(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】自動化学分析装置におけるキュベットの較正および検証
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240116BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G01N35/00 E
G01N35/00 F
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539743
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 US2021060930
(87)【国際公開番号】W WO2022146591
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510005889
【氏名又は名称】ベックマン コールター, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Beckman Coulter, Inc.
【住所又は居所原語表記】250 S. Kraemer Boulevard, Brea, CA 92821, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】上 加奈
(72)【発明者】
【氏名】岡田 悟儀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 訓行
(72)【発明者】
【氏名】水谷 貴行
【テーマコード(参考)】
2G051
2G058
【Fターム(参考)】
2G051AA11
2G051AB01
2G051AB02
2G051AB03
2G051BA05
2G051CB02
2G051DA13
2G051EB01
2G058AA05
2G058EA02
2G058EA04
2G058EA14
2G058GB10
2G058GC02
2G058GC06
2G058GD01
2G058GD02
2G058GD05
2G058GD06
2G058GE02
2G058GE08
2G058GE09
2G058GE10
(57)【要約】
ここに特許請求する記載の技術は、自動化学分析装置における試料容器(例えばキュベット)の改善された較正および検証のプロシージャを提供する。特許請求する記載の技術はさらに、成分試料の測定と並行して個々の試料容器(例えば、キュベット)の較正および完全性追跡を自動化することのできる、自動分析装置を動作させる方法を提供する。当該方法により、システムメンテナンス、例えばキュベットの完全性の検証、吸光度ベースラインの較正およびキュベットの交換を実行する際に、診断モードと測定モードとの間での交替を行う必要がなくなる。このように、ここに特許請求する記載の技術は、こうしたシステムメンテナンスが試料分析と同時に実行可能となることにより、ダウンタイムを短縮し、臨床実験室の生産性を著しく向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動分析装置(10)を動作させる方法であって、該方法が、
複数のキュベットと、
少なくとも1つの試薬分配位置(31)、
少なくとも1つの成分分配位置(32)、
少なくとも1つのキュベット洗浄位置(33)、および
少なくとも1つの成分測定位置(34)
を含む、複数の位置と、
複数のキュベットホルダ(41)を有する少なくとも1つのキュベットトランスポータ(40)と、
少なくとも1つのフォトメータ(50)と、
制御装置(60)と
を備えた自動分析装置(10)を準備するステップと、
前記制御装置(60)のスケジュールに従い、前記少なくとも1つのキュベットトランスポータ(40)を用いて前記複数のキュベットを前記複数の位置間で移動させるステップと、
前記複数のキュベットのうちの1つもしくは複数のキュベット(20)のそれぞれが前記少なくとも1つの成分測定位置(34)にあるときに、前記制御装置(60)の前記スケジュールに従い、前記少なくとも1つのフォトメータ(50)を用いて前記1つもしくは複数のキュベット(20)を測定し、これにより、前記1つもしくは複数のキュベット(20)のそれぞれの少なくとも1つの特性を決定するステップと、
前記少なくとも1つの成分測定位置(34)において測定された1つもしくは複数のキュベット(20)のそれぞれに対して、該キュベットの少なくとも1つの特性が所定の第1の閾値より大きい場合、ディスエーブル状態を割り当てるステップと、
前記複数のキュベットのうちの対応するキュベットが前記分配位置の1つにあるときに、前記対応するキュベットのための成分試験が前記少なくとも1つの成分測定位置(34)においてスケジューリングされた場合、前記制御装置(60)の前記スケジュールに従い、前記対応するキュベットに前記ディスエーブル状態が割り当てられていない限り、前記対応するキュベット内へ成分を分配するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法はさらに、前記対応するキュベットが前記少なくとも1つの成分測定位置(34)にあるときに、前記成分が前記対応するキュベット内へ分配された場合、かつ前記少なくとも1つの成分測定位置(34)において前記対応するキュベットのための成分試験がスケジューリングされた場合、前記少なくとも1つのフォトメータ(50)を用いて前記対応するキュベット内の成分を測定するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記方法はさらに、前記対応するキュベットに前記ディスエーブル状態が割り当てられた場合に、前記成分試験を再スケジューリングするステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記再スケジューリングするステップは、以前に既知となったディスエーブル状態に応答して行われる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記再スケジューリングするステップは、ちょうどその時点で割り当てられたディスエーブル状態に応答して行われる、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記再スケジューリングするステップは、未試験の成分の置換を生じさせる、請求項3から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記未試験の成分は、希釈剤の一部を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記未試験の成分は、前処理剤の一部を含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記成分は生体試料である、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記生体試料は、血液、血漿、血清、唾液、尿、脳脊髄液、涙液、汗、胃腸液、羊水、粘膜液、胸腔内液、および皮脂腺液からなる群から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記生体試料は、哺乳動物由来、好ましくはヒト由来である、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
前記生体試料は検査準備完了状態にある、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記成分が前記少なくとも1つのフォトメータ(50)を用いて測定される前に、前記対応するキュベットが前記少なくとも1つの試薬分配位置(31)へ移動され、試薬が分配される、請求項9から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのフォトメータ(50)を用いて前記複数のキュベットのうちの1つもしくは複数のキュベット(20)を測定するステップは、少なくとも1つの所定の波長の電磁放射に対して前記キュベットのそれぞれの吸光度を測定するステップを含む、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの所定の波長の電磁放射に対して前記キュベットのそれぞれの吸光度を測定するステップにより、前記少なくとも1つの所定の波長の電磁放射のそれぞれにおいて前記キュベットのそれぞれの複数の吸光度データポイントが生成される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記キュベットのそれぞれの吸光度が、少なくとも2個の所定の波長の電磁放射に対して、代替的に少なくとも3個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも4個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも5個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも6個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも7個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも8個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも9個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも10個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも11個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも12個の所定の波長の電磁放射に対して、測定される、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
前記フォトメータ(50)を用いて前記複数のキュベットのうちの1つもしくは複数のキュベット(20)を測定するステップは、13個の異なる所定の波長の電磁放射において前記キュベットのそれぞれの吸光度を測定するステップを含む、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記13個の異なる所定の波長の電磁放射は、短波長限界、長波長限界、および前記短波長限界と前記長波長限界との間の11個の異なる波長を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記所定の波長の電磁放射のうちの少なくとも1つは、UV波長または可視波長である、実施形態14から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記短波長限界はUV波長であり、前記長波長限界は可視波長である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記1つもしくは複数のキュベット(20)のそれぞれの少なくとも1つの特性は、吸光度分散を含む、請求項14から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記吸光度分散は、少なくとも1つの所定の波長の電磁放射に対して測定された最大吸光度と最小吸光度との差である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記方法はさらに、前記成分測定位置(34)において測定された対応するキュベットの少なくとも1つの特性が所定の範囲内にある場合または所定の第2の閾値未満である場合に、前記対応するキュベットのそれぞれにイネーブル状態を割り当てるステップを含む、請求項1から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記方法はさらに、前記ディスエーブル状態が割り当てられた対応するキュベットが前記少なくとも1つのキュベット洗浄位置(33)にあるときに、前記ディスエーブル状態が割り当てられた対応するキュベットに少なくとも1つのエンハンストクリーニングルーチンを適用するステップを含む、請求項1から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つのエンハンストクリーニングルーチンは、前記ディスエーブル状態が割り当てられた対応するキュベットに洗剤を分配するステップを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つのエンハンストクリーニングルーチンが適用された後、
前記方法はさらに、
前記ディスエーブル状態が割り当てられた対応するキュベットが前記成分測定位置(34)にある場合に、前記ディスエーブル状態が割り当てられた対応するキュベットを測定するステップと、
前記対応するキュベットの少なくとも1つの特性が前記所定の第1の閾値より大きい場合にディスエーブル状態の再割り当てを行うか、または前記対応するキュベットの少なくとも1つの特性が前記所定の第2の閾値未満であるかもしくは所定の範囲内にある場合にイネーブル状態の割り当てを行うステップと
を含む、請求項24または25記載の方法。
【請求項27】
前記対応するキュベットに前記ディスエーブル状態の再割り当てが行われた場合、該ディスエーブル状態が再割り当てされた対応するキュベットが前記少なくとも1つのキュベット洗浄位置(33)にあるときに、後続のエンハンストクリーニングルーチンが適用される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記後続のエンハンストクリーニングルーチンは、前記キュベットに除却状態が割り当てられる前に、所定回数の適用にわたって適用される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記所定回数の適用は、少なくとも10回の適用である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記方法はさらに、前記ディスエーブル状態が割り当てられた少なくとも1つの対応するキュベットの交換の必要性をオペレータに通知するステップを含む、請求項1から29までのいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記方法はさらに、前記ディスエーブル状態が割り当てられた対応するキュベットの量を前記オペレータに通知するステップを含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記方法はさらに、前記対応するキュベットのうちの少なくとも1つのキュベットの前記ディスエーブル状態に起因して前記自動分析装置(10)の能力が低下したことを前記オペレータに通知するステップを含む、請求項30または31記載の方法。
【請求項33】
前記方法がさらに、前記キュベットトランスポータ(40)上の交換すべき対応するキュベットのそれぞれの位置を、表示画面を介して前記オペレータに通知するステップを含む、請求項30から32までのいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
前記自動分析装置(10)は自動臨床化学分析装置である、請求項1から33までのいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
前記複数のキュベットは再使用可能キュベットまたは使い捨てキュベットを含む、請求項1から34までのいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
前記複数のキュベットは、ガラス、プラスチック、または光学グレード石英を含む、請求項1から35までのいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つのフォトメータ(50)は光源(51)を含む、請求項1から36までのいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記方法はさらに、前記光源(51)の劣化を監視するステップを含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記方法はさらに、交換時間を予測するために、統計分析によって前記光源(51)の劣化をモデル化するステップを含む、請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記光源(51)はハロゲンランプである、請求項37から39までのいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
前記複数のキュベットのうちの1つもしくは複数のキュベット(20)は、前記キュベットの少なくとも1つの特性が決定されるときに、液体を収容している、請求項1から40までのいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
前記複数のキュベットのうちの1つもしくは複数のキュベット(20)は、前記キュベットの少なくとも1つの特性が決定されるときに、液体を収容していない、請求項1から40までのいずれか1項記載の方法。
【請求項43】
前記方法はさらに、前記キュベットの少なくとも1つの特性に関する統計分析を実行するステップを含む、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記統計分析により、欠陥タイプを識別する値が形成される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記欠陥タイプは引っかき傷および汚れを含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
液体を収容していない少なくとも1つのキュベットの少なくとも1つの特性が決定された後、前記キュベットに液体が充填され、液体が充填された前記キュベットの少なくとも1つの特性が決定される、請求項42記載の方法。
【請求項47】
前記液体は脱イオン水である、請求項41または46記載の方法。
【請求項48】
前記キュベットトランスポータ(40)は、複数のキュベットホルダ(41)を備えたホイール(42)を含む、請求項1から47までのいずれか1項記載の方法。
【請求項49】
前記キュベットトランスポータ(40)は、複数のキュベットを、前記複数の位置間において固定の順序で移動させる、請求項48記載の方法。
【請求項50】
自動分析装置(10)を動作させる方法であって、該方法が、
複数のキュベットと、
少なくとも1つの試薬分配位置(31)、
少なくとも1つの成分分配位置(32)、
少なくとも1つのキュベット洗浄位置(33)、および
少なくとも1つの成分測定位置(34)
を含む、複数の位置と、
複数のキュベットホルダ(41)を有する少なくとも1つのキュベットトランスポータ(40)と、
少なくとも1つのフォトメータ(50)と、
制御装置(60)と
を備えた自動分析装置(10)を準備するステップと、
前記制御装置(60)のスケジュールに従い、前記少なくとも1つのキュベットトランスポータ(40)を用いて前記複数のキュベットを前記複数の位置間で移動させるステップと、
前記複数のキュベットのうちの1つもしくは複数のキュベット(20)のそれぞれが前記少なくとも1つの成分測定位置(34)にあるときに、前記制御装置(60)の前記スケジュールに従い、前記少なくとも1つのフォトメータ(50)を用いて、少なくとも1つの所定の波長の電磁放射に対して前記1つもしくは複数のキュベット(20)のそれぞれの吸光度を測定し、これにより、前記1つもしくは複数のキュベット(20)のそれぞれの少なくとも吸光度分散を決定するステップと、
前記少なくとも1つの成分測定位置(34)において測定された1つもしくは複数のキュベット(20)のそれぞれに対して、該キュベットの吸光度分散が所定の第1の閾値より大きい場合、ディスエーブル状態を割り当てるステップと、
前記複数のキュベットのうちの対応するキュベットが前記分配位置の1つにあるときに、前記少なくとも1つの成分測定位置(34)において前記対応するキュベットのための成分試験がスケジューリングされた場合、前記制御装置(60)の前記スケジュールに従い、前記対応するキュベットに前記ディスエーブル状態が割り当てられていない限り、前記対応するキュベット内へ成分を分配するステップと、
前記対応するキュベットが前記少なくとも1つの成分測定位置(34)にあるときに、前記成分が前記対応するキュベット内へ分配された場合、かつ前記少なくとも1つの成分測定位置(34)において前記対応するキュベットのための成分試験がスケジューリングされた場合、前記少なくとも1つのフォトメータ(50)を用いて、前記対応するキュベットの成分を測定するステップと、
前記対応するキュベットに前記ディスエーブル状態が割り当てられている場合、前記成分試験を再スケジューリングするステップと
を含む、方法。
【請求項51】
自動分析装置(10)を動作させる方法であって、該方法が、
複数のキュベットと、
少なくとも1つの試薬分配位置(31)、
少なくとも1つの成分分配位置(32)、
少なくとも1つのキュベット洗浄位置(33)、および
少なくとも1つの成分測定位置(34)
を含む、複数の位置と、
複数のキュベットホルダ(41)を有する少なくとも1つのキュベットトランスポータ(40)と、
少なくとも1つのフォトメータ(50)と、
制御装置(60)と
を備えた自動分析装置(10)を準備するステップと、
前記制御装置(60)のスケジュールに従い、前記少なくとも1つのキュベットトランスポータ(40)によって前記複数のキュベットを前記複数の位置間で移動させるステップと、
前記複数のキュベットのうちの1つもしくは複数のキュベット(20)のそれぞれが前記少なくとも1つの成分測定位置(34)にあるときに、前記制御装置(60)の前記スケジュールに従い、前記少なくとも1つのフォトメータ(50)を用いて前記1つもしくは複数のキュベット(20)を測定し、これにより、前記1つもしくは複数のキュベット(20)のそれぞれの少なくとも1つの特性を決定するステップと、
前記少なくとも1つの成分測定位置(34)において測定された1つもしくは複数のキュベット(20)のそれぞれに対して、前記キュベットの少なくとも1つの特性が所定の第1の閾値より大きい場合、ディスエーブル状態を割り当てるステップと、
前記複数のキュベットのうちの対応するキュベットが前記分配位置の1つにあるときに、前記少なくとも1つの成分測定位置(34)において前記対応するキュベットのための成分試験がスケジューリングされた場合、前記制御装置(60)の前記スケジュールに従い、前記対応するキュベットに前記ディスエーブル状態が割り当てられていない限り、前記対応するキュベット内へ成分を分配するステップと、
前記ディスエーブル状態が割り当てられたキュベットが前記少なくとも1つの洗浄位置(33)にあるときに、前記対応するキュベットに少なくとも1つのエンハンストクリーニングルーチンを適用し、さらに前記ディスエーブル状態が割り当てられた対応するキュベットが前記成分測定位置(34)にあるときに、前記少なくとも1つのフォトメータ(50)を用いて前記対応するキュベットを測定し、前記対応するキュベットの少なくとも1つの特性が前記所定の第1の閾値より大きい場合にディスエーブル状態の再割り当てを行うか、または前記対応するキュベットの少なくとも1つの特性が所定の第2の閾値未満である場合もしくは所定の範囲内にある場合にイネーブル状態の割り当てを行うステップと
を含む、方法。
【請求項52】
自動分析装置(10)を動作させる方法であって、該方法が、
複数のキュベットと、
少なくとも1つの試薬分配位置(31)、
少なくとも1つの成分分配位置(32)、
少なくとも1つのキュベット洗浄位置(33)、および
少なくとも1つの成分測定位置(34)
を含む、複数の位置と、
複数のキュベットホルダ(41)を有する少なくとも1つのキュベットトランスポータ(40)と、
少なくとも1つのフォトメータ(50)と、
制御装置(60)と
を備えた自動分析装置(10)を準備するステップと、
前記制御装置(60)のスケジュールに従い、前記少なくとも1つのキュベットトランスポータ(40)を用いて前記複数のキュベットを前記複数の位置間で移動させるステップと、
前記複数のキュベットのうちの1つもしくは複数のキュベットが前記少なくとも1つのキュベット洗浄位置(33)にあるときに、前記1つもしくは複数のキュベット(20)内へ液体を分配するステップと、
前記複数のキュベットのうちの1つもしくは複数のキュベット(20)のそれぞれが前記少なくとも1つの成分測定位置(34)にあるときに、前記制御装置(60)の前記スケジュールに従い、前記少なくとも1つのフォトメータ(50)を用いて前記1つもしくは複数のキュベット(20)を測定し、これにより、前記1つもしくは複数のキュベット(20)のそれぞれの少なくとも1つの特性を決定するステップと、
前記少なくとも1つの成分測定位置(34)において測定された1つもしくは複数のキュベット(20)のそれぞれに対して、前記キュベットの少なくとも1つの特性が所定の第1の閾値より大きい場合、ディスエーブル状態を割り当てるステップと、
前記複数のキュベットのうちの1つもしくは複数のキュベット(20)が前記少なくとも1つのキュベット洗浄位置(33)にあるときに、前記1つもしくは複数のキュベット(20)を洗浄するステップと、
前記複数のキュベットのうちの対応するキュベットが前記分配位置の1つにあるときに、前記少なくとも1つの成分測定位置(34)において前記対応するキュベットのための成分試験がスケジューリングされた場合、前記制御装置(60)の前記スケジュールに従い、前記対応するキュベットに前記ディスエーブル状態が割り当てられていない 限り、前記対応するキュベット内へ成分を分配するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許出願は、2020年12月28日付にて出願された米国仮特許出願第63/131241号明細書の優先権の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本開示に組み込まれるものとする。
【0002】
分野
ここに開示し特許請求する技術の種々の態様は、自動化学分析装置におけるキュベットの較正および検証に関し、特に、こうした分析装置において利用されるキュベットの完全性を評価するための改善された方法に関する。
【0003】
背景
自動化学分析装置は、臨床化学サンプリングおよび分析の用途において一般に使用されている。自動分析化学ワークステーションなどの自動分析装置は、並行してまたは短い時間間隔で試験を実行することで、多数の試料についての臨床分析を効率的に実行することができる。効率的な結果は、或る程度は、自動での試料識別および試料追跡の使用によるものである。当該装置は、適切なボリュームの試料を自動で準備し、スケジューリングされた試験の実行に必要な試験条件を自動で設定することができる。試験条件は、単一の試験ステーション内で同時に進行する種々の試験プロトコルに対してそれぞれ独立に確立して追跡することができ、種々の化学反応に基づいて種々の反応条件を必要とするそれぞれ異なる複数の試験の同時実行を可能にする。自動分析装置は、多くの病院および中央型の試験研究所に存在する装置のような大ボリュームの試験環境に特に良好に適している。なぜなら、自動での試料処理により、より精確な試料識別および試料追跡が可能となるからである。自動での試料処理および試料追跡は、誤った試験結果または望ましくない汚染につながりうるヒューマンエラーまたは事故の可能性を大幅に低減する。
【0004】
試料容器(例えばキュベット)の較正および検証は、データの正確性を保証するための自動化学分析装置の使用の重要部分である。個々の試料容器の完全性の追跡は必要であるが、きわめて時間がかかる可能性がある。したがって、現行の較正および検証のプロシージャは、評価が進行している間、その使用が制限されており、例えばこうしたプロシージャが十分な頻度で実行されないことがある。このことは、データの不正確性、非効率性およびコスト増大につながりうる。
【0005】
従来の古典的なアプローチのさらなる制限および欠点は、このようなシステムと、図面を参照した本出願の他の部分に記載する本開示の幾つかの態様との比較によって、当業者に明らかとなるであろう。
【0006】
概要
発明者らは、自動化学分析装置における試料容器(例えばキュベット)のための改善された較正および検証のプロシージャの必要性を認識した。特に、個々の試料容器(例えばキュベット)の完全性の較正および追跡の自動化を可能にする方法を開示する。
【0007】
ここに開示し特許請求する技術の1つの態様は、自動分析装置を動作させる方法であって、当該方法が、複数のキュベットと、少なくとも1つの試薬分配位置、少なくとも1つの成分分配位置、少なくとも1つのキュベット洗浄位置、および少なくとも1つの成分測定位置を含む、複数の位置と、複数のキュベットホルダを有する少なくとも1つのキュベットトランスポータと、少なくとも1つのフォトメータと、制御装置とを備えた自動分析装置を準備するステップと、制御装置のスケジュールに従い、少なくとも1つのキュベットトランスポータを用いて複数のキュベットを複数の位置間で移動させるステップと、複数のキュベットのうちの1つもしくは複数のキュベットのそれぞれが少なくとも1つの成分測定位置にあるときに、制御装置のスケジュールに従い、少なくとも1つのフォトメータを用いて当該1つもしくは複数のキュベットを測定し、これにより、1つもしくは複数のキュベットのそれぞれの少なくとも1つの特性を決定するステップと、少なくとも1つの成分測定位置において測定されたキュベットのそれぞれに対して、当該キュベットの少なくとも1つの特性が所定の第1の閾値より大きい場合、ディスエーブル状態を割り当てるステップと、1つもしくは複数のキュベットのうちの対応するキュベットが分配位置の1つにあるときに、対応するキュベットのための成分試験が少なくとも1つの成分測定位置においてスケジューリングされた場合、制御装置のスケジュールに従い、対応するキュベットにディスエーブル状態が割り当てられていない限り、対応するキュベット内へ成分を分配するステップとを含む、方法である。
【0008】
本技術のさらなる一態様では、当該方法はさらに、対応するキュベットが少なくとも1つの成分測定位置にあるときに、成分が対応するキュベット内へ分配された場合、かつ少なくとも1つの成分測定位置において対応するキュベットのための成分試験がスケジューリングされた場合、少なくとも1つのフォトメータを用いて対応するキュベット内の成分を測定するステップを含む。
【0009】
本技術の別の一態様では、当該方法はさらに、対応するキュベットにディスエーブル状態が割り当てられた場合に、成分試験を再スケジューリングするステップを含む。別の態様では、再スケジューリングするステップは、以前に既知となったディスエーブル状態に応答して行われる。さらに別の態様では、再スケジューリングするステップは、ちょうどその時点で割り当てられたディスエーブル状態に応答して行われる。さらに別の態様では、再スケジューリングするステップは、未試験の成分の置換を生じさせる。付加的な態様では、未試験の成分は希釈剤の一部を含む。代替的に、未試験の成分は前処理剤の一部を含む。
【0010】
本技術の少なくとも1つの態様では、成分は生体試料である。別の態様では、生体試料は、血液、血漿、血清、唾液、尿、脳脊髄液、涙液、汗、胃腸液、羊水、粘膜液、胸腔内液、および皮脂腺液からなる群から選択される。さらに別の態様では、生体試料は、生体試料は、哺乳動物由来、好ましくはヒト由来でありうる。別の態様では、生体試料は検査準備完了状態にある。
【0011】
本技術の少なくとも1つの付加的な態様では、成分がフォトメータを用いて測定される前に、キュベットが少なくとも1つの試薬分配位置に移動され、試薬が分配される。別の態様では、フォトメータを用いて1つもしくは複数のキュベットのうちの幾つかのキュベットを測定するステップは、少なくとも1つの所定の波長の電磁放射に対してキュベットのそれぞれの吸光度を測定するステップを含む。さらなる態様では、少なくとも1つの所定の波長の電磁放射に対してキュベットのそれぞれの吸光度を測定するステップにより、少なくとも1つの所定の波長の、代替的には少なくとも13個の所定の波長の電磁放射のそれぞれにおいてキュベットのそれぞれの複数の吸光度データポイントが生成される。
【0012】
本技術の少なくとも1つのさらなる態様では、フォトメータを用いて1つもしくは複数のキュベットのうちの少なくとも幾つかのキュベットを測定するステップは、13個の異なる所定の波長の電磁放射においてキュベットのそれぞれの吸光度を測定するステップを含む。さらなる態様では、13個の異なる所定の波長の電磁放射は、短波長限界、長波長限界、および短波長限界と長波長限界との間の11個の異なる波長を含む。さらに別の態様では、所定の波長の電磁放射のうちの少なくとも1つは、UV波長または可視波長である。さらに別の態様では、短波長限界はUV波長であり、長波長限界は可視波長である。
【0013】
本技術の別の態様では、少なくとも幾つかのキュベットのそれぞれの少なくとも1つの特性は、少なくとも吸光度分散を含む。さらに、別の態様では、吸光度分散は、少なくとも1つの所定の波長の電磁放射に対して測定された最大吸光度と最小吸光度との差である。さらに別の態様では、成分測定位置において測定された対応するキュベットの少なくとも1つの特性が所定の範囲内にある場合または所定の第2の閾値未満である場合に、対応するキュベットのそれぞれにイネーブル状態が割り当てられる。
【0014】
本技術の少なくとも1つの態様では、当該方法はさらに、ディスエーブル状態が割り当てられたキュベットが少なくとも1つのキュベット洗浄位置にあるときに、当該ディスエーブル状態が割り当てられたキュベットに少なくとも1つのエンハンストクリーニングルーチンを適用するステップを含む。別の態様では、少なくとも1つのエンハンストクリーニングルーチンは、ディスエーブル状態が割り当てられたキュベットに洗剤を分配するステップを含む。さらに別の態様では、少なくとも1つのエンハンストクリーニングルーチンが適用された後、当該方法はさらに、ディスエーブル状態が割り当てられたキュベットが成分測定位置にあるときに、当該対応するキュベットを測定するステップと、キュベットの少なくとも1つの特性が所定の第1の閾値より高い場合にディスエーブル状態の再割り当てを行うか、またはキュベットの少なくとも1つの特性が第2の閾値未満であるかもしくは所定の範囲内にある場合にイネーブル状態の割り当てを行うステップとを含む。さらに別の態様では、キュベットにディスエーブル状態の再割り当てが行われた場合、当該ディスエーブル状態が再割り当てされたキュベットが少なくとも1つのキュベット洗浄位置にあるときに、後続のエンハンストクリーニングルーチンが適用される。別の態様では、後続のエンハンストクリーニングルーチンは、キュベットに除却状態が割り当てられる前に、所定回数の適用に対して適用される。さらに別の態様では、所定回数の適用は、少なくとも10回の適用である。
【0015】
本技術のさらなる一態様によれば、当該方法はさらに、ディスエーブル状態が割り当てられた少なくとも1つのキュベットの交換の必要性をオペレータに通知するステップを含む。別の態様では、当該方法はさらに、ディスエーブル状態が割り当てられたキュベットの量をオペレータに通知するステップを含む。さらに別の態様によれば、当該方法はさらに、少なくとも1つのキュベットのディスエーブル状態に起因して自動分析装置の能力が低下したことをオペレータに通知するステップを含む。さらなる態様では、当該方法は、キュベットトランスポータ上の交換すべきキュベットの位置を、表示画面を介してオペレータに通知するステップを含む。
【0016】
本技術の一態様では、自動分析装置は自動臨床化学分析装置である。別の態様では、1つもしくは複数のキュベットは再利用可能キュベットまたは使い捨てキュベットを含む。別の態様では、1つもしくは複数のキュベットは、ガラス、プラスチック、または光学グレード石英から形成されている。
【0017】
本技術のさらなる一態様では、少なくとも1つのフォトメータは、例えばハロゲンランプであってよい光源を含む。別の態様では、当該方法はさらに、光源の劣化を監視するステップを含む。さらに別の態様では、当該方法はさらに、交換時間を予測するために、統計分析によって光源の劣化をモデル化するステップを含む。
【0018】
本技術の別の態様では、1つもしくは複数のキュベットのうちの少なくとも幾つかのキュベットは、キュベットの少なくとも1つの特性が決定されるときに、液体を収容している。別の態様では、1つもしくは複数のキュベットのうちの少なくとも幾つかのキュベットは、キュベットの少なくとも1つの特性が決定されるときに、液体を収容していない。さらなる態様では、当該方法はさらに、キュベットの少なくとも1つの特性に関する統計分析を実行するステップを含む。さらに別の態様では、統計分析により、欠陥タイプを識別する値が形成される。さらに別の態様では、欠陥タイプは、例えば引っかき傷および汚れを含む。別の態様では、液体を収容していない少なくとも1つのキュベットの少なくとも1つの特性が決定された後、キュベットに液体が充填され、液体が充填されたキュベットの少なくとも1つの特性が決定される。一態様では、液体は脱イオン水である。さらなる態様では、キュベットトランスポータは、複数のキュベットホルダを備えたホイールを含む。別の態様では、当該方法はさらに、ホイールの1サイクルの複数の位置間において、対応するコンポーネントを繰り返し操作するステップを含む。さらに別の態様では、キュベットトランスポータは、1つもしくは複数のキュベットを、複数の位置間において固定の順序で移動させる。さらに別の態様では、固定の順序は、複数の位置でのコンポーネントの5サイクルに対応する。さらなる態様では、1つもしくは複数のキュベットのそれぞれは、5サイクルごとに少なくとも1つの成分測定位置において1回位置決めされる。
【0019】
本開示のこれらのおよび他の利点、態様および新規の特徴ならびにその例示的な実施形態の詳細は、以下の説明および図面からより完全に理解されるであろう。
【0020】
以下に、本開示の実施形態を、添付の図面を参照しながら単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本開示の例示的な実施形態による自動分析装置の概略的な構成を説明するための構成図である。
【
図1B】本開示の例示的な実施形態による自動分析装置の概略的な構成を説明するための構成図である。
【
図2】本開示の例示的な実施形態による、自動分析装置の一部として使用可能なキュベットホイールの複数の変化形態を示す図である。
【
図3A】本開示の例示的な実施形態による、自動分析装置の一部として使用可能なフォトメータを示す図である。
【
図3B】本開示の例示的な実施形態による、自動分析装置の一部として使用可能なフォトメータを示す図である。
【
図4】本開示の例示的な実施形態による、成分測定位置まで走行する複数のキュベットホルダを有するキュベットトランスポータを示す図である。
【
図5】本開示の例示的な実施形態による、16個のデータポイントを利用したキュベットのルーチン較正および検証分析を示す図である。
【
図6A】本開示の例示的な実施形態による、キュベットホイールの1サイクルの一部を示す図であって、洗浄サイクルの例示的な実施形態を示す図である。
【
図6B】本開示の例示的な実施形態による、キュベットホイールの1サイクルの一部を示す図であって、洗浄サイクルの例示的な実施形態を示す図である。
【
図6C】本開示の例示的な実施形態による、キュベットホイールの1サイクルの一部を示す図であって、洗浄サイクルの例示的な実施形態を示す図である。
【
図6D】分配、混合および洗浄のサイクルの例示的な実施形態を示す図である。
【
図7】本開示の例示的な実施形態による、イネーブル状態およびディスエーブル状態にあるキュベットの基本的な判定を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の例示的な実施形態による、診断モードおよび測定モードを使用した、イネーブル状態およびディスエーブル状態にあるキュベットの判定を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の例示的な実施形態による、1つの波長での179個のキュベットについての最大データおよび最小データを示す図である。
【
図10】本開示の例示的な実施形態による、データポイント群の結果の特徴付けを示す図である。
【
図11】本開示の例示的な実施形態による、2つの異なる方法間でのベースライン吸光度の範囲を示す図である。
【
図12】本開示の例示的な実施形態による、2つの異なる方法間でのベースライン吸光度の平均±3SDを示す図である。
【
図13A】本開示の例示的な実施形態による、キュベットホイールおよび各機能部のレイアウトにおけるキュベット位置を示す図である。
【
図13B】リアルタイムでの較正および検証が行われる、本開示の例示的な実施形態によるフォトメータのプロフィルを示す図である。
【
図14】本開示の例示的な実施形態による、自動分析装置の一部として使用可能な制御装置を示す図である。
【0022】
詳細な説明
図面を参照して様々な実施形態を詳細に説明するが、ここで、同様の参照番号は、複数の図を通して類似した部品およびアセンブリを表す。本開示は、本明細書に記載する特定の方法、プロトコルおよび試薬に限定されず、したがってそれ自体変形可能であることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明するためのみのものであり、本開示または添付の特許請求の範囲の権利範囲を限定することを意図したものではないことも理解されたい。
【0023】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形“a”、“an”および“the”は、文脈から別のことが明示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0024】
別の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野において当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0025】
本明細書において説明するように、自動化学分析装置における試料容器のための改善された較正および検証のプロシージャが開示される。自動分析装置において試料容器が使用される場合、各試料容器での測定の変動をデータの正確性のために較正する必要がある。また、試料容器が経時劣化したり損傷を受けたりして、偏った結果が生じることがある。したがって、試料容器を後続の分析に使用する前に、当該容器の完全性を検証する必要もある。これらのプロシージャを利用して、試料容器(例えばキュベット)を分析し、試料分析における使用のために試料容器をイネーブルとすべきかまたはディスエーブルとすべきかを判定することができる。
【0026】
ルーチン化学分析の定量化は、典型的には、2種類の測定の一方、すなわち、(1)光の測定(フォトメトリまたは分光)または(2)電気化学的電位の測定(電位差測定)のうちの一方に基づく。以下の例では、フォトメトリ(吸光度測定)に則して論じるが、電位差測定などの他の分析法も利用可能である。
【0027】
ここで説明し特許請求する技術の少なくとも1つの実施形態による自動分析装置の構成を、
図1A、
図1B、
図2、
図3および
図4を参照して以下に説明する。
図1Aおよび
図1Bは、ここで説明し特許請求する技術の一実施形態による自動分析装置10の概略的な構成を説明するための構成図である。
【0028】
以下に示す特定の実施形態では、自動分析装置における試料容器はキュベット20であり、当該方法により、各キュベットの効率的な較正および検証が可能となることに加え、キュベットの検証後の成分の測定が可能となる。自動分析装置10は、少なくともキュベットトランスポータ40およびフォトメータ50を備えており、これらについては以下で詳しく説明する。キュベットの完全性を較正するかつ/または検証するために自動分析装置10を動作させる特定の実施形態についても説明する。
【0029】
自動分析装置10は自動臨床化学分析装置であってよい。臨床化学分析装置は、血清、血漿、尿および/またはその他の体液の試料中の特定の物質の濃度を計算するために使用される医療実験室装置である。当該機器を通して分析される物質には、例えば、特定の代謝産物、電解質、タンパク質、および/または薬物が含まれる。
【0030】
図1A、
図1Bおよび
図2に示されているように、自動分析装置10は、複数のキュベットホルダ41を備えた少なくとも1つのキュベットトランスポータ40を含み、ここで、複数のキュベットホルダ41は、1つもしくは複数のキュベット20を保持することができる。1つもしくは複数のキュベット20は再使用可能キュベットであってよい。ガラス、プラスチックおよび石英がとりわけキュベット材料に適している。非限定的な例では、1つもしくは複数のキュベット20のうちの少なくとも1つのキュベットは、例えば、ガラス、プラスチックまたは光学グレード石英から形成可能である。
【0031】
キュベットトランスポータ40はさらに、複数のキュベットホルダ41を自動分析装置10上の複数の位置を通して走行させることのできるホイール42を含む。本技術の一実施形態では、複数の位置は、以下に限定されるものではないが、少なくとも1つの試薬分配位置31を含む分配位置、少なくとも1つの成分分配位置32、および少なくとも1つのキュベット洗浄位置33を含む。また、複数の位置は、少なくとも1つの成分測定位置34も含む。
図2には、自動分析装置10の一部として使用可能なホイール42、特にキュベットホイールの幾つかの変化形態が示されている。キュベットホルダ41内の少なくとも幾つかのキュベット41は対応するキュベットと見なすことができる。「対応するキュベット」とは、前記キュベットが分配位置にあるときに、成分、試薬、水および/または洗剤を受容するように配置されたキュベットである。
【0032】
自動分析装置10は、成分の処理のための種々のユニットを含むことができる。
図1Aに示されているように、ここに特許請求する技術の幾つかの実施形態では、自動分析装置10は、例えば分析のために生体試料を分配するための成分分配ユニット100、第1の試薬分配ユニット110、第2の試薬分配ユニット120、第1の撹拌ユニット130、および第2の撹拌ユニット140を備えている。第1の試薬分配ユニット110は、試薬Aを(試薬ボトルA’内に)有することができ、一方、第2の試薬分配ユニット120は、試薬Bを(試薬ボトルB’内に)有することができ、ここで、各試薬は、成分試験を実行する前の成分試料との反応に必要な化学物質であってよく、または溶媒、キャリブレータ、標準物または対照物のような材料であってもよい。自動プロセス中に試薬を識別するために、バーコードリーダを使用することができる。撹拌ユニットにより、試料容器(例えばキュベット)内での物理的な混合が提供される。当業者であれば、ここに特許請求する技術の理解および実施において多数の試薬の複数の組み合わせが想定されていることが理解されるであろう。
【0033】
動作時、1つもしくは複数のキュベット20が、少なくとも1つのキュベットトランスポータ40により、制御装置60のスケジュールに従って複数の位置間で移動される。自動分析装置10のユニットの全てが制御装置に接続されており、この制御装置は、例えばマイクロコンピュータを使用して、分析装置の機能の全てのブロック制御を実行することができる。制御装置は、データ処理ユニット、通信インタフェースなどのようなサブユニットを含むことができる。本技術の例示的な実施形態による制御装置60が
図14に示されている。当該実施形態において、制御装置60は、データプロセッサ60Aと、非一時的なコンピュータ可読媒体60Bと、データプロセッサ60Aに接続されたデータストレージ60Cとを含むことができる。非一時的なコンピュータ可読媒体60Bは、データプロセッサ60Aによって実行可能な、本明細書に記載の機能を実行するためのコードを含むことができる。データプロセッサ60Aは、例えば、試料を処理するためのデータ、試料データ、または試料データを分析するためのデータを記憶することができる。
【0034】
データプロセッサ60Aは、任意の適切なデータ計算装置またはこうした装置の組み合わせを含むことができる。例示的なデータプロセッサは、所望の機能を達成するために協働する1つもしくは複数のマイクロプロセッサを含んでいてよい。データプロセッサ60Aは、ユーザが生成した要求および/またはシステムが生成した要求を実行するためのプログラムコンポーネントの実行に適した少なくとも1つの高速データプロセッサを含むCPUを含むことができる。当該CPUは、マイクロプロセッサ、例えばAMD社のAthlon、Duronおよび/またはOpteron、IBM社および/またはMotorola社のPowerPC、IBM社およびソニー社のCellプロセッサ、Intel社のCeleron、Itanium、Pentium、Xeonおよび/またはXScale、Apple社のM1、および/またはこれらに類似のプロセッサを含みうる。
【0035】
コンピュータ可読媒体60Bおよびデータストレージ60Cは、電子データを記憶することのできる任意の適切な1つもしくは複数の装置であってよい。メモリの例には、例えば1つもしくは複数のメモリチップ、ディスクドライブなどが含まれうる。このようなメモリは、任意の適切な電気的、光学的かつ/または磁気的な動作モードを使用して動作することができる。
【0036】
コンピュータ可読媒体60Bは、データプロセッサ60Aにより実行可能な、任意の適切な方法を実行するためのコードを含むことができる。例えば、コンピュータ可読媒体60Bは、制御装置60を予め定められたスケジュールで動作させるために、プロセッサ60Aによって実行可能なコードを含むことができる。ここに特許請求する技術の幾つかの実施形態では、所定のスケジュールは成分試験である。他の実施形態では、コンピュータ可読媒体60Bは、データプロセッサ60Aにより実行可能な、対応するキュベットにディスエーブル状態が割り当てられた場合に制御装置60に成分試験を再スケジューリングさせるためのコードを含むことができる。
【0037】
1つもしくは複数のキュベット20のうちの少なくとも幾つかのキュベットの完全性を検証するために、キュベットのうちの少なくとも幾つかが制御装置のスケジュールに従って成分測定位置34へ移動される。1つもしくは複数のキュベット20が少なくとも1つの成分測定位置34にあるときに、1つもしくは複数のキュベット20のそれぞれの少なくとも1つの特性が少なくとも1つのフォトメータ50を使用して決定される。当該キュベットの特性とは、試料が存在しない場合のキュベットの測定に対応する。幾つかの実施形態において、特性とは、例えば1つもしくは複数の波長で測定されたキュベットの吸光度である。
【0038】
自動分析装置10は、セルブランキングを行えるように構成されている。乾式セルブランキングとは、キュベットのベースライン測定である。測定された吸光度は、1つもしくは複数のキュベット20のそれぞれの少なくとも1つの特性の決定中にバックグラウンドを差し引くために、かつ/またはキュベットが少なくとも1つの成分測定位置34にある場合にフォトメータ50を用いて対応するキュベットの成分を測定するために、使用される。
【0039】
ここに特許請求する技術の幾つかの実施形態では、自動分析装置10は、セルブランキングを行えるように構成されている。一実施形態では、液体を収容していないキュベット当たり複数個の吸光度データポイントが電磁放射の複数の波長にわたって測定される。例示的な実施形態では、13個の所定の波長の電磁放射に対して16個のデータポイントが測定される。測定された吸光度データポイントが所定の波長の電磁放射ごとに平均化され、全てのキュベットにわたる平均乾式セルブランクの平均(すなわち総乾式平均)が所定の波長の電磁放射ごとに取得される。一実施形態では、乾式セルブランキングはさらに、キュベットの少なくとも1つの特性につき統計分析を実行することを含む。当該統計解析により、欠陥タイプなどの損傷を識別する値を形成することができる。幾つかの実施形態では、欠陥タイプは、例えば、引っかき傷、汚れおよび/または亀裂を含む。このことについては
図8を参照されたい。
【0040】
ここに特許請求する技術の幾つかの実施形態によれば、自動分析装置10は、湿式セルブランキングを行えるように構成されている。一実施形態では、液体、例えば脱イオン水を含むキュベット当たり複数個の吸光度データポイントが複数の波長にわたって測定される。例示的な一実施形態では、13個の所定の波長の電磁放射に対して16個のデータポイントが測定される。測定された吸光度データポイントは所定の波長の電磁放射ごとに平均化され、全てのキュベットにわたる乾式セルブランクの平均(すなわち総湿式平均)が所定の波長の電磁放射ごとに取得される。このことについては
図8を参照されたい。
【0041】
フォトメトリ法は、光密度としての光の吸光度を測定することによって種々の分析物の濃度を測定するものである。モノクロメータまたはフィルタが、測定される物質の特性に応じて、各分析のための光の所望の波長を選択するために使用される。回折格子は、光波長を分離するために使用可能であり、自動分析装置において要求される単色測定を可能にする。個々の波長は、フォトダイオードアレイ内の個々の検出器によって測定される。
図3Aおよび
図3Bに示されているように、キュベットが成分測定位置34にあるとき、フォトメータ50が、(レンズ52を用いて)適切な波長の光を1つもしくは複数のキュベット20へと集束させる。幾つかの実施形態では、フォトメータ50は、光源51、例えばハロゲンランプを備えている。他の適切な代替手段には、例えばタングステンランプ、石英ランプまたは類似の光源が含まれる。光源51がハロゲンランプである場合、約330nm~約3500nmの使用可能な波長範囲を生成することができる。光源51からの光は、1つもしくは複数のキュベット20内の成分を通過する。一実施形態では、自動分析装置10は、光源の劣化を監視できるように構成されている。一実施形態では、監視はさらに、交換時間を予測するために、統計分析を用いて光源の劣化をモデル化することを含む。
【0042】
光がキュベットを通過する際、それぞれ異なる周波数の光が、光とキュベットおよびその内部の液体との相互作用に応じて、それぞれ異なる吸収レベルで吸収される。キュベットを通過した後、それぞれ異なる周波数の光が(例えばプリズムまたは回折格子により)空間的に分離される。回折格子による周波数の分離は(プリズムに対して)干渉をほとんど生じさせないかまたは全く生じさせない。幾つかの態様では、マルチ周波数ハロゲン源からの光が回折格子54を使用してキュベットへ集束される。
【0043】
光検出器53は、成分による光密度または吸収される光の量を測定する。ここに特許請求する技術の幾つかの実施形態では、光検出器はフォトダイオードアレイを含む。フォトダイオードアレイは特定の波長の強度を測定するので、複数の波長の強度を測定するには幾つかのフォトダイオードアレイが必要となる。例えば、13個の波長が測定される場合、フォトダイオードアレイは13個のフォトダイオードを有する。
【0044】
フォトメータ50が成分測定位置34においてキュベットを測定した場合、吸収された光の量および光の周波数は試料中の分析物の濃度と相関しうる。幾つかの実施形態では、成分測定位置34における少なくとも幾つかのキュベット21の測定は、例えば、少なくとも1つの所定の波長の電磁放射に対するキュベットのそれぞれの吸光度データを測定することを含む。代替的な態様では、キュベットのそれぞれの吸光度が、少なくとも2個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも3個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも4個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも5個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも6個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも7個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも8個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも9個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも10個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも11個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも12個の所定の波長の電磁放射、代替的に少なくとも13個の所定の波長の電磁放射に対して測定される。
【0045】
本技術の幾つかの実施形態では、フォトメータは、それぞれ異なる波長を送信し測定するように構成されている。少なくとも1つの実施形態では、少なくとも2個の波長がフォトメータによって送信され、ここで、長いほうの波長は長波長限界であり、短いほうの波長は短波長限界である。光検出器はさらに、フォトメータによって送信された各波長に対応する単一の検出器を含んでいる。
【0046】
本技術の幾つかの実施形態では、長波長限界および短波長限界の双方が可視スペクトルにある波長である。他の態様では、長波長限界は可視スペクトルにあり、短波長限界はUVスペクトルにある。例えば、一態様では、短波長限界は約340nmであってよく、長波長限界は約800nmであってよい。しかし、短波長限界が約330nm、代替的に約320nm、代替的に約310nm、または代替的に約300nmであってもよい。長波長限界は、約825nm、代替的に約850nm、代替的に約875nm、または代替的に約900nmであってもよい。
【0047】
幾つかの実施形態では、フォトメータは、短波長限界から長波長限界までの範囲内の幾つかの波長での吸光度データの同時の検出を可能にする波長スキャンを実行するように構成されている。少なくとも幾つかの実施形態では、キュベットのそれぞれの吸光度データが、電磁放射の少なくとも3個の波長(すなわち、短波長限界、長波長限界およびこれら2つの間の波長)につき測定される。一実施形態では、13個の異なる所定の波長の電磁放射が測定される。当該実施形態では、13個の異なる所定の波長の電磁放射は、短波長限界と、長波長限界と、短波長限界と長波長限界との間の11個の異なる波長とを含む。このような実施形態では、短波長限界は約340nmであり、長波長限界は約800nmであり、11個の異なる波長は約340nm~約800nmの範囲内にある。当該実施形態では、所定の波長の電磁放射は、340nm、380nm、410nm、450nm、520nm、540nm、570nm、600nm、660nm、700nm、750nmおよび800nmを含む。
【0048】
少なくとも1つの成分測定位置34において測定されたキュベットの完全性を検証する一実施形態では、キュベットの少なくとも1つの特性が所定の第1の閾値より大きい場合、または代替的にキュベットの少なくとも1つの特性が所定の第2の閾値未満である場合、キュベットはディスエーブルとされる。一実施形態では、1つもしくは複数のキュベット20のそれぞれの少なくとも1つの特性は、吸光度分散を含む。吸光度分散を測定するために、
図4に示されているように、複数のキュベットホルダ41を有するキュベットトランスポータ40が、少なくとも1つの成分測定位置34へ走行する。1つもしくは複数のキュベット20の吸光度が光源51および光検出器53を利用して複数の波長で測定され、これにより少なくとも1つの特性が決定される。
【0049】
例示的な実施形態では、キュベットのそれぞれの吸光度が、電磁放射の少なくとも13個の所定の波長に対して測定される。当該実施形態では、少なくとも所定の波長の電磁放射に対するキュベットの吸光度データを測定することにより、所定の波長ごとに各キュベットにつき56個の吸光度データポイントが生成される。例示的な自動分析装置10は、200個を超えるキュベットホルダおよび1サイクル当たり41個のスロットピッチシフトを有するホイール42を含む。ホイール42は0.893秒で41個のキュベットホルダを回転通過させ、サイクルタイムは3.6秒である。キュベットは、72.35°のサイクル角度で減速しながら回転する。5サイクル後、キュベットはホイール上の位置において+1スロットピッチだけシフトされ(41×5=205=204+1)、12.3分後に元の位置に戻る。各サイクルは例えば加速部、定速部、減速部、および休止部を有する。
【0050】
ルーチン較正および検証分析において、別個のシステムサイクルにおいてキュベットごとに16個の吸光度データのデータポイントが取得され、平均がキュベットの変動のベースラインおよび補正に用いられる。当該同じデータを使用して、右半部のキュベット(8個のデータポイント)と左半部のキュベット(8個のデータポイント)とが比較され、キュベットが引っかき傷または欠陥のような何らかの損傷を有しているかどうかを評価することができる。このことについては
図5を参照されたい。当該プロシージャは、較正および検証分析のために自動分析装置10を測定モードから診断モードへ切り替えることが要求されるため、時間がかかり非効率的である。
【0051】
本明細書で説明しているように、これらの欠点を克服するオンザフライ較正および検証分析を実行することができる。オンザフライ分析では、各キュベットは別個のサイクルにおいてではなく、通常の測定サイクル中に較正および検証される。一実施形態によれば、オンザフライ較正および検証分析は、測定モードにおいて、生体試料の測定と並行して実行される。このことについては
図8を参照されたい。また、上述した16個のデータポイントに代えて、複数の吸光度データポイントが取得される。一実施形態では、56個のデータポイントがキュベット洗浄シーケンス中に取得される。オンザフライ較正および検証データが矢印で示したポイントで取得されている
図6A~
図6Dを参照されたい。また
図13Aも参照されたい。
【0052】
複数の吸光度データポイントがキュベットの回転中に収集され、これにより、各吸光度データポイントはキュベットの僅かずつ異なる領域に由来する。表1は、本開示の一実施形態(「実施形態1」)とルーチン分析(「ルーチン試験」)との比較を示している。示されているように、実施形態1は、ルーチン分析と比較して、40個の付加的なデータポイントを生成することができる。
【0053】
【0054】
実施形態1とルーチン試験との間でデータポイントの数が異なることには少なくとも2つの理由がある。幾つかの実施形態では、測定された吸光度データポイントの数の増大は多くの要因に関連しており、これらにはCPU速度および/または回転速度が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
得られたデータポイントは3つのデータ群に分類される。キュベットの較正および検証のロジックを設定するために、各システムで測定された実際のデータを使用して、各システムに対する規則が決定されるべきである。このことは、キュベットがイネーブル状態にあるかまたはディスエーブル状態にあるかを判定するためのプロシージャを示した
図7のフローチャートの形態で示されている。
【0056】
第1のデータ群は、個々のデータポイントが(全ての波長にわたって)所定の閾値よりも大きく総湿式平均または総乾式平均から偏差している場合に、不安定であると定義される。当該所定の第1の閾値は、評価される13個の全ての波長の最大値と最小値との間の±0.0100の偏差であってよい。キュベットが当該第1のデータ群に入る場合、すなわち偏差が所定の第1の閾値より大きい場合、対応するキュベットにはディスエーブル状態が割り当てられる。
【0057】
第2のデータ群は、個々のデータポイントが(全ての波長にわたって)所定の閾値より小さく総湿式平均または総乾式平均から偏差している場合に、きわめて安定であると定義される。当該所定の第2の閾値は、評価される13個の全ての波長の最大値と最小値との間の±0.0050の偏差であってよい。キュベットが当該第2のデータ群に入る場合、すなわち偏差が所定の第2の閾値未満である場合、対応するキュベットにイネーブル状態が割り当てられる。
【0058】
第3のデータ群は、個々のデータポイントが(全ての波長にわたって)総湿式平均または総乾式平均から所定の最小値および所定の最大値までの間に入る場合に、安定であると定義される。当該所定の範囲は、評価される13個の全ての波長の偏差が±0.0050である所定の最小値と、当該偏差が±0.0100である所定の最大値とを有することができる。キュベットが当該第3のデータ群に入る場合、すなわち所定の範囲内にある場合、対応するキュベットにイネーブル状態が割り当てられる。
【0059】
幾つかの実施形態によれば、制御装置60は、診断モードまたは測定モードで動作するよう自動分析装置10をスケジューリングするように構成されている。このことについては
図8を参照されたい。
【0060】
制御装置が診断モードで動作するように、すなわち当該診断モードは希釈動作、前処理動作および/または他のフォトメトリ以外の試験動作のために1つもしくは複数のキュベット20をスケジューリングすることを含むがこれらに限定されないモードで動作するようにスケジューリングされている場合、対応するキュベットが成分分配位置32にあれば、キュベットにイネーブル状態が割り当てられているときも、またキュベットにディスエーブル状態が割り当てられているときも、成分が1つもしくは複数のキュベット20内へ分配可能となる。一実施形態によれば、ディスエーブル状態にあるキュベットに分配される成分は、希釈剤の一部または前処理剤の一部を含むことができる。
【0061】
成分は、以下に限定されるものではないが、品質管理(QC)剤、キャリブレータ、前処理液、希釈剤、脱イオン水、および生体試料を含む。例示的な生体試料は、以下に限定されるものではないが、血液、血漿、血清、唾液、尿、脳脊髄液、涙液、汗、胃腸液、羊水、粘膜液、胸腔内液、および皮脂腺液を含む。幾つかの実施形態では、生体試料は脊椎動物に由来する。幾つかの実施形態では、生体試料は哺乳動物由来、好ましくはヒト由来である。幾つかの実施形態では、生体試料は鳥類由来、魚類由来、爬虫類由来、または両生類由来である。幾つかの実施形態は、成分は成分試験にかけられる。幾つかの実施形態では、成分の特性、例えば濃度が測定される。
【0062】
幾つかの実施形態では、成分は試験準備完了状態にある。試験準備完了状態にある成分とは、成分分配位置で対応するキュベット内へ分配される準備が完了した成分であり、成分測定位置に対応するキュベットが到達したときにフォトメータを用いて対応するキュベット内の当該成分が試験されることを示し、また、成分分配位置がその時点で空のサイクルまたは希釈サイクル(またはフォトメータによる測定が行われない別のサイクル)を有しないことを示す。当該実施形態では、成分は生体試料でありうる。
【0063】
空のサイクルは、自動分析装置10が容量未満で動作していることおよび/または分配準備完了状態を阻害する幾分かの非効率性を有することを示す。よって、空のサイクルの間、成分分配位置はアイドル状態で維持される。希釈サイクルとは、成分分配位置が希釈を実行するように計画されていることを示す。希釈サイクルにおいて1つもしくは複数のキュベット20内へ分配される成分は、その後、成分測定位置において測定されない。
【0064】
制御装置60が、フォトメトリ動作(例えば試験、較正またはとりわけ品質管理)のために1つもしくは複数のキュベット20をスケジューリングすることを含むがこれに限定されない測定モードで動作するようにスケジューリングされている場合、対応するキュベットがイネーブル状態に割り当てられた成分分配位置32にあるときに成分が1つもしくは複数のキュベット20内へ分配可能となる。しかし、1つもしくは複数のキュベット20にディスエーブル状態が割り当てられている場合には、成分は前記キュベット内へ分配されない。当該実施形態では、対応するキュベットが成分を収容しており、対応するキュベットにつき成分試験がスケジューリングされている場合であって、かつ対応するキュベットが成分測定位置34にあるとき、フォトメータ50を用いてこの対応するキュベットの成分が測定される。幾つかの実施形態では、対応するキュベットの成分が測定される前に、成分を有するキュベットが少なくとも1つの試薬分配位置31へ移動され、試薬が分配される。幾つかの実施形態では、少なくとも第1の試薬分配位置および第2の試薬分配位置が存在する。幾つかの実施形態では、2種類の試薬が分配される。他の実施形態では、複数の試薬が分配される。幾つかの実施形態では、制御装置60は、どの時点で試薬を分配すべきかをスケジューリングすることができる。
【0065】
一実施形態では、対応するキュベットにディスエーブル状態が割り当てられている場合、対応するキュベットの成分試験が再スケジューリングされる。再スケジューリングは、以前に既知となったディスエーブル状態に応答して行うことができ、例えば、自動分析装置10が診断モードにあったときに割り当てられたディスエーブル状態に応答して行うことができ、またはちょうどその時点で割り当てられたディスエーブル状態に応答して行うこともできる。再スケジューリングの結果、対応するキュベット内の未試験の成分の置換を生じさせることもできる。当該未試験の成分は、以下に限定されるものではないが、希釈剤の一部または前処理剤の一部を含みうる。
【0066】
一実施形態では、自動分析装置10は、アッセイ測定の前にキュベットを洗浄するように構成されている。
図6A~
図6Dに示されているように、洗浄は、洗剤/洗浄溶液での洗浄33、水での濯ぎ73、および乾燥83、の3つの段階を有する。
図6Aでは、キュベットは、連続する2つのキュベット洗浄位置33a,33bにおいて洗剤または他の適切な洗浄溶液で洗浄され、連続する4つのキュベット洗浄位置73a,73b,73c,73dにおいて脱イオン水で濯がれる。キュベットから水を吸い取る前にキュベットの完全性が検査され、次いで、キュベットが連続する2つのキュベット乾燥位置83a,83bで乾燥される。
図6Bでは、キュベットは、キュベット濯ぎ位置73aにおいて脱イオン水で濯がれ、キュベット洗浄位置33aにおいて洗剤または他の適切な洗浄溶液で洗浄され、連続する4つのキュベット濯ぎ位置73b,73c,73d,73eにおいて脱イオン水で濯がれる。キュベットから水を吸い取る前にキュベットの完全性が検査され、次いで、キュベットが連続する2つのキュベット乾燥位置83a,83bで乾燥される。
図6Cでは、キュベットは、キュベット濯ぎ位置73aにおいて脱イオン水で濯がれ、連続する2つのキュベット洗浄位置33a,33bにおいて洗剤または他の適切な洗浄溶液で洗浄され、連続する3つのキュベット濯ぎ位置73b,73c,73dにおいて脱イオン水で濯がれる。キュベットから水を吸い取る前にキュベットの完全性が検査され、次いで、キュベットが連続する2つのキュベット乾燥位置83a,83bで乾燥される。洗剤または他の適切な洗浄溶液は、低刺激の洗剤または濃縮溶液であってよい。幾つかの実施形態では、洗剤は高濃度であってよい。洗剤または洗浄溶液の非限定的の適切な例は、以下に限定されるものではないが、とりわけアルカリ性洗浄濃縮物、例えばオルトリン酸三カリウムおよびエタノール混合物を含む。
【0067】
一実施形態では、自動分析装置10は、ディスエーブル状態が割り当てられたキュベットが少なくとも1つのキュベット洗浄位置33にあるときに、少なくとも1つのエンハンストクリーニングルーチンを適用するように構成されている。当該実施形態では、少なくとも1つのエンハンストクリーニングルーチンは、ディスエーブル状態が割り当てられたキュベットに洗剤または他の適切な洗浄溶液を分配することを含む。エンハンストクリーニングルーチンが適用された後、キュベットが成分測定位置34にあるときに、ディスエーブル状態が割り当てられたキュベットがフォトメータを用いて測定される。対応するキュベットについて測定された少なくとも1つの特性が所定の第1の閾値より大きい場合には、対応するキュベットへのディスエーブル状態の再割り当てが行われる。代替的に、対応するキュベットについて測定された少なくとも1つの特性が所定の第2の閾値未満であるかまたは所定の範囲内にある場合、対応するキュベットにはイネーブル状態が割り当てられる。対応するキュベットにイネーブル状態が割り当てられた場合、前記キュベットは任意の目的(例えば、希釈、前処理、フォトメトリ以外の他の試験動作、および/またはとりわけフォトメトリ試験)に使用することができる。一実施形態では、ディスエーブル状態が割り当てられたまたは再割り当てされたキュベットには、当該キュベットについて測定された少なくとも1つの特性が所定の第2の閾値未満でない限りまたは後続の3回の測定後に所定の範囲内に入らない限り、イネーブル状態は割り当てられない。
【0068】
幾つかの実施形態では、キュベットにディスエーブル状態が再割り当てされると、ディスエーブル状態が再割り当てされたキュベットが少なくとも1つのキュベット洗浄位置33にあるときに、後続のエンハンストクリーニングルーチンが適用される。当該エンハンストクリーニングルーチン中または当該エンハンストクリーニングルーチン前には、ディスエーブル状態が再割り当てされたキュベットは、一時的にディスエーブルと見なされる。その結果、自動分析装置10が診断モードの目的(例えば、希釈動作、前処理動作、またはフォトメトリ以外の他の動作に関連する目的)で用いられているとき、一時的にディスエーブル状態にあるキュベットを使用することができる。一時的にディスエーブル状態にあるキュベットに診断モードの目的が割り当てられない場合、一時的にディスエーブル状態にあるキュベットについては、本明細書に記載のエンハンストクリーニングルーチンを使用したクリーニングが続行される。
【0069】
自動分析装置10は、所定回数の適用にわたってエンハンストクリーニングルーチンを続行するように構成されている。幾つかの実施形態では、所定回数の適用は、少なくとも10回の適用である。他の実施形態では、所定回数の適用は、少なくとも5回の適用である。他の実施形態では、所定回数の適用は、少なくとも15回の適用である。エンハンストクリーニングルーチンの終了時に、ディスエーブル状態が割り当てられたまたは再割り当てされたキュベットに対してイネーブル状態の再割り当てがなかった場合、キュベットには除却状態が割り当てられる。除却状態が割り当てられたキュベットは、自動分析装置10が診断モードの目的で診断モードにあれば依然として使用可能であるが、オペレータは、除却されたキュベットの交換が必要であるという通知を受け取る。通知は、例えば、システム通知、表示画面通知、プッシュ通知、テキスト通知および/または電子メール通知であってよい。
【0070】
幾つかの実施形態では、オペレータは、少なくとも所定数のキュベットに除却状態が割り当てられた際に、通知を受け取る。一実施形態では、これはキュベットの少なくとも約10%に除却状態が割り当てられたときである。別の実施形態では、通知は、キュベットの少なくとも約5%に除却状態が割り当てられたときに受け取られる。別の実施形態では、通知は、キュベットの少なくとも約15%に除却状態が割り当てられたときに受け取られる。
【0071】
幾つかの実施形態では、自動分析装置10は、ディスエーブル状態が割り当てられたキュベットの交換の必要性をオペレータに通知するように構成されている。少なくとも所定数のキュベットにディスエーブル状態が割り当てられた場合、オペレータには、ディスエーブル状態にあるキュベットが自動分析装置10のスループットに与えうる負の影響が通知される。これは、少なくとも1つのキュベットのディスエーブル状態による自動分析装置10の能力の低下をオペレータに通知すること、および/または置換されるキュベットのそれぞれのキュベットトランスポータ40上の位置を表示画面を介してオペレータに通知することを含む。一実施形態では、所定数は、キュベットの総数の少なくとも約20%であってよい。代替的な実施形態では、所定数は、キュベットの総数の少なくとも約15%、代替的にキュベットの総数の少なくとも約25%であってもよい。
【0072】
さらなる例を以下に示す。
【0073】
例1:キュベット較正およびキュベット検証ロジック
従来の化学分析装置を使用して、179個のキュベットについてのロー吸光度データ(各キュベットおよび各波長に対しての56個の吸光度データポイント)の傾向を分析した。得られたデータポイントを「きわめて安定」、「安定」および「不安定」に分類した。
【0074】
全てのキュベットの結果を比較するために、各キュベットの吸光度データポイントを、キュベットの湿式セルブランクと考えられるベースライン吸光度で補正した。
図9は、340nmでの各ポイントに関する179個のキュベットのそれぞれの最大データおよび最小データを示している。最大吸光度データポイントおよび最小吸光度データポイントが0に近い場合、これは、そのポイントの吸光度データがキュベットの湿式セルブランクにきわめて近いことを意味する。最大吸光度データポイントと最小吸光度データポイントとの間の変動が小さい場合、結果は小さなキュベット変動に相関する。
【0075】
56個のデータポイントを、次のルールを用いて3つの群に分類した(データポイント群の結果については
図10を参照)。
(a)「不安定」のデータポイント:当該データポイントでは、13個の波長の全てに対して最大値と最小値との差が0.0100を上回っている。#40~#56のデータポイントをこの群に分類した。
(b)「きわめて安定」のデータポイント:当該データポイントでは、13個の波長の全てに対して最大値と最小値との差が0.0100以下である。また、13個の波長の全てに対する最小値が-0.0035以上である。#10~#29のデータポイントをこの群に分類した。
(c)「安定」のデータポイント:「不安定」あるいは「きわめて安定」に分類されなかったデータポイントを「安定」に分類した。#1~#9および#30~#39のデータポイントをこの群に分類した。
【0076】
例2:キュベット較正の結果
図11には、ルーチン法および実施形態1の方法によって測定されたベースライン吸光度の範囲が示されている。ルーチン試験法および実施形態1の方法のそれぞれにおいて、179個のキュベットについての29個の吸光度データポイントを測定した。どちらの方法でも、測定した29個の吸光度データポイントの範囲を、各キュベットにつき各波長で計算し、
図11に1ドットとしてプロットした。
図11の左半部はルーチン試験を示しており、右半部は実施形態1の方法を示している。
図11に示されているように、実施形態1の方法によって測定されるベースライン吸光度の範囲は、ルーチン試験によって測定される範囲よりも小さくなる傾向を有する。したがって、実施形態1は、ルーチン試験と比較して、付加的に安定したベースライン吸光度のデータを測定することができる。
【0077】
図12には、各波長に対しての実施形態1とルーチン試験との間のベースライン吸光度の差が示されている。
図12には、5191個のデータ吸光度ポイントの平均+3SDおよび平均-3SDが示されており、平均±3SDは、13個の波長の全てに対して±0.0020以内にある。したがって、実施形態1で測定されたベースライン吸光度は、ルーチン試験で測定されたベースライン吸光度にきわめて近かった。
【0078】
例3:実施形態1の方法によるキュベット検証の結果
表2には、実施態様1の方法によって判定されたキュベットの検証の結果が示されている。当該方法では、新しいキュベットおよび汚れた/引っかき傷のあるキュベットが従来の化学分析装置にセットアップされている。最初、別個の10回の分析に対してルーチン方法を使用してキュベットを検証した。キュベットは下記の規則を有する次の2つの群へと分類された。
【0079】
群1:「合格」と判定されるキュベット
10回全てのルーチン試験に合格したキュベットを群1(「合格」との判定)に分類した。231個のキュベットがこの群に分類された。
【0080】
群2:「不合格」と判定されるキュベット
10回全てのルーチン法に不合格であったキュベットを群2(「不合格」との判定)に分類した。113個のキュベットがこの群に分類された。
【0081】
群1または群2に分類されなかったキュベットは、これらのキュベットをどのように判定すべきか不明であるため、この結果から除外した。
【0082】
次いで、群1または群2に分類されたキュベットを、例1において説明したロジックを用いて実施形態1の方法を使用して別の10回の分析につき検証した。表2に示されているように、群1に分類された231個のキュベット全てが10回全てにわたって「合格」と判定され、群2に分類された113個のキュベット全てが10回全てにわたって「不合格」と判定された。これは、ルーチン試験に代えて実施形態1の方法によりキュベットを検証できることを示している。
【0083】
【0084】
例4:キュベット位置および機能部レイアウト
図13Aには、オンザフライ較正および検証プロセスのための例示的なキュベット位置レイアウトおよび対応する各機能部が示されている。当該例では、フォトメトリ位置は固定である。1つのキュベットに焦点を当てると、当該キュベットは5サイクルごとにフォトメトリ位置の正面を通過する。ホイールは1サイクルで41個の位置を回転させるので、キュベットの総数は(内側または外側の)1ラインで204個である(41個の位置×5サイクル=204個(1回転)+1個)。サイクルは、加速部、定速部、減速部および休止部を有する。吸光度データの測定を含むオンザフライ追跡は、サイクルの非定速部で行われる。よって、複数のデータポイントを収集するためにより多くの時間を利用することができる。当該例では、56個の吸光度データポイントが収集された。
図13Bには、例4によるフォトメトリのプロフィルが示されている。
【国際調査報告】