(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】リチウム二次電池の活性金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/54 20060101AFI20240116BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20240116BHJP
C22B 5/12 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H01M10/54
C22B7/00 C
C22B5/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538744
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-03
(86)【国際出願番号】 KR2021019105
(87)【国際公開番号】W WO2022139310
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0181119
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ハ ヒョン ベ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム サン キ
(72)【発明者】
【氏名】キム ワン ギ
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA16
4K001AA19
4K001AA34
4K001BA22
4K001DA05
4K001HA09
5H031BB01
5H031BB02
5H031BB09
5H031HH06
5H031HH09
5H031RR02
(57)【要約】
リチウム二次電池の活性金属の回収方法では、リチウム-遷移金属酸化物を含む正極活物質粒子を準備する。正極活物質粒子は還元処理する。還元処理した正極活物質粒子は超音波分散水和する。水和した遷移金属スラリーを回収する。超音波分散を用いた凝集解消により、リチウムおよび遷移金属の回収率を増加させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム-遷移金属酸化物を含む正極活物質粒子を準備するステップと、
前記正極活物質粒子を還元処理するステップと、
還元処理した前記正極活物質粒子を超音波分散水和するステップと、
水和した遷移金属スラリーを回収するステップとを含む、リチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項2】
前記還元処理するステップは、前記正極活物質粒子からリチウム前駆体粒子、遷移金属酸化物粒子および遷移金属粒子を形成することを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項3】
前記還元処理するステップでは、前記リチウム前駆体粒子、前記遷移金属酸化物粒子および前記遷移金属粒子の凝集体が形成される、請求項2に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項4】
前記超音波分散水和するステップは、前記凝集体を分解することを含む、請求項3に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項5】
前記超音波分散水和するステップにより、前記凝集体は300μm以下の粒度の粒子に分解される、請求項4に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項6】
前記超音波分散水和するステップは、固相-液相の二相工程を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項7】
前記超音波分散水和するステップは、50~110Wの電力の超音波を印加することを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項8】
前記超音波分散水和するステップは、凝集体1gを基準に2.5~5.5W/gの電力の超音波を印加することを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項9】
前記超音波分散水和するステップは、回収された前記遷移金属スラリー1gを基準に0.6~1.4W/gの電力の超音波を印加することを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項10】
前記正極活物質粒子を還元処理するステップは、還元性ガスを用いた流動層反応器内で行われる、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項11】
回収された前記遷移金属スラリーを再水和するステップをさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項12】
前記正極活物質粒子を還元処理するステップの前に、前記正極活物質粒子を500℃以下の温度で熱処理するステップをさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池の活性金属の回収方法に関する。より詳細には、リチウム二次電池の正極から活性金属を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池はカムコーダー、携帯電話、ノートパソコンなどの携帯用電子通信機器およびハイブリッド自動車、電気自動車などの車両の動力源として広く適用および開発されている。二次電池としては、リチウム二次電池が、動作電圧および単位重量当たりのエネルギー密度が高く、充電速度および軽量化に有利な点で積極的に開発及び適用されてきた。
【0003】
前記リチウム二次電池の正極用活物質としては、リチウム金属酸化物を用いることができる。前記リチウム金属酸化物は、さらにニッケル、コバルト、マンガンなどの遷移金属を共に含有することができる。
【0004】
前記正極用活物質に前述した高コストの有価金属が用いられることにより、正極材の製造に製造コストの20%以上がかかっている。また、最近では環境保護への関心が高まることによって、正極用活物質のリサイクル方法の研究が進められている。
【0005】
例えば、廃正極活物質を還元反応させることにより、リチウムおよび遷移金属を分離・回収することができる。しかし、還元反応の条件が適切に制御されないと、活物質粒子の固まり、凝集が生じ得る。この場合には、回収できないリチウムおよび遷移金属の割合が増加することがあり、回収される活性金属の純度も低下することがある。
【0006】
例えば、韓国特許第10-0709268号は、廃マンガン電池とアルカリ電池のリサイクル装置及び方法を開示しているが、高選択性、高収率で有価金属を再生するための乾式ベースの方法は示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、高効率かつ高純度でリチウム二次電池の活性金属を回収する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法では、リチウム-遷移金属酸化物を含む正極活物質粒子を準備する。前記正極活物質粒子は還元処理する。還元処理した前記正極活物質粒子は超音波分散水和する。水和した遷移金属スラリーを回収する。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記還元処理により、前記正極活物質粒子からリチウム前駆体粒子、遷移金属酸化物粒子および遷移金属粒子を形成することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記還元処理により、前記リチウム前駆体粒子、前記遷移金属酸化物粒子および前記遷移金属粒子の凝集体を形成することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記超音波分散水和により、前記凝集体を分解することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記超音波分散水和により、前記凝集体は300μm以下の粒度の粒子に分解することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記超音波分散水和は、固相-液相の二相工程を含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記超音波分散水和では、50~110Wの電力の超音波を印加することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記超音波分散水和では、凝集体1gを基準に2.5~5.5W/gの電力の超音波を印加することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記超音波分散水和では、回収された前記遷移金属スラリー1gを基準に0.6~1.4W/gの電力の超音波を印加することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質粒子の還元処理は、還元性ガスを用いた流動層反応器内で行うことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、回収された前記遷移金属スラリーを再水和することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質粒子を還元処理する前に、前記正極活物質粒子を500℃以下の温度で熱処理することができる。
【発明の効果】
【0020】
前述の例示的な実施形態によると、例えば、廃正極活物質から乾式還元工程を利用した乾式ベースの工程によりリチウム前駆体を回収することができる。これにより、酸溶液の湿式ベースの工程に必要とされる複雑な浸出工程、付加工程なしに高純度でリチウム前駆体を得ることができる。
【0021】
例示的な実施形態によると、前記乾式還元工程の過度の進行、または還元反応熱の過度の増加により生成される凝集体に対して、超音波分散によって凝集を解消することができる。これにより、水和工程における遷移金属を含むスラリーの回収率を向上させることができ、回収されない凝集体の量を低減することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記超音波分散は、固体と液体の二相状態で行い、スラリー回収率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。
【
図2】
図2は、還元工程および水和工程における粒子の流れおよび相変化を示す概略図である。
【
図3】
図3は、還元工程および水和工程における粒子の流れおよび相変化を示す概略図である。
【
図4】
図4は、還元工程および水和工程における粒子の流れおよび相変化を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態は、還元反応により、リチウム二次電池から高純度、高収率で活性金属を回収する方法を提供する。
【0025】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態をより具体的に説明する。但し、これらの実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0026】
本明細書で使用される用語「前駆体」は、電極活物質に含まれる特定の金属を提供するために、前記特定の金属を含む化合物を包括的に指すものとして使用される。
【0027】
図1は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。
図2~
図4は、還元工程および水和工程における粒子の流れおよび相変化を示す概略図である。
【0028】
図1を参照すると、例えば、S10ステップでは、正極活物質混合物を準備することができる。
【0029】
例示的な実施形態によると、リチウム二次電池の廃正極から活物質粒子(例えば、廃正極活物質粒子)を準備することができる。
【0030】
前記リチウム二次電池は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在する分離膜とを含む電極組立体を含むことができる。前記の正極および負極は、それぞれ正極集電体および負極集電体上にコーティングされた正極活物質層および負極活物質層を含むことができる。
【0031】
例えば、前記正極活物質層に含まれる正極活物質は、リチウムおよび遷移金属を含有する酸化物を含むことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0033】
[化学式1]
LixM1aM2bM3cOy
【0034】
化学式1中、M1、M2及びM3は、Ni、Co、Mn、Na、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ge、Sr、Ag、Ba、Zr、Nb、Mo、Al、GaまたはBから選択される遷移金属であってもよい。化学式1中、0<x≦1.1、2≦y≦2.02、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<a+b+c≦1であってもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含むNCM系リチウム酸化物であってもよい。
【0036】
前記廃リチウム二次電池から前記正極を分離して廃正極を回収することができる。前記廃正極は、前述のように正極集電体(例えば、アルミニウム(Al))および正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、前述の正極活物質に加えて、導電材及び結合剤を共に含むことができる。
【0037】
前記導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素系物質を含むことができる。前記結合剤は、例えば、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride,PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)などの樹脂物質を含むことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記正極集電体から前記正極活物質層を剥離し、分離された前記正極活物質層を粉砕して正極活物質粒子を生成することができる。これにより、前記正極活物質粒子は粉末状に製造することができ、例えばブラックパウダー(black powder)の形で収集することができる。
【0039】
前記正極活物質粒子は、前述のようにリチウム-遷移金属酸化物の粉末を含み、例えば、NCM系リチウム酸化物粉末(例えば、Li(NCM)O2)を含むことができる。この場合、前記化学式1中のM1、M2及びM3は、それぞれNi、Co、Mnであってもよい。
【0040】
本出願で使用される用語「正極活物質粒子」とは、前記廃正極から正極集電体が実質的に除去された後、後述する還元性反応処理に投入される原料物質を指すことができる。一実施形態では、前記正極活物質粒子は、前記NCM系リチウム酸化物を含むことができる。一実施形態では、前記正極活物質粒子は、前記結合剤または前記導電材に由来する成分を一部含んでいてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質粒子の平均粒径(D50)(体積累積分布における平均粒径)は5~100μmであってもよい。前記範囲内では、後述する流動層反応器による還元性反応を容易に行うことができる。
【0042】
例えば、S20ステップでは、前記正極活物質粒子を還元性反応器100内で還元反応させることができる。
【0043】
図2及び
図3を参照すると、前述の正極活物質粒子50を還元性反応器100内に投入することができる(例えば、S21ステップ)。
【0044】
いくつかの実施形態では、正極活物質粒子50は還元処理する前に熱処理を行うことができる。前記熱処理により、正極活物質粒子50に含まれる前記の導電材および結合剤のような不純物を除去または低減し、前記リチウム-遷移金属酸化物を高純度で還元処理することができる。
【0045】
前記熱処理の温度は、例えば約500℃以下、一実施形態では約100~500℃、好ましくは約350~450℃であってもよい。前記範囲内では、実質的に前記不純物が除去され、リチウム-遷移金属酸化物の分解、損傷を防止することができる。
【0046】
一実施形態では、前記熱処理は、還元性反応器100内で行うことができる。この場合、還元性反応器100の下部に配置されたガス注入部110を介して、例えば、窒素(N2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)のようなキャリアガスを注入し、還元性反応器100内で流動化熱処理を行うことができる。
【0047】
一実施形態では、正極活物質粒子50は、熱処理された後に還元性反応器100に投入してもよい。
【0048】
例えば、S23ステップでは、正極活物質粒子50を還元処理することができる。例示的な実施形態によると、還元性反応器100は、流動層反応器で提供することができる。ガス注入部110を介して還元性反応器100の下部から還元性ガスを注入し、還元性反応器100内で正極活物質粒子50による流動層が形成され、還元反応を誘導することができる。
【0049】
前記還元性ガスは、水素(H2)を含むことができる。前記還元性ガスは、さらに窒素、ヘリウム、アルゴン(Ar)のようなキャリアガスを含むことができる。
【0050】
前記還元性ガスが還元性反応器100の下部から供給されて正極活物質粒子50と接触するので、正極活物質粒子50は還元性反応器100の上部に移動するか、または還元性反応器100内に滞留しながら、前記還元性反応ガスと反応することができる。
【0051】
前述のように、前記還元性ガスを注入して流動層を形成することができる。前記流動層内で正極活物質粒子50は還元性ガスと接触して上昇、滞留、下降を繰り返すことにより、反応接触時間が増加し、粒子の分散を促進することができる。
【0052】
また、前記還元性ガスが還元性反応器100の下部から供給されて正極活物質粒子50と接触するので、正極活物質粒子50が還元性反応器100の上部に移動しながら反応領域を拡張することができる。
【0053】
しかし、本発明のコンセプトは必ずしも流動層の反応に制限されるものではない。例えば、バッチ(batch)式反応器または管状反応器内に正極活物質混合物を予めロードした後、還元性反応ガスを供給する固定式反応を行ってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、還元性反応器100の下部には、分散プレート120を配置することができる。分散プレート120に含まれる噴射ホール(injection hole)を介して還元性ガスの上昇および噴出を促進することができる。
【0055】
還元反応が開始されることにより、正極活物質粒子50からリチウム前駆体粒子60を生成することができる。例えば、還元工程が進行するにつれて、Li(NCM)O2の結晶構造が崩壊し、Liが前記結晶構造から脱離して、リチウム水酸化物(LiOH)、リチウム酸化物(例えば、Li2O)及び/又はリチウムカーボネート(Li2CO3)の形で還元することができる。好ましい一実施形態では、リチウム前駆体粒子60は、リチウム水酸化物(LiOH)を含むことができる。
【0056】
一方、前記結晶構造から遷移金属が還元され、遷移金属酸化物粒子70を生成することができる。例えば、遷移金属酸化物粒子70は、NiOおよびCoOのような遷移金属酸化物を含むことができる。
【0057】
図3を参照すると、例えばS25ステップでは、還元反応がさらに進行して遷移金属粒子75をさらに生成することができる。例えば、遷移金属粒子75は、ニッケル(Ni)またはコバルト(Co)を含むことができる。遷移金属粒子75が形成されるにつれて、反応熱の増加により粒子の凝集または集まりが開始され得る。
【0058】
還元反応が過度に進行すると、例えばS27ステップにおいて、粒子同士の固まり又はシンタリング(sintering)が発生して凝集体80が生成され得る。
【0059】
例えば、過剰還元を防止するために還元反応の温度を500℃以下に調整することができる。しかし、還元反応時に発生する反応熱により、還元性反応器100内の温度は500℃を超えて上昇し得る。これにより、遷移金属酸化物粒子70または正極活物質粒子50が過剰還元され、遷移金属粒子75が生成され得る。
【0060】
また、遷移金属粒子75間の金属結合またはシンタリングにより凝集体80が発生し、凝集体80内にはリチウム前駆体粒子60、遷移金属酸化物粒子70が共に付着して含まれ得る。
【0061】
図1及び
図4を参照すると、還元反応によって生成された粒子は、超音波分散と共に水和を行うことができる(例えば、S30ステップ)。
【0062】
例えば、前述の還元処理によって生成された凝集体80に水を供給して水和することができる。前記水和は、超音波分散と共に行うことができる。前記水和は、還元性反応器100内に水を投入して行うことができ、別の貯蔵容器に凝集体80と水を共に投入して行うこともできる。
【0063】
例えば、前記凝集体80が投入された水溶液中に超音波プローブ150を浸漬した後、電力供給部Pによって電力を印加することができる。
【0064】
例えば、S34ステップで示されるように、超音波分散水和により、凝集体80のシンタリングが解消し、リチウム前駆体粒子60は実質的に水溶液中に溶解することができる。また、凝集体80に含まれる遷移金属酸化物粒子70および遷移金属粒子75は、個々に分離して水溶液中に固相に分散することができる。
【0065】
前述のように、リチウム前駆体粒子60の水和と共に超音波分散を行って凝集体80を分解することにより、遷移金属の回収率を大幅に増加させることができる。
【0066】
図1に戻ると、例えば、ろ過工程によって遷移金属含有スラリーを回収することができる(例えば、S40ステップ)。
【0067】
前述のように、超音波分散工程によって凝集体80を実質的に個々の粒子に分解するか、または微小粒子に分解することができる。これにより、凝集体80として残留して回収されない分画を実質的に除去することができ、遷移金属成分をスラリー内に実質的に完全に回収することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、前記超音波分散工程により、1,000μm以上の粒度を有する凝集体は、実質的に分解・除去することができる。例えば、前記超音波分散工程によって、凝集体80は、いずれも300μm以下の粒度を有する粒子に分解することができる。
【0069】
前記遷移金属スラリー内に含まれる遷移金属成分は、酸処理して遷移金属前駆体として回収することができる。例えば、硫酸溶液を用いて、前記遷移金属前駆体として、NiSO4、CoSO4およびMnSO4をそれぞれ回収することができる。
【0070】
水溶液中に溶解したリチウム前駆体粒子60は、例えば、結晶化工程により、リチウム水酸化物の形態のリチウム前駆体として回収することができる。いくつかの実施形態では、前記遷移金属スラリーに対して再水和工程(例えば、水洗工程)を行うことができる。前記再水和により、遷移金属スラリー内に残留するリチウム成分を再び溶解し、リチウム前駆体の回収率を高めることができる。
【0071】
前述のように、例示的な実施形態によると、前記水和及び分散工程は、実質的に超音波を利用した固相-液相の二相工程で行うことができる。これにより、凝集解消時間を短縮し、実質的に100%に近い遷移金属回収率を確保することができる。
【0072】
比較例では、凝集体80の分解のために還元性反応器100内に水を投入した後、ガス注入部110を介してキャリアガスを供給して流動化水和を行うことができる。
【0073】
この場合には、分散工程を固相-液相-気相の三相工程で行うので、凝集解消時間が増加しすぎて、リチウムおよび遷移金属の回収率も大幅に低下することがある。
【0074】
これに対し、前述の例示的な実施形態によると、超音波を利用した二相分散工程によって凝集解消時間を大幅に短縮することにより、粒子の再凝集を防止し、リチウムおよび遷移金属の回収率を大幅に増加させることができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、前記超音波分散時に印加される電力Wは50W以上であってもよい。この場合には、分散時間を短縮し、実質的に向上した遷移金属およびリチウム回収率を得ることができる。
【0076】
好ましくは、前記超音波分散時に印加される電力Wは50~110Wであってもよい。例えば、印加電力が110Wを超えると、さらなる回収率の増加が得られず、経済的に好ましくない。
【0077】
いくつかの実施形態では、凝集体80の1g当たりに印加される電力は2.5W/g以上であってもよく、好ましくは2.5~5.5W/gであってもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、回収される遷移金属スラリーの1g当たりに印加される電力は0.6W/g以上であってよく、好ましくは0.6~1.4W/g以上であってもよい。
【0079】
以下、本発明の理解を助けるために具体的な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0080】
実施例
廃リチウム二次電池から分離された正極材1kgを450℃で1時間熱処理した。熱処理した前記正極材を小単位に切断し、ミーリングにより粉砕処理して、Li-Ni-Co-Mn酸化物正極活物質の試料を採取した。流動層反応器内に前記正極活物質試料200gを投入し、反応器の内部温度を480℃に維持したまま、反応器の下部から窒素100%ガスを5.5L/minの流量で注入して、流動化熱処理を3時間行った。
【0081】
熱処理工程後、反応器の温度を460℃に下げ、反応器の下部から水素20vol%/窒素80vol%の混合ガスを5.5L/minの流量で4時間注入し、還元反応を行った。このとき、流動層反応器の内部温度は460℃に維持した。還元反応の進行後、反応器の温度を25℃に減温し、凝集体20gを採取した。
【0082】
前記凝集体20gに水60gを投入し、超音波プローブを水溶液中に浸漬した後、表1に示す電力、分散時間条件にて凝集解消工程を行った。
【0083】
比較例
実施例と同様に還元反応を行って収集した凝集体20gに水60gを投入し、超音波分散の代わりに窒素(N2)ガスを水溶液中に供給しながら300分間分散を行った。
【0084】
実施例および比較例から得られた分散液から遷移金属含有スラリーを収集した後、水洗工程を行った。その後、以下のようにしてスラリー回収率およびリチウム回収率を測定した。
【0085】
1)スラリー回収率の測定
還元工程を行った後に生成された凝集体の重量(A)、分散を行った後にスラリーの形態で分散せずに反応器の内部に残っている固相の凝集体の重量(B)を測定し、スラリー回収率(=(1-B/A)×100)(%)を算出した。
【0086】
2)リチウム回収率の測定
スラリー状態の分散液に、さらに水を19倍(重量基準)だけ投入して攪拌した後、リチウム水酸化物およびリチウム炭酸化物が水に溶解したリチウム前駆体を回収し、最初の正極活物質試料におけるリチウムの重量に対する水に溶解したリチウムの重量を測定して、リチウム回収率(%)を算出した。
【0087】
評価の結果は下記表1にまとめて示す。
【0088】
【0089】
一方、実施例では、回収されたスラリー1gおよび凝集体1gを基準に電力を換算した。それを下記表2に示す。
【0090】
【0091】
表1及び表2から分かるように、超音波分散水和を行った実施例では、全般的に三相分散工程を行った比較例に比べて、短縮された分散時間で向上した回収率が確保された。
【0092】
例えば、実施例3~6では、例えば50W以上の電力供給によって超音波分散を行った場合、80%以上のスラリー回収率および70%以上のリチウム回収率が確保された。
【国際調査報告】