(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ねじり振動減衰器
(51)【国際特許分類】
F16F 15/16 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
F16F15/16 A
F16F15/16 M
F16F15/16 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542511
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2022050536
(87)【国際公開番号】W WO2022152747
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】102021100431.4
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523263902
【氏名又は名称】ハセ・エンド・ブレーデ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Hasse & Wrede GmbH
【住所又は居所原語表記】Georg-Knorr-Strasse 4, 12681 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュタイドル
(72)【発明者】
【氏名】マンディ シュトライフラー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ボーマイアー
(57)【要約】
回転可能なシャフト、例えば原動機、特に内燃機関のクランクシャフト(2)に配置された、好適には相対回動不能に取付け可能な一次質量体と、一次質量体に対して相対的に運動可能な二次質量体とを備えた回転するシステムと、一次質量体と二次質量体との間の相対運動の振動減衰および/または振動吸振のための構成群と、を備えた、ねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器が提供される。一次質量体と二次質量体との間の相対運動の振動減衰および/または振動吸振のための構成群は、少なくとも1つの圧力アキュムレータ(15,15’;22,22’)をねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器の回転するシステムの内に有する。ねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器により内燃機関のクランクシャフト(2)のねじり振動を減衰する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なシャフトに配置され、好適には相対回動不能に取付け可能な一次質量体と、該一次質量体に対して相対的に運動可能な二次質量体とを備えた回転するシステムと、
前記一次質量体と前記二次質量体との間の相対運動の振動減衰および/または振動吸振のための構成群と
を備えた、ねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器であって、
前記一次質量体と前記二次質量体との間の前記相対運動の振動減衰および/または振動吸振のための前記構成群は、少なくとも1つの圧力アキュムレータ(15,15’;22,22’)を前記ねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器の前記回転するシステム内に有していることを特徴とする、ねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器。
【請求項2】
前記一次質量体と前記二次質量体との間の前記相対運動の振動減衰および/または振動吸振のための前記構成群は、前記回転するシステムの一部として、前記二次質量体内に加工成形された、流体が充填された1つ以上の流体チャンバ(13,14)を有しており、前記流体チャンバ(13,14)の容積は、ねじり振動、ひいては該ねじり振動に基づいて生じる、一次質量体と二次質量体との間の相対運動が生じた場合に、前記少なくとも1つの圧力アキュムレータ(15,15’;22,22’)により変更可能であり、前記流体チャンバ(13,14)は、前記一次質量体に結合されたハブ部分(11)の、半径方向に延びる羽根(12,12’)によりそれぞれ分割されている、請求項1記載のねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器。
【請求項3】
前記少なくとも1つの圧力アキュムレータ(15,15’)は、ガスばねを形成し、ダイヤフラム(18,18’)により分離されている、少なくとも1つのガス区域(16,16’)と少なくとも1つの流体区域(17,17’)とを有しており、前記流体区域(17,17’)は、前記流体チャンバ(13,14)に流体管路(20,20’;21,21’)を介して接続されている、請求項2記載のねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器。
【請求項4】
前記少なくとも1つの圧力アキュムレータ(15,15’)の前記少なくとも1つのガス区域(16,16’)は、回転フィードスルー(3)を介して、かつ1つ以上の圧力管路(6,7)を介して制御/ガス供給ユニット(6)に接続されており、該制御/ガス供給ユニットは、前記ねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器の前記回転するシステムの外部に配置されている、請求項3記載のねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器。
【請求項5】
前記少なくとも1つの圧力アキュムレータ(22,22’)は、ハブ部分(11)の羽根(12,12’)に配置されており、チャンバ(22a,22’a)およびダイヤフラム(22b,22’b)を備えたガスばねを形成し、前記ダイヤフラム(22b,22’b)は、前記チャンバ(22a,22’a)を流体チャンバ(13,14)に対して画定する、請求項1から4までのいずれか1項記載のねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器。
【請求項6】
前記少なくとも1つの圧力アキュムレータ(22,22’)の前記チャンバ(22a,22’a)は、弁を介して充填接続部に接続されている、請求項5記載のねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器。
【請求項7】
流体チャンバ(13,14)は、前記一次質量体に結合されたハブ部分(11)内の管路(23,23’)により互いに接続されており、前記管路(23,23’)は、調節可能な少なくとも1つの絞り(24)をそれぞれ有している、請求項1から6までのいずれか1項記載のねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器。
【請求項8】
流体チャンバ(13,14)は、前記一次質量体に結合されたハブ部分(11)内に設けられた逆向きに配置された一方向のオーバフロー管路(25,26)により互いに接続されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器。
【請求項9】
それぞれ1つの羽根(12,12’)による流体チャンバ(13,14)の分割により形成されている流体チャンバ区域(13a,13b;14a,14b)が、それぞれ1つの羽根(12,12’)に設けられた、絞り(27,27’)を備える、または備えていない少なくとも1つの管路によって互いに接続されている、請求項1から8までのいずれか1項記載のねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器。
【請求項10】
直径方向で互いに反対側に位置するそれぞれ2つの流体チャンバ(13,14)が設けられている、請求項1から9までのいずれか1項記載のねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器。
【請求項11】
前記回転可能なシャフトは、ピストン機械のクランクシャフト(2)である、請求項1から10までのいずれか1項記載のねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器。
【請求項12】
前記ピストン機械が内燃機関、圧縮空気モータ、ピストンコンプレッサ等である、請求項11記載のねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載のねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器により、ピストン機械においてクランクシャフト(2)のねじり振動を減衰する方法であって、
前記クランクシャフト(2)に取り付けられた前記ねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器を提供する方法ステップ(VS1)と、
前記ねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器内に組み込まれた少なくとも1つの圧力アキュムレータ(15,15’;22,22’)を、圧力が加えられたガスまたは空気により調節する方法ステップ(VS2)と、
前記ねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器により前記ピストン機械の運転中に前記クランクシャフト(2)のねじり振動を減衰する方法ステップ(VS3)と
を有していることを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記圧力アキュムレータ(15,15’)の調節を、前記第2の方法ステップ(VS2)および前記第3の方法ステップ(VS3)において、前記ねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器の回転フィードスルーを介して、かつ1つの以上の圧力管路(6,7)を介して制御/ガス供給ユニット(6)により行い、該制御/ガス供給ユニットは、前記ねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器の前記回転するシステムの外部に配置されている、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記圧力アキュムレータ(15,15’)および別の絞り(24,27,27’)の調節を前記第2の方法ステップ(VS2)において前記ねじり振動減衰器(1)が静止した状態で行い、前記第3の方法ステップ(VS3)において、前記ねじり振動の減衰を流体チャンバ(13,14)間の流体の往復圧送により行う、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記第3の方法ステップ(VS3)において、1つの方向への前記ねじり振動減衰器(1)またはねじり振動吸振器の変位が過度に強い場合―に、前記流体チャンバ(13,14)間で一方向のオーバフロー管路(25,26)を介したオーバフローを行う、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記ピストン機械は、内燃機関、圧縮空気モータ、ピストンコンプレッサ等である、請求項13から16までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載のねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器に関する。本発明はさらに、内燃機関のクランクシャフトのねじり振動を減衰する方法にも関する。
【0002】
パッシブ型(受動型)のねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器は、種々の構成部分/要素から形成される。この場合、以下の原理/要素の2つまたは3つが使用される。
【0003】
要素「運動エネルギの蓄え器」:
パッシブ型のねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器の基本的な構造は、常に運動エネルギ用の蓄え器を有し、この運動エネルギ用の蓄え器は、サイズモ質量体により形成されている。このサイズモ質量体は、有利には、はずみリングとして形成されていてもよく、「二次質量体」とも呼ばれる。
【0004】
要素「ポテンシャルエネルギの蓄え器」:
ポテンシャルエネルギの蓄え器は、二次質量体(特にはずみリング)と、一次質量体とも呼ばれるハウジング部分および/またはハブ部分との間のねじりばね剛性により形成されていてもよい。
【0005】
散逸要素:
散逸要素としては、構造に応じて、一次質量体(ハウジング部分および/またはハブ部分)と二次質量体との間に、つまり例えばハブ部分/ハウジングとはずみリングとの間に、減衰エレメントまたは減衰構成部分が設けられていてもよく、この減衰エレメントまたは減衰構成部分は、例えば固体摩擦、粘性減衰または液圧減衰に基づいて作用する。
【0006】
サイズモ質量体は、ねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器において常に存在する。ねじり振動減衰器では、さらに散逸構成部分が存在し、ねじり振動吸振器では、「ポテンシャルエネルギの蓄え器」が存在する。減衰付ねじり振動吸振器では、3つの全ての要素が使用される。減衰付ねじり振動吸振器は、以下において「ねじり振動吸振器」のカテゴリに含まれる。
【0007】
現在実際に使用されているパッシブ型のねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器では、全ての要素が1つの構成群内に存在しており、この構成群は、シャフトと一緒に回転するように結合されている。したがって、この構成群は、回転するシステムを形成する。
【0008】
このことは、減衰/吸振されるべきシャフトに唯一つの構成群を取り付けるだけで済むという利点を有するが、しかし実際の使用時では、ある特定の欠点をも有している。
【0009】
すなわち、前で挙げた構造のねじり振動減衰器/ねじり振動吸振器の構成スペースは、しばしば制限されるので、このような構成スペースの制限を考慮すると、所要の剛性度および減衰度を実現することが必ずしも可能であるとは限らない。さらに、減衰により生じた熱は、しばしば導出することが極めて難しい。したがって、この問題は、ねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器の機能および寿命を制限している。
【0010】
国際公開第2019/086258号は、ねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器を記載している。回転するシステムにおいて行われる、ねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器のはずみリングとハウジングとの間の振動運動が、液圧フィードスルーを介して外部の固定されたシステムにおける並進運動に変換される構造が提供される。
【0011】
液圧フィードスルーにおける臨界的な流速が不都合であると見なされる。
【0012】
本発明の根底を成す課題は、冒頭で述べた形式のねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器を改良して、上述の欠点を有しないようにすることである。
【0013】
この課題は請求項1の対象により解決される。
【0014】
課題は、請求項11の対象としての方法によっても解決される。
【0015】
本発明の好適な構成は、従属請求項に記載されている。
【0016】
回転可能なシャフトに配置され、好適には相対回動不能に取付け可能な一次質量体と、一次質量体に対して相対的に運動可能な二次質量体とを備えた回転するシステムと、一次質量体と二次質量体との間の相対運動の振動減衰および/または振動吸振のための構成群とを備えた本発明のねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器は、一次質量体と二次質量体との間の相対運動の振動減衰および/または振動吸振のための構成群が、少なくとも1つの圧力アキュムレータを、ねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器の回転するシステム内に有するように形成されている。
【0017】
圧力アキュムレータが回転側に組み付けられているので、従来技術におけるように液圧油を外部へと案内する回転フィードスルーはその全ての欠点とともに不要になるという特別な利点が生じる。このことは、液圧油の流速が制圧可能なままであるように所用の管路横断面を実現することを著しく容易に可能にする。
【0018】
上述したねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器により、ピストン機械のクランクシャフトのねじり振動を減衰する本発明による方法は、クランクシャフトに取り付けられたねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器を提供する方法ステップVS1と、ねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器内に組み込まれた少なくとも1つの圧力アキュムレータを、圧力が加えられたガスまたは空気により調節する方法ステップVS2と、ねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器によりピストン機械の運転中にクランクシャフトのねじり振動を減衰する方法ステップVS3とを有している。
【0019】
これにより、液圧油もしくは流体が、ねじり振動減衰器内にあり、運転中に外部から供給される必要がないという利点が生じる。圧力下にあるガス、例えば空気、窒素等によって圧力アキュムレータを調節することは、運転中でも有利には簡単である。
【0020】
或る構成では、一次質量体と二次質量体との間の相対運動の振動減衰および/または振動吸振のための構成群が、回転するシステムの一部として、流体が充填された1つ以上の流体チャンバを有している。この流体チャンバは、二次質量体内に加工成形されている。流体チャンバの容積は、ねじり振動、ひいてはこのねじり振動に基づいて生じる、一次質量体と二次質量体との間の相対運動が生じた場合に、少なくとも1つの圧力アキュムレータにより変更可能であり、流体チャンバが、一次質量体に結合されたハブ部分の、半径方向に延びる羽根によりそれぞれ分割されている。このことは、有利にはコンパクトな構造を生じさせる。
【0021】
別の或る構成では、少なくとも1つの圧力アキュムレータが、ガスばねを形成し、ダイヤフラムによって分離された少なくとも1つのガス区域と少なくとも1つの流体区域とを有しており、流体区域が、流体チャンバに流体管路を介して接続されている。流体管路は、有利には、流体の発生する流速に関して、臨界的な流速が生じないように設計されてもよい。
【0022】
或る構成では、少なくとも1つの圧力アキュムレータの少なくとも1つのガス区域が、回転フィードスルーを介して、かつ1つ以上の圧力管路を介して制御/ガス供給ユニットに接続されており、制御/ガス供給ユニットが、ねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器の回転するシステムの外部に配置されていることが規定されている。回転フィードスルーにより、有利には、従来技術に比べて簡単に、ばねの圧力(ひいてはばね定数)だけが、圧力下にあるガスもしくは空気により調節される。
【0023】
代替的な或る構成では、少なくとも1つの圧力アキュムレータが、ハブ部分の羽根に配置されており、チャンバおよびダイヤフラムを備えたガスばねを形成し、ダイヤフラムが、チャンバを流体チャンバに対して画定している。圧力アキュムレータがねじり振動減衰器内に直接組み込まれているので、回転フィードスルーが不要であるという利点が生じる。圧力アキュムレータの調節は、確かに運転中にはもはや不可能であるが、調節は、まだ静止している減衰器の状態において、対応する弁により完全に可能である。このためには、少なくとも1つの圧力アキュムレータのチャンバは、弁を介して充填接続部に接続されていてもよい。当然ながら、複数の弁が設けられていてもよい。
【0024】
圧力アキュムレータのチャンバ内の圧力により、システムの剛性を有利には簡単に調節することができる。
【0025】
別の或る構成では、流体チャンバが、一次質量体に結合されたハブ部分内の管路により互いに接続されており、管路は、少なくとも1つの調節可能な絞りをそれぞれ有している。これにより、有利には、オーバフローによる漏れ損失を補償し、これによりはずみ質量体を、減衰器に対するその公称の位置に保持することができる。別の利点は、はずみ質量体をセンタリングすることができ、付加的なばねにより支持する必要がないことにより生じる。
【0026】
流体チャンバが、一次質量体に結合されたハブ部分内に設けられた逆向きに配置された一方向のオーバフロー管路により互いに接続されていると有利である。なぜならば、これにより、単に1つの方向への減衰器の変位が過度に強い場合に、チャンバ間のオーバフローが可能にされるからである。これにより、はずみ質量体をセンタリングして保持することができる。
【0027】
さらに、それぞれの羽根による流体チャンバの分割により形成されている流体チャンバ区域が、それぞれ1つの羽根において絞りを備える、または備えていない少なくとも1つの管路によって互いに接続されていると、有利な減衰を達成することができる。減衰は、流体チャンバ間もしくは流体チャンバ区域間での羽根を通した液圧油の往復圧送によって実現され、減衰をそれぞれの要求に適合させるために、調節可能な絞りを使用することができる。
【0028】
別の或る構成では、有利なコンパクトな構造のために、直径方向で互いに反対の側に位置するそれぞれ2つの流体チャンバが設けられている。
【0029】
方法の有利な或る構成は、圧力アキュムレータの調節を、第2の方法ステップVS2および第3の方法ステップVS3において、ねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器の回転フィードスルーを介して、かつ1つ以上の圧力管路を介して制御/ガス供給ユニットにより行い、この制御/ガス供給ユニットが、ねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器の回転するシステムの外部に配置されていることを規定している。この場合、媒体、つまり空気または窒素のみが使用され、これにより回転フィードスルーのコンパクトな構造が生じる。
【0030】
回転フィードスルーを有しないねじり振動減衰器の構成では、方法の別の或る構成は、圧力アキュムレータおよび別の絞りの調節を、第2の方法ステップVS2においてねじり振動減衰器の静止した状態で行い、第3の方法ステップVS3において、ねじり振動の減衰を、流体チャンバ間の流体の往復圧送により行うことを規定している。粘性減衰器との比較においてここでも、減衰作用と剛性とを互いに無関係に調節することができるという利点が生じる。これにより一方では、最適な比率を見付けることができ、他方では、同一の減衰器ハードウェアを種々異なるエンジンのために適合させ、これによりコストを削減することが可能である。
【0031】
方法の別の構成では、第3の方法ステップVS3において、1つの方向へのねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器の変位が過度に強い場合に、流体チャンバ間で一方向のオーバフロー管路を介したオーバフローを行う。これにより、はずみ質量体の有利なセンタリングを達成することができる。
【0032】
通常の減衰器とは異なり、本発明では、高価な板ばねを省略することができる。粘性減衰器との比較においてここでも、減衰作用および剛性を互いに無関係に調節することができるという利点が生じる。これにより一方では、最適な比率を見付けることができ、他方では、同一の減衰器ハードウェアを種々異なるエンジンのために適合させ、これによりコストを削減することが可能である。
【0033】
ねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器の別の或る構成では、回転可能なシャフトは、ピストン機械のクランクシャフトである。このようなピストン機械は、例えば内燃機関、圧縮空気モータ、ピストンコンプレッサ等であってもよい。
【0034】
上述の方法のピストン機械も、例えば内燃機関、圧縮空気モータ、ピストンコンプレッサ等であってもよい。
【0035】
以下に、本発明の実施例を添付の図面につき説明する。これらの実施例は、本発明を好適な構造につき説明するために用いられるに過ぎず、本発明はこの構造に限定されるものではない。その限りでは、各請求項の枠内で別の実施例ならびに図示の実施例の改良形および等価形が実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に係るねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器の第1の実施例を示す概略図である。
【
図2】
図1に示した本発明に係るねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器の第1の実施例を概略的に示す半径方向断面図である。
【
図3】本発明に係るねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器の実施例および変化形を示す概略的な半径方向断面図である。
【
図4】本発明に係るねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器の実施例および変化形を示す概略的な半径方向断面図である。
【
図5】本発明に係るねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器の実施例および変化形を示す概略的な半径方向断面図である。
【
図6】本発明による方法の概略的なフローチャートである。
【0037】
図1は、本発明に係るねじり振動減衰器またはねじり振動吸振器の第1の実施例の概略図である。
【0038】
ねじり振動減衰器1またはねじり振動吸振器は、以下では簡単にするために、単にねじり振動減衰器1と呼ばれる。ねじり振動減衰器1は、本実施例ではクランクシャフト2、例えば図示しない内燃機関のクランクシャフト2に相対回動不能に結合されている。このような内燃機関は、例えば、船舶、農業機械、建設機械、エネルギ生成のためのいわゆる大型エンジンである。
【0039】
ねじり振動減衰器1は、回転フィードスルー3をさらに有しており、回転フィードスルー3によりねじり振動減衰器1は、供給構成群5に接続されている。
【0040】
供給構成群5は、圧力管路7,8を備えた制御/ガス供給ユニット6を含んでいる。
【0041】
回転フィードスルー3は、ねじり振動吸振器1と、供給構成群5の制御/ガス供給ユニット6との間のインタフェースを形成し、圧力管路6,7は、制御/ガス供給ユニット6と回転フィードスルー3との間の接続部を形成する。制御/ガス供給ユニット6は、圧力媒体、好適にはガス、例えば圧縮空気により、圧力管路6,7および回転フィードスルー3を介して、ねじり振動減衰器1内の制御エレメントを制御する。これらの制御エレメントは、例えば絞りおよび調節可能なばねであり、これらについては下記でさらに説明する。
【0042】
クランクシャフト2は、回転軸線4を有しており、この回転軸線4に対してねじり振動減衰器1と回転フィードスルー3とは同軸的に配置されている。
【0043】
ねじり振動減衰器の構造および機能形式の詳細な説明については、国際公開第2019/086258号および国際公開第2020/069933号が参照される。
【0044】
図2は、
図1に示した本発明に係るねじり振動減衰器1の第1の実施例を半径方向断面図で示している。
【0045】
ねじり振動減衰器1は、ハウジング9と、いわゆる二次質量体としてのはずみ質量体10と、羽根12,12’を備えたハブ部分11と、流体チャンバ13,14と、圧力アキュムレータ15,15’とを含んでいる。これにより、いわゆる回転するシステムが形成される。
【0046】
ハウジング9は、いわゆる一次質量体を形成し、ハブ部分11およびその羽根12,12’に固定的に結合されている。ハブ部分11により、ねじり振動減衰器1は、クランクシャフト2に相対回動不能に結合されている。
【0047】
より良好に区別するために、羽根12,12’は、第1の羽根12および第2の羽根12’と称される。流体チャンバ13,14は、第1の流体チャンバ13および第2の流体チャンバ14である。圧力アキュムレータ15,15’も同様に、第1の圧力アキュムレータ15および第2の圧力アキュムレータ15’と称される。ただし、これらの設定は、2つより多くの羽根12,12’、2つより多くの流体チャンバ13,14および2つより多くの圧力アキュムレータ15,15’が設けられていてもよいことを排除するものではない。
【0048】
ハウジング1、回転フィードスルー3およびはずみ質量体10は、回転軸線6に対して同軸的に配置されている。はずみ質量体10は、ハウジング1に関して回転することができる。
【0049】
ハブ部分11の羽根12,12’は、ハウジング1に固く結合されている。
【0050】
ハブ部分11の羽根12,12’は、ハブ部分11から、はずみ質量体10内に加工成形されている、直径方向で反対側に位置する流体チャンバ13,14を通って、反対側に位置するように半径方向に延びている。各流体チャンバ13,14は、ハブ部分11の対応する羽根12,12’により、2つの流体チャンバ区域13a,13bおよび14a,14bに分割される。
【0051】
羽根12,12’は、それぞれ2つの羽根面12a,12b;12’a,12’bを有しており、これらの羽根面12a,12b;12’a,12’bは、
図2~
図5に示した本実施例では、より簡単に識別するために、時計回り方向に依存して区別される。したがって、第1の羽根12の羽根面12aは、第1の流体チャンバ13の流体チャンバ区域13a内の流体に接触し、第2の羽根12’の羽根面12’aは、第2の流体チャンバ14の流体チャンバ区域14a内の流体に接触して、ハブ部分11および羽根12,12’が時計回りに旋回した場合に、これらの流体を圧縮する。これに対して、第1の羽根12の羽根面12bは、第1の流体チャンバ13の流体チャンバ区域13b内の流体に接触し、第2の羽根12’の羽根面12’bは、第2の流体チャンバ14の流体チャンバ区域14b内の流体に接触し、ハブ部分11が羽根12,12’と一緒に反時計回りに旋回した場合に、これらの流体を圧縮する。
【0052】
各圧力アキュムレータ15,15’は、ガスばねを形成しており、それぞれ1つのガス区域16,16’と、流体区域17,17’とを有している。各ガス区域16,16’は、対応する流体区域17,17’からダイヤフラム18,18’によって分離されている。
【0053】
圧力アキュムレータ15,15’は、ハウジング1に固定的に取り付けられている。
【0054】
圧力アキュムレータ15,15’のガス区域16,16’は、それぞれガス管路19,19’を介して、回転フィードスルー3のそれぞれ1つの接続区域3a,3bに接続されている。これにより、ガス管路19,19’は、それぞれ所属の圧力管路6,7を介して、供給構成群5の制御/ガス供給ユニット6に制御接続されている。
【0055】
流体チャンバ13,14の流体チャンバ区域13a,13b;14a,14bは、それぞれ流体管路20,20’;21,20を介して、各圧力アキュムレータ15,15’の流体区域17,17’に接続されていて、これにより、下記のように連通もしくは接続しているチャンバ区域が生じるようになっている。
【0056】
流体管路20,20’;21,21’は、はずみ質量体10内に組み込まれるか、取り付けられる、または/かつ加工成形されていてもよい。
【0057】
第1の流体チャンバ13の流体チャンバ区域13aは、流体管路20を介して第1の圧力アキュムレータ15の流体区域17に接続されており、第1の圧力アキュムレータ15自体は、流体管路21を介して、第2の流体チャンバ14の羽根チャンバ区域14aに接続されている。同様に第1の流体チャンバ13の流体チャンバ区域13bは、流体管路20’を介して第2の圧力アキュムレータ15’の流体区域17’に接続されており、第2の圧力アキュムレータ15’自体は、流体管路21’を介して第2の流体チャンバ14の羽根チャンバ区域14bに接続されている。
【0058】
これにより、ハブ部分11の振動運動が、羽根12,12’と、圧力チャンバ15,15’を介した流体管路20,20’;21,21’による流体チャンバ区域13a,13b;14a,14bの上述の連通とを介して、圧力チャンバ15,15’のダイヤフラム18,18’の並進運動に変換され、このとき標準的な構成要素が、剛性および減衰の提供のために使用され得る。
【0059】
したがって、圧力アキュムレータ15,15’は、回転する側において、つまりねじり振動減衰器1において実現されていて、制御/ガス供給ユニット6によって、ねじり振動減衰器1の運転中に調節/調整することができ、ダイヤフラム18,18’を介して、上述のチャンバ間の流れに影響を与えることができる。回転フィードスルー3は、圧力アキュムレータ15,15’内の圧力、ひいてはばね定数を調節するためにしか使用されない。これにより、圧力アキュムレータ15,15’によって形成されるガスばねのばね定数は、外部から調節可能である。
【0060】
この場合、はずみ質量体、すなわちはずみ質量体10が、ハウジング9に関してその公称ポジションに留まるという利点も生じる。これは、上述した連通経路を介したチャンバ間での流体のオーバフローによる漏れ損失の補償により行われる。
【0061】
図3~
図5には、本発明に係るねじり振動減衰器1またはねじり振動吸振器の別の実施例の概略的な半径方向断面図が図示されている。
【0062】
図3は、ねじり振動減衰器1の第2の実施例を示している。
【0063】
ねじり振動減衰器1の第2の実施例の構造は、第1の実施例とは、回転フィードスルー3が設けられていない点において相違している。なぜならば、空気ばねもしくはガスばねとしてのエネルギアキュムレータ22,22’が、ねじり振動減衰器1に直接組み込まれているからである。
【0064】
エネルギアキュムレータ22,22’は、本実施例では、膨張可能なチャンバ22a,22’aが羽根12,12’の両側で、例えばエラストマーから成るダイヤフラム22b,22’bによって形成されているように、羽根12,12’に/羽根12,12’内に取り付けられている。
【0065】
チャンバ22a,22’aは、エネルギアキュムレータ15,15’のガス区域16,16’に類似している。ダイヤフラム22b,22’bは、チャンバ22a,22’aを直接に流体チャンバ区域13a,13b;14a,14bから分離している。この流体チャンバ区域13a,13b;14a,14bは、同様にエネルギアキュムレータ15,15’の流体区域17,17’に相当する。
【0066】
チャンバ22a,22’aは、図示しない弁を介して、図示しない1つ以上の充填接続部に接続されている。この充填接続部により、チャンバ22a,22’aに、ガス、例えば空気または/および窒素が充填される。チャンバ22a,22’a内の圧力により、システムの剛性が調節される。
【0067】
減衰は、流体チャンバ13,14同士の間での流体の往復圧送によって実現される。このためには、ハブ部分11内に流体チャンバ13,14の間で管路23,23’が設けられている。流体の往復圧送は、はずみ質量体10に関する羽根12,12’の相対運動により行われる。
【0068】
管路23は、開口23aを介して流体チャンバ13の流体チャンバ区域13aに接続されており、他方の端部で絞り24を介して管路23’に接続されている。管路23’自体は、開口23’aを介して、流体チャンバ14の、同じ羽根側に位置する流体チャンバ区域14bに接続されている。鏡像対称的な構造において、別の管路23,23’が、開口23a,23’aおよび絞り24により、流体チャンバ13の流体チャンバ区域13bを、流体チャンバ14の流体チャンバ区域14aに接続する。
【0069】
絞り24は、減衰をそれぞれの要求に適合させることができるようにするために調節可能である。
【0070】
エネルギアキュムレータ22,22’および絞り24の調節は、ねじり振動減衰器1の運転中に実施することはできない。このことは、静止状態において、図示されていないが、容易に想像可能である適切な弁を用いて行われる。
【0071】
図4には、
図3に示した第2の実施例の変形形が図示されている。
【0072】
図4には、ねじり振動減衰器1の変向された位置が示されている。
【0073】
第2の実施例とは異なり、この変化形では、2つのオーバフロー管路25,26がハブ部分11に加工成形されており、これらのオーバフロー管路25,26は、それぞれ管路23,23’および絞り24に対して並列に延びている。
【0074】
オーバフロー管路25は、流体チャンバ13の流体チャンバ区域13aから、流体チャンバ14の、同一の羽根側に位置する流体チャンバ区域14bへの一方向のオーバフローを形成する。流体チャンバ14の流体チャンバ区域14aから流体チャンバ13の流体チャンバ区域13bへの一方向のオーバフローは、他方のオーバフロー管路26により可能にされている。
【0075】
オーバフロー管路25,26は、逆向きに配置されており、つまりオーバフロー管路25を通って流れる流れの方向は、オーバフロー管路26を通って流れる流れの方向とは逆方向である。
【0076】
オーバフロー管路25,26は、調節可能な絞り(図示せず)を有していてもよい。
【0077】
これにより、回動方向減衰器1が一方向に著しく強く変位した場合に、オーバフロー管路25,26により、流体チャンバ13,14間のオーバフローが他方の流体チャンバへの逆流によって可能となり、これにより、はずみ質量体10は、センタリングされて保持される。
【0078】
図5は、
図4に示した変化形の別の変化形を示している。
【0079】
図5には、ねじり振動減衰器1の変位した位置が示されている。
【0080】
ハブ部分11に設けられた管路23,23’の代わりに、この変化形では、管路が、各羽根12,12’に設けられた絞り27,27’として設けられている。
【0081】
羽根12に設けられた絞り27は、開口27aにより流体チャンバ13の流体チャンバ区域13aに接続されており、反対側に位置する開口27bが、流体チャンバ13の他方の流体チャンバ区域13bへの接続を形成している。
【0082】
他方の羽根12’に設けられた同様に絞り27’は、開口27’aにより流体チャンバ14の流体チャンバ区域14bに接続されており、絞り27’の、反対側に位置する開口27’bが、この絞り27’を流体チャンバ14の他方の流体チャンバ区域14aに接続する。
【0083】
この変化形では、減衰は、流体チャンバ13の流体区域13a,13b間ならびに他方の流体チャンバ14の流体区域14a,14b間での流体の往復圧送によって行われる。
【0084】
図6は、内燃機関のクランクシャフト2のねじり振動を減衰する本発明による方法の概略的なフローチャートを示している。
【0085】
第1の方法ステップVS1では、クランクシャフト2においてねじり振動減衰器1またはねじり振動吸振器を準備する。
【0086】
圧力アキュムレータ15,15’が、第2の方法ステップVS2において、加圧されたガスまたは空気によって調節される。
【0087】
クランクシャフト2のねじり振動は、第3の方法ステップVS3において、内燃機関の運転中に、ねじり振動減衰器1またはねじり振動吸振器によって減衰される。
【0088】
圧力アキュムレータ15,15’の調節は、第2の方法ステップVS2および第3の方法ステップVS3において、ねじり振動減衰器1の回転フィードスルー3を介した外部の供給構成群によって行われる。
【0089】
或る変化形では、ねじり振動減衰器1は、回転フィードスルー3を有していない。したがって、圧力アキュムレータ15,15’および別の絞り24,27,27’が、ねじり振動減衰器1の静止した状態において、第2の方法ステップVS2において調節される。この場合、第3の方法ステップVS3において、ねじり振動の減衰が流体チャンバ13,14間の流体の往復圧送によって行われる。
【0090】
さらに第3の方法ステップVS3では、一方向へのねじり振動減衰器1の変位が過度に強い場合、一方向のオーバフロー管路25,26によって流体チャンバ13,14間のオーバフローが可能にされる。
【符号の説明】
【0091】
1 ねじり振動減衰器
2 クランクシャフト
3 回転フィードスルー
3a,3b 接続区域
4 回転軸線
5 供給構成群
6 制御/ガス供給ユニット
7,8 圧力管路
9 ハウジング
10 はずみ質量体
11 ハブ部分
12,12’ 羽根
12a,12b;12’a,12’b 羽根面
13,14 流体チャンバ
13a,13b;14a,14b 流体チャンバ区域
15,15’ 圧力アキュムレータ
16,16’ ガス区域
17,17’ 流体区域
18,18’ ダイヤフラム
19,19’ ガス管路
20,20’;21,21’ 流体管路
22,22’ 圧力アキュムレータ
22a,22’a チャンバ
22b,22’b ダイヤフラム
23,23’ 管路
23a,23’a;23b,23’b 開口
24 絞り
25,26 オーバフロー管路
25a,25b;26a,26b 開口
27,27’ 絞り
27a,27’a;27b,27’b 開口
VS1,VS2,VS3 方法ステップ
【国際調査報告】