(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】コロナウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240116BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240116BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240116BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20240116BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240116BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240116BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240116BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240116BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240116BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240116BHJP
C07K 14/165 20060101ALI20240116BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240116BHJP
C12N 15/50 20060101ALI20240116BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240116BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240116BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240116BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240116BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240116BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A61K47/68
A61P31/14 ZNA
A61P37/04
A61K39/215
A61K39/39
A61K9/12
A61K9/08
A61K39/395 S
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/165
C12N15/13
C12N15/50
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539020
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 AU2021051553
(87)【国際公開番号】W WO2022133547
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504348389
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー オブ メルボルン
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MELBOURNE
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴドフリー デール イアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン デイビッド チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルディン ニコラス アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】デリヤニス ジョージア
(72)【発明者】
【氏名】パーセル ダミアン フランシス ジョン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA93Y
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA11
4C076AA24
4C076AA25
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB25
4C076BB27
4C076CC35
4C076EE59
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA71
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC22
4C085EE01
4C085FF01
4C085FF11
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、キメラタンパク質及び融合タンパク質及びそれらの組成物、並びにコロナウイルス感染症、又はコロナウイルス感染症に関連する呼吸器疾患又は病状の予防及び/又は治療における、このようなタンパク質及び組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルスに対する免疫応答を誘導するためのキメラタンパク質又は融合タンパク質及びアジュバントを含んでなる組成物であって、
前記キメラタンパク質又は融合タンパク質が、抗体のFc領域に連結されたコロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメインのダイマーを含んでなり、又は
前記キメラタンパク質又は融合タンパク質が、Fc受容体結合ドメインを含んでなるポリペプチドに連結されたコロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメインのダイマーを含んでなる、組成物。
【請求項2】
前記受容体結合ドメインが、WT、アルファ、ベータ、ガンマ、カッパ、又はデルタSARS-CoV-2株、又は表3で定義される任意のその他の株由来のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記受容体結合ドメインが、WT SARS-CoV-2株由来のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記受容体結合ドメインが、ベータSARS-CoV-2株由来のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
前記受容体結合ドメインが、N334~P527(全長スパイクタンパク質に基づく番号付け)由来のアミノ酸配列を含んでなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記受容体結合ドメインが、N334~P527(全長スパイクタンパク質に基づく番号付け)由来のアミノ酸配列からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
コロナウイルスのスパイクタンパク質由来の前記受容体結合ドメインが、配列番号15又は28のどちらか1つ又は複数のアミノ酸配列、又は配列番号15又は28のどちらか1つと60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記アミノ酸配列が、
図6又は7、又は表3に示される変異の1つ又は複数を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
コロナウイルスのスパイクタンパク質由来の前記受容体結合ドメインが、0~8個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)、好ましくは0~7個、好ましくは0~6個、好ましくは0~5個、好ましくは0~4個、好ましくは0~3個、好ましくは0~2個、好ましくは0~1個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)を有する配列番号15又は28のどちらか1つ又は複数のアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物であって、前記アミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)が、N末端及び/又はC末端に配置される、組成物。
【請求項10】
前記抗体のFc領域がIgGのFc領域である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記IgGがIgG1である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記IgGがヒトである、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記キメラタンパク質又は融合タンパク質のFc領域が、2つの重鎖断片、より好ましくは前記重鎖のCH2及びCH3ドメインを含んでなる、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
抗体のFc領域が、配列番号16又は18のどちらか1つのアミノ酸配列、又は配列番号16又は18のどちらか1つと60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
抗体のFc領域が、0~8個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)、好ましくは0~7個、好ましくは0~6個、好ましくは0~5個、好ましくは0~4個、好ましくは0~3個、好ましくは0~2個、好ましくは0~1個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)を有する、配列番号16又は18のどちらか1つのアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記キメラタンパク質又は融合タンパク質が、配列番号2、3、5、6、22又は23に記載されるいずれか1つの配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記アジュバントが、TLR2-作動薬、より好ましくはPEG-R4-Pam-2-Cysなどの分子を含有するPam-2-Cys、又はNKT細胞の刺激因子、より好ましくはα-ガラクトシルセラミド(本明細書では「α-GalCer」とも称される)、α-グルコシルセラミド、β-マンノシルセラミド、及びそれらの類似体である、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記アジュバントが、Pam3CSK4、PEG-R4-Pam-2-Cys、MALP-2、リポテイコ酸、OspA、Porin、LcrV、リポマンナン、リゾホスファチジルセリン、リポホスホグリカン(LPG)、グリコホスファチジルイノシトール(GPI)、及びザイモサンからなる群から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記アジュバントが、ポリ-I:C、CpG、ポリ-ICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、B(C、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、JuvImmune、LipoVac、MF59(登録商標)、AddaVax(商標)、モノホスホリルリピドA、モンタニドIMS 1312、モンタニドISA 206、モンタニドISA V、モンタニドISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PEPTEL、ベクターシステム、PLGA微粒子、レシキモド、SRL172、ビロソーム及びその他のウイルス様の粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、β-グルカン、Pam-3-Cys、及びAquilaのQS21スティミュロンからなる群から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記アジュバントが、代謝可能な油及び乳化剤を含んでなる、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記油及び乳化剤が、実質的に全ての油滴が直径1ミクロン未満である水中油型エマルションの形態で存在する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記油がスクアレンである、請求項20又は21に記載の組成物。
【請求項23】
前記アジュバントが、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート及びソルビタントリオレアートをさらに含んでなる、請求項20~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記アジュバントが、4.3%スクアレン、0.5%ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、0.5%ソルビタントリオレアートを含んでなる、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が、例えば、上気道及び/又は下気道などの気道への投与のために製剤化又は適合される、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が、吸入又は鼻腔内投与のために製剤化又は適合される、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が、スプレー、ミスト、又は煙霧剤として製剤化される、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が、点鼻スプレー又は点鼻薬として製剤化される、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が、皮下、筋肉内、又は本明細書に記載の任意のその他の経路を介した投与のために製剤化又は適合される、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
コロナウイルスに対する対象における免疫応答を誘導するための方法であって、請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物をそれを必要とする対象に投与することによって、コロナウイルスに対する対象における免疫応答を誘導するステップを含んでなる、方法。
【請求項31】
コロナウイルスによる感染症に関連する症状の重症度を軽減又は最小化するための方法であって、それを必要とする個体に、請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物を投与することによって、コロナウイルスの感染に関連する症状の重症度を軽減又は最小化するステップを含んでなる、方法。
【請求項32】
前記症状が、発熱、空咳、倦怠感、疼き及び痛み、咽喉痛、下痢、結膜炎、頭痛、味覚又は嗅覚の喪失、皮膚の発疹、又は手足の指の変色、呼吸窮迫又は息切れ、胸痛み又は圧迫感、及び発話又は運動の喪失からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
それを必要とする対象における、(a)コロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる疾患、又は(b)コロナウイルス感染症を治療及び/又は防止する方法であって、治療有効量の請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与することによって、前記対象における(a)コロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる疾患、又は(b)コロナウイルス感染症を治療及び/又は予防するステップを含んでなる、方法。
【請求項34】
コロナウイルス感染のリスクがある対象を同定するステップをさらに含んでなる、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
それを必要とする対象における、(a)コロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる疾患、又は(b)コロナウイルス感染症を治療及び/又は予防するための薬剤の製造における、請求項1~29のいずれか一項に記載の本発明の組成物の使用。
【請求項36】
個体の肺におけるコロナウイルス粒子の量を抑制又は低減する方法であって、請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物を前記個体に投与することによって、前記個体の前記肺におけるコロナウイルス粒子の量を抑制又は低減するステップを含んでなる、方法。
【請求項37】
前記組成物が気道に投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記気道が上気道である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物が、鼻及び鼻道、副鼻腔、咽頭、及び声帯皺襞(声帯)上部の喉頭の部分の領域のいずれか1つ又は複数に投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記コロナウイルス感染症が、アルファコロナウイルス属(Alphacoronavirus)、ベータコロナウイルス属(Betacoronavirus)、ガンマコロナウイルス属(Gammacoronavirus)、又はデルタコロナウイルス属(Deltacoronavirus)のいずれかに由来するコロナウイルスによる感染である、請求項1~39のいずれか一項に記載の組成物、方法又は使用。
【請求項41】
前記コロナウイルスが、アルファコロナウイルス属(Alphacoronavirus)亜群クラスター1a及び1bの1つ、又はベータコロナウイルス属(Betacoronavirus)亜群クラスター2a、2b、2c、及び2dの1つに由来する、請求項40に記載の組成物、方法又は使用。
【請求項42】
前記コロナウイルスが、SARS-CoV、MERS-CoV、SARS-CoV-2、HCoV-NL63、HCoV-229E、HCoV-OC43又はHKU1である、請求項1~41のいずれか一項に記載の組成物、方法又は使用。
【請求項43】
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、請求項1~42のいずれか一項に記載の組成物、方法又は使用。
【請求項44】
請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物を非ヒト動物に投与することによって、前記動物においてコロナウイルスに向けられた抗体を生成させるステップを含んでなる、コロナウイルスに向けられた抗体を取得する方法。
【請求項45】
コロナウイルスに向けられた抗体を含んでなる抗体製剤であって、前記抗体製剤が請求項44に記載の方法によって得られる、抗体製剤。
【請求項46】
請求項1~29のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質をコード化する、核酸分子。
【請求項47】
配列番号1、4、29、30、31又は32に対応するヌクレオチド配列を含んでなる、請求項46に記載の核酸。
【請求項48】
請求項46又は47に記載の核酸を含んでなる、発現コンストラクト。
【請求項49】
請求項46又は47に記載の核酸、又は請求項48に記載の発現コンストラクトを含んでなる、細胞。
【請求項50】
コロナウイルスに対する免疫応答を誘導するためのキメラタンパク質又は融合タンパク質及びアジュバントであって、
前記キメラタンパク質又は融合タンパク質が、抗体のFc領域に連結されたコロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメインのダイマーを含んでなり、又は
前記キメラタンパク質又は融合タンパク質が、Fc受容体結合ドメインを含んでなるポリペプチドに連結されたコロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメインのダイマーを含んでなる、キメラタンパク質又は融合タンパク質及びアジュバント。
【請求項51】
前記受容体結合ドメインが、WT、アルファ、ベータ、ガンマ、カッパ、又はデルタSARS-CoV-2株又は変異株、又は表3に定義される任意のその他の株又は変異株に由来するアミノ酸配列を含んでなる、請求項51に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項52】
前記受容体結合ドメインが、WT SARS-CoV-2株由来のアミノ酸配列を含んでなる、請求項50又は51に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項53】
前記受容体結合ドメインが、ベータSARS-CoV-2株由来のアミノ酸配列を含んでなる、請求項50又は51に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項54】
前記受容体結合ドメインが、N334~P527(全長スパイクタンパク質に基づく番号付け)由来のアミノ酸配列を含んでなる、請求項50~53のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項55】
前記受容体結合ドメインが、N334~P527(全長スパイクタンパク質に基づく番号付け)由来のアミノ酸配列からなる、請求項50~54のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項56】
コロナウイルスのスパイクタンパク質由来の前記受容体結合ドメインが、配列番号15又は28のどちらか1つ又は複数のアミノ酸配列、又は配列番号15又は28のどちらか1つと60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる、請求項50~55のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項57】
前記アミノ酸配列が、
図6又は7又は表3に示される変異の1つ又は複数を含む、請求項56に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項58】
コロナウイルスのスパイクタンパク質由来の前記受容体結合ドメインが、0~8個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)、好ましくは0~7個、好ましくは0~6個、好ましくは0~5個、好ましくは0~4個、好ましくは0~3個、好ましくは0~2個、好ましくは0~1個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)を有する配列番号15又は28のどちらか1つ又は複数のアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる、請求項50~57のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質であって、前記アミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)が、N末端及び/又はC末端に配置される、キメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項59】
前記抗体のFc領域がIgGのFc領域である、請求項50~58のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項60】
前記IgGがIgG1である、請求項59に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項61】
前記IgGがヒトである、請求項59又は60に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項62】
前記キメラタンパク質又は融合タンパク質のFc領域が、2つの重鎖断片、より好ましくは前記重鎖のCH2及びCH3ドメインを含んでなる、請求項50~61のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項63】
抗体のFc領域が、配列番号16又は18のどちらか1つのアミノ酸配列、又は配列番号16又は18のどちらか1つと60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる、請求項50~62のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項64】
抗体のFc領域が、0~8個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)、好ましくは0~7個、好ましくは0~6個、好ましくは0~5個、好ましくは0~4個、好ましくは0~3個、好ましくは0~2個、好ましくは0~1個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)を有する、配列番号16又は18のどちらか1つのアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる、請求項50~63のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項65】
前記キメラタンパク質又は融合タンパク質が、配列番号2、3、5、6、22又は23に記載されるいずれか1つの配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる、請求項50~64のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、どちらもその全内容が参照により本明細書に援用される、2020年12月23日に出願されたオーストラリア仮出願第2020904820号、及び2021年12月2日に出願されたオーストラリア仮出願第2021903911号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、キメラタンパク質及び融合タンパク質及びそれらの組成物、並びにコロナウイルス感染症、又はコロナウイルス感染症に関連する呼吸器疾患又は病状の予防及び/又は治療における、このようなタンパク質及び組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
新興の呼吸器コロナウイルスは、世界の人々の健康と経済に大きな脅威を与えている。コロナウイルス(CoV)は、大きなプラス鎖RNAゲノムをコード化して大多数の哺乳類で効率的に自己複製する、系統発生学的に多様なエンベロープウイルスのグループを構成する。ヒトCoV(HCoVs-229E、OC43、NL63、及びHKU1)感染症は、典型的には、軽度から重度の上気道及び下気道疾患を引き起こす。
【0004】
コロナウイルスは、ニドウイルス目(Nidovirales)のコロナウイルス科(Coronaviridae)に属し、サイズが微小(直径80~200nm)であり、長さが26~32kbの一本鎖RNAを核物質として含有する。コロナウイルス科の亜群は、アルファ(α)、ベータ(β)、ガンマ(γ)、及びデルタ(δ)コロナウイルスである。ベータコロナウイルスは、ヒトに関して臨床的に最も重要である。これらとしては、系統AのベータコロナウイルスであるOC43及びHKU1(感冒を引き起こし得る)が挙げられる。系統Bのベータコロナウイルスとしては、重症急性呼吸器症候群コロナウイルスSARS-CoV及びSARS-CoV-2(疾患COVID-19を引き起こす)が挙げられる。中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)は、系統C由来のベータコロナウイルスである。これらのウイルスは、急性肺損傷(ALI)及び急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こし、肺不全及び死をもたらし得る。
【0005】
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)は2002年から2003年に出現し、全体の死亡率が10%、高齢者の死亡率が最大50%のARDSを引き起こした。
【0006】
中東呼吸器症候群-コロナウイルス(MERS-CoV)は、2012年の4月に中東で出現し、重度の肺炎、ARDS、及び急性腎不全として顕在化した。
【0007】
2020年には、高感染性コロナウイルス(2019-nCoV;SARS-CoV-2)に免疫学的にナイーブな世界中の人々が遭遇し、世界は「COVID-19」と称される疾患として顕在化した極端な状況に直面している。SARS-CoV-2感染症は、200以上の国、領域、又は地域で、これまでに世界中で確認症例数が5,000万を超え、100万人以上が死亡している。COVID-19の症状発現は、軽度から生命を脅かす重症の範囲にわたり、死亡率もかなり高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コロナウイルス感染症及び/又はコロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる疾患に対する新しい治療法又は改善された治療法が必要とされている。
【0009】
本明細書における先行技術への言及は、この先行技術がいかなる法域においても一般常識の一部を形成すること、又はこの先行技術が当業者によって理解され、関連性があると見なされ、及び/又は先行技術のその他の部分と組み合わせられることが合理的に期待され得ることを承認又は示唆するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、本発明は、コロナウイルスに対する免疫応答を誘導するためのキメラタンパク質又は融合タンパク質を提供し、このタンパク質は、抗体のFc領域に連結された、コロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメイン(RBD)のアミノ酸配列を含んでなるか又はそれからなる、2つ以上のポリペプチドを含んでなる。
【0011】
別の態様では、本発明は、コロナウイルスに対する免疫応答を誘導するためのキメラタンパク質又は融合タンパク質を提供し、このタンパク質は、それぞれが、Fc受容体結合ドメインを含んでなるポリペプチドに連結されたコロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含んでなるか又はそれからなる、2つ以上のポリペプチドを含んでなる。
【0012】
一態様では、本発明は、コロナウイルスに対する免疫応答を誘導するためのキメラタンパク質又は融合タンパク質を提供し、このタンパク質は、抗体のFc領域に連結されたコロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメインのダイマーを含んでなる。
【0013】
別の態様では、本発明は、コロナウイルスに対する免疫応答を誘導するためのキメラタンパク質又は融合タンパク質提供をし、このタンパク質は、Fc受容体結合ドメインを含んでなるポリペプチドに連結されたコロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメインのダイマーを含んでなる。一実施形態では、キメラタンパク質又は融合タンパク質は、連続ポリペプチド鎖が共有結合した2つのRBD鎖配列を含んでなる、一本鎖ダイマーである。
【0014】
任意の態様において、コロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメインは、配列番号15又は28のどちらか1つ又は複数のアミノ酸配列、又は配列番号15又は28のどちらか1つと60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなり、一実施形態では、アミノ酸配列は、
図6又は7に示されるような変異の1つ又は複数を含んでもよい
【0015】
任意の態様において、受容体結合ドメインは、SARS-CoV-2変異株に由来してもよい。SARS-CoV-2変異株は、ウイルスの元の(Wuhan-Hu-1)祖先型又は(「武漢」)株(ゲノム参照配列:GenBank登録NC_045512.2)から進化しており、本明細書では野生型(WT)株と称される。本明細書に記載されるように、受容体結合ドメインは、WT(「武漢」)、アルファ、ベータ、ガンマ、カッパ、又はデルタ株、又は表3をはじめとする本明細書で定義される任意のその他の株に由来してもよい。任意の実施形態において、受容体結合ドメインは、WT、アルファ、ベータ、ガンマ、カッパ、又はデルタ株のN334~P527であってもよい。アルファ変異株は、元のWT株と比較して、RBDに1つの変異、N501Yを保有する。ベータ変異株は、元のWT株と比較して、RBDに3つの変異、N501Y、E484K、及びK417Nを保有する。ガンマ変異株は、元のWT株と比較して、RBDに3つの変異、K417T、E484K、及びN501Yを保有する。カッパ変異株は、元のWT株と比較して、RBDに2つの変異、L452R及びE484Qを保有する。デルタ変異株は、元のWT株と比較して、RBDに2つの変異、L452R及びT478Kを保有する。
【0016】
任意の態様において、コロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメインは、0~8個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)を有する配列番号15又は28のどちらか1つ又は複数のアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる。いくつかの実施形態では、関連するアミノ酸配列は、0~7個、好ましくは0~6個、好ましくは0~5個、好ましくは0~4個、好ましくは0~3個、好ましくは0~2個、好ましくは0~1個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)を有してもよく、ここでアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)は、N末端及び/又はC末端に位置する。
【0017】
任意の態様において、コロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメインは、0~8個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)を有する配列番号15又は28のどちらかの1つ又は複数のアミノ酸配列と、0~8個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)を有する配列番号18のいずれか1つのアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる抗体のFc領域とを含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる。いくつかの実施形態では、関連するアミノ酸配列は、0~7個、好ましくは0~6個、好ましくは0~5個、好ましくは0~4個、好ましくは0~3個、好ましくは0~2個、好ましくは0~1個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)を有してもよく、ここでアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)は、N末端及び/又はC末端に位置する。
【0018】
任意の態様において、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2、3、5、6、22又は23のいずれか1つに記載される配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる。さらに、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質のアミノ酸配列は、本明細書に記載されるSARS-CoV-2変異株、特にWT、アルファ、ベータ、ガンマ、カッパ、又はデルタ株のスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメインのN334-P527を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなり、ヒトIgG1 Fcと直接的又は間接的に連結され、好ましくはリンカーは、配列番号17のアミノ酸配列を含んでなるか又はそれからなり、ヒトIgG1 Fcは、配列番号18のアミノ酸配列を含んでなるか又はそれからなる。
【0019】
任意の態様において、キメラタンパク質又は融合タンパク質の抗体のFc領域は、IgG、より好ましくはIgG1、より好ましくはヒトIgG1のFc領域である。いくつかの実施形態では、IgGのFc領域はマウスIgG1である。
【0020】
任意の態様において、2つ以上のポリペプチドの1つ又は複数、又はキメラタンパク質又は融合タンパク質のダイマー中の受容体結合ドメインの片方又は双方は、C末端でFc領域と融合していてもよい。代案としては、2つ以上のポリペプチドの1つ又は複数、又はキメラタンパク質又は融合タンパク質のダイマー中の受容体結合ドメインの片方又は双方は、C末端のリンカーを介してFc領域と融合していてもよい。
【0021】
好ましくは、キメラタンパク質又は融合タンパク質のFc領域は、2つの重鎖断片を含んでなり、より好ましくは、前記重鎖のCH2及びCH3ドメインを含んでなる。一実施形態では、重鎖断片は、ジスルフィド結合を介して連結される。
【0022】
任意の態様において、抗体のFc領域は、配列番号16又は18のどちらか1つのアミノ酸配列、又は配列番号16又は18のどちらか1つと60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる。
【0023】
任意の態様において、抗体のFc領域は、0~8個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)を有する配列番号16又は18のどちらか1つのアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる。いくつかの実施形態では、関連するアミノ酸配列は、0~7個、好ましくは0~6個、好ましくは0~5個、好ましくは0~4個、好ましくは0~3個、好ましくは0~2個、好ましくは0~1個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)を有してもよい。
【0024】
任意の態様において、コロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメインは、配列番号15又は28のどちらか1つ又は複数のアミノ酸配列、又は配列番号15又は28のどちらか1つと60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなり、抗体のFc領域は、配列番号16又は18のどちらか1つのアミノ酸配列、又は配列番号16又は18のどちらか1つと60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる。一実施形態では、受容体結合ドメインのアミノ酸配列は、
図6に示されるような、又はアルファ、ベータ、ガンマ、カッパ、デルタ、デルタプラス、タムダ、ミュー、イオタ又はオミクロン株などのSARS-CoV-2変異株に関連して本明細書に記載されるような変異の1つ又は複数を含んでもよい。
【0025】
本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質は、単離、精製、実質的精製、濃縮、合成、組み換えであってもよい。一実施形態では、精製は、キメラタンパク質又は融合タンパク質に結合したポリ-Hisタグの使用によって媒介される。
【0026】
本発明の別の態様では、本発明は、本明細書に記載される本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質と、アジュバントとを含んでなる組成物を提供する。好ましくは、組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤をさらに含んでなる。
【0027】
任意の実施形態において、アジュバントは、本明細書に記載されるいずれか、好ましくはTLR2-作動薬、より好ましくはPEG-4アルギニン(R4)-Pam-2-Cys(PEG-R4-Pam-2-Cys)などの分子を含有するPam-2-Cys、又は好ましくはNKT細胞の刺激因子、より好ましくは、アシル及びスフィンゴシン鎖長、飽和度の多様性と、極性頭部基組成の多様性とを含んでなる、α-ガラクトシルセラミド(本明細書で「α-GalCer」とも称される)、α-グルコシルセラミド、α-グルコシルジアシルグリセロール、α-ガラクトシルジアシルグリセロール、β-マンノシルセラミド、及びそれらの類似体などのNKT細胞を刺激する能力を有する任意の糖脂質である。
【0028】
いくつかの実施形態では、TLR2-作動薬は、Pam-3-CSK4、PEG-R4-Pam-2-Cys、MALP-2、リポテイコ酸、OspA、Porin、LcrV、リポマンナン、リゾホスファチジルセリン、リポホスホグリカン(LPG)、グリコホスファチジルイノシトール(GPI)、及びザイモサンからなる群から選択され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、アジュバントは、ポリ-I:C、CpG、ポリ-ICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS03、AS04、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、JuvImmune、LipoVac、マトリックスM、MF59(登録商標)、AddaVax(商標)、モノホスホリルリピドA、モンタニドIMS1312、モンタニドISA206、モンタニドISA V、モンタニドISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PEPTEL、ベクターシステム、PLGA微粒子、レシキモド、SRL172、ビロソーム及びその他のウイルス様の粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、β-グルカン、Pam-3-Cys、及びAquilaのQS21スティミュロンからなる群から選択され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、アジュバントは、代謝可能な油及び乳化剤(洗剤又は界面活性剤など)を含んでなる。好ましくは、油及び乳化剤は、実質的にその全てが直径1ミクロン未満である油滴を有する水中油型エマルションの形態で存在する。例示的な代謝可能な油及び乳化剤は、米国特許第6,299,884号明細書及び米国特許第6,086,901号明細書に記載されている。一実施形態では、アジュバントは、水中油型エマルションを含んでなる。好ましくは、油はスクアレンである。好ましくは、水相はクエン酸緩衝液(例えば10mM、pH6.5)である。
【0031】
一実施形態では、アジュバントは、水中油型エマルション中のスクアレンを含んでなる。好ましくは、アジュバントは、ツイーン(登録商標)80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)及びSpan(登録商標)85(ソルビタントリオレアート)をさらに含んでなる。アジュバントは、4.3%スクアレン、0.5%ツイーン(登録商標)80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、0.5%Span(登録商標)85(ソルビタントリオレアート)を含んでなってもよく、任意選択的に400pg/mlのMTP-PE(N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-[1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-3(ヒドロキシホスホリル-オキシ)]エチルアミド)を含む。
【0032】
一実施形態では、組成物は50%vol/volのアジュバントを含んでなり、好ましくはアジュバントはMF59である。
【0033】
一実施形態では、組成物は凍結乾燥されている。
【0034】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載される本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質と、アジュバントとを含んでなる、凍結乾燥組成物を提供する。好ましくはアジュバントは、TLR2-作動薬、より好ましくはPEG-4アルギニン(R4)-Pam-2-Cys(PEG-R4-Pam-2-Cys)などの分子を含有するPam-2-Cysである。
【0035】
凍結乾燥組成物は、-20℃~40℃の温度範囲で少なくとも1ヶ月間安定であってもよい。好ましくは、凍結乾燥形態で-20℃~40℃の温度範囲で1ヶ月間保存した後の再構成組成物の免疫原性及び防御効率は、-20℃~40℃の温度範囲で1ヶ月間保存されていない再構成組成物の少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%である。好ましくは、凍結乾燥形態で-20℃~40℃の温度範囲で1ヶ月間保存した後の再構成組成物によって誘導される抗体力価、好ましくは中和抗体力価は、-20℃~40℃の温度範囲で1ヶ月間保存されていない再構成組成物の少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%である。好ましくは、凍結乾燥形態で-20℃~40℃の温度範囲で1ヶ月間保存した後の再構成組成物の、例えば、SARS-CoV-2の元の(Wuhan-Hu-1)祖先型又は(「武漢」)株及びSARS-CoV-2のベータ変異株などの複数のコロナウイルス変異株に対する中和活性は、-20℃~40℃の温度範囲で1ヶ月間保存されていない再構成組成物の少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%である。
【0036】
任意の態様において、本発明のキメラ又は融合物、又は本発明の組成物は、抗体を誘導することによってコロナウイルスに対する免疫応答を誘導し、好ましくは抗体はコロナウイルス粒子又はビリオンを中和する。より好ましくは、本発明のキメラ又は融合体、又は本発明の組成物は、コロナウイルスのRBDに特異的に結合し、RBDのACE2への結合を阻害する免疫グロブリンを誘導する。
【0037】
本発明の任意の態様において、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は組成物は、B細胞による抗体の産生を促進するCD4T細胞応答を誘導することによって、コロナウイルスに対する免疫応答を誘導する。
【0038】
本発明の任意の態様において、本発明のキメラタンパク質若しくは融合タンパク質、又は本発明の組成物は、コロナウイルス感染細胞に対する細胞傷害性を媒介するCD8T細胞応答を誘導することによって、コロナウイルスに対する免疫応答を誘導する。
【0039】
本発明の任意の態様において、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物は、NKT細胞応答を誘導することによって、コロナウイルスに対する免疫応答を誘導する。
【0040】
本発明の任意の態様において、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物は、単回用量として投与される。
【0041】
本発明の任意の態様において、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物は、プライムブースト体制として投与される。ブーストは、1回目のブースト(すなわち、2回目の用量)又は2回目のブースト(すなわち、3回目の用量)、又はさらには3回目以降のブーストであってもよい。レジメンは、実施例を含めて本明細書に記載されるように、例えば、2回用量レジメン又は3回用量レジメン、或いは4回、5回、及びそれを超えるブーストレジメンであってもよい。好ましくは、プライム用量とブースト用量は異なる時点で投与される。いくつかの実施形態では、プライムとブーストの間の時間間隔は、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3ヶ月、6ヶ月、又は1年である。
【0042】
本発明の任意の態様において本発明のキメラタンパク質若しくは融合タンパク質、又は本発明の組成物は、2回以上の用量として投与される。一実施形態では、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物は、3回の別々の用量として投与される。
【0043】
予防又は予防療法が意図され又は要求される本発明の任意の態様において、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物は、ウイルス感染、好ましくはコロナウイルス感染の臨床的又は生化学的に検出可能な症状の前に対象に投与される。対象は、コロナウイルス感染のリスクがあるとして同定されてもよい。
【0044】
本発明の任意の態様において、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物は、気道に投与される。典型的には、本発明のキメラ又は融合体、又は本発明の組成物は、上気道及び/又は下気道に投与される。例えば、本発明のキメラ又は融合体、又は本発明の組成物は、吸入又は鼻腔内を介して対象に投与されてもよい。
【0045】
本発明の任意の態様において、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物の対象への投与は、対象におけるウイルス負荷を低減する。好ましくは、ウイルス負荷は、例えば、上気道及び/又は下気道などの気道において低減される。より好ましくは、ウイルス負荷は、上気道及び下気道において低減される。好ましくは、ウイルス負荷は、肺において低減される。
【0046】
任意の態様において、本発明の組成物は、例えば、上気道及び/又は下気道などの気道への投与のために製剤化又は適合されてもよい。好ましくは、組成物は、吸入又は鼻腔内投与のために製剤化又は適合される。一実施形態では、組成物は、スプレー、ミスト、又は煙霧剤として製剤化される。
【0047】
好ましい実施形態では、組成物は、点鼻スプレーとして又は点鼻薬として製剤化される。
【0048】
任意の態様において、組成物は、皮下、筋肉内、又は本明細書に記載の任意のその他の経路を介した投与のために製剤化又は適合されてもよい。
【0049】
したがって、別の態様では、本発明は、対象におけるコロナウイルスに対する免疫応答を誘導するためのワクチン又は免疫刺激組成物をさらに提供し、組成物は以下を含んでなる:
-本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質の形態の免疫原、及び
-対象における免疫原に対する免疫応答を増強するためのアジュバント。
【0050】
好ましくは、本発明の組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物中に提供される唯一の免疫原は、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質である。
【0051】
別の態様では、本発明は、活性成分として本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質と、薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤又は担体とを含んでなる、(a)コロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる疾患、又は(b)コロナウイルス感染症を治療及び/又は予防するための医薬組成物を提供する。一実施形態では、組成物中に存在する唯一の活性成分は、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質である。
【0052】
別の態様では、本発明は、主要成分として本発明のポリペプチド又は融合タンパク質と、薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤又は担体とを含んでなる、(a)コロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる疾患、又は(b)コロナウイルス感染症を治療及び/又は予防するための医薬組成物を提供する。一実施形態では、組成物中に存在する唯一の活性成分は、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質である。
【0053】
別の態様では、本発明はまた、治療有効量の本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の医薬組成物を対象に投与することによって、対象における免疫応答を惹起することを含んでなる、それを必要とする対象における免疫応答を惹起する方法もまた提供する。
【0054】
本発明はまた、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、ワクチン又は免疫刺激組成物をそれを必要とする対象に投与することを含んでなる、対象におけるコロナウイルスに対する免疫応答を誘導するための方法も提供する。
【0055】
本発明はまた、本明細書で定義されるキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物を対象に投与することを含んでなる、対象におけるコロナウイルスに対する体液性免疫応答を誘導する方法も提供する。好ましくは、誘導される免疫応答は、「バランスの取れた」Th1-Th2応答を含んでなる。
【0056】
本発明はまた、本明細書で定義されるキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物を対象に投与することを含んでなる、コロナウイルス感染に対して対象を免疫化する方法もまた提供する。
【0057】
本発明は、本明細書で定義されるキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物をそれを必要とする個体に投与することを含んでなる、コロナウイルスによる感染症に伴う症状の重症度を軽減又は最小化するための方法を提供し、ここで症状は、発熱、空咳、倦怠感、疼き及び痛み、咽喉痛、下痢、悪心と嘔吐、結膜炎、頭痛、味覚又は嗅覚の喪失、皮膚の発疹、又は手足の指の変色、呼吸窮迫又は息切れ、胸痛み又は圧迫感、及び発話又は運動の喪失からなる群から選択される。
【0058】
別の態様では、本発明はまた、(a)コロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる疾患、又は(b)それを必要とする対象におけるコロナウイルス感染症を治療及び/又は防止する方法も提供し、方法は、治療有効量の本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質又は本発明の組成物を対象に投与することによって、(a)コロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる疾患、又は(b)対象におけるコロナウイルス感染症を治療及び/又は防止することを含んでなる。
【0059】
任意の態様において、本発明の方法は、コロナウイルス感染のリスクがある対象を同定することをさらに含んでなる。
【0060】
別の態様では、本発明は、(a)コロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる疾患、又は(b)それを必要とする対象におけるコロナウイルス感染症を治療及び/又は予防する薬剤の調製における、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物の使用を提供する。好ましくは、薬剤は上気道への投与のために適合される。
【0061】
任意の実施形態において、本発明はまた、個体の上気道又はその領域、又は下気道又はその領域におけるコロナウイルス粒子の量を抑制又は低減するための、キメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物の使用も提供する。上気道の領域又は下気道の領域は、本明細書に記載の領域であってもよい(例えば、肺は下気道の領域である)。好ましくは、本発明はまた、コロナウイルスが検出される任意の組織又は器官におけるコロナウイルス粒子の量を抑制又は低減するための、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は組成物の使用も提供する。好ましくは、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物は、上気道での使用のために適合される。
【0062】
任意の態様において、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質は、上気道のみに投与される。換言すれば、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物は、下気道に投与されず、又は上気道と下気道の双方には投与(すなわち、全気道への投与)されない。
【0063】
さらなる態様では、本発明は、キメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物を個体の上気道に投与することによって、個体の肺におけるコロナウイルス粒子の量を抑制又は低減することを含んでなる、個体の肺におけるコロナウイルス粒子の量を抑制又は低減する方法を提供する。
【0064】
別の態様では、本発明は、発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物を個体の上気道に投与することによって、個体の上気道から肺へのコロナウイルス粒子の進行を抑制、遅延又は低減することを含んでなる、個体の上気道から肺へのコロナウイルス粒子の進行を抑制、遅延又は低減するための方法を提供する。
【0065】
本発明はさらに、個体の上気道から肺へのコロナウイルス粒子の進行を抑制、遅延、又は軽減するための薬剤の調製における、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質の使用を提供する。好ましくは、薬剤は上気道への投与のために適合される。
【0066】
任意の実施形態において、本発明は、個体の上気道から肺へのコロナウイルス粒子の進行を抑制、遅延又は低減するための、本発明のキメラタンパク質若しくは融合タンパク質、又は本発明の組成物の使用を提供する。好ましくは、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は組成物は、上気道での使用のために適合される。
【0067】
本発明の任意の方法又は使用において、組成物は凍結乾燥組成物であり、方法又は使用は、凍結乾燥組成物を再構成するステップ、及び好ましくはその再構成組成物を個体に投与するステップをさらに含んでなる。
【0068】
好ましくは、いずれの方法も、上気道から肺へのコロナウイルスの蔓延を軽減又は防止する。好ましくは、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は組成物は、上気道に保持される。換言すれば、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質又は組成物の上気道への投与は、肺へのウイルスの蔓延を防止又は低減する。
【0069】
本明細書の用法では、上気道には、鼻及び鼻道、鼻甲介、副鼻腔、咽頭、及び声帯皺襞(声帯)上部の喉頭の部分の領域のいずれか1つ又は複数が含まれてもよい。
【0070】
典型的には、下気道には、声帯皺襞下部の喉頭の部分、気管、気管支、及び細気管支のいずれか1つ又は複数の領域が含まれる。肺は下気道に含まれ得て、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、及び肺胞が含まれる。
【0071】
本発明の任意の態様において、上気道への投与は、鼻及び鼻道、副鼻腔、咽頭、及び声帯皺襞(声帯)上部の喉頭の部分のいずれか1つ又は複数への投与であってもよい。したがって、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質又は組成物は、(a)鼻及び鼻道に投与され、(b)鼻、鼻道、及び副鼻腔に投与され、(c)鼻、鼻道、副鼻腔、及び咽頭に投与され、又は(d)鼻、鼻道、副鼻腔、咽頭、及び声帯皺襞(声帯)上部の喉頭の部分に投与されてもよい。
【0072】
任意の態様において、コロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる疾患は呼吸器疾患である。
【0073】
一態様では、本発明は、対象における免疫応答を惹起する際に使用するための、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物を提供する。
【0074】
一態様では、本発明は、(a)コロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる疾患、又は(b)それを必要とする対象におけるコロナウイルス感染症の治療及び/又は予防に使用するための、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物を提供する。
【0075】
本発明の任意の態様において、コロナウイルス感染症は、アルファコロナウイルス属(Alphacoronavirus)、ベータコロナウイルス属(Betacoronavirus)、ガンマコロナウイルス属(Gammacoronavirus)又はデルタコロナウイルス属(Deltacoronavirus)のいずれかに由来するコロナウイルスによる感染であってもよい。好ましくは、コロナウイルスは、アルファコロナウイルス属(Alphacoronavirus)亜群クラスター1a及び1bの1つ、又はベータコロナウイルス属(Betacoronavirus)亜群クラスター2a、2b、2c、及び2dの1つに由来する。コロナウイルスは、ヒトに感染するあらゆるコロナウイルスであってもよい。例示的なコロナウイルスは、SARS-CoV、MERS-CoV、SARS-CoV-2、HCoV-NL63、HCoV-229E、HCoV-OC43及びHKU1であるが、コロナウイルスは本明細書に記載のいずれであってもよい。最も好ましくは、コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2による感染症である。
【0076】
別の態様では、本発明はまた、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物を非ヒト動物に投与することによって、動物においてコロナウイルスに向けられた抗体を生成させることを含んでなるコロナウイルスに向けられた抗体を取得するための方法も提供する。好ましくは、方法は、動物から抗体を単離することをさらに含んでなる。
【0077】
別の態様では、本発明はまた、コロナウイルスに向けられた抗体を含んでなる抗体製剤も提供し、ここで、抗体製剤は、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物を非ヒト動物に投与することによって動物においてコロナウイルスに向けられた抗体を生成させ、動物から抗体を単離することによって得られる。
【0078】
別の態様では、本発明はまた、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質をコード化する核酸分子も提供する。核酸は、DNA又はRNA(例えば、mRNA)であってもよい。
【0079】
好ましくは、核酸は、配列番号2、5、8、12、15、22又は23に対応するアミノ酸配列のいずれか1つ又は複数をコード化するヌクレオチド配列を有する。
【0080】
任意の実施形態において、キメラタンパク質又は融合タンパク質をコード化する核酸分子は、配列番号1、4、29、30、31又は32に対応するヌクレオチド配列を含んでなる。
【0081】
任意の実施形態において、このような核酸は、核酸がプロモーターと作動可能に連結された発現コンストラクトに含まれる。このような発現コンストラクトは、例えばプラスミなどのベクターであり得る。
【0082】
別の態様では、本発明はまた、本発明の核酸分子を含んでなるベクターも提供する。
【0083】
別の態様では、本発明はまた、本発明のベクター又は核酸を含んでなる細胞も提供する。本発明の細胞の例としては、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞又は哺乳類細胞が挙げられる。好ましくは、細胞は単離、実質的精製、又は組換えである。
【0084】
別の態様では、本発明はまた、本発明の細胞を含んでなる、動物又はそれに由来する組織も提供する。
【0085】
本明細書の用法では、文脈が他を必要とする場合を除き、「含んでなる(comprise)」という用語、及び「含んでなる(comprising)」、「含んでなる(comprises)」、及び「含んでなる(comprised)」などの用語の変形は、さらなる添加剤、構成要素、整数又はステップを排除することを意図するものではない。
【0086】
本発明のさらなる態様、及び先行する段落で説明された態様のさらなる実施形態は、添付図面を参照して、例示のために与えられた以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【
図1】変異株RBDタンパク質の生成である。(A)表面がスパイクタンパク質で覆われ、ACE2に結合してウイルスの侵入を惹起する受容体結合ドメイン(RBD)を強調した、SARS-CoV-2ウイルスのカーツーン図である。(B)様々なRBDタンパク質のカーツーン図である。(C-F)ゲル濾過サイズ排除クロマトグラフィーからのFPLC溶出プロファイルである。収集された画分が示されている。RBDモノマーがSuperdex-75カラムから溶出されたのに対し、RBDダイマー及びRBD-Fcタンパク質はSuperdex-200カラムから溶出された。(G)ゲル濾過後の4つのRBD変異株のSDS-PAGEゲルである。(H)ヒトACE2を、又は陰性対照としてのT細胞受容体(TCR)を発現するように一過性に形質移入された、RBD-Fc(マウスIgG1)又は抗TCR抗体で染色されたHEK293T細胞を示す、フローサイトメトリー等高線プロットである。
【
図2】RBDマウスIgG1-Fcダイマー(RBD)をワクチン接種されたマウスからの一次血清及び二次血清中のRBD特異的抗体応答である。BALB/cマウス(各群n=5)は、アジュバントなし(RBD)で投与される、又は0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cys(RBD P2C)又は0.2μgのα-GC(RBD a-GC)の存在下で投与される、0.1ナノモルのRBDダイマーを尾の付け根の皮下経路又はURTへの鼻腔内経路のどちらかを介してワクチン接種された。マウスは0日目にプライミングされ、28日目にブーストされた。1回目の注射の直前(事前採血)、2回目の注射の直前(1°)、及び2回目の注射の2週間後(2°)に採取された血清は、ELISAによってRBD特異的抗体について検査された。抗体力価は、ODが0.3となる血清の最高希釈率(log
10)の逆数として計算された。個々の動物からの抗体力価は、横線で示される各グループの平均値で表される。
【
図3】RBDマウスIgG1-Fcダイマー(RBD)をワクチン接種されたマウスからの一次血清及び二次血清中のSARS-CoV-2中和抗体力価である。
図2に示すBALB/cマウスからの血清もまた、SARS-CoV-2中和抗体について評価された。2回目の注射の直前(1°)及び2回目の注射の2週間後(2°)に採取された血清は、微量中和アッセイを用いて中和抗体について検査された。個々の血清サンプルの連続希釈液は、100 TCID
50のSARS-CoV-2武漢指標株VIC01と共に1時間インキュベートされ、96ウェルプレートにセットアップしたベロ細胞単層を使用して、残留ウイルス感染力が評価された。ウイルス細胞変性効果は、5日目に測定された。中和抗体力価は、Reed/Muench法(Reed,L.J.and Muench,H.(1938)A Simple Method of Estimating Fifty Percent Endpoints.American Journal of Hygiene,27,493-497)を用いて計算された。個々の動物からの中和抗体力価は、横線で示される各グループの平均値で表される。
【
図4】RBDマウスIgG1-Fcダイマー(RBD)をワクチン接種されたマウスからの血清の中和活性を評価する、サロゲートウイルス中和試験である。
図2に示すBALB/cマウスからの二次血清もまた、サロゲートウイルス中和試験を使用してSARS-CoV-2中和抗体について評価された。固定ACE2受容体でコーティングされたウェルへの、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合SARS-CoV-2 RBDタンパク質(HRP-RBD)の結合を阻害する血清抗体の能力が、1:10の血清希釈でELISA形式で検査された。光学濃度の読み取りによって対照血清と比較して、血清がHRP-RBDのACE2受容体への結合を阻害する程度が判定され、20%以上の阻害が陽性結果と見なされた。個々の動物のACE-2に対するRBDの結合阻害パーセントが示され、各群の平均値は横線で示される。
【
図5】RBDマウスIgG1-Fcダイマー(RBD)をワクチン接種されたマウスからの血清サンプルと比較した、ヒト回復期患者サンプル(hCov)における、SARS-CoV-2 RBDに対する血清学的応答である。RBD特異的抗体応答、及び微量中和アッセイ及びサロゲートウイルス中和試験によって評価された中和抗体応答が、RBDワクチン接種されたマウスからの血清と、hCov患者からの血漿サンプルとの間で比較された。マウス血清サンプルとhCov血漿サンプルは、別々の実験で検査された。
【
図6】SARS-CoV-2スパイクタンパク質における変異、及びヒト回復期血漿サンプル(hCov)による、及びRBDマウスIgG1-Fcダイマー(RBD)をワクチン接種されたマウスからの血清による、SARS-CoV-2変異株の中和である。(A)スパイクコード変異と(頻度)10を超える局所事例、RBD領域の変異が赤で示される。(B)3つの回復期患者血漿サンプル(DD2、DD3、及びDD4)が、501Y及び477N変異体を中和できないか、又は中和能力が低下していることを示す、SARS-CoV-2中和アッセイである。(C)RBDマウスIgG1-Fcダイマーワクチンで免疫化されたマウスからの血清が、P2C又はa-GCアジュバントの存在下で、501Y及び477N変異体(VIC2089及びVIC4881)及び元のVIC01株を中和することを示す、SARS-CoV-2中和アッセイである。
【
図7】アジュバントあり又はなしでRBDマウスIgG1-Fcダイマーをワクチン接種されたマウスの血清中の抗体のRBD変異株に対する結合の幅である。RBDマルチプレックスビーズアレイアッセイを用いて、PEG-R4-Pam-2-Cys(RBD P2C)又はα-GC(RBD a-GC)アジュバントの存在下で投与される、又はアジュバントなし(RBD)で投与される、RBDマウスIgG1-Fcダイマーワクチンの2回目の皮下投与の4週間後にマウスから採取された血清中の抗体が、18種類のRBD変異株に対する結合について検査された。結合は、各変異株に対する各血清サンプルの最大半量有効濃度(EC
50)として示される。
【
図8】VIC2089(N501Y/D614G)を使用して確立された、SARS-CoV-2マウスチャレンジモデルである。BALB/cマウス及びC57BL/6マウスは、指標SARS-CoV-2株VIC01又はVIC2089(N501Y/D614G)変異株のどちらかで、煙霧剤チャレンジされた。チャレンジから3日後にマウスを殺処分し、右肺葉を採取して均質化し、上清を収集して-80℃で保存した。感染性ウイルスの力価(TCID
50;50%組織培養感染用量)は、ベロ細胞単層上の上清を滴定し、5日後にCPEを評価することによって判定された。
【
図9】RBDマウスIgG1-Fcダイマーをワクチン接種されたマウスからの血清による、指標SARS-CoV-2株VIC01(WT)及びVIC2089(D614G/N501Y)変異株の中和の比較である。アジュバントなし(RBD)で投与される、又はPEG-R4-Pam-2-Cys(RBD P2C)又はα-GC(RBD a-GC)の存在化で投与される、RBDダイマーの2回目の注射に続いて4週間後に採取された血清は、VIC01(WT)及びVIC2089(D614G/N501Y)変異株に対する中和抗体について、微量中和アッセイを用いて試験された。ウイルスCPEは、5日目に測定された。中和抗体力価は、Reed/Muench法を用いて計算された。個々の動物からの中和抗体力価は、横線で示される各グループの平均値で表される。
【
図10】RBDマウスIgG1-Fcダイマーをワクチン接種されて、VIC2089(D614G/N501Y)変異株でチャレンジされたマウスの肺のウイルス力価である。RBDマウスIgG1-Fcワクチン単独(RBD)で、又はPEG-R4-Pam-2-Cys(RBD P2C)又はα-GC(RBD a-GC)アジュバントありで免疫化されたマウスは、2回目のワクチン投与から103日後にVIC2089(D614G/N501Y)変異株でチャレンジされた。年齢をマッチさせたワクチン未接種の対照マウスも、同時にチャレンジされた。チャレンジから3日後にマウスを殺処分し、右肺葉を採取して均質化し、上清を収集して-80℃で保存した。肺における感染性ウイルスの力価(TCID
50)は、ベロ細胞単層上の上清を滴定し、5日後にCPEを評価することによって判定された。
【
図11】RBDマウスIgG1-Fcダイマーをワクチン接種されて、VIC2089(D614G/N501Y)変異株でチャレンジされたマウスの上気道防御の尺度としての、鼻甲介のウイルス力価である。RBDマウスIgG1-Fcワクチン単独(RBD)で、又はPEG-R4-Pam-2-Cys(RBD P2C)又はα-GC(RBD a-GC)アジュバントありで免疫化され、VIC2089(D614G/N501Y)変異株でチャレンジされたマウスの肺のウイルス力価の評価に加え、上気道防御の尺度として、同じマウスの鼻甲介のウイルス力価もまた評価された。チャレンジから3日後にマウスを殺処分し、鼻甲介を採取して均質化し、上清を収集して-80℃で保存した。鼻甲介における感染性ウイルスの力価(TCID
50)は、ベロ細胞単層上の上清を滴定し、5日後にCPEを評価することによって判定された。
【
図12】ウイルスチャレンジによる、RBDマウスIgG1-Fc(RBD)ダイマーワクチンの筋肉内投与の防御効率の評価である。10匹のBALB/cマウス群は、0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cys(RBD P2C)と共に投与される0.1ナノモルのRBDダイマーを筋肉内ワクチン接種された。マウスは0日目にプライミングされ、28日目にブーストされて、4週間後にVIC2089(D614G/N501Y)変異株でチャレンジされた。年齢をマッチさせた5匹のワクチン未接種の対照BALB/cマウスもまた、同時にチャレンジされた。チャレンジから3日後にマウスを殺処分し、右肺葉と鼻甲介を採取して均質化し、上清を収集して-80℃で保存した。組織における感染性ウイルスの力価(TCID
50)は、ベロ細胞単層上の上清を滴定し、5日後にCPEを評価することによって判定された。
【
図13】ウイルスチャレンジによる、C57BL/6マウスへのRBDマウスIgG1-Fc(RBD)ダイマーワクチンの筋肉内投与の防御効率の評価である。5匹のC57BL/6マウス群は、0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cys(RBD P2C)と共に投与される0.1ナノモルのRBDダイマーを筋肉内ワクチン接種された。マウスは0日目にプライミングされ、14日目にブーストされて、3ヶ月後にVIC2089(D614G/N501Y)変異株でチャレンジされた。年齢をマッチさせた5匹のワクチン未接種の対照C57BL/6マウスもまた、同時にチャレンジされた。チャレンジから3日後にマウスを殺処分し、右肺葉と鼻甲介を採取して均質化し、上清を収集して-80℃で保存した。組織における感染性ウイルスの力価(TCID
50)は、ベロ細胞単層上の上清を滴定し、5日後にCPEを評価することによって判定された。
【
図14】RBDマウスFcダイマー、RBDヒトFcダイマー、又はRBDタンデムダイマーをワクチン接種されたマウスの一次血清及び二次血清中のRBD特異的抗体応答の比較である。(A)ワクチン接種に使用される3つのRBDダイマー抗原の概略図である。(B)C57BL/6マウス(各群5匹)は、全て0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cysと共に投与される、0.1ナノモルのRBDマウスFcダイマー、RBDヒトFcダイマー、又は一本鎖ダイマーのいずれかを筋肉内ワクチン接種された。マウスは0日目にプライミングされ、28日目にブーストされた。1回目の注射の直前(事前採血)、2回目の注射の直前(1°)、及び2回目の注射の2週間後(2°)に採取された血清は、ELISAによってRBD特異的抗体について検査された。抗体力価は、ODが0.3となる血清の最高希釈率(log
10)の逆数として計算された。個々の動物からの抗体力価は、横線で示される各グループの平均値で表される。
【
図15】アジュバントとしてのPEG-R4-Pam-2-Cysと共に投与される各RBD抗原によって惹起される、RBD特異的抗体応答の持続性である。
図14に示すC57BL/6マウスの血清中のRBD特異的抗体応答は、42日目、63日目、及び84日目に測定され、PEG-R4-Pam-2-Cys(P2C)と共に投与される3つの異なるRBD抗原によって誘導された抗体応答の持続性が評価された。抗体力価は、ODが0.3となる血清の最高希釈率(log
10)の逆数として計算された。個々の動物からの抗体力価は、横線で示される各グループの平均値で表される。
【
図16】MF59(登録商標)又はPEG-R4-Pam-2-Cysのどちらかを配合した、RBDマウスIgG1-Fcダイマーをワクチン接種されたマウスの血清中のRBD特異的抗体応答の比較である。C57BL/6マウスは、0.1ナノモルのRBDマウスFcダイマーと0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cysで、又は0.1ナノモルのRBDマウスFcダイマーとMF59(登録商標)(50%vol/vol)で、筋肉内免疫化された。マウスは1回目の免疫化の前(事前採血)、及び14日目(1°)に採血され、14日目又は28日目のどちらかでブーストされ、どちらの場合も2回目の免疫化(2°)の2週間後に再採血された。総RBD特異的抗体力価は、ELISAによって判定された。抗体力価は、ODが0.3となる血清の最高希釈率(log
10)の逆数として計算された。個々の動物からの抗体力価は、横線で示される各グループの平均値で表される。
【
図17】MF59(登録商標)又はPEG-R4-Pam-2-Cysのどちらかを配合した、RBDマウスIgG1-Fcダイマー又はRBD一本鎖ダイマーをワクチン接種されたマウスの血清中のRBD特異的抗体応答の比較である。C57BL/6マウスは、どちらも0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cys(P2C)又はMF59(登録商標)(50%vol/vol)のどちらかを配合した、10μgのRBDマウスFcダイマーで、又は10μgのRBD一本鎖ダイマーで、筋肉内免疫化された。マウスは0日目にプライミングされ、14日目にブーストされた。1回目の注射の直前(事前採血)、2回目の注射の直前(1°)、及び2回目の注射の4週間後(2°)に採取された血清は、ELISAによってRBD特異的抗体について検査された。抗体力価は、ODが0.3となる血清の最高希釈率(log
10)の逆数として計算された。個々の動物からの抗体力価は、横線で示される各グループの平均値で表される。
【
図18】PEG-R4-Pam-2-Cysを配合した、RBDモノマー又はRBDマウスIgG1-Fcダイマーをワクチン接種されたマウスの血清中のRBD特異的抗体応答の比較である。10匹のBALB/cマウス群は、0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cys(P2C)を配合した0.2ナノモルのRBDモノマー、又は0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cys(P2C)を配合した0.1ナノモルのRBDマウスFcダイマーのどちらかで、筋肉内免疫化された。マウスは0日目にプライミングされ、28日目にブーストされた。1回目の注射の直前(事前採血)、2回目の注射の直前(1°)、及び2回目の注射の2週間後(2°)に採取された血清は、ELISAによってRBD特異的抗体について検査された。抗体力価は、ODが0.3となる血清の最高希釈率(log
10)の逆数として計算された。個々の動物からの抗体力価は、横線で示される各グループの平均値で表される。
【
図19】PEG-R4-Pam-2-Cysを配合したRBDマウスIgG1-Fcダイマーによって誘導される防御効率と、PEG-R4-Pam-2-Cysを配合したRBDモノマーによって誘導される防御効率との比較である。
図18に示す10匹のBALB/cマウス群は、28日目のブーストから4週間後にVIC2089(D614G/N501Y)変異株でチャレンジされた。年齢をマッチさせた5匹のワクチン未接種の対照BALB/cマウスもまた、同時にチャレンジされた。チャレンジから3日後にマウスを殺処分し、右肺葉と鼻甲介を採取して均質化し、上清を収集して-80℃で保存した。組織における感染性ウイルスの力価(TCID
50)は、ベロ細胞単層上の上清を滴定し、5日後にCPEを評価することによって判定された。
【
図20】WT RBD-mFcと、PEG-R4-Pam-2-Cys又はMF59(登録商標)のどちらかとを筋肉内ワクチン接種されたマウスにおける、総応答及びnAb応答である。(A~D)WT RBDモノマーに反応する総マウスIgである。(A及びB)0日目及び112日目に2用量体制で接種されたマウスの一次(8、15、22、41、62、及び90日)及び二次(128日)血清における、総WT RBD抗体力価である。ELISA力価は、吸光度0.3を与える抗体希釈率の逆数(log10)として表される。これは、結合のバックグラウンドレベルの少なくとも5倍に相当する。(C及びD)0日目22日目及び112日目に2用量体制で接種されたマウスの一次(8、15、及び22日)、二次(41、62、90、及び111日)及び三次(132日)血清中の総WT RBD抗体力価である。ELISA力価は、吸光度0.3を与える抗体希釈率の逆数(log10)として表される。これは、結合のバックグラウンドレベルの少なくとも5倍に相当する。(E)WT指標株(VIC01)を使用した微量中和アッセイによる中和能力である。MF59(登録商標)と合わせたWT RBD-mFcを筋肉内ワクチン接種されたマウスからの、二次(62日目及び111日目)及び三次(132日目)血清の中和力価。半数阻害濃度(IC50)は、ウェルの50%でCPEを完全に防止する血清の逆希釈に基づいて計算され、Reed-Muench式によって計算された。LOD:検出限界
【
図21】PEG-R4-Pam-2-Cysと合わせたWT RBD-mFc、又はPEG-R4-Pam-2-Cysと合わせたWT RBD-nFcを筋肉内ワクチン接種されたマウスにおける、総応答及びnAb応答である。(A~B)WT RBDモノマーに反応する総マウスIgである。WT RBDマウスFc、又はPEG-R4-Pam-2-Cysと組み合わせたWT RBDヒトFcを筋肉内ワクチン接種されたBALB/cマウス(A)及びC57BL/6マウス(B)からの、一次血清(27日目)及び二次血清(41、55、76、及び115日目)における総WT RBD抗体力価。ELISA力価は、吸光度0.3を与える抗体希釈率の逆数(log10)として表される。これは、結合のバックグラウンドレベルの少なくとも5倍に相当する。(C)WT指標株(VIC01)を使用した微量中和アッセイによる中和能力である。WT RBDマウスFc、又はPEG-R4-Pam-2-Cysと組み合わせたWT RBDヒトFcを筋肉内ワクチン接種されたC57BL/6マウスからの二次(41日)血清の中和力価である。半数阻害濃度(IC50)は、ウェルの50%でCPEを完全に防止する血清の逆希釈に基づいて計算され、Reed-Muench式によって計算された。
【
図22】VIC2089(N501Y/D614G)でチャレンジされたC57BL/6マウスの肺における、ウイルス力価である。0日目及び28日目に、PEG-R4-Pam-2-Cysと共にWT RBDマウスFc、又はPEG-R4-Pam-2-Cysと共にWT RBDヒトFcを筋肉内ワクチン接種されたマウスは、139日目(2回目の免疫から111日後)にVIC2089で煙霧剤チャレンジされた。年齢と性別をマッチさせたワクチン未接種の対照C57BL/6マウスもまた、同時にチャレンジされた。チャレンジから3日後にマウスは殺処分され、ベロ細胞単層上の肺上清が滴定され、5日後にウイルスCPEを測定することによって、個々のマウスの肺における感染性ウイルスの力価(TCID50)が判定された。
【
図23】MF59(登録商標)と合わせたWT RBD-mFcを筋肉内ワクチン接種されたマウスにおける、総応答及びnAb応答である。(A)MF59(登録商標)を配合した10μgのWT RBD-hFcを筋肉内ワクチン接種されたマウスからの、一次血清(1°、20日目)及び二次血清(2°、33日目)における、総WT RBD抗体力価である。ELISA力価は、吸光度0.3を与える抗体希釈率の逆数(log10)として表される。これは、結合のバックグラウンドレベルの少なくとも5倍に相当する。(B)微量中和アッセイによるWT指標株VIC01又はベータ変異株B.1.351の中和である。MF59(登録商標)と合わせたWT RBD-hFcを筋肉内ワクチン接種されたマウスからの二次血清(45日目)の中和力価。半数阻害濃度(IC50)は、ウェルの50%でCPEを完全に防止する血清の逆希釈に基づいて計算され、Reed-Muench式によって計算された。
【
図24】VIC2089(N501Y/D614G)でチャレンジされたマウスの肺及び鼻甲介における、ウイルス力価である。0日目及び21日目に、MF59(登録商標)を配合した10μgのWT RBD-hFcを筋肉内ワクチン接種されたマウスは、2回目の免疫化から60日目にVIC2089で煙霧剤チャレンジされた。年齢と性別をマッチさせたワクチン未接種の対照マウスもまた、同時にチャレンジされた。チャレンジから3日後にマウスは殺処分され、ベロ細胞単層上の肺上清が滴定され、5日後にウイルスCPEを測定することによって、個々のマウスの肺における感染性ウイルスの力価(TCID50)が判定された。
【
図25】MF59(登録商標)と合わせたベータRBD-mFcを筋肉内ワクチン接種されたマウスにおける、総応答及びnAb応答である。(A)10μgのベータRBD-hFc、又はMF59(登録商標)を配合した3μgのベータRBD-hFcを筋肉内ワクチン接種されたマウスからの一次血清(1°、20日目)及び二次血清(2°、33日目)中の総WT抗体力価である。ELISA力価は、吸光度0.3を与える抗体希釈率の逆数(log10)として表される。これは、結合のバックグラウンドレベルの少なくとも5倍に相当する。(B)微量中和アッセイによるWT指標株VIC01又はベータ変異株B.1.351の中和である。10μgのベータRBD-hFc、又はMF59(登録商標)を配合した3μgのベータRBD-hFcを筋肉内ワクチン接種されたマウスからの二次血清(33日目)の中和力価。半数阻害濃度(IC50)は、ウェルの50%でCPEを完全に防止する血清の逆希釈に基づいて計算され、Reed-Muench式によって計算された。
【
図26】MF59(登録商標)又はベータRBD-hFcと合わせたWT-RBD-hFCで免疫化されたマウスにおける、総Ab応答である。0日目及び21日目にMF59(登録商標)存在下で、(10、3、1又は0.3μg)のWT RBD-hFc(A及びB)、又はベータRBD-hFc(C及びD)を筋肉内ワクチン接種されたC57BL/6マウスからの一次血清(1°、20日目;A及びC)及び二次血清(2°、37日目;B及びD)中の総WT RBD抗体力価。ELISA力価は、吸光度0.3を与える抗体希釈率の逆数(log10)として表される。これは、結合のバックグラウンドレベルの少なくとも5倍に相当する。
【
図27】MF59(登録商標)と合わせたWT-RBD-hFCで、又はMF59(登録商標)と合わせたベータRBD-hFcで免疫化されたマウスにおける、WT RBDモノマー及びベータRBDモノマーに対するAb応答である。0日目及び21日目にMF59(登録商標)存在下で、(10、3、1又は0.3μgの)WT RBD-hFc、又はベータRBD-hFcを筋肉内ワクチン接種されたC57BL/6マウスの二次血清(56日目)中のWT RBD特異的抗体力価(A)、及びベータRBD特異的抗体力価(B)。ELISA力価は、吸光度0.3を与える抗体希釈率の逆数(log10)として表される。これは、結合のバックグラウンドレベルの少なくとも5倍に相当する。
【
図28】MF59(登録商標)と合わせたWT-RBD-hFCで、又はMF59(登録商標)と合わせたベータRBD-hFcで免疫化されて、VIC2089(N501Y/D614G)又はベータ変異株B.1.351でチャレンジされた、C57BL/6マウスの肺におけるウイルス力価である。0日目及び21日目にMF59(登録商標))の存在下で、10、3、1又は0.3mgのWT RBD-hFc、又はベータRBD-hFcを筋肉内ワクチン接種されたマウスは、2回目の免疫化の55日後又は62日後に、それぞれVIC2089(A)、又はベータ変異株B.1.351(B)で煙霧剤チャレンジされた。年齢と性別マッチさせたワクチン未接種の対照C57BL/6マウスもまた、対応する日にそれぞれチャレンジされた。チャレンジから3日後にマウスは殺処分され、ベロ細胞単層上の肺及び鼻の上清が滴定され、5日後にウイルス細胞変性効果(CPE)を測定することによって、個々のマウスの肺における感染性ウイルスの力価(TCID50;50%組織培養感染用量)が判定された。LOD:検出限界
【
図29】ハムスターにおける抗RBD抗体力価である。OD値0.3を与える血清の最高希釈の逆数として計算された、ハムスターにおける抗RBD抗体力価である。14日目のPBS対照データは、試験に含めなかった。
【
図30】CSUハムスター研究:WT株に対する3回目の投与から14日後に採取された78日目の血清を試験する、プラーク減少中和力価(PRNT)である。
【
図31】MF59(登録商標)と合わせたWT RBD-hFc、又はMF59(登録商標)と合わせたベータRBD-hFcで免疫化されて、WT(WA-01/USA)又はベータ変異株(B.1.351)ウイルスでチャレンジされた、ハムスターの中咽頭拭き取り検体及び肺におけるウイルス力価である。ハムスターは、0、21、及び64日目に、30又は10μgのWT RBD-hFc、又はMF59(登録商標)を配合した30、10又は3μgのベータRBD-hFcを筋肉内ワクチン接種され、85日目に、ケタミン-キシラジン麻酔下で、100μlの容量で1×10
4pfuのウイルスを鼻腔内滴下注入することによってチャレンジされた。使用されたSARS-CoV-2チャレンジ株はWA-01/USA(WT)及びベータ変異株(B.1.351)であり、ハムスターはチャレンジから3日後に殺処分された。ウイルス負荷は、(A)チャレンジの3日後、動物を安楽死させる直前に採取された中咽頭拭き取り検体、及び(B)チャレンジの3日後に調製された頭蓋肺ホモジネート中で測定された。ウイルス力価は、ベロ細胞のコンフルエントな単層上で、連続10倍希釈を行い、翌日プラークを計数することによって判定された。力価は、プラーク形成単位(pfu)として表される。LoD:検出限界
【
図32】WT SARS-CoV-2スパイク抗原に特異的なラット抗体力価である。0、22、及び43日目に、生理食塩水、又は50μgのベータRBD-hFc、又はMF59(登録商標)アジュバントと合わせた50μgのベータRBD-hFcを筋肉内ワクチン接種された30匹のラット群からの血清中のWTスパイクに対するIgG抗体力価が、各列の下に示される。44~45日目又は56日目の毒性の終了時に、各ラットから終末血液サンプルを採取し、血清に処理して、ELISAによってSARS-CoV-2スパイク特異的IgG抗体応答が評価された。
【
図33】WT RBDモノマーに反応する総マウスIgである。PEG-R4-Pam-2-Cysと合わせたRBD-hFcの新鮮に調製した製剤、又は異なる温度で保存したPEG-R4-Pam-2-Cysと合わせたRBD-hFc凍結乾燥製剤を鼻腔内ワクチン接種されたマウスからの、(A)一次血清(21日目)及び(B)二次血清(43日目)中の総WT RBD抗体力価。ELISA力価は、吸光度0.3を与える抗体希釈度の逆数(log
10)として表される。これは、結合のバックグラウンドレベルの少なくとも5倍に相当する。
【
図34】中和能力である。(A)微量中和アッセイによるWT指標株VIC01の中和である。PEG-R4-Pam-2-Cysと合わせた新鮮に調製したRBD-hFc製剤、又は異なる温度で保存したPEG-R4-Pam-2-Cysと合わせたRBD-hFc凍結乾燥製剤を鼻腔内ワクチン接種されたマウスからの、二次血清(70日目)の中和力価。半数阻害希釈率(ID50)は、ウェルの50%でCPEを完全に防止する血清の逆希釈に基づいて計算され、Reed-Muench式によって計算された。(B)GenScriptサロゲートウイルス中和試験(sVNT)を使用して評価された、ACE2に対するRBDの結合阻害パーセントである。新鮮に調製したRBD-hFc/PEG-R4-Pam-2-Cys製剤、又は異なる温度で保存した凍結乾燥RBD-hFc/PEG-R4-Pam-2-Cys製剤を鼻腔内ワクチン接種されたマウスからの、二次血清(43日目)のsVNT力価である。
【
図35】VIC2089(N501Y/D614G)でチャレンジされたマウスの肺及び鼻甲介における、ウイルス力価である。0日目及び30日目に、PEG-R4-Pam-2-Cysと合わせたWT RBD-hFc、又は40℃で1か月間保存されたPEG-R4-Pam-2-Cysと合わせた凍結乾燥WT RBD-hFcを鼻腔内ワクチン接種されたマウスは、2回目の免疫化の82日後にVIC2089で煙霧剤チャレンジされた。年齢と性別をマッチさせたワクチン未接種の対照マウスもまた、同時にチャレンジされた。チャレンジから3日後にマウスは殺処分され、ベロ細胞単層上の肺(A)及び鼻甲介(B)の上清が滴定され、5日後にウイルスCPEを測定することによって、個々のマウスの肺及び鼻甲介における感染性ウイルスの力価(TCID50)が判定された。
【
図36】中和能力である。微量中和アッセイによるWT指標株VIC01及びベータ変異株B1.351の中和。新鮮に調製したPEG-R4-Pam-2-Cysと合わせたWT RBD-hFc、又は40℃で1か月間保存したPEG-R4-Pam-2-Cysと合わせた凍結乾燥WT RBD-hFcを鼻腔内ワクチン接種されたマウスからの二次血清(70日目)の中和力価。半数阻害希釈率(ID50)は、ウェルの50%でCPEを完全に防止する血清の逆希釈に基づいて計算され、Reed-Muench式によって計算された。
【発明を実施するための形態】
【0088】
配列の説明
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
本明細書で開示され定義される本発明は、本文又は図面で言及される又はそれから明らかな2つ以上の個々の特性の全ての代替の組み合わせに及ぶことが理解されるであろう。これらの全ての異なる組み合わせは、発明の様々な代替態様を構成する。
【0107】
次に、本発明の特定の実施形態を詳細に参照する。本発明を実施形態と併せて説明するが、本発明をこれらの実施形態に限定する意図はないことが理解されるであろう。逆に、本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれる全ての代替物、修正物、及び等価物を網羅することを意図している。
【0108】
当業者であれば、本発明の実施に使用され得る、本明細書に記載のものと類似した又は同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。本発明は、記載された方法及び材料に、どのようにも制限されない。本明細書で開示され定義される本発明は、本文又は図面で言及される又はそれから明らかな2つ以上の個々の特性の全ての代替の組み合わせに及ぶことが理解されるであろう。これらの全ての異なる組み合わせは、発明の様々な代替態様を構成する。
【0109】
本明細書で参照される全ての特許及び刊行物は、それらの全体が参照により援用される。
【0110】
本明細書を解釈する目的では、単数形で使用される用語には複数形も含まれ、逆もまた同様である。
【0111】
本明細書の式で使用される一般化学用語は、それらの通常の意味を有する。
【0112】
本発明者らは、アジュバント(例えば、α-GalCer又はPEG-R4-Pam-2-Cys)と組み合わされると、一連のSARS-CoV-2株に対して幅広く防御する強力な中和抗体応答を惹起する、新規の組換えRBDキメラタンパク質又は融合タンパク質ワクチンを開発した。注目すべきことに、本発明者らは、アジュバント(例えば、α-GalCer又はPEG-R4-Pam-2-Cys)を含むワクチン組成物の、鼻腔内投与による上気道をはじめとする様々な経路を介したワクチン接種が、上気道(鼻腔)及び下気道の双方におけるウイルス複製から防御する強力な中和抗体応答を惹起することを示した。広範な防御は、潜在的に致命的な合併症をもたらし得る播種性肺感染に対する防御を提供する。さらに、本発明者らは、ワクチン接種によって誘導される免疫が少なくとも3ヶ月持続し、広範な防御が維持されて変異株が回避されることを見出した。
【0113】
コロナウイルス
「コロナウイルス」又は「CoV」という用語は、SARS-CoV-2、MERS-CoV、及びSARS-CoV;並びにHCoV-NL63、HCoV-229E、HCoV-OC43、及びHKU1などの風土病コロナウイルスをはじめとするが、これらに限定されるものではない、コロナウイルスファミリーの任意のウイルスを指す。SARS-CoV-2は、中国の武漢で始まった深刻な大流行の原因として特定され、世界の他の地域に急速に蔓延した、新たに出現したコロナウイルスを指す。SARS-CoV-2は、2019-nCoV及び武漢コロナウイルスとしても知られている。これは、ウイルススパイクタンパク質を介して、ヒト宿主細胞受容体アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合する。スパイクタンパク質はまたTMPRSS2に結合して切断され、ウイルスの膜融合のためにスパイクタンパク質を活性化する。
【0114】
コロナウイルス科(Coronaviridae)のコロナウイルス亜科及びニドウイルス目(Nidovirales)(国際ウイルス分類委員会)。この亜科は、それらの系統関係とゲノム構造に基づいて、アルファコロナウイルス属(Alphacoronavirus)、ベータコロナウイルス属(Betacoronavirus)、ガンマコロナウイルス属(Gammacoronavirus)、及びデルタコロナウイルス属(Deltacoronavirus)の4つの属からなる。亜科クラスターは、アルファコロナウイルス属(Alphacoronavirus)の1a及び1b、及びベータコロナウイルス属(Betacoronavirus)の2a、2b、2c、及び2dと標識される。アルファコロナウイルスとベータコロナウイルスは、哺乳類にのみ感染する。ガンマコロナウイルスとデルタコロナウイルスは鳥に感染するが、それらのいくつかは哺乳類にも感染し得る。アルファコロナウイルス及びベータコロナウイルスは通常、ヒトでは呼吸器疾患を引き起こし、動物では胃腸炎を引き起こす。3つの高病原性ウイルス、SARS-CoV、MERS-CoV及びSARS-CoV-2は、ヒトでは重度の呼吸器症候群を引き起こし、その他の4つのヒトコロナウイルス(HCoV-NL63、HCoV-229E、HCoV-OC43、及びHKU1)は、免疫正常な宿主に軽度の上気道疾患のみを引き起こすが、それらのいくつかは、乳児、幼児、及び高齢者に重度の感染症を引き起こし得る。アルファコロナウイルス及びベータコロナウイルスは、家畜に大きな疾病負担をもたらし得るが;これらのウイルスとしては、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、ブタ腸内下痢ウイルス(PEDV)、及び最近出現したブタ急性下痢症候群コロナウイルス(SADS-CoV)が挙げられる。現在の配列データベースに基づいて、全てのヒトコロナウイルスは動物起源であり:SARS-CoV、MERS-CoV、SARS-CoV-2、HCoV-NL63、及びHCoV-229Eは、コウモリ起源であると考えられており、HCoV-OC43及びHKU1は、齧歯類起源であると考えられている。
【0115】
コロナウイルスには、抗原グループI、II、IIIがある。コロナウイルスの非限定的例としては、SARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、ヒト呼吸器コロナウイルス、ブタ呼吸器コロナウイルス、イヌコロナウイルス、ネコ腸内コロナウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス、ウサギコロナウイルス、マウス肝炎ウイルス、ラット唾液腺涙腺炎ウイルス、ブタ血液凝集性脳脊髄炎ウイルス、牛コロナウイルス、鳥類感染性気管支炎ウイルス、及び七面鳥コロナウイルス、並びに本明細書に記載される任意のその他のもの、及びCui,et al.Nature Reviews Microbiology volume 17,pages181-192(2019);及びShereen et al.Journal of Advanced Research,Volume 24,July 2020(published online 16 March 2020),Pages 91-98で言及されるものが挙げられる。
【0116】
亜群1aコロナウイルスの非限定的例としては、FCov.FIPV.79.1146.VR.2202(GenBank受入番号NV_007025)、伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)(GenBank受入番号NC_002306;GenBank受入番号Q811789.2;GenBank受入番号DQ811786.2;GenBank受入番号DQ811788.1;GenBank受入番号DQ811785.1;GenBank受入番号X52157.1;GenBank受入番号AJ011482.1;GenBank受入番号KC962433.1;GenBank受入番号AJ271965.2;GenBank受入番号JQ693060.1;GenBank受入番号KC609371.1;GenBank受入番号JQ693060.1;GenBank受入番号JQ693059.1;GenBank受入番号JQ693058.1;GenBank受入番号JQ693057.1;GenBank受入番号JQ693052.1;GenBank受入番号JQ693051.1;GenBank受入番号JQ693050.1)、ブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)(GenBank受入番号NC_001961.1;GenBank受入番号DQ811787)、並びに現在知られている(例えば、GenBank(登録商標)データベースに見いだされ得る)、又は後日同定される、任意のその他の亜群1aコロナウイルス、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0117】
亜群1bコロナウイルスの非限定的例としては、BtCoV.1A.AFCD62(GenBank受入番号NC_010437)、BtCoV.1B.AFCD307(GenBank受入番号NC_010436)、BtCov.HKU8.AFCD77(GenBank受入番号NC_010438)、BtCoV.512.2005(GenBank受入番号DQ648858)、ブタ流行性下痢ウイルスPEDV.CV777(GenBank受入番号NC_003436、GenBank受入番号DQ355224.1、GenBank受入番号DQ355223.1、GenBank受入番号DQ355221.1、GenBank受入番号JN601062.1、GenBank受入番号N601061.1、GenBank受入番号JN601060.1、GenBank受入番号JN601059.1、GenBank受入番号JN601058.1、GenBank受入番号JN601057.1、GenBank受入番号JN601056.1、GenBank受入番号JN601055.1、GenBank受入番号JN601054.1、GenBank受入番号JN601053.1、GenBank受入番号JN601052.1、GenBank受入番号JN400902.1、GenBank受入番号JN547395.1、GenBank受入番号FJ687473.1、GenBank受入番号FJ687472.1、GenBank受入番号FJ687471.1、GenBank受入番号FJ687470.1、GenBank受入番号FJ687469.1、GenBank受入番号FJ687468.1、GenBank受入番号FJ687467.1、GenBank受入番号FJ687466.1、GenBank受入番号FJ687465.1、GenBank受入番号FJ687464.1、GenBank受入番号FJ687463.1、GenBank受入番号FJ687462.1、GenBank受入番号FJ687461.1、GenBank受入番号FJ687460.1、GenBank受入番号FJ687459.1、GenBank受入番号FJ687458.1、GenBank受入番号FJ687457.1、GenBank受入番号FJ687456.1、GenBank受入番号FJ687455.1、GenBank受入番号FJ687454.1、GenBank受入番号FJ687453 GenBank受入番号FJ687452.1、GenBank受入番号FJ687451.1、GenBank受入番号FJ687450.1、GenBank受入番号FJ687449.1、GenBank受入番号AF500215.1、GenBank受入番号KF476061.1、GenBank受入番号KF476060.1、GenBank受入番号KF476059.1、GenBank受入番号KF476058.1、GenBank受入番号KF476057.1、GenBank受入番号KF476056.1、GenBank受入番号KF476055.1、GenBank受入番号KF476054.1、GenBank受入番号KF476053.1、GenBank受入番号KF476052.1、GenBank受入番号KF476051.1、GenBank受入番号KF476050.1、GenBank受入番号KF476049.1、GenBank受入番号KF476048.1、GenBank受入番号KF177258.1、GenBank受入番号KF177257.1、GenBank受入番号KF177256.1、GenBank受入番号KF177255.1)、HCoV.229E(GenBank受入番号NC_002645)、HCoV.NL63.Amsterdam.I(GenBank受入番号NC_005831)、BtCoV.HKU2.HK.298.2006(GenBank受入番号EF203066)、BtCoV.HKU2.HK.33.2006(GenBank受入番号EF203067)、BtCoV.HKU2.HK.46.2006(GenBank受入番号EF203065)、BtCoV.HKU2.GD.430.2006(GenBank受入番号EF203064)、並びに現在知られている(例えば、GenBank(登録商標)データベースに見いだされ得る)又は後日同定される、任意のその他の亜群1bコロナウイルス、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0118】
亜群2aコロナウイルスの非限定的例としては、HCoV.HKU1.C.N5(GenBank受入番号DQ339101)、MHV.A59(GenBank受入番号NC 001846)、PHEV.VW572(GenBank受入番号NC 007732)、HCoV.OC43.ATCC.VR.759(GenBank受入番号NC_005147)、牛腸内コロナウイルス(BCoV.ENT)(GenBank受入番号NC_003045)、並びに現在知られている(例えば、GenBank(登録商標)データベースに見いだされ得る)又は後日同定される、任意のその他の亜群2aコロナウイルス、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0119】
亜群2bコロナウイルスの非限定的例としては、コウモリSARSCoV(GenBank受入番号FJ211859)、SARSCoV(GenBank受入番号FJ211860)、SARS-CoV-2(GenBank受入番号NC_045512.2)、BtSARS.HKU3.1(GenBank受入番号DQ022305)、BtSARS.HKU3.2(GenBank受入番号DQ084199)、BtSARS.HKU3.3(GenBank受入番号DQ084200)、BtSARS.Rm1(GenBank受入番号DQ412043)、BtCoV.279.2005(GenBank受入番号DQ648857)、BtSARS.Rf1(GenBank受入番号DQ412042)、BtCoV.273.2005(GenBank受入番号DQ648856)、BtSARS.Rp3(GenBank受入番号DQ071615)、SARSCoV.A022(GenBank受入番号AY686863)、SARSCoV.CUHK-W1(GenBank受入番号AY278554)、SARSCoV.GDO1(GenBank受入番号AY278489)、SARSCoV.HC.SZ.61.03(GenBank受入番号AY515512)、SARSCoV.SZ16(GenBank受入番号AY304488)、SARSCoV.Urbani(GenBank受入番号AY278741)、SARSCoV.civet010(GenBank受入番号AY572035)、及びSARSCoV.MA.15(GenBank受入番号DQ497008)、RsSHC014(GenBank(登録商標)受入番号KC881005)、Rs3367(GenBank(登録商標)受入番号KC881006)、WiV1S(GenBank(登録商標)受入番号KC881007)、並びに現在知られている(例えば、GenBank(登録商標)データベースに見いだされ得る)又は後日同定される、任意のその他の亜群2bコロナウイルス、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0120】
亜群2cコロナウイルスの非限定的例としては、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Riyadh_2_2012(GenBank受入番号KF600652.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Al-Hasa_18_2013(GenBank受入番号KF600651.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Al-Hasa_17_2013(GenBank受入番号KF600647.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Al-Hasa_15_2013(GenBank受入番号KF600645.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Al-Hasa_16_2013(GenBank受入番号KF600644.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Al-Hasa_21_2013(GenBank受入番号KF600634)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Al-Hasa_19_2013(GenBank受入番号KF600632)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Buraidah_1_2013(GenBank受入番号KF600630.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Hafr-Al-Batin_1_2013(GenBank受入番号KF600628.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Al-Hasa_12_2013(GenBank受入番号KF600627.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Bisha_1_2012(GenBank受入番号KF600620.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Riyadh_3_2013(GenBank受入番号KF600613.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Riyadh_1_2012(GenBank受入番号KF600612.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Al-Hasa_3_2013(GenBank受入番号KF186565.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Al-Hasa_1_2013(GenBank受入番号KF186567.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Al-Hasa_2_2013(GenBank受入番号KF186566.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス単離株Al-Hasa_4_2013(GenBank受入番号KF186564.1)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(GenBank受入番号KF192507.1)、ベータコロナウイルス・イングランド(Betacoronavirus England)1-N1(GenBank受入番号NC_019843)、MERS-CoV_SA-N1(GenBank受入番号KC667074)、中東呼吸器症候群コロナウイルスの以下の単離株(GenBank受入番号KF600656.1、GenBank受入番号KF600655.1、GenBank受入番号KF600654.1、GenBank受入番号KF600649.1、GenBank受入番号KF600648.1、GenBank受入番号KF600646.1、GenBank受入番号KF600643.1、GenBank受入番号KF600642.1、GenBank受入番号KF600640.1、GenBank受入番号KF600639.1、GenBank受入番号KF600638.1、GenBank受入番号KF600637.1、GenBank受入番号KF600636.1、GenBank受入番号KF600635.1、GenBank受入番号KF600631.1、GenBank受入番号KF600626.1、GenBank受入番号KF600625.1、GenBank受入番号KF600624.1、GenBank受入番号KF600623.1、GenBank受入番号KF600622.1、GenBank受入番号KF600621.1、GenBank受入番号KF600619.1、GenBank受入番号KF600618.1、GenBank受入番号KF600616.1、GenBank受入番号KF600615.1、GenBank受入番号KF600614.1、GenBank受入番号KF600641.1、GenBank受入番号KF600633.1、GenBank受入番号KF600629.1、GenBank受入番号KF600617.1)、コロナウイルス・ネオロミシア(Coronavirus Neoromicia)/PML-PHE1/RSA/2011 GenBank受入番号KC869678.2、コウモリコロナウイルスTaper/CII_KSA_287/Bisha/Saudi Arabia/GenBank受入番号KF493885.1、コウモリコロナウイルスRhhar/CII_KSA_003/Bisha/Saudi Arabia/2013 GenBank受入番号KF493888.1、コウモリコロナウイルスPikuh/CII_KSA_001/Riyadh/Saudi Arabia/2013 GenBank受入番号KF493887.1、コウモリコロナウイルスRhhar/CII_KSA_002/Bisha/Saudi Arabia/2013 GenBank受入番号KF493886.1、コウモリコロナウイルスRhhar/CII_KSA_004/Bisha/Saudi Arabia/2013 GenBank受入番号KF493884.1、BtCoV.HKU4.2(GenBank受入番号EF065506)、BtCoV.HKU4.1(GenBank受入番号NC_009019)、BtCoV.HKU4.3(GenBank受入番号EF065507)、BtCoV.HKU4.4(GenBank受入番号EF065508)、BtCoV 133.2005(GenBank受入番号NC 008315)、BtCoV.HKU5.5(GenBank受入番号EF065512);BtCoV.HKU5.1(GenBank受入番号NC_009020)、BtCoV.HKU5.2(GenBank受入番号EF065510)、BtCoV.HKU5.3(GenBank受入番号EF065511)、ヒトベータコロナウイルス2c Jordan-N3/2012(GenBank受入番号KC776174.1;ヒトベータコロナウイルス2c EMC/2012(GenBank受入番号JX869059.2)、アブラコウモリコロナウイルスHKU5単離株(GenBank受入番号KC522089.1、GenBank受入番号KC522088.1、GenBank受入番号KC522087.1、GenBank受入番号KC522086.1、GenBank受入番号KC522085.1、GenBank受入番号KC522084.1、GenBank受入番号KC522083.1、GenBank受入番号KC522082.1、GenBank受入番号KC522081.1、GenBank受入番号KC522080.1、GenBank受入番号KC522079.1、GenBank受入番号KC522078.1、GenBank受入番号KC522077.1、GenBank受入番号KC522076.1、GenBank受入番号KC522075.1、GenBank受入番号KC522104.1、GenBank受入番号KC522104.1、GenBank受入番号KC522103.1、GenBank受入番号KC522102.1、GenBank受入番号KC522101.1、GenBank受入番号KC522100.1、GenBank受入番号KC522099.1、GenBank受入番号KC522098.1、GenBank受入番号KC522097.1、GenBank受入番号KC522096.1、GenBank受入番号KC522095.1、GenBank受入番号KC522094.1、GenBank受入番号KC522093.1、GenBank受入番号KC522092.1、GenBank受入番号KC522091.1、GenBank受入番号KC522090.1、GenBank受入番号KC522119.1 GenBank受入番号KC522118.1 GenBank受入番号KC522117.1 GenBank受入番号KC522116.1 GenBank受入番号KC522115.1 GenBank受入番号KC522114.1 GenBank受入番号KC522113.1 GenBank受入番号KC522112.1 GenBank受入番号KC522111.1 GenBank受入番号KC522110.1 GenBank受入番号KC522109.1 GenBank受入番号KC522108.1、GenBank受入番号KC522107.1、GenBank受入番号KC522106.1、GenBank受入番号KC522105.1)、アブラコウモリコロナウイルスHKU4単離株(GenBank受入番号KC522048.1、GenBank受入番号KC522047.1、GenBank受入番号KC522046.1、GenBank受入番号KC522045.1、GenBank受入番号KC522044.1、GenBank受入番号KC522043.1、GenBank受入番号KC522042.1、GenBank受入番号KC522041.1、GenBank受入番号KC522040.1 GenBank受入番号KC522039.1、GenBank受入番号KC522038.1、GenBank受入番号KC522037.1、GenBank受入番号KC522036.1、GenBank受入番号KC522048.1 GenBank受入番号KC522047.1 GenBank受入番号KC522046.1 GenBank受入番号KC522045.1 GenBank受入番号KC522044.1 GenBank受入番号KC522043.1 GenBank受入番号KC522042.1 GenBank受入番号KC522041.1 GenBank受入番号KC522040.1、GenBank受入番号KC522039.1 GenBank受入番号KC522038.1 GenBank受入番号KC522037.1 GenBank受入番号KC522036.1、GenBank受入番号KC522061.1 GenBank受入番号KC522060.1 GenBank受入番号KC522059.1 GenBank受入番号KC522058.1 GenBank受入番号KC522057.1 GenBank受入番号KC522056.1 GenBank受入番号KC522055.1 GenBank受入番号KC522054.1 GenBank受入番号KC522053.1 GenBank受入番号KC522052.1 GenBank受入番号KC522051.1 GenBank受入番号KC522050.1 GenBank受入番号KC522049.1 GenBank受入番号KC522074.1、GenBank受入番号KC522073.1 GenBank受入番号KC522072.1 GenBank受入番号KC522071.1 GenBank受入番号KC522070.1 GenBank受入番号KC522069.1 GenBank受入番号KC522068.1 GenBank受入番号KC522067.1、GenBank受入番号KC522066.1 GenBank受入番号KC522065.1 GenBank受入番号KC522064.1、GenBank受入番号KC522063.1、又はGenBank受入番号KC522062.1、並びに現在知られている(例えば、GenBank(登録商標)データベースに見いだされ得る)又は後日同定される、任意のその他の亜群2bコロナウイルス、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0121】
亜群2dコロナウイルスの非限定的例としては、BtCoV.HKU9.2(GenBank受入番号EF065514)、BtCoV.HKU9.1(GenBank受入番号NC_009021)、BtCoV.HkU9.3(GenBank受入番号EF065515)、BtCoV.HKU9.4(GenBank受入番号EF065516)、並びに現在知られている(例えば、GenBank(登録商標)データベースに見いだされ得る)又は後日同定される、任意のその他亜群2dコロナウイルス、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0122】
亜群3コロナウイルスの非限定的例としては、IBV.Beaudette.IBV.p65(GenBank受入番号DQ001339)、並びに現在知られている(例えば、GenBank(登録商標)データベースに見いだされ得る)又は後日同定される、任意のその他亜群3コロナウイルス、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0123】
コロナウイルスは、
図6に示されるような変異の1つ又は複数を含むスパイクタンパク質の受容体結合ドメインを含んでなる任意のウイルスであってもよい。
【0124】
本発明の任意の態様による治療を必要とする、又は本明細書に記載の任意の組成物の投与を必要とする、対象又は個体は、コロナウイルス感染症の症状を示している個体、又はコロナウイルス感染症と診断された個体であってもよい。さらに、対象又は個体は、コロナウイルスに感染していると臨床的又は生化学的に判定されていてもよい。
【0125】
対象は、末期臓器不全を発症する前に、コロナウイルス感染症の段階にあってもよい。それを必要とする対象は、終末臓器不全を発症する前に、臨床進行の開始時からコロナウイルス感染症を有しているものであれば誰でもよい。一実施形態では、対象は、コロナウイルス感染症状を有している期間が12日以内であり、生命を脅かす臓器の機能不全又は臓器不全を有していない。好ましくは対象は、例えば、症状発現から14日目以前、又はウイルス血症及び血清陰性段階など、疾患の経過の初期にある。
【0126】
「対象」又は「個体」は、コロナウイルスによる感染に罹り易い、及び/又はコロナウイルス感染によって引き起こされる疾患若しくは障害に罹り易い、任意の動物であってもよい。本発明の対象は哺乳類であり得て、特定の実施形態ではヒトであり、それは乳児、子供、成人又は高齢者であり得る。「コロナウイルスによる感染のリスクがある対象」又は「コロナウイルス感染のリスクがある対象」は、コロナウイルスに曝露する可能性がある、又は曝露した可能性があるあらゆる対象である。「対象」又は「個体」には、あらゆるヒト又は非ヒト動物が含まれる。したがって、本発明の化合物は、ヒトの治療に有用であることに加えて、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、及びブタ、又はコロナウイルスに感染する可能性のあるあらゆる動物などであるが、これらに限定されるものではない、コンパニオンアニマル及び家畜をはじめとする、哺乳類の獣医学的治療に有用であってもよい。
【0127】
リスクのある対象としては、免疫不全の人、高齢者(65歳以上)、2歳未満の子供、医療従事者、コロナウイルス感染が確定され又は疑われる人と濃厚接触する成人又は子供、及び肺感染症、心臓病又は糖尿病、一次性又は二次性免疫不全症などの基礎疾患を有する人々が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
タンパク質及びポリペプチド
「単離された」は、本明細書で開示される様々なポリペプチドを説明するために使用される場合、その自然環境の構成要素から同定され、分離及び/又は回収されたポリペプチドを意味する。自然環境の汚染成分は、典型的には、ポリペプチドの診断的又は治療的使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、及びその他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質が含まれてもよい。好ましい実施形態では、ポリペプチドは、(1)スピニングカップシークエネーターの使用によって、N末端又は内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで精製されるか、又は(2)クマシーブルー又は好ましくは銀染色を使用する非還元条件下又は還元条件下でのSDS-PAGEによって、均一になるまで精製される。ポリペプチドの自然環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないので、単離されたタンパク質には、組換え細胞内の原位置ポリペプチドも含まれる。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0129】
「断片」は、ポリペプチドと実質的に同様の機能活性、又は実質的に同じ生物学的機能又は活性を保持する、本発明のポリペプチドの一部であり、これは本明細書に記載のアッセイを用いて判定され得る。
【0130】
ポリペプチド配列、すなわち、本明細書で定義される本発明のポリペプチドに関する、「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」又は「同一性パーセント(%)」は、配列同一性の一部として保存的置換を考慮せず、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して最大の配列同一性パーセントを達成した後に、本発明の特定のポリペプチド中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基の百分率と定義される。
【0131】
当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズム(以下に記載される非限定的例)をはじめとする、アライメントを測定するための適切なパラメータを判定し得る。アミノ酸配列が整列される場合、所与のアミノ酸配列Bとの、又はそれに関する、又はそれに対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性パーセント(これは、代案としては所与のアミノ酸配列Bとの、又はそれに関する、又はそれに対して、特定のアミノ酸配列同一性パーセントを有するか又はそれを含んでなる、所与のアミノ酸配列Aと表現され得る)は、次のように計算され得る:アミノ酸配列同一性パーセント=X/Y100(式中、Xは配列アライメントプログラム又はアルゴリズムによるAとBのアライメントによって完全一致としてスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、YはBのアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性パーセントは、Aに対するBのアミノ酸配列同一性パーセントと等しくならない。
【0132】
同一性パーセントの計算では、典型的に、正確な一致が数えられる。2つの配列間の同一性パーセントの判定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。2つの配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの非限定的例は、Karlin and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264のアルゴリズム(Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877に従って修正)である。このようなアルゴリズムは、Altschul et al.(1990)J.MoI.Biol.215:403のBLASTN及びBLASTXプログラムに組み込まれている。ギャップありアライメントを得るために、Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389に記載されるように、Gapped BLAST(BLAST 2.0)が利用され得る。代案としては、PSI-Blastを使用して、分子間の距離関係を検出する反復サーチが実施され得る。前出のAltschul et al.(1997)を参照されたい。BLAST、ギャップドBLAST、及びPSI-BLASTプログラムを使用する場合、それぞれのプログラム(例えば、BLASTX及びBLASTN)のデフォルトパラメータが使用され得る。アライメントはまた、検査によって手動で実行されてもよい。配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の非限定的例は、ClustalWアルゴリズム(Higgins et al.(1994)Nucleic Acids Res.22:4673-4680)である。ClustalWは配列を比較してアミノ酸又はDNA配列全体を整列させ、したがってアミノ酸配列全体の配列保存に関するデータを提供し得る。ClustalWアルゴリズムは、Vector NTI Program Suite(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)のALIGNXモジュールなど、いくつかの市販DNA/アミノ酸解析ソフトウェアパッケージで使用されている。ClustalWでアミノ酸配列を位置合わせした後、アミノ酸同一性配列が評価され得る。ClustalWアライメントの解析に有用なソフトウェアプログラムの非限定的例は、GENEDOC(商標)又はJalView(http://www.jalview.org/)である。GENEDOC(商標)を使用すると、複数のタンパク質間のアミノ酸(又はDNA)の類似性と同一性を評価できるようになる。配列比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の非限定的例は、Myers and Miller,1988,CABIOS 4:11-17のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG Wisconsin Geneticsソフトウェアパッケージ、バージョン10(Accelrys,Inc.,9685 Scranton Rd.,San Diego,CA,USAから入手可能)の一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを使用する場合、PAM 120 weight residue table、gap length penalty=12、及びgap penalty=4を使用し得る。
【0133】
ポリペプチドは、望ましくはアミノ末端及びカルボキシル末端を含んでなる。ポリペプチドは、D-アミノ酸、L-アミノ酸又はD-及びL-アミノ酸の混合物を含んでなり得る。しかしながら、D-アミノ酸で構成されるポリペプチドは、生体内での生物学的活性のより高い保持を有することが期待されるので、アミノ酸のD型が特に好ましい。
【0134】
ポリペプチドは、多くの従来技術のいずれかによって調製され得る。ポリペプチドは、天然に存在する供給源から、又は組換え供給源から単離又は精製され得る。組換え生産が好ましい。例えば、組換えポリペプチドの場合、周知の分子遺伝学的技術を用いて、所望のペプチドをコード化するDNA断片が、適切なベクターにサブクローニングされ得る(例えば、Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory,1982);Sambrook et al.,Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory,1989を参照されたい)。断片は転写され、引き続いてポリペプチドが生体外で翻訳され得る。市販のキットもまた採用され得る(例えば、Clontech,Palo Alto,Calif.;Amersham Pharmacia Biotech Inc.,Piscataway,N.J.;InVitrogen,Carlsbad,Calif.によって製造されるものなど)。核酸の操作には、ポリメラーゼ連鎖反応が任意選択的に採用され得る。
【0135】
「保存的置換」という用語は、本明細書の用法では、ペプチドの天然配列に存在するアミノ酸を、天然又は非天然アミノ酸、又は同様の立体特性を有するペプチド模倣体で置換することを指す。置換される天然アミノ酸の側鎖が極性又は疎水性のどちらかである場合、保存的置換は、天然アミノ酸又は非天然アミノ酸、又は同じく極性又は疎水性である(置換されるアミノ酸の側鎖と同じ立体特性を有することに加えて)ペプチド模倣部分によるものでなければならない。
【0136】
機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的アミノ酸置換表は、当業者には良く知られている。次の6つのグループは、互いに保存的置換であると考えられるアミノ酸の例である:
1)アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);及び
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0137】
天然に存在するアミノ酸は典型的には、それらの特性に従ってグループ化されているので、立体的に類似した非荷電アミノ酸による荷電アミノ酸の置換は保存的置換と見なされという事実を念頭に置いて、天然に存在するアミノ酸による保存的置換が判定され得る。非天然アミノ酸による保存的置換を生成するために、当該技術分野で周知のアミノ酸類似体(合成アミノ酸)を使用することもまた可能である。天然アミノ酸のペプチド模倣体は、当業者に知られている文献で十分に立証されており、非天然(non-natural)又は非天然(unnatural)アミノ酸については下でさらに詳しく説明される。保存的置換に影響を与える場合、置換するアミノ酸は元のアミノ酸と同じ又は類似の官能基を側鎖に有する必要がある。
【0138】
「非保存的置換」又は「非保存的残基」という語句は、本明細書の用法では、親配列に存在するアミノ酸を、異なる電気化学特性及び/又は立体特性を有する別の天然又は非天然アミノ酸で置換することを指す。したがって、置換アミノ酸の側鎖は、置換される天然アミノ酸の側鎖よりも著しく大きく(又は小さく)あり得て、及び/又は置換されるアミノ酸とは著しく異なる電子特性を有する官能基を有し得る。このタイプの非保存的置換の例としては、フェニルアラニン又はシクロヘキシルメチルグリシンによるアラニンの置換、グリシンによるイソロイシンの置換、又は-NH-CH[(-CH2)5-COOH]-CO-によるアスパラギン酸の置換が挙げられる。非保存的置換には、保存的と見なされないあらゆる変異が含まれる。
【0139】
非保存的アミノ酸置換は、以下における変化によって生じ得る:(a)置換領域におけるアミノ酸骨格の構造;(b)アミノ酸の電荷又は疎水性;又は(c)アミノ酸側鎖の嵩高さ。一般に、タンパク質の特性に最大の変化をもたらすと予想される置換は、次のような置換である:(a)親水性残基が疎水性残基に(又はそれによって)置換される;(b)プロリンがその他の残基に(又はそれによって)置換される;(c)例えば、フェニルアラニンなどの嵩高い側鎖を有する残基が、例えば、グリシンなどの嵩高い側鎖のない残基に(又はそれによって)置換される;(d)例えば、リシル基、アルギニル基又はヒスチジル基などの電気陽性側鎖を有する残基が、例えば、グルタミル基又はアスパルチル基などの電気陰性残基に(又はそれによって)置換される。
【0140】
例えば、挿入、欠失及び/又は置換によって変異ポリペプチドを生成するための天然アミノ酸配列の改変は、当業者に知られている様々な手段によって実行され得る。例えば、部位特異的変異は、修飾部位を含んでなる合成オリゴヌクレオチドを発現ベクターにライゲートすることによって導入され得る。交互に、Walder et al.,Gene 42:133(1986);Bauer et al.,Gene 37:73(1985);Craik,Biotechniques,12-19(January 1995);及び米国特許第4,518,584号明細書及び米国特許第4,737,462号明細書で開示されるようなオリゴヌクレオチド指向性部位特異的変異誘発手順が使用され得る。変異を導入するための好ましい手段は、QuikChange部位特異的変異誘発キット(Stratagene、LaJolla,Calif.)である。
【0141】
任意の適切な発現ベクター(例えば、Pouwels et al.,Cloning Vectors:A Laboratory Manual(Elsevier,NY:1985)に記載されるような)と対応する適切な宿主が、組換えポリペプチドの産生のために採用され得る。発現宿主としては、エシェリキア属(Escherichia)、バチルス属(Bacillus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、サルモネラ属(Salmonella)内の細菌種;バキュロウイルスシステム(例えば、Luckow et al.,Bio/Technology 6:47(1988)によって記載されるような)を含む哺乳類又は昆虫宿主細胞システム;及びCOS-7、C127、3T3、CHO、HeLa、及びBHK細胞株などの確立された細胞株が挙げられるが、これらに限定されるものではない。当業者であれば、発現宿主の選択が、生成されるポリペプチドの種類に影響を与えることを認識している。例えば、酵母細胞又は哺乳類細胞(例えば、COS-7細胞)中で産生されるポリペプチドのグリコシル化は、大腸菌(Escherichia coli)などの細菌細胞中で産生されるポリペプチドのグリコシル化とは異なるであろう。
【0142】
交互に、本発明のポリペプチドは、当業者に周知の標準的なペプチド合成技術を使用して合成され得る(例えば、Bodanszky,Principles of Peptide Synthesis(Springer-Verlag,Heidelberg:1984)で概説されるように)。特に、ポリペプチドは固相合成の手順を使用して合成され得る(例えば、Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149-54(1963);Barany et al.,Int.J.Peptide Protein Res.30:705-739(1987);及び米国特許第5,424,398号明細書を参照されたい)。所望ならば、これは自動ペプチド合成装置を使用して実行され得る。t-ブチルオキシカルボニル(t-BOC)又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸ブロック基の除去、及び樹脂からのポリペプチドの分離は、例えば、低温での酸処理によって達成され得る。次に、例えばジメチルエーテルで抽出して非ペプチド有機化合物を除去し、合成されたポリペプチドが樹脂粉末から抽出され得る(例えば、約25%w/v酢酸で)。ポリペプチドの合成に続いて、不完全なポリペプチド又は遊離アミノ酸を除去するために、任意選択的にさらなる精製(例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して)が実行され得る。合成ポリペプチドに対してアミノ酸分析及び/又はHPLC分析が実施され、その同一性が検証され得る。本発明による他の適用については、当業者に公知であり本明細書に記載されるように、本明細書に記載の方法又はその他の遺伝的手段などによって、より大きな融合タンパク質の一部として、又は物理的又は化学的コンジュゲーションなどを介して、より大きな複合物の一部として、ポリペプチドを生成することが好ましくあってもよい。
【0143】
本発明のポリペプチドはまた、別の部分によって修飾、結合又は融合されて、精製を促進し、又はポリペプチドの生体内半減期を延長し、又は当該技術分野で既知の方法を使用するイムノアッセイで使用されてもよい。例えば、本発明のポリペプチドは、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解性切断、細胞リガンド又はその他のタンパク質への結合などによって修飾されてもよい。
【0144】
「ペプチド模倣体」は、本発明のポリペプチドと実質的に同じ構造的及び/又は機能的特徴を有する合成化合物であり、後者については本明細書でさらに詳しく説明する。典型的には、ペプチド模倣体は、本発明のポリペプチドと同一又は類似の構造、例えば、ダイマーを形成する能力が低下した配列番号6又は23の同一又は類似の配列、又はその断片を有する。ペプチド模倣体は、一般に、天然には合成されない少なくとも1つの残基を含む。ペプチド模倣化合物の非天然成分は、以下の1つ又は複数に従ってもよい:a)天然のアミド結合(「ペプチド結合」)連鎖以外の残基結合基;b)天然アミノ酸残基に代わる非天然残基;又はc)二次構造模倣を誘導する残基、すなわち、例えば、βターン、γターン、βシート、αらせんコンフォメーションなどの二次構造を誘導し又は安定化させる残基。
【0145】
ペプチド模倣体は、例えば、Organic Syntheses Collective Volumes,Gilman et al.(Eds)John Wiley & Sons,Inc.,NY,al-Obeidi(1998)Mol.Biotechnol.9:205-223;Hruby(1997)Curr.Opin.Chem.Biol.1:114-119;Ostergaard(1997)Mol.Divers.3:17-27;Ostresh(1996)Methods Enzymot.267:220-234などの科学文献及び特許文献に記載されている様々な手順及び方法論を用いて合成され得る。
【0146】
本明細書で想定される修飾としては、側鎖への修飾、ポリペプチド合成中における非天然アミノ酸及び/又はその誘導体の組み込み、及び本発明のポリペプチドに立体構造的制約を課す架橋剤及びその他の方法の使用が挙げられるが、これらに限定されるものではない。分子がダイマーを形成する能力を低下させる翻訳後修飾をはじめとする、任意の修飾が本明細書で想定される。例としては、当該技術分野で知られているようなクリックケミストリーによって組み込まれる修飾が挙げられる。例示的な修飾としては、ペグ化及びグリコシル化が挙げられる。
【0147】
本発明によって想定される側鎖修飾の例としては、アルデヒドとの反応による還元的アルキル化と、それに続くNaBH4による還元などによるアミノ基の修飾;メチルアセトイミド酸によるアミド化;無水酢酸によるアシル化;シアネートによるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;無水コハク酸及び無水テトラヒドロフタル酸によるアミノ基のアシル化;及びピリドキサール-5-リン酸によるリジンのピリドキシル化とそれに続くNaBH4による還元が挙げられる。
【0148】
アルギニン残基のグアニジン基は、2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサール、及びグリオキサールなどの試薬による複素環縮合生成物の形成によって修飾されてもよい。
【0149】
カルボキシル基は、O-アシルイソ尿素形成を介したカルボジイミド活性化と、それに続く、例えば対応するアミドへの誘導体化によって修飾されてもよい。
【0150】
スルフヒドリル基は、ヨード酢酸又はヨードアセトアミドによるカルボキシメチル化;過ギ酸によるシステイン酸への酸化;その他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸又はその他の置換マレイミドとの反応;4-クロロ水銀安息香酸、4-クロロ水銀フェニルスルホン酸、フェニル水銀塩化物、2-クロロ水銀-4-ニトロフェノール、及び他の水銀を使用した水銀誘導体の形成;アルカリ性pHでのシアネートによるカルバモイル化などの方法によって修飾されてもよい。
【0151】
トリプトファン残基は、例えば、N-ブロモスクシンイミドによる酸化、又は2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロミド又はスルフェニルハロゲン化物によるインドール環のアルキル化によって、修飾されてもよい。一方、チロシン残基は、テトラニトロメタンによるニトロ化によって変性され、3-ニトロチロシン誘導体が形成されてもよい。
【0152】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体によるアルキル化、又はジエチルピロ炭酸によるN-カルボエトキシル化によって達成されてもよい。
【0153】
タンパク質合成中に非天然アミノ酸及び誘導体を組み込む例としては、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニン及び/又はアミノ酸のD-異性体の使用が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書で想定される非天然アミノ酸の一覧を表2に示す。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
架橋剤は、例えば、n=1~n=6の(CH2)nスペーサー基を有する二官能性イミドエステルなどのホモ二官能性架橋剤、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、及びN-ヒドロキシスクシンイミドなどのアミノ反応性部分及び別の基特異的反応性部分を通常含むヘテロ二官能性試薬などのホモ二官能性架橋剤を使用して、3D立体構造を安定化するために使用され得る。
【0159】
「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体をはじめとするが、これらに限定されるものではない、様々な抗体構造を指す。「抗体」という用語は、「免疫グロブリン」という用語と同義的に使用されてもよい。
【0160】
「ヒト抗体」は、ヒト又はヒト細胞によって産生される抗体、又はヒト抗体レパートリー又はその他のヒト抗体コード化配列を利用する非ヒト源由来抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含んでなるヒト化抗体を特に除外する。特に、「組換えヒト抗体」という用語には、ヒト免疫グロブリン遺伝子の遺伝子組換えである動物(例えば、マウス)から単離された抗体;宿主細胞に形質移入された組換え発現ベクターを使用して発現された抗体;組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体;及びヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う、その他のあらゆる手段によって調製、発現、作製又は単離された抗体など、組換え手段によって調製、発現、作製、又は単離された全てのヒト配列抗体が含まれる。したがって、このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域を有する。しかしながら、このような抗体は、生体外変異誘発(又は、ヒトIg配列遺伝子の組換え動物が使用される場合には、生体内体細胞変異誘発)に供され得て、したがって組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し関連する配列である一方で、生体内においてヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しなくてもよい。
【0161】
スパイクタンパク質及びRBD
コロナウイルスのビリオンは、直径約80~200nmの球形である。コロナウイルスの最も顕著な特徴は、ビリオンの表面から突き出たクラブ状の突起である。これらのスパイクはビリオンの特徴であり、それらに太陽コロナのような外観を与え、コロナウイルスという名前の由来となっている。ビリオンのエンベロープ内には、ヌクレオカプシドがありる。コロナウイルスはらせん対称のヌクレオカプシドを有しており、これはプラス鎖RNAウイルスでは稀であるが、マイナス鎖RNAウイルスでは遥かに一般的である。SARS-CoV-2、MERS-CoV、及びSARS-CoVは、コロナウイルス科に属する。
【0162】
「CoV-S」という用語は、コロナウイルスの「S」又は「Sタンパク質」又は「スパイクタンパク質」とも称され、SARS-CoV-2-S、MERS-CoVS、及びSARS-CoVSなどの特定のSタンパク質、又はコロナウイルス科のその他のメンバーを指し得る。SARS-CoV-2スパイクタンパク質は、1273アミノ酸のI型膜糖タンパク質で、それはエンベロープに包まれたコロナウイルス粒子の表面でスパイク又はペプロマーを構成する三量体に集合する。このタンパク質には、(1)宿主受容体結合と(2)膜融合という2つの重要な機能があり、これらはSタンパク質のN末端(S1)半分とC末端(S2)半分に帰せられる。CoV-Sは、S1サブユニットに存在する受容体結合ドメイン(RBD)を介してその同族受容体に結合する。全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号21に記載されるアミノ酸配列によって例示される。「CoV-S」という用語には、異なるCoVスパイクタンパク質又はその断片から単離された、CoVスパイクタンパク質のタンパク質変異型が含まれる。この用語はまた、例えば、ヒスチジンタグ、マウス又はヒトFc、又はROR1などのシグナル配列に、結合したCoVスパイクタンパク質又はその断片も包含する。
【0163】
任意の実施形態において、スパイクタンパク質は、以下の表3をはじめとする本明細書に記載の変異株又は株に由来してもよい。
【0164】
任意の態様において、受容体結合ドメインは、以下の表3に記載されるものなどのSARS-CoV-2変異株に由来してもよい。SARS-CoV-2変異株は、ウイルスの元のWT株から進化している(ゲノム参照配列:GenBank登録NC_045512.2)。本明細書に記載されるように、受容体結合ドメインは、WT、アルファ、ベータ、ガンマ、カッパ、デルタ、ラムダ、イオタ、ミュー又はオミクロン株(表3)、及びRBDにおける変異を伴って出現すると予想されるその他の株に由来してもよい。任意の実施形態において、受容体結合ドメインは、WT、アルファ、ベータ、ガンマ、カッパ、デルタ、ラムダ、イオタ、ミュー、又はオミクロン株のN334-P527、及び例えば、Y.1、AY.2、AY.3、及びAY.4.2などのデルタプラスのような出現してもよいその他の株であってもよい。アルファ変異株は、元のWT株と比較して、RBDに1つの変異、N501Yを保有する。ベータ変異株は、元のWT株と比較して、RBDに3つの変異、N501Y、E484K、及びK417Nを保有する。ガンマ変異株は、元のWT株と比較して、RBDに3つの変異、K417T、E484K、及びN501Yを保有する。カッパ変異株は、元のWT株と比較して、RBDに2つの変異、L452R及びE484Qを保有する。デルタ変異株は、元のWT株と比較して、RBDに2つの変異、L452R及びT478Kを保有する。ラムダ変異株は、元のWT株と比較して、RBDに2つの変異、L452Q及びF490Sを保有する。イオタ変異株は、元のWT株と比較して、RBDに1つの変異、E484Kを保有する。ミュー変異株は、元のWT株と比較して、RBDに2つの変異、E484K及びN501Yを保有する。オミクロン変異株は、元のWT株と比較して、RBDに15の変異、G339D、S371L、S373P、S375F、K417N、N440K、G446S、S477N、T478K、E484A、Q493R、G496S、Q498R、N501Y、及びY505Hを保有する。
【0165】
ベータRBDは、ひいてはベータRBD(例えば配列番号22)(変異(N501Y、K417N、及びE484K)を有する)を含んでなる本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質は、RBD変異N501Y及びK417N(ACE2への結合(N501Y)及び免疫回避(K417N)に影響を及ぼすことが知られている2つの重要な変異)をオミクロンと共有するので、野生型RBDよりもオミクロンにより近い。同様の理由で、ベータRBDは、ひいてはベータRBDを含んでなる本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質は、ガンマ(N501Y、E484K(免疫回避)、及びK417T)、ミュー(N501Y及びE484K)、及びイオタ(E484K)により近い。本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又はベータRBD(例えば配列番号2)を含んでなる本発明の組成物は、ガンマ、ミュー、イオタ、及びオミクロンに対して優れた応答を駆動するはずである。
【0166】
【0167】
任意の態様において、コロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメインは、配列番号15又は28のどちらか1つ又は複数のアミノ酸配列、又は配列番号15又は28のどちらか1つと60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる。一実施形態では、アミノ酸配列は、
図6又は7に示される変異、又はアルファ、ベータ、ガンマ、カッパ、又はデルタ株などのSARS-CoV-2変異株に関連して本明細書に記載される変異の1つ又は複数を含んでもよい。
【0168】
任意の態様において、コロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメインは、0~8個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)を有する配列番号15又は28のどちらか1つ又は複数のアミノ酸配列を含んでなるか、それから本質的になるか又はそれからなる。いくつかの実施形態では、関連するアミノ酸配列は、0~7個、好ましくは0~6個、好ましくは0~5個、好ましくは0~4個、好ましくは0~3個、好ましくは0~2個、好ましくは0~1個のアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)を有してもよく、ここでアミノ酸の挿入、欠失、置換又は付加(又はそれらの組み合わせ)は、N末端及び/又はC末端に位置する。
【0169】
抗体のFc領域及びFc受容体結合ドメイン
本明細書における「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。換言すれば、Fc領域は、抗体のCH2及びCH3ドメインを含んでなる、2つの重鎖フラグメントを含有する。本発明の文脈において、Fc領域は、2つの重鎖断片、好ましくは前記重鎖のCH2及びCH3ドメインを含んでなる。2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合とCH3ドメインの疎水性相互作用によって結合されている。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定数ドメインは、α、δ、ε、γ、μと称される。
【0170】
いくつかの実施形態では、RBD-Fcダイマーは、いかなるエフェクター機能も、又はいかなる検出可能なエフェクター機能も示さない。「エフェクター機能」又は「エフェクター活性」は、抗体のFc領域に帰せられる生物学的活性を指し、抗体イソタイプによって変動する。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害性(CDC);抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体など)の下方制御;及びB細胞活性化が挙げられる。生体外及び/又は生体内細胞傷害性アッセイを実施して、CDC及び/又はADCC活性の減少/枯渇が確認され得る。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して、抗体がFcγR結合を欠いている(したがってADCC活性を欠いている可能性が高い)ことが確実にされ得る。ADCCを媒介する初代細胞であるNK細胞が、FcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現については、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)のページ464の表3で要約される。関心のある分子のADCC活性を評価するための生体外アッセイの非限定的例は、米国特許第5,500,362号明細書(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照されたい);及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985);5,821,337(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照されたい)に記載されている。代案としては、非放射性アッセイ法が用いられてもよい(例えば、ACTI(商標)non-radioactive cytotoxicity assay for flow cytometry(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;及びCytoTox 96(登録商標)non-radioactive cytotoxicity assay(Promega,Madison,WI)を参照されたい。このようなアッセイで有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代案としては、又はそれに加えて、関心のある分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’lAcad.Sci.USA 95:652-656(1998)で開示されているような、動物モデルにおいて生体内で評価されてもよい。抗体がC1qに結合できず、それ故CDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合アッセイが実行されてもよい。例えば、国際公開第2006/029879号パンフレット及び国際公開第2005/100402号パンフレットにおける、C1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが実施されてもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003);及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及び生体内クリアランス/半減期の判定はまた、当該技術分野で既知の方法を使用して実行され得る(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006);国際公開第2013/120929A1号パンフレットを参照されたい)。
【0171】
エフェクター機能が低下した抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329の1つ又は複数が置換された抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号明細書)。このようなFc変異体としては、残基265及び297がアラニンに置換されたいわゆる「DANA」Fc変異体をはじめとする、アミノ酸位置265、269、270、297、及び327の2つ以上に置換を有するFc変異体が挙げられる(米国特許第7,332,581号明細書)。例えば、抗体変異型は、例えば、Fc領域の234位及び235位における置換(残基のEU番号付け)など、FcγR結合を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換を有するFc領域を含んでなってもよい。例えば、置換はL234A及びL235A(LALA)である(例えば、国際公開第号パンフレット2012/130831を参照されたい)。さらに、例えば、米国特許第6,194,551号明細書、国際公開第99/51642号パンフレット、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されるような、C1q結合及び/又は補体依存性細胞毒性の変化(すなわち減少)をもたらす変化が、Fc領域に加えられてもよい。
【0172】
いくつかの態様では、Fc領域は、補体(C1q)及び/又はFcガンマ受容体(FcγR)結合部位に対する変異を含む。いくつかの態様では、このような変異は、融合タンパク質を抗体指向性細胞傷害性(ADCC)及び補体指向性細胞傷害性(CDC)不能にすることができる。
【0173】
「Fc領域」という用語には、天然配列Fc領域及び変異Fc領域もまた含まれる。Fc領域には、重鎖のカルボキシル末端が含まれていてもよい。宿主細胞によって産生される抗体は、重鎖のC末端から1つ以上、特に1つ又は2つのアミノ酸の翻訳後切断を受けてもよい。したがって、全長重鎖をコード化する特定の核酸分子の発現によって宿主細胞で産生される抗体は、全長重鎖を含んでもよいか、又はそれは全長重鎖の切断変異型を含んでもよい。本明細書で特に明記されない限り、Fc領域又は定常領域のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されるようなEU指針とも称されるEU番号付けシステムに従う。抗体のFc領域のアミノ酸配列変異型が想定されてもよい。抗体のFc領域のアミノ酸配列変異型は、抗体をコード化するヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、又はペプチド合成によって調製されてもよい。このような修飾としては、例えば、抗体のFc領域のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又はそれらへの挿入、及び/又はそれらの置換が挙げられる。最終コンストラクトが、例えば、抗炎症応答の誘導又は支持などの所望の特性を有しているという条件で、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせによって最終コンストラクトが得られ得る。
【0174】
抗体のFc領域は、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMなどの抗体のクラスのいずれかのFc領域であってもよい。抗体の「クラス」とは、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体には、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMの5つの主要なクラスがあり、これらのいくつかは、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2のサブクラス(イソタイプ)にさらに分類されてもよい。したがって、本発明の文脈で使用される場合、抗体はIgGのFc領域であってもよい。例えば、抗体のFc領域は、IgG1、anIgG2、anIgG2b、anIgG3又はIgG4のFc領域であってもよい。いくつかの態様では、本発明の融合タンパク質は、抗体のFc領域のIgGを含んでなる。本発明の文脈において、抗体のFc領域は、IgG、好ましくはIgG1のFc領域である。
【0175】
Fc領域は、抗体のクラスに応じて2つ又は3つの定常ドメインに寄与する2つの重鎖で構成されている。Fc領域は、特定のタンパク質と結合することによって、各抗体が所与の抗原に対して適切な免疫応答を生じることを確実にする。
【0176】
Fc受容体結合ドメインは、細胞表面上のFc受容体に結合する任意のタンパク質又はポリペプチドである。Fc受容体結合ドメインは、抗体の抗原結合ドメインであってもよい。Fc受容体結合ドメインはまた、Fc受容体などの様々な細胞受容体、及び補体タンパク質などのその他の免疫分子にも結合する。
【0177】
リンカー
さらに、本明細書で提供される融合タンパク質は、リンカー(又は「スペーサー」)を含んでなってもよい。本発明の文脈において、コロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメイン、又は受容体結合ドメインのダイマーのアミノ酸配列を含んでなるか又はそれからなる、2つ以上のポリペプチドは、C末端でリンカーを介してFc領域又はFc受容体結合ドメインに融合される。
【0178】
リンカーは通常、最大20アミノ酸の長さを有するペプチドである。「連結された(linked)」、「連結された(linked to)」、又は「融合された(fused to)」という用語は、例えばペプチド結合など、2つの部分の間に形成される共有結合を指す。したがって、本発明の文脈において、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21又は22個のアミノ酸の長さを有してもよい。例えば、本明細書で提供される融合タンパク質は、コロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメイン、又は受容体結合ドメインのダイマーのアミノ酸配列を含んでなるか又はそれからなる、2つ以上のポリペプチドと、抗体のFc領域との間のリンカー、例えば、Fc領域/FcR結合ドメインのN末端と受容体結合ドメインポリペプチドのC末端との間のリンカーを含んでなってもよい。このようなリンカーには、融合タンパク質の異なるポリペプチドが独立して折り畳まれ、期待されるような挙動を示す可能性を高めることができるという利点がある。
【0179】
したがって、本発明の文脈において、コロナウイルスのスパイクタンパク質由来の受容体結合ドメイン、又は受容体結合ドメインのダイマーのアミノ酸配列を含んでなるか又はそれからなる、2つ以上のポリペプチドと、抗体のFc領域又はFc受容体結合ドメインとが、単一の共有結合した多機能ポリペプチドに含まれてもよい。
【0180】
いくつかの態様では、本発明の融合タンパク質はペプチドリンカーを含む。いくつかの態様では、ペプチドリンカーには、アミノ酸配列Gly-Gly-Ser(GGS)、Gly-Gly-Gly-Ser(GGGS)又はGly-Gly-Gly-Gly-Ser(GGGGS)が含まれ得る。いくつかの態様では、ペプチドリンカーには、アミノ酸配列GGGGS(長さ6アミノ酸のリンカー)又はさらに長いアミノ酸配列が含まれ得る。リンカーは、異なる長さの一連の反復グリシン残基及びセリン残基(GS)、すなわち(GS)nであってもよく、nは1~15以上の任意の数である。例えば、リンカーは、(GS)3(すなわち、GSGSGS)以上であってもよく、又は(GS)11以上であってもよい。nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又はそれ以上をはじめとする、任意の数であり得ることが理解されるであろう。このような長さのリンカーを有する融合タンパク質は、本発明の範囲内に含まれる。さらに、リンカーを有していない融合タンパク質も本発明の範囲内に含まれる。
【0181】
核酸
本発明のポリペプチドのいずれかをコード化する核酸分子もまた、本発明の範囲内である。核酸は、例えば、本発明のポリペプチドの製造において、及び治療薬として有用である。それらは、培養中又は生体内で細胞に投与されてもよく、細胞からの本発明のポリペプチドの分泌を誘導又は促進する分泌シグナルを含んでもよい。また、本発明の核酸を含有するか又は含む発現ベクター及び宿主細胞も、本発明の範囲内である(下でさらに詳しく説明される)。本発明の核酸は、定義上「単離された」と称されてもよい一方で、本発明のポリペプチドは野生型ポリペプチドではなく、したがって天然に存在する核酸によってコード化されないであろう。したがって、本発明のポリペプチド及び核酸は、「精製」、「実質的精製」、「単離」、「組換え」又は「合成」であってもよいが、天然に存在する物質と区別されるためにそうである必要はない。
【0182】
「単離された」核酸分子は、典型的にはスパイクタンパク質であるポリペプチドをコード化する核酸の天然供給源中で、それが通常結合している少なくとも1つの汚染核酸分子から、同定され分離された核酸分子である。単離された核酸分子は、自然界で見られる形態又は設定とは異なる。したがって、単離された核酸分子は、天然の細胞内に存在する核酸分子とは区別される。しかしながら、単離された核酸分子には、通常、スパイクタンパク質を発現する感染細胞に含有される核酸分子も含まれ、その場合、例えば、核酸分子は、天然の細胞とは異なる染色体上の位置にある。
【0183】
「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で同義的に使用され、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド又はそれらの類似体である、任意の長さのヌクレオチドの重合体を指す。ポリヌクレオチドの非限定的例としては、遺伝子、遺伝子フラグメント、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、及びプライマーが挙げられる。本発明のポリヌクレオチドは、単離又は精製された形態で提供されてもよい。選択されたポリペプチドを「コード化する」核酸配列は、適切な調節配列の制御下に置かれると、生体内でポリペプチドに転写(DNAの場合)及び翻訳(mRNAの場合)される核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンと3’(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンによって決定される。本発明の目的のために、このような核酸配列には、ウイルス、原核生物又は真核生物のmRNAからのcDNA、ウイルス又は原核生物のDNA又はRNAからのゲノム配列、さらには合成DNA配列が含まれ得るが、これらに限定されるものではない。転写終結配列は、コード配列に対して3’に位置してもよい。
【0184】
本発明のポリヌクレオチドは、例として、Sambrook et al(1989,Molecular Cloning-a laboratory manual;Cold Spring Harbor Press)に記載されているように、当該技術分野で周知の方法に従って合成され得る。
【0185】
本発明のポリヌクレオチド分子は、挿入配列と作動可能に連結された制御配列を含む発現カセットの形態で提供されてもよく、したがって標的対象における生体内での本発明のポリペプチドの発現を可能にする。これらの発現カセットは、次に、典型的には、核酸免疫化のための試薬としての使用に適したベクター(例えば、プラスミド又は組換えウイルスベクター)内に提供される。このような発現カセットは、宿主対象に直接投与されてもよい。代案としては、本発明のポリヌクレオチドを含んでなるベクターが、宿主対象に投与されてもよい。好ましくは、ポリヌクレオチドは、遺伝子ベクターを使用して調製及び/又は投与される。適切なベクターは、十分な量の遺伝情報を保有でき、本発明のポリペプチドの発現を可能にする任意のベクターであってもよい。
【0186】
したがって、本発明は、このようなポリヌクレオチド配列を含んでなる発現ベクターを含む。したがって、本発明は、本発明のポリペプチドをコード化するポリヌクレオチド配列、及び任意選択的に、本明細書で定義される異なるポリペプチドをコード化する1つ又は複数のさらなるポリヌクレオチド配列を含んでなる、炎症性疾患又は病状の予防又は治療に使用するためのベクターを提供する。
【0187】
さらに、本発明の組成物及び生成物は、ポリペプチドとポリヌクレオチドの混合物を含んでなってもよいことが理解されるであろう。したがって、本発明は、いずれか1つのポリペプチドの代わりに、前記ポリペプチドを発現できるポリヌクレオチドがある、本明細書で定義される組成物又は製品を提供する。
【0188】
発現ベクターは、分子生物学の技術分野において日常的に構築され、例えば、本発明のペプチドの発現を可能にするために、プラスミドDNA及び適切なイニシエーター、プロモーター、エンハンサー、及び例えば必要であり、且つ正しい方向に配置されているポリアデニル化シグナルなどのその他の要素の使用を伴ってもよい。その他の適切なベクターは、当業者には明らかであろう。この点に関するさらなる例として、本発明者らはSambrook et al(Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory,1989)を参照する。
【0189】
したがって、本発明のポリペプチドは、このようなベクターを細胞に送達し、ベクターからの転写を生じさせることによって提供されてもよい。好ましくは、本発明のポリヌクレオチド、又はベクターにおける本発明での使用のためのポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコード配列の発現を提供できる制御配列と作動可能に連結され、すなわちベクターは発現ベクターである。
【0190】
「動作可能に連結された」とは、そのように記載された構成要素が通常の機能を果たすように構成された、要素の配置を指す。したがって、核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターなどの所与の調節配列は、適切な酵素が存在する場合、その配列の発現をもたらすことができる。プロモーターは、その発現を誘導する機能がある限り、配列に隣接する必要はない。したがって、例えば、介在する未翻訳であるが転写された配列がプロモーター配列と核酸配列の間に存在しても、プロモーター配列は依然としてコード配列と「作動可能に連結された」と見なされ得る。
【0191】
いくつかの発現系が当該技術分野で記載されており、そのそれぞれは、典型的には、発現制御配列と作動可能に連結された、関心のある遺伝子又はヌクレオチド配列を含有するベクターからなる。これらの制御配列には、転写プロモーター配列、転写開始配列、及び転写終了配列が含まれる。本発明のベクターは、例えば、複製起点、任意選択的に前記ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター、及び任意選択的にプロモーターの調節因子を備えた、プラスミド、ウイルス又はファージベクターであってもよい。「プラスミド」は、染色体外遺伝要素の形態のベクターである。例えば、細菌プラスミドの場合は、ベクターは、アンピシリン耐性遺伝子などの1つ又は複数の選択可能なマーカー遺伝子を含有してもよく、又は真菌ベクターの場合は、耐性遺伝子を含有してもよい。ベクターは、例えば、DNA又はRNAの生成のために生体外で使用されてもよく、又は例えば、哺乳類宿主細胞などの宿主細胞を形質移入又は形質転換するために使用されてもよい。ベクターはまた、例えば、ポリペプチドの生体内発現を可能にするために、生体内で使用されるように適合されてもよい。
【0192】
「プロモーター」は、ポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドの転写を開始し制御するヌクレオチド配列である。プロモーターには、誘導性プロモーター(プロモーターと作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、補因子、調節タンパク質などによって誘導される場合)、抑制性プロモーター(プロモーターと作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現が、分析物、補因子、調節タンパク質などによって抑制される場合)、及び構成的プロモーターが含まれ得る。「プロモーター」又は「制御要素」という用語は、全長プロモーター領域及びこれらの領域の機能的(例えば、転写又は翻訳を制御する)セグメントを含むことが意図される。
【0193】
本発明によるポリヌクレオチド、発現カセット又はベクターは、シグナルペプチド配列をさらに含んでなってもよい。シグナルペプチド配列は、シグナルペプチドが発現されて、これもまたプロモーターと作動可能に連結したコード配列によってコード化されるポリペプチドの分泌を促進するように、一般にプロモーターと作動可能に連結して挿入される。
【0194】
典型的には、シグナルペプチド配列は、10~30個のアミノ酸、例えば15~20個のアミノ酸のペプチドをコード化する。多くの場合、アミノ酸は主に疎水性である。典型的な状況では、シグナルペプチドは、シグナルペプチドを保有する成長中のポリペプチド鎖を発現細胞の小胞体に標的化する。シグナルペプチドは小胞体中で切断され、ゴルジ装置を介してポリペプチドが分泌されるようになる。したがって、本発明のペプチドは、個体内の細胞からの発現及びそれらの細胞からの分泌によって、個体に提供されてもよい。
【0195】
免疫原性及びワクチン組成物
本発明は、本明細書で定義されるキメラタンパク質又は融合タンパク質を含んでなる組成物、及びコロナウイルス感染症の治療又は予防における免疫原性組成物又はワクチン組成物におけるこのようなキメラタンパク質又は融合タンパク質の使用をさらに提供する。
【0196】
本明細書で使用される「ワクチン組成物」という用語は、疾患に対して生物を防御又は治療するために、組成物内の抗原(免疫原)に対する免疫応答を惹起するために使用される組成物として定義される。
【0197】
本明細書の用法では、「免疫刺激組成物」、「ワクチン組成物」、及び「免疫原性組成物」という用語は、一般に同義的に使用されてもよい。
【0198】
本発明の免疫刺激組成物又はワクチンは、治療的又は予防的活性成分としての本発明の1つ又は複数のペプチドに加えて、薬学的に許容可能な担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、ビヒクル、緩衝剤又は安定化剤を適切に含んでもよい。このような担体としては、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、リポソーム、水、グリセロール、ポリエチレングリコール、エタノール、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0199】
免疫刺激組成物又はワクチン組成物は、例えば、非経口(皮下、筋肉内、静脈内又は皮内をはじめとする、又は脳脊髄液への注射による)、経口(バッカル又は舌下をはじめとする)、経鼻、局所(バッカル、舌下又は経皮をはじめとする)、膣又は直腸経路などの任意の適切な経路による投与のために適合され得る。このような組成物は、例えば、無菌条件下でペプチドを担体又は賦形剤と混合することによって、薬学分野で公知の任意の方法によって調製され得る。典型的には、ワクチン組成物は、皮下、筋肉内、静脈内又は皮内経路による、典型的には、注射による投与のために適合される。代案としては、ワクチン組成物は、経口又は経鼻投与のために適合されてもよい。
【0200】
非経口投与のために適合された免疫刺激組成物又はワクチン組成物は、意図された受容者の血液と製剤が実質的に等張になるようにする、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び溶質を含有し得る、水性及び非水性の滅菌注射溶液;及び懸濁剤と増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液であってもよい。注射液のために使用され得る賦形剤としては、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセリン、及び植物油が挙げられる。組成物は、例えば密封アンプル及びバイアルなどの単位用量又は多回用量容器内で提示され得て、例えば、使用直前における注射用水などの滅菌液体携行(carried)の添加のみを要する、凍結乾燥(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilized))状態で保存され得る。即席注射液及び懸濁液は、無菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製され得る。
【0201】
経口投与のために適合された免疫刺激又はワクチン組成物は、カプセル又は錠剤などの個別のユニットとして;散剤又は顆粒剤として;溶液、シロップ又は懸濁液(水性又は非水性液体;又は食用の泡又はホイップ;又はエマルション)として提示され得る。
【0202】
錠剤又は硬質ゼラチンカプセルのための適切な賦形剤としては、乳糖、トウモロコシデンプン又はそれらの誘導体、ステアリン酸又はそれらの塩が挙げられる。軟質ゼラチンカプセルと共に使用される適切な賦形剤としては、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固体、又は液体ポリオールなどが挙げられる。
【0203】
溶液及びシロップの調製では、使用され得る賦形剤としては、例えば、水、ポリオール、及び糖が挙げられる。懸濁液の調製では、油(例えば植物油)を使用して、水中油又は油中水懸濁液が提供され得る。
【0204】
担体が固体である経鼻投与のために適合された免疫刺激組成物又はワクチン組成物は、例えば20~500ミクロンの範囲の粒度を有する粗粉末を含み、それは、嗅剤が鼻吸入される、すなわち鼻近くに保持される粉末容器からの鼻腔を介する迅速な吸入の様式で投与される。担体が液体である点鼻スプレー又は点鼻薬として投与するための適切な組成物は、活性成分の水溶液又は油溶液を含んでなってもよい。
【0205】
吸入による投与に適応された組成物としては、様々なタイプの定量投与加圧煙霧剤、ネブライザー又は注入器の手段によって生成され得る、微粒子ダスト又はミストが挙げられる。
【0206】
経皮投与のために適合された免疫刺激組成物又はワクチン組成物は、受容者の表皮と長期間緊密に接触したままにすることを目的とした、個別のパッチとして提示されてもよい。例えば、活性成分は、Pharmaceutical Research.3(6):318(1986)に一般に記載されているように、イオン導入によってパッチから送達され得る。
【0207】
局所投与のために適合された組成物は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、煙霧剤又は油として製剤化されてもよい。眼又はその他の外部組織、例えば、口及び皮膚の感染症の場合、組成物は局所軟膏又はクリームとして適用されてもよい。軟膏に製剤化する場合、有効成分はパラフィン系軟膏基剤又は水混和性軟膏基剤のどちらかと一緒に使用され得る。代案としては、活性成分は、水中油型クリーム基剤又は油中水型クリーム基剤を用いてクリームに配合され得る。眼への局所投与のために適合された医薬組成物は、有効成分が適切な担体、特に水性溶媒に溶解又は懸濁された点眼薬を構成してもよい。口内への局所投与のために適合された医薬組成物は、ロゼンジ剤、トローチ剤又はマウスウォッシュを構成してもよい。
【0208】
免疫刺激組成物又はワクチン組成物は、保存料、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、芳香剤、塩(本発明の物質自体が薬学的に許容可能な塩の形態で提供され得る)、緩衝剤、コーティング剤又は抗酸化剤を含有してもよい。
【0209】
本発明のワクチン組成物はまた、本明細書で定義されるキメラタンパク質又は融合タンパク質に加えて、1つ又は複数のその他の予防的又は治療的に活性な薬剤を含有してもよい。
【0210】
本発明のワクチン組成物で使用するためのキメラタンパク質又は融合タンパク質は、凍結乾燥されていてもいなくてもよい。
【0211】
アジュバント
本発明のワクチン組成物はまた、本明細書で定義されるペプチドに加えて、薬学的に許容可能なアジュバントを含んでもよい。アジュバントは、ワクチン組成物の免疫原性を高めるために添加される。
【0212】
適切なアジュバントは当該技術分野で公知であり、本明細書に記載される任意のもの、好ましくはTLR2作動薬、より好ましくはPEG-R4-Pam-2-CysなどのPam-2-Cys含有分子、又は好ましくはNKT細胞の刺激因子、より好ましくはα-ガラクトシルセラミド(本明細書で「α-GalCer」とも称される)、α-グルコシルセラミド、α-グルコシルジアシルグリセロール、α-ガラクトシルジアシルグリセロール、β-マンノシルセラミド、及びアシル鎖とスフィンゴシン鎖の長さ、飽和度、及び極性頭部基組成の多様性を含んでなる、それらの類似体が挙げられる。
【0213】
いくつかの実施形態では、TLR2-作動薬は、Pam3CSK4、PEG-R4-Pam-2-Cys、MALP-2、リポテイコ酸、OspA、Porin、LcrV、リポマンナン、リゾホスファチジルセリン、リポホスホグリカン(LPG)、グリコホスファチジルイノシトール(GPI)、及びザイモサンからなる群から選択され得る。
【0214】
いくつかの実施形態では、アジュバントは、ポリ-I:C、CpG、ポリ-ICLC、1018ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、B(C、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、JuvImmune、LipoVac、MF59(登録商標)、AddaVax(商標)、モノホスホリルリピドA、モンタニドIMS1312、モンタニドISA206、モンタニドISAV、モンタニドISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PEPTEL、ベクターシステム、PLGA微粒子、レシキモド、SRL172、ビロソーム及びその他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、β-グルカン、Pam3Cys、及びAquilaのQS21スティミュロンからなる群から選択され得るからなる群から選択される(can be selected from the group consisting of is selected from the group consisting of)。
【0215】
いくつかの実施形態では、アジュバントは、代謝可能な油及び乳化剤(洗剤又は界面活性剤など)を含んでなる。好ましくは、油及び乳化剤は、実質的にその全てが直径1ミクロン未満である油滴を有する水中油型エマルションの形態で存在する。例示的な代謝可能な油及び乳化剤は、6,299,884及び6,086,901に記載されている。一実施形態では、アジュバントは、水中油型エマルションを含んでなる。好ましくは、油はスクアレンである。好ましくは、水相はクエン酸緩衝液(例えば10mM、pH6.5)である。
【0216】
一実施形態では、アジュバントは、水中油型エマルション中のスクアレンを含んでなる。好ましくは、アジュバントは、ツイーン(登録商標)80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)及びSpan(登録商標)85(ソルビタントリオレアート)をさらに含んでなる。アジュバントは、4.3%スクアレン、0.5%ツイーン(登録商標)80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、0.5%Span(登録商標)85(ソルビタントリオレアート)を含んでなってもよく、任意選択的に400pig/mlのMTP-PE(N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-[1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-3(ヒドロキシホスホリル-オキシ)]エチルアミド)を含む。
【0217】
一実施形態では、組成物は50%vol/volのアジュバントを含んでなり、好ましくはアジュバントはMF59(登録商標)である。MF59(登録商標)は、スクアレン油の水中油型エマルションである。スクアレンは、ヒト、動植物に見られる天然に存在する物質であり、ワクチン製造工程のために高度に精製される。MF59(登録商標)アジュバント(MF59C.1)は、スクアレン内部油相とクエン酸緩衝液外部水相を備えた水中油型エマルションである。例えば、米国特許第6,299,884号明細書及び米国特許第6,086,901号明細書;Ott et al.“MF59-Design and Evaluation of a Safe and Potent Adjuvant for Human Vaccines,”Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powell,M.F.and Newman,M.J.eds.)Plenum Press,New York,pp.277-296(1995)を参照されたい。2つの非イオン性界面活性剤、トリオレイン酸ソルビタン及びポリソルベート80は、エマルションを安定化するのに役立つ。MF59(登録商標)アジュバントの安全性は、動物及びヒトにおいていくつかの抗原と組み合わせて実証されている。例えば、Higgins et al.,“MF59 Adjuvant Enhances the Immunogenicity of Influenza Vaccine in Both Young and Old Mice,”Vaccine 14(6):478-484(1996)を参照されたい。MF59(登録商標)は、4.3%スクアレン、0.5%ツイーン(登録商標)80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、0.5%Span(登録商標)85(ソルビタントリオレアート)であり、任意選択的に400pg/mlのMTP-PE(N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-[1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-3(ヒドロキシホスホリル-オキシ)]エチルアミド)を含む。MF59の例示的な組成は、クエン酸緩衝液pH6.5(10mMのクエン酸、140mMのNaCl、0.02%PS80、pH6.5)及び39mg/mlのスクアレン、4.7mg/mlのポリソルベート80、4.7mg/mlのソルビタントリオレアート、2.65mg/mlのクエン酸ナトリウム、0.17mg/mlのクエン酸一水和物を含んでなる。
【0218】
任意の実施形態において、アジュバントは、本明細書に記載されるいずれか1つであり、好ましくは、PEG-R4-Pam-2-Cys、α-ガラクトシルセラミド(本明細書で「α-GalCer」とも称される)又はMF59(登録商標)である。
【0219】
投与量及び投与経路
本明細書の用法では、上気道(URT)には、鼻及び鼻道、副鼻腔、咽頭、及び声帯皺襞(声帯)上部の喉頭の部分の領域が含まれてもよい。
【0220】
典型的には、下気道(LRT)には、声帯皺襞下部の喉頭の部分、気管、気管支、及び細気管支の領域が含まれる。肺は下気道に含まれ得て、呼吸細気管支、肺胞管、肺胞嚢、及び肺胞が含まれる。本発明の任意の態様において、URTへの投与は、鼻及び鼻道、副鼻腔、咽頭、及び声帯皺襞(声帯)上部の喉頭の部分への投与であってもよい。化合物がURT内に保持されるか、又はLRTの領域と接触しないという条件で、URTの任意の1つ又は複数の領域への投与も想定される。
【0221】
「治療有効量」という語句は、一般に、(i)特定の疾患、病状、又は障害を治療する、(ii)特定の疾患、病状、障害の1つ又は複数の症状を軽減、改善、又は除去する、又は(iii)本明細書に記載される特定の疾患、病状、又は障害の1つ又は複数の症状の発症を遅らせる、本発明の1つ又は複数のポリペプチド又はポリヌクレオチドの量を指す。望ましくない効果、例えば副作用が、望ましい治療的効果と共に現れることがある;したがって、実務家は、適切な「有効量」を決定する際に、潜在的なリスクと潜在的な利益のバランスを取る。
【0222】
いくつかの実施形態では、ヒト対象に対する本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質の有効量は、約0.25ナノモル/kg体重/用量~0.0001ナノモル/kg体重/用量の範囲にある。好ましくは、範囲は、約0.25ナノモル/kg体重/用量~0.0001ナノモル/kg体重/用量である。より好ましくは、範囲は、約0.002ナノモル/kg体重/用量~0.001ナノモル/kg体重/用量である。いくつかの実施形態では、体重/用量範囲は、約0.25ナノモル/kg~0.001ナノモル/kg、約0.1ナノモル/kg~0.001ナノモル/kg、約0.025ナノモル/kg~0.001nmol/kg、約0.01ナノモル/kg~0.001ナノモル/kg、又は約0.005ナノモル/kg~0.001ナノモル/kg体重/用量である。いくつかの実施形態では、量は、0.25ナノモル、0.1ナノモル、0.05ナノモル、0.01ナノモル、0.005ナノモル、0.002ナノモル、又は0.001ナノモル/kg体重/用量程度の本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質である。投薬体制は状況の緊急性に応じて調整され、最適な治療用量が得られるように調整される。
【0223】
いくつかの実施形態では、ヒト対象に対する本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質の有効量は、1用量当たり約1μg~100μgの範囲である。好ましくは、範囲は、1用量当たり約1μg~50μgである。より好ましくは、範囲は、1用量当たり約1μg~20μgである。いくつかの実施形態では、用量は、1用量当たり約5μg~100μg、約5μg~50μg、約10μg~45μg、約10μg~25μg、又は約10μg~20μgである。いくつかの実施形態では、用量は、約、0.1μg、0.2μg、0.5μg、1μg、5μg、10μg、15μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg程度である。好ましくは、用量は15μgである。
【0224】
必要とされる正確な量は、対象の生物種、年齢及び全身状態、投与様式などに応じて、対象毎に異なるであろう。したがって、正確な「有効量」が特定できない可能性もある。しかしながら、個々の場合における適切な「有効量」は、当業者であれば日常的な実験のみを使用して決定できる。一態様では、対象に投与される用量は、ウイルス量を減少させる任意の用量である。
【0225】
キメラタンパク質又は融合タンパク質又はそのワクチン組成物は、防御免疫応答を誘導するために、当業者に公知の免疫化スキームを用いて投与され得る。これらとしては、単回免疫化、又はプライムブーストストラテジーにおける複数回の免疫化が挙げられる。ブースト免疫化は、初回免疫化(プライム免疫化)の数日後、数週間後、数ヵ月後、或いは数年後にさえ行われ得る。特定の実施形態では、初回プライム免疫化の2週間後、1ヵ月後、2ヵ月後、3ヵ月後、4ヵ月後、5ヵ月後、又は6ヵ月以上後にブースト免疫化が行われる。さらに、毎週、隔週、毎月、隔月、3ヵ月毎、又はそれ以上、複数回のブースト免疫化を行われ得る。その他の実施形態では、ブースト免疫化は、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎、又は12週間毎に行われる。特定の実施形態では、ブースト免疫化は、対象の血清中に防御的抗SARS-CoV-2抗体力価が認められるまで継続され得る。特定の実施形態では、防御的抗体力価を得るために、必要に応じて、対象は、1回のブースト免疫化、2回のブースト免疫化、3回のブースト免疫化、又は4回以上のブースト免疫化を受ける。さらなる実施形態では、初回プライム免疫化におけるアジュバントと、ブースト免疫化におけるアジュバントは異なる。代案としては、プライム免疫化におけるアジュバントと、ブースト免疫化におけるアジュバントは同じである。
【0226】
この投与は、必要な頻度で繰り返され得る。例えば、ワクチンの初回用量が投与され、後日ブースターが投与されてもよい。
【0227】
本発明の組成物は、筋肉内、鼻腔内、皮下、静脈内、腹腔内又は経口経路など、本明細書に記載の任意の好都合な経路によって投与され得る。
【0228】
本発明の組成物は、筋肉内、鼻腔内、皮下、静脈内、腹腔内又は経口経路など、本明細書に記載の任意の好都合な経路による投与のために製剤化又は適合される。
【0229】
本発明の組成物は、URTのみに投与するために製剤化されてもよい。URTへの限定は、量によって、特に形態、すなわち、乾燥粉末又は溶液液滴を問わず、さもなければLRT又はTRTに投与されるであろう組成物の粒度、物理的形態の体積と組成によって、達成されてもよい。代案としては、本発明のワクチン組成物は、URT内のみでの保持を確実にする装置を介して投与されてもよい。
【0230】
本明細書に記載の組成物は、乾燥粉末、スプレー、ミスト、又は煙霧剤をはじめとする、鼻腔内投与のために製剤化されてもよい。これは、コロナウイルス感染症の治療にとって特に好ましくあってもよい。
【0231】
鼻腔内送達を使用して、送達をURTに限定するために採用され得るいくつかの選択肢がある:(1)液滴/粒度が、LRTへのアクセスを防ぐのに十分な大きさ(>10μm)であること確実にする;(2)液体の場合は、流出/排液を最小限に抑える投与量の制限;(3)同様に、流出/排出を最小限に抑える、頭部を逆転させた状態での投与;(4)鼻腔内での保持を促進して流出/排液を防ぐ、粘度増強剤/粘膜付着剤の組み入れ;(5)LRT曝露の可能性を完全に排除する経鼻装置(Optinose双方向性送達装置など)の使用。これらの方法の1つ又は組み合わせが適用され得る。
【0232】
適切な担体の選択は、想定される投与の特定の種類に依存する。例えば、鼻粘膜表面などの上気道を介した投与では、化合物は溶液、例えば、水又は等張生理食塩水(緩衝化又は非緩衝化)、又は懸濁液に製剤化されて、滴剤又はスプレーとして鼻腔内投与され得る。好ましくは、このような溶液又は懸濁液は、鼻分泌物に対して等張であり、例えば、約pH4.0~約pH7.4、又はpH6.0~pH7.0の範囲などのほぼ同じpHである。緩衝液は生理学的に適合する必要があり、単なる例としてリン酸緩衝液が挙げられる。例えば、代表的な鼻充血除去剤は、約6.2のpHに緩衝化されていると記載されている(Remington’s、同上、1445ページ)。もちろん、通常の当業者であれば、鼻及び/又は上気道投与のための無害な水性担体に適した生理食塩水の含有量及びpHを容易に決定し得る。
【0233】
例えば、技術的に知られている、保存料、着色料、潤滑油又は粘稠な鉱油又は植物油、香料、芳香油のような天然又は合成の植物抽出物、及び例えばグリセロールのような保湿剤及び粘度増強剤もなどのその他の成分もまた含めて、製剤にさらなる粘度、保湿性、及び心地よい質感、及び匂いを提供し得る。本発明による溶液又は懸濁液の経鼻投与では、液滴、小滴、及びスプレーを生成するための様々な装置が当該技術分野で利用可能である。例えば、本明細書に記載のワクチン組成物は、ガラス、プラスチック、又は金属製の分注管を含む、単純なスポイト(又はピペット)の手段によって、鼻腔内に投与され得て、このスポイトから、一端に取り付けられた手動式ポンプ、例えば柔軟なゴム球によって供給される空気圧によって、内容物が一滴ずつ排出される。
【0234】
目の涙液分泌物は、眼窩から鼻道に排出されるので、所望であれば、本明細書に記載のワクチン組成物を送達するための担体として、適切な薬学的に許容可能な点眼液が当業者によって容易に提供され得て、点眼薬の形態で眼窩に投与されて、眼内投与と鼻腔内投与の双方が提供され得る。
【0235】
一実施形態では、滴剤又はスプレーとして送達するための溶液又は懸濁液を含有するスポイト又はスプレー装置を含む、予め測定された単位用量ディスペンサーが、投与される薬物の1回又は複数回の用量を含有して調製される。本発明はまた、ワクチン組成物の1回又は複数回の脱水単位用量を、任意の必要な塩及び/又は緩衝剤、保存料、着色剤などと共に含有するキットも含み、これは適量の水を添加することによって溶液又は懸濁液をすぐに調製できる。水は滅菌でも非滅菌でもよいが、一般的には滅菌水が好ましい。
【0236】
本発明の組成物は単位用量剤形で提供され得て、一般に密封容器内に提供され、キットの一部として提供されてもよい。このようなキットには、通常、(必ずしも必須ではないが)使用説明書が含まれる。それは、複数の前記単位用量剤形を含み得る。
【0237】
予防及び治療の方法
任意の態様において、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物は、本明細書に記載されるコロナウイルス株、特に表3のもののいずれか1つ又は複数に対する抗体、好ましくは中和抗体を生成する。任意の態様において、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物は、本明細書に記載のコロナウイルス株、特に表3に記載のコロナウイルス株のいずれか又は複数に対して、治療的又は予防的処置を提供する。以下に定義される態様及び実施形態において、「コロナウイルス」への言及には、表3に記載されるものをはじめとするが、これらに限定されるものではない、本明細書に記載のコロナウイルスの1つ又は複数の株、例えば、WT、アルファ及びベータ株;WT、アルファ、ベータ、及びVIC2089株;WT、アルファ、ベータ、デルタ株;WT、アルファ、ベータ、デルタ、デルタプラス、ガンマ、ラムダ、ミュー、イオタ、カッパ、及びミクロン株への言及も含まれる。本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質質、又は本発明の組成物は、キメラタンパク質又は融合タンパク質中のRBDアミノ酸配列が由来するものとは異なるSARS-CoV-2株に対して、治療的又は予防的利益を提供してもよい。
【0238】
本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、又は本発明の組成物が、それに対して治療的又は予防的利益をもたらす、例示的な株を実施例に示す。
【0239】
一態様では、本発明は、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物をそれを必要とする対象に投与することによって、コロナウイルスに関連する疾患を治療及び/又は予防することを含んでなる、コロナウイルスに関連する疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0240】
一態様では、本発明は、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物をそれを必要とする対象に投与することによって、コロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる疾患を治療及び/又は予防することを含んでなる、コロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0241】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物をそれを必要とする対象に投与することによって、コロナウイルス感染に関連する呼吸器疾患又は病状を治療及び/又は予防することを含んでなる、コロナウイルス感染に関連する呼吸器疾患又は病状を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0242】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物をそれを必要とする対象に投与することによって、コロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる気道炎症を軽減することを含んでなる、コロナウイルスに関連するか、又はそれによって引き起こされる気道炎症を軽減する方法を提供する。
【0243】
別の態様では、本発明はまた、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激剤を、それを必要とする対象に投与することによって、コロナウイルス感染中の呼吸器疾患又は病状を制御する対象の能力を改善することを含んでなる、コロナウイルス感染中の呼吸器疾患又は病状を制御する対象の能力を改善する方法も提供する。
【0244】
別の態様では、本発明は、コロナウイルス感染症と診断された、又はその疑いのある対象における自然免疫応答を惹起するための薬剤の調製における、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物の使用を提供する。
【0245】
別の態様では、本発明は、コロナウイルスによって引き起こされる疾患を治療及び/又は予防するための薬剤の調製における、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物の使用を提供する。
【0246】
別の態様では、本発明は、対象におけるコロナウイルス感染に関連する呼吸器疾患又は病状を治療及び/又は予防するための薬剤の調製における、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物の使用をさらに提供する。
【0247】
別の態様では、本発明は、対象におけるコロナウイルス感染症を治療及び/又は予防するための薬剤の調製における、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物の使用をさらに提供する。
【0248】
別の態様では、本発明は、コロナウイルス感染症と診断された、又はその疑いのある対象における気道炎症を軽減するための薬剤の調製における、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物の使用を提供する。
【0249】
別の態様では、本発明は、コロナウイルス感染中の呼吸器疾患又は病状を制御する対象の能力を改善するための薬剤の調製における、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物の使用をさらに提供する。
【0250】
一態様では、本発明は、コロナウイルス感染症と診断された、又はその疑いのある対象における自然免疫応答を惹起するのに使用するための、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物を提供する。
【0251】
別の態様では、本発明は、対象におけるコロナウイルスによって引き起こされる疾患の治療及び/又は予防に使用するための、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物を提供する。
【0252】
別の態様では、本発明は、対象におけるコロナウイルス感染に関連する呼吸器疾患又は病状の治療及び/又は予防に使用するための、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物を提供する。
【0253】
別の態様では、本発明は、コロナウイルス感染症と診断された、又はその疑いのある対象における気道炎症の軽減に使用するための、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物を提供する。
【0254】
別の態様では、本発明は、対象におけるコロナウイルス感染中の呼吸器疾患又は病状の制御に使用するための、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物を提供する。
【0255】
予防又は予防療法が意図され又は必要とされる本発明の任意の態様において、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物は、ウイルス感染症の臨床的又は生化学的に検出可能な症状の前に対象に投与される。
【0256】
本発明の任意の態様において、本明細書に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物の対象への投与は、対象におけるウイルス負荷を低減する。好ましくは、ウイルス負荷は、例えば、上気道及び/又は下気道などの気道において低減される。好ましくは、ウイルス負荷は、鼻腔及び咽頭(すなわち喉)において低減される。代案の実施形態では、ウイルス負荷は、胃腸管、末梢循環、心臓、肝臓、腎臓、脾臓、又はコロナウイルスによる感染症、好ましくはSARS-CoV-2による感染症に罹り易いことが知られているその他の器官に存在してもよい。
【0257】
「コロナウイルス感染症」又は「CoV感染症」という用語は、本明細書の用法では、SARS-CoV-2、MERS-CoV、又はSARS-CoVなどのコロナウイルスによる感染症を指す。この用語には、多くは下気道で発症するコロナウイルスによる気道感染症が含まれる。症状には、高熱、空咳、息切れ、肺炎、下痢などの消化器症状、臓器不全(腎不全及び腎機能不全)、敗血症ショックなどが含まれ得て、重症の場合は死亡する。
【0258】
コロナウイルス感染の減少は、治療後の対象からのサンプル中のウイルス負荷を測定し、それを治療前の同じ対象からのサンプル中のウイルス負荷と比較することを含む、当該技術分野で公知の、又は本明細書に記載の任意の方法を使用して判定されてもよい。サンプルは、対象から得られる任意の生物学的サンプルであってよく、血液、唾液、尿、糞便、鼻洗浄液、痰、及び粘液分泌物を含んでもよい。サンプルは気道、好ましくは例えば、鼻又は咽頭(すなわち喉)などの上気道から採取されてもよい。「呼吸器疾患」又は「呼吸器病状」という用語は、炎症を伴い、上気道(鼻腔、咽頭、喉頭を含む)及び下気道(気管、気管支、肺を含む)を含む呼吸器系の構成要素に影響を及ぼす、いくつかの病気のいずれか1つを指す。上気道及び下気道の炎症は、ウイルス感染に関連しているか、又はそれによって引き起こされてもよい。
【0259】
呼吸器疾患の症状には、咳、過剰な痰の分泌、息切れ感、又は聞こえる喘鳴を伴う胸部絞扼感などが含まれてもよい。
【0260】
呼吸器疾患の存在、改善、治療又は予防は、対象の臨床的又は生化学的に関連する方法、又はそれからの生検によって判定されてもよい。例えば、測定されるパラメータは、肺機能の存在及び程度、閉塞の徴候及び症状;運動耐性;夜間覚醒;学校や職場に通えなかった日数;気管支拡張剤の使用;吸入コルチコステロイド(ICS)の用量;経口糖質コルチコイド(GC)使用;その他の薬剤の必要性;医学的処置の必要性;入院であってもよい。
【0261】
本明細書の用法では、呼吸器感染症という用語は、気道の任意の箇所の感染症を意味する。呼吸器感染症の例としては、風邪、副鼻腔炎、喉の感染症、扁桃炎、喉頭炎、気管支炎、肺炎、又は細気管支炎が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、本発明の任意の実施形態において、呼吸器感染症は風邪である。個人はウイルス検査によって気道感染症を有すると同定されてもよく、かゆみのある涙目、鼻汁、鼻閉、くしゃみ、咽喉痛、咳、頭痛、発熱、倦怠感、悪心、嘔吐、倦怠感、脱力感などの系(systems)を示してもよい。一態様では、呼吸器感染症を有する対象は、その他の呼吸器疾患を有していなくてもよい。ウイルス、好ましくはコロナウイルスの存在又は量の検出は、臨床サンプル(鼻洗浄液、喀痰、BAL)又は血清学から単離された、RNAのPCR/配列決定によって行われてもよい。
【0262】
本明細書の用法では、呼吸器感染症という用語は、気道の任意の箇所のコロナウイルス、好ましくはSARS-CoV-2による感染症を意味する。
【0263】
個人はウイルス検査によって気道感染症を有すると同定されてもよく、かゆみのある涙目、鼻汁、鼻閉、くしゃみ、咽喉痛、咳、頭痛、発熱、倦怠感、悪心、嘔吐、倦怠感、脱力感などの症状を示してもよい。一態様では、呼吸器感染症を有する対象は、その他の呼吸器疾患を有していなくてもよい。ウイルスの存在又は量の検出は、臨床サンプル(鼻洗浄液、喀痰、BAL)又は血清学から単離された、RNAのPCR/配列決定によって行われてもよい。対象の「治療」又は「治療する」という用語には、疾患又は病状、疾患の症状又は病状、又は疾患又は病状のリスク(又は易罹患性)を遅延させる、減速する、安定させる、治す、治癒する、緩和する、軽減する、変化させる、是正する、悪化を軽減する、回復させる、改善する、又は影響を与える目的での、本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物の対象への適用又は投与(又は、本明細書に記載の本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質、組成物、ワクチン又は免疫刺激組成物の、対象由来の細胞又は組織への適用又は投与)が含まれる。「治療する」とは、傷害、病態、又は病状の治療又は改善における任意の成功の指標を指し、これは、緩和;寛解;悪化の速度の減少;疾患の重症度の軽減;症状の安定化、軽減、又は傷害、病態又は病状を対象にとってより耐え易くする;変性又は衰退の速度を減速する;変性の最終点の衰弱を軽減する;又は対象の身体的又は精神的健康を改善するなどの任意の客観的又は主観的なパラメータを含む。
【0264】
SARS-CoV-2をはじめとするコロナウイルスによって引き起こされる症状の広範さを考慮すると、本明細書に記載の方法によるワクチン接種に対する陽性応答には、対象が経験するあらゆる症状の回復又は改善が含まれてもよいことが理解されるであろう。
【0265】
例えば、ワクチン接種に対する陽性応答は、対象における倦怠感、筋肉痛、頭痛、及び/又は無気力状態の全体的なレベルの低下であってもよい。陽性応答にはまた、対象の発熱の低下及び無熱状態への復帰も含まれてもよい。
【0266】
ワクチン接種に対する陽性応答は、呼吸器ウイルス感染に続く呼吸器症状の悪化を予防又は減弱してもよい。これは、例えば質問票に基づいて、ベースラインから試験期間終了までの疾患スコアの平均変化の比較によって評価され得て、また、感染/風邪症状発症に続いて、下気道症状スコア(LRSS-胸部絞扼感、喘鳴、息切れ(shortness or breath)、及び咳の症状)が毎日評価され得る。ベースラインの肺機能(最大呼気流量PEF)からの変化もまた評価され得て、治療に対する陽性応答は、PEFの減少が有意に減衰することである。例えば、プラセボ治療群は増悪のピーク時に朝のPEFの15%の有意な低下を示す一方、治療群はベースラインからのPEFの変化が15%未満で有意でない低下を示す。
【0267】
ワクチン接種に対する陽性応答はまた、肺周辺又は胸膜の付近のすりガラス状の不透明度の存在の減少(例えば、胸部CT画像技術を使用して判定される)であってもよい。
【0268】
ワクチン接種に対する陽性応答にはまた、血中酸素レベルの上昇又は正常レベルへの復帰も含まれてもよい。
【0269】
ワクチン接種に対する陽性応答にはまた、血圧の変化及び凝固因子の存在の増加などの心血管障害の改善も含まれてもよい。
【0270】
防御免疫応答には、体液性免疫応答と細胞性免疫応答が含まれ得る。SARS-CoV-2に対する防御は、スパイクタンパク質に向けられた血清中和抗体(液性免疫応答)によって与えられると考えられており、粘膜IgA抗体及び細胞媒介免疫応答もまた役割を果たしている。細胞性免疫応答は、SARS-CoV-2感染症に対する防御に有用であり、CD4+及びCD8+T細胞応答とメモリーB細胞応答が特に重要である。CD8+免疫は、ウイルス感染細胞を死滅させるのに特に重要である。ナチュラルキラー細胞及びNKT細胞もまた、ウイルス感染細胞の殺滅及び/又は排除に重要であってもよい。
【0271】
キット
別の実施形態では、本発明の1つ又は複数のタンパク質、ポリペプチド又はポリヌクレオチド及び/又は上記の免疫原性組成物を含む、キット又は製造品が提供される。
【0272】
なおも別の態様では、本発明は、対象への別々の、後続の、又は同時の投与のための、本発明のワクチン組成物と、1つ又は複数のアジュバントとを含んでなる、部品のキットを提供する。
【0273】
その他の実施形態では、上記の治療又は予防用途で使用するためのキットが提供され、キットには以下が含まれる:
-本発明のタンパク質、ポリペプチド、ポリヌクレオチド又は免疫原性組成物を保持する容器;
-使用説明書が記載されたラベル又は添付文書。
【0274】
任意の実施形態において、キットは、対象においてコロナウイルスに対する免疫応答を惹起するための1つ又は複数のさらなる有効成分又は活性成分を含有してもよい。
【0275】
キット又は「製造品」は、容器と、容器上の又は容器に付随するラベル又は添付文書とを含んでなってもよい。適切な容器としては、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、ブリスター包装などが挙げられる。容器は、ガラス又はプラスチックなどの多様な材料から形成されてもよい。容器は、病状の治療に有効な治療用組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能な栓を有する、静脈注射用溶液バッグ又はバイアルであってもよい)。ラベル又は添付文書は、治療用組成物が選択された病状を治療するために使用されることを示す。一実施形態では、ラベル又は添付文書は使用説明書を含み、治療用又は予防用組成物を使用して、本明細書に記載の炎症性疾患又は病状が治療され得ることを示す。
【0276】
キットは、(a)治療用又は予防用組成物;及び(b)第2の有効成分又は活性成分が入った第2の容器を含んでなってもよい。本発明のこの実施形態におけるキットは、組成物及び他の活性成分を使用して、本明細書に記載される炎症性疾患又は病状に起因する障害が治療され得るか、又はそれに端を発する合併症が予防され得ることを示す添付文書をさらに含んでなってもよい。代案としては、又はそれに加えて、キットは、静菌注射用水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液などの薬理的に許容可能な緩衝液を含んでなる、第2の(又は第3の)容器をさらに含んでなってもよい。それは、その他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジをはじめとする、商業的及び使用者観点から望ましいその他の材料をさらに含んでもよい。
【0277】
任意の実施形態において、治療用組成物は、治療用、予防用、又は免疫原性の組成物を保持するための入れ物を含む、使い捨ての又は再利用可能な装置の形態で提供されてもよい。一実施形態では、装置は注射器である。装置は、1~2mLの治療用又は免疫原性の組成物を保持してもよい。治療用又は予防用組成物は、すぐに使用できる状態で、又はさらなる構成成分の混合又は添加が必要な状態で、装置内に提供され得る。
【0278】
本明細書で開示され定義される本発明は、本文又は図面で言及される又はそれから明らかな2つ以上の個々の特性の全ての代替の組み合わせに及ぶことが理解されるであろう。これらの全ての異なる組み合わせは、発明の様々な代替態様を構成する。
【0279】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をより完全に説明するために提示される。しかしながら、それらは本発明の広い範囲を限定するものとしてどのようにも解釈されるべきではない。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される原理の多くの変形及び修正を容易に考案し得る。
【実施例】
【0280】
実施例1-RBD-IgG1 Fc融合タンパク質の生成
材料及び方法
RBDマウスIgG1 Fc融合体:
組換えRBDマウスIgG1 Fc融合タンパク質(配列番号3)を生成するために、祖先型SARS-CoV-2(N334-P527;GenBank登録NC_045512.2;配列番号15)の短縮型受容体結合ドメイン(RBD)をコード化する組換えDNA断片を、5’AgeIと3’BamHIクローニング部位の間で合成した(GeneArt Gene Strings、Thermo Scientific)。次にこれらを、コアヒンジ領域からC末端リジンに至るマウスIgG1 Fcドメイン(配列番号16)を含有してN末端GSGSGリンカー(配列番号17)を含む哺乳類発現ベクターpHLSecにクローニングし、それによってRBDをmIgG1-Fcに融合させた。
【0281】
RBDヒトIgG1 Fc融合体:
組換えRBDヒトIgG1 Fc融合タンパク質(配列番号25)を生成するために、GSGSGリンカー(配列番号17)を介して、コアヒンジ領域からC末端リジンに至るヒトIgG1のFcドメイン(配列番号18)に融合された祖先型SARS-CoV-2(N334-P527;GenBank登録NC_045512.2;配列番号15)をコード化する組換えDNA断片と、それに続く停止コドンを哺乳類発現のためにコドン最適化し(GeneArt Gene Strings、Thermo Scientific)、5’NheIと3’XhoIクローニング部位(IDT)の間で合成した。次にこれを哺乳類発現ベクターpHLSec(配列番号4)にクローニングした。
【0282】
RBDモノマー:
組換えRBDモノマーを生成するために、祖先型SARS-CoV-2の短縮型受容体結合ドメイン(RBD)(N334-P527;GenBank登録NC_045512.2;配列番号15)をコード化する組換えDNA断片を哺乳類発現のためにコドン最適化し(GeneArt Gene Strings、Thermo Scientific)、5’NheIと3’XhoIクローニング部位(IDT)の間で合成した。次に、これを哺乳動物発現ベクターpHLSecにクローニングし、6-HISタグとそれに続くC末端の終止コドン(配列番号8)を組み込んだ。RBDタンデムダイマーは、本明細書では一本鎖RBDダイマーとも称される。
【0283】
RBDタンデムダイマー:
組換えRBDタンデムダイマーを生成するために、Dai et al.,(Cell,2020)に基づき、タンデムに繰り返される祖先型SARS-CoV-2(R319-K537;GenBank登録NC_045512.2、配列番号19及び20)の2つの短縮形受容体結合ドメイン(RBD)をコード化する組換えDNA断片を哺乳類発現のためにコドン最適化し(GeneArt Gene Strings、Thermo Scientific)、5’NheIと3’BamHIクローニング部位(IDT)の間で合成した。次に、これを哺乳動物発現ベクターpHLSecにクローニングし、6-HISタグとそれに続くC末端の終止コドン(配列番号11)を組み込んだ。
【0284】
RBDベータヒトIgG1 Fc融合体
GSGSGリンカー(配列番号17)を介して、コア-ヒンジ領域からC末端リジンに至るヒトIgG1(配列番号18)のFcドメインに融合された祖先型SARS-CoV-2(N334-P527;GenBank登録NC_045512;配列番号15)の短縮型RBDをコード化する組換えDNA断片と、それに続く哺乳類発現ベクターpHLSecからの停止コドンを哺乳類発現ベクターpXC-17.4にクローニングできるように、PCRプライマーを設計した。得られたPCR産物を、制限酵素部位HindIII及びEcoRIを使用して哺乳類発現ベクターpXC-17.4にクローニングし、配列番号29に記載のポリヌクレオチドを生成した。変異K417N、E484K、及びN501Yを導入するために、PCR変異誘発を使用した。これは、DoCo-Pro-RBD-1 ADPの生成のために使用されたコンストラクトであった。
【0285】
タンパク質発現:
RBD-βヒトIgG1 Fc融合タンパク質を除く全てのRBDタンパク質は、製造業者(ThermoFisher Scientific)の指示に従って、ExpiFectamine 293形質移入キットを使用したExpi293S細胞の一過性形質移入によって発現させた。タンパク質を6日目に採取した。RBD-Fcタンパク質をプロテインAセファロース(CL-4B、Cytiva)によって上清から精製し、RBDモノマー及びRBDタンデムダイマーをNi-NTA樹脂(HisPur、Thermo Scientific)によって精製した。全てのタンパク質はゲル濾過サイズ排除クロマトグラフィーを使用してさらに精製し、RBD-Fc及びRBDタンデムダイマーはSuperdex-200カラム(Cytiva)を使用して、RBDモノマーはSuperdexS75カラム(Cytiva)を使用して、さらに精製した。全てのタンパク質は滅菌濾過し、使用前に-80℃で保存した。
【0286】
ベータRBD-hFcタンパク質を発現する安定したプールのための研究細胞バンク(RCB)が、National Biologics Facility(QLDノード)で開発された。Lonza GSv9(商標)の推奨に従って、単一バイアルからの細胞を振盪フラスコ内で復活及び増殖させ、12日間にわたる流加振盪フラスコ生産でタンパク質を生産した。馴化培地は、深層濾過と0.2μm濾過によって採取した。抗原はプロテインA樹脂、MabSelect PrismA(Cytiva)上で捕捉し、pH4.0で溶出した。抗原は、pH3.5まで酸性化して60分を超えて保持し、次にpH5.5まで中和して、低pHウイルス不活化に供した。抗原をpH6.5のクエン酸緩衝液で緩衝液交換し、PS80を0.02%で配合して、1.06mg/mLに希釈した後、無菌的にバイアルに充填した。
【0287】
タンパク質のAF647-コンジュゲーション:
次に、精製したRBD-mFc及びマウスIgG1イソタイプ対照(クローンMOPC-21、Biolegend)を、製造業者の指示に従ってAlexa Fluor 647抗体標識キット(Thermo Scientific)で標識した。
【0288】
結果及び考察
RBDモノマー、RBDタンデムダイマー、及びRBD-IgG1 Fcダイマーの3つの異なる形態(
図1B)での発現のために、単離形態のSARS-CoV-2スパイク受容体結合ドメイン(RBD)(
図1A)をコード化するDNAを哺乳類発現ベクターpHLSecにクローニングした。マウス及びヒトの双方のRBD-IgG1 Fcダイマーを生成した。これらのタンパク質は、哺乳類Expi-293S細胞を一過性に形質移入することによって発現させ、6日後、ゲル濾過サイズ排除クロマトグラフィー(
図1C~G)によってタンパク質を単離精製した後、滅菌濾過して-80℃で保存した。
【0289】
精製されたRBD-Fcダイマータンパク質の活性は、RBDの天然受容体であるヒトACE2を発現するように形質移入された293T細胞を染色することによって、検証した(
図1H)。無関係のタンパク質(T細胞受容体)を形質移入された対照細胞株は、RBD-Fcダイマーでは染色されなかったが、抗TCR抗体では予想通り染色された。
【0290】
実施例2-アジュバントあり又はなしでのRBD-Fcダイマーの皮下及び鼻腔内接種経路の比較
材料及び方法
ワクチン接種及び採血体制
BALB/cマウス(各群n=5)に、アジュバントなしで投与される、又は0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cys又は0.2μgのα-GCのアジュバントの存在下で投与される、0.1ナノモルのRBDダイマーを尾の付け根の皮下経路(100μl)又はURTへの経鼻経路(15μl)のどちらかを介してワクチン接種した。マウスを0日目にプライミングし、28日目にブーストした。マウスは、1回目の注射の直前(事前採血)、2回目の注射の直前(1°)、及び2回目の注射の2週間後(2°)に採血した。
【0291】
RBD特異的抗体応答を測定するための酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
RBD特異的抗体力価は、ELISAによって判定した。平底96ウェルmaxisorpプレート(ThermoFisher Scientific)は、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS;Gibco Life Technologies)中の2μg/ml濃度のRBDモノマーで、50μl/ウェルでコーティングした。プレートは加湿雰囲気下、4℃で一晩インキュベートした。未結合抗体を除去し、ウェルをPBS中の100μl/ウェルの1%ウシ血清アルブミン(BSA画分V、Invitrogen Corporation、Gibco)で1~2時間ブロックした後、0.05%v/vのTween-20(PBST)を含有するPBSで3回洗浄した。マウス血清の連続希釈液をウェルに添加し、室温で一晩インキュベートした。洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合ウサギ抗マウスIg Ab(Dako、Denmark)を使用して、結合したAbを検出した。検出抗体を加湿雰囲気下、室温で1時間インキュベートし、次にプレートをPBSTで5回洗浄した。次に、100μlのテトラメチルベンジジン基質(TMB、BD Biosciences、カタログ番号555214)を各ウェルに加え、5~7分後に1Mオルトリン酸(BDH Chemicals、Australia)の100μl/ウェルの添加によって反応を停止させた。Labsystems Multiskanマイクロプレートリーダー(Labsystems、Finland)を使用して、450nm及び540nmの波長で各ウェルの光学濃度(OD)を測定した。Abの力価は、0.3のODを達成するのに必要な、血清の最高希釈率の逆数として表される。
【0292】
微量中和アッセイ
微量中和アッセイで使用したSARS-CoV-2単離株は、ベロ細胞培養物中で増殖させ-80℃で保存した。アッセイの前日に、ベロ細胞を平底96ウェルプレートに、2×104細胞/ウェルで播種した。熱不活化血清の連続2倍希釈液を、100 TCID50(50%組織培養感染用量)のSARS-CoV-2と共に1時間インキュベートし、残留ウイルス感染力をベロ細胞の4つのウェルで評価した。プレートを37℃でインキュベートし、5日目にウイルス細胞変性効果を測定した。中和抗体力価は、Reed/Muench法を用いて計算した。
【0293】
SARS-CoV-2サロゲートウイルス中和試験
ACE2受容体タンパク質とRBDとの間の相互作用の抗体媒介遮断に基づく、スパイクタンパク質受容体結合ドメイン(RBD)に向けられた循環抗体の検出は、製造業者の指示に従って、SARS-CoV-2サロゲートウイルス中和試験(GenScript、USA)を使用してマウス血清中で測定した。手短に述べると、10μlのマウス血清を90μlのサンプル希釈緩衝液で希釈し、西洋わさびペルオキシダーゼ結合SARS-CoV-2 RBDタンパク質(HRP-RBD)と共にインキュベートした;試験溶液を、固定されたACE2受容体でコーティングされたウェルに添加した。光学濃度の読み取りによって対照血清と比較して、血清がHRP-RBDのACE2受容体への結合を阻害する程度を判定し、20%以上の阻害が陽性結果と見なされた。
【0294】
結果及び考察
5匹のBALB/cマウス群を、アジュバントなしで、又はPEG-R4-Pam-2-Cys(P2C)アジュバント又はα-ガラクトシルセラミド(α-GC)アジュバントと混合して、RBDマウスIgG1-Fcダイマー(RBD)で免疫化した。皮下及び鼻腔内(上気道、URT)の2つの免疫化経路を試験した。
【0295】
1回目の注射(0日目)の4週間後に、同一のブースト注射が続いた。マウスは、1回目の注射の直前(事前採血)、2回目の注射の直前(1°)、及び2回目の注射の2週間後(2°)に採血した。各群の各マウスについて、RBD特異的ELISAアッセイを用いて、総抗RBD IgG抗体力価を判定した(
図2)。
【0296】
これらの結果は、アジュバントを含まないRBDが、事前採血サンプルによって判定されるバックグラウンドを超える応答をほとんど誘導しないことを示した。しかしながら、どちらのアジュバント(P2Cとα-GC)も一次注射後に非常に強い抗体力価(103~104)を誘導し、二次注射後には105以上の抗体力価を誘導した。
【0297】
これらの血清サンプルはまた、SARS-CoV-2ウイルスを使用した微量中和アッセイでも検査され、中和力価は、ベロ細胞の感染を阻害するために必要な力価によって判定された。このアッセイは、一次免疫化後の高い抗体力価にもかかわらず、抗体がほとんど又は全く誘導されないことを実証した。しかし、二次免疫化後、アジュバントと合わせたRBDが投与された全ての群で、抗体力価200~2000の範囲の非常に強力な中和抗体応答が検出された(
図3)。
【0298】
これらの血清サンプルの中和能の独立した検証として、サロゲートウイルス中和試験(sVNT)として知られる別個のアッセイ(Tan et al.(2020)Nature Biotechnology)もまた採用された。この検査では、抗体を含有するサンプルが、RBDのACE2への結合を妨げる能力を測定する。実施し得る検査数が限られているので、二次血清サンプルのみを検査したところ、このアッセイにおいてアジュバント添加RBDワクチンは、RBD-ACE-2結合を95%を超えて阻害することが明らかになった。非アジュバント添加RBDワクチンで免疫化されたマウスからの血清は、このアッセイでは中和抗体応答を記録できなかった(
図4)。
【0299】
これらのデータは、同じ実験ではないが、同じ期間枠で採取されアッセイされた、ヒト回復期患者サンプル(hCov)から得られた同様のデータとも関連付けて提示されている(
図5)。これらのデータは、比較としてのみ提供されている。
【0300】
実施例3-スパイクタンパク質変異型の試験
ヒト回復期血漿サンプル(hCov)
ヒト回復期血漿サンプル(hCov)DD1、DD2、DD3、及びDD4は、Katherine Kedzierska教授(Peter Doherty Institute for Infection and Immunity、微生物学及び免疫学部)から供給された。これらの患者は、2020年4月にSARS-CoV-2武漢指標株VIC01に感染した。微量中和アッセイを用いて、501Y及び477N変異体(VIC2089及びVIC4881)、及び元のVIC01株に対する中和活性について血清を試験した。
【0301】
マウス血清サンプル
BALB/cマウス(各群n=5)に、アジュバントなしで投与される、又は0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cys又は0.2μgα-GCアジュバントの存在下で投与される、0.1ナノモルのRBDダイマーを尾の付け根の皮下経路を介してワクチン接種した。マウスを0日目にプライミングし、28日目にブーストした。2回目の用量から4週間後に採取した血清を、微量中和アッセイを用いて、501Y及び477N変異体(VIC2089及びVIC4881)、及び元のVIC01株に対する中和活性について試験した。これらの血清はまた、マルチプレックスビーズアレイを使用して、18個のRBD変異タンパク質(GenScript、USA)への結合についても試験した。
【0302】
結果及び考察
オーストラリアで2つのSARS-CoV-2変異株、(D614G/N501Y)及び(D614G/S477N)が出現したことから、本発明者らは、これらのウイルスの単離株(VIC2089及びVIC4881)について、3つの異なる回復期患者血漿サンプル(DD2、DD3、及びDD4)によって中和される能力を元のVIC01株と比較して試験した(
図6B)。DD1は、測定可能な中和抗体力価を含有しない患者サンプルとして含めた。サンプルDD2、DD3、及びDD4は、変異株(VIC2089及びVIC4881)を中和する能力が損なわれていた。これにより、元のVIC01株に感染した患者は、これらの新しい変異株に対して限定的な免疫を有していてもよく、さらに、ワクチンに使用されるSタンパク質が武漢指標(VIC01)株に基づいていることから、これらの変異株の出現が、ワクチン誘導免疫の有効性と寿命を限定してもよいことが示唆される。
【0303】
次に、本発明者らは、P2C又はα-GCアジュバントの存在下で、RBD-Fcダイマーワクチンで免疫化されたマウスからの血清について、これら2つのSARS-CoV-2変異株を中和する能力が損なわれているかどうかを試験した(
図6C)。結果は、これらの免疫化マウス血清サンプルが、α-GCをアジュバントとして使用した場合、元のVIC01株と少なくとも同等か又はそれ以上にこれらの変異ウイルス株を中和できることを明らかに示す。より広範囲のRBD変異株を調べるために、本発明者らは、世界的流行中にこれまでに検出された18の異なるRBD変異株への結合を比較できる、RBDマルチプレックスアッセイを用いた(
図7)。P2C又はα-GCアジュバントのどちらかと組み合わせたRBDワクチンで免疫化されたマウス由来の血清サンプルの結合能力(最大半量有効濃度(EC
50)として示される)には、ほとんど差がないことが判明した。結合が最も弱い(EC
50が最も低い)変異株はT478Iであったが、これでも300を超える高いEC
50読み取りを示した。
【0304】
総合すると、アジュバントと合わせたRBD-Fcダイマーによるワクチン接種は、異なるウイルス株に対する微量中和アッセイにおいて同等レベルの中和を達成する(
図5)。これは、ワクチンが全ての免疫応答をRBDエピトープに集中させ、この標的の包括的カバーを提供するので、個々のアミノ酸残基の変異がワクチン誘導免疫から逃れられにくくなるためであると考えられる。ワクチンがスパイク全体又はウイルス全体に基づく場合は、免疫系がカバーするエピトープがより多く存在するので、このようなことが起こる可能性がより低くなってもよい。
【0305】
実施例4-SARS-CoV-2マウスチャレンジモデルにおけるワクチンの試験
材料及び方法
VIC2089(N501Y/D614G)を使用したSARS-CoV-2マウスチャレンジモデルの確立
4匹のBALB/cマウス及びC57BL/6マウス群を、指標SARS-CoV-2株VIC01又はVIC2089(N501Y/D614G)変異株のどちらかで、煙霧剤チャレンジした。チャレンジから3日後にマウスを殺処分し、右肺葉を採取して均質化し、上清を収集して-80℃で保存した。感染性ウイルスの力価(TCID50;50%組織培養感染用量)は、前日に2×104細胞/ウェルの濃度で平底96ウェルプレートに播種したベロ細胞単層上で、上清を滴定して判定した。SARS-CoV-2の10倍連続希釈液をベロ細胞の4つのウェルで評価し;ウイルス細胞変性効果(CPE)を5日後に測定した。
【0306】
ワクチン接種マウスの上気道及び肺における防御効果の評価
ワクチン接種後の指定された時間に、煙霧剤によってマウスをVIC2089(N501Y/D614G)変異体でチャレンジした。チャレンジの3日後にマウスを殺処分し、心臓穿刺によって血液を採取した。左肺を採取し、組織学のために4%パラホルムアルデヒド中で固定した。チャレンジされたマウスの肺及び鼻甲介におけるウイルス力価を判定するために、右肺葉及び鼻甲介を採取し、500μlの培地中でビーズビートによって均質化し、2000×gで5分間遠心分離した。次に、上清を収集し、試験するまで-80℃で保存した。感染性ウイルスの力価(TCID50;50%組織培養感染用量)は、前日に2×104細胞/ウェルの濃度で平底96ウェルプレートに播種したベロ細胞単層上で、上清を滴定して判定した。SARS-CoV-2の10倍連続希釈液をベロ細胞の4つのウェルで評価し;ウイルス細胞変性効果(CPE)を5日後に測定した。
【0307】
結果及び考察
SARS-CoV-2のVIC2089株は、元のVIC01株と比較して2つの重要な変異、D614G及びN501Yを保有する。後者の変異は、このアミノ酸置換が、以前にマウスに適応したSARS-CoV-2ウイルスで観察されていることから、特に重要である。これは、501N残基を有する元の祖先型SARS-CoV-2ウイルスとは対照的に、N501Y変異RBDがマウスACE2に結合できるためである。したがって、本発明者らは、天然に存在する変異株の単離株を、2つの一般的に使用されるマウス系統(C57BL/6及びBALB/c)において試験した(
図8)。その結果、N501Y変異株はこれらのマウスに感染し、3日前後をピークに高いウイルス力価を示したのに対し、元の野生株(N501)はこれらのマウスに感染できなかったことが示された。そこで本発明者らは、免疫化されたマウスをウイルスでチャレンジするための小動物モデルを開発した。
【0308】
免疫化されたマウスからの血清サンプルがVIC2089株を中和できることを確認するために、
図9にWTとVIC2089株を並べて比較した中和力価を示すが、有意差は観察されなかった。
【0309】
本発明者らは、RBDマウスIgG1-Fcワクチン単独で、又はPEG-R4-Pam-2-Cys又はα-GalCerアジュバントと共に、予め(およそ100日前に)免疫化されたマウスを試験した。2回目の免疫化とウイルスチャレンジの間に長い期間があったにもかかわらず、どちらかのアジュバントと合わせたRBDで免疫化されたマウスは、肺感染から完全に防御され、肺サンプル中に検出可能なウイルスはなかった。これは、ワクチンが皮下投与されたか鼻腔内投与されたかに関係なく見られた。アジュバント無添加のRBDワクチンでは、防御は得られなかった(
図10)。本発明者らはまた、上気道防御の尺度としてマウスの鼻甲介からのサンプルも試験した。これらの免疫化されたマウスの一部では、依然として低レベルのウイルスが検出可能であった一方で、ウイルス力価は少なくとも99%減少し、α-GalCerと合わせたRBDで皮下経路を介して免疫化されたマウスの4/5匹では、検出可能なウイルスはなかった(
図11)。
【0310】
実施例5-RBDワクチンの筋肉内投与の有効性評価
材料及び方法
ワクチン接種及びチャレンジ体制
10匹のBALB/cマウス群に、0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cysと共に投与される0.1ナノモルのRBDダイマーを50μlで筋肉内接種した。マウスを0日目にプライミングし、28日目にブーストした。4週間後、マウスをVIC2089(D614G/N501Y)変異株で煙霧剤チャレンジした。年齢をマッチさせた5匹のワクチン未接種の対照BALB/cマウスもまた、同時にチャレンジした。
【0311】
5匹のC57BL/6マウス群は、0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cysと共に投与される0.1ナノモルのRBDダイマーを筋肉内ワクチン接種した。マウスを0日目にプライミングし、14日目にブーストして、3ヶ月後にVIC2089(D614G/N501Y)変異株でチャレンジした。年齢をマッチさせた5匹のワクチン未接種の対照C57BL/6マウスもまた、同時にチャレンジした。
【0312】
ワクチン接種マウスの上気道及び肺における防御効果の評価
BALB/cマウスとC57BL/6マウスの双方をチャレンジしてから3日後に、動物を殺処分し、右肺葉と鼻甲介を採取して均質化し、上清を収集して-80℃で保存した。組織における感染性ウイルスの力価(TCID50)は、ベロ細胞単層上の上清を滴定し、5日後にCPEを評価することによって判定した。
【0313】
結果及び考察
臨床現場における注射経路は通常、筋肉内であるので、本発明者らはまた、マウスウイルスチャレンジエッセイ(essay)において、筋肉内経路(四頭筋(quadracept))を介して免疫化されたマウスも試験した。これらのデータは、PEG-R4-Pam-2-Cysと合わせたRBDワクチンで免疫化された10/10匹のマウスの肺及び鼻甲介の双方で、ウイルスが検出できないことを印象的に示した(
図13)。同様の結果はC57BL/6マウスの5/5でも観察され、ワクチンが2つの異なる実験用マウス系統にわたって完全に防御的であることが示唆された。
【0314】
実施例6-RBDマウスFcダイマー、RBDヒトFcダイマー、及び一本鎖RBDダイマーの比較
材料及び方法
ワクチン接種及び採血体制
C57BL/6マウス(各群5匹)に、全て0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cysと共に投与される、0.1ナノモルのRBDマウスFcダイマー、RBDヒトFcダイマー、又は一本鎖ダイマーのいずれかを50μlで筋肉内ワクチン接種した。マウスを0日目にプライミングし、28日目にブーストした。マウスは、1回目の注射の直前(事前採血)、2回目の注射の直前(42°)、及び2回目の注射の2週間後(2°)に採血した。PEG-R4-Pam-2-Cysと共に投与される3つの異なるRBD抗原によって誘導された抗体応答の持続性を評価するために、マウスは63日目と82日目にも採血した。全ての血清サンプルは、ELISAによってRBD特異的抗体について検査した。
【0315】
結果及び考察
次に、本発明者らは、ダイマーを生成するためにマウスのFc領域とヒトのFc領域のどちらを使用するかによってRBDワクチンの効力に違いがあるかどうか、また単純な一本鎖ダイマーでも同様に機能するかどうかを試験した。本発明者らは、それぞれアジュバントとしてPEG-R4-Pam-2-Cysを使用して、マウスIgG1 Fc領域と、ヒトIgG1 Fc領域と、又は一本鎖RBDダイマーと融合したRBDを比較した(
図14a)。マウスFcダイマーは、一次免疫化及び二次免疫化後にヒトFcダイマーよりわずかに強い応答を示した一方で、RBD一本鎖ダイマーは一次免疫化後に非常に弱い応答を誘導したが、これはブースト後にFcダイマーと同様のレベルまで上昇した(
図14b)。マウスFcダイマーは、マウスFc受容体に対するマウスFcの適合性がより高いので、マウスにおいてほぼ確実にヒトFcダイマーよりも良好に機能した。しかしながら、最終的にはヒトもワクチンで免疫化されるので、ヒトFcダイマーがマウスでもほぼ同様に機能したことは有望であり、これはヒトではより良く機能すると考えられる。
【0316】
本発明者らは、各RBD製剤(アジュバントとしてPEG-R4-Pam-2-Cysを使用)に対する応答の持続性を測定した(
図15)。マウスダイマーとヒトダイマーはどちらも、1回目の注射から最長84日間、安定したレベルのRBD特異的抗体力価を示した。対照的に、RBD一本鎖ダイマーで免疫化されたマウスの抗体レベルは、84日の時間枠で漸進的低下を示し、このダイマーによる応答の持続性が低いことが示唆された。これは、ヒトを免疫化する場合、RBDヒトIgG1 Fcダイマーが、強力で持続的な応答を提供する最適な製剤であることを示唆する。
【0317】
実施例7-MF59(登録商標)アジュバントと合わせたRBDマウスIgG1-Fcダイマーの試験
材料及び方法
ワクチン接種及び採血体制
MF59(登録商標)又はPEG-R4-Pam-2-Cysのどちらかを配合した、RBDマウスIgG1-Fcダイマーをワクチン接種されたマウスにおけるRBD特異的抗体応答を評価するために、10匹のC57BL/6マウス群を、0.1ナノモルのRBDマウスFcダイマーと0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cysで、又は0.1ナノモルのRBDマウスFcダイマーとMF59(登録商標)(50%vol/vol)で、50μlで筋肉内免疫化した。マウスは1回目の免疫化の前(事前採血)、及び14日目(1°)に採血され、14日目又は28日目のどちらかでブーストし、どちらの場合も2回目の免疫化(2°)の2週間後に再採血した。
【0318】
MF59(登録商標)又はPEG-R4-Pam-2-Cysのどちらかを配合した、RBDマウスIgG1-Fcダイマー又はRBD一本鎖ダイマーをワクチン接種されたマウスにおけるRBD特異的抗体応答を評価するために、C57BL/6マウスを、どちらも0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cys又はMF59(登録商標)(50%vol/vol)を配合した、10μgのRBDマウスFcダイマーで、又は10μgのRBD一本鎖ダイマーで、筋肉内免疫化した。マウスを0日目にプライミングし、14日目にブーストした。マウスは、1回目の注射の直前(事前採血)、2回目の注射の直前(1°)、及び2回目の注射の4週間後(2°)に採血した。全ての血清サンプルは、ELISAによってRBD特異的抗体について検査した。
【0319】
結果及び考察
MF59(登録商標)は比較的良く確立されたアジュバントであるので、本発明者らは、次にこれをPEG-R4-Pam-2-Cysアジュバントと比較した(
図16)。マウスは、PEG-R4-Pam-2-Cys又はMF59(登録商標)アジュバントのどちらかと共に、RBDマウスFcダイマーで免疫化した。マウスは1回目の免疫化の前に採血し(事前採血)、2週間又は4週間後のどちらかでブーストし、それぞれの場合において二次免疫化の2週間後に再採血して、総抗RBD特異的IgG力価を判定した。この実験により、MF59(登録商標)アジュバントが、RBD特異的抗体を高力価で誘導するのに、同等に良好かそれ以上であることが明らかになった。
【0320】
本発明者らはまた、MF59アジュバント(登録商標)又はPEG-R4-Pam-2-Cysアジュバントの存在下で、RBDマウスFcダイマーをRBD一本鎖ダイマーと比較した(
図17)。一次免疫化と二次免疫化の双方の後、どのアジュバントを使用したかに関係なく、RBD Fcダイマーをワクチンとして使用した場合の抗体力価は、RBD一本鎖ダイマーを使用した場合と比較してより高かった。
【0321】
実施例8-PEG-R4-Pam-2-Cysと共に投与されるRBDモノマーと対比した、PEG-R4-Pam-2-Cysと共に投与されるRBD m-Fcダイマーに対する応答の包括的解析
材料及び方法
ワクチン接種及び採血体制
10匹のBALB/cマウス群を、0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cysを配合した0.2ナノモルのRBDモノマーで、又は0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cysを配合した0.1ナノモルのRBDマウスFcダイマーで、50μlで筋肉内免疫化した。マウスを0日目にプライミングし、28日目にブーストした。マウスは、1回目の注射の直前(事前採血)、2回目の注射の直前(1°)、及び2回目の注射の2週間後(2°)に採血した。血清は、ELISAによってRBD特異的抗体について検査した。
【0322】
ワクチン接種マウスの上気道及び肺における防御効果の評価
28日目のブーストから4週間後に、マウスをVIC2089(D614G/N501Y)変異株でチャレンジした。年齢をマッチさせた5匹のワクチン未接種の対照BALB/cマウスもまた、同時にチャレンジした。チャレンジから3日後にマウスを殺処分し、右肺葉と鼻甲介を採取して均質化し、上清を収集して-80℃で保存した。組織における感染性ウイルスの力価(TCID50)は、ベロ細胞単層上の上清を滴定し、5日後にCPEを評価することによって判定した。
【0323】
結果及び考察
次の実験は、アジュバント存在下で、RBDモノマーがRBDFcダイマーと同様の応答を誘導できるかどうかを調べるために設計された(
図18)。10匹のBALB/cマウス群は、事前採血を行った後、RBDモノマーとPEG-R4-Pam-2-Cysのワクチン製剤、又はRBD m-FcダイマーとPEG-R4-Pam-2-Cysのワクチン製剤のどちらかで、筋肉内免疫化した。一次免疫化の4週間後にマウスを採血し、二次免疫化の2週間後にブーストして採血した。血清サンプルを総抗RBD抗体力価について試験したところ、RBD Fcダイマーが一次免疫化後にRBDモノマーよりもはるかに強い応答をもたらしたことが明らかになった。血清中の抗RBD抗体の力価はブースト後に顕著に増加したが、それでもRBD Fcダイマーワクチンと同じレベルには達しなかった。
【0324】
ブーストの4週間後、これらのマウスをN501Yマウスチャレンジモデルで試験した(
図19)。以前と同様、RBDダイマーで免疫化されたマウスは完全に防御され、肺又は鼻甲介からウイルスは検出されなかった。対照的に、RBDモノマーで免疫化された8/10匹のマウスでは、肺に検出可能なウイルスは示されなかったが、全てのマウスの鼻甲介には中程度から高いウイルス力価が残っていた。
【0325】
実施例9-WT RBD-mFc抗原製剤とMF59(登録商標)又はPEG-R4-Pam-2-Cysアジュバントとの免疫原性の比較、及び用量レジメンと回数の影響
材料及び方法
臨床的に承認されているスクアレン水中油型アジュバントMF59(登録商標)(Seqirus,Holly Springs,USA)が、Fluad(登録商標)Quadワクチンにおける長年にわたる良好な安全性記録により、WT RBD-mFc抗原を用いた試験のために選択された。
【0326】
0.3ナノモルのPEG-R4-Pam-2-Cysアジュバントと共にWT RBD-mFcダイマーワクチン(10μg)で、50%vol/volのMF59(登録商標)アジュバントと共にWT RBD-mFcダイマーワクチン(10μg)で、C57BL/6マウスに筋肉内投与して比較した。マウスは、0日目と112日目の2回用量レジメン、又は0日目、22日目、及び112日目の3回用量レジメンのどちらかに従って接種した。血清を接種前及び接種後に採取した。
【0327】
結果及び考察
MF59(登録商標)又はPEG-R4-Pam-2-Cysのどちらかと共にWT RBD-mFcダイマーを筋肉内投与すると、同等の総RBD特異的抗体応答が得られた。どちらの群においても、2回用量スケジュール(
図20A~B)及び3回用量スケジュール(
図20C~D)による一次及び二次免疫化の双方に続いて、総RBD特異的Ab応答の増強が観察された。
【0328】
2回用量レジメン又は3回用量レジメンのどちらかにおける、MF59(登録商標)と合わせたWT RBD-mFcダイマーによる一次免疫化と二次免疫化の間の延長された期間は、観察された同様の力価によるブースター免疫化に続く総RBD抗体応答に影響を与えるようには見えず、2回用量レジメン(
図20A)及び3回用量レジメン(
図20C)のそれぞれにおいて、二次免疫化の16日後及び12日後同様の力価が観察された。2回用量体制の2回用量間の112日間で、総抗体レベルは平坦域に達したようであった(
図20A)。3回用量レジメンの総抗体応答では、総RBD特異的Ab応答が、二次免疫化(22日目)から90日目まで増加し、111日目(二次免疫化から89日目)にわずかに減少する傾向があった。111日目に投与された3回目の用量は減少傾向を逆転させ、総RBD特異的Ab応答は、132日目までに再び増加した(
図20C)。
【0329】
MF59(登録商標)と合わせたWT RBD-mFcダイマーを3回用量体制で接種されたマウスからのウイルス中和力価の結果は、二次免疫化の40日後(62日目)からSARS-CoV-2特異的nAbのレベルが増加し、三次免疫化の21日後(132日目)にさらに増加したことを実証した(
図20E)。
【0330】
これらの結果は、臨床的に承認されているMF59(登録商標)アジュバントと共に使用した場合、PEG-R4-Pam-2-Cysアジュバントと比較して、WT RBD-mFcダイマーの免疫原性が維持されることを示す。さらに、プライミング免疫化の22日後又は112日後にブースターが投与された場合でも、抗体レベルは同様なようである。3回目のブースター免疫化は、総抗体レベルの低下を逆転させ、nAbレベルをさらに高めることができるようである。これは、WT RBD-mFcダイマーが、総レベルとnAbレベルを2回目の注射後よりも高く上昇させるブーストを提供する能力を反映している。
【0331】
実験10-1回用量後におけるMF59(登録商標)と合わせたWT RBD-mFcの増加する用量の免疫原性と防御効率の評価
材料及び方法
MF59(登録商標)アジュバントの有無にかかわらず、10μgを超えるWT RBD-mFcが1回のワクチン接種後に防御免疫の向上を提供するかどうかを判定するために、C57BL/6マウスに、MF59(登録商標)の存在下又は非存在下(50%v/v)で、10、30又は50μgのWT RBD-mFcをプライムのみのレジメンを用いて、筋肉内経路を介して免疫化した。
【0332】
結果及び考察
結果は、MF59(登録商標)と合わせた10μg又は30μgのWT RBD-mFcの単回投与は、どちらも防御免疫を提供するには十分ではなく、チャレンジされた全ての動物の肺でウイルス力価が検出されたことを示した。さらに、MF59(登録商標)と合わせた10μg用量のWT RBD-mFcとの比較で、より高い30μg用量では、SARS-CoV-2ウイルスチャレンジに対する優れた防御免疫が得られず、ウイルス力価はより高く、ワクチン未接種の対照で観察されたものと同等であった。
【0333】
これらの結果はMF59(登録商標)と合わせたWT RBD-mFcのプライミングワクチンの用量を増やしても、未感作マウスにおける防御免疫応答の誘導のための2回目のワクチン接種の必要性を克服できないことを示す。
【0334】
実験11-RBDヒトIgG1 FcダイマーとRBDマウスIgG1 Fcダイマーの免疫原性及び防御効率の比較
材料及び方法
WT RBD-Fcワクチン候補をヒト臨床試験にさらに進めるために、WT RBDヒトFcダイマータンパク質(ヒトIgG1 Fc領域を使用)を生成した。BALB/c及びC57BL/6の双方のマウス系統で、プライムブースト体制を用いて、PEG-R4-Pam-2-Cysと合わせた10μgのWT RBD-hFcダイマーの筋肉内投与と、PEG-R4-Pam-2-Cysと合わせた10μgのWT RBD-mFcダイマーの筋肉内投与とを比較した。
【0335】
結果及び考察
RBD特異的抗体解析は、RBD-FcワクチンのヒトFc形態は、C57BL/6マウスではわずかにより低いものの、マウスFc形態と同様の総抗RBD抗体のレベル及びパターンを誘導することを実証した。どちらのマウス系統でも、マウス及びヒトのFc形態のRBDワクチンは、一般に115日目(ブースト後87日)まで一定レベルで維持される、持続性の抗体応答を誘導した(
図21A~B)。
【0336】
C57BL/6マウスにおいて、2回目の免疫から13日後に採取された中和抗体(nAb)力価を評価したところ、全ての動物でnAbの上昇が実証され、総RBD特異的抗体で観察されたように、RBDワクチンのヒトFc形態は、ワクチンのマウスFc形態と同様の、又はわずかにより低いレベルのnAbを誘導した(
図21C)。
【0337】
マウスSARS-CoV-2チャレンジモデルが、139日目(ブースター免疫の11日後)に適用され、結果は、PEG-R4-Pam-2-Cysアジュバントの存在下では、RBD-Fcワクチンのマウス型とヒト型はどちらも、RBDヒトFcで免疫化された5/5匹のマウス及びRBDマウスFcで免疫化された3/5匹のマウスにおいて、下気道感染に対する完全な防御が可能であったことを実証した(
図22)。
【0338】
これらの結果は、WT RBDヒトFcダイマータンパク質が、PEG-R4-Pam-2-Cysアジュバントの存在下で、WT RBDマウスFcダイマーと同様の免疫原性と防御効率を提供することを実証する。
【0339】
実験12-MF59(登録商標)と合わせたWT RBD-hFcの免疫原性と防御効率
次に、プライムブーストレジメンを使用して、MF59(登録商標)アジュバントと合わせたWT RBDヒトFCの免疫原性と防御効率を、筋肉内経路を介してC57BL/6マウスで評価した。
【0340】
MF59(登録商標)と合わせたWT RBD-hFcワクチン候補は、一次免疫化の20日後(20日目)に高レベルのRBD特異的総Abを提供し、それはブースト免疫の12日後(33日目)にはさらに上昇した(
図23A)。WTウイルスとベータ変異型ウイルスの双方を中和できる、高いnAbレベルもまた観察された(
図23B)。予想通り、WTウイルスに対するより高いnAbが、ベータウイルスと比較して観察された。
【0341】
マウスSARS-CoV-2チャレンジモデルを81日目(二次免疫化の60日後)に適用したところ、上気道感染と下気道感染の双方に対する完全な防御が示された(
図24)。
【0342】
これらの結果は、MF59(登録商標)アジュバントと合わせたWT RBD-hFcダイマーが、プライム/ブーストレジメンで筋肉内投与された場合、SARS-CoV-2に対する防御免疫をマウスに提供し得ることを示す。
【0343】
実験13-MF59(登録商標)と合わせたベータRBD-hFcワクチン候補の免疫原性
材料及び方法
世界的流行の発生以来、SARS-CoV-2の変異株がウイルスの元のWT株に取って代わった。ベータ株及びデルタ株をはじめとするこれらの変異株のいくつかは、WTベースのワクチンによって媒介されるワクチン誘導免疫に対して、部分的に耐性があるようである。ベータ変異株は、これまでに報告されている変異株の中で最も回避性が高く、RBDに3つの変異(N501Y、E484K、及びK417N)を保有する。
【0344】
MF59(登録商標)と合わせたRBD-hFcワクチンの適応性を実証するために、ワクチンのベータRBDバージョンを生成した(ベータRBD-hFc)。引き続くMF59(登録商標)と合わせたベータRBD-hFcワクチンの2つの用量(10μg及び3μg)を、プライムブーストレジメンで筋肉内経路を介してマウスで調べた。
【0345】
結果及び考察
10μg又は3μgのどちらかの用量のMF59(登録商標)と合わせたベータRBD-hFcで免疫化されたマウスでは、プライムブーストレジメンに続いて、WT RBDモノマーに対する強固な抗体応答が観察された(
図25A)。
【0346】
3μg又は10μgのどちらかのMF59(登録商標)と合わせたベータRBD-hFcで免疫化された19/20匹のマウスでは、ベータ変異株に特異的な中和抗体力価が観察された(
図25B)。興味深いことに、3μgの用量でプライムブーストを受けたマウスは、10μgの用量でプライムブーストを受けたマウスと比較して、ベータ変異株に対するより高いnAbを有するようであった。さらに、有効力価がより低いにもかかわらず、WT変異株を中和できるnAbが16/20匹のマウスで観察された(
図25B)。
【0347】
これらの結果は、プライムブーストレジメンを用いた、MF59(登録商標)と合わせたベータRBD-hFcダイマーのマウスへの筋肉内投与が、強固なWT-RBD特異的抗体応答と、SARS-CoV-2のWT及びベータ変異株の双方を中和できるnAbとを生じることを示唆する。
【0348】
実験14-MF59(登録商標)と共に投与される、異なる用量のWT RBD-hFc抗原及びベータ変異株RBD-hFc抗原の免疫原性と防御効率の評価
材料及び方法
WT RBD-hFcダイマー及びベータRBD-hFcダイマーの最小有効用量を判定するために、プライムブーストレジメンを用いて、MF59(登録商標)の存在下で、一連の用量(10、3、1及び0.3μg)のどちらかのダイマーで、C57BL/6マウスを筋肉内免疫化した。
【0349】
結果及び考察
免疫原性
MF59(登録商標)の存在下で、10、3、1、又は0.3μgのWT RBD-hFc又はベータRBD-hFcのどちらかを筋肉内ワクチン接種された、マウスの一次及び二次血清中の総抗WT RBD抗体力価を、RBD特異的ELISAを使用して測定した(
図14)。一次RBD抗体応答は、評価されたWT RBD-hFc)(
図26)及びベータRBD-hFc(
図26)の全ての用量で、比較的一貫していたが、ベータRBD-hFc製剤で免疫化されたマウスでは、全体的な力価がわずかにより低くなっていた。二次RBD抗体力価は全ての群にわたってブーストされ、抗原の用量が減少するにつれてブーストレベルが低下する傾向がわずかにあった(
図26C、D)。同様に、ブースト後、ベータRBD-hFc製剤で免疫化されたマウスでは、全体的なRBD抗体力価がわずかにより低く、各ベータRBD-hFcワクチン接種群内でより大きなばらつきも観察された。同様の結果は、MF59(登録商標)と合わせたWT RBD-hFc又は MF59(登録商標)と合わせたベータRBD-hFcをワクチン接種されたマウスからの二次血清(56日目)を、WT RBDモノマーとベータRBDモノマーの双方に対するAb応答について分析した場合にも、観察された(
図27))。
【0350】
防御効率
下気道感染に対する防御効率は、チャレンジ株としてVIC2089(N501Y/D614G)及びベータ変異株B.1.351を使用した、マウスSARS-CoV-2チャレンジモデルで評価した。研究の76日目(ブーストの55日後)に、各ワクチン接種群の10匹のマウスのうち5匹を、MF59(登録商標)の存在下で10、3、1又は0.3μgのWT RBD-hFc又はベータRBD-hFcのいずれかで免疫化し、VIC2089で煙霧剤チャレンジした(
図28A)。研究の83日目(ブーストの62日後)に、各群の残りの5匹のマウスを、B.1.351で煙霧剤チャレンジした(
図28B)。
【0351】
実験15-ハムスターモデルにおけるRBD-hFcダイマーワクチンの免疫原性と防御効率の評価
材料及び方法
SARS-CoV-2に感染したハムスターは、ヒトの上気道及び下気道感染の症状に酷似している。ハムスターはまた、体重が減少し、無気力になり、毛並みが乱れ、猫背になり、呼吸が速くなる。ハムスターの肺と腸では高レベルのSARS-CoV-2が確認されており、これらの組織にはSARS-CoV-2ウイルスに結合できるACE2が点在する。この理由から、ハムスターは開発中のCOVIDワクチンを評価するモデルとして使用されてきた。
【0352】
ハムスターに、0日目と21日目に、MF59(登録商標)又はPEG-R4-Pam-2-Cysのどちらかを配合したWT RBD-hFcダイマーを30μg又は10μg投与した。SARS-CoV-2チャレンジは、Zhou et al.,Cell Host & Microbe,2021,29:551-563の“Syrian Hamster Experiments”の方法に従って実施した。
【0353】
結果及び考察
総RBD特異的抗体応答
全てのハムスターは2回目の注射後に血清転換したが、数匹のハムスターの応答は以前のマウス研究で観察されたものよりも低く、ばらつきが大きかった。そのため、49日目に、ハムスターに、対応するワクチンの3回目の用量を投与した。これにより、
図29に提示される全てのハムスターで、はるかにより高い抗体産生がもたらされた。興味深いことに、2回目のワクチン用量後、MF59(登録商標)と合わせた30μgのWT RBD-hFcダイマー群は、MF59(登録商標)と合わせた10μgのWT RBD-hFcダイマー群よりも低い抗体力価を示した。逆応答は、マウスの研究でも観察された。
【0354】
実験16-ハムスターモデルにおけるベータ変異株に対するRBDワクチンの免疫原性と防御効率の評価
材料及び方法
ハムスターに、MF59(登録商標)と合わせた30、10又は3μgのWT RBD-hFcダイマー、又はMF59(登録商標)と合わせたベータRBD-hFcをワクチン接種し、0日目及び21日目に2回筋肉内投与した。3回目の用量を63日目に投与し、各ハムスターの肺及び鼻甲介におけるウイルス負荷を測定するために、85日目にチャレンジを実行し、88日目に組織を採取した。中和抗体(nAb)力価は、本明細書の他の箇所に記載されているように評価した。
【0355】
結果及び考察
図30は、各群のハムスターの個々のnAb力価を示す。この時点で、MF59(登録商標)と合わせたWT RBD-hFcダイマーで免疫化された10匹のハムスターのうち7匹が検出可能なnAb応答を示し、MF59(登録商標)と合わせたWT RBD-hFcダイマーで免疫化された30匹のマウスのうち15匹が検出可能なnAb応答を示した。これらのnAb応答は、WTウイルスに対して測定した。
【0356】
次に、85日目にこれらのハムスターをWT(WA-01/USA)又はベータ変異株(B.1.351)SARS-CoV-2ウイルスのどちらかでチャレンジし、チャレンジ後3日間にわたり毎日、中咽頭拭き取り検体を採取した。ハムスターは、肺のウイルス力価評価のために88日目に殺処分した。データは、3日目の拭き取り検体データ、及び実験終了時の肺組織1mgあたりのウイルス負荷を提示している。観察された中程度で非常に多様なnAb応答(
図30)と一致して、免疫化されたハムスターは、ウイルスチャレンジに対して中程度で多様な程度の耐性を示した(
図31)。WT SARS-CoV-2ウイルスチャレンジでは、3日目の拭き取り検体中でPBS(プラセボ)を投与されたハムスターのウイルス負荷は低く(平均約80PFU)、1匹の対照ハムスターでは5PFUの検出限界を下回っており、ワクチンを接種されたハムスターでは明らかな減少を示す余地はほとんどなかった。それにもかかわらず、3日目の拭き取り検体中の平均ウイルス負荷は、MF59(登録商標)と合わせた30μgWT RBD-hFcで免疫化されたハムスターにおいてより低く(13PFU)、3匹のハムスターのPFUは検出限界(5PFU)を下回り、2匹のハムスターは少量ではあるが検出可能なウイルスを有した。MF59(登録商標)と合わせた10μgのWT RBD-hFcで処置されたハムスターは全て検出可能なウイルスを有し、3日目の拭き取り検体中の平均ウイルス負荷(42PFU)は、PBSで処置されたハムスターより中程度にのみ低かった。MF59(登録商標)と合わせた30、10、及び3μgのベータSARS-CoV-2 RBD-hFcで免疫化されたハムスターは、平均PFU(29、18、61PFU)の中程度の減少しか示さなかった(
図31A)。
【0357】
ベータ(B.1.351)SARS-CoV-2ウイルスでチャレンジされたハムスターは、PBS処置群でウイルス負荷量がより高く(平均1200PFU)、3日目の拭き取り検体でワクチン誘導防御のより良い証拠を示した。最低の3μg用量を投与された1匹を除いて、MF59(登録商標)と合わせたベータRBD-hFcで免疫化された全てのハムスターは、より低いウイルス負荷を有し、PBS群と重複はなかった(30、10、及び3μg処置群の平均PFUはそれぞれ110、32、及び250)(
図31A)。
【0358】
頭蓋肺組織のサンプルから得られた結果は同様であったが、3日目の拭き取り検体とはいくつかの顕著な違いがあった(
図31B)。このように、MF59(登録商標)と合わせた10μgのWT RBD-hFc群は、WT(WA-01/USA)SARS-CoV-2チャレンジに対して最良の防御を示し(9.1×10^4対9.2×10^6PFU/100mg組織、PBS処理群)、MF59(登録商標)と合わせた10μg及び3μgのベータRBD-hFc群は、MF59(登録商標)と合わせた30μgのベータRBD群(1×10^7PFU/100mg組織)よりも低い平均力価(2.7×10^5及び1.1×10^6)を示した。ベータウイルスチャレンジ群では、PBS処置群が平均1.7×10^7PFU/100mg組織)であったのに対し、MF59(登録商標)と合わせた10μgベータRBD-hFc免疫化群は平均PFUが最も低かった(9.4×10^5)。MF59(登録商標)と合わせた30μgのベータRBD-hFcで免疫化された群は、より大きな広がりを示し、3匹のハムスターはPBS群よりもはるかに低かった(100倍以上)のに対し、2匹はPBS群と同様で、平均PFU値は2.3×10
6であった。最も低いMF59(登録商標)と合わせた3μgのベータRBD-hFc免疫群(7.9×10
6PFU)のハムスターでは、防御の形跡はほとんど見られなかった。
【0359】
総合すると、MF59(登録商標)と合わせたRBD-hFcワクチンは、ハムスター研究において免疫原性であることが示された(
図29~30)。
【0360】
実験17-ラットモデルにおけるベータRBDワクチンの免疫原性
材料及び方法
毒性学試験の一環として、ラットモデルにおいてMF59(登録商標)アジュバントを含む又は含まない、ベータRBD-hFcワクチンの免疫原性を評価した(
図32)。30匹のスプラーグドーリー系ラットの3群に、0日目、22日目、43日目に、生理食塩水、50μgのベータRBD-hFc、又は50μgのMF59(登録商標)アジュバントと合わせたベータRBD-hFcを筋肉内ワクチン接種した。44~45日目又は56日目の毒性の終了時に、各ラットから終末血液サンプルを採取し、血清に処理して、ELISAによってWT SARS-CoV-2スパイク特異的IgG抗体応答が評価された。
【0361】
結果及び考察
図32に示すように、MF59(登録商標)と共に投与されるベータRBD-hFcワクチンは高度に免疫原性であり、MF59(登録商標)と共にベータRBD-hFcワクチンで免疫化された30匹のラットのうち、1匹を除く全てが、10
4以上のスパイク反応性IgG抗体の力価を示した。1匹のラットはより低い抗体力価を生じたが、これは依然として、生理食塩水を注射した対照動物のバックグラウンドレベル(力価100)を明らかに超えていた。対照的に、MF59(登録商標)アジュバントなしでベータRBD hFcで免疫化されたラットでは、30匹中3匹だけが検出可能なIgG抗スパイク抗体を産生した。
【0362】
実験18-凍結乾燥RBDヒトFc/PEG-R4-Pam-2-Cysワクチン製剤の安定性の評価
方法及び材料
本発明者らは、PEG-R4-Pam-2-Cysを配合した凍結乾燥したRBDヒトFcダイマーの安定性を評価した。これらの製剤は、再構成してBALB/cマウスの鼻腔内ワクチン接種に使用する前に、40℃、室温(RT)、4℃又は-20℃で1ヶ月間保存した。保存された凍結乾燥製剤に対する応答は、新鮮に調製したPEG-R4-Pam-2-Cysを配合したRBDヒトFcダイマーによって、及び凍結乾燥の24時間後に再構成した凍結乾燥製剤によって惹起された応答と比較した。
【0363】
5匹のBALB/cマウス群に、新鮮に調製したワクチン、凍結乾燥から24時間後に再構成したワクチン、又は40℃、RT、4℃、又は-20℃で4週間保存してから再構成した凍結乾燥ワクチンのいずれかを、鼻腔内に2回ワクチン接種した。ワクチンは、0日目及び30日目に投与した。1回目の用量の投与ための凍結乾燥保存ワクチンは実験の32日前に調製し、2回目の用量の投与のための凍結乾燥保存ワクチンは実験の0日目に調製した。これにより、1回目と2回目の用量の双方のワクチンを、特定の条件で1か月間保存することが可能になった。マウスは、1回目の注射の直前(事前採血)、1回目の免疫から21日後(1°採血)、2回目の免疫後の様々な時点(2°採血)で採血した。
【0364】
体液性応答を1回目と2回目の免疫後に評価し、これにはELISAによる抗RBD抗体応答、並びに生体外微量中和アッセイとサロゲートウイルス中和試験(GenScript、USA)による、SARS-CoV-2中和抗体の評価が含まれた。
【0365】
試験の112日目(2回目の用量の82日後)に、新鮮に調製したRBD-hFc/PEG-R4-Pam-2-Cys製剤を接種されたマウス、及び40℃で1ヶ月間保存した凍結乾燥RBD-hFc/PEG-R4-Pam-2-Cys製剤をワクチン接種されたマウスをVIC2089(D614G/N501Y)でチャレンジした。
【0366】
結果及び考察
WT RBDモノマーに反応する総免疫グロブリン(Ig)、及び中和Ab応答
新鮮に調製したPEG-R4-Pam-2-Cys/RBD-hFc製剤又は凍結乾燥PEG-R4-Pam-2-Cys/RBD-hFc製剤のどちらかをワクチン接種されたマウスの血清における、一次及び二次WT RBD特異的抗体応答を評価した。異なる条件下で保存された凍結乾燥製剤を投与された全てのマウスは、新鮮に調製された製剤をワクチン接種されたマウスで生成された力価に匹敵する、強力な抗体力価を示した(
図33)。
【0367】
同様に、微量中和アッセイ(
図34A)及びサロゲートウイルス中和試験(
図34B)の双方を使用して、新鮮に調製したPEG-R4-Pam-2-Cysと合わせたRBD-hFcを投与されたマウスの血清中の中和抗体応答と、凍結乾燥PEG-R4-Pam-2-Cysと合わせたRBD-hFc製剤をワクチン接種された動物の中和応答とを比較すると、全てのマウスの間で同等の中和応答が観察された。
【0368】
防御効率
上気道及び下気道感染に対する防御効率は、VIC2089(N501Y/D614G)を使用して、マウスSARS-CoV-2チャレンジモデルで評価した。0日目及び30日目に、WT RBD-hFc+PEG-R4-Pam-2-Cys、又は40℃で1か月間保存した凍結乾燥WT RBD-hFc+PEG-R4-Pam-2-Cysを鼻腔内ワクチン接種されたマウスを、2回目の免疫化の82日後にVIC2089で煙霧剤チャレンジした。年齢と性別をマッチさせたワクチン未接種の対照マウスもまた、同時にチャレンジした。チャレンジから3日後にマウスを殺処分し、ベロ細胞単層上の肺及び鼻甲介の上清を滴定し、5日後にウイルスCPEを測定することによって、個々のマウスの肺及び鼻甲介における感染性ウイルスの力価(TCID50)を判定した。
【0369】
新鮮に調製したワクチン、又は40℃で保存した、凍結乾燥PEG-R4-Pam-2-Cys/RBD-mFcワクチンを接種された全てのBALB/cマウスで、肺感染に対する完全な防御が観察された(
図35A)。さらに、新鮮に調製したワクチンを投与された4/5匹のマウス、及び凍結乾燥ワクチンで免疫化された5/5匹のマウスの鼻甲介では、ウイルスは検出されなかった(
図35B)。
【0370】
これらの結果から、本発明者らは、PEG-R4-Pam-2-Cys+RBD-mFc製剤を凍結乾燥し、-20℃~40℃の範囲の温度で最長1ヶ月保存した場合、免疫原性と防御効率が維持されると結論付けた。
【0371】
武漢指標株VIC01及びベータ変異株B1.351に対する中和活性
新鮮に調製したPEG-R4-Pam-2-Cysと合わせたWT RBD-hFc、又は40℃で保存したPEG-R4-Pam-2-Cysと合わせた凍結乾燥WT RBD-hFcを鼻腔内ワクチン接種されたマウスからの二次血清(70日目)を、マイクロ中和アッセイにより武漢指標株VIC01とベータ変異株B.1.351の双方を中和する能力について評価した。
図36に示すように、どちらの製剤も、武漢指標株RBD抗原を含有するにもかかわらず、相同な武漢指標株VIC01及びベータ変異株B.1.351の双方に対して強力な中和活性を惹起した。
【配列表】
【国際調査報告】