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▶ 12535441 カナダ エルティーディー.の特許一覧

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  • 特表-スペクトル診断システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】スペクトル診断システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/483 20060101AFI20240116BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240116BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240116BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G01N33/483 E
G01N21/27 E
C12Q1/04
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532684
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 CA2021051676
(87)【国際公開番号】W WO2022109732
(87)【国際公開日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】63/118,713
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523197537
【氏名又は名称】12535441 カナダ エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プリストパ,デイビッド アラン
(72)【発明者】
【氏名】パカク,ジョン ステファン
【テーマコード(参考)】
2G045
2G059
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045FA34
2G045FA36
2G045JA01
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB09
2G059BB13
2G059BB14
2G059DD15
2G059DD16
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE03
2G059EE07
2G059EE12
2G059FF01
2G059FF03
2G059HH01
2G059HH02
2G059HH03
2G059HH05
2G059KK04
2G059KK09
2G059MM05
2G059MM10
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ06
4B063QQ08
4B063QQ10
4B063QS39
4B063QS40
4B063QX01
(57)【要約】
【解決手段】生体試料は、試料中に一連の異なる状態を生じさせるウイルス、細菌又は癌などの原因因子の存在について分析される。試料は、サブ試料に分けられ、サブ試料のうちの少なくともいくつかは、異なる状態の試料の部分を含む。電磁放射は、試料と相互作用してサブ試料特性のスペクトルを取得し、サブ試料特性のスペクトルは、異なる状態のそれぞれの状態において複数のサブ試料を試験することから取得された複数の基準スペクトルと比較されて、原因因子に関する情報を取得するためにサブ試料の状態の集団分布が計算される。集団分布は、原因因子の効果に関するデータを生成するために、単一の時間又は経時的に分析され得る。集団分布は、複数の基準集団分布と比較されて、原因因子を識別するデータが生成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原因因子が生物学的試料中に一連の異なる状態を生じさせる、前記生物学的試料における原因因子を調査するための方法であって、
前記生物学的試料を複数のサブ試料に分けるステップであって、前記サブ試料のうちの少なくともいくつかが、前記状態のうちの異なる状態にある前記生物学的試料の部分を含む、分けるステップと、
サブ試料特性のスペクトルを取得するために電磁放射との相互作用によって前記サブ試料のうちの少なくともいくつかを試験するステップと、
各サブ試料からの前記スペクトルと、前記異なる状態のそれぞれの状態において複数のサブ試料を試験することから取得された複数の基準スペクトルとの比較を実行するステップと、
前記比較を使用して、前記サブ試料の前記状態の集団分布を計算するステップと、
前記集団分布を分析して、前記原因因子に関する情報を取得するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記集団分布が、前記原因因子を同定するデータを生成するために、既知の試料の試験から取得された複数の基準集団分布と比較される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原因因子が、前記状態の変化を生じさせる医薬品である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記原因因子が細菌又はウイルスなどの感染因子であるか、又は前記原因因子が癌などの疾患であり、それらの全てが前記状態の変化を生じさせる、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記感染因子が、属、種、又は株のレベルまで同定される、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
各サブ試料からの前記測定されたスペクトルと複数の基準スペクトルとの前記比較が、前記測定されたスペクトルが各基準スペクトルと一致する1つ又は複数の確率を割り当てることによって実行され、前記確率が、前記測定されたスペクトルと前記基準スペクトルとの間のスペクトル類似性に基づいて決定され、前記サブ試料の前記状態の前記集団分布が、前記確率を使用して計算される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの基準サブ試料状態が感染因子の存在に関連付けられ、少なくとも1つの基準サブ試料状態が感染因子に罹患されない真核細胞の存在に関連付けられ、少なくとも1つの基準サブ試料状態が感染因子に罹患される真核細胞の存在に関連付けられる、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記基準サブ試料状態のうちの少なくとも1つが、pH、温度熱履歴、及びイオン濃度などの前記試料の環境条件に関連付けられる、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記基準サブ試料状態のうちの少なくとも1つが、細胞のライフサイクルフェーズに関連付けられる、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記基準サブ試料状態のうちの少なくとも1つが、外部データベース内の前記基準サブ試料の少なくとも1つの特性とさらにリンクされ、前記特性が、年齢、性別、及び基礎的症状に関する医療記録又はその一部、並びにゲノム因子又はゲノム配列又はその一部などの前記生物学的試料の供給源に関する事前情報に依存する、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記原因因子が、真核細胞の基準サブ試料状態と確率的にリンクされたサブ試料スペクトルに由来する少なくとも1つの特性に少なくとも部分的に基づいて同定される、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記原因因子が、サブ試料と確率的にリンクされた少なくとも1つの基準サブ試料状態に関連付けられた外部データベースからの特性に少なくとも部分的に基づいて同定される、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記原因因子が、前記感染因子を含有しない少なくとも1つのサブ試料のスペクトル特徴に少なくとも部分的に基づいて同定される、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記生物学的試料が、複数の異なる感染因子タイプを含有し、複数の感染因子タイプが、属、種又は株のレベルまで同定される、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのサブ試料スペクトルが、光増幅装置を使用して測定される、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つのサブ試料スペクトルが、多重吸収装置を使用して測定される、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのサブ試料スペクトルが、増幅される多重吸収装置を使用して測定される、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのサブ試料が異なる摂動のシーケンスを受け、各摂動について、摂動された前記サブ試料の少なくとも1つのスペクトルが摂動なしで測定された前記サブ試料のスペクトルとは異なるようにスペクトルが測定され、それにより、前記集団分布の計算のための追加のスペクトルを提供する、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記摂動が、温度の変化、圧力の変化、電場の印加、磁場の印加、溶媒組成の変化、pHの変化、又はイオン濃度の変化によって単独で又は組み合わせて引き起こされる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
サブ試料に適用される摂動の前記シーケンスが、摂動のない前記サブ試料の前記スペクトルに少なくとも部分的に依存する、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記原因因子の進行の段階が、サブ試料状態の前記分布の分析によって取得される、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
細胞の多次元スペクトルを基準多次元スペクトルのデータベースと比較することに少なくとも部分的に基づいて、前記細胞が正常又は異常として分類される、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
異常と分類された少なくとも1つの細胞からの多次元スペクトルが、基準多次元スペクトルのデータベースと比較され、前記比較に少なくとも部分的に基づいて疾患状態が診断される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記サブ試料が、前記生物学的試料を複数のサブ試料に分けるように動作可能な区分システムによって前記試料を分割することによって形成され、各サブ試料が、前記生物学的試料から抽出された体積要素を包含し、少なくとも1つの体積要素が、前記生物学的試料の平均組成とは異なる組成を有する、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
新規な感染因子タイプの識別及び特徴付けに基づいて、事前データから遡及的分析が実行される、請求項1~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記集団分布が経時的に分析されて、前記原因因子の効果に関するデータを生成する、請求項1~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記サブ試料が、インキュベーション期間の間、規定された環境条件を有する環境チャンバ内に保持され、各サブ試料の複数の測定が、多次元スペクトルを生成するために前記インキュベーション期間内の異なる時間に行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
時間的シーケンスで複数回測定して複数の状態を表すスペクトルを取得し、次いで各状態がその状態で経過された時間によって重み付けされて時間分布を生成する、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断情報を取得するために生体試料を分析する方法に関する。より詳細には、本発明は、細胞を含有する生体試料におけるウイルス、細菌又は癌などの他の因子などの経時的な変化の原因因子を同定するための方法であって、変化が生体試料において一連の異なる状態を生じさせる、方法に関する。
【0002】
関連出願
本開示は、以下ではMPIS特許と呼ばれる本発明者らによって2013年1月1日に発行されたMultiple Pass Imaging Spectroscopy;米国特許第8,345,254号に関する。
【0003】
本開示は、以下ではHEMS特許と呼ばれる本発明者らによって2020年3月10日に発行されたHigh Efficiency Multiplexing;米国特許第10,585,044号に関する。
【0004】
本開示は、本発明者らによって2020年2月19日に出願され、以下ではMG特許と呼ばれ、国際公開第2012/163798号として2021年8月26日に現在公開されているMagnetic Platform for Sample Orientation、米国仮特許出願第62/978,675号に関する。
【0005】
本開示は、本発明者らによって2020年2月19日に出願され、以下ではFPFA特許と呼ばれ、国際公開第2012/163799号として2021年8月26日に現在公開されているField Programmable Fluid Array;米国仮特許出願第62/978,680号に関する。
【0006】
本開示は、本発明者らによって2020年7月31日に出願され、以下ではMDS特許と呼ばれ、PCT/CA2021/051057として2021年7月28日に現在出願されているMulti-dimensional Spectroscopy;米国仮特許出願第63/059,298号に関する。
【0007】
本開示は、本発明者らによって2020年12月に出願され、以下ではAMAS特許と呼ばれるAmplified Multiplex Absorption Spectroscopy;米国仮特許出願第63/120318号に関する。
【0008】
本開示は、Prystupaら(1993)Macromolecules 26,1947-1955に関する。
【0009】
上記で引用された出願及び公開された文献のそれぞれの開示は、さらなる詳細のために参照され得る。
【発明の概要】
【0010】
本発明によれば、原因因子が生体試料中に一連の異なる状態を生じさせる、生体試料における原因因子を調査するための方法であって、
生体試料を複数のサブ試料に分けるステップであって、サブ試料のうちの少なくともいくつかが、前記状態のうちの異なる状態にある生体試料の部分を含む、分けるステップと、
サブ試料特性のスペクトルを取得するために電磁放射との相互作用によってサブ試料のうちの少なくともいくつかを試験するステップと、
各サブ試料からのスペクトルと、異なる状態のそれぞれの状態において複数のサブ試料を試験することから取得された複数の基準スペクトルとの比較を実行するステップと、
比較を使用して、サブ試料の状態の集団分布を計算するステップと、
前記集団分布を分析して、原因因子に関する情報を取得するステップと、を含む、方法が提供される。
【0011】
原因因子という用語は、生体物質に影響を及ぼす任意の因子の一般的な表現であることを意図している。この原因因子は、細菌又はウイルスなどの感染因子であり得る。それは、癌又は自己免疫疾患などの疾患に関連する場合がある。それは、癌を含む遺伝的欠陥又は遺伝的変化などの変化を生じさせる別の効果であり得る。それは、経時的に生体物質の変化を再び生じさせるエージングを含み得る。それは、生体物質に影響を及ぼす医薬品、毒物、又は環境汚染物質などの他の因子を含み得る。
【0012】
場合によっては、典型的には、因子が知られており、その効果に関する情報が必要とされる場合、得られた集団分布は、分布が変化するにつれて経時的に分析され、原因因子の効果に関するデータを生成する。
【0013】
他の場合、典型的には、因子が知られておらず、それを同定する必要がある場合、集団分布は、原因因子を同定するデータを生成するために、既知の試料を試験することから取得された複数の基準集団分布と比較される。
【0014】
サブ試料特性のスペクトルは、プローブ電磁放射をサブ試料に向けて、前記サブ試料と相互作用させ、試験された各サブ試料から透過、反射、散乱又は放射された電磁放射を別々に収集し、各サブ試料から測定されたスペクトルを取得するために、複数の測定された波長において収集された電磁放射の振幅を測定することによって取得されることができる。
【0015】
しかしながら、磁気共鳴又は質量分析などの他のモダリティが使用されることができる。
【0016】
好ましくは、集団分布は、原因因子を同定するデータを生成するために、既知の試料の試験から取得された複数の基準集団分布と比較される。
【0017】
一例では、原因因子は、状態の変化を生じさせる医薬品である。
【0018】
すなわち、1つの重要な特徴は、原因因子が、異なるサブ試料中の生体試料の異なる状態を示す異なるスペクトルのサブ試料中の集団分布によって同定されることである。したがって、この方法は、そのスペクトルから因子を直接同定しようとするのではなく、疾患が進行するにつれて生じる変化に依存する。
【0019】
原因因子は、典型的には、細菌又はウイルスなどの感染因子である。しかしながら、原因因子は、いずれも生体試料中で状態変化を生じさせる癌などの疾患とすることができる。
【0020】
原因因子が感染因子である場合、これは、属、種又は株のレベルまで同定されることができる。
【0021】
上記で定義された方法とは独立して使用されることもできる重要な特徴では、各サブ試料からの測定されたスペクトルと複数の基準スペクトルとの比較は、測定されたスペクトルが各基準スペクトルと一致する1つ又は複数の確率を割り当てることによって実行され、確率は、測定されたスペクトルと基準スペクトルとの間のスペクトル類似性に基づいて決定され、サブ試料の状態の集団分布は、確率を使用して計算される。すなわち、スペクトル比較からサブ試料状態を実際に判別する必要はなく、1つ又は別の状態である確率を生成するだけである。これらの確率の計算に基づいて、実際の集団分布が計算されることができる。上記の方法に基づいて、集団分布を、他の既知の分布と比較して、原因因子を同定することができる。しかしながら、そのように決定された集団分布は、他の方法において使用されることができる。
【0022】
一実施形態では、少なくとも1つの基準サブ試料状態は、真核細胞と相互作用するように、真核細胞に近接した又は真核細胞内の感染因子の存在に関連付けられ、少なくとも1つの基準サブ試料状態及び少なくとも1つの基準サブ試料状態は、感染因子との相互作用によって影響されない真核細胞の存在に関連付けられる。感染因子と細胞との間の相互作用は、直接的(一次的)又は二次的(感染因子によって放出されるか、又は感染因子との相互作用に起因して別の細胞によって放出される少なくとも1つの分子種の存在によって媒介される)であり得る。
【0023】
一実施形態では、基準サブ試料状態のうちの少なくとも1つは、pH、温度熱履歴及びイオン濃度などの試料の環境条件に関連付けられる。
【0024】
一実施形態では、基準サブ試料状態のうちの少なくとも1つは、ライフサイクルフェーズに関連付けられる。
【0025】
一実施形態では、基準サブ試料状態のうちの少なくとも1つは、外部データベース内の基準サブ試料の少なくとも1つの特性とさらにリンクされ、その特性は、年齢、性別、及び基礎的症状に関する医療記録又はその一部、並びにゲノム因子又はゲノム配列又はその一部などの生体試料の供給源に関する事前情報に依存する。
【0026】
一実施形態では、原因因子は、真核細胞基準サブ試料状態と確率的にリンクされたサブ試料スペクトルに由来する少なくとも1つの特性に少なくとも部分的に基づいて同定される。
【0027】
一実施形態では、原因因子は、サブ試料と確率的にリンクされた少なくとも1つの基準サブ試料状態に関連付けられた外部データベースからの特性に少なくとも部分的に基づいて同定される。
【0028】
一実施形態では、原因因子は、前記感染因子を含有しない少なくとも1つのサブ試料のスペクトル特徴に少なくとも部分的に基づいて同定される。
【0029】
一実施形態では、生体試料は、複数の異なる感染因子タイプを含有し、複数の感染因子タイプは、属、種又は株のレベルまで同定される。
【0030】
一実施形態では、少なくとも1つのサブ試料スペクトルは、光増幅装置を使用して測定される。
【0031】
一実施形態では、少なくとも1つのサブ試料は、異なる摂動のシーケンスを受け、各摂動について、前記摂動されたサブ試料の少なくとも1つのスペクトルが摂動なしで測定された前記サブ試料のスペクトルとは異なるようにスペクトルが測定され、それにより、集団分布の計算のための追加のスペクトルを提供する。摂動は、温度の変化、圧力の変化、電場の印加、磁場の印加、溶媒組成の変化、pHの変化、又はイオン濃度の変化によって単独で又は組み合わせて引き起こされることができる。サブ試料に適用される摂動のシーケンスは、摂動のないサブ試料のスペクトルに少なくとも部分的に依存することができる。
【0032】
一実施形態では、原因因子の進行の段階は、サブ試料状態の分布の分析によって、ここでも原因因子の既知の段階からの既知の分布との比較によって取得される。
【0033】
一実施形態では、細胞の多次元スペクトルを基準多次元スペクトルのデータベースと比較することに少なくとも部分的に基づいて、細胞が正常又は異常として分類される。
【0034】
一実施形態では、正常と分類された少なくとも1つの細胞からの多次元スペクトルが、基準多次元スペクトルのデータベースと比較され、前記比較に少なくとも部分的に基づいて疾患状態が診断される。
【0035】
一実施形態では、サブ試料は、生体試料を複数のサブ試料に分けるように動作可能な区分システムによって試料を分割することによって形成され、各サブ試料は、生体試料から抽出された体積要素を含み、少なくとも1つの体積要素は、生体試料の平均組成とは異なる組成を有する。
【0036】
一実施形態では、新規な感染因子タイプの同定及び特徴付けに基づいて、事前データの遡及的分析が実行される。
【0037】
本発明の重要な特徴によれば、試料は、生体試料を複数のサブ試料に分けるように動作可能な区分システムによって分割され、各サブ試料は、生体試料の平均組成とは異なる組成を有する生体試料から抽出された体積要素を含む。
【0038】
これは、フローサイトメータ又はその変形を使用することによって第1の方法で行うことができる。フローサイトメータは、上記で引用されたMPIS特許に記載されている。フローサイトメータは、(追加されたセンサを有する)FPFAの開示と大規模に並列にされ得る。第2の方法では、細胞の集合体が表面上に広げられ、光学センサが細胞位置を測定する。(無作為に、又はサイズ、形状などの基準に基づいて)測定のために細胞が選択される。磁性体は、選択された細胞の位置に操縦され、選択された細胞に取り付けられるか又はそれを取り囲み、選択された細胞をスペクトル測定位置に平行移動させる。測定される細胞は、各タイプの統計学的に有意な数を与えるように選択され得る。例えば、タイプAの100、タイプBの100などである。第3の方法では、サブ体積は、より大きな体積内の領域として論理的に選択される。
【0039】
区分システムは、例えば、上記で引用されたMPIS特許に記載された構成であってもよい。
【0040】
簡潔には、一例として、流体流は液滴に分割され、生物学的サブ試料を含有する各液滴は、例えばインクジェットプリンタによって基材上の異なる位置に個別に導かれる。生物学的内容物を欠く液滴は、廃棄され得る。これは、液滴が小さな電荷を有し、電場によって変位され得るフローサイトメータにおいて行うことができる。
【0041】
上記又は下記の特徴のいずれかと独立して使用されることができる本発明の重要な任意の特徴によれば、各生物学的サブ試料を、サブ試料によって排他的に占有される画定された試料領域に配置するように動作可能な試料配置システムが提供される。試料配置システムは、例えば、プロッタであってもよい。
【0042】
区分システムは、例えば、異なるサブ試料が異なるチャネルに沿って導かれる流体ネットワークであってもよい。あるいは、流体ネットワークは、一度に1つのサブ試料を通過させる狭窄部を含んでもよい。流体ネットワークは、上記で引用されたFPFA特許に記載されている構成であってもよい。
【0043】
区分システムは、例えば、試料画像を受信し、試料画像をサブ試料領域に区分する計算装置を含んでもよい。サブ試料領域は、画素又は画素の連続ブロックであってもよい。サブ試料領域は、スペクトル特性に基づいて選択されてもよい。例えば、画素領域は、隣接する画素群において検出された蛍光発光の存在(又は欠如)に基づいて、共焦点顕微鏡によって記録された画像から選択されてもよい。サブ試料領域は、例えば、赤外線顕微鏡又はラマン顕微鏡によって記録されたスペクトル画像から選択されてもよい。サブ試料領域は、例えば、上記で引用されたMPIS特許の構成を使用して記録された増幅スペクトル画像から選択されてもよい。サブ試料領域は、例えば、上記で引用されたAMAS特許の構成を使用して記録された増幅スペクトル画像から選択されてもよい。
【0044】
区分システムは、例えば、上記で引用されたMG特許に記載されている構成であってもよく、複合磁性体は、分析のために生物学的サブ試料を個別に選択及び配向するために電磁場によって操作される。
【0045】
生体試料は、例えば、ヒト又は動物から採取又は抽出された血液、唾液、尿、リンパ液、精液、糞便などの流体であり得る。生体試料は、例えば、ヒト又は動物又は植物から採取又は抽出された組織又はその一部であり得る。生体試料は、例えば、ヒト又は動物に関連する又はヒト又は動物から抽出された真核細胞、細菌又はウイルス粒子であり得る。生体試料は、例えば、水処理プラント又は水分配システムから採取された水試料であり得る。生体試料は、例えば、溶液中の生物学的分子の混合物、生物学的分子の凝集体、ウイルス粒子として組織化された生物学的分子(生存能力のある又は生存能力のない)、及び細胞として組織化された生物学的分子(生存能力のある又は生存能力のない)を含有し得る。区分システムは、例えば、生体試料を、溶液を含有する複数のサブ試料、凝集体を含有する複数のサブ試料、ウイルス粒子を含有する複数のサブ試料、及び細胞を含有する複数のサブ試料に分離し得る。好ましくは、各細胞は、異なるサブ試料に含まれる。
【0046】
例えば、サブ試料は、5×10-7gの質量の大きな真核細胞、場合によっては真核細胞によって排出される細胞外物質であり得る。例えば、サブ試料は、4×10-12g程度の質量の原核生物細菌細胞に、場合によっては原核生物細胞によって排出される細胞外物質を加えたものであり得る。
【0047】
例えば、サブ試料は、1×10-16g程度の質量のウイルス粒子であり得る。好ましくは、細胞と関連付けられていない各ウイルス粒子は、異なるサブ試料に含まれる。単一のサブ試料を使用する目的は、重要な利点を提供する生物学的単位の特性の変動性を明らかにすることである。
【0048】
本発明の重要な特徴によれば、画定された各試料体積から受信した電磁放射を分析するための装置が提供される。分析する装置は、例えばスペクトロメーターであり得る。好ましくは、スペクトロメーターは、上記で引用されたHEMS特許に記載されているタイプのものである。各試料体積から受信した電磁放射は、熱放射又は励起後の放射(蛍光放射)であり得る。各試料体積から受信した電磁放射は、試料体積内の分子によって散乱され得る。各試料体積から受信した電磁放射は、試料体積内の分子による吸収のために入射電磁放射から変更され得る。プローブ電磁放射は、試料体積に入射してもよく、生体物質と相互作用し、相互作用した放射が分析のために受信される。
【0049】
本発明の重要な任意の特徴によれば、電磁放射を生成して各画定された試料体積に誘導し、各画定された試料体積内のサブ試料と相互作用した電磁放射を抽出するための誘導システムが提供される。電磁放射は、10nm未満の波長を有するX線であり得る。例えば、X線が使用されて、原子構造又はメソスケール構造(SAXS)を測定し得る。電磁放射は、10nmから450nmの波長を有する紫外線又は450nmから700nmの波長を有する可視光であってもよい。UV及び可視放射は、例えば、電子遷移(吸光度)を測定し、ラマンスペクトル(共鳴ラマン及びCARSを含む)を励起し、蛍光発光を励起し、散乱を介して構造をプローブするために使用され得る。電磁放射は、700nmから2500nmの波長を有する近赤外、2.5ミクロンから25ミクロンの波長を有する中赤外、25ミクロンから1000ミクロンの波長を有する遠赤外、又は1mmを超える波長を有するマイクロ波であってもよい。これらの範囲に吸収された放射は、例えば、存在する分子タイプ及び各画定された試料体積内のそれらの相対的存在量を特定するために使用され得る。画定された試料体積は、スペクトル画像を与える連続的であっても、不連続的であってもよい。電磁放射は、例えば10mrad未満の角度発散でコリメートされてもよい。電磁放射は、画定された試料体積の寸法に集束され得る。電磁放射は、画定された試料体積内の回折限界スポットに集束され得る。画定された試料体積内のサブ回折制限体積内の電磁放射相互作用は、上記で引用されたMG特許に記載されているような近接場増強技術によって増強され得る。
【0050】
本発明の重要な特徴によれば、生物学的サブ試料の基準スペクトルのデータベースが提供され、各基準スペクトルは、生物学的サブ試料のうちの少なくとも1つの物理的属性とリンクされる。好ましくは、基準スペクトルのデータベースは、上記で引用されたMDS特許に記載されているような多次元スペクトルを含む。基準スペクトルのデータベースは、単一のタイプの生物学的分子のスペクトル、様々な相対存在量を有する複数のタイプの生物学的分子のスペクトル、及びウイルス粒子、原核細胞及び真核細胞などの完全な生物学的単位のスペクトルを含み得る。データベースは、測定されたスペクトル、理論モデルから生成されたスペクトル、及びそれらの組合せを含み得る。例えば、理論から生成された水蒸気のスペクトルは、測定された水蒸気のスペクトルよりもノイズが少ない場合がある。公開されているHITRANデータベースは、大部分の大気ガスの周波数及び相対強度を含む。
【0051】
水蒸気のスペクトルは、スペクトル減算によって除去され得る中赤外スペクトルにおける一般的な干渉である。例えば、生物学的高分子及びその凝集体の基準スペクトルは、格子動力学計算によって生成され得る。好ましくは、各基準スペクトルは、生物学的サブ試料の複数の物理的属性とリンクされる。物理的属性は、ゲノム配列又はその一部であり得る。物理的属性は、参照方法によって確立された属、種又は血清型指定であり得る。物理的属性は、疾患症状又は一連の症状であり得る。物理的属性は、疾患症状に対する確率又は感受性であり得る。
【0052】
本発明の重要な特徴によれば、少なくとも1つの基準サブ試料分布が、感染因子と関連することが知られているサブ試料状態の分布を表す、基準サブ試料集団分布のデータベースが提供される。感染因子は、公知の感染因子であってもよく、新規な感染因子であってもよい。基準サブ試料分布は、例えば、異なる感染段階に対応するサブ試料を含み得る。サブ試料は、例えば、正常な(健常な)細胞、感染因子又は感染細胞によって生成された生物学的分子によって変化した細胞(二次効果)、感染因子に直接感染した細胞(一次効果)、死細胞及びその断片、並びに単独の感染因子を含み得る。列挙された各タイプは、サブ試料分布内のいくつかの段階によって表され得る。例えば、様々な分裂段階における細胞のスペクトルは異なる。例えば、感染の第1の段階における細胞のスペクトルは、感染の後期段階における細胞のスペクトルと異なり得る。
【0053】
本発明の重要な特徴によれば、計算装置が提供される。計算装置は、スペクトルデータを受信し、スペクトルデータに対して本明細書に記載の分析を実行し、分析の結果を出力するように動作可能な任意の装置である。計算装置は、異なるタイプの複数の論理処理ユニット、例えば複数のCPUコア及びFPGAユニットを含み得る。計算装置は、複数の異なる機械可読記憶装置、例えば揮発性及び不揮発性メモリを含み得る。計算装置は、ネットワーク接続を介して計算装置をI/O装置(キーボード、ディスプレイなど)及び他のコンピュータと接続する複数の通信構成要素を含み得る。計算装置は、画定された試料体積内の各生物学的サブ試料のスペクトルを基準スペクトルのデータベースと比較するように動作可能である。計算装置は、正確な一致を試みるのではなく、各基準スペクトルと生物学的サブ試料のスペクトルとの間の1つ又は複数の一致確率を割り当てる。
【0054】
次いで、計算装置は、上記から取得されたサブ試料スペクトルタイプの集団分布をサブ試料タイプの基準集団分布のデータベースと比較するように動作可能である。
【0055】
上記又は下記の特徴のいずれかと独立して使用され得る本発明の重要な任意の特徴によると、各生物学的サブ試料からスペクトル信号を分離するように動作可能なスペクトル画像化システムが提供される。スペクトル画像化システムは、例えば、ラマン顕微鏡であってもよい。スペクトル画像化システムは、例えば、赤外線顕微鏡であってもよい。スペクトル画像化システムは、例えば、上記で引用されたMPIS特許に記載されている構成であってもよい。スペクトル画像化システムは、例えば、上記で引用されたAMAS特許に記載されている構成であってもよい。
【0056】
上記又は下記の特徴のいずれかと独立して使用され得る本発明の重要な任意選択の特徴によると、スペクトル画像からのスペクトル信号を各生物学的サブ試料に割り当てるように動作可能な試料マッピングシステムが提供される。試料マッピングシステムは、画像の各領域を1つ又は複数の生物学的サブ試料に割り当て、領域内のスペクトル振幅を前記領域内の各生物学的サブ試料に割り当てる。好ましくは、画像領域は、各画像領域が生物学的サブ試料を含まないか又は1つの生物学的サブ試料を含むように、上記で引用されたAMAS特許に記載されているように選択される。
【0057】
上記又は以下の特徴のいずれかと独立して使用されることができる本発明の重要な任意の特徴によれば、摂動を適用して、各画定された試料体積内の生体試料の複数の異なる構成を誘導するための装置が提供される。生体試料内の分子の異なる構成は、例えばPrystupaらによって上記で引用された論文に記載されているように、分子凝集の変化を引き起こす生体試料の温度を変化させることによって誘導され得る。生体試料内の分子の異なる構成は、生体試料のpHを変化させることによって誘導され得る。上記で引用されたMG特許に記載されているように、基材上に分子を吸着し、基材を再配向させることによって、生体試料内の分子の異なる構成が誘導され得る。生体試料内の分子の異なる構成は、上記で引用されたMDS特許に記載されているように、試料体積内の電磁場又は音響場の印加によって誘導され得る。電磁場は、生体試料中に非線形光学効果を発生させるのに十分な瞬時電力を有するレーザパルスの形態で印加され得る。電磁場は、DC磁場として印加され、生体試料内の双極子を印加磁場に対して位置合わせさせ得る。上記で引用されたMDS特許において論じられているように、10kHzから10MHzの周波数で振動する電磁場を印加して、生体試料内の分子又はその一部の異なる集団を、それらのそれぞれの慣性モーメント、双極子モーメント、及び隣接分子との相互作用にしたがって異なる向きにすることができる。電磁場は、例えば、スターク効果又はゼーマン効果を介して生体試料内の分子の量子状態を乱し得る。
【0058】
上記又は以下の特徴のいずれかと独立して使用されることができる本発明の重要な任意の特徴によれば、入射放射と少なくとも1つのサブ試料領域との相互作用を増加させるための光増幅システムが提供される。光増幅システムは、例えば、上記で引用されたMPIS特許に記載されたマルチパス装置であってもよい。光増幅システムは、例えば、上記で引用されたAMAS特許に記載されたマルチパス装置であってもよい。増幅は、各パスによって吸収を受ける異なる方向からサブ試料領域に電磁放射ビームを複数回通過させることによって達成される。増幅は、ビーム中の光線が試料領域を通過する回数に比例する。検出器アレイに入射する放射は、試料領域の畳み込み画像を含む。各サブ試料領域の吸収は、逆畳み込み変換を適用することによって取得される。
【0059】
上記又は下記の特徴のいずれかと独立して使用されることができる本発明の重要な任意の特徴によれば、必要に応じて、集団分布を経時的又は時間的に分析して、原因因子の効果に関するデータを生成する。すなわち、場合によっては、感染した細胞は同相であり得る:すなわち、細胞は、ほぼ同時に感染し、類似の生化学的プロファイルを有する。これは、全ての罹患細胞が同時に異なる状態を通って進行するように、原因因子によって生じる感染又は影響が同時に起こる場合に特に有効である。この場合、経時的又は時間的に異なる測定によって生成された追加情報は、原因因子を決定するための分析における支援を提供することができる。
【0060】
すなわち、好ましくは、サブ試料は、インキュベーション期間の間、規定された環境条件を有する環境チャンバ内に保持され、各サブ試料の複数の測定は、インキュベーション期間内の異なる時間に行われる。すなわち、規定された環境条件における各サブ試料の時間進展が測定され、多次元スペクトル(振幅、波長、時間、環境条件、及び任意に印加電場などの追加の摂動)を生成する。環境条件は、例えば、温度、湿度、ガス濃度、栄養濃度、pH及びイオン強度を含み得る。
【0061】
先行する又は後続の実施形態のいずれかと組み合わせて使用され得る実施形態では、生体試料内のサブ試料からのスペクトルは、基準サブ試料スペクトルのデータベースとの比較によって分類される。
【0062】
各サブ試料のスペクトルは、スペクトルの時系列であってもよく、比較のための基準サブ試料スペクトルのデータベースは、スペクトルの時系列のデータベースであってもよい。すなわち、基準スペクトルのデータベースは、サブ試料スペクトルと同じ次元を有するスペクトルを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、分類は、生体試料又はその供給源の1つ又は複数の非スペクトル特性に少なくとも部分的に基づく。非スペクトル特性は、温度、熱履歴、pH、イオン濃度などの環境因子、年齢、性別、及び基礎医学的状態を含む医療記録パラメータ、並びにゲノム因子を含む。すなわち、特定の生体試料との比較のために利用される基準スペクトルのデータベース内の記録のセットは、生体試料の供給源に関する事前情報に依存し得る。この場合の事前情報は、スペクトルデータの収集の前ではなく、スペクトルデータの特定の分析の前を意味する。生体試料からのスペクトルデータセットは、非スペクトル特性に関するより多くの情報が利用可能になるに従って、何回でも分析されてよい。
【0064】
先行する又は後続の実施形態のいずれかと組み合わせて使用され得る実施形態では、基準スペクトルのデータベースは、生体試料からのサブ試料スペクトル及び生体試料に関連付けられた情報を含むように拡張される。例えば、新規な感染因子の場合、第1の場合のサブ試料分布は、判定のための閾値内の参照データベース内の既知の感染因子のサブ試料分布に対応しないことがある。第1の場合のサブ試料分布は、基準スペクトルのデータベースに追加され、過去の測定からサブ試料分布を分析することによって、その後、遡及的に新規な感染因子の他の場合を識別するために使用され得る。
【0065】
先行する又は後続の実施形態のいずれかと組み合わせて使用され得る実施形態では、生体試料内のサブ試料からのスペクトルは、基準サブ試料スペクトルのデータベースとの比較による発達段階によって分類される。発達段階は、例えば、細胞の増殖及び分裂の段階であり得る。発達段階は、例えば、感染因子の影響による異常な細胞機能の段階であり得る。
【0066】
先行する又は後続の実施形態のいずれかと組み合わせて使用され得る実施形態では、生体試料におけるサブ試料間の発達段階の分布によって、感染因子が少なくとも部分的に同定される。例えば、ウイルス因子に感染した細胞は、スペクトル測定によって区別され得る異なる濃度の生体分子を有する状態のシーケンスを通過し得る。異なるランダム時間にウイルスに感染した細胞の大きな集団の場合、状態のシーケンス内の各状態にある細胞の数は、シーケンス内の全ての状態の時間に対するその状態で経過された平均時間に比例する。したがって、この例におけるサブ試料状態の分布は、感染因子に固有の時間的プロファイルを表す。生体試料内の異常な細胞状態の相対集団は、感染の時間的分布と異常な細胞状態の時間的配列との畳み込みを表すことができる。
【0067】
上記のように、場合によっては、感染細胞は同相であり得る:すなわち、細胞は、ほぼ同時に感染し、類似の生化学的プロファイルを有する。この場合、細胞は、制御された環境に保持され、複数の状態を表すスペクトルを取得するために時系列で複数回測定され得る。次いで、各状態は、時間分布を生成するためにその状態で経過された時間によって重み付けされる。
【0068】
先行する又は後続の実施形態のいずれかと組み合わせて使用され得る実施形態では、生体試料内のサブ試料からのスペクトルは、階層的クラスタリングによって複数のレベルを有する階層に分類され、階層の各レベルのクラスタは、クラスタからのスペクトルと基準スペクトルのデータベースとの比較によってさらに分類される。例えば、階層的分類は、最初に、生体試料のサブ試料を、溶液のみ、細胞、及び凝集体を含む群に分割し得る。第1のレベルの各グループは、さらに分類されてもよい。例えば、細胞を含有するサブ試料の群は、原核細胞、真核細胞又は双方のタイプを含有するサブグループに分類され得る。分類は、例えば、細胞を含むサブ試料が属、種又は株レベルに分類されるまで、複数回繰り返され得る。
【0069】
先行する又は後続の実施形態のいずれかと組み合わせて使用され得る実施形態では、閾値を超える基準を満たすサブ試料の数の存在に基づいて感染因子が同定される。例えば、基準は、サブ試料スペクトルと感染因子とリンクされた基準サブ試料スペクトルとの間のスペクトル類似性が類似性閾値よりも大きいことであり得る。サブ試料の閾値数は、例えば1であり得る。サブ試料の閾値数は、例えば、生体試料から抽出されたサブ試料の総数の一部であり得る。サブ試料の閾値数は、サブ試料のサブ集団内のサブ試料の一部であり得る。例えば、サブ集団は、階層的分類の共通分岐上のサブ試料のグループであり得る。
【0070】
本発明の方法及びシステムの実装は、選択されたタスク又はステップを手動、自動、又はそれらの組合せで実行又は完了することを含む。さらに、本発明の方法及びシステムの好ましい実施形態の実際の器具及び機器によれば、いくつかの選択されたステップは、任意のファームウェア又はそれらの組合せの任意のオペレーティングシステム上のハードウェア又はソフトウェアによって実装されることができる。例えば、ハードウェアとして、本発明の選択されたステップは、チップ又は回路として実装されることができる。ソフトウェアとして、本発明の選択されたステップは、任意の適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装されることができる。いずれの場合でも、本発明の方法及びシステムの選択されたステップは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実行されるものとして説明されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】本発明にかかる方法の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。当該技術分野において知られている構造又はプロセスの詳細な説明は、本開示の主題を不明瞭にすることを避けるために省略されることがある。さらに、本開示の以下の説明では、本開示の一般的な理解を与えるために以下の説明に見られる様々な具体的な定義が提供され、そのような定義なしで本開示が実装されることができることは当業者にとって明らかである。
【0073】
図1は、全体として(100)で示される本発明の実施形態の概略図を示している。分析のための生体試料(101)は、例えば患者から取得される。これはヒト患者であり得るが、本発明は、ヒト患者に限定されない。本発明の方法はまた、獣医学的患者並びに植物疾患及び水試料に適用され得る。
【0074】
生体試料(101)は、(102)において示されるように、非感染真核細胞を含有し得る。非感染細胞は、正常又は健常な状態であってもよく、異常な状態であってもよい。第1の細胞に現れる非感染異常状態は、例えば、疾患が第2の細胞に罹患され、第2の細胞が第1の細胞の環境を変化させる二次効果によるものであり得る。第1の細胞において現れる非感染異常状態は、例えば、疾患が第2の細胞に罹患され、第2の細胞が第1の細胞によって受け取られたシグナル伝達分子を放出する一次効果によるものであり得る。シグナル伝達分子は、例えば、第1の細胞に細胞防御に関連する生体分子を合成させ得る。
【0075】
生体試料(101)は、ウイルスによる感染の様々な段階で真核細胞を含み得る。細胞膜に付着したウイルス粒子(104)による感染の初期段階の細胞は、(103)において示されている。細胞質内のウイルス粒子(106)による感染の後期段階が(105)において示されている。(107)において示されるように、ウイルス粒子(108)のクラスタが細胞質に形成され得る。(109)において示されるように、ウイルス粒子は、(110)において示されるようにオルガネラと関連してクラスタ化され得る。試料は、細胞の分泌又は破壊によって溶液中に放出された細胞外生体分子(111)を含有し得る。破壊された細胞は、細胞断片(112)、細胞小器官(113)、細胞核(114)及び関連するウイルス粒子(115)を有する生体分子を放出し得る。生体試料(101)は、(116)において示されるようにウイルスにも感染し得る異なるタイプの原核細胞(117)及び(118)を含み得る。
【0076】
生体試料(101)は、(121)において示されるように区分システム(120)に移送される。区分システム(120)は、サブ試料体積(122A)、(122B)から(122N)によって示されるように、生体試料(101)をN個のサブ試料に分割する。サブ試料体積は、サブ試料体積の生化学的組成が生体試料(101)の平均生化学的組成と異なるように選択される。すなわち、ほとんどのサブ試料体積が平均生化学組成と異なるように体積が選択される。
【0077】
好ましくは、サブ試料体積は、(102P)において示されるように、ほぼ細胞の体積であり、タイプ(102)の細胞は、サブ試料体積(122A)に区分される。このようにして、体積は、典型的には、材料(101)に示されるように、生体物質の異なる状態を含む。
【0078】
サブ試料体積は、例えば、流れ中の別個の体積要素として、又は基材表面上の別個の非混合体積要素として連続していてもよい。表面は、例えば、特徴抽出アルゴリズムによって画像から選択された顕微鏡及びサブ試料体積要素によって画像化され得る。サブ試料体積は、例えばフローサイトメータによって選択され、上記で引用されたMPIS特許において論じられているようにプリンタとともに配置されるなど、離散的であってもよい。あるいは、複合磁性体を使用して、上記で引用されたMG特許に記載されているように、測定のためのサブ試料の位置及び配向を選択し得る。
【0079】
図示のようにいくつかの構成要素及び動作を含む、サブ試料(120)を分析するための計算装置(200)が提供される。これは、測定システム(130)と、認識アルゴリズム(140)と、集団分布計算構成要素(150)と、レポート(185)を提供する診断アルゴリズム(180)とを含む。
【0080】
サブ試料は、測定システム(130)に移送される。(131)において示されるように、計算装置は、生体試料(101)の供給源に関するメタデータ(160)を受信又は取得する。メタデータ(160)は、例えば、患者の医療記録からの情報を含み得る。メタデータ(160)は、例えば、患者に関するゲノム情報を含み得る。計算装置(200)は、メタデータ(160)に少なくとも部分的に基づいて、測定装置(130)に適用される測定パラメータを決定する。測定パラメータは、例えば、測定する波長の範囲、必要なスペクトル分解能、必要な信号対雑音比の測定時間、入射及び測定された放射の偏光、サブ試料配向を含み得る。測定パラメータは、(133)において示されるように測定システム(130)に送信される。さらに、計算装置は、測定装置(130)においてサブ試料に適用するために、(135)において示されるように摂動のシーケンスを生成する。
【0081】
(134)において示されるように、メタデータ(160)は、診断アルゴリズム(180)によって実行され、付加された情報に少なくとも部分的に基づいて、生体試料(101)からのスペクトルデータの最初の分析からの情報を含むように付加され得る。このようにして、測定パラメータの第2のセットが決定され、測定システム(130)に渡される。(132)において示されるように、患者メタデータ(160)には、第2の測定システムからの情報が付加されてもよい。例えば、第2の測定手段は、生体試料(101)からDNAを配列決定してもよい。得られたゲノム情報は、患者の転帰を予測するために、診断アルゴリズム(180)のスペクトル情報と組み合わせて使用され得る。
【0082】
最も単純な実施形態では、測定システム(130)は、各サブ試料のスペクトルを順次測定するスペクトロメーターである。別の実施形態では、測定システムは、例えば焦点面アレイを用いて複数のサブ試料領域のスペクトルを並列に測定する従来のスペクトル画像化システムである。好ましい実施形態では、スペクトル測定の感度を改善するために、上記で引用されたMPIS特許又は上記で引用されたAMAS特許に記載されているような増幅スペクトル画像化方法が使用される。好ましい実施形態では、信号対雑音比を改善するために、上記で引用されたHEMS特許に記載された構成によってスペクトル測定が行われる。好ましい実施形態では、スペクトル測定は、上記で引用されたMDS特許に記載されている多次元スペクトル測定器によって行われる。最も好ましい実施形態では、スペクトル測定は、上記で引用されたAMAS及びMDS特許の構成を組み合わせて行われる。
【0083】
いくつかの実施形態では、測定システム(130)は、共焦点顕微鏡である。いくつかの実施形態では、測定システム(130)は、動的光散乱装置である。いくつかの実施形態では、測定システム(130)は、回折計である。
【0084】
(136)において示されるように、各サブ試料について測定システム(130)によって取得されたスペクトルは、電子ファイルとして認識アルゴリズム(140)に提示される。例えば、(102S)において示されるスペクトルは、生体試料(101)中のタイプ(102)のサブ試料(102P)からのものである。認識アルゴリズム(140)は、(141)において示されるように、存在する温度、pH及び栄養素などの生体試料に関するデータベース(119)に記憶されたメタデータを使用して、アルゴリズム(142)によって選択されたそれらの増殖条件に対応する記録のセットを選択する。このステップは、認識アルゴリズム(140)における比較に使用される生体試料の状態が、上記で引用されたMPIS特許において論じられているような増殖条件に依存するために望ましい。
【0085】
本方法は、以下のステップを含む:
患者試料を取得するステップ、
サブ試料を空間的に分離するステップ、
フローサイトメータは、上記で引用されたMPIS特許に記載されているように選択された位置に選択された粒子を堆積させるステップ、
サブ試料がフローチューブに沿って時間的に分離され、各サブ試料は、サブ試料が測定位置を通過するときに順次測定されるステップ(流れは、連続的であっても中断されてもよい。流れは、例えば、上記で引用されたFPFA特許に記載された構成によって調整されてもよい。)、
サブ試料は、画像内の異なる領域として分けられてもよい。いくつかの実施形態では、サブ試料領域は、第1の波長セットによって記録された画像の分析によって特定され、特定されたサブ試料領域のスペクトル測定は、第2の波長セットによって行われる。例えば、第1の波長セットは、可視波長であってもよく、第2の波長セットは、赤外線波長であってもよい。例えば、第1の波長セットは、可視波長であってもよく、第2の波長セットは、ラマン散乱放射の波長であってもよい。例えば、サブ試料領域は、蛍光発光に対応する第1の波長セットによって特定されてもよく、サブ試料領域は、第2の赤外線波長セットによって測定される。
スペクトル収集パラメータを生成するステップ、
各サブ試料のスペクトルを取得するステップ、
各サブ試料を分類するステップ、
サブ試料の集団統計を生成するステップ、
スペクトルデータを適切にするステップ、
患者プロファイルを生成するステップ、
患者プロファイルを比較するステップ、
実施例1:細菌感染の同定、
実施例2:ウイルス感染の同定、
実施例3:異常組織の同定。
【0086】
(120)において示されるように、本方法は、生体試料を複数のサブ試料に分けるステップを含み、サブ試料のうちの少なくともいくつかは、前記状態の異なる状態にある生体試料の部分を含む。
【0087】
(130)において示されるように、本方法は、以下のステップ、すなわち、
サブ試料のうちの少なくともいくつかを、
前記サブ試料と相互作用するようにプローブ電磁放射をサブ試料に向け、
試験された各サブ試料から透過、反射、散乱又は放射された電磁放射を別々に収集し、
各サブ試料から測定されたスペクトルを取得するために、複数の測定された波長において収集された電磁放射の振幅を測定する、ことによってサブ試料のうちの少なくともいくつかを試験するステップを含む。
【0088】
(140)において示されるように、本方法は、各サブ試料からの測定されたスペクトルと、異なる状態のそれぞれの状態にある複数のサブ試料の試験から取得された複数の基準スペクトル(142)との比較を実行するステップを含む。
【0089】
(150)において示されるように、本方法は、比較を使用してサブ試料の状態の集団分布(151)を計算するステップを含む。
【0090】
(180)において示されるように、本方法は、ステップ(150)からの集団分布を、既知の試料の試験から取得され、ステップ(182)においてアルゴリズム(180)に提供された複数の基準集団分布(170)と比較して、試料(101)中の感染因子を示すデータを生成してレポート(185)を提供するステップを含む。
【0091】
認識アルゴリズム(140)では、各サブ試料からの測定されたスペクトルと複数の基準スペクトルとの比較が行われる。各サブ試料の特定を最終的に決定しようとする代わりに、アルゴリズム(140)は、測定されたスペクトルが各基準スペクトルと一致する1つ又は複数の確率を割り当てることによって動作し、確率は、測定されたスペクトルと基準スペクトルとの間のスペクトル類似性に基づいて決定される。これらの確率を使用して、基準分布(170)と比較されるサブ試料の状態の最終的な集団分布が計算される。
【0092】
ステップ(121)においてサブ試料を選択するための上記のシステムは、感染因子の存在に関連付けられた少なくとも1つの基準サブ試料状態、感染因子に罹患されない真核細胞の存在に関連付けられた少なくとも1つの基準サブ試料状態、及び感染因子に罹患された真核細胞の存在に関連付けられた少なくとも1つの基準サブ試料状態を提供する。感染因子はまた、感染因子を含有しない少なくとも1つのサブ試料のスペクトル特徴に少なくとも部分的に基づいて同定される。
【0093】
(133)において示されるように、基準サブ試料状態のうちの少なくとも1つは、pH、温度熱履歴及びイオン濃度などの試料の環境条件に関連付けられ、基準サブ試料状態のうちの少なくとも1つは、ライフサイクルフェーズに関連付けられる。
【0094】
(160)において示されるように、基準サブ試料状態のうちの少なくとも1つは、外部データベース内の基準サブ試料の少なくとも1つの特性とさらにリンクされ、その特性は、年齢、性別、及び基礎的症状に関する医療記録又はその一部、並びにゲノム因子又はゲノム配列又はその一部などの生体試料の供給源に関する事前情報に依存する。
【0095】
生体試料(101)は、複数の異なる感染因子タイプを含むことができ、複数の感染因子タイプは、属、種、又は株のレベルまで同定される。
【0096】
(135)において示されるように、サブ試料は、異なる摂動のシーケンスを受け、各摂動について、前記摂動されたサブ試料の少なくとも1つのスペクトルが摂動なしで測定された前記サブ試料のスペクトルとは異なるようにスペクトルが測定され、それにより、集団分布の計算のための追加のスペクトルを提供する。
【0097】
診断アルゴリズム(180)はまた、データベース(170)からの以前に知られている分布と比較することによって、サブ試料状態の分布の分析によって原因因子の進行の段階を検出することができる。
【0098】
診断アルゴリズム(180)はまた、細胞の多次元スペクトルを基準多次元スペクトルのデータベースと比較することに少なくとも部分的に基づいて、正常又は異常として分類するために使用されることができる。
【0099】
診断アルゴリズム(180)はまた、基準多次元スペクトルのデータベースと比較するために正常と分類された少なくとも1つの細胞からの多次元スペクトルを使用することができ、その結果、前記比較に少なくとも部分的に基づいて疾患状態が診断される。
【0100】
ステップ(121)において、サブ試料は、生体試料を複数のサブ試料(122A)などに分離するように動作可能な区分システムによって試料(101)を区分することによって形成され、各サブ試料は、生体試料から抽出された体積要素を含み、少なくとも1つの体積要素は、生体試料の平均組成とは異なる組成を有する。
【0101】
診断アルゴリズム(180)を使用して、新規な感染因子タイプの特定及び特徴付けに基づいて事前データの遡及的分析を実行することもできる。
図1
【国際調査報告】