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特表2024-502868タンブリングしている宇宙物体の捕獲のための方法及びデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】タンブリングしている宇宙物体の捕獲のための方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/64 20060101AFI20240116BHJP
   B64G 1/22 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B64G1/64 600
B64G1/22 100B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542552
(86)(22)【出願日】2021-10-21
(85)【翻訳文提出日】2023-07-11
(86)【国際出願番号】 JP2021038917
(87)【国際公開番号】W WO2022153639
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】63/137,680
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523263223
【氏名又は名称】株式会社アストロスケールホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140648
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】マイク リンジー
(57)【要約】
本発明の一態様によれば、サービス宇宙船を物体へと推進することと、サービス宇宙船バスから離れる方へ1つ以上のカウンタマスを展開させて、空のボリューム内でサービス宇宙船の質量中心をオフセットすることと、サービス宇宙船を物体に接近させることと、サービス宇宙船の質量中心を、物体の質量中心とほぼ同じ位置に位置決めすることと、サービス宇宙船に角運動量を与えて物体のタンブル率に一致させることと、サービス宇宙船に対する1つ以上の機械的取り付け部によって物体に接触することと、を含む方法が提供される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービス宇宙船を物体へと推進することと、
サービス宇宙船バスから離れる方へ1つ以上のカウンタマスを展開させて、空のボリューム内で前記サービス宇宙船の質量中心をオフセットすることと、
前記サービス宇宙船を前記物体に接近させることと、
前記サービス宇宙船の質量中心を、前記物体の質量中心とほぼ同じ位置に位置決めすることと、
前記サービス宇宙船に角運動量を与えて前記物体のタンブル率に一致させることと、
前記サービス宇宙船に対する1つ以上の機械的取り付け部によって前記物体に接触することと、
を含む、方法。
【請求項2】
イオンビーム、電磁誘導、磁気トルク、及び流体力の使用のうち1つ以上を用いて前記物体にトルクを加えることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バスと、1つ以上のカウンタマスと、前記バス及び前記1つ以上のカウンタマスを接続するトラスと、を備える宇宙船であって、
前記トラスは、前記バスから離れる方へ前記1つ以上のカウンタマスを展開させて、空のボリューム内で前記宇宙船の質量中心をオフセットするように構成されている、宇宙船。
【請求項4】
カウンタマスの数は、2から3の範囲内である、請求項3に記載の宇宙船。
【請求項5】
物体を把持する1つ以上の機械的取り付け部を更に備える、請求項3又は4に記載の宇宙船。
【請求項6】
イオンビーム、電磁誘導、及び流体力の使用のうち1つ以上を生成するための機器を更に備える、請求項3から5の何れか一項に記載の宇宙船。
【請求項7】
前記トラスの構造は、拡張可能である、請求項3から6の何れか一項に記載の宇宙船。
【請求項8】
前記トラスの構造は、折り畳み可能である、請求項3から7の何れか一項に記載の宇宙船。
【請求項9】
前記トラスの構造は、充分なクリアランスで展開するように構成されている、請求項3から8の何れか一項に記載の宇宙船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明の実施形態は、タンブリングしている(tumbling)宇宙物体の捕獲のための方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 外部制御トルクを用いて軌道内の物体の角速度を減衰させるため、様々な手法が提案されている。これはデタンブリング(detumbling)として知られるプロセスである。
【0003】
[0003] 例えば米国特許第8,226,046B2号は、不安定なスペースデブリを安定化させる方法を開示している。この方法は、不安定なスペースデブリ上のターゲットポイントで不安定なスペースデブリに力を加えて、安定化されたスペースデブリを生成することを含む。この力は、隣接した衛星によって与えられたガスプルームが不安定なスペースデブリに空気衝突することにより生成される。この力は、不安定なスペースデブリの回転軸の1つ以上を中心とする回転運動量を低減させるトルクを不安定なスペースデブリ上で発生させるのに充分なものである。
【0004】
[0004] しかしながら、従来技術の方法は、軌道内の物体の角速度を安全かつ経済的に減衰させることが不可能であることを含めて、大きな制限がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8,226,046B2号
【発明の概要】
【0006】
[0007] 上述の状況に鑑み、本発明の態様は、軌道内の物体の角速度を減衰させることができる、タンブリングしている宇宙物体の捕獲のための方法及びデバイスを提供する。
【0007】
[0008] 本発明の一態様によれば、サービス宇宙船(servicing spacecraft)を物体へと推進することと、サービス宇宙船バスから離れる方へ1つ以上のカウンタマスを展開させて、サービス宇宙船の質量中心をオフセットすることと、サービス宇宙船を物体に接近させることと、サービス宇宙船の質量中心を、物体の質量中心とほぼ同じ位置に位置決めすることと、サービス宇宙船に角運動量を与えて物体のタンブル率(tumble rate)に一致させることと、サービス宇宙船に対する1つ以上の機械的取り付け部によって物体に接触することと、を含む方法が提供される。
【0008】
[0009] 本発明の別の態様によれば、バスと、1つ以上のカウンタマスと、バス及び1つ以上のカウンタマスを接続するトラスと、を備える宇宙船が提供される。トラスは、バスから離れる方へ1つ以上のカウンタマスを展開させて、空のボリューム内で宇宙船の質量中心をオフセットするように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[0010] 打ち上げのための格納構成にあるカウンタマス及び宇宙船バスを示す。
図2】[0010] カウンタマスと宇宙船バスを接続する拡張可能かつ折り畳み可能なトラス構造の展開を示す。
図3】[0010] 拡張可能かつ折り畳み可能なトラス構造によって接続された宇宙船バス及びカウンタマスのシステムに角運動量を与える宇宙船バスを示す。
図4】[0010] 打ち上げのための格納構成にある2つのカウンタマス及び宇宙船バスを示す。
図5】[0010] 2つのカウンタマスと宇宙船バスを接続する拡張可能かつ折り畳み可能なトラス構造の展開を示す。
図6】[0010] 拡張可能かつ折り畳み可能なトラス構造によって接続された宇宙船バス及び2つのカウンタマスのシステムに角運動量を与える宇宙船バスを示す。
図7】[0010] 3つの軸を中心として任意にタンブリングしているクライアント物体に接近する宇宙船を示す。
図8】[0010] クライアント物体に質量中心を位置合わせしている宇宙船を示す。
図9】[0010] 角運動量を用いてクライアント物体のタンブル率に一致させて全ての相対運動をゼロにする宇宙船を示す。
図10】[0010] ゼロの相対速度及び回転でクライアント物体を安全に把持している宇宙船を示す。
図11】[0010] 1つ以上のカウンタマスを設計するコンピュータ実施方法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0011] 添付図面を参照して本発明を示す実施形態を説明する。各図において、同一の符号で示される構成要素は同一又は同様の構成を有することに留意するべきである。
【0011】
[0012] スペースデブリ及び放置された衛星は、宇宙空間で任意の軸を中心としてタンブリングしていることが予想される。このような物体を除去するには、最初にデタンブリングを行うため、次いで物体を軌道から外すため、サービス宇宙船による物理的接触が必要である。
【0012】
[0013] 物体がサービス宇宙船に対して大きい相対速度量又は相対回転量を有する場合、物理的接触を試みると、双方の物体に対する衝突及び衝撃リスクが生じ、損傷が発生するか又はスペースデブリが増加する可能性がある。従って、以下の動作のいずれかを実行することにより相対速度及び回転を低減することが理想的である。
【0013】
[0014] オプション1:イオンビーム、電磁誘導、又は流体力の使用のような非接触手段によって、物体の絶対回転率を低下させる。
【0014】
[0015] オプション2:推進力を用いて、物体を中心とした強制運動軌道内にサービス宇宙船を乗せることで、タンブル率に一致させて相対回転をゼロにする。
【0015】
[0016] オプション1は、まだ証明されておらず、タンブリングしている物体に対する追加ダメージのリスクがあり、通常、サービス宇宙船に搭載されたリソースの消費を必要とする。
【0016】
[0017] オプション2は、ゼロ相対運動を達成するために頻繁かつ高い推力が必要である。また、これは、サービス宇宙船に搭載された燃料リソースの著しい消費を必要とする。
【0017】
[0018] 双方の場合において、リソースの消費は、捕獲対象の物体の数に応じた大きい打ち上げ質量を必要とし、これはコストを大幅に増大させる。
【0018】
[0019] 消費可能リソースを使用しない、物体とサービス宇宙船との相対回転率をゼロにする方法は、理論的には無制限の捕獲を可能とする。本明細書に記載されている実施形態は、物体に対するゼロ相対回転を達成するため、機械的に生成することができる角運動量を用いる新規のソリューションを提案する。機械的に生成された運動量は、大量のリソースの消費を必要としない。
【0019】
[0020] 本発明は一般に、タンブリングしているスペースデブリの捕獲のための方法及びデバイスに関し、この方法及びデバイスは軌道内の物体の角速度を減衰させることができる。
【0020】
[0021] 図1は、打ち上げのための格納構成にある宇宙線バス1及びカウンタマス3を示す。
【0021】
[0022] 宇宙機(space vehicle)の構造体及び基本システムは、一般的に宇宙線バスと呼ばれる。バスは、宇宙船の主要サブシステムを支持する宇宙船基礎構造に対して適用され得る一般名称である。これまでに打ち上げられた全ての宇宙船は、バス筐体電子機器及びコンピュータを有する。宇宙線バス1は例えば、Boeing DS&S 702、Lockheed Martin Space Systems A2100 Alphabus、INVAP ARSAT-3K、Airbus D&S Eurostar、ISRO I-1K、I-2K、I-3K、I-4K、I-6K、及びIndian Mini Satelliteバス、NASA Ames MCSB、SSL 1300、Orbital ATK GEOStar、及び、Mitsubishi Electric DS2000とすることができる。本発明の実施形態は、様々な製造業者から供給された様々なコンポーネントを用いて組み立てたカスタムバスを利用してもよい。いくつかのミッションプロファイルでは、非常に高度な推進システムが必要となる場合がある。標準的な宇宙船ミッションでは、バスを特別に構成する必要がない場合がある。本発明に従ったミッションは、市販のバスでは達成できない独特の要求を有し得る。そういった事例では、例えばコンピュータ、電力系統、及びペイロードをカスタム設計して組み立てる。
【0022】
[0023] カウンタマス3は、体積効率が高い球形とするか、又は容易に製造できる可能性のある立方体とすることができる。カウンタマス3は、アルミニウム又は他の金属から作製され得る。スチールは質量効率が高いが、大気中で容易に燃えないので、この材料を用いることは理想的でない場合がある。また、カウンタマスがデータ処理を行わない(dumb)又は単一目的用である必要はないことに留意するべきである。言い換えると、カウンタマスは、バッテリ、燃料、スラスタ、センサ、リアクションホイール、又は、サービス機(servicer)が使用する他の高密度機器を収容し得る。このようにカウンタマスは、サービス機の全体的な質量を低減して二重の目的を果たし、全質量を「2倍にする」必要性をなくすことができる。
【0023】
[0024] 図2は、カウンタマス3と宇宙線バス1を接続するトラス構造5の展開を示す。
【0024】
[0025] トラスは、剛性構造を生成するビーム部材又は他の要素のアセンブリである。いくつかの実施形態において、トラスは、三角形の固有安定性及び重量配分から利点を得る構造である。三角形から成る網を連結して、構造全体に均等に応力を分布させることにより、多くの実用的な利点を提供することができる。
【0025】
[0026] トラス構造5は、アルミニウムで、又は炭素繊維強化ポリマー(CFRP:carbon fiber reinforced polymer)等の複合材料で作製され得る。円形のトラスは、極めて大型のアンテナ反射器を静止軌道内に展開するため一般的に用いられる円形輪状トラス構造に類似していると考えられる。拡張可能かつ収縮可能なトラス構造では、ある範囲内のターゲット物体サイズに対して1つのサイズが適しているが、収縮は技術的に難しいので、例えば1~5m及び10mのように異なる直径クラスのトラス構造を有することが有利であり得る。宇宙船のロボットアームの長さは、物体とサービス機との間の最大範囲を規定する。より長いロボットアームでは、より小さい物体を捕獲するため、より大きいトラス構造を用いることが可能となる。
【0026】
[0027] 収縮可能なトラス構造5の構成では、ケーブル及び滑車システムを用いることができ、これは円形トラス構造には特に適している。直線アームトラス構造では、継手のモータを用いてアームを折り曲げることができる。収縮が不可能な構成では、展開のためにばねを用いるか、又は炭素繊維テープばねを用いることができる。
【0027】
[0028] トラス構造5を展開するために充分なクリアランスは、捕獲対象の物体のサイズに依存する。充分なクリアランスによって、回転による物体の周回(circumnavigation)と、クライアント物体よりも直径が大きい空のボリューム(empty volume)と、を可能とする。安全のため特定のクリアランスが必要であるが、クリアランスはロボットアームの長さによって制限される。1つの例示的な実施形態では約2メートルのロボットアームを用いるが、もっと長いロボットアームも可能である。従って、トラス構造はクライアント物体から2メートル以内で展開する必要があり得る。
【0028】
[0029] 図3は、拡張可能かつ折り畳み可能なトラス構造5によって接続された宇宙船バス1及びカウンタマス3のシステムに角運動量を与える宇宙船バス1を示す。
【0029】
[0030] タンブリングしているスペースデブリを捕獲する従来技術の方法では、サービス宇宙船をクライアント物体の運動に一致させる試みが行われている。クライアント物体が単一の軸を中心として回転している場合、サービス宇宙船はスラスタを用いて、相対運動が存在しないように角速度に一致させることができる。クライアント物体が3つの軸全ての方向に角速度を有する場合、サービス宇宙船はゼロ相対運動を達成するため頻繁かつ高い推力を利用しなければならず、これはサービス宇宙船に搭載された燃料リソースの著しい消費を必要とする。
【0030】
[0031] 本開示の実施形態は、サービス宇宙船をクライアント物体51の運動に一致させることができる(図7から図10)。最初に、カウンタマス3及び宇宙船バス1を接続しているトラス構造5の質量中心7が、物体51の質量中心とほぼ同じ位置に位置決めされる。次いで宇宙船バス1は、機械的に(又は他の手段によって)生成した角運動量を用いて、クライアント物体51に一致するタンブル状態を達成することができる。
【0031】
[0032] 角運動量は、宇宙船バス1上のフライホイール又は磁気トルカ(magnetorquer)が発生したトルクによって提供することができる。しかしながら、毎秒3度で移動する直径15mの構造では、そのような大きい角運動量を達成できる市販のフライホイールは存在しない。コントロールモーメントジャイロを使用してもよいが、この状況では、化学スラスタを用いてトルクを発生させることの方が効率的であり得る。トルクは、回転軸から力を加えるポイントまでの距離の4倍に等しいので、サービス機の重心から離れて搭載されたスラスタの発射によって、燃料効率の高いトルク発生手段が提供される。宇宙船バス1に搭載されたスラスタは、所望の回転状態を達成するため適正な軸に沿ってトルクを生成することができる。トラス構造に沿った又はカウンタマス3上の他の場所に搭載されたスラスタは、追加の軸に沿ったトルクを与える効率を向上させると共に、線形運動量移動をゼロにするのに役立ち得る。一端にあるスラスタは、トルク及び線形運動量変化を与えることができる。反対側の端部にあるスラスタは、角運動量推力を分離することができる。このように、スラスタ及びフライホイールは同じ機能を実行する。
【0032】
[0033] 図4は、打ち上げのための格納構成にあるカウンタマス11及び13並びに宇宙船バス9を示す。
【0033】
[0034] 一般的に、宇宙船バス1及びカウンタマス3の打ち上げに適した打ち上げ機は、宇宙船バス9並びにカウンタマス11及び13の打ち上げにも適している。典型的に、2つ以上のカウンタマスを備える実施形態は、1つのカウンタマスを備える実施形態と同じタイプの打ち上げ機に適しているが、実施形態の質量は大きく変動する可能性があり、いくつかの実施形態では、他とは異なる打ち上げ機が必要となる場合がある。
【0034】
[0035] 多くの場合、民間、研究、及び政府のサービスにおける衛星は、打ち上げ及び輸送のため様々な形態に小型化され、その後、サービス中に様々な形状に展開される。格納構成は、利用される宇宙船バスに応じて様々なやり方で折り畳むことができる。本発明の実施形態は、1つ以上のカウンタマスが存在するので典型的な衛星とは異なり、カウンタマスの形状、重量、及びサイズによって、打ち上げ中は構成に対する特別な注意が必要となる。
【0035】
[0036] 図5は、カウンタマス11及び13と宇宙船バス9を接続するトラス構造15の展開を示す。
【0036】
[0037] いくつかの実施形態では、2つ以上のカウンタマスの展開が行われる。線形タイプのトラス構造では、重心と安全ボリューム(safe volume)を離しておかなければならないので、2つ以上のカウンタマスが存在しなければならない。そうでなければ、単一のカウンタマスを備えた線形トラスは安全ボリューム内で重心を直接通過する。各線形展開は、重心から離してカウンタマスを展開しなければならない。これは重心をX方向及びY方向の双方にオフセットする。Y方向のオフセットは、-Y方向の別のカウンタマスによってバランスを取らなければならない。円形又は円形セグメントのトラス構造を有する場合は、安全ボリューム内で重心を離すことによってこの問題を解決する。また、サービス機システムの角運動量がスラスタによって与えられる場合、スラスタのモーメントアームを増大するため、X軸からある程度離れた距離にスラスタを位置決めすることが有利である。バスと同じ軸上にある単一のカウンタマスでは、この運動量を(スラスタによって)効率的に与えることは難しい。機能的な観点から、追加のカウンタマスを有することで、冗長性を与えると共にシステムをいっそうロバストにすることを促進する。
【0037】
[0038] 様々な実施形態において、トラス構造5、宇宙船バス9、並びにカウンタマス11及び13は、多くの異なる様式で配置することができる。カウンタマス11及び13は、相互に比較的近くにあるか又は比較的遠くにあること、また、宇宙船バスの近く又は遠くにあることが可能である。異なる構成によって、サービス上の異なる利点が得られる。円形の構造では、カウンタマスがどのくらい近くに又は遠くに配置されるかは限定されず、いくつかの実施形態では、カウンタマスは円形トラス構造に沿って移動し得る。
【0038】
[0039] 図6は、拡張可能かつ折り畳み可能なトラス構造15によって接続された宇宙船バス9並びにカウンタマス11及び13のシステムに角運動量を与える宇宙船バス9を示す。
【0039】
[0040] 宇宙船バス9、カウンタマス11及び13、並びにクライアント物体51のシステムの全運動量は、外力が無視できる程度であるならば、ほぼ一定に保たれる。これはいくつかの実施形態で予想される。
【0040】
[0041] 様々な実施形態では、宇宙船バス9並びにカウンタマス11及び13がクライアント物体51の速度及び回転に一致することができるか、又は、宇宙船バス9、カウンタマス11及び13、並びにクライアント物体51が、最初はシステムのいずれにも関連付けられない第3の速度及び回転に一致することができる。
【0041】
[0042] 図7は、宇宙船バス9と、カウンタマス11及び13と、拡張可能かつ折り畳み可能なトラス構造15と、を含むシステムが、3つの軸を中心として任意にタンブリングしているクライアント物体51に接近していることを示す。
【0042】
[0043] 宇宙空間でタンブリングしているクライアント物体51の運動は、クライアント物体51の質量中心の並進と、クライアント物体51の質量中心を通る1つ以上の軸を中心とする回転と、の組み合わせである。
【0043】
[0044] 実施形態では、クライアント物体51の3つの回転軸を識別することができる。クライアント物体51がこれらの軸のうち1つを中心として特定の角速度で回転する場合、クライアント物体51の角運動量は、この回転軸に対応する角速度と慣性モーメントとの積によって与えられる。これらの慣性モーメントは主慣性モーメントと呼ばれ、回転軸は主回転軸と呼ばれる。
【0044】
[0045] クライアント物体51は、3つの垂直軸における前/後、上/下、及び左/右の並進運動と、3つの垂直軸を中心とする回転と、を有し得る。これらの回転は多くの場合、ヨー(垂直軸)、ピッチ(左右軸)、及びロール(前後軸)と呼ばれる。クライアント物体51の主軸を中心とする回転に加え、章動(nutation)として知られる軸変化が生じるロック(rocking)、スウェイ(swaying)、又はノッド(nodding)運動が起こり得る。大量の液体が搭載されるいくつかのシステムでは、スロッシング機構によって、よりカオス的な特性が回転に加えられる可能性があるが、捕獲前に液体が消費、放出、又は冷凍されるほとんどのクライアントでは、これは最小限であると予想される。
【0045】
[0046] 図8は、宇宙船バス9と、カウンタマス11及び13と、拡張可能かつ折り畳み可能なトラス構造15と、を含むシステムが、質量中心をクライアント物体51に位置合わせしていることを示す。
【0046】
[0047] 実施形態は、クライアント物体51の質量中心との位置合わせを較正するために異なる方法を用いることができる。宇宙船バス9は、クライアント物体51のパラメータ(位置、向き、角速度、及び加速度等)を測定するため、ステレオカメラ又は光検出及び測距(LiDAR:light detection and ranging)センサ等の3D視覚センサを含むことができる。宇宙船バス9は、宇宙船バス9と、カウンタマス11及び13と、トラス構造15と、を含むシステムのパラメータ(位置、向き、角速度、及び加速度等)を測定するための機器も含み得る。データは一般的にRF通信リンクを介して地上へ送信される。これは、タンブル率及びセンサデータを更に処理して、地上システム及び地上の技術者がクライアントの動的特性を更に良く理解するためである。
【0047】
[0048] 図9は、宇宙船バス9と、カウンタマス11及び13と、拡張可能かつ折り畳み可能トラス構造15と、を含むシステムが、角運動量を用いてクライアント物体51のタンブル率に一致させて全ての相対運動をゼロにすることを示す。
【0048】
[0049] これは一度に単一の軸ずつ実行され得るが、化学推力が用いられる場合、燃料効率の観点から、軸方向運動量操作を組み合わせてある程度限定された利点を与えてもよい。クライアントのタンブリング率とモードに応じて、数分の時間を要するが、1時間未満である可能性が高いと予想される。
【0049】
[0050] 運動量は、機械的フライホイール、別名リアクションホイール、別名運動量ホイールによって発生することができる。極めて大きいトルクのために使用されるもう1つのハードウェアの選択肢は1又は複数のコントロールモーメントジャイロであり、これはリアクションホイールよりも電力効率が高いが、非常に高価である。ロボットアーム又は他のデバイスを介した機械的接続が行わるまで、角運動量はバスからクライアント物体へ移動されない。機械的接続の時点で、組み合わせたシステムの絶対回転率を低下させるために角運動量を移動させる。状況によっては、スラスタを用いる方が時間効率が高い場合がある。
【0050】
[0051] サービス機は、低速で回転しているものも高速で回転しているものも含む複数のクライアントに対応することができる。場合によっては、どのように物体が故障したかによって回転速度が影響を受ける。タンブリングしている物体は経時的に減速することがあるが、外力がタンブル率を加速させる可能性もある。タンブリング率はラジアン/秒で表すことができるが、ラジアン/秒はタンブリングモードを充分には規定しない。タンブリングモードは通常、地上から望遠鏡又はレーダによって査定される。しかしながら、物体のごく近くの宇宙船によって更に正確な記述を行うことができる。
【0051】
[0052] 図10は、宇宙船バス9と、カウンタマス11及び13と、拡張可能かつ折り畳み可能トラス構造15と、を含むシステムからの付属物53が、ゼロの相対速度及び回転でクライアント物体51を安全に把持していることを示す。
【0052】
[0053] 実施形態において、付属物53は、代替案は多くあるが、ロボットクランプもしくはグリッパ、ロボットアーム、又はロボット触手(robotic tentacle)とすることができる。取り付け後、デタンブリングのために角運動量をクライアントへ移動させなければならないので、ここでは非剛結合は理想的でない。テザー接続(又はネット)は、運動量移動のためには信頼できない。
【0053】
[0054] タンブリングしている物体との剛結合を行った後、サービス機の宇宙船は、連結システムの絶対タンブリング率を低下させ、フライホイール、磁気トルカ、又はスラスタによって剛結合を介してトルクを加えることにより、連結システムをデタンブリングする。一度連結システムがタンブリングしなくなったら、サービス、燃料補給、又は移設のような他の活動を実行できる。クライアント物体51上に特定の把握ポイントが存在する場合、これらのポイントによってクライアント物体51を捕獲するように付属物53を展開することができる。又は、そのような特定の把握ポイントが存在しない場合、付属物53は様々なポイントでクライアント物体51を把持できる。
【0054】
[0055] 一度クライアント物体51の保持が達成されたら、宇宙船バス9と、カウンタマス11及び13と、拡張可能かつ折り畳み可能トラス構造15と、を含むシステムからの付属物53は、把持構成を様々な様式で調整して、サービス又は輸送のためにこれを固定することができる。例えば、把持の位置を変える際は安定した移行のためロボット指を使用することができ、又はロボットラッチ機構を使用することができる。
【0055】
[0056] 図11は、一実施形態の主題である、1つ以上のカウンタマスを設計するコンピュータ実施方法のステップを示すフローチャートである。実施形態では、この方法の多くの変形が可能であり、実際、ステップの順序は実施形態ごとに変更される可能性がある。
【0056】
[0057] 一実施形態は、宇宙船のパラメータを計算するコンピュータ実施方法である。この方法は、1つ以上のデバイスを介して1つ以上のターゲットクライアントの属性を入力すること(101)と、1つ以上のデバイスを介して宇宙船バス及びトラス構造の属性を入力すること(103)と、1つ以上のプロセッサで、以前規定したランキングに従って1つ以上のカウンタマスの所望の性質を計算すること(105)と、を含む。デバイスは、マウス、キーボード、又は様々なメモリタイプ等、様々なコンピュータハードウェアとすることができる。
【0057】
[0058] 所望の性質は、1つ以上のカウンタマスの予測性能に関連した様々な設計及び航空パラメータとすることができる。このため、所望の性質の出力は、使用材料、コンポーネント及びアセンブリのサイズ、コンポーネント及びアセンブリの形状を含む、1つ以上のカウンタマスの製造プロセスに関する有用な情報を提供できる。
【0058】
[0059] 所望の性質は、様々なスプレッドシート及び様々な文章処理プログラム、並びにコンピュータ支援設計において使用できる様々なファイルフォーマットを含む、様々なデータフォーマットで出力することができる。
【0059】
[0060] 以前規定したランキングは、クライアントに関する受信データに応じて、そのクライアントに関連するミッションの目的に応じた異なる量の重みを、異なる設計及び航空パラメータに加えることができる。以前規定したランキングは、キーボード、マウス、又はメモリ等のI/Oデバイスを介して入力することができる。
【0060】
[0061] 他の実施形態は、宇宙船バスの燃料の目標質量を計算すること(107)を含み得る。他の実施形態は、クライアント物体の打ち上げ、ランデブー、及び廃棄のうち1つ以上の目標時間を計算すること(109)を含み得る。
【0061】
[0062] 上述の実施形態は、本発明の理解を容易にする目的で与えられ、本発明の解釈を限定することは意図していない。実施形態の各要素とそれらの配置、材料、条件、形状、サイズ等は、説明した例に限定されず、適宜変更され得る。更に、実施形態に記載した構成要素は、部分的に置き換えること又は組み合わせることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】