IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ワイランド アディテイヴ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-粉末床溶融結合を使用した付加製造 図1
  • 特表-粉末床溶融結合を使用した付加製造 図2a
  • 特表-粉末床溶融結合を使用した付加製造 図2b
  • 特表-粉末床溶融結合を使用した付加製造 図3
  • 特表-粉末床溶融結合を使用した付加製造 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】粉末床溶融結合を使用した付加製造
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/305 20060101AFI20240116BHJP
   H01J 37/06 20060101ALI20240116BHJP
   H01J 27/10 20060101ALI20240116BHJP
   H01J 27/16 20060101ALI20240116BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20240116BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20240116BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240116BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240116BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240116BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240116BHJP
【FI】
H01J37/305 Z
H01J37/06 B
H01J27/10
H01J27/16
H01J37/08
H01J37/20 H
B28B1/30
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023537917
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 GB2021053352
(87)【国際公開番号】W WO2022136843
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】2020407.9
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523230339
【氏名又は名称】ワイランド アディテイヴ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハッセー、マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴィー、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】レイドラー、イアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン バーグ、ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン、ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4F213
4G052
5C101
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213WA25
4F213WA86
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL42
4F213WL52
4F213WL67
4F213WL75
4F213WL85
4F213WL87
4F213WL96
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
5C101AA39
5C101BB03
5C101BB08
5C101BB10
5C101DD03
5C101DD30
5C101DD33
5C101EE17
5C101EE22
5C101EE43
5C101EE44
5C101EE73
5C101FF25
5C101FF57
(57)【要約】
粉末床溶融結合を使用した付加製造荷電粒子ビームを使用して粉末床を照射するように配置された粉末床溶融結合装置であって、装置が、荷電粒子ビームと反対の電荷の中和粒子を提供するように動作可能な中和粒子源;及び粉末上への荷電粒子ビームの照射位置の近傍にある粉末床に対して、中和粒子源からの中和粒子のビームを弱く集束させるように配置された中和粒子集束システムを備え、それにより中和粒子が、荷電粒子ビームによる粉末床の帯電を中和する、装置が提供される。粉末床溶融結合装置を使用した付加製造の方法であって、部分が一連の層として形成され、それぞれの層が、粉末床の層上に荷電粒子ビームを走査して、所定のパターンに従って粉末を融解することによって形成される、方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末床溶融結合装置を使用した付加製造の方法であって、前記方法が、部分を一連の層として形成する段階を備え、それぞれの層が、
(a)粉末床を第1の荷電粒子で照射して、前記粉末床に及び前記粉末床に近接して、第1の荷電粒子の領域を形成する段階;
(b)前記第1の荷電粒子の前記領域が形成された後に、前記第1の荷電粒子と反対の電荷の第2の荷電粒子のビームを使用して、前記粉末床を照射する段階、前記方法は、第2の荷電粒子の前記ビームを前記粉末床上に走査して、所定のパターンに従って前記粉末を融解させる段階を備える;及び
(c)前記第2の荷電粒子の前記ビームを停止し、前記粉末床の粉末の新たな層を形成する段階;
によって形成され、
前記第1の荷電粒子が、前記第2の荷電粒子の前記ビームによる前記粉末床の帯電を緩和する、方法。
【請求項2】
前記第2の荷電粒子の前記ビームが、負に帯電した電子ビームであり、前記第1の荷電粒子が、正に帯電したイオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉末床上に前記第2の粒子の前記ビームが走査されるときに、前記第1の荷電粒子及び前記第2の荷電粒子の前記ビームの相互作用に起因して、粉末運動を誘起するのに必要とされる閾値を下回る平衡電位が前記粉末床上で維持されるように、前記第1の荷電粒子の運動エネルギー及び電流を制御する段階を備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の荷電粒子の前記ビームの照射位置の近傍にある前記粉末床上に前記第1の荷電粒子を弱く集束させ、それにより前記第2の荷電粒子の前記ビームによる前記粉末床の帯電を前記第1の荷電粒子が緩和する段階をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
付加製造に使用するための粉末床溶融結合装置であって、前記装置が、
第1の荷電粒子を提供するように動作可能な、第1の荷電粒子の第1の供給源;
前記第1の荷電粒子と反対の電荷の第2の荷電粒子のビームを提供するように動作可能な、第2の荷電粒子の第2の供給源;
前記第1の荷電粒子、及び前記第2の荷電粒子の前記ビームを受けるための粉末床;及び
部分を一連の層として形成するように前記第1の供給源及び前記第2の供給源の動作を制御するように構成されたコントローラ
を備え、それぞれの層が、
(a)前記粉末床を前記第1の荷電粒子で照射して、前記粉末床に及び前記粉末床に近接して、第1の荷電粒子の領域を形成する段階;
(b)第1の荷電粒子の前記領域が形成された後に、前記第1の荷電粒子と反対の電荷の第2の荷電粒子の前記ビームを使用して、前記粉末床を照射する段階、ここで第2の荷電粒子の前記ビームが前記粉末床上に走査されて、所定のパターンに従って前記粉末を融解させる;及び
(c)第2の荷電粒子の前記ビームを停止し、前記粉末床の粉末の新たな層を形成する段階;
によって形成され、
前記第1の荷電粒子が、第2の荷電粒子の前記ビームによる前記粉末床の帯電を緩和する、粉末床溶融結合装置。
【請求項6】
第2の荷電粒子の前記ビームが、負に帯電した電子ビームであり、前記第1の荷電粒子が、正に帯電したイオンである、請求項5に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項7】
第1の荷電粒子の前記第1の供給源が、希ガスの正イオンを発生させるように構成されたイオン源である、請求項6に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項8】
前記正イオンを発生させるための第1の荷電粒子の前記第1の供給源として、プラズマ源を備える、請求項7に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項9】
前記プラズマ源が、熱イオン放出プラズマフラッド源、高周波プラズマ源、中空カソードプラズマ源、又はデュオプラズマトロンである、請求項8に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項10】
前記プラズマ源が、中空カソードプラズマ源又はデュオプラズマトロンであり、前記装置が、前記粉末への第2の荷電粒子の前記ビームの照射位置の近傍にある前記粉末床上に前記第1の荷電粒子のビームを弱く集束させ、それにより第2の荷電粒子の前記ビームによる前記粉末床の帯電を前記第1の荷電粒子が緩和するように配置された中和粒子集束システムをさらに備える、請求項5から8のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項11】
前記プラズマから正に帯電したイオンを抽出して第1の荷電粒子の前記ビームを形成するために、前記プラズマ源の出力部に位置付けられた負の抽出器電極又はグリッド抽出器をさらに備え、第1の荷電粒子の前記ビームの前記電流が、前記プラズマ源に印加されるバイアス電位による影響を受けない、請求項10に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項12】
前記中和粒子集束システムが、前記プラズマ源及び前記粉末床の間で、前記第1の荷電粒子の前記ビームに沿って整合しており、それらの間で電場をサポートするように離隔した、一連の静電式のシリンドリカルレンズ素子又は開口レンズ素子を有し、前記一連の静電式のシリンドリカルレンズ素子又は開口レンズ素子において、それぞれのレンズ素子が、異なるそれぞれの電位を基準とする、請求項11に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項13】
前記粉末床に最も近い静電レンズ素子が、実質的に接地電位であるように構成されており、それにより前記第1の荷電粒子のエネルギーが、前記プラズマ源に印加される前記バイアス電位によって実質的に定義される、請求項12に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項14】
前記中和粒子集束システムが、前記プラズマ源及び前記粉末床の間で前記第1の荷電粒子の前記ビームに沿って整合された一連の電磁レンズ素子を有し、前記一連の電磁レンズ素子において、それぞれのレンズ素子が、異なるそれぞれの電流を通す、請求項10から13のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項15】
前記電磁レンズ素子のうちの1つ又は複数を取り囲む1つ又は複数のフェライトをさらに備え、それにより前記中和粒子集束システムの外側に実質的に磁場が存在しない、請求項14に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項16】
第1の荷電粒子の前記ビームが、第2の荷電粒子の前記ビームと疑似同期して前記粉末床上に走査されるように、第1の荷電粒子の前記ビームを制御するように配置された走査システムをさらに備え、前記走査システムが、前記中和粒子集束システムの最後のレンズ素子内に位置付けられた静電又は電磁偏向器を有する、請求項10から15のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項17】
前記走査システムが静電偏向器を有し、接地電位であるように、及び前記粉末床に最も近い前記静電レンズ素子の前記出力部に位置付けられるように構成されたワイヤメッシュをさらに備え、それにより前記中和粒子集束システム又は静電偏向器から前記粉末床に対する電場透過が実質的に存在しない、請求項16に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項18】
前記集束システムが、屈曲部を利用し、それにより前記プラズマ源及び前記粉末床の間に前記集束システムを通る直接的な見通し線が存在しない、請求項10から17のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項19】
前記粉末床の周りに位置付けられた熱シールドをさらに備え、前記熱シールドが、接地電位であるように構成されており、それにより前記熱シールド及び前記粉末床に最も近い前記集束システムの一部分の間に実質的に電場が存在しない、請求項10から18のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項20】
前記中和粒子源に印加されるバイアス電位と直列で使用されるように構成されたスナバ回路をさらに備える、請求項8から19のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項21】
第1の荷電粒子の前記第1の供給源が、前記粉末床溶融結合装置の主ビルドチャンバに連結された補助チャンバに格納されている、請求項5から20のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造(additive manufacturing)における粉末床溶融結合装置の使用に関し、特に電子ビーム積層造形(additive layer manufacture)中に金属粉末に照射するときの電荷制御に関するが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
付加製造に利用される最も有名な技術のうちの1つは、粉末(通常は金属又はプラスチック)の薄層が、レーザ又は電子ビームなどのエネルギー源によって選択的に融解される粉末床溶融結合である。粉末層の融解されたエリアは、ビルドすべき物品の断面部分を形成する。層が選択的に融解された後、粉末の新たな層が堆積され、次いで同じく選択的に融解されて、それにより完全な物品が層ごとに作り上げられる。
【0003】
金属粉末は通常、酸化して絶縁性又は半絶縁性になる傾向があるという不利益を被る金属合金である。この絶縁性又は半絶縁性の状態にあるとき、粉末床溶融結合プロセスにおいて高エネルギーの電子ビームなどの荷電粒子ビームを照射すると、金属粉末粒子自体が帯電し、その電荷又はそれらの一部を保持することになる。電荷の蓄積が増大するにつれ、金属粉末粒子は、クーロン斥力の増大に晒され、その結果、下側の粉末層又は融解材料に作用している重力及び摩擦力を金属粉末が克服する場合がある。帯電した粉末層は、次いで可動になることがあり、粉末床から排出されて、層ごとの付加プロセスを瞬時に台なしにし、潜在的には装置を破損することさえある。例えば、粉末が装置のコンポーネントを汚染し、それに溶融結合することがある。高電圧の電気アークが形成される場合もあり、可動性の粉末が電子ビームを散乱させることがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の態様によれば、粉末床溶融結合装置を使用した付加製造の方法であって、前記方法が、部分を一連の層として形成する段階を備え、それぞれの層が、(a)粉末床を第1の荷電粒子で照射して、前記粉末床に及び前記粉末床に近接して、第1の荷電粒子の領域を形成する段階;(b)前記第1の荷電粒子の領域が形成された後に、前記第1の荷電粒子と反対の電荷の第2の荷電粒子のビームを使用して、前記粉末床を照射する段階、前記方法は、前記第2の荷電粒子のビームを前記粉末床上に走査して、所定のパターンに従って前記粉末を融解させる段階を備える;及び(c)前記第2の荷電粒子のビームを停止し、前記粉末床の粉末の新たな層を形成する段階;によって形成され、前記第1の荷電粒子が、前記第2の荷電粒子のビームによる前記粉末床の帯電を緩和する、方法が提供される。
【0005】
方法はさらに、前記粉末床上に前記第2の粒子のビームが走査されるときに、前記第1の荷電粒子及び前記第2の荷電粒子のビームの相互作用に起因して、粉末運動を誘起するのに必要とされる閾値を下回る平衡電位が前記粉末床上で維持されるように、前記第1の荷電粒子の運動エネルギー及び電流を制御する段階を備えてよい。
【0006】
方法は、前記第2の荷電粒子のビームの照射位置の近傍にある前記粉末床上に前記第1の荷電粒子を弱く集束させ、それにより前記第2の荷電粒子のビームによる前記粉末床の帯電を前記第1の荷電粒子が緩和する段階をさらに備えてよい。
【0007】
本発明の別の態様によれば、付加製造に使用するための粉末床溶融結合装置であって、前記装置が、第1の荷電粒子を提供するように動作可能な、第1の荷電粒子の第1の供給源;前記第1の荷電粒子と反対の電荷の第2の荷電粒子のビームを提供するように動作可能な、第2の荷電粒子の第2の供給源;前記第1の荷電粒子、及び前記第2の荷電粒子のビームを受けるための粉末床;及び部分を一連の層として形成するように前記第1の供給源及び前記第2の供給源の動作を制御するように構成されたコントローラを備え、それぞれの層が、(a)前記粉末床を前記第1の荷電粒子で照射して、前記粉末床に及び前記粉末床に近接して、第1の荷電粒子の領域を形成する段階;(b)前記第1の荷電粒子の領域が形成された後に、前記第1の荷電粒子と反対の電荷の前記第2の荷電粒子のビームを使用して、前記粉末床を照射する段階、ここで前記第2の荷電粒子のビームが前記粉末床上に走査されて、所定のパターンに従って前記粉末を融解させる;及び(c)前記第2の荷電粒子のビームを停止し、前記粉末床の粉末の新たな層を形成する段階;によって形成され、前記第1の荷電粒子が、前記第2の荷電粒子のビームによる前記粉末床の帯電を緩和する、粉末床溶融結合装置が提供される。
【0008】
前記第2の荷電粒子のビームは、負に帯電した電子ビームであってよく、前記第1の荷電粒子は、正に帯電したイオンである。
【0009】
前記第1の荷電粒子の第1の供給源は、希ガスの正イオンを発生させるように構成されたイオン源であってよい。
【0010】
粉末床溶融結合装置は、前記正イオンを発生させるための前記第1の荷電粒子の第1の供給源として、プラズマ源を備えてよい。
【0011】
前記プラズマ源は、熱イオン放出プラズマフラッド源、高周波プラズマ源、中空カソードプラズマ源、又はデュオプラズマトロンであってよい。
【0012】
プラズマ源は、中空カソードプラズマ源又はデュオプラズマトロンであってよく、前記装置は、前記粉末への前記第2の荷電粒子のビームの照射位置の近傍にある前記粉末床上に前記第1の荷電粒子のビームを弱く集束させ、それにより前記第2の荷電粒子のビームによる前記粉末床の帯電を前記第1の荷電粒子が緩和するように配置された中和粒子集束システムをさらに備えてよい。
【0013】
粉末床溶融結合装置は、前記プラズマから正に帯電したイオンを抽出して前記第1の荷電粒子のビームを形成するために、前記プラズマ源の出力部に位置付けられた負の抽出器電極又はグリッド抽出器をさらに備えてよく、前記第1の荷電粒子のビームの前記電流は、前記プラズマ源に印加されるバイアス電位による影響を受けない。
【0014】
前記中和粒子集束システムは、前記プラズマ源及び前記粉末床の間で、前記第1の荷電粒子の前記ビームに沿って整合しており、それらの間で電場をサポートするように離隔した、一連の静電式のシリンドリカルレンズ素子又は開口レンズ素子を有してよく、前記一連の静電式のシリンドリカルレンズ素子又は開口レンズ素子において、それぞれのレンズ素子が、異なるそれぞれの電位を基準とする。
【0015】
前記粉末床に最も近い静電レンズ素子が、実質的に接地電位であるように構成されてよく、それにより前記第1の荷電粒子のエネルギーが、前記プラズマ源に印加されるバイアス電位によって実質的に定義される。
【0016】
前記中和粒子集束システムは、前記プラズマ源及び前記粉末床の間で前記第1の荷電粒子の前記ビームに沿って整合された一連の電磁レンズ素子を有してよく、前記一連の電磁レンズ素子において、それぞれのレンズ素子が、異なるそれぞれの電流を通す。
【0017】
粉末床溶融結合装置は、前記電磁レンズ素子のうちの1つ又は複数を取り囲む1つ又は複数のフェライトをさらに備えてよく、それにより前記中和粒子集束システムの外側で発せられる磁場が実質的に存在しない。
【0018】
粉末床溶融結合装置は、前記第1の荷電粒子のビームが、前記第2の荷電粒子のビームと疑似同期して前記粉末床上に走査され得るように、前記第1の荷電粒子のビームを制御するように配置された走査システムをさらに備えてよく、前記走査システムは、静電又は電磁偏向器を有してよい。
【0019】
粉末床溶融結合装置は、接地電位であるように、及び前記粉末床に最も近い前記静電レンズ素子の前記出力部に位置付けられるように構成されたワイヤメッシュをさらに備えてよく、それにより前記中和粒子集束システム又は静電偏向器から前記粉末床に対する電場透過が実質的に存在しない。
【0020】
前記集束システムは、屈曲部を利用してよく、それにより前記プラズマ源及び前記粉末床の間に前記集束システムを通る直接的な見通し線が存在しない。
【0021】
粉末床溶融結合装置は、前記粉末床の周りに位置付けられた熱シールドをさらに備えてよく、前記熱シールドは、接地電位であるように構成されてよく、それにより前記熱シールド及び前記粉末床に最も近い前記集束システムの一部分の間に実質的に電場が存在しない。
【0022】
粉末床溶融結合装置は、前記中和粒子源に印加されるバイアス電位と直列で使用されるように構成されたスナバ回路をさらに備えてよい。
【0023】
前記第1の荷電粒子の第1の供給源は、前記粉末床溶融結合装置の主ビルドチャンバに連結された補助チャンバに格納されていてよい。
【0024】
上記に基づき、本発明の実施形態は、粉末を融解するために使用されるビームによって引き起こされる粉末床への過剰な電荷集積を有効に緩和することが可能な、付加製造のための方法及び装置を提供する。
【0025】
ビルドプロセス中には、付加製造中に粉末床を照射するために使用される粒子と反対の電荷の粒子が、融解に使用される荷電粒子ビームによる照射に起因する粉末床上の金属粒子の電荷を中和するように作用する。粉末床の電荷の緩和は、こうして実現される。したがって、電荷により誘起される金属粉末粒子の運動というインスタンスを、実質的に低減又は排除することさえでき、関連する悪影響が回避される。
【0026】
本願において開示される技術は、電荷緩和のための第1の荷電粒子の利用可能性を制御する「プライミング」プロセスにより、この機構の最適化を可能にする。
【0027】
プライミングステージでは、付加製造中に粉末床を照射するために使用される第2の荷電粒子と反対の電荷の第1の荷電粒子で、粉末床が照射される。ビルドプロセスが開始されると、粉末床への電荷集積の緩和が、自己調節式に生じる。第2の荷電粒子のビームによる粉末床の照射に先立って、粉末床の近傍において第1の荷電粒子が利用可能であることから、第2の荷電粒子のビームが起動するとすぐに、且つ粉末床上へのビルドを終了させる過剰な電荷集積を緩和するように、粉末粒子電荷の中和が生じることが可能であり、そうでなければ、過剰な電荷集積が第2の荷電粒子のビームによって引き起こされてしまう。第2の荷電粒子のビームを使用してそれぞれの層を形成することに先立ってプライミングステージを含めることにより、結果的に粉末床に生じる電荷が、粉末運動性を誘起するのに必要とされる閾値を下回ることが確保され、上述した悪影響の増幅が回避される。
【0028】
本願において開示する技術は、粉末床上に走査することが可能な、中和作用のある第1の荷電粒子の集束ビームを提供するように配置された中和粒子集束システムも利用する。この手法は、中和粒子源の効率的な動作を可能にし、これはまた、中和作用のある第1の電荷粒子の供給源の寿命を延ばすことにつながるとともに、ビルドエリア上への中和粒子の均一な分散を可能にすることがある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の実施形態は、添付図面を参照しながら単なる例として説明される。
【0030】
図1】本発明の実施形態による積層造形装置を示す。
図2a】本発明の実施形態による積層造形装置で使用される受動的スナバ回路を示す。
図2b】本発明の実施形態による積層造形装置で使用される能動的スナバ回路を示す。
図3】本発明の実施形態による、中和粒子集束システムを含む積層造形装置を示す。
図4】本発明の実施形態による積層造形装置を動作させる方法を示す。
【0031】
説明の便宜上、図面の一部の要素は縮尺通りに示されていないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明の実施形態による粉末床溶融結合装置1を示す。図1に示してある装置1は、電子ビーム17を使用して金属粉末を融解し、層ごとに部分3を形成する付加製造を行うように構成されている。
【0033】
粉末床溶融結合装置1は、電子ビーム17を形成、条件調整、及び誘導するための電子光学アセンブリ21を備える。電子光学アセンブリ21は、電子を放出するように配置された電子源7を備える。電子光学アセンブリ21は、粉末床に集束する電子ビーム17を、放出された電子から形成するための電子抽出及び集束要素8をさらに備え、この電子ビーム17は、図1において装置1のz軸として示してあるものに沿って進む。電子光学アセンブリ21は、金属粉末床2上に電子ビーム17を走査させて、融解した粉末を所望の付加製造部分3にするための電子偏向システム9をさらに備える。電子偏向システム9は、電子ビーム17の周りに配置された電磁偏向器を備える。
【0034】
電子光学アセンブリ21の動作は、当技術分野において公知であるように、ビルドコントローラ(図示せず)、例えば適切にプログラムされた1つ又は複数のコンピュータ又はプロセッサから導出される信号により、所望の部分3のための走査ファイルに従って制御される。
【0035】
装置1は、分配機構(図示せず)を介して粉末を分配するように動作可能な少なくとも1つのホッパ4、及び分配された粉末を、粉末床2を画成する体積内で受けるように位置付けられたビルドタンク19を支持するためのステージ20をさらに備える。ステージ20は、ピストンによりz方向に可動であり、ホッパ4及びピストンは、ビルドコントローラ(図示せず)から導出される信号と連動して制御される。
【0036】
装置1は、本発明の実施形態による付加製造方法で使用される電荷緩和機構で使用すべきイオンを発生及び放出するためのイオン源11をさらに備え、これについては以下でより詳細に説明する。
【0037】
図1に示す構成において、イオン源11はプラズマ源である。プラズマ源11から発せられるイオン束16の進行方向は、電子ビーム17の進行方向に対して角度を成す。図1に示す実施形態において、電子ビーム17はz軸に対して平行であり、イオン束16の方向はこれに対して傾斜しているが、代替的実施形態では、イオン束16の方向がz軸に整合していてよく、電子ビーム17がこれに対して傾斜していてよい。プラズマ源11の動作は、ビルドコントローラ(図示せず)から導出される信号によって制御される。
【0038】
本発明の実施形態において、付加製造は真空条件下で実行される。したがって、装置1は、集束電子ビーム17及びイオン束16が粉末床2に入射する前に通過するビルド真空チャンバ5をさらに備える。ビルド真空チャンバ5には、電子光学アセンブリ21を格納した第1の補助真空チャンバ6、及びプラズマ源11を格納した第2の補助真空チャンバ10が連結されている。真空条件は、粉末溶融結合システムの技術分野において知られているように、1×10-3mbar(1×10-1Pa)~1×10-7mbar(1×10-5Pa)オーダーの真空圧で維持される。
【0039】
ホッパ4は、測定された量の粉末を粉末床2の表面に堆積させるように粉末を分配する。スクレーパ又はブレードなどの機構(図示せず)は、粉末を可動ステージ20上で均等に分散させるために使用される。電子光学アセンブリ21は、粉末床2上を電子ビーム17が走査して、粉末を加熱及び融解し、部分3の固体層を形成するように、電子ビーム17を形成及び誘導する。部分3の各層が形成された後、ステージ20がz方向に下げられて、増大する部分3の高さに対応し、次の層を拡散できるようにする。
【0040】
電荷緩和
上で述べたように、負に帯電した電子ビーム17と粉末粒子との相互作用は、金属粉末粒子上の絶縁性又は半絶縁性の酸化物層に起因して、未融解の粉末粒子を負に帯電させることがある。
【0041】
本発明の実施形態で使用される電荷緩和方法を用いなければ、粉末床2内で同じ電荷極性の他の荷電粒子によって加えられるクーロン斥力に起因して粉末粒子が粉末床2から追い出されてビルドチャンバ5中を移動する上述したビルド終了事象を含め、ビルドプロセスに悪影響を及ぼし得る粉末上への負電荷の蓄積が、これによってもたらされることがある。
【0042】
ビルドプロセス開始時の電子ビーム17の起動に先立つ「プライミング」ステージにおいて、粉末床2は、正電位に帯電されるようにプラズマ源11からのイオンで照射される。静止状態の粉末床2(すなわち、電子ビームが入射していない粉末のエリア)では、粉末床2上で誘起される電位(単位V)がイオンの運動エネルギー(単位eV)の大きさと等しくなるまで、粉末に入射するイオン束16が粉末上に電荷を堆積させ続ける。この時点で、帯電した粉末床2の電位は、さらに入来するイオンに対して障壁を形成するのに十分であり、このさらに入来する電位は、電位障壁を克服して粉末床2に到達するために必要な運動エネルギーを有していない。さらに入来する正イオンが、帯電した粉末床2に到達するときにはほぼゼロの運動エネルギーを有するようになるまで、電位障壁は、それらの運動エネルギーを低減させ、帯電した粉末床2の上方に自由な正イオンの「雲」を形成する。ほぼゼロの運動エネルギーを有するこれらの自由な正イオンは、ビルドプロセス中の負電荷の過剰な蓄積を緩和するために利用可能である。
【0043】
プライミングステージは、粉末の運動が誘起されるほど粉末床2が帯電されないように、構成されている。これは、第1の荷電粒子ビームのエネルギーを適切に制限することによって実現される。
【0044】
プライミングステージ後に、電子ビーム17が起動し、粉末床2に向けられる。電子源のカソードは、接地を基準とする電子源のアノードに対しておよそ-60~-80kVなどの高電圧に保たれて、電子ビーム17内の電子を、電子源7から離れて粉末床2に向かうよう加速させる。これは、疑似単色エネルギーの特徴を有するおよそ60~80keVの電子ビームエネルギーに相当する。プラズマ源11は、粉末粒子への正電荷の堆積を最大化するようイオンエネルギーを最適化しながら、その一方で、電子ビーム17による粉末の融解プロセスを妨げる、電荷により誘起される粉末運動を開始させないように選択された、+80~+300V、例えば+200Vなどのより低い正電圧でバイアスがかけられている。
【0045】
静止状態の間に粉末床2に蓄積した正電荷は、電子ビーム17に起因して粉末床2に蓄積される負電荷によって除去される。電子ビーム17は、イオン束16によって誘起される正電位よりもはるかに大きい負電位を誘起することができ、ひいては粉末床2の照射エリアが負に帯電される。この負電荷は、場合により電子ビーム17自体のルートを介して、粉末床2の上方にある自由な正イオンの雲から正イオンを引き付け、これは、電子に起因する負電荷を打ち消す役割を果たす。
【0046】
次いで、粉末床2上に電子ビーム17が走査されるとき、イオン束16及び電子ビーム17からの電子の相互作用に起因して、粉末が融解されているエリア上に平衡電位が確立される。平衡電位は、粉末の運動性が開始される閾値を下回っている。電子ビーム17及びイオン束16が使用され続けると、粉末床2の上方の自由イオンの雲は継続的に補充される。こうして、必要に応じて(すなわち、例えば特定の材料の使用又は電子ビームの走査方針に起因して粉末床2に蓄積する負電荷の量に応じて)、イオンは、ビルドの間中、電荷の中和に容易に利用可能である。このように、自己調節式の電荷緩和プロセスが可能になる。
【0047】
自己調節のこのプロセスは、粉末が負電荷を蓄積し過ぎるのを防止し、こうして、上述したような粉末床2上の過剰な電荷によって引き起こされる多数の潜在的なビルド終了事象が回避される。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態は、電荷中和に利用可能なイオンの数量、電荷中和プロセスのタイムスケール、及び粉末床2に堆積させることができるイオンの最大数に影響を及ぼすように、ユーザが電荷中和パラメータを特定のビルド環境(例えば、材料、特徴分解能)に合わることが可能な、ビルドコントローラに接続されたユーザインタフェースを備える。ビルド中に使用される電子ビームパラメータ(例えば、電子ビーム電流、スポットサイズ、走査速度、走査経路、及びハッチ形状)の全てにより、所与の時間中に粉末床2の所与のエリアに堆積する負電荷の量が決定する。したがって、電荷中和プロセスは、使用される正確なビルドパラメータに大きく依存する。
【0049】
ビルドパラメータは、層によって著しく異なることがあり、それによりいくつかの実施形態においては、この違いに従って層と層の間で電荷中和パラメータを調整することが可能である。
【0050】
図1に示す実施形態では、プラズマ源11が示してあり、これはプラズマフラッド源として具体化される。プラズマ源11は、ビルド表面に結果的に形成される金属部分3の金属格子の格子間汚染を生じさせないように選択された、希ガス、例えばアルゴン、ヘリウム、又はキセノンのうちの1つなどのガスに、原子イオン化プロセスを適用することにより、低エネルギーの正イオンを生成する。希ガスのうち質量が最小で運動性が最高のヘリウムを使用することにより、中和プロセスの効率が向上することがある。原子イオン化プロセスは、接地に対して正のバイアス電位に保たれた放電チャンバ内でガスをイオン化するための、電流を通すタングステンフィラメントからの熱イオン放出に基づいてよい。このように発生したプラズマは、プラズマ源11の開口を介して放電チャンバから出される。
【0051】
図1に示してあるように、プラズマフラッド源11は、ビルド真空チャンバ5に取り付けられた別個の真空チャンバ10に格納されたものである。
【0052】
カスケードイオン化及び抑制
ビルドエリア内に存在する粒子の電子衝撃イオン化が発生することによるビルドプロセスへの影響 を、緩和することが必要な場合もある。
【0053】
ビルドプロセス中に、入射電子ビーム17からの電子は、粉末床2の表面から弾性的に後方散乱することがある。入射電子ビーム17からの電子は、ビルド表面において材料をイオン化することにより、二次電子を発生させることもあり、これらの二次電子は、粉末床2の表面からはじき出されることがある。後方散乱した電子及び二次電子は両方とも、ビルドエリアに存在するイオン及び原子(プラズマフラッド源11から発せられた原子及び/又はイオン、又は融解プール18から蒸発した原子)のさらなるイオン化を生じさせて、さらなる電子を生成することがあり、次いでこれらがさらなるイオン化事象をさらに生じさせることがある。このような連続したイオン化事象は、本明細書においてカスケードイオン化と呼ばれる。
【0054】
正にバイアスのかかったプラズマフラッド源11の放電チャンバ及び粉末床2に近接していることに起因して、及び正に帯電したイオン束16が電子ビーム17の負に帯電したルートを取り囲んでいることに起因して、ビルド表面の近くに電場が存在する。組み合わされたこの電場は、ビルドエリア内の二次電子に付加的なエネルギーを加えるのに十分な大きさを有しており、電子-原子の相互作用の増大をもたらし、ひいてはカスケードイオン化の発生に重要な役割を果たす。
【0055】
上述したプロセスの結果、ビルド体積内で大きい電子及びイオン電流が発生する。ビルドエリア内で発生した大きい電子流は、プラズマフラッド源11及びプラズマフラッド源11に取り付けられた電源の動作を妨げることがある。プラズマフラッド源の動作を妨げることにより、電子ビーム17及び/又は融解プール18の周りのイオン電流密度の変化に起因して、電子ビーム17を取り囲むイオン束16により発生させられる電場が変化する場合、これは、結果的に電子ビームの位置のシフトを生じさせることがある。
【0056】
上述した電界効果は、付加製造されたコンポーネントの気孔率、表面仕上げ、及び形状精度に関して多数の問題を生じさせるおそれがある。以下で説明する電荷緩和の方法及び装置は、そのような問題の解決手段を提供する。
【0057】
上述した実施形態において、粉末床2から離れる帯電粉末粒子に関連付けられた、電荷により誘起される影響を実質的に除去することは、ビルドプロセスにプライミングステージを導入することによって実現される。カスケードイオン化の影響を緩和する必要がある場合、プラズマフラッド源11に印加されるバイアス電位と直列にスナバ回路が配置されてよい。スナバ回路は、カスケードイオン化が粉末床2で生じた場合に、バイアス電位の調節を可能にする。
【0058】
上述したように、プラズマフラッド源11は、正電圧によりバイアスがかけられている。いくつかの実施形態において、プラズマ源バイアス電源ユニット(power supply unit:PSU)は、プラズマフラッド源11の外部の電圧をおよそ+80~+300Vに設定する。通常動作中、このバイアス電圧は、プラズマフラッド源11が発生させたプラズマから電子を抽出するように作用し、その結果、主要なイオン束16はプラズマフラッド源11から離れて、粉末床2に入射することになる。
【0059】
しかしながら、カスケードイオン化が粉末床2で生じるとき、発生した大きい電子流がプラズマフラッド源11の外面に衝撃を与え、PSUを介して接地へと進む。これが、PSUの最大電流(通常は約2.5A)を超過し、自己調節によりPSUにその設定電圧を低下させ、結果的にプラズマフラッド源11のバイアス電位を低下させる。電圧の低下は、融解プール18における電場を減少させる効果を有する。これは、プラズマから抽出される電子が少なくなることにより、プラズマフラッド源11から出る全体的なイオン電流の減少がもたらされることに起因する;こうして、電子ビーム17及びイオン束16の相互作用の大きさが低減し、それにより電場が減少する。プラズマフラッド源11の外部での電圧の低下も、寄与要因であり得る。
【0060】
電場の減少は、ビルドエリアにおけるカスケードイオン化プロセスを抑制し、これによりプラズマフラッド源11の外面に入射してPSUを介して接地に進む電子流が減少する。PSUを通過する電子流が、PSUの最大電流より下に降下すると、PSUの電圧は設定レベルまで回復する。
【0061】
PSUの電圧が回復すると、(プラズマフラッド源11が粉末床2に近接しており、粉末床2の近傍に正イオンが存在することに起因して)電場は以前の通りに再確立され、こうしてカスケードイオン化プロセスが再開する。
【0062】
このように、上述したプロセスは、それ自体が連続的に繰り返され、カスケードイオン化の影響は、反復的に開始及び抑制される。したがって、カスケードイオン化は、粉末床2に到達するイオン電流に不安定さを導入し、融解プール18の近傍において電荷中和のために利用可能なイオンにむらを生じさせる。粉末床2の融解プール18の周りで誘起されるとともに、電子ビームの全長に沿って誘起されるイオン電流密度のそのような不安定さは、電子ビーム17の物理的な位置を変化させ、ビルドプロセスに支障を来たす。
【0063】
スナバ回路の主目的は、イオン電流密度を安定化することである。図2aに示してある実施形態において、スナバ回路101は、PSU103及びプラズマフラッド源放電チャンバ104の間のPSUの正線に高電力抵抗器102を直列に備える。この配置は、本明細書において「受動的スナバ」と呼ばれる。例えば、抵抗器102は、高電力(200W)22Ωの抵抗器であってよい。他の実施形態において、受動的スナバ101は、容量式又は誘導式の設計を有していてよい。
【0064】
カスケードイオン化が生じるとき、大きい電子流が、抵抗器102を介して接地へと通過する。これにより、電流及び抵抗値の積に比例して、抵抗器102にわたって電圧降下が誘起される。この電圧降下は、プラズマフラッド源104の有効バイアス電圧を低下させ、これは上述したように、プラズマフラッド源104に起因する電場及びイオン―電子の相互作用に起因する電場の両方を減少させる。電場の全体的な減少により、カスケードイオン化効果の強度が抑制されるか、又はカスケードイオン化効果が全体的に排除されることがある。
【0065】
PSU103は高電流を補償するようにそれ自体の供給電圧を調節可能であるが、スナバ101はそれよりも素早く上述した態様で動作することができる。したがって、スナバ101は、PSU104の自己調節を支援することができ、発生の頻度及び大きさの両方に関して、電子ビーム位置の偏向を減少させることができる。
【0066】
他の実施形態において、スナバ回路は、粉末床2におけるイオン電流密度を制御するための能動的なフィードバックシステムを利用する。そのような配置は、本明細書において「能動的スナバ」と呼ばれる。図2bに示してある実施形態において、能動的スナバ201は、プラズマフラッド源本体203に対して有効バイアス電圧をサポートする可変抵抗202、例えばMOSFET又は可変抵抗器を備える。フィードバックコントローラ204は、1つ又は複数の電流センサ205a、205bによって測定されたバイアス電流に基づき、有効バイアス電圧を能動的に制御する。
【0067】
カスケードイオン化が生じ、その結果バイアス電流のスパイクが検出されたとき、フィードバックコントローラ204は、可変抵抗202を調整して、バイアス電流を安定化するために提供される有効バイアス電圧を制御する。フィードバックコントローラ204は、受動的スナバよりもさらに素早く、カスケードイオン化を抑制するように動作可能であり、必要とされる時間動態により、能動的なフィードバックシステムを提供することの正当性が認められる。
【0068】
集束機構
上に述べたように、電子ビーム17によって誘起される負電荷をなくすようにビルドの前に正電荷で粉末床2をプライミングすることにより、及び任意選択で、ビルドエリアにおいてカスケードイオン化プロセスが生じたときにプラズマフラッド源11のバイアス電位を調節するためのスナバを利用することにより、電荷により誘起される多数の異なる効果を実質的に除去することができる。
【0069】
そのような電荷中和技術は中和イオンを伴い、この中和イオンは、融解プール18のエリアより著しく大きい粉末床2のエリア上に分散される。粉末床2に入射する広いエリアのイオン束16の強度は、その中心軸からの距離が増大するにつれて急速に低下する。
【0070】
必要とされるビルドサイズが増大するにつれて、必要とされるイオン束16の網羅範囲は増大し、プラズマフラッド源11を使用する場合には、網羅範囲のエリアのそのような増大により、粉末床2におけるイオンの中和分散に不均一性が導入されることが理解される。さらに、より大きいビルドエリアは、結果的により長いビルド時間を生じさせ、これによりプラズマフラッド源11が動作すべき時間の長さが増大し、それにより消耗品であるそのフィラメントにさらに時間がかかることになる。
【0071】
本発明の実施形態は、粉末床上を走査可能なイオンの集束ビームを提供することにより、これらの問題の解決手段を提供することを目的とする。この手法は、ビルドエリアを中和イオンで溢れさせる要件を緩め、より効率的なプラズマ源の動作を可能にする。
【0072】
プラズマ源からのイオンを集束させることにより、融解プールにおけるイオンの電流密度を増大しながら、その一方でプラズマ源からの総イオン出力を著しく低減することが可能であり、これによりプラズマ源の寿命が延び、その一方で集束イオンビームの走査により、ビルドエリア上で中和イオンの均一な分散も可能になる。例えば、広いエリアのフラッドシステムが1Aの電流を利用する場合、比較可能な集束イオンカラムシステムは、10~100mAの電流を利用することになる。
【0073】
図3に示してある構成において、粉末床溶融結合装置10は、イオン集束システム220をさらに備える。正イオンの点源又は近点源は、イオンを集束システム220に提供するために使用される。イオンのビームは、電子ビーム170よりも幅広いビーム幅及び/又は発散を有してよく、「ビーム」という用語は、本明細書において任意の特定のビーム幅の使用を必要とするために使用されるわけではない。プラズマ源11は、例えばデュオプラズマトロン、又は中空カソードプラズマ源であってよい。以下の説明において、実施形態は、デュオプラズマトロン110の文脈で説明される。
【0074】
集束システム220は、デュオプラズマトロン110によって生成されたイオンビーム160を条件調整及び誘導するように配置される。イオンビーム160を集束させることにより、粉末床20の特定の領域にイオンを集中させることを確保できる。イオンビーム160を誘導することにより、その位置が電子ビーム170の位置を追跡することが可能になり、こうして電荷中和を必要とする粉末床20の領域のみにイオンを提供することが確保される。この組合せにより、融解プール180における高イオン電流密度が実現され、ひいては電荷中和プロセスに支障を来たすことなく、デュオプラズマトロン110からの絶対イオン出力を低減することが可能になる。粉末床20上でイオンビーム160を走査できることにより、大きいビルドエリア上で均一な電荷中和がさらに可能になる。
【0075】
図3を参照すると、電子ビーム170の進行方向に対して角度を成して配置されたカラム内に、イオン集束システム220が示してある。図3に示してある実施形態において、電子ビーム170はz軸に対して平行であり、イオン集束システム220はこれに対して傾斜しているが、代替的実施形態においてはカラムがz軸に整合していてよく、これに対して電子ビーム170が傾斜していてよい。カラムは、本明細書においてイオンカラムとも呼ばれる。より詳細には、イオン集束システム220は、デュオプラズマトロン110から出る集束されていないイオンから、イオン集束システム220の長手軸に沿って進む弱い集束のイオンビーム160を形成するための複数のイオン集束レンズ素子130を備える。イオン集束システム220の動作は、ビルドコントローラ(図示せず)から導出される信号によって制御される。
【0076】
装置10はさらに、電子を遅延させてデュオプラズマトロン110によって生成されたプラズマ内のイオンを抽出するための、デュオプラズマトロン110の出力開口に位置付けられた高電圧の負の抽出器要素120を備える。抽出器要素120は、-4~―10kVなどの大きい負電位を基準とし、電極、グリッド、又は一連のグリッドであってよい。
【0077】
装置10は、ビルド真空チャンバ50に取り付けられたイオンカラムに一致するように形状設定された別個の真空チャンバ100に、デュオプラズマトロン110、抽出器電極120、及びイオン集束システム220が格納されるように、配置されている。デュオプラズマトロン110及び抽出器電極120の間の高電場は、集束要素として作用し、デュオプラズマトロン110から離れる正イオンを引き付け、イオン集束システム220の入力要素に向けて効率的にチャネリングする。このように、プラズマのイオン成分のみがイオン集束システム220に入り、以下で説明するように集束される。
【0078】
イオンカラムの長さは、デュオプラズマトロン110を粉末床20から遠くに設けることを可能にしながら、その一方でなお、イオン集束システム220の使用により有効な電荷中和を可能にするのに十分なイオン電流密度を維持する。デュオプラズマトロン110及び粉末床20の間の距離が増大すると、ビルド材料内の熱イオンフィラメントから蒸発したタングステンの取り込みが減少する。
【0079】
上述したように、イオン集束システム220の使用により、融解プール180におけるイオン電流密度が増大し、こうしてデュオプラズマトロン110に入るガスの流速を低下させることができる。次いでこれにより、ビルド表面におけるガス圧が低下して、デュオプラズマトロン110から発せられる原子及びイオンのカスケードイオン化プロセスのリスクが最小限に抑えられ、ひいてはビルドに悪影響を及ぼす電荷により誘起される影響が実質的に低減される。
【0080】
いくつかの実施形態において、イオン集束システム220は、屈曲部を利用する。この配置は、デュオプラズマトロン110及び粉末床20の間のイオン集束システム220を通る直接的な見通し線を排除することにより、デュオプラズマトロン110によるビルドエリアの汚染、又は粉末床20からの蒸発金属原子によるデュオプラズマトロン110の汚染をさらに低減することになる。
【0081】
先に概説したように、イオン集束システム220は、デュオプラズマトロン110及び粉末床20の間でイオンビーム160に沿って整合した一連のレンズ素子を備える。一連のレンズ素子は、弱い集束のイオンビーム160を形成するためのイオン集束レンズ素子130を備える。イオンビーム160は、50~60mmの領域上で弱く集束され、電子ビーム170の照射位置と疑似同期して走査され、それにより電子ビーム170の照射位置を取り囲む粉末のエリアは、ビルドプロセス中にその位置へ向かう電子ビーム170の走査により照射される前に、正電荷を蓄積させる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態において、イオン集束システム220は、イオン集束システム220の長手軸に沿って整合した一連の静電レンズ素子を備え、この静電レンズ素子のそれぞれは、それぞれの異なる電位にバイアスがかけられており、それらの間の電場をサポートするように長手方向に離隔している。イオン集束システム220は、一連の複数素子のシリンダーレンズ又は開口レンズから構成されてよい。いくつかの実施形態において、レンズ素子130は、間隙Gによって分離された、直径Dのシリンダーレンズであり、G/Dの比はおよそ0.1である。レンズ素子は、ステンレス鋼、アルミニウムなどから形成されてよい。そのような静電レンズ系の焦点特性は、レンズ電圧、シリンダー又は開口の直径、レンズ素子間の間隙、及びレンズ系を通って進むイオンのエネルギーに応じて異なる。
【0083】
本発明の実施形態の構成は、イオン集束システム220が存在しない場合と比べて、集束イオンビーム及びより小さいイオン源電流によるより高いイオン電流密度を提供する。上述したように、より低い総イオン源電流を使用してビルド表面における高い電流密度を維持できることから、これによりデュオプラズマトロン110は、より小さい熱イオンフィラメント電流を使用して、より低いガススループットで動作することが可能である。このことは、デュオプラズマトロン110の寿命を延ばし、ユーザサービスの間の期間を延ばすことによりダウンタイムを短縮する。こうして、粉末床20のより広いエリアを網羅し、より多くの層を備えたより大きいビルドに必要とされるビルド時間の増大を、実現することができる。
【0084】
放出される正イオンの(10eVオーダーの)開始エネルギーに加えて、デュオプラズマトロン110に印加されるバイアス電位と粉末床20に最も近いレンズ素子140との電位差によって、イオンエネルギーが定義されるように、粉末床20に最も近いレンズ素子140は、実質的に接地電位であるように構成される。最後のレンズ素子140の接地により、ある電位の電極が粉末床20の領域に近接していることに起因して電場が導入されることが回避され、その一方でイオンビーム160のエネルギーは、デュオプラズマトロンのバイアス電位により容易に制御されることが可能である。「実質的に」接地とは、特定のビルドプロセス内で対応することが可能な接地からの電気公差又は逸脱のいずれかを含むものと解釈されるべきである。
【0085】
代替的実施形態において、イオン集束システム220は、一連の電磁コイルレンズ素子を備え、それぞれの電磁コイルレンズ素子は、それぞれの異なる電流を通し、長手方向に離隔している。
【0086】
粉末床溶融結合装置10は、弱い集束のイオンビーム160を制御するように配置された、本明細書においてイオン偏向システム150と呼ばれる走査システムをさらに備え、それによりイオンビーム160を、集束電子ビーム170と疑似同期して粉末床20上に走査させることができる。走査プロセスは、ビルドプロセスのための走査ファイルに基づき、ビルドコントローラから提供される命令に連動して制御される。走査ファイルは、当技術分野において知られているように、ビームエネルギー、ビーム電流、及びビームスポットサイズ、並びに粉末床20を横切るビームの経路を画成する一連のビーム位置及び滞留時間などの多数のパラメータを、部分30の層ごとに指定する。
【0087】
この疑似同期により、図3の融解プール180に対応するものとして示してある、電子ビーム170の照射位置の領域を、イオンビーム160が完全に包囲することができ、それにより少なくとも一部の正イオン、特に電子ビーム170の照射位置に最も近い正イオンは、負に帯電した粉末粒子に引き付けられて、ここでそれらは、一部又は全部の負電荷を打ち消すのに役立つ。これは、上述したように、電子ビーム170に起因する負電荷の悪影響を緩和するのに役立ち、粉末粒子を、クーロン相互作用によってそれらが粉末床20から離れる電位閾値より低く保つ。電子ビーム170の照射位置から遠い一部の正イオンは、電子ビーム170によってまだ照射されていない粉末床20のエリアに正電荷を取得させるが、逆二乗の法則により距離が増大するにつれてクーロン力が急速に低下することから、それら自体は、負に帯電した粉末粒子に引き付けられることはない。電子ビーム170にまだ照射されていない粉末床20が正電荷を取得する機構は、上述したプライミングプロセスに類似しており、ビルドプロセス中の中和のためのイオンの雲を補充することにつながる。
【0088】
イオン偏向システム150は、静電偏向器を備え、これらの静電偏向器は、いくつかの実施形態において、イオンカラムの長手軸に対して、各プレートの表面の垂線が垂直になるように、イオンカラムの長手軸の周りに整合された一連のプレートである。プレートは対になっており、その対のそれぞれの部材が、イオンカラムの長手軸の両側に設けられており、イオンビーム160の方向を垂直に横切って電場が発生するように、それぞれが電位でバイアスをかけられている。いくつかの実施形態において、x-y偏向システムは、2対のプレートを備え、それぞれの対が、イオンカラムの長手軸を中心として互いに対して90度に配置されている。
【0089】
いくつかの実施形態において、イオン偏向システム150は、接地された最後のレンズ素子140に設けられており、それにより、レンズ素子140から粉末床20への電場を横断する偏向の透過が最小限に保たれる。偏向器に好ましい材料は、ステンレス鋼、アルミニウム、又はチタニウムなどの非磁性材料である。
【0090】
静電偏向器150は、電子ビーム170のための電磁偏向器90に電気的に連結されている。この連結は、弱い集束のイオンビーム160及び入射電子ビーム170が、走査されるときに疑似同期して大まかに互いに追随することが確保されるように、ビルドコントローラによって制御される。特に、疑似同期によって、電子ビーム170はイオンビーム160のエンベロープ内で急速に移動することができる。静電偏向器及び電磁偏向器のそのような組合せを使用することにより、偏向角及び反応速度に関して、それぞれの利点を最適に使用することが可能になる。代替的実施形態において、イオン偏向システム150は、電磁偏向器を使用する。使用される偏向機構の性質、及び必要とされる偏向角において、偏向器及び粉末床20の間の距離が考慮される。いくつかの実施形態において、偏向器及び粉末床20の間の距離は、200~500mmの領域にある。
【0091】
いくつかの実施形態において、装置10はさらに、実質的に接地電位になるように、及び最後の静電レンズ素子140の出力部に位置付けられるように構成されたワイヤメッシュを備え、それにより静電偏向器150又はイオン集束システム220が発生させた電場からビルドエリアへの電場透過が実質的に存在しなくなる。
【0092】
イオン集束システム220が電磁レンズを備え、且つ/又はイオン偏向システム150が電磁偏向器を備える場合、イオン集束システム220又はイオン偏向システム150の外部で実質的に磁場が存在しないように、粉末床溶融結合装置10は、1つ又は複数の高透磁率フェライトをさらに備えてよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、装置10はさらに、粉末床20を取り囲むように位置付けられた、電気絶縁された金属シートを備え、この金属シートは、熱シールドとして作用して、粉末床20からの赤外放射を、装置10の他のコンポーネントから離れるように反射させて粉末床20に戻す。そのような場合、熱シールド及び粉末床20に最も近いレンズ素子140の間に実質的に電場が存在しないように、熱シールドは、実質的に接地電位になるように構成される。
【0094】
いくつかの実施形態において、プラズマ源は、中空カソードプラズマ源である。熱イオンフィラメントが抵抗加熱されることを回避することにより、プラズマ源の寿命は、数千時間まで著しく延びる。さらに、中空カソードプラズマ源は、大きいイオン電流を放出してより多くのイオンを中和のために利用可能にするその能力に関して有利である。これにより、融解プール18においてより高いイオン電流密度が可能になり、場合によっては、中空カソードプラズマ源によって生成されるイオンのビームは、イオン集束システム220を使用することなく、融解プール18において十分なイオン電流密度を提供することができる。
【0095】
イオンビーム制御
上述したように、抽出器電極120の使用に起因して、プラズマからのイオン電流は、デュオプラズマトロン110において使用される比較的小さいバイアス電位による影響は受けないが、その代わりに、デュオプラズマトロン110のタングステンフィラメントを通る電流、デュオプラズマトロン110内のガス圧、及びガス放電チャンバの出力開口のサイズなど、正イオンの発生速度に影響を及ぼすパラメータによって決定される。
【0096】
その結果、イオンエネルギー及びイオン電流は、異なるパラメータによって影響され、互いに独立して制御されることが可能である。イオン電流の調整は、電荷中和に利用可能なイオンの量、並びに電荷中和プロセスのタイムスケールを制御するために使用可能である。イオンエネルギーの調整は、粉末床20に堆積させることができるイオンの最大数を制御するために使用可能である。
【0097】
先に概説したように、電荷緩和のために最適なパラメータは、電子ビーム17に適用すべき走査方針に基づき、ビルドの特定部分の間に使用される特定の電子ビームパラメータを考慮してよい。例えば、ゆっくりした電子ビーム走査速度で高い電子ビーム電流を使用するビルド中には、単位面積当たり単位時間当たりに、電子ビーム170はより大量の電荷を粉末床20に堆積させることになり、こうして有効な電荷中和にはより多数のイオンが必要になる。
【0098】
さらに、ビルドに使用される異なる材料、及び利用される異なる電子ビーム走査方針のために電荷中和パラメータを完全に最適化するには、イオン電流及びエネルギーを独立して変動させることが必要である。特定の金属粉末を電荷中和するための最適なパラメータは、材料の密度、粉末粒子のサイズ及びパッキング密度、粉末粒子上の金属酸化物層のキャパシタンス、接地に対する抵抗値、及び電子ビーム170による照射中に粉末が静止しているか又は可動であるかなどの要因によって影響されることがある。粉末粒子が静止している場合、粉末層及びその下の材料(すなわち、支持金属プレート、先に融解した粉末層、焼結された粉末、又は結合していない未焼結粉末)の間の静止摩擦の係数が、その役割を担う。例えば過剰な帯電に起因して粉末が可動である場合には、動摩擦の係数が、入射電子ビーム170によって粉末がどの程度容易にさらに移動され得るかを決定する役割を担う。
【0099】
ビルド中に使用されるビルドパラメータ及び電荷緩和パラメータの組合せは、製造部分30の性質に影響を及ぼす。例えば、仕上げられた部分30の材料特性は、ビルド材料の層と層上を走査する電子ビーム170との相互作用(すなわち、融解プールの形成、粒子の運動、及び大きい温度勾配)に依存する。
【0100】
付加製造方法
本発明の実施形態による粉末床溶融結合装置10を使用した付加製造の方法も提供され、これは図4を参照しながら例示され、図3を参照しながら説明した粉末溶融結合装置10に関連して説明される。
【0101】
ビルドコントローラは、段階S10において、製造すべき部分30について命令ファイルを取得する。命令ファイルは、部分30を形成するためにコントローラが従うべきコンピュータ実行可能命令、例えば電子ビームビルドパラメータ(例えば、ビームエネルギー、電流、走査速度、スポットサイズ)、及び部分30のそれぞれの層を形成するために電子ビーム170を位置付けるべき粉末床20上のアドレスのシーケンスを格納している。
【0102】
段階S20において、プライミングステージが実行される。ビルドコントローラは、受信した電荷緩和パラメータの仕様(例えば、特定のビルドプロセスを最適化するための特定のイオンビーム電流及びエネルギー)に従って、イオン源110を制御する。粉末床20は、イオンビーム160で照射されて、イオンビーム160のエネルギーと同じ大きさの低い正電位に粉末床20が帯電される(例えば、ユーザ指定の運動エネルギー200eVを有するイオン源110から離れる正イオンは、粉末床20において+200Vの電位を誘起する)。上述したように、ビルドプロセスの開始に先立って、及びそれぞれの新たな層のビルドの開始に先立って、粉末床20をプライミングすることにより、粉末床20の上に自由イオンの雲が蓄積されることになり、次いでこれらが、ビルドプロセスの間中、電荷中和のために利用可能になる。
【0103】
プライミングステージは、粉末床20上の、電子ビーム170の第1のアドレスに対応した位置にイオンビーム160を位置付けることを伴ってよく、それにより、ビルドが開始される粉末床20のエリアが、予めプライミングされる。代替的実施形態では、ビルドの要件に応じて、イオン集束システム220を利用して、ビルドの開始に先立って粉末床20のより大きいエリアがプライミングされるようにイオンビーム160の焦点をぼかしてもよいし、又はイオン偏向システム150を利用して、粉末床20の全エリアと同程度の大きさを横切るようにイオンビーム160を走査してもよい。
【0104】
段階S30において、ビルドコントローラは、ビルドパラメータの仕様に従って電子源70を始動し、命令ファイルから取得した第1のアドレスに電子ビーム170を位置付ける。本発明の実施形態は、任意の特定の走査方針との適合性を有する。電子ビーム170が粉末床20に入射すると、それは粉末を融解し始める。粉末の融解に先立ち、段階S30は、いくつかの実施形態において、融解すべきエリアを、融解に先立って加熱して融解プロセスを支援する予熱ステージをさらに含んでよい。プライミングステージ中に粉末床20に蓄積した正電荷は、電子ビーム170に起因して粉末床20に蓄積する負電荷によってすぐに除去される。粉末床20上の自由イオンの雲からの正イオンは、粉末床20に蓄積する負電位にこうして引き付けられ、ここでそれらは電子ビーム170に起因した負電荷を打ち消して、融解される粉末のエリアに平衡電位が確立される。
【0105】
段階S40において、ビルドコントローラは、命令ファイルから次のアドレスを取得し、粉末床20上の指定されたアドレスに電子ビーム170を移動させる。電子ビーム170が粉末床20上を移動するとき、電子ビーム170は粉末を融解して、所望の付加製造部分30を形成する。弱い集束のイオンビーム160は、電子ビーム170の位置を大まかに追随し、それにより電子ビーム170及びイオンビーム160は、粉末床20を横切るように疑似同期して走査される。いくつかの実施形態において、イオンビーム160は継続的に移動せず、イオンビーム160によって網羅された粉末床20のエリアの外側に電子ビーム170の位置が移動した場合のみ、位置を変化させる。
【0106】
段階S50において、生成されている部分30の層内に電子ビーム170を位置付けるべきさらなるアドレスが命令ファイル内に存在するかどうかについて、ビルドコントローラによる判定が行われる。さらなる位置が存在する場合(S50のはい)、方法は段階S40に戻り、命令ファイル内のアドレスのシーケンスにおける次の位置に電子ビーム170を移動させる。層内にさらなる位置が存在しない場合(S50のいいえ)、方法は段階S60に進む。
【0107】
上述した初期プライミングステージに加えて、ビルドの間中、粉末の継続的なプライミングが生じる。イオンビーム160は、電子ビーム170より大きい粉末の領域上で弱く集束されており、電子ビーム170と疑似同期して走査されることから、電子ビーム170の照射位置を取り囲む粉末のエリアは、粉末床20のアドレスのシーケンスを通るように電子ビーム170が移動するときにそれによって照射される前に、プライミングされる。
【0108】
段階S60において、電子ビーム170はオフに切り替えられる。段階S70において、ビルドコントローラは、処理すべきさらなる層が命令ファイル内に存在するかどうかを決定する。処理すべきさらなる層が存在しない場合(S70のいいえ)、方法は終了する。しかしながら、全ての層の処理が完了していない場合(S70のはい)、方法は段階S80を介して段階S20に戻る。段階S80において、電子ビーム170について次の層のビルドパラメータが命令ファイルから取得され、ステージ200が降下し、新たな粉末が拡散されて、部分30の次の層のための粉末床20が形成される。段階S20に戻ると、新たに拡散された粉末のプライミングが実行される。
【0109】
このように、部分30の層ごとに積層造形により部分30が形成されるように、電子ビーム170は、命令ファイルにおいて指定された全てのアドレスを通るように走査されてよく、イオンビーム160は、電子ビーム170と疑似同期して走査されてよく、イオンビーム160は、それぞれの層が処理されるのに先立って粉末床20をプライミングするために使用されてよい。
【0110】
イオン源がプラズマフラッド源11である代替的実施形態(すなわち図1に示す構成)では、ビルドプロセスは実質的に上述した通りであるが、粉末床20を横切るように弱い集束のイオンビーム160を疑似走査させるのではなく、粉末床2を中和するためにイオン束16を使用する段階を備える。
【0111】
上述した実施形態では、イオン源は、照射電子ビームの電子と反対の電荷である正イオンを提供するものとして説明されている。しかしながら、代替的実施形態では、正に帯電した高いエネルギービームからの電荷を緩和するために、イオン源が、電子又は負に帯電したイオンを提供してよい。上述したものと同じ動作原理が適用される。
【0112】
粉末床溶融結合装置は、特定のビルドプロセスに対するユーザの要件に応じて、多数の異なる手法で構成されることが可能であり、異なる実施形態の適合性のある特徴、例えば中和粒子源の性質、スナバシステム、及び中和粒子のための集束システムなどは、容易に組み合わされてよいことが理解されよう。上述したように、イオンエネルギー及びイオン電流の独立した制御は、変更することが可能なそのような1つの態様である。
図1
図2a
図2b
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-08-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末床溶融結合装置を使用した付加製造の方法であって、前記方法が、部分を一連の層として形成する段階を備え、それぞれの層が、
(a)粉末床を第1の荷電粒子で照射して、前記粉末床に及び前記粉末床に近接して、前記第1の荷電粒子の領域を形成する段階;
(b)前記第1の荷電粒子の前記領域が形成された後に、前記第1の荷電粒子と反対の電荷の第2の荷電粒子のビームを使用して、前記粉末床を照射する段階、前記方法は、前記第2の荷電粒子の前記ビームを前記粉末床上に走査して、所定のパターンに従って粉末を融解させる段階を備える;及び
(c)前記第2の荷電粒子の前記ビームを停止し、前記粉末床の粉末の新たな層を形成する段階;
によって形成され
前記第2の荷電粒子の前記ビームを使用して前記粉末床が照射されるとき、前記第1の荷電粒子の供給源が能動的であり、それにより前記第1の荷電粒子が、前記第2の荷電粒子の前記ビームによる前記粉末床の帯電を緩和する、方法。
【請求項2】
前記第2の荷電粒子の前記ビームが、負に帯電した電子ビームであり、前記第1の荷電粒子が、正に帯電したイオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉末床上に前記第の荷電粒子の前記ビームが走査されるときに、前記第1の荷電粒子及び前記第2の荷電粒子の前記ビームの相互作用に起因して、粉末運動を誘起するのに必要とされる閾値を下回る平衡電位が前記粉末床上で維持されるように、前記第1の荷電粒子の運動エネルギー及び電流を制御する段階を備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の荷電粒子の前記ビームの照射位置の近傍にある前記粉末床上に前記第1の荷電粒子を弱く集束させ、それにより前記第2の荷電粒子の前記ビームによる前記粉末床の帯電を前記第1の荷電粒子が緩和する段階をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
付加製造に使用するための粉末床溶融結合装置であって、前記粉末床溶融結合装置が、
第1の荷電粒子を提供するように動作可能な、前記第1の荷電粒子の第1の供給源;
前記第1の荷電粒子と反対の電荷の第2の荷電粒子のビームを提供するように動作可能な、前記第2の荷電粒子の第2の供給源;
前記第1の荷電粒子、及び前記第2の荷電粒子の前記ビームを受けるための粉末床;及び
部分を一連の層として形成するように前記第1の供給源及び前記第2の供給源の動作を制御するように構成されたコントローラ
を備え、それぞれの層が、
(a)前記粉末床を前記第1の荷電粒子で照射して、前記粉末床に及び前記粉末床に近接して、前記第1の荷電粒子の領域を形成する段階;
(b)前記第1の荷電粒子の前記領域が形成された後に、前記第1の荷電粒子と反対の電荷の前記第2の荷電粒子の前記ビームを使用して、前記粉末床を照射する段階、ここで前記第2の荷電粒子の前記ビームが前記粉末床上に走査されて、所定のパターンに従って粉末を融解させる;及び
(c)前記第2の荷電粒子の前記ビームを停止し、前記粉末床の粉末の新たな層を形成する段階;
によって形成され
前記第2の荷電粒子の前記ビームを使用して前記粉末床が照射されるとき、前記第1の荷電粒子の前記第1の供給源が能動的であるように構成されており、それにより前記第1の荷電粒子が、前記第2の荷電粒子の前記ビームによる前記粉末床の帯電を緩和する、粉末床溶融結合装置。
【請求項6】
前記第2の荷電粒子の前記ビームが、負に帯電した電子ビームであり、前記第1の荷電粒子が、正に帯電したイオンである、請求項5に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項7】
前記第1の荷電粒子の前記第1の供給源が、希ガスの正イオンを発生させるように構成されたイオン源である、請求項6に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項8】
前記正イオンを発生させるための前記第1の荷電粒子の前記第1の供給源として、プラズマ源を備える、請求項7に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項9】
前記プラズマ源が、熱イオン放出プラズマフラッド源、高周波プラズマ源、中空カソードプラズマ源、又はデュオプラズマトロンである、請求項8に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項10】
前記プラズマ源が、中空カソードプラズマ源又はデュオプラズマトロンであり、前記粉末床溶融結合装置が、前記粉末への前記第2の荷電粒子の前記ビームの照射位置の近傍にある前記粉末床上に前記第1の荷電粒子のビームを弱く集束させ、それにより前記第2の荷電粒子の前記ビームによる前記粉末床の帯電を前記第1の荷電粒子が緩和するように配置された中和粒子集束システムをさらに備える、請求項8に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項11】
ラズマから正に帯電したイオンを抽出して前記第1の荷電粒子の前記ビームを形成するために、前記プラズマ源の出力部に位置付けられた負の抽出器電極又はグリッド抽出器をさらに備え、前記第1の荷電粒子の前記ビームの電流が、前記プラズマ源に印加されるバイアス電位による影響を受けない、請求項10に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項12】
前記中和粒子集束システムが、前記プラズマ源及び前記粉末床の間で、前記第1の荷電粒子の前記ビームに沿って整合しており、それらの間で電場をサポートするように離隔した、一連の静電式のシリンドリカルレンズ素子又は開口レンズ素子を有し、前記一連の静電式のシリンドリカルレンズ素子又は開口レンズ素子において、それぞれのレンズ素子が、異なるそれぞれの電位を基準とする、請求項11に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項13】
前記粉末床に最も近い静電レンズ素子が、実質的に接地電位であるように構成されており、それにより前記第1の荷電粒子のエネルギーが、前記プラズマ源に印加される前記バイアス電位によって実質的に定義される、請求項12に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項14】
前記中和粒子集束システムが、前記プラズマ源及び前記粉末床の間で前記第1の荷電粒子の前記ビームに沿って整合された一連の電磁レンズ素子を有し、前記一連の電磁レンズ素子において、それぞれのレンズ素子が、異なるそれぞれの電流を通す、請求項10から13のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項15】
前記電磁レンズ素子のうちの1つ又は複数を取り囲む1つ又は複数のフェライトをさらに備え、それにより前記中和粒子集束システムの外側に実質的に磁場が存在しない、請求項14に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項16】
前記第1の荷電粒子の前記ビームが、前記第2の荷電粒子の前記ビームと疑似同期して前記粉末床上に走査されるように、前記第1の荷電粒子の前記ビームを制御するように配置された走査システムをさらに備え、前記走査システムが、前記中和粒子集束システムの最後のレンズ素子内に位置付けられた静電又は電磁偏向器を有する、請求項10から15のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項17】
前記走査システムが静電偏向器を有し、接地電位であるように、及び前記粉末床に最も近い静電レンズ素子の出力部に位置付けられるように構成されたワイヤメッシュをさらに備え、それにより前記中和粒子集束システム又は静電偏向器から前記粉末床に対する電場透過が実質的に存在しない、請求項16に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項18】
記中和粒子集束システムが、屈曲部を利用し、それにより前記プラズマ源及び前記粉末床の間に前記中和粒子集束システムを通る直接的な見通し線が存在しない、請求項10から17のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項19】
前記粉末床の周りに位置付けられた熱シールドをさらに備え、前記熱シールドが、接地電位であるように構成されており、それにより前記熱シールド及び前記粉末床に最も近い前記中和粒子集束システムの一部分の間に実質的に電場が存在しない、請求項10から18のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項20】
前記第1の荷電粒子の前記第1の供給源に印加されるバイアス電位と直列で使用されるように構成されたスナバ回路をさらに備える、請求項8から19のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
【請求項21】
前記第1の荷電粒子の前記第1の供給源が、前記粉末床溶融結合装置の主ビルドチャンバに連結された補助チャンバに格納されている、請求項5から20のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0112
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0112】
粉末床溶融結合装置は、特定のビルドプロセスに対するユーザの要件に応じて、多数の異なる手法で構成されることが可能であり、異なる実施形態の適合性のある特徴、例えば中和粒子源の性質、スナバシステム、及び中和粒子のための集束システムなどは、容易に組み合わされてよいことが理解されよう。上述したように、イオンエネルギー及びイオン電流の独立した制御は、変更することが可能なそのような1つの態様である
[項目1]
粉末床溶融結合装置を使用した付加製造の方法であって、前記方法が、部分を一連の層として形成する段階を備え、それぞれの層が、
(a)粉末床を第1の荷電粒子で照射して、前記粉末床に及び前記粉末床に近接して、第1の荷電粒子の領域を形成する段階;
(b)前記第1の荷電粒子の前記領域が形成された後に、前記第1の荷電粒子と反対の電荷の第2の荷電粒子のビームを使用して、前記粉末床を照射する段階、前記方法は、第2の荷電粒子の前記ビームを前記粉末床上に走査して、所定のパターンに従って前記粉末を融解させる段階を備える;及び
(c)前記第2の荷電粒子の前記ビームを停止し、前記粉末床の粉末の新たな層を形成する段階;
によって形成され、
前記第1の荷電粒子が、前記第2の荷電粒子の前記ビームによる前記粉末床の帯電を緩和する、方法。
[項目2]
前記第2の荷電粒子の前記ビームが、負に帯電した電子ビームであり、前記第1の荷電粒子が、正に帯電したイオンである、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記粉末床上に前記第2の粒子の前記ビームが走査されるときに、前記第1の荷電粒子及び前記第2の荷電粒子の前記ビームの相互作用に起因して、粉末運動を誘起するのに必要とされる閾値を下回る平衡電位が前記粉末床上で維持されるように、前記第1の荷電粒子の運動エネルギー及び電流を制御する段階を備える、項目1又は2に記載の方法。
[項目4]
前記第2の荷電粒子の前記ビームの照射位置の近傍にある前記粉末床上に前記第1の荷電粒子を弱く集束させ、それにより前記第2の荷電粒子の前記ビームによる前記粉末床の帯電を前記第1の荷電粒子が緩和する段階をさらに備える、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
[項目5]
付加製造に使用するための粉末床溶融結合装置であって、前記装置が、
第1の荷電粒子を提供するように動作可能な、第1の荷電粒子の第1の供給源;
前記第1の荷電粒子と反対の電荷の第2の荷電粒子のビームを提供するように動作可能な、第2の荷電粒子の第2の供給源;
前記第1の荷電粒子、及び前記第2の荷電粒子の前記ビームを受けるための粉末床;及び
部分を一連の層として形成するように前記第1の供給源及び前記第2の供給源の動作を制御するように構成されたコントローラ
を備え、それぞれの層が、
(a)前記粉末床を前記第1の荷電粒子で照射して、前記粉末床に及び前記粉末床に近接して、第1の荷電粒子の領域を形成する段階;
(b)第1の荷電粒子の前記領域が形成された後に、前記第1の荷電粒子と反対の電荷の第2の荷電粒子の前記ビームを使用して、前記粉末床を照射する段階、ここで第2の荷電粒子の前記ビームが前記粉末床上に走査されて、所定のパターンに従って前記粉末を融解させる;及び
(c)第2の荷電粒子の前記ビームを停止し、前記粉末床の粉末の新たな層を形成する段階;
によって形成され、
前記第1の荷電粒子が、第2の荷電粒子の前記ビームによる前記粉末床の帯電を緩和する、粉末床溶融結合装置。
[項目6]
第2の荷電粒子の前記ビームが、負に帯電した電子ビームであり、前記第1の荷電粒子が、正に帯電したイオンである、項目5に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目7]
第1の荷電粒子の前記第1の供給源が、希ガスの正イオンを発生させるように構成されたイオン源である、項目6に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目8]
前記正イオンを発生させるための第1の荷電粒子の前記第1の供給源として、プラズマ源を備える、項目7に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目9]
前記プラズマ源が、熱イオン放出プラズマフラッド源、高周波プラズマ源、中空カソードプラズマ源、又はデュオプラズマトロンである、項目8に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目10]
前記プラズマ源が、中空カソードプラズマ源又はデュオプラズマトロンであり、前記装置が、前記粉末への第2の荷電粒子の前記ビームの照射位置の近傍にある前記粉末床上に前記第1の荷電粒子のビームを弱く集束させ、それにより第2の荷電粒子の前記ビームによる前記粉末床の帯電を前記第1の荷電粒子が緩和するように配置された中和粒子集束システムをさらに備える、項目5から8のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目11]
前記プラズマから正に帯電したイオンを抽出して第1の荷電粒子の前記ビームを形成するために、前記プラズマ源の出力部に位置付けられた負の抽出器電極又はグリッド抽出器をさらに備え、第1の荷電粒子の前記ビームの前記電流が、前記プラズマ源に印加されるバイアス電位による影響を受けない、項目10に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目12]
前記中和粒子集束システムが、前記プラズマ源及び前記粉末床の間で、前記第1の荷電粒子の前記ビームに沿って整合しており、それらの間で電場をサポートするように離隔した、一連の静電式のシリンドリカルレンズ素子又は開口レンズ素子を有し、前記一連の静電式のシリンドリカルレンズ素子又は開口レンズ素子において、それぞれのレンズ素子が、異なるそれぞれの電位を基準とする、項目11に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目13]
前記粉末床に最も近い静電レンズ素子が、実質的に接地電位であるように構成されており、それにより前記第1の荷電粒子のエネルギーが、前記プラズマ源に印加される前記バイアス電位によって実質的に定義される、項目12に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目14]
前記中和粒子集束システムが、前記プラズマ源及び前記粉末床の間で前記第1の荷電粒子の前記ビームに沿って整合された一連の電磁レンズ素子を有し、前記一連の電磁レンズ素子において、それぞれのレンズ素子が、異なるそれぞれの電流を通す、項目10から13のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目15]
前記電磁レンズ素子のうちの1つ又は複数を取り囲む1つ又は複数のフェライトをさらに備え、それにより前記中和粒子集束システムの外側に実質的に磁場が存在しない、項目14に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目16]
第1の荷電粒子の前記ビームが、第2の荷電粒子の前記ビームと疑似同期して前記粉末床上に走査されるように、第1の荷電粒子の前記ビームを制御するように配置された走査システムをさらに備え、前記走査システムが、前記中和粒子集束システムの最後のレンズ素子内に位置付けられた静電又は電磁偏向器を有する、項目10から15のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目17]
前記走査システムが静電偏向器を有し、接地電位であるように、及び前記粉末床に最も近い前記静電レンズ素子の前記出力部に位置付けられるように構成されたワイヤメッシュをさらに備え、それにより前記中和粒子集束システム又は静電偏向器から前記粉末床に対する電場透過が実質的に存在しない、項目16に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目18]
前記集束システムが、屈曲部を利用し、それにより前記プラズマ源及び前記粉末床の間に前記集束システムを通る直接的な見通し線が存在しない、項目10から17のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目19]
前記粉末床の周りに位置付けられた熱シールドをさらに備え、前記熱シールドが、接地電位であるように構成されており、それにより前記熱シールド及び前記粉末床に最も近い前記集束システムの一部分の間に実質的に電場が存在しない、項目10から18のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目20]
前記中和粒子源に印加されるバイアス電位と直列で使用されるように構成されたスナバ回路をさらに備える、項目8から19のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
[項目21]
第1の荷電粒子の前記第1の供給源が、前記粉末床溶融結合装置の主ビルドチャンバに連結された補助チャンバに格納されている、項目5から20のいずれか一項に記載の粉末床溶融結合装置。
【国際調査報告】