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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】リサイクルが容易な毛材物品
(51)【国際特許分類】
   A46B 3/04 20060101AFI20240116BHJP
   C08G 69/02 20060101ALI20240116BHJP
   C08G 63/02 20060101ALI20240116BHJP
   A46D 1/00 20060101ALI20240116BHJP
   A46B 1/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A46B3/04 ZAB
C08G69/02
C08G63/02
A46D1/00 101
A46B1/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023542978
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2022050368
(87)【国際公開番号】W WO2022152659
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】21152035.8
(32)【優先日】2021-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ヘアメス
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ カネンギーサー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー リヒター
(72)【発明者】
【氏名】ケアスティン ヴィーダー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス-フローリアン クランペ
【テーマコード(参考)】
3B202
4J001
4J029
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB19
3B202CA05
3B202EA01
3B202HA00
4J001DA01
4J001DA02
4J001DB01
4J001DB02
4J001DB05
4J001DC05
4J001DC12
4J001EA06
4J001EA16
4J001EA17
4J001EB08
4J001EB09
4J001EC07
4J001EC08
4J001EC09
4J001JA01
4J001JA20
4J001JB13
4J001JB21
4J001JB50
4J001JC04
4J001JC10
4J029AA03
4J029AB01
4J029AC01
4J029AC02
4J029AE01
4J029BA03
4J029BA09
4J029BD07A
4J029CB06A
(57)【要約】
本発明は、以下の構成要素:モノフィラメントまたは毛材と、少なくとも1つのヘッド、柄および/またはネックとを有する毛材物品であって、該構成要素は、ポリマーおよび/またはコポリマーから選択される同一のポリマークラスのポリマーを有するかまたはこれからなり、該ポリマークラスは、ポリアミドまたはポリエステルから選択されることを特徴とする、毛材物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成要素:
- モノフィラメントまたは毛材と
- 少なくとも1つのヘッド、柄および/またはネックと
を有する毛材物品であって、前記構成要素は、ポリマーおよび/またはコポリマーから選択される同一のポリマークラスのポリマーを有するかまたはこれからなり、前記ポリマークラスは、ポリアミドまたはポリエステルから選択されることを特徴とする、毛材物品。
【請求項2】
前記ヘッド、柄および/またはネックは、少なくとも1つのグリップ要素を有し、前記少なくとも1つのグリップ要素は、前記構成要素と同一のポリマークラスのポリマーを有するかまたはこれからなる、請求項1記載の毛材物品。
【請求項3】
前記構成要素は、同一のポリマークラスのポリマーからなる、請求項1または2記載の毛材物品。
【請求項4】
前記ポリマーまたはコポリマーは、モノマーであるヘキサメチレンジアミン/アゼライン酸、ヘキサメチレンジアミン/ドデカン二酸、11-アミノウンデカン酸、ω-アミノドデカン酸、ラウリンラクタム、テトラメチレンジアミン/アジピン酸、ドデカンジアミン/ドデカン二酸、カプロラクタム/ラウリンラクタム、ヘキサメチレンジアミン/デカン二酸、1,10-デカメチレンジアミン/1,10-デカン二酸のポリマーから選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の毛材物品。
【請求項5】
前記ポリマーまたはコポリマーは、モノマーであるラウリンラクタム、11-アミノウンデカン酸、ω-アミノドデカン酸、ドデカンジアミン/ドデカン二酸、1,10-デカメチレンジアミン/1,10-デカン二酸、特に好ましくは11-アミノウンデカン酸、ω-アミノドデカン酸、ラウリンラクタムのポリマーである、請求項4記載の毛材物品。
【請求項6】
前記ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、酸変性ポリエチレンテレフタレート(PETA)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、酸変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT-A)およびグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT-G)から選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の毛材物品。
【請求項7】
前記毛材物品は、歯ブラシである、請求項1から6までのいずれか1項記載の毛材物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成要素が同一の材料を有するかまたはこれからなるためリサイクルが容易な毛材物品に関する。
【0002】
先行技術では、毛材物品の一定の耐久性を確保するために、一般には複数の材料、しかし少なくとも1組の材料が使用されている。例えば歯ブラシの場合には、モノフィラメントあるいは毛材の上にポリマーに加えて金属片が使用される。束ねられた毛材は、この金属片を中心にループ状に曲げられ、毛材物品のヘッドの穴の中に押し込まれる。また、束ねられた毛材を流動性のあるポリマーで包み込み、次いでこれを公知の方法である毛束射出装着で毛材ヘッドの中空に固定するという方法もある。
【0003】
この方法の変形形態では、毛材の素材が、加熱時に可塑性となるベースプラスチックと組み合わされる。いわゆる毛束挿入装着では、毛束がこのベースプラスチックで包み込まれ、加熱状態でヘッドの中空部に挿入される。
【0004】
これらの技術の概要は、例えば、ゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲンの医学部でSusanne Wurbsが2011年に発表した論文に記載されている。また、動画“How Toothbrushes Are Made”, https://www.youtube.com/watch?v=i2plIal6HmU&feature=youtu.beで可視化されている。
【0005】
プラスチック製の毛材物品で特に問題となるのは、その廃棄処理である。環境をクリーンに保つことは、長い間、社会の意識の問題であるが、ポリマーのリサイクルは、依然として大きな技術的課題である。
【0006】
例えば、Hunold + Knoop Kunststofftechnik, https://www.hunold-knoop.de/kunststoffwissen/kunststoff-blog/details/kunststoff-recycling-3-methodenのインターネット記事にあるように、材料の後処理という意味でのリサイクルは、全プラスチックの33%しか行われていない。
【0007】
ここで、使用済み部材は粉砕、洗浄され、種類に応じて分離される。金属成分は、溶融濾過、破砕、分離、または密度による分離によって除去することができる。その後、熱可塑性プラスチックが高温で溶融され、後処理される。
【0008】
しかし、種類に応じた分離は、リサイクルすべき物体に使用されている種類が多いほど煩雑になる。歯ブラシのような複雑な構成の物品の場合、分離は経済的に実施不可能である。種類に応じた分離を行わないと、再生プラスチック製の物体の、少なくとも制御が非常に困難な材料品質の低下が予想される。
【0009】
原料のリサイクルにおいて再利用されるプラスチックは、全体の1%に過ぎない。このようなプロセスでは、プラスチックのポリマー鎖が切断される。ここで、モノマー、オイルおよびガスが生じ、これらを加工して新たなプラスチックを得ることができる。このプロセスは、混合された材料や汚染された材料にも適している。当然のことながら、プラスチックのポリマー鎖の切断は、各種プラスチックの組み合わせに依存する。このような原料のリサイクルの一例としては、液化ポリマーをクラッカーで転化させることによる、いわゆる熱分解油の非選択的な熱化学的製造が挙げられる(https://www.basf.com/global/de/who-we-are/sustainability/we-drive-sustainable-solutions/circular-economy/mass-balance-approach/chemcycling.html)。
【0010】
いわゆるモノマーのリサイクルでは、ポリマー鎖が選択的な化学反応によってモノマー単位に変換される。この一例として、ナイロン6の切断によるカプロラクタムモノマーの生成が挙げられる。反応生成物は、精製後に一部再重合させることができる。
【0011】
基本的に均質なプラスチックマトリックスに他のポリマーが混入すると、異物のように挙動することが知られている。これは、多くのポリマーが互いに化学的に相容性を示さないためであり、これは、これらのポリマーを一緒にして一緒に溶融させると、接着力が弱くなることを意味する。さらに、多くの場合、異なるポリマーは互いに混和しない。所望の耐衝撃性の改良を達成するために、いわゆる「相容化剤」を使用することが必要な場合がある。
【0012】
先行技術では、たいてい、別のプラスチック中のあるプラスチックの割合が小さくても、その成分の化学構造が異なれば異なるほど、マトリックスプラスチック中の特性がより大きく悪化することが観察される。含まれる、あるいは意図的に添加されるプラスチック成分の種類によっては、全く満足のいかない結果が得られることもある。
【0013】
このように、極めて一般的に、廃プラスチックの取扱いにおいて、種類の単一性への関心が高まっている。また、使用されるプラスチックの種類を減らすという要求もますます重要になってきている。その概要は、“Kunststoffe.de”, https://www.kunststoffe.de/themen/basics/recycling/werkstoffliches-recycling/artikel/recycling-von-mischkunststoffen-1001658.htmlに掲載されている。
【0014】
したがって、本発明の課題は、上記の要求および問題を考慮したプラスチック物体を提供することであった。さらに、モノフィラメントまたは毛材は、最低レベルの屈曲回復挙動を有し、壊れ易くならないことが望ましい。
【0015】
したがって、本発明の主題は、以下の構成要素:
- モノフィラメントまたは毛材と
- 少なくとも1つのヘッド、柄および/またはネックと
を有する毛材物品であって、該構成要素は、ポリマーおよび/またはコポリマーから選択される同一のポリマークラスのポリマーを有するかまたはこれからなることを特徴とする、毛材物品である。
【0016】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本発明による毛材物品は、そのヘッド、柄および/またはそのネックに少なくとも1つのグリップ要素を有することができ、ここで、少なくとも1つのグリップ要素は、毛材物品の構成要素と同一のポリマークラスのポリマー(例えば、ポリアミドおよびポリエーテルブロックアミド)を有するかまたはこれからなる。
【0018】
有利には、毛材物品の構成要素は、同一のポリマークラスのポリマーからなることができる。このように理想的にも種類が単一であることによって、リサイクルが非常に容易になる。
【0019】
また、本発明による毛材物品のポリマーまたはコポリマーが、モノマーであるヘキサメチレンジアミン/アゼライン酸、ヘキサメチレンジアミン/ドデカン二酸、11-アミノウンデカン酸、ω-アミノドデカン酸、ラウリンラクタム、テトラメチレンジアミン/アジピン酸、ドデカンジアミン/ドデカン二酸、カプロラクタム/ラウリンラクタム、ヘキサメチレンジアミン/デカン二酸、1,10-デカメチレンジアミン/1,10-デカン二酸のポリマーから選択される場合に有利であり得る。
【0020】
特に好ましくは、本発明による毛材物品のポリマーまたはコポリマーは、モノマーであるラウリンラクタム、11-アミノウンデカン酸、ω-アミノドデカン酸、ドデカンジアミン/ドデカン二酸、1,10-デカメチレンジアミン/1,10-デカン二酸のポリマー、さらに特に好ましくは11-アミノウンデカン酸、ω-アミノドデカン酸、ラウリンラクタムのポリマーから選択することができる。
【0021】
同様に、特に好ましくは、本発明による毛材物品のポリマーは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、酸変性ポリエチレンテレフタレート(PETA)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、酸変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT-A)およびグリコール変性ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT-G)から選択することができる。
【0022】
いくつかの材料は、当業者には以下の名称でも知られており、これらは本発明においても使用される。
【0023】
以下のものから得られるポリアミド:
ヘキサメチレンジアミン/アゼライン酸 PA6.9
ヘキサメチレンジアミン/ドデカン二酸 PA6.12
11-アミノウンデカン酸 PA11
ラウリンラクタムまたはω-アミノドデカン酸 PA12
テトラメチレンジアミン/アジピン酸 PA4.6
ドデカンジアミン/ドデカン二酸 PA12.12
カプロラクタム/ラウリンラクタム PA6.12
1,10-デカメチレンジアミン/1,10-デカン二酸 PA10.10
ヘキサメチレンジアミン/デカン二酸 PA610
ポリアミド PA
ポリブチレンテレフタレート PBT
ポリプロピレン PP
ポリエーテルブロックアミド PEBA
【0024】
非常に特に好ましくは、本発明による毛材物品は、歯ブラシであり得る。
【0025】
以下の実施例により、本発明をさらに詳説する。
【0026】
すべての実施例において、各種材料あるいは各種材料の組み合わせから構成される歯ブラシを、従来のリサイクル工程に供した。ここで、機械的および化学的リサイクルへの適性、ならびに材料の付着性をそれぞれ評価した。
【0027】
本発明において、
- 機械的リサイクルへの適性がある、とは、種類がほぼ単一であるポリマーの回収が可能であることを意味する。適性が「劣悪」であるとは、例えば色、機械的特性、毒性に悪影響を及ぼす各種ポリマーの混合物や異なる修飾を施したポリマーの混合物が存在することと同義である。
【0028】
- モノマーリサイクルへの適性がある、とは、種類がほぼ単一であるポリマーの回収が可能であることを意味する。本プロセスは、少量の不純物の分離除去が可能であるため、原理的には機械的リサイクルよりも広く活用することができる。この場合の適性が「劣悪」であるとは、複雑な材料混合物が使用されているため、手間のかかる追加の分離ステップが必要であることを意味する。
【0029】
- 材料が付着性を示す、とは、2つの材料が応力下で分離不可能であることを意味する。これは例えば、DIN EN ISO 527に準拠した引張試験でテストすることができる。
【0030】
- 清浄化作用とは、毛材物品により軟質から硬質までの必要な剛性の技術的な構成が可能であることを意味する。毛材の屈曲回復挙動は要件を満たし、毛材の疲労は他の材料に比べて緩やかである。
【0031】
- フィラメントの押出成形への適性がある、とは、製造時にフィラメントが破壊することなく、毛材物品用の小さなフィラメント径の生成が可能であることを意味する。半結晶性熱可塑性樹脂により、フィラメントの押出成形の際に力の方向に材料を強化させるための延伸が可能である。
【0032】
- 耐破損性とは、毛材物品が脆くなく、歯みがきの際に長時間使用した後でも破損しないことを意味する。
【0033】
供給源は、以下のとおりである:
PA612: VESTAMID(登録商標)D16、Evonik;
PA12: VESTAMID(登録商標)LX9039、Evonik;
SEBS: Delene 1010、Lingen Plastic Rubber;
PMMA: ACRYLITE(登録商標)SuPure、Roehm;
PC: 4Lex 10F10000、4Plas;
PS: ACLCOM MED PS、MOCOM;
PBT: VESTODUR 2000、Evonik
【0034】
比較例1~6 それぞれ、PA6.12とPPとの材料組み合わせ、PA6.12とPETとの材料組み合わせ、PA6.12とPPとスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンのブロックコポリマー(SEBS)との材料組み合わせ、PA6.12とPEとの材料組み合わせ、PA612とPUとの材料組み合わせ、PA6.12とPA12との材料組み合わせを有する歯ブラシ。
【0035】
比較例7~9 毛材と柄とがそれぞれ同一の材料からなる歯ブラシ:PMMA、PS、SEBSのいずれかであり、毛材物品が十分に良好な特性を示さないもの。
【0036】
実施例1~3 本発明による歯ブラシであって、その毛材、ヘッド、柄およびネックが、それぞれ同一のポリマー、すなわちPA6.12あるいはPA12あるいはPBTからなるもの。
【0037】
実施例4および5 本発明による歯ブラシであって、その毛材、ヘッド、柄およびネックが、それぞれ同一のポリマー、すなわちPBTあるいはPA12からなり、さらにPA12をベースとするPEBAあるいはPA6.12をベースとするPEBAから構成されるグリップ要素を有するもの。評価を表1にまとめた。記号には以下の意味が割り当てられている:
「-」 「劣悪」
「+」 「良好」
「s」 「脆すぎる」
「b」 「限定的」
「w」 「軟らかすぎる」
【表1】
【国際調査報告】