(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】物理性が向上した香料シート、これを含む喫煙物品およびこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
A24B 15/10 20060101AFI20240116BHJP
A24B 15/16 20200101ALI20240116BHJP
A24B 15/30 20060101ALI20240116BHJP
A24B 3/14 20060101ALI20240116BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A24B15/10
A24B15/16
A24B15/30
A24B3/14
C08J5/18 CEP
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539824
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 KR2022010038
(87)【国際公開番号】W WO2023033349
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0118610
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ゴン チャン
(72)【発明者】
【氏名】キム、イク ジューン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、キュン ビン
(72)【発明者】
【氏名】ジェオウン、エウン ミ
(72)【発明者】
【氏名】フワン、ミン ヒー
【テーマコード(参考)】
4B043
4F071
【Fターム(参考)】
4B043BB11
4B043BC02
4B043BC03
4B043BC04
4B043BC18
4B043BC20
4B043BC23
4F071AA09
4F071AB17A
4F071AC05
4F071AE04
4F071AE08
4F071AE19A
4F071AG34
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
(57)【要約】
【課題】裁刻工程の作業性を増進させるために物理性を向上させた香料シート、このような香料シートを含む喫煙物品、および、このような香料シートならびに喫煙物質の製造方法が提供される。
【解決手段】本開示の幾つかの実施例に係る香料シートは、シートを形成するハイドロコロイド物質、香料、および、可塑剤を含むことができる。可塑剤は、香料シートの物理性を向上させることによって裁刻工程の作業性を増進させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを形成するハイドロコロイド物質;
香料;および
可塑剤を含む、香料シート。
【請求項2】
前記ハイドロコロイド物質は改質されたセルロース物質を含む、請求項1に記載の香料シート。
【請求項3】
前記改質されたセルロース物質は、
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびエチルセルロースの中から選択された少なくとも一つの物質を含む、請求項2に記載の香料シート。
【請求項4】
前記可塑剤はグリセリンおよびプロピレングリコールのうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の香料シート。
【請求項5】
前記香料シートの裁刻時粒子の大きさ600μm未満の微粉発生量が裁刻された前記香料シートの重量対比2重量%未満である、請求項1に記載の香料シート。
【請求項6】
前記香料シートの可塑剤含量は前記ハイドロコロイド物質対比5重量部~30重量部である、請求項1に記載の香料シート。
【請求項7】
前記香料シートの水分含量は5重量部~20重量部である、請求項1に記載の香料シート。
【請求項8】
前記香料シートは前記ハイドロコロイド物質、前記香料、前記可塑剤、溶媒および粉末型物質を含むシート組成物から製造されたものである、請求項1に記載の香料シート。
【請求項9】
前記溶媒は蒸溜水を含み、
前記粉末型物質は25℃で前記蒸溜水に対する溶解度が160g/L以下である物質である、請求項8に記載の香料シート。
【請求項10】
前記粉末型物質は増量剤および乳化剤のうち少なくとも一つを含む、請求項8に記載の香料シート。
【請求項11】
前記ハイドロコロイド物質はLM-ペクチン(low methoxyl pectin)を含むものの、
前記LM-ペクチンはカルボキシ基を50%未満で含んで放冷時にゲル化しない特性を有する物質である、請求項1に記載の香料シート。
【請求項12】
請求項1に記載の香料シートの裁刻物と刻み型タバコ物質が配合されている喫煙物質部を含む、喫煙物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は物理性が向上した香料シート、これを含む喫煙物品およびこれらの製造方法に関する。より詳しくは、裁刻工程の作業性を増進させるために物理性を向上させた香料シートと、このような香料シートを含むことによって香り発現性および香り持続性が向上した喫煙物品と、これらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
喫煙者の嗜好を満たすために、喫煙物品(例えば、シガレット)には多様な方式で加香処理が遂行される。代表的な加香処理方式の例としては、刻みのような喫煙物質またはフィルタプラグに香液を直接添加(例えば、噴射)することが挙げられる。しかし、例示された方式は、香液の添加量に制限があるか、意図した香りが発現しないか、喫煙中に香り発現性が急激に落ちるなどの多様な問題がある。
【0003】
具体的には、喫煙物質に香液を添加する方式は香液が喫煙物質と互いに凝集し得るため多量の香液を添加するのが難しい。また、喫煙の際に高い加熱温度(または燃焼温度)によって香液が変質することにより、意図していない香りが発現され得る。次に、フィルタプラグに香液を添加する方式は前述した方式に比べて多量の香液を添加することはできるものの、これも同様に添加量に限界が存在する。
【0004】
一方、いずれの方式であれ、添加された香液が喫煙初期に急激に発現することによって喫煙後半に行くほど香り発現性が落ちる問題があり、香液が過量添加されると、フィルタプラグまたは喫煙物質を包んでいるラッパー(wrapper)が濡れて汚染する問題が発生し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の幾つかの実施例を通じて解決しようとする技術的課題は、物理性が向上した香料シートおよびこの製造方法を提供することである。
【0006】
本開示の幾つかの実施例を通じて解決しようとする他の技術的課題は、表面粗さが向上した香料シートおよびこの製造方法を提供することである。
【0007】
本開示の幾つかの実施例を通じて解決しようとするさらに他の技術的課題は、香り発現性と香り持続性が向上した喫煙物品およびこの製造方法を提供することである。
【0008】
本開示の技術的課題は以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていないさらに他の技術的課題は下記の記載から本開示の技術分野での通常の技術者に明確に理解され得るであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題を解決するための、本開示の幾つかの実施例に係る香料シートは、シートを形成するハイドロコロイド物質、香料および可塑剤を含むことができる。
【0010】
幾つかの実施例において、前記ハイドロコロイド物質は改質されたセルロース物質を含むことができる。
【0011】
幾つかの実施例において、前記可塑剤はグリセリン、プロピレングリコールのうち少なくとも一つを含むことができる。
【0012】
幾つかの実施例において、前記香料シートの引張強度は2.2MPa~3.6MPaであり得る。
【0013】
幾つかの実施例において、前記香料シートの可塑剤含量は5重量部~30重量部であり得る。
【0014】
幾つかの実施例において、前記香料シートの水分含量は5重量部~20重量部であり得る。
【0015】
幾つかの実施例において、前記香料シートは前記ハイドロコロイド物質、前記香料、前記可塑剤、溶媒および粉末型物質を含むシート組成物から製造されたものであり得る。
【0016】
前記技術的課題を解決するための、本開示の幾つかの実施例に係る香料シートの製造方法は、ハイドロコロイド物質、溶媒、可塑剤および香料を配合してシート組成物を製造する段階および前記製造されたシート組成物を乾燥する段階を含むことができる。
【0017】
前記技術的課題を解決するための、本開示の幾つかの実施例に係る喫煙物品は、香料シートの裁刻物と刻み型タバコ物質が配合されている喫煙物質部を含むことができる。この時、前記香料シートはハイドロコロイド物質、可塑剤および香料を含むことができる。
【発明の効果】
【0018】
前述した本開示の幾つかの実施例によると、製造工程中に可塑剤を添加することによって物理性が向上した香料シートが製造され得る。このような香料シートは乾燥後にも砕ける物性を有さないので、シート裁刻工程の作業性を向上させることができる。また、これに伴い、香料シートの裁刻物が適用された喫煙物品が容易に製造され得る。
【0019】
また、グリセリン、プロピレングリコールのように水分の含有を助ける保湿可塑剤を添加することによって、香料シートの物理性がさらに向上し得る。
【0020】
また、香料シートの裁刻物と刻み型タバコ物質が配合された喫煙物品が製造され得る。このような喫煙物品は優秀な香り発現性と香り持続性を保障することができる。
【0021】
また、シート組成物に粉末型物質を配合したり乾燥工程中に粉末型物質を添加することによって、表面粗さが向上(増加)した香料シートが製造され得る。このような香料シートは他の物質と接触され得る実質面積が小さいので、刻み型タバコ物質と配合される時に固まり現象(例えば、互いに付着する現象)が最小化され得る。また、これに伴い、刻み型タバコ物質と香料シートの裁刻物が均一に配合され得(すなわち、配合性が向上する)、配合工程の作業性も向上し得る。ひいては、配合性が向上することによって喫煙物品の香り発現が均一になされ得る。
【0022】
本開示の技術的思想による効果は以上で言及した効果に制限されず、言及されていないさらに他の効果は下記の記載から通常の技術者に明確に理解され得るであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の幾つかの実施例に係る香料シートの製造方法を概略的に示す例示的なフローチャートである。
【0024】
【
図2】本開示の他の幾つかの実施例に係る香料シートの製造方法を説明するための例示的な図面である。
【0025】
【
図3】本開示の幾つかの実施例に係る喫煙物品を概略的に示す例示的な図面である。
【0026】
【
図4】本開示の幾つかの実施例に係る香料シートの適用方式を説明するための例示的な図面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付された図面を参照して本開示の好ましい実施例を詳細に説明する。本開示の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付される図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すると明確となるであろう。しかし、本開示の技術的思想は以下の実施例に限定されるものではなく互いに異なる多様な形態で具現され得、ただし、以下の実施例は本開示の技術的思想を完全なものとし、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者に本開示の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本開示の技術的思想は請求項の範疇によって定義されるのみである。
【0028】
各図面の構成要素に参照符号を付加するに際して、同一の構成要素に対しては、たとえ他の図面上に表示されても、できるだけ同一の符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本開示を説明するに際して、関連した公知の構成または機能に対する具体的な説明が本開示の要旨を不要に曖昧にさせ得る恐れがあると判断される場合にはその詳細な説明は省略する。
【0029】
他の定義がない限り、本明細書で使われるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者に共通して理解され得る意味で使われ得る。また、一般的に使われる辞書に定義されている用語は、明白に特に定義されていない限り理想的にまたは過度に解釈されない。本明細書で使われた用語は実施例を説明するためのものであって、本開示を制限しようとするものではない。本明細書で、単数型は文面で特に言及しない限り複数型も含む。
【0030】
また、本開示の構成要素を説明するに際して、第1、第2、A、B、(a)、(b)等の用語を使うことができる。このような用語はその構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語によって該当構成要素の本質や手順または順序などが限定されない。ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載された場合、その構成要素は、当該他の構成要素に直接的に連結されるか、または接続され得るが、各構成要素の間にさらに他の構成要素が「連結」、「結合」または「接続」され得るものと理解されるべきである。
【0031】
本開示で使用される「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、言及された構成要素、段階、動作および/または素子は、1つ以上の他の構成要素、段階、動作および/または素子の存在または追加を排除しない。
【0032】
まず、本開示の多様な実施例で使われる幾つかの用語について明確にすることにする。
【0033】
以下の実施例において、「喫煙物品」(smoking article)とは、タバコ、タバコ派生物、膨化処理タバコ(expanded tobacco)、再生タバコ(reconstituted tobacco)またはタバコ代用物に基づいているか否かにかかわらず、喫煙可能な任意の製品または喫煙体験を提供できる任意の製品を意味し得る。例えば、喫煙物品はシガレット、シガー(cigar)およびシガリロ(cigarillo)等のような喫煙可能製品を含むことができる。他の例として、喫煙物品は燃焼型喫煙物品と加熱型喫煙物品を含むことができる。
【0034】
以下の実施例において、「喫煙物質」(smoking material)とは、煙(smoke)および/またはエアロゾル(aerosol)を発生させるか、喫煙に利用される物質を意味し得る。例えば、喫煙物質はタバコ物質を含むことができる。タバコ物質は例えば、タバコ葉の細片、タバコの茎またはこれらから加工された物質などを含むことができる。より具体的な例として、タバコ物質は粉砕されたタバコの葉、粉砕された再生タバコ、膨化刻み、膨化主脈および板状葉などを含むことができる。しかし、これに限定されるものではない。
【0035】
以下の実施例において、「上流」(upstream)または「上流方向」は喫煙者の口部から遠ざかる方向を意味し、「下流」(downstream)または「下流方向」は喫煙者の口部から近づく方向を意味し得る。上流および下流という用語は喫煙物品を構成する要素の相対的な位置を説明するために利用され得る。例えば、
図3に例示された喫煙物品100で、フィルタ部120は喫煙物質部110の下流または下流方向に位置し、喫煙物質部110はフィルタ部120の上流または上流方向に位置する。
【0036】
以下の実施例において、「長さ方向」(longitudinal direction)は喫煙物品の長さ方向軸に相応する方向を意味し得る。
【0037】
以下の実施例において、「パフ」(puff)はユーザ(喫煙者)の吸入(inhalation)を意味し、吸入とはユーザの口や鼻を通じてユーザの口腔内、鼻腔内または肺に引き寄せる状況を意味し得る。
【0038】
以下の実施例において、「シート」(sheet)はその厚さより実質的に大きな幅および長さを有する薄層要素を意味し得る。当該技術分野で、シートという用語はウェブ(web)、フィルム(film)等の用語と混用されて使われてもよい。
【0039】
以下の実施例において、「香料シート」(flavor sheet or flavoring sheet)はシート形態で製造された香料含有材料を意味し得る。
【0040】
以下の実施例において、「粉末」(powder)は粒子(particle)、ビーズ(bead)、顆粒(granule)、粉などの形態をすべて包括することができる
【0041】
以下では、本開示の多様な実施例について詳細に説明する。
【0042】
本開示の幾つかの実施例によると、物理性が向上した香料シートが提供され得る。具体的には、香料シート(またはシート組成物)を製造する工程中に可塑剤を添加することによって物理性が向上した香料シートが製造され得る。このような香料シートは乾燥後にも砕ける物性を有さないので、シート裁刻工程の作業性を向上させることができる。また、これに伴い、香料シートの裁刻物が適用された喫煙物品が容易に製造され得る。
【0043】
以下では、前述したような香料シートに対して添付された図面を参照して詳細に説明することにする。
【0044】
図1は、本開示の幾つかの実施例に係る香料シートの製造方法を概略的に示す例示的なフローチャートである。ただし、これは本開示の目的を達成するための好ましい実施例に過ぎず、必要に応じて一部の段階が追加または削除され得ることは言うまでもない。
【0045】
図1に図示された通り、本実施例に係る製造方法は可塑剤を配合してシート組成物を製造する段階S100で開始され得る。具体的には、ハイドロコロイド物質、蒸溜水、エタノールなどの溶媒、香料および可塑剤を配合して液状(例えば、スラリー状態)のシート組成物が製造され得る。ここで、液状は液体状態だけでなく、液体と固体が混合された状態(例えば、スラリー状態)も含むものであり得る。
【0046】
蒸溜水、エタノールなどの溶媒はスラリー状シート組成物の粘度を調節するための要素であり得る。
【0047】
次に、ハイドロコロイド物質は香料を被覆して固定する物質であるとともに、シートを形成するシート形成剤であり得る。ハイドロコロイド物質は蒸溜水、エタノールなどの溶媒と接触する際に自主的に粘性を帯びるため、このような物質に基づいた香料シートは別途の接着剤がなくても喫煙物品に容易に付着され得るという長所がある。例えば、香料シートを喫煙物品のラッパーに配置する場合、ハイドロコロイド物質がシート形成剤として利用されると、香料シートの配置工程が簡素化され得、接着剤による安全性の問題から自由となり得る。
【0048】
ハイドロコロイド物質の例としては、ゼラチン、寒天、ジェランガム、ペクチン、グアガム、キサンタンガム、グルコマンナン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン類などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0049】
幾つかの実施例において、シート組成物は多様なハイドロコロイド物質のうち改質されたセルロース物質を含むことができる。ここで、「改質されたセルロース」は分子構造内で特定の作用基が置換されたセルロースを意味し得る。改質されたセルロースの例としては、HPMC、MC、CMC、ECが挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、HPMCはヒドロキシプロピル基およびメチル基(またはメトキシ基)が置換された比率および分子量によって約4~40000の範囲内の等級(grade)を有することができる。等級により、改質されたセルロースの粘度が決定され得る。より具体的には、HPMCの物理化学的特性はメトキシ基の比率、ヒドロキシプロピル基の比率および分子量と関係があるが、アメリカ薬局方(USP)によると、HPMCの種類はメトキシ基およびヒドロキシプロピル基の比率によってHPMC1828、HPMC2208、HPMC2906およびHPMC2910などに分類され得る。ここで、前の二つの数字はメトキシ基の比率で、後の二つの数字はヒドロキシプロピル基の比率を意味し得る。本発明者らの持続的な実験結果、改質されたセルロースを含むシート組成物から製造された香料シートは、シート物理性および香り保有量が優秀なことが確認された。
【0050】
次に、香料の例としては、メントール、ニコチン、ニコチン塩、葉タバコ抽出物、ニコチンが含まれた葉タバコ抽出物、天然植物性香料(例えば、シナモン、セージ、ハーブ、カモミール、枯れ草、甘茶、クローブ、ラベンダー、カルダモン、丁香、ナツメグ、ベルガモット、ゼラニウム、蜂蜜エッセンス、ローズ油、レモン、オレンジ、ケイヒ、キャラウェイ、ジャスミン、ショウガ、コリアンダー、バニラエキス、スペアミント、ペパーミント、カッシア、コーヒー、セロリ、カスカリラ、サンダルウッド、ココア、イランイラン、フェンネル、アニス、リコリス、セントジョンズブレッド、スモモエキス、桃エキスなど)、糖類(例えば、グルコース、フルクトース、異性化糖、キャラメルなど)、ココア類(パウダー、エキスなど)、エステル類(例えば、酢酸イソアミル、酢酸リナリル、プロピオン酸イソアミル、酪酸リナリルなど)、ケトン類(例えば、メントン、イオノン、ダマセノン、エチルマルトールなど)、アルコール類(例えば、ゲラニオール、リナロール、アネトール、オイゲノールなど)、アルデヒド類(例えば、バニリン、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒドなど)、ラクトン類(例えば、γ-ウンデカラクトン、γ-ノナラクトンなど)、動物性香料(例えば、ムスク、アンバーグリス、シベット、カストリウムなど)、炭化水素類(例えば、リモネン、ピネンなど)が挙げられる。香料は、固体として使用されてもよく、適切な溶媒、例えば、プロピレングリコール、エチルアルコール、ベンジルアルコール、トリエチルシトレートに溶解または分散して使用されてもよい。これらの香料は、単独で用いられてもよく、混合物として用いられてもよい。ただし、本開示の範囲は前述した例示によって限定されるものではない。
【0051】
次に、可塑剤は香料シートに適切な柔軟性を付与することによってシートの物理性を向上させることができる。例えば、可塑剤は香料シートが砕ける物性を有することを防止することによってシートの物理性を全般的に向上させることができ、これに伴い、シート裁刻工程の作業性が大きく増進し得る。
【0052】
可塑剤は例えばグリセリン、プロピレングリコールのうち少なくとも一つを含むことができるが、これに限定されるものではない。因みに、例示された可塑剤は保湿可塑剤であって、香料シートの水分の含量を増加させて香料シートの物理性を大きく向上させることができる。
【0053】
一方、幾つかの実施例において、シート組成物はLM-ペクチン(low methoxyl pectin)をさらに含んでもよい。またはハイドロコロイド物質の中でLM-ペクチンがシート形成剤としてシート組成物に含まれ得る。LM-ペクチンは、エステル化が比較的に少なく行われた低エステルペクチンまたは低メトキシルペクチンであり、具体的には、分子構造の内部にカルボキシ基(carboxyl group)が約50%未満で含有されたペクチンを意味し得る。LM-ペクチンはカラギナンとは異なって、放冷時にゲル化しない特性を有するので、スラリー状シート組成物の粘度を低減する(例えば、約600cp~800cp程度)ことによって製造工程の作業性を向上させることができる。
【0054】
LM-ペクチンは分子構造の内部にカルボキシ基を約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、または約10%未満で含有することができる。LM-ペクチンの分子構造の内部にカルボキシ基含量が少なくなるほど、LM-ペクチンを含むスラリーの粘度が低くなり得る。
【0055】
また、幾つかの実施例において、シート組成物は乳化剤をさらに含んでもよい。乳化剤は脂溶性が強い香料と水溶性のハイドロコロイド物質がよく混合されるようにして香料シートの香り保有量と香り保持性を大きく増大させることができる。乳化剤の例としては、モンタノブワックス、オリーブ乳化ワックス、レシチン、グリセリルステアレート、ステアリン酸、レシチンなどの天然乳化剤と、モノグリセリド、ジグリセリド、ソルビタン、脂肪酸エステル、スクロースエステル(sucrose ester)等の合成乳化剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0056】
また、幾つかの実施例において、シート組成物は増量剤をさらに含んでもよい。増量剤は蒸溜水以外の構成成分の合計質量(すなわち、乾物質量)を増加させて製造される香料シートの体積を増加させることができ、香料シートの本来の機能に影響を及ぼさない物質であり得る。具体的には、増量剤は香料シートの体積を増加させるものの、スラリーの粘度を実質的に上昇させないと同時に、香料シートの香料保持機能に悪影響を及ぼさない特性を有することができる。好ましくは、増量剤はデンプン類、変性デンプン、またはデンプン加水分解物であってもよい。しかし、これに限定されるものではない。
【0057】
変性デンプンは酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルリン酸二デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、リン酸二デンプン、リン酸一デンプン、リン酸化リン酸二デンプンなどを示す。
【0058】
デンプン加水分解物とは、デンプンを加水分解する工程を含むプロセスによって得られる物質を示す。デンプン加水分解物は、例えば、デンプンを直接加水分解して得られる物質(すなわち、デキストリン)、またはデンプンを加熱処理した後に加水分解して得られる物質(すなわち、難消化性デキストリン)を含んでもよい。増量剤は、例えば、デキストリン(dextrin)であって、さらに具体的には、シクロデキストリン(cyclodextrin)であり得る。
【0059】
デンプン加水分解物は、一般的に、約2~約40の範囲に含まれるDE値を有するデンプン加水分解物、好ましくは約2~約20の範囲に含まれるDE値を有するデンプン加水分解物であり得る。約2~約20の範囲に含まれるDE値を有するデンプン加水分解物として、例えば、パインデックス#100(松谷化学工業(株))、パインファイバー(松谷化学工業(株))、TK-16(松谷化学工業(株))が用いられ得る。
【0060】
ここで、「DE」は、dextrose equivalentの略語であり、DE値は、デンプンの加水分解の程度、すなわちデンプンの糖化率を示す。本開示でDE値は、ウィルシュテッター・シューデル(Willstatter-Schudel)法によって測定された値であり得る。加水分解されたデンプン(デンプン加水分解物)の特性、例えば、デンプン加水分解物の分子量やデンプン加水分解物を構成する糖分子の配列などの特性は、デンプン加水分解物の分子ごとに一定でなく、任意の分布またはバリエーション(variation)を持って存在している。デンプン加水分解物の特性の分布やバリエーション、またはカットされる区間の差異などによって、デンプン加水分解物は、その分子ごとに異なる物性特徴(例えばDE値)が発現することができる。このように、デンプン加水分解物は、異なる物性特徴を示す分子の集合であるが、ウィルシュテッター・シューデル(Willstatter-Schudel)法を用いた測定結果(すなわちDE値)は、デンプンの加水分解の程度を示す代表値として扱われている。
【0061】
好ましくは、デンプン加水分解物は、約2~約5のDE値を有するデキストリン、約10~約15のDE値を有する難消化性デキストリンおよびこれらの混合物からなる群から選択され得る。約2~約5のDE値を有するデキストリンとして、例えばパインデックス#100(松谷化学工業(株))が活用され得る。約10~約15のDE値を有する難消化性デキストリンとして、例えばパインファイバー(松谷化学工業(株))が活用され得る。
【0062】
段階S200で、製造されたシート組成物を塗布および乾燥して香料シートが製造され得る。例えば、シート組成物を所定の基材上に塗布(例えば、キャスト)し乾燥させることによって、香料シートが製造され得る。
【0063】
前述したところにより製造された香料シートは多様な組成比(含量比)と物理性を有することができ、具体的な組成比と物理性はシート組成物の配合比と乾燥条件などにより変わり得る。
【0064】
幾つかの実施例では、香料シートが、全体100重量部を基準として、約0.5~10重量部の乳化剤を含むことができる。このような数値範囲内で、香料の保有量および保持性が増大することが確認された。例えば、乳化剤の含量が過度に少ない場合には香料の保有量の増加が微小であり、過度に多い場合にも香料を被覆するシート形成剤や香料の含量が減少して香料の保有量が大きく増加しないことが確認された。
【0065】
また、幾つかの実施例において、香料シートは、全体100重量部を基準として、約10~60重量部または10~40重量部の香料を含むことができ、好ましくは約20重量部、22重量部、24重量部以上または26重量部以上の香料を含むことができる。適切な量の乳化剤が添加される場合、脂溶性香料の保有量が未添加された場合より略10%、15%または20%以上増加することが確認された。
【0066】
また、幾つかの実施例において、香料シートは、全体100重量部を基準として、水分約2~15重量部、改質されたセルロース約25~90重量部および香料約0.1~60重量部を含むことができる。また、香料シートは約0.5~10重量部の乳化剤をさらに含むことができる。
【0067】
また、幾つかの実施例において、香料シートは、全体100重量部を基準として、水分約2~15重量部、ハイドロコロイド物質約1~60重量部、LM-ペクチン約1~60重量部および香料約0.1~60重量部を含むことができる。また、香料シートは約0.5~10重量部の乳化剤をさらに含むことができる。
【0068】
また、幾つかの実施例において、可塑剤は、香料シート全体100重量部を基準として、約0.1~30重量部だけ含まれ得、好ましくは約5~30重量部、5~25重量部または5~20重量部だけ含まれ得る。このような数値範囲内で適切な柔軟性を有するシートが形成され得る。例えば、可塑剤が過度に少なく添加される場合にはシートの柔軟性が落ちて裁刻工程中に香料シートが容易に砕けることがあり、可塑剤が過度に多く添加される場合にはシートが良好に形成されないか柔らかくなり裁刻がうまくなされないことがある。
【0069】
また、幾つかの実施例において、可塑剤はシート形成剤(例えば、MCなどのハイドロコロイド物質)対比約0.1~30重量部だけ含まれ得、好ましくは約5~30重量部、10~30重量部、15~30重量部または15~25重量部だけ含まれ得る。このような数値範囲内で適切な柔軟性を有するシートが製造されて裁刻工程の作業性が向上し得る。
【0070】
また、幾つかの実施例において、水分は、香料シート全体100重量部を基準として、約5~30重量部だけ含まれ得、好ましくは約5~25重量部、5~20重量部または5~15重量部だけ含まれ得る。このような数値範囲内で優秀な物理性を有するシートが形成され得る。例えば、水分含量が過度に少ない場合には裁刻工程中に香料シートが容易に砕けることがあり、水分含量が過度に多い場合にはシートが良好に形成されないか柔らかくなり得る。
【0071】
また、幾つかの実施例において、香料シートの引張強度は略2.2MPa~3.6MPaであり得る。このような数値範囲内で香料シートがよく砕けず、容易に裁刻される物理性を有することが確認された。
【0072】
これまで
図1を参照して本開示の幾つかの実施例に係る香料シートとこの製造方法について説明した。前述したところによると、製造工程中に可塑剤を添加することによって物理性が向上した香料シートが製造され得る。このような香料シートは砕けない物性を有することによってシート裁刻工程の作業性を増進させることができる。
【0073】
一方、グリセリン、プロピレングリコールと同じ保湿可塑剤を添加して香料シートを製造する場合、前述した通り、香料シートの水分含量が増加し得る。ところが、シートの水分含量が増加する場合、裁刻工程の作業性は増進する反面、配合工程の作業性は落ちる可能性がある。例えば、香料シートの裁刻物と刻み型タバコ物質(例えば、葉タバコ刻み、板状葉刻み)を配合して喫煙物品を製造する時、水分含量により香料シートとタバコ物質が互いに付着して固まる現象(すなわち、均一に配合されない現象)が発生する可能性があり、これに伴い、配合工程の作業性が低下し得る。以下では、このような固まる現象を防止することによって配合工程の作業性も増進させ得る香料シートとこの製造方法に関して説明することにする。
【0074】
本開示の幾つかの実施例によると、配合工程の作業性向上のために表面粗さが向上した香料シートが製造され得る。具体的には、粉末型物質を配合してシート組成物を製造し、製造されたシート組成物を塗布および乾燥させることによって表面粗さが向上した香料シートが製造され得る。このような香料シートは他の物質と接触できる実質面積が相対的に少ないので、刻み型タバコ物質(例えば、葉タバコ刻み、板状葉刻み)と配合時に固まる現象が最小化され得、これに伴い、香料シートの裁刻物とタバコ物質が均一に配合され得る。
【0075】
粉末型物質は常温で粉末の形態で存在する物質であり得る。前述した通り、粉末型物質は香料シートの表面粗さを増加させる役割を遂行することができる。例えば、粉末型物質は乾燥後に香料シートの表面に残留して香料シートの表面粗さを増加させることができる。ただし、粉末型物質の種類は多様であり得、これは実施例により変わり得る。
【0076】
幾つかの実施例において、粉末型物質は増量剤(bulking agent)であり得る。換言すると、粉末型物質は常温で粉末の形態で存在する増量剤であり得る。このような増量剤の例としては、アルファ-シクロデキストリン(α-cyclodextrin)、ベータ-シクロデキストリン(β-cyclodextrin)、ガンマー-シクロデキストリン(γ-cyclodextrin)が挙げられるが、これに限定されるものではない。因みに、ベータ-シクロデキストリンはシクロデキストリン物質の中で蒸溜水に対する溶解度が最も低いので、香料シートの表面粗さを増加させるのにより効果的であり得る。本実施例によると、粉末型の増量剤を利用することによって、香料シートの表面粗さが増加するとともに香り保持性も向上し得る。
【0077】
また、幾つかの実施例において、粉末型物質は乳化剤であり得る。換言すると、粉末型物質は常温で粉末の形態で存在する乳化剤であり得る。このような乳化剤の例としてはスクロースエステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。本実施例によると、粉末型の乳化剤を利用することによって、香料シートの表面粗さが増加するとともに香り保有量も向上し得る。例えば、香料が脂溶性である場合、乳化剤が水溶性のハイドロコロイド物質と脂溶性香料間の架橋の役割を遂行するので、香料シートの香り保有量が大きく増進し得る。
【0078】
また、幾つかの実施例において、粉末型物質は難溶性または不溶性の物質であり得る。例えば、粉末型物質は蒸溜水に対して難溶性または不溶性の性質を有する物質であり得る。このような場合、乾燥後香料シートの表面に残留する粉末型物質の量が相当に多くなるので、香料シートの表面粗さがさらに向上し得る。
【0079】
また、幾つかの実施例において、粉末型物質は25℃で水に対する溶解度が160g/L以下である物質であり得る。例えば、粉末型物質は25℃で蒸溜水に対する溶解度が160g/L以下である物質であり得る。このような物質の例としては、スクロースエステルが挙げられるが、これに限定されるものではない。本実施例によると、乾燥後香料シートの表面に残留する粉末型物質の量が大きく増加するので、香料シートの表面粗さがさらに向上し得る。
【0080】
また、粉末型物質は例えばメチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルエチルセルロース(MEC)となり得るが、これに限定されるものではない。
【0081】
一方、幾つかの実施例では、製造されたシート組成物を塗布し乾燥する途中に(または塗布し乾燥する前に)、塗布されたシート組成物上に粉末型物質が添加され得る。この時、添加された粉末型物質はシート組成物に含まれた粉末型物質と同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。また、場合によっては、粉末型物質がシート組成物に配合されずに、乾燥される途中にのみ添加されてもよい。以下、理解の便宜を提供するために、本実施例について
図2を参照して説明することにする。
【0082】
図2に図示された通り、塗布機1を通じてシート組成物2が塗布され得る。そして、塗布されたシート組成物2が乾燥される途中(点線の四角参照)に、噴射機3を通じてシート組成物2に粉末型物質4が噴射(添加)され得る。このような場合、粉末型物質4がシート組成物2の表面に分布した状態で乾燥がなされるので、乾燥後に大部分の粉末型物質4が香料シート10の表面に均一に残留することになる。また、これに伴い、香料シート10の表面粗さがさらに向上し得、刻み型タバコ物質との配合性がさらに向上し得る。
【0083】
これまで
図2を参照して表面粗さが向上した香料シートおよびこの製造方法について説明した。以下では、
図3以下の図面を参照して前述した香料シートを含むことによって香り発現性および香り持続性が増進した喫煙物品100について詳細に説明することにする。
【0084】
図3は、本開示の幾つかの実施例に係る喫煙物品100を概略的に示す例示的な図面である。
【0085】
図3に図示された通り、喫煙物品100はフィルタ部120、喫煙物質部110およびラッパー(130;wrapper)を含むことができる。ただし、
図3には本開示の実施例に関連する構成要素のみが図示されている。したがって、本開示が属した技術分野の通常の技術者であれば、
図3に図示された構成要素の他に他の汎用的な構成要素がさらに含まれ得ることが分かる。また、
図3は本開示の多様な実施例に係る喫煙物品の一部の例示を図示しているだけであるので、喫煙物品の細部構造は
図3に図示されたものと異なり得ることは言うまでもない。以下、喫煙物品100の各構成要素について説明することにする。
【0086】
フィルタ部120は喫煙物質部110で発生した煙および/またはエアロゾルに対する濾過機能を遂行することができる。このために、フィルタ部120はフィルタ(濾過)物質を含むことができる。フィルタ物質の例としては、セルロースアセテート繊維、紙などが挙げられるが、本開示の範囲はこれに限定されるものではない。フィルタ部120はフィルタ物質(プラグ)を包んでいるラッパー130をさらに含むものであってもよい。
【0087】
図示された通り、フィルタ部120は喫煙物質部110の下流に位置して喫煙物質部110の下流末端と連結され得る。例えば、フィルタ部120と喫煙物質部110は円柱(ロッド)状を有して長さ軸方向に整列され、チッピングラッパー(tipping wrapper)により連結され得る。チッピングラッパーはフィルタ部120の少なくとも一部と喫煙物質部110の少なくとも一部を共にラッピングしてフィルタ部120と喫煙物質部110を連結することができる。フィルタ部120が喫煙物品100の下流末端を形成する場合、フィルタ部120は喫煙者の口部と接触するマウスピースとして機能してもよい。
【0088】
フィルタ部120はロッドの形態で製造されるので、場合により「フィルタロッド120」と称されてもよく、円柱型、内部に中空を含むチューブ型、リセス型などのように多様な形態で製造され得る。
【0089】
次に、喫煙物質部110は燃焼または加熱されることによって煙および/またはエアロゾルを発生させることができる喫煙物質を含むことができる。喫煙物質部110は喫煙物質を包んでいるラッパー130をさらに含むものであってもよい。
【0090】
図示された通り、喫煙物質部110はフィルタ部120の上流に位置してフィルタ部120の上流末端と連結され得る。パフによって喫煙物質部110で発生した煙および/またはエアロゾルはフィルタ部120を経て喫煙者の口部に伝達され得る。
【0091】
喫煙物質部110もロッドの形態で製造されるので、場合により「喫煙物質ロッド110」と称されてもよい。または喫煙物質部110は「媒質部110」と称されてもよい。
【0092】
喫煙物質は例えばタバコ物質を含むことができる。タバコ物質は例えば、タバコ葉の細片、タバコの茎またはこれらから加工された物質などを含むことができる。より具体的な例として、タバコ物質は粉砕されたタバコの葉、粉砕された再構成タバコ、膨化刻み、膨化主脈および板状葉などを含むことができる。しかし、これに限定されるものではない。また、タバコ物質は刻み型(例えば、葉タバコ刻み、板状葉刻み)、シート型、粉末型またはタバコ抽出物の形態を有し得るが、これに限定されるものではない。
【0093】
また、図示された通り、喫煙物質部110には香料シート10が適用(配置)され得る。このように適用された香料シート10は喫煙中に持続的に香りを発現することによって喫煙物品100の香り発現性と香り持続性を増大させることができる。換言すると、香料が液状の形態で投入された場合とは異なって、シート形成剤によって固定(被覆)された香料が喫煙中に徐々にそして持続的に発現することによって喫煙初期に多くの香りが発現する問題が効果的に解決され得る。ただし、香料シート10の具体的な適用方式は変わり得る。
【0094】
幾つかの実施例では、
図4に図示された通り、香料シート10の裁刻物11が刻み型タバコ物質111と配合された形態で喫煙物質部110に投入され得る。前述した通り、可塑剤が添加された香料シート10は物理性が優秀で容易に裁刻され得、表面粗さが向上した香料シート10は実質的な接触面積が小さいので刻み型タバコ物質111と均一に配合され得る。
【0095】
また、幾つかの実施例では、香料シート10がシート型タバコ物質(例えば、板状葉などの再構成タバコシート)に付着されたり、付着後タバコ物質と共にくるくる巻かれた形態で喫煙物質部110に投入されてもよい。
【0096】
また、幾つかの実施例では、複数の刻み型タバコ物質が香料シート10に包まれた形態で喫煙物質部110に投入されてもよい。
【0097】
一方、幾つかの実施例において、喫煙物質は湿潤剤(保湿剤)、香味剤および/または有機酸(organic acid)のような添加物質をさらに含んでもよい。例えば、湿潤剤はグリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびオレイルアルコールのうち少なくとも一つを含んでもよい。湿潤剤はタバコ物質内の水分を適正水準に維持して固有の味をやわらかくし、霧化量を豊富にすることができる。また、香味剤は例えば甘草、ショ糖、果糖シロップ、イソ甘味剤(isosweet)、ココア、ラベンダー、シナモン、カルダモン、セロリ、コロハ、カスカリラ、ビャクダン、ベルガモット、ゼラニウム、蜂蜜エッセンス、バラオイル、バニラ、レモンオイル、オレンジオイル、ミントオイル、ケイヒ、キャラウェイ、コニャック、ジャスミン、カモミール、メントール、ケイヒ、イランイラン、サルビア、スペアミント、ショウガ、コエンドロ、クローブ抽出物(またはクローブ物質)またはコーヒーなどを含んでもよい。
【0098】
次に、ラッパー130は喫煙物質部110および/またはフィルタ部120の少なくとも一部を包んでいるものを意味し得る。ラッパー130は喫煙物質部110またはフィルタ部120の個別のラッパーを指し示すものであってもよく、チッピングラッパーなどのように喫煙物質部110とフィルタ部120の少なくとも一部を共に包んでいるラッパーを指し示すものであってもよく、喫煙物品100に利用されたすべてのラッパーを総称するものであってもよい。ラッパー130は多孔性または非多孔性のラッピングペーパー(wrapping paper)からなってもよいが、本開示の範囲はこれに限定されるものではない。例えば、ラッパー130は金属ホイル(foil)またはラッピングペーパーと金属ホイルの重ね合わせの形態からなってもよい。
【0099】
一方、本開示の幾つかの実施例によると、香料シート10がラッパー130に適用されてもよい。例えば、香料シート10が喫煙物質部110の全部または一部を包む形態でラッパー130の内側に配置(例えば、付着(重ね合わせ)、コーティング)され得る。ラッパー130の少なくとも一部が金属ホイルからなる場合、香料シート10は金属ホイルの内側に配置され得る。このような場合、金属ホイルを通じて伝達された熱によって香料シート10の香り発現がさらに促進され得る。他の例として、香料シート10がラッパー130の少なくとも一部を構成してもよい。すなわち、香料シート10自体が喫煙物品100のラッパー130として機能することができる。この時、ラッパー130は香料シート10のみで構成されてもよく、香料シート10とラッピングペーパーが一体化した形態で構成されてもよい。このような場合、香料シート10をラッパー130に配置する工程(例えば、付着(重ね合わせ)工程、コーティング工程)の遂行が不要であるところ、喫煙物品100の製造工程がより簡素化され得る。
【0100】
また、幾つかの実施例では、香料シート10がローリング(rolling)またはフォールディング(folding)された形態で中空が形成された冷却部(図示されず)に配置されてもよい。例えば、香料シート10は冷却部(図示されず)の中空にローリングまたはフォールディングされた形態で配置されたり、冷却部(図示されず)の中空内壁に配置され得る。この時、香料シート10は複数個のホールが形成されるように加工されたパンチングシートであり得るが、パンチングシートは気流との接触面積が大きいので冷却部(図示されず)の性能をさらに向上させることができる。因みに、冷却部(図示されず)は喫煙物質部110とフィルタ部120の間に位置して煙および/またはエアロゾルに対する冷却機能を遂行するセグメントを意味し得る。
【0101】
これまで
図3および
図4を参照して本開示の幾つかの実施例に係る喫煙物品100について説明した。前述したところによると、香料シート10が喫煙物品100に適用されることによって、喫煙物品100の香り発現性と香り持続性が向上し得る。
【0102】
以下では、実施例および比較例を通じて、前述した香料シート10の構成および効果についてより明確に説明することにする。ただし、以下の実施例は本開示の一部の例示に過ぎないので、本開示の範囲は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0103】
実施例1
【0104】
図1に例示された製造方法により可塑剤を添加して香料シートを製造した。具体的には、グリセリンおよびプロピレングリコールからなる可塑剤、香料およびメチルセルロース、蒸溜水などを配合してシート組成物を製造し、製造されたシート組成物を塗布および乾燥して香料シートを製造した。可塑剤は全体シート組成物対比約1重量%(メチルセルロース対比約10重量部)で添加された。因みに、可塑剤とメチルセルロースは水分とは異なって乾燥過程でほとんど損失されないため、製造された香料シートの可塑剤含量もメチルセルロース対比約10重量部である。
【0105】
実施例2
【0106】
可塑剤を全体シート組成物対比約2重量%(メチルセルロース対比約20重量部)で添加した点を除いて、実施例1と同一の方式で香料シートを製造した。
【0107】
実施例3
【0108】
可塑剤を全体シート組成物対比約3重量%(メチルセルロース対比約30重量部)で添加した点を除いて、実施例1と同一の方式で香料シートを製造した。
【0109】
比較例1
【0110】
可塑剤を添加しない点を除いて、実施例1と同一の方式で香料シートを製造した。
【0111】
実験例1:可塑剤含量によるシート裁刻工程の作業性評価
【0112】
実施例および比較例に係る香料シートに対して、裁刻工程の作業性(容易性)を評価する実験を進行した。具体的には、製造された香料シート10gを裁刻し、裁刻された香料シートをメッシュ(mesh)のサイズが約600μmである篩網で篩分けして微粉発生量を測定した。微粉の発生量が多いということはすなわち、シートの物理性が良好でないため裁刻工程の作業性が落ちるということ(すなわち、シートがよく砕けて作業性が落ちる)を意味するためである。実験結果は下記の表1に記載されている。
【0113】
【0114】
表1を参照すると、実施例に係る香料シートの微粉発生量が比較例1に比べて顕著に減少したことが示され、可塑剤の添加量が増加するほど微粉発生量はさらに減少することが示された。具体的には、実施例1、2および3に係る香料シートの微粉発生量がそれぞれ比較例1対比約15%、60%および70%減少したことが示された。このような結果は可塑剤の添加がシートの物理性を向上させることができ、裁刻工程の作業性も向上させることができることを示すものと判断される。
【0115】
一方、表1に記載されてはいないが、可塑剤の添加量がシート組成物対比約4重量%で添加された場合にはシートが柔らかく裁刻がうまくいかなかったが、これを通じて可塑剤はシート組成物対比約3.5重量%(メチルセルロース対比約35重量部)以下で添加されることが好ましいということが分かる。
【0116】
これまで実施例および比較例を通じて、前述した香料シート10の構成および効果についてより明確に説明した。
【0117】
以上、添付された図面を参照して本開示の実施例を説明したが、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者は、その技術的思想や必須の特徴を変更することなく、本開示が他の具体的な形態で実施可能であることが理解できる。したがって、以上で記述した実施例はすべての面において例示的なものであり、限定的ではないものと理解されるべきである。本開示の保護範囲は下記の特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は本開示によって定義される技術的思想の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【国際調査報告】