(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】出血を検出する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240116BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N21/78 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537561
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 IB2021061520
(87)【国際公開番号】W WO2022137002
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】デアングリス・アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】ゴドベイン・サリム・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ダーナラジ・スリデビ
(72)【発明者】
【氏名】エイトケン・ブライアン
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045CA25
2G045DA41
2G045FB12
2G045FB13
(57)【要約】
外科処置中の出血を検出するためのデバイス及びその使用が開示される。また、外科処置中に出血部位を位置特定する方法、及び外科処置中に出血の強度を評価する方法も開示される。出血の検出は、とりわけ、出血部位におけるトロンビン活性の存在に基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科処置における出血を検出するためのデバイス(1)であって、
-遠位端(3、101)及び近位端(4)を有するハウジング(2)であって、前記遠位端(3、101)が、対象の潜在的出血部位内の血液に接触するように構成されている、ハウジング(2)と、
-前記ハウジングの前記近位端(4)と前記遠位端(3、101)との間に画定された領域(7)内に収容されたマトリックス(6)であって、前記マトリックスの少なくとも一部が、発色性又は蛍光性のトロンビン基質を含み、前記マトリックスが、前記血液中に存在する液体を前記基質まで吸着することができ、トロンビンが、前記液体中に存在する場合に、前記基質と反応して、可視的蛍光性又は発色性シグナル(8)を生成することを可能にする、マトリックス(6)と、
-前記ハウジング内に配置されており、かつ前記シグナルを視覚化するように構成されている、検出領域(9)と、を備える、デバイス(1)。
【請求項2】
前記遠位端(3、101)が、開口部(5)を有する、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ、例えば手術野において出血を位置特定するため及び/又は出血の強度を判定するための方法及びデバイス、並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血管の組織の外傷及び損傷は、出血をもたらす。出血に対する生理学的応答は、血管内皮細胞、血小板及び凝固タンパク質を含む。血管損傷後の一時的な血管収縮の後、血小板が血管破壊部位に蓄積し始める。血小板結合の後に、血小板活性化が続き、これにより更なる血小板が血管損傷部位に更に動員されて、血小板血栓を形成する。活性化された血小板は、凝固因子の局在化のための理想的な表面を提供することによって、活性凝固酵素の生成を助ける。このプロセスは一般に「凝固カスケード」と呼ばれ、不活性チモーゲンであるプロトロンビンの、可溶性フィブリノーゲンの不溶性フィブリン塊への変換に関与する活性酵素であるトロンビンへの変換をもたらす。
【0003】
生理学的条件下で、トロンビンは、組織外傷及び血管損傷後に生成される。生成されるトロンビンの量は、多くの因子に依存するが、主に、血管損傷部位で曝露される組織因子の量によって決定される。トロンビンの生成及びフィブリン塊の形成後、凝固反応は、プロテインC系によって下方制御され、トロンビン活性は、内因性抗凝固剤、例えば、抗トロンビンIIIによって低減される。更に、トロンビンは、フィブリンポリマー上への吸収によって不活性化され、溶液相におけるその活性が制限される。
【0004】
病変組織を有する患者、肥満患者、又は変形した解剖学的構(例えば、再置換手術)を有する患者では、術野における可視化は困難であり得る。専門領域又は外科処置にかかわらず、術野内の構造を可視化及び保護することができることが基本的要件である。しかしながら、前立腺切除術、高度な結腸切除術(脾湾曲部)、広汎性子宮全摘出術、腎摘除術、並びに神経路に近い脊髄手術及び頭蓋手術など、可視化が特に問題となるいくつかの手技がある。
【0005】
出血及び失血は、患者の医学的状態を著しく悪化させる。出血の迅速な検出が重要であり、出血の適切な制御が必須である。
【0006】
更に、特に腹腔鏡/内視鏡処置中に出血の存在及び位置を識別することは、外科医にとって困難であり得る。低侵襲手術(Minimally Invasive Surgery、MIS)処置中にビデオスクリーン上で処置を見ているとしても、術野に見られる血液が、例えば、滲出しているか、又はすでに凝固しているかを区別する外科医の能力は低減される。
【0007】
現在、潜在的な出血を識別するために、外科医は、術野を注意深く視覚的に検査して、出血部位を識別及び位置特定しなければならない。この注意深い検査は、手術室での処置時間を延長し、かつ、MIS中は、視野が限られていることと、スコープを検査領域の内外に移動させることによってスコープを清潔に保つ必要があることとによって、処置が複雑化される。外科医が出血部位を誤って識別した場合、外科医は、不必要な止血剤を適用する場合があったり、逆に、出血部位を処置せずに、失血及び関連する負の結果をもたらす場合がある。
【0008】
したがって、上記の問題の少なくとも1つに対処するために、出血の存在を検出するためのインビボの方法が必要とされている。
【0009】
以下は、インビボロサンプル(例えば、血液試料)におけるトロンビン活性を判定するための発色基質又は蛍光基質を開示する背景刊行物である。
【0010】
米国特許第8,916,356(B2)号;Chromogenic Substrates in Coagulation and Fibrinolytic Assays,Andrei Z.Budzynski.Laboratory Medicine,July 2001,Number 7,Volume 32;and Product Brochure for S-2238 chromogenic substrate for thrombin,Chromogenix,Instrumentation Laboratory。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
多くの場合、例えば低侵襲手術(MIS)において、術野における出血を可視化するのは困難である。しばしば、外科医は、出血を可視化しようとして長い時間を費やすことがあり、このため処置時間が長くなる。多くの場合、不適切な可視化の結果は、機械的外傷、構造の誤った識別による大出血、及びこれらの誤って識別された解剖学的構造の切開を含む。
【0012】
一態様において、本発明は、例えばMISにおいて、術野内の出血部位を位置特定するための方法に関する。
【0013】
本発明の一態様では、トロンビン活性の判定は、外科処置において出血部位を位置特定するための方法において使用される。
【0014】
対象における外科処置中の出血部位を位置特定する方法であって、i)対象の体内の潜在的出血部位の中又は上にトロンビンの発色基質又は蛍光基質を導入すること、及びii)色シグナル又は蛍光シグナルを検出すること、を含み、それによって当該対象における出血部位を位置特定する、方法、が開示される。
【0015】
別の態様において、本発明は、例えばMISにおける外科処置中の対象における出血の強度及び/又は重症度を判定するための方法に関する。
【0016】
外科処置中の対象における出血の強度及び/又は重症度は、トロンビン活性のレベルを評価することによって判定され得る。
【0017】
対象における外科処置中の出血の強度を判定することを可能にする方法であって、対象の体内の潜在的出血部位の中又は上にトロンビンの発色基質又は蛍光基質を導入すること、及び色シグナル又は蛍光シグナルの存在及び強度を判定すること、を含み、それによって、出血の存在及び強度を判定する、方法、が開示される。
【0018】
対象の体内の潜在的出血部位の中又は上にトロンビンの発色基質又は蛍光基質を導入することは、例えば噴霧、滴下を含むがこれらに限定されない技術によって、潜在的出血部位の表面上に基質を適用することによって行われ得る。対象の体内の潜在的出血部位の中又は上にトロンビンの発色基質又は蛍光基質を導入する他の技術は、基質の静脈内注射(IV投与と略される)によって、又は他の全身経路によって行われ得る。
【0019】
局所投与は、身体の局所領域又は身体部分の表面への適用に関する。
【0020】
IV投与は、流体を患者の静脈に直接送達する医療技術である。
【0021】
静脈内(Intravenous、IV)アクセスは、身体全体に迅速に分配されなければならない流体を投与するために使用される。発色基質又は蛍光基質を、生理食塩水又はデキストロース溶液などの流体に混合し得る。IV経路は、身体全体に流体を送達する迅速な方法である。この理由のために、IV経路は、緊急の状況において、又は作用の迅速な発現が望ましい場合に一般に好ましい。血中の薬剤濃度をより迅速に増加させるために、発色基質又は蛍光基質の負荷用量又はボーラス投与量が与えられ得る。発色基質又は蛍光基質のボーラス投与量(又は「IVプッシュ」)は、一次チューブのアクセスポートに接続された、発色基質又は蛍光基質を含有するシリンジによって適用され得、発色基質又は蛍光基質はポートを通して投与される。ボーラスは、急速に投与され得る(シリンジプランジャの急速な押し下げによって)か、又は数分間にわたってゆっくりと投与され得る。場合によっては、当該ボーラスの直後に単純なIV流体(すなわち、発色基質又は蛍光基質が添加されていない)のボーラスを投与して、発色基質又は蛍光基質を血流中に更に押し込む。この手順は、「IVフラッシュ」と呼ばれる。
【0022】
発色基質又は蛍光基質の注入は、基質の血中濃度が経時的に一定であることが望ましい場合に使用され得る。
【0023】
手術中、出血が止まったことを確実にするための安全対策として、発色基質又は蛍光基質の静脈内投与が使用され得る。
【0024】
組織(例えば、皮膚組織、任意選択的に、可視化は皮膚を通して可視化され得る)下の活動性の出血を識別する方法は、例えば、発色基質又は蛍光基質の静脈内投与によるものである。
【0025】
例えば、手術後に「開く」可能性がある血腫(血餅の下に位置する)において出血が生じている可能性がある場合、発色基質又は蛍光基質の静脈内投与は、組織の下の出血を検出する可能性を可能にし得る。静脈内に適用される場合、蛍光基質又は発色基質は、残りの血液と共に血管から漏出し得、出血部位で生成されたトロンビンと反応し得る。
【0026】
典型的には、しかし排他的ではなく、蛍光発生物質は、その感度及びより低い干渉を考慮してIV投与で使用され得る。
【0027】
代替的に、蛍光基質又は発色基質は、他の手段によって、例えば、中心動脈ラインによって血管に導入され得る。
【0028】
典型的には、血腫は、例えば、負傷又は手術を含む外傷に起因する、血管の外側の限局性出血であり、破損した毛細血管から血液が滲出し続けることを伴い得る。
【0029】
当該発色基質若しくは蛍光基質は、(i)多孔性マトリックス若しくは膜上に固定化され得るか、又は(ii)潜在的出血部位に直接噴霧され得る。
【0030】
マトリックスは多孔性であり得、かつ流体を吸収し得る。マトリックスは、手術野からのトロンビンを潜在的に含有する流体を吸収し得る。
【0031】
膜は、細胞から流体を、例えば、細胞から血漿を、血液細胞から血漿を、及び/又は血液細胞/全血から血漿を分離することができるマトリックスであり得る。このような膜は、血液細胞から血漿を分離する必要がある場合に使用され得る。膜は、液体血漿を通過させるが、細胞(例えば、大きな細胞)を濾過する。例示的な膜は、例えば、血液透析中に使用するための半透膜である。
【0032】
有利なことに、本明細書に開示される方法は、外科医が出血の重症度を判定し、例えば、重症度に従って、出血のタイプ(例えば滲出性/軽度出血、又は重度/困難な出血)に適切な止血剤を選択することを可能にする。
【0033】
吸着、コーティング、又は含浸された発色性又は蛍光性のトロンビン基質を含むマトリックス又は膜を使用して、外科医が外科処置を積極的に実施している組織又はそれに隣接する領域の一部又は全部を覆うことができる。マトリックスの部位に現れる色又は蛍光シグナルの変化は、出血部位を示す。
【0034】
更に、対象における外科処置中の出血部位を位置特定する方法であって、
i)吸収性マトリックスを潜在的出血部位と接触させること、
ii)潜在的出血部位からマトリックスを除去することと、
iii)除去したマトリックスを、トロンビンの発色基質又は蛍光基質を含む検出溶液中又はその上に配置して、溶液中の色又は蛍光の出現を検出すること、を含み、それによって、対象における出血部位を位置特定する、方法、が開示される。
【0035】
別の態様では、開示されるのは、対象における外科処置中の出血の強度を判定するための方法であって、
i)吸収性マトリックスを潜在的出血部位又は出血部位と接触させること、
ii)潜在的出血部位からマトリックスを除去することと、
iii)除去したマトリックスを、トロンビンの発色基質又は蛍光基質を含む検出溶液中又はその上に配置し、色シグナル又は蛍光シグナルの強度を判定することと、を含み、それによって、出血の強度を判定する、方法、が開示される。
【0036】
また、外科処置中に対象における出血部位を位置特定する及び/又は出血の強度を判定するためのデバイスであって、デバイスは、トロンビンの発色基質又は蛍光基質を含む吸収性マトリックスを含み、典型的には、マトリックスが赤血球に対して不透過性である、デバイス、が開示される。デバイスは、外科処置中及び潜在的出血部位で使用され得る。
【0037】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。本明細書に記載されているものと同様又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実行又は試験に使用することが可能であるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾のある場合、定義を含め本特許明細書が適用される。なお、材料、方法、及び実施例は、単に例解的なものであり、必ずしも限定を意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
ここで、本発明のいくつかの実施形態について、例示のみを目的として、添付図面を参照して本明細書において説明する。ここで図面を詳細に具体的に参照すると、示される詳細は、例としてのものであり、本発明の実施形態の例解的な考察を目的としていることが強調される。この点に関し、図面を用いた説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【0039】
図面のうち:
【
図1】マトリックスの両側にトロンビンを噴霧した後の、発色基質でコーティングされた(左)又は発色基質が存在しない(右)セルロースマトリックス中のトロンビン活性を示す写真画像である。
【
図2】出血が疑われる組織表面(左)上にたたくように当てられた後に発色基質を含む溶液に導入されたディップスティックを使用した、発色基質に対するトロンビン活性を示す写真画像である。ディップスティック中に存在するトロンビンの量は、既知のトロンビン濃度で同様の試験を行うことによって得られる標準曲線と比較することによって定量化することができる(右)。
【
図3A】発色剤を含むトロンボプラスチン試薬によって活性化された血漿(右)における発色基質生成物の検出と、これと対比した、発色剤の代わりに生理食塩水を含む血漿(左)における発色基質生成物の検出とを示す写真画像である。
【
図3B】外科処置における出血を検出するためのデバイスを示す図である。
【
図3C】外科処置における出血を検出するためのデバイスを示す図である。
【
図4A】トロンビンによる切断後に観察された基質の蛍光を示す写真画像である。基質を添加してから約3分後の、真上からの周囲照明のみを用いたチューブ画像である。Sigma基質(Sigma-Aldrich、トロンビン基質III、Fluorogenic-Calbiochem、カタログ番号:605211)を左側に示し、Haematologic Technologies(Haematologic Technologies、HTI)基質(トロンビンのための蛍光基質(ANSN蛍光基質)、カタログ番号:SN-20)を右側に示す。トロンビン活性レベルは、100、10、及び0IU/mLである。溶液は透明であり、いずれのチューブにおいても色の変化は観察されなかった。
【
図4B】トロンビンによる切断後に観察された基質の蛍光を示す写真画像である。基質を添加してから約3分後の、真上からの周囲照明及び365nmフラッシュライト用いたチューブ画像である。Sigma基質は左側、HTI基質は右側である。トロンビン活性レベルは、100、10、及び0IU/mLである。蛍光を示す唯一の溶液は、100IU/mLトロンビンを含むSigma基質であった。
【
図4C】トロンビンによる切断後に観察された基質の蛍光を示す写真画像である。基質を添加してから約60分後の、365nmフラッシュライトのみ用いた(真上からの周囲照明をオフにした)チューブ画像である。Sigma基質は左側、HTI基質は右側である。トロンビン活性レベルは、100、10、及び0IU/mLである。蛍光を示す唯一の溶液は、100IU/mLトロンビンを含むSigma基質であった。
【
図4D】トロンビンによる切断後に観察された基質の蛍光を示す写真画像である。100IU/mLトロンビンと基質とを組み合わせてから約5分後のチューブ画像である。画像は、真上からの周囲照明及び365nmのフラッシュライトの下で撮影した。左側のチューブはSigma基質であり、中央のチューブはTBSで希釈したHTI基質であり、右側のチューブはDMSOで濃縮したHTI基質である。
【
図4E】トロンビンによる切断後に観察された基質の蛍光を示す写真画像である。100IU/mLトロンビンと基質とを組み合わせてから約5分後のチューブ画像である。画像は、365nmのフラッシュライトのみを使用して撮影された(真上からの周囲照明なし)。Sigma基質は、これらの照明条件下で最も強い蛍光シグナルを有した(左、相対ランク+++)。蛍光シグナルは、TBSで希釈したHTI基質で最も低かった(中央、相対的ランク+)。シグナルは、他のHTI基質試料についてより大きかった(DMSOで濃縮したHTI基質、相対ランク++)。
【
図5A】トロンビンによる切断後に観察された基質の蛍光を示す写真画像である。真上からの周囲照明のみを用いた、PNP、基質、及びPT試薬(組織因子及びカルシウム)を組み合わせてから5分後のチューブ画像を示す写真画像である。組織因子は、生理学的凝固応答の主要な活性化因子である。組織因子はPT試薬/トロンボプラスチン中に存在する。HTI基質は左、Sigma基質は中央、対照(基質なし)は右である。液体は血漿の色を示し、周囲照明下でいずれのチューブにおいても色の変化は観察されなかった。
【
図5B】トロンビンによる切断後に観察された基質の蛍光を示す写真画像である。真上からの周囲照明のみを用いた、PNP、基質、及びPT試薬(組織因子及びカルシウム)を組み合わせてから5分後のチューブ画像を示す写真画像である。チューブは、チューブ内の血漿が凝固した(したがってトロンビンが生成された)ことを示す角度で保持されている。液体は血漿の色であり、周囲照明下でいずれのチューブにおいても色の変化は観察されなかった。
【
図5C】トロンビンによる切断後に観察された基質の蛍光を示す写真画像である。真上からの周囲照明及び365nmフラッシュライトを用いた、PNP、基質、及びPT試薬(組織因子及びカルシウム)を組み合わせてから約5分後のチューブ画像である。HTI基質は左、Sigma基質は中央、対照(基質なし)は右である。強い蛍光を示す唯一の血漿は、これらの照明条件下でSigma基質であった。
【
図5D】トロンビンによる切断後に観察された基質の蛍光を示す写真画像である。365nmフラッシュライトのみを用いた(真上からの周囲照明なし)、PNP、基質、及びPT試薬(組織因子及びカルシウム)を組み合わせてから約5分後のチューブ画像である。HTI基質は左、Sigma基質は中央、対照(基質なし)は右である。血漿中のSigma基質は強い蛍光シグナルを示したが、これらの照明条件下では、HTI血漿チューブではわずかな蛍光シグナルが観察された。
【
図6A】インビボで観察された蛍光を示す写真画像である。擦過傷を形成する前の肝臓の画像である。
【
図6B】インビボで観察された蛍光を示す写真画像である。肝臓に形成された広汎/滲出出血を伴う擦過欠損を示す図である。
【
図6C】インビボで観察された蛍光を示す写真画像である。滲出を伴う欠損上の蛍光の小さなスペックルを示す図である。蛍光「スポット」の周囲に血液を見ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、とりわけ、例えばMISにおいて、術野内の出血部位を検出及び位置特定するための方法に関する。インビボでのトロンビン活性の存在は出血を示し得ることが認識されている。本発明は、インビボでのトロンビン活性を検出及び/又は測定するために発色基質又は蛍光基質を使用する。
【0041】
外科処置後に出血が検出されないことは、医学界にとっての懸念事項である。潜在的出血部位の例としては、血管がアクセスのために(例えば外科的創傷により)破裂した領域、又は外傷による領域が挙げられる。潜在的出血部位の例としては、外科医が積極的に外科処置を行っている領域又はそれに隣接する領域が挙げられる。潜在的出血部位の例としては、外科医が積極的に外科処置を行っている組織又はそれに隣接する組織が挙げられる。潜在的出血部位としては、血餅の周囲又は下の領域が挙げられる。当該血餅は、手術後に「開く」ことがある。
【0042】
本発明の目的は、とりわけ、例えばMISにおいて、外科処置中に対象における出血部位を位置特定するための方法を提供することである。本方法は、例えば、視認性が困難であり、オペレータが出血部位を見つけてそれを止めることができない外科処置において有用であり得る。本発明の別の目的は、外科処置中に対象の出血部位を位置特定するためのデバイスを提供することである。
【0043】
本明細書で使用される場合、「位置特定する」という用語は、出血が存在するかどうかを判定すること、出血を検出すること、及び/又は、例えば、出血の場所又は出血の正確な場所を正確に狙うために出血の位置を判定することを指すが、これらに限定されない。出血の位置特定は、トロンビン活性の存在に基づく。位置特定するという用語は、1-位置を判定すること、又は2-出血が存在するかどうかを判定すること、の両方の可能性を含む。
【0044】
本発明の別の目的は、外科処置中の対象における出血の強度/重症度を判定するための方法を提供することである。
【0045】
本発明の別の目的は、外科処置中の対象における出血の強度/重症度を判定するためのデバイスを提供することである。
【0046】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その用途において、以下の説明に記載する又は実施例によって例証される詳細に必ずしも限定されないことを理解すべきである。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは様々な方法で実行又は実施することが可能である。
【0047】
記載された例示的な実施形態における方法又はデバイスは、出血部位におけるトロンビンの存在を利用する。
【0048】
トロンビンは、例えば血管破壊の結果として出血部位で生成され、その活性がフィブリン塊形成に必要とされる最終酵素である。トロンビンは、外因経路及び、比較的程度は低いが内因性経路を介して、活動性の出血部位で生成される。
【0049】
驚くべきことに、トロンビン活性の存在は、可視化され得、その結果、発色性又は蛍光性のトロンビン基質を使用して、出血がインビボで検出され得ることが見出された。驚くべきことに、トロンビン活性は、インビボで定量化され得、その結果、発色性又は蛍光性のトロンビン基質を使用して、出血が定量化され得ることが見出された。トロンビンに対するフィブリノーゲン及び他の基質と同様に、これらの発色基質及び蛍光基質は、トロンビンによって酵素的に切断され得る。基質の一部が切断されると発色団又は蛍光団が放出され、これは、可視化されるか、又は色分析器若しくは蛍光分析器を用いて定量的に測定され得る。
【0050】
本明細書に開示される方法及びデバイスは、とりわけ、以下のインビトロ及びインビボの知見に基づく。
【0051】
インビトロでは、トロンビンの発色基質(S-2238)でコーティングしたセルロースマトリックス上にトロンビンを噴霧した場合に着色の変化が明らかであったが、トロンビンをマトリックスの非コーティング側に噴霧した場合には着色の変化は観察されなかった。これらの知見は、トロンビン活性が、発色基質でコーティングされた吸収性表面上で識別され得ることを示した。
【0052】
また、トロンビンの発色基質を含有する溶液を異なる濃度のトロンビンと混合した場合、色の強度はトロンビンの量に比例して増加することが見出された。
【0053】
トロンボプラスチン試薬(カルシウムを含む)によって活性化された非希釈血漿をトロンビンの発色基質と混合したとき、色の変化が検出された。血漿は、トロンボプラスチン試薬の添加より前に希釈されなかった。血漿は、他の凝固アッセイ(例えば、因子アッセイ)におけるように希釈されているとはみなされない。結果は、血漿の固有の色(麦わら色の液体)が、発色基質を使用するトロンビンの検出を妨害しないことを実証した。色の変化の強度は、トロンビンの活性、したがって、トロンビンの量又は濃度を反映した。
【0054】
トロンビン蛍光基質は、(例えば)公称放射が365nmのUV光である光源への曝露時に、トロンビン活性を検出することができることが見出された。
【0055】
驚くべきことに、蛍光基質は、非希釈の正常プール血漿中で生成されたトロンビンを検出することができた。例えば、外因経路の活性化によって、十分な量のトロンビンがプール血漿中で生成されて、シグナルを生じさせた(高レベルの外因性トロンビンを用いた試験と対比して)。特に、周囲光がなく、365nmのフラッシュライトに曝露した状態において、強い蛍光シグナルが観察され得る。
【0056】
シグナルを遮断又は不明瞭にするものが何もない場合に、改善された蛍光が、ガラスチューブにおいて検出され得る。トロンビンでコーティングされたセルロースマトリックス上で蛍光を検出しようと試みた場合、蛍光は観察されなかった。蛍光シグナルは、マトリックスが白色であり、コントラストが生じ得なかったために不明瞭であった可能性がある。代替的に、セルロースマトリックスが蛍光団をクエンチしたことにより可視化が妨げられた可能性がある。マトリックス表面上の蛍光のより良好な検出のために、非白色マトリックスを使用してコントラストをより良好にし得、及び/又は蛍光団のクエンチ(これは可視化に影響を及ぼし得る)を防止する材料から作製されたマトリックスが使用され得る。しかしながら、驚くべき結果がインビボで得られた。肝臓及び脾臓の擦過傷を有するイヌモデルにおいて、潜在的出血部位に蛍光基質を噴霧した後、蛍光を検出した。
【0057】
これらの結果は、i)対象の体内の潜在的出血部位の中又は上にトロンビンの発色基質又は蛍光基質を導入すること、及びii)色シグナル又は蛍光シグナルを検出し、それによって当該対象における出血部位を位置特定すること、を含む、例えば、対象における出血部位をインビボで、例えば外科処置中に位置特定する方法への道を開いた。
【0058】
これらの結果は、
i)トロンビンの発色基質又は蛍光基質を、対象の体内の潜在的出血部位の中又は上に導入すること、及び
ii)色シグナル又は蛍光シグナルの存在及び強度を判定し、
それによって、出血の存在及び強度を判定すること、を含む、例えば、対象における外科処置中の出血の強度を判定する方法への道を開いた。
【0059】
これらの結果は、例えば、対象における外科処置中の出血部位を位置特定するためのデバイスへの道を開いた。これらの結果はまた、例えば、対象における外科処置中の出血の強度を判定するためのデバイスへの道を開いた。
【0060】
「潜在的出血部位」という用語は、血管(動脈、静脈又は毛細血管)がアクセスのために穿刺された領域、又は任意の外傷若しくは外科的創傷を含む。潜在的出血部位の例としては、外科医が積極的に外科処置を行っている領域又はそれに隣接する領域が挙げられる。潜在的出血部位の例としては、外科医が積極的に外科処置を行っている組織又はそれに隣接する組織が挙げられる。潜在的出血部位の例としては、血管がアクセスのために(例えば外科的創傷により)破裂した領域、又は外傷による領域が挙げられる。潜在的出血部位としては、血餅の周囲又は下の領域が挙げられる。当該血餅は、手術後に「開く」ことがある。
【0061】
「外科処置」という用語は、医療手術等の医療処置の少なくとも一部の間に行われる行為を指し、診断手順及び治療手技等の他の種類の医療処置を指す場合もある。
【0062】
視認性が困難な外科処置は、低侵襲手術(「MIS」)、例えば、結腸内視鏡検査、腹腔鏡検査、脳の内視鏡検査などの内視鏡手術、並びにロボット支援手術からなる群から選択され得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、MISは、身体への外傷を低減させるために外科的切開を最小限にする手術を指すが、これに限定されない。このタイプの手術、例えば腹腔鏡検査は、通常、細い針、及び手術を視覚的にガイドする内視鏡を使用して行われる。
【0064】
MISは、多くの外科専門領域を含み得る。MISの更なる非限定的な例は、癌手術における腫瘍切除、動脈瘤を治療又は修復するための血管内手術、胆嚢手術における胆嚢摘出、腎摘出/摘脾/肝切除処置、及びビデオ支援胸腔鏡手術(video-assisted thoracoscopic surgery、VATS)を用いた胸部手術において行われるMISから選択される。
【0065】
開示される方法は、手術中に適用され得る。「手術中」という用語は、患者が手術室の手術台に移動されたときに始まり、麻酔後回復室(Post Anesthesia Care Unit、PACU)への患者の移動で終わる期間に関する。この期間中、患者は監視され、麻酔され、準備され、かつ布で覆われ、手術が行われる。この期間中の看護行動は、安全性、感染防止、必要に応じて現場への追加の無菌供給品の開封、及び術中レポートの適用可能なセグメントを患者の電子カルテに記録することに焦点を当てている。術中放射線療法及び術中自己血輸血もまた、この時間中に行われ得る。
【0066】
「基質」という用語は、酵素が作用する分子に関する。酵素は、基質が関与する化学反応を触媒する。典型的には、トロンビンの場合、基質はトロンビン活性部位に結合し、トロンビン-基質複合体が形成される。基質は、1つ又は2つ以上の生成物に変換され、次いで、活性部位から放出される。次いで、活性部位は、別の基質分子を自由に受容する。基質は、酵素が作用したときに着色生成物を生じる場合に「発色性」と呼ばれる。本明細書における「発色性」基質は、発光基質も包含する。同様に、基質は、酵素が作用したときに蛍光生成物を生じる場合に「蛍光性」と呼ばれる。
【0067】
発色基質は、トロンビン酵素の活性部位に結合し得る。結合すると、トロンビンは発色基質内で開裂(結合を切断)して発色団を放出し得る。発色団は、特定の周波数で光を吸収し、したがって分子に色を与える化学基である。
【0068】
発色団の非限定的な例は、アゾ発色団、アントラキノン発色団、インジゴイド発色団、カチオン染料、ポリメチン及び関連する発色団、ジ及びトリアリールカルベニウム及び関連する発色団、フタロシアニン、硫黄化合物、並びに金属錯体である。
【0069】
発色団は、例えば、p-ニトロアニリン又はpNAであり得る。結合の切断は、形成されたpNAと元の基質との間の吸光度(光学密度)の差を引き起こす。この光学密度の変化は視覚的に監視し得、濃い黄色の着色として現れる。更に、pNA形成の速度は酵素活性に比例し、酵素活性の正確な判定を可能にする。
【0070】
色の非限定的な例としては、黄色、青色、及び緑色が挙げられる。
【0071】
一実施形態では、発色基質は、トロンビンと反応すると黄色に変化するが、赤血球は、黄色の着色の可視化を不明瞭にするか、又は妨害する可能性がある。したがって、血液細胞を血漿から分離するために、いくつかの実施形態では「濾過技術」が用いられ得、これにより、赤血球による不明瞭化又は干渉なしにトロンビンの検出が可能となる。濾過技術は、典型的には、細胞を血漿から分離する薄膜を含む。いくつかの実施形態では、マトリックスは、血液細胞、例えば赤血球(シグナルに干渉する可能性がある)を濾過して血漿のみを通過させることができる膜である。膜を通って飽和する血漿は、発色基質が配置された膜内のスポットに遭遇し得る。トロンビンが血漿中に存在する場合、トロンビンはスポット内の発色基質と反応し、発色団を放出し、かつ染色されたスポットを生じさせ得る。
【0072】
トロンビン活性をモニターするために使用され得る発色基質は、例えば、Chromgenix,Instrumentation Laboratory Company(Bedford,MA,USA)から入手可能なS-2238(H-D-フェニルアラニル-L-ピペコリル-L-アルギニン-p-ニトロアニリン二塩酸塩)である。発色基質は、多種多様な酵素に利用可能であり、インビトロアッセイにおいてこれらの酵素の活性を判定するために使用される。具体的には、基質S-2238については、血漿中のトロンビン活性レベルを測定し、ベンチトップアッセイにおいて抗トロンビンIII及びヘパリンの阻害特性を間接的に測定するために、この発色基質が使用されてきた。トロンビン活性をインビボで検出又は測定するためのこの発色基質の使用については言及されていない。
【0073】
発色基質(例えば、S-2238Chromogenix)の濃度は、約0.004mM~約16.0mMの範囲であり得る。
【0074】
発色基質(例えば、S-2238、Chromogenix)の濃度は、約0.04mM~約8.0mMの範囲であり得る。
【0075】
一実施形態では、発色基質は、発光基質、例えば、生物発光基質である。生物発光基質の例は、Chen et al.,Biosensors and Bioelectronics77(2016)83-89に記載されている。
【0076】
蛍光基質は、トロンビン酵素の活性部位に結合し得る。結合すると、トロンビンは、蛍光基質内で開裂(例えば、結合を破壊)して蛍光団を放出し得る。
【0077】
異なる蛍光分子をトロンビン基質に付着させることができる。例えば、可視及び近赤外(near-infrared、NIR)スペクトル650-1000nm又は600-850nmの広い領域にわたって放出エネルギー変調を有する蛍光分子。例えば、780nmで光励起したときの800nmのNIR光(例えば、Ghoroghchian et al.”In vivo fluorescence imaging:a personal perspective”Wiley Interdiscip Rev Nanomed Nanobiotechnol.2009;1(2):156-167)。
【0078】
トロンビン活性は、例えば、トロンビン酵素の活性部位に結合する蛍光基質を使用することによって判定され得る。
【0079】
蛍光は、光又は他の電磁放射線を吸収した物質による光の放出である。ほとんどの場合、放出された光は、吸収された放射線よりも長い波長を有し、したがってより低いエネルギーを有する。蛍光の最も顕著な例は、吸収された放射線がスペクトルの紫外領域にあり、したがって人間の目には見えないが、放出された光が可視領域にあり、UV光に曝露されたときに見ることができる明確な色を蛍光物質に与えるときに起こる。比較的弱い蛍光シグナル(少数の放出光子を有する)が、例えば、ノイズの少ないバックグラウンドに対して観察され得る。
【0080】
蛍光分光光度計(蛍光光度計とも称される)は、蛍光シグナルを測定するために使用され得る。
【0081】
典型的には、蛍光光度計は標準的な分光光度計のように見え、光が試料を通過してインライン検出器上に到達しない正方形のキュベットを使用する。検出器は90度の角度である。蛍光光度計は、光源と、定義された励起波長を選択するためのフィルタ又はモノクロメータとを有し、次いで、定義された励起波長は、試料に向けられる。次に、試料から放出された光は、検出器によって測定される前に励起光の大部分を除去するだけでなく、対象となる放出波長を選択する別のフィルタ又はモノクロメータを通過する。
【0082】
検出システムはまた、例えば、特定の波長で光を放射するUVフラッシュライトを使用し、蛍光シグナルを観察することによって、又は任意の他の検出システムによって実行され得る。各基板に対して、最適な励起光波長が使用され得る。
【0083】
試料中のトロンビン活性は、単位/mLで表され得、蛍光基質を使用して、例えば2つの基質、例えば本明細書に記載のSigma及びHTI基質を使用して、試料の相対蛍光速度を参照トロンビンの相対蛍光速度と比較することによって計算され得る。
【0084】
出血部位におけるトロンビンの量を推定は、非常に複雑である。例えば、出血部位におけるトロンビンの量は、曝露された組織因子(tissue factor、TF)の量、血流、利用可能な血小板、凝血促進凝固因子の量、及び内因性抗凝固剤の量に依存し得る。組織因子(TF)は、生理学的凝固応答の主要な活性化因子である。
【0085】
多くの場合、わずか1IU程度の少量のトロンビンがフィブリン塊を形成させることができる。十分な組織損傷(及びTFの曝露)がある場合、トロンビン生成及び凝固は、最適条件下で迅速に(例えば、PT凝固時間に基づいて10~15秒で)起こり得る。他の状況では、凝固は、はるかに長くかかり得る。
【0086】
一般に、トロンビン活性は出血レベルに応じて異なる。
【0087】
出血の強度は、相対的基準で判定され得る。例えば、トロンビン基質は、2つの濃度、すなわち低濃度及び高濃度であり得る。高濃度の基質のみを使用してシグナルが検出される場合、これは、高基質濃度及び低基質濃度の両方を使用して検出されるシグナルと比較して、比較的低いトロンビン活性を表す。
【0088】
有利には、インビボでの使用のための基質は生体適合性である。
【0089】
蛍光基質の非限定的な例は、トロンビン基質III(Sigma-Aldrich)、及びFluorogenic(Calbiochem、カタログ番号:605211。励起最大:360-380nm;発光最大:440-460nm)である。
【0090】
蛍光基質の更なる非限定的な例は、Fluorogenic substrate for thrombin(ANSN蛍光基質カタログ番号:SN-20.励起=352nm、発光=470nm、Haematologic Technologies,Inc.)である。
【0091】
Ghoroghchian et al.”In vivo fluorescence imaging:a personal perspective”Wiley Interdiscip Rev Nanomed Nanobiotechnol.2009;1(2):156-167)に開示されている分子などの異なる蛍光分子をトロンビン基質に付着させることができる。
【0092】
蛍光基質の濃度は、約0.0004mM~約10.0mMの範囲であり得る。
【0093】
蛍光基質の濃度は、約0.004mM~約7.0mMの範囲であり得る。
【0094】
基質は、水又は血液に溶解され、組織上のトロンビンとの反応を可能にし得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、基質は最初にジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)に可溶化される。これは、DMSOが水又は血液に混和性であるという理由による。DMSO(緩衝溶液などの水溶液で希釈されることもある)中の基質は、組織上に送達され、トロンビンが組織上に存在する場合、トロンビンと反応する。
【0096】
DMSOは、蛍光基質を可溶化するための分散剤として一般的に使用されるが、エタノールのような他の比較的無害な溶媒を含む他の溶媒が使用され得る。
【0097】
蛍光基質を使用する場合、反応及びシグナルの感度を最適化することができる。蛍光基質による感度の増加は、特殊な機器を必要とし得る。シグナル特異性は、例えば、他の可視波長の透過を抑制することによって、発光波長の可視化を向上させる最適な光源及び/又は眼鏡を使用することによって増大させることができる。リアルタイム画像処理などの他の画像強調方法は、写真又はビデオイメージングと共に使用され得る。
【0098】
典型的には、「濾過技術」における膜は、化学繊維又は天然繊維のうちの少なくとも1つを含む。繊維は、ガラス繊維、ポリエステル、ニトロセルロース、ポリスルホン、及びセルロースのうちの1つ以上から選択され得る。膜は、トロンビンを潜在的に含有し得る血漿を全血成分の残りから分離することを可能にする。このような分離により、血液細胞、特に赤血球からのシグナルへの干渉が最小化される。そのような膜の市販の例は、Vivid Plasma Separation Membrane(Pall Life Sciences,Port Washington(NY,USA))である。
【0099】
検出工程中のマトリックス、膜又は表面上でのフィブリン塊形成は、トロンビンが基質を吸収するか又は基質と接触する能力を制限し得る。そのような凝固を防止するために、フィブリン重合の阻害剤を使用することができる。例えば、テトラペプチドGly-Pro-Arg-Pro(GPRP)が使用され得る。GPRPは、フィブリンモノマー重合をブロックすることによって凝固形成を防止し、血液/血漿を液体状態に保ち、したがってトロンビンが発色基質と相互作用して色変化をもたらすことを可能にすることができる。
【0100】
非限定的な例では、1種以上のフィブリン重合阻害剤が、発色基質又は蛍光基質を含有するマトリックス上に添加され得る。また、1種以上のフィブリン重合阻害剤が、可溶化された発色基質又は蛍光基質を含む溶液に添加され得る。
【0101】
フィブリン重合阻害剤のリストは、米国特許第10357589号に見出すことができる。
【0102】
特に腹腔鏡/内視鏡処置中に、外科医が出血、例えば滲出する出血を位置特定することは困難であり得る。MIS処置中にビデオスクリーン上で処置を見ている間に外科医が術野内の出血(例えば、滲出)を特定する能力は些細なことではない。出血を位置特定する能力は、例えば、止血製品を使用するかどうか及びどこで使用するか、またどの種類の止血製品を使用するかを決定する上で重要である。
【0103】
典型的には、標準的な方法が無効又は実用的でない場合、出血を制御するための補助的方法として、局所止血剤が使用される。
【0104】
有利なことに、本明細書に開示される方法及び/又はデバイスは、出血があるか否かの定性的評価を可能にする。
【0105】
有利なことに、本明細書に開示される方法及び/又はデバイスは、活動性の出血と凝固した血液とを区別することを可能にする。
【0106】
有利なことに、本明細書に開示される方法及び/又はデバイスは、インビボでの出血の量及び/又は強度を定量化することを可能にする。
【0107】
出血が存在し、組織損傷部位で検出される場合、血液の損失を停止又は最小限にするのを助けるために、補助的な止血剤が使用され得る。代替的に、出血が存在しない場合、止血デバイス及び生物製剤の使用は、最小化され得る。
【0108】
図3Cにおけるような試験デバイス(1)の例示的な構成が提供され、試験デバイス(1)は、
遠位端(3)及び近位端(4)を有するハウジング(2)を備え、遠位端(3)は開口部(5)を有し得る。デバイス(1)はマトリックス(6)を有し得る。マトリックス(6)は、当該ハウジング(2)の近位端(4)と遠位端(3)との間に画定された領域(7)内に収容され得る。マトリックス(6)の少なくとも一部は、発色性又は蛍光性のトロンビン基質(試験領域)を含み得る。マトリックス(6)は、血液からの液体を基質まで吸着することが可能であり得、血液からのトロンビン(存在する場合)が、基質と反応して、可視的蛍光性又は発色性シグナル(8)を生成することを可能にする。ハウジング(2)は、シグナルを視覚化するために、ハウジング内に配置された検出領域(9)を有し得る。
【0109】
一実施形態では、ハウジング(2)はプラスチックで作製される。
【0110】
開口部(5)は、マトリックス(例えば、膜)の遠位端(3、
図3Bの101)が位置する場所に存在し得る。マトリックスの遠位端は、開口部から突出し得る。マトリックスの突出した遠位端は、潜在的出血部位に触れるために使用され得る。
【0111】
マトリックスは、血漿を基質の位置まで吸い上げるように構成されている。トロンビンが血漿中に存在する場合、血漿は基質と反応し、着色又は蛍光生成物を生成する。
【0112】
シグナルは、視覚的に検出され得る(光又はUV源を用いて)。
【0113】
試験デバイスは、検出領域(9、
図3Bの103)における結果に基づいてトロンビン活性が存在するか否かを判定することを可能にする説明文(legend)/符号(key)(9、
図3Bの102)を有し得る。
【0114】
トロンビン活性の存在は、出血を示す。
【0115】
一般に、トロンビン活性は、出血レベルに応じて異なる。
【0116】
一実施形態では、デバイスは、長さ約15cm、幅1~2cm、深さ1cmのサイズである。
【0117】
マトリックスの少なくとも一部はまた、陽性対照を提供することを可能にする乾燥トロンビンを含み得る。代替的に、ハウジング(2)は、陽性対照として機能する乾燥トロンビンを含む別のマトリックス(対照マトリックス)を含み得る。
【0118】
マトリックスは、血液からの液体を遠位端の開口部(3、
図3Bの101)から引き込むことが可能であり得、血液からの液体は、この開口部を通って、例えば毛細血管現象によって、試験領域のマトリックス中に存在するトロンビンの発色基質まで引き込まれることが可能である。
【0119】
上述したように、ハウジング(2)は、検出領域(9、
図3Bの102)を含むことができる。検出領域(9、
図3Bの102)は、ハウジング(2)の近位端(4)内又はその近くに配置され得、血液からのトロンビンと基質との反応後に、例えばハウジングの近位端(4)又はその近くで少なくとも1つのシグナルを視覚的に検出することを可能にする。
【0120】
シグナルは、陽性結果を示すパターン又は単語として「印刷」され得る。
【0121】
デバイスは、ハウジングの遠位端に、血液からの液体をそこを通して引き込むことができる遠位端の開口部を覆う親水性多孔質隔壁膜を含むことができる。
【0122】
一実施形態では、親水性多孔質隔壁膜は、赤血球などの1つ以上の血液細胞に対して不透過性である。
【0123】
一実施形態では、デバイスは、デバイスの構成要素を収容するためのケーシングを備え、ケーシングは、外部光源から遮蔽することができる。
【0124】
動作中、ケーシングは取り外される。
【0125】
遠位端(マトリックスが位置する場所)は、術野内の潜在的出血部位、血液又は流体に接触するように配置され得る。マトリックスは、血漿を基質の位置及び生成されたシグナル(8)(トロンビンが存在する場合)まで吸い上げることができ、シグナル(8)は、例えば、光又はUV源(例えば、フラッシュライト)を用いて、検出領域(9)において視覚的に視覚的に検出され得る。シグナルの検出は、トロンビン活性の存在及び出血の検出を示す。
【0126】
マトリックスは、親水性、吸収性、多孔性、生体適合性、及び/又は非接着性であり得る。
【0127】
典型的には、マトリックスは、凝固(例えば、内因性経路活性化による)を促進又は誘導しないものである。
【0128】
マトリックスの非限定的な例は、親水性創傷被覆材又はフェルト;セルロース(例えば、ガーゼ及び綿状物;ポリウレタンスポンジ(例えば、Hydrasorb);PG910であり得、PG910は、有力な候補であり得る。
【0129】
開示される方法及びデバイスは、以下の利点のうちの1つ以上を提供する:標的部位(例えば、組織)からの血液の漏出があるかどうかを判定することを可能にする、術野内の出血対すでに凝固した血液の識別、出血の可視化のための時間を最小限にし、したがって、処置時間を減少させる、適切な可視化を提供することにより機械的外傷を低減させる、構造の誤った識別による大出血を防止する、及び、解剖学的構造の誤った識別を防止し、したがって、術野内の解剖学的構造を可視化し、保護するための改善された方法を提供する。出血の検出は、とりわけ、潜在的出血部位を止血剤で治療する決定を下す際に有用となる。
【0130】
標的部位は、外科医が外科処置を積極的に実施している領域の組織であり得るか、又はそれに隣接し得る。
【0131】
開示される方法及びデバイスは、MIS及び/又は開放手術の分野において、とりわけ上記の利点を提供する。
【0132】
説明される例示的な実施形態におけるンビボの方法又はデバイスは、潜在的出血部位を重大な再出血に関して常時監視するため、及び出血が検出された場合に医療スタッフに警告するために使用され得る。インビボの方法及びデバイスは、手術中に常時監視を提供することができる。
【0133】
「~を含む(comprises)」、「~を含む(comprising)」、「~を含む(includes)」、「~を含む(including)」、「~を含む(contains)」、「~を含む(containing)」、「~を有する(has)」、「~を有する(having)」という用語及びそれらの活用変化形は、「~を含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。「~からなる(consisting of)」という用語は、「包含し、限定される(including and limited to)」ことを意味する。「~から本質的になる(consisting essentially of)」という用語とは、組成物、方法又は構成が、追加の成分、工程及び/又は部分を含み得ることを意味するが、追加の成分、工程及び/又は部分が、特許請求される組成物、方法又は構成の基本的かつ新規の特性を実質的に変えない場合に限る。
【0134】
「例示的な」という語は、本明細書では、「実例、事例、又は例解としての役割を果たす」ことを意味する。「例示的な」として記載される任意の実施形態は、他の実施形態よりも好ましい又は有利であると必ずしも解釈される必要はない、及び/又は他の実施形態からの特徴の組み込みを必ずしも排除する必要はない。
【0135】
本明細書では、「任意選択的に(optionally)」という語は、「いくつかの実施形態では提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味する。本発明の任意の特定の実施形態は、このような特徴が矛盾しない限り、複数の「任意選択的な(optional)」特徴を含み得る。
【0136】
本明細書で使用される場合、文脈上特に明記されない限り、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、複数の指示物を含む。例えば、「化合物(compound)」又は「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」という用語は、それらの混合物を含めて、複数の化合物を含み得る。
【0137】
本出願全体を通して、本発明の種々の実施形態が範囲形式にて提示され得る。範囲形式の説明は単に便宜上及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲上の確固とした制限として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の説明は、全ての可能な部分範囲、並びにその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示される部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6を有するとみなされるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0138】
数値範囲が本明細書に示される場合はいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。用語、第1の表示番号と第2の表示番号との「間の範囲(ranging)/範囲(ranges)」、及び第1の表示番号「から」第2の表示番号「までの範囲(ranging)/範囲(ranges)」が本明細書で互換的に使用されるが、これは、第1及び第2の表示番号並びにこれらの間の全ての分数及び整数を含むことを意味する。
【0139】
本明細書で使用される場合、「方法」という用語は、所与のタスクを達成するための方法、手段、技術、及び手順を意味し、化学的、分析的、薬理学的、生物学的、生化学的、及び医学的分野の施術者に既知であるか、又は化学的、分析的、薬理学的、生物学的、生化学的、及び医学的分野の施術者よって、既知の方法、手段、技術、及び手順から容易に開発されるか、のいずれかの方法、手段、技術及び手順を含むが、これらに限定されない。
【0140】
本明細書で使用される場合、特に明記しない限り、「重量で」、「w/w」、「重量パーセント」、又は「重量%」という用語は、本明細書で互換的に使用され、対応する混合物、溶液、製剤、又は組成物の総重量のうちの特定の物質の濃度を記述する。
【0141】
本発明の特定の特徴は、明確性のために別個の実施形態の文脈において記載されているが、これはまた、単一の実施形態において組み合わせて提示され得ることが理解されている。逆に、本発明の種々の特徴は、簡潔さのために、単一の実施形態の文脈において記載されているが、これはまた、別個に、若しくは任意の好適な部分的組み合わせで、又は本発明の任意の他の記載される実施形態において好適にもたらされ得る。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしには動作不可能である場合を除き、それらの実施形態の必須特徴であるとして考慮されるべきではない。
【0142】
本明細書の上記で詳述され、以下の特許請求の範囲において特許請求されるような、本発明の種々の実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的な裏付けを見出す。
【実施例】
【0143】
ここで、上記の説明と併せて、非限定的な方法で、本発明のいくつかの実施形態を例解する、以下の実施例を参照する。
【0144】
実施例1:表面にコーティングされた発色基質に対するトロンビン活性の検出
25mgのS-2238発色トロンビン基質((H-D-フェニルアラニル-L-ピペコリル-L-アルギニン-p-ニトロアニリン二塩酸塩)Chromgenix,Instrumentation Laboratory Company(Bedford,MA,USA)カタログ番号:82032439から入手可能)を12.5mLの水に溶解した。得られた濃度は2mg/mL(12.5mL中25mg)であった。1mLの2mg/mL発色基質を、EVICEL(登録商標)ASAチップ(製品コード3921S)を使用して、約4インチ×6cmの白色セルロースマトリックス(ペーパータオルScott C-Fold)の片側に噴霧した。他方の側は、基質でコーティングもスプレーもされなかった。
【0145】
EVICEL(登録商標)(製品コード3905)のキットを37℃の水浴中で5分間解凍した。少量のトロンビンが検出され得るかどうかを評価するために、トロンビンの液滴(50~100μL)を指先に置き、セルロースマトリックス上に広げた。これを基質コーティング側に繰り返し、非基質コーティング側にも二連で適用した。室温で30秒後、基質コーティング側のセルロースマトリックス上に黄色の着色が見られたが、非コーティング側では見られなかった。
【0146】
黄色の着色(暗い縞)がマトリックスの基質コーティング側で明瞭に認められたが(
図1)、非コーティング側では黄色は観察されなかった。これは、基質でコーティングされた吸収性表面(すなわち、セルロースマトリックス)を使用してトロンビン活性が識別され得ることを示す。対照として、トロンビンをマトリックスの非コーティング側に適用したが、色の変化は観察されなかった。
【0147】
実施例2:ディップスティックを使用した発色基質に対するトロンビン活性
「ディップスティック」を、出血が疑われる組織表面上にたたくように当てることができる(
図2)。次いで、ディップスティックの端部を、可視化剤(発色基質)を含有する溶液中に入れることができる。ディップスティック中に存在するトロンビンの量は、既知のトロンビン濃度で同様の試験を行うことによって得られる標準曲線と比較することによって判定される。
【0148】
例えば、0.2mLの2mg/mL発色基質を、12×75cmの2本のホウケイ酸ガラスチューブの中で1.8mLの水と合わせた。溶液を穏やかに混合して基質を分散させた。第3のチューブに、未処理対照として2mLの水を充填した。希釈した基質を含むチューブのうちの1つに、1000IU/mLのトロンビン100uLを添加し、10uLを他のチューブに添加した。室温で約2分後、チューブの写真を撮影した。
【0149】
100μLの1000IU/mLトロンビンを含むチューブは黄色の着色を示したが、10μLのトロンビンを含むチューブはかすかな黄色の着色を示した。水の入ったチューブを参照として示す。色変化の強度は、トロンビンの量を反映した。
【0150】
「ディップスティック」が入れられた可視化剤(発色基質)を含有する溶液中の色の強度に従って、出血及びトロンビンの量を検出することが可能であり、したがって出血が疑われる部位における出血の強度を検出することも可能である。
【0151】
実施例3:血漿中の発色基質生成物の検出
血漿は背景色(麦わら色)を有する。発色基質の生成物が血漿中で検出され得るか否かを試験するために、0.4mLの正常プール血漿(George King BiomedicalからのPNP)を、トロンビン生成を可能にするカルシウムを有するトロンボプラスチン試薬(0.2mL、Neoplastin CL+製品番号00375)によって活性化した。
【0152】
0.2mLの生理食塩水(対照として)又は0.2mLの2mg/mLの発色基質のいずれかをチューブに加え、チューブロッカー上で混合した。
【0153】
室温で約30秒後に凝固形成の証拠が存在した。血漿中のフィブリノーゲンの存在を考慮すると、完全な凝固形成、すなわち硬い/安定な凝固は、室温で約2分で生じた。黄色の着色/色相は、生理食塩水対照と比較して、発色基質を有する凝固血漿で有意に強かった(
図3A)。
【0154】
この研究は、血漿(麦わら色の液体)の固有の色が、発色基質を使用するトロンビンの検出を妨害しないことを実証している。色変化の強度は、トロンビンの量を反映する。
【0155】
一実施形態において、デバイスは、デバイスの構成要素を収容するためのケーシングを備え、ケーシングは、外部光源から遮蔽することができる。
【0156】
図3Bのような試験デバイスが提供される。101は、血液又は流体が基質上に吸収される領域を表し、102は、吸収された血液又は流体中のトロンビンが発色/蛍光基質と反応する検出領域(読み取り領域)を表し、103は、検出領域102における結果に基づいてトロンビン活性又はトロンビン(出血)が存在するかどうかを判定するための説明文/符号を表す。
【0157】
例示的な構成では、これらの試験デバイスは、施術者の手のサイズ(長さ約15cm、幅1~2cm、及び深さ1cm)に適合するようにサイズ決定され、プラスチックで作製される。
【0158】
実施例4:蛍光基質を用いた溶液中のトロンビンの検出
前の研究は、トロンビン活性を検出するための発色基質に焦点を当てており、このインビトロ研究では、蛍光基質がトロンビン活性を検出する能力を評価した。評価した2つの蛍光基質は、Haematologic Technologies及びSigma-Aldrichから購入した。試験は、表面(マトリックス)上での溶液中のトロンビンの検出、及び血漿中のトロンビンの検出を含んだ。
【0159】
Sigma-Aldrich基質:Sigma-Aldrich、トロンビン基質III、Fluorogenic-Calbiochem、カタログ番号:605211。包装:25mgの凍結乾燥粉末を含むアンプル/ボトル。励起最大:360-380nm;発光最大:440-460nm;分子量718D;製品情報からのDMSO中の溶解度(5mg/mL)。
【0160】
5mgの基質を、光不透過性暗琥珀色の2.0mLマイクロチューブに入れた。1.0mLのDMSOを基質に添加して、マイクロチューブ中に5mg/mLのストック溶液を作製し、穏やかに反転させることによって混合した。
【0161】
HTI基質:Haematologic Technologies,Inc.、トロンビンの蛍光基質(ANSN蛍光基質)、カタログ番号:SN-20。包装:バイアル/微量遠心チューブ中10mM;7.5mg/mLで各バイアル中に1mg、したがってDMSO中0.133mL/バイアル。励起=352nm、発光=470nm。基質は、DMSO中の10mMストック溶液として提供され、一般に、インビトロ診断のために400nMの範囲で使用される。
【0162】
製造業者のバイアルから0.050mLを取り出し、1.5mLトリス緩衝生理食塩水(tris buffered saline、TBS)、pH7.4を含有する光不透過性暗琥珀色の2.0mLマイクロチューブに分注して、ストック基質溶液を作製した。トリス濃度は20mMであり、塩化ナトリウム濃度は150mMであった。これは、製造ストックの1:30希釈に相当する(1.5mL中0.375mgは0.25mg/mLである)。
【0163】
トロンビン:フィブリンシーラントからのEVICEL(登録商標)トロンビン。
【0164】
DMSO:Sigma-Aldrich、ジメチルスルホキシド、製品番号296147-25G。
【0165】
光源:光波長365nmの公称発光を有するJowBeamフラッシュライトを蛍光可視化に使用した。
【0166】
試験手順及び結果:
溶液中のトロンビンの検出
1.2mLの0、10IU/mLトロンビン及び100IU/mLのトロンビンを含む生理食塩水(トロンビンなし、低トロンビン、及び高トロンビン)を二連で調製し、それに応じてチューブにラベルを貼った。EVICEL(登録商標)トロンビンのストックは、約1000IU/mLである。
2.規定量のトロンビン基質を以下のようにトロンビン溶液に添加し、混合物の蛍光を評価した。基質ストック溶液をトリス緩衝生理食塩水(TBS)緩衝液で1:10に希釈した(180uLのTBS及び20uLのストック基質溶液)。TBS緩衝液は、20mMトリス及び150mM塩化ナトリウムを含み、pH7.4に調整される。0.05mLの希釈ストック溶液(1:10希釈)を、工程1で調製した2mLのトロンビンに添加し、室温で混合し、約3分間インキュベートした。
3.(様々な発光源を使用して)光で照らしながらチューブの画像を取り込み、異なる量のトロンビンについて応答を比較した。
【0167】
図4Aは、基質を添加してから約3分後の、真上からの周囲照明のみを用いたチューブ画像を示す。Sigma基質は左側に示され、HTI基質は右側に示されている。トロンビン活性レベルは、100、10、及び0IU/mLである。溶液は透明であり、いずれのチューブにおいても色の変化は観察されなかった。
【0168】
図4Bは、基質を添加してから約3分後の、真上からの周囲照明及び365nmフラッシュライト用いたチューブ画像を示す。Sigma基質は左側に示され、HTI基質は右側に示されている。トロンビン活性レベルは、100、10、及び0IU/mLである。蛍光を示す唯一の溶液は、100IU/mLトロンビンを含むSigma基質であった。365nmのフラッシュライトが使用された場合、可視化手順を通してUV遮断眼鏡を着用した。
【0169】
図4Cは、基質を添加してから約60分後の、365nmフラッシュライトのみ用いた(真上からの周囲照明をオフにした)チューブ画像を示す。Sigma基質は左側に示され、HTI基質は右側に示されている。トロンビン活性レベルは、100、10、及び0IU/mLである。蛍光を示す唯一の溶液は、100IU/mLトロンビンを含むSigma基質であった。蛍光は、周囲光を消した状態でより強く現れた。3分と60分の間に強度の変化は見られなかった(基質の全てが3分以内に開裂したことを示唆する)。
【0170】
HTI蛍光基質は、先行研究では機能しないようであったので(おそらく、使用した濃度が比較的低いため)、より多量のHTI基質を用いて研究を繰り返した。100IU/mLのトロンビンを使用した。
【0171】
生理食塩水中の1.0mLの100IU/mLトロンビンに、DMSO中5mg/mLのSigma基質100uLを添加した[全基質500ug]。
【0172】
生理食塩水中の1.0mLの100IU/mLトロンビンに、0.25mg/mLでTBSで希釈した100uLのHTI基質(50uLのHTI製造のストック及び1.5mLのTBS、すなわち1:30希釈)を添加した[全基質25ug]。
【0173】
生理食塩水中の1.0mLの100IU/mLトロンビンに、10uLのHTI製造ストック(DMSO中7.5mg/mL)を添加した[全基質75ug]。
【0174】
様々な照明条件下で(様々な光源を使用して)チューブの画像を取り込み、応答を比較した。
【0175】
実験は、室温で行った。
【0176】
図4Dは、100IU/mLトロンビンと基質とを組み合わせてから約5分後のチューブ画像を示す。画像は、真上からの周囲照明及び365nmのフラッシュライトの下で撮影した。左側のチューブはSigma基質であり、中央のチューブはTBSで希釈したHTI基質であり、右側のチューブはDMSOで濃縮したHTI基質である。
【0177】
先に見られたように、Sigma基質は、これらの照明条件下で最も強い蛍光シグナルを有した(左)。蛍光シグナルは、TBSで希釈したHTI基質で最も低かった(中央)。シグナルは、他のHTI基質試料(DMSOで濃縮したHTI基質)でより大きかった。
【0178】
図4Eは、100IU/mLトロンビンと基質とを組み合わせてから約5分後のチューブ画像を示す。
【0179】
画像は、365nmのフラッシュライトのみを使用して撮影された(真上からの周囲照明なし)。左側のチューブはSigma基質であり、中央のチューブはTBSで希釈したHTI基質であり、右側のチューブはDMSOで濃縮したHTI基質である。
【0180】
Sigma基質は、これらの照明条件下で最も強い蛍光シグナルを有した(左、相対ランク+++)。蛍光シグナルは、TBSで希釈したHTI基質で最も低かった(中央、相対的ランク+)。シグナルは、他のHTI基質試料(DMSOで濃縮したHTI基質)についてより大きかった(DMSOで濃縮したHTI基質、相対ランク++)。
【0181】
結果は、明らかに蛍光強度の差が各チューブ中の基質の量に関連することを示す。各基質の絶対量は、Sigmaが500μg基質、TBS中HTIが25μg基質、及びDMSO中HTIが75μg基質であった。
【0182】
実施例5:表面上のトロンビンの検出
約1000IU/mLのEVICEL(登録商標)トロンビンのストック溶液を使用して、0、10IU/mL、及び100IU/mLの生理食塩水溶液2mL(トロンビンなし、低トロンビン、及び高トロンビン)を調製した。1mLの各トロンビン希釈液を、白色セルロースマトリックス(ペーパータオルScott C-Fold)上の指定領域に噴霧した。
【0183】
直ちに、以下のように調製した規定量のトロンビン基質をトロンビン及びコーティングされたセルロースマトリックス上に噴霧し、混合物の蛍光を評価した。基質ストック溶液をTBSで1:10に希釈した(900uLのTBS及び100uLのストック基質溶液を使用)。1.0mLの希釈ストック溶液(1:10希釈)を、異なるレベルのトロンビンでコーティングされたセルロースマトリックスの3つの領域全てに噴霧した。
【0184】
様々な照明条件下で(様々な光源を用いて)セルロースマトリックスの画像を取り込み、異なる量のトロンビン及び基質について応答を比較した。実験は、室温で行った。
【0185】
セルロースマトリックスに基質を噴霧してから約3分後に、真上からの周囲照明及び365nmのフラッシュライトを用いた状態で、いずれのセルロースマトリックスにおいても色変化又は蛍光は観察されなかった。トロンビン活性レベルは、100、10、及び0IU/mLであり(注目すべきことに、溶液中で実施された先の実験において、蛍光を示す唯一の溶液は、100IU/mLトロンビンを有するSigma基質であった)、蛍光は、セルロースマトリックス表面が白色であり、コントラストが生じ得なかったことから、不明瞭であった可能性がある。
【0186】
基質を噴霧してから約10分後に、365nmのフラッシュライトのみ(真上からの周囲照明なし)の状態で、セルロースマトリックスのいずれにおいても蛍光は観察されなかった。蛍光は、マトリックスが白色であり、コントラストが生じ得なかったことから、不明瞭であった可能性がある。
【0187】
Sigma基質を噴霧してから約60分後に、365nmのフラッシュライトのみ(真上からの周囲照明なし)を用いた状態で、セルロースマトリックスをその元の位置から移動させた後、特にSigma基質を有する100IU/mLトロンビンの下のセルロースマトリックスの下側の表面上で、蛍光のスポットを見ることができた。明らかに、トロンビンは、おそらく高濃度でセルロースマトリックスに浸透し、Sigma基質と結合した。代替的に、セルロースマトリックスは、蛍光可視化を防止する消光剤を有し得る。
【0188】
HTI基質を噴霧してから約60分後に、365nmのフラッシュライトのみ(真上からの周囲照明なし)を用いた状態で。セルロースマトリックスをその元の位置から移動させた後、蛍光のスポットを見ることはできなかった。これは、蛍光の証拠を見ることができたSigma基質とは対照的である。
【0189】
実施例6:血漿中で生成されたトロンビンの検出
プール正常血漿(Pooled normal plasma、PNP)をGeorge King Biomedicalから購入し、37℃で5分間解凍した。0.5mLのPNPを10×75mMの3本のホウケイ酸ガラスチューブに分注した。各ガラスチューブに、0.10mLのストック蛍光基質又は0.10mLのストックTBSを添加した。それに応じてチューブにラベルを付けた。Sigma基質ストックは、DMSO中5mg/mLの濃度を有した。HTI基質ストックは、TBS中0.25mg/mLの濃度を有した。
【0190】
1.0mLのPT試薬(Diagnostica Stago,STA Neoplastine Cl Plus、カルシウム含有)を上記3本のチューブに分注した。
【0191】
明るく輝く光(様々な光源を使用)を使用しながら管の画像を取り込み、異なる基質について応答を比較した。
【0192】
凝固結果:
ブランク/TBS対照は、約10秒で凝固した(PT凝固時間について予想される通り)。
【0193】
HTI基質試料も約10秒で凝固した。
【0194】
Sigma基質試料は、凝固前に約3分間流体のままであった。おそらく、より高濃度のDMSOが凝固を阻害した。PT試薬を添加してから5分後に写真を撮り、周囲室内光及び365nmフラッシュライトを使用した。更なる詳細については、写真の説明を参照されたい。
【0195】
実験は、室温で行った。
【0196】
図5A:真上からの周囲照明のみを用いた、PNP、基質、及びPT試薬(組織因子及びカルシウムを含有する)を組み合わせてから5分後のチューブ画像を示す。左がHTI基質であり、中央がSigma基質であり、右が対照(基質なし)である。液体は、血漿の色を示し、いずれのチューブにおいても色の変化は観察されなかった。
【0197】
図5B:真上からの周囲照明のみを用いた、PNP、基質、及びPT試薬(TF及びカルシウム)を組み合わせてから5分後のチューブ画像。チューブは、チューブ内の血漿が凝固した(したがって、トロンビンが生成された)ことを示す角度で保持されている。液体は、血漿の色であり、周囲照明下でいずれのチューブにおいても色の変化は観察されなかった。
【0198】
図5C:真上からの周囲照明及び365nmフラッシュライトを用いた、PNP、基質、及びPT試薬(TF及びカルシウム)を組み合わせてから約5分後のチューブ画像を示す。左がHTI基質であり、中央がSigma基質であり、右が対照(基質なし)である。強い蛍光を示す唯一の血漿は、これらの照明条件下でSigma基質であった。
【0199】
図5D:365nmフラッシュライトのみを用いた(真上からの周囲照明なし)、PNP、基質、及びPT試薬(TF及びカルシウム)を組み合わせてから約5分後のチューブ画像を示す。左がHTI基質であり、中央がSigma基質であり、右が対照(基質なし)である。血漿中のSigma基質は、強い蛍光シグナルを示したが、これらの照明条件下では、HTI血漿チューブではわずかな蛍光シグナルが観察された。蛍光シグナルの差は、HTI基質が0.25mg/mLであったのに対して、血漿に添加されたSigma基質(5mg/mL)がより高い濃度であったことに(少なくとも部分的に)起因し得る。
【0200】
HTI蛍光基質は、先行研究では機能しないようであったので(おそらく、使用した濃度が比較的低いため)、より多量のHTI基質を用いて研究を繰り返した。100IU/mLのトロンビンを使用した。
【0201】
生理食塩水中の1.0mLの100IU/mLトロンビンに、DMSO中5mg/mLのSigma基質100uLを添加した[全基質500ug]。
【0202】
生理食塩水中の1.0mLの100IU/mLトロンビンに、0.25mg/mLでTBSで希釈した100uLのHTI基質(50uLのHTI製造のストック及び1.5mLのTBS、すなわち1:30希釈)を添加した[全基質25ug]。
【0203】
生理食塩水中の1.0mLの100IU/mLトロンビンに、10uLのHTI製造ストック(DMSO中7.5mg/mL)を添加した。[全基質75μg]
明るく輝く光(様々な光源を使用)を使用しながらチューブの画像を取り込み、応答を比較した。
【0204】
実験は、室温で行った。
【0205】
結果は、トロンビン蛍光発生基質が溶液中のトロンビンを検出することができたことを示す。重要なことに、蛍光基質は、正常プール血漿から生成されたトロンビンを検出することができた。すなわち、外因性経路を活性化することで、血漿中に十分なトロンビンが生成され、シグナルを生成した(高レベルの外因性トロンビンを用いた試験に対して)。Sigma基質で観察された蛍光強度は、おそらくこれらの研究で使用された基質の量に起因して、HTI基質で観察された蛍光強度より大きかった。典型的には、インビトロ研究では、必要とされる蛍光基質の量は最小限であるが(インビトロ研究では1000倍以上の希釈が使用される)、蛍光分光光度計を使用してシグナルを測定する。最良の蛍光シグナルは、365nmのフラッシュライトを使用して周囲光を消した状態で観察された。
【0206】
蛍光シグナルを検出する能力は、ガラスチューブ中のシグナルを観察する場合に最も最適であった。これは、シグナルを遮断又は不明瞭にするものがないことによる。
【0207】
実施例7:インビボ試験
先の実験において、蛍光が表面上に見られないことが示された。先の実験において、蛍光は、背景色なしにガラスチューブ上で見ることができることが示された。蛍光基質を用いたインビトロ研究は、外因性経路を介して血漿中で生成されたトロンビンを含むトロンビンが検出され得ることを実証した。
【0208】
このインビボ研究では、出血を伴う欠損を作製した後の生動物の表面上のトロンビンを検出する能力を、肝臓及び脾臓の擦過傷を有するイヌモデルにおいて評価した。
【0209】
焼灼先端クリーニングパッド(cautery tip cleaning pad)を使用して、広汎/滲出出血を伴う擦過欠損を作り出した。
【0210】
0.5mLのSigma蛍光基質(光から保護されたDMSO中のストック溶液5mg/mL濃度)を出血部位に噴霧し、適用の2~3分後にフラッシュライト(356nm)で可視化した。
【0211】
滲出を伴う欠損上の蛍光の小さなスペックルを示すクローズアップ。蛍光「スポット」の周囲に血液を見ることができる。
【0212】
外因性トロンビンを添加しない出血部位で、蛍光シグナルが検出され得る。
【0213】
Sigma基質は、肝臓擦過モデルにおける出血の検出を可能にしたが、より困難なモデルでは可能にしなかった。
【0214】
本発明は、その特定の実施形態と共に記載されてきたが、多くの代替、変更、及び変形形態が当業者には明白となることは明らかである。したがって、これは、添付の特許請求の趣旨及び広義の範囲内にある、このような代替、変更、及び変形形態の全てを包含することを目的としている。
【0215】
〔実施の態様〕
(1) 対象における外科処置中の出血部位を位置特定する方法であって、
i)トロンビンの発色基質又は蛍光基質を、前記対象の体内の潜在的出血部位の中又は上に導入することと、
ii)色シグナル又は蛍光シグナルを検出することと、を含み、
それによって、前記対象における前記出血部位を位置特定する、方法。
(2) 対象における外科処置中の出血の強度を判定する方法であって、
i)トロンビンの発色基質又は蛍光基質を、前記対象の体内の潜在的出血部位の中又は上に導入することと、
ii)色シグナル又は蛍光シグナルの存在及び強度を判定することと、を含み、
それによって、前記出血の存在及び強度を判定する、方法。
(3) 前記発色基質又は蛍光基質が、
(i)膜上又は多孔性マトリックス上に固定化される、又は、
(ii)前記潜在的出血部位に直接噴霧される、又は、
(iii)静脈内に導入される、又は、
(iv)別様に全身的に導入される、実施態様1に記載の方法。
(4) トロンビンを生成する外因性工程を含まない、実施態様1又は2に記載の方法。
(5) 滲出性/軽度出血及び重度/困難な出血からなる群から選択される出血の強度を検出するための、実施態様2に記載の方法。
【0216】
(6) 前記外科処置が、最小侵襲手術(MIS)である、実施態様1~5のいずれかに記載の方法。
(7) 前記基質が、蛍光性である、実施態様1~6のいずれかに記載の方法。
(8) 前記基質が、発色性である、実施態様1~6のいずれかに記載の方法。
(9) 前記基質が、マトリックス上に固定化される、実施態様1~6のいずれかに記載の方法。
(10) 前記マトリックスが、赤血球に対して不透過性である膜である、実施態様9に記載の方法。
【0217】
(11) 前記マトリックスが、フィブリン重合阻害剤を含む、実施態様9又は10に記載の方法。
(12) 対象における外科処置中に出血部位を位置特定する方法であって、
i)吸収性マトリックスを潜在的出血部位と接触させること、
ii)前記潜在的出血部位から前記マトリックスを除去すること、
iii)前記除去したマトリックスを、トロンビンの発色基質又は蛍光基質を含む検出溶液中又はその上に配置して、前記溶液中の色又は蛍光の出現を検出すること、を含み、
それによって、前記出血部位を位置特定する、方法。
(13) 対象における外科処置中の出血の強度を評価するための方法であって、
i)吸収性マトリックスを潜在的出血部位又は出血部位と接触させること、
ii)前記潜在的出血部位から前記マトリックスを除去すること、
iii)前記除去したマトリックスを、トロンビンの発色基質又は蛍光基質を含む検出溶液中又はその上に配置し、色シグナル又は蛍光シグナルの強度を判定すること、を含み、
それによって、前記出血の強度を評価する、方法。
(14) 外科処置における出血を検出するためのデバイス(1)であって、
-遠位端(3、101)及び近位端(4)を有するハウジング(2)であって、前記遠位端(3、101)が、対象の潜在的出血部位内の血液に接触するように構成されている、ハウジング(2)と、
-前記ハウジングの前記近位端(4)と前記遠位端(3、101)との間に画定された領域(7)内に収容されたマトリックス(6)であって、前記マトリックスの少なくとも一部が、発色性又は蛍光性のトロンビン基質を含み、前記マトリックスが、前記血液中に存在する液体を前記基質まで吸着することができ、トロンビンが、前記液体中に存在する場合に、前記基質と反応して、可視的蛍光性又は発色性シグナル(8)を生成することを可能にする、マトリックス(6)と、
-前記ハウジング内に配置されており、かつ前記シグナルを視覚化するように構成されている、検出領域(9)と、を備える、デバイス(1)。
(15) 前記遠位端(3、101)が、開口部(5)を有する、実施態様14に記載のデバイス。
【国際調査報告】