(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-24
(54)【発明の名称】金属層を有する多層構造体、積層体、及び物品
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240117BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240117BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
B32B27/32
B32B9/00 A
B65D65/40 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023528467
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 CN2020130175
(87)【国際公開番号】W WO2022104655
(87)【国際公開日】2022-05-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】シュー、ボー
(72)【発明者】
【氏名】シュー、ジンイー
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB01
3E086BB02
3E086BB21
3E086BB52
3E086CA01
3E086CA05
3E086CA13
3E086CA22
3E086DA08
4F100AA19C
4F100AA20C
4F100AB10C
4F100AK01A
4F100AK04B
4F100AK07B
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4F100AL07B
4F100AL07G
4F100AT00
4F100BA03
4F100CC10B
4F100CC10G
4F100EC18B
4F100EC18G
4F100EH662
4F100EH66B
4F100GB23
(57)【要約】
多層構造体、並びにそれから形成される物品及び積層体が提供される。本明細書に開示される実施形態による多層構造体は、フィルムと、フィルムの外層上に堆積させた金属を含む金属層とを含む。フィルムの外層は、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンとポリプロピレンホモポリマーとのブレンドを含む。多層構造体は、他の多層構造体と比較して、外層と金属層との間の改善された接合強度を示すことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造体であって、
(a)フィルムであって、前記フィルムの外層が、(i)8~35重量%の、0.905g/cc未満の密度及び50.0g/10分超のメルトインデックス(I
2)を有する無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンと、(ii)65~92重量%のポリプロピレンホモポリマーとのブレンドを含む、フィルムと、
(b)前記フィルムの外層上に堆積させた金属を含む金属層と、
を含む、多層構造体。
【請求項2】
前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンが、0.5重量%超の無水マレイン酸レベルを有する、請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
前記無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンが、8.0~18.0パスカル秒の(350°F)177℃におけるブルックフィールド粘度を有する、請求項1又は2に記載の多層構造体。
【請求項4】
前記金属が、Al、Si、Zn、Au、Ag、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Ti、Sn、それらの酸化物、及びそれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項5】
前記金属が、Al金属、Alの酸化物、又はその両方を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項6】
前記金属が、真空金属化によって前記フィルム上に堆積される、請求項1~5のいずれかに記載の多層構造体。
【請求項7】
前記金属層が、10~60ナノメートルの厚さを有する、請求項1~6のいずれかに記載の多層構造体。
【請求項8】
第2のフィルムと接着接触している請求項1~7のいずれかに記載の多層構造体を含む、積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の積層体を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層及びフィルムを含む多層構造体、そのような多層構造体を含む積層体、並びにそのような多層構造体又は積層体を含む物品に関する。
【0002】
序論
金属化フィルム(すなわち、フィルムの層上に堆積させた金属を含む金属層)を含む多層構造体は、腐敗しやすい食品及び製品を包装するために広く使用されている。そのような構造体を作製するためには、真空金属化を介して金属(例えば、アルミニウム)の薄いコーティングをフィルムに接着させてよい。金属の薄いコーティングをフィルム層に加えると、バリア特性を改善し、液体、気体、又は蒸気の透過を防止又は減少させることができる。しかしながら、金属層のフィルムへの接着の維持には問題があり、金属層が部分的に又は全体的に剥がれる場合があり、その結果、包装が劣化し、バリア特性が失われる。例えば、バリア特性(例えば、ガス及び水分バリア)を改善するためにポリプロピレンフィルムを金属化する場合がある。しかし、ポリプロピレンの非極性特性に起因して、フィルムと金属との間の結合強度が不十分になることがある。その非極性特性を低下させるようにポリプロピレンを処理してもよいが、フィルムと金属との間の不適切な結合強度に起因して、製造中又は製造後に課される外部熱又は応力によってひび割れが生じる場合がある。したがって、金属層とフィルムとの間に強化された結合強度を示すポリプロピレンを含む多層構造体が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、フィルム及び金属層を含み、金属層がフィルム上に堆積している多層構造体を提供する。実施形態によれば、フィルムは、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンとポリプロピレンホモポリマーとのブレンドを含む外層を有し、金属を外層上に堆積させたとき、得られる多層構造体は、金属とフィルムとの間の高い結合強度等の望ましい特性を示す。
【0004】
一態様では、本発明は、(a)フィルムであって、フィルムの外層が、(i)8~35重量%の、0.905g/cc未満の密度及び50.0g/10分超のメルトインデックス(I2)を有する無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンと、(ii)65~92重量%のポリプロピレンホモポリマーとのブレンドを含む、フィルムと、(b)フィルムの外層上に堆積させた金属を含む金属層と、を含む多層構造体を提供する。
【0005】
別の態様では、本発明は、積層体を提供する。積層体は、本明細書に開示される実施形態による多層構造体を含む。
【0006】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示される本発明の多層構造体又は積層体のいずれかを含む、食品包装等の物品を提供する。
【0007】
これら及び他の実施形態は、「発明を実施するための形態」において、より詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
開示する多層構造体、積層体、及び物品の態様については、以下でより詳細に記載する。しかしながら、本開示は、以下に記載する実施形態を限定するものと解釈されるべきではない。
【0009】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、同じ種類又は異なる種類にかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を意味する。したがって、「ポリマー」という総称は、(1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる)ホモポリマーという用語、及びコポリマー又はインターポリマーという用語を包含する。微量の不純物(例えば、触媒残渣)は、ポリマー中及び/又はポリマー内に導入される場合がある。ポリマーは、単一のポリマー、ポリマーブレンド、又は重合中にその場で形成されるポリマーの混合物を含むポリマー混合物であり得る。
【0010】
本明細書で使用するとき、用語「ポリプロピレン」又は「プロピレン系ポリマー」は、(重合性モノマーの総量に基づいて)50重量パーセント超の重合エチレンモノマーを含有するポリマーを意味するものとし、任意選択で、少なくとも1つのコモノマーを含有し得る。ポリプロピレンホモポリマーは、重合プロピレンモノマーを含み、コモノマーを含まないポリマーである。
【0011】
本明細書で使用する場合、「ポリエチレン」又は「エチレン系ポリマー」という用語は、過半量(50mol%超)のエチレンモノマーに由来する単位を含むポリマーを意味するであろう。これは、ポリエチレンホモポリマー又はコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態は、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene、LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene、LLDPE)、極低密度ポリエチレン(Ultra Low Density Polyethylene、ULDPE)、超低密度ポリエチレン(Very Low Density Polyethylene、VLDPE)、直鎖状低密度樹脂及び実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含む、シングルサイト触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、エチレンベースのプラストマー(ethylene-based plastomer、POP)及びエチレンベースのエラストマー(ethylene-based elastomer、POE)、中密度ポリエチレン(Medium Density Polyethylene、MDPE)、並びに高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene、HDPE)が挙げられる。
【0012】
本明細書で使用するとき、用語「多層構造体」は、2つ以上の層を有する任意の構造体を指す。例えば、多層構造体は、2、3、4、5、又はそれ以上の層を有し得る。多層構造体は、文字で指定された層を有するものとして説明され得る。例えば、コア層B、並びに2つの外側層A及びCを有する3層構造体は、A/B/Cとして示され得る。同様に、2つのコア層B及びC、並びに2つの外側層A及びDを有する構造体は、A/B/C/Dとして示され得る。本明細書に開示される多層構造体は、1つ以上の層及び金属層を有するフィルムを含む構造体を含む。
【0013】
用語「接着接触」は、1つの層の1つの対向面(facial surfaces)と別の層の1つの対向面とが互いに触れており、かつ両方の層の層間表面(すなわち、接触している対向面)に損傷を与えることなく一方の層を他方の層から除去することができないように結合接触していることを意味する。
【0014】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、あらゆる追加の成分、工程、又は手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求されるすべての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、あらゆる追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる以降の記述の範囲からあらゆる他の成分、工程、又は手順を除外する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に描写又は列記されていないあらゆる成分、工程、又は手順を除外する。
【0015】
実施形態では、本発明は、(a)フィルムであって、フィルムの外層が、(i)8~35重量%の、0.905g/cc未満の密度及び50.0g/10分超のメルトインデックス(I2)を有する無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンと、(ii)65~92重量%のポリプロピレンホモポリマーとのブレンドを含む、フィルムと、(b)フィルムの外層上に堆積させた金属を含む金属層と、を含む多層構造体を提供する。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、比較的低い密度及び高いメルトインデックス(I2)を有する特定の無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンとポリプロピレンホモポリマーとのブレンドが、フィルムの外層と金属層の金属との間の結合強度を強化すると考えられる。
【0016】
本発明の多層構造体は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0017】
他の実施形態では、本発明は、本明細書に開示される本発明の多層構造体のうちのいずれかと第2のフィルムとを含む、積層体に関する。本明細書に開示される実施形態による積層体は、第2のフィルムと接着接触している本明細書に開示される本発明の多層構造体のうちのいずれかを含む。積層体の第2のフィルムは、特に限定されず、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、又はポリエチレンを含んでいてよい。
【0018】
他の実施形態では、本発明は、腐敗しやすい食品又は製品のための包装等の物品に関する。実施形態では、物品は、本明細書に開示される本発明の多層構造体のうちのいずれかを含む。実施形態では、物品は、本明細書に開示される本発明の積層体のうちのいずれかを含む。本発明の物品又は積層体は、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含んでいてもよい。
【0019】
フィルム
本発明の多層構造体は、フィルムを含む。多層構造体のフィルムは、金属層(後述)との間の接着強度を強化する外層を含み、いくつかの実施形態では、有利なことに単一の多層構造体又は金属化フィルムにおいて良好なバリア特性、封止特性、機械的特性、及び光学的特性の組み合わせを提供する外層を含む。
【0020】
フィルムは、単層フィルムであっても多層フィルムであってもよい。いくつかの実施形態では、フィルムは、シーラントフィルムとして作用することができ、金属化された外層の反対側にある第2の外層であるシーラント層を含み得る。
【0021】
金属化されたフィルムの外層は、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンとポリプロピレンホモポリマーとのブレンドを含む。実施形態では、ブレンドは、8~35重量%の無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンを含む。無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンの8~35重量%の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、開示される。例えば、ブレンドは、8~35重量%、9~35重量%、10~35重量%、8~30重量%、9~30重量%、10~30重量%、8~20重量%、9~20重量%、10~20重量%、又は12~18重量%の無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンを含んでいてよく、重量パーセント(重量%)は、ブレンドの総重量に基づく。
【0022】
実施形態では、無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、0.905g/cc未満の密度を有する。0.905g/cc未満の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、開示される。例えば、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、0.905g/cc、0.900g/cc、0.895g/cc、0.890g/cc、0.885g/cc、0.880g/cc、0.875g/cc、0.870g/ccの上限密度を有していてもよく、又は0.860g/cc~0.900g/cc、0.860~0.890g/cc、若しくは0.860g/cc~0.880g/ccの範囲の密度を有していてもよい。
【0023】
実施形態では、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、50.0g/10分超のメルトインデックス(I2)を有する。50.0g/10分超の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、100.0g/10分超、200.0g/10分超、300.0g/10分超、400.0g/10分超、500.0g/10分超、若しくは600.0g/10分超のメルトインデックス(I2)を有していてもよく、又は100.0~1000.0g/10分、200.0~900.0g/10分、300.0~800.0g/10分、400.0~700.0g/10分、500.0~700.0g/10分、若しくは600.0~700.0g/10分の範囲のメルトインデックス(I2)を有していてもよい。
【0024】
実施形態では、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、0.5重量%超の無水マレイン酸レベルを有する。0.5重量%超の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、開示される。例えば、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、0.5重量%超、0.8重量%超、1.0重量%超、1.2重量%超、若しくは1.4重量%超の無水マレイン酸レベルを有していてもよく、又は0.6~2.0重量%、0.8~2.0重量%、若しくは1.0~2.0重量%の範囲の無水マレイン酸レベルを有していてもよく、重量パーセント(重量%)は、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンの総重量に基づく。
【0025】
実施形態では、無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンは、8.0~18.0パスカル秒(Pa.S)の(350°F)177℃におけるブルックフィールド粘度を有する。8.0~18.0Pa.Sの全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、無水マレイン酸グラフトポリエチレンは、8.0~18.0Pa.S、9.0~17.0Pa.S、10.0~16.0Pa.S、11.0~15.0Pa.S、又は12.0~14.0Pa.Sの(350°F)177℃におけるブルックフィールド粘度を有していてよく、(350°F)177℃におけるブルックフィールド粘度は、ASTM D1084に従って測定される。
【0026】
いくつかの実施形態において外層に使用することができる無水マレイン酸グラフトポリエチレンの例としては、The Dow Chemical Company(Midland,MI)から市販されているRETAIN(商標)3000等のRETAIN(商標)無水マレイン酸グラフトポリエチレンが挙げられる。
【0027】
実施形態では、フィルムの外層のブレンドは、ポリプロピレンホモポリマーを含む。実施形態では、ブレンドは、65~92重量%のポリプロピレンホモポリマーを含む。65~92重量%の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、ブレンドは、65~92重量%、65~91重量%、65~90重量%、70~92重量%、70~91重量%、70~90重量%、80~92重量%、80~91重量%、80~90重量%、80~95重量%、又は82~88重量%のポリプロピレンホモポリマーを含んでいてよく、重量パーセント(重量%)は、ブレンドの総重量に基づく。
【0028】
いくつかの実施形態において外層に使用することができるポリプロピレンホモポリマーの例としては、Total Petrochemical USA(Houston,TX)から市販されているTotal Polypropylene 3365、Borealis AG(Vienna,Austria)から市販されているHD601CF、及びSinopec Shanghai Petrochemical Company Limited(Shanghai,China)から市販されているPP F320が挙げられる。
【0029】
実施形態では、ブレンドのポリプロピレンホモポリマーは、12.0g/10分未満のメルトフローレートを有する。12.0g/10分未満の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、ポリプロピレンホモポリマーは、12.0g/10分、10.0g/10分、8.0g/10分、6.0g/10分、4.0g/10分未満のメルトフローレートを有していてもよく、又は0.5~10.0g/10分、1.0~10.0g/10分、1.0~6.0g/10分、1.0~5.0g/10分、若しくは1.0~4.0g/10分の範囲のメルトフローレートを有していてもよく、メルトフローレートは、ASTM D1238(230℃、2.16kg)に従って測定される。
【0030】
実施形態では、ブレンド又はフィルムの外層は、当該技術分野において一般的に知られている1つ以上の添加剤を含有していてよい。そのような添加剤としては、IRGANOX1010及びIRGAFOS168(BASFから市販)等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、核形成剤、充填剤、滑剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、潤滑剤、安定剤、発煙抑制剤、粘度制御剤、表面改質剤、及びブロッキング防止剤が挙げられる。
【0031】
フィルムが多層フィルムである実施形態では、フィルムは、用途に応じて、例えばシーラント層、バリア層、タイ層、又は他の層を含む、典型的に多層フィルムに含まれる他の層を更に含んでいてもよい。フィルムは、本明細書の教示に基づいて、当業者に既知の技術を使用して形成することができる。例えば、フィルムは、インフレートフィルム又はキャストフィルムとして調製することができ、フィルムの層は、本明細書の教示に基づいて当業者に公知の技術を使用して処理(例えば、コロナ若しくはプラズマ処理)及び/又は共押出することができる。
【0032】
本明細書に開示される実施形態によるフィルムは、例えば、層の数に応じて、様々な厚さを有し得る。例えば、実施形態では、フィルムは、2~200マイクロメートル、15~100マイクロメートル、20~80マイクロメートル、又は25~75マイクロメートルの厚さを有することができる。フィルムが多層フィルムである実施形態では、フィルムの外層(本明細書に記載のブレンドを含む)は、2~100マイクロメートル、5~75マイクロメートル、若しくは10~50マイクロメートルの厚さを有していてもよく、又はフィルム構造体全体の5~50%、10~40%、若しくは15~35%を構成していてもよい。
【0033】
金属層
多層構造体は、フィルムの外層(本明細書に記載するブレンドを含む)に堆積させた金属を含む金属層を更に含む。金属層は、真空金属化を使用してフィルムの外層に適用され得る。真空金属化は、金属源を真空環境で蒸発させ、フィルムが真空チャンバを通過するにつれて金属蒸気がフィルムの表面上で凝縮して薄層を形成する、金属を蒸着させるための周知の技術である。
【0034】
フィルムの外層上に堆積させることができる金属としては、Al、Si、Zn、Au、Ag、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Ti、Sn、又はそれらの酸化物が挙げられる。いくつかの実施形態では、金属層は、アルミニウム又はアルミニウムの酸化物(例えば、Al2O3)から形成される。
【0035】
実施形態では、金属層は、10~60ナノメートルの厚さを有する。10~60ナノメートルの全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に開示され、含まれる。例えば、金属層は、10~60ナノメートル、15~60ナノメートル、10~45ナノメートル、15~45ナノメートル、又は15~40ナノメートルの厚さを有していてよい。
【0036】
多層構造体
本発明の多層構造体は、いくつかの実施形態では、フィルムと、(上記の通り)その上に堆積させた金属層と、を含む。フィルムの外層に指定のブレンド(すなわち、比較的低い密度及び高いメルトインデックス(I2)を有する無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンとポリプロピレンホモポリマーとのブレンド)を組み込むと、有利なことに、金属とフィルムの外層との間の接着が改善され、このことは、フィルムが組み込まれ得る構造体及び他の構造体(例えば、積層体)の性能に利益をもたらす。上述したように、金属層は、良好なバリア特性を提供することができ、フィルムにシーラント層を含めることにより、フィルムを多層構造体においてシーラントフィルムとして機能させることが可能になる。
【0037】
積層体
本明細書に記載される様々な実施形態の多層構造体を使用して、積層体を形成することができる。そのような積層体は、本明細書に記載の多層構造体のうちのいずれからも形成することができる。
【0038】
積層体は、1つ以上の追加のフィルムと接着接触している様々な実施形態の多層構造体を含んでいてよい。例えば、上述の1つ以上の実施形態の多層構造体を第2のフィルムに接着させてもよい。第2のフィルムは、例えば、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。本多層構造体は、当業者に既知であるとおり、接着剤層を介して第2のフィルムに接着していてもよい。
【0039】
物品
本発明の多層構造体又は積層体を使用して、包装などの物品を形成することができる。そのような物品は、本明細書に記載の多層構造体又は積層体のうちのいずれからも形成することができる。
【0040】
本発明の多層構造体又は積層体から形成することができる物品の例としては、可撓性包装、パウチ、自立型パウチ、及び予め作製された包装又はパウチを挙げることができる。いくつかの実施形態では、本発明の多層構造体又は物品は、食品包装に使用することができる。そのような包装に含まれ得る食品の例としては、肉、チーズ、シリアル、ナッツ、ジュース、ソースなどが挙げられる。そのような物品は、本明細書の教示に基づいて、また包装の具体的な用途(例えば、食品の種類、食品の量など)に基づいて、当業者に既知の技術を使用して形成され得る。
【0041】
試験方法
本明細書に別段示されない限り、本発明の態様の説明では以下の分析方法を使用する。
【0042】
密度
密度は、ASTM D792に準拠して測定され、1立方センチメートル当たりのグラム(g/cc又はg/cm3)として表される。
【0043】
メルトインデックス(I2)及びメルトフローレート
メルトインデックス(I2)は、ASTM D-1238によって190℃、2.16kgで測定される(プロピレン系ポリマーを除く)。メルトフローレートは、プロピレン系ポリマーに使用され、ASTM D-1238に従って230℃、2.16kgで測定される。メルトインデックスの値はg/10分で報告され、これは10分当たりに溶出したグラム数に相当する。
【0044】
ブルックフィールド粘度
ブルックフィールド粘度は、ASTM D1084に従って(350°F)177℃で測定される。ブルックフィールド粘度の値は、パスカル秒(Pa.S)で報告される。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は、本開示の特徴を例示するものであるが、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。以下の材料を、多層構造体の実施例の一部であるキャストフィルムに使用する。
【0046】
BYNEL(商標)50E803(「ポリ1」)、0.90g/ccの密度及び470g/10分のメルトフローレートを有するDow Chemical Company(Midland,MI)から市販されている無水物変性ポリプロピレン樹脂。
【0047】
FUSABOND(商標)525(「ポリ2」)、0.88g/ccの密度及び3.7g/10分のメルトインデックス(I2)を有するDow Chemical Company(Midland,MI)から市販されている無水物変性エチレンコポリマー。
【0048】
RETAIN(商標)3000(「ポリ3」)、0.87g/ccの密度、660g/10分のメルトインデックス(I2)、0.5重量%超の無水マレイン酸レベル、及び13.0パスカル秒の(350°F)177℃におけるブルックフィールド粘度を有するDow Chemical Company(Midland,MI)から市販されている無水マレイン酸グラフト化ポリエチレン。
【0049】
Total Polypropylene 3365(「PP-1」)、0.905g/ccの密度及び3.8g/10分のメルトフローレートを有するTotal Petrochemical USA(Houston,TX)から市販されているポリプロピレンホモポリマー。
【0050】
Total Polypropylene Z9450(「PP-2」)、Total Petrochemical USA(Houston,TX)から市販されているランダムコポリマーポリプロピレン。
【0051】
上記材料を使用して、3つの押出機を備える3層キャストフィルムラインを使用して多数の3層キャストフィルムを作製する。各フィルムは、同じ条件を使用して調製する。各フィルムの指定の配合物は、3つの押出機(各層につき1つの押出機)を通して提供される。層が複数の樹脂を含む場合、樹脂を乾式ブレンドした後、押出機に装填する。総ライン速度を20m/分に設定する。総フィルム厚さは50マイクロメートルであり、層比は1/1/1(1層当たり16.67マイクロメートル)である。キャストラインのプロセスパラメータを以下の表1に示す。
【0052】
【0053】
キャストフィルムの層の組成を表2に報告する。ここから分かるように、フィルム1~9の外層は、PP-1と、5%、10%、又は15%のポリ1、ポリ2、又はポリ3のいずれかとのブレンドを含む。
【0054】
【0055】
フィルムは、調製後、商業的条件をシミュレートするために、周囲条件で1週間超保管して、添加剤をフィルム表面に移動させる。1週間超保管した後、当業者に既知の技術を使用して、フィルムをコロナ処理する。
【0056】
コロナ処理に続いて、フィルムの外層(ブレンドを含む)を金属化する。Shenyang Vacuum Technology Instituteによって製造されたラボスケールの真空堆積チャンバ内でフィルムの外層の金属化を行う。フィルムを基材ホルダーにテープで留め、アルミニウム線を抵抗加熱器(加熱ボート)の容器に挿入する。まず真空ポンプを作動させて、冷却システムが15℃の状態で、チャンバ内に50Pa未満の圧力を誘発する。カットオフバルブを素早く開き、コーナーバルブを閉じ、バタフライバルブを開くことによって、チャンバの排気設定を真空ポンプから分子ポンプに変更する。そのような操作によって、チャンバは分子ポンプによってはるかに高い真空まで排気されるが、真空ポンプは分子ポンプの操作を保護していない。真空レベルが3×10-3Paに達したら、加熱ボートをオンにする。基材表面を一時的に覆うようにマスクを調整し、同時に、回転部品をオンにして、基材の一定速度回転を駆動し、より均一な蒸着を促進する。次いで、QCM(水晶振動子マイクロバランス、Fil-Tech Inc.)に基づく厚さモニターをオンにする。必要とされるアルミニウム堆積速度(通常10~50オングストローム/s)を得るために加熱ボートの電流を調整し、次いで、基材の上のマスクを素早く除去し、同時にQCMにおける厚さ読み取り値を0にリセットする。20ナノメートル前後の厚さが達成されるまで堆積を続ける。その時点で、加熱ボートを直ちにオフする。分子ポンプを停止させるが、速度が0に低下するまでオフにしない。この段階中、真空ポンプからの保護も継続した。真空ポンプをオフにした後、チャンバを通気する。次に、金属化された多層構造体をチャンバから取り出し、防塵ボックスに入れる。
【0057】
次に、フィルムの外層に対する金属層の結合強度を、各多層構造体について以下のとおり測定する。多層構造体の金属層がEAAフィルムと接触している状態で、約7%のアクリル酸含有量を有するエチレンアクリル酸コポリマーから作製された100ミクロンのフィルム(「EAAフィルム」)に多層構造体をヒートシールする。110℃の上側ジョーと70℃の下側ジョーとの間に、上側ジョーがEAAフィルムと接触し、下側ジョーが多層構造体と接触している状態でフィルムを配置することによって、多層構造体及びEAAフィルムをヒートシールする。ジョーを、5バールの圧力下で20秒間、EAAフィルム及び多層構造体と接触させる。室温で24時間エージングした後、次いで、100Nのロードセルを用いて12インチ/分の試験速度でT-剥離を測定することによって、Instron 5567引張試験機を使用して結合強度を測定する。平均値をフィルムの外層と金属層との間の結合強度として使用する。結果を、表3に示す。
【0058】
【0059】
上記に示されるように、フィルムの外層が10重量%又は15重量%の無水マレイン酸グラフト化ポリエチレンとポリプロピレンホモポリマーとのブレンドを含有する場合(本発明の多層構造体1及び3)、結合強度は、対応する比較多層構造体(例えば、比較多層構造体1~2及び6~7)よりも著しく大きい。
【国際調査報告】