(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】構造化フィルム及び構造化フィルムを含む光学物品
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
G02B5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536852
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 IB2021061802
(87)【国際公開番号】W WO2022130260
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ウォルク,マーティン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ブロット,ロバート エル.
(72)【発明者】
【氏名】ゴトリック,ケビン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ライオンズ,クリストファー エス.
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,カレブ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】サバティーブ,バディム
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,ジェイムズ エム.
(72)【発明者】
【氏名】シャルト,クレイグ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ソロモン,ジェフリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】ステンスヴァド,カール ケー.
【テーマコード(参考)】
2H249
【Fターム(参考)】
2H249AA02
2H249AA43
2H249AA62
(57)【要約】
光学物品が、導波路と、構造化フィルムとを含む。構造化フィルムは、ポリマー基材と、ポリマー基材上に配置されたエッチストップ層と、ポリマー基材とは反対側のエッチストップ層の側に配置された複数の加工構造を含む構造化層と、複数の加工構造の上に配置された平坦化バックフィル層であって、表面粗さRaを有する、平坦化バックフィル層の実質的に平坦な主表面を画定する、平坦化バックフィル層と、平坦化バックフィル層の実質的に平坦な表面上に配置され、構造化フィルムを導波路に接合させる接着剤層と、を含む。平坦化バックフィル層と構造化層との屈折率の差が、400nm~2500nmの範囲内の少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも0.25である。接着剤層は、平均厚さtaを有し、Ra<ta<(1/4)W1である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路と、
構造化フィルムであって、
ポリマー基材と、
前記ポリマー基材上に配置されたエッチストップ層と、
前記ポリマー基材とは反対側の前記エッチストップ層の側に配置された複数の加工構造を含む構造化層と、
前記複数の加工構造の上に配置された平坦化バックフィル層であって、表面粗さRaを有する、前記平坦化バックフィル層の実質的に平坦な主表面を画定し、前記平坦化バックフィル層と前記構造化層との屈折率の差が、400nm~2500nmの範囲内の少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも0.25である、平坦化バックフィル層と、
前記平坦化バックフィル層の前記実質的に平坦な主表面上に配置され、前記構造化フィルムを前記導波路に接合させる接着剤層であって、Ra<ta<(1/4)W1である平均厚さtaを有する、接着剤層と、を備える構造化フィルムと、
を備える、光学物品。
【請求項2】
前記構造化フィルムは、前記エッチストップ層と前記ポリマー基材との間に配置された非構造化層を更に備え、前記平坦化バックフィル層と前記非構造化層との屈折率の差が、少なくとも前記第1の波長W1に対して少なくとも0.2である、請求項1に記載の光学物品。
【請求項3】
前記加工構造は、前記エッチストップ層に対して傾斜している、請求項1又は2に記載の光学物品。
【請求項4】
前記エッチストップ層と前記ポリマー基材との間に配置された動的分離層を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学物品。
【請求項5】
前記平均厚さtaは、250nm未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学物品。
【請求項6】
前記平均厚さtaは、100nm未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学物品。
【請求項7】
前記複数の加工構造は、複数のナノ構造を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学物品。
【請求項8】
ポリマー基材と、
前記ポリマー基材上に配置されたエッチストップ層と、
前記ポリマー基材とは反対側の前記エッチストップ層の側に配置された複数の加工構造を含む構造化層であって、前記加工構造は前記エッチストップ層に対して傾斜している、構造化層と、
前記複数の加工構造の上に配置された平坦化バックフィル層であって、表面粗さRaを有する、前記平坦化バックフィル層の実質的に平坦な主表面を画定し、前記平坦化バックフィル層と前記構造化層との屈折率の差が、400nm~2500nmの範囲内の少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも0.25である、平坦化バックフィル層と、
前記平坦化バックフィル層の前記実質的に平坦な主表面上に配置された、Ra<ta<(1/4)W1である平均厚さtaを有する接着剤層と、
を備える、構造化フィルム。
【請求項9】
前記加工構造の少なくとも過半数について、各加工構造が、45~85度の範囲の前記エッチストップ層に対する外角を画定する側壁を含む、請求項8に記載の構造化フィルム。
【請求項10】
前記構造化層は、フルオロポリマーを含み、前記平坦化バックフィル層は、金属酸化物、窒化物、又は酸窒化物を含む、請求項8又は9に記載の構造化フィルム。
【請求項11】
前記第1の波長W1は、400nm~700nmの範囲内にある、請求項8~10のいずれか一項に記載の構造化フィルム。
【請求項12】
導波路と、
前記導波路の主表面上に配置された構造化フィルムであって、
エッチストップ層と、
前記エッチストップ層上に配置され複数の加工構造を含む構造化層であって、前記加工構造は前記エッチストップ層に対して傾斜している、構造化層と、
前記複数の加工構造の上に配置された平坦化バックフィル層であって、表面粗さRaを有する、前記平坦化バックフィル層の実質的に構造化されていない主表面を画定し、前記平坦化バックフィル層と前記構造化層との屈折率の差が、400nm~2500nmの範囲内の少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも0.25である、平坦化バックフィル層と、
前記平坦化バックフィル層の前記実質的に構造化されていない主表面上に配置された接着剤層であって、前記構造化フィルムを前記導波路の前記主表面に接合させ、Ra<ta<(1/4)W1である平均厚さtaを有する、接着剤層と、を備える構造化フィルムと、
を備える、光学物品。
【請求項13】
前記表面粗さRaが20nm未満である、請求項12に記載の光学物品。
【請求項14】
ポリマー基材と、
エッチストップ層と、
前記ポリマー基材と前記エッチストップ層との間に配置された動的分離層と、
前記動的分離層とは反対側の前記エッチストップ層の側に配置された複数の加工構造を含む構造化層と、
前記複数の加工構造の上に配置された平坦化バックフィル層であって、表面粗さRaを有する、前記平坦化バックフィル層の実質的に平坦な主表面を画定し、前記平坦化バックフィル層と前記構造化層との屈折率の差が、400nm~2500nmの範囲内の少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも0.25である、平坦化バックフィル層と、
前記平坦化バックフィル層の前記実質的に平坦な主表面上に配置された、Ra<ta<(1/4)W1である平均厚さtaを有する接着剤層と、を備える構造化フィルムであって、
前記動的分離層は、活性化時に前記ポリマー基材と前記エッチストップ層との分離を促進するように適合されている、構造化フィルム。
【請求項15】
前記動的分離層は、活性化時に前記エッチストップ層から剥離するように適合されている、請求項14に記載の構造化フィルム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ナノ構造化物品などの構造化物品は、光学メタ表面用途などの光学用途を含む様々な用途に有用である。
【発明の概要】
【0002】
本明細書は、全般的には、構造化フィルム、及び構造化フィルムを含む光学物品に関する。
【0003】
本明細書のいくつかの態様では、光学物品が提供される。光学物品は、導波路と、構造化フィルムとを含む。構造化フィルムは、ポリマー基材と、ポリマー基材上に配置されたエッチストップ層と、ポリマー基材とは反対側のエッチストップ層の側に配置された複数の加工構造(engineered structure)を含む構造化層と、複数の加工構造の上に配置された平坦化バックフィル層であって、表面粗さRaを有する、平坦化バックフィル層の実質的に平坦な主表面を画定する、平坦化バックフィル層と、平坦化バックフィル層の実質的に平坦な主表面上に配置され、構造化フィルムを導波路に接合させる接着剤層と、を含む。平坦化バックフィル層と構造化層との屈折率の差が、400nm~2500nmの範囲内の少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも0.25である。接着剤層は、平均厚さtaを有し、Ra<ta<(1/4)W1である。
【0004】
本明細書のいくつかの態様では、構造化フィルムが提供される。構造化フィルムは、ポリマー基材と、ポリマー基材上に配置されたエッチストップ層と、ポリマー基材とは反対側のエッチストップ層の側に配置された複数の加工構造を含む構造化層と、複数の加工構造の上に配置された平坦化バックフィル層であって、表面粗さRaを有する、平坦化バックフィル層の実質的に平坦な主表面を画定する、平坦化バックフィル層と、平坦化バックフィル層の実質的に平坦な主表面上に配置された接着剤層と、を含む。加工構造は、エッチストップ層に対して傾斜させることができる。平坦化バックフィル層と構造化層との屈折率の差が、400nm~2500nmの範囲内の少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも0.25である。接着剤層は、平均厚さtaを有し、Ra<ta<(1/4)W1である。
【0005】
本明細書のいくつかの態様では、導波路と、導波路の主表面上に配置された構造化フィルムとを含む光学物品が提供される。構造化フィルムは、エッチストップ層と、エッチストップ層上に配置され複数の加工構造を含む構造化層と、複数の加工構造の上に配置された平坦化バックフィル層であって、表面粗さRaを有する、平坦化バックフィル層の実質的に構造化されていない主表面を画定する、平坦化バックフィル層と、平坦化バックフィル層の実質的に構造化されていない主表面上に配置された接着剤層と、を含む。平坦化バックフィル層と構造化層との屈折率の差が、400nm~2500nmの範囲内の少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも0.25である。接着剤層は、構造化フィルムを導波路の主表面に接合させ、Ra<ta<(1/4)W1である平均厚さtaを有する。加工構造は、エッチストップ層に対して傾斜させることができる。
【0006】
本明細書のいくつかの態様では、構造化フィルムが提供される。構造化フィルムは、ポリマー基材と、エッチストップ層と、ポリマー基材とエッチストップ層との間に配置された動的分離層と、動的分離層とは反対側のエッチストップ層の側に配置された複数の加工構造を含む構造化層と、複数の加工構造の上に配置された平坦化バックフィル層であって、表面粗さRaを有する、平坦化バックフィル層の実質的に平坦な主表面を画定する、平坦化バックフィル層と、平坦化バックフィル層の実質的に平坦な主表面上に配置された接着剤層と、を含む。平坦化バックフィル層と構造化層との屈折率の差が、400nm~2500nmの範囲内の少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも0.25である。接着剤層は、平均厚さtaを有し、Ra<ta<(1/4)W1である。動的分離層は、活性化時にポリマー基材とエッチストップ層との分離を促進するように適合されている。
【0007】
これら及び他の態様は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、いかなる場合も、この簡潔な概要は、特許請求の範囲の主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】いくつかの実施形態による、導波路と、ポリマー基材を含む構造化フィルムとを含む、光学物品の概略断面図である。
【
図2】いくつかの実施形態による、導波路と、ポリマー基材を含む構造化フィルムとを含む、光学物品の概略断面図である。
【
図3】いくつかの実施形態による、導波路と、ポリマー基材を含む構造化フィルムとを含む、光学物品の概略断面図である。
【
図4A】いくつかの実施形態による、光学物品からポリマー基材を除去することを概略的に示す図である。
【
図4B】いくつかの実施形態による、光学物品からポリマー基材を除去することを概略的に示す図である。
【
図5A】いくつかの実施形態による、分離層を含む光学物品からポリマー基材を除去することを概略的に示す図である。
【
図5B】いくつかの実施形態による、分離層を含む光学物品からポリマー基材を除去することを概略的に示す図である。
【
図5C】いくつかの実施形態による、分離層を含む光学物品からポリマー基材を除去することを概略的に示す図である。
【
図6A】いくつかの実施形態による、導波路と、傾斜構造を含む構造化フィルムとを含む、光学物品の概略断面図である。
【
図6B】いくつかの実施形態による、導波路と、傾斜構造を含む構造化フィルムとを含む、光学物品の概略断面図である。
【
図6C】いくつかの実施形態による、導波路と、傾斜構造を含む構造化フィルムとを含む、光学物品の概略断面図である。
【
図7A】いくつかの実施形態による、構造化フィルムを作製するためのプロセスを概略的に示す図である。
【
図7B】いくつかの実施形態による、構造化フィルムを作製するためのプロセスを概略的に示す図である。
【
図7C】いくつかの実施形態による、構造化フィルムを作製するためのプロセスを概略的に示す図である。
【
図8】いくつかの実施形態による、1つ以上の層に入射する光を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、本明細書の一部を構成し、様々な実施形態が実例として示される、添付図面が参照される。図面は、必ずしも正確な比率の縮尺ではない。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想到され、実施可能である点を理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されない。
【0010】
ナノ構造化物品は、機能性材料をパターニングすることにより形成できる。機能性材料のパターニングは、基材(例えば、導波路)上に機能性材料の均一な層を堆積し、次いで、リソグラフィパターニング工程を使用して材料にパターンを形成することにより実行できる。ナノ構造化物品を形成する他の方法が、例えば、国際公開第2020/095258号(Van Lengerichら)及び同第2020/097319号(Wolkら)に記載されている。
【0011】
本明細書のいくつかの実施形態によれば、典型的なリソグラフィパターニングプロセスで使用される一連の工程なしで、基材上に構造(例えば、ナノ構造)を適用するために使用できる構造化フィルムが提供される。構造化フィルムは、例えば、従来のナノインプリントリソグラフィ(NIL)バッチプロセスで使用される半導体ウェハフォーマット、又は大型NIL若しくはロールツープレートNILで典型的に使用されるディスプレイガラス基材よりも実質的に大きくてもよい。いくつかの実施形態では、構造化フィルムは、例えば、100mm、200mm、300mm、450mm、又は600nmを超える最大寸法を有する。いくつかの実施形態では、構造化フィルムは、例えば、4m超、又は5m超、又は10m超、又は50m超、又は100m超の最大寸法を有する。構造化フィルムは、連続ロールツーロールプロセスで作製できる。いくつかの実施形態では、構造化フィルムのロールが提供される。いくつかの実施形態では、ロールはシート状に転換される。
【0012】
例えば、構造化フィルムは、構造化層をポリマー基材から分離する低屈折率層を含んでもよく、又は構造化フィルムが導波路に適用された後に、構造化フィルムに含まれるポリマー基材が除去されてもよい。構造化フィルムは、例えば、典型的なSRGパターニングプロセスにおいて利用される一連のリソグラフィパターニング工程なしで、導波路上に表面レリーフ格子(SRG)又は光学メタ表面の等価物を作製するように設計されてもよい。
【0013】
図1~
図3はそれぞれ、光学物品100、200、及び300の概略断面図である。いくつかの実施形態では、光学物品100(それぞれ、200、300)は、導波路190及び構造化フィルム150(それぞれ、250、350)を含む。構造化フィルム150(それぞれ、250、350)は、ポリマー基材130と、ポリマー基材130上に配置されたエッチストップ層137と、ポリマー基材130とは反対側のエッチストップ層137の側に配置された複数の加工構造129(それぞれ、229、329)を含む構造化層110(それぞれ、210、310)と、複数の加工構造129(それぞれ、229、329)の上に配置されて実質的に平坦な主表面121(それぞれ、221、321)を画定する、平坦化バックフィル層115(それぞれ、215、315)であって、表面粗さRaを有する、平坦化バックフィル層115(それぞれ、215、315)(例えば、
図7A~
図7Cを参照)と、平坦化バックフィル層115(それぞれ、215、315)の実質的に平坦な主表面121(それぞれ、221、321)上に配置され、構造化フィルムを導波路190に接合させる接着剤層140と、を含む。平坦化バックフィル層115(それぞれ、215、315)と構造化層との屈折率の差は、400nm~2500nmの範囲内又は本明細書の他の箇所に記載される他の範囲内の少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも0.25であり得る。接着剤層140は平均厚さtaを有し、Ra<ta<(1/4)W1である。表面粗さRaは、平均偏差表面粗さである。表面粗さRaは、例えば、ISO 4287:1997標準規格に従って決定できる。
【0014】
主表面121(それぞれ、221、321)は、平均高さt2よりも実質的に大きい(例えば、t2の100倍又はt2の1000倍)横方向(例えば、x-y平面)の長さスケールでの平面性からのあらゆる偏位が、平均高さt2よりも実質的に小さい(例えば、平均高さt2の20%未満、又は10%未満、又は5%未満、又は3%未満)場合に、実質的に平面と考えることができる。いくつかの実施形態では、実質的に平坦化された表面は、50%超、より好ましくは75%超、最も好ましくは90%超の平坦化量(P)を有し、平坦化量は、P=(1-(a1/a2))×100%により与えられ、式中、a1は、表面層(例えば、平坦化バックフィル層)のレリーフ高さであり、a2は、表面層によって覆われたフィーチャのフィーチャ高さであり、これらは、P.Chiniwalla,IEEE Trans.Adv.Packaging 24(1),2001,41において更に開示されている。
【0015】
接着剤層140は、所与の用途に好適な範囲の平均厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、層140の平均厚さtaは、250nm未満、又は200nm未満、又は150nm未満、又は100nm未満、又は75nm未満、又は50nm未満、又は40nm未満、又は30nm未満である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、平均厚さtaは、少なくとも5nm、又は少なくとも10nm、又は少なくとも15nmである。いくつかの実施形態では、平均厚さtaは、対象の波長の1/4未満となるように選択される。例えば、可視光については、平均厚さは、100nm未満又は実質的に100nm未満(例えば、50nm未満)であることが好ましい場合があり、一方、近赤外光については、平均厚さは、例えば、最大250nmであってもよく、又はより長い波長が関心の対象である場合には更に大きくてもよい。関心の対象である波長の1/4未満の厚さを有することは、例えば、1つ以上の非構造化層に形成された、得られた構造が、導波路内でエバネッセント波に結合することを可能にする。これは、得られた構造を、例えば、表面レリーフ格子(SRG)として使用することを可能にできる。SRGは、本明細書で使用される場合、格子が異なる屈折率を有する材料中に埋め込まれている場合を含む。この構造は、例えば、(例えば、拡張現実導波路要素への)光学的インカップリング及び/又はアウトカップリングのために使用できる。代わりに又は加えて、得られた構造は、例えば、拡張現実導波路要素における射出瞳拡大のために、光分配要素、直交瞳拡大器、又はリダイレクト要素として使用されてもよい。画像維持導波路におけるSRGの使用の例示的実施例が、例えば、国際公開第2019/195186号(Perozら)に見出すことができる。
【0016】
層140は、ポリマー接着剤層又はモノマー接着剤層であってもよく、及び/又は光学的に透明な接着剤層であってもよい。好適な光学的に透明な接着剤としては、例えば、Norland Products,Inc.(Cranbury,NJ)から入手可能なものなどが挙げられる。他の好適な接着剤として、例えば、Dow Chemical Company (Midland,MI)からCYCLOTENEの商品名で入手可能なものなどの熱硬化性材料が挙げられる。更に他の好適な接着剤としては、例えば、KRATON Polymers (Huston,TX)からKRATONの商品名で入手可能なものなどの熱活性化接着剤が挙げられる。(例えば、50nm未満の厚さの)薄い接着剤層を含む好適な接着剤層が、例えば、米国特許第7,521,727号(Khanarianら)、同第7,53,419号(Camrasら)、同第6,709,883号(Yangら)、及び同第6,682,950号(Yangら)に記載されている。
【0017】
ポリマー基材130は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又はポリカーボネートフィルムであってもよく、寸法安定化(例えば、ヒートセット)されていてもよい。ポリマー基材130に好適な他の材料としては、例えば、他のポリエステル又はコポリエステル、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、及び環状オレフィンコポリマーが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリマー基材は、低い複屈折(第1の波長W1における屈折率の最大面内差に層の厚さを乗算したもの)を有する。いくつかの実施形態では、リターダンスは、50nm未満、又は10nm未満、又は5nm未満、又は1nm未満である。
【0018】
導波路190は、例えば、ガラス導波路又はポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート)導波路であってもよい。いくつかの実施形態では、導波路190は、例えば、画像維持導波路(例えば、画像を含む光(例えば、ディスプレイからの光)が導波路に沿って伝搬し、次いで導波路から取り出される場合、取り出された光が画像を保持するような導波路)である。いくつかの実施形態では、導波路コンバイナは、導波路と、光学メタ表面入力及び/又は出力結合器を画定する、構造化フィルムの構造と、を含む。導波路コンバイナは、例えば、Kress,”Optical waveguide combiners for AR headsets:features and limitations”,Proc.SPIE 11062,Digital Optical Technologies 2019,110620J(16 July 2019);doi:10.1117/12.2527680に記載されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、加工構造129は、直交方向(例えば、x及びy方向)に長さ及び幅を有し、各方向は厚さ方向(z方向)に直交する。いくつかの実施形態では、複数の加工構造129(それぞれ、229、329)は、複数のナノ構造である、又は複数のナノ構造を含む。ナノ構造は、約1nm~約1000nmの範囲の直交する少なくとも2つの寸法(例えば、高さ、長さ及び幅のうちの少なくとも2つ)を有する構造である。加工構造は、所定の幾何学的形状(例えば、所定の長さ、幅、及び高さ)で意図的に作製された構造である。加工構造(例えば、加工ナノ構造)の代表的な形状のいくつかとしては、矩形、三角形及び台形のプリズム、フィン、円筒形及び切頭円錐形のピラー、並びに他のそのような形状が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、加工構造は、例えば、少なくとも0.1、又は少なくとも0.2、又は少なくとも0.5、又は少なくとも1、又は少なくとも2、又は少なくとも5、又は少なくとも10の平均アスペクト比(高さを、長さ又は幅又は最大横方向(高さに直交する)寸法で除算したもの)を有する。加工構造は、規則的な、又は不規則な(例えば、構造がランダムに配置されているように見えるが、基礎となる確定的過程から作製される擬似ランダム分布)、場合によっては用途の機能性及び製造可能性に依存する、ピッチ、配向、及び/又は形状で配置することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、平坦化バックフィル層115(それぞれ、215、315)は、接着剤層140と構造化層110(それぞれ、210、320)との間に残留層142(それぞれ、242、342)を含む。残留層は、構造化層の(正のz方向における)構造の上部の上方におけるバックフィル層の部分として説明され得る。いくつかの実施形態では、残留層142の平均(非加重平均)厚さt1と、複数の加工構造の平均高さt2との比は、1未満、又は0.5未満、又は0.3未満、又は0.25未満である。いくつかの実施形態では、t1/t2は、例えば、0.001~0.5の範囲内にある。いくつかの実施形態では、平坦化バックフィル層の最大厚さ(t1+t2)は、複数の加工構造の平均高さt2の2倍以下、又は1.5倍以下、又は1.3倍以下である。いくつかの実施形態では、残留層142の厚さは、100nm未満、50nm未満、30nm未満、20nm未満、又は10nm未満である。
【0021】
主表面121(それぞれ、221、321)は、その表面に存在し得るあらゆる構造が、平均高さt2よりも実質的に小さい高さ(例えば、平均高さt2の20%未満、又は10%未満、又は5%未満、又は3%未満)を有する場合、実質的に構造化されていないと考えることができる。主表面121(それぞれ、221、321)は、平均高さt2よりも実質的に大きい(例えば、t2の100倍又はt2の1000倍)横方向(例えば、x-y平面)の長さスケールでの平面性からのあらゆる偏位が、平均高さt2よりも実質的に小さい(例えば、平均高さt2の20%未満、又は10%未満、又は5%未満、又は3%未満)場合に、実質的に平面と考えることができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、ポリマー基材130は、エッチストップ層137に剥離可能に付着され、構造化フィルムが導波路に接合された後に除去される(例えば、
図4A~
図6C参照)。代わりに、いくつかの実施形態では、構造化フィルムが導波路に接合された後、ポリマー基材130は、層を酸に溶解させることにより除去される。いずれの場合も、ポリマー基材130が除去された後、エッチストップ層137は、任意選択で、例えば、反応性イオンエッチングにより除去されてもよい。
【0023】
2つの層は、いずれの層にも損傷が殆どなく又は全くなく、互いに分離できる場合(例えば、その損傷が標準視力を有する人の裸眼で容易に見えないほどに十分に小さい損傷の場合)、互いに剥離可能に付着されている。第1の層と第2の層とが互いに剥離可能に付着されていることは、第1の層と第2の層との間に第3の層が配置され、第3の層が第1の層及び第2の層の分離を促進するように適合されている場合を含む(例えば、第3の層は分裂する、又は第1の層及び第2の層の少なくとも一方から分離されるように適合されていてもよい)。第3の層は、第3の層の(例えば、照射又は化学的活性化、又は熱活性化による)活性化の後にのみ、第1の層及び第2の層の分離を促進するように適合されていてもよい。例えば、第3の層は動的分離層であってもよい。動的分離層は、(例えば、照射により分離層を活性化することにより)第1の状態から少なくとも第2の状態に変化させることができる層であり、層は、第1の状態において、少なくとも1つの隣接層に対してより高い接着性を提供し、第2の状態において、少なくとも1つの隣接層に対してより低い接着性を提供する。例えば、動的分離層は、光誘起応力モード剥離層(例えば、架橋の増加が、隣接層からの剥離を促進する応力を発生させるように、架橋させること又は照射時に更に架橋させることができるポリマー層)、及び/又は光熱変換(LTHC)層であり得る。
【0024】
構造化フィルムは、ポリマー基材130とエッチストップ層137との間に分割層を含むことにより、又はポリマー基材130とエッチストップ層137との間に動的分離層を含み、動的分離層を(例えば、照射により)活性化することにより、ポリマー基材130がエッチストップ層137に剥離可能に付着されるように構成できる。分割層は、例えば、低表面エネルギー層であり得る静的分離層であるか、又は、例えば、米国特許第9,415,561号(Lindquistら)に概して記載されるように、ポリマー基材130と共押出されポリマー基材130に弱く接着された層(例えば、いくつかの実施形態による、
図5Aに示す分離層160’)であり得る。動的分離層(例えば、LTHC層)は、複数の副層を含んでもよい。好適な動的分離層としては、カーボンブラックナノコンポジット、薄い光吸収性金属(例えば、アルミニウム、チタン、又はクロム)層、及びアクリレート層などのポリマー層によって分離された薄い(例えば、10~30nmの)金属(例えば、アルミニウム、チタン、又はクロム)層によって画定されるものなどの光吸収光学キャビティが挙げられる。動的分離層は、例えば、3M Light-To-Heat Conversion Release Coating(LTHC)Ink(3M Company(St.Paul,MN)から入手可能)から形成できる。他の好適な動的分離層としては、例えば、米国特許第7,977,864号(Bellmannら)及び同第7,670,450号(Lamanskyら)に記載されているLTHC層が挙げられる。
【0025】
いくつかの実施形態では、エッチストップ層137とポリマー基材130との間に追加層160が配置される。これは、例えば、追加層160を除いて構造化フィルム150に対応し得る、構造化フィルム250について、
図2に概略的に示される。同様に、
図3の構造化フィルム350のエッチストップ層137とポリマー基材130との間に、任意選択で追加層160を含めることができる。追加層160は、例えば、低屈折率層、又は分割若しくは分離層であり得る。いくつかの実施形態では、追加層160は、エッチストップ層137とポリマー基材130との間に配置された動的分離層(例えば、光熱変換(LTHC)層)である。いくつかのそのような実施形態では、エッチストップ層137と層160との間に、追加ポリマー層が配置される(例えば、
図5B~
図5Cを参照)。いくつかの実施形態では、動的分離層が含まれ、動的分離層とエッチストップ層137との間に低屈折率層が含まれる。いくつかの実施形態では、動的分離層160は、活性化時にポリマー基材とエッチストップ層との分離を促進するように適合されている。活性化は、例えば、照射により行うことができる。好適な放射が、レーザ、ランプ、又は他の放射源からの可視光線、赤外線、又は紫外線を含む1つ以上の波長を含んでもよい。有用な放射条件が、例えば、米国特許第7,977,864号(Bellmannら)に記載されている。
【0026】
図4A~
図5Cは、ポリマー基材130を除去する様々な方法を概略的に示す。
図4A~
図4Bでは、光学物品100’及び100’’は、例えば、光学物品100に対応し得る。光学物品100’は、ポリマー基材130がエッチストップ層137に剥離可能に付着されるように構成されている。この実施形態及びいくつかの他の実施形態では、エッチストップ層137をポリマー基材130に適用する前にポリマー基材130に適用される表面処理から生じ得る、ポリマー基材130とエッチストップ層137との間の分割界面が存在する。光学物品100’’は、エッチストップ層137が層110及び115に剥離可能に付着されるように構成されている。この実施形態及びいくつかの他の実施形態では、層110’(
図7Aを参照)を、例えば、エッチストップ層137上に配置する前にエッチストップ層137に適用される表面処理から生じ得る、エッチストップ層137と層110及び115との間の分割界面が存在する。
【0027】
図5A~
図5Cでは、光学物品200’及び200’’は、例えば、光学物品200に対応し得る。
図5Aでは、ポリマー基材は、静的分離層(例えば、ポリマー基材130と共押出された)又は動的分離層であってもよい分離層160’に剥離可能に付着されている。この実施形態及びいくつかの他の実施形態では、ポリマー基材130と分離層160’との間に分割界面が存在し、これは、例えば、米国特許第9,415,561号(Lindquistら)に概して記載されているように、ポリマー基材130と分離層160’との共押出から生じ得る。
図5Bでは、ポリマー基材130とエッチストップ層137との間に、動的分離層160’’が配置されている。動的分離層160’’とエッチストップ層137との間に、追加基材層132が配置されている。追加基材層132は、例えば、(例えば、低屈折率層について本明細書の他の箇所に記載されている範囲の屈折率を有する)低屈折率層であってもよい。動的分離層160’’は、活性化時に追加の基材層132に剥離可能に付着されるように適合され得る。この実施形態及びいくつかの他の実施形態では、活性化時に、
図5Cに概略的に示すように、動的分離層160’’と追加基材層132との間に分割界面が存在する。
【0028】
いくつかの実施形態では、構造化フィルム250は、ポリマー基材130と、エッチストップ層137と、ポリマー基材とエッチストップ層との間に配置された動的分離層160と、動的分離層160とは反対側のエッチストップ層137の側に配置された複数の加工構造229を含む構造化層210と、複数の加工構造229の上に配置された平坦化バックフィル層215であって、表面粗さRaを有する、平坦化バックフィル層215の実質的に平坦な主表面221を画定する、平坦化バックフィル層215と、平坦化バックフィル層215の実質的に平坦な主表面221上に配置された、平均厚さtaを有する接着剤層140と、を含む。いくつかの実施形態では、動的分離層は、(例えば、照射による)活性化時にポリマー基材130とエッチストップ層137との分離を促進するように適合されている。例えば、動的分離層160は、(例えば、照射による)活性化時にエッチストップ層137から剥離するように適合されていてもよく、又は動的分離層160は、活性化時にエッチストップ層137と動的分離層との間に配置された追加層(例えば、
図5Cを参照)から剥離するように適合されていてもよい。いくつかの実施形態では、平坦化バックフィル層215と構造化層210との屈折率の差は、400nm~2500nmの範囲内又は本明細書の他の箇所に記載される他の範囲内の少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも0.25である。いくつかの実施形態では、Ra<ta<(1/4)W1である。
【0029】
いくつかの実施形態では、ポリマー基材130を構造化フィルム内に保持することが望まれる。しかしながら、場合によっては、ポリマー基材130よりも低い屈折率を有する層(例えば、空気又は低屈折率クラッド層)をエッチストップ層137に隣接して有することが望ましい。このような層は、平坦化バックフィル及び構造化層における光閉じ込めを改善するために含めることができる。いくつかの実施形態では、追加層160は低屈折率の非構造化層である。好適な低屈折率層としては、例えば、ナノ多孔質コーティング、キセロゲル及びエアロゲル、ペルフルオロポリエーテル、TEFLON、CYTOP材料、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)、又はフルオレノールメタクリレートが挙げられる。有用な低屈折率層は、例えば、米国特許第8,808,811号(BKolbら)に記載されている。いくつかの実施形態では、追加層160はフルオロポリマー層である。低屈折率層は、少なくとも第1の波長W1に対して、例えば、1.1~1.45、又は1.15~1.4、又は1.2~1.35の範囲内の屈折率を有し得る。いくつかの実施形態では、低屈折率層は、例えば、少なくとも50nm、又は少なくとも100nm、又はt2の少なくとも2倍、又はt2の少なくとも5倍の厚さを有する。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、低屈折率層は、例えば、10マイクロメートル以下、又は5マイクロメートル以下の厚さを有する。いくつかの実施形態では、構造化フィルム250は、エッチストップ層137とポリマー基材130との間に配置された非構造化層160を含み、平坦化バックフィル層215と非構造化層160との屈折率の差が、少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも0.2、又は少なくとも0.25である。
【0030】
いくつかの実施形態では、加工構造129又は229は、エッチストップ層137に対して傾斜している。
図3は、エッチストップ層137に対して傾斜した加工構造329を有する構造化フィルム350を含む物品300の概略断面図である。いくつかの実施形態では、構造化フィルム350は、ポリマー基材130と、ポリマー基材130上に配置されたエッチストップ層137と、ポリマー基材130とは反対側のエッチストップ層137の側に配置された複数の加工構造329を含む構造化層310であって、加工構造329がエッチストップ層137に対して傾斜している、構造化層310と、複数の加工構造329の上に配置され、表面粗さRaを有する、実質的に平坦な主表面321を画定する、平坦化バックフィル層315と、平坦化バックフィル層の実質的に平坦な主表面上に配置された、平均厚さtaを有する接着剤層140と、を含む。いくつかの実施形態では、平坦化バックフィル層315と構造化層310との屈折率の差は、400nm~2500nmの範囲内又は本明細書の他の箇所に記載される他の範囲内の少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも0.25である。いくつかの実施形態では、Ra<ta<(1/4)W1である。
【0031】
加工構造は、構造の上部(エッチストップ層137から離れる方向に面する)及び底部(エッチストップ層137に面する)の中心を通過するラインが、エッチストップ層137に対して5~85度の範囲内の角度をなす場合に傾斜している。上部ファセット及び下部ファセットの場合、中心は、構造の上部及び下部の重心とすることができる。例えば、エッチストップ層137に面する加工構造のファセット343の重心を通り、かつ、エッチストップ層137から離れる方向に面する反対側のファセット346の重心を通るライン341、又は尖った加工構造の場合には、その点を通るライン341が、エッチストップ層137に対して5~85度の範囲内の角度θ0をなす場合、加工構造329は傾斜していると言うことができる。傾斜したエンジニアリング構造は、エッチストップ層137に対して角度θ1及びθ2をなす対向する側壁を有し得る。角度θ1及びθ2は外角(構造329の外側の角度)である。角度θ0及び/又は角度θ1は、例えば、少なくとも45度、又は少なくとも50度であってもよく、及び/又は、例えば、85度以下、又は80度以下、又は75度以下であってもよい。いくつかの実施形態では、角度θ0及び/又は角度θ1は、例えば、45~85度又は50~80度の範囲内にある。角度θ2は、約180度マイナスθ1であってもよく、又は異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、角度θ2は、例えば、95度~135度の範囲内にある。いくつかの実施形態では、加工構造の少なくとも過半数(又は少なくとも60%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%)について、各加工構造は、エッチストップ層137に対して45~85度の範囲内の外角θ1を画定する側壁を有する。構造化層310は、任意選択で、傾斜した加工構造329に加えて、傾斜していない構造を含むことができる。いくつかの実施形態では、構造化層310内に画定された全ての加工構造の少なくとも60%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%が、エッチストップ層137に対して傾斜している。
【0032】
いくつかの実施形態では、構造化フィルム150、250、又は350が導波路に接合された後、ポリマー基材130が除去される。
図6A~
図6Cは、構造化フィルムを導波路190に接合させ、次いでポリマー基材130を除去することによって形成できる、例示的な物品の概略断面図である。
図6Aは、ポリマー基材130を除去することにより構造化フィルム350から形成できる構造化フィルム351を概略的に示す。同様に、ポリマー基材130、及び任意選択で構造化フィルム250の追加層160を除去することにより、構造化フィルム150及び250から構造化フィルムを得ることができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、光学物品301(又は
図6B~
図6Cに示す301’、301’’)は、導波路190と、導波路190の主表面191上に配置された構造化フィルム351とを含む。構造化フィルム351は、エッチストップ層137と、エッチストップ層137上に配置され、複数の加工構造329を含む構造化層310であって、加工構造329はエッチストップ層137に対して傾斜している、構造化層310と、複数の加工構造329の上に配置された平坦化バックフィル層315であって、表面粗さRaを有する、平坦化バックフィル層325の実質的に非構造化された主表面321を画定する、平坦化バックフィル層315と、平坦化バックフィル層315の実質的に非構造化された主表面321上に配置された接着剤層140であって、接着剤層140は構造化フィルム351を導波路190の主表面191に接合させ、平均厚さtaを有する、接着剤層140と、を含む。いくつかの実施形態では、平坦化バックフィル層315と構造化層310との屈折率の差は、400nm~2500nmの範囲内又は本明細書の他の箇所に記載される他の範囲内の少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも0.25である。いくつかの実施形態では、Ra<ta<(1/4)W1である。
【0034】
いくつかの実施形態では、構造化層110、210、又は310は、複数の副層を含む。例えば、構造化層は、本明細書の他の箇所で更に説明されるように、非構造化層をエッチングすることにより形成することができ、非構造化層は、得られる加工構造が副層を有するように、副層のスタックを含むことができる。
図6Bは、いくつかの実施形態による、導波路190に接合された構造化フィルム351’を含む物品301’の概略断面図である。構造化フィルム351’は、第2の副層310b上に配置された第1の副層310aを含む、構造化層310a、310bを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、複数の加工構造129、229、又は329は、少なくとも(a least)2つの異なる高さを有する構造を含む。例えば、少なくとも2つの異なる高さを有する構造を有するエッチレジスト層を介してエッチングすることにより、少なくとも2つの異なる高さを有する構造を形成することができる。例えば、
図7A~
図7Cを参照すると、マスク層131を省略することができ、エッチレジスト層125、225、又は325をマルチレベルレジスト層とすることができ、パターン転写プロセスは、以前に構造化されていない層110’、210’、又は310’に、それぞれマルチレベルパターンを提供することができる。
図6Cは、いくつかの実施形態による、導波路190に接合された構造化フィルム351’’を含む物品301’’の概略断面図である。構造化フィルム351’’は、異なる高さを有する構造329a及び329bを含む構造化層310’’を含む。いくつかの実施形態では、構造化層310’’は複数の副層を含み、より高い構造329aは、より短い副層329bよりも多くの副層を含む。例えば、構造329aではなく、構造329bの上部副層が、エッチングによって除去されていてもよい。
【0036】
図7A~
図7Cは、それぞれ、構造化フィルム150、250、及び350を作製するためのプロセスを概略的に示す。入力フィルム(例えば、フィルムのロール)は、ポリマー基材130と、ポリマー基材130上に配置されたエッチストップ層137と、非構造化層上に配置された非構造化層110’(それぞれ、210’、310’)と、非構造化層上に配置されたマスク層131とを含む。工程A(それぞれ、A’、A’’)において、マスク層131上にエッチレジスト層125(それぞれ、225、325)が配置される。エッチレジスト層は、本明細書の他の箇所で更に説明されるようなツールからの複製を介して形成され得る。マスク層131は、任意選択で省略されてもよく(例えば、比較的低いアスペクト比の構造が望まれる場合、又はマルチレベル構造化層が望まれる場合)、その場合、エッチレジスト層が、非構造化層へのエッチング用のエッチマスクとして機能することができる。工程B(それぞれ、B’、B’’)において、ブレイクスルーエッチングが実行され、その後、マスク層131のエッチングが続く。いずれのエッチング工程も、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)を利用することができる。工程C(それぞれ、C’、C’’)において、エッチレジスト層125(それぞれ、225、325)が除去されるまでエッチングが継続される。工程D(それぞれ、D’、D’’)において、エッチング条件が(例えば、酸素RIEに)変更されて、ビアがエッチストップ層137に達するまで、非構造化層110’(それぞれ、210’、310’)がエッチングされる。
図7Cの工程D’において、方向性エッチング(例えば、方向性RIE)が傾斜角度にて実施されて、傾斜構造が形成される。傾斜角度にてエッチングして傾斜構造を形成することは、例えば、米国特許第10,670,862号(Valliusら)、及び米国特許出願公開第2016/0033784号(Levolaら)に記載されている。工程E(それぞれ、E’、E’’)において、マスク層131が除去されるまでエッチングが継続される。構造化層110(それぞれ、210、310)は、マスク層の露出部分と組み合わされて、ポリマー基材130から離れる方向に面する主表面111(それぞれ、211、311)を画定することができる。工程F(それぞれ、F’、F’’)において、ビアは、(例えば、原子層堆積により)平坦化バックフィルでバックフィルされる。平坦化バックフィルは、主表面111(それぞれ、211、311)に面し、それに実質的に適合する(例えば、t2の20%以下又は10%以下だけ、適合から逸脱する)、主表面116(それぞれ、216、316)を有し得る。平坦化バックフィルは、下にあるビアに対応するトラフ又は谷を有する、所望の粗さRa
0よりも大きい粗さを有し得る。いくつかの実施形態では、表面粗さを、Ra<Ra
0に低減させるために、工程G(それぞれ、G’、G’’)が実行される。いくつかの実施形態では、Raは、約30nm未満、又は約20nm未満、又は約10nm未満、又は約5nm未満、又は約2nm未満、又は約1nm未満、又は約0.5nm未満である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、Ra
0-Raは、10nm超、又は20nm超、又は40nm超、又は80nm超である。いくつかの実施形態では、粗い表面を平滑化することは、例えば、米国特許第6,623,355号(McClainら)及び同9,200,180号(Banerjeeら)に概して記載されているように、(例えば、腐食性化学スラリーと共に研磨剤を使用する)化学機械平坦化により実施される。いくつかの実施形態では、粗い表面を平滑化することは、例えば、米国特許第6,858,537号(Brewer)に概して記載されているように、機械研磨とドライエッチングとの組み合わせにより実施される。工程H(それぞれ、H、H’)において、平坦化バックフィル層115(それぞれ、215、315)に接着剤層140が適用される。いくつかの用途(例えば、可視光学用途)では、5nm未満、又は2nm未満、又は1nm未満、又は0.5nm未満の表面粗さが好ましい場合がある。いくつかの実施形態では、構造化フィルムをシートで覆う及び/又は保管する前に、接着剤層140に除去可能ライナーが適用される。
【0037】
図7A~
図7Cのエッチング工程は、プラズマエッチング工程であってもよい。高アスペクト比の構造が望まれる場合、イオンアシストプラズマ処理が好都合に使用される。異方性エッチングを実現するための方法は、反応性イオンエッチング(RIE)、高密度イオン源処理、又は高密度イオン源処理とRIEとの組み合わせを含む。高密度プラズマは、誘導無線周波数、又はマイクロ波結合によって、又はヘリコンイオン源によって生成できる。直線型高密度プラズマ源は、高アスペクト比フィーチャを形成するのに特に有利である。高密度プラズマをRIEと組み合わせることにより、(高密度プラズマによる)イオン生成を、(RIEバイアス電圧による)イオンエネルギーからデカップリングすることが可能になる。
【0038】
RIE法は、マスキング層によって保護されていない主表面の部分をエッチングして、基材上に構造(例えば、ナノ構造)を形成することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、「円筒型反応性イオンエッチング」(円筒型RIE)と称される連続的ロールツーロールプロセスを使用して実行できる。円筒型RIEは、回転している円筒型電極を利用して、物品の基材の表面上に異方性エッチングされたナノ構造を提供する。一般に、円筒型RIEは、以下のように説明することができる。無線周波数カップリングにより給電される回転可能な円筒電極(「ドラム電極」)、及び接地された対向電極が、真空容器の内部に設けられる。対向電極は、真空容器自体を含むことができる。エッチャントガスが真空容器の中に供給され、ドラム電極と接地された対向電極との間でプラズマが点火され維持される。
【0039】
次いで、パターン形成されたマスキング層を含む連続した基材をドラムの周囲に巻き付けることができ、基材の平面の法線方向に基材をエッチングすることができる。基材の曝露時間を制御して、得られるナノ構造に所定のエッチング深さを得ることができる。このプロセスは、約1~10ミリトルの運転圧力で実施することができる。円筒型RIEは、例えば、米国特許第8,460,568号(Davidら)に記載されている。
【0040】
複数の材料が存在する場合、プラズマ環境の化学物質は、エッチングの選択性を実現するように制御できる。酸素、及び酸素とフッ素化ガスとの混合物は、例えば、ポリマー、ダイヤモンド様炭素、及びダイヤモンドなどの炭素含有材料をエッチングするために使用される。プラズマ中のフッ素の濃度は、エッチング速度及び選択性を最適化するように選択できる。典型的には、少量のフッ素化ガスが使用されて、炭化水素ポリマーのエッチング速度が300%も劇的に向上する。
【0041】
ケイ質材料(二酸化ケイ素、SiOx、ダイヤモンド様ガラス、窒化ケイ素、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、ポリシロキサン、シルセスキオキサン(SSQ)樹脂など)をエッチングするために、例えば、CF4、C2F6、及び/又はC3F8などのフルオロカーボンの混合物が、酸素と組み合わせて使用される。ケイ質材料と炭化水素ポリマーとのエッチング選択性は、これら材料のエッチングプロファイルを、プラズマ供給ガス混合物中のF/O原子比の関数として得ることにより綿密に調整することができる。酸素リッチ条件が、マスキング層としてケイ質材料を使用しながら、炭化水素ポリマー及びダイヤモンド様炭素(DLC)をエッチングする優れた選択性を提供する。対照的に、フッ素リッチ条件が、炭化水素ポリマーベースのマスキング材料を使用しながら、ケイ質材料をエッチングする優れた選択性を提供する。
【0042】
フッ素化プラズマ化学物質は、そのフッ化物が揮発性である、タングステンなどの他のマスキング材料をエッチングするために使用することができる。塩素含有ガス混合物は、その塩化物が揮発性である材料、例えばアルミニウム及びチタンをエッチングするために使用することができる。これらのエッチング可能な金属の酸化物、窒化物、及び炭化物も、塩素ベースの化学物質を使用することによりエッチングできる。窒化ケイ素、窒化アルミニウム、及び酸化チタンは、塩素化学物質でエッチングされ得る高屈折率材料である。
【0043】
様々な層(例えば、マスク層131、エッチストップ層137、層110’、210’、310’、バックフィル層115、215、315、又は接着剤層140)は、材料の種類、層厚さを考慮して、様々な堆積方法を使用して堆積できる。好適な堆積方法としては、例えば、化学蒸着(CVD)法、スパッタコーティング法、物理蒸着(PVD)法、原子層堆積(ALD)法、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。薄層又はフィルムは、スロットダイコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、ナイフコーティング、ブレードコーティング、ディップコーティング、及びスピンコーティングなどの当該技術分野で既知のコーティング方法を使用して、平坦表面又は構造化表面上にコーティングできる。スロットダイコーティング機器は、例えば、米国特許第5,639,305号(Brownら)、及び同第7,591,903号(Maierら)に記載されている。スピンコーターは、例えば、米国特許第6,033,728号(Kikuchiら)に記載されている。
【0044】
平坦化バックフィル層(例えば、115、215、315)は、任意の好適な材料から形成できる。好ましくは、平坦化バックフィル層は、少なくとも第1の波長W1について、構造化層(例えば、115、215、315)の屈折率よりも少なくとも0.2、又は少なくとも0.25、又は少なくとも0.3、又は少なくとも0.35だけ高い屈折率を有する材料から形成される。バックフィル層用に好適な材料としては、例えばコーティングによって堆積されてもよい、ジルコニア又はチタニア充填アクリレート樹脂;例えば、蒸着されてもよい、例えばSi、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、又はCeの酸化物、窒化物、及び酸窒化物を含む金属酸化物、窒化物、及び酸窒化物;並びに、例えばコーティングによって適用されてもよい、パリレンが挙げられる。ケイ素は半金属であるので、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、及びケイ素酸窒化物は、それぞれ、金属酸化物、金属窒化物、及び金属酸窒化物であると考えられる。場合によっては、可視光を伴う光学用途には、チタニア(TiO2)が好ましい場合があり、近赤外光を伴う用途には、ケイ素又は他の金属酸化物が使用されてもよい。構造化層は、本明細書の他の箇所に記載される、例えば、低屈折率材料のいずれかから形成できる。構造化層は、例えば、フルオロポリマー層であり得る。いくつかの実施形態では、構造化層はフルオロポリマーを含み、平坦化バックフィル層は金属酸化物、窒化物又は酸窒化物を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも第1の波長W1に対して、構造化層は、1.4以下の屈折率を有し、平坦化バックフィル層は、少なくとも1.65又は少なくとも1.7の屈折率を有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、対象の波長は、可視又は近赤外範囲内にある。したがって、第1の波長W1は、400nm~2500nmの範囲内にあり得る。いくつかの実施形態では、可視波長が主要な対象である。したがって、第1の波長W1は、400nm~700nmの範囲内にあり得る。いくつかの実施形態では、近赤外波長が主要な対象である。したがって、第1の波長W1は、例えば、700nm~2500nm、又は800nm~2000nmの範囲内にあり得る。用途に応じて対象となり得るいくつかの特定の近赤外波長は、例えば、850nm、905nm、940nm、1060nm、1330nm、及び1550nmを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、エッチレジスト層125、225、又は325は、シリコーン含有ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、エッチレジスト層は、シロキサン、シリコーン、又はシルセスキオキサンを含む。いくつかの実施形態では、エッチレジスト層は架橋アクリレートを含む。好適なエッチレジスト層が、例えば、米国特許第5,811,183号(Shawら)に記載されている。エッチレジスト層は、例えば、50nm~500nmの範囲の総厚を有してもよい。
【0047】
エッチレジスト層125、225、又は325は、異なるパターン印刷、転写、タイリング、コピー、又は複製技術を使用して形成することができ、これらの技術は、例えば、フォトリソグラフィ法、電子ビームリソグラフィ法、グレースケールリソグラフィ法、2フォトンリソグラフィ法、若しくはナノインプリントリソグラフィ法、又はマイクロコンタクト印刷法(μCP)によって製作されたマスターモールドを含むことができる。複製技術(例えば、ナノ複製)は、例えば、ツールの構造化表面に対して樹脂を注型及び硬化させることを含むことができる。好適な注型及び硬化方法、並びにこのような方法で使用するのに好適な樹脂は、例えば、米国特許第5,175,030号(Luら)、及び同第5,183,597号(Lu)、及び米国特許出願公開第2012/0064296号(Walker,JR.ら)に記載されている。エッチレジスト層を形成するための他の有用な方法及び/又は材料が、例えば、米国特許第8,658,248号(Andersonら)、同第5,811,183号(Shawら)、及び同第6,045,864号(Lyonsら)に記載されている。構造化ツールは、ツーリングマスター、その金属コピー、ツーリングマスター又はその金属コピーのいずれかのポリマーコピー、そのようなポリマーコピーのポリマーコピー、直接書き込まれたツール又はその任意のコピー、構造化ライナーのコピー又はその任意のコピー、を準備するためのフォトリソグラフィ又は電子ビームリソグラフィなどによる、任意の好適な製作方法を使用して製作され得る。好適な製作方法が、例えば、国際公開第2009/002637号(Zhangら)、及び米国特許出願公開第2007/0065636号(Merrillら)、及び同第2014/0193612号(Yuら)、及び米国特許第8,460,568号(Davidら)に記載されている。ツールは、例えば、ダイヤモンド旋削により作製されてもよい。例示的なダイヤモンド旋削システム及び方法が、例えば、米国特許第7,350,442号(Ehnesら)、同第7,328,638号(Gardinerら)、及び同第6,322,236号(Campbellら)に記載されている。サブ波長格子のパターニングの一例が、Chun-Wei Liu,Jiwang Yan,Shih-Chieh Lin,”Diamond turning of high-precision roll-to-roll imprinting molds for fabricating subwavelength gratings,”Opt.Eng.55(6),064105(2016),doi:10.1117/1.OE.55.6.064105.).:10.1117/1.OE.55.6.064105.)に見出すことができる。
【0048】
マスク層131は、層110’、210’、又は310’に対して好適なエッチング選択性を有する任意の材料から作製できる。いくつかの実施形態では、マスク層131は、金属又はケイ素含有金属酸化物である、又はそれを含む。例としては、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ゲルマニウム(Ge)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)、それらの合金、又はそれらのケイ素含有酸化物が挙げられる。いくつかの実施形態では、マスク層131は、SiO2、SixOyNz(x=1、y=1~2、z=0~1)、又はSixAlyOz(x=1、y=0~1、z=1~2)を含む。有用な酸化物は、例えば、米国特許出願公開第2015/0214405号(Nachtigalら)に記載されている。有用な材料としては、例えば、窒化チタン(TiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)、アルミニウム及びクロム(Al/Cr)金属合金、SixCyHz(x=1、y=1~4、z=1~4)、又はSixCyNzHn(x=1、y=1~4、z=0~1、n=1~4)、SixNy(x=1、y=0~1)、SiOx(x=1~2)、SiHx(x=1~4)が挙げられる。他の好適な材料としては、例えば、米国特許第8,034,452号(Padiyathら)に記載されているようなダイヤモンド様ガラスが挙げられる。マスク層131は、ハードマスク層とも呼ばれ得る。
【0049】
エッチストップ層137は、層110’、210’、又は310’に対して好適なエッチング選択性を有する任意の材料から作製できる。いくつかの実施形態では、エッチストップ層137は、金属(例えば、Cr、Al、Ti、Zr、Ta、Hf、Nb、Ce、又はそれらの合金)、金属酸化物(例えば、Al2O3又はSixAlyOz(例えば、x=1、y=0~1、z=1~2)などの、これら金属のいずれかの酸化物;又はSixOyNz(例えば、x=1、y=1~2、z=0~1))、又は金属窒化物(例えば、これら金属のいずれかの窒化物、又はSixOyNz)、である又はそれらを含む。いくつかの実施形態では、エッチストップ層137は、例えば、酸化インジウムスズ、酸化スズ、又はアルミナ(Al2O3)である又はそれらを含む。有用な材料としては、例えば、SixCyHz(例えば、x=1、y=1~4、z=1~4)、SixCyNzHn(例えば、x=1、y=1~4、z=0~1、n=1~4)、SixNy(例えば、x=1、y=0~1)、SiOx(例えば、x=1~2)、SixOyNz(例えば、x=1、y=1~2、z=0~1)、又はSiHx(例えば、x=1~4)が挙げられる。他の好適な材料には、例えば、ダイヤモンド状ガラスが含まれる。いくつかの実施形態では、エッチストップ層137は光学的に透明であり、これは、エッチストップ層が、400nm~700nmの波長範囲に対して、少なくとも60%の、実質的に垂直な入射光に対する平均光透過率を有することを意味すると理解できる。
【0050】
マスク層131及び/又はエッチストップ層137の平均厚さは、例えば、約1nm~約200nm、又は約2nm~約50nm、又は約2.5nm~約10nmの範囲であってもよい。マスク層131は、例えば、50nm未満、又は25nm未満、及び/又は5nm超の平均厚さを有することができる。エッチストップ層137は、例えば、25nm未満及び/又は2nm超の平均厚さを有することができる。
【0051】
エッチストップ層137は、好適な厚さに対して対象の波長において所望の光透過率を有する材料から選択することができる。いくつかの実施形態では、エッチストップ層137は、少なくとも第1の波長W1に対して、少なくとも60%、又は少なくとも70%の、実質的に垂直に入射する光に対する光透過率を有する。いくつかの実施形態では、構造化層は、1つ以上の非構造化層から形成される(例えば、層110’、210’、310’のいずれかが、単一層であってもよく、複数の副層を含んでもよい)。いくつかの実施形態では、1つ以上の非構造化層は、少なくとも第1の波長W1に対して、少なくとも60%、又は少なくとも70%の、実質的に垂直に入射する光に対する光透過率を有する。
【0052】
図8は、1つ以上の非構造化層777、入射光773、及び透過光774を示す概略断面図である。入射光773は、単一層(例えば、層131、137、110’、210’、310’のうちのいずれか1つに対応する、又は層115、215若しくは315のいずれかの材料から形成されt1+t2の厚さを有する非構造化層)であり得る、又は層のスタック(例えば、層131、137及び110’、210’、又は310’に対応する)であり得る、1つ以上の非構造化層777に、実質的に垂直に(例えば、垂直から20度以内、又は10度以内、又は5度以内)入射する。入射光773は、λ1~λ2の範囲内の波長λを有するものとして概略的に表されている。範囲λ1~λ2は、例えば、400nm~2500nm、又は400nm~700nm、又は700nm~2500nmであってもよい。波長λは、単一波長(例えば、第1の波長W1)、又は波長範囲(例えば、400nm~700nm)であってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の非構造化層777は、少なくとも第1の波長W1に対して少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%の、実質的に垂直に入射する光に対する光透過率を有し得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の非構造化層777は、例えば、400nm~2500nm又は400nm~700nmの波長範囲に対して、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%の、実質的に垂直に入射する光に対する平均光透過率(所与の波長範囲にわたる光透過率の非加重平均)を有し得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、例えば、導波板にナノ構造を適用するために使用され得る構造化フィルムを作製する際に、ウェハマスター(例えば、半導体ウェハ基板であって、通常はシリコン又はシリコン上の二酸化シリコンであるウェハ表面にナノパターンがエッチングされている)が使用される。ウェハマスターは、例えば電子ビームリソグラフィ又は液浸リソグラフィなどの標準的なマスタリング技術を使用して生成できる。次いで、マスターパターンは、ポリマーコピー(ウェハ上のインプリントレジスト)、ポリマースタンプ(ポリマー上のインプリントレジスト)、タイル状ポリマーマザー(大型ガラス基材上のタイル状ウェハパターン)、電鋳ニッケルシム、及び溶接ニッケルスリーブを含み得る、一連のプロセス中間体にコピーされ得る。溶接ニッケルスリーブは、例えば、構造化フィルムを製造するために、連続注型及び硬化(例えば、ナノ複製)プロセスにおいて使用することができる。ウェハパターンは、単一要素レイアウトで使用されてもよく、又は、他のウェハからの他のパターンと合成されて合成レイアウトを形成してもよい。それぞれ、単一要素としてプロセスを通して運搬され、次いで、ラミネート(lamination)工程中に組み合わされてもよく、又は、例えば、1つを除く全てが、タイル状ポリマーマザー工程において合成され、単一合成フィルムロールに作製されてもよい。残りの要素は、例えば、導波板の反対側上にラミネートされることができ、他の要素とは合成されない。
【0054】
いくつかの実施形態では、個々のナノパターンがタイル状ポリマーマザーなどの中間体において合成される合成手法が利用され、この中間体が、合成シム、スリーブ、及びフィルムを製作するために使用される。構造化フィルム上のライナーをレーザキスカットして、フィルムの構造化領域(例えば、光結合器領域)における接着剤を露出させてもよく、フィルム全体を導波板にラミネートすることができる。この経路は、例えば、全ての結合器が導波板の同じ側にある場合に有用である。いくつかの実施形態では、個々のナノパターンが単一要素としてウェハからフィルムへと運搬される単一要素手法が利用される。この場合、フィルムの数はウェハの数と同じであり得る。各フィルムからの要素は、本明細書の他の箇所に記載されるように調製され、ラミネート中に合成され得る。いくつかの実施形態では、合成手法と単一要素手法とを組み合わせたものが使用され、合成手法では、個々のナノパターンの全てではなく、いくつかが、導波板の一方の側に適用され、単一要素手法では、残りの個々のナノパターンが導波板の反対の側に適用される。
【0055】
ラミネートされた導波板は、例えば、接着された結合器領域の周りでレーザ切断され、ウィードが除去され得る。いくつかの実施形態では、得られた積層体(laminate)は、完成した光学物品を表す。他の実施形態では、積層体は、更なる別個の工程で処理されて、最終光学物品が生産される。いくつかの実施形態では、導波路は、例えば、複数のニアツーアイ(NTE)拡張現実(AR)導波路に個片化されてもよい。
【0056】
実施例
ナノ複製、溶媒コーティング、プラズマエッチング、真空薄膜堆積、及びラミネート法を使用することにより、構造化フィルム物品を調製した。得られた構造体は、研磨されたガラスシートなどのレセプタ基材に接合されたナノ構造化光学機能層(二酸化チタン)を有する光学物品である。
【0057】
これらの実施例は、ただ単に例示を目的としており、限定することを意図するものではない。本明細書の実施例及び他の箇所における全ての部、百分率、比などは、別途指示がない限り、重量に基づくものである。使用した溶媒及び他の試薬は、別途指示がない限り、Sigma-Aldrich Chemical Company(St.Louis,Missouri)から入手した。
【表1】
【0058】
調製例
調製例1(PE1)
最初に、75重量%のPHOTOMER 6210を25重量%のSR238及び0.5%のTPOに添加して第1のアクリレート混合物を形成することによりアクリレート溶液を調製した。93重量%の第1のアクリレート混合物を7重量%のHFPO-UAと手動で混合して第2のアクリレート混合物を得た。次いで、14重量%の第2のアクリレート混合物を43重量%のPGME及び43重量%のMEKと手動で合わせることによりアクリレート溶液を形成した。
【0059】
調製例2(PE2)
0.3重量%の化合物01を99.7重量%のMEK及び0.003重量%のTPO-Lに添加することにより接着促進剤溶液を調製した。
【0060】
調製例3(樹脂D)
PHOTOMER 6210、SR238、SR351、及びTPOを60/20/20/0.5の重量比で組み合わせて混合することにより調製したアクリレート樹脂混合物。
【0061】
調製例4(基材01)
プラズマ前処理ステーションと第1のスパッタリングシステムとの間に配置された第2の蒸発器及び硬化システムを加えて、かつ、米国特許第8,658,248号(Anderson及びRamos)に記載されている蒸発器を使用して、米国特許出願公開第20100316852号(Condoら)に記載されているコーターと同様のロールツーロール真空コーター上で、ST505フィルム上に剥離可能層をコーティングすることにより、剥離層を有する基材を作製する。
【0062】
ST505フィルムを窒素プラズマ処理して金属層の接着を改善することにより、コーティング用のST505フィルムを調製する。フィルムを、チタンカソードを用いて120Wで動作する窒素プラズマによって、9.8メートル/分のウェブ速度を使用して処理し、フィルムの裏側を0℃に冷却されたコーティングドラムと接触させたまま維持した。
【0063】
調製したST505基材上に、前のプラズマ処理工程とインラインで、90%/10% Si/Alの剥離層を堆積させる。Arガスを採用し16kWの電力で動作する従来のACスパッタリングプロセスを使用して、基材上にSiAl合金の厚さ7nmの層を堆積させる。次いで、SiAlでコーティングされたPET基材を巻き戻す。
【0064】
1重量%未満の化合物1を有するアクリレート転写層SR833を、超音波噴霧及びフラッシュ蒸発によって剥離層に適用する。蒸発器への液体モノマーの流れは、0.67mL/分である。窒素ガスの流速は、100毎分標準立方センチメートル(SCCM)であり、蒸発器の温度を、500°F(260℃)に設定する。プロセスドラム温度は、14°F(-10℃)である。その後、このモノマーコーティングを、7.0kV及び10.0mAで動作する電子ビーム硬化銃により直下流で硬化させて、180nm厚のアクリレート層を得る。
【0065】
調製例5(FPI)
ペンタフルオロベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシドを、熱電対、磁気撹拌棒、及び液体添加漏斗を取り付けた、火炎乾燥した3つ口丸底フラスコ内で、真空下、黄色周囲光下で合成する。丸底フラスコに乾燥窒素を充填し、ジメトキシフェニルホスフィン9.92g(58.3mmol)を入れる。
【0066】
液体添加漏斗に13.44g(58.3mmol)のペンタフルオロベンゾイルクロリドを入れ、反応装置を真空に接続する。丸底フラスコをドライアイス/イソプロパノール浴で冷却し、ペンタフルオロベンゾイルクロリドを、反応温度を15℃未満に保つのに十分な速度で滴加する。この時間中に、反応混合物は、明るい黄橙色の流し込み可能な粘度のオイルになる。ペンタフルオロベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシドを定量的収率で回収し、褐色ガラスジャーに保管する。
【0067】
調製例6(HFPO-FCA)
撹拌棒及びセプタムを備える500mL丸底フラスコに、窒素ガス下で120g(0.0663mol、1810MW)のHFPOオリゴマージアクリレート(Mn=2000g/mol、米国特許第9,718,961号(Corveleynら)に概して記載されている合成方法に従って調製された)、及び、セプタムキャップ付きボトル中で4オングストローム分子ふるい上で50%固溶体として予め乾燥させた120gの1,1,1-トリフルオロトルエン、を添加する。次に、1.42g(1.46mL、0.007366mol、193.32数平均分子量)のN-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランを添加し、反応物を室温(RT)で2時間撹拌し、その時点で、アリコートをD8-テトラヒドロフラン/フレオン113中で、1Hフーリエ変換核磁気共鳴分光法(FT-NMR)によって評価する。次いで、反応物を回転蒸発器で2トル、57℃で約30分間にわたって濃縮し、窒素下で瓶に詰める。
【0068】
仮想実施例1
光学物品を、以下のプロセスを使用して調製する。
【0069】
工程1.テンプレート層のナノ複製
樹脂Dをポリカーボネートフィルム上にダイコーティングすることにより、ナノ構造ツーリングフィルムを調製する。コーティングされたフィルムを、毎分15.2メートル/分の速度でゴム被覆ローラを使用して、60℃に制御されたスチールローラに付着されたナノ構造化ニッケル表面に押し付ける。ナノ構造化ニッケル表面は、サイズが75nm~500nmの範囲のフィーチャを有する12個の6mm×6mmのパターン形成された領域からなる。パターン形成された領域は、150nm、200nm、及び250nmのピッチを有し、ピッチの半分(75nm、100nm、125nm)のフィーチャ幅を有する、マルチピッチパターンからなる。
【0070】
フィーチャを、ピッチが両方の軸で変化するように、正方形グリッドに配置し、上述した幅の全ての組み合わせの矩形を有する9単位の繰返しセルを得る。この繰返しセルにおいて、150nmピッチセクションは27個のフィーチャを有し、200nmピッチセクションは20個のフィーチャを有し、250nmピッチセクションは16個のフィーチャを有する。フィーチャの高さは約200nmであり、約4度の側壁角度を有する。
【0071】
フィルム上の樹脂Dのコーティング厚さは、コーティングされたフィルムがナノ構造化ニッケル表面にプレスされるときに、ニッケル表面を完全に濡らし、樹脂のローリングビーズを形成するのに十分である。フィルムを、ナノ構造化ニッケル表面と接触させながら、両方とも142W/cmで動作するDバルブを取り付けた2つのFusion UVランプシステム(Fusion UV Systems,Gaithersburg,MDから商標名「F600」で入手)からの放射線に曝露させる。ナノ構造化ニッケル表面からフィルムを剥がした後、フィルムのナノ構造化された側を、Fusion UVランプシステムからの放射線に再び曝露させる。
【0072】
工程2:剥離処理
米国特許第6,696,157号(Davidら)及び同第8,664,323号(Iyerら)並びに米国特許出願公開第2013/0229378号(Iyerら)に記載の方法により組み立てたケイ素含有剥離フィルム層を、平行平板容量結合プラズマ反応器内でナノ構造ツーリングフィルムに適用する。チャンバは、1.7m2(18.3ft2)の表面積を有する中央円筒型の電力供給された電極を有している。
【0073】
ナノ構造化ツーリングフィルムを電力供給された電極の上に配置し、反応器チャンバを1.3Pa(2ミリトル)未満のベース圧力までポンプダウンする。O2ガスを、1000SCCMの流量でチャンバ内に導入する。無線周波数(RF)電力を13.56MHzの周波数及び2000ワットの印加電力で反応器内に結合することにより、プラズマ強化CVD法を使用して、処理を実施する。ナノ構造ツーリングフィルムを、反応区域の中を9.1メートル/分(30フィート/分)の速度で移動させることによって、処理時間を制御し、その結果、曝露時間はおよそ10秒になる。堆積の完了後、RF電力をオフにし、ガスを反応器から排気する。
【0074】
1回目の処理に続いて、チャンバを大気圧に戻すことなく、同じ反応器内で2回目のプラズマ処理を行う。HMDSOガスを約1750SCCMでチャンバ内に流して、9ミリトルの圧力を実現する。続いて、13.56MHzのRF電力を1000Wの印加電力で反応器に結合させる。次いで、フィルムを、反応区域の中を9.1メートル/分(30フィート/分)の速度で運搬し、その結果、曝露時間はおよそ10秒になる。この処理時間の終わりに、RF電力及びガス供給を停止し、チャンバを大気圧に戻し、剥離処理されたナノ構造ツーリングフィルムをチャンバから取り出す。
【0075】
工程3:パターン転写フィルム
米国特許第5,440,446号(Shawら)及び同第7,018,713号(Padiyathら)に記載されているものと同様のシステムにおいて、反応性スパッタリング及び有機蒸着によって、11.5インチ幅のST505 PET基材フィルム上にエッチストップ層及びパターン転写層を堆積させることにより、パターン転写フィルムを作製する。基材フィルムを、ロールツートール(R2R)フォーマットでコーティングする。このシステムを通る第1のパスにおいて、チタンターゲットを有する非平衡dcマグネトロンカソードからの窒素プラズマで、50Wの電力及び100SCCMの窒素流量にて、基材フィルムを処理する。
【0076】
フィルムをプラズマ処理した直後に、約12nmのSiAlOxのベースエッチストップ層を、プラズマ処理された表面上にスパッタ堆積する。交流(AC)40kHz電源を使用して一対の回転カソードを制御する。各カソードは、90%/10% Si/Alスパッタリングターゲット(Soleras Advanced Coatings ETS(Biddeford,ME)から入手)を収容している。スパッタ蒸着の間、電源からの電圧信号を、比例-積分-微分の制御ループへの入力として使用して、各カソードへの所定の酸素の流れを維持する。スパッタリング条件は、AC電力16kW、ライン速度9.75メートル/分(32フィート/分)、スパッタ圧力2.6ミリトルで350SCCMのアルゴン及び223SCCMの酸素を含むガス混合物、である。
【0077】
次いで、米国特許第8,658,248号(Andersonら)に記載される有機蒸着システム及び方法を使用して、SiAlOx表面を、90%HFPO-FCA/9%HFPO/1%FPI(重量%)の層で、約100nm厚に蒸着コーティングする。フィルムの裏側を0℃に冷却したコーティングドラムと接触させたまま、3.81メートル/分(12.5フィート/分)のライン速度を保持する。コーティングの前に、モノマーを、真空下で20ミリトルの圧力まで脱気する。この液体をシリンジポンプを用いて液体流量1.0mL/分で超音波噴霧器にポンプで送り、流量10SCCMの窒素ガスを噴霧器に送る。液体を250℃でフラッシュ蒸着させ、SiAlOx表面に供給する。蒸気流を、フィルム表面上で凝縮させ、低圧水銀アークランプを用いたUV照射により硬化させる。
【0078】
ベースエッチストップ層について記載したものと同じ方法を使用して、HFPO-FCA/HFPO/FPI表面上に、約12nm厚のSiAlOxの上部エッチストップ層を堆積させる。
【0079】
工程4:接着促進剤
PE2の接着促進剤溶液を、スロットダイコーティングを使用して、工程3で作製したパターン転写フィルム上にコーティングした。Harvardシリンジポンプを3SCCMで使用し、溶液をスロットダイを通して、6メートル/分の速度で移動しているフィルム上にポンプで供給する。次いで、フィルムを、65℃のオーブンに1.5分間にわたって移動させ、その後、Fusion Hバルブを使用して硬化させ、続いて巻き取る。
【0080】
工程5:レジスト転写
工程2からの剥離処理されたナノ構造ツーリングフィルムを、アクリレート溶液PE1で、3メートル/分にてスロットダイコーティングする。溶液を10.16cm幅でコーティングし、Harvardシリンジポンプを使用して1.05SCCMの速度でポンプで供給する。40ボルトで0.2アンペアにて給電される405nmのUV-LEDシステムを使用し、溶液適用部から1.5メートルにて、コーティングを部分的に硬化させる。コーティングは、UV-可視スペクトルにおいて約0.005W/cm2の放射照度を受ける。
【0081】
次いで、フィルムを周囲条件で3分間乾燥させた後、ニップに入れる。ニップにおいて、工程4からのパターン転写フィルムを(ベースエッチストップ、転写層、上部エッチストップ、及び接着促進剤と共に)、PE 1コーティングされた剥離処理されたテンプレートフィルムとラミネートする。
【0082】
ニップは、90デュロ硬度のゴムロール及び37℃に設定されたスチールロールからなる。ニップは、0.28MPaでプレスされた2つのBimbaエアシリンダによって係合される。
【0083】
コーティングされたPE1アクリレート溶液をFusion Hバルブを使用して硬化させ、剥離処理されたテンプレートフィルムから第1のアクリレート混合物を分離して、6mm×6mmのパターン形成された領域の全体について、転写フィルム上に硬化PE1コーティングを残す。ウェブ張力を約0.0057N/mに設定する。
【0084】
工程6:転写層のエッチング
工程5からのパターン形成された転写フィルムを、反応性イオンエッチングのための方法に従ってエッチングすることにより、エッチングされたパターン転写フィルムを作製する。
【0085】
工程2において剥離処理層を堆積させるために使用されたのと同じ反応器チャンバ内で、パターニングされたフィルムに対して反応性イオンエッチングを実施する。パターン形成された転写フィルムを電力供給された電極の上に配置した後、反応器チャンバを1.3Pa(1ミリトル)未満のベース圧力までポンプダウンする。PF-5060と酸素ガスの混合物を、それぞれ100SCCM及び50SCCMの流量でチャンバ内に流す。続いて、13.56MHzのRF電力を、7500Wの印加電力で反応器に結合させる。次いで、パターンを上部エッチストップ層に転写するために、フィルムを、反応区域の中を1.2メートル/分(4フィート/分)の速度で搬送して、約75秒の曝露時間を実現させる。
【0086】
第1のエッチング工程が完了すると、RF電力をオフにし、ガスを反応器から排出させる。第1のエッチングに続いて、チャンバを大気圧に戻すことなく、同じ反応器内で第2の反応性イオンエッチング処理を行う。酸素を、275SCCMの流量でチャンバ内に流す。続いて、13.56MHzのRF電力を、7500Wの印加電力で反応器に結合させる。
【0087】
次いで、パターン形成された転写フィルムを、7.6メートル/分(25フィート/分)の速度で反応区域を通して運搬し、その結果、曝露時間はおよそ12秒となる。この処理時間の終わりに、RF電力及びガス供給を停止し、チャンバを大気圧に戻す。
【0088】
ナノ構造化マスクを介する連続反応性イオンエッチングのための材料及びプロセスに関する追加の情報、並びに反応器の周囲の更なる詳細は、米国特許第8,460,568号(Davidら)に見出すことができる。
【0089】
工程7:TiO2バックフィル
工程6からのエッチングされたパターン転写フィルムにTiO2を堆積させることにより、バックフィルされたナノ構造化フィルムを形成する。TiO2バックフィル層を、空間原子層堆積(ALD)プロセスを使用して、チタンテトラ(イソプロポキシド)(TTIP)前駆体から形成する。平面コーティングを、国際公開第2017/172531号(Lyonsら)に記載されているように、空間R2R ALD機械で行う。80℃に加熱されたTTIPを、300SCCMのN2プッシュガス、並びに1.1トルのN2及び0.3トルのCO2の環境におけるプラズマ放電(約0.50mA/cm2)と共に使用して、TiO2を堆積させる。ALDチャンバを100℃に加熱する。
【0090】
フィルムを、30.48メートル/分(100フィート/分)にて、ALDチャンバを通して複数のパスにわたって移動させる。ALDサイクル当たり1回の前駆体曝露及び1回のプラズマ曝露、並びにチャンバパス当たり72回のALDサイクルを伴う。フィルムを、ALDチャンバを通して10~50パスにわたって移動させて、転写フィルム内のエッチングされたナノ構造を充填するのに十分な厚さのTiO2層を得て、転写フィルムのナノ構造化領域の上部を覆って平面を形成する。
【0091】
工程8:接着剤層の溶液コーティング
ロールツーロールプロセスにおいて接着剤コーティング溶液をスロットダイコーティングすることにより、接着剤層を、工程7からのTiO2バックフィルナノ構造化フィルムの表面上に形成する。ある量のFG1901 Gを十分なシクロヘキサンで希釈して、0.33重量%の全固形分を含有する溶液を生成することにより、接着剤コーティング溶液を作製する。この溶液を、工程5からのフィルム上に、約9マイクロメートルの湿潤コーティング厚さを形成する速度及び流量にてコーティングする。コーティングされたウェブは、約2.4m(8フィート)移動してから、3つのゾーン全てが80℃(176°F)に設定された9.1m(30フィート)の従来の空気浮上式乾燥機に入る。乾燥後、接着剤コーティングの厚さは約30ナノメートルである。
【0092】
工程9:ガラス基材へのラミネート
光学物品は、工程8からの接着剤がコーティングされたナノ構造化フィルムをガラス基材にラミネートすることにより形成される。好適なガラス基材は、1nm RMS未満の表面粗さを有する、厚さ1.1mm、直径76.2mmのEagle XGガラスウェハである。構造化フィルムの接着剤側をガラスウェハの一方の表面上に配置し、80psi、40cm/分、及び115℃に設定したHL-100 Hot Roll Laminator(ChemInstruments,West Chester Township,OH)に通すことにより、フィルムをガラス基材にラミネートする。
【0093】
仮想実施例2
工程1~7を、仮想実施例1のように完了させる。
【0094】
工程7a:TiO2バックフィルの薄膜化
工程7で構築されたTiO2バックフィルナノ構造化フィルムを反応性イオンエッチングして、平坦化されたALD TiO2層の厚さを低減させる。仮想実施例1の工程2において剥離処理層を堆積させるために使用されたのと同じ反応器チャンバ内で、フィルムに対して反応性イオンエッチングを実施する。パターン形成された転写フィルムを電力供給された電極の上に配置した後、反応器チャンバを1.3Pa(1ミリトル)未満のベース圧力までポンプダウンする。三フッ化窒素を、1000SCCMの流量でチャンバ内に導入する。続いて、13.56MHzのRF電力を7500Wの印加電力で反応器に結合させる。次いで、フィルムを反応区域を通して搬送して、曝露時間1分当たり100nmの平面除去速度を実現する。曝露時間を、残留層が50nm未満の厚さとなるようにナノ構造化フィルム上にTiO2の薄い平面層を残すように選択する。
【0095】
工程8及び工程9を、仮想実施例1と同様に繰り返す。
【0096】
仮想実施例3
仮想実施例1又は仮想実施例2に記載されるように光学物品を調製するが、工程1では、ナノ構造ツーリングフィルムが、ポリカーボネートではなく基材01上に調製されることを除く。
【0097】
工程9の後、基材01の90%/10%のSi/Al層を、ST505フィルムを通してUV光に曝露させることにより脆弱化させる。UV曝露後、ST505基材を、構造体から基材を剥がすことにより除去し、それにより、構造体をガラスウェハに付着されたままにする。
【0098】
「約(about)」などの用語は、これらが本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者によって理解されよう。特徴部のサイズ、量、及び物理的特性を表す量に適用される「約」の使用が、本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者にとって別途明らかではない場合、「約」とは、特定の値の10パーセント以内を意味すると理解されよう。特定の値の約、ほぼとして与えられる量は、正確に特定の値であり得る。例えば、それが本明細書で使用及び記載されている文脈において当業者にとって別途明らかではない場合には、約1の値を有する量とは、その量が0.9~1.1の値を有すること、及び、その値が1である場合もあることを意味する。
【0099】
上記において参照された参照文献、特許、又は特許出願の全ては、それらの全体が参照により本明細書に一貫して組み込まれている。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。
【0100】
図面中の要素の説明は、別段の指示がない限り、他の図面中の対応する要素に等しく適用されるものと理解されたい。特定の実施形態が本明細書において図示及び説明されているが、図示及び記載されている特定の実施形態は、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な代替的実施態様及び/又は等価の実施態様によって置き換えられ得ることが、当業者には理解されよう。本出願は、本明細書で論じられた特定の実施形態のあらゆる適応例、又は変形例、又は組み合わせを包含することが意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
【国際調査報告】