(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】抗微生物活性を有するノーズプラグ
(51)【国際特許分類】
A62B 23/06 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
A62B23/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023537558
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2021086171
(87)【国際公開番号】W WO2022136101
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519402524
【氏名又は名称】ノーズオプション アー・ベー
【氏名又は名称原語表記】NoseOption AB
【住所又は居所原語表記】Observatoriegatan 5, 113 29 Stockholm, Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン リリエフォッシュ
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA08
2E185BA07
(57)【要約】
本発明は、抗微生物物質を含む少なくとも1つの可撓性部材と1つの剛性の細長い支持部材とを含む、ノーズプラグに関する。可撓性部材は、支持部材を取り囲むように配置されており、可撓性部材は、鼻孔内に配置されて鼻孔の開口を正確に充填するように適合化されており、抗微生物物質による感染因子の不活性化が可能となるよう、空気が曲がりくねった構造内を流れられるようにする手段を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノーズプラグ(1)であって、
少なくとも1つの可撓性部材(2)と、
1つの剛性の細長い支持部材(3)と
を含み、
前記可撓性部材は、前記支持部材を取り囲むように配置されており、
前記可撓性部材は、鼻孔内に配置されて鼻孔の開口を正確に充填するように適合化されており、鼻孔に進入する空気の流れを複数のプレートまたはバンドにより蛇行状もしくは螺旋状の経路において導通させる手段が設けられている、
ノーズプラグ(1)において、
前記可撓性部材は、抗微生物物質を含む
ことを特徴とする、ノーズプラグ(1)。
【請求項2】
前記抗微生物物質は、前記可撓性部材の材料内または前記可撓性部材の表面上に持続的に固定化されている、請求項1記載のノーズプラグ。
【請求項3】
前記抗微生物物質は、前記可撓性部材の材料または前記可撓性部材の表面から放出可能である、請求項1記載のノーズプラグ。
【請求項4】
可撓性部材のセットが、前記支持部材に沿って配置された複数の平行なプレート(4)を含み、各プレートは、前記支持部材の延在状態に対して垂直な方向に延在している、請求項1から3までのいずれか1項記載のノーズプラグ。
【請求項5】
前記プレートは、鼻孔の内部の形状に前記ノーズプラグを適合させるために、それぞれ異なるサイズの周を有する、請求項4記載のノーズプラグ。
【請求項6】
各プレートは周に1つずつの凹部(6,7)を有し、該凹部は、先行のもしくは後続のプレートにおける凹部と重ならないように配置されている、請求項4または5記載のノーズプラグ。
【請求項7】
凹部の第1のセット(7)は、1つ置きの各プレートの横断方向直径の一方の端部の周の位置に配置されており、
凹部の第2のセット(6)は、中間の各プレートの横断方向直径の他方の端部の周に配置されている、
請求項4から6までのいずれか1項記載のノーズプラグ。
【請求項8】
前記可撓性部材は、前記支持部材の周囲に螺旋状の構造を形成する螺旋状に配置されたバンドを含む、請求項1から3までのいずれか1項記載のノーズプラグ。
【請求項9】
前記抗微生物物質は、抗ウイルス物質、抗細菌物質、および抗真菌物質から成る群から選択されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のノーズプラグ。
【請求項10】
前記抗微生物物質は銀イオンを含む、請求項1から9までのいずれか1項記載のノーズプラグ。
【請求項11】
前記銀イオンはガラスに封入されている、請求項10記載のノーズプラグ。
【請求項12】
前記可撓性部材は熱可塑性エラストマーから作製されており、前記抗微生物物質は前記熱可塑性エラストマー内に均一に分散されている、請求項1から11までのいずれか1項記載のノーズプラグ。
【請求項13】
前記可撓性部材は、熱可塑性エラストマーから作製されており、前記抗微生物物質は、前記可撓性部材内の材料全体の2%~10%の範囲の割合を成している、請求項1から12までのいずれか1項記載のノーズプラグ。
【請求項14】
前記可撓性部材は、前記抗微生物物質を含むコーティングでコーティングされている、請求項1から13までのいずれか1項記載のノーズプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、少なくとも1つの可撓性部材と1つの剛性の細長い支持部材とを含み、抗微生物活性を有するノーズプラグに関する。
【0002】
背景
医療領域で働く人々は、細菌およびウイルスなどの感染因子を含む飛沫またはエアロゾルに頻繁に曝されている。Sars-Cov-2ウイルスが世界的に蔓延するなかで、当該ウイルスおよび他のウイルスの伝播に関する懸念は、あらゆる種類の物理的な面会において、また医療施設外でも、高まっている。
【0003】
ここで、飛沫およびエアロゾルを介した拡散を防止するために、日常生活では、フェイスマスクが、公共の場でのその使用が以前は一般的でなかった国々においても広汎に使用されるようになっている。フェイスマスクは、感染因子が着用者の上咽頭腔に進入することを物理的に阻止し、またユーザが呼出した感染因子が近くにいる人々へ拡散したり環境へと転移したりすることを阻止することによって作用する。
【0004】
したがって、フェイスマスクは、感染因子を含む可能性のある、吸入されるもしくは呼出される実質的に全ての空気がフェイスマスクを通過して、これにより感染因子が固定化されることが保証されるように着用されることが基本である。しかし、ほとんどのフェイスマスクは感染因子を不活性化しない。このため、汚染された環境内で着用されたフェイスマスクは、相当量の生きた感染因子を含む可能性があり、よって、バイオハザードとして取り扱われなければならない。ゆえに、フェイスマスクを適切に使用するには、感染因子の伝播の効果的な低減が保証される安全な方式でのフェイスマスクの装着、着用、取り外しおよび廃棄のしかたにつき、ユーザの教育が必要である。また、フェイスマスクの使用は、ユーザの顔が必然的に覆われてしまうため、一部の潜在的なユーザによっては、反社会的であって、他者による認識および顔の表情を介したコミュニケーションを妨げるものと認識されている。
【0005】
感染因子に感染するリスクまたは他人に感染因子を感染させるリスクを低減するための他の対策には、物理的隔離およびソーシャルディスタンシングが含まれる。しかし、これらの対策は、必要に応じて期間が延長されると人々に精神健康上のリスクを課すことになりうる。
【0006】
ユーザによって吸入される空気中の様々な種類の粒子を除去するためのあまり目立たない方式として、鼻孔内または鼻孔上に配置されて吸気を機械的フィルタを通して配向する、ホルダに取り付けられたフィルタを使用することが挙げられる。こうしたフィルタは、スモッグ粒子もしくはアレルゲンを濾過除去するなどの様々な用途で知られているが、通常、ウイルスまたは細菌のエアロゾルのようなより微小な粒子に対してはあまり有効ではない。さらに、こうしたフィルタは、一部のユーザに快適な呼吸を困難にさせるものと考えられている。
【0007】
したがって、とりわけ上述した問題を解決するための何らかの手段を模索することが望ましい。
【0008】
発明の概要
微生物、例えば細菌、ウイルスおよび真菌への感染の拡散を防止することのできる製品が必要とされている。こうした製品は、使用が簡単でありかつこれを通した呼吸がしやすく、取り扱いが容易で、ユーザの顔の最小限の領域しか覆い隠さない、すなわち小さくて便利な製品であるべきである。
【0009】
本発明の目的は、上記にて概略的に述べた問題に対処することである。これらの目的および他の目的は、添付の独立請求項記載の装置によって達成される。
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、国際公開第2011/162677号(参照により本明細書に組み込まれている)に実質的に記載されているように構成され、さらに抗微生物物質、すなわち感染因子を不活性化することのできる物質を含むノーズプラグが、ユーザによって吸入される空気中および呼出される空気中の微生物粒子の量を最小化する予想外に高い効果を有することを見出した。したがって、このような物質は、好ましくは、ウイルス、細菌または真菌の宿主への到達またはさらに環境中への拡散を不活性化することができ、かつ/または防止することができる。標的とされる感染因子はウイルス、細菌または真菌でありうる。
【0011】
抗微生物物質は、ノーズプラグを通過する空気流と接触する材料内に含有されていてよく、またはノーズプラグを通過する空気流と接触する表面上にコーティングされていてもよい。当該抗微生物物質は、好ましくは、材料内または表面上に持続的に固定化されている。すなわち、当該物質は、好ましくは、通常使用においてかつ保存条件下では放出されない。
【0012】
第1の態様によれば、ノーズプラグは、抗微生物物質を含む少なくとも1つの可撓性部材と1つの剛性の細長い支持部材とを含む。可撓性部材は、支持部材を取り囲むように配置されており、かつ鼻孔内に配置されて鼻孔の開口を正確に充填するように適合化されている。ただし、プラグには、鼻孔を充填するにもかかわらず、鼻孔に進入する空気の流れを複数のプレートまたはバンドにより蛇行状もしくは螺旋状の経路において導通させる手段が設けられている。したがって、ノーズプラグがユーザの鼻孔に配置されたとき、ユーザは、吸入および呼出の双方において、全体として空気流が妨げられないことを経験する。実際には、幾つかのケースにおいて、ユーザは、ノーズプラグが鼻孔に配置されると鼻孔が僅かに拡大されることにより、呼吸しやすさの向上を経験する。
【0013】
鼻に入るまたは鼻から出る空気は、ノーズプラグが鼻に配置されていない場合よりも長い距離を進むことを強制され、当該距離に沿って可撓性部材に含まれる抗微生物物質と接触することとなる。したがって、本開示によるノーズプラグは、吸気および/または呼気の微生物負荷を低減することにおいて、また微生物感染のリスクまたは重症化を防止するもしくは低減する方法において、有用でありうる。
【0014】
一態様では、抗微生物物質は、可撓性部材の材料内または可撓性部材の表面上に持続的に固定化されている。
【0015】
一態様では、抗微生物物質は、可撓性部材の材料または可撓性部材の表面から放出可能である。
【0016】
ノーズプラグの一態様では、可撓性部材のセットは、支持部材に沿って配置された複数の平行なプレートを含み、ここで、各プレートは、支持部材の延在状態に対して垂直な方向に延在している。空気がプレート間の通過を強制され、これにより、より長い距離を流れることを強制されるよう、隣接するプレートによって形成されたスペースどうしの間の連通部が設けられている。当該連通部は、好ましくは、各プレートが周に1つずつの凹部を有し、これらの凹部が先行のプレートもしくは後続のプレートの凹部と重ならないように配置されることで提供される。これにより、空気流は、凹部によって形成された開口を通過することを強制され、これにより、ノーズプラグを通した呼吸が容易となる。
【0017】
一態様では、プレートが、丸みを帯びた形状、好ましくは楕円形状を有する。また、プレートは、それぞれ異なるサイズの周を有していてもよい。これは、ノーズプラグのプレートを鼻孔内へ適切に適合させるために好ましい形状である。
【0018】
ノーズプラグの好ましい態様では、凹部の第1のセットが1つ置きの各プレートの横断方向直径の一方の端部の周の位置に配置されており、凹部の第2のセットが中間の各プレートの横断方向直径の他方の端部の周に配置されている。鼻に流入する空気の進む距離が最大長さとなり、このことは、吸気中もしくは呼気中のあらゆる感染因子を、それらを不活性化することのできる可撓性部材の大きな表面と効率的に接触させることにとって有利である。
【0019】
一態様では、可撓性部材は、支持部材の周囲に螺旋状構造を形成する螺旋状に配置されたバンドを含む。これは、空気流の経路を設計するための代替的な方式である。
【0020】
一態様では、可撓性部材と支持部材とは相互に持続的に固定されている。したがって、可撓性部材は支持部材に一体化された部分となっており、これにより、ユーザが支持部材によってノーズプラグを引き出したときに鼻内に部材が残留する危険がない。一態様では、可撓性部材および支持部材は単一の材料片として一体に成形されている。
【0021】
別の好ましい態様では、ノーズプラグは、全体としてU字状の支持部材によって相互に接続された2つの可撓性部材またはこの可撓性部材の2セットを有し、各可撓性部材は前記U字状の支持部材の一方の脚部に取り付けられている。2つの可撓性部材間に支持部材を延在させることにより、ノーズプラグを2つの鼻孔内に同時に配置することおよび取り外すことが容易となる。また、こうした延在により、ノーズプラグが鼻孔の奥深くに配置されてしまい、軟組織を傷つけるおそれも防止される。
【0022】
一態様では、抗微生物物質は、抗ウイルス剤、抗細菌剤および抗真菌剤から成る群から選択されている。
【0023】
一態様では、抗微生物物質は銀イオンを含む。
【0024】
一態様では、可撓性部材は熱可塑性エラストマーから作製されており、抗微生物物質が当該熱可塑性エラストマー内に均一に分散されている。
【0025】
一態様では、可撓性部材は、抗微生物物質を含むコーティングでコーティングされている。
【0026】
以下に、添付の図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】
図1のノーズプラグを上方から示す図である。
【
図3】
図2のA-A線に沿った断面を示す図である。
【
図4】
図2のB-B線に沿った断面を示す図である。
【
図5】2K技術を使用して成形されたノーズプラグを示す図である。
【
図7】ノーズプラグの螺旋状の態様を示す斜視図である。
【
図8】ノーズプラグの螺旋状の態様を上方から示す図である。
【0028】
詳細な説明
以下の説明では、幾つかの態様および添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。限定ではなく説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために、特定のシナリオ、技術などの特定の詳細が示されている。しかしながら、当業者であれば、これらの特定の詳細から逸脱する他の態様においても本発明が実施可能であることは明らかなはずである。
【0029】
ここでの用途に使用されるノーズプラグなる用語は、鼻孔を完全に閉鎖するという意味での栓ではない。当該ノーズプラグは、鼻孔を充填することで空気が真直ぐに鼻に入らないようにするが、空気の進入の妨害は意図していない。実際に、開示しているノーズプラグは、多くのユーザにとって実際の鼻への空気の流入しやすさおよび鼻からの空気の流出しやすさを高めることができる。なぜなら、可撓性部材の構成により、鼻孔に配置されたときに鼻孔を僅かに拡大することができかつ/または鼻孔のより開放された形状を支持することができるからである。空気が曲がりくねった構造内をノーズプラグがない場合よりも長い距離にわたって流れられるようにすることにより、空気流と接触する材料での抗微生物物質による感染因子の不活性化が可能となる。
【0030】
抗微生物物質は、好ましくは、可撓性部材の材料内またはその表面上に持続的に固定化されている。つまり、好ましくは、物質は、通常使用においてかつ保存条件下では放出されない。一態様では、抗微生物物質は、可撓性部材の材料内で持続的に固定化され、例えばその内部に分散される。これにより、材料から抗微生物物質が意図せず放出されるリスクが最小化される。材料からの抗微生物物質の放出の回避は、特定の抗微生物物質および/または特定のユーザカテゴリにとって望ましいこととなりうる。例えば、銀イオンを含有する抗微生物物質は、ヒトの消化管内では分解されず、したがって環境へ排出されてそこで抗微生物効果が環境障害を引き起こすおそれがある。また、抗微生物物質は、任意のユーザまたは児童などの特定のユーザカテゴリへと放出された場合には潜在的な負の副作用を有することもあるので、ノーズプラグを通って流れる空気中に存在するあらゆる潜在的な感染因子に対する抗微生物効果を発揮させつつ、抗微生物物質の放出を回避できることが望ましい。
【0031】
抗微生物物質は、好ましくは、銀イオン含有組成物である。一態様では、抗微生物物質は、ガラスに封入された銀イオンを含む。他の態様では、抗微生物物質は、塩中に提供される銀イオンを流体として含むもの、および/またはセラミック内もしくは他の適切な担体内に封入されたものである。
【0032】
本開示によるノーズプラグにおける可撓性部材および任意選択手段としての支持部材の組み込みに適した材料の1つは、銀イオン含有組成物(例えばSanitized(登録商標)MB E99-58、Sanitized AG, Burgdorf, Switzerland)3部と熱弾性ポリマー97部とを混合して、約3%の抗微生物物質を含有する熱弾性ポリマーを提供することにより、調製可能である。別の適切な材料は、銀イオン含有組成物(例えばSanitized(登録商標)MB E99-58、Sanitized AG, Burgdorf, Switzerland)5部と熱弾性ポリマー95部とを混合して、約5%の抗微生物物質を含有する熱弾性ポリマーを提供することにより、調製可能である。このような物質組成物中の銀イオンは、好ましくはガラスに封入されている。幾つかの態様では、可撓性部材は熱可塑性エラストマーおよび抗微生物物質から作製可能であり、ここで、抗微生物物質は、可撓性部材中の材料全体の2%~10%の範囲の割合、またはより好ましくは3%~6%の範囲の割合を成す。幾つかの態様では、抗微生物物質は、可撓性部材内の材料の約3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%を成す。
【0033】
一態様では、抗微生物物質は可撓性部材の材料から放出可能である。当該態様は、抗微生物物質がユーザに放出されることが望まれる場合、例えば抗微生物物質が安全であって意図されるユーザの健康の点で有効である場合に特に関連する。
【0034】
一態様では、抗微生物物質はコーティング組成物に含まれており、少なくとも可撓性部材にコーティングされている。
【0035】
可撓性材料内に分散されるかまたは可撓性部材の表面上に配置される抗微生物物質は、抗ウイルス物質、抗細菌物質、または抗真菌物質、または他の任意の抗微生物物質であってよい。抗微生物物質には、銀イオン含有組成物が含まれる。このような組成物は多数のサプライヤから市販入手可能であり、例えばSanitized AG(Burgdorf, Switzerland)からSanitized(登録商標)BC A21-41、Sanitized(登録商標)BC A21-61、Sanitized(登録商標)BC A21-72、およびSanitized(登録商標)MB E99-58なる商品名で提供されている。抗微生物物質には、亜鉛イオン、銅イオンまたは鉄イオンなどの他の金属イオンを含有する組成物も含まれる。
【0036】
抗ウイルス活性を有する別の抗微生物物質には、アマンタジン(1-アダマンチルアミンまたは1-アミノアダマンタン)、リマンタジン、プレコナリル、過酸化水素、次亜塩素酸塩、銀イオン、第二銅イオンおよび第二鉄イオン、過酸、エタノール、C14~C16オレフィンスルホン酸ナトリウム中のパラクロロメタキシレノール、グルタルアルデヒド、第四級アンモニウム塩、クロルヘキシジンおよびグルコン酸クロルヘキシジン、硫酸クルドリン、グリセロール、アゾジカルボンアミド、シクロキソロンナトリウム、ジクロルイソシアヌル酸(ナトリウム塩)、ベンザルコニウム塩、二硫酸ベンズアミドおよびベンゾイソチアゾロン、コンゴレッド、アスコルビン酸、ノノキシノール-9、パラアミノ安息香酸、ビス(モノスクシンアミド)、p,p’-ビス(2-アミノエチル)ジフェニル-C60誘導体(フラーレン)、メロシアニン、ベンゾポルフィリン誘導-単酸環A、ローズベンガル、ヒペリシン、ヒポクレリンA、アントラキノン類(例えば、植物から抽出されたもの)、スルホン化アントラキノンおよびその他のアントラキノン誘導体、グラミシジン、ゴシポール、ニンニク(アリウム・サティウム)抽出物および/またはその成分、アホエン、ジアリルチオスルフィン酸塩(アリシン)、アリルメチルチオスルフィン酸塩、メチルアリルチオスルフィン酸塩、レジウム抽出物、マザーワート抽出物、セランジン抽出物、ブラックカラント抽出物、コアベリー抽出物、ビルベリー抽出物、チャデブグレ抽出物、ドクダミ(ドクダミ科)および/またはその成分からの蒸留物、5,6,7-トリメトキシフラボン(例えばムラサキシキブから得られる)、イソスクラレイン(5,7,8,4’-テトラヒドロキシフラボン)(例えばタツナミソウから得られる)およびイソスクテラレイン-8-メチルエーテル、アルカロイド、およびフィトステリルエステル化合物が含まれる。
【0037】
抗ウイルス物質が可撓性部材に組み込まれる場合、本開示によるノーズプラグは、吸気および/または呼気のウイルス負荷を低減するために有用でありうる。したがって、開示しているノーズプラグは、吸気および/または呼気のウイルス負荷を低減することにおいて、ならびにウイルス感染のリスクまたは重症化を防止もしくは低減するための方法において、有用でありうる。
【0038】
吸気中かつ/または呼気中で低減可能なウイルスの例として、エンテロウイルス;ライノウイルス;アデノウイルス;インフルエンザウイルスAおよびB;ノロウイルス;コロナウイルス(例えばSars-Cov-1、Sars-Cov-2、Mers-Cov、HCoV-229E);水痘;ロタウイルス;麻疹;ムンプス;天然痘が挙げられる。
【0039】
抗菌活性を有する別の抗微生物物質には、アンピシリンおよびその誘導体であるアモキシシリン;キノロン類、例えば、ロメフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、ガチフロキサシン、シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン、ゲミフロキサシン、シノキサシン、ナリジキシン酸、トロバフロキサシン、スパルフロキサシン;カナマイシンA、アミカシン、トブラマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシンB、CおよびネオマイシンE(パロモマイシン)を含むアミノグリコシド;セファロスポリン系;カルベペネム;マクロライド系、例えば、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、およびジリスロマイシン;テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ライメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、およびチゲサイクリン;クロラムフェニコール;チカルシリン;リファマイシン;ペニシリンG、ベンザチンペニシリンG、ペニシリンV、プロカインペニシリン、プロピシリン、フェネチシリン、アジドシリン、クロメトシリン、およびペナメシリン;クロキサシリン(ジクロキサシリン、フルクロキサシリン)、メチシリン、ナフシリン、オキサシリンおよびテモシリン;バンコマイシン、クリンダマイシン、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ピラジナミド、バシトラシン、ポリミキシン、スルホンアミド、グリコペプチドおよびニトロイミダゾールが含まれる。
【0040】
抗微生物物質が可撓性部材内に組み込まれている場合、本開示によるノーズプラグは、吸気および/または呼気の細菌負荷を低減するために有用でありうる。したがって、本開示によるノーズプラグは、吸気および/または呼気の細菌負荷を低減することにおいて、ならびに細菌感染のリスクまたは重症化を防止もしくは低減する方法において、有用でありうる。
【0041】
吸気中かつ/または呼気中で低減可能な細菌の例として、マイコバクテリウム属(結核菌、ウシ結核菌を含む);アシネトバクター菌;緑膿菌;腸内細菌;エンテロコッカス・ファエカリス;ヘリコバクター・ピロリ;カンピロバクター属;サルモネラ属;ナイセリア属;淋菌属;肺炎連鎖球菌;インフルエンザ菌;赤痢菌;黄色ブドウ球菌(MRSAを含む);肺炎球菌;炭疽菌;髄膜炎菌;レジオネラ属;クリプトコッカス属;百日咳菌が挙げられる。
【0042】
抗真菌活性を有する抗微生物物質には、アムホテリシン、ナイスタチン、ピマリシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ナフチフィン、テルビナフィン、アモロルフィン、および5-フルオロシトシンが含まれる。
【0043】
抗真菌物質が可撓性部材内に組み込まれている場合、本開示のノーズプラグは、吸気および/または呼気の真菌負荷を低減するために有用でありうる。したがって、本開示によるノーズプラグは、吸気および/または呼気の負荷を低減することにおいて、ならびに真菌感染のリスクまたは重症化を防止もしくは低減する方法において、有用でありうる。
【0044】
吸気中かつ/または呼気中で低減可能な真菌の例として、アスペルギルス・ニガー;ブラストミセス菌;カンジダ属が挙げられる。
【0045】
図1は、抗微生物物質を含む可撓性部材2のセットとこの可撓性部材を安定化させるように適合化された1つの剛性の細長い支持部材3とを含む、ノーズプラグ1を示している。ノーズプラグの当該態様では、可撓性部材2のセットが、支持部材を取り囲む平行なプレート4を含む。隣接するプレート間には、スペース5が存在している。さらに、プレートを通したこれらのスペース間の連通部が設けられている。ノーズプラグが鼻に配置されて可撓性プレートが鼻孔の開口を正確に充填すると、鼻孔に進入する空気は、ノーズプラグの通過に際して、まず最下方の第1のプレートに設けられた凹部7を通って進入する。次いで、空気流は、曲がりくねった状態でノーズプラグを通過し、最上方の最終プレートの凹部6を通って出る。呼気は反対方向に流れる。よって、空気が吸入されたときおよび呼出されたときの双方において、鼻孔にノーズプラグが配置されない場合よりも長い距離にわたって空気が流れ、双方向において抗微生物物質に曝される。
【0046】
ノーズプラグを通る経路全体を通って、空気は、抗微生物物質を含む可撓性部材と接触する。よって、当該空気中に含まれるあらゆる感染因子が抗微生物物質と接触し、不活性化されることになる。当該態様は、空気が通流するためのきわめて長い経路を示している。なぜなら、全ての第2の凹部は、隣接するプレートの凹部に対して横断方向直径上で反対の位置の周上にあるからである。第1のプレートの凹部7および最終プレートの凹部6およびこれらの間の全ての凹部が
図4に明示されており、すなわち、最下方の第1のプレートの凹部7と第1のプレートから数えて1つ置きの各プレートの凹部とが同じ参照番号を有し、最上方の最終プレートの凹部6と最終プレートから数えて1つ置きの第2のプレートとが同じ参照番号を有する。このことは(
図1~
図6の態様に図示されているように)プレートの数が偶数である場合に有効であり、そうでなくプレートの数が奇数である場合には、第1のプレートの凹部と最終プレートとが同じ参照番号を有する。
【0047】
図1~
図6に示されているノーズプラグの態様では、抗微生物物質を含む可撓性部材2のセットは、鼻孔に進入する空気の流れを蛇行状もしくはメアンダ状の経路において導通させるように適合化されている。このことは、ノーズプラグが鼻孔に配置されたときに達成される。空気流は、最下方のプレート4の凹部7を通ってノーズプラグ1に進入し、次いで、2つの隣接するプレート間のスペース5、すなわち第1のプレートと第2のプレートとの間のスペース5を通過して、横断方向直径での第1のプレートの反対側の端部に到達し、そこでさらに第2のプレートの凹部6を通って導通される。その後、空気流は、別の2つの隣接するプレート間のスペース、すなわち第2のプレートと第3のプレートとの間のスペースを通過して、横断方向直径での第2のプレートの反対側の端部に到達し、そこでさらに第3のプレートの凹部7を通って導通される。以降も同様に続いて、空気流が2つの最上方のプレート間を通過し、最終プレートの凹部6を通って鼻孔へと出る。
【0048】
図1~
図4に示されている態様ではプレートの数は6個であり、
図5および
図6ではプレートの数は8個である。プレートの数は、7個、9個または10個などの別の個数であってもよい。プレートの数は、好ましくは4~12個の範囲である。
【0049】
図2には、
図1の態様のノーズプラグが上方から示されている。見て取れるように、プレート4は楕円形状を有している。最上方の最終プレートが(横断方向直径および共役直径で)最小であり、中央部のプレート、すなわち番号4および/または番号5のプレートが最大のプレートである。第1のプレートは最終プレートよりも幾分大きい。第1のプレートから見て、第4のプレートまたは第5のプレートまでそれぞれ次に隣接するプレートが幾分大きな直径を有し、その後、それぞれ幾分小さな直径を有する。すなわち、第1のプレートから第4のプレートまたは第5のプレートまで横断方向直径および共役直径がプレートごとに増大し、第4のプレートまたは第5のプレートから最終プレートまで横断方向直径および共役直径がプレートごとに減少する。隣接する各プレートでの増大または減少は線形であってもよいが、不規則に進行してもよい。
【0050】
図2には、A-A線およびB-B線が示されている。A-A線はプレートの共役直径と一致し、B-B線はプレートの横断方向直径と一致する。
【0051】
可撓性部材2は抗微生物物質を含む。抗微生物物質は、可撓性部材2を成す材料内に均一に分散するように組み込むことができる。抗微生物物質は、当該技術分野で知られているように、可撓性部材2にコーティングすることも可能である。
【0052】
可撓性部材2は、好ましくは熱可塑性エラストマーまたは他の適切なポリマーから作製されており、任意の適切な製造技術を使用して、熱可塑性エラストマーの全体に抗微生物物質が均一に分散されている。一態様では、抗微生物物質は、添加剤マスターバッチ法を使用することにより、熱可塑性エラストマー内または他の適切な可撓性材料内へ導入することができる。これに加えてまたはこれに代えて、抗微生物物質を可撓性部材に、また幾つかの態様では支持部材にも、適切な溶液中の抗微生物物質でコーティングすることによって、または熱可塑性エラストマー内もしくは他の適切な材料内に分散させることによって、導入することもできる。したがって、可撓性部材2は、抗微生物物質が表面にコーティングされた熱可塑性エラストマーから作製されていてもよい。
【0053】
他の可撓性材料も可撓性部材および/または支持部材において使用可能である。支持部材は好ましくは熱可塑性ポリマーから作製される。他の硬質もしくは剛性の材料を使用することも可能である。幾つかの態様では、支持部材および/または可撓性部材はさらに、ノーズプラグの部分の可撓性が減少可能となるように、かつ/または支持部材が所定の形状へと押圧されて個々の鼻もしくは鼻孔に良好に適合可能となるように、1つもしくは複数の補強部材、例えばより剛性の材料および/または成形可能な材料から成る内部コアを有していてもよい。
【0054】
図3には、A-A線に沿った断面図が示されている。この図では、支持部材3の各端部に可撓性部材2のセットが一体成形されており、可撓性部材2が支持部材3の端部を取り囲んでいる。支持部材3は略U字状を有しており、その両端部に可撓性部材2が1セットずつ取り付けられている。両端部間に延在する支持部材3は、取り扱いを容易にするために屈曲形状を有している。
【0055】
図4には、B-B線に沿った断面図が示されている。ここでの断面線は、プレート4の横断方向直径と一致している。したがって、1つ置きの一方のプレートの凹部6が一方側に示されており、1つ置きの他方のプレートの凹部7が他方側に示されている。
【0056】
図5から見て取れるように、全体としてU字状の支持部材3の2つの脚部は、相互に対して僅かに傾斜していてもよく、かつ/または角度を有していてもよい。これは、鼻孔の延在状態および配置状態に対するノーズプラグの適応を容易にする。鼻孔を必要以上に広げることなく、鼻内にプラグを適切に配置すべきだからである。
【0057】
本開示によるノーズプラグは、2つの材料を一緒に成形する2K技術を用いた成形によって製造可能である。したがって、まず、支持部材を1つの材料で成形し、その後、同じもしくは異なる材料を使用して、可撓性部材を直接に支持部材上に成形することができる。このことは
図5~
図7に示されている。ノーズプラグの製造方法は、押出成形、射出成形、鋳造、圧縮成形、トランスファモールド成形などの他の技術、または使用される材料に適した他の任意の技術を含むことができる。幾つかの態様では、ノーズプラグ全体を製造するために唯一の材料のみを使用することができ、すなわち、可撓性部材と支持部材とに同じ材料を使用することができる。次いで、抗微生物物質がノーズプラグ全体に分散される。なお、本開示によりノーズプラグに設けられる可撓性部材および支持部材を、同じ材料または2つの異なる材料を用いて別個に成形し、その後2つの部品を一緒に組み立てることによって製造してもよい。この場合、抗微生物物質の含有量は、ノーズプラグの種々の部分に適合させることができる。
【0058】
ノーズプラグの可撓性部材および/または支持部材を製造するための材料の抗ウイルス特性は、ISO21702などの標準的な方法に従って評価可能である。好ましくは、1エンベロープ一本鎖陽方向鎖RNAウイルス(例えばHCov-229E)および1非エンベロープ二本鎖DNAウイルス(例えばアデノウイルス5型)などの少なくとも2つの異なる種類のウイルスに対して、特性が評価される。このような試験およびその結果の例については、以下の実施例1に示されている。
【0059】
ノーズプラグの可撓性部材および/または支持部材を製造するための材料の抗菌特性は、ISO 22196などの標準的な方法に従って評価可能である。好ましくは、大腸菌(ATCC8739)および黄色ブドウ球菌(ATCC6538P)などの少なくとも2つの異なる種類の細菌に対して、特性が評価される。このような試験およびその結果の例については、以下の実施例2に示されている。
【0060】
本明細書に開示しているように抗微生物物質を内部に組み込んで構成されたノーズプラグの抗微生物特性の例は、抗微生物物質を内部に組み込んだノーズプラグを通過する空気中のウイルス負荷および細菌負荷のそれぞれの顕著な減少を示す実施例3および実施例4に記載されている。
【0061】
開示している実施例は、空気流の阻害を引き起こすことなく長い経路を通って導かれる空気と、ノーズプラグの材料ひいてはここでの経路の全表面に沿って組み込まれた抗微生物物質との組み合わせが、感染のリスクおよび/または他の人々へ感染を拡げるリスクを低減するためにきわめて効果的であって、快適でありかつ使いやすいノーズプラグをもたらすという結論を支持している。より具体的には、前述したように、ノーズプラグの可撓性部材の配置は、ユーザの呼吸しやすさを維持しながら、ノーズプラグが使用されない場合の鼻孔におけるよりも長い経路を通して空気を導くことを可能にする。可撓性部材の配置と材料に組み込まれる抗微生物物質とを組み合わせることにより、吸気および呼気の微生物負荷の顕著な低減効果が達成される。
【0062】
開示している例は、さらに長時間効果をも示しており、本明細書に開示しているノーズプラグが少なくとも8時間にわたってユーザに装着され、依然として吸気および呼気の微生物負荷を低減する高い有効性を維持することが結論付けられている。ノーズプラグの設計により、吸気および呼気の両方が同等の抗微生物低減効果を受けることに留意されたい。
【0063】
図6には、支持部材上に配置された1つの可撓性部材を有する各ノーズプラグが1つずつの鼻孔に別個に配置されるように適合化された態様が示されている。
【0064】
図7には、螺旋状に配置されたバンドを含む可撓性部材を備えた態様が斜視図で示されている。当該螺旋状構造は、鼻孔に進入する空気に対し、延長された経路を提供する。経路の距離は、バンドの螺旋状翼のピッチ角によって変化しうる。螺旋状に配置されたバンドに凹部が設けられていてもよい。ただし、空気は凹部がなくとも進入可能であるので、これは必須の特徴ではない。
【0065】
図8には、
図7の態様を上方から見た図が示されている。
図7および
図8に示されている螺旋状に配置されたバンドは、鼻孔に進入する空気の流れを螺旋状の経路において導通させるように適合化された可撓性部材を示している。
【0066】
なお、上述した各態様は単に例として示したにすぎず、本発明を限定するためのものではない。添付の特許請求の範囲において請求されている本発明の範囲内の他の解決手段、使用、目的および機能は当業者に明らかなはずである。
【0067】
実施例1
ノーズプラグの可撓性部材および支持部材を製造するための材料の抗ウイルス性をISO21702の標準方法に従って評価した。
【0068】
銀イオン含有組成物(Sanitized(登録商標)MB E99-58、Sanitized AG, Burgdorf, Switzerland)3部と熱弾性ポリマー97部とを含む試験材料表面上に、4つの異なるウイルス株を接種した。不活性表面(ステンレス鋼)を使用した試験材料表面の抗ウイルス活性を、ISO21702(2019)の適合化プロトコルにより定義された条件下で、8時間の接触時間にわたって試験した。実験条件(25℃、8時間、80%相対湿度)下で、試験材料表面は、次の表1にまとめる対数減少率およびウイルス減少率に関連する1cm2当たりの抗ウイルス活性を示した。
【0069】
【0070】
実施例2
ノーズプラグの可撓性部材および支持部材を製造するための材料の抗菌特性をISO22916の標準方法に従って評価した。
【0071】
銀イオン含有組成物(Sanitized(登録商標)MB E99-58、Sanitized AG, Burgdorf, Switzerland)5部と熱弾性ポリマー95部とを含む試験材料表面上に、5つの異なるウイルス株を接種した。試験材料表面の抗細菌活性を、ISO22196(2011)の適合化プロトコルにより定義された条件下で、8時間の接触時間にわたって試験した。実験条件下(25℃、8時間、80%相対湿度)で、試験材料表面は、次の表2にまとめる抗細菌活性および抗ウイルス減少率を示した。
【0072】
【0073】
実施例3
抗微生物物質を内部に組み込んで本明細書に開示しているように構成したノーズプラグの抗ウイルス特性を評価したところ、抗微生物物質を内部に組み込んだノーズプラグを通過する空気中のウイルス負荷の顕著な減少が示された。
【0074】
試験品を、本明細書に開示している
図1~
図3に示した態様によるノーズプラグとして、ただし各可撓性部材に7個の平行なプレートが設けられるように、銀イオン含有組成物(Sanitized(登録商標)MB E99-58、Sanitized AG, Burgdorf, Switzerland)5部と熱弾性ポリマー95部とを含む材料を使用した射出成形によって成形した。
【0075】
シミュレートされた鼻孔に試験品を取り付けることにより、鼻孔内に設けられたノーズプラグを用いて鼻孔での空気の吸入を模倣しつつ、ノーズプラグに空気を適用することができる。
【0076】
試験手順を実施して、向上した負荷レベルで5個の試験品のウイルス濾過効率(VFE)を評価した。本明細書における「濾過」なる用語は、空気流からの感染因子の除去を意味することに留意されたい。ΦΧ174バクテリオファージ(大腸菌に感染した一本鎖DNA(ssDNA)ウイルス)の懸濁液を、106プラーク形成単位(PFU)超の負荷レベルで試験品へ送達させ、濾過効率を決定した。当該負荷は、ネブライザを使用してエアロゾル化され、固定の空気圧かつ10リットル毎分(LPM)の流量で試験品へ送達された。エアロゾル液滴は、ガラスエアロゾルチャンバ内で生成され、試験品を通して収集のための全ガラスインピンジャ(AGI)内へ引き込まれた。1分間隔で負荷を行い、AGIによるサンプリングを2分間にわたり行って、エアロゾルチャンバを空けた。平均粒度(MPS)制御を、収集のための6段階生粒子アンダーセンサンプラを用いて、28.3LPMの流量で行った。AGIアッセイ液の力価を、標準プラークアッセイ技術を使用して決定した。
【0077】
濾過効率の割合を、次の式、すなわち、
%VFE=(C-T)/C×100
を使用して計算した。ここで、Cは負荷レベルであり、Tは試験品の下流で回収された総PFUである。本明細書の「濾過」なる用語は空気流からの感染因子の除去を意味することに留意されたい。結果を次の表3に示す。
【0078】
【0079】
実施例4
抗微生物物質を内部に組み込んで本明細書に開示しているように構成したノーズプラグの抗細菌特性を評価したところ、抗微生物物質を内部に組み込んだノーズプラグを通過する空気中の細菌負荷の顕著な減少が示された。
【0080】
試験品を、本明細書に開示している
図1~
図3に示した態様によるノーズプラグとして、ただし各可撓性部材に7個の平行なプレートが設けられるように、銀イオン含有組成物(Sanitized(登録商標)MB E99-58、Sanitized AG, Burgdorf, Switzerland)5部と熱弾性ポリマー95部とを含む材料を使用した射出成形によって成形した。
【0081】
シミュレートされた鼻孔に試験品を取り付けることにより、鼻孔内に設けられたノーズプラグを用いて鼻孔での空気の吸入を模倣しつつ、ノーズプラグに空気を適用することができる。
【0082】
試験手順を実施して、向上した負荷レベルで5個の試験品の細菌濾過効率(BFE)を評価した。黄色ブドウ球菌ATCC#6538の懸濁液を、106コロニー形成単位(CFU)超の負荷レベルで試験品へ送達させた。当該負荷は、ネブライザを使用してエアロゾル化され、固定の空気圧かつ10リットル毎分(LPM)の流量で試験品へ送達された。エアロゾル液滴は、ガラスエアロゾルチャンバ内で生成され、試験品を通して収集のための全ガラスインピンジャ(AGI)内へ引き込まれた。1分間隔で負荷を行い、AGIによるサンプリングを2分間にわたり行って、エアロゾルチャンバを空けた。平均粒度(MPS)制御を、収集のための6段階生粒子アンダーセンサンプラを用いて、28.3LPMの流量で行った。AGIアッセイ液の力価を、標準拡散プレートおよび/またはメンブレイン濾過技術を使用して決定した。
【0083】
濾過効率の割合を、次の式、すなわち、
%BFE=(C-T)/C×100
を使用して計算した。ここで、Cは負荷レベルであり、Tは試験品の下流で回収された総PFUである。本明細書における「濾過」なる用語は空気流からの感染因子の除去を意味することに留意されたい。結果を次の表4に示す。
【0084】
【手続補正書】
【提出日】2022-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノーズプラグ(1)であって、
少なくとも1つの可撓性部材(2)と、
1つの剛性の細長い支持部材(3)と
を含み、
前記可撓性部材は、前記支持部材を取り囲むように配置されており、
前記可撓性部材は、鼻孔内に配置されて鼻孔の開口を正確に充填するように適合化されており、鼻孔に進入する空気の流れを複数のプレートまたはバンドにより蛇行状もしくは螺旋状の経路において導通させる手段が設けられている、
ノーズプラグ(1)において、
前記可撓性部材は、
その材料内またはその表面上に持続的に固定化された抗微生物物質を含
み、
前記抗微生物物質は、前記ノーズプラグの蛇行状もしくは螺旋状の経路を通過する空気の流れにおける生きた微生物の数を大幅に低減するように適合化されており、
前記抗微生物物質は、銀イオン、亜鉛イオン、銅イオンおよび/または鉄イオンから選択される金属イオンを含む
ことを特徴とする、ノーズプラグ(1)。
【請求項2】
可撓性部材のセットが、前記支持部材に沿って配置された複数の平行なプレート(4)を含み、各プレートは、前記支持部材の延在状態に対して垂直な方向に延在している、請求項
1記載のノーズプラグ。
【請求項3】
前記プレートは、鼻孔の内部の形状に前記ノーズプラグを適合させるために、それぞれ異なるサイズの周を有する、請求項
2記載のノーズプラグ。
【請求項4】
各プレートは周に1つずつの凹部(6,7)を有し、該凹部は、先行のもしくは後続のプレートにおける凹部と重ならないように配置されている、請求項
2または
3記載のノーズプラグ。
【請求項5】
凹部の第1のセット(7)は、1つ置きの各プレートの横断方向直径の一方の端部の周の位置に配置されており、
凹部の第2のセット(6)は、中間の各プレートの横断方向直径の他方の端部の周に配置されている、
請求項
2から
4までのいずれか1項記載のノーズプラグ。
【請求項6】
前記可撓性部材は、前記支持部材の周囲に螺旋状の構造を形成する螺旋状に配置されたバンドを含む、請求項
1記載のノーズプラグ。
【請求項7】
前記抗微生物物質は銀イオンを含む、請求項1から
6までのいずれか1項記載のノーズプラグ。
【請求項8】
前記銀イオンはガラスに封入されている、請求項
7記載のノーズプラグ。
【請求項9】
前記可撓性部材は熱可塑性エラストマーから作製されており、前記抗微生物物質は前記熱可塑性エラストマー内に均一に分散されている、請求項1から
8までのいずれか1項記載のノーズプラグ。
【請求項10】
前記可撓性部材は、熱可塑性エラストマーから作製されており、前記抗微生物物質は、前記可撓性部材内の材料全体の2%~10%の範囲の割合を成している、請求項1から
9までのいずれか1項記載のノーズプラグ。
【請求項11】
前記可撓性部材は、前記抗微生物物質を含むコーティングでコーティングされている、請求項1から
10までのいずれか1項記載のノーズプラグ。
【国際調査報告】