SaO2は、安静時に98±0.2から92±3に減少し、運動後に85±3%に減少した。AFRデバイスは、現在、PAHを伴う30人の患者におけるAFRの安全性および効能を査定するために、前向きの無作為化研究であるPROPHET治験(NCT03022851)において評価されている。
【0059】
他のシャント設計に優る前述のオリフィス-プレートメッシュシャントの主な利益は、製造の簡略化である。理論および構造が比較的に単純であるが、オリフィス-プレートメッシュタイプシャントは、臨床上の安全性および有効性のためのそれらの全体的潜在性を低減させることが予期される、いくつかの重要な短所を有する。
【0060】
オリフィス-プレートデバイスの第1の短所は、埋込後治癒周期の間、狭化または閉鎖を被りやすいことである。例えば、パンヌスと称される、新生心内膜組織内部成長が、下層組織から成長し、メッシュを被覆し、シャントオリフィスを狭化または部分的に閉塞させる。埋込後の周期の間、FOを交差および拡張させることによって引き起こされる局所外傷に加え、中隔組織上のメッシュ材料によって印加される持続的圧力の慢性的効果が、局所治癒応答を誘発する。本応答は、炎症性プロセスの活性化を伴い、リンパ球および貪食細胞を組織傷害の面積に引き付ける。これらの炎症性細胞は、ひいては、創傷縁からの線維芽細胞および平滑筋細胞に脱分化し、遊走し、増殖し、埋込されたデバイスの影響を受ける部分をカプセル化するように信号伝達する、様々なサイトカインを放出する。線維芽細胞および平滑筋細胞は、次いで、コラーゲンおよびプロテオグリカンから成る、細胞外マトリクス物質を分泌する。細胞外マトリクスは、パンヌスの塊を形成する。ヒトにおける本治癒相の持続時間は、典型的には、最大6~9ヵ月であるが、デバイス圧縮または隣接する組織の浸食等の組織傷害の慢性源が存在する場合、より長くなり得る。最終的に、本パンヌスは、新生内皮細胞で被覆され、パンヌス成長を停止または安定化させる。長期的に、パンヌスのコラーゲンが、再生するが、概して、その空間占有性質を留保する。そのような組織内部成長は、典型的には、インプラントの支柱、メッシュ、またはディスクの表面にわたって拡散し、オリフィス管腔を実質的に狭化させる、またはさらにはシャントを完全に閉塞させ得る。シャントの狭化または閉塞は、LA減圧を阻害または妨害し、患者のための任意の好影響を限定する。
【0061】
管腔狭化度は、局所傷害の重症度の差異に起因して、患者の間で非常に可変であり得る、すなわち、傷害が多いほど、パンヌス形成は、より悪化する。加えて、変動性は、宿主創傷治癒応答の差異からももたらされる。例えば、細胞外マトリクスの量および特性は、治癒の持続時間および堆積される物質の量に影響を及ぼし得る。したがって、オリフィス-プレートメッシュシャントに関して、最終的オリフィス管腔サイズは、非常に可変となるであろう。これらのプロセスは、これが、概して、露出金属ステントがアテローム硬化性狭窄を治療するために使用されるときに動脈内で生じる後期管腔喪失のタイプに類似するため、当業者に公知であろう。
【0062】
オリフィス-プレートメッシュシャントの第2の短所は、奇異性塞栓症の潜在性である。奇異性塞栓症は、塞栓が心臓シャントを通して全身性動脈循環の中に右から左に横断するように静脈脈管内で生じる、血栓性塞栓症(静脈血栓性塞栓症またはVTE)を指す。奇異性塞栓症の最も重度の合併症は、塞栓が脳循環内で詰まり、脳梗塞(脳卒中)をもたらすときに生じる。最も頻繁には、VTEは、下肢または骨盤の深部静脈内の原位置血栓症(深在静脈血栓症またはDVT)の結果である。
【0063】
HFは、Howell MD, et al.「Congestive heart failure and outpatient risk of venous thromboembolism: a retrospective, case-control study」 J Clin Epidemiol. 2001;54:810-816に報告されるように、特に、低減された左心室収縮期機能を伴う患者において、DVTおよびVTEに関する広く認識されたリスク因子である。心不全患者における死亡の約3%は、Beemath A, et al.「Pulmonary embolism as a cause of death in adults who died with heart failure」 Am J Cardiol. 2006;98:1073-1075に報告されるように、通常、肺塞栓症と関連付けられる、VTEに起因する。奇異性塞栓症のリスクが、ASD等の自然に生じる心房レベルシャントのオリフィスサイズに直接関連するという証拠が、存在する。閉鎖に関して言及される臨床的に有意な(典型的には、直径において20mmまたはそれを上回る)ASDを伴う患者では、奇異性塞栓の発生率は、最大14%であることが報告されている。例えば、Chiche O, et al. 「Prevalence of patent foramen ovale and stroke in pulmonary embolism patients」 Eur Heart J. 2013;34:1142およびBannan A, et al.「Characteristics of adult patients with atrial septal defects presenting with paradoxical embolism」 Catheter Cardiovasc Interv 2009;74:1066-9を参照されたい。
【0064】
臨床的に関連する静脈塞栓は、膝窩静脈において、または上大腿部もしくは骨盤のより大きい静脈においてより近位に形成される傾向がある。膝窩静脈の直径は、6.2~20.1mmに及ぶ。多くの場合、塞栓は、起始静脈の直径に等しい幅を伴う、静脈の管腔の円柱物の形態を有するものとして説明される。これらの血栓傾向はまた、伸長され、閉塞された静脈区画の長さに対応する傾向がある。塞栓の詰まりからの虚血性損傷は、閉塞された脈管によって供給される分水器官領域に限定されるため、より大きい塞栓は、特に、閉塞血管が脳に灌流するとき、より多くの損傷を引き起こし、関連付けられるより危険な結果を有する傾向がある。
【0065】
これらの観察から、オリフィス-プレートメッシュシャントが、先天性二次孔型ASDとのそれらの解剖学的類似性によって、奇異性塞栓症の理論的に類似するリスクを有するであろうことが予期されることは、合理的であると考えられる。薄いプレート-オリフィスメッシュタイプの人工シャントが、より長いオリフィス幾何学形状、例えば、ノズルを伴う他のタイプのシャントよりも奇異性塞栓症を受けやすくあり得ることは、容易に理解可能である。任意の所与の量のRA体積(血液または血栓)に関して、シャントを横断してLAの中に逆行横断する統計的尤度は、圧力勾配逆転の持続時間、RA内の流動パターン、流速流線の長さに影響を及ぼすシャントトンネル距離、流速およびオリフィスサイズの複雑な関数であることが予期されるであろう。
【0066】
オリフィス-プレートメッシュシャントの第3の短所は、身体からの経皮的除去が、埋込時のみに可能であることである。シャントが、感染症の病巣となる、その金属フレームワークの疲労または腐食亀裂を発展させる、または他の重要な心臓構造を浸食もしくはそれに別様に衝突する場合、これは、経皮的回収/除去技法によって除去されることができない。これは、その大きい「占有面積」を心房間中隔上に伴うシャントがパンヌス組織内に包囲されるためである。シャントは、開心外科手術によってのみ安全に除去されることができる。これは、心臓が体外膜ポンプ酸素供給器(心肺バイパス)を使用してバイパスされ、したがって、心臓が開放され、シャントが広範なパンヌスの外科的切開によって除去され、中隔が修復され得ることを伴う。すでに確立された重度のHFまたはPAHを伴う患者においてそのような外科手術手技を実施することは、許容できない罹患率および死亡リスクに起因して、禁忌である可能性が高いであろう。
【0067】
オリフィス-プレートメッシュのタイプのシャントの第4の短所は、それらの幾何学形状がそれらを高流動を支援する際に比較的に非効率的にすることである。シャントを横断する任意の所与の圧力勾配に関して、オリフィスプレートの幾何学形状は、これがベンチュリ形状の管腔または円錐形形状のノズル等の他の幾何学形状と比較して低減された有効オリフィスサイズを有するため、より大きいオリフィスを要求する。これは、オリフィス-プレートを用いることで、オリフィスの縁における渦流と関連付けられるより多くのエネルギー損失が存在するためである。オリフィス-プレート幾何学形状は、流動を実際のオリフィスサイズに関連させる、無次元流体-機械的パラメータである、比較的に低い流出係数を有するものとしてカテゴリ化され得る。実践的目的のために、流出係数は、シャントオリフィスと比較して噴流の最狭部分である、退出噴流縮流部の面積の比率である。例えば、パイプ内に設置されたオリフィスプレートに関する流出係数は、約0.6となる傾向があるが、稀に、0.65を超える。流出係数は、オリフィスおよび室寸法、圧力勾配、ならびに具体的流動条件の血液の粘度および/またはレイノルズ数によって影響を受ける。これは、流出係数が、通常、0.9を超え、典型的には、0.94~0.98の範囲内である、狭窄されたノズルまたは古典的ベンチュリタイプの狭化を通した流動のより効率的通過と異なる。結果として、より効率的なシャント管腔幾何学形状と比較して、オリフィス-プレートメッシュシャントは、シャントを横断する任意の所与の圧力差に関して同一量の流動を収容するためにより大きいオリフィス直径を要求する。
【0068】
オリフィス-プレートメッシュタイプシャントに関するサイズ決定は、HFpEF患者血行動態データに基づく検証されたコンピュータモデルを使用して、ASDの血行動態効果をシミュレートした、Kaye et al.「Effects of an interatrial shunt on test and exercise hemodynamics: results of a computer simulation in heart failure」 J Cardiac Fail 2014;20:212-221の研究からもたらされる。彼らは、LAPが運動の間に28mmHgから17mmHgに低減されるであろうことを示すことによって、ASDに類似するシャントのプレートオリフィスタイプに関する最適なサイズが、直径において8mmであることを推測した。トレードオフは、ピーク心拍出量における12%低減および1.3~1.4の肺血流対全身血流の比率(Qp:Qs)、ならびにRA圧力のわずかな上昇であった。より小さいシャントオリフィスサイズ、例えば、6.4mmを用いると、運動LAPは、全身心拍出量におけるより小さい低減を伴い、より小さいQp:Qsを伴い、右心房圧のいかなる明らかな上昇を伴わずに、依然として、約20mmHgまで低減された。治癒後、オリフィス-プレートメッシュタイプシャントが、6mm範囲内の平均オリフィス直径における低減を有し得ることが予想され得る。しかしながら、5~6mmに及ぶオリフィス直径を伴うノズルまたはベンチュリ構成は、約6.3~7.4mmのオリフィスプレートASD直径と同等であろう。
【0069】
オリフィス-プレートメッシュシャントの第5の短所は、それらが、大きい面積または占有面積を心房間中隔上に占有する傾向があることである。シャントに係留する、デバイスのフランジは、典型的には、卵円窩の面積全体を占有し、心房間中隔の隣り合う筋肉部分に重複し得る。これらのフランジは、持続的圧力を中隔上に付与し、傷害を引き起こし、上記に説明されるように、悪化される治癒応答を刺激する。また、メッシュの剛性は、筋肉中隔の正常運動に干渉し得る。フランジは、加えて、左心房の天蓋部、右肺静脈口、ならびに大動脈基部およびバルサルバ洞等の隣接する心臓構造に衝突し得、慢性擦過接触または狭着圧縮力に起因して、それらは、これらの重要な構造の中に浸食し得る。そのような浸食は、心臓タンポナーデおよび死亡を含む、重度の合併症と関連付けられている。例えば、上記に説明される同様のサイズのアンプラッツァーASDディスク閉塞デバイスは、随時、結果として生じる致命的転帰を伴う、隣り合う組織の中への浸食と関連付けられている。
【0070】
オリフィス-プレートメッシュシャントの第6の短所は、複雑な3次元幾何学形状を伴う比較的に大きいデバイスを設置することと関連付けられる潜在的困難、すなわち、シャントをFO内に正確に位置付け、十分な組織係留を取得し、遊走を防止し、デバイスを心臓解剖学的構造の不規則性に共形化させる等の困難である。例えば、Hasenfuss, et al.によって著された上記に引用されるLancet刊行物内の66人の患者におけるオリフィス-プレートメッシュシャントの埋込試行の報告では、IASD IIのデバイス設置は、2人の患者において不可能であった。また、64人の埋込された患者のうち、最初の埋込試行の誤設置、遊走、または塞栓に起因して、別の3人の患者において、デバイスは、除去または再埋込される必要性があった。
【0071】
オリフィス-プレートメッシュシャントの最後かつ第7の短所は、心房中隔上の大きい占有面積が、経中隔アクセスを要求する他の介入手技を実施することを妨害または不可能にし得ることである。大きいフランジ直径および小さいメッシュ細孔サイズは、概して、心房中隔のカテーテル交差を中心シャントオリフィス自体のみを通して可能にする。心房細動RFアブレーション等の小径カテーテルを使用した経中隔手技は、これがパンヌスによって遮断されず、オリフィス場所が、全ての4つの肺静脈の中への進入を可能にする場合のみ、オリフィス-プレート管腔を通して行われ得る。大径送達システムを有し、および/または具体的場所においてFOを交差することを要求する、他の構造的心疾患手技は、困難に遭遇する、または単に、不可能であり得る。これらの手技は、左心耳閉塞、僧帽弁縁間(「マイトラクリップ」)修復、および経血管僧帽弁置換を含む。例えば、マイトラクリップを最適に設置することは、その後上象限においてFOを交差することを要求する。誘導カテーテルは、7.3mm(22Fr)の先端外径を有する。類似する経中隔アクセスは、Valtechによって販売されているCardiobandデバイスを用いて、再構築僧帽弁形成術を実施するために必要とされ得る。これらの症例では、唯一の代替は、経左心室心尖アクセスまたは開心外科手術を伴うより高いリスクの療法アプローチであり得る。
【0072】
第2のタイプのシャントは、弁付き一方向性シャントと称される。これらのシャントは、オリフィス-プレートデバイスの短所のうちのいくつかを克服しようと試みる。例えば、弁付き一方向性シャントは、逆シャントおよび奇異性塞栓症を限定するための一方向または逆止弁を含有する、実施形態を有する。弁構成のうちのいくつかは、LA-RA圧力勾配が所定の閾値を超えると開放するように設計される。他の弁構成は、RA圧力がLA圧力を超える(逆転勾配)ときにのみ閉鎖する。
【0073】
Nitzanへの米国特許第9,034,034号(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)は、上記に説明するプレート様オリフィスメッシュシャントの短所のうちの多くを解決する。Nitzanタイプシャントの一実施形態は、砂時計またはディアボロ外側形状を備え、中隔傷害を最小限にする小さいFO占有面積を有し、これは、パンヌス成長およびシャント管腔の消滅を最小限にすることが予期される。その一方向弁はまた、逆シャントおよび奇異性塞栓症の潜在性を低減させるように設計される。中隔と接触するシャントの比較的に小さい占有面積およびカプセル化された圧潰可能ニチノールフレームは、標準的S字形管スネアおよび大ボアシースを使用して、中隔からの経皮的抽出および身体からの回収を促進するように設計され、したがって、デバイスをより容易に回収させる。ディアボロ形状のベンチュリ管様内側管腔は、より良好なバルク流動特性を提供し、オリフィスプレートシャントと比較して、同一量の流動のためのより小さいオリフィスを可能にする。また、最後に、FO上の小さい占有面積および砂時計形状は、埋込の間、正確な設置および保定を促進するように設計される。本幾何学形状はまた、心房間中隔の正常運動への干渉を最小限にし、小さい占有面積は、経中隔カテーテル留置を要求する他の潜在的介入手技のためのシャントを囲繞する空間を提供する。
【0074】
Nitzan設計の一実施形態は、V-Wave, Ltd(Caesarea, Israel)によって製造された第1世代「弁付き」シャントとして実装された。一方向性左/右流動を支援するように設計される、そのシャントは、レーザ切断されたニチノール管から構築された自己拡張式フレームを備える。フレームは、6つの縦方向バーによって相互接続される、5つの正弦波円周方向支柱を含む。フレームは、これが非対称砂時計形状またはディアボロ形状を有するように熱固化される。シャントは、縮径部(5.3mm外径)が、FOを横断して設置され、その外面幾何学形状によって定位置に固着されるように展開される。シャントの最広部分は、約14.3mm外径をシャントのLA端部に伴う、円錐形形状を有し、これは、HFにおいて、入口漏斗の遠位端上の「入口」ポートとしての役割を果たす。入口漏斗は、左心房内で展開され、シャントの縮径部をFOの領域に位置合わせする。第2のわずかにより狭いベル形部分が、シャントの出口部分を形成し、これは、シャントのRA端部において11.4mmの最大外径まで拡張する。シャントは、これを定位置に固着させるために、フランジ、ディスク、または組織アンカを要求しない。中隔保定は、持続的圧力、張力、または擦過接触をデバイス縮径部に隣り合う組織上に印加することなく達成される。
【0075】
前述の弁付きシャントは、単一内側管腔を有し、流動は、LA内の入口漏斗の中に同伴され、ベンチュリ-タイプオリフィスに類似する、5.1mm内径を有する狭窄された縮径部を通して通過し、次いで、シャントのRA端部の近傍に位置付けられる生体プロテーゼ弁を通して退出する。入口漏斗および中心縮径領域は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)を用いてカプセル化され、フレームにわたってスカートまたはカバーを形成する。スカートは、デバイス治癒の間、積層流動を促進し、パンヌス内部成長を限定するように設計される。出口ベル形部分は、ePTFEカプセル化の右心房範囲におけるニチノールフレームにおける一連の孔に縫合される3つのグルタルアルデヒド固定ブタ心膜弁尖を含有する。弁尖は、平滑出口チャネルを作成し、開放位置に留まり、RA圧力がLA圧力を1~2mmHg超えるときのみ閉鎖し、したがって、逆の右から左へのシャントを防止するように設計される。
【0076】
展開のために、V-Waveシャントは、これが三重ラッチケーブル送達カテーテルに取り付けられる、装填管内で圧縮される。装填管は、右大腿部静脈からFOを横断した経中隔カテーテル留置後、以前に設置された14F送達導入器シースの中に挿入される。シャントは、次いで、入口漏斗がLA内に展開されるまで、シースを通して前進される。システム全体は、LA漏斗がFOの左側と接触するまで、ユニットとして抜去される。送達カテーテルラッチは、シャントから掛止解除され、送達カテーテルは、抜去され、したがって、シャントの右心房側は、その半径方向力のみによって送達シースに対して保持される。送達シースは、次いで、抜去され、それによって、FOのRA側上のシャントの出口ベル形部分を展開する。デバイス設置は、蛍光透視法および心エコー、例えば、心内エコーまたは経食道エコーによって誘導および確認されてもよい。
【0077】
V-Waveシャントに関する前臨床試験が、Eigler et al「Cardiac Unloading with an Implantable Interatrial Shunt in Heart Failure: Serial Observations in an Ovine Model of Ischemic Cardiomyopathy」 Structural Heart 2017;1:40-48による査読済み刊行物において確立されるように、虚血性心筋症形態の心不全を生成した、確立された若いヒツジ(羊)モデルにおいて実施された。羊は、Huang et alによる「A stable ovine congestive heart failure model」、「Remodeling of the chronic severely failing ischemic sheep heart after coronary microembolization: functional, energetic, structural, and cellular response」 Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2004;286:H2141- H2150の刊行物に説明されるように、逐次冠動脈マイクロ塞栓を用いて事前治療された。数週間後、羊は、重度のLV収縮期機能障害を発現させ、上昇されたLV、LA、および肺動脈圧を発展させた。いったんHFが確立されると、羊は、12週の生存率研究に登録された。V-Wave弁付きシャントは、LA圧力およびLVEFにおける有意な改善と関連付けられた。全ての心不全悪化の発現は、改善され、ある場合には、心房間シャントを用いて逆転された。しかし、確立された心不全を伴う同時対照動物は、V-Waveシャントを埋込されず、経過観察の間、LVEFおよび心内/肺圧の進行性の悪化を実証した。シャントされた動物における生理学的改善は、シャント体積がわずかであると査定された場合であっても実質的であった。肺血流/全身血流比(Qp:Qs)は、オキシメトリによって測定されるように、1.1~1.2であり、これは、非常に小さいシャントと一貫し、十分に許容された。5mm直径シャントは、左心を選択的に除負荷し、LAPの持続された低減につながり、LV性能を改善し、変力および変弛緩機能を温存し、リモデリングの抑制を伴った。二次肺高血圧症は、防止され、右側心臓圧および機能は、温存された。
【0078】
【化1】
による別の査読済みの公開された原稿では、n=38人の患者が、ヒト実行可能性研究においてV-Wave弁付きシャントを埋込された。患者は、NYHAクラスIIIまたは外来クラスIV HFを伴う66±9歳であり、HFrEF(n=30)またはHFpEF(n=8)のいずれかを有していた。冠動脈疾患、糖尿病、心房細動、および慢性腎臓機能障害を含む、より不良の予後と関連付けられることが公知である、併存症が、高頻度で存在した。他のリスク因子は、ナトリウム利尿ペプチドの上昇されたレベル、低減された運動能力、上昇された心内および肺動脈圧、増加された肺血管抵抗、ならびに低減された心拍出量を含んでいた。全ての患者は、研究登録に先立って、GDMTを受けた。シャント埋込は、周術期死亡を伴わずに、全ての38人の患者において成功し、いかなるデバイス交換も、実施されなかった。シャント設置を含む、全ての研究関連手技の完了までの時間は、平均して1時間をわずかに上回った。
【0079】
最初の12ヵ月の間の主なデバイスまたは手技関連合併症の率は、2.6%であった(経中隔カテーテル留置からもたらされる周術期心臓タンポナーデが、1人の患者において観察された)。中央値28か月の経過観察の間、いかなるデバイス関連死亡、脳卒中、または血栓塞栓性事象も、存在しなかった。経過観察心エコーでは、デバイス脱落、遊走、塞栓、血栓症、または浸食のいかなる事例も、存在しなかった。いかなるシャントも、感染症または支柱亀裂に関して除去または交換を要求しなかった。経過観察撮像研究は、潜在的に、経中隔手技を実施し、例えば、心房細動アブレーション、左心耳閉塞、または僧帽弁修復を含む、他の心臓条件を治療するために利用可能である、FO上の隣接する場所が残っていたことを示す。
【0080】
心エコーによって測定されるような肺対全身流動比(Qp:Qs)は、ベースラインにおける1.0±0.1から埋込後3ヵ月における1.2±0.1まで増加した(p<0.01)。3および12ヵ月経過観察において、収縮期、拡張期、または全体的RV機能の客観的測定値の変化を伴わずに、NYHAクラス(それぞれ、患者の78%および60%においてクラスIおよびII)、生活の質(それぞれ、患者の74%および73%において≧5ポイントの改善)、および6MWD(それぞれ、41±63および28±83mの平均増加、全てに関してp<0.02)における改善が、存在した。HF入院および全ての原因の死亡の率は、上記に説明される、明確に合致されるCHAMPION対照および治療群と比較して、予期されるものを相当に、かつ有意に下回った。
【0081】
シャント開存性は、経食道エコー/ドップラ研究でのシャントを通したLAからRAへの流動として定義された。全てのシャントは、3ヵ月後において開存していたが、12ヵ月までに、36人のうち5人(14%)が、閉塞し、36人のうち別の13人(36%)は、弁において狭窄(狭化)した。弁狭窄の根本的原因は、決定的に判定された。3人の患者からの摘出されたV-Waveシャントが、回収され、埋込後の30、34、および27か月において病理組織学的分析を受けた。患者のうちの2人は、心臓移植を要求し、3人目の患者は、HFの漸進的進行に起因して死亡した。インプラント部位は、完全に成熟し、内皮化した(CD31陽性)線維細胞性新生心内膜によるインプラント表面の被覆を証拠として、完全に治癒された。完全な内皮被覆は、顕微鏡的に、かつSEMを介して実証された。局所的生体適合性は、コラーゲン性先端生体プロテーゼ弁尖、ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)カプセル化、または金属フレームに対する炎症性応答の完全な欠如によって実証されるように、全ての摘出物において最適であった。いかなる血栓症も、記録されなかった。生体プロテーゼ弁尖は、線維性細胞パンヌスによるそれらの交連縁の癒着に起因して、運動性を失った。心房間チャネルは、開存したままであり、導管または先端における病理学的または機能的に意味のある石灰化は、存在しなかった。したがって、生体プロテーゼ弁尖は、肥厚し、新生心内膜過形成(パンヌス)を伴って狭窄した。
【0082】
中央値28ヵ月の経過観察において、広く開存するシャントを伴う患者は、肺毛細血管楔入圧の低減(ベースラインにおける23.3±5.4mmHgから12ヵ月における18.0±4.0mmHg、p<0.011)とともに、死亡、左心室補助デバイス設置または心臓移植(p<0.001)、およびHF入院(p<0.008)のより低い長期率を有していた。広く開存するシャントを維持した患者は、より高齢である傾向があり、より重度の基礎心疾患および併存症、特に、低減された腎機能、より低い運動能力、より悪い安静時血行動態、およびHFrEF患者におけるより低いLVEFを有していた。広く開存するシャントを伴う患者はまた、埋込後の早期の数ヵ月の間、有意により高いシャント流動を有していた。これらの「より病的な」患者は、より高いシャント流動に起因して、より開放する構成において自身の生体プロテーゼ弁尖を維持した。狭窄したシャントを伴う患者は、クロスオーバー対照として挙動し、1年後に疾患進行の自然な率に戻った。開存するシャントを伴う対象は、PCWP、PAP、肺血管抵抗、LVEF、および運動能力における改善を有していた。対象はまた、死亡、HF入院、死亡とHFに関する入院との組み合わせ、または任意の原因に関する入院を含む、より少ない長期心不全事象を有していた。開存するシャントの患者は、右心機能の悪化を有していなかった。したがって、長期に開存するシャントを有することが、非常に臨床的に有利であると結論付けられた。これらの観察は、心房間シャントが意図されるデバイス効果を有するという概念実証を確立した。
【0083】
V-Waveは、続けて、Ventura(登録商標)心房間シャントと呼ばれる、第2世代のNitzanタイプシャントを開発し、生体プロテーゼ組織弁は、除去され、ePTFEカプセル化スカートは、左心房入口ポートから右心房出口ポートまで延在した。正常生理学動物モデルのGLPおよび非GLP慢性前臨床研究からのデータは、31個の連続する5.1mm弁なしシャントが、正常に埋込されたことを示した。全てのシャントは、45~180日に及ぶ経過観察において広く開存していた。弁なしシャントは、縮径部が卵円窩を横断する外面シール上に形成される、新生内膜過形成(パンヌス)で治癒する。シャントの心房円錐部のうちの1つが、心房構造に接触する場合であっても、パンヌスは、縮径領域における管腔を広く開存したままにし、シャント機能を完全に温存する傾向がある。内皮化が、ePTFEカプセル化の管腔面にわたって漸進的に発展した。正常生理学モデルは、HFにおいて予期されるものよりもはるかに小さい、2~3mmHgの経心房左右勾配を有していた。それにもかかわらず、シャントは、抗凝固または二重抗血小板療法を用いて治療されるかどうかにかかわらず、デバイス血栓症の証拠を伴わずに、広く開存したままであった。任意の下流器官のいかなる血栓塞栓または梗塞も、存在しなかった。
【0084】
第2世代Ventura(登録商標)シャントは、現在、小規模(n=14)患者実行可能性研究において、およびRELIEVE-HFピボタル治験(NCT NCT03499236)の非盲検ロールイン登録群におけるスケジューリングされた100人の患者のうちの82人において埋込されている。全ての患者は、シャントを正常に埋込された。6ヵ月における経食道心エコー経過観察に応じて、RELIEVE-HFロールイン登録における6ヵ月経過観察に到達した47個のシャントのうちの47個が、広く開存している。
【0085】
要約すると、これらの埋込可能シャントデバイスは、具体的設計特徴にかかわらず、HFを伴う患者において有益な療法効果を一貫して実証しており、左から右への心房間シャントは、左心前負荷を減圧させ、改善された症状、運動能力、生活の質、および緊急入院を要求するHF悪化のエピソードにおける低減をもたらす。類似する転帰結果が、LV駆出率にかかわらず、HFのほぼ全ての病因を包含する異なる患者群における全てのシャントデバイスに関して報告されている。したがって、最適なシャントオリフィスサイズの範囲にわたって開存する左から右への心房間シャントを有し、維持することからの改善された生理学に関連する強いクラス効果が、存在する。同様に、PAHにおける心房間シャントの結果は、右から左へのシャントが、RV前負荷を低下させ、症状、運動能力、生活の質における関連付けられる改善、および可能性として、入院を要求する右側HFの急性悪化のエピソードにおける低減を伴うことを示す。BASまたはシャントによるものにかかわらず、クラス効果が、有益な機構が、最適なシャントオリフィスサイズの範囲にわたって開存する右から左への心房間シャントを有し、維持する改善された生理学である点において、実証されている。それにもかかわらず、議論されるように、オリフィス-プレートメッシュタイプシャントは、施術者によるそれらの採用を限定し得る、複数の有意な短所を有すると考えられる。第2世代Ventura(登録商標)シャントデバイスおよび他の類似する設計は、オリフィス-プレートメッシュシャント設計の短所の全てを克服する。
【0086】
具体的には、Ventura(登録商標)シャントの寸法および材料は、これをパンヌスまたは血栓形成に起因する狭化に対して非常に抵抗性にする。パンヌス形成は、シャント表面に沿ったその移行性の成長が、オリフィス管腔に到達し得る前に、ある程度の距離で阻止される。シャントの長さ、そのオリフィスサイズ、および右心房室の中への保護フードの突出は、奇異性塞栓症の可能性および重症度を低減させる。これらのシャントは、動物モデルにおいて最大6ヵ月後に正常に経皮的に除去され、別の差別化特徴である、残留する5mmの丸形欠損を中隔において残す。高い流出係数を伴うノズルまたはベンチュリ効果は、これらのシャントをオリフィス-プレートメッシュシャントに対して非常に効率的にし、より小さいサイズを可能にし、それらの外部砂時計形状と併せて、それらは、卵円窩上で最も小さい利用可能な占有面積を占有する。外部形状は、それ自体で、中隔組織を挟むことなく、シャントを定位置に固着させる。外部砂時計形状はまた、隣り合う面積との接触を低減させ、重要な心臓構造の中へのデバイス浸食の機会を大幅に限定する。本幾何学形状は、複雑な3次元解剖学的構造におけるシャント送達を、ほぼ100%の成功率を伴って比較的に簡単にする。最後に、小さい占有面積は、シャントに隣接する卵円窩上の他の場所からLAにアクセスするための十分な空間を残し、幅広い構造的心疾患および電気生理学的アブレーション手技がシャント設置および治癒後に実施されることを可能にする。
シャントを伴うセンサを組み込むための既知の取り組み
【0087】
センサを組み込むシャントが、例えば、Keren et al.への米国特許第8,091,556 B2号、Rottenberg et al.への米国特許第8,070,708 B2号、Levi et al.への米国特許第9,681,948 B2号、およびNitzan et al.への米国特許第8,696,611 B2号ならびに第9,707,382 B2号(その特許の全ては、本開示の譲受人に譲渡されており、そのそれぞれの全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されている。McNamaraへの米国特許第10,413,284 B2号(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)もまた、下記に説明されるように、センサを有するシャントを説明している。これらの特許は、概して、センサが、例えば、モータを伴う、機械的手段を介して弁またはゲートのオリフィス面積を調整するために心房間シャントに組み込まれ得、センサ情報が、診断を行うことおよび薬物療法を誘導すること等の他の目的のために有用であり得ることを説明している。
【0088】
実施例として、Keren et al.への米国特許第8,091,556号は、センサ、プログラマブル信号プロセッサ、および電源によって制御される弁等の流動調整装置を備える、シャントを用いてLAPを低減させる方法を説明している。プロセッサは、データを収集し、外部から、患者とさえも通信し得、患者は、次いで、デバイスがHFの悪化状態によってアクティブ化される場合に医師に通知することができる。医師は、次いで、患者の条件の重症度を低減させるために、医療治療を確立する。
【0089】
Rottenberg et al.への米国特許第8,070,708 B2号は、心房の間の差圧の変化に応答する流動調整機構を伴う心房間シャントを説明している。流動調整機構は、差圧閾値によって制御された方法で変化する弁を含み得る。いくつかの実施形態では、差圧調整デバイスは、例えば、患者または医療サービス提供者によって、能動的に制御され得る。別の実施形態では、1つまたはそれを上回る圧力トランスデューサを採用する、圧力依存性閉ループが、説明される。圧力トランスデューサは、1つまたはそれを上回る心室、LAP、RAPにおける絶対圧力、またはこれらの2つもしくは任意の2つの心室の間の差圧を測定し得る。インプラントは、外部伝送ユニットから無線で制御され得る。弁位置付けに応答する血流変化が、遠隔で監視され得る。
【0090】
Levi, et al.への米国特許第9,681,948 B2号は、心房間シャントデバイスのアンカ部分上に搭載されるセンサを有し得る、心房中隔を通した血流のための開口部を伴う医療インプラントを説明している。係留デバイスは、オリフィスを閉鎖するように適合されるフラップまたは他のユニットを含み得、フラップの開放および閉鎖は、センサ出力に応答して制御され得る。センサは、デバイスに隣接して位置し得る、またはデバイスから遠隔であり得る。動作エネルギーが、埋設されたバッテリによって、および/または外部源によって、コントローラに提供され得る。いくつかの実施形態では、アンカデバイスが、ペースメーカまたはICDに結合され、その電源を共有する。例えば、フラップの開放は、心室のうちの1つまたはそれを上回るものにおける絶対圧力に、1つまたはそれを上回る心室における温度に、患者の血圧に、および/または患者の血液酸素含有量に依存し得る。制御はまた、例えば、同期ペーシングにおいて、ペースメーカによって使用されるパラメータのうちのいずれかに依存し得る。センサは、心房中隔壁の片側上に位置する、シャントのアンカ部分のペタルまたは複数のペタル上に搭載され得る一方、第2のセンサが、壁の他方の側上に位置する、ペタル上に搭載される。したがって、センサの両方からの読取値が、読み取られ、心房中隔の反対側上の相対的条件を判定するために比較され得る。本特許は、任意のタイプのセンサが、使用され得、より多いまたはより少ないセンサが、シャントデバイスのアンカ部分上に搭載され得ることを説明している。例えば、センサは、1つまたはそれを上回る圧力センサ、酸素センサ、Bナトリウム利尿ペプチド(BNP)センサ、毒性成分のセンサ、流動センサ、および/またはpHセンサを含み得る。
【0091】
両方ともNitzan et al.への米国特許第8,696,611 B2号および第9,707,382 B2号は、2つの心房室の間の血圧を調整するためのディアボロ形シャントの実施形態を説明している。それらの特許は、心房間圧力差が、弁尖開口角度によって測定され得るという実験的証拠を含み、角度が、超音波等の撮像モダリティによって判定され得ることを仮定している。圧力を定量化することによって、医師は、次いで、患者を安定させ、(肺)浮腫を防止することに役立つように、投薬を調節し得る。
【0092】
McNamara et al.への米国特許第10,413,284 B2号は、通路を画定する、円筒形コア区画と、心房中隔の第1の表面に係合するように適合される、第1の環状フランジと、心房中隔の第2の表面に係合するように適合される、第2の環状フランジと、移動可能フラップに結合される本体要素に搭載され、心房中隔の開口部を形成し、左心房と右心房との間で血液が流動することを可能にする、モータとを備える、患者における心臓条件を治療するためのシステムを説明している。本特許は、システムがさらに、血液化学、血圧、温度、患者の心臓の電気的特性、血液の化学的特性、および血液中のバイオマーカのうちの少なくとも1つに関連するデータを検出するためのセンサを含むことを説明している。本特許はさらに、システムが、センサと通信するマイクロプロセッサを含み得ることを説明している。心臓と関連付けられる複数の生理学的パラメータを検出するためのセンサが、説明されている。そのシステムは、センサデータを表示し、療法を患者に送達するためのデバイスを制御し、データを臨床医に提示し、センサによって取得された生理学的データに基づいて、薬物の投与等の適切な治療を推奨するための能力を含み得る、遠隔監視施設と通信し得る。
【0093】
前述を考慮して、既知のシステムおよびデバイスの短所を克服し、長期開存性を提供し、加えて、患者および担当医が患者の治療および/または投薬の過程を修正することを可能にするために使用され得る、心内生理学的パラメータに関する実用的データを提供し得る、心房間シャントを提供することが、有利であろう。
【0094】
故に、実証された有益な流動特性および長期開存性を有する心房間シャントを提供し、心内生理学的パラメータに関する実用的データを提供する1つまたはそれを上回るセンサを含み、患者および担当医が患者の治療および/または投薬の過程を修正することを可能にする、心房間シャントシステムおよび方法の必要性が、存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0095】
【非特許文献1】Pretorious V, et al.「An implantable left atrial pressure sensor lead designed for percutaneous extraction using standard techniques」 Pacing Clin Electrophysiol 2013 May;36(5):570-7
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0096】
本発明は、心血管および心肺障害、具体的には、HFおよびPAHを伴う患者に関する治療ならびに転帰を改善するために、センサを組み込む改良された心房間シャントを作製および使用するための装置ならびに方法を説明する。より具体的には、組み込まれた生理学的センサを有する心房間シャントが、心不全および肺高血圧症を含む、心血管症候群を監視および治療するために提供される。本発明の原理によると、1つまたはそれを上回るセンサは、シャントの管腔表面に、またはその中に直接添着されるか、もしくはシャント管腔に対して離間関係において配置される支持構造上に搭載されるかのいずれかで、心房間シャント内の生理学的パラメータを測定するためにシャントに添着され、1つまたはそれを上回るセンサは、パンヌス形成または心臓壁運動アーチファクトを殆どもしくは全く受けない場所に配置される。
【0097】
本開示に議論されるように、埋込可能心房間シャントとの併用のために好適なセンサは、例証として、圧力、血流、または血液速度を測定する。提示される実施形態では、センサという用語が、その環境内の事象または変化を検出することを含む、任意の好適なタイプの環境現象を測定するためのデバイスとして、その最も一般的な意味で使用されることが、当業者によって理解されるべきである。より具体的には、本発明のシャントにおける使用のために好適な埋込可能センサは、重要となる生理学的パラメータを示す、および/または、限定ではないが、流動、速度、加速度、pH、酸素含有量または飽和度、もしくはB型ナトリウム利尿ペプチド等の化学種濃度を含む、具体的療法的作用の判定を可能にするものである。
【0098】
特に、本発明によるデバイスを構築する際の使用のためによく適している心房間シャントは、Nitzan et al.への米国特許第9,707,382 B2号、第9,980,815 B2号、および第10,639,459 B2号、Eigler et al.への米国特許第10,076,403 B1号および第10,251,740 B2号ならびに米国特許出願公開第US 2019/008628 A1号および第US 2019/0262118 A1号、ならびにNae et al.への米国特許出願公開第US 2019/0110911 A1号(そのそれぞれの全体は、全て本明細書に参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されている。これらのシャントは、カプセル化表面を有することを含む、設計幾何学形状および生体材料性質の好適な組み合わせを有することによって、既知のシャントの短所のうちの多くを克服する。具体的には、それらは、1.埋込後治癒周期の間、パンヌスと称される、新生心内膜組織内部成長に起因するシャントの狭化または閉鎖の被りやすさを低減させ、2.右心房から左心房への奇異性血栓塞栓の潜在性および結果を低減させ、3.身体から塞栓形成または完全に治癒された埋込されたシャントを非外科的に除去するための能力を促進し、4.真のオリフィスサイズに対するシャント有効オリフィスサイズを改良し、5.シャント中隔占有面積を低減させ、中隔壁運動への干渉を低減させ、中隔および隣接する心臓構造に対するシャント衝突を最小限にし、シャント展開成功を簡略化および改良し、経中隔ルートを介した左心房への進入を要求する手技のための隣接する中隔アクセスを可能にする。
【0099】
既知の心房間シャントの前述の短所を考慮して、本発明の原理に従って構築されるセンサを有するシャントは、長い時間周期にわたって、管腔開存性を維持する、より耐久性のある構成を提供する。本発明のシャントは、心房圧および流速の監視を可能にし、それによって、医師が、患者の投薬計画、またはいくつかの実施形態では、シャントの流動特性を調節し、奇異性塞栓症のリスクを低減させながら、心房間血液体積を再分配し、圧力不均衡を調節することを可能にする。埋込可能センサは、心血管および心肺条件を監視、検出、ならびに診断するために提供される。センサデータは、RFテレメトリまたは誘導結合を介して、外部患者ディスプレイデバイスに持続的またはエピソード毎に通信され、投薬療法を変更または調節する、効用が示されたデバイス療法を追加する、もしくはシャントの生理学的特性を改変するための手技を実施するためのガイドとして使用されてもよい。埋込可能センサから通信されるデータはまた、電話またはインターネット等の好適な広域ネットワークを介して、患者の医師に暗号化フォーマットにおいて中継されてもよい。
【0100】
HFおよびPAHを治療する効用に関して、本発明のシャントの使用の予想される転帰は、向上された安全性、改良された埋込手技の成功、長期デバイス性能および臨床効能を含み、結果として生じる症状、運動能力、生活の質における改善、および入院ならびに死亡をもたらす臨床代償不全のエピソードの低減を伴う。また、本発明のシャントは、僧帽弁修復、左心耳閉塞、および肺静脈アブレーションによる心房細動の治療等の他の療法的手技のための左心房へのアクセスを妨害し得る、心房間中隔に近接して別個に埋込されたシャントおよびセンサを使用することと関連付けられる悪影響を低減させるであろう。
【0101】
本発明の原理によると、本発明のシャントは、HF患者に、他の利益の中でもとりわけ、左心房圧における低減を提供し、肺鬱血を緩和し、肺動脈圧を低下させる。本発明のデバイスは、心房中隔を横断する、好ましくは、卵円窩を通した、ユニットとして、または単一の手技の一部としての埋込のために構成される。代替として、デバイスのシャント部分は、最初に埋込され、その後直ちに、または臨床的に効用が示されたときのある規定されない後の時間に、センサコンポーネントを追加もしくはアクティブ化する選択肢を伴ってもよい。
【0102】
特に、本発明の原理に従って構築されるシャントは、通常、左心房から左心室に流動する、血液の一部を移送し、これを代わりに右心房に迂回させ、それによって、LV拡張終期充填体積を緩やか低減させることによって、LAPを制御するように設計される。LAPが上昇されると、LVは、その拡張期コンプライアンス曲線のより急峻な部分に作用する。故に、LV拡張終期体積における緩やかな低減でさえ、LV拡張終期圧力における実質的低下につながり得る。その低減は、LAP、肺静脈圧、および肺動脈圧を含む、上流充填圧における同一基準の低減を引き起こす。これらの圧力低減の予想される臨床結果は、肺鬱血性症状を緩和またはさらには防止することが予期される。より少ないシャントを伴う、より小さい心房間勾配において、LV体積および充填圧に対する効果は、これが無視可能になるまで、漸進的により小さくなる。心房間シャントは、主として、LV充填に影響を及ぼし、後負荷には影響を及ぼさないため、拡張終期圧力を低下させることに対する有益な効果が、LV収縮期機能にかかわらず、低減された駆出率と関連付けられる心不全(HFrEF)を伴う患者および駆出率が保たれた心不全(HFpEF)を伴う患者に関して予期される。
【0103】
本発明の一側面によると、シャント部分特性は、既知のオリフィス-プレートメッシュタイプシャントの短所および限定を克服するように最適化される。故に、本発明のデバイスのシャント部分は、上記に組み込まれたNitzan et al.、Eigler et al.、およびNae et al.の特許および公開済み出願に説明されるシャントを採用する。さらに、本発明によると、1つまたはそれを上回るセンサが、センサが、シャント動作から実質的に減殺されず、シャントの送達性に干渉せず、後続介入手技のための左心室へのシャントを介したアクセスを妨げないように、直接、または支持構造を介してのいずれかで、シャントに取り付けられる。
【0104】
本発明は、LAP、RAP、シャントオリフィスを通した血流または血流速度、もしくは他の心内パラメータのうちの1つまたはそれを上回るものを測定するために、センサを組み込むシャントを提供する。シャント流動の中断を最小限にし、最も小さい達成可能な寸法および中隔占有面積を維持し、現在の最良なシャント展開技法と調和し、確実な係留システムを利用し、波形アーチファクトおよび外来的センサドリフトを低減させるためのシャント設計幾何学形状ならびに生体材料を使用し、シャントの設定において投薬を操作するためにセンサデータを最良に利用するために、関連付けられるシャントとともにシームレスに機能する、センサ係留、格納、展開手技、および使用の方法が、提供される。現在の独立型心内センサと異なり、本発明の好ましい実施形態はまた、療法を誘導し得る重要な生理学的パラメータである、シャント流動特性の測定を可能にする。
【0105】
様々な心臓病理を伴う対象が、本発明のシャントを用いて治療され得、そこから利益を享受し得る。例えば、HFを伴う対象において、LAPおよびLVEDPの改善された制御は、限定ではないが、肺鬱血の減少、肺動脈圧の減少、LVEFの増加、短縮率の増加、および収縮期におけるLV内径の減少を含む、様々な利益を提供し得る。有益に治療され得る他の心臓病理は、付随の急性HFの有無を問わない大規模な心筋梗塞を含み、これは、心筋梗塞の間に、またはその直後に本デバイスを展開し、有害な心筋リモデリングおよび難治性HFの発症を低減させることによって、治療され得る。急性ウイルス性心筋炎を伴う患者も、同様に助けられ得る。本発明のシャントはまた、体外式膜型人工肺(ECMO)デバイスの必要性を低減させる、またはそれからの離脱を支援する、もしくは心臓移植の緊急心室補助デバイスの必要性を低減させ得る。マイトラクリップまたは他の類似する療法を用いた僧帽弁修復を有する患者は、残留するHFをさらに管理することに役立つために、経中隔交差の部位に本発明のシャントを設置することによって、利益を享受し得る。類似する利益が、心房細動に関する肺静脈アブレーションを受ける患者に関して存在し得る。本発明の原理に従って構築されるシャントはまた、左側心臓機能障害に起因する残留するHFを管理するために使用されてもよく、これは、洞調律を維持することに同様に役立ち得る。特発性である、または関連付けられる原因からであるかにかかわらず、PAHを伴う患者は、RVを除負荷する右から左へのシャントおよびRV前負荷ならびに後負荷に影響を及ぼす投薬のセンサ誘導調節の二重の効果から利益を享受し得る。
【図面の簡単な説明】
【0106】
本発明のさらなる特徴が、例証のためにのみ意図され、本開示の範囲を限定するように意図されない、詳細な説明、請求項、および図面から明白となるであろう。
【0107】
【
図1A】
図1A-1Cは、それぞれ、本発明の原理に従って構築される、デバイスにおける使用のための好適なシャント構造の好ましい実施形態の斜視図、端面図、および側面図である。
【
図1B】
図1A-1Cは、それぞれ、本発明の原理に従って構築される、デバイスにおける使用のための好適なシャント構造の好ましい実施形態の斜視図、端面図、および側面図である。
【
図1C】
図1A-1Cは、それぞれ、本発明の原理に従って構築される、デバイスにおける使用のための好適なシャント構造の好ましい実施形態の斜視図、端面図、および側面図である。
【0108】
【
図2】
図2は、そのポリマーカプセル化内にカットアウトを有し、送達システムとの係合を促進する、本発明における使用のために好適なシャントの代替実施形態の側面図である。
【0109】
【
図3】
図3は、患者ディスプレイデバイスおよび/または患者の医師と通信する無線センサを有するシャントを含む、HFおよびPAH等の心血管疾患を患う患者を監視および治療するための本発明のシステムの概略図である。
【0110】
【
図4A】
図4Aおよび5Bは、それぞれ、同軸無線LAPセンサを有する、本発明の原理に従って構築される、シャントの側面図および端面図である。
【
図4B】
図4Aおよび5Bは、それぞれ、同軸無線LAPセンサを有する、本発明の原理に従って構築される、シャントの側面図および端面図である。
【0111】
【
図5A】
図5Aおよび5Bは、それぞれ、非同軸無線LAPセンサを有する、本発明のシャントの代替実施形態の側面図および端面図である。
【
図5B】
図5Aおよび5Bは、それぞれ、非同軸無線LAPセンサを有する、本発明のシャントの代替実施形態の側面図および端面図である。
【0112】
【
図6A】
図6Aおよび6Bは、それぞれ、電子同軸導線を伴う同軸LAPセンサを有する、シャントのさらなる代替実施形態の側面図および端面図である。
【
図6B】
図6Aおよび6Bは、それぞれ、電子同軸導線を伴う同軸LAPセンサを有する、シャントのさらなる代替実施形態の側面図および端面図である。
【0113】
【
図7A】
図7A-7Fは、それぞれ、交換可能センサを有する、本発明のシャントの別の実施形態の側面図および端面図である。
【
図7B】
図7A-7Fは、それぞれ、交換可能センサを有する、本発明のシャントの別の実施形態の側面図および端面図である。
【
図7C】
図7A-7Fは、それぞれ、交換可能センサを有する、本発明のシャントの別の実施形態の側面図および端面図である。
【
図7D】
図7A-7Fは、それぞれ、交換可能センサを有する、本発明のシャントの別の実施形態の側面図および端面図である。
【
図7E】
図7A-7Fは、それぞれ、交換可能センサを有する、本発明のシャントの別の実施形態の側面図および端面図である。
【
図7F】
図7A-7Fは、それぞれ、交換可能センサを有する、本発明のシャントの別の実施形態の側面図および端面図である。
【0114】
【
図8A】
図8A-8B、9A-9B、および10A-10Bは、それぞれ、シャント被覆物の複数の層の間にセンサを組み込むための代替構成を描写する、本発明のシャントの3つの実施形態の側面図および端面図である。
【
図8B】
図8A-8B、9A-9B、および10A-10Bは、それぞれ、シャント被覆物の複数の層の間にセンサを組み込むための代替構成を描写する、本発明のシャントの3つの実施形態の側面図および端面図である。
【
図9A】
図8A-8B、9A-9B、および10A-10Bは、それぞれ、シャント被覆物の複数の層の間にセンサを組み込むための代替構成を描写する、本発明のシャントの3つの実施形態の側面図および端面図である。
【
図9B】
図8A-8B、9A-9B、および10A-10Bは、それぞれ、シャント被覆物の複数の層の間にセンサを組み込むための代替構成を描写する、本発明のシャントの3つの実施形態の側面図および端面図である。
【
図10A】
図8A-8B、9A-9B、および10A-10Bは、それぞれ、シャント被覆物の複数の層の間にセンサを組み込むための代替構成を描写する、本発明のシャントの3つの実施形態の側面図および端面図である。
【
図10B】
図8A-8B、9A-9B、および10A-10Bは、それぞれ、シャント被覆物の複数の層の間にセンサを組み込むための代替構成を描写する、本発明のシャントの3つの実施形態の側面図および端面図である。
【0115】
【
図11】
図11は、LAPセンサを有する、本発明の原理に従って構築される、非対称シャントを図示する。
【0116】
【
図12A】
図12A-12B、13A-13B、および14A-14Bは、それぞれ、同軸無線RAPセンサを有する、3つの本発明のシャントの側面図および端面図である。
【
図12B】
図12A-12B、13A-13B、および14A-14Bは、それぞれ、同軸無線RAPセンサを有する、3つの本発明のシャントの側面図および端面図である。
【
図13A】
図12A-12B、13A-13B、および14A-14Bは、それぞれ、同軸無線RAPセンサを有する、3つの本発明のシャントの側面図および端面図である。
【
図13B】
図12A-12B、13A-13B、および14A-14Bは、それぞれ、同軸無線RAPセンサを有する、3つの本発明のシャントの側面図および端面図である。
【
図14A】
図12A-12B、13A-13B、および14A-14Bは、それぞれ、同軸無線RAPセンサを有する、3つの本発明のシャントの側面図および端面図である。
【
図14B】
図12A-12B、13A-13B、および14A-14Bは、それぞれ、同軸無線RAPセンサを有する、3つの本発明のシャントの側面図および端面図である。
【0117】
【
図15A】
図15A-15Dは、それぞれ、2つの生理学的パラメータを測定するセンサを有する、本発明のシャントの側面図、シャントを通した速度の算出的流動動的プロファイルのグラフ、計算された速度および圧力勾配を伴うシャントを通した連続波ドップラ流速のグラフ、ならびにRA圧力波形のトレーシングである。
【
図15B】
図15A-15Dは、それぞれ、2つの生理学的パラメータを測定するセンサを有する、本発明のシャントの側面図、シャントを通した速度の算出的流動動的プロファイルのグラフ、計算された速度および圧力勾配を伴うシャントを通した連続波ドップラ流速のグラフ、ならびにRA圧力波形のトレーシングである。
【
図15C】
図15A-15Dは、それぞれ、2つの生理学的パラメータを測定するセンサを有する、本発明のシャントの側面図、シャントを通した速度の算出的流動動的プロファイルのグラフ、計算された速度および圧力勾配を伴うシャントを通した連続波ドップラ流速のグラフ、ならびにRA圧力波形のトレーシングである。
【
図15D】
図15A-15Dは、それぞれ、2つの生理学的パラメータを測定するセンサを有する、本発明のシャントの側面図、シャントを通した速度の算出的流動動的プロファイルのグラフ、計算された速度および圧力勾配を伴うシャントを通した連続波ドップラ流速のグラフ、ならびにRA圧力波形のトレーシングである。
【0118】
【
図16A】
図16A-16Cは、それぞれ、2つの生理学的パラメータを測定するように配列される本発明のシャントの代替実施形態の側面図、シャントを通したLAからRAへの流動のカラー流動ドップラ2D心エコー画像の概略表現、および計算された速度および圧力勾配を伴うシャントを通した連続波ドップラ流速のグラフである。
【
図16B】
図16A-16Cは、それぞれ、2つの生理学的パラメータを測定するように配列される本発明のシャントの代替実施形態の側面図、シャントを通したLAからRAへの流動のカラー流動ドップラ2D心エコー画像の概略表現、および計算された速度および圧力勾配を伴うシャントを通した連続波ドップラ流速のグラフである。
【
図16C】
図16A-16Cは、それぞれ、2つの生理学的パラメータを測定するように配列される本発明のシャントの代替実施形態の側面図、シャントを通したLAからRAへの流動のカラー流動ドップラ2D心エコー画像の概略表現、および計算された速度および圧力勾配を伴うシャントを通した連続波ドップラ流速のグラフである。
【0119】
【
図17A】
図17A-17Cは、それぞれ、本発明のシャントのシャント部分の幾何学的特徴の図示、流動を測定するためのセンサの場所および動作モードを描写する概略図、ならびにペーシング導線の包含を描写する概略図である。
【
図17B】
図17A-17Cは、それぞれ、本発明のシャントのシャント部分の幾何学的特徴の図示、流動を測定するためのセンサの場所および動作モードを描写する概略図、ならびにペーシング導線の包含を描写する概略図である。
【
図17C】
図17A-17Cは、それぞれ、本発明のシャントのシャント部分の幾何学的特徴の図示、流動を測定するためのセンサの場所および動作モードを描写する概略図、ならびにペーシング導線の包含を描写する概略図である。
【0120】
【
図18】
図18A-18Cは、本発明の原理に従って構築される、シャントの算出的流動力学圧力場を示す、グラフであり、
図18Cは、歪みゲージセンサを含む、本発明のシャントを示す。
【0121】
【
図19A】
図19Aおよび19Bは、それぞれ、縦方向に切断され、平坦構成に広げられる、本発明のシャントの平面図と、複数の円周方向に離間されるセンサを有する、シャントの端面図とである。
【
図19B】
図19Aおよび19Bは、それぞれ、縦方向に切断され、平坦構成に広げられる、本発明のシャントの平面図と、複数の円周方向に離間されるセンサを有する、シャントの端面図とである。
【0122】
【
図20A】
図20A-20Cは、それぞれ、心不全を伴う患者におけるLAP傾向および医療療法の変化に対する応答を示す、埋込されたLAPセンサによって発生される、例示的IEGMおよび圧力波形である。
【
図20B】
図20A-20Cは、それぞれ、心不全を伴う患者におけるLAP傾向および医療療法の変化に対する応答を示す、埋込されたLAPセンサによって発生される、例示的IEGMおよび圧力波形である。
【
図20C】
図20A-20Cは、それぞれ、心不全を伴う患者におけるLAP傾向および医療療法の変化に対する応答を示す、埋込されたLAPセンサによって発生される、例示的IEGMおよび圧力波形である。
【0123】
【
図21A】
図21A-21Cは、それぞれ、心不全を伴う患者におけるLAP傾向および構造的心疾患介入ならびに医療療法の変化に対する応答を示す、埋込されたLAPセンサによって発生される、例示的IEGMおよび圧力波形である。
【
図21B】
図21A-21Cは、それぞれ、心不全を伴う患者におけるLAP傾向および構造的心疾患介入ならびに医療療法の変化に対する応答を示す、埋込されたLAPセンサによって発生される、例示的IEGMおよび圧力波形である。
【
図21C】
図21A-21Cは、それぞれ、心不全を伴う患者におけるLAP傾向および構造的心疾患介入ならびに医療療法の変化に対する応答を示す、埋込されたLAPセンサによって発生される、例示的IEGMおよび圧力波形である。
【0124】
【
図22】
図22は、埋込された肺動脈圧センサを伴う心不全患者における生理学的パラメータ傾向および心房間シャントの埋込ならびに医療療法の変化に対する応答の例示的グラフである。
【0125】
【
図23】
図23は、センサの電気コンポーネントが、シャントアンカの保定部材上に配置される、本発明のシャントの実施形態である。
【0126】
【
図24A】
図24A-24Cは、それぞれ、シャントの流動管腔内に添着されるセンサを有する、生体適合性被覆物を用いて被覆されるワイヤ編組から形成される、心房内シャントの端面図および側面図である一方、
図24Cは、心房中隔における
図24A-24Bのシャントの展開を描写する。
【
図24B】
図24A-24Cは、それぞれ、シャントの流動管腔内に添着されるセンサを有する、生体適合性被覆物を用いて被覆されるワイヤ編組から形成される、心房内シャントの端面図および側面図である一方、
図24Cは、心房中隔における
図24A-24Bのシャントの展開を描写する。
【
図24C】
図24A-24Cは、それぞれ、シャントの流動管腔内に添着されるセンサを有する、生体適合性被覆物を用いて被覆されるワイヤ編組から形成される、心房内シャントの端面図および側面図である一方、
図24Cは、心房中隔における
図24A-24Bのシャントの展開を描写する。
【0127】
【
図25A】
図25Aおよび25Bは、シャントアンカの中間領域が、センサの回路要素としての役割を果たすコイル構造を有する、本発明のシャントのさらなる代替実施形態を図示する。
【
図25B】
図25Aおよび25Bは、シャントアンカの中間領域が、センサの回路要素としての役割を果たすコイル構造を有する、本発明のシャントのさらなる代替実施形態を図示する。
【0128】
【
図26A】
図26A-26Bは、センサが、シャントアンカにおいて形成されるレーザ切断フレーム要素において配置される、
図19Aおよび19Bのシャントの代替実施形態を図示する。
【
図26B】
図26A-26Bは、センサが、シャントアンカにおいて形成されるレーザ切断フレーム要素において配置される、
図19Aおよび19Bのシャントの代替実施形態を図示する。
【0129】
【
図27】
図27は、シャントアンカの中間領域が、センサの回路要素としての役割を果たすコイル構造を有する、本発明のシャントのさらなる代替実施形態を図示する。
【0130】
【
図28】
図28-30は、センサが、シャントアンカにおける種々の領域に位置する、本発明のシャントの代替実施形態を図示する。
【
図29】
図28-30は、センサが、シャントアンカにおける種々の領域に位置する、本発明のシャントの代替実施形態を図示する。
【
図30】
図28-30は、センサが、シャントアンカにおける種々の領域に位置する、本発明のシャントの代替実施形態を図示する。
【0131】
【
図31A】
図31A-31Eは、センサの断面プロファイルが変動する、本発明のシャントの代替実施形態を図示する。
【
図31B】
図31A-31Eは、センサの断面プロファイルが変動する、本発明のシャントの代替実施形態を図示する。
【
図31C】
図31A-31Eは、センサの断面プロファイルが変動する、本発明のシャントの代替実施形態を図示する。
【
図31D】
図31A-31Eは、センサの断面プロファイルが変動する、本発明のシャントの代替実施形態を図示する。
【
図31E】
図31A-31Eは、センサの断面プロファイルが変動する、本発明のシャントの代替実施形態を図示する。
【0132】
【
図32A】
図32A-32Dは、センサの断面プロファイルが変動し、テレメトリコイルを含む、本発明のシャントの別の代替実施形態を図示する。
【
図32B】
図32A-32Dは、センサの断面プロファイルが変動し、テレメトリコイルを含む、本発明のシャントの別の代替実施形態を図示する。
【
図32C】
図32A-32Dは、センサの断面プロファイルが変動し、テレメトリコイルを含む、本発明のシャントの別の代替実施形態を図示する。
【
図32D】
図32A-32Dは、センサの断面プロファイルが変動し、テレメトリコイルを含む、本発明のシャントの別の代替実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0133】
本発明の詳細な説明
心房間血液体積を再分配し、左心房圧を低減させるための心房間シャントが、提供され、これは、1つまたはそれを上回る生理学的センサを組み込み、HFまたは上昇された左心房圧と関連付けられる他の障害を患っている対象を治療する際に有利であり得る。本発明のシャントの好ましい実施形態は、砂時計または「ディアボロ」形ステントもしくはフレームを有し得る、アンカと、フレームを合成生体適合性材料内にカプセル化することによって形成される、導管とを含む。シャントは、心房中隔、好ましくは、卵円窩内に形成される通路内に固着して入れられるように構成され、左心房内の血圧が右側のものを超えると、左心房から右心房への一方向血流を提供し、右心房内の血圧が左側におけるものを超えると、右心房から左心房への血流の逆転を提供する。本発明によると、1つまたはそれを上回る生理学的センサは、アンカに結合される、1つまたはそれを上回る支持支柱上に配置される、もしくは生体適合性材料に添着される。
【0134】
ここで
図1A-1Cを参照すると、参照することによって本明細書に組み込まれる、本発明の譲受人に譲渡された特許および出願のうちのいずれかに説明されるように構成され得る、シャント10の例証的実施形態が、説明される。シャント10は、概して、3つの領域、すなわち、漸拡または漏斗形端部領域14と、漸拡または漏斗形端部領域18と、端部領域14と18との間に配置される、縮径領域16とを有する、アンカ12を備える。縮径領域16は、心房中隔、好ましくは、卵円窩内に形成される穿刺口等の開口内に入るように構成される。漸拡端部領域14および18は、それぞれ、埋込されると、心房中隔の右および左側に部分的に係合し、それを越えて突出するように構成される。シャント10はさらに、アンカ12を、アンカ12の全てまたは実質的に全てを被覆し、管腔または内部通路22を画定する導管を形成する、生体適合性材料20でカプセル化することによって例証的に形成される、導管を備える。
【0135】
漸拡領域14は、右心房内に配置されるように構成される一方、漸拡領域18は、左心房内に配置されるように構成される。一実施形態では、アンカ12は、円周方向支柱26a-26eによって相互接続される、縦方向支柱24を含む。縦方向支柱24は、拡張の間、アンカ12の短縮を阻止または防止し得る一方、円周方向支柱26a-26eにおける正弦波または蛇行屈曲は、アンカが、
図1A-1Cに図示されるように、半径方向に圧潰された略円筒形送達状態と拡張された漸拡展開状態との間で遷移することを可能にする。図に描写されるように、導管が、縮径部16、漸拡端部領域18、および漸拡端部領域14の全体をカプセル化する、生体適合性材料20によって形成される。生体適合性材料20は、好ましくは、好適な生体適合性接着剤を使用して、または焼結技法を使用してアンカを生体適合性材料の内側層と外側層との間に狭入することによって、アンカ12に添着される。
【0136】
好ましい実施形態では、アンカ12は、超弾性合金等の自己拡張式材料から成り、円周方向支柱26a-26eは、カプセル化20とともに、管腔22が、漸拡端部区分18(左心房内)と漸拡端部区分14(右心房内)との間の略積層流動を可能にする、輪郭を有するように、展開されると、所定の量だけ拡張するように処理される。正弦波または蛇行屈曲28は、全ての円周方向支柱が、円周方向支柱26aと同相であるようなものである。本配列は、シャント送達のために使用される、拘束管、例えば、導入器シースの中にこれを後退させる等、半径方向圧潰形状に圧着するように、より少ない力が漸拡端部領域18に印加されることを要求するシャントを提供する。代替として、漸拡端部領域14上の円周方向支柱の正弦波または蛇行屈曲28は、正弦波または蛇行屈曲が、圧潰送達状態または展開状態のいずれかにおいて、縦方向支柱24の端部を越えて延在しないように、好ましくは、縮径領域16および漸拡端部領域18における正弦波または蛇行屈曲28と180度位相がずれている。
【0137】
上記に組み込まれた特許および公開済み出願に説明されるように、アンカ12は、ニチノール、チタン合金、コバルトクロム合金、MP35N、316ステンレス鋼、L605、Phynox/Elgiloy、白金クロム、または当業者に公知であるような他の生体適合性金属から作製される、生体適合性金属フレームワークまたはレーザ切断された中実金属管を備えてもよい。好ましい実施形態は、超弾性自己拡張式合金を採用するが、代替として、アンカ12の別の好ましい実施形態は、塑性的に変形可能な材料、例えば、バルーン拡張可能材料を備えてもよい、または温度変化に応答し、収縮送達状態と拡張展開状態との間で遷移する、形状記憶合金であってもよい。当業者によって認識されるであろうように、ニッケル-チタン合金等のある合金は、製造処理技法に応じて、超弾性または形状記憶性質を呈し得、性質のいずれかのセットが、有利なこととして、本発明の原理に従って構築される、シャントにおける使用のためにアンカにおいて採用されてもよい。
【0138】
一好ましい実施形態では、アンカは、ニチノールが、体温において超弾性オーステナイト相にあるように、理想的には、5~20℃の範囲内で体温を優に下回る、オーステナイト仕上げ温度Afを伴うニチノールから作製される。さらに、アンカは、「Devices with dimensions that can be reduced and increased in vivo, and methods of making and using the same」と題された、同時係属中の本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第16/875,652号(本明細書に参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に説明されるように、縮径領域16において調節可能な直径を有してもよい。差動熱処理によって、漸拡領域14および18の隣接する部分の中にもまたある距離だけ延在され得る、縮径領域16上を中心とするアンカの領域は、例えば、45~60℃の範囲内で体温を上回る、オーステナイト仕上げ温度Afを有する。体温において、アンカの中間部分は、主として、または本質的に、形状記憶を有するマルテンサイト相にあり、すなわち、バルーン拡張によって等、より大きい直径に機械的に変形可能であるが、生理食塩水等の暖められた液体を用いた洗流またはRF誘導等の他の手段による加熱のいずれかによる、Afを上回る温度への過渡加熱の印加によって、その元の形状に戻ることが可能であろう。漸拡端部領域14および18は、5~20℃の範囲内のより低いAfを有し、したがって、主として、または本質的に、オーステナイト相にあり、体温において超弾性のままである。
【0139】
アンカの材料に適用される表面仕上げは、距離、厚さ、組成、および/またはパンヌス形成ならびに血栓形成の成長パターンを制御するように選択されてもよく、例えば、アンカ12の外面は、電解研磨されてもよい。アンカは、生体適合性ポリマーまたはヘパリン等の生物学的分子もしくはパンヌス組織または血栓形成を阻止もしくは防止する他の好適なコーティングを用いてコーティングされてもよい。
【0140】
本発明の原理によると、縮径領域16ならびに漸拡端部領域14および18の半径方向寸法、軸方向長さ、輪郭は、好ましくは、埋込されると、シャントの内部を通して積層流動を提供し、渦流の形成を低減させ、したがって、血栓形成を阻止し、縮径領域を妨害し得る、パンヌス形成を阻止し、縮径領域の外部の周囲の組織内部成長を助長し、シャントを遊走に対して十分に固着させ、生理学的圧力差における左心房と右心房との間の所望の血流率を提供し、逆行性奇異性塞栓症を阻止または防止するように選択される。
【0141】
生体適合性材料20は、アンカに適用されると、導管を形成し、好ましくは、経中隔送達に続いてシャントを用いて中隔を交差する場所において、シャントが心房間中隔に接触する、縮径領域の外部の周囲を除いて、0.6mmを上回る組織厚を有する、パンヌス物質の貫壁性かつ移行性の内部成長を防ぐ。縮径領域の外面上で、連続する漸拡領域の中に延在すると、パンヌス組織厚は、0.6mmを上回り得る。
【0142】
Clowes et al.「Mechanisms of arterial graft healing: Rapid transmural capillary ingrowth provides a source of intimal endothelium and smooth muscle in porous PTFE prostheses」 Am. J. Pathology 1986;123;220-230(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されるように、60ミクロン結節間距離を有する、実験的ePTFE血管グラフトは、増殖する平滑筋細胞および肉芽組織による急速な貫壁性浸潤を発展させることが観察された一方、30ミクロン結節間距離を伴うePTFEグラフトは、グラフト管腔の中に隣接する動脈から数ミリメートルのみ前進した、ゆっくりとのみ成長する内皮の薄層を発展させることが観察された。いくつかの心房中隔欠損症(「ASD」)閉塞デバイス上で採用される、多孔性ポリエステル布地被覆物は、そのような材料が穿通する線維組織で完全にメッシュ状にされた状態になるため、本発明のシャントにおける使用のための不良な選択肢であろう。シャント10が、例えば、電解研磨されたニチノールから作製される、またはそれを含む、アンカ12を備え、生体適合性材料20が、30ミクロンまたはそれを下回る結節間距離を有する、不活性ポリマー、例えば、ePTFE、または(非延伸)PTFEである、もしくはそれを含むとき、パンヌスは、卵円窩(「FO」)組織との接触の部位から3mmの距離だけ移行的に延在した後、約0.6mm以下の厚さまで成長し得ることが予期され、正常ヒツジ動物モデルにおいて実証された。そのような場合では、導管の内部管腔は、縮径部におけるその元の直径から合計1.2mmを越えて狭化しないことが予期される。本開示の目的のために、用語「管腔狭化」は、25%を上回る最小のシャント管腔直径の喪失として定義されるものとし、用語「管腔閉塞」は、血流に対する管腔の全体的遮断(管腔直径の100%喪失)として定義される。本願に使用されるように、「約」、「おおよそ」、および「実質的に」等の用語は、寸法と併せて使用されるとき、別様に記載されない限り、記載される値の±20%以内を意味することを意図している。
【0143】
また別の好ましい実施形態では、正常ヒツジ動物モデルにおいて、シャント10が、例えば、電解研磨されたニチノールから作製される、またはそれを含む、アンカ12を備え、生体適合性材料20が、不活性ポリマー、例えば、ePTFEである、またはそれを含むとき、縮径領域における増殖する平滑筋細胞および肉芽組織が、ポリマーの結節間空間の中に浸潤するが、ポリマーに化学的に結合しないことが実証された。シャントは、したがって、増殖する組織の機械的干渉によって定位置に保持され、したがって、これを塞栓に対して抵抗性にし得る。それにもかかわらず、生体適合性材料20への組織の付着は、好適なサイズの導入器シースの中にシャントを引き込むために使用され得る、シャントデバイスの縮径領域の周囲に設置される血管アンプラッツ単一ループスネアによって提供されるように、適正な後退力で克服されることができる。このように、
図1A-1Cおよび2に説明されるもの等のシャントは、それらが最大6ヵ月、またはそれを超える周期にわたって埋込された後であっても、可撤性のままであり得る。このように除去されると、残留する増殖性組織は、中隔の引裂を阻止または防止するリングを形成し、縮径領域におけるシャントデバイスの外径に密接に近似する、残留する略円形の孔を心房間中隔において残し得る。
【0144】
図1A-1Cに描写される、好ましい実施形態では、アンカ12は、超弾性金属、例えば、ニチノール、または当技術分野において公知の任意の他の好適な材料から形成される、もしくはそれを含む、砂時計形状を有する。円周方向支柱26a-26eおよび縦方向支柱24は、好ましくは、一体型構造を有する、すなわち、アンカ12全体は、超弾性金属の管からレーザ切断される。
【0145】
生体適合性材料20は、例えば、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコーン、ポリカーボネート、ウレタン、DACRON(テレフタル酸ポリエチレン)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、またはポリウレタン等のポリマーのシートを備えてもよい。生体適合性材料はまた、または代替として、金属、セラミック、カーボンナノチューブアレイ、または任意の他の好適な生体適合性材料である、またはそれを含んでもよい。例えば、生体適合性材料20は、最大30ミクロンの結節間距離を伴う、ePTFEを備えてもよく、ともに焼結され、一体型導管を形成する、内側および外側層として適用されてもよい。代替として、生体適合性材料20は、電界紡糸技法を使用して、内側管腔およびアンカの外側に適用されてもよい。パンヌス組織の貫壁性内部成長を阻止または防止する、カプセル化の他の方法および他の好適なポリマーも、当業者によって理解されるであろうように、使用されてもよい。アンカ12の露出金属領域およびアンカの任意の他の領域は、随意に、公知の方法を使用して血栓形成を阻止するために、電解研磨または別様に処理されてもよい。
【0146】
シャント10の縮径領域16は、好ましくは、心房中隔の卵円窩を通した、いくつかの実施形態では、より好ましくは、卵円窩の中心部分の近傍またはそこへの埋込のために構成される。当業者に公知であるように、卵円窩は、心臓の胎児発達の間に形成される、心房中隔の薄化部分であり、これは、心房中隔の右側における湾入として現れ、心房中隔のより厚い部分によって囲繞される。心房中隔自体は、数ミリメートル厚さであり、筋肉質であり得るが、卵円窩は、わずか約1mm厚さであり得、主として、線維組織から形成される。稀な場合では、卵円窩は、最大10mm厚さであり得る。
【0147】
本発明のいくつかの実施形態では、シャント10は、「Asymmetric shunt for redistributing atrial blood volume」と題された、同時係属中の本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第16/408,419号(本明細書に参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)に説明されるように、非対称に成形され、卵円窩の近傍の心房中隔の天然特徴を利用し、好適な流動特性を提供してもよい。例えば、好ましい実施形態では、アンカは、砂時計またはディアボロ形状を備え、LA入口漏斗は、円錐形形状のノズルに類似し、RA出口漏斗は、「ベル」形であり、RA内のRA出口ポートにおいてベルの広口管腔を伴う。縮径領域のオリフィスに接続される、ベル形出口漏斗への幅狭の入口は、放物線の湾曲表面に近似するように構成されてもよい。本タイプの収束-発散ノズルは、ロケットエンジンにおいて使用される、古典的de Lavalノズルの形状に類似する。左から右への流動は、主として、入口円錐における流線の平滑収束およびベルから退出する流線の発散によって統制される。そのようなノズル構成は、古典的ベンチュリ管に類似する流出係数、例えば、約0.94~0.98を有する、順方向流動方向において非常に効率的である。
【0148】
ここで
図1Cを参照すると、点BおよびCは、LA入口ポートを画定する、最左円周方向支柱26e上に位置する。点AおよびDは、支柱26eから縮径部に向かって、LA入口漏斗に沿って、円周方向支柱26d上に位置する。点HおよびEは、RA出口漏斗に沿って、円周方向支柱26b上に位置し、点GおよびFは、RA出口ポートを画定する、円周方向支柱26a上に位置する。好ましい実施形態では、シャントオリフィスの縮径領域内の管腔22の直径は、5~6.5mmに及ぶ。点ADEHによって境界される、FOを交差するシャントの部分は、軸方向長において3mmであり得るが、より厚いFOを伴う患者では、最大10mm延在されてもよい。点AB、CD、EF、および/またはGHの間の対角線長は、好ましくは、パンヌスが、シャントの端部から内向きに移行的に成長し、したがって、縮径領域16を妨害し得ないように、≧3mmである。加えて、点AB、CD、EF、および/またはGHの間の水平コンポーネント長、すなわち、シャントが左心房または右心房の中に突出する距離は、好ましくは、≦15mmであり、埋込されるとき、既存の心臓構造への干渉を回避する。
【0149】
依然として上記に説明されるような
図1Cを参照すると、かつ本発明の別の側面によると、概して、3mmを上回る区画EFおよびGHの長さを提供することが、右心房の中に延在する端部領域が、概して、下大静脈から戻る血液の流路外に配置されることを確実にし、奇異性塞栓症を引き起こし得る同伴される塞栓の最も可能性が高い源となることが予期されることが判定されている。ABCDおよび/またはEFGHによって境界される、切頭漏斗円錐は、体積≦2mlを有してもよい。
【0150】
本発明のシャントの他の実施形態は、円周方向リングおよび軸方向支柱要素の異なる組み合わせならびに構成を伴う、アンカを含んでもよい。具体的には、そのような実施形態は、
図1A-1Cに描写されるように、多かれ少なかれ縦方向支柱24と、多かれ少なかれ円周方向支柱26a-26eとを有してもよい。これらの構成は、他のシャント管腔幾何学形状をもたらし得る。別の実施形態では、アンカ12は、自己拡張式ポリマーから作製されてもよい。代替として、アンカは、自己拡張式である必要はなく、316Lステンレス鋼、コバルトクロム合金、または当業者に公知の任意の他のそのような好適な生体適合性材料等の塑性的に変形可能な生体適合性金属から作製されてもよい。そのような変形可能シャントアンカは、所望の管腔幾何学形状を達成するように構成される、バルーン等の拡張部材によって送達されてもよい。変形可能アンカは、Shanleyへの米国特許第6,242,762号(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)によって教示されるように、角柱状に、またはある局所部位において拡張するように設計されてもよく、延性ヒンジは、より選択された拡張のために構成される。
【0151】
ここで
図2を参照すると、本発明のデバイスを構築する際の使用のために好適なシャントの代替実施形態が、説明される。シャント200は、アンカ221を含み、
図1A-1Cの実施形態に関して説明されたものに構造において類似し、漸拡端部領域222および223と、縮径領域224とを有する。患者の心房間中隔内に埋込されると、漸拡端部領域222は、患者の右心房内に配置される一方、漸拡端部領域223は、患者の左心房内に配置され、縮径領域224は、心房間中隔内に形成される通路内に据え付けられる。アンカ221は、縦方向支柱225と、円周方向支柱226a-226eとを含み、生体適合性材料227によってカプセル化される。アンカ221は、本明細書の上記に説明されるように、自己拡張式または塑性的に変形可能な材料から成ってもよい。
図2のシャント220は、生体適合性材料227、例えば、ePTFEが、円周方向支柱226aに隣接してカットアウト228を含むという点で、
図1A-1Cの実施形態と異なる。カットアウト228は、Yacoby et al.への米国特許出願公開第2014/0350565号(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されるように、円周方向支柱226aから、0.5mm~2mm、好ましくは、約1mmの距離にわたって、近位に延在し、円周方向支柱226eが、展開の間に送達システム、例えば、フックと解放可能に係合されることを可能にしてもよい。
【0152】
依然として
図2を参照すると、生体適合性材料227は、カットアウト228を作成するために、円周方向支柱226aから、手動でまたは機械的に、もしくはレーザ切断によって、トリミングされてもよい。このように、シャント220は、解放される前に、臨床医がデバイス設置に満足するまで、心房間中隔内に形成される通路内に位置付けられ、再位置付けされてもよい。好ましい実施形態では、生体適合性材料227によって形成される導管は、縮径領域224を越えて漸拡端部領域222の中に少なくとも3mmの距離だけ延在し、パンヌスが、縮径領域224の流動面積を部分的に閉塞するために十分に遠くまで、管腔壁に沿って移行的に成長し得ないことを確実にする。加えて、漸拡端部領域222は、心房間中隔内に埋込されると、少なくとも3mmの距離だけ右心房の中に延在し、漸拡端部領域224の入口が、概して、下大静脈から右心房に進入する血液によって発生される流路と整合されないことを確実にし、それによって、下肢から右心房の中に搬送される塞栓が、シャント220を通して通過することによって奇異性塞栓症を引き起こすであろうリスクを低減させる。
【0153】
本発明の原理によると、本明細書に組み込まれる本発明の譲受人に譲渡された特許および出願に説明されるシャント設計の全ては、卵円窩を横断して展開されるように設計されてもよく、シャント上に位置する、またはそれに結合されるセンサを受け取るように修正されてもよい。本発明のシャントは、全てYacoby et al.への米国特許第9,713,696 B2号、第US 10,478,594 B2号、および米国特許出願公開第US2020/0078558A1号(そのそれぞれの全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されるように送達されてもよい。
【0154】
本発明のシャントにおける使用のために好適なセンサは、例えば、慢性的に埋込される心血管用途において満足の行く性能の実績を確立した、導線付きHeartPOD、導線なしV-LAP、および導線なしCardioMEMs圧力センサを含む。あるクラスとして、これらのセンサは、伸長数ミリメートル寸法形状因子を伴う剛性カプセル化密閉筐体を有するものとして特徴付けられる。本開示では、本群のデバイスは、大型フォーマット圧力センサ(LFPS)と称される。これらのデバイスは、オンボード特定用途向け集積回路プロセッサの有無を問わない、ピエゾ抵抗または可変コンデンサから形成される、もしくはそれを含む、センサゲージ等の回路網と、本明細書の別の場所に例示されるような様式で身体の外に測定値を伝送するための回路網(アンテナ等)とを含んでもよい。密閉筐体は、チタン、チタン合金、または他の好適な生体適合性金属を含んでもよい、またはそれから加工されてもよい、もしくは代替として、適切であるとき、非電磁遮蔽筐体が、ジルコニア等のセラミック、溶融シリカ等のガラス、または埋込可能センサ材料の技術分野における当業者に周知の他の材料である、もしくはそれを含んでもよい。
【0155】
導線付きLFPS設計の利点は、外部電源およびデータ読出のためのRFアンテナが、比較的に大きく(HeartPODの場合では、直径において約20mm)、皮膚に近接して(典型的には、<5cm深さ)外科的に設置され得ることである。これは、バッテリ給電ハンドヘルドコンピュータであり得る、低電力通信デバイス(例えば、PAM)の使用を可能にする。別の実施形態では、モバイルスマートフォンが、用量毎の医師指示患者自己管理(例えば、DynamicRx)のための給電、データ伝送、記憶、およびローカル処理のために導線付きインプラントとRF結合されることができる。導線付きインプラントはまた、ペースメーカまたは埋込可能除細動器等の心臓律動管理デバイスに容易に結合されることができる。潜在的に、センサ筐体または係留システム上の電極は、心内電位図(IEGM)を感知し、心房間中隔をペーシングするために使用され、別個の右心房導線の必要性を不要にし得る。本シャントにおいて使用され得る一例示的導線付き圧力センサは、Silicon Microstructures, Inc.(Milpitas, CA)から商業的に入手可能なIntraSense Calibratedセンサである。
【0156】
導線付きインプラントの導線は、バイポーラペーシングのための感知電極から十分に離れた不関電極を含んでもよい。心臓周期の電気的事象のタイミングは、特に、診断目的のためにLAP波形と併用されることができる。例えば、心臓専門医等の当業者は、IEGMのP波が、LAPトレーシングのa波にわずかに先行することを理解するであろう。P波が存在し、a波が不在であることは、心房電気機械解離として公知である、心不全患者に見られる稀な障害の診断となる。多数の条件が、心内圧およびIEGMの組み合わせによって診断可能であり、Mann et al.への米国特許第6,970,742 B2号(その全内容は、本明細書に参照することによって本明細書に組み込まれる)によって説明されている。導線付きセンサの別の利点は、センサが、埋込の時点または後のある時点のいずれかで、心房間中隔上のその最適な場所から塞栓形成するはずである場合、センサが、導線によって繋留され、これを再位置付けし、または回収し、身体から除去することを比較的に簡単にすることである。
【0157】
導線付きLFPSのいくつかの利点は、近位導線および通信アンテナコイルが、ペースメーカのように肩の近傍に位置する皮下または筋肉下外科的ポケット内に最良に設置されることである。これは、例えば、右大腿静脈における静脈アクセスのための標準的な場所からよりも困難である、鎖骨下または腋窩静脈からの経中隔カテーテル留置を実施することによって達成されてもよい。代替として、導線は、Eigler et alへの米国特許出願公開第US2011/0022057 A1号(その全内容は、本明細書に参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されるように、経大腿アクセスの部位から設置され、次いで、上静脈アクセス部位に移送されることができる。両方のアプローチは、導線付きHeartPODシステムで臨床的に許容可能であることが証明された。導線付きLFPSの別の不利点は、より大量の留置ハードウェアおよび皮下外科的ポケットの作成に関連するデバイス感染の増加された可能性である。典型的には、デバイス除去を要求するペースメーカに関する感染率は、年間約1%である。
【0158】
導線なしLFPS設計の利点および不利点は、概して、上記に説明されるような導線付きLFPSの逆である。導線なしセンサは、いかなる感染させる皮下ポケットまたは感染を循環に導く導線も存在しないからこそ、デバイス感染を受けにくい。導線なしLFPSは、導線を上静脈アクセス場所に再位置付けする必要性を伴わずに、経大腿静脈経中隔アクセスからより容易に設置されることができる。塞栓のリスクを最小限にするために、導線なしセンサは、その近位側上で繋留され、確実な経中隔設置が確認された後にのみテザーから解放されなければならない。そうであっても、挿入手技の間またはその後の塞栓が、可能性として考えられ、センサは、僧帽弁または大動脈弁上で詰まった状態になり、または全身循環の中に塞栓形成し得、外科的除去を要求し得る。導線なしLFPSモジュールは、概して、RF結合アンテナを格納するために要求され得る余分な体積に起因して、より長く、より堅性である。加えて、アンテナは、比較的に小さく、センサモジュールの長軸に垂直であり、皮膚の下に実質的により深く配置される(典型的には、左心房内に配置されるとき、最低9~13cm)ため、RF給電は、同一のセンサおよび埋込プロセッサ電力要件に関して、より大きい外部コイルおよびより大きい電磁束を要求し得る。加えて、V-LAP導線なしセンサは、小さい直径のフェライトの周囲に巻着される、内部インダクタコイルを含み、MRI適合性の実証をより困難にする。
【0159】
埋込可能センサ技術におけるいくつかの重要な最近の進展は、形状因子寸法および電力要件を低減させ得る。これらの特徴を実装する改良されたセンサは、本開示では、小型フォーマット圧力センサ(SFPS)と称される。上記に説明されるピエゾ抵抗および静電容量タイプ圧力センサに加えて、技術および新規材料ベースの最近の進歩は、例えば、Chang Y, et al.「State-of-the-art and recent developments in micro/nanoscale pressure sensors for smart wearable devices and health monitoring systems」 Nanotechnology and Precision Engineering 2020;3:43-52, https://doi.org/10.1016/j.npe.2019.12.006に説明されるように、埋込可能医療効用のためのマイクロ、潜在的に、ナノスケールの圧力センサの開発を可能にしている。実施例の1つのクラスは、圧力誘起応力が、それらの自然周波数を変化させる、共振デバイスである。従来のセンサと比較して、共振デバイスは、それらが環境雑音の影響を受けにくいため、より高い正確度および感度をもたらし得る。表面音響波共振器(SAW)、ラム波共振器(LWR)、およびフィルムバルク音響波共振器(FBAR)もまた、当業者に公知であり、例えば、以下の参考文献(そのそれぞれの全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)、すなわち、Wang WN, et al.「Tire pressure monitoring system and wireless passive surface acoustic wave sensor」 Appl Mech Mater 2014, 536-537:333-7、Mu X, et al.「Dual mode acoustic wave sensor for precise pressure reading」 Appl Phys Lett 2014, 105(11), 113507、Della Lucia F, et al.「Design, fabrication and characterization of SAW pressure sensors for offshore oil and gas exploration」 Sensors and Actuators A: Phys 2015, 222:322-8、Kropelnicki P, et al.「CMOS-compatible ruggedized high temperature Lamb wave pressure sensor」 J Micromech Microeng 2013, 23(8), 085018、
【化2】
、Nagaraju M, et al.「A 400μW differential FBAR sensor interface IC with digital readout」 2015 joint conference of the IEEE international frequency control symposium and the European frequency and time forum, FCS 2015 - proceedings, Denver, Colorado, 2015, p. 218-21、Zhang M, et al.「A film bulk acoustic resonator-based high-performance pressure sensor integrated with temperature control system」 J Micromech Microeng 2017, 27(4), 045004、Galipeau DW, et al.「Surface acoustic wave microsensors and applications」 Smart Mater Struct 1997, 6(6):658-67、Scholl G, et al.「Surface acoustic wave devices for sensor applications」 Phys Status Solidi Appl Res 2001, 185(1):47-58、およびYantchev V, et al.「Thin film lamb wave resonators in frequency control and sensing applications: a review」 J Micromech Microeng 2013, 23(4), 043001に説明されている。
【0160】
Chen LY, et al.「Continuous wireless pressure monitoring and mapping with ultra-small passive sensors for health monitoring and critical care」 Nature Communication 2014, 5:5028(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明される、別の実施例では、著者らは、組み込まれたPDMS可撓性基板を伴うポリイミドコーティングシリコンウエハ上に標準的リソグラフィ技法を用いて加工されたLC発振器と、銅印刷アンテナとを備える、1×1×0.1mmの埋込可能圧力センサに関する概念実証を開発した。その論文は、センサが、頭蓋内圧を慢性的に測定するために、齧歯動物の頭蓋内に埋込され得ることを記載している。グラフェン、MXene、カーボンナノチューブ、および金属ナノワイヤを含む、2Dナノ材料における他の進歩により、安定し、超高感度である可撓性ピエゾ抵抗および静電容量圧力センサを作製することができる。材料科学における飛躍的進歩はまた、拍動する心臓から等、環境から直接機械的エネルギーを採取する、自己発電式圧力センサを可能にしている。SFPSデバイスは、心血管および心肺条件の診断を支援し、その療法を誘導し得る、慢性的埋込可能センサのために要求される周辺環境における長期正確度および耐久性をまだ実証していない。それにもかかわらず、データの実践的無線伝送および外部電源スキームを伴う十分に堅牢な密閉生体適合性包装の開発は、本開示の本発明のシャントの中に組み込まれ、それと一貫して作製され得る、信頼性のある小型フォーマットの可撓性埋込可能センサが、圧力または他の生理学的パラメータ測定のいずれかのために、利用可能になることを可能にするはずである。
【0161】
ここで
図3を参照すると、HFを伴う患者における左心房内の生理学的パラメータを測定するための本発明のシャントを含む、本発明の原理に従って構築されるシステムの例示的実施形態が、説明される。シャント30は、例証として、
図1A-1Cおよび2に説明されるもののようなNitzanタイプ砂時計またはディアボロ形ニチノールアンカを含み、アンカは、
図1A-1Cおよび2に関して説明されるもののような生体材料を用いて完全または部分的にカプセル化されてもよい。本明細書に例示されるもの等の他のセンサ構成を伴う他のセンサも、
図3に図示されるシャント30の代わりに好適に使用され得ることを理解されたい。
【0162】
図3では、シャント30は、本明細書で上記に説明されるLFPSと一貫する寸法および特性を有し、支持支柱36と、カラー38とを含む、支持構造35を介してシャントフレームに結合される、導線なしセンサ34を含む。代替として、センサまたは複数のセンサは、上記に説明されるSFPSタイプであり得る。センサ34は、圧力、力、流動、速度、加速度、壁剪断応力、温度、および同等物を含む、機械的パラメータ、またはIEGM、抵抗、インピーダンス、電流、インダクタンス、静電容量として例示される電気的性質、またはpH、モル浸透圧濃度、化学種同定、分子濃度、反応率を含む、化学的性質、もしくは許容可能なセンサが開発されている任意の他の望ましい生理学的パラメータを測定するための回路網を含んでもよい。例証として、回路網は、左心房圧(例えば、
図3に図示される、または
図4A-10もしくは
図16Aを参照して説明されるもの等の実施例における)、右心房圧(例えば、
図12A-15Aを参照して説明される実施例における)、または管腔を通した血流の速度を示すデータを発生させてもよい。また、センサは、複数の特性を測定するための回路網を含んでもよい、または、それぞれ、個別の特性を測定するための回路網を含み、他のセンサとともに一体的包装内に含有される、複数のセンサを含んでもよい。代替として、複数の独立したセンサが、シャント30のアンカをカプセル化する生体適合性材料上に搭載されてもよい。
【0163】
導線なしセンサモジュール34は、好ましくは、LA室に向かって面し、その中に位置する感知ダイヤフラムまたは表面を伴う、適切に成形された(例えば、略円筒形)、密閉してシールされた筐体を含む。代替実施形態では、センサ32の感知表面は、シャントのオリフィスに向かって面して配置されてもよい。また別の実施形態では、センサ34は、略長方形中実形状を有してもよく、
図26A-26B、28、29、30、31A-31E、および32A-32Dを参照して説明されるような様式で、シャント30の縦方向および/または円周方向支柱のうちのいずれか1つまたはそれを上回るものの上に配置されてもよい。センサの3次元幾何学形状が、これがシャント流動を十分に妨げない、またはシャントの臨床有効性を実質的に低減させない限り、全体的サイズおよび寸法において限定されないことを理解されたい。
【0164】
導線なしセンサモジュール34は、データを導線なしセンサモジュール34から、患者ディスプレイデバイス370、例証として、好適なアプリケーションプログラムをプログラムされた従来のスマートフォンおよびタッチスクリーンディスプレイ372に直接通信するための回路網を含んでもよい。代替として、導線なしセンサモジュール34は、随意の患者モジュール360を介して、患者ディスプレイデバイス370と間接的に通信するための回路網を含んでもよい。随意の患者モジュール360が使用されるかどうかは、導線なしセンサモジュール34によって採用される通信モードに依存し得る。
【0165】
一実施形態では、導線なしセンサモジュール34は、生理学的データおよびプログラミング命令を患者ディスプレイデバイス370と直接交換するように構成される、RF送受信機回路を含む。このように、患者は、患者ディスプレイデバイス370のウィンドウ372における表示のためにセンサモジュール34によってリアルタイムで提供される、RAPまたはLAP等の選択された生理学的パラメータのグラフを直接閲覧してもよい。患者ディスプレイデバイス370はまた、異常な状況、例えば、上昇されたLAP(例証として、30mmHgを上回る)を検出し、即時のアクションを講じるように、例えば、「すぐにラシックスを2錠飲んでください」とアラートし、圧力が、指定されたタイムフレーム内に十分に低減されない(例証として、2時間以内に20mmHgを下回る)場合、医師に連絡するように、プログラミングを含んでもよい。
【0166】
患者ディスプレイデバイス370によって表示されるアラートはまた、異常な状況が、規定された時間周期内に解決されない場合、医療支援を求めるように患者に命令してもよい。
図3に描写されるように、患者ディスプレイデバイス370はまた、電話ネットワークまたは広域無線ネットワークのいずれかを使用して、例えば、インターネット380を介してデータを伝送するためにWiFiネットワークおよびアクセスポイントを使用して、センサモジュール34から受信されたデータを医師のコンピュータシステム390にアップロードしてもよい。WANを経由する患者データの任意のそのような通信が、好ましくは、最初に、患者プライバシを維持するために暗号化されるべきであることを理解されたい。患者ディスプレイデバイス370はまた、アラートを患者の医師または好適な監視サービスに直接伝送し、後続治療ステップに関する付加的ガイダンスを提供するように医師をプロンプトするようにプログラムされてもよい。この場合では、医師と患者との間の通信はまた、医師から患者へのテキストメッセージングまたは電話もしくはVOIP通話のいずれかを使用して、双方向的であってもよい。
【0167】
随意に、導線なしセンサモジュール34から患者ディスプレイモジュール370および/または医師のコンピュータ390にデータを通信するためのシステムは、患者モジュール360を採用してもよい。患者モジュール360は、接着パッチ362上に搭載される、導線なしセンサモジュール34との双方向データ通信のために構成される、コンパクトな電子機器パッケージ(回路網)を備えてもよい。患者モジュール360は、例えば、誘導コイル、特定用途向け電子機器パッケージ、バッテリ、およびRF送受信機を含んでもよい。電子機器パッケージは、誘導コイルおよび/またはRF送受信機を介して、電力および命令を導線なしセンサモジュール34に伝送するようにプログラムされてもよい。患者モジュール360の電子機器パッケージはまた、導線なしセンサモジュール34上に記憶される、またはそれによってリアルタイムで発生される、生理学的データをダウンロードし、処理および患者ディスプレイデバイス370のウィンドウ372における表示のためにそのデータを伝送するようにプログラムされてもよい。患者モジュール360を含む、接着パッチ362は、導線なしセンサモジュール34への近接を維持し、そこからの中断のない転送を確実にするために、患者の胸部または上側胴体に適用されてもよい。より具体的には、患者モジュール360の使用は、患者ディスプレイデバイス370と導線なしセンサモジュール34との間の距離が、そのような相互通信が損なわれる所定の距離を超えるであろうリスクを低減させ得る。有利なこととして、患者モジュール360は、導線なしセンサモジュールにおける電子機器を再充電または給電するために使用され得る、再充電可能バッテリを含んでもよく、患者ディスプレイデバイス370における従来のスマートフォンバッテリよりも予測可能な電力供給を提供する。
【0168】
図6Aおよび6Bに関して下記に説明される代替実施形態では、センサモジュールは、導線を含んでもよい。そのような実施形態では、上記に説明されるような随意の患者モジュール360の代わりに、センサは、患者ディスプレイモジュール370等の外部デバイスに通信するように構成される、埋込可能モジュールに導線を介して直接接続されてもよい。その場合では、埋込可能モジュールは、患者ディスプレイデバイス370と直接通信してもよく、これは、別様に、
図3に説明されるように、メッセージを患者に表示する、および/または生理学的データならびにアラートを医師に通信するようにプログラムされてもよい。
【0169】
図3の実施形態の一好ましい実施形態では、支持構造35は、好ましくは、センサの感知表面32が、シャントオリフィスから離間されるように、センサ34をシャント30の縦方向軸と略同軸に配置する。このように、測定されたパラメータは、左心房空洞内のパラメータを示し、シャントオリフィスの領域内の流速特性の増加によってあまり影響を受けない。好ましい実施形態では、支持支柱36は、シャント30のアンカ構造と一体的に形成され、交互の縦方向支柱から延在し、センサモジュール34を受け取るカラー38において終端する。支持支柱36およびカラー38は、例えば、超弾性ニチノール管類の単一の断片からレーザ切断され、熱固化され、電解研磨される、一体的構造であってもよい。代替として、支柱および/またはカラーは、他の手段によってシャント30のアンカに溶接される、または取り付けられてもよい。支持支柱36は、代替として、好適な生体適合性ポリマー組成物から形成されてもよい。センサ34および支持構造35は、好ましくは、それらが、経血管送達のために装填カートリッジまたは送達導入器シース内に圧着および拘束され、次いで、送達プロセスの間にそれらの最終構成に拡張され得るように構成される。
【0170】
センサ34の感知表面32は、好ましくは、埋込後治癒の間、反応性の移行性組織成長が、シャントが心臓構造と接触する任意の点から延在し、感知表面に到達するように支持構造にわたって成長する距離が、2.5mmの合計線形距離を超えるように位置付けられる。本発明者らによって行われた事前の実験から、本距離は、感知表面にわたる組織成長を<300μmに限定するはずである。代替として、支持支柱36は、感知表面の軸に対する直交から<±45度である角度でカラー38に接触し、感知表面から2.5mmの最小距離でカラーに接触してもよい。これは、反応性組織成長から感知表面を効果的に機械的に隔離し、感知表面への組織の架橋を低減させるであろう。さらに、そのような配列は、感知表面への心臓収縮または弛緩に起因する室壁張力の変化の伝達を最小限にするであろう。その結果、感知表面移動は、左心房圧力波形を正確に反映し、実質的に人為現象的に劣化されない、または診断上有用であるために別様に補正不能にされないであろう。
【0171】
代替実施形態では、センサモジュールの本体は、シャント管腔の縮径部分の中に、またはそれを通して近位に延在してもよい。無線LFPSは、種々の構成のRFコイルを格納するように、伸長構造である傾向がある。CardioMEMsセンサは、長方形中実形状因子を有し、約15mm長さ×3.4mm幅×2mm厚さである。V-LAPセンサは、円筒形であり、2.5mmの直径を伴う約14mm長さである。左心房の中への遠位端の突出を最小限にするために、これらまたは類似する形状因子のLFPSは、それらの近位部分が、シャント縮径部を含む、シャント管腔の中に、さらにはシャントの右心房部分の中に延在するように搭載されることができる。類似する流動特性を維持するために、シャント縮径部の断面積は、おおよそセンサの断面積だけ拡大されるべきである。例えば、縮径領域を通して延在するであろう、V-LAPのような形状因子を伴うセンサに関して、5mmの内部最小直径を伴う独立型の砂時計シャントに類似するシャント圧力/流動関係を有することは、縮径部を直径において約5.6mmまで拡大させることを伴ってもよい。同様に、縮径部は、CardioMEMsのような形状因子を伴うセンサが、これを通して設置された場合、5.8mmに拡大されてもよい。これらの寸法は、一次近似式であり、実際のシャント/センサ幾何学形状に基づく圧力/流動試験または算出的流動動的分析の結果に基づいて、好適に修正されてもよい。
【0172】
図4Aおよび4Bに関して、
図3の本発明のシャントのさらなる側面が、説明される。
図4Bは、センサ支持構造が、例証として、センサカラー48に隣り合うアンカフレーム40の円周の周囲に等しく離間される、3つの支持支柱45を含むことを示す。センサ44が左心房空洞の中に突出する範囲は、概して、HFを伴う患者において平均して直径において約55mmである、LV空洞のサイズによって限定される。シャント縮径部の中心からセンサの左端までの左側突出部の軸方向寸法は、
図4Aに示されるように、L
maxとして標識化される。本寸法は、外傷または血栓形成を引き起こし得る、シャントと、僧帽弁、肺静脈、左心耳、左心房壁等の左心房の重要な構造または隣接する構造との間のいかなる接触も存在しないように、十分に短くなるべきである。一実施形態では、卵円窩の中間から左心耳口まで測定される室直径に関して、L
maxは、その距離の50%を超えないように限定される。したがって、PAHを伴う患者において見出されるような小さい直径の左心房に関して、例えば、20mmの直径に関して、L
maxは、10mmを超えるべきではない。
【0173】
図5Aおよび5Bに関して、センサ54が、シャント50の長軸と実質的に非同軸に搭載される、代替実施形態が、説明される。センサは、上記に説明されるように、LFPSまたはSFPSタイプ、もしくは非圧力センサであってもよい。センサ54の長軸は、シャント50の長軸と平行に延在してもよいが、これは、必ずしもそのように配列される必要はない。センサ54は、
図4A-4Bに関して説明されるものと同様に、支持支柱55と、カラー58とを含むが、シャント50の管腔22から中心を外れてセンサを支持する、支持構造を用いてシャントに添着されてもよい。
図5A-5Bの実施形態の1つの利点は、左心房への将来のアクセスが、大口径カテーテルのために必要とされる場合、そのようなカテーテルが、センサによって妨げられないシャントを通して前進され得ることである。
【0174】
図4A-4Bおよび5A-5Bを参照して説明されるような実施例、ならびに本明細書に提供される他の実施例では、シャントアンカは、「Devices with dimensions that can be reduced and increased in vivo, and methods of making and using the same」と題された、上記に組み込まれる米国特許出願第16/875,652号に説明されるタイプであってもよい。したがって、アンカの縮径領域は、体温よりも高いA
fを伴う形状記憶特性を有してもよく、バルーンまたは拡張の他の好適な手段によって変形可能であってもよく、したがって、これは、左心房アクセスのためのさらにより大きい直径のカテーテルの交差に適応するために、より大きく作製されてもよい。その場合では、アンカは、シャント縮径部が、熱遷移を受け、それによって、その事前のサイズまたは構成を取り戻すように、A
fを上回って加熱されてもよい。同様に、センサをシャントアンカフレームに添着する支持支柱(例えば、支柱45または55)は、類似する遷移温度A
fを伴う類似する形状記憶材料であってもよい。バルーンまたは拡張力の他の源が、支持構造を変形させ、センサをさらに進路を外れて押動し、より広い左心房アクセスを可能にするために使用されてもよい。A
fを上回る過渡加熱に応じて、センサおよびその支持構造は、それらの変形前の構成に戻る。
【0175】
図6Aおよび6Bでは、カプセル化シャントアンカ60と、
図4A-4Bのものに類似する支柱65およびカラー68を伴うセンサ支持構造とを伴う、実施形態が、説明される。本実施形態において描写されるセンサは、導線付きLFPSタイプであり、導線66は、センサモジュール64の近位側から左または右肩(図示せず)の近傍の静脈アクセス部位まで延在する。導線66は、内側スタイレット管腔、3ファイラコイル状内側および外側導体、ならびにシリコーンまたは他の好適なポリマー材料から作製される介在および外側絶縁体を伴う従来のペーシングタイプ導線設計である、またはそれを含んでもよい。導線は、典型的には、サイズにおいて5Fr~8Fr(1.7~2.7mm直径)に及び得る。導体は、導体要件のサイズおよび数に応じて、コイルまたは編組ワイヤであってもよい。代替として、導線66は、複数の別個に絶縁された導体を有してもよい。歪み緩和部分が、センサモジュール64を外側絶縁体に接続するために採用されてもよい。
図4A-4Bの実施形態におけるように、シャント管腔22は、所望の圧力/流動関係を達成するために、導線66のサイズに従って調節されてもよい。
【0176】
依然として
図6A-6Bを参照すると、導線66は、加えて、センサモジュール64上の電極と不関電極67との間のベクトルに関するIEGMを測定するために、不関感知電極67を含んでもよい。導線/センサ幾何学形状は、シャント縮径部または他のシャント構造との導線接触が、十分に低く、または最小限にされ、それによって、外側導線絶縁体の摩滅を阻止または防止し、導体の可能性として考えられる摩耗破断のリスクを低減させるように選択されてもよい。導線66は、IS-1またはIS-4コネクタ等の近位コネクタを含んでもよく、導線は、独立型アンテナコイル/コンデンサに接続されてもよい、または埋込されたペースメーカもしくは除細動器発生器に接続されてもよい。一実施形態では、シャント60は、従来的な経大腿経中隔カテーテル留置の後に設置され、導線は、続けて、上記に説明されるような上静脈アクセスの部位に移送されてもよい。代替として、経中隔カテーテル留置およびシャント/導線設置は、鎖骨下、腋窩、または頸静脈等の上静脈アクセスの部位から直接実施されてもよい。
【0177】
ここで
図7A-7Fを参照すると、導線付きLFPSセンサ74を有する、本発明のシャント70のさらなる実施形態が、説明される。本実施形態では、支柱75および78を伴うセンサ支持構造のみを含み、いかなる導線付きセンサも含まない、シャント70は、最初に、
図7A-7Bに図示されるような様式で、卵円窩を横断して位置付けられる。ガイドワイヤ79がセンサ固定カラー78を通して延在する状態で、センサ送達導入器シース71が、次いで、
図7C-7Dに示されるような様式で、カラーを横断して位置付けられる。センサモジュール74は、好ましくは、センサ送達シース71内に拘束されるとき、略平坦に折畳される、1つまたはそれを上回る近位および1つまたはそれを上回る遠位超弾性保定タブ72を含む。一非限定的実施形態では、2つまたはそれを上回る(例えば、3つ)近位保定タブ72および2つまたはそれを上回る(例えば、3つ)遠位保定タブ72’が、存在する。遠位タブ72’は、遠位タブが、暴露され、シース71およびセンサ74が、近位に後退され、遠位タブ72’を固定カラー78に対して位置合わせする際、シャントを定位置に固着させる。シース71が、さらに近位に後退される際、近位タブ72は、
図7E-7Fに図示されるような様式で、カラーの近位に展開される。展開に続いて、導線76は、
図6に関して説明されるような様式で、上静脈アクセスの部位に移送されてもよい。
【0178】
別の実施形態では、導線76は、センサ固定カラー78内に事前位置付けされ、
図6A-6Bに関して説明されるような様式で、展開されてもよい。本2部分構造の利点は、センサ74が、これが感染した、または動作不能な状態になった場合、後で容易に除去および交換され得ることである。そうするために、導線76の近位部分は、外科的に解放されてもよく、係止スタイレット(具体的に図示せず)が、導線上に設置されてもよい。機械的またはエキシマレーザ導線除去装置が、静脈構造から導線の接着部分を取外するために使用されてもよい。シース(具体的に図示せず)が、追加の支持を提供するために、カラーのすぐ近位まで導線にわたって前進されてもよい。導線およびセンサは、次いで、シースの中に後退され、除去され、所望される場合、新しい導線付きセンサ74と交換されることができる。
【0179】
図3-7Fを参照して説明されるような前述の実施形態では、センサは、1つまたはそれを上回る支持支柱と、カラーとを含む、支持構造によってシャントに添着されてもよい。代替実施形態では、センサは、ePTFE等の生体適合性カプセル化の層の間に配置されてもよく、層は、熱または圧力媒介焼結もしくは溶接プロセスによって、シャントアンカフレームに接着される、またはカプセル化は、生体材料のナノファイバの電界紡糸によって遂行される。上記に説明されるように、生体適合性材料は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、PTFE、ポリウレタン、Dacron(テレフタル酸ポリエチレン)、シリコーン、ポリカーボネート、ウレタン、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、または炭素繊維等のポリマーである、もしくはそれを含んでもよい。代替として、または加えて、生体適合性材料は、金属、セラミック、カーボンナノチューブアレイ、または任意の他の好適な生体適合性材料である、もしくはそれを含んでもよい。さらに、センサは、エポキシを用いて等、接着剤接合によってシャントに接着されてもよい、またはセンサは、他の構造的部材との摩擦嵌合もしくは締まり嵌めによってその場所を維持してもよい、または前述のハイブリッドの組み合わせである。固定方法の本列挙は、例証的であることを意図し、網羅的であることを意図していない。シャントに対するセンサ固定の他の手段が、当業者に明白であり、本開示の範囲内組み込まれるものとして理解されるものである。
【0180】
本発明のシャントの他の実施形態は、伸長円筒形外形を伴うLFPSタイプセンサを組み込み得る、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第10,251,740号(本明細書に参照することによって本明細書に組み込まれる)の
図10-15に示されるようなシャント設計を採用してもよい。そのような実施形態では、ハイブリッド固定機構が、採用されてもよく、例えば、センサは、
図4A-4Bを参照して説明されるような様式で支持構造45、48によって、およびカプセル化物質の生体適合性二重層の間に組み込むことによっての両方で添着される。代替として、センサは、単に、カプセル化物質との接着および締まり嵌めによって、シャントに添着されてもよい。さらなる代替として、本発明のシャントは、その中にセンサが埋設される、一体型自己拡張式シャントを形成する、射出成型シリコーンゴムを含んでもよい。センサをシャントに結合するための構造および方法の他の非限定的実施例が、本明細書の別の場所に提供される。
【0181】
ここで
図8A-10Bを参照すると、本発明のシャントの付加的変形が、説明される。
図8Aおよび8Bの実施形態では、センサ84が、シャントフレーム81と生体適合性材料の外側層82との間に添着される、シャント80が、描写される。生体適合性材料の内側層83が、シャントフレーム81の内側に提供されてもよい。シャントフレーム81は、センサ84を収容し、シャントの軸方向に対称な外側外形を維持するために、管腔22に向かって内向きに変形されてもよく、左心房入口円錐は、センサの領域において内向きに非対称に変形されてもよい。
図9Aおよび9Bでは、センサ94が、シャントフレーム91と生体適合性材料の内側層93との間に添着される、別の実施形態が、描写される。生体適合性材料の外側層92が、シャントフレーム91の外側に提供されてもよい。本実施形態では、シャントフレーム91は、変形されないが、代わりに、その外側外形の軸方向対称性を実質的に維持する一方、左心房入口円錐は、センサ94の領域において内向きに非対称に変形される。
図10Aおよび10Bでは、シャントフレーム1001の外側外形が、比較的に大きい直径のRFコイル1006を伴うセンサ1004を収容するために変形され、無線電力受電およびテレメトリを改良する、別のシャント実施形態1000が、示される。センサ1004は、シャントフレーム1001と生体適合性材料の内側層1003との間に添着されてもよい。生体適合性材料の外側層1002が、シャントフレーム1001の外側に提供されてもよい。左心房入口円錐は、センサ1004の領域において内向きに非対称に変形され、シャント1000の内側および外側外形は両方とも、非対称に変形される。それにもかかわらず、シャントは、依然として、装填管および送達導入器シースの内側に嵌合するように圧着されることができる。
【0182】
図11は、センサ1104が、概して、上記に組み込まれる米国特許出願公開第US 2019/0262118 A1号の
図8に説明されるような様式で、軸方向に非対称なシャント内に添着される、本発明のシャント1100の実施形態を示す。本実施形態におけるシャント1100は、V-LAPシステムのもののような形状因子を伴う導線なしLFPS 1104を組み込む。好ましい実施形態では、内部アンカフレームワークは、LFPS 1104の場所を、LA入口1107の近傍でフレームの内部にするが、縮径部および右心房出口円錐1108の領域においてフレームの外部にするように調節されてもよい。本実施形態では、センサ1104は、ePTFE等の生体適合性被覆物を用いて完全または部分的にカプセル化されてもよい。
【0183】
依然として
図11を参照すると、本開示の原理に従って、左心房シャント円錐1107の内側曲線に沿って、センサ本体1104とのその接合部に到達する最小距離X+該接合部からセンサ1104の感知表面1104’までの最小距離Yは、少なくとも2.5mmである。そのような距離を維持することは、感知表面上の組織過成長が、300μmの厚さを超える可能性が低く、したがって、LAP波形アーチファクトを低減させる、または最小限にすることを保証することに役立つ。別の実施形態では、寸法XおよびYならびにXとYとの間の角度は、任意の心臓組織と連続する感知表面1104’の任意の組織過成長が、十分に機械的に隔離され、心臓壁張力の変化に関連する感知されたLAP波形におけるアーチファクトが、実質的ではないであろうように選択される。なおも別の実施形態では、リングまたは他のカラー様部材1109が、心臓壁張力の変化に起因するアーチファクトからのさらなる機械的隔離を提供するために、センサ1104の感知表面1104’の近位のセンサ本体の周囲に配置されてもよい。
【0184】
ここで
図12Aおよび12Bを参照すると、
図4A-4Bに関して説明されるものに類似する、支柱1205と、カラー1208とを含む、支持構造によってシャントフレームに添着される、略同軸に配向される導線なしLFPSセンサ1204を装備する、本発明のシャント1200が、説明される。本実施形態では、支持構造は、LFPS1204がRAPを測定し得るように、シャント1200の右心房円錐から延在する。本シャント設計は、特に、肥大した右心房を有し、主として、右側HFを患う、PAHを伴う患者に関して有益であり得る。支柱1205がRA入口を占有する、そのようなセンサ固定方法が、一方の心房から他方の心房へのシャントを通した塞栓物質の通過を妨げるように構築され得ることが、さらに明白となるであろう。
【0185】
図13Aおよび13Bは、略非同軸導線なしLFPSセンサ1304が、RAPを測定するためにシャントの右心房円錐から延在することを除いて、
図5A-5Bのものに類似する様式で、管腔22の中心を外れて、支柱1305と、カラー1308とを含む、支持構造によってシャントアンカフレームに添着される、シャント1300の付加的実施形態を描写する。本シャント設計もまた、特に、肥大した右心房を有し、主として、右側HFを患う、PAHを伴う患者に関して有益であり得る。本配列はまた、後でシャントを通してLAの中に通過するための能力を改良する。
【0186】
図14Aおよび14Bでは、感知表面1401の反対のセンサ1404の端部1402が、流線形外形を有する、本発明のシャントの別の実施形態1400が、説明される。当業者によって認識されるであろうように、血流に暴露される任意の表面上の特徴を流線形にするようにセンサ本体を修正することは、圧力/流動関係を最適化し、血小板を活性化する、または別様に血栓形成を増強し得る乱流および高剪断力を低減させるために有益であり得る。
【0187】
ここで
図15A-15Dを参照すると、HF、PAH、および他の心血管ならびに心肺障害を治療する際に有用であり得る、装置および方法が、説明される。
図15Aでは、例示的シャント1500は、本明細書に提供されるシャント構成のうちのいずれかを備え、
図12A-12B、13A-13B、および14A-14Bに関して説明されるような様式で、例えば、支柱1505およびカラー1508を介して、シャントのRA側上に配置される、導線なしLFPS1504を含む。一好ましい実施形態では、センサ1504は、少なくとも2つの異なる生理学的パラメータを測定するための回路網を伴う二重センサである。図示される実施例では、圧力感知表面Pが、センサモジュールの近位端の近傍に配置され、ドップラ圧電音響トランスデューサDが、センサモジュールの遠位端の近傍に位置付けられる。センサDは、シャントの縦方向軸に沿った速度プロファイルを測定する一方、センサPは、RAPを測定する。一好ましい実施形態では、センサDは、連続波ドップラ時変信号を測定する。代替として、センサDは、パルス化ドップラ技法を使用して、トランスデューサから規定された距離における体積におけるシャントの縦方向軸に沿った時変速度信号を測定してもよい。また別の実施形態では、センサDは、連続波またはパルス化ドップラ信号のいずれかを使用することが可能であってもよい。
【0188】
図15Bは、LAPが38mmHgであり、RAPが8mmHgであり、心房間圧力勾配が30mmHgであるときの静的圧力/流動条件下のV-Wave Ventura(登録商標)心房間シャントの縦方向管腔の2分の1を通した速度プロファイルの実施例を描写する。図から、ピーク速度が、シャントの縮径スロートオリフィスから退出し、RA円錐の出口を越えて延在する、噴流の中心部分に広く局在化されていることを理解されたい。
【0189】
図15Cは、V-Wave Ventura(登録商標)心房間シャントの中心管腔を通して照準される、RA内に位置する心内心エコープローブから動物において取得された連続波ドップラ時変信号の実施例である。画像は、1.19 M/秒のピーク速度V
maxおよび約0.90M/秒の複数の心臓周期にわたる平均速度V
meanを伴う持続的なLAからRAへのシャントを示す。シャントを横断する圧力勾配が、公式ΔP=4V
2によって厳密に推定され得ることが、エコー/ドップラ撮像の技術分野の当業者によって理解されるであろう。本実施例に関するピークおよび平均圧力勾配に関する値が、
図15Cにおける画像に隣り合う表に示される。
【0190】
図15Dは、約5mmHgの平均RAPを示す、カテーテルを用いてとられた複数の心臓周期にわたるRAP圧力トレースの実施例である。これは、
図15Aに示されるLFPSによって取得可能な信号波形のタイプの代表的なものである。シャントのRA端部の近傍に全体的に位置する、
図15Aの二重センサ構成では、各心房における瞬間的または平均圧力が、同時に測定され得ることが明白である。RAPは、LFPSによって直接測定され、LAPは、合計RAP+|ΔP|によって推定される。本シャント設計が、主として、左から右へのシャント流動を用いて、HFおよび同等物を伴う患者において、または代替として、主として、右から左へのシャント流動を用いて、PAHおよび同等物において、療法を誘導するために使用され得ることを理解されたい。
図15Aに示される構成の1つの利点は、LAPが、シャントの左心房側上に位置する付加的センサの必要性を伴わずに測定され得ることである。これは、特に、LAがRAの寸法に対して小さい傾向があるPAHにおいて有利であり得る。
【0191】
図16A-16Cは、
図15A-15Dに類似する特徴を有する、別の例示的実施形態を図示する。しかしながら、本実施形態では、二重機能センサ1604は、逆転され、支柱1605およびカラー1608を使用して、シャント1600のLA側上に設置され、したがって、圧力感知表面Pが、中間LA空洞に向かって配向され、圧電音響ドップラトランスデューサDが、シャントを通して縦方向軸に沿って配向される。
図16Bにおける画像は、HFを伴う患者の卵円窩を横断して位置付けられる、V-Wave Ventura(登録商標)心房間シャントの短軸経食道心エコー図(TEE)カラードップラビューである。画像は、シャントからRAの中に退出する、顕著な左心房から右心房への高速噴流を示す。
図16Cは、それぞれ、25mmHgのピークΔPおよび12mmHgの平均ΔPに対応する、2.5M/秒のLAからRAへのシャントを通したピーク速度および1.7M/秒の平均速度を示す、複数の心臓周期にわたる対応する連続ドップラ波形である。RA圧力は、RA=LAP-|ΔP|として計算されることができる。本発明のシャントの本実施形態1600は、主として、左から右へのシャント流動を用いて、HFおよび同等物を伴う患者において、または代替として、主として、右から左へのシャント流動を用いて、PAHおよび同等物において、療法を誘導するために使用されてもよい。一好ましい実施形態では、構成は、HFにおいて等、LAP誘導療法が最も関連する場合、最も有利であり得る。
図16Aのシャント1600はまた、HFおよび同等物におけるように、LA空洞が肥大する場合、有利であり得る。
【0192】
ここで
図17A-17Cを参照すると、本発明のシャントの付加的な好ましい実施形態が、説明される。
図17Aは、
図1A-1Cのものに類似するシャント1700を示し、種々の特徴は、異なる解剖学的構造のために最適化されてもよい。例えば、左心房円錐のすくい角θ
Lは、LA円錐の同一の基部直径に関して、LA空洞の中へのより少ない突出が存在するように、増加されてもよい。本特徴は、LAが小さく、充填不足である、PAHおよび同等物におけるRV不全を治療する際に有利であり得る。縮径部長Nは、より厚い卵円窩に適応するために、延在されてもよい。より厚い卵円窩が、PAHにおいてより一般的であり得るが、心房間中隔の脂肪腫浸潤が、他の疾患プロセスの不在下で、卵円窩の最小厚を10mm程度まで増加させ得る。さらに、RA円錐のすくい角θ
Rは、RA円錐基部の同一の直径に関して減少され、RAの中へのさらなる突出を提供してもよい。RA円錐のさらなる突出は、RAが肥大し、卵円窩がRAP>LAPに起因してLAに向かって曲がり、したがって、RA視点からの卵円窩が明確な窪みまたはクレータのように見える、PAHおよび同等物において有利であり得る。本状況では、RA円錐がより長くなり、したがって、これが、卵円窩を囲繞する縁郭のレベルを越えてRAの中に突出することが、より有利であり得る。右から左へのシャントの設定における入口円錐の本延在は、左心房の中への血栓塞栓の同伴のリスクを低減させ、したがって、脳卒中のリスクを低減させ得る。上記の特徴の任意の組み合わせが、具体的解剖学的または生理学的条件のために最適化された心房間シャントを作成するために利用されてもよい。
【0193】
図17Bは、シャントの縮径領域を囲繞する導線なし通過時間流動プローブ1702を有する、解剖学的に最適化されたシャント1701の使用を描写する。本実施形態では、流動プローブは、第1のトランスデューサ1703が、シャント1700の縮径領域によって反射され、第2のトランスデューサ1704によって受信される、パルスを伝送するように、二重圧電音響トランスデューサを有する。次のパルスは、第2のトランスデューサ1704から伝送され、シャント1700の縮径領域によって反射され、第1のトランスデューサ1703によって受信される。各方向における伝送と受信との間の通過時間の差異は、血流の方向および速度を示す。トランスデューサは、縮径部の反対側上の異なる場所に配列されてもよい(図示せず)、または音伝送および反射のパターンは、通過時間流量計の技術分野における当業者に周知であるように、「V形」(
図17Bに示されるような)またはさらには「W形」(図示せず)であってもよい。別の実施形態では、トランスデューサ1703、1704、制御電子機器、および外部電力受電ならびにテレメトリのためのRFコイルは、トランスデューサのための音響窓を有する、密閉円筒形カラー1705内に格納される。カラー1705は、拘束されたシャント部分(縮径部)にわたって滑動されてもよく、上記に説明される様々なものによってシャント1700に添着されてもよい。
【0194】
図17Cに描写される実施形態1701’は、流動センサ1702’が導線付きであることを除いて、
図17Bものと同様であり、第1および第2のトランスデューサ1703’、1704’を含む。一実施形態では、導線1706は、RA円錐の壁を横断し、展開に先立って装填管または導入器シース内にシャントを拘束するために有益であり得る、より同軸のシステムを作成する。別の実施形態では、導線および内部電子機器(回路網)は、導線が、ペースメーカ発生器に接続され得るように、最適化されてもよい。ペーシング電極または複数のペーシング電極が、卵円窩の場所からの心房ペーシングおよび/またはIEGM感知のために、カラー上に外部から設置されてもよい。代替として、導線は、バイポーラペーシングおよび/またはIEGM感知のために、より近位の不関電極(図示せず)を含有してもよい。
【0195】
図18Aおよび18Bは、境界条件の2つのセットに対応する、V-Wave Ventura(登録商標)心房間シャントの半分のモデルを横断するゲージ圧力場の算出的流動力学分析の図示である。
図18Aは、18mmHgの固定ゲージ圧力がLA側(入口)上に印加され、8mmHgがRA側(出口)上に印加される、HFにおける平均的または典型的な観察される条件をシミュレートする。したがって、ΔP=10mmHgである。
図18Bは、38mmHgの固定ゲージ圧力がLA側(入口)上に印加され、RA側(出口)圧力におけるいかなる変化も存在せず、8mmHgで一定のままである、非代償性HFに対応する極端な条件を図示する。この場合では、ΔP=30mmHgである。両方のシナリオでは、LA円錐の遠位半分における圧力は、その場所における流動の最小の加速度に起因して、本質的にLAPと同一である。加えて、両方のグラフでは、圧力は、シャント縮径スロートオリフィスの領域において最も低く、RAにおけるものよりも実質的に低い。これは、古典的流体力学のベンチュリ効果と一貫し、それによって、流体は、ベルヌーイのエネルギー保存の原理に従って、圧力(位置エネルギー)における低減が存在するとき、運動エネルギーを得る。
【0196】
圧力勾配ΔPの増加に伴って、縮径部における圧力は、6.24mmHgから2.37mmHgへ劇的に低下する。カプセル化シャント本体が、実質的に不透過性の壁を有し、弾性的に変形可能であり、適正な周波数応答を有する場合、
図18Bに示されるようなより低いΔPから高いΔPへの遷移は、シャントの幾何学形状の変化を査定することによって測定され得る。変化する幾何学形状の一実施例は、シャント縮径部の内向き変位(矢印)である一方、別の実施例は、LA円錐のすくい角θ
Lの増加として測定可能な曲げモーメントである。これらの条件が、満たされる場合、シャント自体が、圧力感受性ダイヤフラムと同様に、力ゲージとして使用されてもよい。線形または角度変位を測定するセンサタイプが、周知であり、集力器に、この場合では、シャントに直接結合されてもよい。
【0197】
ここで
図18Cを参照すると、SFPSセンサ形態における1つまたはそれを上回る可撓性密閉歪みゲージを有する、実施形態1800が、説明される。
図18Cでは、感知要素1801は、シャント縮径部の円周の周囲の複数の位置の近傍およびそこでのシャントフレーム1810の曲げモーメントを測定するように配列されてもよい。センサは、ピエゾ抵抗歪みゲージ、付随の特定用途向け処理回路網、および遠隔RF電力受電ならびにテレメトリのための外部インダクタコイル等の回路網を含む。電子機器は、埋込環境における繊細な電子機器への水分の進入を阻止または防止する、可撓性ポリマー材料を用いてポッティングされてもよい。コンポーネントの他の好適な配列が、シャント自体の中の変位を測定するであろうセンサを作成するために使用され得ることが、埋込可能センサの技術分野における当業者に明白となるであろう。
【0198】
図19Aおよび19Bは、SFPS技術を採用する、例示的実施形態を描写する。より具体的には、
図19Aは、本明細書の別の場所に説明されるようなシャントアンカフレーム1901を示し、アンカは、容易な理解のために、縦方向に切断され、平坦な平面図に広げられる。複数の1×1×0.1mmSFPSセンサ1904が、シャントのRAおよびLA側の両方の上でシャントアンカフレームをカプセル化する、生体適合性材料1920上に配置される。
図19Bは、V-Wave Ventura(登録商標)心房間シャントのRA円錐の管腔側面に関する複数のSFPS1904のための例示的場所を描写する。一実施形態では、センサは、ePTFEカプセル化1920の管腔面に直接接着されてもよい。代替として、センサ1904は、シャントアンカフレームを狭入するようにともに焼結される、ePTFEの二重層の間に配置されてもよい。加えて、または代替として、各センサ1904から、心臓構造に接触し得る個別の心房円錐縁までの最小距離は、いくつかの実施例では、約2.5mmであってもよい。圧力センサ1904は、好ましくは、末端の左心房または右心房円錐基部とシャントの縮径領域との間の位置における管腔壁上に位置する。
【0199】
図15Bおよび18Aならびに18Bから、シャント縮径部におけるもの以外のシャント管腔壁に近接する血液の領域が、個別の圧力センサにすぐ近接する心室を示す比較的に低い速度の流動および圧力を有し得ることが明白である。一実施形態では、複数のセンサが、シャントの各側上に提供され、そのセンサの全ては、圧力センサである、またはそれを含んでもよい。例えば、LCタイプSFPSセンサが、使用される場合、各センサは、異なる基本共振周波数を有し、適切に多重化されたRF信号によって順にアクティブ化される、または同時に読み出され得る。例えば、圧力の変化は、共振周波数をゼロ点周波数から変化させ得る。センサがそれぞれ、異なるゼロ点周波数を有し、これらの周波数が、十分に離れて離間される場合、センサは、多重化を伴わずに全て一度に読み出され得、スペクトルは、相互から区別され得るセンサの全ての周波数を網羅し得る。代替として、センサは、多重化され、例えば、一度に1つずつ読み出されてもよい。心圧信号を忠実に再現するためのサンプリング率は、心拍数の基本周波数の第10高調波の約2倍である。殆どのHF患者は、0.8~1.3HzのHRまたは基本周波数を有する。2Hzの頻拍HRであっても、40Hzのサンプリング率が、適正であろう。少なくとも240Hzの周波数切替およびサンプリング圧が可能なデバイスが、最大6つの圧力センサを多重化するために適正であろう。第20高調波を適正に再現することが可能であることはまた、dP/dtの忠実な計算を可能にするであろう。多重化される6つのセンサに関して、これは、十分に100kHzまたはそれを上回る実践的なRF搬送周波数に関するサンプリング能力の範囲内である、480Hzにおけるサンプリングを利用し得る。
【0200】
本明細書に説明されるような複数のLAPセンサを有することはまた、信号平均化を可能にすることによって、雑音を低減させるために有益であり得る。さらに、センサが、組織過成長または室壁張力に起因する機械的接続に起因して、故障する、もしくはアーチファクトを発展させることになる場合、そのセンサからの情報は、無視され得、冗長センサは、重要な圧力データへの継続されるアクセスを可能にするであろう。別の実施形態では、複数の生理学的パラメータまたは生化学的パラメータのうちの1つを個別に測定する個々のセンサ、例えば、複数のセンサタイプ(例えば、圧力、オキシメトリ、pH、加速度等)を有するシャントが、採用され得る。
【0201】
図20A-20C、21A-21C、および22に関して、埋込された圧力センサ、例えば、LFPSまたはSFPS圧力センサが、HF患者における薬物およびデバイス療法を誘導するために使用され得る方法を示す、例証的実施例が、説明される。
【0202】
図20A-20Cは、ADHFで以前に入院し、次いで、導線付きLAPセンサを埋込された、25%のLVEFを伴う特発性心筋症を伴う患者からのデータを描写する。
図20Aは、患者が息切れしたときのエピソードに対応するLAP波形トレースである。平均LAPは、60mmHgのV波を伴って36mmHgにおいて実質的に上昇された。
図20Bは、後のある時点でとられた波形トレースであり、11mmHgの正常な平均LAPを示す。
図20Cは、日中LAP測定値(白丸=朝、黒丸=晩)および7日移動平均の時間的傾向プロットである。監視の最初の4ヵ月の間、急性非代償性HFの2つのエピソードが、存在した。医師指示患者自己管理が、ACE阻害薬およびベータ拮抗薬の連続的漸増から開始された。利尿薬および長時間作用する硝酸塩が、上記に説明されるDynamicRxアルゴリズムを使用して、ちょうど測定されたLAPに従って調節された。プロットの最後の8ヵ月の間、LAPは、大部分が正常化され、平均して10~12mmHgになり、患者は、無症状になった。
【0203】
図21A-21Cは、ADHFに関する4回の事前の入院を経験した、HFrEFを伴う高齢患者からのLAP波形トレースおよび傾向プロットである。センサ埋込後の最初の1年の間、患者は、巨大なv波と関連付けられる重度に上昇されたLAP読取値の短いエピソードを有し続けた(
図21A)。これらのエピソードは、心エコーで観察されるような重度の機能的僧帽弁閉鎖不全と相関した。患者は、卵円窩上のLAP圧力センサの場所の後方で実施された経中隔カテーテル留置を用いて正常なマイトラクリップ埋込を受けた。患者の症状は、最も重大なLAP規定外変動の防止によって改善した。薬物療法の後の強化は、LAPの優れた制御をもたらした。
【0204】
図22は、CardioMEMS圧力センサを埋込された、HFpEFを伴う患者における肺動脈圧および心拍数の傾向プロットを示す。患者は、PA圧力の重度かつ持続された上昇を伴うNYHAクラスIII症状を有していた。V-Wave Ventura(登録商標)心房間シャントが、埋込され、心拍数は、ベータ拮抗薬を用いて低下し、左心房のシャント減圧の効率を改善した。それらのステップは、症状における付随の改善を伴って、PA圧力における即時かつ持続された低減をもたらした。
【0205】
図23は、センサの電気コンポーネントがシャントアンカ2300の保定部材(脚部)上に配置される、本発明のシャントの実施形態である。
図23では、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第10,251,740号の
図12に描写されるものに類似するアンカフレーム2301が、説明される。より具体的には、
図23では、本発明のシャントにおける使用のために好適なアンカ2300は、左心房における展開のために構成される、漸拡領域2306と、心房中隔を通して右心房の中に延在する、略円筒形領域2307とを含む。可撓性支柱2308は、アンカがその送達シースから解放されると、遠位に、すなわち、中隔に向かって屈曲し、好ましくは、
図23に描写されるように、完全に展開された位置では、右心房壁に接触するが、それを穿通しない、U形反転端部2309を含む。好ましくは、アンカ2300は、可撓性支柱2308以外、組織内部成長が円筒形領域2307の管腔を閉塞しないように阻止または防止する、ポリマー材料を用いてアンカをカプセル化することによって形成される導管を含み、先述の実施形態に関して説明されるように、生体適合性形状記憶合金を含む、またはそれから作製されてもよい。
図23の実施形態では、可撓性支柱2308のうちの少なくとも1つは、センサ要素2304を含む。展開されるときの可撓性支柱2308の高さおよび支柱がパンヌスによって過成長される可能性が高いかどうかに応じて、センサ要素2304は、センサ自体またはセンサ回路網、例えば、センサアンテナおよび/またはセンサ電子機器パッケージのうちの1つまたはそれを上回るものの任意の好適な組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例では、センサ要素2304は、温度センサ、生化学センサ、または他の好適なセンサタイプを含む。
【0206】
図24Aおよび24Bは、それぞれ、米国特許第6,468,303号(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されるような様式で構成される、ワイヤ編組から形成される、心房間シャント2400の端面図および側面図である。シャント2400は、生体適合性被覆物(具体的に図示せず)を用いて被覆されてもよく、シャントの流動管腔22’内に添着される、センサ2404を含んでもよい。センサ2404は、管腔22’内に位置する、二次管腔22”内に提供されてもよい。
図24Cは、心房中隔内の
図24A-24Bのシャントの展開を描写する。例えば、センサ2404を含む、シャント2400(いくつかの詳細が明確化のために省略される)は、送達シース2405内に圧縮されてもよく、これは、心房中隔を横断して延在されてもよい。構造2406は、第1のフランジ2402が、心房のうちの一方の中に自己拡張し得るように、シース2405が、後退される間、シャント2400を定位置に保持するために使用されてもよい。シース2405は、次いで、心房中隔を横断してセンサ2404を固着させるような様式で、他方の心房の中への第2のフランジ2403の自己拡張を可能にするように、さらに後退されてもよい。センサ2404は、LAP、RAP、またはLAPおよびRAPの両方を測定するように構成される、回路網を含んでもよい。
図24Aは、センサ2404が、略円形断面を有することを示唆し得るが、センサ2404が、半円形、三日月形、またはその他等の任意の好適な断面形状を有し得、例えば、
図31A-31Eおよび32A-32Dを参照してより詳細に説明されるような様式で、センサの長さに沿って変動する断面形状を有し得ることに留意されたい。例証として、センサ2404は、それを通して血液が流動し得る、少なくとも部分的に環状の断面を有してもよく、センサは、それを通した血液の流率を測定するための回路網を含んでもよい。また、センサ2404が、管腔22’の内壁に隣接して位置付けられ得るが、シャント2400が、代わりに、センサ2404を同心円状に支持するように構成され、管腔22’の内壁から離間される、支柱と、カラーとを含み得ることを理解されたい。
【0207】
図25Aおよび25Bは、シャントアンカ2500の中間領域2501が、センサ2504の回路要素としての役割を果たすコイル構造を有する、本発明のシャントのさらなる代替実施形態を図示する。本実施形態では、フレーム縮径部2501(中間領域)は、Luo, 「Selective and regulated RF heating of stent toward endohypothermia treatment of in-stent restenosis」 Master’s Thesis, University of British Columbia (Vancouver), 2014(その全内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されるものに類似する様式で、コイルの幾何学形状にレーザ切断されてもよく、したがって、インダクタまたはテレメトリコイルを形成してもよい。センサ2504、例えば、コンデンサは、フランジ2502、2503のうちの一方または両方の縁において提供されてもよく、縮径部2501(インダクタを提供し得る)とともに、受動的共振回路として使用され得る、LC回路を形成してもよい。例証として、フレーム縮径部2501は、完全にカプセル化される多巻数コイルを形成してもよく、約6mmの外径を有してもよく、18Frまたは24Frシースを通して展開可能であってもよい。いくつかの実施例では、フレーム縮径部2501は、超弾性性質を有するように、複合ニチノール/銀ワイヤを含んでもよい、またはそれから形成されてもよい、ならびに/もしくは腐食を阻止するように、白金または銀を用いてめっきされてもよい。この点で、フレーム縮径部2501は、必ずしもフランジ2502および2503と一体的に形成されない場合があり、代わりに、それに溶接または別様に結合されてもよい。
【0208】
コイル形フレーム縮径部2501のインダクタンスが、比較的に小さくあり得、そのようなインダクタンスが、コイルの断面積および/または長さの変化に応答して、例えば、拍動間で、もしくは治癒またはリモデリングに起因して経時的に変化し得ることに留意されたい。本縮径部支柱リングコイル内のインダクタンスの前述の変化を使用する能動的センサは、縮径部内の圧力が、ベンチュリ効果に起因する増加する流動に伴って低下し、したがって、コイルの断面積を低減させ、したがって、そのインダクタンスを低減させるはずであるため、潜在的に、シャントを通した流動を測定し得る。合理的なサイズのコンデンサを使用するLC回路の比較的に高い共振周波数のため、インダクタンスを測定し、テレメトリを実施するための能動的回路が、提供され得る。
【0209】
図26A-26Bは、センサが、シャントアンカにおいて形成されるレーザ切断フレーム要素において配置される、
図19Aおよび19Bのシャントの代替実施形態を図示する。
図19Aおよび19Bの実施形態では、複数の導線なしセンサが、シャントアンカフレームをカプセル化する生体適合性材料上またはその中に配置され得る一方、
図26A-26Bのシャント2600では、アンカフレーム2602は、それぞれ、センサ2604を個別に受け取り、固着させるように構成される、円周方向支柱2605において形成される、1つまたはそれを上回る容器2603を含む。複数の容器2603は、アンカフレーム2602の円周の周囲に等しく離間されてもよく、容器は、アンカフレームの一方または両方の心房において、ならびに/もしくはシャント縮径部の場所において位置してもよい。容器2603は、アンカフレームの製造の間のレーザ切断または後続溶接を含む、任意の好適なプロセスによって形成されてもよい。センサ2604は、任意の好適なプロセスを介して、例えば、生体適合性接着剤または圧着を使用して、個別の容器2603上に、またはその中に添着されてもよい。代替として、センサ2604は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第10,251,740号の
図4および5に描写されるアイレット64において等、アンカフレームの一方または両方の端部に形成されるアイレットにおいて位置してもよい。有利なこととして、容器2603は、アンカフレームの長さの中に配置されてもよく、したがって、シャントの展開の間の潜在的な屈曲が生じにくくあり得る。例えば、
図26Bは、容器2603が、概して、圧縮されたシャントの外側輪郭に従う、送達構成に圧縮されたシャント2600を図示する。容器に関する他の例示的場所も、
図28-30を参照して、ならびに本明細書の別の場所に説明される。
【0210】
図27は、シャントアンカ2700の中間領域が、
図25A-25Bを参照して説明されるものに類似する様式で、センサ2704の回路要素を形成し得るコイル構造2701を有する、本発明のシャントのさらなる代替実施形態を図示する。
【0211】
本明細書に提供されるシャントが、1つまたはそれを上回るセンサを含み得、そのそれぞれが、シャントの任意の好適な場所に配置され得ることを理解されたい。例えば、
図28-30は、センサが、シャントアンカにおける種々の領域に位置する、本発明のシャントの代替実施形態を図示する。例えば、
図28に図示されるシャントアンカ2800は、縦方向支柱2806に結合され、フランジ2802の周辺を越えて延在する、センサ2804のための容器2803を含む。別の実施例として、
図29に図示されるシャントアンカ2900は、縦方向支柱2906に結合され、
図26A-26Bを参照して説明されるものに類似する様式でアンカフレームの長さの中に位置する、センサ2904のための容器2903を含む。また別の実施例として、
図30に図示されるシャントアンカ3000は、円周方向支柱3005に結合される、個別のセンサ3004のための1つまたはそれを上回る容器3003と、縦方向支柱3006に結合される、個別のセンサ3004’のための1つまたはそれを上回る容器3003’とを含む。容器3003、3003’のうちの任意の好適なものが、アンカフレームの長さの中に位置してもよく(例えば、
図30に示される実施例における容器3003)、容器3003、3003’のうちの任意の好適なものが、フランジ3001および/または3002の周辺を越えて延在してもよい。
【0212】
図24A-24Cを参照して上記にさらに記述されるように、センサは、任意の好適な断面プロファイルを有してもよく、いくつかの実施形態では、センサの長さに沿って変動する断面プロファイルを有してもよい。例えば、
図31A-31Eは、センサの断面プロファイルが変動する、本発明のシャント3100の代替実施形態を図示する。
図31Aに図示されるように、センサ3104は、圧力センサまたは本明細書の別の場所に説明されるような他のセンサタイプを含んでもよい。センサ3104は、略円形であり得、その領域内の圧力を測定するように、第1の漸拡端部領域3102または第2の漸拡端部領域3103のいずれかの中に、もしくはそれに隣接して配置されるように構成され得る、圧力感知ダイヤフラム等のセンサ表面3104’と、シャントフレーム3110の縮径領域3101内に配置され、その中で比較的に薄型を有するように構成される、凹状区分3107と、センサ表面と凹状区分との間に延在する、テーパ状区分3106とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、凹状区分3107は、センサ3104の回路網を格納してもよい。
【0213】
センサ3104は、シャント3100内の任意の好適な場所に配置されてもよい。例えば、
図31B-31Eに図示されるように、センサ3104は、シャントフレーム3110の第1の寸法に沿って中心に配置されてもよく、シャントフレームの第2の寸法に沿って中心を外れて配置されてもよい。例証として、センサ3104は、センサ3104が管腔22を通して流動しないように血液を遮断する程度を低減または最小限にするような様式で、シャントフレームの内面に沿ってシャントフレーム3110に結合されてもよい。凹状区分3107は、管腔22を通した乱流を低減または最小限にするように、縮径部3101の内部と類似する外形を有してもよい。したがって、センサ3104の回路網は、シャント3100の内側管腔22と同軸に配置されてもよい。
図31A-31Bに図示されるような実施形態では、血液が、凹状区分3107およびテーパ状区分3106の単一の側のみに沿って流動し、それらの区分の他方の側が、それらの区分とシャントフレームとの間の血流を阻止するような様式でシャントフレーム3110に結合され得ることを理解されたい。
【0214】
図32A-32Dは、センサの断面プロファイルが変動し、テレメトリコイルを含む、本発明のシャント3200の別の代替実施形態を図示する。
図32Aに図示されるように、センサ3204は、圧力センサまたは本明細書の別の場所に説明されるような他のセンサタイプを含んでもよい。おそらく
図32Dに最も詳細に見られるように、センサ3204は、略円形であり得、その領域内の圧力を測定するように、第1の漸拡端部領域3202または第2の漸拡端部領域3203のいずれかの中に、もしくはそれに隣接して配置されるように構成され得る、圧力感知ダイヤフラム等のセンサ表面3204’と、シャントフレーム3210の縮径領域3201内に配置され、その中で比較的に薄型を有するように構成され、随意に、シャントフレームの外側周辺を越えて延在する、低減直径区分3207と、センサ表面と凹状区分との間に延在する、テーパ状区分3106とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、低減直径区分3207は、センサ3204の回路網を格納してもよい。シャント3200はさらに、テレメトリコイル3220を含んでもよい。
【0215】
センサ3204は、シャント3200内の任意の好適な場所に配置されてもよい。例えば、
図32A-32Dに図示されるように、センサ3204は、シャントフレーム3210の1つまたはそれを上回る寸法に沿って中心に配置されてもよい。例えば、センサ表面3204’は、漸拡端部領域3202内に、または漸拡端部領域3203内に略対称に配置されてもよい。例証として、センサ3204は、その中にセンサ3204が挿入され得るカラー3208およびカラー3208をシャントフレーム3210の縦方向支柱3212に結合する支柱3205を介して、シャントフレーム3210に結合されてもよい。したがって、血液は、環状間隙3230を通して、
図32Dにおける標識化されていない矢印によって示唆されるような様式で、センサ3204の周囲で、それを過ぎて略対称に流動し得る。
【0216】
いくつかの実施形態では、シャントフレーム3210内のセンサ3204の場所は、環状間隙3230を通した血流の率を調節するように、生体内または生体外で調節可能であってもよい。例えば、カラー3208および低減直径区分3207の外面はそれぞれ、ねじ山付きであってもよく、センサ3204が、
図32Dにおける矢印3240によって示唆されるような第1の方向に回転されると、センサが、矢印3231によって示唆されるような第1の方向に側方に移動し、間隙3230のサイズを低減させ、間隙を通した血流の減少を引き起こすように、相互と係止してもよい。同様に、センサ3204が、
図32Dにおける矢印3241によって示唆されるような第2の方向に回転されると、センサは、矢印3232によって示唆されるような第2の方向に側方に移動し、間隙3230のサイズを増加させ、間隙を通した血流の増加を引き起こす。
【0217】
加えて、複数の容器が、センサのために提供されるとき、そのような容器が、必ずしもそうである必要はないが、アンカフレームの円周の周囲にほぼ等しく離間され得ることを理解されたい。加えて、または代替として、容器は、アンカフレームの一方または両方の心房において、ならびに/もしくはシャント縮径部の場所において位置してもよい。容器は、アンカフレームの製造の間のレーザ切断またはアンカフレームへの後続溶接を含む、任意の好適なプロセスによって形成されてもよい。加えて、または代替として、1つまたはそれを上回るセンサは、シャントの縮径部、左心房側、または右心房側における生体適合性材料(例えば、ePTFE)の2つの層の間に設置されてもよい。例証として、センサは、生体適合性材料の2つの層によって前もって作成された「ポケット」の内側に設置されてもよく、次いで、熱、生体適合性接着剤、および/または好適な縫合糸の任意の好適な組み合わせを使用してシールされてもよい。代替として、センサは、生体適合性材料の一方の層およびその上に折り返される生体適合性材料の他方の層上に位置付けられてもよい。
【0218】
本明細書に提供される種々の構成では、センサとシャントとの間の接続は、実質的に、シャントフレームにおける圧着歪みを増加させ得ない。例えば、カプセル化センサは、構造への塑性変形を実質的に引き起こすことなく、シャントフレームとともに送達構成に比較的に容易に折畳または圧縮されるように構成されてもよく、また、展開されるとき、フェールセーフ解放機構を有してもよい。センサカプセル化(例えば、パリレンまたは類似物を使用する)は、例えば、センサが、比較的に高い熱(例えば、摂氏45度を上回って加熱された生理食塩水)に一時的に暴露される場合であっても、機能的なままであることを確実にするために、温度変化に対する比較的に長期の耐久性を提供し得る。
【0219】
本シャントを送達するある機構および方法が、本明細書および組み込まれる参考文献に説明されるが、アンプラッツァーシャント設計を送達するために以前に使用されたようなねじ式送達ケーブル、フックなし設計、センサ本体の周囲のクランプ、および同等物等の任意の好適な機構ならびに方法が、使用され得ることを理解されたい。
【0220】
前述の実世界の患者は、病理学的心臓圧を迅速かつ自動的に再び平衡させる、心房間シャントと、重要となる生理学的パラメータを査定し、療法的決定を誘導するための実用的データをもたらす、埋込可能センサとを組み合わせることによって達成可能な臨床的実行可能性および潜在的相乗効果を実証している。
【0221】
故に、本明細書のいくつかの実施例は、少なくとも1つの心房生理学的パラメータを監視し、患者ディスプレイデバイス上に少なくとも1つの心房生理学的パラメータを示す情報を表示することによって、心不全(HF)または肺動脈高血圧症(PAH)を治療するためのシステムを提供する。本システムは、(i)第1の漸拡領域と、縮径領域と、第2の漸拡領域とを有し、縮径領域は、第1の漸拡領域と第2の漸拡領域との間に配置される、アンカと、(ii)アンカ上に配置され、第1の漸拡領域から第2の漸拡領域まで延在する、管腔を形成する、生体適合性被覆物とを備える、心房間シャントを含んでもよい。本システムはさらに、少なくとも1つの心房生理学的パラメータを示すデータを発生させるための回路網を備える、センサと、センサを心房間シャントに結合するための支持構造とを含んでもよい。支持構造は、少なくとも1つの生理学的パラメータを監視するために、管腔に対してセンサを配置してもよく、その場所において、埋込後組織成長は、300ミクロンを超えない。本システムは、患者ディスプレイデバイスのプロセッサによって実行されるべきプログラミングを記憶する、コンピュータ可読媒体であって、プログラミングは、センサからデータを受信し、患者ディスプレイデバイス上での閲覧のためにデータを処理するための命令を含む、コンピュータ可読媒体を含んでもよい。そのようなシステムの非限定的実施例が、
図3を参照して説明され、そのようなシステムにおける使用のための心房間シャントおよびセンサの非限定的実施例が、
図1-2、4A-4B、5A-5B、6A-6B、7A-7F、8A-8B、9A-9B、10A-10B、11、12A-12B、13A-13B、14A-14B、15A、16A、17A-17C、18C、19A-19B、23、24A-24C、25A-25B、26A-26B、27、28、29、30、31A-31E、および32A-32Dを参照して説明される。
【0222】
本明細書のいくつかの実施例は、高圧力を緩和するために血液をシャントし、少なくとも1つの心房生理学的パラメータを監視することによって、心不全(HF)または肺動脈高血圧症(PAH)を治療するための心房間シャントを提供する。シャントは、第1の漸拡領域と、縮径領域と、第2の漸拡領域とを有し、縮径領域は、第1の漸拡領域と第2の漸拡領域との間に配置される、アンカを含んでもよい。シャントは、アンカ上に配置され、第1の漸拡領域から第2の漸拡領域まで延在する、管腔を形成する、生体適合性被覆物を含んでもよい。シャントは、少なくとも1つの心房生理学的パラメータを示すデータを発生させるための回路網を備える、センサを含んでもよい。センサは、埋込後組織成長が、300ミクロンを超えないように、管腔に対して配置されてもよい。心房間シャントおよびセンサの非限定的実施例が、
図1-2、4A-4B、5A-5B、6A-6B、7A-7F、8A-8B、9A-9B、10A-10B、11、12A-12B、13A-13B、14A-14B、15A、16A、17A-17C、18C、19A-19B、23、24A-24C、25A-25B、26A-26B、27、28、29、30、31A-31E、および32A-32Dを参照して説明される。
【0223】
明確化のために、別個の実施形態の文脈において説明される、本発明のある特徴がまた、単一実施形態において組み合わせて提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔にするために、単一実施形態の文脈において説明される、本発明の種々の特徴はまた、別個に、または任意の好適な副次的組み合わせにおいて提供されてもよい。本発明の種々の例証的実施形態が、上記に説明されるが、種々の変更および修正が、本発明から逸脱することなく、本明細書に行われ得ることが、当業者に明白となるであろう。したがって、本発明の全範囲は、それらの請求項が法的に享受する均等物の全範囲とともに、添付される請求項を参照して確認されなければならない。
【0224】
前述の開示では、実施形態が、その具体的例示的実装を参照して説明されている。種々の修正が、以下の請求項に記載されるような本開示のより広範な精神および範囲から逸脱することなく、それに行われ得ることが明白となるであろう。
【国際調査報告】