(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】極低温条件で生物学的サンプルを保存及び輸送するための装置
(51)【国際特許分類】
A01N 1/02 20060101AFI20240116BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A01N1/02
G01N1/00 101H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535428
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 US2021063608
(87)【国際公開番号】W WO2022140134
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521084389
【氏名又は名称】ティーエムアールダブリュ ライフサイエンシーズ,インコーポレイテツド
【氏名又は名称原語表記】TMRW Life Sciences, Inc.
【住所又は居所原語表記】250 Hudson Street, Suite 701, New York, NY 10013 US
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】ビクソン,ブライアン ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】リ,チェンシ
【テーマコード(参考)】
2G052
4H011
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052DA02
2G052DA12
2G052DA23
2G052DA24
2G052EB08
2G052EB13
2G052JA02
2G052JA08
2G052JA10
4H011CA01
4H011CB04
4H011CB08
4H011CC01
(57)【要約】
試料移送装置はハウジングと、ハウジングの内部キャビティが試料移送装置の外部から熱的に隔離された閉じた構成から、内部キャビティがハウジングの開口を介してアクセス可能である開いた構成への試料移送装置の移行を可能にするように取り付けられた蓋とを含む。試料移送装置は、内部キャビティ内に熱を均等に分配するように内部キャビティ内に配置された熱シャントを含む。試料移送装置は、輸送されるそれぞれの生物学的サンプルを各々が担持する1つ又は複数の試料容器を支持するためのキャリアを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアと側壁を含むハウジングであって、前記側壁は前記フロアから開口に向かって延在し、前記開口は、前記ハウジングの嵌合面によって画定される、該ハウジングと、
前記ハウジングに結合可能な蓋であって、前記蓋の嵌合面と前記ハウジングの嵌合面とが協働して開口を閉じ、それによって、前記フロア及び前記側壁によって形成されるハウジングの内部キャビティへの進入又は内部キャビティからの退出を防止するようにした、該蓋と、
前記側壁に結合され、前記内部キャビティ内に配置された熱シャントを含み、
前記側壁は第一材料を含み、熱シャントは前記第一材料と第二材料とが等しい場合に、前記第一材料よりも高い熱容量を有する第二材料を含む、試料移送装置。
【請求項2】
前記ハウジングは前記フロアに垂直な方向に沿って前記フロアから前記開口まで測定される第一高さを有し、前記熱シャントは前記フロアに垂直な前記方向に沿って測定される第二高さを有し、前記第二高さは、前記第一高さよりも低く、前記第一高さの50パーセントよりも大きい、請求項1に記載の試料移送装置。
【請求項3】
前記第二高さは、前記第一高さよりも低く、前記第一高さの75パーセントよりも大きい、請求項2に記載の試料移送装置。
【請求項4】
前記第二高さは、前記第一高さよりも低く、前記第一高さの90パーセントよりも大きい、請求項3に記載の試料移送装置。
【請求項5】
前記ハウジングは前記フロアから前記フロアに垂直な前記方向に沿って前記開口に向かって延びるオフセットを含み、前記オフセットは前記フロアに垂直な前記方向に沿って測定される前記フロアに対する最大高さを有し、前記熱シャントは前記フロアに対して垂直な前記方向に沿って測定される前記フロアからの最小離隔距離を有し、前記最小離隔距離は前記最大高さよりも小さい、請求項2~4のいずれかに記載の試料移送装置。
【請求項6】
フレームと、前記フレームを貫通して延びる少なくとも1つの貫通孔とを含むキャリアであって、前記少なくとも1つの貫通孔の各々は、試料容器を受け入れるように寸法決めされる、該キャリアを更に含み、
前記キャリアは、前記オフセットによって前記内部キャビティ内に支持される、請求項5に記載の試料移送装置。
【請求項7】
前記フロアに垂直な前記方向に沿って前記フロアと前記キャリアとの間で測定される第一最小距離が前記フロアに垂直な前記方向に沿って前記フロアと前記熱シャントとの間で測定される第二最小距離よりも大きい、請求項6に記載の試料移送装置。
【請求項8】
前記熱シャントの表面が第一非平面形状を含み、前記キャリアの表面が前記第一非平面形状に対応する第二非平面形状を含み、前記第一及び第二非平面形状の整列が、前記内部キャビティ内での前記キャリアの整列を容易にする、請求項6又は7に記載の試料移送装置。
【請求項9】
前記ハウジングに回転可能に連結されたハンドルであって、前記ハンドルが前記ハウジングに対して回転軸を中心に回転可能である、該ハンドルを更に含み、
前記回転軸は前記フロアに対して垂直な前記方向に沿って測定される第一距離だけフロアから離れており、前記第一距離は、前記フロアに対して垂直な前記方向に沿って前記フロアと前記フロアから最も遠い前記熱シャント上の点との間で測定される第二距離よりも小さい、請求項2~8のいずれかに記載の試料移送装置。
【請求項10】
ヒンジであって、前記蓋が前記ヒンジの回転軸の周りで前記ハウジングに対して回転可能であるように前記蓋を前記ハウジングに結合する、該ヒンジを更に含み、
前記ヒンジは前記ハウジングの後面に取り付けられ、前記熱シャントは前記後面に最も近い前記側壁の部分に取り付けられる、請求項1~9のいずれかに記載の試料移送装置。
【請求項11】
前記側壁が内側壁であり、前記後面が外側壁の一部であり、前記内側壁の少なくとも一部が前記外側壁から間隙によって離間される、請求項10に記載の試料移送装置。
【請求項12】
前記蓋の少なくとも一部が透明である、請求項1~11のいずれかに記載の試料移送装置。
【請求項13】
前記熱シャントが金属板である、請求項1~12のいずれかに記載の試料移送装置。
【請求項14】
前記熱シャントが、アルミニウム6061-T6から形成されたプレートである、請求項1~12のいずれかに記載の試料移送装置。
【請求項15】
前記第二材料が、前記第一材料よりも高い密度を有する、請求項1~14のいずれかに記載の試料移送装置。
【請求項16】
前記第一材料は、前記第二材料よりも高い比熱を有する、請求項15に記載の試料移送装置。
【請求項17】
生物学的試料を収集する方法であって、
前記生物学的試料を試料容器の表面に配置するステップと、
試料移送装置の内部キャビティの少なくとも一部を冷却剤で充填し、それによって、前記内部キャビティ内に配置された熱シャントを少なくとも部分的に浸漬するステップと、
前記内部キャビティ内に前記生物学的試料を有する前記試料容器を配置するステップと、
前記試料容器を前記冷却剤中に少なくとも部分的に浸漬するステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記冷却剤が液体窒素である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記試料容器を前記内部キャビティ内に配置されるキャリアで支持するステップであって、該ステップが前記試料容器の一部を前記キャリアのフレームを通って延びる貫通孔を通して挿入することによって行われる、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記キャリアと前記フロアとの間に間隙が形成されるように、前記キャリアと前記ハウジングのフロアから延在するオフセットを当接させるステップを更に含み、
前記フロアは、前記内部キャビティの底部境界を形成する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記キャリアと前記オフセットを当接させることにより、前記熱シャントの一部が前記間隙に位置決めされる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第二生物学的試料を第二試料容器の表面上に配置するステップと、
前記第二試料容器を前記内部キャビティ内に前記第二生物学的試料と共に配置するステップと、
前記第二試料容器を前記冷却剤中に少なくとも部分的に浸漬するステップと、
を更に含む、請求項17~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記試料移送装置を閉じた構成に移行させることで、前記試料移送装置の蓋が前記内部キャビティの開口を塞ぎ、それによって、前記内部キャビティが前記試料移送装置を取り囲む外部環境から熱的に隔離されるステップを更に含む、請求項17~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
試料移送装置を前記閉じた構成に移行させた後、前記生物学的試料が収集された第一場所から、前記生物学的試料が極低温で保管される第二場所に前記試料移送装置を移送するステップを更に含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、収集された生物学的サンプル(例えば、卵、精子、胚)を輸送及び保存するためのシステムに関し、より具体的には、収集されたサンプルを極低温に少なくとも一時的に維持しながら、複数の収集された生物学的サンプルを輸送し得る装置に関する。
【背景技術】
【0002】
凍結保存による細胞及び組織の長期保存は、組織工学、生殖能力(又は、不妊治療/fertility)及び生殖医療、再生医療、幹細胞、血液バンキング、動物株保存、臨床サンプル保存、移植医学、及びインビトロ薬物試験を含む複数の分野において広範な影響を有する。これは、保管(又は、貯蔵/storage)装置(例えば、凍結保存ストロー、凍結保存チューブ、スティック又はスパチュラ)の中又は上に含まれる生物学的サンプル(例えば、卵母細胞、胚、生検材料(又は、生検/biopsy))が液体窒素等の物質中に生物学的サンプル及び保管装置を配置することによって急速に冷却されるガラス化のプロセスを含み得る。これは生物学的サンプルのガラス様凝固又はガラス状状態(例えば、分子レベルのガラス構造)をもたらし、これは細胞内及び細胞外氷の非存在を維持し(例えば、細胞損傷及び/又は死滅を低減し)、解凍すると、解凍後の細胞生存率を改善する。生存性を確実にするために、ガラス化された生物学的サンプルは次いで、典型的には、凍結保存に寄与する温度、例えば、マイナス196℃である液体窒素デュワー又は他の容器中に連続的に保管される。
【0003】
しかしながら、これらの生物学的サンプルがどのようにして収集され、輸送され、保管され、識別され、管理され、在庫管理され(インベントリされ/inventory)、回収され(又は、取り出され/retrieved)、等々であるかに関する多くの懸念が存在する。
【0004】
例えば、各採取された胚は、硬い胚ストロー、チューブ、スティック又はスパチュラ上に装填される。管は採取された胚を受け入れる一端が開いており、他端が閉じられている(例えば、栓がされている)。胚を含む又は保持する凍結保存保管装置は例えばガラス化を達成するために、およそマイナス196℃の温度で、生物学的材料と共に凍結保存保管装置を液体窒素中に押し込むことによって、可能な限り迅速に冷却される。
【0005】
より具体的には、液体窒素貯蔵タンク内に配置するために、複数の凍結保存保管装置がゴブレット内に配置される。ゴブレットは複数の凍結保存保管装置が液体窒素中にぶら下げるように、液体窒素貯蔵タンクに取り付けられる。
【0006】
生物学的サンプルが収集/採取される場所は、典型的には液体窒素貯蔵タンクの場所から離れている。したがって、生物学的サンプル(例えば、ガラス化された生物学的サンプル)を適切に低温で輸送及び保存するための新しい装置を提供することが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本開示の一態様によれば、試料(又は、標本/検体/サンプル/specimen)移送装置(又は、運搬装置/transporter)は、ハウジングと、蓋と、熱シャントを含む。ハウジングは、フロアと側壁を含む。側壁はフロアから、ハウジングの嵌合面によって境界付けられるハウジングの開口に向かって延在する。蓋は蓋の嵌合面とハウジングの嵌合面とが協働して開口を閉じ、それによって、フロア及び側壁によって形成されるハウジングの内部キャビティへの進入又はそこからの退出を防止するように、ハウジングに結合可能である。熱シャントは側壁に結合され、内部キャビティ内に配置され、熱シャントは側壁よりも高い熱伝導率を有する材料を含む。
【0008】
本開示の別の態様によれば、生物学的試料を収集する方法は、生物学的試料を試料容器の表面上に位置決めすることを含む。本方法は、試料移送装置の内部キャビティの少なくとも一部を冷却剤で充填することによって、内部キャビティ内に配置された熱シャントを少なくとも部分的に浸漬することをさらに含む。本方法は、内部キャビティ内に生物学的試料を有する試料容器を配置することと、試料容器を冷却剤中に少なくとも部分的に浸漬することとをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面において、同一の参照番号は、同様の要素又は作用を示す。図面における要素のサイズ及び相対位置は、必ずしも一定の縮尺で描かれてはいない。例えば、様々な要素の形状及び角度は必ずしも縮尺通りに描かれているわけではなく、これらの要素のいくつかは図面の見やすさを改善するために任意的に、拡大され、配置されることができる。さらに、描かれた要素の特定の形状は、必ずしも特定の要素の実際の形状に関するいかなる情報も伝えることを意図するものではなく、図面における認識を容易にするためにのみ選択されていてもよい。
図1は、閉じた構成における、一実施形態による、試料移送装置の上面正面等角図である。
図2は、
図1に示された試料移送装置の、開いた構成における上面正面等角図である。
図3は、
図1に示された試料移送装置の底面背面等角図である。
図4は、
図1に示す試料移送装置の正面図である。
図5は、
図1に示された試料移送装置の第一側面図である。
図6は、
図1に示された試料移送装置の第二側面図である。
図7は、
図1に示した試料移送装置の背面図である。
図8は、
図1に示した試料移送装置の上面図である。
図9は、
図1に示した試料移送装置の底面図である。
図10は、
図1に示された試料移送装置の線A-Aに沿った断面図である。
図11は、
図1に示す試料移送装置の線B-Bに沿った断面図である。
図12は、一実施形態による、試料移送装置のキャリアの等角図である。
図13は、一実施形態による、生物学的サンプルを収集する方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
種々の実施態様が正しく理解されるように、開示内容の詳細を以下に説明する。但し、当業者ならば、これら特定の細部の1つ又は複数を欠いても、又は他の方法、他の構成部材、他の材料でも実施が可能であることは容易に理解するところであろう。他の例では実施形態の説明を不必要に不明瞭にすることを避けるために、試料移送装置に関連する周知の構造は詳細には示されていないか、又は説明されていない。
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲において理由が必要ない限り、用語”を有する”及びその派生語は確定していない包括的な意味、即ち、”含むが、それに限定されるものではない”であるとみなされる。
【0012】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、又は「本発明の態様」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構成又は特徴が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書における表現”一実施形態における”又は”実施形態における”の全てが、必ずしも同様の実施形態について記載されてはいない。さらに、特別な特徴、構造又は特質は1つ又は複数の実施形態において任意の適当な方法で組み合わせられ得る。
【0013】
本明細書及び同時提出の特許請求の範囲で用いられているように、単数表現はコンテンツが明確に定められていない限り、複数の存在を包含するものである。また、用語「又は」は一般に、その最も広い意味で使用され、それは、その内容が明らかに別段の指示をしない限り、「及び/又は」を意味するものであることに留意されたい。
【0014】
ここで、本開示の態様を、図面を参照して詳細に説明するが、ここで、同様の参照番号は別段の指定がない限り、全体を通して同様の要素を指す。特定の用語は、便宜上、以下の説明で使用され、限定するものではない。本明細書で使用される「複数」という語は、2つ以上を意味する。構造の「一部」及び「少なくとも一部」という用語は、構造の全体を含む。
【0015】
発明の名称及び要約は便宜上のものであり、本発明の範囲を表すものではなく、又は実施形態を意味するものでもない。
【0016】
図1~
図9を参照すると、試料移送装置10は、本体12によって形成された内部キャビティ(又は、空洞/cavity)14を選択的に囲む本体12を含む。本体12は、ハウジング16及び蓋18を含み得る。ハウジング16及び蓋18は、(
図1に示されるように)閉じた構成(又は、閉鎖構成/closed configuration)から(
図2に示されるように)開いた構成(又は、開放構成/open configuration)への試料移送装置10の移行を可能にするように取り付けられる。図示の実施形態に示されるように、閉じた構成では内部キャビティ14が試料移送装置10の外部(例えば、周囲環境)から封止され、開いた構成では内部キャビティ14が試料移送装置10の外部からアクセス可能である。
【0017】
一実施形態によれば、ハウジング16及び蓋18は恒久的に結合されてもよい(すなわち、本体12を塑性変形させることなく、蓋18をハウジング16から完全に分離することができないように)。例えば、本体12は、ハウジング16と蓋18とを移動可能に結合するヒンジ20を含み得る。図示の実施形態に示すように、ヒンジ20は、回転軸22を中心としたハウジング16に対する蓋18の回転を可能にし得る。一実施形態によれば、回転軸22を中心とする第一回転方向におけるハウジング16に対する蓋18の回転は、試料移送装置10を閉じた構成から開いた構成に移行させる。同様に、回転軸22を中心とする第二回転方向(第一回転方向とは反対)におけるハウジング16に対する蓋18の回転は、試料移送装置10を開いた構成から閉じた構成に移行させる。
【0018】
一実施形態によれば、ハウジング16及び蓋18は、本体12を塑性変形させることなく分離可能であり得る。例えば、ハウジング16及び蓋18は対応する嵌合特徴(例えば、対応するねじ山、突出部及び凹部、摩擦嵌合)を含み得る。
【0019】
本体12は係合されている間、試料移送装置10が閉じた構成にあるとき、ハウジング16に対する蓋18の移動を防止するロック(図示せず)を含み得る。ロックは試料移送装置10の閉じた構成から開いた構成への移行を可能にするために、係合解除されてもよい。したがって、ロックは、内部キャビティ14の周囲環境への意図しない露出を防止し得る。
【0020】
本体12は、開放補助機構24を含み得る。閉じた構成にあるとき、ハウジング16の嵌合面26と蓋18の嵌合面28とは、ハウジング16と蓋18との間のしっかりと握ること又は把持が困難であるように、互いにしっかりと押圧されてもよい。一実施形態によれば、ハウジング16及び蓋18の一方又は両方は、凹部30及び突起(図示せず)の一方又は両方を含み得る。図示の実施形態に示すように、開放補助機構24は、ハウジング16に形成された凹部30を含む。
【0021】
一実施形態によれば、開放補助機構24は、ヒンジ20の反対側に配置し得る。図示の実施形態に示すように、開放補助機構24は本体12の前部、例えば、ハウジング16の前面32に配置することができ、ヒンジ20は本体12の後部、例えば、ハウジング16の後面34に配置し得る。
【0022】
本体12は例えば、人間の手(複数可)によって試料移送装置10を持ち上げることを容易にするハンドル36を含み得る。ハンドル36は、剛性部材38の形態を取り得る。図示の実施形態に示すように、剛性部材38は、U字形部材であり得る。ハンドル36は図示のように、本体12に、例えば、ハウジング16の第一側面40及びハウジング16の第二側面42に回転可能に取り付けられてもよい。
【0023】
ハンドル36は試料移送装置10の持ち上げ及び運搬を容易にするために、(
図4に示すように)「上」位置に回転可能であり得る。一実施形態によれば、「上」位置にあるとき、ハンドル36と蓋18との間には、試料移送装置10のユーザの指の通過を可能にするのに十分なクリアランス(又は、隙間)が存在し得る。ハンドル36はハンドルが蓋18の移動を妨げない「下」位置に回転可能であり得る(すなわち、閉じた構成から開いた構成への移行中)。
【0024】
ハンドル36は他の形態をとってもよい。例えば、ハンドル36は、ハウジング16及び蓋18に対して固定されてもよい。ハンドル36は例えば、第一側面40及び第二側面42の一方又は両方において、くぼみ又はテクスチャ加工された表面の形態であり得る。ハンドル36は非剛性部材(すなわち、ベルト、ストラップ等)であり得る。
【0025】
図1-2及び
図10-11を参照すると、試料移送装置10は、内部キャビティ14内に配置された熱シャント17を含み得る。熱シャント17は、高い熱容量(熱エネルギーを貯蔵する能力)を有する材料を含み得る。より高い熱容量を有する材料は、より低い熱容量を有する材料よりも、所与の温度変化に対してより多くのエネルギーを必要とする。所与の材料の熱容量は、体積×密度×比熱×温度変化によって計算し得る。2つの異なる材料の熱容量を比較するとき、2つの材料の体積及び温度変化が同じである場合、2つの材料の密度及び比熱は、2つの材料の相対熱容量を決定する。
【0026】
例えば、アルミニウム6061-T6は、室温で、約897J/(kgK)の比熱容量と、約2,700kg/m3の密度を有する。これに対して、ポリフェニルスルホン(PPSU)は室温で比熱が約970J/(kgK)であり、密度が約1,290kg/m3である。したがって、ある体積のアルミニウム6061-T6の熱容量は、等しい体積のポリフェニルスルホンの熱容量の約2倍である。
【0027】
熱シャント17は、比較的高い熱伝導率を有する材料を含み得る。高い熱伝導率は冷たい温度(例えば、冷却剤(又は、クーラント/coolant)によって提供される)が冷却剤から離れた内部キャビティ14の一部に広がる速度を改善する。金属は典型的には高い熱伝導率値を有する(例えば、室温でのアルミニウム6061-T6は、約152W/(m-K)の熱伝導率を有する)。ガス及びフォームは典型的には低い熱伝導率値を有する(例えば、室温でのポリフェニルスルホンは、約0.24W/(m-K)の熱伝導率を有する)。
【0028】
図示の実施形態に示すように、熱シャント17は、熱シャント17の高さH1が垂直に延びるように(ハウジング16のフロア44と、内部キャビティ14へのアクセスを提供するハウジング16の開口46との間に)配置されてもよい。一実施形態によれば、フロア44は、内部キャビティ14を境界付けるハウジング16の最下面を含む。一実施形態によれば、開口46は、ハウジング16の最高表面、例えば嵌合面26によって境界付けられる。
【0029】
熱シャント17は例えば、ハウジング16内に存在する他の材料と比較して、比較的高い熱伝導率を有する材料を含み得る。熱シャント17は内部キャビティ14内に熱を均等に分配するように(すなわち、局所的な「ホットスポット」を防止するように)寸法決めされ、位置決めされてもよい。図示の実施形態に示すように、熱シャント17の高さH1は、ハウジング16の高さH2の少なくとも50%である。ハウジングH2の高さは、図示のように、内部キャビティを境界付けるハウジング16の最下面(例えば、フロア44)から、ハウジングの最上面(例えば、開口46)まで測定し得る。一実施形態によれば、熱シャント17の高さH1は、ハウジング16の高さH2の少なくとも75%である。一実施形態によれば、熱シャント17の高さH1は、ハウジング16の高さH2の少なくとも90%である。
【0030】
ハウジング16は、内部キャビティ14を境界付け、フロア44と嵌合面26との間に延在する内側壁48を含み得る。フロア44及び内側壁48の一方又は両方は断熱材料(例えば、熱伝導率値が低い材料)を含み得る。内側壁48及びフロア44のための材料(複数可)は、熱シャント17よりも低い熱容量を有し得る。一実施形態によれば、ハウジング16のための材料(複数可)は、極低温でのそれらの構造的完全性に基づいて、及び/又はそれらの低い熱収縮率に基づいて選択される。例えば、内側壁48及びフロア44の少なくとも一方は、ポリフェニルスルホンから作製されてもよい。一実施形態によれば、フロア44及び内側壁48は、同じ材料から作製される。
【0031】
ハウジング16は、内部キャビティ14の断熱性を向上させるために二重壁を含み得る。図示のように、ハウジング16は、ハウジング16の前面32、後面34、第一側面40、及び第二側面42を含む外側壁50を含み得る。ハウジング16は一実施形態によれば、内側壁48と外側壁50との間に1つ又は複数の間隙52を含み得る。間隙52は、真空、空気又は断熱材を囲むことができる。
【0032】
ハウジング16は、オフセット54を含み得る。図示のように、オフセット54は、フロア44から開口46に向かって内部キャビティ14内に垂直に延びる。オフセット54は図示の実施形態に示すように、内側壁48から離れていてもよい。別の実施形態によれば、オフセット54は、内側壁48から水平に延びることができる。オフセット54は1つ又は複数の試料容器210を保持するキャリア110と接触し、それを支持するように寸法決めされることができる。一実施形態によれば、オフセット54は内部キャビティ14内の冷却剤、例えば液体窒素が間隙60を満たすように、キャリア110とフロア44との間に間隙60を維持する。一実施形態によれば、冷却剤は、内部キャビティ14の高さの約3分の2を充填し得る。試料容器210は間隙60内又はその付近に位置する試料容器210の一部分内に生物学的試料212を担持することができ、したがって、担持された生物学的試料212を冷却剤に近接して配置する。別の実施形態によれば、ハウジング16はキャリア110がフロア44上に直接着座するように、オフセット54がなくてもよい。
【0033】
図10~
図12を参照すると、キャリア110は複数の貫通孔113を有するフレーム112を含むことができ、貫通孔113の各々は、試料容器210のそれぞれの1つを保持するような大きさにされ、試料容器210とハウジング16との相対移動が貫通孔113のうちの1つの中に位置付けられたときに制限される。貫通孔113は直線状(例えば、2つ又はそれ以上の列)に、又はアレイ状(例えば、7×7グリッド)に配置されてもよい。
【0034】
図10及び
図11に示すように、キャリア110は、単一のモノリシック基板から形成されたフレーム112を含み得る。
図12に示すように、キャリア110は、複数の別個の基板から形成されたフレーム112を含み得る。例えば、フレーム112は、第一基板114、第二基板116及び第三基板118を含み得る。第一、第二及び第三基板114、116及び118は第二基板116が第一基板114の上にあり、第三基板118が第二基板116の上にあるように積層されてもよい。第一、第二及び第三基板114、116、及び118は例えば、ねじ120等の締結具で固定されてもよい。
【0035】
第一、第二及び第三基板114、116及び118は、異なる材料から形成されてもよい。例えば、第一基板114は、アルミニウム6061-T6等の熱伝導性材料であり得る。第二基板116は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の絶縁体であり得る。第三基板は、ポリフェニルスルホン(PPSU)等のポリマーであり得る。
【0036】
第一基板114は第一複数の貫通孔122を含み得、第二基板116は第二複数の貫通孔124を含み得、第三基板118は第三複数の貫通孔126を含み得る。第一、第二、及び第三基板114、116及び118が積層され、固定されるとき、第一、第二及び第三複数の貫通孔122、124及び126は、フレーム112の全体を通って延在する貫通孔を協働して画定するように整列されることができる。第一、第二及び第三複数の貫通孔122、124及び126は直線的に(例えば、2つ又はそれ以上の列)、又はアレイ状に(例えば、7×7グリッド)配置されることができる。
【0037】
貫通孔113、122、124及び126は、貫通孔内に受容されるべき試料容器210の形状に対応する断面形状を画定し得る。一実施形態によれば、断面形状は、貫通孔内での試料容器210の回転が防止されるように非円形である。別の実施形態によれば、断面形状は円形である。
【0038】
フレーム112は、熱シャント17の形状に対応する形状を有する1つ又は複数の表面を含み得る。例えば、フレーム112は、内部キャビティ14内でのキャリア110の位置合わせ及び位置決めを容易にする熱シャント17の溝19に対応する突出部130を含み得る。
【0039】
図10及び
図11を参照すると、一実施形態によれば、熱シャント17は、熱シャント17の一部分、例えば熱シャント17の底面がオフセット54の上部分、例えばキャリア110に当接するオフセットの表面よりもフロア44に近いように配置されてもよい。したがって、熱シャント17の一部は、間隙60内に配置されることができる。
【0040】
一実施形態によれば、ハンドル36は、回転軸64を中心としてハウジング16に対して回転可能である。図示のように、熱シャント17の一部、例えば、熱シャント17の上面が、開口46からの回転軸64(の距離)よりも開口46に近いように熱シャント17は配置されてもよい。
【0041】
熱シャント17は例えば、アルミニウム6061-T6等であるが、これに限定されない熱伝導性金属から構成されたプレートの形態であり得る。熱シャント17は内部キャビティ14内の均一な熱分布をさらに促進するために、材料内に形成された1つ又は複数の溝、キャビティ、管等を含み得る。図示のように、熱シャント17は内側壁48の後面66に取り付けることができ、後面66は、ハウジング16の後面34に最も近い内側壁48の部分を含む。代替的に熱シャント17が内側壁48の前面68に取り付けることができ、前面68はハウジング16の前面32に最も近い内側壁48の部分を含む。熱シャント17は、内側壁48の片側又は両側に取り付けることができる。図示の実施形態では1つの熱シャント17のみが示されているが、別の実施形態によれば、複数の熱シャント17が内部キャビティ14内に含まれてもよい。一実施形態によれば、熱シャント17は内側壁48(すなわち、内側壁48の少なくとも一部分上のコーティング)に組み込まれてもよい。
【0042】
蓋18は内部キャビティ14内の要素(例えば、試料容器210)が試料移送装置10が閉じた構成にあるときに、試料移送装置10の外部から見えることを可能にする透明部分70を含み得る。
【0043】
図1~
図13を参照すると、生物学的試料を輸送する方法は生物学的試料212を収集し、収集された生物学的試料212を試料容器210と共に運ぶことを含む。一実施形態によれば、試料容器210を用いて生物学的試料212を収集することは、試料容器210内に生物学的試料212を封入することを含む。本方法は、内部キャビティ14の少なくとも一部を冷却剤で充填することをさらに含み得る。内部キャビティ14の少なくとも一部分を冷却剤で充填することは、熱シャント17を少なくとも部分的に浸漬することを含み得る。本方法は、試料容器210を試料移送装置10の内部キャビティ14内にある冷却剤中に少なくとも部分的に浸漬することをさらに含み得る。一実施形態によれば、冷却剤は液体窒素である。
【0044】
本方法は試料容器210をキャリア110で支持することをさらに含むことができ、キャリア110は、内部キャビティ14内に配置される。試料容器210の支持に加えて、生物学的試料212の収集及び少なくとも部分的な浸漬は、複数の生物学的試料について繰り返されてもよい。
【0045】
一実施形態によれば、キャリア110は、熱シャント17に接触する。本方法は内部キャビティ14が試料移送装置10の外部から熱的に隔離されるように、試料移送装置10を閉じた構成に移行させることをさらに含み得る。試料移送装置10を閉じた構成に移行させることは、嵌合面26及び28が合うまで、ハウジング16に対して蓋18を回転させることを含み得る。
【0046】
この方法は、ハンドル36が蓋18の上方に配置されるまでハンドル36を回転軸64の周りに回転させ、次いでハンドル36によって試料移送装置10を持ち上げることを含み得る。本方法は生物学的試料112が収集された第一位置から、生物学的試料112が極低温で保管される第二位置まで、試料移送装置10を輸送することをさらに含み得る。
【0047】
要約に記載しているものを含む、例示された実施形態についての上の説明は、網羅的であるとも、又はそれらの実施形態を開示されている形態そのままに限定するようにも意図されていない。具体的な実施形態及び実施例は説明の目的のために本明細書に記載されているが、当業者によって認識されるように、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な同等の修正が行われ得る。
【0048】
本明細書に記載される方法の多くは、バリエーションを伴って実施し得る。例えば、方法の多くは、追加の動作を含み、いくつかの動作を省略し、及び/又は図示又は説明されたものとは異なる順序で動作を実行し得る。上記の種々の実施形態は、更なる実施形態を提供するように組み合わされることが可能である。本願明細書において言及され、及び/又は本願データシートに列挙された、同一出願人に譲渡された米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許及び外国特許出願の全ては2020年12月21日に出願された「APPARATUS TO PRESERVE AND TRANSPORT BIOLOGICAL SAMPLES AT CRYOGENIC CONDITIONS」と題する米国特許出願第63/128,732号を含むが、これらに限定されず、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。この変更及び他の変更は、上記の詳細な説明に照らして実施形態に対して行うことができる。
【0049】
上記の詳細説明に照らして、上記の及び他の変形がそれらの実施形態に対して行われることが可能である。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は特許請求の範囲を、本明細書及び特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲とともに、すべての可能な実施形態を含むように解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示によって限定されない。
【国際調査報告】