(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】コポリマー骨格及びコポリマーアームを有する熱応答性ブラシポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 81/02 20060101AFI20240116BHJP
C10M 149/12 20060101ALI20240116BHJP
C08L 51/06 20060101ALI20240116BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20240116BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20240116BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20240116BHJP
C08F 8/30 20060101ALI20240116BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240116BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20240116BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20240116BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240116BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
C08G81/02
C10M149/12
C08L51/06
C08K5/00
C08L91/00
C08F220/18
C08F8/30
C10N30:00 A
C10N30:08
C10N30:02
C10N40:25
C10N40:04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538984
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2021087011
(87)【国際公開番号】W WO2022136384
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500010875
【氏名又は名称】インフィニューム インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】グエン ガ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ロナルド エム
(72)【発明者】
【氏名】ベセル レムジ
(72)【発明者】
【氏名】コンシリオ マティルデ
【テーマコード(参考)】
4H104
4J002
4J031
4J100
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104CA04A
4H104CE20C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB13
4H104LA01
4H104LA04
4H104LA11
4H104PA03
4H104PA41
4H104PA42
4J002AE002
4J002BN111
4J002FD022
4J002FD070
4J002FD180
4J002FD202
4J002GN00
4J002HA01
4J031AA19
4J031AA20
4J031AA57
4J031AB01
4J031AB04
4J031AC03
4J031AD01
4J031AE02
4J031AE03
4J031AF19
4J031AF30
4J031BA11
4J031BA12
4J031BA28
4J031BB01
4J031BB03
4J031BC02
4J031BC03
4J031BC12
4J031CA16
4J031CB01
4J031CD12
4J031CD16
4J100AJ02Q
4J100AL04P
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA28
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA30
4J100HA11
4J100HA61
4J100HC05
4J100HC45
4J100HD19
4J100HE08
4J100HE14
4J100JA15
4J100JA28
(57)【要約】
少なくとも2つの異なるアクリレートモノマーのモノマー繰り返し単位を有するコポリマー骨格、及び少なくとも2つの異なるアシル化ポリ(アルキレンアミン)を有するコポリマーブラシアームを含むブラシコポリマー組成物に関する。前記ブラシアーム、ブラシコポリマー、又はその両方は有利にも、例えば炭化水素希釈剤中で上限臨界溶液温度(UCST)挙動を示す場合がある。可逆的付加断片化連鎖移動(RAFT)及び可逆的不活性化ラジカル重合(CROP)(偽)リビング反応法を利用したこのようなコポリマーを形成する方法も本明細書に記載している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリマー骨格及びコポリマーブラシアームを含むブラシコポリマー組成物であって:
前記コポリマーブラシアームは下記式(1)及び(2)の少なくとも2つの異なるアシル化ポリ(アルキレンアミン)のモノマー繰り返し単位を含み:
【化1】
式中、各R
5は個々に、水素、又は直鎖もしくは分枝C
1‐C
24アルキル部分であり;各R
6は、炭素原子数が各R
5と同一であるか又はR
5より多いが、各R
5とは異なっており、個々に、直鎖もしくは分枝C
8‐C
24アルキル部分であり;y及びzはそれぞれ1又は2であり;m+nの合計は、コポリマーブラシアームの平均重合度の90モル%~100モル%であり;コポリマー骨格は下記式(3)及び(4)の少なくとも2つの異なるアクリレートモノマーのモノマー繰り返し単位を含み:
【化2】
式中、各R
1及びR
3は個々に水素、直鎖もしくは分枝C
1‐C
4アルキル部分、又はこれらの混合物であり;各R
2は個々に、共有結合コポリマーブラシアーム、残留水素、置換基がそれぞれ個々に、直鎖状、分枝状、及び/又は環状C
1‐C
8アルキル、アリール、アルカリル、もしくはアラルキル部分である残留三置換シリル基、残留直鎖状、環状、もしくは分枝状C
1‐C
7アシル部分、残留直鎖もしくは分枝C
1‐C
4ヒドロキシアルキル部分、又は残留一価対イオンであり;各R
4は個々に、直鎖状、分岐状、及び/又は環状C
8‐C
30アルキル、アリール、アルカリル、又はアラルキル部分であり;a+bの合計は、コポリマー骨格の平均重合度の90モル%~100モル%である
ブラシコポリマー組成物。
【請求項2】
コポリマー骨格及びコポリマーブラシアームを含むブラシコポリマー組成物であって:
前記コポリマーブラシアームは、約100℃における動粘度(KV100)が約4cStであるグループIIIのベースストック中で、約5mg/mLの濃度で上限臨界溶液温度(UCST)挙動を示し、下記式(1)及び(2)の少なくとも2つの異なるアシル化ポリ(アルキレンアミン)のモノマー繰り返し単位を含み:
【化3】
式中、各R
5は個々に、水素、又は直鎖もしくは分枝C
1‐C
24アルキル部分であり;各R
6は、炭素原子数が各R
5と同一であるか又はR
5より多いが、各R
5とは異なっており、個々に、直鎖もしくは分枝C
8‐C
24アルキル部分であり;y及びzはそれぞれ1又は2であり;コポリマー骨格は下記式(3)及び(4)の少なくとも2つの異なるアクリレートモノマーのモノマー繰り返し単位を含み:
【化4】
式中、各R
1及びR
3は個々に水素、直鎖もしくは分枝C
1‐C
4アルキル部分、又はこれらの混合物であり;各R
2は個々に、共有結合コポリマーブラシアーム、残留水素、置換基が個々に直鎖状、分枝状、及び/又は環状C
1‐C
8アルキル、アリール、アルカリル、もしくはアラルキル部分である残留三置換シリル基、残留直鎖状、環状、もしくは分枝状C
1‐C
7アシル部分、残留直鎖もしくは分枝C
1‐C
4ヒドロキシアルキル部分、又は残留一価対イオンであり;各R
4は個々に、直鎖もしくは分岐C
8‐C
30アルキル、アリール、アルカリル、又はアラルキル部分であり、前記ブラシコポリマー組成物は、約100℃における動粘度(KV100)が約4cStであるグループIIIのベースストック中で、約5mg/mLの濃度で上限臨界溶液温度(UCST)挙動も示す、
ブラシコポリマー組成物。
【請求項3】
コポリマー骨格及びコポリマーブラシアームを含むブラシコポリマー組成物を形成する方法であって、以下の工程:
下記式(3)及び(4)の少なくとも2つの異なるアクリレートモノマーのモノマー繰り返し単位を含むコポリマー骨格を提供する工程であって:
【化5】
式中、各R
1及びR
3は個々に、水素、直鎖もしくは分枝C
1‐C
4アルキル部分、又はこれらの混合物であり;各R
2は個々に水素、置換基が個々に直鎖状、分枝状、及び/又は環状C
1‐C
8アルキル、アリール、アルカリル、もしくはアラルキル部分、直鎖状、環状、もしくは分枝状C
1‐C
7アシル部分、直鎖もしくは分枝C
1‐C
4ヒドロキシアルキル部分である三置換シリル基、又は一価対イオンであり;各R
4は個々に、直鎖又は分岐C
8‐C
30アルキル、アリール、アルカリル、又はアラルキル部分であり、式(3)及び(4)の少なくとも2つの異なるモノマー繰り返し単位は最大9.46(cal/cm
3)
1/2の計算溶解度パラメータを有するコポリマー骨格を提供してもよい、工程;
下記式(1)及び(2)の少なくとも2つの異なるアシル化ポリ(アルキレンアミン)のモノマー繰り返し単位を含むコポリマーブラシアームを提供する工程であって:
【化6】
式中、各R
5は個々に、水素、又は直鎖もしくは分枝C
1‐C
24アルキル部分であり;各R
6は、炭素原子数が各R
5と同一であるか又はR
5より多いが、各R
5とは異なっており、個々に、直鎖もしくは分枝C
8‐C
24アルキル部分であり;y及びzはそれぞれ1又は2であり;この工程では、コポリマーブラシアームは、窒素原子及び酸素原子を含有する複素環式モノマーを使用するカチオン開環重合(CROP)法により形成し、付加鎖端は、安定化した複素環式カチオンで終了する、工程;並びに
コポリマーブラシアームをコポリマー骨格にグラフトする工程であって;R
2の除去及び/又はカルボキシレートアニオンの形成により、コポリマー骨格中の式(3)のアクリレートモノマー繰り返し単位を活性化すること;及びコポリマーブラシアーム中の安定化した複素環式カチオンを式(3)の活性化繰り返し単位にカップリングすることによりコポリマーブラシアームをコポリマー骨格上に効果的にグラフトし、それによりブラシコポリマー組成物を形成すること、により行う工程
を含む方法。
【請求項4】
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準に対して約40℃で、溶離液として約2%(v/v)のトリエチルアミン(TEA)を含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行うことにより測定した、前記コポリマー骨格、前記コポリマーブラシアーム、及び前記ブラシコポリマー組成物のうち1つ、2つ、又は全ての多分散度は1.60未満であり;また/あるいは、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準に対して約40℃で、溶離液として約2%(v/v)のTEAを含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行うことにより測定したブラシコポリマー組成物の数平均分子量は30,000g/モル~100,000g/モルである、請求項1~3のいずれか1項に記載のブラシコポリマー組成物又は方法。
【請求項5】
前記ブラシコポリマー組成物、前記ブラシコポリマーアーム、又はその両方は約100℃における動粘度(KV100)が約4cStであるグループIIIのベースストック中で、約5mg/mLの濃度で上限臨界溶液温度(UCST)挙動を示す、請求項1~4のいずれか1項に記載のブラシコポリマー組成物又は方法。
【請求項6】
前記UCST挙動は、示差走査熱量計(DSC)において、反復加熱冷却サイクルの第2冷却又は第3冷却中に、約1℃/分の冷却速度で、約80.0℃未満にピーク中心がある一次発熱転移として現れる、請求項5に記載のブラシコポリマー組成物又は方法。
【請求項7】
各R
5は個々に直鎖又は分枝C
2‐C
18アルキル部分であり;各R
6は個々に直鎖C
8‐C
20アルキル部分であり;各R
1及びR
3は個々に水素又はメチルであり;各R
2は個々に共有結合コポリマーブラシアーム、残留水素、又は残留直鎖もしくは分岐C
1‐C
4ヒドロキシアルキル部分であり;各R
4は個々に直鎖又は分枝C
8‐C
24アルキル部分であり;y及びzはそれぞれ1である
請求項1~6のいずれか1項に記載のブラシコポリマー組成物又は方法。
【請求項8】
R
2基の少なくとも50モル%又は少なくとも60モル%は共有結合コポリマーブラシアームである、請求項1~7のいずれか1項に記載のブラシコポリマー組成物又は方法。
【請求項9】
前記コポリマー骨格は可逆的付加断片化連鎖移動(RAFT)重合法などの可逆的不活性化ラジカル重合(RDRP)法により形成する、請求項1~8のいずれか1項に記載のブラシコポリマー組成物又は方法。
【請求項10】
下記条件のうち1つ以上:
比a:bは1:14~1:2である;
比m:nは1:25~2:1である;
a+bの合計は250以下である;及び
m+nの合計は75以下である
を満たし、式(3)及び(4)の少なくとも2つの異なるモノマー繰り返し単位は、最大9.45(cal/cm
3)
1/2の計算溶解度パラメータを有するコポリマー骨格を提供してもよい、請求項1、2、及び4~9のいずれか1項に記載のブラシコポリマー組成物。
【請求項11】
下記条件のうち1つ以上:
m+nの合計はコポリマーブラシアームの平均重合度の90モル%~100モル%である;
比m:nは1:25~2:1である;
a+bの合計はコポリマー骨格の平均重合度の90モル%~100モル%である;
比a:bは1:14~1:2である;
a+bの合計は250以下である;及び
m+nの合計は75以下である:
を満たし、任意に、式(3)及び(4)の少なくとも2つの異なるモノマー繰り返し単位は、8.60(cal/cm
3)
1/2~9.45(cal/cm
3)
1/2の計算溶解度パラメータを有するコポリマー骨格を提供する、請求項2~9のいずれか1項に記載のブラシコポリマー組成物又は方法。
【請求項12】
下記条件のうち3つ以上、5つ以上、7つ以上、又は全て:
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準に対して約40℃で、溶離液として約2%(v/v)のTEAを含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行うことにより測定したブラシコポリマー組成物の数平均分子量は30,000g/モル~100,000g/モルである;
各R
5は個々に直鎖又は分枝C
2‐C
18アルキル部分である;
各R
6は個々に直鎖C
8‐C
20アルキル部分である;
各R
1及びR
3は個々に水素又はメチルである;
各R
4は個々に直鎖又は分枝C
8‐C
24アルキル部分である;
y及びzはそれぞれ1である;
各R
2は個々に、共有結合コポリマーブラシアーム、残留水素、又は残留直鎖もしくは分枝C
1‐C
4ヒドロキシ部分であり、R
2基の少なくとも70モル%は共有結合コポリマーブラシアームである;
m+nの合計はコポリマーブラシアームの平均重合度の90モル%~100モル%である;
比m:nは1:25~2:1である;
a+bの合計はコポリマー骨格の平均重合度の90モル%~100モル%である;
比a:bは1:14~1:2である;
a+bの合計は250以下である;及び
m+nの合計は75以下である:
を満たし、式(3)及び(4)の少なくとも2つの異なるモノマー繰り返し単位は、8.80(cal/cm
3)
1/2~9.44(cal/cm
3)
1/2の計算溶解度パラメータを有するコポリマー骨格を提供してもよい、請求項2~9のいずれか1項に記載のブラシコポリマー組成物又は方法。
【請求項13】
潤滑剤組成物であって:少なくとも70質量%の1種以上の潤滑油ベースストック;抗酸化剤、腐食防止剤、摩耗防止添加剤、摩擦調整剤、分散剤、洗浄剤、消泡剤、極圧添加剤、流動点降下剤、シール膨潤制御剤、又はこれらの組み合わせを含む最大25質量%の少なくとも1種の潤滑添加剤;及び0.5質量%~12質量%の、請求項1~12のいずれか1項以上に従ったブラシコポリマー組成物又は請求項1~12のいずれか1項以上に記載の方法に従って形成したブラシコポリマー組成物
を含む潤滑剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、コポリマー骨格及びコポリマーブラシアームを有するブラシコポリマーに関する。コポリマーブラシアーム及び/又はブラシコポリマー自体は、比較的非極性の希釈剤中で上限臨界溶液温度(UCST)挙動を示す場合がある。このようなブラシコポリマーは、潤滑剤組成物(例えば、乗用車用、高負荷ディーゼル、及び/又は船舶用ディーゼルのエンジン用)などの組成物、又はマニュアル/オートマティックトランスミッション液などの他の機能液の粘度を調整するために有用である場合がある。より具体的には、このようなブラシコポリマーは、ポリ(メタ)アクリレートコポリマー骨格を有する場合があり、その上に、ポリオキサゾリンなどのアシル化ポリ(アルキレンアミン)コポリマーがグラフトされる場合がある。このようなブラシコポリマーを含有する潤滑剤組成物、及びこのようなブラシコポリマーを製造する方法も本明細書において説明する。
【背景技術】
【0002】
2‐オキサゾリンのリビングカチオン性開環重合(CROP)が、4つの独立した研究グループ(T.Kagiyaら、「Ring‐Opening Polymerization of 2‐Substituted 2‐Oxazolines」、Journal of Polymer Science Part B:Polymer Letters、1966年、第4号(7)、pp.441‐445;W.Seeligerら、「Recent Syntheses and Reactions of Cyclic Imidic Esters」、Angewandte Chemie International Edition in English、1966年、第5号(10)、pp.875‐888;D.A.Tomaliaら、「Homopolymerization of 2‐alkyl‐ and 2‐aryl‐2‐oxazolines」、Journal of Polymer Science Part A‐1:Polymer Chemistry、1966年、第4号(9)、pp.2253‐2265;及びT.G.Bassiriら、「Polymerization of Cyclic Imino Ethers. I.Oxazolines」、Journal of Polymer Science Part B:Polymer Letters、1967年、第5号(9)、pp.871‐879)により最初に報告された1966年以来、2‐オキサゾリンモノマー及びその対応するポリ(2‐アルキル‐2‐オキサゾリン)類は、特に生物医学的用途の高性能高分子材料の開発で関心を集めつつある。
適切な条件下では、2‐オキサゾリンのCROPは、連鎖成長重合の典型的な機序に従って、リビング又は半リビング様式で進行できる。B.Verbraekenら、「The Chemistry of Poly(2‐oxazoline)s」、European Polymer Journal、2017年、第88号、pp.451‐469参照。重合のリビング特性により、明確に定義されたホモポリマーのみならず、2‐オキサゾリンモノマーの反応性に応じて、明確に定義されたランダムコポリマーやブロックコポリマーが合成可能となる。S.Kobayashiら、「Block Copolymers from Cyclic Imino Ethers」:「A New Class of Nonionic Polymer Surfactant」、Macromolecules、1986年、第19号(3)、pp.535‐541;T.Saegusaら、「One‐Shot Block Copolymerization」、Macromolecular Chemistry Makromolecular Symposia、1990年、第31号(1)、pp.1‐10参照。
【0003】
更に、2‐オキサゾリン環の2位上の置換基を変化させることにより、ポリ(2‐アルキル‐2‐オキサゾリン)類の構造及び物理特性を所望の用途に応じて精密に調節及び調整することが可能となる。直鎖(コ)ポリマーに加えて、他のモノマーとの共重合により得られる様々な構造体が文献で報告されている(例えば、E.Rosseggerら、「Design Strategies for Functionalized Poly(2‐oxazoline)s and Derived Materials」、Polymers、2013年、第5号(3)、pp.956‐1011;H.Schlaadら、「Poly(2‐Oxazoline)s as Smart Bioinspired Polymers」、Macromolecular Rapid Communications、2010年、第31号(6)、pp.511‐525;D.Pizziら、「Poly(2‐Oxazoline)Macromonomers as Building Blocks for Functional and Biocompatible Polymer Architectures」、European Polymer Journal、2019年、第121号、p.109258)。その中でも、ブラシポリマーとグラフトポリマーとの(コ)ポリマーは、異なるポリマー単位の特性を同一分子内で組み合わせることが可能であり、様々な潜在的応用の可能性を広げるため、かなり関心の的となっている。グラフトコポリマーの合成には3種の合成方法:(i)グラフトスルー(grafting‐through)法、(ii)グラフトフロム(grafting‐from)法、及び(iii)グラフトオント(grafting‐onto)法を用いてもよい。
しかし、ポリ(2‐アルキル‐2‐オキサゾリン)をベースとするグラフト構造体は稀である。そのグラフト構造体は主に、リビングオキサゾリニウム種を(メタ)アクリレートでエンドキャッピングした後に他のモノマーと(共)重合させるグラフトスルー法により合成する。
【0004】
一方では、リビング重合技術の利用は、多くの利点(即ち、得られるポリマーの分子量、分散度、及び高分子構造を良好に制御できること、末端基が明確に定義されていること、並びにブロックコポリマーを容易に合成できること)をもたらし得る。一方、従来のフリーラジカル重合では、反応条件が容易で多くの官能基に対する耐性が高いため、多種多様なモノマーを(共)重合できる。しかし、通常、フリーラジカル重合では、停止反応が起こるため、明確に定義された(コ)ポリマーを得られない(A.Rudinら、「Free‐Radical Polymerization」、The Elements of Polymer Science&Engineering、第3版;Academic Press:2013年;pp.341‐389)。そのため、リビング重合の利点とフリーラジカル重合の汎用性の両方を兼ね備えた方法の開発が、高分子化学の分野で注目されている。
制御したラジカル重合(CRP)の主な機序は以下の3種:(i)ニトロキシド媒介重合(NMP)、(ii)原子移動ラジカル重合(ATRP)、及び(iii)可逆的付加‐断片化連鎖移動(RAFT)重合である。中でもRAFT重合は、ラジカル重合にリビング性を与える最も強力かつ汎用性の高い方法の1つと考えられている。RAFT重合は、反応条件が比較的簡単で、官能基耐性が比較的高い傾向にあるため、広範なモノマー(NMPやATRPより広範)を、広範な温度範囲と溶媒の豊富な選択肢で重合することが可能となる。このように、本明細書におけるCROPとRAFT重合技術を組み合わせることで明確に定義されたポリマーを得る強力なツールを提供できる可能性がある。このポリマーは構造が精密で、ポリ(2‐アルキル‐2‐オキサゾリン)及びRAFTモノマーをベースとする。
【0005】
親水性モノマーと疎水性モノマーとを組み合わせて、特異的な高分子構造体を持つ明確に定義されたポリマーを形成する能力は様々な応用の可能性を広げ、特にその両親媒性のために、前記ポリマーは溶液中で自己凝集してナノスケールサイズの物体になることが可能になる。その自己凝集挙動は外部刺激によっても誘発され、広範な応用のための貴重で万能な候補となる。温度に応答するポリマーは、生物医学分野や、水回収戦略及び建築分野への応用できる可能性から、特に注目を集めている。
しかし、直鎖(コ)ポリマーや、より複雑な構造を持つ(コ)ポリマーの温度応答性挙動は特に純水中やアルコール/水混合液中で研究されている。実際、非水性媒体中で温度応答性を持つポリマーを報告した研究は限られている。
【0006】
直鎖状ポリ(オクタデシルビニルエーテル)は、長アルキル鎖の結晶化により様々な溶媒中で30℃付近で上限臨界溶液温度(UCST)相転移を起こすことが観察されている(T.Yoshidaら、「Stimuli‐Responsive Reversible Physical Networks.I.Synthesis and Physical Network Properties of Amphiphilic Block and Random Copolymers with Long Alkyl Chains by Living Cationic Polymerization」、Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry、2005年、第43号(6)、pp.1155‐1165)。
【発明の概要】
【0007】
ポリスチレンとポリイソプレンのブロックコポリマーは、イソプレンブロックの長さに応じて室温でヘプタン中に円筒状のミセル又は小胞を形成することが可能であり、また、約40まで加熱すると、それぞれ球状又は円筒状ミセルに可逆的に変化する場合もある。ポリ(スチレン‐ジメチルシロキサン)ジブロックコポリマーは、室温では様々なフタル酸ジアルキル中で自己凝集し、小胞になることが可能である。温度が上昇し、ひいては溶媒の選択性が低下すると、小胞から円筒状になり、球状ミセルへと可逆的に形態変化することが観察される場合もある。
ポリ(ラウリルメタクリレート‐ブロック‐スチレン‐ブロック‐ラウリルメタクリレート)傾斜特性コポリマーは、市販の脂肪族オイルに球状コロイドミセルを形成できる。この球状コロイドミセルは、2種のブロックを混合したドメインが段階的に可溶化するため、温度を上昇させたときに膨潤する。
ベンジルメタクリレート及びラウリルメタクリレートから成るジブロックコポリマーの重合誘発自己凝集(PISA)により得られたワーム状相は、n‐ドデカン中、約20℃で柔らかい自立ゲルを形成できることが分かっている。このゲルは、約50℃を超える温度に加熱されると、ワーム状から球状への転移により脱ゲル化することが可能であり、希薄溶液(約0.10%質量/質量)では不可逆性を現し、ポリマー濃度が上昇すると(約20%質量/質量)、可逆的になる場合もある。
【0008】
ステアリルメタクリレートと3‐フェニルプロピルメタクリレートとのブロックコポリマーは、n‐オクタン中で純粋なワーム状相を形成することが可能であり、これは室温で物理的ゲルになる。そのゲルは加熱すると、自由流動性溶液に変化するが、これは3‐フェニルプロピルメタクリレートブロックの溶媒和の変化によりワーム状から球状のナノ粒子へと形態転移が起こるためと考えられる。
ラウリルアクリレートとベンジルアクリレートから成る全アクリル系ジブロックコポリマーナノ粒子も、n‐ドデカン中で同様の挙動を示し得る。最近では、PISAにより鉱油中で直接調製したステアリルメタクリレートとベンジルメタクリレートとのジブロックコポリマー小胞の熱応答性挙動が研究されている。この場合も、ジブロックコポリマーは加熱すると小胞相からワーム状相へ相転移することが可能である。
ポリアルファオレフィン(PAO)中のUCST型挙動は、適切なアルキルペンダント長を持つアルキルメタクリレートモノマーのホモポリマー及びランダムコポリマーで観察されている。更に、PAO親和性中間ブロック及び温度応答性外側ブロックを含む一連のABAトリブロックコポリマーは、二官能性連鎖移動剤を用いたRAFT重合により合成している。適切なブロック組成及び濃度では、トリブロックコポリマーは調整可能な熱可逆的なゾル‐ゲル転移を示すことが分かる。
【0009】
ブチル及びラウリルメタクリレートとグラフとしたポリオレフィン骨格から成るグラフトコポリマーはn‐ドデカン中でUCST挙動を示すことが可能であり:低温では、側鎖の溶解度が低いため、メタクリレートに富むドメインを含むクラスターが観察でき、一方高温では、メタクリレート側鎖の溶解度が高まるため、単鎖への脱凝集が促進されるようである。
最後に、デカメチルシクロペンタシロキサンシリコーンオイル中での直鎖ポリジメチルシロキサン‐ポリ(2‐(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)ジブロックコポリマーの溶液挙動が最近研究されている:ジブロックコポリマーは、ポリ(2‐(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)コアの可逆性溶媒可塑化により加熱時にワーム状~球状転移が発生するようである。
【0010】
また、ポリ(2‐アルキル‐2‐オキサゾリン)をベースとする材料の場合でも、その調節可能な温度応答性挙動は純水中又は水/アルコール混合液中でのみ研究されてきた。例えば、2‐エチル‐2‐オキサゾリン及び2‐イソプロピル‐2‐オキサゾリンホモポリマーの温度応答性挙動は広く報告されている。これらは水溶液中でより下限臨界溶液温度(LCST)を示すことが分かっている(P.Linら、「Solubility and Miscibility of Poly(Ethyl Oxazoline)」、Polymer Physics、1988年、第26号(3)、pp.603‐619;U.Hiroshiら、「A Novel Thermo‐Sensitive Polymer.Poly(2‐Iso‐Propyl‐2‐Oxazoline)」、Chemistry Letters、1992年、第21号(9)、pp.1643‐1646;C.Diabら、「Microcalorimetric Study of the Temperature‐Induced Phase Separation in Aqueous Solutions of Poly(2‐Isopropyl‐2‐Oxazolines)」、Macromolecules、2004年、第37号(7)、pp.2556‐2562;J.S.Parkら、「Versatile Synthesis of End‐Functionalized Thermosensitive Poly(2‐Isopropyl‐2‐Oxazolines)」、Macromolecules、2004年、第37号(18)、pp.6786‐6792;M.Meyerら、「Unexpected Thermal Characteristics of Aqueous Solutions of Poly(2‐Isopropyl‐2‐Oxazoline)」、Soft Matter、2007年、第3号(4)、pp.430‐431;S.Huberら、「Effect of End Group Polarity Upon the Lower Critical Solution Temperature of Poly(2‐Isopropyl‐2‐Oxazoline)」、Colloid and Polymer Science、2008年、第286号(14‐15)、pp.1653‐1661;Y.Jungら、「Linear and Cyclic Poly(2‐Isopropyl‐2‐Oxazoline)s for Fine Control of Thermoresponsiveness」、European Polymer Journal、2017年、第88号、pp.605‐612)。異なるアルキル側鎖長、ひいては異なる親水性/疎水性比を有する2‐オキサゾリンモノマーを共重合することによりLCSTを変化させ、精密に制御できる。
【0011】
また、最終材料の特性を向上させ、相転移の温度範囲に渡って制御を向上させるために、より複雑な構造も研究されている。中でも、水溶液中でLCSTを調節できるポリ(2‐アルキル‐2‐オキサゾリン)をベースとする櫛型コポリマーやグラフトコポリマーは、前述の応用可能性から大きな関心を集めている。しかし、LCST挙動を示す2‐オキサゾリンポリマーに関する多くの研究があるにも関わらず、上限臨界溶液温度(UCST)相転移を示すポリオキサゾリンの報告は少なく、報告されているものはアルコール/水混合溶液中で発生する相転移のみである。H.M.L.Lambermont‐Thijsら、「Solubility Behavior of Amphiphilic Block and Random Copolymers Based on 2‐Ethyl‐2‐Oxazoline and 2‐Nonyl‐2‐Oxazoline in Binary Water‐Ethanol Mixtures」、Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry、2009年、第47号(2)、pp.515‐522、第81号、pp.89‐91;H.M.L.Lambermont‐Thijsら、「Temperature Induced Solubility Transitions of Various Poly(2‐Oxazoline)s in Ethanol‐Water Solvent Mixtures」、Polymers、2010年、第2号(3)、pp.188‐199;R.Hoogenboomら、「A Schizophrenic Gradient Copolymer」:「Switching and Reversing Poly(2‐Oxazoline) Micelles Based on UCST and Subtle Solvent Changes」、Soft Matter、2009年、第5号(19)、pp.3590‐3592;R.Hoogenboomら、「Tuning Solution Polymer Properties by Binary Water‐Ethanol Solvent Mixtures」、Soft Matter、2008年、第4号(1)、pp.103‐107参照。
【0012】
本明細書で更に述べるように、2‐ステアリル‐2‐オキサゾリン(SteOx)及び2‐エチル‐2‐オキサゾリン(EtOx)、並びに他のオキサゾリンモノマーのブラシアームコポリマー(及びいくつかの直鎖ホモポリマーさえも)をリビングCROPにより合成し、異なる極性及び油溶性を有する明確に定義された複数のポリマーが得られた。また、RAFT重合により得たメタクリル酸‐(2‐エチルヘキシル)メタクリレートランダムコポリマー骨格(ポリ(xMA))を有するグラフトブラシコポリマーを、グラフトオント法を用いてブラシアームコポリマー側鎖(ポリOx)と反応させた。2‐オキサゾリンコポリマー及びグラフトブラシコポリマーの市販油(例えば、Yubase(商標)4)への溶解性挙動を、濁度測定及び熱分析により評価した。これは、純粋な非水系でUCST型の相転移を示す2‐オキサゾリン及びメタクリレートモノマーをベースとする熱応答性直鎖コポリマー及びグラフトブラシコポリマーの初の例であると考えられる。
本開示はまた、潤滑剤組成物の濁度、熱、及び/又は粘度特性を改質するための、本開示に従ったブラシコポリマー組成物の使用も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、ブラシコポリマー、その製造方法、並びに例えば潤滑剤成分としての、及び/又は潤滑剤組成物中でのその応用(単数又は複数)/使用(単数又は複数)に関する。本明細書に開示したブラシコポリマーは、コポリマー骨格及びコポリマーブラシアームを有する。
コポリマーブラシアームは、それぞれ下記式(1)及び(2)の少なくとも2つの異なるアシル化ポリ(アルキレンアミン)のモノマー繰り返し単位を含むか、その繰り返し単位から基本的に成るか、又はその繰り返し単位から成ることを可能とする。
【化1】
式(1)及び(2)中、各R
5は個々に、水素又は直鎖もしくは分枝C
1‐C
24アルキル部分(特に、直鎖又は分枝C
2‐C
18アルキル部分)であってもよく、各R
6は、各R
5と異なっているが、炭素原子数が各R
5と同一又はそれより多く、個々に、直鎖又は分枝C
8‐C
24アルキル部分(特に、直鎖又は分枝C
8‐C
20アルキル部分)であってもよい。これらの式中、下付き文字y及びzは各々1又は2であってもよい(特に、下付き文字y及びzの両方を1とすることが可能である)。式(1)及び(2)のモノマー繰り返し単位間の典型的な類似性(しかし同一ではない)のため、ブラシアームはランダム(又はほぼランダム)コポリマーであってもよいが、いずれにしてもブロックコポリマーではなく、典型的にはブロックコポリマー特性は高くないと考えられる。
【0014】
本明細書で使用する場合、炭化水素に関する用語「アルキル」は、非芳香族かつヘテロ原子非含有炭化水素を芳香族炭化水素及びヘテロ原子含有炭化水素の両方と区別するように理解すべきであり、従って、用語「アルキル」は、シクロアルキル基、1つ以上の炭素‐炭素二重結合を有するアルケニル基(任意の環状基に追加して、又はその環状基を除いて;また、共役が芳香族共役を形成しない限り、共役二重結合も含む)、及び1つ以上の炭素‐炭素三重結合を有するアルキニル基(任意の炭素-炭素二重結合及び/又は任意の環状基に追加して、又はそれらを除いて)を包含すると定義してもよい。当業者に公知なように、炭化水素系材料において、「ヘテロ原子」は水素及び炭素以外の原子を表し、これには酸素、窒素、硫黄、リン、セレン、ハロゲン、メタロイド(ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルル等)、金属(アルカリ金属、アルカリ土類金属、転移金属、ランタニド、アクチニド、アルミニウム、ガリウム、インジウム、鉛、スズ、ビスマス等)、及び希ガスが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。しかし、いくつかの実施形態では、用語「アルキル」は、非環式の単鎖‐炭素‐炭素結合炭化水素のみに限定してもよい。
【0015】
ブラシアームが式(1)及び(2)のモノマーのみから成る実施形態では、下付き文字m及びnの合計は当然にコポリマーブラシアームの平均重合度の100モル%を表す。しかし、ブラシアームが式(1)及び(2)のモノマーを含むか、又はそれらモノマーから基本的に成る実施形態では、m+nの合計は、コポリマーブラシアームの平均重合度の60モル%~100モル%(例えば、60モル%~99モル%、60モル%~95モル%、60モル%~90モル%、60モル%~85モル%、60モル%~80モル%、70モル%~100モル%、70モル%~99モル%、70モル%~95モル%、70モル%~90モル%、70モル%~85モル%、70モル%~80モル%、80モル%~100モル%、80モル%~99モル%、80モル%~95モル%、80モル%~90モル%、90モル%~100モル%、90モル%~99モル%、90モル%~95モル%、95モル%~100モル%、95モル%~99モル%、又は99モル%~100モル%;特に、90モル%~100モル%、95モル%~100モル%、又は99モル%~100モル%)である。
追加的又は代替的に、ブラシアームの平均重合度及び/又はm+nの合計は100以下(例えば、85以下、75以下、65以下、60以下、55以下、50以下、45以下、40以下、35以下、又は30以下)であってもよい;任意であるが好ましくは、ブラシアームの平均重合度及び/又はm+nの合計は少なくとも8(例えば、少なくとも11、少なくとも14、少なくとも17、少なくとも20、少なくとも23、又は少なくとも25)であってもよい(特に、ブラシアームの平均重合度、及び/又はm+nの合計は75以下、60以下、11~75、又は14~60であってもよい)。また追加的又は代替的に、ブラシアームは、下付き文字m:nの比で特徴付けてもよい;例えば、比m:nは1:99~9:1、1:49~4:1、1:25~2:1、1:19~1.5:1、1:14~1:1、又は1:9~1:1.5(特に1:25~2:1、1:19~1.5:1、1:14~1:1、又は1:9~1:1.5)であってもよい。
【0016】
コポリマー骨格は、それぞれ下記式(3)及び(4)の少なくとも2つの異なるアクリレートモノマーのモノマー繰り返し単位を含むか、その繰り返し単位から基本的に成るか、又はその繰り返し単位から成ることが可能である。
【化2】
式(3)及び(4)中、各R
1及びR
3は個々に、水素、直鎖もしくは分枝C
1‐C
4アルキル部分、又はこれらの混合物(特に、水素、メチル、及び/又はエチル)であってもよい;各R
2は個々に、共有結合コポリマーブラシアーム、残留水素、残留三置換シリル基であってもよく、この置換基は個々に、直鎖、分枝、及び/又は環状C
1‐C
8アルキル、アリール、アルカリル、又はアラルキル部分、残留直鎖、環状、又は分枝C
1‐C
7アシル部分、残留直鎖もしくは分枝C
1‐C
4ヒドロキシアルキル部分、又は残留一価対イオン(特に、共有結合コポリマーブラシアーム、残留水素、残留直鎖もしくは分枝C
2‐C
4ヒドロキシアルキル部分、又は残留一価対イオン)である;また、各R
4は個々に、直鎖、分枝、及び/又は環状C
8‐C
30アルキル、アリール、アルカリル、もしくはアラルキル部分(特に、直鎖又は分枝C
8‐C
22アルキル部分)であってもよい。特定の実施形態では、ブラシコポリマー組成物はコポリマー骨格を含み、ここでは、少なくとも40モル%(例えば、少なくとも45モル%、少なくとも50モル%、少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも65モル%、少なくとも70モル%、少なくとも75モル%、少なくとも80モル%、少なくとも85モル%、又は少なくとも90モル%)のR
2基が共有結合コポリマーブラシアームである。特定の実施形態では、コポリマー骨格はランダム(又はほぼランダム)コポリマーであってもよいが、いずれにしてもブロックコポリマーではなく、典型的にはブロックコポリマー特性は高くないと考えられる。
【0017】
残留一価対イオンが存在する場合、その対イオンは有利にも一価カチオンとすることが可能である。いくつかの実施形態では、残留一価対イオンは、リチウム、カリウム、ナトリウム、銅(I)、銀(I)等、もしくはこれらの組み合わせなどの金属イオン;アンモニウム等の非金属イオン;又はこれらの混合物を含むか、これらから基本的に成るか、又はこれらから構成してもよい。
コポリマー骨格が式(1)及び(2)のモノマーのみから成る実施形態では、下付き文字a及びbの合計は当然にコポリマー骨格の平均重合度の100モル%を表す。しかし、コポリマー骨格が式(1)及び(2)のモノマーを含むか、又はそのモノマーから基本的に成る実施形態では、a+bの合計は、コポリマー骨格の平均重合度の60モル%~100モル%(例えば、60モル%~99モル%、60モル%~95モル%、60モル%~90モル%、60モル%~85モル%、60モル%~80モル%、70モル%~100モル%、70モル%~99モル%、70モル%~95モル%、70モル%~90モル%、70モル%~85モル%、70モル%~80モル%、80モル%~100モル%、80モル%~99モル%、80モル%~95モル%、80モル%~90モル%、90モル%~100モル%、90モル%~99モル%、90モル%~95モル%、95モル%~100モル%、95モル%~99モル%、又は99モル%~100モル%;特に、90モル%~100モル%、95モル%~100モル%、又は99モル%~100モル%)であってもよい。
【0018】
追加的又は代替的に、コポリマー骨格の平均重合度及び/又はa+bの合計は500以下(例えば 450以下、400以下、350以下、300以下、250以下、200以下、150以下、120以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、又は50以下)であってもよい;任意であるが好ましくは、コポリマー骨格の平均重合度及び/又はa+bの合計は少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも75、又は少なくとも100であってもよい(特に、コポリマー骨格の平均重合度及び/又はa+bの合計は400以下、250以下、20~250、又は25~200であってもよい)。また追加的又は代替的に、コポリマー骨格は、下付き文字a:bの比で特徴付けてもよい;例えば、比a:bは1:19~1:1.5、1:14~1:2、1:9~1:2.5、1:7~1:3、1:6~1:3.5、又は約1:4(特に1:19~1:1.5、1:7~1:3、又は1:6~1:3.5)であってもよい。
ブラシコポリマー組成物及びその各反応物/中間生成物は、多数の異なる方法により形成し得る。特定の方法及び材料を本明細書に開示する。しかし、他の方法及び/又は材料を使用して、同一又は類似のブラシコポリマー組成物生成物を得てもよい。
【0019】
例えば、コポリマーブラシアームは、重合されるとそれぞれ式(1)及び(2)の繰り返し単位を形成するであろう少なくとも2種の異なる環状モノマーを重合することにより製造できる。このようなモノマーの例としては、2‐オキサゾリン、2‐メチル‐2‐オキサゾリン、2‐エチル‐2‐オキサゾリン、2‐プロピル‐2‐オキサゾリン、2‐イソプロピル‐2‐オキサゾリン、2‐プロペニル‐2‐オキサゾリン、2‐ブチル‐2‐オキサゾリン、2‐(メチルプロピル)‐2‐オキサゾリン、2‐tert‐ブチル‐2‐オキサゾリン、2‐ブテニル‐2‐オキサゾリン、2‐ペンチル‐2‐オキサゾリン、2‐(メチルブチル)‐2‐オキサゾリン、2‐(ジメチルプロピル)‐2‐オキサゾリン、2‐ペンテニル‐2‐オキサゾリン、2‐ヘキシル‐2‐オキサゾリン、2‐(メチルペンチル)‐2‐オキサゾリン、2‐(ジメチルブチル)‐2‐オキサゾリン、2‐(エチルブチル)‐2‐オキサゾリン、2‐ヘキセニル‐2‐オキサゾリン、2‐ヘキサジエニル‐2‐オキサゾリン、2‐ヘプチル‐2‐オキサゾリン、2‐(メチルヘキシル)‐2‐オキサゾリン、2‐(ジメチルペンチル)‐2‐オキサゾリン、2‐(エチルペンチル)‐2‐オキサゾリン、2‐ヘプテニル‐2‐オキサゾリン、2‐ヘプタジエニル‐2‐オキサゾリン、2‐オクチル‐2‐オキサゾリン、2‐ノニル‐2‐オキサゾリン、2‐デシル‐2‐オキサゾリン、2‐ウンデシル‐2‐オキサゾリン、2‐ドデシル‐2‐オキサゾリン、2‐トリデシル‐2‐オキサゾリン、2‐テトラデシル‐2‐オキサゾリン、2‐ペンタデシル‐2‐オキサゾリン、2‐ペンタデセニル‐2‐オキサゾリン、2‐ヘキサデシル‐2‐オキサゾリン、2‐ヘプタデシル‐2‐オキサゾリン、2‐(メチルヘキサデシル)‐2‐オキサゾリン、2‐ヘプタデセニル‐2‐オキサゾリン、2‐ヘプタデカジエニル‐2‐オキサゾリン、2‐ヘプタデカトリエニル‐2‐オキサゾリン、2‐ヘプタデカテトラエニル‐2‐オキサゾリン、2‐オクタデシル‐2‐オキサゾリン、2‐ノナデシル‐2‐オキサゾリン、2‐ノナデセニル‐2‐オキサゾリン、2‐ノナデカジエニル‐2‐オキサゾリン、2‐ノナデカトリエニル‐2‐オキサゾリン、2‐ノナデカテトラエニル‐2‐オキサゾリン、2‐ノナデカペンタエニル‐2‐オキサゾリン、2‐エイコサニル‐2‐オキサゾリン、2‐ヘニコサニル(heneicosanyl)‐2‐オキサゾリン、2‐ドコサニル‐2‐オキサゾリン、2‐トリコサニル‐2‐オキサゾリン、2‐テトラコサニル‐2‐オキサゾリン、4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐メチル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐エチル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐プロピル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐イソプロピル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐プロペニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ブチル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐(メチルプロピル)‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐tert‐ブチル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ブテニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ペンチル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐(メチルブチル)‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐(ジメチルプロピル)‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ペンテニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ヘキシル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐(メチルペンチル)‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐(ジメチルブチル)‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐(エチルブチル)‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ヘキセニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ヘキサジエニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ヘプチル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐(メチルヘキシル)‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐(ジメチルペンチル)‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐(エチルペンチル)‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ヘプテニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ヘプタジエニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐オクチル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ノニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐デシル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ウンデシル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ドデシル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐トリデシル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐テトラデシル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ペンタデシル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ペンタデセニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ヘキサデシル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ヘプタデシル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐(メチルヘキサデシル)‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ヘプタデセニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ヘプタデカジエニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ヘプタデカトリエニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ヘプタデカテトラエニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐オクタデシル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ノナデシル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ノナデセニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ノナデカジエニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ノナデカトリエニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ノナデカテトラエニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ノナデカペンタエニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐エイコサニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ヘニコサニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐ドコサニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐トリコサニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、2‐テトラコサニル‐4,5‐ジヒドロ‐1,3‐オキサジン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0020】
少なくとも2つの異なる(ヘテロ)環状モノマー(例えば、それぞれが窒素原子及び酸素原子を含む本明細書で画定するようなオキサゾリン及び/又はオキサジン)を共重合する場合、ブラシアームは有利にも、カチオン性開環重合(CROP)法により形成できる。ラジカルスキーム、アニオンスキーム、又は他の重合スキームは、オキサゾリン/オキサジンなどの(ヘテロ)環状モノマーでは排除するものではが、カチオン法は重合可能な鎖端でオキサゾリニウム/オキサジニウム(複素)環式カチオンを比較的安定にする。当業者が理解しているように、好適なCROP開始剤としては、トシル酸アルキル(例えばトシル酸メチル)、ノシル酸アルキル、ブロシル酸アルキル、トリフル酸アルキル等の求電子性スルホン酸エステル、オキサジニウム塩、オキサゾリニウム塩、ハロゲン化アルキル、比較的安定なアニオンを含むルイス酸、及び求核性が十分に低い(例えば、ほぼ無い)他の官能性化合物、並びにこれらの組み合わせ又は混合物が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。例えば、望ましくない停止反応及び/又は副反応を低減又は排除しながら比較的効率的な開始/進行を達成するために、好適な(共)重合温度はモノマー(単数又は複数)及び開始剤の選択に基づいて選択できる。
【0021】
好適な開始剤は適切な溶媒で希釈してもよいが、CROP重合は有利にも、比較的低濃度の溶媒中、例えばバルク量で行うことが可能である(いかなる開始剤溶媒も典型的には極微量であるようにモノマー反応物系に添加した少量の開始剤溶媒は、少なくとも2種のモノマー及び任意の他の重合反応物/促進剤の量に対しては「バルク量」であると本明細書では依然として考えている)。実際、重合鎖端部分が十分に安定である場合、リビング重合法又は擬似リビング重合法が可能であり、これにより、通常、分子量、分子量分布、副反応減少等をより良好に制御することが可能となり、よって、通常、より均一で化学的に安定なブラシコポリマーアームが形成される。リビング重合法又は擬似リビング重合法は更に、活性化又は重合後官能化をほとんど又は全く伴わずに、コポリマー骨格上の部位にグラフトできるというコポリマーブラシアームの利点をもたらす可能性がある。
【0022】
あるいは、少なくとも2つの異なる繰り返し単位を形成するために重合したモノマーの少なくとも一方(いくつか)又は両方(全て)は非環式とすることが可能である。このような1例では、他の方法でホモポリマーのポリ(アルキレンアミン)鎖(例えば、ポリ(エチレンアミン)又はポリ(プロピレンアミン))を重合するために単一非環式モノマーを使用することが可能であり、その後、重合後反応により骨格二級アミンを少なくとも2つの異なるアシル基でアシル化し、式(1)及び(2)の繰り返し単位を有するコポリマーブラシアームを形成する。このような別の例では、アルキレンアミン及び/又は官能化アルキレンアミン繰り返し単位を有する中間体コポリマーを共重合させるために、少なくとも2種の異なるモノマー(1つ/いくつか、又は両方/全てが非環式となり得る)を使用することが可能であり、その後、その共重合により形成したそれぞれの繰り返し単位(単数又は複数)の骨格窒素上のペンダント基の1つ又は両方を重合後反応に供し、それらの窒素を適切なアシル基(単数又は複数)で選択的にアシル化し、式(1)及び(2)の繰り返し単位を有するコポリマーブラシアームを形成してもよい。
【0023】
類似しているが代替的な実施形態では、少なくとも2つの異なる繰り返し単位を形成するために重合したモノマーの両方(全て)は、開環重合法への感受性が高くなるように環状であってもよい。しかし、モノマーの一方(いくつか)又は両方(全て)は、中間ポリマー又はコポリマーが形成され、骨格窒素上の一方(いくつか)又は両方(全て)の官能基が式(1)及び(2)に記載のR5‐C(=O)‐及びR6‐C(=O)‐アシル基とは異なる状況を作り出すように選択してもよい。その後、それぞれの繰り返し単位(単数又は複数)の骨格窒素上のペンダント基の一方又は両方を重合後反応に供し、それらの窒素を適切なアシル基(単数又は複数)で選択的にアシル化してもよい。
【0024】
コポリマー骨格は、重合するとそれぞれ式(3)及び(4)の繰り返し単位を形成する少なくとも2種の異なるアクリレートモノマーを重合することにより形成できる。式(3)の繰り返し単位を形成するように重合可能なモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、トリメチルシリルアクリレート、トリメチルシリルメタクリレート、エチルジメチルシリルアクリレート、エチルジメチルシリルメタクリレート、フェニルジメチルシリルアクリレート、フェニルジメチルシリルアクリレート、メチルジフェニルシリルアクリレート、メチルジフェニルシリルメタクリレート、トリルジメチルシリルアクリレート、トリルジメチルシリルメタクリレート、ベンジルジメチルシリルアクリレート、ベンジルジメチルシリルメタクリレート、トリフェニルシリルアクリレート、トリフェニルシリルメタクリレート、アクリル酢酸無水物、メタクリル酢酸無水物、エタクリル酢酸無水物、アクリルプロピオン酸無水物 メタクリルプロピオン酸無水物、エタクリルプロピオン酸無水物、アクリル酪酸無水物、メタクリル酪酸無水物、エタクリル酪酸無水物、アクリルイソ酪酸無水物 メタクリルイソ酪酸無水物、エタクリルイソ酪酸無水物、アクリルペンタン酸無水物、メタクリルペンタン酸無水物、エタクリルペンタン酸無水物、アクリルメチルブタン酸無水物、メタクリルメチルブタン酸無水物、エタクリルメチルブタン酸無水物、アクリルピバル酸無水物、メタクリルピバル酸無水物、エタクリルピバル酸無水物、アクリルヘキサン酸無水物、メタクリルヘキサン酸無水物、エタクリルヘキサン酸無水物、アクリルメチルペンタン酸無水物、メタクリルメチルペンタン酸無水物、エタクリルメチルペンタン酸無水物、アクリルジメチルブタン酸無水物、メタクリルジメチルブタン無水物、エタクリルジメチルブタン酸無水物、アクリルヘプタン酸無水物、メタクリルヘプタン酸無水物、エタクリルヘプタン酸無水物、アクリルメチルヘキサン酸無水物、メタクリルメチルヘキサン酸無水物、エタクリルメチルヘキサン酸無水物、アクリルジメチルペンタン酸無水物、メタクリルジメチルペンタン酸無水物、エタクリルジメチルペンタン酸無水物、アクリルエチルペンタン酸無水物、メタクリルエチルペンタン酸無水物、エタクリルエチルペンタン酸無水物、アクリルシクロヘキサンカルボン酸無水物、メタクリルシクロヘキサンカルボン酸無水物、エタクリルシクロヘキサンカルボン酸無水物、アクリル安息香酸無水物、メタクリル安息香酸無水物、エタクリル安息香酸無水物、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、リチウムアクリレート、リチウムメタクリレート、カリウムアクリレート、カリウムメタクリレート、ナトリウムアクリレート、ナトリウムメタクリレート、銅(I)アクリレート、銅(I)メタクリレート、銀(I)アクリレート、銀(I)メタクリレート、アンモニウムアクリレート、アンモニウムメタクリレート、アルキル化アンモニウム(alk)アクリレート(例えば、モノメチルアンモニウムアクリレート、モノメチルアンモニウムメタクリレート、ジメチルアンモニウムアクリレート、ジメチルアンモニウムメタクリレート、トリメチルアンモニウムアクリレート、トリメチルアンモニウムメタクリレート、テトラメチルアンモニウムアクリレート、テトラメチルアンモニウムメタクリレート、モノエチルアンモニウムアクリレート、モノエチルアンモニウムメタクリレート、ジエチルアンモニウムアクリレート、ジエチルアンモニウムメタクリレート、トリエチルアンモニウムアクリレート、トリエチルアンモニウムメタクリレート、テトラエチルアンモニウムアクリレート、テトラエチルアンモニウムメタクリレート等、又はこれらの混合物)等、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0025】
式(4)の繰り返し単位を形成するために重合可能なモノマーの例としては、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、メチルヘプチルアクリレート、メチルヘプチルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、ジメチルヘキシルアクリレート、ジメチルヘキシルメタクリレート、トリメチルペンチルアクリレート、トリメチルペンチルメタクリレート、メチルエチルペンチルアクリレート、メチルエチルペンチルメタクリレート、プロピルペンチルアクリレート、プロピルペンチルメタクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロオクチルメタクリレート、シクロヘプチルメチルアクリレート、シクロヘプチルメチルメタクリレート、トリシクロ[3.3.0.0]オクタニルアクリレート、トリシクロ[3.3.0.0]オクタニルメタクリレート、トリシクロ[2.2.1.1]オクタニルアクリレート、トリシクロ[2.2.1.1]オクタニルメタクリレート、ビシクロ[2.2.2]オクタニルアクリレート、ビシクロ[2.2.2]オクタニルメタクリレート、ビシクロ[3.2.1]オクタニルアクリレート、ビシクロ[3.2.1]オクタニルメタクリレート、オクタヒドロペンタレニルアクリレート、オクタヒドロペンタレニルメタクリレート、メチルシクロヘプチルアクリレート、メチルシクロヘプチルメタクリレート、シクロヘプチルメチルアクリレート、シクロヘプチルメチルメタクリレート、シクロヘキシルエチルアクリレート、シクロヘキシルエチルメタクリレート、エチルシクロヘキシルアクリレート、エチルシクロヘキシルメタクリレート、ジメチルシクロヘキシルアクリレート、ジメチルシクロヘキシルメタクリレート、メチルシクロヘキシルメチルアクリレート、メチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、シクロペンチルプロピルアクリレート、シクロペンチルプロピルメタクリレート、プロピルシクロペンチルアクリレート、プロピルシクロペンチルメタクリレート、メチルシクロペンチルエチルアクリレート、メチルシクロペンチルエチルメタクリレート、ジメチルシクロペンチルメチルアクリレート、ジメチルシクロペンチルメチルメタクリレート、エチルシクロペンチルメチルアクリレート、エチルシクロペンチルメチルメタクリレート、トリメチルシクロペンチルアクリレート、トリメチルシクロペンチルメタクリレート、メチルエチルシクロペンチルアクリレート、メチルエチルシクロペンチルメタクリレート、ペンタレニルアクリレート、ペンタレニルメタクリレート、メチルベンジルアクリレート、メチルベンジルメタクリレート、ベンジルメチルアクリレート、ベンジルメチルメタクリレート、ジメチルフェニルアクリレート、ジメチルフェニルメタクリレート、エチルフェニルアクリレート、エチルフェニルメタクリレート、フェニルエチルアクリレート、フェニルエチルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、メチルオクチルアクリレート、メチルオクチルメタクリレート、エチルヘプチルアクリレート、エチルヘプチルメタクリレート、ジメチルヘプチルアクリレート、ジメチルヘプチルメタクリレート、トリメチルヘキシルアクリレート、トリメチルヘキシルメタクリレート、メチルエチルヘキシルアクリレート、メチルエチルヘキシルメタクリレート、プロピルヘキシルアクリレート、プロピルヘキシルメタクリレート、テトラメチルペンチルアクリレート、テトラメチルペンチルメタクリレート、エチルジメチルペンチルアクリレート、エチルジメチルペンチルメタクリレート、ジエチルペンチルアクリレート、ジエチルペンチルメタクリレート、トリシクロ[4.3.0.0]ノナニルアクリレート、トリシクロ[4.3.0.0]ノナニルメタクリレート、ビシクロ[3.2.2]ノナニルアクリレート、ビシクロ[3.2.2]ノナニルメタクリレート、ビシクロ[3.3.1]ノナニルアクリレート、ビシクロ[3.3.1]ノナニルメタクリレート、ビシクロ[4.2.1]ノナニルアクリレート、ビシクロ[4.2.1]ノナニルメタクリレート、オクタヒドロインデニルアクリレート、オクタヒドロインデニルメタクリレート、シクロオクチルメチルアクリレート、シクロオクチルメチルメタクリレート、メチルシクロオクチルアクリレート、メチルシクロオクチルメタクリレート、オクタヒドロペンタレニルメチルアクリレート、オクタヒドロペンタレニルメチルメタクリレート、メチルオクタヒドロペンタレニルアクリレート、メチルオクタヒドロペンタレニルメタクリレート、エチルシクロヘプチルアクリレート、エチルシクロヘプチルメタクリレート、シクロヘプチルエチルアクリレート、シクロヘプチルエチルメタクリレート、ジメチルシクロヘプチルアクリレート、ジメチルシクロヘプチルメタクリレート、メチルシクロヘプチルメチルアクリレート、メチルシクロヘプチルメチルメタクリレート、シクロヘキシルプロピルアクリレート、シクロヘキシルプロピルメタクリレート、プロピルシクロヘキシルアクリレート、プロピルシクロヘキシルメタクリレート、メチルエチルシクロヘキシルアクリレート、メチルエチルシクロヘキシルメタクリレート、メチルシクロヘキシルアクリレート、メチルシクロヘキシルエチルメタクリレート、エチルシクロヘキシルメチルアクリレート、エチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ジメチルシクロヘキシルメチルアクリレート、ジメチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、シクロペンチルブチルアクリレート、シクロペンチルブチルメタクリレート、ブチルシクロペンチルアクリレート、ブチルシクロペンチルメタクリレート、メチルシクロペンチルプロピルアクリレート、メチルシクロペンチルプロピルメタクリレート、プロピルシクロペンチルメチルアクリレート、プロピルシクロペンチルメチルメタクリレート、ジエチルシクロプロピルアクリレート、ジエチルシクロペンチルメタクリレート、エチルシクロペンチルエチルアクリレート、エチルシクロペンチルエチルメタクリレート、
ジメチルシクロペンチルエチルアクリレート、ジメチルシクロペンチルエチルメタクリレート、テトラメチルシクロペンチルアクリレート、テトラメチルシクロペンチルメタクリレート、トリメチルシクロペンチルメチルアクリレート、トリメチルシクロペンチルメチルメタクリレート、インデニルアクリレート、インデニルメタクリレート、スピロ[4.4]ノナニルアクリレート、スピロ[4.4]ノナニルメタクリレート、スピロ[4.4]ノナジエニルアクリレート、スピロ[4.4]ノナジエニルメタクリレート、スピロ[4.4]ノナテトラエニルアクリレート、スピロ[4.4]ノナテトラエニルメタクリレート、メチルフェニルエチルメタクリレート、メチルペンタレニルアクリレート、メチルペンタレニルメタクリレート、ペンタレニルメチルアクリレート、ペンタレニルメチルメタクリレート、エチルベンジルアクリレート、エチルベンジルメタクリレート、ベンジルエチルアクリレート、ベンジルエチルメタクリレート、ジメチルベンジルアクリレート、ジメチルベンジルメタクリレート、フェニルプロピルアクリレート、フェニルプロピルメタクリレート、プロピルフェニルアクリレート、プロピルフェニルメタクリレート、トリメチルフェニルアクリレート、トリメチルフェニルメタクリレート、メチルエチルフェニルアクリレート、メチルエチルフェニルメタクリレート、メチルフェニルエチルアクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、メチルノニルアクリレート、メチルノニルメタクリレート、エチルオクチルアクリレート、エチルオクチルメタクリレート、ジメチルオクチルアクリレート、ジメチルオクチルメタクリレート、プロピルヘプチルアクリレート、プロピルヘプチルメタクリレート、メチルエチルヘプチルアクリレート、メチルエチルヘプチルメタクリレート、トリメチルヘプチルアクリレート、トリメチルヘプチルメタクリレート、ブチルヘキシルアクリレート、ブチルヘキシルメタクリレート、テトラメチルヘキシルアクリレート、テトラメチルヘキシルメタクリレート、ジメチルエチルヘキシルアクリレート、ジメチルエチルヘキシルメタクリレート、ジエチルヘキシルアクリレート、ジエチルヘキシルメタクリレート、ペンタメチルペンチルアクリレート、ペンタメチルペンチルメタクリレート、エチルトリメチルペンチル(ethyltrmethylpentyl)アクリレート、エチルトリメチルペンチルメタクリレート、ジエチルメチルペンチルアクリレート、ジエチルメチルペンチルメタクリレート、ブチルメチルペンチルアクリレート、ブチルメチルペンチルメタクリレート、エチルプロピルペンチルアクリレート、エチルプロピルペンチルメタクリレート、ジメチルプロピルペンチルアクリレート、ジメチルプロピルペンチルメタクリレート、テトラシクロ[4.2.1.1.0]デカニルアクリレート、テトラシクロ[4.2.1.1.0]デカニルメタクリレート、アダマンタニルアクリレート、アダマンタニルメタクリレート、デカヒドロシクロペンタペンタレニルアクリレート、デカヒドロシクロペンタペンタレニルメタクリレート、
トリシクロ[4.4.0.0]デカニルアクリレート、トリシクロ[4.4.0.0]デカニルメタクリレート、トリシクロ[4.2.1.1]デカニルアクリレート、トリシクロ[4.2.1.1]デカニルメタクリレート、トリシクロ[3.3.1.1]デカニルアクリレート、トリシクロ[3.3.1.1]デカニルメタクリレート、トリシクロ[2.2.2.2]デカニルアクリレート、トリシクロ[2.2.2.2]デカニルメタクリレート、ビシクロ[3.3.2]デカニルアクリレート、ビシクロ[3.3.2]デカニルメタクリレート、ビシクロ[4.2.2]デカニルアクリレート、ビシクロ[4.2.2]デカニルメタクリレート、デカヒドロナフタレニルアクリレート、デカヒドロナフタレニルメタクリレート、デカヒドロアズレニルアクリレート、デカヒドロアズレニルメタクリレート、メチルオクタヒドロインデニルアクリレート、メチルオクタヒドロインデニルメタクリレート、オクタヒドロインデニルメチルアクリレート、オクタヒドロインデニルメチルメタクリレート、オクタヒドロペンタニルエチルアクリレート、オクタヒドロペンタニルエチルメタクリレート、エチルオクタヒドロペンタレニルアクリレート、エチルオクタヒドロペンタレニルメタクリレート、メチルオクタヒドロペンタレニルメチルアクリレート、メチルオクタヒドロペンタレニルメチルメタクリレート、ジメチルオクタヒドロペンタレニルアクリレート、ジメチルオクタヒドロペンタレニルメタクリレート、ジメチルシクロオクチルアクリレート、ジメチルシクロオクチルメタクリレート、メチルシクロオクチルメチルアクリレート、メチルシクロオクチルメチルメタクリレート、エチルシクロオクチルアクリレート、エチルシクロオクチルメタクリレート、プロピルシクロヘプチルアクリレート、プロピルシクロヘプチルメタクリレート、シクロヘプチルプロピルアクリレート、シクロヘプチルプロピルメタクリレート、エチルシクロヘプチルメチルアクリレート、エチルシクロヘプチルメチルメタクリレート、メチルシクロヘプチルエチルアクリレート、メチルシクロヘプチルエチルアクリレート、トリメチルシクロヘプチルアクリレート、トリメチルシクロヘプチルメタクリレート、ジメチルシクロヘプチルメチルアクリレート、ジメチルシクロヘプチルメチルメタクリレート、シクロヘキシルブチルアクリレート、シクロヘキシルブチルメタクリレート、ブチルシクロヘキシルアクリレート、ブチルシクロヘキシルメタクリレート、プロピルシクロヘキシルメチルアクリレート、プロピルシクロヘキシルメチルメタクリレート、メチルプロピルシクロヘキシルアクリレート、メチルプロピルシクロヘキシルメタクリレート、メチルシクロヘキシルプロピルアクリレート、メチルシクロヘキシルプロピルメタクリレート、エチルシクロヘキシルアクリレート、エチルシクロヘキシルエチルメタクリレート、ジエチルシクロヘキシルアクリレート、ジエチルシクロヘキシルメタクリレート、ジメチルシクロヘキシルエチルアクリレート、ジメチルシクロヘキシルメタクリレート、テトラメチルシクロヘキシルアクリレート、テトラメチルシクロヘキシルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメチルアクリレート、トリメチルシクロヘキシルメチルメタクリレート、ナフタレニルアクリレート、ナフタレニルメタクリレート、テトラヒドロナフタレニルアクリレート、テトラヒドロナフタレニルメタクリレート、ビシクロペンタジエニルアクリレート、ビシクロペンタジエニルメタクリレート、アズレニルアクリレート、アズレニルメタクリレート、ジメチルペンタレニルアクリレート、ジメチルペンタレニルメタクリレート、メチルペンタレニルメチルアクリレート、メチルペンタレニルメチルメタクリレート、エチルペンタレニルアクリレート、エチルペンタレニルメタクリレート、ペンタレニルエチルアクリレート、ペンタレニルメタクリレート、スピロ[4.5]デカニルアクリレート、スピロ[4.5]デカニルメタクリレート、スピロ[4.5]デカジエニルアクリレート、スピロ[4.5]デカジエニルメタクリレート、スピロ[4.5]デカテトラエニルアクリレート、スピロ[4.5]デカテトラエニルメタクリレート、ブチルフェニルアクリレート、ブチルフェニルメタクリレート、フェニルブチルアクリレート、フェニルブチルメタクリレート、
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メチルインダセニルアクリレート、メチルインダセニルメタクリレート、インダセニルメチルアクリレート、インダセニルメチルメタクリレート、メチルヘプタレニルアクリレート、メチルヘプタレニルメタクリレート、テトラデシルアクリレート、テトラデシルメタクリレート、メチルトリデシルアクリレート、メチルトリデシルメタクリレート、ジメチルドデシルアクリレート、ジメチルドデシルメタクリレート、エチルドデシルアクリレート、エチルドデシルメタクリレート、トリメチルウンデシルアクリレート、トリメチルウンデシルメタクリレート、メチルエチルウンデシルアクリレート、メチルエチルウンデシルメタクリレート、プロピルウンデシルアクリレート、プロピルウンデシルメタクリレート、ジエチルデシルアクリレート、ジエチルデシルメタクリレート、テトラメチルデシルアクリレート、テトラメチルデシルメタクリレート、ブチルデシルアクリレート、ブチルデシルメタクリレート、メチルプロピルデシルアクリレート、メチルプロピルデシルメタクリレート、ペンチルノニルアクリレート、ペンチルノニルメタクリレート、ペンタメチルノニルアクリレート、ペンタメチルノニルメタクリレート、トリメチルエチルノニルアクリレート、トリメチルエチルノニルメタクリレート、メチルジエチルノニルアクリレート、メチルジエチルノニルメタクリレート、プロピルエチルノニルアクリレート、プロピルエチルノニルメタクリレート、プロピルジメチルノニルアクリレート、プロピルジメチルノニルメタクリレート、ヘキシルオクチルアクリレート、ヘキシルオクチルメタクリレート、トリエチルオクチルアクリレート、トリエチルオクチルメタクリレート、ジプロピルオクチルアクリレート、ジプロピルオクチルメタクリレート、ヘキサメチルオクチルアクリレート、ヘキサメチルオクチルメタクリレート、ジメチルジエチルオクチルアクリレート、ジメチルジエチルオクチルメタクリレート、ブチルエチルオクチルアクリレート、ブチルエチルオクチルメタクリレート、ブチルジメチルオクチルアクリレート、ブチルジメチルオクチルメタクリレート、テトラシクロ[6.2.2.1.1]テトラデカニルアクリレート、テトラシクロ[6.2.2.1.1]テトラデカニルメタクリレート、テトラシクロ[6.3.1.1.1]テトラデカニルアクリレート、テトラシクロ[6.3.1.1.1]テトラデカニルメタクリレート、テトラシクロ[5.4.1.1.1]テトラデカニルアクリレート、テトラシクロ[5.4.1.1.1]テトラデカニルメタクリレート、テトラシクロ[5.3.2.1.1]テトラデカニルアクリレート、テトラシクロ[5.3.2.1.1]テトラデカニルメタクリレート、テトラシクロ[4.4.2.1.1]テトラデカニルアクリレート、テトラシクロ[5.2.2.2.1]テトラデカニルアクリレート、テトラシクロ[5.2.2.2.1]テトラデカニルメタクリレート、テトラシクロ[4.4.2.1.1]テトラデカニルメタクリレート、テトラシクロ[4.4.2.1.1]テトラデカニルアクリレート、テトラシクロ[4.4.2.1.1]テトラデカニルメタクリレート、テトラシクロ[4.3.2.2.1]テトラデカニルアクリレート、テトラシクロ[4.3.2.2.1]テトラデカニルメタクリレート、テトラシクロ[4.3.3.1.1]テトラデカニルアクリレート、テトラシクロ[4.3.3.1.1]テトラデカニルメタクリレート、テトラデカヒドロシクロペンタアセナフチレニルアクリレート、テトラデカヒドロシクロペンタアセナフチレニルメタクリレート、テトラヒドロシクロペンタアセナフチレニルアクリレート、テトラデカヒドロシクロペンタアセナフチレニルメタクリレート、テトラデカヒドロジシクロペンタペンタレニルアクリレート、テトラデカヒドロジシクロペンタペンタレニルメタクリレート、テトラデカヒドロアントラセニルアクリレート、テトラデカヒドロアントラセニルメタクリレート、テトラデカヒドロフェナントレニルアクリレート、テトラデカヒドロフェナントレニルメタクリレート、テトラデカヒドロシクロヘプタナフタレニルアクリレート、テトラデカヒドロシクロヘプタナフタレニルメタクリレート、ヘキサヒドロシクロヘプタナフタレニルアクリレート、ヘキサヒドロシクロヘプタナフタレニルメタクリレート、テトラデカヒドロオクタレニルアクリレート、テトラデカヒドロオクタレニルメタクリレート、ヘキサヒドロオクタレニルアクリレート、ヘキサヒドロオクタレニルメタクリレート、トリシクロ[8.2.1.1]テトラデカニルアクリレート、トリシクロ[8.2.1.1]テトラデカニルメタクリレート、トリシクロ[7.3.1.1]テトラデカニルアクリレート、
トリシクロ[7.3.1.1]テトラデカニルメタクリレート、トリシクロ[7.2.2.1]テトラデカニルアクリレート、トリシクロ[7.2.2.1]テトラデカニルメタクリレート、トリシクロ[6.4.1.1]テトラデカニルアクリレート、トリシクロ[6.4.1.1]テトラデカニルメタクリレート、トリシクロ[6.3.2.1]テトラデカニルアクリレート、トリシクロ[6.3.2.1]テトラデカニルメタクリレート、トリシクロ[6.2.2.2]テトラデカニルアクリレート、トリシクロ[6.2.2.2]テトラデカニルメタクリレート、トリシクロ[5.5.1.1]テトラデカニルアクリレート、トリシクロ[5.5.1.1]テトラデカニルメタクリレート、トリシクロ[5.4.2.1]テトラデカニルアクリレート、トリシクロ[5.4.2.1]テトラデカニルメタクリレート、トリシクロ[5.3.3.1]テトラデカニルアクリレート、トリシクロ[5.3.3.1]テトラデカニルメタクリレート、トリシクロ[5.3.2.2]テトラデカニルアクリレート、トリシクロ[5.3.2.2]テトラデカニルメタクリレート、トリシクロ[4.4.2.2]テトラデカニルアクリレート、トリシクロ[4.4.2.2]テトラデカニルメタクリレート、トリシクロ[4.4.3.1]テトラデカニルアクリレート、トリシクロ[4.4.3.1]テトラデカニルメタクリレート、トリシクロ[4.3.3.2]テトラデカニルアクリレート、トリシクロ[4.3.3.2]テトラデカニルメタクリレート、メチルドデカヒドロフルオレニルアクリレート、メチルドデカヒドロフルオレニルメタクリレート、ドデカヒドロフルオレニルメチルアクリレート、ドデカヒドロフルオレニルメチルメタクリレート、メチルドデカヒドロフェナレニルアクリレート、メチルドデカヒドロフェナレニルメタクリレート、ドデカヒドロフェナレニルメチルアクリレート、ドデカヒドロフェナレニルメチルメタクリレート、ドデカヒドロアヌレニルメチルアクリレート、ドデカヒドロアヌレニルメチルメタクリレート、メチルドデカヒドロアヌレニルアクリレート、メチルドデカヒドロアヌレニルメタクリレート、ブチルアダマンチルアクリレート、ブチルアダマンチルメタクリレート、ジエチルアダマンチルアクリレート、ジエチルアダマンチルメタクリレート、テトラメチルアダマンチルアクリレート、テトラメチルアダマンタニルメタクリレート、エチルドデカヒドロアセナフチレニルアクリレート、エチルドデカヒドロアセナフチレニルメタクリレート、ジメチルドデカヒドロアセナフチレニルアクリレート、ジメチルドデカヒドロアセナフチレニルメタクリレート、エチルドデカヒドロ(s)インダセニルアクリレート、エチルドデカヒドロ(s)インダセニルメタクリレート、ジメチルドデカヒドロ(s)インダセニルアクリレート、ジメチルドデカヒドロ(s)インダセニルメタクリレート、エチルドデカヒドロヘプタレニルアクリレート、エチルドデカヒドロヘプタレニルメタクリレート、ジメチルドデカヒドロヘプタレニルアクリレート、ジメチルドデカヒドロヘプタレニルメタクリレート、ビシクロ[5.4.3]テトラデカニルアクリレート、ビシクロ[5.4.3]テトラデカニルメタクリレート、ビシクロ[5.5.2]テトラデカニルアクリレート、ビシクロ[5.5.2]テトラデカニルメタクリレート、ビシクロ[6.3.3]テトラデカニルアクリレート、ビシクロ[6.3.3]テトラデカニルメタクリレート、ビシクロ[6.4.2]テトラデカニルアクリレート、ビシクロ[6.4.2]テトラデカニルメタクリレート、ビシクロ[6.5.1]テトラデカニルアクリレート、ビシクロ[6.5.1]テトラデカニルメタクリレート、ビシクロ[7.3.2]テトラデカニルアクリレート、ビシクロ[7.3.2]テトラデカニルメタクリレート、ビシクロ[7.4.1]テトラデカニルアクリレート、ビシクロ[7.4.1]テトラデカニルメタクリレート、ビシクロ[8.2.2]テトラデカニルアクリレート、ビシクロ[8.2.2]テトラデカニルメタクリレート、ビシクロ[8.3.1]テトラデカニルアクリレート、ビシクロ[8.3.1]テトラデカニルメタクリレート、ビシクロ[9.2.1]テトラデカニルアクリレート、ビシクロ[9.2.1]テトラデカニルメタクリレート、ブチルデカヒドロナフタレニルアクリレート、ブチルデカヒドロナフタレニルメタクリレート、ジエチルデカヒドロナフタレニルアクリレート、ジエチルデカヒドロナフタレニルメタクリレート、テトラメチルデカヒドロナフタレニルアクリレート、テトラメチルデカヒドロナフタレニルメタクリレート、ブチルデカヒドロアズレニルアクリレート、ブチルデカヒドロアズレニルメタクリレート、ジエチルデカヒドロアズレニルアクリレート、ジエチルデカヒドロアズレニルメタクリレート、テトラメチルデカヒドロアズレニルアクリレート、
テトラメチルデカヒドロアズレニルメタクリレート、ペンチロオクタヒドロインデニルアクリレート、ペンチルオクタヒドロインデニルメタクリレート、ヘキシルオクタヒドロペンタレニルアクリレート、ヘキシルオクタヒドロペンタレニルメタクリレート、シクロヘキシルオクタヒドロペンタレニルアクリレート、シクロヘキシルオクタヒドロペンタレニルメタクリレート、ヘキサメチルシクロオクチルアクリレート、ヘキサメチルシクロオクチルメタクリレート、シクロヘキシルシクロオクチルアクリレート、シクロヘキシルシクロオクチルメタクリレート、ヘプチルシクロヘプチルアクリレート、ヘプチルシクロヘプチルメタクリレート、シクロヘプチルシクロヘプチルアクリレート、シクロヘプチルシクロヘプチルメタクリレート、シクロペンタアセナフチレニルアクリレート、シクロペンタアセナフチレニルメタクリレート、ジシクロペンタペンタレニルアクリレート、ジシクロペンタペンタレニルメタクリレート、アントラセニルアクリレート、アントラセニルメタクリレート、フェナントレニルアクリレート、フェナントレニルメタクリレート、シクロヘプタナフタレニルアクリレート、シクロヘプタナフタレニルメタクリレート、ビベンジリルアクリレート、ビベンジリルメタクリレート、スチルベニルアクリレート、スチルベニルメタクリレート、ビシクロヘプタトリエニリデニルアクリレート、ビシクロヘプタトリエニリデニルメタクリレート、オクタレニルアクリレート、オクタレニルメタクリレート、ペンタデシルアクリレート、ペンタデシルメタクリレート、シクロペンタフェナントレンアクリレート、シクロペンタフェナントレンメタクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ピレニルアクリレート、ピレニルメタクリレート、フルオランテニルアクリレート、フルオランテニルメタクリレート、アセアントリレニル(aceanthrylenyl)アクリレート、アセアントリレニルメタクリレート、ジシクロペンタヘプタレニルアクリレート、ジシクロペンタヘプタレニルメタクリレート、インデノインデニルアクリレート、インデノインデニルメタクリレート、シクロオクタインダセニルアクリレート、シクロオクタインダセニルメタクリレート、シクロヘプタフルオレニルアクリレート、シクロヘプタフルオレニルメタクリレート、フェニルナフタレニルアクリレート、フェニルナフタレニルメタクリレート、ビシクロオクタテトラエニルアクリレート、ビシクロオクタテトラエニルメタクリレート、ヘプタデシルアクリレート、ヘプタデシルアクリレート、メチルヘキサデシルアクリレート、メチルヘキサデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、オクタデセニルアクリレート、オクタデセニルメタクリレート、オクタデカジエニルアクリレート、オクタデカジエニルメタクリレート、オクタデカトリエニルアクリレート、オクタデカトリエニルメタクリレート、シクロペンタピレニルアクリレート、シクロペンタピレニルメタクリレート、シクロペンタアセアントリレニルアクリレート、シクロペンタアセアントリレニルメタクリレート、アズレノインダセニルアクリレート、アズレノインダセニルメタクリレート、ジシクロヘプタナフタレニルアクリレート、ジシクロヘプタナフタレニルメタクリレート、ジシクロオクタペンタレニルアクリレート、ジシクロオクタペンタレニルメタクリレート、テトラセニルアクリレート、テトラセニルメタクリレート、テトラフェニルアクリレート、テトラフェニルメタクリレート、クリセニルアクリレート、クリセニルメタクリレート、トリフェニレニルアクリレート、トリフェニレニルメタクリレート、
シクロヘプタアントラセニルアクリレート、シクロヘプタアントラセニルメタクリレート、アズレノアズレニルアクリレート、アズレノアズレニルメタクリレート、ノナデシルアクリレート、ノナデシルメタクリレート、エイコサニルアクリレート、エイコサニルメタクリレート、インデノフルオレニルアクリレート、インデノフルオレニルメタクリレート、ジシクロヘプタインダセニルアクリレート、ジシクロヘプタインダセニルメタクリレート、ペリレニルアクリレート、ペリレニルメタクリレート、シクロヘプタピレニルアクリレート、シクロヘプタピレニルメタクリレート、ジベンゾフルオランテニルアクリレート、ジベンゾフルオロアンテニルメタクリレート、ヘプタレノフルオレニルアクリレート、ヘプタレノフルオレニルメタクリレート、ジシクロヘプタナフタレニルアクリレート、ジシクロヘプタナフタレニルメタクリレート、ビナフタレニルアクリレート、ビナフタレニルメタクリレート、ビアズレニルアクリレート、ビアズレニルメタクリレート、ヘンエイコサニル(heneicosanyl)アクリレート、ヘンエイコサニルメタクリレート、アズレノフェナントレニルアクリレート、アズレノフェナントレニルメタクリレート、ドコサニルアクリレート、ドコサニルメタクリレート、ペンタセニルアクリレート、ペンタセニルメタクリレート、ペンタフェニルアクリレート、ペンタフェニルメタクリレート、ピセニルアクリレート、ピセニルメタクリレート、シクロヘプタアズレノヘプタレニルアクリレート、シクロヘプタアズレノヘプタレニルメタクリレート、トリコサニルアクリレート、トリコサニルメタクリレート、テトラコサニルアクリレート、テトラコサニルメタクリレート、コロネニルアクリレート、コロネニルメタクリレート、テトラフェニレニルアクリレート、テトラフェニレニルメタクリレート、ビヘプタレニルアクリレート、ビヘプタレニルメタクリレート、ペンタコサニルアクリレート、ペンタコサニルメタクリレート、ヘキサコサニルアクリレート、ヘキサコサニルメタクリレート、ヘキサセニルアクリレート、ヘキサセニルメタクリレート、ヘキサフェニルアクリレート、ヘキサフェニルメタクリレート、ビアントラセニルアクリレート、ビアントラセニルメタクリレート、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0026】
特に、本開示に従ったブラシコポリマー組成物に関して:各R5は個々に直鎖又は分枝C2‐C18アルキル部分であってもよい;各R6は個々に直鎖C8‐C20アルキル部分であってもよい;各R1及びR3は個々に水素又はメチルであってもよい;各R2は個々に共有結合したコポリマーブラシアーム、残留水素、又は残留直鎖又は分枝C1‐C4ヒドロキシアルキル部分であってもよい;各R4は個々に直鎖又は分枝C8‐C24アルキル部分であってもよい;y及びzはそれぞれ1であってもよい。
【0027】
特に、本開示に従ったブラシコポリマー組成物に関し、下記条件の3つ以上(例えば、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、又は全て;特に、5つ以上、7つ以上、又は全て)が満たされる:ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準に対して約40℃で、溶離液として約2%(v/v)のTEAを含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行うことにより測定したブラシコポリマー組成物の数平均分子量は30,000g/モル~100,000g/モルである;各R5は個々に直鎖又は分枝C2‐C18アルキル部分である;各R6は個々に直鎖C8‐C20アルキル部分である;各R1及びR3は個々に水素又はメチルである;各R4は個々に直鎖又は分枝C8‐C24アルキル部分である;y及びzはそれぞれ1である;各R2は個々に、共有結合コポリマーブラシアーム、残留水素、又は残留直鎖もしくは分枝C1‐C4ヒドロキシアルキル部分であり、R2基の少なくとも70モル%は共有結合コポリマーブラシアームである;m+nの合計はコポリマーブラシアームの平均重合度の90モル%~100モル%である;比m:nは1:25~2:1である;a+bの合計はコポリマー骨格の平均重合度の90モル%~100モル%である;比a:bは1:14~1:2である;a+bの合計は250以下である;並びにm+nの合計は75以下である。
【0028】
いくつかの実施形態では、コポリマー骨格は可逆的付加断片化連鎖移動(RAFT)重合法などの可逆的不活性化ラジカル重合(RDRP)法により形成できる。このような方法(単数又は複数)のためのラジカル開始剤としては、過酸化物、ジアゾ化合物等、並びにこれらの組み合わせ及び/又はハイブリッドが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。RAFT重合法では、例えば、連鎖移動剤をラジカル開始剤(単数又は複数)と同時に使用できる。好適な連鎖移動剤は、重合する(コ)モノマー系に応じて選択してもよく、例えば、S.Perrier、「Raft Polymerization―A User’s Guide」、Macromolecules、2017年、第50号、pp.7443‐47(「Perrierの論文」)に記載されており、その内容は参照により本明細書に援用される。連鎖移動剤は、芳香族置換アルキルジチオネートなどのチオカルボニルチオ基を含むように選択してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。RAFT条件は、またPerrierの論文に記載されているように、重合する(コ)モノマー系に基づいて選択してもよい。このような(共)重合は標準圧力、減圧、又は高圧で行ってもよい。重合温度はまた、広い範囲で変えてもよい。特に、重合は、典型的には約-20℃~約200℃、例えば、約50℃~約150℃、又は約70℃~約130℃で実施してもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、本明細書に従ったブラシコポリマー組成物、及び/又はブラシコポリマー組成物の個々のブラシアーム成分は有利にも、約100℃における動粘度(KV100)が約4cStであるグループIIIのベースストック中、約5mg/mLの濃度で上限臨界溶液温度(UCST)挙動を示す場合がある。このようなUCST挙動を得るために、紫外線‐可視光(UV‐Vis)分光法を用いた濁度分析(例えば、温度を変化させ、約600nmのような感度の高い波長又は波長群を監視することで行う)を利用してもよい。このような濁度分析では、転移温度(溶解、又は他の波長特異的な吸収/散乱のいずれかを示す)は、約50%の透過率で発生しているときに測定可能であり、少なくとも2回の加熱及び冷却サイクル(大幅な(コ)ポリマー分解を誘発しないように特別に選択した妥当な温度範囲)を行い、1回目以外の加熱及び/又は冷却サイクルからのデータのみを考慮する(例えば、以前の熱履歴又は結合履歴を削減、抑制、又は消去するように)ことが好ましい。ブラシアームの波長約600nmにおけるUV‐Vis濁度転移は、2回目以降(例えば、2回目又は3回目)の冷却サイクルにおいて冷却速度約1℃/分で、約80.0℃未満(例えば、約75.0℃未満、約70.0℃未満、約65.0℃未満、約60.0℃未満、約55.0℃未満、約50.0℃未満、約45.0℃未満、約40.0℃未満、約35.0℃未満、又は約30℃未満;追加的又は代替的に、約-40.0℃以上、約-30.0℃以上、約-20.0℃以上、約-10.0℃以上、約-0.0℃以上、約10.0℃以上、約15.0℃以上、又は約20.0℃以上)とし、また/あるいは、2回目以降(例えば、2回目又は3回目)の加熱サイクルにおいて加熱速度約1℃/分で、約85.0℃未満(例えば、約80.0℃未満、約75.0℃未満、約70.0℃未満、約65.0℃未満、約60.0℃未満、約55.0℃未満、約50.0℃未満、45.0℃未満、約40.0℃未満、約35.0℃未満、又は約30℃未満;追加的又は代替的に、約-40.0℃以上、約-30.0℃以上、約-20.0℃以上、約-10.0℃以上、約0.0℃以上、約10.0℃以上、約15.0℃以上、約20.0℃以上)とすることが可能である。
【0030】
追加的又は代替的に、このようなUCST挙動は、示差走査熱量計(DSC)で、2回目以降(例えば、2回目又は3回目)の冷却サイクルにおいて冷却速度約1℃/分で、約85.0℃未満(例えば、約80.0℃未満、約75.0℃未満、約70.0℃未満、約65.0℃未満、約60.0℃未満、約55.0℃未満、約50.0℃未満、約45.0℃未満、約40.0℃未満、約35.0℃未満、又は約30℃未満;追加的又は代替的に、約-40.0℃以上、約-30.0℃以上、約-20.0℃以上、約-10.0℃以上、約0.0℃以上、約10.0℃以上、約15.0℃以上、又は約20.0℃以上)にピーク中心がある一次発熱転移として現れる場合がある。このようなDSC分析では、本明細書に記載の濁度分析と同様に、少なくとも2回(例えば、少なくとも3回)の加熱及び冷却サイクル(大幅な(コ)ポリマー分解を誘発しないように特別に選択した妥当な温度範囲にわたって)を行い、1回目以外の加熱及び/又は冷却サイクルからのデータのみを考慮する(例えば、以前の熱履歴又は結合履歴を削減、抑制、又は消去するように)ことが好ましい。本明細書で使用する場合、「一次」発熱転移は、ピーク面積で、又は代替的にピーク高さで、最大ピーク(又は、複数のピークが有意に重複する場合は、ピークの集合)を表すことが可能である。
【0031】
特に、本開示に従った、ブラシコポリマー組成物、ブラシコポリマー組成物のコポリマー骨格部分、及び/又はブラシコポリマー組成物のブラシアームコポリマー部分は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準に対して約40℃で、溶離液として約2%(v/v)のトリエチルアミン(TEA)を含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行うことにより測定した多分散度が、1.60未満(例えば1.55以下、1.50以下、1.45以下、1.40以下、1.35以下、1.30以下、1.25以下、又は1.20以下)であってもよい。追加的又は代替的に、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準に対して約40℃で、溶離液として約2%(v/v)のTEAを含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行うことにより測定したブラシコポリマー組成物の数平均分子量は、30,000g/モル~125,000g/モル(例えば、30,000g/モル~110,000g/モル、30,000g/モル~100,000g/モル、30,000g/モル~90,000g/モル、30,000g/モル~80,000g/モル、30,000g/モル~75,000g/モル、30,000g/モル~70,000g/モル、30,000g/モル~65,000g/モル、30,000g/モル~60,000g/モル、40,000g/モル~125,000g/モル、40,000g/モル~110,000g/モル、40,000g/モル~100,000g/モル、40,000g/モル~90,000g/モル、40,000g/モル~80,000g/モル、40,000g/モル~75,000g/モル、40,000g/モル~70,000g/モル、40,000g/モル~65,000g/モル、45,000g/モル~125,000g/モル、45,000g/モル~110,000g/モル、45,000g/モル~100,000g/モル、45,000g/モル~90,000g/モル、45,000g/モル~80,000g/モル、45,000g/モル~75,000g/モル、又は45,000g/モル~70,000g/モル;特に、30,000g/モル~100,000g/モル、35,000g/モル~80,000g/モル、又は40,000g/モル~75,000g/モル)であってもよい。
【0032】
本開示に従ったブラシコポリマーは有利にも、比較的高い油溶性又は油分散性を示す場合がある。本明細書で使用される場合、用語「油溶性」とは、少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.5質量%の櫛型コポリマー粘度調整剤、及び少なくとも80質量%(好ましくは、少なくとも85質量%、少なくとも90質量%、又は残部)の潤滑油ベースストックを含む組成物が、安定した巨視的な相を形成することなく比較的簡単に組み合わせ得ることを意味する。油溶性及び/又は油分散性は、ベースストックの性質、特にコポリマー化学特性に依存する場合がある。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態では、コポリマー骨格のモノマーは以下のように選択する。得られるコポリマー骨格生成物(ブラシアームとの反応前)の計算した溶解度パラメータは、基寄与法(R.Fedors、「A Method for Estimating Both the Solubility Parameters and Molar Volumes of Liquids」、Polymer Engineering & Science、第14号(2)、1974年2月、pp.147‐54に記載)に基づいて、最大9.46(cal/cm3)1/2、例えば最大9.45(cal/cm3)1/2、最大9.44(cal/cm3)1/2、最大9.43(cal/cm3)1/2、最大9.42(cal/cm3)1/2、最大9.41(cal/cm3)1/2、最大9.40(cal/cm3)1/2、最大9.38(cal/cm3)1/2、最大9.36(cal/cm3)1/2、最大9.34(cal/cm3)1/2、8.00~9.46、8.00(cal/cm3)1/2~9.46(cal/cm3)1/2、8.00(cal/cm3)1/2~9.45(cal/cm3)1/2、8.00(cal/cm3)1/2~9.44(cal/cm3)1/2、8.00(cal/cm3)1/2~9.43(cal/cm3)1/2、8.00(cal/cm3)1/2~9.42(cal/cm3)1/2、8.00(cal/cm3)1/2~9.41(cal/cm3)1/2、8.00(cal/cm3)1/2~9.40(cal/cm3)1/2、8.00(cal/cm3)1/2~9.38(cal/cm3)1/2、8.00(cal/cm3)1/2~9.36(cal/cm3)1/2、8.00(cal/cm3)1/2~9.34(cal/cm3)1/2、8.20(cal/cm3)1/2~9.46(cal/cm3)1/2、8.20(cal/cm3)1/2~9.45(cal/cm3)1/2、8.20(cal/cm3)1/2~9.44(cal/cm3)1/2、8.20(cal/cm3)1/2~9.43(cal/cm3)1/2、8.20(cal/cm3)1/2~9.42(cal/cm3)1/2、8.20(cal/cm3)1/2~9.41(cal/cm3)1/2、8.20(cal/cm3)1/2~9.40(cal/cm3)1/2、8.20(cal/cm3)1/2~9.38(cal/cm3)1/2、8.20(cal/cm3)1/2~9.36(cal/cm3)1/2、8.20(cal/cm3)1/2~9.34(cal/cm3)1/2、8.40(cal/cm3)1/2~9.46(cal/cm3)1/2、8.40(cal/cm3)1/2~9.45(cal/cm3)1/2、8.40(cal/cm3)1/2~9.44(cal/cm3)1/2、8.40(cal/cm3)1/2~9.43(cal/cm3)1/2、8.40(cal/cm3)1/2~9.42(cal/cm3)1/2、8.40(cal/cm3)1/2~9.41(cal/cm3)1/2、8.40(cal/cm3)1/2~9.40(cal/cm3)1/2、8.40(cal/cm3)1/2~9.38(cal/cm3)1/2、8.40(cal/cm3)1/2~9.36(cal/cm3)1/2、8.40(cal/cm3)1/2~9.34(cal/cm3)1/2、8.60(cal/cm3)1/2~9.46(cal/cm3)1/2、8.60(cal/cm3)1/2~9.45(cal/cm3)1/2、8.60(cal/cm3)1/2~9.44(cal/cm3)1/2、8.60(cal/cm3)1/2~9.43(cal/cm3)1/2、8.60(cal/cm3)1/2~9.42(cal/cm3)1/2、8.60(cal/cm3)1/2~9.41(cal/cm3)1/2、8.60(cal/cm3)1/2~9.40(cal/cm3)1/2、8.60(cal/cm3)1/2~9.38(cal/cm3)1/2、8.60(cal/cm3)1/2~9.36(cal/cm3)1/2、8.60(cal/cm3)1/2~9.34(cal/cm3)1/2へ、8.80(cal/cm3)1/2~9.46(cal/cm3)1/2へ、8. 80(cal/cm3)1/2~9.45(cal/cm3)1/2、8.80(cal/cm3)1/2~9.44(cal/cm3)1/2、8.80(cal/cm3)1/2~9.43(cal/cm3)1/2、8.80(cal/cm3)1/2~9.42(cal/cm3)1/2、8.80(cal/cm3)1/2~9.41(cal/cm3)1/2、8.80(cal/cm3)1/2~9.40(cal/cm3)1/2、8.80(cal/cm3)1/2~9.38(cal/cm3)1/2、8.80(cal/cm3)1/2~9.36(cal/cm3)1/2、8.80(cal/cm3)1/2~9.34(cal/cm3)1/2、8.90(cal/cm3)1/2~9.46(cal/cm3)1/2、8.90(cal/cm3)1/2~9.45(cal/cm3)1/2、8.90(cal/cm3)1/2~9.44(cal/cm3)1/2、8.90(cal/cm3)1/2~9.43(cal/cm3)1/2、8.90(cal/cm3)1/2~9.42(cal/cm3)1/2、8.90(cal/cm3)1/2~9.41(cal/cm3)1/2、8.90(cal/cm3)1/2~9.40(cal/cm3)1/2、8.90(cal/cm3)1/2~9.38(cal/cm3)1/2、8.90(cal/cm3)1/2~9.36(cal/cm3)1/2、8.90(cal/cm3)1/2~9.34(cal/cm3)1/2、9.00(cal/cm3)1
/2~9.46(cal/cm3)1/2、9.00(cal/cm3)1/2~9.45(cal/cm3)1/2、9.00(cal/cm3)1/2~9.44(cal/cm3)1/2、9.00(cal/cm3)1/2~9.43(cal/cm3)1/2、9.00(cal/cm3)1/2~9.42(cal/cm3)1/2、9.00(cal/cm3)1/2~9.41(cal/cm3)1/2、9.00(cal/cm3)1/2~9.40(cal/cm3)1/2、9.00(cal/cm3)1/2~9.38(cal/cm3)1/2、9.00(cal/cm3)1/2~9.36(cal/cm3)1/2、9.00(cal/cm3)1/2~9.34(cal/cm3)1/2、9.10(cal/cm3)1/2~9.46(cal/cm3)1/2、9.10(cal/cm3)1/2~9.45(cal/cm3)1/2、9.10(cal/cm3)1/2~9.44(cal/cm3)1/2、9.10(cal/cm3)1/2~9.43(cal/cm3)1/2、9.10(cal/cm3)1/2~9.42(cal/cm3)1/2、9.10(cal/cm3)1/2~9.41(cal/cm3)1/2、9.10(cal/cm3)1/2~9.40(cal/cm3)1/2、9.10(cal/cm3)1/2~9.38(cal/cm3)1/2、9.10(cal/cm3)1/2~9.36(cal/cm3)1/2、9.10(cal/cm3)1/2~9.34(cal/cm3)1/2、9.20(cal/cm3)1/2~9.46(cal/cm3)1/2、9.20(cal/cm3)1/2~9.45(cal/cm3)1/29.20(cal/cm3)1/2~9.44(cal/cm3)1/2、9.20(cal/cm3)1/2~9.43(cal/cm3)1/2、9.20(cal/cm3)1/2~9.42(cal/cm3)1/2、9.20(cal/cm3)1/2~9.41(cal/cm3)1/2、9.20(cal/cm3)1/2~9.40(cal/cm3)1/2、9.20(cal/cm3)1/2~9.38(cal/cm3)1/2、9.20(cal/cm3)1/2~9.36(cal/cm3)1/2、又は9.20(cal/cm3)1/2~9.34(cal/cm3)1/2であり;特に、計算した溶解度パラメータは、最大9.46(cal/cm3)1/2、最大9.45(cal/cm3)1/2、8.20(cal/cm3)1/2~9.46(cal/cm3)1/2、8.60(cal/cm3)1/2~9.45(cal/cm3)1/2、又は8.80(cal/cm3)1/2~9.44(cal/cm3)1/2とすることが可能である。Fedorsの論文では、溶解度パラメータδは次のような計算で概算する:δ=[(ΣiΔei)/(ΣiΔvi)]1/2。式中、Δeiは各繰り返し単位のi成分の気化の一覧にした(tabulated)個々のエネルギーを表し、Δviは各繰り返し単位のi成分の一覧にしたモル体積を表す。
【0034】
粘度を改質するために適用する場合、ブラシコポリマーは、例えば粘度改質混合物を形成するために、粘度改質量の潤滑組成物(少なくとも潤滑剤ベースストック、及び任意に1種以上の機能性潤滑組成物成分を含有する)と組み合わせることが可能である。特に、ブラシコポリマーは、グループI、グループII、グループIIIのベースストック、及び/又はグループIV希釈剤/ベースストック、特に少なくとも1種のグループIIベースストック及び/又は少なくとも1種のグループIIIベースストックを含みながら、任意にグループIVメタロセン系又は非メタロセン系ベースストック及び/又はグループVベースストックを含む潤滑油ベースストックと組み合わせてもよい。任意に、潤滑添加剤も含まれてよい(例えば、少量の潤滑油ベースストック、並びに抗酸化剤、腐食防止剤、摩耗防止添加剤、摩擦調整剤、分散剤、洗浄剤、消泡剤、極圧添加剤、流動点降下剤、及びシール膨潤制御剤のうちの1種以上を含む濃縮潤滑添加剤パッケージ;又は単に、前記列挙した添加剤のうちの1種以上の混合物又は組み合わせなどを介して)。
【0035】
特定の用途では、ブラシコポリマー(追加の(コ)ポリマー成分及び/又は追加の希釈剤を含んでもよいが、他の潤滑剤ベースの機能成分を含まない任意の粘度調整剤濃縮物とは異なる)は、潤滑組成物の総質量に対して0.2質量%~15質量%、例えば0.2質量%~12質量%、0.2質量%~9.0質量%、0.2質量%~8.0質量%、0.2質量%~7.0質量%、0.2質量%~6.0質量%、0.2質量%~5.0質量%、0.2質量%~4.0質量%、0.2質量%~3.5質量%、0.2質量%~3.0質量%、0.2質量%~2.5質量%、0.2質量%~2.0質量%、0.4質量%~15質量%、0.4質量%~12質量%、0.4質量%~9.0質量%、0.4質量%~8.0質量%、0.4質量%~7.0質量%、0.4質量%~6.0質量%、0.4質量%~5.0質量%、0.4質量%~4.0質量%、0.4質量%~3.5質量%、0.4質量%~3.0質量%、0.4質量%~2.5質量%、0.4質量%~2.0質量%、0.5質量%~15質量%、0.5質量%~12質量%、0.5質量%~9.0質量%、0.5質量%~8.0質量%、0.5質量%~7.0質量%、0.5質量%~6.0質量%、0.5質量%~5.0質量%、0.5質量%~4.0質量%、0.5質量%~3.5質量%、0.5質量%~3.0質量%、0.5質量%~2.5質量%、0.5質量%~2.0質量%、0.6質量%~15質量%、0.6質量%~12質量%、0.6質量%~9.0質量%、0.6質量%~8.0質量%、0.6質量%~7.0質量%、0.6質量%~6.0質量%、0.6質量%~5.0質量%、0.6質量%~4.0質量%、0.6質量%~3.5質量%、0.6質量%~3.0質量%、0.6質量%~2.5質量%、0.6質量%~2.0質量%、0.8質量%~15質量%、0.8質量%~12質量%、0.8質量%~9.0質量%、0.8質量%~8.0質量%、0.8質量%~7.0質量%、0.8質量%~6.0質量%、0.8質量%~5.0質量%、0.8質量%~4.0質量%、0.8質量%~3.5質量%、0.8質量%~3.0質量%、0.8質量%~2.5質量%、0.8質量%~2.0質量%、1.0質量%~15質量%、1.0質量%~12質量%、1.0質量%~9.0質量%、1.0質量%~8.0質量%、1.0質量%~7.0質量%、1.0質量%~6.0質量%、1.0質量%~5.0質量%、1.0質量%~4.0質量%、1.0質量%~3.5質量%、1.0質量%~3.0質量%、1.0質量%~2.5質量%、1.0質量%~2.0質量%、1.2質量%~15質量%、1.2質量%~12質量%、1.2質量%~9.0質量%、1.2質量%~8.0質量%、1.2質量%~7.0質量%、1.2質量%~6.0質量%、1.2質量%~5.0質量%、1.2質量%~4.0質量%、1.2質量%~3.5質量%、1.2質量%~3.0質量%、1.2質量%~2.5質量%、1.2質量%~2.0質量%、1.4質量%~15質量%、1.4質量%~12質量%、1.4質量%~9.0質量%、1.4質量%~8.0質量%、1.4質量%~7.0質量%、1.4質量%~6.0質量%、1.4質量%~5.0質量%、1.4質量%~4.0質量%、1.4質量%~3.5質量%、1.4質量%~3.0質量%、1.4質量%~2.5質量%、1.4質量%~2.0質量%、1.5質量%~15質量%、1.5質量%~12質量%、1.5質量%~9.0質量%、1.5質量%~8.0質量%、1.5質量%~7.0質量%、1.5質量%~6.0質量%、1.5質量%~5.0質量%、1.5質量%~4.0質量%、1.5質量%~3.5質量%、1.5質量%~3.0質量%、1.5質量%~2.5質量%、又は1.5質量%~2.0質量%の量で潤滑組成物中に含まれてもよい。特に、ブラシコポリマーは0.5質量%~12質量%、又は1.0質量%~9.0質量%の量で潤滑組成物中に含まれてもよい。
【0036】
潤滑油ベースストックは、当技術分野で公知の任意の好適な潤滑油ベースストックであってよい。天然及び合成潤滑油ベースストックは両方とも好適である可能性がある。天然潤滑油としては、動物油、植物油(例えば、ひまし油及びラード油)、石油、鉱油、石炭又はシェール由来の油剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。特定の天然潤滑油としては鉱油が挙げられるか、又は鉱油である。
好適な鉱油としては、化学構造においてナフテン系又はパラフィン系油を含む全ての一般的な鉱油ベースストックが挙げられる。酸、アルカリ、及び粘土、もしくは塩化アルミニウムなどの他の薬剤を使用する従来法により好適な油剤を精製してもよく、又は、例えば、フェノール、二酸化硫黄、フルフラール、ジクロロジエチルエーテル等、もしくはこれらの組み合わせなどの溶媒を使用した溶媒抽出により製造した抽出油であってもよい。油剤は、水素化処理もしくは水素化精製、冷却もしくは触媒脱蝋法による脱蝋、水素化分解、又はこれらの組み合わせに供してもよい。好適な鉱油を天然の粗原料から生成してもよく、又は異性化した蝋材料や他の精製法の残渣から構成してもよい。
【0037】
合成潤滑油としては、オリゴマー化、重合化、及び共重合化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン、イソブチレンコポリマー、塩素化ポリラクトン、ポリ(1‐ヘキセン)、ポリ(1‐オクテン)、ポリ‐(1‐デセン)等、及びこれらの混合物)などの炭化水素油及びハロ置換炭化水素油;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2‐エチルヘキシル)ベンゼン等);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル等);アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、及びこれらの誘導体、類似体、相同体等;並びにこれらの組み合わせ及び/又は反応生成物が挙げられる。
いくつかの実施形態では、このクラスの合成油由来の油剤は、α‐オレフィンの水素化オリゴマー、特に1‐デセンのオリゴマー、例えばフリーラジカル法、チーグラー触媒反応、又はカチオン法により生成したオリゴマーを含むポリアルファオレフィン(PAO)を含むか、又はそのPAOであってもよい。これらは、例えば、炭素原子数2~16個の分岐又は直鎖α‐オレフィンのオリゴマーであってもよく、具体的な非限定的例としては、ポリプロペン、ポリイソブテン、ポリ‐1‐ブテン、ポリ‐1‐ヘキセン、ポリ‐1‐オクテン、ポリ‐1‐デセン、ポリ‐1‐ドデセン、及びこれらの混合物及び/又はコポリマーが挙げられる。
【0038】
追加的又は代替的に、合成潤滑油としては、任意の(大部分の)末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等により修飾された酸化アルキレンポリマー、インターポリマー、コポリマー、及びこれらの誘導体が挙げられる。このクラスの合成油の例としては:酸化エチレン又は酸化プロピレンの重合により調製したポリオキシアルキレンポリマー;これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びアリールエーテル(例えば、平均Mnが約1000ダルトンのメチル‐ポリイソプロピレングリコールエーテル、平均Mnが約1000~約1500ダルトンのポリプロピレングリコールのジフェニルエーテル);並びにこれらのモノ‐及びポリ‐カルボン酸エステル(例えば、テトラエチレングリコールの酢酸エステル(単数又は複数)、混合C3‐C8脂肪酸エステル、C12オキソ酸ジエステル(単数又は複数)等、又はこれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0039】
合成潤滑油の別の好適なクラスには、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸及びアルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸等)と、種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2‐エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等)とのエステルが含まれる場合もある。これらのエステルの具体例としては、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2‐エチルヘキシル)、フマル酸ジ‐n‐ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエコシル、リノール酸ダイマーの2‐エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2‐エチルヘキサン酸とを反応させることにより形成した複合エステル等、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。このクラスの合成油由来の好ましい油剤タイプとしては、C4‐C12アルコールのアジピン酸塩が挙げられる。
追加的又は代替的に、合成潤滑油として有用なエステルとしては、C5‐C12モノカルボン酸、ポリオール、及び/又はポリオールエーテル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等、並びにこれらの組み合わせから形成したエステルが挙げられる。
【0040】
潤滑油は、未精製油、精製油、再精製油、又はこれらの混合物由来のものであってもよい。未精製油は、更に精製又は処理することなく天然源又は合成源(例えば、石炭、シェール、又はタールサンド瀝青)から直接得られる。未精製油の例としては、レトルト処理から直接得たシェールオイル、蒸留から直接得た石油、又はエステル化法から直接得たエステル油が挙げられ、これらの各々又は組み合わせは、その後更なる処理を行わずに使用してもよい。精製油は未精製油と類似しているが、例外として、精製油は通常、化学構造を変化させるため、及び/又は1つ以上の特性を改善するために、1つ以上の精製工程で処理されている。好適な精製技術には、蒸留、水素化処理、脱蝋、溶媒抽出、酸又は塩基抽出、濾過、及びパーコレーションが挙げられ、これらは全て当業者に公知である。再精製油は、使用済み油及び/又は精製油を、最初に精製油を得るために使用した方法と同様の方法で処理することにより得てもよい。このような再精製油は、再生油又は再処理油として公知であり、使用済み添加剤及び油分解物を除去する技術により更に処理することも多い。
【0041】
好適な潤滑油の別の追加的又は代替的クラスには、天然ガス原料のオリゴマー化又は蝋類の異性化から生成した潤滑油ベースストックが含まれる場合もある。これらのベースストックはいくつかの方法で見られるが、一般的には、ガス‐トゥ‐リキッド(GTL)又はフィッシャー‐トロプシュベースストックとして公知である。
本開示に従った潤滑油ベースストックは、本明細書に記載の油剤/ベースストックの1種以上のブレンドであってもよく、このブレンドでは、油剤/ベースストックは類似のタイプであっても異なるタイプであってもよい。天然潤滑油と合成潤滑油とのブレンド(即ち部分的合成)は本開示で明確に企図している。
【0042】
潤滑油は、米国石油協会(API)発行の「Engine Oil Licensing and Certification System」、Industry Services Department、1996年12月、第14版、補遺1、1998年12月に規定されるように分類可能であり、ここでは油剤は以下のように分類している:
a)グループIベースストックは90%未満の飽和物及び/又は0.03%超の硫黄を含有し、粘度指数は80以上120未満である;
b)グループIIベースストックは90%以上の飽和物及び0.03%以下の硫黄を含有し、粘度指数は80以上120未満である;
c)グループIIIのベースストックは90%以上の飽和物及び0.03%以下の硫黄を含有し、粘度指数は120以上である;
d)グループIVベースストックはポリアルファオレフィン(PAO)である;
e)グループVベースストックはグループI、II、III、又はIVに含まれない他の全てのベースストック油である。
【0043】
特に、潤滑油は、鉱油又は鉱油の混合物、特に(API分類の)グループI、グループII、グループIII、及び/又はグループIVの鉱油を含んでもよく、又はそれらであってもよい。例えば、潤滑油ベースストック(例えば、グループI、グループII、グループIII、及び/又はグループIVを含む)は、潤滑剤組成物の総質量(潤滑油ベースストック成分及び任意の潤滑添加剤、並びにこの場合はブラシコポリマーを含む)の55質量%~98質量%、例えば55質量%~95質量%、55質量%~90質量%、55質量%~85質量%、60質量%~98質量%、60質量%~95質量%、60質量%~90質量%、60質量%~85質量%、65質量%~98質量%、65質量%~95質量%、65質量%~90質量%、65質量%~85質量%、70質量%~98質量%、70質量%~95質量%、70質量%~90質量%、70質量%~85質量%、75質量%~98質量%、75質量%~95質量%、75質量%~90質量%、75質量%~85質量%、80質量%~98質量%、80質量%~95質量%、80質量%~90質量%、又は80質量%~85質量%を構成してもよい。
【0044】
潤滑添加剤は1種以上の添加剤成分を含んでもよく、また(濃縮)潤滑添加剤パッケージ中に含まれてもよい。(濃縮)添加剤パッケージは通常、添加剤を潤滑剤組成物の残部と相溶させるために、若干量の潤滑油ベースストック等を含むが、本明細書での用語「添加剤」とは潤滑剤組成物中の潤滑添加剤のみを指し、一方、用語「潤滑油ベースストック」とは添加剤パッケージ中のベースストックと、大部分の相を占める潤滑剤成分としてのベースストック両方の全ベースストックを指す。追加的又は代替的に、2種以上の添加剤を添加剤パッケージとして一緒に添加してもよいが、1種以上の他の成分を潤滑油ベースストック、及び/又は潤滑剤組成物を形成するための混和物に別々に添加してもよい。
特に、潤滑添加剤は、抗酸化剤、腐食防止剤、摩耗防止添加剤、摩擦調整剤、分散剤、洗浄剤、消泡剤、極圧添加剤、流動点降下剤、任意に染料及び/又は染料安定剤、並びにシール膨潤制御剤のうちの1種以上を含むか、それらから基本的に成るか、又はそれらであってもよい。
摩耗防止添加剤は、その名が示すように、潤滑成分、例えばクランクケース及び/又はトランスミッションなどのモーター駆動部品の摩耗を低減するために使用してもよい。摩耗防止成分は、摩耗防止機能のみならず代替的に抗酸化機能をもたらすものもある。
【0045】
リンを含有する化合物は高負荷の接触金属表面に摩耗保護を提供できることが当技術分野で公知である。理論に縛られることなく、このことは潤滑された金属表面に亜リン酸「ガラス」が形成された結果であると示唆されている。
リン含有摩耗防止成分は以下の構造(I)の化合物の1種以上、特に2種以上、又は3種以上を含んでもよい:
【化3】
(I);
式中、基R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して、炭素原子数が1~18個のアルキル基、及び/又はアルキル鎖がチオエーテル結合により中断されている炭素原子数が1~18個のアルキル基を含むか、又はそれらであってもよい。ただし、基R
1、R
2、及びR
3の少なくとも一部は、アルキル鎖がチオエーテル結合により中断されている炭素原子数が1~18個のアルキル基を含むか、又はそれであってもよい。混合物は、構造(I)の化合物の3種以上、4種以上、又は5種以上を含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、基R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して、炭素原子数が4~10個のアルキル基、及び/又はアルキル鎖がチオエーテル結合により中断されている炭素原子数が4~10個のアルキル基を含むか、又はそれらであってもよい。ただし、基R1、R2、及びR3の少なくとも一部は、アルキル鎖がチオエーテル結合により中断されている炭素原子数が4~10個のアルキル基を含むか、又はそれであってもよい。
基R1、R2、及びR3がアルキル基(アルキル鎖がチオエーテル結合により中断されていない)を含む場合、そのアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、及びブチル、特にブチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
基R1、R2、及びR3が、アルキル鎖がチオエーテル結合により中断されているアルキル基を含む場合、そのアルキル基の例としては、構造‐R’‐S‐R”の基が挙げられ、式中のR’は‐(CH2)n‐であってもよく、式中のnは2~4の整数であってもよく、式中のR”は‐(CH2)m‐CH3であってもよく、式中のmは1~17、例えば3~9の整数であってもよい。
特に、構造(I)の化合物に関し、全ての構造(I)化合物の少なくとも10質量%(例えば、少なくとも20質量%、少なくとも30質量%、又は少なくとも40質量%)は、R1、R2、及びR3の少なくとも1つがアルキル基を含むか又はそのアルキル基である構造を含み、前記アルキル基は、アルキル鎖がチオエーテル結合により中断され、特に構造‐R’‐S‐R”を有しており、式中のR’は‐(CH2)n‐であってもよく、式中のnは2~4の整数であってもよく、式中のR”は‐(CH2)m‐CH3であってもよく、式中のmは1~17、例えば3~9の整数であってもよい。
【0047】
別のクラスのリン含有摩耗防止添加剤としては、1種以上のジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物が挙げられる。このような化合物は当該技術分野で公知であり、しばしばZDDPと呼ばれる。これらは公知の技術に従って、例えば、通常、1種以上のアルコール又はフェノールとP2S5との反応により最初にジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を形成し、次いで形成したDDPAを亜鉛化合物で中和することにより調製してもよい。例えば、第一級アルコールと第二級アルコールの混合物を反応させることにより、ジチオリン酸を形成してもよい。あるいは、ヒドロカルビル基が特徴的に完全に第二級であるか、又はヒドロカルビル基が特徴的に完全に第一級である場合にジチオリン酸を調製できる。亜鉛塩の形成には、塩基性又は中性の亜鉛化合物を使用してもよいが、酸化物、水酸化物、炭酸塩が一般的に使用される。市販の添加剤は、中和反応で塩基性亜鉛化合物を過剰に使用するため、亜鉛を過剰に含有することが多い。
【0048】
有利なジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、下記式で表されるようなジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性又は油分散性の塩を含むか、又はその塩であってもよい:
【化4】
式中、R
8及びR
9は、炭素原子数が1~18個(例えば、2~12個又は2~8個)の同一又は異なるヒドロカルビルラジカルであってもよく、そのヒドロカルビルラジカルの例としてはアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリル、及び脂環式ラジカルのうちの1種以上が挙げられる。例示的なヒドロカルビルラジカルは、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、イソブチル、sec‐ブチル、アミル、n‐ヘキシル、イソヘキシル、n‐オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2‐エチルヘキシル、フェニル、ベンジル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニル、及びこれらの組み合わせを含むか、又はこれらであってよいが、必ずしもこれらに限定されるものではない。油溶性及び/又は分散性を取得及び/又は維持するためには、各ジヒドロカルビルジチオリン酸リガンド(即ち、単一のR
8とR
9の対)上の炭素原子の総数は概して少なくとも約5であってもよい。従って、特にジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛はジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むか、又はジアルキルジチオリン酸亜鉛とすることが可能である。
【0049】
通常、構造(I)のリン含有摩耗防止化合物(単数又は複数)との混和形態で存在するリン非含有摩耗防止成分は、下記構造(II)の化合物の1種以上、特に2種以上を含んでもよい:
【化5】
式中、基R
4及びR
7はそれぞれ独立して炭素原子数が1~12個のアルキル基を含むか、又はそのアルキル基であってもよく、式中のR
5及びR
6はそれぞれ独立して炭素原子数が2~12個のアルキル結合を含むか、又はそのアルキル結合であってもよい。特に、R
4及びR
7はそれぞれ独立して‐(CH
2)
m‐CH
3を含むか、又は(CH
2)
m‐CH
3であってよく、式中のmは1~17、例えば3~9の整数であり、R
5及びR
6はそれぞれ独立して‐(CH
2)
n‐を含むか、又は(CH
2)
n‐であってもよく、式中のnは2~4の整数である。混合物は、構造(II)の3つ以上の化合物を含んでもよい。
特に、構造(I)の化合物と構造(II)の化合物との質量比は2:1~1:2、3:2~2:3、又は4:3~3:4であってもよい。
無灰分散剤の例としては、ポリイソブテニルコハク酸イミド、ポリイソブテニルコハク酸アミド、ポリイソブテニル置換コハク酸の混合エステル/アミド、ポリイソブテニル置換コハク酸のヒドロキシエステル、並びにヒドロカルビル置換フェノール、ホルムアルデヒド、及びポリアミンのマンニッヒ縮合生成物、更にこれらの反応生成物及び混合物が挙げられる。
【0050】
塩基性窒素含有無灰分散剤は周知の潤滑油添加剤であり、その調製方法は特許文献に広く報告されている。分散剤の例としては、ポリイソブテニル置換基が炭素原子数36個超、例えば40個超の長鎖であるポリイソブテニルコハク酸イミド及びコハク酸アミドが挙げられる。これらの材料は、ポリイソブテニル置換ジカルボン酸材料とアミン官能性を持つ分子とを反応させることにより容易に形成できる。好適なアミンの例としては、ポリアルキレンポリアミン、ヒドロキシ置換ポリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン、及びこれらの組み合わせなどのポリアミンが挙げられる。アミン官能性は、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミンなどのポリアルキレンポリアミンにより付与してもよい。1つのポリアミン分子当たりの平均窒素原子数が7を超える混合物も利用可能である。このポリアミンは一般に重質ポリアミン又はH‐PAMと呼ばれ、DowChemical社製HPA(商標)及びHPA‐X(商標)、Huntsman Chemical社製E‐100(商標)等の商品名で市販されているものもある。ヒドロキシ置換ポリアミンの例としては、N‐(2‐ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N‐(2‐ヒドロキシエチル)ピペラジン、及び/又は例えば米国特許第4,873,009号明細書に記載されているタイプのN‐ヒドロキシアルキル化アルキレンジアミンなどのN‐ヒドロキシアルキル‐アルキレンポリアミンが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリアミンの例としては、平均Mnが約200~約2500ダルトンのポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンジアミン及びトリアミンが挙げられる。このタイプの製品はJeffamine(商標)という商品名で市販されているものもある。
【0051】
当技術分野で公知のように、アミンとポリイソブテニル置換ジカルボン酸材料(好適にはアルケニルコハク酸無水物又は無水マレイン酸)との反応は、反応物を一緒に、例えば油溶液中で加熱することにより都合よく達成できる。反応温度は約100℃~約250℃、反応時間は約1時間~約10時間が典型的である場合もある。反応比はかなり可変であるが、一般に、ジカルボン酸単位の含有量は、アミン含有反応物の反応当量当たり約0.1~約1.0当量であってよい。
特に、無灰分散剤としては、ポリイソブテニルコハク酸無水物、及びテトラエチレンペンタミン又はH‐PAMなどのポリアルキレンポリアミンから形成したポリイソブテニルコハク酸イミドが挙げられる。ポリイソブテニル基は、ポリイソブテンから誘導してもよく、また約750~約5000ダルトン、例えば約900~約2500ダルトンの数平均分子量(Mn)を有してもよい。当該技術分野で公知のように、分散剤は(例えば、ホウ酸化/ホウ素化剤及び/又はリンの無機酸で)後処理してもよい。好適な例としては、例えば米国特許第3,254,025号明細書、米国特許第3,502,677号明細書、及び米国特許第4,857,214号明細書で報告されているものもある。
【0052】
カルシウム含有洗浄剤などの洗浄剤は、油剤により意図した作用部位に輸送するため、油剤中への溶解又は分散を維持できるように十分な油溶性又は油分散性を有する。カルシウム含有洗浄剤は当該技術分野で公知であり、サリチル酸、スルホン酸、カルボン酸、アルキルフェノール、硫化アルキルフェノール、及びこれら物質の混合物などの酸性物質との中性及び過塩基性カルシウム塩が挙げられる。
中性カルシウム含有洗浄剤とは、洗浄剤中に存在する(ルイス)酸性部分の量に対して化学量論的に等価な量のカルシウムを含有する洗浄剤である。従って一般的に、中性洗浄剤は通常、過塩基性洗浄剤と比較して塩基性が低い。
【0053】
例えばカルシウム洗浄剤に関し、用語「過塩基性」は、対応する(ルイス)酸成分よりも化学量論的に多量にカルシウム成分が存在することを示すために使用している。過塩基性塩を調製するために一般的に採用されている方法は、酸の鉱油溶液を化学量論的に過剰な中和剤と共に適切な温度で加熱し(この場合、カルシウム中和剤、例えば酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、硫化物、又はこれらの組み合わせと共に、約50℃の温度)、得られた生成物を濾過する工程を含む。大幅に過剰量の塩/塩基(この場合はカルシウム)の取り込みを促進する中和工程での「促進剤」の使用も同様に公知である。促進剤として有用な化合物の例としては、フェノール、ナフトール、アルキルフェノール、チオフェノール、硫化アルキルフェノール、ホルムアルデヒドとフェノール性物質との縮合生成物などのフェノール性物質;メタノール、2‐プロパノール、オクタノール、Cellosolve(商標)アルコール、Carbitol(商標)アルコール、エチレングリコール、ステアリルアルコール、及びシクロヘキシルアルコールなどのアルコール;アニリン、フェニレンジアミン、フェノチアジン、フェニル‐β‐ナフチルアミン、及びドデシルアミンなどのアミン;及びこれらの組み合わせが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。塩基性塩を調製するための特に効果的な方法は、酸性物質と過剰量のカルシウム中和剤及び少なくとも1種のアルコール促進剤とを混合し、混合物を高温、例えば60~200℃で炭酸化する工程を含む。
【0054】
本開示の潤滑剤組成物中の有用なカルシウム含有洗浄剤の例としては、フェネートカルシウム;硫化フェネートカルシウム(例えば、各芳香族基は、炭化水素溶解性を付与するために1つ以上の脂肪族基を有する);スルホン酸カルシウム(例えば、各スルホン酸部分は、芳香族核に結合しており、この芳香族核は通常、同様に炭化水素溶解性を付与するために1つ以上の脂肪族置換基を含む);サリチル酸カルシウム(例えば、芳香族部分は通常、炭化水素溶解性を付与するために1つ以上の脂肪族置換基で置換されている);加水分解したリン硫化オレフィン(例えば炭素原子数10~2000個)の、また/あるいは加水分解したリン硫化アルコール及び/又は脂肪族置換フェノール化合物(例えば炭素原子数10~2000個)のカルシウム塩;脂肪族カルボン酸及び/又は脂肪族置換脂環式カルボン酸のカルシウム塩;これらの組み合わせ及び/又は反応生成物;並びに油溶性有機酸の他の多くの類似のカルシウム塩などの物質の中性塩及び/又は過塩基性塩が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。必要であれば、2種以上の異なる酸の中性塩及び/又は過塩基性塩の混合物を使用できる(例えば、1種以上の過塩基性フェネートカルシウムと1種以上の過塩基性スルホン酸カルシウム)。
【0055】
油溶性中性及び過塩基性カルシウム洗浄剤の生成方法は当業者に周知であり、特許文献に広く報告されている。カルシウム含有洗浄剤は任意に後処理してもよく、例えばホウ酸化処理してもよい。ホウ酸化した洗浄剤の調製方法は当業者に周知であり、特許文献に広く報告されている。
抗酸化剤は酸化防止剤と呼ばれることもあり、潤滑剤組成物の酸化に対する抵抗性を高める(又は感受性を低下させる)場合もある。抗酸化剤は、過酸化物や他のフリーラジカル形成化合物などの酸化剤と結合し、修飾し、無害化することにより、例えば、酸化剤を分解するか、又は酸化の触媒もしくは促進剤を不活性化することにより作用する場合もある。酸化劣化は、使用の増加に伴う流体中のスラッジ、金属表面上のワニス状沈着物、時には粘度上昇により明らかにできる。
好適な抗酸化剤の例としては、銅含有抗酸化剤、硫黄含有抗酸化剤、芳香族アミン含有及び/又はアミド含有抗酸化剤、ヒンダードフェノール系抗酸化剤、ジチオリン酸塩及び誘導体等、並びにこれらの組み合わせ及び特定の反応生成物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。無灰(即ち、存在する場合、微量とは言えない金属原子又は汚染物質をほぼ含まないもの)であってもよい抗酸化剤もある。
腐食防止剤は金属の腐食を抑制するために使用してもよく、代替的に金属不活性化剤又は金属不動態化剤と呼ばれることも多い。代替的に抗酸化剤として特徴づけられる腐食防止剤もある。
【0056】
好適な腐食防止剤としては、窒素及び/又は硫黄含有複素環式化合物、例えばトリアゾール(例えば、ベンゾトリアゾール)、置換チアジアゾール、イミダゾール、チアゾール、テトラゾール、ヒドロキシキノリン、オキサゾリン、イミダゾリン、チオフェン、インドール、インダゾール、キノリン、ベンゾオキサジン、ジチオール、オキサゾール、オキサトリアゾール、ピリジン、ピペラジン、トリアジン、及びこれらの1種以上の誘導体が挙げられる。特定の腐食防止剤は下記構造で表すベンゾトリアゾールである:
【化6】
式中、R
10は存在しないか、又はC
1‐C
20ヒドロカルビルもしくは置換ヒドロカルビル基であり、これは直鎖又は分枝、飽和又は不飽和であってもよい。腐食防止剤は、天然のアルキルもしくは芳香族であるか、また/あるいはN、O、又はSなどのヘテロ原子を含む環構造を有してもよい。好適な化合物の例としては、ベンゾトリアゾール、アルキル置換ベンゾトリアゾール(例えば、トリルトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、オクチルベンゾトリアゾール等)、アリール置換ベンゾトリアゾール、アルカリル置換又はアラルキル置換ベンゾトリアゾール等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、トリアゾールは、アルキル基の炭素原子数が1~約20個、又は1~約8個のベンゾトリアゾール及び/又はアルキルベンゾトリアゾールを含むか、又はそれらであってもよい。好ましい腐食防止剤は、ベンゾトリアゾール及び/又はトリルトリアゾールを含むか、又はそれらであってもよい。
【0057】
追加的又は代替的に、腐食防止剤は、下記構造で表す置換チアジアゾールを含んでもよい:
【化7】
式中、R
11及びR
12はそれぞれ独立して水素又は炭化水素基であり、この基は、環式、脂環式、アラルキル、アリール、及びアルカリールなどの脂肪族又は芳香族であってもよい。これらの置換チアジアゾールは、2,5‐ジメルカプト‐1,3,4‐チアジアゾール(DMTD)分子から誘導する。DMTDの多くの誘導体が当該技術分野で報告されており、このような化合物はいずれも本開示で使用するトランスミッション液に添加してもよい。例えば、米国特許第2,719,125号明細書、米国特許第2,719,126号明細書、及び米国特許第3,087,937号明細書には、様々な2,5‐ビス‐(炭化水素ジチオ)‐1,3,4‐チアジアゾールの調製が記載されている。
【0058】
更に追加的又は代替的に、腐食防止剤は、カルボン酸エステルなどのDMTDの1種以上の他の誘導体を含んでもよく、その誘導体中、R9及びR10はカルボニル基を介して硫化物の硫黄原子に結合してもよい。これらのチオエステル含有DMTD誘導体の調製は、例えば米国特許第2,760,933号明細書に記載されている。例えば米国特許第2,836,564号明細書には、DMTDと、炭素原子数が少なくとも10個のα‐ハロゲン化脂肪族モノカルボンカルボン酸との縮合により生成したDMTD誘導体が記載されている。この方法により、R11及びR12がHOOC‐CH(R13)‐(R13はヒドロカルビル基である)であるDMTD誘導体が生成される。これらの末端カルボン酸基のアミド化又はエステル化により更に生成したDMTD誘導体も有用である。
2‐ヒドロカルビルジチオ‐5‐メルカプト‐1,3,4‐チアジアゾールの調製は、例えば米国特許第3,663,561号明細書に記載されている。
【0059】
DMTD誘導体の特定のクラスには、2‐ヒドロカルビルジチオ‐5‐メルカプト‐1,3,4‐チアジアゾールと2,5‐ビス‐ヒドロカルビルジチオ‐1,3,4‐チアジアゾールとの混合物が含まれる場合もある。このような混合物は、HiTEC(登録商標)4313の商品名で販売されている場合もあり、Afton Chemical社から市販されている。
摩擦調整剤としては、ポリエチレンポリアミン及び/又はエトキシル化長鎖アミンの誘導体が挙げられる。ポリエチレンポリアミンの誘導体は有利にも、定義した構造のスクシンイミドを含み、又は単純なアミドである場合もある。
ポリエチレンポリアミンから誘導した好適なスクシンイミドとしては、下記構造のスクシンイミドが挙げられる:
【化8】
式中、x+yは8~15であってもよく、zは0又は1~5の整数であってもよく、特に、x+yは11~15(例えば13)であってもよく、zは1~3であってもよい。このような摩擦調整剤の調製は、例えば米国特許第5,840,663号明細書に記載されている。
【0060】
上記のスクシンイミドは、酢酸無水物と後反応させ、以下の構造(z=1)で例示する摩擦調整剤を形成してもよい:
【化9】
この摩擦調整剤の調製は、例えば米国特許出願公開第2009/0005277号明細書に見られる。他の試薬、例えばホウ酸化剤との後反応も当技術分野で公知である。
【0061】
代替的単純アミドの例は以下の構造を有してもよい:
【化10】
式中、R
14及びR
15は同一又は異なっているアルキル基であってもよい。例えば、R
14及びR
15は、直鎖又は分枝C
14‐C
20アルキル基であってもよく、mは1~5の整数とすることが可能である。特に、R
14及びR
15はいずれもイソステアリン酸から誘導してもよく、mは4であってもよい。
【0062】
好適なエトキシル化アミン摩擦調整剤は、第一級アミン及び/又はジアミンと酸化エチレンとの反応生成物を含むか、又はその反応生成物であってもよい。酸化エチレンとの反応は好適には、ほぼ全ての第一級アミン及び第二級アミンが第三級アミンに変換され得るように化学量論的に実施してもよい。このようなアミンは下記の例示的な構造を有してもよい:
【化11】
式中、R
16及びR
17は炭素原子数が約10~20個の、アルキル基、又は硫黄もしくは酸素結合を含むアルキル基であってもよい。例示的なエトキシル化アミン摩擦調整剤は、R
16及び/又はR
17の炭素原子数が16~20個、例えば16~18個である材料を含んでもよい。この種の材料は市販品であってもよく、Akzo Nobel社のEthomeen(登録商標)及びEthoduomeen(登録商標)での商品名で販売されている。Akzo Nobel社製の好適な材料としては、特にEthomeen(登録商標)T/12及びEthoduomeen(登録商標)T/13が挙げられる。
【0063】
摩擦調整剤の別の代替的なタイプには、油溶性又は油分散性のモリブデン含有化合物、例えば油溶性又は油分散性の有機モリブデン化合物が挙げられる。このような油溶性又は油分散性の有機モリブデン化合物の非限定的な例としては、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントゲン酸モリブデン、硫化モリブデン等、及びこれらの混合物、特にジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、アルキルキサントゲン酸モリブデン、及びアルキルチオキサントゲン酸モリブデンが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。代表的なアルキルキサントゲン酸モリブデン化合物及びアルキルチオキサントゲン酸モリブデン化合物は、それぞれMo(R18OCS2)4及びMo(R18SCS2)4の式を用いて表してもよい。式中の各R18は独立して、一般に炭素原子数が1~30個又は2~12個のアルキル、アリール、アラルキル、及びアルコキシアルキルから選択される有機基、特に炭素原子数が2~12個のアルキル基であってもよい。
【0064】
特定の実施形態では、油溶性又は油分散性の有機モリブデン化合物は、ジチオカルバミン酸モリブデン、例えばジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンを含んでもよく、及び/又はジチオリン酸モリブデン、特にジアルキルジチオリン酸モリブデンをほぼ含まなくてもよい。特定の他の実施形態では、任意の油溶性又は油分散性のモリブデン化合物を、潤滑剤組成物中のモリブデン原子の唯一の供給源(単数又は複数)として、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンなどのジチオカルバミン酸モリブデン、及び/又はジアルキルジチオリン酸モリブデンなどのジチオリン酸モリブデンから構成してもよい。実施形態のいずれの組み合わせにおいても、油溶性又は油分散性モリブデン化合物は、潤滑剤組成物中のモリブデン原子の唯一の供給源としてジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンなどのジチオカルバミン酸モリブデンから基本的に構成してもよい。
モリブデン化合物は、単核、二核、三核、又は四核であってもよく、特に二核及び/又は三核モリブデン化合物を含むか、又はそれらであってもよい。
【0065】
好適な二核又は二量体ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンは、例えば以下の式で表せる:
【化12】
式中、R
21~R
24はそれぞれ独立して、炭素原子数が1~24個の直鎖、分岐、又は芳香族のヒドロカルビル基を表してもよく、X
1~X
4はそれぞれ独立して、酸素原子又は硫黄原子を表してもよい。4つのヒドロカルビル基、R
21~R
24は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0066】
好適な三核有機モリブデン化合物としては、式:Mo3SkLnQzを有する化合物、及びその混合物が挙げられる。このような三核の式において、3個のモリブデン原子は複数の硫黄原子(S)に結合してもよく、kは4~7に可変である。また、各Lは、化合物を油溶性又は油分散性に変換するために十分な数の炭素原子を有する独立して選択された有機リガンドであってもよく、nは1~4である。更に、zがゼロでない場合、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及び/又はエーテルなどの中性電子供与性化合物の群から選択してもよく、zは0~5の範囲であり、非化学量論的(非整数)値を含む。
このような三核の式では、全てのリガンド(Ln)の組み合わせの中で、典型的に少なくとも合計21個の炭素原子(例えば、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個)が存在する場合があるが、それらリガンドの有機基は有利にも、集合的に化合物を油溶性又は油分散性に変換するために十分な数の炭素原子を有する場合もある。例えば、各リガンドL内の炭素原子数は一般に、1~100個、例えば1~30個又は4~20個の範囲であってもよい。
【0067】
式Mo
3S
kL
nQ
zを有する三核モリブデン化合物は有利にも、以下の構造の一方又は両方に表されるような、アニオン性リガンドに囲まれたカチオン性コアを示す場合がある:
【化13】
このようなカチオン性コアはそれぞれ+4の正味電荷を有する場合もある(例えば、Mo原子の酸化状態がそれぞれ+4であることに起因する)。従って、これらのコアを可溶化するためには、全リガンド間の合計電荷が一致する必要があり、この場合は-4である。4個のモノアニオン性リガンドはコアの中和に利点をもたらす可能性がある。いかなる理論にも縛られる意図なく、2つ以上の三核コアが1つ以上のリガンドにより結合又は相互連結し、リガンドは多座配位性になる場合があると考えられる。これは、単一のコアに複数の結合を有する多座配位性リガンドの場合を含む。酸素及び/又はセレンは、いずれかのコアの硫黄原子の一部と置換してもよい。
【0068】
上述の三核コアのリガンドの非限定的な例としては、必ずしも限定されるものではないが、ジアルキルジチオリン酸塩などのジチオリン酸塩、アルキルキサントゲン酸塩及び/又はアルキルチオキサントゲン酸塩などのキサントゲン酸塩、ジアルキルジチオカルバミン酸塩などのジチオカルバミン酸塩、並びにこれらの組み合わせが挙げられ、特に各々がジアルキルジチオカルバミン酸塩を含むか、又はジアルキルジチオカルバミン酸塩である。追加的又は代替的に、三核モリブデン含有コアのリガンドはそれぞれ独立して、下記式の1種以上であってもよい:
【化14】
式中、X
5、X
6、X
7、及びYはそれぞれ独立して酸素又は硫黄であり、Zは窒素又はホウ素であり、R
25、R
26、R
27、R
28、R
29、R
30、及びR
31はそれぞれ独立して水素、又はヒドロカルビル基などの有機(炭素含有)部分であり、これらは互いに同一であっても異なっていてもよく、特に同一であってもよい。例示的な有機部分としては、アルキル(例えば、リガンドの残りの部分に結合した炭素原子が第一級又は第二級である)、アリール、置換アリール、アルカリル、置換アルカリル、アラルキル、置換アラルキル、エーテル、チオエーテル、又はこれらの組み合わせもしくは反応生成物、特にアルキルを含むか、又はこれらであってもよい。
【0069】
油溶性又は油分散性の三核モリブデン化合物は、(NH4)2Mo3S13
●n(H2O)(式中のnは非化学量論的(非整数)値を含めて0~2の範囲で可変である)などのモリブデン源と、二硫化テトラアルキルチウラムなどの好適なリガンド源とを適当な液体(単数又は複数)/溶媒(単数又は複数)中で反応させることにより調製可能である。他の油溶性又は油分散性の三核モリブデン化合物は、適当な溶媒(単数又は複数)中での、(NH4)2Mo3S13
●n(H2O)などのモリブデン源と、二硫化テトラアルキルチウラム、ジチオカルバミン酸ジアルキル、又はジチオリン酸ジアルキルなどのリガンド源と、シアン化物イオン、亜硫酸イオン、又は置換ホスフィンなどの硫黄抽出剤との反応中に形成可能である。あるいは、[M’]2[Mo3S7A6](式中、M’は対イオンであり、AはCl、Br、又はIなどのハロゲンである)などの三核モリブデン‐硫黄ハロゲン化物塩は、適当な液体/溶媒(系)中で、ジアルキルジチオカルバミン酸塩又はジアルキルジチオリン酸塩などのリガンド源と反応させて、油溶性又は油分散性の三核モリブデン化合物を形成してもよい。適当な液体/溶媒(系)は例えば、水性又は有機系であってよい。
【0070】
他のモリブデン前駆体としては、酸性モリブデン化合物が挙げられる。このような化合物は、米国材料試験協会規格(ASTM)D‐664又はD‐2896滴定手順で測定すると塩基性窒素化合物と反応する場合もあり、典型的には6価である場合もある。例としては、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、及び他のモリブデン酸アルカリ金属、並びに他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデン、もしくは類似の酸性モリブデン化合物、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。従って、追加的又は代替的に、本開示の組成物には、例えば、米国特許第4,263,152号明細書、米国特許第4,285,822号明細書、米国特許第4,283,295号明細書、米国特許第4,272,387号明細書、米国特許第4,265,773号明細書、米国特許第4,261,843号明細書、米国特許第4,259,195号明細書、及び米国特許第4,259,194号明細書、並びに/又はPCT公開第WO94/06897号に記載されているような塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によりモリブデンを提供できる。
消泡剤、シール膨潤制御剤、極圧添加剤、流動点降下剤、他の粘度調整剤、任意に染料及び染料安定剤等の当該技術分野で公知の他の添加剤を任意に潤滑剤組成物に添加してもよい。これらは典型的に、例えば、C.V.Smallheer及びR.Kennedy Smith著「Lubricant Additives」、1967年、pp.1‐11に開示されている。
【0071】
更なる実施形態
追加的又は代替的に、本開示は以下の実施形態のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0072】
実施形態1
コポリマー骨格及びコポリマーブラシアームを含むブラシコポリマー組成物であって:
前記コポリマーブラシアームは下記式(1)及び(2)の少なくとも2つの異なるアシル化ポリ(アルキレンアミン)のモノマー繰り返し単位を含み:
【化15】
式中、各R
5は個々に、水素、又は直鎖もしくは分枝C
1‐C
24アルキル部分であり;各R
6は、炭素原子数が各R
5と同一であるか又はR
5より多いが、各R
5とは異なっており、個々に、直鎖もしくは分枝C
8‐C
24アルキル部分であり;y及びzはそれぞれ1又は2であり;m+nの合計は、コポリマーブラシアームの平均重合度の90モル%~100モル%であり;
コポリマー骨格は下記式(3)及び(4)の少なくとも2つの異なるアクリレートモノマーのモノマー繰り返し単位を含み:
【化16】
式中、各R
1及びR
3は個々に水素、直鎖もしくは分枝C
1‐C
4アルキル部分、又はこれらの混合物であり;各R
2は個々に、共有結合コポリマーブラシアーム、残留水素、置換基がそれぞれ個々に、直鎖状、分枝状、及び/又は環状C
1‐C
8アルキル、アリール、アルカリル、もしくはアラルキル部分である残留三置換シリル基、残留直鎖状、環状、もしくは分枝状C
1‐C
7アシル部分、残留直鎖もしくは分枝C
1‐C
4ヒドロキシアルキル部分、又は残留一価対イオンであり;各R
4は個々に、直鎖状、分岐状、及び/又は環状C
8‐C
30アルキル、アリール、アルカリル、又はアラルキル部分であり;a+bの合計は、コポリマー骨格の平均重合度の90モル%~100モル%である
ブラシコポリマー組成物。
【0073】
実施形態2
前記ブラシコポリマー組成物は約100℃における動粘度(KV100)が約4cStであるグループIIIのベースストック中で、約5mg/mLの濃度で上限臨界溶液温度(UCST)挙動を示す、実施形態1に記載のブラシコポリマー組成物。
【0074】
実施形態3
前記UCST挙動は、示差走査熱量計(DSC)において、反復加熱冷却サイクルの第2冷却又は第3冷却中に、約1℃/分の冷却速度で、約80.0℃未満にピーク中心がある一次発熱転移として現れる、実施形態2に記載のブラシコポリマー組成物。
【0075】
実施形態4
前記コポリマーブラシアームは、約100℃における動粘度(KV100)が約4cStであるグループIIIのベースストック中で、約5mg/mLの濃度で上限臨界溶液温度(UCST)挙動を示す、実施形態1に記載のブラシコポリマー組成物。
【0076】
実施形態5
前記UCST挙動は、示差走査熱量計(DSC)において、反復加熱冷却サイクルの第2冷却又は第3冷却中に、約1℃/分の冷却速度で、約80.0℃未満にピーク中心がある一次発熱転移として現れる、実施形態4に記載のブラシコポリマー組成物。
【0077】
実施形態6
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準に対して約40℃で、溶離液として約2%のトリエチルアミン(TEA)を含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行うことにより測定したブラシコポリマー組成物の多分散度は1.60未満である、実施形態1に記載のブラシコポリマー組成物。
【0078】
実施形態7
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準に対して約40℃で、溶離液として約2%のトリエチルアミン(TEA)を含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行うことにより測定した、コポリマー骨格、コポリマーブラシアーム、又はその両方の多分散度は1.60未満である、実施形態1に記載のブラシコポリマー組成物。
【0079】
実施形態8
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準に対して約40℃で、溶離液として約2%のTEAを含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行うことにより測定したブラシコポリマー組成物の数平均分子量は30,000g/モル~100,000g/モルである、実施形態1に記載のブラシコポリマー組成物。
【0080】
実施形態9
各R5は個々に直鎖又は分枝C2‐C18アルキル又はアルケニル部分であり;
各R6は個々に直鎖C8‐C20アルキル部分であり;
各R1及びR3は個々に水素又はメチルであり;
各R2は個々に共有結合コポリマーブラシアーム、残留水素、又は残留直鎖もしくは分岐C1‐C4ヒドロキシアルキル部分であり;
各R4は個々に直鎖又は分枝C8‐C24アルキル部分であり;
y及びzはそれぞれ1である
実施形態1に記載のブラシコポリマー組成物。
【0081】
実施形態10
R2基の少なくとも50モル%は共有結合コポリマーブラシアームである、実施形態1に記載のブラシコポリマー組成物。
【0082】
実施形態11
下記条件のうち1つ以上:
比a:bは1:14~1:2である;
比m:nは1:25~2:1である;
a+bの合計は250以下である;及び
m+nの合計は75以下である
を満たす実施形態1に記載のブラシコポリマー組成物。
【0083】
実施形態12
コポリマー骨格及びコポリマーブラシアームを含むブラシコポリマー組成物であって:
前記コポリマーブラシアームは、約100℃における動粘度(KV100)が約4cStであるグループIIIのベースストック中で、約5mg/mLの濃度で上限臨界溶液温度(UCST)挙動を示し、下記式(1)及び(2)の少なくとも2つの異なるアシル化ポリ(アルキレンアミン)のモノマー繰り返し単位を含み:
【化17】
式中、各R
5は個々に、水素、又は直鎖もしくは分枝C
1‐C
24アルキル部分であり;各R
6は、炭素原子数が各R
5と同一であるか又はR
5より多いが、各R
5とは異なっており、個々に、直鎖もしくは分枝C
8‐C
24アルキル部分であり;y及びzはそれぞれ1又は2であり;
コポリマー骨格は下記式(3)及び(4)の少なくとも2つの異なるアクリレートモノマーのモノマー繰り返し単位を含み:
【化18】
式中、各R
1及びR
3は個々に水素、直鎖もしくは分枝C
1‐C
4アルキル部分、又はこれらの混合物であり;各R
2は個々に、共有結合コポリマーブラシアーム、残留水素、置換基が個々に直鎖状、分枝状、及び/又は環状C
1‐C
8アルキル、アリール、アルカリル、もしくはアラルキル部分である残留三置換シリル基、残留直鎖状、環状、もしくは分枝状C
1‐C
7アシル部分、残留直鎖もしくは分枝C
1‐C
4ヒドロキシアルキル部分、又は残留一価対イオンであり;各R
4は個々に、直鎖もしくは分岐C
8‐C
30アルキル、アリール、アルカリル、又はアラルキル部分であり、
前記ブラシコポリマー組成物は、約100℃における動粘度(KV100)が約4cStであるグループIIIのベースストック中で、約5mg/mLの濃度で上限臨界溶液温度(UCST)挙動も示す、
ブラシコポリマー組成物。
【0084】
実施形態13
前記コポリマーブラシアーム及び前記ブラシコポリマー組成物のいずれか一方又は両方の前記UCST挙動は、示差走査熱量計(DSC)において、反復加熱冷却サイクルの第2冷却又は第3冷却中に、約1℃/分の冷却速度で、約80.0℃未満にピーク中心がある一次発熱転移として現れる、実施形態12に記載のブラシコポリマー組成物。
【0085】
実施形態14
下記条件のうち5つ以上:
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準に対して約40℃で、溶離液として約2%のTEAを含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行うことにより測定したブラシコポリマー組成物の数平均分子量は30,000g/モル~100,000g/モルである;
各R5は個々に直鎖又は分枝C2‐C18アルキル部分であり;各R6は個々に直鎖C8‐C20アルキル部分であり;各R1及びR3は個々に水素又はメチルであり;各R4は個々に直鎖又は分枝C8‐C24アルキル部分であり;y及びzはそれぞれ1であり;各R2は個々に、共有結合コポリマーブラシアーム、残留水素、又は残留直鎖もしくは分枝C1‐C4ヒドロキシアルキル部分であり、R2基の少なくとも70モル%は共有結合コポリマーブラシアームである;
m+nの合計はコポリマーブラシアームの平均重合度の90モル%~100モル%である;
比m:nは1:25~2:1である;
a+bの合計はコポリマー骨格の平均重合度の90モル%~100モル%である;
比a:bは1:14~1:2である;
a+bの合計は250以下である;及び
m+nの合計は75以下である:
を満たす、実施形態12に記載のブラシコポリマー組成物。
【0086】
実施形態15
コポリマー骨格及びコポリマーブラシアームを含むブラシコポリマー組成物を形成する方法であって、以下の工程:
下記式(3)及び(4)の少なくとも2つの異なるアクリレートモノマーのモノマー繰り返し単位を含むコポリマー骨格を提供する工程であって:
【化19】
式中、各R
1及びR
3は個々に、水素、直鎖もしくは分枝C
1‐C
4アルキル部分、又はこれらの混合物であり;各R
2は個々に水素、置換基が個々に直鎖状、分枝状、及び/又は環状C
1‐C
8アルキル、アリール、アルカリル、もしくはアラルキル部分、直鎖状、環状、もしくは分枝状C
1‐C
7アシル部分、直鎖もしくは分枝C
1‐C
4ヒドロキシアルキル部分である三置換シリル基、又は一価対イオンであり;各R
4は個々に、直鎖又は分岐C
8‐C
30アルキル、アリール、アルカリル、又はアラルキル部分である、工程;
下記式(1)及び(2)の少なくとも2つの異なるアシル化ポリ(アルキレンアミン)のモノマー繰り返し単位を含むコポリマーブラシアームを提供する工程であって:
【化20】
式中、各R
5は個々に、水素、又は直鎖もしくは分枝C
1‐C
24アルキル部分であり;各R
6は、炭素原子数が各R
5と同一であるか又はR
5より多いが、各R
5とは異なっており、個々に、直鎖もしくは分枝C
8‐C
24アルキル部分であり;y及びzはそれぞれ1又は2であり、この工程では;
コポリマーブラシアームは、窒素原子及び酸素原子を含有する複素環式モノマーを使用するカチオン開環重合(CROP)法により形成し、ここでは、付加鎖端は、安定化した複素環式カチオンで終了する、工程;並びに
コポリマーブラシアームをコポリマー骨格にグラフトする工程であって;
R
2の除去及び/又はカルボキシレートアニオンの形成により、コポリマー骨格中の式(3)のアクリレートモノマー繰り返し単位を活性化すること;並びに
コポリマーブラシアーム中の安定化した複素環式カチオンを式(3)の活性化繰り返し単位にカップリングすることによりコポリマーブラシアームをコポリマー骨格上に効果的にグラフトし、それによりブラシコポリマー組成物を形成すること
により行う工程
を含む方法。
【0087】
実施形態16
前記コポリマー骨格は可逆的不活性化ラジカル重合(RDRP)法により形成する、実施形態15に記載の方法。
【0088】
実施形態17
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準に対して約40℃で、溶離液として約2%のTEAを含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行うことにより測定したブラシコポリマー組成物の多分散度は1.60未満である、実施形態15に記載の方法。
【0089】
実施形態18
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準に対して約40℃で、溶離液として約2%のTEAを含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行うことにより測定した、コポリマー骨格、コポリマーブラシアーム、又はその両方の多分散度は1.60未満である、実施形態15に記載の方法。
【0090】
実施形態19
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)標準に対して約40℃で、溶離液として2%のTEAを含有するテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を行うことにより測定したブラシコポリマー組成物の数平均分子量は30,000g/モル~100,000g/モルである、実施形態15に記載の方法。
【0091】
実施形態20
実施形態15に記載の方法では、
各R5は個々に直鎖又は分枝C2‐C18アルキル部分であり;
各R6は個々に直鎖C8‐C20アルキル部分であり;
各R1及びR3は個々に水素又はメチルであり;
各R2は個々に共有結合コポリマーブラシアーム、残留水素、又は残留直鎖もしくは分岐C1‐C4ヒドロキシアルキル部分であり;
各R4は個々に直鎖又は分枝C8‐C24アルキル部分であり;
y及びzはそれぞれ1である
実施形態15に記載の方法。
【0092】
実施形態21
前記グラフト工程は、R2基の少なくとも60モル%が共有結合したコポリマーブラシアームとなるように制御する、実施形態15に記載の方法。
【0093】
実施形態22
下記条件のうち1つ以上:
m+nの合計はコポリマーブラシアームの平均重合度の90モル%~100モル%である;
比m:nは1:25~2:1である;
a+bの合計はコポリマー骨格の平均重合度の90モル%~100モル%である;
比a:bは1:14~1:2である;
a+bの合計は250以下である;並びに
m+nの合計は75以下である:
を満たす、実施形態15に記載の方法。
【0094】
実施形態23
潤滑剤組成物であって、以下:
少なくとも70質量%の1種以上の潤滑油ベースストック;
抗酸化剤、腐食防止剤、摩耗防止添加剤、摩擦調整剤、分散剤、洗浄剤、消泡剤、極圧添加剤、流動点降下剤、シール膨潤制御剤、又はこれらの組み合わせを含む最大25質量%の少なくとも1種の潤滑添加剤;及び
0.5質量%~12質量%の実施形態1に従ったブラシコポリマー組成物
を含む潤滑剤組成物。
【0095】
実施形態24
潤滑剤組成物であって、以下:
少なくとも70質量%の1種以上の潤滑油ベースストック;
抗酸化剤、腐食防止剤、摩耗防止添加剤、摩擦調整剤、分散剤、洗浄剤、消泡剤、極圧添加剤、流動点降下剤、シール膨潤制御剤、又はこれらの組み合わせを含む最大25質量%の少なくとも1種の潤滑添加剤;及び
0.5質量%~12質量%の実施形態12に従ったブラシコポリマー組成物
を含む潤滑剤組成物。
【0096】
実施形態25
潤滑剤組成物であって、以下:
少なくとも70質量%の1種以上の潤滑油ベースストック;
抗酸化剤、腐食防止剤、摩耗防止添加剤、摩擦調整剤、分散剤、洗浄剤、消泡剤、極圧添加剤、流動点降下剤、シール膨潤制御剤、又はこれらの組み合わせを含む最大25質量%の少なくとも1種の潤滑添加剤;及び
0.5質量%~12質量%の実施形態15の方法に従って形成したブラシコポリマー組成物であって、約100℃における動粘度(KV100)が約4cStであるグループIIIのベースストック中で、約5mg/mLの濃度で上限臨界溶液温度(UCST)挙動を示すブラシコポリマー組成物
を含む潤滑剤組成物。
【0097】
実施形態26
前記ブラシコポリマー組成物のUCST挙動は、示差走査熱量計(DSC)において、反復加熱冷却サイクルの第2冷却又は第3冷却中に、約1℃/分の冷却速度で、約85.0℃未満にピーク中心がある一次発熱転移として現れる、実施形態25に記載の潤滑組成物。
次に、本発明を非限定的な例としてのみ説明する。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明するが、この説明により何ら制限を課す意図はない。
【0099】
材料
2‐エチル‐2‐オキサゾリン(EtOx、99+%、ベルギー、GeelのAcros Organics社製)を、使用前に水素化カルシウムで乾燥させ、窒素雰囲気下で蒸留した。トシル酸メチル(MeTos、98%、米国ミズーリ州セントルイスのSigma Aldrich社製)を窒素雰囲気下、減圧して蒸留して保存した。トリエチルアミン(TEA、≧99%、Sigma Aldrich社製)を窒素雰囲気下で蒸留して保存した。使用したAcros Organics社製の超乾燥溶媒ジクロロメタン(99.8%)及びクロロベンゼン(99.8%)を不活性雰囲気下、分子篩上で保存した。Acros Organics社製チタン(IV)n‐ブトキシド(99%)、エタノールアミン、及び3‐アミノ‐1‐プロパノール(99%)は入手したまま使用した。富士フイルムワコーケミカルズ社製の開始剤V‐601は入手したまま使用した。モノマーであるメタクリル酸(MAA、99%、Sigma Aldrich社製)、2‐エチルヘキシルメタクリレート(EHMA、99%、Acros Organics社製)、及び移動剤である2‐シアノ‐2‐プロピルベンゾジチオエート(CPBD、>97%、Sigma Aldrich社製)は入手したまま使用した。Sigma Aldrich社製ナトリウムメトキシド(NaOMe、95%)及びステアリン酸(95%)は入手したまま使用した。ジメチルホルムアミド(DMF、≧99%)は米国ペンシルバニア州ピッツバーグのFisher Chemical社製である。
【0100】
他のアクリレートモノマー及びマクロモノマーは市販品として入手可能であるか、又は全体又は一部を合成することが可能であり、例えば、2‐ヘプタデシル‐2‐オキサゾリン(ステアリルオキサゾリン又はSteOx)は市販品として入手可能であるか、又は以下のレシピに従って形成可能である。
【0101】
モノマー合成 ‐ 実施例1
ステアリン酸(約1.00当量を、磁気攪拌子を備えた500mL丸底フラスコ中でMeOH(約30当量)に溶解した。次いで、硫酸(約0.007当量)を添加し、反応混合物を還流下、約85℃で一晩(約8~18時間)撹拌した。その後、温度を下げ、室温(約20~25℃)になるまで還流を維持した。ガスの放出が観察されなくなるまで、NaHCO3をゆっくりと添加した。溶媒を真空除去し、得られたステアリン酸メチルをそのまま使用した。その後、エタノールアミン(約4当量)、及びナトリウムメトキシド(約3モル%)を丸底フラスコに添加し、そのフラスコを油浴に設置し、最大約120℃で一晩加熱した。アミノ化の完了後、反応混合物を約90℃まで冷却し、減圧下、約90~160℃で蒸留した。約160℃に達したら、溶液をこの温度で約15分間維持し、その後、チタン(IV)n‐ブトキシド(約0.14当量)を添加した。次いで反応混合物を減圧下、約160℃で一晩撹拌した。粗混合物を減圧下、約250℃を超える温度で蒸留して2‐オキサゾリンを得た。薄黄色の固体を約50~65%の収率で得た。例示的データ:1H NMR(約300MHz,CDCl3),δ(ppm):約0.74‐0.85(m,3H,CH2CH3),約1.11‐1.31(m,28H,CH2アルキル鎖),約1.48‐1.60(m,2H,CCH2CH2),約2.19(t,2H,CCH2CH2),約3.75(t,2H,CH2CH2O),約4.14(t,2H,NCH2CH2).
【0102】
特性評価
プロトン核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルはBruker社製Avance III HD 300MHz及びHD 400MHz装置で記録した。溶媒として重水素化クロロホルム(CDCl3)を用い、約7.26ppmでの残留プロトン化クロロホルム(CHCl3)のシグナルを化学シフトδの基準とした。データ分析はTopSpin 3.2ソフトウェアを用いて行った。
【0103】
ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)測定は、試料の溶解度に応じて下記2種類の異なる溶離液を用いて行った。
(i)約2%(v/v)のTEA(トリメチルアミン)を含むテトラヒドロフラン(THF)。Agilent Technologies社製1260 Infinity(商標)装置には、屈折率計(RI)、約308nmUV検出器、PLgel(商標)約5μmガードカラム、及びPLgel(商標)約5μm混合Dカラム(約300×約7.5mm)が備えられていた。別段に指定のない限り、試料は約1mL/分、約40℃で流した。較正には、ポリ(メチルメタクリレート)標準(Agilent Technologies社製PMMA較正キット、M‐M‐10及びM‐L‐10)を使用した。注入(約100μL)前に、試料を孔径約0.2μLのPTFE膜で濾過した。
(ii)約2%(v/v)のTEAを含むクロロホルム(CHCl3)。Agilent Technologies社製Infinity II(商標)MDS装置には、示差屈折率計(DRI)、粘度計(VS)、二重角度光散乱計(LS)、及び多波長UV検出器が備えられていた。そのシステムには、2xPLgel(商標)Mixed Cカラム(約300×約7.5mm)及びPLgel(商標)約5μmガードカラムが備えられていた。試料は約1mL/分、約30℃で流した。較正には、ポリ(メチルメタクリレート)及びポリスチレン標準(Agilent Technologies社製EasiVials(商標))を使用した。流速マーカーとしてエタノールを添加した。注入(約100μL)前に、試料を孔径約0.22μmのGVHP膜で濾過した。どちらの場合も、実験モル質量、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び多分散度(Mw/Mn)は、Agilent Technologies社製GPC/SECソフトウェアを用いた従来の較正により決定した(OriginPro(商標)2019b Academicソフトウェアを用いてプロットを作成した)。
【0104】
各試料の転移温度を決定するための濁度分析は、Agilent Technologies社製Cary温度制御装置及びAgilent Technologies社製6×6マルチセルブロックペルチェを備えたAgilent Technologies社製Cary 100 UV‐Vis分光光度計を用いて実施した。測定は、YuBase(商標)4希釈液/ベースストック(韓国、SK社製)中、各ポリマーの約5mg/mL溶液を満たしたSuprasil(登録商標)石英キュベット(100‐QS、光路≒10mm、ドイツJenaのHellma社製)を使用して行った。各試料について、約15℃~約85℃の間で2回の加熱/冷却サイクルを、λ≒600nmで、約1℃/分の温度勾配で行った。全データは、Cary WinUV(商標)ソフトウェアを用いて記録し、OriginPro(商標)2019b(Academic)ソフトウェアを用いて精緻化した。報告の転移温度は、2回目の加熱サイクル及び/又は2回目の冷却サイクル(1回目の加熱サイクルは、結果を歪める傾向がある熱履歴を排除するように設計してある)の約50%透過率で測定/計算したものである。
【0105】
熱重量分析(TGA)は、オートサンプラーを備えたMettler‐Toledo社製の装置を用い、約50mL/分の気流下、約1℃/分の昇温速度、約25℃~約550℃で行った。試料(各約5~20mg)をアルミニウムパンを用いて調製した。データをMettler‐Toledo STARe(商標)ソフトウェアを用いて分析した(OriginPro(商標)2019b Academicソフトウェアを用いてプロットを作成した)。
示差走査熱量測定(DSC)分析を利用し、オートサンプラーを備えたMettler‐Toledo社製DSC1(商標)を用い、約50mL/分の流速、約-80℃~約150℃で熱転移を測定した。加熱/冷却速度は、1回目のサイクルでは約60℃/分(その後の計算には利用せず)とし、その後の2回の加熱/冷却サイクルでは約1℃/分とした。試料(各約5~20mg)をアルミパンを用いて調製した。データをMettler‐Toledo STARe(商標)ソフトウェアを用いて分析した(OriginPro(商標)2019b Academicソフトウェアを用いてプロットを作成した)。報告の熱転移温度は、利用可能であれば、ピーク最大値又は最小値(例えば、発熱の一覧(tabulation)に応じた結晶化)に対応するものである。濁度測定と同様に、報告の転移温度は、3回目(及び/又は2回目)の加熱サイクル及び/又は3回目(及び/又は2回目)の冷却サイクルでのものである(1回目の加熱サイクルは、結果を歪める傾向がある熱履歴を排除するように設計してある)。
【0106】
ブラシアームコポリマー合成 ‐ 実施例2~7並びに比較例A及びB
実施例2~7のブラシアームコポリマーでは、全てのコポリマーは同じ開始剤(トシル酸メチル、又はMeTos)及びモノマー、2‐エチル‐2‐オキサゾリン(EtOx)、及び/又は2‐ヘプタデシル‐2‐オキサゾリン(SteOx)を利用しており、全て同様のモノマー:開始剤比及び他の反応条件下で合成し、反応条件の唯一の違いは、それらコモノマー自体の間の比が異なることであった。これらの実施例では、所望量のSteOx及びEtOxを、磁気攪拌子を備えたマイクロ波バイアルに移し、次いでこれを密封し、約130℃の油浴に浸漬した。反応混合物を窒素流で約30分間起泡した後、MeTos開始剤原液(乾燥クロロベンゼン中約49mg/mL)を添加した。
【0107】
【化21】
上記式における図式表現が簡略的であるにも関わらず、実施例2~7の全てのEtOx‐SteOxコポリマーは本質的にブロックコポリマーでも「ブロック状」でもないと考えられており、 ― ほぼランダムコポリマー又はそれに近いものと考えられている。この結論は、R.Hoogenboomら、「High‐Throughput Synthesis and Screening of a Library of Random and Gradient Copoly(2‐oxazoline)s」、Journal of Combinatorial Chemistry、第8号(2)、pp.145‐48の実験所見で裏付けられ、この所見では、短いアルキル鎖と長いアルキル鎖とのオキサゾリンモノマーは反応性比が比較的類似していることが見出されている。
【0108】
上記の式に関し、反応混合物中の全モノマーと開始剤とのモル比はそれぞれ約50:1であった。その後、最終コポリマー組成に応じて、ほぼ完全な変換率(少なくとも95%、好ましくは少なくとも99%)に達するように、カチオン性開環(共)重合(CROP)条件下で各反応混合物を必要な時間反応させた。MeTosを開始剤とする場合、「開始剤」末端はメチル基を構成すると考えられ、活性鎖端はコモノマーの1つのオキサゾリニウム種(ヒドロキシルなどの対アニオンと釣り合う)又は単に共有結合オキサゾリニウム対アニオン自体(例えば、ヒドロキシル基)を構成すると考えられる。
例示的なデータ:1H NMR(約300MHz,CDCl3),δ(ppm):約0.69‐0.91(m,6H,CH2CH2CH3,C(=O)OCH2CH3),約0.91‐1.32(m,28H,CH2アルキル鎖),約1.32‐1.63(m,2H,NC(=O)CH2CH2),約2.02‐2.40(m,4H,NC(=O)CH2CH2,NC(=O)CH2CH3),約3.14‐3.58(m,8H,CH2骨格)。
【0109】
比較例A及びBでは、約100%EtOx及び約100%SteOxのホモポリマーをそれぞれ、コポリマーと同様の条件下で合成した。
【表1】
表1では、SteOxモノマーとEtOxモノマーとの比を変化させ、一方で全モノマー濃度と開始剤(MeTos)濃度の比を約50:1で一定に維持した。全ての実施例及び比較例において、
1H NMRスペクトル(図示せず)により決定したモノマー変換率は>99%であった。CROP反応により、比較的低い多分散度(PDI)を特徴とする明確に定義したポリマー生成物が得られた。実施例2~7のコポリマー及び比較例AのEtOxホモポリマーについて、PMMA標準に対して、溶離液としてTHF(質量/2%TEA)を使用するGPCを行うことにより、Mn
ms及び多分散指数(PDI、又は測定したMw/Mn)を求めた。表1のアスタリスクで示すように、比較例BのSteOxホモポリマーの場合、THF中に溶解しないため、PMMAを標準としてCHCl
3(やはり約2%v/vのTEAを含む)を溶離液として使用した。表1に報告されているデータから観察できるように、使用の溶離液に関係なく、全ての実施例及び比較例において、測定/実験Mn(Mn
ms)値は理論Mn(Mn
th)値より低い。この差は、特に、GPC較正に使用した複数のPMMA標準が、溶離液間で(コ)ポリマーに対する流体力学的体積変化に差を示すと考えられることから予想された。しかし、変換の結果(
1H NMRスペクトルから得られた)及び均一に狭い多分散値は、反応条件下でのCROP反応の良好な重合制御を示している。
【0110】
実施例2~7及び比較例A~Bの熱特性を、熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)により評価した。これらの実施例及び比較例の全ポリマーの熱安定性は最大約300℃であった。DSC測定では、試料の熱履歴を排除するために、1回目の約-80℃~約150℃の高速加熱/冷却サイクルを約60℃/分で行い、その後、更に2サイクルを約1℃/分で行った。
図1は、例えば各ホモポリマー及びコポリマーの3回目の冷却サイクルのトレースを示す。観察できるように、実施例2~7及び比較例Bの各々は、測定温度の範囲内で一次発熱ピークを示す(結晶化、又は何らかのα転移を示すと推定される)ことが分かったが、比較例Aは、予想通りに測定温度の範囲内で熱転移を示さないことが分かった。発熱はα転移を示すピークとして現れるため、冷却時の結晶化(及びそれに対応する加熱時の溶解)を示唆しており、このことは測定温度範囲における上限臨界溶液温度(UCST)の挙動を示している。比較例Aの熱(α)転移挙動が無いことは、整序性にほぼ変化がないことを示し、この場合は、測定温度範囲に渡って比較的均一な溶解性を示す(あるいは、単にDSCデータから比較的均一な不溶解性を推論することもできるが、これはEtOxホモポリマーの場合ではない)。
【0111】
実施例2及び7は、他のコポリマーと比較して、SteOxホモポリマー(比較例B)に近い高熱転移温度を示すことが分かった。理論に縛られることなく、これは2つの系の全体的な整序性の増加から説明できる。一方、実施例7はEtOx量が最も少なく、SteOxを主成分とするコポリマーとなる。その結果、(ランダムに)介在するEtOx単位は、SteOx単位の長いアルキル側鎖の整序性(結晶性)を乱すほどではないことが分かり、SteOx単位は容易に整序構造に整列することが可能になり、それにより転移温度が比較例Bに近くなる。他方、実施例2は(他のコポリマーブラシの実施例と比較して)EtOxの量が最も高かったが;2つのモノマーはほぼ等モル量で共重合した。ここでも理論に縛られことなく、それらのコモノマーは類似の反応性を有すると考えられることから、それらのコモノマーは、得られたコポリマー中で交互に近接した状態になり得ると仮定でき、これにより他のコポリマーと比較して系が全体的により整序性を示す可能性がある。その結果、それらのポリマー鎖はより容易にパック状になり、整序構造を形成し、その結果、発熱温度が比較的高くなる。実施例3及び4は、比較例BのSteOxホモポリマーより低い類似の熱転移温度を示すことが分かる。理論に縛られることなく、ポリマーに沿って2つのコモノマーが不均一に分布しているため、ポリマー鎖間のパッキング動力学が複雑になり、整序領域が少なくなる可能性がある。この側面は、この中で最も低い熱転移温度を示す実施例5の場合で更に際立つ。しかし、SteOxの量を増やし、EtOxの含有量を減らすことで、更に整序性の高い系に再び向かうと、実施例6の場合に見られるように、熱転移温度が上昇することが分かる。
【0112】
希釈油/ベースストック中での実施例2~7及び比較例Bの溶解性挙動を濁度測定により評価した。(コ)ポリマーをそれぞれYubase(商標)4と混合(に溶解)し(約5mgポリマー/mL希釈剤)、次いで約15℃~約85℃で加熱/冷却サイクルに2回供し、濁度を波長約600nmで測定した。
図2は例えば、各試料の2回目の加熱サイクルの測定曲線を示す。実施例2~7及び比較例Bの全てのコポリマーは、UCSTタイプの挙動を示すことが分かった(温度が高い程、試料は希釈油に可溶であり、その結果、透過率が100%又はそれに近いかなり透明な溶液が得られることが分かる)。
【0113】
しかし、温度を下げると、透過率は低下し、ポリマー混合物(溶液)は不均一になった。理論に縛られることなく、この不均一さは、SteOx繰り返し単位の長いアルキル鎖の結晶化に起因する可能性のある凝集体の形成によるものと考えられた。しかし、全ての試料では、最低温度での透過率が0%まで下がっていないことは注目に値する。このことは、(コ)ポリマーが低温(例えば約15℃)でさえ油剤にわずかにしか溶解しないことを示唆していると考えられる。DSC分析の場合と同様に、全体的に更に整序性の高い構造を有する試料混合物/溶液(実施例2、6、及び7)は比較的高い転移温度を示すことが分かった。何故なら、高温は理論的に、他の整序性の低い結合と比較して(コ)ポリマー側鎖の結晶性を必然的に破壊するからである。(コ)ポリマー組成物中の非整序性が増加し、ひいてはコポリマー中の整序性レベルが上昇することで、濁度転移温度(約50%透過時の温度として概算)は減少し、SteOx含有量は約90%SteOx/10%EtOxまで上昇する傾向がある。実施例5のコポリマーの濁度曲線は、複雑な濁度(おそらく2つの転移温度)を示すことが分かった。理論に縛られることなく、この効果の最初の部分は、ポリマー鎖のSteOx部分の動的な脱結晶化が原因であり、第1の比較的鋭い相転移をもたらす可能性がある。しかし、更に温度を上げると、ポリマー鎖は更に熱膨張し、低い整序性又は低い結晶性の構造体が可溶化する。これは第2の比較的広い転移が生じたことの根拠となる。実施例2~7及び比較例Bでは、下記表2は、2回目の加熱(T
UV
turb,heat)及び2回目の冷却(T
UV
turb,cool)サイクル中に測定した濁度転移温度(約50%の透過率で計算)、並びにDSC分析における3回目の冷却段階中に測定した熱転移温度(T
DSC
th,cool)を示している。観察されるように、データは比較的良好に一致しており、各(コ)ポリマーのα転移(ピーク発熱)温度と、Yubase(商標)4の相転移発生(UCST挙動開始)温度とが相関していることを示唆している。
【表2】
【0114】
ブラシアームコポリマーの合成 ‐ 実施例8~16及び比較例C
実施例8~16及び比較例Cのブラシアームコポリマーでは、SteOx、EtOx、2‐(15‐メチル)ヘキサデシル‐2‐オキサゾリン(イソステアリルオキサゾリン、又はisoSteOx)、及び2‐ヘプチル‐2‐オキサゾリン(HepOx)の様々な組み合わせ、並びにisoSteOx単独を使用した。全ての(共)重合に同じ開始剤(MeTos)を使用した。実施例8~9及び比較例Cでは、全モノマーと開始剤とのモル比は約25:1であり、実施例10~16では、全モノマーと開始剤とのモル比は約50:1であった。これらの実施例の各々において、所望量のモノマー(単数又は複数)を、磁気攪拌子を備えたマイクロ波バイアルに移し、次いでこれを密封し、約130℃の油浴に浸漬した。窒素流で反応混合物を30分間起泡した後、開始剤溶液(約49mg/mLのMeTosを含む乾燥クロロベンゼン)を添加した。各反応混合物を、
1H NMRで決定したモノマー変換率の報告レベルに達するように、カチオン性開環(共)重合(CROP)条件下で必要な時間(約60分)反応させた。下記表3に結果を示す。
【表3】
【0115】
希釈油/ベースストック中での実施例8~16及び比較例Cの溶解性挙動を濁度測定により評価し、その結果を下記表4に示す。(コ)ポリマーをそれぞれYubase(商標)4と混合(に溶解)し(約5mgポリマー/mL希釈剤)、次いで約15℃~約85℃で加熱/冷却サイクルに2回供し、濁度を波長約600nmで測定した。上記の実施例2~7及び比較例Bと同様に、濁度転移温度は、加熱及び冷却の両サイクルにおける透過率約50%の温度として概算した。報告の数値は、各種類の2回目のサイクルのものである。また、DSCで加熱及び冷却サイクルを3回実施し、3回目の冷却サイクルのピーク発熱温度を報告する。
【表4】
【0116】
データが示すように、比較例C及び実施例9~11の(コ)ポリマーは、濁度分析温度範囲に渡ってYubase(商標)4に可溶であることが分かったが、実施例8は同じ温度範囲でYubase(商標)4に不溶であることが分かった。また、実施例12~17のコポリマーのみがUCSTタイプの挙動を示すことが分かった(温度が高い程、試料は希釈油に可溶であり、その結果、透過率が100%又はそれに近いかなり透明な溶液が得られることが分かる)。しかし、実施例14のコポリマーはUCSTタイプの挙動を示すことが分かったが、このコポリマーは試験レジームの上限温度ではYubase(商標)4に完全に溶解しなかった(測定で100%を下回る透過率レベルで裏付けられる)ため、測定の濁度転移値に誤差が生じる可能性があることに留意すべきである(表4中にアスタリスクで示している)。
【0117】
骨格コポリマーの合成 ‐ 実施例17~20
実施例17~20は、可逆的不活性化ラジカル(共)重合(RDRP)法の一種である可逆的付加断片化連鎖移動(RAFT)(共)重合法による、メタクリル酸と2‐エチルヘキシルメタクリレートとの比がそれぞれで異なるコポリマーの合成を説明している。実施例17では、メタクリル酸(約0.66mL、約7.8ミリモル、MAA)及び2‐エチルヘキシルメタクリレート(約7mL、約31.2ミリモル、EHMA)を磁気攪拌子付き丸底フラスコに移し、最終モノマー濃度が約5モル/Lになるようにジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した。約22.4mgのV‐601開始剤を含むDMF溶液、及び約86mgの2‐シアノ‐2‐プロピルベンゾジチオエート転移剤のDMF溶液をフラスコに添加した。実施例17における[MAA]:[EHMA]:[CTA]:[I]のモル比は約20:80:1:0.25であった。実施例18~20の転移剤と開始剤とのモル比は同じであったが、[MAA]:[EHMA]のモル比はそれぞれ約30:70、約40:60、及び約50:50であった。
【0118】
【化22】
上記式における図式表現が簡略的であるにも関わらず、実施例17~20の全てのMAA‐EHMAコポリマーは本質的にブロックコポリマー又は「ブロック状」ではないと考えられ、ほぼランダムなコポリマー又はそれに近いと考えられる。
【0119】
次いで、各反応混合物を窒素流で約30分間起泡した後、フラスコをシリコン製セプタムで蓋をして、油浴中で約20時間、約70℃に加熱した。メタノールへ沈殿させることによりピンク色の粉末として各コポリマーを得た。開始剤及び2‐シアノ‐2‐プロピルベンゾジチオエートとしてV‐601(ビス[2‐シアノ‐2‐プロパン酸メチルエステル]‐1,2‐ジアゼン)を用いる場合、「開始剤/CTA」末端は2‐シアノ‐2‐プロピル部分を構成し(この場合、開始剤残基でもCTA残基でも同じである)、「活性」鎖端はCTAのベンゾジチオエート部分で可逆的にキャッピングされたと考える。変換は1H NMRで決定した。例示的データ:1H NMR(約400MHz,CDCl3),δ(ppm):約0.72‐1.15(m,12H,COOHCCH3,COOCH2CCH3,CHCH2CH3,CH2CH2CH3),約1.16‐1.47(m,8H,CHCH2CH3,CHCH2CH2,CH2CH2CH2,CH2CH2CH3),約1.47‐1.64(m,1H,CH2CHCH2),約1.68‐2.26(m,4H,CH2CCOOH,CH2CCOOCH2),約3.53‐4.15(m,2H,OCH2CH).
【0120】
実施例17~20のMAA‐EHMAコポリマーのうち、EHMAとMAAとのモル比が4:1のコポリマー(実施例17)のみが、ジクロロメタン(DCM)に望ましい溶解性を有することが見出された。希釈剤/溶媒としてDCMを使用し、コポリマーポリアクリレート骨格にブラシアームコポリマーをグラフトするその後の反応を実施するので、式(4)及び(3)のアクリレートモノマーのうちEHMAとMAAとの比が少なくとも約3:1(約75/25以上)であるコモノマー系のみを選択し、更に進めた。実施例17のMAA‐EHMAコポリマーをGPCにより分析し、他のほとんどの実施例及び比較例も同様に分析し、PMMA標準に対して約40℃で、溶離液としてTHF(質量/2%v/vTEA)を用い、Mnms及び多分散指数(PDI、又は測定Mw/Mn)を得た。それに基づき、実施例17は、17500g/モルのMnms及び1.18のPDIをもたらした。実施例17のMnthは約17800g/モルと算出され、1H NMRにより決定した実施例17の変換率は>95%であった。
【0121】
ブラシコポリマーのグラフト反応 ‐ 実施例21~34、及び比較例D
実施例21~34及び比較例Dに従ったブラシコポリマーを、3工程:(1)ブラシ(コ)ポリマーアーム(ポリOx)を形成するための2‐オキサゾリンモノマー(単数又は複数)のCROP;(2)コポリマー骨格(ポリ(xMA))を形成するための(メタ)アクリレートモノマーのRAFT;及び(3)様々なブラシコポリマー組成物を形成するためのコポリマー骨格上の(メタ)アクリレートモノマーのペンダント官能基と、ブラシ(コ)ポリマーアームとのグラフトオント反応:に供した。工程(1)及び(2)は別々に行い、互いに依存しないので、工程(1)及び(2)が両方とも工程(3)(工程(1)及び(2)の両方の生成物を利用する)の前に行われる限り、工程(1)及び(2)は任意の順序で行っても、又は同時に行ってもよい。
【0122】
工程1
2‐オキサゾリンモノマーのCROPを溶液中で行った。所望量の2‐オキサゾリンモノマーを、磁気攪拌子を備えたマイクロ波バイアルに移し、次いでこれを密封し、約100℃の油浴に浸漬した。混合物を窒素流で30分間起泡した後、乾燥ジクロロメタン(DCM)を添加した。DCM中の最終モノマー濃度は約4モル/Lであった。その後、MeTos原液を添加し、反応混合物を約100℃で約35分~約4時間維持した。変換率を1H NMRで決定した。2‐オキサゾリンモノマーと開始剤とのモル比は約25:1~100:1の範囲であった。
【0123】
工程2
連鎖移動剤として2‐シアノ‐2‐プロピルベンゾジチオエート(CPBD)、開始剤としてV‐601を用い、約5MのDMF溶液中、約70℃でメタクリル酸(MAA)と2‐エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)とのRAFT重合を実施した。実施例17~20で詳述したように、2種のモノマー間の比率を変化させることにより、最終コポリマーの疎水性への影響を評価した。グラフトオント反応溶媒(ジクロロメタン)へのポリマーの溶解性を求めるために、[MAA]と[EHMA]のモル比を20:80とした(実施例17と同一)。全体の[モノマー]と[CPDB]と[V‐601]比は100:1:0.25であった(これも実施例17と同一)。モノマー変換率を1H NMRにより決定した。
【0124】
工程3
工程2で得たポリ(xMA)の乾燥DCM溶液にトリエチルアミン(TEA)を加え、これをオリゴマーオキサゾリン(コ)ポリマー鎖を含むキャップ付きマイクロ波バイアルに注射器で添加した。この(コ)ポリマー鎖は「リビング」であり、従ってオキサゾリニウム鎖端(又はその非平衡な異性体、又はその可逆性エンドキャップド形態)を含むと仮定する。ただ1つの例で、ポリ(xMA)のモル量は、MAAモノマー繰り返し単位のペンダントカルボン酸基の濃度に基づいて、2‐オキサゾリン(コ)ポリマー(リビング)鎖端の約1.4倍(約20/14モル比、又は約40%過剰)であると算出された。1つの例(実施例32)では、ポリ(xMA)のモル量は、MAAモノマー繰り返し単位のペンダントカルボン酸基の濃度に基づいて、2‐オキサゾリン(コ)ポリマー(リビング)鎖端の約2.8倍(約20/7モル比、又は約180%過剰)であると算出された。例えば、カルボン酸水素の脱プロトン化を促進して、2‐オキサゾリン(コ)ポリマー鎖端(におけるオキサゾリニウム種など)との反応をより容易にすることにより、グラフトオント反応を補助するために十分な一定量(例えば約3倍過剰のモル量)でTEAは含まれていた。工程3の混合物の濃度は約2モル/Lを目標とした。この混合物を約70℃~約120℃の範囲の温度で約1時間加熱した。得られたグラフトコポリマーを更に精製することなくGPCで分析し、分子量及びPDIに加えて、(必要に応じて)逆重畳積分、及び未反応ブラシアームとブラシコポリマーとの積分ピーク面積の比較を利用し、グラフト効率、別名ブラシ収率の計算を支援した(OriginPro 2019b Academicソフトウェアを使用)。
【0125】
【化23】
上記式における工程3の図式表現が簡略的であるにも関わらず、ブラシコポリマーの骨格とブラシアームとの両方の全ての繰り返し単位は本質的にブロックコポリマーでも「ブロック状」でもないと考えられており、ほぼランダムに共重合されているか、又はそれに近いと考えられている。また、開環エチルオキサゾリンモノマーが骨格への接着点に最も近いという簡略的な図式表現は任意であり、実際にはいずれかの繰り返し単位がコポリマー骨格からの各グラフト点で結合してもよいことは理解されたい。アスタリスクは便宜上としてのみ、開始剤及び末端鎖端の代替記号として使用している。
【0126】
【表5】
実施例21~32に関わる工程1の詳細は上記の表5に示す。これらは全てEtOx及びSteOxコモノマーを含む。実施例21~24は、モノマー変換率及び分子量分布に対するCROP反応時間の効果を検討している。実施例22は、比較のために最もバランスの取れた反応と考えられ、従ってEtOx‐SteOxコポリマーの残部は約1時間のCROP反応時間及び約85~90%の変換率を目標とした(唯一の例外は、実施例31であり、実施例31では、目標の変換率レベルを達成するために目標共重合度を増加させることはCROP反応時間の延長を必要とする)。実施例22、28、及び29はほぼ一定の重合度におけるEtOx‐SteOxコモノマー比の変動を検討しており、測定したブラシアームの数平均分子量には予想される変動が得られたが、測定したブラシアームのPDIではほぼ変動がなかった。実施例22、30、及び31は、EtOx‐SteOx重合度の変化を検討しており、これもブラシアームの数平均分子量では若干の変動が測定され、ブラシアームのPDIではほんのわずかな変動が測定された。実施例22及び30では、重合度25及び50の両方でCROP反応時間は約1時間で十分であったが、重合度100(実施例31)では、同様のモノマー変換率を達成するために約4倍の時間を要し、測定した数平均分子量は、より低い重合度の数平均分子量より理論値から大きく逸脱する結果となったことに留意されたい。
【0127】
実施例21~32それぞれの工程2では、実施例17で合成した骨格コポリマーを利用した。このように、実施例21~32の各ポリ(xMA)の種類は同一であり、1実施例を除く全実施例において、オキサゾリンブラシアームコポリマー鎖端に対する相対モル量も同一であった(上述のように、実施例32は、未反応のメタクリル酸ペンダント基をより多く残すことによりオキサゾリンブラシアームグラフト点をより少なくするために、異なる相対モル量を計算した)。
【0128】
【0129】
実施例21~32を含む工程3の詳細を上記表6に示す。グラフトしたブラシコポリマーは狭い分子量分布を示し、この分子量分布はブラシアームコポリマー自体とほぼ同じであるか、それよりわずかに広い。このことは、グラフトオント工程が比較的速い反応であること:ポリ(xMA)をオキサゾリンコポリマーを含有する反応混合物に添加すると、コポリマー骨格上のMAA繰り返し単位の脱プロトン化カルボン酸基は(リビング)オキサゾリンブラシアーム鎖端と即座に反応し、その結果、明確に定義されたブラシコポリマーが得られることを強く示唆している。工程1の分析で述べたように、実施例21~24では、ポリOxブラシアーム反応のCROP時間を変化させたが、変換率が目標値である実施例22と同様に、予想に反して、低いモノマー変換率と高いモノマー転化率の両方を有する試料よりブラシ収率も向上したように思える。従って、恐らく偶然ではなく、実施例22のグラフトしたブラシコポリマーは、これら4つの実験の中で、理論値に対する実測数平均分子量の一致性も最も近かった。このことは、更なる研究用の例及び比較として実施例22の条件を選択することを促進するだけのものであった。それにも関わらず、これらの試料中の様々なモノマー変換率の中で比較的高いブラシ収率は、最適とは言えない反応条件でもグラフトオント反応が効率的に働くことを示している。実施例22及び25~27は、グラフト反応の温度の変化を検討しており、グラフト温度とブラシ収率の間には比較的直線的な相関関係があり、分子量分布への影響は比較的少ないように思えた。低い温度(約70/80℃)及び高い温度(約120℃)では、副反応が中間温度(約100℃)よりわずかに多く観察され、得られたグラフトコポリマーの、炭化水素潤滑油中への溶解性を低下させる可能性があることが指摘された。工程1の分析で指摘したように、実施例22、28、及び29は、ほぼ一定の重合度でのEtOx‐SteOxコモノマー比の変化を検討しており、工程1の分析で指摘した効果に加えて、ブラシ収率の低下とSteOx含有量の増加との間に非線形関係があることも示しているようにも思えた。工程1の分析で指摘したように、実施例22、30、及び31は、ほぼ一定のコモノマー比でのEtOx‐SteOx重合度の変化を検討しており、工程1の分析で指摘した効果に加えて、重合度の増加に伴うブラシ収率の減少は比較的直線的であることも示しているように思えた。実施例22、28、及び29のブラシ収率に対するSteOx含有量の増加の影響を考慮すると、恐らくこの指摘は驚くものではなかった。実施例22及び32は、グラフト点アンカー(メタクリル酸繰り返し単位のカルボキシレートペンダント部分)に対するグラフト鎖の割合を低下させた場合の影響を検討しており、理論値に対するブラシ収率及び数平均分子量の測定値がわずかに低いことが分かった。当然ながら、MAAコポリマーのカルボン酸部分の反応性/官能性が低下した。しかし、ブラシコポリマーの多分散度が比較的低いことは、ブラシアーム自体の多分散度と比較して同様に、最適とは言えない反応条件下であってもグラフトオント反応の化学的復元性を促進している。
【0130】
【0131】
熱及び溶液ベースの転移を解明するために、GPC及び1H NMR分析に加えて、実施例21~32のブラシコポリマーをDSC及び濁度装置による分析に供した。上記と同様に、DSC測定では、試料の熱履歴を除去するために、約-80℃~約150℃、約60℃/分での1回目の高速加熱/冷却サイクルを利用して試料の熱履歴を排除し、次いで約1℃/分の更なる2サイクルを行った。発熱はDSC出力にピークとして現れ、α転移を示すことから、発熱は冷却時の結晶化(相応して加熱時の溶解)を示唆していると推測され、これは測定温度範囲に渡る上限臨界溶液温度(UCST)挙動があることを示している。希釈油/ベースストックへの実施例21~32の溶解性挙動を濁度測定により評価した。ブラシコポリマーをそれぞれYubase(商標)4(約5mgポリマー/mL希釈液)と混合(に溶解)し、次いで約15℃~約85℃の加熱/冷却サイクルを2回行い、濁度を波長約600nmで測定した。上記と同様に、濁度転移温度は、加熱と冷却の両サイクルにおける透過率約50%での温度として概算した。報告した数値は各種類の2回目のサイクルのものである。測定した転移温度を含む濁度及びDSCデータは、入手可能な場合、上記の表7に示している。
【0132】
【表8】
実施例33及び34並びに比較例Dを含む工程1の詳細は、本明細書中のCROPの説明と共に上記の表8に示す。これら例のCROP反応は全て約100℃で約1時間行い、報告の変換率を達成した。測定した分子量は全て理論分子量と妥当な一致を示し、全ての多分散度は比較的狭い/低いものであった。
実施例33及び34並びに比較例D各々の工程2では、実施例17で合成した骨格コポリマーを利用した。このように、実施例33及び34並びに比較例Dの各ポリ(xMA)は、種類及びオキサゾリンブラシアームコポリマー鎖端に対するモル量も同一であった。
【0133】
【表9】
実施例33~34及び比較例Dを含む工程3の詳細を上記表9に示す。グラフトしたブラシコポリマーは狭い分子量分布を示し、これはブラシアームコポリマー自体とほぼ同一である。少なくともEtOx:SteOxコポリマーブラシアームを含むブラシコポリマーと比較して、これら試料のブラシ収率は比較的低く、熱及び濁度転移の確立の難しさも示唆する工程3溶媒における溶解性の問題が示された。実際、DSC実験から、実施例34及び比較例Dのブラシコポリマーはいずれも分析範囲内の全温度で可溶であり、実施例33のブラシコポリマーは分析範囲の全温度で比較的不溶であることが実証された。従って、これらの試料のうち、測定温度範囲に渡って上限臨界溶液温度(UCST)挙動を示すものはない。
【0134】
本明細書に記載された全ての特許、論文、及び他の材料の開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。本明細書及び添付の特許請求の範囲において提示される、複数の特定成分を含むか、それらから成るか、又はそれらから基本的に成る組成物の記載は、前記複数の特定成分を混和することにより形成される組成物も包含すると解釈すべきである。本発明の原理、好ましい実施形態、及び操作の態様は、前述の明細書に記載されている。しかし、開示した実施形態は限定ではなく例示的なものであると見なされるため、出願人が発明として提出したものは、開示した特定の実施形態に限定するものではないと解釈すべきである。当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく変更を加えてもよい。
【国際調査報告】