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特表2024-502758CD73結合タンパク質及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】CD73結合タンパク質及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240116BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240116BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240116BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240116BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240116BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240116BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240116BHJP
   A61P 15/14 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240116BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240116BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240116BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240116BHJP
   G01N 33/573 20060101ALI20240116BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20240116BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/02
A61P15/14
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K38/10
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/12
A61K47/68
A61K38/16
G01N33/573 A
G01N33/531 A
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538013
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2022071520
(87)【国際公開番号】W WO2022152144
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】202110045071.3
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522432620
【氏名又は名称】上海華奥泰生物藥業股▲フン▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】522432619
【氏名又は名称】華博生物医藥技術(上海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 錦根
(72)【発明者】
【氏名】朱 向陽
(72)【発明者】
【氏名】于 海佳
(72)【発明者】
【氏名】韋 小越
(72)【発明者】
【氏名】瞿 麗麗
(72)【発明者】
【氏名】任 曉▲チェン▼
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC17
4C076CC27
4C076CC29
4C076EE59
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA19
4C084BA23
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC201
4C084ZC202
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA12
4C087MA16
4C087MA17
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA81
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC02
4C087ZC20
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
【課題】CD73結合タンパク質及びその使用を提供することを課題とする。
【解決手段】特異性結合CD73に特異的に結合でき、重鎖可変領域VH内の少なくとも1つのCDRを含み、前記VHが配列番号:49で示されるアミノ酸配列を含む単離された抗原結合タンパク質を提供し、前記単離された抗原結合タンパク質の調製方法及び使用も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域VH内の少なくとも1つのCDRを含む単離された抗原結合タンパク質であって、前記VHは配列番号:49に示されるアミノ酸配列を含む単離された抗原結合タンパク質。
【請求項2】
HCDR3を含み、且つ前記HCDR3が配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項3】
HCDR2を含み、且つ前記HCDR2が配列番号:2で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項4】
HCDR1を含み、且つ前記HCDR1が配列番号:3で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項5】
軽鎖可変領域VL内の少なくとも1つのCDRを含み、前記VLが配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項6】
LCDR3を含み、且つ前記LCDR3が配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項7】
LCDR2を含み、且つ前記LCDR2が配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項8】
LCDR1を含み、且つ前記LCDR1が配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項9】
H-FR1を含み、前記H-FR1のC末端は前記HCDR1のN末端に直接的又は間接的に接続され、且つ前記H-FR1が配列番号:41で示されるアミノ酸配列を含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項10】
前記H-FR1は、配列番号:7、配列番号:15及び配列番号:23のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項11】
H-FR2を含み、前記H-FR2が前記HCDR1と前記HCDR2との間に位置し、且つ前記H-FR2が配列番号:42で示されるアミノ酸配列を含む、請求項4~10のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項12】
前記H-FR2は、配列番号:8又は配列番号:16で示されるアミノ酸配列を含む請求項11に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項13】
H-FR3を含み、前記H-FR3が前記HCDR2と前記HCDR3との間に位置し、且つ前記H-FR3が配列番号:43で示されるアミノ酸配列を含む、請求項3~12のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項14】
前記H-FR3は、配列番号:9、配列番号:17、配列番号:27及び配列番号:27のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項15】
H-FR4を含み、前記H-FR4のN末端は前記HCDR3のC末端に接続され、且つ前記H-FR4が配列番号:44で示されるアミノ酸配列を含む、請求項2~14のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項16】
前記H-FR4は、配列番号:10又は配列番号:18で示されるアミノ酸配列を含む、請求項15前記的単離された抗原結合タンパク質。
【請求項17】
L-FR1を含み、前記L-FR1のC末端は前記LCDR1のN末端に直接的又は間接的に接続され、且つ前記L-FR1が配列番号:45で示されるアミノ酸配列を含む、請求項8~16のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項18】
前記L-FR1は、配列番号:11、配列番号:19及び配列番号:25のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項19】
L-FR2を含み、前記L-FR2が前記LCDR1と前記LCDR2との間に位置し、且つ前記L-FR2が配列番号:46で示されるアミノ酸配列を含む、請求項8~18のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項20】
前記L-FR2は、配列番号:12又は配列番号:20で示されるアミノ酸配列を含む、請求項19に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項21】
L-FR3を含み、前記L-FR3が前記LCDR2と前記LCDR3との間に位置し、且つ前記L-FR3が配列番号:47で示されるアミノ酸配列を含む、請求項7~20のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項22】
前記L-FR3は、配列番号:13、配列番号:21及び配列番号:26のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項21に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項23】
L-FR4を含み、前記L-FR4のN末端は前記LCDR3のC末端に接続され、且つ前記L-FR4が配列番号:48で示されるアミノ酸配列を含む、請求項6~22のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項24】
前記L-FR4は、配列番号:14又は配列番号:22で示されるアミノ酸配列を含む、請求項23に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項25】
HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記HCDR1が配列番号:3で示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号:2で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項26】
LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、前記LCDR1が配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記LCDR3が配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項27】
HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、前記HCDR1が配列番号:3で示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号:2で示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記LCDR3が配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項28】
VHを含み、前記VHが配列番号:49で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項29】
前記VHは、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32及び配列番号:34のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項28に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項30】
VLを含み、前記VLが配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項31】
前記VLは、配列番号:29、配列番号:31及び配列番号:33のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項30に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項32】
VH及びVLを含み、前記VHが配列番号:49で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項33】
以下の任意の群から選択されるVH及びVLを含み、
1)前記VHが配列番号:28で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:29で示されるアミノ酸配列を含み、
2)前記VHが配列番号:30で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:31で示されるアミノ酸配列を含み、
3)前記VHが配列番号:30で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:33で示されるアミノ酸配列を含み、
4)前記VHが配列番号:32で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:31で示されるアミノ酸配列を含み、及び
5)前記VHが配列番号:34で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:33で示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~32のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項34】
抗体重鎖定常領域を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項35】
前記抗体重鎖定常領域は、ヒト抗体重鎖定常領域に由来する、請求項34に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項36】
前記抗体重鎖定常領域は、ヒトIgG重鎖定常領域に由来する、請求項34~35のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項37】
前記抗体重鎖定常領域は、ヒトIgG1重鎖定常領域に由来する、請求項34~36のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項38】
前記抗体重鎖定常領域は、配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含む、請求項34~37のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項39】
抗体軽鎖定常領域を含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項40】
前記抗体軽鎖定常領域は、人Ig定常領域に由来する、請求項39に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項41】
前記抗体軽鎖定常領域は、配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含む、請求項39~40のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項42】
抗体又はその抗原結合断片を含む、請求項1~41のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項43】
前記抗原結合断片には、Fab、Fab’、Fv断片、F(ab’)、F(ab)、scFv、di-scFv及び/又はdAbが含まれる、請求項42に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項44】
前記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及び完全ヒト抗体から成る群の1種又は複数種から選択される、請求項42~43のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項45】
CD73又はその機能的活性断片に特異的に結合することができる、請求項1~44のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項46】
前記CD73は、ヒトCD73及び/又はサルCD73を含む、請求項45に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項47】
CD73の酵素活性を阻害できる、請求項1~46のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項48】
細胞表面のCD73のエンドサイトーシスを誘導できる、請求項1~47のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項49】
融解温度(Tm)及び/又は凝集温度(Tagg)は、65℃を超える、請求項1~48のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項50】
非特異的吸着の影響がない又は弱い、請求項1~49のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項51】
腫瘍増殖を抑制できる、請求項1~50のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項52】
請求項1~51のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質を含む、ポリペプチド分子。
【請求項53】
融合タンパク質を含む、請求項52に記載のポリペプチド分子。
【請求項54】
請求項1~51のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質又は請求項52~53のいずれか一項に記載のポリペプチド分子をコードする核酸分子。
【請求項55】
請求項54に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項56】
請求項1~51のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質を含む免疫複合体。
【請求項57】
請求項54に記載の核酸分子、請求項55に記載のベクター及び/又は請求項56に記載の免疫複合体を含む細胞。
【請求項58】
請求項1~51のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項52-53のいずれか一項に記載のポリペプチド分子、請求項54に記載の核酸分子、請求項55に記載のベクター、請求項56に記載の免疫複合体及び/又は請求項57に記載の細胞、及び任意選択の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項59】
前記単離された抗原結合タンパク質が発現されるような条件下で、請求項57に記載の細胞を培養することを含む、請求項1~51のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質の調製方法。
【請求項60】
疾患及び/又は病症を予防及び/又は治療するための医薬品の調製における請求項1~51のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質,請求項52~53のいずれか一項に記載のポリペプチド分子、請求項54に記載の核酸分子、請求項55に記載のベクター、請求項56に記載の免疫複合体、請求項57に記載の細胞及び/又は請求項58に記載の医薬組成物の用途。
【請求項61】
前記疾患及び/又は病症は、CD73によって媒介される、請求項60に記載の用途。
【請求項62】
前記疾患及び/又は病症は、腫瘍を含む、請求項60~61のいずれか一項に記載の用途。
【請求項63】
前記腫瘍は、固形腫瘍及び/又は血液腫瘍を含む、請求項62に記載の用途。
【請求項64】
前記疾患及び/又は病症は、乳癌を含む、請求項60~64のいずれか一項に記載の用途。
【請求項65】
請求項1~51のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項52~53のいずれか一項に記載のポリペプチド分子、請求項54に記載の核酸分子、請求項55に記載のベクター、請求項56に記載の免疫複合体、請求項57に記載の細胞及び/又は請求項58に記載の医薬組成物を投与することを含む、サンプル中のCD73を検出するための方法。
【請求項66】
請求項1~51のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項52~53のいずれか一項に記載のポリペプチド分子、請求項54に記載の核酸分子、請求項55に記載のベクター、請求項56に記載の免疫複合体、請求項57に記載の細胞及び/又は請求項58に記載の医薬組成物を含む、サンプル中のCD73を検出するための試薬又はキット。
【請求項67】
サンプル中のCD73の存在及び/又は含有量を検出するためのキットの調製における請求項1~51のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項52~53のいずれか一項に記載のポリペプチド分子、請求項54に記載の核酸分子、請求項55に記載のベクター、請求項56に記載の免疫複合体、請求項57に記載の細胞及び/又は請求項58に記載の医薬組成物の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、バイオ医薬品分野に関し、特に、CD73抗原結合タンパク質及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CD73は、NT5Eとも呼ばれ、分子量約70Kdの細胞外5-ヌクレアーゼ(NT5E)であり、グリコホスファチジルイノシトール(GPI)を介して細胞表面に係留され、主に二量体の形で存在する。通常の生理学的状態においてCD73は、肝臓、大腸、腎臓、脾臓、肺、卵巣、リンパ節などの様々な組織又は器官で発現することができる。
【0003】
多数の前臨床研究結果では、CD73が様々な腫瘍細胞の表面に異常に高発現していることが示され、臨床データからCD73の高発現が腫瘍患者の予後不良と密接に関連していることが示されるため、CD73は様々な腫瘍の臨床治療と予後のための潜在的なターゲットとして使用できる。
【0004】
しかし、現在市場にはヒトCD73向け抗体又は低分子薬が出回っておらず、CD73の異常発現を伴う癌の治療に新しい構想及び展望を提供するため、腫瘍CD7を標的とするより多くの医薬品を開発することが急務となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,150,584号公報
【特許文献2】米国特許第6,458,592号公報
【特許文献3】米国特許第6,420,140号公報
【特許文献4】国際出願WO 06/030220号公報
【特許文献5】国際出願WO 06/003388号公報
【特許文献6】国際出願WO 06/003388号公報
【特許文献6】国際出願WO2015/036583号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Korndorferら,2003,Proteins:Structure,Function,andBioinformatics,53(1):121-129(2003); Roqueら,Biotechnol. Prog. 20:639-654(2004)。
【非特許文献2】Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993); Sheriff et al, Nature Struct. Biol. 3:733-736 (1996)
【非特許文献3】IMGT,the international ImMunoGeneTics information system@imgt.cines.fr;http://imgt.cines.fr;Lefrancら,1999,Nucleic Acids Res.27:209-212;
【非特許文献4】Ruizら,2000 Nucleic Acids Res.28: 219-221;Lefrancら, 2001, Nucleic Acids Res. 29:207-209;
【非特許文献5】Lefrancら,2003,Nucleic Acids Res. 31: 307-310;
【非特許文献6】Lefrancら,2005,DevComp Immunol 29:185-203
【非特許文献7】Kabat EA &Wu TT(1971)Ann NY AcadSci 190:382-391
【非特許文献8】Kabat EAet al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,FifthEdition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242
【非特許文献9】Kabat et al, Sequences of Immunological Interest, Fifth Edition, National Institute of Health, Bethesda, Md.(1991)
【非特許文献10】Basic and Clinical Immunology, 8th Edition, Daniel P. Sties, Abba I. Terr and Tristram G. Parsolw (eds), Appleton & Lange, Norwalk, Conn.,1994,71頁目及び第6章
【非特許文献11】Wardら(Nature,1989Oct 12;341(6242):544-6)
【非特許文献12】Holtら,Trends Biotechnol.,2003,21(11):484-490
【非特許文献13】W.R.Pearson及びD.J.Lipmanの「生物学的配列比較のための改善されたツール」
【非特許文献14】全米科学アカデミーのジャーナル議事録(Proc.Natl.Acad.Sci.),85:2444-2448,1988
【非特許文献15】D.J.Lipman及びW.R.Pearsonの「高速かつ高感度のタンパク質類似性検索」、Science,227:1435-1441,1989
【非特許文献16】S.Altschul、W.Gish、W.Miller、E.W.Myers及びD.Lipmanの「基本的なローカルアラインメント(alignment)検索ツール」、分子生物学ジャーナル、215:403-410,1990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は、1)CD73又はその機能的活性断片に特異的に結合することができること、2)ヒトCD73及び/又はサルCD73に特異的に結合することができること、3)CD73の酵素活性を阻害できること、4)細胞表面のCD73のエンドサイトーシスを誘導できること、5)Tm及び/又はTagg値が65℃を超えること、6)非特異的な静電結合がないか弱いこと、及び7)腫瘍増殖を抑制できることの特性のうち1種又は複数種を有する単離された抗原結合タンパク質を提供する。本出願は、単離された抗原結合タンパク質をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞及び前記単離された抗原結合タンパク質の調製方法も提供する。本出願に記載の単離された抗原結合タンパク質は、疾患及び/又は病症、例えば腫瘍の予防及び/又は治療に使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本出願は、重鎖可変領域VH内の少なくとも1つのCDRを含む単離された抗原結合タンパク質を提供し、前記VHは配列番号:49に示されるアミノ酸配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR3を含み、且つ前記HCDR3が配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR2を含み、且つ前記HCDR2が配列番号:2で示されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR1を含み、且つ前記HCDR1が配列番号:3で示されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、軽鎖可変領域VL内の少なくとも1つのCDRを含み、前記VLが配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR3を含み、且つ前記LCDR3が配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR2を含み、且つ前記LCDR2が配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR1を含み、且つ前記LCDR1が配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR1を含み、前記H-FR1のC末端は前記HCDR1のN末端に直接的又は間接的に接続され、且つ前記H-FR1が配列番号:41で示されるアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質の前記H-FR1は、配列番号:7、配列番号:15及び配列番号:23のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR2を含み、前記H-FR2が前記HCDR1と前記HCDR2との間に位置し、且つ前記H-FR2が配列番号:42で示されるアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質の前記H-FR2は、配列番号:8又は配列番号:16で示されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR3を含み、前記H-FR3が前記HCDR2と前記HCDR3との間に位置し、且つ前記H-FR3が配列番号:43で示されるアミノ酸配列を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質の前記H-FR3は、配列番号:9、配列番号:17、配列番号:24及び配列番号:27のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR4を含み、前記H-FR4のN末端は前記HCDR3のC末端に接続され、且つ前記H-FR4が配列番号:44で示されるアミノ酸配列を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質の前記H-FR4は、配列番号:10又は配列番号:18で示されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR1を含み、前記L-FR1のC末端は前記LCDR1のN末端に直接的又は間接的に接続され、且つ前記L-FR1が配列番号:45で示されるアミノ酸配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質の前記L-FR1は、配列番号:11、配列番号:19及び配列番号:25のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR2を含み、前記L-FR2が前記LCDR1と前記LCDR2との間に位置し、且つ前記L-FR2が配列番号:46で示されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質の前記L-FR2は、配列番号:12又は配列番号:20で示されるアミノ酸配列を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR3を含み、前記L-FR3が前記LCDR2と前記LCDR3との間に位置し、且つ前記L-FR3が配列番号:47で示されるアミノ酸配列を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質の前記L-FR3は、配列番号:13、配列番号:21及び配列番号:26のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR4を含み、前記L-FR4のN末端は前記LCDR3のC末端に接続され、且つ前記L-FR4が配列番号:48で示されるアミノ酸配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質の前記L-FR4は、配列番号:14又は配列番号:22で示されるアミノ酸配列を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記HCDR1が配列番号:3で示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号:2で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR3が配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、前記LCDR1が配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記LCDR3が配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、前記HCDR1が配列番号:3で示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号:2で示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記LCDR3が配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、VHを含み、前記VHが配列番号:49で示されるアミノ酸配列を含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質の前記VHは、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32及び配列番号:34のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、VLを含み、前記VLが配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質の前記VLは、配列番号:29、配列番号:31及び配列番号:33のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、以下の任意の群から選択されるVH及びVLを含み、
1)前記VHが配列番号:28で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:29で示されるアミノ酸配列を含み、
2)前記VHが配列番号:30で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:31で示されるアミノ酸配列を含み、
3)前記VHが配列番号:30で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:33で示されるアミノ酸配列を含み、
4)前記VHが配列番号:32で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:31で示されるアミノ酸配列を含み、及び
5)前記VHが配列番号:34で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:33で示されるアミノ酸配列を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、抗体重鎖定常領域を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記抗体重鎖定常領域は、ヒト抗体重鎖定常領域に由来する。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記抗体重鎖定常領域は、ヒトIgG重鎖定常領域に由来する。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記抗体重鎖定常領域は、ヒトIgG1重鎖定常領域に由来する。
【0044】
いくつかの実施形態において、前記抗体重鎖定常領域は、配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、抗体軽鎖定常領域を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記抗体軽鎖定常領域は、ヒトIg定常領域に由来する。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記抗体軽鎖定常領域は、配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記抗原結合断片には、Fab、Fab’、Fv断片、F(ab’)、F(ab)、scFv、di-scFv及び/又はdAbが含まれる。
【0050】
いくつかの実施形態において、前記抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及び完全ヒト抗体から成る群の1種又は複数種から選択される。
【0051】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、CD73又はその機能的活性断片に特異的に結合することができる。
【0052】
いくつかの実施形態において、前記CD73は、ヒトCD73及び/又はサルCD73を含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、CD73の酵素活性を阻害できる。
【0054】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、細胞表面のCD73のエンドサイトーシスを誘導できる。
【0055】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質のTm及び/又はTagg値は、65℃を超える。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、非特異的吸着の影響がない又は弱い。
【0057】
いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、腫瘍増殖を抑制できる。
【0058】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質を含むポリペプチド分子も提供する。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記ポリペプチド分子は、融合タンパク質を含む。
【0060】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質又は前記ポリペプチド分子をコードする核酸分子も提供する。
【0061】
別の態様において、本出願は、前記核酸分子を含むベクターも提供する。
【0062】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質を含む免疫複合体も提供する。
【0063】
別の態様において、本出願は、前記核酸分子、前記ベクター及び/又は前記免疫複合体を含む細胞も提供する。
【0064】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記免疫複合体及び/又は前記細胞、及び任意選択の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。
【0065】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質が発現されるような条件下で、前記細胞を培養することを含む、前記単離された抗原結合タンパク質の調製方法も提供する。
【0066】
別の態様において、本出願は、疾患及び/又は病症を予防及び/又は治療するための医薬品の調製における前記単離された抗原結合タンパク質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記免疫複合体、前記細胞及び/又は前記医薬組成物の用途も提供する。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記疾患及び/又は病症は、CD73によって媒介される。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記疾患及び/又は病症は、腫瘍を含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、前記腫瘍は、固形腫瘍及び/又は血液腫瘍を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記疾患及び/又は病症は、乳癌を含む。
【0071】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記免疫複合体、前記細胞及び/又は前記医薬組成物の投与を含む、サンプル中のCD73を検出するための方法も提供する。
【0072】
別の態様において、本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記免疫複合体、前記細胞及び/又は前記医薬組成物を含む、サンプル中のCD73を検出するための試薬又はキットも提供する。
【0073】
別の態様において、本出願は、サンプル中のCD73の存在及び/又は含有量を検出するためのキットの調製における前記単離された抗原結合タンパク質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記免疫複合体、前記細胞及び/又は前記医薬組成物の用途も提供する。
【0074】
当業者は、下記の詳細な説明から本出願の他の態様及び利点を容易に理解することができる。下記の詳細な説明では、本出願の例示的な実施形態のみを示して説明する。当業者が理解するように、本出願の内容により、当業者は、本出願に係る発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示された具体的実施形態に変更を加えることができる。また、本出願の添付の図面及び明細書における説明は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
【0075】
本出願に係る発明の具体的特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。下記の詳細に説明する例示的な実施形態及び図面を参照して本出願に係る発明の特徴及び利点をさらに理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】本出願の抗原結合タンパク質と細胞表面のヒトCD73との結合活性を示すグラフである。
図2】本出願の抗原結合タンパク質と組換えCD73との結合活性を示すグラフである。
図3】本出願の抗原結合タンパク質によるCD73の酵素活性阻害の検出を示すグラフである。
図4】本出願の抗原結合タンパク質によるCD73の酵素活性阻害の検出を示すグラフである。
図5】本出願の抗原結合タンパク質による細胞表面のCD73のエンドサイトーシス誘導の検出を示すグラフである。
図6】体内腫瘍に対する本出願の抗原結合タンパク質の治療効果を示すグラフである。
図7】体内腫瘍に対する本出願の抗原結合タンパク質の治療効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下、特定の具体的実施例を挙げて本出願の発明の実施形態を説明し、当業者は本明細書に開示された内容から本出願の発明その他の利点及び効果を容易に理解することができる。
【0078】
(用語定義)
本出願において、「CD73」という用語は、「NT5E」、「分化クラスター73」、「5’-ヌクレオチダーゼ(5’-NT)」又は「細胞外5’-ヌクレオチダーゼ」とも呼ばれる。この用語は、「完全長」、未プロセシングのCD73、及び細胞プロセシングによって産生される任意の形態のCD73をカバーする。本出願において、用語「CD73」は、完全長の野生型CD73及びその変異体、断片、バリアント、アイソフォーム及びホモログを含む。いくつかの実施形態において、前記CD73はヒトCD73を含み得る。例えばヒトCD73の配列は、Uniprotアクセッション番号P21589で見つけることができる。
【0079】
本出願において、「単離された」という用語は通常、人工的手段によって自然状態から得られることを意味する。自然界に「分離された」物質又は成分が存在する場合、「分離された」物質又は成分が位置する自然環境は変更されたか、自然環境から該物質が分離されたか、或いはその両方である可能性がある。例えば生きている動物には単離されていないポリヌクレオチド又はポリペプチドが自然に存在し、この自然状態から単離された高純度の同じポリヌクレオチド或いはポリペプチドを単離という。用語「単離された」は、人工又は合成物質の混合、物質の活性に影響を与えない他の不純物質の存在を排除するものではない。
【0080】
本出願において、「単離された抗原結合タンパク質」という用語は、一般に、その天然に存在する状態から取り除かれた抗原結合能を有するタンパク質を意味する。該「単離された抗原結合タンパク質」は、抗原結合部分と、任意選択で抗原への前記抗原結合部分の結合を促進するコンフォメーションを抗原結合部分がとることを可能にする枠組み或いは枠組み部分とを含み得る。抗原結合タンパク質は、例えば抗体由来タンパク質枠組み領域(FR)又はCDR或いはCDR誘導体が移植された代替タンパク質枠組み領域若しくは人工枠組み領域を含み得る。このような枠組みには、例えば抗原結合タンパク質の三次元構造を安定化するために導入された変異を含む抗体由来の枠組み領域、及び例えば生体適合性ポリマーを含む完全に合成された枠組み領域が含まれるが、これらに限定されない。例えば非特許文献1を参照する。抗原結合タンパク質の例として、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fab、Fab’、Fv断片、F(ab’)、F(ab)、scFv、di-scFv、dAb、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、又はIgG4抗体及びその断片が挙げられる。
【0081】
本出願において、用語「CDR」は、「相補性決定領域」とも呼ばれ、一般的に抗体の可変ドメイン内の領域を指し、その配列は超可変であり、及び/又は構造ループを形成する。一般的に抗体は、VHにある3つ(HCDR1、HCDR2、HCDR3)、VLにある3つ(LCDR1、LCDR2、LCDR3)という6つのCDRを含む。いくつかの実施形態において、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科動物抗体は、軽鎖がない場合においてその機能も正常で安定化することができる。例えば非特許文献2を参照する。抗体のCDRは、CCG、Kabat、Chothia、IMGT、総合考慮Kabat/Chothiaなどの複数の番号付けシステムによって決定できる。これらの番号付けシステムは、当技術分野で知られ、具体的には例えばhttp://www.bioinf.org.uk/abs/index.html#kabatnumを参照できる。例えば前記抗原結合タンパク質のアミノ酸配列番号は、IMGT番号付けスキームに従うことができる(特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)。例えば前記抗原結合タンパク質のCDRは、Kabat番号付けシステムに従い決定できる(例えば非特許文献7及び非特許文献8を参照)。
【0082】
本出願において、「FR」という用語は、一般的に抗体可変ドメインの中でより高度に保存された部分を指し、枠組み領域と呼ばれる。通常、天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ4つのFR領域を含み、すなわちVHに4つ(H-FR1、H-FR2、H-FR3、及びH-FR4)、VLに4つ(L-FR1、L-FR2、L-FR3及びL-FR4)がある。
【0083】
本出願において、「可変ドメイン」及び「可変領域」という用語は、交換可能に使用され、一般的に抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一部を指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「V」及び「“V」(或いはそれぞれ「VH」及び「VL」)と呼ぶことができる。これらのドメインは通常、(同じクラスの他の抗体と比較して)抗体の最も変化しやすい部分であり、抗原結合部位を含む。
【0084】
本出願において、「可変」という用語は、一般的に可変ドメインのある部分が抗体間の配列で非常に異なることを意味する。可変ドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を決定する。ただし、可変性は可変ドメイン全体に均等に分散されていない。通常、軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメイン中の超可変領域(CDR又はHVR)と呼ばれる3つの部分に集中している。可変ドメインの中でより高度に保存された部分は、枠組み領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは主としてβ-シート構造を持ち、3つのループ状連結を形成し、場合によりβ-シート構造の部分を形成するCDRにより連結された4つのFR領域を含む。各鎖中のCDRは、FR領域により非常にもう一方の鎖のCDRと近接して保持され、抗体の抗原結合部位の形成に一役買う(非特許文献9参照)。
【0085】
本出願において「抗体」という用語は、一般的にインビトロ又はインビボで産生されたかどうかにかかわらず、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドをカバーする、免疫グロブリン或いはその断片若しくは誘導体を指す。この用語には、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多重特異性、非特異性、ヒト化、一本鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異及び移植の抗体が含まれるが、これらに限定されない。「インタクト抗体」のように、「インタクト」という用語によって特に修飾されない限り、本発明の目的のため、「抗体」という用語は、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、dAbなどの抗体断片及び抗原結合機能を保持する他の抗体断片(例えばヒトCD73に特異的に結合する)を含む。このような断片は、抗原結合ドメインを含む。基本的な4鎖抗体ユニットは、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖で構成されるヘテロ四量体糖タンパク質です。IgM抗体は、5つの基本的なヘテロ四量体ユニットとJ鎖と呼ばれる別のポリペプチドで構成され、10個の抗原結合部位を含むが、IgA抗体には、J鎖と結合・重合して多価組み合わせを形成する2~5個の基本的な4鎖ユニットを含む。IgGの場合、4鎖ユニットは一般的に約150,000ダルトンである。各L鎖は共有ジスルフィド結合によってH鎖につながっているが、2つのH鎖はH鎖のアイソタイプに応じて1つ又は複数のジスルフィド結合によって互いにつながっている。各H鎖及びL鎖はまた、規則正しく間隔が開いた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端において、可変ドメイン(VH)、続いてα鎖及びγ鎖のそれぞれに関する3個の定常ドメイン(CH)並びにμアイソタイプ及びεアイソタイプに関する4個のCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)、続いてC末端に定常ドメイン(CL)を有する。VLはVHとアライメントされ、CLは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)とアライメントされる。特定のアミノ酸残基は軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。VH及びVLの対合は、単一の抗原結合部位を共に形成する。様々なクラスの抗体の構造及び特性に関して、例えば非特許文献10を参照する。任意の脊椎動物種に由来するL鎖を、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κ及びλと呼ばれる2種の明確に異なるタイプのうちの一方に帰属させることができる。重鎖(CH)の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンを様々なクラス又はアイソタイプに帰属させることができる。5つのクラスの免疫グロブリン:それぞれα、δ、ε、γ及びμと命名された重鎖を有するIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在する。
【0086】
本出願において「抗原結合断片」という用語は、一般的に抗原(例えばCD73)に特異的に結合する能力を有する1つ或いは複数の断片を指す。本出願において、抗原結合断片には、Fab、Fab’、F(ab)、Fv断片、F(ab’),scFv、di-scFv及び/又はdAbが含まれることができる。
【0087】
本出願において「Fab」という用語は、一般的に抗体の抗原結合断片を指す。上記のようにパパインでインタクト抗体を消化できる。抗体は、パパイン消化により、2つの同一の抗原結合断片、すなわち「Fab」断片、及び残りの「Fc」断片(すなわち、Fc領域、同上)を生成する。Fab断片は、1本の完全なL鎖と重鎖の可変領域及びH鎖(VH)の第1の定常領域(CH1)からなり得る。
【0088】
本出願において「Fab’断片」という用語は、一般的にFab断片よりわずかに大きい断片である、ヒトモノクローナル抗体の一価抗原結合断片を指す。例えばFab’断片は、軽鎖の全て、重鎖の可変ドメインの全て、及び重鎖の第1と第2の定常領域の全て又は一部を含み得る。例えばFab’断片は、重鎖の220~330個のアミノ酸残基の一部又は全部も含み得る。
【0089】
本出願において「F(ab’)2」という用語は、一般的にペプシンでインタクト抗体を消化して生成される抗体断片を指す。F(ab’)2断片には、ジスルフィド結合した2つのFab断片とヒンジ領域の一部が含まれる。F(ab’)2断片は二価の抗原結合活性を持ち、抗原を架橋することができる。
【0090】
本出願において「Fv断片」という用語は、一般的に重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の全部又は一部を含み、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を欠くヒトモノクローナル抗体の一価の抗原結合断片を指す。重鎖可変領域及び軽鎖可変領域には、例えばCDRが含まれる。例えばFv断片は、重鎖及び軽鎖の約110個のアミノ酸のアミノ末端可変領域の全部又は一部を含む。
【0091】
本出願において「scFv」という用語は、一般的に軽鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片と、重鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片とを含む融合タンパク質を指し、前記軽鎖及び重鎖の可変領域は、隣接し(例えば短い柔軟なポリペプチドリンカーなどの合成リンカーを介して)、且つ単鎖ポリペプチドの形態で発現することができ、前記scFvが由来するインタクト抗体の特異性を保留する。特記しない限り、本出願で使用されるように、scFvは、任意の順序で(例えばポリペプチドのN末端及びC末端に対して)前記VL及びVHの可変領域を有し得、scFvはVLリンカー-VH或いはVH-リンカー-VLを含み得る。
【0092】
本出願において「dAb」という用語は、一般的にVHドメイン、VLドメインを有する或いはVHドメイン又はVLドメインを有する抗原結合断片を指す。例えば非特許文献11、非特許文献12、及び例えば特許文献4、特許文献5及びDomantisLtdの他の公開特許出願を参照する。
【0093】
本出願において「モノクローナル抗体」という用語は、一般的に単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して作用するものである。異なる抗原決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含む慣用な(ポリクローナル)抗体調製物と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の抗原決定基に向けられる。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンにより汚染されていないハイブリドーマ培養により合成される点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体の集団より得られた抗体の特性を示唆するものであって、抗体が特定の方法により製造されることを要求するものではない。例えば本出願で使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ細胞で調製することができ、若しくは組換えDNA法によって調製することができる。
【0094】
本出願において「キメラ抗体」という用語は、一般的に可変領域が1つの物種に由来し、定常領域が別の物種に由来する抗体を指す。通常、可変領域は齧歯類などの実験動物の抗体(「親抗体」)に由来し、定常領域はヒト抗体に由来するため、得られるキメラ抗体は親(例:マウス由来)抗体に比べ、ヒト個体において有害な免疫反応を引き起こす可能性が低くなる。
【0095】
本出願において「ヒト化抗体」という用語は、一般的に非ヒト抗体(例:マウス抗体)のCDR領域以外のアミノ酸の一部又は全部が、ヒト免疫グロブリン由来の対応するアミノ酸で置換されている抗体を指す。CDR領域において、アミノ酸の小さな付加、欠失、挿入、置換若しくは修飾もまた、それらが特定の抗原に結合する抗体の能力を保留している限り許容され得る。ヒト化抗体は、任意選択でヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部を含む。「ヒト化抗体」は、元の抗体に似ている抗原特異性を保留している。非ヒト(例:マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の配列のキメラ抗体を最低限で含み得る。場合により、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)のCDR領域残基を、所望の特性、親和性及び/又は能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)(例:マウス、ラット又は非ヒト霊長類)CDR領域における残基に置き換えることができる。場合により、ヒト免疫グロブリンのFR領域残基を対応する非ヒト残基で置換し得る。なお、ヒト化抗体は、レシピエント抗体或いはドナー抗体に存在しないアミノ酸修飾を含み得る。これらの修飾は、結合親和性などの抗体特性をさらに改良するために行うことができる。
【0096】
「完全ヒト抗体」という用語は、一般的にヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を指す。完全ヒト抗体は、マウス、マウス細胞、或いはマウス細胞由来のハイブリドーマで産生される場合、マウス糖鎖を含む可能性がある。同様に、「マウス抗体」或いは「ラット抗体」は、それぞれマウス或いはラット免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。ファージディスプレイ又は他の分子生物学的方法により、ヒト、ヒト免疫グロブリン生殖系列配列を有するトランスジェニック動物において完全ヒト抗体を産生することができる。抗体を作製するために使用できる例示的な技術は、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載されている。ライブラリを使用するなどの他の技術は、当技術分野で知られている。
【0097】
本出願において「ポリペプチド分子」及び「ポリペプチド」、「ペプチド」という用語は交換可能に使用され、一般的にアミノ酸残基のポリマーを指す。「融合タンパク質」という用語は、一般的に互いに共有結合した少なくとも2つの部分を有するポリペプチドを指す。これらの部分のそれぞれは、異なる特性を有するポリペプチドであり得る。該特性は、インビトロ或いはインビボ活性などの生物学的特性であってもよい。この特性は、標的分子への結合、反応の触媒作用などの単純な化学的又は物理的特性でもある。この2つの部分は、単一のペプチド結合或いはペプチドリンカーを介して直接連結できる。
【0098】
本出願において「核酸分子」という用語は、一般的に単離された形態の任意の長さのヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、或いはそれらの自然環境から単離された若しくは人工的に合成されたアナログを指す。
【0099】
本出願において「ベクター」という用語は、一般的にタンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入し、タンパク質を発現させることができる核酸送達ビヒクルを指す。ベクターは、宿主細胞を形質転換、形質導入、又はトランスフェクトすることで、ベクターによって運ばれる遺伝物質エレメントを宿主細胞で発現させることができる。例えばベクターには、プラスミド、ファージミド、コスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)或いはP1由来人工染色体(PAC)などの人工染色体、λファージ又はM13ファージなどのファージ及び動物ウイルスなどが含まれる。ベクターとして使用される動物ウイルス種類には、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスなど)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、及びパポバウイルス(SV40など)が含まれる。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択エレメント、及びレポーター遺伝子を含む、発現を制御する多種エレメントを含む場合がある。なお、ベクターは複製起点を含んでいてもよい。ベクターには、ウイルス粒子、リポソーム、或いはカプシドなど、細胞への侵入を促進する成分も含まれる場合があるが、これらだけではない。
【0100】
本出願において「細胞」という用語は、一般的に本発明に記載の核酸分子又は本発明に記載のベクターを含む、被験者のプラスミド或いはベクターのレシピエントである若しくはあった単一の細胞、細胞系株若しくは細胞培養物を指す。細胞は、単一細胞の子孫を含み得る。自然、偶発的、又は意図的な変異により、子孫は元の親細胞と必ずしも同一であるとは限らない(全DNA補体の形態又はゲノムで)。細胞は、本出願に記載のベクターを用いてインビトロでトランスフェクトされた細胞を含み得る。細胞は、細菌細胞(例:大腸菌)、酵母細胞、又はCOS細胞、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞、CHO-K1細胞、LNCAP細胞、HeLa細胞、HEK293細胞、COS-1細胞、NS0細胞などの他の真核細胞であり得る。いくつかの実施形態において、細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞はHEK293細胞である。
【0101】
本出願において「免疫複合体」という用語は、一般的にその他の試薬(例:化学療法剤、放射性元素、細胞増殖抑制剤及び細胞毒性剤)が抗体或いはその抗原結合断片にコンジュゲート(例えばリンカー分子によって共有結合)され、該複合体は、前記抗体又はその抗原結合断片を介して標的細胞上の抗原に特異的に結合して、他の薬剤を標的細胞(例えば腫瘍細胞)に送達することができる。
【0102】
本出願において「医薬組成物」という用語は、一般的に疾患又は病症を予防/治療するための組成物を指す。前記医薬組成物は、本出願に記載の単離された抗原結合タンパク質、本出願に記載の核酸分子、本出願に記載の担体及び/又は本出願に記載の細胞、及び任意選択の薬学的に許容されるアジュバントを含み得る。なお、前記医薬組成物は、1つ或いは複数の(薬学的に有効な)担体、安定剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤及び/又は防腐剤を含んでもよい。組成物の許容される成分は、好ましくは使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して無毒である。本発明の医薬組成物には、液体、凍結及び凍結乾燥組成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0103】
本出願において「薬学的に許容される担体」という用語は、一般的に使用される投与量及び濃度で曝露される細胞或いは哺乳動物に対して無毒である、薬学的に許容されるベクター、賦形剤若しくは安定剤を含む。生理学的に許容される担体の例としては、緩衝剤、抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、タンパク質、親水性ポリマー、アミノ酸、単糖類、二糖類及び他の炭水化物、キレート剤、糖アルコール、塩形成対立イオン(例:ナトリウム)及び/又は非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0104】
本出願において「特異的に結合する」又は「特異的な」という用語は、一般的に標的と抗体との間の結合など、分子(生体分子を含む)の不均一な集団の存在下で標的の存在を決定できる、測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗体は、他の標的に結合するよりも高い親和性、結合力、容易さ、及び/又は長い持続時間で該標的に結合する抗体であり得る。いくつかの実施形態において、抗体は、異なる種のタンパク質間で保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。いくつかの実施形態において、特異的結合は排他的結合を含むが、これを必要としない。
【0105】
本出願において「被験者」という用語は、一般的にネコ、イヌ、ウマ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ、マウス、ラット、又はサルを含むがこれらに限定されない、ヒト或いはヒト以外の動物を指す。
【0106】
「腫瘍」という用語は、一般的に組織の新たな病理学的増殖を指す。腫瘍細胞は、局所的に、或いは血流とリンパ系を介して体の他の部分に広がることがある。本出願において、前記腫瘍は良性腫瘍及び悪性腫瘍を含み得る。本出願において、前記腫瘍は、固形腫瘍及び/又は血液腫瘍を含み得る。本出願において、前記腫瘍は癌を含み得る。本出願において、前記腫瘍の例には、乳癌が含まれるが、これに限定されない。
【0107】
本出願において「非特異的な静電結合がない又は弱い」という用語は、一般的に前記単離された抗原結合タンパク質と非標的分子との間に非特異的吸着の影響がほぼないことを指す。例えばSPR法を用いて、前記単離された抗原結合タンパク質と非標的分子との間の非特異的吸着の影響を測定することができ、Bufferの影響を差し引いた後、本出願に記載の単離された抗原結合タンパク質のシグナル強度は20RU未満或いはそれに近い。一般的にシグナル強度が約20RU以下、例えば約20RU、約19RU、約18RU、約17RU、約16RU、約15RU、約14RU、約13RU、約12RU、約11RU、約10RU、約9RU、約8RU、約7RU、約6RU、約5RU、約4RU、約3RU、約2RU又は約1RUの場合、抗原結合タンパク質と非標的分子との相互作用は弱く、信号強度が約20RUを超える場合、抗原結合タンパク質と非標的分子間の相互作用が強いと考えられ、信号強度が約100RUを超える場合、抗原結合タンパク質と非標的分子の相互作用は非常に強い。
【0108】
本出願においてかかるタンパク質、ポリペプチド及び/又はアミノ酸配列は、該タンパク質又はポリペプチドと同一或いは類似の機能を有するバリアント又はホモログを少なくとも含むと理解されるべきである。
【0109】
本出願において前記バリアントは、例えば前記タンパク質及び/又は前記ポリペプチド(例えばCD73タンパク質に特異的に結合する抗体或いはその断片)のアミノ酸配列中の1つ或いは複数のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたタンパク質又はポリペプチドであり得る。例えば機能的バリアントは、1~30個、1~20個或いは1~10個などの少なくとも1個、さらに例えば1個、2個、3個、4個又は5個のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されることにより、アミノ酸改変を有するタンパク質又はポリペプチドを含み得る。前記機能的バリアントは、改変(例えば置換、欠失又は付加)前の前記タンパク質又は前記ポリペプチドの生物学的特性を実質的に維持し得る。例えば機能的バリアントは、改変前の前記タンパク質又は前記ポリペプチドの生物学的活性(例えば抗原結合能)の少なくとも60%、70%、80%、90%、或いは100%を維持し得る。例えば前記置換は、保存的置換であり得る。
【0110】
本出願において前記ホモログは、前記タンパク質及び/又は前記ポリペプチド(例えばCD73タンパク質に特異的に結合する抗体又はその断片)のアミノ酸配列に対して少なくとも約85%(例えば少なくとも約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はこれ以上を有する)の配列相同性を有するタンパク質又はポリペプチドであり得る。
【0111】
本出願において相同性は、一般的に2つ以上の配列間の近似性、類似性或いは関連性を意味する。次の方法により「配列相同性のパーセンテージ」を計算できる。比較ウィンドウでアラインされる2本の配列を比較し、2本の配列に同じ核酸塩基(例えばA、T、C、G、I)或いは同じアミノ酸残基(例えばAla、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、及びMet)が存在する位置の数を確認して一致する位置の数を得、一致する位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(すなわち、ウィンドウの大きさ)で割り、その結果に100を掛けて配列相同性のパーセンテージを求め。配列相同性のパーセンテージを確認するためのアラインメントは、当技術分野で知られている様々な方法で実現でき、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、若しくはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを用いて実現できる。当業者は、配列をアラインメントさせるための適切なパラメータを確認することができ、これには、比較されている配列の全長にわたって、或いはターゲットする配列の領域にわたって、最大のアラインメントを実現するために必要な任意のアルゴリズムが含まれる。前記相同性は、FASTA及びBLASTの方法によっても確認できる。FASTAアルゴリズムに関する説明は、非特許文献13、非特許文献14、非特許文献15を参照する。BLASTアルゴリズムの説明については、非特許文献16を参照する。
【0112】
本出願において「含む」という用語は、一般的に、含む、総括する、含有する、又は包含するという意味を指す。場合により、「のため」、「……からなる」を意味することもある。
【0113】
本出願において「約」という用語は、一般的に、所定値の上下0.5%~10%の範囲内で変動することを意味し、例えば所定値の上下0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、又は10%の範囲内で変動する。
【0114】
(詳細な説明)
単離された抗原結合タンパク質
抗体のCDRは、相補性決定領域とも呼ばれ、可変領域の一部である。この領域のアミノ酸残基は、抗原又は抗原エピトープと接触することができる。抗体のCDRは、CCG、Kabat、Chothia、IMGT、総合考慮Kabat/Chothiaなどの複数種の番号付けシステムによって決定できる。これらの番号付けシステムは、当技術分野で知られ、具体的にはhttp://www.bioinf.org.uk/abs/index.html#kabatnumを参照できる。当業者は、抗体の配列及び構造に基づいて、異なる番号付けシステムでCDR領域を決定できる。異なる番号付けシステムを使用する場合、CDR領域に違いが生じる場合がある。本出願において、前記CDRは、任意のCDR割り当て方法により割り当てて得られたCDR配列をカバーでき、そのバリアントをカバーしてもよい。前記バリアントは、1つ或いは複数のアミノ酸が置換、欠失及び/又は付加された前記CDRのアミノ酸配列を含む。例えば1~30個、1~20個又は1~10個、また例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個或いは9個のアミノ酸が置換、欠失及び/又は挿入され、これらのホモログもカバーし、前記ホモログは、前記CDRのアミノ酸配列に対して少なくとも約85%(例えば少なくとも約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%又はこれ以上を有する)の配列相同性を有するアミノ酸配列であり得る。いくつかの実施形態において、前記CDRは、IMGT番号付けスキームによって決定される。
【0115】
一態様において本出願は、重鎖可変領域VH内の少なくとも1つのCDRを含む単離された抗原結合タンパク質を提供し、前記VHは配列番号:49に示されるアミノ酸配列を含む。本出願の抗原結合タンパク質は、配列番号:49で示されるアミノ酸配列を任意の方法で割り当てて得られたCDRを含み得る。
【0116】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR3を含み得、且つ前記HCDR3が配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0117】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR2を含み得、且つ前記HCDR2が配列番号:2で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0118】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR1を含み得、且つ前記HCDR1が配列番号:3で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0119】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み得る。例えば前記単離された抗原結合タンパク質の前記HCDR1が配列番号:3で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2が配列番号:2で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記HCDR3が配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0120】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、軽鎖可変領域VL内の少なくとも1つのCDRを含み得、前記VLが配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0121】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR3を含み得、且つ前記LCDR3が配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0122】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR2を含み得、且つ前記LCDR2が配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0123】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR1を含み得、且つ前記LCDR1が配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0124】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み得る。例えば前記単離された抗原結合タンパク質の前記LCDR1が配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2が配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記LCDR3が配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0125】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み得る。例えば本出願の単離された抗原結合タンパク質のHCDR1は、配列番号:3で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2が配列番号:2で示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR3が配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR1が配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2が配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記LCDR3が配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0126】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR1を含み得、前記H-FR1のC末端は前記HCDR1のN末端に直接的又は間接的に接続され、且つ前記H-FR1が配列番号:41で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記H-FR1は、配列番号:7、配列番号:15及び配列番号:23のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0127】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR2を含み得、前記H-FR2が前記HCDR1と前記HCDR2との間に位置し、且つ前記H-FR2が配列番号:42で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記H-FR2は、配列番号:8又は配列番号:16で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0128】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR3を含み得、前記H-FR3が前記HCDR2と前記HCDR3との間に位置し、且つ前記H-FR3が配列番号:43で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記H-FR3は、配列番号:9、配列番号:17、配列番号:24及び配列番号:27のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0129】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、H-FR4を含み得、前記H-FR4のN末端は前記HCDR3のC末端に接続され、且つ前記H-FR4が配列番号:44で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記H-FR4は、配列番号:10又は配列番号:18で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0130】
本出願において前記抗原結合タンパク質は、H-FR1、H-FR2、H-FR3及びH-FR4を含み得る。例えば前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR1,H-FR2,H-FR3及びH-FR4は、それぞれ配列番号:41、配列番号:42、配列番号:43及び配列番号:44で示されるアミノ酸配列を順に含み得る。
【0131】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR1、H-FR2、H-FR3及びH-FR4は、それぞれ配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9及び配列番号:10で示されるアミノ酸配列を順に含み得る。例えば前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR1、H-FR2、H-FR3及びH-FR4は、それぞれ配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17及び配列番号:18で示されるアミノ酸配列を順に含み得る。例えば前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR1、H-FR2、H-FR3及びH-FR4は、それぞれ配列番号:23、配列番号:16、配列番号:24及び配列番号:18で示されるアミノ酸配列を順に含み得る。例えば,前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR1、H-FR2、H-FR3及びH-FR4は、それぞれ配列番号:23、配列番号:16、配列番号:27及び配列番号:18で示されるアミノ酸配列を順に含み得る。
【0132】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR1を含み得、前記L-FR1のC末端は前記LCDR1のN末端に直接的又は間接的に接続され、且つ前記L-FR1が配列番号:45で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記L-FR1は、配列番号:11、配列番号:19及び配列番号:25のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0133】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR2を含み得、前記L-FR2が前記LCDR1と前記LCDR2との間に位置し、且つ前記L-FR2が配列番号:46で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記L-FR2は、配列番号:12又は配列番号:20で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0134】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR3を含み得、前記L-FR3が前記LCDR2と前記LCDR3との間に位置し、且つ前記L-FR3が配列番号:47で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記L-FR3は、配列番号:13、配列番号:21及び配列番号:26のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0135】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR4を含み得、前記L-FR4のN末端は前記LCDR3のC末端に接続され、且つ前記L-FR4が配列番号:48で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記L-FR4は、配列番号:14又は配列番号:22で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0136】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、L-FR1、L-FR2、L-FR3及びL-FR4を含み得る。例えば前記単離された抗原結合タンパク質のL-FR1、L-FR2、L-FR3及びL-FR4は、それぞれ配列番号:45、配列番号:46、配列番号:47及び配列番号:48で示されるアミノ酸配列を順に含み得る。
【0137】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のL-FR1、L-FR2、L-FR3及びL-FR4は、それぞれ配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13及び配列番号:14で示されるアミノ酸配列を順に含み得る。例えば前記単離された抗原結合タンパク質のL-FR1、L-FR2、L-FR3及びL-FR4は、それぞれ配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21及び配列番号:22で示されるアミノ酸配列を順に含み得る。例えば前記単離された抗原結合タンパク質のL-FR1、L-FR2、L-FR3及びL-FR4は、それぞれ配列番号:25、配列番号:20、配列番号:26及び配列番号:22で示されるアミノ酸配列を順に含み得る。
【0138】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、VHを含み得、前記VHが配列番号:49で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32及び配列番号:34のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0139】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、VLを含み得、前記VLが配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VLは、配列番号:29、配列番号:31及び配列番号:33のいずれかで示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0140】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、前記VH及びVLを含み得る。例えば前記VHが配列番号:49で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記VLが配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0141】
例えば前記VHは、配列番号:28で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記VLが配列番号:29で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:30で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記VLが配列番号:31で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:30で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記VLが配列番号:33で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:32で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記VLが配列番号:31で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:34で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記VLが配列番号:33で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0142】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、抗体重鎖定常領域を含み得る。前記抗体重鎖定常領域は、ヒトIgG重鎖定常領域に由来できる。いくつかの実施形態において、前記単離された抗原結合タンパク質は、抗体重鎖定常領域を含み得、且つ前記抗体重鎖定常領域がヒトIgG1重鎖定常領域に由来する。本出願において、前記抗体重鎖定常領域は、バリアント、ホモログ、アナログもカバーする。例えば前記ヒトIgG1重鎖定常領域のCH2には抗体ADCC knock out(KO)効果のL234A及びL235A(Eu numbering)変異がある。例えば前記抗体重鎖定常領域は、配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0143】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のHCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれ配列番号:3、配列番号:2及び配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0144】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のHCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれ配列番号:3、配列番号:2及び配列番号:1で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR1、H-FR2、H-FR3及びH-FR4がそれぞれ配列番号:41、配列番号:42、配列番号:43及び配列番号:44で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0145】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のHCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれ配列番号:3、配列番号:2及び配列番号:1で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR1、H-FR2、H-FR3及びH-FR4がそれぞれ配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9及び配列番号:10で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0146】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のHCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれ配列番号:3、配列番号:2及び配列番号:1で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR1、H-FR2、H-FR3及びH-FR4がそれぞれ配列番号:15、配列番号:16、配列番号:17及び配列番号:18で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0147】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のHCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれ配列番号:3、配列番号:2及び配列番号:1で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR1、H-FR2、H-FR3及びH-FR4がそれぞれ配列番号:23、配列番号:16、配列番号:24及び配列番号:18で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0148】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のHCDR1、HCDR2及びHCDR3は、それぞれ配列番号:3、配列番号:2及び配列番号:1で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質のH-FR1、H-FR2、H-FR3及びH-FR4がそれぞれ配列番号:23、配列番号:16、配列番号:27及び配列番号:18で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0149】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のVHは、配列番号:49で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0150】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のVHは、配列番号:28で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0151】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のVHは、配列番号:30で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0152】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のVHは、配列番号:32で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0153】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のVHは、配列番号:34で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0154】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、抗体軽鎖定常領域を含み得る。前記抗体軽鎖定常領域はヒトIgκ定常領域に由来できる。例えば前記抗体軽鎖定常領域は、配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0155】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のLCDR1、LCDR2及びLCDR3は、それぞれ配列番号:6、配列番号:5及び配列番号:4で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0156】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のLCDR1、LCDR2及びLCDR3は、それぞれ配列番号:6、配列番号:5及び配列番号:4で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質のL-FR1、L-FR2、L-FR3及びL-FR4がそれぞれ配列番号:45、配列番号:46、配列番号:47及び配列番号:48で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0157】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のLCDR1、LCDR2及びLCDR3は、それぞれ配列番号:6、配列番号:5及び配列番号:4で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質のL-FR1,L-FR2,L-FR3及びL-FR4がそれぞれ配列番号:11、配列番号:12、配列番号:13及び配列番号:14で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0158】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のLCDR1、LCDR2及びLCDR3は、それぞれ配列番号:6、配列番号:5及び配列番号:4で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質のL-FR1、L-FR2、L-FR3及びL-FR4がそれぞれ配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21及び配列番号:22で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0159】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のLCDR1、LCDR2及びLCDR3は、それぞれ配列番号:6、配列番号:5及び配列番号:4で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質のL-FR1、L-FR2、L-FR3及びL-FR4がそれぞれ配列番号:25、配列番号:20、配列番号:26及び配列番号:22で示されるアミノ酸配列を順に含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0160】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のVLは、配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0161】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のVLは、配列番号:29で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0162】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のVLは、配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0163】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のVLは、配列番号:31で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0164】
例えば前記単離された抗原結合タンパク質のVLは、配列番号:33で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記単離された抗原結合タンパク質の軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0165】
本出願において、前記単離された抗原結合タンパク質は、VH、VL、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:49で示されるアミノ酸配列を含み得、前記VLが配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含み得、前記重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:28で示されるアミノ酸配列を含み得、前記VLが配列番号:29で示されるアミノ酸配列を含み得、前記重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:30で示されるアミノ酸配列を含み得、前記VLが配列番号:31で示されるアミノ酸配列を含み得、前記重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:30で示されるアミノ酸配列を含み得、前記VLが配列番号:33で示されるアミノ酸配列を含み得、前記重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:32で示されるアミノ酸配列を含み得、前記VLが配列番号:31で示されるアミノ酸配列を含み得、前記重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。例えば前記VHは、配列番号:34で示されるアミノ酸配列を含み得、前記VLが配列番号:33で示されるアミノ酸配列を含み得、前記重鎖定常領域が配列番号:37で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記軽鎖定常領域が配列番号:38で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0166】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、抗体又はその抗原結合断片を含み得る。
【0167】
いくつかの実施形態において前記抗原結合断片には、Fab、Fab’、Fv断片、F(ab’)、F(ab)、scFv、di-scFv及び/又はdAbが含まれる。
【0168】
いくつかの実施形態において前記抗体には、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及び/又は完全ヒト抗体が含まれる。
【0169】
例えば前記キメラ抗体のVHは、配列番号:28で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記キメラ抗体のVLが配列番号:29で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0170】
例えば前記ヒト化抗体のVHは、配列番号:30で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記ヒト化抗体のVLが配列番号:31で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0171】
例えば前記ヒト化抗体のVHは、配列番号:30で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記ヒト化抗体のVLが配列番号:33で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0172】
例えば前記ヒト化抗体のVHは、配列番号:32で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記ヒト化抗体のVLが配列番号:31で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0173】
例えば前記ヒト化抗体のVHは、配列番号:34で示されるアミノ酸配列を含み得、且つ前記ヒト化抗体のVLが配列番号:33で示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0174】
なお特筆すべきことは、本出願の単離された抗原結合タンパク質は、1つ或いは複数の保存配列修飾を伴う重鏈及び/又は軽鎖配列を含み得る。いわゆる「保存配列修飾」とは、抗体の結合特性に大きな影響を与えないか、改変させないアミノ酸修飾を意味する。このような保存修飾には、アミノ酸の置換、付加及び欠失が含まれる。部位変異及びPCR媒介変異などの当技術分野で知られている標準的な技術を通じて、修飾を本明細書に記載の単離された抗原結合タンパク質に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、類似した側鎖を有するアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換である。類似した側鎖を有するアミノ酸残基群には、当技術分野で知られている。これらアミノ酸残基群には、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。いくつかの実施形態において、本出願の単離された抗原結合タンパク質のCDR領域中の1つ或いは複数のアミノ酸残基は、同じ側鎖群の他のアミノ酸残基で置換することができる。当業者は、いくつかの保存配列修飾が抗原結合性を喪失しないことを知り、具体的には例えばBrummell et al., (1993) Biochem 32:1180-8; de Wildt et al., (1997) Prot. Eng. 10:835-41; Komissarov et al., (1997) J. Biol. Chem. 272:26864-26870; Hall et al., (1992) J. Immunol. 149:1605-12; Kelley and O’Connell (1993) Biochem.32:6862-35; Adib-Conquy et al., (1998) Int. Immunol.10:341-6 and Beers et al., (2000) Clin. Can. Res. 6:2835-43を参照できる。
【0175】
当技術分野で知られている様々なアッセイによって、本出願のCD73抗原結合タンパク質の同定、スクリーニング又はキャラクタリゼーションを行うことができる。
【0176】
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫ブロッティング(例えばウエスタンブロット)、フローサイトメトリー(例えばFACS)、免疫組織化学、免疫蛍光などの既知の方法で本出願の抗原結合タンパク質又は融合タンパク質の抗原結合活性を測定できる。
【0177】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、CD73又はその機能的活性断片に特異的に結合することができる。
【0178】
いくつかの実施形態において前記単離された抗原結合タンパク質は、Biacoreで親和性をスクリーニングする。前記単離された抗原結合タンパク質は、3×10-9M以下のKDでCD73タンパク質に結合することができ、例えば本出願の抗原結合タンパク質は約3×10-9M未満、約2×10-9M未満、約1×10-9M未満、約7×10-10M未満、約6×10-10M未満、約5×10-10M未満、約4×10-10M未満、約3×10-10M未満、約2×10-10M未満、約1×10-10M未満、約9×10-11M未満、約5×10-11M未満、約2×10-11M未満でKDCD73に結合することができる。いくつかの実施形態において、本出願は、FACS方法で抗原結合タンパク質と抗原の結合活性を測定することも含む。例えば本出願の抗原結合タンパク質は、0.3μg/mL以下、約0.2μg/mL以下、約0.1μg/mL以下、約0.09μg/mL以下、約0.08μg/mL以下、約0.07μg/mL以下、約0.06μg/mL以下、約0.05μg/mL以下、約0.04μg/mL以下、約0.03μg/mL以下、約0.02μg/mL以下又は約0.01μg/mL以下のEC50値で細胞表面のヒトCD73に結合することができる。
【0179】
例えば本出願の抗原結合タンパク質は、0.4μg/mL以下、0.3μg/mL以下、約0.2μg/mL以下、約0.1μg/mL以下、約0.09μg/mL以下、約0.08μg/mL以下、約0.07μg/mL以下、約0.06μg/mL以下、約0.05μg/mL以下、約0.04μg/mL以下、約0.03μg/mL以下、約0.02μg/mL以下又は約0.01μg/mL以下のEC50値で組換えCD73タンパク質に結合することができる。
【0180】
いくつかの実施形態において前記単離された抗原結合タンパク質は、CD73に結合することができる。場合により、本出願の抗原結合タンパク質は、サルのCD73とも交差反応することができ、例えばFACSで検出される。本出願において、「交差反応」とは、抗体が他の物種の相同タンパク質と反応する能力を意味する。
【0181】
いくつかの実施形態において本出願の単離された抗原結合タンパク質は、マウス及び/又はラットのCD73に結合しない。
【0182】
例えばELISA法で力価を検出することができる。例えばFACS法で前記単離された抗原結合タンパク質の結合活性又は機能活性を検出することができる。例えば前記単離された抗原結合タンパク質の親和性を検出することができる。
【0183】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、CD73の酵素活性を阻害することができる。例えば前記単離された抗原結合タンパク質は、組換えCD73に対して酵素活性阻害効果を有し得る。例えば前記単離された抗原結合タンパク質は、ヒトCD73に対して酵素活性阻害効果を有し得る。本出願に記載の酵素活性は、当技術分野で一般的に使用される任意の方法で検出されることができる。前記酵素活性の検出には、CD73抗原結合タンパク質と組換えCD73タンパク質を均一に混ぜて、AMP及びATPを加え、CellTiter-Glo(商標)基質をCellTiter-Glo(商標)バッファーに添加し、よく混ぜて室温に平衡化して全波長検出を行うことが含まれる。例えば前記単離された抗原結合タンパク質は、約0.1μg/mL以下、約0.09μg/mL以下、約0.08μg/mL以下、約0.07μg/mL以下、約0.06μg/mL以下、約0.05μg/mL以下、約0.04μg/mL以下、約0.03μg/mL以下、約0.02μg/mL以下、約0.01μg/mL以下のEC50値で組換えCD73タンパク質の酵素活性を阻害することができる。例えば前記単離された抗原結合タンパク質は、約0.2μg/mL以下、約0.1μg/mL以下、約0.09μg/mL以下、約0.08μg/mL以下、約0.07μg/mL以下、約0.06μg/mL以下、約0.05μg/mL以下、約0.04μg/mL以下、約0.03μg/mL以下、約0.02μg/mL以下、約0.01μg/mL以下のEC50値で細胞膜上CD73タンパク質の酵素活性を阻害することができる。
【0184】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、細胞表面のCD73のエンドサイトーシスを誘導することができる。いくつかの実施形態において、蛍光標識の方法によってタンパク質のエンドサイトーシス状況を判断することができる。例えばフローサイトメトリーで細胞の蛍光強度を検出して前記抗原結合タンパク質が細胞表面のCD73エンドサイトーシスを誘導する効率を検出することができる。場合により、前記単離された抗原結合タンパク質は、約50%以上の効率でCD73のエンドサイトーシスを誘導することができる。
【0185】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、熱安定性を有し得る。例えばタンパク質安定性分析計で本出願の抗原結合タンパク質の融解温度(Tm)及び/又は凝集温度(Tagg)を検出することができ、本出願の単離された抗原結合タンパク質のTm値は約65℃以上、約66℃以上、約67℃以上、約68℃以上、約69℃以上、約69.4℃以上、約70℃以上又は約70.2℃以上である。本出願の単離された抗原結合タンパク質のTagg値は、約65℃以上、約66℃以上、約66.4℃以上、約67℃以上、約68℃以上、約69℃以上、約70℃以上、約71℃以上、約72℃以上、約73℃以上、約74℃以上、約74.1℃以上、約75℃以上又は約75.6℃以上である。
【0186】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、は、非特異的吸着の影響がない又は弱い可能性がある。例えばSPR法で前記単離された抗原結合タンパク質と非標的分子の非特異的吸着の影響を測定し、Buffer影響を差し引いた後、本出願の単離された抗原結合タンパク質のシグナル強度は20RU以下又はそれに近い。一般的にシグナル強度は、約20RU、約19RU、約18RU、約17RU、約16RU、約15RU、約14RU、約13RU、約12RU、約11RU、約10RU、約9RU、約8RU、約7RU、約6RU、約5RU、約4RU、約3RU、約2RU又は約1RU以下であると考えられる。
【0187】
本出願において前記単離された抗原結合タンパク質は、腫瘍増殖抑制の効果を有し得る。
【0188】
ポリペプチド分子、核酸分子、ベクター、免疫複合体、細胞及び医薬組成物
別の態様において本出願は、本出願に記載の単離された抗原結合タンパク質を含み得るポリペプチド分子を提供する。
【0189】
いくつかの実施形態において前記ポリペプチド分子は、融合タンパク質を含む。
【0190】
別の態様において本出願は、本出願に記載の単離された抗原結合タンパク質又は本出願に記載のポリペプチド分子をコードし得る単離された核酸分子を提供する。例えば単離された核酸分子は、(i)インビトロでの増幅、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅により産生されること、(ii)組換えクローニングにより産生されること、(iii)例えば酵素的切断及びゲル電気泳動分画によって精製されること、或いは(iv)例えば化学合成によって合成されることといった方法で産生若しくは合成されることができる。
【0191】
別の態様において本出願は、本出願に記載の核酸分子を含み得るベクターを提供する。なお、前記ベクターには適切な宿主細胞及び適切な条件下での該ベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子などの他の遺伝子を含めることもできる。また、前記ベクターは、適切な宿主におけるコード領域の適切な発現を可能にする発現制御エレメントも含み得る。このような制御エレメントは当業者にはよく知られ、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、及び遺伝子転写又はmRNA翻訳などを調節する他の制御エレメントも含み得る。ベクターは、宿主細胞を形質転換、形質導入、又はトランスフェクトすることで、ベクターによって運ばれる遺伝物質エレメントを宿主細胞で発現させることができる。前記ベクターとしては、プラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ、或いは遺伝子工学で一般的に使用される他のベクターが挙げられる。例えばベクターは発現ベクターである。なお、前記ベクターは、例えばウイルス粒子、リポソーム、或いはカプシドなどであるがこれらに限定されない、細胞への侵入を促進する成分を含んでもよい。
【0192】
別の態様において本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質を含む免疫複合体も提供する。
【0193】
例えば本出願の単離された抗原結合タンパク質又はその断片を化学療法剤、毒素、免疫療法剤、イメージングプローブ、分光プローブなどの別の試薬に連結することができる。該連結は、1つ或いは複数の共有結合又は非共有結合性相互作用によるものであり得、キレート作用を含み得る。複数種のリンカー(リンカーは、当技術分野で知られている)を使用して免疫複合体を形成することができる。なお、免疫複合体は、免疫複合体をコードするポリヌクレオチドから発現させることができる融合タンパク質の形態で提供することができる。前記免疫複合体は、例えば抗体-薬物複合体(ADC)を含んでもよい。適切な薬物としては、細胞毒素、アルキル化剤、DNA副溝結合分子、DNAインターカレーター、DNA架橋剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、核外輸送阻害剤、プロテアソーム阻害剤、I型又はII型トポイソメラーゼ阻害剤、熱ショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質及び抗有糸分裂剤が挙げられる。ADCにおいて、ペプチドリンカー、ジスルフィドリンカー、或いはヒドラゾンリンカーなどの切断可能なリンカーを介して抗体及び治療薬を架橋することができる。
【0194】
別の態様において本出願は、本出願に記載の核酸分子、本出願に記載のベクター及び/又は本出願に記載の免疫複合体を含み得る細胞を提供する。いくつかの実施形態において、各種宿主細胞又は各宿主細胞は、1つ個又は1種の本出願の核酸分子又はベクターを含む。いくつかの実施形態において、各種宿主細胞又は各宿主細胞は、複数(例えば2つ以上)或いは複数種(例えば2種以上)の本出願の核酸分子又はベクターを含む。例えば本出願のベクターを前記宿主細胞、例えば植物由来の細胞、真菌或いは酵母細胞などの真核細胞に導入することができる。いくつかの実施形態において、前記細胞は、細菌細胞(例えば大腸菌)、酵母細胞或いはその他の真核細胞、例えばCOS細胞、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞、CHO-K1細胞、LNCAP細胞、HeLa細胞、293T細胞、COS-1細胞、SP2/0細胞、NS0細胞又はミエローマ細胞である。エレクトロポレーション、lipofectineトランスフェクション、lipofectaminトランスフェクションなどの当技術分野で知られている方法で本出願のベクターを前記宿主細胞に導入することができる。
【0195】
別の態様において本出願は、本出願に記載の単離された抗原結合タンパク質、本出願に記載のポリペプチド分子、本出願に記載の免疫複合体、本出願に記載の核酸分子、本出願に記載のベクター及び/又は本出願に記載の細胞、及び任意選択の薬学的に許容される担体を含み得る医薬組成物も提供する。
【0196】
本出願において前記医薬組成物は、1種又は複数種(薬学的に有効な)アジュバント、安定剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤及び/又は防腐剤の適切な製剤を含み得る。組成物の許容される成分は、好ましくは使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して無毒である。本発明の医薬組成物には、液体、凍結及び凍結乾燥の組成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0197】
本出願において前記医薬組成物は、1種以上の活性化合物、例えば一般的に互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する活性化合物を含み得る。このような薬物のタイプ及び有効量は、例えば製剤中に存在するアンタゴニストの量及びタイプ、ならびに被験者の臨床パラメータに取り決め得る。
【0198】
本出願において前記薬学的に許容される担体は、薬物投与に適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、等張化剤及び吸収遅延剤を含み得、一般に安全で無毒である。
【0199】
本願において医薬組成物は、非経口、経皮、腔内、動脈内、くも膜下腔内及び/又は鼻腔内投与、或いは組織への直接注射を含み得る。例えば前記薬学的組成物は、注入又は注射を介して患者或いは被験者に投与することができる。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物の投与は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所或いは皮内投与などの異なる手段を介して行うことができる。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、中断することなく投与することができる。特許文献7に記載されているように、患者の体内へ流入する治療薬を測定するために患者が装着する小さなポンプシステムによって、中断のない(又は連続的な)投与を実現することができる。
【0200】
調製方法
別の態様において本出願は、前記的抗原結合タンパク質の調製方法を提供する。前記方法は、前記単離された抗原結合タンパク質が発現されるような条件下で、本出願に記載の細胞を培養することを含む。例えば適切な培地の使用、適切な温度及び培養時間などを通じて実施でき、これらの方法は当業者には理解されている。
【0201】
モノクローナル抗体を産生するのに適した任意の方法は、本出願の抗原結合タンパク質を産生することができる。例えば結合した又は天然に存在するCD73或いはその断片で動物を免疫することができる。アジュバント、免疫刺激剤、反復ブースター免疫を含む適切な免疫接種方法を使用することができ、1つ或いは複数の経路を使用することができる。例えばハイブリドーマ調製法で免疫マウスから脾細胞を取得してSP2/0ミエローマ細胞と融合し、HATによりハイブリドーマ細胞株をスクリーニングすることができる。
【0202】
任意の適切な形態のCD73は、免疫原(抗原)としてCD73に特異的な非ヒト抗体を産生し、前記抗体の生物学的活性をスクリーニングするために使用することができる。例えばプライミング免疫原は、天然のホモ二量体を含む完全長の成熟ヒトCD73、或いは単一/複数のエピトープ含有ペプチドであり得る。免疫原は、単独で、若しくは当技術分野で知られている1つ或いは複数の免疫増強剤と組み合わせて使用することができる。
【0203】
キメラヒト抗体は、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEを含む免疫グロブリンの任意の種類から選択されることができる。本出願において、抗体はIgG抗体であってもよく、IgG1サブタイプが使用されてもよい。以下の実施例に記載の生物学的アッセイを使用して抗体をスクリーニングすることによって、必要な定常ドメイン配列の最適化を実現して所望の生物学的活性を産生することができる。同様に、いずれのタイプの軽鎖も、本出願の化合物及び方法で使用することができる。例えば本出願の化合物及び方法において、κ鎖又はそのバリアントを使用することができる。
【0204】
方法及び用途
別の態様において本出願は、疾患及び/又は病症を予防及び/又は治療するための医薬品の調製における前記単離された抗原結合タンパク質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記免疫複合体、前記細胞及び/又は前記医薬組成物の用途を提供する。
【0205】
別の態様において本出願は、疾患及び/又は病症を予防及び/又は治療するための方法も提供し、前記方法は本出願に記載の単離された抗原結合タンパク質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記免疫複合体、前記細胞及び/又は前記医薬組成物を必要な被験者に投与することを含み得る。
【0206】
本出願において前記投与は、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所或いは皮内投与などの異なる手段を介して行うことができる。
【0207】
別の態様において本出願に記載の単離された抗原結合タンパク質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記免疫複合体、前記細胞及び/又は前記医薬組成物は、疾患及び/又は病症を予防及び/又は治療するために使用することができる。
【0208】
本出願において前記疾患及び/又は病症は、CD73により媒介される疾患及び/又は病症であり得る。
【0209】
本出願において前記疾患及び/又は病症は、腫瘍を含み得る。
【0210】
本出願において前記腫瘍は、固形腫瘍及び/又は血液腫瘍を含み得る。
【0211】
本出願において前記疾患及び/又は病症は、乳癌を含み得る。
【0212】
別の態様において本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記細胞、前記免疫複合体及び/又は前記医薬組成物の投与を含む、サンプル中のCD73を検出するための方法も提供する。
【0213】
本出願において前記サンプル中のCD73を検出するための方法は、インビトロ法であり得る。本出願において、前記サンプル中のCD73を検出するための方法は、非治療目的であり得る。本出願において、前記サンプル中のCD73を検出するための方法は、診断方法ではない。
【0214】
別の態様において本出願は、前記単離された抗原結合タンパク質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記免疫複合体、前記細胞及び/又は前記医薬組成物を含む、サンプル中のCD73を検出するための試薬又はキットも提供する。
【0215】
別の態様において本出願は、サンプル中のCD73の存在及び/又は含有量を検出するためのキットの調製における前記単離された抗原結合タンパク質、前記ポリペプチド分子、前記核酸分子、前記ベクター、前記免疫複合体、前記細胞及び/又は前記医薬組成物の用途も提供する。
【0216】
いかなる理論にも拘束されることなく、以下の実施例は本出願の抗原結合タンパク質、調製方法及び用途などを説明するためのものであって、本出願の発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0217】
(実施例1 抗ヒトCD73のマウス由来抗原結合タンパク質の調製方法)
1.1マウス由来抗原結合タンパク質を産生するハイブリドーマ細胞の調製
マウス由来モノクローナル抗原結合タンパク質の調製方法は、1975年にKohlerとMilsteinが発明したハイブリドーマ調製技術(Nature,1975,256:495-497)を用いた。まず、免疫抗原として、Hisタグ付きヒトCD73タンパク質(Met 1-Lys 547)を使用し、一部をフロイントアジュバント:Freund’s Adjuvant, Complete (Sigma cat no.F5881,別名:FCA)及びFreund’s Adjuvant, Incomplete(Sigma cat no.F5506,別名:FICA)で免疫し、他部分をQuick Antibody - Mouse 5w(Biodragon社製、cat no.KX0210041)アジュバントで複数のBALB/c、CD1マウスをそれぞれ皮下免疫した。經3回免疫後、血清を採取してELISA法で力価を検出し、結合活性及び機能活性をFACSで検出した。最後に、最良のマウスを選択し、脾細胞及びSP2/0骨髄腫細胞を取得して融合を行った。ハイブリドーマ細胞株をHATでスクリーニングし、細胞培養上清を取りFACS検出法でヒトCD73、サルCD73に特異的に結合するモノクローナルハイブリドーマ細胞株をスクリーニングし、次にCD73酵素活性阻害を有するモノクローナル細胞株をスクリーニングし、モノクローナル細胞株の親和性(Biacore)をスクリーニングし、最後にヒトCD73抗原結合タンパク質を発現するモノクローナルハイブリドーマ細胞株を得て配列を解析し、その機能活性及び親和性の結果を表1に示す。
【0218】
【表1】
【0219】
ハイスループットスクリーニングを経た後、最後に得られたモノクローナルハイブリドーマ細胞株は高い親和性を持ち、ヒト及びサルの両方との結合活性を有すると共にCD73の酵素活性を阻害する機能もある。
【0220】
(実施例2 抗CD73抗原結合タンパク質の可変領域遺伝子シーケンシング及び各抗原結合タンパク質の調製)
2.1ハイブリドーマ細胞における抗原結合タンパク質の可変領域遺伝子シーケンシング及びクローニング
TAKARAの5’RACE技術の原理に基づき、ハイブリドーマ細胞株124A9が発現するマウス抗原結合タンパク質の可変領域のcDNA配列をクローニングした。簡単に言えば、SMARTer 5’RACE合成キット(TAKARA,#634859)を使用して、説明書に従い重鎖及び軽鎖の可変領域遺伝子特異的cDNAを合成した。cDNA配列の5’末端と3’末端をPCRプライマーで修飾し、前記PCRプライマーは重鎖及び軽鎖の可変領域のcDNAにそれぞれ適切なリーダー配列を追加するように設計され、得られたPCR産物は、シームレスクローニング法を介して既存の組換え抗原結合タンパク質により発現される重鎖ベクターpHB-Fc及び軽鎖ベクターpHB-Cκにクローニングできるようにする。pHB-Fc発現ベクターには、ヒトIgG1重鎖定常領域遺伝子配列が含まれ、CH2には抗原結合タンパク質ADCCノックアウト(knock out,KO)効果のL234A及びL235A(Eu numbering)変異がある。pHB-Cκベクターにはκ軽鎖定常領域遺伝子配列が含まれる。重鎖及び軽鎖の可変領域PCR増幅産物をIn-fusionクローニング試薬(TAKARA、#639650)によって発現ベクターにクローニングし、E.coli DH5α大腸菌コンピテントセル(YEASTERN BIOTECH社製、#FYE607-80VL)に形質転換された。抗原結合タンパク質の可変領域の配列は、モノクローナルコロニーを選抜してSanger及びNGSシーケンシングを実施し、解析によって抗原結合タンパク質の可変領域の配列が得られた。124A9が発現する抗CD73抗原結合タンパク質の可変領域の配列は次のとおりであり、
124A9 VH 配列番号: 28
QVQLQQPGAELVKPGASVKLSCKASGYTFTSYWIHWVKQRPGQGLDWIGMIHPNSGSTYYNEKFKSKATLTVDKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYYCARYYGSDYEWYFDVWGTGTTVTVSS
124A9 VL 配列番号: 29
DIVMTQSQKFMSTSVGDRVSITCKASQNVRTAVVWYQQNPGQSPKALIYLASNRHTGVPDRFTGSGSGTDFTLTISNVHSEDLADYFCLQHWNYPYTFGGGTKLEIK
ここで、下線部がCDRs(IMGT定義、各CDR一覧は以下の通り)である。
【0221】
【表2】
【0222】
2.2 抗原結合タンパク質の発現
実施例2.1で得られた発現ベクターを大腸菌で増幅し、エンドトキシンフリーのプラスミド抽出キット(天根生化科技(北京)有限会社製,#DP117)を使用して、抗原結合タンパク質を発現するための一過性トランスフェクションに十分なプラスミドを調製した。発現に使用される宿主細胞は、CHO-S細胞(Thermo Fisher Scientific社製、#R80007)である。調製した2つの重鎖ベクターと軽鎖ベクターをポリエーテルイミド(PEI、Polysciences、#24765-1)と混合してリポソーム複合体を形成した後、CHO-S細胞にトランスフェクトし、インキュベーターに入れ、5~7日間培養した。細胞培養上清を遠心分離により回収し、Protein Aアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、ヒト-マウス抗原結合タンパク質を得た(124A9が発現する抗原結合タンパク質の番号は900567)。
【0223】
2.3抗原結合タンパク質900725-900728の調製
抗原結合タンパク質のヒト化は、3Dモデリング手法を用いた。まずマウス由来抗原結合タンパク質の三次元構造モデリングを行って最適な構造モデルを選択し、具体的にDiscovery Studio及びSchroedinger Antibody Modelingをそれぞれ使用して、ホモロジー・モデリング法を用いて5~10個の最適な構造解を選択し、Loop領域は通常、ホモロジー・モデリング法を使用してモデルを構築し、例えばCDRアミノ酸配列アラインメントの結果、Identityが50%未満であることが示された場合、ab initioモデリング手法でCDR3構造モデルを構築した。PDB BLASTを使用して、最も近い配列を持つ10個の抗体結晶構造モデルを取得し(構造分解能は2.5オングストローム以上)、自動モデリングモデルを比較し、最適な構造モデルを選択した。次に、抗原結合タンパク質の可変領域配列をNCBI IgBlastデータベース内の利用可能な配列と比較し、同定及び解析によってCDR移植重鎖及び軽鎖を構築するのに適したヒト枠組み領域(FR領域)を決定した。
【0224】
改変時、ヒト抗体FR領域の保存アミノ酸残基及び抗体FR領域内の重要なアミノ酸残基に基づいて改変部位を設計し、本出願の抗原結合タンパク質900567の重鎖・軽鎖の可変領域についてそれぞれヒト化変異wp設計し、設計されたヒト化配列は抗体の構造安定性に影響を与えない、抗原結合タンパク質と抗原の結合に影響を与えない、グリコシル化・リン酸化などのタンパク質修飾部位を導入しない、容易に酸化・アミノ化される部位を導入しない、構造安定性を高めるなどの要求を満たしなければならない。解析により今回900567のマウス由来抗原結合タンパク質配列について合計3本のヒト化重鎖配列と3本のヒト化軽鎖配列を設計し、ヒト化点変異の抗原結合タンパク質発現プラスミドをそれぞれCHO-S細胞で発現させ、精製後ヒト化抗原結合タンパク質を得た。ELISA、Biacore及びフローサイトメトリーなどの検出方法を使用して、ヒト化抗原結合タンパク質の受容体結合能、機能阻害活性及び非特異的結合特性、熱安定性などの指標をスクリーニングし、特性に優れた4つのヒト化抗CD73抗原結合タンパク質を得た。得られたヒト化抗CD73抗原結合タンパク質のタンパク質番号及び対応するVHとVLの配列を以下に示す。
900725及び900726 VH 配列番号:30
QVQLVQSGAEVKKPGASVKLSCKASGYTFTSYWIHWVRQAPGQGLEWIGMIHPNSGSTYYNEKFKGRATLTVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARYYGSDYEWYFDVWGQGTTVTVSS
900725及び900727 VL 配列番号:31
DIQMTQSPSSMSASVGDRVTITCKASQNVRTAVVWYQQKPGKAPKALIYLASNRHTGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYFCLQHWNYPYTFGQGTKLEIK
900727 VH 配列番号:32
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYWIHWVRQAPGQGLEWIGMIHPNSGSTYYAQKFQGRVTITVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARYYGSDYEWYFDVWGQGTTVTVSS
900726及び900728 VL 配列番号:33
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQNVRTAVVWYQQKPGKAPKALIYLASNRHTGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQHWNYPYTFGQGTKLEIK
900728 VH 配列番号:34
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYWIHWVRQAPGQGLEWIGMIHPNSGSTYYNEKFQGRVTMTVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARYYGSDYEWYFDVWGQGTTVTVSS
ここで、下線部は、CDRs(IMGT定義)で、900725、900726、900727及び900728がそれぞれ4個の抗CD73ヒト化抗原結合タンパク質番号である。
【0225】
(実施例3 ヒトCD73を発現する細胞に対する抗CD73抗原結合タンパク質の結合活性の検出)
抗原結合タンパク質900567、900584、900725、900726、900727及び900728とヒトCD73を発現する細胞(CHOK1-huCD73-3F4,華博生物社製)の結合活性を検出し、うち、900584はCD73を標的とするスクリーニングされた抗原結合タンパク質であり、900584のVHのアミノ酸配列は配列番号:35に示され、900584のVLのアミノ酸配列が配列番号:36に示される。
【0226】
全ての抗原結合タンパク質は、1%BSA含有PBS溶液(1%BSA/PBS)で30μg/mlに希釈してから11つの濃度勾配に3倍希釈した。96ウェル穴U字型プレートに1ウェルあたり20μL添加し、同時に陰性対照をセットした(1%BSA/PBSのみ添加)。対数増殖期のヒトCD73発現細胞(CHOK1-huCD73-3F4、Huabo Biotech)の懸濁液を採取し、遠心分離(1000rpm×5分)して培養液を捨て、生細胞の密度は1×10/mLになるまで1%BSA/PBSで再懸濁し、抗CD73抗原結合タンパク質を含む96ウェルU字型プレートに1ウェルあたり20μL(2×10細胞)を加え、室温で30分間反応させた。反応後の96ウェルU字型プレートを1%BSA/PBSで再懸濁し、遠心分離(300g×3分)して上清を捨て、このように1回洗浄し、1:200希釈のPE-ヤギ抗ヒト-Fc(Jackson ImmunoResearch、#109-115-098)を加え、暗所、室温で15分間反応させた。反応後の96ウェルU 字型プレートを1%BSA/PBSで再懸濁し、遠心分離(300gx3分)して上清を捨て、このように3回洗浄し、最後に1ウェルあたり100μLの1%BSA/PBSで再懸濁し、PEチャネルの蛍光強度をフローサイトメーター(BD、#CantoII)で検出した。
【0227】
900567の結合活性結果を図1及び表3に、900567、900725、900726、及び900728の結合活性結果を表4に示す。この結果から、900567は、ヒトCD73を発現する細胞(CHOK1-huCD73-3F4、華博生物社製)に対して良好な親和性を持ち、900725及び900728がヒトCD73を発現する細胞(CHOK1-huCD73-3F4、華博生物社製)の親和性はかなり良いことが分かる。
【0228】
【表3】
【0229】
【表4】
【0230】
(実施例4 組換えCD73タンパク質に対する抗CD73抗原結合タンパク質の結合活性の検出)
抗CD73抗原結合タンパク質900567,900725,900726,900727,900728と組換えCD73タンパク質(ACRO,# CD3-H52H7-100μg)との結合活性を検出する。
【0231】
ELISAマイクロプレートを30ulの2ug/mlCD73タンパク質(ACRO、#CD3-H52H7-100μg)溶液でコーティングし、4℃で一晩放置した。次にPBSTで3回洗浄し、5%のMILK/PBSで室温にて1時間ブロッキングし、ブロッキング後にPBSTで3回洗浄した。900567、900725、900726、900727及び900728はいずれも1%BSA含有PBS溶液(1%BSA/PBS)で10μg/mlに希釈してから7つの濃度勾配に4倍希釈した。そして希釈した抗原結合タンパク質溶液をELISAマイクロプレートに1ウェルあたり30ul添加し、室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、PBSTで3回洗浄してからAnti-human-IgG-Fc-HRPを加えて室温で50分間インキュベートし、インキュベーション後にBSTで3回洗浄した。TMB溶液を加え、次に2M HClを加えて反応を停止させ、OD450の読み取り値を確認した。
【0232】
900567、900725、900726、900727、900728と組換えCD73タンパク質(ACRO,# CD3-H52H7-100μg)との結合活性を表5及び図2に示し、結果は組換えCD73タンパク質に対する本出願の抗原結合タンパク質の結合親和性がかなり良いことを示している。
【0233】
【表5】
【0234】
(実施例5 CD73酵素活性の阻害に対する抗CD73抗原結合タンパク質の効果の検出)
本出願に記載の抗原結合タンパク質をPBS溶液で30μg/mlに希釈してから6つの濃度勾配を5倍に比例して希釈した。対数増殖期のヒトCD73を発現する細胞(CHOK1-huCD73-3F4,華博生物社製)懸濁液を取り、培地で4X10/mlの細胞懸濁液を調製し、1ウェルあたり100ul(約40000個の細胞)を9696 ウェルU字型プレートに入れ、1500rpm×5分で遠心分離し、上清を除去した。次に系列希釈をした抗体で細胞を再懸濁し、各ウェルに100ulを加え、よく混合し、37℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後、1500rpmで5分間遠心分離し、上清を除去し、200ul/ウェルのPBSで1回洗浄してから100ul/ウェルの180uM AMPで再懸濁し、37℃で60分間インキュベートした。インキュベーション後、1500rpm×5分で遠心分離し、50ul/ウェルの上清を取り、96ウェルブラックプレートに移し、50ul/ウェルの調製済みATPを加え、よく混合し、37℃で15分間反応させた。最後にCellTiter-Glo(商標) SubstrateをCellTiter-Glo(商標) bufferに加え、よく混合し、室温に平衡化し、次に試験対象ウェルに100ul/ウェルを加え、室温で10分間反応させ、全波長で検出した。酵素活性のパーセンテージは次のように評価された。残留CD73の活性:(CHOK1-huCD73-3F4細胞+Ab+ATP+AMP)-(ATP+AMP)/(CHOK1-huCD73-3F4細胞+ATP+AMP)-(ATP+AMP)×100。
【0235】
CD73の細胞(CHOK1-huCD73-3F4,華博生物社製)の酵素活性阻害に対する900567、900584の効果を図3及び表6に示す。CD73の細胞(CHOK1-huCD73-3F4,華博生物社製)の酵素活性阻害に対する900567、900725、900728及びMedImmune社由来のOleclumab陽性対照抗体(Oleclumabの重鏈配列は、配列番号:39に示され、軽鎖配列は配列番号:40に示され、本出願において、番号は900759である)の効果を図4及び表7に示す。結果は、細胞膜上のCD73酵素活性阻害に対するヒト化抗体900725、900728とキメラ抗体900567の効果は、基本的に同じであることを示している。
【0236】
【表6】
【0237】
【表7】
【0238】
(実施例6 抗CD73抗原結合タンパク質とヒトCD73タンパク質の結合親和性の検出)
900567、900725、900726、900727、900728とヒトCD73タンパク質(メーカー:ACRO Biosystems、品番:CD3-H52H7)の結合キネティックス実験は、Biacore(GE,型番:T200)で検出する。実験用バッファー:HBS-EP+(pH7.4)、protein Aチップ(メーカー:GE、品番:29-1275-56)。
【0239】
サンプルチャンバーと流路の温度を25℃に設定し、protein Aチップにキメラ抗体又はヒト化抗体をリガンドとして捕捉し、約100RU固定化した。ヒトCD73タンパク質を解析対象として 実験用バッファーで50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、3.12nM、1.57nMの一連の濃度に希釈し、実験用バッファーを0濃度対照として30μL/分の流速下で120秒間結合、600秒間解離した。10mM Glycine pH 1.5は、50μL/分の流速下で、60秒間再生してマルチサイクルキネティックス検出を実行した。1:1結合モデルを使用して、Fit localモードを選択して、結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、及び解離平衡速度定数(KD)を適合させた。フィッティング結果を表8に示す。本出願に記載の抗原結合タンパク質はヒトCD73タンパク質に結合し、大部分の抗原結合タンパク質とヒトCD73タンパク質との間の結合親和性に有意差がないことを示している。
【0240】
【表8】
【0241】
(実施例7 抗CD73抗原結合タンパク質と異種(ヒト、マウス、ラット、サル)CD73タンパク質との結合親和性の検出)
900567、900725、900726、900727及び900728とHuman(ヒト)CD73タンパク質(メーカー:ACRO Biosystems、品番:CD3-H52H7),Mouse(マウス)CD73/NT5E(メーカー:ACRO Biosystems、品番:CD3-M52H9)、Rat(ラット)CD73(メーカー:Novoprotein、品番:CB16)及びCynomolgus(サル)CD73(メーカー:Novoprotein、品番:CI21)の結合キネティックス実験をBiacore(GE、型番:T200)で検出する。実験用バッファー:HBS-EP+(pH7.4)、 protein Aチップ(メーカー:GE、品番:29-1275-56)。
【0242】
サンプルチャンバーと流路の温度を25℃に設定し、protein Aチップにそれぞれ抗原結合タンパク質をリガンドとして捕捉し、約100RU固定化した。Human CD73タンパク質/Cynomolgus CD73/Rat CD73/Mouse CD73は、それぞれ実験用バッファーで50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、3.12nM、1.57nMの一連の濃度に希釈し、実験用バッファーを0濃度対照として30μL/分の流速下で120秒間結合、600秒間解離した。10mM Glycine pH 1.5は、50μL/分の流速下で、60秒間再生してマルチサイクルキネティックス検出を実行した。1:1結合モデルを使用して、Fit localモードを選択して、結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、及び解離平衡速度定数(KD)を適合させた。フィッティング結果を表9に示す。本出願に記載の抗原結合タンパク質はヒトCD73、サルCD73(メーカー:Novoprotein、品番:CI21)に結合し、大部分の抗原結合タンパク質とヒトCD73タンパク質との間の結合親和性に有意差がなく、同時に全ての抗原結合タンパク質はマウス(メーカー:ACRO Biosystems、品番:CD3-M52H9)及びラット(メーカー:Novoprotein、品番:CB16)のCD73タンパク質と結合しなかったことを示している。
【0243】
【表9】
【0244】
(実施例8 抗CD73抗原結合タンパク質による細胞表面のCD73エンドサイトーシス誘導能力の検出)
本実施例は、本出願に記載の抗原結合タンパク質がCD73酵素活性を阻害し、細胞表面のCD73細胞内移行を誘導するという二重の作用機序を持っていることを示している。具体的な操作は以下の通りである。CD73系抗原結合タンパク質をPBS溶液で1μg/mlに希釈し、各濃度を2ウェルで繰り返した。対数増殖期のCalu6細胞を採取し、2×10/mlの細胞懸濁液に調製し、96ウェルU字型プレートに1ウェルあたり100μL(約20,000個の細胞)を加え、300g×3分間で遠心分離し、上清を除去した。次に希釈した抗原結合タンパク質で細胞を再懸濁し、100μL/ウェルでよく混合し、4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、300g×3分間で遠心分離し、上清を除去し、1%BSAで再懸濁し、半分を37℃でインキュベートし、残りの半分を4℃で5時間インキュベートした。インキュベーション後、相応時間のウェルを取り出し、300g×3分間で遠心分離して上清を除去し、PE anti-huIgG Fc(1:200)を50μL/ウェル加え、よく混ぜ、4℃で30分間反応させた。インキュベーション後、300g×3minで2回洗浄し、フローサイトメトリーで蛍光強度を測定した。
【0245】
抗CD73抗原結合タンパク質による細胞表面のCD73エンドサイトーシス誘導の検出結果を表10及び図5に示す。結果は、抗CD73抗原結合タンパク質900567、900725及び900728がいずれも細胞表面のCD73受容体のエンドサイトーシスを誘導できることを示している。
【0246】
【表10】
【0247】
(実施例9 抗CD73抗原結合タンパク質の熱安定性の検出)
抗CD73抗原結合タンパク質の熱安定性の実験ステップは、次の通りである。タンパク質安定性解析装置(UNcle,UNCHAINED LABS,US)で抗CD73抗原結合タンパク質900567、900725、900726、900727及び900728の融解温度(Tm)、凝集温度(Tagg)を測定し、Tm及びTaggの昇温範囲は25℃~95℃で、昇温速度は0.3℃であった。
【0248】
抗CD73抗原結合タンパク質の熱安定性の検出結果を表11に示す。結果は、抗CD73抗原結合タンパク質900567、900725、900726、900727及び900728の熱安定性データのTm及びTagg値は、どちらも65℃を超え、且つ900725、900726及び900728の3つのヒト化タンパク質の熱安定性は優れたことを示している。
【0249】
【表11】
【0250】
(実施例10 抗CD73抗原結合タンパク質の非特異的吸着の影響の検出)
SPR法で抗原結合タンパク質と非標的分子の非特異的吸着の影響を測定した。
【0251】
【表12】
【0252】
【表13】
【0253】
シリーズセンサーチップCM5(GE,#BR-1005-30)を室温に置いて20~30分間平衡化し、Biacore 8K(GE)機器に取り付けした。鶏卵由来のリゾチーム溶液(Sigma,#L3790)及び大豆由来のトリプシンインヒビタータイプ1-S(Sigma,#T-2327)をアミンカップリングキット(GE,#BR-1000-50)でCM5チップにそれぞれ固定した。ローディングバッファーはHBS-EP(1X)(GE,#BR-1006-69)であり、4つの平衡化サイクルを設定した。ポリクローナルウサギ抗リゾチーム(ABcam、Ab391)、抗トリプシン阻害剤の抗体(LifeSpan Biosciences、#LS-C76609)、キメラ抗体及びヒト化抗体を平衡バッファーで1000nMに希釈し、流速5μL/分、注入チャネル1、2及び3、Flow Cell1及び2、結合時間10分、解離時間15分を設定した。再生流速は50μL/分で、まず0.85%リン酸溶液(ProteOn、176-2260)で60秒間再生してから50mM水酸化ナトリウム溶液で30秒間再生した。
【0254】
カルボキシメチルデキストラン(Carboxymethyl Dextran)のPIは3.5、トリプシン阻害剤のPIは4.5、リゾチームのPIは11.3で、pH7.4のHBS-EPバッファーにおいて、カルボキシメチルデキストラン及びトリプシン阻害剤は強い負電荷を持ち、リゾチームが強い正電荷を持っている。検出結果を表12に示す。900567、900725、900726、900727、900728のシグナル強度はいずれも20U未満又はそれに近いため、非特異的静電相互作用はないと考えられる。
【0255】
【表14】
注:一般的には、バッファーの影響を差し引いた後、応答値が20RU未満の場合、相互作用が弱く無視できると考えられ、20RUを超える場合、明らかな相互作用があり、100RU以上の場合、相互作用が強いと考えられている。
【0256】
(実施例11 抗CD73抗原結合タンパク質のインビボにおける腫瘍治療効果の検出)
(1)CD73ヒト化マウスを使用して、MDA-MB-231 トリプルネガティブ乳癌動物モデルを確立し、被験抗体の有効性をテストする。まず、100μLのMDA-MB-231(ATCCライブラリ)細胞(2E6細胞)をCD73ヒト化マウスに接種して、CD73ヒト化マウスMDA-MB-231トリプルネガティブ乳癌動物モデルを確立し、腫瘍形成マウスをマウス腫瘍の体積及び体重に応じて4つの実験群に均等に分配し、各群に6匹のマウスを、週に2回、合計6回、腹腔内注射で投与した。具体的な投薬レジメンを下表に示す。900759はMedImmune社のOleclumab(MEDI 9447)由来の抗体であり、陰性対照の900201はTNPを標的とする抗体であり、900201の重鎖アミノ酸配列を配列番号:51に示し、軽鎖アミノ酸配列を配列番号52に示す。結果は、本出願に記載の抗原結合タンパク質900725、900728及び陽性対照抗体900759は、いずれもMDA-MB-231トリプルネガティブ乳癌の増殖を効果的に抑制でき、且つ効果が同じで、陰性対照抗体900201は。腫瘍の増殖を抑制できないことを示している。
【0257】
【表15】
【0258】
(2)NPGマウスを使用して、MDA-MB-231トリプルネガティブ乳癌動物モデルを確立し、被験抗体の有効性をテストした。この実験で使用したヒト乳癌細胞MDA-MB-231は、10%FBSを添加したL-15培地を、CO2を含まない37℃のインキュベーターに入れて培養した。細胞を10世代連続培養する前に、約5.0×10 MDA-MB-231細胞を100μLのPBSに懸濁し、同量のMatrigelとよく混合し、NPGヒト化マウスの背中右側脇の下に皮下注射により接種し、接種量は約200μLであった。接種前に2~5%のイソフルランでマウスを麻酔した。接種当日、1.0×10PBMC(100μL)を尾静脈から注射し、腫瘍が平均約50~80mmに成長した時、18匹の荷瘤マウスを腫瘍体積及び体重に応じて無作為に1群6匹、3群に分けた。投薬は群分けの日に行い、具体的な投薬レジメンを下表に示す。900201はCD73抗原に結合しない陰性対照抗体である。Oleclumabは、アストラゼネカ社が開発した抗CD73モノクローナル抗体で、現在第II相臨床試験中である。Oleclumabの重鎖(HC)のアミノ酸配列を配列番号:53に示し、Oleclumabの軽鎖(LC)のアミノ酸配列を配列番号:54に示す。
【0259】
結果を下表14及び図6に示し、oleclumab及び900725はMDA-MB-231トリプルネガティブ乳癌の増殖を有意に抑制することができ、且つ900725の腫瘍抑制効果は陽性対照oleculumabよりも優れ、陰性対照抗体900201が腫瘍の増殖を抑制できない。
【0260】
【表16】
【0261】
(実施例12 抗CD73抗原結合タンパク質のインビボにおける膵臓癌治療効果の検出)
この実験で使用したヒト膵臓癌細胞BxPC-3は、10% FBSを添加したRPMI-1640培地を5%CO2 を含む37℃のインキュベーターに入れて培養した。細胞を10世代連続培養する前に、約1×10 BxPC-3細胞を含む100μLのPBSと等量のMatrigelをよく混合し、18匹のNPGマウスの背中右側脇の下に皮下注射により接種し、接種量は約200μLであった。接種前に2~5%のイソフルランでマウスを麻酔した。接種当日、1.0×10 PBMC(100 μL)を尾静脈から注射し、腫瘍が平均約50~80mmに成長した時、18匹の荷瘤マウスを腫瘍体積及び体重に応じて無作為に1群6匹、3群に分けた。投薬は群分けの日に行い、具体的な投薬レジメンを下表に示す。900543はCD73抗原に結合しない陰性対照抗体(900543は900201のADCCノックアウト型、その重鎖のアミノ酸配列を配列番号:55に示す)である。Oleclumabは、アストラゼネカ社が開発した抗CD73モノクローナル抗体で、現在第II相臨床試験中である。
【0262】
結果を図7に示し、oleclumab及び900725は、BxPC-3膵臓癌の増殖を有意に抑制することができ、かつ900725の腫瘍増殖抑制効果は陽性対照oleculumabよりも優れ、陰性対照抗体900543が腫瘍の増殖を抑制できない。
【0263】
【表17】
【0264】
本出願で言及された全ての文献は、あたかも個々の文書が参照により組み込まれることが個別に示されているかのように、参照により本出願に組み込まれる。なお、本出願の上記の教示内容を読んだ後、当業者は本出願に多種多様な変更又は修正を加えることができ、かかる均等な形態も本出願の添付の特許請求の範囲によって限定される範囲内に収まることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2024502758000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD73又はその機能的活性断片に特異的に結合することができ、HCDR3を含み、且つ前記HCDR3が配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含む、単離された抗原結合タンパク質。
【請求項2】
HCDR3、HCDR2、及びHCDR1を含み、前記HCDR3が配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号:2で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記HCDR1が配列番号:3で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項3】
LCDR3を含み、且つ前記LCDR3が配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項4】
LCDR3、LCDR2、及びLCDR1を含み、前記LCDR3が配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記LCDR1が配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項5】
HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、前記HCDR1が配列番号:3で示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2が配列番号:2で示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR3が配列番号:1で示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR1が配列番号:6で示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR2が配列番号:5で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記LCDR3が配列番号:4で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項6】
VHを含み、前記VHが配列番号:49で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項7】
前記VHは、配列番号:28、配列番号:30、配列番号:32及び配列番号:34のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項8】
VLを含み、前記VLが配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項9】
前記VLは、配列番号:29、配列番号:31及び配列番号:33のいずれかで示されるアミノ酸配列を含む、請求項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項10】
VH及びVLを含み、前記VHが配列番号:49で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:50で示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項11】
以下アミノ酸配列の組合せ:
1)前記VHが配列番号:28で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:29で示されるアミノ酸配列を含
2)前記VHが配列番号:30で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:31で示されるアミノ酸配列を含
3)前記VHが配列番号:30で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:33で示されるアミノ酸配列を含
4)前記VHが配列番号:32で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:31で示されるアミノ酸配列を含、及び
5)前記VHが配列番号:34で示されるアミノ酸配列を含み、且つ前記VLが配列番号:33で示されるアミノ酸配列を含む、
からなる群より選択される1つ以上を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項12】
抗体重鎖定常領域及び抗体軽鎖定常領域を含み、前記抗体重鎖定常領域は、ヒトIgG1重鎖定常領域に由来し、前記抗体軽鎖定常領域は、ヒトIg 定常領域に由来する、請求項1~11のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項13】
CD73の酵素活性を阻害できる、細胞表面のCD73のエンドサイトーシスを誘導できる、融解温度(Tm)及び/もしくは凝集温度(Tagg)が65℃を超える、非特異的吸着の影響がないもしくは弱い、並びに/又は腫瘍増殖を抑制できる、請求項1~12のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質を含む、ポリペプチド分子。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質又は請求項14に記載のポリペプチド分子をコードする核酸分子。
【請求項16】
請求項15に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質を含む免疫複合体。
【請求項18】
請求項15に記載の核酸分子、請求項16に記載のベクター及び/又は請求項17に記載の免疫複合体を含む細胞。
【請求項19】
請求項1~13のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項14に記載のポリペプチド分子、請求項15に記載の核酸分子、請求項16に記載のベクター、請求項17に記載の免疫複合体及び/又は請求項18に記載の細胞、並びに薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項20】
疾患及び/又は病症を予防及び/又は治療するために使用される医薬組成物であって、前記疾患及び/又は病症は、CD73によって媒介される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項1~13のいずれか一項に記載の単離された抗原結合タンパク質、請求項14に記載のポリペプチド分子、請求項15に記載の核酸分子、請求項16に記載のベクター、請求項17に記載の免疫複合体、請求項18に記載の細胞及び/又は請求項19に記載の医薬組成物を投与することを含む、サンプル中のCD73を検出するための方法。
【国際調査報告】