(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】軸受摩耗監視
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20240116BHJP
F16C 41/00 20060101ALI20240116BHJP
F16C 19/52 20060101ALI20240116BHJP
F04B 49/10 20060101ALI20240116BHJP
F04B 51/00 20060101ALI20240116BHJP
F04B 37/16 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H02P29/024
F16C41/00
F16C19/52
F04B49/10 331J
F04B51/00
F04B37/16 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023537117
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 GB2021053283
(87)【国際公開番号】W WO2022129888
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ヘイロック ジェイムズ アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】マイルズ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ペイティ アレキサンダー ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
3H076
3H145
3J217
3J701
5H501
【Fターム(参考)】
3H076AA21
3H076BB26
3H076BB45
3H076CC98
3H145CA08
3H145DA04
3H145DA46
3H145EA20
3H145EA26
3H145EA36
3H145EA38
3H145EA50
3J217JA02
3J217JA13
3J217JA24
3J217JB76
3J701AA01
3J701AA32
3J701AA54
3J701AA62
3J701FA23
3J701FA26
3J701GA29
5H501AA05
5H501LL53
5H501LL60
5H501MM09
(57)【要約】
説明される態様及び実施形態は、回転組立体を備える電気モータを有する真空ポンプの軸受を監視するように構成された軸受摩耗監視装置に関する。監視装置は、回転組立体の回転の特徴を示す信号を受け取るように構成された入力受け取り回路と、回転組立体の回転の特徴を示す信号を分析するように構成された軸受摩耗監視回路とを備える。また、軸受摩耗監視回路は、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するように構成される。態様は、典型的なポンプモータが、目標回転速度を維持するように構成されていることを認識している。ポンプモータ構成に回転構成要素の回転速度は、モータロータシャフトのトルクに影響されることになる。その結果、目標回転速度への到達はシャフトトルクに依存することになる。軸受摩耗は、軸受の転がり摩擦に変動を生じさせるため、シャフトトルクの変動の1つの原因となる。態様は、シャフトトルクの変動が、ポンプモータの動作特性の適切な測定又は監視によって間接的に監視、測定及び/又は決定することができ、軸受摩耗に起因するシャフトトルクの変動を、1又は2以上の他の要因によって引き起こされるシャフトトルクの変動から区別することができることを認識している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転組立体を備える電気モータを有する真空ポンプの軸受を監視するように構成された軸受摩耗監視装置であって、
前記回転組立体の回転の特徴を示す信号を受け取るように構成された入力受け取り回路であって、前記回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転速度の指標及びモータ出力の指標の少なくとも1つを含む、入力受け取り回路と、
前記回転組立体の回転の特徴を示す信号を経時的に分析して、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するように構成された軸受摩耗監視回路と、
を備える、軸受摩耗監視装置。
【請求項2】
前記軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性は、予め設定されており、既知の軸受摩耗状態を示す、請求項1記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項3】
前記軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性の識別時にトリガされるように構成されたユーザ警報を含む、請求項1又は2に記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項4】
前記軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性は、所定の閾値を超える減速度を含む、請求項1又は2に記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項5】
前記軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性は、過去の減速事象と比較して増加した減速度の識別を含む、請求項1から4のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項6】
前記軸受磨耗を示す1又は2以上の信号特性は、モータ出力が所定時間最大であることを含む、請求項1から5のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項7】
前記入力受け取り回路は、前記真空ポンプの動作特性を示す信号を受け取るように構成され、前記軸受磨耗を示す1又は2以上の信号特性は、前記動作特性を示す信号が、前記真空ポンプが最大モータ出力を必要とする可能性が低いことを示しているにもかかわらず、モータ出力が最大であることを含む、請求項1から6のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項8】
前記回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転速度の指標及びモータ出力の指標の両方を含む、請求項1から7のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項9】
軸受摩耗故障診断は、前記軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性の識別に関連付けられる、請求項1から8のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項10】
前記軸受摩耗監視装置は、前記減速度が所定の閾値を超えていると判定することに応答して、検出された減速度に続く期間中に出力を監視し、前記軸受摩耗故障診断は、前記期間中に監視された前記モータ出力が所定の閾値を超えているという指標に応答して、軸受摩耗を示す、請求項4に従属する場合の請求項9に記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置を備える真空ポンプ装置。
【請求項12】
回転組立体を備える電気モータを有する真空ポンプの軸受摩耗を監視する方法であって、
前記回転組立体の回転の特徴を示す信号を受け取るステップであって、前記回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転速度の指標及びモータ出力の指標の少なくとも1つを含む、ステップと、
前記回転組立体の回転の特徴を示す信号を経時的に分析し、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
プロセッサによって実行されると、装置に請求項12に記載の方法を実行させるように構成されたコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、軸受摩耗監視装置、軸受摩耗監視方法、及び軸受摩耗監視装置を備えるポンプ装置に関する。より詳細には、本開示は、限定されるものではないが、真空ポンプの動作を監視するための軸受摩耗監視装置、及び軸受摩耗監視装置を備える真空ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプシステムは、通常、ステータ及び回転組立体部分を含むポンプ、インバータ、及びポンプコントローラを備える。対象のポンプとしては、半導体ツールなどからガスをポンプ送給するためのターボポンプなどの真空ポンプ、又は多段容積式ポンプを挙げることができる。しかしながら、ポンプの動作に関連する問題は、特定のタイプのポンプ機構に限定されないことを理解されたい。上述したように、ポンプは、通常、ステータと回転組立体とを有する電気モータを備える。回転組立体は、モータロータ、シャフト、及びポンプインペラを備えることができる。ロータは、通常、軸受がロータに関連するシャフトの円滑な回転を保証するように取り付けられることになる。軸受摩耗は、例えば、関連する軌道の破損又は軸受保持器の損傷によるものであり、軸受に関連する転がり摩擦力の増加を引き起こす可能性があり、その結果、ポンプ及びポンプシステムの動作に影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
少なくとも特定の実施形態において、本発明は、軸受摩耗を被るポンプの動作に関連する制限の少なくとも一部を解消又は改善しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様は、回転組立体を備える電気モータを有する真空ポンプの軸受を監視するように構成された軸受摩耗監視装置を提供し、監視装置は、回転組立体の回転の特徴を示す信号を受け取るように構成された入力受け取り回路であって、回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転速度の指標及びモータ出力の指標のうちの少なくとも1つを含む、入力受け取り回路と、回転組立体の回転の特徴を示す信号を経時的に分析し、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するように構成された軸受摩耗監視回路と、を備える。
【0005】
第1の態様は、典型的に、ポンプモータが目標回転速度を維持するように構成されていることを認識する。ポンプモータの回転組立体を形成する回転構成要素の回転速度は、モータロータのシャフトのトルクに影響されることになる。その結果、目標回転速度への到達はシャフトトルクに依存することになる。軸受摩耗は軸受の転がり摩擦の変動を生じさせるため、シャフトトルクの変動の1つの原因となる。他の要因もシャフトトルクの変動を引き起こす可能性があり、例えば、真空ポンプシステムのモータの動作に関連して、潜在的な原因として、ガス負荷の変化、熱的効果、背圧変化、ポンプモータの動作モードの変化、及び/又はポンプ負荷の変化が挙げられる。
【0006】
第1の態様は、特に、シャフトトルクの変動は、ポンプモータの動作特性の適切な測定又は監視によって間接的に監視、測定及び/又は決定できることを認識する。第1の態様はさらに、軸受摩耗に起因する場合があるシャフトトルクの変動を、1又は2以上の他の要因によって引き起こされるシャフトトルクの変動から区別することが可能であることを認識する。これらのシャフトトルクの変動は、回転の急激な減速及び/又は回転を維持するために必要なモータ出力の増加を引き起こす場合がある。
【0007】
シャフトトルクの変動を認識するのを助けることができるポンプモータの動作特性は、典型的に回転組立体運動の状態の間接的な指標に関連することを理解されたい。軸受摩耗に関連する可能性があるような軸受の転がり摩擦の変動は、シャフト又はモータロータの回転運動に変動を引き起こし、これはポンプの動作に変換される。回転変動は、軸受摩耗によって引き起こされる「固着」を補正するために、例えば、シャフトやポンプを駆動するモータが調整される際の動作の変化に関連する。
【0008】
第1の態様は、回転速度及びモータ出力の少なくとも一方を経時的に適切に分析することで、軸受摩耗に特徴的とすることができる特性を明らかにできることを認識する。
【0009】
いくつかの実施形態では、信号特性は予め設定され、既知の軸受摩耗状態を示す。従って、信号特性を単に検出するだけで、軸受摩耗を示すことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、装置は、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性の識別時にトリガされるように構成されたユーザ警報を含むことができる。その警報状態は、ユーザ又はポンプ制御ユニットに伝えることができる。警報は、視覚的又は聴覚的警報を含むことができる。警報は、例えば、安全なポンプ停止などのさらなるアクションを起動することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転速度の指標を含む。
【0012】
従って、モータシャフトによって駆動されるシャフト又はポンプの回転速度は、軸受摩耗がポンプの動作に及ぼす摩擦又は固着の影響を識別するための機構を提供することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、軸受摩耗を示す信号特性は、所定の閾値を超える減速度を含む。従って、軸受又は軸受保持器の摩耗に関連する固着は、ポンプインペラ又はロータ又はシャフトの予期せぬ減速を引き起こす可能性がある。
【0014】
いくつかの実施形態では、軸受摩耗を示す信号特性は、過去の減速事象と比較して増加した減速度の識別を含む。いくつかの実施形態では、軸受摩耗を示す信号特性は、既知の又は予定された減速事象と比較して増加した減速度を識別することを含む。いくつかの実施形態では、軸受摩耗を示す信号特性は、所定の減速度閾値と比較して増加した減速度の識別を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、回転組立体の回転の特徴を示す信号は、モータ出力の指標を含む。出力要求の増加は、固着及び摩擦に打ち勝つために出力が増加するので軸受摩耗を示すことができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、軸受摩耗を示す信号の特徴は、モータ出力が所定時間最大であることを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、入力受け取り回路は、真空ポンプの動作特性を示す信号を受け取るように構成され、軸受摩耗を示す信号特性は、動作特性を示す信号が、真空ポンプが最大モータ出力を必要とする可能性が低いことを示しているにもかかわらず、モータ出力が最大であることを含む。モータ出力の増加又は最大化は、通常のポンプ動作のさまざまな時点で予想される。例えば真空ポンプの場合、ポンプの初期始動時及びガス負荷の増加時に最大出力が必要となる場合がある。軸受摩耗装置にポンプの動作状態を示す情報を提供することで、軸受摩耗警報の間違った起動を防ぐことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転速度の指標及びモータ出力の指標の両方を含む。
【0019】
一定期間にわたって測定された回転速度又はモータ出力のいずれか一方は、軸受摩耗の兆候を提示することができるが、場合によっては両方が使用され、より正確な故障診断が可能になる。
【0020】
いくつかの実施形態では、軸受摩耗故障診断は、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性の識別に関連する。従って、軸受摩耗故障の特質は、分析される信号(複数可)から識別することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、軸受摩耗監視装置は、減速度が所定の閾値を超えていると判定することに応答して、検出された減速度に続く期間中に出力を監視し、軸受摩耗故障診断は、この期間中に監視されたモータ出力が所定の閾値を超えているという指標に応答して軸受摩耗を示すようになっている。
【0022】
いくつかの実施形態では、軸受摩耗監視装置は、消費された出力を監視するための閾値を超える減速度の検出に応答することができる。上述したように、減速度及び出力は共に軸受摩耗を示すものであり、一般に減速は出力の増加の前に見られる。従って、急激な減速に続く出力を監視することで、軸受摩耗のさらなる根拠が提示され、より信頼性の高い故障診断が可能になる。
【0023】
第2の態様は、第1の態様による軸受摩耗監視装置を含む真空ポンプ装置を提供する。
【0024】
第3の態様は、回転組立体を備える電気モータを有する真空ポンプの軸受摩耗を監視する方法を提供し、本方法は、
回転組立体の回転の特徴を示す信号を受け取るステップであって、回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転速度の指標及びモータ出力の指標の少なくとも1つを含む、ステップと、
回転組立体の回転の特徴を示す信号を経時的に分析して、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するステップと、
を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、信号特性は予め設定され、既知の軸受摩耗状態を示す。
【0026】
いくつかの実施形態では、本方法は、軸受摩耗を示す1又は以上の信号特性の識別時に、ユーザ警報をトリガすることを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、軸受摩耗を示す信号特性は、所定の閾値を超える減速度を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、本方法は、過去の減速事象と比較して増加した減速度を識別することを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、回転組立体の回転の特徴を示す信号は、モータ出力の指標を含み、本方法は、モータ出力を経時的に分析して軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、軸受摩耗を示す信号特性は、モータ出力が所定時間最大であることを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、本方法は、真空ポンプの動作特性を示す信号を受け取ることを含み、軸受摩耗を示す信号特性は、動作特性を示す信号が、真空ポンプが最大モータ出力を必要とする可能性が低いことを示しているにもかかわらず、モータ出力が最大であることを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、回転組立体の回転の特徴を示す信号は、モータの相電流の経時的な変動の指標を含み、本方法は、時間ベースの信号を周波数ベースの信号に変換すること、及び、周波数ベースの信号を分析して、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別することを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転速度の指標及びモータ出力の指標の両方を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、軸受摩耗を示すこの信号特性は、所定の閾値を超える減速度と、所定の時間にわたって最大であるモータ出力との両方を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、本方法は、減速度が所定の閾値を超えていると判定することに応答して、検出された減速度に続く期間中に出力を監視すること、及び
この期間中に監視されたモータ出力が所定の閾値を超えているという指標に応答して軸受摩耗を示す指示を出力すること、
を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、軸受摩耗故障診断は、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性の識別に関連する。
【0037】
第4の態様は、プロセッサによって実行されると、装置に第3の態様の方法を実行させるように構成されたコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムを提供する。
【0038】
いくつかの関連する実施例では、回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転期間の指標を含み、軸受摩耗監視回路は、連続する回転期間を分析して軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するように構成されている。回転期間は、1回転を完了するための時間を含むことができ、いくつかの関連する実施例では、一部回転を完了するための時間を含むことができる。従って、軸受摩耗の結果、シャフト又はロータが動けなくなった場合、回転周期に微小変動が生じることが予想される。時間周期の変動又はばらつきを決定するために、隣接する連続した回転期間を分析することにより、軸受摩耗によって典型的に引き起こされるタイプの摩擦を識別することができる。
【0039】
いくつかの関連する実施例では、回転周期は、既知の角回転を完了する時間を含む。角回転は、例えば、1回の完全な回転、部分回転、又は複数の連続した回転を含む。
【0040】
いくつかの関連する実施例では、軸受摩耗を示す信号特性は、所定の閾値を超える回転期間の変動を含む。
【0041】
いくつかの関連する実施例では、軸受摩耗を示す信号特性は、回転期間の過去の変動と比較して、回転期間の変動が増加していることを識別することを含む。従って、軸受摩耗が存在しないと判定された受け取った信号の履歴解析は、比較を行うことができるように記憶することができる。
【0042】
いくつかの関連する実施例では、回転組立体の回転の特徴を示す信号は、モータの相電流の経時的な変動の指標を含み、軸受摩耗監視回路は、時間ベースの信号を周波数ベースの信号に変換し、周波数ベースの信号を分析して、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するように構成されている。ポンプは一定の回転速度を維持するように動作するので、モータに供給される電流の変動は、回転組立体を形成するロータ/シャフト/ポンプの回転変動の指標を提供することができる。時間ベースの信号を周波数ベースの信号に変換することで、軸受摩耗を示す可能性のある信号の特性を容易に識別することができる。
【0043】
シャフトトルクの変動を認識するのを助けることができるポンプモータの動作特性の1つは、回転速度を維持するという目標が与えられた場合にポンプモータに供給される電流であることを理解されたい。軸受摩耗に関連する場合がある軸受の転がり摩擦の変動は、「固着」を補正するために調整される電流の変動を引き起こす。
【0044】
典型的に、相電流の指標は、ポンプ「出力」測定値を介してユーザ又はシステムコントローラに報告され、これは約1又は2秒ごとにリフレッシュされ報告される。これは実際上「システム出力」であり、時間平均値は、軸受摩耗によるシャフトトルクの変動に関連する可能性のある電流の微小変動を不明瞭にし、軸受摩耗の影響から生じる摩擦の増加を、他の要因による摩擦又はトルクの増加から切り離すことを困難にする。その結果、ポンプ「出力」は軸受摩耗の良好な指標とはならない。平均化された電流信号を避け、代わりに微小変動を調べることで、軸受摩耗に関連する特性を識別することができる。
【0045】
いくつかの関連する実施例では、軸受摩耗を示す信号特性は、周波数ベースの信号において、予め設定された周波数で又は予め設定された周波数範囲で発生する少なくとも1つの信号ピークを含む。軸受摩耗は、典型的には所定の周波数領域で発生する可能性がある。
【0046】
いくつかの関連する実施例では、軸受摩耗を示す信号特性は、周波数ベースの信号において予め設定された閾値振幅を超える信号ピークを含む。従って、周波数ベースの信号において、通常ピークが予想されるような周波数であっても、予想外に大きなピークは、軸受摩耗を示す可能性がある。
【0047】
いくつかの関連する実施例では、軸受摩耗を示す信号特性は、周波数ベース信号における過去のパターンと比較して、周波数ベース信号における少なくとも1つの新しい信号ピークを識別することを含む。従って、信号の過去の周波数分析と比較して新たな周波数特性の出現は、軸受摩耗を示す可能性がある。
【0048】
いくつかの関連する実施例において、回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転周期の指標を含み、方法は、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するために、連続する回転周期を分析することを含む。
【0049】
いくつかの関連する実施例において、方法は、回転周期の過去の変動と比較して回転周期の変動が増加していることを識別することを含む。
【0050】
いくつかの関連する実施例において、回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転速度の指標を含み、方法は、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するために、経時的に回転速度を分析することを含む。
【0051】
さらに別の特定の及び好ましい態様は、添付の独立及び従属請求項に示されている。従属請求項の特徴は、適切である場合に及び特許請求の範囲に明示的に示されるもの以外の組み合わせで独立請求項の特徴と組み合わせることができる。
【0052】
装置特徴が機能を提供するように作動可能であると説明される場合に、これは、その機能を提供するか又はその機能を提供するように適応又は構成される装置特徴を含むことを理解されたい。機能が機能ロジックとして説明される場合、このロジックはその機能を実行するための構成された回路とすることができることを理解されたい。
【0053】
ここで添付図面を参照して本発明の実施形態を以下にさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】説明される様々な態様及びアプローチによる軸受摩耗監視装置を組み込んだ真空ポンプ装置のいくつかの主要構成要素を概略的に示す。
【
図2】
図1に示すような軸受摩耗監視装置によって監視される信号の概略図である。
【
図3】
図1に示すような軸受摩耗監視装置によって監視される別の信号の概略図である。
【
図4】
図1に示すような軸受摩耗監視装置によって監視される別の信号の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
実施形態を詳細に説明する前に、最初に概要が提示される。
ポンプシステムは、通常、ステータ及び回転組立体部を含むポンプ、インバータ、及びポンプコントローラを備える。対象のポンプとしては、半導体ツールなどからガスをポンプ送給するためのターボポンプなどの真空ポンプ、又は多段容積式ポンプを挙げることができる。しかしながら、ポンプの動作に関連する問題は、特定のタイプのポンプ機構に限定されないことを理解されたい。上述したように、ポンプは、通常、ステータと回転組立体とを有する電気モータを備える。ロータは、通常、軸受がロータに関連するシャフトの円滑な回転を保証するように取り付けられることになる。シャフトはポンプのインペラを駆動することができる。モータのロータ、シャフト、及びインペラは、一緒になって回転組立体を構成することになる。軸受摩耗は、例えば、関連する軌道の破損又は軸受保持器の損傷によるものであり、軸受に関連する転がり摩擦力の増加を引き起こす可能性があり、その結果、ポンプ及びポンプシステムの動作に影響を及ぼす可能性がある。シャフトはモータによって駆動されるため、転がり摩擦力の変動は、モータの様々な動作特性の微小変動として測定することができる。例えば、軸受摩耗による摩擦の変化は、相電流及び/又は回転速度の微小変動を引き起こす可能性がある。このような微小変動を検出又は監視するためには、概略的にユーザーインターフェース又はシステムコントローラから供給される時間平均値に優る測定アプローチが必要である。
【0056】
次に、様々な配置によるポンプシステムについて説明する。本明細書で説明するように、ポンプシステム10は、軸受摩耗に関連して自己診断機能を実行するように構成されている。
図1は、説明される様々な態様及びアプローチによる軸受摩耗監視装置を組み込んだ真空ポンプシステム10のいくつかの主要構成要素を概略的に示す。
【0057】
ポンプシステム10は、モータ25によって駆動されるポンプ20、電源30及び関連する電力供給電子機器35、及び制御ユニット40を備える。説明される構成におけるポンプ20は、半導体ツールなどからガスをポンプ送給するための多段容積式ポンプなどの真空ポンプである。しかしながら、この構成に関連して説明されるアプローチは、特定のタイプのポンプ機構に限定されないことを理解されたい。
【0058】
電気モータ30は、ステータ及びロータを備える。ロータは、ポンプ20を駆動するシャフトに結合されている。ロータ及びシャフトは軸受と関連しており、シャフトの円滑な回転及びポンプへの回転の伝達が可能になっている。制御ユニット40は、ポンプ20を駆動するモータ25の動作を制御するために、ポンプ電力供給電子機器35と通信するように構成されている。また、制御ユニットは、ポンプ20の制御を容易にするためのヒューマンマシンインターフェース(HMI)を提供する。制御ユニット40は、ポンプシステム10の様々な構成要素及びポンプシステムの構成要素に関連する1又は2以上のセンサから受け取った信号を処理するように構成された制御回路及び制御ソフトウェアを備える。制御ユニットは、制御回路を使用してそれらの入力信号を処理し、ポンプシステムの1又は2以上の構成要素に伝達され、ポンプ20の動作を制御することができる1又は2以上の出力を生成するように構成されている。
【0059】
図1に示されるポンプシステム10は、軸受摩耗監視装置50を含む。制御ユニット40の一部として示されているが、いくつかの実施態様では、制御ユニット40と通信するように構成することができる別個の軸受摩耗監視装置を設けることができることを理解されたい。軸受摩耗監視装置50は、軸受摩耗ロジック又は回路及び処理能力を含み、また、ポンプシステム10の様々な構成要素から及びポンプシステムの構成要素に関連する1又は2以上のセンサから受け取った信号を処理するように構成されている。軸受摩耗監視装置は、制御回路を使用してそれらの入力信号を処理し、制御ユニット40及び/又はポンプシステムの1又は2以上の構成要素に伝達され、結果としてポンプ20の動作に直接的又は間接的に影響を与えることができる1又は2以上の出力を生成するように構成されている。軸受磨耗監視装置は、軸受磨耗警報器55の動作に関連付けることができる。軸受摩耗警報器55は、軸受摩耗監視装置50が軸受摩耗の可能性を検出した場合に、システム使用者に視覚的又は聴覚的警報を提供するように構成することができる。
【0060】
図1に示す構成では、軸受摩耗監視装置は、ロータ位置測定装置60と通信する。このロータ位置測定装置60は、モータ25によって駆動されるシャフトの回転運動を測定又は推定するように構成することができる。ロータ位置測定装置60は、例えば、1又は2以上のホールスイッチ、エンコーダ、又は他の位置測定装置又は推定装置を用いてロータ位置測定を行うことができる。ロータ位置測定又は推定装置60によって生成される信号65の例が示されており、ロータ又はシャフトの1回転ごとに生成される1又は2以上のパルスの形をとる。また、
図1に示す軸受摩耗監視装置は、電力供給電子機器35及び制御ユニット40と通信する。
【0061】
軸受摩耗監視装置50が軸受摩耗の評価を提供するように構成することができる様々なアプローチについて詳細に説明する。説明される一部のアプローチは、シャフトの1回転ごとに複数の測定を行うことに基づくことができ、一部のアプローチは、より長い期間、例えば、複数のシャフト回転を包含する期間にわたって行われる測定に基づくことができる。
【0062】
4つの概略的なアプローチについて詳しく説明する。概略的なアプローチの詳細は、軸受摩耗を評価するメカニズムを同様に提供できるハイブリッドアプローチを提供するために、適宜組み合わせることができることを理解されたい。
【0063】
概略的なアプローチのうち2つは、非常に高速な測定(マイクロ秒からミリ秒)に依存する。概略的なアプローチのうち2つは、より長時間の測定(~秒)に依存する。
【0064】
1つの概略的な関連するアプローチによれば、軸受摩耗ロジックは、一定の回転速度を提供しようとするために、電力供給電子機器ス35によってモータ25に供給されるモータ相電流を記録又は監視するように構成することができる。軸受摩耗監視装置は、記録又は監視されたモータ相電流の周波数領域への変換を行うように構成されている。モータ相電流は、各シャフト回転、又は一部回転(1回転につき1回、1kHzのシャフト速度で1msの測定に相当)、又は少数のシャフト回転(例えば、1kHzのシャフト速度で5から10msに相当する5から10回転)について測定又は監視することができる。周波数領域での分析により、軸受摩耗ロジックは、特徴的な軸受故障周波数での成分を識別することができる。これらの周波数は、軸受摩耗故障モードを有するポンプの分析に基づいて予め設定すること、又は、ポンプ動作の過去の周波数分析と比較して識別された「新しい」周波数特性を含むことができる。
【0065】
1つの概略的な関連するアプローチによれば、軸受摩耗監視装置50の一部として提供される軸受摩耗ロジック又は回路は、シャフトが1回転、又は他の固定された角度運動を完了するのにかかる時間を測定又は監視するように構成することができる。換言すれば、軸受摩耗監視装置は、ロータ位置測定装置60から受け取った信号65を分析することができる。測定は、複数の連続した角度運動にわたって繰り返すことができる。軸受摩耗ロジックは、隣接する測定又は監視時間を比較するように構成することができる。時間の比較により、ロジックは、軸受構成要素の摩耗とその結果生じる摩擦による軸受の「引っ掛かり(snagging)」を示す監視時間の変動を識別することができる。
【0066】
上述した2つの概略的な関連するアプローチの利点は、測定及び監視が、軸受の要因とは対照に、ポンプの要因にほとんど無関係である十分速い速度で行われるという事実にある。例えば、上述したように、1kHzで作動するポンプの場合、シャフトの連続10回転を測定するのに10msecかかることになる。これら連続10回転の各々の継続時間を比較及び評価して、軸受摩耗を判定することができる。ガス負荷の変化、熱影響、背圧の変化などのポンプ要因は、軸受摩耗によって引き起こされる変動と誤解されるような、10msにわたるシャフトの回転時間又は速度の変動を引き起こす可能性は低い。換言すれば、説明される2つの概略的な関連するアプローチは、真空システム10上のマクロ効果によって引き起こされる変動を排除するために、非常に迅速にロータの動作パラメータを収集して処理するように構成された軸受摩耗ロジックを提供する。
【0067】
一実施形態による1つの概略的なアプローチによれば、軸受摩耗ロジックは、ポンプ回転速度、又はシャフト回転速度を測定又は監視し、回転速度の変化率が予想されるポンプ状態に関連する変化率を超える場合を識別するように構成することができる。換言すれば、軸受摩耗監視装置は、ロータ位置測定装置60からの信号65から決定される減速度又は加速度を識別し、その信号を処理して、決定された変化率が、許容及び/又は予想されるポンプ状態、例えば、緊急停止に関連する変化率に関連する変化率を超えるか否かを識別するように構成することができる。
【0068】
実施形態による1つの概略的なアプローチによれば、軸受摩耗ロジックは、電力供給電子機器35からの電力供給信号の分析に基づいて、ポンプ出力を監視及び/又は測定し、既知のポンプ動作条件を前提として予想されない時に、予め設定された閾値最大出力がポンプ制御ユニット40によって要求される状態を識別するように構成することができる。
【0069】
上記の2つの概略的なアプローチは、先の関連するアプローチに関連して説明したように高速の取得及び処理を利用することもでき、又はより低速の測定及び処理速度で実行することもできる。回転での軸受摩耗の変動を区別するために、より遅い速度で実行される概略的なアプローチは、回転速度の減速又は加速及び/又はポンプ出力が予想される動作限界から外れる時間を識別できるようにするために、予想されるポンプ作動の範囲に関する少なくとも何らかの知識を必要とする場合がある。いくつかの実施形態では、低速で実行される2つの概略的なアプローチを組み合わされることができ、減速度及び消費される出力の両方を監視して、軸受摩耗の判定に利用するようになっている。この点で、急激な減速は、軸受摩耗を示す場合があるが、ポンピング条件の変化を示す場合もある。この直後又は直後に消費される出力は、減速の原因に関するさらなる情報を提供し、故障診断を実質的に承認するか又は拒否するために利用することができる。
【0070】
4つの概略的なアプローチの概要について説明した後、各アプローチの詳細について説明する。
【0071】
(相電流)
上述したように、一部のアプローチは、シャフト1回転ごとに1、2回又はそれ以上など、非常に短い時間にわたって相電流を監視及び/又は測定し、次に、監視された相電流の周波数領域への変換を実行するように構成された軸受摩耗ロジックを提供する。電流を周波数領域に変換することで、特定の周波数における成分を分解し、典型的に軸受摩耗に関連する周波数を識別することができる。例えば、周波数変換された信号から同期周波数をフィルタ処理し、他の関心のある周波数、例えば、ボール通過周波数、軸受保持器周波数などを識別し、抽出し、監視することができる。このような値は、軸受摩耗又は軸受に関連する故障を見分けるために、例えば、ポンプの寿命を通じて追跡して、所定の閾値と比較する又は以前の値と比較することができる。例えば、軸受保持器周波数(準同期周波数)は、特定の故障モードの良好な指標とすることができ、経時的に測定し追跡するのに有用なパラメータとすることができる。勿論、相電流は、通常、スイッチング周波数にロックされたリップル電流であり、各測定値自体が平均化された値の指標を含む場合があることも理解されたい。
【0072】
(シャフト回転時間)
上述したように、いくつかのアプローチは、軸受摩耗要因を監視する手段として、1回転(又は半回転、又はモータの極数及び正確な測定実施構成に依存する他の固定された角度運動)を完了するまでの時間を測定及び監視するように構成された軸受摩耗ロジックを提供する。回転時間を監視し、基準値及び/又は以前の値と比較することで、摩耗の兆候を示唆するような局所的な高摩擦領域が軸受に存在するか否かを識別することができる。
【0073】
図2は、
図1に示すような軸受摩耗監視装置によって監視される信号の概略図である。詳細には、
図2は、ロータ位置測定装置60によって生成することができる信号65を示す。図示されている信号は、ロータ角度と共に正弦曲線状に変化する推定値の時間に対するプロットであり、隣接する回転T1、T2、T3間の変動を見ることができる。その変動は軸受摩耗監視装置50によって分析され、軸受摩耗を示す摩擦変化に起因する、各回転の間の一貫性のない変動を識別することができる。
【0074】
(ロータ減速度)
上述したように、実施形態によるいくつかのアプローチは、ロータ又はポンプの減速度を測定し、監視するように構成された軸受摩耗ロジックを提供する。ロジックが測定されたロータ減速度が期待値から外れていると判定した場合、ユーザに警報を出す、アラームを起動する、又はポンプロータの動作パラメータを調整するように構成することができる。例えば、制御制動、ガス抜き、ガス負荷など、予想される動作事象に関連して、ポンプの種類ごとに異なる減速度を設定することができる。このような事象に関する所定の理解及び知識は、通常の動作減速度の指標を提供するのを助け、適切な最大予想減速度の選択を助けることができる。減速度閾値が選択されると、軸受摩耗ロジックは、ポンプの回転速度を連続的に監視し、減速度が最大予想閾値を超えた場合、故障の可能性が高い状態の識別を引き起こすように構成することができる。一部の実施形態では、故障の可能性が高い状態の識別を即座に引き起こすのではなく、減速度の検出は、むしろ消費される出力の監視を起動し、これが閾値を超えた場合にのみ、故障の可能性が識別されることになる。いずれの場合も、故障の可能性がある状態が識別されると、場合によってはアラーム又は他の同様のシグナルが起動され、ポンプの使用者に故障状態を警報することができる。いくつかの実施構成では、軸受摩耗ロジックは、ポンプ制御ロジックと組み合わせて、ポンプをフェイルセーフモードにして、ポンプの動作を停止させるように構成することができる。介入なしに制御された方法でポンプを停止することは、無人ポンプの場合に有利である。
【0075】
図3は、
図1に示したような軸受摩耗監視装置によって監視される別の信号の概略図である。詳細には、
図3は、ポンプ又はモータシャフトの回転速度を経時的に監視することによって生じる可能性のある信号を示す。ポンプの通常運転では、実質的に一定の目標回転速度が維持される。破線(b)は、予想される動作状態によるモータシャフト又はポンプの減速を示し、実線(a)は、軸受の故障から予想される減速を示している。回転速度変化の変化率は、軸受摩耗監視装置50によって分析され、軸受摩耗又は軸受故障を示す、選択された閾値を超える減速度を識別することができる。
【0076】
(モータ出力要求)
上述したように、いくつかのアプローチは、モータ出力を測定及び監視するように構成された軸受摩耗ロジックを提供する。軸受摩耗ロジックは、出力が最大予想閾値を超えた場合、又は最大出力に達した場合、ロジックが故障の可能性のある状態を識別し、アラームを起動するように構成することができる。軸受摩耗ロジックは、最大出力要求が軸受摩耗の問題を示している状況の識別を助けるために、追加のポンプ制御パラメータを監視するように構成することができる。詳細には、例えば、ポンプを全速力まで加速させるために最大出力が供給されるポンプランプ中又はポンプ始動中に、ロジックはアラーム状態を無視するか、又はアラーム状態の起動を防止するように構成することができる。いくつかの実施例によれば、モータ出力要求監視レジームを実施する軸受摩耗ロジックは、そのようなレジームを、例えば回転速度、減速度、STARTコマンド受信からの時間など、1又は2以上の追加ポンプパラメータの監視又は評価とリンクさせることができる。モータ出力要求軸受摩耗アプローチは、1又は2以上の信号に関連する閾値又はトリガ条件の組み合わせが満たされた場合にアクティブになることができる。モータ出力の軸受摩耗監視を使用するアプローチは、特に、ガス負荷が周知であり、ガス負荷に起因するポンプへの負荷が駆動装置に設定された最大値未満であるポンプ用途に関連して使用することができる。
【0077】
図4は、
図1に示すような軸受摩耗監視装置によって監視される別の信号の概略図である。詳細には、
図4は、監視されるモータ出力の経時変化をプロットしたものである。ポンプが大きなガス負荷を受けていない場合、モータ出力は、通常、実質的に一定となるはずである。同様に、ポンプが、増加するが一定のガス負荷を受けている場合、モータ出力は増加するがこれも実質的に一定である。ガス負荷の急激な変化、又は最初の始動時には、
図4のピークCのように、最大モータ出力が一定時間生じて保持される場合がある。そうでなければ、予想されるポンプ状態の変化によって引き起こされるのではない様式で、モータが最大出力で作動していると判定することは、ポンプの故障を示す可能性がある。そのような故障状態は、
図4のピークAとして示されている。モータ出力のピーク又は最大値は軸受摩耗監視装置50によって分析され、例えば軸受摩耗を示す最大出力の予期せぬ期間を識別することができる。
【0078】
上述の別々に説明される軸受摩耗監視アプローチは、組み合わせて使用できることを理解されたい。詳細には、アラーム又はシステムシャットダウンは、1つの説明されたアプローチに従って軸受摩耗が決定された場合にトリガされる場合があるが、有利には、軸受摩耗の可能性を示す2又は3以上の閾値条件(各々が、異なる監視ロータ動作パラメータに依存する)が満たされた場合にトリガされる場合がある。
【0079】
添付図面を参照して本発明の例示的な実施形態を本明細書に詳細に開示したが、本発明は、正確な実施形態には限定されず、特許請求の範囲及びその均等物によって定められる本発明の範囲から逸脱することなく、そこに当業者によって様々な変更及び修正を達成することができることが理解される。
【0080】
様々な関連する実施形態及び/又は実施例は、以下の番号付けされた条項に記載される。
【0081】
(条項1)
回転組立体を備える電動モータを有する真空ポンプの軸受を監視するように構成された軸受摩耗監視装置であって、軸受摩耗監視装置は、
回転組立体の回転の特徴を示す信号を受け取るように構成された入力受け取り回路と、
回転組立体の回転の特徴を示す信号を分析して、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するように構成された軸受摩耗監視回路と、
を備える。
【0082】
(条項2)
信号特性は、予め設定されており、既知の軸受摩耗状態を示す、条項1に記載の軸受摩耗監視装置。
【0083】
(条項3)
軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性の識別時にトリガされるように構成されたユーザ警報を含む、条項1又は2に記載の軸受摩耗監視装置。
【0084】
(条項4)
回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転期間の指標を含み、軸受摩耗監視回路は、連続する回転期間を分析して軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するように構成されている、条項1から3のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【0085】
(条項5)
回転期間が、既知の角回転を完了する時間を含む、条項4に記載の軸受摩耗監視装置。
【0086】
(条項6)
軸受摩耗を示す信号特性は、所定の閾値を超える回転周期の変動である、条項4又は5に記載の軸受摩耗監視装置。
【0087】
(条項7)
軸受摩耗を示す信号特性は、回転周期の過去の変動と比較して増加した回転周期の変動の指標を含む、条項4から6のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【0088】
(条項8)
回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転速度の指標を含み、軸受摩耗監視回路は、回転速度を経時的に分析して、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するように構成されている、条項1から7のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【0089】
(条項9)
軸受摩耗を示す信号特性は、所定の閾値を超える減速度を含む、条項8に記載の軸受摩耗監視装置。
【0090】
(条項10)
軸受摩耗を示す信号特性は、過去の減速事象と比較して増加した減速度の識別を含む、条項8又は9に記載の軸受摩耗監視装置。
【0091】
(条項11)
回転組立体の回転の特徴を示す信号は、モータ出力の指標を含み、軸受摩耗監視回路は、モータ出力を経時的に分析して軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するように構成されている、条項1から9のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【0092】
(条項12)
軸受摩耗を示す信号特性は、モータ出力が所定時間最大であることを含む、条項11に記載の軸受摩耗監視装置。
【0093】
(条項13)
入力受け取り回路は、真空ポンプの動作特性を示す信号を受け取るように構成されており、軸受摩耗を示す信号特性は、動作特性を示す信号が、真空ポンプが最大モータ出力を必要とする可能性が低いことを示しているにもかかわらず、モータ出力が最大であることを含む、条項11又は12に記載の軸受摩耗監視装置。
【0094】
(条項14)
回転組立体の回転の特徴を示す信号は、モータの相電流の経時的な変動の指標を含み、軸受摩耗監視回路は、時間ベースの信号を周波数ベースの信号に変換し、周波数ベースの信号を分析して、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するように構成されている、条項1から13のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【0095】
(条項15)
軸受摩耗を示す信号特性は、周波数ベースの信号において、予め設定された周波数又は予め設定された周波数範囲で発生する少なくとも1つの信号ピークを含む、条項14に記載の軸受摩耗監視装置。
【0096】
(条項16)
軸受摩耗を示す信号特性は、周波数ベースの信号において予め設定された閾値振幅を超える信号ピークを含む、条項14又は15に記載の軸受摩耗監視装置。
【0097】
(条項17)
軸受摩耗を示す信号特性は、周波数ベース信号における過去のパターンと比較した、周波数ベース信号における少なくとも1つの新しい信号ピークの識別を含む、条項14から16のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【0098】
(条項18)
軸受摩耗の故障診断は、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性の識別に関連付けられる、条項1から17のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【0099】
(条項19)
条項1から18のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置を備える真空ポンプ装置。
【0100】
(条項20)
回転組立体を備える電気モータを有する真空ポンプの軸受摩耗を監視する方法であって、
回転組立体の回転の特徴を示す信号を受け取るステップと、
回転組立体の回転の特徴を示す信号を分析し、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するステップと、
を含む方法。
【0101】
(条項21)
プロセッサによって実行されると、装置に条項20に記載の方法を実行させるように構成されたコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0102】
10 ポンプシステム
20 ポンプ
25 モータ
30 電源
35 電力供給電子機器
40 制御ユニット
50 軸受摩耗監視装置
55 軸受摩耗アラーム
60 ロータ位置測定装置
【手続補正書】
【提出日】2023-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転組立体を備える電気モータを有する真空ポンプの軸受を監視するように構成された軸受摩耗監視装置であって、
前記回転組立体の回転の特徴を示す信号を受け取るように構成された入力受け取り回路であって、前記回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転速度の指標及びモータ出力の指標の両方を含む、入力受け取り回路と、
前記回転組立体の回転の特徴を示す信号を経時的に分析して、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するように構成された軸受摩耗監視回路と、
を備える、軸受摩耗監視装置。
【請求項2】
前記軸受摩耗を示す信号特性は、予め設定されており、既知の軸受摩耗状態を示す、請求項1記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項3】
前記軸受摩耗を示す信号特性の識別時にトリガされるように構成されたユーザ警報を含む、請求項1又は2に記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項4】
前記軸受摩耗を示す信号特性は、所定の閾値を超える減速度を含む、請求項1又は2に記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項5】
前記軸受摩耗を示す信号特性は、過去の減速事象と比較して増加した減速度の識別を含む、請求項1から4のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項6】
前記軸受磨耗を示す信号特性は、モータ出力が所定時間最大であることを含む、請求項1から5のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項7】
前記入力受け取り回路は、前記真空ポンプの動作特性を示す信号を受け取るように構成され、前記軸受磨耗を示す信号特性は、前記動作特性を示す信号が、前記真空ポンプが最大モータ出力を必要とする可能性が低いことを示しているにもかかわらず、モータ出力が最大であることを含む、請求項1から6のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項8】
軸受摩耗故障診断は、前記軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性の識別に関連付けられる、請求項1から7のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項9】
前記軸受摩耗監視装置は、減速度が所定の閾値を超えていると判定することに応答して、検出された減速度に続く期間中に出力を監視し、前記軸受摩耗故障診断は、前記期間中に監視された前記モータ出力が所定の閾値を超えているという指標に応答して、軸受摩耗を示す、請求項4に従属する場合の請求項8に記載の軸受摩耗監視装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の軸受摩耗監視装置を備える真空ポンプ装置。
【請求項11】
回転組立体を備える電気モータを有する真空ポンプの軸受摩耗を監視する方法であって、
前記回転組立体の回転の特徴を示す信号を受け取るステップであって、前記回転組立体の回転の特徴を示す信号は、回転速度の指標及びモータ出力の指標の両方を含む、ステップと、
前記回転組立体の回転の特徴を示す信号を経時的に分析し、軸受摩耗を示す1又は2以上の信号特性を識別するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記方法は、減速度が所定の閾値を超えていると判定することに応答して、前記検出された減速度に続く期間中に出力を監視し、当該期間中に監視されたモータ出力が所定の閾値を超えているという指標に応答して軸受摩耗を示す軸受摩耗故障診断を生成するステップと、を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
プロセッサによって実行されると、装置に請求項11又は12に記載の方法を実行させるように構成されたコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム。
【国際調査報告】