(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】抗体の局所的延長放出
(51)【国際特許分類】
A61K 9/08 20060101AFI20240116BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240116BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240116BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240116BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240116BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240116BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240116BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/18
A61K39/395 N
A61K47/36
A61P35/00
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540560
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 US2021065222
(87)【国際公開番号】W WO2022146925
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523224796
【氏名又は名称】エーマックス バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アラニ, レーマン
(72)【発明者】
【氏名】スー, チュン-チアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA94
4C076BB11
4C076BB16
4C076BB24
4C076CC27
4C076EE37
4C076FF31
4C076FF61
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE05
4C085GG01
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本開示では、特定の型の抗体のin vivoでの延長放出のための組成物および方法を提供する。このような抗体により、経時的に解離して、その物理的および化学的特性ならびに生物学的活性に対していかなる影響をも有することなく抗体を放出するデポーを生成することによって、ヒアルロン酸(HA)の可逆的ゲル化を惹起することが可能であることが発見された。特定の組織および器官、例えば、眼、関節および皮膚がHAを含むため、このような組織または器官への抗体の局所注射により、HAから形成されたゲルに抗体が包埋され、これは、緩徐放出抗体の貯蔵所となる。加えて、緩徐放出製剤は、抗体をHA、必要に応じて、他のポリマーと混合することにより、調製することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体の延長放出を必要とする哺乳動物対象において抗体の延長放出をもたらすための方法であって、前記哺乳動物対象における組織またはこの付近への前記抗体を含む水溶液の注射を含み、前記組織が、ヒアルロン酸(HA)を含み、前記溶液が、前記抗体の等電点(pI)よりも少なくとも0.5低いpHを有する、方法。
【請求項2】
前記溶液が、少なくとも15mg/mLの前記抗体、好ましくは、少なくとも25mg/mL、30mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、80mg/mLまたは100mg/mLの前記抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液が、100mMを超えるアルカリ塩またはアミノ酸の塩を含まず、好ましくは、50mM、20mMまたは10mMを超える前記塩を含まない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩が、NaClまたはアルギニンの塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶液が、前記抗体の等電点(pI)よりも0.7~1.5低いpHを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、AM001であり、前記溶液が、4.5~5.5のpHを有し、AM001が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶液が、5~5.3のpHを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、エマクツズマブであり、前記溶液が、5.5~6.5のpHを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶液が、6.2~6.4のpHを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組織が、関節である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記関節が、肘、手首、足首または膝である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記注射が、関節内注射である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記組織が、真皮組織である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記注射が、皮下注射である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組織が、眼組織である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記注射が、硝子体内注射である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶液が、HAをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記溶液が、0.1~1.5w/v%のHA、好ましくは、0.2~0.5w/v%のHAを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記注射が、2週間、3週間、4週間、2カ月、3カ月、4カ月、6カ月またはこれよりも長い期間毎に1回である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも15mg/mLの抗体、0.1~1.5w/v%のヒアルロン酸(HA)および水を含む、組成物であって、前記抗体の等電点(pI)よりも少なくとも0.5低いpHを有する、組成物。
【請求項21】
前記抗体が、前記HAを含むゲルに包埋されている、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも15mg/mLの前記抗体、好ましくは、少なくとも25mg/mL、30mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、80mg/mLまたは100mg/mLの前記抗体を含む、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
100mMを超えるアルカリ塩またはアミノ酸の塩を含まず、好ましくは、50mM、20mMまたは10mMを超える前記塩を含まない、請求項20~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記塩が、NaClまたはアルギニンの塩である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記抗体の等電点(pI)よりも0.7~1.5低いpHを有する、請求項20~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記抗体が、AM001であり、前記組成物が、4.5~5.5のpHを有し、AM001が、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項20~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
5~5.3のpHを有する、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記抗体が、エマクツズマブであり、前記組成物が、5.5~6.5のpHを有する、請求項20~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
6.2~6.4のpHを有する、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
0.1~1.2w/v%のHA、好ましくは、0.1~1.0w/v%のHA、0.2~0.8w/v%のHAまたは0.2~0.5w/v%のHAを含む、請求項20~29のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願では、2020年12月30日に出願された米国特許仮出願第63/132,433号、2021年5月10日に出願された第63/186,639号、および2021年5月11日に出願された第63/187,251号の利益を米国特許法第119条(e)の下に主張し、このそれぞれの内容は、その全体を参照により本開示に組み込む。
【背景技術】
【0002】
背景
特定の限局性疾患、特には、慢性疾患では、他の組織に対する潜在的副作用が最小化される一方、治療効果を局所的に集中させることが可能であるため、治療剤の局所送達から利益を得ることができる。主要な局所送達のうちの1つは、局所注射、例えば、関節内注射によるものである。このような注射は、熟練の医療専門家により行う必要を有するため、大量の治療剤を長期間にわたって送達することが可能な製剤を開発する強い必要性が存在する。
【0003】
腱鞘巨細胞腫(TGCT)は、周囲組織にも広がり得る、例となる限局性疾患である。TGCTは、滑膜に由来する新生物であり、これにより免疫細胞、特には、マクロファージの動員が生じ、腫瘤の形成が引き起こされる。このような腫瘍は、増殖パターン(限局性またはびまん性)および部位(関節内または外)により分類されることが多い。
【0004】
限局性TGCTは、別々の小結節により特徴づけられる。いずれの位置にも生じ得るが、限局型は主に、指関節および手首を侵す(症例の85%)。足および足首、膝、股関節または他の関節の位置は、稀である。びまん型は主に、大関節:膝、股関節、足首および肘を侵す。限局型は、系統的に良性であり、びまん型は、より侵襲性かつ破壊性であって、悪性成分を例外的に含み得る。
【0005】
TGCTの現在の処置選択肢は、制限されており、手術および放射線療法を含む。手術は、TGCTを有する患者のための最適処置となることが多い。限局性TGCTは、辺縁切除により管理される。再発は、患者の8~20%において生じ、再切除により管理される。びまん性TGCT/PVNSは、より頻繁に再発する傾向を有し(33~50%)、よりいっそう侵襲性の臨床経過を有する。患者は、症候性であることが多く、生涯において複数回の外科的手順を必要とする。一部の症例では、関節を交換する必要を有し得る。
【0006】
TGCTのための潜在的な療法では、コロニー刺激因子1(CSF1)と呼ばれるサイトカインまたはこの受容体であるコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を標的とする。
【0007】
CSF1R媒介シグナル伝達は、単核食細胞系の分化および生存に重要である。CSF1R陽性マクロファージの腫瘍内存在は、種々の腫瘍型における乏しい生存と相関し、腫瘍促進性腫瘍関連マクロファージにおけるCSF1Rシグナル伝達の標的化は、このような細胞を除去または再分極する魅力的な戦略となる。
【0008】
いくつかの抗CSF1および抗CSF1R抗体が、種々の固形腫瘍を処置するため、臨床開発中である。例としては、エマクツズマブ(emactuzumab)(抗CSF1R、SynOxおよびRoche)、カビラリズマブ(cabiralizumab)(抗CSF1R、FivePrimeおよびBMS)、ラクノツズマブ(lacnotuzumab)(抗CSF1、NovartisおよびXoma)、PD-0360324(抗CSF1、Pfizer)、アクサチリマブ(axatilimab)(抗CSF1R、SyndaxおよびUCB Biopharma)、ならびにIMC-CS4(抗CSF1R、Eli LillyおよびImclone)が挙げられる。この種の化合物の安全性には、治療効果の値、例えば、上昇した肝臓酵素および浮腫を認識しなければならない課題が提示される。抗CSF1および抗CSF1R抗体の延長放出製剤および方法の開発は、多くの適応症の処置に有用であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
本開示では、ヒアルロン酸(HA)と抗体、例えば、AM001およびエマクツズマブの間の驚くべき可逆的相互作用によって、緩徐に解離する塊が生成されることを報告する。緩徐な侵食および放出により、抗体の生物学的活性またはこの化学的もしくは物理的完全性に影響することなく、長期の生物学的効果(デポーとして作用する)がもたらされる。したがって、本開示では、抗体および抗体の延長放出に好適なHAを含む組成物、ならびにHAを含む組織に抗体を送達する方法を提供する。
【0010】
本開示の一実施形態では、それを必要とする哺乳動物対象において抗体の延長放出をもたらすための方法であって、哺乳動物対象における組織(もしくは関節)またはこの付近への抗体を含む水溶液の注射を含み、この組織が、ヒアルロン酸(HA)を含み、この溶液が、抗体の等電点(pI)よりも少なくとも0.5低いpHを有する、方法を提供する。
【0011】
一部の実施形態では、溶液は、少なくとも15mg/mLの抗体、好ましくは、少なくとも25mg/mL、30mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、80mg/mLまたは100mg/mLの抗体を含む。
【0012】
一部の実施形態では、溶液は、100mMを超えるアルカリ塩またはアミノ酸の塩を含まず、好ましくは、50mM、20mMまたは10mMを超える塩を含まない。一部の実施形態では、塩は、NaClまたはアルギニンの塩である。
【0013】
一部の実施形態では、溶液は、抗体の等電点(pI)よりも0.7~1.5低いpHを有する。
【0014】
一部の実施形態では、抗体は、AM001であって、溶液は、4.5~5.5のpHを有し、AM001は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、溶液は、5~5.3のpHを有する。
【0015】
一部の実施形態では、抗体は、エマクツズマブであり、溶液は、5.5~6.5のpHを有する。一部の実施形態では、溶液は、6.2~6.4のpHを有する。
【0016】
一部の実施形態では、組織は、関節である。一部の実施形態では、関節は、肘、手首、足首または膝である。一部の実施形態では、注射は、関節内注射である。
【0017】
一部の実施形態では、組織は、真皮組織である。一部の実施形態では、注射は、皮下注射である。
【0018】
一部の実施形態では、組織は、眼組織である。一部の実施形態では、注射は、硝子体内注射である。
【0019】
一部の実施形態では、溶液は、HAをさらに含む。一部の実施形態では、溶液は、0.1~1.5w/v%のHA、好ましくは、0.2~0.5w/v%のHAを含む。
【0020】
一部の実施形態では、注射は、2週間、3週間、4週間、2カ月、3カ月、4カ月、6カ月またはこれよりも長い期間毎に1回である。
【0021】
また、一実施形態では、少なくとも15mg/mLの抗体、0.1~1.5w/v%のヒアルロン酸(HA)および水を含む、組成物であって、この抗体の等電点(pI)よりも少なくとも0.5低いpHを有する、組成物を提供する。一部の実施形態では、抗体は、HAを含むゲルに包埋されている。
【0022】
一部の実施形態では、組成物は、少なくとも15mg/mLの抗体、好ましくは、少なくとも25mg/mL、30mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、80mg/mLまたは100mg/mLの抗体を含む。
【0023】
一部の実施形態では、組成物は、100mMを超えるアルカリ塩またはアミノ酸の塩を含まず、好ましくは、50mM、20mMまたは10mMを超える塩を含まない。一部の実施形態では、塩は、NaClまたはアルギニンの塩である。
【0024】
一部の実施形態では、組成物は、抗体の等電点(pI)よりも0.7~1.5低いpHを有する。一部の実施形態では、抗体は、AM001であって、組成物は、4.5~5.5のpHを有し、AM001は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、組成物は、5~5.3のpHを有する。
【0025】
一部の実施形態では、抗体は、エマクツズマブであり、組成物は、5.5~6.5のpHを有する。一部の実施形態では、組成物は、6.2~6.4のpHを有する。
【0026】
一部の実施形態では、組成物は、0.1~1.2w/v%のHA、好ましくは、0.1~1.0w/v%のHA、0.2~0.8w/v%のHAまたは0.2~0.5w/v%のHAを含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、AM001の溶液へのヒアルロン酸(HA)およびポロクサマー407(407)の追加により、ワックス様物質の小塊が形成されたことを示す。ワックス様物質は、3回の凍結融解サイクル(FT)前後の両方で観察されたが、407のみを加えた試料では、観察されなかった。
【0028】
【
図2】
図2は、HAにより、AM001が単独で、またはHPMCもしくはポロクサマー407とともに沈殿したことを示す。
【0029】
【
図3】
図3は、AM001の沈殿が、HAおよび407の存在下で、希釈後にさらに可視となったことを示す。
【0030】
【
図4】
図4は、皮下注射後のAM001の血清レベル(PK)を示す。
【0031】
【
図5】
図5は、AM001の皮下注射後のCSF1の血清レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
I.定義
範囲を含むすべての数値的表示、例えば、pH、温度、時間、濃度および分子量は、近似値であり、0.1または10%だけ(+)または(-)に変動する。必ずしも明示的に述べるとは限らないが、すべての数値的表示は、「約」の用語が前に付くことが理解される。必ずしも明示的に述べるとは限らないが、本明細書に記載の試薬は、単なる例であり、これらの等価物は、当技術分野において公知であることも理解される。
【0033】
「組成物」は、活性剤、および不活性(例えば、検出可能な薬剤もしくは標識)または活性の別の化合物または組成物、例えば、佐剤の組合せを意味することを意図する。
【0034】
「医薬組成物」は、活性剤と、組成物がin vitro、in vivoまたはex vivoでの診断的または治療的使用に好適なものとなる不活性または活性の担体との組合せを含むことを意図する。
【0035】
「投与」の用語は、薬剤を患者に導入することを指す。処置する医師等により決定することが可能な有効量を投与し得る。「投与すること」および「~の投与」の関連する用語および句は、化合物または錠剤(ならびに文法的等価物)と関連して使用する場合、直接投与をともに指し、これは、医療専門家によるまたは患者による自己投与による、患者に対する投与であり得る。
【0036】
「治療有効量」または「有効量」は、本明細書に記載の医薬組成物によって、状態に罹患している患者に局所的に投与する場合、意図する治療効果、例えば、患者における状態の1つまたは複数の症状の軽減、回復、緩和または除去を有する、薬物または薬剤の量を指す。十分な治療効果は、必ずしもすぐには生じず、治療有効量が、ある期間連続的に送達された後のみ生じ得る。緩徐放出または制御放出製剤では、「治療有効量」または「有効量」は、ある期間にわたって有効な総量を指すことがあり、これは、疾患部位に薬物の有効量を一定に供給するのに確認可能かつ制御可能な放出速度で、送達ビヒクルから疾患部位に緩徐に放出される。一部の実施形態では、「治療有効量」または「有効量」は、所与の期間、例えば、1日あたりの疾患部位に放出される量を指す。
【0037】
「付近」の用語は、投与の標的とした組織を指す場合、意図する標的組織および周囲の領域を意味する。一部の実施形態では、近接は、組織から5cm、4cm、3cm、2cm、1.5cm、1cm、0.8cm、0.6cm、0.5cm、0.4cm、0.3cm、0.2cmまたは0.1cm以内である。
【0038】
「生物分解性」の用語は、本明細書において使用する場合、所望の適用において許容される、生物学的環境への曝露後約5年未満、最も好ましくは、約1年未満の期間内で溶解または分解するポリマーを意味する。例えば、ポリマーは、約25℃~38℃の温度におけるpH5~8の生理溶液において生物分解性であり得る。
【0039】
「薬学的に許容される」の用語は、ヒト投与に対して一般に安全かつ非毒性であることを指す。
【0040】
「処置(treatment)」、「処置すること(treating)」および「処置する(treat)」は、疾患、障害または状態に対して、薬剤により、疾患、障害もしくは状態および/またはその症状の有害なまたは他の任意の望ましくない影響を低減または回復させるように作用するものとして定義する。
【0041】
他に特定しない限り、「薬物」、「活性成分」、「活性医薬成分」、「治療剤」および「API」の用語は、同義的に使用して、所望の治療効果を有する組成物の成分を指す。
【0042】
「抗体」は、ヒト化抗体を含む、ヒトまたは非ヒト抗体を意味し、ポリクローナルもしくはモノクローナルおよび/またはキメラ抗体であり得る。「抗体」の用語は、抗原に結合することが可能な抗体断片を含み、Fab、Fv、scFv、Fab’およびFab’’から選択され得る。抗体は、任意のアイソタイプのものであり得る。抗体は、野生型であり得るか、または1つもしくは複数の変異を含み得る。例えば、変異は、システイン残基の保存的置換であり得る。「抗CSF1R抗体」は、CSF1R受容体に対する抗体に関して対応する意味を有する。
【0043】
マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)としても知られるコロニー刺激因子1(CSF-1)は、マクロファージ、内皮細胞および線維芽細胞を含む様々な細胞により産生されるサイトカインである。CSF-1は、生物学的に活性な二量体CSF-1タンパク質を形成する2つの「単量体」ポリペプチドからなる。CSF-1は、選択的RNAスプライシングのため、少なくとも3つの成熟形態で存在する(例えば、Cerretti et al. Molecular Immunology, 25:761 (1988)を参照)。CSF-1の3つの形態は、前駆体から翻訳され、これは、256~554アミノ酸のポリペプチド単量体をコードし、アミノ末端に32アミノ酸のシグナル配列、およびカルボキシル末端付近におよそ23アミノ酸の推定膜貫通領域を有する。その後、前駆ペプチドは、アミノ末端およびカルボキシル末端タンパク質切断によりプロセシングされて、成熟CSF-1を放出する。CSF-1の3つすべての成熟形態の1~149残基は同一であり、CSF-1の生物学的活性に必須の配列を含むと考えられる。CSF-1単量体は、ジスルフィド結合によりin vivoで二量体化され、グリコシル化される。CSF-1は、血液細胞の生成を促進する生物学的アゴニストの群に属する。詳細には、単核食細胞系譜の骨髄前駆細胞の増殖および分化因子として作用する。
【0044】
コロニー刺激因子1受容体(本明細書においてCSF1Rと呼び、FMS、FIM2、C-FMSまたはCD115とも呼ぶ)は、N末端細胞外ドメイン(ECD)およびC末端細胞内ドメインをチロシンキナーゼ活性とともに有する1回膜貫通受容体である。CSF1Rは、III型タンパク質チロシンキナーゼ受容体ファミリーに属し、CSF1またはインターロイキン34リガンドの結合により、受容体のホモ二量体化およびその後の受容体シグナル伝達の活性化が誘導される。CSF1R媒介シグナル伝達は、特に単核食細胞系およびマクロファージの分化および生存に重要である。
【0045】
「サーモゲル(thermogel)」は、「転移温度」または「ゲル化温度」と呼ぶ臨界値よりも温度を上昇させるか、またはこれ未満に低下させる場合、液相からゲル相への相転移を起こす組成物を指す。好ましくは、サーモゲルは、熱可逆性である。「液相」または「液体状態」の用語は、液体または流動性形態、例えば、2000パスカル秒未満の粘度を有する状態を指す。「ゲル相」または「ゲル状態」の用語は、ゲルまたは相対的固体形態、例えば、10,000パスカル秒を超える粘度を有する状態を指す。一部の実施形態では、液体からゲルまたはこの逆への相転移は、10分未満、または5分未満、または2分未満に生じる。
【0046】
「ゲル」は、半固相を指す。例えば、サーモゲルの温度を、サーモゲルのゲル化温度まで、またはこれよりも高く上昇させる場合、サーモゲルはゲルとなり、一方、ゲル化温度未満の温度では、液体として挙動する。
【0047】
「水性溶媒」は、水または水ベースの溶液、例えば、水性塩溶液、例えば、食塩溶液、リン酸緩衝食塩水(PBS)、および注射用医薬組成物の調製に好適な他の水溶液を指す。水性塩溶液は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)、リン酸ナトリウム(Na3PO4)、リン酸一ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸カリウム(K3PO4)、リン酸一カリウム(KH2PO4)、リン酸二カリウム(K2HPO4)、種々の可溶性カルシウムおよびマグネシウム塩、例えば、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、ならびにナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびテトラアルキルアンモニウムからなる群より選択されるカチオンと、クロリド、ブロミド、タートレート、メシレート、アセテート、マレエートおよびオキサレートからなる群より選択されるアニオンとの組合せにより形成される他の塩、ならびにP. Heinrich Stahl, Camille G. Wermuth (Eds.), Handbook ofPharmaceutical Salts Properties, Selection, and Use; 2002に記載のものを含む他の生体適合性の水溶性塩から選択される1つまたは複数の生体適合性の塩を含み得る。
【0048】
II.投与した抗体のin situでのゲル化
本開示の驚くべき発見では、ヒアルロン酸(HA)を抗体AM001の溶液に加えた場合、HAおよび抗体のゲル化が結果として生じる。ゲルは、希釈後であっても保持されるが、それにもかかわらず可逆的であった。さらに驚くべきことには、このようなゲル化は、内因性HAによっても観察された。AM001の溶液を関節内に注射した場合、関節に存在する内因性HAとともにゲルを形成した。対照的に、抗体ペムブロリズマブでは、検査条件下のin vitroまたはin vivoでHAのゲル化が引き起こされなかった。
【0049】
その上、HAに対するゲル化効果は、関節に制限されない。実施例3では、AM001を皮下に投与した場合、活性の急速な発生が、完全なプラトーにより結果として生じ(少なくとも3週間)、これにより、真皮組織におけるHAによって抗体を含むデポーが形成され、体への抗体の放出を延長させたことが示唆された。
【0050】
このような発見は、いくつかの理由により予想外である。第1に、本発明者らの知る限りでは、HAゲル化が、タンパク質、まして、抗体により活性化されるという報告はなかった。第2に、このようなゲル化は可逆的であり、これにより、周囲組織への抗体の緩徐放出が可能となり、HAの天然の機能に対する影響の最小化がもたらされる。第3に、HAゲル化を活性化する能力は、特定の条件下でのみ生じる。
【0051】
実施例4~8に示すさらなる実験では、抗体およびHAの間のゲル化が、正に荷電した抗体とHAとのイオン対形成のためであることを実証する。このようなイオン対形成は、抗体が、その等電点(pI)よりも低いpHで、好ましくは、高イオン強度を有する賦形剤、例えば、NaClまたはArg*HClの非存在下で存在する場合にのみ起こり得る。
【0052】
したがって、本開示の一実施形態と一致して、それを必要とする哺乳動物対象において抗体の延長放出をもたらすための方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、哺乳動物対象における組織またはこの付近への、抗体を含む組成物の局所投与を必要とし、ここで、組織は、ヒアルロン酸(HA)を含む。一部の実施形態では、抗体は、組織におけるHAのゲル化を活性化することが可能である。
【0053】
ヒアルロン酸(HA、またはヒアルロナン)は、結合、上皮および神経組織にわたり広範に分布するアニオン性の非硫酸化グリコサミノグリカンである。ヒト滑膜HAは、平均的に1分子あたり約700万Daまたは約20,000の二糖単量体である。細胞外マトリックスの主な成分のうちの1つとして、これは、細胞の増殖および遊走に寄与する。平均的な70kg(154lb)のヒトは、およそ15グラムのヒアルロナンを体内に有し、この3分の1は、毎日代謝回転(すなわち、分解および合成)される。
【0054】
ヒアルロン酸は、滑液および硝子体液の主要な成分であり、体液の粘度を上昇させ得る。ラブリシンとともに、体液の主な潤滑成分のうちの1つである。ヒアルロン酸は、関節軟骨の重要な成分であり、ここで、各細胞(軟骨細胞)周囲の被膜として存在する。アグリカン単量体がHAPLN1(ヒアルロナンおよびプロテオグリカン結合タンパク質1)の存在下でヒアルロナンに結合する場合、大型で高度に負に荷電した凝集物を形成する。このような凝集物は、水を吸収し、軟骨の弾性の原因となる。
【0055】
また、ヒアルロン酸は、皮膚の成分であり、ここで、組織の修復に関与する。過量のUVB線に曝露される場合、皮膚は炎症し、真皮の細胞は、それだけ多くのヒアルロナンの産生を停止して、その分解速度が上昇する。これは、皮膚構造ならびに環境および体の間の保護バリアとしての機能の維持に必須である、真皮と呼ぶ皮膚の厚い層に見出される。また、ヒアルロン酸は、水に結合するため、皮膚の水分を維持するのに役立つ。
【0056】
一実施形態では、HAを含む組織は、結合組織である。一実施形態では、HAを含む組織は、皮膚組織である。一実施形態では、HAを含む組織は、硝子体液に近いか、またはこれを含む眼組織である。一実施形態では、HAを含む組織は、関節、例えば、肘、手首、足首および膝である。
【0057】
「延長放出」、「制御放出」、「持続放出」または「緩徐放出」および類似の用語を使用して、適用または注射時にすぐに分散する(例えば、拡散制御速度で)のではなく、ある期間(少なくとも24時間、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月または6カ月)にわたって送達ビヒクルまたはデポーから活性剤を放出する場合に生じる活性剤送達の様式を表す。
【0058】
一部の実施形態では、HAのゲル化を活性化することが可能な抗体は、IgG2定常領域を含む。一部の実施形態では、HAのゲル化を活性化することが可能な抗体は、IgG1定常領域を含む。IgG定常領域は、CH1、CH2および/またはCH3断片を含むが、これらに制限されない。
【0059】
一部の実施形態では、抗体は、ヒトまたはヒト化抗体である。一部の実施形態では、抗体は、抗CSF1(コロニー刺激因子1)または抗CSF1R(コロニー刺激因子1受容体)抗体である。抗CSF1および抗CSF1R抗体の例は、表1~2に提示する。これらの配列は、表3A~Bに提示する。一部の実施形態では、抗体は、AM001、PD-0360324、エマクツズマブ、IMC-CS4またはラクノツズマブである。一部の実施形態では、抗体は、AM001であり、これは、配列番号7の配列を含む重鎖、および配列番号8の配列を含む軽鎖を含む。
表1. 例となる抗CSF1R抗体
【表1】
表2. 例となる抗CSF1抗体
【表2】
表3A. 例となる抗CSF1R抗体の配列
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
表3B. 例となる抗CSF1抗体の配列
【表3-4】
【表3-5】
【0060】
エマクツズマブ(RG7155およびRO5509554としても公知である)は、腫瘍組織におけるマクロファージを標的として枯渇させるように設計した、臨床段階のヒト化IgG1CSF1R標的化抗体である。これは、患者における好ましい安全性プロファイルを示し、TGCTに対する有効性を促進した。エマクツズマブは、臨床試験NCT01494688-「進行した固形腫瘍を有する参加者における、単独療法としての、およびパクリタキセルと組み合わせたRO5509554の研究(A Study of RO5509554 as Monotherapy and in Combination with Paclitaxel in Participants With Advanced Solid Tumors)」において研究中である。
【0061】
カビラリズマブ(FPA008としても公知である)は、臨床試験NCT03502330-「進行した黒色腫、非小細胞肺がんまたは腎細胞癌におけるニボルマブおよびカビラリズマブを用いたAPX005M(APX005M With Nivolumab and Cabiralizumab in Advanced Melanoma, Non-small Cell Lung Cancer or Renal Cell Carcinoma)」において研究中である。カビラリズマブは、半二量体交換を防ぐヒンジ領域における単一のアミノ酸置換を有するヒト化IgG4抗CSF1Rモノクローナル抗体である。
【0062】
IMC-CS4(LY3022855としても知られる)は、CSF1Rを標的とするヒトIgG1抗体(mAb)である。IMC-CS4は、臨床試験NCT01346358-「進行した固形腫瘍を有する対象におけるIMC-CS4の研究(A Study of IMC-CS4 in Subjects With Advanced Solid Tumors)」において研究中である。
【0063】
AM001は、完全ヒトIgG2抗CSF1R抗体である。抗CSF1R抗体の他の例としては、PD-0360324およびGTX128677が挙げられるが、これらに制限されない。
【0064】
アクサチリマブ(SNDX-6352としても公知である)は、CSF-1Rに対する高親和性を有するヒト化完全長IgG4抗体である。アクサチリマブは、CSF-1Rに結合すること、ならびに2つの公知のこのリガンド、CSF-1およびIL-34によるこの活性化を遮断することによって、単球およびマクロファージの遊走、増殖、分化および生存に影響する。アクサチリマブは、現在、cGVHDを有する患者における第1/2相臨床試験において評価されている。
【0065】
ラクノツズマブ(MCS110としても公知である)は、応答性細胞において増殖を駆動するCSF1Rの能力を遮断する、高親和性ヒト操作IgG1抗CSF1抗体である。ラクノツズマブは、臨床試験NCT01643850-「色素性絨毛結節性滑膜炎(PVNS)を有する患者におけるMCS110(MCS110 in Patients With Pigmented Villonodular Synovitis (PVNS))」において研究中である。
【0066】
PD-0360324は、皮膚エリテマトーデス(CLE)の処置について研究されている、CSF1に対する完全ヒト免疫グロブリンG2モノクローナル抗体である。また、これは、再発性高悪性度卵巣上皮、原発性腹膜または卵管がんを有する患者の処置において、シクロホスファミドとのこの組合せについて検査している。
【0067】
一部の実施形態では、投与される組成物は、最低濃度の抗体を含む。一部の実施形態では、最低濃度は、2mg/mL、または5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mL、210mg/mL、220mg/mL、230mg/mL、240mg/mLもしくは250mg/mLである。
【0068】
一部の実施形態では、投与される組成物は、好適なpHを有するように調整する。一部の実施形態では、pHは、4~10、4~9.5、4~9、4~8.5、4~8、4~7.5、4~7、4~6.5、4~6、4~5.5、4~5、4.5~10、4.5~9.5、4.5~9、4.5~8.5、4.5~8、4.5~7.5、4.5~7、4.5~6.5、4.5~6、4.5~5.5、4.5~5、4.9~10、4.9~9.5、4.9~9、4.9~8.5、4.9~8、4.9~7.5、4.9~7、4.9~6.5、4.9~6、4.9~5.5、5.5~10、5.5~9.5、5.5~9、5.5~8.5、5.5~8、5.5~7.5、5.5~7、5.5~6.5、5.5~6、6~10、6~9.5、6~9、6~8.5、6~8、6~7.5、6~7、6~6.5、6.5~10、6.5~9.5、6.5~9、6.5~8.5、6.5~8、6.5~7.5、6.5~7、7~10、7~9.5、7~9、7~8.5、7~8、7~7.5、7.5~10、7.5~9.5、7.5~9、7.5~8.5、7.5~8、8~10、8~9.5、8~9、8~8.5、8.5~10、8.5~9.5、8.5~9、9~10、9~9.5または9.5~10である。一実施形態では、pHは、4.9~5.5である。
【0069】
一部の実施形態では、投与される組成物、例えば、水溶液は、そのpIよりも少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4または1.5低いpHを有する。一部の実施形態では、投与される組成物、例えば、水溶液は、そのpIよりも0.1~2.5、0.2~2.0、0.3~1.5、0.5~1.5、0.6~1.4、0.7~1.3、0.8~1.2または0.9~1.1低いpHを有する。
【0070】
抗体のpIは、研究室において容易に検査され得るか、または計算方法によって推定され得る。例となる計算方法は、Kozlowski LP (2016) "IPC - Isoelectric Point Calculator,"Biology Direct 11:55に、isoelectric.org.のオンラインフリープログラムとともに記載されている。開示の抗体のpIは、表1~2に提示する。これは、「IPC Protein」パラメータを使用するオンラインツールを使用して算出した。
【0071】
エマクツズマブは、7.18の算出pIを有する。一部の実施形態では、エマクツズマブを含む組成物または溶液のpHは、5.5~6.5、例えば、5.6~6.5、5.7~6.45、5.8~6.45、5.9~6.45、6~6.45、6.1~6.45、6.2~6.4、6.25~6.35または6.28~6.32であるが、これらに制限されない。
【0072】
カビラリズマブは、5.76の算出pIを有する。一部の実施形態では、カビラリズマブを含む組成物または溶液のpHは、4.0~5.3、例えば、4.1~5.2、4.2~5.0、4.3~4.9、4.4~4.8、4.5~4.8、4.5~4.7または4.6~4.7であるが、これらに制限されない。
【0073】
アクサチリマブは、5.92の算出pIを有する。一部の実施形態では、アクサチリマブを含む組成物または溶液のpHは、4.0~5.4、例えば、4.1~5.4、4.2~5.3、4.3~5.2、4.4~5.0、4.5~5.0、4.6~5.0または4.7~4.9であるが、これらに制限されない。
【0074】
IMC-CS4は、6.7の算出pIを有する。一部の実施形態では、IMC-CS4を含む組成物または溶液のpHは、5.0~6.3、例えば、5.1~6.2、5.2~6.0、5.3~5.9、5.4~5.8、5.5~5.8、5.5~5.7または5.6~5.7であるが、これらに制限されない。
【0075】
AM001は、6.2の算出pIを有する。一部の実施形態では、AM001を含む組成物または溶液のpHは、4.5~5.5、例えば、4.6~5.5、4.7~5.45、4.8~5.45、4.9~5.4、5~5.4、5.1~5.35、5.1~5.3、5.1~5.25または5.1~5.2であるが、これらに制限されない。
【0076】
ラクノツズマブは、6.43の算出pIを有する。一部の実施形態では、ラクノツズマブを含む組成物または溶液のpHは、4.9~5.9、例えば、5.1~5.8、5.2~5.8、5.3~5.7または5.4~5.6であるが、これらに制限されない。
【0077】
PD-0360324は、6.65の算出pIを有する。一部の実施形態では、PD-0360324を含む組成物または溶液のpHは、4.9~6.2、例えば、5.2~6.1、5.2~5.9、5.3~5.8または5.5~5.7であるが、これらに制限されない。
【0078】
一部の実施形態では、組成物は、高イオン強度を有する高レベルの賦形剤、例えば、アルカリ塩およびアミノ酸の塩を含まない。例としては、NaCl、KCl、CaCl2、アルギニンの塩が挙げられるが、これらに制限されない。一部の実施形態では、アルカリ塩およびアミノ酸(ヒスチジンを除く)の塩の濃度は、存在する場合、100mM、90mM、80mM、70mM、60mM、50mM、40mM、30mM、20mM、15mM、10mM、5mM、2mM、1mM、0.5mMまたは0.1mM以下である。
【0079】
一部の実施形態では、組成物は、例えば、制限されないが、0.05~2w/v%、0.1~1.5w/v%、0.1~1.2w/v%、0.1~1w/v%、0.1~0.9w/v%、0.15~0.8w/v%、0.15~0.7w/v%、0.15~0.6w/v%、0.2~0.5w/v%、0.2~0.4w/v%、0.25~0.35w/v%または0.28~0.32w/v%の濃度でHAを含む。
【0080】
一部の実施形態では、組成物は、延長放出製剤を形成する、以下に開示の他の成分をさらに含む。
【0081】
III.抗体製剤
また、本開示の抗体を含む製剤を提供する。一実施形態では、少なくとも15mg/mLの抗体、0.1~1.5w/v%のヒアルロン酸(HA)および水を含む組成物を提供する。一部の実施形態では、組成物は、抗体の等電点(pI)よりも少なくとも0.5低いpHを有する。一部の実施形態では、抗体は、HAを含むゲルに包埋されている。
【0082】
一部の実施形態では、組成物は、抗体のpIよりも少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4または1.5低いpHを有する。一部の実施形態では、組成物は、pIよりも0.1~2.5、0.2~2.0、0.3~1.5、0.5~1.5、0.6~1.4、0.7~1.3、0.8~1.2または0.9~1.1低いpHを有する。抗体のpIは、研究室において容易に検査され得るか、または計算方法によって推定され得る。開示の抗体のpIは、表1~2に提示する。
【0083】
エマクツズマブは、7.18の算出pIを有する。一部の実施形態では、エマクツズマブを含む組成物または溶液のpHは、5.5~6.5、例えば、5.6~6.5、5.7~6.45、5.8~6.45、5.9~6.45、6~6.45、6.1~6.45、6.2~6.4、6.25~6.35または6.28~6.32であるが、これらに制限されない。
【0084】
カビラリズマブは、5.76の算出pIを有する。一部の実施形態では、カビラリズマブを含む組成物または溶液のpHは、4.0~5.3、例えば、4.1~5.2、4.2~5.0、4.3~4.9、4.4~4.8、4.5~4.8、4.5~4.7または4.6~4.7であるが、これらに制限されない。
【0085】
アクサチリマブは、5.92の算出pIを有する。一部の実施形態では、アクサチリマブを含む組成物または溶液のpHは、4.0~5.4、例えば、4.1~5.4、4.2~5.3、4.3~5.2、4.4~5.0、4.5~5.0、4.6~5.0または4.7~4.9であるが、これらに制限されない。
【0086】
IMC-CS4は、6.7の算出pIを有する。一部の実施形態では、IMC-CS4を含む組成物または溶液のpHは、5.0~6.3、例えば、5.1~6.2、5.2~6.0、5.3~5.9、5.4~5.8、5.5~5.8、5.5~5.7または5.6~5.7であるが、これらに制限されない。
【0087】
AM001は、6.2の算出pIを有する。一部の実施形態では、AM001を含む組成物または溶液のpHは、4.5~5.5、例えば、4.6~5.5、4.7~5.45、4.8~5.45、4.9~5.4、5~5.4、5.1~5.35、5.1~5.3、5.1~5.25または5.1~5.2であるが、これらに制限されない。
【0088】
ラクノツズマブは、6.43の算出pIを有する。一部の実施形態では、ラクノツズマブを含む組成物または溶液のpHは、4.9~5.9、例えば、5.1~5.8、5.2~5.8、5.3~5.7または5.4~5.6であるが、これらに制限されない。
【0089】
PD-0360324は、6.65の算出pIを有する。一部の実施形態では、PD-0360324を含む組成物または溶液のpHは、4.9~6.2、例えば、5.2~6.1、5.2~5.9、5.3~5.8または5.5~5.7であるが、これらに制限されない。
【0090】
一部の実施形態では、組成物は、高イオン強度を有する高レベルの賦形剤、例えば、アルカリ塩およびアミノ酸の塩を含まない。例としては、NaCl、KCl、CaCl2、アルギニンの塩が挙げられるが、これらに制限されない。一部の実施形態では、アルカリ塩およびアミノ酸(ヒスチジンを除く)の塩の濃度は、存在する場合、100mM、90mM、80mM、70mM、60mM、50mM、40mM、30mM、20mM、15mM、10mM、5mM、2mM、1mM、0.5mMまたは0.1mM以下である。
【0091】
一部の実施形態では、組成物は、例えば、制限されないが、0.05~2w/v%、0.1~1.5w/v%、0.1~1.2w/v%、0.1~1w/v%、0.1~0.9w/v%、0.15~0.8w/v%、0.15~0.7w/v%、0.15~0.6w/v%、0.2~0.5w/v%、0.2~0.4w/v%、0.25~0.35w/v%または0.28~0.32w/v%の濃度でHAを含む。
【0092】
一部の実施形態では、医薬組成物における治療剤の制御放出をもたらす、局所投与のための医薬組成物を提供する。制御放出賦形剤は、特には、治療剤が大型分子、例えば、抗体である場合、ゲル形成賦形剤であり得る。好ましいゲル形成賦形剤は、サーモゲルである。制御放出賦形剤は、生物分解性マトリックスであり得る。好ましくは、生物分解性マトリックスは、低分子治療剤の送達のためのミクロスフェアとして製剤化する。組成物は、注射用に製剤化し得る。一部の実施形態では、治療剤は、本開示の抗体である。
【0093】
制御放出により、数時間、数日もしくは数カ月延長する、治療剤の持続放出がもたらされ得るか、または治療剤のパルス放出がもたらされることがあり、多くの因子の関数として変動し得る。放出速度は、組成物中の治療剤および賦形剤の種類および濃度ならびに投与位置を含む因子に依存し得る。
【0094】
一部の実施形態では、組成物は、組成物の総量に基づいて約1%w/w~約90%w/wまたは約5%w/w~約80%w/wまたは約10%w/w~約70%w/wの抗体を含む。一部の実施形態では、組成物は、組成物の総量に基づいて約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%w/w、またはエンドポイントを含んだ任意の2つの値間の任意の範囲内の抗体を含む。
【0095】
一部の実施形態では、抗体は、ある期間、例えば、1日、2日、1週間、2週間、3週間、6週間、1カ月、2カ月、3カ月または6カ月にわたって制御された様式により組成物から放出される(例えば、1日治療量を毎日放出する)。一部の実施形態では、各投与により、少なくとも3週間、4週間、2カ月、3カ月、4カ月または6カ月の間、抗体の持続曝露が生じる。一部の実施形態では、有効量は、局所投与のためのものであり、全身投与に必要とされる量未満、例えば、全身投与に対応する有効量の90%もしくはこれ未満、80%もしくはこれ未満、70%もしくはこれ未満、60%もしくはこれ未満、50%もしくはこれ未満、40%もしくはこれ未満、30%もしくはこれ未満、20%もしくはこれ未満、10%もしくはこれ未満、5%もしくはこれ未満、または1%もしくはこれ未満、あるいはエンドポイントを含んだ任意の2つの数間の任意の範囲の量である。
【0096】
一部の実施形態では、組成物は、長期間にわたって治療有効量をもたらすように抗体を放出する制御放出製剤である。一部の実施形態では、組成物により、治療有効量の抗体阻害物質が1週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月または6カ月の間、放出される。好ましい実施形態では、制御放出製剤により、月に1回または2回投与すると、治療有効量の抗体がもたらされる。
【0097】
一部の実施形態では、組成物は、種々の時間に抗体を放出するように設計された微小粒子の混合物を含む制御放出製剤である。例えば、組成物によって、パルス的様式で抗体が放出されることがあり、ここで、微小粒子の種々の集団は、所定の時間にわたり別々のバーストとして治療用量が放出されるように設計される。
【0098】
一部の実施形態では、ゲル形成賦形剤は、室温を超えるが体温未満かまたは体温での転移温度を有するサーモゲルである。この実施形態では、製剤は、投与後にゲル相に転換する室温の注射用液である。一部の実施形態では、組成物は、約25℃~約36℃または約28℃~約35℃の転移温度を有する。投与後のゲル相への転換時に、治療剤は、ゲルから緩徐に放出されて、治療効果を可能にする。一部の実施形態では、サーモゲルは、生物分解性である。
【0099】
ゲル形成賦形剤により、サーモゲルによる場合のように、投与時にゲルが形成されることによって、または製剤の粘度が増強されることによって、治療剤の持続放出がもたらされ得る。ゲル形成賦形剤は、ポロクサマー、ヒアルロン酸(HA)、アルギネート、ヒドロキシメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(sodiumcarboxymethylcellulsoe)(NaCMC)またはポリビニルピロリドン(PVP)から選択されるポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、粘度増強剤、例えば、NaCMC、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはポリビニルピロリドン(PVP)を含む。
【0100】
一部の実施形態では、ポリマーは、活性成分をミクロスフェアまたはナノスフェアに被包し、生物分解性物質、例えば、ポリ(D,L-乳酸)(PLA)、ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、または親水性ポリ(エチレングリコール)(PEG)およびポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)およびポリ(ε-カプロラクトン-co-グリコール酸)(PCGA)から選択される1つまたは複数のポリマーを含むブロックコポリマー(例えば、ポリ(ε-カプロラクトン-co-グリコール酸)-ポリ(エチレングリコール)-ポリ(ε-カプロラクトン-co-グリコール酸)(PCGA-PEG-PCGA)およびポリ(乳酸-co-グリコール酸)-ポリ(エチレングリコール)-ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA-PEG-PLGA))あるいはこれらの組合せを含む。長鎖または中鎖トリグリセリドは、ミクロスフェアまたはナノスフェアに組み込んで、安定性および/またはミクロスフェアもしくはナノスフェアからの薬物放出をさらに増強し得る。例えば、Meng, B, et al., Int'l J. Pharm., Vol 397 (1-2), 136-142 (2010)を参照されたい。
【0101】
一部の実施形態では、組成物は、組成物の総量に基づいて約5%~約50%のゲル形成賦形剤を含む。一部の実施形態では、組成物は、組成物の総量に基づいて約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%もしくは50%、またはエンドポイントを含んだ任意の2つの値間の任意の範囲のゲル形成賦形剤を含む。
【0102】
一部の実施形態では、サーモゲルは、ヒアルロン酸(HA)または薬学的に許容されるその塩を含む。ヒアルロン酸は、N-アセチルグルコサミンおよびグルクロン酸からなるムコ多糖である。HAの薬学的に許容される塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等を有する塩を含む。一部の実施形態では、HAまたは薬学的に許容されるその塩は、約2×105~5×106ダルトンまたは約5×105~3×106ダルトンまたは約7×105~2.5×106ダルトンの分子量を有する。一部の実施形態では、組成物は、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%または50%のHAを含む。
【0103】
一部の実施形態では、サーモゲルは、ポロクサマーを含む。ポロクサマーは、登録商標、例えば、Pluronics(登録商標)およびLutrol(登録商標)によっても公知の、生体適合性ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーである。分子量ならびにオキシエチレンおよびオキシプロピレンユニットの量に基づいて、いくつかの種類のポロクサマーが存在し、例えば、ポロクサマー124、182、188、237、338および407が挙げられる。水または水性溶媒に溶解する場合、これらにより、サーモゲルが形成される。
【0104】
一部の実施形態では、サーモゲルは、約25%~33%のポロクサマー407もしくはポロクサマー188またはこれらの組合せ、および水性溶媒、例えば、水または水性緩衝液を含む。一部の実施形態では、サーモゲルは、約25%~33%の、3:1から0.8:1の比でのポロクサマー407またはポロクサマー188の混合物を含む。
【0105】
一部の実施形態では、組成物は、生物分解性マトリックスを含む。生物分解性マトリックスは、生物分解性ポリマーを含む。生物分解性ポリマーの例としては、ポリシアノアクリレート、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリエステル、例えば、ポリ(D,L-乳酸)(PLA)およびポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリヒドロキシルブチレート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)ならびにポリジアキソノン(poly diaxonone);ポリ酸無水物、例えば、ポリアジピン酸(poly adepic acid)、ポリセバシン酸およびポリテレフタル酸(poly terpthalic acid);ポリアミド、例えば、ポリアミノ酸およびポリイミノカーボネート;リン系ポリマー、例えば、ポリホスフェート、ポリホスホネートおよびポリホスファゼンが挙げられるが、これらに制限されない。生物分解性ポリマーの他の例としては、ポリ(リシノール酸)(RA);ポリ(フマル酸)(FA);ポリ(脂肪酸二量体)(FAD);ポリ(テレフタル酸)(TA);ポリ(イソフタル酸)(IPA);ポリ(p-{カルボキシフェノキシ}メタン)(CPM);ポリ-{カルボキシフェノキシ}プロパン(CPP);ポリ(p-{カルボキシフェノキシ}ヘキサン)(CPH);ポリアミン、ポリエステルアミド、(CHDM:Cis/trans-シクロヘキシルジメタノール)、HD:l,6-ヘキサンジオール(3,9-ジエチリデン-2,4,8,10-テトラオキサスピロウンデカン)(DETOSU);ポリジオキサノン;ポリヒドロキシブチレート;ポリアルキレンオキサレート(polyalkyene oxalate);ポリケタール(polyketal);ポリカーボネート;ポリオルトカーボネート;ポリシロキサン;スクシネート;ヒアルロン酸;ポリ(リンゴ酸);ポリヒドロキシバレレート;ポリアルキレンスクシネート;ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸;ポリ酪酸:ポリ吉草酸;およびポリ(グルタミン酸-co-エチルグルタメート)、これらのコポリマーならびに/または混合物が挙げられる。一部の実施形態では、生物分解性マトリックスは、PLAおよび/またはPLGAミクロスフェアを含む。
【0106】
特定のポリマー、例えば、ポリエチレンオキシドおよびポリ(L-乳酸)のブロックコポリマーは、ともに生物分解性であり、サーモゲルを形成し得る。
【0107】
一部の実施形態では、治療剤は、錯化剤、例えば、シクロデキストリンまたは樹脂との錯体として製剤化し、次いで、ミクロスフェアとして製剤化する。この実施形態では、治療剤は、好ましくは、低分子である。錯化剤により、治療剤の放出が延長する。錯化剤によりミクロスフェアとして治療剤を製剤化する製剤は、必要に応じて、粘度増強剤を含み得る。一部の実施形態では、シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンである。
【0108】
本明細書において使用する場合、「微小粒子」は、1mm未満、または900μm、800μm、700μm、600μm、500μm、400μm、300μm、200μmもしくは100μmより大きいもしくはそれより小さい直径を有する粒子を指す。微小粒子は、固体で球状の微小粒子である「ミクロスフェア」、および異なるポリマー、薬物または組成物の核を有する球状の微小粒子であるマイクロカプセルであり得る。
【0109】
多くのポリマーを使用して、制御薬物送達のためのミクロスフェアを調製することができる。ポリマーは、典型的には、体への移植後、少なくとも2または3年の期間にわたって比較的同一の形態のままであるため、非生物分解性であると一般に考えられる、熱可塑性合成ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテートおよびポリ(アクリル酸)、および生物分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびこれらのコポリマーを含むポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ならびに特定の種類のタンパク質および多糖ポリマーである。ポリマーは、約1週間~約10年、例えば、約1週間、約1カ月、約6カ月、約1年、約5年、約10年、またはこれらの任意の2つの間の値の範囲の生物学的環境における半減期を有し得る。
【0110】
例となるポリマー物質は、生物分解性であり、少なくとも6~7日の移植後の期間、放出を制御するのに十分な形態を保持するものである。ポリ(ヒドロキシ酸)、特には、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(「PLGA」)は、特に有用なポリマーであり、分解性縫合糸の製造において数十年間、使用されている。このポリマーは、体の水性環境への曝露後の加水分解によって分解する。このポリマーを加水分解して、乳酸単量体およびグリコール酸単量体を得、これは、細胞代謝の通常の副産物である。ポリマー分解の速度は、ポリマー分子量、ポリマー鎖におけるラクチド単量体 対 グリコリド単量体の比率、単量体サブユニットの立体規則性(LおよびD立体異性体の混合物によりポリマー結晶化度が破壊され、ポリマー崩壊が増強される)を含む、いくつかの因子に応じて、数週間から1年を超える期間まで変動し得る。
【0111】
特に有用な結果は、種々の分子量および/またはラクチド対グリコリドの種々の比率を有するPLGAをブレンドすることにより得ることができる。分子量および単量体比を最適化して、規定の期間にわたる放出動態を調整することができる。分子量が高いほど、長い期間の構造的完全性を保持するポリマーマトリックスが生じ、一方、分子量が低いほど、迅速な放出および短いマトリックスの存続の両方が生じる。
【0112】
一部の実施形態では、ミクロスフェアは、種々の分子量および/または単量体比の、少なくとも2つまたはこれよりも多く、好ましくは、3つまたはこれよりも多い生物分解性ポリマー、好ましくは、加水分解的に不安定なポリマー、最も好ましくは、ポリ(ヒドロキシ酸)のブレンドを含む。好ましい実施形態では、3つの異なる分子量のPLGAをブレンドして、少なくとも1日~約60日の範囲の規定の期間にわたる線形放出を有する組成物を形成する。約1~21日の放出を得るためのより好ましい実施形態では、PLGAは、1000~20,000、より好ましくは、5,000~10,000、20,000~35,000、より好ましくは、25,000~30,000および35,000~70,000、より好ましくは、5000~10,000の分子量を有する。約1週間の期間にわたる放出のための最も好ましい実施形態では、約6,000、30,000および41,000の分子量を有するPLGAを組み合わせる。一部の実施形態では、ミクロスフェアは、安定性および/または薬物放出を増強するために中鎖または長鎖トリグリセリドを含み得る。
【0113】
PLAポリマーは、乳酸の環状エステルから調製することができる。L(+)およびD(-)の両型の乳酸を使用して、PLAポリマー、ならびにD(-)およびL(+)乳酸の光学不活性DL-乳酸混合物を調製することができる。ポリ乳酸を調製する方法は、特許文献において十分に文書化されている。
【0114】
ミクロスフェア製剤は、本明細書に記載のミクロスフェアの種々の集団の組合せにより調製し得る。組合せにおけるミクロスフェアの各集団は、治療剤が種々の速度で放出され、これにより長期の治療効果がもたらされるように設計され得る。一部の実施形態では、製剤により、ミクロスフェアの集団を組み合わせることによって、治療剤のパルス放出がもたらされ、ここで、各集団は、治療剤が所定の期間に単回のバーストにより放出されるように設計される。
【0115】
一部の実施形態では、放出遅延剤は、治療剤に共有結合して、循環半減期を延長させる、高分子量ポリマーである。例えば、治療剤は、高分子量PEGによりペグ化され得る。ペグ化は、好ましい実施形態であり、ここで、治療剤は、大型分子、例えば、抗体である。
【0116】
一部の実施形態では、治療剤は、デポー薬物送達ビヒクルの移植により局所的に投与される。移植は、腫瘍において、腫瘍内、または腫瘍部位付近におけるものであり、腫瘍塊を除去する手術と関連して行われ得る。デポー薬物送達系は、移植のために開発され、長期間にわたる局所薬物送達をもたらす。このような薬物送達系は、ゲル、フィルム、ウェーハ、ロッドおよび粒子を含む、いくつかの形態をとってもよく、治療剤の予測可能な制御放出がもたらされるように設計される。Wolinski, JB, Colson, YL, and Grinstaf, MW, J Control Release, 2012Apr 10: 159(1)を参照されたい。好ましい植込み型送達系は、生物分解性ポリマーである。
【0117】
植込み型送達系において使用するポリマーは、天然または合成であり得る。天然ポリマー系は、多糖類、例えば、アルギネート、ヒアルロン酸、デキストランおよびキトサン、ならびにポリペプチド、例えば、コラーゲン、アルブミン、エラスチンおよびゼラチンを含む。このようなポリマー送達系は、投与時にゲルを形成し、これにより、長期の局所薬物送達がもたらされ得る。薬物デポー埋め込みのための合成ポリマーは、公知であり、ラクチド、グリコリド、カプロラクトンおよびジオキサノン系のポリエステル、セバシンおよびアジピン酸系のポリ酸無水物、ならびにポリアミド、ポリカーボネート、ポリオルトエステルおよびホスフェート系のポリマーを含む。合成ポリマー系は、疎水性であることが多く、水不溶性薬物の長期の送達に十分に適している。
【0118】
一部の実施形態では、製剤は、1つまたは複数の張度剤(tonicity agent)を含む。「張度剤」の用語は、本明細書において使用する場合、製剤の張度を調節するのに使用する、薬学的に許容される作用物質を表す。等張性は、溶液に対する、通常、ヒト血清のそれに対する浸透圧を一般に指す。製剤は、低浸透圧性、等張性または高浸透圧性であり得る。一態様では、製剤は、等張性である。等張製剤は、液体もしくは固体形態から再構成した液体、または例えば、凍結乾燥形態から、希釈時に可溶化した懸濁物であり、それと比較する他の一部の溶液、例えば、生理塩溶液および血清と同一の張度を有する溶液を表す。好適な等張剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、ならびに本明細書に定義のアミノ酸、糖の群の任意の成分およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに制限されない。
【0119】
一部の実施形態では、製剤は、1つまたは複数の界面活性剤を含む。本明細書において使用する場合、「界面活性剤」の用語は、両親媒性構造を有する、すなわち、反対の溶解度傾向を有する基、典型的には、油溶性炭化水素鎖および水溶性イオン基からなる、薬学的に許容される有機物質を指す。界面活性剤は、表面活性部分の電荷に応じて、アニオン性、カチオン性および非イオン性界面活性剤に分類することができる。界面活性剤は、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤および分散剤として、生物学的物質の種々の医薬製剤および調製物に使用することが多い。本明細書に記載の医薬製剤の一部の実施形態では、界面活性剤の量は、百分率として記載し、質量/体積パーセント(w/v%)で表す。好適な薬学的に許容される界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween(登録商標))、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij(登録商標))、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル(Triton(登録商標)-X)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロクサマー、Pluronic(登録商標))またはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の群が挙げられるが、これらに制限されない。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20(商標)の登録商標で販売)およびポリソルベート80(Tween(登録商標)80(商標)の登録商標で販売)を含む。ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマーは、Pluronic(登録商標)F68またはポロクサマー188(商標)の名称で販売されているものを含む。ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、Brij(商標)の登録商標で販売されているものを含む。アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテルは、Triton(登録商標)-Xの登録商標で販売されているものを含む。
【0120】
一部の実施形態では、製剤は、1つまたは複数の抗酸化剤をさらに含む。「抗酸化剤」は、他の分子の酸化を遅延または予防することが可能な分子を指す。酸化は、ある物質から酸化する作用物質へ電子を移行させる化学反応である。酸化反応により、フリーラジカルが生成されることがあり、これにより、タンパク質製剤を不安定化し、最終的に生成物の活性に影響する連鎖反応が開始される。抗酸化剤により、フリーラジカル中間体が除去されることによって、このような連鎖反応が終結し、これら自体が酸化されることによって、他の酸化反応が阻害される。結果として、抗酸化剤は、還元剤、キレート剤および脱酸素剤、例えば、シトレート、EDTA、DPTA、チオール、アスコルビン酸またはポリフェノールであることが多い。抗酸化剤の非制限的な例としては、アスコルビン酸(AA、E300)、チオスルフェート、メチオニン、トコフェロール(E306)、没食子酸プロピル(PG、E310)、第三級ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA、E320)およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、E321)が挙げられる。
【0121】
一部の実施形態では、製剤は、1つまたは複数の保存剤をさらに含む。「保存剤」は、生成物、例えば、食品、医薬品、塗料、生物学的試料、木材等に加えて、微生物の増殖または望まない化学変化による脱製剤化(deformulation)を予防する、天然または合成の化学物質である。保存添加剤は、単独で、または他の保存方法と組み合わせて使用することができる。保存剤は、細菌および真菌の増殖を阻害する抗菌保存剤、または構成成分の酸化を阻害する抗酸化剤、例えば、酸素吸収剤であり得る。一般的な抗菌保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、クロルヘキシジン(cholorohexidine)、グリセリン、フェノール、ソルビン酸カリウム、チメロサール、亜硫酸塩(二酸化硫黄、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム(potassium hydrogen sulfite)等)およびEDTA二ナトリウムが挙げられる。他の保存剤としては、非経口タンパク質において一般に使用されるもの、例えば、ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノールまたはメチルパラベンが挙げられる。
【0122】
一部の実施形態では、製剤は、緩衝系、例えば、シトレート、アセテート、ボレート、ホスフェートまたはこれらの組合せをさらに含む。一部の実施形態では、製剤は、凍結乾燥した物質の特性および安定性を増強する第三級ブタノールをさらに含む。
【0123】
III.投与方法
また、投与方法を提供する。一部の実施形態では、投与は、疾患、例えば、炎症または腫瘍の部位における組織または部位に対して近位の組織への局所投与である。一部の実施形態では、投与は、腫瘍内または腫瘍に対して近位の部位における投与である。一部の実施形態では、組織は、例えば、皮下領域または筋肉内(骨格筋)にヒアルロン酸(HA)を含む。
【0124】
一部の実施形態では、組織は、手におけるものである。一部の実施形態では、組織は、膝におけるものである。一部の実施形態では、組織は、指関節におけるものである。一部の実施形態では、組織は、手首におけるものである。一部の実施形態では、組織は、足におけるものである。一部の実施形態では、組織は、股関節におけるものである。一部の実施形態では、組織は、肘におけるものである。一部の実施形態では、組織は、足首におけるものである。一部の実施形態では、組織は、皮膚/真皮組織である。一部の実施形態では、組織は、眼組織である。したがって、一部の実施形態では、投与は、注射、例えば、関節内注射、皮下注射、硝子体内注射または筋肉内注射である。
【0125】
一部の実施形態では、組織は、皮膚の下にある。一部の実施形態では、投与は、皮下投与である。一部の実施形態では、組織は、眼におけるものである。一部の実施形態では、投与は、硝子体内注射である。一部の実施形態では、複数回の(2、3、4もしくは5回またはこれよりも多い)皮下または硝子体内注射を特定の患者に実施する。一部の実施形態では、皮下注射において使用する組成物または製剤は、比較的高濃度、例えば、少なくとも2mg/mLまたは5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、110mg/mL、120mg/mL、130mg/mL、140mg/mL、150mg/mL、160mg/mL、170mg/mL、180mg/mL、190mg/mL、200mg/mL、210mg/mL、220mg/mL、230mg/mL、240mg/mLまたは250mg/mLの抗体を有する。一部の実施形態では、注射部位におけるヒアルロン酸(HA)が持続放出プロファイルの生成に役立つことを考慮して、注射される組成物それ自体は、延長放出形態である必要がない。一部の実施形態では、注射される組成物は、粘度増強賦形剤またはポリマーを含まない。
【0126】
一部の実施形態では、投与される組成物は、好適なpHを有するように調整する。一実施形態では、pHは、4~10、4~9.5、4~9、4~8.5、4~8、4~7.5、4~7、4~6.5、4~6、4~5.5、4~5、4.5~10、4.5~9.5、4.5~9、4.5~8.5、4.5~8、4.5~7.5、4.5~7、4.5~6.5、4.5~6、4.5~5.5、4.5~5、4.9~10、4.9~9.5、4.9~9、4.9~8.5、4.9~8、4.9~7.5、4.9~7、4.9~6.5、4.9~6、4.9~5.5、5.5~10、5.5~9.5、5.5~9、5.5~8.5、5.5~8、5.5~7.5、5.5~7、5.5~6.5、5.5~6、6~10、6~9.5、6~9、6~8.5、6~8、6~7.5、6~7、6~6.5、6.5~10、6.5~9.5、6.5~9、6.5~8.5、6.5~8、6.5~7.5、6.5~7、7~10、7~9.5、7~9、7~8.5、7~8、7~7.5、7.5~10、7.5~9.5、7.5~9、7.5~8.5、7.5~8、8~10、8~9.5、8~9、8~8.5、8.5~10、8.5~9.5、8.5~9、9~10、9~9.5または9.5~10である。一実施形態では、pHは、4.9~5.5である。
【0127】
一部の実施形態では、組織は、TGCTの部位付近である。一部の実施形態では、放出は、指定の期間にわたって生じる。一部の実施形態では、指定の期間は、1週間、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月または6カ月である。一部の実施形態では、医薬組成物は、毎週、2週間毎、3週間毎、毎月、2カ月毎、3カ月毎または6カ月毎に患者に投与される。一部の実施形態では、投与頻度は、指定の期間と相関する。
【0128】
一部の実施形態では、組成物は、腫瘍部位に投与される。一部の実施形態では、組成物は、腫瘍部位に対して近位、例えば、腫瘍部位から1mmもしくはこれ未満、5mmもしくはこれ未満、1cmもしくはこれ未満、2cmもしくはこれ未満、または5cmもしくはこれ未満に投与される。好ましい実施形態では、医薬組成物は、嵌入した関節への関節内注射により投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、皮下または筋肉内注射により投与される。
【0129】
一部の実施形態では、方法は、CSF1/CSF1R阻害により好適に処置可能な、TGCTまたは他の腫瘍(例えば、メラノーマ、神経膠芽腫、白血病および先天性毳毛性多毛症(CHL))を有する患者を処置するための方法である。
【実施例】
【0130】
本開示は、次の実施例への参照により、さらに理解され、これらは、単に本開示の例となるものであることを意図する。本開示は、例証する実施形態による範囲に制限されず、これらは、本開示の単一の態様のみの例示であることを意図する。機能的に等価な任意の方法は、本開示の範囲内である。本開示の種々の修飾は、本明細書に記載のものに加えて、前述の記載および付随する図面から当業者に明らかとなる。このような修飾は、添付の特許請求の範囲内である。
【0131】
(実施例1)
ヒアルロン酸で沈殿されたAM001
この実施例では、AM001のヒドロゲル製剤の調製に有用であり得るポリマーについてスクリーニングしたが、驚くべきことに、ヒアルロン酸(HA)により、抗体を緩徐に放出するデポーとして作用するゲル様物質を形成することが可能であることを見出した。
【0132】
以下のポリマーを、AM001、ポロクサマー407(F127)、ポロクサマー188(F68)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(低および高粘度)およびヒアルロン酸(HA、1.0~1.5×106kD)について、緩徐放出製剤の開発に対する適合性について検査した。抗体AM001は、10mMの酢酸、9%のスクロース(w/v)、0.004%のPS-20(w/v)および0.1NのNaOHを含む水(WFI)により調製して、pHを4.9~5.5に調整した。
【0133】
1mg/mLのヒアルロン酸(HA)+15%のポロクサマー407(407)を15mg/mLのAM001に加えると、試料が、ワックス様物質の小塊を形成することが発見された(
図1)。ワックス様物質は、3回の凍結融解サイクル(FT)前後の両方で観察されたが、407のみを加えた試料では、観察されなかった。
【0134】
HAによりAM001(51.84mg/mL)の存在下でゲル化が可能であることを確認するために、HAストック溶液を、最終濃度1mg/mLまで、他のポリマーを有するかまたは有しないAM001溶液に加えた。
図2に示すように、1mg/mLのHAにより、AM001を単独またはHPMCもしくはポロクサマー407とともに沈殿させた。混合物(HA/407/AM001)を2mg/mLのAM001に希釈後、沈殿は、さらに可視となった(
図3)。しかし、さらなる希釈により、沈殿物を溶解することが可能となり、沈殿が可逆的であることが示された。
【0135】
in vitroでの放出試験を実施して、混合物から模擬滑液への抗体の放出を測定した。抗体は、24時間あたり約2~5%の速度で緩徐に放出された。
【0136】
別の実験では、AM001とは異なり、抗体ペムブロリズマブ(IgG4抗体)によってヒアルロン酸(HA)のゲル化は引き起こされなかったことが示された。
【0137】
したがって、この実施例では、AM001によってHAのゲル化が引き起こされ得ることが実証される。本発明者らの知る限りでは、抗体によりHAのゲル化が引き起こされ得るという報告は存在しなかったため、これは予想外であった。このようなゲル化が可逆的であることも予想外であった。
【0138】
(実施例2)
in vivoでのAM001による内因性ヒアルロン酸のゲル化
この実施例では、注射したAM001によりin vivoで内因性ヒアルロン酸(HA)のゲル化が引き起こされたことを示す。
【0139】
AM001水溶液(pHを4.9~5.5に調整するために0.1NのNaOHを加えた30mg/mLのAM001、10mMの酢酸、9%のスクロース(w/v)、0.004%のPS-20(w/v))をサルの関節に関節内投与した。関節におけるヒアルロン酸(HA)によるゲル様物質の形成が観察されたが、ビヒクル単独では、このようなゲルは見られなかった。
【0140】
(実施例3)
皮下投与後のAM001のPKおよびPD
この実験は、健常成人対象における単回の皮下(SC)4mg/kg用量のAM001の薬物動態(PK)および薬力学を評価するために行った。
【0141】
方法:これは、第1相単一施設オープンラベル(非盲検)試験であった。8人の対象(男性4人、女性4人)はそれぞれ、4mg/kgのAM001の単回SC用量を受けた。投与体積は、pH5.2のおよそ0.06ml/kgの70mg/ml薬物製品製剤であった。
【0142】
対象は、-1日目(試験薬物投与前日)から8日目(投与後168時間)まで試験施設に滞在した。1日目に、対象は、抗CSF1RmAbであるAM001を受けた。対象が試験施設に滞在している間の投与前および投与後3、9、24、48、72、96、120、168時間にAM001レベルの血清薬物動態解析のための血液試料を採取した。また、同一時点における血清CSF1レベルの解析を、in vivoでのAM001の薬理学的活性の尺度、すなわち、薬力学マーカーとして実施した。詳細には、有効レベルで存在する場合、mAbにより、その受容体への天然CSF1リガンドの結合が阻害され、これによりCSF1レベルの上昇が生じる。対象は、投与後240、336および504時間の時点のPK試料採取のために試験施設に戻った。血清AM001およびCSF1レベルは、高感度ELISA方法により解析した。
【0143】
結果:平均+/-SD血清AM001(PK)またはCSF1(PD)レベルを
図4および5に示す。薬物動態プロファイルにより、高いバイオアベイラビリティ、持続した薬物放出および長い半減期(>/=22日)が実証され、これは、公開されているヒトIV PKプロファイルおよび典型的SC血清濃度対時間抗体プロファイルからの予想を上回る。
【0144】
観察された薬力学プロファイルにより、CSF1R阻害活性の急速な発生が完全なプラトーを伴って示され、これは、投与から1週間以内の十分な活性を示し、全3週間の監視期間を通して実際に減衰しなかった。したがって、AM001SC薬力学は、薬物動態を超えて明らかに延長する。
【0145】
このような優れた薬力学および薬物動態は、皮下注射の部位またはこの付近に存在するヒアルロン酸のゲル化を引き起こすAM001の能力に少なくとも部分的に起因すると考えられる。このようなデータにより、この用量での長時間作用性(おそらくは、1カ月をはるかに超える)薬物候補および薬物製品、ならびにおそらくは、その他多くが支持される。
【0146】
(実施例4)
HAにおける好適なゲル化条件の検査
この実施例では、種々の条件におけるHA存在下でのAM001のゲル化を検査した。
【0147】
A.5%デキストロース対生理食塩水
生理食塩水または5%デキストロース(薬物製品(DP):10mMのアセテート(pH5.2)および260mMのスクロース中70mg/mLのAM001)のいずれかによりAM001を30mg/mLに希釈した。希釈したAM001を、DP:HA比0.7:1で0.3%および1%のヒアルロン酸溶液(H2Oにより調製)の両方に注射した。HAは37℃であり、試料は室温であった。DPは、ポジティブディスプレイスメントピペットによりHAに加えた。
【0148】
追加後、最初の目視観察を行い、試料を37℃で数分間静置させた後、もう一度目視観察を行った。次いで、試料を4000×gで2分間遠心分離して、沈殿物を沈降させた。上清中のAM001含量をSoloVPEにより測定した。
【0149】
この最初の含量測定の後、試料を短時間ボルテックスしてタンパク質およびHA溶液を十分に混合し、SoloVPEを使用してAM001含量を再び測定した。目視観察結果を表4に示す。
表4. 目視観察結果
【表4】
【0150】
溶解度検査結果を表5に表す。
表5. 注射後および撹拌後の溶解度
【表5】
【0151】
タンパク質をデキストロースで希釈した場合、AM001の著しい沈殿が生じる。%HAの上昇により、沈殿したAM001量の増加が生じた。タンパク質を生理食塩水で希釈した場合、最小限の持続したAM001沈殿が生じた。
【0152】
この結果により、AM001の沈殿において、HAに注射した場合、イオン強度が顕著な役割を果たすことが示唆される。結果として、5%デキストロースは、注射時にHA中に沈殿した(局所的に)タンパク質の量を最大化するのに好ましい希釈剤である。同一の理由から、低イオン強度のAM001製剤が好ましい。
【0153】
B.Arg*HClを含む70および150mg/mLのAM011
AM001(70および150mg/mLのタンパク質で製剤化)を0.3%のヒアルロン酸溶液(H2Oにより調製)にAM001:HA比1:1でポジティブディスプレイスメントピペットにより注射した。
【0154】
追加後、試料を旋回させて混合し、目視観察を記録した。次いで、上清中のAM001含量をSoloVPEにより測定した。結果を表6に示す。
表6. 目視観察および含量測定
【表6】
【0155】
Arg*HClを用いて製剤化した試料は、比較的低いpH(pH≦5.2)の条件下であっても0.3%のHAに可溶性であった。おそらくこれは、イオン強度の効果であり、生理食塩水で希釈した薬物製品に見られるものと類似する。しかし、タンパク質濃度は、一因ではなかった。
【0156】
70および150mg/mLのAM001は、ともに可溶性であった(Arg*HClを用いて製剤化した場合)。Arg*HClなしでは、20mMのヒスチジン(pH5.3)単独で製剤化した場合、タンパク質の少なくとも半分の沈殿が生じた。20mMのヒスチジンもある程度の効果を有し得るが、Arg*HClが、タンパク質およびHAの混和性/溶解性の主な原因であったことが、この結果により示唆される。
【0157】
C.温度効果:5℃対室温の追加
HA(H2O中の)における溶解度に対するタンパク質温度の効果を調査した。薬物製品(DP):10mMのアセテート(pH5.2)および260mMのスクロース中70mg/mLのAM001。
【0158】
試料を0.3%および1%の両方のヒアルロン酸溶液(H2Oにより調製)にDP:HA比0.7:1で注射した。HAは、5℃または37℃のいずれかであり、DPは、5℃または室温であった。
【0159】
調査条件は、次のとおりであった:(a)DP5℃+HA5℃、(b)DP5℃+HA37℃、(c)DP室温+HA37℃、(d)DP+HA;5℃および37℃の両方で24時間保存。
【0160】
HAへの試料の注射後、試料を短時間ボルテックスして、タンパク質およびHA溶液を十分に混合した。次いで、試料を4000×gで10+分間遠心分離して、沈殿物を沈降させた。上清中のAM001含量をSoloVPE(A280)により測定した。結果は、表7および8に示す。
表7. 注射後および撹拌後の沈殿
【表7】
【0161】
追加および混合後のHA溶液に残存する可溶性(すなわち、非沈殿)AM001の量を、上の表の最終列に列挙する。5℃対室温のDPの追加の比較では、DPの温度が、HA(0.3%または1%HAのいずれか)におけるその溶解度に影響しなかったことが示される。
【0162】
興味深いことには、タンパク質は、高いHA含量(1%)を有する試料ほど、可溶性であった。タンパク質沈殿は、タンパク質対HAの比に対する依存性を有すると思われた。
表8. 5℃または37℃で24時間保存後の溶解度
【表8】
【0163】
混合物を5℃で24時間保存した場合、HA中のAM001の溶解度は低下した。上清中のさらなる沈殿物の形成(ゼロ時点において最初は清澄)ならびに濃度測定により証明された。1%HA条件では、溶解度は、37℃においてわずかに上昇した。
【0164】
上記の混合物に対して行った濃度測定では、DPの温度は、HA(0.3%または1%HAのいずれか)におけるその溶解度に対して著しくは影響しないことが示された。タンパク質/HA溶液の5℃で24時間の保存により、タンパク質のある程度増加した沈殿を生じた。
【0165】
D.HAおよびヒスチジン製剤の溶解度
このアッセイでは、HAと混合した場合の、20mMのヒスチジン(pH5.3)中に製剤化したAM001の溶解度を調査した。
【0166】
製剤化したAM001を、0.3%および1%の両方のヒアルロン酸溶液(H2Oにより調製)にタンパク質溶液:HA比0.7:1で注射した。製剤化したAM001を、ポジティブディスプレイスメントピペットによりHAに加えた。
【0167】
調査した製剤は、次のとおりであった:(a)20mMのヒスチジン(pH5.3)中160mg/mLのAM001、(b)20mMのヒスチジン(pH5.3)中70mg/mLのAM001および(c)20mMのヒスチジン(pH5.3)中30mg/mLのAM001。
【0168】
HAへのDSの注射後、試料を短時間ボルテックスして、タンパク質およびHA溶液を十分に混合した。次いで、試料を4000×gで10+分間遠心分離して、沈殿物を沈降させた。上清中のAM001含量をSoloVPEにより測定した。結果は、表9および10に示す。
表9. 注射後および撹拌後の沈殿
【表9】
【0169】
追加および混合後のHA溶液に残存する可溶性(すなわち、非沈殿)AM001の量を、上の表の最終列に列挙する。上のデータセットに基づけば、タンパク質対HAの比により、このような特定の条件下でAM001の溶解度が決定される。
【0170】
薬物製品を使用して得られたデータと一致して、同一の実験条件である0.3%HA(3mg/mL)中70mg/mLのAM001により、最大量の不溶性/沈殿タンパク質が生じた。ここでは、タンパク質対HAの比は、質量に基づいて23:1であった。
表10. ヒスチジン製剤および薬物製品の比較
【表10】
【0171】
追加および混合後のHA溶液に残存する可溶性(すなわち、非沈殿)AM001の量を、20mMのヒスチジン(pH5.3)中に製剤化したAM001および薬物製品(DP)の両方について、上の表に列挙する。概して、ヒスチジン製剤は、HA中の薬物製品よりも可溶性である。
【0172】
タンパク質対HA比は、HA溶液におけるAM001の溶解度において重要な役割を果たすと思われる。0.3%HA(3mg/mL)と混合した70mg/mLのAM001により、最大量の不溶性/沈殿タンパク質が生じた(約93%沈殿)。ヒスチジン製剤は、HAにおいて、わずかにより可溶性である傾向を有する。
【0173】
E.IVR試験
この試験では、次のAM001製剤0.5mLを滅菌のコニカルチューブの底部に注射した:(a)20mMのHis(pH5.8)、150mMのArg*HClおよび0.009%のPS20中150mg/mLのAM001、(b)薬物製品(70mg/mLのAM001)、(c)5%のデキストロース中に希釈した30mg/mLの薬物製品、ならびに(d)生理食塩水中に希釈した30mg/mLの薬物製品。
【0174】
チューブの底部においてHAからタンパク質を相分離した(密度に基づく)。HA溶液2mLにより、チューブ内の残りの体積を補った(HA溶液=PBS(pH7.4)中0.3%HA)。IVRを37℃で混合せずに行った(すなわち、静的)。
【0175】
HA溶液1.5mLを24時間間隔で回収した。さらなるHA溶液(37℃)1.5mLを加えて、回収したHA体積を置換した。試験時間は、6日であった。
【0176】
回収した溶液は、タンパク質含量についてSoloVPE(A280)を使用して測定した。結果を表11に示す。
表11. 6日後の残存タンパク質
【表11】
【0177】
結果は、タンパク質濃度の上昇とともに放出速度が上昇したことを示す。6日後の残存タンパク質の総量に基づけば、タンパク質濃度が高いことは、有利であると思われる。
【0178】
(実施例5)
種々の濃度のヒアルロン酸におけるAM001、EMACおよびラットIgG1溶解度の比較
この実施例では、ヒアルロネート(HA)の濃度に応じたAM001、EMAC(エマクツズマブ)およびIgG1(ラット由来)の溶解度を測定した。
【0179】
0.3%および1%のHAをmilliQ水により調製し、0.3%のHAをPBS(pH7.4)により調製した。調査したタンパク質/製剤は、次のとおりであった:(a)10mMのアセテート(pH5.2)、9%のスクロースおよび0.002%のPS20中30mg/mLのAM001、(b)20mMのHis(pH6.0)、240mMのトレハロースおよび0.02%のPS20中30mg/mLのEMAC、ならびに(c)10mMのアセテート(pH5.2)および9%のスクロース中22mg/mLのIgG1(ラット由来)。
【0180】
タンパク質をタンパク質:HA比1:1で混合した(室温のタンパク質溶液および37℃のHA溶液)。HAへのタンパク質の注射後、試料を短時間ボルテックスして、タンパク質およびHA溶液を十分に混合した。次いで、試料を4000×gで20+分間遠心分離して、沈殿物を沈降させた。上清中のタンパク質含量をSoloVPEにより測定した(A280による濃度)。結果は、表12および13に示す。
表12. 水により調製したHAの溶解度結果
【表12】
【0181】
追加および混合後のHA溶液に残存する可溶性(すなわち、非沈殿)タンパク質の量を、上の表の最終列に列挙する。AM001およびEMACは、0.3%のHAにおいて類似の溶解度を有した。3つすべてのタンパク質の溶解度は、1%HAにおいて上昇した。
【0182】
概して、このような知見により、低イオン強度、およびそれらのpIよりも正に荷電するのに十分に低いpHで製剤化する場合、ほとんどのIgGの溶解度が類似することが示唆される。沈殿は、HAと正に荷電したIgGのイオン対形成のためであると考えられる。
表13. PBS (pH 7.4)により調製したHAの溶解度結果
【表13】
【0183】
3つすべてのタンパク質は、HAに注射すると、最初に、ある程度まで(局所的に)沈殿した。これは、混合していない溶液中の低イオン強度の領域のためである可能性を有し、これにより、不溶性IgG/HAイオン対の形成が促進される。しかし、3つすべてのタンパク質は、溶液を混合する場合、100%可溶性である。これは、IgG/HAイオン対を解離させるのに十分なイオン強度の結果であると考えられる。
【0184】
(実施例6)
タンパク質濃度に応じたヒアルロネートにおけるAM001およびEMAC溶解度の比較
この実施例では、0.3%のヒアルロネート(HA)溶液におけるタンパク質濃度に応じたAM001およびEMAC(エマクツズマブ)の溶解度を測定した。
【0185】
0.3%のHAをmilliQ水により調製した。基本製剤は、次のとおりであった:10mMのアセテート(pH5.2)、9%のスクロースおよび0.002%のPS20中AM001;20mMのHis(pH6.0)、240mMのトレハロースおよび0.02%のPS20中EMAC。試料は、上の製剤により次の濃度で調製した:1、5、10、15、20および30mg/mLのAM001またはEMAC。
【0186】
各タンパク質は、タンパク質:HA比1:1で室温において混合した。HAへのタンパク質の追加後、試料を短時間ボルテックスして、タンパク質およびHA溶液を十分に混合した。次いで、試料を遠心分離して、沈殿物を沈降させた。上清中のタンパク質含量をSoloVPEにより測定した(A280による濃度)。
【0187】
観察結果は、表14に示す。追加および混合後のHA溶液に残存する可溶性(すなわち、非沈殿)タンパク質の量は、表14の最終列に列挙する。
表14. 各溶液における抗体の溶解度
【表14】
【0188】
タンパク質対ヒアルロネート比が上昇するにつれて、沈殿量の増加が生じた。これにより、このようなIgGの1%ヒアルロネート対0.3%ヒアルロネートにおける溶解度の上昇が説明される。EMACおよびAM001の溶解度傾向は、この試験において類似した。
【0189】
(実施例7)
製剤pHに応じたヒアルロネートにおけるAM001およびEMAC溶解度の比較
この実施例では、0.3%ヒアルロネート(HA)の存在下でのpHに応じたAM001およびEMAC(エマクツズマブ)の溶解度を測定した。
【0190】
調査した基本タンパク質製剤は、次のとおりであった:(a)10mMのアセテート(pH5.2)、9%のスクロースおよび0.002%のPS20中30mg/mLのAM001、ならびに(b)20mMのHis(pH6.0)、240mMのトレハロースおよび0.02%のPS20中30mg/mLのEMAC。
【0191】
このような製剤は、少量の酸または塩基の追加により、pHの標的値まで滴定した。タンパク質は、タンパク質:HA比1:1で室温において混合した。HAへのタンパク質の追加後、試料を短時間ボルテックスして、タンパク質およびHA溶液を十分に混合した。次いで、試料を遠心分離して、沈殿物を沈降させた。上清中のタンパク質含量をSoloVPEにより測定した(A280による濃度)。結果は、表15に示す。
表15. 溶解度結果
【表15】
【0192】
結果により、pHがヒアルロネートと相互作用して沈殿物を形成するIgGの能力において役割を果たすことが示唆される。沈殿は、HAとの正に荷電したIgGのイオン対形成のためであることが考えられる。結果として、pHがpIのそれに近づく(およびこれを超える)ため、ヒアルロネートとイオン対形成するIgGの能力は、低減する。
【0193】
(実施例8)
製剤pH(pH6~7)に応じたヒアルロネートにおけるEMACの溶解度
この実施例では、0.3%ヒアルロネート(HA)溶液における製剤pH(pH6~7)に応じたEMACの溶解度を測定した。
【0194】
この試験に利用したEMAC基本製剤は、20mMのHis(pH6.3)、240mMのトレハロースおよび0.02%のPS20中30mg/mLのEMACであった。
【0195】
基本製剤は、少量の酸または塩基の追加により、pHの標的値まで滴定した。EMACは、タンパク質:HA比1:1で室温において混合した。HAへのタンパク質の追加後、試料を短時間ボルテックスして、タンパク質およびHA溶液を十分に混合した。次いで、試料を遠心分離して、沈殿物を沈降させた。上清中のタンパク質含量をSoloVPEにより測定した(A280による濃度)。結果は、表16に示す。
表16. EMAC溶解度結果
【表16】
【0196】
EMAC製剤のpHがpH7からpH6まで低下するにつれて、沈殿量の増加が生じた。この結果により、pHの低下に応じたEMAC上の正電荷の増加によって、ヒアルロネートとの相互作用の増加が生じることが示唆される。
【0197】
本開示は、本開示の個々の態様の単一例示として意図する、記載する特定の実施形態により、範囲内に制限するものではなく、機能的に等価な任意の組成物または方法は、本開示の範囲内である。本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、本開示の方法および組成物において、種々の修飾および変形を行うことが可能であることが当業者に明らかである。したがって、本開示により、添付の特許請求の範囲およびこれらの等価物の範囲に入るという条件で、本開示の修飾および変形を包含することを意図する。
【0198】
本明細書において言及する公表文献および特許出願はすべて、個々の各公表文献または特許出願を、参照により組み込むことを詳細かつ個別に示す場合と同程度まで、参照により本明細書において組み込む。
【配列表】
【国際調査報告】