(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】呼吸同期化による高流量呼吸治療装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
A61M16/00 320B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542514
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 KR2021004770
(87)【国際公開番号】W WO2022154175
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0004258
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523264002
【氏名又は名称】メク カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MEK CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョンチョル
(57)【要約】
本発明は、呼吸同期化による高流量呼吸治療が可能な装置に関し、本発明の一実施形態に係る高流量呼吸治療装置は、患者に供給される混合ガスの流量変化及び圧力変化をモニタリングして患者の呼吸パターン情報を収集する呼吸パターンモニタリング部と、患者の呼吸パターン情報から患者が吸気を始めようと努力する吸気努力点を検出する吸気努力点検出部と、患者の呼吸パターン情報から患者が排気を始めようと努力する排気努力点を検出する排気努力点検出部と、患者の呼吸が吸気努力点になると、混合ガスの流量を増加し、患者の呼吸が排気努力点になると、混合ガスの流量を減少させて供給する供給流量制御部と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に供給される混合ガスの流量変化及び圧力変化をモニタリングして前記患者の呼吸パターン情報を収集する呼吸パターンモニタリング部と、
前記患者の呼吸パターン情報から前記患者が吸気を始めようと努力する吸気努力点を検出する吸気努力点検出部と、
前記患者の呼吸パターン情報から前記患者が排気を始めようと努力する排気努力点を検出する排気努力点検出部と、
前記患者の呼吸が前記吸気努力点になると、前記混合ガスの流量を増加し、前記患者の呼吸が前記排気努力点になると、前記混合ガスの流量を減少させて供給する供給流量制御部と、
を含む、呼吸同期化による高流量呼吸治療装置。
【請求項2】
前記呼吸パターンモニタリング部と、前記吸気努力点検出部と、前記排気努力点検出部と、を含んでなり、前記患者の呼吸パターン情報に、前記抽出された吸気努力点及び前記排気努力点を同期化する呼吸同期化部をさらに含み、
前記供給流量制御部は、
前記呼吸同期化部で同期化された吸気努力点及び排気努力点に対して前記混合ガスの流量制御を同期化して遂行することを特徴とする、請求項1に記載の呼吸同期化による高流量呼吸治療装置。
【請求項3】
前記供給流量制御部は、
前記患者の鼻腔を新鮮な空気で換気させることができる水準の流量と前記患者の吸気最大流量をと含む基本流量(bias flow)を定めておき、
前記患者の呼吸が始まると、前記基本流量の混合ガスを供給し、前記吸気努力点になると、前記基本流量に補助流量(assist flow)分だけ増加して供給し、前記排気努力点になると、前記基本流量に減少させて供給することを特徴とする、請求項1に記載の呼吸同期化による高流量呼吸治療装置。
【請求項4】
前記患者の吸気最大流量は、分当たりの呼吸量に対して3~4倍で算出されることを特徴とする、請求項3に記載の呼吸同期化による高流量呼吸治療装置。
【請求項5】
前記吸気努力点検出部は、
前記患者の呼吸パターン情報から、吸気流量の変化が最大である吸気最大努力点と、排気後に再び吸気する前に呼吸がしばらく停止する排気努力停止点をそれぞれ抽出し、抽出された前記排気努力停止点および前記吸気最大努力点を参照の上、それらの間で前記患者が吸気努力を始める前記吸気努力点を検出することを特徴とする、請求項1に記載の呼吸同期化による高流量呼吸治療装置。
【請求項6】
前記吸気努力点検出部は、
前記患者の呼吸パターン情報から、吸気流量の変化が最大である排気最大努力点と、排気完了後、吸気前に呼吸がしばらく停止する排気努力停止点をそれぞれ抽出し、抽出された前記排気最大努力点および前記排気動力停止点を参照の上、それらの間で前記患者が排気努力を始める前記排気努力点を検出することを特徴とする、請求項1に記載の呼吸同期化による高流量呼吸治療装置。
【請求項7】
患者に供給される混合ガスの流量変化、圧力変化のいずれか一つ以上をモニタリングして前記患者の呼吸パターン情報を収集する呼吸パターンモニタリング部と、
前記収集された呼吸パターン情報から前記患者が排気を始めようと努力する排気努力点を検出する排気努力点検出部と、
前記患者の呼吸が始まると、定められた基本流量の混合ガスを供給し、前記呼吸が前記排気努力点になると、前記混合ガスの流量を排気補助流量(relief flow)分だけ減少させて前記患者の排気努力を軽減させる供給流量制御部と、
を含む、呼吸同期化による高流量呼吸治療装置。
【請求項8】
前記呼吸パターンモニタリング部と、前記排気努力点検出部と、を含んでなり、前記患者の呼吸パターン情報に、前記抽出された排気努力点を同期化する呼吸同期化部をさらに含み、
前記供給流量制御部は、
前記呼吸同期化部で同期化された排気努力点に対して前記混合ガスの流量制御を同期化して遂行することを特徴とする、請求項7に記載の呼吸同期化による高流量呼吸治療装置。
【請求項9】
前記基本流量は、
前記患者の鼻腔を新鮮な空気で換気させることができる水準の流量と前記患者の吸気最大流量とを含む流量で選定し、
前記患者の吸気最大流量は、分当たりの呼吸量に対して3~4倍で算出されることを特徴とする、請求項7に記載の呼吸同期化による高流量呼吸治療装置。
【請求項10】
前記排気努力点検出部は、
前記患者の呼吸パターン情報で前記患者の排気流量の変化が最大である排気最大努力点と、前記排気完了後吸気前に呼吸がしばらく停止する排気努力停止点をそれぞれ抽出し、抽出された前記排気最大努力点および前記排気努力停止点を参照の上、それらの間で前記患者が排気努力を始める前記排気努力点を検出することを特徴とする、請求項7に記載の呼吸同期化による高流量呼吸治療装置。
【請求項11】
高流量呼吸治療装置での治療方法であって、
前記装置内の制御部の呼吸パターンモニタリング部において、患者に供給される混合ガスの流量変化及び圧力変化をモニタリングして前記患者の呼吸パターン情報を収集する段階と、
前記制御部の検出部において、前記患者の呼吸パターン情報から前記患者が吸気を始めようと努力する吸気努力点と前記患者が排気を始めようと努力する排気努力点とを検出するか、または前記排気努力点だけを検出する段階と、
前記制御部の供給流量制御部において、前記吸気努力点または前記排気努力点に対応して前記混合ガスの流量を能動的に制御する段階と、
を含む、呼吸同期化による高流量呼吸治療方法。
【請求項12】
前記検出する段階以後、
前記制御部の呼吸同期化部において、前記検出された吸気努力点または前記排気努力点を前記患者の呼吸パターン情報と同期化する段階をさらに含み、
前記混合ガスの流量を制御する段階では、
前記制御部の供給流量制御部が、前記呼吸同期化部で同期化された吸気努力点および排気努力点に対して前記混合ガスの流量制御を同期化して遂行することを特徴とする、請求項11に記載の呼吸同期化による高流量呼吸治療方法。
【請求項13】
前記検出する段階で前記吸気努力点と前記排気努力点を検出した場合、
前記混合ガスの流量を制御する段階では、
前記患者の呼吸が始まると、定められた基本流量(bias flow)の混合ガスを供給し、前記吸気努力点になると、前記基本流量に補助流量(assist flow)分だけ増加して供給し、前記排気努力点になると、前記基本流量に減少させて供給することを特徴とする、請求項11に記載の呼吸同期化による高流量呼吸治療方法。
【請求項14】
前記検出する段階で前記排気努力点のみを検出した場合、
前記混合ガスの流量を制御する段階では、
前記患者の呼吸が始まると、定められた基本流量の混合ガスを供給し、前記呼吸が前記排気努力点になると、前記混合ガスの流量を排気補助流量(relief flow)分だけ減少させ、その後、排気努力の軽減に比例して流量を基本流量まで増加させて維持することで前記患者の排気努力を軽減させることを特徴とする、請求項11に記載の呼吸同期化による高流量呼吸治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高流量呼吸治療器に関し、特に、患者が吸気を始めようとする時点と、排気を始めようとする時点とを検出し、吸気時には高い流量の混合ガスを供給して死腔を減らすとともに、排気時には混合ガスの流量を減少させて患者の努力呼吸を減らすことができる、呼吸同期化による高流量呼吸治療装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高流量呼吸治療とは、大気中の酸素濃度よりも高い高濃度の加温・加湿された空気を患者の呼吸量よりも2~3倍以上高く投与することで、ガス交換が行われない死腔(dead space)を相対的に減少させて患者の呼吸を補助する治療を言う。
【0003】
一般に、空気の大部分は、肺胞内に入ってガス交換が行われ、一部分は呼吸気道に滞留しているが、気道に滞留する空気の容積を死腔(dead space)と呼ぶ。死腔は、実際に呼吸するにあたりガス交換が行われない。
【0004】
例えば、正常人の1回呼吸量が500mlである時、死腔の容積が約150mlであれば、実際の呼吸量は350mlとなる。しかし、呼吸能力が劣って1回呼吸量が300mlしかならない患者は、死腔150mlを除き150mlが実際呼吸量になるので、正常な水準対比半分にもならない呼吸量を有するようになる。このように、患者の呼吸量が死腔よりも十分に大きくない場合、患者には呼吸不全(呼吸不足現象)が生じるようになる。
【0005】
したがって、患者は一層早い呼吸をするようになるか、正常な酸素飽和度を維持するために、多くのエネルギーを消耗するようになるが、これは患者の状態をさらに悪化させる要因になる。
【0006】
これを解決すべく、従来より高流量呼吸治療器を導入して患者に一定した混合ガス流量を投与する方法を利用している。投与方法としては、両鼻孔に細い管を差し込んで耳にかける形態の鼻腔カニューレを利用するか、または酸素マスクを利用することができる。
【0007】
ところが、従来の高流量呼吸治療器は、患者が自発呼吸で吸気する流量よりも患者に投与される供給流量が大きいので、吸気時、患者が呼吸する努力を軽減させるが、排気時には、高流量の鼻腔投入のため、自発呼吸時よりも空気抵抗が増加して患者が排気する努力に負担が加えられることができる。
【0008】
また、患者の吸気開始は、もっぱら患者の呼吸意志に依存するようになるが、これに対し、従来の高流量呼吸治療器は、患者の状態によって変わることができる吸気及び排気時点に関係なく、同一の流量で混合ガスを投与するので、高流量治療法の効果はあるものの、患者の吸気努力または排気努力に負担を減らすことができないという問題点がある。
【0009】
特に、鼻腔カニューレを利用した高流量呼吸治療は、同一の流量の混合ガスを供給しても、患者の鼻孔の大きさ、カニューレの装着状態、鼻腔及び上気道の解剖学的な特徴によって、抵抗度、嵩及び努力呼吸が異なるように検出されて、同期検出(吸排気時点検出)の技術的な困難によって排気努力を軽減させる能動的な呼吸治療を施しにくいという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのもので、患者の吸気を始めようとする時点と、排気を始めようとする時点とを検出し、吸気時には高い流量の混合ガスを供給して死腔を減らし、排気時には混合ガスの流量を減少させて患者の努力呼吸を減らすことができる、呼吸同期化による高流量呼吸治療装置及び方法を提供することにその目的がある。
【0011】
また、本発明は、患者が排気を始めようとする時点のみを検出し、普段は基本流量の混合ガスを供給するが、患者の吸気が完了して排気が始まると、基本流量よりも低めた排気補助流量の混合ガスを供給することで患者の排気努力を軽減させ、患者の排気努力の軽減に比例して流量を増加させて基本流量に戻す、呼吸同期化による高流量呼吸治療装置及び方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る呼吸同期化による高流量呼吸治療装置は、患者に供給される混合ガスの流量変化及び圧力変化をモニタリングして前記患者の呼吸パターン情報を収集する呼吸パターンモニタリング部と、前記患者の呼吸パターン情報から前記患者が吸気を始めようと努力する吸気努力点を検出する吸気努力点検出部と、前記患者の呼吸パターン情報から前記患者が排気を始めようと努力する排気努力点を検出する排気努力点検出部と、前記患者の呼吸が前記吸気努力点になると、前記混合ガスの流量を増加し、前記患者の呼吸が前記排気努力点になると、前記混合ガスの流量を減少させて供給する供給流量制御部と、を含む。
【0013】
また、本発明の一実施形態に係る呼吸同期化による高流量呼吸治療装置は、前記呼吸パターンモニタリング部と、前記吸気努力点検出部と、前記排気努力点検出部と、を含んでなり、前記患者の呼吸パターン情報に、前記抽出された吸気努力点及び前記排気努力点を同期化する呼吸同期化部をさらに含み、前記供給流量制御部は、前記呼吸同期化部で同期化された吸気努力点及び排気努力点に対して前記混合ガスの流量制御を同期化して遂行することができる。
【0014】
一方、本発明の他の実施形態に係る呼吸同期化による高流量呼吸治療装置は、患者に供給される混合ガスの流量変化と圧力変化のいずれか一つ以上をモニタリングして前記患者の呼吸パターン情報を収集する呼吸パターンモニタリング部と、前記収集された呼吸パターン情報から前記患者が排気を始めようと努力する排気努力点を検出する排気努力点検出部と、前記患者の呼吸が始まると、定められた基本流量の混合ガスを供給し、前記呼吸が前記排気努力点になると、前記混合ガスの流量を排気補助流量(relief flow)分だけ減少させて前記患者の排気努力を軽減させる供給流量制御部と、を含む。
【0015】
また、本発明の他の実施形態に係る呼吸同期化による高流量呼吸治療装置は、前記呼吸パターンモニタリング部と、前記排気努力点検出部と、を含んでなり、前記患者の呼吸パターン情報に、前記抽出された排気努力点を同期化する呼吸同期化部をさらに含むことができる。この時、前記供給流量制御部は、前記呼吸同期化部で同期化された排気努力点に対して前記混合ガスの流量制御を同期化して遂行する。
【0016】
一方、本発明の実施形態に係る呼吸同期化による高流量呼吸治療方法は、高流量呼吸治療装置での治療方法であって、前記装置内の制御部の呼吸パターンモニタリング部において、患者に供給される混合ガスの流量変化及び圧力変化をモニタリングして前記患者の呼吸パターン情報を収集する段階と、前記制御部の検出部において、前記患者の呼吸パターン情報から前記患者が吸気を始めようと努力する吸気努力点と前記患者が排気を始めようと努力する排気努力点とを検出するか、または前記排気努力点だけを検出する段階と、前記制御部の供給流量制御部において、前記吸気努力点または前記排気努力点に対応して前記混合ガスの流量を能動的に制御する段階と、を含む。
【0017】
前記検出する段階の以後、前記制御部の呼吸同期化部において、前記検出された吸気努力点または前記排気努力点を前記患者の呼吸パターン情報と同期化する段階をさらに含むことができ、この場合、前記混合ガスの流量を制御する段階では、前記制御部の供給流量制御部が、前記呼吸同期化部で同期化された吸気努力点および排気努力点に対して前記混合ガスの流量制御を同期化して遂行する。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明によれば、患者が吸気時に患者の鼻腔を新鮮な空気で換気させるに十分な高い流量の混合ガスを供給することにより、臨床的に死腔を減少させるとともに、患者の呼気時には排気呼吸の努力を軽減させることで、患者の努力呼吸を軽減させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る高流量呼吸治療装置の構成を示した図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る高流量呼吸治療装置の構成を示した図である。
【
図3】
図1及び
図2の装置における本発明の第1の実施形態に係る呼吸同期化による高流量呼吸治療装置の構成を示した図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態によって混合ガスの流量変化をモニタリングした値を示したグラフである。
【
図5】本発明の第1の実施形態によって患者呼吸変化による患者吸気努力点および排気努力点を抽出する例を示す波形図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態によって患者呼吸変化による患者吸気努力点および排気努力点を抽出する例を示す波形図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る呼吸同期化による高流量呼吸治療方法を説明するための動作流れ図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る呼吸同期化による高流量呼吸治療装置の構成を示した図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態によって混合ガスの流量変化をモニタリングした値を示したグラフである。
【
図10】本発明の第2他の実施形態によって患者呼吸変化による患者排気努力点を抽出する例を示す波形図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る呼吸同期化による高流量呼吸治療方法を説明するための動作流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態を添付された図面を参照して詳しく説明する。
【0021】
図1及び
図2は本発明に実施形態に係る高流量呼吸治療器の構成を示した図である。
【0022】
本発明の実施形態に係る呼吸同期化による高流量呼吸治療装置100は、酸素及び空気を含む混合ガスを生成する混合ガス生成部、流量センサー(
図1及び
図2の110)、ブロワー(
図1及び
図2の120)、圧力センサー(
図1及び
図2の130)、加湿部(
図1及び
図2のHF1)、供給ホース(
図1及び
図2の140)を備えた鼻腔カニューレ(
図1及び
図2のC1)、および制御部(
図1及び
図2の150)を含むことができる。
【0023】
流量センサーFS1は、センシングしようとする位置及び構成によってブロワー120の前端(
図1参照)またはブロワー120の後端(
図2参照)に設置されることができる。
【0024】
圧力センサー130は、さらに、
図1及び
図2のP2のように、患者に身近に配置されることができる。後端の圧力センサー160は、患者に供給される流量、圧力を実際と近接するように測定することができるという長所があるが、鼻腔カニューレ140の離脱時またはカニューレ140の装着状態によって測定結果が大きく変わることができる。このような構成によって高流量呼吸治療装置100は、大気中の酸素濃度よりも高い濃度の加温、加湿された混合ガスを患者に投与するが、患者の呼吸時点に関与して吸気時点と排気時点に応じて混合ガスの流速、流量を調節して投与することに特徴がある。
【0025】
また、本発明の実施形態に係る高流量呼吸治療装置100は、患者の鼻孔の大きさ、カニューレの装着状態、鼻腔及び上気道の解剖学的特徴による抵抗度、嵩及び努力呼吸が異なるように検出される問題を解決するために、患者に供給される圧力と流量に基づいて吸気時点および排気時点を検出して患者の呼吸サイクルと同期化する。このために、制御部150は、治療前の患者の呼吸をモニタリングして同期化する呼吸同期化過程が先行されなければならない。
【0026】
したがって、本発明の実施形態に係る高流量呼吸治療装置100は、制御部150で同期化された吸気時点および排気時点を参照の上、各吸気時点または排気時点に混合ガスの流量を増加または減少させることで患者の努力呼吸を軽減させる。
【0027】
具体的に、本発明の実施形態に係る呼吸同期化による高流量呼吸治療装置100の二つの同期化方法を提供する。
【0028】
第1の実施形態
図3は、
図1及び
図2の装置における本発明の第1の実施形態に係る呼吸同期化による高流量呼吸治療装置の構成を示した図であり、
図4は、本発明の第1の実施形態によって混合ガスの流量変化をモニタリングした値を示したグラフであり、
図5及び
図6は、本発明の第1の実施形態によって患者呼吸変化による患者吸気努力点および排気努力点を抽出する例を示す波形図である。
【0029】
理解の便宜を助けるために、
図4~
図6に示された波形を参照して
図3を説明する。
【0030】
本発明の第1の実施形態に係る高流量呼吸治療装置の制御部150Aは、呼吸パターンモニタリング部1511と、吸気努力点検出部1512および排気努力点検出部1513を含んでなる呼吸同期化部1510と、吸排気による供給流量制御部1520と、を含む。
【0031】
ここで、吸排気による供給流量制御部1520は、呼吸同期化部1510と連動して供給流量を制御する構成であり、同一な機能で流量を制御する制御部であっても機能的な役割によって仕分けられる。
【0032】
呼吸パターンモニタリング部1511は、高流量呼吸治療装置(
図1及び
図2の100)の流量センサーと圧力センサーを用いて患者に供給される混合ガスの流量変化及び圧力変化をモニタリングする。このようなモニタリングを通じて患者の呼吸パターン情報を収集する。
【0033】
また、
図5の呼吸パターン情報および努力呼吸情報は、流量センサーおよび圧力センサーから検出される流量及び圧力の情報を含むことができる。
図5に示された患者呼吸関連波形は、患者の流量が吸気努力点で増加し、排気努力点で下降することを確認することができる。
【0034】
吸気努力点検出部1512は、呼吸パターンモニタリング部1511で収集された患者の呼吸パターン情報から患者が吸気を始めようと努力する吸気努力点(
図5のA)を検出する。
【0035】
これと同時に、排気努力点検出部1513は、呼吸パターンモニタリング部1511で収集された呼吸パターン情報から患者が排気を始めようと努力する排気努力点(
図5のB)を検出する。
【0036】
具体的に、吸気努力点検出部1512は、患者の呼吸パターン情報から、吸気流量の変化が最大である吸気最大努力点(
図5のC)と、排気後に再び吸気する前に呼吸がしばらく停止する排気努力停止点(
図5のE)をそれぞれ抽出し、抽出された排気努力停止点(
図5のE)および吸気最大努力点(
図5のC)を参照の上、それらの間で患者が吸気努力を始める(開始する)吸気努力点(
図5のA)を検出する。
【0037】
この時、吸気努力点検出部1512は、一サイクルの間の患者呼吸流量を加算し、その個数で割った平均値から排気努力停止点を検出して、その排気努力停止点を零点として吸気最大努力点及び排気最大努力点が相対的にどこに位置するかを抽出することができる。
【0038】
また、吸気努力点検出部1512は、少なくとも二つのサイクルを参照して一番目のサイクルにおける排気努力停止点(
図5のE)と二番目のサイクルにおける吸気最大努力点(
図5のC)との間のスカラー値(scalar value)を算出し、算出されたスカラー値を基準として当該吸気最大努力点(
図5のC)から10~30%の所定範囲に該当する値を吸気努力点(
図5のA)として検出することができる。もしくは、吸気努力点検出部1512は、一番目のサイクルにおける排気努力停止点(
図5のE)と二番目のサイクルにおける吸気最大努力点(
図5のC)との間の傾きを算出し、算出された傾きに基づいて吸気努力点(
図5のA)を検出してもよい。
【0039】
10~30%の範囲は、患者の状態、カニューレの装着状態などによって異なるように設定されてもよい。
【0040】
努力点及び停止点は、下記の式と関係して算出される。
【0041】
[式1]
Effort=Pressure×Volume/time=Pressure×FlowL/min
【0042】
排気努力点検出部1513は、患者の呼吸パターン情報から、患者の排気流量の変化が最大である排気最大努力点(
図5のD)と、排気完了後かつ吸気前に呼吸がしばらく停止する排気努力停止点(
図5のE)とをそれぞれ抽出し、抽出された排気最大努力点(
図5のD)と排気努力停止点(
図5のE)を参照の上、それらの間で患者が排気努力を始める(開始する)排気努力点(
図5のB)を検出する。
【0043】
排気努力停止点(
図5のE)は、一サイクルの間の患者呼吸流量を加算してその個数で割った平均値から抽出可能である。
【0044】
排気努力点検出部1513は、排気努力停止点(
図5のE)を零点として排気最大努力点が相対的にどこに位置するかを抽出することができる。
【0045】
また、排気努力点検出部1513は、少なくとも二つのサイクルを参照して一番目のサイクルにおける排気努力停止点(
図5のE)と二番目のサイクルにおける排気最大努力点(
図5のD)との間のスカラー値(scalar value)を算出し、算出されたスカラー値を基準として、排気最大努力点(
図5のD)から10~30%の所定範囲以下に該当する値を排気努力点として検出することができる。もしくは、一番目のサイクルにおける排気努力停止点(
図5のE)と二番目のサイクルにおける排気最大努力点(
図5のD)との間の傾きを算出し、算出された傾きに基づいて排気努力点を検出してもよい。
【0046】
このように検出された吸気努力点Aおよび排気努力点Bは、時間的に各吸気最大努力点Cおよび排気最大努力点Dになる前の時点に当たる。したがって、吸気努力点、排気努力点の時点で流量を制御して供給すると、患者が最大に吸気または排気する時点においては、患者の吸気努力または排気努力を効果的に減らすようになる。
【0047】
呼吸同期化部1510は、呼吸パターンモニタリング部1511と、吸気努力点検出部1512と、排気努力点検出部1513とを含んで構成され、患者の呼吸パターン情報に、吸気努力点検出部1512及び排気努力点検出部1513から抽出された吸気努力点と排気努力点をそれぞれ同期化する。これによって、呼吸同期化部1510は、患者の呼吸サイクルに吸気時点および排気時点が同期化されるものである。
【0048】
供給流量制御部1520は、呼吸同期化部1510で同期化された吸気努力点および排気努力点に対して、混合ガスの流量制御も同期化して遂行する。
【0049】
すなわち、患者の呼吸サイクルにて吸気努力点になると、供給流量制御部1520は、この時点に同期化して混合ガスの流量を増加し、排気努力点になると、混合ガスの流量を減少させて供給する。
【0050】
このとき、供給流量制御部1520は、患者の鼻腔を新鮮な空気で換気させることができる水準の流量を基本流量(bias flow)として定め、普段は基本流量で供給し、吸気時に基本流量に補助流量(assist flow)分だけ増加して供給する。
【0051】
補助流量は、患者の状態、患者の呼吸の大きさ、カニューレの装着状態などによって変わることができる。
【0052】
鼻腔を新鮮な空気で満たす水準の流量は、臨床学的または解剖学的な基準で決めることができる。
【0053】
したがって、本発明の第1の実施形態に係る高流量呼吸治療装置は、カニューレ装着後に患者の呼吸が始まるかまたは作動が始まる場合、制御部150Aの制御を通じて基本流量の混合ガスを供給し、吸気努力点になると基本流量に補助流量分だけ増加した吸気流量を供給する。吸気流量を持続的に供給し、患者の吸気が終わって排気努力点が検出されれば吸気流量を減少させて基本流量に切り替える動作を行う。
【0054】
このような動作によって
図4に示した波形のような供給流量が現われる。
【0055】
一方、
図5の下段に示された波形は、本発明の第1の実施形態による装置の呼吸同期化過程を、基本流量(bias flow)を基準として行った結果、患者の努力呼吸に対する波形を示している。
【0056】
図5において、サイクルが始まる基準ラインは、基本流量に相応する値となる。
【0057】
一方、
図6は、本発明の第1の実施形態による装置の呼吸同期化過程を基本流量だけではなく、吸気流量を基準として行った結果であって、患者の努力呼吸に対する波形を示している。
【0058】
すなわち、前半のサイクルは、基本流量で呼吸同期化過程を遂行した波形であり、後半のサイクルは、吸気流量(基本流量+補助流量)で呼吸同期化過程を遂行した波形である。前半のサイクルと後半のサイクルとの間の基準ラインが変わったことが確認できる。
【0059】
このような同期化方法は、治療流量が変更される場合に適用可能であり、新しい流量に合わせて呼吸同期化する過程であると認められる。
【0060】
なお、
図6の実施形態では吸気努力点及び排気努力点を検出する時、
図4の混合ガス流量とマッチングしてみれば、吸気努力点は、基本流量を供給する際に発生し、排気努力点は、吸気流量を供給する際に発生する時点である。したがって、各努力点を検出する際には、とりわけ、吸気努力点を検出する際には、基本流量を同期化して基本流量から検出することが有利であり、排気努力点を検出する際には吸気流量から検出するのが有利である。これは検出方法の一例であり、これに限定するものではなく、流量に関係なく、基本流量から検出してもよい。
【0061】
一方、
図7は、本発明の第1の実施形態に係る呼吸同期化による高流量呼吸治療方法を説明するための動作流れ図である。
【0062】
最初に、S100A段階で、制御部150Aが患者の努力呼吸を感知するために呼吸同期化過程を行う。
【0063】
具体的に、制御部150Aでの呼吸パターンモニタリング部1511が患者に供給される混合ガスの流量変化及び圧力変化をモニタリングして患者の呼吸パターン情報を収集する。
【0064】
その後、制御部150Aの検出部が前記過程で収集された患者の呼吸パターン情報から患者が吸気を始めようと努力する吸気努力点と患者が排気を始めようと努力する排気努力点を検出するか、もしくは排気努力点だけを検出する。
【0065】
例えば、制御部150Aの吸気努力点検出部1512は、吸気努力点を検出し、制御部150Aの排気努力点検出部1513は、排気努力点を検出する。
【0066】
その以後、制御部150Aの呼吸同期化部1510が、検出された吸気努力点および排気努力点を患者の呼吸パターン情報と同期化する。
【0067】
一般に、患者の吸気開始は、患者の呼吸意志によるが、このような呼吸同期化過程を通じて実際の患者の吸気時点および排気時点を呼吸サイクルにそれぞれ同期化し得るようになる。
【0068】
次いで、S200A段階で、制御部150Aの供給流量制御部1520が吸気努力点または排気努力点に対応して混合ガスの流量を能動的に制御し、特に、流量制御も呼吸同期化部で同期化された吸気努力点および排気努力点に同期化して遂行することができる。
【0069】
具体的に、供給流量制御部1520は、患者の呼吸が始まると、定められた基本流量(bias flow)の混合ガスを供給し、吸気努力点になると、基本流量に補助流量(assist flow)分だけ増加して供給し、排気努力点になると、基本流量に減少させて供給する。
【0070】
次に、S300A段階で、ユーザまたは医師の操作によって、同期化追加命令があれば制御部150Aが再びS100A段階に移動して動作し、同期化終了が操作されればこの動作を終了する。
【0071】
第2の実施形態
図8は、本発明の第2の実施形態に係る呼吸同期化装置の構成を示した図であり、
図9は、本発明の第2の実施形態によって混合ガスの流量変化をモニタリングした値を示したグラフであり、
図10は、本発明の第2他の実施形態によって患者呼吸変化による患者排気努力点を抽出する例を示す波形図である。
【0072】
まず、
図8を参照すれば、本発明の第2の実施形態に係る高流量呼吸治療装置は、制御部150Bとして、呼吸パターンモニタリング部1511と、排気努力点検出部1513を含む呼吸同期化部1510と、供給流量制御部1520とを含む。
【0073】
各部の機能は、第1の実施形態による構成要素と同様な機能を遂行する。ただし、第2の実施形態では排気努力点のみを検出して混合ガスの流量を制御しており、供給流量制御部1520の動作だけが異なっている。
【0074】
呼吸パターンモニタリング部1511は、患者に供給される混合ガスの流量変化、圧力変化のいずれか一つ以上をモニタリングして患者の呼吸パターン情報を収集する。
【0075】
排気努力点検出部1513は、呼吸パターンモニタリング部1511で収集された呼吸パターン情報から患者が排気を始めようと努力する排気努力点を検出する。検出方法は、前述したものと同様である。
【0076】
呼吸同期化部1510は、呼吸パターンモニタリング部1511と排気努力点検出部1513とを含んで構成され、患者の呼吸パターン情報に、排気努力点検出部1513から排気努力点を同期化する。これによって、患者の呼吸サイクルに排気時点が同期化される。
【0077】
供給流量制御部1520は、呼吸同期化部1510で同期化された排気努力点に対して混合ガスの流量制御も同期化して遂行する。
【0078】
すなわち、供給流量制御部1520は、患者の呼吸が始まると、定められた基本流量(bias flow)で供給して維持し、排気努力点になると、混合ガスの流量に排気補助流量(relief flow)分だけ減少させた排気流量で供給することで患者の排気努力を軽減させる。その以後、排気努力が減ると、
図9に示しているように排気努力の軽減に比例して流量を増加させる。基本流量まで増加されれば次の排気努力点が検出されるまで基本流量を維持する。
【0079】
第2の実施形態において、基本流量(bias flow)は、患者の鼻腔を新鮮な空気で換気させることができる水準の流量と患者の吸気最大流量とを含むように定められる。
【0080】
患者の吸気最大流量は、臨床学的に、分当たりの呼吸量の3~4倍で決めることができる。分当たりの呼吸量は、[1回呼吸量]×[分当たりの呼吸数]で算定する。
【0081】
例えば、成人を基準に1回呼吸量が500mlであり、平均分当たりの呼吸数が14回であると仮定すると、分当たりの呼吸量は、おおよそ7L/分になり、これによって吸気最大流量は20~30LPMで決定される。
【0082】
このように、鼻腔を新鮮な空気で満たす水準の流量および患者の吸気最大流量は、臨床学または解剖学的な基準で決めることができる。
【0083】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る装置の呼吸同期化過程を、基本流量(bias flow)を基準にして遂行した結果、患者の排気努力に対する波形を示している。
【0084】
以下、本発明の第2の実施形態に係る高流量呼吸治療装置の動作を説明する。
【0085】
図11を参照すれば、初めてS100B段階で、制御部150Bが患者の努力呼吸を感知するために呼吸同期化過程を遂行する。
【0086】
具体的に、制御部150Bでの呼吸パターンモニタリング部1511が患者に供給される混合ガスの流量変化及び圧力変化をモニタリングして患者の呼吸パターン情報を収集する。
【0087】
その以後、制御部150Bの排気努力点検出部1513が前記過程を通じて収集された患者の呼吸パターン情報から患者が排気を始めようと努力する排気努力点のみを検出する。
【0088】
その後、制御部150Bの呼吸同期化部1510が、検出された排気努力点を患者の呼吸パターン情報と同期化する。
【0089】
次のS200B段階で、制御部150Bの供給流量制御部1520が排気努力点に対応して混合ガスの流量を能動的に制御するが、特に、流量制御も呼吸同期化部1510で同期化された排気努力点に同期化して遂行することができる。
【0090】
具体的に、供給流量制御部1520が、患者の呼吸が始まると、所定の基本流量(bias flow)の混合ガスを供給し、排気努力点になると、混合ガスの流量を、排気補助流量(relief flow)分だけ減少させて供給する。その後、排気努力の軽減に比例して流量を増加させて、基本流量に到逹すると、次回の排気努力検出時まで基本流量を維持する。
【0091】
次のS300B段階で、ユーザまたは意思の操作によって同期化追加命令があると、制御部150Bが再びS100B段階に移動して動作し、同期化終了が操作されればこの動作を終了する。
【0092】
以上の説明は、本発明を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者によって本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。したがって、本発明の明細書に開示された実施形態は、本発明を限定するものではない。本発明の範囲は、下記特許請求の範囲によって解釈されなければならなく、本願出願当時においてこれらを代替可能な多様な均等物と変形例は、本発明の範囲に属するものと解釈しなければならない。
【0093】
多様な実施例が本発明を実施するための最良の形態で説明された。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は呼吸同期化による高流量呼吸治療装置に関連する分野で用いられる。
【0095】
本発明の思想や範囲を外れることなく、本発明で種々な変更及び変形が可能であるということは当業者にとって自明である。それゆえ、本発明は、添付の請求範囲及びその均等範囲内で提供される本発明の変更及び変形を含むものと意図される。
【国際調査報告】