IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンファ ソリューションズ コーポレーションの特許一覧

特表2024-502881加工性に優れた超高圧ケーブルの半導電性樹脂組成物およびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(54)【発明の名称】加工性に優れた超高圧ケーブルの半導電性樹脂組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20240116BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240116BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20240116BHJP
   C08K 5/372 20060101ALI20240116BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20240116BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240116BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20240116BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20240116BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C08L23/08
C08K3/04
C08K5/13
C08K5/372
C08K5/098
C08K5/14
C08J3/20 Z
H01B1/24 E
H01B13/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543178
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 KR2022002333
(87)【国際公開番号】W WO2022182055
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0023895
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】イ イン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リム ジェ ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム キシク
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】パク サン キュ
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
5G301
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AB11
4F070AB24
4F070AC04
4F070AC56
4F070AC66
4F070AE03
4F070AE06
4F070AE08
4F070DA41
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC03
4F070GA05
4F070GC05
4J002BB07W
4J002BB07X
4J002DA036
4J002EG039
4J002EG049
4J002EJ007
4J002EK038
4J002EV047
4J002FD016
4J002FD077
4J002FD148
4J002GQ00
5G301DA18
5G301DA42
5G301DA48
5G301DD04
5G301DE01
(57)【要約】
本発明は、高圧電力ケーブル用半導電性樹脂組成物に関する。具体的には、メルトインデックスが異なるエチレンブチルアクリレートを混合したベース樹脂、カーボンブラック、酸化防止剤および架橋剤を含む半導電性樹脂組成物に関する。また、本発明は、スコーチ安定性および加工性に優れ、高温でも体積抵抗が低い高圧電力ケーブル用半導電性樹脂組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトインデックスが異なるエチレンブチルアクリレート(ethylene butylacrylate)を混合したベース樹脂、カーボンブラック、酸化防止剤および架橋剤を含む半導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ベース樹脂は、メルトインデックスが下記式1~2を満足する2種のエチレンブチルアクリレート樹脂が混合されたベース樹脂である、請求項1に記載の半導電性樹脂組成物。
【数1】
【数2】
(前記MIは第1エチレンブチルアクリレート樹脂のメルトインデックスであり、前記MIは第2エチレンブチルアクリレート樹脂のメルトインデックスであり、前記メルトインデックスはASTM D1238測定方法に従って125℃、2.16kgの条件で測定され、前記メルトインデックスの単位はg/10minである)
【請求項3】
前記ベース樹脂のMIの値とMIの値が下記式3を満足する、請求項2に記載の半導電性樹脂組成物。
【数3】
【請求項4】
前記ベース樹脂は、第1エチレンブチルアクリレート樹脂のMIは5~10g/10minであり、第2エチレンブチルアクリレート樹脂のMIは15~25g/10mである、請求項3に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ベース樹脂における第1エチレンブチルアクリレート樹脂は、ブチルアクリレート単量体から誘導された構造単位含有量が15~18mol%であり、メルトインデックスが5~10g/10minであるエチレンブチルアクリレート共重合体である、
前記第2エチレンブチルアクリレート樹脂は、ブチルアクリレート単量体から誘導された構造単位含有量が19~22mol%であり、メルトインデックスが17~22g/10minであるエチレンブチルアクリレート共重合体である、請求項4に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項6】
前記酸化防止剤は、フェノール系化合物およびチオエーテル系化合物から選ばれるいずれか1種以上である、請求項2に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項7】
前記半導電性樹脂組成物は、金属ステアレートをさらに含む、請求項2に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項8】
前記金属ステアレートは、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムおよびステアリン酸マグネシウムを含む、請求項7に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項9】
前記ベース樹脂100重量部に対して、カーボンブラック30~100重量部、酸化防止剤0.01~5重量部および架橋剤0.1~10重量部を含むことを特徴とする、請求項2に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の半導電性樹脂組成物を架橋して得られる、半導電性樹脂硬化物。
【請求項11】
前記半導電性樹脂硬化物は、MDR(Moving die rheometer)による架橋密度が15dNm以上である、請求項10に記載の半導電性樹脂硬化物。
【請求項12】
前記半導電性樹脂硬化物は、ASTM D991による体積抵抗が135℃で130Ω・cm以下である、請求項10に記載の半導電性樹脂硬化物。
【請求項13】
a)第1混練機に第1項のベース樹脂、カーボンブラックおよび酸化防止剤を投入した後、混練して複合樹脂を製造するステップと、
b)前記複合樹脂を複合樹脂チップ(chip)の形で製造するステップと、
c)前記複合樹脂チップと架橋剤を第2混練機に投入し、混合して半導電性樹脂組成物を製造するステップと、
d)前記半導電性樹脂組成物を架橋および熟成して半導電性樹脂硬化物を提供するステップと、を含むことである、半導電性樹脂硬化物の製造方法。
【請求項14】
前記d)ステップの架橋時間は10分以上である、請求項13に記載の半導電性樹脂硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧電力ケーブル用半導電性樹脂組成物に関する。より具体的には、スコーチ安定性および加工性に優れ、高温でも体積抵抗が低い高圧電力ケーブル用半導電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に電力ケーブルは、アルミニウムや銅などの金属からなる導体部分と導体を包む内部半導電層で被覆された後、絶縁層で被覆され、続いて外部半導電層およびケーブル自体を保護するために外部半導電層の外側に配置した外装層などで構成されており、必要に応じてその構造が変わることもある。
【0003】
半導電層を使用する目的は、導体と中性線の間に発生する電界歪みによって絶縁層に高い電圧がかかることがあるので、局部電界を放射状に均一化し、絶縁層の劣化による絶縁破壊および電力ケーブルの寿命短縮を防止することにある。
【0004】
前記半導電層は、電力ケーブルを構成する上で本来の役割を忠実に発揮するために、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)やエチレンブチルアクリレート(EBA)などのエチレン共重合体に半導電性になるのに十分な量のカーボンブラックおよび過酸化物架橋剤と通常の添加剤を含むことができる。
【0005】
前記半導電層は、温度が上がると体積抵抗が増加することになるが、これは温度による半導電性物質の導電性ネットワークが破壊され、電子の通路を妨げるため、体積抵抗値が増加することになる。
【0006】
これにより、前記体積抵抗値を下げるためにカーボンブラックなどの導電性物質をさらに含有するが、これにより加工性、機械的強度が低下することができる。
【0007】
これに、加工性を向上させるために、異なる種類の高分子樹脂を混合して使用することができるが、これにより半導電層組成物間の混和性が低くなり、表面平滑性が低下する可能性がある。また、添加剤をさらに含んで加工性を高めることができるが、追加の費用が発生する可能性があり、均質に混合することが困難な場合があり、産業的に採用することが困難である。
【0008】
したがって、当該技術分野では、加工性および機械的強度に優れ、同時に十分な半導電特性を発揮する半導電層を形成するための半導電性組成物が切実に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために、異なる種類の高分子を混合したベース樹脂を使用したり、追加のカーボンブラックを投入することなく、優れた加工性および混和性を持ち、同時に機械的強度も優れた半導電性層組成物を提供することであり、特に、表面平滑度および高温での体積抵抗が低い半導電性層組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、メルトインデックスが下記式1~2を満足する2種のエチレンブチルアクリレート樹脂が混合されたベース樹脂、カーボンブラック、酸化防止剤および架橋剤を含む半導電性樹脂組成物を提供する。
【0011】
【数1】
【数2】
(前記MIは第1エチレンブチルアクリレート樹脂のメルトインデックスであり、前記MIは第2エチレンブチルアクリレート樹脂のメルトインデックスであり、前記メルトインデックスはASTM D1238測定方法により125℃、2.16kgの条件で測定され、前記メルトインデックスの単位はg/10minである。)
【0012】
本発明の一態様によれば、前記ベース樹脂のMIの値とMIの値は、下記式3を満足するものとすることができる。
【0013】
【数3】
本発明の一態様によれば、前記ベース樹脂は、第1エチレンブチルアクリレート樹脂のMIが5~10g/10minであり、第2エチレンブチルアクリレート樹脂のMIが15~25g/10mであることを含むことができる。
【0014】
本発明の一態様によれば、前記ベース樹脂における第1エチレンブチルアクリレート樹脂は、ブチルアクリレート単量体から誘導された構造単位含有量が15~18mol%であり、メルトインデックスが5~10g/10minであるエチレンブチルアクリレート共重合体であり、
前記第2エチレンブチルアクリレート樹脂は、ブチルアクリレート単量体から誘導された構造単位含有量が19~22mol%であり、メルトインデックスが17~22g/10minであるエチレンブチルアクリレート共重合体であることを含むことができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、前記酸化防止剤は、フェノール系化合物およびチオエーテル系化合物から選択されるいずれか1つ以上を含むものであることができる。
【0016】
本発明の一態様によれば、前記半導電性樹脂組成物は、金属ステアレートをさらに含むことができる。
【0017】
本発明の一態様によれば、前記金属ステアレートは、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムおよびステアリン酸マグネシウムを含むものであってもよい。
【0018】
本発明の一態様によれば、前記ベース樹脂100重量部に対して、カーボンブラック30~100重量部、酸化防止剤0.01~5重量部および架橋剤0.1~10重量部を含むことができる。
【0019】
本発明の一態様によれば、前記半導電性樹脂組成物を架橋して得られたものである、半導電性樹脂硬化物を提供することができる。
【0020】
本発明の一態様によれば、前記半導電性樹脂硬化物は、MDR(Moving die rheometer)による架橋密度が15dNm以上のものであることができる。
【0021】
本発明の一態様によれば、前記半導電性樹脂硬化物は、ASTM D991による体積抵抗が135℃で130Ω・cm以下であるものであることができる。
【0022】
本発明の一態様によれば、a)第1混練機に第1項のベース樹脂、カーボンブラックおよび酸化防止剤を投入した後、混練して複合樹脂を製造するステップと、b)前記複合樹脂を複合樹脂チップ(chip)形態で製造するステップと、c)前記複合樹脂チップと架橋剤を第2混練機に投入して混合して半導電性樹脂組成物を製造するステップと、およびd)前記半導電性樹脂組成物を架橋および熟成して半導電性樹脂硬化物を提供するステップと、を含む半導電性樹脂硬化物の製造方法を提供することができる。
【0023】
本発明の一態様によれば、前記d)ステップの架橋時間は10分以上であることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による半導電性樹脂組成物は、メルトインデックスが異なるエチレンブチルアクリレート(ethylene butylacrylate)を混合してベース樹脂を組成し、特定の構造の酸化剤およびカーボンブラックを含有することにより、混和性に優れ、同時に引張強度および伸び率などの機械的強度も優れた半導電性組成物を提供することができる。
【0025】
また、前記半導電性組成物は、前記エチレンブチルアクリレートのメルトインデックス値だけを制御して体積抵抗の値を下げることができ、前記抵抗を下げるために導電性物質を追加的に投入する必要がない。
【0026】
また、前記半導電性組成物は、エチレンブチルアクリレートのブチルアクリレート単量体を含む単位構造の含有量も制御することで、優れた機械的強度および加工性を維持しながら、同時に高温で最適な体積抵抗を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付された図面を含む具体例または実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下の具体例または実施例は、本発明を詳細に説明するための一つの参考であって、本発明がこれに限定されるものではなく、複数の形態で実施することができる。
【0028】
また、特に定義されていない限り、すべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明において説明に使用される用語は、特定の実施形態を効果的に説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0029】
また、明細書および添付された特許請求の範囲に使用される単数形は、文脈から特別な指示がない限り、複数形も含むことを意図することができる。
【0030】
また、ある部分があるコンポーネントを「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他のコンポーネントを除外するのではなく、他のコンポーネントをさらに含めることができることを意味する。
【0031】
また、本願発明における記載された高温とは、90℃以上の温度を意味する。
【0032】
本発明の発明者らは、異なる融解指数を有するエチレンブチルアクリレートを混合したベース樹脂を含む半導電性組成物を提供することにより、添加剤または導電性物質の追加なしに、機械的な物性および加工性に優れ、同時に優れた体積抵抗を有する半導電性組成物を提供できることを発見し、本発明を完成した。
【0033】
本発明の一態様は、メルトインデックスが下記式1~2を満足する2種のエチレンブチルアクリレート樹脂が混合されたベース樹脂、カーボンブラック、酸化防止剤および架橋剤を含む半導電性樹脂組成物であることができる。
【0034】
【数4】
【数5】
前記MIは第1エチレンブチルアクリレート樹脂の融解指数であり、前記MIは第2エチレンブチルアクリレート樹脂の融解指数であり、前記融解指数はASTM D1238測定方法により125℃、2.16kgの条件で測定され、前記融解指数単位はg/10minである。
【0035】
前記MIの範囲の融解指数値を満足する第1エチレンブチルアクリレート樹脂およびMIの範囲の融解指数値を満足する第2エチレンブチルアクリレートを混合して半導電性組成物に含まれるベース樹脂を構成することにより、前記半導電性組成物の加工性が向上し、組成物間の混和性も優れているという利点がある。また、前記ベース樹脂を含む半導電性組成物の場合、一種のエチレンブチルアクリレートおよび異なる2種の高分子樹脂が混合された樹脂よりも、理由はよく分からないが、体積抵抗が著しく低くなる効果を発見した。
【0036】
前記体積抵抗が低くなる効果は、追加の導電性物質を含まずに、前記式1~2を満足する第1エチレンブチルアクリレート樹脂および第2エチレンブチルアクリレート樹脂を混合することによって発生する異質な効果であり、半導電性組成物本来の加工性および機械的物性の低下なしに体積抵抗を下げることができる。
【0037】
また、本発明の一態様によれば、前記ベース樹脂のMIの値とMIの値は、下記式3を満足することにより、高温での体積抵抗をさらに下げることができる。
【0038】
【数6】
前記半導電層の場合、体積抵抗値が上昇するほど半導電層の温度も上昇することになり、半導電層の構成が破壊され、最終的にケーブルの寿命が短くなるという問題が発生する可能性がある。
【0039】
前記第1エチレンブチルアクリレート樹脂および第2エチレンブチルアクリレート樹脂のMIおよびMIの値の差が前記範囲を満たす場合、高温での体積抵抗がより低下することが確認できる。
【0040】
前記半導電層が高温で低い体積抵抗を持つことにより、半導電層の破壊を抑制することができ、これは最終的にケーブルの寿命短縮を抑制する効果がある。
【0041】
また、本発明の一態様によると、前記ベース樹脂は、MIは5~10g/10minおよびMIの値は15~25g/10minを満足すると同時に、前記式3を満足する場合、体積抵抗をさらに低下させることができる。
【0042】
また、本発明の一態様によれば、前記ベース樹脂において、前記第1エチレンブチルアクリレート樹脂は、ブチルアクリレート単量体から誘導された構造単位含有量が15~18mol%であり、メルトインデックスが5~10g/10minであるエチレンブチルアクリレート共重合体であり、前記第2のエチレンブチルアクリレート樹脂は、ブチルアクリレート単量体から誘導された構造単位含有量が19~22mol%であり、メルトインデックスが17~22g/10minであるエチレンブチルアクリレート共重合体である場合、高温で最も低い体積抵抗を有する半導電性組成物を提供することができる。
【0043】
前記半導電性組成物は、酸化防止剤を含有することにより、高温で優れた体積抵抗、加工性および機械的強度を維持しながら、加工後長期間、半導電性組成物の変質を抑制することができる。
【0044】
本発明の一態様に係る前記酸化防止剤は、フェノール系化合物およびチオエーテル系化合物から選択されるいずれか一つ以上であることができる。
【0045】
具体的には、前記フェノール系化合物は、2、2´-チオジエチレン-ビス-(3、5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4、4´-チオ-ビス-(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)、1、2-ジヒドロ-2、2、4-トリメチルキノリン、ジエチル((3、5-ビス-(1、1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)メチル)ホスホネート、1、3、4-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2、6-ジメチルベンゼン)-1、3、5-トリアジン-2、4、6-(1H、3H、5H)-トリオン、テトラキス[メチレン-3-(3、5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3、5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(2、4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトおよびN、N´-ビス-(3-(3´、5´-ジ-t-ブチル-4´-ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン等からなる群より選択される1種以上を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
また、前記チオエーテル系化合物は、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジオクタデシルジスルフィド、ビス[2-メチル-4-(3-n-ドデシルチオプロピオニルオキシ)-5-tert-ブチルフェニル]スルフィド、ペンタエリスリトール-テトラキス-(3-ラウリルチオプロピオネート)、1、4-シクロヘキサンジメタノール、3、3´-チオビスプロパン酸ジメチルエステル重合体およびジステアリルチオジプロピオネート等からなる群より選択される1種以上を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
前記酸化防止剤を使用することにより、前記半導電性樹脂組成物を加工することにより、高分子の加工性を増大させるだけでなく、高分子の酸化を防止することができる。
【0048】
前記半導電性組成物は、架橋剤を使用して架橋される。適切な一方法は、重合体粉末または重合体ペレットに架橋剤を含浸させることである。次いで、混合物を架橋剤の分解温度より高い温度に加熱する。使用できる適切な架橋剤としては、例えば、(ジ(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1、1-(ターシャリーブチルパーオキシ)-3、3、5-トリメチルシクロヘキサン、ノルマル-ブチル-4、4-(ビス-ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、パーフルチルパーオキサイド、1、1-ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、ベンゾイルパーオキサイド、2、5-ジメチル-2、5-ジ-ターシャリーブチルパーオキシヘキサン、ターシャリーブチルパーオキシ安息香酸、ジ-ターシャリーブチルパーオキシドおよび2、5-ジメチル-2、5-ジ-ターシャリーブチルパーオキシルヘキサン等を含むことができ、好ましくは、パーフルチルパーオキシド、1、1-(ターシャリーブチルパーオキシ)-3、3、5-トリメチルシクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシドおよびジクミルパーオキシド等を含むことができ、より好ましくは、ジクミルパーオキシドおよびパーフルチルパーオキシドを含むことができるが、これらに限定されない。
【0049】
本発明の一態様によれば、前記ベース樹脂100重量部に対して、カーボンブラック30~100重量部、酸化防止剤0.01~5重量部および架橋剤0.1~10重量部を含むことができ、好ましくは、前記ベース樹脂100重量部に対して、カーボンブラック40~90重量部、酸化防止剤0.1~3重量部および架橋剤0.3~5重量部を含むことができ、さらに好ましくは、前記ベース樹脂100重量部に対して、カーボンブラック55~60重量部、酸化防止剤0.2~1重量部および架橋剤0.5~3重量部を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0050】
前記半導電性組成物の組成物含量が前記範囲を満足することにより、架橋時間および架橋度が適切で、加工性および機械的強度が優れているだけでなく、長期間使用しても変質せず、体積抵抗が優れた半導電性組成物を提供することができる。
【0051】
また、本発明の一態様によれば、前記半導電性組成物に金属ステアレート系化合物等を含有させることができ、具体的には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムおよびステアリン酸マグネシウム等を含有させることができ、好ましくはステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸亜鉛を含有させることができ、より好ましくはステアリン酸亜鉛を含有させることができるが、これに限定されない。
【0052】
前記金属ステアレートをさらに含有することにより、高分子のスラッピング現象を最小限に抑えることができる。前記金属ステアレート含有量から製造された本発明の半導電性層は、表面に突起が生成されず、優れた表面特性を付与することができる。また、前記金属ステアレートは、前記電気伝導性樹脂組成物の流動性を向上させ、これを成形する場合、延伸による電気伝導性の偏差を最小化することができる。
【0053】
前記半導電性樹脂組成物に加工助剤をさらに含むことができる。前記加工助剤は、モンタンワックス、脂肪酸エステル、トリグリセリドまたはこれらの部分エステル、グリセリンエステル、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、金属石鹸系潤滑剤、アミド系潤滑剤などを含むことができ、好ましくは、脂肪酸エステル、トリグリセリドまたはこれらの部分エステルおよびポリエチレンワックスを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0054】
前記加工助剤をさらに含むことにより、前記組成物の導体との離型性向上および押出負荷を下げる効果がある。
【0055】
本発明の一態様による前記半導電性樹脂組成物を架橋することにより、半導電性樹脂硬化物を製造することができる。前記架橋された半導電性樹脂硬化物の場合には、加工性および機械的強度が優れ、高温でも体積抵抗が優れており、超高圧ケーブル電線の半導電層に使用するのに適している。
【0056】
前記半導電性樹脂硬化物の架橋度によって機械的物性および体積抵抗などの要素が変化することがあり、前記架橋度の程度は架橋密度で判断することができる。
【0057】
前記架橋された半導電性樹脂硬化物は、MDR(Moving die rheometer)による架橋密度が15dNm以上であることができ、好ましくは16~20dNmであることができ、さらに好ましくは17~18dNmであることができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
前記架橋密度範囲を満足する架橋度の場合、優れた機械的物性を満足することができ、同時に加工性にも優れた特徴を満足することができる。
【0059】
本発明の一態様によれば、前記半導電性樹脂硬化物は、ASTM D991による体積抵抗が90℃で170Ω・cm以下、好ましくは150Ω・cm以下、さらに好ましくは100Ω・cm以下であることができる。
【0060】
また、前記半導電性樹脂硬化物は、ASTM D991による体積抵抗が135℃では150Ω・cm以下であることができ、好ましくは140Ω・cm以下であることができ、さらに好ましくは130Ω・cm以下であることができるが、これに限定されるものではない。
【0061】
次に、前記半導電性組成物の製造方法について説明する。
【0062】
本発明の一態様によれば、
a)第1混練機に第1項のベース樹脂、カーボンブラックおよび酸化防止剤を投入した後、混練して複合樹脂を製造するステップと、
b)前記複合樹脂を複合樹脂チップ(chip)の形で製造するステップと、
c)前記複合樹脂チップと架橋剤を第2混練機に投入し、混合して半導電性樹脂組成物を製造するステップと、
d)前記半導電性樹脂組成物を架橋および熟成して半導電性樹脂硬化物を提供するステップと、を含むことにより、半導電性組成物を製造することができる。
【0063】
前記a)ステップでの前記第1混練機の温度は、90~120℃であることができるが、一般的に利用される温度であればこれに限定されるものではない。前記第1混練機は、banbury mixer(Dispersion type kneader)などを使用することができるが、一般的に使用される装置であればこれに限定されるものではない。
【0064】
前記b)ステップでは、第1混練機で混練された複合樹脂は、加工しやすいチップ(chip)形態で製造することができ、前記チップはRoll millとcrusherを通過させて製造することもできるが、通常に使用される装置であればこれに限定されるものではない。
【0065】
前記チップのサイズは、2~10mmであることができ、好ましくは3~8mmであることができるが、これに限定されるものではない。
【0066】
前記c)ステップで前記複合樹脂チップと架橋剤を第2混練機に投入し、60~80℃で30~60rpmで混練することができるが、これに限定されるものではない。
【0067】
前記c)ステップで製造された半導電性樹脂組成物は、オーブン(Oven)で架橋および熟成することができる。前記オーブン温度は、硬化剤の硬化温度以上の温度で行うことができ、具体的には60~100℃であることができ、架橋および熟成時間は10分~12時間であることができるが、これに限定されるものではない。
【0068】
また、本発明の一態様によれば、前記d)ステップの架橋時間は、10分以上架橋することが好ましく、好ましくは12分以上架橋することが好ましい。前記架橋時間が短すぎると、ケーブル加工時に前記半導電性硬化物の加工安定性が低下することがある。
【0069】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下の実施例および比較例は、本発明をより詳細に説明するための一例であって、本発明が以下の実施例および比較例によって限定されるものではない。
【0070】
[引張強度と伸び率]
引張張力および伸び率は、ATSM D638に従って250mm/minの条件で測定した。
【0071】
[架橋密度・スコーチ時間]
架橋結合された重合体組成物内の架橋密度は、ASTM D5289-12に従って180℃で移動ダイ流量計(MDR)上で分析を通じて決定することができる。分析では、最大弾性トルク(MH)と最小弾性トルク(ML)の差分値(MH-ML)で架橋密度を計算しました。スコーチ時間(TS1)は、145℃で測定したトルクの最小値(ML)から1dNm上昇するまでの時間から算出した。
【0072】
[体積抵抗率]
体積抵抗はASTM D991に従って測定した。
【0073】
[メルトインデックス]
ASTM D1238測定方法により125℃、2.16kgの条件で測定され、前記融解指数単位はg/10minである。
【0074】
[実施例1]
半導電性樹脂組成物の製造は、Banbury Mixerで150℃で30分間混練して製造した。ブチルアクリレート含有量が17モル%およびメルトインデックスが7.0g/10minであるエチレンブチルアクリレート共重合体100重量部に対して、ブチルアクリレート含有量が20モル%およびメルトインデックスが20.0g/10minであるエチレンブチルアクリレート共重合体100重量部、1、2-ジヒドロ-2、2、4-トリメチルキノリン(Naugard SuperQ、美原商事)0.95重量部、カーボンブラック(VXC500)113重量部を100℃で30分間混練して製造した。これをRoll MillとCrusherを通過させてチップ状に製造した後、Brabender Mixerで架橋剤(ジ(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(Di[tert-butylperoxyisopropyl]benzene、AkzoNobel)をさらに2.8重量部を添加して75℃で10分間40rpmで含浸した後、70℃ Ovenで8時間熟成して半導電性樹脂組成物を製造した。
【0075】
製造された半導電性樹脂組成物を引張強度、伸び率、スコーチ時間および架橋密度を測定して表1に記載し、体積抵抗率を測定して表2に記載した。
【0076】
[実施例2]
実施例1でカーボンブラックの含有量を107重量部を使用した以外は同様に実施した。製造された半導電性樹脂組成物を引張強度、伸び率、スコーチ時間および架橋密度を測定して表1に記載し、体積抵抗率を測定して表2に記載した。
【0077】
[実施例3]
実施例1でブチルアクリレート含量が17モル%およびメルトインデックスが7.0g/10minのエチレンブチルアクリレート共重合体の代わりに、ブチルアクリレート含量が17モル%およびメルトインデックスが15.0g/10minのエチレンブチルアクリレート共重合体を使用した以外は同様に実施した。製造された半導電性樹脂組成物を引張強度、伸び率、スコーチ時間および架橋密度を測定して表1に記載し、体積抵抗率を測定して表2に記載した。
【0078】
[実施例4]
実施例1でブチルアクリレート含量が17モル%およびメルトインデックスが7.0g/10minのエチレンブチルアクリレート共重合体の代わりに、ブチルアクリレート含量が20モル%およびメルトインデックスが9.0g/10minのエチレンブチルアクリレート共重合体を使用した以外は同様に実施した。
【0079】
[実施例5]
実施例1でブチルアクリレート含有量が17モル%およびメルトインデックスが7.0g/10minであるエチレンブチルアクリレート共重合体100重量部に対して、ステアリン酸亜鉛1.5重量部をさらに含む以外は同様に実施した。
【0080】
[比較例1]
半導電性樹脂組成物の製造は、Banbury Mixerで150℃で30分間混練して製造した。ブチルアクリレート含有量が17モル%およびメルトインデックスが7.0g/10minであるエチレンブチルアクリレート共重合体100重量部に対して、1、2-ジヒドロ-2、2、4-トリメチルキノリン(Naugard SuperQ、ミウォン商事)0.90重量部、カーボンブラック(VXC500)56.7重量部を100℃で30分間混練して製造した。これをRoll MillとCrusherを通過させてチップ状に製造した後、Brabender Mixerで架橋剤(ジ(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(Di[tert-butylperoxyisopropyl]benzene、AkzoNobel)を1.4重量部をさらに添加して75℃で10分間40rpmで含浸した後、70℃ Ovenで8時間熟成して半導電性樹脂組成物を製造した。
【0081】
製造された半導電性樹脂組成物を引張強度、伸び率、スコーチ時間および架橋密度を測定して表1に記載し、体積抵抗率を測定して表2に記載した。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
以上のように本発明では、特定の事項と限定された実施例および図面によって説明したが、これは本発明のより全体的な理解を助けるために提供されたものであり、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば、これらの記載から様々な修正および変形が可能である。
【0085】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して定められるものではなく、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価な変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属するといえる。
【国際調査報告】